(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】血漿分離および計量のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20230719BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20230719BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G01N33/48 H
G01N1/10 B
G01N1/10 D
G01N37/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581378
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 US2021039341
(87)【国際公開番号】W WO2022005953
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ストラディンガー
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・レデン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045BA10
2G045BB04
2G045BB32
2G045BB34
2G045BB38
2G045CA25
2G045HB03
2G045HB20
2G045JA07
2G052AA30
2G052AD29
2G052AD46
2G052EA03
2G052GA29
2G052JA11
(57)【要約】
患者の液体検査試料から血漿試料を分離し計量するためのデバイス、アセンブリ、およびキットを開示する。それらを製造し使用する方法も開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの診断アッセイを実行するために患者の液体検査試料から血漿を分離するための試料デバイスであって:
毛細管流体流の経路を画定し、液体試験試料を試料デバイス内に引き込むための開口部を端部に有する、少なくとも1つのチャネルと;
少なくとも1つのチャネルと流体連通している少なくとも1つのキャビティと;
内面および外面を有し、該内面がキャビティの少なくとも1つの面の少なくとも一部を形成する少なくとも1つの膜であって、凝集した赤血球(RBC)が膜を通って流れるのを実質的に防止する細孔サイズを有する、少なくとも1つの膜と;
キャビティ内に位置し、赤血球結合または凝集物質を含む、少なくとも1つの試薬と、
を含む前記試料デバイス。
【請求項2】
膜の細孔サイズは、約5ミクロン~約20ミクロンの範囲にある、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項3】
膜の細孔サイズは5ミクロン未満である、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項4】
膜の細孔サイズは、個々のRBCが膜を通過するのを実質的に防止する、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項5】
膜は、ニトロセルロース膜、ポリスルホン膜、セルロース膜、ホウケイ酸膜、レクチン膜、抗ヒト赤血球抗体が埋め込まれた膜、およびそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項6】
RBC結合または凝集物質は、抗体、凝集タンパク質、レクチン、およびそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項7】
RBC結合または凝集物質は、コンカナバリンA、レンズマメレクチン、ジャガイモレクチン、スノードロップレクチン、リシン、ピーナッツアグルチニン、ジャカリン、ヘアリーベッチレクチン、小麦胚芽アグルチニン、エルダーベリーレクチン、イヌエンジュヘマグルチニン、ハリエニシダアグルチニン、ヒイロチャワンタケレクチン、抗ヒト赤血球抗体、およびそれらの組合せからなる群かが選択されている、請求項6に記載の試料デバイス。
【請求項8】
RBC結合または凝集物質は、膜の細孔サイズよりも小さい直径を有するビーズに結合している、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項9】
ビーズは、ラテックス、ポリエチレン、金ゾル、鉄、ホウケイ酸塩、ソーダ石灰、およびそれらの組合せからなる群から選択された材料で形成されている、請求項8に記載の試料デバイス。
【請求項10】
ビーズは、関連する色素を有する、請求項8に記載の試料デバイス。
【請求項11】
色素は、ナフトールグリーンB、フェリシアン化物、メタ重亜硫酸塩、タウリン、およびそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項10に記載の試料デバイス。
【請求項12】
少なくとも1つの試薬は抗凝固剤を含む、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項13】
抗凝固剤は、ヘパリンナトリウム、ヘパリンリチウム、ワルファリン、リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバン、エドキサバン、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびこれらの組合せからなる群から選択されている、請求項12に記載の試料デバイス。
【請求項14】
キャビティは、第1の長手方向面、第2の長手方向面、第1の端面、および第2の端面を有し、膜の内面は、キャビティの第1の長手方向面の少なくとも一部を形成している、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項15】
少なくとも1つのチャネルの少なくとも一部と、キャビティの第2の長手方向面、第1の端面、および第2の端面の各々の少なくとも一部とは、親水性物質でコーティングされている、請求項14に記載の試料デバイス。
【請求項16】
親水性物質は、スクロース、トレハロース、マルトース、デキストロース、およびそれらの組合せからなる群から選択された糖である、請求項15に記載の試料デバイス。
【請求項17】
キャビティの第2の長手方向面、第1の端面、および第2の端面は、各々、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、スチレンブタジエン、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、およびそれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1つの材料から構成されている、請求項14に記載の試料デバイス。
【請求項18】
少なくとも1つの膜は、第1の膜および第2の膜を含み、第1の膜の内面は、キャビティの第1の長手方向面の少なくとも一部を形成し、第2の膜の内面は、キャビティの第2の長手方向面の少なくとも一部を形成している、請求項14に記載の試料デバイス。
【請求項19】
患者の液体検査試料は、試料デバイスによって毛細管作用により採取され、試料デバイスを通して移送される、請求項1に記載の試料デバイス。
【請求項20】
アセンブリであって:
請求項1~19のいずれか1項に記載の試料デバイスと;
反応チャンバを有する反応カートリッジと;
を含み、
ここで、試料デバイスは、該試料デバイスの少なくとも1つのチャネルの端部の開口部が反応カートリッジとの連通から封止されるように、反応チャンバの反応カートリッジ内に位置して固定されている、前記アセンブリ。
【請求項21】
反応カートリッジは、緩衝液を収容するコンパートメントをさらに含み、該コンパートメントは、反応カートリッジの一部から延びるタブを有する取外し可能なカバーで封止され、それによって、タブの作動により緩衝液が反応チャンバ内に放出される、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項22】
患者の液体検査試料から血漿を分離する方法であって:
(a)患者の液体試験試料を、請求項1~19のいずれか1項に記載の試料デバイスと接触させる工程であって、患者の液体試験試料の少なくとも一部は、毛細管作用を介して試料デバイスの少なくとも1つのチャネル内に引き込まれ、試料デバイスのキャビティに入り、患者の液体検査試料は少なくとも1つの試薬と混合し、それにより、患者の液体検査試料内のRBCを凝集させる工程と;
(b)試料デバイスを反応カートリッジの反応チャンバ内に配置して固定する工程であって、試料デバイスの少なくとも1つのチャネルの端部の開口部が反応カートリッジとの連通から封止されるように、試料デバイスが固定される、工程と;
(c)緩衝液が試料デバイスの膜の外面に接触するように、反応カートリッジの反応チャンバ内に緩衝液を放出し、それにより、試料デバイスのキャビティ内の凝集したRBCに結合していないRBC結合または凝集物質を含む試薬が、膜を通って反応チャンバ内の緩衝液内に拡散する、工程と
を含む前記方法。
【請求項23】
患者の液体試験試料から血漿を分離し計量する方法としてさらに定義され、
(d)内部に試料デバイスが固定されている反応カートリッジを機器内に配置する工程と;
(e)反応チャンバ内の緩衝液の少なくとも1つの吸光度値を測定する工程と;
(f)少なくとも1つの吸光度値に基づいて、反応チャンバ内に存在する血漿の推定体積を決定する工程と
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
患者の液体検査試料は、ある体積の全血を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
全血の体積は、約10マイクロリットル~約30マイクロリットルの範囲にある、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による組入れの説明
本出願は、2020年6月29日に出願された米国特許仮出願第63/045,396号の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。上記特許出願の全内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れる。
【0002】
連邦政府の助成による研究または開発に関する説明
該当しない。
【背景技術】
【0003】
一般に、多くの臨床診断試験に対して、全血ではなく血漿が好ましい試料である。たとえば、HIVウイルス量検出では、ヘモグロビンまたは他の溶血生成物がウイルスRNAの検出を阻害する場合があるため、血漿は全血から分離される。ヘモグロビンおよび他の溶血生成物は、アッセイ結果を阻害する可能性があるため、血漿は溶血していないことが必要である場合がある。
【0004】
当業界では、血漿の分離は、従来、患者の全血試料の遠心分離によって行われており、これにより血漿が生成され、その後、溶血ヘモグロビンを検出するために(光学的にまたは電気化学的に)血漿をインテロゲートすることができる。遠心分離プロセスは、正確ではあるが、時間がかかり、追加の装置を必要とし、ポイントオブケア(POC)用途には非効率的である。
【0005】
医療業界では、迅速かつ可搬のケアを提供するために、ポイントオブケアシステムの開発が進められている。遠心分離は、時間的制約があり、機器のサイズが大きく、1人のオペレータが使用するため、一般にこうしたポイントオブケア診断機器での使用は実際的ではない。しかしながら、層流ろ過または毛細管作用に基づくプロセスを含む他の分離方法も、費用がかかり、複雑であり、時間がかかり、大量の血液を必要とし、かつ/または許容できないレベルの溶血を引き起こす可能性がある。また、1つまたはそれ以上の分離工程の追加により、さまざまな診断機器で実行される診断アッセイのためにCLIA下で免除ステータスが除去される可能性がある。
【0006】
血漿分離に関連する当技術分野における他の先行する開示は、全血毛細管試料から血漿を分離するためにジャガイモレクチンが埋め込まれた膜を利用するか(特許文献1)、ろ過膜により血漿を分離するか(特許文献2)、または圧力駆動システム(たとえば、プランジャ)を使用した。これらの開示は、複雑であり、大きい試料サイズを必要とし、かつ/または血漿試料を放出するように設計されていないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/191450号
【特許文献2】国際公開第2009/068027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、当技術分野では、先行技術における不都合および欠点を克服する新規の改善された診断デバイスおよび方法が引き続き必要とされている。したがって、単純であり、必要な試料がより小さく、血漿試料の放出を可能にする、血漿試料を分離するための新規の改善されたデバイスおよび方法が必要とされている。特に(ただし限定としてではなく)、少なくとも1つの分析物検出および/または診断アッセイで使用するために患者の抽出された血漿試料を分離し計量することができる、統合された、改善された血漿分離および試料計量デバイスが、目下必要とされている。本開示は、こうしたデバイス、アセンブリ、および方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に従って構成された試料デバイスの1つの非限定的な実施形態の正面図である。
【
図4】本開示の1つの非限定的な実施形態に従って、反応カートリッジの反応チャンバ内に位置し固定された、
図1の試料デバイスの側面図である。
【
図5】血漿試料混合/抽出に
図1の試料デバイスを使用する方法をグラフィカルに示す図である。第1のパネル:接触前の試料デバイスおよび試験試料。第2のパネル:試料が、試料デバイスの毛細管チャネル内に引き込まれている。第3のパネル:赤血球(RBC)が凍結乾燥試薬(限定されないが、レクチン、ビーズに結合した色素など)と混合する。試薬が混合すると、RBCは凝集し、遊離した試薬の量はRBCに反比例する。第4のパネル:試験試料を収容している試料デバイスは、反応カートリッジの反応チャンバ内に位置し固定されている。遊離した試薬は、血漿とともに試料デバイスの外に拡散する。そのため、試薬の量は、血漿と相関する。下方のパネルは、その上方の対応するパネルで起こる混合、凝集、および拡散反応を示す。
【
図6】本開示に従って構成された試料デバイスの別の非限定的な実施形態の正面図である。
【
図7】本開示による方法で使用されるビーズ/色素結合によるヘマトクリットの決定に対する鎌状赤血球のあり得る影響の空間充填モデルおよび推定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態を、例示的な文言および結果によって詳細に説明する前に、本開示は、それらの適用が、以下の説明に示す構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、またはさまざまな方法で実施もしくは実行することができる。したがって、本明細書で使用する文言は、あり得る最も広い範囲および意味が与えられることが意図されており;実施形態は、例示的なものであり網羅的ではないことが意図されている。また、本明細書で採用する語法および専門用語は、説明を目的とするものであり、限定的であるとみなすべきではないことを理解されたい。
【0011】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示に関連して使用する科学および技術用語は、当業者に一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。上述した技法および手順は、概して、当技術分野において周知の従来の方法に従って、かつ本明細書を通じて引用および考察するさまざまな一般的かつより詳細な参照文献に記載されるような、従来の方法に従って実行される。本明細書に記載する外科手術、麻酔、創傷治癒、および感染制御に関連して利用する命名法、ならびにそれらの医療手順および技法は、当技術分野で周知であり一般的に使用されているものである。標準的な技法は、感染症診断および治療用途に使用されている。
【0012】
本明細書で言及するすべての特許、公開特許出願、および非特許文献は、本開示が関係する技術分野の当業者の技術レベルを示す。本明細書のいずれかの部分で参照するすべての特許、公開特許出願、および非特許文献は、各個々の特許または公報が参照により組み入れられるものと明確かつ個々に示されているのと同じ範囲まで、それらの全体が参照により明示的に組み入れられる。
【0013】
本明細書で開示するデバイス、アセンブリ、および/または方法のすべては、過度の実験を行うことなく、本開示を考慮して作製および実行することができる。それらのデバイス、アセンブリ、および方法について、特定の実施形態に関して説明しているが、本開示の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載するデバイス、アセンブリ、および/または方法に、かつ、方法の工程にまたは一連の工程に、変形形態を適用することができることが、当業者には明らかとなろう。すべてのこうした同様の、当業者には明らかな置換形態および変更形態は、添付の特許請求の範囲によって定義するような本開示の趣旨、範囲、および概念にあると考えられる。
【0014】
本開示に従って利用する場合の以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0015】
「a」または「an」という用語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語とともに使用する場合、「1つの」を意味する場合があるが、「1つまたはそれ以上の」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは2つ以上の」という意味とも一貫する。したがって、「a」、「an」、および「the」という用語は、別段文脈が明示的に示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、たとえば、「一化合物」と述べる場合、それは、1つもしくはそれ以上の化合物、2つ以上の化合物、3つ以上の化合物、4つ以上の化合物、またはそれよりも多い化合物を指す場合がある。「複数」という用語は、「2つ以上」を指す。
【0016】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つと、限定されないが2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む、1つよりも多い任意の量とを含むものと理解されよう。「少なくとも1つ」という用語は、それが付加される用語に応じて、最大100もしくは1000またはそれ以上に広がる場合があり;加えて、100/1000という量は、それより多い限界値が十分な結果をもたらす場合があるため、限定的なものとみなされるべきではない。加えて、「X、Y、およびZのうち少なくとも1つ」という用語の使用は、Xのみ、Yのみ、およびZのみ、ならびにX、Y、およびZのうちの任意の組合せを含むものと理解されよう。
【0017】
序数の用語(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、単に2つ以上の項目を区別することを目的とするものであり、別段明示的な言及がない限り、たとえば、1つの項目の別の項目に対する任意の順番もしくは順序もしくは重要性または任意の追加の順序を暗示するようには意図されていない。
【0018】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されていない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するように用いている。たとえば、「AまたはB」という条件は、以下のいずれかによって満足される:Aは真であり(または存在し)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在せず)かつBは真である(または存在する)、ならびにAとBとの両方が真である(または存在する)。
【0019】
本明細書で用いる場合の、「1つの実施形態」、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの例」、「たとえば」、または「一例」のいずれに対する言及も、その実施形態に関連して記載する特定の要素、構成、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。たとえば、本明細書のさまざまな箇所で「いくつかの実施形態では」または「1つの例」という言い回しが現れる場合、それは、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例に対するすべての言及は、特許請求の範囲に対して非限定的であるものとして解釈されるべきである。
【0020】
本出願を通して、「約」という用語は、ある値が組成物/装置/デバイスに対して固有の誤差のばらつきを含むことを示すために用いており、その値、または研究対象間に存在するばらつきを決定するためにその方法が採用されている。たとえば、限定としてではなく、「約」という用語を利用する場合、指定された値は、特定された値からプラスマイナス20パーセント、または15パーセント、または12パーセント、または11パーセント、または10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセント、または1パーセント変動する可能性があり、それは、そうした変動は開示する方法を実行するのに適切であるためであり、こうしたことは当業者には理解されている。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合の「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」など、任意の形態の含む)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」など、任意の形態の有する)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」など、任意の形態の含む)、または「含む(containing)」(ならびに「含む(contains)」および「含む(contain)」など、任意の形態の含む)は、包括的または非限定的であり、追加の、列挙されていない要素または方法工程を排除するものではない。たとえば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるとは限らず、明示的に列挙されていないかまたはそこに本質的に存在する他の要素を含む場合がある。
【0022】
本明細書で用いる場合の「またはそれらの組合せ」という用語は、その用語に先行する列挙された項目のすべての順列および組合せを指す。たとえば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は:A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、また特定の文脈で順序が重要である場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABのうちの、少なくとも1つを含むことが意図されている。この例を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1つまたはそれ以上の項目の繰返しを含む組合せが明確に含まれる。当業者であれば、文脈から別段明確でない限り、典型的には、任意の組合せでの項目または用語の数に限定がないことが理解されよう。
【0023】
本明細書で用いる場合の「実質的に」という用語は、その後に記載する事象もしくは状況が完全に生じること、またはその後に記載する事象もしくは状況が大部分またはかなりの度合いで生じることを意味する。たとえば、「実質的に」という用語は、特定の事象または状況に関連する場合、その後に記載する事象または状況が、少なくとも80%の確率で、または少なくとも85%の確率で、または少なくとも90%の確率で、または少なくとも95%の確率で生じることを意味する。「実質的に隣接して」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに近接しているが、互いに100%は隣接していないこと、または2つの項目のうちの一方の一部が他方の項目に100%は隣接していないが、他方の項目と近接していることを意味する場合がある。
【0024】
本明細書で用いる場合の「試料」という用語は、本開示に従って利用することができる任意のタイプの生体試料を含むものと理解されよう。いくつかの実施形態では、試料は、任意の流体試料、および/または流体であることが可能な試料(たとえば、流体基材と混合された生体試料)であり得る。利用することができる生体試料の例としては、限定されないが、全血またはその任意の部分(すなわち、血漿または血清)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、外科用ドレーン流体、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、尿、ぬぐい液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、それらの組合せなどが挙げられる。特定の(ただし非限定的な)例では、生体試料は、尿、糞便、性感染症(STI)ぬぐい液、呼吸採取物などであり得る。
【0025】
本明細書で用いる場合の「液体試験試料」という用語は、本開示に従って利用することができる任意のタイプの生体流体試料を含むと理解されよう。利用することができる生体試料の例としては、限定されないが、全血またはその任意の部分(すなわち、血漿または血清)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙液、粘液、尿、膀胱洗浄液、精液、組合せなどが挙げられる。本開示に従って利用される試料の体積は、約0.1~約100マイクロリットルの範囲にあり得る。本明細書で用いる場合の「体積」という用語は、それが本開示に従って利用される液体試験試料に関連するとき、約0.1マイクロリットル~約100マイクロリットル、または約1マイクロリットル~約75マイクロリットル、または約2マイクロリットル~約60マイクロリットル、または約50マイクロリットル以下、または約40マイクロリットル以下を意味する。本開示の1つの非限定的な実施形態では、液体試験試料は、約10マイクロリットル~約30マイクロリットルの体積を含みかつ/またはそうしたものからなる患者の全血試料である。
【0026】
「患者」という用語は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。いくつかの実施形態では、患者は哺乳動物である。いくつかの他の実施形態では、患者はヒトである。処置目的の「哺乳動物」とは、ヒト、家畜、非ヒト霊長類、および犬、馬、猫、牛などの動物園、スポーツ、またはペットの動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。
【0027】
「血漿」という用語は、身体を通して細胞およびタンパク質を運ぶ、全血試料内の血液細胞を懸濁状態で保持する責務を有する血液の液体成分を指す。1つの非限定的な実施形態では、血漿は、単に例として、血清アルブミン、グロブリンおよびフィブリノーゲン等の溶解したタンパク質および/または分析物、グルコース、凝固因子、単に例としてナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、重炭酸塩、塩化物イオン等の電解質、ホルモン、二酸化炭素、および酸素を含みかつ/またはそれらからなることができる。
【0028】
「反応カートリッジ」という用語は、本明細書に記載するような少なくとも1つの診断アッセイを実行することができる任意のデバイスを含む。反応カートリッジは、診断アッセイを手動で実行することができるが、大部分の場合、反応カートリッジは、診断アッセイの実行を自動化するシステムに挿入される。1つの非限定的な実施形態では、反応カートリッジは、Siemens Healthineers,Inc.から市販されているDCA Vantage(登録商標)Analyzerによって行われる自動診断アッセイで使用される反応カセットを含む。
【0029】
ここで特定の実施形態を参照すると、本開示は、1つまたはそれ以上の診断アッセイを実行するために患者の液体試験試料から血漿試料を分離し計量するためのデバイス、アセンブリ、キット、および方法に関する。試料デバイスが、患者の液体検査試料を採取し、試料から血漿を分離および/または計量するように構成されている。試料デバイスは、単独で利用してもよく、または、分離および/または計量された血漿試料に対して診断アッセイを実行するために診断機器内に配置されるように構成された反応カートリッジと組み合わせて、アセンブリで利用してもよい。
【0030】
いくつかの非限定的な実施形態では、試料デバイスは、毛細管流体流のための経路を画定し、液体試験試料を試料デバイスに引き込むために端部に開口部を有する、少なくとも1つのチャネルを含む。試料デバイスは、少なくとも1つのチャネルと流体連通しているキャビティをさらに含む。試料デバイスは、内面および外面を有する膜も含み、膜の内面は、キャビティの少なくとも1つの側面の少なくとも一部を形成し;加えて、膜は、凝集した赤血球(RBC)がそこを通って流れるのを実質的に防止する細孔サイズを有している。試料デバイスは、キャビティ内に位置する少なくとも1つの試薬をさらに含み、少なくとも1つの試薬は、RBC結合または凝集物質を含む。
【0031】
本開示のいくつかの非限定的な実施形態は、本明細書に開示するかまたは別段企図される試料デバイスのうちの任意のものと、反応カートリッジとを含む、アセンブリを対象とする。反応カートリッジは反応チャンバを有し、試料デバイスは、試料デバイスの少なくとも1つのチャネルの端部の開口部が反応カートリッジとの連通から封止されるように、反応チャンバの反応カートリッジ内に位置し固定される。
【0032】
本開示のいくつかの非限定的な実施形態は、患者の液体試験試料から血漿を分離する方法を対象とし、本方法は:(a)患者の液体試験試料を、本明細書に開示するかまたは別段企図される試料デバイスのうちの任意のものと接触させる工程であって、患者の液体試験試料の少なくとも一部は、毛細管作用を介して試料デバイスの少なくとも1つのチャネル内に引き込まれ、試料デバイスのキャビティに入り、患者の液体検査試料は少なくとも1つの試薬と混合し、それにより、患者の液体検査試料内のRBCを凝集させる工程と;(b)試料デバイスを反応カートリッジの反応チャンバ内に配置して固定する工程であって、試料デバイスの少なくとも1つのチャネルの端部の開口部が反応カートリッジとの連通から封止されるように、試料デバイスが固定される、工程と;(c)緩衝液が試料デバイスの膜の外面に接触するように、反応カートリッジの反応チャンバ内に緩衝液を放出し、それにより、試料デバイスのキャビティ内の凝集したRBCに結合していないRBC結合または凝集物質を含む試薬が、膜を通って反応チャンバ内の緩衝液内に拡散する、工程とを含む。
【0033】
本開示のいくつかの非限定的な実施形態は、患者の液体試験試料から血漿を分離し計量する方法を対象とする。本方法は、本明細書において上述した工程(a)~(c)を含み、(d)内部に試料デバイスが固定されている反応カートリッジを機器内に配置する工程と;(e)反応チャンバ内の緩衝液の少なくとも1つの吸光度値を測定する工程と;(f)少なくとも1つの吸光度値に基づいて、反応チャンバ内に存在する血漿の推定体積を決定する工程とをさらに含む。
【0034】
ここで図、より詳細には
図1~3を参照すると、そこには、患者の液体試験試料を採取するとともに、試料から血漿の分離しかつ/または計量するように構成されている、試料デバイス10の非限定的な実施形態が示されている。1つの非限定的な実施形態では、試料デバイス10は、ハウジング12と、試料チャネル20と、キャビティ30と、膜40と、キャビティ30内に配置された、RBC結合または凝集物質を含む少なくとも1つの試薬50とを含む。
【0035】
いくつかの非限定的な実施形態では、ハウジング12は、上端部14、下端部16、および側壁18を含む。いくつかの(ただし非限定的な)実施形態では、ハウジング12は、本明細書においてさらに詳細に後述するように、反応カートリッジ内に試料デバイス10を固定するためのロックキャッチとして機能する、フランジ52をさらに含む。
【0036】
ハウジング12、試料チャネル20、およびキャビティ30は、ハウジング12の下端部16がキャビティ30および試料チャネル20を形成するように、一体的に形成することができる。代替として、キャビティ30および/または試料チャネル20は、ハウジング12の下端部16に取り付けてもよい。同様に、フランジ52は、ハウジング12と一体的に形成するか、または、別個に形成してハウジング12に取り付けてもよい。
【0037】
ハウジング12、キャビティ30、試料チャネル20、および/またはフランジ52の各々は、ハウジング12、キャビティ30、試料チャネル20、および/またはフランジ52が本開示に従って機能するのを可能にする任意の材料から、独立して構成することができる。ハウジング12、キャビティ30、試料チャネル20、および/またはフランジ52の各々を構成することができる非限定的な例としては、限定されないが、単に例として、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマー、および/または、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、スチレンブタジエン、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、およびそれらの組合せなどの合成繊維など、合成および/または天然に存在するもしくは天然由来のポリマー(有機および/または無機の両方)が挙げられる。ハウジング12、キャビティ30、試料チャネル20、および/またはフランジ52は、各々、限定なしに、円形、卵形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、または多角形を含む、本開示の方法を達成することができる任意の形状であるように構成することができる。
【0038】
試料チャネル20は、患者の液体検査試料を採取するように構成されている。試料チャネル20は、流体流(限定されないが、毛細管流体流など)のための経路を画定し、その下端部24に、液体試験試料を試料デバイス10内に引き込むための開口部22を有する。本明細書では、採取機構の1つの非限定的な例として毛細管作用を介する採取を開示しているが、当業者であれば、患者の液体試験試料が、限定なしに、患者の液体試験試料を試料チャネル20内に引き込む負圧差の生成を介するなど、当技術分野において一般的に既知の任意の方法を介して、試料チャネル20によって採取することができることを容易に理解するはずである。
【0039】
試料チャネル20は、キャビティ30に通じている(すなわち、流体的に連通している)。キャビティ30は、第1の長手方向面32、第2の長手方向面34、第1の端面36、および第2の端面38を有する。
【0040】
試料チャネル20および/またはキャビティ30のサイズおよび体積容量は、採取されている患者の液体検査試料のタイプおよび量によって変化する。いくつかの非限定的な実施形態では、試料チャネル20および/またはキャビティ30は、約0.1マイクロリットル~約100マイクロリットル、または約0.5マイクロリットル~約95マイクロリットル、または約1マイクロリットル~約90マイクロリットル、または約2マイクロリットル~約85マイクロリットル、または約5マイクロリットル~約80マイクロリットル、または約10マイクロリットル~約75マイクロリットル、または約15マイクロリットル~約70マイクロリットル、または約20マイクロリットル~約65マイクロリットル、または約25マイクロリットル~約60マイクロリットル、または約30マイクロリットル~約55マイクロリットル、または約35マイクロリットル~約50マイクロリットル、または約40マイクロリットル以下の体積を保持するように適用するとともにそうしたサイズとすることができる。限定としてではなく、単に例として、患者の液体検査試料が全血である場合、試料チャネル20および/またはキャビティ30の体積容量は、約10マイクロリットル~約20マイクロリットルの体積を含むことができる。
【0041】
膜40は、内面42および外面44を有し、膜の内面42がキャビティ30の第1長手方向面32の少なくとも一部を形成するように、キャビティ30内に配置される。膜40は、凝集した赤血球(RBC)が膜40を通って流れるのを実質的に防止する細孔サイズを有する。
【0042】
膜40は、キャビティ30の第1の端面36と第2の端面38との間に完全に位置するとともに収容され、試料チャネル20に対して実質的に平行な向きで構成されるが;当業者は、本開示の方法を達成することができる任意の位置に膜40を向けることができることを、容易に理解するはずである。加えて、膜40は、キャビティ30の第1の長手方向面32の少なくとも一部を形成するものとして示されているが、この構成は単に例示を目的とするものであり;膜40は、キャビティ30の任意の面(たとえば、限定されないが、キャビティ30の第2長手方向面34など)の少なくとも一部を形成してもよいことが理解されよう。
【0043】
膜40は、当技術分野で既知であるかまたは別段本明細書において企図される任意の方法によって、キャビティ30に固定され、その第1の長手方向面32の一部としてキャビティ30内の適所に保持される。取付け方法の非限定的な例としては、超音波溶接、接着剤、レーザ溶接など、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0044】
膜40は、(以下にさらに詳細に記載するように)血漿が膜40を通り、キャビティ30および試料デバイス10を出て自由に移動することができるようにしながら、少なくとも凝集した赤血球(RBC)が膜40を通って流れるのを実質的に防止することができる任意の材料で構成することができる。膜40を構成することができる材料の非限定的な例としては、レクチン、抗ヒト赤血球(anti-human RBC)抗体、ニトロセルロース、ポリスルホン、セルロース、ボロシリケート、他のポリマー等、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。本開示に従って利用することができる膜の特定の非限定的な例としては、レクチン(限定されないが、コンカナバリンA、レンズマメレクチン、ジャガイモレクチン、スノードロップレクチン、リシン、ピーナッツアグルチニン、ジャカリン、ヘアリーベッチレクチン、小麦胚芽アグルチニン、エルダーベリーレクチン、イヌエンジュ(Maackia amurensis)ヘマグルチニン、ハリエニシダ(Ulex europaeus)アグルチニンおよびヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチンなど)から形成されたかまたはそれが埋め込まれた膜;抗ヒト赤血球抗体から形成されたかまたはそれが埋め込まれた膜;非対称ポリスルホン膜(VIVID(商標)血漿分離膜(Pall Life Sciences、Port Washington、NY))、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0045】
本明細書で上述したように、膜40は、凝集した赤血球(RBC)が膜40を通って流れるのを実質的に防止する細孔サイズを有する。いくつかの非限定的な実施形態では、膜40は、約0.01μm、約0.05μm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、または約20μmの細孔サイズを有する。加えて、膜40は、上記値のうちの2つの範囲(すなわち、約5μm~約20μmの範囲)にある細孔サイズ、および上記の値のうちの任意の2つの間にある整数である値を有することができる。
【0046】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、膜40は、約5μm~約20μmの範囲にある細孔サイズを有する。別の特定の(ただし非限定的な)実施形態では、膜40は、5μm未満である細孔サイズを有する。
【0047】
別の非限定的な実施形態では、膜40は、個々のRBCが膜40を通って流れるのを実質的に防止する細孔サイズを有することができる。
【0048】
試料デバイス10の外部に露出される膜40の外面44の部分に対して、限定されないが、1つまたはそれ以上の分析物検出および/または診断アッセイを行うために、患者の血漿試料を反応カートリッジの反応チャネル内に(拡散によって)送達することを含む、本開示の方法を達成することができる任意の寸法を与えることができる。
【0049】
キャビティ30は、当技術分野で既知であるかまたは別段本明細書において企図される任意の方法によって、形成することができる。
図2および
図3は、キャビティ30の構造に対する1つの非限定的な実施形態を示す。ハウジング12は、試料チャネル20およびキャビティ30を包含する下部部分26を有する。下方部分26にくぼみ28が形成され、くぼみ28が、第2の長手方向面34、第1の端面36、および第2の端面38を提供するようになっている。そして、膜40は、適所に固定されて、キャビティ30の第1の長手方向面32を形成し、それによってキャビティ30を封止する。
【0050】
キャビティ30内に、少なくとも1つの試薬50が位置している。少なくとも1つの試薬は、患者の液体検査試料中に存在する赤血球と反応し、膜40を通過することができない凝集複合体を形成する、RBC結合または凝集物質を含む。本開示によれば、本明細書に記載する方法で、試料デバイス10内で機能することができる、当技術分野で既知であるかまたは別段本明細書において企図される任意のRBC結合または凝集物質を、利用することができる。本開示に従って利用することができるRBC結合または凝集物質の非限定的な例としては、抗体、凝集タンパク質、レクチン、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0051】
特定の(ただし非限定的な)実施形態では、RBC結合または凝集物質は、コンカナバリンA、レンズマメレクチン、ジャガイモレクチン、スノードロップレクチン、リシン、ピーナッツアグルチニン、ジャカリン、ヘアリーベッチレクチン、小麦胚芽アグルチニン、エルダーベリーレクチン、イヌエンジュヘマグルチニン、ハリエニシダアグルチニン、ヒイロチャワンタケレクチン、抗ヒト赤血球抗体、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0052】
いくつかの非限定的な実施形態では、RBC結合または凝集物質は、ビーズに結合している。本開示によれば、診断アッセイに使用される、当技術分野で既知であるかまたは別段本明細書において企図される任意のビーズを利用することができる。加えて、ビーズを任意の材料で形成し、ビーズに対して、ビーズが本開示に従って機能するのを可能にする任意の形状を与えることができる。唯一の要件は、ビーズが膜の細孔サイズよりも小さい直径を有していなければならないということである。
【0053】
ビーズを形成することができる材料の非限定的な例としては、ラテックス、ポリエチレン、金ゾル、鉄、ホウケイ酸塩、ソーダ石灰、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0054】
いくつかの非限定的な実施形態では、ビーズは、関連する色素を有する。本開示によれば、当技術分野で既知であるかまたは別段本明細書で企図される任意の色素を利用することができる。利用することができる色素の非限定的な例としては、ナフトールグリーンB(700~900nm)、フェリシアン化物、メタ重亜硫酸塩、タウリン(約425nm)等、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0055】
いくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1つの試薬50は、RBC結合または凝集物質に加えて、他の試薬を含んでもよい。たとえば(ただし限定としてではなく)、少なくとも1つの試薬50は、少なくとも1つの抗凝固化合物および/または少なくとも1つの糖を含んでもよい。
【0056】
代替としてかつ/またはそれに加えて、チャネル20の内面の少なくとも一部および/またはキャビティ30の第2の長手方向面34、第1の端面36、および第2の端面38のうちの1つまたはそれ以上の少なくとも一部を、(限定されないが)糖など、少なくとも1つの抗凝固剤および/または少なくとも1つの親水性物質で予めコーティングしてもよい。
【0057】
本開示に従って利用することができる抗凝固剤の非限定的な例としては、ヘパリンナトリウム、ヘパリンリチウム、ワルファリン、リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバン、エドキサバン、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、エチレンジアミン四酢酸(EDTA;限定されないがK2-EDTAなど)など、およびそれらの組合せが挙げられる。本開示に従って利用することができる糖類の非限定的な例としては、スクロース、トレハロース、マルトース、デキストロースなど、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0058】
少なくとも1つの試薬50は、存在する化合物が本開示に従って機能するのを可能にする任意の形態で、キャビティ30内に存在することができる。たとえば、ただし限定としてではなく、少なくとも1つの試薬50は、1つまたはそれ以上の乾燥液滴として、または1つまたはそれ以上の凍結乾燥粉末試薬として存在することができる(ここで、乾燥/凍結乾燥試薬は、キャビティ30に引き込まれた液体試験試料中において容易に再構成される)。代替として、少なくとも1つの試薬50は、液体形態で存在してもよい。
【0059】
少なくとも1つの試薬50は、チャネル20およびキャビティ30内に試料を引き込んだときに、少なくとも1つの試薬50が患者の液体試験試料と反応することを確実にする任意の方法で、キャビティ30内に配置することができる。たとえば(ただし限定としてではなく)、少なくとも1つの試薬50は、単にキャビティ30内にランダムに配置してもよく;代替として、少なくとも1つの試薬50は、キャビティ30の面32、34、36、および38のうちの1つまたはそれ以上の少なくとも一部に少なくとも1つの試薬50を固定する/取り付けることによって、キャビティ30内に配置してもよい。
【0060】
ここで
図4を参照すると、そこには、診断アッセイアセンブリ100を形成するように反応カートリッジ110内に挿入されその中に固定された、
図1~
図3に記載する試料デバイス10が示されている。
図1~
図3に関する試料デバイス10の説明は、
図4に示す試料デバイス10に完全に適用可能とみなされ、簡潔にするために、ここでは繰り返さないものとする。
【0061】
試料デバイス10は、試料デバイス10のチャネル20の開口部22が反応チャンバ112との連通から封止されるように、反応カートリッジ110の反応チャンバ112内に位置する(また、フランジ52を介してその内部に固定される)。たとえば(ただし限定としてではなく)、反応カートリッジ110は、開口部22を封止するように機能するシーラント114(限定されないが、ゴムまたは可塑剤で軟化した別のポリマーなど)を有するものとして示す。
【0062】
いくつかの非限定的な実施形態では、反応カートリッジ110は、緩衝液118が封入されているコンパートメント116をさらに含む。コンパートメント116は、反応カートリッジ110の外部の一部から延びるタブ122を有する取外し可能なカバー120で封止されている。このように、タブ122を作動させて、緩衝液118をコンパートメント116から出て反応チャンバ112内に放出して、試料デバイス10の膜40と接触させることができる。緩衝液118の膜40との相互作用により、試験試料中に存在する血漿が、試料デバイス10から緩衝液118内に拡散する。
【0063】
反応カートリッジ110に、反応カートリッジ110が本開示に従って機能するのを可能にする任意の形状、構成、および寸法を与えることができる。したがって、
図4に示す構造は、単に例示のみを目的とするものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0064】
したがって、試料デバイス10を反応カートリッジ110の反応チャンバ112内に配置して固定し、タブ122を引いて緩衝液118を試料デバイス10の膜40と接触するように放出した後、血漿は、試料デバイス10から出て緩衝液118内に拡散する。加えて、凝集した赤血球に結合していない任意のRBC結合または凝集物質試薬50も、膜40を通って反応チャンバ112内の緩衝液118内に拡散する。
【0065】
このように、膜40を通って反応チャンバ112内に拡散したRBC結合または凝集物質試薬50に付着した色素の量を決定することができる。反応チャンバ112内に存在する色素の量は、試料のヘマトクリットに逆相関し、それによって、最終分析物濃度を計算するための血漿試料体積の推定値が得られる。
【0066】
図5は、血漿試料混合/抽出のために
図1の試料デバイスを使用する方法を示す。第1のパネルは、試験試料と接触する前の本開示に従って構成された試料デバイスを示し;試料デバイス内に存在する試薬(限定されないが、レクチンおよびビーズに結合した色素など)は、(単に例示の目的で)膜の長さに沿って色付きで描かれている。第2のパネルでは、試験試料は、試料デバイスの毛細管チャネル内に引き込まれている。赤血球(RBC)が凍結乾燥試薬と混合すると、RBCが凝集し;これは、第3のパネルにおいて色の変化によって示す。第4のパネルでは、試験試料を収容している試料デバイスは、反応カートリッジの反応チャンバ内に位置して固定されている。そして、遊離した試薬および血漿は試料デバイスから出て拡散し、遊離した試薬の量は試験試料中に存在するRBCに反比例する。そして、試薬の量は血漿と相関する。下方のパネルは、その上方の対応するパネルで生じる混合、凝集、および拡散反応を示す。
【0067】
アセンブリ100は、診断機器内に位置することができ、アセンブリ100をインテロゲートして、反応チャンバ112内に存在する緩衝液118の少なくとも1つの吸光度値を測定することができる。この吸光度値に基づいて、反応チャンバ112内に存在する血漿の推定体積を決定することができる。
【0068】
試料がインテロゲートされる波長は、利用される特定の色素に基づいて決定され;特定の波長の決定は、十分に当業者の範囲内にあり、典型的には、市販の色素を用いて明らかになる。したがって、特定の波長の選択についてのこれ以上の説明は、不要であると考えられる。
【0069】
いくつかの非限定的実施形態では、少なくとも1つの吸光度値は、約530nm~約750nmの範囲の波長など、約430nm~約999nmの範囲の波長で測定される。利用することができる波長の特定の(ただし非限定的な)例としては、約531nmおよび約725nmが挙げられる。
【0070】
反応カートリッジは、分離された血漿に対して診断アッセイを実行するための1つまたはそれ以上の試薬をさらに含むことができる。たとえば、本開示のデバイス、アセンブリ、キット、および方法において、生物学的、化学的、または生化学的分析およびアッセイの分野で使用される実質的に任意の試薬を使用することができることが企図される。これらの試薬は、対象の分析物に結合すると物理的かつ/または化学的変化を起こすことができ、それによって、試薬-分析物複合体によって生成される信号の強度、性質、周波数、またはタイプが、液体試料内に存在する分析物の濃度に正比例するかまたは反比例することが企図される。これらの試薬は、対象の分析物と反応したときに色の変化を示すことができる、指示染料、金属、酵素、ポリマー、抗体、ならびに、電気化学的に反応する成分および/または化学物質を含むことができる。診断アッセイ試薬に対する唯一の要件は、前記試薬が、膜を通って緩衝液中に拡散する未結合のRBC結合または凝集物質の検出および測定を阻害しないことである。
【0071】
本願で特許請求する発明の概念のデバイス、アセンブリ、および方法において、流体試料中の分析物を検出および測定する任意の方法を使用することができる。当技術分野では、分析物を検出するための種々のアッセイが周知であり、それには、限定されないが、化学アッセイ、酵素阻害アッセイ、抗体染色、ラテックス凝集、ラテックス凝集阻害、およびラジオイムノアッセイなどのイムノアッセイが挙げられる。本明細書における「抗体」という用語は、最も広範な意味で使用され、たとえば、インタクトモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性(たとえば、抗原/分析物結合)を示す抗体フラグメントを指す。抗体は、任意のタイプまたはクラス(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)またはサブクラス(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものであり得る。
【0072】
本明細書では、液体試験試料中に存在する少なくとも1つの対象の分析物を検出するために、(限定されないが、連続分析化学およびイムノアッセイを含む)イムノアッセイについて主に考察しているが、当業者であれば、本開示が、イムノアッセイに厳密に限定されず、限定ではなく例として、化学および化学ベースのアッセイ、核酸アッセイ、脂質ベースのアッセイ、および血清学ベースのアッセイを含むことができることを容易に理解できるはずである。ラジオイムノアッセイ、酵素結合イムノアッセイ、および直接標識イムノアッセイ(限定されないが、金ゾルなど)を含むイムノアッセイは、本願で特許請求し開示する発明の概念とともに使用される、有用な方法である。本発明の方法において、たとえば、競合的および非競合的イムノアッセイフォーマット、抗原/分析物捕捉アッセイ、および2抗体サンドイッチアッセイを含むさまざまなイムノアッセイフォーマットを使用することができる。本願で特許請求し開示する発明の概念において、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)も同様に使用することができる。酵素イムノアッセイの場合、酵素は、典型的には、一般にグルタルアルデヒド、過ヨウ素酸塩、ヘテロ二官能性架橋剤、またはビオチン-ストレプトアビジン複合体によって、二次抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、当業者には容易に理解されるように、本開示とともに使用するために容易に利用可能である、多種多様な異なるコンジュゲーション技法が存在する。
【0073】
限定されないが、イムノアッセイ、核酸捕捉アッセイ、脂質ベースのアッセイ、および血清学ベースのアッセイを含むアッセイは、液体試験試料中に含まれる可能性があるタンパク質、ペプチド、および核酸の多重化パネルについて開発することができ、こうしたタンパク質およびペプチドには、たとえば、ただし限定としてではなく、アルブミン、マイクロアルブミン、コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、ヘモグロビン、ミオグロビン、α-1-ミクログロビン、免疫グロブリン、酵素、タンパク質、糖タンパク質、プロテアーゼ阻害剤、薬物、サイトカイン、クレアチニン、およびグルコースが挙げられる。本明細書に開示しかつ/または本明細書で特許請求するデバイス、アセンブリ、および方法は、限定なしに、全血、血漿、血清、または尿を含む、任意の液体試験試料の分析に使用することができる。
【0074】
したがって、次いで、反応カートリッジ110の反応チャンバ112内に存在する血漿の体積を推定することと同時に、または全体的にもしくは部分的に逐次、反応カートリッジ110の反応チャンバ112内の少なくとも分析物検出および/または診断アッセイを行うために、緩衝液118を少なくとも1つの緩衝液および/または少なくとも1つの液体試薬と混合することができる。
【0075】
加えて、本方法の工程のすべては、生体試料からの血漿の所望の単離(および、存在する場合には、それぞれの診断アッセイの実行)をもたらす任意の期間内に完了することができる。本開示に従って利用することができる期間の非限定的な例としては、約1秒間、約5秒間、約10秒間、約15秒間、約20秒間、約30秒間、約45秒間、約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、約5分間、約5分間、約6分間、約7分間、約8分間、約9分間、約10分間、約11分間、約12分間、約13分間、約14分間、約15分間、約16分間、約17分間、約18分間、約19分間、約20分間、約25分間、約30分間、またはそれ以上が挙げられる。加えて、本方法は、上記の値のうちの2つの範囲にある期間、および上記の値のうちの任意の2つの間にある整数である値で完了することができる。
【0076】
本明細書で上述したように、
図1~
図3に示す構造は、単に例示を目的とするものである。本開示に従って機能することができる他の構造も、本開示の範囲内にある。たとえば(ただし限定としてではなく)、
図6は、本開示の試料デバイスの別の非限定的な実施形態を示す。
図6に示す試料デバイス140は、本明細書において後述すること以外は、
図1~
図4の試料デバイス10と同一である。
【0077】
試料デバイス140は、ハウジング142、試料チャネル144、キャビティ150、試薬172、およびフランジ174を含み、これらはすべて、
図1~
図4に示す試料デバイス10の対応する構造と同じかまたは同様の方法で構成される。キャビティ150は、第1の長手方向面152、第2の長手方向面154、第1の端面156、および第2の端面158を含む。試料デバイス140は、2つの膜(それらの各々は、
図1~
図4の膜40と同様の方法で構成され、同様の方法で試料デバイスに取り付けられる)を含むという点で、試料デバイス10と異なる。第1の膜160は、内面162および外面164を有する。第2の膜166は、内面168および外面170を有する。第1の膜160は、膜160の内面162がキャビティ150の第1の長手方向面152の少なくとも一部を形成するように、キャビティ150内に配置される。同様に、第2の膜166は、膜166の内面168がキャビティ150の第2の長手方向面154の少なくとも一部を形成するように、キャビティ150内に配置される。
【0078】
したがって、第1の膜160の外面164および第2の膜166の外面170はともに、試料デバイス140が反応カートリッジ(
図4に示すものと同様)内に配置されたときに、緩衝液が両方の膜と接触することができるように、試料デバイス140の外面に露出されている。2つの膜160および166が存在することにより、緩衝液と相互作用するために利用可能な表面積が増大し、それにより、血漿が試料デバイス140から出てカートリッジ内に存在する緩衝液内に拡散する速度が上昇する。
【0079】
本開示の別の代替的な(ただし非限定的な)実施形態では、毛細管チャネルが、試料デバイスの両側にウェルおよび膜があるように2つに分割される、
図6に示すものと同様の試料デバイスを構成することができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を提供する。しかしながら、本開示は、本明細書で後に開示する特定の実験、結果、および検査室手順にその適用が限定されるものではないないと理解されるべきである。むしろ、本実施例は、単にさまざまな実施形態の1つとして提供され、網羅的ではなく、例示的であることが意図されている。
【実施例1】
【0081】
図1~
図3は、本実施例で利用する試料デバイスの構造を示す。しかしながら、この特定の構造は単に例示を目的とするものであり;試料デバイスの構造は、(限定されないが)射出成形との互換性のため等、変更することができる。
【0082】
試料デバイスの先端にある毛細管チャネルは、斜めにオフセットされており;試料が引き込まれ、後に分離膜に接触する際、膜の下の面積が毛細管チャネルの面積以下であり、試料はキャビティを満たすように引き込まれ続けるように、毛細管チャネルの角度は必要である。斜めの毛細管チャネルは、膜がキャビティの上部を覆った状態で、キャビティ(底部、2つの側面、後壁)と接触する。膜は、限定されないが、超音波溶接、接着剤、レーザ溶接などの取付け機構によって、キャビティの上の適所に保持される。膜は、レクチン、抗ヒト赤血球(anti-human RBC)抗体、非対称ポリスルホン膜(VIVID(商標)血漿分離膜(Pall Life Sciences、Port Washington、NY))などを含む1つまたはそれ以上の材料で形成される。
【0083】
緩衝液内への試料の拡散を促進するために、表面積に対する体積の大きい比率が必要である。試料キャビティおよび入口は、(限定されないが)スクロース、トレハロース、マルトース、デキストロースなどの糖など、親水性物質で予めコーティングされることが必要となる。
【0084】
キャビティ内には、多数の乾燥液滴または凍結乾燥粉末試薬がある。この試薬は、抗凝固剤(限定されないが、ヘパリンおよび/またはEDTAなど)、ならびにビーズおよび色素に結合した赤血球捕捉物質を含む。さらに、安定性を高めるために糖を添加してもよい。
【0085】
RBC捕捉物質の非限定的な例としては、さまざまなレクチン、抗ヒトRBCなどが挙げられる。ビーズの非限定的な例としては、ラテックス、鉄、金ゾルなどで形成されたものが挙げられ、唯一の要件は、ビーズが膜の細孔サイズよりも小さいことである。実際に、RBC捕捉物質-ビーズ-色素の複合体全体が、膜の孔サイズよりも小さくなければならない。
【0086】
(
図5に示すような)使用例
患者からフィンガスティックまたは静脈の試料を採取する。試料デバイスを下降させて、毛細管チャネルを試料と接触させる。試料デバイスの先端における余分な試料は、キムワイプでまたはパラフィルムで取り除く。
【0087】
試料デバイスキャビティは、色素およびRBC結合化合物を含む、細孔サイズよりも小さいビーズを収容する。乾燥タンパク質を安定化させるために、試料デバイスキャビティには1つまたはそれ以上の糖も存在する。加えて、試料デバイスの試料と接触する部分は、毛細管作用を促進するように、糖または他の親水性化合物で予めコーティングされる。コーティングされていない場合、試料は試料デバイスの中に入らない。
【0088】
全血試料の部分がキャビティ内に引き込まれると、RBC結合化合物は、試料中の任意のRBCと凝集して、凝集した赤血球塊を生成する。凝集したRBCは、膜の細孔サイズよりも大きいサイズを有し、これにより、凝集したRBCが膜を通過するのが防止される。
【0089】
表面糖質または他の抗原部位の試料間変動は、RBC捕捉物質に付着したビーズを使用することにより相殺され、各RBCが占める色素の量を動的に制限できるはずである。
【0090】
次いで、試料デバイスを、次にカートリッジに、かつ機器内に配置する。試料デバイスは、カートリッジに挿入されると、適所でロックされ、毛細管チャネルは、ゴム、または可塑剤で軟化した何らかの他のポリマーに押し込まれて先端が封止される。その後、緩衝液タブを引き、それにより、緩衝液を放出する。その後、機器の蓋を閉め、試験を開始する。緩衝液は膜の外面で押し流され、未結合のビーズ(色素)の拡散を促進する。十分な試料が引き出されたか、またはそれ以上試料を引き出す必要がないかを判断するために、時々確認する場合がある。存在する色素の量は、試料のヘマトクリットに逆相関しており、それにより、最終分析物濃度を計算するための血漿試料体積の推定値を得ることができる。その後、実行中の特定の診断アッセイが完了し、結果が表示される。
【0091】
試料は、毛細管を介して、細孔サイズ直径が5~20μmの膜で囲まれたチャンバ内に引き込まれる。95%下限が直径6μmのSiemens DCA抗体ラテックスビーズと、細胞サイズ6.2~8.2μmの血液+色素試料を模擬する青色ブロモフェノール色素とを用いて、さまざまな膜を試験した。細孔サイズ0.22μmおよび1.5μmの膜を使用した場合、拡散は、撹拌を伴って約3時間かかった。細孔サイズ5μmの膜を使用した場合、色素の拡散は、撹拌を伴って約30秒かかった。10μmの細孔サイズの膜を試験した場合、ラテックスビーズの有効直径を増大させるために試薬を凝集剤と予め混合し;これにより、拡散にかかる時間は3時間を超えて著しく延長され、これは、より大きい細孔サイズが必要であるか、または、1:1の混合よりも少ない凝集剤が必要であることを示唆している。
【実施例2】
【0092】
図7において、本開示のビーズ/色素結合方法によるヘマトクリットの決定に対する鎌状赤血球のあり得る影響を分析した。赤血球および8μmビーズの平均測定値を用いて、空間充填モデルを作成した(
図7、上方のパネル)。鎌状血球は、200%の伸長と50%の幅縮小で表現した。これらのモデルから、細胞あたりのビーズとビーズあたりの細胞の最大量を推定した(
図7、下方のパネル)。両最大値の正規分布と、完全に定型的な血液および非定型的な血液の試料を想定すると、予想される観測バイアスは約|1%|である。
【0093】
このように、本開示によれば、本明細書に示した目的および利点を完全に満たすデバイス、アセンブリ、および方法が提供された。本開示について、上述した具体的な図面、実験、結果、および文言と関連して説明したが、多くの代替形態、変更形態、および変形形態が当業者には明らかとなることは明白である。したがって、本開示の趣旨および広範な範囲内にある、そうした代替形態、変更形態、および変形形態をすべて包含することが意図されている。
【国際調査報告】