(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】電気回路内の抵抗を決定すること
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20230719BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20230719BHJP
【FI】
G01R27/02 E
G01R31/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523672
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2021067661
(87)【国際公開番号】W WO2022002836
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523001153
【氏名又は名称】リマック・アウトモビリ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Rimac Automobiles Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】サレーム,サンワル
【テーマコード(参考)】
2G014
2G028
【Fターム(参考)】
2G014AA17
2G014AB06
2G014AB24
2G014AB59
2G014AB61
2G028BE04
2G028BE06
2G028BE10
2G028CG03
2G028DH06
(57)【要約】
電気回路内の抵抗を決定する方法は、所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを、電気回路の試験点に印加すること、パルス持続時間の少なくとも一部の間、電気回路の応答点での電気的可観測量を計測すること、パルス持続時間の間、計測された可観測量から期待値を推定すること、及び、期待値から抵抗を決定すること、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路内の抵抗を決定する方法であって、
所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを、前記電気回路の試験点に印加すること、
前記パルス持続時間の少なくとも一部の間、前記電気回路の応答点での電気的可観測量を計測すること、
前記パルス持続時間の間、前記計測された可観測量から期待値を推定すること、及び、
前記期待値から前記抵抗を決定すること、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記電圧パルスは、決定対象の前記抵抗の一方側にある試験点に印加され、
前記電気的可観測量は、決定対象の前記抵抗の他方側にある応答点で計測される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電圧パルスは、決定対象の前記抵抗の一方側にある試験点に印加され、
前記電気的可観測量は、決定対象の前記抵抗の他方側にある応答点で計測され、
前記方法は、前記抵抗の前記一方側にある参照応答点で参照電気的可観測量を計測することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
追加の応答点で追加の電気的可観測量を計測することを、更に含む、
請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記電圧パルスは、決定対象の前記抵抗の一方側にある試験点に印加され、
前記電気的可観測量及び前記追加の電気的可観測量の両方は、決定対象の前記抵抗の他方側にある応答点及び追加の応答点の両方で、それぞれ、計測される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気的可観測量は、前記電圧パルスが印加される前記試験と同じである応答点で計測される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パルス持続時間は、前記可観測量が所定の許容範囲内で前記期待値に到達する期間よりも短い、
請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記抵抗は、絶縁抵抗である、
請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記電気回路は、非接地の電気回路、車両側バッテリ回路、高電圧システム内の電気回路、Yコンデンサを含む電気回路、又は、充電中の電気回路のいずれか一つである、
請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
電圧パルスを印加することは、電圧パルスを重畳することを含む、
請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記重畳された電圧パルスは、交流電圧パルスである、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気的可観測量のいずれかは、電圧又は電流である、
請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記電気的可観測量の前記期待値を推定することは、前記電気的可観測量の計測値にモデルをフィッティングすることを含み、
前記モデルは、好ましくは、指数モデルである、
請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記決定された抵抗に基づいて故障が起きているかどうかを決定することを更に含み、
前記故障は、短絡、所定の閾値を超える抵抗、又は、絶縁破壊のいずれか一つである、
請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
電気回路内の抵抗を決定するデバイスであって、
所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを、前記電気回路の試験点に印加し、
前記パルス持続時間の少なくとも一部の間、前記電気回路の応答点での電気的可観測量を計測し、
前記パルス持続時間の間、前記計測された可観測量から期待値を推定し、及び、
前記期待値から前記抵抗を決定するように構成される、
デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路内の抵抗を決定することに関する。対応する実装は、抵抗決定方法、抵抗決定デバイス、抵抗決定システム、抵抗決定マイクロコントローラ、並びに、対応する抵抗決定プログラムに関する。本発明は、例えば、電気通信、自動車、消費者製品等を含む多くの分野において一般的なバッテリ充電に関連して応用されることができる。
【背景技術】
【0002】
電気回路の膨大な分野において、そのような電気回路内の抵抗を決定することは共通の課題である。決定対象の抵抗が、例えば、回路の部品間、及び、車両のハウジング、シャシー、又はボディの部品間の絶縁に関連する電気回路の絶縁を監視する場合、そのような抵抗は特に関心が持たれる。
【0003】
一般に、絶縁監視は、電圧(高電圧であり得る)が電気回路の第1部分に限られ、電気回路の第2部分に接触しないことが要求され、電気回路の一部分並びに回路の近くにいる人に深刻な危険をもたらし得る電気回路の2つの部分間のいわゆる絶縁抵抗を継続的に決定することにより、実施されることができる。そのような電気回路で故障(典型的には絶縁抵抗が所定の閾値を下回ることを意味する)が決定されると、回路をオフにする等の適切な行動が実行され得、それによって、危険、被害、及び、負傷を避ける。
【0004】
絶縁監視の一態様は、絶縁抵抗が継続的に決定されることであり、これは、非常に短い期間内で、故障が起きたかどうかを決定し、迅速な行動及び適切な対策が取られるということを含む。いくつかの従来のシステムにおいて、適時な反応を可能にするために十分に高い反応性を提供する抵抗を決定する方法が利用可能であったことから、このようなことは通常は懸念されていなかった。そのような方法及びコンセプトは、電気回路のいくつかの試験点に電圧パルスを繰り返し又は周期的に印加した後に応答を測定することを含む。
【0005】
しかしながら、日々の生活に高電圧システムが、例えば、とりわけ電気車両を含む新しい技術といった形で出現し、絶縁監視及びその結果として抵抗の決定は、より重要になってきている。必然的に、電気回路が高電圧を使用する場合、より高い絶縁抵抗が要求される。更なる態様は、大きいキャパシタを使用することであり、これは、しばしば、特に電圧パルスとの関係で、正しい測定結果を得る反応を遅延させる。上述のキャパシタは、また、負荷、電源、及び、分離されるべき部分の間に共通に接続され、電磁妨害(EMI)等のノイズを低減するために通常は比較的大きなキャパシタンスを有する、いわゆるYーキャパシタを含む。
【0006】
しかしながら、そのような場合、印加される電圧パルスは変形され得、結果として、パルスに対する回路の応答を、故障の場合の十分に速い応答を達成するのに必要であるほどに十分に速く計測することができない。事実、従来技術において、抵抗又はシステムの絶縁状態を決定するためには、試験電圧パルスのパルス長、パルスの繰り返し時間、又は、単純に、信頼できて十分な保護を達成するための最大反応時間の観点から利用可能な時間よりも長い時間を必要とし得る。
【0007】
したがって、特に絶縁監視に関連して、電気回路内の抵抗を決定する改善された方法が求められている。さらに、抵抗がリアルタイムで継続的に決定できるように短い期間内に抵抗を決定することを可能にするコンセプトが求められている。特に、そのようなコンセプトが、抵抗を決定するために計測された対応する可観測量が継続的、リアルタイム又は準リアルタイム抵抗決定に要求される期間内で収束しない電気回路においても信頼できる出力を提供できる、ということが望まれる。
【発明の概要】
【0008】
上記の課題は、独立請求項の主題により解決される。より好ましい実施の形態が、従属請求項の主題により与えられる。
【0009】
本発明の実施の形態によれば、電気回路内の抵抗を決定する方法が提供される。当該方法は、所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを電気回路の試験点に印加すること、パルス持続時間の少なくとも一部の間、電気回路の応答点での電気的可観測量を計測すること、パルス持続時間の間、計測された可観測量から期待値を推定すること、及び、期待値から抵抗を決定すること、を含む。
【0010】
本発明の他の実施の形態によれば、電気回路内の抵抗を決定するデバイスが提供される。当該デバイスは、所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを電気回路の試験点に印加し、パルス持続時間の少なくとも一部の間、電気回路の応答点での電気的可観測量を計測し、パルス持続時間の間、計測された可観測量から期待値を推定し、及び、期待値から抵抗を決定するように構成される。
【0011】
本発明の他の実施の形態によれば、電気回路内の抵抗を決定するステップを実行するように装置に指示するためのマイクロコントローラが提供される。当該ステップは、所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを電気回路の試験点に印加すること、パルス持続時間の少なくとも一部の間、電気回路の応答点での電気的可観測量を計測すること、パルス持続時間の間、計測された可観測量から期待値を推定すること、及び、期待値から抵抗を決定すること、を含む。
【0012】
本発明の他の実施の形態によれば、電気回路内の抵抗を決定するためのコンピュータ実装プログラムが提供される。当該コンピュータ実装プログラムは、動作中のデバイスが、所定のパルス持続時間を有する電圧パルスを電気回路の試験点に印加し、パルス持続時間の少なくとも一部の間、電気回路の応答点での電気的可観測量を計測し、パルス持続時間の間、計測された可観測量から期待値を推定し、及び、期待値から抵抗を決定するように指示するコードを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施の形態は、以下の図を参照して説明される。本発明の実施の形態は、発明思想をより良く理解するために提示され、発明を制限するものとして見られるべきではない。
【
図1A-1C】本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる電気回路の概略図を示す。
【
図1D】電気車両を充電することに関連して本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる電気回路の概略図を示す。
【
図2A-2B】本発明の一般的な方法の実施の形態のフローチャートを示す。
【
図3A-3B】本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる電気回路の図を示す。
【
図4A-4B】本発明の対応する実施の形態にかかる
図3A及び/又は
図3Bの回路に関連して言及され及び説明されるコンポーネントの詳細な概略図を示す。
【
図5A-5B】本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる電気回路に関連する電気的可観測量及び印加される信号の概略図を示す。
【
図6A】本発明のデバイスの実施の形態の概略図を示す。
【
図6B】本発明の一般的なデバイスの実施の形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aは、本発明の実施の形態にかかる抵抗決定の対象となる電気回路1の概略図を示す。電気回路1は、一般的に、電気及び電子コンポーネント、能動及び/又は受動コンポーネント、モジュール、集積回路、導体、配線、プリント回路板、シャシー、及び、筐体等を含み、これらは個々にすべて従来技術からよく知られている。電気回路1は、非接地の電気回路、車両側バッテリ回路、高電圧システム内の電気回路、シャシー及びボディを含む車両の等の全体装置を表す回路、又な、任意の他の電気回路であり得る。回路1は、少なくとも一つの試験点10と、少なくとも一つの応答点11と、回路1の一部分201と、回路のその他の部分又はコンポーネント202との間の抵抗を示す少なくとも一つの抵抗100を提供する。その他の部分202は、完全に回路1により構成されてもよいし、回路1の外部に拡張されてもよい。
【0015】
本実施の形態の特定の変形例において、コンポーネント/その他の部分202は、少なくとも部分的に回路1の部分を囲うシャシー又は筐体であり得、抵抗100は、回路1の一部としてのシャシー202を、例えば、高電圧が流れ、シャシーによって保護されるべき部分等の回路1の個々の部分と電気的に分離する絶縁抵抗に対応し得る。一般的に、そのような実施の形態において、コンポーネント202は、回路又は回路の対応する部分から十分に分離されるべき実体を表す。いくつかの実施の形態において、回路は、電磁妨害を低減するために抵抗100に並列に接続されるコンデンサであるY-コンデンサ等のコンデンサ101を含み得る。
【0016】
図1Aに示されるように、電圧パルスVPは、試験点10に印加される。電圧パルスVPは、所定のパルス持続時間を有し、これは、本開示の他の場所においてTpで表される。電圧パルスは、例えば、矩形状を有し得る。加えて、パルスの持続時間は、処理に対する要件に応じて、変更されることができる。例えば、持続時間は、リアルタイムの監視の頻度が増加する場合には短くされ得、リアルタイムの監視に高い頻度が要求されない場合には長くされ得る。加えて、持続時間を調整する場合には、計算上の制約が考慮され得る。さらに、パルスの生成を単純化できる任意の形状の適切な近似であってよく、正確な形状に限定されない。形状は、正の成分のみ、又は、負の成分のみ、又は、正負の成分の両方を、有してよい。正及び負の成分は、対称性のために同じであってよいし、非対称の形状になるように異なっていてもよい。対称性の理由から、形状、強度及びパルス持続時間が同じで交互に現れる正及び負の成分を有するという利点があり得る。さらに、パルスは、周期的又は非周期的であってよい。パルスは、更に、いくつかのサブパルスを含んでもよいし、単一パルスであってもよい。
【0017】
応答点11では、電気回路1の電気的可観測量eOが計測され得る。これは、電圧パルスVPのパルス持続時間の少なくとも一部の間、実行されることができる。計測された可観測量は、システム内の電圧、電流、又は抵抗、並びに、計測されることができるシステムの任意の他の量であってよい。特に、可観測量は、上記の量、推定量、又は、抵抗に暗示的にのみ関連付けられた導出量であってよい。計測の単純化のために、電圧測定には利点がある。電気回路は、複数の応答点11を含んでよく、特に、その場合には、複数の電気的可観測量eOが計測される。これら異なる電気的可観測量は、同じ応答点又は異なる応答点で計測され得る。これは、電気回路1の異なる部分で異なる電圧が計測される場合に、特に関連する。
【0018】
計測された電気的可観測量eOに基づいて、期待値が推定され得、これに続いて、抵抗100が期待値から決定され得る。計測された可観測量と同様に、推定された期待値は、電圧、電流、又は抵抗、並びに、計測されることができるシステムの任意の他の量であってよく、上記の量、計測された可観測量又は抵抗に暗示的にのみ関連付けられた導出量を含み得る。計測された可観測量から期待値を推定することは、期待値を推定するために、計測された可観測量を所定のモデルにフィッティングすることを含み得るが、計測された可観測量から期待値を直接的に推測することを含んでもよい。所定のモデルは、複数の候補モデルから事前に選択され得るか、計測された可観測量に基づいて複数の候補モデルから選択され得る。推定に用いられる方法は、複数の推定方法から事前に選択され得るか、計測された可観測量に基づいて選択され得る。
【0019】
推定された期待値から抵抗を決定することは、例えば、期待値が抵抗である場合には、推定された期待値から抵抗を直接的に推測することにより実行され得、又は、例えば、推定された期待値が電圧又は電流である場合には、推定された期待値の個別の演算を更に処理することにより実行され得、その後に、推定された期待値、システムの既知又は計測されたパラメータ、及び、オームの法則を用いて抵抗を決定することが実行され得る。換言すれば、計測された可観測量が抵抗ではない場合、全ての計測された値が、推定が実行される前に抵抗に変換され得るか、最初に関連する量の推定が実行され、抵抗への変換がその後実行される。
【0020】
図1Bは、本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる更なる電気回路の概略図を示す。大部分において、
図1Aとともに提供された説明及び記述は、この電気回路に当てはまるから、相違点のみを説明する。示された実施の形態によれば、試験点10は、要素202への電気接続であり、応答点11は、抵抗100によって要素202から分離された回路1の部分201への電気接続である。この実施の形態の特定の変形例において、要素202は、絶縁抵抗という意味で抵抗100によって絶縁されるべき電圧がかかる回路の部分を少なくとも部分的に囲うシャシーである。
【0021】
図1Cは、本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる更なる電気回路の概略図を示す。大部分において、
図1A-1Bとともに提供された説明及び記述は、この電気回路1に当てはまるから、相違点のみを説明する。特に、この実施の形態は、試験点10を、電圧パルスVPを印加すること、並びに、電気的可観測量eOを計測することの両方に用いるための代替手段を考慮する。この目的のため、コンポーネント13として示される、マルチプレクサ、スイッチ、及び/又は、方向性結合器が、一つの試験点10を両方の目的に使用するために、任意的に提供され得る。
【0022】
図1Dは、電気車両を充電することに関連して本発明の実施の形態にかかる絶縁抵抗決定の対象となる電気回路の概略図を示す。この実施の形態は、電気車両2が充電される状況を対象とする。特に、金属又は少なくとも部分的に導通するシャシー20を有し、電気車両充電ステーション3にケーブル23が接続されている間に充電される車両2が示される。より詳細には、充電の間、ケーブル23が、車両の電気回路1’を電力及び電圧源(ステーション3)に接続する。この場合の回路1’は、バッテリ21、車体20の少なくとも一部分、及び、他のコンポーネントを少なくとも含み、本発明の実施の形態に沿った絶縁抵抗決定及び監視の対象となる実体であり得る。抵抗100は、シャシー20から絶縁されるべき、電圧がかかる回路1’の部分間に仮定され得る。そのため、抵抗100は、この場合、外部(例えば、車両を触る操作者)を潜在的に危険な電圧の内部から保護する絶縁抵抗を表す。すなわち、絶縁抵抗は、シャシー及び車に乗る可能性がある人に対する保護を提供する。
【0023】
図2Aは、実施の形態による抵抗を決定する方法のフロー図を示す。最初のステップS21において、所定のパルス持続時間Tpを有する電圧パルスVPが、電気回路1の試験点10に印加される。この電圧は、例えば、+40V又は-40Vであり得る。電圧パルスを印加することは、パルス注入を用いて実行されることができる。その後、ステップS22において、電気的可観測量eOが、電気回路1の応答点11で、パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間、計測される。さらに、ステップS23において、計測された電気的可観測量eOから、期待値が、パルス持続時間の間に推定される。有利には、パルス持続時間は、可観測量が所定の許容範囲内で期待値に到達する期間よりも短くすることができる。この推定は、フィッティングを用いて実行されることができる。すなわち、計測された電気的可観測量は、電気的可観測量の期待値を決定するために所定のモデルに使用される。そのようなフィッティング方法の例としては、一般化最小二乗(ordinary least squares)又は総最小二乗(total least squares)等の最小二乗法が挙げられる。フィッティングに使用される可能性があるモデルは、指数関数、線形関数、並びに、多項式関数、及び、シヌソイド関数である。そのため、フィッティング方法も使用されるモデルも特には限定されない。さらに、ステップS24において、抵抗が、期待値から決定される。
【0024】
図2Aには図示されていない追加のステップS25において、抵抗に基づいて故障が起きているかどうかが決定される。故障は、短絡、所定の閾値を下回る抵抗の低下、絶縁破壊、又は、回路及びその特徴並びに抵抗の目的に応じたその他の故障であり得る。加えて、方法は、更に、決定された故障に反応するステップS26(これもまた
図2Aに図示されていない)を含んでもよい。これは、回路をオフにする、電流及び/又は電圧を下げる、又は、決定された故障を修正する又は適切な対策を開始することを可能にするその他の保護対策を含み得る。
【0025】
図2Bは、実施の形態による抵抗を決定する方法のより詳細なフロー図を示す。最初のステップS201において、正のパルスが生成される。次に、ステップS202において、アナログデジタル変換器(ADC)から値が読み取られる。ステップS203において、電圧値が、ADC値から計算される。これらの電圧値は、正の値の電圧パルス又は電圧パルスの正の値の成分に関連付けられた正の電圧Vp、負の値の電圧パルス又は電圧パルスの負の値の成分に関連付けられた負の電圧Vn、及び、シャシーに印加される電圧であるシャシー電圧Ch、を含み得る。
【0026】
ステップS204において、計測された電圧値及び電気回路1の計算された抵抗に基づいて、電流値が計算される。ステップS205において、正の電流及び電圧値が計算される。ステップS206において、正の電流値がフィッティングのために集められる。ステップS207において、正のパルスのためのフィッティングが終了し、評価される。ステップS208において、負のパルスが生成される。その後、ステップS209において、ADCから値が読み取られる。ステップS210において、ADC値から電圧値が計算される。ステップS211において、計算された電圧値及び電気回路1の抵抗値に基づいて、電流値が計算される。
【0027】
ステップS212において、負の電流及び電圧値が計算される。ステップS213において、負の電流値がフィッティングのために集められる。ステップS214において、負のパルスのためのフィッティングが終了し、評価される。ステップS215において、パルス電流が、正のパルスのフィッティングからの評価値と負のパルスのフィッティングからの評価値との差の半分として計算され、シャシー電圧が、正のシャシー電圧と負のシャシー電圧との差の半分として計算される。ステップS216において、絶縁抵抗が、シャシー電圧と、パルス電流-Rcascとの間の比に基づく抵抗として計算される。ここで、抵抗Rcascは、本文書のどこかでさらに説明されるカスケード抵抗であり得る。
【0028】
図3Aは、本発明の実施の形態にかかる抵抗決定の対象となる電気回路1”の図を示す。この実施の形態において、回路1”は、少なくとも一つのバッテリ311、負荷312、パルスジェネレータ313、正の電圧を計測するための回路314、負の電圧を計測するための回路315、シャシー電圧を計測するための回路316、シャシー317を含む。バッテリ311は、2つの線、正の線P及び負の線N、を通じて、負荷312に接続される。パルスジェネレータ313は、電圧パルスを生成し、それをシャシー317の側面に印加する。そのため、この実施の形態において、試験点10はシャシー317との電気接続にあり、回路の種々の部分に3つの応答点11-1、11-2、11-3があると考えられる。
【0029】
特に、最初の応答点11-1は、正の線P及び負の線Nに対するシャシー317の絶縁をそれぞれ表す第1抵抗100n及び第2抵抗100pの上流側(パルスジェネレータ313に対して)にあると考えられる。これら2つの抵抗は、ともに、絶縁抵抗Risoを形成する。そのため、この実施の形態において、決定の対象となる抵抗は、絶縁抵抗を表している。対応する絶縁抵抗は、各々抵抗と(Y-)キャパシタとを並列に含み、正の給電線Pと負の給電線Nの両方に個別的に設けられる組100p及び100nにより表される。
【0030】
回路316は、応答点11-1つまりはシャシー318での電圧を計測するために提供され、例えば、ローパスフィルタ(LPF)、オフセット追加部、及び、アナログデジタル変換器(ADC)への接続/インターフェース又は対応するADCそれ自体を備える。応答点11-1の上流には抵抗Rch1が提供され得、応答点11-1の下流には抵抗Rch2が提供され得る。ローパスフィルタは、通常、所定の閾値を超える高周波成分の全て又は実質的な部分を除去する。これは、通常は、信号中のノイズを低減するために用いられ、電気車両の場合には、インバータ、モータ及びスイッチが相当な有効電力のノイズを生成することが多いために、特に望ましい。オフセット追加は、信号に、一定の部分-オフセット-を追加する処理を記述する。いくつかのADCは負の電圧値を計測するようには構成されていないため、信号がADCに供給される場合には、これは望ましくあり得る。全体の信号が正になるか、少なくとも負でなくなるように適切なオフセットを追加することによって、全体の信号がADCに供給され、ADCで計測されることができる。回路316は、シャシー抵抗Rch1より上流側の点でシャシーに接続され、次に、グランドISOGNDで接地される。したがって、印加されるパルスは、回路316によりよく見え、検出されることができる。
【0031】
回路314は、応答点11-2つまりは正の電圧線Pに電気的に接続される点での電圧を計測するように構成され、上述の回路315、316と本質的には同様に実装されることができる。しかしながら、この実施の形態において、回路314は、更に、演算増幅器及び/又は反転増幅器等の増幅器を備える。この増幅器は、正の電圧を負の電圧と同じレベルにするために用いられることができる。回路314はまた、正の給電線Pに、抵抗Rcascの下流側の点で接続される。さらに、抵抗R1pが提供され得、これは次にグランドISOGNDにより接地される。そのため、印加されるパルスが、回路314によりよく見え、検出されることができる。
【0032】
回路315は、応答点11-3つまりは負の電圧線Nに電気的に接続される点での電圧を計測するように構成され、上述の回路316と本質的には同様に実装されることができる。しかしながら、回路315は、負の給電線Nに結合される負の電圧を計測するように適応される。回路315は、負の給電線Nに、抵抗Rcascの下流側の点で接続される。さらに、抵抗R1nが提供され得、これは次にグランドISOGNDにより接地される。そのため、印加されるパルスが、回路内でのソース313からの電圧パルスの伝播を表す破線で図示されているように、回路315によりよく見え、検出されることができる。
【0033】
シャシー(線)317と正及び負の線P、N間で、組100p、100nの一部としての絶縁抵抗が仮定される。シャシー線318と正の線Pとの間の絶縁抵抗の組100pは、並列に接続された抵抗RpとキャパシタCpとを含み、シャシー線318と負の線Nとの間の絶縁抵抗の組100nは、並列に接続された抵抗RnとキャパシタCnとを含む。したがって、抵抗Rp、Rnは、絶縁抵抗Risoを形成し、ここで、1/Riso=1/Rp+1/Rnである。
【0034】
キャパシタCp、Cnは、本開示の他の場所において言及される電磁妨害の低減を可能にするY-キャパシタの例である。以下では、回路の機能と、絶縁抵抗が決定され得る方法とについて、説明される。
【0035】
パルスジェネレータ313は、システムに電圧パルスを印加するように適応される。回路314、315、316は、個別の応答点に到達する個別の電圧を計測する。部分314は、正の電圧Vpを計測し、部分315は、負の電圧Vnを計測し、部分316は、シャシー電圧Vchを計測する。そのため、この実施の形態の回路1”及び設定において、抵抗は、以下のようにして決定される。
-電圧パルスVPがパルスジェネレータ313によって電気回路1”の試験点10に印加される。試験点10は、決定対象の抵抗Rn、Rpの一方側に配置される。電圧パルスVPは、所定のパルス持続時間Tpを有する。
-抵抗Rn、Rpの他方側にある最初の応答点11-2での電気的可観測量eO1は、パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間に、回路314により計測される。
-抵抗Rn、Rpの他方側にある別の応答点11-3での別の電気的可観測量eO2は、パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間に、回路315により計測される。
-抵抗Rn、Rpの一方側にある参照応答点11-1での参照電気的可観測量eORefは、パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間に、回路316により計測される。
-パルス持続時間Tpの間に、期待値eVが、計測された電気的可観測量eO1及び計測された別の電気的可観測量eO2からそれぞれ推定される。
-抵抗Risoが、期待値及び計測された参照電気的可観測量から決定される。
【0036】
以下では、回路1”内の抵抗を決定することに関連して、例示的な詳細が記述される。特に、絶縁抵抗Risoは、Riso=Vch/Ipulse-Rcasc,parallelとして計算されることができる。
【0037】
ここで、Rcasc,parallelは、正及び負の電圧を計測する部分に関連付けられた2つの抵抗Rcascの結果として得られる抵抗である。Ipulseは、パルスジェネレータ313により生成される印加パルスVPによる電流である。同じ大きさの正と負の成分が印加され、正と負の成分が、個々の回路314と回路315とで別々に計測される場合、オフセット電流並びにバッテリの電流は互いに打ち消し合い、それによって、Ipulseは、単純に、正と負の計測された電流の差の半分になる。これらの電流は、個々の回路314と回路315を形成するADCにより計測された対応する電圧を計測し、これらを抵抗Rcascで除算することにより決定されることができる。したがって、Ipulse=(Imeasp-Imeasn)/2である。
【0038】
ここで、Imeaspは、パルスジェネレータ313により印加されるパルスVPの正の部分の間の計測された電流を意味し、Imeasnは、パルスジェネレータ313により印加されるパルスVPの負の部分を意味する。さらに、一般に、Imeas=Ip-Inである。ここで、Ip=Vp/Rcascであり、In=Vn/Rcascである。
【0039】
同様に、シャシー電圧Vchは、パルスVPの正と負の部分の間に計測されるべきであり、Vch=(Vchp-Vchn)/2として決定されることができる。
【0040】
そのため、絶縁抵抗Risoは、印加パルスVPの正と負の部分の間に3つの個々の回路314、315、316で3つの異なる電圧Vp、Vn、Vchを計測することにより決定されることができる。重要なことは、これらの値は、期待値、つまり、電圧の印加/変化による最初のピークが消失した後、として仮定される。
【0041】
図3Bは、実施の形態にかかる抵抗決定デバイスのブロック図を示す。この実施の形態において、抵抗決定デバイスは、分圧器321、能動ローパスフィルタであり得るローパスフィルタ322、オフセット追加部323、アナログデジタル変換器324、デジタルアイソレータ325、マイクロコントローラ328、及び、パルスジェネレータ329を備える。
【0042】
マイクロコントローラ328は、起こる可能性があるエラーを伝えるために、コントローラエリアネットワーク(CAN)トランシーバ又はハイサイドスイッチ(HSS)等の外部の要素とインターフェース334を通して通信できる。特に、マイクロコントローラは、印加電圧パルスVPのパルス持続時間Tpの間に、ADC324との間接的な接続を通じて、計測された可観測量から期待値eVを推定するように構成されることができる。それらに基づき、マイクロコントローラは、更に、推定された期待値から抵抗を決定するように構成されることができる。さらに、マイクロコントローラは、抵抗決定の結果に反応することができ、すなわち、短絡、所定の閾値を超える抵抗、又は、絶縁破壊等の、故障が生じたかどうかを決定し、決定された故障に対して任意の適切な反応を開始することができる。
【0043】
デジタルアイソレータ325は、電気回路を、2つの電子的に分離された部分に分離する。それと同時に、分離された電源は、分離された電源の左部分341と分離された電源の右部分342とにそれに応じて分離される抵抗決定デバイスの一部分であり得る。電源は、負荷、並びに、電圧を、チャージポンプインバータに印加できるように、並びに、アナログデジタル回路に供給するために変換する低ドロップアウト電圧レギュレータに、電流/電圧を提供する。マイクロコントローラ328は、自動車のマイクロコントローラであり得る。デジタルアイソレータは、パルスジェネレータ329に、デジタル出力を提供する。
【0044】
パルスジェネレータ329は、分圧器321に電圧パルスVPを提供する。パルスは、所定の持続時間Tpを有する電圧パルスであり、電気回路1の試験点10に印加される。分圧器321は、ノイズを低減するために高周波成分を除去するアクティブローパスフィルタ322に、正の電圧Vp、負の電圧Vn、及び、シャシー電圧Vchを、提供する。その後、フィルタされた電圧は、オフセット追加部323に提供される。部323は、受け取った電圧、正の電圧Vpと負の電圧Vnの両方、にオフセットを追加する。ここで、部323はまた、最初に、正の電圧Vpに反転増幅を適用する。
【0045】
最後に、これらの電圧は、ADC324に提供される。ADC324はまた、パルスジェネレータ329から情報を受け取る。アクティブローパスフィルタ322、オフセット追加部323、及び、ADC324で実行されるこれらのステップは、印加パルス電圧Vpのパルス持続時間Tpの少なくとも一部の間に、電気回路1の少なくとも一つの応答点11での電気的可観測量eOを計測することとして、要約されることができる。
【0046】
図4Aは、分圧器の3つの異なる部分を示す。上側の部分は、互いに接続される分圧器の最初の2つの部分を示す一方で、下側の部分は、その他の部分と直接的に接続されていない分圧器の第3の部分を示す。分圧器の第1の部分は、分圧器のこの部分を、高電圧の正側HV+に接続するための接続部分を含み得る。さらに、これは、抵抗R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114、R115等の直列接続された抵抗の組を含み得る。これらの抵抗は、全て同じ値を有するか、異なる値を有し得る。これらの抵抗は、330kΩ、270kΩ、又は、300kΩ等の値を有することが好ましい。
【0047】
特に、これらの抵抗は、接続部分から最初の抵抗が最も高い値を有し、続く2番目の抵抗が最も低い値を有し、残りが、これら残りの抵抗の全てで同じであり得る中間の値を有する、ように配置される。直列接続の最後の次には、スイッチが提供され得る。スイッチは、3つの部分の最初の部分を、本文書の他の場所で説明される分圧器の第2の部分に接続し得る。スイッチの次に、抵抗R117、トランジェント電圧抑制ダイオードD24、抵抗R107、及び、キャパシタC127、続いて、正の電圧Vpを生じ得る入出力変換器が提供される。これらの部分は、この順に提供され得る。抵抗R117、ダイオードD24、キャパシタC127は、残りの部分に対して並列接続され得、さらに、接地され得る。抵抗R117は、4.7kΩの値を有し得、一方で、抵抗R107は、47kΩの値を有し得る。キャパシタC127は、10pFの値を有し得、入出力変換器は、フォロワSchDoc型であり得る。
【0048】
分圧器の第2の部分は、分圧器のこの部分を、高電圧の負側HV-に接続するための接続部分を含み得る。さらに、これは、抵抗R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127等の直列接続された抵抗の組を含み得る。これらの抵抗は、全て同じ値を有するか、異なる値を有し得る。これらの抵抗は、330kΩ、270kΩ、又は、300kΩ等の値を有することが好ましい。特に、これらの抵抗は、接続部分から最初の抵抗が最も高い値を有し、続く2番目の抵抗が最も低い値を有し、残りが、これら残りの抵抗の全てで同じであり得る中間の値を有する、ように配置される。
【0049】
直列接続の最後の次には、スイッチが提供され得る。スイッチは、3つの部分の最初の部分を、本文書の他の場所で説明される分圧器の第1の部分に接続し得る。スイッチの次に、抵抗R118、トランジェント電圧抑制ダイオードD25、抵抗R119、及び、キャパシタC128、続いて、負の電圧Vnを生じ得る入出力変換器が提供される。これらの部分は、この順に提供され得る。抵抗R118、ダイオードD25、キャパシタC128は、残りの部分に対して並列接続され得、さらに、接地され得る。抵抗R118は、4.7kΩの値を有し得、一方で、抵抗R119は、47kΩの値を有し得る。キャパシタC128は、10pFの値を有し得、入出力変換器は、フォロワSchDoc型であり得る。
【0050】
分圧器の第2の部分は、更に、分圧器の第1の部分及び第2の部分の2つのスイッチに接続される回路を含み得る。回路は、ダイオードD26、ソース、正及び負側を有する要素、並びに、MOSFETQ8、要素イネーブル(ENABLE)、抵抗R130を備え得り、接地され得る。要素がダイオードD26に並列に提供され、MOSFETQ8が抵抗R130に並列に提供される一方で、これら2つの部分は互いに直列に提供される。抵抗は、10kΩの値を有してよく、ソースは、コンポーネントD5V0であってよく、ダイオードD26は、1N4148WX-TP型であってよく、MOSFETは、BSS138NH6327型であってよい。
【0051】
分圧器の第3の部分は、交流信号AC SIGNALを、シャシーを通じて、シャシー電圧Vchに接続する。すなわち、要素AC SIGNALは、シャシーに接続され、次に、他の場所で説明された第1及び第2の部分と同様の方式でシャシー電圧に接続される。この接続は、抵抗R131、R132、R133、R134、R135の組、トランジェント電圧抑制ダイオード、キャパシタC129、及び、入出力変換器を備え得る。抵抗R131、R132、R133は同じ値を有してよく、この値は100kΩであってよく、さらに、これらは、シャシーの次に直列に提供されてよい。抵抗R135は、次に提供され得、並列に提供され得る。これは、8.06kΩの値を有し得る。この次には、ダイオードD27が続き、これもまた、シャシー電圧Vchの主線に並列に提供され得る。次に、抵抗R134が直列に提供され得、この次にキャパシタC129が続き、これは並列に提供され得る。全てのこれらの並列な要素は、接地され得る。抵抗R134は、47kΩの値を有し得る。入出力変換器は、フォロワSchDoc型であり得る。
【0052】
図4Bは、パルスジェネレータの概略図を示す。左側から順に、
図4Bは、接地された2つの直列の抵抗R75、R76に接続された、5Vの電圧を有するソースを示す。第1の抵抗R75は、118kΩの値を有し得、第2の抵抗は、47kΩの値を有し得る。これらの抵抗の間には線が提供され、この線は、コンパレータU10に接続される。さらに、インプット(INPUT)、+40Vのソース、-40Vのソース、抵抗R78が提供され、これらの全てはコンパレータU10に接続される。抵抗R78は、2.2kΩの値を有し得る。コンパレータU10から出ている線は、2つに分岐され、これらの線の各々は、上側の線に抵抗R74が、下側の線に抵抗R77がそれぞれ備えられ得る。これらの抵抗の両方は、1kΩの値を有し得る。
【0053】
抵抗の次に、各線は、トランジスタ、上側の線用のトランジスタQ3及び下側の線用のトランジスタQ4、に通じ得る。トランジスタQ4は、Hfe=100、Icmax=50mA、Ibmin=0.5mAという特性を有し得る。さらに、それは、抵抗R79に直列接続され得、続いて-40Vの電圧のソースに接続され得る。抵抗R79は、10Ω及びRsの特性を有し、10mA=100mVであり得る。トランジスタQ3は、Hfe=100、Icmax=50mA、Ibmin=0.5mAという特性を有し得、PMBTA45,215型であり得る。2つのトランジスタQ3、Q4は接続され、接続線は、SIG OUTへの分岐を有し得る。この接続された線は、ILmax=10mAという特性を有し得る。
【0054】
上流で、トランジスタQ3は、抵抗R71に直列に接続され得、抵抗R71は、+40Vの電圧のソースに接続される。抵抗R71は10Ω及びRsの特性を有し、10mA=100mVであり得る。抵抗R71の上流及び下流には、コンパレータU9に接続される線が提供され得、加えて、このコンパレータU9は、接地され、さらに、+5Vの電圧のソースに接続され得る。このコンパレータU9は、INA169NA3K型であり得る。これらの線に加えて、コンパレータU9は、要素+I FBに接続され得る。この線に沿って、抵抗R73、抵抗R72、キャパシタC84、及び、ダイオードD1が提供され得、これらはこの順に提供され得る。抵抗R73は、接続される線に並列に提供され得、RL、47kΩの特性を有し得る。抵抗R72は、コンパレータU9と要素+I FBとの間に直列に提供され得、1.47kΩの値を有し得る。キャパシタC84は、220nFの値を有し得る。複合体は、抵抗R72及びキャパシタC84で構成され、RC回路とみなされ得、Fc=492Hzの特性を有し得る。ダイオードD1は、PTVS6V051UR型であり得る。
【0055】
図5Aは、パルス持続時間Tpの間の推定処理についての詳細を示す。
図5Aにおいて、矩形の電圧パルスVPが、Tpのパルス持続時間の間、印加される。最初実線であり後に破線になる太線は、パルス持続時間Tpの間の、電気的可観測量eOの振る舞いを示す。例えば、電気的可観測量eOは、パルスVPの始期では比較的高い初期値をとり、その後減少する。電気的可観測量eOは、特定の時間の後、所定の許容範囲内で、ある期待値eVに達すると仮定されることができる。特に、パルス持続時間Tpより長い時間Tで期待値eVに到達すると仮定することができる。ここで、パルス持続時間の終了後に印加される電圧が変化すると電気的可観測量もまた変化するということが期待されるため、パルス持続時間Tp後の電気的可観測量eOの振る舞いは、どちらかといえば理論的性質のものである。そうではあるものの、
図5Aにおいては、パルス持続時間の終了時の電気的可観測量eOの値が時間Tの後に到達する期待値eVの所定の許容範囲内にないことを示している。高い初期値(すなわち、実質的には期待値eVとは異なる)は、例えば、キャパシタ及び絶縁抵抗により変形し、キャパシタンス及び絶縁抵抗の増加により増加する。この効果は、抵抗とキャパシタンスの積、すなわち、
図3の用語を用いれば、RpとCp、RnとCnそれぞれの積、を考慮することにより説明されることができる。この積の増加は、変形の増加につながり、また、より大きいキャパシタンスのキャパシタの充電はより遅くなるため、信号を歪ませることになる。これは、RC回路の時間的な振る舞いを記述するために一般的に使用される指数法則により説明され得る。
【0056】
パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間、電気的可観測量eOは、eOmとして計測され、実線で示される。この計測された電気的可観測量eOmは、電気的可観測量eOの期待値eVを、電気的可観測量eOが実際により後の時間Tでの期待値eVに到達する前に推定するために使用される。実施の形態によれば、最初の、太い部分の間に電気的可観測量eOmを計測することは、計測された電気的可観測量eOmに基づいて、電気的可観測量eOの期待値eVを推定するのに十分である。これに基づいて、抵抗を決定することができる。特に、本発明の実施の形態は、電気的可観測量eOが、パルス持続時間Tpの間に所定の許容範囲内で対象の期待値eVに到達せずに、実質的にその後の時間Tでのみ到達するような場合であっても、この決定を可能にする。実線で示される(計測されたために)既知の振る舞いと推定された期待値eVとの間の、電気的可観測量eOの仮定的及び仮説的な振る舞いは、破線で描かれ、eO’で表されている。
【0057】
そのため、決定は、パルス持続時間の終わりまでの値を使用する従来の方法よりも早くできるだけではなく、当該方法は、パルス持続時間の間に期待値に到達するかどうかに関係なく、期待値を推定することによって、抵抗を決定することを可能にすることもできる。特に、本発明の実施の形態は、高いキャパシタンス、インダクタンス、及び、その他の反応コンポーネントを潜在的に含み得る有効な回路の特性から独立して、抵抗決定、特に、絶縁抵抗決定の応答性を良くする。
【0058】
図5Bは、例えば、
図3Aと関連して説明された回路と類似又は等価な回路で生じる、持続時間Tpの電圧パルスVPが印加された場合の、経時的な電気的可観測量eOの振る舞いについての詳細を示す。
図5Bは、例えば、
図3Aの回路314、315で計測された電圧から、時間の関数として導き出される電流In及びIpの形状において電気的可観測量の対応する振る舞いを示す。電圧パルスは同様に印加され、持続時間Tpを有し、これは、もちろん、電気的可観測量の振る舞いとして見ることができる。
【0059】
抵抗は、本開示の他の場所で説明された詳細にしたがって、パルス列の各部において決定されることができる。また、
図5Aと同様に、電気的可観測量eOは、パルスの最初に最も高い値を有し、その後低下し、期待値に到達する。この期待値に向かう減衰は、指数法則に従い得るが、同様にその他の減少関数にも従い得る。特に、期待値は、抵抗を決定するために重要な値である。そのため、パルス持続時間Tpの終了より前にこの値が決定されることができることが必要とされる。決定された抵抗が絶縁抵抗であり、リアルタイムの継続的な監視が必要である場合に、これは特に重要である。
【0060】
図5Bは、一つの電気的可観測量eOだけではなく、それぞれ、電気的可観測量、及び、本開示の他の場所で言及される追加の電気的可観測量の意味で、パルスが印加されている間にバッテリと負荷の間の正の線で計測された電気的可観測量と、パルスが印加されている間にバッテリと負荷の間の負の線で計測された電気的可観測量との両方を示す。さらに、
図5Bはまた、
図3Aの説明に沿って抵抗を決定するために実施の形態において計算される電気的可観測量間の差を示す。初期の段階の後の電気的可観測量に対する変化は、バッテリ電圧の印加に対応することに留意されたい。
【0061】
さらに、システムにおいて期待値eVに到達するのに必要な時間は、使用されるパラメータに依存する。特に、システムにおいて通常印加される電圧は、影響がある。システムが高電圧を使用する場合、十分な絶縁を提供するために必要な抵抗も同様に高くなる。加えて、この場合、十分なEMIの減衰を提供するために必要なキャパシタンスもまた高くなる。これらの要因の両者は、期待値に到達するまでの時間Tをより長くする。換言すれば、高い抵抗及び高いキャパシタンスは、計測された可観測量eOの期待値eVに到達するまでの待ち時間Tの増加の一因になる。 これは、期待値eVに到達するまで待機することが適した戦略ではないという状況につながり得る。
【0062】
そのため、そのようなシステムは、上記に基づかずに、別の手段を用いて抵抗を決定する方法を必要とする。代わりに、パルス持続時間Tpの最初の部分における計測された電気的可観測量を所定のモデルにフィッティングするステップが提供される。このフィッティングするステップを追加することにより、長い待ち時間が減少し、システムのパラメータへの依存が減り得るか、もっと言えば、除去され得る。実際に、適切な推定方法を用いることで、決定処理は、フィッティングにより、電気的可観測量eOの期待値の測定とは無関係となり、その後のステップは、フィッティングされた値に基づいて実行される。
【0063】
したがって、これは、抵抗を決定する、より速い方法を提供し、特に、重要な電気的可観測量の期待値に到達するまでの長い待ち時間のために絶縁抵抗監視が不可能であり得るシステムのパラメータとは無関係又はより依存度が低い方法を提供する。
【0064】
図6Aは、デバイスの実施の形態61の概略図を示す。デバイスの実施の形態は、コンポーネントが搭載されるベースを形成するプリント回路板(PCB)611を備え得る。PCT611は、PCTを別の実体、例えば、電気車両の実体に搭載するための孔612を備え得る。さらに、デバイス61は、高電圧コネクタ613を備え得る。加えて、デバイス61は、PCB611に搭載されるモジュール614を備え得る。モジュール614は、例えば、リレーであり得る。さらに、ディスクリート受動コンポーネント615及び/又はディスクリート能動コンポーネント617が、デバイス61の一部であってよいし、PCT611に搭載されてよい。そのうえ、集積回路(IC)616もまた、デバイス61の一部であってよいし、また、IC611は、PCTに搭載されてもよい。このデバイス61は、所定のパルス持続時間Tpの電圧パルスVPを生成し、電気回路1の試験点10に印加し、パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間に電気回路の応答点での電気的可観測量を計測し、パルス持続時間Tpの間に計測された可観測量から期待値を推定し、そして、期待値から抵抗を決定するように、構成される。
【0065】
図6Bは、本発明の一般的なデバイ実施の形態60の概略図を示す。このデバイス実施の形態60は、メモリ601、処理ユニット600、及び、インターフェース602を含む。メモリ601は、処理ユニット600とデータを交換でき、処理ユニット600は、さらに、インターフェース602とデータを交換することができ、一方で、インターフェース602は、電気回路1との接続を提供することができる。したがって、処理ユニット600は、メモリ601からデータが与えられ、電気回路1と通信するようにインターフェース602に指示して、所定の持続時間Tpを有する電圧パルスVPが、回路1に印加されるようにする。次のステップにおいて、インターフェース602は、パルス持続時間Tpの少なくとも一部の間の電気回路1の電気的可観測量eOの計測を要求するように、処理ユニット600により指示される。これを受け取ると、処理ユニット600は、パルス持続時間の間に、電気的可観測量の期待値eVを推定し、そして、次のステップにおいて、期待値並びにメモリに格納されたデータに基づいて抵抗を決定する。さらなるステップにおいて、処理ユニット600は、この抵抗、及び、故障が起きたかどうか決定の結果を、インターフェース602を通じて外部に通信してよく、さらに、適切な反応を開始してよい。
【0066】
詳細な実施の形態が説明されたが、これらは、独立クレームにより定義された発明のよりよい理解を提供することだけを目的としており、限定として見られるべきではない。
【国際調査報告】