(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】アルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/443 20060101AFI20230719BHJP
C04B 41/80 20060101ALI20230719BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C04B35/443
C04B41/80 A
C04B41/80 Z
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579883
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021041367
(87)【国際公開番号】W WO2022015688
(87)【国際公開日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン、マシュー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ、スティーブン、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】コイララ、スディップ
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA03
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB23
(57)【要約】
90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAhCriのアルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体であって、焼結助剤を含まない、セラミック焼結体が開示される。スピネルを含むセラミック焼結体の作製方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl
2O
4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体であって、焼結助剤を含まない、セラミック焼結体。
【請求項2】
前記焼結助剤が、元素状リチウム及びリチウム化合物を含む、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項3】
3.49~3.58g/ccの密度を有する、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項4】
3.56~3.58g/ccの密度を有する、請求項3に記載のセラミック焼結体。
【請求項5】
90~99.95体積%の立方晶結晶構造を有する、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項6】
95~99.5体積%の立方晶結晶構造を有する、請求項5に記載のセラミック焼結体。
【請求項7】
前記セラミック焼結体の99質量%以上で立方晶結晶構造を含む、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項8】
ICPMSで測定した99.99%以上の総純度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項9】
ICPMSで測定した99.9975%以上の総純度を有する、請求項8に記載のセラミック焼結体。
【請求項10】
ICPMSで測定した99.9995%以上の総純度を有する、請求項9に記載のセラミック焼結体。
【請求項11】
ICPMSで測定した10ppm以下の総不純物含有量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項12】
ICPMSで測定した5ppm以下の総不純物含有量を有する、請求項11に記載のセラミック焼結体。
【請求項13】
前記セラミック焼結体が、多結晶である、請求項1~12のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項14】
平均結晶粒径が、ASTM E112-2010に従って測定して0.5~20μmである、請求項1~13のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項15】
平均結晶粒径が、ASTM E112-2010に従って測定して2~15μmである、請求項14に記載のセラミック焼結体。
【請求項16】
平均結晶粒径が、ASTM E112-2010に従って測定して3~10μmである、請求項15に記載のセラミック焼結体。
【請求項17】
ASTM C1327に従って0.025kgfの適用荷重を使用して測定して、13.5~16.5GPaの硬度を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項18】
ASTM C1327に従って測定して、14.5~15.5GPaの硬度を有する、請求項17に記載のセラミック焼結体。
【請求項19】
100mm~622mmの最大寸法を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項20】
200mm~622mmの最大寸法を有する、請求項19に記載のセラミック焼結体。
【請求項21】
最大寸法にわたって測定して、0.2~5%未満の密度分散を有する、請求項19に記載のセラミック焼結体。
【請求項22】
最大寸法にわたって測定して、0.2~3%の密度分散を有する、請求項21に記載のセラミック焼結体。
【請求項23】
セラミック焼結体の作製方法であって、
a.酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、前記粉末混合物は、99.995%超の総純度を有し、前記粉末混合物は、焼結助剤を含まない、作製する工程と、
b.加熱して前記粉末混合物の温度を600℃~1000℃の温度に上昇させることによって前記粉末混合物をか焼し、か焼温度を4~12時間維持してか焼された粉末混合物を形成する工程と、
c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内に前記か焼された粉末混合物を入れて、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
d.1000℃~1700℃の焼結温度に加熱しながら、前記か焼された粉末混合物に5~60MPaの圧力を加えて焼結を行なって前記セラミック焼結体を形成する工程と、
e.前記セラミック焼結体の温度を低下させる工程であって、前記セラミック焼結体は、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl
2O
4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含む、低下させる工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
前記焼結助剤が、元素状リチウム及びリチウム化合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ツールセットが、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に連結された第1及び第2のパンチとを含み、前記第1及び第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1及び第2のパンチの少なくとも1つが前記ダイの前記容積内で移動するとき、前記第1及び第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを形成する、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記ギャップが、前記ダイの前記内壁と前記第1及び第2のパンチの各々の前記外壁との間の10~100μmの距離である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記焼結温度が、1000~1650℃である、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記焼結温度が、1200~1600℃である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記焼結温度に加熱しながら、5~59MPaの圧力を前記か焼された粉末混合物に加える、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記圧力が、5~40MPaである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記圧力が、5~20MPaである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記焼結温度に加熱しながら、50MPa未満の圧力を前記か焼された粉末混合物に加える、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
焼結セラミック体が、100mm~622mmの最大寸法を有する、請求項23~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
焼結セラミック体が、200mm~622mmの最大寸法を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記セラミック焼結体が、前記最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、請求項23~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記セラミック焼結体が、前記最大寸法にわたって測定して0.2~3%の密度分散を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記か焼された粉末混合物が、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムを含む、請求項23~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
f.加熱して前記セラミック焼結体の温度を、アニールを行なうアニール温度に達するまで上昇させることによって前記セラミック焼結体をアニールする工程と、
g.前記アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、
を更に含む、請求項23~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
h.前記セラミック焼結体を機械加工して、立方体、円板、板、リング、シリンダ、湾曲板、管、ドーム、窓、リング、ノズル、チャック、シャワーヘッド、注入器の形状のセラミック焼結体構成要素を作製する工程、
を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項23~38のいずれか一項に記載の方法によって作製された、半導体製造チャンバ構成要素を製造するためのセラミック焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶結晶構造を有する式MgAl2O4のスピネルを含むセラミック焼結体に関する。スピネルセラミック焼結体は、本明細書に開示される方法及び材料を使用して作製することができる。より具体的には、セラミック焼結体は、意図される用途に応じて様々な特定の形態又は構成要素に機械加工することができる。スピネルセラミック焼結体の用途は、数ある用途の中でも、宇宙船の窓など室温及び高温の両方で高い機械的強度を必要とするもの、化学加工用途におけるものなど薬品侵食に対する高い耐性を必要とするもの、半導体加工用途での使用に必要とされるような広いエネルギーバンドギャップ及びハロゲン系プラズマ環境に対する耐薬品性を必要とするもの、高温及び厳しい環境で行なわれる光学分光法での使用、特に過酷な環境での高エネルギーレーザーシステムのための射出窓開口として有用なものであり得る。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、とりわけ、自動車、航空宇宙、半導体、光学、及び医療などの様々な産業にわたって有用である。セラミックにより、概して、高い圧縮強度、低い熱膨張、高い熱伝導率、優れた耐薬品性、並びに好ましい誘電特性及び光学特性が得られる。セラミックの分野では、組成MgAl2O3のスピネルが、その優れた化学的、熱的、誘電的、機械的及び光学的特性によって特に興味深い。しかし、スピネルを含むセラミック焼結体、特に大きな寸法のものの製造は、様々な理由で困難であることが判明している。
【0003】
スピネル材料の緻密化を促進するために、LiFなどの焼結助剤及び多くの他のものが多くの場合使用される。高純度が必要とされる用途では、焼結セラミック中に存在する焼結助剤は、セラミック物品の最終用途に適合せず、したがって、99.99%以上のオーダーの高純度が要求される用途でのそれらの使用は妨げられる。焼結助剤はまた、それらの特定の特性により、焼結されたセラミックにおける電気的、磁気的又は他の特性が望まない様式で変化し得るという問題をもたらし得る。例として、スピネルセラミック中に存在するLiFなどの焼結助剤は、結晶粒成長を促進し、それによって曲げ強度を低下させ、構造用途又はある特定のレベルの機械的強度が必要な任意の用途でのその使用を制限することがある。スピネル材料中のLiF及び他の焼結助剤の存在はまた、例えば、加工チャンバ内に混入物を導入することのないプラズマ腐食及び侵食に対する高い耐性が必要とされる、円板又は窓、ライナー、ガス注入器、リング、及びシリンダなどの構成要素としての半導体チャンバ用途でのその使用を妨げ得る。
【0004】
スピネルセラミックの調製では、スピネル、MgAl2O4を含む出発粉末を使用することが多く、これは多くの場合、平均で約200nm未満の粒径及び20m2/gを超えるオーダーの表面積を有するナノ粉末である。この結果、出発材料のコストが高くなることと併せて、セラミックの調製及び焼結の過程における粉末の加工及び取り扱いが困難になる。
【0005】
MgAl2O4などの立方晶スピネルは、化学的に不活性であり、高い耐食性を示すことが知られている。しかし、スピネルは、従来の方法では必要とされる高密度に焼結することが困難であることが知られており、その結果、最終部品にかなりの多孔性が残る。スピネルを焼結するには、典型的には約1600℃以上の高温を長時間にわたって必要とする。これらの高温及び長い焼結持続時間は、過度の結晶粒成長をもたらし、機械的強度に悪影響を及ぼす。緻密化を促進する試みで、80MPa以上のオーダーの高圧も使用されることが多い。80MPa以上などの高圧の使用には、大きな寸法にわたってこれらの圧力を発生可能な、高価な焼結装置を必要とする。
【0006】
概して、固体セラミック体、特に、破断も亀裂も生じることなく取り扱うことができ使用することができるスピネルから作られた大きな寸法(>100mm)の固体セラミック体を製造しようとする試みでは、製造における困難が生じる。スピネルを製造する既知の方法は高コストであり、有機結合剤の使用、未加工体を成形するための冷間プレス、結合剤バーンアウトのための空気中での焼成、高温(1700℃を超える)で1日以上のオーダーの長い持続時間にわたる真空焼結、その後の熱間等方圧プレスなどの多数の加工工程を必要とする。スピネル体を製造するための製造工程は高価な資本設備を必要とし、製造に数日かかることがある。
【0007】
スピネル化合物の緻密化を促進する更なる試みでは、焼結温度を低下させるために焼結助剤が高頻度で使用される。しかし、焼結助剤を添加すると、過度の結晶粒成長を促進し、それによって強度を低下させ、また耐食性及び耐侵食性を事実上低下させ、半導体加工などの高純度環境を必要とする用途において不純物混入の確率を増加させることがある。
【0008】
現在、広範囲の用途にわたって使用するための100mm~600mmの寸法を有する、高純度(>99.999%)及び高密度のスピネル、MgAl2O4を含む大型セラミック焼結体又は構成要素の調製のための、商業的に実行可能で費用効果の高い製造方法は存在しない。
【0009】
その結果、大きな寸法の構成要素及び焼結体形態に特に適した、高密度並びに強化された耐薬品性及び耐侵食性を有する立方晶結晶相を含む組成MgAl2O4のスピネルを含むセラミック焼結体、並びに焼結体を製造する簡略化された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
これら及び他の必要性は、本明細書に開示する様々な実施形態、態様、及び構成によって対処される。
【0011】
実施形態1.90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl2O4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体であって、焼結助剤を含まない、セラミック焼結体。
【0012】
実施形態2.焼結助剤が、元素状リチウム及びリチウム化合物を含む、実施形態1に記載のセラミック焼結体。
【0013】
実施形態3.3.49~3.58g/ccの密度を有する、実施形態1に記載のセラミック焼結体。
【0014】
実施形態4.3.56~3.58g/ccの密度を有する、実施形態3に記載のセラミック焼結体。
【0015】
実施形態5.90~99.95体積%の立方晶結晶構造を有する、実施形態1に記載のセラミック焼結体。
【0016】
実施形態6.95~99.5体積%の立方晶結晶構造を有する、実施形態5に記載のセラミック焼結体。
【0017】
実施形態7.セラミック焼結体の99質量%以上で立方晶結晶構造を含む、実施形態1に記載のセラミック焼結体。
【0018】
実施形態8.ICPMSで測定した99.99%以上の総純度を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0019】
実施形態9.ICPMSで測定した99.9975%以上の総純度を有する、実施形態8に記載のセラミック焼結体。
【0020】
実施形態10.ICPMSで測定した99.9995%以上の総純度を有する、実施形態9に記載のセラミック焼結体。
【0021】
実施形態11.ICPMSで測定した10ppm以下の総不純物含有量を有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0022】
実施形態12.ICPMSによって測定した5ppm以下の総不純物含有量を有する、実施形態11に記載のセラミック焼結体。
【0023】
実施形態13.セラミック焼結体が、多結晶である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0024】
実施形態14.平均結晶粒径が、ASTM E112-2010に従って測定して0.5~20μmである、実施形態1~13のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0025】
実施形態15.平均結晶粒径がASTM E112-2010に従って測定して2~15μmである、実施形態14に記載のセラミック焼結体。
【0026】
実施形態16.平均結晶粒径がASTM E112-2010に従って測定して3~10μmである、実施形態15に記載のセラミック焼結体。
【0027】
実施形態17.ASTM C1327に従って0.2kgfの適用荷重を使用して測定して、13.5~16.5GPaの硬度を有する、実施形態1~16のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0028】
実施形態18.ASTM C1327に従って0.2kgfの適用荷重を使用して測定して、14.5~15.5GPaの硬度を有する、実施形態17に記載のセラミック焼結体。
【0029】
実施形態19.100mm~622mmの最大寸法を有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0030】
実施形態20.200mm~622mmの最大寸法を有する、実施形態19に記載のセラミック焼結体。
【0031】
実施形態21.最大寸法にわたって測定して、0.2~5%未満の密度分散を有する、実施形態19に記載のセラミック焼結体。
【0032】
実施形態22.最大寸法にわたって測定して、0.2~3%の密度分散を有する、実施形態21に記載のセラミック焼結体。
【0033】
実施形態23.セラミック焼結体の作製方法であって、a.酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、粉末混合物は、99.995%超の総純度を有し、粉末混合物は、焼結助剤を含まない、作製する工程と、b.加熱して粉末混合物の温度を600℃~1000℃の温度に上昇させることによって粉末混合物をか焼し、か焼温度を4~12時間の持続時間にわたって維持してか焼された粉末混合物を形成する工程と、c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内にか焼された粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出す工程と、d.1000℃~1700℃の焼結温度に加熱しながら、か焼された粉末混合物に5~60MPaの圧力を加えて焼結を行なってセラミック焼結体を形成する工程と、e.セラミック焼結体の温度を低下させる工程であって、セラミック焼結体は、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl2O4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含む、低下させる工程と、を含む、方法。
【0034】
実施形態24.焼結助剤が、元素状リチウム及びリチウム化合物を含む、実施形態23に記載の方法。
【0035】
実施形態25.ツールセットが、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、ダイと動作可能に連結された第1及び第2のパンチとを含み、第1及び第2のパンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1及び第2のパンチの少なくとも1つがダイの容積内で移動するとき、第1及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを形成する、実施形態23又は24に記載の方法。
【0036】
実施形態26.ギャップが、ダイの内壁と第1及び第2のパンチの各々の外壁との間の10~100μmの距離である、実施形態25に記載の方法。
【0037】
実施形態27.焼結温度が、1000~1650℃である、実施形態23~26のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態28.焼結温度が、1200~1600℃である、実施形態27に記載の方法。
【0039】
実施形態29.焼結温度に加熱しながら、5~59MPaの圧力をか焼された粉末混合物に加える、実施形態23~28のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施形態30.圧力が、5~40MPaである、実施形態29に記載の方法。
【0041】
実施形態31.圧力が、5~20MPaである、実施形態29に記載の方法。
【0042】
実施形態32.焼結温度に加熱しながら、50MPa未満の圧力をか焼された粉末混合物に加える、実施形態23~28のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
実施形態33.焼結セラミック体が、100mm~622mmの最大寸法を有する、実施形態23~32のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施形態34.焼結セラミック体が、200mm~622mmの最大寸法を有する、実施形態33に記載の方法。
【0045】
実施形態35.セラミック焼結体が、最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、実施形態23~34のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
実施形態36.セラミック焼結体が、最大寸法にわたって測定して0.2~3%の密度分散を有する、実施形態35に記載の方法。
【0047】
実施形態37.か焼された粉末混合物が、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムを含む、実施形態23~36のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
実施形態38.f.加熱してセラミック焼結体の温度を、アニールを行なうアニール温度に達するように上昇させることによってセラミック焼結体をアニールする工程と、g.アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、を更に含む、実施形態23~37のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
実施形態39.h.セラミック焼結体を機械加工して、立方体、円板、板、リング、シリンダ、湾曲板、管、ドーム、窓、リング、ノズル、チャック、シャワーヘッド、注入器の形状のセラミック焼結体構成要素を作製する工程を更に含む、実施形態38に記載の方法。
【0050】
実施形態40.実施形態23~38のいずれか1つに記載の方法によって作製された、半導体製造チャンバ構成要素を製造するためのセラミック焼結体。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】アルミン酸マグネシウムスピネル相MgAl
2O
4を示す、マグネシア/アルミナ相図を示す。
【
図2】一実施形態による例示的なか焼された粉末混合物のX線回折パターンを示す。
【
図3】本開示の一実施形態による立方晶スピネル相を含む例示的なセラミック焼結体のX線回折パターンを示す。
【
図4a】それぞれ1000倍及び5000倍での、一実施形態による例示的なセラミック焼結体の研磨された表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図4b】それぞれ1000倍及び5000倍での、一実施形態による例示的なセラミック焼結体の研磨された表面のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図5】本明細書に開示される一実施形態による半導体加工チャンバの第1の例を示す。
【
図6】本明細書に開示される一実施形態による半導体加工チャンバの第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
ここで特定の実施形態について詳細に言及する。特定の実施形態の例を添付の図に示す。本発明をこれらの特定の実装形態と併せて説明するが、本発明をそのような特定の実施形態に限定することを意図するものではないことは理解される。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替、改変、及び等価物を包含することを意図している。以下の記述では、開示する実施形態を完全に理解できるように、多くの具体的な詳細を記載する。本発明はこれらの具体的な詳細のうちのいくつか又は全てを使用せずに実施することができる。
【0053】
定義
本明細書で使用される場合、用語「アルミナ」は、酸化アルミニウム、Al2O3であると理解され、「マグネシア」は、酸化マグネシウム、MgOであると理解される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「セラミック焼結体」という用語は、「焼結物」、「本体」、「スピネル焼結体」、「アルミン酸マグネシウムスピネル」、又は「焼結体」と同義であり、か焼された粉末混合物からモノリシック体を作製する加圧及び加熱処理プロセスに供された、か焼された粉末混合物から形成された固体セラミック物品を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粉末」は、20m2/g以上の比表面積(SSA)を有する粉末を包含することが意図される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、出発粉末、粉末混合物又は焼結セラミック体中に様々な混入物質が存在しないことを指す。より高い純度は、出発粉末、粉末混合物又は焼結セラミック体の100%により近い出発材料を表すことを意味し、これは、混入物質又は不純物を本質的に有していない、意図された材料組成のみを含む材料を表す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、出発粉末、粉末混合物又は焼結セラミック体中に存在する、出発材料自体以外の化合物を指す。不純物は、セラミック焼結体においてある特定の電気的、機械的又は他の特性を達成するために粉末混合物に意図的に添加され得るドーパントとは別個のものである。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「セラミック焼結体構成要素」は、例えば、半導体、光学、医療、航空宇宙、及び自動車産業などの様々な用途での使用に必要な特定の形態又は形状を作り出すための機械加工工程後のセラミック焼結体を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「粉末混合物」は、焼結プロセスの前に一緒に混合された1つ以上の粉末を意味し、これは、「か焼された粉末混合物」を形成するためのか焼工程及び焼結工程の後に、それによって「セラミック焼結体」に形成される。
【0060】
本明細書で使用される場合、メジアン粒径、d50粒径及び平均粒径は同義であると解釈され、したがって、各々について本明細書で報告される値は、本明細書で開示される粉末及び粉末混合物の粒径の実質的に対称な分布により互換的であると解釈される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、少なくともダイ及び少なくとも2つのパンチ、並びに任意選択で追加のスペーサを含み得る。完全に組み立てられると、ツールセットは、開示されるように、か焼された粉末混合物の配置のための容積を画定する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「相」という用語は、特定の結晶構造を有する結晶領域を意味すると理解される。
【0063】
「か焼」という用語は、加熱処理プロセスに関して使用される場合、本明細書では、水分及び/又は不純物を除去し、結晶化度を増加させ、場合によっては表面積を変更するために、焼結温度未満の温度で空気中で、粉末又は粉末混合物に対して行なうことができる加熱処理工程を意味すると理解される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中に緻密化を向上させ、それによって多孔性を低減する、本明細書に開示される添加剤又は化合物を指す。
【0065】
セラミックの加熱処理に適用される場合、「アニール」という用語は、本明細書では、開示されたセラミック焼結体に対して、応力を緩和し、及び/又は化学量論を正規化するために空気中で行なわれ得る加熱処理を意味すると理解される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数と関連して使用されるとき、プラス又はマイナス10%の分散を許容する。
【0067】
組成
開示されるセラミック焼結体は、様々な形状、サイズ、及び様々な材料組成のものであってよい。半導体ウェハ加工に加えて、自動車、航空宇宙、半導体、光学、及び医療などの他の産業、並びに本発明を利用することができる他の製品としては、光学素子、高エネルギーレーザ、極限条件での分光法、半導体チャンバ構成要素、マイクロ機械デバイス、光センサなどの様々な物品が挙げられる。
【0068】
本明細書に開示されるセラミック焼結体及び関連構成要素により、以下に記載される特定の材料特性及び特徴によって、様々な改善されたハロゲン系プラズマ耐食性及び耐侵食性が得られる。
【0069】
90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl2O4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体であって、焼結助剤を含まない、セラミック焼結体が開示される。立方晶スピネル、特に開示されるマグネシアアルミナスピネル焼結体は、材料特性が結晶面又は方向に基づいて変化しないという点で等方性であり、したがって、立方晶スピネル形態は、その一貫した材料特性及び多くの用途において得られる予測可能な性能のために好ましい。実施形態では、セラミック焼結体は、アルミン酸マグネシウムスピネル、MgAl2O4を、95~100体積%、好ましくは98~100体積%の立方晶結晶構造、好ましくは99~100体積%の立方晶結晶構造、より好ましくは100体積%の立方晶結晶構造の量で含んでもよい。他の実施形態では、本明細書で提供されるセラミック焼結体は、90~99.95体積%の立方晶結晶構造、好ましくは90~99.9体積%の立方晶結晶構造、好ましくは90~99.5体積%の立方晶結晶構造、好ましくは95~99.5体積%の立方晶結晶構造、好ましくは95~99.2体積%の立方晶結晶構造を含む。
【0070】
加えて、前述の用途の多くでは、スピネル焼結体は、大きな(例えば、100~622mm又は200mm~622mm)寸法での取り扱い性のために十分な曲げ強度及び剛性を有する必要がある。かなりの応力が、使用中に構成要素にかかることがあり、大きな焼結体寸法を考慮すると、より大きな程度までかかることがあり、高強度の材料の選択を必要とする。改善された取り扱い能力に加えて、更なる要件は、破断も亀裂もチッピングもなく、微細な形状の入り組んだ特徴をセラミック焼結体に機械加工することであり得る。これらの用途特有の要件は、大きな構成要素サイズで特に重要になる。
【0071】
開示される方法に従って調製されるセラミック焼結体、及び焼結体から作製されるセラミック焼結体構成要素は、好ましくは高密度を有し、それによって高い曲げ強度又は機械的強度が得られ、多くの構造用途におけるスピネル焼結体の使用中の改善された取り扱い性及び性能が可能となる。密度測定は、当該技術分野において既知であるアルキメデス水浸漬法を用いて行なった。L.Ping et al,”Magnesium aluminate(MgAl2O4)spinel produced via self-heat-sustained(SHS)technique”,Materials Research Bulletin 36(2001)によれば、アルミン酸マグネシウムスピネルの理論密度は3.58g/cm3であり、本明細書に開示されるセラミック焼結体は、例えば3.47~3.58g/cc、好ましくは3.49~3.58g/cc、好ましくは3.51~3.58g/cc、好ましくは3.54~3.58g/cc、好ましくは3.56~3.58g/ccの密度を有してもよい。これらの値は、97~100%、97.5~100%、更に98~100%、更に99~100%、更に99.5~100%の理論密度のパーセントに対応し、これにより、他の有益な特性の中でも、強化された機械的強度、並びに化学的腐食及び侵食の影響に対する改善された耐性(プラズマ耐性)を得ることができる。
【0072】
高い機械的強度に加えて、高い硬度値により、焼結体の表面にチッピングもフレーキングも損傷もなく、特定の形態に機械加工する際にセラミック焼結体に微細な特徴を形成する能力が可能になる。開示されるスピネル焼結体の硬度の他の利点は、例えば、プラズマエッチング及び堆積用途で使用されるときのイオン衝撃による化学的腐食及び物理的侵食などの、腐食環境で使用されるときの化学的腐食に対する耐性であり得る。スピネル焼結体の硬度は、0.2kgfのロードセルを用いてASTM C1327に従って測定した。約14~約15.5GPaの平均硬度が、8回の繰り返しにわたって測定された。スピネル焼結体の硬度は、13.5~16.5GPa、好ましくは13.5~16GPa、好ましくは13.5~15.5GPa、好ましくは14~16.5GPa、好ましくは15~16.5GPa、好ましくは14~16GPaであってもよい。
【0073】
半導体デバイス形状が小さくなり縮小し続けるにつれて、プロセス歩留まり損失を最小限に抑えるために温度制御がますます重要になってくる。加工チャンバ内のこの温度変動は、ナノメートルスケールのフィーチャの限界寸法の制御に影響を及ぼし、デバイスの歩留まりに悪影響を及ぼす。例えば1×10-4以下の誘電正接(本明細書では誘電損失及び損失正接と同義的に使用される)などの低い誘電損失を有するチャンバ構成要素の材料選択が、チャンバ内での温度不均一性をもたらす熱発生を防止するのに望ましい場合がある。誘電損失は、他の要因の中でも、結晶粒径、純度、並びに材料中のドーパント及び/又は焼結助剤の使用によって影響を受ける可能性がある。焼結助剤及び拡張された焼結条件の使用は、より大きな結晶粒径、より低い純度の材料をもたらすことがあり、これにより、産業において一般的な高周波チャンバプロセスへの適用に必要な低損失正接が得られないことがあり、粒子生成及び機械的強度の低下をもたらし、大きな構成要素サイズの製造を妨げることがある。特に、プラズマ加工チャンバで使用されるような1MHz~20GHz(及びそれ以上のRF範囲)の高周波数で、プラズマ発生効率を改善し、過熱を防止するために、好ましくは、半導体チャンバ構成要素は、可能な限り低い誘電損失を有する材料である。例示的なスピネル焼結体を、1MHzの周波数でASTM D-150に従って誘電率及び誘電正接について試験し、0.0002の誘電正接が測定され、誘電率は7.8であった。この範囲内の誘電率は、半導体リアクタチャンバで使用するのに好ましい場合がある。高純度で化学的に不活性な材料を必要とする用途では、開示されるスピネル焼結体は、ICPMS法を使用して測定して、99.99%以上、好ましくは99.995%以上、好ましくは99.999%以上の純度を有し得る。例えば、半導体加工リアクタは、反応性プラズマによる化学的腐食及びイオン衝撃による侵食に対して高い耐性を有する材料から製造されたチャンバ構成要素を必要とする。これらのプラズマ又はプロセスガスは、多くの場合、O2、F、Cl2、HBr、BCl3、CCl4、N2、NF3、NO、N2O、C2H4、CF4、SF6、C4F8、CHF3、CH2F2などの様々なハロゲン、酸素及び窒素ベースの化学物質を含む。本明細書に開示される高純度スピネルセラミック焼結体からのチャンバ構成要素の製造は、化学的腐食及び侵食に対する耐性の増大をもたらし得る。腐食及び侵食に対するこの耐性により、半導体加工中における構成要素表面からエッチング又は堆積チャンバ内への粒子の放出を防止する。純度は、Agilent 7900 ICP-MSモデルG8403を使用して、誘導結合質量分析、ICP-MSによって測定した。本明細書に開示されるICPMSを使用して、Sc及びより軽い元素などのより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、概して、約0.14ppm以下であり得るより重い元素の報告限界よりも高く、約1.4ppm以下である。特に、Siを検出するための本明細書に開示されるICPMS法の使用は、約14ppm以上の信頼度内で行なわれ得る。したがって、出発粉末、粉末混合物、か焼された粉末混合物及び焼結セラミック体は、約14ppmの量でシリカを含み得る。シリカの形態のSiは、本明細書に開示される出発粉末、か焼された粉末混合物及び焼結セラミック体の%純度又は不純物含有量に含まれず、約14ppm以下であるとみなされ得るが、Siは多くの場合未検出であった。例示的なスピネルセラミック焼結体を純度について試験し、測定したところ、100%純度に対して99.9993%の純度に相当する約7ppmの不純物含有量を有していた。
【0074】
多結晶立方晶スピネルなどの耐食性材料は、既知のエアロゾル又はプラズマスプレー技術によってフィルム又はコーティングとして適用される場合、典型的には高い(3%~50%の程度の)レベルの多孔率、及びそれによる低い密度を示す。更に、これらのフィルム又はスプレーコーティングでは、基材材料と希土類酸化物コーティングとの間の不十分な界面接着を示す場合がある。高密度(97%を超える)を有する開示される立方晶アルミン酸マグネシウムスピネルを含むモノリシックセラミック焼結体により、様々な用途にわたって改善された性能を得ることができる。対応して最小の多孔率を有する、ほぼ緻密又は完全に緻密な固体セラミック焼結体が、本明細書に開示される。本明細書に開示される耐食性セラミック焼結体は、スピネル焼結体の理論密度に対して97%超、好ましくは98%超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超の非常に高い密度を有し得、それに対応して、
図4a及び
図4bのSEM顕微鏡写真に示されるように、セラミック焼結体において3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満の低い多孔率を有し、改善された耐薬品性及び耐侵食性をもたらし得る。
図4a)及び
図4b)の例示的な焼結セラミック体(実施例5による)は、ASTM規格E112-2010「Standard Test Method for Determining Average Grain Size」に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って測定して、5umの平均結晶粒径、7um未満の最大結晶粒径、及び約3.6umの最小結晶粒径を有する。ある実施形態では、本明細書に開示され、
図4a及び
図4bに示されるセラミック焼結体は、非常に高い密度(理論値の>98%、好ましくは>99%)と、それに対応して非常に低いレベルの多孔率(例えば、2体積%以下、好ましくは1体積%以下)とを、表面上及び本体全体の両方において有し得る。好ましくは、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された組成MgAl
2O
4のスピネルで構成されるセラミック焼結体は、それにより、高密度を有する一体型本体であってもよく、本体全体にわたって先に開示されたような非常に小さい細孔を有してもよい。換言すれば、研磨された表面上で測定した、高密度の、低多孔率構造は、本明細書に開示されるセラミック焼結体のバルク又は体積内の密度及び多孔率レベルを代表することができる。バルク内の多孔率は、同義的に体積多孔率と呼ぶことができ、当業者に知られているように、相対密度から計算することができる。
【0075】
本明細書に開示されるセラミック焼結体は、有利には、最大寸法にわたって5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下の密度の変動を示し、最大寸法は、例えば、約622mm、好ましくは575mm、好ましくは525mm、好ましくは100~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは200~622mm、好ましくは200~510mm、好ましくは400~622mm、好ましくは500~622mmであってもよい。
【0076】
開示されるアルミン酸マグネシウムスピネル(MAS)体により、耐薬品性及び耐侵食性を得ることができ、開示されるセラミック焼結体を製造するために高純度の出発材料を使用することにより、その耐薬品性及び耐侵食性が、セラミック焼結構成要素又はそれから形成された部品に移行する。しかし、アルミン酸マグネシウムスピネルは、高レベルの機械的強度を必要とする用途に必要とされるような、例えば、半導体エッチングチャンバでの使用、透明装甲板、宇宙用途のための多結晶セラミック窓、及び他の構造用途としての使用などに必要とされるような高密度まで焼結することが困難である。焼結助剤が、高い(97%超、98%超、99%超)密度を達成するために多くの場合必要とされることから、高い焼結温度及び高い耐薬品性のアルミン酸マグネシウムスピネルの材料特性は、有利な高純度を維持しながら高密度に焼結する際の困難をもたらす。高純度では、そうでなければ純度の低い粉末から作製された構成要素又はセラミック焼結体を薬品侵食し、表面を粗面化し、エッチングし得る、例えばハロゲン系ガス種、強酸、強塩基、毒性及び他の極端な化学条件によるセラミック焼結体の表面の粗面化を防止することができる。
【0077】
前述の理由から、酸化アルミニウム出発粉末材料における総純度は、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9999%超である。
【0078】
酸化マグネシウム出発粉末材料の総純度は、出発酸化マグネシウム粉末材料において、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9992%超であり得る。
【0079】
本明細書に開示される粉末混合物及び/又はか焼された粉末混合物の総純度は、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9992%超であり得る。
【0080】
本明細書に開示されるセラミック焼結体の総純度は、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9992%超であり得る。高純度(99.99%)アルミナを粉砕媒体として使用することができる。ジルコニア媒体が混合のために使用され得る実施形態では、ジルコニアは、セラミック焼結体中に微量(50ppm以下、好ましくは30ppm以下)で存在し得る。高純度のアルミナ粉砕媒体が混合プロセス中に使用される場合、セラミック焼結体の純度は、か焼された粉末混合物の純度に対して実質的に同じであり得る、又は同じであり得る、又は5ppm以下の範囲内であり得る。機械加工プロセス後のセラミック焼結構成要素又は形態の純度は、セラミック焼結体の純度から保持され得る。
【0081】
本明細書に開示されるMAS焼結体の高密度及び高純度の組み合わされた相乗効果により、半導体加工中に使用されるハロゲン系プラズマの腐食及び侵食作用に対する改善された耐性が得られる。これは、以下に開示されるようなエッチングプロセスの前後に行なわれる表面粗さ測定によって評価された。
【0082】
エッチング手順
ドライエッチングプロセスは、業界の標準的装置であるPlasma-Therm Versaline DESC PDC Deep Silicon Etchを用いて行なわれた。エッチングは、2工程プロセスを用いて合計6時間の持続時間で完了した。エッチング方法は、10ミリトルの圧力、600ボルトのバイアス、及び2000ワットのICP出力を用いて行なわれた。エッチング方法は、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF4流量、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量、及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を用いる第1のエッチング工程と、100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を用いる第2のエッチング工程とを用いて行なわれ、第1及び第2のエッチング工程は、6時間の合計持続時間にわたって各々300秒間繰り返される。
【0083】
本明細書に開示されるエッチングプロセスは、20分の合計持続時間にわたる5.23ミクロンのシリコンエッチングレート(上記のような2工程プロセスを使用)に対応する。これは、0.26ミクロン/分のシリコンエッチングレートに相当する。
【0084】
エッチングプロセス前後のMAS焼結セラミック体について、Sa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)及びSdr(界面展開面積比)のパラメータを測定した。一般に、プラズマエッチングプロセス後の表面粗さは、耐食性材料によってもたらされる低い表面粗さがチャンバ内への混入粒子の放出を低減し、それに対応して、エッチングプロセス後のより高い表面粗さが、より多くの粒子生成及びウェハ上への放出を示すという点で、チャンバ粒子生成に影響を及ぼし得る。したがって、エッチングプロセスの前及び後の両方で、焼結セラミック体の表面は、加工チャンバ内の微粒子生成に相関し得る。したがって、一般に、低減された表面粗さを有することが有益である。
【0085】
表面粗さの測定は、クラス1のクリーンルームの環境条件下で、Keyenceの3Dレーザー走査型共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを用いて行なった。ISO25178表面テクスチャ(Areal Roughness測定)は表面粗さの分析に関連する国際標準集であり、この顕微鏡はそれに準拠している。
【0086】
共焦点顕微鏡を使用して50倍の倍率で試料の表面をレーザースキャンして、試料の詳細な画像を撮影した。7つの区画化されたブロックのプロファイルで粗さを得た。測定サンプリング長を表すラムダ カイ(λ)を、ISO仕様4288:製品の幾何特性仕様(GPS)-表面テクスチャ:プロファイル方法-表面テクスチャの評価のための規則と手順に従って線の読取りが7つのうちの5つの中央ブロックからの測定値をとるように調整した。
【0087】
領域は、測定のためのMAS焼結セラミック体のエッチング領域及び未エッチング領域内で選択した。領域は、典型的な試料表面を最も代表するように選択し、Sa、Sz及びSdrを計算するために使用した。
【0088】
Saは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたって計算された平均粗さ値を表す。Szは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山-谷距離を表す。Sdrは、「界面展開面積比」として定義される計算数値であり、完全に平坦な表面に対する実際の表面積の増加分の比例表現である。平坦な表面には0のSdrが割り当てられ、その値は表面の勾配と共に増加する。より大きな数値は、表面積のより大きな増加と一致する。
【0089】
Sa、Sz及びSdrの表面粗さの特徴は基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO規格25178-2-2012に記載されている。
【0090】
MAS体を焼結した後、測定表面を研削及び研磨した。表面を、以下の方法(Struers,Inc.によって提供される研磨用品)によって研磨した(Strasbaugh研磨装置):(i)40umのアルミナ:必要に応じて表面を平坦化するため;(ii)12umのアルミナ、固定研磨パッド:2分;(iii)9pmのダイヤモンド、ポリウレタンパッド:8分;(iv)6umのダイヤモンド、ケバ立てた布:3分、及び(v)1umのダイヤモンド、ケバ立てた布:3分。この研磨方法は、本明細書に開示される全ての研磨表面に使用した。
【0091】
エッチング性能
Sa、Sz及びSdrの表面粗さ特徴は、エッチング前のMASセラミック焼結体の研磨された表面にわたってISO規格25178-2-2012に従って測定した。表4の試料B及びC(それぞれ実施例2及び4)に対応する2つのMAS焼結体を、上記の表面粗さ特徴について測定した。表面粗さの測定結果を表5に示す。本明細書に開示されるエッチングプロセスの前に、Saを測定したところ、30nm未満、好ましくは20nm未満、好ましくは2~20nm、好ましくは10~20nm、好ましくは15~20nmであった。Szを測定したところ、20um未満、好ましくは15um未満、好ましくは3~20um、好ましくは3~15umであり、Sdrを測定したところ、5000×10-5未満、好ましくは1000×10-5未満、好ましくは200~5000×10-5、好ましくは300~1000×10-5であった。本明細書で使用される場合、nm及びumは、それぞれ1×10-9m及び1×10-6mを意味する。
【0092】
本明細書に開示されるエッチングプロセスの後、Sa、Sz、及びSdrは、同じ表面粗さ測定条件下で測定された。Saを測定したところ、30nm未満、好ましくは25nm未満、好ましくは10~25nm、好ましくは10~23nmであった。Szを測定したところ、20um未満、好ましくは15um未満、好ましくは3~20um、好ましくは3~15umであり、Sdrを測定したところ、5000×10-5未満、好ましくは1000×10-5未満、好ましくは200~5000×10-5、好ましくは300~1000×10-5であった。Saは、本明細書に開示される方法に従って作製されたMAS焼結体に対して行なわれたエッチングプロセス後に14~20%増加した。
【0093】
いくつかの実施形態では、ハロゲン系プラズマ加工に対する向上した耐性をもたらすために、本明細書に開示されるMAS焼結体は、ASTM E112-2010に従って測定される2um以上~約10um以下の平均結晶粒径を有することが好ましい場合がある。
【0094】
本明細書に開示されるプロセスに従って作製されたMASセラミック焼結体(及びそれから形成される構成要素)は、半導体プラズマ加工チャンバ内で使用されるハロゲン系プロセスガスの強い腐食性及び侵食性の作用に対して耐性のある表面を提供し、それによって加工チャンバ内への粒子放出を最小限に抑える。
【0095】
高密度MASセラミック体を得るために、当該技術分野で知られている焼結助剤の使用が多くの場合必要である。本明細書に開示される材料及び方法では、焼結助剤を使用することなく、例えば、開示されるスピネル焼結体の理論値の98%を超える高密度を有する焼結セラミック体を製造する。したがって、本明細書に開示されるセラミック焼結体は、焼結助剤又は焼結助剤の残留物を含まない。本明細書で使用される場合、用語「焼結助剤の残留物」は、焼結助剤が焼結前に組成物中に存在する結果としてセラミック焼結体中に見出される、未反応焼結助剤及び焼結助剤の反応生成物を含む、焼結助剤に由来する任意の原子の存在を指す。典型的な焼結助剤としては、例えば、LiF、CaO、CaF2、CaCl2、ZnF2、BaF2、Fe2O3、Cr2O3、CaCO3、CaB4O7、B2O3、AlCl3、Dy2O3、Na3AlF6、AlF3、NaF、V2O3、MnF2、CoF2、CoO、金属マグネシウム(Mg)、MgCl2、ZnO、TiO2、Y2O3、及びNa3AlF6が挙げられる。したがって、本明細書に開示されるセラミック焼結体は、LiF、CaO、CaF2、CaCl2、ZnF2、BaF2、Fe2O3、Cr2O3、CaCO3、CaB4O7、B2O3、AlCl3、Dy2O3、Na3AlF6、AlF3、NaF、V2O3、MnF2、CoF2、CoO、金属マグネシウム(Mg)、MgCl2、ZnO、TiO2、Y2O3、及びNa3AlF6又はそれらの残留物を含まない。他の実施形態では、本明細書に開示されるセラミック焼結体は、元素状Li及びLi含有化合物を含まない。更に別の実施形態では、本明細書に開示されるセラミック焼結体は、フッ化物及び塩化物を含まない。
【0096】
作製方法
【0097】
セラミック焼結体の調製は、直流焼結及び関連技術と組み合わせた加圧支援焼結を用いて行なうことができ、これは直流を使用して導電性のダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって材料を焼結するものである。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な結晶粒径のセラミック焼結体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。
【0098】
セラミック焼結体は、酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、粉末混合物が99.995%超の総純度を有し、粉末混合物が焼結助剤を含まない、作製する工程と、加熱して粉末混合物の温度を600℃~1000℃の温度に上昇させることによって粉末混合物をか焼し、か焼温度を4~12時間維持してか焼された粉末混合物を形成する工程と、焼結装置のツールセットによって画定された容積内にか焼された粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出す工程と、1000~1700℃の焼結温度に加熱しながら、か焼された粉末混合物に5~60MPaの圧力を加えて焼結を行なってセラミック焼結体を形成する工程と、セラミック焼結体の温度を低下させる工程であって、セラミック焼結体は、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl2O4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含む、低下させる工程と、を含む、方法によって調製される。以下の追加の工程、すなわち、f.任意選択で、加熱してセラミック焼結体の温度を、アニールを行なうアニール温度に達するように上昇させることによってセラミック焼結体をアニールする工程と、g.アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、h.セラミック焼結体を機械加工して、立方体、円板、板、リング、シリンダ、湾曲板、管、ドーム、窓、リング、ノズル、チャック、シャワーヘッド、注入器の形状のセラミック焼結体構成要素を作製する工程とは、任意選択である。
【0099】
セラミック焼結体から形成される耐食性セラミック焼結構成要素の上述の特性は、特に、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムの粉末の純度、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムのか焼粉末に対する圧力、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムの粉末の温度、粉末混合物の焼結持続時間、任意選択のアニール工程中のセラミック焼結体/セラミック焼結体構成要素の温度、並びに任意選択のアニール工程の持続時間を適合させることによって得られる。本明細書に開示される方法は、規模拡大可能な製造環境において、セラミック焼結体、特に大寸法のものを製造するのに適している。
【0100】
開示される全般的なプロセス工程及び方法は、組成、粒径、比表面積、混合プロセスなどの様々な特性を有し得る、工程aによる粉末混合物の作製を含み得、粉末混合物は、工程bによる様々な加熱処理又はか焼プロセスに供され得る。
【0101】
本明細書に開示される方法は、上記で詳述された特性を有する組成MgAl2O4の立方晶結晶相を有するスピネル焼結セラミック体を含むセラミック焼結体形態又は構成要素の調製を提供する。実施形態では、本明細書に開示されるセラミック焼結体はドーパントを含んでもよいが、化学的不活性並びに腐食及び侵食に対する耐性を必要とする多くの用途では、スピネルセラミック焼結体はドーパントを含まないことが好ましい場合がある。したがって、ある実施形態では、スピネル焼結体は、これらのドーパントのうちの少なくとも1つ、又はその全てを実質的に含まない、又は含まない。
【0102】
ある実施形態によるセラミック焼結体及びセラミック焼結体構成要素の特性は、特に、粉末を組み合わせる工程a及び焼結前に粉末混合物をか焼する工程b、工程aにおいて使用される酸化アルミニウム及び酸化マグネシウム粉末の出発粉末の純度、粒径、表面積及び混合、工程dにおける粉末混合物への加圧、工程dにおける粉末混合物の焼結温度、工程dにおける粉末混合物の焼結の持続時間、工程fにおける任意選択のアニール工程中のセラミック焼結体又は構成要素の温度、並びに任意選択のアニール工程fの持続時間、を適合させることによって実現される。開示されるプロセスは、化学量論的組成の、及び粉末バッチ処理の分散を考慮して出発粉末の約5重量%だけ化学量論的組成から変動する組成の立方晶相スピネルの調製を提供する。この組成範囲にわたる粉末は、最小限の多孔率、高純度及び高密度を有する相純粋なMgAl2O4スピネルを提供することができる。
【0103】
本明細書に開示される方法の工程aは、酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、粉末混合物が99.995%超の総純度を有し、粉末混合物が焼結助剤を含まない、工程を含む。セラミック焼結体を形成するための酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムの出発材料は、好ましくは高純度の市販の粉末である。本発明の方法において、アルミン酸マグネシウムスピネルは、反応性焼結プロセスによってその場で(in situ)で作製され、アルミン酸マグネシウムスピネル粉末は、工程aにおいて出発粉末として使用されない。粒径は、典型的には、10nm~5mmの粒径を測定可能なHoribaモデルLA-960レーザー散乱粒径分布分析器を使用して測定される。表面積は、典型的には、Horiba BET表面積分析器モデルSA-9601を使用して測定される。純度は、典型的には、Agilent 7900 ICP-MSモデルG8403のICP-MSを使用して測定される。
【0104】
本発明の一実施形態により出発物質として使用される酸化マグネシウム粉末の平均又はd50粒径は、典型的には1.5~5.5μm、2~5.5μm、2.5~5.5μm、3~5.5μm、1.5~5μm、1.5~4.5μm、より好ましくは2~4.5μmである。
【0105】
本発明の一実施形態により出発材料として使用される酸化マグネシウム粉末のd90粒径は、4~9μm、好ましくは5~9μm、好ましくは6~9μm、好ましくは4~8μm、好ましくは4~7μm、より好ましくは5~7.5μmである。
【0106】
酸化マグネシウム粉末は、通常、0.5~10m2/g、好ましくは0.5~8m2/g、好ましくは0.5~6m2/g、好ましくは1~10m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは3~10m2/g、より好ましくは2~6m2/gの比表面積を有する。酸化マグネシウム出発材料の純度は、当該技術分野で公知のICPMS法を用いて測定して、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、より好ましくは99.9975%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9992%超である。これに対応して、マグネシア粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは8ppm以下であり得る。
【0107】
一実施形態により出発材料として使用される酸化アルミニウム粉末の平均又はd50粒径は、0.75~7μm、好ましくは0.75~6.5μm、好ましくは0.75~6μm、好ましくは1~7μm、好ましくは1.5~7μm、好ましくは2~7μm、より好ましくは2~6μmである。酸化アルミニウム粉末は、通常、4~18m2/g、好ましくは4~15m2/g、好ましくは4~12m2/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは6~18m2/g、好ましくは6~15m2/g、好ましくは6~12m2/g、好ましくは6~10m2/g、好ましくは6~8m2/gの比表面積(SSA)を有する。酸化アルミニウム出発材料の純度は、ICPMS法を使用して測定して、典型的には99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.9975%超、好ましくは99.999%超、好ましくは99.9995%超、好ましくは99.9999%超である。これに対応して、アルミナ粉末の不純物含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは1ppm以下であり得る。
【0108】
本明細書に開示される方法による出発粉末は、マグネシア及びアルミナの混合物を含み、好ましくは、本明細書に定義されるナノ粉末の比表面積(SSA)よりも低い比表面積を有し得る。本明細書に開示される粉末混合物は、例えば、15~32重量%、好ましくは20~30重量%、好ましくは25~30重量%、より好ましくは27~29重量%の量でMgOを含み得る。これに対応して、本明細書に開示される粉末混合物は、アルミナを68~85重量%、好ましくは68~80重量%、好ましくは68~75重量%、より好ましくは70~72重量%の量で含み得る。
【0109】
本明細書に開示される方法による出発粉末、粉末混合物及びか焼された粉末混合物は、好ましくはナノ粉末を含まず、したがって、本明細書に定義されるナノ粉末を実質的に含まない、又は含まない。一実施形態による出発粉末の好ましい平均又はd50粒径は、1~7ミクロンであってもよく、出発粉末の好ましい比表面積は、約20m
2/g未満、より好ましくは約14m
2/g未満であってもよい。表1は、例示的な粉末混合物組成を列挙している。
【表1】
【0110】
前述の粉末を組み合わせて粉末混合物を作製することは、ボールミル粉砕を使用して行なうことができる。ボールミル粉砕は、混合中に出発粉末の純度を保つために、一例として高純度(99.99%)アルミナ媒体を使用して達成することができる。出発粉末の凝集が懸念され得る他の場合では、酸化ジルコニウムなどのより硬い媒体を使用することができる。ジルコニア媒体の使用により、75ppm未満、好ましくは25~50ppmの量で、スピネル焼結体中に微量のジルコニアがもたらされ得る。湿式ボールミル粉砕は、粉末混合物を懸濁溶媒、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール又は水に分散させてスラリーを形成することによって行なうことができる。媒体は、粉末重量基準で粉砕中に使用される媒体の量での変更し得る充填量でスラリーに添加され、したがって媒体は、粉末重量基準で10~100重量%、好ましくは粉末重量基準で20~80重量%、好ましくは粉末重量基準で30~60%重量の充填量である。湿式ボールミル粉砕は、8~48時間、好ましくは12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは8~36時間、好ましくは8~24時間、好ましくは8~12時間の持続時間で、50~200RPM、好ましくは75~150RPMのRPMを用いて行なうことができる。湿式ボールミル粉砕の使用は、微粒子及び凝集体を破壊する高エネルギープロセスであり、微細規模の混合を提供し、か焼の前に均質な粉末混合物を得ることができる。湿式混合又はミル粉砕により、移動度の増大を通じて粉末の分散が改善され、加熱処理又はか焼の前に微細規模の均質な混合がもたらされる。乾式ボールミル粉砕、湿式又は乾式タンブリング、磨砕ミル粉砕、ジェットミル粉砕、高剪断混合、遊星ミル粉砕、及び他の既知の手順の追加の粉末調製手順も、混合媒体あり又はなしのいずれかで適用することができる。粉末スラリーは、回転蒸発法を用いて乾燥させる。粉末混合物を乾燥させた後に、篩い分け及びブレンド化を行なってもよい。前述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで使用され得る。
【0111】
本明細書に開示される方法の工程bは、加熱して粉末混合物の温度をか焼温度に上昇させることによって粉末混合物をか焼し、か焼温度を維持してか焼された粉末混合物を形成することを含む。この工程は、水分及び/又は残留有機物質を除去するように、また粉末混合物の表面条件が焼結前に均一になるように、行なうことができる。実施形態では、か焼を行ない、焼結中の改善された粉末取り扱いのために粉末混合物の表面積を減少させることができる。代替的な実施形態では、か焼により、粉末混合物の表面積の減少がもたらされなくてもよい。か焼は、好ましい実施形態でか焼された粉末混合物がアルミナ及びマグネシアの粉末を含むように、行なうことができる。代替的な実施形態では、か焼は、か焼された粉末混合物が、アルミナ、マグネシア、及び開示される5体積%以下のアルミン酸マグネシウムスピネルの粉末を含むように、行なうことができる。加熱処理工程によるか焼は、酸素含有環境において、600℃~1000℃、好ましくは600℃~900℃、好ましくは600℃~850℃、好ましくは600℃~800℃、好ましくは700℃~1000℃、好ましくは800℃~1000℃、好ましくは800℃~900℃の温度で、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間の持続時間で行なうことができる。
【0112】
か焼後、か焼された粉末混合物は、典型的には、3~9m
2/g、3~8m
2/g、好ましくは3~7m
2/g、好ましくは3~6m
2/g、好ましくは4~9m
2/g、好ましくは5~9m
2/g、好ましくは6~9m
2/g、好ましくは4~7m
2/gの比表面積を有し得る。か焼後、粉末混合物は、公知の方法に従って、篩い分け、タンブリング、ブレンド化、及びそれらの組み合わせが成され得る。表2は、例示的なか焼された粉末混合物の特性を列挙している。アルミン酸マグネシウムスピネルは、広範囲の化学量論を有し、
図1の相図に従って、15重量%マグネシア/85重量%アルミナから32重量%マグネシア/68重量%アルミナまでの組成範囲にわたって固溶体(ss)立方相MAS(焼結助剤を含まない)として形成することができる。
【表2】
【0113】
本明細書に開示される方法の工程cは、焼結装置のツールセットによって画定された容積内にか焼された粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出すことを含む。ある実施形態によるプロセスで使用される焼結装置は、通常、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有する円筒状グラファイトダイであるグラファイトダイと、第1及び第2のパンチとを少なくとも含むツールセットを含む。第1及び第2のパンチは、ダイと動作可能に連結され、第1及び第2のパンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1及び第2のパンチの少なくとも1つがダイの容積内で移動するとき、第1及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを形成する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/124,547号に開示されているように、本明細書に開示されるツールセットは、10μm以上~100μm以下のギャップを有し、ギャップは、ダイの内壁と第1及び第2のパンチの各々の外壁との間に構成される。本明細書に開示されるSPSプロセスでは、好ましくは、非パルスDC電流を使用する。SPS装置及び手順は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されている。第1のパンチがダイの第1の開口部内に移され、か焼された粉末混合物はダイの第2の開口部内に入れられて、第2のパンチがダイの第2の開口部内に移され、それによって焼結装置のツールセットによって画定された容積内にか焼された粉末混合物が入れられる。当業者に知られている真空条件がツールセットによって画定された容積内に確立される。典型的な真空条件としては、10-2~10-3トル及びそれ未満の圧力が挙げられる。主に空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するために、及びか焼された粉末混合物から空気の大部分を除去するために、真空が適用される。本明細書に開示される方法は、規模拡張可能であり、商業的製造方法に適合する、セラミック焼結体及び/又は焼結セラミック構成要素の製造プロセスを提供する。
【0114】
開示される方法は、市販のアルミナ及びマグネシア粉末又は化学合成技術から調製されたものを利用し、焼結助剤もドーパントも必要としないが、それらは必要に応じて使用されてもよい。焼結前の未加工体の冷間プレス、成形又は機械加工は不要である。
【0115】
開示される方法の工程dは、焼結温度に加熱しながら、か焼された粉末混合物に圧力を加えて焼結を行なってセラミック焼結体を形成することを含み、工程eは、例えば、焼結装置への熱源を取り除き、セラミック焼結体を冷却することによって、セラミック焼結体の温度を低下させることを含む。か焼された粉末混合物が焼結装置のツールセットによって画定された容積内に入れられた後、グラファイトパンチ間に入れられた粉末混合物に圧力が加えられる。これにより、圧力を、5MPa~60MPa、5MPa~59MPa、5MPa~50MPa、5MPa~40MPa、5MPa~30MPa、5MPa~20MPa、好ましくは20MPa~40MPaの圧力まで上昇させる。他の実施形態では、か焼された粉末混合物に加えられる圧力は、50MP未満である。圧力は、ダイの中に入れられた材料上に軸方向に加えられる。
【0116】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチとダイによって直接加熱される。ダイは、抵抗加熱/ジュール加熱を促進するグラファイトなどの導電性材料を含み得る。焼結装置及び手順は米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。したがって、示された温度がか焼された粉末混合物中で実際に実現されているように、温度は加工されている粉末の可能な限り近くで測定されることが好ましい。
【0118】
ダイに入れられた粉末混合物に熱を加えることによって、1000~1700℃、好ましくは1100~1700℃、好ましくは1200~1700℃、好ましくは1300~1700℃、好ましくは1400~1700℃、好ましくは1500~1700℃、好ましくは1000~1600℃、好ましくは1000~1500℃、好ましくは1000~1400℃、好ましくは1000~1300℃、好ましくは1400~1700℃、好ましくは1450~1650℃の焼結温度を容易にする。最終焼結は、典型的には、0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは0.5~10分、好ましくは0.5~5分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは100~120分、好ましくは30~60分の等温時間で実現することができる。ある実施形態では、最終焼結は、典型的には、等温時間ゼロで実現することができ、焼結温度に達した後、本明細書に開示される速度の冷却を開始する。プロセスの工程eにおいて、セラミック焼結体は、熱源取り除きによって受動的に冷却される。自然対流は、任意選択のアニールプロセスを容易にし得る温度に達するまで起こり得る。
【0119】
焼結中、典型的には体積の減少が生じ、その結果、セラミック焼結体は、焼結装置のツールセットに入れたときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を有し得る。本明細書に開示される方法では、アルミナ及びマグネシアの市販の出発粉末を利用して、開示されるスピネル焼結体を形成するための焼結工程dの過程で、か焼された粉末混合物のその場(in-situ)反応を通してセラミック焼結体を形成する。
【0120】
一実施形態で、圧力と温度の適用の順序は、本開示に従って変更し得、このことは、最初に示された圧力を加え、その後に所望の温度に達するように熱を加えることが可能であることを意味する。更に、他の実施形態ではまた、最初に所望の温度に達するように示された加熱を行ない、その後に、示された圧力を加えることが可能である。本開示による第3の実施形態では、焼結する粉末予備混合物に温度と圧力を同時に加えて、示された値に達するまで上昇させてもよい。
【0121】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内の粉末予備混合物を間接的に加熱するために使用することができる。
【0122】
他の焼結技術とは対照的に、焼結前の試料の調製、すなわち、焼結前の未加工体の冷間プレス又は成形による試料の調製は必須ではなく、か焼された粉末混合物を、開示されるツールセットによって画定された容積内に直接充填する。未加工体の形成及び機械加工を伴わない粉末混合物の直接圧密により、最終的なセラミック焼結体においてより高い純度を得ることができる。
【0123】
本発明の一実施形態では、プロセス工程dは、特定の予備焼結時間に達するまで、0.1℃/分~100℃/分、好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは2~25℃/分の特定の加熱勾配での予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0124】
本発明の更なる実施形態では、プロセス工程dは、特定の予備焼結時間に達するまで、0.50MPa/分~30MPa/分、好ましくは0.75MPa/分~20MPa/分、より好ましくは1MPa/分~10MPa/分の特定の加圧勾配での予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0125】
別の実施形態では、プロセス工程dは、上述の特定の加熱勾配と上述の特定の加圧勾配とを用いる予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0126】
プロセス工程dの終わりに、ある実施形態では、方法は、工程e、当業者に知られているように真空条件下でプロセスチャンバの自然冷却(非強制的冷却)によってセラミック焼結体を冷却することを更に含んでもよい。プロセス工程eによる更なる実施形態では、セラミック焼結体を、不活性ガス、例えば、1バールのアルゴン又は窒素の対流下で冷却してもよい。1バール超又は1バール未満の他のガス圧力も使用することができる。更なる実施形態では、セラミック焼結体は、酸素環境中、強制対流条件下で冷却される。冷却工程を開始するために、焼結工程dの終わりに、焼結装置に加えられた電力を除き、セラミック焼結体に加えられた圧力を除き、その後に、工程eに従って冷却を行なう。
【0127】
本明細書に開示される方法の工程fは、任意選択で、加熱してセラミック焼結体の温度を、アニールを行なうアニール温度に達するように上昇させることによってセラミック焼結体をアニールすることを含み、工程gは、アニールしたセラミック焼結体の温度を下げることを含む。任意選択の工程fにおいて、工程d又はhのそれぞれで得られたセラミック焼結体又は構成要素をアニール手順に供することができる。他の例では、セラミック焼結体又は構成要素にアニールを行なわなくてもよい。他の状況下では、アニールは焼結装置の外部の炉内で、又は装置から取り出すことなく、焼結装置自体の中で行なわれてもよい。
【0128】
本開示によるアニールの目的ために、プロセス工程eによる冷却後にセラミック焼結体を焼結装置から取り出して、アニールのプロセス工程を、炉などの別個の装置内で行なってもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、本開示によるアニールの目的のために、工程dにおけるセラミック焼結体を、焼結工程dと任意選択のアニール工程との間に焼結装置から取り出す必要なしに、焼結装置内で続けてアニールしてもよい。
【0130】
このアニールによって、焼結体の化学的及び物理的特性を改良することができる。アニールの工程は、ガラス、セラミック、及び金属のアニールに使用される従来の方法によって行なうことができ、改良の程度は、アニール温度及びアニールを継続させる持続時間の選択によって選択することができる。
【0131】
ある実施形態では、セラミック焼結体をアニールする任意選択の工程fは、0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは3℃/分~10℃/分、及び好ましくは3℃/分~7℃/分の加熱速度で実施される。
【0132】
通常、セラミック焼結体をアニールする任意選択の工程fは、約900~約1700℃、好ましくは約1100~約1650℃、より好ましくは約1300~約1600℃、及びより好ましくは約1400~約1600℃の温度で実施される。
【0133】
任意選択のアニール工程fは、結晶構造内の酸素空孔を修正して化学量論比に戻すことを意図している。任意選択のアニール工程は、アニール温度で、1~24時間、好ましくは1~18時間、好ましくは1~16時間、好ましくは1~8時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~24時間、好ましくは12~24時間、好ましくは4~12時間、好ましくは6~10時間の持続時間にわたって実施することができる。
【0134】
ある実施形態では、セラミック焼結体をアニールする任意選択の工程fは、0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは3℃/分~10℃/分、及び好ましくは3℃/分~7℃/分の冷却速度で実施される。
【0135】
セラミック焼結体をアニールする任意選択のプロセス工程fは酸化雰囲気中で行なわれ、それによってアニールプロセスにより、アルベドを上昇させ、応力を低下させて、機械的な取り扱いを改善することができる。任意選択のアニール工程は空気中で行なわれてもよい。
【0136】
セラミック焼結体をアニールする任意選択のプロセス工程fを行なった後、焼結された、またいくつかの場合ではアニールしたセラミック焼結体の温度を、プロセス工程gに従って環境温度まで低下させ、焼結された、また任意選択でアニールされたセラミック体を、アニール工程が焼結装置の外部で行なわれる場合は炉から取り出すか、又はアニール工程fが焼結装置内で行なわれる場合はツールセットから取り出す。
【0137】
本明細書に開示される方法の工程hは、任意選択で、セラミック焼結体を機械加工して、セラミック焼結体構成要素又は形状を形成する工程であり、組成MgAl2O4の本明細書に開示されるアルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体から耐食性及び他のタイプの構成要素を機械加工するための公知の方法に従って実施することができる。セラミック焼結構成要素のための耐食性構成要素、構造構成要素及び他の用途は、とりわけ、立方体、円板、板、リング、シリンダ、湾曲板、管、ドーム、窓、リング、ノズル、チャック、シャワーヘッド、注入器の形状に形成されてもよい。
【0138】
セラミック焼結体/構成要素は、大きなスピネル焼結体サイズの製造を可能にするのに十分な機械的特性を有する。本明細書に開示される構成要素は、各々焼結体の最大寸法に関して、100mm~600mm、好ましくは200mm~600mm、好ましくは300~600mm、好ましくは350~600mm、好ましくは400~600mm、より好ましくは450~600mm、より好ましくは500~600mm、より好ましくは550~600mmのサイズを有し得る。
【0139】
本明細書に開示される方法により、より高い密度、高純度、改善された機械的強度が得られ、それによって、特に、例えば最大フィーチャサイズにわたって100mmを超える寸法のセラミック体のための耐食性セラミック焼結構成要素の取扱い性、及び耐食性セラミック焼結構成要素の格子中の酸素空孔の低減がもたらされる。開示されるセラミック焼結体の高密度及び短い焼結時間により、ASTM C1161-13に従って測定した、120~160MPa、好ましくは140~150MPa、約150MPaの4点曲げ強度を得ることができる。
【0140】
別の実施形態では、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl2O4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体であって、焼結助剤を含まない、セラミック焼結体が本明細書で提供され、セラミック焼結体は、酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、粉末混合物は99.995%超の総純度を有し、粉末混合物は焼結助剤を含まない、作製する工程と、加熱して粉末混合物の温度を600℃~1000℃の温度に上昇させることによって粉末混合物をか焼し、か焼温度を4~12時間維持してか焼された粉末混合物を形成する工程と、焼結装置のツールセットによって画定された容積内にか焼された粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出す工程と、1000~1700℃の焼結温度に加熱しながら、か焼された粉末混合物に5~60MPaの圧力を加えて焼結を行なってセラミック焼結体を形成する工程と、セラミック焼結体の温度を低下させる工程であって、セラミック焼結体は、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl2O4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含む、低下させる工程と、を含む、方法によって調製される。
【0141】
図1は、アルミン酸マグネシウムスピネル相MgAl
2O
4、並びにこの相を生成するのに必要なモル組成/重量パーセント及び温度の条件を示す、酸化アルミニウム/酸化マグネシウム相図を示す。化学量論的スピネル相は、50モル%のアルミナ及びマグネシアに相当する71.7重量%のアルミナ及び28.3重量%のマグネシアでバッチ処理された。しかし、アルミン酸マグネシウムスピネル相は、非常に広い範囲の化学量論を示し、1400~1700℃の焼結温度の間で固溶体として熱力学的に安定であり、したがって、約48~60モル%のアルミナ及び約52~40モル%のマグネシアの広い組成範囲にわたって安定なままであり得る。したがって、スピネル相は、約48~60モル%の酸化アルミニウム及びこれに対応して約52~40モル%の酸化マグネシウムの量でバッチ処理された出発材料から形成され得る。
【0142】
図2は、850℃で4時間か焼された、本明細書に開示される例示的なか焼された粉末混合物からのX線回折結果を示す。
図2に示されるスピネル相は、参照のためにのみ添加されたものであり、XRDによる検出可能な範囲内ではなかった。したがって、
図2のか焼された粉末混合物は、アルミナ及びマグネシアを含む。一実施形態では、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの相が、
図2に示すように、か焼された粉末混合物中に存在し得る。代替的な実施形態では、か焼された粉末混合物は、マグネシア、アルミナ及び約5体積%のスピネル、MgAl
2O
4を含むことができる。温度及び時間のか焼条件は、マグネシア及びアルミナの相、又は立方晶スピネル、マグネシア及びアルミナの組み合わせを生成するために変更することができる。X線回折は、5体積%の検出限界を有するPAN分析(Philips)XRD Aerisモデルを使用して行なった。
【0143】
図3は、本開示の一実施形態による、本明細書に開示されるスピネルを含むセラミック焼結体からのX線回折結果を示す。XRD結果により、完全に相純粋な立方晶アルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体が確認される。X線回折法を使用すると、相純度は5%以内まで測定することができ、したがって、一実施形態によるセラミック焼結体は、90%以下、好ましくは95%以下のスピネル、好ましくは99%以下のスピネル、MgAl
2O
4、より好ましくは90~95%超の立方晶結晶構造を有するスピネル、MgAl
2O
4を含み得る。
【0144】
図4a及び
図4bは、本明細書に開示される立方晶スピネル結晶相を含む、それぞれ1000倍及び5000倍での例示的なセラミック焼結体の研磨された表面のSEM顕微鏡写真を示す。SEM画像は、焼結体のバルクに研磨することによって撮影されたものであり、したがって、示された特徴は、開示されるセラミック焼結体のバルク又は体積を代表するものとみなすことができる。画像は、約5umの平均結晶粒径、並びにそれぞれ6.7及び3.6の最大/最小結晶粒径を有する、高密度の相純粋微細構造を示す。表3は、本明細書に開示される方法に従って調製されたいくつかのMAS試料についての結晶粒径情報を示す。
【表3】
【0145】
Nano Science Instruments製のSEM、Model PhenomXLを全ての測定に使用した。ImageJなどの画像処理ソフトウェアと組み合わせたSEM法/画像を使用して、SEM画像を相純度について解析した。ImageJは、米国国立衛生研究所(NIH)で開発されており、科学的多次元画像の画像処理のためのJavaベースでパブリックドメインの画像処理及び解析プログラムである。これらの方法の組み合わせにより、当該技術分野において現在利用可能な最も高精度であり得る相純度の決定が得られ、したがって、相純度は、面積測定に基づいて約0.01%まで測定され得る。開示される出発材料からこれらの極めて低いレベルで形成され得る相の特性及び/又は性能への寄与は、無視し得ると考えることができる。したがって、
図4a及び
図4bに示す実施形態によるセラミック焼結体は、立方晶結晶構造を有するスピネル、MgAl
2O
4を、90~100体積%、好ましくは95~100体積%、好ましくは98~100体積%、好ましくは99~100体積%、好ましくは90~99.99体積%、好ましくは90~99.95体積%、好ましくは90~99.9体積%、好ましくは90~99.5体積%、好ましくは90~99.2体積%、好ましくは95~99.99体積%の量で含むことができる。
図1の相図によれば、開示される出発材料の反応では、開示されるスピネル相以外の他の結晶相を生じない場合があり、したがって、セラミック焼結体は、実施形態では、スピネル、MgAl
2O
4、並びに未反応アルミナ及び/又は未反応マグネシアを含み得る。
【0146】
試料FのMAS焼結体について、Linseis膨張計1600Cモデル番号L75VD1600Cを使用して、50~1500℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って熱膨張係数(CTE)を測定した。CTEを測定したところ、測定された温度範囲にわたって9.6665×10-6/℃であった。
【0147】
本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態は、任意の特定のセラミック焼結体で組み合わせることができる。したがって、本明細書に開示される特徴のうちの2つ以上を組み合わせて、例えば実施形態に概説されるように、セラミック焼結体をより詳細に記載することができる。
【0148】
本発明者らは、上記のセラミック焼結体及び関連する焼結体構成要素が、改善された取り扱い能力を有し、耐薬品性、耐侵食性、高い熱伝導率、高い機械的強度、優れた硬度などを必要とする様々な用途のための大きな寸法の構成要素の調製のための材料として容易に使用することができると判定した。
【0149】
更に、スピネル焼結体を費用効果的に作製することが困難であるために、開示されるアルミン酸マグネシウムスピネルから形成された100mm~600mmの大きな寸法の固体の相純粋部品を製造することは困難であった。
【0150】
これとは対照的に、本技術は、とりわけ相純度、硬度、密度及び取扱い性に焦点を当てたプラズマエッチングチャンバへの用途、製鋼などの構造及び熱/耐火用途、高エネルギーレーザのための、有用である可能性のある耐食性及び化学的不活性構成要素を特定するための新しい考えを提供する。
【0151】
図5に示すように、本明細書に開示される技術の実施形態は、加工システムとも呼ばれる半導体加工システム9500を含むことができる。加工システム9500は、遠隔プラズマ領域を含み得る。遠隔プラズマ領域は、遠隔プラズマ源(「RPS」)とも呼ばれるプラズマ源9502を含むことができる。
【0152】
容量結合プラズマ加工装置を表すことができる加工システム9500は、耐食性チャンバライナ(図示せず)を有する真空チャンバ9550と、真空源と、半導体基板とも呼ばれるウェハ50を支持するチャック9508と、を含む。カバーリング9514及び上部シールドリング9512は、ウェハ50及びパック9509を取り囲む。窓9507は、真空チャンバ9550の上壁を形成する。窓9507、ガス分配システム9506、カバーリング9514、上部シールドリング9512、チャンバライナ(図示せず)、及びパック9509は、本明細書に開示されるセラミック焼結体から完全に又は部分的に作製され得る。
【0153】
遠隔プラズマ源9502は、加工されるウェハ50を収容するチャンバ9550の窓9507の外側に設けられる。遠隔プラズマ領域は、ガス供給システム9506を介して真空チャンバ9550と流体連通し得る。チャンバ9550内では、加工ガスをチャンバ9550に供給し、高周波数出力をプラズマ源9502に供給することによって、容量結合プラズマを生成することができる。こうして生成された容量結合プラズマを用いることによって、ウェハ50に対して所定のプラズマ加工が行なわれる。容量結合加工システム9500の高周波数アンテナには、所定のパターンを有する平面アンテナが広く用いられている。
【0154】
図6に示すように、本明細書で開示される技術の別の実施形態は、加工システムとも呼ばれる半導体加工システム9600を含むことができる。誘導結合プラズマ加工装置を表すことができる加工システム9600は、真空チャンバ9650と、真空源と、半導体基板とも呼ばれるウェハ50を支持するチャック9608と、を含む。シャワーヘッド9700は、真空チャンバ9650の上壁を形成するか、又は上壁の下に取り付けられる。セラミックシャワーヘッド9700は、プロセスガスを真空チャンバ9650の内部に供給するための複数のシャワーヘッドガス出口と流体連通する、ガスプレナムを含む。シャワーヘッド9700は、ガス供給システム9606と流体連通している。更に、シャワーヘッド9700は、中央ガス注入器(ノズルとも呼ばれる)9714を受け入れるように構成された中央開口部を含むことができる。RFエネルギー源は、プロセスガスにエネルギーを与えプラズマ状態にし、半導体基板を加工する。中央ガス注入器9714によって供給されるプロセスガスの流量と、セラミックシャワーヘッドによって供給されるプロセスガスの流量とは、独立して制御され得る。シャワーヘッド9700、ガス供給システム9606、及び中央ガス注入器9714は、本明細書に開示されるセラミック焼結体から作製され得る。
【0155】
システム9600は、ウェハ50を保持するように設計された静電チャック9608を更に含むことができる。チャック9608は、ウェハ50を支持するため、パック9609を含むことができる。パック9609は、誘電材料から形成することができ、パック9609上に配置されたときにウェハ50を静電的に保持するために、パック9609の支持面に近接してパック内に入れたチャッキング電極を有することができる。チャック9608は、パック9609を支持するために延びるリング状を有するベース9611と、ベースとパックとの間に配置され、パック9609とベース9610との間にギャップが形成されるようにベースの上方でパックを支持するシャフト9610と、を含むことができ、シャフト9610は、パック9609の周縁部に近接してパックを支持する。チャック9608及びパック9609は、本明細書に開示されるセラミック焼結体から作製され得る。
【0156】
シャワーヘッド9700の表面の一部は、シールドリング9712で覆われてもよい。シャワーヘッド9700の表面の一部、特にシャワーヘッド9700の表面の半径方向側面は、上部シールドリング9710で覆われてもよい。シールドリング9712及び上部シールドリング9710は、本明細書に開示されるセラミック焼結体から作製され得る。
【0157】
パック9609の支持面の一部は、カバーリング9614で覆われてもよい。パック9609の表面の更なる一部は、上部シールドリング9612及び/又はシールドリング9613で覆われてもよい。シールドリング9613、カバーリング9614、及び上部シールドリング9612は、本明細書に開示されるセラミック焼結体から作製され得る。
【0158】
アルミン酸マグネシウムスピネルを含む上述のセラミック焼結体は、焼結体の最大寸法に関して100mm~600mmの寸法の大きな耐食性及び耐侵食性構成要素の製造に適し得る。本明細書に記載される大きな構成要素寸法は、本明細書に開示される様々な用途のために構成要素又は部品が製造され得るセラミック焼結体の密度及び硬度の増大によって可能になり得る。
【0159】
また、ハロゲン系プラズマ条件にさらされたときに他の材料よりも改善されたプラズマ耐食性及び耐侵食性をもたらすことができる立方晶結晶構造を有するスピネルを含むセラミック焼結体の、半導体加工チャンバにおける使用が、本明細書に開示される。
【実施例】
【0160】
以下の実施例の全てに関して、粒径は、10nm~5mmの粒径を測定可能なHoribaモデルLA-960 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzerを使用して測定し、表面積は、Horiba BET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を使用して当該技術分野において既知のBET法に基づいて測定し、純度は、Agilent 7900 ICP-MSモデルG8403からのICP-MSを使用して測定し、密度測定は、当該技術分野において既知のアルキメデス水浸漬技術を使用して実施した。
【0161】
以下の実施例の全てに関して、マグネシア及びアルミナの出発粉末、それらから形成されるか焼された粉末混合物、並びにか焼された粉末混合物から形成された焼結セラミック体は、焼結助剤を含まず、本明細書に開示される元素状リチウム及びリチウム化合物を含まない。
【0162】
以下の実施例の全てに関して、SPS焼結装置を使用し、SPS焼結装置は、少なくとも、通常、ある容積、内壁、並びに第1及び第2の開口部を有する円筒形グラファイトダイであるグラファイトダイを含み、更に第1及び第2のパンチを含むツールセットを含んでいた。第1及び第2のパンチは、ダイと動作可能に連結され、第1及び第2のパンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1及び第2のパンチの少なくとも1つがダイの容積内で移動するとき、第1及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを形成した。ギャップの距離は、10μm以上~100μm以下であり、ギャップは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/124,547号に開示されるように、ダイの内壁と第1及び第2のパンチの各々の外壁との間に構成される。第1パンチをダイの第1開口部内に移し、か焼された粉末混合物をダイの第2の開口部内に入れて、第2のパンチをダイの第2の開口部内に移し、それによって焼結装置のツールセットによって画定された容積内にか焼された粉末混合物を入れた。本明細書に開示されるSPSプロセスでは、好ましくは、非パルスDC電流を使用する。当業者に公知の真空条件を、ツールセットによって画定された容積内に確立した。典型的な真空条件としては、10-2~10-3トル及びそれ未満の圧力が挙げられる。主に空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するために、またか焼された粉末混合物から空気の大部分を除去するために、真空を適用した。
【0163】
実施例1(上記の試料A)
6ppmの総不純物に相当する99.9994%の総純度、4~6m
2/gの表面積、及び3~4umの平均又はd50粒径を有するマグネシアの粉末を、5ppmの総不純物に相当する99.9995%の総純度、6~8m
2/gの表面積、及び2.5~4.5umの平均又はd50粒径を有するアルミナの粉末と組み合わせた。焼結後に立方晶結晶構造を有するスピネルMgAl
2O
4を形成するために、粉末を相対量で秤量して、マグネシア粉末28.5重量%及びアルミナ粉末71.5重量%の量で粉末混合物を作製した。粉末を、高純度(99.99%)アルミナ媒体及びエタノールとそれぞれ等しい重量で混合して、スラリーを形成した。ボールミル粉砕を150rpmで12時間の持続時間にわたって行ない、ロータリーエバポレーターを用いてスラリーを乾燥させた。粉末混合物を、酸素含有環境中、850℃で4時間、か焼した。か焼された粉末混合物は、任意選択で、か焼後に、当該分野で公知の方法を使用して篩い分けされ得る。X線回折測定の検出限界内で、か焼された粉末混合物は、
図2に示すように、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの存在を示した。か焼された粉末混合物の特性を表2に列挙する。次いで、か焼された粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、1450℃の温度、20MPaの圧力で30分間、真空下で焼結して、100mmの最大寸法を有する焼結セラミック体を形成した。アルキメデス水浸漬法を使用した密度を測定したところ、3.47g/cc又は理論密度の97%であった。
図3は、立方晶結晶構造を有するスピネルを含むセラミック焼結体の形成が確認される、X線回折結果を示す。結晶粒径測定を、ASTM E112-2010に従って行ない、それぞれ4.1um、4.9um及び3.2umの、平均、最大及び最小結晶粒径が、5000倍SEM画像から取った研磨表面にわたって測定された。
【0164】
得られた焼結体は、7ppmの不純物、及び99.9993%の純度を有していた。
【0165】
実施例2(上記の試料B)
出発粉末、ミル粉砕プロセス及びか焼は、実施例1に開示したように行なった。次いで、か焼された粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、1500℃の温度、20MPaの圧力で30分間、真空下で焼結して、100mmの最大寸法を有する焼結セラミック体を形成した。アルキメデス水浸漬法を使用してセラミック焼結体の密度を測定したところ、3.55g/cc又は理論密度の99.2%であった。ASTM C1327に従って、0.025kgfの適用荷重を使用して、焼結セラミック体に対して硬度測定を行なった。8回の測定にわたって、15.06GPaの平均硬度が0.75の標準偏差で測定された。結晶粒径測定を、ASTM E112-2010に従って行ない、それぞれ8.1um、10.7um及び6.7umの、平均、最大及び最小粒径が、5000倍SEM画像から取った研磨表面にわたって測定された。
【0166】
エッチング加工前のMAS焼結体の研磨面について表面粗さ測定を行ない、17nm、12.7um、及び4474×10-5の、Sa、Sz、及びSdr値が測定された。
【0167】
ドライエッチングプロセスを、Plasma-Therm Versaline DESC PDC Deep Silicon Etch装置を使用して、2工程プロセスを使用して合計6時間の持続時間で行なった。エッチング方法は、10ミリトルの圧力、600ボルトのバイアス、及び2000ワットのICP出力を用いて行なった。エッチング方法は、90標準立方センチメートル/分(sccm)のCF4流量、30標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量、及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を用いる第1のエッチング工程と、100標準立方センチメートル/分(sccm)の酸素流量及び20標準立方センチメートル/分(sccm)のアルゴン流量を用いる第2のエッチング工程とを用いて行ない、第1及び第2のエッチング工程は、6時間の合計持続時間にわたって各々300秒間繰り返す。エッチングプロセス後、19nm、13um、及び4068×10-5の、Sa、Sz、及びSdr値が測定された。Saは、エッチング後に初期測定値から14%増加した。
【0168】
その後、1500℃まで5℃/分の加熱及び冷却速度を使用して、等温期間なしでアニールを行なった。アルキメデス水浸漬法を用いた、アニールされた焼結セラミック体(試料B-1に対応する)での密度を測定したところ、3.55g/cc又は理論密度の99.2%であった。
【0169】
実施例3(上記の試料G)
出発粉末、ミル粉砕プロセス及びか焼は、実施例1に開示したように行なった。次いで、か焼された粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、1550℃の温度、20MPaの圧力で30分間、真空下で焼結して、100mmの最大寸法を有する焼結セラミック体を形成した。アルキメデス水浸漬法を使用してセラミック焼結体での密度を測定したところ、3.54g/cc又は理論密度の98.9%であった。
【0170】
実施例4(上記の試料C)
出発粉末、ミル粉砕プロセス及びか焼は、実施例1に開示したように行なった。次いで、か焼された粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、1600℃の温度、30MPaの圧力で30分間、真空下で焼結して、100mmの最大寸法を有する焼結セラミック体を形成した。アルキメデス水浸漬法を使用してセラミック焼結体での密度を測定したところ、3.57g/cc又は理論密度の99.7%であった。結晶粒径測定を、ASTM E112-2010に従って行ない、それぞれ34um、54um及び32umの、平均、最大及び最小結晶粒径が、5000倍SEM画像から取った研磨表面にわたって測定された。
【0171】
実施例2に従って開示されるように、エッチング加工前のMAS焼結体の研磨面について表面粗さ測定を行ない、17nm、8.25um、及び292×10-5の、Sa、Sz、及びSdr値が測定された。エッチングプロセス後、22nm、5.7um、及び268×10-5の、Sa、Sz、及びSdr値が測定された。Saは、エッチング後に初期測定値から20%増加した。
【0172】
実施例5(上記の試料F)
アルミン酸マグネシウムスピネルを含むセラミック焼結体を、以下に開示されるように製造した。焼結後にスピネル、MgAl2O4を形成するために、マグネシア及びアルミナの高純度の市販の粉末を組み合わせて、28.5重量%のマグネシア粉末及び71.5重量%のアルミナ粉末を含む粉末混合物を形成した。
【0173】
マグネシア粉末を、ICPMS法を用いて測定したところ、純度100%に対して99.9992%の純度を有しており、これは不純物含有量8ppmに相当した。マグネシア粉末は、4.5~6.5m2/gのBET比表面積(SSA)及び1~3umのd50粒径を有していた。
【0174】
アルミナ粉末を、ICPMS法を用いて測定したところ、純度100%に対して99.9997%の純度を有しており、これは不純物含有量3ppmに相当した。アルミナ粉末は、6~8m2/gのBET比表面積及び0.1~0.3umのd50粒径を有していた。
【0175】
焼結後にスピネル、MgAl2O4を形成するために、28.5重量%のマグネシア粉末及び71.5重量%のアルミナ粉末を組み合わせて粉末混合物を形成した。出発粉末は、LiFも本明細書に開示される任意の他の焼結助剤も、含まなかった、又は実質的に含まなかった。粉末を、各々粉末重量の100%の量で高純度(99.99%)アルミナ媒体(>99.99%)及びエタノールと組み合わせて、スラリーを形成した。
【0176】
当業者に公知のタンブル(又は垂直/回転混合)を、約20RPMで15時間の持続時間にわたって実施し、その後、エタノールを、既知の方法による回転蒸発を用いて粉末混合物から抜き取った。空気中、800℃で6時間か焼後、か焼された粉末混合物について測定したところ、5.5~7m2/gのBET比表面積、及び8.5~9umのd50粒径を有していた。粉末、粉末混合物及び/又はか焼された粉末混合物は、例えば45~400umの開口サイズを使用して篩い分けされ得、当業者に公知の方法に従って様々なプロセス工程でか焼され、ブレンド化され、及び/又はミル粉砕され得る。純度を、本明細書に開示されるICPMS法を使用して測定し、全構成成分から計算される酸化物の総質量に対して約3ppmのか焼された粉末混合物の総不純物含有量が測定され、これは100%純度に対して約99.9997%の純度に相当した。本明細書に開示されるICPMS法を使用してSiを測定する検出限界は約14ppmであり、したがって、マグネシア及びアルミナの出発粉末、並びにか焼された粉末混合物及びセラミック焼結体は、シリカの形態のSiを約14ppm以下の量で含む可能性はあるが、シリカは多くの場合検出されなかった。か焼された粉末混合物は、LiFも任意の他の焼結助剤及びドーパントも含まなかった、又は実質的に含まなかった。か焼された粉末混合物のX線回折は、未反応の酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの結晶性粉末の存在を示し、他の結晶相は識別されなかった。
【0177】
か焼された粉末混合物を、本明細書に開示される焼結装置のツールセットによって画定される容積内に入れ、10-2~10-3トルの真空条件を容積内に作り出した。5MPaの圧力を加え、容積内のか焼された粉末混合物を周囲温度から約10℃/分で800℃まで加熱し、その後、圧力を約0.4~約0.6MPa/分の速度で上昇させ、昇温を前述のように継続して1650℃、15MPaで60分間の焼結条件に到達させて、最大寸法150mmを有するディスク形状のアルミン酸マグネシウムスピネルを含む多結晶セラミック焼結体を形成した。X線回折(XRD)により、立方晶MAS(アルミン酸マグネシウムスピネル)を100体積%含む焼結体が確認された。他の結晶相はXRDによって識別されなかった。
【0178】
純度を、本明細書に開示されるICPMS法を使用してMAS焼結体について測定し、全構成成分から計算される焼結体の総質量に対して4ppm未満の立方晶MAS焼結体の総不純物含有量が測定され、これは100%純度に対して約99.9996%の純度に相当した。
【0179】
アルミン酸マグネシウムスピネルの理論密度は3.58g/ccであると報告されている。ASTM B962-17に従いアルキメデス法を使用して、5回の繰り返しにわたる3.57g/ccの平均密度が測定され、これは、この実施例による理論密度のパーセントの99.7%に相当する。密度変動を測定し、立方晶MASの理論密度に対して3%未満だけ最大寸法にわたって変動することが分かった。
図4は、約5umの平均結晶粒径を有する相純粋スピネルを含む、この実施例によるセラミック焼結体を示す。
【0180】
結晶粒径測定を、ASTM E112-2010に従って行ない、それぞれ5.0um、6.7um及び3.6umの、平均、最大及び最小結晶粒径を、5000倍SEM画像から取った研磨表面にわたって測定した。
【0181】
弾性率を、ASTM C1259-15に従って測定し、273GPaの弾性率が測定された。
【0182】
0.2kgfの適用荷重を用いてASTM C1327に従って硬度測定を行ない、14.5GPaの平均硬度が測定され、最大値及び最小値は15.2GPa及び14.0GPaであった。
【0183】
本実施例のMAS焼結体について、Linseis膨張計1600Cモデル番号L75VD1600Cを使用して、50~1500℃の温度範囲にわたってASTM E228-17に従って熱膨張係数(CTE)を測定した。CTEを測定したところ、測定された温度範囲にわたって9.6665×10-6/℃であった。
【0184】
表4は、上記実施例の結果及び条件、並びに本明細書に開示されるMASセラミック焼結体の追加の実施形態を要約している。
【表4】
【0185】
表5は、上記で開示された実施例2及び4によるエッチング試験の結果を列挙している。
【表5】
【0186】
多くの実施形態を本明細書に開示されるとおり記載した。しかしながら、本明細書に開示された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行なうことができることは理解される。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック焼結体の作製方法であって、
a.酸化マグネシウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを組み合わせて粉末混合物を作製する工程であって、前記粉末混合物は、99.995%超の総純度を有し、前記粉末混合物は、焼結助剤を含まない、作製する工程と、
b.加熱して前記粉末混合物の温度を600℃~1000℃の温度に上昇させることによって前記粉末混合物をか焼し、か焼温度を4~12時間維持してか焼された粉末混合物を形成する工程と、
c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内に前記か焼された粉末混合物を入れて、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
d.1000℃~1700℃の焼結温度に加熱しながら、前記か焼された粉末混合物に5~60MPaの圧力を加えて焼結を行なって前記セラミック焼結体を形成する工程と、
e.前記セラミック焼結体の温度を低下させる工程であって、前記セラミック焼結体は、90~100体積%の立方晶結晶構造及び3.47~3.58g/ccの密度を有する組成MgAl
2O
4のアルミン酸マグネシウムスピネルを含む、低下させる工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記焼結助剤が、元素状リチウム及びリチウム化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ツールセットが、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有するグラファイトダイと、前記ダイと動作可能に連結された第1及び第2のパンチとを含み、前記第1及び第2のパンチの各々が、前記ダイの前記内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、前記第1及び第2のパンチの少なくとも1つが前記ダイの前記容積内で移動するとき、前記第1及び第2のパンチの各々と前記ダイの前記内壁との間にギャップを形成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ギャップが、前記ダイの前記内壁と前記第1及び第2のパンチの各々の前記外壁との間の10~100μmの距離である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結温度が、1000~1500℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼結温度に加熱しながら、5~59MPaの圧力を前記か焼された粉末混合物に加える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼結温度に加熱しながら、50MPa未満の圧力を前記か焼された粉末混合物に加える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
焼結セラミック体が、100mm~622mmの最大寸法を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
焼結セラミック体が、200mm~622mmの最大寸法を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック焼結体が、前記最大寸法にわたって測定して0.2~5%未満の密度分散を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記か焼された粉末混合物が、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
f.加熱して前記セラミック焼結体の温度を、アニールを行なうアニール温度に達するまで上昇させることによって前記セラミック焼結体をアニールする工程と、
g.前記アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、
を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
h.前記セラミック焼結体を機械加工して、立方体、円板、板、リング、シリンダ、湾曲板、管、ドーム、窓、リング、ノズル、チャック、シャワーヘッド、注入器の形状のセラミック焼結体構成要素を作製する工程、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって作製された、半導体製造チャンバ構成要素を製造するためのセラミック焼結体。
【国際調査報告】