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特表2023-531963多能性細胞懸濁物を培養するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】多能性細胞懸濁物を培養するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230719BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 5/073 20100101ALN20230719BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/00
C12N5/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579706
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021038395
(87)【国際公開番号】W WO2021262663
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/042,419
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】502221282
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン ロンダ
(72)【発明者】
【氏名】エイケンヘッド マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB02
4B065BB10
4B065BB11
4B065BB12
4B065BB19
4B065BB20
4B065BB23
4B065BC09
4B065BC41
4B065BD39
4B065BD50
(57)【要約】
少なくとも1つのGSK3阻害剤、ROCK阻害剤、及び1つ以上の有糸分裂成長因子を含む細胞培養培地及び/又は細胞培養培地サプリメント、並びに多能性幹細胞を3D培養フォーマットで本明細書に記載の組成物中で培養及び/又は拡大する方法が本明細書に記載される。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞(PSC)組成物であって、
細胞培養基本培地と、
1つ以上の有糸分裂成長因子と、
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)阻害剤と、
rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤と、を含み、
前記組成物は、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する、組成物。
【請求項2】
前記GSK3阻害剤及び/又は前記ROCK阻害剤が、細胞培養サプリメント中で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記GSK3阻害剤及び/又は前記ROCK阻害剤が、前記基本培地中で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、血清フリーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、微量元素、抗酸化剤、塩、ヌクレオシド、緩衝剤、界面活性剤、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記GSK3阻害剤が、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、BIO((2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、AR-A014418(N-[(4-メトキシフェニル)メチル]-N’-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ウレア)0、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンザゼピン-6(5H)-オン)、SB216763(ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、又はSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、それらの塩、それらのエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記GSK3が、CHIR99021を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ROCK阻害剤が、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)、Chroman1、Emricasan、ポリアミン、Trans-ISRIB、チアゾバビン(thiazovavin)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ROCK阻害剤が、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ROCK阻害剤が、ROCK1活性を阻害する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ROCK阻害剤が、ROCK2活性を阻害する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ROCK阻害剤が、ROCK1及びROCK2活性を阻害する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記1つ以上の有糸分裂成長因子が、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、ヘレグリン(HRG)、若しくはKGF、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含み、前記少なくとも2つの有糸分裂成長因子が、EGF及びTGF-α、EGF及びTGF-β、EGF及びbFGF、EGF及びBDNF、EGF及びHGF、EGF及びHRG、EGF及びKGF、TGF-α及びTGF-β、TGF-α及びbFGF、TGF-α及びBDNF、TGF-α及びHGF、TGF-α及びHRG、TGF-α及びKGF、TGF-β及びbFGF、TGF-β及びBDNF、TGF-β及びHGF、TGF-β及びHRG、TGF-β及びKGF、bFGF及びBDNF、bFGF及びHGF、bFGF及びHRG、bFGF及びKGF、BDNF及びHGF、BDNF及HRG、BDNF及びKGF、HGF及びHRG、HGF及びKGF、又はHRG及びKGFを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、アルブミン又はそのペプチドを含み、前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ラット血清アルブミン、マウス血清アルブミン、ウマ血清アルブミンサル血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、組換え血清アルブミン、前述のうちのいずれかの機能的フラグメント、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)成分を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記1つ以上のECM成分が、フィブロネクチン、ラミニン、ニドゲン、コラーゲン、ビトロネクチン、若しくはヘパラン硫酸プロテオグリカン、又はそれらの機能的フラグメントからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記アミノ酸が、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、それらの塩、それらのエステル、又はそれらのジ若しくはトリペプチドのうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項20】
前記ビタミンが、ビオチン(B7)、コリン、葉酸(B9)、ナイアシンアミド(B3)、ピリドキシン(B6)、リボフラビン(B2)、チアミン(B1)、コバラミン(B12)、イノシトール、レチノール(A)、パントテン酸(B5)、アスコルビン酸(C)、コレカルシフェロール(D)、トコフェロール(E)、フィロキノン(K)、リポ酸、リノール酸、パラアミノ安息香酸、それらの塩、それらのエステル、又はそれらのの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項21】
前記塩が、塩化カルシウム、硫酸銅、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、硫酸亜鉛、ピリドキシンHCl、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硝酸塩、前述のうちのいずれかのイオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の塩を含む、請求項5に記載の組成物。。
【請求項22】
前記脂肪酸が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、合成コレステロール、酢酸D/L-トコフェロール、ベヘン酸、リグノセリン酸(lignoceric aid)、セロチン酸、ミリストレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、α-リノレン酸、エルカ酸、エイコサペンタエン酸、又はドコサヘキサエン酸のうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項23】
インスリン及び/又はトランスフェリンを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、動物由来フリー(animal origin free)である、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
懸濁物中で多能性幹細胞(PSC)を成長させるための方法であって、
懸濁物中で培養されるPSCを提供することと、
前記PSCを第1の組成物と培養容器中で接触させて、懸濁培養物を形成することであって、前記第1の組成物が、
(a)細胞培養基本培地と、
(b)グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(GSK3)阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む、第1の小分子阻害剤と、
(c)rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む、第2の小分子阻害剤と、
(d)1つ以上の有糸分裂成長因子と、
任意選択で、(e)1つ以上のアルブミン又はそのペプチドと、を含む、接触させることと、
PSC拡大に好ましい条件下で前記懸濁培養物を培養することと、を含む、方法。
【請求項26】
前記多能性幹細胞が、ヒト多能性幹細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PSCが、iPSC又はESCである、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記提供することが、PSCを単一細胞に解離することを含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記PSCが、前記接触させるステップの前に単一細胞として提供される、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記接触させることが、前記懸濁培養物のための播種するステップでのものである、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記播種するステップが、前記懸濁培養物の継代することでのものである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記PSCを、前記播種する又は継代するステップの少なくとも1日後に、(a)、(b)、(d)及び(e)を含む第2の組成物と接触させて、懸濁培養培地を改変することと、前記懸濁培養物を前記第2の組成物の存在下で培養することと、を更に含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の組成物と接触させるステップが、
(a)前記第1の組成物を前記第2の組成物に置換すること、
(b)前記第2の組成物を前記懸濁培養物上に重層すること、又は
(c)前記第1の組成物の一部を前記第2の組成物と交換すること、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
(c)が、前記第1の組成物の少なくとも25%を等価量の前記第2の組成物と交換することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(c)が、前記第1の組成物の少なくとも50%を等価量の前記第2の組成物と交換することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞を前記第2の組成物と接触させた少なくとも1日後に、前記懸濁培養培地の少なくとも25%を等価量の新鮮な第2の組成物と交換することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記懸濁培養培地を前記交換することが、前記懸濁培養培地の少なくとも50%を交換することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記懸濁培養培地の前記交換することが、その後毎日行われる、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記懸濁培養培地の前記交換することが、その後1日おきに行われる、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項40】
前記PSCを、前記播種する又は継代するステップの少なくとも1日後に、(a)、(d)及び(e)を含む第2の組成物と接触させて、懸濁培養培地を改変することと、前記懸濁培養物を前記第2の組成物の存在下で培養することと、を更に含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の組成物と接触させるステップが、
(a)前記第1の組成物を前記第2の組成物に置換すること、
(b)前記第2の組成物を前記懸濁培養物上に重層すること、又は
(c)前記第1の組成物の一部を前記第2の組成物と交換すること、を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(c)が、前記第1の組成物の少なくとも25%を等価量の前記第2の組成物と交換することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
(c)が、前記第1の組成物の少なくとも50%を等価量の前記第2の組成物と交換することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞を前記第2の組成物と接触させた少なくとも1日後に、前記懸濁培養培地の少なくとも25%を等価量の新鮮な第2の組成物と交換することを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記懸濁培養培地を前記交換することが、前記懸濁培養培地の少なくとも50%を交換することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記懸濁培養培地の前記交換することが、その後毎日行われる、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記懸濁培養培地の前記交換することが、その後1日おきに行われる、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの少なくとも1つが、血清フリーである、請求項25~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの少なくとも1つが、動物由来フリーである、請求項25~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の組成物、前記第2の組成物、又はそれらの組み合わせが、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する、請求項25~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記GSK3阻害剤が、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、BIO((2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、AR-A014418(N-[(4-メトキシフェニル)メチル]-N’-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ウレア)0、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンザゼピン-6(5H)-オン)、SB216763(ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、又はSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、それらの塩、それらのエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記GSK3が、CHIR99021を含む、請求項25~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ROCK阻害剤が、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)、Chroman1、Emricasan、ポリアミン、Trans-ISRIB、チアゾバビン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記ROCK阻害剤が、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)を含む、請求項25~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ROCK阻害剤が、ROCK1活性を阻害する、請求項25~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ROCK阻害剤が、ROCK2活性を阻害する、請求項25~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ROCK阻害剤が、ROCK1及びROCK2活性を阻害する、請求項25~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ以上の有糸分裂成長因子が、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、ヘレグリン(HRG)、若しくはKGF、又はそれらの組み合わせを含む、請求項25~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物が、少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含み、前記少なくとも2つの有糸分裂成長因子が、EGF及びTGF-α、EGF及びTGF-β、EGF及びbFGF、EGF及びBDNF、EGF及びHGF、EGF及びHRG、EGF及びKGF、TGF-α及びTGF-β、TGF-α及びbFGF、TGF-α及びBDNF、TGF-α及びHGF、TGF-α及びHRG、TGF-α及びKGF、TGF-β及びbFGF、TGF-β及びBDNF、TGF-β及びHGF、TGF-β及びHRG、TGF-β及びKGF、bFGF及びBDNF、bFGF及びHGF、bFGF及びHRG、bFGF及びKGF、BDNF及びHGF、BDNF及びHRG、BDNF及びKGF、HGF及びHRG、HGF及びKGF、又はHRG及びKGFを含む、請求項25~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの少なくとも1つが、アルブミン又はそのペプチドを含み、前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ラット血清アルブミン、マウス血清アルブミン、ウマ血清アルブミンサル血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、組換え血清アルブミン、前述のうちのいずれかの機能的フラグメント、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの少なくとも1つが、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)成分を更に含む、請求項25~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の組成物及び前記第2の組成物のうちの少なくとも1つが、インスリン及び/又はトランスフェリンを更に含む、請求項25~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記培養容器が、マルチウェルプレート、フラスコ、又はバイオリアクターから選択される、請求項25~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記懸濁培養物が、少なくとも20mLの体積を有する、請求項25~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記懸濁培養物が、少なくとも100mLの体積を有する、請求項25~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記第1及び第2の組成物中で前記懸濁培養物を培養しながら、前記細胞を撹拌することを更に含む、請求項25~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記撹拌することが、約30RPM~約180RPMでのものである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
懸濁培養物中で多能性幹細胞(PSC)を培養するための、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記組成物が、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月22日に出願された米国仮特許出願第63/042,419号(その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
少なくとも1つの小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、及びアルブミン、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせを含む細胞培養培地又はサプリメントが本明細書に記載される。サプリメントは、様々な時点で培地又は細胞培養物に添加されて、慣習的なPSC培地と比較して、多能性幹細胞(PSC)成長を増加させ、PSC増殖を増強し、PSC多能性を維持し、スフェロイド形態を維持し、PSC形態を維持し、PSC継代数を増加させ、PSC培養スケールを増加させ得る。
【背景技術】
【0003】
ヒト多能性幹細胞(hPSC)拡大は、下流分化、疾患モデリング、創薬、及び治療用途における使用のための細胞のほぼ無制限のプールの生成を可能にする。更に、PSCの適切な増殖及び分化は、細胞の損傷又は機能不全から生じる疾患を治療するための移植に適した細胞の無制限の供給源を生成するために潜在的に使用され得る。
【0004】
しかしながら、PSCを成長させるための報告されている方法の多くは最適以下である。例えば、マウス胚性幹細胞はしばしば、白血病抑制因子(LIF)を補充したフィーダーフリー培養を使用して未分化状態で維持される。ヒト胚性幹細胞(hESC)は、LIFの存在下でさえ、細胞がフィーダー細胞層又は好適なフィーダー細胞株からの馴化培地無しで培養されるときに分化する。フィーダー細胞(又はフィーダー細胞培養物からの馴化培地)を用いるシステムは、典型的には、培養されている幹細胞のものとは異なる種からの細胞を使用し、例えば、マウス胎仔線維芽細胞(MEF)は、hESCの大部分の報告されている未分化成長においてフィーダー層を形成する。更に、フィーダーフリーシステムの報告は、典型的には、MEF培養物からの馴化培地の使用を必要とし、これは非異種間産物/薬剤の必要性を取り除かない。ヒトフィーダー細胞を用いるシステムでさえ、未分化細胞を規定されていない培養条件に曝露することの欠点を有しており、したがって、多くの幹細胞培養条件はしばしば再現性がない。加えて、細胞療法を含む、多くの用途のために、大量のPSCが必要とされる。過去10年間にわたって、多能性幹細胞培養は、接着単層条件下でその拡大をサポートするための特殊化されたマトリックス及びフィーダーフリー培養培地システムの使用に移行した。これらの培養システムはワークフローを大いに単純化したが、拡大潜在力は表面積によって制限され、培養フラスコにおけるスケールアウトは著しい時間どおりの人手及び培養物汚染の危険性の増加を必要とする。例えば、エドモントンプロトコルを使用した膵島移植のために必要とされるPSCの数は、109~1010細胞/患者のオーダーであると見積もられる。
【0005】
細胞培養培地は、制御されたインビトロ環境で細胞を維持又は成長させるための栄養素を提供する。細胞培養培地の特徴及び組成は、そのために細胞が培養される特定の細胞の要求及び任意の機能に応じて変動する。培地は、典型的には、乾燥粉末、液体、液体濃縮物、凝集培地、又は凝集培地ペレットとして製造される。例えば、米国特許第6,383,810号及び同第6,627,426号、並びに米国特許出願公開第2018/0142203A1号及び同第2019/004831A1号(これらの各々は、細胞培養培地に関連する教示のために参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0006】
規定された細胞培養培地又はサプリメントが、PSCの成長、増殖、継代数、培養スケールを増加させ、培養されるPSCにおける多能性及び形態を維持する、PSCの培養、安定化、及び大スケール産生のための方法及び組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載の一実施形態は、多能性幹細胞(PSC)組成物であって、細胞培養基本培地と、1つ以上の有糸分裂成長因子と、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む第1の阻害剤と、rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む第2の阻害剤と、を含み、組成物は、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する、組成物である。一態様では、組成物は、rhoキナーゼ阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む、第2の小分子阻害剤を更に含む。いくつかの実施形態では、GSK3阻害剤及び/又はROCK阻害剤は、細胞培養サプリメント中で提供される。いくつかの実施形態では、GSK3阻害剤及び/又はROCK阻害剤は、基本培地中で提供される。
【0008】
一態様では、GSK3阻害剤は、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル))-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、BIO((2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、AR-A014418(N-[(4-メトキシフェニル)メチル]-N’-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ウレア)0、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンザゼピン-6(5H)-オン)、SB216763(ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、又はSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、それらの塩、それらのエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、GSK3阻害剤は、CHIR99021である。一態様では、ROCK阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)、Chroman1、Emricasan、ポリアミン、Trans-ISRIB、チアゾバビン(thiazovavin)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、ROCK阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)である。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK1活性を阻害する。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK2活性を阻害する。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK1活性及びROCK2活性を阻害する。
【0009】
一態様では、1つ以上の有糸分裂成長因子は、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、ヘレグリン(HRG)、若しくはKGF、又はそれらの組み合わせを含む。別の態様では、PSC組成物は、少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含み、少なくとも2つの有糸分裂成長因子は、EGF及びTGF-α、EGF及びTGF-β、EGF及びbFGF、EGF及びBDNF、EGF及びHGF、EGF及びHRG、EGF及びKGF、TGF-α及びTGF-β、TGF-α及びbFGF、TGF-α及びBDNF、TGF-α及びHGF、TGF-α及びHRG、TGF-α及びKGF、TGF-β及びbFGF、TGF-β及びBDNF、TGF-β及びHGF、TGF-β及びHRG、TGF-β及びKGF、bFGF及びBDNF、bFGF及びHGF、bFGF及びHRG、bFGF及びKGF、BDNF及びHGF、BDNF及びHRG、BDNF及びKGF、HGF及びHRG、HGF及びKGF、又はHRG及びKGFを含む。
【0010】
一態様では、PSC組成物は、アルブミン又はそのペプチドを更に含む。別の態様では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ラット血清アルブミン、マウス血清アルブミン、ウマ血清アルブミンサル血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、組換え血清アルブミン、前述のうちのいずれかの機能的フラグメント、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一態様では、PSC組成物は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)成分を更に含む。別の態様では、1つ以上のECM成分は、フィブロネクチン、ラミニン、ニドゲン、コラーゲン、ビトロネクチン、若しくはヘパラン硫酸プロテオグリカン、又はそれらの機能的フラグメントからなる群から選択される。別の態様では、PSC組成物は、トランスフェリン及び/又はインスリンを更に含む。
【0011】
一実施形態では、PSC組成物は、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、微量元素、抗酸化剤、塩、ヌクレオシド、緩衝剤、界面活性剤、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。一態様では、アミノ酸は、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、それらの塩、それらのエステル、又はそれらのジ若しくはトリペプチドのうちの1つ以上を含む。別の態様では、ビタミンは、ビオチン(B7)、コリン、葉酸(B9)、ナイアシンアミド(B3)、ピリドキシン(B6)、リボフラビン(B2)、チアミン(B1)、コバラミン(B12)、イノシトール、レチノール(A)、パントテン酸(B5)、アスコルビン酸(C)、コレカルシフェロール(D)、トコフェロール(E)、フィロキノン(K)、リポ酸、リノール酸、パラアミノ安息香酸、それらの塩、それらのエステル、又はそれらのの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。別の態様では、塩は、塩化カルシウム、硫酸銅、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、硫酸亜鉛、ピリドキシンHCl、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硝酸塩、前述のうちのいずれかのイオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の塩を含む。別の態様では、脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、合成コレステロール、酢酸d/l-トコフェロール、ベヘン酸、リグノセリン酸(lignoceric aid)、セロチン酸、ミリストレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、α-リノレン酸、エルカ酸、エイコサペンタエン酸、又はドコサヘキサエン酸のうちの1つ以上を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、PSC組成物は、血清フリーである。他の実施形態では、PSC組成物は、動物由来フリー(animal origin free)である。いくつかの実施形態では、PSC組成物は、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)を更に含む。
【0013】
本明細書に記載の別の実施形態は、懸濁培養物中で多能性幹細胞(PSC)を培養するためのPSC組成物の使用であって、組成物は、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する、使用である。
【0014】
本明細書にされる別の実施形態は、懸濁物中で多能性幹細胞(PSC)を成長させるため方法であって、懸濁物中で培養されるPSCを提供することと、PSCを第1の組成物と培養容器中で接触させて、懸濁培養物を形成することと、PSC拡大に好ましい条件下で懸濁培養物を培養することと、を含み、第1の組成物が、(a)細胞培養基本培地と、(b)グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む、第1の小分子阻害剤と、(c)rhoキナーゼ阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む、第2の小分子阻害剤と、(d)1つ以上の有糸分裂成長因子と、任意選択で、(e)1つ以上のアルブミン又はそのペプチドと、を含む、方法である。一態様では、多能性幹細胞は、ヒト多能性幹細胞である。別の態様では、PSCは、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)である。
【0015】
一態様では、提供するステップは、PSCを単一細胞に解離することを含む。別の態様では、PSCは、接触させるステップの前に単一細胞として提供される。一態様では、接触させることは、懸濁培養物のための播種するステップでのものである。別の態様では、播種するステップは、懸濁培養物の継代することでのものである。
【0016】
一実施形態では、第1の組成物と接触させること及びそれとともに培養することとの後に、方法は、PSCを、播種する又は継代するステップの少なくとも1日後に、(a)細胞培養基本培地と、(b)グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)阻害剤、その塩、又はそのエステルを含む、第1の小分子阻害剤と、(d)1つ以上の有糸分裂成長因子と、(e)1つ以上のアルブミン又はそのペプチドと、を含む、第2の組成物と接触させて、懸濁培養培地を改変することと、懸濁培養物を第2の組成物の存在下で培養することと、を更に含む。別の実施形態では、第1の組成物と接触させること及びそれとともに培養することの後に、方法は、PSCを、播種する又は継代するステップの少なくとも1日後に、(a)細胞培養基本培地と、(d)1つ以上の有糸分裂成長因子と、(e)1つ以上のアルブミン又はそのペプチドと、を含む、第2の組成物と接触させて、懸濁培養培地を改変することと、懸濁培養物を第2の組成物の存在下で培養することと、を更に含む。
【0017】
一態様では、第2の組成物と接触させるステップは、(a)第1の組成物を第2の組成物に置換すること、(b)第2の組成物を懸濁培養物上に重層すること、又は(c)第1の組成物の一部を第2の組成物と交換すること、を含む。一態様では、(c)第1の組成物の一部を第2の組成物と交換することは、第1の組成物の少なくとも25%を等価量の第2の組成物と交換することを含む。別の態様では、(c)第1の組成物の一部を第2の組成物と交換することは、第1の組成物の少なくとも50%を等価量の第2の組成物と交換することを含む。一態様では、方法は、細胞を第2の組成物と接触させた少なくとも1日後に、懸濁培養培地の少なくとも25%を等価量の新鮮な第2の組成物と交換することを更に含む。別の態様では、方法は、細胞を第2の組成物と接触させた少なくとも1日後に、懸濁培養培地の少なくとも50%を等価量の新鮮な第2の組成物と交換することを更に含む。一態様では、懸濁培養培地の更に交換することは、その後毎日行われる。別の態様では、懸濁培養培地の更に交換することは、その後1日おきに行われる。
【0018】
一態様では、培養容器は、マルチウェルプレート、フラスコ、又はバイオリアクターから選択される。一態様では、懸濁培養物は、少なくとも20mLの体積を有する。別の態様では、懸濁培養は、少なくとも100mLの体積を有する。一態様では、方法は、第1及び第2の組成物中で懸濁培養物を培養しながら、細胞を撹拌することを更に含む。別の態様では、撹拌することは、約30RPM~約180RPMでのものである。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の組成物及び第2の組成物のうちの少なくとも1つは、血清フリーである。他の実施形態では、第1の組成物及び第2の組成物のうちの少なくとも1つは、動物由来フリーである。いくつかの実施形態では、第1の組成物、第2の組成物、又はそれらの組み合わせは、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する。
【0020】
一態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物のGSK3阻害剤は、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、BIO((2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、AR-A014418(N-[(4-メトキシフェニル)メチル]-N’-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ウレア)0、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンザゼピン-6(5H)-オン)、SB216763(ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、又はSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、それらの塩、それらのエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、GSK3阻害剤は、CHIR99021である。一態様では、第1の組成物のROCK阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)、Chroman1、Emricasan、ポリアミン、Trans-ISRIB、チアゾバビン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様では、ROCK阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)である。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK1活性を阻害する。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK2活性を阻害する。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK1活性及びROCK2活性を阻害する。
【0021】
一態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物の1つ以上の有糸分裂成長因子は、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、ヘレグリン(HRG)、若しくはKGF、又はそれらの組み合わせを含む。別の態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含み、少なくとも2つの有糸分裂成長因子は、EGF及びTGF-α、EGF及びTGF-β、EGF及びbFGF、EGF及びBDNF、EGF及びHGF、EGF及びHRG、EGF及びKGF、TGF-α及びTGF-β、TGF-α及びbFGF、TGF-α及びBDNF、TGF-α及びHGF、TGF-α及びHRG、TGF-α及びKGF、TGF-β及びbFGF、TGF-β及びBDNF、TGF-β及びHGF、TGF-β及びHRG、TGF-β及びKGF、bFGF及びBDNF、bFGF及びHGF、bFGF及びHRG、bFGF及びKGF、BDNF及びHGF、BDNF及びHRG、BDNF及びKGF、HGF及びHRG、HGF及びKGF、又はHRG及びKGFを含む。
【0022】
一態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、アルブミン又はそのペプチドを含み、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ラット血清アルブミン、マウス血清アルブミン、ウマ血清アルブミンサル血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、組換え血清アルブミン、前述のうちのいずれかの機能的フラグメント、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)成分を更に含む。別の態様では、1つ以上のECM成分は、フィブロネクチン、ラミニン、ニドゲン、コラーゲン、ビトロネクチン、若しくはヘパラン硫酸プロテオグリカン、又はそれらの機能的フラグメントからなる群から選択される。別の態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、トランスフェリン及び/又はインスリンを更に含む。一態様では、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、微量元素、抗酸化剤、塩、ヌクレオシド、緩衝剤、界面活性剤、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例2に記載の、懸濁培養物中で成長させたWA09 hESC(上列、「H9-ESC」)及びGibco Human Episomal iPSC(中列、「Gepi」)の拡大に対する、培養培地に様々な濃度(X軸)で添加した個々の小分子(CHIR99021、PD0325901、SP00125、BIRD796、及びGo6983)並びに凝集剤の影響グラフの評価を示す。
図2】実施例2に記載の様々な条件下で懸濁培養物中で成長させたiPSCの位相差顕微鏡写真[40×]を示す。「継続的」という見出しの下の顕微鏡写真の左の列において、細胞を、示される濃度の示される小分子に継続的に曝露した。「1日目」という見出しの下の顕微鏡写真の右の列において、細胞を、示される濃度の示される小分子に1日目にのみ曝露した。
図3】iPSCの懸濁培養物への、抗凝集試薬無し(対照)又は抗凝集試薬有り(対照+DS)のPSC基礎培養培地(緑色の棒)と比較した、様々な小分子の毎日の添加(青色の棒、「継続的」)対小分子の1日目の添加(赤色の棒、「1日目」)の影響の倍率変化評価を示す棒グラフである。Y軸は、培養1日目~5日目の生存細胞数の倍率変化を示す。特定の条件下での5日目の細胞培養物の代表的な顕微鏡写真を示す。
図4】WA09 ESCの懸濁培養物への、抗凝集試薬物無し(対照)又は抗凝集試薬有り(対照+DS)の基礎培養培地(緑色の棒)と比較した、様々な小分子の毎日の添加(青色の棒、「継続的」)対小分子の1日目の添加(赤色の棒、「1日目」)の影響の倍率変化評価を示す棒グラフである。Y軸は、培養1日目~5日目の生存細胞数の倍率変化を示す。特定の条件下での5日目の細胞培養物の代表的な顕微鏡写真を示す。
図5A-5B】実施例3に記載のCHIR99021(3uM)又は10uLの抗凝集試薬の存在下で懸濁培養物中で成長させたiPSCの拡大に対するROCK阻害剤Y-27632、Pinacidil、又はRevitaCellの影響グラフの評価を示す。
図6】実施例3に記載の、示されるようにCHIR99021の存在下又は非存在下で様々な濃度のBSAを含有する基礎培養培地中の懸濁培養物中で成長させた細胞の位相差顕微鏡写真を示す。
図7】実施例3に記載の、示される濃度のCHIR99021及びBSAの存在下で懸濁培養物中で成長させたiPSCの、培養5日目の、位相差顕微鏡写真、並びにOCT4(緑色)及びDNA(青色)について染色した再プレーティングに際しての同じ拡大細胞の免疫細胞化学顕微鏡写真を示す。
図8】実施例3に記載の、懸濁培養物中で成長させたiPSCの拡大に対する、基礎PSC培養培地への様々な濃度のPinacidil、CHIR99021、Go6893及びBSA(示されるように)の添加の影響グラフの評価を示す。
図9A-9E】PSC懸濁培養物のための。ROCKi、PSC培地処方物及び市販培地を使用した懸濁培養物におけるPSC拡大及び多能性の維持を示す。図9A~9Bのグラフは、示される培地処方物における(A)Gibco Human Episomal iPSC及び(B)WA09(H9)ESCの拡大倍率変化を示す。図9Cのグラフは、OCT4陽性細胞%(iPSC(青色の棒)、ESC(赤色の棒))を介して評価される、示される培地処方物(x軸)での多能性の維持を示す。図9Dは、拡大後に自発的に分化したESCの位相差顕微鏡写真を示し、図9Eは、TaqMan(商標)hPSC Scorecard(商標)Panelを介して評価した拡大ESCの三系列分化を示す。
図10A-10C】PSC拡大のためのPSC培養培地処方物とのROCKiの組み合わせを示す。図10Aは、実施例3に記載のCHIR99021を除外する基礎PSC培養培地との、様々な濃度のPinacidil、Thiazovivin又はY-27632の組み合わせでのiPSC拡大における倍率変化を示す。図10Bは、Y-27632又はPinacidilとともに播種し、CHIR99021有り又は無しのPSC培地中で培養したiPSCの位相差顕微鏡写真を示す。図10Cは、以下のPSC培地処方物を用いて培養したiPSCの拡大における3継代累積倍率変化を示すグラフである:1)PSC培地+1X RevitaCell、2)PSC培地+1X RevitaCell+1.88μMのCHIR99021、3)PSC培地+10μMのY-27632、4)PSC培地+10μMのY-27632+1.88μMのCHIR99021。
図11A-11B】市販の培地、mTeSR1と比較した、様々な糖源及び様々な濃度のCHIR99021を含む基礎PSC培地を用いて100mLバイオリアクター中で拡大したiPSCの倍率変化拡大(A)及び生存率(B)を示す。培地交換を、実施例3に記載物の毎日(ED)又は1日おき(EOD)のケイデンスで完了した。
図12A-12D】PSC培養培地処方物とのROCKiの組み合わせの評価を示す。図12Aは、RevitaCellとともに及びY-27632とともに播種したときの5日目のiPSC拡大のグラフである。図12Bは、Pinacidilとともに及びY-27632とともに播種したときのiPSCの3継代拡大のグラフである。図12Cは、Chroman Iとともに及びY-27632とともに播種したときのiPSCの3継代拡大のグラフである。図12Dは、示されるROCKiをPSC培地処方物とともに使用して生成されたiPSCスフェロイドの位相差顕微鏡写真である。
図13】培地処方物を使用して成長させた懸濁培養物中のPSCの倍率拡大を示すグラフである。(A)CHIR99021の非存在下でのPSC培地、(B)CHIR99021を含有するPSC培地、及び(C)mTeSR1。
図14A-14C】完全PSC培地処方物の使用及びmTeSR1培地の使用からのiPSC拡大及び多能性の比較を示す。図14Aのグラフは、3継代にわたるiPSC拡大倍率変化を示す。図14Bのグラフは、継代の過程にわたる生存率を示す。図14Cのグラフは、多能性の細胞内マーカーOCT4及びNANOGを介して評価される多能性の維持を示す。
図15A-15B】播種のためにRevitaCell、Y-27632及びCellartis Supplement3を使用したスフェロイド成長の評価を示す。図15Aは、記述される播種条件からのスフェロイドの拡大倍率変化及び位相差顕微鏡写真を示す。図15Bは、記述される播種条件からのスフェロイドの多能性を示す。
図16】完全PSC培地及び2つの他の拡大培地中で拡大したPSCが、次いで、内胚葉系列に直接分化される能力を示すグラフである。
図17A-17B】完全PSC培地処方物中で拡大した細胞が、次いで、外胚葉系列に直接分化される能力を示すICC画像及びグラフを示す。図17Aは、SOX1(赤色)及びネスチン(緑色)の発現を示す代表的なICC画像を示し、SOX1発現の定量化を下のグラフに示す。図17Bは、PAX6(赤色)及びOTx2(緑色)の発現を示す代表的なICC画像を示し、PAX6の定量化を下のグラフに示す。
図18A-18D】PBSバイオリアクターを使用した100mLフォーマットでのPSC拡大及び多能性を示す。図18Aのグラフは、3継代にわたる倍率拡大iPSCを示す。図18B~18Cは、TaqMan(商標)hPSC Scorecard(商標)Panel(B)及びPluriTest(商標)Assay分析(C)を介して決定される多能性の維持を示す。図18Dは、KaryoStat Assay分析を介して評価した正常な核型の維持を示す。
図19A-19C】100mLスケールのPBSミニバイオリアクターにおけるスフェロイド直径チューニング(tuning)の評価を示す。図19A中の画像は、開始後3日目のスフェロイド形態を示し、様々な直径のスフェロイドを生成する能力を示す。図19Bのグラフは、様々な撹拌速度(x軸)でのバイオリアクター培養物についての継代後5日目の倍率変化を示す。各々の個々のフラスコからの細胞数を、個々のデータポイントによって示す。図19Cのグラフは、多能性の細胞外(TRA1-60、青色)及び細胞内(OCT4、赤色)マーカーの存在を介した様々な撹拌速度(x軸)でのバイオリアクター培養物についての多能性を示す。
図20A-20D】シェーカーフラスコ及び他の容器における異なる細胞株からのスフェロイド成長を示す。図20Aは、スフェロイドの代表的な位相差顕微鏡写真を示し、図20Bは、シェーカーフラスコ中で成長させたGibco Episomal iPSC、WTC-11 iPSC、WA09 ESC、及びWA01 ESCからの累積倍率拡大を示す。図20C~20Dは、様々なサイズのシェーカーフラスコ(C)及び複数のタイプの培養容器(D)におけるiPSCの倍率拡大を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
分子GSK3阻害剤、ROCK阻害剤、1つ以上の有糸分裂成長因子を含む細胞培養組成物が本明細書に記載される。有利なことに、本明細書に記載の細胞培養組成物は、慣習的なPSC培地と比較して、多能性幹細胞(PSC)成長を増加させ、PSC増殖を増強し、PSC多能性を維持し、スフェロイド形態を維持し、PSC形態を維持し、PSC継代数を増加させ、PSC培養スケールを増加させる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」は、単一細胞レベルで自己再生及び分化の両方をして、子孫細胞(自己再生前駆細胞、非再生前駆細胞、及び最終分化細胞を含む)を生成するその能力によって規定される未分化細胞を指す。幹細胞はまた、複数の胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)から様々な細胞系列の機能細胞にインビトロで分化する、並びに移植後に複数の胚葉の組織を生じる、及び胚盤胞中への注入後に実質的に大部分の(全てではないにしても)組織に寄与するその能力によって特徴付けられる。幹細胞は、その発生潜在力によって以下のように分類される:(1)全能性、全ての胚性及び胚外性細胞型を生じることができることを意味する、(2)多能性、全ての胚性細胞型を生じることができることを意味する、(3)多分化能性、細胞系列のサブセットを生じることができるが、全てが特定の組織、器官、若しくは生理学的システム内であることを意味する(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己再生)、血液細胞限定少能性前駆細胞及び血液の通常成分である全ての細胞型及び要素(例えば、血小板)を含む子孫を生成し得る)、(4)少能性、多分化能性幹細胞よりも限定された細胞系列のサブセットを生じることができることを意味する、又は(5)単能性、単一の細胞系列を生じることができることを意味する(例えば、精子形成幹細胞)。
【0026】
当業者は、多能性幹細胞が、SSEA3及び4、アルカリホスファターゼ、nanog、Oct4、Sox2などを含むがこれらに限定されない、1つ以上の「多能性マーカー」、又は多能性細胞を示す生体分子を発現し得ることを容易に理解する。多能性マーカーは、抗体ベースのアッセイ、PCRベースのアッセイ、ハイブリダイゼーションベースのアッセイ、細胞化学ベースのアッセイ、組織化学ベースのアッセイなどを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で受け入れられている技術を使用して測定され得る。いくつかの市販の試験が利用可能である。
【0027】
増殖させられた多能性幹細胞は、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉組織の3つ全ての胚葉の細胞に分化する潜在力を有する。幹細胞の多能性は、例えば、細胞を重症複合免疫不全症(SCID)マウス中に注入し、形成される奇形腫を4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、次いで、3つの胚葉からの細胞型の証拠についてそれを組織学的に調べることによって確認され得る。あるいは、多能性は、胚様体の作製、及び胚様体を3つの胚葉に関連するマーカーの存在について評価することによって決定され得る。増殖させられた多能性幹細胞株は、標準的なG分染技術を使用して核型決定され、対応する霊長類種の公開された核型と比較され得る。細胞は「正常な核型」を有し得る。これは、細胞が正倍数体であることを意味し、ここで、全てのヒト染色体が存在し、著しくは変化していない。
【0028】
本明細書に記載の実施形態において有用な多能性幹細胞には、妊娠の間の任意の時に、典型的には、必ずしもそうではないが、およそ妊娠10~12週の前に、採取された前期胚子組織(例えば、胚盤胞など)、胚組織、又は胎児組織を含む、妊娠後に形成された組織に由来する多能性細胞の樹立株が含まれる。非限定的な例としては、ヒト胚性幹細胞又はヒト胚性生殖細胞の樹立株、例えば、ヒト胚性幹細胞株H1、H7、及びH9などが挙げられる。本開示の組成物のそのような細胞の最初の樹立又は安定化の間の使用も企図され、この場合、供給源細胞は、供給源組織から直接採取された初代多能性細胞である。フィーダー細胞の非存在下で既に培養された多能性幹細胞集団から採取された細胞もまた好適である。例えば、BG01vなどの、変異ヒト胚性幹細胞株もまた好適である。例えば、成体体細胞などの、非多能性細胞に由来する多能性幹細胞もまた好適である。
【0029】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「人工多能性幹(iPS)細胞(iPSC)」(又は胚性様(embryonic-like)幹細胞)という語句は、体細胞(例えば、成体体細胞)の脱分化によって得られる増殖性の多能性幹細胞を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「分化」は、それによって特殊化されていない(「拘束されていない(uncommitted)」)か又はより少なく特殊化された細胞が、例えば、神経細胞又は筋細胞などの特殊化された細胞の特徴を獲得するプロセスを指す。分化した又は分化誘導された細胞は、細胞の系列内でより特殊化された(「拘束された(committed)」)位置にあるものである。「拘束された」という用語は、分化のプロセスに適用されるとき、通常の状況下では、それが特異的な細胞型又は細胞型のサブセットへの分化を継続する点まで分化経路において進行しており、通常の状況下では、異なる細胞型への分化又はより少なく分化した細胞型への復帰をし得ない細胞を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「脱分化」は、それによって細胞が、細胞の系列内のより少なく特殊化された(又は拘束された)位置に復帰するプロセスを指す。本明細書で使用される場合、細胞の系列は、細胞の遺伝、すなわち、それがどの細胞から来て、それが何の細胞を生じ得るかを規定する。細胞の系列は、細胞を発生及び分化の遺伝スキーム内に置く。系列特異的マーカーとは、目的の系列の細胞の表現型に特異的に関連する特徴を指し、拘束されていない細胞の目的の系列への分化を評価するために使用され得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「維持」は、一般に、細胞のより大きな集団を生じ得るか又はそうでない、細胞の成長、拡大、及び/又は分裂を促進する条件下で、成長培地に入れられた細胞を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「継代」は、細胞を1つの培養容器から取り出し、それを細胞の成長/拡大及び/又は分裂を促進する条件下で第2の培養容器に入れるプロセスを指す。いくつかの実施形態では、継代は、より小さなクラスター又は個々の細胞を得るための細胞クラスターの解離、それに続く、解離したクラスター又は細胞の培養培地中での成長を含み得る。いくつかの実施形態では、解離した細胞クラスター又は細胞の全部又は一部は、新たな培養培地に入れられる。いくつかの実施形態では、解離したクラスター又は細胞は、新たな培地に入れられず、むしろ、追加の培地又はサプリメントが、解離した細胞培養物に添加される。細胞の特定の集団、又は細胞株は、時折、それが継代された回数で称されるか又はそれによって特徴付けられる。例えば、10回継代された培養細胞集団は、P10培養物と称され得る。初代培養物、すなわち組織からの細胞の単離後の第1の培養物は、P0と称される。第1の継代培養の後、細胞は二次培養物(P1又は継代1)として記載される。第2の継代培養の後、細胞は三次培養物(P2又は継代2)になる、など。継代の期間の間に多くの集団倍加が存在し得、したがって、培養物の集団倍加の数は継代数よりも大きいことは、当業者によって理解される。継代間の期間の間の細胞の拡大(すなわち、集団倍加の数)は、播種密度、基材、培地、成長条件、及び継代間の時間を含むがこれらに限定されない、多くの要因に依存する。
【0034】
いくつかの実施形態では、懸濁培養のためのPSC播種密度は、約25,000~約400,000生存細胞/mLである。いくつかの実施形態では、懸濁培養のためのPSC播種密度は、約100,000~約200,000生存細胞/mLである。特定の実施形態では、PSC播種密度は、約150,000生存細胞/mLである。いくつかの実施形態では、PSC播種密度は、約25,000、約50,000、約75,000、約100,000、約125,000、約175,000、約200,000、約225,000、約250,000、約275,000、約300,000、約325,000、約350,000、約375,000、約400,000、約25,000~約100,000、約50,000~約200,000、約100,000~約300,000、又は約200,000~約400,000生存細胞/mLである。
【0035】
本明細書で使用される場合、PSC培養物の拡大の文脈において使用される「拡大する」という用語は、培養期間にわたって達成された生存細胞/培養物において播種された生存細胞を指す。したがって、拡大は、培養期間にわたる生存PSC数の倍率増加及び/又は増加パーセントを指し得る。単一の多能性幹細胞から得られ得る、多能性幹細胞の数は、多能性幹細胞の増殖能に依存することが理解される。多能性幹細胞の増殖能は、細胞の倍加時間(すなわち、細胞が培養物中で有糸分裂を受けるために必要とされる時間)及び多能性幹細胞培養物が未分化状態で維持され得る期間によって計算され得る(これは、継代数掛ける各継代間の日数と等価である)。
【0036】
本明細書で使用される場合、PSCの解離の文脈における「解離」という語句は、PSCの凝集塊又はクラスターをより小さな凝集塊又はクラスター及び/又は単一細胞に分離することを指す。機械的及び非機械的解離手段が、本明細書に記載の実施形態において有用である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「単一細胞」という語句は、多能性幹細胞が細胞クラスターを形成しない状態を指す。いくつかの実施形態では、「単一細胞」は、一緒にクラスター化された10個以下のPSC、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の細胞を指す。いくつかの実施形態では、PSC「クラスター」は、懸濁培養物中の、約200個以上の多能性幹細胞の凝集を指す。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞凝集塊の各々は、少なくとも約200個の細胞、少なくとも約500個の細胞、少なくとも約600個の細胞、少なくとも約700個の細胞、少なくとも約800個の細胞、少なくとも約900個の細胞、少なくとも約1000個の細胞、少なくとも約1100個の細胞、少なくとも約1200個の細胞、少なくとも約1300個の細胞、少なくとも約1400個の細胞、少なくとも約1500個の細胞、少なくとも約5×103個の細胞、少なくとも約1×104個の細胞、少なくとも約5×104個の細胞、少なくとも約1×105個の細胞、少なくとも約1×106個の細胞又はそれ以上を含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「懸濁培養物」は、その中で多能性幹細胞が表面に接着するのではなく、培地中に懸濁されている培養物を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「マーカー」は、目的の細胞において差次的に発現される生体分子(例えば、核酸、タンパク質、糖タンパク質など)を指す。この文脈において、差次的発現は、陽性マーカーについてはレベルの増加を、陰性マーカーについてはレベルの減少を意味する。マーカー核酸又はポリペプチドの検出可能なレベルは、目的の細胞が当該技術分野で知られている様々な方法のうちのいずれかを使用して同定され得、他の細胞と区別され得るように、他の細胞と比較して目的の細胞において十分により高いか又はより低い。多能性のマーカーには、SSEA3、SSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81、CD24、OCT4、NANOG、及びアルカリホスファターゼ(AP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「慣習的なPSC培地(customary PSC media)」又は「慣習的なPSC培地(customary PSC medium)」は、当該技術分野で知られている任意のPSC培地、例えば、MEF(マウス胎仔維芽細胞)馴化培地又はフィーダーフリーシステム、例えば、StemFlex(商標)培地、Nutristem(登録商標)hESC XF培養培地、Essential8(商標)培地、mTeSR(商標)培地、mTeSR(商標)-2培地などを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「プリン誘導体」という用語は、プリン複素環式化合物及びその変形を指す。別の態様では、プリン誘導体は、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチド、又はプリンヌクレオチド一、二、若しくは三リン酸を指す。一態様では、「プリン誘導体」は、プリン、アデニン、アロプリノール、カフェイン、ジフィリン、グアニン、ヒポキサンチン、イソグアニン、テオブロミン、テオフィリン、尿酸、キサンチン、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、又はそれらの組み合わせを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「培地又はサプリメント濃縮物」、「濃縮培地、サプリメント、又は培地」、「濃縮物」又は「#×濃縮物」という語句は、互換的に使用され、1つ以上の種を使用のために意図された濃度、すなわち「作業濃度」よりも高い濃度で含有する溶液を指す。「#×濃縮物」の場合、「#×」は希釈係数を指す。例えば、「10×濃縮物」は、1×作業濃度を達成するために10倍希釈される。10×濃縮物(例えば、2M)は、1×作業濃度(例えば、200mM)を達成するために、1部の10×濃縮物を9部の溶媒(水など)と組み合わせることによって希釈される。希釈式C1・V1=C2・V2(式中、C1は初期濃度であり、V1は初期体積であり、C2は最終濃度であり、V2は最終体積である)を使用して、適切な希釈を計算し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「粉末」又は「乾燥粉末」という用語は、その肉眼的な外観が易流動性であり得る、乾燥顆粒形態で存在する細胞培養のためのフィード、サプリメント、又は培地粉末若しくは粉末化培地組成物を指す。「粉末」という用語は、凝集粉末を含む。凝集培地、フィード、栄養粉末、サプリメントなどの調製、それらの特性、及び凝集培地、フィード、栄養粉末、サプリメントなどの自動pH及び自動浸透圧モル濃度を調製する方法は、米国特許第6,383,810号及び同第6,627,426号、並びに米国特許出願公開第2019/0048312A1号に記載され、とりわけ、これらのそれぞれは、凝集培地に関連する教示のために参照により組み込まれている。
【0044】
本明細書で使用される場合、「成分」という用語は、化学又は生物起源に関係なく、細胞の増殖の成長を維持又は促進するために、細胞培養培地において使用され得る任意の化合物を指す。「成分(component)」、「栄養素」、及び成分(ingredient)」という用語は互換的に使用され、全てはそのような化合物を指す。細胞培養培地において使用される典型的な成分としては、アミノ酸、塩、金属、糖、炭水化物、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質などが挙げられる。エクスビボでの細胞の培養を促進又は維持する他の成分は、特定の必要性によって、当業者によって選択され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「細胞培養」又は「培養」という用語は、人工的な、例えば、インビトロ環境における細胞の維持を指す。しかしながら、「細胞培養」という用語は一般名称であり、ヒト若しくは動物細胞、個々の原核生物(例えば、細菌)又は真核生物(例えば、動物、植物及び真菌)細胞などの細胞の培養だけでなく、そのために「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」又は「器官型培養」という用語が「細胞培養」という用語と互換的に使用され得る、組織、ヒト若しくは動物組織、器官、器官系又は生物全体の培養もまた包含するように使用され得ることを理解されたい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「細胞培養培地」、「培養培地」、「培地処方物」、「多能性幹細胞組成物」、「PSC組成物」、「PSC培地」、又は「培地」(各々の場合に複数形「培地(media)」)という語句は、細胞の培養及び/又は成長をサポートする栄養溶液又は「栄養培地」を指し、これらの語句は互換的に使用され得る。細胞培養培地は、基本培地(細胞成長をサポートするために追加の成分を必要とする一般的な培地)又は細胞成長をサポートするための全ての又はほとんど全ての成分を有する完全培地であり得る。細胞培養培地は、血清フリー、タンパク質フリー(一方又は両方)、動物由来フリーであり得、効率的で堅牢な細胞性能のために、小分子、成長因子、添加物、フィード、サプリメントなどの追加の成分を必要とし得るか又はそうでない。
【0047】
本明細書で使用される場合、「基礎培地」、又は「基本培地」は、典型的には、細胞成長をサポートするために補充を必要とする培地を指す。基本培地は、ビタミン及びアミノ酸を含み得るが、タンパク質、脂質、小分子、又は成長因子を含まない。
【0048】
本明細書に記載の栄養培地及びサプリメントは、本明細書に記載されるように調製及び使用され得る様々な「サブグループ」に分けられ得る。そのようなサブグループは、別々に調製され、次いで、組み合わされて、栄養培地を生成し得る。適合性サブグループ及び関連する考慮事項の例については、米国特許第5,474,931号及び同第5,681,748号を参照されたい。これらは、このような教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「組み合わせる」という用語は、細胞培養培地処方物における成分の混合又は混ぜ合わせを指す。組み合わせは、液体若しくは粉末の形で、又は1つ以上の粉末及び1つ以上の液体で行うことができる。一例では、2つ以上の成分を混合して、培地若しくはサプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液などの複合的混合物を生成し得る。組み合わせには、乾燥成分と液体成分の混合も含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「接触させる」という用語は、培養される細胞を、その中で細胞が培養される培地及び/又はサプリメントとともに培養容器中に入れることを指す。「接触させる」という用語は、とりわけ、細胞を培地及び/又はサプリメントと混合すること、細胞を培地及び/又はサプリメントで灌流すること、培地及び/又はサプリメントを培養容器中で細胞上にピペッティングすること、並びに細胞を培養培地及び/又はサプリメント中に浸すことを包含する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「培養」という用語は、細胞の活動又は静止状態での、成長、分化、又は継続的な生存率に好都合な条件下での人工環境における細胞の維持を指す。したがって、「培養」は、「培養する」、「細胞培養」、「細胞成長」、「細胞維持」、又は上記の同義語のうちのいずれかと互換的に使用され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「培養容器」という用語は、細胞を保持するための入れ物を指す。容器は、細胞を培養、保持、又は貯蔵するための無菌環境を提供することができるガラス、プラスチック、金属、又は他の材料であり得る。培養容器は、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、又は96ウェルプレートなどの、ウェルを有するプレートであり得る。プレートは、様々な細胞培養用途のために使用され得る非組織培養処理プレートであり得る。プレートは、無菌である透明な、未処理の、疎水性ポリスチレン表面を有し得る。プレートは、リバーシブルでない蓋を有し得、ウェル間の相互凝縮を防止する。培養容器は、シェーカーフラスコ、スピナーフラスコ、バイオリアクター、懸濁バッグ、又は細胞を培養するための他の手段であり得る。いくつかの実施形態では、培養容器は、125mLシェーカーフラスコ、250mLシェーカーフラスコ、100mLバイオリアクター、又は500mLバイオリアクターであり得る。「コンテナ」という用語は同義である。
【0053】
いくつかの実施形態では、PSCは、約1mL~約1000mLの懸濁培養体積中で成長させられる。いくつかの実施形態では、PSCは、約0.5mL~約2mL、0.5mL~約20mL、約20mL~約100mL、約20mL~約500mL、約100mL~約500mL、又は約500mL~約1000mLの懸濁培養体積中で成長させられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、PSCを培養する又は成長させることは、細胞培養の間に細胞を撹拌することを含む。いくつかの実施形態では、懸濁培養物中のPSCは、培養期間の大部分の間、撹拌又は撹拌運動に供される。いくつかの実施形態では、懸濁培養物中のPSCは、培養期間の大部分の間、一定の又は継続的な撹拌又は撹拌運動に供される。培養細胞を撹拌するための例示的な手段としては、オービタルロッカープラットフォームなどのロッカープラットフォーム、磁気撹拌プレートなどの撹拌プレート、CO2耐性シェーカーなどのオービタルシェーカー、及びバイオリアクター、例えば、回転ホイールインペラーを有するバイオリアクター又は撹拌インペラーを有するバイオリアクターが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるように、PSC懸濁培養物が撹拌される速度は、限定されないが、懸濁培養物の体積、培養容器のサイズ及びタイプ、培養物を撹拌するための手段、細胞密度、及び培養の間に所望されるスフェロイドサイズに従って変動し得る。いくつかの実施形態では、懸濁物中でPSCを培養することは、細胞を少なくとも20RPM~約200RPMで撹拌することを含む。いくつかの実施形態では、懸濁物中でPSCを培養することは、約30RPM~約180RPM、約40RPM~約160RPM又は約40RPM~約80RPMで細胞を撹拌することを含む。特定の実施形態では、懸濁培養物中のPSCは、培養期間を通して単一の速度で撹拌される。特定の実施形態では、懸濁培養物中のPSCは、培養期間の間、少なくとも2つの異なる速度で撹拌される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「有効濃度」という用語は、使用のために利用可能である、成分の量を指す。一例は、培養培地中のビタミンの量である。これは、通常そのビタミンに関連する生物学的プロセスで使用するために細胞が利用できる。したがって、有効量には、細胞が代謝するために利用可能な細胞培養成分(例えば、ビタミン又は糖)の量が含まれる。成分の有効量は、例えば、当業者に利用可能な知識から、又は実験的決定によって、決定され得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「サプリメント」、「サプリメント組成物」、「幹細胞培養サプリメント組成物」、「フィード」、又は「フィード又はサプリメント」という用語は、標準的な培養物中の細胞に添加されたときに、細胞の維持、拡大、成長、及び生存率に有益であり得るか、又は細胞性能に影響を与え得る、培養物寿命を増加させ得る、細胞増殖を増加させ得る、多能性を維持し得る、スフェロイド形態を維持し得る、PSC形態を維持し得る、継代数を増加させ得る、培養スケールを増加させ得るなどの組成物を指す。「フィード」又は「サプリメント」という用語は、本開示において互換的に使用され得、培養物、又は細胞培養システム中の細胞の成長又は性能を再均衡化(rebalance)若しくは補充又は調節するために必要とされる、1つ以上の小分子阻害剤(例えば、ROCK阻害剤及び/若しくはGSK3阻害剤など)、アミノ酸、糖、ビタミン、無機塩若しくは有機塩、微量元素、緩衝液、ペプチド、加水分解物、画分、成長因子(有糸分裂成長因子を含む)、アルブミン、ホルモンなどを含む培地、フィード、又はサプリメントの乾燥粉末又は液体フォーマットを指す。フィード又はサプリメントは、それが、典型的には、細胞を培養するために使用され得るか又は使用されている細胞培養培地に添加される(例えば、特定の培地中の既存の細胞培養物に添加されるか又は培地に細胞を添加する前に特定の培地に添加される)という点で、細胞培養培地と区別され得る。細胞が培地中で成長するにつれて、成分は消費され、フィード又はサプリメントはそれらの枯渇又は分解された成分を置換する。培地、サプリメント、又はサプリメントを含む培地の一部は、細胞が培地中で成長するにつれて細胞培養物から除去され、等価量の新鮮な培地、サプリメント、又はサプリメントを含む培地に置換され得る(すなわち、交換され得る)。例えば、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換される。いくつかの実施形態では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が交換される。他の実施形態では、フィード、サプリメント、又はサプリメントを含有する培地は、培養溶液の上部に重層として添加され得る。更に、フィード又はサプリメントは、例えば、細胞生存率を増加させること、細胞増殖を増加させること、細胞成長を増強すること、多能性を維持すること、形態を維持すること、又は継代数を増加させることによって、培養物内の細胞を調節するために使用され得る。当業者によって理解されるように、フィード又はサプリメントは、培養物、又は細胞培養システム中の細胞の成長又は性能を再均衡化若しくは補充又は調節するために必要とされる、アミノ酸、糖、ビタミン、緩衝液などを含み得る。
【0057】
本明細書に記載の一実施形態では、フィード又はサプリメントは、細胞培養適合性ビヒクル中に、少なくとも1つの小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、又はアルブミン、その塩、若しくはエステル、又はそれらの組み合わせを含む。そのようなサプリメントは、細胞成長を増加させる、細胞生存率を増加させる、培養物寿命を増加させる、細胞増殖を増加させる、多能性を維持する、スフェロイド形態を維持する、PSC形態を維持する、継代数を増加させる、又は培養スケールを増加させるために、新たな又は既存の細胞培養物に時々添加され得る。そのようなフィード又はサプリメントは、濃縮物若しくは作業濃度のものであり得、又は単に希釈の割合を占め、元の培地中に存在する成分の濃度を維持するように特定の成分について部分的に濃縮され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、細胞培養培地組成物は、いくつもの成分で構成され、これらの成分は培養培地ごとに変動する。「1×処方物」は、作業濃度で細胞培養培地中に見出される一部又は全ての成分を含む、任意の水溶液を指すことを意味する。「1×処方物」は、例えば、細胞培養培地、又はその培地のための成分の任意のサブグループを指し得る。1×溶液における成分の濃度は、インビトロで細胞を維持又は培養するために使用される細胞培養処方物において見出されるその成分の濃度とほぼ同じである。細胞のインビトロ培養のために使用される細胞培養培地は、定義により1×処方物である。いくつもの成分が存在する場合、1×処方物中のそれぞれの成分は、細胞培養培地中のそれらの成分の濃度にほぼ等しい濃度を有する。例えば、RPMI-1640培養培地は、成分の中でも、0.2g/Lのl-アルギニン、0.05g/Lのl-アスパラギン、及び0.02g/Lのl-アスパラギン酸を含有する。これらのアミノ酸の「1×処方物」は、溶液中にほぼ同じ濃度のこれらの成分を含む。したがって、「1×処方物」に言及する場合、溶液中のそれぞれの成分は、説明される細胞培養培地において見出される濃度と同じ又はほぼ同じ濃度を有することが意図される。細胞培養培地の1×処方物の濃度及び成分は当業者に知られている。例えば、Banes et al.,Methods for Preparation of Media,Supplements and Substrate for Serum-Free Animal Cell Culture,Alan R.Liss,N.Y.(1984)を参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、浸透圧モル濃度及び/又はpHは、特により少ない成分が1×処方物中に含有されるときに、培養培地と比較して1×処方物において異なり得る。任意の成分の1×濃度は、様々な培地処方物にわたって必ずしも一定ではない。したがって、1×は、異なる培地に言及するときに、単一成分の異なる濃度を示し得る。しかしながら、一般に使用されるときに、1×は、言及される培地のタイプにおいて一般的に見出される典型的な作業濃度を示す。1×の量は、関連する体積の培地に対して1×の濃度になる成分の量である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「10×処方物」は、その溶液中の各成分が、細胞培養培地中の同じ成分よりも約10倍濃縮されている溶液を指す。例えば、RPMI-1640培養培地の10×処方物は、成分の中でも、2.0g/Lのl-アルギニン、0.5g/Lのl-アスパラギン、及び0.2g/Lのl-アスパラギン酸を含有し得る(上述の1×処方物と比較されたい)。「10×処方物」は、1×培養培地に見られる濃度の約10倍の濃度でいくつもの追加の成分を含み得る。容易に明らかとなるように、「20×処方物」、「25×処方物」、「50×処方物」及び「100×処方物」は、それぞれ、1×細胞培養培地と比較して、約20、25、50又は100倍の濃度の成分を含有する溶液を示す。同様に、培地処方物及び濃縮溶液の浸透圧モル濃度及びpHは異なる場合がある。培養培地濃縮物技術に関する米国特許第5,474,931号を参照されたい。
【0060】
本明細書で使用される場合、「生理学的pH」は、約4より大きく、約9未満である。他の又は特定のpH値又は範囲、例えば、4.2、4.5、4.8、5.0、5.2、5.5、5.7、5.8、6.0、6.2、6.5、6.7、6.8、7.0、7.2、7.4、7.5、7.8、8.0、8.2、8.4、8.5、8.7、8.8などを超える最小若しくは最大pH、又は約4.0~約9.0、約4.0~約5.0、約5.0~約6.0、約6.0~約7.0、約8.0~約9.0、約4.0~約6.0、約5.0~約7.0、約6.0~約8.0、約7.0~約9.0、約6.0~約9.0、若しくは約4.0~約7.0の最小若しくは最大pHもまた、サプリメントを溶解するのに使用できる。一部のサプリメントは、好ましくはないが、これらの範囲外でのみ完全に溶解できる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「生物学的及び生化学的活性の著しい損失無しに」という語句は、新鮮に作製された同じ処方の栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、緩衝液又はサンプルと比較したときの、目的の栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、緩衝液又はサンプルの生物学的又は生化学的活性の約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、又は約10%未満の減少を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「溶媒」は、培地の別の成分を溶解するか又は溶解した液体である。溶媒は、培地、フィード、サプリメント、サブグループ、又は他の処方物の調製において、及び細胞を培養するための調製における培地の再構成又は濃縮物の希釈において使用され得る。溶媒は、極性、例えば、水性溶媒、又は非極性、例えば、有機溶媒であり得る。溶媒は複合的(すなわち、成分を可溶化するために1つより多い成分を必要とする)であり得る。複合的溶媒は、アルコール及び水などの2つの液体の単純混合物であり得、又は液体中の塩若しくは他の固体の混合物であり得る。場合によっては、可溶性混合物を形成するために、2、3、4、5、6、又はそれ以上の成分が必要になることがある。エタノール又はメタノールと水との混合物などの単純溶媒は、その調製及び取り扱いの容易さのために使用され得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「延長された期間」又は「長期貯蔵寿命」という用語は、互換的に、そのためにサンプル(例えば、医薬組成物、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液)が貯蔵される期間よりも長い期間を指す。したがって、本明細書で使用される場合、「延長された期間」又は「長期貯蔵寿命」は、約-70℃、約-20℃、約0℃、約4℃、約10℃、約20℃、約25℃、約-70℃~約25℃、約-20℃~約25℃、約0℃~約25℃、約4℃~約25℃、約10℃~約25℃、又は約20℃~約25℃の温度での貯蔵を含み得る、所与の貯蔵条件下での、約1~36ヶ月、約2~30ヶ月、約3~24ヶ月、約6~24ヶ月、約9~18ヶ月、又は約4~12ヶ月を意味する。医薬組成物又は臨床組成物、細胞培養試薬、栄養素、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液の生物学的又は生化学的活性を決定するためのアッセイは、当該技術分野でよく知られており、当業者が精通している。
【0064】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は「およそ」を意味し、数値を修飾するとき、値が記述された値の±10%変動し得ることを示す。
【0065】
本明細書に記載の一実施形態は、多能性幹細胞組成物であって、細胞培養基本培地、少なくとも1つのGSK3阻害剤、1つ以上の有糸分裂成長因子、及び、任意選択で、少なくとも1つのROCK阻害剤を含み、細胞培養物に添加されたときに、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供する、組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上のアルブミン又はそのペプチドを更に含む。本明細書に記載の組成物はまた、任意選択で、とりわけ培養物又は細胞培養システム中の細胞の培地成分を再均衡化又は補充するために必要とされる、1つ以上のアミノ酸、糖、ビタミン、ペプチドを含有し得る。一態様では、組成物は、細胞培養における使用の前に又はその際に希釈される液体濃縮物である。別の態様では、フィードは、培養物に直接添加されるか又は細胞培養物への添加の前に濃縮物若しくは作業体積を達成するように細胞培養適合性ビヒクル(例えば、水)中に溶解される、乾燥粉末、凝集粉末、錠剤、又は他の乾燥形態である。一態様では、組成物は、表1の例示的なリストから様々に選択される成分を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【0066】
一実施形態では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、少なくとも1つの小分子阻害剤、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせを含む。一態様では、小分子阻害剤は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)阻害剤、その塩、若しくはそのエステル、又はrhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、その塩、若しくはそのエステルである。本明細書で使用される場合、「GSK3阻害剤」という用語は、阻害剤分子、その塩及びそのエステルを含む。本明細書で使用される場合、「ROCK阻害剤」又は「ROCKi」という用語は、阻害剤分子、その塩及びそのエステルを含む。一態様では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、小分子GSK3阻害剤及びROCK阻害剤を含む。別の態様では、GSK3阻害剤は、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、BIO((2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、AR-A014418(N-[(4-メトキシフェニル)メチル]-N’-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ウレア)0、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンザゼピン-6(5H)-オン)、SB216763(ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、又はSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK1活性又はROCK2活性を阻害する。別の態様では、ROCK阻害剤は、ROCK1活性及びROCK2活性を阻害する。別の態様では、rhoキナーゼ阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)、Chroman1、Emricasan、ポリアミン、Trans-ISRIB、Pinacidil又はチアゾバビン、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。Chroman1、Emricasan、ポリアミン、及びTrans-ISRIBの小分子阻害剤の組み合わせ(CEPT)は、そのような教示について参照により本明細書に組み込まれる、Chen et al.,BioRxiv(Oct.2019)doi.org/10.1101/815761に記載されている。
【0067】
別の実施形態では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、少なくとも1つの有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせを含む。一態様では、有糸分裂成長因子は、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、アクチビンA、脳由来神経栄養因子(BDNF)、肝細胞成長因子(HGF)、ヘレグリン(HRG)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF)、増殖刺激因子(multiplication-stimulating factor)(MSF)、肉腫成長因子(sarcoma growth factor)(SGF)、神経成長因子(NGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、トロンボポエチン(TPO)、骨形態形成タンパク質(bone morphogenic protein)(BMP)、成長分化因子(GDF)、ニューロトロフィン、骨格成長因子(SGF)、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、ジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせである。
【0068】
一態様では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、アクチビンA、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、HRG、若しくはKGF、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、ジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の有糸分裂成長因子を含む。別の態様では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、HRG、若しくはKGF、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、ジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせから選択される2つ以上の有糸分裂成長因子を含む。別の態様では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、EGF及びTGF-α、EGF及びTGF-β、EGF及びbFGF、EGF及びBDNF、EGF及びHGF、EGF及びHRG、EGF及びKGF、TGF-α及びTGF-β、TGF-α及びbFGF、TGF-α及びBDNF、TGF-α及びHGF、TGF-α及びHRG、TGF-α及びKGF、TGF-β及びbFGF、TGF-β及びBDNF、TGF-β及びHGF、TGF-β及びHRG、TGF-β及びKGF、bFGF及びBDNF、bFGF及びHGF、bFGF及びHRG、bFGF及びKGF、BDNF及びHGF、BDNF及びHRG、BDNF及びKGF、HGF及びHRG、HGF及びKGF、HRG及びKGF、とりわけ、それらの塩、それらのエステル、又はそれらのジ若しくはトリペプチドから選択される少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含む。
【0069】
一実施形態では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、少なくとも1つのアルブミン、そのペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。一態様では、アルブミンは、ヒト(HSA)、ウシ(BSA)、ウシ胎児(FBS)、ラット、マウス、ウマ、サル、又はブタ血清に由来し得る。一態様では、アルブミンは、組換えHSA又はそのペプチドを含むがこれらに限定されない、組換えアルブミンであり得る。一態様では、アルブミンは、HSA、BSA、FBS、それらのペプチド、又はそれらの組み合わせである。
【0070】
多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物における小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、及びアルブミンの濃度は、同様であり得るか又は異なり得、用途及び細胞型又は培養タイプ(例えば、プレート、フラスコ、シェーカーフラスコ、バイオリアクターなど)に応じて変動し得る。更に、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、作業濃度のものであり得るか又は使用の前若しくは使用の間に希釈される濃縮物であり得る。多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、培養物に直接添加される粉末又は液体であり得る。
【0071】
一実施形態では、小分子阻害剤、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせは、約0.5μM~約100μM(特定される範囲内の各整数を含む)の作業濃度を有する。別の実施形態では、有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約0.1ng/ml~約1000ng/ml(特定される範囲内の各整数を含む)の作業濃度を有する。別の実施形態では、アルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約0.1%~約3%(特定される範囲内の各整数を含む)の作業濃度を有する。
【0072】
別の実施形態では、小分子阻害剤、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせは、約5μM~約1mM(特定される範囲内の各整数を含む)の10×濃縮物濃度を有する。別の実施形態では、有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約1.0ng/ml~約10,000ng/ml(特定される範囲内の各整数を含む)の10×濃縮物濃度を有する。別の実施形態では、アルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約1%~約30%(特定される範囲内の各整数を含む)の10×濃縮物濃度を有する。
【0073】
一実施形態では、小分子阻害剤、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせは、約0.1μM、0.15μM、0.2μM、0.25μM、0.3μM、0.35μM、0.4μM、0.45μM、0.5μM、0.55μM、0.6μM、0.65μM、0.7μM、0.75μM、0.8μM、0.85μM、0.9μM、0.95μM、1μM、1.1μM、1.15μM、1.2μM、1.25μM、1.3μM、1.35μM、1.4μM、1.45μM、1.5μM、1.55μM、1.6μM、1.65μM、1.7μM、1.75μM、1.8μM、1.85μM、1.9μM、1.95μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、5μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、110μM、120μM、130μM、140μM、150μM、160μM、170μM、180μM、190μM、200μM、210μM、220μM、230μM、240μM、250μM、260μM、270μM、280μM、290μM、300μM、310μM、320μM、330μM、340μM、350μM、360μM、370μM、380μM、390μM、400μM、410μM、420μM、430μM、440μM、450μM、460μM、470μM、480μM、490μM、500μM、510μM、520μM、530μM、540μM、550μM、560μM、570μM、580μM、590μM、600μM、610μM、620μM、630μM、640μM、650μM、660μM、670μM、680μM、690μM、700μM、710μM、720μM、730μM、740μM、750μM、760μM、770μM、780μM、790μM、800μM、810μM、820μM、830μM、840μM、850μM、860μM、870μM、880μM、890μM、900μM、910μM、920μM、930μM、940μM、950μM、960μM、970μM、980μM、990μM、1000μM、0.1mM、0.2mM、0.5mM、0.75mM、1mM、2.5mM、5mM、7.5mM、10mM、15mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、210mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、300mM、310mM、320mM、330mM、340mM、350mM、360mM、370mM、380mM、390mM、400mM、410mM、420mM、430mM、440mM、450mM、460mM、470mM、480mM、490mM、又は約500mMの濃度を有する。
【0074】
一実施形態では、小分子阻害剤、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせは、約0.1μM~約1μM、約0.2μM~約1μM、約0.3μM~約1μM、約0.4μM~約1μM、約0.5μM~約1μM、約0.6μM~約1μM、約1μM~約5μM、約1μM~約4μM、約1μM~約3μM、約1μM~約2μM、約1μM~約10μM、約1μM~約20μM、約1μM~約50μM、約1μM~約100μM、約1μM~約200μM、約1μM~約500μM、約1μM~約1000μM、約10μM~約20μM、約10μM~約30μM、約10μM~約40μM、約10μM~約40μM、約10μM~約60μM、約10μM~約70μM、約10μM~約80μM、約10μM~約90μM、約10μM~約100μM、約100μM~約200μM、約100μM~約300μM、約100μM~約400μM、約100μM~約500μM、約100μM~約600μM、約100μM~約700μM、約100μM~約800μM、約100μM~約900μM、約100μM~約1000μM、約1mM~約5mM、約1mM~約10mM、約1mM~約20mM、約1mM~約50mM、約1mM~約100mM、約1mM~約200mM、約1mM~約500mM、約1mM~約1000mM、約10mM~約20mM、約10mM~約30mM、約10mM~約40mM、約10mM~約40mM、約10mM~約60mM、約10mM~約70mM、約10mM~約80mM、約10mM~約90mM、約10mM~約100mM、約100mM~約200mM、約100mM~約300mM、約100mM~約400mM、約100mM~約500mM、約100mM~約600mM、約100mM~約700mM、約100mM~約800mM、約100mM~約900mM、又は約100mM~約1000mMの濃度を有する。
【0075】
一実施形態では、有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約0.1ng/ml、0.2ng/ml、0.3ng/ml、0.4ng/ml、0.5ng/ml、0.6ng/ml、0.7ng/ml、0.8ng/ml、0.9ng/ml、1.0ng/ml、2.0ng/ml、3.0ng/ml、4.0ng/ml、5.0ng/ml、6.0ng/ml、7.0ng/ml、8.0ng/ml、9.0ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、65ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、110ng/ml、120ng/ml、140ng/ml、160ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、225ng/ml、250ng/ml、275ng/ml、300ng/ml、325ng/ml、350ng/ml、375ng/ml、400ng/ml、425ng/ml、450ng/ml、475ng/ml、500ng/ml、525ng/ml、550ng/ml、575ng/ml、600ng/ml、625ng/ml、650ng/ml、675ng/ml、700ng/ml、725ng/ml、750ng/ml、775ng/ml、800ng/ml、825ng/ml、850ng/ml、875ng/ml、900ng/ml、925ng/ml、950ng/ml、975ng/ml、又は約1000ng/mlの作業濃度を有する。
【0076】
一実施形態では、有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/ml、150ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、500ng/ml、550ng/ml、600ng/ml、650ng/ml、700ng/ml、750ng/ml、800ng/ml、850ng/ml、900ng/ml、950ng/ml、1000ng/ml、1100ng/ml、1200ng/ml、1400ng/ml、1600ng/ml、1800ng/ml、2000ng/ml、2250ng/ml、2500ng/ml、2750ng/ml、3000ng/ml、3250ng/ml、3500ng/ml、3750ng/ml、4000ng/ml、4250ng/ml、4500ng/ml、4750ng/ml、5000ng/ml、5250ng/ml、5500ng/ml、5750ng/ml、6000ng/ml、6250ng/ml、6500ng/ml、6750ng/ml、7000ng/ml、7250ng/ml、7500ng/ml、7750ng/ml、8000ng/ml、8250ng/ml、8500ng/ml、8750ng/ml、9000ng/ml、9250ng/ml、9500ng/ml、9750ng/ml、又は約10,000ng/mlの10×濃縮濃度を有する。
【0077】
一実施形態では、有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約0.1ng/ml~約1ng/ml、約0.2ng/ml~約1ng/ml、約0.3ng/ml~約1ng/ml、約0.4ng/ml~約1ng/ml、約0.5ng/ml~約1ng/ml、約0.6ng/ml~約1ng/ml、約1ng/ml~約5ng/ml、約1ng/ml~約4ng/ml、約1ng/ml~約3ng/ml、約1ng/ml~約2ng/ml、約1ng/ml~約10ng/ml、約1ng/ml~約20ng/ml、約1ng/ml~約50ng/ml、約1ng/ml~約100ng/ml、約1ng/ml~約200ng/ml、約1ng/ml~約500ng/ml、約1ng/ml~約1000ng/ml、約10ng/ml~約20ng/ml、約10ng/ml~約30ng/ml、約10ng/ml~約40ng/ml、約10ng/ml~約50ng/ml、約10ng/ml~約60ng/ml、約10ng/ml~約70ng/ml、約10ng/ml~約80ng/ml、約10ng/ml~約90ng/ml、約10ng/ml~約100ng/ml、約100ng/ml~約200ng/ml、約100ng/ml~約300ng/ml、約100ng/ml~約400ng/ml、約100ng/ml~約500ng/ml、約100ng/ml~約600ng/ml、約100ng/ml~約700ng/ml、約100ng/ml~約800ng/ml、約100ng/ml~約900ng/ml、約100ng/ml~約1000ng/ml、約1000ng/ml~約2000ng/ml、約1000ng/ml~約3000ng/ml、約1000ng/ml~約4000ng/ml、約1000ng/ml~約5000ng/ml、約1000ng/ml~約6000ng/ml、約1000ng/ml~約7000ng/ml、約1000ng/ml~約8000ng/ml、約1000ng/ml~約10000ng/ml、約2000ng/ml~約10000ng/ml、約5000ng/ml~約10000ng/ml、約300ng/ml~約1000ng/ml、約30ng/ml~約100ng/ml、約40ng/ml~約200ng/ml、約40ng/ml~約150ng/ml、約10ng/ml~約200ng/ml、約10ng/ml~約250ng/ml、又は約50ng/ml~約500ng/mlの濃度を有する。
【0078】
一実施形態では、アルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1%、1.05%、1.1%、1.15%、1.2%、1.25%、1.3%、1.35%、1.4%、1.45%、1.5%、1.55%、1.6%、1.65%、1.7%、1.75%、1.8%、1.85%、1.9%、1.95%、2%、2.05%、2.1%、2.15%、2.2%、2.25%、2.3%、2.35%、2.4%、2.45%、2.5%、2.55%、2.6%、2.65%、2.7%、2.75%、2.8%、2.85%、2.9%、2.95%、3%、3.05%、3.1%、3.15%、3.2%、3.25%、3.3%、3.35%、3.4%、3.45%、3.5%、3.55%、3.6%、3.65%、3.7%、3.75%、3.8%、3.85%、3.9%、3.95%、4%、4.05%、4.1%、4.15%、4.2%、4.25%、4.3%、4.35%、4.4%、4.45%、4.5%、4.55%、4.6%、4.65%、4.7%、4.75%、4.8%、4.85%、4.9%、4.95%、5%、6%、7%、8%、9%、又は約10%の濃度を有する。
【0079】
一実施形態では、アルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせは、約0.1%~約5%、約0.15%~約5%、約0.2%~約5%、約0.25%~約5%、約0.3%~約5%、約0.35%~約5%、約0.4%~約5%、約0.45%~約5%、約0.5%~約5%、約0.55%~約5%、約0.6%~約5%、約0.65%~約5%、約0.7%~約5%、約0.75%~約5%、約0.8%~約5%、約0.85%~約5%、約0.9%~約5%、約0.95%~約5%、約1%~約5%、約1.05%~約5%、約1.1%~約5%、約1.15%~約5%、約1.2%~約5%、約1.25%~約5%、約1.3%~約5%、約1.35%~約5%、約1.4%~約5%、約1.45%~約5%、約1.5%~約5%、約1.55%~約5%、約1.6%~約5%、約1.65%~約5%、約1.7%~約5%、約1.75%~約5%、約1.8%~約5%、約1.85%~約5%、約1.9%~約5%、約1.95%~約5%、約2%~約5%、約0.1%~約1%、約0.05%~約2.0%、約0.1%~約2%、約0.15%~約2%、約0.2%~約2%、約0.25%~約2%、約0.3%~約2%、約0.35%~約2%、約0.4%~約2%、約0.45%~約2%、約0.5%~約2%、約0.55%~約2%、約0.6%~約2%、約0.65%~約2%、約0.7%~約2%、約0.75%~約2%、約0.8%~約2%、約0.85%~約2%、約0.9%~約2%、約0.95%~約2%、約1%~約2%、約1.05%~約2%、約1.1%~約2%、約1.15%~約2%、約1.2%~約2%、約1.25%~約2%、約1.3%~約2%、約1.35%~約2%、約1.4%~約2%、約1.45%~約2%、約1.5%~約2%、約1.55%~約2%、約1.6%~約2%、約1.65%~約2%、約1.7%~約2%、約1.75%~約2%、又は約1.8%~約2%の濃度を有する。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞組成物におけるアルブミンの量及び小分子阻害剤(例えば、GSK3阻害剤)の量は、拡大の際の多能性の維持のために均衡化される。小分子阻害剤とアルブミンとの組み合わせのそのような実施形態では、小分子阻害剤は、培養期間を通して含まれ得る。
【0080】
一実施形態では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、1つ以上の小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、アルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせなどの、成分の組み合わせを含み、ここで、各成分(又はそれらの組み合わせ)は、組み合わされるか、又は細胞培養物、培養容器、若しくは他のコンテナに別々に添加される。例えば、各小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、又はアルブミンのストック溶液のアリコートは、多能性幹細胞組成物、若しくはサプリメント組成物を構成するように組み合わされ得、又は各々は、細胞培養物若しくは他のコンテナに個別に添加され得る。一態様では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、他の細胞培養適合性成分に加えて、1つ以上の小分子阻害剤及び1つ若しくは有糸分裂成長因子、その塩、そのエステル、又はそれらの組み合わせを含み得る。別の態様では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、他の細胞培養適合性成分に加えて、1つ以上の小分子阻害剤、1つ若しくは有糸分裂成長因子、及び1つ以上のアルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0081】
表1に示される例示的な培地及びサプリメント成分は、溶液、濃縮物、粉末、凝集粉末、錠剤、カプセル、又は他の送達手段に処方され得る。一態様では、フィード又はサプリメント処方物は、固体粉末又は凝集粉末である。いくつかの実施形態では、例示的な処方物は、再構成されるか、培養物に直接添加されるか、又は使用前に細胞培養適合性ビヒクル(例えば、水、緩衝液、培地、フィード溶液など)中に溶解される、液体又は乾燥粉末として処方され得る。一態様では、例示的な処方物は、液体である。別の態様では、例示的な処方物は、使用の前又は間に希釈される液体濃縮物である。別の態様は、本明細書に記載の多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物成分を個別に又はまとめてのいずれかで補充した細胞培養物又は細胞培養システムである。別の態様は、本明細書に記載の多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物を利用する細胞培養システムである。別の態様は、本明細書に記載の多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物を細胞培養物又は細胞培養システムに添加することによって、PSC成長を増加させる、PSC増殖を増強する、PSC多能性を維持する、スフェロイド形態を維持する、PSC形態を維持する、PSC継代数を増加させる、又はPSC培養スケールを増加させる、又はそれらの組み合わせの方法である。本明細書に記載の別の実施形態は、本明細書に記載の多能性幹細胞組成物若しくはサプリメント組成物又はその個々の成分を投与された、PSC成長の増加、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、若しくはPSC培養スケールの増加、又はそれらの組み合わせを有する細胞培養物である。
【0082】
本明細書に記載されるように生成される栄養培地、培地サプリメント及び培地サブグループは、細胞の成長をサポートするために使用され得る任意の培地、培地サプリメント又は培地サブグループ(血清フリー又は血清含有)であり、細胞は、動物細胞(特に、哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞)であり得、そのうちの任意のものは、体細胞、生殖細胞、正常細胞、罹患細胞、形質転換細胞、変異細胞、幹細胞、前駆細胞又は胚細胞であり得る。細胞は、幹細胞などの自己複製細胞であり得る。幹細胞は、人工多能性細胞(iPSC)、胚に由来する胚性幹細胞(ES細胞)、体細胞核移植によって作製された胚性幹細胞(ntES細胞)、及び未受精卵からの胚性幹細胞(単為生殖胚性幹細胞、若しくはpES細胞)などの多能性幹細胞(PSC)であり得る。そのような栄養培地には、細胞培養培地、好ましくはPSC培養培地又は動物細胞培養培地が含まれ得るが、これらに限定されない。PSC培地及び/又は培地サプリメントは、生物学的流体(特に、ウシ血清、特に、ウシ胎児、新生仔ウシ又は正常仔ウシ血清、ウマ血清、ブタ血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、サル血清、類人猿血清又はヒト血清(それらのうちの任意のものは胎児血清であり得る))及びその抽出物(より好ましくはウシ血清アルブミン又はヒト血清アルブミンを含むが、これらに限定されない、血清アルブミン)を含み得るが、これらに限定されない。PSC培地及び/又は培地サプリメントは、組換え発現アルブミン、その抽出物又はペプチドフラグメント、例えば、組換えヒトアルブミンを含み得る。培地サプリメントには、StemPro(商標)LipoMAX(商標)サプリメント、OptiMAb(商標)サプリメント、Knock-Out(商標)Serum Replacement(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific)などの規定された代替物もまた含まれ得る。そのようなサプリメントはまた、とりわけ、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、付着因子、タンパク質を含むが、これらに限定されない、規定された成分を含み得る。
【0083】
一実施形態では、フィード又はサプリメントは、培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液の凝集粉末を含む。本明細書に記載の一態様では、凝集培地サプリメントは、培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液の溶液を凝集させるために流動床技術を使用して生成される。流動床技術は、出発物質から特徴(特に、例えば、溶解度)が変化した凝集粉末を製造するプロセスである。一般に、技術の適用、粉末を上向きに移動している空気柱中で懸濁し、同時に制御され規定された量の流体を粉末流中に注入して、粉末の湿潤状態を生成し、次いで、温和な熱を使用して材料を乾燥させ、凝集粉末を生成する。いくつかの態様では、凝集培地サプリメント又はサブグループは、専有のAdvanced Granulation Technology(商標)(AGT(商標)乾燥培地フォーマット)(Gibco(商標))を使用して生成される。Jayme et al.,“A Novel Application of Granulation Technology to Improve Physical Properties and Biological Performance of Powdered Serum-Free Culture Media,”In:Shirahata et al.(Eds)Animal Cell Technology:Basic&Applied Aspects.Vol.12(2002),Springer,Dordrechtを参照されたい。
【0084】
本明細書に記載の処方物及び方法を使用して、PSC成長を増加させる、PSC増殖を増強する、PSC多能性を維持する、スフェロイド形態を維持する、PSC形態を維持する、PSC継代数を増加させる、若しくはPSC培養スケールを増加させる、又はそれらの組み合わせのための栄養培地サプリメント又は培地サプリメントサブグループを調製し得る。
【0085】
任意の栄養培地、培地サプリメント、又は培地サプリメントサブグループは、本明細書に記載の方法によって調製され得る。特に、本明細書に記載されるように調製され得る栄養培地サプリメント又はサプリメントサブグループには、ヒト及び他の動物細胞、特に、幹細胞、例えば、限定されないが、iPSC、ES細胞、ntES細胞、及びpES細胞などのPSCの成長をサポートする細胞培養培地、フィード、又はサプリメント、及び培地サプリメントサブグループが含まれる。
【0086】
本明細書に記載されるように利用され得る動物細胞培養培地の例としては、DMEM、RPMI-1640、MCDB131、MCDB153、MDEM、IMDM、MEM、M199、McCoy’s 5A、Williams’Media E、Leibovitz’s L-15 Medium、F10 Nutrient Mixture、F12 Nutrient Mixture、MEF(マウス胎仔線維芽細胞)馴化培地、StemFlex、Nutristem hESC XF培養培地、Essential8(商標)培地、mTeSR培地、mTeSR-2培地、及び幹細胞、PSC、ケラチノサイト、内皮細胞、肝細胞、メラノサイト、様々なCHO細胞、293細胞、PerC6、ハイブリドーマ、造血細胞、胚細胞、神経細胞などの培養をサポートするように設計されたものなどの細胞特異的血清フリー培地(SFM)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の化学的に規定された培地製品には、CD CHO Medium(Gibco(商標))、CD OptiCHO Medium(Gibco(商標))、Dynamis Medium(Gibco(商標))、ExpiCHO Stable Production Medium(Gibco(商標))、BalanCD(登録商標)CHO Growth A(Irvine Scientific)、PowerCHO(商標)Advance(Lonza)、EX-CELL(登録商標)Advanced(商標)CHO Medium(Millipore Sigma-Aldrich)、HyClone(商標)ActiPro(商標)(GE Healthcare Life Sciences)が含まれる。特定のフィードサプリメントには、CHO CD EfficeientFeed(商標)A(又はB)AGT(商標)Nutritional Supplement(Gibco(商標))、CD EfficientFeed(商標)C AGT(商標)Nutrient Supplement(Gibco(登録商標))、EfficientFeed(商標)A+AGT(商標)Supplement(Gibco(商標))、EfficientFeed(商標)B+AGT(商標)Supplement(Gibco(商標))、Resurge(商標)CD1 Supplement(Gibco(商標))、HyClone(商標)Cell Boost Supplements(様々なバージョン)(GE Healthcare Life Sciences)、EX-CELL(登録商標)Advanced(商標)CHO Feed1(Millipore Sigma-Aldrich)などが含まれる。調製に好適な他の培地、培地サプリメント、及び培地サブグループは市販されている。これらの培地、培地サプリメント及び培地サブグループ、並びに多くの他の一般的に使用される動物細胞培養培地、培地サプリメント及び培地サブグループのための処方は、当該技術分野でよく知られており、文献に記載されており、例えば、Thermo Fisher Scientific、Life Technologies、Gibco、Invitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
【0087】
本明細書に記載されるように使用され得る上述の培地、培地サプリメント、培地サプリメントサブグループ、又は緩衝液のうちの任意のものはまた、指示剤又は選択剤(例えば、色素、抗生物質、アミノ酸、酵素、基質など)、フィルター(例えば、木炭)、塩、多糖、イオン、界面活性剤、安定剤などの、1つ以上の追加の成分を含み得る。
【0088】
本明細書に記載の別の実施形態では、多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物は、培養培地に最適な緩衝能を提供するのに十分な濃度の1つ以上の緩衝塩を含み得る。一態様では、1つ以上の緩衝液は、酢酸、アセチルサリチル酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、ホウ酸、ブタン酸、酪酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸を、炭酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グリセリン酸、グリセロリン酸、グリシン、グリグリシン、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリコール酸、ヘミ硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒプリン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフチル酸、ニコチン酸、亜硝酸、シュウ酸、ペラルゴン、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サッカリン、サリチル酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、チオグリコール酸、チオ硫酸、トシル酸、ウンデシレン酸、MES、ビス-トリスメタン、ADA、ACES、ビス-トリスプロパン、PIPES、MOPSO、塩化コラミン、MOPS、BES、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、アセトアミドグリシン、TAPSO、TEA、POPSO、HEPPSO、EPS、HEPPS、トリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トロメタミン)、グリシンアミド、グリシルグリシン、HEPBS、ビシン、TAPS、AMPB、CHES、AMP、AMPSO、CAPSO、CAPS、CABS、それらの組み合わせ、又はそれらの塩を含む。一態様では、緩衝液は、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ブタン酸塩、乳酸塩、グリシン、マレイン酸塩、ピルビン酸塩、クエン酸塩、アコニット酸塩、イソクエン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、オキサロ酢酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トロメタミン)、それらの組み合わせ、又はそれらの塩の1つ以上を含む。
【0089】
本明細書に記載の一態様では、炭酸水素ナトリウムなどの緩衝塩が、培地の凝集の前、間、又は後に細胞培養培地、フィード、又はサプリメントに添加され得る。本明細書に記載のこの態様の一例では、凝集培地の再構成に際して、培養培地が、様々な細胞型の培養に最適な又は実質的に最適なpHにあるように、緩衝塩が、適切な溶媒(例えば、水、血清、又はpH調整剤、例えば、酸(例えば、1M~5M、0.1M~5M、若しくは好ましくは1Mの濃度のHCl)又は塩基(例えば、1M~5M、0.1M~5M、若しくは好ましくは1Mの濃度のNaOH)とともに凝集の前、間、又は後に培養培地に添加され得る。例えば、本方法によって調製された動物細胞培養培地は、再構成に際して、好ましくは、約6~8又は約7~8、より好ましくは約7~7.5、又は約7.2~7.4のpHを有する。
【0090】
別の例では、1つ以上の緩衝塩が、栄養培地に直接添加され得る。関連する態様では、酸(例えば、HCl)又は塩基(例えば、NaOH)などのpH調整剤が、1つ以上の緩衝塩を含有し得る栄養培地に、流動床装置における栄養培地中へのpH調整剤の凝集によって、pH調整剤の粉末化若しくは凝集栄養培地上への噴霧乾燥によって、又はそれらの組み合わせによって添加され得、このアプローチにより、粉末化培地の再構成後のpH調整剤のその後の添加が不要になる。本明細書に記載の栄養培養培地は、溶媒(例えば、水又は血清)を用いた再構成に際して、液体培地のpHの調整の必要性無しに、細胞の培養又は成長のサポートに最適であるpHを有する、インビトロでの細胞の培養又は成長に有用である。例えば、これらの方法に従って調製された哺乳動物細胞培養培地は、約7.1~約7.5、より好ましくは約7.1~約7.4、最も好ましくは約7.2~約7.4又は約7.2~約7.3のpHを有し得る。
【0091】
別の実施形態では、特定の培地成分(特に、リン酸塩又は他の緩衝塩)のpH反対(pH-opposing)形態が、所望のpHを提供するために培養培地において使用され得る。成分のpH反対形態は、共役酸-塩基ペアであり、ここで、ペアのメンバーは、pHを上昇させるか又は低下させるかのいずれかをして、溶液の所望のpHを達成し得る。ナトリウムHEPES(pH上昇)及びHEPES-HCl(pH低下)は、pH反対成分の例である。例えば、4.5~7.2のpHを有する培地を調製する場合、最初のステップは、所望のpHをもたらすために一塩基性(pHを低下させるための)リン酸塩の二塩基性(pHを上昇させるための)リン酸塩に対する正しいバランスを決定することである。典型的には、一塩基性及び二塩基性リン酸塩は、約0.1mM~約10mM、約0.2mM~約9mM、約0.3mM~約8.5mM、約0.4mM~約8mM、約0.5mM~約7.5mM、約0.6mM~約7mM、又は好ましくは約0.7mM~約7mMの濃度で使用される。他の緩衝系が処方物において使用される場合、塩基性(典型的には、ナトリウム又は一塩基性)緩衝塩及び対応する酸性(又はpH反対、典型的にはHCl又は二塩基性)緩衝塩の適正な比率又はバランスは、処方物が所望の最終pHになることを確実にするために同様に決定される。溶液中に存在する実際のリン酸分子種は、塩基性(例えば、ナトリウム又は一塩基性)又は酸性(例えば、HCl又は二塩基性)の形態が添加されても、所与のpHで同じであるため、この調整は緩衝能に影響を及ぼすとは予想されない。一旦適切な緩衝液のpH反対形態の適切な比率が決定されると、これらの成分は、使用前に適切なpHレベルのものである培養培地を提供するために、培地(例えば、乾燥粉末培地)に添加され得る。
【0092】
別の実施形態は、使用前の培地へのいかなる補充栄養成分の添加の必要も無しに、インビトロでの細胞の培養を直接サポートする、本明細書に記載の多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物である。したがって、本明細書に記載のこの態様による培地は、好ましくは、インビトロでの細胞の培養に必要な栄養成分を含み、その結果、追加の栄養成分が、溶媒中に含まれるか、又は使用前に培地に添加される必要はない。そのような完全培地は、自動的pH調整培地であり得、1つ以上の培養培地サプリメント(血清、血清代替物サプリメント又は組換えアルブミンを含むがこれに限定されない)、1つ以上のアミノ酸(l-グルタミンを含むがこれに限定されない)、インスリン、トランスフェリン、1つ以上のホルモン、1つ以上の脂質、1つ以上の成長因子、1つ以上の有糸分裂成長因子、1つ以上の小分子阻害剤、1つ以上のサイトカイン、1つ以上の神経伝達物質、1つ以上の動物組織、器官若しくは腺の抽出物、1つ以上の酵素、1つ以上のタンパク質、1つ以上の微量元素、1つ以上の細胞外マトリックス成分、1つ以上の抗生物質、1つ以上のウイルス阻害剤、及び又は1つ以上の緩衝液などの1つ以上の成分を含み得る。いくつかの実施形態では、完全培地には、細胞が成長し、培地からそのような成分を消費するか又は枯渇させるにつれて、少なくとも1つの小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、又はそれらの組み合わせを含むフィード又はサプリメントを更に補充し得る。特定の実施形態では、完全培地には、細胞が成長し、培地からそのような成分を消費するか又は枯渇させるにつれて、少なくとも1つの小分子阻害剤、有糸分裂成長因子、及びアルブミン、その塩、そのエステル、そのジ若しくはトリペプチド、又はそれらの組み合わせを含むフィード又はサプリメントを更に補充し得る。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞組成物、サプリメント及び/又は完全培地は、血清フリーである。他の実施形態では、多能性幹細胞組成物、サプリメント及び/又は完全培地は、動物由来フリーである。
【0093】
本明細書に記載の培地、フィード若しくはサプリメントに添加され得る、又は本明細書に記載の方法によって調製され得る追加の成分の例としては、ウシ血清、ウシ胎児、新生仔ウシ及び仔ウシ血清、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル血清、類人猿血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清などのような動物血清、StemPro(商標)LipoMAX(商標)サプリメント、OptiMAb(商標)サプリメント、Knock-Out(商標)Serum Replacement(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific)などの規定された代替物、ホルモン(コルチコステロイド、エストロゲン、アンドロゲン(例えば、テストステロン)などのステロイドホルモン、及びインスリンなどのペプチドホルモンを含む、サイトカイン(成長因子(例えば、EGF、αFGF、βFGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGFなど)、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロンなどを含む)、有糸分裂成長因子(例えば、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、HRG、KGF、VEGF、PDGF、IGF、MSF、SGF、NGF、FGF、G-CSF、GM-CSF、エリスロポエチン、TPO、BMP、GDF、ニューロトロフィン、SGF)、小分子阻害剤(例えば、GSK3阻害剤、rhoキナーゼ阻害剤)、神経伝達物質、脂質(リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、Excyte(商標)、コレステロールなどを含む)、付着因子(フィブロネクチ、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどのような細胞外マトリックス成分を含む)、並びに動物組織、細胞、器官又は腺の抽出物又は加水分解物(ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、ニワトリ肉抽出物、ニワトリ組織抽出物、アキレス腱及びそれらの抽出物など)など)が挙げられるが、これらに限定されない。本方法によって生成され得る、又は本明細書に記載の培養培地中に含まれ得る他の培地サプリメントには、天然又は組換えであり得る様々なタンパク質(血清アルブミン、特にウシ又はヒト血清アルブミン、免疫グロブリン及びそのフラグメント又は複合体、アプロチニン、ヘモグロビン、ヘミン又はヘマチン、酵素(トリプシン、コラゲナーゼ、パンクレアチニン(pancreatinin)、又はディスパーゼなど)、リポタンパク質、フェチュイン、フェリチンなどのような)、ビタミン、アミノ酸及びそのバリアント(l-グルタミン及びl-シスチンを含むがこれらに限定されない)、酵素補因子、多糖、塩又はイオン(モリブデン、バナジウム、コバルト、マンガン、セレンなどの塩又はイオンなどの微量元素を含む)、並びに、当業者が精通する、インビトロで細胞を培養するのに有用である他のサプリメント及び組成物が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成される培地及び/又は培地サプリメントは、動物又は哺乳動物(例えば、ヒト、魚、ウシ、ブタ、ウマ、サル、類人猿、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、昆虫など)由来のサプリメント、成分、又は産物を含む。これらの血清及び他の培地サプリメントは市販されている。あるいは、本明細書に記載の血清及び他の培地サプリメントは、当業者にとって日常的である当該技術分野で知られている方法によって、それらの天然供給源から単離され得るか、又は組換え的に産生され得る。Freshney,R.I.,Culture of Animal Cells,New York:Alan R.Liss,Inc.,pp.74-78(1983)を参照されたい。Harlow,E.,and Lane,D.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1988)もまた参照されたい。他の実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成される培地及び/又は培地サプリメントは、動物由来成分を含まず、動物由来フリー培地及び/又はサプリメントである。
【0094】
本明細書に記載の多能性幹細胞組成物又はサプリメント組成物と組み合わせて使用され得る緩衝液の例としては、緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)処方物、Tris緩衝生理食塩水(TBS)処方物、HEPES緩衝生理食塩水(HBS)処方物、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ダルベッコPBS(DPBS)、アール平衡塩類溶液、Puckの生理食塩水、Murashige and Skoog植物基本塩類溶液、Kellerの海洋植物基本塩類溶液、Provasoliの海洋植物基本塩類溶液、並びにKao及びMichaylukの基本塩類溶液などが挙げられるが、これらに限定されない。市販されている、これらの緩衝液のための、並びに多くの他の一般的に使用される緩衝液のための処方は、当該技術分野でよく知られており、例えば、Thermo Fisher Scientific Catalogueにおいて、DIFCO(商標)&BBL(商標)Manual,2nd ed.(Becton,Dickinson and Company,2009)において、及びMillipore Sigma Cell Culture Catalogueにおいて見出され得る。
【0095】
試験培養培地中の化合物(例えば、ビタミン)の有効濃度を決定するための1つの方法は、以下のとおりである。例証の目的のためにビタミンを使用すると、既知の濃度のビタミンを、ビタミンを欠く培養培地中に段階希釈する。試験培養培地を、これもまたビタミンを欠く培養培地中に段階希釈する、段階希釈液の第2のセットを設定する。次いで、成長のためにビタミンを必要とする細胞を、段階希釈したサンプルの両方のセットに添加し、適切な条件下で培養する。一定期間の後、細胞複製を測定する(例えば、細胞計数によって又は光学密度を測定することによって)。既知の濃度の測定値をグラフ化して標準曲線を作成し、これに試験培養培地希釈液からの測定値を比較して、試験培養培地中のビタミンの有効濃度を決定する。任意のいくつかの同様のアッセイを使用して、サンプル中の代謝物の量を決定し得る。
【0096】
本明細書に記載の別の実施形態は、本明細書に記載の栄養培地、培地サプリメント、培地サプリメントサブグループ又は緩衝液を滅菌するための、並びにボールミル又は凍結乾燥などの標準的な方法によって調製された粉末化栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ及び緩衝液を滅菌するための方法である。本明細書に記載の栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、及び緩衝液を含むサンプルを滅菌又は実質的に滅菌するための方法も記載されている。そのような追加の方法には、濾過、熱滅菌、照射、又は他の化学的又は物理的方法が含まれ得る。栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液(本明細書に記載されるように調製されるは、滅菌に好都合な条件下で照射され得る。栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、及び緩衝液は通常、大きな体積の溶液で調製され、熱に不安定な成分を含むことが多いため、照射又は加熱による滅菌には適していない。したがって、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、及び緩衝液は、一般に、濾過などの汚染物質除去方法によって滅菌され、そのような培地、培地サプリメント、培地サブグループ、及び緩衝液を製造するために必要な費用及び時間を大幅に増加させる。
【0097】
本明細書に記載の方法に従って調製された栄養培地、培地サプリメント、培地サプリメントサブグループ、又は緩衝液は、濾過、照射、又はオートクレーブを含む当該技術分野における一般的な方法によって滅菌され得る。例えば、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液は、滅菌に好都合な条件下で照射され得る。好ましくは、この照射は、バルクで(すなわち、サンプル、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液の包装の後に)達成され、最も好ましくは、この照射は、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液中に存在し得る細菌、真菌、胞子又はウイルスが不活性化される(すなわち、複製するのを妨げられる)ような条件下での、本明細書に記載のバルク包装されたサンプル、培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液のガンマ線源への曝露によって達成される。あるいは、照射は、サンプル、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液の、包装の前の、ガンマ線源又は紫外線源への曝露によって達成され得る。本明細書に記載のサンプル、培地、培地サプリメント、培地サブグループ及び緩衝液は、あるいは、例えば、瞬間殺菌又はオートクレーブによる熱処理によって滅菌することができる(サブグループ、又はサンプル、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液の成分が熱安定性である場合)。当業者によって理解されるように、滅菌のために必要とされる、照射の線量又は熱、及び曝露の時間は、滅菌される材料の容積に依存し、過度の実験無しに当業者によって容易に決定され得る。
【0098】
栄養培地、培地フィード若しくはサプリメント、培地サプリメントサブグループ、又は緩衝液は、当業者に知られている標準的な細胞培養技術に従って細胞を培養又は操作するために使用され得る。そのような技術において、培養される細胞は、細胞の培養又は操作に好都合な条件(制御された温度、湿度、細胞撹拌、照明、及び大気条件など)の下で、本明細書に記載の栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ、又は緩衝液と接触させられる。そのような方法による培養に特に適している細胞には、動物細胞が含まれるが、これに限定されない。そのような動物細胞は、既知の培養物保管所、例えば、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas,Va.)及び当業者が精通する他のものから市販されている。いくつかの実施形態では、これらの方法による培養のための動物細胞には、哺乳動物細胞(CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞並びにヒト細胞、例えば、293細胞、PER-C6細胞及びHeLa細胞など)が含まれるが、これらに限定されず、それらのうちの任意のものは、体細胞、生殖細胞、正常細胞、罹患細胞、形質転換細胞、変異細胞、幹細胞、PSC、前駆細胞又は胚細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、IPSC、ntES細胞、pES細胞、ウイルス又はベクター産生のために使用される細胞(すなわち、293、PerC6)、細胞又は遺伝子治療のために使用される初代ヒト部位に由来する細胞、すなわち、リンパ球、造血細胞、他の白血球(WBC)、マクロファージ、好中球、樹状細胞であり得、それらのうちの任意のものは、足場依存性又は足場非依存性(すなわち、「浮遊」)細胞であり得る。別の態様は、組織又は器官の移植又は操作のための細胞及び/又は組織、すなわち、肝細胞、膵島、骨芽細胞、破骨細胞/軟骨細胞、皮膚又は筋肉又は他の結合組織、上皮細胞、ケラチノサイトのような組織、神経、角膜、皮膚、器官起源の細胞、及びワクチンとして使用される細胞、すなわち、血液細胞、造血細胞、他の幹細胞又は前駆細胞、並びに様々な組織型の不活化又は改変された腫瘍細胞の操作又は培養である。
【0099】
別の実施形態は、1つ以上の細胞を操作又は培養する方法であって、当該細胞を本明細書に記載のフィード又はサプリメントと接触させることと、当該細胞又は複数の細胞を細胞又は複数の細胞の培養又は操作に好都合な条件下でインキュベートすることと、を含む、方法である。任意の細胞が、本方法に従って培養又は操作され得る(本明細書に記載の動物細胞及び他の細胞又は細胞株)。本明細書に記載のこの態様に従って培養又は操作される細胞は、正常細胞、罹患細胞、形質転換細胞、変異細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞、幹細胞、PSC又は胚性幹細胞、iPSCであり得、それらのうちの任意のものは、樹立細胞株であり得るか、又は天然供給源から得られ得る。
【0100】
一態様では、PSC培地又はサプリメントは、1つ以上のアミノ酸を含む。別の態様では、アミノ酸の塩が使用される。別の態様では、塩は、ナトリウム塩である。別の態様では、一塩基性及び二塩基性リン酸塩が使用される。好ましいカチオンはナトリウムである。別の態様では、得られるpH、例えば、約pH7が得られるように、一塩基性及び二塩基性の塩が提供される。処方に応じて、一塩基性塩と二塩基性塩との比率は所望のpHによって決定され得るが、特に濃縮された又は高度に濃縮されたサプリメントを使用する場合は、溶解度を最適化するために様々な総塩濃度を試す必要がある。塩分濃度を評価する際にもpHを確認できる。アミノ酸が塩として提供されない場合、酸のpH効果は、三塩基性リン酸塩、好ましくはリン酸三ナトリウムによって対抗され得る。ナトリウムはカチオンとして使用され得るが、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの他の金属が使用され得る。特定の対イオンが所望される場合は、リン酸塩として利用できる場合がある。別の態様では、サプリメントは、例えば、補充される培地中のその成分の濃度の約2×以上、3×、5×、8×、10×、12×、15×、20×、25×、50×、75×、85×、95×、又は約100×倍以上さえの濃度の1つ以上の成分を含む、高度に濃縮された混合物として調製及び使用され得る。サプリメントのそれぞれの所望の成分の濃度は、独立して選択することができる。
【0101】
サプリメントは、補充される培地と共通の成分を持たない場合もあれば、1つ以上の共通の成分を含む場合もある。サプリメントは、1つ以上の成分の異なる濃度、例えば、2つの成分の異なる比率、異なる成分混合、追加の成分、又はサプリメントにおける省略された成分など、少なくとも1つの方法で、補充される培地と異なり得る。例えば、サプリメントは、実行可能な程度まで塩を省略し得、例えば、著しく増強された濃度の成長因子又はアミノ酸を含有し得る。好ましいサプリメント処方物は、少なくとも2つ、より好ましくは3つ、しかしおそらく少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上のアミノ酸(その塩又は二量体を含む)を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のPSC培地又はサプリメントは、細胞を培養するために使用されたか又は使用されている培地を補充するために利用され、例えば、細胞が培養されるときに、いくつかの成分は細胞によって培地から除去される。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、フィードサプリメントは、とりわけ、これらの成分のいくつか又は全てを置換するために使用される。いくつかの実施形態では、PSC培地又はサプリメントは、補充される元の培地中に存在した成分の大半を含有するが、PSC培地又はサプリメントは、少なくとも1つの成分を欠いている。いくつかの実施形態では、PSC培地又はサプリメントは、補充される元の培養培地の濃度と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上の成分を欠いている。いくつかの実施形態では、PSC培地又はサプリメントは、濃縮形態で、例えば、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×、30×、40×、50×、100×、200×、300×、400×、500×又は1000×で添加される。濃縮形態は、PSC培地又はサプリメント中の成分のうちの少なくとも1つが、培養培地における所望の濃度であるものよりも高い濃度でのものであることを意味する。いくつかの実施形態では、PSC培地は、培養物中の細胞に1×処方物として添加される。いくつかの実施形態では、PSC培地又はサプリメントのための成分は、例えば、適合性サブグループに基づいて、複数のPSC培地又はサプリメントに分けられ得る。
【0103】
細胞培養培地の浸透圧モル濃度(浸透圧の尺度)は、細胞に出入りする物質の流れを調節するのに役立つため、重要である。これは典型的には、培養培地中の塩の添加又は除去によって制御される。浸透圧モル濃度の急速な増加(例えば、基礎成長培地と比較して上昇した浸透圧モル濃度を有する濃縮サプリメントの添加)は、ストレスを受けた、損傷した、又は死んだ細胞をもたらし得る。細胞培養/成長中に最適な浸透圧モル濃度範囲を維持することは、細胞機能及び/又は生物生産の成功にとって望ましいことである。
【0104】
基礎成長培地の浸透圧モル濃度は、一般に250mOsmo/kg~350mOsmo/kgの範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の濃縮PSC培地又はサプリメントの添加は、浸透圧モル濃度を、約25mOsmo/kg又は約0~約100、約0.01~約100、約0.1~約100、約1~約100、約10~約100、約50~約100、約75~約100、約1~約10、約1~約50、約1~約75、約10~約50、約15~約35、約25~約50、又は約20~約30mOsmo/kg増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の濃縮サプリメント培地(例えば、5×濃縮サプリメント培地)の浸透圧モル濃度は、約0~約1500、1~約1000、1~約750、1~約500、1~約400、1~約300、1~約200、1~約100、1~約50、50~約1000、100~約1000、300~約1000、500~約1000、750~約1000、100~約200、200~約300、300~約400、400~約500、450~約500、500~約600、550~約650、600~約700、750~約850、700~約800、800~約900、900~約1000、1000~約1250、又は約1250~約1500mOsmo/kgの浸透圧モル濃度を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の濃縮PSC培地又はサプリメントの浸透圧モル濃度は、補充又は供給される培地の浸透圧モル濃度と比較して、約3.0×~約3.5×、約3.5×~約4.5×、約4.5×~約5.5×、約5.5×~約6.5×、約6.5×~約7.5×、約7.5×~約8.5×、約8.5×~約9.5×、約9.5×~約10.5×、約10.5×~約11.5×、約11.5×~約12.5×、約12.5×約13.5×、約13.5×~約14.5×、約14.5×~18.5×~約19.5×、約19.5×~約20.5×、約3×~約10×、約5×~約10×、約10×~約15×、約15×~約20×、約20×~約25×、又は約25×~約100×である。
【0105】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、多能性幹細胞(PSC)組成物は、細胞培養基本培地と、小分子GSK3阻害剤その塩、又はそのエステルと、ROCK阻害剤、その塩、又はそのエステルと、1つ以上の有糸分裂成長因子と、を含み、組成物は、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供し得る。別の実施形態では、PSC組成物は、1つ以上のアルブミン又はそのペプチドを更に含む。
【0106】
一態様では、PSC組成物のGSK3阻害剤は、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、BIO((2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)、AR-A014418(N-[(4-メトキシフェニル)メチル]-N’-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ウレア)0、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンザゼピン-6(5H)-オン)、SB216763(ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、又はSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)のうちの1つ以上を含み得る。別の態様では、GSK3阻害剤は、CHIR99021であり得る。実施例2に示すように、CHIR99021の基本培地への添加は、多能性幹細胞の倍率拡大の著しい改善をもたらす。いくつかの態様では、GSK3阻害剤は、培養の最初の日のみ(例えば、継代時)に基本培地に添加され得、又は培養期間を通して継続的に基本培地に添加され得る。いくつかの実施形態では、継続的にGSK3阻害剤の存在下でPSCを培養することは、懸濁培養物における拡大倍率変化及び多能性の維持を改善する実施例2に示すように、GSK3阻害剤(例えば、CHIR99021)の継続的な存在は、懸濁培養物中の細胞の倍率変化を改善するが、小分子阻害剤の組み合わせを含有するいくつかの培地処方物では、スフェロイドの形態が失われ、これは、多能性が失われることを示す。そのような処方物において、1日目のみのCHIR99021の添加、それに続くCHIR99021を含まない完全培地の2~4日目の供給が、多能性幹細胞拡大。及び正常なスフェロイドの形態の維持をサポートする。
【0107】
一態様では、PSC組成物のrhoキナーゼ阻害剤は、ROCK1活性及び/又はROCK2活性を阻害し得る。rhoキナーゼ阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)、Chroman1、Emricasan、ポリアミン、Trans-ISRIB、Pinacidil、又はチアゾバビンであり得る。別の態様では、rhoキナーゼ阻害剤は、Y-27632((R)-(+)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド)であり得る。PSCの播種又は継代時のCHIR99021の使用と組み合わせたY-27632の実行は、最適な倍率変化もたらすことが実施例2において示されている。
【0108】
別の態様では、PSC組成物の1つ以上の有糸分裂成長因子は、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、HRG、及びKGFのうちの1つ以上を含む。別の態様では、PSC組成物は、EGF、TGF-α、TGF-β、bFGF、BDNF、HGF、HRG、及びKGFから選択される少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含む。別の態様では、PSC組成物は、EGF及びTGF-α、EGF及びTGF-β、EGF及びbFGF、EGF及びBDNF、EGF及びHGF、EGF及びHRG、EGF及びKGF、TGF-α及びTGF-β、TGF-α及びbFGF、TGF-α及びBDNF、TGF-α及びHGF、TGF-α及びHRG、TGF-α及びKGF、TGF-β及びbFGF、TGF-β及びBDNF、TGF-β及びHGF、TGF-β及びHRG、TGF-β及びKGF、bFGF及びBDNF、bFGF及びHGF、bFGF及びHRG、bFGF及びKGF、BDNF及びHGF、BDNF及びHRG、BDNF及びKGF、HGF及びHRG、HGF及びKGF、又はHRG及びKGFを含む少なくとも2つの有糸分裂成長因子を含む。別の態様では、組成物は、インスリン及び/又はトランスフェリンを更に含み得る。別の態様では、組成物は、フィブロネクチン、ラミニン、ニドゲン、コラーゲン、ビトロネクチン、若しくはヘパラン硫酸プロテオグリカン、又はそれらのフラグメントから選択されるものなどの1つ以上の細胞外マトリックス成分又はタンパク質を更に含み得る。いくつかの実施形態では、細胞外マトリックスタンパク質又はそのフラグメントは、組換えタンパク質若しくはフラグメント、又は合成ペプチドである。別の実施形態では、PSC懸濁培養のために本明細書で提供される細胞培養基本培地は、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、微量元素、抗酸化剤、塩、ヌクレオシド、緩衝剤、ペプチド、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0109】
別の態様では、PSC培養培地は、ヒト(HSA)、ウシ(BSA)、ウシ胎児(FBS)、ラット、マウス、ウマ、サル、若しくはブタ血清に由来するアルブミン、又は組換えアルブミン若しくはそのフラグメントなどのアルブミンを含み得る。別の態様では、アルブミンは、HSA、BSA、FBS、それらのペプチド、又はそれらの組み合わせであり得る。実施例3に示すように、CHIR99021と一緒に高濃度のアルブミンを含めることは、著しいPSC拡大及び拡大されたPSCの多能性の維持をもたらした。
【0110】
実施例3に示すように、本明細書に記載の培地及びワークフローは、iPSC及びESCの拡大及び多能性をサポートする。別の態様では、PSCは、iPSC又はESCであり得る。PSCは、例えば、Gibco Episomal iPSC、WTC-11、WA09、又はWA01細胞であり得る。
【0111】
特定の実施形態、懸濁培養のためのPSC組成物及びサプリメントは、pH指示薬、抗生物質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、微量元素、抗酸化剤、ヌクレオシド、緩衝剤、ペプチド、界面活性剤、非必須アミノ酸、脂質、無機塩、有機塩、抗真菌剤、プリン誘導体、溶媒、緩衝液、糖、ホルモン、追加の成長因子、サイトカイン、抗ウイルス剤、ホルモン、神経伝達物質、及び付着因子を含むが、これらに限定されない本明細書に記載の追加の成分を含有し得る。
【0112】
別の態様では、組成物は、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、それらの塩、それらのエステル、又はそれらのジ若しくはトリペプチドのうちの1つ以上を含み得るアミノ酸を含み得る。
【0113】
別の態様では、組成物は、ビオチン(B7)、コリン、葉酸(B9)、ナイアシンアミド(B3)、ピリドキシン(B6)、リボフラビン(B2)、チアミン(B1)、コバラミン(B12)、イノシトール、レチノール(A)、パントテン酸(B5)、アスコルビン酸(C)、コレカルシフェロール(D)、トコフェロール(E)、フィロキノン(K)、リポ酸、リノール酸、パラアミノ安息香酸、それらの塩、又はそのエステルのうちの1つ以上を含み得るビタミンを含み得る。
【0114】
別の態様では、組成物は、グルコース、スクロース、ガラクトース、フルクトース、トレハロース、ピルビン酸塩(例えば、ピルビン酸ナトリウム)のうちの1つ以上を含み得る炭水化物を含み得る。
【0115】
別の態様では、組成物は、ビオチン、鉄、マンガン、銅、ヨウ素、亜鉛、コバルト、フッ化物、クロム、モリブデン、セレン、ニッケル、ケイ素、バナジウム、それらの塩、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得るミネラルを含み得る。
【0116】
別の態様では、組成物は、限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、合成コレステロール、酢酸d/l-トコフェロール、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、α-リノレン酸、エルカ酸、エイコサペンタエン酸、若しくはドコサヘキサエン酸、又はそれらのエステル、又はそれらの誘導体などのn-3、n-6及びn-9ファミリーの脂肪酸のうちの1つ以上を含み得る脂肪酸を含み得る。
【0117】
別の態様では、組成物は、アルミニウム塩、バリウム塩、カドミウム塩、銅塩、マグネシウム塩、マンガン塩、ニッケル塩、カリウム塩、カルシウム塩、銀塩、スズ塩、ジルコニウム塩、ナトリウム塩、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る無機又は有機塩を含み得る。塩には、AgNO3、AlCl3、Ba(C2322、CaCl2、CdSO4、CdCl2、CoCl2、Cr2(SO43、CuCl2、CuSO4、FeSO4、FeCl2、FeCl3、Fe(NO33、GeO2、Na2SeO3、H2SeO3、KBr、KCl、KI、MgCl2、MgSO4、MnC12、NaCl、NaF、Na2SiO3、NaVO3、Na3VO4、(NH46Mo724、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NiSO4、NiCl2、Ni(NO32、RbCl、SnCl2、ZnCl2、ZnSO4、ZrOCl2、EDTA四ナトリウム、ピリドキシンHCL、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、有機又は無機アニオンを用いて作製されたものが含まれる。一態様では、組成物は、塩化カルシウム、硫酸銅、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、硫酸亜鉛、ピリドキシンHCl、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、硝酸塩、前述のうちのいずれかのイオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の塩を含む。
【0118】
別の態様では、組成物は、d/l-リポ酸チオクト(d/l-Lipoic Acid Thioctic)、アスコルビン酸2リン酸、ジチオスレイトール(DTT)、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK3、ビタミンD2、カルシフェロール、ナイアシン、ナイアシンアミド、アスコルビン酸、トコフェロール、アスコルビン酸塩、N-アセチル-l-システイン(NAC)、又は還元グルタチオンのうちの1つ以上を含み得る抗酸化剤を含み得る。
【0119】
別の態様では、組成物は、アデノシン、グアノシン、チミジン、シチジン、ウリジン、キサントシン、又はイノシンのうちの1つ以上を含み得るヌクレオシドを含み得る。
【0120】
別の態様では、組成物は、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩、硫酸塩、HEPES、PIPES、MOPS、MES、リン酸二ナトリウム、又はリン酸一ナトリウムのうちの1つ以上を含み得る緩衝剤を含み得る。
【0121】
別の態様では、組成物は、Pluronic F68、(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体)Synperonics(ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール))、Pluronic F127(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体)、Kolliphor(登録商標)(ポリエトキシル化ヒマシ油ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリエチレングリコール(PEG)8,000、PEG20,000、若しくはCremophor(登録商標)EL(ポリエトキシル化ヒマシ油)、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る界面活性剤を含み得る。
【0122】
本明細書に記載の別の実施形態は、懸濁物中で多能性幹細胞(PSC)を成長させるための方法であり、方法は、懸濁物中で培養される多能性幹細胞を提供することと、本明細書に記載のPSC組成物のうちのいずれかの中で成長に好ましい条件下で懸濁物中でPSCを培養することと、を含み得、ここで、細胞を培養した少なくとも1日後に、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換され得る。組成物の少なくとも25%が毎日交換され得る。別の態様では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が毎日交換され得る。組成物は、1日おきに交換され得る。実施例3及び4に示すように、本明細書に記載の培地組成物及びサプリメント組成物は、組成物が毎日交換されるか又は1日おきに交換されるときに、拡大におけるPSCの倍率変化の増加及び多能性の維持をサポートする。
【0123】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)の多能性を維持するための方法であり、方法は、PSCを、本明細書に記載のPSC培地組成物又はサプリメント組成物のうちのいずれかを含み得る培地と接触させることを含み得、ここで、細胞を接触させた少なくとも1日後に、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換され得る。組成物の少なくとも25%が毎日交換され得る。別の態様では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が毎日交換され得る。組成物は、1日おきに交換され得る。
【0124】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)の細胞形態を維持するための方法であり、方法は、PSCを、本明細書に記載のPSC培地組成物又はサプリメント組成物のうちのいずれかを含み得る培地と接触させることを含み得、ここで、細胞を接触させた少なくとも1日後に、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換され得る。組成物の少なくとも25%が毎日交換され得る。別の態様では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が毎日交換され得る。組成物は、1日おきに交換され得る。
【0125】
本明細書に記載の別の実施形態は、本明細書に記載のプロセスのうちのいずれかのプロセスを使用して培養され得る多能性幹細胞である。
【0126】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)を成長させるための手段であり、プロセスは、懸濁物中で培養される多能性幹細胞を提供することと、本明細書に記載のPSC組成物のうちのいずれかの中で成長に好ましい条件下で懸濁物中でPSCを培養することと、を含み得、ここで、細胞を培養した少なくとも1日後に、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換され得る。組成物の少なくとも25%が毎日交換され得る。別の態様では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が毎日交換され得る。組成物は、1日おきに交換され得る。
【0127】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)の多能性を維持するための手段であり、プロセスは、PSCを、本明細書に記載のPSC培地組成物又はサプリメント組成物のうちのいずれかを含み得る培地と接触させることを含み得、ここで、細胞を接触させた少なくとも1日後に、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換され得る。組成物の少なくとも25%が毎日交換され得る。別の態様では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が毎日交換され得る。組成物は、1日おきに交換され得る。
【0128】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)の細胞形態を維持するための手段であり、プロセスは、PSCを、本明細書に記載のPSC培地組成物又はサプリメント組成物のうちのいずれかを含み得る培地と接触させることを含み得、ここで、細胞を接触させた少なくとも1日後に、培地及びサプリメント組成物の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が交換され得る。組成物の少なくとも25%が毎日交換され得る。別の態様では、培地及びサプリメント組成物の少なくとも50%が毎日交換され得る。組成物は、1日おきに交換され得る。
【0129】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)を培養するための本明細書で提供されるPSC組成物の使用であって、本明細書に記載のPSC組成物又は幹細胞培養サプリメント組成物のうちのいずれかを含み得る組成物中で成長に好ましい条件下でPSCを培養することを含み得る、使用である。一態様では、PSC組成物が、慣習的なPSC培地と比較して、PSC成長の増強、PSC増殖の増強、PSC多能性の維持、スフェロイド形態の維持、PSC形態の維持、PSC継代数の増加、又はPSC培養スケールの増加のうちの1つ以上を提供するように、懸濁培養物中でPSCを培養するための、本明細書で提供されるPSC組成物の使用が本明細書で提供される。
【0130】
本明細書に記載の別の実施形態は、本明細書に記載のプロセスのうちのいずれかのプロセスによって調製され得る細胞培養フィード又はサプリメントである。
【0131】
本明細書に記載の別の実施形態は、多能性幹細胞(PSC)を培養するためのキットであり、キットは、本明細書に記載の培地、培地サプリメント、及び細胞含有組成物の乾燥又は液体溶液を含有する1つ以上のコンテナを含み得る。そのようなキットは、バイアル、試験管、ボトル、パッケージ、ポーチ、ドラムなどのような1つ以上のコンテナを含み得る。コンテナの各々は、本明細書に記載の細胞培養試薬、栄養培地、培地サプリメント、若しくは細胞、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含有し得る。細胞培養試薬、栄養培地、又は培地サプリメントは、水和又は脱水され得る。そのような調製物は、無菌又は実質的に無菌であり得る。キットは、乾燥粉末医薬若しくは臨床組成物、細胞培養試薬、栄養培地、培地サプリメント、培地サブグループ及び/又は緩衝液の再構成において使用される溶媒を含有する1つ以上の追加のコンテナを更に含み得、そのような溶媒は、水性又は有機であり得、緩衝液、生理食塩水、栄養培地溶液、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、キットは、PSC培地及び/又はサプリメントを含有するコンテナ、使用のための説明書、及び培地又はサプリメントにアクセスするための手段、例えば開封帯を含み得る。キットはまた、1つ以上の追加のコンテナ中に、PSC又はPSC株などの1つ以上の細胞を含有し得る。
【0133】
いずれかの実施形態又はその態様の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物、処方物、方法、プロセス、及び用途に対して好適な改変及び適合をなし得ることが、関連技術分野の当業者には明らかであろう。提供される組成物及び方法は例示的であり、特定される実施形態のうちのいずれかの範囲を限定することを意図しない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、及びオプションの全ては、任意の変形又は反復で組み合わせることができる。本明細書に記載の組成物、処方物、方法、及びプロセスの範囲には、本明細書に記載の実施形態、態様、オプション、例、及び優先の全ての実際の又は潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書に記載の例示的な組成物及び処方物は、任意の成分を省略し得、本明細書に開示される任意の成分を置換し得、又は本明細書の他所に開示される任意の成分を含み得る。本明細書に開示される組成物又は処方物のうちのいずれかの任意の成分の質量の、処方物中の任意の他の成分の質量に対する、又は処方物中の他の成分の総質量に対する比率は、それらが明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。参照により組み込まれる特許又は刊行物のいずれかの用語の意味が、本開示で使用される用語の意味と矛盾する場合、本開示の用語又は語句の意味が優先する。更に、前述の考察は単に例示的な実施形態を開示及び記載する。本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、その特定の教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0134】
実施例1 PSC培地組成物及び培養物
以下は、拡大細胞のスフェロイド形態及び多能性を維持しながら、懸濁培養物中でPSCを拡大するための、本明細書で提供されるPSC培地処方物の使用のための例示的なプロトコルである。Gibco Human Episomal iPSCを、本実施例において記載するが、しかしながら、PSC培地及び一般的なプロトコルは、他のiPSC及びESC株の拡大において有効である。本実施例において、Essential8培地を、凍結保存後の最初の2D播種のために使用する。当該技術分野で知られている他のもの及び本明細書で提供されるものを含めて、他の細胞培養培地は、2D及び/又は3D播種における使用に好適である。
【0135】
Essential8(商標)完全培地を、サプリメントを一晩2~8℃で融解することによって調製した。融解したサプリメントを、穏やかな反転によって混合した。10mLのサプリメント混合物を、500mLのEssential8基本培地に移した。5mLの抗生物質及び抗真菌剤を、Essential8完全培地に添加し、穏やかな反転によって混合した。この完全培地を、最大2週間2~8℃で遮光して貯蔵し得る。
【0136】
本明細書において記載及び提供されるPSC完全培地を、サプリメントを本明細書に記載されるように一晩2~8℃で、又は約1時間室温で融解することによって調製した。融解したサプリメントを、穏やかな反転によって混合した。100mLのPSCサプリメント混合物を、900mLのPSC基本培地に移した。10mLの抗生物質及び抗真菌剤を、PSC完全培地に添加し、穏やかな反転によって混合した。この完全培地を、最大2週間2~8℃で遮光して貯蔵し得る。
【0137】
0日目に、凍結保存したGibco Human Episomal iPSCを、Geltrexコート6ウェルプレート上に播種した。20mLのEssential8(商標)完全培地及び200μLのRevitaCell(商標)サプリメントを、2つの50mLコニカルチューブに添加し、37℃に水浴中で5分以下の間加温した。1.5mLのEssential8完全培地を、プレートの各ウェルに添加した。iPSCを、RevitaCellを含むEssential8完全培地2mL中に再懸濁した。Countess II自動セルカウンターを使用して、再懸濁した細胞を計数した。細胞を、3つの細胞播種密度、ウェル中40,000生存細胞/cm2、60,000生存細胞/cm2、及び80,000生存細胞/cm2で播種した。播種した細胞を、一晩37±1℃、5%(±1%)CO2の加湿インキュベーター中でインキュベートした。播種後1日目及び2日目に、ウェル中の培地を吸引し、細胞に1mLの予熱した(37℃)Essential 8 完全培地を供給した。
【0138】
播種後3日目に、iPSCを継代した。iPSCの2Dヴェルセン継代を行った。2D培養物のコンフルエンシーを見積もった。PSCは、理想的には、継代時に50~80%コンフルエントであるべきである。1つのウェルを選択して、新たな2Dプレート中に継代した。ヴェルセン溶液とのインキュベーションの後、細胞を8mLのそれぞれの成長培地中に再懸濁した。細胞懸濁物を1:8、1:12、及び1:16の分割比率で2連のウェルに移し、プレートを37℃、5%CO2で約24時間インキュベートした。翌日、2DプレートにEssential8完全培地を供給した。供給を毎日行った。iPSCが50~80%コンフルエンシーに達したときはいつも、2Dプレートをヴェルセンを用いて継代した。2D培養物を、3D実験のための細胞を供給するために使用した。非組織培養処理6ウェルプレートを、3D培養のために使用した。13μLの10mM Y-27632を、PSC完全培地の13mLアリコートに添加した。2mLのPSC完全培地+Y-27632溶液を、6ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを、37℃+5%CO2の加湿インキュベーター中で貯蔵した。
【0139】
2D Gibco Human Episomal iPSCのStemPro(商標)Accutase(商標)細胞解離試薬又はTrypLE(商標)Select酵素継代を行って、3D培養物を播種した。例えば、2D培養の残りのウェルを、Accutase継代のために使用した。各培地条件の5mLを15mLコニカルチューブ中にとり、5μLの10mM Y-27632を培地アリコートの各々に添加した。StemPro Accutase溶液とのインキュベーションの後、細胞を、PSC完全培地+Y-27632を使用することによって継代したウェル当たり1mLの適切な培地中に再懸濁した。Countess II自動セルカウンターを使用して、再懸濁した細胞を計数した。細胞を、300,000生存細胞/ウェルの播種密度でウェル中に播種した。プレートを、37℃+5%CO2の加湿インキュベーター中のオービタルシェーカープラットフォーム(70RPMで継続的に回転)上で一晩インキュベートした。
【0140】
4、8、及び12日目に、iPSCはスフェロイドであるべきである。健全なスフェロイドは、典型的には、最小の「くぼみのある」外観を有して丸く見え、一方、不健全な又は分化中のスフェロイドは、いびつで著しく「くぼみのある」ように見え得る。スフェロイドは、3D培養物をプレーティングした最初の24時間で形成され始める。培地の50%をそれぞれの新鮮な予熱した培地に置換することによって、3Dスフェロイドに供給した。5、9、及び13日目には、スフェロイドに供給しない。6、10、及び14日目に、培地の50%をそれぞれの新鮮な予熱した培地に置換することによって、スフェロイドに供給する。7、11、及び15日目に、iPSCスフェロイドを、Accutaseを使用して継代した。非組織培養処理6ウェルプレートを使用し、Y-27632を含む完全PSC培地2mLを各ウェルに添加した。非組織培養処理6ウェルプレートの各ウェルからのスフェロイドをチューブに移し、スピンダウンし、1mLの予熱したStemPro Accutase中でインキュベートした。細胞を、完全PSC培地+Y-27632を使用することによって、1mLの適切な培地中に再懸濁した。CountessII自動セルカウンターを使用して、再懸濁した細胞を計数した。細胞を、300,000生存細胞/ウェルの播種密度でウェル中に播種した。プレートを、37℃+5%CO2の加湿インキュベーター中のオービタルシェーカープラットフォーム(70RPMで継続的に回転)上で一晩インキュベートした。継代3の終わり、すなわち15日目に、細胞数及び生存率を使用して、倍率変化及び生存細胞のパーセンテージを決定した。
【0141】
他の培養プロトコルでは、スフェロイドを3~5日ごとに継代する。いくつかの場合では、細胞を(記載される)日に播種し、続いて、2日目の培地重層ステップ、3日目の供給無し、4日目の供給、5日目の継代を行う。
【0142】
6ウェルフォーマットからスケールアップするために、適切な培養条件を、追加の培養容器のために決定した。6ウェルフォーマットを異なる培養容器フォーマットに適応させるために、表2の例示的なパラメーターを使用した。
【表2】
【0143】
実施例2 グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(GSK3)阻害剤は、多能性幹細胞(PSC)の拡大を改善し、形態を維持する
以前のナイーブ培地処方物は、限定されないが、KSR、AlbumaxII、N2 Supplement、DMEM/F12、GlutaMAX、非必須アミノ酸、インスリン、及びアスコルビン酸を含有するリッチで複合的な培地ベースを必要とすることが示されている。この基礎培地への4つ又は5つの小分子並びに成長因子LIF、TGFベータ1、及びFGFの添加は、接着培養及び懸濁培養物におけるよりナイーブな状態のPSCの拡大をサポートすることが示されている(Gafni,et al.,Nature504(7479)):282-286(2013)、Lipsitz,et al.,PNAS115(25):6369-6374(2018))。実験計画法(DOE)を、Gibco Human Episomal人工多能性幹細胞(iPSC)及びWA09胚性幹細胞(ESC)を使用して実施して、小分子の影響を決定した。これらのPSCを、基礎PSC培地+1X RevitaCell(商標)Supplement中に播種し、24ウェル非組織培養処理プレート中、オービタルシェーカープラットフォーム上で120RPMで成長させ、細胞拡大を5日目の生存細胞数を介して評価した。加えて、抗凝集試薬の影響を含めた。なぜなら、刊行物が、Lipsitz,et al.,PNAS115(25):6369-6374(2018)において評価されたナイーブ培地処方物について、デキストラン硫酸を含めることが、スフェロイドをより一貫したより小さなサイズに維持することによって細胞拡大を助けたことを示したからである(Lipsitz,et al.,Biotechnol Bioeng.115(8):2061-2066(2018))。図1は、iPSC及びWA09 hESCの拡大に対する、様々な濃度の抗凝集剤並びに個々の小分子CHIR99021、PD0325901、SP00125、BIRD796、及びGo6983の評価からの結果を示す。これらのデータは、本発明者らの基本PSC培地処方物の存在下で、CHIR99021のみがPSCの倍率拡大の著しい改善を提供することが示されることを示す。PD0325901及びSP00125は、全体的なPSC拡大に有害であることが示される。抗凝集試薬を含めることについて本発明者らの処方物の文脈において著しい利益は示されなかった。基礎PSC培地処方物の存在下でのCHIR99021単独は、驚くべきことに、細胞核形成を補助した。
【0144】
CHIR99021の添加は、懸濁培養物中の細胞の倍率変化を改善することが示されたが、スフェロイドの形態は失われた。継続的培養培地中に3μMのCHIR99021を含有する処方物への曝露後の細胞形態を、1日目のみの曝露に対して評価した。iPSCを、24ウェル非組織培養処理プレート中、オービタルシェーカープラットフォーム上で120RPMで成長させ、細胞形態を5日目に評価した。この実験において、小分子を1日目にのみ又は培養期間を通して添加した。様々な条件で成長させたiPSCの例示的な位相差顕微鏡写真を図2に示す。典型的な滑らかな縁及びスフェロイド形態が、CHIR99021を継代時(1日目)にのみ含めた条件について観察された一方で、異常な分化が、高濃度の3μMのCHIR99021を継続的に含めたいくつかの条件について認められた。
【0145】
細胞拡大及び形態を、CHIR99021を単独で又は他の小分子及び/若しくは抗凝集剤のうちの1つ以上と組み合わせて含有する基礎PSC培地処方物とのインキュベーション後のPSC懸濁培養物について評価した。PSCを、24ウェル非組織培養処理プレート中、オービタルシェーカープラットフォーム上で120RPMで成長させ、細胞形態を調べ、細胞拡大を5日目の生存細胞数を介して評価した。この実験において、小分子を1日目にのみ又は培養期間を通してのいずれかで添加した。Gibco Human Episomal iPSCを使用した例示的な結果を図3に示し、WA09 ESCを使用した例示的な結果を図4に示す。これらの図において、x軸は試験した様々な処方物を示し、y軸は培養1日目~5日目の生存細胞数の倍率変化を示す。特定の条件下での5日目の細胞培養物の顕微鏡写真もまた示す。
【0146】
1日目のみのCHIR99021の添加へのシフト、それに続く完全基礎PSC培地の2~4日目のみの供給は、PSC拡大をサポートし、正常なスフェロイドの形態を維持することが示された(図2図4)。倍率変化の増加が、継代時のみ(例えば、1日目のみ)にCHIR99021を含めることを通じて達成され得たことは、驚くべきことであった。これらのデータは、継代時にのみ様々な濃度のCHIR99021を含めることが、スフェロイドの形態の視覚的評価を介して評価される望まれない異常な分化を最小にしながら、倍率拡大を増加させることにおいて有効であることを示す。
【0147】
実施例3 CHIR99021との使用のためのrhoキナーゼ阻害剤(ROCKi)の決定
実施例2に記載の実験を、抗酸化及びフリーラジカルスカベンジャー特性を含む分子と相まってrhoキナーゼ阻害剤(ROCKi)を含有するサプリメントである、RevitaCell(商標)Supplementの存在下で実施した。CHIR99021又は抗凝集試薬を添加したときの懸濁培養物におけるPSC細胞の生存及び拡大に対する、ROCKi/カクテルY-27632、Pinacidil、及びRevitaCell(商標)Supplementの影響を評価するために、Gibco Human Episomal iPSCを使用してDOEを実施した。図5に示す結果での評価のために、Y-27632(10μM)、Pinacidil(40μM)、Pinacidil(50μM)又はRevitaCell(商標)サプリメント(1X)を、CHIR99021(3μM)又は10μLの抗凝集試薬の存在下でPSC培養培地に含めた。PSCを、24ウェル非組織培養処理プレート中、オービタルシェーカープラットフォーム上で120RPMで成長させ、細胞拡大を5日目の生存細胞数を介して評価した。この実験において、小分子を1日目にのみ添加した。
【0148】
継代時にCHIR99021と組み合わせてROCKiを含めることは、最適な倍率変化をもたらすことが示され、Y-27632は最大の有効性を示した。(図5)。他のROCKi/カクテルを用いて等価な細胞拡大が観察され、より低い倍率変化をもたらしたが、抗凝集試薬の存在を必要としなかった(図5)。
【0149】
多能性の維持のサポートもまた提供しながら、最適な倍率拡大を達成することにおける、CHIR99021、Go6983(広域スペクトルPKC阻害剤)、及びBSAのバランスを評価するために、DOEを実施した。PSCを、10μMのY-27632の存在下で播種し、3μMのCHIR99021の存在下又は非存在下で様々な濃度のBSAを含有するPSC基礎培地中の懸濁培養物中で成長させた。様々な培養条件から生じるスフェロイドサイズの変動を、位相差イメージングによって評価した。細胞を10μMのY-27632の存在下で播種すると、CHIR99021はスフェロイド形成を助ける(図6)。iPSCをPinacidilの存在下で播種し、様々な濃度のCHIR99021、BSA、及び抗凝集剤の存在下で懸濁培養物中で成長させた。培養5日目に、スフェロイドを、StemPro Accutaseを使用して解離し、2Dフォーマットに24時間再プレーティングした。24時間の成長の後、細胞を固定し、透過処理し、DAPIでそしてOct4発現について染色して、解離した細胞の多能性を決定した。Oct4を発現する細胞の数を、DAPIを発現する細胞の総数と比較した。これは、スフェロイドから得られた多能性幹細胞のパーセンテージの見積もりを可能にする。多能性の低下がより低い濃度のBSAで観察され、これは、CHIR99021とアルブミンとの間のバランスが多能性の維持のために必要とされることを示す(図7)。
【0150】
懸濁培養物におけるPSC拡大を、また、PSC培地処方物においてBSAに代えてヒト血清アルブミン(HSA)又は組換えHSA(rHSA)を使用して分析した。Gibco Human Episomal iPSCを、非組織培養処理6ウェルプレート中、70RPMに設定したオービタルシェーカー上で拡大した。細胞を、2D培養物からStemPro Accutaseを使用して継代し、CHIR99021を含むPSC培地中で成長させた。細胞を0日目に2mL体積中150,000細胞/mLの濃度で播種し、ROCK阻害剤を培養物に添加した。スフェロイドを5日間にわたって成長させ、50%の培地置換を毎日行った。5日後に、iPSCの8~12倍の拡大が、CHIR99021を含有するPSC培地処方物中でHSA又はrHSAを使用して得られた。
【0151】
様々な濃度のPinacidil、CHIR99021、Go6893、及びBSAを、抗凝集剤有り又は無しで、懸濁培養物中のiPSCの倍率拡大の達成について評価した。最適濃度の決定のためのDOE予測プロファイラー分析(それは倍率拡大に関連することから、特にBSA及びCHIR99021に焦点を当てた)は、中濃度のCHIR99021及び高濃度のBSAが最大の倍率変化を提供することを示す(図8)。全体として、CHIR99021はスフェロイド形成を促進し、アルブミンとCHIR99021とのバランスは、適切なスフェロイドサイズを維持する。驚くべきことに、同様の倍率変化を有する処方にもかかわらず、高濃度のアルブミンが、CHIR99021の存在下での多能性の維持のために最適である。2つの細胞株(WA09 ESC及びGibco Human Episomal iPSC)にわたって、中濃度のCHIR99021とバランスをとる高レベルのBSAとともに、Go6983及び抗凝集剤の除外が好ましいことが決定された。
【0152】
Gibco Human Episomal iPSC及びWA09 ESCを、以下の培地条件(図9A~9B)で、6ウェル非組織培養処理プレート中、オービタルシェーカープラットフォーム上で70RPMで、50パーセントの培地置換を毎日行って成長させた:mTeSR1+Y-27632、Cellartis、Def-CS3D PSC培地+Y-27632、PSC培地+RevitaCell(商標)サプリメント、PSC培地+50μMのPinacidil+1.88μMのCHIR99021。その後、細胞拡大を5日ごとに生存細胞数を介して評価し、5継代の間150,000生存細胞/mLで播種した細胞を維持した(図9A~9B)。継代時の中濃度のCHIR99021と一緒のPinacidilの利用の文脈において、培地における倍率拡大は、mTeSR1処方物と比較して、iPSCについては匹敵し、又はESCについては改善されることが示された。CHIR99021と組み合わせたときの性能は、RevitaCell(商標)Supplementとの組み合わせと比較して、両方の細胞株について著しく改善され、より大きな利得がESCについて観察され、mTeSR1+Y-27632について観察されたものに匹敵するか又はそれを上回って改善された(図9A~9B)。3継代の拡大後の多能性の維持に関する性能の比較を、免疫細胞化学(ICC)を介して評価した。OCT4を発現する細胞のパーセンテージを、Cellomics CX5 Cellinsightを使用して定量的に評価した。OCT4陽性細胞%を、Gibco Human Episomal iPSC(青色の棒)及びWA09 ESC(赤色の棒)について強調する(図9C)。Cellartis Def-CS3Dは、本明細書で提供されるPSC培地処方物よりも高いiPSCについての倍率細胞拡大をもたらすことが示されたが、Cellartis Def-CS3D中で拡大した細胞は、多能性の有意な損失を被る(図9C)。5日間の拡大の後、PSC培地+50μMのPinacidil+1.88μMのCHIR99021中で拡大したWA09 ESCを、Essential6 Mediumに移し、自発的に分化させた。Essential6 Medium中での懸濁培養物中での10日間の後、細胞を三系列分化潜在力についてTaqMan(商標)hPSC Scorecard(商標)Panelを使用して評価し、3つ全ての系列に効率的に分化することが示された(図9D~9E)。CHIR99021を含有する本発明者らのPSC培地処方物を使用して拡大し、Pinacidilを用いて継代した細胞は、多能性幹細胞の古典的な品質証明である、三系列分化潜在力を維持することが示された。
【0153】
ROCK阻害剤Pinacidil、Thiazovivin、及びY-27632を、PSC基礎培地処方物との組み合わせについて評価した。Gibco Human Episomal iPSCを、様々な濃度のPinacidil、Thiazovivin、又はY-27632を含むPSC基礎培地処方物中に150,000生存細胞/mLで播種した。毎日の50%の培地交換及びオービタルシェークプラットフォーム上での一定の撹拌を伴う5日間の成長の後、拡大に際しての倍率変化を評価した。図10Aは、様々な濃度のPinacidil、Thiazovivin又はY-27632の、CHIR99021を除外する基礎PSC培養培地との組み合わせでのiPSC拡大における倍率変化を示す。図10Bは、Y-27632又はPinacidilとともに播種し、CHIR99021有り又は無しのPSC培地中で培養したiPSCの位相差顕微鏡写真を示す。Pinacidilと比較して、より大きなスフェロイドが、継代時にY-27632及びThiazovivinを使用した条件について特定された。PSC培地処方物を用いたフォローアップ実験により、以下のPSC培地処方物を用いて培養したiPSCの拡大における3継代累積倍率変化を使用して評価される、最大倍率変化のためのCHIR99021とのY-27632との組み合わせが確認された(図10C):1)PSC培地+1X RevitaCell、2)PSC培地+1X RevitaCell+1.88μMのCHIR99021、3)PSC培地+10μMのY-27632、4)PSC培地+10μMのY-27632+1.88μMのCHIR99021。Y-27632は、継代時にのみ含まれたときにPSC培地処方物の存在下で倍率変化の改善に対する最大の影響を有することが示された。
【0154】
毎日の供給のための処方物中に含まれた場合のPSC培地処方物における使用のためのCHIR99021の最適範囲を評価した。Gibco Human Episomal iPSCを、100mL PBSバイオリアクター中で2連で拡大し、細胞計数を各継代の終わりに行った。細胞を1日目に10μMのY-27632を補充した培地60mL中に播種し、2日目に40mLの追加の培地を重層し、次いで、50%の培地交換を毎日(ED)又は1日おき(EOD)に完了した。糖源(グルコース/ガラクトース)及びCHIR99021の濃度を変動させた。供給スケジュールもまた、毎日対1日おきの供給スケジュールを含むように改変した。拡大に際しての倍率変化及び生存率を、各条件について評価した。0.6μMほど低いCHIR99021濃度が、毎日の培地交換供給スケジュールでの最適な細胞拡大(図11A)、並びに毎日及び1日おきの培地交換供給スケジュールでの生存率(図11B)をサポートした。低い生存率が、グルコース/ガラクトース含有処方物についてより後の継代で観察され、クラスターを継代するのが困難であり、生存率及びその結果としての倍率変化の低下がもたらされた。これらのデータから、培地中に継続的に含まれる0.6μMほど低いCHIR99021濃度が、市販のmTeSR1培地処方物と比較して最適な倍率変化を提供することが観察された。最大1.5μMのCHIR99021の濃度は、培養物に1日おきのケイデンスで供給したときでさえ、最適な倍率拡大をサポートすることが示された。(図11A~11B)。
【0155】
ROCKi ChromanIを、PSC懸濁培養についてPSC培地においてY-27632、Pinacidil、及びRevitaCellと比較した。Gibco Human Episomal iPSCを、非組織培養処理6ウェルプレート中、70RPMに設定したオービタルシェーカー上で拡大した。細胞を、StemPro Accutaseを使用して2D培養物から継代し、PSC培地中で成長させた。細胞を0日目に2mL体積中150,000細胞/mLの濃度で播種し、ROCK阻害剤を培養物に添加した。添加したROCKiは、1X RevitaCell(図12A)、60μMのPinacidil(図12B)、又は50μMのChromanI(図12C)のいずれかであり、全てを10μMのY-27632に対して比較した。スフェロイドを5日間にわたって成長させ、50%の培地置換を毎日行った。RevitaCell及び60μMのPinacidilは同様に作用し、スフェロイドを拡大するときに10μMのY-27632より劣っていた(図12A~12B)。50nMのChromanI及び10μMのY-27632は、スフェロイドを拡大するときに同様に作用する(図12C)。RevitaCell及び60μMのPinacidilのスフェロイドは形態学的により小さく、一方、50nMのChromanI及び10μMのY-27632のスフェロイドは形態学的により大きい(図12D)。全体として、CHIR99021含有PSC培地処方物の文脈における最適の性能は、Y-27632及びChroman1継代培養物について示された。
【0156】
本明細書で提供されるPSC培地処方物を使用したPSC拡大を、市販の培地中での拡大と比較した。H9(WA09)ESCを、CHIR99021の非存在下でのPSC基本培地中、CHIR99021の存在下でのPSC基本培地、及びmTeSR1培地処方物(Stem Cell Technologies)中で拡大した。PSCを、StemPro(商標)Accutase(商標)細胞解離試薬を使用して継代し、2mLの培地中150,000生存細胞/mLで播種した6ウェル非組織培養処理プレート中で成長させ、オービタルシェーカープラットフォーム上で70RPMで撹拌した。これらの比較のために、10μMのY-27632を細胞培養物に継代時に添加して、スフェロイド核形成を促進した。細胞拡大を、5日目の生存細胞数を介して評価した。培養物に、毎日行った50%の培地置換で供給した。図13に示すように、PSC基本培地へのCHIR99021の添加は、CHIR99021無しのPSC基本培地と比較して、倍率拡大を増強し図13B図13A)、mTeSR1と比較して倍率拡大を有意に増強した(図13C)。
【0157】
Gibco Episomal iPSCを、非組織培養処理6ウェルプレート中、70RPMに設定したオービタルシェーカー上で拡大した。細胞を、StemPro Accutaseを使用して2D培養物から継代し、完全PSC培地又はmTeSR-3D培地中で成長させた。完全PSC培地培養物に、毎日の50%の培地置換によって供給し、一方、mTeSR-3D培地培養物に、毎日の224μLのフィード培地の添加による製造業者が推奨する重層プロトコルを使用して供給した。培養物を、3継代にわたる倍率拡大(図14A)、継代の過程にわたる生存率の維持(図14B)、並びにOct4及びNanog発現についてのフローサイトメトリーを使用して評価される多能性の維持(図14C)について評価した。全体として、PSC完全培地処方物は、mTeSR-3Dと比較して匹敵する多能性パーセントを維持しながら、mTeSR-3Dを上回って倍率変化を改善したことが示された。
【0158】
PSC倍率拡大及び多能性維持を、ROCK阻害剤を用いて又は市販のCellartis Def-CS3D培地システムのCellartis Supplement3を用いて播種し、本明細書で提供される完全PSC培地中で成長させたスフェロイド培養物について比較した。Gibco Human Episomal iPSCを、24ウェル非組織培養処理プレート中、オービタルシェーカープラットフォーム上で120RPMで、完全PSC培地中で拡大して、使用のために選択したROCKi又はサプリメントのタイプが、全体的なスフェロイド成長に影響するかどうかを決定した。全てのPSCを、完全PSC培地処方物中で成長させ、唯一の例外は1日目で、細胞をRevitaCell(1X)、Y-27632(10μM)、又はCellartis Supplement3(500×希釈)のいずれかの中で成長させた。全体的なスフェロイド成長及び拡大を、細胞が5日間24ウェルプレート中で成長した後に評価した(図15A)。スフェロイドの多能性もまた、細胞が5日間24ウェルプレート中で成長した後に評価した(図15B)。多能性を評価するために、スフェロイドを、StemPro Accutaseを使用して解離し、2Dフォーマットに24時間再プレーティングした。24時間の成長の後、細胞を固定し、透過処理し、DAPIでそしてOct4発現について染色して、解離した細胞の多能性を決定した。Oct4を発現する細胞の数を、DAPIを発現する細胞の総数と比較した。これは、スフェロイドから得られた多能性幹細胞のパーセンテージの見積もりを可能にする。Y-27632は、最も効率的であることが示され、RevitaCell(商標)Supplementに対して、継代時にY-27632を添加する培養物中で成長した5日目でより大きなスフェロイドであった。Cellartis Supplement3は、Y-27632と比較して、匹敵するサイズ及び形態を有した。RevitaCell及びY-27632は、PSC培地処方と組み合わせて使用したときに、スフェロイド成長の間に高レベルの多能性幹細胞を維持し得る。Cellartis Def-CS3Dは、完全PSC培地とは対照的に、拡大細胞集団におけるOCT4発現の減少によって示されるように、細胞の多能性を維持するために不十分であった(図15B)。
【0159】
多能性幹細胞の拡大は、PSC懸濁培養ワークフローにおける重要な最初のステップであるが、拡大後に、細胞が所望の下流系列への方向付けられた分化を受け得ることもまた重要である。下流分化能力を評価するために、PSCを6ウェル非組織培養処理プレート中の様々な培地条件に播種し、オービタルシェーカープラットフォーム上で70RPMで拡大し、拡大の2、3、又は4日間、50パーセントの培地置換を毎日行った。拡大期の後、胚体内胚葉分化を、Gibco PSC Definitive Endoderm Induction Kitをキットのプロトコルに従って使用して実施した。分化プロトコルに従った、胚体内胚葉マーカーである、CXCR4の発現に関する性能の比較を、Invitrogen Attune NxT フローサイトメーターを使用したフローサイトメトリーによって定量的に評価した。CXCR4について陽性のGibco Human Epsiomal iPSCのパーセンテージを、図16のグラフに示す。これらは、完全PSC培地処方物を使用して拡大した細胞が、内胚葉系列への方向付けられた分化を受ける能力を示す。PSC培地での内胚葉分化性能は、市販のmTeSR1及びmTeSR3D培地で観察されるものに匹敵する。
【0160】
この評価を、外胚葉系列に分化する能力の評価に拡張した。Gibco Human Episomal iPSCを、スフィア形成のために完全PSC懸濁培養培地中で2又は3日間培養した(図17中、PSC.D2、PSC.D3)。培地を6、7、及び8日間PSC Neural Induction Mediumに変えた(図17中、Ind.D6、Ind.D7、Ind.D8)。誘導後、神経幹細胞凝集体を拡大培地中で1~3日間培養した。11日目に、細胞を、Accutaseを用いて解離し、2日間拡大培地中でGeltrexコートプレート上で単層でプレーティングした。細胞を固定し、マーカーSOX1及びネスチン又はPAX6及びOTx2について染色した。図17Aは、SOX1(赤色)及びネスチン(緑色)の発現の代表的な免疫細胞化学画像を示し、SOX1の定量的発現をグラフに示す。図17Bは、PAX6(赤色)及びOTx2(緑色)の発現の代表的なICC画像を示し、PAX6の定量的発現をグラフに示す。これらのデータは、完全PSC培地を使用して拡大した細胞が、Gibco Neural Induction Mediumを使用した外胚葉系列への方向付けられた分化を受ける能力を示す。中胚葉系列への細胞拡大及び方向付けられた分化もまた示されている。
【0161】
実施例4 PSC培地のスケーラビリティ
24ウェル及び6ウェルフォーマットの懸濁培養物を使用することに加えて、PSC拡大を、より高い培養体積において評価した。このために、PSC培地中でのPSCの拡大を、PBSバイオリアクターを使用して100mLスケールで評価した。Gibco Human Episomal iPSCを、StemPro(商標)Accutase(商標)細胞解離試薬を使用して継代し、100mL PBSミニバイオリアクター中で40rpmで撹拌しながら成長させた。細胞を、1.5μMのCHIR99021への継続的な曝露を伴ってPSC完全培地中で、又はmTeSR1培地を用いて培養した。10μMのY-27632を、継代時にのみ添加した。PSC培地培養物については、細胞に毎日(ED)又は1日おき(EOD)のいずれかで50%の培地置換を使用して供給した。mTeSR1条件については、細胞に毎日の50%の培地置換を使用して毎日供給した。図18Aは、評価した全ての条件についての3継代にわたるGibco Human Episomal iPSCの倍率拡大を示す。匹敵する拡大が、1日おき及び毎日の供給スケジュールを使用したPSC培地処方物について観察された。mTeSR1と比較して増加した性能が、100mlスケールで観察された。正常な多能性幹細胞特性の維持を、含んだEODの50%の培地交換スケジュールを使用して供給したPSC培地中のiPSC培養物について評価した。多能性の維持を、TaqMan(商標)hPSC Scorecard(商標)Assay(図18B)及びPluriTest(商標)アッセイ分析(図18C)を使用して評価し、正常な核型の維持を、KaryoStat分析を介して評価した(図18D)。更に、1日おきのPSC完全培地条件下で拡大したGibco Human Episomal iPSCは、多能性マーカーの発現の維持及び正常な核型の維持を含む、正常な多能性幹細胞特性を維持することが示された。提供されるPSC培地及び細胞拡大ワークフローの使用は、PluriTest(商標)分析によって及びフローサイトメトリー分析によって評価されるように、5連続継代にわたってスフェロイドとして成長させたiPSC及びESC(WA09)の多能性を維持し、同じ拡大細胞株の>90%がOct4及びNanogマーカーを発現することが示された。
【0162】
拡大に際して得られたスフェロイドのサイズが、細胞が継代後に懸濁物中で開始され、その後懸濁物中で分化するときに、下流分化能力に対する影響を有し得ることが示されている。これに取り組むために、細胞が、完全PSC培地処方物を使用してスフェロイド直径において「チューニングされる(tuned)」能力を、100mLスケールのPBSミニバイオリアクターと組み合わせて、一定範囲の撹拌速度を使用することによって調べた。Gibco Human Episomal iPSCを、StemPro Accutaseを使用して継代し、100mL PBSミニバイオリアクター中で、継代後最初の24時間は初期撹拌速度で撹拌し、続いて、2~5日目は第2の撹拌速度に調整して、成長させた。細胞を、継代時に10μMのY-27632を補充した完全PSC培地60mL中に播種し、2日目に40mLの追加の完全PSC培地単独を重層し、続いて、50%の培地交換を介して1日おきに供給した。開始後3日目のスフェロイド形態の評価は、チューニング可能な(tunable)スフェロイドの存在を示し、より小さなスフェロイド直径はより高いRPMで達成された(図19A)。図19Bは、個々のデータポイントによって示される各々の個々のフラスコからの細胞数での継代後5日目に評価した倍率変化を示す。撹拌速度条件を、x軸に示す。多能性の維持を、多能性の細胞外(TRA1-60、青色)及び細胞内(OCT4、赤色)マーカーの存在を検出するためのフローサイトメトリーを使用して評価した(図19C)。これらのデータは、スフェロイド直径が、可変撹拌速度を使用して改変され得ることを示す。匹敵する倍率変化及び多能性は、使用した撹拌速度(例えば、30~40RPM)にかかわらず、5日目に観察された。
【0163】
シェーカーフラスコにおけるスフェロイド成長を分析した。Gibco Human Episomal iPSC、WTC-11 iPSC、WA09 ESC、及びWA01 ESCを、シェーカーフラスコ(125mL、250mL、500mL、1000mL)中、70RPMに設定したオービタルシェーカー上で拡大した。細胞を、StemPro Accutaseを使用して2D培養物から継代し、完全PSC培地中で成長させた。細胞を0日目に2mL体積中150,000細胞/mLの濃度で播種し、阻害剤Y-27632を培養物に添加した。スフェロイドを5日間にわたって成長させ、50%の培地置換を毎日行った。複数の細胞株の成長を比較した。試験した4つ全ての細胞株は、PSC培地中でスフェロイドとして拡大した(図20A~20B)。驚くべきことに、PSC培地処方物は、効率的なソリューションを、iPSCの拡大だけでなく、ESCの拡大にも提供した。これは、そのうちのいくつかは容易には懸濁培養に移行しない、ここで培養及び拡大した4つの細胞株によって実証された。10個を上回る異なるiPSC及びESC細胞株が、提供されるPSC培地及び拡大ワークフローを使用した懸濁培養拡大に適合性であることが示されている。平均して、継代当たり5~10倍の拡大が得られており、倍率拡大は細胞株によって変動し得る。様々なシェーカーフラスコ体積における(図20C)及び複数のタイプの容器における(図20D)Gibco Human Episomal iPSCの性能を分析した。試験した全てのシェーカーフラスコサイズは、PSC培地での一貫した拡大性能を示した。シェーカーフラスコ性能は、6ウェルプレート及びバイオリアクターにおける性能と同様であった。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A-9B】
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B-18C】
図18D
図19A
図19B
図19C
図20
【国際調査報告】