(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】プロテアソーム阻害剤治療のためのバイオマーカーに基づく患者選択
(51)【国際特許分類】
A61K 45/08 20060101AFI20230720BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20230720BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20230720BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20230720BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230720BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230720BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A61K45/08
C12Q1/6886 Z
A61K31/69
A61K38/07
A61P43/00 111
A61P35/00
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577525
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 US2021037943
(87)【国際公開番号】W WO2021257910
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508087147
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウインター ジェイコブ エム
(72)【発明者】
【氏名】ラター ジャレド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA26
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4B063QA01
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4C084AA02
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4C084ZB26
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
方法又は組成物のいずれかが、本明細書において開示される。がんを有する対象を治療する方法であって、がんを有する対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することを含み、がんを有する対象が、非機能性ATAD1遺伝子を有する、方法が開示される。がんを診断及び治療する方法であって、対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することと、対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することと、を含む、方法が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する対象を治療する方法であって、がんを有する前記対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することを含み、がんを有する前記対象が、非機能性ATAD1遺伝子を有する、前記方法。
【請求項2】
前記対象が、非機能性PTEN遺伝子を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ATAD1遺伝子の一部分又は全てが、欠失されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記PTEN遺伝子の全ての一部分が、欠失されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
対象においてがんを診断及び治療する方法であって、
a)対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することと、
b)前記対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することと、を含む、前記方法。
【請求項7】
前記対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することが、前記対象を、非機能性ATAD1遺伝子を有するとして識別することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することが、前記対象を、非機能性PTEN遺伝子を有するとして識別することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することが、BIMレベルの増加を検出することを更に含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
BIMレベルの増加が、標準と比較した増加である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
非機能性ATAD1遺伝子を有する対象が、欠失された前記ATAD1遺伝子の全ての一部分を有する対象である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
非機能性PTEN遺伝子を有する対象が、欠失された前記PTEN遺伝子の全ての一部分を有する対象である、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象においてアポトーシスを増加させる方法であって、前記対象にプロテアソーム阻害剤を投与することを含み、前記対象が、非機能性ATAD1遺伝子を含む、前記方法。
【請求項15】
前記対象が、非機能性PTEN遺伝子を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非機能性ATAD1遺伝子を有する対象が、欠失された前記ATAD1遺伝子の全ての一部分を有する対象である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
非機能性PTEN遺伝子を有する対象が、欠失された前記PTEN遺伝子の全ての一部分を有する対象である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、がんを有する、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロテアソーム阻害剤が、ボルテゾミブ、イキサゾミブ又はカーフィルゾミブである、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
以下の順序で、
(a)がん患者から試料を得るステップと;
(b)前記対象が前記試料中に非機能性ATAD1遺伝子を有するかどうかを判定するステップと;
(c)前記対象が非機能性ATAD1遺伝子を有する場合、プロテアソーム阻害剤による治療に好適な候補として、前記がん患者を識別するステップと;
(d)前記好適な候補として識別された前記がん患者にプロテアソーム阻害剤を投与し、前記がん患者が非機能性ATAD1遺伝子を有しない場合には、プロテアソーム阻害剤を前記がん患者に投与しないステップと、を含む、方法。
【請求項22】
がんを有する対象におけるプロテアソーム阻害剤の有効性を増強する方法であって、前記対象に、非機能性ATAD1遺伝子を有する対象に対して有効量のプロテアソーム阻害剤を投与すること、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/040,442号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、National Institutes of Health(米国国立衛生研究所)によって授与された、付与番号CA243440及びGM115174の下で政府支援により行われた。政府は、本発明における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍抑制遺伝子であるPTENは、ヒトがんにおいて最も一般的な欠失遺伝子のうちの1つである(1)。PTEN欠失は、多くの場合、隣接する遺伝子座を含む、染色体10q23上の隣接DNAの多くのキロベース(kb)を包含する。PTENに最も近い遺伝子のうちの1つは、ATAD1であり、これは、外側ミトコンドリア膜(OMM)上のタンパク質品質制御に関与するAAA+ATPaseをコードする(2~6)。ATAD1は、ヒト及びマウスの生命に不可欠であり、10億年の進化にわたって保存されており、酵母及びヒトを分離する(6、7)。本明細書では、ATAD1のPTENとの共欠失が、ユビキチンプロテアソームシステム(UPS)の機能障害に対して細胞を感作する方法について説明する。ATAD1は、OMMからアポトーシス促進タンパク質BIMを直接抽出し、タンパク質品質制御が、臨床的に関連する設定において、細胞死とどのように相互作用するかを実証する。
【発明の概要】
【0004】
方法又は組成物のいずれかが、本明細書において開示される。
【0005】
がんを有する対象を治療する方法であって、がんを有する対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することを含み、がんを有する対象が、非機能性ATAD1遺伝子を有する、方法が開示されている。
【0006】
がんを診断及び治療する方法であって、対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することと、対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することと、を含む、方法が開示される。
【0007】
開示された方法及び組成物の追加の利点は、以下の説明において部分的に記載され、かつ説明から部分的に理解されるか、又は開示された方法及び組成物の実施によって習得され得る。開示される方法及び組成物の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成される。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、単に例示的及び説明的であり、特許請求される発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0008】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、開示された方法及び組成物のいくつかの実施形態を例示し、説明とともに、開示された方法及び組成物の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】ATAD1が種々のがんにおけるパッセンジャー遺伝子としてPTENと頻繁に共欠失されることを示す。(A)ヒトChr10q23.31上のATAD1及びPTEN遺伝子座の概略図;(B)PTEN-ヌル前立腺がんを有する患者におけるIHCによるATAD1の喪失を評価すること;(C)PTEN-ヌル腫瘍を有する2人の患者からの代表的な組織学及びIHC;(D)ATAD1及びPTENの共欠失、及びATAD1単独での変異の欠如を示すTCGA腫瘍プリント;(E)がん、TCGAにわたるATAD1の変化の頻度。
【
図2A】ゲノム全体のCRISPRスクリーニングが、ATAD1との遺伝的相互作用を識別することを示す;(A)CRISPRスクリーニング戦略の概略図;(B)Jurkat細胞のPTEN-ヌル遺伝的背景におけるクローンATAD1ノックアウトの生成、及びRPMI1640培地中のATAD1Δ及びWT Jurkat細胞の増殖速度;(C)CRISPRスクリーニング結果の火山プロット;CRISPRスコアを、所与の遺伝子を標的とするsgRNAの平均Log
2倍変化として定義した。差分CRISPRスコア(dCS)は、WT CSをATAD1Δ CSから差し引くことによって計算した。dCS複合は、各クローンのdCS値の合計である。P値は、Benjamini Hochberg補正及びP値メタ分析のためのフィッシャー法を用いて、コルモゴロフ-スミルノフを使用して各遺伝子について計算した。破線は、dCS<-2及びP
adj<0.05で区切っている;(D)DepMapデータはMARCH5依存性とMCL1依存性との相関を示す;(E)WT又はATAD1ΔJurkat細胞からの全細胞溶解物のウェスタンブロットであって、BIM、MCL1、及びFIS1、非BCL2ファミリーコントロールの定常状態レベルを示す;(F)ATAD1Δ細胞中のBIM
ELレベルの定量化;n=6個の独立した実験;(G)MCL1阻害剤、AMG176で24時間処理した後のWT又はATAD1ΔJurkat細胞の生存性。
【
図3A】ATAD1は、膜からBIMを直接抽出することによって、BIM媒介性アポトーシスプライミングから細胞を保護することを示す;(A)ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)のBCL2ファミリー制御の簡略化された概略図;BCL2ファミリータンパク質の結合選好については、
図S3Aを参照されたい;(B)Del10q23細胞(H4;PTEN-ヌル、ATAD1-ヌル)を用いたBH3-プロファイリングであって、EV、触媒的に死んだATAD1
E193Q、又は野生型ATAD1は、安定的に再発現されている;ヒートマップは、3個の生物学的複製の平均として、シトクロムCの部分的放出(MOMP)を表示し;(C)テトラサイクリン誘導性GFP又はGFP-BIM
EL融合を安定的に発現し、ドキシサイクリンで48時間処理されたATAD1-ヌル又はWT Jurkat細胞の生存率;(D)ATAD1野生型又はノックアウト細胞におけるGFP-BIM
EL誘導に応答して、PARP切断により検出されるアポトーシス;(E)BAK1欠失背景のATAD1Δ細胞におけるGFP-BIM
ELタンパク質のウェスタンブロット。細胞をドキシサイクリン(250ng/mL)で24時間処理し、(F)ATAD1-FLAG又はEVを安定して発現する細胞におけるATAD1-FLAG/HA及びGFP-BIM
ELの共免疫沈降であって、zVAD-fmkの存在下でGFP-BIM
ELで一晩一過性にトランスフェクトしたもの;(G)RPMI7951細胞をMG132(10μM)で4時間処理し、全細胞溶解物を準備し、ウェスタンブロットによって分析した。(H)再構築されたプロテオリポソーム抽出アッセイの概略図;(I)His-ATAD1及び3xFLAG-BIM
L(レーン1~4、9~20)、又は陰性対照TAタンパク質、3xFLAG-Fis1(レーン5~8)を使用した抽出アッセイ;GSTタグ付きSGTA及びカルモジュリン(CaM)は、抽出されたTAタンパク質を捕捉するためのシャペロンとして含まれる。「I」=入力、「FT」=フロースルー、「W」=最終洗浄、「E」=溶出。溶出画分は、ATAD1によって抽出され、GSTタグ付きシャペロンによって結合されたTAタンパク質を表し、溶出「E」を入力「I」と比較する。†は、P<0.0001を示す。
【
図4A】ATAD1が、プロテアソーム機能不全によって誘導されるアポトーシスから細胞を保護することを示す。(A)EV又はATAD1-FLAGで形質導入し、指示薬物で24時間処理したSW1088細胞の生存率;(B)SW1088細胞におけるボルテゾミブ処理に応答した生存率の時間経過;(C)10nMのボルテゾミブで8時間処理したRPMI7951全細胞溶解物のウェスタンブロット;(D)Cの定量化;(E)BTZ及び汎カスパーゼ阻害剤であるzVAD-FMK(20μM)又はDMSO(zVADビヒクル)での16時間処理に応答した再発現RPMI7951細胞に対するATAD1-ヌルの生存率;(F)Eと同じであるが、生存率はクリスタルバイオレット染色によって測定し、(G)で定量化した。(H)プロテアソーム阻害剤毒性におけるATAD1の役割を説明する概略図;(I)NOD/SCIDマウスにおけるSW1088細胞の経時的な皮下異種移植片の腫瘍サイズ;(J)経時的な触知可能な腫瘍の発生率、又は腫瘍なしの生存率;(K)クリスタルバイオレット染色で測定した培養SW1088細胞の増殖、n=2の別々の実験。†は、P<0.0001を表す。
【
図5】ATAD1及びPTEN IHCを、PTEN陽性腫瘍を有する15人の患者からの生検で実施し、ATAD1は、全ての(PTEN陽性)試料で検出可能であったことを示す。
【
図6A】ATAD1との遺伝的相互作用に関するゲノム全体のCRISPRスクリーニングを示す。(A)互いにプロットした各クローン細胞株対WTの差分CRISPRスコア。ピアソン係数=0.51、P=2.16×10~16。(B)MARCH5を標的とする各sgRNAの微分(示差)倍率変化についてのsgRNAレベルのデータ;(C)ACOT11についてのBと同じである。
【
図7A】(A)
図3BのBH3プロファイリング実験に関連するBH3ペプチド及びBH3模倣小分子の結合パターンを示し、Letai,Ann Rev Cancer 2017、及びKale et al,Cell Death及びDiff,2018に由来する;(B)Tet-ON GFP-BIMELを安定的に発現するBAK1Δ及びBAK1Δ ATAD1Δ細胞株の全細胞溶解物中のBIMアイソフォームのウェスタンブロットの定量化。「GFP-BIMEL」は異所性融合タンパク質を示し、一方で「BIMEL」及び「BIML」は内因性である。細胞を、採取前に24時間、250ng/mLのドキシサイクリンで処理した。n=3の独立した実験;(C)可溶性His-Msp1及び全長Msp1;(D)プロテオリポソームからの抽出物BIML¬。(E)抽出アッセイは、Msp1の生理学的基質選択性を再現する。残基の疎水性パッチがTMDのN末端に挿入されると、Fis1が抽出される(「Fis1-パッチ」)。Sec22及びSec61bは、Msp1がERネイティブTAタンパク質を認識することができることを示す陽性対照である。
【
図8A】Del(10q23)細胞におけるATAD1発現の回復により、プロテアソーム阻害剤に対する耐性が増加することを示す。(A)RPMI7951細胞をボルテゾミブ又はカーフィルゾミブで16時間処理し、生存率をCell Titer Gloによって測定した。(B)ボルテゾミブ(3.125nM)n=3個の生物学的複製物で処理したRPMI7951細胞の時間経過;(C)SW1088細胞を5 nMのボルテゾミブ中で48時間培養し、RPMI7951細胞を24時間培養し、生存率をクリスタルバイオレット染色によって評価した;(D)H4細胞をボルテゾミブで24時間処理し、Cell Titer Gloで評価した;(E)ATAD1アドバックにより、SW1088細胞中のボルテゾミブに応答して、ミトコンドリア形態表現型を回復する。細胞をBTZ(10nM)で12時間処理し、MitoTracker Red(ミトトラッカーレッド)で染色し、次いで広視野蛍光顕微鏡で撮像し、(F)DepMap細胞株でのATAD1の発現、PC3細胞(ATAD1半接合型)及び2つのDel10q23細胞株を強調した;(G)非標的Cas9のみを対照(LCv2G)としてsgATAD1(LCv2G中)の安定した発現を用いた、ATAD1欠損ポリクローナルPC3細胞の生成;(H)ATAD1の欠失は、PC3細胞でのボルテゾミブに対する感受性を増加させる。(I)ATAD1WTの過剰発現は、ATAD1E193Qではなく、ボルテゾミブに対する耐性を増加させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示される方法及び組成物は、特定の実施形態の以下の詳細な説明及びその中に含まれる実施例、並びに図及びそれらの前後の説明を参照することにより、より容易に理解され得る。
【0011】
開示される方法及び組成物は、別途指定されない限り、特定の合成方法、特定の分析技術、又は特定の試薬に限定されず、したがって、変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0012】
開示された方法及び組成物に使用することができ、これらと併用することができ、これらの調製に使用することができ、又はこれらの生成物である、材料、組成物、及び成分が開示されている。これら及び他の材料を本明細書に開示し、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合、これらの化合物の様々な個別及び集合の組み合わせ及び順列のそれぞれの具体的な参照が明示的に開示されない場合があるが、それぞれが本明細書に具体的に企図及び記載されることを理解されたい。したがって、分子A、B、及びCのクラス、並びに分子D、E、及びFのクラス、並びに組み合わせ分子の例が開示される場合、A~Dが開示され、次いで、それぞれが個別に列挙されていなくても、それぞれが個別に及び集合的に企図される。したがって、この例では、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fの各々が具体的に企図され、A、B、及びC、D、E、及びF、並びに例示的な組み合わせA-Dの開示から開示されると考えるべきである。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせも具体的に企図及び開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループが具体的に企図され、A、B、及びC、D、E、及びF、並びに例示的な組み合わせA-Dの開示から開示されるとみなされるべきである。この概念は、開示される組成物の作製及び使用方法におけるステップを含むが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施され得る様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップのそれぞれが、開示された方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせで実施され得ること、及びそのような組み合わせのそれぞれが具体的に企図され、開示されたものとみなされるべきであることを理解されたい。
【0013】
A.定義
開示される方法及び組成物は、これらが変化し得るように記載される特定の方法、プロトコル、及び試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「対象」への言及は、複数のそのような対象を含み、「プロテアソーム阻害剤」への言及は、当業者に既知の1つ以上のプロテアソーム阻害剤及びその等価物への言及等である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、同義的に使用され得、例えば、実験、診断、及び/又は治療目的のために、本発明の組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、非ヒト霊長類及びヒト等の哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ及びブタ等の家畜動物又は農耕動物;マウス、ラット及びモルモット等の実験動物;ウサギ;魚;爬虫類;動物園及び野生動物)が挙げられる。典型的には、「対象」は、ヒト及び霊長類等の哺乳動物を含む動物である。
【0016】
「治療」とは、疾患若しくは状態の効果の悪化を予防若しくは遅延させるために、又は疾患若しくは状態(例えば、がん)の効果を部分的に若しくは完全に逆転させるために、がんを発症させる感受性が増加した、ヒト若しくは他の哺乳動物(例えば、動物モデル)などの対象に、プロテアソーム阻害剤などの治療薬を投与することを意味する。
【0017】
「予防する」とは、がんの発症に対する増加された感受性を有する対象という可能性を最小限に抑えることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「投与する」及び「投与」という用語は、プロテアソーム阻害剤などの治療薬を対象に提供する任意の方法を指す。かかる方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与、及び静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与などの注射剤を含む非経口投与を含むが、これらに限定されない。投与は、連続的又は間欠的であり得る。様々な態様において、調製物は、治療的に投与することができる、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与される。更なる様々な態様において、調製物は、予防的に投与され得る、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与される。ある態様において、当業者は、対象を治療するために、有効な用量、有効なスケジュール、又は有効な投与経路を判定することができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「生体試料」は、哺乳動物、特にヒト患者、例えば、体液(血液、唾液、尿等)、生検、組織、及び/又は患者からの廃棄物に由来することができるか又は由来する任意の試料を指す。したがって、組織生検、便、痰、唾液、血液、血漿、血清、リンパ、涙、汗、尿、膣分泌物等は、本質的に、適切な核酸を含有する目的の任意の組織と同様に、SNPについて容易にスクリーニングすることができる。これらの試料は、通常、インフォームドコンセントの後、標準的な医療検査法によって患者から採取される。試料は、患者から直接得られた形態であり得るか、又は少なくともいくつかの非核酸材料を除去するために、少なくとも部分的に処理(精製)され得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「調節する」は、増加又は減少によって変更することを意味することを意味する。調節は、活性又は機能又は数値の変化を意味し得る。変化は、活性、機能、若しくは数の増加又は減少、増強又は阻害であり得る。
【0021】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、後述の事象、状況、又は材料が発生し得る、又は発生しない場合がある、又は存在し得ることを意味し、この記述は、事象、状況、又は材料が発生する、又は存在する場合、及びそれが発生しない、又は存在しない場合を含む。
【0022】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表現されるとき、文脈が別途具体的に指示しない限り、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までの範囲も具体的に企図され、開示されるとみなされる。同様に、値が近似値として表現されるとき、先行する「約」の使用によって、特定の値は、文脈が別途具体的に指示しない限り、開示されるとみなされるべき別の、具体的に企図される実施形態を形成することが理解されるであろう。範囲の各々のエンドポイントは、文脈が別途具体的に指示しない限り、他のエンドポイントとの関係においても、他のエンドポイントから独立していても、有意であることが理解されるであろう。最後に、明示的に開示された範囲内に含まれる個々の値及び値のサブ範囲の全ても具体的に企図されており、文脈が別途具体的に指示しない限り、開示されているとみなされるべきであることが理解されるべきである。上記は、特定の場合において、これらの実施形態のうちのいくつか又は全てが明示的に開示されるかどうかにかかわらず、適用される。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される方法及び組成物が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似又は同等の任意の方法及び材料は、本方法及び組成物の実施又は試験に使用され得るが、特に有用な方法、デバイス、及び材料は、記載されているものと同様である。本明細書に引用される刊行物及びそれらが引用される材料は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。本明細書におけるいかなるものも、本発明が、先行発明のためにそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。任意の参照が先行技術を構成することは認められない。参考文献の考察は、その著者が主張することを述べており、出願人は、引用された文書の正確性と関連性に異議を唱える権利を留保する。本明細書では、いくつかの刊行物が参照されるが、そのような参照は、これらの文書のいずれかが当該技術分野の一般的な知識の一部を形成することを認めるものではないことが明確に理解されるであろう。
【0024】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」という語及び当該語の変形例、例えば、「含んでいる」及び「含む」は、「含むが、これらに限定されない」ことを意味し、例えば、他の添加剤、構成要素、整数又はステップを除外することを意図されない。特に、1つ以上のステップ又は動作を含むと記載される方法では、各ステップが列挙されるものを含むことが具体的に企図され(そのステップが「~からなる」等の限定用語を含む場合を除く)、各ステップが、例えば、該ステップに列挙されていない他の添加剤、構成要素、整数、又はステップを除外することを意図されていないことを意味する。
【0025】
B.治療する方法
がんを有する対象を治療する方法であって、がんを有する対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することを含み、がんを有する対象が、非機能性ATAD1を有する、方法が開示される。がんを有する対象を治療する方法であって、がんを有する対象に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬を投与することを含む方法であって、がんを有する対象が、非機能性ATAD1を有する、方法が開示される。いくつかの態様において、非機能性ATAD1は、非機能性ATAD1遺伝子又は非機能性ATAD1タンパク質を含む。
【0026】
いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、非機能性ATAD1遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性ATAD1タンパク質にされ得る。
【0027】
いくつかの態様において、対象は、非機能性PTENを更に含む。いくつかの態様において、非機能性PTENは、非機能性PTEN遺伝子又は非機能性PTENタンパク質であり得る。非機能性PTEN遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTEN遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、非機能性PTEN遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性PTENタンパク質にされ得る。
【0028】
いくつかの態様において、がんを有する対象は、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する。
【0029】
いくつかの態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カーフィルゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ、デランゾミブ、エポキソミシン、MG132、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸塩であり得るが、これらに限定されない。
【0030】
いくつかの態様において、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬は、IRE1調節物質、PERK調節物質、ATF6調節物質、熱ショックタンパク質阻害剤、選択的アンドロゲン受容体分解薬、又は選択的エストロゲン受容体分解薬であり得るが、これらに限定されない。
【0031】
C.診断及び治療する方法
対象においてがんを診断及び治療する方法であって、対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することと、対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することと、を含む、方法が開示される。
【0032】
対象においてがんを診断及び治療する方法であって、対象を、プロテアソーム阻害剤による治療に応答性であると診断することと、対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することと、を含む、方法が開示される。
【0033】
いくつかの態様において、対象をプロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することは、対象を、非機能性ATAD1を有するものとして識別することを含む。いくつかの態様において、対象をプロテアソーム阻害剤による治療に応答性であると診断することは、対象を、非機能性ATAD1を有するものとして識別することを含む。
【0034】
いくつかの態様において、非機能性ATAD1は、非機能性ATAD1遺伝子又は非機能性ATAD1タンパク質であり得る。非機能性ATAD1遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、非機能性ATAD1遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性ATAD1タンパク質にされ得る。
【0035】
いくつかの態様において、対象をプロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することは、対象が機能性PTENを有するかどうかを識別することを更に含む。いくつかの態様において、対象をプロテアソーム阻害剤による治療に応答すると診断することは、対象が機能性PTENを有するかどうかを識別することを更に含む。いくつかの態様において、非機能性PTENは、非機能性PTEN遺伝子又は非機能性PTENタンパク質であり得る。非機能性PTEN遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTEN遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、非機能性PTEN遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性PTENタンパク質にされ得る。
【0036】
いくつかの態様において、対象をプロテアソーム阻害剤による治療に感受性であると診断することは、BIMレベルの増加を検出することを更に含む。いくつかの態様において、対象をプロテアソーム阻害剤による治療に応答すると診断することは、BIMレベルの増加を検出することを更に含む。いくつかの態様において、BIMは、ATAD1の基質であることが理解され、したがって、非機能性ATAD1は、BIMの増加をもたらす。いくつかの態様において、BIMレベルの増加は、標準と比較した増加である。いくつかの態様において、標準は、機能性ATAD1を有する対象において生じることが知られているBIMの正常レベル又は既知レベルであり得る。いくつかの態様において、標準は、機能性ATAD1を有する対象群の平均として判定される量であり得る。
【0037】
いくつかの態様において、対象が、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する。
【0038】
いくつかの態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カーフィルゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ、デランゾミブ、エポキソミシン、MG132、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸塩であり得るが、これらに限定されない。
【0039】
D.アポトーシスを増加させる方法
対象においてアポトーシスを増加させる方法であって、対象に、プロテアソーム阻害剤を投与することを含み、対象が非機能性ATAD1を含む、方法が開示されている。いくつかの態様において、非機能性ATAD1は、非機能性ATAD1遺伝子又は非機能性ATAD1タンパク質であり得る。非機能性ATAD1遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、非機能性ATAD1遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性ATAD1タンパク質にされ得る。
【0040】
いくつかの態様において、対象は、非機能性PTENを更に含む。いくつかの態様において、非機能性PTENは、非機能性PTEN遺伝子又は非機能性PTENタンパク質であり得る。非機能性PTEN遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTEN遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、非機能性PTEN遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、機能性タンパク質に翻訳され、次いで、翻訳後修飾して、非機能性PTENタンパク質にされ得る。
【0041】
いくつかの態様において、対象はがんを有する。いくつかの態様において、対象が、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する。
【0042】
いくつかの態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カーフィルゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ、デランゾミブ、エポキソミシン、MG132、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸塩であり得るが、これらに限定されない。
【0043】
E.対象を識別する方法
以下の順序で、がん患者から試料を得るステップと;がん患者が試料中に非機能性ATAD1を有するかどうかを判定するステップと;がん患者が非機能性ATAD1を有する場合、プロテアソーム阻害剤による治療に好適な候補として、がん患者を識別するステップと;好適な候補として識別されたがん患者に、プロテアソーム阻害剤を投与し、がん患者が非機能性ATAD1を有しない場合には、がん患者に、プロテアソーム阻害剤を投与しないステップとを含む、方法が開示される。
【0044】
以下の順序で、がん患者から得られた試料中に、がん患者が非機能性ATAD1を有するかどうかを判定するステップと;がん患者が非機能性ATAD1を有する場合に、プロテアソーム阻害剤による治療に好適な候補として、がん患者を識別するステップと;好適な候補として識別されたがん患者に、プロテアソーム阻害剤を投与し、がん患者が非機能性ATAD1を有しない場合には、がん患者に、プロテアソーム阻害剤を投与しないステップとを含む、方法が開示される。
【0045】
以下の順序で、がん患者から試料を得るステップと;がん患者が試料中に非機能性ATAD1を有するかどうかを判定するステップと;がん患者が非機能性ATAD1を有する場合に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬による治療に好適な候補として、がん患者を識別するステップと;好適な候補として識別されたがん患者に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬を投与し、がん患者が非機能性ATAD1を有しない場合には、がん患者に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬を投与しないステップと、を含む、方法が開示される。
【0046】
以下の順序で、がん患者から得られた試料中に、がん患者が非機能性ATAD1を有するかどうかを判定するステップと;対象が非機能性ATAD1を有する場合に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬による治療に好適な候補として、がん患者を識別するステップと;好適な候補として識別されたがん患者に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬を投与し、がん患者が非機能性ATAD1を有しない場合には、がん患者に、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬を投与しないステップと、を含む、方法が開示される。
【0047】
いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、非機能性ATAD1遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、機能性タンパク質に翻訳され、次いで、翻訳後修飾して、非機能性ATAD1タンパク質にされ得る。
【0048】
いくつかの態様において、本方法は、がん患者が非機能性PTENを有するかどうかを判定することを更に含む。いくつかの態様において、非機能性PTENは、非機能性PTEN遺伝子又は非機能性PTENタンパク質であり得る。非機能性PTEN遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTEN遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、非機能性PTEN遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、機能性タンパク質に翻訳され、次いで、翻訳後修飾されて、非機能性PTENタンパク質に翻訳され得る。
【0049】
がんを有する対象におけるプロテアソーム阻害剤の有効性を増強する方法であって、対象に、非機能性ATAD1を有する対象に対して有効量のプロテアソーム阻害剤を投与することを含む、方法も開示されている。がんを有する対象におけるタンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬の有効性を増強する方法であって、対象に、非機能性ATAD1を有する対象に対して、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する有効量の化合物又は治療薬を投与することを含む、方法も開示されている。いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は、非機能性ATAD1遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性ATAD1タンパク質は機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性ATAD1タンパク質にされ得る。いくつかの態様において、対象は、非機能性PTENを更に含む。いくつかの態様において、非機能性PTENは、非機能性PTEN遺伝子又は非機能性PTENタンパク質であり得る。非機能性PTEN遺伝子は、欠失遺伝子又は変異遺伝子であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTEN遺伝子は、部分的に又は完全に欠失され得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は、非機能性PTEN遺伝子から翻訳されるタンパク質であり得る。いくつかの態様において、非機能性PTENタンパク質は機能性タンパク質に翻訳され、次いで翻訳後修飾して非機能性PTENタンパク質にされ得る。
【0050】
いくつかの態様において、がん患者は、乳がん、肺がん、結腸がん、脳がん、又は前立腺がんを有する。
【0051】
本明細書に記載されるのは、臨床試験に適切な対象を識別する方法であって、対象において非機能性ATAD1遺伝子の存在を判定することを含み、非機能性ATAD1の存在は、対象がプロテアソーム阻害剤による治療のための臨床試験に適切であることを示す、方法である。「臨床試験に適している」とは、臨床試験の治療から利益を得る可能性が高い対象を指す。例えば、非機能性ATAD1を有するとして識別された対象は、プロテアソーム阻害剤による治療を必要としている、これに応答性である、又はこれに感受性であるとみなされ得、したがって、プロテアソーム阻害剤の臨床試験に適している。例えば、本明細書に記載されるのは、プロテアソーム阻害剤を用いた臨床試験に適切な対象を識別する方法であって、対象において非機能性ATAD1の存在を判定することを含み、非機能性ATAD1の存在は、対象がプロテアソーム阻害剤の臨床試験に適切であることを示す、方法である。
【0052】
本明細書に記載されるのは、これらの臨床試験のために適切な患者集団を選択することを含む、臨床試験を増強する方法である。一態様において、本方法を使用して、対象がプロテアソーム阻害剤、又はタンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物若しくは治療薬による治療から利益を得ることができるかどうかの可能性に基づいて、患者が臨床試験に参加するように識別されることを確実にすることができる。いくつかの態様において、本方法は、対象が非機能性ATAD1を有するかどうかを判定することを含み、それによって、プロテアソーム阻害剤、又はタンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物若しくは治療薬による治療から利益を得ることができる対象を識別することを含む。
【0053】
本明細書に開示されるのは、臨床試験のための対象を識別するための方法であって、対象から得られた試料中の非機能性ATAD1遺伝子を検出することを含み、非機能性ATAD1の存在は、対象が臨床試験に適切であることを示し、対象における非機能性ATAD1は、対象から得られた試料から判定される方法である。
【0054】
いくつかの態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カーフィルゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ、デランゾミブ、エポキソミシン、MG132、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸塩であり得るが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの態様において、タンパク質分解のタンパク質品質制御を調節する化合物又は治療薬は、IRE1調節物質、PERK調節物質、ATF6調節物質、熱ショックタンパク質阻害剤、選択的アンドロゲン受容体分解薬、又は選択的エストロゲン受容体分解薬であり得るが、これらに限定されない。
【0056】
F.組成物
本明細書において、組成物のいずれかが開示される。本明細書において、構築物のいずれかが開示される。本明細書において、核酸配列又はアミノ酸配列のいずれかが開示される。
【0057】
G.キット
上記の材料並びに他の材料は、開示された方法を実施する、又はこの実施を補助するのに有用なキットとして、任意の好適な組み合わせで一緒に包装され得る。所与のキット中のキット構成要素が、開示される方法において一緒に使用されるように設計され、適合される場合に有用である。例えば、がんを診断、検出、又は治療するためのキットであって、プライマー、プローブ、抗体、タンパク質、又は機能性ATAD1遺伝子の不在を判定する化合物を含むキットが開示される。
【実施例】
【0058】
A.実施例1
腫瘍抑制遺伝子であるPTENは、ヒトがんにおいて最も一般的な欠失遺伝子の1つである(1)。PTEN欠失は、多くの場合、隣接する遺伝子座を含む、第10q23染色体上の隣接DNAの多くのキロ塩基(kb)を包含する。PTENに最も近い遺伝子のうちの1つは、外側ミトコンドリア膜(OMM)上のタンパク質品質制御に関与するAAA+ATPaseをコードするATAD1である(2-6)。ATAD1はヒト及びマウスの生活に不可欠であり、酵母及びヒトを分離する10億年の進化の間に保存されてきた(6,7)。本明細書では、ATAD1及びPTENとの共欠失が、ユビキチンプロテアソームシステム(UPS)の機能障害に対して細胞を感作する方法について説明する。ATAD1は、タンパク質品質制御が臨床的に関連する設定で細胞死とどのように相互作用するかを実証するために、OMMからアポトーシス促進タンパク質BIMを直接抽出する。
【0059】
PTEN及びATAD1遺伝子座は、ヒトChr10q23.31(
図1A)上で約40kbで分離される(8)。この近接性により、ATAD1がPTENと共欠失しているかどうかは、PTEN欠失を特徴とすることが知られている前立腺腺がん(PrAd)を有する患者からの腫瘍検体上の免疫組織化学を使用して評価される(9)。ATAD1の状態は、PTEN-ヌル腫瘍を有する37人の患者からの試料を使用して評価され、ATAD1が半数超で検出不可能であることが分かった(21/37)が、15個全てのPTEN陽性対照試料中に保持された(
図1B、
図1C、
図5)。タンパク質レベルの所見を裏付けるために、The Cancer Genome Atlas(TCGA)を分析した。PTENにおいて深部欠失を有する腫瘍の大部分もまた、ATAD1において深部欠失を有し(
図1D)、これは、複数の種類のがんにおいても同様であった(
図1E)(8)。重要なことに、TCGAデータは更に、PTEN欠失の不在下ではATAD1がほとんど欠失されないことを示し(
図1D)、ATAD1には、PTEN及びほとんどの善意の腫瘍抑制剤に見られるものとは異なり、不活性化点変異又は切断が本質的に存在しないことを示した。したがって、ATAD1欠失は、PTEN欠失の発がん性ドライバーへのパッセンジャーでのみである。(
図1D)。ATAD1の喪失は、最大25%超のPrAd、11%の黒色腫、及び7~8%の膠芽腫及び肺扁平上皮細胞がんを含む、がん全体にわたって高頻度で生じる。したがって、ATAD1の喪失がこれらの腫瘍にどのような影響を与えるかを理解することは、診療所に深い影響を与える可能性がある。
【0060】
ATAD1及びS.cerevisiaeホモログMsp1を含むそのホモログは、OMM及びペルオキシソームから誤って局在化され又は過剰な膜貫通タンパク質を抽出することによってミトコンドリアの完全性を保護する(10)。Msp1は更に、ミトコンドリア輸入チャネルであるTOM複合体において失速したタンパク質を抽出することが示されている(11,12)。他の文脈でのミトコンドリア恒常性におけるATAD1の確立された役割を考えると、パッセンジャー遺伝子としてのATAD1の欠失は、腫瘍に独自の脆弱性を付与することができる。このような脆弱性は、腫瘍抑制遺伝子欠失(13,14)の「側副致死性」として知られる概念である精密医療のための新規の治療標的を表し得る。
【0061】
そのような脆弱性を発見するために、ゲノム全体のCRISPRスクリーニングを実施して、ATAD1Δ細胞において選択的に必須である遺伝子を識別した。Cas9の一過性発現及びATAD1を標的とする2つの異なるsgRNAを使用して、PTEN-ヌルである、2つのクローンATAD1Δ細胞株をJurkat細胞内で作製した(
図2A)。ATAD1欠失は、基底増殖率に影響を及ぼさなかった(
図2B)。野生型(WT)Jurkat親細胞株、及び2つのATAD1Δクローン細胞株の各々で3つのスクリーニングを並行して行い、これらの比較により、クローン細胞株に固有の特異性を排除することができた(
図2C)。差分CRISPRスコア(dCS)は、所与の遺伝子を標的とするsgRNAの平均存在量のLog2倍変化におけるWTとATAD1Δとの間の差異を表し、その遺伝子の欠失が、ATAD1の不在下で細胞適合性に多かれ少なかれ有害であるかどうかの測定基準を提供する。予想どおり、2つのクローン細胞株のdCS値は有意に相関した(
図6A)。P値を組み合わせて、2つのATAD1Δクローンのうちの1つのみでヒットとしてスコア化した遺伝子にペナルティを課した(15)。2つの遺伝子がヒットとして出現した。これは、組み合わせたdCS値が<-2及びPadj<0.05であることによって定義される。ACOT11及びMARCH5(
図2C、
図6B、
図6C)。ACOT11は、ミトコンドリア及び細胞質に局在し、長鎖脂肪酸アシル-CoAを加水分解するアシル-CoAチオエステラーゼをコードする(16,17)。MARCH5は、分解のためにいくつかの膜貫通タンパク質を標的とするOMMに局在するユビキチンE3リガーゼをコードする(18-20)。
【0062】
MARCH5は、アポトーシスの開始を調節するためにOMMで機能するプロ及び抗アポトーシスタンパク質からなるBCL2ファミリーのメンバーの分解を促進することが最近示された(21-24)。アポトーシスの調節における重要なステップは、BAX/BAKによるOMMの透過化であり、これにより、シトクロムCなどのミトコンドリアタンパク質が細胞質内に拡散し、カスパーゼカスケードを活性化させる。BCL2、BCL-XL、及びMCL1を含む抗アポトーシスタンパク質は、基底条件下でBAX及びBAKに結合し、これらを阻害する(23)。抗アポトーシスタンパク質の上流には、特定の抗アポトーシスタンパク質を不活性化するか、又はBAX/BAKを直接活性化することによってストレスに応答する、プロデスBH3のみのタンパク質(BIM、BID、NOXA、BAD、PUMA等を含む)がある(25)。MARCH5の欠失は、MCL1、NOXA、及びBIMをOMM上に蓄積させ、抗アポトーシスBCL2ファミリーメンバーと結合及び隔離してアポトーシスを誘発するBH3模倣薬に対する感受性を増加させる(26-29)。他の人々によって指摘されるように、MARCH5及びMCL1(強力な抗アポトーシスタンパク質をコードする)は同時不可欠であり(
図2D)、これは、それらが同じ経路で機能することを示す(29,30)。実際、DepMapデータベースによれば、ヒトゲノム全体にわたってMCL1と最も同時不可欠な遺伝子はMARCH5であり、逆もまた同様である(31)。
【0063】
ATAD1及びMARCH5がスクリーン内で合成致死性であったことは、それらが並行した経路又は機能で作用し得ることを示した。実際、ATAD1欠失は、BCL2ファミリーの一部ではないOMM上の尾部アンカータンパク質であるFIS1には影響を及ぼさなかったが、MCL1及びBIMの存在量(
図2E、
図2F)並びにMCL1を阻害するBH3模倣物であるAMG176によって誘導されるアポトーシスのためのプライミング細胞を増加させた(
図2G)(32)。したがって、MARCH5と同様に、ATAD1は、BH3模倣物に対する感受性によって測定されるように、メンバーBCL2ファミリーを調節し、アポトーシスプライミングに影響を与える。
【0064】
ATAD1の喪失がアポトーシスプライミングにどのように影響するかについての洞察を得るために、BH3プロファイリングを実施した(33)。ここで、透過性細胞を、異なるアポトーシス促進性BH3のみのタンパク質に由来するBH3ペプチドで処理し、ミトコンドリアからのシトクロムC放出を検出することによって、ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)を直接測定する(
図3A)。H4神経膠腫細胞をプロファイリングし、これは、ATAD1及びPTENの両方を包含するChr10q23欠失を有し、その中に、安定して再発現されたATAD1、触媒不活性変異体ATAD1E193Q、又は空ベクター(EV)が存在した。EV又はATAD1E193Qを発現するこれらのATAD1ヌル細胞において、BIMペプチドは、シトクロムCの大量放出を引き起こし、一方、WT ATAD1の発現は、BIM媒介性シトクロムC放出から細胞を著しく保護した(
図3B)。対照的に、PUMA及びBADは、ATAD1状態とは無関係に中等度のシトクロムC放出を誘導した。アラメチシンは、BAX/BAK及びBH3のみのタンパク質から独立して作動する合成孔形成ペプチドであり、ATAD1の状態に関係なく等しくシトクロムC放出を誘導し、これは、ATAD1がOMM上の孔形成の下流でのシトクロムC放出に影響を及ぼさないことを示す。これらのデータは、ATAD1の不在が、BIMペプチドに感受性のあるアポトーシスプライミングを増加させることを示す。このプライミングは、細胞が内因性BIMタンパク質を調節する方法の変化を反映する。BIMペプチドに加えて、ATAD1が全長BIMタンパク質から細胞を保護したかどうかを判定するために、テトラサイクリン誘導性GFP-BIMEL融合タンパク質を安定して発現する細胞株を作製した。BIMは、C末端膜アンカー(34~36)を含む主要な構造的特徴を共有する、3つの主要なアイソフォーム、BIMEL(優位な形態である「エクストラロング」)、BIML(「ロング」)、及びBIMS(「ショート」)に存在する。BH3プロファイリング実験と同様に、細胞死の増加及び切断PARPの生成によって証明されるように、ATAD1の喪失は異所性の完全長GFP-BIMに対して細胞を感作した(
図3C、
図3D)。したがって、生化学的及び遺伝子データは、ATAD1欠乏が、強力なアポトーシス促進性BH3のみのタンパク質であるBIMに対して感受性を有することを示す。
【0065】
BIMは、既知のATAD1/Msp1基質のいくつかの特徴を有するため、ATAD1の直接的な基質であり得る。すなわち、BIMは、尾部固定され、本質的に無秩序であり、その膜貫通ドメインに塩基性残基C末端を有し、プロテアソーム(37-39)によって分解される。ATAD1の欠失は、観察された分子量(34,40)のシフトに基づいて、BIMリン酸化状態の変化である可能性がある、わずかに増加したBIM存在量(
図2E、
図2F)を引き起こした。ATAD1がどのようにBIM存在量に影響を与えたかを、異所性BIMでチャレンジされた細胞で調べた。この実験は、細胞死が結果を混乱させるのを防ぐために、BIMによって誘導されるアポトーシスに耐性のあるBAK1Δ-Jurkat細胞株(基本的にBAX-ヌルである)で行った。この関連において、ATAD1の喪失は、異所性GFP-BIMEL、内因性BIMELの蓄積、及び内因性BIMLの蓄積への傾向を引き起こした(
図3E、
図7B)。BIMがATAD1基質であることと一致し、GFP-BIMELは、ATAD1-FLAGとともに共免疫沈降した(
図3F)。BIMは、プロテアソームによって分解することができ、したがって、急性プロテアソーム阻害が、ATAD1の存在下及び非存在下の両方で、BIMレベルの堅牢な増加を引き起こしたことが見出された(
図3G)。合わせて、ATAD1欠乏は、BH3模倣物、BIMペプチド、及び全長BIMに対して細胞を感作し、BIMは、ATAD1ヌル細胞内で過剰に蓄積し、BIMは、ATAD1と物理的に相互作用する。これらのデータは、BIMが細胞におけるATAD1基質であるという説得力のある事例を提供する。
【0066】
BIMがATAD1の直接基質であるかどうかに対処するために、インビトロ抽出アッセイを、ATAD1及びBIMLで使用した。BIMLは、BIMELよりも可溶性であるが、N末端近くのドメインを除いて、全ての主要な構造的特徴を共有するために使用された(34)。全長ATAD1は、精製することができなかった。代わりに、N末端TMDをHis6タグと入れ替え、これは、His-ATAD1をニッケルキレートヘッドグループでドープされたリポソームに固定した(「Ni Lipos」;
図3H)。この抽出アッセイでは、ATAD1/Msp1によってリポソームから抽出されるTAタンパク質は、可溶性GSTタグ付きシャペロンによって結合され、グルタチオンカラム上で精製され、ウェスタンブロットによって検出される(39)。このインビトロアッセイにおいて、His-ATAD1は、リポソームから3xFLAG-BIMLを直接的かつ効率的に抽出した(
図3I)。予想どおり、この活性はATP依存性であり(レーン17~20)、触媒不活性変異体であるATAD1E193Qを使用した場合には消失した(レーン1~4)。Niキレート脂質(「Mito Lipos;」レーン5~8)を省略することにより、BIMの抽出がブロックされ、ATAD1が、その抽出酵素活性のために膜アンカーを必要とすることが示された。重要なことに、ATAD1は、別のTAタンパク質であるFis1を抽出しなかった(レーン9~12)。したがって、ATAD1はBIMを特異的に抽出するが、全てのTAタンパク質を抽出するわけではない。(38)。
【0067】
Ni-Hisアンカー戦略は、酵母ホモログMsp1の全長(FL)又は同様にHisタグ付けされたバージョンのいずれかを使用することによって検証された(
図7B)。FL-Msp1及びHis-Msp1の両方とも、ATAD1及びMsp1の生化学的保存に沿って、BIM(
図7C、
図7D)を抽出した。このアッセイの基質選択性を、Msp1及び一連の陽性及び陰性対照TAタンパク質を使用して検証した(
図7E)。全ての実験において、これらの実験は、ATAD1が脂質膜からBIMを直接的かつ特異的に抽出することを示す。
【0068】
BIMは、MARCH5の喪失又はプロテアソーム阻害剤による治療などのストレス因子によって誘導されるユビキチンプロテアソームシステム(UPS)の機能障害時に蓄積される(41)。Del(10q23)細胞内のプロテアソーム阻害剤でUPS機能不全を誘導することは、BIMを増加させ、ATAD1の不在を利用することができる。実際に、ボルテゾミブ及びカーフィルゾミブは、Del10q23細胞(SW1088及びH4神経膠腫及びRPMI7951黒色腫)における生存率の損失を強力かつ迅速に誘導し、これはATAD1の発現によって緩和された(
図4A、
図4B;
図8A~
図8E)。利用可能なDel(10q23)前立腺がん細胞株は存在しないが、PC3細胞はPTEN-ヌル及びATAD1-ヘミ接合である(
図8F)。ボルテゾミブに感作されたPC3細胞中のATAD1の残りの対立遺伝子の欠失、一方でATAD1の過剰発現(ただしATAD1E193Qではない)は、ボルテゾミブに対する耐性を増加させた(
図8G~
図8I)。したがって、ATAD1は、UPS機能不全の状況での細胞生存率にとって非常に重要である。
【0069】
アポトーシス細胞死は、細胞におけるプロテアソーム阻害剤毒性の基礎となる多くの機序の1つにすぎない(42~44)。我々のシステムにおいて、ボルテゾミブは、Del10q23-EV細胞において堅牢なアポトーシスを誘導したが、ATAD1再発現細胞においては最小限であった(
図4C、
図4D)。ATAD1の存在又は不在下で同じ程度に蓄積されたポリユビキチン化タンパク質は、ATAD1が、タンパク質毒性傷害自体を最小限に抑えるのではなく、細胞がタンパク質毒性ストレスにどのように反応するかに影響することを示す。次いで、ATAD1が、いくつかのアポトーシス非依存性経路を介してプロテアソーム阻害剤感受性に影響を及ぼすかどうかを尋ねた。その場合、ATAD1の再発現及びカスパーゼ阻害(アポトーシスをブロックする)は、プロテアソーム阻害剤毒性を軽減するための付加効果を有するであろう。顕著なことに、ATAD1再発現は、ボルテゾミブで処理したDel10q23細胞におけるカスパーゼ阻害剤zVAD-fmkを用いた治療を実質的にフェノコピーした(
図4E~
図4G)。更に、zVADの付加効果は、ATAD1再発現細胞において最小限であり、ATAD1及びzVADがプロテアソーム阻害の下流の同じ経路で作用することを示唆した(
図4H)。要するに、これらの結果は、プロテアソーム阻害中のATAD1の保護効果が、アポトーシスによってのみ説明され得ることを示す。
【0070】
腫瘍増殖に対するATAD1の効果を、皮下異種移植片モデルを使用してインビボで評価した。SW1088は、低いクローン形成能を有するDel10q23グリオーマ細胞株であり、SCIDマウスにおいて非腫瘍性である(45,46)。したがって、EVで形質導入したSW1088細胞は、注射した17匹のNOD/SCIDマウスのうち17匹において腫瘍を形成することに失敗した。顕著なことに、ATAD1再発現細胞は、注射された18匹のマウスのうちの17匹において触知可能な腫瘍を増殖させた(
図4I、
図4J)。この効果は、単純には増殖の違いで説明することはできない。なぜなら、ATAD1は培養物中のSW1088細胞の増殖速度に影響しないからである(
図4K)。したがって、ATAD1は、分解のためにBIMを抽出し、タンパク質毒性ストレス誘導型アポトーシスから保護するという知見と一致して、ATAD1はインビボでPTENヌル細胞において完全な生存促進役割を果たす。
【0071】
プロアポトーシスBCL2タンパク質と抗アポトーシスBCL2タンパク質の微妙なバランスは、常に細胞生存を脅かす。これらのタンパク質がどのように活性化されるかは集中的に研究されているが、それらがどのように分解されるかについてはあまり知られていない。ATAD1は、UPS機能不全の間に蓄積されるOMM局在のBIMを直接的かつ具体的に抽出する。ATAD1損失がUPS機能不全に感受性を与えるという調査結果は、Del10q23腫瘍を有する何千人ものがん患者に重大な臨床的影響を与える可能性がある。
【0072】
アポトーシスのために細胞をプライミングしているにもかかわらず、ATAD1の喪失ががんで非常に頻繁に起こることは、直感に反するように思われるかもしれない。ATAD1が欠失されるたびに、PTENも欠失されることを覚えておく必要がある。PTEN喪失は、FOXO3Aを阻害することによってBCL2L11(BIM)の転写を減少させること、及び直接リン酸化によってBADを不活性化することを含む、強力な生存促進効果を有するAKTを活性化する(47,48)。したがって、PTENの共欠失は、ATAD1の喪失によって誘導されるアポトーシスプライミングのいくつかを緩衝し得る。加えて、アポトーシスのために細胞をプライミングする遺伝的病変は、がんに対して常に選択されるわけではない。それどころか、強力ながん遺伝子(MYCパラログを含む)は、アポトーシスプライミングを誘導することができるが、それでも(49,50)に対して強く選択される。ATAD1の喪失が何らかの状況下で有益である可能性を排除することはできないが、私たちのデータは圧倒的に生存促進要因としての役割を支持している。
【0073】
更に、アポトーシスに対するATAD1の効果は、UPS機能不全を超えて、より広範な生理学的文脈に及ぶ可能性が高い。ATAD1(マウスにおける「トラーゼ」)は、アポトーシスに関連付けられることは報告されていないが、酸素及びグルコース欠乏(OGD)に応答して神経細胞死を防止する因子(抗アポトーシスBcl-xLを含む)の遺伝子スクリーニングを介して哺乳動物で最初に発見された(51)。前調整レジメンは、Atad1の発現を増加させ、その後、Atad1は、後続のOGDから細胞を保護した。生存促進シグナルに応答するATAD1の発現の増加は、細胞が他の文脈においてもアポトーシス促進性BIMを中和するのを助けることができる。更に、虚血性脳卒中の中大脳動脈閉塞マウスモデルにおいて、Atad1はBcl2及びBcl-xLをフェノコピーし、Atad1又はBcl2の欠失は悪化し、Atad1、Bcl2、又はBcl2l1(Bcl-xLをコードする)の過剰発現は、神経細胞死を減少させる(52-55)。加えて、保存されたシステイン残基のニトロシル化がATAD1を不活性化することが最近発見された(56)。これは、損傷した組織内の反応性窒素種がATAD1を不活性化して、BIM媒介性アポトーシスを誘発する機構を提供し得る。したがって、BIMの拮抗作用は、AMPA受容体の調節因子としてのその確立された機能に加えて、インビボにおけるATAD1/トラーゼの神経保護機能に寄与し得る。ATAD1調節及び機能のメカニズム及び原理を定義することは、アポトーシス感受性の理解を再形成するだけでなく、PTEN/ATAD1共欠失腫瘍及びそれ以降における深刻な臨床的影響の可能性を有する。
【0074】
材料及び方法:
主な連絡先
リソース及び試薬に関する詳細情報及び請求は、主な連絡先であるJared Rutter(rutter@biochem.utah.edu)に宛てに提出して頂ければ、満足のいく回答が得られるであろう。
【0075】
材料の入手可能性
本試験で生成された全ての特有の/安定した試薬は、請求により主な連絡先から制限なく入手可能である。
【0076】
データ及びコードの入手可能性
本試験中に生成されたCRISPRスクリーニングデータは、補足資料で入手可能である。
【0077】
実験モデル及び対象の詳細
ATAD1ノックアウト細胞株
Jurkat E6.1ヒトT-ALL細胞(ATCC TIB-152)を、10% FBS及び100 U/mL Pen/Strep(ThermoFisher)を有するRPMI1640中で増殖させた。細胞を、製造業者の仕様に従ってLonza SE Cell Line 4D-NucleofectorTM X Kit Lを使用し、Jurkat E6.1細胞用に最適化されたプロトコルを使用して、エレクトロポレーションした。ATAD1を標的とするsgRNAをコードするPx458由来のプラスミドを、エレクトロポレーションを介してJurkat細胞において一過性に発現させた。3日後、GFP+細胞を選別し(BD FACSAria)、96ウェルプレートに単一細胞としてプレーティングした。クローン細胞株を増殖させ、採取し、ノックアウト検証されたモノクローナル抗体(NeuroMab)を使用して、免疫ブロットを介してATAD1欠失について評価した。
【0078】
PC3細胞を、LentiCRISPRv2-GFP(LCv2G)、又はsgATAD1を有するLCv2G(ガイド配列#1)をコードするレンチウイルスで形質導入した。形質導入の3日後、GFP+細胞を選別し(BD FACSAria)、ポリクローナル集団として維持した。上記のように免疫ブロットによって編集を確認した。
【0079】
Del10q23細胞株におけるATAD1再発現
H4及びPC3細胞を、C末端フラグ及びHAタグを有するATAD1をコードするレトロウイルス(PQCXIP転写プラスミド)で形質導入した。形質導入から2日後、細胞を1μg/mLのピューロマイシンで4日間選択した。RPMI7951及びSW1088細胞は、レトロウイルス感染に対して不応性であり、代わりに、ATAD1-FLAGをコードするレンチウイルス(pLenti-Blast転写プラスミド)で形質導入し、8μg/mLのブラストサイジンで6日間選択した。細胞は、解凍時に選択的抗生物質(ピューロマイシン又はブラスチジン)を含有する培地中で増殖させたが、選択的抗生物質を含有する培地を使用して実験を実施しなかった。
【0080】
1.方法の詳細
i.免疫組織化学
ATAD1(NeuroMab #75-157マウスモノクローナル抗体を使用)
ATAD1免疫組織化学染色を、ホルマリン固定パラフィン包埋組織の4ミクロン厚切片上で行った。切片を空気乾燥させ、次いで60℃のオーブンで30分間溶融させた。スライドをLeica Bond(商標)III自動染色器具(Leica Biosystems、Buffalo Grove,IL.)にロードし、Bond(商標)Dewax溶液で脱パラフィン化した。実施した抗原回収は、Bond(商標)Epitope Retrieval Buffer 2(ER2、pH8.0)で20分間、95℃で行った。1:400のATAD1一次抗体濃度を、室温で30分のインキュベーション時間で適用した。陽性シグナルは、DAB(3-3’ジアミノベンジジン)を色原体として利用して、ヤギ抗マウス/抗ウサギ二次HRP/ポリマー検出システムであるBond(商標)Polymer Refine Detection kit-DABを使用して可視化した。組織切片をヘマトキシリンで10分間対比染色した。スライドを免疫染色剤から取り出し、dH2O/DAWN(商標)混合物中に配置した。切片を脱イオン水及びDAWN(商標)溶液の混合物中で穏やかに洗浄して、非結合試薬を除去した。全ての洗浄混合物を除去するまで、スライドを脱イオン水中で穏やかにすすいだ。スライドを、グレーディングされたエタノール中で脱水し、キシレン中で洗浄し、次いでカバースリップした。
【0081】
PTEN(ウサギ抗ヒトモノクローナル抗体を使用):クローン138G6、カタログ番号9559L、細胞シグナル伝達、Danvers,MA)。
【0082】
PTEN免疫組織化学染色を、ホルマリン固定パラフィン包埋組織の4ミクロン厚切片上で行った。切片を空気乾燥させ、次いで60℃のオーブンで30分間溶融させた。スライドをVentana BenchMark(商標)Ultra自動染色器具(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)にロードし、EZ Prep溶液で脱パラフィン化した。実施した抗原回収を、圧力鍋(BioCare Medical、Concord,CA)中のクエン酸緩衝液(pH6.0)で4分間、100℃で行った後、高温緩衝液中で30分間冷却した。1:50のPTEN一次抗体濃度を、室温で2時間のインキュベーション時間で適用した。ベンタナ増幅キットを適用して抗体シグナルを増加させた。陽性シグナルは、DAB(3-3’ジアミノベンジジン)を色原体として利用して、ヤギ抗マウス/抗ウサギ二次HRP/ポリマー検出システムであるUltraView DAB検出キットを使用して可視化した。組織切片をヘマトキシリンで16分間対比染色した。スライドを免疫染色剤から取り出し、dH2O/DAWN(商標)混合物中に配置した。切片を脱イオン水及びDAWN(商標)溶液の混合物中で穏やかに洗浄して、自動化された器具によって適用される非結合試薬及びカバースリップ油を除去した。全ての洗浄混合物を除去するまで、スライドを脱イオン水中で穏やかにすすいだ。スライドを、グレーディングされたエタノール中で脱水し、キシレン中で洗浄し、次いでカバースリップした。
【0083】
ii.細胞培養
Jurkat細胞を、10% FBS(Sigma)及び100U/mLのPen/Strepで、RPMI1640中で培養した。細胞を定期的に数え、典型的には約1.5x106個の細胞/mLの濃度で分割したが、常に3x106個の細胞/mLの濃度に達する前に分割した。次の培地中のサブコンフルエント培養物中に接着細胞株を維持した。RPMI1640(PC3),DMEM(H4、SW1088),EMEM(RPMI7951)(全ては10%FBS及び100μ/mL Pen/Strepを含有している)
【0084】
iii.クローニング
全てのクローニングは、従来のPCR/制限酵素「カット&ペースト」方法を介して実施し、Sanger配列決定によって検証した。
【0085】
ATAD1構築物:
ATAD1-FLAG/HA及びATAD1E193Q-FLAG/HAをコードするレトロウイルスプラスミドを以前に公表した(Chen et al,2014)。レンチウイルスベクターは、pLenti-BLAST骨格を使用して、上記のレトロウイルスベクターからATAD1 CDSをPCR増幅することによって作製したが、HAタグを終止コドンで置き換えることによって構築物を切断した。
【0086】
GFP-BIM構築物:
pLVXTet-Oneベクターをタカラから購入した。EGFPのコード配列をPCR増幅し、AgeI/BamHI部位を使用してMCSにライゲーションした。EGFP-BIMELの融合物を、SOEing PCRを使用して生成し、AgeI/BamHI部位を使用してライゲーションした。EGFP-BIMELも一過性トランスフェクションのためにpEGFP-C3にライゲーションした。
【0087】
iv.Cell Titer Glo生存率アッセイ
生存率は、いくつかの修正を加えて、製造業者の推奨に従って、Cell Titer Glo(Promega)によって判定した。細胞を、白色壁及び透明底を有する96ウェルプレート中、100μL中、5x103細胞/ウェルの密度でプレーティングした(Corning#3610)。Cell Titer Glo試薬を再構成し、滅菌PBSを使用して1:4に希釈し、10mLのアリコート中で、-20℃で保存した。示されている各実験について、少なくとも2つの独立した実験を行い、各実験を、PC3細胞におけるATAD1過剰発現実験(
図S4I)を除いて、3つの生物学的複製物を用いて行った。PC3細胞におけるATAD1過剰発現実験は、それぞれ2つの生物学的複製物を有していた。96ウェルプレートの外側ウェルは、エッジ効果の懸念により、培地で満たされたが、細胞で満たされなかった。発光を、Biotek Synergy Neo2マイクロプレートリーダーを用いて測定した。発光値を各プレート上で、同じプレート上の未処理細胞に対して正規化し、パーセントで表した。
【0088】
v.クリスタルバイオレット染色
12又は6ウェルプレートで培養した細胞をPBSで2回洗浄し、次いで4%パラホルムアルデヒド(Sigma Aldrich)で、30分間室温で固定した。ウェルをddH2Oで3回洗浄し、次いで、20%メタノール中の0.1%(w/v)クリスタルバイオレット溶液で30分間、室温で染色した。ウェルを再びddH2Oで3回洗浄し、反転させて乾燥させ、プレートをiPhone Xを使用して白色の背景に対して撮影した。定量化のために、氷酢酸を各ウェルに添加して染料を溶出させ、プレートを回転シェーカー上の室温で30分間インキュベートした。吸光度を、Biotek Synergy Neo2マイクロプレートリーダーを使用して590nmにて測定し、各プレート上の同じ遺伝子型の未処理細胞に由来する値に正規化した。
【0089】
vi.SDS-PAGE及び免疫ブロット法
細胞を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を補充したRIPA緩衝液(Sigma Aldrich P8340,Roche Molecular 04906845001)に直接スクレイピングすることにより、細胞全体の溶解物を調製し、10分ごとにボルテックスしながら氷上で30分間インキュベートし、次いで16,000gで、10分間4℃で回転させて、不溶性物質を除去した。上清を溶解物として保存した。WCL、PMS、及び/又は粗製ミトコンドリア画分を、BCAアッセイ(Thermo Scientific 23225)を介して総タンパク質含有量について正規化した。試料をSDS-PAGE又はTris-グリシンゲル(Invitrogen XP04205BOX)によって分解し、ニトロセルロース又はPVDF(抽出アッセイ)膜に移した。製造業者の推奨に従って主要リソース表に列挙されている示された一次抗体を用いて免疫ブロット法を行い、Licor Odyssey又はAzure C500(抽出アッセイ)によって分析した。Azure C500の検出器には、機能していないように見えるピクセルの列がいくつか存在することに注意されたい。これにより、一部の画像に細い垂直白線が表示される。これは、コントラストを過度に調整することで、生データファイルで簡単に見ることができる。
【0090】
vii.共免疫沈降
H4細胞(EV又はATAD1-WT-FLAG/HAを発現する)を、20μMのzVAD-fmkの存在下で、10cmプレートのための10μgのプラスミドであるpEGFP-C3(GFP-BIM)中のpEGFP-C3(GFP)又はGFP-BIMELでトランスフェクトした。一過性発現は一晩(14~16時間)進行した。細胞を冷たいPBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤カクテル及び1%チャップを補充したHN緩衝液(HNC緩衝液)で溶解した。磁気抗FLAGビーズ(Sigma Aldrich)をHNC緩衝液で平衡化し、次いで溶解物と混合した(10%体積を入力として除去した後)。ビーズ-溶解物混合物を、回転子上で、4℃で2~4時間インキュベートした。ビーズをHNC緩衝液で3回洗浄し、次いで30μLの1X Laemmli緩衝液中で、65℃で10分間加熱した。
【0091】
viii.細胞計数
細胞を、BioRad TC20細胞カウンターを使用してカウントした。カウントを行う際には、培養液から少なくとも2つの試料を採取し、平均値を記録した。
【0092】
ix.CRISPR画面
Jurkat細胞(野生型親細胞、ATAD1KO #1、及びATAD1KO #2)を、Cas9及びピューロマイシン耐性カセットもコードしたゲノム全体のレンチウイルスsgRNAライブラリ(Addgene #1000000100;Wang et al,Science 2015)でスピンフィクションによって形質導入した。形質導入を最適化して、およそ30%の形質導入効率を達成し、細胞をピューロマイシン(0.5μg/mL)で3日間選択し、ピューロマイシンなしで2日間回復させ、次いで、スクリーニング期間中、より低用量のピューロマイシン(0.2μg/mL)で維持した。細胞の初期試料(8x107)を収集し、ピューロマイシン選択のエンドポイントで凍結した(形質導入後6日)。次いで、細胞を14個の累積集団倍加のために培養中で維持した。細胞を2日ごとに通過させ、2x105細胞/mLの密度で新しいフラスコに播種した。14個体群の倍加後、代表的な試料を収集した(8x107個の細胞)。他の箇所に記載されているように(Adelmann et al,Methods in Mol Biol,2019)、細胞ペレットをQIAamp DNA Blood Maxiprepを使用して処理し、sgRNA配列をPCRによって増幅し、Whitehead Institute DNA Sequencing Core FacilityでIllumina HiSeq NGSによって40サイクルにわたって増幅子を配列決定した。
【0093】
シークケンシングリードを、1の擬似カウントを与えられたsgRNAライブラリに整列させ、各sgRNAの存在量を以前に記載されたように計算した(Wang et al,Science 2015;Kanarek et al,Nature 2018)。各試料からのカウントを、深度を配列決定するために正規化した。50未満のリードを有するsgRNA、及び最初の参照データセットにおける4未満のsgRNAを有する遺伝子を、下流分析から省略した。最終参照集団と初期参照集団との間の各sgRNAの存在量のlog2倍の変化を計算し、各遺伝子のCRISPRスコアを定義するために使用した。CRISPRスコアは、所与の遺伝子を標的とする全てのsgRNAの存在量における平均log2倍の変化である。所与の遺伝子を標的とする全てのsgRNAの分布を、Kolmogorov-Smirnov試験を用いてsgRNA分布全体に対して試験し、Benjamini-Hochberg手順を用いてp値を調整した。ATAD1Δクローンにおける遺伝子必須性とWT対照における遺伝子必須性の直接的な比較を達成するために、適切に表されなかったsgRNAを両群で省略した(すなわち、初期時点で<50リード)。このステップは、存在量におけるsgRNAの変化のペア分析を可能にし、ある遺伝的背景において「スコア化」されたが、別の遺伝的背景においてその効果を評価することができない所与のsgRNAを含むことを回避する。各ATAD1Δクローンについての差分CRISPRスコア(dCS)を、以下のように各遺伝子について計算した。CSATAD1Δ-CSATAD1-WT。2つのdCS値の平均を合計し、「dCS複合」として提示する。一方のクローンでは「ヒット」としてスコア付けられたが、他方ではスコア付けられなかった遺伝子は、クローンのアーチファクト又は単純な実験誤差を反映する可能性がある。これらの遺伝子は、Rパッケージ「metap」(Dewey M,2020)を使用したメタ分析のために、フィッシャー法(Fisher,R.A.,1934;「logsの和」又は「カイ二乗」法としても知られる)を介して、2つのクローンのQ値(Benjamini-Hochberg補正P値)を組み合わせることによって分析においてペナルティを受けた。データを解析し、Rバージョン4及びRStudioバージョン1.1.442を使用してプロットした。
【0094】
x.BH3-プロファイリング
BH3-プロファイリングは、FACSベースの方法を使用して実施し、前述のように細胞におけるシトクロムC放出/保持を直接監視した(Ryan and Letai,Methods 2013)。
【0095】
xi.蛍光顕微鏡
SW1088細胞(EV又はATAD1-WTを発現する)を8チャンバースライド上で増殖させ、撮像の2日前にチャンバ当たり5x103個の細胞で播種した。画像化の前夜(12時間)、細胞を10 nMのボルテゾミブ(BTZ)で処理するか、又は未処理であった。翌朝、チャンバをPBSで2回洗浄し、37℃のCO2インキュベーターで20分間MitoTracker Red CMXRos(20nM)で染色した。細胞を培地で2回洗浄した後、40×及び100×対物レンズ(油浸)を備えたAxio Observer Z1イメージングシステム(Carl Zeiss)上で即座に撮像した。少なくとも30個の細胞を、各条件について撮像し、n=2の別々の実験のために繰り返した。
【0096】
xii.マウス異種移植片
SW1088細胞(EV又はATAD1-FLAGで形質導入)を、上記のように正常な培養条件下で増殖させた。細胞(3x106)をMatrigel(Corning(登録商標))と1:1で混合し、マウス1匹当たり1本の脇腹に注入した。マウスは、13~15週齢の雄のNOD/SCIDであった。腫瘍体積を、Biopticon TumorImagerを使用して隔週でモニタリングした。動物実験は、The University of Utah IACUCと一致していた。
【0097】
xiii.細菌の形質転換
クローニングのために、E.coli DH5αコンピテント細胞(New England Biolabs)を、製造業者によって提供されるマニュアルに従って形質転換し、LB寒天プレート上で、37℃で一晩増殖させた。レンチウイルスベクター及びレトロウイルスベクターのクローニングには、NEB Stableコンピテント細胞を使用した(NEB C3040I)。
【0098】
xiv.E.cloni(クローニ)細胞
クローニングのために、E cloni10Gコンピテント細胞を、製造業者(Lucigen)が提供するマニュアルに従って形質転換し、LB寒天プレート上で、37℃で一晩増殖させた。
【0099】
xv.BL21-DE3 pRIL細胞
タンパク質発現のために、pRILプラスミド及びタンパク質発現ベクターを含有するE.coli BL21(DE3)を、0.6~1.0のOD600まで、37℃の優れたブロス中で増殖させた。培養物を1mMの最終濃度でイソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)で誘導し、更に3~4時間、室温で増殖させた。
【0100】
xvi.可溶性構築物の産生
Δ1-32Msp1及びΔ1-39ATAD1:
S.cerevisiae Msp1(Δ1~32)の可溶性領域をコードする遺伝子を、ゲノムDNAからPCR増幅し、N末端6xHisタグ、続いてTEVプロテアーゼ切断部位をコードするpET28a誘導体(Novagen)にサブクローニングした。Rattus norvegicus ATAD1(Δ1-39)の可溶性領域を、ATAD1 cDNAを含有するプラスミド(GE Healthcare)からPCR増幅した。全ての挿入及び欠失を、標準的なPCR技術によって行った。部位特異的変異誘発をQuickChange PCRによって実行した。全ての構築物をDNA配列決定によって検証した。
【0101】
可溶性Msp1、ATAD1、又はそれらの変異体をコードするプラスミドを、前述のように精製した(Wohlever et al.,2017)。プラスミドを、pRILプラスミドを含有するE.coli BL21(DE3)に形質転換し、0.6~1.0のOD600まで37℃で優れたブロスで発現させ、培養物を1mMのIPTGで誘導し、更に3~4時間室温で増殖させた。細胞を遠心分離によって採取し、0.05mg/mLのリゾチーム(Sigma)、1mMのフェニルメタンスルホニルフッ化物(PMSF)及び500Uのユニバーサルヌクレアーゼ(Pierce)を補充したMsp1 Lysis Buffer(20mMのTris pH7.5、200mMのKAc、20mMのイミダゾール、0.01mMのEDTA、1mMのDTT)中に再懸濁し、超音波処理によって溶解した。上清を4℃で18,500 x gで30分間遠心分離することにより単離し、重力カラム上でNi-NTA親和性クロマトグラフィー(Pierce)により精製した。Ni-NTA樹脂を10カラム体積(CV)のMsp1 Lysis Bufferで洗浄し、次に10CVのWash Buffer(30mMのイミダゾールを含むMsp1 Lysis緩衝液)で洗浄した後、250mMのイミダゾールを補充したLysis Bufferで溶出した。可溶性ATAD1の精製には、タンパク質を安定化するためのATPの添加も含まれていた。超音波処理後、及びニッケル樹脂からの溶出後に、ATPを2mMの最終濃度まで添加した。
【0102】
タンパク質を、20mMのTris pH7.5、200mMのKAc、1mMのDTT中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE Healthcare)によって更に精製した。ピーク画分をプールし、30kDaのMWCO Amicon Ultra遠心フィルター(Pierce)中で5~15mg/mlまで濃縮し、アリコートを液体窒素中でフラッシュ凍結させ、-80℃で保存した。計算された消滅係数(Expasy)を使用して、タンパク質濃度をA280によって判定した。
【0103】
xvii.GST-SGTA及びGST-カルモジュリン:
GSTタグ付きSGTAを発現させ、前述のように精製した(Mateja et al.,2015)。元のカルモジュリンプラスミドは、Hegdeラボの一種のギフトであった(Shao and Hegde,2011)。カルモジュリンを、標準的な方法によってpGEX6p1プラスミドにクローニングした。GST-SGTA及びGST-カルモジュリンを、可溶性Msp1構築物について上記のように発現させた。細胞を遠心分離によって採取し、0.05mg/mLのリゾチーム(Sigma)、1mMのPMSF及び500Uのユニバーサルヌクレアーゼ(Pierce)を補充したSGTA Lysis Buffer(50mMのHepes pH7.5、150mMのNaCl、0.01mMのEDTA、1mMのDTT、10%のグリセロール)中に再懸濁し、超音波処理によって溶解した。上清を4℃で18,500 x gで30分間遠心分離することにより単離し、重力カラム上でGlutathione(グルタチオン)親和性クロマトグラフィー(Thermo Fisher)により精製した。樹脂を20カラム体積(CV)のSGTA Lysis Bufferで洗浄し、次いで、10mMの還元されたグルタチオンを補充した3CVのSGTA Lysis Buffer(溶解バッファ)で溶出した。タンパク質を、20mMのTris pH7.5、100mMのNaCl,0.1mMのTCEP中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(Superdex 200 Increase 10/300GL、GE Healthcare)によって更に精製した。ピーク画分をプールし、30kDa MWCO Spin Concentrator(Pierce)中で10mg/mlまで濃縮し、アリコートを液体窒素中でフラッシュ凍結させ、-80°Cで保存した。計算された消滅係数(Expasy)を使用して、タンパク質濃度をA280によって判定した。
【0104】
xviii.膜タンパク質の産生
BIM及びFis1:
ホモサピエンスBimL又はS.cerevisiae Fis1 TMD +/-5隣接アミノ酸(残基126~155)を、前述のSumoTMD構築物(Wang et al.,2010;Wohlever et al.,2017)のSec22TMDの代わりにクローニングした。これらの構築物は、N末端His6及び3xFlagタグ、並びにC末端オプシングリコシル化部位(11残基)を有する。3Cプロテアーゼ部位を、標準的なPCR法によってHisタグの直後に添加した。結果として得られる構築物は、His6-3C-3xFlag-Sumo-トロンビンBimL-Opsin及びHis6-3C-3xFlag-Sumo-トロンビン-Fis1(126~155)-Opsinである。
【0105】
SumoTMDの発現プラスミドを、pRILプラスミドを含有するE. coli BL21(DE3)に形質転換し、0.6~0.8のOD600まで37℃の優れたブロスで発現させ、培養物を0.4mMのIPTGで誘導し、更に3~4時間、20℃で増殖させた。細胞を遠心分離によって採取し、0.05mg/mLのリゾチーム(Sigma)、1mMのPMSF及び500Uのユニバーサルヌクレアーゼ(Pierce)を補充したSumoTMD Lysis Buffer(溶解緩衝液)(50mMのTris pH7.5、300mMのNaCl、10mMのMgCl2、10mMのイミダゾール、10%のグリセロール)中に再懸濁し、超音波処理によって溶解した。膜タンパク質を、n-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)を1%の最終濃度に添加することによって可溶化し、4℃で30’にわたって揺動した。溶解物を4℃で1時間、35,000 x gで遠心分離することによって洗浄し、Ni-NTA親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0106】
Ni-NTA樹脂を10カラム体積(CV)のSumoTMD Wash Buffer(洗浄緩衝液)1(50mMのTris pH7.5、500mMのNaCl、10mMのMgCl2、10mMのイミダゾール、5mMのβ-メルカプトエタノール(BME)、10%のグリセロール、0.1%のDDM)で洗浄した。次いで、樹脂を10CVのSumoTMD Wash Buffer(洗浄緩衝液)2(300mMのNaCl及び25mMのイミダゾールを除いて、Wash Buffer(洗浄緩衝液)1と同じ)及び10CVのSumoTMD Wash Buffer(洗浄緩衝液)3(150mMのNaCl及び50mMのイミダゾールとともに、Wash Buffer(洗浄緩衝液)1と同じ)で洗浄し、次いで3CVのSumoTMD Elution Buffer(溶出緩衝液)(250mMのイミダゾールを除いて、Wash Buffer(洗浄緩衝液)3と同じ)で溶出した。
【0107】
タンパク質を、50mMのTris pH7.5、150mMのNaCl、10mMのMgCl2、5mMのBME、10%のグリセロール、0.1%のDDM中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(Superdex 200 Increase 10/300GL,GE Healthcare)によって更に精製した。ピーク画分をプールし、30kDaのMWCOスピン濃縮器(Pierce)中で濃縮した。次いで、試料を3Cプロテアーゼと1:100の比率で、4℃で一晩インキュベートし、Hisタグを除去した。翌日、試料をLysis Buffer(溶解緩衝液)中で平衡化したNi-NTA樹脂に流し、3Cプロテアーゼ、Hisタグ、及び未切断タンパク質を除去した。フロースルーを液体窒素中で収集し、等分し、フラッシュ凍結し、-80℃で保管した。計算された消滅係数(Expasy)を使用して、A280によってタンパク質濃度を判定した。
【0108】
Msp1:
全長S. cerevisiae Msp1をゲノムDNAからPCR増幅し、C末端6xHisタグを有するpET21b誘導体にサブクローニングし、可溶性構築物について上記のように発現させた。細胞を超音波処理により溶解し、不溶性画分を、4℃で1時間、140,000 x gで遠心分離して採取した。1% DDMを含有するMsp1 Lysis Buffer(Bioworld)中で16時間再可溶化した後、全ての緩衝液が0.05% DDMを含有したことを除いて、洗剤可溶性上清を142,000 x gで45分間遠心分離することによって単離し、可溶性構築物について上記のようにNi-NTA親和性クロマトグラフィー及びSECにより精製した。ピーク画分を、100kDaのMWCO Amicon Ultra遠心フィルター(Millipore)中に濃縮した。計算された消滅係数(Expasy)を用いて、A280によってタンパク質濃度を判定し、液体窒素中でアリコートをフラッシュ凍結させた。
【0109】
xix.プロテオリポソームにおけるMsp1活性の再構築
リポソーム調製
酵母外側ミトコンドリア膜の脂質組成を模倣するリポソームを、記載のとおりに調製した(Kale et al.,2014)。簡単に述べると、鶏卵ホスファチジルコリン(Avanti 840051C)、鶏卵ホスファチジルエタノールアミン(Avanti 840021C)、ウシ肝臓ホスファチジルイノシトール(Avanti 840042C)、合成DOPS(Avanti 840035C)、及び合成TOCL(Avanti 710335C)のクロロホルム原料を、48:28:10:10:4のモル比で1mgのDTTと混合することにより、25mgの脂質フィルムを調製した。1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル]ニッケル塩(Avanti 790404)を2%のモル比で使用し、DOPSを10%から8%に低下させたことを除いて、ニッケルリポソームを上述のように作製した。
【0110】
クロロホルムを窒素の穏やかな蒸気下で蒸発させ、次いで真空(<1mTorr)上に一晩放置した。脂質フィルムをリポソーム緩衝液(50mMのHepes KOH pH7.5、15%のグリセロール、1mMのDTT)中に再懸濁して20mg/mLの最終濃度にし、次いで液体窒素で5回凍結融解サイクルを行った。リポソームを、60℃で200nmフィルターを通して15回押し出し、単回使用のアリコートに分配し、液体窒素中でフラッシュ凍結させた。
【0111】
プロテオリポソームの調製
全長Msp1を用いた抽出アッセイについては、1μMのMsp1、1μMのTAタンパク質(SumoTMD)、及び2mg/mLのミトコンドリアリポソームをReconstitution Buffer(再構成用緩衝液)(50mMのHepes KOH pH7.5、200mMの酢酸カリウム、7mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、10%のスクロース、0.01%のアジ化ナトリウム、及び0.1%のデオキシビッグチャップ)中に混合することによってプロテオリポソームを調製した(Zhang et al.,2013)。可溶性Msp1/ATAD1を用いた抽出アッセイのために、1μMのTAタンパク質(SumoTMD)、及び2mg/mLのニッケルリポソームをReconstitution Buffer(再構成用緩衝液)に混合することによって、プロテオリポソームを調製した。25mgのバイオビーズを添加し、試料を4℃で16時間回転させることによって洗剤を除去した。バイオビーズを除去した後、非組み込みTAタンパク質を、再構築物を過剰(5μM)GST-SGTA及びGST-カルモジュリンでインキュベートし、グルタチオンスピンカラム(Pierce #16103)に通すことによって予め洗浄し、フロースルーを収集し、すぐに変位アッセイに使用した。
【0112】
xx.抽出アッセイ
抽出アッセイは、60μLの予めクリアされたプロテオリポソーム、5μMのGST-SGTA、5μMのカルモジュリン、及び2mMのATPを含有し、最終体積をExtraction Buffer(抽出緩衝液)(50mMのHepes KOH pH7.5、200mMの酢酸カリウム、7mMの酢酸マグネシウム、2mMのDTT、0.1μMの塩化カルシウム)で200μLに調整した。試料を30℃で35分間インキュベートし、次いでグルタチオンスピンカラムに充填した。カラムをExtraction Buffer(抽出緩衝液)で4回洗浄し、20mMのグルタチオン(pH8.5)を補充した同じ緩衝液で溶出した。試料を無染色ゲル上にロードし、画像化した後、PVDF膜に移し、主要リソース表に示されるようにブロットした。再構築効率及びウエスタンブロッティングのばらつきを考慮するために、野生型Msp1を用いた新しい再構築及び変位アッセイを、各変異体Msp1と並行して行った。図は、N>3の個別の再構成を示す。「入力」レーンは、「溶出」レーンに対して5倍希釈されていることに注意されたい。
【0113】
xxi.定量化と統計解析
ウェスタンブロットバンド強度を、ImageJを使用して推定した(Schneider et al.,2012)。再構築効率及びウエスタンブロッティングのばらつきを考慮するために、野生型Msp1を用いた新しい再構築及び変位アッセイを、各Msp1変異体と並行して行った。図は、N>3の個別の再構成を示す。変位効率は、「溶出」レーンにおけるTAタンパク質の量を、「入力」レーンにおける基質の量と比較することによって定量化した。
【0114】
当業者は、本明細書に記載の方法及び組成物の特定の実施形態に対する多くの等価物を、日常的な実験のみを使用して認識するか、又は確認することができるであろう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
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