(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】フラクションコレクタおよびこれを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230719BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230719BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230719BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20230719BHJP
G01N 30/80 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G01N35/10 C
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C11/00
G01N30/80 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580222
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2021066805
(87)【国際公開番号】W WO2021259850
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・ルンドクヴィスト
(72)【発明者】
【氏名】トマス・イングヴェ・アーグレン
(72)【発明者】
【氏名】エーリク・ニールソン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・スコグルンド
【テーマコード(参考)】
2G058
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB06
2G058BB12
2G058CB15
2G058GA14
2G058GB10
4F041AA03
4F041AB02
4F041BA05
4F041BA22
4F041BA38
4F042AA11
4F042BA07
4F042BA12
4F042BA19
4F042CB02
4F042CB10
4F042CB11
4F042CB19
4F042DF05
4F042DF34
4F042DH09
(57)【要約】
本発明は、支持システム(1、2)と、支持システム(1、2)によって移動可能に支持されたキャリア(42)と、キャリア(42)に接続された延長アーム(3)と、液滴を分注するための、延長アーム(3)に移動可能に接続された少なくとも1つの分注ヘッド(31)と、を含み、分注ヘッド(31)およびキャリア(42)は、第1の平面内で支持システムに対して移動するように構成され、トレイ領域(11)が少なくとも1つのラック(6、7)を支持するように設計され、少なくとも1つのラック(6、7)は、少なくとも1つの収集容器(12、14)を保持するように設計され、上記キャリア(42)の運動がリニアベアリングYスライドユニット(41)によって達成され、リニアベアリングYスライドユニット(41)はリニアベアリングYレール(40)の下に配置され、キャリア(42)はリニアベアリングYスライドユニット(41)に取り付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.支持システム(1、2)と、
b.前記支持システム(1、2)によって移動可能に支持されたキャリア(42)と、
c.前記キャリア(42)に接続された延長アーム(3)と、
d.液滴を分注するための少なくとも1つの分注ヘッド(31)であって、前記少なくとも1つの分注ヘッド(31)が、前記延長アーム(3)に移動可能に接続され、前記分注ヘッド(31)およびキャリア(42)は、第1の平面内で前記支持システム(1、2)に対して移動するように構成されている、少なくとも1つの分注ヘッド(31)と、
e.少なくとも1つのラック(6、7)を支持するように設計されたトレイ領域(11)であって、前記少なくとも1つのラック(6、7)は、少なくとも1つの収集容器(12、14)を含むように設計され、前記キャリア(42)の運動がリニアベアリングYスライドユニット(41)によって達成され、前記リニアベアリングYスライドユニット(41)はリニアベアリングYレール(40)の下に配置され、前記キャリア(42)は前記リニアベアリングYスライドユニット(41)に取り付けられている、トレイ領域(11)と、
を含むフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項2】
前記リニアベアリングYレール(40)は、前記トレイ領域(11)上に配置された前記少なくとも1つのラック(6、7)の頂面より低いZ方向の位置に配置されている、請求項1に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項3】
前記ラック(6、7)は、冷却媒体を含む密閉された冷却容積を含む冷却手段(60)を含み、前記冷却手段(60)は、少なくとも1つの収集容器(12、14)を少なくとも部分的に取り囲むために構成されている、請求項1から2のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項4】
前記分注ヘッド(31)は、前記液滴(74)を検出するための送信機(62)および受信機(66)を含み、前記送信機(62)と受信機(66)との間の通信経路(37)が前記液滴(74)の経路を横切る、請求項1から3のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項5】
前記受信機(66)の前にアパーチャ(64)をさらに含む、請求項4に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項6】
前記送信機(62)は電磁放射源であり、前記受信機(66)は電磁放射感知センサである、請求項4または5に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項7】
前記分注ヘッド(31)はチューブ(68)をさらに含み、前記チューブ(68)は前記液滴(74)より幅が広く、電磁放射を透過する材料で作製され、前記分注ヘッド(31)からの前記液滴(74)は前記チューブ(68)を通して分注される、請求項1から6のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項8】
前記送信機と受信機との間の前記通信経路(37)は前記チューブ(68)を横切って伝送される、請求項7に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項9】
前記チューブ(68)は透明な材料から形成されている、請求項7または8に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項10】
前記トレイ領域(11)は、収集容器(12、14)の少なくとも2つのラック(6、7)を支持するために構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項11】
前記収集容器(12、14)は前記第1の平面に対する法線に対して角度を成している、請求項1から10のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項12】
前記移動可能に支持されたキャリア(42)および/または前記移動可能に接続された分注ヘッド(31)には、前記少なくとも1つの収集容器(12、14)から出る液体飛沫が前記キャリア(42)の線形移動機構および/または前記分注ヘッド(31)に入るのを禁止するために構成された飛沫カバー(3'、32)が設けられている、請求項1から11のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項13】
前記分注ヘッド(31)内の電子機器が防水ハウジング内に設けられている、請求項1から12のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項14】
前記分注ヘッド(31)はスナップ嵌めで組み立てられている、請求項1から13のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項15】
前記分注ヘッド(31)は除去可能に結合されている、請求項1から14のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項16】
空気冷却器、冷却ブロックおよび1つまたは複数の温度センサの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)。
【請求項17】
フラクションコレクタ装置(100)を動作させるための方法であって、
a.支持システムによって移動可能に支持されたキャリア(42)を提供するステップと、
b.前記キャリア(42)に接続された延長アーム(3)を提供するステップであって、液滴を分注するための少なくとも1つの分注ヘッド(31)が前記延長アームに移動可能に接続され、前記分注ヘッド(31)および前記キャリア(42)は、第1の平面内で前記支持システムに対して移動するように構成されている、ステップと、
c.前記分注ヘッド(31)からの前記液滴を検出するために構成された検出デバイス(66)を提供するステップと、
d.前記分注ヘッド(31)からの液滴(74)が、トレイ領域(11)上に設けられた少なくとも1つの収集容器(12、14)に入ることになるように、前記液滴と同期して前記分注ヘッド(31)を移動させるステップであって、前記キャリアの運動がリニアベアリングYスライドユニット(41)によって達成され、前記リニアベアリングYスライドユニット(41)はリニアベアリングYレール(40)の下に配置され、前記キャリア(42)は前記リニアベアリングYスライドユニット(41)に取り付けられている、ステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
e.前記少なくとも1つの収集容器を保持するように設計された前記トレイ領域(11)上に配置されたラックの頂面より低いZ方向の位置に前記リニアベアリングYレール(40)を提供するステップ、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
f.少なくとも1つの収集容器を少なくとも部分的に取り囲むために構成された冷却媒体を含む密閉された冷却容積を含む冷却装置(60)によって前記少なくとも1つの収集容器(12、14)を冷却するステップ、
をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
g.液滴通路(68)を横切って電磁放射感知センサに電磁放射を伝送することによって液滴(74)を検出するステップと、
h.前記電磁放射感知センサによって検出される前にアパーチャ(64)を通る前記電磁放射を制限するステップと、
をさらに含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)に使用されるように構成された冷却装置(60)であって、前記冷却装置(60)は、冷却媒体を含む密閉された冷却容積を含み、前記冷却容積は、少なくとも1つの収集容器(12、14)を少なくとも部分的に取り囲むために構成されている、冷却装置(60)。
【請求項22】
前記冷却装置(60)は前記ラック(6、7)に除去可能に取り付けられている、請求項21に記載の冷却装置(60)。
【請求項23】
請求項1から16のいずれか一項に記載のフラクションコレクタ装置(100)で使用されるべき少なくとも1つの収集容器(12、14)を含むために構成されたラック(6、7)であって、前記ラック(6、7)は、冷却媒体を含む密閉された冷却容積を含む冷却装置(60)を含み、前記冷却容積は、前記少なくとも1つの収集容器(12、14)を少なくとも部分的に取り囲むために構成されている、ラック(6、7)。
【請求項24】
フラクションコレクタ装置(100)で使用されるように構成された分注ヘッド(31)であって、前記分注ヘッド(31)は、液滴(74)を送達するためのノズル(72)を含み、前記液滴(74)はチューブ(68)を通して分注され、前記チューブ(68)は前記液滴(74)より幅が広く、電磁放射を透過する材料で作製されている、分注ヘッド(31)。
【請求項25】
送信機(62)および受信機(66)を含む液滴検出機構をさらに含み、前記送信機(62)と受信機(66)との間の通信経路が前記液滴(74)の経路を横切る、請求項24に記載の分注ヘッド(31)。
【請求項26】
前記受信機(66)の前にアパーチャ(64)をさらに含む、請求項25に記載の分注ヘッド(31)。
【請求項27】
前記チューブ(68)は透明である、請求項24から26のいずれか一項に記載の分注ヘッド(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してカラムクロマトグラフィの分野に、特にフラクションコレクタおよびフラクションコレクタを動作させるための方法、このようなフラクションコレクタで使用されるように構成された冷却手段、フラクションコレクタで使用されるように構成されたラック、およびフラクションコレクタで使用されるように構成された分注ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィは、溶液のサンプルに保持された成分を識別および定量化するための化学プロセスである。このプロセスにおいて、カラムに保持された静止物質を通って溶液が移動するにつれて、溶液中の成分が互いに分離される。1つまたはいくつかのクロマトグラフィポンプによって圧力下でカラム内の静止物質を通して溶液を圧送することができる。成分のフラクションをフラクションコレクタ装置によって一連の個々のコンテナに収集することができる。いくつかの場合において、個々のコンテナ/フラクションチューブ/収集容器に収集されたフラクションはフラクションコレクタ装置によって運ばれてさらなる分析のために分注される。
【0003】
分画カラムから流体を受け取って流体のフラクションをコンテナ内へ分離するために使用されるフラクションコレクタ装置が知られている。フラクションをレセプタクル内へ分注するためのノズルを、二次元に移動可能であり得るアーム上に配置することができる。電気モータがノズルを第1および第2の方向に移動させることができ、これらの方向は互いに直交することができる。
【0004】
既知のフラクションコレクタ装置はしかしながら比較的複雑で高価である可能性がある。また、既知の装置は、かなりのスペース(フットプリント)を必要とする寸法を有する。
【0005】
米国特許第8,114,281号は、複雑でありかなりのスペースが要求されるという問題を少なくとも有する既知のフラクションコレクタ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題を回避することを目的とする。本発明の主な目的は、簡素、安価であり、当該技術において既知のフラクションコレクタよりスペースが要求されない改良されたフラクションコレクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば少なくとも主な目的は、独立請求項に定義された特徴を有する装置によって対処される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態が従属請求項においてさらに定義される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、支持システム、支持システムによって移動可能に支持されたキャリア、キャリアに接続された延長アーム、液滴を分注し、延長アームに移動可能に接続された少なくとも1つの分注ヘッドを含むフラクションコレクタ装置が提供され、分注ヘッドおよびキャリアは、第1の平面内で支持システムに対して移動するように構成され、少なくとも1つのラックを支持するようにトレイ領域が設計され、少なくとも1つのラックは、少なくとも1つの収集容器を含むように設計され、リニアベアリングYスライドユニットによって上記キャリアの運動が達成されることを特徴とし、リニアベアリングYスライドユニットはリニアベアリングYレールの下に配置され、キャリアはリニアベアリングYスライドユニットに取り付けられている。
【0011】
これの利点は、フラクションコレクタが先行技術のフラクションコレクタよりコンパクトであることである。この実施形態の他の利点は、これが先行技術のフラクションコレクタより複雑でなく、したがってより信頼でき、および/または滅菌/洗浄などが容易であることである。
【0012】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記リニアベアリングYレールは、上記トレイ領域上に配置された上記少なくとも1つのラックの頂面より低いZ方向の位置に配置されている。たとえば、Z方向は、使用時にフラクションコレクタが支持される床または支持面に実質的に垂直な軸に平行とすることができる。より低い位置はしたがって、この軸に沿ってさらに離れた位置より床または支持面に近いと見なされるであろう。XおよびY方向はしたがって、床または支持面にほぼ平行な平面(たとえば上記第1の平面)内の直交する軸にほぼ従うことができる。
【0013】
これらの実施形態の利点は、フラクションコレクタを非常にコンパクトに作製することができることである。
【0014】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記ラックは、冷却媒体を含む密閉冷却容積を含む冷却手段を含むことができ、上記冷却手段は、少なくとも1つの収集容器を少なくとも部分的に取り囲むために構成されている。
【0015】
これらの実施形態の利点は、フラクションコレクタの有用性を高めることになる気候制御環境でフラクションコレクタを動作させる必要性がないことである。ここでオペレータは、使用前に上記冷却手段を冷凍庫に備えて分画が始まるときに上記冷却された冷却手段を使用するだけでよい。フラクションコレクタは、上記収集容器内の分画された液体が破壊される危険を冒すことなく通常の室温で動作させることができる。
【0016】
本発明によるさまざまな例の実施形態において上記分注ヘッドは、液滴を検出するための送信機および受信機を含み、上記送信機と受信機との間の通信経路が上記液滴の経路と交差している。
【0017】
これらの実施形態の利点は、液滴が上記分注ヘッドから放出されないことがわかっているときに上記分注ヘッドの移動を実行することができるので、液滴の飛散を最小化することができることである。
【0018】
本発明のさまざまな例の実施形態において受信機の前にアパーチャが設けられている。
【0019】
これらの実施形態の利点は、液滴事象を検出する精度を増加させることができることである。
【0020】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記送信機は電磁放射源であり、上記受信機は電磁放射感知センサである。
【0021】
これらの実施形態の利点は、さまざまなタイプの電磁放射源および対応する検出器、たとえば通常の白色光源および白色光を検出するためのセンサを使用することができることである。
【0022】
本発明のさまざまな例の実施形態において、上記分注ヘッドはチューブをさらに含み、このチューブは液滴より幅が広く、電磁放射を透過する材料で作製され、分注ヘッドからの上記液滴は上記チューブを通して分注される。
【0023】
これらの実施形態の利点は、分注ヘッドの電子機器上への飛散を排除または少なくとも低減することができることである。
【0024】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記送信機と受信機との間の上記通信経路は上記チューブを介して送信される。
【0025】
この実施形態の利点は、検出電子機器を飛散のない領域に設けることができることである。
【0026】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記トレイ領域は、収集容器の少なくとも2つのラックを支持するために構成されている。
【0027】
これらの実施形態の利点は、第2のラックにおける収集容器を充填しながら、充填された収集容器を備えた第1のラックを、空の収集容器を有するラックに置き換えることによって、連続分画を実行することができることである。
【0028】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記収集容器は上記第1の平面に対する法線に対して角度を成している。
【0029】
これらの実施形態の利点は、液滴の飛散をさらに低減することができることである。飛沫が上記収集容器の外に向かう可能性がある、収集容器内の液面に液滴を入れることの代わりに、上記液滴は、傾斜した収集容器で代わりに上記収集容器の内壁に向かうことになる。上記内壁への上記液滴の衝突からの液滴のいかなる飛散も、収集容器の他の内壁領域に向かう方向におけるものであり、これによって液体を容器の内側に保つことになる。傾斜面に衝突する液滴は、それ自体、液滴の経路に垂直な平面に衝突することと比較して、飛散をさらに低減することになる。
【0030】
本発明のさまざまな例の実施形態において、上記移動可能に支持されたキャリアおよび/または上記移動可能に接続された分注ヘッドには、上記少なくとも1つの収集容器から出る液体飛沫が、キャリアおよび/または分注ヘッドの線形移動機構に入るのを禁止するために構成された飛沫カバーが設けられている。
【0031】
これらの実施形態の利点は、線形移動機構の飛散による汚染が排除または少なくとも最小まで低減されることである。他の利点は、上記カバーが、上記カバーの内側に隠れたいかなる電気部品への損傷も低減することである。
【0032】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記分注ヘッド内の電子機器が防水ハウジングに設けられている。
【0033】
これらの実施形態の利点は、電子機器への液体による損傷が実質的に排除されることである。
【0034】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記分注ヘッドはスナップ嵌めで組み立てられている。
【0035】
これらの実施形態の利点は、上記分注ヘッドの製造を最小限に保つことができることである。他の利点は、上記分注ヘッドの組み立ておよび分解をいかなる工具もなしで実行することができることである。さらに他の利点は、上記分注ヘッドのサービスが先行技術のディスペンサより容易であることである。
【0036】
本発明の他の一態様においてフラクションコレクタを動作させるための方法が提供され、上記方法は、
a.支持システムによって移動可能に支持されたキャリアを提供するステップと、
b.キャリアに接続された延長アームを提供するステップであって、液滴を分注するための少なくとも1つの分注ヘッドが延長アームに移動可能に接続され、上記分注ヘッドおよび上記キャリアは、第1の平面内で支持システムに対して移動するように構成されている、ステップと、
c.上記分注ヘッドからの上記液滴を検出するために構成された検出デバイスを提供するステップと、
d.分注ヘッドからの液滴が、トレイ領域上に設けられた少なくとも1つの収集容器に入ることになるように、分注ヘッドを液滴と同期して移動させるステップであって、リニアベアリングYスライドユニットによってキャリアの運動が達成され、リニアベアリングYスライドユニットはリニアベアリングYレールの下に配置され、キャリアはリニアベアリングYスライドユニットに取り付けられている、ステップと、
を含む。
【0037】
この方法の利点は、これがフラクションコレクタの先行技術の動作方法より複雑でないことである。
【0038】
本発明の他の一態様において、フラクションコレクタで使用されるように構成された冷却手段が提供され、上記冷却手段は、冷却媒体を含む密閉冷却容積を含み、上記冷却容積は、少なくとも1つの収集容器を少なくとも部分的に取り囲むために構成されている。
【0039】
このような冷却手段の1つの利点は、温度制御された環境でフラクションコレクタを使用することを排除することができることである。このような冷却手段は、1つまたは複数の既存のマイクロタイタープレートと関連して使用されるように設計することができ、または冷却マイクロタイタープレートとして設計することができ、すなわち、収集容器用のウェルと上記収集容器を受け入れるための上記ウェルを少なくとも部分的に取り囲む上記マイクロタイタープレートの内側の冷却容積の両方を有する。
【0040】
本発明の他の一態様において、フラクションコレクタで使用される少なくとも1つの収集容器を含むために構成されたラックが提供され、上記ラックは、冷却媒体を含む密閉冷却容積を含む冷却手段を含み、上記冷却容積は、上記少なくとも1つの収集容器を少なくとも部分的に取り囲むために構成されている。
【0041】
これらの実施形態の利点は、ラックが、フラクションコレクタの有用性を高めることになる一体型または取り外し可能な冷却手段を有し得ることである。
【0042】
本発明のさらに他の一態様において、フラクションコレクタ装置で使用されるように構成された分注ヘッドが提供され、上記分注ヘッドは、液滴を送達するためのノズルを含み、上記液滴はチューブを通して分注され、このチューブは液滴より幅が広く、電磁放射を透過する材料で作製されている。
【0043】
これらの実施形態の利点は、分注ヘッド内の電子機器を飛散のない領域に設けることができることである。
【0044】
本発明のさらなる利点および特徴が、好ましい実施形態の次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0045】
本発明の上記および他の特徴および利点のより完全な理解が、添付の図面と併せて好ましい実施形態の次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明によるフラクションコレクタの一例の実施形態の概略正面斜視図である。
【
図2】
図1に示したものと同じフラクションコレクタの例の実施形態の概略後方斜視図である。
【
図3】
図2に示したものと同じフラクションコレクタの例の実施形態の、アームのカバーのない概略部分断面側面図である。
【
図4】チューブラックの一例の実施形態の斜視図である。
【
図6】本発明による分注ヘッドの一例の実施形態の正面斜視図である。
【
図7】
図6における分注ヘッドの断面側面図である。
【
図8】本発明による分注ヘッド内の滴下センサ機構の一例の実施形態の拡大部分である。
【
図9】本発明による冷却手段を備えたフラクションコレクタの一例の実施形態の正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次の説明において、コンテナ、フラクションチューブ、マイクロタイターチューブまたは収集容器は、同じもの、すなわち、所定量の液体を収集するための手段の異なる名称である。上記コンテナ、フラクションチューブ、マイクロタイターチューブまたは収集容器は、平行な壁で円筒状に成形、または非平行な壁を備えた円錐状に成形されたチューブとすることができる。
【0048】
図1は、本発明によるフラクションコレクタ100の一例の実施形態の概略正面斜視図を示す。フラクションコレクタ100は、支持システム、アーム3およびチューブラック4を含む。上記支持システムは、底部フレーム1およびメインボードハウジング2を含むことができる。上記底部フレーム1は、収集容器12、14の少なくとも1つのラック6、7を支持するように設計されたトレイ領域11を含むことができる。設計の意図は、可燃性液体が危険な濃度で蓄積するのを防止するのに役立つことができるオープンアーキテクチャで、堅牢な、低コストのフラクションコレクタ100を構築することである。さまざまな例の実施形態において上記支持システムは、単一のユニット、本明細書に開示されるような2つのユニット、または3つ以上のユニットとすることができる。
【0049】
フラクションコレクタ100は、カラムクロマトグラフィシステムの下のトンネル内またはカラムクロマトグラフィシステムの横のベンチ上に収まるように設計されている。カラムクロマトグラフィシステムは、たとえば、吸着クロマトグラフィシステム、イオン交換クロマトグラフィシステム、アフィニティクロマトグラフィシステムまたはゲルパーミエーションクロマトグラフィシステムのいずれか1つとすることができる。
【0050】
フラクションコレクタ100は、鋳造アルミニウムまたは任意の他の適切な剛性材料、または材料の組み合わせで作製された支持システムを有することができる。フラクションコレクタ100は少なくとも1つのカバープレートを含むこともでき、これは射出成形、3D印刷などすることができる。
【0051】
フラクションコレクタ100は2つのラックまたはマイクロタイタープレート6、7の容量を有することができる。ラック6、7は、24/48/96、または任意の他の適切な数のウェルを含むことができ、それぞれ1つが収集容器12、14を受け入れるために構成されている。
【0052】
異なる容積の収集容器12、14には、異なる高さのラック6、7が要求されることがある。低いラックまたはマイクロタイタープレート6を使用することには、距離プレート5がアーム3からマイクロタイタープレート表面まで同じレベル、すなわち、ラック6、7自体の寸法に関係なく、上記収集容器12、14の開口からこれを満たす液滴の起点まで同じ高さを保つことが要求されることがある。さまざまな例の実施形態において収集容器12、14はエッペンドルフチューブ(登録商標)とすることができる。さまざまな例の実施形態においてラック6、7は少なくとも1つの統合された収集容器12、14を有することができる。さまざまな例の実施形態においてラック6、7は少なくとも1つの統合された収集容器12、14および少なくとも1つの除去可能に取り付けられた収集容器12、14を有することができる。さまざまな例の実施形態においてラック6、7は、除去可能に取り付けられた収集容器のみを含むことができる。除去可能に取り付けられた収集容器は、同じ容積または少なくとも2つの異なる容積のものとすることができる。
【0053】
フラクションコレクタ100は、分注ヘッド31で所定の領域を蛇行、線形または円形の様式で走査するためのXおよびY運動を支持することができる。蛇行様式は、X軸に長いストロークおよびY軸に短いストローク、またはX軸に短いストロークおよびY軸に長いストロークを有することができる。
図1に示すような機械において、X軸はアーム3に沿った分注ヘッド31の移動であると見なされ、Y移動はアーム3自体の移動である。線形様式において収集容器12、14は常に、ラック6、7の一方の側から始まり、同じラック6、7の反対側で終わるように充填され、開始位置はX軸またはY軸のいずれかからとすることができ、すなわち、充填のための長いストロークはそれぞれY方向またはX方向であり、次いで他の列のいずれか1つを充填するために戻ることができる。上記分注ヘッド31の線形様式のXおよびY移動と上記分注ヘッド31の蛇行様式のXおよびY移動との間の違いは、蛇行様式は線形移動の場合とは異なり、長いストロークの戻り移動でも収集容器12、14を充填することである。円形様式のXおよびY移動は、上記ラックまたはマイクロタイタープレート6、7の最も外側のXまたはY列に沿った任意の位置で開始することができる。収集容器12、14は、最も外側のXおよびY列に沿って充填され、次いで中央の収集容器の位置に到達するまで2番目に外側のXおよびY列に沿って続く。あるいは、円形様式は上記中央の収集容器の位置から上記ラック6、7の最も外側のXおよびY列に向かって作用する。
【0054】
上記トレイ領域11上に少なくとも2つのラックまたはマイクロタイタープレート6、7を提供することにより、第2のラックまたはマイクロタイタープレート7において分注しながら、第1の非稼働のラックまたはマイクロタイタープレート6を除去することが支持される。
【0055】
底部フレーム1の少なくとも一方の側にチューブラック4を除去可能に取り付けることができる。
図1においてチューブラック4は、底部フレーム1の左側に取り付けられ、機械のX軸方向に沿って、すなわち、分注ヘッド31のストロークに沿って5本のチューブ8、9を有する。ホーム位置はホームチューブ9の上方にあり得る。ホームチューブは、ホーム位置に配置されたときに分注ヘッド31によって分注することができるいかなる液滴をも収集するように配置された15mlチューブとすることができる。分画される必要のない液体のフロースルーを、4つのフロースルーチューブ8のいずれか1つに収集することができる。上記フロースルーチューブ8は50mlチューブとすることができる。フロースルーチューブ8は上記分注ヘッド31の線形または蛇行移動中に充填することができる。
【0056】
図4は、チューブラック4の一例の実施形態の斜視図を示す。チューブラック4は底部フレーム1にスナップ嵌めすることができる。代替の一実施形態において少なくとも2つのチューブラックをトレイ領域11の両側またはトレイ領域11の代替の側のいずれか、すなわち、X軸およびY軸に沿って使用することができる。一実施形態において、チューブラック4は、他の容器の上方を移動する必要なく到達され得るように、2つの収集容器位置12および14間に配置され、これによって汚染の危険を回避することができる。
【0057】
チューブラック4は2つの部分、フレーム4'と、フロースルーチューブ8を受け取るための4つのフロースルーホール8'およびホームチューブ9を受け取るための1つのホームホール9'を含むトッププレート4''を含むことができる。チューブラックは、UL94-V0に分類されているPBTまたは任意の他の適切な材料で作製することができる。
【0058】
チューブラック4は、2つのガイドフックおよびリリースボタン付きのスナップフィットを使用して底部フレーム1に取り付けることができる。チューブラック4は食器洗い機で洗浄可能とすることができる。フレームは、食器洗い機の水が集まることを防止する排水穴を有することができる。
【0059】
収集容器12、14の1つで分画を行うことができる。前記第2のマイクロタイタープレートまたはラック7の容器14のいずれか1つで分画が行われている間に第1のマイクロタイタープレートまたはラック6を除去することが可能である。
【0060】
底部フレーム1は、いくつかの機械加工された特徴を備えたダイカストアルミニウム片とすることができる。フラクションコレクタ100の構成要素のすべてまたはほとんどを底部フレーム1に組み立てることができ、したがって底部フレーム1の公差が高いことが重要である。
【0061】
マイクロタイタープレート6、7を位置決めするためのアライメントフィーチャを底部フレーム1のトレイ領域11上に機械加工することができる。ラックまたはマイクロタイタープレート6、7の高精度の位置決めを可能にするためにアライメントフィーチャの公差が高いことが重要であり得る。アライメントフィーチャは、その標準寸法にしたがった上記マイクロタイタープレート6、7内の対応するアライメントフィーチャに適合するように機械加工することができる。異なるタイプのマイクロタイタープレートに対応する上記トレイ領域11上のマーキングがあることがあり、これはフラクションコレクタ100の有用性を高めることができる。
【0062】
図1において分注ヘッド31の接続部分30のみが示され、分注ヘッドの残りは上記アーム3のカバー3'によって隠されている。上記フラクションコレクタ100内の分注ヘッド31を外部カラムクロマトグラフィシステムに取り付けるためにフレキシブルチューブまたはキャピラリー20を配置することができる。
【0063】
図6~
図8は分注ヘッド31をさまざまな図で示している。分注ヘッド31は、ハウジング33、カバー32、接続部分30、および電子機器および/または液滴を検出するための手段のための支持体34を含む。ノズル72が、分注ヘッド31に取り付けられたクロマトグラフィシステムからの液体の液滴74を送達するために構成されている。
【0064】
液滴74から分注ヘッド31のさまざまな部品またはフラクションコレクタの任意の他の構成要素上への飛散に抵抗するため、液滴74は、出口通路35を通って分注ヘッド31を出る前に透明パイプ68内に落下することができる。カバー32は、電気および機械部品のための飛沫保護ならびにカバー32の内側の感応性部品への損傷を防止するための保護シールドの両方の機能を有する。カバー32はハウジング33にスナップフィットで組み立てることができる。分注ヘッド31の少なくとも一部がまたフラクションコレクタ装置100に除去可能に取り付け可能であり得る。このような分注ヘッド31はしたがって、必要に応じて、サービス中の清掃および/または交換のために除去可能であり得る。
【0065】
分注ヘッド31はまた、Xおよび/またはY方向のホーム位置を検出する機能を有する、少なくとも1つのフラグフォークセンサ、または他のタイプのセンサを含むことができる。分注ヘッド31はまた、分注ヘッドから落下する液滴を検出するための送信機および受信機を含むことができる。液滴を検出することは電磁放射源62と電磁放射感知センサ66によって実行することができ、これらは、液滴74がノズル72から放出されてセンサを通過する、すなわち、上記電磁放射源62と上記電磁放射感知センサ66との間の電磁放射経路37を遮断するときを検出するように配置されている。電磁放射源62から検出される電磁放射の精度を高めるため、センサ66に近接してアパーチャ64を配置することができる。さまざまな例の実施形態において複数のアパーチャ64を上記センサ66の前の可動プレート上に配置することができる。ノズルのサイズ、およびしたがって液滴のサイズに応じて、異なるアパーチャを選択することができ、すなわち、小さな液滴には小さなアパーチャを選択することができ、大きな液滴には大きなアパーチャが選択される。電磁放射源62は、白色光源、レーザ源または赤外線源のような任意の適切な光源とすることができる。センサ66は、使用される電磁放射源に関して選択される。センサ66と電磁放射源62との間の電磁放射経路37は上記透明パイプ68を通過することができる。
【0066】
支持システム1、2およびアームカバー3'は両方とも、フラクションコレクタによって可燃性液体からの蒸気が捕捉される可能性を回避するオープン設計を有するが、これは、このような捕捉された蒸気は安全上の問題を提示する可能性があるためである。顧客/システムユーザに面する表面は、滑らかで掃除しやすい設計を有することができる。オープンアーキテクチャにより、顧客が分画を追跡/視認するための良好な可視性も提供される。この器具は、小さな面積および/または体積フットプリントを提供するためにサイズが最小化されており、取り扱いが容易である。幅w≦320mmおよび深さd≦270mm、任意選択で高さh≦190mm(たとえば挿入されたさまざまなインサート/トレイ/ラックなしでh≦170または180mm)を備えた面積フットプリントを有する本発明のさまざまな実施形態を提供することができる。たとえば、150mm≦w≦320mm、120mm≦d≦270mmおよびh≦170mmである。好ましくは、さまざまな実施形態はまた4kg以下の質量mを有する。たとえば、1kg≦m≦4kg、1kg≦m<4kg、1kg≦m≦3kg、2kg≦m≦4kg、2kg≦m≦3kgなどである。
【0067】
アーム3は、キャリア42、リニアベアリングXレール50、分注ヘッド31、モータ電子機器(図示せず)およびアームカバー3'を含むことができる。
【0068】
分注ヘッド31はその底端にリニアベアリングXスライドユニットを含む。分注ヘッド31は、フレックスケーブルでモータ電子機器に接続されたリニアベアリングXレール50の上を走る。アームカバー3'はキャリア42へのスナップフィットを有することができる。アームカバー3'は、フラクションコレクタによって可燃性液体からの蒸気が捕捉される可能性を回避するオープン設計を有するが、これは、このような捕捉された蒸気は安全上の問題を提示する可能性があるためである。アームカバー3'の特徴は、モータ電子機器を覆うこと、および設計特徴として機能することであり得る。アーム3の移動は、アームがセンサXおよびYを検出するとき、較正のためにゼロ位置を有することができる。この移動は、電流をできるだけ低く保つためにXまたはYのみに、または位置決めの速度を上げるためにXおよびYにすることができる。リニアベアリングXレール50はキャリア42に取り付けられている。
【0069】
キャリア42はリニアベアリングYスライドユニット41を含む。キャリア42は上記リニアベアリングYスライドユニット41の下側に取り付けられている。リニアベアリングYスライドユニット41はリニアベアリングYレール40に沿って移動する。上記リニアベアリングYスライドユニット41の下側は上記リニアベアリングYレール40の下方にある。上記キャリア42を上記リニアベアリングYスライドユニット41に取り付けることにより、キャリア42の少なくとも一部がリニアベアリングYレール40の下方に配置され、すなわち、キャリア42の少なくとも一部が上記リニアベアリングYレール40の下にぶら下がっており、したがって逆さまの/反転したリニアベアリング運動と見なすことができる。リニアベアリングYスライドユニット41がリニアベアリングYレール40の下側に配置されることによってY軸運動が達成される。キャリア42はリニアベアリングYスライドユニット41に取り付けられ、リニアベアリングYレール40の上方に延在するようにリニアベアリングXレール50を担持するように形成されている。パイプ68および/または飛沫カバー3'、32は、キャリア42および/または分注ヘッド31の線形移動機構、すなわち、Yレール40、Xレール50、リニアベアリングYスライドユニット41およびリニアベアリングXスライドユニットを、液体飛沫から保護することができる。
【0070】
キャリア42には、アーム3からの負荷を支持システムに分配し、リニアベアリングYレール40上のトルクを低減するために底部フレーム1における溝45内を走るブッシングを備えたピン44を設けることができる。これにより、アーム3における振動なく、よりスムーズな走行が提供される。代替の一実施形態において上記ピンは上記リニアベアリングYスライドユニット41に設けられる。ピン44および溝45の構成要素は、Y軸運動に垂直な方向に追加の支持を提供しており、Y軸ベアリングコンポーネント上のトルク負荷を減少させるように設計されている。ピン44および溝45の構成要素は、Yレール40に対して時計回りおよび/または反時計回りの方向におけるトルクを減少させるように設計することができる。
【0071】
リニアベアリングYレール40は、底部フレーム1またはメインボードハウジング2のいずれかで支持システムに取り付けられている。メインボードハウジング2は
図1~
図3においてメインボードベース2'を含み、その上にメインボードカバー2''があるように示されている。メインボードハウジングは、上記キャリア42を受け入れて上記キャリア42がその端部位置間を自由に移動することを可能にするために構成された開口77を有する。上記リニアベアリングYレール40は上記メインボードカバー2''に取り付けることができる。X軸運動および/またはY軸運動のための駆動手段は、ねじ付きロッド、ラックアンドピニオン、ベルト駆動機構などとすることができる。
【0072】
本発明のさまざまな例の実施形態において上記キャリア42の上記リニアベアリング運動のためのリニアベアリングYレール40は上記収集容器12、14の開口の下方に配置することができる。本発明のさまざまな例の実施形態において上記キャリア42の上記リニアベアリング運動のためのリニアベアリングYレール40はトレイ領域11の下方に配置することができる。上記フラクションコレクタ内の低い位置にリニアベアリングYレール40を設けることによってコンパクトな設計を達成することができる。上記リニアベアリングYレールの位置が低いことにより、底部フレーム1における上記溝45内を走るブッシングを備えた上記ピン44を使用してアーム3からの負荷を支持システムに分配することおよびリニアベアリングYレール40上のトルクを防止することによって、線形移動のためのトルクリデューサとして底部フレーム1を効率的に使用することもできる。代替の一実施形態において上記溝45は、メインボードベース2'に取り付けられた支持構造47に配置されている。
【0073】
キャリア42上には、上記キャリアの端部位置を検出するための開口を備えたリッジに沿って移動する2つのフォークセンサがあり得る。
【0074】
キャリア42はXおよびYリニアベアリング間の機械的リンクである。これは、フラクションコレクタ100の公差チェーン、特にリニアベアリングのXおよびY移動間の垂直性に影響を与える可能性がある。キャリア42はダイカストアルミニウム部品とすることができる。公差チェーンに影響を与える可能性のあるフィーチャを機械加工することができる。
【0075】
カバー3'は、キャリア42からの凝縮液滴からアーム3内の電子機器を、そして顧客が誤ってこれに触れることができないように機械的保護として保護する。
【0076】
XおよびY移動用のリニアスライドユニットは、修正されたStork Drives(登録商標)1/4"ピッチユニットとすることができる。リニアベアリングXレール50およびリニアベアリングYレール40は同じピッチであるが異なる長さを有することができる。
【0077】
フラクションコレクタは、フラクションを冷たく保つために、冷却された収集容器を受け入れるようにさらに構成することができる。X-Y移動は液滴生成と同期させることができ、すなわち、液滴74がノズル72から放出されていないときに移動を行うことができる。上記電磁放射源62と電磁放射感知センサ66との間の電磁放射37のビームが、ノズル72から出る液滴の経路と交差する。電磁放射37のビームは、上記液滴74が落下している透明チューブ68を横切ることもできる。上記電磁放射感知センサ66の前にアパーチャ64を設けることができる。ノズル72から放出された液滴が、収集容器12、14のいずれか1つによって収集される。
【0078】
上記分注ヘッド31のX-Y移動は、液滴が上記ノズル72に安全に付着したときにのみ移動が実行されるような方式で、液滴形成および液滴放出と同期させることができる。1つの収集容器12、14から他の収集容器12、14への分注ヘッドの移動は、上記ノズルを通る液体の流量も考慮に入れることができる。流量が増加すると液滴形成が増加することになり、上記分注ヘッドを移動させるためのタイムスロットが、液滴形成頻度が増加することによって減少する。所望の領域、すなわち、収集容器の内側の外側に液滴を提供することなく移動を実行することができる安全なタイムスロットを予測するために分注ヘッドの移動の加速および減速も考慮に入れることができる。
【0079】
例の一実施形態において、分注ヘッド31の移動は、液滴74が検出された後に開始することができる。分注ヘッド31の移動は例の一実施形態において、2つの連続する液滴間で先に登録された時間の50%の間のタイムスロットでのみ許可することができる。制御ユニットが分注ヘッドの移動を制御することができる。制御ユニットは、使用される異なるタイプのラック6、7、すなわち、収集容器の数、収集容器間の距離、上記収集容器が充填されるべき順序などについて事前にプログラムすることができる。制御ユニットはまた、いかなる液体をも収集容器の外側で危険にさらすことなく分注ヘッドの移動を実行することができるときを決定するために液滴の頻度および液滴の検出についての情報を受け取ることができる。
【0080】
図5は、傾斜した収集容器12、14の側面図を示す。収集容器12、14の対称軸は、ノズル72からの液滴74の軌跡に対して角度を付けることができ、またはあるいは上記収集容器12、14は、上記分注ヘッド31の上記第1の移動の平面に対する法線Nに対して角度αで角度を付けることができる。上記分注ヘッドが移動する上記第1の平面は、上記トレイ領域11と本質的に平行な平面とすることができる。収集容器は、ラック6、7を傾けることによって、または上記ラック6、7の底面に対して垂直ではないウェルを上記ラック内に設けることによって、角度を付けることができる。さまざまな例の実施形態において、トレイ領域11は、ノズル72からの液滴の軌跡に対して垂直でなくてもよい。液滴74が収集容器12の内側の高い位置に当たると、液滴74は出ていくためのエネルギーが少なくなり、液体は収集容器12の内側をたどって収集された液体88に至る。いかなる小さな液滴でも排出されれば、これらは収集容器12の他の内壁に向けられることになる。ノズル72からの液滴が液面89に当たると、小さな液滴がエネルギー変位により収集容器から飛び出す可能性がある。これにより、ノズル上だけでなく収集容器12、14の周囲にも、最悪の場合には隣接する収集容器にも液体が堆積することにつながる。傾斜した収集容器を使用することによって、フラクションからの液体の損失を低減することができ、ノズルおよび周囲への堆積物を低減することができ、隣接するフラクションの汚染のリスクも低減することができる。
【0081】
収集容器12、14の位置を判定するための検出機構は、ラック6、7上に設けられたバーコードまたは上記ラック6、7上の他の検出サインを読み取るための上記アーム3上の読み取り機構によることができる。ラック6、7は、上記トレイ領域11上の位置合わせされた位置に提供することができる。較正された機械で、容器が配置されているコードを読み取ることから機械のX-Y移動を知ることができる。
【0082】
図9は、本発明による冷却手段/デバイスを備えたフラクションコレクタの一例の実施形態の正面斜視図である。ラック6、7は、冷却媒体を含む密閉冷却容積を含む冷却手段60を含むことができる。冷却手段60は、説明のみを目的として、トレイ領域11に対して高い位置に設けられている。冷却手段60は、少なくとも1つの収集容器12、14を少なくとも部分的に取り囲むために構成することができる。さまざまな例の実施形態において上記冷却手段60は上記ラック6、7に除去可能に取り付けることができる。さまざまな例の実施形態において上記冷却手段60は、ラック6、7を取り囲む中空フレームの形態とすることができる。フレームは底板を備えていても備えていなくてもよい。フレームは、複数のラックを取り囲むための単一のユニットであっても、単一のラックのみを取り囲む個別のユニットであってもよい。さまざまな例の実施形態において上記冷却手段はラックの一体部分とすることができ、すなわち、ラック自体に、冷却媒体で少なくとも部分的に満たされた中空構造が設けられている。
図9にはトレイ領域11に設けられたアライメントフィーチャ92、94の例の実施形態も示されている。アライメントフィーチャ92は、ラック6、7における対応する凹部(図示せず)によって受容されるように構成された突起の形態である。アライメントフィーチャ94は、上記少なくとも1つのラック6、7を受容してXおよび/またはY方向の移動を制限するように構成された突出要素の形態である。異なるタイプのラック6、7および/または冷却手段60を受容するためにトレイ領域上に複数のアライメントフィーチャを設けることができる。冷却手段60は、使用前、冷却器または冷凍庫のような低温領域に提供することができる。収集容器12、14内の分注された液体を冷却するため、冷却された冷却手段を使用直前に低温領域から除去することができる。
【0083】
中に統合された1つまたは複数の温度センサを含むさまざまな実施形態を提供することもできる。たとえば、支持システム、キャリア、延長アーム、分注ヘッド、トレイ領域、ラックなどの1つまたは複数に温度センサを設けることができる。
【0084】
中に冷却要素またはシステムを備えたさまざまな実施形態を提供することもできる。たとえば、冷却された空気を少なくとも1つのラックおよび/または収集容器に提供する空冷システムを設けることができる。さまざまな実施形態において、少なくとも1つのラックおよび/または収集容器に任意に解放可能に結合可能な冷却ブロックを設けることができる。このような冷却ブロックは、たとえば、3-D印刷によって製造することができ、水のような冷却流体で充填する/充填可能とすることができる。本発明は、上で説明し、図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、これらは主に説明および例示の目的を有する。本特許出願は、本明細書に記載された好ましい実施形態のすべての調整および変形を網羅するように意図されており、したがって本発明は添付の請求項の文言およびその均等物によって定義される。したがって、添付の特許請求の範囲内であらゆる種類の方法で装置を修正することができる。
【0085】
本明細書および次の請求項を通して、文脈上別段の要求がない限り、「comprise」という語、および「comprises」または「comprising」のような変形は、述べられた完全体またはステップまたは完全体またはステップの群を含むが、任意の他の完全体またはステップまたは完全体またはステップの群を除外するものではないことを意味すると理解されるであろう。
【符号の説明】
【0086】
1 底部フレーム
2 メインボードハウジング
2' メインボードベース
2'' メインボードカバー
3 アーム
3' カバー
4 チューブラック
4' フレーム
4'' トッププレート
5 距離プレート
6 ラック
7 ラック
8 フロースルーチューブ
8' フロースルーホール
9 ホームチューブ
9' ホームホール
11 トレイ領域
12 収集容器
14 収集容器
20 キャピラリー
30 接続部分
31 分注ヘッド
32 カバー
33 ハウジング
34 支持体
35 出口通路
37 電磁放射経路
40 リニアベアリングYレール
41 リニアベアリングYスライドユニット
42 キャリア
44 ピン
45 溝
47 支持構造
50 リニアベアリングXレール
60 冷却手段
62 電磁放射源
64 アパーチャ
66 電磁放射感知センサ
68 透明パイプ
72 ノズル
74 液滴
77 開口
88 液体
89 液面
92 アライメントフィーチャ
94 アライメントフィーチャ
100 フラクションコレクタ
【国際調査報告】