(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】化学療法誘発毒性緩和のための内皮細胞
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20230719BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20230719BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230719BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230719BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230719BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230719BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230719BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230719BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230719BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230719BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230719BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20230719BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K35/51
A61K35/44
A61K35/28
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/20
A61P29/00
A61P1/12
A61P1/00
A61P7/00
A61P7/02
A61P7/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/02
A61K38/38
A61K31/675
A61K31/4184
A61K31/7048
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580216
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 US2021039224
(87)【国際公開番号】W WO2021263189
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516389363
【氏名又は名称】アンジオクライン・バイオサイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Angiocrine Bioscience, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】フィネガン,ポール ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フレイザー,ジョン ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ギンズバーグ,マイケル ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076BB13
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4C076CC16
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4C087AA01
4C087AA02
4C087BB59
4C087BB64
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZA66
4C087ZA73
4C087ZB11
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、例えば血液系腫瘍(例えばリンパ腫、白血病および骨髄異形成症候群)を有するヒト対象ならびに大量療法(HDT)または高用量HDTおよび造血幹細胞移植の組み合わせなどの化学療法で処置され得る他の悪性腫瘍または他の状態を有する対象における、化学療法の副作用の緩和のための組成物および方法を提供する。方法は、ヒト対象への、アデノウイルスE4ORF1タンパク質を発現するよう操作された操作されたヒト臍帯静脈内皮細胞(E4ORF1+HUVEC)などの内皮細胞の投与を含む。本発明の組成物および方法により緩和される副作用は、口腔/消化器副作用および発熱性好中球減少症を含むが、これらに限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とするヒト対象における非血液学的重度レジメン関連毒性(SRRT)を緩和する方法であって、有効量のE4ORF1+HUVECを含む治療組成物をホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を有する成人対象に静脈内投与することを含み、ここで、(a)有効量は約10×10
6細胞/kg体重~約30×10
6細胞/kg体重であり、(b)対象は先に高用量療法(HDT)および自己造血幹細胞移植(AHCT)を受けており、(c)E4ORF1+HUVECを対象がAHCTを受けるのと同じ日に対象に投与し、そして(d)非血液学的SRRTが口腔/消化器SSRTおよび発熱性好中球減少症からなる群から選択されるものであり、これにより対象におけるSSRTが緩和されるものである、方法。
【請求項2】
E4ORF1+HUVECが対象にAHCT完了の約2時間~約4時間後に投与される、請求項1の方法。
【請求項3】
有効量が約10×10
6細胞/kg~約20×10
6細胞/kg体重である、請求項1の方法。
【請求項4】
有効量が約20×10
6細胞/kg体重である、請求項1の方法。
【請求項5】
その後対象に治療組成物の第二投与量を投与することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項6】
第二投与量がAHCT完了の約1日~約3日後に投与される、請求項5の方法。
【請求項7】
対象が少なくとも40歳である、請求項1の方法。
【請求項8】
対象が少なくとも60歳である、請求項1の方法。
【請求項9】
治療組成物が生理学的食塩水中にE4ORF1+HUVECを含む、請求項1の方法。
【請求項10】
治療組成物が緩衝液、塩、多糖、タンパク質および防腐剤からなる群から選択される1以上の添加物をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項11】
治療組成物がヒト血清アルブミン(HSA)をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項12】
治療組成物がデキストラン40をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項13】
治療組成物が約0.25%DMSOをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項14】
治療組成物が1mlあたり約5×10
6 E4ORF1+HUVECを含む、請求項1の方法。
【請求項15】
口腔/GI SSRTが粘膜炎、口内炎、盲腸炎、悪心、嘔吐および下痢からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項16】
粘膜炎が口腔、食道、胃、小腸、大腸、結腸、直腸または肛門粘膜炎から選択される、請求項15の方法。
【請求項17】
AHCTが骨髄造血幹細胞移植を含む、請求項1の方法。
【請求項18】
AHCTが末梢血造血幹細胞移植を含む、請求項1の方法。
【請求項19】
高用量療法(HDT)が対象へのBEAM、BeEAM、FEAM、CBV、TBC、DHAPおよびBu/Cy/Fluからなる群から選択される化学療法剤の組み合わせの投与を含む、請求項1の方法。
【請求項20】
方法が血液学的SRRTの緩和ももたらす、請求項1の方法。
【請求項21】
血液学的SRRTが血小板減少症、好中球減少症、白血球減少症または貧血を含む、請求項20の方法。
【請求項22】
好中球生着または血小板生着までの時間が治療組成物で処置されない対象における好中球生着または血小板生着までの時間と比較して短縮される、請求項20の方法。
【請求項23】
処置を必要とするヒト対象における非血液学的重度レジメン関連毒性(SRRT)を緩和する方法であって、有効量の内皮細胞(EC)を含む治療組成物を、化学療法を行けた、受けているまたは受ける予定であるヒト対象に投与することを含み、対象におけるSRRTが緩和されるものである、方法。
【請求項24】
SRRTが口腔/GI毒性、発熱性好中球減少症、固形臓器毒性、静脈閉塞病および重度感染からなる群から選択される、請求項23の方法。
【請求項25】
ECがヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である、請求項23の方法。
【請求項26】
ECがE4ORF1+ヒト臍帯静脈内皮細胞(E4ORF1+HUVEC)である、請求項23の方法。
【請求項27】
対象が悪性疾患を有する、請求項23の方法。
【請求項28】
悪性疾患がリンパ腫である、請求項27の方法。
【請求項29】
悪性疾患が白血病である、請求項27の方法。
【請求項30】
悪性疾患が多発性骨髄腫である、請求項27の方法。
【請求項31】
悪性疾患が骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項27の方法。
【請求項32】
対象がホジキンリンパ腫(HL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)からなる群から選択されるリンパ腫を有する、請求項28の方法。
【請求項33】
対象がCNS病変のないリンパ腫を有する、請求項28の方法。
【請求項34】
対象がCNS病変を伴うリンパ腫(CNSリンパ腫)を有する、請求項28の方法。
【請求項35】
対象が再発-難治性リンパ腫を有する、請求項28の方法。
【請求項36】
化学療法が高用量療法(HDT)である、請求項23の方法。
【請求項37】
化学療法が骨髄除去化学療法である、請求項23の方法。
【請求項38】
化学療法が対象へのBEAM、BeEAM、FEAM、CBV、TBC、DHAPおよびBu/Cy/Fluからなる群から選択される化学療法剤の組み合わせの投与を含む、請求項23の方法。
【請求項39】
化学療法対象に、対象が造血幹細胞移植を受ける準備をするコンディショニングレジメンの一部として投与される、請求項23の方法。
【請求項40】
対象が造血幹細胞移植を受けている、請求項23の方法。
【請求項41】
対象が治療組成物が対象に投与される時点で造血幹細胞移植を受けている、請求項23の方法。
【請求項42】
対象が治療組成物が対象に投与される時点の約3日以内に造血幹細胞移植を受けている、請求項23の方法。
【請求項43】
対象が治療組成物が対象に投与される同じ日に造血幹細胞移植を受ける、請求項23の方法。
【請求項44】
対象が治療組成物が対象に投与される時点の約1~約4時間以内に造血幹細胞移植を受ける、請求項23の方法。
【請求項45】
対象が治療組成物が対象に投与されるのと同時に造血幹細胞移植を受ける、請求項23の方法。
【請求項46】
造血幹細胞移植および治療組成物が対象に同じIV輸注で適用される、請求項45の方法。
【請求項47】
造血幹細胞移植が自己造血幹細胞移植(ASCT)である、請求項39~46の何れかの方法。
【請求項48】
造血幹細胞移植が同種造血幹細胞移植(AlloSCT)である、請求項39~46の何れかの方法。
【請求項49】
対象が造血幹細胞移植前に高用量療法(HDT)を受ける、請求項39~48の何れかの方法。
【請求項50】
治療組成物が約500万細胞/ml濃度のECを含む、請求項23~49の何れかの方法。
【請求項51】
治療組成物が生理学的食塩水中に内皮細胞を含む、請求項23~50の何れかの方法。
【請求項52】
治療組成物が緩衝液、塩、多糖、タンパク質および防腐剤からなる群から選択される1以上の添加物を含む、請求項23~51の何れかの方法。
【請求項53】
治療組成物がヒト血清アルブミン(HSA)を含む、請求項23~52の何れかの方法。
【請求項54】
治療組成物がデキストラン40を含む、請求項23~53の何れかの方法。
【請求項55】
治療組成物がDMSOを含む、請求項23~50の何れかの方法。
【請求項56】
治療組成物が対象に静脈内IV投与される、請求項23~55の何れかの方法。
【請求項57】
治療組成物が対象に単回IV輸注で投与される、請求項23~56の何れかの方法。
【請求項58】
治療組成物が対象に複数IV輸注で投与される、請求項23~56の何れかの方法。
【請求項59】
治療組成物が対象に0日目に最初のIV輸注および1日目、2日目、3日目、4日目または5日目に2回目のIV輸注で投与される、請求項58の方法。
【請求項60】
治療組成物が対象に0日目に最初のIV輸注および3日目に2回目のIV輸注で投与される、請求項58の方法。
【請求項61】
治療組成物が対象に0日目に最初のIV輸注および2日目に2回目のIV輸注で投与される、請求項58の方法。
【請求項62】
治療組成物が対象に0日目に最初のIV輸注および1日目に2回目のIV輸注で投与される、請求項58の方法。
【請求項63】
有効量が約5×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項64】
有効量が約10×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れか方法。
【請求項65】
有効量が約15×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項66】
有効量が約20×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項67】
有効量が約25×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項68】
有効量が約30×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項69】
有効量が約35×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項70】
有効量が約40×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項71】
有効量が約5×10
6細胞/kg体重~約40×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項72】
有効量が約5×10
6細胞/kg体重~約25×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項73】
有効量が約10×10
6細胞/kg体重~約20×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項74】
有効量が約20×10
6細胞/kg体重である、請求項23~62の何れかの方法。
【請求項75】
緩和される非血液学的SRRTが粘膜炎(口腔、食道、胃、小腸、大腸、結腸、直腸または肛門粘膜炎)、口内炎、盲腸炎、悪心、嘔吐および下痢からなる群から選択される、請求項23~74の何れかの方法。
【請求項76】
方法が血液学的SRRTの緩和ももたらす、請求項23~75の何れかの方法。
【請求項77】
血液学的SRRTが血小板減少症、好中球減少症、白血球減少症または貧血を含む、請求項76の方法。
【請求項78】
好中球生着または血小板生着までの時間が治療組成物で処置されない対象における好中球生着または血小板生着までの時間と比較して短縮される、請求項76の方法。
【請求項79】
ECがE4ORF1+ECである、請求項23~79の何れかの方法。
【請求項80】
ECがE4ORF1+HUVEC、請求項23~78の何れかの方法。
【請求項81】
処置を必要とするヒト対象における化学療法副作用を緩和する方法であって、有効量の内皮細胞(EC)を含む治療組成物を、化学療法を行けた、受けているまたは受ける予定であるヒト対象に投与することを含み、対象における化学療法副作用が緩和されるものである、方法。
【請求項82】
ECがE4ORF1+ECである、請求項81の方法。
【請求項83】
ECがE4ORF1+HUVECである、請求項81の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月25日出願の米国仮出願63/044,243および2021年5月12日出願の米国仮出願63/187,486に基づく優先権の利益を主張し、これら出願各々の内容を、引用によりそれらの全体として本明細書に包含させる。
【0002】
配列表
本願はASCII形式で電子的に提供され、引用によりその全体を本明細書に包含させる配列表を含む。該ASCIIコピーは2021年6月25日に作成し、Angiocrine_029_WO1_SL.txtなる名称であり、1,543バイトサイズである。
【0003】
引用による取り込み
引用による取り込みが許容されている地域のみに対する目的で、本願明細書に引用する引用文献全て引用によりそれらの全体を本願明細書に包含させる。さらに、ここに引用または記載するあらゆる製品のあらゆる製造者の指示書またはカタログを、引用により包含させる。本明細書に引用により包含される文書またはその中のあらゆる教示を、本発明の実施に際して使用できる。
【背景技術】
【0004】
背景
化学療法の使用が副作用を伴うことは周知である。実際、がんなどの生命を脅かす疾患の処置に使用される化学療法剤は、多くの場合、患者が受けている化学療法剤の投与が、副作用と関連する罹病率および死亡率により限定されるほど重度副作用の高いリスクをしばしば伴う。例えば、悪性腫瘍処置に使用されるまたは自己免疫疾患のある処置の一部として送達される化学療法レジメンは、悪心、嘔吐、下痢、感染および消化器炎症(粘膜炎)を含む用量依存的毒性をしばしば伴う。これらの副作用が送達される化学療法の用量と相関するため、高用量化学療法、例えば造血幹細胞移植に付随する高用量療法(HDT)に適格であるとされる、高悪性度または再発疾患を有する患者で特に顕著である。このような場合、患者はしばしば口腔-消化器(GI)、肺、中枢神経系(CNS)、肝臓、腎臓および心臓系を含む多臓器系が関与する重度レジメン関連毒性(SRRT)の症候群に罹患する。高用量療法(HDT)により引き起こされる毒性の大部分は、急性または亜急性に生ずる。大部分は100日以内に解消する。一方で重度毒性は稀に1年を超えて持続し(Pamukcuoglu et al., 「Hematopoietic Cell Transplant-Related Toxicities and Mortality in Frail Recipients,」 Biol. Blood Marrow Transplant, 2019; 25(12): 2454-2460)、継続中の有害作用は、数年間顕著であり得る。このような毒性の重症度は、放射線療法との同時投与で増加する。虚弱および高齢患者でこのような毒性の発生率および重症度も高まる。
【0005】
重度(グレード≧3)非血液学的毒性症候群の発生は、HDT±放射線療法、続く造血幹細胞移植を受けている患者で、57~100%で起こると報告されている。最も一般的な非血液学的毒性は、発熱性好中球減少症(ある状況で83~95%の発生と報告)および重度口腔粘膜炎および重度‘突発性’または‘難治性’悪心、嘔吐および下痢(一括してN/V/Dと称する)を含む口腔胃腸毒性の「群発」を含む。グレード≧3口内炎または粘膜炎の報告される発生率は30~81%の範囲であり、一方重度N/V/Dは12~30%の割合で生ずると報告されている。より稀ではあるが、生命を脅かす非血液学的毒性は、重度感染(13~44%)、神経系障害(4~47%)、肺臓炎または肺炎(10~38%)、肝障害(2~19%)、腎不全(1~9%)および心血管障害(3~26%)を含む(Scordo et al, 2017, “A Comprehensive Assessment of Toxicities in Patients with Central Nervous System Lymphoma Undergoing Autologous Stem Cell Transplantation Using Thiotepa, Busulfan, and Cyclophosphamide Conditioning” Biol. Blood Marrow Transplant 23 (2017) 38-43, Perales et al., Real-World Economic Burden Associated with Transplantation-Related Complications, Biol Blood Marrow Transplant, 23 (2017) 1788-1794, Olivieri et al., A Comparison of the Conditioning Regimens BEAM and FEAM for Autologous Hematopoietic Stem Cell Transplantation in Lymphoma: An Observational Study on 1038 Patients From Fondazione Italiana Linfomi. Biol Blood Marrow Transplant, 2018. 24(9): p. 1814-182)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高用量療法(HDT)を含む化学療法剤の使用に関連する重度毒性の処置および予防のための新規かつ改善された治療の分野の差し迫った必要性がある。本発明は、その必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、一部、高用量化学療法および造血幹細胞移植を受けている種々の血液系腫瘍を有するヒト対象への操作された内皮細胞の投与の安全性を評価するフェーズ1臨床治験の実施中のある発見に基づく。これらの臨床試験実施に際し、内皮細胞投与に付随する明らかな負の副作用または安全性問題がないだけでなく、内皮細胞の投与が処置患者における多数の非血液学的および血液学的な重度レジメン関連毒性(SSRT)を緩和することも発見された。異なる用量の内皮細胞が異なる効果をもたらす - 一部副作用は低用量および高用量いずれでも緩和され、他の副作用は高用量で優先的に緩和された - ことも判明した。例えば、CNS病変のないリンパ腫を有する患者への内皮細胞投与後、重度口腔胃腸毒性の発生は排除され、発熱性好中球減少症の発生は約75%減少することが判明した。これらおよび他の発見は、本明細書の実施例でさらに詳述する。
【0008】
これらの発見に基づいて、本発明は、患者に投与される高用量療法(HDT)に限らず、造血幹細胞移植と関連する化学療法の副作用の緩和のための種々の新規方法および組成物を提供する。
【0009】
従って、本発明は、処置を必要とする対象における化学療法の副作用を緩和する方法を提供し、このような方法は、化学療法で処置されている対象に有効量の内皮細胞を含む治療組成物を投与し、それにより対象における化学療法の1以上の副作用を緩和することを含む。本発明はまた、例えばそのような方法に使用するための、内皮細胞を含む治療組成物も提供する。本発明はまた、例えばそのような方法に使用するための治療組成物(または医薬)の製造に使用するための、内皮細胞を提供する。
【0010】
ある実施態様において、内皮細胞は臍帯静脈内皮細胞(UVEC)である。ある実施態様において、内皮細胞はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である。ある実施態様において、内皮細胞は組み換えタンパク質を発現するよう操作される。ある実施態様において、内皮細胞はアデノウイルスE4ORF1タンパク質を発現するよう操作される - すなわち、E4ORF1+内皮細胞である。ある実施態様において、内皮細胞はE4ORF1+HUVECである。
【0011】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は成人である。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は≧18歳である。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は≧20歳である。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は≧30歳である。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は≧40歳である。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は≧50歳である。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は≧60歳である。
【0012】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は重度レジメン関連毒性(SRRT)(severe regimen-related toxicity)をもたらす化学療法レジメンを使用して処置され得る疾患または障害を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は高用量療法(HDT)を使用して処置され得る疾患または障害を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は化学療法(例えば、高用量療法(HDT))と造血幹細胞移植の組み合わせを使用して処置され得る疾患または障害を有する。
【0013】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はがん(すなわち、悪性腫瘍)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は血液学的がん/悪性腫瘍を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は非血液学的がん/悪性腫瘍を有する。
【0014】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はリンパ腫を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はホジキンリンパ腫(HL)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はびまん性B細胞性大細胞型リンパ腫(DLBCL)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はT細胞リンパ腫(TCL)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はCNS病変のないリンパ腫を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象はCNS病変があるリンパ腫(すなわち、「CNSリンパ腫」)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は再発リンパ腫を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は難治性リンパ腫 - すなわち、先の処置に応答しなかったかまたはほとんど応答しなかったリンパ腫 - を有する。
【0015】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は多発性骨髄腫を有する。
【0016】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は白血病を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は急性骨髄性白血病(AML)を有する。ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する。
【0017】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は骨髄異形成症候群を有する。
【0018】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は副腎皮質腫瘍、肺胞軟部肉腫、星状細胞腫、乳がん、膀胱がん、脳がん、がん腫、子宮頚がん、軟骨肉腫、結腸直腸がん、類腱腫、線維増生小円形細胞がん、内分泌がん、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜がん、類上皮型血管内皮腫、食道がん、ユーイング肉腫、胃がん、胚細胞腫瘍、神経膠腫、心臓がん、肝芽腫、肝細胞がん、口唇および/または口腔がん、肺がん、黒色腫、中皮腫、腎腫、神経芽腫、非横紋筋肉腫軟組織肉腫、中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、傍脊柱肉腫、前立腺がん、直腸がん、腎臓細胞がん腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、小細胞肺がん、滑膜肉腫、精巣がん、咽喉がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮肉腫およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される非血液学的がん/悪性腫瘍を有する。
【0019】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(びまん性または限局型)、多発性硬化症、クローン病、I型糖尿病または若年性特発性関節炎などの自己免疫疾患を有する。
【0020】
ある実施態様において、化学療法は重度レジメン関連毒性(SRRT)をもたらす化学療法である。ある実施態様において、化学療法は高用量療法(HDT)である。ある実施態様において、化学療法を、対象に移植 - 例えば、造血幹細胞移植 - を受ける準備をするコンディショニングレジメンの一部として投与する。ある実施態様において、コンディショニングレジメンは骨髄除去コンディショニングレジメンである。ある実施態様において、コンディショニングレジメンは低強度コンディショニングである。
【0021】
ある実施態様において、化学療法はCNS浸透性化学療法である。例えば、ある実施態様において、対象はCNSリンパ腫を有し、化学療法はCNS浸透性化学療法である。
【0022】
ある実施態様において、化学療法はカルムスチン、エトポシド、シタラビンおよびメルファランの投与を含む組み合わせ化学療法(「BEAM」)である。ある実施態様において、化学療法はベンダムスチン、エトポシド、シタラビンおよびメルファランの投与を含む組み合わせ化学療法(「BeEAM」)である。ある実施態様において、化学療法はホテムスチン、エトポシド、シタラビンおよびメルファランの投与を含む組み合わせ化学療法(「FEAM」)である。ある実施態様において、化学療法はエトポシド、シタラビンおよびメルファランの投与を含む組み合わせ化学療法(「EAM」)である。ある実施態様において、化学療法はシクロホスファミド、カルムスチンおよびエトポシドの投与を含む組み合わせ化学療法(「CBV」)である。ある実施態様において、化学療法はチオテパ、ブスルファンおよびシクロホスファミドの投与を含む組み合わせ化学療法(「TBC」) - CNS浸透性化学療法組み合わせ - である。ある実施態様において、化学療法はリツキシマブ、デキサメサゾン、高用量シタラビンおよびシスプラチンの投与を含む組み合わせ化学療法(「DHAP」)である。ある実施態様において、化学療法はブスルファン、シクロホスファミドおよびフルダラビンの投与を含む組み合わせ化学療法(「Bu/Cy/Flu」)である。
【0023】
ある実施態様において、化学療法は - ブスルファンと併用するまたはしない - メルファランの投与を含む。ある実施態様において、化学療法はメルファランであるかまたはそれを含む。例えば、ある実施態様において、化学療法は、対象を約140mg/m2の用量のメルファランで処置することを含む。同様に、ある実施態様において、化学療法は、対象を約200mg/m2の用量のメルファランで処置することを含む。
【0024】
ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~28日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~7日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~2日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~1日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)を、対象が化学療法の副作用を初めて示す前に対象に最初に投与する。
【0025】
ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~28日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~7日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~2日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~1日後に対象に最初に投与される。
【0026】
ある実施態様において、内皮細胞が投与される対象は造血幹細胞移植も受ける。このような実施態様において、対象は、内皮細胞が対象に投与されるのと同時に造血幹細胞移植を受ける。このような実施態様において、造血幹細胞移植および内皮細胞を、対象に一緒に - 例えば同じ静脈内IV輸注(infuse)で - 適用する。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた後に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けるのと同じ日に対象に投与される(すなわち、0日目、ここで、0日目は造血細胞移植の日である)。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた1日後(すなわち、1日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた2日後(すなわち、2日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた3日後(すなわち、3日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約2時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約3時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約4時間後に対象に投与される。ある実施態様において、造血幹細胞移植は自己造血幹細胞移植である。ある実施態様において、造血幹細胞移植は同種異系間造血幹細胞移植である。例えば、ある実施態様において、対象は同種臍帯血移植(UCBT)を受ける。
【0027】
ある実施態様において、対象は、内皮細胞の投与前に、高用量化学療法(すなわち、大量療法)および自己造血幹細胞移植を受ける。ある実施態様において、対象は、内皮細胞の投与前に、高用量化学療法(すなわち、大量療法)および同種造血幹細胞移植を受ける。
【0028】
ある実施態様において、内皮細胞は、対象に約500万細胞/mlの濃度で内皮細胞を含む治療組成物で投与される。ある実施態様において、内皮細胞は、対象にヒト血清アルブミン(HSA)は含む治療組成物で投与される。ある実施態様において、内皮細胞は、対象にデキストラン40は含む治療組成物で投与される。ある実施態様において、内皮細胞は、対象にDMSOは含む治療組成物で投与される。
【0029】
ある実施態様において、内皮細胞(例えば、内皮細胞は含む組成物)は対象に1回 - すなわち、単回投与/投薬レジメンを使用して(例えば、0日目) - 投与される。ある実施態様において、内皮細胞(例えば、内皮細胞は含む組成物)は対象に2回 - すなわち、2回投与/投薬レジメンを使用して(例えば、最初は0日目、次いで再びその後の日、例えば1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目または7日目) - 投与される。ある実施態様において、内皮細胞(例えば、内皮細胞は含む組成物)は対象に複数回投与される。例えば、ある実施態様において、内皮細胞(例えば、内皮細胞は含む組成物)は対象に最初に0日目、続いて再び2日目、そして再び4日目などに投与される。
【0030】
ある実施態様において、0日目(すなわち、対象が幹細胞移植を受ける日)は、対象が化学療法(例えば、HDT)を受けた0~28日後である。ある実施態様において、0日目は、対象が化学療法(例えば、HDT)を受けた0~7日後である。ある実施態様において、0日目は、対象が化学療法(例えば、HDT)を受けた0~2日後である。ある実施態様において、0日目は、対象が化学療法(例えば、HDT)を受けた0~2日後である。典型的に、処置医は、例えば、使用する特定の化学療法、組織のガイドラインなどの因子に基づき、対象が化学療法(例えば、HDT)を受けるのと幹細胞移植を受ける間の適切なタイミングを決定できる。
【0031】
ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象に静脈内、例えばIV輸注により投与される。ある実施態様において、IV輸注は、例えば、末梢IVカテーテルを使用して、末梢に投与される。ある実施態様において、IV輸注は、例えば、末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)、中心静脈カテーテル(CVC)、ヒックマンカテーテルまたは留置ポートデバイスを使用して中心性に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象に腹腔内、皮下、動脈内にまたは局所注射(例えば骨髄への局所注射)により投与される。
【0032】
ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約2×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約5×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約10×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約15×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約20×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約25×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約30×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約35×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約40×106細胞/kg体重である。
【0033】
ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約2×106細胞/kg体重~約40×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約2×106細胞/kg体重~約30×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約5×106細胞/kg体重~約30×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約5×106細胞/kg体重~約25×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約5×106細胞/kg体重~約20×106細胞/kg体重である。ある実施態様において、内皮細胞の有効量は約10×106細胞/kg体重~約20×106細胞/kg体重である。
【0034】
ある実施態様において、緩和される副作用は、副作用/有害事象の等級付けに関する米国国立がん研究所「有害事象共通用語規準」(NCI-CTCAE)システムの何れかのグレードである。このような副作用はレジメン関連毒性またはRRTとも称される。
【0035】
ある実施態様において、緩和される副作用は、重度副作用(重度レジメン関連毒性またはSRRTとも称される) - すなわち、副作用/有害事象の等級付けに関する米国国立がん研究所「有害事象共通用語規準」(NCI-CTCAE)を使用してグレード3以上(すなわち≧グレード3)に分類される副作用 - である。
【0036】
ある実施態様において、本発明の方法を使用して緩和される副作用は、非血液学的副作用(例えば、非血液学的RRTまたはSRRT)である。
【0037】
ある実施態様において、緩和される副作用は、血液学的副作用(例えば、血液学的RRTまたはSRRT)である。
【0038】
本特許明細書の実施例セクションに記載するとおり、ヒト対象への内皮細胞の投与は、化学療法の種々の非血液学的副作用を緩和することが判明した。従って、ある実施態様において、本発明の方法を使用して緩和される非血液学的副作用は口腔/胃腸(GI)副作用である。ある実施態様において、緩和される口腔/胃腸副作用は、粘膜炎(口腔、食道、胃、小腸、大腸、結腸、直腸または肛門)、口内炎、盲腸炎、悪心、嘔吐および下痢の1以上を含む。ある実施態様において、緩和される非血液学的副作用は発熱性好中球減少症である。ある実施態様において、緩和される非血液学的副作用は感染(例えば、重度感染)である。ある実施態様において、緩和される非血液学的副作用は、肺臓炎、腎炎、ニューロパチー、化学療法関連認知障害、心毒性、生着症候群および/または内皮機能不全の1以上を含む。
【0039】
また本明細書の実施例に記載するとおり、化学療法の種々の非血液学的副作用の緩和に加えて、ヒト対象への内皮細胞の投与は、化学療法後の血液学的/造血回復を改善する - 例えば造血回復(好中球および血小板回復/生着を含む)までの期間を短縮する - ことも判明した。従って、ある実施態様において、本発明は、血液学的副作用を緩和する方法を提供する。本発明の方法を使用して緩和される血液学的副作用は、血小板減少症(低血小板数)、好中球減少症(低好中球数)、白血球減少症(低白血球数)および貧血(低赤血球数)の1以上を含み得る。
【0040】
本発明のこれらおよび他の実施態様は、本特許明細書の他のセクションにさらに記載される。さらに、当業者には明らかなとおり、ここに記載する種々の実施態様のある修飾および組み合わせは、本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】高用量療法および自己造血細胞移植(HDT-AHCT)を受けているリンパ腫を有するヒト対象へのE4ORF1+HUVECS(AB-205)の投与が試験した全投与量レベルおよび投与レジメンにわたり口腔胃腸の重度レジメン関連毒性(SRRT)の>50%減少をもたらすことを示すデータ。
【0042】
【
図2】高用量療法および自己造血細胞移植(HDT-AHCT)を受けているリンパ腫を有するヒト対象へのE4ORF1+HUVECS(AB-205)の投与が試験した全レジメンにわたり発熱性好中球減少症発生率の用量依存的減少をもたらすことを示すデータ。
【0043】
【
図3】高用量療法および自己造血細胞移植(HDT-AHCT)を受けているCNS病変のないリンパ腫を有するヒト対象へのE4ORF1+HUVECS(AB-205)の投与が試験した全投与量レベルで口腔胃腸の重度レジメン関連毒性(SRRT)の0%率をもたらすことを示すデータ。
【0044】
【
図4】高用量療法および自己造血細胞移植(HDT-AHCT)を受けているリンパ腫を有するヒト対象へのE4ORF1+HUVECS(AB-205)の投与が発熱性好中球減少症(FN)の75%を超える減少をもたらすことを示すデータ。
【0045】
【
図5】AB-205での処置が口腔/GIの重度レジメン関連毒性の平均期間の相当な短縮と関連することを示すデータ。後向きチャート審査からの対照データをAB-205処置患者からのデータと比較する。AB-205処置患者(20×10
6細胞/kg)のSRRTの期間は95%短縮した(すなわち5.5日から0.26日に)。
【0046】
【
図6】試験した全用量でのAB-205での処置が粘膜炎の全体的重症度の減少と関連することを示すデータ。データはAB-205の全用量(複合)および20×10
6細胞投与量について示す。対照データは後向きチャート審査からである。
【0047】
【
図7】重度(CTCAEグレード≧3)レジメン関連口腔/GI毒性(すなわち、口腔/GI SSRT)の割合に対する、コホート対照と比較した2000万細胞/kg未満および2000万細胞/kgの用量でのAB-205処置の効果を示すデータ。評価した口腔/GI毒性は、口腔粘膜炎、悪心、嘔吐、下痢、食道炎、盲腸炎、大腸炎および肛門粘膜炎であった。
【0048】
【
図8】口腔/GI SRRTの示すサブタイプに対するAB205処置の効果が用量依存的であることを示すデータ。この分析の対象は40歳以上であった。
【0049】
【
図9】造血回復(血小板生着および好中球生着)に対するAB205処置の効果を示すデータ。上部パネル/グラフは、全対象について生着までの時間を示すデータである。下部パネル/グラフは、好中球生着の1日以内の血小板生着を示す。
【0050】
【
図10】高用量療法および自己造血細胞移植(HDT-AHCT)を受けているリンパ腫を有するヒト対象へのE4ORF1+HUVECS(AB-205)の投与の臨床プロトコールの略図。
【0051】
【
図11A-B】高用量療法および同種臍帯血幹細胞移植(HDT-AlloSCT)を受けている白血病または骨髄異形成症候群を有するヒト対象におけるE4ORF1+HUVECの投与が好中球回復/生着までの時間(
図11A)および血小板回復/生着までの時間(
図11B)を短縮することを示すデータ。曲線は、95%信頼区間(点線)との相関(実線)を示す。
図11Aおよび
図11B両者において、縦軸は、kg体重あたりの細胞投与量(E4ORF1+HUVEC - E-Cellsとも称する)を示す。
図11Aにおいて、横軸は500細胞/μLの絶対好中球数(すなわち、ANC500)に達する時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な記載
本明細書の「本発明の概要」、「実施例」および「特許請求の範囲」セクションは、本発明の主要な実施態様の多くを記載する。この「詳細な記載」セクションは、本発明の組成物および方法に関連するある付加的な記載を提供し、本明細書の全ての他のセクションと関連して読まれることが意図される。さらに当業者に認識されるとおり、本明細書を通して記載される種々の実施態様を、あらゆる副標題と無関係に種々の異なる方法で組み合わせ得る。ここに記載する特定の実施態様のこのような組み合わせは、本発明の範囲内に入る
【0053】
定義
いくつかの定義を以下に提供する。他の用語または語句は本明細書の他の箇所に定義されているかもしれずまたは使用される文脈から明らかである意味を有するかもしれない。個々で他に定義されない限りまたはここで使用される文脈から他の何らかの意味が明らかではない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語および定義は、本発明が関連する分野における当業者に共通して理解されるのと同じ意味を有する。例えば、The Dictionary of Cell and Molecular Biology (5th ed. J.M. Lackie ed., 2013)、the Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology (2d ed. R. Cammack et al. eds., 2008)およびThe Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology (2d ed. P-S. Juo, 2002)は、ここで使用されるいくつかの用語の一般的定義を当業者に提供する。
【0054】
本明細書および添付する特許請求の範囲で使用されるにあたり、文脈から他のことが明らかに示されない限り、単数表現は複数対象を含む。用語「ある」ならびに用語「1以上」および「少なくとも1」は、相互交換可能に使用され得る。
【0055】
さらに、「および/または」は、他方を伴うまたは伴わない2つの特定の性質またはおよびその各々の特定の開示と解釈されるべきである。故に、「Aおよび/またはB」などの表現で使用される用語「および/または」は、AおよびB、AまたはB(単独)およびB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの表現で使用される用語「および/または」は、A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはB;AまたはC;BまたはC;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)を含むことが意図される。
【0056】
単位、接頭辞および記号は、国際単位系(SI)により認められている形態で記載する。数値範囲は、範囲を規定する数値を含み、ここに提供される個々の値は、ここに提供される他の個々の値を含む範囲の終点として役立ち得る。例えば、1、2、3、8、9および10などの一連の値は、1~10の数値の範囲の開示でもある。
【0057】
実施態様が用語「含む」を用いて記載されているところは全て、「からなる」および/または「本質的にからなる」の用語で記載されているその他は類似する実施態様を含む。
【0058】
ここで使用する用語「約」および「凡そ」は、数値と関連して使用されるとき、示す値の+または-10%を意味する。数値が用語「約」または「凡そ」を使用して記載される全実施態様において、厳密な数値が使用される類似実施態様も意図される。例えば、約24時間の時間が関与する実施態様において、24時間(すなわち、「約」修飾がない)の時間が関与する類似実施態様も意図される。
【0059】
ここで使用する用語「AB-205」は、E4ORF1を発現するよう操作されたHUVEC(すなわち、E4ORF1+HUVEC)またはこのような細胞を含む組成物をいうために使用される。このような細胞は、ここでは「E-CELs」または「E-CEL UVEC」細胞とも称される。
【0060】
ここで使用する略語「AE」は、有害事象をいう。
【0061】
ここで使用する定義「AHCT」および「ASCT」は、自己造血幹細胞移植をいう。自己移植に使用される造血細胞は、典型的に骨髄または末梢血から得る。
【0062】
ここで使用する定義「AlloHCT」および「AlloSCT」は、同種造血幹細胞移植をいう。同種移植に使用される造血細胞は、典型的にドナー骨髄、末梢血または臍帯血(さい帯血とも称される)から得る。例えばAlloSCT治療は、対象への臍帯血1ユニットまたは臍帯血2ユニットの投与により実施され得る。
【0063】
ここで使用する略語「ANC」は、絶対好中球数をいう。
【0064】
ここで使用する用語「同種」は、同じ種のメンバーに由来する、同じ種のメンバーから発生するまたは同じ種のメンバーであることを意味し、ここで、メンバーは遺伝的に関連するか、遺伝的に関連していないが遺伝的に類似する。例えば、対象への同種造血細胞の投与を含む実施態様において、同種細胞は、細胞が投与される対象(すなわちレシピエント)と同じ種のドナーから得る。ある実施態様において、同種細胞は、細胞が投与される対象(すなわちレシピエント)と同じMHC/HLA型を有するドナーから得る - すなわち細胞のドナーおよび細胞のレシピエントはMHC適合またはHLA適合である。ある実施態様において、造血細胞は、(a)ドナーから得て、(b)エクスビボで維持および/または培養および/または増殖させ、そして(c)その後ドナーとして同じ種の対象に投与される。
【0065】
ここで使用する用語「自己」は、同じ対象に由来するまたは同じ対象から発生することを意味する。例えば、対象への自己造血細胞の投与を含む実施態様において、自己細胞は、投与される対象から得る(すなわち、造血細胞のドナーおよびレシピエントは同じ個体である)。ある実施態様において、造血細胞は、(a)対象から得て、(b)エクスビボで維持および/または培養および/または増殖させ、そして(c)その後同じ対象に投与される。
【0066】
ここで使用する略語「BEAM」は、カルムスチン(BCNU)、エトポシド、シタラビン(Ara-C、シトシンアラビノシド)およびメルファラン - 化学療法の組み合わせ - をいう。BEAM化学療法は高用量療法(HDT)の一形態であり、典型的に造血幹細胞移植前に投与される。
【0067】
ここで使用する略語「BeEAM」は、ベンダムスチン、エトポシド、シタラビン(Ara-C、シトシンアラビノシド)およびメルファラン - 複数化学療法薬物の組み合わせ - をいう。BeEAM化学療法は高用量療法(HDT)の一形態であり、典型的に造血幹細胞移植前に投与される。
【0068】
ここで使用する略語「CBV」は、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)およびエトポシド(VP-16) - 複数化学療法薬物の組み合わせ - をいう。CBV化学療法は高用量療法(HDT)の一形態であり、典型的に造血幹細胞移植前に投与される。
【0069】
ここで使用する略語「CINV」は、化学療法誘発悪心および嘔吐をいう。
【0070】
ここで使用する略語「CR」は、完全寛解をいう。
【0071】
ここで使用する用語「化学療法」は、細胞毒性薬剤または対象への細胞毒性薬剤の投与を含む治療をいう。化学療法/化学療法剤は、典型的にがんおよび自己免疫疾患および障害などのいくつかの他の疾患および障害の処置に使用される。ある実施態様において、意図される化学療法は、高用量化学療法(大量療法またはHDTとも称される)である。しかしながら、ある実施態様において、意図される化学療法は高用量化学療法である。同様に、ある実施態様において、化学療法は骨髄破壊的であり、一方他の実施態様において、骨髄破壊的ではない。化学療法での処置は、一般に1以上の副作用を引き起こす。化学療法の副作用は、ここではレジメン関連毒性またはRRTとも称する。NCI-CTCAEグレード3以上の化学療法副作用は重度副作用と見なされ、ここで重度レジメン関連毒性またはSRRTと称され得る。
【0072】
ここで使用する略語「DLBCL」は、びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫をいう。
【0073】
ここで使用する略語「DMSO」は、ジメチルスルホキシドをいう。
【0074】
ここで使用する略語「EC」は、内皮細胞をいう。
【0075】
ここで使用する用語「E-CELs」および「E-CEL UVEC」は、E4ORF1を発現するよう操作されたHUVEC(すなわち、E4ORF1+HUVEC)またはこのような細胞を含む組成物をいうために使用される。このような細胞/組成物はここでは「AB-205」細胞/組成物とも称され得る。
【0076】
ここで使用する略語「E4ORF」は、アデノウイルスゲノムの初期4(E4)領域のオープンリーディングフレーム(ORF)またはそのORFによりコードされるポリペプチド/タンパク質(遺伝子またはタンパク質のいずれが言及されるかは使用される文章から明らかである)をいう。
【0077】
ここで使用する略語「E4ORF1」は、アデノウイルスゲノムの初期4(E4)領域のオープンリーディングフレーム(ORF)1またはそのORFによりコードされるポリペプチド/タンパク質(遺伝子またはタンパク質のいずれが言及されるかは使用される文章から明らかである)をいう。
【0078】
ここで使用する略語「E4ORF1+HUVEC」は、E4ORF1を発現するよう操作されたHUVECをいうために使用される。このような細胞は組み換えE4ORF1核酸分子を含み、E4ORF1タンパク質を発現する。
【0079】
ここで使用する用語「有効量」は、記載するアウトカム(例えば副作用の緩和)を検出可能な程度または特定の程度まで達成するのに十分であるECまたはECを含む治療組成物の量をいう。ある実施態様において、有効量は特定される(例えば、kg体重あたりのEC細胞数の観点で)。他の実施態様において、適切な「有効量」は、例えば、投与量漸増試験などの、当分野で知られる標準技術を使用して経験的に決定でき、計画される投与経路、所望の投与頻度などの因子を考慮に入れて、決定され得る。さらに、「有効量」は、本明細書の実施例セクションに記載するものなどの試験を使用して、決定され得る。
【0080】
用語「操作された」は、内皮細胞(EC)に関連するとき、列挙される表現型(例えば、E4ORF1発現)をもたらすまたは列挙される核酸分子またはポリペプチドを発現するために、人為的に操作されているEC細胞をいう。用語「操作された細胞」は天然に存在する細胞を含むことを意図せず、むしろ、例えば、そうしなければ発現されないポリペプチドを発現するまたは操作されていない内皮細胞で観察されるより相当高レベルでポリペプチドを発現するように、例えば、組み換え核酸分子を含む細胞または他の点で人工的に改変されている細胞を含むことが意図される。
【0081】
ここで使用する用語「生着症候群」は、造血幹細胞移植後の典型的に発熱、皮疹、肺浮腫、体重増加、臓器機能不全の1以上を含む臨床状態をいい、ここで、該症候群は、好中球回復時、好中球回復前約1週間以内または好中球回復後約2週間以内に生ずる。
【0082】
用語「遺伝子組み換え」および/または「遺伝子組み換えされた」および/または「遺伝子改変」は、ヌクレオチド配列または細胞のゲノムまたは細胞遺伝物質内容物またはそれに対するあらゆる付加、欠失、改変または分裂をいう。ある実施態様において、ここに記載する内皮細胞は、E4ORF1をコードする核酸分子を提供するよう遺伝子組み換えされているのに加えて、1以上の他の遺伝子組み換えも - 記載のとおり - 含み得る。用語「遺伝子組み換え」および上記関連用語は、一過性および安定両方の遺伝子組み換えを包含し、形質導入(インビボまたはインビトロのレシピエントへの核酸のウイルス媒介導入)、トランスフェクション(細胞による単離核酸の取り込み)、リポソーム媒介導入および当分野で周知の遺伝子送達のその他手段を含むが、これらに限定されない種々の異なる遺伝子送達媒体および方法の使用を含む。
【0083】
ここで使用する略語「FN」は、発熱性好中球減少症をいう。
【0084】
ここで使用する略語「G-CSF」は、顆粒球-コロニー刺激因子をいう。
【0085】
ここで使用する略語「GI」は、消化器をいう。
【0086】
ここで使用する定義「HCT」および「SCT」は、造血幹細胞移植片または移植をいう。
【0087】
ここで使用する略語「HDT」は、高用量療法(すなわち、高用量化学療法)をいう。用語大量療法は当分野で広く使用され、本発明の分野の仕事をする医師に理解される。用語HDTは、骨髄除去(HDTは骨髄における造血細胞数を減少させる)である化学療法剤(または化学療法剤組み合わせ)の投与量での治療をいう。HDTはまた多数の他の重度レジメン関連毒性も引き起こす。HDTは、しばしば造血幹細胞移植がその後にある。
【0088】
ここで使用する略語「HL」は、ホジキンリンパ腫 - Hodgkinリンパ腫とも称される - をいう。
【0089】
ここで使用する略語「HLA」は、ヒト白血球抗原をいう。
【0090】
ここで使用する略語「HSA」は、ヒト血清アルブミンをいう。
【0091】
ここで使用する略語「HUVEC」は、ヒト臍帯静脈内皮細胞をいう。
【0092】
ここで使用する略語「IV」は、静脈内をいう。
【0093】
ここで使用する略語「LN2」は、液体窒素をいう。
【0094】
用語「緩和」(およびその文法的変形)および表現「緩和する方法」は、ここでは化学療法の副作用(例えばHDT副作用およびSRRT)と関連して使用され、副作用の発生率、重症度または期間の持続または一過性減少をもたらすことをいう。減少は、副作用の発生率、重症度または期間の何れかの検出可能な減少から副作用の完全な排除までの範囲であり得る。ある実施態様において、緩和の程度(すなわち副作用の発生率、重症度または期間の減少の程度)の評価は、適当なベースラインまたは適当な対照との比較 - 化学療法の処置後であるが、内皮細胞投与前の同じ対象における副作用の発生率、重症度または期間との比較または対象と同様に処置されているが、内皮細胞は投与されていない他の個体(例えば対象と同じタイプの化学療法で処置されている個体)の副作用の発生率、重症度または期間との比較または他の対象における副作用の発生率、重症度または期間に関する既知データ(例えば公開データに基づく)との比較 - で行い得る。ある実施態様において、緩和は、適当なベースラインまたは上記の適当な対照の一つと比較して、副作用の発生率、重症度または期間の約2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の減少を含む。ある実施態様において、緩和は、副作用のグレードの減少を含む。例えば、ある実施態様において、緩和は、副作用/有害事象の等級付けに関する米国国立がん研究所「有害事象共通用語規準」(NCI-CTCAE)システムを使用して決定して、副作用のグレードの減少を含む。このような実施態様において、緩和は、副作用のグレードの1点、2点、3点、4点または5点の減少を含む。
【0095】
用語「骨髄破壊的」または「骨髄破壊」は、典型的に骨髄中の造血細胞が損傷または死滅したとき生ずる、造血系の損傷および骨髄が血液細胞を産生する能力の抑制をいう。用語骨髄破壊は、造血系を破壊する完全骨髄破壊を含む。完全未満である骨髄破壊も含む。骨髄破壊は、化学療法(例えば、HDT)および/または放射線での対象の処置により引き起こされ得る。例えば、骨髄破壊は、その後の造血幹細胞移植のための対象の準備に使用されるコンディショニングレジメンにより引き起こされ得る。
【0096】
ここで使用する定義「NCI-CTCAE」および「CTCAE」は、がん治療で使用される薬物の有害作用/副作用の標準分類の一連の基準である米国国立がん研究所「有害事象共通用語規準」をいう(Common Terminology基準 for Adverse Events (CTCAE) Version 5.0, Published: November 27, 2017, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, National Cancer Institute; Freites-Martinez et al., Using the Common Terminology基準 for Adverse Events (CTCAE - Version 5.0) to Evaluate the Severity of Adverse Events of Anticancer Therapies. Actas Dermosifiliogr (Engl Ed). 2021 Jan;112(1):90-92参照)。グレード1は有害事象(AE)が軽度、グレード2は中程度、グレード3は重度(すなわち、重度AEまたはSAE)、グレード4が生命を脅かすおよびグレード5は致命的(AE関連死)であることを指す。下表1は、副作用/AE口腔粘膜炎および発熱性好中球減少症のグレード1~5のNCI-CTCAE基準を提供する。
【表1】
【0097】
ここで使用する略語「NHL」は、非ホジキンリンパ腫(非Hodgkinリンパ腫とも称される)をいう。非ホジキンリンパ腫は、びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、リンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫(BL)、縦隔原発(胸腺)B細胞性大細胞型リンパ腫(PMBCL)、形質転換濾胞性および形質転換粘膜関連リンパ系組織(MALT)リンパ腫、原発中枢神経系(CNS)リンパ腫、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連リンパ腫および濾胞性リンパ腫(FL)を含むが、これらに限定されない。
【0098】
ここで使用する略語「OM」は、口腔粘膜炎をいう。
【0099】
ここで使用する用語「組み換え」は、分子生物学および遺伝子工学(例えば分子クローニング)の方法を使用して、人為的に単離、産生および/または設計され(機械によるものを含む)かつ天然で存在しないヌクレオチド配列を含むまたは天然で存在しないヌクレオチド配列内に含まれるまたは天然で関連しないヌクレオチド配列と関連して提供されるまたは天然でもともと関連していたヌクレオチド配列の非存在下に提供される、核酸分子をいう。故に、組み換え核酸分子は、天然で - 例えば生物のゲノム内に - 存在する核酸分子と区別される。例えば、対応するゲノムDNA配列で見られるような、何ら介在イントロン配列なしに相補的DNAまたはmRNA配列の「cDNA」コピーを含む核酸分子は、故に、組み換え核酸分子と見なされる。さらなる例として、組み換えE4ORF1核酸分子は、プロモーターに操作可能に連結したE4ORF1コード配列および/またはコード配列が天然に存在するアデノウイルスゲノムにおいてもともと関連していない他の遺伝子成分を含むべきである。
【0100】
ここで使用する略語「RRT」は、レジメン関連毒性をいう。用語「RRT」および「化学療法副作用」はここでは相互交換可能に使用され、NCI-CTCAE等級制度であらゆるグレードの化学療法副作用を含む。RRTは、血液学的RRTおよび非血液学的RRTを含み得る。血液学的RRTは、血小板減少症(低血小板数)、好中球減少症(低好中球数)、白血球減少症(低白血球数)および貧血(低赤血球数)を含み得る。非血液学的RRTは、口腔/GI毒性(粘膜炎、口腔粘膜炎、悪心、嘔吐および下痢を含む)、発熱性好中球減少症(好中球減少症を有する患者のしばしば他の感染徴候を伴う発熱)、固形臓器毒性(心臓、腎臓、肺およびCNS毒性を含む)、静脈閉塞病および感染を含み得る。
【0101】
ここで使用する略語「SRRT」は、重度レジメン関連毒性をいう。SRRTは、NCI-CTCAE等級制度でグレード3以上のRRT(すなわち、化学療法副作用)である。SRRTは、血液学的SRRTおよび非血液学的SRRTを含む。血液学的SRRTは、血小板減少症(低血小板数)、好中球減少症(低好中球数)、白血球減少症(低白血球数)および貧血(低赤血球数)を含み得る。非血液学的SRRTは、口腔/GI毒性(粘膜炎、口腔粘膜炎、悪心、嘔吐および下痢を含む)、発熱性好中球減少症(好中球減少症を有する患者のしばしば他の感染徴候を伴う発熱)、固形臓器毒性(心臓、腎臓、肺およびCNS毒性を含む)、静脈閉塞病および感染を含み得る。
【0102】
用語「対象」は、哺乳動物 - 例えばヒトおよび非ヒト霊長類ならびにウサギ、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含む他の哺乳動物種 - を含む。ある実施態様において、対象は哺乳動物対象である。ある実施態様において、対象は非ヒト霊長類である。ある実施態様において、対象はヒトである。対象がヒトであるとき、用語「対象」および「患者」は相互交換可能に使用され得る。
【0103】
ここで使用する略語「TBC」は、チオテパ、ブスルファンおよびシクロホスファミド - 複数化学療法薬物の組み合わせ - をいう。TBC化学療法は、CNS浸透性であり、典型的に造血幹細胞移植前に投与される高用量療法(HDT)の形態である。
【0104】
ここで使用する略語「TEAE」は、治療下で発現した有害事象をいう。
【0105】
ここで使用する略語「UVEC」は、臍帯静脈内皮細胞をいう。
【0106】
ここで使用する略語「WBC」は、白血球をいう。
【0107】
内皮細胞
ある実施態様において、ここに記載する内皮細胞(EC)は、当分野で知られるあらゆる適当なタイプの血管内皮細胞である。ある実施態様において、内皮細胞は、初代内皮細胞である。ある実施態様において、内皮細胞はヒトまたは非ヒト霊長類細胞またはウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタまたは他の哺乳動物細胞などの哺乳動物細胞である。ある実施態様において、内皮細胞は原発ヒト内皮細胞である。ある実施態様において、内皮細胞はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などの臍帯静脈内皮細胞(UVEC)である。ある実施態様において、内皮細胞は脂肪ECである。ある実施態様において、内皮細胞は皮膚ECである。ある実施態様において、内皮細胞は心臓ECである。ある実施態様において、内皮細胞は腎臓ECである。ある実施態様において、内皮細胞は肺ECである。ある実施態様において、内皮細胞は肝臓ECである。ある実施態様において、内皮細胞は骨髄ECである。ある実施態様において、内皮細胞は自己ECである。ある実施態様において、内皮細胞は同種ECである。使用できる他の適当な内皮細胞は、米国特許8,465,732(その内容を引用により本明細書に包含させる)に記載のものを含む。
【0108】
E4ORF1
本発明の実施態様のいくつかは、E4ORF1+である操作された内皮細胞(EC) - すなわち、E4ORF1ポリペプチドを発現するEC細胞 - を含む。「E4ORF1」ポリペプチドはアデノウイルスゲノムの初期4(E4)領域のオープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされる。本発明において使用されるE4ORF1+ECは、典型的に内皮細胞におけるE4ORF1コード配列の発現に適するプロモーターに操作可能に連結したE4ORF1コード配列を含む組み換え核酸分子を含む。
【0109】
E4ORF1アミノ酸配列およびヌクレオチド配列は当分野で知られる。あらゆるこのような配列が本発明により使用され得る。ある実施態様において、E4ORF1ポリペプチドはヒトアデノウイルスタイプ2、3、5、7、9、11、12、14、34、35、46、50または52などのあらゆる適当なアデノウイルスタイプまたは株からであり得る。ある好ましい実施態様において、使用されるポリペプチド配列はヒトアデノウイルスタイプ5からである。そのようなアデノウイルスポリペプチドのアミノ酸配列およびそのようなポリペプチドをコードする核酸配列は当分野で周知であり、Genbankデータベースなどの周知の公開で利用可能なデータベースで入手可能である。例えば、適当な配列は次のものを含む:ヒトアデノウイルス9(Genbank Accession No. CAI05991)、ヒトアデノウイルス7(Genbank Accession No. AAR89977)、ヒトアデノウイルス46(Genbank Accession No. AAX70946)、ヒトアデノウイルス52(Genbank Accession No. ABK35065)、ヒトアデノウイルス34(Genbank Accession No. AAW33508)、ヒトアデノウイルス14(Genbank Accession No. AAW33146)、ヒトアデノウイルス50(Genbank Accession No. AAW33554)、ヒトアデノウイルス2(Genbank Accession No. AP.sub.--000196)、ヒトアデノウイルス12(Genbank Accession No. AP.sub.--000141)、ヒトアデノウイルス35(Genbank Accession No. AP.sub.--000607)、ヒトアデノウイルス7(Genbank Accession No. AP.sub.--000570)、ヒトアデノウイルス1(Genbank Accession No. AP.sub.--000533)、ヒトアデノウイルス11(Genbank Accession No. AP.sub.--000474)、ヒトアデノウイルス3(Genbank Accession No. ABB 17792)およびヒトアデノウイルスタイプ5(Genbank Accession No. D12587)。ある実施態様において、使用するE4ORF1配列は、NCBI accession number AZR66741.1を有するものである。ある実施態様において、使用するE4ORF1配列は、NCBI accession number AP_000232.1を有するものである。ある実施態様において、E4ORF1配列は、アミノ酸配列MAAAVEALFVVLEREGAILPRQEGFSGVYVFFSPINFVIPPMGAVMLSLRLRVCIPPGYFGRFLALTDVNQPDVFTESYIMTPDMTEELSVVLFNHGDQFFYGHAGMAVVRLMLIRVVFPVVRQASNV(配列番号1)を有する。
【0110】
ある実施態様において、E4ORF1ポリペプチドは、ここに提供するまたは当分野で知られる特定の配列の何れかのバリアント、誘導体、変異体またはフラグメントであるアミノ酸配列を有するかまたはバリアント、誘導体、変異体またはフラグメントである核酸配列によりコードされるものであってよいが、ただし、そのようなバリアント、誘導体、変異体またはフラグメントはここに記載するアデノウイルスE4ORF1の機能的性質の1以上を有するポリペプチドであるかまたはそれをコードする。ある実施態様において、バリアント、誘導体、変異体またはフラグメントは、既知配列に対して約85%同一性または既知配列に対して約88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ある実施態様において、既知ヌクレオチド配列に対して約50ヌクレオチドまたは約45ヌクレオチドまたは約40ヌクレオチドまたは約35ヌクレオチドまたは約30ヌクレオチドまたは約28ヌクレオチド、26ヌクレオチド、24ヌクレオチド、22ヌクレオチド、20ヌクレオチド、18ヌクレオチド、16ヌクレオチド、14ヌクレオチド、12ヌクレオチド、10ヌクレオチド、9ヌクレオチド、8ヌクレオチド、7ヌクレオチド、6ヌクレオチド、5ヌクレオチド、4ヌクレオチド、3ヌクレオチド、2ヌクレオチドまたは1ヌクレオチド長さが違う既知ヌクレオチド配列のバリアント、誘導体、変異体またはフラグメントが使用される。ある実施態様において、既知アミノ酸配列に対して約50アミノ酸または約45アミノ酸または約40アミノ酸または約35アミノ酸または約30アミノ酸または約28アミノ酸、26アミノ酸、24アミノ酸、22アミノ酸、20アミノ酸、18アミノ酸、16アミノ酸、14アミノ酸、12アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸または1アミノ酸長さが違う既知アミノ配列のバリアント、誘導体、変異体またはフラグメントが使用される。
【0111】
ある実施態様において、E4ORF1配列は、アデノウイルスE4領域からの他の配列無し - 例えばE4領域全体の状況にないまたはE4領域における他のORFを伴わない - で使用される。しかしながら、他の実施態様において、E4ORF1を、E4ORF2、E4ORF3、E4ORF4、E4ORF5またはE4ORF6/7配列などのE4領域からの他のORFの1以上と共に使用し得る。例えば、E4ORF1配列を、他の配列、遺伝子またはコード領域(例えばプロモーター、マーカー遺伝子、抗生物質耐性遺伝子など)を含む構築物(例えばウイルスベクター)で使用でき、ある実施態様において、E4ORF1配列は、E4領域全体を含まないまたはE4ORF2、E4ORF3、E4ORF4および/またはE4ORF5などのE4領域全体からの他のORFを含まない構築物で使用される。
【0112】
E4ORF1コード化配列は、種々の他の配列、遺伝子またはコード領域、例えば、プロモーター、エンハンサー、抗生物質耐性遺伝子、レポーター遺伝子または発現タグ(例えばGFPをコードするヌクレオチド配列など)または望ましいはずであるあらゆる他のヌクレオチド配列または遺伝子を含む構築物またはベクター中に存在し得る。
【0113】
E4ORF1コード化核酸分子は、発現を可能とするための1以上のプロモーターの制御下にあり得る。内皮細胞におけるE4ORF1核酸配列の発現の駆動に利用可能なあらゆるプロモーターが使用され得る。適当なプロモーターの例は、CMV、SV40、RSV、HIV-LtrおよびMMLプロモーターを含むが、これらに限定されない。プロモーターはアデノウイルスゲノムまたはそのバリアントからのプロモーターであってもよい。例えば、ある実施態様において、プロモーターは、アデノウイルスゲノムにおいて天然でE4ORF1の発現を駆動するプロモーターであり得る。しかしながら、他の実施態様において、プロモーターは、アデノウイルスゲノムにおいて天然でE4ORF1の発現を駆動しない。
【0114】
E4ORF1コード化配列は、天然に存在するヌクレオチド、合成ヌクレオチドまたはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ある実施態様において、本発明の核酸分子は、細胞で安定であり、細胞内で直接タンパク質発現/産生指示のために使用できる合成修飾RNAなどのRNAを含み得る。他の実施態様において、E4ORF1コード化配列はDNAを含み得る。DNAが使用される実施態様において、DNA配列は、細胞内の発現を可能とする(および/または促進、増強または制御する)1以上の適当なプロモーターおよび/または調節要素に操作可能に連結でき、1以上の適当なベクターまたは構築物に存在し得る。
【0115】
E4ORF1コード化配列は、トランスフェクション技術およびウイルス介在形質導入技術を含むが、これらに限定されない、当分野で知られるあらゆる適当な系を使用して、内皮細胞に導入され得る。本発明により使用され得るトランスフェクション方法は、リポソーム介在トランスフェクション、ポリブレン介在トランスフェクション、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクションおよび微粒子銃を含むが、これらに限定されない。使用され得るウイルス介在形質導入方法は、レンチウイルス介在形質導入、アデノウイルス介在形質導入、レトロウイルス介在形質導入、アデノ随伴ウイルス介在形質導入およびヘルペスウイルス介在形質導入を含むが、これらに限定されない。
【0116】
ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、ベクター中にある。ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、ウイルスベクター中にある。ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、レンチウイルスベクター中にある。ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、アデノウイルスベクター中にある。ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、アデノ随伴ウイルスベクター中にある。ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、レトロウイルスベクター中にある。ある実施態様において、E4ORF1コード化配列は、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)ベクター(レトロウイルスベクターの1タイプ) 中にある。
【0117】
ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)はE4ORF1+およびE4ORF1陰性内皮細胞両者を含む(実施例に記載するとおり、臨床治験の実施に際して使用したE4ORF1+HUVECはE4ORF1+E4ORF1陰性内皮細胞両者を含んだ)。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約75%はE4ORF1+である。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約80%はE4ORF1+である。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約85%はE4ORF1+である。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約90%はE4ORF1+である。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約95%はE4ORF1+である。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約98%はE4ORF1+である。ある実施態様において、治療組成物の内皮細胞の少なくとも約99%はE4ORF1+である。
【0118】
実施例に記載するとおり、臨床治験の実施に際して使用したE4ORF1+HUVECは、細胞E4ORF1あたり、約0.88~約1.4コピーの統合されたE4ORF1コード配列を含んだ。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり1コピー未満のゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり1コピーを超えるゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約0.7コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約0.8コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約0.9コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1.0コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1.1コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1.2コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1.3コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1.4コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。ある実施態様において、本発明の組成物(すなわち、治療組成物)は、組成物中の内皮細胞全体にわたる平均で、細胞当たり約1.5コピーのゲノム統合されたE4ORF1コード配列を含む、内皮細胞を含む。
【0119】
ある実施態様において、E4ORF1コード配列の存在は、PCRベースの技術(例えば、定量的PCR)およびシーケンシングベースの技術(例えば、定量的次世代シーケンシングベースの技術)などの当分野で知られる標準核酸検出および/または定量アッセイを使用して、確認および/または定量できる。ある実施態様において、E4ORF1ポリペプチドの存在は、抗体ベースの技術などの当分野で知られる標準タンパク質検出および/または定量アッセイを使用して、確認および/または定量できる。ある実施態様において、機能的E4ORF1ポリペプチドの発現(または機能的E4ORF1ポリペプチドの適切な量)は、当分野で知られる(例えば米国特許8,465,732に記載の何れか)または本特許明細書の実施例セクションに記載される、E4ORF1発現内皮細胞の機能的性質の何れかの機能的アッセイ(例えば、インビトロまたはインビボアッセイ)を使用して、確認および/または定量できる。このような実施態様のいくつかにいおいて、このようなアッセイの結果を、例えば一貫性の評価のためおよび/またはそれに基づく何らかの調節をするために、E4ORF1+内皮細胞のバッチ間(例えば試験バッチと既知E4ORF1性質を有する対照バッチの間)で比較し得る。
【0120】
内皮細胞におけるE4ORF1配列の取り扱い、操作および発現は、分子生物学および細胞生物学の慣用技術を使用して、実施し得る。このような技術は当分野で周知である。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis eds., “Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Springs Harbor Laboratory Press, 1989); Methods of Enzymology (Academic Press, Inc.)のシリーズまたはヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の取り扱い、操作および発現において使用すべき適当な技術のガイダンスについてのあらゆる他の標準的教科書における教示を参照し得る。内皮細胞におけるE4ORF1配列の取り扱いおよび発現に関連するさらなる態様は、米国特許8,465,732(その内容を引用により本明細書に包含させる)に記載さえる。
【0121】
治療組成物
【0122】
ここで使用する用語「治療組成物」は、ヒト対象への投与に適する組成物をいう。用語「治療組成物」および「組成物」は - 使用される文脈から明らかであるとおり - ここでは相互交換可能に使用され得る。例えば、組成物がヒト対象への投与の状況で記載されるとき、組成物は、必然的に治療組成物である。
【0123】
ある実施態様において、本発明は、ヒト対象への投与に適する、溶液中に有効量の特定の内皮細胞(例えばE4ORF1+HUVEC)を含む治療組成物を提供する。このような組成物は、典型的に特定の内皮細胞を生理学的食塩水溶液中に含む。ある実施態様において、組成物は、緩衝液、塩、防腐剤、多糖(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)などのヒト対象への投与に適し、細胞療法に適合性である1以上のさらなる添加物を含み得る。ある実施態様において、組成物は、低濃度の凍結保存剤を含み得る(重要なことに、本明細書の実施例セクションに示すフェーズ1試験は、E4ORF1+HUVECおよび低濃度の凍結保存剤DMSOを含む治療組成物がヒト対象に安全に投与され得ることを示した)。ある実施態様において、本発明の治療組成物は、デキストラン40を含む。ある実施態様において、本発明の治療組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む。ある実施態様において、本発明の治療組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。ある実施態様において、本発明の治療組成物は、E4ORF1+HUVEC細胞、デキストラン40、HSAおよびDMSOを生理学的食塩水中に含む。このような実施態様においてこのような組成物は、E4ORF1+HUVEC細胞を約5×106細胞/mlの濃度で含む。このような実施態様においてこのような組成物は、デキストラン40を約8mg/mlの濃度で含む。このような実施態様においてこのような組成物は、HSAを約4.5mg/mlの濃度で含む。このような実施態様においてこのような組成物は、DMSOを約0.25mg/mlの濃度で含む。
【0124】
典型的に、本発明の方法で使用する内皮細胞(例えば、E4ORF1+HUVEC)は、凍結形態 - すなわち特定の内皮細胞(例えばE4ORF1+HUVEC)および凍結保存剤を含む凍結組成物 - で供給される(例えば、対象への投与が行われる医療機関に)。凍結組成物は、例えば、当分野で知られる標準方法を使用して、使用前に解凍される。ある実施態様において、凍結組成物は、解凍され、次いで希釈されずに対象に投与され得る。しかしながら、他の実施態様において、凍結組成物は、解凍され、次いで、例えば上記のとおり、所望のまたは特定濃度の細胞および所望のまたは特定濃度の添加物を含む治療組成物をもたらすために適当な希釈剤で希釈される。
【0125】
ある実施態様において、本発明は、無菌包装中に本発明の治療組成物および対象に治療組成物を投与するための指示を含む、キットを提供する。
【0126】
ある実施態様において、本発明は、無菌包装中に本発明の内皮細胞を含む凍結保存組成物(例えば、E4ORF1+HUVEC)および凍結保存組成物から治療組成物を調製し、治療組成物を対象に投与するための指示を含む、キットを提供する。
【0127】
投与
【0128】
本発明は、対象に有効量の内皮細胞または内皮細胞を含む治療組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0129】
あらゆる適当な投与経路が使用され得る。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象に静脈内、例えばIV輸注により投与される。ある実施態様において、IV輸注は、例えば、末梢IVカテーテルを使用して、末梢に投与される。ある実施態様において、IV輸注は、例えば、末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)、中心静脈カテーテル(CVC)、ヒックマンカテーテルまたは留置ポートデバイスを使用して中心性に投与される。
【0130】
有効量の内皮細胞が対象に投与されるように、あらゆる適当な投与のタイミングまたは投与の速度または投与レジメンが使用され得る。
【0131】
ある実施態様において、有効量の内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象に単回投与で(すなわち、単回投与/投薬レジメンで)投与される。ある実施態様において、有効量の内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、種々の回数(すなわち、複数回投与/投薬レジメンで)で送達される複数回投与で別々に対象に投与される2つ以上の用量に分割される。このような複数回投与レジメンの別々の用量は、あらゆる適当な時間離し得る。ある実施態様において、このような複数回投与レジメンの別々の用量は、1日離してまたは2日離してまたはまたは3日離して投与される。
【0132】
ある実施態様において、有効量の内皮細胞は、所望の時間にわたるIV輸注で対象に投与される。ある実施態様において、有効量は、約1時間にわたるIV輸注で対象に投与される。ある実施態様において、有効量は、約6ml/分の速度のIV輸注で対象に投与される。ある実施態様において、有効量の内皮細胞は、約30×106細胞/分の速度のIV輸注で対象に投与される。
【0133】
ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~28日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~7日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~2日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象が化学療法の副作用を初めて示した0~1日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)を、対象が化学療法の副作用を初めて示す前に対象に最初に投与する。
【0134】
ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~28日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~7日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~2日後に対象に最初に投与される。ある実施態様において、内皮細胞(または内皮細胞を含む組成物)は、対象の化学療法での処置が終了した0~1日後に対象に最初に投与される。
【0135】
このような実施態様において、対象は、内皮細胞が対象に投与されるのと同時に造血幹細胞移植を受ける。このような実施態様において、造血幹細胞移植および内皮細胞を、対象に一緒に - 例えば同じ静脈内(IV)輸注で - 投与する。
【0136】
ある実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた後に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けるのと同じ日、すなわち、0日目に対象に投与され、ここで、0日目は造血細胞移植の日である)。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた1日後(すなわち、1日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた2日後(すなわち、2日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた3日後(すなわち、3日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約2時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約3時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約4時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約6時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約8時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約10時間後に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受けた約12時間後に対象に投与される。
【0137】
ある実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける1日前(すなわち、-1日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける2日前(すなわち、-2日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける3日前(すなわち、-3日目)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約2時間前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約3時間前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約4時間前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約6時間前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約8時間前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約10時間前に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、対象が造血細胞移植を受ける約12時間前に対象に投与される。
【0138】
このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の1日以内(すなわち、前後いずれか)に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の2日以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の3日以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約2時間以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約3時間以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約4時間以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約6時間以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約8時間以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約10時間以内に対象に投与される。このような実施態様において、内皮細胞は、造血細胞移植の約12時間以内に対象に投与される。
【0139】
造血幹細胞移植
【0140】
造血幹細胞移植は当分野で周知である標準方法を使用して実施される。
【0141】
例えば、自己造血細胞移植(AHCT)を実施する方法は当分野で周知であり、周知方法を使用しかつ周知方法を使用して得た自己造血細胞を使用して、医療専門家により容易に実施され得る。このような方法の例は、Dahi, P.B., et al., Strategies to improve outcomes of autologous hematopoietic cell transplant in lymphoma. Bone Marrow Transplant, 2019. 54(7): p. 943-960, Gyurkocza & Sandmaier, Conditioning regimens for hematopoietic cell transplantation: one size does not fit all. Blood, 2014. 124(3): p. 344-53, Loke et al., Outcomes of EAM conditioned autologous haematopoietic SCT for lymphoma. A matched pairs retrospective single-centre study analysis, Bone Marrow Transplantation (2013) 48, 1486-1487(その内容を引用により本明細書に包含させる)に記載される。
【0142】
同様に、同種造血幹細胞移植(AlloSCT)を実施する方法は当分野で周知であり、周知方法を使用しかつ周知方法を使用して得た同種臍帯血幹細胞を使用して、医療専門家により容易に実施され得る。このような方法の例は、Bacigalupo et al., Defining the intensity of conditioning regimens working definitions, Biol Blood Marrow Transplant. 2009; 15(12): 1628-1633, Gyurkocza & Sandmaier, Conditioning regimens for hematopoietic cell transplantation: one size does not fit all. Blood, 2014. 124(3): p. 344-53, Chaudhry et al., The Incidence and Severity of Oral Mucositis among Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation Patients: A Systematic Review, Biol Blood Marrow Transplant 22 (2016) 605e616, Eapen et al., “Mismatched Related and Unrelated Donors for Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation for Adults with Hematologic Malignancies, Biol Blood Marrow Transplant 20 (2014) 1485e1492に記載される。
【0143】
高用量療法
高用量療法(HDT)は当分野で周知である方法および化学療法剤を使用して実施される。
【0144】
例えば、リンパ腫および白血病(ならびに他の状態)の処置のためにHDT治療を実施する多数の方法は当分野で周知であり、周知方法を使用しかつ周知化学療法剤または化学療法剤の組み合わせを使用して、医療専門家により容易に実施され得る。適当なHDT方法および薬剤の一部例は、本特許明細書の実施例セクションに記載される(すなわち、実施例に記載する臨床治験において使用されたもの)。適当な方法および薬剤のさらなる例は、Philip, T., et al., High-dose therapy and autologous bone marrow transplantation after failure of conventional chemotherapy in adults with intermediate-grade or high-grade non-Hodg kin's lymphoma. N Engl J Med, 1987. 316(24): p. 1493-8 and Philip, T., et al., Autologous bone marrow transplantation as compared with salvage chemotherapy in relapses of chemotherapy-sensitive non-Hodgkin's lymphoma. N Engl J Med, 1995. 333(23): p. 1540-5, Gyurkocza & Sandmaier, Conditioning regimens for hematopoietic cell transplantation: one size does not fit all. Blood, 2014. 124(3): p. 344-53, Loke et al., Outcomes of EAM conditioned autologous haematopoietic SCT for lymphoma. A matched pairs retrospective single-centre study analysis, Bone Marrow Transplantation (2013) 48, 1486-1487に記載される。
【0145】
補助的療法
多様な補助的治療方法または補助的薬剤を、ここに記載する方法および組成物と組み合わせて使用し得る。例えば、このような補助的処置は、対象の放射線での処置、対象の化学療法剤での処置、対象の免疫療法(例えばチェックポイント阻害剤 - 例えばキイトルーダ(登録商標))での処置、対象の抗体(例えばハーセプチン(登録商標))での処置、対象の細胞療法での処置、対象の手術での処置、対象の増殖因子、サイトカイン、抗炎症剤、抗細菌剤、抗真菌剤、制吐剤、止瀉剤、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、赤血球新生剤、抗不整脈剤での処置などを含み得る。対象の根柢の状態(例えば、がん)の処置または対照の化学療法の副作用の処置に有用であるあらゆる処置を、ここに記載する方法と組合わせて使用し得る。HDTを受けている対象のケアに有用な適当な「標準治療」支持療法の例は、実施例4に提供される。
【0146】
本発明を、次の非限定的実施例を引用してさらに記載する。
【実施例】
【0147】
実施例概論
高用量療法および自己造血細胞移植(HDT-AHCT)は、高悪性度全身性非ホジキン(NHL)およびホジキンリンパ腫(HL)を有する患者の標準治療療法であり、治癒目的で患者に投与される(Philip et al., “High-dose therapy and autologous bone marrow transplantation after failure of conventional chemotherapy in adults with intermediate-Grade or high-Grade non-Hodgkin's lymphoma,” N. Engl. J. Med, 1987. 316(24): p. 1493-8; Gisselbrecht et al., “Salvage regimens with autologous transplantation for relapsed large B-cell lymphoma in the rituximab era,” J. Clin. Oncol., 2010. 28(27): p. 4184-90; Crump, et al., “Outcomes in refractory diffuse large B-cell lymphoma: results from the international SCHOLAR-1 study,” Blood, 2017. 130(16): p. 1800-1808)。米国で最も広く使用される高用量療法(HDT)レジメンはカルムスチン、エトポシド、シタラビンおよびメルファランの使用を含み、一般に「BEAM」と称される(Dahi, et al., “Strategies to improve outcomes of autologous hematopoietic cell transplant in lymphoma,” Bone Marrow Transplant, 2019. 54(7): p. 943-960). When compared to non-myeloablative chemotherapy plus radiotherapy, BEAM HDT followed by AHCT has demonstrated superior 5-year overall survival in patients with chemotherapy-sensitive relapsed lymphoma (Philip, et al., “Autologous bone marrow transplantation as compared with salvage chemotherapy in relapses of chemotherapy-sensitive non-Hodgkin's lymphoma,” N. Engl. J. Med., 1995. 333(23): p. 1540-5; Mills et al., “BEAM chemotherapy and autologous bone marrow transplantation for patients with relapsed or refractory non-Hodgkin's lymphoma,” J. Clin. Oncol., 1995. 13(3): p. 588-95)。BEAMは、BeEAM(カルムスチンの代わりにベンダムスチン)などのBEAM様代替物と共に、リンパ腫に対する現代のHDTの大部分を占める(Vose et al., “Phase I trial of iodine-131 tositumomab with high-dose chemotherapy and autologous stem-cell transplantation for relapsed non-Hodgkin's lymphoma,” J. Clin. Oncol., 2005, 23(3): p. 461-7; Friedberg, “Relapsed/refractory diffuse large B-cell lymphoma,” Hematology Am. Soc. Hematol. Educ. Program, 2011. 2011: p. 498-505; Chen et al., “Impact of conditioning regimen on outcomes for patients with lymphoma undergoing high-dose therapy with autologous hematopoietic cell transplantation,” Biol. Blood Marrow Transplant, 2015. 21(6): p. 1046-1053)。
【0148】
HDT-AHCTは、効果的であり、治癒的である可能性があるが、患者罹病率を増加させ、死亡リスクの増加に至り得る重度レジメン関連毒性(SRRT)を伴う(Olivieri et al., “A Comparison of the Conditioning Regimens BEAM and FEAM for Autologous Hematopoietic Stem Cell Transplantation in Lymphoma:An Observational Study on 1038 Patients From Fondazione Italiana Linfomi.” Biol. Blood Marrow Transplant, 2018. 24(9): p. 1814-1822)。SRRTは、複数臓器が関与するHDTオフターゲット細胞毒性の結果として主に生ずると考えられる - 細胞ターンオーバーが最高である臓器が主であり、高齢患者および併発状態を有する患者は、最高SRRT発生率、重症度および死亡率を示す(Majhail et al., “Indications for Autologous and Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation: Guidelines from the American Society for Blood and Marrow Transplantation,” Biol. Blood Marrow Transplant, 2015. 21(11): p. 1863-1869; Dahi et al., “Favorable outcomes in elderly patients undergoing high-dose therapy and autologous stem cell transplantation for non-Hodgkin lymphoma,” Biol. Blood Marrow Transplant, 2014. 20(12): p. 2004-9; Anderson et al., “Symptom burden in patients undergoing autologous stem-cell transplantation,” Bone Marrow Transplant, 2007. 39(12): p. 759-66)。
【0149】
ここ数十年の支持療法および移植医療の改善により、年間で実施されるHDT-AHCTの数は一貫して増えている。これらの改善は、造血増殖因子、感染予防ならびに化学療法誘発悪心および嘔吐(CINV)に対する制吐剤の使用を含む。しかしながら、移植後3~5日目に生ずる重度悪心、嘔吐および下痢を含む口腔-消化管のびまん性および重度粘膜炎を反映する臨床的徴候および症状は数年変わっていない。同様に、好中球減少性発熱および感染は、頻繁に発生し続けている。
【0150】
グレード≧3口腔粘膜炎および悪心は、HDT-AHCTで経験する最も重度有害作用の2つとして同定されている(Stiff, “Mucositis associated with stem cell transplantation: current status and innovative approaches to management,” Bone Marrow Transplant, 2001. 27 Suppl 2: p. S3-S11)。さらに、多くの患者は、重度毒性のリスクまたは併存疾患のため、移植不適格と見なされ、故に、治癒的である可能性治療が奪われている。
【0151】
全身性リンパ腫に対するHDT-AHCTを受けている患者は、しばしばSRRTを経験する。大部分の公開された試験は、グレード≧3 AEが患者の最大100%で生ずることを示す[10、24]。BEAMまたは類似コンディショニングレジメンで処置される患者について、消化管粘膜へのオフターゲット細胞毒性損傷は、口腔/GI SRRT(口腔粘膜炎、悪心、嘔吐および下痢)として顕在化し、最も一般的なおよび永続性の重度かつ日常生活に支障を来す症状の一部を示す。公開された臨床試験は、BEAMコンディショニングを受けている対象における全グレードの口腔粘膜炎の割合は、61~84%に達し得て、グレード≧3口腔粘膜炎は30%に達し得ることを示す[10、25]。この割合は、中央/範囲年齢72(70~77)歳の対象でグレード≧3口腔粘膜炎に対する患者管理鎮痛使用の割合が40%であった、Dahi, et al.による試験で示されるとおり、高齢患者で増加する[26]。下痢はBEAMでの細胞毒性コンディショニング治療後極めて一般的な有害事象であり、グレード≧3は患者の約20%で生じ、一方グレード≧3悪心および嘔吐は患者の最大20%で生ずる[10、24]。
【0152】
BEAMまたはFEAM(カルムスチンの代わりにホテムスチン)コンディショニングレジメンを受ける、患者の中央年齢は53歳(16~79歳)であり、うち607患者がBEAM処置患者である、リンパ腫に対するAHCTを受けている1038患者の大規模遡及調査において、口腔粘膜炎、悪心/嘔吐および下痢のグレード≧3事象の割合はそれぞれ31%、12%および21%であった。Olivieri, J., et al., A Comparison of the Conditioning Regimens BEAM and FEAM for Autologous Hematopoietic Stem Cell Transplantation in Lymphoma: An Observational Study on 1038 Patients From Fondazione Italiana Linfomi. Biol Blood Marrow Transplant, 2018. 24(9): p. 1814-1822。これらの知見は、2019~2020年にBEAM(96%)で処置し、中央年齢58歳(範囲20,77)の143患者における口腔/GI SRRTの割合を評価する後向きチャート審査試験により裏付けられた。この試験において、グレード≧3口腔粘膜炎、悪心、嘔吐および下痢の割合はそれぞれ10%、20%、2%、26%であり、累積的発生率は41%であった。口腔/GI SRRTの割合は<40歳の患者で25%であり、≧40歳の患者で46%であった。
【0153】
重要なことに、これら後向き試験の両者で報告された毒性は標準治療支持療法手段の使用にも関わらず発生し、これは最近10年で意味のある改善はされていない。
【0154】
故に、患者がHDTにより良好な耐容性を示すことができる介入に対する重大かつ満たされていない医学的必要性が存在する。
【0155】
本発明はこの必要性に取り組む。特に、そして、以下の実施例に記載するとおり、アデノウイルスE4ORF1タンパク質を発現するよう操作された同種ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)(すなわち「E4ORF1+HUVEC」または「AB-205」細胞)のホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を有するヒト対象への - 高用量療法(すなわち骨髄除去化学療法)および自己幹細胞移植(HDT-ASCT)の補助剤としての - 投与が安全であるだけでなく、重度レジメン関連毒性の緩和に有効であることも本発明により発見された。
【0156】
このフェーズ1臨床治験のさらなる詳細は、下記の実施例2に提供する。種々の他のプロトコールおよび試験の詳細は、実施例1および3~5に提供する。
【0157】
実施例1
E4ORF1+HUVEC細胞の調製
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、同種ドナーヒト臍帯の臍帯静脈から、コラゲナーゼでの酵素消化により単離した。臍帯静脈をハンクス平衡塩溶液(HBSS)で洗い流し、次いで0.2%(w/v)コラゲナーゼで満たし、両端を挟んだ。臍帯を、20~25℃で30分間インキュベートして、内皮細胞を臍帯静脈から遊離させた。30分後、遊離した細胞を静脈から洗い流し、コニカルチューブに移した。臍帯静脈を再びHBSSで洗浄し、洗浄液を同じコニカルチューブに加えた。チューブを遠心分離し、上清を吸引し、続いてペレットを10%ウシ胎児血清、20ng/mL FGF-2、10U/mL ヘパリン、40μg/mL ゲンタマイシン、10mM HEPESおよび1×Glutamaxを添加したM199ベースの培地からなる12mLの内皮細胞増殖培地に再懸濁した。次いで、細胞をT-75フラスコ中の内皮細胞増殖培地に移し、37℃、5%CO2で2日間インキュベートした。
【0158】
2日間培養後、HUVECを、E4ORF1発現カセット(配列番号1をコード)を含むレトロウイルス(MMLV)ベクターで、約0.3~0.5の感染効率(MOI)で形質導入した。形質導入4日後、内皮細胞増殖培地をゲンタマイシン含有無血清選択培地に置き換え、細胞を - E4ORF1+形質導入細胞を選択するため - 選択培地で5日間培養した。その後、細胞を内皮細胞増殖培地で再給餌し、閉鎖系バイオリアクターを使用して、培養して増殖させた。速度制御凍結プログラムを使用する凍結保存を、細胞バンクにするおよび/または必要となるまで細胞を維持するために、必要に応じて使用した。凍結保存後、細胞を再び閉鎖系バイオリアクターを利用して増殖させて、患者に投与するのに十分な細胞を産生した。このアプローチにより産生された細胞の評価は、平均ウイルスコピー数(各細胞の集団全体に統合されたウイルスの平均コピー数)は約0.88~約1.4であった。これは、集団全体としての平均であり、組成物がE4ORF1+細胞およびE4ORF1細胞(E4ORF1を発現する内皮細胞およびしない内皮細胞両者)を含むことを示す。さらに、集団が1コピーを超えるE4ORF1導入遺伝子を含む内皮細胞を含み得ることを示す。
【0159】
実施例2
高用量療法および自己幹細胞移植を受けているリンパ腫を有する成人におけるAB-205のフェーズ1、オープンラベル、非無作為化、多施設治験
フェーズ1臨床治験(clinicaltrials.gov identifier NCT03925935)を、高用量化学療法(放射線を伴うまたは伴わない)および自己幹細胞移植(HDT-ASCT)の補助剤としてホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を有する成人対象にE4ORF1+HUVECを含む同種治療組成物(AB-205)を投与する安全性の評価を実施した。E4ORF1+HUVECを実施例1に記載のとおり調製した。
【0160】
この実施例は、2つのサブセクション - 実施例2A、2Bおよび2C - からなる。全て同じフェーズ1臨床治験に関する。実施例2Aは、患者が3コホートで処置された(各々単回E4ORF1+HUVEC投与を受ける)治験の初期段階のデータを提供する。実施例2Bは、患者が5コホートで処置され(コホート1~3は単回E4ORF1+HUVEC投与を受け、そしてコホート4~5はE4ORF1+HUVECの2回投与を受ける)、さらなるデータ分析が実施された治験の後期段階(さらなる患者および長期フォローアップ)からのデータを提供する。実施例2Cは、得られた結果の分析を記載する。
【0161】
実施例2A
単回投与レジメンで複数用量のAB-205の安全性&有効性
放射線を伴うまたは伴わない高用量化学療法および自己幹細胞移植(HDT-ASCT)を受けて化学感受性寛解であるホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を有する成人対象を募集した。
【0162】
試験を、(a)輸注24時間以内の重度輸注関連毒性、(b)ASCT入院時~+100日目の米国国立がん研究所有害事象共通用語規準バージョン5(「NCI CTCAE v. 5.0」)に基づくグレード3以上の全有害事象および(c)グレード3およびそれ以上の中咽頭粘膜炎、悪心、嘔吐および/または下痢を含む粘膜毒性の発生率の測定により、HDT-ASCT後投与したE4ORF1 HUVECの漸増単回用量輸注の安全性を評価するため実施した。
【0163】
試験はまた好中球生着までの時間(ASCT後、3日連続絶対好中球数(ANC))≧500/μLの最初の日として定義)、血小板生着までの時間(ASCT後、輸血サポートなく7日連続血小板数≧20,000/μLの最初の日として定義)、ASCT後+14日目、+28日目および+100日目のリンパ系(T、BおよびNK細胞)回復、ASCT後+100日目、+180日目および+1年目の無進行生存、ASCT後+1年目の非再発死亡率およびASCT後1年の全体的生存を評価するためにも実施した。
【0164】
登録対象は、処置腫瘍科医により決定されるとおり、BEAM、BeEAM、CBVまたはTBC骨髄除去コンディショニングレジメンを使用する、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫に対する計画されたHDT-ASCT処置を受けた。
【0165】
身体局所放射線療法も - 処置担当腫瘍科医により決定されるとおり - 許容された。
【0166】
自己幹細胞輸注を、標準プロトコールを使用して患者に投与した。幹細胞輸注投与日を「0日目」と指定する。幹細胞輸注に対する急性反応が生じないことを確認後、生理学的食塩水溶液(デキストラン40およびHSAを含む)中約5.0×106細胞/ml濃度のE4ORF1+HUVECからなる治療組成物を、静脈内輸注により患者に投与した。E4ORF1+HUVECの輸注を、自己幹細胞輸注完了4時間後に開始し、2時間内に完了した。E4ORF1+HUVECの種々の用量のを、次のとおりの3つの別々の患者コホートの各々に投与した:
・ コホート1 - 5×106細胞/キログラム対象体重 -0日目。
・ コホート2 - 10×106細胞/キログラム対象体重 -0日目。
・ コホート3 - 20×106細胞/キログラム対象体重 -0日目。
【0167】
下記データは、コホート1~3で処置された25対象からであり、そのうち23名は少なくとも30日間フォローアップした(実施例2Bは、長期患者フォローアップからのデータを含む)。患者中央年齢は56歳(範囲22~69歳)であり、12対象が55歳を超えた。各コホートにおける処置患者数は次のとおりであった:
【表2】
【0168】
少なくとも30日間フォローアップした23対象中、16対象(70%)はCNS病変のないリンパ腫を有し、7対象(30%)はCNSリンパ腫を有した。CNSリンパ腫病変を有する対象は、原発性(n=6)または二次性(n=1)CNS病変を有するかに関わらず、全員CNS浸透レジメンTBCで処置した(TBCなどのCNS浸透レジメンは、重度レジメン関連多臓器毒性の発生率が極めて高く、長期であることが知られる)。残りの対象は、非CNS浸透コンディショニングレジメンを用いるHDT-ASCTを受けた:標準BEAM、BeEAMまたはCBVコンディショニング(BEAM様) - リツキシマブを併用するまたはしない。この群の患者の特徴を下表3に示す。
【表3】
【0169】
表3で使用する定義は次のとおりである:「HL」はホジキンリンパ腫であり;「NHL」は非ホジキンリンパ腫であり;「DLBCL」はびまん性B細胞性大細胞型リンパ腫であり;「PTCL TFH」はTfh表現型を有する末梢T細胞リンパ腫であり;「TCL」はT細胞リンパ腫である。
【0170】
実施例2Aに示す分析当時、全対象は生存しており、疾患進行はなかった。
【0171】
上記のとおり、NCI CTCAEシステム(バージョン5.0)を有害事象(AE)の等級付けに使用した。有害事象(グレード≧1のあらゆる)は、HDT-ASCTを受ける対象で典型的である、100%の対象で報告された。公開されているデータに一致して、CNS浸透HDTレジメンで処置された対象は、非CNSリンパ腫(再発-難治性(「R/R」)リンパ腫)に用いられるHDTレジメンで処置された対象と比較して、血液学的および臓器毒性の発生率が高く、期間が長かった。特に、TBCでコンディショニングされた7対象は、5対象における発熱性好中球減少症の7エピソードを含む30のグレード3~4非血液学的毒性を含む60のCTCAEグレード3~4 AEを有した。全体として、41のグレード3~4 AEがあった。G3~4 AEの数は、コホート1、2、3でそれぞれ17(5対象)、15(5/6対象)、9(4/5対象)であった。HDT-ASCTについて予想されるとおり、グレード3~4 AEの圧倒的多数は血液学的であった。
【0172】
消化管および発熱性好中球減少症が関与するある種のAEの比較的高い発生率を考慮して、これらの事象を臓器毒性の指標として評価した。特に、重度(グレード≧3)消化器粘膜炎、悪心/嘔吐/下痢(N/V/D)および発熱性好中球減少症の発生率を、臓器毒性全体に対するE4ORF1+HUVECの投与の影響の指標として使用した。他の支持的観察は、グレード3+腎炎、肺臓炎、CNS炎症、肝炎および敗血症の発生率を含むが、これらに限定されなかった。下表4は、観察されたAEデータの一部を要約する。
【表4】
【0173】
重要なことに、BEAMコンディショニングでHDT-HCTを受けている患者で、グレード3以上の口腔粘膜炎の発生の報告はなく、E4ORF1+HUVECの投与は試験した全用量で口腔粘膜炎を緩和したことが示唆される。公表されている患者における少なくともグレード3の口腔粘膜炎の発生率は約20%である。
【0174】
複合胃腸有害事象(口腔粘膜炎、口腔疼痛、悪心、嘔吐および下痢)について、グレード3~4 AEはなかった - 同様に、E4ORF1+HUVECの投与は試験した全用量でこれらAEを緩和することが示唆された。7(43%)対象で15のグレード2 AEがあった。3(19%)対象でグレード3鼻血、ライノウイルス感染、低カリウム血症、高カリウム血症およびグレード4上室性頻脈を含む5つのグレード3~4非血液学的末端器官AEしかなかった。
【0175】
顕著なことに、発熱性好中球減少症の発生率は、コホート1の100%(5/5)からコホート2の80%(5/6)およびコホート3の20%(1/5)対象に減少した - E4ORF1+HUVECの投与が用量依存的様式で発熱性好中球減少症を減少させることが示される。
【0176】
次の観察もなされた。TBC含有レジメンを受けていない2患者のみで、重度(グレード3以上)副作用が報告された。2日以内に解消した鼻血(鼻出血)、3日以内に解消した感染性腸炎および1日以内に解消した敗血症の各1事象を含んだ。TBCレジメンを受けていない患者の何れでも、中程度を超える副作用の他の報告はなかった。うつ病、妄想、せん妄、多幸感、幻覚、性的衝動の変化(増加または低下)、躁病、人格変化または自殺念慮の副作用は報告されなかった。1患者の軽度錯乱が報告された。1患者のみが何らかの心房性機能不全を報告した;その患者はTBCレジメンを受けた。心停止、伝導障害、心不全、心臓弁疾患、心筋梗塞、心筋炎、心外膜液、心膜炎、細動または心室頻脈の患者の報告はなかった。1患者で、1日以内に解消した軽度心悸亢進(グレード1)が報告された。耳疼痛、聴力障害、耳鳴りまたは回転性めまいの患者の報告はなかった。唯一報告されためまいは軽度であった(CTCAE v5;グレード1)。内分泌障害は報告されなかった。あらゆる患者で報告された唯一の眼副作用は、かすみ目であった。白内障、角膜潰瘍化、ドライアイまたは何らかの他の眼障害の発症の患者の報告はなかった。肛門粘膜炎、肛門瘻孔発症、大腸炎およびいくつかの他の消化器副作用の患者の報告はなかった。1患者のみで重度腹痛が報告された。これは、TBCレジメンを受けている患者であった。上記以外のその他で、報告された他の胃腸副作用は軽度または中程度であり、大部分は短期間であった。
【0177】
標準治療の一部として実施する日常的検査に加えて、全対象でベースライン、2日目、7日目、14日目、21日目、28日目、56日目および100日目に血液検査を実施した。これらの時点で、血液尿素窒素、血清クレアチニン、クロライド、リン酸、ナトリウム、重炭酸、アスパラギン酸、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アルブミン、総タンパク質、総ビリルビン、直接ビリルビンまたは乳酸デヒドロゲナーゼに臨床的に有意な変化(上昇または減少)を示す患者はなかった。いずれもTBCレジメンを受けている2患者のみが、カルシウムの臨床的に有意な変化を示した;これら患者の一方について、変化は1回の試験日(2日目)に限定的であった。いずれもTBCレジメンを受けている2患者のみがマグネシウムの臨床的に有意な変化を示した;これら患者の両者について、変化は1回の試験日に限定的であった。BEAMレジメンを受けている1患者のみが、グルコースの臨床的に有意な変化を示した;これはベースライン(処置前)および0日目および2日目に顕著であったが、その後報告されなかった。
【0178】
2患者のみで浮腫が報告された;両者ともTBCレジメンを受けた;一方は軽度(グレード1)、他方は中程度(グレード2)と報告された。疲労が報告された大多数の患者はグレード1のみであった。1患者のみ全身性筋脱力を報告した。3患者のみが肝臓機能不全に関連する問題(高ビリルビン、高トランスフェラーゼ酵素)を報告した;全3例とも軽度(グレード1)と考えられた。中程度(グレード2)と考えられる1尿路感染以外、尿路問題は報告されなかった。3患者で末梢感覚ニューロパチーが報告され、そのうち2名はTBCレジメンを受けていた - 1名はグレード1および他はグレード2(中程度)と考えられた。1患者のみで月経困難症が報告され、この患者はTBCを受けていた;月経困難症は軽度(グレード1)と考えられた。
【0179】
生着細胞数確認済みの13対象で、血小板生着までの中央時間は9(範囲0~14)であり、一方好中球生着までの中央日数は10(範囲8~13)であった。血小板生着は6(46%)対象で好中球生着に先行し、一方全13(100%)対象で好中球生着前または1日以内に血小板が生着した。
【0180】
【0181】
実施例2B
単回または2回投与レジメンを使用して送達するAB-205処置および複数用量の安全性&有効性の拡大試験
この実施例は、E4ORF1+HUVECを含む治療組成物(すなわちAB-205)で処置され、少なくとも100日間フォローアップされた全身性リンパ腫(CNS病変がない)を有する35対象からのデータを含む。この実施例は、AHCT後0日目の5×106~20×106 E4ORF1+HUVEC細胞/kgの投与後に、2日目のさらなる10×106細胞/kgの投与を伴うまたは伴わないで得た投与量漸増データを含む。対象は次のHDTレジメンを受けた:BEAM(86%)、BeEAM(11%)またはCBV(4%)。口腔/GI SRRTは、HDT開始時~AHCT後28日目までに起こるNCI-CTCAE(v5.0)グレード≧3口腔粘膜炎、悪心、嘔吐または下痢として定義された。
【0182】
簡潔には、試験中にAB-205処置に直接関連すると考えらえる臨床的に意味のある有害事象の発生はなかった。さらに、試験からのデータは、E4ORF1+HUVECの投与が全体として低い口腔/GI SRRT(発生率3/35または9%)および口腔/GI毒性および発熱性好中球減少症の用量応答性減少をもたらしたことを示した。心臓炎、肺臓炎、腎炎または肝炎レジメン関連毒性は報告されず、対象の68%は、好中球生着前または1日以内に血小板生着を達成した。
【0183】
この臨床試験の一次目的は、AB-205の用量漸増コホートにおける用量規制毒性(DLT)の数により評価する、AB-205の安全性の評価であった。
【0184】
この試験の重要な適格性基準は次のものを含んだ:年齢≧18歳;HLまたはNHLの診断;BEAM、BeEAM、CBVまたはTBC骨髄除去コンディショニングレジメンでのHDT-AHCTの候補(BEAM、BeEAMまたはCBVは全身性リンパ腫患者またはTBCはCNSリンパ腫患者)。適格対象を、次のとおり連続的用量漸増コホートに登録した:
【0185】
コホート1:5×106細胞/kg 0日目
【0186】
コホート2:10×106細胞/kg 0日目
【0187】
コホート3:20×106細胞/kg 0日目
【0188】
コホート4:10×106細胞/kg 0日目および10×106細胞/kg 2日目
【0189】
コホート5:20×106細胞/kg 0日目および10×106細胞/kg 2日目
【0190】
AB-205を、AHCT後0日目に投与した。対象は、増殖因子、口腔寒冷療法(氷片)、感染予防/処置、制吐剤、血液製剤輸血、栄養支持および他の適切なケアを含む標準治療(SOC)予防および支持療法を受けることを許可された。
【0191】
フォローアップがAHCT後少なくとも100日間実施された42対象を、コホート1(n=6)、2(n=10)、3(n=10)、4(n=10)および5(n=6)に登録した。対象の人口学的特性は、下表5に示すとおり、HDT-AHCTを受けているリンパ腫患者のより大きな団体を代表するものであり、コホート間で有意な差はなかった。
【表5】
【0192】
最大耐用量(MTD)は確立されなかった。前向きに記載された用量規制毒性(DLT)の定義を満たすのは1対象のみであった - 28日を超える期間の長期グレード4血小板減少症を示した。しかしながら、この事象はAB-205処置と無関係と考えられた。BEAM様コンディショニングで処置された対象で、DLTは観察されなかった。重要なことに、顕著な輸注関連反応はなかった。
【0193】
あらゆるグレード(CTCAEグレード≧1)の有害事象(AE)は、HDT-AHCTを受けている対象で典型的な100%の対象で報告された。全身性リンパ腫を有する対象(n=35)で最も高頻度で報告された非血液学的な治療下で発現したAE(TEAE)は、下痢(71%)、悪心(46%)、口内炎(46%)および疲労(43%)(表6)であった。
【表6】
【0194】
CNS病変を有する対象(n=7)で最も一般的に報告された非血液学的TEAE(>30%)は、疲労(57%)、発熱(57%)、口内炎(57%)、食道炎(43%)および発疹(43%)であった。HDT-AHCTを受けている対象について予想されるとおり、大多数のグレード≧3 AEは血液学的であった。全身性リンパ腫を有する対象(n=35)で報告された非血液学的グレード≧3 AEを表7に示す。
【表7】
【0195】
CNSリンパ腫を有する対象(n=7)で報告されたグレード≧3非血液学的TEAEは、食道炎(n=3)、口内炎(n=3)、発疹(n=2)および心房細動、肺感染、単純ヘルペス感染、デバイス関連感染、不安、DVTおよび高血圧についてn=1であった。
【0196】
全身性リンパ腫を有する対象の11/35(31%)で生じた16のSAEおよびCNSリンパ腫を有する対象の6/7(86%)で生じた9/25のSAEを含む、25のSAEが17/42(40%)対象で報告された。肺感染/肺炎(n=4)、発熱性好中球減少症(n=3)および発熱(n=2)のみが、1を超える対象で生じたSAEであった。
【0197】
治験医によりAB-205と関連と考えられたTEAEは稀であった。全身性リンパ腫を有する対象で、AB-205と関連と考えられたTEAEは、(全n=1)下痢(グレード1、コホート2)、疼痛(グレード1、コホート2)、悪寒(グレード3、コホート4)であった。発疹、発熱性好中球減少症および血栓塞栓性事象の3つのグレード3 TEAEは、CNSリンパ腫を有する対象でAB-205と関連すると考えられた。血栓塞栓性事象は、AB-205処置28日目に生じた急性深部静脈血栓症のSAEであり、処置と無関係と考えられた。
【0198】
全体として、AB-205輸注に関連する懸念すべき安全性シグナルは、このフェーズ1治験で観察されなかった。臨床的に有意な輸注関連毒性およびMTDは報告されなかった。
【0199】
口腔/GI SRRTは、HDT開始時(すなわち、0日目AB 205での治療前)からAHCT後28日目の口腔粘膜炎、悪心、嘔吐または下痢のNCI CTCAEバージョン5.0グレード≧3事象として定義された。次のデータは、AB-205-001試験におけるCNS病変がない全身性リンパ腫対象(n=35)を記載する。AB-205での処置は、口腔/GI SRRTの全体的に低い割合を達成し、発生率は9%(3/35対象)(表8)であった。
【表8】
【0200】
口腔/GI SRRTを経験した3対象は、GI毒性のリスク因子を有した。フェーズ3適格性基準(年齢≧40歳)をこれらAB-205試験結果に当てはめたとき、AB-205投薬後口腔/GI SRRTを経験した全身性リンパ腫対象はいない。
【0201】
全コホートにわたり、好中球および血小板生着までの中央(IQR)時間はそれぞれ10日(9、11)および11日(10、13)であった。
【0202】
このフェーズ1試験で2投薬スケジュールを評価した - 0日目単回投与からなる第一投薬スケジュールおよび0日目1回および2日目1回の2回投与からなる第二投薬スケジュール。2日目のさらなる投与量は、0日目投薬単独と比較して、幾分かの、しかし限定的な有効性の増加を示した。
【0203】
AB-205の全投与量レベルが口腔/GI SRRT発生率を実質的に減少させたため、全グレード口腔/GI RRT(すなわち、軽度、中程度および重度口腔/GI毒性)ならびに発熱性好中球減少症(FN)の発生率および期間を評価するさらなる分析を実施した。各投与量レベルの患者数が比較的少ないため、コホートを、次のとおり、AB-205の最も影響力のある投与量、すなわち、0日目用量により群分けした:
【0204】
群1:<20×106細胞/kgをD0、すなわち、コホート1、2および4(n=21)
【0205】
群2:20×106細胞/kgをD0、すなわち、コホート3および5(n=14)
【0206】
群1および群2の全グレードの口腔/GI事象およびグレード≧3発熱性好中球減少症(FN)の発生を表9に示す。
【表9】
【0207】
全グレード口腔/GI事象を考慮すると、0日目に20×106細胞/kg未満を受けた対象と0日目に20×106細胞/kgを受けた対象を比較したとき、複合エンドポイントの要素に投与量応答があった。
【0208】
AB-205での処置は、さらに発熱性好中球減少症の発生率(FN)の投与量依存的減少をもたらした。さらに、FNを有する対象で、発熱性好中球減少症の中央(範囲)期間は、0日目に20×10
6細胞/kgを受けた対象でわずか2(1、3)日であり、対して、0日目に20×10
6細胞/kg未満を受けた対象で4(1、9)日であった。
【表10】
【表11】
【0209】
この臨床治験からの上記データの一部ならびにさらなるデータを
図6~9に示す。
【0210】
結論として、このフェーズ1臨床治験からのデータは、試験した全用量および投薬スケジュールで、AB-205は、HDT-AHCTを受けている種々の異なるタイプのリンパ腫を有する患者への投与が安全であり、MTDに到達せず、輸注関連反応は示されず、心臓、腎臓または肝臓RRTの報告はなかった。さらにおよび重要なことに、このフェーズ1(フェーズ1b/2)からの臨床治験データは、HDTの副作用緩和に対するAB-205処置の有効性の証拠を提供した。故に、通常より低い割合で口腔/GI SRRTが、試験したAB-205用量全体にわたり観察され(9%(95%CI:2、23)、用量-応答性効果が口腔/GI RRTおよび発熱性好中球減少症(FN)について見られた。さらに、データは、AB-205処置患者の好中球および血小板回復が早いことを示した。
【0211】
実施例2C
患者年齢により分析したAB-205処置の安全性および有効性
上記フェーズ1臨床試験からのデータを、処置対象の年齢により分析した。データ分析は、20×106細胞/kgの投与量で - AHCT後0日目に投与する単回投与またはAHCT後0日目および2日目に投与する分割投与として - 静脈内E4ORF1+HUVECで処置された化学感受性リンパ腫を有する対象から得た。上記のとおり、支持療法治療剤も投与した。口腔/GI SRRTは、NCI-CTCAEv5.0グレード≧3口腔粘膜炎、悪心、嘔吐または下痢として定義した。29対象を処置し、中央フォローアップ時間は271日(範囲179~566)であった。参加施設での後向きチャート審査(n=45)は、コンテンポラリーコントロールとして役立った。最大耐用量(MTD)には到達しなかった。この試験のカットオフ日まで、肺、心臓、腎臓または肝臓系に影響するSRRTの報告はなく、PFSまたはOSに対する有害作用は観察されなかった。処置後100日目まで死亡もなかった。対照コホートは、対象≧60歳で16/25(64%)の口腔/GI SRRT率と報告され、一方対象<60歳は、9/20(45%)の口腔/GI SRRT率と報告された。故に、口腔/GI SSRT率は、60歳を超える対象ではるかに高かった。
【0212】
しかしながら、E4ORF1+HUVEC処置は、高齢および若齢群両者で口腔/GI SSRTを有効に排除した - 口腔/GI SRRTは、≧60歳の全対象(n=7)を含むAB-205処置を受けた対象いずれでも報告されなかった(0%、n=18)。好中球生着までの中央時間(日)、中央血小板生着までの時間および入院日数(AHCTから)も、対照コホートと比較して、処置群で - それぞれ約2日、7日および3日 - 短かった。故に、高齢患者の口腔/GI SRRTの割合が高くても、E4ORF1+HUVEC処置は、なお、高度に有効であった - 口腔/GI SRRTを年齢群を超えて排除した。重要なことに、このデータは、E4ORF1+HUVECでの処置が、全年齢の患者 - SRRTの高い割合のために、HCTの候補とは以前は見なされなかったかもしれない高齢患者を含む - でHDT-AHCTを実質的に安全とする大きな可能性を有する。この分析からのデータを下表12に提供する。
【0213】
【0214】
実施例3
自己造血細胞移植を受けているリンパ腫を有する患者におけるAB-205の効果のフェーズ3試験
フェーズ3臨床治験を、上記フェーズ1(フェーズ1b/2)試験で示されたAB-205の安全性および有効性を確認するため、大規模患者集団で実施する。特に、二重盲検式、無作為化、プラセボ対照多施設臨床治験を、化学感受性寛解であり、BEAM(カルムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファラン)またはBeEAM(ベンダムスチン、エトポシド、シタラビン、メルファラン)コンディショニングレジメンを伴うHDT-AHCTの候補と考えられるリンパ腫(ホジキンリンパ腫(HL)または非ホジキンリンパ腫(NHL))を有する成人対象(≧40歳)で実施する。
【0215】
適格対象を、「処置」(アームA - AB-205+標準治療)および「対照」(アームB - プラセボ+標準治療)群に1:1比で無作為化する。約140対象を、治験製品(IP) - すなわち、AB-205 - で処置する。アームAおよびアームB両者の対象を、BEAMまたはBeEAMのHDTレジメンで処置する。アームAの対象は、AB-205を0日目に20×10
6細胞/kgの投与量で受ける(すなわち、AHCT実施日) - AHCT約3時間後(±1時間)。20×10
6細胞/kg投与量のAB-205を、フェーズ1試験においてこの投与量で忍容性が良好であり、SRRT減少の最高有効性を示したため、選択した(フェーズ1試験で2日目に投与したAB-205のさらなる投与量は、有効性の意味ある増加を提供しなかった)。アームBの対象は、AB-205の代わりにプラセボ(細胞不含媒体)を受ける以外、アームAと同じ処置を受ける。アームAおよびアームBのプロトコールのさらなる詳細を下表13に提供する。
【表13】
【0216】
対象は、表12に示す一次および二次エンドポイントの評価を受ける。口腔/GI SRRTの評価を、HDT開始時~AHC後21日目まで行う。他のSRRT、疾患状態および生存の長期フォローアップを、AHCT後1年まで行う。
【表14-1】
【表14-2】
【0217】
「造血生着までの時間」の二次エンドポイントは、好中球生着までの時間および血小板生着までの時間の遅いほうとして定義され、好中球生着までの時間は、ASCT後、3日連続絶対好中球数(ANC)>500/μLの最初の日として定義され、血小板生着までの時間は、ASCT後、輸血サポートなく7日連続血小板数≧20,000/μLの最初の日として定義される。毎日血液サンプルを、生着が生ずるまでこれらエンドポイントの分析のために採決する。
【0218】
実施例4
支持療法/標準治療
標準治療支持療法を、処置医により適切であると決定されるかまたは何れかの組織のガイドラインに合致するならば、E4ORF1+HUVECSで処置している対象に提供し得る。
【0219】
標準治療支持療法は、口腔粘膜炎予防、化学療法誘発悪心および嘔吐(CINV)予防、細菌感染予防および抗感染性予防および血液および血小板輸血サポートのための治療を含み得る。あらゆる出現した毒性の処置も、必要ならば提供され得る。
【0220】
CINV予防は、コルチコステロイド(例えば、デキサメサゾン)、5 HT3アンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン)および/またはNK1アンタゴニスト(例えば、アプレピタント)の投与を含み得る。
【0221】
グラム陰性細菌感染に対する抗細菌予防は、例えば、+1日目またはANC<1000細胞/μLから、広スペクトル抗生物質開始またはANC>1000/μLまでの、キノロン(例えばレボフロキサシン)投与を含み得る。キノロンに不耐またはアレルギーである対象に対しては、セフトリアキソンまたはセフポドキシムなどの第三世代セファロスポリンを使用し得る(例えば、+1日目に200mg経口1日2回)。
【0222】
造血サポートは、例えば、AHCT後5日目から好中球生着まで、例えば、約300μg/日(体重<75kgの対象について)または約480μg/日(体重≧75kgの対象について)でのG-CSF投与を含み得る。
【0223】
血小板サポートを必要に応じて提供し得る。
【表15】
【0224】
レボフロキサシンを、1日約500mg経口または静脈内で投与し得る。シプロフロキサシンを、1日2回約500mg経口または12時間毎に約400mg静脈内を、+1日目またはANC<1000細胞/μLから広スペクトル抗生物質またはANC>1000/μまで投与し得る。キノロンに不耐の対象において、セファロスポリン(例えばセフトリアキソンまたはセフポドキシム)を、+1日目に1日2回約200mg経口で投与し得る。
【0225】
実施例5
高用量療法および同種幹細胞移植を受けている白血病または骨髄異形成症候群を有する成人におけるE4ORF1+HUVECのフェーズ1臨床治験
高用量化学療法および自己幹細胞移植(HDT-ASCT)の補助剤としてホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を有するヒト対象へのE4ORF1+HUVEC(AB205)細胞の投与を含む上記臨床試験に加えて、別の臨床治験を高用量化学療法および同種幹細胞移植(HDT-AlloSCT)に対する補助剤として白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ芽球性白血病(ALL))または骨髄異形成症候群を有する成人対象へのE4ORF1+HUVECの投与の安全性を評価するために実施した(clinicaltrials.gov identifier NCT03483324)。
【0226】
E4ORF1+HUVECを実施例1に記載のとおり調製した。
【0227】
白血病または骨髄異形成症候群およびタンデム(2ドナー)臍帯単位血液幹細胞移植(タンデムHDT-Allo-SCT)を有する成人対象を募集し、オープンラベル、多施設試験の3コホートに登録した。最初の2コホートにおいて、臍帯血単位の一つを、E4ORF1+HUVEC細胞の存在下培養して増殖させた。次いで、この増殖単位およびE4ORF1+HUVEC細胞を、培養で増殖しなかった第二単位と共に患者に輸注した。第三コホートにおいて、両単位を培養増殖せずに、同時のE4ORF1+HUVEC細胞の輸注と共に注入した。これら対象に輸注したE4ORF1+内皮細胞の用量は約1×106/kg~約10×106/kgの範囲であった。対象が約1×109細胞(約10×106/kg~約20×106/kg)の総投与量の内皮細胞を受ける第三コホートを開始する。
【0228】
故に、これらの臨床試験は、患者集団(リンパ腫患者ではなく白血病または骨髄異形成症候群患者)、細胞移植(自己造血細胞ではなく同種臍帯血幹細胞)、投与レジメン(最初に幹細胞移植の適用、続いてE4ORF1+HUVEC細胞投与ではなく、幹細胞移植とE4ORF1+HUVEC細胞の共投与)および投与するE4ORF1+HUVEC細胞の用量範囲に関して、先の実施例に記載したものと異なる。
【0229】
この試験における有害事象を、CTCAEのバージョン4.03を使用してコード化した。8患者中、2名のみで重度(グレード≧3)と見なされた消化器有害事象が報告された。1患者でグレード3嘔吐ならびにグレード3胃不全麻痺(胃排出不全の障害)およびグレード3盲腸炎(盲腸の炎症)が報告された。報告された他の唯一のグレード3消化器(GI)毒性は、細胞毒性化学療法と無関係と見なされた食中毒の事象であった。複数GI有害事象(AE)を有する1患者でまた呼吸器不全および心停止からの死亡に至る他の臓器系(心臓、呼吸器、CNS[脳症]および血管)の重度グレード3以上事象も報告された。あらゆるグレードの心臓有害事象は、他の患者の何れでも報告されなかった。グレード3以上の血管AEは、他の1患者のみで報告された(グレード3高血圧)。3患者で、グレード3発熱性好中球減少症が報告された。これらの患者は全て20×106内皮細胞/kg未満の内皮細胞用量を受けていた。1患者のみでグレード3以上の肝胆汁性有害事象(グレード3高ビリルビン血症)が報告された;この事象は、化学療法ではなく、肝臓に影響する急性移植片対宿主病(GVHD)と関連すると考えられた。他の1患者で、グレード3急性GVHDが報告された。他の消化器副作用について:2患者のみで口腔粘膜炎が報告された;いずれもグレード2(中程度)と見なされた。この発生率は、文献で報告されるより低い(二重臍帯血移植で19/20患者で粘膜炎が報告された(Biol Blood Marrow Transplant. 2014 Dec;20(12):2062-6); Bone Marrow Transplant 2014 Jul;49(7):955-60)。7患者で悪心、嘔吐または下痢の少なくとも1事象が報告された。これは、上記のグレード3嘔吐事象が報告された1患者を含む。他の全N/V/D事象はグレード1またはグレード2であった。
【0230】
上記以外、1対象のみでグレード2 CNS AE(立ちくらみ)が報告された;他の3患者で、グレード1 CNS事象AEが報告された。5患者で精神AEが報告された;いずれもグレード2を超えるものではなかった。2患者のみで腎臓または泌尿器有害事象(各1事象)が報告された;両者ともグレード1と見なされた。
【0231】
2AEのみが生殖器系または胸部で報告された;1患者でグレード2膣出血および1患者でグレード1膣掻痒症(掻痒)であった。
【0232】
上記以外、4有害事象のみが呼吸器、胸郭および縦隔カテゴリーで報告された - 何れもグレード2を超えるものではなかった。これらは咳嗽、しゃっくり、咽喉炎および鼻血であった。
【0233】
グレード2の皮膚有害事象2例のみが報告された(1発疹および1掻痒症(掻痒));6つのグレード1皮膚AEが報告された。
【0234】
さらに、血小板生着までの時間および好中球生着までの時間の両者とも、E4ORF1+内皮細胞の輸注投与量と正に相関した(表16&
図11A~B)。
【0235】
【0236】
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