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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】腫瘍撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580537
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 FR2021051168
(87)【国際公開番号】W WO2021260334
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】2006763
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505026125
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ルシェルシュ・アン・アンフォルマティック・エ・オン・オトマティック
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョン=クレメンタル,イレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドラスド,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】イン,イー
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA17
4C096AA18
4C096AB46
4C096DA14
4C096DC20
(57)【要約】
撮像装置は、撮像データ12、生検針を使用して行われる穿刺の寸法を規定する針データ160を含む生検データ16、及び手技データ162を受信するように設計されるメモリ10と、マトリクス画像14を処理画像22にオーバサンプリングするように設計されるオーバサンプラ20と、オーバサンプラ20からの処理画像22を領域のセット32に分割するように設計されるカッタ30と、拡散パラメータのセット36内の拡散パラメータのサブセット42を特定し、領域のセット32から抽出された領域のサブセット44を返すように設計されるセレクタ40と、針データ160とともに穿刺ゾーンを規定する穿刺パラメータ52、穿刺向き及び穿刺進入点のセットに関するデータを領域のサブセット44から特定するように設計されるガイド50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ(10)であって、
腫瘍の断面拡散強調磁気共鳴画像から導出される少なくとも1つのラスタ画像(14)を含む撮像データ(12)であって、前記ラスタ画像(14)の各ピクセルは、その値が前記腫瘍内の水分子の移動度を表す拡散パラメータに関連する、撮像データ(12)と、
生検針によって実施される穿刺の寸法を規定する針データ(160)を含む生検データ(16)と、
生検手技において行われる穿刺の2回以上の回数と、行われる穿刺の前記回数を実施するために満たすべき介入制約に関連する制約のセット(300)とを含む、手技データ(162)と、
を受信するように構成される、メモリ(10)と、
前記ラスタ画像(14)を処理画像(22)へとアップサンプリングするように構成されるアップサンプラ(20)であって、前記処理画像(22)の空間分解能は、前記処理画像(22)の各ピクセルが、その辺が前記針データ(160)の針直径寸法よりも短い長さを有する実質的に正方形の断面画像の領域に対応する、アップサンプラ(20)と、
前記アップサンプラ(20)からの前記処理画像(22)を、領域のセット(32)に分割するように構成されるスライサ(30)であって、前記領域のセット(32)における各領域(34)は、
少なくとも2つずつ互いに直接隣接する前記処理画像(22)のピクセルを含み、
その値が、その構成ピクセルに関連する拡散パラメータの値の平均に実質的に等しい前記拡散パラメータに関連し、
前記領域の前記ピクセルに関連する前記拡散パラメータの前記値の分散は、所与の分散値よりも小さく、
その寸法が、前記生検データ(16)の生検針によって実施される穿刺の寸法よりも大きい又は前記寸法に実質的に等しい前記腫瘍の前記断面拡散強調磁気共鳴画像の一部に対応し、
前記領域のセット(32)の各領域(34)に関連する前記拡散パラメータは、拡散パラメータのセット(36)を形成する、スライサ(30)と、
セレクタ(40)であって、
前記拡散パラメータのセット(36)内において、前記手技データ(162)の行われる穿刺の回数と同数の拡散パラメータを含む拡散パラメータのサブセット(42)を特定することであって、少なくとも、前記拡散パラメータのサブセット(42)は、前記拡散パラメータのセット(36)の前記拡散パラメータ値の最初の十分位数から選択される第1の拡散パラメータ(420)と、前記拡散パラメータのセット(36)の前記拡散パラメータ値の最後の十分位数から選択される第2の拡散パラメータ(426)と、前記手技データ(162)の実施される穿刺の回数が2回よりも多いとき、そのそれぞれの拡散パラメータ値が、前記第1の拡散パラメータ(420)の値と前記第2の拡散パラメータ(426)の値との間である拡散パラメータ(424)とを含むことと、
前記領域のセット(32)から導出される領域のサブセット(44)を返すことであって、各領域(46)は、前記拡散パラメータのサブセット(42)の前記パラメータのうちの1つに実質的に等しい拡散パラメータに関連することと、
を行うように構成される、セレクタ(40)と、
前記領域のサブセット(44)から、前記手技データ(162)の行われる穿刺の回数に等しい数の穿刺パラメータセットデータ(52)を特定するように構成されるガイド(50)であって、穿刺パラメータの各セットは、穿刺深さ(520)、穿刺向き(522)及び穿刺進入点(524)を含み、前記穿刺パラメータのセット(52)が、前記手技データ(162)の前記制約のセット(300)を共に満たすように、前記領域のサブセット(54)の前記領域(544)のうちの1つに実質的に含まれる穿刺ゾーン(526)を前記針データ(160)とともに規定する、ガイド(50)と、
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記アップサンプラ(20)は、補間を実施することによって、前記ラスタ画像(14)を前記処理画像(22)へとアップサンプリングするように構成される、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記アップサンプラ(20)は、バイキュービック補間を実施して、前記ラスタ画像(14)を前記処理画像(22)へとアップサンプリングするように構成される、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記スライサ(30)は、スーパーピクセル法によって、前記アップサンプラ(20)からの前記処理画像(22)を分割するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記メモリ(10)内に記憶される前記手技データ(162)の生検手技において行われる穿刺の回数は、4回以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記セレクタ(40)は、前記拡散パラメータのセット(36)の前記拡散パラメータ値の2番目のパーセンタイルから前記第1の拡散パラメータ(420)を選択し、前記拡散パラメータのセット(36)の前記拡散パラメータ値の98番目のパーセンタイルから前記第2の拡散パラメータ(426)を選択する、請求項1~5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の拡散パラメータ(420)及び前記第2の拡散パラメータ(426)は、そのそれぞれの四分位数の中央値にそれぞれ等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記手技データ(162)の行われる穿刺の回数が2回よりも多いとき、前記セレクタ(40)は、前記拡散パラメータ(424)が互いに2つずつ等距離になるように、前記拡散パラメータのサブセット(42)の前記拡散パラメータ(424)を選択する、請求項1~7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記手技データ(162)の行われる穿刺の回数(N)が、2回よりも多いとき、前記セレクタ(40)は、前記拡散パラメータのセット(36)の前記拡散パラメータの中央値(M)を特定し、前記拡散パラメータ(Dj)を特定し、jは、次式に従って、1と前記手技データ(162)の行われる穿刺の回数(N)との間に含まれる、前記拡散パラメータのサブセット(42)の自然数であり、
Dj=Dini+Delta(j-1)
ここで、Diniは次式を満たし、
Dini=M-min(|M-Dmin|,|M-Dmax|)
Deltaは次式を満たし、
Delta=2(M-Dini)/(N-1)
Dminは、前記セレクタ(40)によって特定される前記第1の拡散パラメータ(420)の値に等しく、Dmaxは、前記セレクタ(40)によって特定される前記拡散パラメータのサブセット(42)の前記第2の拡散パラメータ(426)の値に等しい、請求項1~7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ガイド(50)によって特定される前記穿刺パラメータのセット(52)のそれぞれの前記穿刺深さ(520)、前記穿刺向き(522)、前記穿刺進入点(524)は、前記生検データ(16)とともに、前記生検針の穿刺軌道を規定し、前記メモリ(10)内に記憶される前記手技データ(162)の前記制約のセット(300)は、
生検手技の穿刺が、前記腫瘍(200)内への同じ進入点(524)を有する必要があること、
前記穿刺軌道が直線であり、最大穿刺角度内に収める必要があること、
前記穿刺深さ(520)が、最大穿刺深さよりも短いこと、
前記穿刺ゾーン(526)が、所定の距離だけ前記腫瘍(200)の縁部から離隔されること、
前記腫瘍(200)が壊死ゾーン(500)を含む場合、前記穿刺軌道が、前記壊死ゾーン(500)を貫通しないこと、
前記腫瘍(200)が脂肪組織ゾーンを含む場合、前記穿刺ゾーン(526)がいずれも前記脂肪組織ゾーンに交わらないこと、
前記穿刺パラメータセットデータ(52)の前記進入点(524)のうちの少なくとも1つが、予め固定されること、
を含む群から選択される1つ以上の制約を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記メモリ(10)は、細胞密度のセットを含む穿刺データ(58)を受信するように更に構成され、各細胞密度は、前記穿刺パラメータセットデータ(52)の前記穿刺ゾーン(526)のうちの1つに関連し、各細胞密度は、前記穿刺ゾーン(526)の細胞密度を表す値を有し、
前記撮像装置(1)は、
前記穿刺ゾーン(526)のうちの1つに関連する各細胞密度値と、前記領域のセット(54)について前記穿刺ゾーン(526)が実質的に含まれる前記領域(544)の前記拡散パラメータ値とを関連させ、細胞密度値と前記拡散パラメータのセット(36)の拡散パラメータ値とを関連させる相関データ(62)を導出するように構成される、相関器(60)と、
前記処理画像(22)及び前記相関データ(62)から密度データ(72)を特定するように構成される構築器(70)であって、前記密度データ(72)は、前記断面画像の領域に対応する各ピクセルが、前記ピクセルの前記断面画像の前記領域に対応する前記処理画像(22)のピクセルの前記拡散パラメータ値とその値が前記相関データ(62)内で関連する細胞密度に関連する密度画像を含む、構築器(70)と、
を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記相関器(60)は、拡散パラメータ値と、穿刺ゾーン(526)に関連する細胞密度値とから形成される対に基づく狭義単調線形補間又は非線形補間を実施し、前記補間の結果から前記相関データ(62)を導出する、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記穿刺データ及び前記密度データ(72)の前記細胞密度は、全体細胞密度又は癌細胞密度に対応する、請求項11又は12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記密度データ(72)に基づいて前記腫瘍(200)の腫瘍量を特定するように構成される推定器を更に備える、請求項11~13のいずれか一項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用撮像の分野に関し、より詳細には、腫瘍撮像に関する。腫瘍撮像は、腫瘍の非侵襲的な分析方法を包含する。分析は、腫瘍内の癌細胞の程度を特定することを狙いとすることができる。腫瘍撮像は、磁気共鳴撮像(MRI)、特に拡散強調磁気共鳴撮像によって実施される。しかしながら、これらの2つの撮像技法は、現状、癌細胞の絶対分布又は腫瘍量等、患者の体内の腫瘍に関する正確な情報を提供するものではない。ここで、腫瘍量とは、全てのタイプの腫瘍細胞、又は各タイプの個別の腫瘍細胞、特に癌細胞タイプの腫瘍細胞の総数を意味する。
【背景技術】
【0002】
生検は、腫瘍撮像を補足する又は腫瘍撮像に代わる侵襲的方法として使用されるものとして知られる。生検とは、生検針によって組織を局所的にサンプリングすることである。生検は、非侵襲的技法ではアクセス可能でない腫瘍に関する局所情報を提供する。しかしながら、生検は局所的なサンプリングであり、サンプリングされた組織は、通常、研究対象の腫瘍を代表するものではない。さらに、生検は、侵襲的な外科手技であり、腫瘍の拡大、正常組織への癌細胞の拡散、出血、感染症又は神経損傷等の医療リスクを呈する。
【0003】
生検を行うための代表位置を特定する方法が存在しない。結果として、現状では、求められる絶対分布又は腫瘍量に関する情報を特定するのに十分な情報を得る可能性を高めるために、多数回の生検、時に10回もの生検を実施する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記の状況を改善する。このために、本発明は、
-メモリであって、
腫瘍の断面拡散強調磁気共鳴画像から導出される少なくとも1つのラスタ画像を含む撮像データであって、上記ラスタ画像の各ピクセルは、その値が上記腫瘍内の水分子の移動度を表す拡散パラメータに関連する、撮像データと、
生検針によって実施される穿刺の寸法を規定する針データを含む生検データと、
生検手技において行われる穿刺の2回以上の回数と、行われる穿刺の回数を達成するために満たすべき介入制約に関連する制約のセットとを含む、手技データと、
を受信するように構成される、メモリと、
-ラスタ画像を処理画像へとアップサンプリングするように構成されるアップサンプラであって、処理画像の空間分解能は、処理画像の各ピクセルが、その辺が針データの針直径寸法よりも短い長さを有する、実質的に正方形の断面画像の領域に対応するようなものとなる、アップサンプラと、
-アップサンプラからの処理画像を、領域のセットに分割するように構成されるスライサであって、各領域は、
少なくとも2つずつ互いに直接隣接する処理画像のピクセルを含み、
その値が、その構成ピクセルに関連する拡散パラメータの値の平均に実質的に等しい拡散パラメータに関連し、
領域のピクセルに関連する拡散パラメータの値の分散は、所与の分散値よりも小さく、
その寸法が、生検データの生検針によって実施される穿刺の寸法よりも大きい又は寸法に実質的に等しい上記腫瘍の断面拡散強調磁気共鳴画像の一部に対応し、
領域のセットの各領域に関連する拡散パラメータは、拡散パラメータのセットを形成する、スライサと、
-セレクタであって、
拡散パラメータのセット内において、手技データの行われる穿刺の回数と同数の拡散パラメータを含む拡散パラメータのサブセットを特定することであって、少なくとも、拡散パラメータのサブセットは、拡散パラメータのセットの拡散パラメータ値の最初の十分位数から選択される第1の拡散パラメータと、拡散パラメータのセットの拡散パラメータ値の最後の十分位数から選択される第2の拡散パラメータと、手技データの行われる穿刺の回数が2回よりも多いとき、そのそれぞれの拡散パラメータ値が、第1の拡散パラメータの値と第2の拡散パラメータの値との間である拡散パラメータとを含むことと、
領域のセットから導出される領域のサブセットを返すことであって、各領域は、拡散パラメータのサブセットのパラメータのうちの1つに実質的に等しい拡散パラメータに関連することと、
を行うように構成される、セレクタと、
-領域のサブセットから、手技データの行われる穿刺の回数に等しい数の穿刺パラメータセットデータを特定するように構成されるガイドであって、穿刺パラメータの各セットは、穿刺深さ、穿刺向き及び穿刺進入点を含み、穿刺パラメータのセットが、手技データの制約のセットを共に満たすように、領域のサブセットの領域のうちの1つに実質的に含まれる穿刺ゾーンを針データとともに規定する、ガイドと、
を備える、撮像装置を提供する。
【0005】
この撮像装置は、関連情報を保証する生検位置の削減された数を自動的に特定することを可能にすることから、非常に有利である。実際、撮像装置によって特定される穿刺は、ランダムに行われる穿刺よりも遥かに腫瘍全体を代表するものであると同時に、回数が少ない。
【0006】
様々な代替形態において、本装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を有することができる。
-アップサンプラは、補間を実施することによって、ラスタ画像を処理画像へとアップサンプリングするように構成される。
-アップサンプラは、バイキュービック補間を実施して、ラスタ画像を処理画像へとアップサンプリングするように構成される。
-スライサは、スーパーピクセル法によって、アップサンプラからの処理画像を分割するように構成される。
-メモリ内に記憶される手技データの生検手技において行われる穿刺の回数は、4回以下である。
-セレクタは、拡散パラメータのセットの拡散パラメータ値の2番目のパーセンタイルから第1の拡散パラメータを選択し、拡散パラメータのセットの拡散パラメータ値の98番目のパーセンタイルから第2の拡散パラメータを選択する。
-第1の拡散パラメータ及び第2の拡散パラメータは、そのそれぞれの四分位数の中央値にそれぞれ等しい。
-手技データの行われる穿刺の回数が2回よりも大きいとき、セレクタは、拡散パラメータが互いに2つずつ等距離になるように、拡散パラメータのサブセットの拡散パラメータを選択する。
-手技データの行われる穿刺の回数が、2回よりも大きいとき、セレクタは、拡散パラメータのセットの拡散パラメータの中央値を特定し、拡散パラメータを特定し、jは、次式に従って、1と手技データの行われる穿刺の回数との間に含まれる、拡散パラメータのサブセットの自然数であり、
Dj=Dini+Delta(j-1)
ここで、Diniは次式を満たし、
Dini=M-min(|M-Dmin|,|M-Dmax|)
Deltaは次式を満たし、
Delta=2(M-Dini)/(N-1)
Dminは、セレクタによって特定される第1の拡散パラメータの値に等しく、Dmaxは、セレクタによって特定される拡散パラメータのサブセットの第2の拡散パラメータの値に等しい。
-ガイドによって特定される穿刺パラメータのセットのそれぞれの穿刺深さ、穿刺向き、穿刺進入点は、生検データとともに、生検針の穿刺軌道を規定し、メモリ内に記憶される手技データの制約のセットは、
-生検手技の穿刺が、腫瘍内への同じ進入点を有する必要があること、
-穿刺軌道が直線上にあり、最大穿刺角度内に収める必要があること、
-穿刺深さが、最大穿刺深さよりも短いこと、
-穿刺ゾーンが、所定の距離だけ腫瘍の縁部から離隔されること、
-腫瘍が壊死ゾーンを含む場合、穿刺軌道が、この壊死ゾーンを貫通しないこと、
-腫瘍が脂肪組織ゾーンを含む場合、穿刺ゾーンがいずれもこの脂肪組織ゾーンに交わらないこと、
-穿刺パラメータセットデータの進入点のうちの少なくとも1つが、予め固定されること、
を含む群から選択される1つ以上の制約を含む。
-メモリは、細胞密度のセットを含む穿刺データを受信するように更に構成され、各細胞密度は、穿刺パラメータセットデータの穿刺ゾーンのうちの1つに関連し、各細胞密度は、上記穿刺ゾーンの細胞密度を表す値を有し、
撮像装置は、
-穿刺ゾーンのうちの1つに関連する各細胞密度値と、領域のセットについて上記穿刺ゾーンが実質的に含まれる領域の拡散パラメータ値とを関連させ、細胞密度値と拡散パラメータのセットの拡散パラメータ値とを関連させる相関データを導出するように構成される、相関器と、
-処理画像及び相関データから密度データを特定するように構成される構築器であって、密度データは、断面画像の領域に対応する各ピクセルが、上記ピクセルの断面画像の上記領域に対応する処理画像のピクセルの拡散パラメータ値とその値が相関データ内で関連する細胞密度に関連する密度画像を含む、構築器と、
を更に備える。
-相関器は、拡散パラメータ値と、穿刺ゾーンに関連する細胞密度値とから形成される対に基づく狭義単調線形補間又は非線形補間を実施し、上記補間の結果から相関データを導出する。
-穿刺データ及び密度データの細胞密度は、全体細胞密度又は癌細胞密度に対応する。
-本装置は、密度データに基づいて腫瘍の腫瘍量を特定するように構成される推定器を更に備える。
【0007】
以下の説明において、添付の図面を参照して本発明の更なる特徴及び利点を詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る撮像装置の概略図である。
図2図1の撮像装置によって受信される、拡散強調磁気共鳴によって得られる腫瘍のラスタ画像である。
図3図1の撮像装置によって受信される制約のセットの概略図である。
図4図1の撮像装置によって得られる処理画像である。
図5図1の撮像装置によって特定される領域のセットを示す図である。
図6図1の撮像装置によって特定される拡散パラメータのセットを示す図である。
図7図1の撮像装置によって特定される穿刺パラメータのセットを示す図である。
図8図1の撮像装置によって特定される領域のサブセットを示す図である。
図9図7の領域のサブセットの領域を示す図である。
図10図1の撮像装置によって特定される領域の別のサブセットを示す図である。
図11図10の詳細を示す図である。
図12図1の撮像装置に対する代替形態を示す図である。
図13図12の撮像装置によって実施される第1の線形補間を示す図である。
図14図12の撮像装置によって実施される第2の線形補間を示す図である。
図15図12の撮像装置によって実施される第3の線形補間を示す図である。
図16図12の撮像装置によって実施される腫瘍量推定を示す図である。
図17図12の撮像装置によって特定される図16からの腫瘍量を示す図である。
図18】制約のセットを満たす、ランダムに行われる穿刺について測定された腫瘍量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面は、大半が確実性を伴う要素を含む。したがって、図面は、本発明をよりよく理解する役割を果たすのみならず、適宜、その定義に寄与することもできる。
【0010】
本明細書の後には、数式を含む付属書Aが続く。この付属書は、本明細書の一体部分をなすものとする。
【0011】
図1図11を参照する。
【0012】
本発明に係る撮像装置1は、メモリ10、アップサンプラ20、スライサ30、セレクタ40及びガイド50を備える。
【0013】
メモリ10は、デジタルデータを受信するのに適した任意のタイプのデータストレージ、すなわち、ハードディスク、フラッシュメモリハードディスク(SSD)、任意の形態のフラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、ローカル又はクラウド分散ストレージ等とすることができる。装置1によって計算されたデータは、メモリ10と同様の任意のタイプのメモリ又はメモリ10に記憶することができる。このデータは、本装置がそのタスクを行った後に消去することもできるし、保持することもできる。
【0014】
アップサンプラ20、スライサ30、セレクタ40及びガイド50は、ここでは、コンピュータプロセッサによって実行されるプログラムである。代替的に、これらの要素のうちの1つ以上は、専用プロセッサによって異なる方法で実装してもよい。プロセッサとは、後述するようなデータ処理に適合される任意のプロセッサと理解されたい。そのようなプロセッサは、任意の既知の方法で、パーソナルコンピュータのマイクロプロセッサ、FPGA若しくはSoCタイプの専用チップ、グリッド上の計算リソース、マイクロコントローラ、又は後述する実施形態に必要な計算パワーを提供するのに適した他の任意の形態で実現することができる。これらの要素のうちの1つ以上は、ASIC等の特殊な電子回路の形態で実現してもよい。プロセッサと電子回路との組合せを想定することもできる。
【0015】
メモリ10は、腫瘍200の断面拡散強調磁気共鳴撮像(拡散MRI又はDWI)画像からの少なくとも1つのラスタ画像14を含む、撮像データ12を受信する。ラスタ画像14は、「Dマップ」としても知られる。拡散強調磁気共鳴とは、組織内の水分子の拡散を測定する組織撮像技法である。そのため、ラスタ画像14の各ピクセルは、その値が腫瘍200の組織内の水分子の移動度を示す拡散パラメータに関連する。拡散パラメータの値が高いほど、水分子の拡散が大きい、換言すれば、組織内を移動する水分子の自由度が上がる。
【0016】
拡散パラメータ値は、これらの値を生成する拡散強調磁気共鳴撮像機に大きく依存するため、概して、追加の情報なしではパラメータ値を解析することは不可能となる。ここに記載の例において、図2に示すラスタ画像14は、一辺が2.1mmの実質的に正方形のゾーンに対応する辺を有するピクセルを有する。
【0017】
本出願人の研究により、拡散値が細胞密度と相関することが分かった。そのため、断面拡散強調磁気共鳴画像から導出されるラスタ画像14を始点として、理論上は、腫瘍内の細胞の不均質性を少なくとも定性的に観測することが可能である。しかしながら、現行の拡散強調磁気共鳴撮像装置によって提供されるラスタ画像の分解能は、そのような不均質性を有用な方法で示すには低すぎるため、対応関係を見るために全腫瘍摘出を実施しない限り、上記画像を実践では使用することができない。全身腫瘍摘出は、特に可能であったとしても、撮像及び生検が用をなさないことから当然のごとく論外である(また、大抵は不可能である)。
【0018】
1つの実施形態において、撮像データ12は、腫瘍200の連続的な断面を示す複数のラスタ画像14を含む。これにより、腫瘍200の三次元ビューが提供される。ここに記載の実施形態において、撮像データ12は、9枚のラスタ画像14を含む。別の実施形態において、撮像データ12は、40枚のラスタ画像14を含み、その中から、腫瘍200の正中面に最も近いセクションを示す9枚のラスタ画像14が導出される。これらのラスタ画像14のうちの1枚が図2に示されており、図の右側の尺度は、ピクセル強度と拡散パラメータ値との間の対応関係を示す。
【0019】
メモリ10は、針データ160及び手技データ162を含む、生検データ16も受信する。
【0020】
針データ160は、生検針を用いて実施される穿刺の寸法を規定する。ここに記載の実施形態において、穿刺の寸法は、穿刺直径及び穿刺長さを含み、生検針を用いたサンプリングは、その直径及び長さによって規定される実質的に円筒形の穿刺ゾーンである。ここに記載の例において、穿刺直径は実質的に0.84mmであり、穿刺長さは4.55mm±1.45mmである。
【0021】
手技データ162は、生検手技において行われる穿刺の回数を含む。行われる穿刺の回数は、2以上の整数である。実際、腫瘍200に関する十分な情報を得るためには少なくとも2回の穿刺を行うことが必要である。ここに記載の実施形態において、穿刺の回数は、2と4との間(両端を含む)に含まれる。
【0022】
手技データ162は、制約のセット300も含む。制約のセットは、1回以上の穿刺を実施する生検手技において満たすべき介入制約を規定する。制約のセットにおける制約は、腫瘍200が位置する臓器のタイプ、腫瘍200のサイズ、腫瘍200内の壊死組織500の存在、又は生検の実行に制約をかける他の任意のパラメータから生じ得る。
【0023】
ここに記載の例において、腫瘍200は肺腫瘍であり、図3に示すこの腫瘍に関連する生検制約は、以下のとおりである。
-異なる生検が全て、腫瘍200内への同じ進入点302を有する必要があること、
-異なる針軌道304、306、308が直線上にあり、最大穿刺角310内に収める必要があること、
-生検針を腫瘍に挿入する深さが、最大穿刺深さ312よりも短いこと。
【0024】
ここに記載の例において、最大穿刺角310は20度であり、最大穿刺深さ312は2.2cmである。
【0025】
制約としては以下も挙げられる。
-例えば、腫瘍の縁部から少なくとも2.5mmの穿刺の場合、この縁部への生検によって穿刺されるゾーンの近接性、
-生検中に針を通してはならない、腫瘍内の壊死組織の存在、
-穿刺を行うことができるゾーンからの脂肪組織の除外、
-特定の進入点又は進入点のセットを腫瘍の縁部に固定すること、
-癌細胞の拡散リスクを低減するために最も血管化したゾーンを回避すること、
-或る特定の進入点及び角度での穿刺を妨げる骨、例えば肺腫瘍の場合には肋骨の存在、並びに、
-想定されている臓器及び/又は生検手技の特性。例えば、前立腺の経直腸超音波生検の場合、患者は左側臥位にあるため、アクセス性が制限される。
【0026】
上述のように、ピクセルはそれぞれ、実質的に正方形であるとともに一辺が2.1mmである断面画像の領域に対応し、穿刺針の穿刺ゾーンは、実質的に0.84mmの直径及び4.55mm±1.45mmの長さを有する。そのため、ラスタ画像14の解析には2つの問題が存在する。
1)一方では、そのピクセルが腫瘍の不均質性を示すには大きすぎる。
2)他方では、そのピクセルは、単一のピクセルに対応する領域に実質的に含まれる、或る特定の拡散パラメータ及び均質性特性を有する穿刺ゾーン内の組織を生検針がサンプリングするには小さすぎる。
【0027】
アップサンプラ20は、第1の問題を克服するようにラスタ画像を精緻化する。
【0028】
そのために、アップサンプラ20は、ラスタ画像14を受信し、処理画像22へとアップサンプリングする。処理画像22は、図2図4とを比較することによって分かるように、ラスタ画像14よりも空間分解能が遥かに高い画像である。処理画像22内のピクセルのそれぞれは、画像の実質的に正方形の断面領域に対応する。処理画像22の分解能は、そのピクセルのそれぞれが、針データ160の穿刺直径よりも短い辺長を有するように、アップサンプラ20によって選択される。
【0029】
ここに記載の実施形態において、アップサンプラ20は、補間技法を適用してラスタ画像14をアップサンプリングする。使用される補間技法は、バイキュービック補間、バイリニア補間、ベルフィルタ、エルミートフィルタ、ミッチェルフィルタ、ランチョスフィルタ、又は画像に適合される他の任意の従来の補間技法とすることができる。ここに記載の例において、アップサンプラ20は、例えば、Keys, R. (1981). "Cubic convolution interpolation for digital image processing." IEEE transactions on Signal Processing. In Acoustics, Speech, and Signal Processing (Vol. 29, p. 1153)に記載のバイキュービック補間技法を適用する。
【0030】
代替的に、アップサンプラ20は、Dugad, R., & Ahuja, N. (2001). "A fast scheme for image size change in the compressed domain." IEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technology, 11(4), 461-474及びPark, H., Park, Y., & Oh, S. K. (2003). "L/M-fold image resizing in block-DCT domain using symmetric convolution." IEEE Transactions on Image Processing, 12(9), 1016-1034に記載のような離散コサイン変換(DCT)技法を適用してラスタ画像14をアップサンプリングすることができる。代替的に、機械学習ベースの技法、特にWang, Z., Chen, J., & Hoi, S. C. (2019). "Deep learning for image super-resolution: A survey." arXiv preprint arXiv:1902.06068に記載のようなディープラーニングを使用することができる。
【0031】
処理画像22は、その辺が、ラスタ画像14のピクセルのゾーンの辺よりも少なくとも5倍小さい、好ましくは、ここに記載の例におけるように20倍小さい辺を有する実質的に正方形のゾーンに対応するピクセルを有する。
【0032】
別の実施形態において、撮像装置1は、三次元において機能し、撮像データ12は、2つずつ6mmの距離だけ分離される9枚の連続断面ラスタ画像14を含む。そのため、ラスタ画像14は、2.1mm×2.1mm×6mmのボクセルを規定する。処理画像22は、各寸法が少なくとも5倍小さい、好ましくは20倍小さいボクセルを規定する。ここに記載の例において、処理画像22のボクセルはそれぞれ、0.105mm×0.105mm×0.3mmのゾーンを規定する。
【0033】
処理画像22は、ラスタ画像14よりも遥かに高い分解能を有する。処理画像内のピクセルに対応する領域は、腫瘍内の不均質性よりも遥かに小さい。ここで、処理画像22のピクセルは、第1の問題を克服するのに十分な均質性があるとともに、第2の問題を克服するのに十分に大きい複数の領域へと断面画像をスライスするために、グループ化されなければならない。
【0034】
そのために、スライサ30は、処理画像22を受信し、領域のセット32へと分割する。領域のセット32の領域34のそれぞれは、少なくとも2つずつ直接隣接する処理画像22のピクセルを含む。
【0035】
領域34は、その構成ピクセルの拡散パラメータ値の平均に実質的に等しい拡散パラメータ値に関連する。領域34のこの拡散パラメータ値は、例えば、領域34のピクセルに関連する拡散パラメータ値の平均値として、又は中央値として選択することができる。
【0036】
スライサ30は、領域34ごとに、その領域34のピクセルに関連する拡散パラメータ値の分散が閾値未満であるように、領域のセット32を特定する。そのため、領域のセット32の領域34は、その関連する拡散パラメータ値が実質的に均質である、換言すれば、その分散が低い、処理画像22の連続したピクセルのセットである。
【0037】
スライサ30は、その寸法が、針データ160の生検針によって実施される穿刺の寸法よりも大きい又は実質的に等しい断面拡散強調磁気共鳴画像の一部に領域34が対応するように、領域のセット32を更に特定する。ここで、領域34が対応する部分は、例えば実質的に等しいそれぞれの面積を有して実質的に同様の寸法を有する。領域のセット32の各領域34に関連する拡散パラメータは、拡散パラメータのセット36を形成する。
【0038】
1つの実施形態において、スライサ30は、サイズに関する制約及び各領域34のピクセルに関連する拡散パラメータ値の低分散を伴うスーパーピクセル法によって、処理画像22を領域のセット32へと分割する。ここに記載の例において、使用されるスーパーピクセル法は、Ren, X., & Malik, J. (2003, October). "Learning a classification model for segmentation." In Proceedings Ninth IEEE International Conference on Computer Vision. (p. 10). IEEEに記載のものである。図5に示すここに記載の例において、スーパーピクセルは、ラスタ画像14のピクセルに対応する部分よりも僅かに大きいサイズを有する断面拡散強調磁気共鳴画像の部分に対応する。代替的に、Stutz, D., Hermans, A., & Leibe, B. (2018). "Super-pixels: An evaluation of the state-of-the-art." Computer Vision and Image Understanding, 166, 1-27に記載のスーパーピクセル法のうちの1つを使用することができる。
【0039】
図5において、断面拡散強調磁気共鳴画像の一部は、壊死組織に対応する領域500であるため考慮されない。領域500に対応するデータの特定は、アップサンプラ20、スライサ30、又は撮像装置1の別の部分によって実施することができる。代替的に、領域500に対応するデータは、例えば、生検操作を行う前に操作者が特定することができる。
【0040】
代替的に、スライサ30は、Duan, L., & Lafarge, F. (2015). "Image partitioning into convex polygons." In Proceedings of the IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (pp. 3119-3127)に記載の凸多角形分割方法によって、処理画像22を領域のセット32へと分割することができる。この方法は、処理画像22内に既に描かれた直線に合致することによってそのセルが凸多角形であるボロノイ図の構築に基づく。ここで、その寸法を制御することができるとともに、サブピクセル尺度における処理画像22内の形状又はオブジェクトの縁部を保持する領域34を得ることができる。ここで、領域のセット32は、処理画像22内の不均質性の表示を提供する。
【0041】
いくつかの処理画像22がアップサンプラ20によって作成される三次元の場合、スライサ30は、Xu, C., & Corso, J. J. (2012, June). "Evaluation of super-voxel methods for early video processing." In 2012 IEEE conference on computer vision and pattern recognition (pp. 1202-1209). IEEEという文献に記載のようなスーパーボクセル法を使用して、処理画像22を分割する。
【0042】
そのため、スライサ30によって特定される領域34は、
-針穿刺ゾーンが領域34のうちの1つに実質的に含まれ得るように十分に大きく、
-領域34内のサンプリングがその領域34を代表するように十分に均質性がある。
【0043】
セレクタ40は、領域34から、これらの領域内の拡散パラメータ値が全ての拡散パラメータを代表するように、いずれがサンプルに関連するかを特定する。
【0044】
そのために、セレクタ40は、拡散パラメータのセット36内で、手技データ162の行われる穿刺の回数と同数の拡散パラメータを含む拡散パラメータのサブセット42を特定する。行われる穿刺の回数が少なくとも2回であることから、拡散パラメータのサブセット42は、少なくとも2つの拡散パラメータを含む。拡散パラメータのうちの第1の拡散パラメータ420は、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ値の最初の十分位数から選択される。拡散パラメータのうちの第2の拡散パラメータ426は、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ値の最後のデシルから選択される。第1の拡散パラメータ420及び第2の拡散パラメータ426はそれぞれ、例えば、そのそれぞれの十分位数の中央値とすることができる。これにより、セレクタ40によって特定される拡散パラメータのサブセット42は、領域のセット32の領域34の拡散パラメータ値、特に、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータの極値を代表することが保証される。
【0045】
1つの実施形態において、第1の拡散パラメータ420及び第2の拡散パラメータ426は、拡散パラメータのセットの5番目のパーセンタイル及び95番目のパーセンタイルから、好ましくは2番目のパーセンタイル及び98番目のパーセンタイルからそれぞれ選択される。ここで、第1の拡散パラメータ420及び第2の拡散パラメータ426は、それぞれ、そのそれぞれの四分位数の中央値である。
【0046】
手技データ162の行われる穿刺の回数が2回よりも大きいとき、セレクタ40は、第1の拡散パラメータ420及び第2の拡散パラメータ426に加えて、追加の拡散パラメータ424を特定する。これらの追加の拡散パラメータ424のそれぞれの値は、第1の拡散パラメータ420の値と第2の拡散パラメータ426の値との間である。
【0047】
1つの実施形態において、セレクタ40は、拡散パラメータのサブセット42の拡散パラメータが、互いに2つずつ等距離である値を有するように、第1の拡散パラメータ420の値と第2の拡散パラメータ426との間に含まれる拡散パラメータ424を選択する。そのために、セレクタ40は、付属書Aにおける式(1)を適用する。式中、Dminは、第1の拡散パラメータ420の値であり、Dmaxは、第2の拡散パラメータ426の値であり、Nは、手技データ162の生検手技において行われる穿刺の回数であり、jは、1と行われる穿刺の回数との間の整数(両端を含む)であり、Djは、拡散パラメータのサブセット42のj番目の拡散パラメータの値である。このように得られた拡散パラメータのサブセット42は、図6に示されており、軸xは、拡散パラメータ値を示し、軸yは、拡散パラメータ値を有する確率を示す。拡散パラメータのサブセット42は、少数の拡散パラメータ(ここに記載の例においては4つ)を含むが、これらは、極値についても含めて、拡散パラメータのセット36における全ての拡散パラメータを大いに代表するものである。
【0048】
代替的に、拡散パラメータのセット36が、大いに歪んだ拡散パラメータのセット36の拡散パラメータの中央値Mの周りにその拡散パラメータの分布を有する場合、セレクタ40は、付属書Aの式(2)に従って拡散パラメータ424を特定する。式中、Diniは、付属書Aの式(3)に従って特定され、Deltaは、付属書Aの式(4)に従って特定される。この代替形態により、拡散パラメータのサブセット42が、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ分布を代表するように、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ分布の最長の裾に与えられる重みをより小さくすることが可能になる。この歪度は、例えば、ラスタ画像12におけるノイズが過多である場合に生じる可能性があり、この場合、高拡散パラメータ値よりも多く小拡散パラメータ値が擾乱される。この歪度の特定、ひいては、この歪度方法又は上述の等距離方法の選択は、手動で又はセレクタ40によって自動で実施することができる。
【0049】
1つの実施形態において、セレクタ40は、拡散パラメータのセット36の歪度係数を計算する。この歪度係数が或る特定の閾値を超える場合、セレクタ40は、式(2)に従って拡散パラメータ424を特定する。超えない場合、セレクタ40は、式(1)を適用する。
【0050】
セレクタ40は、領域のセット32から導出された領域46を含む領域のサブセット44を返す。領域のサブセット44の各領域46は、拡散パラメータのサブセット42の拡散パラメータのうちの1つに実質的に等しい拡散パラメータに関連する。さらに、ここに記載の例において、拡散パラメータの全ては、それぞれ領域46のうちの少なくとも1つに関連する。代替的に、拡散パラメータのサブセット42の拡散パラメータごとに、領域のサブセット44は、拡散パラメータのサブセット42の上記拡散パラメータに関連する領域のセット32の領域34の全てを含むことができる。拡散パラメータのセットが四分位数にスライスされる実施形態において、領域のサブセット44の各領域46の拡散パラメータは、拡散パラメータの関連するサブセット42の拡散パラメータと同じ四分位数に含まれる。
【0051】
領域のサブセット44は、拡散パラメータのセット36内に十分に分散される拡散パラメータ値を有する領域46を含む。実際、拡散パラメータ値が2つずつ異なるこれらの複数の領域46からのサンプリングは、全ての領域34を代表する。
【0052】
しかしながら、腫瘍200は、制約のセット300の形状、又は壊死領域500の存在等、複数の特徴を有する。これらの特徴に基づいて、ガイド50は、領域のサブセット44のうちいずれの領域をサンプリングするべきか、及びサンプリングをどのように行うべきかを特定する。
【0053】
そのために、ガイド50は、領域のサブセット44から、手技データ162の行われる穿刺の回数に等しい数の穿刺パラメータセットデータ52を特定する。穿刺パラメータセットデータ52の穿刺パラメータの各セットは、図7にここに示す例に示されている穿刺深さ520、穿刺向き522及び穿刺進入点524を含む。穿刺パラメータの各セットは、領域のサブセット44の領域46のうちの1つに実質的に含まれる穿刺ゾーン526(図11に見られる)を針データ160とともに規定する。ガイド50は、穿刺パラメータのセットが、手技データ162の制約のセット300を共に満たすように、穿刺パラメータセットデータ52の穿刺パラメータのセットを特定する。
【0054】
図8に示す例において、ガイド50は、セレクタ40から4つの領域46を含む領域のサブセット44を受信する。ここで、拡散パラメータのサブセット42は、3つの拡散パラメータP1、P2及びP3を含む。拡散パラメータP1及びP2はそれぞれ、図8において「1」及び「2」としてそれぞれ参照される領域のサブセット44の単一の領域に関連する。パラメータP3は、図8において「3」と参照される領域のサブセット44の2つの領域に関連する。その後、ガイド50は、これらの領域46から、制約のセット300に応じて穿刺に適合された、図9に示す領域のセット54を選択する。手技が3回の生検を伴うことから、この領域のセット54は、3つの領域540、542及び544を含む。領域540及び542は、それぞれパラメータP1及びP2に対応する。「3」と標示される領域544は、図8において拡散パラメータP3に対応する2つの領域のうちの一方から選択される。
【0055】
いくつかの場合、ガイド50は、領域のサブセット44が制約のセット300と不整合であると判定することができる。これは、制約のセット300を満たす当初予定していた穿刺と同じ回数の穿刺を行うことが可能でないことを意味する。この場合、セレクタ40は、以前よりも1つ少ない拡散パラメータを含む拡散パラメータの新たなサブセット42を特定し、その後、領域のサブセット44を特定するように実行される。これは、ガイド50が、制約のセット300と整合する領域のサブセット44を特定するまで、又は生検手技が可能でないと判定されるまで繰り返される。
【0056】
図10及び図11に示す別の例において、ガイド50によって選択される領域の新たなセット54は、3つの領域540、542及び544を含む。ここで、ガイド50によって特定される穿刺パラメータセットデータ52の穿刺ゾーン526は、領域の新たなセット54の領域544内に実質的に含まれる。
【0057】
ガイド50によって特定される穿刺パラメータセットデータ52は、外科医又は放射線技師に提供され、その後、外科医又は放射線技師は、手ずから又はランダムに生検を選択する場合よりも遥かに関連性の高い生検を実施することができる。さらに、行われる生検の回数が少ない、ここに記載の例においては4回未満であることから、医療リスクは大幅に低減する。
【0058】
ここで図12図15を参照する。
【0059】
ここに記載の実施形態において、撮像装置1は、穿刺パラメータセットデータ52に従って実施された生検手技の結果を抽出する。この結果は、穿刺データ58としてメモリ内に記憶される。穿刺データ58から、撮像装置1は、腫瘍200の密度マップを再構築する。
【0060】
そのために、撮像装置1は、相関器60及び構築器70を備える。相関器60は、穿刺データ58から、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ値と腫瘍200内の細胞密度値との間の相関を導出する。細胞密度は、全体細胞密度又は癌細胞密度とすることができる。構築器70は、この相関を使用して、腫瘍200内の細胞密度マップを再構築する。
【0061】
穿刺データ58は、細胞密度のセットを含む。各細胞密度は、穿刺パラメータセットデータ52の穿刺ゾーン526のうちの1つに関連する。各密度は、これに関連する穿刺ゾーン526の細胞密度を示す値を有する。
【0062】
この穿刺データ58は、外科医又は放射線技師による生検手技の後、かつ穿刺パラメータセットデータ52の穿刺ゾーン526から採取したサンプルの解析の後に、得ることができる。この穿刺データ58の解析は、Yin, Y., Sedlaczek, O., Mueller, B., Warth, A., Gonzalez-Vallinas, M., Lahrmann, B., Grabe, N., Kauczor, HU., Breuhahn, K., Vignon-Clementel, IE., Drasdo, D. (2018). "Tumour cell load and heterogeneity estimation from diffusion-weighted MRI calibrated with histological data: an example from lung cancer." IEEE transactions on medical imaging, 37(1), 35-46に記載のような組織学的方法によって実施することができる。
【0063】
相関器60は、穿刺データ58を受信し、穿刺ゾーン526のうちの1つに関連する各細胞密度値と、上記穿刺ゾーン526が実質的に含まれる領域46の拡散パラメータ値とを関連させる。相関器60は、細胞密度値と拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ値とを関連させる相関データ62を特定する。
【0064】
ここに記載の実施形態において、相関器60は、拡散パラメータ値と、穿刺パラメータセットデータ52の穿刺ゾーンのうちの1つに関連する細胞密度値とをそれぞれ関連させる対を特定する。これらの対に基づいて、相関器60は、線形補間を行い、その結果、拡散パラメータのセット36の拡散パラメータ値を細胞密度値に関連付ける。相関器60は、線形補間の結果に基づいて相関データ62を特定する。図13図14及び図15は、それぞれ2回、3回及び4回の手技データ162の穿刺の回数について線形補間を示す。図13図14及び図15は、拡散パラメータ値を示す軸xと、細胞密度を示す軸yとにフィッティングされている。拡散パラメータ値が高いほど、組織内の水分子の移動度が高いことを示し、細胞密度が低くなる。
【0065】
代替的に、相関器60によって実施される補間は、狭義単調多項式補間、又は他の狭義単調関数とすることができる。
【0066】
構築器70は、処理画像22及び相関データ62から密度データ72を特定する。密度データ72は、密度画像を含む。密度画像の各ピクセルは、処理画像22のピクセルも対応する断面画像の領域に対応する。構築器70は、密度画像の各ピクセルと、相関データ62において処理画像22の上記ピクセルの拡散パラメータ値に関連する細胞密度値とを関連させる。そのため、ラスタ画像14から、撮像装置1は、ここで、実施されるサンプリングの削減された回数を特定し、その後、これらのサンプリングの結果に基づいて、腫瘍200の細胞密度の正確なマップを再構築することができる。
【0067】
図16を参照する。図16は、行われる穿刺の回数を示す軸xと、腫瘍量値を示す軸yとにフィッティングされたものである。
【0068】
図示しない1つの実施形態において、撮像装置1は、腫瘍200の腫瘍量を特定するように構成される推定器を更に備える。ここで、推定器は、腫瘍量を導出する密度画像の全面積にわたる数値面積積分を実施する。図16は、穿刺の回数がそれぞれ2回、3回又は4回であるかに応じて、推定器によって特定される腫瘍量602、604、606を示し、この腫瘍量を基準腫瘍量608と比較したものである。穿刺の回数が多いほど、推定器によって特定される腫瘍量は、基準腫瘍量608に近くなる。撮像装置1は、そのため、2回だけの生検で腫瘍量を測定することができ、ここで、8回又は更には10回の生検によってランダムに採取した生検を伴う従来法は正確性が劣る。3回又は4回の生検の場合、穿刺の回数を少なく抑えつつも、測定される腫瘍量は更により正確である。
【0069】
ここで、撮像装置1は、そのため、穿刺パラメータセットデータ52に従ったサンプリングの結果から腫瘍200の腫瘍量を特定し、腫瘍の不均質性を可視化及び/又は定量化することができる。
【0070】
図17及び図18を参照する。各図面は、2回、3回及び4回の生検からの腫瘍量の特定に基づく3つのヒストグラムを示す。具体的には、軸xは、腫瘍量値を示し、軸yは、実施される全ての生検と比較した推定腫瘍量の値を有する生検のパーセンテージを示す。そのため、図17において、2回の生検を伴う生検手技の10%は、1mmあたり600000個の細胞の推定腫瘍量という結果になる。これらの図面において、基準腫瘍量値170も示されており、推定すべき理想的な目標値を示す。
【0071】
既存の方法と比較した本発明の利益を示すために、本発明に係る装置によって選択された生検から導出されたヒストグラムを図17に示し、一方、図18には、制約のセット300を満たすランダムに実施された穿刺から作成したヒストグラムを示す。
【0072】
これらの図面は、撮像装置1によって特定される穿刺パラメータセットデータ52により、ランダムな穿刺よりも実際の腫瘍量に遥かに近い腫瘍量を特定するように穿刺を実施することが可能になることを示す。また、これらの図面は、穿刺パラメータセットデータ52に基づいて作成される腫瘍量測定値が、ランダムな穿刺によって作成される測定値よりも遥かに少ない散布を有することも示す。
【0073】
したがって、撮像装置1によって特定される穿刺パラメータセットデータ52の使用により、相関器60、構築器70及び推定器は、遥かに信頼性が高い腫瘍量、すなわち、基準値170により近い腫瘍量を特定することが可能になる。
【0074】
撮像装置1により、外科医又は放射線技師は、非常に少ない回数の穿刺、典型的には従来の手技よりも3回~5回少ない穿刺から腫瘍量を正確かつロバストに測定することが可能になる。
【0075】
相関器60、構築器70及び推定器は、コンピュータプロセッサによって実行されるプログラムである。アップサンプラ20、スライサ30、セレクタ40及びガイド50について説明した代替形態は、相関器60、構築器70及び推定器にも適用することができる。
【0076】
上記において、スライサ30は、生検針の穿刺ゾーンよりも大きい又は穿刺ゾーンに実質的に等しいサイズを有する領域34を特定する。代替的に、スライサ30は、穿刺長さよりも短いが穿刺直径よりも大きい寸法を有する領域34を特定することができる。これに基づいて実施される生検の場合、領域540、542、544に対応するサンプリングの部分に対してのみ組織学的測定を実施する。
【0077】
代替的に、本装置は、メモリ10において、ラスタ画像14のそのピクセルが、DWIの場合の拡散パラメータの代わりに、細胞密度を反映するパラメータに関連する他のタイプの非侵襲的撮像からのデータも受信することができる。
【0078】
付属書A

(1)Dj=Dmin+(j-1)(Dmax-Dmin)/(N-1)
(2)Dj=Dini+Delta(j-1)
(3)Dini=M-min(|M-Dmin|,|M-Dmax|)
(4)Delta=2(M-Dini)/(N-1)
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【国際調査報告】