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特表2023-532152アルコールの二日酔いを治療又は低減する薬物組成物及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】アルコールの二日酔いを治療又は低減する薬物組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/344 20060101AFI20230719BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 36/076 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 36/906 20060101ALI20230719BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20230719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61K36/344
A61P1/08
A61P1/00
A61K36/076
A61K36/752
A61P3/00
A61P1/16
A61P3/06
A61P13/12
A61K36/906
A61K36/284
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523322
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2022079657
(87)【国際公開番号】W WO2022188762
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2021900682
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523001359
【氏名又は名称】チャン グン メディカル ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ザ-ホン
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AA04
4C088AB26
4C088AB30
4C088AB62
4C088AB81
4C088AC01
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA07
4C088NA05
4C088ZA66
4C088ZA71
4C088ZA75
4C088ZA81
4C088ZC33
4C088ZC75
(57)【要約】
トウジン、ブクリョウ及び陳皮を含み,又は乾姜とビャクジュツを更に含む、アルコールの二日酔いを治療又は低減する薬物組成物。有効量を投与することによる薬物組成物が、アルコールの二日酔い、肝臓、腎臓及び胃腸管損傷を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の飲酒による影響を治療又は低減するための薬物の製造における薬物組成物の用途であって、
該薬物組成物は、
トウジン、
ブクリョウ、及び
陳皮を含む(1)薬草混合物と、
(2)薬学的に許容される担体とを含む、用途。
【請求項2】
前記薬草混合物において、トウジン、陳皮、ブクリョウの重量比が25~35%:25~35%:30~50%である、請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記薬草混合物は、乾姜及びビャクジュツを更に含む、請求項1に記載の用途。
【請求項4】
前記薬草混合物において、5~15重量%の乾姜、15~25重量%のトウジン、25~35重量%のブクリョウ、15~25重量%の陳皮及び10~20重量%のビャクジュツを含む、請求項3に記載の用途。
【請求項5】
前記薬物組成物は、飲酒前に投与される、請求項1乃至4に記載の用途。
【請求項6】
前記飲酒による影響は、血中アルコール濃度の上昇の症状、及びアルコールの二日酔いからなる群より選択されたものである、請求項1乃至4に記載の用途。
【請求項7】
薬物組成物であって、
トウジン
ブクリョウ、及び
陳皮を含む(1)薬草混合物と、
(2)薬学的に許容される担体とを含む、薬物組成物。
【請求項8】
前記薬草混合物において、トウジン、陳皮、ブクリョウの重量比が25~35%:25~35%:30~50%である、請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項9】
前記薬草混合物は、乾姜及びビャクジュツを更に含む、請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項10】
前記薬草混合物において、5~15重量%の乾姜、15~25重量%のトウジン、25~35重量%のブクリョウ、15~25重量%の陳皮及び10~20重量%のビャクジュツを含む、請求項9に記載の薬物組成物。
【請求項11】
請求項7乃至10に記載の薬物組成物が、肝細胞炎症作用及び脂肪蓄積を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途。
【請求項12】
請求項7乃至10に記載の薬物組成物が、小腸粘膜又は腸機能障害を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途。
【請求項13】
請求項7乃至10に記載の薬物組成物が、糸球体の損傷又は腎機能の損傷を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールの二日酔い、肝臓、腎臓及び胃腸管の損傷を治療又は低減する新規薬物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールによる二日酔いは、最も一般的に報告されている過度の飲酒の弊害であり、血中アルコール濃度(BAC)がほぼゼロに戻ったときに現れる。エタノールは水と混和可能であるため、水に富む組織を対象とすることになり、例えば、脳では、一般的な苦痛、頭痛、疲労、注意力の問題、口渇、めまい、吐き気、認知障害及び気分変化等の身近な症状を引き起こす。アルコールの二日酔いは、職場での無断欠勤、業績の悪化、生産性の低下、学業成績の低下を引き起こし、自動車の運転や重機の操作等の潜在的に危険な日常生活を危険にさらす可能性がある。一般的な各種の疾患及び他の健康リスク因子と比較すると、アルコールの二日酔いのこれらの社会経済的結果及び健康リスクははるかに高い。
【0003】
アルコールによる障害や副作用(二日酔いを含む)の治療法を探すことは、アルコール自体と同じくらい古いものである。多くの治療法及び予防薬が利用可能であるが、その有効性に関する科学的証拠は一般に欠如している。
【0004】
従って、血中アルコール濃度(BAC)上昇の症状を迅速に減少させるか、あるいは飲酒後の覚醒を迅速に回復させるか、あるいは飲酒症状を減少又は予防する方法及び組成物を必要とする。本発明はこの需要及びその他の需要を解決する。
【発明の概要】
【0005】
[発明が解決しようとする課題]
[課題を解決するための手段]
一実施形態において、本発明は、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツからなる群より選択された少なくとも2種類の薬草を含む(1)薬草混合物と、(2)薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を開示している。
【0006】
他の実施形態において、トウジン、ブクリョウ及び陳皮を含む(1)薬草混合物と、(2)薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を提供する。
【0007】
他の実施形態において、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツを含む(1)薬草混合物と、(2)薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を提供する。
【0008】
本明細書に記載の薬物組成物が、飲酒による影響を治療又は低減するための薬物を製造するために用いられる用途を更に含む。
【0009】
本明細書に記載の薬物組成物が、肝細胞炎症作用及び脂肪蓄積を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途を更に含む。
【0010】
本明細書に記載の薬物組成物が、小腸粘膜又は腸機能障害を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途を更に含む。
【0011】
本明細書に記載の薬物組成物が、糸球体の損傷又は腎機能の損傷を治療又は低減する薬物を製造するために用いられる用途を更に含む。
【0012】
本明細書に記載の薬物組成物を投与することによって、必要とする個体の飲酒による影響を治療又は低減する方法を更に提供する。
【0013】
本特許で用いられる用語「発明」及び「本発明」は、本特許及び以下の特許請求の範囲のすべての主題を広く指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を制限せず、又は以下の特許請求の範囲の意味又は範囲を制限しないものと理解されるべきである。本特許に含まれる本発明の実施形態は、本発明の内容ではなく、以下の特許請求の範囲によって定義される。当該発明の内容は、本発明の様々な側面の高度な概要であり、以下の実施形態部分で更に述べられるいくつかの概念を説明する。当該発明の内容は、要求される主題の重要な特徴又は基本的な特徴を決定することを意図するものではなく、要求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることを意図するものでもない。主題は、明細書全体の適切な部分、いずれかの図面又はすべての図面、及び各請求項の範囲を参照することによって理解されるべきである。
【0014】
以下の図面及び実施形態を参照すると、本発明はより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の薬物組成物がマウス体重に与える影響を説明する折れ線グラフである。
図2】本発明の薬物組成物がマウスの肝臓/体重比及び腎臓/体重比に与える影響を説明するヒストグラムである。
図3】本発明の薬物組成物がマウスの肝臓/体重比及び腎臓/体重比に与える影響を説明するヒストグラムである。
図4】本発明の薬物組成物がマウスの血清肝機能(AST及びALT)レベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図5】本発明の薬物組成物がマウスの血清肝機能(AST及びALT)レベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図6】本発明の薬物組成物がマウスの血清総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリド(TG)レベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図7】本発明の薬物組成物がマウスの血清総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリド(TG)レベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図8】本発明の薬物組成物がマウスの血清グルコースレベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図9】本発明の薬物組成物がマウスの肝臓の総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリド(TG)レベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図10】本発明の薬物組成物がマウスの肝臓の総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリド(TG)レベルに与える影響を説明するヒストグラムである。
図11】本発明の薬物組成物がアルコール性肝疾患のマウスを治療する際の脂肪変性評価を説明するヒストグラムである。
図12】本発明の薬物組成物の一実施形態が実地覚醒検査の成績に与える影響を説明するヒストグラムである。
図13】本発明の薬物組成物の一実施形態が飲酒1時間後のアルコールによる症状に与える影響を説明するヒストグラムである。
図14】本発明の薬物組成物の一実施形態が飲酒2時間後のアルコールによる症状に与える影響を説明するヒストグラムである。
図15】本発明の薬物組成物の一実施形態が飲酒24時間後のアルコールによる症状に与える影響を説明するヒストグラムである。
図16A】本発明の薬物組成物の一実施形態が肝機能テスト(AST、ALT及びγ-GT)に与える影響を説明するヒストグラムである。
図16B】本発明の薬物組成物の一実施形態が肝機能テスト(AST、ALT及びγ-GT)に与える影響を説明するヒストグラムである。
図16C】本発明の薬物組成物の一実施形態が肝機能テスト(AST、ALT及びγ-GT)に与える影響を説明するヒストグラムである。
図17A】本発明の薬物組成物の一実施形態が腎機能テスト(アルドステロン及びクレアチニン)に与える影響を説明するヒストグラムである。
図17B】本発明の薬物組成物の一実施形態が腎機能テスト(アルドステロン及びクレアチニン)に与える影響を説明するヒストグラムである。
図18】本発明の薬物組成物の一実施形態がグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)に与える影響を説明するヒストグラムである。
図19】アルコールによる空腸絨毛の損傷(図B)、及び本発明の薬物組成物の一実施形態がアルコールによる小腸被膜の損傷を低減すること(図C~E)を示す、ヘマトキシリン及びエオジン染色(H及びE)像の集合である。
図20】アルコールによる糸球体の損傷(図B)、及び本発明の薬物組成物の一実施形態がアルコールによる糸球体の損傷を低減すること(図C~E)を示す、H及びE像の集合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
上記及び本開示の内容全体を通して用いられるように、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解される。
【0017】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「一(a/an)」及び「当該」は、文脈により特に明記されない限り、複数の指示語を含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、飲酒又はBACの上昇に起因する少なくとも1つの症状を治療又は改善するのに十分な薬物組成物の用量を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、緩和的な用途又は結果、及び/又はアルコールによる症状又は徴候の発現を遅らせるか又は抑制することを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「個体」は、一般に、飲酒又はBACの上昇に起因する症状を有するか又は有すると疑われるヒト又は動物を指す。すなわち、飲酒した個体は、飲酒又はBAC上昇の症状又は徴候の有無にかかわらず、「個体」という用語の範囲に含まれる。
【0021】
本明細書のすべての数字は、「約」で修飾されていると理解することができる。本明細書で使用される場合、用語「約」は、±10%の変動を包含することを意味する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツからなる群より選択された少なくとも2種類の薬草を含む(1)薬草混合物と、(2)薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を開示している。
【0023】
一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜及びトウジンを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、トウジン及びブクリョウを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、ブクリョウ及び陳皮を含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、陳皮及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜及びブクリョウを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜及び陳皮を含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、トウジン及び陳皮を含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、トウジン及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、ブクリョウ及びビャクジュツを含む。
【0024】
他の実施形態において、本発明は、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツからなる群より選択された少なくとも3種類の薬草を含む(1)薬草混合物と、(2)薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を開示している。
【0025】
一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜、トウジン及びブクリョウを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、トウジン、ブクリョウ及び陳皮を含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、陳皮、ビャクジュツ及び乾姜を含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜、陳皮及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜、トウジン及び陳皮を含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜、ブクリョウ及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物のトウジン、陳皮、ブクリョウの重量比が約25~35%:25~35%:30~50%である。
【0026】
一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜、トウジン及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、乾姜、ブクリョウ及びビャクジュツを含む。
【0027】
一例示的な実施形態において、薬草混合物は、トウジン、陳皮及びビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、トウジン、ブクリョウ及びビャクジュツを含む。
【0028】
他の実施形態において、本発明は、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツを含む(1)薬草混合物と、(2)薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を開示している。
【0029】
一例示的な実施形態において、薬草抽出物は、約5~15重量%の乾姜を含む。一例示的な実施形態において、薬草抽出物は、約15~25重量%のトウジンを含む。一例示的な実施形態において、薬草抽出物は、約25~35重量%のブクリョウを含む。一例示的な実施形態において、薬草抽出物は、約15~25重量%の陳皮を含む。一例示的な実施形態において、薬草抽出物は、約10~20重量%のビャクジュツを含む。一例示的な実施形態において、薬草抽出物は、約20~25重量%のトウジンを含み、約30~35重量%のブクリョウを含み、約20~25重量%の陳皮を含み、約15~18重量%のビャクジュツを含み、及び約6~12重量%の乾姜を含む。
【0030】
一例示的な実施形態において、薬草混合物は、列挙された薬草(すなわち、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツ)のうち少なくとも2つの乾燥粉末又は凍結乾燥粉末である。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、列挙された薬草(すなわち、乾姜、トウジン、ブクリョウ、陳皮及びビャクジュツ)のうち少なくとも2つの水又はアルコール抽出物である。
【0031】
薬草混合物中の薬草は、生の薬草、生の薬草の乾燥粉末、凍結乾燥粉末、研磨粉末、煎剤、水又はアルコール粗抽出物又は抽出粒子であり得る。一例示的な実施形態において、薬草混合物は、水性抽出によって製造され、ここで、生の薬草(最適な抽出結果を得るために抽出前に任意に研磨される)は、水又は溶媒中で加熱され、その後、濾過、濃縮(液体抽出物が真空又は低圧濃縮によって凝集される)される。
【0032】
国立アルコール乱用・アルコール中毒研究所は、血中アルコール濃度(BAC)の増加に伴う様々な程度の障害を列挙している。
【0033】
軽度の障害(BACは0.0~0.05%の間):軽度の言語、記憶力、注意力、協調運動、バランスの障害、弛緩障害及び嗜眠。
【0034】
中度の障害(BACレベルは0.06~0.15%の間):攻撃性のリスクの増加、言語、記憶力、注意力、協調運動、バランス及び運転技能のさらなる障害。
【0035】
重度の障害(BACレベルは0.16~0.30%の間):言語、記憶力、注意力、協調運動、バランス、判断、意思決定の著しい障害、錯乱、失神、吐き気及び嘔吐、意識消失、気分の変化、不規則な呼吸。
【0036】
生命を脅かし得る状態(アルコール過剰摂取、BACは0.31~0.45%):錯乱、意識消失、痙攣発作及び過度の低体温。
【0037】
二日酔いとは、過度の飲酒によって起こる一連の症状のことである。典型的な症状には、疲労、衰弱、口渇、頭痛、筋肉痛、吐き気、胃痛、めまい、光や音に対する過敏、不安、易刺激性、発汗、血圧上昇等を含む。
【0038】
例えば、BAC上昇の症状及び徴候を低減し、飲酒者が迅速に覚醒できるように、任意量のアルコールを社交的に飲む前、その間、又は直後に、薬物組成物を投与することが望ましい。薬物組成物を投与して、肝臓、腎臓又は腸管の損傷等の胃腸管及び泌尿器系の損傷を治療及び予防することも望ましい。
【0039】
本発明は、本明細書に記載の薬物組成物を投与することによって、必要とする個体の飲酒による影響を治療又は低減する方法を提供する。
【0040】
飲酒による影響の非限定的な実例は、血中アルコール濃度の上昇の症状、徴候又はアルコールの二日酔いを含む。
【0041】
薬物組成物は、薬草混合物及び薬学的に許容される担体で調製又は製造されやすい。薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の薬物組成物の吸収又はクリアランスを安定化又は増加又は減少させるための生理学的に許容される化合物を含有してもよい。生理学的に許容される化合物は、例えば、グルコース、スクロース又はポリデキストロース等の炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオン等の酸化防止剤、キレート剤、低分子量蛋白質、清浄剤、リポソーム担体又は他の安定剤及び/又は緩衝剤を含むことができる。このような製剤は、薬草混合物を適切な薬学的に許容される担体(例えば、液体担体、固体担体又はその両方)と組み合わせることを含む様々な技術によって製造することができる。
【0042】
本明細書に提供される薬物組成物は、任意選択で、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、防腐剤、共溶媒及び粘着付与剤、又はアルコール障害を治療するための他の治療成分、例えば、アカンプロサートカルシウム(acamprosate)、ガバペンチン(gabapentin、商品名NEURONTIN)又はトピラメート(topiramate、商品名topamax)を含む。担体及び他の治療成分は、薬物組成物に適合し且つ個体に害を及ぼさないという意味で許容可能でなければならない。
【0043】
薬物組成物は、個体のBAC上昇の症状又は徴候を減少させるのに有効な量で投与される。投与される薬物組成物の用量は、摂取されたアルコールの量、並びに個体の体重及び通常の状態、並びに投与経路等の他の臨床的要因に依存することになる。本明細書に提供される薬物組成物の有用な用量は、インビトロ及び動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定される。マウス及び他の動物の有効な量を人間に推定する方法はこの技術では既知である。例えば、米国特許第4,938,949号を参照し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
本明細書に提供される方法によれば、薬物組成物は、注射(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮内、硝子体内)、皮膚、経皮投与、経皮的吸収、経口(例えば、錠剤、粉剤、丸剤、口腔剤、カプセル、液体、食用フィルム又は薬草に適した任意の剤形)、植込み型浸透ポンプ、座薬、エアゾールスプレー、局所、眼、鼻への吸入、肺への吸入、皮膚内への注入等の様々な経路のいずれかによって送達され上記の経路を含むがこれらに限定されない。一実施形態において、本発明の薬物組成物は、水性抽出物の形態で経口投与することができる。
【0045】
薬物組成物は、一定期間内に単一用量又は複数用量の治療で投与することができる。薬物組成物は、例えば、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日に6回、1日おきに1回、3日おきに1回等の適切な間隔で投与することができる。
【0046】
本明細書に記載の方法は、任意量のアルコールを摂取した後の個人の飲酒による影響を治療又は低減するインビトロ及びインビボ方法を含む研究方法及び用途も包含する。
【0047】
本発明の実施形態は、以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。以下の実施例に記載されている研究期間中、特に明記されていない限り、周知の手順に従う。説明を目的として、いくつかの手順を以下に説明する。
【実施例
【0048】
実施例1:薬物組成物がマウスに与える影響に関する事例研究
本研究の目的は、薬物組成物S1~S11がアルコール性肝疾患のマウスモデルにおけるアルコール性肝障害の改善に及ぼす保護作用を研究することであり、薬物組成物S1~S11の成分は下記の表1に示されている。
【0049】
【表1】
【0050】
1.マウスのアルコール性肝疾患
8週齢のC57BL/6雄性マウス52匹をペアフィード(pair-fed)の流動食(対照グループの食事はアルコールを含まない)に1週間適応させ、その後、マウスをアルコール給餌グループとペアフィードグループ(正常対照グループ)に分けた。アルコール給餌グループのマウスは毎日Lieber-DeCarli流動食(高脂肪型アルコール液体飼料)を摂取し、アルコール濃度は1~5%(毎日1~5%増加)であり、しかもマウスは流動食において任意に5%のアルコールを5週間給餌する。ペアフィードを行ったマウスを正常対照グループとして、熱量が一致する流動食(液体担体は再蒸留水(ddHO)である)を5週間摂取させた。
【0051】
2.治療
疾患誘発期間が開始するときに、担体(ddHO)又は薬物組成物をマウスに1日1回経口(PO)で投与し(QD)、マウスを35日間又は5週間治療する。用量容積は12.3mL/kg(体重)であり、治療1日目は0日目と表示される。実験設計を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
S1~S11等の11組の薬物組成物をアルコール性肝臓病マウスに対してテストし、アルコール性肝障害に対する保護作用を評価する。第1グループの動物は流動食のペアフィードが行われ、一方、正常対照グループとして担体(ddHO)を摂取した。第2グループの動物はLieber-DeCarli流動食を摂取し、一方、疾患対照グループとして担体(ddH2O)を摂取した。第3グループから第13グループの動物はそれぞれLieber-DeCarli流動食及び薬物組成物S1~S11を摂取した
図1を参照すると、アルコールを給餌したマウスでは体重の顕著な減少が観察された。担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループでは顕著な体重変化が観察されなかった。
【0054】
図2及び図3を参照すると、研究終了時(34日目)に、肝臓/体重比の平均値が5.78%であったが、正常対照グループ(第1グループ)は3.55%であった(p<0.05)。また、腎臓/体重比の平均値が1.35%であったが、正常対照グループ(第1グループ)は1.01%であった(p<0.05)。このことから分かるように、アルコールを給餌したマウスは肝臓/体重比及び腎臓/体重比がいずれも顕著に上昇している。
【0055】
その他、図2を参照すると、治療グループS1(第3グループ)、S2(第4グループ)、S3(第5グループ)、S5(第7グループ)、S6(第8グループ)又はS10(第12グループ)を治療した後、その肝臓/体重比は担体対照グループ(第2グループ)より顕著に低下した(p<0.05)。
【0056】
3.血清化学測定
マウスは0日目及び34日目に採血する前に一晩絶食し、最後の薬物投与後4時間に血液サンプルを採取して血清化学分析に用いた。血清化学パラメータはAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素、Aspartate aminotransferase)、ALT(アラニンアミノ基転移酵素、Alanine aminotransferase)、総コレステロール(T-CHO)、トリグリセリド(TG)及び血糖(GLU)を含み、ここで、AST、ALT、CHO及びTGはHitachi 7180分析計を用いて測定し、GLUは血糖計を用いて測定する。
【0057】
図4及び図5を参照すると、34日目の血液化学分析により、正常対照グループ(第1グループ)と比較し、アルコールを給餌したマウスの血清AST及びALTレベルは顕著に増加し、そのAST値が122.5±29.6U/Lであったが、正常対照グループ(第1グループ)は80.8±3.5U/Lであった。ALT値が49.7±6.3U/Lであったが、正常対照グループ(第1グループ)では33.9±3.0U/Lであった(p<0.05)。しかし、担体対照グループ(第2グループ)と比較した場合、治療グループでは血清AST及びALTに顕著な差異が認められなかった。
【0058】
図6を参照すると、治療開始時(0日目)、治療グループS1(第3グループ)、S3(第5グループ)、S5(第7グループ)、S7(第9グループ)又はS9(第11グループ)の血清総コレステロール(T-CHO)レベルは担体対照グループ(第2グループ)と比較して顕著に上昇した(p<0.05)。研究が終了するとき(34日目)に、正常対照グループ(第1グループ)と比較して、アルコールを給餌したマウスの血清T-CHOレベルは顕著に上昇した(p<0.05)。しかし、担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループでは血清T-CHOの顕著な上昇が見られなかった。
【0059】
図7を参照すると、担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループS2(第4グループ)、S3(第5グループ)、S5(第7グループ)、S6(第8グループ)及びS9(第11グループ)の血清トリグリセリド(TG)レベルが顕著に低下した(p<0.05)。研究が終了するとき(34日目)正常対照グループ(第1グループ)と比較して、アルコールを給餌したマウスの血清TGレベルが顕著に低下した(p<0.05)。しかし、担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループでは血清TGに顕著な変化が見られなかった。
【0060】
図8を参照すると、治療開始時(0日目)、治療グループS1(第3グループ)、S2(第4グループ)又はS5(第7グループ)の血清グルコースレベルは担体対照グループ(第2グループ)と比較して顕著に上昇した(p<0.05)。しかし、研究が終了するとき(34日目)に、担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループS8(第10グループ)において、アルコールを給餌したマウスの血清グルコースレベルが顕著に低下した(p<0.05)。
【0061】
4.肝臓の総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリドレベルの測定
34日目の研究が終了するときに、肝臓組織を採取し、PBSで抽出する。組織中の総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリド(TG)をHitachi 7180分析計を用いて分析した。
【0062】
図9及び図10を参照すると、アルコールを給餌したマウスの肝臓の総コレステロール(T-CHO)及びトリグリセリド(TG)レベルは増加した。担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループS7(第9グループ)、S8(第10グループ)、S9(第11グループ)及びS11(第13グループ)の肝臓のT-CHOレベルは顕著に低下した(p<0.05)。しかし、担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループS8(第10グループ)中の肝臓のTGレベルは顕著に低下した(p<0.05)。
【0063】
5.肝酵素測定
肝臓中のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)レベルをELISA法で測定した結果を表3に示す。
【0064】
【表3A】
【0065】
【表3B】
【0066】
6.顕微鏡評価
マウスを解剖するとき、組織サンプルを採取し、10%中性緩衝ホルマリン(neutral buffered formalin、NBF)で保存した。肝臓、腎臓、腸管をトリミングし、パラフィン包埋し、切片化してH(ヘマトキシリン)及びE(エオジン)で染色し、更に治療性質について知らない獣医病理学者がそれを顕微鏡(Leica DM2700M)で検査する。
【0067】
6.1肝脂肪変性病変の半定量スコア
顕微鏡での肝臓脂肪変性病変の重症度分類システムを下記表4に示し、各グループの治療後のスコアを下記表5及び図11に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
図11を参照すると、担体対照グループ(第2グループ)と比較して、治療グループS5(第7グループ)で治療したLieber-DeCarli流動食を給餌したマウスの肝臓脂肪変性病変のスコアは顕著に低下した(p<0.05、一方向分散分析)。従って、その結果から分かるように、治療グループS5(第7グループ)は、アルコールによる肝臓脂肪変性の増加からマウスを保護し、アルコール性肝疾患のマウスモデルにおける肝臓病理を改善できる。
【0071】
6.2組織病理学的観察の半定量スコア
Toxicologic Pathology (Shackelfold et al.、2002)に発表された参考資料によれば、その他のミクロ病変(肝臓、腎臓、腸管)の重症度分類システムの標準を下記表6に示し、各グループの治療後スコアを下記表7に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
【表7A】
【0074】
【表7B】
【0075】
表7から分かるように、肝臓では限局的に最小単核球の浸潤が観察された(第1グループ2/4雄性動物、第2グループ3/4雄性動物、第4グループ1/4雄性動物、第5グループ3/4雄性動物、第6グループ1/4雄性動物、第7グループ1/4雄性動物、第8グループ3/4雄性動物、第9グループ1/4雄性動物、第10グループ1/4雄性動物、第11グループ2/4雄性動物、第12グループ2/4雄性動物及び第13グループ2/4雄性動物)。治療グループと担体対照グループ(第2グループ)の間にミクロ変化の重症度は統計学的に差がなかった(p>0.05、一方向分散分析)。
【0076】
表7から分かるように、腎臓では、皮質限局性軽度慢性進展腎病変(第4グループの1/4雄性動物)、皮質尿細管限局性好酸球最少増殖(第3グループの1/4雄性動物)、皮質尿細管限局性好酸球最少増殖(第5グループの1/4雄性動物)、尿細管限局性最小から軽度の微小管型(第5グループの1/4雄性動物及び第7グループの1/4雄性動物)、限局性尿細管最小拡張(第5グループの1/4雄性動物及び第9グループの1/4雄性動物)、乳頭状細管限局性最小石灰化(第7グループの1/4雄性動物)が観察される。治療グループと担体対照グループ(第2グループ)の間にミクロ変化の重症度は統計学的に差がなかった(p>0.05、一方向分散分析)。
【0077】
表7から分かるように、腸管では、限局性の最小から軽度の変性/壊死(第5グループの1/4雄性動物及び第10グループの1/4雄性動物)が観察された。治療グループと担体対照グループ(第2グループ)の間にミクロ変化の重症度は統計学的に差がなかった(p>0.05、一方向分散分析)。
【0078】
以上の全体的な結果から分かるように、薬物組成物S5は、アルコールによる肝臓脂肪変性の増加からマウスを保護し、上記のマウスモデルにおける肝臓病理を改善する。
【0079】
7.統計分析
すべての数値は、平均値±標準差(S.D.)又は平均標準誤差(SEM)で表される。対応のない学生のt検定(unpaired Student’s t-test)を正常グループ(第1グループ)と担体グループ(第2グループ)の間の比較に用い、一方向分散分析(one-way ANOVA)及びDunnett検定(Dunnett’s test)を用いて担体グループ(第2グループ)及び他の治療グループ(第3グループから第13グループ)を比較して統計分析に用いた。p値が0.05未満(p<0.05)の場合、その差は統計的に有意であると考えられている。
【0080】
実施例2:薬物組成物が人体に与える影響に関する事例研究
上昇したBACに対する本発明の薬物組成物の影響を評価するために、25人のボランティア個体に関する研究を実施した。31歳から50歳の間の21名の男性と4名の女性が研究対象となった。表8には、選抜された個体の基本的人口統計の詳細が示されている。
【0081】
【表8】
【0082】
薬物組成物(以下「CGW3製剤」と称する)は、約5~15重量%の乾姜、約15~25重量%のトウジン、約25~35重量%のブクリョウ、約15~25重量%の陳皮及び約10~20重量%のビャクジュツを含む薬草混合物の抽出物を含む。
【0083】
各個体は次の3つの条件のそれぞれについて検査する。
【0084】
1)CGW3製剤を服用せずに飲酒する(対照設定)
2)飲酒30分前及び30分後に120mlのCGW3製剤を摂取する。
【0085】
3)飲酒15日前に1日1回、30分前及び30分後に120mlのCGW3製剤を摂取する。
【0086】
各男性個体は147mlのアルコールを摂取し、各女性は73.5mlのアルコールを摂取した。飲酒後、神経科医により以下の検査及び評価を行う。
【0087】
(a)実地覚醒検査には、指鼻テスト、カウントテスト(閉眼カウント)及びRombergバランステストが含まれる。
【0088】
(b)飲酒1時間後、2時間後及び24時間後の自己記入式アンケート。飲酒1時間後のアンケートは、めまい、発熱、発汗、頭痛、腹痛、下痢、皮膚のかゆみ及び発疹、並びに腹痛等のアルコールによる二日酔いの症状に関するものである。飲酒2時間後のアンケートは、支離滅裂な会話、意識レベルの変化、錯乱、歩行不安定、霧視、手の小刻みな震え等のアルコールによる二日酔いの症状を対象としている。飲酒24時間後のアンケートは、作業能力、注意力又は記憶力の低下、吐き気、嘔吐、腹部不快感、背部痛、頭頸部痛、ドライアイの不快感、不眠、嗜眠等のアルコールによる二日酔いの症状を対象としている。
【0089】
(c)血清学的検査:グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)、クレアチニン及びアルドステロン。
【0090】
図12及び表9に示されるように、飲酒前にCGW3製剤を15回服用した個体は、対照設定と比較して、指鼻テスト及びカウントテストにおいて顕著に良好であり、より良好なバランスを維持した。更に、CGW3製剤を飲酒前に1回服用した個体は、対照設定と比較して、顕著に正確なカウントテストを行い、より良好なバランスを維持した。その結果、飲酒前に少なくとも一回のCGW3製剤を摂取すると、非標準化実地覚醒テスト(指鼻テスト、カウントテスト及びバランステスト)の成績が顕著に向上した。
【0091】
【表9】
【0092】
表10及び図13図15は、飲酒前にCGW3製剤を1回又は15回摂取すると、すべてのアルコールによる二日酔いの症状が減少することを示す。具体的には、飲酒前にCGW3製剤を15回服用すると、対照設定と比較して、めまい、錯乱が顕著に減少し、翌日の注意力又は記憶力が改善された。飲酒前にCGW3製剤を1回服用すると、対照設定と比較して、支離滅裂な会話を大幅に減少させ、意識レベルを変化させ、翌日の作業能力を改善した。
【0093】
【表10A】
【0094】
【表10B】
【0095】
表11及び図16-18に、CGW3製剤が肝機能テスト、腎機能テスト及びG6PDに与える影響を示す。対照設定と比較して、飲酒前にCGW3製剤を1回服用するとG6PD及びγ-GTの血清レベルを顕著に低下させ、飲酒前にCGW3製剤を15回服用するとALT及びASTの血清レベルを顕著に低下させ、血清クレアチニンレベルが低下する傾向があることが注意される。
【0096】
【表11】
【0097】
実施例3:薬物医薬組成物の影響に関する生体内研究
CGW3製剤がマウスの腸管被膜及び糸球体に与える影響を評価する。
【0098】
体重が約20グラムの8~10週齢の雄性C57BL/6マウス(中国台湾国立動物センターから購入し、長庚大学動物センターで飼育し、IACUC番号CGU108-009)を研究に用いた。本研究は、各グループ10匹のマウスからなる以下の5つの研究グループから構成されている。
【0099】
1.通常の対照食:Lieber-DeCarli食(Lieber-DeCarli標準食粉末221.78gを1リットルの蒸留水中で撹拌)を経口経管栄養によりマウスに4週間給餌した。12.3ml/kg体重/日の蒸留水を通常の対照食の1週間前及び全過程で経口経管栄養により投与した。
【0100】
2.液体アルコール食:中国台湾食品薬物管理署が2016年に公布した「健康食品の肝臓保健効果評価方法(Evaluation Method of Liver Health Care Efficacy of Healthy Food)」に従い、経口経管栄養によりマウスにLieber-DeCarliアルコール食(Lieber-DeCarli標準食粉末132.18g及び67mlの95%アルコールが933ml蒸留水の中にある)を4週間給餌し、腸管と腎臓の損傷を誘発させる。12.3ml/kg体重/日の蒸留水を、液体アルコール食の1週間前及び全過程で経口経管栄養により投与した。
【0101】
3.液体アルコール食+4.1ml/kg体重/日のCGW3製剤:Lieber-DeCarliアルコール食を経口経管栄養によりマウスに4週間に与えた。4.1ml/kg体重/日のCGW3製剤(ヒトの0.33mg/kg体重/日に相当)を、液体アルコール食の1週間前及び全過程中に1日1回、5週間経口経管栄養により投与した)。
【0102】
4.液体アルコール食+12.3ml/kg体重/日のCGW3製剤:Lieber-DeCarliアルコール食を経口経管栄養によりマウスに4週間給餌した。12.3ml/kg体重/日のCGW3製剤(ヒトの1mg/kg体重/日に相当)を、液体アルコール食の1週間前及び全過程で経口経管栄養により1日1回、合計5週間投与した。
【0103】
5.液体アルコール食+36.9ml/kg体重/日のCGW3製剤:Lieber-DeCarliアルコール食を経口経管栄養によりマウスに4週間給餌した。36.9ml/kg体重/日のCGW3製剤(ヒトの3mg/kg体重/日に相当)を、液体アルコール食の1週間前及び全過程で経口経管栄養により1日1回、合計5週間投与した。
【0104】
CGW3製剤を5週間投与した後、腸管被膜及び糸球体に対するCGW3製剤の保護作用を評価した。
【0105】
病理学的検査
マウスの殺処分後、空腸及び腎臓組織を10%ホルマリンで固定し、ヘマトキシリン及びエオシンプロトコルにより染色した。染色結果:細胞核は青色であり、細胞質及び間質組織は赤色である。
【0106】
結果:
図19図Bは、液体アルコール食を摂取したマウスの空腸絨毛が、通常の対照食を摂取したマウス(図19図A)と比較して損傷していることを示している。空腸絨毛の損傷は、CGW3製剤を定期的に給餌することで逆転又は減弱する(図19図C~E)。
【0107】
図20図Bは、液体アルコール食を摂取したマウスの糸球体の損傷を、通常の対照食を摂取したマウスと比較して示している(図20図A)。糸球体は腎臓の組織であり、濾過によって生成された最初の尿はボーマン嚢(Bowman’s capsule)に包まれる。糸球体の主な機能は、血漿を濾過して老廃物を除去し、尿を形成することである。糸球体の損傷は、CGW3製剤を定期的に給餌することで逆転又は減弱する(図20図C~E)。
【0108】
実施例4:赤ワインを摂取した後に薬物組成物を服用することに関する事例研究
成年ボランティア2人を募集し、250mLの赤ワインを摂取してコントロールグループとし、且つトウジン、ブクリョウ及び陳皮の3種類の成分を含有するS5薬物組成物(トウジン、ブクリョウ及び陳皮の重量比が25~35%:30~50%:25~35%)と250mLの赤ワインを服用して実験グループ1とし、そしてトウジン、ブクリョウ及び青皮の3種類の成分を含有する薬物組成物(トウジン、ブクリョウ及び青皮の重量比が25~35%:30~50%:25~35%)と250mLの赤ワインを服用して実験グループ2として試験を行い、薬物組成物に陳皮又は青皮の両者を添加してアルコール濃度の低下に対する差異を確認し、そのアルコール濃度の測定は漢訊科学技術の専門電気化学アルコール測定器(型番HOHOGA-AT576-AlcoREAL)を使用して測定する。ボランティア2人のアルコール濃度の平均値を表12に示す。
【0109】
【表12】
【0110】
表12から分かるように、実験グループ1において30分後に測定されたアルコール濃度は、コントロールグループと実験グループ2よりも低くなった。また、実験グループ1において90分後のアルコール濃度が0であり、すなわちアルコール測定器で測定できない。以上の結果から分かるように、本発明の薬物組成物は、青皮含有組成物よりも陳皮含有組成物の方が酔い覚まし効果が高く、より短時間でアルコール濃度をゼロまで低下させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18
図19
図20
【国際調査報告】