(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230719BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230719BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230719BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230719BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20230719BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230719BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20230719BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230719BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 ZNA
A61P35/00
A61P35/04
A61P13/12
A61P1/18
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61P13/10
A61P15/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P17/00
A61K31/47
A61K31/277
C07K14/705
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578934
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 US2021038171
(87)【国際公開番号】W WO2021262562
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ペリーニ,ロドルフォ・フルーリー
(72)【発明者】
【氏名】ピネイロ,エレイン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン・ロジェリオ,ジャクリーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA18
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC022
4C084ZC422
4C084ZC751
4C084ZC80
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG05
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
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4C086MA04
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4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC75
4C086ZC80
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA14
4C206KA04
4C206KA17
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZC75
4C206ZC80
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法であって、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、(a)PD-1アンタゴニスト;(b)HIF-2α阻害剤;および(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。このような作用物質を含有するキット、および癌の処置のためのこのような作用物質の治療的組み合わせの使用も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法であって、
癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含み、
前記PD-1アンタゴニストはアテゾリズマブではない、方法。
【請求項2】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫、膵臓癌および黒色腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌がRCCである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RCCが進行RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RCCが、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト患者が、進行した疾患に対する従前の全身処置を受けたことがない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記RCCが転移性RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が膵臓癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を備え、
前記PD-1アンタゴニストはアテゾリズマブではない、キット。
【請求項10】
前記PD-1アンタゴニスト、前記HIF-2α阻害剤およびレンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書をさらに備える、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
ヒト患者における癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含み、
前記PD-1アンタゴニストはアテゾリズマブではない、使用。
【請求項12】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫、膵臓癌および黒色腫からなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記癌がRCCである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記RCCが進行RCCである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記RCCが、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記ヒト患者が、進行した疾患に対する従前の全身処置を受けたことがない、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記RCCが転移性RCCである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記癌が膵臓癌である、請求項12に記載の使用。
【請求項19】
前記PD-1アンタゴニストが、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項20】
前記PD-1アンタゴニストが、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項21】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がヒト化抗体である、請求項19に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項22】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がヒト抗体である、請求項19に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項23】
前記HIF-2α阻害剤がベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項24】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、カムレリズマブおよびトリパリマブからなる群から選択される、請求項19に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項25】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がペムブロリズマブである、請求項24に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項26】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がニボルマブである、請求項24に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項27】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がセミプリマブである、請求項24に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項28】
(a)前記PD-1アンタゴニストがペムブロリズマブであり;および
(b)前記HIF-2α阻害剤がベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項29】
(a)前記PD-1アンタゴニストがニボルマブであり;および
(b)前記HIF-2α阻害剤がベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項30】
(a)前記PD-1アンタゴニストがセミプリマブであり;および
(b)前記HIF-2α阻害剤がベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項31】
前記ヒト患者が、200mg、240mgまたは2mg/kgのペムブロリズマブを投与され、ペムブロリズマブが3週間ごとに1回投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト患者が400mgのペムブロリズマブを投与され、ペムブロリズマブが6週間ごとに1回投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト患者が、240mgもしくは3mg/kgのニボルマブを2週間ごとに1回、または480mgのニボルマブを4週間ごとに1回投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト患者が350mgのセミプリマブを投与され、セミプリマブが3週間ごとに1回投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト患者が約40mg~約120mgのベルズチファンを投与され、ベルズチファンが1日1回投与される、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者が40、80または120mgのベルズチファンを投与され、ベルズチファンが1日1回投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒト患者が120mgのベルズチファンを投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒト患者が8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブを投与され、レンバチニブが1日1回投与される、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
RCCを処置する方法であって、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)200mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)20mgのレンバチニブ
を投与することを含む、方法。
【請求項40】
ペムブロリズマブが3週間ごとに1回投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
(b)および(c)が1日1回投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
(a)、(b)および(c)が同じ日に投与され、(a)、(b)および(c)が逐次にまたは同時に投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記その薬学的に許容され得る塩がレンバチニブメシル酸塩である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(a)プログラム死1タンパク質(PD-1)アンタゴニスト、(b)低酸素誘導因子2α(HIF-2α)阻害剤および(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌(例えば、腎細胞癌腫(RCC))またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための方法が、本明細書において提供される。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
本出願の配列表は、ファイル名「25062WOPCT-SEQLIST-09APR2021_ST25.txt」、作成日2021年4月9日、サイズ10KBのASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出されている。EFS-Webを介して提出されたこの配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
PD-1は、免疫調節および末梢性免疫寛容の維持における重要なプレイヤーとして認識されている。PD-1またはそのリガンド(例えば、PD-L1)を標的とする免疫チェックポイント療法は、複数のヒト癌型における臨床応答に革新的な改善をもたらした(Brahmer et al.,N Engl J Med,366:2455-2465(2012);Garon et al.,N Engl J Med,372:2018-2028(2015);Hamid et al.,N Engl J Med,369:134-144(2013);Robert et al.,Lancet,384:1109-1117(2014);Robert et al.,N Engl J Med,372:2521-2532(2015);Robert et al.,N Engl J Med,372:320-330(2015);Topalian et al.,N Engl J Med,366:2443-2454(2012);Topalian et al.,J Clin Oncol,32:1020-1030(2014);Wolchok et al.,N Engl J Med,369:122-133(2013))。PD-1軸を標的とする免疫療法には、PD-1受容体に対して作られたモノクローナル抗体が含まれる(例えば、KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)、Merck and Co.,Inc.,Kenilworth,NJ;OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)、Bristol-Myers Squibb Company,Princeton,NJ);LIBTAYO(登録商標)(セミプリマブ)、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY;TYVYT(登録商標)(シンチルマブ),Innovent Biologics,Inc.,Jiangsu,China;チスレリズマブ、BeiGene,Beijing,China;カムレリズマブ、Hengrui Therapeutics,Inc.,Princeton,NJ;およびトリパリマブ、Junshi Biosciences,Shanghai,China);およびPD-L1リガンドに結合するもの(例えば、IMFINZI(登録商標)(デュルバルマブ)、AstraZeneca Pharmaceuticals LP,Wilmington,DE;およびBAVENCIO(登録商標)(アベルマブ)、Pfizer Inc,New York,NY)。
【0004】
腫瘍内の低酸素は、癌の進行の推進力であり、患者の予後不良ならびに化学療法および放射線処置に対する抵抗性と密接に関連している。低酸素誘導因子(HIF-1αおよびHIF-2α)は、低酸素応答経路において中心的な役割を果たす転写因子である。正常酸素条件下では、腫瘍抑制因子であるフォンヒッペル・リンダウ(VHL)タンパク質は、特定のヒドロキシル化プロリン残基に結合し、プロテアソーム分解のためにHIF-αタンパク質を標的とするE3ユビキチンリガーゼ複合体を動員する。低酸素条件下では、HIF-αタンパク質は蓄積して核に入り、嫌気性代謝、血管新生、細胞増殖、細胞生存、細胞外マトリックスリモデリング、pH恒常性、アミノ酸およびヌクレオチド代謝、ならびにゲノム不安定性を調節する遺伝子の発現を刺激する。VHL欠損も、酸素負荷された条件(偽低酸素条件)下で蓄積されたHIF発現をもたらし得る。したがって、HIF-αタンパク質を直接標的とすることは、多方面において腫瘍を攻撃するための絶好の機会を提供する(Keith,et al.,Nature Rev.Cancer 12:9-22,2012)。
【0005】
具体的には、HIF-2αは、淡明細胞型腎細胞癌腫(ccRCC)における重要な発癌推進因子である(Kondo,K.,et al.,Cancer Cell,1:237-246(2002);Maranchie,J.et al,Cancer Cell,1:247-255(2002);Kondo,K.,et al.,PLoS Biol.,1:439-444(2003))。マウスccRCC腫瘍モデルにおいて、pVHL(フォンヒッペル・リンダウタンパク質)欠損細胞株におけるHIF-2α発現のノックダウンは、pVHLの再導入と同等に腫瘍増殖を阻止した。さらに、HIF-2αの安定化された変異型の発現は、pVHLの腫瘍抑制的役割に打ち勝つことができた。優れたインビトロ効力、薬物動態学的プロファイルおよびマウスモデルにおけるインビボ有効性を有する新規HIF-2α阻害剤であるベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩は、進行腎細胞癌腫を有する患者において有望な結果を示している(Xu,Rui,et al.,J.Med.Chem.62:6876-6893(2019)。
【0006】
HIF-2αは、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)欠損ccRCCに必須である重要なHIFアイソフォームとして浮上した。VHL欠損ccRCC異種移植マウス腫瘍モデルにおいては、HIF-2α発現のノックダウンは機能的VHLの再導入と同等に腫瘍形成を阻害し、HIF2αの過剰発現は、単独で、VHLの腫瘍抑制効果を救済することができる(Kondo K.,Klco J,Nakamura E,Lechpammer M,Kaelin WG Jr..Inhibition of HIF is necessary for tumor suppression by the von Hippel-Lindau protein.Cancer Cell 2002;1:237-46;Maranchie JK,Vasselli JR,Riss J,Bonifacino JS,Linehan WM,Klausner RD.The contribution of VHL substrate binding and HIF1-alpha to the phenotype of VHL loss in renal cell carcinoma.Cancer Cell 2002;1:247-55;Kondo K,Kim WY,Lechpammer M,Kaelin WG Jr..Inhibition of HIF2alpha is sufficient to suppress pVHL-defective tumor growth.PLoS Biol 2003;1:E83;Zimmer M,Doucette D,Siddiqui N,Iliopoulos O.Inhibition of hypoxia-inducible factor is sufficient for growth suppression of VHL-/-tumors.Mol Cancer Res 2004;2:89-95を参照)。これらのデータは、HIF-2αがccRCCにおける腫瘍形成推進因子であり得ることを示唆している。HIFタンパク質はまた、腫瘍低酸素微小環境によって、多くの他の種類の癌(例えば、乳癌、肝臓癌、結腸癌、脳癌、膵臓癌)において活性化され得、癌の開始、進行および転移に関与するとされている(Jarman EJ,Ward C,Turnbull AK,Martinez-Perez C,Meehan J,Xintaropoulou C,Sims AH,Langdon SP.HER2 regulates HIF-2α and drives an increased hypoxic response in breast cancer.Breast Cancer Res.2019 Jan 22;21(1):10;Wigerup C,Pahlman S.,Bexell D.Therapeutic targeting of hypoxia and hypoxia-inducible factors in cancer.Pharmacology&Therapeutics 164(2016)152-169)。HIF-2αは、内皮細胞、血管周囲腫瘍細胞、および自然免疫の調節において役割を果たす腫瘍関連マクロファージ(TAM)などの免疫抑制細胞型を含む、腫瘍低酸素下の宿主腫瘍細胞によって安定化されることが示されている(Imtiyaz HZ,Williams EP,Hickey MM,Patel SA,Durham AC,Yuan LJ,Hammond R,Gimotty PA,Keith B,Simon MC.Hypoxia-inducible factor 2alpha regulates macrophage function in mouse models of acute and tumor inflammation.J Clin Invest.2010 Aug;120(8):2699-714を参照)。しかしながら、どのVHL保有腫瘍型および組み合わせ戦略が、HIF-2αの阻害剤を用いて調べることが論理的に妥当であるかについてはほとんど知られていない。
【0007】
フォンヒッペル・リンダウ病(VHL病)は、患者が腎臓癌になりやすいだけでなく(約70%の生涯リスク)、血管芽細胞腫、褐色細胞腫および膵臓神経内分泌腫瘍にもなりやすい常染色体優性症候群である。VHL病は、構成的に活性なHIF-αタンパク質を有する腫瘍をもたらし、これらの大部分はHIF-2α活性に依存する(Maher,et al.Eur.J.Hum.Genet.19:617-623,2011)。HIF-2αは、VHL疾患および活性化変異の両方を介して、網膜、副腎および膵臓の癌に関連している。近年、機能獲得型HIF-2α変異が、赤血球増加症および赤血球増加を伴う傍神経節腫において同定されている(Zhuang,et al.NEJM 367:922-930,2012;Percy,et al.NEJM 358:162-168,2008;およびPercy,et al.Am.J.Hematol.87:439-442,2012)。注目すべきことに、いくつかの公知のHIF-2α-標的遺伝子産物(例えば、VEGF、PDGF、およびサイクリンD1)は、腎臓、肝臓、結腸、肺および脳に由来する癌において極めて重要な役割を果たすことが示されている。実際、重要なHIF-2αによって調節される遺伝子産物の1つであるVEGFを標的とする治療法が、これらの癌の処置に関して承認されている。
【0008】
チロシンキナーゼは増殖因子シグナル伝達の調節に関与しており、したがって癌治療のための重要な標的である。レンバチニブは、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)およびVEGFR3(FLT4))ならびに線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、2、3および4の他、腫瘍増殖に関与する他の血管新生促進性および発癌性経路関連のRTK(血小板由来増殖因子(PDGF)受容体PDGFRα;KITおよびRET癌原遺伝子(RET)を含む)のキナーゼ活性を選択的に阻害する多重RTK(マルチRTK)阻害剤である。特に、レンバチニブは、X線結晶構造解析を通じて確認されたところ、VEGFR2に対する新しい結合様式(V型)を有し、速度論的解析によれば、キナーゼ活性の迅速かつ強力な阻害を示す。
【0009】
抗PD-1または抗PD-L1アンタゴニスト抗体の有効性は、他の承認されたまたは実験的な癌治療、例えば、放射線、手術、化学療法剤、標的療法、腫瘍中で調節不全である他のシグナル伝達経路を阻害する作用物質、および他の免疫増強剤と組み合わせて投与された場合に増強され得ることが提案されている。しかしながら、抗PD-1または抗PD-L1抗体と組み合わされたいずれの作用物質が有効であり得るか、またはいずれの患者においてその組み合わせが処置の有効性を増強し得るかに関する明確な指針は存在しない。したがって、癌に対する頑強な免疫応答を生じることができる高い有効性の治療的組み合わせに対する満たされていない要求が当技術分野において存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Brahmer et al.,N Engl J Med,366:2455-2465(2012)
【非特許文献2】Garon et al.,N Engl J Med,372:2018-2028(2015)
【非特許文献3】Hamid et al.,N Engl J Med,369:134-144(2013)
【非特許文献4】Robert et al.,Lancet,384:1109-1117(2014)
【非特許文献5】Robert et al.,N Engl J Med,372:2521-2532(2015)
【非特許文献6】Robert et al.,N Engl J Med,372:320-330(2015)
【非特許文献7】Topalian et al.,N Engl J Med,366:2443-2454(2012)
【非特許文献8】Topalian et al.,J Clin Oncol,32:1020-1030(2014)
【非特許文献9】Wolchok et al.,N Engl J Med,369:122-133(2013)
【非特許文献10】Keith,et al.,Nature Rev.Cancer 12:9-22,2012
【非特許文献11】Kondo,K.,et al.,Cancer Cell,1:237-246(2002)
【非特許文献12】Maranchie,J.et al,Cancer Cell,1:247-255(2002)
【非特許文献13】Kondo,K.,et al.,PLoS Biol.,1:439-444(2003)
【非特許文献14】Xu,Rui,et al.,J.Med.Chem.62:6876-6893(2019)
【非特許文献15】Kondo K.,Klco J,Nakamura E,Lechpammer M,Kaelin WG Jr..Inhibition of HIF is necessary for tumor suppression by the von Hippel-Lindau protein.Cancer Cell 2002;1:237-46
【非特許文献16】Maranchie JK,Vasselli JR,Riss J,Bonifacino JS,Linehan WM,Klausner RD.The contribution of VHL substrate binding and HIF1-alpha to the phenotype of VHL loss in renal cell carcinoma.Cancer Cell 2002;1:247-55
【非特許文献17】Kondo K,Kim WY,Lechpammer M,Kaelin WG Jr..Inhibition of HIF2alpha is sufficient to suppress pVHL-defective tumor growth.PLoS Biol 2003;1:E83
【非特許文献18】Zimmer M,Doucette D,Siddiqui N,Iliopoulos O.Inhibition of hypoxia-inducible factor is sufficient for growth suppression of VHL-/-tumors.Mol Cancer Res 2004;2:89-95
【非特許文献19】Jarman EJ,Ward C,Turnbull AK,Martinez-Perez C,Meehan J,Xintaropoulou C,Sims AH,Langdon SP.HER2 regulates HIF-2α and drives an increased hypoxic response in breast cancer.Breast Cancer Res.2019 Jan 22;21(1):10
【非特許文献20】Wigerup C,Pahlman S.,Bexell D.Therapeutic targeting of hypoxia and hypoxia-inducible factors in cancer.Pharmacology & Therapeutics 164(2016)152-169
【非特許文献21】Imtiyaz HZ,Williams EP,Hickey MM,Patel SA,Durham AC,Yuan LJ,Hammond R,Gimotty PA,Keith B,Simon MC.Hypoxia-inducible factor 2alpha regulates macrophage function in mouse models of acute and tumor inflammation.J Clin Invest.2010 Aug;120(8):2699-714
【非特許文献22】Maher,et al.Eur.J.Hum.Genet.19:617-623,2011
【非特許文献23】Zhuang,et al.NEJM 367:922-930,2012
【非特許文献24】Percy,et al.NEJM 358:162-168,2008
【非特許文献25】Percy,et al.Am.J.Hematol.87:439-442,2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法を提供する。
【0012】
本開示はさらに、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を含むキットを提供する。
【0013】
癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩を含む、使用も本明細書において提供される。
【0014】
一局面において、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法であって、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0015】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)、膵臓癌および黒色腫からなる群から選択される。
【0016】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0017】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は膵臓癌である。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0018】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。
【0019】
別の局面において、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を備えるキットが本明細書において提供される。
【0020】
ある態様において、キットは、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書をさらに備える。
【0021】
さらに別の局面において、ヒト患者における癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0022】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)、膵臓癌および黒色腫からなる群から選択される。
【0023】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0024】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は膵臓癌である。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0025】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である。さらに別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。
【0026】
一態様において、ヒト患者は、進行した疾患に対する従前の全身処置を受けたことがない。態様のクラスにおいて、ヒト患者は、進行RCCに対する従前の全身処置を受けたことがない。
【0027】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用のある態様において、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の他の態様において、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0028】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0029】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト抗体である。
【0030】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用のある態様において、HIF-2α阻害剤は、ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0031】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の一態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、カムレリズマブおよびトリパリマブからなる群から選択される。
【0032】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の一態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はペムブロリズマブである。
【0033】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はニボルマブである。
【0034】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はセミプリマブである。
【0035】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はシンチリマブである。
【0036】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はチスレリズマブである。
【0037】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はカムレリズマブである。
【0038】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はトリパリマブである。
【0039】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はデュルバルマブである。
【0040】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の別の態様において、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はアベルマブである。
【0041】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用のさらに別の態様において、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩はレンバチニブメシル酸塩である。経口投与用のカプセル剤は、4mgまたは10mgのレンバチニブを含有し、それぞれ4.90mgまたは12.25mgのレンバチニブメシル酸塩に相当する。別の態様において、レンバチニブメシル酸塩などのレンバチニブの薬学的に許容され得る塩が投与され、使用すべきレンバチニブの用量が4mgであるとき、医療従事者は、4.90mgのレンバチニブメシル酸塩を投与することを知っているであろう。別の態様において、レンバチニブメシル酸塩などのレンバチニブの薬学的に許容され得る塩が投与され、使用されるべきレンバチニブの用量が10mgであるとき、医療従事者は、12.25mgのレンバチニブメシル酸塩を投与することを知っているであろう。本明細書に記載される様々な方法の態様において、ヒト患者は、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブを1日1回投与される。
【0042】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の1つの具体的な態様において、PD-1アンタゴニストはペムブロリズマブであり、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0043】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の1つの具体的な態様において、PD-1アンタゴニストはニボルマブであり、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0044】
本明細書で提供される様々な方法、キットまたは使用の1つの具体的な態様において、PD-1アンタゴニストはセミプリマブであり、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0045】
本明細書に記載される様々な方法のいくつかの態様において、ヒト患者は、200mg、240mgまたは2mg/kgのペムブロリズマブを投与され、ペムブロリズマブは3週間ごとに1回投与される。一態様において、ヒト患者は、200mgのペムブロリズマブを3週間ごとに1回投与される。一態様において、ヒト患者は、240mgのペムブロリズマブを3週間ごとに1回投与される。一態様において、ヒト患者は、2mg/kgのペムブロリズマブを3週間ごとに1回投与される。
【0046】
本明細書に記載される様々な方法のある態様において、ヒト患者は400mgのペムブロリズマブを投与され、ペムブロリズマブは6週間ごとに1回投与される。
【0047】
本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は、240mgもしくは3mg/kgのニボルマブを2週間ごとに1回、または480mgのニボルマブを4週間ごとに1回投与される。1つの特定の態様においては、ヒト患者は、240mgのニボルマブを2週間ごとに1回投与される。1つの特定の態様においては、ヒト患者は、3mg/kgのニボルマブを2週間ごとに1回投与される。1つの特定の態様においては、ヒト患者は、480mgのニボルマブを4週間ごとに1回投与される。
【0048】
本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は350mgのセミプリマブを投与され、セミプリマブは3週間ごとに1回投与される。
【0049】
本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は800mgのアベルマブを投与され、アベルマブは2週間ごとに1回投与される。
【0050】
本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は10mg/kgのデュルバルマブを投与され、デュルバルマブは2週間ごとに1回投与される。本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は1500mgのデュルバルマブを投与され、デュルバルマブは3週間ごとに1回投与される。本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、ヒト患者は1500mgのデュルバルマブを投与され、デュルバルマブは4週間ごとに1回投与される。
【0051】
本明細書に記載される様々な方法のさらに他の態様において、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、ヒト患者は40mg~120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を毎日投与される。いくつかの態様において、ヒト患者は、40、80または120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、40mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。別の特定の態様において、ヒト患者は、80mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。別の特定の態様において、ヒト患者は、120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。
【0052】
したがって、いくつかの態様において、ヒト患者は、
(a)3週間ごとに1回、200mg、240mgまたは2mg/kgのペムブロリズマブ;
(b)1日1回、40、80または120mgのベルズチファン;および
(c)1日1回、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブ
を投与される。
【0053】
ある態様において、ヒト患者は、
(a)3週間ごとに1回、200mgのペムブロリズマブ;
(b)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(c)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与される。
【0054】
ある態様において、ヒト患者は、
(a)3週間ごとに1回、240mgのペムブロリズマブ;
(b)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(c)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与される。
【0055】
ある態様において、ヒト患者は、
(a)3週間ごとに1回、2mg/kgのペムブロリズマブ;
(b)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(c)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与される。
【0056】
ある態様において、ヒト患者は、
(a)6週間ごとに1回、400mgのペムブロリズマブ;
(b)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(c)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与される。
【0057】
特定の態様において、RCCを処置する方法であって、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)3週間ごとに1回、200mgのペムブロリズマブ;
(b)1日1回、120mgのベルズチファン;および
(c)1日1回、20mgのレンバチニブ
を投与することを含む方法が本明細書において提供される。
【0058】
このような方法のある態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブは、同じ日に投与される。いくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブは逐次投与される。他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブは同時に投与される。
【0059】
本明細書に記載される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの態様において、レンバチニブの薬学的に許容され得る塩-レンバチニブメシル酸塩-を使用することができる。レンバチニブメシル酸塩が使用される場合、レンバチニブメシル酸塩の投与量は、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブが提供するのと等しいモルのレンバチニブを提供するように適切に調整される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、一次進行RCCを有する患者(実験群A4)におけるペムブロリズマブおよびレンバチニブと組み合わせたベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩(MK-6482)の第1b/2相試験の設計概要のスキームを示す。
【
図2A】
図2Aは、各処置群における平均腫瘍体積によって示される、PD-1アンタゴニスト、レンバチニブおよびHIF-2a阻害剤(MK-6482)の同時投与の抗腫瘍効果を示す。実験の詳細は実施例2に記載されている。
【
図2B】
図2Bは、各それぞれの群についての個々の増殖曲線における平均腫瘍体積によって示される、PD-1アンタゴニスト、レンバチニブおよびHIF-2a阻害剤(MK-6482)の同時投与の抗腫瘍効果を示す。実験の詳細は実施例2に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0061】
1.定義
ある特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0062】
数値的に定義されたパラメータ(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤もしくはその抗原結合断片、もしくはレンバチニブの用量、または本明細書中に記載される併用療法による処置時間の長さ)を修飾するために使用される場合の「約」は、パラメータが、そのパラメータについて記載された数値または範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満であることを意味し、適切な場合には、記載されたパラメータは、最も近い整数に丸められ得る。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kg~5.5mg/kgの間で変動し得る。
【0063】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「a」、「an」および「the」などの単語の単数形は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、それらの対応する複数の言及を含む。
【0064】
「投与」または「投与する」という用語は、物質が体外に存在する場合に(例えば、本明細書中に記載されるような抗PD-1抗体、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブ)、経口、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達、および/または本明細書に記載されているもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法などによって、物質を患者に注射するか、またはその他物理的に送達する行為を指す。
【0065】
「PD-1アンタゴニスト」は、免疫細胞(T細胞、B細胞またはNKT細胞)上に発現されたPD-1への癌細胞上に発現されたPD-L1の結合を遮断し、好ましくは免疫細胞によって発現されたPD-1への癌細胞上に発現されたPD-L2の結合も遮断する任意の化学化合物または生物学的分子を意味する。PD-1およびそのリガンドの別名または同義語には、PD-1についてはPDCD1、PD1、CD279およびSLEB2、PD-L1についてはPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274およびB7-H;ならびにPD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-DC、BtdcおよびCD273が含まれる。ヒト個体が処置されている処置方法、医薬および開示される使用のいずれにおいても、PD-1アンタゴニストは、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断し、好ましくはヒトPD-L1およびPD-L2の両方のヒトPD-1への結合を遮断する。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI Locus No.:NP_005009に見出すことができる。ヒトPD-L1およびPD-L2アミノ酸配列は、それぞれ、NCBI Locus No.:NP_054862およびNP_079515に見出すことができる。PD-1アンタゴニストは、抗PD-L1モノクローナル抗体であるアテゾリズマブではない。
【0066】
「HIF-2α阻害剤」は、HIF-2αの活性を阻害する任意の化学化合物または生物学的分子を意味する。HIF-2αの別名または同義語には、低酸素誘導因子-2α、内皮PASドメイン含有タンパク質1およびEPAS1が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、所望の生物学的活性または結合活性を示す免疫グロブリン分子の任意の形態を指す。したがって、「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化、完全ヒト抗体およびキメラ抗体を具体的に包含するが、これらに限定されない。「親抗体」は、ヒト治療薬として使用するための抗体のヒト化などの意図された使用のための抗体の改変の前に免疫系を抗原に曝露することによって得られる抗体である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、特に明記しない限り、特異的結合について無傷の抗体と競合するその任意の抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態も包含する。
【0068】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を含み、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100~110またはそれより多くのアミノ酸の可変領域を含む。各軽/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷の抗体は2つの結合部位を有する。重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定し得る。典型的には、ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域は、約12またはそれより多くのアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、さらに約10個のアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照されたい。
【0069】
本明細書で使用される「可変領域」または「V領域」または「V鎖」は、異なる抗体間で配列が可変的であるIgG鎖のセグメントを意味する。抗体の「可変領域」とは、単独でまたは組み合わせて、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖の可変領域は、「VH」と称されることがある。軽鎖の可変領域は、「VL」と称されることがある。典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは通常、フレームワーク領域によって整列されており、特異的なエピトープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端へ、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインはいずれも、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,5th ed.,NIH Publ.No.91-3242(1991),Kabat(1978),Adv.Prot.Chem.32:1-75,Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616,Chothia,et al.,(1987)J.Mol.Biol.196:901-917またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883の定義に従う。
【0070】
「CDR」は、抗体VHβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)のうちの1つ、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、抗体可変ドメイン内の最も超可変性の領域として、例えばKabatによって定義されている。CDR領域配列はまた、保存されたbシートフレームワークの一部ではない、したがって異なる立体構造に適応することができる残基として、Chothiaによって構造的に定義されている。いずれの語法も当技術分野でよく認知されている。CDR領域配列はまた、AbM、ContactおよびIMGTによって定義されている。カノニカル抗体可変領域内のCDRの位置は、多数の構造の比較によって決定されている(Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.273:927-48;Morea et al.,2000,Methods 20:267-79)。超可変領域内の残基の数は異なる抗体において変動するので、カノニカル位置に対する追加の残基は、慣例として、カノニカル可変領域ナンバリングスキームにおける残基番号の隣にa、b、cなどが付番される(Al-Lazikani et al.,前出)。このような命名法も同様に当業者に周知である。例えば、KabatナンバリングおよびIMGT固有のナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知であり、以下の表1に示される。いくつかの態様において、CDRは、Kabatナンバリングシステムによって定義される通りである。他の態様において、CDRは、IMGTナンバリングシステムによって定義される通りである。さらに他の態様において、CDRは、AbMナンバリングシステムによって定義される通りである。さらに他の態様において、CDRは、Chothiaナンバリングシステムによって定義される通りである。さらに他の態様において、CDRは、Contactナンバリングシステムによって定義される通りである。
【0071】
【0072】
「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種(例えば、ヒト)に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する配列を含有し、(1つまたは複数の)鎖の残りが別の種(例えば、マウス)に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびに所望の生物学的活性を示す限り、このような抗体の断片を指す。
【0073】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列またはその誘導体を含む抗体を指す。ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞において、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合、マウス炭水化物鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、それぞれマウスもしくはラットの免疫グロブリン配列またはその誘導体のみを含む抗体を指す。
【0074】
「ヒト化抗体」は、ヒト抗体の他に非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の配列を含有する抗体の形態を指す。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでもよい。ヒト化抗体を親齧歯動物抗体と区別するために必要な場合、接頭辞「hum」、「hu」または「h」が抗体クローンの名称に付加され得る。齧歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親齧歯類抗体の同じCDR配列を含むが、親和性を増加させるために、ヒト化抗体の安定性を増加させるために、または他の理由のために、ある特定のアミノ酸置換が含まれ得る。
【0075】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」は、実質的に均一な抗体の集団を指し、すなわち、その集団を構成する抗体分子は、微量に存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いてアミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、しばしば異なるエピトープに対して特異的であるそれらの可変ドメイン、特にそれらのCDR中に異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られているとして抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628およびMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離され得る。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照されたい。
【0076】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片、例えば、1つまたは複数のCDR領域を保持する断片を指す。PD-1またはILT4「に特異的に結合する」抗体は、他のタンパク質と比較して(必要に応じて)PD-1またはILT4に優先的な結合を示すが、この特異性は絶対的な結合特異性を必要としない抗体である。抗体は、例えば偽陽性などの望ましくない結果を生じることなく、その結合が試料中の標的タンパク質の存在を決定するものであれば、その意図された標的に対して「特異的」であると考えられる。抗体またはその結合断片は、非標的タンパク質との親和性より少なくとも2倍大きい、好ましくは少なくとも10倍大きい、より好ましくは少なくとも20倍大きい、最も好ましくは少なくとも100倍大きい親和性で標的タンパク質に結合する。
【0077】
抗原結合部分としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、CDRを含む断片、および一本鎖可変断片抗体(scFv)、ならびに抗原(例えば、PD-1またはILT4)に結合する特異的抗原を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが挙げられる。抗体は、IgG、IgAまたはIgM(またはこれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体はいずれかの特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つの主要な免疫グロブリンのクラスが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置は周知である。
【0078】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」項目または「1つまたは複数の」項目という用語はそれぞれ、リストから選択された単一の項目およびリストから選択された2つまたはそれより多くの項目の混合物を含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、以下のもの:特異的免疫応答、非特異的免疫応答、特異的応答と非特異的応答の両方、自然応答、一次免疫応答、適応免疫、二次免疫応答、記憶免疫応答、免疫細胞活性化、免疫細胞増殖、免疫細胞分化、およびサイトカイン発現の任意の1つまたは複数に関する。
【0080】
本明細書で使用される「対象」(あるいは「患者」)という用語は、処置、観察または実験の対象であった哺乳動物を指す。哺乳動物は、男性/雄または女性/雌であり得る。哺乳動物は、ヒト、ウシ類(例えば、乳牛)、ブタ類(例えば、ブタ)、ヒツジ類(例えば、ヒツジ)、ヤギ類(例えば、ヤギ)、ウマ類(例えば、ウマ)、イヌ類(例えば、飼育犬)、ネコ(例えば、飼育猫)、ウサギ類(例えば、ウサギ)、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)、プロキオン・ロトール(例えば、アライグマ)からなる群から選択される1つまたは複数であり得る。特定の態様において、対象はヒトである。
【0081】
本明細書で使用される「~を必要とする対象」という用語は、本明細書で定義される癌または感染性疾患と診断されたまたはそれを有すると疑われる対象を指す。
【0082】
本開示によって提供される治療薬および組成物は、任意の適切な経腸投与経路または非経口投与経路を介して投与することができる。「経腸経路」の投与という用語は、消化管の任意の部分を介した投与を指す。経腸経路の例としては、経口、粘膜、口腔および直腸経路、または胃内経路が挙げられる。「非経口経路」の投与は、経腸経路以外の投与経路を指す。非経口経路の投与の例としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、膀胱内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内、皮下または局所投与が挙げられる。本開示の治療薬および組成物は、経口摂取、経鼻胃管、胃瘻管、注射、注入、埋め込み型注入ポンプ、および浸透圧ポンプなどの任意の適切な方法を使用して投与することができる。適切な投与経路および投与方法は、使用されている具体的な治療薬、所望の吸収速度、使用されている具体的な製剤または剤形、処置されている障害のタイプまたは重症度、具体的な作用部位、および患者の状態などのいくつかの要因に応じて異なり得、当業者によって容易に選択され得る。
【0083】
抗体(例えば、抗PD-1抗体)または抗体内のアミノ酸領域に関して使用される場合の「変異型」という用語は、天然のまたは非修飾の配列と比較して、1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)のアミノ酸配列の置換、欠失および/または付加を含むペプチドまたはポリペプチドを指し得る。例えば、抗PD-1抗体の変異型は、天然のまたは以前に修飾されていない抗PD-1抗体のアミノ酸配列に対する1つまたは複数の(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)変化から生じ得る。変異型は、天然に存在し得、または人工的に構築され得る。ポリペプチド変異型は、変異型をコードする対応する核酸分子から調製され得る。特定の態様において、抗体変異型(例えば、抗PD-1抗体変異型)は、少なくとも抗体機能活性を保持する。特定の態様において、抗PD-1抗体変異型は、PD-1に結合し、および/またはPD-1活性に拮抗する。
【0084】
「保存的に改変された変異型」または「保存的置換」は、タンパク質の生物学的活性または抗原親和性および/もしくは特異性などのその他の所望の特性を変化させることなく変化を頻繁に行うことができるような、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格の立体構造および剛性など)を有する他のアミノ酸によるタンパク質中のアミノ酸の置換を指す。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域中の単一のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する[例えば、Watson et al.,(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性がより低い。例示的な保存的置換を下の表2に示す。
【0085】
【0086】
「相同性」とは、2つのポリペプチド配列が最適に整列されている場合の、2つのポリペプチド配列間の配列類似性を指す。2つの比較された配列の両方中のある位置が同じアミノ酸単量体サブユニットによって占められている場合、例えば2つの異なるAbの軽鎖CDR中の位置がアラニンによって占められていれば、2つのAbはその位置において相同である。相同性のパーセントは、比較される位置の総数で除した2つの配列によって共有される相同な位置の数×100である。例えば、配列が最適に整列されたときに、2つの配列中の10個の位置のうち8個が一致している場合、2つの配列は80%相同である。一般に、比較は、2つの配列が最大のパーセント相同性を与えるように整列されたときに行われる。例えば、比較はBLASTアルゴリズムによって実施することができ、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間で最大の一致を与えるように選択される。
【0087】
以下の参考文献は、配列分析のためにしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,’’A model of evolutionary change in proteins.’’ in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,;Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,’’Matrices for detecting distant relationships.’’ in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.’’ M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.’’Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.’’ in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York。
【0088】
本明細書で使用される「固形癌効果判定基準1.1応答基準」は、必要に応じて、応答が測定されている状況に基づいて、標的病変または非標的病変に関してEisenhauer,E.A.et al.,Eur.J.Cancer 45:228-247(2009)に記載されている定義を意味する。
【0089】
「持続した応答」は、本明細書に記載される処置の停止後の持続した治療効果を意味する。いくつかの態様において、持続した応答は、処置期間と少なくとも同じであるか、または処置期間よりも少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍もしくは3倍長い期間を有する。
【0090】
本明細書で使用される癌を「処置する」または「処置すること」とは、例えば、低下した数の癌細胞、低下した腫瘍サイズ、末梢器官への癌細胞浸潤の低下した割合、または腫瘍転移もしくは腫瘍増殖の低下した割合などの少なくとも1つのプラスの治療効果を達成するために、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の治療的組み合わせを、癌を有するかまたは癌と診断された対象に投与することを意味する。このような「処置」は、本明細書に記載されるように癌の進行の減速、中断、抑止、制御または停止をもたらし得るが、必ずしも癌または癌の症候の完全な排除を示すものではない。癌におけるプラスの治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)を参照)。例えば、腫瘍増殖阻害に関して、NCI基準によれば、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、T/C(%)=処置されたものの腫瘍体積の中央値/対照の腫瘍体積の中央値×100である。いくつかの態様において、本開示の併用療法によって達成される処置は、PR、CR、OR、PFS、DFSおよびOSのいずれでもある。PFSは、「腫瘍進行までの時間」とも呼ばれ、処置中および処置後に癌が増殖しない時間の長さを示し、患者がCRまたはPRを経験した時間の長さの他、患者がSDを経験した時間の長さを含む。DFSは、患者が無疾患状態を保つ処置中および処置後の時間の長さを指す。OSは、無処置または非処置の個体または患者と比較した平均余命の延長を指す。いくつかの態様において、本開示の併用療法に対する応答は、固形癌効果判定基準1.1応答基準を使用して評価されるPR、CR、PFS、DFSまたはORのいずれでもある。癌患者を処置するのに有効な本開示の併用療法のための処置レジメンは、患者の病状、年齢および体重、ならびに対象において抗癌応答を誘発する療法の能力などの因子に応じて変化し得る。本開示の局面のいずれかの態様は、すべての対象においてプラスの治療効果を達成する上で有効ではないことがあり得るが、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ワリス検定(H検定)、ヨンキー・テラプストラ検定およびウィルコクソン検定などの当技術分野で公知の任意の統計学的検定によって決定された場合に、統計的に有意な数の対象においてプラスの治療効果を達成すべきである。
【0091】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」、「併用療法」および「治療的組み合わせ」という用語は、少なくとも1つの抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩、および追加してもよい治療薬がそれぞれ、重複する期間にわたって協調した様式で患者に投与される処置を指す。少なくとも1つの抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)による処置(「抗PD-1処置」)の期間は、患者が抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)による処置を受ける期間、すなわち、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)の初回投与から処置サイクルの最終日までの期間である。同様に、HIF-2α阻害剤による処置(「HIF-2α阻害剤処置」)の期間は、患者がHIF-2α阻害剤による処置を受ける期間である、すなわち、HIF-2α阻害剤の最初の投与から処置サイクルの最終日までの期間である。レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩による処置(「レンバチニブ処置」)の期間は、患者がレンバチニブによる処置を受ける期間、すなわち、レンバチニブの初回投与から処置サイクルの最終日までの期間である。本明細書中に記載される方法および治療的組み合わせにおいて、抗PD-1処置は、HIF-2α阻害剤処置と少なくとも1日重複し、レンバチニブ処置と少なくとも1日重複する。ある態様において、抗PD-1処置、HIF-2α阻害剤処置およびレンバチニブ処置は、同じ期間である。いくつかの態様において、抗PD-1処置は、HIF-2α阻害剤および/またはレンバチニブ処置の前に始まる。他の態様において、抗PD-1処置は、HIF-2α阻害剤および/またはレンバチニブ処置の後に始まる。さらに他の態様において、HIF-2α阻害剤処置は、抗PD-1および/またはレンバチニブ処置の前に始まる。さらに他の態様において、HIF-2α阻害剤処置は、抗PD-1および/またはレンバチニブ処置の後に始まる。いくつかの態様において、レンバチニブ処置は、HIF-2α阻害剤および/または抗PD-1処置の前に始まる。他の態様において、レンバチニブ処置は、HIF-2α阻害剤および/または抗PD-1処置の後に始まる。ある態様において、抗PD-1処置は、HIF-2α阻害剤および/またはレンバチニブ処置の終了より前に終了する。他の態様において、抗PD-1処置は、HIF-2α阻害剤および/またはレンバチニブ処置の終了より後に終了する。さらに他の態様において、HIF-2α阻害剤処置は、抗PD-1および/またはレンバチニブ処置の終了より前に終了する。さらに他の態様において、HIF-2α阻害剤処置は、抗PD-1および/またはレンバチニブ処置の終了より後に終了する。ある態様において、レンバチニブ処置は、HIF-2α阻害剤および/または抗PD-1処置の終了より前に終了する。他の態様において、レンバチニブ処置は、HIF-2α阻害剤および/または抗PD-1処置の終了より後に終了する。
【0092】
「処置レジメン」、「投薬プロトコル」および「投薬レジメン」という用語は、本開示の併用療法における各治療薬の投与の用量およびタイミングを指すために互換的に使用される。
【0093】
「腫瘍」は、癌と診断された対象または癌を有すると疑われる対象に対して適用される場合、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発性腫瘍および続発性新生物を含む。腫瘍の非限定的な例としては、固形腫瘍(例えば、肉腫(軟骨肉腫など)、癌腫(結腸癌腫など)、芽細胞腫(肝芽腫など)など)および血液腫瘍(例えば、白血病(急性骨髄性白血病(AML)など)、リンパ腫(DLBCLなど)、多発性骨髄腫(MM)など)が挙げられる。
【0094】
「腫瘍体積」または「腫瘍サイズ」という用語は、腫瘍の長さおよび幅として測定することができる腫瘍の総サイズを指す。腫瘍サイズは、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、例えばキャリパーを使用して、対象から除去したときの(1つまたは複数の)腫瘍の寸法を測定することによって、または画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CTもしくはMRIスキャンを使用して、体内に存在する間に(1つまたは複数の)腫瘍の寸法を測定することによって決定され得る。
【0095】
それとは反対の明示的な記載がなければ、本明細書に引用されるすべての範囲は包括的である、すなわち、範囲は、範囲の上限および下限の値、ならびにその間のすべての値を含む。一例として、本明細書に記載される温度範囲、パーセンテージ、等価物の範囲などは、範囲の上限および下限、ならびにそれらの間の連続したつながりの任意の値を含む。本明細書で提供される数値、および「約」という用語の使用は、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±10%、±15%および±20%の変動およびそれらの数的等価物を含み得る。必ずしも明示的に記載されているわけではないが、すべての範囲は、含まれるすべての部分範囲を含むことも意図される。例えば、3~7日の範囲は、3、4、5、6および7日を含むことが意図される。さらに、本明細書で使用される「または」という用語は、適切な場合には組み合わされ得る選択肢を示す、すなわち、「または」という用語は、それぞれの列挙された選択肢を別々に含むのみならず、それらの組み合わせも含む。
【0096】
本開示の局面または態様がマーカッシュ群または選択肢のその他のグループ化の観点で記載されている場合、本開示は、全体として列挙された群全体のみならず、群の各メンバーを個別におよび主群のすべての可能な部分群も包含し、群メンバーの1つまたは複数が存在しない主群も包含する。本開示はまた、特許請求の範囲における任意の群メンバーの1つまたは複数の明示的な除外を想定する。
【0097】
別段の定義が為されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、定義を含む本明細書が優先する。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を除外しないことを意味すると理解される。文脈上によって別段の要求がなければ、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」という用語に続く任意の(1つまたは複数の)例は、網羅的または限定的であることを意味しない。
例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料も、本開示の実施または試験において使用することができる。材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0098】
2.PD-1アンタゴニスト
PD-L1のPD-1への結合を遮断し、好ましくはPD-L2のPD-1への結合も遮断する任意の化学化合物または生物学的分子を含む、本明細書に開示される様々な方法、キットおよび使用において使用することができるPD-1アンタゴニストが本明細書において提供される。
【0099】
PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチドまたはPD-1エピトープに結合し、PD-1とそのリガンドPD-L1またはPD-L2との間の相互作用を遮断する任意のモノクローナル抗体を使用することができる。いくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチド、またはPD-1エピトープに結合し、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断する。他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチド、またはPD-1エピトープに結合し、PD-1とPD-L2との間の相互作用を遮断する。さらに他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチドまたはPD-1エピトープに結合し、PD-1とPD-L1との間の相互作用およびPD-1とPD-L2との間の相互作用を遮断する。
【0100】
PD-L1ポリペプチド、PD-L1ポリペプチド断片、PD-L1ペプチドまたはPD-L1エピトープに結合し、PD-L1とPD-1との間の相互作用を遮断する任意のモノクローナル抗体も使用することができる。
【0101】
ある態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、シンチリマブ、チセリズマブ、カムレリズマブ、トリパリマブ、ピディリズマブ(米国特許第7,332,582号)、AMP-514(MedImmune LLC,Gaithersburg,MD)、PDR001(米国特許第9,683,048号)、BGB-A317(米国特許第8,735,553号)およびMGA012(MacroGenics,Rockville,MD)からなる群から選択される。一態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はペムブロリズマブである。
【0102】
本明細書で提供される様々な方法、薬学的組成物、キットまたは使用のある態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:1、2および3に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)相補性決定領域1(CDR1)、VLCDR2およびVLCDR3と、それぞれSEQ ID NO:6、7および8に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)CDR1、VHCDR2およびVHCDR3とを含む。
【0103】
本明細書で提供される様々な方法、薬学的組成物、キットまたは使用のいくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含むVL領域と、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含むVH領域とを含む。
【0104】
本明細書で提供される様々な方法、薬学的組成物、キットまたは使用の他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含むかまたはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖と、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含むかまたはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列からなる重鎖とを含む。
【0105】
【0106】
別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はニボルマブである。別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はセミプリマブである。別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はシンチリマブである。別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はチセリズマブである。別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はカムレリズマブである。別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はトリパリマブである。さらに別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はピディリズマブである。一態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はAMP-514である。別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はPDR001である。さらに別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はBGB-A317である。さらに別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はMGA012である。
【0107】
いくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、米国特許第7488802号、米国特許第7521051号、米国特許第8008449号、米国特許第8354509号、米国特許第8168757号、国際公開第2004/004771号、国際公開第2004/072286号、国際公開第2004/056875号、米国特許出願公開第2011/0271358号、および国際公開第2008/156712号に開示されている任意の抗体、その抗原結合断片またはその変異型であり得、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0108】
本明細書で記載される様々な方法、キットおよび使用において使用され得るヒトPD-L1に結合するモノクローナル抗体の例は、米国特許第8383796号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。記載される様々な方法、キットおよび使用においてPD-1アンタゴニストとして有用な具体的な抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体には、デュルバルマブ、アベルマブおよびBMS-936559が含まれる。
【0109】
本明細書で記載される様々な方法、キットおよび使用において有用な他のPD-1アンタゴニストには、PD-1またはPD-L1に特異的に結合し、好ましくはヒトPD-1またはヒトPD-L1に特異的に結合する免疫接着分子、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含有する融合タンパク質が含まれる。PD-1に特異的に結合する免疫接着分子の例は、国際公開第2010/027827号および国際公開第2011/066342号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書で記載される様々な方法、キットおよび使用においてPD-1アンタゴニストとして有用な具体的な融合タンパク質には、PD-L2-Fc融合タンパク質であり、ヒトPD-1に結合するAMP-224(B7-DCIgとしても知られる)が含まれる。
【0110】
様々な態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のアミノ酸配列の変異型を含む。変異型アミノ酸配列は、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸置換、欠失および/または付加を有することを除いて、参照配列と同一である。いくつかの態様において、置換、欠失および/または付加はCDR中にある。いくつかの態様において、置換、欠失および/または付加はフレームワーク領域中にある。ある態様において、アミノ酸置換の1つ、2つ、3つ、4つまたは5つは、保存的置換である。
【0111】
一態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVLドメインのうちの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVLドメインを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。別の態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVHドメインのうちの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVHドメインを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。さらに別の態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVLドメインのうちの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVLドメインと、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVHドメインのうちの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVHドメインとを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。
【0112】
一態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVLドメインの1つ中に最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くのアミノ酸置換、欠失および/または付加を有するVLドメインを有し、PD-1またはPD-L1への特異的結合を示す。別の態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVHドメインの1つ中に最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くのアミノ酸置換、欠失および/または付加を有するVHドメインを有し、PD-1またはPD-L1への特異的結合を示す。さらに別の態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVLドメインの1つ中に最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くのアミノ酸置換、欠失および/または付加を有するVLドメインと、本明細書に記載される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1抗体のVHドメインの1つ中に最大1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くのアミノ酸置換、欠失および/または付加を有するVHドメインとを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。
【0113】
様々な態様において、抗ヒトPD-1もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはこれらの抗原結合断片は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラスから選択される。好ましくは、抗体はIgG抗体である。IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むIgGの任意のアイソタイプを使用することができる。異なる定常ドメインが、本明細書で提供されるVLおよびVH領域に付加され得る。例えば、本発明の抗体(または断片)の特定の意図された使用が、変更されたエフェクター機能を必要とする場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインが使用され得る。IgG1抗体は長い半減期を提供し、補体活性化および抗体依存性細胞傷害性などのエフェクター機能を提供するが、このような活性は抗体のすべての使用にとって望ましくないことがあり得る。そのような場合には、例えば、IgG4定常ドメインが使用され得る。様々な態様において、重鎖定常ドメインは、抗体の所望の特徴を生じさせるために1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、S228P変異を有するIgG4)を含有する。これらの所望の特徴には、修飾されたエフェクター機能、物理的または化学的安定性、抗体の半減期などが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
通常、本明細書中に開示される抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体およびその抗原結合断片のアミノ酸配列変異型は、参照抗体または抗原結合断片(例えば、重鎖、軽鎖、VH、VLまたはヒト化配列)のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するであろう。配列に対する同一性または相同性は、本明細書では、最大パーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後、配列同一性の一部として一切の保存的置換を考慮せずに、基準配列と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。抗体配列中へのN末端、C末端または内部の伸長、欠失または挿入はいずれも、配列同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。
【0115】
配列同一性は、2つの配列が最適に整列されたときに、2つのポリペプチドのアミノ酸が等価な位置において同じである程度を指す。配列同一性はBLASTアルゴリズムを使用して決定することができ、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間で最大の一致を与えるように選択される。以下の参考文献は、配列分析のためにしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,’’A model of evolutionary change in proteins.’’ in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,;Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,’’Matrices for detecting distant relationships.’’ in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.,M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.’’Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.’’ in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York。
【0116】
いくつかの態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0117】
いくつかの態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の軽鎖はヒトκ骨格を有する。他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の軽鎖はヒトλ骨格を有する。
【0118】
いくつかの態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG1骨格を有する。他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG2骨格を有する。さらに他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG3骨格を有する。さらに他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG4骨格を有する。
【0119】
いくつかの態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG1変異型骨格を有する。他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG2変異型骨格を有する。さらに他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖はヒトIgG3変異型骨格を有する。さらに他の態様において、抗ヒトPD-1または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG4変異型(例えば、S228P変異を有するIgG4)骨格を有する。
【0120】
3.HIF-2α阻害剤
HIF-2αの活性を阻害する任意の化学化合物または生物学的分子を含む、本明細書に開示される様々な方法、キットおよび使用において使用することができるHIF-2α阻害剤も本明細書において提供される。
【0121】
いくつかの態様において、HIF-2α阻害剤は、MK-6482、PT2977、3-[(1S,2S,3R)-2,3-ジフルオロ-1-ヒドロキシ-7-メチルスルホニル-インダン-4-イル]オキシ-5-フルオロ-ベンゾニトリル、および3-[[(1S,2S,3R)-2,3-ジフルオロ-2,3-ジヒドロ-1-ヒドロキシ-7-(メチルスルホニル)-1H-インデン-4-イル]オキシ]-5-フルオロベンゾニトリルとしても知られるベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、以下の化学構造を有する。
【化1】
【0122】
ベルズチファンおよびその合成は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第9,969,689号に記載されている。淡明細胞型腎細胞癌腫に対する潜在的処置としてのベルズチファンは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるRui Xu et al.,J.Med.Chem.2019,62,6876-6893に記載されている。黒色腫、RCCまたはCRCを処置するためのPD-1/CTLA-4阻害剤とHIF-2α阻害剤との組み合わせは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,335,388号に記載されている。米国特許出願公開第2018-0042884号は、HIF-2α阻害剤による神経膠芽腫の処置を記載しており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ベルズチファンの経口製剤は、2019年10月23日に出願された国際出願第PCT/US2019/57725号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0123】
4.レンバチニブ
VEGF受容体のキナーゼ活性を選択的に阻害する多重RTK(マルチRTK)阻害剤であるレンバチニブも本明細書において提供される。
【0124】
レンバチニブは、LENVIMA(登録商標)、Eisai Inc.,Woodcliff Lake、NJおよび4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミドとしても知られており、以下の化学構造を有する。
【化2】
【0125】
レバチニブ、その合成および使用は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,253,286号;同第7,612,208号;同第9,006,256号;同第10,259,791号;同第10,407,393号に記載されている。
【0126】
5.PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法
別の局面において、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたは記載されているその薬学的に許容され得る塩の組み合わせを使用して、癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法が本明細書において提供される。
【0127】
いくつかの態様において、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。
【0128】
ある態様において、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置する方法は、癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0129】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)、膵臓癌および黒色腫からなる群から選択される。
【0130】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0131】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は膵臓癌である。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0132】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)である。さらに別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。
【0133】
一態様において、ヒト患者は、進行した疾患に対する従前の全身処置を受けたことがない。態様のクラスにおいて、ヒト患者は、進行RCCに対する従前の全身処置を受けたことがない。
【0134】
ある態様において、RCCを処置する方法であって、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0135】
いくつかの態様において、進行RCCを処置する方法であって、進行RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0136】
いくつかの態様において、淡明細胞成分を有する進行RCCを処置する方法であって、淡明細胞成分を有する進行RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0137】
他の態様において、転移性RCCを処置する方法であって、転移性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0138】
さらに他の態様において、再発性RCCを処置する方法であって、再発性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0139】
さらに他の態様において、難治性RCCを処置する方法であって、難治性RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0140】
他の態様において、再発性かつ難治性のRCCを処置する方法であって、再発性かつ難治性のRCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0141】
他の態様において、膵臓癌を処置する方法であって、膵臓癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0142】
ある態様において、癌を処置する方法は、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0143】
ある態様において、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0144】
ある態様において、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の態様において、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0145】
したがって、ある態様において、癌を処置するための方法であって、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ヒトまたはヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0146】
いくつかの態様において、癌を処置するための方法であって、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ヒト抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;
(b)ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0147】
他の態様において、癌を処置するための方法であって、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0148】
本明細書で提供される様々な方法の一態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペムブロリズマブである。
【0149】
本明細書で提供される様々な方法の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブである。
【0150】
本明細書で提供される様々な方法の別の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブである。
【0151】
したがって、本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、癌を処置するための方法は、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ペムブロリズマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0152】
本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、癌を処置するための方法は、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ニボルマブ;
(b)ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0153】
本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、癌を処置するための方法は、癌を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)セミプリマブ;
(b)ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0154】
本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、RCCを処置するための方法は、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ペムブロリズマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0155】
本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、RCCを処置するための方法は、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)ニボルマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0156】
本明細書で提供される様々な方法の1つの特定の態様において、RCCを処置するための方法は、RCCを処置することを必要とするヒト患者に、
(a)セミプリマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む。
【0157】
一態様において、RCCは進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCCである。さらに別の態様において、RCCは転移性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性RCCである。さらに別の態様において、RCCは難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性かつ難治性RCCである。
【0158】
一態様において、本発明は、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置する方法であって、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病を処置することを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニスト(例えば、ペムブロリズマブ);
(b)HIF-2α阻害剤(例えば、ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩);および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を投与することを含む、方法を提供する。
【0159】
6.投薬および投与
PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片)、HIF-2α阻害剤およびマルチRTK阻害剤(例えば、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩)の組み合わせを使用して癌(例えば、RCC)を処置するための投薬レジメンおよび投与経路が本明細書においてさらに提供される。
【0160】
抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくは本明細書に開示されるその薬学的に許容され得る塩は、例えば、毎日、1週間に1~7回、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月、3ヶ月ごと、半年ごと、毎年などに投与される用量によって投与され得る。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内、または吸入によって投与され得る。ある態様において、用量は静脈内投与される。ある態様において、用量は皮下投与される。ある態様において、用量は経口投与される。処置間隔についての総用量は、一般に少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgであるか、またはそれを超える。対象の血清中の抗体(例えば、抗PD-1抗体)またはその抗原結合断片の所定の標的濃度、例えば0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mLまたはそれより多くを達成するための用量も提供され得る。
【0161】
いくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、10、20、50、80、100、200、300、400、500、1000または2500mg/対象で、毎週、隔週、3週ごと、4週ごと、5週ごと、6週ごと、毎月、隔月または3ヶ月ごとに皮下または静脈内投与される。いくつかの具体的な方法において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.05mg/kg~約25mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.2mg/kg~約9mg/kg、約0.3mg/kg~約8mg/kg、約0.4mg/kg~約7mg/kg、約0.5mg/kg~約6mg/kg、約0.6mg/kg~約5mg/kg、約0.7mg/kg~約4mg/kg、約0.8mg/kg~約3mg/kg、約0.9mg/kg~約2mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、約1.0mg/kg~約2.0mg/kg、約1.0mg/kg~約3.0mg/kg、または約2.0mg/kg~約4.0mg/kgである。いくつかの具体的な方法において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、約10mg~約500mg、約25mg~約500mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約200mg~約500mg、約150mg~約250mg、約175mg~約250mg、約200mg~約250mg、約150mg~約240mg、約175mg~約240mg、または約200mg~約240mgである。いくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、240mg、250mg、300mg、400mg、または500mgである。
【0162】
本明細書に記載される様々な方法のいくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペムブロリズマブであり、ヒト患者は200mg、240mgまたは2mg/kgのペムブロリズマブを投与され、ペムブロリズマブは3週間ごとに1回投与される。一態様において、ヒト患者は、200mgのペムブロリズマブを3週間ごとに1回投与される。一態様において、ヒト患者は、240mgのペムブロリズマブを3週間ごとに1回投与される。一態様において、ヒト患者は、2mg/kgのペムブロリズマブを3週間ごとに1回投与される。
【0163】
本明細書に記載される様々な方法のある態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペムブロリズマブであり、ヒト患者は400mgのペムブロリズマブを投与され、ペムブロリズマブは6週間ごとに1回投与される。
【0164】
本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブであり、ヒト患者は240mgまたは3mg/kgのニボルマブを投与され、ニボルマブは2週間ごとに1回投与される。1つの特定の態様においては、ヒト患者は、240mgのニボルマブを2週間ごとに1回投与される。1つの特定の態様においては、ヒト患者は、3mg/kgのニボルマブを2週間ごとに1回投与される。本明細書に記載される様々な方法の他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブであり、ヒト患者は480mgのニボルマブを投与され、ニボルマブは4週間ごとに1回投与される。
【0165】
本明細書に記載される様々な方法のさらに他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブであり、ヒト患者は350mgのセミプリマブを投与され、セミプリマブは3週間ごとに1回投与される。
【0166】
本明細書に記載される様々な方法のさらに他の態様において、HIF-2α阻害剤はベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、ヒト患者は40~120mgを1日1回投与される。本明細書に記載される様々な方法のさらに他の態様において、40、80もしくは120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩は1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、40mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、80mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。1つの特定の態様において、ヒト患者は、120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩を1日1回投与される。
【0167】
ある態様において、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩は、経口投与される。いくつかの態様において、レンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩は、それぞれレンバチニブとして、8、10、12、14、18、20または24mgの1日用量で投与される。
【0168】
したがって、本明細書で提供される様々な方法のいくつかの態様において、ヒト患者は、
(a)200mg、240mgまたは2mg/kgのペムブロリズマブ;
(b)40、80または120mgのベルズチファン;および
(c)8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0169】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)200mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0170】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)240mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0171】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)2mg/kgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0172】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)400mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は6週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0173】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)400mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)14mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は6週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0174】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)400mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)10mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は6週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0175】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)400mgのペムブロリズマブ;
(b)80mgのベルズチファン;および
(c)10mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は6週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0176】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)200mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0177】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)240mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0178】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)2mg/kgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は3週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0179】
本明細書で提供される様々な方法のある態様において、ヒト患者は、
(a)400mgのペムブロリズマブ;
(b)120mgのベルズチファン;および
(c)20mgのレンバチニブ;
を投与され、
(a)は6週間ごとに1回投与され;(b)および(c)は毎日投与される。
【0180】
ある態様において、ヒト患者は、進行した疾患に対する従前の全身処置を受けたことがない。
【0181】
いくつかの態様において、併用療法における治療薬(例えば、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその結合断片、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブ)の少なくとも1つは、その薬剤が同じ症状を処置するための単剤療法として使用されるときに典型的に用いられる同じ投与レジメン(処置の用量、頻度および期間)を用いて投与される。他の態様において、患者は、併用療法において、その薬剤が単剤療法として使用される場合よりも少ない総量の治療薬(例えば、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその結合断片、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブ)の少なくとも1つ、例えば、より少ない用量、より少ない頻度の用量、および/またはより短い処置期間を受ける。
【0182】
本明細書に開示される併用療法は、腫瘍を除去するための手術の前または後に使用され得、放射線処置の前、間または後に使用され得る。
【0183】
いくつかの態様において、本明細書に開示される併用療法は、生物療法剤または化学療法剤で以前に処置されたことがない患者、すなわち処置未経験の患者に投与される。他の態様において、併用療法は、生物療法剤または化学療法剤による従前の治療後に持続した応答を達成することができなかった患者、すなわち、処置を経験した患者に投与される。
【0184】
本明細書に開示される治療的組み合わせは、特定の疾患または症状(癌)の予防、処置、調節、改善、またはリスクの軽減において使用される他の抗癌剤を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の他の活性作用物質と組み合わせて使用され得る。このような他の活性作用物質は、本明細書中に開示される組み合わせにおける治療薬の1つまたは複数と同時にまたは逐次に、そのために一般的に使用される経路および量で投与され得る。
【0185】
1つまたは複数の追加の活性作用物質は、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容され得る塩と同時投与され得る。(1つまたは複数の)追加の活性作用物質は、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩から選択される1つまたは複数の同時投与される作用物質とともに単一の剤形で投与することができる。(1つまたは複数の)追加の活性作用物質はまた、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容され得る塩を含有する剤形とは別個の(1つまたは複数の)剤形で投与され得る。
【0186】
7.キット
さらに別の局面において、適切な包装材に包装された、本明細書に開示される治療薬(例えば、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブ)またはその薬学的組成物を備えるキットが本明細書で提供される。キットは、構成要素の説明またはキット中の構成要素のインビトロ、インビボまたはエクスビボでの使用のための説明書を含むラベルまたは添付文書を含んでもよい。
【0187】
いくつかの態様において、キットは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を備える。
【0188】
ある態様において、キットは、PD-1アンタゴニスト、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書をさらに備える。
【0189】
いくつかの態様において、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、PD-1アンタゴニストは、抗PD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0190】
一態様において、キットは、(a)1つまたは複数の薬用量の抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;(b)1つまたは複数の薬用量のHIF-2α阻害剤;(c)1つまたは複数の薬用量のレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩;ならびに(d)抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、HIF-2α阻害剤およびレンバチニブまたはその薬学的に許容され得る塩をヒト患者に投与するための説明書を備える。
【0191】
いくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペムブロリズマブである。いくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブである。いくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブである。
【0192】
本明細書の様々なキットにおいては、抗PD-1モノクローナル抗体、HIF-2α阻害剤、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容され得る塩のための薬用量を使用することができる。いくつかの態様において、キットは、ある期間の処置(例えば、3、6、12または24週間など)に十分な各成分の薬用量を含む。例えば、キットは、1薬用量の200mgのペムブロリズマブ、21薬用量の120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩、および21薬用量の20mgのレンバチニブ(または等量の、レンバチニブの薬学的に許容され得る塩)を備えることができ、これらは3週間の処置に十分である。または、キットは、1薬用量の400mgのペムブロリズマブ、42薬用量の120mgのベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩、および42薬用量の20mgのレンバチニブ(または等量の、レンバチニブの薬学的に許容され得る塩)を備えることもでき、これらは6週間の処置に十分である。
【0193】
いくつかの態様において、キットは、容器、分割された瓶または分割されたホイルの包みなどの、構成要素を別々に保持するための手段を備える。本開示のキットは、異なる剤形の投与、例えば経口および非経口のために、異なる投薬間隔での別個の組成物の投与のために、または別個の組成物の互いに対する用量設定のために使用することができる。
【0194】
8.癌またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための治療的組み合わせの使用
さらに別の局面において、ヒト患者における癌(例えば、RCC)またはフォンヒッペル・リンダウ病を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0195】
いくつかの態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌腫(RCC)、肝細胞癌腫(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0196】
ある態様において、癌は転移性である。いくつかの態様において、癌は再発性である。他の態様において、癌は難治性である。さらに他の態様において、癌は再発性かつ難治性である。
【0197】
一態様において、癌は膀胱癌である。別の態様において、癌は乳癌である。さらに別の態様において、癌はNSCLCである。さらに別の態様において、癌はCRCである。一態様において、癌はRCCである。別の態様において、癌はHCCである。さらに別の態様において、癌は黒色腫である。
【0198】
一態様において、癌は進行RCCである。別の態様において、癌は、淡明細胞成分を有する進行RCCである。さらに別の態様において、癌は転移性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性RCCである。さらに別の態様において、癌は難治性RCCである。さらに別の態様において、癌は再発性かつ難治性RCCである。
【0199】
一態様において、ヒト患者におけるRCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0200】
いくつかの態様において、ヒト患者における進行RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0201】
いくつかの態様において、ヒト患者における淡明細胞成分を有する進行RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0202】
他の態様において、ヒト患者における転移性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0203】
さらに他の態様において、ヒト患者における再発性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0204】
さらに他の態様において、ヒト患者における難治性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0205】
他の態様において、ヒト患者における再発性かつ難治性RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)HIF-2α阻害剤;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0206】
さらに他の態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)PD-1アンタゴニスト;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0207】
ある態様において、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の態様において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0208】
ある態様において、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の態様において、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0209】
ある態様において、HIF-2α阻害剤は、ベルズチファンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0210】
したがって、ある態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ヒトまたはヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0211】
いくつかの態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ヒト抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0212】
他の態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0213】
本明細書で提供される様々な使用のいくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペムブロリズマブである。本明細書で提供される様々な使用のいくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブである。本明細書で提供される様々な使用のいくつかの態様において、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブである。
【0214】
したがって、1つの特定の態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ペムブロリズマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0215】
1つの特定の態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ニボルマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0216】
1つの特定の態様において、癌を処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)セミプリマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0217】
1つの特定の態様において、RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ペムブロリズマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0218】
1つの特定の態様において、RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)ニボルマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0219】
1つの特定の態様において、RCCを処置するための治療的組み合わせの使用であって、前記治療的組み合わせは、
(a)セミプリマブ;
(b)ベルズチファン、またはその薬学的に許容され得る塩;および
(c)レンバチニブ、またはその薬学的に許容され得る塩
を含む、使用が本明細書において提供される。
【0220】
一態様において、ヒト患者は、進行した疾患に対する従前の全身処置を受けたことがない。
【0221】
一態様において、RCCは進行RCCである。別の態様において、RCCは、淡明細胞成分を有する進行RCCである。さらに別の態様において、RCCは転移性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性RCCである。さらに別の態様において、RCCは難治性RCCである。さらに別の態様において、RCCは再発性かつ難治性RCCである。
【0222】
本発明のいくつかの態様を説明してきた。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正が行われ得ることが理解されよう。そのような組み合わせがそれらの態様の説明と一致する程度まで、各態様は、1つまたは複数の他の実施形態と組み合わされ得ることがさらに理解されよう。
[実施例]
【0223】
I.実施例
このセクション(セクションVI)中の実施例は、限定ではなく例示として提供されている。
【0224】
[実施例1]
淡明細胞成分を有する一次(1L)進行RCC(ccRCC)を有する患者においてベルズチファン(MK-6482)およびレンバチニブと組み合わせて抗PD-1抗体を投与する臨床試験(実験群A4)。
【0225】
合計34名の健康な志願者および185名の患者が、5つの進行中の臨床試験においてMK-6482で処置されていた。
【0226】
16名の健康な女性成人志願者における進行中の無作為化、単回投与、2期、2群クロスオーバー第1相試験において、120mgのMK-6482の単回投与のPKに対する食物の影響を調査した。本研究は、高脂肪、高カロリー食はMK-6482曝露の程度に影響を及ぼさないが、最大血漿MK-6482濃度を約35%低下させ、ピークMK-6482曝露までの時間を2時間の中央値差(摂食-絶食)で遅延させることを示した。これらのデータは、臨床的に意味があるとは考えられず、食物ありまたはなしでのMK-6482の投薬を支持する。報告された最も一般的な有害事象(AE)は頭痛(12.5%)であった。
【0227】
様々な進行固形腫瘍を有する参加者におけるMK-6482の忍容性、安全性、PKおよびPD特性を評価するために設計されたFIH第1相試験が進行中である。2019年9月6日の時点で、20から240mgQDおよび120mgBIDまでの範囲の用量漸増部分(パート1A)中の様々な進行固形腫瘍を有する43名の参加者を含む、合計104名の参加者が登録されていた。MTDには到達せず、2つの処置関連DLT:240mgQDコホートにおける1つのグレード4の血小板減少症の事象、および120mgBIDコホートにおける1つのグレード3の低酸素症の事象が観察された。好ましいPK、薬力学および安全性所見に基づいて、さらなる臨床開発のために120mgQD用量が選択された。120mgQDの臨床用量で、進行RCCを有する52名のさらなる参加者を拡大コホート(パート1B)において処置した。用量漸増と拡大コホートの組み合わせでは、最も一般的なAE(参加者の20%以上で発生)は、貧血、疲労、呼吸困難、吐き気および末梢浮腫であった。最も一般的なグレード3のAEは、貧血および低酸素症であった(参加者の5%以上)。MK-6482のtmax中央値は1~2.8時間であり、曝露は用量とともに増加した。15日目の120mgQD拡大コホート(パート1B)における平均定常状態t1/2は15.4時間であり、1日目から15日目まで1.5倍の蓄積をもたらした。15日目の120mgQD拡大コホート(パート1B)における平均定常状態Cmaxは、1.79μg/mL(4.67μM)であった。推定CL/Fは5.22~14.4L/hrであった。推定Vz/Fは106~266Lであり、末梢組織への広範な分布を示唆している。CVは、単回投与後のCmaxについては32~59%およびAUCについては24~48%であり、定常状態でのCmaxについては27~56%およびAUCについては30~64%であった。合計で、以前に処置された進行RCCを有する55名の参加者が、本研究において120mgQDでのMK-6482で処置されている(本研究の用量漸増部分中の3名の患者および本研究の用量拡大部分中の52名の参加者)。固形癌効果判定基準v1.1によって評価された場合、これらの55名の参加者の中で最も良好な応答には、PRを有する11名の参加者(20%)およびSDを有する32名の参加者(58%)が含まれた。
【0228】
VHL病関連RCCを有する参加者における第2相非盲検有効性および安全性試験が進行中である。2019年9月6日の時点で、61名の参加者が120mgQDの用量で登録されていた。有効性データはまだ入手できない。疲労は、グレード3以上の毒性の最も一般的なAEであった(参加者の5%以上によって報告された)。
【0229】
さらに、ccRCCを有する20名の患者が第2相試験で評価されており、18名の健康な成人志願者が第1相バイオアベイラビリティ試験で評価されている。
【0230】
これらの研究からのデータに基づいて、120mgのMK6482、400mgのペムブロリズマブ、および20mgのレンバチニブの組み合わせを、一次治療として、淡明細胞成分を有する進行RCC(ccRCC)を有する患者(1L)において評価する。
【0231】
本研究の主要な目的は、進行ccRCCを有する患者におけるMK6482、ペムブロリズマブおよびレンバチニブの組み合わせの安全性および忍容性、ならびに抗腫瘍効果を評価することである。本研究では、主要有効性評価項目としてORRを使用する。ORRは、BICRによって評価された場合に固形癌効果判定基準1.1による確認されたCRまたはPRを達成する参加者の割合として定義される。奏効は、最大10個の標的病変および器官当たり最大5個の標的病変を追跡するように改変されている固形癌効果判定基準1.1を使用したBICRに基づく。ORRは、参照群および実験群の抗腫瘍活性を評価するための適切な評価項目である。ORRによって測定される処置効果は、特定の疾患、使用の状況、効果の大きさ、CRの数、奏効の持続性、疾患の状況、腫瘍の位置、利用可能な治療、およびリスクと利益の関係に基づいた直接的な臨床的利益を表すことができる。
【0232】
副次的目的は、DOR、PFS、OSおよびCBRを副次的有効性評価項目として評価することである。「DOR」は、CRまたはPRの最初に文書に記録された証拠から、疾患進行または任意の原因による死亡のうちいずれか早い方までの時間として定義される。BICRによって評価される、最大10個の標的病変および器官あたり最大5個の標的病変を追跡するように改変された固形癌効果判定基準1.1によるDORは、有効性のさらなる尺度としての役目を果たし、規制当局および腫瘍学団体の両方によって一般に認められている評価項目である。「PFS」は、無作為化の日付から、BICRによって固形癌効果判定基準1.1に従って最初に文書に記録されたPDまたは任意の原因による死亡のうちいずれか早い方までの時間として定義される。奏効評価におけるバイアスを最小限に抑えるために、画像はBICRによって読み取られる。PFS事象は、腫瘍増殖を反映することができ、生存利益の決定の前に評価され得る。その決定は、その後の治療によって狂わされることはない。PFSによって測定される処置効果は、特定の疾患、使用の状況、効果の大きさ、疾患状況、転移部位の位置、利用可能な治療、リスクと利益の関係、および重要な疾患部位における進行を遅延もしくは防止すること(例えば、脳または脊椎における新たな病変を遅延させること)またはより毒性の高い治療の投与を遅延させることの臨床的帰結に基づいた直接的な臨床的利益を表すための代用評価項目であり得る。「OS」は、無作為化臨床試験において新しい抗新生物療法の優位性を実証するためのゴールドスタンダードとして認識されている。OSは、無作為化の日付から任意の原因による死亡の日付までの時間として定義される。「CBR」は、多くの癌臨床試験で一般的に使用されている副次的評価項目であり{059M4P}、固形癌効果判定基準1.1に従うBICRによる評価に基づいて、6ヶ月以上のSDまたはCRもしくはPRを達成した参加者の割合として定義される。
【0233】
本研究の三次/探索的目的には、腫瘍サイズ変化とDOR、PFSおよびOSとの相関の評価;治験薬の薬物動態(PK)プロフィールおよび抗薬物抗体(ADA)形成の特徴付け;ならびにペムブロリズマブ、レンバチニブおよびMK6482との試験処置組み合わせの臨床的応答/耐性、安全性および/または作用機序を示し得る分子(ゲノム、代謝、および/またはプロテオーム)バイオマーカーを同定することが含まれる。腫瘍サイズ変化は、探索的有効性評価項目であり、初期抗腫瘍活性のシグナルを検出し得る提案された中間評価項目であり、各ベースライン後評価での最長直径の標的病変の合計およびベースラインからの変化(および%変化)として定義される。
【0234】
進行した疾患(1L RCC)に対する従前の全身処置を受けたことがない進行ccRCCを有する少なくとも18歳の男性および女性患者が本研究に登録される。患者は、局所的に進行した/転移性のccRCC(肉腫様特徴を伴うまたは伴わない)、すなわち、AJCCによるステージIVのRCCの組織学的に確認された診断を有さなければならず、進行RCCに対する従前の全身治療を受けたことがあってはならない。さらに、患者は、BICRによって評価された場合に固形癌効果判定基準1.1による測定可能な疾患を有していなければならない。
【0235】
本研究の参照群を以下に記載する。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
[実施例2]
抗PD-1マウス代替抗体(muDX400)およびVEGFチロシンキナーゼ阻害剤であるレンバチニブをHIF-2α阻害剤であるMK-6482と組み合わせた組み合わせたVHL保有マウス同系膵臓腫瘍モデル。
【0240】
本実施例では、本発明者らは、抗PD-1マウス代替抗体(muDX400)およびVEGFチロシンキナーゼ阻害剤であるレンバチニブをHIF-2α阻害剤であるMK-6482と組み合わせることから得られる抗腫瘍利益を実証するために、VHL保有マウス同系膵臓腫瘍モデルを使用した前臨床データを提供する。
【0241】
処置開始前に、体重18~21グラムの7週齢の雌C57BL/6Jマウスを麻酔し、0.5×106個の対数期サブコンフルエントKPC-2838c3細胞を後側腹部に注射した。接種された動物の平均腫瘍体積が約95mm3に達した十(10)日後に、群あたり10匹のマウスからなる8つの処置群にマウスを対対応させた。処置群は以下からなった:1)0.5%メチルセルロース(ビヒクル)+アイソタイプマウスIgG1抗体(mIgG1);2)MK-6482+mIgG1;3)レンバチニブ+mIgG1;4)ビヒクル+抗マウスPD-1 IgG1抗体;5)MK-6482+抗PD-1;6)レンバチニブ+抗PD-1;7)MK-6482+レンバチニブ;8)MK-6482+レンバチニブ+抗PD-1。ビヒクルおよびMK-6482を、3mg/kg体重で1日2回(BID)経口胃管投与した。レンバチニブは、10mg/kg体重で1日1回(QD)経口投与した。アイソタイプ対照、アイソタイプIgG1のアデノウイルスヘキソンに対して特異的なマウスモノクローナル抗体、および抗PD-1抗体を、10mg/kg体重で5日ごとに腹腔内投与した。処置の開始を0日目とみなし、スケジュールに基づく投薬を45日目まで記載のように続けた。腫瘍および体重のキャリパー測定を週に2回行った。統計解析は、処置群が終点に達した指定された時点でテューキー多重比較検定を用いた一元配置ANOVAによって行った。
【0242】
MK-6482、抗PD-1およびレンバチニブによる三重の併用処置は、顕著な抗腫瘍効果(
図2A)を示し、測定可能な腫瘍が残存しない1つの完全寛解および1つの部分的な腫瘍退縮が観察された(
図2B)。完全なおよび部分的な腫瘍退縮は、いずれの他の処置群においても観察されなかった。三重併用処置の平均抗腫瘍応答は、MK-6482単剤療法、抗PD-1単剤療法、またはビヒクル対照のいずれかで観察された抗腫瘍応答より大きかった(p<0.0001、24日目)。三重の併用群はまた、レンバチニブ単剤療法よりも有意に改善された(p=0.0002、45日目)。三重の組み合わせの平均抗腫瘍応答は、MK-6482+抗PD-1よりも改善されたが(p<0.0001、31日目)、レンバチニブ+抗PD-1(p=0.247、45日目)またはレンバチニブ+MK-6482(p=0.404、45日目)よりは改善されなかった。24日目の腫瘍増殖阻害(TGI)の要約およびビヒクル処置群が本研究を終了したときの部分的腫瘍退縮(PR)または完全腫瘍退縮(CR)の観察を以下の表に示す:
【0243】
【0244】
CRは観察可能な腫瘍が存在しないと定義されたのに対して、PRは処置を開始したときの元の腫瘍サイズよりその体積が小さな腫瘍であった。上記の治療で処置されたいずれの動物においても有意な体重減少または有害事象は観察されず、処置が十分に忍容されたことを示している。
【0245】
上記の研究によって示されたように、治療薬の組み合わせによる処置は、単独で投与された場合の各薬剤による処置よりも有利である。
【0246】
II.配列表
以下の表は、本明細書に開示されるすべての配列を要約する。
【0247】
【配列表】
【国際調査報告】