(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】メタロセン多峰性コポリマーゴムを含有する熱可塑性加硫物組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20230719BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20230719BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230719BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20230719BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230719BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230719BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20230719BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L91/00
C08L101/00
C08F210/16
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/16
C08J3/24 Z CES
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581454
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021032738
(87)【国際公開番号】W WO2022005634
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】バデーン,プラシャント・アルン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,ウェンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ツビック,ポール・ダグラス
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA15
4F070AA16
4F070AA63
4F070AB09
4F070AB11
4F070AC04
4F070AC14
4F070AC16
4F070AC18
4F070AC27
4F070AC86
4F070AE08
4F070GA08
4F070GB07
4F070GC07
4J002AA013
4J002AE052
4J002BB023
4J002BB123
4J002BB151
4J002DA036
4J002DD077
4J002DE107
4J002DE236
4J002DJ046
4J002FD016
4J002FD157
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS11R
4J100CA04
4J100DA05
4J100DA06
4J100DA09
4J100DA13
4J100DA14
4J100DA15
4J100DA19
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA51
(57)【要約】
メタロセン系多峰性コポリマーゴムを含有する熱可塑性加硫物(TPV)組成物およびその製造方法。TPV組成物は、(a)エチレン由来単位、50重量%超~100重量%未満の、ムーニー粘度が約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)の主要ポリマー画分、0重量%超~50重量%未満の、ムーニー粘度が約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)の微量ポリマー画分、約2.0から約4.5の平均分子量分布(Mw/Mn)、約0.7から約1.0の平均分岐指数、および100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含有する多峰性コポリマーゴム;(b)少なくとも1種の他の油;(c)少なくとも1種の熱可塑性ポリマー;ならびに(d)少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含む硬化系を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性加硫物組成物であって、
(a)多峰性コポリマーゴムであって、
エチレン由来単位、
前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50wt%超~100wt%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分、
前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて0wt%超~50wt%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分、
約2.0から約4.5の平均分子量分布(M
w/M
n)、
約0.7から約1.0の平均分岐指数、および
100重量部の前記多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油、
を含む、前記多峰性コポリマーゴム、
(b)少なくとも1種の他の油、
(c)少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、ならびに
(d)少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含む硬化系
を含む、前記熱可塑性加硫物組成物。
【請求項2】
前記多峰性コポリマーゴムが、メタロセン触媒を使用して形成され、約45wt%から約80wt%の前記エチレン由来単位;約1wt%から約10wt%の非共役ジエン由来単位;残りのα-オレフィン由来のポリマー単位を含み、全体のムーニー粘度が約20ML(1+4@125℃)から約90ML(1+4@125℃)であり、全重量百分率が前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づく、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの連続相またはマトリクス中に分散された加硫ゴムの粒子をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項4】
前記多峰性コポリマーゴムが、約0.5mmから約15.0mmの粒径を有する粒子の形態である、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、プロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、エチレンとプロピレンとのコポリマー、またはこれらの組合せを含み、前記熱可塑性加硫物組成物中の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量が約20phrから約600phrである、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項6】
前記ポリプロピレンが、リサイクルされたポリプロピレンを含む、請求項5に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレンが、リサイクルされたポリエチレンを含む、請求項5に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性加硫物組成物中の前記少なくとも1種の他の油の量が約10phrから約250phrである、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の硬化材料が、前記熱可塑性加硫物組成物中に存在するフェノール系ポリマーを約0.1phrから約20.0phrの量で含む、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性加硫物組成物中に存在する充填剤を約0phrから約300phrの量でさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項11】
約30ショアAから約55ショアDの硬度、約250%から約900%の破断点伸び、約2.0MPaから約15.0MPaの極限引張強さ、1200s
-1で約30Pa*sから約150Pa*sの見掛け粘度、約0.86から約1.40の比重、約1.0MPaから約5.0MPaの結合強度、および約20から約200の押出表面粗さをさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性加硫物組成物。
【請求項12】
熱可塑性加硫物組成物の製造方法であって、
多峰性コポリマーゴムを反応器に導入するステップであり、前記多峰性コポリマーゴムが、
エチレン由来単位、
前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50wt%超~100wt%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分、
前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて0wt%超~50wt%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分、
約2.0から約4.5の平均分子量分布(M
w/M
n)、
約0.7から約1.0の平均分岐指数、および
100重量部の前記多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油
を含む、ステップと、
前記多峰性コポリマーゴムに対して同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、および硬化系を前記反応器に導入するステップと、
前記多峰性コポリマーゴム、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および前記硬化系を溶融混合するステップと、
前記多峰性コポリマーゴムを硬化するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記多峰性コポリマーゴムを硬化するステップが、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの連続相またはマトリクス中に分散されたゴムの粒子を形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多峰性コポリマーゴムを硬化するステップの前に前記少なくとも1種の他の油を導入し、さらに、前記多峰性コポリマーゴムの硬化に後続して、追加の油を導入するステップを含み、前記少なくとも1種の油と前記追加の油との比が約1未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記多峰性コポリマーゴムが、メタロセン触媒を使用して形成され、約45wt%から約80wt%の前記エチレン由来単位、約1wt%から約10wt%の非共役ジエン由来単位、残りのα-オレフィン由来のポリマー単位を含み、全体のムーニー粘度が約20ML(1+4@125℃)から約90ML(1+4@125℃)であり、全重量百分率が前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づく、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記多峰性コポリマーゴムが、約0.5mmから約15.0mmの粒径を有する粒子の形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、エチレンとプロピレンとのコポリマー、またはこれらの組合せを含み、前記熱可塑性加硫物組成物中の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量が約20phrから約600phrである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリプロピレンが、リサイクルされたポリプロピレンを含み、前記ポリエチレンが、リサイクルされたポリエチレンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記熱可塑性加硫物組成物中の前記少なくとも1種の他の油の量が、約10phrから約250phrであり、前記硬化系が、少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含み、前記少なくとも1種の硬化材料が、前記熱可塑性加硫物組成物中に存在するフェノール系ポリマーを約0.1phrから約20.0phrの量で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記多峰性コポリマーゴムに対して同時にまたは連続的に、約0phrから約300phrの量の充填剤を前記反応器に導入することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
熱可塑性加硫物の製造方法であって、
予加硫ブレンドを作製するステップであり、前記予加硫ブレンドが、
(a)多峰性コポリマーゴムであって、
エチレン由来単位、
前記多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50wt%超~100wt%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)の第1のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分、
0wt%超~50wt%未満の、前記第1のムーニー粘度より低い第2のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分、
100重量部の前記多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油、
を含む、前記多峰性コポリマーゴム、および
(b)少なくとも1種の粉状硬化剤
を含む、ステップと、
前記予加硫ブレンドを反応器に導入するステップと、
前記予加硫ブレンドに対して同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、および少なくとも1種の硬化材料を前記反応器に導入するステップと、
前記予加硫ブレンド、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および前記少なくとも1種の硬化材料を溶融混合するステップと、
前記多峰性コポリマーゴムを硬化するステップと
を含む、方法。
【請求項22】
前記予加硫ブレンドを作製するステップが、前記予加硫ブレンドを反応器に導入するステップとは別の場所で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記予加硫ブレンドが、少なくとも1種の粉状充填剤、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、前記少なくとも1種の他の油、前記少なくとも1種の硬化材料、またはこれらの組合せをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1種の粉状充填剤が、炭酸カルシウム、カーボンブラック、タルク、またはこれらの組合せを含み、前記少なくとも1種の粉状硬化剤が、金属酸化物、塩化第一スズ、またはこれらの組合せを含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年7月2日に出願された米国特許第63/047,640号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明の実施形態は一般に、熱可塑性加硫物組成物に関する。より詳細には、そのような実施形態は、本質的にエキステンダー油を含まないメタロセン系多峰性コポリマーゴムを含有する熱可塑性加硫物組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]熱可塑性加硫物(TPV)は、動的に硬化されたゴムと熱可塑性ポリマーとのブレンドを含む。ゴムは、微粉化したゴム粒子として熱可塑性ポリマー相中に分散することができる。これらの組成物は、多くの場合、有利には、熱硬化性エラストマーの特性の多くを実証するが、さらに、射出成形、押出成形、およびブロー成形などの一般的な熱可塑性成形技術を用いて処理することができる。熱可塑性加硫物は、ゴムを熱可塑性ポリマーと混合しながら、ゴムを硬化材料(curative material)で動的に加硫、すなわち硬化することによって調製することができる。
【0004】
[0004]エチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)エラストマーなどのエチレン系エラストマーまたはゴムは、多くの場合、TPV用途における使用に適している。しかしながら、そのようなエラストマーは、典型的には、非常に高い分子量のポリマーであり、本質的に非常に高い粘度、例えば、200ML(1+4@125℃)超のムーニー粘度を有する。このEPDMの固有特性は、該エラストマーの処理可能性に関連する問題をもたらしうる。例えば、TPV製造工程中のEPDMエラストマーの効率的なブレンディングは、達成するのが難しいことがある。エキステンダー油は、多くの場合、ゴム相を「増量」し、TPVの見掛け粘度を低下するためにEPDMエラストマーに添加される。
【0005】
[0005]エキステンダー油の必要レベルは、EPDMエラストマーの分子量によって決まるが、通常、油展EPDMの見掛け粘度を約100ML(1+4@125℃)以下のムーニー粘度まで低下するのに十分である。TPV製造工程における使用に適した非常に高い分子量のEPDMエラストマーは、典型的には、約50~125phrのエキステンダー油を含有する。そのような多量のエキステンダー油の取り込みは困難でありうるが、その理由は、油がEPDMエラストマー中に完全に溶解できないことが多く、結果としてEPDMエラストマーとエキステンダー油との間に相分離が生じるからである。
【0006】
[0006]処理可能性を改善するためにエキステンダー油を含む例示EPDMエラストマーは、ExxonMobil社から販売されているVistalon(商標)3666であり、これは、チーグラー‐ナッタ触媒を使用して調製される単峰性高分子量非晶質エラストマーである。非晶質エラストマーは、多くの場合、高いクリープ流および凝集を示し、したがって微粒子よりも大きなベールとして入手可能である。
【0007】
[0007]チーグラー‐ナッタをベースとするEPDMエラストマーに関連する問題に起因して、TPV製造工程における使用に適したメタロセン系EPDMエラストマーが開発された。そのようなEPDMエラストマーは、メタロセン触媒を使用して調製され、通常、比較的狭い分子量分布、比較的直線状の分子、および高結晶度を持つ。そのようなものとして、これらのメタロセン系EPDMエラストマーは、約90ML未満(1+4@125℃)の全体のムーニー粘度を有することができ、エキステンダー油の必要なしに良好な処理可能性を示しうる。これらのEPDMエラストマーは、性質上、高度に結晶性であるため、有利には、低いクリープ流および凝集を示し、したがって、微粒子として販売されうる。残念ながら、現在のメタロセン系EPDMエラストマーを含有するTPV製品は、チーグラー‐ナッタ系EPDMエラストマーに比べて物理的性質が劣っていることがある。また、そのようなTPV製品の物理的性質は、多くの場合、両極端間でトレードオフされる。
【0008】
[0008]TPV工程は、典型的には、EPDMエラストマー、充填剤、熱可塑性ポリマー、および硬化系を反応器に添加し、後続してこれらの成分を溶融混合するステップと、EPDMエラストマーを硬化または動的に加硫するステップとを要する。硬化系は、硬化材料および硬化剤を含むことができる。これらの材料の多くは、溶融せず、非常に細かい粉末または粉塵として添加されない場合に物理的性質に悪影響を及ぼす恐れがある。しかしながら、細かい粉塵は、空中浮遊する傾向があり、産業衛生に深刻な影響を及ぼしうる。加えて、有機塵雲は、粉塵爆発の危険を加えうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]したがって、産業衛生および安全な操業条件を維持しながら良好なバランスのとれた性質を有するメタロセン系EPDMエラストマーを使用して、質量スケールで経済的に調製することができるTPV組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]本質的にエキステンダー油を含まないメタロセン系多峰性コポリマーゴムを含有する熱可塑性加硫物組成物およびその製造方法を提供する。1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性加硫物組成物は、(a)エチレン由来単位、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50重量%超~100重量%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて0重量%超~50重量%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量(マイナー、minor)ポリマー画分、約2.0から約4.5の平均分子量分布(Mw/Mn)、約0.7から約1.0の平均分岐指数、および100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含有する多峰性コポリマーゴム;(b)少なくとも1種の他の油;(c)少なくとも1種の熱可塑性ポリマー;ならびに(d)少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含む硬化系を含むことができる。
【0011】
[0011]1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性加硫物組成物の製造方法は、多峰性コポリマーゴムを反応器に導入するステップであり、多峰性コポリマーゴムが、(a)エチレン由来単位、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50重量%超~100重量%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて0重量%超~50重量%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分、約2.0から約4.5の平均分子量分布(Mw/Mn)、約0.7から約1.0の平均分岐指数、および100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含有する、ステップと、(b)多峰性コポリマーゴムに対して同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、および硬化系を反応器に導入するステップと、(c)多峰性コポリマーゴム、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および硬化系を溶融混合するステップと、(d)多峰性コポリマーゴムを硬化するステップとを含むことができる。
【0012】
[0012]1つまたは複数の代替の実施形態において、熱可塑性加硫物の製造方法は、予加硫ブレンドを製造するステップであり、予加硫ブレンドが、(a)エチレン由来単位、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50重量%超~100重量%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)の第1のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分、0重量%超~50重量%未満の、第1のムーニー粘度より低い第2のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分、および100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含有する多峰性コポリマーゴムならびに(b)少なくとも1種の粉状硬化剤を含む、ステップと、予加硫ブレンドを反応器に導入するステップと、予加硫ブレンドに対して同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、および少なくとも1種の硬化材料を反応器に導入するステップと、予加硫ブレンド、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および少なくとも1種の硬化材料を溶融混合するステップと、多峰性コポリマーゴムを硬化するステップとを含むことができる。予加硫ブレンドは、任意選択により、少なくとも1種の粉状充填剤、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、少なくとも1種の硬化材料、またはこれらの組合せを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0013]以下の開示は、本発明のさまざまな特徴、構造、および/または機能を実現するためのいくつかの例示的な実施形態を説明することを理解されたい。構成要素、配置、および構成の例示的な実施形態を、本開示を簡単にするために以下で記載するが、これらの例示的な実施形態は単に例として提供するものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。加えて、本開示は、さまざまな例示的な実施形態において、また本明細書中に記載する図面にわたって、参照番号および/または文字を繰り返し使いうる。この繰り返しは、単純明快にすることを目的とし、それ自体が、さまざまな例示的実施形態および/または図面中で考察される構成の間の関係を決定づけるものではない。その上、以下に挙げる例示的な実施形態を任意の組合せの方法で組み合わせることができ、すなわち、一例示的実施形態の任意の要素を、本開示の範囲から逸脱することなく、他の任意の例示的実施形態で使用することができる。
【0014】
[0014]加えて、特定の用語を、特定の構成要素を指すために、以下の記述および特許請求の範囲の全体にわたって用いる。当業者であれば、別段の規定が本明細書中にない限り、さまざまな実体が異なる名称によって同じ構成要素を指すことができ、そのようなものとして、本明細書中に記載の要素に対する命名法が本発明の範囲を制限することを意図しないことを理解するであろう。さらに、本明細書中で用いられる命名法は、名称が異なるが機能が同じ構成要素間を区別することを意図しない。
【0015】
[0015]以下の説明および特許請求の範囲において、用語「含む(including)」および「含む(comprising)」は、制約なく用いられ、したがって、「~を含むが、~に制限されない」を意味すると理解すべきである。語句「から本質的になる」は、記載される/特許請求の範囲において主張される組成物が、その性質が実質的にその性質の5%を超えて変質する他の任意の構成要素を含まず、いずれの場合にも、3質量%超のレベルまで他の任意の構成要素を含まないことを意味する。
【0016】
[0016]用語「または」は、排他的な場合と包含的な場合の両方を含み、すなわち、「A」または「B」は、本明細書中で明示的に別段の規定がない限り、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義であるよう意図されている。
【0017】
[0017]不定冠詞「ある(a)」および「ある(an)」は、文脈上明確に指示されている場合を除き、単数形(すなわち、「1」)および複数の指示対象(すなわち、1または複数)の両方を指す。例えば、「オレフィン(an olefin)」を用いる実施形態は、矛盾がない限りまたは文脈上明確に1種限りのオレフィンが用いられることを示さない限り、1種、2種、またはそれ以上のオレフィンが用いられる実施形態を含む。
【0018】
[0018]用語「wt%」は重量百分率を意味し、「vol%」は容量百分率を意味し、「mol%」はモル百分率を意味し、「phr」は、ゴム100部(当たり)に基づくことを意味し、「ppm」は100万分の1を意味し、「ppm wt」および「wppm」は区別なく用いられ、重量ベースでの100万分の1を意味する。本明細書中のすべての濃度は、別段の指定がない限り、対象とする組成物の総量を基準に表される。
【0019】
[0019]用語「α-オレフィン」は、αおよびβ炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を有する炭素と水素の任意の直鎖状または分枝鎖化合物を指す。この明細書およびそれに添付される特許請求の範囲の目的のために、ポリマーまたはコポリマーがα-オレフィン、例えばポリα-オレフィンを含むといわれるとき、該ポリマーまたはコポリマー中に存在するα-オレフィンは、α-オレフィンの重合形態である。
【0020】
[0020]用語「ポリマー」は、2つ以上の任意の同じまたは異なる繰り返し単位/量体単位または単位を指す。用語「ホモポリマー」は、同じ単位を有するポリマーを指す。用語「コポリマー」は、互いに異なる2つ以上の単位を有するポリマーを指し、ターポリマーなどを含む。用語「ターポリマー」は、互いに異なる3つの単位を有するポリマーを指す。用語「異なる」は、単位が少なくとも1個の原子によって互いに異なるか、または異性体として異なることを示す単位を指すものである。同様に、ポリマーの定義は、本明細書中で用いられる場合、ホモポリマーおよびコポリマーなどを含む。例としては、コポリマーが10wt%~30wt%の「プロピレン」含有量を有するといわれるとき、コポリマー中の繰り返し単位/量体単位または単純に単位が、重合反応中にプロピレンから誘導され、誘導された単位が、コポリマーの重量に基づいて10wt%~30wt%で存在すると理解される。
【0021】
[0021]用語「ゴム」および「エラストマー」は区別なく用いられ、重合技術を用いて製造される弾性重合物質を指す。用語「加硫物」は、少なくとも部分的に硬化または強化したゴムを指す。用語「熱可塑性」は、所定の昇温下で成形可能になり、冷却すると固化する重合材料を指す。用語「熱可塑性加硫物」は、少なくとも部分的に加硫されたポリマーを、熱可塑性物質中に分散して含む材料を指す。
【0022】
[0022]本明細書中で用いられるこれらの要素および群の命名法は、1988年以降に国際純正応用化学連合によって用いられてきた周期表に従ったものである。周期表の例を、F.Albert Cottonら著、Advanced Inorganic Chemistry、第6版(John Wiley & Sons,Inc.,1999)の表紙の内側の頁に示す。
【0023】
[0023]ここで、詳細な説明を提供していく。添付の特許請求の範囲の各請求項は、侵害目的のために、特許請求の範囲内で指定されるさまざまな要素または制限の同等物を含むと認識されている、独立した発明を規定する。文脈に応じて、「本発明」への全ての言及は、場合によっては、ある特定の実施形態のみを指してもよい。その他の場合では、「本発明」への言及は、特許請求の範囲の1つまたは複数において列挙される主題を指すが、必ずしも全てを指すものではないと認識される。ここで、それぞれの発明(特定の実施形態、変異形態および実施例を含む)を以下でより詳細に説明していくが、本発明は、これらの実施形態、変異形態または実施例に限定されず、これらは、この開示中の情報を公開されている情報および技術と合わせるとき、当業者が本発明を実行して使用するために含まれる。
【0024】
熱可塑性加硫物組成物
[0024]エキステンダー油を本質的に含まない多峰性コポリマーゴム、少なくとも1種の他の油、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、ならびに少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含有する硬化系を含むことができる熱可塑性加硫物(TPV)組成物を開示する。TPV組成物はまた、要望に応じて充填材も含有することができる。本明細書中で用いられる場合、用語「エキステンダー油を本質的に含まない」とは、多峰性コポリマーゴムが、ゴム100重量部当たり約10重量部(「parts per hundred rubber」またはphrとも称する)未満、好ましくは約5phr未満、より好ましくは約1phr未満しか含まないことを意味する。TPV組成物は、熱可塑性ポリマーの連続相またはマトリクス中に分散された加硫ゴム(すなわち硬化ゴム)の粒子を含有することができる。
【0025】
[0025]多峰性コポリマーゴムは、エチレン由来単位;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50重量%超~約100重量%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて約0重量%超~約50重量%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分;約1.5から約4.5の平均分子量分布(Mw/Mn);および約0.7から約1.0の平均分岐指数(BI)を含むことができる。これに応じて、多峰性コポリマーゴムは、比較的狭い分子量分布および約90ML未満(1+4@125℃)の全体のムーニー粘度を有することができ、容易に処理することができ、したがって若干のエキステンダー油しか必要としない、またはエキステンダー油を必要としないことを示す。多峰性コポリマーゴムは、平均分岐指数によって示されるようにほぼ線状の構造であってもよく、完全に非晶質または本質的に半結晶性であってもよい。
【0026】
[0026]多峰性コポリマーゴムは、メタロセン触媒を使用する重合によって作製することができる。結果として得られるゴムは、約0.5mmから約15.0mm、好ましくは約1.0mmから約10.0mm、より好ましくは約1.5mmから約8.0mmの粒径を有する粒子の形態であってもよい。本明細書中で用いられる場合、「粒径」は、重量平均粒径を指す。これらの粒子は、ゴム粒子がくっつくのを防止するために、例えば約0.1phr超が散布されていてもよい。このような微粒子は、例えば、ポリエチレン微粒子、無機充填材、例えば炭酸カルシウム、タルク、粘土などを含んでいてもよい。
【0027】
[0027]驚くべきことに、TPV組成物は、バランスの良い特性を有することができ、これは従来のメタロセン系TPV組成物より優れている。理論に制約されるものではないが、上述の多峰性コポリマーゴムの特質は、これらの改善された特性に貢献しうると考えられる。例えば、TPV組成物は、比較的均一な相形態、比較的低い押出表面粗さ(ESR)によって示されるような優れた表面の審美性、および他のTPV材料に対する比較的高い結合強度を有しうる。特に、TPV組成物は、約20~約200、好ましくは約25~約100、最も好ましくは約28~約80のESRを有しうる。TPV組成物はまた、約1.0MPa~約5.0MPa、より好ましくは約1.5MPa~約4.5MPa、最も好ましくは約1.8MPa~約4.0MPaの結合強度を有しうる。比較的均一な相形態を有することに起因して、TPV組成物は、良好な成形性能を示すことができ、したがって押出、射出成形、ブロー成形、および圧縮成形を要する用途において使用することができる。
【0028】
[0028]TPV組成物はまた、意外なことに、優れた硬度、破断点伸び、および引張強さ性能も示す。特に、TPV組成物は、約30ショアA~約55ショアD、好ましくは約35ショアA~約50ショアD、より好ましくは約40ショアA~約45ショアDの硬度を有しうる。TPV組成物は、約250%~約900%、好ましくは約275%~約800%、より好ましくは約300%~約750%の破断点伸びを有しうる。また、TPV組成物は、約2.0MPa~約15.0MPa、好ましくは約2.5MPa~約14.0MPa、より好ましくは約3.0MPa~約13.0MPaの極限引張強さを有しうる。
【0029】
[0029]加えて、TPV組成物は、比較的低い相対密度、すなわち比重、および比較的低い見掛け粘度、すなわち印加された剪断応力/剪断速度を有することができる。TPV組成物の比重は、約0.86から約1.40、好ましくは約0.87から約1.25、より好ましくは約0.88から約1.2の範囲でありうる。TPV組成物の見掛け粘度は、1200s-1の剪断速度で測定した場合、約30Pa*sから約150Pa*s、好ましくは約40Pa*sから約140Pa*s、より好ましくは約50Pa*sから約130Pa*sの範囲でありうる。
【0030】
[0030]TPV組成物の前述の特性を決定するために用いた試験法は、以下の実施例に記載する。
[0031]TPV組成物はバランスの良い特性を有するため、TPV組成物は、例えば、自動車、産業、および消費者市場における多肢にわたる用途に用いることができる。例えば、TPV組成物は、ホース、シーラント、隙間充填剤、フロアマット、窓用シール材、およびウェザーシールの製造に使用することができる。TPV組成物はまた、TPV組成物を、マイクロセル、化学、または水発泡などの一般的に公知の発泡形成技術に供することによって、泡を利用する用途において使用することもできる。
【0031】
[0032]1つまたは複数の実施形態において、TPV組成物の製造方法は、本明細書中に開示される多峰性コポリマーゴムを二軸押出機などの反応器に導入すること;多峰性コポリマーゴムと同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の油、および硬化系を反応器に導入すること;多峰性コポリマーゴム、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および硬化系を溶融混合すること;ならびに多峰性コポリマーゴムを硬化することを含んでよい。本明細書中で用いられる場合、「溶融混合」は、混合しながら溶融状態で置くことを意味し、「硬化」は、反応の結果としての分子量の増加に起因する融液の固化を意味する。いくつかの態様において、多峰性コポリマーゴムを硬化する前に少なくとも1種の油を導入してもよく、硬化剤注入後に追加の油を反応器に導入してもよい。この場合、硬化前に導入される油と硬化後に導入される油との比は、約1.00未満、約0.85未満、または約0.70未満であってもよい。
【0032】
[0033]1つまたは複数の追加の実施形態において、多峰性コポリマーゴムと1種または複数の他の成分、特に粉末形態の成分(硬化剤および粉状充填剤など)との予加硫ブレンドを、第1のステップで別に調製することができる。次いで第2のステップは、予加硫ブレンドを反応器に導入することと、同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の油、および少なくとも1種の硬化材料または硬化剤を反応器に導入することとを含むことができる。次いで予加硫ブレンド、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および少なくとも1種の硬化材料または硬化剤を一緒に溶融混合することができ、多峰性コポリマーゴムが硬化されうる。あるいは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の油、および/または少なくとも1種の硬化材料または硬化剤をブレンドとは別に反応器に添加する代わりに、予加硫ブレンドに含めてもよい。
【0033】
[0034]粉末形態の成分を含有する予加硫ブレンドは、別のステップで、またはさらにはTPVプロセスとは別の場所で調製されうるため、粉塵爆発のリスクを問題にする必要がない。また、加硫プロセス中の微粉の使用が、産業衛生に悪影響を及ぼす可能性について心配する必要もない。
【0034】
多峰性コポリマーゴム
[0035]TPV組成物中の多峰性コポリマーゴムの含有量は、TPV組成物の総重量に基づいて、約10wt%から約60wt%、好ましくは約15wt%から約50wt%、より好ましくは約20wt%から約40wt%の範囲であってもよい。多峰性コポリマーゴムは、エチレン由来単位、α-オレフィン由来単位、およびジエン由来単位、好ましくは非共役ジエン由来単位を含むことができる。
【0035】
[0036]α-オレフィン由来単位は、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、またはこれらの組合せなどのC3~C20α-オレフィンであってもよく、またはこれらを含んでもよい。α-オレフィン由来単位hは、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの組合せ、より好ましくはプロピレンである。非共役ジエン由来単位は、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ノルボルナジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、またはこれらの組合せであってもよく、またはこれらを含んでもよい。好適なエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴムの例としては、ExxonMobilから市販されているVistalon(商標)5601、Vistalon(商標)5702、Vistalon(商標)7001、Vistalon(商標)9301などが挙げられる。
【0036】
[0037]多峰性コポリマーゴム中に存在するエチレン由来単位の量は、ゴムの総重量に基づいて、約45wt%から約80wt%、好ましくは約50wt%から約75wt%、より好ましくは約55wt%から約70wt%の範囲であってもよい。TPV多峰性コポリマーゴム中に存在するジエン由来単位の量は、ゴムの総重量に基づいて、約1wt%から約10wt%、好ましくは約2wt%から約8wt%、より好ましくは約3wt%から約6wt%の範囲であってもよい。α-オレフィン由来単位が、ポリマー単位の残りを占めてよい。
【0037】
[0038]エチレン含有量は、FTIR、ASTM D3900によって決定することができ、ジエン含有量に対して補正されない。ENBジエン含有量は、FTIR、ASTM D6047によって決定することができる。その他のジエンは、1H NMRによって測定することができる。
【0038】
[0039]多峰性コポリマーゴムは、単純に多峰性分子量と呼ばれうる多峰性分子量分布によって特徴付けられうる。1つまたは複数の実施形態において、多峰性コポリマーゴムは、少なくとも2つの画分を含むことができる。多峰性は、Mw GPC LALLSシグナル中の2つの別個のピークまたは主要ピークおよびショルダーピークとしてそれ自体を明らかにすることができる。この多峰性は、逐次重合の結果として、または物理的ブレンド技法によってのいずれかで、非常に高い分子量の成分を非常に低い分子量の成分とブレンドすることによって生じうる。
【0039】
[0040]多峰性コポリマーゴムは、約50wt%超~約100wt%未満、好ましくは約55wt%超~約95wt%未満、より好ましくは約60wt%超~約90wt%未満の主要ポリマー画分を含むことができる。主要ポリマー画分は、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)、好ましくは約25ML(1+4@125℃)から約90ML(1+4@125℃)、より好ましくは約30ML(1+4@125℃)から約80ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有しうる。
【0040】
[0041]多峰性コポリマーゴムは、約0wt%超~約50wt%未満、好ましくは約5wt%超~約45wt%未満、より好ましくは約10wt%超~約40wt%未満の微量ポリマー画分を含むことができる。微量ポリマー画分は、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)、好ましくは約120ML(1+4@125℃)から約1100ML(1+4@125℃)、より好ましくは約120ML(1+4@125℃)から約700ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有しうる。
【0041】
[0042]多峰性コポリマーゴムは、約20ML(1+4@125℃)から約90ML(1+4@125℃)、好ましくは25ML(1+4@125℃)から約85ML(1+4@125℃)、より好ましくは約30ML(1+4@125℃)から約80ML(1+4@125℃)の全体のムーニー粘度を有しうる。
【0042】
[0043]本明細書中で用いられる場合、ムーニー粘度は、フォーマット:Rotor([予熱時間(分)]+[剪断時間(分)]@測定温度(℃))を用いて報告され、ML(1+4@125℃)は、ASTM D1646-99(125℃の温度で、予熱時間1分および剪断時間4分)に従い、MLまたは大型ローターを用いて決定されるムーニー粘度を示す。
【0043】
[0044]別段の指定がない限り、ムーニー粘度は、本明細書において、ASTM D-1646によるムーニー単位でML(1+4@125℃)として報告される。しかしながら、約100を超えるムーニー粘度値は、一般的に、これらの条件下で測定できない。この事象において、高温(すなわち、150℃)を用い、結果としてより長い剪断時間(すなわち、1+8@125℃または150℃)になってもよい。より好ましくは、本明細書の目的のためのムーニー測定は、非標準小型ローターを用いて実施される。非標準ローター設計は、ムーニー規模を変えて採用され、約100ML(1+4@125℃)にわたるムーニー粘度を有するポリマーで同じムーニー機器の計装の使用を可能にする。本明細書の目的のために、この修正されたムーニー決定法は、Mooney Small Thin(MST)と呼ばれる。
【0044】
[0045]ASTM D1646-99は、ムーニー機器のキャビティ内で使用されるローターの寸法を規定する。この方法は、直径のみが異なる大型および小型ローターの両方に可能である。これらの異なるローターは、ASTM D1646-99においてML(Mooney Large)およびMS(Mooney Small)と呼ばれる。しかしながら、EPDMゴムは、そのような高分子量で製造でき、これらの標準規定ローターを使用して、ムーニー機器のトルク限界は超過されうる。これらの例では、試験は、直径がより小さくより細いMSTローターを使用して行われる。典型的には、MSTローターを使用する場合、試験は異なる時定数および温度でも行われる。予熱時間は、標準の1分から5分に変わり、試験は標準の125℃ではなく、200℃で行われる。これらの修正条件下で得られた値は、本明細書において、MST(5+4@200℃)と呼ばれる。注記:Mooney読取が行われる最後の時点でのランタイム4分は、標準条件と同じままである。MSTが(5+4@200℃)で測定され、MLが(1+4@125℃)で測定されるとき、一点のMSTは5MLの各点とほぼ同等である。これに応じて、2つの測定規模間の近似転換のために、MST(5+4@200℃)ムーニー値と5を乗じて近似ML(1+4@125℃)値と同等の値を得る。
【0045】
[0046]本明細書で使用されるMSTローターは、直径30.48+/-0.03mm、厚さ2.8+/-0.03mm(鋸歯状の上部から決定される)、および直径11mm以下のシャフトを有する。ローターは、中心に1.6mmの切り口がある約0.8mmの幅および約0.25~0.38mmの深さの正方形の溝を有する、鋸歯状の面および端を有する。鋸歯状の縁は、互いに直交する2セットの溝からなり、それによって正方形のクロスハッチを形成する。ローターは、ローターディスクのセンターラインが+/-0.25mmの許容値内でダイキャビティのセンターラインと一致するようにダイキャビティの中心に位置する。スペーサまたはシムを用いてシャフトを中点まで上げてもよく、これは当該技術分野においてムーニー決定に典型的な慣例と一致する。摩耗点(ローターの上面の中心に位置する円錐形の突起)は、ローターの面で機械切削により平らにされる。
【0046】
[0047]多峰性コポリマーゴムのムーニー粘度は、本明細書におけるポリマーのブレンドで決定することができる。ブレンドの特定の成分のムーニー粘度は、本明細書において、次式(1):
log ML=nA log MLA+nB log MLB (1)
[式中、対数は10進法までであり、MLは2種のポリマーAおよびB(それぞれ、個別のムーニー粘度MLAおよびMLBを有する)のブレンドのムーニー粘度であり、nAはブレンド中のポリマーAのwt%分率を表し、nBはブレンド中のポリマーBのwt%分率を表す]
に示す関係を用いて得られる。
【0047】
[0048](1+4@125℃)条件下で測定可能なムーニー粘度を有する、高ムーニー粘度のポリマーAおよび低ムーニー粘度のポリマーBを含むブレンドのムーニー粘度を決定するために式(1)を用いることができる。ML、MLAおよびnAを知ることによって、MLBの値を算出することができる。
【0048】
[0049]しかしながら、高ムーニー粘度のポリマー(すなわち、100ML(1+4@125℃)超のムーニー粘度)の場合、MLAは、上述のMSTローターを使用して測定することができる。次いでブレンド中の低分子量のポリマーのムーニー粘度を、上の式1を用いて決定することができ、MLAは、以下の関係式(2):
MLA(1+4@125℃)=5.13*MSTA(5+4@200℃) (2)
を用いて決定される。
【0049】
[0050]これらのまたは他の実施形態において、最大400単位までのムーニー粘度を測定できるムーニー粘度計モデルVR/1132(株式会社上島製作所)を用いることによって高分子量のポリマーのムーニー粘度を決定することができる。
【0050】
[0051]本明細書で開示する多峰性コポリマーゴムは、約100,000g/moleから約450,000g/mole、好ましくは約125,000g/moleから約400,000g/mole、より好ましくは約150,000g/moleから約350,000g/mole重量平均分子量(Mw)を有しうる。多峰性コポリマーゴムはまた、約2.0から約4.5、好ましくは約2.0から約4.0、より好ましくは約2.0から約3.5の平均分子量分布(MWD)を有しうる。本明細書中で用いられる場合、MWDは多分散性とも呼ばれ、ポリマーの数平均分子量で割られる重量平均分子量(Mw/Mn)を表す。MWDは、示差屈折率(DRI)検出器およびオンライン光散乱光度計を使用するChromatix KMX-6を装備したWaters 150ゲル浸透クロマトグラフ上でゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定することができる。決定は、移動相としての1,2,4-トリクロロベンゼンおよび802、803、804または805の番号付けがされたShodex(Showa Denko Amrica,Inc)ポリスチレンゲルカラムの1つを使用して135℃で行うことができる。この技術は、LIQUID CHROMATOGRAPHY OF POLYMERS AND RELATED MATERIALS III 207(J.Cazes編、Marcel Dekker、1981)に詳述されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。さらなる情報については、米国特許第4,540,753号(Cozewithら著)およびその中で列挙される参考文献、ならびにVerstrateら、21 Macromolecules 3360(1998)を参照されたい。本明細書で開示されるデータには、拡散するカラムの補正は用いられない。
【0051】
[0052]Mw/Mnは、好ましくは溶離時間から算出される。これらの数値解析は、市販のBeckman/CISカスタマイズされたLALLSソフトウェアを標準ゲル浸透パッケージと併せて使用して実施する。計算は、「Polymer Conformation and Configuration」、Academic Press, New York, 1969におけるF.A.Boveyの研究に従う13C NMRによるポリマーの特性評価に関与していた。Mw/Mnへの言及は、MwがLALLS検出器を使用して報告された値であり、MnがDRI検出器を使用して報告された値であることを含意する。
【0052】
[0053]ポリマーの分岐の相対次数は、平均分岐指数とも呼ばれる平均分岐指数因子(BI)を使用して決定することができる。本明細書で開示する多峰性コポリマーゴムは、約0.7から約1.0、好ましくは約0.8~約0.99、より好ましくは約0.85~約0.98のBIを有することができ、構造中でほぼ線形であることを示す。
【0053】
[0054]BIは、参照により本明細書に組み込まれるVerStrate, Gary、「Ethylene-Propylene Elastomers」、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、6、第2編(1986)で開示されているように、溶液中のポリマー特性の一連の4つの実験測定値を用いて算出することができる。4つの測定値は、(i)低角度光散乱検出器(LALLS)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と組み合わせて使用して測定される重量平均分子量(Mw)(本明細書では「Mw GPC LALLS」と略す);(ii)示差屈折率(DRI)検出器をGPCと組み合わせて使用して決定される重量平均分子量(Mw)(本明細書では「Mw GPC DR」と略す);(iii)示差屈折率(DRI)検出器をGPCと組み合わせて使用して決定される粘度平均分子量(Mv)(本明細書では「Mv GPC DRI」と略す);(iv)135℃のデカリン中で測定される極限粘度(固有粘度とも呼ばれ、IVと略す)である。最初の3つの測定値(i、iiおよびiii)は、トリクロロベンゼン中のポリマーの濾過希薄溶液を使用するGPCによって得られる。
【0054】
[0055]BIは、以下の式(3):
【0055】
【0056】
[式中、Mv、br=(IV/k)1/aであり、「k」は、Paul J.FloryによってPRINCIPLES OF POLYMER CHEMISTRY 310(1953)で記載される直鎖状ポリマーから測定された定数であり、総和は分布中のスライス全体であり、「a」はMark-Houwink定数(135℃のデカリン中のエチレン-プロピレン-ジエンゴムの場合、0.759に等しい)である]
を用いて決定することができる。
【0057】
[0056]式(3)から、直鎖状ポリマーのBIは1.0であるという結果になる。分岐状ポリマーの場合、分岐の程度は、直鎖状ポリマーに対して規定される。一定の数平均分子量Mn、(Mw)分岐>(Mw)直鎖で、分岐状ポリマーのBIは1.0未満であり、より小さなBI値は、より高い分岐レベルを示す。デカリン中のIVの測定が不可能な例において、IVは、いわゆるDPC-3D機器内のDRIおよびLALLS検出器と縦一列に並んでいる粘度検出器を使用して本開示との比較のために測定することができる。この場合、決定を行う上で使用されるGPC溶媒に適当な「k」および「a」の各値が選択される。
【0058】
[0057]多峰性コポリマーゴムは、当該技術分野において公知の任意の好適な重合法を用いて製造することができる。例えば、多峰性コポリマーゴムは、下記の一連の反応器を使用して、並列反応器を使用して、または機械的ブレンドを介して異なる割合のゴムを形成することによって製造することができる。
【0059】
[0058]多峰性コポリマーゴムが直接重合によって製造される場合、使用する触媒は、好ましくはシングルサイト触媒であり、これは一般的に少なくとも100℃の温度での均一環境において重合するのに十分な活性および寿命を有し、したがって異なる分子量の画分を、温度および/または水素制御によって直列に配置された連続反応器内で製造することができる。
【0060】
[0059]1つまたは複数の実施形態において、触媒は、「メタロセン」触媒としても知られる、嵩高い配位子遷移金属触媒であってもよい。嵩高い配位子は、基(1個または複数の任意選択のヘテロ原子を有する環であってもよい)を形成する、非常に多数の結合原子、好ましくは炭素原子を含有していてもよい。嵩高い配位子は、単核であっても多核であってもよいシクロペンタジエニル誘導体であってもよい。1種または複数の嵩高い配位子は、遷移金属原子に結合していてもよい。嵩高い配位子は、一般的な科学理論によれば、重合の経過中に適切な位置にとどまり、均一な重合効果をもたらすと仮定される。他の配位子は、ヒドロカルビル基またはハロゲン脱離基など、好ましくは触媒または活性剤によって離脱可能な遷移金属に結合していても配位結合していてもよい。任意の該配位子の脱離によって、オレフィンモノマーがポリマー鎖の中に挿入されうる配位部位が作られると考えられる。遷移金属原子は、元素周期表のIV、VまたはVI族の遷移金属であってもよい。遷移金属原子は、好ましくはIVB族の原子である。活性触媒状態における遷移金属は4+酸化状態にあり、正電荷を持つカチオン、一般的に中性の前駆遷移金属錯体は、より低い酸化状態にありうる。好適なメタロセン錯体のより詳細な説明については、米国特許第6,211,312号を参照されたい。
【0061】
[0060]触媒は、以下の式(4):
[L]mM[X]n (4)
[式中、Lは嵩高い配位子であり、Xは脱離基であり、Mは遷移金属であり、mおよびnは総配位子原子価が遷移金属原子価に相当するような値である]
で表される化合物から誘導されうる。好ましくは、触媒は、化合物が1+原子価状態までイオン化可能であるような4配位である。配位子LおよびXは互いに架橋されていてもよく、2つの配位子Lおよび/またはXが存在する場合、これらは架橋されていてもよい。メタロセンは、シクロペンタジエニル基である2つの配位子Lを有するフルサンドイッチ型化合物であっても、シクロペンタジエニル基である1つの配位子Lのみしか有さないハーフサンドイッチ型化合物であってもよい。
【0062】
[0061]メタロセンは、1つまたは複数のシクロペンタジエニル部分を元素周期表の遷移金属と組み合わせて含有する該化合物を含むことができる。メタロセン触媒成分は、一般式(Cp)mMRnR’p[式中、Cpは置換または非置換シクロペンタジエニル環であり、MはIV、VまたはVI族の遷移金属であり、RおよびR’は、独立して、ハロゲン、ヒドロカルビル基、または1~20個の炭素原子を有するヒドロカルボキシル基から選択され、m=I-3、n=O-3、P=O-3であり、m+n+pの和は、Mの酸化状態に等しい]で表すことができる
[0062]1つまたは複数の実施形態において、有用なメタロセンには、IV族の遷移金属のビスシクロペンタジエニル誘導体、好ましくはジルコニウムまたはハフニウムを挙げることができる。WO1999/41294を参照されたい。これらの誘導体は、フルオレニル配位子およびシクロペンタジエニル配位子(単一炭素およびケイ素原子によって連結されている)を含有しうる(WO1999/45040およびWO1999/45041を参照)。特定の実施形態において、Cp環は非置換であり、かつ/または架橋はアルキルシリル置換基などのアルキル置換基を含有し、メタロセンのアルカン可溶性を助ける。全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2000/24792およびWO2000/24793を参照されたい。他のメタロセン触媒系は、本明細書で開示する多峰性コポリマーゴムの製造に好適な重合能を示すことができる。例えば、EP418044は、EP416815のそれと同等のモノシクロペンタジエニル化合物を使用する。類似化合物がEP420436に記載されている。WO1997/03992は、単一Cp種およびフェノールがCまたはSi結合によって結合されている触媒(Me2C(Cp)(3-tBu-5-Me-2-フェノキシ)TiCl2など)を示す。WO2001/05849は、(Cp)((tBu)3P=N-)TiCl2などのCp-ホスフィンイミン触媒を開示している。
【0063】
[0063]触媒は、一般的な理論によればメタロセンカチオンの形成を助けると考えられる共触媒または活性剤と一緒に使用してもよい。メチルアルモキサンが一般的に知られている例であるアルミニウムアルキル由来活性剤を使用してもよい。この材料は、捕捉剤としても機能することができ、AlbemarleまたはScheringから購入できる。
【0064】
[0064]EP277004に記載のタイプの活性剤を発生する非配位性または弱配位性アニオン(NCA)が好ましい。これらの活性剤が使用されることが多く、上記のメタロセンに関する特許参考文献中のメタロセンと併せて記載されている。NCAは、安定化アニオンを含有する中性塩または安定化アニオンを形成するために遷移金属錯体から基を取り除くことができる非イオン性ルイス塩基であってもよい前駆体から発生させることができる。NCAは、生成方法に応じて、ホウ素またはアルミニウムなどの金属原子上で置換された3つまたは4つの配位子を有することができる。配位子は、好ましくはフッ素化、より好ましくは過フッ素化された芳香族部分(フェニル、ビスフェニルまたはナフチルなど)である。また、別の好適なNCA構造を記載し、全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2001/42249も参照されたい。
【0065】
[0065]典型的に工業規模で用いられる高い触媒活性および低い触媒濃度は、毒物感受性亢進をもたらしうる。毒物は、溶媒もしくはモノマー供給材料中の不純物として重合反応器に入る可能性があり、または一般的に適切な重合が完了した後に水を用いて実施される触媒消滅操作などの二次工程によって発生されうる。これらの毒物は、トリエチルアルミニウム(TEAL)、チタンホウ素アルミニウム(TIBAL)またはn-オクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム捕捉剤を使用することによって失活することができる。毒物の存在は、連続式反応器レイアウトにおけるリサイクルの一部として分子篩または他の浄化設備を設置することによっても対処できる。
【0066】
[0066]第1および第2の反応器間の条件は、WO1999/45047に記載されるように区別されうる。一般的に、(好適なジエンを含有する)ターポリマーは、a)ジエンを含有する第1のセットのモノマーを第1の反応器に供給すること;b)シングルサイト触媒を第1の反応器に添加すること;c)第1の反応器を稼働させて、第1のセットのモノマーを重合して、第1のポリマー成分および任意選択の未反応モノマーを含有する廃液を生成すること;d)c)の廃液を第2の反応器に供給すること;e)第2のセットのモノマーを第2の反応器に供給すること;およびf)第2の反応器を稼働させて、第2のセットのモノマーおよび任意の未反応モノマーを重合して第2のポリマー成分を生成することを含むプロセスにおいて、エチレン、高級α-オレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテン)、ならびに非共役ジエンを使用して作製することができる。任意選択により、追加の触媒を第2の反応器に供給してもよい。最終ポリマー生成物は、第1および第2のポリマー成分の混合物を含有していてもよい。
【0067】
[0067]重合および触媒の失活または消滅の後、EP552945に記載の1つまたは複数のフラッシングのステップまたは液相分離によって溶媒を除去することができ、したがって溶媒の含有量は0.1wt%以下まで下がる。溶媒はリサイクルすることができ、ポリマーはベール化またはペレット化することができる。
【0068】
熱可塑性ポリマー
[0068]TPV組成物中の熱可塑性ポリマーの含有量は、約20phr~約600phr、好ましくは25~約500phr、より好ましくは約30phr~約400phrの範囲であってもよい。熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性加硫物の製造において一般的に使用される熱可塑性ポリマーを挙げることができる。例えば、これらの熱可塑性ポリマーは、熱可塑性樹脂または非官能化熱可塑性物質とも呼ばれ得、固体、一般的には高分子量のポリマー樹脂が挙げられうる。好適な熱可塑性ポリマーの例としては、結晶性、半結晶性、および結晶化可能ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、および非オレフィンポリマーであってもよい、またはこれらを挙げることができる。
【0069】
[0069]熱可塑性ポリマーは、約0.10~約100.00、好ましくは約0.25~約50.00、より好ましくは約0.50~約30.00のメルトフローレート(MFR)を有するポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィンコポリマー、またはこれらの組合せであってもよく、またはこれらを挙げることができる。1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性ポリマーは、エチレンまたはα-オレフィン(プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、またはこれらの混合物など)を重合することによって形成することができる。エチレンとプロピレンとのコポリマーならびにエチレンおよび/またはプロピレンと別のα-オレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、またはこれらの混合物など)とのコポリマーも企図される。特に含まれるのは、プロピレンとエチレンもしくは上で開示する高級α-オレフィンまたはC10~C20ジオレフィンとのリアクター、インパクト、およびランダムコポリマーである。これらのプロピレンコポリマーのコモノマー含有量は、ポリマーの重量の1wt%~約30wt%であってもよい(例えば、米国特許第6,867,260B2号参照)。好適なコポリマーの例は、ExxonMobilから商品名VISTAMAXX(商標)で市販されている。他のポリオレフィンコポリマーとしては、オレフィンとスチレンとのコポリマー、例えばスチレン-エチレンコポリマーまたはオレフィンとα,β-不飽和酸もしくはα,β-不飽和エステルとのポリマー、例えばポリエチレン-アクリレートコポリマーを挙げることができる。非オレフィン熱可塑性ポリマーとしては、スチレン、α,β-不飽和酸、α,β-不飽和エステル、およびこれらの混合物のポリマーおよびコポリマーを挙げることができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリレート、およびポリメタクリレートを使用することができる。本明細書に記載されるような2種以上のポリオレフィン熱可塑性物質のブレンドもしくは混合物、または他の重合調整剤を有するものも好適である。有用な熱可塑性ポリマーは、インパクトおよびリアクターコポリマーも含みうる。
【0070】
[0070]1つまたは複数の実施形態において、熱可塑性樹脂としては、プロピレンの重合から誘導される単位を主に含む固体、一般的には高分子量ポリマー樹脂を含めたプロピレン系ポリマーを挙げることができる。特定の実施形態において、少なくとも75%、他の実施形態では少なくとも90%、他の実施形態では少なくとも95%、他の実施形態では少なくとも97%のプロピレン系ポリマーの単位が、プロピレンの重合から誘導される。特定の実施形態において、これらのポリマーは、プロピレンのホモポリマーを含む。
【0071】
[0071]特定の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、エチレンおよび/またはα-オレフィン(1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン、およびこれらの混合物など)の重合から誘導される単位も含むことができる。
【0072】
[0072]1つまたは複数の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、半結晶性ポリマーを含むことができる。1つまたは複数の実施形態において、これらのポリマーは、少なくとも25重量%、他の実施形態では少なくとも55重量%、他の実施形態では少なくとも65重量%、他の実施形態では少なくとも70重量%の結晶化度によって特徴付けることができる。結晶化度は、試料の融解熱を100%結晶性ポリマーの融解熱によって割ることによって決定することができ、ポリプロピレンでは209J/gであると想定される。1つまたは複数の実施形態において、これらのポリマーは、少なくとも52.3J/g、他の実施形態では100J/g超、他の実施形態では125J/g超、他の実施形態では140J/g超のHfによって特徴付けることができる。
【0073】
[0073]1つまたは複数の実施形態において、有用なプロピレン系ポリマーは、約50~約2000kg/mole、他の実施形態では約100~約600kg/moleのMwによって特徴付けられうる。これらは、ポリスチレン標準液と用いたGPCによって測定した場合、約25~約1000kg/mole、他の実施形態では約50~約300kg/moleのMnによって特徴付けられうる。
【0074】
[0074]1つまたは複数の実施形態において、有用なプロピレン系ポリマーは、50dg/分未満、他の実施形態では10dg/分未満、他の実施形態では5dg/分未満のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、2.16kg@230℃)を有しうる。これらのまたは他の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、少なくとも0.1dg/分、他の実施形態では0.2dg/分、他の実施形態では少なくとも0.5dg/分のMFRを有しうる。
【0075】
[0075]1つまたは複数の実施形態において、有用なプロピレン系ポリマーは、約110℃から約170℃、他の実施形態では約140℃から約168℃、他の実施形態では約150℃から約165℃の溶融温度(Tm)を有しうる。プロピレン系ポリマーは、約-10℃から約10℃、他の実施形態では約-3℃から約5℃、他の実施形態では約0℃から約2℃のガラス転移温度(Tg)を有しうる。1つまたは複数の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、少なくとも約75℃、他の実施形態では少なくとも約95℃、他の実施形態では少なくとも約100℃、他の実施形態では少なくとも105℃、他の実施形態では105℃から130℃の範囲の結晶化温度(Tc)を有しうる。
【0076】
[0076]プロピレン系ポリマーは、当該技術分野において公知の適当な重合技術を用いて合成することができる。例えば、プロピレン系ポリマーは、チーグラー‐ナッタ触媒またはシングルサイト有機金属触媒(メタロセン触媒など)を使用して重合することができる。
【0077】
[0077]特定の実施形態において、プロピレン系ポリマーは、高結晶性イソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンのホモポリマーを含む。このポリプロピレンは、約0.89~約0.91g/ccの密度を有し得、高度にイソタクチックのポリプロピレンは、約0.90~約0.91g/ccの密度を有する。また、分別メルトフローレートを有する高分子量および超高分子量ポリプロピレンを用いることもできる。1つまたは複数の実施形態において、ポリプロピレン樹脂は、10dg/分以下、他の実施形態では1.0dg/分以下、他の実施形態では0.5dg/分以下のMFR(ASTM D-1238;2.16kg@230℃)によって特徴付けられうる。
【0078】
[0078]好適なポリプロピレンポリマーの例としては、ExxonMobilから市販されているPP5341(0.8MFR)、PP1074NKE1(20MFR)、およびPP3854E1(24MFR)、ならびにBraskem America,Inc.から市販されているPP F180A(17MFR)が挙げられる。好適なポリエチレンポリマーの例としては、ExxonMobilから市販されているLD051.LQ(0.25MI)、LL3001.32(1MFR)、LL6407.67(6.8MI)、およびHD7845.30(0.45MI)が挙げられる。使用済みのリサイクルされたポリオレフィンも使用することができる。好適な使用済みのリサイクルされたポリプロピレンおよびポリエチレンの例としては、KW Plasticsから市販されているKW308A(8MFR)、KW622(10MFRおよび20MFR)、KWR621FDA(10MFRおよび20MFR)、KWR102(0.5MI)、KWR105(4MI)が挙げられる。
【0079】
油
[0079]TPV組成物中の油の含有量は、約10phrから約250phr、好ましくは約50phrから約200phr、最も好ましくは約75phrから約150phrの範囲であってもよい。油は、鉱油、合成油、またはこれらの組合せであってもよい、またはこれらを挙げることができる。
【0080】
[0080]TPV組成物中に使用するために好適な鉱油としては、芳香、ナフテン、パラフィン、イソパラフィン油、およびこれらの組合せが挙げられる。鉱油は、処理されていても未処理でもよい。有用な鉱油は、HollyFrontierから市販されている商品名SUNPAR(商標)150、Chevron Corporationから市販されているParamount(商標)6001、およびExxonMobilから市販されているPLASTOL(商標)517で入手することができる。
【0081】
[0081]1つまたは複数の実施形態において、好適な合成油としては、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、ブタジエン、およびこれらの混合物などのブテンのポリマーおよびオリゴマーを挙げることができる。1つまたは複数の実施形態において、これらのオリゴマーは、約300g/moleから約9000g/mole、他の実施形態では約700g/moleから約1300g/moleのMnによって特徴付けられうる。1つまたは複数の実施形態において、これらのオリゴマーは、イソブテニル量体単位を含むことができる。例示的な合成油としては、ポリイソブチレン、ポリ(イソブチレン-コ-ブテン)、およびこれらの混合物を挙げることができる。1つまたは複数の実施形態において、好適な合成油としては、多線状α-オレフィン、多分岐α-オレフィン、水素化ポリ-α-オレフィン、およびこれらの混合物も挙げることができる。
【0082】
[0082]1つまたは複数の実施形態において、好適な合成油としては、粘度がASTM D-4402に従って38℃においてBrookfield粘度計によって測定される場合、約20cp超、他の実施形態では約100cp超、他の実施形態では約190cp超の粘度を有する合成ポリマーまたはコポリマーを挙げることができる。これらのまたは他の実施形態において、これらの油の粘度は、4000cp未満、他の実施形態では1000cp未満であってもよい。
【0083】
[0083]有用な合成油は、Soltexから市販されている商品名Polybutene(商標)、およびInnouveneから市販されているIndopol(商標)で入手することができる。ExxonMobilから商品名SPECTRASYN(商標)(ExxonMobil)で市販されている白色の合成油も使用してよい。米国特許第5,936,028号に記載の油も用いることができる。合成油は、強化された低温性能をもたらすことができると考えられる。また、高温性能が、分子構造に基づいて強化されうる。
【0084】
硬化系
[0084]TPV組成物は、硬化材料および硬化剤を含む硬化系を含有していてもよい。硬化材料は、熱可塑性加硫プロセス中に多峰性コポリマーゴムを硬化または強化させるのに役立ちうる。硬化剤は、硬化材料と併せて使用して、硬化プロセスを促進させることができる。TPV組成物中に存在する硬化材料の量は、約0.1phrから約20.0phr、好ましくは約0.5phrから約10.0phr、より好ましくは約1.0phrから約5.0phrの範囲であってもよい。TPV組成物中に存在する硬化剤の量は、約0.10phrから約10.00phr、好ましくは約0.25phrから約6.00phr、より好ましくは約0.50phrから約3.00phrの範囲であってもよい。
【0085】
[0085]好適な硬化材料の例としては、フェノール系ポリマー、ケイ素含有材料、および過酸化物(すなわち、フリーラジカル硬化材料)が挙げられる。
[0086]有用なフェノール系ポリマー硬化材料は、米国特許第2,972,600号、同第3,287,440号、同第5,952,425号および同第6,437,030号に開示されている。1つまたは複数の実施形態において、フェノール系ポリマーは、アルカリ媒体中でのアルキル置換フェノールもしくは非置換フェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合によってまたは二官能性フェノールジアルコールの縮合によって作製することができるレゾールポリマーを含みうる。アルキル置換フェノールのアルキル置換基は、1~約10個の炭素原子を含有することができる。パラ位において1~約10個の炭素原子を含有するアルキル基で置換されているジメチロールフェノールまたはフェノール系ポリマーを用いてもよい。
【0086】
[0087]硬化材料として使用される例示的なフェノール系ポリマーは、オクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよびノニルフェノール-ホルムアルデヒドポリマーのブレンドである。1つまたは複数の実施形態において、ブレンドは、約25~約40wt%のオクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよび約75~約60wt%のノニルフェノール-ホルムアルデヒド、他の実施形態では約30~約35wt%のオクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよび約70~約65wt%のノニルフェノール-ホルムアルデヒドを含みうる。一実施形態において、ブレンドは、約33wt%のオクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよび約67wt%のノニルフェノール-ホルムアルデヒドを含み得、オクチルフェノール-ホルムアルデヒドおよびノニルフェノール-ホルムアルデヒドはそれぞれ、メチロール基を含む。このブレンドは、約30%の固体で、相分離なしでパラフィン油に可溶化されうる。
【0087】
[0088]有用なフェノール系ポリマーは、Schenectady Internationalから市販されている商品名SP-1044およびSP-1045で入手することができ、アルキルフェノール-ホルムアルデヒドポリマーと呼ばれうる。SP-1045は、オクチルフェノールとメチロール基を含有するノニルフェノールホルムアルデヒドポリマーとのブレンドであると考えられる。SP-1044およびSP-1045ポリマーは、ハロゲン置換基または残留ハロゲン化合物を本質的に含まないと考えられている。ハロゲン置換基を本質的に含まないとは、ポリマーの合成が、微量のハロゲン含有化合物しか含まない可能性がある非ハロゲン化ポリマーを生成することを意味する。
【0088】
[0089]好適なフェノール系ポリマーの例を、以下の一般式(5):
【0089】
【0090】
[式中、Qは、-CH2-、-CH2-O-CH2-からなる群から選択される二価の基であり、mはゼロまたは1~20の正の整数であり、R’は有機基である]
に従って規定することができる。一実施形態において、Qは二価の基-CH2-O-CH2-であり、mはゼロまたは1~10の正の整数であり、R’は20個未満の炭素原子を有する有機基である。他の実施形態において、mはゼロまたは1~10の正の整数であり、R’は4~12個の炭素原子を有する有機基である。
【0091】
[0090]1つまたは複数の実施形態において、フェノール系ポリマーは、塩化第一スズおよび酸化亜鉛などの金属酸化物などの硬化剤と併せて使用され、これは、スコーチ遅延剤および酸捕捉剤および/またはポリマー安定剤として機能すると考えられている。好適なタイプの酸化亜鉛は、Horsehead,Corp.から商品名Kadox(商標)911で市販されている。酸化亜鉛は、約0.05~約0.15μmの平均粒径を有しうる。他の実施形態において、酸捕捉剤として働く硬化剤、例えばハイドロタルサイトを、硬化の下流で添加してもよい。
【0092】
[0091]フリーラジカル硬化材料は、有機過酸化物などの過酸化物を含むことができる。有機過酸化物の例としては、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ジクミル、過酸化t-ブチルクミル、α,α-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DBPH)、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4-4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジラウロイル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、およびこれらの混合物が挙げられる。また、過酸化ジアリール、過酸化ケトン、ペルオキシジカルボネート、ペルオキシエステル、過酸化ジアルキル、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、およびこれらの混合物も使用することができる。他の好適な過酸化物としては、Archemaから市販されているLuazo(商標)APなどのアゾ開始剤が挙げられる。有用な過酸化物および熱可塑性加硫物の動的加硫におけるその使用方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,656,693号に開示されている。特定の実施形態において、米国特許第6,747,099号、米国特許出願公開第2004/0195550号、および国際特許出願公開第2002/28946号、同第2002/077089号、および同第2005/092966号に記載されるような硬化系も用いることができる。
【0093】
[0092]1つまたは複数の実施形態において、フリーラジカル硬化材料を、1種または複数の硬化剤と併せて用いることができる。好適な硬化剤としては、高ビニルポリジエンまたはポリジエンコポリマー、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、リン酸トリアリル、硫黄、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、N,N’-p-フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、三官能性アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタクリレート、多官能性アクリレート、遅延シクロヘキサンジメタノールジアクリレートエステル、多官能性メタクリレート、アクリレートおよびメタクリレート金属塩、多官能性アクリレート、多官能性メタクリレート、オキシマー(キノンジオキシムなど)、またはこれらの混合物が挙げられる。高ビニルポリジエンとα,β-エチレン性不飽和金属炭酸塩との組合せは、米国特許出願第11/180,235号で開示されるように有用である。硬化剤はまた、原液としてまたは担体と共に用いてもよい。例えば、担体と共に使用される好適な多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレートは、米国特許公開第11/246,773号に開示されている。また、米国特許第4,087,485号に記載されるように、熱可塑性加硫物を調合する前に、硬化材料および/または硬化剤をプラスチックと予混合してもよい。
【0094】
[0093]ケイ素含有硬化材料は、少なくとも2つのSiH基を有する水素化ケイ素化合物を含むことができる。水素化ケイ素の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンジメチルシロキサンコポリマー、アルキルメチル-コ-メチルハイドロジェンポリシロキサン、ビス(ジメチルシリル)アルカン、ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。そのようなヒドロシリル化硬化材料は、5-ビニル-2-ノルボルネン由来のジエン単位を含む単峰性コポリマーゴムで特に有用である。
【0095】
[0094]ヒドロシリル化のための触媒として働く硬化剤の例としては、VIII族の遷移金属およびこれらの金属の錯体が挙げられる。例えば、パラジウム、ロジウム、および白金を硬化剤として使用することができる。有用なケイ素含有硬化材料および硬化剤は、米国特許第5,936,028号に開示されている。
【0096】
[0095]当業者であれば、TPV組成物を生成するために使用する硬化材料の量が、併せて使用される硬化材料および/または硬化剤の化学的性質に応じて変動しうることを理解できる。これらのまたは他の実施形態において、用いる硬化材料の量は、使用される単峰性コポリマーゴムのタイプならびにゴム中に存在する架橋性単位に応じて変動しうる。
【0097】
充填材
[0096]充填材は、約0phr~約300phr、好ましくは約0phr~約200phr、より好ましくは約0phr~約100phrの量でTPV組成物中に含まれうる。好適な充填剤の例としては、カーボンブラック、粘土、タルク、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0098】
[0097]比較的高い比重を有する該充填材は、多くの場合、TPV反応器に供給されるベールを分割する安価な方法としてベールで入手可能なゴムを含有する従来のTPV組成物中に使用される。1つまたは複数の実施形態において、充填材を顕著に減少させ、またはさらには除去させて、低密度のTPV組成物を得ることができる。この充填材の減少が可能な理由は、本明細書で開示する多峰性コポリマーゴムをベールではなくより小さい粒子の形態で供給することができ、それによって分割剤の必要を解消することができるためである。
【0099】
その他の添加剤
[0098]1つまたは複数の実施形態において、TPV組成物は、非常に高いメルトフロー指数を有する高分子加工添加剤を含むことができる。好適な高分子加工添加剤としては、約500dg/分超、約750dg/分超、約1000dg/分超、約1200dg/分超、または約1500dg/分超のMFRを有する直鎖状および分岐状ポリマーが挙げられる。さまざまな分岐状またはさまざまな直鎖状高分子加工添加剤の混合物、ならびに直鎖状および分岐状の両方の高分子加工添加剤の混合物を用いてもよい。有用な直鎖状高分子加工添加剤には、ポリプロピレンホモポリマーがある。有用な分岐状高分子加工添加剤には、ジエン修飾ポリプロピレンポリマーがある。好適な加工添加剤は、米国特許第6,451,915号にも開示されている。
【0100】
[0099]TPV組成物は、任意選択により、相溶化剤、顔料、着色剤、染料、分散剤、難燃剤、酸化防止剤、伝導性粒子、UV阻害剤、UV安定剤、接着促進剤、脂肪酸、エステル、パラフィンろう、中和剤、金属不活性化剤、粘着付与剤、ステアリン酸カルシウム、吸湿剤、安定剤、光安定剤、光吸収剤、カップリング剤、例えばシランおよびチタン酸塩、可塑剤、潤滑剤、遮断剤、ブロッキング防止剤、静電防止剤、ワックス、発泡剤、核形成剤、スリップ剤、酸捕捉剤、潤滑剤、アジュバント、界面活性剤、結晶化助剤、高分子添加剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、レオロジー改質剤、湿潤剤、硬化抑制剤、補強充填剤および非補強充填剤、ならびにこれらの組合せ、ならびにゴム配合技術分野において一般的に知られている他の加工助剤などの他の添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、総TPV組成物の最大で約50wt%の量で存在しうる。
【0101】
加硫プロセス
[0100]TPV組成物は、非加硫熱可塑性ポリマーの存在下の多峰性コポリマーゴムの動的加硫によって調製することができる。動的加硫は、ゴムが、熱可塑性ポリマーの融点より高い温度にて、高剪断の条件下で架橋されうる加硫または硬化プロセスを含みうる。一実施形態において、ゴムは、同時に架橋され、他の形態も存在しうるが、熱可塑性マトリクス中に微粒子として分散されうる。
【0102】
[0101]1つまたは複数の実施形態において、動的加硫は、連続プロセスを用いて達成することができる。連続プロセスは、生成物を生成または製造することが望ましい時間の間に、ゴムの動的加硫が連続的に達成され、熱可塑性加硫生成物が連続的に除去され、もしくは系から集められ、かつ/または1種以上の原材料もしくは成分が連続的に系に供給されるプロセスを含むことができる。
【0103】
[0102]1つまたは複数の実施形態において、連続動的加硫は、連続混合反応器(連続ミキサーとも呼ばれうる)内で達成されうる。連続混合反応器は、成分を連続的に供給でき、連続的に生成物を取り出すことができる反応器を含むことができる。連続混合反応器の例としては、二軸または多軸押出機、例えばリング押出機が挙げられる。TPV組成物を連続的に調製するための方法および装置は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,311,628号、同第4,594,390号、同第5,656,693号、同第6,147,160号、および同第6,042,260号、ならびにWO2004/009327 A1に記載されている。低い剪断速度を用いる方法も使用できるという知見を得た。ブレンドは連続反応器のさまざまなバレル部または位置を通過するため、ブレンドの温度は、当該技術分野において一般的に知られているように変動しうる。特に、硬化範囲内の温度は、用いられる硬化材料の半減期に応じて制御または操作することができる。
【0104】
[0103]1つまたは複数の実施形態において、TPV組成物の調製は、TPV組成物の各成分を、加硫のための連続混合反応器に導入することによって達成することができる。他の実施形態において、特定の成分を組み合わせて予加硫ブレンドを生成した後、このブレンドを、予加硫ブレンドに含まれない他成分と共に連続混合反応器に導入する。好ましくは、予加硫ブレンドは、粉末およびその結合剤、例えば粉末で散布されうる多峰性コポリマーゴム、充填剤、ならびに硬化剤を含む成分を含有するが、予加硫ブレンドは、TPV組成物を調製するために使用されるいずれの成分をも含有することができる。
【実施例】
【0105】
[0104]前述の考察は、以下の非限定例を参照してさらに説明することができる。
[0105]以下の表1に示すメタロセン系EPDMゴムの1種(すなわち、M-EPDM IおよびM-EPDM II)を含む6種のTPV組成物(実施例1~6)を生成した。M-EPDM IはVistalon(商標)5601であり、M-EPDM IIはVistalon(商標)5702であり、これらは両方ともExxonMobilから市販されている。M-EPDM IおよびM-EPDM IIの特定の特性を表1に記載する。M-EPDM IおよびM-EPDM IIは、先端のメタロセン触媒技術を用いて調製される非油展多峰性EPDMコポリマーであり、ペレット形態で入手できる。これらのコポリマーは、逆二峰性コポリマーと呼ばれることが多く、ムーニー粘度が120ML(1+4@125℃)超の微量(50wt%未満)ポリマー画分およびムーニー粘度が120ML(1+4@125℃)未満の主要(50wt%超)ポリマー画分を有する。これらのコポリマーの全体のムーニー粘度は、約90ML(1+4@125℃)以下である。また、これらは約5wt%のジエン含有量、約64wt%以上のジエンを含まないエチレン含有量(C2)、3.5未満のMWD、および0.85超のBIも有する。
【0106】
[0106]以下の表1に示すチーグラー‐ナッタEPDMゴム(ZN-EPDM)を含有する2種の比較TPV組成物(比較例1~2)も生成した。ZN-EPDMはVistalon(商標)3666であり、これはExxonMobilから市販されている。ZN-EPDMは、従来のチーグラー‐ナッタ触媒を使用して調製される75phrの油展単峰性分岐状EPDMコポリマーである。ZN-EPDMの特定の特性を表1に記載する。ZN-EPDMは、油の添加後に約50のムーニー粘度(ML、1+4@125℃)、約4dl/gの135℃でのデカリン中の固有粘度、約850kg/moleのMw、約170kg/moleのMn、5超のMWD、および約0.5のBIを有する。ZN-EPDMはまた、約64wt%のジエンなしのエチレン(C2)含有量、および約4.2wt%のジエン含有量も有する。
【0107】
[0107]
【0108】
【0109】
[0108]以下の表2は、実施例(Ex.)1~6で使用される特定のメタロセン系EPDMゴムおよび比較例(C.Ex.)1~2で使用されるZN-EPDMゴムの量を記載する。Ex.1~6およびC.Ex.1~2のTPV組成物は、二軸押出機中でゴムを動的加硫することによって調製した。固体成分、すなわちゴム、熱可塑性ポリオレフィンの混合物、硬化材料、硬化剤、および充填剤を押出機の供給口に添加し、溶融混合を経てブレンドを実現し、それによって熱可塑性ポリオレフィン混合物を溶融状態にし、ゴムを硬化した。使用する熱可塑性ポリオレフィンは、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物だった。本発明のEx.1~6のTPV組成物中に使用される熱可塑性ポリオレフィンの特定量を、表2に示すように変動させ、C.Ex.1~2のTPV組成物と同等の硬度レベルおよび物理的性質の全体バランスならびに処理性能を達成した。Ex.1~6およびC.Ex.1~2では、使用した硬化材料は、オクチルフェノールとノニルフェノールホルムアルデヒドのブレンド(0.5~10phr)を含むレゾールタイプのフェノール系樹脂だった。使用した硬化剤は、酸化亜鉛および塩化第一スズ(0.5~5phr)だった。Ex.1~6では、カーボンブラック(1~40phr)を第1の充填剤として使用し、炭酸カルシウム(0~100phr)を第2の無機ミネラル充填剤として使用した。C.Ex.1~2では、カーボンブラック(1~40phr)を第1の充填剤として使用し、粘土(0~100phr)を第2の無機ミネラル充填剤として使用した。
【0110】
[0109]硬化の前後に、表2に記載の量のパラフィン油を押出機に添加した。C.Ex.1~2のTPV組成物は油展ゴムで調製したため、硬化後より硬化前に、より多量の油(2~10倍を超える)がゴムに含まれていた。従来のTPV組成物とは対照的に、Ex.1~6のTPV組成物は、硬化前に、より少ない油を添加し、硬化後に、より多くの油で作製し、非油展メタロセンEPDMゴムの工程間の油展を可能にした。この工程間の油展が、最適なTPV相形態の実現を助け、したがって本発明のEx.1~6のTPV組成物の物理的および審美的性質の全体バランスを良好に提供すると考えられている。
【0111】
[0110]
【0112】
【0113】
[0111]Ex.1~6およびC.Ex.1~2のTPV組成物のさまざまな性質を以下のとおりに決定し、以下の表3に示した。比重は、ISO1183に基づくTPE0105に従って測定した。硬度は、15秒の時間間隔でISO868に基づくTPE0189に従って決定した。LCR粘度は、204℃でISO11443に基づくSOP-211に従って決定した。圧縮永久歪みは、室温(RT)および70℃で22時間の25%の圧縮率にてASTM D395に従って決定した。100%伸び時のモジュラス(M100)、極限引張強さ、および破断点伸び(%)を、Instron試験機を使用して、50mm/分で、23℃にてISO37に従って決定した。
【0114】
[0112]押出表面粗さ(ESR)は、マイクロインチで表す表面のむら(Ra)の算術平均として報告される。表面のむらは、以下のとおりに測定した。試験する約1kg(2lbs.)のTPV組成物を、3.0~3.5の圧縮比を有する24:1長さ/直径の軸を装備した直径2.54cm(1インチ)または3.81cm(1.5インチ)の押出機に供給した。押出機に、幅25.4mm(1インチ)×厚さ0.5mm(0.019インチ)×長さ7~10mm(0.25~0.40インチ)のストリップダイを取り付けた。ブレーカープレートをダイと共に使用したが、ブレーカープレートの前にスクリーンパックは置かなかった。押出機の近似の温度プロフィールは以下のとおりだった:ゾーン1:180℃(供給ゾーン);ゾーン2=190℃;ゾーン3=200℃;ゾーン4=205℃(ダイゾーン)。ゾーン温度が達すると、軸が稼働した。軸の速度は、約50g/分の出力を維持するように設定した。最初の5分の押し出しのために、押出機を流し、押し出された材料を廃棄した。長さが約30.5cm(12インチ)のストリップを、ダイの下面の下、該下面に接して直接位置する平らな基板上に押し出した。3つの代表的な試料は、この方法で集めた。針圧200mgの汎用プローブおよびSurfanalyzer適正先端部タイプEPT-01049(0.025mm(0.0001インチ)針圧の半径)を含むモデルEMD-04000-W5 Surfanalyzer System 4000を使用して、試料上でESRを測定した。
【0115】
[0113]C.Ex.1のTPV組成物に対する結合強度は、まずジョイントドッグボーン試験片を調製し、次いでそれをInstron機で試験することによって測定した。ジョイントドッグボーンは、試験するTPV組成物を試験片の半分とし、残り半分のTPV組成物をC.Ex.1として直接射出成形して調製した。C.Ex.1のTPV組成物の半分の基材は、射出成形したドッグボーン全体を中間で切断して調製した。
【0116】
[0114]
【0117】
【0118】
[0115]驚くべきことに、良好なバランスの性質が、非油展メタロセン系EPDMゴムを含有する本発明のEx.1~6のTPV組成物で得られた。Ex.1~6のTPV組成物の物理的、処理、および審美的性能は、予想外にも、油展チーグラー‐ナッタ系EPDMゴムを含有するC.Ex.1~2のTPV組成物の性能より良好または同等であり、概して同様の密度レベルを有していた。例えば、Ex.1~6のTPV組成物の硬度値は、有利には、C.Ex.1~2のTPV組成物と比較して高く、Ex.1~5のESR値は、有利にはより低かった。また、Ex.3のTPV組成物の結合強度は、驚くべきことに、C.Ex.1~2のTPV組成物の結合強度より高かった。Ex.1~6のTPV組成物では、極限引張強さ値は5.5超であり、破断点伸び値は395%超であり、圧縮永久歪みはRTで35%未満であり、70℃で60%未満であり、ESR値は概して55μin未満だった(Ex.1~5の場合)。処理および審美的性能は、剪断速度200-1でLCR見掛け粘度によって測定した場合、望ましくは約300~500Pa*sの範囲だった。加えて、本発明のEx.5~6のTPV組成物は、優れた性質の全体バランスを実証し、低下した密度をもたらした。
【0119】
実施形態一覧
[0116]本開示は、以下の非限定的実施形態のうちのいずれか1つ以上をさらに含むことができる。
【0120】
[0117]1.(a)エチレン由来単位;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50wt%超~100wt%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて0wt%超~50wt%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分;約2.0から約4.5の平均分子量分布(Mw/Mn);約0.7から約1.0の平均分岐指数;および100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含む多峰性コポリマーゴム;(b)少なくとも1種の他の油;(c)少なくとも1種の熱可塑性ポリマー;ならびに(d)少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含む硬化系を含む、熱可塑性加硫物組成物。
【0121】
[0118]2.多峰性コポリマーゴムが、メタロセン触媒を使用して形成され、約45wt%から約80wt%のエチレン由来単位;約1wt%から約10wt%の非共役ジエン由来単位;残りのα-オレフィン由来のポリマー単位を含み、全体のムーニー粘度が約20ML(1+4@125℃)から約90ML(1+4@125℃)であり、全重量百分率が、多峰性コポリマーゴムの総重量に基づく、実施形態1の熱可塑性加硫物組成物。
【0122】
[0119]3.少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの連続相またはマトリクス中に分散された加硫ゴムの粒子をさらに含む、実施形態1または2の熱可塑性加硫物組成物。
[0120]4.多峰性コポリマーゴムが、約0.5mmから約15.0mmの粒径を有する粒子の形態である、実施形態1から3の熱可塑性加硫物組成物。
【0123】
[0121]5.少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、エチレンとプロピレンとのコポリマー、またはこれらの組合せを含み、熱可塑性加硫物組成物中の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量が約20phrから約600phrである、実施形態1から4の加硫物組成物。
【0124】
[0122]6.ポリプロピレンが、リサイクルされたポリプロピレンを含む、実施形態5の熱可塑性加硫物組成物。
[0123]7.ポリエチレンが、リサイクルされたポリエチレンを含む、実施形態5の熱可塑性加硫物組成物。
【0125】
[0124]8.熱可塑性加硫物組成物中の少なくとも1種の他の油の量が約10phrから約250phrである、実施形態1から7の熱可塑性加硫物組成物。
[0125]9.少なくとも1種の硬化材料が、熱可塑性加硫物組成物中に存在するフェノール系ポリマーを約0.1phrから約20.0phrの量で含む、実施形態1から8の熱可塑性加硫物組成物。
【0126】
[0126]10.熱可塑性加硫物組成物中に存在する充填剤を約0phrから約300phrの量でさらに含む、実施形態1から9の熱可塑性加硫物組成物。
[0127]11.約30ショアAから約55ショアDの硬度、約250%から約900%の破断点伸び、約2.0MPaから約15.0MPaの極限引張強さ、1200s-1で約30Pa*sから約150Pa*sの見掛け粘度、約0.86から約1.40の比重、約1.0MPaから約5.0MPaの結合強度、および約20から約200の押出表面粗さをさらに含む、実施形態1から10の熱可塑性加硫物組成物。
【0127】
[0128]12.熱可塑性加硫物組成物の製造方法であって、多峰性コポリマーゴムを反応器に導入するステップであり、多峰性コポリマーゴムが、エチレン由来単位;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50wt%超~100wt%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて0wt%超~50wt%未満の、約120ML(1+4@125℃)から約1500ML(1+4@125℃)のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分;約2.0から約4.5の平均分子量分布(Mw/Mn);約0.7から約1.0の平均分岐指数;および100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含む、ステップと;多峰性コポリマーゴムに対して同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、および硬化系を反応器に導入するステップと;多峰性コポリマーゴム、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および硬化系を溶融混合するステップと;多峰性コポリマーゴムを硬化するステップとを含む方法。
【0128】
[0129]13.前記多峰性コポリマーゴムを硬化するステップが、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの連続相またはマトリクス中に分散されたゴムの粒子を形成する、実施形態12の方法。
【0129】
[0130]14.多峰性コポリマーゴムを硬化するステップの前に少なくとも1種の油を導入少なくとも1種の他の油を導入し、さらに、前記多峰性コポリマーゴムの硬化に後続して、追加の油を導入するステップを含み、少なくとも1種の他の油と追加の油との比が約1未満である、実施形態12または13の方法。
【0130】
[0131]15.多峰性コポリマーゴムが、メタロセン触媒を使用して形成され、約45wt%から約80wt%のエチレン由来単位、約1wt%から約10wt%の非共役ジエン由来単位、残りのα-オレフィン由来のポリマー単位を含み、全体のムーニー粘度が約20ML(1+4@125℃)から約90ML(1+4@125℃)であり、全重量百分率が多峰性コポリマーゴムの総重量に基づく、実施形態12から14の方法。
【0131】
[0132]16.多峰性コポリマーゴムが、約0.5mmから約15.0mmの粒径を有する粒子の形態である、実施形態12から15の方法。
[0133]17.少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、エチレンとプロピレンとのコポリマー、またはこれらの組合せを含み、熱可塑性加硫物組成物中の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量が約20phrから約600phrである、実施形態12から16の方法。
【0132】
[0134]18.ポリプロピレンがリサイクルされたポリプロピレンを含み、ポリエチレンがリサイクルされたポリエチレンを含む、実施形態17の方法。
[0135]19.熱可塑性加硫物組成物中の少なくとも1種の他の油の量が、約10phrから約250phrであり、硬化系が、少なくとも1種の硬化材料および少なくとも1種の硬化剤を含み、少なくとも1種の硬化材料が、熱可塑性加硫物組成物中に存在するフェノール系ポリマーを約0.1phrから約20.0phrの量で含む、実施形態12から18の方法。
【0133】
[0136]20.多峰性コポリマーゴムに対して同時にまたは連続的に、約0phrから約300phrの量の充填剤を反応器に導入することをさらに含む、実施形態12から19の方法。
【0134】
[0137]21.熱可塑性加硫物の製造方法であって、予加硫ブレンドを作製するステップであり、予加硫ブレンドが、(a)エチレン由来単位;多峰性コポリマーゴムの総重量に基づいて50wt%超~100wt%未満の、約15ML(1+4@125℃)から約120ML(1+4@125℃)の第1のムーニー粘度を有する主要ポリマー画分;0wt%超~50wt%未満の、第1のムーニー粘度より低い第2のムーニー粘度を有する微量ポリマー画分;100重量部の多峰性コポリマーゴム当たり10重量部未満の油を含む、多峰性コポリマーゴム;ならびに(b)少なくとも1種の粉状硬化剤を含む、ステップと、予加硫ブレンドを反応器に導入するステップと、予加硫ブレンドに対して同時にまたは連続的に、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、および少なくとも1種の硬化材料を反応器に導入するステップと、予加硫ブレンド、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、および少なくとも1種の硬化材料を溶融混合するステップと、多峰性コポリマーゴムを硬化するステップとを含む、製造方法。
【0135】
[0138]22.前記予加硫ブレンドを作製するステップが、前記予加硫ブレンドを反応器に導入するステップとは別の場所で行われる、実施形態21の方法。
[0139]23.予加硫ブレンドが、少なくとも1種の粉状充填剤、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、少なくとも1種の他の油、少なくとも1種の硬化材料、またはこれらの組合せをさらに含む、実施形態21または22の方法。
【0136】
[0140]24.少なくとも1種の粉状充填剤が、炭酸カルシウム、カーボンブラック、タルク、またはこれらの組合せを含み、少なくとも1種の粉状硬化剤が、金属酸化物、塩化第一スズ、またはこれらの組合せを含む、実施形態23の方法。
【0137】
[0141]特定の実施形態および特徴を、一連の上限数値および一連の下限数値を用いて説明してきた。任意の2つの値の組合せ、例えば任意の下限値と任意の上限値との組合せ、任意の2つの下限値の組合せ、および/または任意の2つの上限値の組合せを含む範囲が、別段の指定がない限り企図されると理解すべきである。特定の下限、上限および範囲が、以下の1つ以上の請求項に記載されている。すべての数値は、指定の値に「約」または「ほぼ」が付き、当業者が予測すると思われる実験誤差および変動を考慮に入れている。
【0138】
[0142]さまざまな用語を上で定義した。特許請求の範囲内で用いられる用語の範囲は上で規定しておらず、最も広義の定義であるべきであり、当業者が挙げる少なくとも1つの印刷された刊行物または発行された特許の中で反映されている用語であるべきである。さらに、本出願で引用される全ての特許、試験手順、および他の文献は、該開示が本出願と矛盾しない程度まで、参照により完全に組み込まれ、この組み込みが許容される全ての権限下にあるものとする。
【0139】
[0143]前述の内容は、本発明の実施形態を対象とするが、その基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他のおよびさらなる実施形態が考案され得、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】