(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】整流される回転子巻線を備える電気機械内の電力分配
(51)【国際特許分類】
H02K 19/26 20060101AFI20230719BHJP
H02P 21/05 20060101ALI20230719BHJP
H02P 27/05 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H02K19/26 A
H02P21/05
H02P27/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506210
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021044213
(87)【国際公開番号】W WO2022026957
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520456860
【氏名又は名称】タウ モーターズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ペニントン,ウォルター ウェスリー,サード
(72)【発明者】
【氏名】ルビン,マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン,グレゴリー ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン,マイケル パーカー
(72)【発明者】
【氏名】スウィント,イーサン バゲット
(72)【発明者】
【氏名】プレインドル,マティアス
【テーマコード(参考)】
5H505
5H619
【Fターム(参考)】
5H505AA01
5H505AA06
5H505AA19
5H505BB10
5H505DD06
5H505EE41
5H505EE48
5H505HB01
5H505HB10
5H619BB01
5H619BB13
5H619PP08
5H619PP12
5H619PP14
5H619PP32
(57)【要約】
電気機械が、固定子電流を受けるように構成された付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する固定子を備える。電気機械はまた、付随した回転子巻線により固定された複数の回転子磁極を画定する回転子であって、回転子が、固定子電流を受けたときに、固定子巻線が発生した磁界によって励磁されて回転子と固定子との間に相対運動を発生させ得る磁界を画定し、回転子が、電気機械の動作中、固定子が発生した磁界と同期した状態に維持される、回転子を備える。電気機械はまた、固定子電流を受けたときに固定子巻線が発生した磁界によって磁界が励磁されると回転子磁極に誘導される交互に切り替わる電流に対して制御するように構成された整流システムを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子電流を受けるように構成された付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する固定子と、
付随した回転子巻線により固定された複数の回転子磁極を画定する回転子であって、前記回転子は、前記固定子巻線が前記固定子電流を受けたことに応じて、前記固定子巻線が発生した磁界によって励磁され前記回転子と前記固定子との間に相対運動を発生させる磁界を画定し、前記回転子は、前記電気機械の動作中、前記固定子が発生した前記磁界と同期した状態に維持される、回転子と、
前記固定子電流を受けたときに前記固定子巻線が発生した磁界によって前記磁界が励磁されると、前記回転子磁極に誘導される交互に切り替わる電流に対して制御するように構成された整流システムと
を備える、電気機械。
【請求項2】
前記整流システムが、前記固定された複数の回転子磁極のそれぞれの両端を短絡する整流構成要素を備える、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記整流構成要素が、前記固定子と前記回転子との間の空隙における磁束の励磁の遅延を抑制するように構成される、請求項2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記整流システムが、前記固定子電流を受けたときに前記固定子巻線が発生した前記電界に対して非対称の応答を発生させて、回転子トルクリップルを制御するように構成される、請求項1に記載の電気機械。
【請求項5】
前記整流システムが、前記固定された複数の回転子磁極のそれぞれを挟んで配置されたそれぞれの整流子を備える、請求項1に記載の電気機械。
【請求項6】
前記整流システムが、受動整流システム又は能動整流システムを含む、請求項1に記載の電気機械。
【請求項7】
前記固定子巻線を通して、前記回転子磁極のうちの最も近い磁極に対して測定されるある電流角で前記固定子電流を送り、
前記電気機械の所望の動作出力を決定し、
前記電気機械の前記所望の動作出力に対応する所望の回転子運動を決定し、
前記所望の回転子運動を引き起こす、前記固定子に適用されるベクトル制御変調を計算し、
前記ベクトル制御変調に基づいて前記固定子電流の前記電流角を調節して、前記回転子に前記所望の回転子運動を行わせ、前記電気機械の前記所望の動作出力を達成する
ように構成されたコントローラを更に備える、請求項1に記載の電気機械。
【請求項8】
前記コントローラが、前記ベクトル制御変調に基づいて前記固定子電流の大きさ又は周波数を変調するように更に構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項9】
前記コントローラが、
前記固定子電流の周波数又は振幅を調節して、前記回転子に前記所望の回転子運動を行わせ、
前記電気機械の前記所望の動作出力を達成する
ように更に構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項10】
前記コントローラが、
前記固定子電流の周波数又は振幅を調節して、前記回転子に前記所望の回転子運動を行わせ、
前記回転子が前記所望の回転子運動を行っており、前記電気機械の前記所望の動作出力を達成しているときに、回転子トルクリップルを制御する
ように更に構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項11】
前記コントローラが、前記固定子の巻線に沿って回転子の磁極より進むように前記固定子電流の前記電流角を大きくして、増加したトルクを送達するように構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項12】
前記コントローラが、前記固定子電流の前記電流角を大きくしながら前記固定子電流の大きさを大きくして、回転子トルクリップルを制御するように構成される、請求項10に記載の電気機械。
【請求項13】
前記コントローラが、前記固定子の電流角を負にさせて、前記回転子の制動機能を実現するように構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項14】
前記固定子巻線が分布巻巻線を含み、前記回転子が、
集中巻巻線、
突極型巻線、
非重ね巻巻線、又は
永久磁石
を含む、請求項1に記載の電気機械。
【請求項15】
前記回転子が永久磁石を含み、前記永久磁石が前記回転子磁極と実質的に整列する、請求項14に記載の電気機械。
【請求項16】
付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する固定子と、
複数の回転子磁極を画定する回転子であって、前記回転子が前記固定子と同期して回転するように構成され、前記回転子が前記回転子磁極のそれぞれに付随した回転子巻線を備え、前記回転子巻線が前記固定子巻線が発生した磁界によって励磁されるように構成され、前記励磁された回転子巻線が回転子磁界を発生させる、回転子と、
前記固定子巻線が発生した前記磁界に応じて前記回転子巻線への励磁の遅延を抑制し、前記固定子電流の位相角又は前記固定子電流の大きさの少なくとも一方が変化すると、前記回転子巻線に非対称の電流応答を発生させて、回転子トルクリップルを制御するように構成された整流システムと
を備える、巻線界磁回転子同期機械。
【請求項17】
前記整流システムが、前記複数の回転子磁極のそれぞれの両端を短絡する整流構成要素を備える、請求項16に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項18】
前記整流システムが、前記固定された複数の回転子磁極のそれぞれを挟んで配置されたそれぞれの整流子を備える、請求項16に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項19】
前記整流システムが、受動整流システム又は能動整流システムを含む、請求項16に記載の電気機械。
【請求項20】
前記回転子磁極のうちの最も近い磁極に対して測定される前記大きさ及び前記位相角を有する固定子電流により前記固定子巻線を励磁し、
次のことにより、前記巻線界磁回転子同期機械の所望の動作出力を達成する、すなわち、
前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力を達成する回転子性能を決定することと、
前記固定子電流の前記位相角又は前記大きさのうちの一方を調節して、前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力を達成することと、
前記巻線界磁回転子同期機械の現在の動作出力を示す信号を受信することと、
前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力に対して前記巻線界磁回転子同期機械の前記現在の動作出力を比較することと、
前記固定子電流の前記位相角又は前記大きさのうちの他方を調節して、前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力を達成することと
により、前記巻線界磁回転子同期機械の所望の動作出力を達成する
ように構成されたコントローラを更に備える、請求項15に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項21】
前記コントローラが、前記巻線界磁回転子同期電気機械の前記所望の動作出力に基づいて、前記固定子電流の周波数を変調するように更に構成される、請求項20に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項22】
前記電流角を調節するために、前記コントローラが、前記巻線界磁回転子同期電気機械の1つの軸のみにおいて前記電流角のみを調節するように更に構成される、請求項20に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項23】
前記コントローラが、前記電流角又は前記電流の大きさの少なくとも一方への調節を選択して、前記巻線界磁回転子同期電気機械の前記所望の動作出力を実現しながら回転子トルクリップルを制御するように更に構成される、請求項20に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
[0001] 本出願は、2020年7月31日に出願された米国特許出願第63/059930号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張するものであり、同米国特許出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0002] 本発明は、電動機及び発電機に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 電動機は、一般に、固定子と呼ばれることが多い固定構成要素と、回転子と呼ばれることが多い回転構成要素とを備える。電流が電磁界に変換され、電磁界が固定子と回転子との間に機械的な力すなわちトルクを発生させる。機械的な力すなわちトルクは、仕事を行うために使用され得る。発電機も同様の原理で動作するが、機械的な力が電流に変換されることにより動作する。本明細書で説明される原理は、主に回転力すなわちトルクに関して説明されるが、リニアモータにも適用可能である。リニアモータの場合、いくつかの実装形態では、回転子は固定構成要素として機能し、固定子は並進移動される構成要素として機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
[0004] 本開示は、電気機械内で電力を無線で伝達することに関する技術を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 本開示内で説明される主題の例示的な実装形態は、以下の特徴を有する電気機械である。固定子が、付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する。回転子が、付随した回転子巻線により固定された複数の回転子磁極を画定し、付随した回転子巻線は、整流子を備え、且つ固定子によってのみ励磁されるように構成される。回転子は、固定子巻線が発生した磁界によって励磁されて回転子と固定子との間に相対運動を発生させ得る回転子磁界を画定する。コントローラが、固定子巻線を通して、回転子磁極のうちの最も近い磁極に対して測定されるある電流角で電流を送るように構成される。コントローラは、動作条件に応じて電流角を調節するように構成される。コントローラは、動作条件に応じて送られた電流の大きさを調節するように構成される。回転子は、動作中、固定子巻線が発生した磁界と同期した状態に維持される。
【0006】
[0006] いくつかの実装形態では、固定子巻線が集中巻巻線を含む。
【0007】
[0007] いくつかの実装形態では、固定子巻線が分布巻巻線を含む。
【0008】
[0008] いくつかの実装形態では、固定子巻線が突極型巻線を含む。
【0009】
[0009] いくつかの実装形態では、回転子巻線が集中巻巻線を含む。
【0010】
[0010] いくつかの実装形態では、回転子巻線が突極型巻線を含む。
【0011】
[0011] いくつかの実装形態では、回転子巻線が非重ね巻巻線を含む。
【0012】
[0012] いくつかの実装形態では、整流子がダイオードを含む。
【0013】
[0013] いくつかの実装形態では、整流方向が、回転子磁極間で交互に切り替わる。
【0014】
[0014] いくつかの実装形態では、回転子が永久磁石を含む。
【0015】
[0015] いくつかの実装形態では、永久磁石が、回転子磁極と実質的に整列する。
【0016】
[0016] 本開示で説明される主題の例示的な実装形態は、電気機械を制御する方法である。本方法は以下の特徴を含む。固定子の固定子巻線が、励磁されて固定子内に固定子磁界を発生させる。固定子磁界が磁束を確立することによって、回転子磁極内の強磁性材料内の対応する回転子磁界が変化する。固定子磁界のシフトによって回転子の接線方向の力が発生する。発生した接線方向の力によって回転子が動く。空隙における磁束の励磁の遅延が整流子によって抑制される。空隙は、固定子の内面と回転子の外面との間に画定される。回転子内の磁束の減衰が、磁界シフトに応じて回転子巻線内の電流によって抵抗される。固定子磁界と回転子とは、動作中、互いに同期した状態に維持される。電流が、固定子巻線を通して、回転子磁極のうちの最も近い磁極に対して測定されるある電流角で送られる。送られた電流の大きさが、動作条件に応じて調節される。電流角は、動作条件に応じて調節される。
【0017】
[0017] いくつかの実装形態では、磁束を維持することが、第1の電流がゼロに減少するまで回転子巻線内で第1の方向に第1の電流を誘導することによって磁束の第1の変化に抵抗することを含み、また磁束を維持することが、磁束の第2の変化が回転子巻線内で第2の方向に電流を誘導することを可能にすることを含む。
【0018】
[0018] いくつかの実装形態では、逆向きの接線方向の力が整流子によって抑制される。
【0019】
[0019] いくつかの実装形態では、整流子がダイオードを含む。
【0020】
[0020] 本開示で説明される主題の例示的な実装形態は、以下の特徴を有する巻線界磁回転子同期機械である。固定子が、付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する。回転子が複数の回転子磁極を画定する。回転子は、固定子と同期して回転するように構成される。回転子は、回転子磁極のそれぞれに付随した回転子巻線を備える。回転子巻線は、固定子巻線が発生した磁界によって励磁されて回転子磁界を発生させるように構成される。回転子巻線は整流子を備える。永久磁石が回転子内に埋め込まれる。コントローラが、固定子巻線を励磁するように構成される。コントローラは、固定子巻線を通して、最も近い回転子磁極に対して測定されるある電流角で電流を送ることによって固定子巻線に制御信号を送信することにより、固定子内で固定子磁界を発生させるように構成される。コントローラは、動作条件に応じて電流角を調節するように構成される。コントローラは、動作条件に応じて送られた電流の大きさを調節するように構成される。
【0021】
[0021] いくつかの実装形態では、永久磁石は、回転子磁極と整列しない。
【0022】
[0022] いくつかの実装形態では、整流子はショットキーダイオードを含む。
【0023】
[0023] いくつかの実装形態では、整流子は、動作中、トルクリップルを低減するように構成される。
【0024】
[0024] いくつかの実装形態では、位置センサが、固定子に対する回転子の位置を検出するように構成される。このような場合、コントローラは、位置センサから位置ストリームを受信するように更に構成される。位置ストリームは回転子位置を表す。コントローラは、位置ストリームを受信したことに応じて、トルクリップルが存在すると判定するように更に構成される。コントローラは、トルクリップルが存在すると判定したことに応じて、回転子磁極に対する電流角を調節するように更に構成される。コントローラは、トルクリップルが存在すると判定したことに応じて、電流の大きさを調節するように更に構成される。
【0025】
[0025] 本開示で説明される主題の1つ又は複数の実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示される。主題の他の特徴、態様、及び利点も、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
【
図1】[0026]電気駆動システムの一例の概略図である。
【
図2】[0027]電気巻線のための例示的な電源スイッチの概略図である。
【
図3A】[0028]例示的な電気機械の斜視図である。
【
図3B】[0028]例示的な電気機械の側面図である。
【
図3C】[0029]例示的な電気機械の斜視図である。
【
図3D】[0029]例示的な電気機械の側面図である。
【
図4】[0030]例示的な電気機械の側面図である。
【
図5A】[0031]例示的な回転子コイルの正面図である。
【
図5D】[0034]ロックされた回転子条件(例えば、始動)の下での様々なチャージ状態及び発生したトルク、並びに異なる位相器角度を示すグラフである。
【
図6】[0035]本開示による、制御用に構成された電動機の概略図である。
【
図7】[0036]本開示の態様で使用され得る例示的なコントローラのブロック図である。
【
図8】[0037]本開示の態様で使用され得る方法のフローチャートである。
【
図9A】[0038]本開示の態様による、トルク増加要求に応じるための方法のフローチャートである。
【
図9B】[0039]本開示の態様による、トルク増加要求に応じるための方法の別のフローチャートである。
【
図9C】[0040]本開示の態様による、電動機を始動させるための方法のフローチャートである。
【
図9D】[0041]本開示の態様による、トルク増加要求に応じるための方法のフローチャートである。
【
図10】[0042]様々な機械構成のための平均磁界強度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0043] 各種図面において、同様の参照符号及び名称は同様の要素を指す。
【0028】
詳細な説明
[0044] 本開示は、電磁気的に直接結合された回転子と固定子とを備えた巻線界磁同期電動機に関する。回転子コイルは、ダイオードなどの整流子を備え得る。整流子を加えることは、動作中、電動機においてトルクリップルを低減するのを助ける。回転子の回転子磁極は、トポロジ的且つ電気的に回転子表面に固定される。回転子は、固定子巻線以外の固定子構成要素から実質的にエネルギー的に隔離される。つまり、回転子磁界は、固定子巻線が発生した磁界によって励磁されるように構成される。固定子磁界と回転子とは、動作中、互いに同期した状態に維持される。動作中、コントローラが、固定子を通して電流を送り、現在の動作条件又は変化する動作条件に応じて電流の大きさ及び角度を能動的に調節するように構成される。このような電動機は、高価な希土類磁石を必要とせず、また回転子内の巻線を励磁するための別個のブラシ又は励磁回路を必要とせずに、同期機械の効率で動作することができる。
【0029】
[0045] 本明細書で説明される電気機械は、回転子磁極を画定する短絡された集中巻巻線を特徴とする。過渡的な減衰のために回転子内の短絡されたダンパーバーが提案されているが、このようなダンパーバーは限られた周波数応答を有する傾向にある。対照的に、短絡された集中巻巻線は、動作中、幅広い周波数にわたって効果的な過渡減衰を提供し得る。加えて、本開示内で説明される様々な電気機械は、回転子バックアイアンの飽和中に発生する固有の非線形性及び非対称性を利用し得る。つまり、コイル内のインダクタンスが非対称になり、結果として正味のトルクが発生する。コイルに整流子を加えることにより、この非対称性が更に増し、トルクリップルが減る。
【0030】
[0046] よって、本開示は、様々な異なる目標を達成するための電気機械又は電動機を制御するための主題を提供する。例えば、本開示は、希土類元素若しくはブラシや励磁回路などの摩耗要素を必要としないか依存を低減した状態で所望の動作目標を達成するための主題、又は望ましくないトルクリップルを制御するように設計された正味トルクを発生させるなどのシステムの他の動作態様を改善するための主題を提供する。
【0031】
[0047]
図1は、電動機102と、電動機102に結合された電動機コントローラ104とを備える電気駆動システム100を示している。電動機コントローラ104は、電動機102を動作させて負荷110を駆動するように構成される。負荷110は、ギヤセット、車両の車輪、ポンプ、コンプレッサ、又は複数の電動機を連結されて並列して動作され得る他の電動機などの付加的なギヤトレインであり得る。
【0032】
[0048] 電動機102は、電動機ハウジング105に対して回転可能な出力シャフト107を有し、電動機ハウジング105は電動機構成要素の回転及び他の運動に関するデータムと見なされる。使用時には、出力シャフト107は、電動機コントローラ104からの適切な電力及び信号によって電気的に作動されると、電動機102が回転力を付与し得る負荷110に結合され得る。出力シャフト107は、電動機を通って延び、且つ両端が露出されもよく、つまり、回転力は電動機の両端で伝達され得る。電動機ハウジング105は、出力シャフト107の回転軸を中心として回転対称であり得るが、任意の外形形状であってもよく、一般に、電動機動作中のハウジング回転を防止するために、電動機ハウジング105を他の構造体に固定するための手段を備え得る。
【0033】
[0049] 電動機102は、固定子などの能動磁気構成要素106と、回転子などの受動磁気構成要素108とを備える。以下、説明の目的で、能動磁気構成要素の代表例として固定子が使用され、受動磁気構成要素の代表例として回転子が使用される。
【0034】
[0050] 回転子108は、固定子106に付随し、(例えば、内部回転子ラジアルギャップ電動機において)固定子106内に配置され得る、又は(例えば、アキシャルギャップ電動機又はリニアモータにおいて)固定子に平行に配置され得る。以下でより詳細に説明するように、適切に制御された固定子106の電気的活動が回転子108の運動を駆動する。回転子108は、結果として得られる回転子運動の任意の回転成分が出力シャフト107に伝達され、出力シャフト107を回転させるように、出力シャフト107に回転結合される。固定子106は、動作中に回転子108が固定子106を中心として又は固定子106に平行に動くように電動機102に固定される。
【0035】
[0051] 本開示全体を通して説明されるように、整流システム112が含まれてもよく、様々な異なる仕方で実施され得る。例えば、整流システムは、受動又は能動として動作するように構成されてもよい。いくつかの実装形態では、受動整流が1つ又は複数のダイオードを使用してもよい。いくつかの実装形態では、能動システムの場合、能動整流が、1つ又は複数のMOSFETなどのトランジスタを含んでもよい。いくつかの実装形態では、整流システム112は、1つ又は複数のダイオードなどの受動構成要素を使用する場合、半波整流子として構成されてもよい。いくつかの実装形態では、整流システム112は、例えば、能動整流を使用する場合、全波整流子として構成されてもよい。
【0036】
[0052] 能動であれ受動であれ、整流システム112を含めることにより、励磁条件下で存在し得る回転子コイル又は巻線のAC成分(具体的には、負の電流成分)を制御することによってトルクリップルを更に軽減することができる。AC成分は、チャージフェーズ(低電流角)中に発生することが多く、シート電流密度の低下をもたらす。整流は、この成分を実質的に除去し、コイルが高い電流移相器角度の電流のみを流すシステムを形成する。いくつかの実装形態では、高い電流移相器角度は、45度、65度、又は75度より大きい。
【0037】
[0053] 整流システムの非対称な電気抵抗により、回転子トポロジにおいて(非整流システムと比較した場合に)電流のより迅速な減衰が可能になる。例えば、突極型を有し得る分数スロット固定子では、チャージすなわち磁束注入サイクルを助け、トルクリップルを制限するために、より速い減衰が望ましい場合がある。例えば単一のダイオードによる一方向受動回路を有する整流された回転子を備えた機械では、回転子内に磁束を注入するために、巻線の電流をゼロにしなければならない。低い電流角(例えば、45度未満、35度未満、又は15度未満)で振動させることにより、システムに更に磁束注入するため、又は特定の動作条件(例、高速又は低トルク動作)のために回転子を効果的に弱め界磁させるために、回転子電流を迅速に減衰させることができる。
【0038】
[0054] また、本開示は、整流システムと並行して、チャージ前の回転子電流の減衰を促進し、過電圧放電によって生じる損傷を制限する、電気抵抗などの線形電気負荷114、又はアバランシェダイオードや電圧抑制ガス放電管などの非線形電気負荷を説明する。いくつかの実装形態では、1つ又は複数の線形負荷114は、100オーム、150オーム、300オーム、又は1,000オームより大きい抵抗値を有する電気抵抗器を含む。いくつかの実装形態では、ガス放電管又はアバランシェダイオードは、50ボルト、100ボルト、200ボルト、400ボルト、600ボルト、又は800ボルトより大きい逆方向降伏電圧、及び10ms、5ms、2ms、0.5ms、又は0.1ms未満の応答時間を有する。
【0039】
[0055] 電線のループを通って流れる電流は、実質的に一様な起磁力(MMF)をもたらし、その結果、巻線領域すなわち包囲領域内に電動機磁極が得られる。一般的な電動機では、このようなループは、所望の電流負荷を担うのに十分な直径を有するが、駆動周波数の表皮深さがループを完全に貫通するのに十分な程度に薄い。磁極磁界強度を上げるために、多くの巻数、すなわちワイヤの重なるループが使用されてもよい。このトポロジは、一般に、巻線界磁型磁極と呼ばれる。このような重なるループの集合がコイルと呼ばれる。本開示の目的のために、固定子又は回転子内で一緒に作用する複数のコイルが巻線と呼ばれる。いくつかの例では、コイルが重なり、回転子又は固定子のいずれかの複数の歯を包囲し得る。このような重ね巻きのコイルは、電機子又は分布巻巻線と呼ばれ得る。磁極が、この分布巻巻線の磁気中心であり、そのため、磁極は、巻線を通過する駆動電流に応じて、このような分布巻巻線内の個々のコイルに対して移動することができる。
【0040】
[0056] 本開示全体を通して更に詳細に説明される例のように、固定子106は、付随した電気巻線により複数の固定子磁極を画定し、回転子108は、複数の回転子磁極を含む。本開示全体を通して更に詳細に説明される例のように、回転子108は、固定子106と一緒に、固定子磁極と回転子磁極との間の名目上の空隙を画定する。回転子108は運動方向に沿って固定子106に対して移動可能である。
【0041】
[0057]
図2は、個々の電気巻線132の別の例示的な電力スイッチ200を示している。電力スイッチ200は、電気巻線132を中心として4つのスイッチング素子202a、202b、202c、202dをH字形の構成で備えるHブリッジ回路を有し得る。スイッチング素子202a、202b、202c、202dは、バイポーラ型又はFET型のトランジスタであり得る。各スイッチング素子202a、202b、202c、202dは、対応するダイオードD1、D2、D3、D4と結合され得る。ダイオードはキャッチダイオードと呼ばれ、ショットキータイプであり得る。ブリッジの上端は電源、例えばバッテリV
batに接続され、下端は接地される。スイッチング素子202a、202b、202c、202dのゲートは、対応する制御電圧信号を各スイッチング素子202a、202b、202c、202dに送信するように動作可能な巻線コントローラ130に結合され得る。制御電圧信号は、DC電圧信号又はAC(交流)電圧信号であり得る。
【0042】
[0058] スイッチング素子202a、202b、202c、202dは、電動機コントローラ104によって個別に制御でき、独立にオン/オフにされ得る。いくつかの場合では、スイッチング素子202a及び202dがオンにされると、固定子の左リード線が電源に接続されると共に、右リード線が接地部に接続される。電流が固定子を通して流れ始め、順方向に電気巻線132を励磁する。いくつかの場合では、スイッチング素子202b及び202cがオンにされると、固定子の右リード線が電源に接続されると共に、左リード線が接地部に接続される。電流が固定子を通して流れ始め、反対の逆順方向に電気巻線132を励磁する。つまり、スイッチング素子を制御することにより、電気巻線132は2つの方向のいずれかに励磁/作動され得る。主に単相のHブリッジ構成を使用するとして図示及び説明したが、本開示から逸脱することなく典型的な6スイッチインバータシステムを多相機械に使用することができる。
【0043】
[0059] 本開示全体を通して更に詳細に説明されるように、電動機コントローラ104は、固定子磁極と回転子磁極との間の空隙を横切る磁束を発生させるために、対応する磁極励磁デューティサイクルのためのスイッチ134又は200を順次動作させるように構成され得る。スイッチは、固定子磁極を順次励磁して、回転子を引っ張る局所的な引力を発生させるように制御され得る。このような順次励磁(又は作動)により、回転子108、出力シャフト107、及び負荷110を回転させることができる。
【0044】
[0060] 電動機の構成要素及び制御部は、電動機の回転子及び/又は固定子のD軸312(
図3に例示)及びQ軸に関連して論じられる場合がある。電動機における直軸、すなわちD軸312は、空隙314に直交する磁極308の中心線として定義することができ、固定子磁極411(
図4参照)又は回転子磁極408のいずれかに適用することができる。回転子は、同期基準座標系で見たときに各磁極におけるD軸312により特徴付けられ得る。巻線回転子では、D軸312は、界磁巻線が単一の大きなスロットに集中しているか複数の小さなスロットにわたっているかにかかわらず、コイル又は界磁巻線の結果として得られる磁気中心の中心点である。固定子磁極も同様に特徴付けられ得る。
【0045】
[0061] Q軸は、磁気基準座標系内でD軸に垂直(つまり、電気的に90度)である。一般に、Q軸に沿った力は、トルクなどの起電力を発生させる。トポロジ的には、回転子又は固定子のQ軸は、一般に、直接2つの磁極間に位置する。
【0046】
[0062] 制御信号がD-Q軸成分に変換され得るようなシステムでは、第3のz軸成分も存在し、D軸又はQ軸に直接マッピングされない信号又は磁気量として説明され得る。例えば、Q成分及びD成分を求めることができる平面と直交する成分である。
【0047】
[0063] 電流移相器角度318は、固定子の磁気中心に対する回転子磁極D軸312の相対角度である(
図3A及び
図3Bに例示)。正の電流移相器角度は、固定子の磁気中心が運動方向において回転子磁極より進んでいることを示す。このような状況の結果、固定子の磁気中心が、固定子の磁気中心に向けて回転子磁極を「引っ張る」。同様に、負の電流角は、固定子の磁気中心が回転子磁極よりも遅れていることを示す。このような状況は、回転子磁極を反対方向に「引っ張る」。このような負の電流移相器角度318は、制動の状況で使用され得る。いくつかの実装形態では、90°より大きい電流移相器角度318が使用され得る。このような大きな電流移相器角度318は、運動方向に隣接する磁極を「押す」ことができる。同様に、-90°未満の電流移相器角度318は、制動動作中など、反対方向に隣接する磁極を「押す」ために使用され得る。固定基準座標系と同期基準座標系との間の電流移相器角度318の変換は、次式を用いてなされ得る。
θ
e=(P/2)θ
m (1)
θ
eは同期基準座標系における電流移相器角度であり、Pは固定子磁極の数であり、θ
mは固定基準座標系における電流移相器角度である。電流移相器角度にかかわらず、D軸成分とQ軸成分とに分けることができる。一般に、本明細書で説明される電動機及び発電機では、D軸成分は回転子磁極内の磁界を「チャージ」又は変調するように作用すると共に、Q軸成分は回転子磁極に力又はトルクをかけるように作用する。本開示全体を通して、動作条件に基づいて電流移相器角度318と電流移相器振幅との両方を調節することが詳細に説明される。
【0048】
[0064] 例えば、電流角、デューティサイクル、及びD軸からQ軸への電流注入は、すべて変更することができる。いくつかの例では、瞬時D軸電流の増加は、Q軸電流に対して、D軸注入期間中に少なくとも5%、10%、20%、又は30%達成され得る。いくつかの例では、注入サイクル中、結果として得られる電流角の減少は、注入サイクル中に、例えば、5~60度、10~50度、15~45度、又は22.5~67.5度達成され得る。いくつかの例では、2~70ms、5~50ms、又は10~25msの注入パルス幅が使用され得る。いくつかの例では、全動作時間の5%、10%、15%、又は25%のチャージデューティサイクルが使用され得る。いくつかの例では、回転子電流がゼロに減少することによって決まる、電流角のD軸注入から通常動作への移行時間は、500μs~15ms、2ms~12ms、又は4ms~10msである。いくつかの例では、電流角は、15度未満、10度未満、又は5度未満変更される。いくつかの例では、D軸及びQ軸の大きさは、D軸注入期間中に少なくとも5%、10%、20%、又は30%同時に変わる。本システムは、電流制御又は電圧制御として動作されてもよい。例えば、特定の動作パラメータに関係なく、信号は、所望の許容範囲内になるように制御される、電流注入リップルの大きさの分散を有する電流源インバータを介して注入されてもよい。
【0049】
[0065] 本開示全体を通して説明されるように、回転子上のコイル構造体は、回転子磁極を中心とした少なくとも1つのループを含む誘導結合を介して固定子からの電力/信号を受ける。いくつかの実装形態では、導電性ループのための回転子コイルは静電容量を形成し、いくつかの実装形態では、静電容量は、回転子コイル又は導電性ループの特定の部分によって形成され、挿入され、又は定義される。いくつかの実装形態では、回転子コイル又は導電性ループは共振周波数を含む。いくつかの実装形態では、回転子コイルの共振周波数は、透磁極又は回転子コイル材料の透過可能範囲にある。
【0050】
[0066] 動作時、回転子磁極は、固定子のD軸信号を介して磁束注入され得ると共に、コイル構造体が磁極の磁束変化に抵抗して電流を流す。回転子のQ軸信号が、磁束注入された機械にトルクを発生させる。いくつかのトポロジでは、例えば突極型巻線同期機械では、最大トルク/電流(maximum torque per ampere、MTPA)が60~90度の電流角で行われる。所与の動作条件(例えば、トルク及び速度)について、コントローラは、電流移相器角度を確立するD軸電流とQ軸電流との組み合わせ(主制御部分)を含むMTPA(例えば、ルックアップテーブル又はモデルベースの推定器を通して)を確立する。この電流移相器角度は、所望のレベルの回転子磁束を周期的に維持するために変調又は振動させられてもよく、観測器又は推定器によって監視されてもよいし、モデルベースの手法によって確立されてもよい。D軸が変調されて回転子磁束を増加させると、Q軸の電流の大きさは比例して変調されて、トルクリップルを制限し、電流移相器角度の変化による悪影響を抑制してもよいし、電流移相器角度の変化を制限してもよい。
【0051】
[0067]
図3A及び
図3Bは、例示的な電気機械300の斜視図及び側面図である。電気機械300は、付随した固定子巻線304により複数の固定子磁極を画定する固定子302を備える。「電動機磁極」は、ある時点で空隙を横切って単一極性の磁束を放出する固定子又は回転子のいずれかのトポロジセクションと説明され得る。電動機の磁極数又は位置を決定する際に、固定子又は回転子のバックアイアンに担持される磁束が考慮される。磁極は、一般に、5,000ガウスを超え得る高磁界領域によって特徴付けられる。磁極は永久磁石又は電磁界に由来し得る。固定子又は回転子の磁極の数は製造時に固定されることが多いが、本明細書で説明されるいくつかの実装形態では、回転子、固定子、又はその両方の磁極の数を動作中に変更することができる。
【0052】
[0068] 本明細書で例示される固定子302は、分散巻巻線304を有するものとしてここでは示されているが、突極型巻線、集中巻線、及び/又は非重ね巻線の固定子も本開示から逸脱することなく同様に使用され得る。回転子306は、付随した回転子コイル310により複数の回転子磁極308を画定する。図示の実施態様は、固定子の歯と比較して1/3の回転子の歯を備えるが、本開示から逸脱することなく他の比率を使用することができ、例えば、回転子は、固定子に存在する歯の1/2を備えることができる。いくつかの実装形態では、回転子は、固定子に存在する歯の1/4の歯を備えることができる。本開示から逸脱することなく、突極型集中巻の固定子巻線が使用されるか分散巻の固定子巻線が使用されるかにかかわらず、固定子の歯に対する回転子の歯の他の比率を使用することができる。
【0053】
[0069] 図示のように、回転子コイル310のそれぞれが、整流子311に短絡される。各コイル310について整流子を有するものとして図示されているが、本開示から逸脱することなく、他の構成を使用することもできる。例えば、複数の回転子コイルが単一の整流子に直列又は並列に電気的に結合され得る。いくつかの実装形態では、整流子311がダイオードを含み得る。いくつかのタイプのダイオード、例えば、p-n接合ダイオード、ガスダイオード、ツェナーダイオード、又はショットキーダイオードなどを使用することができる。いくつかの実装形態では、ショットキーダイオードが使用される場合、ショットキーダイオードは炭化ケイ素ダイオードであり得る。ダイオードの選択は、電圧降下、逆電圧降伏、及び回復時間を含む様々な因子に応じて行われる。所望の動作条件に応じて異なるダイオードが使用され得る。いくつかのタイプのダイオードを挙げたが、本開示から逸脱することなく、他のダイオードを使用することもできる。整流子は、回転子コイル310のそれぞれを通して一方向にのみ電流を流すことができる。
【0054】
[0070] 回転子磁極308は、トポロジ的且つ電気的に回転子表面に固定される。固定磁極回転子は、磁極が同期基準座標系に対してトポロジ的且つ電磁気的に固定される、又は静止状態で保持される回転子であり、例えば、回転子306は固定磁極回転子である。つまり、回転子306は、常に、固定子が提供する駆動周波数と実質的に同じ速度で、又は同期して回転する(トルクリップルの固有のレベルを許容する)。同期基準座標系は磁気基準座標系と同じである。この理由で、固定磁極電動機は、「同期」電動機と呼ばれることが多い。巻線界磁型回転子、表面永久磁石回転子、リラクタンス電動機、及び内部永久磁石回転子はすべて、固定磁極回転子の例である。固定磁極回転子の設計では、回転子のD軸312領域(回転子磁極の中心)で強磁性材料の利用を最大限にし、巻線界磁回転子の場合は、有効な磁気中心がD軸312と一致することを確保する。その結果、固定磁極回転子は、所与のサイズ及び定格電力では移動磁極回転子よりも効率が良いと考えられるが、固定磁極回転子は、動的な負荷条件及び動的な稼働速度の下で固定磁極回転子を一定の電流移相器角度に維持することが困難であるという点で、制御することが困難である。例えば、負荷の変化中に電動機を加速したり速度を維持したりすることは、位置センサ316からの入力に基づいて、電流移相器角度318、電流の大きさ、及び/又は駆動周波数を能動的に調節することを含む。本明細書で説明される概念は、固定子磁界と回転子、例えば回転子306とが動作中に互いに同期した状態にあることを維持するような同期機械に主に適用可能である。
【0055】
[0071] 対照的に、移動磁極回転子の磁極は、トポロジ的又は電磁気的に固定されておらず、動作中、固定基準座標系に対して移動する。つまり、回転子は常に「滑り」、固定子が提供する駆動周波数に遅れを取る、すなわち同期から外れる。そのため、これらの電動機は「非同期」電動機と呼ばれることが多い。移動磁極回転子の例としては、巻線型かご形誘導回転子、電機子巻線型回転子、ブラシ電動機、及び他の同様の電動機が挙げられる。移動磁極回転子は動作中に電流移相器角度318を自己調節することができるが、磁極が回転子表面を均一に動くことができるようにするには、D軸の強磁性材料とQ軸の界磁巻線との間で設計上の妥協がなされなければならない。その結果、所与のサイズ及び定格電力の移動磁極回転子では、そのような電動機の電気抵抗が高くなり、より多くの始動電流が必要とされ、磁界強度が低くなる。
【0056】
[0072] 回転子306の磁界は、固定子巻線304が発生する磁界によって励磁されるように構成される。回転子306及び固定子302は、励磁された回転子磁界に応じて互いに対して移動するように構成される。回転子306は、固定子巻線304以外の固定子302の構成要素から実質的にエネルギー的に隔離される。
【0057】
[0073] 電気機械内では、固定子と回転子とが結合されて、動作中の電力伝達、信号伝送、及び/又は電磁界変調を可能にし得る。結合は、直接結合又は間接結合として分類され得る。直接結合は、空隙314などの一次動作空隙に沿った固定子と回転子との間で生じる。間接結合は、一次動作空隙から離れた二次界面に沿って生じる。
【0058】
[0074] 直接結合は、一般に、誘導結合として特徴付けられ、例えば、かご形誘導回転子は固定子に直接結合されると見なされる。非同期機械では直接結合が一般的であり容易に制御されるが、同期機械での直接結合は、本開示全体を通して説明される理由から、制御するのが困難である。例えば、電流の大きさ及び/又は周波数が適切に維持されることを確保するためには、回転子位置を把握する必要があることが多い。
【0059】
[0075] 間接結合は、二次結合に沿って動作し、半径方向に向けられても軸方向に向けられてもよく、電気接点、別個の空隙に沿った誘導結合、容量結合、又は光学結合を介して連絡してもよい。二次結合は、電気機械の効率及び/又は全体的な制御性を向上させるための様々な機能に使用され得るが、このようなシステムを利用する機械の重量、複雑さ、故障頻度、及びコスト(運用コスト及び資本コストの両方)を増加させ得る付加的な構成要素を必要とすることが多い。
【0060】
[0076] 結合は、電力結合又は信号結合として更に分類され得る。電力結合は、一次側動作空隙に沿って起磁力を直接駆動するために使用され、それによりトルクを発生させる電力を固定子から回転子に伝達する。信号結合は、回転子内の電気回路を個別に調節したり、温度又は固定基準座標系に対する位置など、回転子条件を監視するしたりするために使用され得る信号を固定子と回転子との間で伝達する。信号結合は、電動機の定格電力に対して極めて低い電力レベル、例えば電動機の定格電力の5%未満で送信する。いくつかの実装形態では、又はいくつかの動作パラメータの下では、信号結合は、例えば7.5%、5%、3%、又は2.5%の電動機の定格電力に対するレベルで電力を送信することが望ましい場合がある。
【0061】
[0077] 本開示全体を通して説明されるようなエネルギー的に隔離された電動機及び発電機は、主に(標準的な電磁シールドの許容範囲内で)直接結合を使用して、間接結合又は二次結合を使用せずに、固定子と回転子との間で電力及び信号を伝達する。本明細書で説明される電気機械は、回転子306と固定子302との間で電力結合及び信号結合の両方に直接結合を含む。
【0062】
[0078] いくつかの実装形態では、巻線回転子は、
図3Bに示すように位置Dに位置するときに、又は位置Dから電流移相器角度の変調を通して位置Qに移行するときに、チャージされる必要がある、すなわちチャージされることから利益を得ることができる。チャージとは、1つ若しくは複数の回転子巻線に電流を発生させること、又は回転子における磁束を伝達、増加、若しくは蓄積することを意味し得、それぞれ固定子から回転子への何らかの電力伝達を伴い得る。このようなタスクは、例えば、固定子励起の電流移相器角度を前進変調すること(例えば、固定子励起の電流角を適宜進めたり遅らせたりすること)、固定子励起の電流移相器角度における変化の周波数を上げること、固定子における励起電流の大きさ(又はその結果として生じる信号成分のいずれか)を増やすこと、又はそれらの任意の組み合わせによって様々な仕方で実現され得る。いくつかの例では、回転子磁界は、例えば位置D’又はその付近で動作することによる(例えば、位置Qから位置D’への移行、又は位置D’からQ’への移行することによる)場合、弱める(例えば、回転子及び/又は回転子磁界巻線に存在する電流又は磁束のレベルを低減する)必要があり得る。このようなタスクは、電流移相器角度を変調すること(例えば、固定子励起の電流角を適宜進めたり遅らせたりすること)、固定子励起の電流移相器角度の変化の周波数を下げること、固定子における励起電流の大きさ(又はその結果として生じる信号成分のいずれか)を減らすこと、又はそれらの任意の組み合わせなどによって様々な仕方で実現され得る。代替的又は追加的に、界磁を弱めることは、オーム損失による回転子磁界巻線電流の受動的損失を通して実現され得る。動作中、いくつかの実装形態では、固定子によって放出される信号と、回転子速度を決定する基本動作周波数との間に、周波数及び高調波の独立性が観測され得る。後述するように、本開示は、回転子を単に動かすことを超えて、システムの効率を高めること、システムにおける損失を制御すること、又はシステムの有効性を損なったり低下させたりし得る運用状況の可能性を軽減することなどの付加的な目標を優先した仕方で電動機の制御が実現され得ることを認識している。このようなシステムに関する更なる詳細は、本開示全体を通して、例えば、
図6及び関連説明で説明される。
【0063】
[0079]
図3C及び
図3Dは、例示的な電気機械350の斜視図及び側面図である。電気機械350は、本明細書で説明される相違点を除き、電気機械300と実質的に同様である。回転子356は、6つの回転子磁極358を備える。固定子352は、分布巻巻線354を備える。電気機械350は、6つの回転子歯(磁極358)と36の固定子歯370とを有し、したがって回転子歯と固定子歯との比率は1:6である。これは、4つの回転子歯(磁極308)と12の固定子歯320とを備え、したがって回転子歯と固定子歯との比率が1:3である電気機械300とは異なる。本開示から逸脱することなく、他の回転子歯と固定子歯との比率を使用することもでき、例えば、1:2又は1:4の比率を使用することもできる。本開示から逸脱することなく、突極型集中巻の固定子巻線が使用されるか分散巻の固定子巻線が使用されるかにかかわらず、固定子の歯に対する回転子の歯の他の比率を使用することができる。
【0064】
[0080]
図4は、例示的な電気機械400の側面図である。電気機械400は、本明細書で説明される相違点を除き、上述の電気機械300と実質的に同様である。回転子406は外側に配置された回転子であり、固定子402は内側に配置された固定子である。換言すれば、回転子406は、固定子402を囲み、静止している固定子402を中心として回転する。固定子402は、突極型非重ね集中巻の固定子コイル404により固定子磁極411を画定する。回転子406は、回転子406内に埋め込まれた永久磁石材料416を含む。図示のように、各回転子磁極408は、略「M」又は「W」字形構成で配置された永久磁石材料416の4つのチャネルを備えるが、本開示から逸脱することなく他の配置を使用することもできる。永久磁石材料416は、フェライト、SmFeN、N35、N45を含む様々な材料を含むことができる。一般に磁力の低い永久磁石材料が使用されるが、本開示から逸脱することなく、より低量の強力な磁性材料を使用することもできる。永久磁石材料416は、各回転子磁極408の長手方向の全長にわたって延びることも、各回転子磁極408に部分的にわたって延びることもできる。いくつかの実装形態では、永久磁石材料416は、複数の層又は積層体で構成され得る。
【0065】
[0081] 図示のように、永久磁石材料416は、各回転子磁極408と実質的に整列する正味の磁力をもたらす。いくつかの実装形態では、永久磁石材料は、永久磁石材料416に由来する正味の磁力が回転子磁極408から整列しないように配置され得る。一般に、永久磁石材料の配置は、回転子内の磁石材料の所望の断面磁束密度に依存する。永久磁石材料416が回転子コイル310内に配置される実装形態では、永久磁石材料416の各セットにおける磁束は、周囲の回転子コイル310のチャージを調節することによって、個別に調節及び/又は変調され得る。このような実装形態はまた、強力な固定子磁界によって引き起こされ得る減磁から磁石を保護する。永久磁石材料416が回転子コイルに囲まれていない実装形態では、固定子磁界によって引き起こされる磁束の調節は、回転子406内の永久磁石材料416の複数のセットに影響を与え得る。
【0066】
[0082]
図5A~
図5Cは、例示的な回転子コイル310の正面図、側面図、及び斜視図である。
図3A、
図3B、及び
図4に示すように、各回転子コイル310は、単一のコイルが回転子磁極308又は408などの各磁極の周囲にある状態で、それ自身の巻線として機能する。そのため、回転子は、集中巻巻線、突極型巻線、及び/又は非重ね巻巻線を含むと説明され得る。いくつかの実装形態では、各コイルの巻線方向は、各隣接する回転子磁極308又は408で交互に切り替えられ得る。例えば、突極型巻線、集中巻巻線、及び/又は非重ね巻巻線を有する固定子を使用する実装形態では、このような配置が使用され得る。或いは、整流子311の整流方向は、それぞれの隣接する磁極で交互に切り替えられても同様の結果を得ることができる。いくつかの実装形態では、巻線方向は、隣接する回転子磁極間で交互に切り替えられる必要はない。例えば、分散巻巻線を有する固定子を使用する実装形態では、このような配置が使用され得る。回転子コイル310は、それ自体が短絡された単一のコイルとして示されているが、各コイルがそれ自体で短絡し、隣接するコイルと重ならない限り、他の幾何学的形状を使用することもできる。いくつかの実装形態では、同種の極性を有する磁極同士が短絡されて、例えば整流子を共有させることもできる。同様に、各磁極の巻線方向に応じて、異種の極性を有する磁極同士を短絡させることもできる。一般に、回転子コイルは、電力伝達周波数の電流表皮深さがコイルの導体を完全に貫通するように構成されることが多い。本開示に関連して、「電流表皮深さ」とは、電流、特に所与の周波数で変化する磁界から誘導される渦電流が主に流れる導体表面からの深さをいう。所与の材料について、表皮深さは次式のように計算され得る。
δ≒1/√πfμσ (2)
「f」は磁気スイッチング周波数、μは材料の透磁率(H/mm単位)、σは材料の電気伝導率である。回転子コイル310内での完全な表皮深さ貫通を達成することにより、回転子コイル310内のインダクタンスを一様にすることができる。いくつかの実装形態では、駆動周波数は0ヘルツ~20ヘルツに広がり得る。いくつかの実装形態では、駆動周波数は100ヘルツ~2000ヘルツに及び得る。一般に、回転子コイルは、回転子内の磁束の減衰が、固定子からの磁界シフトに応じて回転子コイル内の電流によって抵抗されるように構成される。
【0067】
[0083] 従来、同期電動機は、材料を磁化するための磁化電流を持たないため、工場において、又は設置前に磁石を磁化しなければならない。そのため、動作中に(例えば、固定子が負荷をかけすぎたために)磁石材料が減磁した場合、磁石が損傷することもあるし、電動機が全く動作しなくなることもある。回転子コイル310は、永久磁石を固定子の潜在的な減磁の影響から保護するのを助ける。
【0068】
[0084] 回転子コイル310のそれぞれにおける整流子311は、動作中、電動機においてトルクリップルを低減するのを助ける。整流子は空隙314における磁束の励磁の遅延を低減することによりこれを行う。回転子コイル310は、磁界シフトに応じて回転子巻線内の電流によって回転子内の磁束の減衰に抵抗するが、回転子コイル310は、整流なしで、回転子コイル310が曝される駆動サイクルの部分にかかわらず、この機能を行う。つまり、整流されていない回転子コイルは、駆動周波数の正の部分及び駆動周波数の負の部分の両方に対して対称的である。このような構成は、測定可能な量のトルクリップルを生じ得る。整流子311を備える回転子コイル310では、回転子コイル310により、第1の電流がゼロに減少するまで回転子巻線内で第1の方向に第1の電流を誘導することによって磁束の第1の変化に抵抗することができ、磁束の第2の変化が回転子巻線内で第2の方向に電流を誘導することを可能にする。つまり、回転子巻線内の電流は一方向であり、非対称な応答を生じ、動作中のトルクリップルを減少させる。
【0069】
[0085] 動作時、コイル(310、410)及び整流子を通って流れる電流をゼロに減らすことができる。このような動作は、電流移相器角度318を90°未満に減らす(つまり、隣の隣接する磁極を「押す」のではなく、「引く」)ことにより行われる。コイル(310、410)及び整流子311内の電流を、電流移相器角度が90°未満である時間内に減衰させることができる。このような時間は、回転子(306、406)の速度及び飽和に応じて、数ミリ秒から2秒の範囲に及び得る。次いで、コイル(310、410)での電流が増加するにつれて、電流移相器角度が大きくされる。このプロセス全体を通して、電流の大きさは、移相器角度318を調節するときに、リップル電流を打ち消すように電流移相器角度318と共に変調され得る。
【0070】
[0086]
図5Dは、ロックされた回転子条件(例えば、始動)の下での様々なチャージ状態552及び発生したトルク554、並びに異なる位相器角度556を示すグラフ550である。大きな電流角では(左側)、回転子電流558は、瞬間的な固定子電流の励起に強く応答することが示されている。Q軸(90°)とD軸(0°)との間で動作する場合、高レベルのチャージ552が、(例えば、磁界を維持する)実質的な誘導減衰を伴って見られる。
【0071】
[0087] トルク554は、固定子Q軸電流の濃度が低いことに起因して、比較的大きな電流角556にあることが示されている。磁束の変化に抵抗するように回転子コイル(310、410)を通過する電流558により、減衰が観察され得る。このような制御スキームの下では(コイル310又は410と組み合わせて)、回転子磁界は電流移相器角度556に基づいて変調され得る。このことにより、動作時の動作範囲が広くなり得る。グラフ550からわかるように、D軸312からQ軸の動作は、磁石材料を保護する遮蔽効果を実証しており、このことにより、磁石材料の削減、低保磁力材料、又はその両方が可能になる。固定子Q軸電流が増えるにつれて、回転子電流は、トルク発生への寄与が大きくなることが示されている(130度~120度)。90度では、電流は回転子D軸に直交し、正味電流は発生しない。
【0072】
[0088] 別の利点は、永久磁石の場合、比較して、D軸の注入によって界磁を弱めることが一定ではないことである。同様に、回転子磁界は、電流の大きさが固定子を通過することによって変調され得る。多くの場合、所望の回転子磁界変調のために電流の大きさと電流移相器角度556との両方が同時に調節され得る。90度未満の移相器の角度における回転子電流は、整流回路の存在に起因して、励起電流に対して反循環性であることが示されている。回転子磁界は、正味D軸注入及び固定子励起間の無効磁界の減衰に起因して、これらの期間に増加する。
【0073】
[0089] 制御部は、所望の回転子磁界変調のために電流移相器角度を変調することによって、トルクリップルを更に制限するために使用され得る。回転子磁束は、同期基準座標系における機械のD軸での変調を通して固定子から回転子に伝達され得る。この電流の大きさすなわち振幅の変調は、変調の周波数で、変調の持続時間中に電流移相器角度を変化(減少)させ得る。より高い周波数の変調は、トルクリップル、特に、パワートレイン若しくは車両負荷又は更には回転子自体の慣性質量を含み得るシステムによって、より高い周波数の高調波が減衰及び/又はフィルタリングされるシステムのトルクリップルを更に減少させ得る。
【0074】
[0090] いくつかの例では、トルクリップルはまた、同期基準座標系における機械のD軸での電流の大きさすなわち振幅を変調しながら、最大トルク発生に適した望ましい電流角を考慮することによって制限、又は大幅に低減することができる。このような例では、コントローラは、D軸での変調に関して、同期基準座標系におけるQ軸で電流の大きさすなわち振幅を比例して変調する。いくつかの例では、Q軸の大きさのこのような比例変調は、D軸変調の5~10%、10~20%、20~40%、又は50~100%である。いくつかの例では、このことは、最大トルク発生のために設定された又は望ましい電流角について振動の許容範囲を可能にする。いくつかの例では、そのような許容範囲では、設定された電流角からの分散が0~1%、0~5%、5~10%、10~30%、又は30~60%である。適切なレベルの磁束に回転子磁界を維持するために十分な優先順位がコントローラから与えられると仮定した場合、振動の許容範囲が小さいほど、コントローラはトルクリップルをより厳密に制御することが可能である。また、これらの振動の許容範囲は、固定子の励磁のデューティサイクルとも説明され得る。
【0075】
[0091] このような制御スキームを更に説明するために、
図6は、電動機600の概略図を、回転子602と固定子604との間のアライメントと共に示している。位置Dは、対向する固定子604の磁極と回転子602の磁極とが整列する(すなわち、N-S及びS-N)ものとして定義される。位置Q及びQ’は、完全に位置合わせされていない磁極(すなわち、それぞれ、同種の磁極に接近すること、及び反対の磁極に接近すること)又は同種の固定子604の磁極と回転子602の磁極とが整列する(すなわち、N-N及びS-S)ためD及びD’に電気的に直交するものとして定義される。いくつかの実装形態では、特に突極性の高い回転子では、ピークトルクが(例えば、そのリラクタンス成分に起因して)同期基準座標系のD位置とQ位置との間で発生する。円筒形回転子などの他の実装形態(例えば、突極性の低い機械)では、ピークトルクはQ位置とD’位置との間で発生する。永久磁石電動機が使用される例では、ピークトルク動作によって高負荷で減磁し、高速で界磁を弱める必要があり得る。より弱い磁石が使用されると、サイズ/重量及び/又はトルク発生を損ない得る。
【0076】
[0092] いくつかの実施形態では、永久磁石が使用されてもよい。減磁のリスクなしに磁気電流能力を高めるために、本明細書で説明される回転子巻線が使用される。低いトルクでは、回転子巻線電流を減らすことができ、コギング(抵抗性)トルクを下げ、より強い永久磁石の能動磁束を弱める必要性をなくすことができる。本明細書の電流移相器角度の変調を使用して、巻線回転子は、制御機構を通して磁束弱化又は磁束強化され得る(例えば、回転子界磁巻線内の電流の減少又は増加、回転子磁極本体内の磁束の減少又は増加)。非限定的な一例として、固定子からの同期励起の電流移相器角度が変調され得る。少なくともいくつかの構成では、例えば固定子界磁を制御する巻線回転子同期電動機などにおける二次制御システム又は付加的な整流ハードウェアは必要ではない)。
【0077】
[0093] 本明細書で説明されるように、本開示による巻線回転子構成は、追加の固定子-回転子間結合要素を必要としない。むしろ、信号は、固定子巻線及び回転子巻線を回転子積層体と共に使用して送信される。このことは、固定子から回転子に信号を送信するための特別な検出器、センサ、有線接続若しくは無線接続、又はブラシを組み込んだスキームと比較して、コスト及び構成部品を削減し、性能を改善(例えば、ブラシのオーム損失を排除)し、物理接点及び摩耗構成要素を排除又は制御し、パッケージサイズを縮小し、制御柔軟性を提供する。
【0078】
[0094] 本明細書全体を通して説明されるように、
図6に示すような制御信号がD-Q軸成分に変換され得るシステムでは、第3のz軸成分も存在し、D軸又はQ軸に直接マッピングされない信号又は磁気量として説明され得る。例えば、図示のようにQ成分及びD成分を定義し得る平面と直交する成分である。
【0079】
[0095] 動作時、特定の変調(例えば、信号、又は信号パラメータの変調)を伴うフィールド指向制御すなわちベクトル制御が、回転子磁界の様々な態様を制御するために使用され得る。これらの変調は、固定子と回転子との間を結合する信号励起を調節すること、及び回転子に対する固定子励起波(例えば、相対位置及び大きさ)を制御することに使用され得る。よって、回転子応答、すなわち回転子巻線に誘導される電流の直接的な関連付けが、固定子及びインバータによって事実上「操作」され得る。換言すれば、このような制御は、コントローラ104又はコントローラ700(
図7)などのコントローラによって調整されるように、D軸の磁界及びQ軸の磁界における電流に応じた機械の動的挙動を形成し得る。他の戦略(例えば、トルク発生)の中でも、ベクトル変調は、電流移相器角度の変調を定義するのを助けるのに使用され得る。
【0080】
[0096] 本開示は、与えられた固定子信号を通して回転子の応答に直接影響を与えるためにベクトル制御変調が使用され得ることを認識している。更に、これらの回転子の応答は、D軸又はQ軸のいずれかで変調されてもよく、電流移相器角度変調を使用して実現されてもよい。電流移相器角度変調の相対的な有効性は、変調の大きさ及び(例えば、ある時間にわたる)変化率の両方に比例し得る。電流移相器角度を調節する速度は、コントローラによって変わり得、回転子の材料又は回転子の応答における意図された応答に対して選択され得る。いくつかの場合では機械の速度に基づいて周波数を選択することができ、他の場合では、固定変調を選択することができる。変調の周波数は、様々な考慮事項に基づいて選択され得る。例えば、いくつかの構成では、周波数は機械の基本周波数より少なくとも2~4倍高くてもよい。他の状況では、変調は機械の基本周波数より5~10倍高くてもよい。また更なる構成では、周波数は機械の基本周波数より10~30倍高くてもよい。例えば、いくつかの構成では、周波数は、トルク発生との相互作用を防ぐように(例えば、トルクリップルを減らすように)選択され得る。
【0081】
[0097] 電流移相器角度は、ベクトル成分制御を用いて制御され得る。ベクトル成分制御は、
図6に示すD-Q基準座標系で表される基本周波数の電流をi
d、i
q、及びi
zとすることにより説明され得る(例えば、電流移相器角度を含む主制御成分)。これらの信号は直接変調されてもよいし、或いは、基本電流に加算される独立な励起変調をD/Q軸のいずれかに加えて、次のように総固定子電流とすることも可能である。
i
dtotal=i
d +i
dmodulation (3)
i
qtotal=i
q +i
qmoduation (4)
i
ztotal=i
z +i
zmodulation (5)
ここで、i
d、i
q、及びi
zは各軸に沿った通常の励磁電流であり、i
dexcitation、i
qexcitation、及びi
zexcitationは、詳細に後述するような電動機コントローラ又は他のコントローラによって選択及び制御され得る独立変調信号である。変調は、正弦波となるように選択することもできるし、任意の形態を取ることもでき、例えば、そのような変調は、更に次のように記述することができる。
i
dexcitation=m
d cos(w
dt) (6)
i
qexcitation=m
q sin(w
qt) (7)
i
zexcitation=m
z sin(w
zt) (8)
変調の大きさ及び周波数は、成分及びベクトル和ごとに独立に選択されて、電流移相器角度を変化させることも、電流移相器角度(γ)を直接制御して次のように主成分を変化させることもできる。
i
dtotal=i
d*cos(γ) (9)
i
qtotal=i
q*sin(γ) (10)
i
ztotal=i
z*sin(γ) (11)
同様に、設定された電流移相器角度に関して、次のような変調を行うこともできる。
i
dtotal=i
d*cos(γ+γ
moduation) (12)
i
qtotal=i
q*sin(γ+γ
moduation) (13)
i
ztotal=i
z*sin(γ+γ
moduation) (14)
ここで、γ
modulationは、例えば、固定電流角を中心とした正弦波振動として記述され得る。
γ
dmoduation=m
d cos(w
dt) (15)
γ
qmodulation=m
q sin(w
qt) (16)
γ
zmodulation=m
z sin(w
zt) (17)
【0082】
[0098] それぞれの場合において、変調は単一の軸に適用されてもよく、それによって他の2つの軸には変調が適用されず、回転子の応答を生成するために使用され得る。代替的又は追加的に、トルクリップルを制御又は最小化することを目標として、D軸の電流変調を使用することもできるし、Q軸の電流変調と並行して変化させることができる。D軸変調が不十分である場合、Q軸変調を使用することができる。いくつかの実装形態では、Q軸変調は、D軸変調と組み合わせて使用されて、回転するベクトル注入を形成する。Z軸変調は、本質的にトルクリップルに影響を与えず、D-Q基準座標系の知識も必要としない。しかしながら、Z軸変調は、回転子への効果が限定されることが多いが、電力又は付随情報の結合(例えば、速度及び/又は位置)のいずれかのために、固定子を回転子に結合するために使用され得る。
【0083】
[0099] 電流変調、すなわち電流の移相器振動の周波数はデューティサイクルで説明され得る。このデューティサイクルは、磁束注入(例えば、D軸)とトルク発生(例えば、Q軸)との主成分に分割して動作を説明し得る。始動条件では、トルク発生のためのD軸とQ軸との間の分割動作の前では、回転子の強い磁束注入のためのD軸でのデューティサイクルは100%、又は75~100%、又は40~100%であってもよく、分割動作では、50%-50%分割、30%-70%、20-80%、10-90%分割(D軸:Q軸)であり得る。また、これは、定常状態又は準定常状態での動作中に、電流移相器角度及び結果として得られる磁界がある角度を中心として5度、10度、20度、場合によっては30~45度変化する電流移相器角度を中心とした振動として現れることもある。いくつかの実装形態では、振動又は振幅変調の周波数は、回転子の応答を引き出すこと、及び/又は動作中のトルクリップルを制限することの両方に変化させることができる。
【0084】
[00100] 加えて、制御戦略は、回転子コイルにおいて時間と共に減衰する磁束の量を制限するために、より高い周波数動作すなわちパルスを利用し得る。つまり、(時間と共に減衰する)回転子のMMFサイクルの時間ステップを短くすることにより、回転子コイルを横切る磁束の分散を減らして磁束を強固にし、負のトルクモーメント又はそれに伴うトルクリップルを低減することが可能である。回転子に磁束注入するのを助け、トルクリップルを制限し、動作中の電流移相器角度間の移行を円滑にするために、スキュー信号、台形、又はパルス幅変調(PWM)技法など、付加的な信号変調が使用されてもよい。
【0085】
[00101] 固定子側の電流は固定子側の電圧に対応し得るため、電流に埋め込まれた信号を含むスキームは、電圧に埋め込まれた信号を含む同等のスキームに対応し得る。固定子側の電圧の信号に関連して本開示全体を通して説明される実装形態は、固定子側の電流の信号と同等であってもよく、またその逆であってもよく、同様に説明され得る。
【0086】
[00102] 上述のように、回転子磁界の制御は、電流移相器角度の変調を使用して固定子巻線を通してコントローラによって操作され得る。この変調は、大きさ及び周波数によって定義され得、機械の磁界、固定子の励磁、及び主要制御成分によって観測され得る。電流移相器角度変調はACコイルに電力を伝達するために使用され得、電流角の振動がD-Q基準座標系によって定義される電流角の設定された動作点に関して定義される(例えば、電流角が変調されて1アンペア当たりの目標トルク、すなわちMTPAを達成し得る)。電流移相器角度変調摂動は、励磁磁場の振動、大きさ、及び周波数によって定義され得る。所与の電流移相器角度における電流の大きさの変調は、回転子への電力伝達、又は回転子内での応答を誘発するために使用され得、最大の応答は回転子に最も結合する(所与の磁極のD-Q基準座標系における)電流角で見ることができる。例えば、同期基準座標系の軸に関してD軸に整列した巻線回転子の場合、電流移相器角が電気的に0°(ここで、電気的に0°とは同期基準座標系のD軸として定義される)のときに最大の電力伝達が起こる。
【0087】
[00103] いくつかの実装形態では、整流方向を交互に切り替えることとは、各回転子磁極の極性を隣接するものと逆にすることを事実上意味する。換言すれば、4つの磁極の機械はN-S-N-Sを有する。或いは、このような交互の磁極配置を実現するために、巻線の方向は、極から極に反転させて適切な極性を確立することもできる(例えば、単一のコイル及び整流子を使用する場合など)。或いは、一方向性巻線が使用されてもよく、整流子自体が極から極へ方向を反転されて、回転子に適切な極性を与えることもできる。
【0088】
[00104] いくつかの実装形態では、個別又は並列の回転子コイル巻線が使用されて、機械内の局所的な磁束条件を確立する。いくつかの実装形態では、グループ化された又は直列のコイル回転子コイル巻線(複数可)が使用されて、回転子電流と機械全体の磁束とのバランスを取る。このことは、機械の周期性、又は対称性に応じてなされ得る。並列及び直列の個別及びグループの巻線の組み合わせが使用されて、回転子又は機械全体の局所的な制御領域及び分散バランスを実現し得る。
【0089】
[00105]
図7は、本開示の態様で使用され得る例示的なコントローラ700のブロック図である。コントローラ700は、上述の電動機コントローラ104に追加的又は代替的に使用され得る。前者の例では、コントローラ700と電動機コントローラ104とは、単一の統合されたコントローラに結合され得る、又はコントローラ700と電動機コントローラ104とは、別個の個別のコントローラにされ得る。コントローラ700は、とりわけ、電気機械(300、400)のパラメータを監視し、電気機械(300、400)の様々な動作パラメータを作動及び/又は調節する信号を送信し得る。
図7に示すように、コントローラ700は、特定の例では、プロセッサ750(例えば、1つのプロセッサ又は複数のプロセッサとして実装される)と、プロセッサ750に本明細書で説明される動作を実行させる命令を含むメモリ752(例えば、1つのメモリ又は複数のメモリとして実装される)とを備える。プロセッサ750は、例えば回転子位置センサ又は電流センサを含む電気機械(300、400)内の構成要素との通信を送信及び受信するための入出力(I/O)インターフェース754に結合される。特定の例では、コントローラ700は、追加的に、電気機械(300、400)の様々な電気機械構成要素(固定子への電力信号又は駆動信号など)及び電気機械(300、400)に設けられた他のセンサ(例えば、温度センサ、振動センサ、及び他タイプのセンサ)のうちの1つ又は複数とステータスを通信し、作動信号及び/又は制御信号(固定子への電力信号又は駆動信号を含む)、を送信し得る。通信は、有線、無線、又は有線と無線との組み合わせとすることができる。いくつかの実装形態では、コントローラ700は、様々な部分が異なる場所、例えば、車両の異なる部品内に配置された分散型コントローラとすることができる。付加的なコントローラが、本開示から逸脱することなく、スタンドアロンコントローラ又はネットワーク化されたコントローラとしてコントローラ700と組み合わせて使用されてもよい。
【0090】
[00106] コントローラ700は、電気機械(300、400)を制御するための様々なレベルの自律性を有し得る。例えば、コントローラ700は、負荷及び/又は速度の変化を検知し始めることができ、操作者は、電力周波数、電流の大きさ、及び/又は電流角を調節する。或いは、コントローラ700は、負荷及び/又は速度の変化を検知し始め、操作者から追加の入力を受信し、操作者からの他の入力がない状態で、周波数、電流の大きさ、及び/又は電流角を調節し得る。或いは、コントローラ700は、負荷及び/又は速度の変化を検知し始め、操作者からの入力がない状態で、周波数、電流の大きさ、及び/又は電流角を調節し得る。
【0091】
[00107] 例えば、動作時、コントローラは、固定子巻線に制御信号を送信することにより、固定子巻線を励磁し、固定子内で固定子磁界を発生させるように構成されたコントローラとすることができる。コントローラは、固定子を通して、ある電流角及び大きさで電流を送り、電気機械(300、400)の動作条件に応じて電流角及び大きさを能動的に調節することによって、固定子磁界を発生させるように構成され得る。代替的又は追加的に、コントローラは、位置センサ316から位置ストリームを受信し得る。位置ストリームは回転子位置を表す。位置ストリームは、アナログ又はデジタルの電気信号又は電磁信号であり得る。位置ストリームを受信したことに応じて、コントローラは、トルクリップルの存在、不在、又は存在するトルクリップルの程度を判定し得る。次いで、コントローラは、トルクリップルが存在すると判定したことに応じて、電流角及び/又は電流の大きさを調節し得る。
【0092】
[00108] いくつかの実装形態では、電流移相器角318は、高トルク条件中、移動方向において回転子磁極(308、408)より先に大きくなる。つまり、単位トルク当たりでより大きな電流が必要とされる場合では、電流移相器角318の増大につながり得る。一般に、電流移相器角度318が大きくなると、D軸成分312が少なくなることに起因して、回転子コイル(310、410)がより活性化される(コイルを通って流れる電流が多くなる)。換言すれば、電流移相器角度318が大きくなるほど、各回転子巻線の磁界は早く減衰する。コイル内の活性が高まると、緩和されないトルクリップルが増加することにつながり得るが、各磁極が経るD軸成分の増加の間に電流振幅が増加し、電流角318の増大によって発生する潜在的な負のトルクを打ち消すことができる。代替的又は追加的に、電流移相器角318は高速且つ低トルク動作時に小さくされる。代替的又は追加的に、電流角は、制動動作時に負になり得る。使用される動作モードにかかわらず、コントローラ700は、所与の状況における電気機械(300、400)の現在の要求を満たすように電流角及び/又は電流振幅を調節することが可能である。
【0093】
[00109] 特に、機械の主要構成要素の電流移相器角度又は電流振幅を動作中に調節して、トルクを発生させることができる。いくつかの例では、例えば、回転子が十分な磁界強度を有する場合、以前の時間ステップと比較して、磁化電流の印加がない(又は少ない)のであってもよい。高速動作などの他の例では、回転子磁界を低下させて逆起電力(EMF)を減らし電圧ヘッドルームを提供し、コギングトルクを減らしてトルクリップルを制限し、能動的な弱め界磁動作を回避することが可能になり得る。コントローラは、固定子を通じて、例えば50~1000ヘルツ(Hz)の広い範囲の周波数で、回転子と通信することが可能である。いくつかの実装形態では、通信は100~1000Hzで行われる。いずれにせよ、本システムは、従来のシステムよりも高速に変化を伝えることができる。例えば、従来のかご形誘導機械は実質的に7Hzで通信する。高周波伝送が可能であることにより、コントローラ700は、動作条件にかかわらずトルクリップルを能動的に低減することができ、動作条件の変化にも迅速に対応することができる。
【0094】
[00110]
図8は、本開示の態様で使用され得る方法800のフローチャートである。方法800の全部又は一部が、コントローラ800及び/又は電動機コントローラ104によって実行され得る。802において、固定子の固定子巻線が、励磁されて固定子内に固定子磁界を発生させる。804において、回転子内の強磁性材料内で対応する回転子磁界が固定子磁界によって変化する。806において、固定子磁界のシフトによって回転子の接線方向の力が発生する。808において、発生した接線方向の力によって回転子が動く。固定子磁界と回転子とは、動作中、互いに同期した状態に維持される。810において、空隙における磁束の励磁の遅延が整流子によって抑制される。空隙は、固定子の内面と回転子の外面とによって画定される。
【0095】
[00111] 812において、回転子内の磁束の減衰が、磁界シフトに応じて回転子コイル内の電流によって抵抗される。磁束の減衰における抵抗は、個々の回転子コイル310に整流子311が含まれることに起因して対称ではない。そのため、第1の電流がゼロに減少するまで回転子巻線内で第1の方向に第1の電流を誘導することによって磁束の第1の変化が抵抗され、また磁束の第2の変化が回転子巻線内で第2の方向に電流を誘導することを可能にする。
【0096】
[00112] いくつかの例では、814において、電流が、固定子を通して、ある電流角で送られる。通常、電流角は、移動方向において回転子磁極より進んでいる。いくつかの例では、816において、電流の大きさが変化する動作条件に応じて調節される。818において、回転子磁極(D軸)に対する電流角が、変化する動作条件に応じて調節される。特に、814及び816が点線で示されているのは、両方のステップが必須ではなく、またその順序であることが必須でもないためである。つまり、電流の大きさと電流角とは独立に調節されてもよい。
【0097】
[00113] その後、現時点での電気機械の動作出力が電気機械の所望の動作出力と比較される。現時点での電気機械の動作出力が電気機械の所望の動作出力にある場合、機械は、固定子電流の最も直近に調節されたパラメータを使用して動作を継続する。そうでない場合は、プロセスは、現時点での電気機械の動作出力が電気機械の所望の動作出力になるまで、固定子電流の大きさ又は電流角の少なくとも一方を調節することに戻って繰り返す。
【0098】
[00114] 次に
図9Aを参照すると、本開示によるプロセス制御の非限定的な一例が提供されている。特に、
図9Aは、本開示による電動機システムを制御して増加したトルク900を実現するための例示的なフローチャートを提供している。プロセス900は、902においてトルク増加の要求又はリクエストにより開始する。本開示によれば、この要求を満たすことは、2つの並行なワークフローを行うこととして概念化され得る。しかしながら、実際には、コントローラは、独立した、並列した、又は他の異なるフローで動作するようにプログラム又は設計される必要はない。トルク増加の要求902を満たすために、コントローラは、904において増加したトルクを達成することが回転子磁束を増加させることによってなされ得ると判定する。これを行うために、906においてI
dを増加し、これにより908において回転子磁束が増加する。これは、所望の回転子トルクが達成されるまで続けられ、その後、910においてI
dを減少させる。しかしながら、回転子磁束を増加させようとしながら、コントローラは、トルクリップルを制御又は最小化することを目標として、Q軸電流変調を使用することもできるし、D軸電流変調と並行して変化させることができることを認識している。よって、コントローラはまた、912においてトルク性能を維持するようにも働く。この目的のために、コントローラはまた、914においてI
qを変調し、それによって、916において所望のトルク増加を得るが、トルクリップルによって引き起こされ得るような不安定なトルク性能の悪影響は生じない。
【0099】
[00115] 次に
図9Bを参照すると、920におけるトルクの増加要求に応じるための制御プロセス918の別の非限定的な例が提供される。920における要求に応じて、コントローラは、増加したトルクを達成することは、922において回転子磁束の増加を要求することによって達成され得ると判定する。これを達成するために、コントローラは、924においてD軸に向かって電流角を変調しようとするが、これは、このことが924において回転子磁束を容易に増加させ、回転子磁界が、928においてQ軸に向かって電流角を変調することによって更に制御されるためである。並行して、コントローラは、上述のようにI
qを変調することによって、930においてトルク性能を維持するように働く。よって、この結果、要求されたトルクの増大が934において実現される。
【0100】
[00116] 次に
図9Cを参照すると、所望のトルク形態の始動に到達するための制御プロセスの別の非限定的な例が、936において提供される。938において、始動時に、回転子がロックされる。回転を始めるために、940において、電流角はD軸に向かって変調され、942において、D軸に向かって回転子が移動するにつれて回転子磁束が確立又は増加される。944において、電流角はQ軸に向かって変調され、このプロセスは946において所望のトルクが発生されるまで継続される。
【0101】
[00117]
図9Dは、948において所望のトルクに到達するための制御プロセスの更に別の非限定的な例を提供する。この場合では、プロセスは、電動機が既に高速動作950している状態から開始する。952において、電流角変調のデューティサイクルが低減され、954において、電流変調の振幅が低減される。その結果、回転子磁束は956において減少する。958において、逆起電力が低下し、960において回転子磁束が減少するとコギングトルクが低下する。この制御は、950において電動機の高速回転が与えられると、最終的に962においてトルクの増加をもたらす。
【0102】
[00118] このように、説明されたシステム及び方法は、正味の回転子磁界D軸電流注入をもたらす固定子D軸に沿った回転子磁界ラインの非対称磁束ベクトル制御に起因して、正弦波励磁を通してトルクの正味の増加に至ることがわかった。その結果、正味のD軸電流注入がアナログ回路による従来の回路において可能になった。回転子コイル構造を備えた機械は、飽和が少なく、平均トルクの発生という点で、短絡されたコイルの正味の利点をもたらす。正味のD軸電流注入により、回転子コイルの無効電流に起因して、同等の固定子励磁下でより大きなシート電流密度を得ることができる。
【0103】
[00119] このように、発明の主題の特定の実装形態を説明してきた。他の実装形態が以下の特許請求の範囲に含まれる。いくつかの場合では、特許請求の範囲に記載された動作を異なる順序で実行することもでき、望ましい結果を依然として得ることができる。加えて、添付の図面に示されたプロセスは、望ましい結果を得るために、必ずしも示された特定の順序、又は連続した順序を必要としない。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子電流を受けるように構成された付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する固定子と、
付随した回転子巻線により固定された複数の回転子磁極を画定する回転子であって、前記回転子は、前記固定子巻線が前記固定子電流を受けたことに応じて、前記固定子巻線が発生した磁界によって励磁され前記回転子と前記固定子との間に相対運動を発生させる磁界を画定し、前記回転子は、前記電気機械の動作中、前記固定子が発生した前記磁界と同期した状態に維持される、回転子と、
前記固定子電流を受けたときに前記固定子巻線が発生した磁界によって前記磁界が励磁されると、前記回転子磁極に誘導される交互に切り替わる電流に対して制御するように構成された整流システムと
を備える、電気機械。
【請求項2】
前記整流システムが、前記固定された複数の回転子磁極のそれぞれの両端を短絡する整流構成要素を備える、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記整流
システムの整流構成要素が、前記固定子と前記回転子との間の空隙における磁束の励磁の遅延を抑制するように構成される、請求項2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記整流システムが、前記固定子電流を受けたときに前記固定子巻線が発生し
た電界に対して非対称の応答を発生させて、回転子トルクリップルを制御するように構成される、請求項1に記載の電気機械。
【請求項5】
前記整流システムが、前記固定された複数の回転子磁極のそれぞれを挟んで配置されたそれぞれの整流子を備える、請求項1に記載の電気機械。
【請求項6】
前記整流システムが、受動整流システム又は能動整流システムを含む、請求項1に記載の電気機械。
【請求項7】
前記固定子巻線を通して、前記回転子磁極のうちの最も近い磁極に対して測定されるある電流角で前記固定子電流を送り、
前記電気機械の所望の動作出力を決定し、
前記電気機械の前記所望の動作出力に対応する所望の回転子運動を決定し、
前記所望の回転子運動を引き起こす、前記固定子に適用されるベクトル制御変調を計算し、
前記ベクトル制御変調に基づいて前記固定子電流の前記電流角を調節して、前記回転子に前記所望の回転子運動を行わせ、前記電気機械の前記所望の動作出力を達成する
ように構成されたコントローラを更に備える、請求項1に記載の電気機械。
【請求項8】
前記コントローラが、前記ベクトル制御変調に基づいて前記固定子電流の大きさ又は周波数を変調するように更に構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項9】
前記コントローラが、
前記固定子電流の周波数又は振幅を調節して、前記回転子に前記所望の回転子運動を行わせ、
前記電気機械の前記所望の動作出力を達成する
ように更に構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項10】
前記コントローラが、
前記固定子電流の周波数又は振幅を調節して、前記回転子に前記所望の回転子運動を行わせ、
前記回転子が前記所望の回転子運動を行っており、前記電気機械の前記所望の動作出力を達成しているときに、回転子トルクリップルを制御する
ように更に構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項11】
前記コントローラが、前記固定子の巻線に沿って回転子の磁極より進むように前記固定子電流の前記電流角を大きくして、増加したトルクを送達するように構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項12】
前記コントローラが、前記固定子電流の前記電流角を大きくしながら前記固定子電流の大きさを大きくして、回転子トルクリップルを制御するように構成される、請求項10に記載の電気機械。
【請求項13】
前記コントローラが、前記固定子の電流角を負にさせて、前記回転子の制動機能を実現するように構成される、請求項7に記載の電気機械。
【請求項14】
前記固定子巻線が分布巻巻線を含み、前記回転子が、
集中巻巻線、
突極型巻線、
非重ね巻巻線、又は
永久磁石
を含む、請求項1に記載の電気機械。
【請求項15】
前記回転子が永久磁石を含み、前記永久磁石が前記回転子磁極と実質的に整列する、請求項14に記載の電気機械。
【請求項16】
付随した固定子巻線により複数の固定子磁極を画定する固定子と、
複数の回転子磁極を画定する回転子であって、前記回転子が前記固定子と同期して回転するように構成され、前記回転子が前記回転子磁極のそれぞれに付随した回転子巻線を備え、前記回転子巻線が前記固定子巻線により発生した磁界によって励磁され
て回転子磁界を発生させる
ように構成される、回転子と、
前記固定子巻線が発生した前記磁界に応じて前記回転子巻線への励磁の遅延を抑制し
、固定子電流の位相角又は前記固定子電流の大きさの少なくとも一方が変化すると、前記回転子巻線に非対称の電流応答を発生させて、回転子トルクリップルを制御するように構成された整流システムと
を備える、巻線界磁回転子同期機械。
【請求項17】
前記整流システムが、前記複数の回転子磁極のそれぞれの両端を短絡する整流構成要素を備える、請求項16に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項18】
前記整流システムが、前
記複数の回転子磁極のそれぞれを挟んで配置されたそれぞれの整流子を備える、請求項16に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項19】
前記整流システムが、受動整流システム又は能動整流システムを含む、請求項16に記載の
巻線界磁回転子同期機械。
【請求項20】
前記回転子磁極のうちの最も近い磁極に対して測定される
電流の大きさ及び
電流角を有する固定子電流により前記固定子巻線を励磁し、
次のことにより、前記巻線界磁回転子同期機械の所望の動作出力を達成する、すなわち、
前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力を達成する回転子性能を決定することと、
前記固定子電流の前記
電流角又は前記
固定子電流の前記電流の大きさのうちの一方を調節して、前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力を達成することと、
前記巻線界磁回転子同期機械の現在の動作出力を示す信号を受信することと、
前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力に対して前記巻線界磁回転子同期機械の前記現在の動作出力を比較することと、
前記固定子電流の前記
電流角又は前記
固定子電流の前記電流の大きさのうちの他方を調節して、前記巻線界磁回転子同期機械の前記所望の動作出力を達成することと
により、前記巻線界磁回転子同期機械の所望の動作出力を達成する
ように構成されたコントローラを更に備える、請求項
16に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項21】
前記コントローラが、前記巻線界磁回転子同
期機械の前記所望の動作出力に基づいて、前記固定子電流の周波数を変調するように更に構成される、請求項20に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項22】
前記電流角を調節するために、前記コントローラが、前記巻線界磁回転子同
期機械の1つの軸のみにおいて前記電流角のみを調節するように更に構成される、請求項20に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【請求項23】
前記コントローラが、前記電流角又は前記電流の大きさの少なくとも一方への調節を選択して、前記巻線界磁回転子同
期機械の前記所望の動作出力を実現しながら回転子トルクリップルを制御するように更に構成される、請求項20に記載の巻線界磁回転子同期機械。
【国際調査報告】