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特表2023-531960生体分子の超高感度検出のための単一分子アッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】生体分子の超高感度検出のための単一分子アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/682 20180101AFI20230719BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230719BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230719BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20230719BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20230719BHJP
【FI】
C12Q1/682
G01N33/483 C
G01N33/543 541Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579698
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021038463
(87)【国際公開番号】W WO2021262706
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/042,596
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/076,833
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ウォルト,デイビッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウー,コニー
(72)【発明者】
【氏名】マレイ,アダム エム.
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA14
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR48
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR83
4B063QS10
4B063QS22
4B063QS24
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、タンパク質および他の生体分子を、例えば低から中程度のアトモル濃度で検出するためのデジタル測定法を提供するアッセイである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の生体分子を検出する方法であって、
前記試料を含む溶液を用意すること;
前記溶液を、前記試料中の生体分子が捕捉部分に結合する条件下およびそれに十分な時間で、前記生体分子に結合する前記捕捉部分を含む複数のビーズと接触させること;
前記溶液を、前記生体分子に結合し、標的分子を保有する各ビーズの検出を可能にするのに十分な、オンビーズの非拡散性の検出可能なシグナルの生成を可能にする結合部分と接触させ、次いで増幅されたシグナルを生成させること;
前記ビーズを、任意選択で単層に固定化すること;ならびに
前記シグナルを検出すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ビーズを固定化することが、前記ビーズを含む前記溶液をスライド上にドロップキャストすること、または前記溶液のゲル化を触媒することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液を、前記結合部分に結合するシグナル増幅部分と接触させることをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記シグナル増幅部分が、酵素または分枝状DNAを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シグナルを検出することが、前記ビーズを画像化して蛍光または他のシグナルを検出することを含む、請求項1から3に記載の方法。
【請求項6】
ビーズ-生体分子複合体を含むビーズの数および/または百分率を決定することをさらに含む、請求項1から4に記載の方法。
【請求項7】
前記ビーズが、ポリマー、金属、金属酸化物、半導体および/または半導体酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出可能なシグナルが、ローリングサークル増幅とそれに続く相補性の蛍光標識されたDNAプローブとのハイブリダイゼーション;チラミドシグナル増幅(TSA);ハイブリダイゼーション連鎖反応;酵素触媒近傍標識(PL)重合;重合ベースシグナル増幅;または磁気ビーズ量子ドットイムノアッセイによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検出可能なシグナルが、プレ増幅されたシグナルによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記プレ増幅されたシグナルが、標識ポリマーまたはナノ粒子である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記シグナルが検出される前に、前記ビーズが、表面上にドロップキャストされ、乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記シグナルが検出される前に、前記溶液が表面に適用されまたはそれと接触され、ゲル化が触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記表面が、スライド、チップまたはフローセルである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液のゲル化を触媒することが、フィブリノーゲンおよび/もしくはトロンビン;フィブリン;セルロース;コラーゲン;ゼラチン;アガロース;ヒアルロン酸;ポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ(HEMA));ポリエチレングリコール(PEG);またはアクリルアミドを前記溶液に混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液が、フィブリノーゲンおよび/もしくはトロンビン;フィブリン;セルロース;コラーゲン;ゼラチン;アガロース;ヒアルロン酸;ポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ(HEMA));ポリエチレングリコール(PEG);またはアクリルアミドから選択されるポリマーを含み;ポリマーへのゲル化を触媒することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年6月23日に出願された、米国仮特許出願第63/042,596号明細書、および2020年9月10に日出願された、同第63/076,833号の優先権を主張する。前述の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で提供されるのは、タンパク質および他の生体分子を低から中程度のアトモル濃度で検出するためのデジタル測定法を提供する改善された単一分子アッセイである。
【背景技術】
【0003】
極めて低いレベルの生体分子、例えば、タンパク質、核酸および代謝物を正確に測定する能力は、疾患の診断、薬物送達、食品中の病原体検出、環境中の毒素検出およびバイオプロセス制御を含む広範な臨床および環境適用のために不可欠である。多数の有望なバイオマーカーが利用可能な生体液中に、現在の検査室の方法の検出限界を大きく下回るレベルで存在することから、超高感度測定技術は、臨床診断において特に重要である。デジタル測定法、例えば、デジタル酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、伝統的に使用される分析技術、例えば従来のELISAより最大1000倍大きく改善された測定感度を有する2~5。しかし、デジタル測定技術の感度は、多くの診断適用のため、特に、疾患関連タンパク質を測定するためには不十分なままである。例えば、神経学的障害についていくつかのタンパク質バイオマーカーが脳脊髄液において上方制御されていることが示されているが、高度に侵襲性の腰椎穿刺がこれらの測定のために求められることから、早期疾患検出のために個体をスクリーニングすることを非実用的にしている6~9。脳由来タンパク質のごく一部が血液脳関門を循環に通過することから、簡易な血液検査を通じて希少なタンパク質バイオマーカーを検出および同定できる高感度技術は、この未だ対処されていない診断の必要性に対処するために決定的である10~12。分析感度を改善することは、迅速なポイントオブケア(POC)診断が効果的な医療行為のために決定的である他の疾患における主な課題でもあるが、容易に利用可能である生体液、例えば、唾液または尿が求められる。これらの生体液は、わずかな血清の(serumnal)構成成分を含有するだけであり、タンパク質バイオマーカー検出のための超高感度技術を必要としている。
【0004】
デジタルELISAにおいて感度を増大させるための主な1つの障害は、低い試料採取効率である。デジタルELISA法は、測定感度を改善するために単一分子計数を利用するが、低い試料採取効率が計数される標的分子の数を限定している。非常に低い標的濃度で、単一の事象を計数することからのポアソンノイズ
【0005】
【数1】
(式中、Nは計数される分子の数である)は、顕著に測定誤差の一因となる。例として、5%の試料採取効率では、完全な捕捉効率を仮定して、10aM試料100μL中の600個の標的分子のうち30個だけが計数される。理論的な変動のポアソンノイズ関連係数(CV)、
【0006】
【数2】
は、この低い試料採取効率で18%であり、実際には、100%を大きく下回る捕捉効率および実験誤差を考慮すると、さらに高い。したがってこの高い測定不確実性は、希少な分子を検出するための主な限界を提示する。このため、さらに多くの標的分子を計数するために試料採取効率を増大させることは、測定精度および感度を大きく改善できるが、デジタルELISAにおける課題のままである。
【0007】
既存のデジタルELISA手法は、単一の標的タンパク質分子を保有する個々のビーズを単離するためにマイクロウェルまたは油中水液滴を利用する2、5、13~15。現在の最新鋭のデジタルELISAは、Single Molecule Arrays(Simoa)であり、単一の標的分子を抗体コート常磁性ビーズ上に捕捉し、単一分子計数のためにフェムトリットルサイズのマイクロウェルに個々のビーズを単離する。各ビーズがゼロまたは1つの捕捉された標的分子を有し、ポアソン分布に従うデジタル測定を確実にするために、試料中の標的分子数を超える大過剰量のビーズが使用される。捕捉された各分子は、次に酵素コンジュゲートストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)を用いて標識される免疫複合体サンドイッチを形成するように、ビオチン化検出抗体を用いて標識される。続いて、ビーズは、最大でビーズ1個にそれぞれフィットできるマイクロウェルに蛍光発生酵素基質と共にロードされる。オイルを用いてマイクロウェルを密封し、高い局所濃度の蛍光産生物が、SβG分子を保有するビーズを含有する各ウェル中で触媒的に生成される。それにより、標的分子の数は、「オン」および「オフ」のウェルを計数することによって測定される。
【0008】
Simoaがフェムトモル以下の検出限界を達成でき、超高感度タンパク質検出のため現在の絶対的基準である一方で、その感度は、低い試料採取効率によって制限される。ビーズの総数の約5%だけがマイクロウェルに重力によってロードされて分析され得る16。ごく最近開発されたSimoa装置、HD-X Analyzerでは外部の磁力がビーズローディングに利用されているが、分析されるビーズの百分率は、およそ5%のままである。ビーズローディングを改善するための他の方法は、電場指向性ビーズローディング、疎水性中親水性(hydrophilic-in-hydrophobic)マイクロウェルアレイおよびデジタルマイクロ流体を含んで探求されている14、15、17~19。これらの方法がビーズローディング効率を増大させた一方で、デジタルイムノアッセイ感度におけるそれらの改善の実証は、限定的なままである。さらに、複雑な製作法およびワークフローは、POC適用におけるこれらの手法の使用を限定する。デジタルバイオアッセイにおける試料採取効率を改善するための別の戦略は、油中水液滴中へのビーズ封入である。デジタル液滴ベースのイムノアッセイは、60%に至るビーズローディング効率を実証し、現在のSimoa技術のものと同様またはそれより1桁まで高い感度の改善を示した5、13。液滴マイクロ流体システムが多様な適用のために十分に確立されている一方で、高度に制御されたハイスループットな液滴生成の必要性は、POCシステムに統合する場合にさらなる複雑さをもたらす追加的な製作および処理ステップを導入する。さらに、かなりの割合の液滴は、ビーズを含有しないが画像化はされるはずであることから、画像処理量を改善することはPOC実行に向けた別の課題のままである。
【発明の概要】
【0009】
タンパク質および核酸を含む非常に低いレベルの生体分子の測定は、不十分な感度のために多くの臨床診断適用において重要な課題のままである。Single Molecule Arrays(Simoa)またはデジタルELISAなどのデジタル測定法が、感度において顕著に進歩した一方で、これらの技術の検出限界を下回るレベルで入手可能な生体液中に存在する多数の有望な疾患バイオマーカーがまだある。本明細書に記載されているのは、上に述べた課題に対処する高感度デジタルELISAプラットフォームである。非常に簡易な読み取りプロセスおよび本方法の対費用効果の改善は、一部の実施形態では、ビーズローディングのためのスライドガラスおよびシグナル読み取りのための簡易な光学装置だけを必要とし、POCシステムへの統合可能性を促進できる。本プラットフォームは、現在の(例えば、SimoaおよびデジタルELISA)技術より感度において最大25倍増大するアトモルの検出限界を達成できる。概念の証明として本発明者らは、骨がんの稀な形態、脊索腫についての組織バイオマーカー、ブラキュリ(Brachyury)の血漿中の以前は検出不可能なレベルを測定する本方法の能力を実証した。これにより本方法の感度および簡易さの増強は、バイオマーカー発見およびPOC診断開発のためのプラットフォームを提供する。
【0010】
別の例示的方法は、ビーズが移動することなく画像化が行えるように単層にビーズを封入するためにゲルを使用し;すべての反応は、溶液中で行われ、ビーズ周囲のゲル重合および画像化が続く。
【0011】
したがって、本明細書で提供されるのは、試料中の生体分子を検出するための方法である。方法は、試料を含む溶液を用意すること;溶液を、試料中の生体分子が捕捉部分に結合する条件下およびそれに十分な時間で、生体分子に結合する捕捉部分を含む複数のビーズと接触させること;溶液を、生体分子に結合し、標的分子を保有する各ビーズの検出を可能にするのに十分な、オンビーズの非拡散性の検出可能なシグナルの生成を可能にする結合部分と(例えば、捕捉部分と連続的にまたは同時に)接触させ、次いで増幅されたシグナルを生成させること;ビーズを、任意選択で単層に固定化すること;ならびにシグナルを検出することを含む。
【0012】
一部の実施形態では、ビーズを固定化することは、ビーズを含む溶液をスライドにドロップキャストすること、または溶液のゲル化を触媒することを含む。
【0013】
一部の実施形態では、方法は、溶液を、結合部分に結合するシグナル増幅部分と接触させることを含む。
【0014】
一部の実施形態では、シグナル増幅部分は、酵素または分枝状DNAを含む。
【0015】
一部の実施形態では、シグナルを検出することは、ビーズを画像化して蛍光または他のシグナルを検出することを含む。一部の実施形態では、ビーズは単層に固定化され、単一zセクション画像化(single z-section imaging)が使用され得;ビーズが単層にない実施形態では、方法は異なるzセクションを画像化することを含み得る。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、ビーズ-生体分子複合体を含むビーズの数および/または百分率を決定することを含む。
【0017】
一部の実施形態では、ビーズは、ポリマー、金属、金属酸化物、半導体および/または半導体酸化物を含む。
【0018】
一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、ローリングサークル増幅とそれに続く相補性の蛍光標識されたDNAプローブとのハイブリダイゼーション;チラミドシグナル増幅(TSA);ハイブリダイゼーション連鎖反応;酵素触媒近傍標識(Enzyme-catalyzed proximity labeling)(PL)重合;重合ベースシグナル増幅;または磁気ビーズ量子ドットイムノアッセイによって生成される。
【0019】
一部の実施形態では、検出可能なシグナルは、プレ増幅されたシグナル、例えば、標識されたポリマーまたはナノ粒子によって生成される。
【0020】
一部の実施形態では、シグナルが検出される前に、ビーズは、表面上にドロップキャストされ、例えば、フィルムを形成するように乾燥され、または溶液は表面に適用されもしくはそれと接触され、ゲル化が触媒される。
【0021】
一部の実施形態では、表面は、スライド、チップまたはフローセルである。
【0022】
一部の実施形態では、溶液のゲル化を触媒することは、フィブリノーゲンおよび/もしくはトロンビン;フィブリン;セルロース;コラーゲン;ゼラチン;アガロース;ヒアルロン酸;ポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ(HEMA));ポリエチレングリコール(PEG);またはアクリルアミドを溶液に混合することを含む。
【0023】
一部の実施形態では、溶液は、フィブリノーゲンおよび/もしくはトロンビン;フィブリン;セルロース;コラーゲン;ゼラチン;アガロース;ヒアルロン酸;ポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ(HEMA));ポリエチレングリコール(PEG);またはアクリルアミドから選択されるポリマーを含み;方法は、ポリマーへのゲル化を触媒することを含む。
【0024】
他に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載され;当技術分野において公知の他の好適な方法および材料も使用され得る。材料、方法および例は、単に例示であり、限定することを意図しない。本明細書において述べられるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース登録および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配する。
【0025】
本発明の他の特性および有利点は、続く詳細な記載および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】例示的ドロップキャスト単一分子アッセイの模式図である。抗体コート常磁性ビーズ上での単一免疫複合体サンドイッチの形成およびストレプトアビジン-DNAコンジュゲートを用いた標識化において、ローリングサークル増幅(RCA)は、各免疫複合体に付着された長いコンカテマーを生成するためにビーズ上で実施される。蛍光標識されたDNAプローブは、完全な免疫複合体サンドイッチを保有するビーズ上で局所的蛍光シグナルを産生するようにRCAの際にコンカテマーにハイブリダイズされる。RCA後にビーズは、濃縮され、スライドガラス上にドロップキャストされ、単層フィルムを形成するように乾燥される。単一標的分子は、ドロップキャストフィルムの蛍光画像化ならびに「オン」および「オフ」ビーズの計数によって計数される。
図2A-G】フィルムの画像である。スライドガラス上のドロップキャストビーズフィルムの(A)代表的な写真および(B)明視野画像。およそ2000~2500個のビーズが各フレームにおいて分析される。スケールバー=100μm。(C~E)ドロップキャストフィルム中の「オン」および「オフ」色素エンコードビーズ(dye-encoded bead)の代表的な画像:ビーズ蛍光(488nm;C)、ATTO 647Nプローブ(647nm;D)およびマージ(E)。灰色矢印は「オン」ビーズを示す。スケールバー=10μm。(F~G)0fM IL-1β(F)および10fM IL-1β(G)試料についての各ビーズ上での最大蛍光強度値(画像中のバックグラウンド蛍光強度値からの減算)の代表的なヒストグラム。正規分布は、蛍光強度値にフィットされ、「オン」対「オフ」ビーズについてのカットオフは、平均から標準偏差の5倍より上として定義された。
図3A-F】本方法と従来のSimoaのアッセイ感度の比較を示すグラフである。ヒトIL-10についての(A)本方法および(B)従来のSimoaの較正曲線。破線は、算出された検出限界(LOD)を示す。(C)IL-10較正曲線範囲にわたる本方法と従来のSimoaとの間のシグナル対バックグラウンド比の比較。ヒトIL-1βについての(D)本方法と(E)従来のSimoaの較正曲線。(F)IL-1β較正曲線範囲にわたる本方法と従来のSimoaとの間のシグナル対バックグラウンド比の比較。
図4A-B】測定精度および感度への試料採取効率の影響を示すグラフである。IL-10についての本方法較正曲線を使用して画像化されたビーズの無作為に選択されたサブセットについての(A)バックグラウンドシグナルの測定されたCVおよび(B)算出されたLOD。分析されたビーズの百分率は、全アッセイビーズの百分率を表す。各点は、ビーズの4回の異なる無作為に選択されたサブセットの平均を表す。
図5A-F】血漿中のブラキュリの測定のグラフである。ヒトブラキュリについての(A)本方法および(B)従来のSimoaの較正曲線。破線は、算出された検出限界(LOD)を示す。(C)較正曲線範囲にわたる本方法と従来のSimoaとの間のシグナル対バックグラウンド比の比較。(D~E)それぞれ、脊索腫患者血漿試料(D)ならびに市販の血漿および血清試料(E)において、従来のSimoaおよび本方法によって測定されたビーズあたりの平均酵素(AEB)およびビーズあたりの平均分子(AMB)値。茶色の線は、アッセイのLODを示す。(F)本方法および従来のSimoaを使用して脊索腫、軟骨肉腫ならびに市販の血漿および血清試料において測定された濃度。LODを下回る測定値は値をゼロとした。
図6A-B】プールされたヒト唾液におけるヒトIL-10 dSimoaアッセイの検証を示す図である。(A)4倍希釈されたプールされたヒト唾液中に添加された組換えヒトIL-10タンパク質の回収率。(B)プールされたヒト唾液の系列希釈試料中で測定されたIL-10濃度。
図7A-B】ヒト血漿および血清でのヒトブラキュリdSimoaアッセイの検証を示す図である。(A)8倍希釈された個々の市販のヒト血清試料およびプールされたヒト血漿中に添加された組換えヒトブラキュリタンパク質の回収率。(B)プールされたヒト血漿の系列希釈試料中で測定されたブラキュリ濃度。
図8A-C】(A)ヒトIL-10(150pM SβG、5分間)、(B)ヒトIL-1β(150pM SβG、5分間)および(C)ヒトブラキュリ(300pM SβG、15分間)について、異なるSβG濃度およびインキュベーション時間で実施された従来のSimoaアッセイを示すグラフである。灰色破線は、各アッセイについて算出されたLODを示す。各アッセイについてのLOD値は、IL-10、IL-1βおよびブラキュリについてそれぞれ575aM、2.77fMおよび1.48fMであった。
図9A-C】CARD-dELISAの概略図である。A.標的タンパク質分子は、抗体コードビーズに捕捉され、次いでタンパク質分子は、ビオチン化検出抗体およびストレプトアビジン-ポリ-HRPを用いて標識される。オンビーズ酵素的シグナル増幅ステップでは、ビーズは、チラミド-Alexa Fluor 488とインキュベートされる。過酸化水素の存在下で、HRPはチラミド分子のラジカル形成を触媒し、これは次いで近くのタンパク質上のフェノール残基と共有結合を形成する。完全な免疫複合体を含有するビーズだけがチラミドAlexa Fluor 488試薬で標識される。B.画像化のためにフィブリンハイドロゲル中にビーズを封入するために、ビーズはシリコン単離ウェル内のガラススライドに配置され、次に、フィブリノーゲンおよびトロンビンの溶液がビーズアレイに加えられる。ビーズは、in situで形成されるフィブリンハイドロゲル中に固定化される。C.固定化されたビーズアレイは、単一分子計数を実施するために蛍光顕微鏡を使用して画像化される。ビーズは、明視野画像で同定され、蛍光画像からのビーズ強度は「オン」および「オフ」ビーズを決定するために使用される。
図10A-B】フィブリンハイドロゲルにおけるビーズ固定化を示す図である。A.各単離ウェル(7mmx7mmx2mm)は、フィブリンハイドロゲル中に固定化されたビーズを含む1つの試料を含む。B.フィブリンハイドロゲル中の数百個のビーズ(小さな黒点)の明視野画像(倍率10×)。この画像は、単一の単離ウェル中のフィブリンハイドロゲル全体のうちの小領域を表す。単離ウェル全体は、倍率10×で約20~25個の画像で捕捉され得る。スケールバー=100μm。
図11A-E】画像解析および単一分子計数を示す図である。A~C.「オン」および「オフ」ビーズを含む目的の小領域を示す代表的な顕微鏡画像。(A.)ビーズ(明視野画像)および(B.)チラミドAlexa Fluor 488試薬の蛍光強度(488nm蛍光画像)を示す画像は、(C.)「オン」ビーズを示す灰色矢印と共にオーバーレイされた。スケールバー=10μm(D.)0fMおよび(E.)50fM IL-6についてのビーズ蛍光強度の代表的なヒストグラム。「オフ」と「オン」の間のカットオフは、各ヒストグラムにおいて灰色四角によって示される。
図12】CARD-dELISAを使用するIL-6較正曲線を示すグラフである。曲線上の各データ点は、2連の測定の平均を表す。エラーバーは、2連の測定の標準偏差を表す。挿入図:CARD-dELISAおよび従来のSimoaによって測定された唾液試料の比較。データ点は、2連の測定の平均を表し、エラーバーは、2連の測定の標準偏差を表す。点線は、2つの方法の間の正確な相関関係を表す。スピアマンの相関係数は、1.00である。
図13】従来のSimoaによって作成されたIL-6較正曲線を示すグラフである。データ点は、2連の測定の平均を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最小限の侵襲性の生体液、例えば血液または唾液中のタンパク質バイオマーカーの定量的で超高感度な検出は、早期疾患診断、処置モニタリングおよび疾患再発モニタリングを含む医学的診断を改革する可能性を有する。デジタル酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および単一分子アレイ(Simoa)などの技術は、タンパク質(Rissin et al., Nat. Biotechnol. 2010, 28 (6), 595-599;Leirs et al., Anal. Chem. 2016, 88 (17), 8450-8458; Cohen et al., Chem. Rev. 2019, 119 (1), 293-321)、核酸(Song et al., Anal. Chem. 2013, 85 (3), 1932-1939; Cohen et al., Nucleic Acids Res. 2017, 45 (14), e137-e137)および他の生物学的に関連する小分子(Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (51), 18132-18139;Wang and Walt, Chem. Sci. 2020. doi.org/10.1039/D0SC02552F)が挙げられる低含量の生体分子の超高感度検出を、マイクロウェルアレイ(Rondelez et al., Nat. Biotechnol. 2005, 23 (3), 361-365;Rissin et al., Nano Lett. 2006, 6 (3), 520-523;Cohen and Walt, Annu. Rev. Anal. Chem. 2017, 10 (1), 345-363)またはマイクロ流体液滴(Kim et al., Lab. Chip 2012, 12 (23), 4986;Witters et al., Lab. Chip 2013, 13 (11), 2047;Yelleswarapu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 2019, 116 (10), 4489-4495;Cohen et al., ACS Nano 2020, 14, 8, 9491-9501)中で個々の分子を単離し、計数することによって可能にする。
【0028】
超高感度タンパク質検出は、Simoaにおいて以下の通り達成され得る:最初に、個々のタンパク質分子は抗体コート常磁性ビーズに捕捉される。タンパク質分子の数と比較して過剰な数のビーズが、各ビーズがタンパク質分子に結合しないかまたは1つのタンパク質分子に結合するかのいずれかであることを確実にするように使用される。次いで、結合したタンパク質分子は、ビオチン化検出抗体およびストレプトアビジン-コンジュゲート酵素を用いて標識される。最後に、ビーズは、蛍光発生酵素基質を含有する溶液に再懸濁され、マイクロウェルアレイにロードされる。アレイは、オイルを用いて密封され、蛍光産生物の局在性の濃度は、完全な免疫複合体を含むウェルだけで産生される。単一分子計数は、アクティブウェルを計数することによって実施され、ビーズの総数に対する「オン」ビーズの割合が算出され、次に、較正曲線を作成するためにビーズあたりの平均酵素(AEB)に変換される。近年、Simoaは、神経学的および神経変性疾患(Mattsson et al., JAMA Neurol. 2017, 74 (5), 557;Shahim et al., JAMA Neurol. 2014, 71 (6), 684;Gill et al., Neurology 2018, 91 (15), e1385-e1389;Ng et al., Clin. Transl. Neurol. 2019, 6 (3), 615-619)、腫瘍学(Wilson et al., Clin. Chem. 2011, 57 (12), 1712-1721;Shi et al., Nature 2019, 569 (7754), 131-135;Olsen et al., J. Immunol. Methods 2018, 459, 63-69)および感染性疾患(Leirs et al., 2016, supra; J. Clin. Microbiol. 2018, 56 (8);Anderson et al., Clin. Infect. Dis. 2018, 67 (1), 137-140;Ahmad et al., Sci. Transl. Med. 2019, 11 (515), eaaw8287)が挙げられる多数の臨床適用において実行されている(Wu et al., Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 2020, 57 (4), 270-290)。Simoaは、フェムトモル(fg/mL)またはフェムトモル以下の範囲の濃度のタンパク質を検出するために使用され得る。
【0029】
本発明者らは、低から中程度のアトモルタンパク質濃度を検出できる革新的で簡易な単一分子測定プラットフォームを開発した。デジタルELISA手法での希少な標的分子の試料採取における低効率の課題に対処することによって、本発明者らは、超高感度タンパク質検出についての現在の絶対的基準である現在のSimoa技術より最大25倍感度を増強した。本方法によって達成されたアトモルの検出限界(LOD)は、感度において従来のイムノアッセイの10,000倍を超える増大に相当する。非拡散性の増幅されたシグナルの各ビーズへの局在化は、マイクロウェルまたは液滴へのシグナル区画化の必要性を除外する。
【0030】
一部の実施形態では、方法は、迅速な乾燥および単層フィルムの形成、またはハイドロゲルの層中でのビーズの固定化のために、表面上、例えば、スライドへのすべてのビーズの直接ドロップキャスティングを含む。1つの例示的方法は、単一分子計数のためにオンビーズシグナル生成を単層フィルムへのビーズドロップキャスティングと組み合わせて使用する。これらの方法の一実施形態は、本明細書においてdSimoaと称される。加えて、本明細書で提供するのは、オンビーズシグナル生成のために、チラミドシグナル増幅(TSA)、触媒レポーター沈着(Catalyzed Reporter Deposition)(CARD)のための方法を使用し(図9A)、フィブリンハイドロゲルへのビーズの固定化(図9B)および単一分子計数のための画像化(図9C)が続く方法である。本方法の一部の実施形態は、本明細書においてCARDデジタルELISA(CARD-dELISA)として言及される。標的分子を保有する各ビーズに非拡散性蛍光シグナルを局在化することによって、このプラットフォームは、シグナル区画化のためのマイクロウェルまたは液滴へのビーズローディングの必要性を除外するだけでなく、試料採取効率の改善のためにさらに著しく多いビーズが分析されるようにし、それにより感度を増強する。
【0031】
この簡易な手法は、平均で全アッセイビーズの40~50%が分析されるようにし、現在のSimoa技術の約5%の試料採取効率より8から10倍増大する。低い試料濃度、特に100%を大きく下回る捕捉効率(本研究において開発された本アッセイでは、すべての捕捉および標識ステップにわたって約1~3%)では、試料採取の改善は、測定に関連するポアソンノイズCVを最小化するために重要である。一部のビーズは、洗浄ステップの際に失われる、または重複もしくは凝集した場合に分析から除外されるが、実験結果は、全アッセイビーズの20%を分析することは、より多くのビーズが分析されたことから、測定CVおよびLODでの少しのさらなる改善を伴って、LODを約一桁改善したことを示した。本方法の試料採取効率の顕著な改善は、従来のSimoaと比較してより少ないアッセイビーズの使用も可能にし、「オン」ビーズの割合およびそれによるシグナル対バックグラウンドを増加させる。感度におけるさらなる改善は、低い解離定数を有する親和性試薬を使用し、親和性試薬とストレプトアビジン-DNA標識との非特異的結合を減少させることによって得ることができる。非特異的結合を低減するさらに良好な親和性試薬および方法の開発で本方法は、ゼプトモルタンパク質濃度に至るまで検出できる可能性がある。
【0032】
アトモル感度を有して本方法は、種々の疾患の根底にある新しいバイオマーカーおよび生物学的機構の発見に向けた道を築き得る。原理の証明として、本発明者らは、本方法が、脊索腫患者由来の血漿試料において現在のSimoa技術によっては以前検出できなかった低濃度の、T-box-ファミリー転写因子ブラキュリを測定できることを実証した。ブラキュリが、脊索腫患者の腫瘍において高度に過発現されることは示されているが、血漿中のそのレベルは評価されていない26~30。脊索腫の診断が、頭蓋底または脊椎への侵襲性の針または切開での生検を必要とすることから、血液ベースの検査は、顕著に低リスクの診断手順を提供し、脊索腫の早期診断を促進する可能性がある31、32。本発明者らの測定は、小さな試料コホートにおいてだけで実施されたが、本方法を使用する脊索腫患者の血漿試料中のブラキュリ検出性の顕著な改善は、有望な血液検査および新たな生物学的機構の発見のための新たな可能性を開く。本方法を用いて感度における一桁またはそれ以上の改善を達成することは、多数の他の種類のがんおよび神経学的障害のための新たな血液ベースのバイオマーカーの発見に重要な意義も有する。アルツハイマーおよびパーキンソン病などの神経変性疾患のための診断用血液検査は、高度に侵襲性の腰椎穿刺が必要であることから現在非常に困難である広範なスクリーニングおよび早期の診断のために特に重要であると判明した。バイオマーカーレベルが明らかな疾患進行後にだけ検出可能になる多くの場合では、本方法の感度の増強は、健康転帰の改善のために初期段階での疾患診断を加速できる。
【0033】
重要なことに、本方法は、デジタルバイオアッセイシグナル読み取りの簡易さも増大させ、さらなる開発においてそれは、POCプラットフォームに統合することができ、現在のPOC診断の低い感度の課題に対処する可能性がある。デジタルイムノアッセイにおける感度の増強のための試料採取効率の増大が、ビーズ液滴アレイおよび液滴デジタルELISA方法におい実証された一方で、これらの方法が追加的な複雑さを製作および処理ステップにもたらす13、14。対照的に、本方法のためのデジタル読み取りプロセスは、追加的な材料または複雑な装置の必要性を伴わずに、ビーズローディングのためのスライドガラスおよび簡易な光学装置だけを必要とする。さらに、ドロップキャスティングプロセスは、極めて簡易かつ迅速である。ドロップキャスト法は、単一分子検出読み取りプロセスを簡易化し、現在のマイクロウェルベースのデジタルELISA方法または液滴ベースのデジタルELISA方法と比較して対費用効果を増大させる。本方法の感度の増強は、非常に低い濃度で存在し、容易に入手できる生体液、例えば、唾液および尿において、以前測定されなかった種々のバイオマーカーの検出を可能にする。本方法の追加的な興味深い態様は、ドロップキャストフィルムでの長期間のシグナル安定性であり、それはアッセイプロセスにおける柔軟性を増加させる。例えば、好適な光学装置が容易に利用できない物資が限られた環境では、ドロップキャストフィルムは、少なくとも1か月間シグナルの喪失を伴わずに、画像化および分析のための施設に容易に輸送され得る。
【0034】
本方法は、試料処理のためのマイクロ流体デバイスへの統合およびポータブル画像化の組込みが挙げられる、POC適用に適合され得る。例えば、試料処理ワークフローは、マイクロ流体システムに自動化され得、本方法の単一分子分解能および高い試料採取効率と組み合わされ、既存のPOCプラットフォームによっては現在検出できない低含量のバイオマーカーを検出するための高感度を依然として達成しながら、アッセイ時間を低減できる可能性がある。さらに、RCAの迅速な動態および小さなマイクロ流体反応体積中の拡散距離の低減により、RCAを含む各試料処理ステップの時間は短縮され得る。RCAは、下に記載される実施例では1時間で実行されたが、検出可能なシグナルは15分後に観察可能であった。RCAシグナル増幅時間は、各コンカテマー上の蛍光標識の空間密度を増加させることによってさらに低減され得る。いくつかの自動化され、合理化されたマイクロ流体に基づく方法は、ビーズベースのイムノアッセイのために開発され、本試料処置ステップは、自動化マイクロ流体プラットフォームに組み込まれ得る5、33~36。加えて、多数のポータブル蛍光画像化プラットフォームは、単一蛍光ナノ粒子およびRCA産生物を画像化するためのスマートフォン付属品を含んで開発され、本方法に容易に適合され得る5、37~41。一部の実施形態では、複数のフレームが各ドロップキャストフィルムを完全に捕捉するために使用され得、例えば自動化ハンドヘルドリーダーまたは広角カメラを使用して、さらに短い画像化時間も使用され得る。さらに、本方法を使用する結果のサンプリング分析によって支持される通り、全アッセイビーズの約20%だけが最大感度近くを達成するために画像化される必要がある可能性がある。本方法の超高感度、ポータブルおよび自動化プラットフォームへの統合は、近年のSARS-CoV-2パンデミックおよび結核などの感染性疾患、外傷性脳損傷ならびに心筋梗塞が挙げられる多数の疾患の広範なスクリーニング、早期発見およびモニタリングを促進するために使用される。
【0035】
現在のバージョンのデジタルELISAは、簡易なワークフローを有し、生物学的液体中のタンパク質の超高感度定量を可能にする。一部の実施形態では、例えば、CARD-dELISAは、オンビーズ酵素的シグナル生成のためにチラミドシグナル増幅を使用する。
【0036】
本方法は、フィブリンハイドロゲルへのビーズ封入および単一分子計数のための画像化を含み得る。CARD-dELISAは、良好な感度およびダイナミックレンジを示し、CARD-dELISAが従来のSimoaへのより簡易だがロバストな選択肢であることを示している。さらに、CARD-dELISAは、従来のSimoaにおいて必要であったいくつかの高価な装置および消耗品の必要性をなくし、CARD-dELISAが、ポイントオブケアデジタルELISAプラットフォームへの組込みのために好適であることを実証している。今後の研究は、統合された試料処理(すなわち、標的捕捉、標識化およびオンビーズシグナル増幅)13、32、33、ビーズ画像化ならびにデータ分析を含む、組み合わされたポイントオブケアCARD-dELISAプラットフォームを開発することを含むであろう。ビーズ画像化のために、本発明者らは、マイクロの、およびナノスケールの対象物を測定するための感度を有するプラットフォームに小型の顕微鏡モジュールを組み込む。顕微鏡モジュールは、LED光原、適切なフィルターおよびレンズを含み、画像化は、スマートフォンカメラ34~36またはコンパクトCMOS37を使用して実施される。さらに本発明者らは、アッセイ感度を増大させ、総アッセイ時間を減少させるためにCARD-dELISAを最適化および改善し続けている。現在CARD-dELISAは、従来のSimoより感度が約10分の1であるが、完全に統合されたポイントオブケアデバイスへのCARD-dELISAの自動化は、バックグラウンドシグナルのCV(変動係数)をおそらく低下させ、それによりアッセイ感度を改善する。ポイントオブケアデバイスに統合されれば、CARD-dELISAは、TB、敗血症または軽度の外傷性脳傷害などの疾患についてのトリアージ検査または早期診断のための有望なプラットフォームである。
【0037】
アッセイ方法
本方法では、溶液中の試料は、ビーズ-生体分子複合体を形成するように試料のビーズへの結合を可能にする条件下で、目的の生体分子に結合する捕捉部分にコンジュゲートされた複数のビーズと接触される。複合体が形成されると、方法は、標的分子を保有する各ビーズの検出を可能にし、次いで増幅されたシグナルを生成するオンビーズで非拡散性の検出可能なシグナル、例えば蛍光シグナルの生成を可能にする、第2の捕捉部分と生体分子を接触させることを含む。方法は、未結合ビーズの除去を含み得る。
【0038】
次いで方法は、例えばビーズを含む溶液をフィルムを形成するように表面上にドロップキャストすることによって(例えば、溶液の平らな表面への滴下に続く溶液の蒸発による薄いフィルムの形成)、または溶液のゲル化を触媒することによってビーズを固定化することを含む。表面として、例えば画像化による検出に適用される、例えば、スライド、チップまたはフローセルが挙げられる。最後に方法は、ビーズ由来のシグナルを検出することならびに任意選択でビーズ-生体分子複合体を含むビーズの数および/または百分率を決定することを含む。
【0039】
一般に試料は、画像化の前は未処理のまま維持される、例えば、画像化の前に細分されず、個々のウェルに区画化されない。本方法は、マイクロウェルまたは液滴へのシグナルの区画化の必要性を除外する。
【0040】
試料
本明細書において使用される場合、用語「試料」は、本発明の方法を使用して目的のマーカーの生体分子の存在について検査される材料に言及する場合、とりわけ、組織、全血、血漿、血清、尿、汗、唾液、呼気、エキソソームまたはエキソソーム様マイクロベシクル(米国特許第8.901.284号明細書)、リンパ液、大便、脳脊髄液、腹水、気管支肺胞洗浄液、胸水、精液、痰、乳頭吸引液、術後漿液腫または創部ドレナージ液を含む。使用される試料の種類は、検査される生物学的マーカーおよび本方法が使用される臨床的状況の特性に応じて変化する場合がある。試料由来の生物学的マーカーの同定および/または単離および/または精製のための種々の方法が当技術分野内で周知である。「単離された」または「精製された」生物学的マーカーは、生物学的マーカーが由来する細胞または組織源由来の細胞物質または他の混入物を実質的に含まない、すなわち、ヒトの介入を通じて天然の状態から部分的にまたは完全に変更または除去されている。例えば、試料中に含有される核酸は、標準的方法に従って、例えば、溶解性酵素、化学溶液を使用して最初に単離されるか、または製造者の説明書に従って核酸結合レジンによって単離される。
【0041】
ビーズ
本方法は、所望の生体分子に結合する捕捉部分にコンジュゲートされたマイクロまたはナノ粒子ビーズの使用を含む。マイクロおよび/またはナノ粒子(例えば、マイクロビーズ)は、種々の材料から作られてよい。一般に、任意のポリマー性またはプラスチック材料が、マイクロ粒子、マイクロビーズまたはナノ粒子を創出するために使用されてよく、例えば、ポリスチレンおよびポリエチレンなどの材料が挙げられる。一部の実施形態では、マイクロ粒子は、生物学的に適合性のポリマー材料、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および/またはポリアミドから形成され得る。
【0042】
ある特定の実施形態では、Au、Ag、Pt、Al、Cu、Ni、Fe、Cd、Se、Ge、Pd、Sn、酸化鉄、TiO、AlおよびSiOの1つまたは複数から形成された金属性、金属酸化物、半導体および/または半導体酸化物ミクロおよび/またはナノ粒子は、多数のサイズで作製され、使用され得る。例えば、単結晶酸化鉄ナノ粒子(MION)および架橋された酸化鉄(CLIO)粒子が使用され得る。一部の実施形態では、ビーズは、常磁性である。好適なビーズとして、これだけに限らないが、磁性ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)、プラスチックビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、シリカビーズ、ポリスチレンビーズ、メチルスチレンビーズ、アクリルポリマービーズ、カーボングラファイト(carbon graphited)ビーズ、二酸化チタンビーズ、ラテックスまたは架橋デキストラン、例えばSEPHAROSEビーズ、セルロースビーズ、ナイロンビーズ、架橋ミセルおよびTEFLON(登録商標)ビーズが挙げられる。一部の実施形態では、球状のビーズが使用されるが、非球状または不規則な形状のビーズも使用され得る。
【0043】
一部の実施形態では、ビーズは、「Ultra-sensitive detection of molecules on single molecule arrays,」D.Duffy、E.Ferrell、J.Randall、D.Rissin、D.Walt.米国特許第8,222,047号明細書、2012年7月17日;「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution,」D.M.Rissin、D.R.Walt.米国特許第8,460,879号明細書、2013年6月11日;「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」David Walt、David Rissin、Hans-Heiner Gorris.米国特許第8,492,098号明細書、2013年7月23日;「Ultra-sensitive detection of molecules on single molecule arrays,」David C.Duffy、Evan Ferrell、Jeffrey D.Randall、David M.Rissin、David R.Walt.米国特許第8,846,415号明細書、2014年9月30日;「Ultra-sensitive detection of molecules or particles using beads or other capture objects,」D.C.Duffy、D.M.Rissin、D.R.Walt、D.Fournier、C.Kan.Quanterix Corporation.米国特許第9,310,360号明細書、2016年4月12日;「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution,」D.R.Walt、D.M.Rissin.米国特許第9,395,359号明細書、2016年7月19日;または「Ultra-sensitive detection of molecules or particles using beads or other capture objects」、D.C.Duffy、D.M.Rissin、D.R.Walt、D.Fournier、C.Kan.Quanterix Corporation.米国特許第9,482,662号明細書、2016年11月1日;または国際公開第2020037130号パンフレットに記載される通りである。
【0044】
捕捉および結合部分
ビーズは、目的の生体分子に結合する捕捉部分を用いてコート、例えば、コンジュゲートされる。追加的に、結合部分は、生体分子に結合したビーズを検出し、それ由来のシグナルを増幅するために使用される。
【0045】
一部の実施形態では、捕捉または結合部分は、抗体またはその抗原結合性部分または生体分子に結合するアプタマーであり、例えば、生体分子はタンパク質またはペプチドである。一部の実施形態では、捕捉または結合部分は、目的の核酸の一部に相補性であるオリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、捕捉または結合部分は、タンパク質の、例えば受容体のリガンド結合部分であり、生体分子はホルモンなどの分子である。
【0046】
捕捉または結合部分は、捕捉部分または標的分析物に特異的に結合できるまたは、そうでなければ特異的に会合できる。捕捉または結合部分は、捕捉部分にコンジュゲート、捕捉、付着、結合または付き得る。例えば一部の実施形態では、捕捉または結合部分は、抗体(例えば、全長抗体(例えば、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM抗体)または抗原結合性抗体断片(例えば、scFv、Fv、dAb、Fab、Fab’、Fab’2、F(ab’)2、Fd、FvまたはFeb))、アプタマー、抗体模倣物(例えば、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー(fynomer)、Kunitzドメインペプチド、モノボディ、またはナノCLAMP)、抗体IgG結合タンパク質(例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインLまたは組換えプロテインA/G)、ポリペプチド、核酸または小分子である。例えば一部の実施形態では、捕捉または結合成分は、抗体のFc領域に結合する。
【0047】
一部の実施形態では、方法は、生体分子に結合する捕捉部分;および捕捉部分に結合する結合部分の使用を含む。一部の実施形態では、方法は、生体分子に結合する捕捉部分;捕捉部分に結合する第1の結合部分;および第1の結合部分に結合する第2の結合部分またはシグナル増幅部分の使用を含む。捕捉部分、結合部分または第2の結合部分/シグナル増幅部分の1つまたは複数は、検出可能な標識を含むか、または生成できる。例えば、一部の実施形態では、結合部分はビオチンを含み、第2の結合部分/シグナル増幅部分はシグナル生成の前に結合するストレプトアビジン標識西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)酵素である。試料は、捕捉および結合部分と同時に(例えば、同じ溶液中で)接触される場合があるか、または連続的に、例えば捕捉部分と接触され、次に結合部分と接触される場合がある。方法は、検出の前にすべての未結合の試薬、例えば、ビーズ、捕捉および/または結合部分を除去することを含み得る。
【0048】
一部の実施形態では、捕捉または結合部分は、「Ultra-sensitive detection of molecules on single molecule arrays,」D.Duffy、E.Ferrell、J.Randall、D.Rissin、D.Walt.米国特許第8,222,047号明細書、2012年7月17日;「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution,」D.M.Rissin、D.R.Walt.米国特許第8,460,879号明細書、2013年6月11日;「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」David Walt、David Rissin、Hans-Heiner Gorris.米国特許第8,492,098号明細書、2013年7月23日;「Ultra-sensitive detection of molecules on single molecule arrays,」David C.Duffy、Evan Ferrell、Jeffrey D.Randall、David M. Rissin、David R.Walt.米国特許第8,846,415号明細書、2014年9月30日;「Ultra-sensitive detection of molecules or particles using beads or other capture objects,」D.C.Duffy、D.M.Rissin、D.R.Walt、D.Fournier、C.Kan.Quanterix Corporation.米国特許第9,310,360号明細書、2016年4月12日;「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution,」D.R.Walt、D.M.Rissin.米国特許第9,395,359号明細書、2016年7月19日;または「Ultra-sensitive detection of molecules or particles using beads or other capture objects」,D.C.Duffy、D.M.Rissin、D.R.Walt、D.Fournier、C.Kan.Quanterix Corporation.米国特許第9,482,662号明細書、2016年11月1日;または国際公開第2020037130号パンフレットに記載される通りである。
【0049】
生体分子
一部の実施形態では、目的の生体分子は、タンパク質、ペプチド、核酸、ウイルス、細胞表面分子、代謝物または小分子である。
【0050】
「生体分子」によって、検出される、測定される、定量されるまたは評価されるかのいずれかの任意の原子、分子、イオン、分子イオン、化合物、粒子、細胞、ウイルス、複合体またはこれらの断片が意味される。標的分析物は、試料(例えば、液体試料(例えば、生物学的試料または環境試料))中に含有され得る。例示的な標的分析物として、非限定的に、小分子(例えば、有機化合物、ステロイド、ホルモン、ハプテン、生体アミン、抗生物質、マイコトキシン、有機汚染物質、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖類もしくは二次代謝物)、タンパク質(糖タンパク質またはプリオンを含む)、核酸(例えば、修飾核酸またはmiRNA)、多糖類、脂質、細胞外ベシクル、グリカン、毒素、脂肪酸、細胞、ガス、治療剤、生物(例えば、病原体)またはウイルスが挙げられる。標的分析物は、天然に存在するか、または合成であってよい。一部の実施形態では、標的分析物は、インターフェロン、例えば、インターフェロンg(IFNg)である。一部の実施形態では、標的分析物は、インターロイキン、例えば、インターロイキン2(IL-2)である。
【0051】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的にされ、少なくとも2個の共有結合で連結されたヌクレオチドモノマーを指す。用語は、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)これらのハイブリッドおよびこれらの混合物を包含する。ヌクレオチドは、典型的には核酸中でリン酸ジエステル結合によって連結されているが、用語「核酸」は、他の種類の連結または骨格(例えば、ホスホロチオエート、ホスホラミド、ジチオリン酸、O-メチルホスホロアミデート、モルホリノ、ロックド核酸(LNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)およびペプチド核酸(PNA)連結または骨格など)を有する核酸類似体も包含する。核酸は1本鎖、2本鎖であってよく、または1本鎖および2本鎖配列の両方の部分を含有してよい。核酸は、デオキシリボ核酸およびリボヌクレオチドの任意の組合せ、ならびに、例えば、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシルおよび修飾もしくは非標準的塩基を含む塩基の任意の組合せを含有し得る。
【0052】
本明細書において「タンパク質」によって、共有結合で連結された少なくとも2個のアミノ酸が意味され、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含む。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合または合成ペプチド模倣構造から構成され得る。これにより、「アミノ酸」または「ペプチド残基」は、本明細書において使用される場合、天然に存在するおよび合成のアミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的のためのアミノ酸とみなされる。側鎖は、(R)または(S)立体配置のいずれであってもよい。一部の実施形態では、アミノ酸は、(S)またはL-立体配置にある。天然に存在しない側鎖が使用される場合、例えばin vivoでの分解を妨げるまたは遅らせるために非アミノ酸置換基が使用される場合がある。用語「一部」は、全長または参照ポリペプチドよりも少ないアミノ酸(例えば、約5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%少ないアミノ酸)を含有する断片(例えば、切断産生物または組換え的に産生された断片)または要素もしくはドメイン(例えば、活性を有するポリペプチドの領域)などのタンパク質の任意の領域を含む。
【0053】
用語「小分子」は、本明細書において使用される場合、5000Da未満の分子量を有する任意の分子を意味する。例えば、一部の実施形態では、小分子は、有機化合物、ステロイド、ホルモン、ハプテン、生体アミン、抗生物質、マイコトキシン、シアノトキシン、ニトロ化合物、残留薬物、残留農薬、有機汚染物質、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖類または二次代謝物である。国際公開第2020037130号パンフレットも参照されたい。
【0054】
検出方法
本方法は、単一分子シグナル生成のためにオンビーズシグナル増幅を含む。シグナルは、任意の検出可能なシグナル、例えば、蛍光もしくは化学発光または比色分析などの光学的に検出可能な標識であってよく、あるいは他の標識、例えば、金ビーズまたは非光学的アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴または他の方法を使用する)によって検出可能な他の標識であってよい。一部の実施形態では、方法は、コンカテマーのローリングサークル増幅を使用し;各免疫複合体に付着した生成されたDNAコンカテマーは、可視化のために多数の相補性の蛍光標識されたDNAプローブにハイブリダイズされ得る。これらの方法では感度は、RCA時間を増大(より高い感度)または減少(より低い感度)させることによって調整され得る。
【0055】
他の核酸増幅方法も使用され得る、例えば、ハイブリダイゼーション連鎖反応、酵素触媒近接標識化(PL)重合(例えば、Branon et al., Nat Biotechnol. 2018 Oct;36(9):880-887を参照されたい);重合ベースシグナル増幅(例えば、可視光誘導重合、例えば、Badu-Tawiah et al., Lab Chip, 2015, 15, 655に記載の通り);磁気ビーズ量子ドットイムノアッセイ(Kim et al., ACS Sens. 2017, 2, 6, 766-772);または免疫シグナルハイブリダイゼーション連鎖反応(isHCR)(Lin et al., Nat Methods. 2018 Apr;15(4):275-278)。分枝状DNAも使用され得る。
【0056】
代替的に、方法は、チラミドシグナル増幅(TSA)を使用することを含む。TSAは、触媒レポーター沈着(CARD)とも称され、低含量で存在する生体分子の検出を可能にする高感度法である。TSAは、免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーション実験において使用され、デジタルELISAに使用されている(Akama et al., Anal. Chem. 2016, 88 (14), 7123-7129)。TSAでは、HRP(例えば、第2の結合部分に結合する)は、次いで、近くのチロシン残基に供給結合で結合し、高密度の検出可能なシグナルを生成する反応性ラジカルへの標識チラミドの変換を触媒する。
【0057】
他の増幅化学も使用され得る、例えばDunbar and Das, J Clin Virol. 2019 Jun; 115: 18-31に記載の通り、例えば、分枝状DNAアッセイ(bDNA)。
【0058】
一部の実施形態では、方法は、結合部分を、標識されたポリマーまたはナノ粒子;例えばTang et al., Analyst, 2013,138, 981-990;Hansen et al., Anal Bioanal Chem. 2008 Sep; 392(1-2): 167-175;Wu et al., Chem 2, 760-790, June 8, 2017;Skaland et al., Applied immunohistochemistry & molecular morphology: AIMM / official publication of the Society for Applied Immunohistochemistry 18(1):90-6 (2009);Gormley et al., Nano Lett. 2014, 14, 11, 6368-6373(酵素または金属イオンのいずれかによって生成されたラジカルは、複数の金ナノ粒子(AuNP)を巻き込むポリマーを形成するように重合される)を参照されたい;色素ロードポリマーナノ粒子(例えば、Melnychuk and Klymchenko, J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 34, 10856-10865に記載の通り)などのプレ増幅されたシグナルに接触させることを含む。
【0059】
選択用の検出可能な(detactable)標識のために好適な画像化または他の方法は使用され得る。一部の実施形態では、ビーズは、単層に固定化され、単一zセクション画像化が使用され得る;ビーズが単層中にない実施形態では、方法は、異なるzセクションを画像化することを含み得る。
【0060】
ハイドロゲル
一部の実施形態では、方法は、シグナル検出の前に個々のビーズを固定化するためのハイドロゲルの層のゲル化を含む。ハイドロゲルのゲル化を触媒するための方法は、当技術分野において公知である。ハイドロゲルは、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、コラーゲン、ゼラチン、アガロースおよびヒアルロン酸、またはポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ(HEMA))、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはアクリルアミドなどの合成ハイドロゲルを含み得る。例えば、Ahmed, J Adv Res. 2015 Mar;6(2):105-21を参照されたい。
【0061】
キット
同様に本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の方法における使用のための、例えば、本明細書に記載されるビーズおよび試薬を含むキットである。
【実施例
【0062】
本発明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載される。
【0063】
[実施例1]
ドロップキャスト単一分子アッセイによるアトモルタンパク質濃度の超高感度検出
本発明者らは、現在の最新鋭のデジタルELISA技術より最大25倍感度を増強した簡易な超高感度単一分子検出プラットフォームを開発した。希少な標的分子の試料採取を改善することによって、本手法は、アトモル範囲でのタンパク質検出を可能にし、それにより以前は測定できなかった広範な有望な疾患バイオマーカーへの機会を開いた。重要なことに、本方法はデジタルアッセイ読み取りプロセスを簡易化し、それによりPOCシステムへの将来的な統合にさらに適している。プラットフォームは、以前開発されたSimoaアッセイと比べてより簡易で、より感度が高いアッセイで、マイクロRNAおよび小分子を含む他の疾患関連生体分子を測定することにも容易に適合され得る42、43。現在の方法によっては検出できない非常に低い濃度の生体分子を測定することによって、本方法は、早期の疾患診断を促進できる超高感度検出のためのプラットフォームを提供する。
【0064】
方法
材料。この研究において使用したすべての抗体、組換えタンパク質およびDNA配列は、付帯情報に列挙する。DNAプライマー、テンプレートおよびプローブは、Integrated DNA technologiesまたはMilliporeSigmaから入手した。コンジュゲーションおよびアッセイ緩衝液ならびに色素エンコードカルボキシル化2.7μm常磁性ビーズ(Homebrew Multiplex Beads 488)は、Quanterix Corporationから購入した。
【0065】
抗体コート捕捉ビーズの調製。各標的について、捕捉抗体をビーズコンジュゲーション緩衝液(Quanterix)に、50K Amicon遠心分離フィルター(0.5mL、MilliporeSigma)を使用して緩衝液交換した。ビーズコンジュゲーション緩衝液をフィルター中の抗体溶液に500μLまで加え、14,000xg、5分間での遠心分離を続けた。溶離液を廃棄し、プロセスを2回反復した。緩衝液交換した抗体を新たなチューブ中にフィルターを反転させ、1000xg、2分間遠心分離し、続いて50μLビーズコンジュゲーション緩衝液でのすすぎおよび1000xg、2分間での2回目の遠心分離を行うことによって回収した。抗体濃度をNanoDrop分光光度計を用いて測定し、続くビーズカップリングのために抗体をビーズコンジュゲーション緩衝液中の0.5mg/mL(IL-10)、0.3mg/mL(ブラキュリ)または0.2mg/mL(IL-1β)に希釈した。2.8×10個の色素エンコード常磁性ビーズを、200μLビーズ洗浄緩衝液(ビーズコンジュゲーション緩衝液)を用いて3回、および200μLビーズコンジュゲーション緩衝液を用いて2回洗浄し、190μL冷ビーズコンジュゲーション緩衝液に再懸濁した。次に、1mgバイアルの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)(Thermo Fisher Scientific)を100μL冷ビーズコンジュゲーション緩衝液中に再構成し、10μLを直ちにビーズに加えた。ビーズを振とうしながら30分間活性化した。活性化後、ビーズを200μL冷ビーズコンジュゲーション緩衝液を用いて洗浄し、200μLの捕捉抗体溶液に再懸濁し、抗体カップリングのために2時間振とう器上に置いた。続いて、抗体をカップリングしたビーズを200μLビーズ洗浄緩衝液を用いて2回洗浄し、200μLビーズブロッキング緩衝液(Quanterix)を用いて30分間、振とうしながらブロックした。ブロッキング後、ビーズを200μLビーズ希釈液への再懸濁の前に、200μLビーズ洗浄緩衝液、次に200μLビーズ希釈液(Quanterix)を用いて洗浄した。IL-1βについて、EDC活性化および抗体カップリングステップを4℃で、ビーズ4.2×10個、ビーズ活性化のための9μL EDCおよびコンジュゲーションのための300μL 0.2mg/mL抗体を用いて実施した。Beckman Coulter Z1 Particle Counterをビーズを計数するために使用し、アッセイでの続く使用のために4℃で保存した。
【0066】
ストレプトアビジン-DNAコンジュゲートの調製。45μL 100μMプライマー、54μL 100μMテンプレートおよび26.6μL 5xNEBNext(登録商標)Quick Ligation反応緩衝液(New England Biolabs)の溶液を95℃、2分間加熱し、90分かけてゆっくり室温に冷やすことによって、RCAテンプレート(MilliporeSigma)を5’アジド修飾プライマー(Integrated DNA technologies)に最初にアニールした。次にテンプレートに7.5μL T4 DNAリガーゼ(2,000,000単位/mL、New England Biolabs)を加え、反応物を室温、3時間インキュベートすることによってライゲートさせた。次にライゲーション反応物を1mM EDTAを含むPBSにZeba(商標)スピン脱塩カラム(7K MWCO、Thermo Fisher Scientific)を使用して緩衝液交換した。ストレプトアビジン(Biolegend 280302)を10K Amicon遠心分離フィルター(0.5mL、MilliporeSigma)を用いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に緩衝液交換し、捕捉抗体について上に記載した同じ緩衝液交換手順が続き、次にPBS中1mg/mLに希釈した。ジベンゾシクロオクチン-PEG4-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(DBCO-PEG4-NHS、1mg、MilliporeSigma)を200μLジメチルスルホキシドに溶解し、20倍モル過剰量を緩衝液交換したストレプトアビジンに加えた。コンジュゲーション反応物を30分間、室温でインキュベートし、次に10K Amicon遠心分離フィルターを用いて精製した。コンジュゲートしたストレプトアビジンを1mM EDTAを含むPBSを用いて5回の14,000xg、5分間の遠心分離に続く14,000xg、15分間の1回の遠心分離で洗浄した。次に、精製したDBCOコンジュゲートしたストレプトアビジンを、フィルターを反転させ、1000xg、2分間遠心分離することによって回収した。アニールしたプライマーテンプレートをDBCO-コンジュゲートストレプトアビジンに2倍モル過剰で加え、コンジュゲーション反応を一晩、4℃で進行させた。次にストレプトアビジンDNAコンジュゲートを、さらなる精製をせずに0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、5mM EDTAおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むアリコートに、-80℃で保存した。
【0067】
ドロップキャスト単一分子アッセイ。すべてのdSimoaアッセイは、96ウェルプレート(Greiner Bio-One、655096)において実施した。抗体コートビーズ、組換えタンパク質およびビオチン化検出抗体を所望の濃度に試料希釈液(Quanterix)に希釈した。各アッセイのための検出抗体およびストレプトアビジン-DNA濃度を付帯情報に記載する。各アッセイについて、10μL抗体コートビーズ(総ビーズ100,000個)および10μLビオチン化検出抗体を100μLのタンパク質試料に加えた。次にプレート密封し、1時間、免疫複合体形成のために振とうした。ビーズをシステム洗浄緩衝液1(Quanterix)を用いてBioTek 405 TSマイクロプレート洗浄機を使用して6回洗浄し、その後、5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む試料希釈液中に希釈した100μLストレプトアビジン-DNAコンジュゲートへ再懸濁した。プレートを免疫複合体のストレプトアビジン-DNA標識のために、15分間振とうし、次いでシステム洗浄緩衝液1を用いてマイクロプレート洗浄機を使用して8回洗浄した。洗浄後、ビーズを新たな96ウェルプレートに移し、60μL RCA溶液に再懸濁する前に200μL システム洗浄緩衝液1を用いて追加に洗浄した。RCA溶液は、50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM (NHSOおよび10mM MgClを含む反応緩衝液中の、0.5mMデオキシヌクレオチドミックス(New England Biolabs)、0.33U/uL phi29 DNAポリメラーゼ(Lucigen)、0.2mg/mL BSA、1nM ATTO 647N標識DNAプローブ(Integrated DNA technologies)および0.1%Tween-20からなる。Zeba(商標)スピン脱塩カラム(7K MWCO、Thermo Fisher Scientific)を使用して製造者から得たphi29ポリメラーゼ溶液からジチオスレイトール(DTT)を除去した。RCAを37℃、1時間、プレートを振とうしながら実施し、その後5mM EDTAを含む150μL PBSを各試料に加え、RCA反応を停止させた。次いでビーズを200μLドロップキャスト緩衝液(50mM Tris-HCl、50mM NaCl、0.1%Tween-20、0.5%BSA)を用いて2回洗浄し、再懸濁および手作業のピペッティングでのスライドガラスへのドロップキャスティングの前に10~15μLに濃縮した。ドロップキャストビーズを単層フィルムを形成するように10から15分間乾燥させた。
【0068】
唾液試料について、プールされたヒト唾液(BioIVT)を13,150xg、20分間、4℃で遠心分離した。希釈直線性実験では、所望の体積の上清をプロテアーゼ阻害剤(Halt(商標)Protease Inhibitor Cocktail、Thermo Fisher Scientific)を含む試料希釈液中に2から32倍系列希釈した。添加および回収実験のために、組換えヒトIL-10タンパク質を4倍希釈唾液試料に100、10および1fMで添加した。
【0069】
脊索腫患者由来の血漿試料は、Dr.Sandro SantagataおよびDr.Keith Ligon(Brigham and Women’s Hospital)から入手し、2000xg、10分間、4℃で遠心分離し、凍結融解サイクルを避けるために上清をアリコートした。市販の血漿および血清試料は、BioIVTから入手した。すべての試料は、測定のために試料希釈液中に8倍希釈した。
【0070】
画像化および分析。ドロップキャストビーズフィルムの明視野および蛍光画像は、科学用CMOSカメラ(ORCA-Flash4.0 LT+、Hamamatsu)および10x対物レンズを備えたOlympus IX81倒立顕微鏡を使用して取得した。GFPフィルター(露光1秒)を用いて得た蛍光画像を、色素エンコードビーズを位置付けるために使用し、Cy5フィルター(露光1秒)を用いて得た蛍光画像は「オン」対「オフ」ビーズを同定するために使用した。市販のソフトウェア(cellSens)をステージおよびカメラを制御するために使用した。明視野および蛍光画像を各フレームについて取得し、複数のフレームは、フィルム端を除くドロップキャストフィルム全体を捕捉するために取得した。ドロップキャストフィルムあたり約20~25個のフレームをおよそ15分の平均総画像化時間で取得した。
【0071】
画像解析をMATLABにおいて実施した。不均等な照明を補正するためのトップハットフィルター処理(top-hat filtering)を備えたディスク型形態構造化エレメント(morphological structuring element)を使用してビーズを最初に488nm蛍光画像に位置付けた。重複しているまたは凝集したビーズを流域セグメンテーション(watershed segmentation)によって分離し、残ったすべての凝集したビーズをサイズカットオフによって除去した。同定された各ビーズの最大シグナル強度は、不均一な照明を補正するためのトップハットフィルター処理を最初に受けた、対応するCy5蛍光画像において決定した。ガウス分布をビーズ蛍光強度にフィットさせ、「オン」対「オフ」ビーズについてのカットオフ強度値を分布の平均から標準偏差の5倍より上として決定した。それにより、カットオフ値を超える強度のすべてのビーズを「オン」ビーズとして計数する。ビーズの割合は、ビーズの総数分の「オン」ビーズの総数として算出し、ビーズあたりの平均分子(AMB)は、続いてポアソン分布から算出した。
【0072】
較正曲線をGraphPad Prismにおいて4パラメーターロジスティクス(4PL)フィットを使用してフィットさせ、未知試料の濃度を決定するために使用した。較正曲線フィットのR値は、付帯情報に見出すことができる。2連で実施した希釈直線性ならびに添加および回収アッセイを除いて、すべての測定は、3~4連で実施した。各アッセイの検出限界(LOD)は、バックグラウンドAEBから標準偏差の3倍より上に対応する濃度として算出した。
【0073】
Simoaアッセイ。従来のSimoaアッセイを、対応するdSimoaアッセイにおいてと同じ抗体コート捕捉ビーズ(アッセイあたりビーズ500,000個)およびビオチン化検出抗体を同じ濃度で、試料体積100μLを使用してHD-X Analyzer(Quanterix)において実施した。ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)濃縮物(Quanterix)を所望の濃度にSβG希釈液(Quanterix)中で希釈した。1時間の同じインキュベーション時間を、ビーズ、試料および検出抗体を免疫複合体サンドイッチ形成のためにインキュベートする抗体捕捉ステップについて使用した。各標的について、2つのアッセイ条件を実施した:対応するdSimoaアッセイと同じSβG濃度およびインキュベーション時間を用いる1つのアッセイ、ならびにHD-Xにおいて使用される標準SβG濃度およびインキュベーション時間を用いる1つのアッセイ(150pM SβG、5分間)。ビーズ、検出抗体およびSβGをプラスチックボトル(Quanterix)に入れ、試料を96ウェルプレートに加え、そのすべてをHD-X Analyzerにロードした。酵素基質(レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド)、洗浄緩衝液1、洗浄緩衝液2およびSimoaシーリングオイルを製造者の説明書に従ってHD-X Analyzerにロードした。すべてのアッセイステップ、画像解析およびビーズあたりの平均酵素(AEB)の算出を、以前詳細に記載の通り自動化した13
【0074】
結果
ドロップキャスト単一分子アッセイの開発
「オン」および「オフ」ビーズの計数のためのビーズドロップキャスティングを可能にするために、本発明者らは、先ず、完全免疫複合体サンドイッチを保有する各ビーズ上に局在化したシグナルを生成するための戦略を開発した。ローリングサークル増幅(RCA)、環状DNAテンプレート周囲のポリメラーゼの進行性の作用に基づく等温DNA増幅法は、迅速で強いシグナル増幅を提供するようにDNAリピートの長いコンカテマーを生成する。RCAが、個々のタンパク質タンパク質複合体および核酸の検出のために成功裏に使用されていることから、本発明者らは、RCAがビーズ上に捕捉された単一免疫複合体サンドイッチの検出を可能にすると仮定した20~23。RCAは、マルチプレックスなタンパク質検出を可能にするようにマイクロウェルアレイ中で単離されたビーズ上の免疫複合体上で実施される24。本発明者らの単一分子検出プラットフォームにRCAを組み込むために、本発明者らは、環状DNAテンプレートにアニールされたRCAプライマーを用いて各免疫複合体サンドイッチを標識した(図1)。RCAを実施した後に、各免疫複合体に付着された生成されたDNAコンカテマーは、可視化のために多数の相補性の蛍光標識されたDNAプローブとハイブリダイズされ得る。
【0075】
dSimoa法は、抗体コート常磁性ビーズが免疫複合体サンドイッチを形成するように試料およびビオチン化検出抗体とインキュベートされる、従来のSimoaと同じ標的捕捉ステップを利用する。しかし、免疫複合体サンドイッチをストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)を用いて標識する代わりに、プレアニールされたプライマーテンプレート対にコンジュゲートされたストレプトアビジンを免疫複合体サンドイッチを標識するために使用する。次にRCAを、シグナル増幅のために各標識免疫複合体サンドイッチについて37℃で実行する。さらに、蛍光標識されたDNAプローブをin situハイブリダイゼーションのためにRCA反応物に加える。RCA反応後、ビーズを洗浄し、濃縮し、スライドガラスにドロップキャストし、画像化のために単層フィルムを形成するように乾燥させる。免疫複合体形成のために検出抗体DNAコンジュゲートを直接使用し、RCAが続く本発明者らの予備的な試みが、高いバックグラウンドシグナル(データ未記載)を生じたことから、本発明者らは、すべてのdSimoaアッセイのためにストレプトアビジン-DNAコンジュゲートを使用した。
【0076】
ドロップキャストフィルムでのシグナル増幅およびビーズ分布を評価するために、本発明者らは、以前検証したSimoaアッセイにおいて使用した同じ捕捉および検出抗体対を用いて、モデル分析物としてのインターロイキン-1ベータ(IL-1β)を検出するためにdSimoaを使用した。ドロップキャスト緩衝液由来の塩結晶形成が明視野でのビーズ同定を妨害する場合があることから、蛍光色素エンコードビーズ(488nm)を、分析のためのドロップキャストフィルムでのビーズ同定を促進するために使用した。アッセイビーズ100,000個およびおよそ15μLのドロップキャスト体積を用いて、ドロップキャストビーズフィルムは、フィルムにわたって最小限のビーズ凝集および高く、均一なビーズ密度を示す(図2A~B)。さらに、ドロップキャストプロセスは、迅速で、15μLドロップキャスト体積は15分間以内に直径12~15mmのフィルムに乾燥される。ビーズ上に捕捉された標的分析物の存在は、ビーズの全体または一部を覆う蛍光シグナルによって示される(図2C~E)。画像解析での凝集したビーズの含有が「オン」ビーズの算出される割合の正確性に影響を与える場合があることから、各フィルム中のビーズの約20~25%を構成する2つ以上のビーズのビーズ凝集物は、画像解析アルゴリズムにおいて流域セグメンテーションによって分離し、いずれの残存ビーズ凝集物もサイズ閾値を介して分析から排除した。ドロップキャストフィルムにおいて画像化されたすべてのビーズでの最大蛍光強度の代表的なヒストグラムは、RCAによって生成されたコンカテマーの幅広いサイズ分布のために、広範囲の「オン」ビーズシグナル強度を示す(図2F~G)。各ドロップキャストフィルムでの「オン」および「オフ」ビーズの数を、各ビーズの最大蛍光強度に正規分布をフィットさせ、平均から標準偏差の5倍より上として「オン」ビーズについての閾値を割り当てることによって算出した。ビーズあたりの平均標的分子(AMB)は、従来のSimoaにおいて算出したビーズあたりの平均酵素(AEB)と同様に、ポアソン分布方程式を使用して決定した25
【0077】
ビーズの全体積をスライドガラスに単に移すことによって、本発明者らは、平均でアッセイビーズの総数の40~50%を画像化し、分析することができ、残りのビーズの大部分は洗浄または移すステップの際に失われたか、または凝集物の形成のために分析から除外されかのいずれかである。したがって、dSimoaにおける試料採取効率は、現在のSimoa技術を使用して分析されるビーズの約5%を超える顕著な改善を示す。マイクロウェルの必要性の除外に加えて、dSimoaは、分析され得るビーズの百分率の増加により標的捕捉のために使用され得るビーズをはるかに少なくすることができ、そのためポアソンノイズを最小化しながら希少な標的分子の試料採取を改善する。現在のSimoa技術は、ビーズ500,000個を使用する一方で、dSimoaはビーズ100,000個を使用する。ビーズの数の減少は、ビーズの総数と比較してより多くの「オン」ビーズおよびそれにより、より高いAMBがあることからバックグラウンドに対するシグナルを増大できる。さらに、乾燥状態では蛍光シグナルは、1か月後でも測定されるAMB値が減少せず、ドロップキャストフィルムにおいて高度に安定なままである(表2)。
【0078】
dSimoaを用いたタンパク質のデジタル検出
dSimoaの感度を評価するために、本発明者らは、対応するSimoaアッセイにおいて以前使用した同じ抗体対を使用して、2つのヒトサイトカイン、IL-1βおよびインターロイキン-10(IL-10)について較正曲線を作成した。これらのdSimoaアッセイは、IL-10およびIL-1βのそれぞれについて対応する従来のSimoaアッセイの25および15倍の感度の改善を示して、低から中程度のアトモルの検出限界(LOD)を達成した(図3A~F;表1)。バックグラウンド(ブランクのAMBまたはAEB)から標準偏差の10倍より上として算出される定量限界(LOQ)も従来のSimoaアッセイと比較してdSimoaアッセイにおいて一桁改善された。分析され得るビーズの百分率を実質的に増加させることによって、dSimoaは、低含量分子の試料採取効率を増強し、使用されるビーズをはるかに少なくできる。加えてビーズの数の5分の1の低減は、バックグラウンドに対するシグナルを増加させ、感度における顕著な増強に寄与する(図3C、F)。
【0079】
バックグラウンドに対するシグナルの改善に加えて、本発明者らは、捕捉された標的分子の試料採取効率の増大は、ポアソンノイズによる測定の不正確性を低減することによって、dSimoaを用いたより低いLODを達成することも助けると仮定した。本発明者らの実験結果がこの仮説を支持するかどうかを判定するために、本発明者らは、IL-10較正曲線において分析されたビーズのサブセットを無作為に選択し、分析される全アッセイビーズの百分率を変動させて、バックグラウンド測定値のLODおよび変動係数(CV)を決定した(図4A~B)。わずかなビーズ(全ビーズの10%未満)を分析した場合、ポアソン試料採取ノイズから予測される通り、バックグラウンド測定値の不正確性は、低いLODに対応して20%を超えるCVで非常に高かった。さらに、低い百分率のビーズが分析された場合、異なる無作為試料採取中で得られたLODにおいて高い変動があった。したがって、これらの観察は、デジタル測定の精度および感度における試料採取効率の重要な役割を実証している。20%以上のビーズが分析された場合に算出されたLOD値は、さらには増加せず、最大近くの感度がアッセイビーズの少なくとも20%の画像化で達成され得ることを示唆している。
【0080】
生物学的液体におけるdSimoaの性能を検証するために、本発明者らは、ヒト唾液においてIL-10について添加および回収実験を実施した。プールされたヒト唾液に添加された種々の濃度の組換えヒトIL-10タンパク質の回収率は、76%から122%の範囲であり、dSimoaが唾液中のタンパク質を確実に検出できることを実証している(図6A)。さらに、ヒト唾液の系列希釈物中のIL-10のdSimoa測定は、直線性希釈を示し、dSimoaアッセイでの唾液マトリクスからの最小限の干渉を示している(図6B)。dSimoaアッセイは、すべての唾液試料にわたって10%をはるかに下回るCVで高い測定精度も示した。
【0081】
dSimoaの感度の改善の潜在的な診断有用性を調査するために、本発明者らは、脊索腫、脊椎または頭蓋底における原発性骨がんに強く関連するT-box転写因子、ブラキュリのためのdSimoaアッセイを開発した26。ブラキュリ発現のレベルの上昇が脊索腫瘍において見出されたが、血漿中のブラキュリの測定についての報告は、本発明者らが知る限りない27~30。ブラキュリについてdSimoaおよび従来のSimoaアッセイによって生成された較正曲線は、それぞれ244.6aMおよび841.4aMのLODをもたらした(図5A~B)。このdSimoaアッセイは、従来のSimoaアッセイより感度における3倍の改善をもたらしただけである。LODにおける比較的小さな改善は、従来のSimoaアッセイと比較してバックグラウンドに対してシグナルのより小さな増大に起因する可能性がある(図5C)。アッセイビーズの総数の低減は捕捉抗体濃度も低減させることから、アッセイビーズの数の減少からのバックグラウンドに対するシグナルにおける改善の程度は、より低い結合親和性を有する抗体についてより小さい可能性があり、ビーズに対する標的分子のより高い比にもかかわらず、捕捉効率の減少をもたらし得る。血漿および血清マトリクスにおけるdSimoaアッセイの性能を検証するために、本発明者らは、添加および回収実験を実施し、添加された血漿および血清試料の大部分において、大部分の測定値CVが10%を下回って、少なくとも65~70%の回収率を得た(図7A)。本発明者らは、許容可能な希釈直線性を確認することによって血漿中のdSimoaアッセイの精度をさらに検証した(図7B)。
【0082】
最終的に本発明者らは、いくつかの脊索腫患者血漿試料ならびに健常ドナー由来の市販の血漿および血清試料において内在性ブラキュリを検出するdSimoaおよび従来のSimoaの能力を比較した。従来のSimoa測定値は、6個すべての脊索腫患者試料についてそのLODを下回った一方で、dSimoaは、6個すべての試料においてブラキュリの検出可能なレベルを測定することができ(図5D)、感度における比較的小さな改善でさえ、臨床的に重要なバイオマーカーを測定するのに十分である場合があることを実証している。本発明者らは、従来のSimoaによっては検出不能だったが、dSimoaによっては検出可能である1個の軟骨肉腫患者試料も検査した。6個の市販の血漿および血清試料のうち、ブラキュリは、従来のSimoaを使用して1個の試料において、およびdSimoaを使用して3個の試料において検出可能であった(図5E)。注目すべきことに、多数の試料においてdSimoaによって測定された濃度は低フェムトモル範囲であり、従来のSimoaアッセイの算出されたLODを超えていたが、従来のSimoaによるこれらの試料の測定値はそのLODを下回ったままであった(図5F)。しかし、従来のSimoa LODを下回ったAEBのうち、より高いAEB値は、より高いAMB値およびdSimoaアッセイにおいて測定された濃度と一般に相関した。さらに、より高い試料濃度では、dSimoaおよび従来のSimoaは、同様の測定濃度をもたらした。低濃度での血漿および血清におけるdSimoaの優れた性能は、dSimoaのLODの改善およびさらに良好な試料採取効率を含むいくつかの要因に起因する可能性があり、特に低濃度での測定の精密度を増加できる。別の可能性は、dSimoaが、5分の1の少ないビーズを使用して、血漿および血清においてバックグラウンドに対してより高いシグナルおよび回収を有して、血漿および血清マトリクスにおいて従来のSimoaよりもさらに正確に実施することである。加えて従来のSimoaは、dSimoaにおいて使用されるより小さいオリゴヌクレオチド標識よりもさらに高い非特異的結合を示す可能性がある大きな酵素標識を使用する。最終的に、従来のSimoaアッセイと比較してdSimoaアッセイの際の多量の洗浄液は、血漿および血清構成成分からの干渉をさらに低減する可能性がある。
【0083】
【表1】
LODおよびLOQ値はバックグラウンドから標準偏差のそれぞれ3倍より上および10倍より上として算出した。対応するQuanterix Simoaアッセイによって報告されたLOD値は、バックグラウンドから標準偏差の2.5倍より上として算出した。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
実施例1についての参考文献
【0090】
【表7-1】
【0091】
【表7-2】
【0092】
【表7-3】
【0093】
【表7-4】
【0094】
【表7-5】
【0095】
[実施例2]
チラミドシグナル増幅およびフィブリンハイドロゲルを使用するデジタル酵素結合免疫吸着アッセイの簡易化
方法
材料。すべての材料は、以下に他に特に指定のない限り、製造者の説明書により得て、使用した。IL-6タンパク質標準物(#206-IL-010)および抗体(捕捉#MAB206および検出#BAF206)は、R&D Systemsから購入した。
【0096】
抗体コート捕捉ビーズの調製。IL-6抗体は、保存緩衝液を除去するために最初に緩衝液交換した。0.13mgの抗体を50K Amicon Ultra-0.5mL Centrifugal Filter(MilliporeSigma)に添加した。ビーズコンジュゲーション緩衝液(Quanterix Corp.)をフィルターに体積500μLまで加えた。フィルターデバイスを14,000×g、5分間遠心分離した。遠心分離後、流出液を廃棄し、追加的なビーズコンジュゲーション緩衝液をフィルターに加えた(総体積500μL)。遠心分離プロセスをさらに2回繰り返した。次にフィルターを新たなチューブ中に反転させ、1000xg、2分間遠心分離した。回収した抗体の濃度をNanoDrop One(ThermoFisher)を使用して測定した。緩衝液交換した抗体をビーズコンジュゲーション緩衝液を使用して0.5mg/mLに希釈した。コンジュゲーション用のビーズを調製するために、2.8×10Quanterix 647nm色素エンコードカルボキシル化常磁性ビーズ(2.7μm)をビーズ洗浄緩衝液(Quanterix)を用いて3回、ビーズコンジュゲーション緩衝液を用いて3回洗浄し、次に190μLのビーズコンジュゲーション緩衝液に再懸濁した。使用前に、1mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)を100μLのビーズコンジュゲーション緩衝液に溶解した。ビーズを洗浄後、10μLのEDCをビーズに加え、ビーズを30分間ローテーター上で撹拌した。EDCを用いたビーズ活性化後、ビーズを、ビーズコンジュゲーション緩衝液を用いて1回洗浄し、次に200μLの0.5mg/mL捕捉抗体溶液に再懸濁した。ビーズを2時間ローテーター上で撹拌した。コンジュゲーション後、ビーズを、ビーズ洗浄緩衝液を用いて2回洗浄し、次に200μLのビーズブロッキング緩衝液(Quanterix)中で30分間BSAを用いてブロックした。最後に、抗体コンジュゲートビーズをビーズ洗浄緩衝液、ビーズ希釈液(Quanterix)を用いて洗浄し、200μLのビーズ希釈液に再懸濁した。ビーズをBeckman Coulter Z1 Particle Counterを使用して計数し、4℃で保存した。
【0097】
CARDデジタルELISA。CARD-dELISAを使用する較正曲線を作成するために、3ステップアッセイを、ビーズ上の標的タンパク質を捕捉および標識するために実施し、オンビーズシグナル増幅ステップを実施する。第1のステップでは、IL-6タンパク質標準物をHomebrew試料希釈液(Quanterix)に系列希釈し、100μLの各較正標準物を低結合96ウェルプレート(Greiner Bio-One)に加えた。IL-6捕捉ビーズ(10μL、ビーズ20,000個/μLで)および10μLのビオチン化IL-6検出抗体(最終濃度0.3μg/mL)も96ウェルプレートに加えた。プレートを振とうしながら1時間インキュベートし、次にシステム洗浄緩衝液1(Quanterix)を用いて3回洗浄した。最終洗浄サイクル後、残った洗浄緩衝液を除去し、ビーズを100μLの試料希釈液に再懸濁した。第2のステップでは、10μLの5μg/mLストレプトアビジン-ポリ-HRP(Thermo Scientific Pierce)を各試料に加えた。プレートを振とうしながら10分間インキュベートし、次にシステム洗浄緩衝液1を用いて3回洗浄した。最終洗浄サイクル後、残った洗浄緩衝液を除去した。第3のステップでは、オンビーズチラミドシグナル増幅をAlexa Fluor 488 Tyramide SuperBoost Kit(ThermoFisher Scientific)を使用して変更したプロトコールを用いて実施した。具体的には、使用溶液を1.6mLの1X反応緩衝液を16μLの1X過酸化水素溶液および16μLのAlexa Fluor 488-チラミド試薬と混合することによって調製した。次にビーズを200μLのチラミド使用溶液に再懸濁した。プレートを振とうしないで1時間インキュベートした。標識後、50μLの1:11希釈した反応停止溶液(SuperBoost Kit)を各ビーズ懸濁物に加え、振とうしながら2分間インキュベートした。次にプレートを、1:11希釈した反応停止溶液を含むシステム洗浄緩衝液1を用いて6回洗浄した。最終洗浄サイクル後、ビーズを30μLの1×PBSに再懸濁した。次にビーズをスライドガラス上のシリコン単離ウェル(Electron Microscopy Sciences)に加えた。フィブリンハイドロゲルを調製するために、1×PBS中のフィブリノーゲン(ウシ血漿由来、I-S型、MilliporeSigma)の10mg/mL溶液および1×PBS中のトロンビン(ウシ血漿由来、MilliporeSigma)の1.25U/mL溶液の等量を混合した。フィブリノーゲンをPBSに溶解するために、使用前に溶液を37℃で加熱した。ハイドロゲル試薬を混合後、50μLの混合物を各単離ウェルに加え、画像化前にハイドロゲルを15分間形成させた。
【0098】
画像化および分析。ハイドロゲル固定化ビーズアレイの明視野および蛍光画像をOlympus IX81倒立顕微鏡を用い、倍率10×でOCRA-Flash 4.0 LT+CMOSカメラ(Hamamatsu)を用いて取得した。CellSensソフトウェアを顕微鏡ステージを管理し、画像を取得するために使用した。ビーズの位置を同定するために使用した明視野画像を露光時間20msで取得した。「オン」および「オフ」ビーズを同定するために使用したGFPフィルターキューブを使用する蛍光画像は、露光時間1秒で取得した。
【0099】
画像解析をカスタムMATLABアルゴリズムを使用して実施した。明視野画像を、画像の補完をコンピューターで計算すること(ビーズは明るく、バックグラウンドは暗くなるように)、不均等な照明を補正するためにトップハットフィルターを用いてフィルタリングすること、バイナリー画像を変換することによって処理した。蛍光画像も不均等な照明を補正するためにトップハットフィルターを用いてフィルタリングした。ビーズをディスク型形態構造化エレメントを使用してビーズを明視野画像中で位置付けた。各ビーズのシグナル強度をビーズ領域中の上位4分の1の強度を算出することによって対応するGFP蛍光画像から測定した。「オフ」ビーズと「オン」ビーズとの間のカットオフ値を、ブランク(0fM)標準物でのビーズ強度の分布を正規分布にフィッテイングし、カットオフ強度を、低濃度試料について平均から標準偏差の3倍より上(<50fM、カットオフ値約90)および高濃度試料について平均から標準偏差の4倍より上(≧50fM、カットオフ値約100)に設定することにより、決定した。「オン」ビーズの割合を、「オン」ビーズの数をビーズの総数で割ることによって算出した。
【0100】
AEB対濃度の較正曲線をGraphPad Prismバージョン8.3.0において4パラメーターロジスティクス(4PL)回帰にフィットさせた。4PLフィット曲線は、唾液試料中の未知のIL-6濃度を決定するために使用した。すべての測定は、2連で実施した。
【0101】
唾液試料分析。プールされた唾液試料は、BioIVTから購入し、使用まで-80℃で保存した。唾液を13,150×g、20分間、4℃で遠心分離した。遠心分離後に上清を除去し、唾液試料をCARD-dELISA分析のために25X、Simoa分析のために8Xに希釈した。
【0102】
Simoaアッセイ。従来のSimoaアッセイをHD-1 Analyzer(Quanterix)で実施した。捕捉ビーズ、検出抗体およびストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ(SβG)の溶液を試薬ビンに入れ、装置に載せた。較正曲線のために系列希釈したIL-6タンパク質標準物および希釈した唾液試料を96ウェルプレート(Quanterix)にピペッティングし、装置に載せた。SβG基質レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド、システム洗浄緩衝液1、システム洗浄緩衝液2およびSimoaシーリングオイルをQuanterixから得て、製造者の説明書に従って装置に載せた。標準物および試料を標準的な3ステップアッセイを使用して処理した。画像解析およびAEB算出は、オンボードSimoaソフトウェアによって自動的に実施した。
【0103】
結果
本発明者らは、高価な機器および精巧なマイクロ流体またはロボット工学の必要性を低減する簡易化したデジタルELISAフォーマットの開発を試みた。フルオロフォアがビーズに直接コンジュゲートされているシグナル増幅ステップを実行することによって、本発明者らは、マイクロウェルアレイまたはマイクロ流液滴中でのビーズの区画化の必要性を除外する。代わりに、シグナル増幅ステップは、標的タンパク質捕捉および標識ステップと同じ反応チャンバーにおいてなど、バルク溶液において生じる。さらに、本手法は、マイクロウェルアレイへのビーズローディングのために必要である高価なエンジニアリングおよびロボット工学を必要としない。CARD-dELISAは、安価なフィブリンハイドロゲル中にビーズを固定化することによって、単一分子計数のために使用されるビーズ画像化のための簡易化された手法を有する。このフォーマットでは、ビーズを、ガラススライド上に配置し、in situで形成するフィブリンハイドロゲル層に固定化した。画像取得後にビーズを位置付け、単一分子計数のためにその蛍光強度を測定するためにMATLABのアルゴリズムを使用する。概念の証明として、本発明者らは、インターロイキン6(IL-6)について較正曲線を作成し、唾液試料中のIL-6レベルを測定した。
【0104】
CARD-dELISAを開発するための最初のステップは、単一分子シグナル生成のためのオンビーズ酵素増幅のための方法を確立し、最適化することであった。本発明者らは、免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーション実験において一般に使用されるTSAを使用する。他の研究者らもデジタルELISAのためのTSAの使用について報告している27。本発明者らは、デジタルELISAをポイントオブケアデバイスに実装する場合に考慮される重要な事柄である、イムノアッセイにおけるステップ数を低減することによって以前の文献報告を改善した(5ステップアッセイから3ステップアッセイに低減した)。CARD-dELISAのアッセイフォーマットを図9Aに要約する。抗体コート捕捉ビーズ(200,000個)を標的タンパク質分子の捕捉を可能にするように試料に加える。従来のSimoaと同様に本発明者らは、標的タンパク質分子の数と比較して多数のビーズを使用する。このことはアッセイが、大部分のビーズが標的分子に結合せず、わずかな百分率のビーズだけが1つの標的分子に結合するポアソン分布に従うことを確実にする。タンパク質捕捉後、標的分子は、ビオチン化検出抗体およびストレプトアビジン-ポリ-HRP(数個の西洋ワサビペルオキシダーゼ分子を含むストレプトアビジン-コンジュゲートポリマー)を用いて標識し、完全な酵素標識免疫複合体を形成する。次にビーズを、シグナル生成ステップのために過酸化水素およびチラミドフルオロフォアコンジュゲート(チラミドAlexa Fluor 488)を含有する溶液に再懸濁する。過酸化水素の存在下でHRPは、チラミドをラジカル中間体に触媒的に変換する。このチラミドラジカルは、HRP分子近くの他の芳香族環、ビーズ上の付近のタンパク質および抗体上のチロシン残基などと共有結合を形成する。このステップの完了で、完全な免疫複合体を有するビーズは、供給結合で付着した多数の蛍光色素を用いて標識される。このことは、オンビーズシグナル生成ステップを完了させ、続く単一分子計数を可能にする。本発明者らは、チラミド標識ステップ後にビーズ間の検出可能な交差標識を観察しなかった。これは、ポアソン分布に従う本アッセイフォーマットにおいて予測される、低タンパク質濃度においてごく一部のビーズだけが検出可能な蛍光シグナルを有するとの観察によって支持される。さらに、チラミド標識ステップでは、本発明者らは、ラジカル中間体の寿命の間にチラミドラジカルが別のビーズに拡散しないように薄いビーズ溶液を使用する27
【0105】
CARD-dELISAを開発する第2のステップは、画像化および単一分子計数のためにビーズ固定化の方法を確立することであった。増幅された酵素シグナルがアッセイの先行するステップにおいてビーズに既にコンジュゲートされていることから、本発明者らは、酵素増幅のためのマイクロウェルまたは液滴でのビーズの区画化の必要性によって制限されない。本発明者らは、ビーズ固定化のためにフィブリンハイドロゲルを使用した(図9B)。フィブリンハイドロゲルは、トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンハイドロゲルネットワークに酵素的に重合する場合に形成される28。合成フィブリンハイドロゲルは、細胞封入および組織工学を含む適用のためにしばしば使用され、in situで容易に形成され得る29~31。フィブリンハイドロゲル中のビーズの封入は、画像化のためにビーズを固定化する早くて簡易な方法である。図10Aは、フィブリンハイドロゲルに封入された、いくつかのビーズ試料を示す。フィブリンハイドロゲル中にビーズを固定化するために、ビーズ溶液をシリコン単離ウェル(7mmx7mmx2mm)内部のガラススライドに最初にドロップキャストする。フィブリノーゲンおよびトロンビンの溶液を混合し、単離ウェルに直ちに加える。ハイドロゲルは約15分間で形成され、ビーズはフィブリンポリマーネットワーク中に捕捉される。フィブリンハイドロゲル中の数百個のビーズの明視野画像を図10Bに示す。この画像は約100μmx約100μmであり、ビーズアレイの小領域を表している。ビーズアレイ全体は、倍率10×で約20~25枚の画像で捕捉され得る。ビーズが比較的大きく(直径2.7μm)、溶液から急速に沈降することから、本発明者らは、ビーズが主に同じz平面(すなわち、ガラススライドとフィブリンハイドロゲルとの界面)にあることを観察した。早く簡易であることに加えて、フィブリンハイドロゲルへのビーズ封入は、マイクロウェルアレイと比べて安い選択肢でもある。この費用の削減は、安価なポイントオブケアデジタルELISAプラットフォームを開発するために重要である。
【0106】
CARD-dELISAの最後のステップは、単一分子計数のための方法を開発することである。ビーズアレイの明視野および蛍光画像を倒立蛍光顕微鏡を用いて捕捉し、次に画像を単一分子計数を実施するためにMATLABのアルゴリズムを使用して分析した。目的の小領域の明視野画像(図11A)および488nm蛍光画像(図11B)の例を示す。明視野画像を各ビーズを位置付けるために使用し、蛍光画像をシグナル増幅ステップ由来の沈着したチラミドAlexa Fluor 488色素を有するビーズを同定するために使用した。2つの画像を重ね合わせて(図11C)、本発明者らは、画像中の8個のビーズのうち2個が「オン」(灰色矢印)であることを観察した。各ビーズの位置は、MATLABアルゴリズムによって自動的に決定され、各ビーズの対応する蛍光強度を算出する。すべての試料について、すべてのビーズの蛍光強度をヒストグラムとしてプロットする;0fM IL-6標準物は図11Dにプロットし、50fM IL-6標準物は図11Eにプロットする。図11Dのブランク試料についてのヒストグラムは正規分布にフィットされ、「オン」対「オフ」ビーズのカットオフは、ブランクの平均蛍光強度から標準偏差の4倍より上に設定する(図11Dおよび11Eの灰色四角)。AEBを「オン」ビーズの数をビーズの総数で割ることによって算出する。本発明者らは、試料あたりビーズ約50,000~60,000個を分析する(すなわち、ビーズの約30%を分析する)、これは、ビーズの約5%だけを分析する従来のSimoaと比較して分析されるビーズの割合における改善である。
【0107】
概念の証明として、本発明者らは、図12にプロットする、CARD-dELISAを使用する較正曲線を生成するためのモデルタンパク質としてIL-6を使用し;較正曲線のためのAEB値を表7に示す。予測される通り低タンパク質濃度では、大部分のビーズはIL-6に結合しない(AEB値は小さい)。IL-6濃度が増加するとともに、IL-6に結合するビーズの数は増加する。本発明者らは、HD-1 Analyzer上において標準的Simoaアッセイを使用してIL-6較正曲線(図13)も作成した。両曲線を、各アッセイのLODおよびLOQを推定するために使用した4パラメーターロジスティクス(4PL)回帰にフィットさせた(表8)。CARD-dELISAは、広いダイナミックレンジおよびIL-6について1.36fMのLODをもたらした。最終的に本発明者らは、CARD-dELISAを使用して市販の唾液試料中のIL-6を測定し、生体液中のタンパク質を確実に検出するためにCARD-dELISAを使用できることを確認するために、従来のSimoaの結果と比較した。両アッセイからの結果を表9に報告し、図12の挿入図にプロットした。本発明者らは、2つの方法の間に十分な一致を観察し(スピアマンの相関係数は1.00である)、CARD-dELISAが唾液中のIL-6を確実に検出できることを実証している。さらにSimoaと同様にCARD-dELISAは、高度に希釈された試料の使用を可能にする。CARD-dELISAによって分析した唾液試料を25Xに希釈した。高い試料希釈倍率の使用は、非特異的吸着を低減し、したがってアッセイの精度を改善する。加えて、CARD-dELISAは、10μLの唾液を必要とするだけであり、タンパク質バイオマーカーが少量の試料から測定できることを意味している。
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
実施例2についての参考文献
【0112】
【表11-1】
【0113】
【表11-2】
【0114】
【表11-3】
【0115】
【表11-4】
【0116】
他の実施形態
本発明は、その詳細な記載と併せて記載されたが、前述の記載が例示を意図し、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図しないことは理解される。他の態様、利点および変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】