(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】肉製品の品質を保存及び/又は改善するための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 13/40 20230101AFI20230719BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20230719BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20230719BHJP
【FI】
A23L13/40
A23L13/60
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579757
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2021067192
(87)【国際公開番号】W WO2021260030
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】PCT/US2020/039037
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ, ギャレット ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】クマール, サウラブ
(72)【発明者】
【氏名】カーリーン, サフィエラ
(72)【発明者】
【氏名】ベイマン, ヨハンナ ヘラルダ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルホルスト, ヘリット アンソン ルネ
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC02
4B042AC06
4B042AD01
4B042AD02
4B042AD03
4B042AD16
4B042AD22
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK02
4B042AK04
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK17
4B042AP02
4B042AP03
4B042AP14
4B042AP30
(57)【要約】
本発明は、肉製品及び肉類似品の品質を保存又は改善するための組成物であって、上記組成物が乾燥物に基づいて
(a)0.8/1~2.6/1の間の酢酸当量の乳酸当量に対する重量比での、30~80%(w/w)の間の酸当量の乳酸塩及び酢酸塩、
(b)0.04~2.5%(w/w)の間のアントシアニジンを含み、
乳酸塩及び酢酸塩が、乳酸当量:酢酸当量のモル比が0.5:1~1.7:1で上記組成物に含まれる、組成物を提供する。
本発明はまた、上記組成物の調製のための方法であって、上記方法が
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の酢酸当量を含有する酢製品を供給する工程であって、上記酢酸塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の乳酸当量を含有する乳酸発酵製品を供給する工程であって、上記乳酸塩が乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも0.1%(w/w)のアントシアニジンを含有するアントシアニジン源を供給する工程、
上記酢製品、上記乳酸発酵製品及び上記アントシアニジン源を混合する工程を含む、方法に関する。本発明はまた、肉製品又は肉類似品を調製する方法であって、上記方法が本発明の組成物を0.5~15%(w/w)の間の乾燥物の量で加工肉に添加する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉製品又は肉類似品における使用のための組成物であって、
前記組成物が乾燥物に基づいて
(a)30~80%(w/w)の間の酸当量の乳酸塩及び酢酸塩、
(b)0.04~2.5%(w/w)の間のアントシアニジンを含み、
乳酸塩及び酢酸塩が、乳酸当量:酢酸当量のモル比が0.5:1~1.7:1で前記組成物に含まれる、組成物。
【請求項2】
前記乳酸塩及び酢酸塩が、乳酸当量:酢酸当量の比が0.6:1~1.65:1、好ましくは0.7:1~1.6:1で前記組成物に含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が0.08~1.2%(w/w)のアントシアニジンを含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が0.1~10mg/kgのカロテノイドを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、アントシアニジン及びカロテノイドを、アントシアニジン対カロテノイドの重量比が300:1~6,000:1で含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カロテノイドがリコピンである、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、フェノール性ジテルペン、ポリフェノール及びそれらの組み合わせから選択される200~10,000mg/kgの複合フェノールを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の調製のための方法であって、
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の酢酸当量を含有する酢製品を供給する工程であって、前記酢酸塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の乳酸当量を含有する乳酸発酵製品を供給する工程であって、前記乳酸塩が乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも0.1%(w/w)のアントシアニジンを含有するアントシアニジン源を供給する工程、
前記酢製品、前記乳酸発酵製品及び前記アントシアニジン源を混合する工程、を含む、方法。
【請求項9】
前記酢製品が中和酢製品であり、前記乳酸発酵製品が中和乳酸発酵製品である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アントシアニジン源が赤ダイコン、ベリー、ブドウ、アサイー、紫イモ、リンゴ、西洋ナシ、赤キャベツ、ニンジン、大豆及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の植物から得られる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記酢製品、前記乳酸発酵製品及び前記アントシアニジン源をカロテノイド源と混合する工程を含み、前記カロテノイド源が、乾燥重量に基づいて少なくとも10mg/kgのカロテノイドを含有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カロテノイド源がトマト、ローズヒップ、クコ、クロウメモドキのベリー、アナトー、ニンジン、カボチャ、サツマイモ、冬カボチャ及びガックフルーツから選択される1つ以上の植物から得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記酢製品、前記乳酸発酵製品及び前記アントシアニジン源を複合フェノール源と混合する工程を含み、前記複合フェノール源が、フェノール性ジテルペン、ポリフェノール及びそれらの組み合わせから選択される、乾燥重量に基づいて少なくとも3%(w/w)の複合フェノールを含有する、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合フェノール源が、ブドウ、バニラ、タイム、ローズマリー、クローブ、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー、レーズン、ミント、タマネギ、グレープフルーツ、リンゴ、ケール、リーキ、茶、コーヒー及びセージから選択される1つ以上の植物から得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
肉製品又は肉類似品を調製する方法であって、前記方法が請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を、0.5~15%(w/w)の間の乾燥物の量で食肉に添加する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)乳酸当量:酢酸当量のモル比が0.5:1~1.7:1での乳酸塩及び酢酸塩、及び(ii)アントシアニジンを含有する、肉製品又は肉類似品の品質を保存及び/又は改善するための組成物に関する。本発明は更に、これらの組成物の調製のための方法及び肉製品を調製する方法に関する。
【0002】
[背景技術]
その味を改善するため及び/又はその保存可能期間を延長するために、肉製品、例えば新鮮な食肉及び加工肉を処理することが知られている。そのような処理の例としては、例えば、加塩、塩漬け、発酵及び燻しが挙げられる。加工肉の例は、ベーコン、ハム、ソーセージ、サラミ、コーンビーフ、ビーフジャーキー、食肉缶詰及び食肉ベースのソースである。
【0003】
所望の特性を有する肉製品又は肉類似品を得るために、様々な添加材料が一般的に用いられている。これらの添加剤は、微生物学的及び化学的の両方での保存可能期間、製品の食感、風味及び色、並びに調製方法の生産量に貢献することができる。従来の添加剤は、例えば、食塩、リン酸塩、安息香酸塩、酸、硝酸塩又は亜硝酸塩(化学的供給源から)、カゼイン塩である。そのような添加剤は、それらが「化学的」又は「人工的」等と受け取られることから消費者に嫌われうる。より「天然の」又は「信頼できる」又は「承認できる」と受け取られる添加剤が必要とされている。
【0004】
これらの「化学的」な添加剤の使用の代替手段としてのより魅力的な「ラベルフレンドリー」な添加剤の使用は、先の添加剤の複雑な多機能性のために妨げられることが多い。リン酸塩は例えば、pH安定性だけでなく、食肉からのタンパク質抽出、保水容量、食肉の水和にも影響を与えることが知られている。硝酸塩及び亜硝酸塩は、食肉の色及び風味に影響を与えるだけでなく、抗菌効果を有することも知られている。通常、異なる添加剤の間にはそれらの効果における複雑な相互作用も存在することから、従来の「化学的」な添加剤の代替手段を見出すのは難しいことが分かった。
【0005】
米国特許出願公開第2005/02872841号は、食物繊維ゲル、及び高オメガ3油、中鎖トリグリセリド、ファゴピリトロール(fagopyritrol)、リコピン、植物由来のポリフェノール性抗酸化剤、ルテイン、ベータカロテン、ステアリン酸カルシウム、ビタミンE、バイオフラボノイドからなる群より選択される少なくとも1つの機能性食品を含有する加工肉について記載している。
【0006】
国際公開第2012/028928号は、食肉又は肉製品をアセロラ抽出物を含有する組成物と接触させる工程を含む、食肉及び肉製品の色を保護する方法を記載している。
【0007】
欧州特許出願公開第3106041号は、1つ以上の酢酸塩、及び食肉の調理の間の水分蒸散を低減するのに特に有効な1つ以上の多糖材料を含有する食肉処理組成物について記載している。これらの組成物のいくつかの実施形態においては材料が天然酢及び繊維材料由来の植物に基づくことから、これらの組成物はまた、「ラベルフレンドリー」な添加剤との観点からも魅力的でありうる。
【0008】
欧州特許出願公開第3170403号は、
桂皮酸、桂皮酸の塩及びそれらの組み合わせから選択される桂皮酸塩成分、
酢酸、プロピオン酸、酢酸の塩、プロピオン酸の塩及びそれらの組み合わせから選択されるアルカン酸塩成分を含有する防腐剤システムについて記載している。
【0009】
国際公開第2018/106109号は、部分的又は完全な中和酢酸の形態の緩衝食品酸成分、及び培養植物抽出物の形態の亜硝酸塩源の組み合わせを含有する食肉処理組成物を記載している。
【0010】
本発明の目的は、多機能性を有し、従来の添加剤よりも消費者にとってより魅力的と考えられる肉製品及び肉類似品のための添加剤組成物を提供することである。
【0011】
[発明の概要]
本発明者らは、肉製品及び肉類似品の品質を保存及び/又は改善するための組成物を開発した。この組成物は多機能性を提供し、「ラベルフレンドリー」な材料から調製することができる。
【0012】
肉製品及び肉類似品の品質を保存又は改善するための本組成物は、乾燥物に基づいて
(a)30~80%(w/w)の間の酸当量の乳酸塩及び酢酸塩、
(b)0.04~2.5%(w/w)の間のアントシアニジンを含み、
乳酸塩及び酢酸塩が、乳酸当量:酢酸当量のモル比が0.5:1~1.7:1で上記組成物に含まれる。
【0013】
この材料の組み合わせが従来の防腐剤、安定剤、酸調整剤及び抗酸化剤に好適に取って代わることができることが見出された。肉製品又は肉類似品に適用される場合、本組成物は、色安定性、及び病原微生物、例えばクロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)及びリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の増殖に対する効果的な予防を提供する。
【0014】
本発明はまた、肉製品及び肉類似品の品質を保存及び/又は改善するための組成物の調製のための方法であって、上記方法が
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の酢酸当量を含有する酢製品を供給する工程であって、上記酢酸塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の乳酸当量を含有する乳酸発酵製品を供給する工程であって、上記乳酸塩が乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも0.1%(w/w)のアントシアニジンを含有するアントシアニジン源を供給する工程、
上記酢製品、上記乳酸発酵製品及び上記アントシアニジン源を混合する工程を含む、方法に関する。
【0015】
本発明はまた、肉製品又は肉類似品を調製する方法であって、上記方法が本発明の組成物を0.5~15%(w/w)の間の乾燥物の量で添加する工程を含む、方法に関する。
【0016】
[発明の詳細な説明]
本発明の第1の態様は、肉製品又は肉類似品の品質を保存又は改善するための組成物であって、上記組成物が乾燥物に基づいて
(a)30~80%(w/w)の間の酸当量の乳酸塩及び酢酸塩、
(b)0.04~2.5%(w/w)の間のアントシアニジンを含み、
乳酸塩及び酢酸塩が、乳酸当量:酢酸当量のモル比が0.5:1~1.7:1で上記組成物に含まれる、組成物に関する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「酢酸塩」は、別に示されない限り、酢酸、酢酸の塩、解離酢酸塩及びそれらの組み合わせを含む。
【0018】
本明細書で用いられる用語「乳酸塩」は、別に示されない限り、乳酸、乳酸の塩、解離乳酸塩及びそれらの組み合わせを含む。
【0019】
「%(w/w)酸当量」として表される酢酸塩の濃度とは、全ての酢酸塩が酢酸として存在すると仮定した酢酸塩の総濃度を言う。
【0020】
「%(w/w)酸当量」として表される乳酸塩の濃度とは、全ての乳酸塩が乳酸として存在すると仮定した乳酸塩の総濃度を言う。
【0021】
本明細書で用いられる用語「アントシアニジン」は、以下の化学構造で表される物質を言う。
【0022】
【化1】
ここで、R
3、R
5、R
6、R
7、R
3‘、R
4‘及びR
5‘は独立的に、H、OH及びOCH
3から選択される。用語「アントシアニジン」はまた、アントシアニジンの配糖体(「アントシアニン」)を含む。
【0023】
本明細書で用いられる用語「カロテノイド」とは、9~11個の共役二重結合からなるポリエン鎖を含む物質、例えばカロテン及びキサントフィルを言う。
【0024】
カロテノイドの例としては、カロテンとしてのリコピン、α-カロテン、β-カロテン、及び以下のキサントフィル:ルテイン、ゼアキサンチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、フラボキサンチン、並びにα-及びβ-クリプトキサンチンが挙げられる。
【0025】
本明細書で用いられる用語「リコピン」とは、以下のIUPAC名:(6E,8E,10E,12E,14E,16E,18E,20E,22E,24E,26E)-2,6,10,14,19,23,27,31-オクタメチルドトリアコンタ-2,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,30-トリデカエンの明赤色のカロテノイド炭化水素を言う。
【0026】
本明細書で用いられる用語「アスコルビン酸塩」は、別に示されない限り、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、解離アスコルビン酸塩及びそれらの組み合わせを含む。用語「アスコルビン酸塩」は更に、イソアスコルビン酸(エリソルビン酸)、イソアスコルビン酸の塩、解離イソアスコルビン酸塩及びそれらの組み合わせを含む。
【0027】
「%(w/w)酸当量」として表されるアスコルビン酸塩の濃度とは、全てのアスコルビン酸塩がアスコルビン酸として存在すると仮定したアスコルビン酸塩の総濃度を言う。粒子に関して本明細書で用いられる用語「直径」とは、別に示されない限り、その粒子の平均相当球径を言う。
【0028】
組成物のアントシアニジン含有量は、液体クロマトグラフィー-紫外線(LC-UV)により好適に決定することができる。アントシアニンは、分析前に加水分解によってアントシアニジンに変換させられる必要がある。
【0029】
組成物のカロテノイド含有量は、例えばC30カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により好適に決定することができる。
【0030】
本発明の組成物は、15%(w/w)未満の含水量を有する粉末であってもよく、10~80%(w/w)の乾燥物含有量を有する水性液体であってもよい。
【0031】
上記組成物が粉末である場合、上記酢酸塩は、好ましくは、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される。同様に、上記乳酸塩は、好ましくは、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される。
【0032】
好ましい実施形態において、上記組成物は、15%(w/w)未満の含水量を有する粉末であり、ここで、上記酢酸塩は、存在するとすれば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸及びそれらの組み合わせから選択され、上記乳酸塩は、存在するとすれば、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、上記粉末の含水量は10%(w/w)未満であり、更により好ましくは7%(w/w)未満である。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、上記組成物は、10~80%(w/w)の乾燥物含有量を有する水性液体である。より好ましくは、上記水性液体の乾燥物含有量は20~75%(w/w)の間であり、更により好ましくは30~70%(w/w)の間である。
【0034】
液体形態の上記組成物において、上記酢酸塩は、好ましくは、(その解離形態の)酢酸塩、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される。上記乳酸塩は、好ましくは、(その解離形態の)乳酸塩、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、上記組成物は、乾燥物に基づいて35~75%(w/w)の間、より好ましくは40~70%(w/w)の間の酸当量の乳酸塩及び酢酸塩を含有する。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態において、上記組成物は、乳酸当量:酢酸当量のモル比が0.6:1~1.65:1、より好ましくは0.7:1~1.6:1、最も好ましくは0.8:1~1.55:1で乳酸塩及び酢酸塩を含有する。
【0037】
特に好ましい実施形態において、本組成物は、15%(w/w)未満の含水量を有する粉末であり、上記有機酸成分は、20~60%(w/w)酸当量の酢酸塩及び40~75%(w/w)酸当量の乳酸を含有する。最も好ましくは、上記有機酸成分は、25~55%(w/w)の酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及びそれらの組み合わせ、並びに40~80%(w/w)の乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム及びそれらの組み合わせから選択される乳酸塩を含有する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、上記組成物は、20℃の蒸留水に分散して水のL当たり30グラムの乾燥物を与える場合、4~9の範囲内、より好ましくは5~7.5の範囲内のpHを有する水性組成物を製造する。
【0039】
肉製品及び肉類似品の品質を保存又は改善するための本組成物は、好ましくは、乾燥物に基づいて0.08及び1.2%(w/w)、より好ましくは0.10及び0.8%(w/w)、最も好ましくは0.12及び0.5%(w/w)のアントシアニジンを含有する。
【0040】
特に好ましい実施形態によれば、本組成物は、乾燥物に基づいて0.08及び1.2%(w/w)、より好ましくは0.10及び0.8%(w/w)、最も好ましくは0.12及び0.5%(w/w)の糖化アントシアニジン、即ち、アントシアニンを含有する。肉製品又は肉類似品に適用される場合、アントシアニンがそれらの非糖化対応物よりも安定な傾向にあることが見出された。
【0041】
特に好ましい実施形態によれば、少なくとも30wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%、更により好ましくは少なくとも70wt.%のアントシアニジンがペラルゴニジンである。肉製品及び肉類似品にペラルゴニジンにより与えられる色は、自然な食肉の色と非常に似ていることが見出された。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、本組成物は、更にカロテノイドを含有する。特に好ましい実施形態によれば、本組成物のカロテノイド含有量は、乾燥重量に基づいて、0.1~10mg/kgの範囲内、より好ましくは0.2~8mg/kgの範囲内、最も好ましくは0.3~6mg/kgの範囲内である。
【0043】
好ましくは、上記組成物は、乾燥重量に基づいて、0.1~10mg/kg、より好ましくは0.2~8mg/kgの範囲内、最も好ましくは0.3~6mg/kgの範囲内のリコピン、α-カロテン、β-カロテン及びそれらの組み合わせから選択されるカロテンを含有する。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、上記組成物は、乾燥重量に基づいて、0.1~10mg/kg、より好ましくは0.2~8mg/kgの範囲内、最も好ましくは0.3~6mg/kgの範囲内のリコピンを含有する。
【0045】
アントシアニジン及びカロテノイドは、好ましくは、アントシアニジンのカロテノイドに対する重量比が300:1~6,000:1、より好ましくは500:1~3,000:1で上記組成物中に存在する。
【0046】
別の好ましい実施形態によれば、本組成物は、乾燥物に基づいて、200~10,000mg/kg、より好ましくは500~5000mg/kgのフェノール性ジテルペン、ポリフェノール及びそれらの組み合わせから選択される複合フェノールを含有する。
【0047】
組成物中の複合フェノールの濃度は、例えばZorbax SB-C18(50nmx2.1mm IDx1.8μm)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により好適に決定することができる。
【0048】
本発明の組成物は、好ましくはまた、アスコルビン酸塩を含有する。アスコルビン酸塩は食品における抗酸化剤として承認されており、例えば色及び脂質酸化を抑えたり塩漬けプロセスを促進したりするために用いられてもよい。抗酸化剤であることの次に、アスコルビン酸塩はまた、ビタミン、即ち、ビタミンCとして知られている。アスコルビン酸塩は、エリソルビン酸としても知られているイソアスコルビン酸塩を含む。
【0049】
本組成物が粉末である場合、上記アスコルビン酸塩は、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸及びそれらの組み合わせから選択される。液体形態の上記組成物において、上記アスコルビン酸塩は、好ましくは、(その解離形態の)アスコルビン酸塩、アスコルビン酸及びそれらの組み合わせから選択される。
【0050】
本発明の組成物は、好ましくは、乾燥物に基づいて0.5~5%w/wの間の酸当量のアスコルビン酸塩、より好ましくは1.0~4%w/wの間の酸当量のアスコルビン酸塩、最も好ましくは1.2~3.5%w/wの間の酸当量のアスコルビン酸塩を含有する。
【0051】
アスコルビン酸塩は、化学合成、発酵又は両方の技術の組み合わせにより製造することができるが、アスコルビン酸塩はまた、天然源、例えば果実製品から回収することができる。比較的高いアスコルビン酸塩含有量を有する果実製品の例は、アセロラ、カムカム、シーバックソーン、ユカン、ローズヒップ、カカドゥプラム、グアバ、クロスグリ、オレンジ及びレモンである。これらの果実の抽出物は、例えばNaturex社からのAcerola Cherry36のようなアスコルビン酸塩源として市販されている。本発明の好ましい実施形態において、上記アスコルビン酸塩は、果実抽出物から供給される。更により好ましい実施形態において、上記果実抽出物はアセロラ抽出物である。
【0052】
肉製品及び肉類似品の品質を保存又は改善するための本組成物は、典型的には、様々な、好ましくは植物由来の機能性材料源を組み合わせることにより製造することができる。粉末形態の組成物は、粉末形態の様々な成分を供給し、粉末混合により上記組成物を調製することで得ることができる。液体形態の組成物は、少なくとも1つの液体形態の成分を供給し、他の材料を上記液体に混合することで得ることができる。好ましい実施形態において、上記酢酸塩及び/又は乳酸塩は液体形態で供給される。粉末形態の本発明の組成物を調製するために、それにより得られた液体組成物を続いて乾燥させることもまた可能である。
【0053】
本発明の別の態様は、本明細書で上述したような肉製品及び肉類似品の品質を保存又は改善するための組成物の調製のための方法であって、上記方法が
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の酢酸当量を含有する酢製品を供給する工程であって、上記酢酸塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも30%(w/w)の乳酸当量を含有する乳酸発酵製品を供給する工程であって、上記乳酸塩が乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸及びそれらの組み合わせから選択される、工程、
乾燥重量に基づいて少なくとも0.1%(w/w)のアントシアニジンを含有するアントシアニジン源を供給する工程、
上記酢製品、上記乳酸発酵製品及び上記アントシアニジン源を混合する工程を含む、方法に関する。
【0054】
本方法に用いられる酢製品は、酢、即ち、例えば発酵生物により製造プロセスの間に製造された少量の成分を更に含有する酢酸水溶液に由来する。
【0055】
酢は、好ましくは、希釈エタノール含有物質の好ましくは酢酸菌を用いた発酵により得られる。このエタノール含有物質は、好ましくは、植物製品の酵母発酵により得られる。上記酢は、ホワイトビネガー、ブランデービネガー、アルコールビネガー、バルサミコ酢、ワイン酢、モルトビネガー、ビールビネガー、ポテトビネガー、米酢、リンゴ酢、サクランボ酢、及びキビ酢からなる群より選択することができる。本発明の特に好ましい実施形態において、上記酢はキビ酢である。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、上記酢製品は、乾燥重量に基づいて、少なくとも35%(w/w)、より好ましくは少なくとも40%(w/w)、最も好ましくは少なくとも50%(w/w)酸当量の酢酸塩を含有する。
【0057】
中和酢は、酢にアルカリ化物質、好ましくはアルカリ化金属塩、例えば金属炭酸塩又は金属水酸化物を添加することにより製造することができる。上記金属炭酸塩は、好ましくは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム及びそれらの組み合わせから選択される。上記金属水酸化物は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、上記金属水酸化物は水酸化ナトリウムである。上記中和酢は、好適に、例えばエバポレーションによる水分除去により濃縮することができ、及び/又は例えば噴霧乾燥により乾燥することができる。
【0058】
好ましくは、20℃の蒸留水で乾燥物含有量10%(w/w)まで希釈した場合の中和酢製品は、好ましくは、少なくとも6、より好ましくは少なくとも6.5、更により好ましくは少なくとも6.8、最も好ましくは少なくとも7.0のpHを有する。
【0059】
本発明の実施形態によれば、上記酢製品は、流動性粉末形態で供給される。従来の乾燥技術、例えば噴霧乾燥を用いた液体酢からの流動性粉末の製造は、当該分野において説明されている。例えば、国際特許出願第WO/2014/021719号は、アルカリ化液体酢から流動性粉末を製造する方法を記載している。
【0060】
本方法で用いられる乳酸発酵製品は、好ましくは、糖を乳酸に変換することのできる微生物による糖含有媒体の発酵により得られる。そのような微生物は当業者に良く知られており、乳酸菌を含む。用いることのできる糖は、通常、単糖形態及び二糖形態の両方のC6糖、例えばグルコース、サッカロース及びラクトースである。好ましくは、トウ、トウモロコシ又はビート由来のサッカロースが用いられる。上記発酵は、通常、pH制御有りで又はpH制御なしで行うことができる。pH制御なしの場合、pHは、発酵が進行するにつれて乳酸の製造のために低下するだろう。pH制御有りの場合、pHを所望のレベル、例えば中性pH又は中性pH付近に維持するため、アルカリ化物質が発酵もろみ液に添加される。典型的に用いられるアルカリ化物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等である。発酵後、上記乳酸発酵製品は、通常、上記製品を精製及び濃縮するため、下流プロセス、例えば遠心分離、ろ過、膜ろ過、蒸留、抽出、エバポレーション及び乾燥により更に加工される。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、上記乳酸発酵製品は、乾燥重量に基づいて、少なくとも35%(w/w)、より好ましくは少なくとも40%(w/w)、最も好ましくは少なくとも50%(w/w)酸当量の乳酸塩を含有する。
【0062】
好ましくは、上記乳酸発酵製品は、乳酸発酵により及びアルカリ化物質の添加により得られた中和乳酸発酵製品である。最も好ましくは、上記乳酸発酵製品は、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム及びそれらの組み合わせから選択される中和乳酸を含有する。
【0063】
上記中和乳酸発酵製品は、好適に、例えばエバポレーションによる水分除去により濃縮することができ、及び/又は例えば噴霧乾燥により乾燥することができる。
【0064】
20℃の蒸留水で乾燥物含有量10%(w/w)まで希釈した場合の中和乳酸発酵製品は、好ましくは、少なくとも6、より好ましくは少なくとも6.5、更により好ましくは少なくとも6.8、最も好ましくは少なくとも7.0のpHを有する。
【0065】
本発明の実施形態によれば、上記中和乳酸発酵製品は、流動性粉末形態で供給される。従来の乾燥技術、例えば噴霧乾燥を用いた液体中和乳酸発酵製品からの流動性粉末の製造は、当該分野において説明されている。例えば、欧州特許第EP2879524B1号は、ナトリウム及びカルシウムの両方を含有する中和乳酸発酵製品から流動性粉末を製造する方法を記載している。更に、流動性粉末形態の中和乳酸発酵製品は市販されている。
【0066】
特に好ましい実施形態によれば、本方法は、中和酢製品及び中和乳酸発酵の両方を用いる。
【0067】
本方法で用いられるアントシアニジン源は、好ましくは、赤ダイコン(red radish)、ベリー、ブドウ、アサイー、紫イモ(sweet purple potato)、リンゴ、西洋ナシ(pear)、赤キャベツ、ニンジン及び大豆から選択される1つ以上の植物から得られる。上記アントシアニジン源は、植物原料の抽出又は乾燥によりこれらの植物から得ることができる。より好ましくは、上記アントシアニジン源は、赤ダイコン抽出物、紫イモ抽出物及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、上記アントシアニジン源は赤ダイコン抽出物である。
【0068】
好ましくは、上記アントシアニジン源は、乾燥物に基づいて少なくとも0.3%(w/w)、より好ましくは0.5~10%(w/w)、最も好ましくは1.0~8.0%(w/w)のアントシアニジンを含有する。
【0069】
上記アントシアニジン源は、好ましくは、20%(w/w)以下、より好ましくは15%(w/w)以下の含水量を有する。
【0070】
特に好ましい実施形態によれば、上記アントシアニジン源における少なくとも30wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%、更により好ましくは少なくとも70wt.%のアントシアニジンがペラルゴニジンである。
【0071】
好ましい実施形態において、本方法は、上記酢製品、上記乳酸発酵製品及び上記アントシアニジン源をカロテノイド源と混合する工程を含む。本方法で用いられるカロテノイド源は、好ましくは、トマト、ローズヒップ、クコ(wolfberry)、クロウメモドキ(buckthorns)のベリー、アナトー、ニンジン、カボチャ、サツマイモ、冬カボチャ(winter squash)、ガックフルーツ(gac fruit)から選択される1つ以上の植物から得られる。植物だけでなく、北極小エビ、微細藻類、バクテリア及び酵母菌にも由来する。上記カロテノイド源は、植物原料の抽出又は乾燥によりこれらの植物から得ることができる。
【0072】
上記カロテノイド源は、好ましくは、乾燥物に基づいて少なくとも15mg/kg、より好ましくは20~100mg/kg、最も好ましくは25~80mg/kgのカロテノイドを含有する。
【0073】
特に好ましい実施形態によれば、上記カロテノイド源は、リコピンが豊富である。そのようなリコピンが豊富なカロテノイド源は、トマト、ローズヒップ、クコ及びクロウメモドキのベリーから選択される1つ以上の植物から得ることができる。最も好ましくは、上記リコピンが豊富なカロテノイド源は、トマト抽出物、トマト粉末及びそれらの組み合わせから選択される。
【0074】
特に好ましい実施形態において、上記カロテノイド源は、乾燥物に基づいて少なくとも15mg/kg、より好ましくは20~100mg/kg、最も好ましくは25~80mg/kgのリコピンを含有する。
【0075】
上記カロテノイド源は、好ましくは、20%(w/w)以下、より好ましくは15%(w/w)以下の含水量を有する。
【0076】
好ましい実施形態によれば、本方法は、上記酢製品、上記乳酸発酵製品及び上記アントシアニジン源を複合フェノール源と混合する工程を含み、上記複合フェノール源が、乾燥重量に基づいて少なくとも3%(w/w)のフェノール性ジテルペン、ポリフェノール及びそれらの組み合わせから選択される複合フェノールを含有する。
【0077】
本方法で用いられる複合フェノール源は、好ましくは、ブドウ、バニラ、タイム(thyme)、ローズマリー、クローブ、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー、レーズン、ミント、タマネギ、グレープフルーツ、リンゴ、ケール、リーキ(leek)、茶(紅茶及び緑茶)、コーヒー及びセージから選択される1つ以上の植物から得られる。上記複合フェノール源は、植物原料の抽出又は乾燥によりこれらの植物から得ることができる。最も好ましくは、上記複合フェノール源は、ブドウ抽出物及びローズマリー抽出物から選択される。
【0078】
上記複合フェノール源は、好ましくは、乾燥物に基づいて少なくとも1%(w/w)、より好ましくは3~30%(w/w)、最も好ましくは5~25%(w/w)のフェノール性ジテルペン、ポリフェノール及びそれらの組み合わせから選択される複合フェノールを含有する。
【0079】
上記複合フェノール源は、好ましくは、20%(w/w)以下、より好ましくは15%(w/w)以下の含水量を有する。
【0080】
別の好ましい実施形態によれば、本方法は、乾燥重量に基づいて少なくとも10%w/wのアスコルビン酸塩を含有する果実抽出物を供給する工程、並びにこの果実抽出物を上記酸製品、上記乳酸発酵製品及び上記アントシアニジン源と混合する工程を含む。好ましくは、上記果実抽出物は、アセロラ、カムカム、シーバックソーン(seabuckthorn)、ユカン(Indian gooseberry)、ローズヒップ、カカドゥプラム(kakadu plum)、グアバ、クロスグリ(blackcurrant)、オレンジ及び/又はレモンの抽出物である。最も好ましくは、上記果実抽出物はアセロラ抽出物である。
【0081】
本発明の好ましい実施形態において、上記組成物のpHは、本明細書で上述したような組成物を得るために調整される。pHを上げる必要がある場合、これは好ましくは適切な量のアルカリ金属水酸化物を添加することにより行われる。上記組成物のpHを下げることが望まれる場合、これは適切な量の酢酸及び/又は乳酸を用いて好適に行うことができる。
【0082】
本発明の更に別の態様は、肉製品又は肉類似品を調製する方法であって、上記方法が本明細書に記載したような組成物を、最終肉製品又は最終肉類似品に含まれる乾燥物の重量で計算された0.5~15%(w/w)の間の乾燥物を供給する量で、より好ましくは最終肉製品又は最終肉類似品に含まれる乾燥物の重量で計算された1.0~10%(w/w)の間の乾燥物を供給する量で添加する工程を含む、方法に関する。ここで「%(w/w)の乾燥物」は、組成物により供給される乾燥固形物の量を最終製品に含まれる乾燥物の量で割り100%を乗じることにより計算される。
【0083】
上記組成物は、液体形態又は乾燥形態で適用することができる。上記組成物が乾燥形態で用いられる場合、上記組成物は、食肉への添加前に適切な量の水、例えば水道水でもどすことができる。この目的で、材料は、典型的には均一な液体を形成するのに十分な期間撹拌され、これは分散液であっても溶液であってもよい。
【0084】
肉製品又は肉類似品を調製する本方法は、好ましくは、上記組成物を、最終肉製品又は最終肉類似品の重量で計算された0.5~5%(w/w)、より好ましくは0.6~4.5%(w/w)、最も好ましくは0.7~4%(w/w)の乳酸当量を供給する量で添加する工程を含む。
【0085】
更に好ましい実施形態において、上記方法は、上記組成物を、最終肉製品又は最終肉類似品の重量で計算された0.5~5%(w/w)、より好ましくは0.6~4.5%(w/w)、最も好ましくは0.7~4%(w/w)の酢酸当量を供給する量で添加する工程を含む。
【0086】
本発明の方法は、それが提供される供給源及び/又は形態に関わらず、典型的にヒトの飲食のために提供されるほとんどの従来の肉製品及び肉類似品の処理のために好適であり有益である。
【0087】
好ましくは、本方法は、肉製品を調製するのに用いられる。本発明の好ましい実施形態において、上記肉製品は加工肉である。より好ましくは、上記食肉は乳化肉である。最も好ましくは、上記食肉は、ソーセージ、ホットドッグ、ボロニア、フランクフルトソーセージ及びモルタデッラから選択される。
【0088】
好ましくは、上記食肉は、肉牛、豚肉、子羊の肉、家禽の肉、及び獲物の肉から得られ、最も好ましくは肉牛、豚肉、鶏肉及び七面鳥の肉から得られる。
【0089】
加工肉の調製のための方法は、新鮮な食肉と添加剤組成物を合わせるために知られている及び/又は従来用いられているあらゆる方法を利用することができる。例えば、新鮮な食肉全体にそれを分散させることにより、食肉を本発明の組成物で処理することができる。好適な方法としては、上記組成物の上記食肉中又は上記食肉上への注入、ポンプでの送り込み、噴霧、浸漬、ディッピング、又はそうでなければ分散が挙げられる。更に、上記方法は、上記組成物を上記食肉全体に更に分散させるため、上記食肉をタンブリング、混錬、マッサージ、又はそうでなければ操作する工程を含むことができる。いくつかの実施形態において、上記組成物は、自動化された市販の食肉製造工程の一部として、上記食肉に加圧下で注入される。適切な注入器が設置され、特定容積の組成物をそれぞれの食肉へポンプで送り込むことができる。
【0090】
本発明の好ましい実施形態において、加工肉の調製のための方法は、本防腐剤組成物を含有する水性液体を添加する工程を含み、上記組成物は注入タンブリングにより添加される。
【0091】
上記水性液体が上記食肉全体に分散すると、上記食肉は続いて、所望の内部温度に達するまで調理され、包装され、冷蔵又は冷凍されうる。別の方法では、上記水性液体が上記食肉全体に分散すると、上記食肉は包装され、調理され、次いで冷蔵又は冷凍されうる。
【0092】
好ましい実施形態において、上記方法は、新鮮な肉製品を供給する工程、その挽肉製品を調製する工程、及び添加剤組成物を上記挽肉製品に混合する工程を含む。
【0093】
別の好ましい実施形態において、加工肉の調製のための方法は乳化工程を含む。乳化肉製品の例としては、ホットドッグ、ボロニア、フランクフルトソーセージ及びモルタデッラが挙げられる。
【0094】
本方法により得られる肉製品又は肉類似品は、典型的には、水分保持、色、食感、風味及び保存可能期間に関して有利な特性を有する。
【0095】
以下の実施例は、例示の目的で提供されるにすぎず、いずれの方法においても本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0096】
[実施例]
実施例1
本発明の組成物を含有する食肉試料の安定性研究は、4℃/39°Fで11週間行った。食肉試料の色は、L*a*b*測定を用いて観察した。食品安全性は、リステリア・モノサイトゲネス及びクロストリジウム・ボツリナムモデルを用いて評価した。
【0097】
表1に示すレシピに基づいてソーセージを調製した。
【0098】
【0099】
肉挽機において豚挽肉(3mmサイズ)を食塩及び半分の水(氷及び水の混合物)と混合することにより、ソーセージを調製した。乳化加工肉の稠度に達するまで、残った材料及び残りの水を徐々に添加して混合した。
【0100】
次いで、そのようにして得られた食肉生地を80mmの包装材料に詰め、74℃/165°Fの中核温に達するまで調理した。ソーセージを冷却し、薄切りにし、包装して、食料品店のディスプレーを模した光条件下、4℃/39°Fで保存した。
【0101】
全ての試料について、ソーセージの調製直後、及び11週間の保存後にHunterのL*a*b*値を測定した。更に、ソーセージの水分活性、pH及び含水量を測定した。測定結果を表2及び3に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
赤みを表すLabのa*値は、本発明のソーセージについて11週間を通して安定なままであった。亜硝酸ナトリウム又は天然の亜硝酸塩源を含有する試料は、赤みのかなりの低下を示した。
【0105】
表2に示すデータは、食品安全性のミクロモデリング分析の入力データとして用いた。使用したモデルは、参照製品及び本発明の製品の両方のC.ボツリナムに関する安全な期間については、C.ボツリナム(Gunvigら、2013)の毒に対する時間についてのMeng(Mengら、1993)であり、L.モノサイトゲネスについてはCorbion Listeria Control Model(CLCM、Beekmannら、国際食肉科学技術会議、メルボルン2018で示された)であった。
【0106】
これらの製品が提供する安全性を評価するため、以下の食肉パラメーターに基づいてモデリングを適用した。
含水量 60~70%
pH 6.2~6.4
Aw 0.97
NaCl 1.8%
T 4℃又は12℃
【0107】
試験製品が、L.モノサイトゲネスに対して少なくとも100日、C.ボツリナムに対して4℃/39°Fの保存で90日、12℃/54°Fの保存で40日の安全性を提供できることが示された。参照1及び2に比べて、L.モノサイトゲネスに対する安全性は本発明の製品で約70日改善した。C.ボツリナムに対する安全性は、参照1、参照2及び本発明の製品について同様であることが分かった。
【0108】
L.モノサイトゲネス及びC.ボツリナムの両方に対して本発明の製品により提供される安全性を、より広範な範囲の乳酸:酢酸比について調査した。結果を表4に示す。
【0109】
【0110】
製品は、乳酸の酢酸に対する比が0.5:1~1.7:1の範囲内である場合に90日を超えて安全であることが示された。別の場合には安全な期間は90日未満であった。
【0111】
実施例2
表5に示すレシピに基づいてソーセージを調製した。
【0112】
【0113】
均一な混合物が得られるまで食肉及び成分を混合することにより、ソーセージを調製した。次いで、80mmのハイバリアプラスチック包装材料に食肉生地を真空詰めし、次いで水浴中(75℃に設定)で72℃の内部温度に達するまで調理した。
【0114】
調製後、ソーセージを真空包装し、官能研究のために0℃で、色安定性研究のために4℃で保存した。
【0115】
0℃での2週間の保存後、熟練した専門パネル(n=13)により全ての4つの試料を評価した。それぞれの試料について、1~9(1=非常に弱い、9=非常に強い)の段階でパネルメンバーにより6つの異なる官能特性の強度を格付けした。パネルメンバーにより与えられたスコアを平均することにより、試料の特性スコアを得た。評価結果(平均スコア)を表6に示す。
【0116】
【0117】
コントロール+試料よりも試料1がより塩辛かったことを除いて、試料は非常によく似ていることが分かった(ダネットt=0,82(有意水準p<0,05)。
【0118】
0℃での2週間の保存後、熟練していないパネル(n=19)により試料A及び試料1をまた評価した。このパネルは、再び1~9(1=非常に悪い、9=優れている)の段階で全体の外観及び色を採点した。結果を表7に示す。
【0119】
【0120】
調製の直後、並びに4℃での1週間の保存後及び4週間の保存後、L-a-b色値を測定することによりいくつかの試料の色を分析した。結果を表8a、8b及び8cに示す。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
試料1は、コントロール+試料より暗いピンク色を示した。両方の試料がパネルに許容されるのに十分なピンク色/赤みを示した。
【0125】
MAP包装による暗条件下で4℃での4週間の保存後、コントロール-試料は許容できない変色を示し、一方でコントロール+試料及び試料1の色は許容可能なままであった。
【0126】
実施例3
表9に示すレシピに基づいてソーセージを調製した。
【0127】
【0128】
肉挽機において豚挽肉(3mmサイズ)を食塩及び半分の水(氷及び水の混合物)と混合することにより、ソーセージを調製した。乳化加工肉の稠度に達するまで、残った材料及び残りの水を徐々に添加して混合した。
【0129】
次いで、食肉生地を包装材料に置き、74℃の中核温に達するまで調理した。ソーセージを冷却し、薄切りにし、包装して4℃で保存した。コントロール-試料及び試料Aを除く全ての試料について、5週間の保存の間にHunterのL*a*b*値を測定した。測定結果を表10に示す。
【0130】
【0131】
これらの結果は、(i)酢酸塩/乳酸塩及び(ii)アントシアニジン(赤ダイコン由来)の組み合わせが、冷蔵保存で5週間保持したソーセージにピンク/赤色を与えたことを示す。それに対して、コントロール-試料及び酢酸塩/乳酸塩のみを含有する試料の両方が、調製直後に既に変色した。結果は更に、第3の成分、即ち(iii)カロテノイド(トマト又はニンジン由来)の添加が、加工肉製品の色をそれにより深い赤色を与えることにより更に改善することを示す。
【0132】
実施例4
今回は赤ダイコン粉末に代えて紫イモの抽出物を用いたことを除いて、実施例2を繰り返した。後者の抽出物を含有するソーセージのレシピを表11に示す。
【0133】
【0134】
色測定結果を表12に示す。
【0135】
【0136】
これらの結果は、(i)酢酸塩/乳酸塩及び(ii)アントシアニジン(紫イモ由来)の組み合わせが、冷蔵保存で5週間保持したソーセージにピンク/赤色を与えたことを示す。この場合も同様に、カロテノイドの添加が更に、加工肉製品の色を改善した。
【0137】
実施例5
今回は赤ダイコン粉末に代えてアロニア属の粉末を用いたことを除いて、実施例2を繰り返した。ソーセージのレシピを表13に示す。
【0138】
【0139】
今回はソーセージを8℃で保存した。コントロール-試料及び試料Aを除く全ての試料について、4週間の保存の間にHunterのL*a*b*値を測定した。色測定結果を表14に示す。
【0140】
【0141】
これらの結果は、(i)酢酸塩/乳酸塩及び(ii)アントシアニジン(アロニア属由来)の組み合わせが、8℃で2~4週間保持したソーセージにピンク/赤色を与えたことを示す。この場合も同様に、カロテノイドの添加が更に、加工肉製品の色を改善することが分かった。
【国際調査報告】