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特表2023-532023自然免疫モジュレーターの投与による免疫応答を加速/増強するための免疫プライミング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】自然免疫モジュレーターの投与による免疫応答を加速/増強するための免疫プライミング
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/739 20060101AFI20230719BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20230719BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230719BHJP
   A61K 36/02 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 33/14 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K31/739
A23K10/16
A61K35/74 G
A61K36/02
A61P37/02
A61P33/14
A61P1/00
A61P37/04
A61P33/02 173
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580155
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 US2021039180
(87)【国際公開番号】W WO2021263162
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/044,841
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/358,878
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522444645
【氏名又は名称】ジボ バイオサイエンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】エイミー イー.ステフェック
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー エー.ダール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ピー.ファンド
【テーマコード(参考)】
2B150
4C086
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA20
2B150AB10
2B150AC01
2B150DC14
2B150DD12
2B150DD47
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4C086ZC61
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4C087CA15
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZB07
4C087ZB37
4C087ZC61
4C087ZC64
4C088AA12
4C088BA15
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA66
4C088ZB07
4C088ZB37
4C088ZC61
4C088ZC64
(57)【要約】
動物及びヒトの両方における自然免疫経路及び適応免疫経路の両方の状態を変化させるための方法及び化合物が開示される。状態変化は免疫応答のプライミングをもたらし、こうして、動物又はヒトが広範囲の疾患状態につながる病原体にチャレンジされたときに、加速されたより強固な応答が生成される。開示された方法は、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)由来の化合物を利用する。化合物自体は、環境への悪影響が観察されていない天然物である。開示された本発明概念に従って免疫経路をプライミングすることによって、様々な疾患状態の重症度を軽減することができ、より迅速に解決することができ、又は完全に回避することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、ライフステージの初期の動物における免疫代謝を変更する方法:
細菌由来のリポ多糖治療化合物を生成すること;及び
有効量の前記治療化合物を動物に投与して、疾患に対する動物の自然免疫及び適応免疫経路をプライミングすること。
【請求項2】
有効量の前記治療化合物が、動物の生後1日目から投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療化合物がバリオボラクス・パラドクサス由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細菌由来のリポ多糖治療化合物がバリオボラックス・パラドクスス由来の藻類組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む有効量の組成物を動物に給餌することを含む、疾患の予防のために動物の免疫応答をプライミングする方法であって、
動物の生後1日目に開始する、有効量の組成物を動物に給餌する工程と;
1日目の後に組成物を動物に給餌し、動物の生涯を通じて毎日の組成物給餌計画を維持する工程とを含み、
ここで、感染又は病変の存在について動物を監視する工程をさらに含む、方法。
【請求項6】
監視する工程は、コクシジウム感染又は盲腸病変について動物を監視することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、動物に給餌する前に、飼料配給部分(feed ration portion)と混合される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、動物に最終飼料1トンあたり約0.5ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約11.0ポンドの組成物を提供する量で給餌される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、動物に最終飼料1トンあたり約1.0ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約5.0ポンドの組成物を提供する量で給餌される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、動物に最終飼料1トンあたり約3.0ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約4.0ポンドの組成物を提供する量で給餌される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、ウシ、ブタ、トリ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、及びヤギ種に給餌するために処方される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記グラム陰性細菌がバリオボラクス群のメンバーである、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記バリオボラクス群のメンバーがバリオボラクス・パラドクサスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
グラム陰性細菌組成物由来のリポ多糖を含む組成物が、家禽におけるコクシジウム症の予防及び治療用である、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖の形態の非抗生物質組成物を含む飼料を、動物がコクシジウム症に感染するリスクを最小にするのに有効な量で投与することを含む、コクシジウム症に対して動物の免疫系をプライミングする方法であって、前記組成物が、動物に最終飼料1トンあたり約0.5ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約11.0ポンドの組成物を提供する量で給餌される、方法。
【請求項16】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、動物に最終飼料1トンあたり約1.0ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約5.0ポンドの組成物を提供する量で給餌される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、動物に最終飼料1トンあたり約3.0ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約4.0ポンドの組成物を提供する量で給餌される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む前記組成物が、ウシ、ブタ、トリ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、及びヤギの種に給餌するために処方される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記グラム陰性細菌がバリオボラクス群のメンバーである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記バリオボラクス群のメンバーがバリオボラクス・パラドクサスである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
動物におけるコクシジウム症の治療のための組成物であって、上清、共生細菌、細菌バイオマス、及び細菌発酵物のうちの1つ又はそれ以上からなる群から選択されるバイオマスを含む有効量の飼料成分を含む組成物。
【請求項22】
前記飼料成分が、グラム陰性細菌由来のリポ多糖を含む、請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月26日に出願された「自然免疫モジュレーターの投与による免疫応答を加速/増強するための免疫プライミング」と題する米国仮特許出願第63/044,841号の米国非暫定的特許出願であり、これは参照により全ての目的についてその全体が本明細書に取り込まれる
【0002】
技術分野
開示された本発明概念は、動物及びヒトにおける免疫系に関する。より具体的には、開示された本発明概念は、動物及びヒトの両方における自然免疫経路及び適応免疫経路の両方の状態を変化させる化合物を使用する方法及び治療に関する。状態変化は免疫応答のプライミングをもたらし、こうして、動物又はヒトが広範囲の疾患状態につながる病原体にチャレンジされたときに、加速されたより強固な応答が生成される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
家禽産業を含む多くの動物産業における実質的な経済的損失は、ほとんどの場合、疾患の結果である。鳥群の疾患は、多くの場合、生産量の減少、又は食料供給に導入される最終産物の安全性や品質低下につながる。家禽の疾患の予防と治療は、家禽の生産コストを大幅に増加させる。いくつかの推定では、家禽の疾患による総損失は、全生産コストの10%を超えている。
【0004】
家禽群を攻撃することが知られている疾患のうち、最も一般的なものは、コクシジウム原虫である寄生虫によって引き起こされる疾患であるコクシジウム症を含む腸疾患である。コクシジウム症のみによる年間の経済的損失は、30億ドル/年を超えると推定されており、これらの費用はさまざまな理由で増加すると予想される。
【0005】
第1に、今日のコクシジウム症の予防は、主にワクチンを使用して病原体感染を未然に防ぐことによって達成されている。ワクチンの1回の投与は、ブロイラーの生涯の非常に早い段階で、具体的には孵化の日に行われる。このアプローチはある程度の効果を示しているが、ワクチンは、時間の経過とともに疾患を制御する効果が非常に低下することが知られている.実験では、プロバイオティクスなどのサプリメントと組み合わせて使用されるワクチンが結果を改善し得ることが示されているが、このアプローチは生産コストを増加させる.
【0006】
第2に、今日のコクシジウム症の治療は、抗生物質とイオノフォアを使用する従来の方法で行われているが、どちらも費用がかかる。抗生物質とイオノフォアの予防的使用は、消費者の抵抗、規制機関による調査、及び環境問題を含む、さまざまな理由から世界的に圧力を受けている。最近、欧州連合は、飼料添加物としての特定の抗生物質の治療量以下の使用を禁止した。他の合成治療化合物やその他の化学物質が知られており使用されているが、従来の抗生物質やイオノフォアほど効果的ではない。
【0007】
第3に、抗生物質、イオノフォア、及び病原体に特異的な治療化合物に対する薬剤耐性が、過度の使用により大幅に増加しており、このため、これらの治療の有効性が著しく損なわれている。同時に、これらの分野のいずれにおいても、何年もの間、新薬の承認はなかった。
【0008】
第4に、たとえ現在の治療法が依然として主張されているように経済的で効果的であったとしても、これらのアプローチは依然として不十分であるとみなされるであろう。なぜなら、完全に効果的であるためには、動物の成長の全期間にわたって動物の飼料に薬物を含有させなければならないためである。この要件により、成長期間全体の餌代が大幅に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、動物の免疫経路をプライミングすることによって疾患(特に限定されるものではないが、コクシジウム症を含む)を制限又は排除することができ、こうして、病原体にチャレンジされたときに加速されたより強固な応答を提供することができる、抗生物質に基づかない治療法及び/又は化合物を開発することが、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
開示された本発明概念は、動物及びヒトの両方で多種多様な疾患のための改善された持続的な治療を提供する。動物、及び特に家禽における、この治療法及び組成物は、例えばコクシジウム症に対して有効であることが分かった。この化合物は、投与が容易で費用対効果が高い。開示された方法及び組成物は、免疫プライミングの方法により疾患の予防と治療の両方を提供する。
【0011】
開示された本発明概念の化合物は、家禽などの動物に投与するための従来の飼料と組み合わされる。ヒトへの適用も可能である。給餌療法は、自然(初期段階)免疫経路並びに適応(後期段階)免疫経路の状態を変化させ、こうして免疫系全体がプライミングされる。このような免疫プライミングの結果は、特に限定されるものではないがコクシジウム症を含む病原体にチャレンジされたときの応答が、加速されより強力なものになることである。開示された方法及び化合物は、動物及びヒトの両方における多種多様な疾患に適用可能であり、ここで、免疫プライミングは疾患状態の重症度及び期間を軽減するだけでなく、それを完全に予防する可能性があることが理解されるべきである。
【0012】
治療期間中、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)に由来する開示された化合物は、家禽飼料、飲料水、又はその両方によって動物に投与される。組成物自体は天然物であるため、既知の抗生物質処方とは異なり、環境への悪影響はない。従って、開示された本発明概念のアプローチは、既知の一般的に使用される疾患治療とは著しく対照的である。
【0013】
データは、健康なニワトリ(特に、ブロイラーニワトリ)に、藻類培養の本発明の化合物であるバイオマスを補充したトウモロコシ/大豆飼料を給餌すると、成長効率が向上すると同時に、藻類培養バイオマス補充のない同じ飼料を与えられた鳥と比較して、免疫応答が改善されることを示している。本明細書では、トウモロコシ及び大豆の従来の食事について言及しているが、開示された化合物は、特に限定されるものではないが、小麦などの他の形態の従来の動物飼料と組み合わせて有利に使用することもできることを理解されたい。
【0014】
本発明の化合物と従来の飼料との飼料混合物を給餌された殺処分された鳥から収集された組織のキノミクス分析は、バイオマスが、複数の成長関連経路におけるシグナル伝達の変化を引き起こすことを示唆している。これらの経路には、特に限定されるものではないが、血管内皮増殖因子(VEGF)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK又はMAPキナーゼ)、Ak株形質転換(Akt)、及び神経栄養性トロポミオシン関連キナーゼ(NTRK)に関連する経路が含まれる。証拠は、この変化がさまざまな経路の活性化を表しているという結論を支持している。
【0015】
開示された本発明概念は、特に限定されるものではないが、以下を含むヒト及び動物における多数の用途を有する:(1)ワクチンの効力を改良すること;(2)防御に必要なワクチンの量を減らすこと;(3)栄養補助食品として免疫の健康の一般的なブースターとして機能すること;及び(4)抗生物質の必要性を全体的に減少させること。
【0016】
本発明をより完全に理解するためには、以下で説明される添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、肝臓及び筋肉組織のキノタイプ(kinotype)のヒートマップを示す。
【0018】
図2図2は、肝臓及び筋肉組織の樹状図(T2対T1)を示す。
【0019】
図3図3は、小腸及び盲腸キノタイプのヒートマップを示す。
【0020】
図4図4は、小腸及び盲腸組織の樹状図(T2対T1)を示す。
【0021】
図5A図5Aは、14日目の小腸(メッケル隣接)における「代謝」リアクトーム(Reactome)経路メンバーを示す。
【0022】
図5B図5Bは、42日目の小腸(メッケル隣接)における「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0023】
図6A図6Aは、14日目の肝臓における「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0024】
図6B図6Bは、42日目の肝臓における「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0025】
図7A図7Aは、14日目の筋肉における「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0026】
図7B図7Bは、42日目の筋肉における「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0027】
図8図8は、盲腸における「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0028】
図9A図9Aは、14日目の小腸(メッケル隣接)における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0029】
図9B図9Bは、42日目の小腸(メッケル隣接)における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0030】
図10A図10Aは、14日目の肝臓における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0031】
図10B図10Bは、42日目の肝臓における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0032】
図11A図11Aは、14日目の筋肉における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。
【0033】
図11B図11Bは、42日目の筋肉における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す;及び
【0034】
図12図12は、盲腸における「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好適な実施態様の詳細な説明
以下の説明において、さまざまな構成の実施態様について、さまざまな動作パラメーター及び構成要素が説明される。これらの具体的なパラメーター及び構成要素は例として含まれており、限定することを意図したものではない。特に他に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるような、それらの共通の意味に一致している。
【0036】
開示された本発明概念の方法は、藻類バイオマス、並びに例えば藻類上清、共生細菌、細菌バイオマス、及び細菌発酵産物を含む関連材料を含む化合物の使用を提案する。この化合物は、ブロイラーのニワトリや他の動物に給餌され、こうして自然(初期段階)及び適応(後期段階)免疫経路の状態が変化し、その結果、特に限定されるものではないが、コクシジウム症などの病原体によるチャレンジを受けたときに、免疫応答が加速され、より強固になるようにプライミングされる。
【0037】
プラスの効果は、化合物を給餌されたか又は給餌されていない鳥のブロイラー組織のキノミクス分析によって直接証明された。これらの同じプラスの効果の間接的な証拠は、ブロイラーで実施されたコクシジウム症チャレンジ試験によって提供され、これは、化合物を給餌された鳥が、コクシジウム症予防のためのワクチンの有効性を高めたことを示している.さらに、結果として得られる免疫応答の広域性は、開示された化合物で治療された鳥の腸内の病原性細菌数(サルモネラ菌、ウェルシュ菌、大腸菌、カンピロバクター)の減少によって示される。
【0038】
治療に使用される化合物
開示された治療方法は、一般的にグラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)に由来する有効な化合物を利用する。ブロイラー生涯の初期に化合物を投与することにより、免疫調節を介する疾患の予防と治療が達成され得る。有効な化合物はまた、リポ多糖以外の供給源から得ることもできる。
【0039】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、別の分子によって誘導される活性を低減又は減衰させる分子を指す。例として、ヒト及び動物の免疫細胞の表面に存在するTLR4受容体(又はおそらくTLR2受容体)ののLPS依存性活性化をブロックすることができる化合物は、この特定の経路の阻害剤と見なされるであろう。
【0040】
本明細書で使用される「藻類培養物」という用語は、液体培地中で一緒に増殖する藻類生物及び細菌(1つ又はそれ以上の種類)として定義される。特に明記しない限り、「藻類バイオマス」という用語は、藻類細胞及び細菌細胞(液体培養培地を除去したもの)を指す。「藻類バイオマス」は、湿った材料又は乾燥した材料でもよい。
【0041】
特に明記しない限り、「藻類上清」という用語は、藻類バイオマスから排出された化合物を含む、藻類バイオマスが増殖する培地として定義される。藻類の上清は、藻類のバイオマスを培養培地中で適切な時間増殖させた後、濾過及び/又は遠心分離によって藻類及び細菌細胞を除去することによって得られる。
【0042】
バリオボラクス(Variovorax)属及びロドバクター(Rhodobacter)属の一部である細菌は、代謝的に多様であることが知られている。バリオボラクスは、さまざまな条件下で増殖できるグラム陰性の好気性細菌である。これはプロテオバクテリア(Proteobacteria)亜綱の一部であり、植物によって生成されたいくつかの天然化合物を代謝的に利用することができる。ロドバクターは、光合成と化学合成の両方を含む、多種多様な条件下で増殖できる。増殖は、嫌気的条件下でも好気的条件下でも達成できる。ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)は、グラム陰性の通性細菌であり、プロテオバクテリアのα-3亜門のメンバーである。
【0043】
本明細書に記載の疾患の予防と治療に使用される化合物の実施態様には、TLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達経路の選択的阻害剤として使用するための、グラム陰性細菌株によって産生される1つ又はそれ以上のLPS/リピドA化合物が含まれる。開示された本発明概念は、3つの基本的な工程の任意の組み合わせを含む:(1)グラム陰性細菌はLPS/リピドA化合物を産生する;(2)LPS/脂質化合物は、阻害を通じてTLR4活性を調節する;及び(3)下流の効果は、TLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達経路の遮断を介して腸の炎症の低下をもたらし、こうしてコクシジウム症の治療を助ける。
【0044】
1つの実施態様において、TLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達経路の選択的阻害剤として使用されるLPS/リピドA化合物は、バリオボラクス・パラドクサス(Variovorax paradoxus)株から産生される。バリオボラクス・パラドクサス株は、藻類バイオマス及び/又は藻類上清産物中に見いだされる天然の株であり得る。例えば、藻類バイオマスは、藻類クレブソルミディウム・フラッシズム(Klebsormidium flaccidum)を含み得る。より詳しくは、藻類バイオマス培養物は、クレブソルミディウム・フラッシズム株ZIVO変種を含み得る。
【0045】
別の実施態様において、TLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達経路の選択的阻害剤として使用されるLPS/リピドA化合物は、ロドバクター・スフェロイデス株から産生される。ロドバクター・スフェロイデスの構造と機能に関して、広範な研究が一般的に行われている。より焦点を絞った研究により、ロドバクター・スフェロイデスの光合成特性が調べられた。ロドバクター・スフェロイデス由来のリポ多糖は、ヒト細胞における有効なTLR4(又はおそらくTLR2)アンタゴニストであることが知られており、LPS/TLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達をブロックすることによってTLR4を介した炎症を防ぐが、本発明者らは、家禽の抗コクシジウム薬として有効なロドバクター・スフェロイデス由来のLPS化合物を発見していた。初期のデータは、LPS様分子による阻害を示唆したが、ロドバクター・スフェロイデスに向けられた特定の試験が、家禽のコクシジウム症の治療などの疾患の治療におけるこの細菌の有効性を初めて明らかにした。研究はさらに、TLR4阻害剤とTLR2のアクチベーター(多くのグラム陰性細菌由来のLPSなど)を組み合わせることで、抗コクシジウム症効果が得られることを示した。
【0046】
従って、本開示による疾患の治療に使用される化合物の実施態様は、TLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達経路の選択的阻害剤として使用される、バリオボラクス属又はロドバクター属のグラム陰性細菌株によって産生される1つ又はそれ以上のLPS/リピドA化合物に関する。開示された本発明概念の特定の実施態様は、バリオボラクス・パラドクサス株及びロドバクター・スフェロイデス株から産生されるTLR4(又はおそらくTLR2)シグナル伝達経路の選択的阻害剤として使用されるLPS/リピドA化合物の使用に関する。
【0047】
本明細書で使用されるLPS/リピドA化合物は、バリオボラクス・パラドクサス株又はロドバクター・スフェロイデス株から任意の適切な方法によって得ることができるが、特定の実施態様において、これらは、以下のような標準的な多工程LPS抽出プロトコールを使用して抽出される:(1)凍結乾燥細菌をフェノール/チオシアン酸グアニジン溶液で抽出し、水層を集めて凍結乾燥する;(2)凍結乾燥画分を水に再溶解する;(3)溶解した画分を限外濾過して低分子量物質と塩類を除去する;(4)Affi-prepポリミキシンマトリックス材料(Bio-Rad)などのポリミキシンB樹脂カラムを使用して、高分子量画分を親和性精製し、そこから活性画分を1%デオキシコール酸で溶出し、そして任意選択的に;(5)サイズ排除クロマトグラフィーを使用して追加の精製を行う。
【0048】
いくつかの例において、細菌からLPS化合物を得るために、複数のタイプのLPS抽出プロトコールが使用され、抽出手順は2回以上行われてもよい。LPS化合物が細菌から抽出され精製されると、リピドA画分は、酸加水分解又は他の適切な技術によって調製することができる。
【0049】
バリオボラクス・パラドクサス又はロドバクター・スフェロイデスなどのグラム陰性細菌株に由来する1つ又はそれ以上のLPS/リピドA化合物は、TLR4シグナル(又はおそらくTLR2)伝達経路を選択的に阻害して、炎症反応を低減及び/又は阻害し、さまざまな使用及び用途で免疫の健康を改善することができる。1つの実施態様において、バリオボラクス・パラドクサス又はロドバクター・スフェロイデスに由来するLPS/リピドA化合物は、藻類ベースの飼料成分に組み込んで、家禽の腸の健康を改善することができる。
【0050】
バリオボラクス・パラドクサス又はロドバクター・スフェロイデスに由来する開示されたLPS/リピドA化合物は、様々なメカニズムを通じて家禽の健康を改善するために使用することができる。例えば、LPS/リピドA化合物は、TLR4(又はおそらくTLR2)発現のダウンレギュレーションとNF-κB活性化の阻害を介して炎症性メディエーターを負に調節することにより、家禽を内部炎症から防御する可能性がある。別の例では、LPS/リピドA化合物は、システイン残基媒介受容体二量体化を妨害することによって、家禽におけるTLR4(又はおそらくTLR2)の活性化を阻害することができる。さらに別の例では、LPS/リピドA化合物は、非感染性及び感染性刺激がTLR4(又はおそらくTLR2)と相互作用して炎症誘発性応答を誘発する能力を阻害して、家禽の腸の完全性を改善することができる。
【0051】
組み合わされたバッチは、好ましくは最終飼料1トンあたり約0.5ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約11.0ポンドの組成物の量、より好ましくは最終飼料1トンあたり約1.0ポンドの組成物~最終飼料1トンあたり約5.0ポンドの組成物の量、最も好ましくは最終飼料1トンあたり約3トンの組成物~最終飼料1トンあたり約4.0ポンドの組成物の量で提供される。理想的な提唱される非限定的な比率は、最終飼料1トンあたり約3.5ポンドの組成物である。
【0052】
治療方法
疾患を治療するための方法の非限定的な例が示される。以下の方法は家禽の治療に関するが、開示された治療は他の動物並びにヒトにも同様に適用できることを理解されたい。従って、記載された治療方法は、家禽での使用のみを意図したものではない。
【0053】
実施例
【0054】
本発明の非限定的な例によれば、本発明の化合物は、上記の藻類バイオマス、並びに藻類上清及び共生細菌を含む関連物質として定義される。開示された治療化合物を従来の飼料と混合して、3.5ポンド化合物対1トンの飼料の固定比率で「飼料混合物」を生成した。この比率は、試験期間を通じて維持された。飼料混合物は、1日目に通常の給餌処方の一部として免疫未経験の鳥に与え、試験期間を通じて等しい比率を続けた。「治療化合物」は、上記の藻類バイオマス、並びに藻類上清及び共生細菌を含む関連物質として示される。すべての比率は給餌期間中維持された。ニワトリは、米国のニワトリ集団の少なくとも25%で見られる通常のストレスに曝らされた。これには、米国の家禽生産分野で経験する典型的なストレスを再現するために、以前の鳥群から蓄積された敷きわらで飼育することが含まれた。
【0055】
2つの成長促進治療処方が施された:
治療1(T1)=トウモロコシ-大豆食対照
治療2(T2)=とうもろこし-大豆食+藻類
【0056】
本開示の発明概念による成長促進化合物は、42日間のブロイラー檻試験において研究大学で試験された。全体として結果は、生後14日目以降、開示された本発明の化合物及びトウモロコシ/大豆混合物を含む飼料組成物を給餌された鳥は、トウモロコシ/大豆混合物のみを給餌された対照動物と比較して、改善された代謝及び改善された免疫応答を示すことが証明された。健康な鳥に本発明の化合物を含む組成物を限られた時間給餌した後、病気のチャレンジを与えた多数の他の研究の小さなセグメントの進行中のレビューは、従来の動物食餌と組み合わせた場合の健康な動物における本発明の化合物のプラスの効果を、予備的に示唆している。
【0057】
成長期の終了後、孵化後14日目(D14)及び42日目(D42)に2つの食餌群のそれぞれの5羽の鳥から、筋肉、肝臓、小腸、及び盲腸組織を採取した。ニワトリから組織試料を取り出し、すぐに液体窒素で急速冷凍して、キナーゼ酵素活性を保持した。試料をドライアイス上に維持し、実験プロトコールが実施されるまで-80℃で保存した。組織試料を解凍し、40mgの切片を採取し、1.5mmジルコニウムビーズと100μLの溶解緩衝液を含む2.0mLホモジナイザーチューブに入れた。試料をビーズ粉砕機 (Bead Ruptor)でホモジナイズした。
【0058】
次に、ホモジナイズした組織を氷上で10分間インキュベートし、次に微量遠心機で遠心分離した。次に、ペプチドアレイの産生を行い、重複して9回印刷された771のユニークなキナーゼ基質標的ペプチド配列を生成した。
【0059】
ガラスリフタースリップをマイクロアレイに適用して、適用された溶解物を挟んで分散させた。80μLの混合物をペプチドマイクロアレイに適用し、ピペットチップ又はアレイスライドに気泡が存在しないことを確認した。スライドを加湿チャンバー内で2時間インキュベートした:インキュベーター内に少量の水を含む密閉容器(アレイと接触していない)。アレイをインキュベーター及び加湿チャンバーから取り出し、リン酸緩衝化生理食塩水を含む遠心チューブに入れた。リフタースリップがアレイから滑り落ちるまで、アレイを繰り返し溶液に沈めた。その後、アレイを沈め、攪拌した。次に、このプロセスを新鮮な溶液で繰り返した。アレイをdd水に沈め、攪拌した。アレイスライドをdd水から取り出し、ディッシュ中のリン酸特異的蛍光染色液に沈め、シェーカーテーブル上に置いた。ディッシュにカバーをして、蛍光染色を光から防御した。次にアレイを新しいディッシュに入れ、撹拌しながら脱色溶液に沈めた。シャーレをカバーをして、染色を光から防御した。このプロセスを2回繰り返した。蒸留脱イオン水で最終洗浄を行った。
【0060】
次いで、くしゃくしゃにしたキムワイプが底に入っているmLの遠心チューブにアレイを入れた。次いで、アレイを含むチューブを遠心分離して、アレイから水分を除去した。Tecan PowerScannerマイクロアレイスキャナーを使用して、580nmフィルターを用いて532~560nmでアレイをスキャンし、色素の蛍光を検出した。
【0061】
統計とデータ解析
【0062】
画像が生成し、デフォルトのスキャナー飽和レベルを用いて局所特徴バックグラウンド強度計算を使用して、スポット強度シグナルがピクセル強度の平均として採取された。
【0063】
画像はグリッド化され、スポット強度シグナルは、デフォルトのスキャナー飽和レベルを用いて局所特徴バックグラウンド強度計算を使用して、ピクセル強度の平均として採取された。次に、得られたデータをPIIKA2ペプチドアレイ解析ソフトウェアで解析した。簡単に言えば、得られたデータ点を正規化して、技術的変動、例えばアレイ間又はアレイ内のアレイブロック間の染色強度のランダムな変動による変動を排除した。分散安定化正規化が実行された。アレイが3重でペプチドブロックで印刷されているため、各ペプチドに3つの値があったことに注意されたい。正規化されたデータセットを使用して、成長促進治療群と対照群との比較を行い、倍率変化と有意P値を計算した。P値は、特定のペプチドの成長促進治療と陰性対照値の間で対応のある片側t検定を行うことによって計算された。次に、結果として得られた倍数変化と有意値を使用して、任意選択的な解析(ヒートマップ、階層的クラスター化、主成分分析、及び経路分析を含む)を行った。
【0064】
ニワトリ固有のキノームペプチドアレイによって分析された4つの組織(小腸、肝臓、筋肉、盲腸)は、解析パイプラインであるPlatform for Integrated, Intelligent Kinome Analysis 2 (PIIKA2) を、1つは肝臓と筋肉で他の1つは盲腸と小腸(メッケル憩室周辺の領域)の2つのバッチで行った。肝臓及び筋肉のキノームシグナルのヒートマップを図1に示す。図の各列は、アレイからの組織の総リン酸化シグナルを表す。これは、組織のキノームプロフィール又はキノタイプと呼ばれる。図の上部にある接続線は、クラスター化、又は各組織間のキノタイプの相対的な類似性を表している。鶏の処置や年齢に関係なく、同じ組織の試料間には強い類似性がある。これは、図1中の、1つは肝臓と他の1つは筋肉の2つの別個のクラスターに反映されている。筋肉と肝臓は生理学的及び機能的に異なっており、異なるキノームプロフィールを示すと予想されるため、この類似性は予想される。各組織クラスター内で、D14T1試料は他の群とは別にクラスター化される。これは、食餌への藻類の添加の効果により、D14組織が全体的にD42組織により似たものになったことを示している。
【0065】
図1は、肝臓及び筋肉組織キノタイプのヒートマップであり、PIIKA2解析後のデータを示す。各列内の各色付きの線は、アレイ上のペプチドを表す。赤はリン酸化の相対的な増加を示し、緑は相対的な減少を示す。一般的なキノタイプクラスター化では、主に組織特異的クラスター化が表示される。
【0066】
成長促進治療を、時間が一致した組織ごとに対照対と比較すると(T2対T1)、食餌への藻類の添加によるものではないシグナルが除去される。これにより、各ペプチドについて対照と比較して、リン酸化の倍数変化の増加又は減少が生じる(倍数変化ペプチドX=T2ペプチドX/T1ペプチドX)。このデータは、相対的な類似性のためにクラスター化された。D14の肝臓組織と筋肉組織が最も類似していることが分かった(図2に示される)。これは、藻類産物がD14で両方の組織に同様のシグナル伝達効果を有し、おそらくその効果がこの初期の時点で最も強かったことを示している。
【0067】
図2は、肝臓及び筋肉組織の樹状図である(T2対T1)。倍率変化の計算に続くキノタイプのクラスター化。対照のトウモロコシ-大豆食と組織関連の応答をキノタイプから除外することで、成長促進治療とD14の年齢に基づいて、強化された食餌が2つの組織をより密接に整列させることがわかる。
【0068】
腸の組織、具体的には小腸(メッケルを取り囲む)及び盲腸(図3に示される)を検討すると、図1と同様のパターンが見られる。鶏の治療や年齢に関係なく、同じ組織の試料間には強い類似性がある。小腸と盲腸は生理学的及び機能的に異なり、異なるキノームプロフィールを示すと予想されるため、この類似性は予想される。ただし、肝臓と筋肉とは異なり、T1D14の小腸と盲腸の試料は、それぞれの組織クラスターの外側に集まる。これは、食餌への藻類の添加の効果により、D14組織が全体的にD42組織により似たものになったことを示している。クラスター化パターンは図1よりも図3の方が顕著であり、1T1D14組織は実際には他の試料から完全に離れてクラスター化するが、2つの列を結ぶ線の長さによって示されるように、2つの間には有意差があった。
【0069】
図3は、小腸及び盲腸のキノタイプのヒートマップであり、PIIKA2解析後のデータを示す。各列内の各色付きの線は、アレイ上のペプチドを表す。赤はリン酸化の相対的な増加を示し、緑は相対的な減少を示す。一般的なキノタイプクラスター化は、D14T1群を除いて、組織ベースのクラスター化を示す。
【0070】
上述のように、成長促進治療を対照と比較すると(T2対T1)、食餌への藻類の添加によるものではないシグナルが排除され得る。このデータは、相対的な類似性のためにクラスター化された。D14の小腸組織と盲腸組織が最も類似していることが分かった(図4に示される)。これは、藻類産物がD14で両方の組織に同様のシグナル伝達効果を有し、おそらくその効果がこの初期の時点で最も強いことを示している。
【0071】
図4は、小腸及び盲腸組織の樹状図である(T2対T1)。この図は、倍率変化の計算に続くキノタイプのクラスター化を示す。対照のトウモロコシ-大豆食と組織関連の応答をキノタイプから除外することで、成長促進治療とD14の年齢に基づいて、強化された食餌が2つの組織をより密接に整列させることがわかる。
【0072】
4つの組織からの上記データに基づくと、食餌への藻類補充の最も強い影響はD14で起きるようである。これは、特に腸組織に当てはまり、D42腸がサプリメントを受け取ったかどうかに関係なく、産物がD14腸をD42腸のように見せるようにするようである(図3に示される)。治療を時間の一致した対照と比較し、藻類の影響のみを検討すると、シグナル伝達の変化のパターンは、小腸と盲腸、及び肝臓と筋肉の組織対の間で一貫している。図2図4は、D14試料がD42試料とは別に、クラスター化されていることを示す。上記データは、藻類産物がD14で組織を成熟させ、そのキノームプロフィールがD42で成熟した組織と同様に見えるようにするという証拠を示している。
【0073】
D42と比較してD14でどのようなタンパク質変化が生じていたかを分析することにより、このクラスター化パターンの背後にあるキノーム変化を理解することができる。各組織及び各時点で藻類処理と対照との間で統計的に有意な差を示したタンパク質を、STRINGデータベースに入力して、シグナル伝達経路を生成した(本明細書で使用される「STRING」データベースは、「相互作用する遺伝子/タンパク質を検索するための検索ツール」を指し、これは、計算予測法、公開テキストコレクション、及び実験データを含むいくつかの情報源から得られた既知の予測可能なタンパク質-タンパク質相互作用の生物学的データベース及びWebリソースである)。次に、このデータを解析して、藻類に起因する生物学的機能の変化を決定することができる。
【0074】
以下の表において:
【0075】
「タンパク質」は、アレイ上で差動的にリン酸化された経路内のタンパク質の数を指し、「バックグラウンド」は経路内のタンパク質の数であり、そして「FDR」は経路の偽発見率有意値である。
【0076】
「リアクオトーム(Reactome)」は、ゲノム分析及びモデリングに関連する基礎研究及び臨床研究を支援するために使用される、オープンソース、オープンアクセス、用手的精選、及び査読を受けた経路データベースを指す。
【0077】
「MYD88」は、TLR4及びTLR2シグナル伝達の最初に見つかった下流の成分を指す。
【0078】
「TRIF(TICAM1)媒介TLR4シグナル伝達」又は「Toll様受容体アダプター分子1」は、タンパク質コード遺伝子を指す。活性化されたTLR4シグナル伝達経路は、TICAM1に関連する。
【0079】
「Fcイプシロン受容体(FCER1)」は、免疫グロブリンE(IgE)のFc領域に対する高親和性IgE受容体を指す。これはまた、FcεRI又はFcイプシロンRIでもある。
【0080】
表1AとBは、表1A)D14及び表1B)D42中で、D14における食餌への藻類の添加によって変化した小腸組織の上位20の経路を示す。黄色で強調表示されているのは、特定の日の固有の経路である。
【0081】
藻類補充のあるD42では、適応免疫応答の増加があり(表1B)、これはおそらく、この時までにより免疫学的に適格な、又は発達したシステムであることを示している。サプリメントが免疫系を刺激し、自然のシステムで始まった可能性がある.これにより、D42までに、補充された鳥でより適応性の偏った免疫系がもたらされた.この証拠には、補充された鳥のD42での適応免疫系経路、並びにD14でのTLRシグナル伝達の実質的な変化が含まれる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表1:小腸(メッケル隣接)リアクトーム経路。D14及びD42の小腸からの統計的に有意に差動的にリン酸化されたタンパク質をSTRINGデータベースに入力して、強化されたリアクトーム経路のリストを作成した。表1A)D14はD14からの上位20の経路を示し、表1B)D42はD42からの上位20の経路を示す。黄色で強調表示されているのは、各時点からの固有の経路である。D14に固有のシグナル伝達の多くは自然免疫シグナル伝達に関連しているが、D42でのシグナル伝達は成長と適応免疫系に関連している。「タンパク質」はアレイ上で差動的にリン酸化された経路内のタンパク質の数であり、「バックグラウンド」は経路内のタンパク質の数であり、「FDR」は経路の偽発見率有意値である。
【0085】
肝臓試料について行った上記と同じ分析は、D14とD42との間に固有のシグナル伝達経路がほとんどないことを示している(表2A及びB)。ユニークなものは成長に関連していた:D14の「VEGFによるシグナル伝達」と「D42のMAPKファミリーシグナル伝達カスケード」。特に興味深い2つの時点の違いは、D14の上位20リストに、D42には存在しないTLRシグナル伝達に関連する2つの自然免疫シグナル伝達経路があったことである。これは、D42で自然免疫シグナル伝達又はTLRシグナル伝達がなかったことを意味するものではない。代わりに、これはD14で追加の固有のTLRシグナル伝達があったことを意味する。これは、成長の早い段階で藻類によるより強固な免疫刺激を再び示している可能性があり、おそらくこの初期の時点で組織を成熟させている可能性がある.
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
表2:肝リアクトーム経路。D14及びD42の肝臓からの統計的に有意に差動的にリン酸化されたタンパク質をSTRINGデータベースに入力して、強化されたリアクトーム経路のリストを作成した。表2A)D14はD14からの上位20の経路を示し、表2B)D42はD42からの上位20の経路を示す。黄色で強調表示されているのは、各時点からの固有の経路である。D14(表2A)D14)に固有なのは、成長と自然免疫シグナル伝達の混合である。表2B)D42では、成長が固有の特徴を表している。これは、初期のプライミングと成長を示している可能性があるが、その後、サプリメントは成長関連のシグナル伝達を強化する.
【0089】
筋肉における差動的応答は、D14経路とD42経路との間で機能的に大きく異なっていた(表3A及びB)。筋肉のD42では、成長促進(MAPK、AKT)シグナル伝達と自然免疫シグナル伝達(TLR4及び9)が混在していた(表3B)。D14では、TRAF6を介した自然免疫シグナル伝達があったが、他の2つの固有の経路は NTRKシグナル伝達に関連していた(表3A)。NTRKは、細胞分化及びMAPK関連の成長につながる神経関連のシグナル伝達受容体である。その機能は、筋骨形成、細胞増殖、ウェルシュ菌のアルファ毒素に対する免疫応答に関連していることが示されている。筋肉に対する藻類のこれらの効果には、筋肉/骨の発達の改善、筋肉のさらなる成長、又は免疫プライミングなど、多くの興味深い可能性があり、これらのすべては、成長期にはおそく見いだされるのに比較して、早期に筋肉内で見いだされている
る。
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
表3:筋肉リアクトーム経路。D14及びD42の筋肉からの統計的に有意に差動的にリン酸化されたタンパク質をSTRINGデータベースに入力して、強化されたリアクトーム経路のリストを作成した。表3A)D14はD14からの上位20の経路を示し、表3B)D42はD42からの上位20の経路を示す。黄色で強調表示されているのは、各時点からの固有の経路である。NTRKシグナル伝達は、表3A)D14のD14の筋肉に示されている。表3B)D42のD42では、免疫及び増殖関連のシグナル伝達が混在している。「タンパク質」はアレイ上で差動的にリン酸化された経路内のタンパク質の数であり、「バックグラウンド」は経路内のタンパク質の数であり、「FDR」は経路の偽発見率有意値である。
【0093】
盲腸では、D14とD42との間に限られた数の固有のシグナル伝達経路が存在する。NTRKによるシグナル伝達はD14に固有であったが、NTRK1によるシグナル伝達はD14とD42の両方に現れ、この経路は、おそらく免疫関連の単純な細胞増殖応答に関連している可能性がある。VEGFによるシグナル伝達もD14で固有であるが、VEGFA-VEGFR2経路によるシグナル伝達はD42に存在し、このより大きな経路群のサブセットであり、やはり細胞増殖シグナルに関連している。D42では、MyD88を介するAktシグナル伝達とTLRシグナル伝達は固有であり、D42には存在しない増殖と免疫シグナル伝達の組み合わせを表している。しかし、全体として、他の組織と比較して、藻類が盲腸のD14とD42の間で有意な変化をもたらすとは思われない。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
表4:盲腸リアクトーム経路。D14及びD42の盲腸由来の統計的に有意に差動的にリン酸化されたタンパク質をSTRINGデータベースに入力して、強化されたリアクトーム経路のリストを作成した。表4A)D14はD14からの上位20の経路を示し、表4B)D42はD42からの上位20の経路を示す。黄色で強調表示されているのは、各時点からの固有の経路である。「タンパク質」はアレイ上で差動的にリン酸化された経路内のタンパク質の数であり、「バックグラウンド」は経路内のタンパク質の数であり、「FDR」は経路の偽発見率有意値である。
【0097】
リアクトーム経路の上位20には現れないが、すべての組織及び時点において、藻類補充と対照との間で有意な変化を示した「代謝」と呼ばれる広範な経路が存在した。代謝経路内の有意に差動的にリン酸化されたタンパク質を、各組織についてD14とD42の間で比較した。各時点に固有のタンパク質がSTRINGにアップロードされた。得られたタンパク質相互作用群(図5A、5B、6A、6B、7A、7B、及び8)内には、強化された特定の多量栄養素代謝プロセスが存在した。ユニークなタンパク質が圧倒的に連続したタンパク質-タンパク質相互作用ネットワークを生成したという事実は、これらのタンパク質が相互作用する代謝プロセスの一部であり、単なる異種のリン酸化変化ではないことを示している。
【0098】
小腸では、D14及びD42の両方で、「代謝」経路内で、固有のタンパク質相互作用群が「脂質の代謝」について強化された(図5A及び5B)。従って、鳥の2つの異なる年齢での藻類に対する反応の違いにもかかわらず、主な効果は腸内の脂質の代謝を変えることであった。
【0099】
図5A及び5Bは、小腸(メッケル隣接)における固有の「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。「代謝」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14(図5A)及びD42(図5B)の両方の「脂質の代謝」経路のメンバーである。
【0100】
図6A及び6Bは、肝臓における固有の「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。肝臓では、D14とD42の両方で、「代謝」経路内で、固有のタンパク質相互作用群が「脂質の代謝」と「脂肪酸代謝」について強化されていた。従って、2つの異なる年齢での藻類に対する応答の違いにもかかわらず、主な効果は腸内の脂肪の代謝を変えることであった。肝臓は脂質と脂肪の主要な処理装置であるため、脂質代謝は腸内で変化する.この結果は、上記のデータと一致している。
【0101】
「代謝」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。D14(図6A)及びD42(図6B)の両方について、赤色タンパク質は「脂質の代謝」経路のメンバーであり、紫色のタンパク質は「脂肪酸代謝」経路のメンバーである。
【0102】
図7A及び7Bは、筋肉内の固有の「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。筋肉では、D14とD42の両方で「代謝」経路内で、「ピルビン酸代謝とTCA回路」と「炭水化物の代謝」についてそれぞれ固有のタンパク質相互作用群が強化された。従って、藻類補充の主な効果は、TCA回路を早期に変更し、炭水化物の代謝を遅くすることであった。筋肉はグルコースの主要な消費装置であるため、これは筋肉沈着の増加と従って成長と一致している.これは、より大きな飼料変換率の可能性を示唆している可能性さえある。
【0103】
「代謝」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14における「ピルビン酸代謝及びTCA回路」経路(図7A)とD42における「炭水化物の代謝」(図7B)のメンバーである。
【0104】
盲腸では、D14で、「代謝」経路内で、固有のタンパク質相互作用群は「脂質の代謝」について強化された。ここでも、藻類補充の主要な効果が、脂質代謝を早期に変化させることを観察できる。D42の盲腸には、重要なタンパク質相互作用群又は機能の強化はなかった。従って、固有の変化のほとんどは、代謝の初期に発生した。小腸組織の代謝データと一致して、脂質代謝は藻類によって腸内で変化した。
【0105】
図8は、盲腸の固有の「代謝」リアクトーム経路メンバーを示す。「代謝」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14の「脂質の代謝」経路のメンバーである。D42は重要なタンパク質相互作用群を表示しなかったため、表示されていない。
【0106】
すべての組織及び時点において、「自然免疫系」は上位20の重要なリアクトーム経路に存在し、この免疫応答が藻類補充と対照との間で有意に変化したことを示した(表1~4)。自然免疫系経路内の有意に差動的にリン酸化されたタンパク質を、各組織のD14とD42の間で比較した。その時点に固有のタンパク質はSTRINGにアップロードされた。
【0107】
得られたタンパク質相互作用群(図9A、9B、10A、10B、11A、11B、及び12)内で、Toll様シグナル伝達は、D42での盲腸及び肝臓を除いて、すべての場合に強化された。この経路がD42でのこれら2つの組織の固有の応答に存在しなかったという事実は、藻類補充の主な効果が成長の初期に発生するというさらなる証拠である。
【0108】
図9A及び9Bは、小腸(メッケル隣接)における固有の「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。「自然免疫系」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14(図9A)及びD42(図9B)の両方について「Toll様受容体カスケード」経路のメンバーである。
【0109】
図10A及び10Bは、肝臓における固有の「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。「自然免疫系」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14の「Toll様受容体カスケード」経路のメンバーである(図10A)。D42には「Toll様受容体カスケード」経路は見られなかった(図10B)。
【0110】
図11A及び11Bは、筋肉内の固有の「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。「自然免疫系」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14の「Toll様受容体カスケード」経路のメンバーである(図11A)。D42には「Toll様受容体カスケード」経路は見られなかった(図11B)。
【0111】
図12は、盲腸における固有の「自然免疫系」リアクトーム経路メンバーを示す。「自然免疫系」リアクトーム経路内の各時点に固有のタンパク質はSTRINGに入力して、タンパク質-タンパク質相互作用群を生成した。赤色タンパク質は、D14(A)の「Toll 様受容体カスケード」経路のメンバーである。D42にはタンパク質相互作用群は生成されなかった。
【0112】
結果
一般に、開示された化合物を含む飼料混合物を提供した鳥からの家禽組織のキノミクス分析は、従来の飼料混合物を給餌された殺処分した鳥と比較して、14日目に自然免疫経路の顕著な成熟を示した。また、一般に、開示された化合物を含む飼料混合物を提供した鳥からの家禽組織のキノミクス分析は、42日目に適応免疫経路の顕著な増強を証明した。
【0113】
最終的に、上記の処方に従って治療化合物を給餌されたニワトリの群と治療化合物を給餌されなかったニワトリの両方の群からのブロイラー組織のキノミクス分析は、治療されたニワトリが適応免疫応答の増加を示し、より免疫学的に有能又は発達した免疫系を証明した。重要なことに、キノミクス分析は、開示された化合物による治療が、補充された鳥においてより適応的に偏った免疫系をもたらすことを示し、さらに、動物をより迅速かつ強固な免疫応答をプライミングすることにより、標準的な強化されていない飼料を与えられた鳥と比較して、腸、肝臓、及び筋肉組織における免疫代謝の変化を証明した。
【0114】
状態の変化の1つの指標は、14日目におけるTLRシグナル伝達の実質的な変化の検出であった。この知見の証拠にはさらに、飼料を補充された鳥において42日目に特定された適応免疫系経路の調節が含まれる。有利なことに、試験は、特定された免疫調節的適応が、成長及び発達の障害を犠牲にしてもたらされるのではなく、むしろ生涯の後半における代謝効率を促進することを示した.開示された本発明概念の方法及び治療に従うことにより、通常42日齢の鳥に見られる応答と比較して、動物におけるより迅速な適応免疫応答が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】