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特表2023-531954溝内に高温超伝導体(HTS)ケーブルを備える磁石構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】溝内に高温超伝導体(HTS)ケーブルを備える磁石構造体
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
H01F6/06 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579656
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 US2021031699
(87)【国際公開番号】W WO2022019989
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/044,574
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】521259219
【氏名又は名称】コモンウェルス・フュージョン・システムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ラドビンスキー,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ラボンバード,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】マムガード,ロバート
(57)【要約】
方法は、高温超伝導体(HTS)ケーブルを支持構造体の溝内に挿入するステップと、HTSケーブルが溝に入れられた状態で溶融金属をHTSケーブル内に流し込むステップとを含む。磁石構造体は、溝を有する支持構造体および高温超伝導体(HTS)ケーブルを含み、高温超伝導体(HTS)ケーブルは、当該HTSケーブルに少なくとも部分的に充填される金属を含み、溝内に配設されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導体(HTS)ケーブルを支持構造体の溝内に挿入するステップと、
前記HTSケーブルが前記溝に入れられた状態で溶融金属を前記HTSケーブル内に流し込むステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記溶融金属は、溶融はんだであり、前記溶融金属を前記HTSケーブル内に流し込むステップは、前記溶融はんだを前記ケーブル内に流し込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HTSケーブルを前記溝内に挿入するステップは、前記HTSケーブルを前記溝内に挿入して螺旋状にすることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融金属を冷却して前記溶融金属を凝固させるステップをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記支持構造体は、第1の支持構造体であり、前記方法は、第2のHTSケーブルを第2の支持構造体の第2の溝内に挿入するステップと、前記第2のHTSケーブルが前記溝に入れられた状態で第2の溶融金属を前記第2のHTSケーブル内に流し込むステップとをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の支持構造体を前記第2の支持構造体に装着するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記HTSケーブルを前記第2のHTSケーブルと電気的に接続するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
磁石構造体であって、
溝を有する支持構造体と、
高温超伝導体(HTS)ケーブルと
を備え、
前記HTSケーブルは、当該HTSケーブルに少なくとも部分的に充填された金属を含み、前記溝内に配設されている、磁石構造体。
【請求項9】
前記金属は、はんだを含む、請求項8に記載の磁石構造体。
【請求項10】
前記HTSケーブルの形状は、前記溝の形状に適合する、請求項8または9に記載の磁石構造体。
【請求項11】
前記HTSケーブルは、少なくとも1つのHTSテープスタックを備える、請求項8~10のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項12】
前記HTSケーブルは、複数の流路と、前記複数の流路のそれぞれの流路に配設された複数のHTSテープスタックとを備える、請求項11のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項13】
前記HTSケーブルは、前記複数のHTSテープスタックのうちの少なくとも第1および第2のHTSテープスタックを分離するフォーマを備える、請求項12に記載の磁石構造体。
【請求項14】
前記フォーマは、導電性金属を含む、請求項13に記載の磁石構造体。
【請求項15】
前記フォーマの複数の区分を互いに絶縁させる電気絶縁体をさらに備える、請求項14に記載の磁石構造体。
【請求項16】
前記導電性金属は、銅または鋼を含む、請求項14に記載の磁石構造体。
【請求項17】
前記HTSケーブルは、冷却流路を備える、請求項8~16のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項18】
前記少なくとも1つのHTSテープスタックは、前記HTSケーブルの長さに沿って捻回している、請求項11~17のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項19】
前記支持構造体は、導電性材料を含む、請求項8~18のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項20】
前記HTSケーブルは、前記溝内で螺旋形状を有する、請求項8~19のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項21】
前記HTSケーブルは、複数の巻回部を有し、前記複数の巻回部のそれぞれの巻回部は、前記支持構造体を介して互いに電気的に結合される、請求項8~20のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項22】
前記磁石構造体は、第1の磁石構造体であり、
前記磁石は、
第2の溝を有する第2の支持構造体と、
第2のHTSケーブルと
を備え、
前記第2のHTSケーブルは、当該第2のHTSケーブルに少なくとも部分的に充填される第2の金属を含み、前記第2の溝内に配設されており、
前記HTSケーブルは、前記第2のHTSケーブルに電気的に接続される、請求項8~21のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項23】
前記HTSケーブルは、外装と、前記外装内のHTSテープとを備える、請求項8~22のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項24】
前記外装および前記HTSテープは、前記HTSケーブルの長さに沿って延在している、請求項23に記載の磁石構造体。
【請求項25】
前記支持構造体は、プレートを備える、請求項8~24のいずれかに記載の磁石構造体。
【請求項26】
前記HTSケーブルは、前記HTSケーブルが前記溝内に挿入されるときに前記HTSケーブルの長さに沿って滑動することができるHTSテープスタックを備える、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
溶融金属を前記HTSケーブル内に流し込むことは、前記溶融金属を前記HTSケーブルの流路内に流し込むことを含む、請求項1~8または26のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月26日に出願された仮出願第63/044,574号の米国特許法第119条(e)による利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本明細書に説明される概念は、概して、超伝導電磁石(磁石)に関し、特に、高温超伝導体を含むケーブルを備える超伝導磁石に関する。
【背景技術】
【0003】
超伝導磁石は、高磁場を発生させるために様々な用途に使用され得る。用途のいくつかの例としては、数ある中でも、熱核融合炉、モータおよび発電機、磁気共鳴画像化(MRI)マシンが挙げられる。高磁場を発生させるため、超伝導磁石は、導電体(伝導体)を多数巻回した形態であり得る。電流が伝導体を流通するとき、磁場は、マクスウェル方程式に従って生成される。超伝導ではない伝導体は、非ゼロの電気抵抗を有し、これが伝導体内に電力損失をもたらす。対照的に、理想の超伝導体は、ちょうどゼロの電気抵抗を有する。超伝導体を磁石の伝導体として使用することは、磁石の効率を向上させ、より高い磁場を可能にし、加熱を低減する。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態は、高温超伝導体(HTS)ケーブルを支持構造体の溝内に挿入するステップと、HTSケーブルが溝に入れられた状態で溶融金属をHTSケーブル内に流し込むステップとを含む方法に関する。
【0005】
溶融金属は、溶融はんだであり得、溶融金属をHTSケーブル内に流し込むステップは、溶融はんだをケーブル内に流し込むことを含む。
【0006】
HTSケーブルを溝内に挿入するステップは、HTSケーブルを溝内に挿入して螺旋状にすることを含み得る。
【0007】
本方法は、溶融金属を冷却して溶融金属を凝固させるステップをさらに含み得る。
【0008】
本方法は、第2のHTSケーブルを第2の支持構造体の第2の溝内に挿入するステップと、第2のHTSケーブルが溝に入れられた状態で第2の溶融金属を第2のHTSケーブル内に流し込むステップとをさらに含み得る。
【0009】
本方法は、第1の支持構造体を第2の支持構造体に装着するステップをさらに含み得る。
【0010】
本方法は、HTSケーブルを第2のHTSケーブルと電気的に接続するステップをさらに含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態は、溝を有する支持構造体と、HTSケーブルとを備えた磁石構造体に関し、HTSケーブルは、当該HTSケーブルに少なくとも部分的に充填される金属を含み、溝内に配設されている。
【0012】
金属は、はんだを含み得る。
【0013】
HTSケーブルの形状は、溝の形状に適合し得る。
【0014】
HTSケーブルは、少なくとも1つのHTSテープスタックを備え得る。
【0015】
HTSケーブルは、複数の流路と、複数の流路のそれぞれの流路に配設される複数のHTSテープスタックとを備え得る。
【0016】
HTSケーブルは、複数のHTSテープスタックのうちの少なくとも第1および第2のHTSテープスタックを分離するフォーマを備え得る。
【0017】
フォーマは、導電性金属を備え得る。
【0018】
磁石構造体は、フォーマの複数の区分を互いに絶縁させる電気絶縁体をさらに備え得る。
【0019】
伝導性金属は、銅または鋼を含み得る。
【0020】
HTSケーブルは、冷却流路を備える。
【0021】
少なくとも1つのHTSテープスタックは、HTSケーブルの長さに沿って捻回し得る。
【0022】
支持構造体は、導電性材料を含み得る。
【0023】
HTSケーブルは、溝内で螺旋形状を有し得る。
【0024】
HTSケーブルは、複数の巻回部を有し得、複数の巻回部のそれぞれの巻回部は、支持構造体を介して互いに電気的に結合され得る。
【0025】
磁石構造体は、第2の溝を有する第2の支持構造体と、第2のHTSケーブルとを備えることができ、第2のHTSケーブルは、当該第2のHTSケーブルに少なくとも部分的に充填される第2の金属を含み、第2の溝内に配設されており、HTSケーブルは、第2のHTSケーブルに電気的に接続されている。
【0026】
HTSケーブルは、外装と、外装内のHTSテープとを備え得る。
【0027】
外装およびHTSテープは、HTSケーブルの長さに沿って延在し得る。
【0028】
支持構造体は、プレートを備え得る。
【0029】
HTSケーブルは、HTSケーブルが溝内に挿入されるときHTSケーブルの長さに沿って滑動することができるHTSテープスタックを備え得る。
【0030】
溶融金属をHTSケーブル内に流し込むステップは、溶融金属をHTSケーブルの流路内に流し込むことを含み得る。
【0031】
概念を例示する非限定的な実施形態は、添付の図面を参照して例として説明されるものとし、添付の図面は、概略的であり、縮尺通りに表示されることは意図されない。図において、示される各々の同一またはほぼ同一の構成要素は、典型的には単一の番号によって表される。分かり易さという目的のため、すべての構成要素がすべての図面内でラベル付けされるわけではなく、説明されている概念および実施形態を当業者が理解することを可能にするために例示が必要ではない場合、各々の実施形態のすべての構成要素が示されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】高温超伝導体(HTS)磁石を形成する方法を示す図である。
図2A】支持構造体の断面の例を示す図である。
図2B】支持構造体の上面図である。
図2C】HTSケーブルが溝220内に配置し得ることを示す図である。
図2D】溶融金属でHTSケーブルを充填することを示す図である。
図3A】キャップが支持構造体の溝内のHTSケーブルの上に配設される例を示す図である。
図3B1】支持構造体が円筒形状の層状巻回スキームを有し得ることと、この支持構造体の上部が外側を向く溝を有していることを示す図である。
図3B2】支持構造体が円筒形状の層状巻回スキームを有し得ることと、この支持構造体の上部が内側を向く溝を有していることを示す図である。
図3B3】コークスクリュ形状のHTSケーブルの例を示す図である。
図3C】パンケーキ状巻回スキームをもつ支持構造体を示す図である。
図3D】非絶縁性シェルの形状を、変動外部磁場の磁束線に平行であるように構成することを示す図である。
図3E】セグメント化されたHTSケーブルの1つの例を示す図である。
図3F】セグメント化されていないHTSケーブルの1つの例を示す図である。
図3G】様々な異なるフォーマについて損失対周波数のプロットを示す図である。
図3H】冷却流路が除去され、セグメント化されたフォーマの拡張によって置き換えられるHTSケーブルの例を示す図である。
図3I】HTSケーブルの例としてTSTCケーブルを示す図である。
図3J】HTSケーブルの例としてCROCOケーブルを示す図である。
図3K】HTSテープスタックのために使用され得るフィラメント化されたテーブルの例を示す図である。
図4】単一のHTSテープスタックを有するHTSケーブルの例を示す図である。
図5】フォーマのそれぞれの流路内に配設される複数のHTSテープスタックを有するHTSケーブルの例を示す図である。
図6図6Aは、複数の流路が中に提供されているフォーマを備えるケーブルを示す図であり、図6Bは、複数の流路が中に提供されているフォーマを備えるケーブルを示す図である。
図7A】本明細書に説明される概念に従う金属充填プロセスの例示的な実施形態を形成する処理要素のシーケンスで構成されるフローチャートである。
図7B】本明細書に説明される概念に従う金属充填プロセスの例示的な実施形態を形成する処理要素のシーケンスで構成されるフローチャートである。
図8】真空圧技術を使用してケーブルにはんだを充填するための装置を示す図である。
図9】HTSケーブル内の構造体の例を示す図である。
図10】HTSテープの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
高温超伝導体(High temperature superconductors:HTS)は、これらが低温超伝導体よりも高温において超伝導を維持し、故に、超伝導を維持するための低温に冷却されることを要しないため、超伝導磁石に有利であり得る。本明細書で使用される場合、語句「HTS材料」または「HTS超伝導体」および同様のものは、自己場で30°Kを上回る臨界温度を有する超伝導材料を指す。セラミックHTSの一例は、希土類バリウム銅酸化物(rare-earth barium copper oxide:REBCO)である。HTS超伝導体は、様々な材料のいくつかの層を含むテープまたはテープスタック内に形成され得る。HTS磁石は、電流の少なくとも一部分を伝導するためにHTS材料を含む磁石である。
【0034】
<HTS材料および磁石設計検討事項>
高温超伝導体(HTS)は、多様な用途のために高磁場磁石を構成するための新たな機会を開く。
【0035】
HTSおよびHTS-REBCOテープのいくつかの特徴は、具体的には、以下のとおりである。
- (低温超伝導体(LTS)と比較して)動作温度に対する小さい臨界電流感度であり、これにより、より大きい動作温度マージンが可能となること。
- LTSよりも高い動作温度であり、この温度では、関連した温度上昇を制限するための十分な冷却があれば、磁石の冷たい塊を含む材料の熱容量は、LTS対応温度よりも著しく高く、その結果として局所加熱に対する感度がより低いこと。
- 束ねられたHTS-REBCOテープ間、ならびに、冷たい塊構造体および共巻きのスタビライザを含む周囲の導電媒体とそれらテープとの間における良好な電流共有に起因する非絶縁(No-Insulation:NI)設計原理との互換性があること。
- はんだ含浸の可能性であり、これは、電流共有を著しく強化し、クエンチ(quench:急冷)に対するはるかに良好な耐性および安定性、ならびに特定の状況下ではクエンチからの保証された回復をもたらすこと。
- LTSと比較すれば、大きな固有ひずみが許されること。
- 典型的な動作モード中、ならびにクエンチ中に、磁石内でNI巻線特有の小さい(<約1V)電圧が発生することであり、これは、LTS磁石に関しては、高圧の電気絶縁を必要としないこと。
【0036】
本開示は、HTS材料技術を使用し得る画期的な磁石設計の種類を説明し、この種類の磁石設計の使用により利益を得る可能性のある適用例を提供する。
【0037】
ここで検討されるタイプの巻回スキームの選択に関連する、超伝導磁石の簡略化した分類は、以下の形態で提示され得る。磁石は、次の2つの主要なグループへと細分化され得る。
- 通常、直流(DC)磁石と称される定電流磁石。
- 通常、交流(AC)磁石と称される可変電流磁石。
【0038】
本明細書に説明される技術および装置は、特に、DC磁石に当てはまるが、DC磁石に限定されず、AC磁石にも当てはまる。
【0039】
この点に関して、磁石は、以下のサブグループへと細分化され得る。
- グループ1:一定の外部場環境で動作するDC磁石。
- グループ2:DC磁石の一定の自己場に弱い変動外部磁場を重畳した環境において するDC磁石。
- グループ3:DC磁石の自己場と同じオーダの大きさの変動外部磁場を有する環境において動作するDC磁石。
【0040】
これらのグループに属する磁石の典型の代表的なものは、以下を含むが、これらに限定されない。
グループ1:MRI磁石およびNMR磁石、直線加速器(Linacs)内の多極集束磁石、シンクロサイクロトロンの磁石、風力発電システムにおいて広く使用されている、誘導モータおよび発電機における磁場コイル。
グループ2:トカマク炉(tokamaks)内のトロイダル磁場(TF)磁石。
グループ3:様々な試験施設および高エネルギー物理実験のためのバックグラウンド磁場コイル。
【0041】
3つすべてのグループが、本明細書に説明される概念、構造体および技術から利益を得ることができる。これらのエンジニアリングソリューションの適応性は、磁石内のAC損失とその冷却力とのバランスによって制限され得るが、これらの制限は、グループ3の磁石では、より差別的である。
【0042】
1つまたは複数のHTSテープスタックを備える磁石について検討し得るAC(電力)損失には、強磁性、ヒステリシス、結合、および渦電流によって引き起こされるものという、4つのタイプが存在する。
【0043】
1.強磁性損失は、鉄のような強磁性元素の磁化または消磁によって生成される熱と関連付けられる。ケーブル内の材料が強磁性ではない場合、これらの損失は無視され得る。
【0044】
2.ヒステリシス損失は、強磁性損失と同様であるが、第二種超伝導体にのみ関連する。第一種超伝導体とは異なり、第二種超伝導体は、磁場線の浸透を受け得る。材料内における印加された磁場が変化すると、周波数およびその変化の大きさ、ならびにテープの臨界電流密度(Jc)およびテープの幅に比例して、損失が発生する。通常、容量測定のヒステリシス電力損失はBeanモデルを使用して評価されるが、本明細書に説明される概念は、これに関して制限されない。
【0045】
3.結合損失は、テープとテープスタックとの間に流れる電流によって生成される。スタック内のテープ間の結合損失は、多くの理由で発生し得る。例えば、各テープの臨界電流(Ic)は、その長さに沿って変動するため、仮に高平均Icテープが比較的低いIcスポットを有すると、一部の電流は、スタック内の他のテープ内へ流れ込み得る。単一スタックケーブルにおいては、スタック同士の電流共有は問題ではなく、マルチスタックケーブルにおいては、スタック同士の共有は、絶縁によってブロックされ得る。その場合、磁場に平行なテープは、一般的に、より垂直状態に近いテープよりもはるかに高いIcを有することになり、捻回ケーブルにより、各スタックは磁場に対して絶えず変化する配向を有することになる。
【0046】
4.ファラデーの法則によって説明されるように、磁場環境を変化させることによってケーブル(数ある構造体の中でも)内で電圧が誘起される。電圧は、電流路の抵抗に反比例して渦電流を生起し、そのため電流は、銅およびHTSを通してほぼ全体的に展開される。
【0047】
強磁性およびヒステリシスの損失を軽減するためになされ得ることはほとんどないが、それらは、1つまたは複数のHTSテープスタックを備える磁石においては小さいことが予想される。HTSテープスタック内の結合損失は、スタック内の超伝導テープの幅およびテープスタックの全体的な断面寸法を減らすことによって低減され得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明される技術および装置は、実行可能な超伝導磁石内の渦電流AC損失を低減させ、これにより実用的で工学的な要求を満たすことが促進され得る。
【0049】
いくつかの用途において、磁石は、以下の要求を満たす必要があり得る。
- 磁石は、最大20Tの高い自己磁場において一定の動作電流で動作することができ、その大きさおよび周波数範囲の外部磁場により制限を受けたランピング(ramping)または振動によって引き起こされる渦電流加熱を持続させることができること。
- 磁石は、10Kを超えるように引き上げられた極低温で動作することができ、任意選択的に受動モードで、すなわち、あらゆる種類のクエンチ保護システムによる干渉なしで、磁気クエンチを持続させることができること。
【0050】
磁石内の渦電流損失を低減させる2つの通常の方法は、以下の通りである。
- トラップされた磁束の電流ループを低減させるために磁石を備える構成要素のセグメント化であって、積層化鉄シートを有する変圧器内で行われる(例えば、行われ得るような)もの。
- 銅または他の高導電性材料を減らすこと、またはその完全な除去。
【0051】
磁石設計への1つの手法は、いわゆる非絶縁(NI)巻回スキームを使用することによるものである。この場合、磁石は、連続的な巻回部間絶縁がないように設置されるケーブルからなり、これにより、限られた巻回部間の電流共有が可能となる。非絶縁スキームを簡略的に表したものは、薄い高電気抵抗性マトリクス内に配置される一組の平行超伝導ケーブルとしてそれを表すことによるものである。良好な導電性が、磁石のそれぞれの巻回部間に確立される。HTS非絶縁磁石の1つの利点は、それらがクエンチに対して受動的に回復力があることである(ここでHTS超伝導体の領域が抵抗性になる)。別の利点は、1つまたは複数の超伝導ケーブルを備えるNI磁石が銅のスタビライザをほとんどまたは全く必要とせずに済むことがあるという点である。これらの特徴は、NI巻回スキームを、変動外部磁場の存在下で動作するDC超伝導磁石を必要とする用途において魅力的なものにする。
【0052】
<支持構造体の溝内のHTSケーブル>
HTSテープを磁石内に形成し得る方式はいくつか存在する。いくつかの実施形態において、HTS超伝導体は、ケーブル内に配設され得る。特定の条件下で、HTSケーブルは、様々な形状へと屈曲し得る。HTSケーブルは、HTSケーブルの長さに沿って電流を伝導するためにHTS超伝導体を有するケーブルである。HTSケーブルは、絶縁型または非絶縁型であり得る。非絶縁型であるHTSケーブルは、NI磁石を形成することを可能にし得る。
【0053】
高磁場を生成することの1つの結果は、大きな力(ローレンツ力)が電流を伝導する伝導体上にもたらされることである。故に、そのような力に耐えることができるように十分に構造的にロバストである構造体を有する磁石を提供することが望ましい。
【0054】
いくつかの実施形態において、HTS磁石は、HTSケーブルを、当該HTSケーブル用の所望の形状を定める支持構造体内の溝に置くことによって形成され得る。この段階で、HTSケーブルは、HTSテープスタックを損傷させることなく所望の形状へと屈曲し得るが、その理由は、HTSテープスタックの位置が固定されておらず、HTSケーブルが屈曲する際にHTSテープスタックがHTSケーブルの長さに沿って滑動することができるためである。HTSケーブルは、HTSテープを取り囲む外装と、溶融金属を受容するための流路(チャネル)とを含む。一旦HTSケーブルが所望の形状へと屈曲すると、次いで、ケーブルが支持構造体の溝に入れられた状態で溶融金属(例えば、はんだ)がケーブル内に流し込まれ得る。溶融金属が冷めると、これによりHTSケーブルは支持構造体の溝内でその最終形状へと「凍結」され、HTSテープスタックはもはや、HTSケーブル内で大きく移動することができない。有利には、支持構造体は、HTS磁石のための機械的支持を提供し得、HTS磁石が磁石の動作中に発生する力に耐えることを可能にする。
【0055】
本明細書に説明される概念、構造体、および技術の図面および文章における分かり易さを促進するために、単一の面内で螺旋状に屈曲したケーブルの例となる実施形態が本明細書において説明されていることを理解されたい。しかしながら、本明細書に提供される説明を読んだ後、当業者は、ケーブルが、(例えば、複雑な多次元湾曲構造体を形成するために必要とされ得るような)湾曲面で定められた形状を含む任意の所望の形状へと屈曲し得ることを理解するものとする。いくつかの湾曲面の非限定的な例が、本明細書において以下に説明される。
【0056】
高磁場超伝導磁石は、多くの場合、多層型配置にグループ分けされる複数のケーブル巻回部を備える(すなわち、磁石が複数の層からなる)ということも理解されたい。複数の巻回部は、密集し得る。平坦な層内に配置されるHTS、HTSテープまたはHTSテープスタックの巻回部によって高磁場超伝導磁石が形成される(例えば、当該複数の層の接触面が、層が配設される周りの当該磁石の中心長手方向軸に対して垂直となるように形成される)実施形態においては、そのような配置は、「パンケーキ状巻回」、またはさらにより簡単に「パンケーキ」と称され得る。故に、パンケーキは、HTS要素およびHTSを収容するための構造的な要素の両方を含む。(例えば、層の接触面が、層が周りに配設される磁石の中心長手方向軸に対して平行であるように)複数の巻回部を有する層によって磁石が形成される場合は、そのような配置は、「層状巻回スキーム」、または簡単に「層状化構成」、またはさらにより簡単に「層状化」と称され得る。
【0057】
図1は、いくつかの実施形態による、HTS磁石を形成する方法100を示す。ステップS5において、HTSケーブルが構成され得る。HTSケーブルは、任意の好適な製造技術を使用して、および任意の好適な構造を有するように構成され得、それらの例が本明細書に説明される。HTSケーブル内の流路(チャネル)は、このステップでは、溶融金属(例えば、はんだ)で充填されなくてもよい。例えば、流路は、後のステップにて溶融金属で充填することに対応するために空のままにされ得る。ステップS10において、支持構造体は、溝を有するように形成され得る。いくつかの実施形態において、支持構造体は、プレートであり得る。しかしながら、本明細書に説明される装置および技術は、支持構造体がプレートの形状以外の形状を有し得るため、この点に限定されない。支持構造体は、機械的に剛性の材料で形成され得る。いくつかの実施形態において、支持構造体は、導電材料で形成され得る。HTSケーブルの巻回部間に導電材料を含む支持構造体は、非絶縁(NI)磁石を形成することを容易にし得る。いくつかの実施形態において、支持構造体は、金属で形成され得る。機械的剛性を提供し、かつ導電性である金属の例は、鋼である。好適なタイプの鋼としては、例えば、NITRONIC40およびNITRONIC50が挙げられる。しかしながら、本明細書に説明される装置および技術では、支持構造体が他の金属もしくは非金属で形成され得るか、または様々な層内の様々な材料の組み合わせが使用され得るため、この点に関して限定されない。支持構造体は、HTSケーブルを受け入れるために、その中に形成された溝を有し得る。例えば、支持構造体がプレートである場合、プレートの第1の表面は、その中に形成された溝を有し得る。いくつかの実施形態において、溝は、螺旋形状を有し得、および/または、HTSケーブルを螺旋状に受け入れるように成形され得る。
【0058】
ステップS20において、HTSケーブルは、支持構造体の溝内に挿入され得る。溝が螺旋形状を有する場合、HTSケーブルは、螺旋状に巻回され、溝内に押圧され得る。ケーブルを支持構造体内の溝内へ置く前に、伝導性材料を、溝内またはHTSケーブルの外側に配設することができ、これにより、HTSケーブルと支持構造体との間の接触抵抗を低減し得る。例えば、伝導性材料は、インジウムなどの可鍛性(展性)材料、またははんだなど、熱が印加されるときに流れる材料であり得る。はんだは、加熱され、溝内に流し込まれ、次いで凝固し得る。いくつかの実施形態において、支持構造体とHTSケーブルの外側との間に非伝導性材料が存在し得る(例えば、支持構造体とHTSケーブルとの間の任意の空間は空のままにされ得る)。後者の場合、HTSケーブルと支持構造体との間におけるこれらの接触抵抗を介した電流共有に依存することとなる。
【0059】
ステップS30において、はんだなどの溶融金属は、HTSケーブルが溝に入れられた状態でHTSケーブル内に流し込まれ得る。例えば、本明細書にさらに詳細に説明されるように、溶融金属を加熱し、溶融金属をHTSケーブル内の1つまたは複数の流路内に流し込む装置が、HTSケーブルに接続され得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、HTSケーブルは、支持構造体における溝内に、それらの間にいかなる材料も追加することなく、配置し得る。ステップ30において、溶融材料が、この空間内に流れ込み、HTSケーブルと支持構造体との間に導電層を形成する。
【0061】
ステップS40において、溶融金属は、冷めて、凝固し得る。これは、熱源を除去するか、あるいはHTSケーブルを冷却することによって行われ得る。
【0062】
一旦溶融金属が凝固すると、HTSケーブルは、最終形状へと「凍結」または「固定」される。それ以後のHTSケーブルは、これを破壊することなく大きく屈曲することはできない。したがって、結果として生じる構造体は、支持構造体の溝内にはんだをもつHTSケーブルを有するHTS磁石とあり得る。そのような構造体は、HTS磁石として使用され得るか、または複数のそのような構造体は、それぞれの構造体の間に好適な電気的相互接続を伴って、さらに多くの数の巻回部を有するHTS磁石を形成するために互いに接合(例えば、スタック化(積層化))され得る。
【0063】
図2Aは、いくつかの実施形態による支持構造体210の断面の例を示している。この例では、支持構造体210は、その上面に溝220を有する。溝220は、支持構造体210の上面図を表す図2Bに例示されるような螺旋形状を有し得る。溝220は、任意の好適な数の巻回部を有し得、用語「巻回部」は、中心点の周りを一回転するものを指すということを理解されたい。図2Aおよび図2Bは、いくつかの実施形態による、図1のステップS10の結果を示している。
【0064】
図2Cは、HTSケーブル230が溝220内に配置し得ることを示している。図2Cは、いくつかの実施形態による、図1のステップS20の結果を示している。図2Cに示されるように、溝220の形状は、HTSケーブル230の形状に適合するように形成され得る。例えば、HTSケーブル230が図2Cに示されるように円形断面を有する場合、溝は、HTSケーブル230の半径にぴったりと適合する半径を有する半円形断面を有し得る。実施形態において、ケーブルおよび溝の半径(またはより広くいえば、ケーブルまたは溝のいずれかが円形または半円形の断面形状を有するように提供されないとき、ケーブルおよび溝の寸法)は、圧力嵌合を行うために選択され得る。他の実施形態において、ケーブルおよび溝半径(またはケーブルおよび溝の寸法)は、締まり嵌めを行うために選択され得る。他の実施形態において、ケーブルおよび溝半径(またはケーブルおよび溝寸法)は、動き嵌めを行うために選択される。依然として他の実施形態において、ケーブルおよび溝の半径(またはケーブルおよび溝の寸法)は、中間嵌めを行うために選択される。しかしながら、本明細書に説明される技術および装置は、HTSケーブルおよび溝の断面が、正方形、矩形、楕円形、三角形などの任意の規則的または不規則的な形状を有し得るため、この点に関して限定されない。
【0065】
図2Dは、いくつかの実施形態による図1のステップS30において溶融金属でHTSケーブル230を充填することを示している。溶融金属でHTSケーブル230を充填することがハッシングにより図2Dに概略的に示されているが、HTSケーブル230の一部分のみに溶融金属を充填し得ることを理解されたい。例えば、以下にさらに詳細に説明されるように、HTSケーブル230内の1つまたは複数の流路(チャネル)は、溶融金属で充填され得る。次いで、溶融金属は、上述したように、凝固し得る。図2Dに示されるような構造体は、次いで、HTS磁石として使用され得るか、または、複合型もしくは積層型のHTS磁石を形成するために、図2Dに示されるものなどの他の構造体に接続され得る。
【0066】
図3Aは、キャップ240が支持構造体210の溝220内のHTSケーブル230の上に配設される例を示す。キャップ240は、HTSケーブル230を溝220内の適当な位置に保持するか、あるいは固定し得る。キャップ240は、任意の伝導性または非伝導性の材料で形成され得る。いくつかの実施形態において、キャップ240は、支持構造体の材料(例えば、鋼)と同じ材料で形成され得る。キャップ240は、任意の好適な方式で支持構造体に固定され得る。いくつかの実施形態において、キャップ240は、図3Aに示されるように、その端部で支持構造体の溝220の端部に溶接されてもよい。はんだまたは他の溶融金属をHTSケーブルの外側と支持構造体との間に配置することは、キャップを設置および固定する前またはその後に行われ得る。
【0067】
上述したように、複数のパンケーキが、HTS磁石を形成するために互いに接合(例えば、スタック化(積層化))され得る。それらは、層状巻回(図3B1図3B2)またはパンケーキ状巻回(図3C)のスキームの多層型配置でそれぞれ配置され得る。図3B1および図3B2に示されるように、支持構造体は、支持構造体の上部に外側(図3B1)または内側(図3B2)のいずれかを向く溝を有し、円筒形状をそれぞれ有し得る。図3B1および図3B2に示されるように、これら支持構造体は、互いの内部にネストされ(入れ子にされ)てもよい。各々の円筒形状の支持構造体の表面は、コークスクリュ形状のHTSケーブルを受け入れるようにコークスクリュ形状の表面に沿って延在する溝を有し得る。コークスクリュ形状のHTSケーブルの例は、図3B3に示される。円筒状の支持構造体と支持構造体の溝内のHTSケーブルとを有する円筒状構造体は、個別に形成され、次いで、示したネストされた円筒構造体を形成するために互いの内部にまたは互いの外部に嵌め込まれ得る。円筒状の層の嵌め込みは、層間の空隙を低減または除去するために「焼き嵌め」法によって、例えば、層を加熱/冷却することによって行われ得る。代替的に、それらは、空隙を低減するために異なる方式で嵌め込まれてもよいし、または小さい空隙をもって嵌め込まれてもよい。空隙は、ガラス繊維布または他の好適な材料でフィルされることができ、次いでアセンブリ全体が、エポキシで充填(例えば、真空含浸)され得、隣接する円筒の間に層間絶縁を形成する。交わりに、層間絶縁は、Kapton-G10またはG11の既製の固体シートによって形成され得る。隣接する円筒内のHTSケーブルは、好適な電気接合部によって互いに接続され得る。図3Cに示されるように、複数のパンケーキが積層されるとき、導電性接合構造体によってパンケーキの間に接続がなされ得る。そのような接合構造体は、超伝導または非超伝導であり得る。接合構造体とは別に、それぞれのパンケーキ(例えば、平らな支持構造体)の間または複数の層(例えば、円筒状の支持構造体)の間の界面は、絶縁材料であり得る。
【0068】
非絶縁磁石には、以下のとおり、渦電流超伝導ケーブル損失の2つの主要なメカニズムが存在する。
- 超伝導ケーブルで形成されるループによって生成される渦電流であり、それらの端部で高電気抵抗性マトリクスを通じて分流されるもの。
- 超伝導ケーブル内の渦電流。これらの損失を軽減することは、以下に説明するようにケーブルの設計に特有のことである。
【0069】
マトリクス内の渦電流は、薄い非絶縁性シェル(層、パンケーキなど)に垂直な変動外部磁場によって主に引き起こされる。
【0070】
明確な形の変動外部磁場の場合、それらの損失は、非絶縁性シェルの形状を、それが変動外部磁場の磁束線に平行であるように調節することによって軽減され得る(図3D)。
【0071】
<HTSケーブルの例>
HTSケーブル230は、いくつかの異なる設計に従って構造化され得る。いくつかのHTS-REBCOベースのケーブル設計が提案および開発されている。それらの多くは、AC結合損失を低減するように設計されている。これは、ケーブル内のテープのいわゆる転置によって達成され得る。この転置は、多くの異なる方式で行われる。
【0072】
HTSケーブル230の一例は、いわゆるPIT-VIPERケーブルである(図3E)。それは、マルチスタックケーブルである(この例では、4つのHTSテープスタックがあるが、他の設計では異なる数の流路/テープスタックを有し得る)。テープスタックは、図6Bに示されるように、それらの長さに沿って螺旋状に捻回し得る。任意選択的に、各テープスタックは、HTSケーブル内のテープスタックを安定化させるためのスタビライザとして機能し得る伝導性(例えば、銅)のフォーマによって取り囲まれていればよい。低減した渦電流損失は、フォーマをセグメントに分割すなわち区分化し、セグメント間に誘電体絶縁を設置することによって実現され得る。実施形態において、そのような手法は、HTSケーブル230の別の例であるセグメント化されていないVIPERケーブル(図3F)と比較して、渦電流加熱の20倍超の低減を結果としてもたらし得る。図3FのVIPERケーブルは、図3EのVIPERケーブルと同様であるが、フォーマをセグメント化する絶縁がない。
【0073】
いくつかの実施形態において、AC損失は、フォーマのためにより高い電気抵抗性の材料を使用することによって低減し得る。例えば、銅の代わりに鋼が、フォーマのために使用され得る。数値モデル(実験により確認されるもの)は、VIPERケーブルを区分化することが、振動する外部横磁場に起因するフォーマ内のAC損失を1.7倍低減することを示している。銅フォーマを鋼と置き換えることにより、さらに損失が2.7倍低減する。これらの結果は、図3Gに示されている。
【0074】
VIPERおよびPIT-VIPERの配置の1つの利点は、このトポロジが、図3Eに示されるように、中央における冷却流路の存在に好適であることである。これは、液状の極低温流体の流れによってHTS材料の効率的な冷却を可能にする。
【0075】
比較的小さいAC損失の場合、技術的条件が伝導冷却を許すときは、冷却流路は、取り除かれ、セグメント化されたフォーマの拡張によって置き換えられ得る(図3H)。代替的に、流路、残置されて、空のままにされるか、あるいは、極低温動作温度では液体状態または固体状態にある液体または高圧ガスで室温で充填されることができ、超伝導体に対して追加の熱安定性を提供する。
【0076】
伝導冷却型配置においては、その巻線の内側からの熱を除去する冷却剤は存在しない。代わりに、熱は、高い熱伝導率の構成要素を通じた伝導によって、磁石の本体から巻線の外側にある熱の交差点へ除去される。これらは、層間(パンケーキ間)絶縁で絶縁された銅ワイヤまたは絶縁された銅ストリップに沿って設けられ得る。
【0077】
伝導冷却スキームが十分である場合、冷却流路なしの他のケーブルが使用され得る。TSTCケーブル(図3I)、CROCOケーブル(図3J)、およびCORCケーブル(図示せず)は、非絶縁型配置において使用するのに好適なHTSケーブル230の他の例である。両方の場合において、捻回したテープスタックは、より良好な横の熱電気伝導のためにはんだを用いて丸い(例えば、鋼の)チューブ内へ真空圧含浸され得る。これらのケーブルの利点は、高い充填率、すなわち、巻線の面積に対する超伝導体の面積の比率、その結果得られる高い工学的電流密度であり、これはいくつかの用途において意義深いものであり得る。テープ間のスタック内結合からのAC損失をさらに低減させるために、テープスタックは、狭いテープを使用すること、もしくはスタック内のテープの数を減らすこと、またはその両方によって、サイズを低減することができる。図3Kに示される、Subra社(www.subra.dk)によるフィラメント化テープのような高度なテープを使用すれば、AC損失を著しく低減させることができる。これらのケーブルの別の利点は、それらが、捻回したテープスタックによって形成されることである。ケーブルの長さに沿ってテープスタックを捻回することは、スタック内のテープに沿ってひずみを全くまたはほとんど生じさせることなく、ケーブルの限られた屈曲を可能にする。ケーブルを屈曲させることは、ケーブル内にテープをはんだ付けする前に行われ得る。要求された形状をとるためのケーブル屈曲のプロセスにおいて、これは、捻回したスタック内の複数のテープが互いに滑動することを可能にし、超伝導体の大きな劣化とその臨界電流の減少とを別途引き起こし得る望ましくない真性軸ひずみを著しく低減させ、または完全に除去するものである。ケーブル内のテープをはんだ付けすることは、ケーブルを屈曲させてそれを構造的マトリクス内の溝内に挿入した後に、適当な位置で行われ得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明される技術に従って形成されるHTS磁石は、いくつかの有利な特性を有し得る。例えば、支持構造体の使用は、高い構造的完全性をもたらし得る。HTS磁石が、HTS材料のそれぞれの巻回部の間に伝導路を提供するNI磁石として形成されるとき、いくつかの利点が存在し得る。例えば、絶縁を省略することは、放射線障害の問題を回避し得る。NI磁石は、高いクエンチ抵抗性を有し得る。HTS材料の冷却は、HTS材料と密接な状態となり得る高伝導性材料(例えば、銅)と接触しているHTSケーブルの流路内の冷却剤の流れによってもたらされ得る。そのような磁石は、AC(交流)損失、遮蔽、および渦電流に曝されることが低減したものでもよい。HTS材料のはんだ付け品質は、ケーブル内への溶融金属の流れに起因して高い場合がある。
【0079】
<HTSケーブルおよび溶融金属充填のさらなる例>
高温超伝導(HTS)ケーブルに溶融金属を充填するためのプロセス、システム、デバイス、および技術について説明する。
【0080】
図4は、単一のHTSテープスタックを有するHTSケーブルの例を示す。HTSケーブルは、HTS材料が内部に配設されている外装を含む。外装は、チューブの形状であり得る。HTSテープスタックは、HTS材料の複数のテープ層を有するように表示されている。各層は、単一のHTS材料または複数の異なるHTS材料を含み得る。
【0081】
この例では、外装(およびそれ故に、ケーブル)は、円形断面形状を有するものとして示されている。当然ながら、外装またはケーブルは、任意の規則的な(例えば、矩形、正方形、三角形)または不規則的な断面形状を有するように提供され得ることを理解されたい。さらに、用途によっては、複数の異なる外装/ケーブルは、同じ断面形状を有さなくてもよい。外装/ケーブルの特定の断面形状は、外装/ケーブルが使用されることになる特定の用途のニーズに適合するように選択され得る。いくつかの実施形態において、HTSケーブルに溶融金属を充填するための本明細書に説明されるプロセスは、溶融金属が、HTS材料の表面の周りに配設される、および/またはこれに接触することを結果として与え得る。いくつかの実施形態において、溶融金属は、HTSテープの複数の層の間における隙間空間に充填され得る。
【0082】
図5は、フォーマのそれぞれの流路内に配設される複数のHTSテープスタックを有するHTSケーブルの実施形態を示す。この例では、ケーブルは、複数の流路(ここでは4つの流路)を有するフォーマを備えており、各流路内にマルチスタックHTSテープが配設された状態で形成あるいは提供されている。外装は、フォーマの周りに配設される。任意の数の流路が使用され得る。流路の数は、ケーブルが使用されることになる特定の用途のニーズに合うように選択され得る。
【0083】
この例示的な実施形態において、各流路は、略正方形の断面形状を有し得る。しかしながら、流路は、任意の規則的(例えば、矩形、円形、三角形)または不規則的な断面形状を有し得る。さらに、用途によっては、各流路は、同じ断面形状を有さなくてもよく、すなわち、複数の異なる流路は、異なる形状を有し得る。流路の特定の断面形状は、ケーブルが使用されることになる特定の用途のニーズに合うように選択され得る。本明細書に説明される金属充填プロセスは、ケーブルに、および特に、フォーマ内に提供される任意の流路に、溶融金属(例えば、はんだ)を充填するために使用され得る。説明される金属充填プロセスは、各HTSテープスタックの周り、スタックHTSテープを備えるHTSテープ層間の空間、およびフォーマの表面と外装の表面との間に存在し得る空間を充填し得る。
【0084】
本明細書に説明される金属充填プロセスは、外装を備えるがフォーマのない(例えば、図4に示されるような)および/または外装およびフォーマの両方を備える(例えば、図5に示されるような)任意のケーブルに適用され得る。さらには、本明細書に説明される金属充填プロセスは、任意または複雑な断面形状ならびに任意または複雑なパターンを有するチューブまたは流路に溶融金属を充填するために容易に使用され得る。さらに、本明細書に説明される金属充填プロセスは、任意の長さのケーブルに対して使用され得る。
【0085】
これより図6Aおよび図6Bを参照すると、ケーブルは、複数の流路が内部に提供されているフォーマを備える。この例示的な実施形態において、フォーマは、フォーマの中央縦軸に沿って提供される冷却流路に対応する1つの流路を有する。実施形態において、フォーマは、その内部に複数の冷却流路を有し得る。フォーマは、複数の流路を有し、これら複数の流路は、その内部にHTS材料が与えられた状態で、フォーマの内部に形成されるか、あるいは提供される。図6Aの例示的な実施形態において、HTS材料は、各流路内に配設されるマルチスタックHTSテープとして示される。HTS材料の他の構成もまた、当然ながら使用され得る。外装は、フォーマの周りに配設される。この例示的な実施形態において(および、図6Bにおいてより明白に視ることができるように)、流路は、各流路が略正方形断面形状を有した状態で、フォーマの長さに沿ってフォーマの表面に沿って、捻回パターンまたは螺旋パターンを有し得、これは、HTSテープがHTSケーブルの長さに沿って捻回していることを意味する。HTSケーブルの長さに沿ってHTSテープを捻回することは、ケーブルが屈曲したときにテープ内の力の再配分を可能にする。
【0086】
図7Aおよび図7Bは、本明細書に説明される概念に従う金属充填プロセスの例示的な実施形態を形成する処理要素のシーケンスで構成されるフローチャートである。明白に記載のない限り、フローチャート内の処理要素は、順序不同であり、フローチャート内に列挙されるプロセス要素が任意の好適な順序で実施され得ることを意味するということを理解されたい。
【0087】
図7Aおよび図7Bに示されるように、HTSケーブルにはんだを充填するための例示的なプロセスは、はんだ充填プロセスを経たケーブル内で使用されることになる要素(例えば、チューブ、フォーマ、HTS材料、外装、取付部品など)を洗浄することによって開始する(62)。実施形態において、ケーブル要素は、酸性溶液で洗い流し、次いで水すすぎを伴うプロセスを使用して洗浄され得る。1つの特定の実施形態に関連したそのようなプロセスの詳細は、以下に説明される。
【0088】
1つの非限定的な例として、水および洗浄溶液(例えば、Citronox酸性洗浄剤)の混合物を含む貯蔵器が、ケーブルフォーマと結合され得、混合物は、ケーブルフォーマを通じて貯蔵器から圧送される。その後、洗浄水が、ケーブルフォーマを通じて圧送されて、ケーブルフォーマの外へ洗浄溶液をすすぎ洗いし得る。いくつかの場合において、すすぎ洗いの間、混合物および/または洗浄水は、室温を上回るまで(例えば、60℃(140°F))加熱され得る。
【0089】
要素が洗浄されると、HTS材料は、外装内、または流路化されたフォーマの流路内に配設される(64)。実施形態において、HTS材料は、HTSテープスタックとして提供され得る。実施形態において、HTSテープスタックは、タイトなスタック内でテープ間の良好な接着(例えば、テープが互いにしっかりと結合される接着)を確実にするために予め錫めっきを施され得る。1つの実施形態において、HTSテープスタックは、ケーブルに充填されるために使用されるべき金属で予め錫めっきを施され得る。1つの実施形態において、HTSテープは、PbSnはんだでプレプレーティングされる。
【0090】
「緩いHTSケーブルアセンブリ」(またはより単純に「HTSケーブルアセンブリ」)が、次いで形成される(65)。HTSケーブルアセンブリは、少なくともHTS材料(およびおそらくは他の要素)がチューブもしくは流路化されたフォーマ、またはHTSケーブルの一部を形成する他の構造体に構造的に固定されていないことから、時として「緩いケーブルアセンブリ」と称される。本明細書で使用される場合、「HTSケーブルアセンブリ」または「緩いHTSケーブルアセンブリ」は、HTS(例えば、HTSテープ)を備える任意の容器を指してよく、その例が本明細書に提供される。例えば、1つのタイプのHTSケーブルアセンブリは、チューブ内にHTS材料を配設し、任意選択的に、必要に応じて取付部品などを追加することによって、形成され得る。別の例として、HTSケーブルアセンブリは、流路化されたフォーマを備え得、流路化されたフォーマにおいて、HTS材料が流路のうちの相応しいものの内部に配設され、任意選択的に、必要に応じて取付部品などを追加する。他のタイプのHTSケーブルアセンブリが想起され得、HTSケーブルアセンブリに金属を充填するための技術が、それに適用される。
【0091】
これより図7Aを参照すると、HTSケーブルアセンブリは、次いで、(例えば、真空プロセスを通じて)真空化され、不活性ガスにより浄化(パージ)され(66)、いかなる酸化も排除するために、フラックスが、HTSケーブルを形成するHTS材料およびケーブル要素に適用される。実施形態において、液体フラックスは、はんだ付けの直前に適用され得る。これは、説明される予定の溶融金属のその後の流れと同様の方式ですべての表面に浸透することができる。実施形態において、液体フラックスの適用が、テープおよびケーブルへのはんだの良好な濡れ性を可能にすることが分かっている。実施形態において、RMA-5液体フラックスを使用したが、同じまたは同様の特性を有する他の液体フラックスも使用され得る。
【0092】
過剰なフラックスは、アセンブリから排出される(68)。任意の残りのフラックスは、より重い溶融金属はんだの流れ(78と併せて説明される予定)によって効果的に洗い流されることが分かっている。そのようなものとして、過剰なフラックスを排出する明示的なステップは、どれくらいのフラックスがアセンブリ内に残っているかによって、必要とされない場合がある。長く複雑なケーブル形状を有する実施形態においては、加圧が、過剰なフラックスを排出するために効果的に使用され得る。
【0093】
HTSケーブルアセンブリは、金属(例えば、はんだ)を溶融させる温度を下回る温度まで加熱される(74)。実施形態において、対流式オーブンが、金属充填プロセス中にケーブルならびに取付部品および配管のすべての温度を制御するために使用され得る。これは、必要とされる最小の外部制御によりある程度の一様性をもたらし、また重要なことには、HTSテープがオーブンの設定点を超えてケーブルのその部分に劣化を引き起こすいかなるリスクも回避するものである。
【0094】
ケーブルアセンブリの加熱(74)の前、後、またはそれと同時に、HTSケーブルに充填される金属は、液体状態へと溶融される(75)。金属は、例えば、缶すなわちるつぼ内の温度制御されたヒータを使用して、溶融され得る。缶の内側および外側の熱電対が、溶融がいつ完了するか、および流れる前の溶融金属の温度を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、金属は、ケーブルが位置するオーブンの内側で溶融され得るが、他の実施形態において、金属は、別個に(すなわち、オーブンの外側で)溶融され得る。HTSケーブルアセンブリは、次いで、金属が流れる温度まで加熱される(76)。
【0095】
重要であることが分かっている金属充填プロセスの一態様は、所望の時間-温度プロファイルを得たものである。温度は、金属が低粘度の流体となるのに十分に高くなければならないが、足りる量を少し晒すことにして、熱劣化と、HTS材料(例えば、REBCOテープスタック)に対する金属の化学的効果に起因する劣化とを回避するようにする。
【0096】
REBCOテープの層を有するHTSテープスタックを備え、PbSnはんだを使用したHTSケーブルのはんだ充填の1つの実施形態において、2つのステップが使用され得る。まず、オーブンは、HTSケーブルアセンブリを加熱するが、HTSテープを劣化させない温度に設定され得る。実施形態において、オーブンは、HTSテープ上のはんだの溶融点(例えば、PbSnはんだの場合、185℃)を下回る温度に設定され、これを以て、HTSテープスタックの劣化を大いに低減させ、また理想的にはこれを回避し得、ケーブル(またはより適切には、ケーブルアセンブリ)全体の温度が平衡化する。ケーブルアセンブリは、はんだ供給が完全に溶融され、200℃のプロセス温度に平衡化するまで、この温度に保たれる。次に、オーブン温度は、次いで、所望の流れ温度を達成する温度に設定され得る。PbSnはんだを利用する実施形態において、オーブン温度は、約205℃の温度に設定され得、待機期間が、ケーブル上のすべての地点およびはんだステーションの配管が所望の流れ温度(例えば、PbSnはんだの場合、200℃の流れ温度)を達成するまで発生し得、温度監視は、(HTSテープスタックの任意の劣化を低減させるように、また理想的にはこれを回避するように)202℃の温度を超える地点がないことを確実にするために実施される。これらの条件が満たされると、はんだフロー(はんだの流れ)ステップ78が始まり得る(および好ましくは、HTSテープスタックの熱暴露を低減させる、また理想的にはこれを最小限にするように、即座に始まる)。
【0097】
処理ステーション(その例が図8と併せて以下に説明されるもの)内およびケーブル上の複数の地点における複数の温度監視デバイス(例えば、熱電対)の適用および監視は、REBCOの劣化が200℃を上回る温度で指数関数的に増大することから、このプロセスにとって重要であり得る。温度監視デバイスの場所は、各ケーブル形状のために選択される。考慮事項は、ケーブルのサイズおよび予測される熱均一性、ならびに計画された冷却プロセスを誘導するために必要とされる入力を含む。温度は、異なるはんだまたはHTSテープのタイプのために調節され得る。HTSケーブルのはんだ充填のためのそのような最適化された時間-温度プロファイルは、説明された技術の成功において1つの重大な態様である。
【0098】
処理要素78、80は、溶融金属がケーブルアセンブリ全体を流通することを確実にするためにループを実施する。実施形態において、ケーブルアセンブリ全体を通る溶融金属の流れは、少なくとも部分的に重力により(例えば、大気圧で)、容積型ポンプにより、または真空圧技術を使用して達成され得る。真空圧技術の一例は、図8と併せて以下に説明される。
【0099】
決定ブロック80において、HTS材料が内部に配設されるケーブルアセンブリの部分を溶融金属が流通したとの決定がなされると、溶融金属の流れは停止され(82)、溶融金属およびHTSケーブルアセンブリは冷却され(84)、冷却が完了した後、はんだ充填されたHTSケーブルが結果として生じる。
【0100】
図7Aおよび図7Bに示される例示的な方法において、本方法は、それが常に、フローチャートに示されるステップのすべてを実施すること、および提示される指定の順序で実施することを必要とせずに、実行され得るということを理解されたい。さらには、少なくともいくつかの場合において、本方法のいくつかのステップは、同時に実施され得る。1つの非限定的な例として、いくつかの場合において、(68)におけるフラックスの適用は、(66)におけるHTSケーブルアセンブリの真空化の前に実施され得る。別の非限定的な例として、いくつかの場合において、HTSケーブルアセンブリ(74)および金属の溶融(75)は、同時に実施され得るか、またはいずれかのステップが、他方の前に開始されるか、または完了さえされ得る。いくつかの場合において、図7Aおよび図7Bに示される例示的な方法のステップ(および/またはステップの一部分)は、完全に省略され得る。例えば、いくつかの実施形態において、フラックスがHTS材料に適用されて排出されるステップ(68)は、省略され得る。いくつかの実施形態において、ステップ(66)の浄化(パージ)の態様は、省略され得るが、ステップ(66)の真空化の態様は、実施され得る。
【0101】
これより図8を参照すると、図7A図7Bと併せて説明されるプロセスと同じまたは同様であり得る金属充填プロセスを実行するために使用され得る処理ステーション90は、HTSケーブルアセンブリ94、結果として生じるHTSケーブル(図8には示されない)、さらに任意選択的に、溶融金属を保持するための容器96(例えば、るつぼ)、を受け入れるようにサイズ決定されたオーブン、ならびに概して97で示される関連付けられた入口および出口の配管を含む。ガス源95は、1つまたは複数のバルブV4、V5を通じて容器96の入力96aに、ならびにガス流量およびそれ故にはんだの流れの初期粘度を制限する流れ制御器99に結合される。
【0102】
容器96(時として、本明細書では「缶」とも称される)は、ケーブルアセンブリ94に充填されるのに十分な金属(例えば、はんだ)の量を保持するように配設され、オーブン92の内側または外側に位置し得る。実施形態において、容器は、金属(例えば、はんだ)を保持するために十分な長さおよび寸法の円筒形状を有するように提供され得る。実施形態において、容器は、最大13.61kg(30lbs)の金属(例えば、最大13.61kg(30lbs)のはんだ棒)を保持するように構成される約8.89cm(3.5インチ)外径の円筒状ステンレス鋼(SS)管を備え得る。当然ながら、他の形状も使用され得る。しかしながら、一般には、容器90は、本明細書に説明される概念およびプロセスに従って既知のサイズのHTSケーブルを充填し、理想的にはいくらかの追加の金属がケーブルを流通して、すべての隙間を充填し、いかなる不純物も洗い流すのに少なくとも十分な溶融金属の量を保持するようにサイズ決定されるべきである。本明細書に提供される説明を読んだ後、当業者は、特定の用途のために金属の適切な量ならびに故に容器形状およびサイズ(例えば、容積)をどのように選択すべきかを理解するものとする。
【0103】
複数のヒータ98は、容器96の周りに(例えば、容器96の内表面または外表面上に)配設され、所望の方式で容器を加熱するように構成される。ヒータは、ヒータを制御する1つまたは複数の制御器100に結合され得る。1つの実施形態において、650Wで120VACの3つのヒータが、容器に熱的に結合され、1つまたは複数の比例・積分・微分(PID)プロセッサ(図8には示されない)により制御される。実施形態において、制御器は、オートメーション・ダイレクト社(Automation Direct)からのSolo SL4848-VVシリーズ制御器として提供され得る。この実施形態において、制御器100の出力は、デューティサイクル制御された120VAC電力をヒータへゲートするリレーを動作させる電圧パルスである。容器90を加熱するための他の手段(または容器の内側の金属を溶融するための他の手段)も、当然ながら、使用され得る。
【0104】
容器96の外側の複数の熱電対102、および容器96の内側の異なるレベルにある(例えば、熱電対の動作を妨げないように選択される既知の厚さを有するステンレス鋼配管などの配管内に配設される)2つの熱電対103が、溶融プロセスを制御し、いつ容器の内側の金属の溶融が完了するかを確立するために使用され得る。容器90の出口に近接した複数のヒータ99(2つのヒータ99が図8には示されている)は、単一の外部熱電対(TC)101を使用して、ともに制御され、上方ヒータ98(650W max)は、ヒータ99とは別個に制御される。熱電対および他の器具類の詳細は、処理されているケーブル(すなわち、充填されることになるケーブル)のサイズおよび形状に応じて変化し得る。
【0105】
本明細書に提供される説明を読んだ後、当業者は、特定の用途のニーズに適合させるために、ヒータの適切な数、サイズ(ワット単位)、および配置(すなわち、物理的な場所)、ならびに熱電対の数、特性、および配置(すなわち、物理的な場所)をどのように選択するかを理解するものとする。
【0106】
サイフォン104は、容器96の出力96bに結合される第1の端部を有する。サイフォンは、流れが加圧なしで発生することができないように、容器内の溶融金属の高さよりも大きい高さを有するように提供される。実施形態において、サイフォン104は、1.27cm(0.5インチ)内径を有する配管を備え得る。
【0107】
複数の接触センサ108は、金属の溶融および流れの両方を監視するために処理ステーション90内の様々な地点に配設される。実施形態において、接触センサは、市販の単一導体真空フィードスルーセンサとして提供され得る。実施形態において、接触センサは、ピンを有する。実施形態において、ピンは、中心ピン、セラミック絶縁体、およびステンレス鋼外側ハウジングを有する同軸構造体の一部であり得る。1つの実施形態において、フィードスルーは、処理ステーションの一部である様々な装置(例えば、サイフォン、接続配管、およびダンプタンク)上の噛合せ取付け具に接続され得る取付部品(例えば、ねじ式エンドキャップ)にろう付けされるか、あるいは固定される。いくつかのセンサ108は、容器内の液体はんだの予測レベルの近くに配設され得、センサ109は、ダンプタンク110内または上に異なるレベルまたは高さに配設され得る(内部または外部のいずれかで)。図8のこの例となる実施形態においては、3つのセンサのセットが、ダンプタンク内に異なる高さに配設される。そのようなセンサ配置は、金属充填プロセスを監視すること、および所望の量のはんだまたは他の金属で停止することに役立ち得る。
【0108】
1つの実施形態において、はんだの存在を検出するため、センサの中心ピンは、発光ダイオード(LED)ランプおよび電流制限抵抗器を通じてDC電源(例えば、5~24ボルトDC)に接続される。タンクおよび配管は、参照電位(例えば、電気接地または0VDC)に接続され、中心ピン上の電圧が記録される。
【0109】
この実施形態において、はんだがなければ、センサの中心ピンと参照電位との間に接続はない(例えば、センサの中心ピンと接地との間に接続がない)。LEDはオフであり、記録された電圧は、ハイ(HIGH)である(例えば、論理HIGH値に対応する電圧レベル)。はんだの存在下では、中心ピンは、接地される。LEDは励起され、記録された電圧は、ロー(LOW)である(例えば、論理LOW値に対応する電圧レベル)。そのような電子機器は、プロセスの急速な手動操作に非常に有用なはんだの流れの視覚表示、ならびに、後工程解釈に有用であり、プロセス自動化のために使用され得る(例えば、プログラム可能な論理制御器を使用して)電子記録およびインレットの両方を提供する。
【0110】
HTSケーブルアセンブリ94がフォーマおよびフォーマの周りに配設される外装を備える実施形態において、外装は、図8では参照符号112a、112bで示されるように、HTSケーブルアセンブリ94の端部を超えて延在する。延在部112a、112bは、注入管114からケーブルアセンブリ(例えば、フォーマおよび外装)への、およびダンプタンク110へ導く排出管115における、金属の流れ(例えば、はんだの流れ)のスムーズな移行を可能にする。延在部を屈曲することが所望される、または必要とされる場合、延在部は、好ましくは、滑らかな屈曲を有するように提供される。
【0111】
ヒータ116a、116bは、延在部112a、112bに近接して配設されるか、あるいはこれに結合され、ケーブルアセンブリ94内のはんだが凝固するまで、これらの延在部内の液体はんだを維持するように延在部を加熱する。実施形態において、ヒータは、注入管および排出管114、115内の各屈曲の両側に、またはケーブルアセンブリの各端にも配置し得る。以下に説明されるように、ヒータは、隙間の発生を回避する役割を果たし、さもなければケーブルアセンブリ内の溶融金属の冷却の結果として隙間が発生し得る。
【0112】
ダンプタンク110の入口110aにおける管115は、第2の「Uベンド」140を有するように提供される。これは、充填されるべきケーブルを通ってダンプタンク内に流れ込んだ初期はんだおよびフラックスがケーブルアセンブリ内へ逆流することを防ぐ。
【0113】
ダンプタンクは、ケーブルアセンブリを流通した後の過剰な溶融金属を保持する。記されるように、様々な高さにある接触センサ109は、溶融金属がどれくらいダンプタンクに達したかを示す。可変流量バルブ(99)は、ガスの流れ(例えば、不活性ガスの流れ)の量および圧力上昇を調整する。実施形態において、アルゴンなどの不活性ガスが使用され得るが、別の不活性ガスが使用されてもよい。実施形態において、ダンプタンクは、上部からの入口を伴う約10.16cm(4インチ)の直径を有するステンレス鋼を備え得、最大約4.54kg(10lbs)の過剰な溶融金属(例えば、過剰なはんだ)を保持するようにサイズ決定され得る。当業者は、どのようにして特定の用途のニーズを満足するようにダンプタンクをサイズ決定すべきかを理解するものとする。
【0114】
容器およびダンプタンクは、それらが真空化されるか(典型的には250mTorrに)、または、例えば、アルゴンなどの不活性ガスにより加圧されるかのいずれかであることを可能にする真空システム122およびガスシステム124に結合される(すなわち、これと流体連通状態にある)。可変流量バルブ99は、ガス流量および圧力上昇を調整するために使用され得る。バルブV4は、開/閉バルブであり、バルブ99は、流量調整器/バルブである。
【0115】
熱電対は、システム内の様々な複数の地点に(例えば、缶、配管、オーブン上に)配設され得、充填されるべきケーブル94に沿った熱電対130aを含め、(例えば、モニタを介して)リアルタイムで監視され得る。実施形態において、約10メートルの長さを有するケーブルアセンブリの場合、最大18個の熱電対が、典型的には1秒の速度で2つの16チャネルAgilent34972Aスキャナを介してリアルタイムで監視され得る。そのようなモニタはまた、上に説明されるようにDC電圧に変換される接触センサ状態、および圧力計アナログ出力を格納および表示し得る。熱電対の間隔は、ケーブル長さ、形状、予測される熱均一性、および計画された冷却方法に依存する。
【0116】
処理ステーションはまた、真空ポンプ133および複数のバルブ134を備える真空加圧システム131と、ケーブルアセンブリおよびはんだ缶の注入区域、ならびにケーブルアセンブリ94およびはんだダンプ110の排出区域が、独立して真空化、圧送、または加圧されることを可能にする配管136とを含む。故に、ケーブルアセンブリ94は、閉システムを形成する方式で、関連付けられた配管、取付け具、センサ、ヒータ、熱電対に結合され、これを以て様々な要素(ケーブルアセンブリを含む)が真空化および/または加圧されることを可能にするということを理解されたい。
【0117】
HTSケーブルに金属を充填する前、バイパスバルブV2は、ケーブルアセンブリ94の各端において圧力を平衡化するために開いたままである。容器104とケーブルアセンブリ94との間のこのおよびサイフォン区域104は、すべての要素が標的温度になる前の早期のはんだの流れを防ぐ。容器内の金属およびケーブルの両方がそれらのそれぞれの標的温度になると、金属の流れが開始される。実施形態において、金属の流れは、ガス源95に対するガス圧を標的圧力に設定することによって開始され得る。
【0118】
金属を流すため、バイパスバルブV2が閉じられ、ケーブルアセンブリ端94a、94bの間の差圧を可能にする。この時点で、容器96の出口96bは、溶融金属によってブロックされ、ガス源95からの圧力は、金属を、容器96から配管およびサイフォン104を通じて、延在部112aを介してケーブルアセンブリ94内へ押し込む。
【0119】
実施形態において、源95からの加圧された不活性ガスは、(例えば、バルブV4、V5を開くことによって容器に印加され、以て、溶融金属を、注入サイフォン104を超えてケーブルアセンブリへと押し下げる。溶融金属の流れは、ケーブルアセンブリを流通し続け、HTS材料間およびHTS材料の周りの任意の空間を含むすべての真空の間隙に浸透する。溶融金属はフラックスよりも重いため、溶融金属は、その前方のいかなる残りの軽いフラックスも押し出す。この方式では、高温超伝導材料を備えるケーブルアセンブリ(例えば、管または外装付きフォーマを備えるもの)に溶融金属を充填する真空圧含浸(vacuum-pressure impregnation:VPI)プロセスが提供される。
【0120】
第2の反転した管(「サイフォン」)139が、注入サイフォン104と同様の高さで、ケーブルアセンブリ排出口94bとダンプタンク注入口110aとの間に使用される。これにより、溶融金属が重力下で流れ出るのを防ぐ。各垂直区域104a、104b、139a内に残っている溶融金属は、流れの後、金属充填されたケーブルアセンブリに対する圧力を提供する。
【0121】
実施形態において、接触センサ108、109は、溶融金属の流れを監視し、これを制御するのを助けるために、システム内の複数の地点において使用され得る。例えば、接触センサは、缶に対して内部および/または外部に、容器の排出口に、注入サイフォン内に、ケーブル注入口および/または排出口に、ならびにダンプタンク内の複数の高さに配置し得る。実施形態において、接触センサは、ピンを備え、センサのピンは、缶に対して内部にあり、はんだに接触しなければならない。実施形態において、1つまたは複数のセンサは、缶の壁に、壁を貫通する取付部品を用いて配設され得、この壁を通ってセンサのピンは、はんだ(または別の溶融金属)がセンサピンのレベルに到達するとき、ピンがはんだに接触することができるように配置される)。実施形態において、1つまたは複数のセンサは、缶に対して内部管である管内に配設され得る。ケーブル排出口における、およびダンプの内側の接触センサは、溶融金属の流れを監視するために使用され得る。複数のレベルにおける、ダンプタンクの内側のセンサの使用は、充填を最適化するためにケーブルを流通してフラックスを洗い流す既定の量の溶融金属を設定することを可能にする。
【0122】
実施形態において、典型的には2.27~4.54kg(5~10lbs)の溶融金属が、出口配管およびダンプタンク内に存在し、これは約3メートルの長さを有するケーブルには十分である。標的レベルに到達すると、バイパスバルブV2が開かれ、これにより、ケーブルアセンブリの第1の端部と第2の端部との間の圧力を再び平衡化させ、これを以て流れを停止し、ケーブルアセンブリの注入管が空にされないことを確実にする。
【0123】
実施形態において、接触センサ108、109は、中心ピン、セラミック絶縁体、およびステンレス鋼外側ハウジングをもつ同軸構造体を有する市販の単一導体真空フィードスルーとして提供され得る。この用途の場合、フィードスルーは、設備上の噛合せ取付け具に結合され得るねじ式エンドキャップにろう付けされ得る。
【0124】
実施形態において、すべてのタンク、配管、および取付け具は、伝導性銅またはステンレス鋼を含むか、またはこれからなり得、均一温度を確実にするためにオーブン内に配設され得る。実施形態において、典型的には数百mTorrの真空レベルが、フラックス塗布前に達成され、フラックス塗布後は典型的には1~数Torrである。本明細書に提供される本開示を読んだ後、当業者は、どのようにして特定の用途のために真空レベルを選択するかを理解するものとする。真空は、加熱前に無酸素環境を確実にし、ケーブルのすべての部分、テープの周りおよびテープ間、ならびにフォーマおよび外装の表面の間の間隙においてさえ、金属(例えば、はんだ)の良好な含浸を確実にする。
【0125】
はんだの流れの後、1つまたは複数のエアムーバ(例えば、送風機)が、ケーブルの冷却プロファイルを制御するように、ケーブル上の選択されたゾーンに空気を優先的に向けるために使用され得る。金属充填されたケーブルを冷却するための特定の技術は、ケーブルの形状に従って選択される。略円形またはループ形状に屈曲したHTSケーブルの場合、可動バッフルが、冷却をループの指定の部分に局所化するために利用され得る。
【0126】
<例となるはんだ材料およびテープ/ケーブル構造体ならびにこれを形成する方法>
本明細書に説明される概念のいくつかの態様は、はんだおよび他の液体金属、ならびに特に、超伝導材料または他の用途のために使用されるはんだまたは他の液体金属に関する。特定の態様は、例えば、概して、超伝導材料および銅または銀を含む部分を含む、ワイヤまたはテープなどの構造体に関する。本構造体は、銅または銀部分と接触状態にあるはんだなどの金属と接触状態にあり得、例えば、金属は、構造体をケーブルまたは他の物品へと形成するために使用され得る。いくつかのタイプのはんだは、例えば、はんだ内への金属の拡散または溶解に起因して、はんだと接触状態にあるとき、本構造体から銅または銀を「抽出」または除去し得るが、本構造体と共に使用され得る本明細書に説明される金属は、本構造体からの抽出をほとんどまたは全く示さなくてもよい。故に、そのような金属は、本構造体の劣化を防ぐのに役立ち得る。他の態様は、そのようなはんだおよび他の液体金属を作製もしくは使用する方法、これを伴うキット、または同様のものを含む。
【0127】
特定の態様は、例えば、ケーブルまたは他の物品を形成するために超伝導材料に追加されるはんだまたは他の金属に関する。例えば、超伝導材料は、ワイヤまたは他の構造体内に存在し得、複数のそのようなワイヤおよび/構造体は、ケーブルへと形成され得る。ワイヤは、例えば、ワイヤ間に作成される隙間または間質空間内に存在し得るはんだまたは他の金属を使用して、ケーブル内の適当な位置に保持され得るか、あるいは固定され得る。
【0128】
使用され得る超伝導材料の例としては、カプレート超伝導体、例えば、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの希土類バリウム銅酸化物(REBCO)が挙げられる。そのような超伝導体は、典型的には、それらの原子構造内に酸素原子を含み、これは、そのような材料が、好適に低い温度に暴露されるときに超伝導性を示すのに役立つ。しかしながら、いくつかの場合において、酸素原子のうちの一部は、離れるように移動することができ、これは、そのような材料が超伝導になることを制限するか、または防ぐ。
【0129】
これが発生することを防ぐため、いくつかの場合において、ワイヤまたは他の構造体は、酸素が通って移動することを防ぐ、または抑制する、超伝導材料を囲む材料の一部分または層を含み得る。そのような材料の一例は、銀である。故に、いくつかの実施形態において、超伝導材料は、銀を含む層によって部分的にまたは完全に囲まれ得、これにより超伝導材料から遠ざかる酸素移動を防ぎ得る。
【0130】
しかしながら、銀または他の材料と接触状態にあるはんだは、例えば、はんだ内への銀の拡散または溶解に起因して、銀のうちの一部を(例えば、銀イオンとして)銀層の外へ除去または抽出することができる場合がある。このプロセスは、拡散または溶解が発生する速度を増大させ得るより高温度によって悪化され得る。こうして、例えば、はんだは、液体形態で、比較的高い温度で適用され得、ケーブルまたは他の物品の製造プロセス中、比較的長い時間期間(例えば、数時間)にわたってそのような温度に留まり得る。その時間の間、驚くほど大量の銀が、はんだによって抽出され得、著しく劣化した銀層および結果として生じる物品の乏しい性能を結果としてもたらす。
【0131】
この効果を低減させるための1つの方法は、銀層の周りの銅層など、別の材料の介在層をワイヤまたは他の構造体に追加することである。銅は、他の利点、例えば、電気または熱安定化も提供し得る。例えば、超伝導材料がその超伝導性の性質を失う場合、銅は、超伝導材料の周りで熱を吸収すること、および/または電流をバイパスすることを助け得る。しかしながら、一部のはんだは、銅層から銅を抽出することもできる。したがって、銅層と接触状態にあるはんだは、最初、銅層から銅を抽出し得、またそのような場合、はんだも銀層と接触するようになるほど多くの銅を抽出して、上述したような劣化を結果としてもたらす。いくつかの場合において、さらなる劣化が、外側銅層との金属間化合物形成、例えば、スカロップ状金属間化合物形成によって発生し得る。金属間化合物形成は、超伝導体のn値(性能の尺度)を低減させ得、ならびに/または、銅および/もしくは銀層の層間剥離を可能にし得る。故に、構造体の周りの様々な金属層が劣化し得る。
【0132】
故に、本明細書に論じられるような特定の実施形態は、ワイヤまたは他の構造体から相当量の銅および/または銀を抽出することができないはんだおよび他の金属に関する。いくつかの場合において、はんだまたは他の金属は、例えば、はんだまたは他の金属がさらなる量の(例えば、ワイヤから除去される)銅および/または銀を含む能力が、低減しているか、またはこの能力がないように、いくらかの量の銅および/または銀を含み得る。例えば、はんだは、飽和濃度の銅および/もしくは銀、ならびに/または飽和濃度に関して大きい濃度(例えば、この濃度の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を含み得る。
【0133】
鉛錫(PbSn)またはインジウム錫(InSn)はんだを含め、多種多様のはんだおよび他の金属が使用され得る。他のはんだは、以下に詳細に説明される。そのようなはんだは、様々な量の銅および/または銀を含み得る。
【0134】
そのような構造体の1つの非限定的な例は、図9において見ることができる。この図では、ケーブルなどの物品10は、1つまたは複数の構造体20を含み得る。構造体20は、ワイヤ、または本明細書に説明されるものなどの他の構造体であり得、2つ以上の構造体が物品10内に存在する場合、それらは同じまたは異なる場合がある。1つのみのそのような構造体が、明瞭性の目的のために、本図では詳細に提供される。
【0135】
そのような物品は、液体金属を、構造体の少なくとも一部分の周りに、例えば、構造体の周りの隙間または間質空間内へ適用し、液体金属を冷まして物品内に固体30を形成することによって、部分的に組み立てられ得る。述べたように、液体金属は、様々な技術を使用して導入され得る。金属はまた、VPI技術だけではなく、他の実施形態においては他の用途において導入または使用され得る。他の要素40もまた、例えば、構造体20を含む流路、スロットなどを定めるために物品内に存在し得るが、金属30は、熱的および/または電気的接触を促進するために物品内で使用され得る。
【0136】
構造体20は、この図では、第1の領域21、第1の領域を少なくとも部分的に囲む第2の領域22、および第2の領域を少なくとも部分的に囲む第3の領域23を含む。3つのみのそのような領域が明瞭性の目的のためにここでは示されるが、より少ないまたは多い領域が、他の実施形態においては存在してもよく、これらの領域のうちの任意の2つの間に、または他の好適な構成で位置し得る。加えて、これらは、矩形断面を有するものとしてここでは示されるが、他の形状(例えば、平坦な、または図1に示されるものなど層状化した、円形など)も他の実施形態では可能である。非限定的な例としては、規則的(例えば、例えば、矩形、円形、三角形)または不規則的な断面形状が挙げられる。
【0137】
この例では、例えば、第1の領域21は、REBCOまたは別のカプレート超伝導体など、超伝導材料を含み得る。第2の領域22は、銀を含み得る。この領域は、第1の領域21の外への酸素の移動を防ぐか、またはこれを抑制するために使用され得る。第3の領域23は、銅を含み得る。これは、金属30が第2の領域22と接触状態になることを少なくとも部分的に防ぐために使用され得る。先に論じられるように、いくつかの場合において、金属30は、銅を、例えば、第3の領域33の外への銅の移動を防ぐか、またはこれを抑制することができる量で、含み得る。例えば、金属30は、いくらかの銅が存在した状態で、PbSnはんだなどのはんだを含み得る。そのようなはんだの1つの非現敵的な例は、Sn62Pb36Cuである(すなわち、62%Sn、36%Pb、2%Cu;そのような公式内の下付き文字は、化学量論比ではなく重量パーセンテージを表すということを理解されたい)。
【0138】
上述したものに加えて、また図9を参照すれば、他の実施形態も可能である。したがって、より一般的には、説明された概念の様々な態様は、超伝導材料または他の用途のために使用されるはんだまたは他の金属のための様々なシステムおよび方法に関する。
【0139】
例えば、特定の態様は、概して、本明細書で論じられるものなどのワイヤを含む、1つまたは複数の構造体を含むケーブルまたは他の物品に関する。他の物品の非限定的な例としては、ケーブル構造体、パンケーキ状「巻回」構造体、または同様のものなど、超伝導ジョイントまたは磁石が挙げられる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のワイヤまたは他の構造体など、任意の数の構造体が、物品内に存在し得る。2つ以上存在する場合、構造体は、同じまたは異なる場合がある。そのような構造体の例は、本明細書内により詳細に提供される。
【0140】
述べたように、そのような物品は、液体形態にあるはんだまたは他の金属を、構造体の少なくとも一部分の周り、例えば、構造体の周りの空間内へ適用し、例えば、冷却により、はんだまたは他の金属を凝固させて固体を形成することによって、部分的に組み立てられ得る。はんだまたは他の金属は、構造体の周りの空間のすべてまたはほんの一部分を充填し得る。例えば、物品の体積の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的にすべてが、例えば、はんだもしくは他の金属により、および/または構造体、ワイヤ、もしくは他の要素により充填され得る。
【0141】
いくつかの場合において、はんだまたは他の金属は、物品のかなりの部分を形成し得る。例えば、物品の体積の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%などが、はんだまたは他の金属であり得る。しかしながら、いくつかの場合において、物品の体積の50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下が、はんだまたは他の金属であり得る。これらの範囲の組み合わせもまた、様々な実施形態において可能であり、例えば、はんだまたは他の金属は、本明細書内で論じられるようなケーブルまたは他の物品の体積の5%~10%を形成し得る。
【0142】
多種多様なはんだのうちのいずれかが使用され得る。はんだは、例えば、約250℃未満、または225℃未満の比較的低い融点を有する金属であり得る。別の実施形態において、融点は、約200℃未満である。いくつかの場合において、はんだの融点は、少なくとも100℃、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、または少なくとも180℃である。加えて、特定の実施形態において、融点は、これらの範囲のうちのいずれかの間に入り得る。例えば、融点は、180℃~200℃であり得る。
【0143】
1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の金属元素が、はんだまたは他の金属内に存在し得る。金属元素の非限定的な例としては、Ag、Pb、Sn、In、Bi、Hg、Zn、または同様のものが挙げられる。加えて、いくつかの場合において、本明細書内で論じられるものなどの貴金属が存在し得る。
【0144】
これらの元素のうちのいずれかが、任意の好適な組み合わせで存在し得る。例えば、元素は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%など、および/または75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、もしくは25重量%以下の濃度ではんだまたは他の金属内に存在し得る。他のパーセンテージ範囲も、元素の各々について、他の実施形態において可能である。
【0145】
非限定的な例として、はんだまたは他の金属は、例えば、PbSnまたはInSnなどの金属において、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%など(または上に説明されるような他のパーセンテージ)のSnを含み得る。別の例として、はんだまたは他の金属は、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%など(または上に説明されるような他のパーセンテージ)のPbを含み得る。さらに別の例として、はんだまたは他の金属は、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%など(または上に説明されるような他のパーセンテージ)のInを含み得る。
【0146】
いくつかの場合において、1つまたは2つの元素が、はんだまたは他の金属の大部分を形成し得る。例えば、はんだまたは他の金属の少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%は、2つまたは3つの金属元素によって形成され得る。非限定的な例として、はんだは、PbおよびSnから形成され得、これらの2つの元素は、はんだの組成の少なくとも50重量%、少なくとも55重量%などを一緒に形成し得る。
【0147】
錫鉛はんだの非限定的な例としては、Sn60Pb40、Sn63Pb37、または、SnPbCu、SnPbAg、もしくはSnPbCuAgなど、Agおよび/もしくはCuを含む様々な錫鉛はんだ(Sn61Pb35AgCuおよび本明細書内で論じられるような他のものなど、各々が様々な組成を有する)、ならびに同様のものが挙げられる。錫鉛(SnPb)に加えて、好適なはんだの他の非限定的な例としては、錫インジウム(SnIn)はんだが挙げられる。記されるように、そのような公式内の下付き文字は、化学量論比ではなく重量パーセンテージを表すということを理解されたい。
【0148】
述べたように、特定の態様によると、そのようなはんだまたは他の金属は、銅(Cu)および/または銀(Ag)などの貴金属を含み得る。貴金属の他の例としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(rh)、パラジウム(pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および金(Au)が挙げられる。1、2、3、またはそれ以上の貴金属が、様々な実施形態において、存在し得る。
【0149】
銅または銀などの貴金属は、任意の好適な量または濃度で存在し得る。例えば、貴金属は、はんだまたは他の金属内に、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.02重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.07重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.1重量%、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.3重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも1.7重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも7重量%、少なくとも10重量%などで存在し得る。
【0150】
実施形態の1つのセットにおいて、貴金属は、その飽和濃度で、またはその近くで、はんだまたは他の金属内に存在する(しかしながら、いくつかの場合において、これは、例えば、過飽和溶液を作成すること、合金、または他の技術によって、超過され得る)。故に、非限定的な例として、Cuは、その飽和濃度で、またはその近くで存在し得る。加えて、飽和濃度は、様々な因子に依存し得、例えば、飽和濃度は、温度の関数として変化し得るということを理解されたい。故に、非限定的な例として、飽和濃度は、一部の貴金属では、より高い温度で増加または減少し得る。
【0151】
例として、いかなる理論にも制約されることを望むものではないが、Cuは、およそ200℃で、約0.1重量%の65/35Sn-Pbはんだ内の飽和濃度を有すると考えられる。このはんだが銅源(例えば、本明細書内で論じられるような)に暴露されるとき、はんだは、その飽和濃度でCuを有するSn-Pbはんだを形成するために十分な銅を溶解または抽出し得る。別の非限定的な例として、Agは、およそ200℃で、63/37Sn-Pbはんだ内で約2重量%の飽和濃度を有し、このはんだが銀源(例えば、本明細書内で論じられるような)に暴露されるとき、はんだは、Sn62Pb36Ag(62%Sn、36%Pb、2%Ag)、またはその飽和濃度でAgを含む他のSn/Pbはんだを形成するために十分な銀を除去または抽出し得る。
【0152】
他の非限定的な例としては、Sn59Pb39Cu、Sn59Pb39Ag、Sn58Pb38CuAg、Sn96.5AgCu0.5、または同様のものが挙げられる。これらのものなどのはんだ、ならびに/または異なる比率のSnおよび/もしくはPb(および/もしくは他の元素)をもつはんだは、多くの場合、市販で手に入れることができ、ならびに/または、貴金属を含む組成物を産生するために、はんだもしくは他の金属を、例えば、液体状態で、貴金属源(例えば、Cu、Agなど)に引き渡すことによって、産生され得る。
【0153】
加えて、貴金属は、他の実施形態において、その飽和濃度ではんだまたは他の金属内に存在する必要がないということを理解されたい。例えば、はんだまたは他の金属は、貴金属を含むが、その飽和濃度よりも低い(または高い)濃度で含み得る。例えば、特定の実施形態において、貴金属は、その飽和濃度の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の濃度ではんだまたは他の金属内に存在し得る。
【0154】
いくつかの(しかしながらすべてではない)実施形態において、はんだまたは他の金属は、本明細書に説明される元素の任意の組み合わせを含むか、またはこれから本質的になり得る。例えば、はんだまたは他の金属は、Pb、Sn、およびCu;Pb、Sn、およびAg;Pb、Sn、Ag、およびCu;In、Sn、およびCu;In、Sn、およびAg;In、Sn、Ag、およびCu、または同様のものから本質的になり得る。絶対的な純度は、多くの場合、実際問題としてほぼ手に入らないということを理解されたい。しかしながら、特定の実施形態において、他の元素が存在する場合、それらは、5重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満の量で、またははんだもしくは他の金属の融点を実質的に変更するには小さすぎる量で存在し得る。
【0155】
特定の態様において、述べたように、はんだまたは他の金属は、ケーブルまたは他の物品内に配設され得る。例えば、物品は、超伝導物品、すなわち、十分に低い温度へと冷却されるときに超伝導性質を示す物品であり得る。
【0156】
いくつかの場合において、物品は、ケーブルまたは同様のものとして形成され得る。例えば、いくつかの場合において、複数のワイヤまたは他の構造体は、ケーブル内に、例えば、捻回しているまたは捻回していない構成で含まれ、ワイヤまたは他の構造体は、実質的に同じまたは異なる構造体を有し得る。はんだまたは他の金属は、これらのうちの一部またはすべての間に存在し得る。いくつかの場合において、ケーブルは、はんだまたは他の金属をケーブルに追加する前またはこれと同時に、所望の形状(例えば、磁石、電流リード、または他の構造体の最終形状)へと屈曲する、巻かれる、成型される、形成される、または別途作製され得る。いくつかの実施形態において、ケーブルは、テープ・イン・コンジットケーブルとして提供され得る。
【0157】
ケーブルまたは他の物品は、任意の好適な長さを有し得る。例えば、長さは、少なくとも1m、少なくとも3m、少なくとも10m、少なくとも11m、少なくとも25m、少なくとも50m、少なくとも75m、少なくとも100m、またはいくつかの場合においてはそれ以上であり得る。
【0158】
上に説明されるように、HTSケーブルは、まず、支持構造体の溝内に置かれ、次いで、溶融金属(例えば、はんだ)を充填され得、これが次いで冷却されて、HTSケーブルを支持構造体の溝内の適当な位置に凍結させる。
【0159】
いくつかの場合において、例えば、好適な電流がケーブルを流通するとき、ケーブルが比較的大きい磁場を生成することができるように、ケーブルは、コイル状にされ得る。例えば、ケーブルが、ワイヤまたは他の構造体の少なくとも一部が超伝導になるように冷却される場合、コイルは、少なくとも0.01T、少なくとも0.1T、少なくとも0.3T、少なくとも0.5T、少なくとも1T、少なくとも3T、少なくとも5T、少なくとも10Tなどの磁場を生成することができてもよい。例えば、ケーブルは、磁場磁石(例えば、トロイダル磁場磁石)において使用され得る。いくつかの場合において、そのようなケーブルは、例えば、安価(affordable)、頑丈(robust)、およびコンパクト(compact)な(ARC)核融合炉において、MRI用途において、または同様のものにおいてなど、融合用途において使用され得る。1つの実施形態において、コイルは、NINT(non-insulating non-twisted:非絶縁無捻回)コイルである。
【0160】
しかしながら、本明細書に説明されるものなどのケーブル(例えば、本明細書内で論じられるような、はんだおよび/または液体金属を含む)は、融合用途だけではなく、様々な他の用途においても同様に使用され得るということを理解されたい。そのような用途の非限定的な例としては、核磁気共鳴、磁気共鳴画像、磁気材料分離、加速器/HEP磁石、使い捨て混合システム、発電機およびモータ、故障電流制限器、RFフィルタリング、SQUID(超伝導量子干渉装置)回路、伝送線路、磁気エネルギー貯蔵、変圧器、ならびに低温超伝導ケーブルのための電流リードが挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
様々な方法は、物品を冷却してそれが超伝導になるようにするために使用され得る。例えば、物品は、液体窒素(77Kの沸点を有する)、液体ネオン(25Kの沸点を有する)、液体水素(20Kの沸点を有する)、または液体ヘリウム(4Kの沸点を有する)への暴露によって冷却され得る。他の冷却技術もまた、物品が超伝導になるようにするために他の実施形態において使用され得る。故に、ケーブルまたは他の物品の使用中、それは、極低温流体(例えば、液体窒素、液体水素、液体ヘリウムなど)、および/または低温度(例えば、180K未満、140K未満、100K未満、77K未満、50K未満、20K未満、10K未満、4K未満、2K未満などの温度に少なくとも部分的に暴露され得る。さらなる例として、物品は、気体水素、気体もしくは臨界超過ヘリウム(例えば、本明細書に説明されるものなど、極低温にある)、低温クーラを使用した伝導冷却、または同様のものへの暴露によって冷却され得る。
【0162】
いくつかの態様において、ケーブルまたは他の物品は、超伝導材料を含む。論じられるように、超伝導材料は、十分に低い温度に冷却されるとき、超伝導性を示し得る。
【0163】
様々な超伝導材料が使用され得る。例えば、超伝導材料は、低温超伝導材料(自己場またはゼロ外部場において約30Kを下回る温度で超伝導性を示す)、または高温超伝導材料(自己場またはゼロ外部場において約30Kを上回る温度で超伝導性を示す)であり得る。例えば、高温超伝導材料は、液体窒素または液体水素を使用して冷却されるときに超伝導性を示し得る。いくつかの場合において、高温超伝導材料は、140K未満、77K未満、または20K未満の温度で超伝導性を示し得る。
【0164】
高温超伝導材料の非限定的な例としては、カプレート超伝導体が挙げられる。カプレート超伝導体の例は、希土類バリウム銅酸化物(REBCO)材料である。特定の非限定的な例としては、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)、またはビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物(BSCCO)が挙げられる。他の例としては、MgB、ランタンバリウム銅酸化物(LBCO)、タリウムバリウムカルシウム銅酸化物(TBCCO)、水銀バリウムカルシウム銅酸化物(HBCCO)、または同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。述べたように、そのような超伝導体は、典型的には、それらの原子構造体内に酸素原子を含む。しかしながら、酸素原子のうちの一部は、遠ざかって移動することができ、これにより、そのような材料が超伝導になることを制限するか、またはこれを防ぎ得る。
【0165】
故に、いくつかの場合において、超伝導材料は、ケーブルまたは他の物品内の第1の領域内に含まれ、部分的または完全に第2の領域で囲まれ得る。故に、第2の領域は、第1の領域を、ワイヤ、テープ、または他の構造体の外側の第3の領域または要素(はんだまたは他の金属など)から実質的に分離し得る。第2の領域は、例えば、酸素が超伝導材料から遠ざかって移動することを防ぐために、酸素に対して部分的または完全に不浸透性または不透過性であり得る。
【0166】
例として、実施形態の1つのセットにおいて、第2の領域は、銀を含み得る。1つの実施形態において、第2の領域は、銀から本質的になる。特定の場合において、第2の領域の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または実質的にすべては、銀を含み得る。
【0167】
第2の領域は、第1の領域に直接隣接して位置付けられ得るか、または1つもしくは複数の介在領域が第1の領域と第2の領域との間に存在し得る。加えて、第2の領域は、任意の好適な厚さを有し得る。例えば、第2の領域は、10マイクロメートル未満、8マイクロメートル未満、7マイクロメートル未満、6マイクロメートル未満、5マイクロメートル未満、4マイクロメートル未満、3マイクロメートル未満、2マイクロメートル未満、1マイクロメートル未満などである平均断面厚を有し得る。いくつかの場合において、第2の領域は、実質的に均一の厚さを有し得るが、他の場合において、第2の領域は、実質的に均一の厚さを有さなくてもよい。
【0168】
加えて、特定の実施形態において、第2の領域は、第3の領域(いくつかの実施形態において、上述したように、第1の領域を部分的または完全に囲み得る;故に、第3の領域は、内側または第1の領域をさらに囲む外側領域であり得る)で部分的または完全に囲まれ得る。いくつかの実施形態において、第3の領域は、第2の領域がワイヤ、テープ、または他の構造体の外側の要素(はんだまたは他の金属など)と接触して統合することを防ぎ得る。ワイヤもしくは他の構造体の第3の領域は、はんだもしくは他の金属と接触状態にあり得るか、または第3の領域とはんだもしくは他の金属との間に追加の領域が存在し得る。
【0169】
例として、実施形態の1つのセットにおいて、第3の領域は、銅を含み得る。1つの実施形態において、第3の領域は、銅から本質的になる。特定の場合において、第3の領域の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または実質的にすべては、銅を含み得る。
【0170】
第3の領域は、第2の領域に直接隣接して位置付けられ得るか、または1つもしくは複数の介在領域が第2の領域と第3の領域との間に存在し得る。加えて、第3の領域は、任意の好適な厚さを有し得る。例えば、第3の領域は、10マイクロメートル未満、8マイクロメートル未満、7マイクロメートル未満、6マイクロメートル未満、5マイクロメートル未満、4マイクロメートル未満、3マイクロメートル未満、2マイクロメートル未満、1マイクロメートル未満などである平均断面厚を有し得る。第3の領域の厚さは、第2の領域と同じまたは異なり得る。いくつかの場合において、第3の領域は、実質的に均一の厚さを有し得るが、他の場合において、第3の領域は、実質的に均一の厚さを有さなくてもよい。
【0171】
上記したように、ワイヤまたは他の構造体の外側領域が、銅(または、銀などの別の貴金属)を含み、はんだまたは他の金属と接触状態にある場合でさえ、特定の実施形態において、はんだまたは他の金属は、ワイヤまたは他の構造体の第3の領域から銅または他の金属を大きく除去または抽出することができない。したがって、第3の領域内の銅または他の金属の濃度は、実質的に均質のままであり得る。
【0172】
述べたように、特定の態様によると、はんだまたは他の金属は、本明細書に説明されるものなどの様々な技術を使用して、ケーブルまたは他の物品内に導入され得る。
【0173】
いくつかの場合において、物品および/または物品内に含まれる構造体は、はんだまたは他の金属で充填され得る空間を定めるのに役立ち得る。例えば、物品および/または物品内に含まれる構造体の部分は、隙間、流路、スロット、溝、または同様のものを定め得る。当然ながら、任意の数のこれらが存在し得ること、および特定の数がケーブルまたは他の物品が使用されることになる特定の用途のニーズに合うように選択され得ることを理解されたい。隙間、流路、スロット、溝、または同様のものは、任意の規則的(例えば、矩形、円形、三角形、正方形など)または不規則的な断面形状を有し得る。さらに、用途によっては、これらの各々は、同じ断面形状を有する場合とそうでない場合とがある。
【0174】
いくつかの場合において、これらの一部またはすべては、はんだまたは他の金属を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、いくつかの流路は、螺旋形状を有し得る。述べたように、はんだまたは他の金属は、例えば、体積の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的にすべてが金属を含むように、これらを部分的または完全に充填し得る。
【0175】
はんだまたは他の金属は、室温では固体であり得、液化させるために加熱され得る。抵抗加熱、はんだもしくは他の金属を加熱したるつぼの中に置くこと、温風加熱、火炎への暴露、トーチ、またははんだ付けガンもしくははんだ付けイオンなどの別の加熱源を含め、様々な方法が、はんだまたは他の金属を加熱するために使用され得る。はんだまたは他の金属は、溶融するのに少なくとも十分な温度、例えば、180℃~200℃の温度、または本明細書で論じられるような融点のための他の温度範囲に加熱され得る。例えば、はんだまたは他の金属は、少なくとも150℃、少なくとも180℃、少なくとも190℃などの温度に加熱され得る。
【0176】
いくつかの場合において、はんだまたは他の金属の温度は、比較的長い時間期間、例えば、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間などにわたって、はんだまたは他の金属を液体に保つのに十分な温度に維持され得る。例えば、ケーブルが比較的長い場合、そのような長いケーブルを産生するには比較的長い時間がかかり得、その時間の間、はんだまたは他の金属の温度は、それを液体に保つために十分に高く保たれる。
【0177】
加えて、導入された後、受動冷却(周囲温度への暴露)、または、増加した空気流、冷蔵、もしくは同様のものなどの能動冷却技術を含め、任意の技術が冷却のために使用され得る。
【0178】
以下の実施例は、特定の実施形態を例示することが意図されるが、説明された概念の全範囲を例示するものではない。
【実施例1】
【0179】
この実施例では、はんだは、超伝導ワイヤまたは「テープ」のスタックを保持するためのスロットまたは流路を有するケーブルに追加される。
【0180】
従来のPb40Sn60はんだ(40%Pb、60%Sn)は、はんだのための最も安価な選択のうちの1つであるが、Pb40Sn60はんだは、銅および銀の両方(テープ内に存在し得る)による溶解度問題を有する。例えば、単一のHTSテープは、テープの超伝導性の性質を保護および維持するために銀の層および/または銅の層内に閉じ込められ得る。銀層は、テープ性能の劣化を防ぐために、酸素がテープの超伝導層(図10では「REBCO」で表記される)の外へ拡散することを防ぎ得る。同様に、テープの外側の銅層は、電気的および/または熱的「スタビライザ」として機能し得る。これは、超伝導層が抵抗性になるとき、銅内での有限量の電流共有を可能にし得る。しかしながら、テープが200℃を上回るPbSnはんだ浴内に埋め込まれるとき、銀または銅の大部分が、テープから除去または「抽出」され得、これにより、テープまたはその性能の劣化を引き起こし得ることを研究が示している。
【0181】
したがって、この実施例は、PbSnはんだを銅(Cu)で飽和させることが、テープの銅層による溶解度および/または拡散問題を防ぎ得ることを示すものである。これは、例えば、テープとはんだ混合物との間の減少した濃度勾配に起因し得る。銅層を保護することに加えて、はんだは、銀層への錫暴露を防ぎ得る。これは、はんだに暴露されるときテープの超伝導性能を守るのに有用であり得る。そのような技術は、例えば、超伝導性能の劣化なしにケーブルの長い長さを首尾よくはんだ付けするのに十分な時間を可能にするため、または本明細書で論じられるものなどの他の用途のために、使用され得る。そのようなはんだの一例は、Sn62Pb36Cu(62%Sn、36%Pb、2%Cu)であり、これは、この例では昇温で最大3時間にわたって混合物内で使用された。しかしながら、より長い時間および/または他のタイプのはんだもまた、他の実施形態において使用され得る。
【0182】
この例は、マルチテープスタック内で層状化される複数のPbSnコートされたテープの長い長さ(数百メートル)をはんだ付けするためのはんだを使用する。はんだは、テープのマルチスタックを有する銅構造体の内側の正方形流路に沿って注入される。はんだは、銅構造体へのテープの熱的および電気的接触を確実にするために、スロット内の隙間を充填する。これは、より良好な電流共有、熱除去、および/または構造的支持を可能にすることによって、ケーブルの性能を最適化するのに役立ち得る。
【0183】
このはんだは、ケーブルの長い長さにおいて使用されることから、テープおよびケーブルはおそらく、長い時間期間(例えば、1~3時間)にわたって昇温したはんだ温度を経験し得る。Sn62Pb36Cu組成物を使用した実験は、本明細書で論じられるように、いかなる大きな性能劣化も観察されることなく、3時間にわたってREBCOテープをはんだ付けすることに成功した。
【0184】
Sn62Pb36Cuはんだは、多くの形態(はんだ棒またははんだワイヤ)で供給され得、それは市販されている。しかしながら、それは、先に述べたように、性能劣化を軽減するために昇温で長い時間期間にわたってテープをはんだ付けすること(はんだ浴またははんだ含浸プロセスにおいて)には、以前は適用されていない。
【0185】
いくつかの実験において、はんだは、PbSnめっきしたREBCOテープを用いたはんだ浴実験中に使用した。テープを、193℃で異なる暴露時間(例えば、60分~210分)にわたってSn62Pb36Cu浴に暴露した。超伝導性劣化を決定するために、各暴露時間の前および後にすべてのテープについて臨界電流を試験した。
【0186】
Sn62Pb36Cuは、多くの方式でテープスタックに適用され得る。Sn62Pb36Cuはんだ棒は、市販で購入され得る。棒は、次いで、保持ポットの内側に置かれ、液相点を上回る温度まで昇温される。液体形態になると、はんだは、圧力含浸プロセスを使用して、HTSテープを有する銅ケーブル流路内へ注入される。
【0187】
はんだ混合物もまた、ワイヤ形態で使用され得る。はんだは、例えば、はんだこて技術またはホットプレートを使用して、テープに適用され得る。別の例として、平らにされたはんだワイヤの薄ストリップが、スタックの間またはスタックの上においてパンケーキ化され得る。テープスタックが融点を上回る温度まで昇温されると、はんだは、すべてのテープを互いに対して接着させて、隙間を充填し得る。
【0188】
異なる組成物が、例えば、この例において説明されるSn62Pb36Cuに加えて、はんだ混合物内のPb、Sn、およびCuのために使用され得る。はんだは、比較的低い融点(例えば、200℃以下)を有し得る。いくつかの場合において、はんだ組成物は、超伝導体の周りの保護層、例えば、銀および/または銅層のスカベンジを防ぐ、回避する、または少なくとも最小限にし得る。これは、様々な異なる超伝導保護層および非スカベンジはんだ組み合わせへと一般化され得る。例えば、低い融点および非スカベンジ特性を有することは、超伝導体が、超伝導性能の実質的な劣化なしに長い長さにおいてそれをはんだ付けするのに必要とされる昇温および時間に保持されることを可能にする。
【0189】
本明細書に説明される概念のいくつかの実施形態が本明細書において説明および例示されているが、当業者は、機能を実施するため、ならびに/または、結果、および/もしくは本明細書に説明される利点のうちの1つもしくは複数を獲得するための、様々な他の手段および/または構造体を容易に想起するものとし、そのような変異形態および/または修正形態の各々は、本明細書に説明される概念の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に説明されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることが意図されること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および構成が、特定の用途または本明細書に説明される概念の教示が使用される用途に依存することを理解するものとする。当業者は、本明細書に使用される概念の特定の実施形態に対する多くの等価物を、ルーチン実験だけを使用して、認識するか、または確認することができるものとする。したがって、先述の実施形態は、単に例として提示されること、ならびに添付の特許請求項およびその等価物の範囲内で、説明された概念は、具体的に説明および特許請求されるものとは異なって実践され得ることを理解されたい。本明細書に説明される概念は、本明細書に説明される各々個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合、本明細書に説明される概念の範囲内に含まれる。
【0190】
本明細書および参照によって組み込まれる文書が相反するおよび/または矛盾した開示を含む場合、本明細書が支配するものとする。参照により組み込まれる2つ以上の文書が互いに対して相反するおよび/または矛盾した開示を含む場合、より後の効力発生日を有する文書が支配するものとする。
【0191】
本明細書内で規定および使用されるようなすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または規定された用語の通常の意味を支配すると理解されるものとする。
【0192】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求項において使用される場合、逆のことが明白に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるものとする。
【0193】
語句「および/または」は、本明細書および特許請求項において使用される場合、そのように等位接続される要素のうちの「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合においては等位接続的に存在し、他の場合においては離接的に存在する要素を意味すると理解されるものとする。「および/または」を用いて列挙される複数の要素は、同じ方式で、すなわち、そのように等位接続される要素のうちの「1つまたは複数」と解釈されるものとする。具体的に識別されるそれらの要素と関係あるなしに関わりなく、他の要素が、任意選択的に、「および/または」項によって具体的に識別される要素以外にも存在し得る。故に、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「備える」などのオープンエンドの言語と併せて使用されるとき、1つの実施形態において、Aのみ(任意選択的に、B以外の要素を含む)、別の実施形態において、Bのみ(任意選択的に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(任意選択的に、他の要素を含む)などを指すことができる。
【0194】
本明細書および特許請求項において使用される場合、「または」は、上に定義されるような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるものとする。例えば、リスト内の項目を分けるとき、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、少なくとも1つの包含であるが、いくつかの要素または要素のリストのうちの2つ以上、および任意選択的に、追加の未列挙の項目も含むと解釈されるものとする。「~のうちの1つのみ」もしくは「~のうちのちょうど1つ」、または請求項で使用されるとき「~からなる」など、逆のことが明白に示される用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうちのちょうど1つの要素の包含を指す。一般に、本明細書で使用される場合、用語「または」は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちのちょうど1つ」など、排他性の用語が後に続くとき、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとしか解釈されないものとする。
【0195】
本明細書および特許請求項において使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに関連した語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙される1つ1つすべての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しないことを理解されたい。この定義は、要素が、任意選択的に、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されるそれらの要素と関係あるなしに関わりなく、存在し得ることも可能にする。故に、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、等価に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または、等価に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、Bの存在なしに、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのA(および任意選択的に、B以外の要素を含む)、別の実施形態において、Aの存在なしに、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのB(および任意選択的に、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態において、任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのA、および任意選択的に2つ以上を含む少なくとも1つのB(および任意選択的に、他の要素を含む)などを指すことができる。
【0196】
「約」という言葉が、数字に関連して本明細書内で使用されるとき、さらに別の実施形態は、「約」という言葉の存在によって修正されない数字を含み得るということを理解されたい。
【0197】
逆のことが明白に示されない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む本明細書において特許請求される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、方法のステップまたは行為が列挙される順序に必ずしも限定されないということも理解されたい。
【0198】
特許請求項において、ならびに上記の明細書において、「備える」、「含む」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「で構成される」、および同様のものなどのすべての移行句は、オープンエンド、すなわち、含むことが限定されないことを意味すると理解されるものとする。移行句「からなる」および「から本質的になる」のみが、それぞれ、米国特許庁特許審査便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、2111.03条に記されている通り、クローズドまたはセミクローズドな移行句であるものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B1
図3B2
図3B3
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
【国際調査報告】