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特表2023-531970ヘテロアリール-ビフェニルアミド誘導体を用いて癌を処置する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ヘテロアリール-ビフェニルアミド誘導体を用いて癌を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230719BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230719BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K31/506
C07D401/14
C07D405/14
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579736
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021038339
(87)【国際公開番号】W WO2021262627
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/042,807
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502129656
【氏名又は名称】ケモセントリックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, シージエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラルタ-コロメル, マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン, イービン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ペンリエ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC29
4C063CC78
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
ある特定の癌を処置することを必要とする対象へ、その立体異性体及び医薬として許容され得る塩を含む有効量の式(I)
の化合物を投与することを含む方法であって、式中、R、R、R、R、R、及びRが、本明細書で定義される通りである、方法が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸癌、腎癌、大腸癌、胃癌、膀胱癌、黒色腫、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、肝癌、乳癌、及び頭頚部癌からなる群から選択される癌を処置する方法であって、前記癌を処置することを必要とする対象へ、有効量の式(I)
【化11】
の化合物又はその医薬として許容され得る塩を投与することを含む、方法であって、式中、
及びRが各々独立して、F、Cl、CH、及びCFからなる群から選択され、
が、F、Cl、CH、CF、-O-CH、及び-O-CFからなる群から選択され、
が、-Y及び-X-Yからなる群から選択され、式中、各XがC1~4アルキレンであり、且つ
Yが、C3~6シクロアルキル、N、O、及びSからなる群から独立して選択される1~3個のヘテロ原子環頂点を有するC4~6ヘテロシクロアルキル、並びにN、O、及びSからなる群から独立して選択される1~3個のヘテロ原子環頂点を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、非置換であるか、又はオキソ、OH、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルコキシ、C1~4ハロアルコキシ、及びC1~4ヒドロキシアルコキシからなる群から独立して選択される1~2個の置換基で置換されており、且つ
及びRが独立して、H、C1~3アルキル、及びC1~4ハロアルキルからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記有効量の式(I)の化合物が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、Cl及びCHからなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がClである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
がCHである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
がCl及びCHからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
がClである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
がCHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
が、-O-CH及び-O-CFからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
が-O-CHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
が-O-CFである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
が、H、CH、及びCFからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
がCHである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
が、H、CH、及びCFからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
がCHである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式Iの化合物が、式(Ia)
【化12】
又はその医薬として許容され得る塩を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
-NH(R)が
【化13】
からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
-NH(R)が
【化14】
からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
-NHR
【化15】
からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
-NHR
【化16】
である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式(I)の化合物が、光学的に純粋な又は豊富な異性体である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(I)の化合物が、表1の化合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記有効量の式(I)が、約2ng/ml~約1,000ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記有効量の式(I)が、約5ng/ml~約500ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記有効量の式(I)が、約20ng/ml~約300ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記有効量の式(I)が、約30ng/ml~約200ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患又は障害が、結腸癌である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患又は障害が、大腸癌である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患又は障害が、乳癌である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患又は障害が、肝癌である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患又は障害が、黒色腫である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象へ、有効量の1つ以上の追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の追加の治療薬が、細胞毒性薬、遺伝子発現調節薬、化学治療薬、抗癌薬、抗血管新生薬、免疫治療薬、抗ホルモン薬、放射線療法、放射線治療薬、抗腫瘍薬、及び抗増殖薬からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月23日出願の米国仮出願番号第63/042,807号に対する、米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張するものであって、その開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究及び開発の下でなされる本発明に対する権利についての陳述
該当なし。
【0003】
コンパクトディスクで提出される「配列表」、表、又はコンピュータプログラムリスト付録に対する参照
該当なし。
【背景技術】
【0004】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)は、陰性シグナルをその2つのリガンドであるPD-L1又はPD-L2との相互作用の際に伝達するCD28スーパーファミリーのメンバーである。PD-1及びそのリガンドは、広く発現しており、T細胞の活性化及び寛容における広範囲の免疫調節の役割を発揮する。PD-1及びそのリガンドは、感染性免疫及び腫瘍免疫を減弱させ、慢性的な感染及び腫瘍の進行を促進することに関与している。
PD-1経路の調節は、様々なヒト疾患において治療能を有する(Hyun-Tak Jin et al.,Curr Top Microbiol Immunol.(2011);350:17-37)。PD-1経路の遮断は、癌療法における魅力的な標的となっている。プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)を遮断する治療用抗体は、T細胞の下方調節を防止し、癌に対する免疫応答を促進する。いくつかのPD-1経路阻害薬は、臨床試験の様々な相において堅牢な活性を示している(RD Harvey,Clinical Pharmacology and Therapeutics(2014);96(2),214-223)。
PD-L1のPD-1又はCD80のいずれかとの相互作用を遮断する作用因子が所望されている。いくつかの抗体が開発され、市販されてきた。非ペプチド小分子を開示するいくつかの特許出願が公開されている(BMS出願の国際公開第2015/160641号パンフレット、国際公開第2015/034820号パンフレット、及び国際公開第2017/066227号パンフレット及び国際公開第2018/009505号パンフレット、Aurigene出願の国際公開第2015/033299号パンフレット及び国際公開第2015/033301号パンフレット、Incyte出願の国際公開第2017/070089号パンフレット、米国特許出願公開第2017/0145025号明細書、国際公開第2017/106634号パンフレット、米国特許出願公開第2017/0174679号明細書、国際公開第2017/192961号パンフレット、国際公開第2017/222976号パンフレット、国際公開第2017/205464号パンフレット、国際公開第2017/112730号パンフレット、国際公開第2017/041899号パンフレット、及び国際公開第2018/013789号パンフレット、Maxinovel出願の国際公開第2018/006795号パンフレット、並びに本発明者であるChemoCentryx出願の国際公開第2018/005374号パンフレット)。しかしながら、PD-L1の阻害薬としての小分子など、経口投与、高い腫瘍浸潤性、安定性、生物学的利用率、治療指数、及び毒性の点で有利な特徴を有し得る、代替的な化合物についての必要性がなおもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】Hyun-Tak Jin et al.,Curr Top Microbiol Immunol.(2011);350:17-37
【特許文献2】RD Harvey,Clinical Pharmacology and Therapeutics(2014);96(2),214-223
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国際公開第2015/160641号
【非特許文献2】国際公開第2015/034820号
【非特許文献3】国際公開第2017/066227号
【非特許文献4】国際公開第2018/009505号
【非特許文献5】国際公開第2015/033299号
【非特許文献6】国際公開第2015/033301号
【非特許文献7】国際公開第2017/070089号
【非特許文献8】米国特許出願公開第2017/0145025号明細書
【非特許文献9】国際公開第2017/106634号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの態様において、癌を処置することを必要とする対象へ、有効量の式(I)
【化1】
の化合物又はその医薬として許容され得る塩を投与することを含む方法であって、式中、R、R、R、R、R、及びRが、本明細書で説明される通りである、方法が本明細書で提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記癌は、結腸癌、腎癌、大腸癌、胃癌、膀胱癌、黒色腫、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、肝癌、乳癌、及び頭頚部癌からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1A図1Bは、化合物2.001(A)及び化合物2.002(B)についてのPD-1/PD-L1結合ELISAデータ(上パネル)及びPD-1/PD-L1遮断細胞系アッセイデータ(下パネル)をプロットしている。
図1B図1A図1Bは、化合物2.001(A)及び化合物2.002(B)についてのPD-1/PD-L1結合ELISAデータ(上パネル)及びPD-1/PD-L1遮断細胞系アッセイデータ(下パネル)をプロットしている。
図2AB図2A図2Cは、化合物2.001がどのように、ヒトT細胞の異質遺伝子の免疫応答をエクスビボ混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて促進するのかを示しており、3人の別個のドナー由来のT細胞応答が示されており、ドナーその1(A)、ドナーその2(B)、及びドナーその3(C)である。
図2C図2A図2Cは、化合物2.001がどのように、ヒトT細胞の異質遺伝子の免疫応答をエクスビボ混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて促進するのかを示しており、3人の別個のドナー由来のT細胞応答が示されており、ドナーその1(A)、ドナーその2(B)、及びドナーその3(C)である。
図3A図3A図3Cは、化合物2.002がどのように、ヒトT細胞の異質遺伝子の免疫応答をエクスビボ混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて促進するのかを示しており、3人の別個のドナー由来のT細胞応答が示されており、ドナーその1(A)、ドナーその2(B)、及びドナーその3(C)である。
図3BC図3A図3Cは、化合物2.002がどのように、ヒトT細胞の異質遺伝子の免疫応答をエクスビボ混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて促進するのかを示しており、3人の別個のドナー由来のT細胞応答が示されており、ドナーその1(A)、ドナーその2(B)、及びドナーその3(C)である。
図4A図4A図4Bは、化合物2.002(A,最も左側の列)、化合物2.001(A、真ん中の列)、及び対照化合物(A、最も右側の列)のPBMC介在性腫瘍細胞殺滅を示す。追加の対照実験は、抗PD-L1抗体(デュルバルマブ)(B、最も左側の列)、及び抗体アイソタイプ(B、最も右側の列)を用いた。
図4B図4A図4Bは、化合物2.002(A,最も左側の列)、化合物2.001(A、真ん中の列)、及び対照化合物(A、最も右側の列)のPBMC介在性腫瘍細胞殺滅を示す。追加の対照実験は、抗PD-L1抗体(デュルバルマブ)(B、最も左側の列)、及び抗体アイソタイプ(B、最も右側の列)を用いた。
図5図5は、化合物2.001及び化合物2.002がPD-L1二量体化を誘導するのに対し、抗PD-L1抗体及び試験された対照がPD-L1二量体化を誘導しないことを示す。
図6図6は、様々な試験条件下で4℃(下のパネル)及び37℃(上のパネル)でのPD-L1の表面レベルを示す。この図は、化合物2.001及び2.002が37℃で特異的に表面PD-L1レベルを低下させることを実証しており、PD-L1のインターナリゼーションを示唆している。
図7】ヒトPD-L1阻害薬をインビボで評価するためのMC38-hPD-L1腫瘍モデル。工学操作されたMC38-hPD-L1細胞は、インビボでのヒトPD-L1特異的阻害薬の効果を評価するのに適しており、hPD-L1及びmPD-L1は、mPD-1へ同様の親和性で結合し、本hPD-L1阻害薬はhPD-1又はmPD-1とのhPD-L1の相互作用を同様の効力で遮断する(データは示されていない)。MC38-hPD-L1細胞は、マウスにおいて腫瘍の成長を誘導する。
図8A図8A図8Cは、化合物2.002が、MC38-hPD-L1腫瘍モデルにおける用量依存的な様式での腫瘍成長抑制に介在することを示す。(A)腫瘍の体積対腫瘍移植後の日数をプロットする。(B)35日後の平均腫瘍重量をプロットする。(C)投与3日後のトラフにおける血漿化合物濃度をプロットする。
図8B図8A図8Cは、化合物2.002が、MC38-hPD-L1腫瘍モデルにおける用量依存的な様式での腫瘍成長抑制に介在することを示す。(A)腫瘍の体積対腫瘍移植後の日数をプロットする。(B)35日後の平均腫瘍重量をプロットする。(C)投与3日後のトラフにおける血漿化合物濃度をプロットする。
図8C図8A図8Cは、化合物2.002が、MC38-hPD-L1腫瘍モデルにおける用量依存的な様式での腫瘍成長抑制に介在することを示す。(A)腫瘍の体積対腫瘍移植後の日数をプロットする。(B)35日後の平均腫瘍重量をプロットする。(C)投与3日後のトラフにおける血漿化合物濃度をプロットする。
図9A図9A図9Cは、ビヒクル処置(黒丸)及びAPI(抗PD-L1抗体又は示された化合物、黒四角)について示された日数での腫瘍サイズをプロットしている。試験されるAPIは、化合物2.001(A)、化合物2.003(B)、及び抗PD-L1抗体(C)とした。上の区画は各処置群について平均腫瘍サイズをプロットしているのに対し、下の区画は処置群における各マウスの腫瘍サイズをプロットしている。
図9B図9A図9Cは、ビヒクル処置(黒丸)及びAPI(抗PD-L1抗体又は示された化合物、黒四角)について示された日数での腫瘍サイズをプロットしている。試験されるAPIは、化合物2.001(A)、化合物2.003(B)、及び抗PD-L1抗体(C)とした。上の区画は各処置群について平均腫瘍サイズをプロットしているのに対し、下の区画は処置群における各マウスの腫瘍サイズをプロットしている。
図9C図9A図9Cは、ビヒクル処置(黒丸)及びAPI(抗PD-L1抗体又は示された化合物、黒四角)について示された日数での腫瘍サイズをプロットしている。試験されるAPIは、化合物2.001(A)、化合物2.003(B)、及び抗PD-L1抗体(C)とした。上の区画は各処置群について平均腫瘍サイズをプロットしているのに対し、下の区画は処置群における各マウスの腫瘍サイズをプロットしている。
図10A図10A図10Bは、生物学的実施例2において説明されるマウスモデルにおける、投与12時間後、投与6日後の化合物2.001(A)及び化合物2.003(B)のトラフ血漿濃度をプロットしている。
図10B図10A図10Bは、生物学的実施例2において説明されるマウスモデルにおける、投与12時間後、投与6日後の化合物2.001(A)及び化合物2.003(B)のトラフ血漿濃度をプロットしている。
図11図11は、抗PD-L1抗体(デュルバルマブ)、アイソタイプの抗体、化合物2.001、及びビヒクルで処置したときの細胞のヒトPD-L1染色を示す。本分析において使用されるPD-L1の検出抗体は、PD-L1へ結合する化合物2.001によって遮断される。この図は、化合物2.001によって処置されたMC38-hPD-L1腫瘍が、化合物2.001によってほぼ完全に占有されていることを実証している。
図12図12は、様々な処置条件が、MC38-HPD-L1腫瘍モデルにおいて、腫瘍浸潤免疫細胞の量をどのように変化させるのかを示す。下のパネルは、測定されたCD8+ T細胞の量をプロットしており、真ん中のパネルは、測定されたCD4 T細胞の量をプロットしており、上のパネルは、測定されたCD8 及びCD4 T細胞の量をプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.概論
本開示は、式(I)の化合物を用いて特定の癌を処置するための方法を提供する。特許請求した化合物は、PD-L1に対する高い親和性を有する堅牢な抗腫瘍特性を有する。投与されると、これらの化合物は、PD-1/PD-L1シグナル伝達を有効に中断し、いくつかの実施形態において、癌細胞に対してPD-L1の二量体化及びインターナリゼーションを誘導する。
【0011】
PD-1/PD-L1の小分子モジュレーターの開発は、PD-1/PD-L1の親和性、化合物の疎水性/親水性、生物学的クリアランス率、及び抗標的活性(例えば、CYP及びhERG阻害)を含む様々な因子に平衡を保たせる必要性によって妨げられてきた。実際、今日まで、経口投与ためのPD-1/PD-L1阻害剤は承認されていない。
【0012】
静脈内薬物処方とは対照的に、経口投与される化合物の生物学的利用率はとりわけ、胃の吸収と、肝臓への門脈循環を経た有意な分解(いわゆる「第1の通過の代謝」)に対する耐性とを必要とする。いくつかの実施形態において、本明細書で説明される方法は、ある特定の癌の処置における経口投与に予期せずして適しているPD-1/PD-L1モジュレーターを提供する。説明される方法における化合物は、血液中の化合物が極度に高濃度であることを必要とせず、代わりに、これらの化合物は、ng/mL範囲において抗腫瘍作用を誘起することができる。
【0013】
II.略語及び定義
本明細書で使用するような「a」、「an」、又は「the」という用語は、1つの構成要素を有する態様だけでなく、1つを超える構成要素を有する態様も含む。例えば、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、別段の明確な記載がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」に対する参照は、複数のかかる細胞を含み、「作用因子」に対する参照は、当業者に公知の1つ以上の作用因子に対する参照を含むなどである。
【0014】
「約」及び「おおよそ」という用語は概して、測定結果の性質又は正確性を考慮して測定された量について許容され得る程度の誤差を意味するものとする。典型的な例示的な程度の誤差は、所与の値又は複数の値からなる範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内である。或いは、及び詳しくは、生物学的な系において、「約」及び「おおよそ」という用語は、桁内である、好ましくは所与の値の5倍内、より好ましくは2倍内である値を意味し得る。本明細書で与えられる数的量は、別段の記載がない限り、概算値であり、「約」又は「おおよそ」という用語は、明白に記載されていないとき、推測されることができることを意味する。
【0015】
「アルキル」という用語は、それ自体、又は別の置換基の一部として、別段の記載がない限り、指定された炭素原子数を有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を意味する(すなわち、C1~8は1~8個の炭素を意味する)。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びこれらに類するものがある。「アルケニル」という用語は、1つ以上の二重結合を有する不飽和アルキル基を指す。同様に、「アルキニル」という用語は、1つ以上の三重結合を有する不飽和アルキル基を指す。アルケニル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、及び3-(1,4-ペンタジエニル)がある。アルキニル基の例としては、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、並びにより高次の同族体及び異性体がある。「シクロアルキル」という用語は、示される環原子数を有し(例えば、C3~6シクロアルキル)、完全に飽和である又は環の頂点間に1つ以下の二重結合を有する炭化水素環を指す。「シクロアルキル」はまた、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなど、二環式及び多環式の炭化水素環を指すようにも意味する。二環式又は多環式の環は、縮合し得、架橋され得、スピロ又はその組み合わせであり得る。「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」という用語は、N、O、及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を含有するシクロアルキル基を指し、この中で、窒素原子及び硫黄原子は、場合により酸化しており、窒素原子は、場合により四量体化されている。ヘテロシクロアルキルは、単環式、二環式、又は多環式の環系であり得る。二環式又は多環式の環は、縮合し得、架橋され得、スピロ、又はその組み合わせであり得る。C4~12ヘテロシクリルについての列挙は、4~12の環員を有する基を指し、ここで環員の少なくとも1つはヘテロ原子である。ヘテロシクロアルキル基の非限定例としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、テトラゾロン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、1,4-ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリン-S-オキシド、チオモルホリン-S,S-オキシド、ピペラジン、ピラン、ピリドン、3-ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジン、及びこれらに類するものがある。ヘテロシクロアルキル基は、環炭素又はヘテロ原子を経て分子の残部へ結合することができる。
【0016】
「アルキレン」という用語はそれ自体、又は別の置換基の一部として、-CHCHCHCH-によって具現化されるように、アルカンに由来する二価の基を意味する。アルキレン基は、直鎖又は分枝鎖であり得る。後者の例は、-CHC(CHCH-、-CHC(CH-、又は-CH(CH)CHCH-である。典型的には、アルキル(又はアルキレン)基は、1~12個の炭素原子を有し、8個以下の炭素原子を有する当該基が本開示においては好ましい。同様に、「アルケニレン」及び「アルキニレン」はそれぞれ、二重結合又は三重結合を有する「アルキレン」の不飽和形態を指す。
【0017】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ酸素原子、アミノ基、又は硫黄原子を介して分子の残部へ結合するアルキル基を指す。追加として、ジアルキルアミノ基については、アルキル部分は、同じであり得又は異なり得、また各々が結合する窒素原子とともに3~7員環を形成するよう組み合わされることもできる。したがって、-NRとして表される基は、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、アゼチジニル、及びこれらに類するものを含むことを意味する。
【0018】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、それら自体によって又は別の置換基の一部として、別段の記載がない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を意味する。追加として、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「C1~4ハロアルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル、及びこれらに類するものがあることを意味する。
【0019】
「ヒドロキシアルキル」又は「アルキル-OH」という用語は、先に定義した通りのアルキル基であって、水素原子の少なくとも1個(及び3個まで)がヒドロキシ基と置き換えられたものを指す。アルキル基に関しては、ヒドロキシアルキル基は、C1~6など、いずれかの適切な数の炭素原子を有することができる。例示的なヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル(ここで、ヒドロキシは、1位又は2位にある)、ヒドロキシプロピル(ここで、ヒドロキシは、1位、2位、又は3位にある)、及び2,3-ジヒドロキシプロピルがあるが、これらに限定されない。
【0020】
「アリール」という用語は、別段の記載がない限り、多価不飽和の、典型的には芳香族の、互いに縮合している又は共有結合している単一の環又は複数の環(3個までの環)であり得る炭化水素基を意味する。「ヘテロアリール」環は、N、O、及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を含有するアリール基(又はアリール環)を指し、この中で、窒素原子及び硫黄原子は、場合により酸化しており、窒素原子は、場合により四量体化している。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を経て分子の残部へ結合することができる。C5~10ヘテロアリールについての列挙は、5~10個の環員を有するヘテロアリール部分を指すことは理解され、ここで、環員の少なくとも1つはヘテロ原子である。アリール基の非限定例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルがあるのに対し、ヘテロアリール基の非限定例としては、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミンジニル(pyrimindinyl)、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、フタラジニル、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリル、チエニル、及びこれらに類するものがある。先に記載のアリール環系及びヘテロアリール環系の各々についての置換基は、後述に説明する許容され得る置換基の群から選択される。
【0021】
「炭素環式環」、「炭素環」、又は「カルボシクリル」という用語は、環の頂点として炭素原子のみを有する環状部分を指す。炭素環式環部分は、飽和又は不飽和であり、芳香族であり得る。概して、炭素環部分は3~10個の環員を有する。複数の環構造(例えば、二環)を有する炭素環部分は、芳香環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)へ縮合したシクロアルキル環を含むことができる。したがって、炭素環式環は、シクロペンチル、シクロヘキセニル、ナフチル、及び1,2,3,4-テトラヒドロナフチルを含む。「複素環式環」という用語は、「ヘテロシクロアルキル」部分及び「ヘテロアリール」部分の両方を指す。したがって、複素環式環は、飽和又は不飽和であり、芳香族であり得る。概して、複素環式環は、4~10個の環員であり、ピペリジニル、テトラジニル、ピラゾリル、及びインドリルを含む。
【0022】
上述の用語(例えば、「アルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」)のいずれかが、置換基に関してさらなる注記なく「置換されている」と称されるとき、示された基の置換された形態は、後述に提供される通りである。
【0023】
アルキル基(アルキレン、アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキルと称されることが多い当該基を含む)についての置換基は、0~(2m’+1)の範囲の数における-ハロゲン、-OR”、-NR’R”、-SR’、-SiR’R”R’”、-OC(O)R’、-C(O)R’、-COR’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)R’、-NH-C(NH)=NH、-NR’C(NH)=NH、-NH-C(NH)=NR’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R”、NR’S(O)R”、-CN、及び-NOから選択される様々な基であり得、ここで、m’はかかる基における炭素原子の総数である。R’、R”、及びR’”は各々独立して、水素、非置換C1~8アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換アリール、1~3個のハロゲン、非置換C1~8アルキル基、非置換C1~8アルコキシ基、若しくは非置換C1~8チオアルコキシ基で置換されたアリール、又は非置換アリール-C1~4アルキル基を指す。R’及びR”が同じ窒素原子へ結合しているとき、これらは、当該窒素原子と結合して、3員環,4員環、5員環、6員環、又は7員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意味する。それ自体によって、又は別の基の一部として使用されるような「アシル」という用語は、当該基についての結合点に最も近い炭素上の2つの置換基が置換基=Oで置き換えられたアルキル基を指す(例えば、-C(O)CH、-C(O)CHCH”OR’、及びこれらに類するもの)。
【0024】
同様に、アリール基及びヘテロアリール基についての置換基は様々であり、概して、-ハロゲン、-OR’、-OC(O)R’、-NR’R”、-SR’、-R’、-CN、-NO、-COR’、CONR’R”、C(O)R’、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R”’、NH-C(NH)=NH、-NR’C(NH)=NH、-NH-C(NH)=NR’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R”、-NR’S(O)R”、-N、ペルフルオロ(C~C)アルコキシ、及びペルフルオロ(C~C)アルキルから選択され、芳香環系における0から開いた原子価の総数までの範囲の数においてであって、且つR’、R”、及びR”’は独立して、水素、C1~8アルキル、C3~6シクロアルキル、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、非置換アリール及び非置換ヘテロアリール、(非置換アリール)-C1~4アルキル、並びに非置換アリールオキシ-C1~4アルキルから選択される。他の適切な置換体としては、1~4個の炭素原子のアルキレン鎖によって環原子へ結合した上述のアリール置換基の各々がある。
【0025】
アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、場合により、式-T-C(O)-(CH-U-の置換基で置き換えられてよく、式中、T及びUは独立して、-NH-、-O-、-CH-、又は単結合であり、qは0~2の整数である。或いは、アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、場合により式A-(CH-B-の置換基で置き換えられてよく、式中、A及びBは独立して、-CH-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-S(O)NR’-、又は単結合であり、且つrは、1~3の整数である。そのように形成された新たな環の単結合のうちの1つは、場合により二重結合で置き換えられてよい。或いは、アリール環又はヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、場合により式-(CH-X-(CH-の置換基で置き換えられてよく、式中、s及びtは独立して、0~3の整数であり、且つXは-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、又は-S(O)NR’-である。-NR’-及び-S(O)NR’-における置換基R’は、水素又は非置換C1~6アルキルから選択される。
【0026】
本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、及びケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0027】
本明細書の本開示はさらに、プロドラッグ及びその生物学的等価体に関する。適切な生物学的等価体には例えば、カルボキシラート置き換え体(リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、及びテトラゾールなどの酸性複素環基)がある。適切なプロドラッグには、式Iの化合物を提供するために生理学的条件下で加水分解及び/又は酸化することが公知の従来の基がある。
【0028】
「患者」及び「対象」という用語には、霊長類(特にヒト)、飼育用コンパニオン動物(イヌ、ネコ、ウマ、及びこれらに類するものなど)及び家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、及びこれらに類するものなど)がある。
【0029】
本明細書で使用する場合、「処置すること」又は「処置」という用語は、いずれかが予防上(すなわち、症状の重症度を予防する、遅滞させる、又は低減するために発症の前に)又は治療上(症状の重症度及び/又は持続時間を低減するために発症の後に)であり得る疾患改変処置及び症候性処置の両方を包含する。
【0030】
「医薬として許容され得る塩」という用語は、本明細書で説明される化合物に関して発見された特定の置換基によって、比較的非毒性の酸又は塩基を用いて調製された活性のある化合物の塩を含むことを意味する。本開示の化合物が、比較的酸性の官能性を含有するとき、塩基付加塩は、かかる化合物の中性形態を、無希釈又は適切な不活性溶媒中のいずれかの、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。医薬として許容され得る無機塩基由来の塩の例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛、及びこれらに類するものがある。医薬として許容され得る塩基に由来する塩には、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミンの塩があり、このようなアミンには、置換アミン、環状アミン、天然アミン及びこれらに類するものがあり、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、及びこれらに類するものがある。本開示の化合物が比較的塩基性の官能性を含有するとき、酸付加塩は、かかる化合物の中性形態を、無希釈又は適切な不活性溶媒中のいずれかの、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。医薬として許容され得る酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸、及びこれらに類するものなどの無機酸に由来する塩、並びに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、及びこれらに類するものなどの相対的に非毒性の有機酸に由来する塩がある。また、アルギン酸塩及びこれらに類するものなどのアミノ酸の塩、並びにグルクロン酸又はガラクツノール酸(galactunoric acid)及びこれらに類するものなどの有機酸の塩も含まれている(例えば、Berge,S.M.,et al,“Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Science,1977,66,1-19を参照されたい)。ある特定の具体的な化合物は、当該化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかへと転化することができる塩基性官能性及び酸性官能性の両方を含有している。
【0031】
この化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させること、及び従来の様式で親化合物を単離することによって再生し得る。この化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解度など、ある特定の物理的特性において様々な塩形態とは異なるが、そうでなければ、この塩は、本開示の目的のためにこの化合物の親形態と同等である。
【0032】
本開示のある特定の化合物は、非溶媒和形態、及び水和形態を含む溶媒和形態において存在することができる。概して、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲内に包含されるよう企図されている。本開示のある特定の化合物は、複数の結晶形態又は非晶質形態で存在し得る。概して、物理形態はすべて、本開示によって企図される使用のために同等であり、本開示の範囲内であるよう企図されている。
【0033】
本発明のある特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、位置異性体、及び個々の異性体(例えば、個別の鏡像異性体)はすべて、本発明の範囲内に包含されるよう企図されている。立体化学的な図が示されているとき、異性体のうちの1つが存在し、他の異性体を実質的に含んでいない化合物を指すものと意味する。別の異性体「を実質的に含んでいない」は、2つの異性体の少なくとも80/20の比、より好ましくは90/10、又は95/5又はそれより多数を示す。いくつかの実施形態において、異性体のうちの1つは、少なくとも99%の量で存在する。
【0034】
本開示の化合物はまた、かかる化合物を構成する原子のうちの1つ以上で原子同位体を非天然の比率で含有し得る。例えば、この化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)など、放射性同位体で放射能標識され得る。本開示の化合物の同位体変化物はすべて、放射性であろうとなかろうと、本開示の範囲内に包含されるよう企図されている。例えば、化合物は、いずれかの数の水素原子を重水素(H)同位体と置き換えるように調製され得る。本開示の化合物はまた、かかる化合物を構成する原子のうちの1つ以上で原子同位体を非天然の比率で含有し得る。同位体の非天然の比率は、問題の原子の天然に見出される量から、100%からなる量までの範囲と定義され得る。例えば、化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)若しくは炭素-14(14C)などの放射性同位体、又は重水素(H)若しくは炭素-13(13C)など、非放射性同位体を組み込んでもよい。かかる同位体のバリエーションは、本出願内の他の個所で説明されるものに対して追加の有用性を提供することができる。例えば、本開示の化合物の同位体変異体は、診断用及び/若しくは撮像用試薬として、又は細胞毒性/放射性毒性治療薬として、を含むがこれらに限定されない追加の有用性を見出し得る。追加として、本開示の化合物の同位体変異体は、処置の間中高い安全性、耐容能、又は効能に寄与することができる薬物動態特徴及び薬力学的特徴を変えることができる。本開示の化合物の同位体バリエーションはすべて、放射性であろうとなかろうと、本開示の範囲内に包含されるよう企図されている。
【0035】
III.本開示の実施形態
処置方法
いくつかの態様において、癌を処置することを必要とする対象へ、有効量の式(I)
【化2】
の化合物又はその医薬として許容され得る塩を投与することを含む、癌を処置する方法であって、式中、
及びRが各々独立して、F、Cl、CH、及びCFからなる群から選択され、
が、F、Cl、CH、CF、-O-CH、及び-O-CFからなる群から選択され、
が、-Y及び-X-Yからなる群から選択され、式中、各XがC1~4アルキレンであり、且つ
Yが、C3~6シクロアルキル、N、O、及びSからなる群から独立して選択される1~3個のヘテロ原子環頂点を有するC4~6ヘテロシクロアルキル、並びにN、O、及びSからなる群から独立して選択される1~3個のヘテロ原子環頂点を有する5~6員のヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、非置換であるか、又はオキソ、OH、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルコキシ、C1~4ハロアルコキシ、及びC1~4ヒドロキシアルコキシからなる群から独立して選択される1~2個の置換基で置換されており、且つ
及びRが独立して、H、C1~3アルキル、及びC1~4ハロアルキルからなる群から選択される、方法が本明細書に提供される。
【0036】
いくつかの実施形態において、Rは、Cl及びCHからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、RはClである。いくつかの実施形態において、RはCHである。
【0037】
いくつかの実施形態において、Rは、Cl及びCHからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、RはClである。いくつかの実施形態において、RはCHである。
【0038】
いくつかの実施形態において、Rは、-O-CH及び-O-CFからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、Rは,-O-CHである。いくつかの実施形態において、Rは、-O-CFである。
【0039】
いくつかの実施形態において、Rは、H、CH、及びCFからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、Rは、CHである。
【0040】
いくつかの実施形態において、Rは、H、CH、及びCFからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、Rは、CHである。
【0041】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式(Ia)
【化3】
又はその医薬として許容され得る塩を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、-NH(R)は、
【化4】
からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、-NH(R)は、
【化5】
からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、-NHRは、
【化6】
からなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態において、-NHRは、
【化7】
である。
【0046】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、光学的に純粋な又は豊富な異性体である。
【0047】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、表1の化合物から選択される。
【0048】
本明細書で説明されるように、ある特定の癌を処置するための開示された方法は、血中の式(I)の化合物の極度に高い濃度を必要としない。実際、これらの化合物は、より低い血漿濃度で治療上の利益を提供するよう十分に効力がある。したがって、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、1,000ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、750ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、500ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、400ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、300ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、200ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、100ng/mL以下のトラフ血漿濃度を維持する。
【0049】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、約2ng/mL~1,000ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、約5ng/mL~500ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、約10ng/mL~400ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、約20ng/mL~300ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の有効量は、約40ng/mL~200ng/mLのトラフ血漿濃度を維持する。
【0050】
多くの癌は、本明細書で説明される方法を用いて処置することができる。いくつかの実施形態において、癌は、黒色腫、膠芽腫、食道腫瘍、鼻咽腔腫瘍、ぶどう膜黒色腫、リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、慢性骨髄性白血病、カポジ肉腫性線維肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、滑膜腫、髄膜腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、肉腫、敗血症、胆道腫瘍、基底細胞癌、胸腺腫瘍、甲状腺癌、副甲状腺癌、子宮癌、副腎癌、肝臓感染症、メルケル細胞癌、神経腫瘍、濾胞中心部リンパ腫、結腸癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病を含む慢性又は急性の白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、卵巣腫瘍、骨髄異形成症候群、皮膚又は眼内悪性黒色腫、腎細胞癌、小細胞肺癌、肺癌、中皮腫、肝癌、乳癌、扁平非小細胞肺癌(SCLC)、非扁平NSCLC、大腸癌、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、膵癌(pancreatic carcinoma)、膵癌(pancreatic cancer)、膵管線癌、頭頚部扁平細胞癌、頭頚部癌、消化管、胃癌、HIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザ、骨癌、皮膚癌、直腸癌、肛門領域の癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、舌癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、尿道癌、陰茎癌、膀胱癌、腎癌、尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、腫瘍血管新生、脊索腫(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類上皮癌、石綿症、癌腫、腺癌、乳頭状癌、嚢胞腺癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルム腫瘍(wilm’s tumor)、多形性腺腫、肝細胞乳頭腫、腎管状腺腫、嚢胞腺腫、乳頭腫、腺腫、平滑筋腫、横紋筋腫、血管腫、リンパ管腫、骨腫、軟骨腫、脂肪腫、及び線維腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、列挙された癌の各々は、PD-L1陽性癌である。
【0051】
いくつかの実施形態において、癌は、結腸癌、腎癌、大腸癌、胃癌、膀胱癌、黒色腫、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌、肝癌、乳癌、及び頭頚部癌である。いくつかの実施形態において、列挙された癌の各々は、PD-L1陽性癌である。
【0052】
いくつかの実施形態において、疾患又は障害は結腸癌である。いくつかの実施形態において、癌は腎癌である。いくつかの実施形態において、癌は大腸癌である。いくつかの実施形態において、癌は胃癌である。いくつかの実施形態において、癌は膀胱癌である。いくつかの実施形態において、癌は黒色腫である。いくつかの実施形態において、癌は非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態において、癌は肝癌である。いくつかの実施形態において、癌は乳癌である。いくつかの実施形態において、列挙された癌の各々は、PD-L1陽性癌である。
【0053】
いくつかの実施形態において、有効量の1つ以上の追加の治療薬がさらに対象へ投与される。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、細胞毒性薬、遺伝子発現調節薬、化学治療薬、抗癌薬、抗血管新生薬、免疫治療薬、抗ホルモン薬、放射線療法、放射線治療薬、抗腫瘍薬、及び抗増殖薬からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、ケモカイン及び/又は化学誘引物質受容体のアンタゴニストであり、これには、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CCR11、CCR12、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、C3aR、及び/又はC5aRがあるがこれらに限定されない。ケモカイン及び/又は化学誘引物質受容体のアンタゴニストは、当該技術分野で公知であり、例えば、国際公開第2007/002667号パンフレット、国際公開第2007/002293号パンフレット、国際公開第2003/105853号パンフレット、国際公開第2007/022257号パンフレット、国際公開第2007/059108号パンフレット、国際公開第2007/044804号パンフレット、国際公開第2007/115232号パンフレット、国際公開第2007/115231号パンフレット、国際公開第2008/147815号パンフレット、国際公開第2010/030815号パンフレット、国際公開第2010/075257号パンフレット、国際公開第2011/163640号パンフレット、国際公開第2010/054006号パンフレット、国際公開第2010/051561号パンフレット、国際公開第2011/035332号パンフレット、国際公開第2013/082490号パンフレット、国際公開第2013/082429号パンフレット、国際公開第2014/085490号パンフレット、国際公開第2014/100735号パンフレット、国際公開第2014/089495号パンフレット、国際公開第2015/084842号パンフレット、国際公開第2016/187393号パンフレット、国際公開第2017/127409号パンフレット、国際公開第2017/087607号パンフレット、国際公開第2017/087610号パンフレット、国際公開第2017/176620号パンフレット、国際公開第2018/222598号パンフレット、国際公開第2018/222601号パンフレット、国際公開第2013/130811号パンフレット、国際公開第2006/076644号パンフレット、国際公開第2008/008431号パンフレット、国際公開第2009/038847号パンフレット、国際公開第2008/008375号パンフレット、国際公開第2008/008374号パンフレット、国際公開第2008/010934号パンフレット、国際公開第2009/009740号パンフレット、国際公開第2005/112925号パンフレット、国際公開第2005/112916号パンフレット、国際公開第2005/113513号パンフレット、国際公開第2004/085384号パンフレット、国際公開第2004/046092号パンフレットにおいて説明されている。ケモカイン及び/又は化学誘引物質受容体のアンタゴニストにはまた、CCX354、CCX9588、CCX140、CCX872、CCX598、CCX6239、CCX9664、CCX2553、CCX3587、CCX3624、CCX2991、CCX282、CCX025、CCX507、CCX430、CCX765、CCX224、CCX662、CCX650、CCX832、CCX168、CCX168-M1、CCX3022、及び/又はCCX3384もある。
【0054】
本明細書で提供される処置方法には、概して、患者への有効量の本明細書に提供される1つ以上の化合物の投与がある。適した患者には、本明細書で特定される障害若しくは疾患に罹患している患者又は当該障害若しくは疾患に易罹患性の患者(すなわち、予防処置)がある。本明細書で説明されるような処置のための典型的な患者には、哺乳動物、詳しくは霊長類、特にヒトがある。他の適した患者には、イヌ、ネコ、ウマ、及びこれらに類するものなどの飼育用コンパニオン動物、又はウシ、ブタ、ヒツジ、及びこれらに類するものなどの家畜がある。
【0055】
投与経路及び薬用量
本開示において企図される投与経路には、癌の処置のための活性のある作用因子を送達するための当該技術分野で公知のものがある。これには、経口投与、腫瘍内注射、静脈内投与、及び皮下注射があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、有効量の式(I)の化合物は経口投与される。いくつかの実施形態において、有効量の式(I)の化合物は、腫瘍内注射を介して投与される。いくつかの実施形態において、有効量の式(I)の化合物は静脈内投与される。いくつかの実施形態において、有効量の式(I)の化合物は皮下注射を介して投与される。
【0056】
概して、本明細書で提供される処置方法は、患者へ有効量の式(I)の化合物又は本明細書で提供される1つ以上の化合物を投与することを含む。有効量は、対象においてPD-1/PD-L1相互作用を調節するのに、腫瘍成長を遅滞させるのに、腫瘍成長を阻害するのに、及び/又は腫瘍の大きさを低減するのに十分な量であり得る。好ましくは、投与される量は、PD-1/PD-L1相互作用を十分に調節するのに十分に高い化合物(又は、化合物がプロドラッグの場合、その活性のある代謝産物)の血漿濃度を生じるのに十分である。処置投与計画は、使用される化合物、及び処置される特定の容態によって変わり得、ほとんどの障害の処置にとっては1日4回以下の投与頻度が好ましい。概して、1日2回の薬用量投与計画がより好ましく、1日1回の投薬は特に好ましい。しかしながら、いずれかの特定の患者のための具体的な用量レベル及び処置投与計画が、採用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身レベルの健康状態、性別、食事(食餌)、投与時刻、投与経路、排泄率、薬物の組み合わせ(すなわち、患者へ投与されている他の薬物)、及び療法を受けている特定の疾患の重症度、並びに処方する医療従事者の判断を含む様々な要因によることは理解されるであろう。概して、有効な療法を提供するのに十分な最少量の用量の使用が好ましい。患者は概して、処置又は予防される容態に適した医学的な又は獣医学的な基準を用いて治療の有効性について監視され得る。
【0057】
1日あたり体重1キログラムあたり約0.1mg~約140mgの桁の薬用量レベルがPD-1/PD-L1相互作用を包含する容態の処置又は予防において有用である(1日あたりヒト患者1人あたり約0.5mg~約7g)。単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、処置される宿主及び特定の投与様式によって変わる。単位剤形は概して、約1mg~約500mgの有効成分を含有する。経口で、経皮で、静脈内に、又は皮下に投与される化合物については、5ng(ナノグラム)/mL~1μg(マイクログラム)/mL血漿の血漿濃度を達成するのに十分な量の投与される化合物が投与されるべきであることが好ましく、より好ましくは、20ng~0.5μg/ml血漿の血漿濃度を達成するのに十分な化合物が投与されるべきであり、最も好ましくは、30ng/ml~200ng/ml血漿の血漿濃度を達成するのに十分な化合物が投与されるべきである。
【0058】
投薬の頻度はまた、使用される化合物、投与経路、及び処置される特定の疾患によっても変わり得る。しかしながら、ほとんどの障害の処置については、1日4回、1日3回、又はそれ未満の薬用量投与計画が好ましく、1日1回又は1日2回の薬用量投与計画が特に好ましい。しかしながら、いずれかの特定の患者に特異的な用量レベルが、採用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身レベルの健康状態、性別、食事(食餌)、投与時刻、投与経路、及び排泄率、薬物の組み合わせ(すなわち、患者へ投与される他の薬物)、療法を受けている特定の疾患の重症度、並びに処方する医療従事者の判断を含む他の要因を含む様々な要因によることは理解されるであろう。
【0059】
医薬組成物
式(I)は、対象へ投与されるとき、典型的には医薬組成物中にある。本明細書で使用されるような「組成物」という用語は、指定された量で指定された成分を含む製品、及び指定された量の指定された成分の組み合わせから直接的に又は間接的に結果が得られるいずれかの製品を包含するよう企図されている。「医薬として許容され得る」によって意味されるのは、担体、希釈剤、又は賦形剤が、製剤の他の成分と共存可能でなければならず、且つその受け手に対して有害であってはならない、ということである。
【0060】
本開示の化合物の投与のための医薬組成物は、経口投与のための単位剤形において簡便に提示され得、薬学及び薬物送達の分野において周知の方法のうちのいずれかによって調製され得る。方法はすべて、担体とともに有効成分をもたらすステップを含み、当該担体は、1つ以上の付属成分を構成する。概して、医薬組成物は、液体担体若しくは細かく分割された固体担体又はその両方とともに有効成分を均一且つ細かくすることによって調製され得、次いで、必要な場合、製品を所望の製剤へと成形する。この医薬組成物において、活性のある対象化合物は、疾患のプロセス又は容態に応対する所望の作用を生じるのに十分な量で含まれる。
【0061】
有効成分を含有する医薬組成物は、経口使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性又は油性の懸濁剤、分散可能な散剤又は顆粒剤、米国特許出願第2002/0012680号明細書において説明されるようなエマルション剤及び自己乳化剤、硬質又は軟質のカプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、液剤、頬側パッチ剤、経口ジェル剤、チューインガム剤、咀嚼可能な錠剤、発泡性散剤及び発泡性錠剤としての形態であり得る。経口使用に企図される組成物は、医薬組成物の製造のために、当該技術分野に公知のいずれかの方法により調製され得、かかる組成物は、医薬としてすっきりとした且つ喜ばれる味の調製物を提供するために、甘味料、着香料、着色料、酸化防止剤、及び保存料からなる群から選択される1つ以上の作用因子を含有し得る。錠剤は、非毒性の医薬として許容され得る、錠剤の製造に適している賦形剤と混合された有効成分を含有する。これらの賦形剤は例えば、セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、トウモロコシでんぷん又はアルギン酸などの顆粒剤及び崩壊剤、PVP、セルロース、PEG、でんぷん、ゼラチン、又はアカシアなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクなどの潤滑剤であり得る。錠剤は、被覆されていなくてもよいし、消化管内での崩壊及び吸収を遅延させ、それにより、より長い時間にわたって持続的な作用を提供するための公知の技術によって、腸溶又はそれ以外の態様で被覆されていてもよい。例えば、グリセリルモノステアラート又はグリセリルジステアラートなどの時間遅延材料が採用され得る。錠剤はまた、米国特許第4,256,108号明細書、同第4,166,452号明細書、及び同4,265,874号明細書において説明される技術によっても被覆されて、制御放出のための浸透圧性治療用錠剤を形成し得る。
【0062】
経口使用のための製剤はまた、硬質ゼラチンカプセルとしても提示され得、この中で、有効成分は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリン、様々な平均径のポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG400、PG4000)、及び、クレモホア若しくはソルトールなど、ある特定の界面活性剤、又は軟質ゼラチンカプセルと混合され、この中で、有効成分は、水又は油の媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン、又はオリーブ油と混合される。追加として、エマルション剤は、油など非水混和性成分とともに調製され、モノグリセリド又はジグリセリド、PEGエステル、及びこれらに類するものなど界面活性剤を用いて安定化することができる。
【0063】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合した活性のある材料を含有している。かかる賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムなどの懸濁剤であり、分散剤又は湿潤剤は、レシチンなどの天然のホスファチド、又はポリオキシ-エチレンステアラートなどの、酸化アルキレンと脂肪酸との縮合産物、又はヘプタデカエチレンオキシセタノールなどの、酸化エチレンと長鎖脂肪アルコールとの縮合産物、又はポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートなどの、酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合産物、又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどの、酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合産物であり得る。水性懸濁剤はまた、1つ以上の保存料、例えば、エチル、又はn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾアート、1つ以上の着色料、1つ以上の着香料、及びスクロース又はサッカリンなど1つ以上の甘味料も含有し得る。
【0064】
油状懸濁液は、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはヤシ油の中に、又は流動パラフィンなど鉱油の中に有効成分を懸濁することによって製剤され得る。油状懸濁液は、蜜蝋、硬質パラフィン、又はセチルアルコールなどの増粘剤を含有し得る。上述に説明したものなどの甘味料、及び着香料は、咀嚼可能な経口調製物を提供するために添加され得る。これらの組成物は、アスコルビン酸など酸化防止剤の添加によって保存され得る。
【0065】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散可能な散剤又は顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存料と混合して有効成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、上述ですでに記載されたものによって具現化されている。追加の賦形剤、例えば、甘味料、着香料、及び着色料も存在し得る。
【0066】
本開示の医薬組成物はまた、水中油エマルションの形態でもあり得る。油相は、オリーブ油若しくは落花生油などの植物油、又は流動パラフィンなどの鉱油、或いはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、アカシアゴム又はトラガカントゴムなどの天然ゴム、ダイズ、レシチンなどの天然のホスファチド、脂肪酸とヘキシトール無水物とに由来するソルビタンモノオレアートなどのエステル又は部分エステル、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどの、当該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物であり得る。エマルション剤はまた、甘味料及び着香料も含有し得る。
【0067】
シロップ剤及びエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、又はスクロースなどの甘味料とともに製剤され得る。かかる製剤はまた、粘滑剤、保存料及び着香料、並びに着色料も含有し得る。経口液剤は、例えば、シクロデキストリン、PEG、及び界面活性剤と合わせて調整することができる。
【0068】
本開示の化合物はまた、ターゲティングが可能な薬物担体に適したポリマーである担体とカップリングすることもあり得る。かかるポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチル-アスパルトアミド-フェノール、又はパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシド-ポリリジンを含むことができる。さらに、本開示の化合物は、薬物の放出制御を達成する上で有用な生分解可能なポリマーとカップリングされ得、そのようなポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリラート、及びヒドロゲルの架橋した又は両親媒性のブロックコポリマーの1クラスである担体が挙げられる。ポリマー及び半透性ポリマーマトリックスは、バルブ、ステント、配管、人工器官、及びこれらに類するものなど、成形された物品へと形成され得る。本開示の一実施形態において、本開示の化合物は、ステント又はステントグラフト装置として形成されるポリマー又は半透性ポリマーマトリックスへカップリングされる。
【0069】
いくつかの実施形態において、医薬組成物はさらに、1つ以上の追加の治療薬を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、抗菌薬、抗ウイルス薬、細胞毒性薬、遺伝子発現調節薬、化学治療薬、抗癌薬、抗血管新生薬、免疫治療薬、抗ホルモン薬、抗線維化薬、放射線療法、放射線治療薬、抗腫瘍薬、及び抗増殖薬からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、ケモカイン及び/又は化学誘引物質受容体のアンタゴニストであり、これには、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CCR11、CCR12、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、C3aR、及び/又はC5aRが含まれるが、これらに限定されない。ケモカイン及び/又は化学誘引物質受容体のアンタゴニストは、当該技術分野で公知であり、例えば、国際公開第2007/002667号パンフレット、国際公開第2007/002293号パンフレット、国際公開第2003/105853号パンフレット、国際公開第2007/022257号パンフレット、国際公開第2007/059108号パンフレット、国際公開第2007/044804号パンフレット、国際公開第2007/115232号パンフレット、国際公開第2007/115231号パンフレット、国際公開第2008/147815号パンフレット、国際公開第2010/030815号パンフレット、国際公開第2010/075257号パンフレット、国際公開第2011/163640号パンフレット、国際公開第2010/054006号パンフレット、国際公開第2010/051561号パンフレット、国際公開第2011/035332号パンフレット、国際公開第2013/082490号パンフレット、国際公開第2013/082429号パンフレット、国際公開第2014/085490号パンフレット、国際公開第2014/100735号パンフレット、国際公開第2014/089495号パンフレット、国際公開第2015/084842号パンフレット、国際公開第2016/187393号パンフレット、国際公開第2017/127409号パンフレット、国際公開第2017/087607号パンフレット、国際公開第2017/087610号パンフレット、国際公開第2017/176620号パンフレット、国際公開第2018/222598号パンフレット、国際公開第2018/222601号パンフレット、国際公開第2013/130811号パンフレット、国際公開第2006/076644号パンフレット、国際公開第2008/008431号パンフレット、国際公開第2009/038847号パンフレット、国際公開第2008/008375号パンフレット、国際公開第2008/008374号パンフレット、国際公開第2008/010934号パンフレット、国際公開第2009/009740号パンフレット、国際公開第2005/112925号パンフレット、国際公開第2005/112916号パンフレット、国際公開第2005/113513号パンフレット、国際公開第2004/085384号パンフレット、国際公開第2004/046092号パンフレットにおいて説明されている。ケモカイン及び/又は化学誘引物質受容体のアンタゴニストにはまた、CCX354、CCX9588、CCX140、CCX872、CCX598、CCX6239、CCX9664、CCX2553、CCX3587、CCX3624、CCX2991、CCX282、CCX025、CCX507、CCX430、CCX765、CCX224、CCX662、CCX650、CCX832、CCX168、CCX168-M1、CCX3022、及び/又はCCX3384もある。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、式(I)又は式(Ia)の化合物を含む、本開示の化合物を作る様々な方法を説明している。以下の例は、特許請求した開示を説明するために提供されるのであって、これを制限するものではない。
【0071】
以下に使用する試薬及び溶媒は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wisconsin,USA)などの販売元から得ることができる。H-NMRスペクトルをVarian Mercury 400 MHz NMR分光光度計で記録した。有意なピークをTMSに対して提供し、多重度(s、一重線、d、二重線、t、三重線、q、四重線、m、多重線)及びプロトン数の順に作表した。質量分析の結果を質量電荷比として報告する。この例では、単一のm/z値を、最も共通の原子同位体を含有するM+H(又は、記載する場合、M-H)イオンについて報告する。同位体パターンは、すべての場合において予測式に対応している。エレクトロスプレイイオン化(ESI)質量分析を、HP1100 HPLCを試料送達に用いるHewlett-Packard MSDエレクトロスプレイ質量分析計で行った。通常、分析物はメタノール又はCHCN中に0.1mg/mLで溶解し、1マイクロリットルを送達溶媒で質量分析計内へと注入し、100ダルトンから1000ダルトンまで走査した。化合物はすべて、1%ギ酸含有のアセトニトリル/水を送達溶媒として用いて、正のESIモード又は負のESIモードで分析することができた。
【0072】
以下の略語を実施例において及び本開示の明細書のいたるところで用いる。TLCは、薄層クロマトグラフィーを意味する。
【0073】
本開示の範囲内の化合物は、後述に説明する通り、当業者に公知の様々な反応を用いて合成することができる。当業者はまた、代替的な方法を採用して、本開示の標的化合物を合成し得ること、及び本文書の本体内で説明されるアプローチは網羅的ではないが、目的の化合物への広範に応用可能な且つ実用的な経路を提供することも認識するであろう。
【0074】
本特許で特許請求されるある特定の分子は、異なる鏡像異性形態及びジアステレオマー形態で存在することができ、これらの化合物のかかる変異体はすべて、具体的な鏡像異性体が指定されていない限り、特許請求されている。
【0075】
本文書においてカギとなる化合物を合成するために使用される実験手順の詳細な説明は、当該化合物を同定する物理的なデータによって、及び当該化合物と関係する構造図によって説明される分子につながっている。
【0076】
当業者はまた、有機化学の標準的な精密作業手順の間、酸及び塩基が頻繁に使用されることも認識するであろう。親化合物の塩は、本特許内で説明される実験手順の間に、必要な本質的酸性度又は塩基性度を有する場合、製造されることが時折ある。
【0077】
実施例1:N-(2’-クロロ-3’-(5-((((3R,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)メチル)-6-メトキシピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド
【化8】
ステップa:p-ジオキサン(40mL)及びDI HO(6mL)中の1,3-ジメチル-N-(2-メチル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド(3.6g、9.0mmol)、1,3-ジブロモ-2-クロロベンゼン(6.9g、25.5mmol)、及びKCO(3.8g、27.5mmol)の混合物へ、Pd(dppf)Clのジクロロメタンとの複合体(912mg、1.12mmol)を添加した。この反応混合物を2分間脱気し(N)、N下で90℃で2時間撹拌した。この反応混合物をEtOAcで希釈し、セライトで濾別し、鹹水で洗浄し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の5→100%EtOAcに続いてEtOAc中の0→5%MeOH)によって精製して、N-(3’-ブロモ-2’-クロロ-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミドを得た。MS:(ES)m/z C2018BrClN[M+H]についての計算値462.0,実測値462.0。
【0078】
ステップb:p-ジオキサン(18mL)中のN-(3’-ブロモ-2’-クロロ-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド(1.4g、3.03mmol)、ピナコールジボラン(1.0g,3.94mmol)、及びKOAc(1.2g,10.2mmol)の混合物へ、Pd(dppf)Clのジクロロメタンとの複合体(350mg,0.43mmol)を添加した。この反応混合物を2分間脱気し(N)、N下で90℃で3時間撹拌した。この反応混合物をEtOAcで希釈し、セライトで濾別し、鹹水で洗浄し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の10→60%EtOAc)によって精製して、N-(2’-クロロ-2-メチル-3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミドを得た。MS:(ES) m/z C2630BClN[M+H]についての計算値510.2,実測値510.1。
【0079】
ステップc:p-ジオキサン(10mL)及びDI HO(2mL)中のN-(2’-クロロ-2-メチル-3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド(400mg,0.78mmol)、6-クロロ-2-メトキイニコチンアルデヒド(200mg,1.17mmol)、及びKCO(350mg,2.53mmol)の混合物へ、Pd(dppf)Clのジクロロメタンとの複合体(70mg,0.086mmol)を添加した。この反応混合物を2分間脱気し(N)、N下で95℃で2時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、セライトで濾別し、鹹水で洗浄し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の10→65%EtOAc)によって精製して、N-(2’-クロロ-3’-(5-ホルミル-6-メトキシピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミドを得た。MS:(ES) m/z C2724ClN[M+H]についての計算値519.1,実測値519.1。
【0080】
ステップd:ジクロロエタン(2mL)及びエタノール(1mL)中のN-(2’-クロロ-3’-(5-ホルミル-6-メトキシピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド(40mg,0.077mmol)及び(3R,4R)-4-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-3-オールヒドロクロリド(24mg,0.154mmol)の撹拌溶液へ、トリエチルアミン(2滴)、次いで、酢酸(2滴)を添加した。この反応混合物を70℃で1時間撹拌した。次いで、この混合物を0℃まで冷却し、NaCNBH(10mg,0.154mmol)を緩徐に添加した。この混合物を0℃で10分間撹拌した。この混合物をシリンジフィルタに通し、次いで分取用HPLC(0→40%→100%アセトニトリル/HO)によって精製して、N-(2’-クロロ-3’-(5-((((3R,4R)-3-ヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)メチル)-6-メトキシピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミドを得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ 11.18(s,1H),8.63(s,1H),8.13-8.06(m,1H),7.88(d,J=7.6Hz,1H),7.61(dd,J=7.6,1.7Hz,1H),7.49(t,J=7.6Hz,1H),7.39-7.25(m,3H),7.00(d,J=7.7Hz,1H),4.35(d,J=13.3Hz,1H),4.24(d,J=13.2Hz,1H),4.11-3.93(m,6H),3.61-3.36(m,10H),2.13(s,4H),1.87(d,J=12.4Hz,1H).MS:(ES)m/z C3234ClN[M+H]についての計算値620.2、実測値620.2。
【0081】
実施例2:(S)-N-(2’-クロロ-3’-(6-メトキシ-5-((((5-オキソピロリジン-2-イル)メチル)アミノ)メチル)ピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド
【化9】
実施例1と同じ手順を用いて、標題化合物をN-(2’-クロロ-3’-(5-ホルミル-6-メトキシピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド及び(S)-5-アミノメチルピロリジン-2-オンヒドロクロリドから調製した。粗生成物を逆相HPLC(C18カラム,溶離剤として0.1%TFA含有のアセトニトリル/HO)によって精製して、所望の生成物(S)-N-(2’-クロロ-3’-(6-メトキシ-5-((((5-オキソピロリジン-2-イル)メチル)アミノ)メチル)ピリジン-2-イル)-2-メチル-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミドを得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ 8.63(d,J=1.1Hz,1H),8.12(dd,J=7.9,1.3Hz,1H),7.88(d,J=7.6Hz,1H),7.61(d,J=7.7Hz,1H),7.50(t,J=7.6Hz,1H),7.41-7.25(m,3H),7.00(d,J=7.5Hz,1H),4.34(d,J=2.0Hz,2H),4.13-4.00(m,4H),3.55(d,J=1.0Hz,3H),3.39(d,J=1.0Hz,3H),3.34-3.22(m,2H),2.49-2.32(m,3H),2.13(s,3H),1.92(q,J=7.5Hz,1H).MS:(ES)m/z C3233ClN[M +H]についての計算値617.2、実測値 617.2。
【0082】
実施例3:(S)-N-(2,2’-ジクロロ-3’-(6-メトキシ-5-((((5-オキソピロリジン-2-イル)メチル)アミノ)メチル)ピリジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド
【化10】
実施例1と同様の手順を用いて、標題化合物をN-(2,2’-ジクロロ-3’-(5-ホルミル-6-メトキシピリジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド及び(S)-5-(アミノメチル)ピロリジン-2-オンヒドロクロリドから調製した。粗生成物を分取用HPLC(C18カラム,溶離剤として0.1%TFA含有のMeCN/HO)によって精製して、(S)-N-(2,2’-ジクロロ-3’-(6-メトキシ-5-((((5-オキソピロリジン-2-イル)メチル)アミノ)メチル)ピリジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3-ジメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミドを得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ 11.69(s,1H),8.66(s,1H),8.54(d,J=8.3Hz,1H),7.93-7.85(m,1H),7.65(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),7.51(dd,J=7.7,7.7Hz,1H),7.45-7.35(m,3H),7.10(d,J=7.6Hz,1H),4.34(s,2H),4.14-4.01(m,4H),3.56(d,J=1.6Hz,3H),3.39(d,J=1.8Hz,3H),3.30-3.20(m,3H),2.40(dd,J=11.8,11.1Hz,2H),2.03(d,J=1.7Hz,1H),1.92(d,J=6.9Hz,1H).MS:(ES)m/z C3131Cl[M+H]についての計算値637.2、実測値 637.2。
【0083】
生物学的実施例1:酵素結合免疫吸着検定法-ELISA
96ウェルプレートをPBS中のヒトPD-L1(R&Dから入手)1μg/mLで4℃で一晩被覆した。次いで、ウェルを0.05%トゥイーン20含有PBS中の2%(W/V)BSAで37℃で1時間ブロッキングした。このプレートをPBS/0.05%トゥイーン20で3回洗浄し、この化合物を希釈培地中で連続希釈し(1:5)、ELISAプレートへ添加した。ヒトPD-1及びビオチン0.3μg/mL(ACRO Biosystems)を添加し、37℃で1時間インキュベートし、次いで、PBS/0.05%トゥイーン20で3回洗浄した。第2のブロックをPBS中の2%BSA(W/V)/0.05%トゥイーン20で37℃で10分間行い、このプレートをPBS/0.05%トゥイーン20で3回洗浄した。ストレプトアビジン-HRPを37℃で1時間添加し、次いで、プレートをPBS/0.05%トゥイーン20で3回洗浄した。TMB基質を添加し、37℃で20分間反応させた。停止溶液(2N HSO水溶液)を添加した。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を用いて450nmで読み取った。結果を表1に示す。IC50値を以下の通り提供する。1000~10,000nM(+)、10~1000nM(++)、10nM未満(+++)。
【0084】
【表1】
【0085】
生物学的実施例2:化合物2.001、化合物2.002、及び化合物2.003の抗腫瘍作用
この例は、本明細書で開示される化合物2.001、2.002、及び2.003の生物学的抗腫瘍作用を実証する。
【0086】
ELISA:このアッセイを生物学的実施例1において実質的に説明した通りに行った。
【0087】
細胞株及び細胞培養:TCRアゴニスト及びPD-L1を恒常的に発現するCHO細胞を、10%FBSを補充したHam溶液で生育させ、細胞系アッセイに使用した。PD-1を恒常的に発現し、TCR誘導性NFAT応答要素によって駆動するルシフェラーゼ受容体遺伝子を担持するよう改変したTリンパ球様細胞株(Jurkat)(エフェクター細胞、EC)(Jurkat PD-1)を、10%FBS及び1×ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI中で生育させ、細胞系アッセイに使用した。ヒト黒色腫細胞株A375及びヒト乳癌細胞株MDA-MB-231をATTCから入手し、10%FBS及び1×ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM中で生育させた。ヒトPBMCを実験室内で単離し、10%FBS及び1×ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI中で生育させた。
【0088】
PD-1/PD-L1遮断細胞系アッセイ:
6×10個のCho PD-L1細胞を96ウェルプレート内に37℃で一晩播種した。細胞をPBS1×で洗浄した後、40μlのTJurkat PD-1(1×10個/ml)含有の1%FBS RPMI(5μMの出発濃度に続いて1:5希釈)で希釈した40μlの化合物を各ウェルに添加し、37℃で6時間インキュベートした。細胞を室温へ冷却した後、80μlのBio-Glo Reagent(Promega,Madison,WI)を培地へ添加し、相対的な光単位(RLU)をFlexStation 3プレートリーダーで500ms/ウェルの速度で測定した。2個の細胞を一緒に共培養すると、PD-1/PD-L1相互作用はTCRシグナル伝達及びNFAT-RE介在性発光を阻害する。添加することによって、PD-1/PD-L1相互作用を遮断する抗PD-1又は抗PD-L1抗体/化合物は、阻害シグナルを放出し、結果的にTCR活性化及びNFAT-RE介在性発光を生じる。
【0089】
PBMCの単離:
末梢血単核細胞(PBMC)を、健常ドナー由来のLRSチャンバ(白血球除去システム)由来の血液軟膜から、Ficoll-Paque Plus(Sigma Aldrich Inc.,St.Louis,MO)を含有するStemCell SepMate(商標)-50チューブ(STEMCELL Technologies,Vancouver,CA)を用いる密度勾配遠心分離によって単離した。
【0090】
単球由来の樹状細胞の発生:
CD14単球をPBMCから、ヒトCD14MicroBeads(MACS Miltenyi Biotech,Bergisch Gladbach,Germany)及びautoMACS(登録商標)Pro Separatorを用いた磁気分離によって単離した。単離した単球を1×10個/mlの濃度で播種し、樹状細胞へ、GM-CSF(100ng/ml)及びIL-4(50ng/ml)を6日間添加することによって分化させた。サイトカイン補充物含有の新鮮な培地を0日後及び2日後に添加した。成熟樹状細胞を6日後に、IL-6(2000IU/ml)、IL-1B(400IU/ml)(Peprotech,Inc.Rocky Hill,NJ)、TNFアルファ(2000IU/ml)及びPGE2(2ug/ml)(Sigma Aldrich,Inc.)の添加によって誘導し、24時間培養した。
【0091】
ヒトエフェクター細胞の調製:
CD4T細胞をPBMCから、ヒトCD4+MicroBeads(MACS Miltenyi Biotech)及びautoMACS(登録商標)Pro Separatorを用いた磁気分離によって単離した。
【0092】
混合型リンパ球反応(MLR):一致していないドナー由来のDC細胞及びCD4T細胞を1:10の比で一緒に、96ウェル平底プレート(Thermo Scientific)内で5日間培養した。試験化合物を、1:4希釈をDMSOで行った1μMの出発濃度で、示す通り添加した。PD-L1抗体(AZ Medi4736類似体)及びアイソタイプ対照(Human IgG1、カッパアイソタイプ対照)(CrownBio,Beijing)をそれぞれ、陽性対照及び陰性対照として用いた。上清を接種5日後に収穫し、ヒトIFNgの検出を、製造元の説明書に従って、Human IFN-ガンマDuoSet ELISA(R&D System,Minneapolis)を用いたELISAによって行った。
【0093】
インビトロでの免疫療法効力アッセイ:
A375-eGFP-Puro細胞(ATCC)を、ピューロマイシン1ug/mlを含有する完全培地(DMEM+10%FBS+P/S 1×)中で生育させた。ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を健常ドナーからのLRSチャンバ(白血球除去システム)由来の血液軟膜から、Ficoll-Paque Plus(Sigma Aldrich Inc.,St.Louis,MO)を含有するStemCell SepMate(商標)-50チューブ(STEMCELL Technologies,Vancouver,CA)を用いた密度勾配遠心分離によって単離した。新鮮に単離したhPBMCを100ng/mlのStaphylococcal Enterotoxin B(SEB)(EMD Milipore,カタログ番号324798)で3日間刺激した。細胞を2回洗浄し、正規の生育培地中へと再懸濁した。3×10個のA375-eGFP-Puro細胞を96ウェルの透明底黒TC処理プレート内で最終容積100ulで播種した(Corning)。試験化合物又は抗ヒトPD-L1抗体(AZ Medi4736類似体、CrownBio,Beijing)をウェルに異なる濃度で添加した。SEBで刺激したhPBMCをウェルに、E:T(エフェクター細胞:標的細胞)が2:1である比で添加した。混合した細胞を96~120時間、37℃で5%CO中でインキュベートした。培地を注意深く吸引し、100μlのPBS 1×を各ウェルに添加した。A375-eGFP細胞からの蛍光を、FlexStation3プレートリーダーを用いて検出した。
【0094】
二量体化アッセイ
PD-L1タンパク質の二量体化を、PathHunter(登録商標)Dimerizationアッセイ(DiscoverX,Fremont,CA)を用いて化学発光検出によってインビトロで評価した。このアッセイは、発売元のプロトコルに従って行った。2×10個のU2OS細胞を96ウェル白色底TC処理プレート(Costar,San Jose,CA)に100ulの最終容積で播種した。ChemoCentryx化合物又は抗ヒトPD-L1抗体(AZ Medi4736 類似体,CrownBio,Beijing)を実験細胞へ異なる濃度で添加し、37℃、5%COで16時間インキュベートした。110ulのPathHunter Flash検出試薬(DiscoverX)を各ウェルに添加し、室温で暗所で1時間インキュベートした。化学発光シグナルをFlexStation3プレートリーダー(Molecular Devices,San Jose,CA)で100ms/ウェルの速度で測定した。
【0095】
インターナリゼーションアッセイ:
37℃、5%COで生育させているMC38-hPD-L1細胞(GenOway S.A.,France)及びRKO細胞(ATCC)を脱離し、冷FACS緩衝液(10%FBS及び0.1%アジ化物含有のPBS 1×)中で再懸濁し、96ウェルアッセイプレート(V底)(Axygen,Union City,CA)に10×10個/ウェルの濃度で添加した。ChemoCentryx化合物又は抗ヒトPD-L1抗体(AZ Medi4736類似体)をウェルに異なる濃度で添加し、37℃又は4℃で2時間インキュベートした。細胞を氷冷FACS緩衝液で2回洗浄し、組換えウサギモノクローナル抗ヒトPD-L1抗体([28-8](PE)(ab209962),Abcam)又は組換えウサギモノクローナルIgGアイソタイプ対照([EPR25A](PE)(ab209478),Abcam)で氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した後、FACS分析を行った。データはFlowJoソフトウェアを用いて解析した。
【0096】
MC38-hPD-L1細胞の発生及び培養:
化合物は、ヒトPD-L1と交差反応することが公知であるのみで、それゆえ、ヒトPD-L1を発現するマウスMC-38結腸腫瘍細胞をもつ同系腫瘍モデル(MC38-hPD-L1腫瘍モデル)を用いた。MC38-hPD-L1細胞をGenOwayによって発生させた。内在性マウスPDL1をCRISPR技術を用いてまずノックアウトした後、ヒトPDL1をこれらのマウスPD-L1ノックアウトMC38細胞において安定して移入した。MC38-hPD-L1細胞をMC38細胞にとって標準的な条件(10%ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシン含有DMEM)下で、導入遺伝子発現を維持するためにG418とともに培養した。これらの細胞をマウスへ接種する2日前に、細胞をトリプシン処理し、抗生物質なしで植えた。
【0097】
インビボでの試験:
8週齢の雌C57BL/6マウスに5×10個のMC38-hPD-L1細胞を右脇腹において皮下注射した。腫瘍接種9日後、マウスを無作為に腫瘍の大きさに基づいて複数の処置群へ割り当てた。測定可能な腫瘍を発症したマウスのみを試験に登録した。抗PD-L1(デュルバルマブ)又はアイソタイプ対照をマウス1匹あたり1回の投与あたり100ugで1週間に2回を2週間、腹腔内投与した。1%HPMC中に懸濁した化合物2.001及び化合物2.002を示された用量で、1匹のマウスあたり100μlの投与量で毎日経口投与した。ビヒクルである1%HPMCを同じ量で同じ頻度で対照動物へ投与した。
【0098】
腫瘍の体積を1週間に3回、デジタルカリスパを用いて測定し、(幅×長さ/2)として計算した。腫瘍の体積がIACUCガイドラインに従って2,000mmに到達したとき、マウスを屠殺した。
【0099】
腫瘍の幅(W)及び長さ(L)をカリスパで1週間に3回測定し、腫瘍の体積を式V=(W(2)×L)/2を用いて計算した。腫瘍が2000mmに到達したとき、マウスを屠殺し、さらなる分析のために腫瘍を摘出した。
【0100】
腫瘍浸潤物の細胞の表現型分類:
摘出した腫瘍を刃で細かくたたき、200umふるいにかけた。細胞を次に70μMふるいにかけた。細胞を洗浄し、FACS緩衝液(10%FBS及び0.1%アジ化物含有のPBS 1×)中で再懸濁した。
【0101】
フローサイトメトリーのための抗体をBioLegend(San Diego,CA)から入手した。フローサイトメトリーパネルは、FITC中のCD45、PE中のPD-L1、APC中のCD8、APC-Cy7中のCD4を含んでいた。フローサイトメトリーデータを、FACSCanto II(BD Biosciences,San Jose,CA)サイトメーターで獲得し、FlowJO第10.2版(FlowJo,Ashland,OR)を用いて解析した。
【0102】
結果:
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)において、化合物2.001及び2.002は両方とも、PD-L1とPD-1との直接的な相互作用を強力に阻害した。複数アッセイからの2.001及び2.002の平均IC50はそれぞれ、0.3nM及び0.4nMである(図1)。PD-1介在性下流シグナル伝達を評価する細胞系アッセイにおいて、これらの化合物は、PD-L1/PD-1相互作用によって抑制されるNFATプロモーター駆動型ルシフェラーゼ発現を増強する。このアッセイにおける化合物2.001及び2.002の平均EC50はそれぞれ、52nM及び46nMである。
【0103】
混合型リンパ球反応(MLR)アッセイ(図2及び図3)において、化合物2.001及び化合物2.002は、ヒトT細胞からのINFガンマの放出を用量依存的に増やす。異なるドナー由来のT細胞の応答性は様々だが、いずれの化合物も異なるT細胞で100nM未満のEC50を呈する。
【0104】
前刺激した初代ヒトPBMCの存在下で、化合物2.001及び2.002は、GFP標識したヒト癌細胞株A375の殺滅を促進する(図4A)。FDA承認の抗PD-L1抗体であるデュルバルマブを陽性対照として用い、本研究の比較因子とした(図4B)。
【0105】
経路ハンターアッセイ(二量体化アッセイ)において、2つのPD-L1分子の二量体化は、2つの酵素サブユニットを一緒にし、機能的な酵素を形成し、これが生物発光シグナルを生じる。化合物2.001及び2.002はいずれも、二量体化シグナルを強く誘導したのに対し、対照化合物及び抗PD-L1抗体は、かかるシグナルを誘導しない(図5)。
【0106】
腫瘍細胞株に対する表面PD-L1をフローサイトメトリーによって測定した。PD-L1に対する検出抗体の結合は、4℃での化合物処理によるPD-L1染色の最小限の変化によって示されるように、小分子阻害剤によって影響されない。受容体のインターナリゼーションを可能にする温度である37℃では、化合物2.001及び2.002は細胞表面上での表面PD-L1レベルを顕著に低減する(図6)。抗PD-L1抗体は、PD-L1表面レベルに対して何ら効果を有していない。これらの事実は、化合物2.001及び2.002がPD-L1インターナリゼーションを促進することを示唆している。
【0107】
マウスPD-L1がヒトPD-L1導入遺伝子と置き換えられたマウス腫瘍細胞株MC38を用いて、マウスにおける腫瘍の成長を誘導した(図7)。本発明者らは、ヒト及びマウスのPD-L1が、マウスPD-1へ同様の親和性で結合することを確認したが、本発明者らのPD-L1阻害剤は、マウスPD-1とのヒトPD-L1の相互作用を同様の効能で遮断する(データは示されていない)。
【0108】
このモデルにおいて、経口投与される化合物2.002は、用量依存的に腫瘍の成長を抑制する(図8A図8C)。30mg/kgの化合物2.002で(1日2回)処理した10匹のマウスのうちの8匹が、腫瘍の完全な撲滅を達成した(図8A)。最終的な腫瘍の重量は、腫瘍の大きさの測定と一貫性があり、撲滅した腫瘍は、腫瘍重量のグラフに含まれなかった(図8B)。血漿化合物濃度はまた、用量依存性も実証した(図8C)。
【0109】
30mg/kgで各々(1日2回)経口投与される化合物2.001及び化合物2.003はまた、抗PD-L1抗体(デュルバルマブ)と同様の腫瘍抑制にもつながった(図9A図9B、及び図9Cを比較されたい)。図9Aは、マウスが化合物2.001を投与される時の腫瘍の成長をプロットしており、図9Bは、マウスが化合物2.003を投与される時の腫瘍の成長をプロットしており、図9Cは、マウスが抗PD-L1抗体(デュルバルマブ)を投与される時の腫瘍の成長をプロットしている。各々図における上パネルは、各群における10匹のマウス由来の平均腫瘍サイズであり、下のグラフは、個々の動物の腫瘍の進行である。抗PD-L1処理群における6匹の動物、化合物2.001で処置した群における4匹、化合物2.001で処置した群における4匹の動物は、完全な退縮を達成した。
【0110】
上述の参照したモデルにおいて、化合物2.001及び化合物2.003についての血漿濃度(各々30mg/kgで1日2回投与)を、各マウスにおいて投与の6日後に測定した。トラフ血漿濃度を図10にプロットする。
【0111】
化合物2.001が腫瘍細胞においてPD-L1を占有する程度を検討するために、本発明者らは、これらの腫瘍から単離した細胞を染色する別のPD-L1検出抗体を利用した。この検出抗体は、化合物2.001又は処置抗PD-L1(デュルバルマブ)がいったん結合すると、PD-L1へは結合しない。化合物2.001処置した腫瘍由来の細胞は、この検出抗体によるPD-L1染色を完全に欠失させており、化合物2.001によるほぼ完全なPD-L1占有率を実証した(図11)。
【0112】
上述に参照したマウスモデルにおける各処置条件を、腫瘍浸潤免疫細胞について解析した。CD8T細胞及びCD4T細胞はいずれも、抗PD-L1処置腫瘍と同様に、化合物2.001処置によって増加する(図12)。
【0113】
本発明を行うために本発明者らに公知の最善のモードを含む、本発明の特定の実施形態が本明細書に説明されている。上述の説明を読み取る際、開示された実施形態の変化は、当業者にとって明らかであり得、当業者が、かかる変化を適宜採用し得ることは期待される。したがって、本発明が、さもなくば本明細書で具体的に説明されるよりも、本発明が行われるべきであること、本発明が、適用可能な法律によって許可されるような添付の特許請求に列挙されている対象事項の改変物及び等価物をすべて含むことは企図される。その上、起こり得るその変化すべてにおける上述に説明する要素のいかなる組み合わせも、本明細書に別段の記載がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0114】
本明細書で引用される公表物、特許出願、受託番号、及び他の参照物は、本明細書において、各個々の公表物又は特許出願が、あたかも参照により組み込まれるよう具体的且つ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2AB
図2C
図3A
図3BC
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
【国際調査報告】