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特表2023-532160テキスタイルグレード繊維を製造するための植物バイオマスの酵素処理の方法
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  • 特表-テキスタイルグレード繊維を製造するための植物バイオマスの酵素処理の方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(54)【発明の名称】テキスタイルグレード繊維を製造するための植物バイオマスの酵素処理の方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 16/00 20060101AFI20230719BHJP
   C12N 9/42 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20230719BHJP
   C12N 9/08 20060101ALI20230719BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
D06M16/00 A
C12N9/42
C12N9/26
C12N9/16 Z
C12N9/08
C12P1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523686
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2021055948
(87)【国際公開番号】W WO2022003638
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202021028274
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523001108
【氏名又は名称】ジェンクレスト プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】チャダリ、ラシュミ
(72)【発明者】
【氏名】アガーワル、アンシカ
(72)【発明者】
【氏名】シェチエ、ニティン
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ、ディーパック
【テーマコード(参考)】
4B064
4L031
【Fターム(参考)】
4B064AF11
4B064AF12
4B064CA21
4B064CB01
4B064CB11
4B064CB16
4B064DA16
4L031AA02
4L031AB01
4L031BA39
4L031CA09
4L031DA01
4L031DA05
4L031DA11
(57)【要約】
本発明は、植物由来のバイオマスから高品質のテキスタイルを製造するための酵素ベースの方法を開示する。本発明は、過酷な化学処理を使用する従来の方法によってセルロース系バイオマスから製造されたテキスタイルグレードの繊維と比較して、品質パラメータの損失がない高品質のテキスタイルグレードの繊維の製造方法を開示している。この方法で原料天然繊維から製造された繊維は、自動化された手順で糸に紡ぐことができ、糸は手織機と同様に力織機で高品質の織物に織ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換する方法であって、植物由来のバイオマスから得られた原料天然繊維を酵素処理してテキスタイルグレードの繊維に変換する工程を含み、テキスタイルグレードの繊維は、フィラメント当たり75デニール以下で、破断強度が少なくとも50gであることを特徴とする方法。
【請求項2】
植物由来のバイオマスは、バナナ、大麻、イラクサ、亜麻、ジュート、およびカラムシからなる群から選択される植物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
繊維処理容器中の総酵素濃度は、0.5~1%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酵素処理を2~4時間行う請求項1に記載の方法。
【請求項5】
原料天然繊維を酵素処理する工程に使用する酵素は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、リグナーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、およびペルオキシダーゼからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酵素処理の工程の前に原料天然繊維をアルカリプロテアーゼ処理することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アルカリプロテアーゼは、繊維処理容器中に0.1~0.3%の濃度で存在する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
いかなる化学的処理工程も含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酵素処理後に漂白する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法から製造されたテキスタイルグレードの繊維であって、該繊維は、自動化プロセスにより糸に紡ぐことができることを特徴とするテキスタイルグレードの繊維。
【請求項11】
該繊維から製造される糸は、織られるか又は編まれる請求項10に記載のテキスタイルグレードの繊維。
【請求項12】
該糸は、力織機または手織機によって布地に織られる請求項10に記載のテキスタイルグレードの繊維。
【請求項13】
他の人工繊維または天然繊維とブレンドされ、少なくとも20番手の糸を作るために紡がれる請求項1に記載の方法から得られるテキスタイルグレードの繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のバイオマスから酵素的方法を用いてテキスタイルグレードの繊維を得る分野に関し、具体的には、様々な種類の原料天然繊維を酵素的手段で処理してテキスタイルグレードの繊維を得る方法に関するものである。本発明は、特に、酵素活性を有する方法を用いてセルロース系バイオマスを処理することにより、過酷な化学物質または処理を用いることなく、高品質のテキスタイルグレードの繊維を製造することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界人口の増加に伴い、繊維素材の需要は増加の一途をたどっており、この16年ほどでほぼ倍増している。増え続ける世界人口に衣食を提供すると同時に、土地や資源を大切にする必要性も高まっている。そこで、同じ作物の土地資源から繊維と食品を得るための取り組みが行われている。さらに、石油系合成繊維は生分解性がないため、生態系に別の課題をもたらしている。これらの課題は、様々な種類の植物由来のバイオマス(その多くは農業の副産物でもある)から高品質のテキスタイルグレードの繊維を生産できれば解決することができる。セルロースは地球上で最も豊富に存在する有機物であり、その自然な形態と再生された形態で、テキスタイル産業にとって繊維の主要な原料となっている。植物は天然のセルロース系繊維の主要な供給源であり、これらのセルロース系繊維は様々な産業用途のための様々な異なるタイプの繊維の生産に使用することができる。これらのセルロース系繊維は、主に繊維のために栽培された植物から、または繊維が主に副産物とみなされる植物、例えばココナッツ、サトウキビ、バナナ、パイナップルから得られる。世界的に見ると、農業は毎年何百万トンもの農業副産物を生み出している。副産物の一部は、動物飼料や小規模な用途に使用されている。農業副産物の多くは、特に繊維状のセルロースを相当量含んでいる。副産物型の繊維は、入手しにくい、抽出が難しい、紡糸特性が劣る、高級品を製造するのに使えない低品質繊維である、栽培地域が限定されているなどの理由で、これまで広範に使用されてこなかった。農業副産物を川下で活用することは、生産者に経済的な利益をもたらすとともに、副産物の廃棄量を減らすことで環境面でもメリットがある。また、これらの農業副産物を利用した製品は、通気性、低アレルギー性、高吸湿性などの品質が付加された100%生分解性である。
【0003】
農業副産物の多くは、特に繊維状でセルロースを相当量含んでいるため、それらを用いて様々な産業で使用可能な繊維を製造することができる。しかし、植物バイオマスから抽出される天然繊維は一般的に粗く、リグニンやヘミセルロースを多く含んでいる。このため、これらの繊維は非常に硬く、太いため、その用途は手工芸品、手織機、椅子張りなどのごく一部の分野に限られている。このような太くて硬い繊維をより柔らかい繊維に変換するプロセスには、非常に過酷で環境問題を引き起こす化学処理が含まれる。また、酵素を使った従来の方法によるいままでに到達した繊維の品質は、それを糸に紡ぐことが難しいためにテキスタイル用途に十分でなく、紡績可能なグレードにするにはさらに過酷な化学的工程が必要であるが、繊維がもろくなり、光沢が失われるなどの欠点がある。
【0004】
酵素は、テキスタイル繊維製造のための化学的または機械的プロセスと比較していくつかの利点があることが知られているが、完全に酵素プロセスを使用して原料天然繊維からテキスタイルグレードの繊維を作る試みは、これまで成功していない。酵素を使用するプロセスのほとんどは、プロセス中に過酷な化学処理を使用したり、大量の酵素を長期間にわたって使用したりしている。さらに、これらのプロセスでは、原料繊維から高品質の繊維を生産することはできず、自動化された方法で糸に紡ぎ、得られた糸が力織機を使って織ることができることも示されていない。これらの工程で作られた素材は、何度も粗製乱造され、手織りされている。CN107385523A(7)やCN108977895A(8)などの文献には、大麻やトウモロコシから繊維を製造するために酵素を使用することが記載されているが、これらのプロセスには酸やアルカリによる前処理が含まれており、高濃度の酵素で長時間処理されているため、本発明の方法で得られる繊維ほど繊細で、力織機による糸に紡ぐことができる繊維は得られていない。
【0005】
本発明は、過酷な化学的または機械的処理を用いることなく、植物由来のバイオマスを高品質なテキスタイルグレードの繊維に酵素的に変換する環境に優しい方法を提示するものである。本明細書に開示された方法は、主に酵素を使用し、通常過酷な化学的および/または機械的処理による従来の方法で得られる高品質のテキスタイル繊維を製造する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換する方法を包含し、該方法は、植物由来のバイオマスから得られる原料天然繊維を酵素処理してテキスタイルグレードの繊維に変換する工程を含み、テキスタイルグレードの繊維の繊維デニールは75dpf(繊維当たりのデニール)以下であり、破断強度は少なくとも50gである。一実施形態においては、繊維の破断強度は175gである。
一実施形態において、植物由来のバイオマスは、バナナ、パイナップル、大麻、イラクサ、亜麻、ジュート、サイザル、及びカラムシからなる群から選択される植物から構成される。
一実施形態では、繊維処理容器内の総酵素濃度は、0.5~1%である。
一実施形態では、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換するための酵素処理は、2~4時間行われる。
一実施形態では、原料天然繊維を酵素処理する工程に使用される酵素は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、リグナーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、及びペルオキシダーゼからなる群から選択される。
一実施形態において、本方法は、酵素処理の工程の前に原料天然繊維をアルカリプロテアーゼ処理することをさらに含んでいる。
一実施形態において、繊維処理容器中に存在するアルカリプロテアーゼ濃度は、0.1~0.3%である。
【0007】
一実施形態において、本方法は、酵素処理の前に原料天然繊維を機械的又は手動で開繊する工程をさらに含む。
一実施形態では、植物由来のバイオマスは、酵素処理の前に原料天然繊維を開くための機械的又は手動的な処理を行わない。
一実施形態では、本方法は、いかなる化学処理工程も含まない。
一実施形態において、本方法は、酵素工程の前にいかなる化学的前処理工程も含まない。
一実施形態において、本方法は、酵素処理の後にマイルドな化学処理を行う工程をさらに含む。
一実施形態において、本明細書に開示される方法から製造されるテキスタイルグレードの繊維は、自動化された方法によって糸に紡ぐことができる。一実施形態では、製造された糸は、布地に織物に織られるか又は編まれる。一実施形態では、糸は、力織機または手織機を使用して布地に織られる。
一実施形態では、本明細書に開示された方法から製造されたテキスタイルグレードの繊維から作られた糸は、織物または編物される。
一実施形態では、繊維は、他の種類の繊維と混ぜることなく、布地にされる。
一実施形態では、本明細書に開示された方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維は、他の人工繊維または天然繊維とブレンドされて、少なくとも20番手の糸を作成する。
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示された方法から製造されたテキスタイルグレードの繊維を包含し、それらは、高い引張強度、良好な伸縮性、高いテナシティ、およびより細い径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明で開示する植物由来バイオマスからテキスタイルグレード繊維を製造する方法における手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細説明
本発明は、植物由来のバイオマスからテキスタイルグレードの繊維を酵素的に製造するための方法を開示する。本発明は、特に、過酷な化学処理を使用せずに、酵素を用いた方法によってセルロース系繊維を処理することによって、高品質のテキスタイルグレードの繊維を製造することに関するものである。この方法は環境に優しく、さらに、製造された繊維は、綿から従来の方法で製造されたものと同等の高品質である。
セルロースは、地球上で最も豊富に存在する有機物であり、その天然および再生形態は、テキスタイルの主要な繊維源である。植物は、天然のセルロース系繊維の主な原料である。これらのセルロース系繊維は、様々な産業用途のための異なるタイプの繊維の生産に使用することができる。世界的に見ると、農業は毎年何百万トンもの農業副産物を生み出している。農業副産物の多くは、特に繊維状で相当量のセルロースを含んでいる。農業副産物をより多く利用することは、生産者に経済的な利益をもたらすとともに、副産物の廃棄量を減らすことで環境面でもメリットがある。さらに、この農業副産物を利用した製品は、100%生分解性である。副産物型繊維は、入手しにくい、抽出が難しい、最終製品としての品質が低いため高級製品への使用が制限される、紡績性が低い、目が粗い、硬い手触りであるなどの性能上の問題があるなどの理由で、広範囲に使用されてきていない。
【0010】
植物の茎や幹および葉から繊維を抽出する方法として、従来は"浸漬"と呼ばれる工程がある。従来の浸漬工程は、環境中のバクテリアと菌類を利用して繊維を脱リグニンし、従来のテキスタイル機械で使用するのに適した状態に変換する露地浸漬(Dew-Retting)である。露地浸漬は、結果が一定せず、繊維の品質が悪く、通常、限られた地域でしか行えず、浸漬プロセスの間農地を占有する。浸漬の化学的方法が使われ、これらは典型的により一定した、物理的特性も改善した繊維を生産するが、このような化学的な方法は、廃棄物処理の問題を含む多くの環境問題を引き起こす。それとは別に、完成した繊維製品は、輝度指数や低い引張強度の点で低品質である。
本発明は、植物ベースまたは植物由来のバイオマスを、高級なテキスタイル繊維に変換するための酵素法を提供する。本明細書に開示された方法は、少量の酵素を使用し、原料天然繊維のアルカリまたは酸の前処理を伴わない。この方法は、酵素処理の時間が短く、非常に高品質の指標を持つ紡糸可能な繊維を得ることができる。この繊維は、自動化された方法で糸に紡ぐことができ、得られた糸は力織機でも布に織ることができるため、工業規模で布/テキスタイルを作るために使用することができる。
【0011】
定義
本明細書で使用する「植物由来バイオマス」という用語は、植物から取り出されたバイオマスとして定義される。それは、そのバイオマスを得るために特別に栽培された植物からであってもよいし、主な作物の副産物であってもよい。植物由来のバイオマスは、自然に生育する植物、又は農作物を含む任意の植物からであることができる。
本明細書で使用する「原料(生の)天然繊維」という用語は、手動プロセスまたは機械抽出器を使用して植物バイオマスから機械的に取り出された繊維であると定義される。原料天然繊維の例としては、バナナ、大麻、竹、イラクサ、亜麻、パイナップル、カラムシ、ジュート、ケナフ、セサル、アバカ、ココナツから得られる繊維が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0012】
生の繊維(原料繊維)は、機械抽出機によって植物バイオマスから抽出される。機械はバイオマスを剥がし、靭皮繊維を抽出する。
【0013】
本明細書で使用する「脱ガム」という用語は、ペクチン、デンプン、ヘミセルロース、ガム、および繊維を結合させている他の生体分子などの生体分子を除去することにより、繊維同士を分離する工程と定義される。
【0014】
用語「繊維処理容器」及び「処理浴」及び「浴」は、本明細書において互換的に使用され、生の繊維の酵素処理が行われる容器又は浴を意味する。使用される酵素の割合および浴に加えられる原料繊維の量は、浴の容積に依存するであろう。容器内の液体は、本明細書では、「溶液」または「液体」とも呼ばれる。それは、水または酵素の最適な作用のための添加物を有する他の任意の水性溶媒であってもよい。
植物の細胞壁の主成分は「リグノセルロース」で、リグニン(15~20%)、ヘミセルロース(25~30%)、セルロース(40~50%)で構成されている。これらの成分は、共有結合と非共有結合の相互作用によって結合した3次元の複雑なネットワークを形成している。
リグノセルロースは、例えば、植物の繊維、パルプ、茎、葉、外皮、節のある茎、殻、及び/又は穂軸、又は木及び/又は潅木の繊維、葉、枝、樹皮、及び/又は木材に一般的に見いだされる。リグノセルロース系材料の例としては、農業バイオマス、例えば、農業及び/又は林業材料及び/又は残渣、枝、茂み、節のある茎、森林、穀物、草、短回転木質作物、草本作物、及び/又は葉、トウモロコシ、キビ、および/または大豆などの作物残渣、草本材料および/または作物、森林、果物、花、針葉、丸太、根、苗木、低木、スイッチ草、野菜、果物の皮、つる、小麦中粒、麦殻、硬質および軟質の木材、またはそれらの任意の組合せ、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
ヘミセルロースは、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノースなどの単糖と、酢酸、フェルラ酸、グルクロン酸などの有機酸で置換されたヘテロ多糖であるキシランがグリコシド結合やエステル結合で織り込まれて構成されている。この複合高分子の解重合が、異なる産業に適用されて効率的に利用するためには必要である。
【0016】
本明細書で使用する「原料(生の)天然繊維」という用語は、手動プロセスまたは機械抽出器を使用して植物バイオマスから機械的に取り出された繊維であると定義される。原料天然繊維の例としては、バナナ、大麻、竹、イラクサ、亜麻、カラムシ、ジュート、ケナフ、セサル、アバカ、ココナツから得られる繊維が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
原料繊維(生の繊維)は、機械抽出機によって植物バイオマスから抽出され、機械はバイオマスを剥がし、靭皮繊維を抽出する。
【0018】
「酵素製剤」、「酵素カクテル」および「酵素組成物」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、少なくとも1つの酵素を含む製剤を指し、それはいかなる化学物質も含んでいない。
本明細書で使用される「セルラーゼ(Cellulase)」又は「セルラーゼ(cellulases)」は、セルロースをグルコースに加水分解することができる酵素を意味する。セルラーゼの非限定的な例としては、マンナンエンド-1,4-β-マンノシダーゼ、1,3-β-D-グルカン グルカノヒドロラーゼ、1,3-β-グルカン グルコヒドロラーゼ、1,3-1,4-β-D-グルカン グルカノヒドロラーゼ及び1,6-β-D-グルカン グルカノヒドロラーゼが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される「キシラナーゼ(Xylanase)」または「キシラナーゼ(xylanases)」は、キシランをキシロビオースおよびキシロトリオースに加水分解することができる酵素を指す。
キシラナーゼは、単糖およびキシロオリゴ糖にキシランが解重合している中に含まれる、エンド-1,4-β-d-キシラナーゼ (EC 3.2.1.8), β-d-キシロシダーゼ (E.C. 3.2.1.37), α-グルクロニダーゼ (EC 3.2.1.139) アセチルキシランエステラーゼ (EC 3.1.1. 72)、α-l-アラビノフラノシダーゼ(E.C. 3.2.1.55)、p-クマール酸エステラーゼ(3.1.1.B10)、フェルラ酸エステラーゼ(EC 3.1.1.73 )から構成される酵素群である。
【0020】
「ペクチナーゼ」という用語は、任意の酸性ペクチナーゼ酵素を含む。ペクチナーゼは、主にポリ-L,4-α-D-ガラクツロニドおよびその誘導体のペクチン物質のグリコシド結合を加水分解する酵素群であり、この酵素は、成熟タンパク質もしくはその前駆体形態、または本質的に全長酵素の活性を有するその機能的断片を含むと理解される。さらに、ペクチナーゼ酵素という用語は、そのような酵素の同族体または類似体を含むことが意図されている。ペクチナーゼは、その優先基質である高メチルエステル化ペクチンまたは低メチルエステル化ペクチンとポリガラクチュロン酸(ペクチン酸)、およびその反応機構であるβ-エリミネーションまたは加水分解により分類することができる。ペクチナーゼには、主に鎖内のランダムな部位でポリマーを切断してオリゴマーの混合物を与えるエンド型と、ポリマーの一端から攻撃してモノマーやダイマーを生成するエキソ型とがある。Enzyme Nomenclature (1992)によれば、ペクチンの平滑部に作用するいくつかのペクチナーゼ活性は、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2.2)、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15) 、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67)、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 4.2.2.9)及びエキソポリα-ガラクツロニダーゼ(EC 3.2.1.82)のような酵素の分類に含まれる。
【0021】
ラッカーゼは、マルチ銅酸化酵素(MCO)の酵素ファミリーに属し、ベンゼンジオール酸素還元酵素(EC 1.10.3.2)に分類され、ウルシオール酸化酵素、p-ジフェノール酸化酵素とも呼ばれる。基質特異性が低く、酸素を電子受容体とし用い、副産物として水を生成するため、多くのフェノール性、非フェノール性分子を酸化することができる万能酵素と考えられている。
【0022】
エンド-1,4-β-d-マンナナーゼ (EC 3.2.1.78) は、ガラクトマンナン、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナン、マンナンの主鎖内のβ-d-1,4-マンノピラノシル結合をランダムに開裂する触媒である。これらは短鎖のβ-1,4-マンノオリゴマーを遊離し、さらにβ-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.25)によりマンノースへと加水分解されることが可能である。
【0023】
α-アミラーゼはデンプン加水分解酵素である。アミラーゼはデンプンをオリゴ糖にする加水分解する原因となる。α-アミラーゼはグルコース3分子以上を含む化合物の1,4-α-グルコシド結合を加水分解する。β-アミラーゼはデンプンや他の化合物から(主に)β-マルトースを遊離させる。
【0024】
一実施形態において、本発明で使用されるアミラーゼは、α-アミラーゼである。
【0025】
本明細書で使用する場合、酵素活性は単位で定義される。1単位の酵素(U)は、1分間に1μmolの基質の反応を触媒する酵素の量である。
本発明で使用する酵素の活性定義を以下に示す。活性測定に用いる基質は、所定の酵素について公知の基質であればよい。さらに、使用される酵素は、既知のどのようなものであってもよい。
【0026】
セルラーゼ:
1単位の活性は、検定条件下で1分間1ml当たり1μmolのD形グルコース[ブドウ糖]還元糖(グルコース換算)を放出する酵素量に相当した。活性の評価には、任意の適切な基質を使用することができる。本明細書で使用する基質は、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩-低粘性(SIGMA-ALDRICH)である。
【0027】
キシラナーゼ:
活性の1単位は、検定条件下で1分間1ml当たり1μmolのキシロース還元糖(グルコース換算)を放出する酵素の量に相当する。本明細書でキシラナーゼ活性の評価に用いる基質は、ブナ材由来のキシラン(SRL)である。
【0028】
ペクチナーゼ:
1単位の活性は、検定条件下で1分間1ml当たり1μmolのD-ガラクツロン酸還元糖(グルコース換算)を放出する酵素量に相当する。本明細書で使用する基質は、リンゴ由来のペクチン(SIGMA)である。
【0029】
ポリガラクツロナーゼ:
活性の1単位は、検定条件下で1分間1ml当たり1μmolのD-ガラクツロン酸還元糖(グルコース換算)を放出する酵素量に相当する。本発明において活性の評価に用いる基質は、ポリガラクツロン酸ナトリウム塩(SIGMA)である。
【0030】
アミラーゼ:
活性の1単位は、検定条件下で1分間1ml当たり1μmolのマルトース還元糖(グルコース換算)を放出する酵素量に相当する。なお、本発明において活性の評価に用いる基質は、ジャガイモ澱粉可溶性(HIMEDIA)である。
【0031】
マンナナーゼ:
活性の1単位は、検定条件下で1分間1ml当たり1μmolのマンノース還元糖(グルコース換算)を放出する酵素量に相当する。本発明において活性の評価に用いる基質は、イナゴマメ種子由来のローカストビーンガム(SIGMA)である。
【0032】
ラッカーゼ:
1IUは、1分間に1μmoleのグアイアコールを酸化するのに必要な酵素量と定義される。本発明の活性の評価に用いる基質は、基質がグアイアコール(SIGMA-ALDRICH)である場合である。
【0033】
本明細書では、「テキスタイルグレード繊維」および「テキスタイル繊維」という用語は、互換的に用いられ、柔らかく、テキスタイルを作るのに適した特性を有する繊維を指す。
引張強度と破断伸縮性は、テキスタイルグレードの繊維にとって最も重要な機械的特性の2つである。繊維の引張強度は、1デニールまたは1テックス当たりの力を単位としたテナシティで表されることが多い。
【0034】
本明細書で使用する「セルロース系繊維」という用語は、少なくとも20%のセルロースを含み、セルロースのエーテル又はエステルで作られた繊維と定義され、これらは植物由来であり、植物の樹皮、木材、葉、又は他の植物部分から得ることができる。繊維は、セルロースの他に、主要成分としてペクチン、ヘミセルロース、リグニンを、その他の微量成分とは別に、含んでいる場合がある。これらの成分の割合は、原料の種類によって異なり、繊維の機械的特性を変化させる。
【0035】
本明細書で使用する「人工繊維」という用語は、自然界に存在しない繊維として定義され、通常、様々な化学物質から作られるか、植物繊維から再生されたものである。人工繊維の例としては、ポリエステル;ポリアミド-(ナイロン);アクリル;ビスコース、レーヨン、竹繊維、リヨセル、モダールなどの再生セルロース系繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0036】
本明細書で使用する「デニール」という用語は、その材料の9,000mあたりのグラム数で表した材料の重量として定量化されるテキスタイル材料の繊度を表すために使用される。
【0037】
本明細書で示されるデニール値は、各繊維またはフィラメントに対するデニール値である。理論的には、デニールは糸についても測定できるが、本明細書で示されるデニール値は、本明細書に開示される方法によって製造された各テキスタイルグレードのフィラメント(繊維のもの)についてのデニール値を指す。2および単一フィラメント繊維に使用される。一般的な計算方法は以下の通りである。
1デニール=1g / 9000 m
=0.11 mg/m
【0038】
実際には、9000mを測定するのは時間がかかるし、現実的でない。一般的には900mのサンプルを計量し、その結果を10倍してデニール量とする(9)。
【0039】
伸縮性という用語は、開始時の長さに対する割合で定義されている。弾性のないテキスタイル製品は使い物にならないので、弾性のある伸縮性は非常に重要である。それらは変形しやすく、また元に戻りやすいものでなければならない。テキスタイル繊維の伸縮性が高ければ加工がしやすくなり、また着用時の快適性も向上する。
【0040】
本明細書で使用する繊維の「反射率」という用語は、材料によって反射される光の割合、またはその反射の尺度として定義される。
繊維の「破断強度」という用語は、本明細書では、材料が破断または変形する前に耐えることができる最大量の引張応力と定義される。
引張強度は、繊維を破断するときに到達する最大力の尺度である。テナシティは、同じ力を繊維または糸の線密度との関係で表す尺度である。試料を破壊するのに必要な荷重と、その試料の線密度との比をテナシティと呼ぶ。
【0041】
破断強度とは、繊維の断面積に対して、繊維を破断させるために加える力のことで、破断強度と呼ばれている。
【0042】
織機は、生地を得るために糸状のものを織るための装置である。織機は、縦方向に並んだ糸を、幅方向に並んだ糸と交錯させることで織物を作る。
手織機。手織機は、人力で動く、織ること(weaving)に使われる簡単な機械である。
力織機。力織機:人力ではなく、機械的な力で柄や糸状のものを生地に織り込むタイプの織機である。
【0043】
実施形態
本発明は、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換する方法を包含し、この方法は、植物由来のバイオマスから得られる原料天然繊維を酵素処理してテキスタイルグレードの繊維に変換する工程を含み、テキスタイルグレードの繊維の繊維デニールは75dpf(繊維当たりのデニール)以下で、破断強度は少なくとも50gである。一実施形態では、繊維の破断強度は175gである。
一実施形態において、植物由来のバイオマスは、バナナ、大麻、サイザル、パイナップル、イラクサ、亜麻、ジュート、及びカラムシからなる群より選択される植物からなる。
一実施形態では、繊維処理容器内の総酵素濃度は、0.5~1%である。
一実施形態では、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換するための酵素処理は、2~4時間行われる。
一実施形態では、原料天然繊維を酵素処理する工程に使用される酵素は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、リグナーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、又はペルオキシダーゼからなる群から選択される。
一実施形態では、本方法は、酵素処理の工程の前に、原料天然繊維をアルカリプロテアーゼ処理することをさらに含んでいる。
一実施形態では、アルカリプロテアーゼは、0.1~0.3%の濃度で繊維処理容器に存在する。
【0044】
一実施形態において、本方法は、酵素処理の前に、原料天然繊維を機械的又は手動で開繊する工程をさらに含む。
一実施形態では、植物由来のバイオマスは、酵素処理の前に、原料天然繊維を開くための機械的又は手動的な処理を行わない。
一実施形態では、本方法は、いかなる化学処理工程も含まない。
一実施形態では、本方法は、いかなる化学的前処理工程も含んでいない。
一実施形態において、本方法は、酵素処理の後にマイルドな化学処理を行う工程をさらに含む。
一実施形態において、本明細書に開示される方法から製造されるテキスタイルグレードの繊維は、自動化された方法によって糸に紡ぐことができる。一実施形態では、製造された糸は、織物に織られるか又は編まれる。一実施形態では、糸は、力織機または手織機を使用して布地に織られる。
一実施形態では、本明細書に開示された方法から製造されたテキスタイルグレードの繊維から作られた糸は、織られるまたは編まれる。
一実施形態では、繊維は他の種類の繊維と混ぜることなく、布地にされる。
一実施形態では、本明細書に開示された方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維は、セルロース系繊維、リネン、綿、テンセルまたはそれ以上から選択される他の繊維とブレンドされて、少なくとも20番手の糸が作成される。
一実施形態において、本発明は、本明細書に開示される方法から製造されるテキスタイルグレードの繊維を包含し、それらは、農業廃棄物からの原料天然繊維を処理する他の従来の方法で製造される繊維よりも高い引張強度、良好な伸縮性、高いテナシティ、及びより細い径を有する。
一実施形態では、テキスタイルグレードのバナナ繊維は、他の繊維と1:3の割合でブレンドされる。
【0045】
一実施形態では、上記に開示された方法は、酵素処理の前に、原料天然繊維を機械的に処理する工程をさらに含む。一実施形態では、上記に開示された方法は、酵素処理の後に、原料天然繊維をマイルドな化学処理する工程をさらに含む。一実施形態では、マイルドな化学的処理は、漂白に続いて漂白剤の中和によって行われる。
【0046】
一実施形態では、化学処理の後に、繊維から過剰な水分を除去すること、又はハイドロ抽出を行うことが挙げられる。一実施形態では、本方法は、ハイドロ抽出後に柔軟剤を用いて繊維を調製する工程をさらに含む。一実施形態では、柔軟剤は、シリコン柔軟剤、又は両性柔軟剤(例えば、Siligen、Sapamine、Zylon SFC)である。一実施形態において、使用される柔軟剤は両性柔軟剤である。
【0047】
一実施形態は、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換する方法であり、該方法は、以下の工程を含む。(a)機械的処理によって植物バイオマスから繊維束をより小さな繊維束に開く工程、(b)小さな繊維束を少なくとも1つの酵素工程に付す工程であって、その酵素は、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼ、及びマンナナーゼからなる群から選択されて、小さな原料繊維束からテキスタイルグレードの繊維を生成させる工程、および(c)繊維を軟化処理して、繊維径が75デニール以下、繊維破断強度が175g以下である、テキスタイルグレードの繊維を製造する工程。
【0048】
一実施形態では、方法は、繊維の酵素的脱ガムを行う工程を含み、ペクチン、ヘミセルロース、リグニンなどの生体分子が除去される。
【0049】
一実施形態において、植物由来のバイオマスを抽出するために使用することができる植物部分の例としては、茎、葉、及び偽茎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
一実施形態では、植物由来のバイオマスとして、バナナ、カラムシ、竹の茎を使用して、原料植物繊維を抽出する。
一実施形態では、原料天然繊維はセルロースベースの繊維であり、少なくとも20%のセルロースを含んでいる。一実施形態において、原料天然繊維は、ペクチン、ヘミセルロース、リグニンも含んでいる。
【0051】
一実施形態では、植物由来のバイオマスは、バナナ偽茎、トウモロコシの皮、トウモロコシの茎、稲藁、ソルガム葉、ソルガム茎、大豆藁、麦藁、綿茎、及び大麦藁、並びにそれらの組み合わせなどの農業廃棄物であってもよい。
【0052】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、バナナ、大麻またはジュート繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換するために使用される。
一実施形態では、植物由来のバイオマスまたは植物からの原料繊維は、より小さい繊維束に機械で抽出することなく、本明細書に開示される方法による処理にも直接使用することができる。
【0053】
一実施形態では、原料天然繊維を酵素処理する工程に使用される酵素は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼからなる群から選択される。
【0054】
一実施形態において、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換するための酵素活性は、本明細書に開示される方法によるペクチノリシス活性、加水分解活性、及びオキシド-レダクターゼ活性である。
【0055】
一実施形態において、加水分解酵素活性は、植物バイオマスから非セルロース性成分を除去する。
一実施形態において、オキシド-レダクターゼ活性は、繊維の輝度を向上させる。
【0056】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、白色度指数を高めるために、酵素処理の後にマイルドな化学処理を行う工程をさらに含む。
【0057】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、白色度指数を高めるための酵素処理の後にマイルドな化学処理を行う段階をさらに含み、そのマイルドな化学処理は、アルカリおよび/または過酸化物を用いて行われる。
【0058】
本発明の1つの実施形態は、本明細書で与えられる方法によって製造されるテキスタイルグレードの繊維を包含する。
【0059】
一実施形態において、本明細書に開示される方法によって製造されるテキスタイルグレードの繊維は、原料天然繊維の化学処理によって得られる繊維と比較して、高い引張強度、良好な伸縮性、より良い紡糸性、高いテナシティ、低い抵抗、より細い径、及び高い輝度指数を有する。
【0060】
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって製造されるテキスタイルグレードの繊維の繊維径は、75デニール以下である。
一実施形態では、大麻から製造されるテキスタイルグレードの繊維の破断強度は、50g以上である。
一実施形態では、バナナから製造されるテキスタイルグレードの繊維の破断強度は、175g以上である。
【0061】
一実施形態において、本明細書に記載の方法によって製造された繊維のテナシティ又は強度は、2.5グラム/デニール以上である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法によって製造された繊維の伸縮性は5%以上である。
一実施形態では、輝度(反射率)は65以上である。
一実施形態では、本明細書に開示された方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維は、アパレル、スーツ用生地-シャツ地、椅子張り、手工芸品、人形毛、及び履物を含むがこれらに限定されない任意の材料の製造に使用される。
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって製造された繊維は、糸に紡がれる。
【0062】
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維から紡がれた糸から布地を製造するために、力織機が使用される。
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維から紡がれた糸から布地を製造するために、手織機が使用される。
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維からの糸は、さらに布に織られるか、または編まれる。
一実施形態では、本明細書に開示された方法によって製造された繊維は、不織布製品を製造するために使用される。
【0063】
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって製造されたテキスタイルグレードの繊維は、他の天然繊維又は人工繊維とさらにブレンドされ、その例としては、再生セルロース繊維、リネン、綿、及び人工繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
一実施形態では、植物由来のバイオマスからテキスタイルグレードの繊維を製造する方法は、酵素処理する少なくとも1つの工程を含む。
【0065】
一実施形態では、本明細書に開示される方法を用いて、バナナ偽茎からテキスタイルグレードの繊維を製造する。一実施形態では、バナナバイオマスからテキスタイルグレードの繊維を製造する方法は、本明細書に開示される方法によって製造されたバナナ繊維を酵素処理する1つの工程を含む。一実施形態では、この工程は、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、エンドセルラーゼ、リグニンオキシダーゼ及びマンナナーゼからなる群から選択される酵素で処理することを含んでいる。
【0066】
一実施形態では、本明細書に開示される方法を用いて、大麻バイオマスからテキスタイルグレードの繊維が製造される。一実施形態では、大麻バイオマスからテキスタイルグレードの繊維を製造する方法は、酵素処理の2つの工程を含む。本明細書に開示される方法によって製造されたバナナ繊維。一実施形態では、第1の工程は、プロテアーゼによる処理を含む。一実施形態では、第2の処理は、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、エンドセルラーゼ、リグニンオキシダーゼ及びマンナナーゼからなる群から選択される酵素で行われる。
【0067】
一実施形態では、本明細書に開示される方法によって大麻から生成された繊維からの糸は、布地を生成するために他の繊維と1:1の割合でブレンドされる。一実施形態では、本明細書に開示された方法によってバナナから生成された繊維からの糸は、布地を生成するために他の繊維と1:3の割合でブレンドされる。
一実施形態では、酵素処理に要する総時間は、2~4時間である。
【0068】
一実施形態では、テキスタイルグレードの繊維に酵素的に加工するための原料繊維の処理に、洗浄剤を使用しない。
一実施形態では、本明細書に開示される酵素法において、化学処理または水処理による浸漬工程は行われない。
一実施形態では、本明細書に開示される酵素法における処理工程のいずれにも、キレート剤は使用されない。
一実施形態では、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に加工するために、本明細書に開示される酵素法では、酸処理工程は行われない。
【0069】
一実施形態では、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に加工するために、本明細書に開示される酵素法ではアルカリ処理工程は行われない。
一実施形態では、酵素処理の後に選択的にアルカリ処理工程を行い、酵素処理によって生成された繊維を漂白して、原料天然繊維をテキスタイルグレードの繊維に変換する。
【0070】
表1は、本明細書に開示された方法の特徴を強調したものである。
【表1】
【0071】
実施例
酵素活性は、詳細な説明(参考文献1~6)に記載されている方法で検定した。
今回の実験に使用した酵素の供給源は以下の通りであった:
セルラーゼ/キシラナーゼ:Trichoderma reesei(トリコデルマ・リーセイ)
ペクチナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、リパーゼ:Aspergillus niger(アスペルギルス・ニガー)
マンナナーゼ:Bacillus sp.(バシラス エスピー)
ラッカーゼ:真菌由来のもので、最小活性は25U/ml。
【0072】
実施例1
A) バナナ繊維
素材:バナナ偽茎の原料のバナナ繊維(直径100~120デニール)
組成:バナナ繊維は、セルロース(40-45%)、ヘミセルロース(12-15%)、リグニン(10-12%)、ペクチン&ワックス(2-3%)、その他の物質(30-35%)で構成されている。
【0073】
プロセス条件:
得られた原料のバナナ繊維を、約40mmの長さに切断した。次に、繊維を、図1に説明するように段階的にプロセスするために、表2に説明したプロセス条件と時間でロンダロメーター(launderometer)(モデル番号WFT8X500、JK &PC Texlab)のステンレス鋼管に装填した。
第1工程、酵素:酵素プロセスに使用した酵素は、ヘミセルラーゼ(500000 IU/繊維のKg)、ペクチナーゼ(100000 IU/繊維のKg)、エンドセルラーゼ(50000 IU/繊維のKg)、リグニン酸化酵素(10000 IU/繊維のKg)およびマンナナーゼ(20000 IU/繊維のKg)であった。これらの酵素を含む酵素組成物を、水に浸した繊維に1リットルあたり5gの量で添加した。この処理は、最適条件である50℃、pH5で2時間行った。
処理後、水を抜いて再充填した。
第2工程、漂白: 0.5% アルカリ NaOHとH2O2 の溶液を用いて、100℃、1時間で漂白を行った。
第3工程、高温洗浄: 漂白後、浴を排水・再充填し、85℃の温度で10分間、高温洗浄を行った。処理後、浴の水を抜いた。
第4工程、中和処理は酢酸で50℃で10分間行った。この後、水を抜いた。
第5工程、柔軟剤を用いて、pH5.0、温度50℃で30分間、軟化処理を施した。処理後、浴の水を抜いた。
プロセス終了後、繊維を絞り、最後に風乾させた(水分率8~10%まで到達した)。
第6工程、乾燥後、繊維を手で開いて、互いにくっついた繊維を分離した。
表2:バナナ繊維処理のプロセス工程の条件
【表2】
【0074】
結果
バナナ繊維
【表3】
* ASTM(American Society for Testing and Materials)は、国際的な標準化団体である。
** 変動係数(Coefficient of Variation: CV)は、標準偏差(SD)を平均値(CV % = (SD ÷ 平均値) x 100)に対する百分率で表したものである。それは、繊維の伸縮性測定と同じである。
【0075】
酵素法次いで漂白処理によって製造されたテキスタイルグレードのバナナ繊維は、目視評価において、繊度、柔軟性および白色度の点で優れた繊維特性を示し、試験結果においても繊維の強度を失うことなく優れた繊度および伸縮性を示した。
【0076】
実施例2
素材:原料の大麻糸(140~160デニール)
大麻の原料繊維の組成:セルロース(70-75%)、ヘミセルロース(15-20%)、リグニン(3.5-5.7%)、ペクチン(0.8%)、水溶性物質(1.6%)およびその他の物質(油脂・ロウなど、1.2-6.2%)。
プロセス条件:
大麻植物の茎から得られた原料繊維を40mmの長さに切断した。次に、繊維を、図1に説明するように段階的にプロセスするために、表4に説明したプロセス条件と時間でロンダロメーターのステンレス鋼管に装填した(繊維10gに対して150mlの溶液)。
【0077】
第1工程、酵素処理1:酵素処理の最初の工程は、アルカリプロテアーゼ(50000U/繊維のKg)であった。繊維を水に浸し、与えられた酵素の用量は2gplであった。処理は、60℃、pH10で1時間行われた。処理後、繊維を50℃、10分間、酢酸で中和した。
【0078】
第2工程、酵素処理2:酵素処理工程2に使用する酵素は、ヘミセルラーゼ(500000IU/繊維kg)、ペクチナーゼ(75000IU/繊維kg)、エンドセルラーゼ(20000IU/繊維kg)、リグニンオキシダーゼ(2000IU/繊維kg)およびリパーゼ(5000IU/繊維kg)のカクテルである。
酵素カクテルは、水に浸した繊維に5gplの用量で添加した。酵素カクテルのプロセス工程に最適な条件は、50o CかつpH 5-6である。処理は2時間行われた。水を排出し、再充填した。
【0079】
第3工程、漂白: 0.5%のアルカリNaOHとH2O2 の溶液で漂白し、プロセスは同じチャンバで1時間行われる。
処理後、繊維を85oCの水で10分間洗浄する。浴の水を抜き、水で再充填した。
第4工程、中和: さらに、浴を酢酸で50o Cの温度で10分間中和した。
第5工程、柔軟剤でpH5.0、温度50oCで30分間の軟化処理を施した。処理後、浴の水を抜いた。
プロセス終了後、繊維を絞り、最後に風乾した(水分8~10%まで)。
第6工程、乾燥後、繊維を手作業で開き、互いに付着した繊維を分離する。
表 4:大麻繊維処理のプロセス工程の条件
【表4】
【0080】
結果
【表5】
【0081】
結論:
本明細書に開示された方法で処理された大麻繊維は、目視評価により、繊度、柔らかさ、繊維の透明度の点で良い結果を示した。試験結果では、繊維の細さと破断強度は良好な結果を示した。また、処理後の繊維の長さも減少していない。
【0082】
参考文献
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8. 特許出願番号CN108977895A
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図1
【国際調査報告】