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特表2023-532046組換え修飾線維芽細胞増殖因子およびそれを使用した治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】組換え修飾線維芽細胞増殖因子およびそれを使用した治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20230719BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230719BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K38/18
C12P21/02 C ZNA
C12P21/02 H
C07K14/50
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K9/08
A61P27/02
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580315
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 US2021039139
(87)【国際公開番号】W WO2021263134
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/044,980
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】519393956
【氏名又は名称】トレフォイル セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヴェレス,デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG13
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4C076AA11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD09E
4C076DD09F
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD38D
4C076DD43
4C076DD60
4C076FF11
4C076FF14
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DB54
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA03
4C084ZA33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
修飾線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)の好適な製剤、ならびに眼における送達のために、ポリペプチド、医薬組成物およびかかる修飾FGFポリペプチドを含む薬剤を作製する方法、ならびにFGFの投与により恩恵を受ける状態を治療または予防するために、かかる修飾FGFポリペプチドを使用する方法が本明細書に記載される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬製剤であって、
修飾FGF-1ポリペプチド、
約1mM~約20mM濃度のクエン酸塩またはヒスチジン、
約0.01%~約10%(w/v)の濃度の界面活性剤、および
約1%~約10%(w/v)または約50mM~約200mM濃度の浸透圧調整剤、を含み、
前記修飾FGF-1ポリペプチドが、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のValのアミノ酸残基を含む、医薬製剤。
【請求項2】
約1mMまたは約10mM濃度のヒスチジンを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記界面活性剤の濃度が約0.1%(w/v)である、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記界面活性剤がポリソルベートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記ポリソルベートがPS-20またはPS-80である、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記ポリソルベートがPS-80である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記浸透圧調整剤がソルビトールであり、前記医薬製剤が約5%(w/v)の濃度のソルビトールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記医薬製剤のpHが約4.5~約6.5である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記製剤のpHが約5.8である、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記修飾FGF-1ポリペプチドの濃度が約0.0005μg/mL~約200μg/mLである、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記修飾FGF-1ポリペプチドの濃度が約100μg/mLである、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記修飾FGF-1ポリペプチドが、(i)外観検査による目に見える微粒子の欠如、および(ii)SE-HPLCアッセイでの高分子量種についての5%未満のピーク面積、のうちいずれか一つにより測定されるように、室温で保存した場合、少なくとも28日間は安定している、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
室温で保存した場合、前記修飾FGF-1ポリペプチドが少なくとも50日間は安定している、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記製剤を室温で保存した場合、前記修飾FGF-1ポリペプチドが少なくとも59日間は安定している、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記製剤が局所適用、点眼薬としての適用、眼内注射または眼周囲注射のために好適である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記製剤が眼内送達用の注射用製剤である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記製剤が硝子体内送達用の注射用製剤である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
バルク原薬製剤であって、修飾FGF-1ポリペプチド;少なくとも約200mM~約1000mM濃度の塩化ナトリウム、約50mM~約500mM濃度の硫酸アンモニウム;約1mM~約50mM濃度のリン酸水素二ナトリウム、を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドが、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のValのアミノ酸残基を含む、バルク原薬製剤。
【請求項19】
前記修飾FGF-1ポリペプチドの濃度が少なくとも約0.1g/mL~約10g/mLである、請求項18に記載のバルク原薬製剤。
【請求項20】
前記修飾FGF-1ポリペプチドの濃度が約3g/mLである、請求項19に記載のバルク原薬製剤。
【請求項21】
約800mM濃度の塩化ナトリウムを含む、請求項18~20のいずれか一項に記載のバルク原薬製剤。
【請求項22】
約320mM濃度の硫酸アンモニウムを含む、請求項18~21のいずれか一項に記載のバルク原薬製剤。
【請求項23】
約20mM濃度のリン酸水素二ナトリウムを含む、請求項18~22のいずれか一項に記載のバルク原薬製剤。
【請求項24】
前記バルク原薬製剤のpHが約7~約9である、請求項18~23のいずれか一項に記載のバルク原薬製剤。
【請求項25】
前記バルク原薬製剤のpHが約7.4である、請求項24に記載のバルク原薬製剤。
【請求項26】
前記修飾FGF-1ポリペプチドが-60℃±10℃の温度で保存した場合に安定している、請求項18~25のいずれか一項に記載のバルク原薬製剤。
【請求項27】
前記修飾FGF-1ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターでトランスフェクトされた細菌細胞の培養物中の封入体から単離された、リフォールディングされた修飾FGF-1ポリペプチドの精製を含む製造方法であって、前記精製が、リガンドとしてのデキストラン硫酸に結合される高度に架橋されたアガロース系マトリックスに、前記リフォールディングされた修飾FGF-1ポリペプチドを捕捉し、続いて、ブチルセファロース樹脂を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用して、疎水性相互作用クロマトグラフィーで最終精製することを含む、方法。
【請求項28】
前記最終精製ステップからの前記修飾FGF-1ポリペプチドの回収が、ヘパリン樹脂を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用し、他の点では同一である製造方法における疎水性相互作用クロマトグラフィーによる最終精製ステップ後の前記修飾FGF-1ポリペプチドの回収よりも、約10%~約40%多い、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを製造するためのスケーラブルな方法であって、前記方法が、
a.大腸菌細胞に前記修飾FGF-1ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記細胞のペリプラズムに、翻訳された修飾FGF-1ポリペプチドを標的化するように構成されている組換え核酸コンストラクトを導入することと、
b.約20時間にわたり、好適な抗生物質を含む合成増殖培地で前記細胞を増殖させることと、
c.治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを前記細胞から回収することと、を含み、
回収された前記修飾FGF-1の収量は、1L以上の規模では少なくとも3g/Lである、方法。
【請求項30】
前記修飾FGF-1ポリペプチドが、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のValのアミノ酸残基を含む、請求項27~29のいずれか一項に記載のスケーラブルな方法。
【請求項31】
前記大腸菌細胞がBL21、K12 HMS174およびW3110の株から選択される、請求項29または30に記載のスケーラブルな方法。
【請求項32】
前記組換え核酸コンストラクトが、T7またはTacプロモータを含むpMKet_TTHX1114である、請求項29~31のいずれか一項に記載のスケーラブルな方法。
【請求項33】
前記合成増殖培地が炭素源としてのグリセロール、ペプトンおよび酵母を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載のスケーラブルな方法。
【請求項34】
前記大腸菌細胞がBL21細胞であり、pMKet_TTHX1114を発現する前記BL21細胞が、37℃で約20時間、カナマイシンの存在下で増殖される、請求項31~33のいずれか一項に記載のスケーラブルな方法。
【請求項35】
前記組換え核酸コンストラクトが、前記細胞からの前記修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための1つ以上の修飾を含む、請求項29~34のいずれか一項に記載のスケーラブルな方法。
【請求項36】
前記1つ以上の修飾が、前記細胞での前記修飾FGF-1ポリペプチドの発現を増加させるための核酸配列コドンの最適化を含む、請求項35に記載のスケーラブルな方法。
【請求項37】
修飾FGF1-1ポリペプチドをコードする核酸配列であって、前記核酸が配列番号207の配列を含む、核酸配列。
【請求項38】
前記配列番号207を含み、Tacプロモータに動作可能に連結される、細菌発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2020年6月26日に出願された米国仮出願第63/044,980号の恩典を主張し、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容全体を援用する。
【0002】
修飾線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)ポリペプチド、医薬組成物およびかかる修飾FGFポリペプチドを含む薬剤、ならびにFGFの投与により恩恵を受ける状態を治療または予防するために、かかる修飾FGFポリペプチドを調製および使用する方法が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
FGFは、発達中の組織および成体組織で広範に発現される大きなポリペプチドであり(非特許文献1)、複数の生理学的機能にて働く(非特許文献2)。FGFファミリーとしては、少なくとも22種類のメンバーが挙げられる(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Baird et al.,Cancer Cells,3:239-243,1991
【非特許文献2】McKeehan et al.,Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.59:135-176,1998;Burgess,W.H.et al.,Annu Rev.Biochem.58:575-606(1989)
【非特許文献3】Reuss et al.,Cell Tissue Res.313:139-157(2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、
修飾FGF-1ポリペプチド、
約1mM~約20mM濃度のクエン酸またはヒスチジン、
約0.01%~約10%(w/v)の濃度の界面活性剤、および
約1%~約10%(w/v)または約50mM~約200mM濃度の浸透圧調整剤、を含む医薬製剤を提供し、
修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のValのアミノ酸残基を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は約1mMまたは約10mM濃度のヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は約0.1%(w/v)である。いくつかの実施形態では、界面活性剤はポリソルベートである。いくつかの実施形態では、ポリソルベートはPS-20またはPS-80である。いくつかの実施形態では、ポリソルベートはPS-80である。いくつかの実施形態では、浸透圧調整剤はソルビトールであり、医薬製剤は約5%(w/v)の濃度でソルビトールを含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤のpHは約4.5~約6.5である。いくつかの実施形態では、医薬製剤のpHは約5.8である。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの濃度は約0.0005μg/mL~約200μg/mLである。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの濃度は約100μg/mLである。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、(i)外観検査による目に見える微粒子の欠如、および(ii)SE-HPLC(サイズ排除高速液体クロマトグラフィー)アッセイでの高分子量種について5%未満のピーク面積、のうちいずれか一方により測定されるように、室温で保存した場合、少なくとも28日間は安定している。いくつかの実施形態では、室温で保存した場合、修飾FGF-1ポリペプチドは少なくとも50日間は安定している。いくつかの実施形態では、製剤を室温で保存した場合、修飾FGF-1ポリペプチドは少なくとも59日間は安定している。いくつかの実施形態では、製剤は局所適用、点眼薬としての適用、眼内注射または眼周囲注射に好適である。いくつかの実施形態では、製剤は眼内送達用の注射用製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は硝子体内送達用の注射用製剤である。
【0007】
一実施形態は、修飾FGF-1ポリペプチド;少なくとも約200mM~約1000mM濃度の塩化ナトリウム;約50mM~約500mM濃度の硫酸アンモニウム;約1mM~約50mM濃度のリン酸水素二ナトリウム、を含むバルク原薬製剤を提供し、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のValのアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの濃度は少なくとも約0.1g/mL~約10g/mLである。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの濃度は約3g/mLである。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は、約800mM濃度の塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は、約320mM濃度の硫酸アンモニウムを含む。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は、約20mM濃度のリン酸水素二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤のpHは約7~約9である。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤のpHは約7.4である。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤中の修飾FGF-1ポリペプチドは、-60℃±10℃の温度で保存した場合、安定している。
【0008】
一実施形態は、修飾FGF-1ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターでトランスフェクトされた細菌細胞の培養物中の封入体から単離された、リフォールディングされた修飾FGF-1ポリペプチドを精製することを含む製造方法を提供し、精製は、リガンドとしてのデキストラン硫酸に結合される高度に架橋されたアガロース系マトリックスに、リフォールディングされた修飾FGF-1ポリペプチドを捕捉し、続いて、ブチルセファロース樹脂を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用して、疎水性相互作用クロマトグラフィーで最終精製することを含む。いくつかの実施形態では、最終精製ステップからの修飾FGF-1ポリペプチドの回収は、ヘパリン樹脂を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用すること以外は同一である製造方法での疎水性相互作用クロマトグラフィーによる最終精製ステップ後の修飾FGF-1ポリペプチドの回収よりも、約10%~約40%多い。
【0009】
一実施形態は、治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを製造するためのスケーラブルな方法を提供し、該方法は、
a.大腸菌細胞に修飾FGF-1ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、細胞のペリプラズムに、翻訳された修飾FGF-1ポリペプチドを標的化するように構成されている組換え核酸コンストラクトを導入することと、
b.約20時間にわたり、好適な抗生物質を含む合成増殖培地で細胞を増殖させることと、
c.治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを細胞から回収することと、を含み、
回収された修飾FGF-1の収量は、1L以上の規模では少なくとも3g/Lである。
【0010】
スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のアミノ酸残基を含む。スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、大腸菌細胞はBL21、K12 HMS174およびW3110といった株から選択される。スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、組換え核酸コンストラクトは、T7またはtacプロモータを含むpMKet_TTHX1114である。スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、合成増殖培地は炭素源としてグリセロール、ペプトンおよび酵母を含む。スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、大腸菌細胞はBL21細胞であり、pMKet_TTHX1114を発現するBL21細胞は、37℃で約20時間、カナマイシンの存在下で増殖される。スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、組換え核酸コンストラクトは、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための1つ以上の修飾を含む。スケーラブルな方法のいくつかの実施形態では、1つ以上の修飾は、細胞での修飾FGF-1ポリペプチドの発現を増加させるために最適化されている核酸配列コドンを含む。
【0011】
一実施形態は、修飾FGF1-1ポリペプチドをコードする核酸配列であり、該核酸は配列番号207の配列を含む。一実施形態は、配列番号207を含み、Tacプロモータに動作可能に連結される細菌発現ベクターを提供する。
【0012】
一実施形態では、1つ以上の変異を有し配列番号1に示される配列を含む組換え修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供され、該ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置するN末端メチオニン残基を含む。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、N末端メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長ペプチドは配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、伸長ペプチドは配列番号4~8に示される配列のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはポリペプチドの成熟型である。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号14~18から選択される配列を含む。
【0013】
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、または配列番号1に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し、少なくとも1個、2個、3個、4個または5個の単一のアミノ酸変異を含む組換えFGF-1ポリペプチド、および(b)L-メチオニン、を含む製剤が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、製剤は眼内送達用の注射用製剤である。
【0014】
いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、N末端メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長ペプチドは配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、伸長ペプチドは配列番号4~8に示される配列のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはポリペプチドの成熟型である。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号14~18から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号24~28から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号93~117から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、伸長ペプチドに対してN末端にメチオニン残基をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号118~141から選択される配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは136個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に少なくとも141個のアミノ酸を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、組換え修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の67位に変異を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の最初の5つの残基のうち1つ以上の切断をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号146~149から選択される配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む伸長ペプチドをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号174~204から選択される配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド組換え修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号2または配列番号205に示される配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはポリペプチドの成熟型である。
【0024】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valからなる群から選択される1つ以上の変異を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の1つ以上の変異を含み、当該変異は、Lys12Val、Cys16Ser、Ala66Cys、Cys117ValおよびPro134Valからなる群から選択され、修飾FGF-1ポリペプチドはペプチドALTEKの少なくとも1つの残基をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valといった配列番号1の変異を含む1つ以上の変異を含み、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置するメチオニン残基、およびN末端メチオニンと配列番号1の1位との間に位置するペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、製剤はヒト血清アルブミン(human serum albumin、HSA)および/またはポリソルベート80を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、製剤はL-メチオニンを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、製剤はL-メチオニンおよびポリソルベート80を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、製剤は、
-少なくとも約50mM リン酸水素二ナトリウム、
-少なくとも約100mM 塩化ナトリウム、
-少なくとも約10mM 硫酸アンモニウム、
-少なくとも約5mM L-メチオニン、および
-少なくとも約0.01%(w/v)のポリソルベート80、のうち少なくとも1つをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、製剤は、
-少なくとも約50mM リン酸水素二ナトリウム、
-少なくとも約100mM 塩化ナトリウム、
-少なくとも約10mM 硫酸アンモニウム、
-少なくとも約0.1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、
-少なくとも約5mM L-メチオニン、および
-少なくとも約0.01%(w/v)のポリソルベート80、のうち少なくとも1つをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、製剤は少なくとも約0.01mM~約10mM濃度であるEDTAを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、製剤は硫酸アンモニウムを含み、硫酸アンモニウムの濃度は少なくとも約0.01mM~約100mMである。
【0034】
いくつかの実施形態では、製剤は少なくとも約0.01mM~約100mM L-メチオニンを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、組換えFGF-1は、フックスジストロフィー、水疱性角膜症、ヘルペス性角膜症、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー1、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー2、後部多形性角膜内皮ジストロフィー、ドライアイ症候群、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜ジストロフィー、黄斑角膜ジストロフィー、シュナイダー結晶性角膜ジストロフィー、先天性実質性角膜ジストロフィー、斑状角膜ジストロフィー、角膜損傷、眼の損傷、化学損傷、びらん性損傷、角膜実質損傷およびマスタードガス角膜症からなる一覧から選択される1つ以上の疾患、障害または病気を治療するのに好適な濃度で存在する。
【0036】
いくつかの実施形態では、生物への修飾FGF-1ポリペプチドの投与を容易にする医薬組成物または製剤が本明細書に提供される。修飾FGF-1ポリペプチドを投与する複数の技術は当該技術分野に存在しており、局所、眼、眼内、眼周囲、静脈内、経口、エアロゾル、非経口および投与を含むがこれらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は液体眼科用製剤である。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、局所的に、すなわち角膜へのマイクロニードル注射により、または房内に投与される。局所投与の様式としては、例えば局所適用、点眼薬、眼内注射または眼周囲注射が挙げられ得る。眼周囲注射は、典型的には結膜下、またはテノン嚢(眼の上の線維組織下方)への化合物の注射を含む。眼内注射は、典型的には硝子体への修飾FGFまたは医薬組成物の注射を含む。ある特定の実施形態では、投与は、局所適用または点眼薬などによる非侵襲的なものである。いくつかの実施形態では、投与は局所的方法および房内方法の併用によるものである。
【0038】
いくつかの実施形態では、製剤は房内に投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、製剤は硝子体内に投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、製剤は約-20℃の温度で、少なくとも約2週間~約4週間安定している。
【0041】
治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを製造するためのスケーラブルな方法が本明細書に提供され、該方法は、(a)修飾FGF-1ポリペプチドをコードする配列を含む組換え核酸コンストラクトを細胞内に導入することであって、修飾FGF-1ポリペプチドが細胞によって産生される、導入することと、(b)治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを細胞から回収することと、を含む。いくつかの実施形態では、スケーラブルな方法は、(a)pBR322由来のori配列を含むベクターに挿入される、細胞質発現のために修飾FGF-1ポリペプチドをコードする配列を含む組換え核酸コンストラクトを、好適な大腸菌細胞に導入することと、(b)約20時間、好適な抗生物質を含む合成増殖培地中で細胞を増殖することと、(c)治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを細胞から回収することと、を含み、ステップcで回収される修飾FGF-1の収量は、pBR322由来のori配列、合成増殖培地またはこれらの組合せを含むベクターの使用を含まない方法よりも少なくとも2倍高い。
【0042】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはAla66Cys変異を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはCys16Ser変異を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはCys117Ser変異を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置するN末端メチオニン残基を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、N末端メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長ペプチドは配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、伸長ペプチドは配列番号4~8に示される配列のうちのいずれか1つを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドはポリペプチドの成熟型である。
【0046】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号14~18から選択される配列を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号24~28から選択される配列を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号93~117から選択される配列を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチドに対してN末端にメチオニン残基をさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号118~141から選択される配列を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは136個のアミノ酸を含む形態で発現される。
【0052】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に少なくとも141個のアミノ酸を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の最初の5つの残基のうち1つ以上の切断をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号146~149から選択される配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む伸長ペプチドをさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号174~204から選択される配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号2、配列番号205に示される配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり1gの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり10gの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0060】
いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり100gの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0061】
いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり1kgの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0062】
いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり10kgの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0063】
いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり100kgの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0064】
いくつかの実施形態では、該方法は、少なくとも100Lの細胞ストックのバッチ製剤を製造するために規模を拡大することが可能である。
【0065】
いくつかの実施形態では、細胞は酵母細胞または細菌である。
【0066】
いくつかの実施形態では、細胞は細菌であり、細菌は大腸菌である。
【0067】
いくつかの実施形態では、細胞は大腸菌細胞であるBLA21A1株である。
【0068】
いくつかの実施形態では、細胞は大腸菌細胞であるK12 HMS174株またはW3110株である。
【0069】
いくつかの実施形態では、組換え核酸コンストラクトはプラスミドの形態である。
【0070】
いくつかの実施形態では、組換え核酸コンストラクトは、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための1つ以上の修飾を含む。
【0071】
1つ以上の修飾は、細胞での修飾FGF-1ポリペプチドの発現を増加させるために最適化されている配列を含む、実施形態69の方法。
【0072】
いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾はプラスミドの修飾を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾は、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための好適なプロモータを選択することを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法は細胞増殖を最大化するための適切な栄養培地中で細胞を増殖することをさらに含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、適切な栄養培地は炭素源を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、炭素源はグルコースまたはグリセロールである。
【0077】
いくつかの実施形態では、プラスミドはpMKetまたはそれらの誘導体もしくは修飾である。
【0078】
いくつかの実施形態では、該方法は、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を最大化させるために1つ以上の修飾プロセスをさらに含み、1つ以上の修飾プロセスは、
i.変異FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸内での修飾;
ii.変異FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸に関連し、プロモータ、エンハンサ、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域、ポリA尾部、転写物安定化配列から選択される1つ以上の調節配列要素を含む組換え核酸内での修飾;
iii.組換え核酸を含むプラスミドの修飾;
iv.細胞増殖を最大化させるための細胞株の修飾または細胞株の選択;
v.細胞増殖培地の変性;および
vi.細胞から修飾FGF-1ポリペプチドを回収するプロセスでの修飾、から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、組換え核酸を導入することは、細胞内に組換え核酸を電気穿孔することを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドを細胞から回収することは、タンパク質を細胞のペリプラズム封入体から回収することを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、回収することは、変性緩衝液中で封入体を可溶化させること、およびFGF-1ポリペプチドを回収することを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、変性緩衝液は尿素またはグアニジンを含む。
【0083】
変性緩衝液は、pH7.4の6M グアニジンを含む実施形態34または77に記載の方法。
【0084】
いくつかの実施形態では、変性緩衝液は2mM EDTAをさらに含む。いくつかの実施形態では、該方法は、DTTを加えることで回収されたFGF-1ポリペプチドを還元することをさらに含む。いくつかの実施形態では、該方法は、透析ろ過によりDTTを取り除くことをさらに含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、回収されたFGF-1ポリペプチドは、リフォールディングバッファ内でリフォールディングにかけられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、リフォールディングバッファはアルギニンを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、リフォールディングバッファは1M アルギニンを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、リフォールディングバッファはpH9~9.5の5~50mM トリスを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、リフォールディングバッファは5mM システインまたは2mM システインまたはその両方を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、FGF-1は、ヘパリンとの疎水性相互作用カラム(hydrophobic interaction column、HIC)で捕捉される。
【0091】
いくつかの実施形態では、治療的に有効な組換え変異hFGF1タンパク質を回収することは、タンパク質を精製することを含む。いくつかの実施形態では、精製することは、液体クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、超遠心分離法、クロスフローろ過および透析ろ過のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、精製することは、ヘパリンカラムろ過による精製ステップを含む。いくつかの実施形態では、精製することは、純粋な単量体の組換え変異hFGF1タンパク質を回収することを含む。いくつかの実施形態では、精製することは、病原体を含まず、エンドトキシンを含まず、ヘパリンを実質的に含まない純粋な単量体の組換え変異hFGF1タンパク質を回収することを含む。
【0092】
実施形態34~97のうちいずれか1つの方法により製造される、修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物、その凍結乾燥粉末画分またはその液体製剤が本明細書に記載される。
【0093】
修飾ヒトFGF-1をコードし、1つ以上の調節配列に動作可能に連結される組換え核酸配列を含むプラスミドベクターが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、組換え核酸配列は細胞質発現のために設計される。いくつかの実施形態では、組換え核酸はモノシストロニック配列をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、組換え核酸はポリシストロニック配列をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、FGF-1ポリペプチドに加えてシャペロンペプチド配列をコードする。
【0094】
フックスジストロフィー、水疱性角膜症、角膜潰瘍、ヘルペス性角膜症、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー1、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー2、後部多形性角膜内皮ジストロフィー、ドライアイ症候群、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜ジストロフィー、黄斑角膜ジストロフィー、シュナイダー結晶性角膜ジストロフィー、先天性実質性角膜ジストロフィー、斑状角膜ジストロフィー、角膜損傷、眼の損傷、化学損傷、びらん性損傷、角膜実質損傷およびマスタードガス角膜症からなる一覧から選択される1つ以上の疾患、障害または病気を有する対象を治療する方法が本明細書に提供され、該方法は、好適な投与量の
【0095】
(i)実施形態1~33のうちのいずれか1つの注射用製剤、または
【0096】
(ii)実施形態98の医薬組成物を、その必要がある対象に投与することを含む。
【0097】
FGF-1の注射用製剤を含むキットが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の製剤または医薬組成物内の修飾FGF-1の最小用量を提供可能であるドロッパーボトルを含む。いくつかの実施形態では、ドロッパーボトルは滅菌フィルタをさらに備える。いくつかの実施形態では、容器はシリンジを備える。いくつかの実施形態では、シリンジはツベルクリンポリプロピレンおよびガラスからなる群から選択される材料を含む。いくつかの実施形態では、キットは成形同時充填ドロッパーなどの単回投与量容器を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、シリンジは、本明細書に記載の注射用製剤または医薬組成物で予め満たされている。
【0099】
いくつかの実施形態では、キットは電子制御部品をさらに含む。いくつかの実施形態では、電子制御部品によって、少なくとも約10μL~約100μLの容量の本明細書に記載の注射用製剤または医薬組成物の投与を制御することができる。
【0100】
援用記載
本明細書で言及されているすべての刊行物および特許出願は、それぞれ個別の刊行物または特許出願が本明細書の一部として援用されると具体的かつ個別に示されていると仮定した上で、同程度でその内容全体が本明細書の一部を構成するものとして援用される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1】例示的で一般的なFGF-1製造プロセスを表す。
【0102】
図2A】ブチルHICクロマトグラフィーによる例示的な捕捉、およびSDS-PAGEによってFGF-1に対応する17kDaの単一バンド(図示せず)が得られる、点線で示されている画分の溶出を表す。
【0103】
図2B】ヘパリンカラムでのブチル捕捉ステップ後の例示的な最終精製ステップ、および溶離液の代表的なSDS-PAGEを表す。
【0104】
図3A】ブチルおよびヘパリンHICで捕捉した、異なるリフォールディングバッファを使用した実験からのデータを表す。
図3B】ブチルおよびヘパリンHICで捕捉した、異なるリフォールディングバッファを使用した実験からのデータを表す。
図3C】ブチルHIC(左)、続いてヘパリンHIC(右)での溶出のSDS-PAGE結果を示す。
【0105】
図4A】リフォールディングバッファ中で尿素またはグアニジンを使用し、ポリソルベート20の使用とポリソルベート80の使用を比較した代表的な実験からのFGF1回収を示し、SDS-PAGEで得られたタンパク質泳動を比較した量的データを示す。
図4B】リフォールディングバッファ中で尿素またはグアニジンを使用し、ポリソルベート20の使用とポリソルベート80の使用を比較した代表的な実験からのFGF1回収を示し、SDS-PAGEで得られたタンパク質泳動を比較した量的データを示す。図中の各データポイントに関して、第1のカラムは4℃でのリフォールディングを表し、第2のカラムは室温でのリフォールディングを表す。
【0106】
図5】例示的で一般的なFGF-1製造プロセスを表す。
【0107】
図6】大腸菌(E.coli)での修飾FGF-1ポリペプチド発現のプラスミドマップを表す。
【0108】
図7A】0日目での原薬の明確なピークを示す代表的なSEC-HPLCデータを表す。
図7B】28日目での原薬の明確なピークを示す代表的なSEC-HPLCデータを表す。
図7C】59日目での原薬の明確なピークを示す代表的なSEC-HPLCデータを表す。
【発明を実施するための形態】
【0109】
眼の疾患および眼の損傷は重度の衰弱性疾患および損傷であり、広範囲にわたる形態で発生する可能性がある。眼の疾患の一分類としてマスタードガス角膜症がある。マスタードガスは、第1次世界大戦中の1915年4月、イープスの戦いでドイツ軍によって最初に投入されたびらん性毒ガスである。マスタードガスへの曝露によって長期合併症が生じる可能性があり、これは年月を重ねる中で発症する。角膜は瘢痕化してかつ不規則なものとなり、コレステロールおよびカルシウムがその組織に堆積することで進行性視覚障害がもたらされる。細隙灯顕微鏡検査によって、強膜組織には特徴的な模様が認められることが明らかになっている。白色磁器のような見た目と異常な血管奇形が一般的である。この奇形は、拡張してねじれた血管として確認されており、時には静脈瘤様膨脹およびソーセージ様血管とともに壺型の輪郭を有する状態で確認される。時間が経過するとともに、濃い角膜混濁が生じる。上部分は瞼が張り出していることで保護されているため、これは中央部分および下部分で最も顕著である。MGKの主要な組織病理学的特徴としては、例えば上皮の不規則な厚さ、退行性変化、肥厚した上皮基底膜、ケラチノサイトの損失およびボーマン膜の破壊が挙げられる。(Kanavi et al.,Chronic and delayed mustard gas keratopathy:a histopathologic and immunohistochemical study,Eur.J Ophthalmol.2010 Sep-Oct;20(5):839-43)。典型的には、角膜に水疱を生じさせる曝露の1日以内に、角膜上皮(corneal epithelium、CE)が基底膜(basement membrane、BM)から脱落して剥皮化した角膜実質に角膜浮腫が発生し、全層ケラトサイトーシスが創縁内にはっきりと認められる。5日間までに、上皮キャップが再生し、角膜浮腫が引き始める。曝露後1週間では、CEは、未発達のヘミデスモソームが接着した状態で部分的に層状である。このような明らかな好転にもかかわらず、角膜は曝露後3週間ですぐに、持続して増大する角膜浮腫、角膜びらんおよび新生血管形成を含む慢性損傷の臨床的な特徴を生じる。8週間までに、基底膜領域は重度の変性を受ける。さらにはMGKに冒された角膜は、創傷治癒プロセスの遅延を呈すると考えられる。
【0110】
本明細書では、修飾FGF-1ポリペプチドおよびかかる修飾ペプチドを含むその液体注射剤、ならびに眼の疾患、障害および病気(例えば、フックスジストロフィー)、角膜の上皮損傷および内皮損傷を誘発するびらん剤(例えば、マスタードガス角膜症(MGK))、創傷治癒、心血管疾患(例えば、虚血)および神経の病気(例えば、筋萎縮性側索硬化症(amylotrophic lateral sclerosis、ALS)などの種々の病気を治療するため、かかる修飾FGF-1ポリペプチドを使用する方法が提供される。本明細書には、修飾線維芽細胞増殖因子(FGF-1)ポリペプチドまたはかかる修飾ペプチドを含む医薬組成物または薬剤を投与することで化学物質またはびらん性毒ガス誘発性損傷を治療する方法もまた提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで、例えば化学熱傷などの化学損傷によって誘発されるマスタードガス角膜症(MGK)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで、例えばナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard、NM)などのびらん性毒ガスによって誘発されるマスタードガス角膜症(MGK)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、例えばホスゲンなどの化学兵器によって生じる化学損傷または熱傷を治療することを含む。
【0111】
本明細書では、修飾FGF-1ポリペプチドおよびその液体注射剤が、眼の疾患、障害および病気(例えば、フックスジストロフィー)、角膜の上皮損傷および内皮損傷を誘発するびらん剤(例えば、マスタードガス角膜症(MGK))、創傷治癒、心血管疾患(例えば、虚血)および神経の病気(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの種々の病気を治療するためにかかる修飾FGF-1ポリペプチドの使用が好適であるように、修飾FGF-1ポリペプチドおよびかかる修飾ペプチドを含むその液体注射剤を製造する方法もまた提供される。本明細書には、修飾線維芽細胞増殖因子(FGF-1)ポリペプチドまたはかかる修飾ペプチドを含む医薬組成物または薬剤を投与することで化学物質またはびらん性毒ガス誘発性損傷を治療する方法もまた提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで、例えば化学熱傷などの化学損傷によって誘発されるマスタードガス角膜症(MGK)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで、例えばナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard、NM)などのびらん性毒ガスによって誘発されるマスタードガス角膜症(MGK)を治療することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、例えばホスゲンなどの化学兵器によって生じる化学損傷または熱傷を治療することを含む。
【0112】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドがN末端メチオニン(N-Met)残基がある状態で発現される場合、ポリペプチドは、N末端ペプチドを除去するためのタンパク質分解切断を必要とするステップなしにその後精製される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、N末端ペプチドを除去するためのタンパク質分解切断ステップを含まずに迅速な精製方法で調製される修飾FGF-1ポリペプチドを提供する。これは、医薬品の製造管理および品質管理の基準(good manufacturing practice、GMP)ガイドラインに従った修飾FGF-1ポリペプチドの製造に特に有利である。こうした利点としては切断分解ステップの欠如が挙げられており、切断分解された産物を後で精製すること、および分離切断に使用される試薬を除去する必要性がなくなることを含む。さらなる利点は、処理を減らすことによる収量増加、ならびに切断分解のために導入される残留切断分解試薬および汚染物質、未切断分解物質からの切断後の分離を試験する必要性の減少である。
【0113】
本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドは、安定性(例えば、熱安定性)を増大させ、埋没した遊離チオール数を減少させ、かつ/または有効なヘパラン硫酸プロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycan、HSPG)親和性を増加させる。
【0114】
いくつかの他の利点は、本明細書に記載の方法での修飾FGF-1ポリペプチドの用途に関連する。例えば、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドは、その医薬組成物または製剤(例えば、眼科用製剤)中にヘパリンを含むことなく投与されるため、その生物学的起源に関連する潜在的な安全性の問題を回避することができる。加えて、ヘパリンの使用を避けることで、局所的なヘパリン誘発性有害事象または既存の抗ヘパリン抗体により生じる合併症を伴うことなく、高投与量での修飾FGF-1ポリペプチドの使用が可能になる。さらに、ヘパリンが存在しない場合、修飾FGFの組織への即時の結合は最大化し、全身分布が著しく減少する。本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドには局所的な貯留を増強し、再分布動態を低下させるため、送達部位での排出半減期および平均滞留時間(mean residence time、MRT)を増加させ、投与頻度を低下させることが可能という利点もある。こうした利点は、安定性(例えば、熱安定性)を増大させ、埋没した遊離チオール数を減少させ、かつ/または有効なヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)親和性を増加させる本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドの結果であり得る。
【0115】
本開示のFGF-1ポリペプチドは、種々の実施形態では、付加、切断または付加と切断の組合せといった該ポリペプチドのN末端に修飾を含む。いくつかの実施形態では、修飾は単一のN末端メチオニン残基の付加である。いくつかの実施形態では、修飾は伸長ペプチドの付加である。いくつかの実施形態では、修飾はFGF-1ポリペプチドの最初の5つの残基のうちの1つ以上の切断である。いくつかの実施形態では、FGF-1ポリペプチドは、N末端の修飾に加えて1つ以上の変異を有する、配列番号1に示される配列を含む。
【0116】
本明細書に開示される修飾FGF-1ポリペプチドのいくつかの例は、ポリペプチドの成熟型にN末端メチオニン(N-Met)残基を含む。アミノ酸がタンパク質のN末端に付加される場合の生物学的活性の維持は、予測不可能である。いくつかのタンパク質は付加に耐性があるが、耐性のないタンパク質もあり、生物学的活性の維持および安定性変化の可能性は実験によってのみ決定される。本開示は、N末端のMet残基の付加が生物学的活性および安定性の維持に関して許容されることを特定する。
【0117】
特定用語
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される主題のいずれかを制限するものではないということを理解されたい。本願では、単数形の使用は、特段明記しない限り複数形の使用を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、特段文脈で明確に規定しない限り、複数形の指示対象を含む。本願では、「または(or)」の使用は、特段明記しない限り「および/または(and/or)」を意味する。さらに、「含む(including)」といった用語ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」および「含んだ(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0118】
本明細書で使用される章の見出しは、系統立てのみを目的にしたものであり、記載の主題を限定するものとして解釈されるべきではない。特段規定しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および化学用語は、特許請求される主題の一般的に理解されている意味を有する。本明細書の用語に複数の定義が存在する場合には、本章の定義が優先される。本明細書に言及されるすべての特許、特許出願、刊行物ならびに公開されているヌクレオチドおよびアミノ酸配列(例えば、GenBankまたは他のデータベースで利用できる配列)は、本明細書の一部を構成するものとして援用される。URLまたはこうした他の識別子もしくはアドレスを参照する場合、こうした識別子は変わる可能性があり、かつインターネット上の特定の情報は変化する可能性がある。ただし、インターネットを検索することで同等の情報を発見することが可能である。これらの参照は、こうした情報が入手可能かつ公開されて普及していることを証明している。
【0119】
本明細書で使用される場合、配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」という用語は、必要な場合には配列をアライメントしてギャップを導入し、最大パーセント配列同一性を取得した後に、配列同一性の一部としていずれかの保存的置換を考慮していない、特定の配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の割合として定義されている。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のアライメントは、例えば、EMBOSS MATCHER、EMBOSS WATER、EMBOSS STRETCHER、EMBOSS NEEDLE、EMBOSS LALIGN、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用し、当業者の技術範囲内の種々の方法で達成することができる。当業者は、アライメントを測定するために適切なパラメータを決定することができるが、これは比較されている配列の全長にわたって最大アライメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含んでいる。
【0120】
標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg 「Advanced Organic Chemistry 4th Ed.」Vols.A(2000)およびB(2001),Plenum Press,New Yorkを含むがこれに限定されない参考文献に見出され得る。特段指示しない限り、質量分析法、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法は、同様の参考文献に見出され得る。
【0121】
特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載の分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および創薬化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの検査法および技術は、当該分野で認識されているものである。化学合成、化学分析、医薬品、製剤および送達および患者の治療に標準的な技術を使用することができる。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成および組織培養および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に標準的な技術を使用することができる。例えば製造業者仕様のキットを使用して、または当該技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように反応および精製技術を使用することができる。従来の方法ならびに本明細書全体を通して引用および説明される種々の一般的な、およびより具体的な参考文献に記載されているように、通常、上述の技術および手順を実行することができる。
【0122】
本明細書に記載の方法および組成物は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、コンストラクトおよび試薬に限定されず、そのためこれらは変化してもよいことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載することが目的であり、本明細書に記載の方法、化合物、組成物の範囲の限定を意図していないこともまた理解されたい。
【0123】
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」といった用語は、疾患、障害もしくは病気の症状を軽減すること、弱めることもしくは寛解させること、さらなる症状を予防すること、症状の主たる代謝的原因を寛解させることもしくは予防すること、例えば疾患、障害もしくは病気の発症を抑えること、疾患、障害もしくは病気を和らげること、疾患、障害もしくは病気の症状を寛解させること、疾患、障害もしくは病気により引き起こされる病気を和らげること、または疾患、障害もしくは病気の症状を止めることなど疾患、障害もしくは病気を抑制することを含む。「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」といった用語は、予防的処置および/または治療的処置を含むがこれらに限定されない。
【0124】
製剤、組成物または成分に対する「許容される」または「薬学的に許容される」といった用語は、治療されている対象の全般的な健康状態に、持続性のある有害作用を何ら有しないことを指す、または本明細書に記載の修飾FGFの生物学的活性もしくは特性を無効にせず、相対的には非毒性である。
【0125】
特定の修飾FGFまたは医薬組成物の投与による、特定の疾患、障害または病気の症状の「寛解」といった用語は、永続的または一時的、長期または短期のいずれかであったとしても、修飾FGFまたは医薬組成物の投与が原因であり得る、または投与に関連し得る、重症度の一部低下、発症の遅延、進行の緩徐化または持続期間の短縮を指す。
【0126】
本明細書で使用される場合、「組合せ」または「薬学的組合せ」といった用語は、2つ以上の活性成分を混合または組み合わせることで生じる産物を意味し、活性成分の固定の組合せまたは固定されない組合せの両方を含む。「固定の組合せ」といった用語は、ある活性成分(例えば、修飾FGF)および助剤が、単一の存在物または用量の形態で両方が患者に同時に投与されることを意味する。「固定されない組合せ」といった用語は、ある活性成分(例えば、修飾FGF)および助剤が、同時に、並行して、または間に特定の時間制限を設けることなく経時的に、のいずれかで、個別の存在物として患者に投与されることを意味する。かかる投与によって、患者の身体に有効なレベルの2つの薬剤が提供される。後者は、例えば3つ以上の活性成分の投与といったカクテル療法にも適用される。
【0127】
本明細書で互換的に使用される場合、「医薬組成物」または「医薬製剤」といった用語は、1つ以上の修飾FGF-1ポリペプチド(例えば、配列番号2の修飾FGF-1ポリペプチド)と、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/もしくは他の賦形剤、またはこれらの任意の組合せといった1つ以上の他の化学成分を含む製剤を指す。医薬製剤は、生物への修飾FGF-1ポリペプチドの投与を容易にする。修飾FGF-1ポリペプチドを投与する複数の技術は当該技術分野に存在しており、局所、眼、眼内、眼周囲、静脈内、経口、エアロゾル、非経口および投与を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、例えば緩衝剤、界面活性剤、浸透圧調整剤またはこれらの組合せといった不活性成分とともに、活性薬物成分として修飾FGF-1ポリペプチド(例えば、配列番号2に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチド)を含む。
【0128】
本明細書で使用される場合、「担体」といった用語は、目的の薬剤(例えば、修飾FGF)の細胞または組織への導入を容易にする、相対的に非毒性の化学化合物または薬剤を指す。
【0129】
「希釈剤」といった用語は、送達前に目的の薬剤(例えば、修飾FGF)を希釈するために使用される化学化合物を指す。希釈剤はまた、さらに安定した環境を提供することができることから、薬剤を安定化させるために使用することができる。(pH制御または維持をもたらし得る)緩衝溶液に溶解されている塩は、当該技術分野に希釈剤として利用され、リン酸緩衝生理食塩水を含むがこれに限定されない。
【0130】
「同時投与」などの用語は、選択された薬剤(例えば、修飾FGFまたはその組成物および助剤)の単一の患者への投与を包含することを意味し、薬剤が同一もしくは異なる投与経路、または同時もしくは異なる時間で投与される治療レジメンを含むことを意図している。
【0131】
「有効量」または「治療有効量」といった用語は、治療されている疾患、障害または病気の1つ以上の症状をある程度和らげる、投与される、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチド、薬剤、組合せまたは医薬組成物の十分な量を指す。この結果は、疾患の徴候、症状または原因の減少および/または軽減、または生物系の他の望ましい変化であり得る。例えば、治療使用にとっての「有効量」は、望ましい薬理効果、治療的改善または過度の有害な副作用がなく、疾患症状の臨床的に著しい軽減を提供するために必要とされる修飾FGF、薬剤、組合せまたは医薬組成物の量である。個々のいずれかの場合での適切な「有効量」は、用量漸増試験などの技術を使用して決定されてもよい。「治療有効量」といった用語は、例えば予防有効量を含む。「効力量」は、修飾FGF、組合せまたは医薬組成物の代謝、年齢、体重、対象の全身状態、治療されている病気、治療されている病気の重症度および処方する医師の判断の変化により患者によって変化することがあるということが理解される。単純に例として、治療有効量は、用量漸増治験を含むがこれに限定されない日常的な実験により決定されてもよい。
【0132】
「予防有効量」といった用語は、治療されている疾患、病気または障害の1つ以上の症状をある程度和らげる、患者に適用される、本明細書に記載の修飾FGF、化合物、薬剤、組合せまたは医薬組成物の量を指す。こうした予防的適用では、かかる量は患者の健康状態、体重などに応じて変化させてもよい。用量漸増治験を含むがこれに限定されない日常的な実験によってかかる予防有効量を決定することは、当業者にとって十分その技術の範囲内であると考えられる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」といった用語は、治療、観察または実験の対象である動物を指す。単純に例として、対象は限定されるわけではないが、ヒトを含むがこれに限定されない哺乳動物であってもよい。
【0134】
「増強する(enhance)」または「増強する(enhancing)」といった用語は、効能または持続期間のいずれかで望ましい効果を増加または延長することを意味する。例として、治療薬の効果を単独で、または組み合わせて「増強する(enhancing)」とは、効能、持続期間および/または規模のいずれかで、疾患、障害または病気の治療に対する薬剤の効果を増加または延長する能力を指す。患者で使用される場合、こうした使用に有効な量は、疾患、障害または病気の重症度および経過、投与前の治療、患者の健康状態および薬物への応答および治療する医師の判断に応じて変化させてもよい。
【0135】
「調節する」といった用語は、単純に例として標的の活性を増強させること、標的の活性を阻害もしくは弱めること、標的の活性を制限することまたは標的の活性を延ばすことを含む、標的の活性を変性させることを目的として、直接的に、または間接的に標的(例えば、FGF受容体)と相互作用することを意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物は、1つ以上のそれぞれの標的(例えば、1つ以上のFGF受容体)の活性を調節することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドは、細胞(例えば、角膜内皮細胞)での1つ以上のFGF受容体の活性を調節(例えば、増加)し、例えば細胞遊走および/または細胞増殖をもたらす。
【0136】
本明細書で使用される場合、「標的」といった用語は、本明細書に記載の選択的結合剤(例えば、修飾FGF)または医薬組成物によって結合が可能であるFGF受容体などの生物学的分子(例えば、標的タンパク質またはタンパク質複合体)または生物学的分子の一部を指す。本明細書で使用される場合、「非標的」といった用語は、本明細書に記載の選択的結合剤または医薬組成物によって選択的に結合されない生物学的分子または生物学的分子の一部を指す。
【0137】
「標的活性」または「細胞応答」といった用語は、修飾FGFによって調節可能である生物学的活性または修飾FGFのFGF受容体への結合から生じる何らかの細胞応答を指す。ある特定の例示的な標的活性および細胞応答としては、結合親和性、シグナル伝達、遺伝子発現、細胞遊走、細胞増殖、細胞分化および眼の疾患、障害または病気に関連する1つ以上の症状の寛解が挙げられるがこれらに限定されない。
【0138】
「角膜ヘルペス」、「単純ヘルペス性角膜炎」、「HSK」、「ヘルペス性角膜症」、「ヘルペス性角膜」および「ヘルペス性角結膜炎」といった用語は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)によって典型的には引き起こされる眼の疾患、障害または病気を指す。
【0139】
修飾FGF-1ポリペプチドの発現型および成熟型
FGFは、ファミリーの7つのFGF受容体アイソフォームを刺激し、各FGFは異なるパターンの受容体を刺激してその特異的効果を得る。例えば、Ornitz et al.(1996)The Journal of biological chemistry,1996,271(25):15292-7;Zhang et al.(2006)The Journal of biological chemistry,2006,281(23):15694-700)を参照されたい。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、7つのFGF受容体アイソフォームすべてに結合し、かつこれらを刺激することから好ましい。Ornitz et al.(1996)The Journal of biological chemistry,1996,271(25):15292-7を参照されたい。
【0140】
本明細書に開示される実施形態は、修飾FGF-1ポリペプチドまたは修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物(例えば、眼科用製剤)に関連する。本明細書に開示される実施形態はまた、修飾FGF-1ポリペプチドまたは修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物(例えば、眼科用製剤)を投与することで化学損傷またはびらん性損傷を治療する方法に関連する。本明細書で使用される場合、修飾FGFポリペプチドは、配列番号1の、1つ以上の異なるアミノ酸残基の置換もしくは変異、および/または1つ以上のアミノ酸残基の1つ以上の欠失、および/または1つ以上のアミノ酸残基の1つ以上の付加を含む組換えFGFを指す。
【0141】
第1の実施形態では、1つ以上の変異を有し配列番号1に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供され、該修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流にメチオニン残基をさらに含む。いくつかの実施形態では、N末端メチオニン(N-Met)残基を含む修飾FGF-1ポリペプチドはポリペプチドの成熟型である。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、第1の実施形態に従い、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流にメチオニン残基がある状態で宿主細胞で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟中にN-Met残基を除去するためのN末端プロセシングを受けない。したがって、いくつかの実施形態では、修飾FGF-1の成熟型はN-Met残基および配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含む。N-Met残基を含む例示的な修飾FGF-1配列は、配列番号2として開示されている。
【0142】
本開示は、その成熟型にN-Met残基を含む本明細書に記載の修飾FGF-1が、N-Met残基を含まないバージョンと同様の生物学的活性を有すると確認している。N末端メチオニンの除去または除去(excision)は、ポリペプチドがリボソームから出現すると即座に生じる共翻訳的プロセスである。N末端メチオニンの除去は、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、スレオニンまたはバリンなど、小さな側鎖を有するアミノ酸残基が後に続くメチオニン残基を認識する、開裂酵素であるメチオニンアミノペプチダーゼ(metAP)の基質特異性に関係している。この基質配列特異性により、N-Met残基、続いてフェニルアラニンを含む第1の実施形態の修飾FGF-1(配列番号1の1位を参照されたい)は、metAPによりプロセシングされない。したがって、配列番号1のすぐ上流にメチオニン残基がある状態で修飾FGF-1を発現することで、N末端残基としてメチオニンを含む成熟した修飾FGF-1を得ることができる。いくつかの実施形態では、第1の実施形態に従う修飾FGF-1はN末端ペプチドがある状態で発現されず、そのため、後の精製中、N末端ペプチドを除去するためのタンパク質分解切断を受けない。
【0143】
第2の実施形態では、1つ以上の変異を有し配列番号1に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供され、該修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流のメチオニン残基および配列番号3に示されるペプチドの1つ以上のアミノ酸をさらに含む。配列番号3の1つ以上の残基を含むペプチドは、本明細書では「伸長ペプチド」と呼ばれる。したがって、第2の実施形態に従う修飾FGF-1は、1つ以上の変異を有する配列番号1に示される配列、配列番号1の第1の残基上流のメチオニン残基およびメチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、N末端メチオニンおよびメチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを含む修飾FGF-1ポリペプチドは、ポリペプチドの成熟型である。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含み、該ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流にメチオニン残基、およびメチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドがさらにある状態で宿主細胞で発現される。いくつかの実施形態では、配列番号3の5つの残基を含み、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドがある状態で発現される。いくつかの実施形態では、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する配列番号3の4つの残基がある状態で発現される。いくつかの実施形態では、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する配列番号3の3つの残基がある状態で発現される。いくつかの実施形態では、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する配列番号3の2つの残基がある状態で発現される。いくつかの実施形態では、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する配列番号3の1つの残基がある状態で発現される。伸長ペプチドの例示的配列は、配列番号4~8を含む。
【0144】
いくつかの例では、伸長ペプチドおよびN末端メチオニン残基を含む第2の実施形態の修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基を除去するためのN末端プロセシングを受けず、その一方で、いくつかの例ではメチオニンは開裂酵素によって切除される。典型的には、開裂酵素はメチオニンアミノペプチダーゼ(metAP)である。したがって、いくつかの例では、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドの成熟型は、本明細書に記載されるように、N-Met残基、続いて伸長ペプチドを含む。N末端メチオニンおよびメチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドの1つ以上の残基を含む第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドの成熟型の例示的配列は、配列番号9~13に示されており、該配列は、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。N末端メチオニンおよび伸長ペプチドを含む成熟した修飾FGF-1ポリペプチドのさらなる例示的配列(exemplar sequence)は、配列番号14~18に示される。いくつかの他の例では、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドの成熟型は、N-Met残基は含まないが伸長ペプチドのみを含む。配列番号1の第1の残基上流に位置する伸長ペプチドを含む、第2の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドの成熟型の例示的配列は配列番号19~23に示されており、該配列は、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。伸長ペプチドの1つ以上の残基を含む成熟した修飾FGF-1ポリペプチドのさらなる例示的配列(exemplar sequence)は、配列番号24~28に示される。いくつかの実施形態では、メチオニン残基は、アラニン(配列番号4)またはスレオニン(配列番号5)を有する伸長ペプチドが開始する場合には、metAPによって切断分解される。前述の例では、成熟したFGF-1ポリペプチドはN末端メチオニン残基を含まず、例えばこれらは配列番号19、21、24および26である。
【0145】
第3の実施形態では、1つ以上の変異を有し配列番号1に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供され、該修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置する伸長ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長ペプチドを含む修飾FGF-1ポリペプチドはポリペプチドの成熟型である。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含み、該ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置する伸長ペプチドの1つ以上のアミノ酸残基がある状態で、宿主細胞で発現される。伸長ペプチドを含み、N末端メチオニン残基なしで発現される修飾FGF-1ポリペプチドの例示的配列は配列番号19~23に示され、該配列は、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。伸長ペプチドの1つ以上の残基を含み、かつN末端メチオニン残基なしで発現される成熟した修飾FGF-1ポリペプチドのさらなる例示的な配列は、配列番号24~28に示される。
【0146】
第4の実施形態では、1つ以上の変異を有し配列番号1に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供され、該修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の5つの残基のうち1つ以上の切断をさらに含む。いくつかの実施形態では、配列番号1の第1の5つの残基のうち1つ以上の切断を含む修飾FGF-1ポリペプチドは、ポリペプチドの成熟型である。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含み、配列番号1の第1の5つの残基のうち1つ以上が欠落している。いくつかの場合では、切断を含む修飾FGF-1ポリペプチドは、N末端メチオニン残基がある状態で発現される。例えば、修飾FGF-1ポリペプチドは、第4の実施形態に従い、N-Met残基に続いて配列番号1の第2の残基であるアスパラギンが存在する配列を有する。いくつかの場合では、修飾FGF-1ポリペプチドは、N-Met残基に続いて配列番号1の第3の残基であるロイシンを含む。いくつかの場合では、修飾FGF-1ポリペプチドは、N-Met残基に続いて配列番号1の第4の残基であるプロリンを含む。いくつかの場合では、修飾FGF-1ポリペプチドは、N-Met残基に続いて配列番号1の第5の残基であるプロリンを含む。伸長ペプチドは、N-Met残基と配列番号1の第1の残基、第2の残基、第3の残基、第4の残基または第5の残基との間に位置し得る。N-Met残基が配列番号1の第2の残基、第3の残基、第4の残基または第5の残基に続く、第4の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドの成熟型の例は、配列番号37~40に示されており、該配列は、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。切断およびN-Met残基を含む修飾FGF-1ポリペプチドのさらなる例は、配列番号41~44に提供される。
【0147】
本開示はまた、配列番号1の1つ以上の変異を含む修飾FGF-1ポリペプチドに関し、N-Met残基、続いて伸長ペプチドがある状態で該ポリペプチドが発現され、該伸長ペプチドは配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断に続いている。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含み、該ポリペプチドはN-Met残基、続いて伸長ペプチドがある状態で発現され、該伸長ペプチドは配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断に続いている。N-Met残基、続いて配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断に続く伸長ペプチドがある状態で発現されるかかる配列の例は配列番号45~68に開示されており、該配列は配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。いくつかの例では、N末端メチオニンはN末端プロセシングにより切断され、したがって修飾FGF-1ポリペプチドの成熟型は、配列番号69~92に例示されるように、配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断に続くリーダー断片の1つ以上の残基のみを含み、該例示的配列は、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。N-Met残基を含まないが伸長ペプチドおよびN末端残基の切断を含む配列のさらなる例は、配列番号93~117に提供される。
【0148】
いくつかの例では、N-Met残基は成熟した修飾FGF-1ポリペプチド配列に保持され、したがって該成熟型は配列番号45~68に例示される配列を含み、配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。N-Met残基、伸長ペプチドおよびN末端残基の切断を含む配列のさらなる例は、配列番号118~141に提供される。
【0149】
配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含む修飾FGF-1ポリペプチドの切断バージョンは、第5の実施形態では、N末端メチオニン残基なしで、かつさらには伸長ペプチドなしで発現される。いくつかの例では、第5の実施形態に従う成熟した修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号29~32に示される配列を含み、該配列は配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。いくつかの例では、第5の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号33~36からなる群から選択される配列を含む。
【0150】
配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含む修飾FGF-1ポリペプチドまたはその切断バージョンがN末端メチオニン、続いて伸長ペプチドがある状態で発現される場合では、メチオニン残基は、発現後のポリペプチドの成熟中にN末端を保持または切断される。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基に隣接してアラニン(例えば、配列番号14)がある状態で発現される場合、メチオニンは切断され、N-Met残基を含まない成熟したFGF-1ポリペプチド(例えば、配列番号19)が得られる。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基に隣接してスレオニン(例えば、配列番号16)がある状態で発現される場合、メチオニンは切断され、N-Met残基を含まない成熟したFGF-1ポリペプチド(例えば、配列番号20)が得られる。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基に隣接してグルタミン酸(例えば、配列番号17)がある状態で発現される場合、メチオニンは切断されず、N末端メチオニンを含み、かつ発現型と同じ配列を有する成熟したFGF-1ポリペプチドが得られる。
【0151】
第6の実施形態では、67位に変異を含む配列番号1に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号1の67位の変異、12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上のさらなる変異を含み、N-Met残基がある状態で発現される。67位の内部のメチオニンは、例えばアラニン残基と置換され得る。67位に内部のメチオニンが存在しない場合、修飾FGF-1ポリペプチドのN末端メチオニンは、メチオニン残基の後でアミド結合を特異的に切断する薬剤である臭化シアン(CNBr)を使用して発現後に切断され得る。いくつかの場合では、第6の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは伸長ペプチドがある状態で発現される。いくつかの他の場合では、第6の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号142~149に例示されるように、配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を含む形態で発現され、該配列は配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸に1つ以上の変異をさらに含む。さらに他の例では、第6の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号151~175に例示されるように、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を含む形態で発現される。成熟型である第6の実施形態に従う修飾FGF-1ポリペプチドのさらなる例は、配列番号174~204に示される。内部のメチオニン変異を含む形態で発現される修飾FGF-1ポリペプチドのうち、ポリペプチドがN末端メチオニン、続いて伸長ペプチドに由来するアラニンまたはスレオニン残基(例えば、配列番号175および配列番号177)がある状態で発現される場合、それぞれ、N末端メチオニンはmetAPによって、またはCNBrの使用のいずれかで、ポリペプチドの成熟中に切断され得る。
【0152】
第7の実施形態では、配列番号205に示される配列を含み、本明細書に記載の方法で使用するための修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供される。第8の実施形態では、配列番号206に示される配列を含み、本明細書に記載の方法で使用するための修飾FGF-1ポリペプチドが本明細書に提供される。
【0153】
本開示は、当該修飾ポリペプチドが配列番号1の1つ以上の変異を含むという条件では、配列番号1の欠失、挿入および置換のうちいずれかの組合せを含む修飾FGF-1ポリペプチドにさらに関する。アミノ酸置換は修飾FGF-1ポリペプチドに導入されてもよく、産物は、例えば治療する眼の障害での有効性の保持/改善、フックスジストロフィーの寛解における効能の増加、マスタードガス角膜症の治療の改善といった望ましい活性についてスクリーニングされてもよい。アミノ酸置換はまた、修飾FGF-1ポリペプチドに導入されてもよく、産物は、例えば凝集の傾向が低く、溶解度が向上し、半減期が延長され、眼科用医薬品としての製剤化が容易であり、安定性が増強され、有効期間が向上するといった、望ましい物理化学的特性についてスクリーニングされてもよい。保存的アミノ酸置換および非保存的アミノ酸置換の両方が企図されている。
【0154】
上記実施形態のうちいずれかにあるように、修飾FGF-1ポリペプチドは少なくとも136個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは137個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは138個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは139個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは140個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは141個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは142個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは143個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは144個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは145個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは146個のアミノ酸を含む形態で発現される。
【0155】
上記実施形態のうちいずれかにあるように、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に少なくとも136個のアミノ酸を含む形態で発現される。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に137個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に138個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に139個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に140個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に141個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に142個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に143個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に144個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に145個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟型に146個のアミノ酸を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがポリペプチドの成熟型にN-Met残基を含むという条件では、配列番号1に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含み、該ポリペプチドが配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含むという条件では、配列番号9~13から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含むという条件では、配列番号14~18から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含み、該ポリペプチドが配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含まないという条件では、配列番号19~23から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含まないという条件では、配列番号24~28から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含み、該ポリペプチドが配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含まないという条件では、配列番号19~23から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含み、該ポリペプチドが配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含むという条件では、配列番号37~40から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含むという条件では、配列番号41~44から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドが配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含み、かつ当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含まないという条件では、配列番号45~68から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、配列番号69~92から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該ポリペプチドは配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含み、かつ当該ポリペプチドはその成熟型にN-Met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含まないという条件では、配列番号93~117から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドがその成熟型にN-Met残基を含むという条件では、配列番号118~141から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、当該ポリペプチドが配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に対応するアミノ酸位置に1つ以上の変異を含むという条件では、配列番号29~32から選択される配列のうちのいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、配列番号33~36から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、配列番号142~204から選択される配列のいずれかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Lys12Valを有する、12位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN末端メチオニンを含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Lys12Valといった配列番号1の12位に変異、および配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-Met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Lys12Valといった配列番号1の12位に変異、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Lys12Valといった配列番号1の12位に変異を有する配列を含み、ポリペプチドは、配列番号1の67位にメチオニンの変異をさらに含み、N末端のメチオニンがある状態で発現し、メチオニンはその成熟型のポリペプチドから切断される。
【0159】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Serを有する、16位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Serといった配列番号1の16位に変異、および配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Serといった配列番号16の16位に変異、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Serといった配列番号1の16位に変異を有する配列を含み、ポリペプチドは、配列番号1の67位にメチオニンの変異をさらに含み、N末端のメチオニンがある状態で発現し、メチオニンはその成熟型のポリペプチドから切断される。
【0160】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Ala66Cysを有する、66位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN末端メチオニンを含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Ala66Cysといった配列番号1の66位に変異、および配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Ala66Cysといった配列番号1の66位に変異、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはN-Met残基がある状態で発現される。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Ala66Cysといった配列番号1の66位に変異を有する配列を含み、ポリペプチドは、配列番号1の67位にメチオニンの変異をさらに含み、N末端のメチオニンがある状態で発現し、メチオニンはその成熟型のポリペプチドから切断される。
【0161】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys117Valを有する、117位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys117Valといった配列番号1の117位に変異、および配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys117Valといった配列番号1の117位に変異、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys117Valといった配列番号1の117位に変異を有する配列を含み、ポリペプチドは、配列番号1の67位にメチオニンの変異をさらに含み、N末端のメチオニンがある状態で発現し、メチオニンはその成熟型のポリペプチドから切断される。
【0162】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Pro134Valを有する、134位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN末端メチオニンを含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えばPro134Valといった配列番号1の134位に変異、および配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Pro134Valといった配列番号1の134位に変異、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Pro134Valといった配列番号1の134位に変異を有する配列を含み、ポリペプチドは、配列番号1の67位にメチオニンの変異をさらに含み、N末端のメチオニンがある状態で発現し、メチオニンはその成熟型のポリペプチドから切断される。
【0163】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valを有する、配列番号1の16位、66位および117位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valを有する配列番号1の16位、66位および117位に変異、および配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟型にN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valを有する配列番号1の16位、66位および117位に変異、伸長ペプチドおよび配列番号1の第1の5つの残基のうちの1つ以上の切断を有する配列を含み、当該修飾FGF-1ポリペプチドはN-met残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば変異Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valを有する配列番号1の16位、66位および117位に変異を有する配列を含み、ポリペプチドは、配列番号1の67位にメチオニンの変異をさらに含み、N末端のメチオニンがある状態で発現し、メチオニンはその成熟型のポリペプチドから切断される。
【0164】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、配列番号2および9~204から選択される配列に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、配列番号205または206に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは熱安定性である。本明細書で使用される場合、熱安定性FGF(例えば、熱安定性FGF-1)は、同一の条件下では配列番号1のポリペプチドよりもさらに安定している、配列番号1に対する修飾アミノ酸配列を有するFGFを指す。FGF(例えば、FGF-1)に熱安定性を付与可能である変異および熱安定性を評価するための方法の例は、例えば米国特許第7,790,682号;同7,595,296号;同7,696,171号;同7,776,825号;同7,659,379号;同8,119,776号;同8,153,770号;同8,153,771号;および同8,461,111号;米国特許出願公開第2011/0224404号および同2013/0130983号;ならびにXia et al.PloS one.(2012)7(11):e48210に記載されている。いくつかの実施形態では、12位および/または134位はFGF-1で変異し、熱安定性がある修飾FGF-1を生成する。FGF-1製剤は、ある特定の温度では期間中「安定している」と考えることができるが、これはFGF-1が、指定の温度で指定の期間にわたり、その元々の純度および形態でその中に存在している製剤として理解されている。いくつかの実施形態では、FGF-1は、仮にその単量体形態で5%未満、2%未満、または好ましくは1%未満の分解または変化がある場合には、その元々の純度および形態で残っているものと考えられてもよい。こうした変化は、例えばクロマトグラフィー法、ELISA、SDS-PAGEおよびウェスタンブロット法といった本明細書に説明される分析手順のうちのいずれかによって検出することができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、反応性チオール(例えば、遊離システイン)の数を減少させる1つ以上の修飾を含む。FGF-1のこうした修飾の例は例えば、米国特許第7,790,682号;同7,595,296号;同7,696,171号;同7,776,825号;同7,659,379号;同8,119,776号;同8,153,770号;同8,153,771号;および同8,461,111号;米国特許出願公開第2011/0224404号および同2013/0130983号;ならびにXia et al.PloS one.(2012)7(11):e48210に記載されている。いくつかの実施形態では、83位および/または117位は配列番号1で変異され、反応性チオールの数を減少させる修飾FGF-1を生成する。
【0167】
いくつかの実施形態では、修飾FGFは、内部ジスルフィド結合の形成を可能にする1つ以上の修飾を含む。いくつかの実施形態では、66位は配列番号1で変異し、内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1を生成する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドは、安定のために製剤中に外因性ヘパリンなしで投与することができ、ヘパリンなしで製剤化および適用可能であり、これによって組織のヘパランへの結合を高めることが可能である。こうした修飾FGF-1ポリペプチドは、手術状態、外傷性状態またはジストロフィー状態ならびに疾患状態に曝露される組織のヘパランに高い親和性を有し、そのために適用時に疾患組織に結合する。加えて、より熱安定性がある修飾FGF-1ポリペプチドは、室温での製剤化および貯蔵に好適である。修飾FGF-1ポリペプチドが安定していることによって、これらは溶液(例えば、即時放出)製剤および徐放性製剤の両方での投与に好適なものとなる。
【0169】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは12位、16位、66位、117位および134位にうちの1つ以上で修飾された配列番号1である。いくつかの実施形態では、修飾FGFは16位、66位および117位で修飾された配列番号1である。アミノ酸位置は、例えばSer、Cys、Valまたは他のアミノ酸で置換され、修飾アミノ酸と野生型アミノ酸との間にジスルフィド結合を形成することができる。いくつかの実施形態では、修飾FGFはN-Met THX1114とも呼ばれる配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、Lys12Val、Pro134Val、Ala66Cys、Cys117ValおよびPro134Valからなる群から選択される1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは配列番号2の配列を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドまたは組成物はプロドラッグとして調製されてもよい。「プロドラッグ」は、インビボで親薬物へと変換される薬剤を指す。状況によっては、プロドラッグは親薬物よりも容易に投与され得ることから、これらは多くの場合有用である。例えば、プロドラッグは経口投与では生物学的に利用可能であり得るが、一方で親薬物は利用不可である。プロドラッグはまた、親薬物よりも医薬組成物の溶解度が向上していてもよい。
【0171】
本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドは、同位体によって(例えば、放射性同位元素)または発色団もしくは蛍光部分、生物発光標識、光活性化型標識または化学発光型標識を含むがこれらに限定されない他の手段で標識されてもよい。
【0172】
本開示はさらに、1つ以上のN末端の修飾を含む修飾FGFポリペプチドに関し、修飾FGFポリペプチドは、FGF-1(配列番号1)、FGF-2、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-15、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22およびFGF-23およびFGF-24を含むFGFファミリーのメンバーのいずれかであり得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドの合成は、当該技術分野に記載の方法の使用、本明細書に記載の方法の使用またはそれらを組み合わせて達成される。
【0174】
いくつかの実施形態では、修飾FGFの配列は、例えばCys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valを有する、1つ以上の16位、66位および117位で変異した配列番号1に対して、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGFは、例えばCys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valといった16位、66位および117位での変異を有する野生型のヒトFGF-1配列を含む。
【0175】
修飾FGF-1ポリペプチドの調製のための組換え技術
種々の宿主発現ベクター系は、本明細書に提供される修飾FGF-1ポリペプチドを産生するために利用されてもよい。こうした宿主発現系は、修飾FGF-1ポリペプチドが産生され、その後精製され得る媒体を表すが、適切なヌクレオチドのコーディング配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合、その場所で修飾遺伝子産物を呈し得る細胞を表すこともできる。宿主発現系の例としては、修飾FGF-1ポリペプチドについてコードするヌクレオチド配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;修飾FGF-1ポリペプチドのコーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))で感染させた、もしくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換させた植物細胞系;または例えば、HT1080、COS、CHO、BHK、293、3T3といったヒト細胞系を含む哺乳動物細胞系、例えばメタロチオネインプロモータといった哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモータ、もしくは例えばアデノウイルス後期プロモータ、ワクシニアウイルス7.5Kプロモータといった哺乳動物ウイルス由来のプロモータ、もしくは例えばpSH19およびpSH15といった酵母由来プラスミド由来のプロモータ、もしくはラムダファージなどのバクテリオファージおよびこれらの誘導体由来のプロモータを含有する収容組換え発現コンストラクトなどではあるが、これらに限定されない細菌、植物、ヒト宿主系を含む哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。細菌発現系の例としては、大腸菌由来プラスミド(例えば、pMKet、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13およびpET-3);枯草菌由来プラスミド(例えば、PUB110、pTP5およびpC194)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細菌発現系はpMKetベクターを含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1を発現させるためにpMKet細菌発現ベクターの使用を含む方法は、修飾FGF-1をコードする配列をpETベクターにサブクローニングすることを含む方法と比較すると、修飾FGF-1の収量を約5倍~約60倍向上させる。いくつかの実施形態では、pETベクターに修飾FGF1をサブクローニングすることを含む方法は、発酵運転後には約0.5g~約0.7g/100Lの収量をもたらす。いくつかの実施形態では、pMKetベクターに修飾FGF1をサブクローニングすることを含む方法は、発酵運転後には、例えば37g/100Lなどの約20g~約40g/100Lの収量をもたらす。いくつかの実施形態では、pMKetに修飾FGF1をサブクローニングすること、および本明細書に記載の技術を使用してベクターからのタンパク質を精製することを含む方法は、約82g/50Lの収量をもたらす。
【0176】
いくつかの実施形態では、宿主細胞株は、挿入配列の発現を調節する、または望ましい特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングするために選択される。タンパク質産物のこのような修飾およびプロセシングは、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特異的機構を有する。適切な細胞株または宿主系は、発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実に行うために選択されることが可能である。この目的のため、遺伝子産物の一次転写産物の適切なプロセシング、グリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用してもよい。ヒト宿主細胞を含むこのような哺乳動物宿主細胞としては、HT1080、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38が挙げられるがこれらに限定されない。
【0177】
いくつかの実施形態では、細菌細胞は組換え型FGFタンパク質を発現させるために使用される。いくつかの実施形態では、細菌細胞は大腸菌細胞にある。いくつかの実施形態では、大腸菌株は、BL21、BLA21A1、K12 HMS174およびW3110から選択される。長期にわたる組換え型ペプチドの高収量での製造、安定した発現が望ましい。例えば、組換え型修飾FGF-1ポリペプチドを安定して発現する細胞株が設計されてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりは、宿主細胞は、例えばプロモータ、エンハンサ、配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位および同等物、ならびに選択可能なマーカといった適切な発現制御要素で制御されるDNAで形質転換されることができる。いくつかの実施形態では、FGF-1ポリペプチドをコードする配列を含む組換え核酸は、中で発現される株または細胞によるコドン使用を最大化させるように最適化される。いくつかの実施形態では、FGF-1ポリペプチドをコードする配列を含む組換え核酸は、プロモータ、例えばポリA配列、または転写物を安定化させ、翻訳を容易にする配列といった3’UTR制御配列に動作可能に連結される。いくつかの実施形態では、プラスミドベクターは、カナマイシンなどの抗生物質への耐性遺伝子といった選択マーカを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、細菌発現のためのプロモータはT7プロモータである。
【0179】
いくつかの実施形態では、細菌発現のためのプロモータはTacプロモータである。
【0180】
いくつかの実施形態では、プラスミドはpBR322ori配列を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、細菌発現ベクターは、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13およびpET-T3またはpET-T7ベクターなどの市販のベクター骨格から改変される。
【0182】
いくつかの実施形態では、タンパク質のペリプラズム発現が意図されている。組換え型タンパク質は、封入体に蓄積することがある。いくつかの実施形態では、タンパク質の細胞質発現が意図されている。いくつかの実施形態では、タンパク質の細胞質発現が意図されており、タンパク質は不溶性タンパク質である。いくつかの実施形態では、組換え型ポリペプチドは細胞外放出に望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードする組換え核酸は、ompAリーダー配列などの好適なリーダー配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸は、ompAリーダー配列などの好適なリーダー配列を含まない。いくつかの実施形態では、製造中、ある特定の段階の修飾FGF-1ポリペプチドはペリプラズムに向けられる。ペリプラズムは封入体を含み、ここでポリペプチドが蓄積する可能性が高い。封入体は、ポリペプチドを回収するために細胞分画後に収集されてもよい。いくつかの実施形態では、組換え核酸はリーダー配列を含有しない。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1は細胞での細胞質発現を対象とする。
【0183】
いくつかの実施形態では、組換え核酸コンストラクトは、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための1つ以上の修飾を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾は、細胞での修飾FGF-1ポリペプチドの発現を増加させるために最適化されている配列を含む。一実施形態では、1つ以上の修飾はプラスミドの修飾を含む。一実施形態では、1つ以上の修飾は、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための好適なプロモータを選択することを含む。
【0184】
さらなる実施形態では、1つ以上の修飾は、ポリペプチドを発現するための宿主細胞を開発することに関すると考えられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾は、細胞増殖を最大化させるための適切な栄養培地の調整につながると考えられ得る。一実施形態では、適切な栄養培地は炭素源を含む。一実施形態では、炭素源はグルコースまたはグリセロールである。
【0185】
一実施形態では、1つ以上の修飾は、宿主細胞のプラスミドのコピー数を増加し、発現効率を増加させるためにプラスミドで行われる。一実施形態では、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を最大化させるために1つ以上の修飾が考えられ、1つ以上の修飾は、
i.変異FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸内での修飾;
ii.変異FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸に関連し、プロモータ、エンハンサ、5’-非翻訳領域、3’-非翻訳領域、ポリA尾部、転写物安定化配列から選択される1つ以上の調節配列要素を含む組換え核酸内での修飾;
iii.組換え核酸を含むプラスミドの修飾;
iv.細胞増殖を最大化させるための細胞株の修飾または細胞株の選択;
v.細胞増殖培地の変性;および
vi.細胞から修飾FGF-1ポリペプチドを回収するプロセスでの修飾、から選択されてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、細菌細胞は、FGF-1ポリペプチドをコードする配列を含む組換え核酸を含むプラスミドで、電気穿孔、または化学的に形質転換される。外来DNAの導入後、遺伝子操作された細胞を栄養強化培地中で1~2日間増殖させ、その後選択培地に交換される。いくつかの実施形態では、1つ以上の炭素源は、産生増加のため、発現されたFGFポリペプチドの増加を目的として一定期間内に細菌細胞の増殖を最大化させるために使用される。いくつかの実施形態では、細菌細胞の炭素源はグルコースであってもよい。いくつかの実施形態では、細菌細胞の炭素源はグリセロールであってもよい。
【0187】
組換え型プラスミドの選択可能なマーカは選択に対する耐性を付与し、細胞は、プラスミドを自らの染色体中に安定的に導入し、結果として増殖して細胞株へとクローニングおよび増殖させることが可能である細胞増殖巣を形成する。いくつかの例では、この方法は、修飾FGF-1ポリペプチド産物を発現させる細胞株を遺伝子操作するために有利に使用され得る。このような遺伝子操作された細胞株は、遺伝子産物の生物学に影響を及ぼす化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用であり得る。
【0188】
本明細書に記載の製造方法は、修飾FGF-1を発現する細菌培養物の製造を大規模なものにするために容易にスケールアップすることができる。いくつかの実施形態では、該方法は、1Lの細菌培養物中に、または10Lの細菌培養物中に、または100Lの細菌培養物中に、または500Lの細菌培養物中にFGF-1を製造するように調整することができる。いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり1gの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり10gの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり100gの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり1kgの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり10kgの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。いくつかの実施形態では、該方法は、バッチあたり100kgの修飾FGF-1ポリペプチドを製造するために規模を拡大することが可能である。
【0189】
一般に、種培養物は形質転換された細菌細胞から形成される。播種された種フラスコは、約235RPM、37℃でインキュベートされてもよい。10~14時間のインキュベーション後、それぞれのフラスコからの種培養物のサンプルを純度(汚染生物が観察されないウェットマウントの顕微鏡観察)、pH、600nmでの吸光度(OD600)および無菌性の保持について検査してもよい。種培養物は、OD600≧1.0および汚染生物が存在しないことを実証することで最適な増殖を示すことが望ましい。各製造運転からの6個の種フラスコは、スケールアップのために選択されてもよい。選択基準としては、12±2時間の増殖時間、OD600≧1.0および6個のフラスコを有することが挙げられ得る。発酵槽の種菌を形成するため、6個のフラスコの内容物は、総容量が約6リットルの種培養物については、BSCの10Lのバッグ(滅菌したバイオプロセス用使い捨て容器)に貯蔵されてもよい。
【0190】
製造用培地(例えば、Soytone12g/L、酵母抽出物 24g/L、グリセロール 15.1g/L、リン酸二水素カリウム 12.5g/L、リン酸一水素カリウム 3.8g/LおよびP2000消泡剤 0.1mL/Lといった栄養素を含む)を用いてmFGF-1を発現させる培養大腸菌の発酵のため、1個以上の150Lの発酵槽が調製されてもよい。製造用培地はその場所で滅菌される。次に、滅菌培地に、硫酸マグネシウム七水和物 0.4g/L、カナマイシン 0.050g/Lを含有した5±0.1L滅菌溶液が追加される。貯蔵された6リットルの種培養物を用い、適切な時点で1個または2個以上の発酵槽に播種してもよい。次に、発酵培養物を60±30分ごとにモニタリングし、pH、純度(ウェットマウントの顕微鏡観察)およびOD600についてサンプルを処理した。撹拌および空気流量を制御することで、溶存酸素を維持してもよい。リン酸および/または水酸化アンモニウムを適切に無菌添加することで、pHを望ましい範囲内に維持してもよい。
【0191】
いくつかの実施形態では、mFGF-1の発現は、培養物が播種後3時間時点でOD600が約4.5に達した場合、イソプロピル-β-D-1-チオ-ガラクトピラノシド(isopropyl-β-D-1-thio-galactopyranoside、IPTG)0.2~0.4g/LおよびL-アラビノース5.0g/Lの追加により誘導される。いくつかの実施形態では、約1mMまたは0.25mM濃度のIPTGは、カナマイシンの有無にかかわらず、誘導のために使用される。いくつかの実施形態では、カナマイシンの存在下での誘導はプラスミド維持および細胞生存率の増加を必要としないが、修飾FGF-1ポリペプチドの製造に影響を及ぼす。いくつかの例では、誘導の長さは約8~12時間、約10~20時間、約20時間または約24時間である。いくつかの例では、カナマイシンが存在する場合の修飾FGF-1ポリペプチドの収量(最終OD/細胞ペースト(g/L)で測定される)は、1Lのスケールでは、カナマイシンが存在しない場合よりも約1.1~約5倍(例えば、1.2倍)多い。誘導のため、いくつかの実施形態では、炭素源は、例えば少なくとも約30g/Lの濃度のグリセロールであり、温度は約37℃、pHは約6.8である。誘導後、発酵をさらに3時間にわたって継続してもよい。遠心分離前に、SDS-PAGEおよび培養物純度による分析のため、各発酵槽からサンプルを採取してもよい。発酵は周期的に評価されてもよく、さらに1~20時間にわたって増殖させてもよい。いくつかの実施形態では、最終培養物は、50~100、50~200、50~250、70~260または約100、約200または約250の吸光度に到達する。
【0192】
いくつかの実施形態では、チューブポンプおよび管を介して発酵ブロスを遠心分離機に移す(1分あたり0.5~0.8リットルで)ことでロットの収集を実施し、水循環ジャケットを使用して冷却しながら20,000xgで遠心分離されてもよい。収集した細胞ペーストの質量を測定して回収し、4個の容器にこれを分け、-70℃以下の冷凍庫に置いてもよい。
【0193】
細胞溶解:修飾FGF-1を含む凍結細胞を適切な時点で融解し、好適な緩衝液に再懸濁させてもよい。緩衝液は例えば、トリスおよびEDTAを含んでもよい。例示的な実施形態では、細胞は、1:5(w/v)、すなわち5mLの緩衝液中に1グラムの細胞ペーストといった割合で、1mM DTEを含有するTES緩衝液(50mM トリス、20mM EDTA、100mM NaCl、pH7.4)で融解されてもよい。高圧ホモジナイザーにかける前に、懸濁液を16℃未満に冷却してもよい。それぞれ通過させた後、OD600は著しい減少がなくなるまでモニタリングされる。次に、等量のTES+5%Triton X-100を破壊された細胞懸濁液に混合してもよい。破壊された細胞懸濁液は、発現されたFGF-1タンパク質の回収のために使用されてもよい。発現されたタンパク質は、FGF-1タンパク質に特異的に結合するアガロース系樹脂(例えば、Capto(商標)DeVirs(Cytiva、BPG 300x500、製品番号17-5466)などの高度に架橋されたアガロース系樹脂)を充填したアフィニティーカラムなど、特定の捕捉方法に細胞溶解物を通過させることで破壊された細胞から回収されてもよく、これは後で溶出される。ただし、FGF-1の回収および収量を最大化させるため、タンパク質はIBでの発現を目的としてもよく、タンパク質は封入体から回収されてもよい。例示的な方法では、混合物を15,900xgで60分間、4℃で遠心分離にかけ、mFGF-1を含有する封入体を回収してもよい。溶解後、過剰発現したタンパク質は、遠心分離によって大腸菌ペーストからの封入体(IB)から回収されてもよい。
【0194】
いくつかの実施形態では、アガロース系樹脂(例えば、Capto(商標)DeVirs)を充填したアフィニティーカラムは、他の捕捉方法と比較すると、回収したFGF-1ポリペプチドのパーセント収量を約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、約45%~約50%、約50%~約55%、約55%~約60%、約60%~約65%、約65%~約70%、約70%~約75%、約75%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%または約95%~約100%増加させる。
【0195】
封入体からの回収:例示的な実施形態では、FGF-1の回収のため、細胞ペーストは2~8℃で融解され、好適な緩衝液に再懸濁されてもよい。緩衝液はトリスおよびEDTAを含んでもよい。例えば、細胞ペーストはpH7.4、4.5LのTES緩衝液(50mM トリス、100mM NaCl、20mM EDTA)で融解され、次に細胞は圧力均質化によって溶解されてもよい。5回均質化(約8,000psi)を行い、最大量の細胞溶解を得てもよい。次に、等量のTES緩衝液および5%Triton X-100(pH7.4)を細胞溶解物に加え、2.5%濃度のTritonを得てもよい。
【0196】
便宜的に混合物を6本~20本の遠心分離ボトルに分けてもよく、次にこれらを少なくとも30分、約15~20℃にて225RPMで振盪させながらインキュベートさせる。これらのボトルを60分間、4℃、15,900xgで遠心分離にかけてもよい。上清を廃棄物として処分した。組織ホモジナイザー(Model Omni GLH850)を使用し、回収した封入体を2.5%(w/v)Triton X-100を含むTE緩衝液(約1L、50mM トリス、20mM EDTA、pH7.4)に個々に再懸濁させ、ボトルを少なくとも30分、15~20℃にて225RPMで振盪させながらインキュベートさせた。インキュベーション後、ボトルを45分間、4℃、15,900xgで遠心分離にかけた。封入体洗浄プロセス、懸濁、インキュベーションおよび遠心分離を合計で3回実施した。回収した封入体は、2℃~8℃で一晩保存されてもよい。Tritonを含まないTE緩衝液(約1L、50mM トリス、20mM EDTA、pH7.4)で封入体を洗浄し、ボトルを少なくとも15分間、15~20℃にて225RPMで振盪させながらインキュベートさせた。いくつかの実施形態では、IBは、ポリソルベート20またはポリソルベート80を含む緩衝液で洗浄されてもよい。インキュベーション後、ボトルを30分間、4℃、15,900xgで遠心分離にかけた。Tritonなしでの洗浄、インキュベーションおよび遠心分離を合計で5回実施した。サンプルを取り出し、この段階での総タンパク質解析およびSDS-PAGEクマシー染色/濃度測定解析にかけてもよい。いくつかの実施形態では、合計100g、200g、300g、400g、500g、600g、700g、800g、900gまたは1000gの封入体が回収され得る。各ロットの洗浄された封入体を含有する遠心分離ボトルは、-70℃以下で保存され得る。
【0197】
洗浄された封入体の可溶化:各ロットの洗浄された封入体の可溶化は、可溶化緩衝液を使用して実施されてもよい。可溶化緩衝液は、尿素またはグアニジン塩などのカオトロピック成分を含んでもよい。洗浄された封入体を貯蔵から取り出し、2~8℃で融解した(15時間~19時間)。封入体を60分間、4℃、15,900xgで遠心分離にかけてもよく、液相を取り除いた後、ペレットの正味の重量を決定した。次に封入体を緩衝液中で可溶性にしてもよい。例示的な可溶化緩衝液は、4~8M グアニジンを含んでもよい。例示的な可溶化緩衝液は、6M グアニジンを含んでもよい。例示的な可溶化緩衝液は、4~6M 尿素を含んでもよい。さらに、こうした緩衝液は100mM トリス、2mM EDTA(pH8.0)を含んでもよい。溶液が目で見る限り均質になるまで、10,000RPMで組織ホモジナイザー(例えば、Model Omni GLH850)を使用して2~8℃で1gあたり10mLの割合で混合してもよい。グアニジンは、タンパク質変性をもたらすカオトロピック剤である。2~8℃の可溶化封入体に、10mg/mLの最終濃度までジチオエリトリトール(DTE)を使用してジスルフィド結合をチオールに還元してもよい。この反応は2~6時間継続させることができる。次に、可溶化封入体を40分間、4℃、15,900xgで遠心分離にかけてもよい。遠心分離を含む全プロセスは、5時間未満であってもよい。上清は、2LのPETGボトルに回収され、タンパク質濃度を検査しつつ、2~8℃(25~50分)で保存してもよい。タンパク質の結果に基づき、可溶化封入体を、希釈緩衝液(6M グアニジン、100mM トリス、2mM EDTA、pH8.0)で2.0±0.5mg/mLの標的濃度に希釈してもよい。10mgの標的濃度までDTEを加え、混合してもよい。可溶化封入体を-70℃以下で保存してもよい。1グラムのIBにつき10mLの緩衝液の割合で、100mM トリス、2mM EDTA中の6M グアニジン塩酸塩(pH8.0)中にIBを溶解させてもよい。DTEを加え(10mg/mL)、3~5時間混合した後(最初は組織ホモジナイザー、Polytron PT 3100を用い、続いて磁気撹拌棒を用いる)、混合物を遠心分離にかけてもよい(15,900xgで40分以上)。上清を0.45μmフィルタでろ過してもよい。
【0198】
変性タンパク質のリフォールディング:グアニジン可溶化IB(2±0.5mg/mL)を冷リフォールディングバッファに加えてもよい。リフォールディングバッファは、L-アルギニン(例えば、0.5M L-アルギニン、100mM トリス、2mM EDTA、pH9.5)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リフォールディングバッファは酸化グルタチオンを含有してもよい。いくつかの実施形態では、リフォールディングバッファは還元グルタチオンを含有してもよい。可溶化mFGF-1をゆっくりと加え(例えば、リフォールディング溶液のボルテックス中に滴下する)、混合を2~8℃で2時間継続してもよい。等量の3M 硫酸アンモニウムをリフォールディング溶液に加え、2~8℃で1時間撹拌してもよい。
【0199】
回収されたタンパク質をSDS-PAGEで検出してもよい。当該技術分野に公知の1つ以上の方法で総タンパク質含有量を測定してもよい。例えば、SDS-PAGEで分離されたタンパク質のクマシー染色で総タンパク質含有量を測定してもよい。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)-HPLCといったHPLCを使用し、回収されたタンパク質をさらに精製してもよい。
【0200】
インビトロでの細胞増殖アッセイでタンパク質の生物学的活性を評価してもよい。この目的のため、内皮細胞株を使用してもよい。いくつかの実施形態では、インビトロでの増殖アッセイに線維芽細胞を使用してもよい。
【0201】
いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾は、細胞からの修飾FGF-1の回収量を向上させるために行われる。1つ以上の改善は、プラスミドベクターの改善、好適な細菌株の選択の改善、増殖培地の改善、IPTGを用いた誘導時間の改善、細菌の最大増殖のためのインキュベーション時間の改善、および細菌増殖のための温度の最適化を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍の修飾FGF-1収量の増加をもたらす。
【0202】
修飾FGF-1ポリペプチドのジスルフィド結合の形成
いくつかの実施形態では、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1にCys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valといった変異を含み、ポリペプチドは、66位および83位のシステイン残基間に内部ジスルフィド結合を含む。多くの組換え型タンパク質については、正確なジスルフィド結合の形成は、これらのタンパク質の生物学的に活性である三次元立体構造を達成するためには不可欠である。誤ったジスルフィド結合の形成により、タンパク質のミスフォールディングおよび封入体への凝集が生じることがある。大腸菌では、システイン酸化は典型的にはペリプラズムで起こり、ジスルフィド結合は無数の酵素(主にDsbファミリー由来の酵素)で触媒されるジスルフィド交換反応で形成される(Rosano,G.L.,&Ceccarelli,E.A.(2014).Recombinant protein expression in Escherichia coli:advances and challenges.Frontiers in Microbiology,5,172)。対照的に、細胞質のジスルフィド結合はほとんど形成されない。この状況は、Cys66とCys83との間に内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1ポリペプチドなど、細胞質で産生されるジスルフィド結合を用いた組換え型タンパク質の産生に影響を及ぼす。したがって、いくつかの例では、修飾FGF-1ポリペプチドの発現のため、ジスルフィド結合の形成に有利に働く酸化的細胞質環境を有する遺伝子操作された大腸菌株が宿主細胞として選択される(Rosano,G.L.,&Ceccarelli,E.A.(2014).Recombinant protein expression in Escherichia coli:advances and challenges.Frontiers in Microbiology,5,172)。こうした株の例としては、K-12バックグラウンドにtrxB-gor-遺伝子型を有するOrigami(Novagen)、BL21バックグラウンド(DE3)にtrxB-gor-遺伝子型を有し、ジスルフィド結合イソメラーゼであるDsbCの染色体コピーを恒常的に発現するSHuffle(商標)T7 Express株(NEB)を含むが、これらに限定されない。DsbCは、誤って酸化されたタンパク質のそれらの正確な形態への補正を推進し、これはジスルフィド結合を必要としないタンパク質のフォールディングを支援することができるシャペロンでもあることが示される。特定の理論に限定されるものではないが、DsbCの作用により、Cys66とCys83との間に内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1ポリペプチドなどの標的タンパク質が凝集して封入体になることはほとんどないことが企図されている。したがって、ある特定の実施形態では、本開示はCys16とCys83との間に内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1ポリペプチドの細胞質産生のための方法の改善を確認する。
【0203】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基がある状態で発現される場合、ポリペプチドは、N末端ペプチドを除去するためのタンパク質分解切断を必要とするステップなしにその後精製される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、N末端ペプチドを除去するためのタンパク質分解切断ステップを含まない、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドの迅速な精製方法を提供する。これは、医薬品の製造管理および品質管理の基準(good manufacturing practice、GMP)ガイドラインに従った修飾FGF-1ポリペプチドの製造に特に有利である。こうした利点としては切断分解ステップの欠如が挙げられており、切断分解された産物を後で精製すること、および分離切断に使用される試薬を除去する必要性がなくなることを含む。さらなる利点は、処理を減らすことによる収量増加、ならびに切断分解のために導入される残留切断分解試薬および汚染物質、未切断分解物質からの切断後の分離を試験する必要性の減少である。
【0204】
使用方法
一実施形態では、上記実施形態に記載の修飾FGF-1ポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の眼の疾患、障害または病気を治療する方法が本明細書に提供される。いくつかの例では、本明細書に記載の方法で使用する修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号2および配列番号9~204から選択される配列を含む。一実施形態では、配列番号205または206に示される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬製剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の眼の疾患、障害または病気を治療する方法が本明細書に提供される。
【0205】
いくつかの実施形態では、治療される眼の疾患、障害または病気は、角膜内皮層の疾患、障害または病気である。角膜内皮層の疾患、障害または病気としては、フックスジストロフィー、水疱性角膜症、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー1、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー2および後部多形性角膜内皮ジストロフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
理論に限定されるものではないが、眼の房水へと房内に注射される修飾FGF-1ポリペプチド溶液(例えば、本明細書に記載の医薬製剤)は、内皮表面、特に健康な内皮層に覆われている角膜領域のどこかに結合すると考えられている。修飾FGFは、内皮細胞の増殖および遊走を刺激する。修飾FGFは内皮ジストロフィーに関連する角膜浮腫を軽減し、角膜または内皮移植が必要となる可能性を減少させる。修飾FGFは、最も大きいジストロフィーの部位(典型的には角膜中央)以外の部位で作用し、さらに角膜辺縁の内皮細胞および線維柱帯(trabecular meshwork、TM)の内皮前駆細胞プールの刺激をもたらす。
【0207】
いくつかの実施形態では、治療される眼の疾患、障害または病気は、角膜上皮の疾患、障害または病気である。角膜上皮の疾患、障害または病気としては、再発性角膜びらん、遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ症候群、スティーヴンス・ジョンソン症候群などの炎症性疾患および角膜上皮欠損が挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
いくつかの実施形態では、治療される眼の疾患、障害または病気はヘルペス性角膜症である。ヘルペス性角膜症は、典型的には単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされる角膜の感染症である。初感染は、感染性HSVに宿主の粘膜が直接曝露した結果であり得る。初感染および知覚神経節に潜伏が確立した後、ウイルスが刺激されて感染サイクルに入り、ここから角膜に戻る。一度感染すると、この再発性感染症によって種々の合併症、特に炎症性応答が生じるが、この炎症性応答が十分強い場合には角膜の完全性を損なう可能性があり、角膜潰瘍、混濁、濁り、瘢痕および重度の場合には失明につながる。ヘルペスへの感染に続き、慢性ヘルペス性角膜症、神経栄養性角膜症またはそれらの両方を発症する可能性がある。例えば、免疫介在性感染症であり、かつ先進国での角膜失明の主な原因である角膜実質感染症は、慢性的なウイルスの再活性化の結果として起こり、変性疾患である神経栄養性角膜症が生じる。標準状態の角膜は神経支配が密であるが血管が存在しない。ウイルスへの初感染後に発現する症状としては、神経を損傷し、それによる角膜知覚の減少(角膜知覚鈍麻)がもたらされるだけではなく、血管形成および新生血管形成ももたらし得る。さらなる実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを使用し、細菌感染または真菌感染により引き起こされる感染性角膜炎を治療することができる。
【0209】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを使用し、上皮基底膜ジストロフィー、若年性メースマン角膜上皮ジストロフィー、膠様滴状角膜ジストロフィー、虹彩角膜上皮ジストロフィー、上皮下粘液性ジストロフィー、ライス・ビュックラース角膜ジストロフィーまたはティールベンケジストロフィーおよび再発性角膜びらんを治療することができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、眼の病気としては、角膜の損傷(例えば、角膜と房水との界面での角膜表面もしくは内皮層)またはPRK、LASIKおよび全層角膜手術または角膜移植のいずれかを含む角膜手術により引き起こされる外科的破壊が挙げられる。
【0211】
本明細書には、修飾線維芽細胞増殖因子(FGF-1)ポリペプチドまたはかかる修飾ペプチドを含む医薬組成物もしくは薬剤を投与することで化学物質またはびらん剤誘発性損傷を治療する方法もまた提供される。
【0212】
一実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで化学物質またはびらん性毒ガス誘発性損傷を治療する方法もまた提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、化学物質またはびらん剤により引き起こされる皮膚損傷または眼の損傷を治療することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に記載のポリペプチドとして修飾FGF-1を投与することで、例えばナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard、NM)など、びらん性毒ガスによって誘発されるマスタードガス角膜症を治療することを含む。本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドでMGKを治療することにより、いくつかの実施形態では、角膜上皮層の過形成、角膜-角膜実質細胞の分離による浮腫、角膜びらんなど、MGKに関連する組織病理学的疾患の寛解がもたらされる。本開示の修飾FGF-1の投与により、ある特定の実施形態では、浮腫の軽減および角膜びらんの除去がもたらされる。角膜びらんは、典型的には角膜の脱上皮化により特徴付けられ、いくつかの例では、修飾FGF-1の投与により、迅速な角膜の再上皮化がもたらされる、または角膜の脱上皮化の重症度が低下する。一実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1を投与することで化学物質またはびらん性毒ガスに曝露した患者の眼表面の上皮を再生させる方法が記載される。いくつかの実施形態では、該方法は、眼の再生を促進させ、角膜変性を予防し、化学損傷による長期後遺症を予防する。いくつかの例では、該方法は、角膜内皮損傷、角膜上皮損傷または角膜実質損傷を治療することを含む。該方法によって角膜内皮損傷が治療される場合には、本明細書に記載の修飾FGF-1を投与することにより、角膜内皮細胞の機能が増強され、角膜の長期変性を予防する。いくつかの例では、該方法によって角膜内皮損傷が治療される場合には、本明細書に記載の修飾FGF-1を投与することにより、角膜浮腫および続発性前部角膜症を予防する。いくつかの例では、該方法によって角膜内皮損傷が治療される場合には、本明細書に記載の修飾FGF-1を投与することにより、角膜内皮細胞の減少を予防する。いくつかの実施形態では、該方法は、角膜上皮剥離の重症度の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、該方法は、角膜実質の瘢痕および角膜混濁などの角膜実質損傷を治療することを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、眼の病気は、角膜への事故による外傷または化学損傷もしくは熱傷を含む。いくつかの例では、化学損傷または熱傷は化学熱傷である。いくつかの例では、化学損傷または熱傷はびらん剤により引き起こされる。いくつかの例では、化学損傷または熱傷は化学兵器により引き起こされる。
【0214】
多数の家庭用化合物および業務用化合物は、眼および皮膚に化学熱傷を誘発する潜在性がある。迅速な介入を行わない場合、不可逆的な視力喪失および外見の悪化が広がる可能性がある。熱を放出することなく、酸性薬剤およびアルカリ性薬剤の両方を迅速に中和し、かつ拡散を制限する薬剤は、化学損傷を治療する上で有効であると企図されている。例示的な化学損傷としては、アルカリ性損傷、酸性損傷が挙げられるがこれらに限定されない。化学熱傷の一般的な原因としては、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、石灰(CaO)、硝酸銀(AgNO)、過酸化水素(H)、塩素ガスおよび何らかの強酸化剤が挙げられる。
【0215】
本明細書に記載の化学損傷または熱傷を引き起こし得る例示的な化学兵器は、痒み促進剤(urticant)または湿疹剤であるホスゲンである。ホスゲンは毒性が強く、室温および標準圧力では無色の気体であり、0℃で濃縮して発煙液体となる。この分子式はCOClである。ホスゲンは、急性(短期)吸入曝露によって極めて毒性が強くなる。ヒトでは、肺水腫、肺気腫を含む呼吸器への重度の作用および死亡が報告されている。重度の眼への刺激および皮膚の火傷は、眼または皮膚への曝露後に生じる可能性がある。ホスゲンへの慢性(長期)吸入曝露により、肺気腫および線維症などの不可逆的な肺の変化を引き起こす可能性もある。ホスゲンへの曝露は、その迅速な浸透と重度の皮膚損傷を即時に引き起こす能力が原因の死亡率が上昇することを含む広範かつ壊滅的な影響を生じさせる可能性がある。近年の研究結果によれば、気化したホスゲンへの局所的な皮膚曝露によって、マウスモデルでは、曝露後数分以内から曝露の8時間までに環状紅斑、壊死、浮腫、軽度の痒みおよび紅斑とともに、曝露した皮膚が白くなることが分かっている。これらの臨床的な皮膚症状は、皮膚の厚みの増加、アポトーシス細胞死、肥満細胞の脱顆粒、好中球浸潤を示すミエロペルオキシダーゼ活性、p53リン酸化および蓄積、ならびにCOX-2およびTNFαレベルの増加を伴う。局所的なホスゲン曝露はまた、肝臓、膵臓、腎臓、肺および心臓組織血管内のRBCを確実に増加させつつ、末梢血管の拡張ももたらす。これらの事象は、ショック、低酸素症および死につながる血圧降下を引き起こすこともあると考えられている。Tewari-Singh N,Goswami DG,Kant R,Croutch CR,Casillas RP,Orlicky DJ,Agarwal R,Cutaneous exposure to vesicant phosgene oxime:Acute effects on the skin and systemic toxicity,Toxicol Appl Pharmacol.2017 Feb 15;317:25-32を参照されたい。
【0216】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、びらん性毒ガスへの曝露により引き起こされる種々の皮膚損傷を治療、予防または寛解する方法で使用されてもよい。
【0217】
びらん性毒ガスまたはびらん剤または水疱剤は、火傷により引き起こされる皮膚損傷に似た損傷を生じさせる毒性化合物である。吸入時、これらの薬剤は上気道および肺に影響を及ぼし、肺水腫を引き起こす。例えば、Ganesan,K.,S.K.Raza,and R.Vijayaraghavan(2010)Chemical Warfare Agents,Journal of Pharmacy and Bioallied Sciences 2.3:166-178を参照されたい。これらの薬剤は重度の眼損傷も引き起こす可能性がある。これらの薬剤としては、マスタードとヒ素剤といった2つの形態のびらん剤が存在する。こうした分類の化学兵器における最も重要な物質はスルフィルマスタードである。他のメンバーとしては、ナイトロジェンマスタード(HN1、HN2およびHN3)およびルイサイト(L1、L2およびL3)、エチルジクロロアルシン、メチルジクロロアルシン、フェニルジクロリアルシン(phenyldichloriarsine)などのヒ素性びらん剤が挙げられる。びらん剤の特定の例としては、スルフィルマスタード(SM)、ビス-(2-クロロエチル)スルフィド、クロロエチルエチルスルフィド(chloroethylethyl sulfide、CEES)、ルイサイトおよびナイトロジェンマスタード(NM)ファミリーの一員である2-クロロ-N-(2-クロロエチル)-N-メチルエタンアミンヒドロクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。本開示全体を通して使用される場合、びらん性毒ガス、水疱形成誘発剤または化学物質、水疱形成剤などといった用語は、本明細書に具体的に列挙されているようなびらん性毒ガスならびに毒物および/または化学兵器などの他の化合物を意味すると解釈される。スルフィルマスタードは、第一次世界大戦での使用を理由として最も軍事的意義が大きいびらん性毒ガスである。ナイトロジェンマスタードは1930年代に合成されたが、戦争を目的としては大量生産されなかった。塩酸メクロレタミン(HN2、Mustargen)は、がん用化学療法剤としての最も平和的な用途が発見されており、長年にわたってがん用化学療法剤用の標準的化合物として存在し続けている。ルイサイト(L)は、その非可燃性およびマスタードに類似する毒性により軍事目的で1918年に合成されたが、戦場での使用はされていないものと考えられている。マスタードは放射線類似性であり、分裂細胞に対して極めて毒性が高い。マスタードは脂溶性であり、皮膚、ほとんどの織物およびゴムに容易に浸透する。細胞膜を通過した後、スルフィルマスタードは高い反応性を有するスルホニウムイオンに変換される。スルホニウムイオンはDNA、RNAおよびタンパク質を不可逆的にアルキル化して細胞死を引き起こす。最も重要な標的はDNAである。マスタードは、DNAのプリン塩基をアルキル化し、それらを損傷させる。ルイサイトは極めて迅速に皮膚に吸収され、冒された器官に直ちに疼痛および刺激を引き起こし、さらに全身症状を生じさせる。これはスルフヒドリル基に直接結合し、これらを不活性化させる。
【0218】
戦争におけるスルフィルマスタード(SM)および他の水疱形成剤の使用は長い間知られてきた。直近では、2015年8月、ISISはイラクのクルド人組織との戦闘、およびシリアでの戦闘でSMを使用した。マスタード剤は、眼、皮膚および肺を損傷させるが、眼が最も感受性が高い。症状は曝露後2~4時間までは顕在化しないため、曝露したヒトは自分がマスタードに曝露したことを直ちに認識することがない。この認識の遅れは、曝露症状が最終的に発症した時の混乱およびパニックの要因となる。眼については、これらの症状は眼瞼痙攣、流涙、刺激、疼痛および羞明からなる。気化したスルフィルマスタード(SM)への眼の曝露による角膜損傷は、最も一般的な戦争による化学損傷である。眼の曝露は、損傷の完全な消散、慢性損傷への即時移行または明白な回復とそれに続く、眼の持続症状のその後の発症といった3つの異なる用量依存的な臨床経過を呈する。これらの臨床経過のうち後者2つの経過としては、マスタードガス角膜症(MGK)としてまとめて知られている一連の角膜症状が挙げられる。急性損傷中の組織特異性損傷によって角膜内皮および角膜縁幹細胞の再生能が低下し、それによって角膜は慢性型または遅延型のMGKの素因となってしまう。
【0219】
一部の患者については、MGKは曝露後数週間で生じるが、他の患者については顕在化までに数年を要した。この角膜症は、角膜の結膜弛緩症および角膜縁幹細胞欠乏により特徴付けられる。ヒトの角膜内皮では、CEC損失によるギャップは、典型的には近位CECが伸展することで満たされることが示されている。これらの組織の変換は、角膜と房水との間のバリアのそれ以上の維持が不可能となるまで内皮損失を補い、持続性角膜浮腫および続発性前部角膜症をもたらす。成人のヒトCECはインビボで増殖しないため、それゆえにCECが損失することは、内皮能の永続的な減少を潜在的に表す。したがって、内皮機能はCEC伸展による軽度損傷後に回復する可能性があるが、より重度の損傷は、ヒト内皮の修復能力を上回る可能性がある。ウサギは、限定的なCEC増殖を起こすことができるという点でヒトと異なるため、CEC損失から回復する能力が改善される。ただし、ヒトと同様に、ウサギ内皮に対して十分重度の損傷もまた、不可逆的な角膜代償不全および続発性角膜症をもたらす。
【0220】
上記研究に基づき、びらん性毒ガスによって誘発される内皮不全は、MGK病因の背景にある原因機構である可能性があると仮定されている。この仮説は、ヒトおよびウサギで認められるSMとMGK発症との間の用量依存性、ならびにヒト死傷者で報告されている異なる臨床経過(消散した慢性MGKおよび遅延発症型MGK)と一致している。この仮説に従い、低用量のびらん性毒ガスへの角膜曝露により、最小限の内皮毒性による急性上皮病変がもたらされるが、角膜は長期合併症なしで回復する可能性がある。代替的には、角膜内皮に対する回復不可能な損傷を引き起こす用量のびらん性毒ガスへの曝露により、内皮のバリア不全が生じ、それによって続発性前部角膜症を伴う持続性浮腫が生じる。重度の損傷の後、急性損傷とMGK発症との間には明白な遅延が存在しない場合がある。
したがって、スルフィルマスタードおよび同様に作用する化学毒物、特に化学兵器による損傷を最小化または予防するための組成物および方法は、米国国防総省のために働く科学者にとって重要な探求である。近年の研究は、水疱形成剤としてのマスタード化合物は、上皮-実質付着の減少につながることを示している。角膜ではミクロの水疱が形成され、一度十分な量が発生すると角膜上皮は基底膜をしっかりと維持することができず、上皮組織を脱落させる。したがって、角膜実質に付着し続けるように角膜上皮の能力を増強するため、SMへの有効な曝露後治療が望ましい。理論に限定されるものではないが、角膜実質に付着し続ける角膜上皮の能力によって、一部の基底上皮がその場所で回復する機会を与え、それらの基底膜と角膜実質との接合を維持することが企図されている。上皮-実質完全性において重要な役割を担うもののうちの1つは、ヘミデスモソームの膜貫通成分であるコラーゲンXVII(すなわち、BP180)であるとも仮定されている。損傷後、ADAM9、ADAM10および/またはADAM17を含むタンパク質のADAM(「ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ」)ファミリーによるコラーゲンXVIIの切断は、上皮細胞をそれらの基底膜から放出させ、こうした切断は上皮細胞を遊走させる。
【0221】
TNF-α変換酵素またはTACEとしても公知であるADAM17は、損傷に対する一般的な応答であり、コラーゲンXVII放出の「シェダーゼ」である。びらん剤への曝露によって誘発される角膜でのミクロ水疱形成は、コラーゲンXVIIを切断可能であるADAM17が部分的に活性化していることに起因すると仮定されていた。実験データにより、びらん剤であるNMに曝露した角膜の基底膜領域で、ADAM17発現の誘導が確認された。したがって、ADAM17発現の曝露後増加を阻害することができる薬剤は、びらん剤により引き起こされる角膜損傷の減弱に有用であると企図されている。
【0222】
本開示は、治療して有害作用を減少させ、それ以外の場合にはSMおよびNMなどのびらん剤への曝露の治癒の一助となる修飾FGF-1ポリペプチドを提供する。本明細書に開示される修飾FGF-1ポリペプチドは、SMおよび/またはNMなどのびらん剤への曝露後のADAM17の過剰発現を予防することが可能である。
【0223】
本開示はまた、修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで、化学物質またはびらん性毒ガス誘発性損傷への曝露の有害作用を治療、予防、軽減し、それ以外の場合にはこれを治癒する一助となる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法によって、SMおよび/またはNMなどのびらん剤への曝露後にADAM17の過剰発現がさらに予防される。
【0224】
例えば配列番号1の野生型FGF-1タンパク質は、酸化およびアルキル化を受けやすい不対システイン残基を有する。修飾FGF-1ポリペプチドが不対システイン残基を含まない本開示のいくつかの実施形態では、こうした修飾FGF-1ポリペプチドはびらん剤による酸化および/またはアルキル化をほとんど受けない。実験データはまた、FGF-1およびそのmRNAレベルの減少がマスタード剤への曝露から生じることが公知であると示しており、この損失が、マスタードにより誘発される角膜病変の治癒を遅延させる一因であり得ると仮定される。本開示のいくつかの実施形態では、遊離システイン残基を含まず、したがってシステイン修飾をほとんど受けない、またはこれを受けない修飾FGF-1ポリペプチドは、マスタードによる角膜病変の治癒を加速させるという点で有効である。
【0225】
本開示のいくつかの実施形態では、該方法は不対システイン残基を含まず、びらん剤による酸化および/またはアルキル化をほとんど受けない修飾FGF-1ポリペプチドを投与することを含む。本開示のいくつかの実施形態では、該方法は遊離システイン残基を含まず、したがってシステイン修飾をほとんど受けない、またはこれを受けない修飾FGF-1ポリペプチドを投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、MGKに関連する角膜病変の治癒を加速させるという点で有効である。
【0226】
スルフィルマスタード(SM)およびナイトロジェンマスタード(NM)などのびらん剤への曝露は、ゆっくりとした水疱形成を伴う重度の皮膚損傷を引き起こし得る。これらの曝露の用量および時間に応じ、浮腫および紅斑は水疱、潰瘍、壊死、剥離、色素沈着の変化へと潜在的に発展する可能性があり、曝露後数週間、場合によっては数年間これが持続する。例えば、Tewari-Singh N,Agarwal R,Mustard vesicating agent-induced toxicity in the skin tissue and silibinin as a potential countermeasure,Ann N Y Acad Sci.2016 Jun;1374(1):184-92を参照されたい。別の例示的なびらん剤であるホスゲンオキシム(CX)は痒み促進剤または湿疹剤であるが、潜在的な化学兵器およびテロ兵器でもある。
【0227】
いくつかの実施形態では、治療される眼の疾患、障害または病気は、角膜実質の疾患、障害または病気である。角膜実質の疾患、障害または病気としては、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜ジストロフィー、黄斑角膜ジストロフィー、シュナイダー結晶性角膜ジストロフィー、先天性実質性角膜ジストロフィー、斑状角膜ジストロフィー、外傷または化学損傷もしくは熱傷、トラコーマなどの感染症に続発する損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0228】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜もしくは眼表面細胞の治癒の加速ならびに/または侵襲に対する細胞応答の改善(例えば、移植細胞の生存率および/もしくは寿命の増加による)が治療効果をもたらすであろう場合、角膜(例えば、角膜内皮構造)の破壊を含む角膜移植手技(例えば、角膜移植またはデスメ膜を含む手技)の前、その間またはその後に適用され得る。
【0229】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドを使用し、移植のために調製されている角膜細胞または角膜前駆細胞の生存率および健康を増加させることができる。提供された角膜および他の提供された角膜組織向けの器官培養培地に加えられる修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜細胞を刺激し、角膜の移植前貯蔵可能時間を増加させ、移植に有用であるように十分に健康な細胞を角膜が有する可能性を増加させる。加えて、修飾FGF-1ポリペプチドは、これらの細胞の増殖を刺激するように角膜前駆細胞を培養する場合に培地中で使用することができる。
【0230】
さらなる実施形態は、角膜内皮細胞と修飾FGF(例えば、配列番号2の配列を含むものといった修飾FGF-1)とを接触させることを含む、当該角膜内皮細胞で1つ以上の線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の活性を調節する方法に関する。かかる方法を使用して1つ以上のFGFRの活性を増加または刺激し、それによって細胞遊走および/または細胞増殖の増加をもたらすことができる。
【0231】
さらなる実施形態では、本開示に従って修飾FGF-1ポリペプチドを投与することで、代謝性疾患を治療する方法が記載されている。本開示の修飾FGF-1ポリペプチドで治療することができる例示的な代謝性疾患としては、(1)糖尿病(I型およびII型)、妊娠糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、グルコース代謝異常、「境界型糖尿病」(空腹時血糖異常(Impaired Fasting Glucose、IFG)または耐糖能異常(Impaired Glucose Tolerance、IGT))を含む、グルコース利用障害およびそれらに関連する後遺症、ならびに例えば膵β細胞破壊などの組織病理学的変化を含む高血糖状態に関連またはここから生じる他の生理学的障害;(2)例えば、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、脳血管障害などの脂質異常症およびそれらの後遺症;(3)肥満および体重増加(非アルコール性脂肪性疾患(nonalcoholic fatty liver disease、NADLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis、NASH)および多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome、PCOS)など、肥満および体重増加の併存症を含むがこれらに限定されない)などのメタボリックシンドロームに関連する可能性があり、血栓症、凝固性亢進および血栓形成促進性症状(動脈および静脈)、高血圧、心血管疾患、脳卒中および心不全もまた含み得る他の病気;(4)アテローム性動脈硬化、慢性炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、喘息、エリテマトーデス、関節炎または他の炎症性リウマチを含む、炎症性反応が含まれる障害または病気;(5)脂肪細胞腫瘍、例えば脂肪肉腫を含む脂肪腫性肉腫、充実性腫瘍および腫瘍など、細胞周期または細胞分化プロセスの障害;(6)アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、進行性多巣性白質脳症およびギランバレー症候群を含む、神経変性疾患ならびに/または中枢神経系および末梢神経系の脱髄障害ならびに/または脳内炎症プロセスおよび/もしくは他の末梢神経障害に関係する神経性疾患;(7)紅斑性扁平上皮皮膚疾患を含む、皮膚および皮膚科学障害ならびに/または創傷治癒プロセスの障害、ならびに(8)シンドロームX、変形性関節症および急性呼吸窮迫症候群などの他の障害、が挙げられるが、これらに限定されない。治療有効量の本開示の修飾FGF-1ポリペプチド(またはこれをコードする核酸分子)を投与することによる、摂食時および空腹時の血中ブドウ糖を減少させる方法、インスリン感受性および耐糖能を改善する方法、慢性全身性炎症を軽減させる方法、哺乳動物での脂肪肝を寛解させる方法、食物摂取を減少させる方法、またはこれらの方法の組合せもまた、記載される。
【0232】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは創傷治癒のために投与される。創傷の例としては、表皮剥脱、剥離、気胸(例えば、開放性気胸)、火傷、挫傷、銃創、切創、開放創、穿通創、貫通創、穿刺創、串線創、刺創、手術創、皮下創傷、糖尿病性病変または接線創傷が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の化合物および組成物で治療することができるさらなる創傷の例としては、熱傷、化学熱傷、放射線熱傷、紫外線への過度の曝露により引き起こされる火傷(例えば、日焼け)などの急性疾患または創傷;分娩および出産の結果としての会陰などの生体組織の損傷;会陰切開など医療手技中に経験する損傷;切除、切開、擦過傷を含む外傷誘発性損傷;事故によって経験する損傷;手術後の損傷および褥瘡、床ずれ、糖尿病および循環不良に関連する病気などの慢性疾患、ならびに全種類の挫瘡が挙げられる。加えて、創傷としては、膿痂疹、間擦疹、毛包炎および湿疹などの皮膚炎、歯科手術後の創傷;歯肉炎、外傷後の創傷;ならびに腫瘍関連創傷が挙げられ得る。創傷のさらに他の例としては、動物による咬傷、動脈疾患、昆虫による刺傷および咬傷、骨感染症、皮膚/筋肉移植片の損傷、壊疽、皮膚裂傷または裂創、皮膚老化、手術創の治癒がゆっくりとした、もしくは治癒しない手術創を含む術創、脳内出血、動脈瘤、皮膚無力症ならびに術後感染症が挙げられる。
【0233】
擦過、切除外傷、裂傷、咬傷、弾傷、刺創、火傷、日焼け、化学熱傷、手術創、床ずれ、放射線損傷、あらゆる種類の急性創傷および慢性創傷、美容的皮膚手技により形成された創傷または病変により引き起こされるが、これらに限定されない外傷を治療するために本発明の治療用ペプチドを使用することができる。このペプチドを使用し、皮膚老化の効果を緩和することもできる。このペプチドは外傷の創傷治癒を加速させ、かつ/または創傷領域もしくは老化した、および疾患に罹患した皮膚の審美性を改善することができる。このペプチドを使用し、心臓、骨、脳、脊髄、網膜、末梢神経を含むがこれらに限定されない器官および組織、ならびに急性損傷および慢性損傷、疾患、先天性および発生学的奇形、ならびに老化プロセスを一般的に経験する他の組織および器官、疾患、手術、砲撃、刺傷、事故、梗塞、虚血傷害により引き起こされるがこれらに限定されない、内部損傷を治療することができる。
【0234】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは火傷の治療のために投与される。例示的な火傷としては、例えば第I度熱傷(すなわち、皮膚表面の赤くなった領域);第II度熱傷(水疱液を取り除いた後、自発的に治癒可能である水疱が生じた損傷部位);第III度熱傷(皮膚全体にわたる熱傷であり、通常、創傷治癒のために外科的介入を必要とする);熱傷(scalding)(沸点近くの熱湯、油またはラジエータ液により生じ得る);熱傷(thermal burn)(炎により生じ得る、通常は深部火傷である);化学熱傷(酸およびアルカリに由来し得る、通常は深部火傷である)電撃傷(家庭用の低電圧または仕事中の高電圧のいずれか);爆発によるフラッシュ(通常は表面火傷);ならびに接触熱傷(通常は深部火傷であり、マフラーテイルパイプ、熱したアイロンおよびストーブにより生じ得る)を含む火傷の結果として生じる潰瘍を含む「熱傷潰瘍」を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、治癒がゆっくりとした、または治癒困難な創傷としては、例えば1)長期炎症段階、2)細胞外マトリックス(ECM)形成の遅延、および3)上皮形成速度の減少により、少なくとも部分的に特徴付けられる創傷が挙げられ得る。
【0235】
例えば、FGF-1といった増殖因子は、神経再生および神経治癒において重要な役割を果たす。FGF-1は神経増殖および成長を刺激し、かつ神経保護性であり得ると考えられることから、腕神経叢損傷などの脊髄損傷もしくは外傷、急性もしくは特発性横断性骨髄炎(TM)などの後の神経免疫障害、またはニューロンもしくは神経組織の再生および/もしくは保護が望ましい他のいずれかの疾患もしくは病気後に神経系組織を再生する際の使用が提案されている。例えば、Cheng,H.et al.,「Spinal Cord Repair with Acidic Fibroblast Growth Factor as a Treatment for a Patient with Chronic Paraplegia,」 SPINE 29(14):E284-E288(2004);and Lin,P-H.,「Functional recovery of chronic complete idiopathic transverse myelitis after administration of neurotrophic factors,」 Spinal Cord 44:254-257(2006)を参照されたい。FGF-1は、神経栄養活性を有し、軸索成長を促進し、脊髄損傷および軸索再生モデルに有益な影響をもたらすことで知られている。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは神経再生を促進し、神経再生によって好転する病気を治療する方法で使用することができる。いくつかの例示的な方法では、神経の病気は筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosi、ALS)である。いくつかの例示的な方法では、神経の病気は急性または特発性横断性骨髄炎(TM)である。ある特定の例では、修飾FGF-1ポリペプチドは、神経再生によって利益がある病気を治療するため、他の増殖因子および他の薬学的に活性のある成分と組み合わせて投与され得る。
【0236】
医薬組成物、投与方法および投与
本明細書に記載の修飾FGFポリペプチドを含む医薬組成物は、薬学的に使用され得る製剤への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む、1つ以上の生理学的に許容される担体を使用する従来方法で製剤化され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に依存している。本明細書に記載の医薬組成物にとって好適な賦形剤についてのさらなる詳細は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams&Wilkins1999)に見出すことができ、こうした開示についてはその内容全体が本明細書の一部として援用される。
【0237】
本明細書で使用される場合、医薬組成物は、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/または賦形剤などの他の化学成分、ならびに任意選択的には他の治療的および/または予防的成分との修飾FGFの混合物を指す。医薬組成物は、生物への修飾FGFの投与を容易にする。本明細書で提供される治療方法または使用方法を実施する際には、本明細書に記載の治療有効量の修飾FGF-1ポリペプチドは、治療される眼の疾患、障害または病気に罹患している哺乳動物へと医薬組成物にて投与される。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効能および他の要因に応じて幅広く変更することができる。薬学的に許容される、または好適な組成物としては、眼科的に好適、または許容される組成物が挙げられる。
【0238】
医薬組成物(例えば、注射による送達用または点眼薬としての適用目的)は、液状または固形状であり得る。液体医薬組成物は、例えば注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンガー液、生理食塩液などの滅菌希釈剤、溶媒または懸濁用媒体として機能可能である固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒、抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調整するための緩衝液および薬剤、のうちの1つ以上を含む。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチックで製造されたアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与用バイアルに封入されることができる。生理食塩水は賦形剤として一般的に使用されており、注射可能な医薬組成物または眼に送達される組成物(例えば、点眼薬として)は、滅菌されていることが好ましい。
【0239】
本明細書に記載の修飾FGFポリペプチドまたは医薬組成物は、例えば、局所的、眼内、房内、経口、非経口、静脈内、腹腔内、鼻腔内を含む任意の好適な手段(もしくは、例えば鼻、喉および気管支の粘膜への他の送達方法)によって、または眼への局所投与によって、または眼内デバイスもしくは眼周囲デバイスによって、対象に送達され得る。局所投与の様式としては、例えば局所適用、点眼薬、眼内注射または眼周囲注射が挙げられ得る。眼周囲注射は、典型的には結膜下、またはテノン嚢(眼の上の線維組織下方)への化合物の注射を含む。眼内注射は、典型的には硝子体への修飾FGFまたは医薬組成物の注射を含む。ある特定の実施形態では、投与は、局所適用または点眼薬などによる非侵襲的なものである。いくつかの実施形態では、投与は局所的方法および房内方法の併用によるものである。
【0240】
本明細書に記載の修飾FGFまたはその医薬組成物は、薬学的に許容される(好適な)担体または媒体、および当該技術分野で日常的に利用される技術を使用し、投与のために製剤化され得る。薬学的に許容される、または好適な担体は、眼科的に好適な、または許容される担体を含む。担体は、特定の修飾FGFの溶解度に従って選択される。好適な眼科的組成物および製剤は、点眼薬、注射など、目に局所的に投与される組成物および製剤を含む。点眼薬の場合には、製剤は例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(ポリソルベート80とも呼ばれる)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(ポリソルベート20とも呼ばれる)、ポリオキシルステアラート40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの保存剤;および他の成分などの眼科的に適合する薬剤を任意選択的に含むこともできる。保存剤は例えば、約0.001~約1.0%重量/体積の量で使用され得る。製剤のpHは通常、眼科用製剤に許容される範囲内であり、例えばpHは約4~8の範囲内である。
【0241】
注射のために、修飾FGFまたは医薬組成物は注射グレードの食塩水の形態、注射可能なリポソーム溶液の形態、徐放性ポリマー系などの形態で提供されてもよい。眼内注射および眼周囲注射は当業者に公知であり、例えばSpaeth,Ed.,Ophthalmic Surgery:Principles of Practice,W.B.Sanders Co.,Philadelphia,Pa.,85-87,1990を含む多数の刊行物に記載されている。
【0242】
いくつかの実施形態では、修飾FGFまたは医薬組成物(例えば、眼科用製剤)は、マイクロニードルによって角膜内に投与される(Jiang et al.(2007).Invest Ophthalmol Vis Sci 48(9):4038-4043)。マイクロニードルアレイは、修飾FGFまたは医薬組成物でコーティングされており、マイクロニードルが角膜実質に達するものの、角膜すべてを貫通しないように角膜に押し付けられる。これを取り外すと、修飾FGFまたは医薬組成物が角膜実質内に残る。残った修飾FGFまたは医薬組成物は角膜細胞を刺激して増殖または遊走し、実質細胞が通常有している瘢痕反応を抑制する。
【0243】
いくつかの実施形態では、組成物は眼内送達用に製剤化されてもよい。眼内送達は、硝子体内送達、角膜注射、房内送達を含む。いくつかの実施形態では、組成物は房内送達用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は硝子体内送達用に製剤化される。製剤は注射可能な液体であり、非常に少量を含むことができ、注射可能な液体製剤の密度は、標的とする空間での液体製剤の放出が組織への損傷を引き起こさないよう、調整されてもよい。いくつかの実施形態では、房内送達用の容量は、約100マイクロリットル、約100マイクロリットル未満、約20マイクロリットル未満、約10マイクロリットル未満、約5マイクロリットル未満、約2.5マイクロリットル未満または約1マイクロリットルである。配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、または配列番号1に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、少なくとも1個、2個、3個、4個または5個の単一のアミノ酸変異を含む修飾FGF-1ポリペプチド、およびL-メチオニン、を含む眼内送達用注射用製剤が本明細書に提供される。該製剤内の修飾FGF-1ポリペプチドは、約95%を超える純粋な状態で存在し、ポリペプチドは製剤内では単量体形態である。ポリペプチドがN末端メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の製剤。いくつかの実施形態では、注射用製剤は、配列番号2、205、206、3~8、14~18、24~28、93~117、118~141、146~149および174~204のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはこれらの配列に少なくとも90%同一である配列、またはこれらの断片を含む修飾FGF-1を含んでもよい。
【0244】
いくつかの実施形態では、ここに注射用製剤が提供され、該製剤は、必要とされる投与量および濃度の修飾FGF-1、ならびに塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸一水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸およびL-メチオニンのうちの1つ以上を含む賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、注射用製剤は、修飾FGF;少なくとも約50mM リン酸水素二ナトリウム;少なくとも約100mM 塩化ナトリウム;少なくとも約10mM 硫酸アンモニウム;少なくとも約0.1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA);少なくとも約5mM L-メチオニン、および少なくとも約0.01%(w/v)のポリソルベート80、のうち少なくとも1つをさらに含む。修飾FGF-1ポリペプチドを含む注射用製剤は、Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Val、Lys12Val、Cys16Ser、Ala66Cys、Cys117ValおよびPro134Valからなる群から選択される1つ以上の変異を含み、修飾FGF-1ポリペプチドはペプチドALTEKの少なくとも1つの残基をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドは、Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valといった配列番号1の変異を含む1つ以上の変異を含み、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置するメチオニン残基、およびN末端メチオニンと配列番号1の1位との間に位置するペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、製剤またはその中の薬学的に好適な賦形剤は、ヒト血清アルブミンおよび/またはポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、製剤はL-メチオニンを含む。いくつかの実施形態では、L-メチオニンは、製剤内に1mM~20mM濃度で存在する。いくつかの実施形態では、L-メチオニンは、製剤内に2mM~10mM濃度で存在する。いくつかの実施形態では、L-メチオニンは、製剤内に1mM~10mM濃度で存在する。いくつかの実施形態では、L-メチオニンは、製剤内に2.5mM~15mM濃度で存在する。いくつかの実施形態では、L-メチオニンは、製剤内に約5mM濃度で存在する。本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む組成物を、鼻腔、喉および気道に送達することを含む粘膜経路を介しての送達については、組成物はエアロゾルの形態で送達されてもよい。化合物は、粘膜内送達のために液状または粉末状であってもよい。例えば、組成物は、炭化水素噴霧剤(例えば、プロパン、ブタン、イソブテン)などの好適な噴霧剤を備えた加圧エアロゾルを介して送達されてもよい。組成物は、ネブライザーまたはアトマイザーなどの非加圧送達系を介して送達されてもよい。
【0246】
好適な経口剤形としては例えば、硬ゼラチンまたは軟ゼラチン、メチルセルロースまたは消化管で容易に溶解される別の好適な材料の、錠剤、ピル、分包、またはカプセルが挙げられる。例えば薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む好適な非毒性固体担体が使用され得る。(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005)を参照されたい)。
【0247】
本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドまたは医薬組成物は、持続放出または徐放のために製剤化されてもよい。かかる組成物は周知の技術を使用して一般には調製され、例えば眼周囲、眼内、直腸、経口または皮下注入によって、または所望の標的部位での注入によって、または局所適用によって投与されてもよい。徐放性製剤は、担体マトリックス内に分散される、および/または速度制御膜で囲まれたリザーバ内に含有される薬剤を含有してもよい。こうした製剤内で使用するための賦形剤は生物適合性があり、生分解可能であってもよく、好ましくは該製剤によって相対的に一定レベルの活性成分が放出される。徐放性製剤内に含有された活性化合物の量は注入部位、放出速度および予想される持続期間、ならびに治療される、または予防される病気の性質に依存する。
【0248】
眼経路によって投与される薬物または組成物の全身薬物吸収は、当業者に公知である(例えば、Lee et al.,Int.J.Pharm.233:1-18(2002)を参照されたい)。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、眼への局所送達方法によって送達される(例えば、Curr.Drug Metab.4:213-22(2003))。組成物は、水性点眼薬、水性懸濁点眼剤、非水性点眼薬および非水性懸濁点眼剤、ゲル、眼用軟膏など、点眼薬、膏薬または軟膏などの形態であってもよい。ゲルの調製については、例えばカルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン無水マレイン酸ポリマーなどが使用され得る。
【0249】
別の実施形態では、修飾FGF溶液または医薬組成物(例えば、眼科用製剤)は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースまたは安定した眼用溶液を製造するための眼の忍容性の増加、粘度の増加および浸透圧の増加を提供する他の多糖類を含有する。
【0250】
本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む修飾FGFまたは医薬組成物の投与量は、患者(例えば、ヒト)の状態、すなわち眼の疾患、障害または病気の段階、一般的な健康状態、年齢および医療分野の当業者が投与量を決定するために使用する他の因子に応じて異なっていてもよい。組成物が点眼薬として使用される場合、例えば単位投与量あたり1滴~数滴、好ましくは1滴または2滴(1滴あたり約50μL)が1日あたり約1回~6回適用され得る。
【0251】
医薬組成物は、医療分野の当業者によって決定されるように、治療される(または予防される)疾患、障害または病気に対して適切な方法で投与される。適切な投与量、ならびに投与の好適な持続期間および頻度は、患者の状態、患者の疾患、障害または病気の種類および重症度、特定の形態の活性成分、ならびに投与方法などの因子により決定される。一般には、適切な投与量および治療レジメンは、治療的および/または予防的利益(例えば、さらに高頻度の完全もしくは部分的寛解、またはより長期の無病状態、または症状重症度の軽減などの臨床アウトカムの改善)を提供するのに十分な量の1つ以上の組成物を提供する。予防的使用については、投与量は眼の疾患、障害または病気の発症の予防、遅延またはこれらの重症度の軽減を行う上で十分なものでなければならない。最適な投与量は、一般には実験モデルおよび/または治験を使用して決定され得る。最適な投与量は、患者の体格、体重または血液量に依存し得る。
【0252】
種々の実施形態では、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、一定期間にわたって1日量として対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは慢性的に、または長期で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、対象の生涯にわたり数日間、数週間、数ヶ月間、数年間の期間、または持続的治療期間に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、約7日間、約15日間、約21日間、約30日間、約3ヶ月間、約6ヶ月間、約12ヶ月間、約18ヶ月間、約2年間、約5年間、約7年間、約10年間、約15年間、約20年間、約25年間、約30年間、約35年間または約40年間の期間にわたり投与されてもよい。いくつかの実施形態では、治療レジメンは、種々の因子に応じて個々の対象で決定されてもよい。いくつかの例では、治療レジメンは、びらん性化合物など、化学損傷または熱傷を引き起こす化合物への曝露量に応じて変化する。いくつかの実施形態では、治療レジメンは、急性曝露については約2週間、長期曝露については数ヶ月~1年である。いくつかの実施形態では、治療レジメンは慢性的である。いくつかの例では、因子としては、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応答した角膜組織変性度の変化の決定が挙げられ得るが、これに限定されない。いくつかの例では、因子としては、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応答したMGK後遺症の寛解が挙げられ得るが、これに限定されない。いくつかの例では、因子としては、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応答した角膜内皮病変の治癒が挙げられ得るが、これに限定されない。いくつかの例では、因子としては、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応答した角膜上皮細胞増殖が挙げられ得るが、これに限定されない。いくつかの例では、因子としては、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応答したフックスジストロフィーに関連する症状の軽減が挙げられ得るが、これに限定されない。複数の実施形態では、組成物に対して例えばフックスジストロフィーに関連する症状の即時軽減といった即時応答を呈する対象は、後に、または複数回の投薬の後に組成物に対して応答を示す対象よりも、必要となる投与回数は少なくなり得る。
【0253】
修飾FGF-1ポリペプチドまたは医薬組成物の投与量は、対象の臨床状態、症状および年齢、剤形などに応じて好適に選択され得る。点眼薬の場合には、本明細書に記載の修飾FGFは、1週間につき1~7回、例えば約10μg/ml~約100mg/mlの修飾FGFを投与することができる。
【0254】
本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物を製造する方法もまた提供される。薬学的に許容される賦形剤または担体および本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む組成物は、本明細書に記載の、または当該技術分野で行われている方法のうちのいずれか1つに従って修飾FGFを合成し、続いて薬学的に許容される担体と化合物とを製剤化することで調製されてもよい。組成物の製剤化は適切なものであり、送達経路、投与量および化合物の安定性を含むがこれらに限定されない複数の因子に依存している。
【0255】
本明細書に記載の少なくとも1つの修飾FGFは、ヒトまたは非ヒトの他の脊椎動物に投与され得る。ある特定の実施形態では、修飾FGFは、例えば合成方法のステップのうち1つ以上で形成される、混入中間生成物または副生成物などの他の有機分子を約5%未満または約1%未満、または約0.1%未満含有するという点で実質的に純粋である。他の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の修飾FGF-1ポリペプチドの組合せが投与され得る。
【0256】
本明細書に記載の組成物は、予防的処置、および/または治療的処置のために投与され得る。治療的適用では、組成物は、疾患または病気の症状を治癒または少なくとも部分的に停止するのに十分な量で、疾患または病気に既に罹患している患者に投与される。こうした使用に有効な量は、疾患または病気の重症度および経過、投与前の治療、患者の健康状態、体重および薬物への応答ならびに治療する医師の判断に応じて変化させてもよい。
【0257】
予防的適用では、本明細書に記載の組成物は、特定の疾患、障害または病気に罹患しやすい、またはそれ以外の場合にはそうした疾患、障害または病気のリスクがある患者に投与される。こうした量は、「予防有効量または投与量」であると定義される。この使用では、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに依存する。
【0258】
患者の状態が改善しない場合には、医師の裁量に応じて、組成物の投与は慢性的に投与されてもよい。これはすなわち、患者の疾患または病気の症状を寛解、またはそれ以外の場合には制御もしくは制限するために、患者の生存期間全体を含む長期期間にわたり投与されるということである。
【0259】
患者の状態が改善しない場合には、医師の裁量に応じて、組成物の投与は連続的に行われてもよく、代替的には投与される薬物の投与量を段階的に減少してもよく、またはある特定の長さの時間にわたって一時的に停止してもよい(すなわち、「休薬期間」)。
【0260】
患者の状態が改善した時には、必要な場合には維持投与量が投与される。その後に、用量もしくは投与頻度、またはそれら両方を、症状の関数として、疾患、障害または症状の改善が保持されている量まで減少させることができる。ただし、患者は何らかの症状が長期的に再発した場合に、周期的治療を必要とすることがある。
【0261】
望ましい投与量は、単回投与量で、または同時に(もしくは短時間にわたって)、もしくは例えば1日あたり2回、3回、4回以上の投与量未満の量として適切な間隔で投与される分割投与量として適切に提示され得る。
【0262】
本明細書に記載の医薬組成物は、正確な用量の単回投与に好適な単位剤形であってもよい。単位剤形では、製剤は1つ以上の適切な量の修飾FGF-1ポリペプチドを含有する単位投与量に分割される。単位用量は、別個の量の製剤を含有する包装形態であってもよい。非限定的な例は、包装された錠剤またはカプセル、およびバイアルまたはアンプル内の粉末である。水性懸濁液組成物は、再密閉不可能な単回投与量の容器または再度封入可能な容器に包装され得る。代替的には、複数投与量の再密閉可能な容器を使用することができ、この場合、組成物内に保存剤を含むことが典型的である。単純に例として、非経口注射用の製剤は、保存剤を加えた状態のアンプル、または複数投与量の容器を含むがこれらに限定されない単位剤形で提供されてもよい。
【0263】
こうした治療レジメンの毒性効果および治療効果は、細胞培養物または実験用動物でのLD50(集団の50%の致死量)およびED50(集団の50%の薬効量)の決定が挙げられるが、これらに限定されない、標準的な薬学的手順で決定され得る。毒性と治療効果との用量比は治療指数であり、LD50とED50との比として表され得る。高い治療指数を表す化合物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から取得されるデータは、ヒトでの使用のために用量の範囲を処方する場合に使用され得る。こうした化合物の用量は、最小限の毒性を伴い、ED50を含む血中濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、使用される剤形および使用される投与経路に応じて、この範囲内で変化してもよい。
【0264】
バルク原薬製剤および医薬製剤
本開示の一実施形態は、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムおよびリン酸水素二ナトリウム二水和物のうちの少なくとも1つを含む製剤のバルク原薬製剤(BDS)としての修飾FGF-1ポリペプチド(例えば、配列番号2の配列を含むFGF-1ポリペプチド)を提供する。いくつかの実施形態では、BDSは、例えばブチルセファロースファストフローカラムを使用して修飾FGF-1ポリペプチドを発現する宿主細胞からの精製後に溶離緩衝液内の溶液(バルク原薬製剤を保存するための製剤である)として保存される。精製中、修飾FGF-1ポリペプチドは典型的には勾配をつけて溶出するため、いくつかの例では、溶離緩衝液は正確な組成物を有さない。例えば、いくつかの場合では、溶離緩衝液は塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムおよびリン酸水素二ナトリウム二水和物を含み、そのpHは約7.4である。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は、約200mM、約300mM、約400mM、約500mM、約600mM、約700mM、約800mM、約900mM、約1000mM 塩化ナトリウムなど、約100mM~約1000mM 塩化ナトリウム;約200mM、約300mM、約310mM、約320mM、約330mM、約340mM、約360mM、約370mM、約380mM、約390mM、約400mM、約500mM 硫酸アンモニウムなど、約100mM~約500mM 硫酸アンモニウム;および約2mM、約5mM、約10mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mMもしくは約30mM リン酸水素二ナトリウム二水和物など、約1mM~約50mM リン酸水素二ナトリウム二水和物、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、BDSは、約6~約8のpHを有する製剤内に保存される。
【0265】
本開示の一実施形態は、pH5.8のヒスチジン/ポリソルベート/ソルビトール製剤から構成される医薬製剤を提供する。種々の利点は医薬製剤に関連しており、こうした利点としては目に見える微粒子、SE-HPLCによるほぼ一定の主ピーク面積、SE-HPLCによる可溶性のある凝集体の経時的に低い割合、経時的なpHの制御が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、約0.2mM、約0.3mM、約0.4mM、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約25mM、約30mM、約40mM、約50mM、約100mMなどの約0.1mM~約10mM濃度で存在する。いくつかの実施形態では、医薬製剤は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびこれらのいずれかの組合せが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤はポリソルベートである。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、例えばPS20、PS80といったポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、製剤は約0.01%~約10%の濃度で存在するPS80を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも約0.005%、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.015%、少なくとも約0.02%、少なくとも約0.03%、少なくとも約0.04%、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.06%、少なくとも約0.07%、少なくとも約0.08%、少なくとも約0.09%または少なくとも約0.1%の濃度のポリソルベート80、NF(PS80)(%w/v)を含む。他の実施形態では、製剤は約0.005%~約0.1%のPS80、約0.005%~約0.02%のPS80、約0.005%~約0.05%のPS80、約0.01%~約0.02%のPS80、約0.02%~約0.1%のPS80、または約0.01%~約0.03%のPS80を含む。さらに他の実施形態では、組成物は約0.01%の濃度のPS80を含む。さらに他の実施形態では、組成物は約0.02%の濃度のPS80を含む。いくつかの実施形態では、組成物は約0.03%の濃度のPS80を含む。特定の実施形態では、組成物は約0.04%の濃度のPS80を含む。いくつかの実施形態では、組成物は約0.05%の濃度のPS80を含む。他の実施形態では、組成物は約0.06%の濃度のPS80を含む。他の実施形態では、組成物は約0.07%の濃度のPS80を含む。他の実施形態では、組成物は約0.08%の濃度のPS80を含む。他の実施形態では、組成物は約0.09%の濃度のPS80を含む。他の実施形態では、組成物は約0.1%の濃度のPS80を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも約0.005%、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.015%、少なくとも約0.02%、少なくとも約0.03%、少なくとも約0.04%、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.06%、少なくとも約0.07%、少なくとも約0.08%、少なくとも約0.09%または少なくとも約0.1%の濃度のポリソルベート20、NF(PS20)(%w/v)を含む。他の実施形態では、製剤は約0.005%~約0.1%のPS20、約0.005%~約0.02%のPS20、約0.005%~約0.05%のPS20、約0.01%~約0.02%のPS20、約0.02%~約0.1%のPS20、または約0.01%~約0.03%のPS20を含む。さらに他の実施形態では、組成物は約0.01%の濃度のPS20を含む。さらに他の実施形態では、組成物は約0.02%の濃度のPS20を含む。いくつかの実施形態では、組成物は約0.03%の濃度のPS20を含む。特定の実施形態では、組成物は約0.04%の濃度のPS20を含む。いくつかの実施形態では、組成物は約0.05%の濃度のPS20を含む。他の実施形態では、組成物は約0.06%の濃度のPS20を含む。他の実施形態では、組成物は約0.07%の濃度のPS20を含む。他の実施形態では、組成物は約0.08%の濃度のPS20を含む。他の実施形態では、組成物は約0.09%の濃度のPS20を含む。他の実施形態では、組成物は約0.1%の濃度のPS20を含む。他の実施形態では、医薬製剤は例えば、眼内注射、房内注射、眼周囲注射、静脈内注射、腹腔内注射または鼻腔内注射を含む好適な手段で対象に送達される。
【0266】
いくつかの実施形態では、医薬製剤はアルコール化合物を含む。いくつかの実施形態では、アルコール化合物は、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、マンニトールまたはこれらのいずれかの組合せである。いくつかの実施形態では、アルコール化合物は例えば、ソルビトールといった浸透圧調整剤である。いくつかの実施形態では、アルコール化合物は約1%~約10%で存在するソルビトールである。いくつかの実施形態では、製剤は塩化ナトリウムである浸透圧調整剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤はグリセリンを含む。
【0267】
ある特定の実施形態では、製剤は、少なくとも約0.25%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.75%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2%、少なくとも約2.5%、少なくとも約3%、少なくとも約3.5%、少なくとも約4%、少なくとも4.5%、少なくとも約5%、少なくとも約7.5%または少なくとも約10%の濃度のソルビトール(%w/v)USPを含む。他の実施形態では、組成物は約0.5%~約5%のソルビトール、約0.5%~約4%のソルビトール、約0.5%~約1.5%のソルビトール、約1%~約2%のソルビトールまたは約2.5%~約3.5%のソルビトールを含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、医薬製剤のpHは約5.8、約4.5~約6.5、約4.0~約6.0、約4.0~約6.5未満、約5.0~約6.0、約5.1~約5.9、約5.2~約5.8、約5.3~約5.4、約5.4~約5.5、約4.1~約6.1、約4.2~約6.2、約4.3~約6.3、約4.4~約6.4、約4.5~約6.5、約4.6~約6.6、約4.7~約6.7、約4.8~約6.8、約4.9~約6.9、約5.0~約7.0、約4.1~約5.1、約4.2~約5.2、約4.3~約5.3、約4.4~約5.4、約4.5~約5.5、約4.6~約5.6、約4.7~約5.7、約4.8~約5.8、約4.9~約5.9、約5.0~約6.0、約6.1未満、約6.2未満、約6.3未満、約6.4未満、約6.5未満、約6.6未満、約6.7未満、約6.8未満、約6.9未満、約7.0未満である。
【0269】
いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチド(例えば、配列番号2の修飾FGF-1ポリペプチド)は、本明細書に記載の医薬製剤内に活性成分を含み、約100pg/mL~約1000μg/mL、約500pg/mL~約200μg/mL、約0.0001μg/mL~約0.0005μg/mL、約0.0005μg/mL~約1.0μg/mL、約1.0μg/mL~約10μg/mL、約10μg/mL~約20μg/mL、約20μg/mL~約30μg/mL、約30μg/mL~約40μg/mL、約40μg/mL~約50μg/mL、約50μg/mL~約60μg/mL、約60μg/mL~約70μg/mL、約70μg/mL~約80μg/mL、約80μg/mL~約90μg/mL、約90μg/mL~約100μg/mL、約100μg/mL~約110μg/mL、約110μg/mL~約120μg/mL、約120μg/mL~約130μg/mL、約130μg/mL~約140μg/mL、約140μg/mL~約150μg/mL、約150μg/mL~約160μg/mL、約160μg/mL~約170μg/mL、約170μg/mL~約180μg/mL、約180μg/mL~約190μg/mL、約190μg/mL~約200μg/mLの濃度で存在する。
【0270】
本開示の一実施形態は、修飾FGF-1ポリペプチド;少なくとも約200mM~約1000mM濃度の塩化ナトリウム、約50mM~約500mM濃度の硫酸アンモニウム;約1mM~約50mM濃度のリン酸水素二ナトリウムを含むバルク原薬製剤を提供する。修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、16位のSer、66位のCysおよび117位のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの濃度は、少なくとも約0.1g/mL~約10g/mL、約0.2g/mL~約15g/mL、約0.3g/mL~約20g/mL、約1g/mL~約5g/mL、約1g/mL~約4g/mL、約2g/mL~約3g/mLなどである。いくつかの実施形態では、修飾FGF-1ポリペプチドの濃度は約3g/mLである。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は、約800mM濃度の塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は、約320mM濃度の硫酸アンモニウムを含み、いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤は約20mM濃度のリン酸水素二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤のpHは約7~約9である。いくつかの実施形態では、バルク原薬製剤のpHは約7.4である。いくつかの実施形態では、-60±10℃の温度で保存した場合、修飾FGF-1ポリペプチドは安定している。
【0271】
本開示の一実施形態は、修飾FGF-1ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターでトランスフェクトされた細菌細胞の培養物中の封入体から単離された、リフォールディングされた修飾FGF-1ポリペプチドを精製することを含む製造方法を提供し、精製は、アガロース系樹脂(例えば、Capto(商標)DeVirS)を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用してリフォールディングされた修飾FGF-1ポリペプチドを捕捉し、続いて、ブチルセファロース樹脂を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用して、疎水性相互作用クロマトグラフィーで最終精製することを含む。いくつかの実施形態では、最終精製ステップによる修飾FGF-1ポリペプチドの回収は、ヘパリン樹脂を充填したクロマトグラフィー用カラムを使用すること以外は同一である製造方法での疎水性相互作用クロマトグラフィーによる最終ステップ後の修飾FGF-1ポリペプチドの回収よりも、約10%~約40%多い、または約11%多い、約12%多い、約13%多い、約14%多い、約15%多い、約16%多い、約17%多い、約18%多い、約19%多い、約20%多い、約25%多い、約30%多い、約35%多い、約40%多いなど、約10%~約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%大きい。
【0272】
併用治療
修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物は、治療される病気についての治療価値のために選択される他の治療薬と組み合わせて使用されてもよい。修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物は、びらん性毒ガス損傷を治療することに関する治療価値のために選択される他の治療薬と組み合わせて使用されてもよい。こうした薬剤は、同じ医薬組成物で投与される必要はなく、その異なる物理学的特徴および化学的特徴を理由に、異なる経路で投与されなければならない場合がある。同じ医薬組成物に関する投与様式の決定および投与への助言は、可能であれば、これらは医師の知識の範囲内に十分存在する。初期投与は、当該分野で認識されている確立したプロトコールに従って行われてよく、その後観察された効果に基づいて、医師は用量、投与様式および投与時間を変更することができる。
【0273】
使用される任意のさらなるこれらの薬剤の個別選択は、診療を行う医師の診断および患者の症状の判断および適切な治療プロトコールに応じて変化する。薬剤は、疾患、障害または病気の性質、患者の病状および使用される実際の薬剤の選択に応じて、並行して(例えば、同時に、本質的に同時に、もしくは同じ治療プロトコール内で)、または経時的に投与されてもよい。投与順の決定および治療プロトコール中の各治療薬の投与の反復回数は、治療されている疾患および患者の症状の評価後の医師の知識の十分な範囲内にある。
【0274】
本明細書に開示される併用治療を構成する治療薬は、併用剤形または実質的に同時投与を意図した別個の剤形であり得る。併用治療を構成する治療薬はまた、任意の治療化合物が2段階投与を必要とするレジメンで投与される状態で、経時的に投与されてもよい。2段階投与レジメンは、活性薬の経時的投与、または間隔をあけての別個の活性薬の投与を必要としてもよい。複数の投与ステップ間の期間は、治療薬の効能、溶解度、バイオアベイラビリティ、血漿半減期および動態プロファイルなどの各治療薬の特性に応じ、数分~数時間の範囲であってもよい。標的分子濃度の概日変動によっても、最適な投与量の間隔を決定することができる。
【0275】
治療有効量は、薬物が治療を組み合わせる際に使用される場合には変化する可能性がある。治療レジメンを組み合わせて使用するための治療有効量の薬物および他の薬剤を実験的に決定するための方法は、文献中に記載されている。例えば、メトロノーム投与(すなわち、毒性副作用を最小化するために回数を増やし、投与量を減らすこと)は、文献内では広く記載されている。併用治療は、患者の臨床管理を支援するため、様々な時点で開始および停止する定期的な治療をさらに含む。
【0276】
例えば、修飾されたものは、ステロイド、抗生物質、抗炎症薬、IL-1もしくはIL-1の類似体、またはIL-17の阻害薬などのサイトカインの拮抗薬といった他の活性成分を含有する製剤へと導入されてもよい。
【0277】
他の例示的なサイトカインとしては、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-1α、IL-1βおよびIL-1 RA)、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor、G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony stimulating factor、GM-CSF)、オンコスタチンM、エリスロポエチン、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor、LIF)、インターフェロン、B7.1(CD80としても知られている)、B7.2(B70、CD86としても知られている)、TNFファミリーメンバー(TNF-α、TNF-β、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail)および遊走阻止因子(migration inhibitory factor、MIF)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0278】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組合せまたは医薬組成物は、免疫系の活性を減少、阻害または予防するために免疫抑制療法で投与される。免疫抑制療法は、移植された臓器および組織の拒絶の防止、自己免疫疾患または自己免疫由来である可能性が最も高い疾患の治療、および一部の他の非自己免疫疾患炎症性疾患の治療のために臨床的に使用される。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs、NSAIDs)および副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)を含むがこれらに限定されない、1つ以上の抗炎症薬とともに投与される。
【0280】
NSAIDsとしては、アスピリン、サリチル酸、ゲンチジン酸、サリチル酸マグネシウムコリン、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウムコリン、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸ナトリウム、ジフルニサル、カプロフェン、フェノプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルオロビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブトン、ケトロラク、ケトロラクトロメタミン、ナプロキセン、オキサプロジン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメティン、メクロフェナメート、メクロフェナメートナトリウム、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカムおよびCOX-2特異的阻害薬(セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、CS-502、JTE-522、L-745,337およびNS398などであるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0281】
副腎皮質ホルモンとしては、ベタメタゾン、プレドニゾン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポナート、ヒドロコルチゾンブテプラート、ヒドロコルチゾンブチラート、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポナート、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルバート、プレドニゾン/プレドニゾロン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロンおよびウロベタゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0282】
抗炎症薬として使用される他の薬剤としては、米国特許公開第2005/0227929号に記載のものが挙げられ、その内容全体が本明細書の一部として援用される。
【0283】
一部の市販の抗炎症薬としては、Arthrotec(登録商標)(ジクロフェナクおよびミソプロストール)、Asacol(登録商標)(5-アミノサリチル酸)、Salofalk(登録商標)(5-アミノサリチル酸)、Auralgan(登録商標)(アンチピリンおよびベンゾカイン)、Azulfidine(登録商標)(スルファサラジン)、Daypro(登録商標)(オキサプロジン)、Lodine(登録商標)(エトドラク)、Ponstan(登録商標)(メフェナム酸)、Solumedrol(登録商標)(メチルプレドニゾロン)、Bayer(登録商標)(アスピリン)、Bufferin(登録商標)(アスピリン)、Indocin(登録商標)(インドメタシン)、Vioxx(登録商標)(ロフェコキシブ)、Celebrex(登録商標)(セレコキシブ)、Bextra(登録商標)(バルデコキシブ)、Arcoxia(登録商標)(エトリコキシブ)、Prexige(登録商標)(ルミラコキシブ)、Advil(登録商標)、Motrin(登録商標)(イブプロフェン)、Voltaren(登録商標)(ジクロフェナク)、Orudis(登録商標)(ケトプロフェン)、Mobic(登録商標)(メロキシカム)、Relafen(登録商標)(ナブメトン)、Aleve(登録商標)、Naprosyn(登録商標)(ナプロキセン)、Feldene(登録商標)(ピロキシカム)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0284】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、BAY u9773(欧州特許第00791576号;1997年8月27日公開を参照されたい)、DUO-LT(Tsuji et al,Org.Biomol.Chem.,1,3139-3141,2003)、ザフィルルカスト(Accolate(登録商標))、モンテルカスト(Singulair(登録商標))、プランクラスト(Onon(登録商標))およびこれらの誘導体または類似体を含むがこれらに限定されない、ロイコトリエン受容体拮抗薬とともに投与される。
【0285】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物は、1つ以上のRhoキナーゼ阻害物質とともに投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物は、上皮増殖因子(epidermal growth factor、EGF)および神経成長因子(nerve growth factor、NGF)を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加の増殖因子とともに投与される。例えば、Joyce et al.(2009)Invest Ophthalmol.Vis Sci.50:2116-2122、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、腫瘍細胞増殖因子αおよびβ(transforming growth factor alpha and beta、TGF-alphaおよびTFG-beta)、血小板由来内皮成長因子(platelet-derived endothelial growth factor、PD-ECGF)、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor、PDGF)、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor alpha、TNF-alpha)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、HGF)、インスリン様成長因子(insulin like growth factor、IGF)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(colony stimulating factor、CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球/マクロファージCSF(GM-CSF)および一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase、NOS)を参照されたい。
【0286】
キット/製造品
本明細書に記載の治療適用で使用するため、キットおよび製造品もまた本明細書に提供される。かかるキットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器(container)を受容するように区画を分けられている容器(carrier)、包装または入れ物を含み、1つ以上の容器のそれぞれは、本明細書に記載の方法で使用される別個の要素のうちの1つを含み得る。好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管を含む。容器はガラスまたはプラスチックなどの種々の物質から形成され得る。
【0287】
本明細書にて提供される製造品はパッケージ材料を含む。医薬品の包装に使用するためのパッケージ材料は、例えば米国特許第5,323,907号、同5,052,558号および同5,033,252号に含まれる。医薬用パッケージ材料の例は、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトルならびに選択される製剤および投与および治療の意図する様式に好適なパッケージ材料のいずれかを含むが、これらに限定されない。本明細書に提供される修飾FGF-1ポリペプチドおよび医薬組成物の多様な眼科用製剤は、本明細書に記載の修飾FGFまたは医薬組成物の投与によって好転する何らかの眼の疾患、障害または病気のための種々の治療として企図されている。
【0288】
例えば、1つ以上の容器は、配列番号2の配列を有する修飾FGF-1などの修飾FGFを含み得る。1つ以上の容器は、任意選択的に滅菌アクセスポートを有する。こうしたキットは、任意選択的には、本明細書に記載の方法を用いた使用に関する識別用の説明またはラベルまたは取扱説明書とともに化合物を含む。
【0289】
いくつかの実施形態では、キットは、眼内送達用の注射可能な液体製剤に好適であってもよい、または好適であるように設計されていてもよい。キットは、低容量バイアルとして設計されてもよく、円錐形のインサートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットはドロッパーボトルである。いくつかの実施形態では、ドロッパーボトルは、注射用製剤中の修飾FGF-1の最小用量を提供可能であってもよい。いくつかの実施形態では、ドロッパーボトルは滅菌フィルタをさらに備える。いくつかの実施形態では、容器はシリンジを備える。いくつかの実施形態では、シリンジはツベルクリンポリプロピレンおよびガラスからなる群から選択される材料を含む。いくつかの実施形態では、シリンジは、注射用製剤で予め満たされている。いくつかの実施形態では、キットは電子制御部品をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、電子制御部品によって、前述した章に記載の内容に従い、少なくとも約10マイクロリットル~約100マイクロリットルの容量の注射用製剤の投与を制御することができる。いくつかの実施形態では、ドロッパーボトルが、上記実施形態のうちいずれか1つに記載の注射用製剤中の修飾FGF-1、または本開示のいずれかの箇所に記載の医薬組成物の最小用量を提供することができる、請求項107に記載のキット。いくつかの実施形態では、ドロッパーボトルは滅菌フィルタをさらに備えてもよい。いくつかの実施形態では、容器はシリンジを備える。いくつかの実施形態では、シリンジはツベルクリンポリプロピレンおよびガラスからなる群から選択される材料を含む。いくつかの実施形態では、シリンジは上記実施形態のうちのいずれか1つに記載の注射用製剤、または本開示のいずれかの箇所に記載の医薬組成物で満たされる。キットは、電子制御部品をさらに備えてもよい。いくつかの実施形態では、電子制御部品は、少なくとも約10μL~約100μLの容量の、請求項1~45のいずれか一項に記載の注射用製剤または請求項90~95のいずれか一項に記載の医薬組成物の投与を制御することができる。
【0290】
いくつかの実施形態では、キットは典型的には、本明細書に記載の修飾FGFの使用にとって商業的観点およびユーザ観点から望ましい、種々の物質(試薬、任意選択的には濃縮形態および/またはデバイス)のうち1つ以上をそれぞれ含む、1つ以上のさらなる容器を含んでもよい。こうした物質の非限定的な例としては、緩衝液、希釈剤、フィルタ、ニードル、シリンジ、内容物および/または使用説明書を列挙する容器(carrier)、包装、容器、バイアルおよび/またはチューブのラベル、ならびに使用説明書と添付文書が挙げられるが、これらに限定されない。一連の説明もまた典型的には含まれる。
【0291】
ラベルは、容器上にある、あるいは容器に付随し得る。ラベルを形成する文字、数字または他の文字が容器自体に添付、成形または書き入れられる場合にはラベルは容器上にあり得、ラベルが、例えば添付文書として容器もまた保持する入れ物または容器内に提示される場合には、これは容器に付随し得る。ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されなければならないと示すために使用され得る。ラベルはまた、本明細書に記載の方法でなど、内容物の使用に関する指示を示し得る。
【0292】
ある特定の実施形態では、修飾FGF医薬組成物は、本明細書に提供される化合物を含有する1つ以上の単位剤形を含有することができるパックまたはディスペンサデバイス内に提供され得る。パックは例えば、ブリスターバックなどの金属またはプラスチック箔を含有する。パックまたはディスペンサデバイスは、投与についての説明書を含み得る。パックまたはディスペンサには、医薬の製造、使用または販売を規制する行政機関により規定される形態にて容器に付随する形で通知が同封され得る。この通知は、ヒトまたは獣医学的な投与のための薬物形態の承認を反映している。こうした通知は例えば、処方薬に関する米国食品医薬品局によって承認されるラベルまたは認可された製品への挿入物であり得る。適合性のある薬学的担体内に製剤化された本明細書に提供される修飾FGFを含有する組成物が調製され、適切な容器に入れられ、かつ指示される病状の治療を目的に標識されている。
【実施例
【0293】
これらの例は、例示のみを目的として提供されており、本明細書に提供される特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書に記載の例で使用される出発物質および試薬は合成されることができ、または商業的供給源から得ることができる。
【0294】
実施例1:修飾FGF-1ポリペプチドの治療効果を評価するための例示的な方法 組換え技術の章にて記載される方法を使用して産生した配列番号2(N-Met-TTHX1114)または配列番号205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを、NIH-3T3線維芽細胞細胞増殖アッセイを使用し、生物学的活性について評価した。配列番号2および配列番号205の両方の修飾FGF-1ポリペプチドは、線維芽細胞の増殖を誘導する有効性に関しては同等の能力を示した。配列番号2(N-Met-TTHX1114)または配列番号205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを、以下に記載のように眼の疾患の実験モデルでさらに評価した。
【0295】
健康なドナーからのヒト角膜内皮細胞の初期培養物(継代1)を、ウシ胎児血清(FBS、8%)の存在下で24ウェルプレート上に播種し、24時間後、低(0.8%)FBSを含む培地中で様々な濃度のN-Met-TTHX1114(配列番号2)、TTHX1001(配列番号205)またはwt-FGF-1(配列番号1)で処理した。8%のFBS群を陽性対照として機能させる。結果は、N-Met-TTHX1114が、ヒト角膜上皮細胞増殖の刺激に関してはTTHX1001またはwt-FGF-1よりも強力であり、これはその中で用量応答的であることを示している。N-Met-TTHX1114のEC50は、wt-FGF-1または他に検査した修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1001、配列番号205)よりも約100倍低い。
【0296】
本明細書に記載の医薬組成物の治療効果を評価するために、ナイトロジェンマスタード(NM)を使用した例示的な角膜損傷モデルを使用することができる。ウサギの角膜器官培養モデル系を使用し、NMへの曝露後の治癒を評価した。ウサギの眼(8~12週齢)を入手し、2mmの強膜辺縁を残したままで眼から角膜を切開し、上皮側を下にしてスポットプレートの中に入れ、その凹面を、558C 溶解寒天(0.75%)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium、DMEM)で満たした。溶液をゲル化させると、上皮層にアクセスすることが可能であるように、角膜を反転させた。60mm径のパイレックス製組織培養皿に培養物を置いた。13MEM-NEAA(最小必須培地-非必須アミノ酸)、13RMPI 1640ビタミン溶液、13抗生物質/抗真菌薬、アスコルビン酸(0.45mM)およびシプロフロキサシン(10lg/ml)を含有する高グルコースDMEMを調製する。高グルコースDMEMを強膜辺縁まで加え、角膜を空気に曝露させる。5%のCOを含む37℃の加湿したインキュベータ内にこの皿を入れる。7~9時間ごとに角膜中央の上へと滴下することで、各培養物の上皮を500μLの培地で湿らせた。水疱形成剤であるNMを角膜中央上へと滴下した。角膜サンプル(寒天支持体から剥離したもの)を、最適切断温度(Optimal Cutting Temperature、OCT、Tissue-Tek;Sakura,Torrance,CA,USA)化合物を含有するクリオモルド内に上皮側を下にして置いて染色法および免疫蛍光法のために凍結し、またはウェスタンブロットおよびADAM17活性アッセイ(InnoZyme TACE活性アッセイキット;Calbiochem,Billerica,MA,USA)を含むさらなるタンパク質解析のために直接急速凍結させた。
【0297】
角膜中央上へとNMを適用した後、びらん性毒ガスを除去せずに培養物を37℃のインキュベータに2時間戻す。このインキュベーション後に、汚染培地を除去し、皿内での培地高さが強膜辺縁上部に達するまで角膜中央に新しい培地を加えた。対照の曝露されていない角膜および曝露された角膜を22時間インキュベーションするために37℃に戻し、3回のみの短期間でこれを取り出し、N-Met-TTHX1114療法を受けない曝露サンプルに20μLの培地を加え、または角膜中央への療法として20μLのN-Met-TTHX1114を加える。第1のmet-TTHX1114適用を8時間維持し、第2の適用を9時間維持し、第3の適用を5時間維持する。この結果、2時間の曝露とその後の治療の長さは合計で24時間である。
【0298】
NMによって生じた損傷は、(a)角膜実質に押し下げている上皮細胞の数および深さの増加から明らかである上皮層の過形成であり、これは下方過形成と呼ばれ、曝露されていない(まだ曝露をうけていない)角膜は、一部下方過形成を示しているがNMに曝露された角膜と同程度広範なものではない、上皮層の下形成、(b)基底上皮細胞頂部に向かって隆起している基底細胞核、および(c)上皮-角膜実質分離を含む。組織病理学的反応は、曝露後4日という早さで認められる。組織病理学的なグレードは、N-Met-TTHX1114を用いた治療で改善する。N-Met-TTHX1114処理済の角膜部分は、非処置角膜に由来する部分と比較すると、低スコア(損傷がより少ないことを示す)を呈する。角膜上皮細胞(corneal epithelial cell、CEC)のEdU導入で周辺角膜上皮層の刺激を評価する。例えば、Kay et alにより記載の手順といった標準的な手順を使用してウサギCECの初期培養物を確立する(Kay et al.Investigative ophthalmology&visual science.1993;34(3):663-72;Lee et al.,Investigative ophthalmology&visual science.2009;50(5):2067-76)。細胞を2時間、NMに曝露させる。例えば、Click-ITアッセイキット(Life Technologies)を使用し、12ウェルプレートにて増殖アッセイを実施する。角膜上皮細胞へのEdUの導入は、上皮増殖の指標である。EdUを導入している角膜上皮細胞の割合は、NM曝露後にN-Met-TTHX1114で処理した場合には、非処理の対照と比較すると低い。
【0299】
同様のモデルでは、スルフィルマスタードを使用して実験用角膜内皮損傷を誘発させ、消散を試験するためにN-Met-TTHX1114(または偽群)を投与することができる。ウサギの角膜に曝露させた8週間後に、試験群(消散した眼とも呼ばれる)と偽対照群(後にMGKを発症する)との間の内皮細胞の形態および構造を比較する。消散した眼は、角膜びらん、新生血管形成または角膜の濁りなどの臨床的評価中の特徴的なMGK後遺症が存在しないことで区別される。これらは6週間時点までは偽-曝露対照とは統計的に区別できない角膜厚を有していた。消散した眼のEnface走査顕微鏡写真は、組織化された多角形細胞の単層を有する偽-曝露対照と著しく類似していることが認められる。平均的なCECサイズは、対照角膜と比較した場合、消散した眼では増加しているが、一方で消散した眼は後方面にわたる著しい変化を呈しない。対照的に、MGK内皮を有する偽対照で処理されたウサギは、動物における細胞形状および細胞サイズの広範な変化を示しているが、これは動的な損傷プロセスを示している。内皮形態の限局した変化は、個々の角膜に日常的に観察され、領域の一部は拡張しているがモザイク状のCECを呈し、他の領域は著しい組織崩壊を示し、様々な程度の頂端部の水疱を伴い、領域が剥皮化したDMを示し、かつ細胞境界の欠損を明確に表している。これらの現象は、N-Met-TTHX1114処理済の消散した内皮では観察されない。N-Met-TTHX1114処理済の消散した角膜の透過型電子顕微鏡画像は、未曝露の内皮と非常に類似している。対照的に、MGK病態を有する偽対照処理済内皮は、後方DMの拡散した肥厚を呈し、これは浮腫および/または角膜後線維膜の沈着と一致している。MGK角膜はまた、細胞質の希薄化、過剰な空胞形成および腫大した小胞体を含む、CECストレスまたは損傷の広範なマーカを呈する。高頻度の重複する細胞プロセスが存在しているが、これは24時間の画像と類似しており、直近で剥皮化したDMを継続して生着させようとしていることを示唆している。
【0300】
ヘルペス性角膜症の治療のため、例えば配列番号2(N-Met-TTHX1114)または配列番号205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドといったFGF-1ポリペプチドの治療効果を評価するため、以下の方法を採用することができる。
【0301】
この研究のためにヘルペス性角膜症に罹患している患者群を選択する。患者を3つのサブグループに分ける。第1のサブグループの患者に、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400および0.05%のヒドロキシプロピルグアーガム中に製剤化される約500pg/ml(すなわち、0.0005μg/ml)のN-met TTHX1114(配列番号2)を含有している、点眼薬などの眼科用製剤を眼に投与する。第2のサブグループの患者に、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400および0.05%のヒドロキシプロピルグアーガム中に製剤化される約500pg/ml(すなわち、0.0005μg/ml)のTTHX1001(配列番号205)を含有している、点眼薬などの眼科用製剤を眼に投与する。第3のサブグループの患者に、N-Met-TTHX1114(配列番号2)またはTTHX1001(配列番号205)を含まないが、その他は第1のサブグループおよび第2のサブグループに投与されるものと同一の偽眼科用製剤を眼に投与する。3つのサブグループすべてについて、点眼薬は患者によって自己投与される、または看護師もしくは介護者によって投与される。N-Met-TTHX1114(配列番号2)含有眼科用製剤、TTHX1001(配列番号205)含有眼科用製剤および偽眼科用製剤を、第1のサブグループ、第2のサブグループおよび第3のサブグループの患者それぞれに、最大30日間にわたって1日に2回、投与する。
【0302】
N-Met-TTHX1114(配列番号2)を含有する眼科用製剤およびTTHX1001(配列番号205)を含有する眼科用製剤により、約14日以内に、疼痛および炎症持続期間の減少とともに、第1のサブグループおよび第2のサブグループに属する患者の大半にヘルペス性角膜潰瘍の治癒が生じる。さらには、N-Met-TTHX1114(配列番号2)含有眼科用製剤およびTTHX1001(配列番号205)含有眼科用製剤でそれぞれ治療された第1のサブグループおよび第2のサブグループの患者の眼は、偽眼科用製剤で治療された第3のサブグループの患者よりも角膜の濁りと瘢痕が少なくなる。
【0303】
例えば、ヒト角膜内皮細胞(HCEC)増殖での配列番号206(TTHX1114)または配列番号205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの効果を試験するため、健康なドナーからのヒト角膜内皮細胞の初期培養物(継代1)を、ウシ胎児血清(FBS、8%)の存在下で24ウェルプレート上に播種し、24時間後、低(0.8%)FBSを含む培地中で様々な濃度のTTHX1114(配列番号206)、TTHX1001(配列番号205)またはwt-FGF-1(配列番号1)で処理した。8%のFBS群を陽性対照として機能させる。結果は、TTHX1114が、ヒト角膜上皮細胞増殖の刺激に関してはTTHX1001またはwt-FGF-1よりも強力であり、これは中で用量応答的であることを示していた。TTHX1114のEC50は、wt-FGF-1または他に検査した修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1001、配列番号205)よりも約100倍低かった。
【0304】
実施例2:組換えヒトFGF-1を大規模に作製する方法:眼内治療薬としてFGF-1を製造するための例示的で一般的な方法は、図1に概略的に示されている。一般的な方法をさらに開発し、種々の修飾を行う。簡潔には、修飾ヒトFGF-1(N-Met-TTHX1114)をコードする組換え核酸配列を含むプラスミドで大腸菌を形質転換する。
【0305】
例示的な一セットでは、Nde1/BamH1クローニング制限部位を使用し、大腸菌コドン最適化ヒトFGF-1(TTHX1114)配列をpET26b(+)ベクター中にサブクローニングし、pET26_TTHX1114プラスミドを得た。hFGF-1をコードする例示的な大腸菌コドン最適化配列を以下に提供する:
【0306】
CATATGTTTAATCTGCCGCCGGGTAACTATAAGAAACCGAAACTGTTGTACAGCTCTAATGGTGGCCACTTCCTGCGTATCCTGCCGGACGGCACCGTCGATGGTACCCGTGACCGCAGCGATCAACACATTCAACTGCAACTGAGCGCCGAGAGCGTGGGCGAAGTTTACATTAAGTCCACTGAAACGGGCCAGTACCTGTGTATGGACACCGATGGCCTGCTGTACGGTTCGCAGACGCCAAATGAAGAGTGCCTGTTCTTGGAGCGTCTGGAAGAGAACCACTATAACACCTACATTAGCAAGAAACATGCGGAGAAAAACTGGTTTGTGGGTCTGAAGAAAAATGGTTCCGTCAAGCGCGGTCCTCGTACGCATTATGGCCAGAAAGCAATCTTGTTCCTGCCGCTGCCGGTTAGCAGCGACTAATGACTCGAG。
【0307】
例示的な一セットでは、Nde1/BamH1部位を使用し、大腸菌コドン最適化ヒトFGF-1配列をpMKetベクター骨格中にサブクローニングし、ompAリーダー配列などのリーダー配列を含まないpMKet_TTHX1114プラスミドを得た。pMKetベクターはpBR322ori配列を含む。
【0308】
例示的な一セットでは、TTHX1114コーディング配列上流にompAリーダー配列を挿入してFGF-1ポリペプチドのペリプラズム発現を指示するOA_TTH1114pMKetプラスミドを得る。ompAリーダー配列をコードする例示的な核酸配列を以下に提供する:
【0309】
5’-ATGAAAAAGACAGCTATCGCGATTGCAGTGGCACTGGCTGGTTTCGCTACCGTTGCGC AAGCT-3’。
【0310】
例示的なompAアミノ酸配列は、MKKTAIAIAVALAGFATVAQAである。
【0311】
N末端fMetの有無にかかわらず、FGF-1配列を試験する。
【0312】
試験する宿主細胞は、大腸菌のBL21株および大腸菌のW3110株である。
【0313】
炭素源としてグルコースまたはグリセロールを含む、2YTの試験培地または特注の合成培地中で宿主細胞を増殖させる。全体を通し、カナマイシンの存在下で培養物を静置した。
【0314】
形質転換させた大腸菌細胞を発酵培養物中で増殖させ、例示的なFGF-1製造のために10Lのアリコートを使用した。発酵運転T1 F01E(10L)からの100gの大腸菌細胞ペーストを再懸濁し、続いて細胞溶解させて封入体(IB)を単離し、可溶化緩衝液中に希釈させ、リフォールディングバッファ中でリフォールディングした(1:20体積/体積)。FGF-1を含む250mlのリフォールディングバッファをブチルおよびヘパリンHICカラム中へと通した。
【0315】
上記の一般化プロトコールを使用する例示的な一運転では、収量は1Lのリフォールディングバッファにつき、約0.6mgのFGF-1であった。0.25Lリフォールディングから約0.2~0.25mgのFGFを得た(約1mg/L)。精製したタンパク質の同定をウェスタンブロットで確認した。
【0316】
例示的な一運転では、BL21細胞でのpMKet TTX1114(ompAリーダー配列を含まない)の使用、および合成培地中での増殖によって、ompAリーダー配列を含むプラスミドよりも収量が向上し、約10倍収量が向上した。図2Aは、ブチル捕捉クロマトグラフィーカラム(例えば、Capto DeVirs(Cytiva,BPG 300x500,製品番号17-5466)からの溶離液を示し、図2Bは、示されるようにA215およびA280で検出されるヘパリンHICからの溶離液を示す。点線で示される溶離液画分をSDS-PAGEおよび単量体の存在を示すウェスタンブロット解析にかけた。本アッセイに使用されるカラムは5mlのブチル4FFであり、1.5M 硫酸アンモニウムを加えサンプル負荷量250mlを調整し、pH7.4で10mM NaHPO、2mM KHPOで溶出させた。ヘパリンカラム溶出サンプルの例示的なウェスタンブロット結果を図2Bに示す。例示的な別の方法では、プロトコールではいくつかの調整を行った。1Lの培養物について、以下の表1に示される条件を使用し、クローンスクリーニングにかけた。
【0317】
【表1】
【0318】
上記の最適化試験から、高密度の細胞を得た。合成培地およびコドン最適化FGF-1をコードする配列を有するpMKetプラスミドで形質転換させた大腸菌BL21株によって、3g/LのFGF-1の予想し得なかった高収量がもたらされた。これは表に示されるように、他の実験変動よりも約5~30倍の増加である。
【0319】
修飾FGF-1を作製するための例示的な方法では、実施される方法は以下の通りである:
・pH7.4である50mM トリス、2mM EDTA、6M グアニジン、0.1M NaCl中に可溶化された10gの調製IB
・50mM DTTの添加(2時間以上)によるhFGFの減少
・透析ろ過/限外ろ過によるDTTの除去
・急速希釈による約1.0のA280へのリフォールディング(一晩のRF)
・リフォールディングバッファ:
・I(RFB):pH9.5である1M アルギニン、50mM トリス、0.1M NaCl、5mM EDTA
・II(RFD)pH9.0である5mM トリス、2mM システイン、5mM システイン
・沈殿剤を除去するための遠心分離
・ヘパリンによる捕捉について:pH調整および25mS/cm未満の濃さに減少させるために希釈(必要があれば)し、続いてHIC(C4)によるヘパリン溶離液の塩調整
・カラム:ヘパリン HiTrap HP(5mL)
緩衝液:
I(等量/洗浄I):PBS pH7.0
II(洗浄II):PBS+0.6M NaCL(pH7.0)
III(溶出):PBS+1.2M NaCl(pH7.0)
グラジエント:0~100%緩衝液III(10CV)
流速:5mL/分
・HIC(C4)による捕捉について:1.5M 硫酸アンモニウムへの塩調整、pH7.4へのpH調整。
【0320】
リフォールディングバッファIおよびIIの使用によるそれぞれの溶離液プロファイルを図3Aおよび図3Bに示す。ヘパリンHiTrap後の対応するSDS-PAGE画像を評価した(図示せず)。これらの試験は、リフォールディングバッファ1(RFB)の使用は、リフォールディングバッファ2(RFD)の使用よりも著しく良好な結果をもたらしたことを示した。RFDによって大量の沈殿物が生じた。
【0321】
別の例示的な試験では、周囲温度ではHICを使用した捕捉スクリーニングを実施した。以下の手順を使用した:
・pH7.0の12mM PO中に再懸濁された10gの細胞ペレット
・HPHによる細胞溶解(2×400バール、T<25℃)
・17500xgでの遠心分離、30分、8℃
・ヘパリンによる捕捉について:50mLの細胞溶解物→pH調整→負荷
・HIC(C4)による捕捉について:50mLの細胞溶解物→1.5M 硫酸アンモニウムまでの塩添加、pH7.4までのpH調整→負荷。
【0322】
溶出したブチルHIC(図3C(左))の分光測定データを示し、これをその後にヘパリンカラムにかけ、より鋭い産物のピーク(図3C(右))を得た。
【0323】
別の例示的な試験では、尿素およびグアニジン緩衝液での可溶化についての比較を行った。IBの洗浄の有無にかかわらず、尿素およびグアニジンでの封入体(IB)の可溶化を試験した。IBの洗浄におけるポリソルベート20またはポリソルベート80の使用もまた試験した。結果は、PS20およびPS80は同等の効果を有することを示していた。可溶化FGFの純度は、両方の洗浄手法では同等であった。可溶化FGFの収量は、両方の洗剤について同等であった。
【0324】
例示的な方法では、微生物の発現のため、クローンをさらに最適化した。新しいコンストラクトを異なる株へと形質転換かつこれを増殖させ、FGF産物を異なる培地で試験した。特注の合成培地または2TY培地にて各コンストラクト/株の組合せを増殖させた。炭素源はグリセロールまたはグルコースのいずれかであった。OD600を2に増加させた後、1mM IPTG(c:37℃で20時間の発現、p:26℃で20時間の発現)で培養物を誘導した。浸透圧衝撃を用いてペリプラズムのコンストラクトを送り、その後超音波を用いて処理して細胞を開裂させた。ペリプラズム発現および細胞質発現用のコンストラクトを以下に一般化した(図2および図3):
















【0325】
【表2】
【0326】
【表3】
【0327】
BL21株およびW3110株で発現される細胞質コンストラクトと、BL21株およびW3110株で発現されるペリプラズムのコンストラクトの比較を行った。加えて、すべてのコンストラクトを炭素源としてグリセロールおよびグルコースを含む自家製培地および2YT培地中で培養した。OD600を2に増加させた後、1mM IPTG(細胞質:37℃で20時間の発現、ペリプラズム:26℃で20時間の発現)で培養物を誘導させた。浸透圧衝撃を用いてペリプラズムのコンストラクトを送り、その後超音波を用いて処理して細胞を開裂させた。
【0328】
修飾FGF-1タンパク質の微生物での発現については、pMKetコンストラクトは、プロモータまたは本明細書に記載の他の修飾を含まない現存するプラスミドよりも著しく良好であった。
【0329】
別の例示的な試験では、リフォールディングバッファで尿素を使用し、洗剤としてPS20を使用した。変性のためにグアニジンを使用した。リフォールディングは、RTおよび2~8℃で実施した(予め開示したリフォールディングバッファ)。リフォールディング後、スピンカラムを使用してサンプルを透析ろ過し、DTTを除去した。伝導率を高くするために各RF手法を希釈した。緩衝液A(平衡化):pH7.0のPBS、緩衝液B(洗浄):pH7.0のPBS、0.6M NaCl、緩衝液C(溶出):pH7.0のPBS、1.2M NaCl、を使用した5mL HiTrapヘパリンを用いて、ヘパリンカラムを構成した。SDS-PAGEを使用する解析のための各ステップ後にサンプルを採取した。以下の表4に構成をまとめた:











【0330】
【表4】
【0331】
表5はそれぞれの収量を示す:





























【0332】
【表5】
【0333】
タンパク質をSDS-PAGEで分離し、図4A図4Bに示されるデータに定量化したFGF-1回収物を示す。Agilent Advance Bio SEC 300A(孔径2.7μm)を使用し、サイズ排除クロマトグラフィーを構成した。泳動用緩衝液は、pH7.4の0.5M NaClを含むPBSを含んでいた。流速を0.75mL/分に調整し、20分間これを泳動させた。A215nmで吸光度を観察した。各泳動について、それぞれのSECのピークを評価した。リフォールディングバッファAおよびBは、変性溶液としてグアニジンを含むプロセスでは良好な結果を示した。加えて、IB可溶化に使用されるカオトロピック薬剤は、リフォールディング性能に影響を及ぼさないと考えられる。リフォールディングバッファCおよびDは、尿素を使用する場合、リフォールディングバッファAおよびB(低コスト)よりもわずかに良好である。リフォールディングは4℃ではわずかに良好であったこともまた確認された。
【0334】
実施例3:バルク原薬の製造条件
封入体の発酵および初期回収
例示的な研究は、修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)バルク原薬(BDS)の封入体の発酵、収集/回収、修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)バルク原薬(BDS)の精製、単離および試験に関与している。配列番号2の修飾FGF-1ポリペプチドを発現するための核酸配列を含む大腸菌であるBL21 pMKetのマスター細胞バッチ(MCB)を使用し、TTHX1114のBDSのcGMP製造を実施した。
【0335】
MCBを含有する融解したバイアルの内容物を混合し、これを使用し、前培養:5.2g/Lの(NHSO、4.4g/LのNaHPOx2HO、4.0g/LのKCl、5.3g/Lのクエン酸xHO、1.3g/LのNaHPOx2HO、0.5g/LのNaCl、1g/LのMgSOx7HO、0.3g/LのCaClx2HO、0.1g/LのFeClx6HO、1xTES(21mg/LのZnSOx7HO、24mg/LのMnSOxHO、8mg/LのCuSOx5HO、4mg/LのCoSOx7HO、0.3mg/LのHBO、0.2mg/LのNaMoOx2HO)、グリセロール10g/L、50mg/Lのカナマイシン、10g/LのBacto酵母抽出物および16g/LのPhytoneペプトン、のために合成培地を含有する種フラスコに播種した。播種した種フラスコを、培養物が約2~5のODに達するまで、37℃でインキュベートした。
【0336】
150Lのバイオリアクタ内で、50Lの出発容量の培地(30g/Lのグリセロール、5.2g/Lの(NH4)2SO4、4.4g/LのNaH2PO4x2H2O、4.0g/LのKCl、5.3g/Lのクエン酸xH2O、1.3g/LのNa2HPO4x2H2O、0.5g/LのNaCl、1.0g/LのMgSO4x7H2O、0.3g/LのCaCl2x2H2O、0.1g/LのFeCl3x6H2O、1倍のTES(21mg/LのZnSO4x7H2O、24mg/LのMnSO4xH2O、8mg/LのCuSO4x5H2O、4mg/LのCoSO4x7H2O、0.3mg/LのH3BO3、0.2mg/LのNa2MoO4x2H2O)、1mLの消泡剤、10g/LのBacto酵母抽出物および16g/LのPhytoneペプトンで、本培養を実施した。本培養物に500mLの前培養物を播種し、続いて酸素の制限なしに37℃、pH6.8でこれをインキュベートした。25%の水酸化アンモニウムおよび1M リン酸を加え、pHを制御した。培地中の初期グリセロール量(30g/L)を消費(これは、pO2-ピークで示される)した後、2.333kg/hの供給速度で45%グリセロール水溶液の一定供給を開始した。供給を開始して約10時間後、1mM最終濃度までイソプロピル-β-D-1-チオ-ガラクトピラノシド(isopropyl-β-D-1-thio-galactopyranoside、IPTG)を加えて産物形成を誘導し、追加のグリセロール供給量を減少させた(0.973kg/hの供給速度にて45%グリセロール水溶液)。誘導から収集までの時間を、誘導期または産物形成期と呼んだ。
【0337】
発酵培地を約18±2℃まで冷却させて誘導期を停止し、顕微鏡分析のためにサンプルを採取した。遠心分離(40~100L/hの流速で8Lのボウルを使用する連続CEPA遠心分離機)によってバイオマスを回収し、18℃±2℃まで冷却させながら18,000xgで遠心分離した。15℃以下で、細胞破壊緩衝液(48mM トリス、2mM EDTA、96mM NaCl、pH7.4)中に細胞ペーストを再懸濁し、950±50バールでの2サイクルの高圧均質化(SPXホモジナイザー)で再懸濁細胞を破壊した。均質化ステップ中、産物含有溶液を絶えず冷却した。
【0338】
細胞破壊後、以前同様遠心分離によって封入体(IB)を回収し、異なる緩衝液(洗浄1および2、50mM、2mM EDTA、1.5M NaCl、0.2%のポリソルベート80、pH7.4;洗浄3および4、50mM トリス、2mM EDTA、100mM NaCl、2%のポリソルベート80、20mM DTT、pH7.4;洗浄5、50mM トリス、2mM EDTA、100mM NaCl、20mM DTT、pH7.4)を使用し、5回の連続洗浄サイクルで溶解性不純物を洗浄した(200Lの撹拌タンク)。洗浄終了後、封入体を-60℃以下で保存した。
封入体の可溶化およびリフォールディング
【0339】
可溶化およびさらなる処理のため、洗浄された封入体の半分(約1kg)を貯蔵から取り出し、2~8℃で融解した(1~3日間)。合計25Lの可溶化緩衝液(50mM トリス、2mM EDTA、6M グアニジン、100mM NaCl、pH7.4)中にIBを再懸濁した。5000~8000rpmで8~10分間、S50N-G45Gプローブを用い、続いて7000~10000rpmでさらに8~10分間、S50N-G45Fプローブを用いてULTRA-TURRAX(IKA)を使用して分散させ、最終的に60分間撹拌した。IBの再懸濁後、50mM最終濃度までDTTを加え、15時間にわたってジスルフィド結合をチオールに還元した。続いて、Pallカセットシステム(PES膜を備えた10kDa Sartocon、Sartorius Stedim Biotech、製品番号3021463907E)を使用する限外ろ過によって再びDTTを除去した。続いて、550Lのリフォールディングバッファ(1M アルギニン塩酸塩、0.1M NaCl、5mM EDTA、30mM NaOH、1mM GSSG、5mM GSH、pH7.4)に産物をゆっくりと加え、これを9時間インキュベートした。最後に、深層ろ過で産物の不純物を清澄化し、その後0.2μmのバイオバーデン減少膜(Sartopore 2 XLGカプセル、0.8/0.2μmの保持速度、PES製のメンブレンフィルタ、Sartorius Stedim Biotech、製品番号5445307G)でろ過し、500Lのバッグに入れた。
【0340】
以下に記載されるように、さらなる下流処理のため、修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)を含有するろ過したリフォールディングタンパク質溶液を後で使用した。
バルク原薬のクロマトグラフィー精製および充填
【0341】
結合を確実なものとするため、水で1:1に希釈した後、Capto DeVirs(Cytiva、BPG 300x500、製品番号17-5466)を充填したカラム(15.6L容量)を使用し、リフォールディングFGF-1ポリペプチド(配列番号2)を捕捉した。0%~100%の緩衝液1B(緩衝液1Aの100%~0%に対応する)の直線勾配で、室温にて21.2~179.9L/hの流速で流すことで、カラムを溶出した。溶出後、5CVにわたり、100%の緩衝液1Bでカラムを保持した。緩衝液1B=78.13g/Lの塩化ナトリウム;0.20g/Lの塩化カリウム;1.78g/Lのリン酸水素二ナトリウム二水和物;0.27g/Lのリン酸二水素カリウム;pH7.4(緩衝液1A:8.00g/Lの塩化ナトリウム;0.20g/Lの塩化カリウム;1.78g/Lのリン酸水素二ナトリウム二水和物;0.27gのリン酸二水素カリウム、pH7.4の100%~0%に対応する)。緩衝液1A=8.00g/Lの塩化ナトリウム;0.20g/Lの塩化カリウム;1.78g/Lのリン酸水素二ナトリウム二水和物;0.27gのリン酸二水素カリウム、pH7.4。緩衝液1B=78.13g/Lの塩化ナトリウム;0.20g/Lの塩化カリウム;1.78g/Lのリン酸水素二ナトリウム二水和物;0.27gのリン酸二水素カリウム、pH7.4。
【0342】
単一画分に溶離液を収集した。収集した溶離液を0.2μmのフィルタ(Sartopore 2 XLG Art.番号:5445307G8)でろ過し、15~25℃で24時間未満保存した。Capto DeVirsカラムを使用した捕捉ステップ後の収量は、溶離液の約1.74g/Lの濃度の約120gの修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)であった。
【0343】
このカラムステップ後、硫酸アンモニウム(1.0M最終濃度)および塩化ナトリウム(2.5M最終濃度)を加えて最終精製するため、産物をコンディショニングした。ブチルセファロース4FF(Cytiva、BPG 300x500、製品番号17-0980)を充填し、20mM リン酸水素二ナトリウム二水和物(pH7.4)で平衡化したカラム(10.6L容量)を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)で最終精製を実施した。同一緩衝液の3ベッドボリュームでカラムを洗浄した。0%~100%の緩衝液2B(緩衝液2Aの100%~0%に対応する)の直線勾配で、10CVにわたって室温で51.3L/hの流速で流すことで、産物を溶出した。緩衝液2A=20mM リン酸水素二ナトリウム二水和物、pH7.4および緩衝液2B=2.5mM 塩化ナトリウム、1M 硫酸アンモニウム、20mM リン酸水素二ナトリウム二水和物、pH7.4。溶離液をStedimバッグ(1×50L)に移した。最終精製ステップ後の収量は、3g/Lの濃度で約92gの修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)であった。ブチルセファロースFFカラムを使用した最終精製ステップでの収量は約50%であり、最終精製ステップにヘパリン樹脂を使用することで約20%の収量と比較して著しく向上した。
【0344】
上記方法に従って精製されたバルク原薬(BDS)を、ブチルセファロースFFカラムの溶出緩衝液中に溶液として保存した。修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)は勾配をつけて溶出することが観察されており、そのために緩衝液は正確な組成物は含まず、pH7.4で約800mM 塩化ナトリウム、320mM 硫酸アンモニウムおよび20mM リン酸水素二ナトリウム二水和物を含有していた。
【0345】
精製BDSをろ過(Millipak 100 Gamma Gold、0.22μm、Merk、製品番号MPGL1GCF3)し、チューブポンプを使用して第2のStedim滅菌バッグに入れた。上記プロセスによるバルク原薬の総収量は、50Lの培養物からは約82gであった。
【0346】
高密度ポリエチレン製スクリューキャップを備えたガンマ線滅菌したパイロジェンフリーのポリエチレン製ボトルに、ろ過済のタンパク質溶液を無菌状態で分注することで、上記にて調製されるように原薬の充填を実施した。約-60℃±10℃の温度でバルク原薬のアリコートを保存した。
【0347】
実施例4:医薬製剤
配列番号2の修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬製剤の異なるバリエーションを評価するための例示的に一般化した試験は、最適化された安定性および分解傾向が減少した医薬製剤を識別するために、2つの異なる界面活性剤条件中での異なる3つのpH値での10mM ヒスチジン緩衝液対1mM ヒスチジンの比較を含んでいた。目盛り付きの外観検査、サイズ排除HPLC(SE-HPLC)、FlowCam解析など、2つの方法で安定性を決定した。白黒の背景に対し、白色光源(13Wの蛍光管)下で外観検査を行った。各時点ですべての製剤のデジタル写真を取得した。FlowCam粒子イメージングシステムは、粒子の自動解析のために光学、エレクトロニクスおよび流体工学を組み合わせている。流体中の粒子がフローセルを通過するときの流体のリアルタイム画像を捕捉するため、光学系を使用する。イメージングソフトウェアは、粒径および形態を評価する能力を提供する。すべてのサンプルを75トールで30分間脱気し、適切に解析した。
【0348】
例えば、目盛り付きの外観検査法を使用して薬物沈殿を解析し、SE-HPLC解析を使用して薬物分解および高分子量(HMW)種の形成を解析した。医薬製剤の調製後、最終製剤を、カバー付きチューブラック内のベンチトップに室温(約20℃)で保存した。調製後、外観検査およびSE-HPLC解析を0日目、5日目、14日目、28日目および59日目に実施した。
【0349】
例示的な試験では、pHが6.5超のサンプルでは調製後すぐに目に見える沈殿が生じた。ヒスチジン濃度に関係なく、pHが5.8のサンプルは溶液中での薬物の保持は良好であり、調製後59日目までは10mM ヒスチジン緩衝液中には粒子は見られなかったが、1mM ヒスチジン緩衝液では28日目に1つのサンプルのみで懸濁粒子が観察されている。すべてのPS20製剤は、SE-HPLCによって5日目にそれらのPS80対照物よりも回収量がすべて低かったため、5日目以降は検査されない。
【0350】
界面活性剤のスクリーニングを2回行った。1回目のスクリーニングでは、10mM クエン酸塩、300mM NaCl、pH6にて約0.1mg/mL(100μg/mL)の濃度の修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)を製剤化した。様々な界面活性剤を試験した。FGF-1製剤を界面活性剤原液に混合し、最終濃度を以下の通りとした:0.1%(w/v)チロキサポール、0.01%(w/v)ポリソルベート80(PS80)および0.1%(w/v)ポロキサマー188(F-68)。界面活性剤を含まないFGF-1製剤を対照として使用した。別の界面活性剤のスクリーニングでは、pH7.4の1.046M NaCl、0.419M 硫酸アンモニウム、20mM リン酸水素二ナトリウム二水和物(ブチル溶離液)中で約0.25mg/mL(250μg/mL)の濃度でFGF-1ポリペプチド(配列番号2)を製剤化した。第2の界面活性剤のスクリーニングでは、10mM クエン酸塩および300mM NaClを含有する製剤、またはブチル溶離液製剤のいずれかの中の修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)を様々な製剤(表6を参照されたい)に透析し、透析後、それぞれの製剤緩衝液中で原薬濃度を0.25mg/mL~約0.1mg/mLに減少し、約1.25mLの容量のCrystal Zenithバイアルに充填した。以下の表は、2回の界面活性剤スクリーニングの詳細を提供する。





























【0351】
【表6】
【0352】
1000rpm、周囲温度で約4時間にわたり振盪機上で撹拌ストレスにかけることで各製剤のサンプルバイアルを試験し、同一製剤のバイアルをストレスのかかっていない静的対照(室温で4時間保存した)として使用した。4時間撹拌ストレスをかけた後、ストレスをかけたサンプルを5サイクルの凍結と融解に供した(凍結するまで-20℃で保存し、融解するまで周囲温度に置いた)。凍結融解サイクルの間、ストレスのかかっていないサンプルを5℃で保存した。撹拌および凍結融解ストレスの終了後、外観検査およびFlowCamでサンプルを解析した。
【0353】
第1回の界面活性剤スクリーニングについては、すべての静的サンプルは界面活性剤の有無にかかわらず透明で無色であり、微粒子を多少示した。撹拌および凍結融解サイクルにかけた界面活性剤を含まないサンプルは、わずかに不透明に見え、多くの微粒子を含有していた。0.1%のチロキサポールまたは0.1%のF-68を含有するサンプルは透明で無色であり、撹拌および凍結融解サイクル時にフレーク状の白色沈殿を呈した。0.01%のPS80を含有し、ストレスをかけたサンプルは透明かつ無色であったが、多くの微粒子を有する。FlowCam解析では、すべての静的サンプルは中程度の、目視で確認できる減少した粒子数を示した。0.1%のF-68を含有する撹拌済サンプルは、他の界面活性剤条件の撹拌済サンプルと比較すると最も低い粒子数を示した。ただし、ストレスをかけたF-68サンプルは、目視で確認できる粒子の著しい増加を依然として示していた。界面活性剤を含まない撹拌および凍結融解サンプルは、目視で確認できる粒子濃度が最も高くなった。
【0354】
第2回の界面活性剤スクリーニングについては、界面活性剤を含まないすべての静的サンプルは透明で無色であり、目に見える微粒子を多少呈した。新規DS(ブチル溶離液)ソルビトールサンプルは、他のサンプルよりも見た目には透明になり、溶液中に微細な気泡を多く呈した。新規DS(ブチル溶離液)を除き、NaClおよび0.1%のPS20を含む、PS20を含有するすべての静的サンプルは、透明で無色であり、目に見える粒子を含まなかった。0.1%のPS20を含有する新規DS NaClサンプルは透明で無色であり、目に見える粒子を多少呈した。ソルビトールを含有する撹拌済サンプルは一般には透明で無色であり、目に見える微粒子を多少呈した。NaClを含有する撹拌済サンプルは一般には見た目がわずかに不透明であり、目に見える粒子を呈した。
【0355】
PS80を含有するすべての静的サンプルは透明で無色であり、一般には目に見える粒子を含まない。ソルビトールを含有する撹拌済サンプルは一般には透明で無色であり、目に見える微粒子を多少呈した。NaClを含有する撹拌済サンプルは、一般には見た目がわずかに不透明であり、目に見える粒子を呈した。F-68を含有するすべての静的サンプルは透明で無色であり、目に見える粒子を含まない。F-68を含有するすべての撹拌済サンプルは一般には透明で無色であり、目に見える微粒子を多少呈した。第2回の界面活性剤スクリーニング後のFlowCam解析に関して、ソルビトールを含む製剤は、一般にはNaClを含む製剤と比較して目視で確認できる粒子濃度の減少を示した。新規原薬(ブチル溶離液)は、すべての界面活性剤条件について、製剤にかかわらず(ソルビトール対NaCl)、従来の原薬(クエン酸塩製剤)と比較すると、ストレス後の目視で確認できる粒子濃度の著しい低下を呈した。全体的には、0.10%のPS80を含有するソルビトール製剤中の新規DS(ブチル溶離液)は、ストレス後に目視で確認できる粒子内容物の変化量は最も少ないものであった。
【0356】
SE-HPLC解析では、ソルビトール製剤中の新規DS(ブチル溶離液)および0.05%または0.1%のいずれかのPS80は、静的条件およびストレスをかけた条件下では同等のプロファイルを呈した。0.05%または0.10%のPS80を含むソルビトール製剤中のすべての新規DS(ブチル溶離液)サンプルは、2つのHMW種(HMWピーク1については約0.5%の%面積、HMWピーク2については7.8~8%、および主ピークについては約91.6~91.8%)を呈するソルビトールおよびPS20を含有する新規DS(ブチル溶離液)サンプルと比較すると、1つのHMW種(ピーク1については約7%の%領域、および主ピークについては92~93%の%領域)を示した。
【0357】
この後、配列番号2の修飾FGF-1ポリペプチドの種々の医薬製剤を用い、加速安定性試験を行った。加速安定性試験は、5つの異なる貯蔵温度で保存しながら、8週間にわたって様々なアッセイで製剤を評価した。開始時点(ゼロ時点)、急激なストレス時点および最終時点でデータを収集した(40℃ではT=2週間、他のすべての温度ではT=8週間)。医薬製剤評価および最適化試験の一部としてpH変動試験も行った。加速安定性試験の結論は、ヒスチジン/ポリソルベート/ソルビトール製剤中の配列番号2の修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬製剤には低pHが最適であり、これは外観検査、FloCam解析およびSE-HPLCによる2つの方法で支持されるということである。SE-HPLCでは例えば、主ピークは低pHのサンプルでは高い。このことは、低pHでは凝集および/または分解が少なく、検出される未変化単量体が多く残っていることを示していた。一方、高pHサンプルは、これよりも低いpHのサンプルよりも、各時点での可溶性凝集体の割合が高かった。これらはHMW種では経時的に増加し、pHが上昇するにつれてさらに状況は悪化すると考えられる。換言すれば、経時的には、pHとHMW種の存在との間には正の相関が観察された。
【0358】
さらなる試験では、製剤中のヒスチジン濃度を10mMから1mMに低下させ、SE-HPLCを使用して、HMW種のピーク面積の割合の変化の影響を評価した。表8に提供されるように、pH5.8の製剤は、ヒスチジン濃度にかかわらず、6.0よりも高いpHの製剤と比較して低いHMWピークを示した。
【0359】
例えば2つの異なる界面活性剤条件について、3つの異なるpH値での10mM ヒスチジン緩衝液対1mM ヒスチジン緩衝液といった候補となる製剤の異なるバリエーションを比較した(表7)。比較されるパラメータを選択し、pHが、10mM ヒスチジン緩衝液とは対照的に1mM ヒスチジン緩衝液で依然として制御されるのかどうかを決定した。これらの製剤を比較する主な目的は、見込みのある候補となる製剤および/またはそのバリエーションのうちのいずれかが、室温の100(±20%)μg/mLのTTHX1114にとって最大1ヶ月の好適な安定性を提供するかどうか推定することであった。副次的には、ヒスチジン濃度が低下した、および/またはpHがわずかに上昇したバリエーションでは、こうした調整によって適用時により鎮静作用のある点眼薬がもたらされる可能性があることから、同程度の安定性を達成可能かどうかを認識することが望ましいものであった。







































【0360】
【表7】
【0361】
(i)薬物沈殿を観察する目盛り付きの外観検査法、および(ii)薬物分解およびHMW種の形成を観察するSE-HPLC解析で安定性を決定した。調製後、最終製剤をカバー付きチューブラック内のベンチトップに室温(約20℃)で保存した。調製後、外観検査およびSE-HPLC解析を0日目、5日目、14日目、28日目および59日目に実施した。特定の時点で良好に機能しない製剤は、その後の時点で解析から除外した。さらに、残りの製剤で59日目にpHを測定し、試験過程にわたってドリフトが発生しないことを確認した。
希釈剤および原液の調製
【0362】
L-ヒスチジンを欠く2つのベース希釈剤を調製した:脱イオン(DI)HO中にPS80およびソルビトールを溶解し、希釈剤A(0.2%のPS80/10%のソルビトール)を調製した。これをDI HOを用いて500mLに希釈し、続いて0.2μmのポリエーテルスルホン(PES)膜真空フィルタユニットでろ過した。第2のベース希釈剤は希釈剤B(0.2%のPS20/10%のソルビトール)であり、DI HO中にPS20およびソルビトールを溶解することで調製した。これをDI HOを用いて500mLに希釈し、続いて0.2μmのPES膜真空フィルタユニットでろ過した。
【0363】
ベース希釈剤を調製した後、透析緩衝液の2つの異なる濃縮原液を調製した。DI HO中にソルビトール、PS80およびL-ヒスチジンを加え、かつ溶解させ、原液A(9.29mM ヒスチジン/0.929%のPS80/46.43%のソルビトール)を調製した。これをDI HOを用いて3.5Lに希釈し、このうち2Lを0.2μmのボトルトップ型PES膜真空フィルタでろ過し、2Lの滅菌ボトルに入れた。DI HO中にソルビトール、PS20およびL-ヒスチジンを加え、かつ溶解させ、原液B(9.18mM ヒスチジン/0.909%のPS80/45.45%のソルビトール)を調製した。これをDI HOを用いて2750mLに希釈し、このうち2Lを0.2μmのボトルトップ型PES膜真空フィルタでろ過し、別個の2Lの滅菌ボトルに入れた。
【0364】
-70℃の冷凍庫での貯蔵から修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)アリコートを取り出した後、原液を望ましい1倍濃度:2mM ヒスチジン/0.2%のポリソルベート80または20/10%のソルビトールの透析緩衝液に希釈しつつ、室温で1時間、このアリコートを融解した。融解したサンプルをよく混合し、O.Dを280nmで測定した。透析緩衝液に対してサンプルを1:100の比率で(30mLのサンプル:3000mLの透析緩衝液)室温(RT)にて透析を実施し、その後緩衝液を2回変更した。第1の変更は開始時間の2時間後に実施し、第2の変更は開始時間の4時間後に実施した。第2の変更後、サンプルをRTで一晩透析させた(13時間超)。続いてTTHX114を2mM ヒスチジン/0.2%のPS80またはPS20/10%のソルビトール中に処方した。
【0365】
透析した両方のサンプルを2部(2A.1+2A.2および2B.1+2B.2)に分割した。2A/B.1溶液に対しては、180mM、10倍ヒスチジンを補充した希釈剤Aまたは希釈剤Bを加えることで、ヒスチジン濃度を20mMに増加させた。40mLの希釈剤Aおよび希釈剤Bのそれぞれに1.117gのL-ヒスチジンを加え、これらの10倍溶液を調製した。
【0366】
溶液2A.1については、1.6mLの希釈剤A中の10倍ヒスチジン溶液を14.4mLの透析済サンプルに加えた。溶液2B.1については、1.8mLの希釈剤A中の10倍ヒスチジンを14.6mLの透析済サンプルに加え、続いて1.6mLの希釈剤Bを加えた。2A.1および2B.1溶液中でヒスチジン濃度を20mMにすることに加え、これらの部分でこれらの希釈剤もまた、TTHX1114濃度を200μg/mLにした。両方の透析したサンプル(2A/B.2溶液)の他の部分は、2mM ヒスチジンで補充した希釈剤Aまたは希釈剤Bで200μg/mLのTTHX1114に単純に希釈した(これは、180mM 溶液をそれぞれの希釈剤で1:90に希釈して調製した)。2A.1+2A.2および2B.1+2B.2はすべての成分が2倍である。0.2μmの酢酸セルロースシリンジフィルタでサンプルをろ過した。特定の懸濁液の外観検査を行い、0~3および3超の単一ランクのスケールでランク付けした。この場合、0は目に見える懸濁された粒子物質がなかったことを意味する。
【0367】
結果:ヒスチジン濃度に関係なく、pHが5.8のサンプルは溶液中での薬物の保持は良好であり、調製後59日目までは10mM ヒスチジン緩衝液中には粒子は見られなかったが、1mM ヒスチジン緩衝液では28日目に1つのサンプルのみで懸濁粒子が観察された。すべてのPS20製剤は、SE-HPLCによって5日目にそれらのPS80対照物よりも回収量がすべて低かったため、5日目以降は検査されなかった。代表的なSE-HPLCピークを図7に示す。















【0368】
【表8】
【0369】
pHの維持
0日目に必要となるpHに調整した後(表6を参照されたい)、製剤のpHにドリフトが見られないことを確認するために59日目にpHを再び評価した。両方のヒスチジン濃度のサンプルは試験過程にわたってpHを良好に維持しており、顕著なドリフトは観察されなかった。
【0370】
【表9】
【0371】
全体的には、この試験は薬物産物(配列番号2のFGF-1ポリペプチド)が室温では少なくとも28日間にわたって安定している製剤を明らかにした。長期期間にわたる目に見える粒子の欠乏、SE-HPLCによるほぼ一定の主ピーク面積、SE-HPLCによる経時的に低い割合の可溶な凝集体および経時的なpHの制御から、最適化された製剤は、10mM ヒスチジン/0.1%のPS80/5%のソルビトール製剤(pH5.8)である。類似の傾向は、1mM ヒスチジン/0.1%のPS80/5%のソルビトールを含有する製剤について観察されており、これは薬物産物(配列番号2のFGF-1ポリペプチド)が少なくとも59日間にわたって安定していると見出された別の製剤となる。
【0372】
実施例5プラスミド、修飾ヒトFGF-1のクローニングおよび発現
本実施例は、細菌中での修飾FGF-1ポリペプチド(配列番号2)の製造を記載する。大腸菌(BL21形質転換受容性細胞)中で遺伝子操作された(修飾)ヒトFGF-1(TTHX1114)の発現を可能とするため、標的タンパク質のコード配列を、コドン使用、転写および翻訳効率、ならびにmRNA安定性を含む大腸菌発現のために最適化し、GenScriptが新規に合成し、発現プラスミドへとサブクローニングした。選択されたプラスミドTTHX1114_pMKetのプラスミドマップを図6に示す。設計されたコンストラクトは、末端融合を含まない修飾FGF-1ポリペプチドの遺伝情報をコードする。
【0373】
修飾FGF-1ポリペプチドのペリプラズム蓄積については、外膜タンパク質(ompA、oA)のリーダー配列を成熟型タンパク質とN末端で融合させた。リーダー配列は、プレタンパク質がペリプラズムにトランスロケーションする上で必要であり、これはシグナルペプチダーゼI(SP-1)を介してトランスロケーション後に切断される。プラスミドはカナマイシン耐性を付与する配列を有する。プラスミド骨格TTHX1114_pMKetにインサートをサブクローニングした。pMKet骨格(プラスミド名:oA-TTHX1114_pMKet)にペリプラズムコンストラクトをサブクローニングした。修飾FGF-1ポリペプチドの発現は、IPTG依存性プロモータであるTacプロモータによって制御された。
【0374】
ペリプラズムコンストラクトは、スクリーニング後に、例えばシャペロン(遺伝子操作したhFGF-1の例示的なコドン最適化したヌクレオチド配列の2つの停止コドン(下線部)とBamHI制限部位(イタリック体)の間の配列)のバイシストロニックな共発現を可能とするため、修飾FGF-1ORF下流のさらなる配列の挿入を確実なものとするために設計されており、これを以下に提供する(長さ:438bp、隣接部位を含む):
CATATGAAAAAGACAGCTATCGCGATTGCAGTGGCACTGGCTGGTTTCGCTACCGTTGCGCAAGCTTTTAATCTGCCGCCGGGTAACTATAAGAAACCGAAACTGTTGTACAGCTCTAATGGTGGCCACTTCCTGCGTATCCTGCCGGACGGCACCGTCGATGGTACCCGTGACCGCAGCGATCAACACATTCAACTGCAACTGAGCGCCGAGAGCGTGGGCGAAGTTTACATTAAGTCCACTGAAACGGGCCAGTACCTGTGTATGGACACCGATGGCCTGCTGTACGGTTCGCAGACGCCAAATGAAGAGTGCCTGTTCTTGGAGCGTCTGGAAGAGAACCACTATAACACCTACATTAGCAAGAAACATGCGGAGAAAAACTGGTTTGTGGGTCTGAAGAAAAATGGTTCCGTCAAGCGCGGTCCTCGTACGCATTATGGCCAGAAAGCAATCTTGTTCCTGCCGCTGCCGGTTAGCAGCGACTAATAGAAGGAGATATAGCCATGGTCTGGACAGAAGCTTGGATCC(配列番号207)。
【0375】
ペリプラズム蓄積のための修飾FGF-1ポリペプチドの例示的配列を以下に提供する:
【0376】
MKKTAIAIAVALAGFATVAQAFNLPPGNYKKPKLLYSSNGGHFLRILPDGTVDGTRDRSDQHIQLQLSAESVGEVYIKSTETGQYLCMDTDGLLYGSQTPNEECLFLERLEENHYNTYISKKHAEKNWFVGLKKNG SVKRGPRTHYGQKAILFLPLPVSSD(配列番号208)。
【0377】
転位後、配列番号2の成熟型FGF-1ポリペプチドを生成した。
【0378】
実施形態
実施形態1は、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、または配列番号1に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し、少なくとも1個、2個、3個、4個または5個の単一のアミノ酸変異を含む修飾FGF-1ポリペプチド、
および(b)L-メチオニン、を含む製剤を提供する。
【0379】
実施形態2は、製剤が眼内送達用の注射用製剤である実施形態1に記載の製剤を提供する。
【0380】
実施形態3は、修飾FGF-1ポリペプチドが、配列番号1の第1の残基上流に位置するN末端メチオニン残基を含む、実施形態1に記載の製剤を提供する。
【0381】
実施形態4は、ポリペプチドが、N末端メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドをさらに含む、実施形態1に記載の製剤を提供する。
【0382】
実施形態5は、伸長ペプチドが配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む、または配列番号4~8に示される配列のうちいずれか1つを含む、実施形態4に記載の製剤を提供する。
【0383】
実施形態6は、修飾FGF-1ポリペプチドがポリペプチドの成熟型である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0384】
実施形態7は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号14~18から選択される配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0385】
実施形態8は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号24~28から選択される配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0386】
実施形態9は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号93~117から選択される配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0387】
実施形態10は、ポリペプチドが、伸長ペプチドに対してN末端にメチオニン残基をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つを提供する。
【0388】
実施形態11は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号118~141から選択される配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0389】
実施形態12は、修飾FGF-1ポリペプチドが136個のアミノ酸を含む形態で発現される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0390】
実施形態13は、修飾FGF-1ポリペプチドがその成熟型に少なくとも141個のアミノ酸を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0391】
実施形態14は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号1の67位に変異を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0392】
実施形態15は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号1の第1の5つの残基のうち1つ以上に切断をさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0393】
実施形態16は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号146~149から選択される配列を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0394】
実施形態17は、ポリペプチドが、配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む伸長ペプチドをさらに含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0395】
実施形態18は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号174~204から選択される配列を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0396】
実施形態19は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号2または配列番号205に示される配列を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0397】
実施形態20は、修飾FGF-1ポリペプチドがポリペプチドの成熟型である、実施形態19に記載の製剤を提供する。
【0398】
実施形態21は、修飾FGF-1ポリペプチドが、Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valからなる群から選択される1つ以上の変異を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0399】
実施形態22は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号1の1つ以上の変異を含み、当該変異は、Lys12Val、Cys16Ser、Ala66Cys、Cys117ValおよびPro134Valからなる群から選択され、修飾FGF-1ポリペプチドはペプチドALTEKの少なくとも1つの残基をさらに含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0400】
実施形態23は、修飾FGF-1ポリペプチドが、Cys16Ser、Ala66CysおよびCys117Valといった配列番号1の変異を含む1つ以上の変異を含み、修飾FGF-1ポリペプチドは、配列番号1の第1の残基上流に位置するメチオニン残基、およびN末端メチオニンと配列番号1の1位との間に位置するペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0401】
実施形態24は、製剤がヒト血清アルブミン(HSA)および/またはポリソルベート80を含む、実施形態1に記載の製剤を提供する。
【0402】
実施形態25は、修飾FGF-1ポリペプチドが製剤中で95%を超える純粋な単量体形態である、実施形態1に記載の製剤を提供する。
【0403】
実施形態26は、
-少なくとも約50mM リン酸水素二ナトリウム、
-少なくとも約100mM 塩化ナトリウム、
-少なくとも約10mM 硫酸アンモニウム、
-少なくとも約0.1mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、
-少なくとも約5mM L-メチオニン、および
-少なくとも約0.01%(w/v)のポリソルベート80、のうち少なくとも1つをさらに含む、実施形態25の製剤を提供する。
【0404】
実施形態27は、製剤が少なくとも約0.01mM~約10mM濃度であるEDTAを含む、実施形態26に記載の製剤を提供する。
【0405】
実施形態28は、製剤が硫酸アンモニウムを含み、硫酸アンモニウムの濃度が少なくとも約0.01mM~約100mM濃度である、実施形態26に記載の製剤を提供する。
【0406】
実施形態29は、製剤が少なくとも約0.01mM~約100mM濃度であるL-メチオニンを含む、実施形態26に記載の製剤を提供する。
【0407】
実施形態30は、修飾FGF-1が、フックスジストロフィー、水疱性角膜症、ヘルペス性角膜症、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー1、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー2、後部多形性角膜内皮ジストロフィー、ドライアイ症候群、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜ジストロフィー、黄斑角膜ジストロフィー、シュナイダー結晶性角膜ジストロフィー、先天性実質性角膜ジストロフィー、斑状角膜ジストロフィー、角膜損傷、眼の損傷、化学損傷、びらん性損傷、角膜実質損傷およびマスタードガス角膜症からなる一覧から選択される1つ以上の疾患、障害または病気を治療するのに好適な濃度で存在する、実施形態1に記載の製剤を提供する。
【0408】
実施形態31は、製剤が房内に投与される、実施形態1または30に記載の製剤を提供する。
【0409】
実施形態32は、製剤が硝子体内に投与される、実施形態1または30に記載の製剤を提供する。
【0410】
実施形態33は、製剤が約-20℃の温度で少なくとも約2週間~約4週間安定している、実施形態1~31のいずれか1つに記載の製剤を提供する。
【0411】
実施形態34は、治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを製造するためのスケーラブルな方法を提供し、該方法が、
(a)pBR322由来のori配列を含むベクターに挿入される、細胞質発現のために修飾FGF-1ポリペプチドをコードする配列を含む組換え核酸コンストラクトを、好適な大腸菌細胞に導入することと、
(b)約20時間、好適な抗生物質を含む合成増殖培地中で細胞を増殖することと、
(c)治療的に有効な修飾FGF-1ポリペプチドを細胞から回収することと、を含み、
ステップcで回収される修飾FGF-1の収量は、pBR322由来のori配列、合成増殖培地またはこれらの組合せを含むベクターの使用を含まない方法よりも少なくとも2倍高い。
【0412】
実施形態35は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列、または配列番号1の12位、16位、66位、117位および134位に1つ以上の変異を含む配列を含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0413】
実施形態36は、修飾FGF-1ポリペプチドが(i)Ala66Cys変異、(ii)Cys16Ser変異、(iii)Cys117Ser変異のうち1つ以上を含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0414】
実施形態37は、修飾FGF-1ポリペプチドが、配列番号1の第1の残基上流に位置するN末端メチオニン残基を含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0415】
実施形態38は、修飾FGF-1ポリペプチドが、N末端メチオニン残基と配列番号1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドをさらに含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0416】
実施形態39は、伸長ペプチドが配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む、実施形態38に記載の方法を提供する。
【0417】
実施形態40は、伸長ペプチドが配列番号4~8に示される配列のうちいずれか1つを含む、実施形態39に記載の方法を提供する。
【0418】
実施形態41は、修飾FGF-1ポリペプチドがポリペプチドの成熟型である、実施形態34~40のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0419】
実施形態42は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号14~18から選択される配列を含む、実施形態34~41のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0420】
実施形態43は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号24~28から選択される配列を含む、実施形態34~42のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0421】
実施形態44は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号93~117から選択される配列を含む、実施形態34~43のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0422】
実施形態45は、修飾FGF-1ポリペプチドが、伸長ペプチドに対してN末端にメチオニン残基をさらに含む、実施形態34~44のいずれか1つの方法を提供する。
【0423】
実施形態46は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号118~141から選択される配列を含む、実施形態34~45のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0424】
実施形態47は、修飾FGF-1ポリペプチドが136個のアミノ酸を含む形態で発現される、実施形態34~46のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0425】
実施形態48は、修飾FGF-1ポリペプチドがその成熟型に少なくとも141個のアミノ酸を含む、実施形態34~46のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0426】
実施形態49は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号1の第1の5つの残基のうち1つ以上に切断をさらに含む、実施形態34~48のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0427】
実施形態50は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号146~149および174~204から選択される配列を含む、実施形態34~49のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0428】
実施形態51は、修飾FGF-1ポリペプチドが、配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基を含む伸長ペプチドをさらに含む、実施形態34~50のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0429】
実施形態52は、修飾FGF-1ポリペプチドが配列番号2、配列番号205に示される配列を含む、実施形態34~51のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0430】
実施形態53は、好適な細胞がBL21、K12 HMS174またはW3110といった株の大腸菌細胞である、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0431】
実施形態54は、組換え核酸コンストラクトが、T7またはtacプロモータを含むpMKet_TTHX1114である、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0432】
実施形態55は、合成培地が炭素源としてグリセロール、ペプトンおよび酵母を含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0433】
実施形態56は、pMKet_TTHX1114を発現するBL21細胞が、37℃で20時間、カナマイシンの存在下で増殖された、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0434】
実施形態57は、組換え核酸コンストラクトが、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための1つ以上の修飾を含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0435】
実施形態58は、1つ以上の修飾が、細胞での修飾FGF-1ポリペプチドの発現を増加させるために最適化されている配列を含む、実施形態57に記載の方法を提供する。
【0436】
実施形態59は、1つ以上の修飾が、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を増加させるための好適なプロモータを選択することを含む、実施形態57に記載の方法を提供する。
【0437】
実施形態60は、細胞増殖を最大化するため、適切な栄養培地中で細胞を増殖させることをさらに含み、適切な栄養培地が炭素源を含み、炭素源がグルコースまたはグリセロールである、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0438】
実施形態61は、プラスミドがpMKetまたはその誘導体またはその修飾である、実施形態57に記載の方法を提供する。
【0439】
実施形態62は、細胞からの修飾FGF-1ポリペプチドの収量を最大化させるために1つ以上の修飾を導入することをさらに含み、1つ以上の修飾プロセスは、修飾FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸内での修飾;修飾FGF-1ポリペプチドをコードする組換え核酸に動作可能に関連する1つ以上の調節配列要素を含む組換え核酸内での修飾;組換え核酸を含むプラスミドの修飾;細胞増殖を最大化させるための細胞株の修飾または細胞株の選択;細胞増殖培地の変性をさらに含む、実施形態34~61のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0440】
実施形態63は、組換え核酸を導入することが細胞内に組換え核酸を電気穿孔することを含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0441】
実施形態64は、修飾FGF-1ポリペプチドを細胞から回収することが、タンパク質を細胞のペリプラズム封入体から回収することを含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0442】
実施形態65は、回収することが、変性緩衝液中で封入体を可溶化させること、および修飾FGF-1ポリペプチドを回収することを含む、実施形態64に記載の方法を提供する。
【0443】
実施形態66が、変性緩衝液が尿素またはグアニジンを含む、実施形態65のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0444】
実施形態67が、変性緩衝液が2mM EDTAをさらに含む、実施形態66に記載の方法を提供する。
【0445】
実施形態68が、DTTを加えることで回収された修飾FGF-1ポリペプチドを還元することをさらに含み、透析ろ過によってDTTを取り除くことをさらに含む、実施形態65~67のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0446】
実施形態69が、回収された修飾FGF-1ポリペプチドをリフォールディングバッファ内でリフォールディングにかけることである、実施形態65~68のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0447】
実施形態70は、リフォールディングバッファがL-アルギニンを含む、実施形態69に記載の方法を提供する。
【0448】
実施形態71は、リフォールディングバッファが5mM システインまたは2mM システインまたはそれら両方を含む、実施形態69または70のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0449】
実施形態72は、FGF-1がヘパリンとの疎水性相互作用カラム(HIC)で捕捉される、実施形態69~71のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0450】
実施形態73は、治療的に有効な組換え変異hFGF1タンパク質を回収することがタンパク質を精製することを含み、精製することが、液体クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、超遠心分離法、クロスフローろ過および透析ろ過のうちの1つ以上を含む、実施形態34に記載の方法を提供する。
【0451】
実施形態74は、実施形態34~73のうちいずれか1つの方法により製造される、修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物、その凍結乾燥粉末画分またはその液体製剤を提供する。
【0452】
実施形態75は、フックスジストロフィー、水疱性角膜症、ヘルペス性角膜症、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー1、先天性遺伝角膜内皮ジストロフィー2、後部多形性角膜内皮ジストロフィー、ドライアイ症候群、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜ジストロフィー、黄斑角膜ジストロフィー、シュナイダー結晶性角膜ジストロフィー、先天性実質性角膜ジストロフィー、斑状角膜ジストロフィー、角膜損傷、眼の損傷、化学損傷、びらん性損傷、角膜実質損傷およびマスタードガス角膜症からなる一覧から選択される1つ以上の疾患、障害または病気に罹患している対象を治療する方法を提供し、該方法が、好適な投与量の(i)実施形態1~33のいずれか1つに記載の注射用製剤または(ii)実施形態74に記載の医薬組成物を、必要のある対象に投与することを含む。
【0453】
実施形態76は、FGF-1の注射用製剤を含むキットを提供する。
【0454】
実施形態77は、実施形態1~33のいずれか1つに記載の製剤内に、または実施形態74に記載の医薬組成物内の修飾FGF-1の最小用量を提供可能であるドロッパーボトルを含む、実施形態76に記載のキットを提供する。
【0455】
実施形態78は、ドロッパーボトルが滅菌フィルタをさらに備える、実施形態76または77に記載のキットを提供する。
【0456】
実施形態79は、容器がシリンジを含む、実施形態76~78のいずれか1つに記載のキットを提供する。
【0457】
実施形態80は、シリンジがツベルクリンポリプロピレンおよびガラスからなる群から選択される材料を含む、実施形態79に記載のキットを提供する。
【0458】
実施形態81は、シリンジが実施形態1~33のいずれか1つに記載の注射用製剤または実施形態74に記載の医薬組成物で満たされている、実施形態79または80に記載のキットを提供する。
【0459】
実施形態82は、電子制御部品をさらに含む、実施形態79~81のいずれか1つに記載のキットを提供する。
【0460】
実施形態83は、電子制御部品が、少なくとも約10μL~約100μLの容量の実施形態1~33のいずれか1つに記載の注射用製剤または実施形態74に記載の医薬組成物の投与を制御することができる、実施形態82に記載のキット。
【0461】
【表10-1】

【0462】
【表10-2】






【0463】
【表10-3】






【0464】
【表10-4】






【0465】
【表10-5】






【0466】
【表10-6】






【0467】
【表10-7】






【0468】
【表10-8】






【0469】
【表10-9】






【0470】
【表10-10】






【0471】
【表10-11】






【0472】
【表10-12】






【0473】
【表10-13】






【0474】
【表10-14】






【0475】
【表10-15】






【0476】
【表10-16】






【0477】
【表10-17】






【0478】
【表10-18】






【0479】
【表10-19】






【0480】
【表10-20】
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
【配列表】
2023532046000001.app
【国際調査報告】