(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】インスリン抵抗性モデル
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20230720BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20230720BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230720BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230720BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20230720BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230720BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N9/88
C12Q1/02
C12N15/09 110
C12N15/60 ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578950
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021038416
(87)【国際公開番号】W WO2021262676
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武部 貴則
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌樹
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ02
4B063QR41
4B063QS16
4B065AA93X
4B065AC20
4B065CA46
(57)【要約】
生体細胞におけるインスリン応答の定量化に使用するためのインスリン抵抗性レポーターが本明細書に開示される。これらの生体細胞は、インスリン抵抗性レポーターを含む幹細胞組成物又はその誘導体であり得る。幹細胞誘導体は、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド、例えば、膵臓、脳、脂肪、筋肉、若しくは肝細胞、又はその組織、若しくはオルガノイドを含むが、これらに限定されない。また、インスリン抵抗性を調べるためのモデルとして、上記インスリン抵抗性レポーター及びこれらのインスリン抵抗性レポーターを有する細胞を使用する方法、並びにインスリン抵抗性と関連する疾患又は障害の治療に潜在的に有用である化合物をスクリーニングする方法も本明細書に開示される。インスリン抵抗性レポーターを含む細胞は、例えば非アルコール性脂肪肝疾患又は脂肪性肝炎の結果としての、肝臓のインスリン抵抗性の調査に使用することができる肝細胞又は肝臓オルガノイド組成物であり得る。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドであって、前記インスリン抵抗性レポーターが前記肝臓オルガノイドのインスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている、肝臓オルガノイド。
【請求項2】
前記インスリン依存性遺伝子が、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である、請求項1に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項3】
前記インスリン依存性遺伝子が、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項4】
前記インスリン依存性遺伝子がPCK1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項5】
前記インスリン依存性遺伝子の発現が、前記インスリン抵抗性レポーターの発現をもたらす、請求項1~4のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項6】
前記インスリン依存性遺伝子及び前記インスリン抵抗性レポーターが、バイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項7】
前記バイシストロン性エレメントが、自己切断ペプチド又はIRESである、請求項6記載の肝臓オルガノイド。
【請求項8】
前記自己切断ペプチドが、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドである、請求項7に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項9】
前記インスリン抵抗性レポーターが、CRISPRヌクレアーゼを使用して前記インスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれている、請求項1~8のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項10】
前記CRISPRヌクレアーゼがCas9である、請求項9に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項11】
前記インスリン抵抗性レポーターが1つ以上のレポーター遺伝子を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項12】
前記1つ以上のレポーター遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子若しくは発光タンパク質をコードする遺伝子、又はその両方を含む、請求項11に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項13】
前記蛍光タンパク質がmScarletを含むか、又は前記発光タンパク質がルシフェラーゼを含む、請求項12に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項14】
前記1つ以上のレポーター遺伝子が耐性マーカーを更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項15】
前記インスリン抵抗性レポーターが2つ以上のレポーター遺伝子を含み、前記2つ以上のレポーター遺伝子が1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項1~14に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項16】
前記1つ以上のバイシストロン性エレメントが、1つ以上の自己切断ペプチド又はIRESを含む、請求項15に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項17】
前記1つ以上の自己切断ペプチドが、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドを含む、請求項16に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項18】
前記肝臓オルガノイドが脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドである、請求項1~17のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項19】
前記脂肪肝オルガノイド又は前記脂肪性肝炎肝臓オルガノイドが、正常な肝臓オルガノイドと比較して多数の脂肪滴を含む、請求項18に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項20】
前記脂肪肝オルガノイド又は前記脂肪性肝炎肝臓オルガノイドが、前記肝臓オルガノイドを脂肪酸と接触させることによって生成される、請求項18又は19に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項21】
前記脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、若しくはステアリン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項20に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項22】
前記脂肪肝オルガノイド又は前記脂肪性肝炎肝臓オルガノイドが、インスリン抵抗性及び/又は2型糖尿病の表現型を示す、請求項18~21のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項23】
インスリン抵抗性が、正常な肝臓オルガノイドと比較して、AKTリン酸化の減少、インスリンに応答したPCK1、CREB1、若しくはFOXO1の発現抑制の低減、又はインスリンに応答した糖新生抑制の低減、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項22に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項24】
前記脂肪肝オルガノイド又は前記脂肪性肝炎肝オルガノイドが、正常な肝臓オルガノイドと比較して、より多くの脂肪滴、DGAT1/2の発現の増加、又は炎症誘発性サイトカインの発現及び/若しくは分泌の増加、又はそれらの任意の組み合わせを示す、請求項18~23のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項25】
前記炎症誘発性サイトカインが、TNFα、TGFb、IL6、IL8、若しくはIL1b、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項26】
前記肝臓オルガノイドが哺乳動物又はヒトの肝臓オルガノイドである、請求項1~25のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項27】
前記肝臓オルガノイドが、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、又は胚性幹細胞に由来している、請求項1~26のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項28】
前記肝臓オルガノイドが、インスリン機能不全と関連する疾患若しくは障害を有するか、又は発症するリスクがある対象からの細胞に由来している、請求項1~27のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項29】
前記インスリン機能不全と関連する疾患又は障害が、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、肥満、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項28に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項30】
前記インスリン抵抗性レポーターが、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項31】
インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドであって、前記インスリン抵抗性レポーターが、前記インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのインスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項32】
前記インスリン依存性遺伝子が、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である、請求項31に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項33】
前記インスリン依存性遺伝子が、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される、請求項31又は32に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項34】
前記インスリン依存性遺伝子がPCK1である、請求項31~33のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項35】
前記インスリン依存性遺伝子の発現が、前記インスリン抵抗性レポーターの発現をもたらす、請求項31~34のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項36】
前記インスリン依存性遺伝子及び前記インスリン抵抗性レポーターが、バイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項31~35のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項37】
前記バイシストロン性エレメントが、自己切断ペプチド又はIRESである、請求項36に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項38】
前記自己切断ペプチドが、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドである、請求項37に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項39】
前記インスリン抵抗性レポーターが、CRISPRヌクレアーゼを使用して前記インスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれている、請求項31~38のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項40】
前記CRISPRヌクレアーゼがCas9である、請求項39に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項41】
前記インスリン抵抗性レポーターが1つ以上のレポーター遺伝子を含む、請求項31~40のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項42】
前記1つ以上のレポーター遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子若しくは発光タンパク質をコードする遺伝子、又はその両方を含む、請求項41に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項43】
前記蛍光タンパク質がmScarletを含むか、又は前記発光タンパク質がルシフェラーゼを含む、請求項42に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項44】
前記1つ以上のレポーター遺伝子が耐性マーカーを更に含む、請求項41~43のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項45】
前記インスリン抵抗性レポーターが2つ以上のレポーター遺伝子を含み、前記2つ以上のレポーター遺伝子が1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項31~44のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項46】
前記1つ以上のバイシストロン性エレメントが、1つ以上の自己切断ペプチド又はIRESを含む、請求項45に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項47】
前記1つ以上の自己切断ペプチドが、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドを含む、請求項46に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項48】
前記インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、胚体内胚葉細胞、又は前腸細胞である、請求項31~47のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項49】
前記インスリン抵抗性レポーターが、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項31~48のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
【請求項50】
インスリン抵抗性レポーターであって、インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域及び3’相同領域に隣接する1つ以上のレポーター遺伝子を含む、インスリン抵抗性レポーター。
【請求項51】
前記インスリン依存性遺伝子が、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である、請求項50に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項52】
前記インスリン依存性遺伝子が、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される、請求項50又は51に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項53】
前記インスリン依存性遺伝子がPCK1である、請求項50~52のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項54】
前記1つ以上のレポーター遺伝子のうちの少なくとも1つ、及びインスリン依存性遺伝子と関連する前記5’相同領域が、バイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項50~53のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項55】
前記バイシストロン性エレメントが、自己切断ペプチド又はIRESである、請求項54に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項56】
前記自己切断ペプチドが、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドである、請求項55に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項57】
前記1つ以上のレポーター遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする遺伝子若しくは発光タンパク質をコードする遺伝子、又はその両方を含む、請求項50~56のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項58】
前記蛍光タンパク質がmScarletを含むか、又は前記発光タンパク質がルシフェラーゼを含む、請求項57に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項59】
前記1つ以上のレポーター遺伝子が耐性マーカーを更に含む、請求項50~58のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項60】
前記インスリン抵抗性レポーターが2つ以上のレポーター遺伝子を含み、前記2つ以上のレポーター遺伝子が1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている、請求項50~59のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項61】
前記1つ以上のバイシストロン性エレメントが、1つ以上の自己切断ペプチド又はIRESを含む、請求項60に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項62】
前記1つ以上の自己切断ペプチドが、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドを含む、請求項61に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項63】
前記インスリン依存性遺伝子と関連する前記5’相同領域が、配列番号6と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する核酸配列を含み、かつ/又は前記インスリン依存性遺伝子と関連する前記3’相同領域が、配列番号13と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する核酸配列を含む、請求項50~62のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項64】
前記インスリン抵抗性レポーターが、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項50~63のいずれか一項に記載のインスリン抵抗性レポーター。
【請求項65】
インスリン機能不全と関連する疾患又は障害の治療のための候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイド、又はインスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドを、前記候補化合物と接触させることと、
前記肝臓オルガノイド又は前記インスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドにおける前記インスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することと、を含む、インビトロ方法。
【請求項66】
前記インスリン機能不全と関連する疾患又は障害が、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、肥満、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記インスリン抵抗性レポーターを含む前記肝臓オルガノイドが、請求項1~30のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドである、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
前記インスリン抵抗性レポーターを含む前記インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、請求項31~49のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドである、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記インスリン抵抗性レポーターを含む前記肝臓オルガノイドが、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドである、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記肝臓オルガノイドにおける前記インスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することが、前記接触させるステップの前と比較して、AKTリン酸化の増加、インスリンに応答したPCK1、CREB1、若しくはFOXO1の発現抑制の増加、又はインスリンに応答した糖新生抑制の増加、又はそれらの任意の組み合わせを観察することを含む、請求項65~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記肝臓オルガノイドにおける前記インスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することが、前記接触させるステップの前と比較して、脂肪滴数の減少、DGAT1/2の発現の低下、又は炎症誘発性サイトカインの発現及び/若しくは分泌の減少、又はそれらの任意の組み合わせを観察することを含む、請求項65~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
対象におけるインスリン応答をモニタリングする方法であって、
インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイド、又はインスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドを前記対象に移植することと、
前記肝臓オルガノイド又は前記インスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドの前記インスリン抵抗性レポーターの発現をモニタリングすることと、を含む、方法。
【請求項73】
前記インスリン抵抗性レポーターを含む前記肝臓オルガノイドが、請求項1~30のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記インスリン抵抗性レポーターを含む前記インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、請求項31~49のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドである、請求項72又は73に記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害を有するか、又は発症するリスクがある、請求項72~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記インスリン抵抗性レポーターと前記インスリン依存性遺伝子とがバイシストロン性エレメントによって分離されるように、前記インスリン抵抗性レポーターが前記インスリン依存性遺伝子の3’側にある、請求項1~30のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド、請求項31~49のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイド、又は請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記インスリン抵抗性レポーターと前記インスリン依存性遺伝子とがバイシストロン性エレメントによって分離されるように、前記インスリン抵抗性レポーターが前記インスリン依存性遺伝子の5’側にある、請求項1~30のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイド、請求項31~49のいずれか一項に記載のインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイド、又は請求項65~75のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月23日に出願された米国仮特許出願第63/042,997号の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が後援する研究開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたDK119982の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表と共に提出されている。配列表は、2021年6月21日に作成され、最後に変更を加えられた、38,040バイトのサイズのSeqListingCHMC63_032WO.TXTという表題のファイルとして提供される。電子配列表の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
技術分野
本開示の態様は、概してインスリン応答レポーターに関する。これらのインスリン応答レポーターは、幹細胞等の細胞、又は分化細胞若しくはオルガノイド等の細胞の誘導体において、例えば、インスリン応答又はその存在若しくは欠如を検出するために、あるいは細胞のインスリン応答に影響を与える化合物をスクリーニングするために使用することができる。本開示はまた、インスリン応答レポーターを操作する方法、並びにインスリン応答レポーターを有する細胞を作製及び使用する方法も記載する。
【背景技術】
【0005】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NALFD)及び関連するメタボリックシンドロームは、ヒト集団において増加し続けており、罹患率及び死亡率の増加につながっている。肝臓のインスリン抵抗性は、心臓病等の併存症の危険因子であるNAFLDを伴うことが多い。全身のインスリン抵抗性とは対照的に、NAFLDは、非常に可変的な、遺伝的及び非遺伝的要因に依存する有害プロセスである肝臓の脂肪蓄積の増加を介して、肝臓のインスリン抵抗性を引き起こす可能性がある。しかしながら、肝臓の脂肪蓄積とインスリン抵抗性を関連付ける正確な遺伝的及び分子的機構は完全には理解されておらず、好適なヒトベースのモデルシステムの欠如によって混乱している。したがって、肝臓のインスリン抵抗性等の幅広い肝障害を研究するための堅牢で信頼性の高いモデルに対する現在の必要性が存在する。更に、インスリン抵抗性の潜在的な治療を発見するために、ヒトベースのモデルシステムを使用した改善されたスクリーニング方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドが、本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイドのインスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている。インスリン依存性遺伝子は、生体細胞で生じるインスリンの影響又はインスリンシグナル伝達経路によって調節される任意の遺伝子(及び結果として生じるタンパク質)であり得る。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である。インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つであり得る。
【0007】
また、インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドも本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのインスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている。インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、インスリン又はインスリンシグナル伝達経路に対する機能的応答が起こる任意の1つ以上の細胞型であり得るか、又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、インスリン抵抗性等の機能不全のインスリン応答と関連する疾患又は障害によって影響を受ける可能性がある。インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドでインスリン抵抗性レポーターを発現させることは、機能不全のインスリン応答と関連する疾患若しくは障害の検出、又は疾患若しくは障害の治療に有用な分子若しくは化合物の特定に役立ち得る。
【0008】
また、インスリン抵抗性レポーターも本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域及び3’相同領域に隣接する1つ以上のレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、これらのインスリン抵抗性レポーターは核酸である。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、例えば、インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域及び3’相同領域を介した相同組換えによって、インスリン依存性遺伝子でゲノムに組み込まれることが意図される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドに組み込まれる。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイド等の肝臓オルガノイドに組み込まれる。
【0009】
また、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害の治療のための候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイド、又はインスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドを、候補化合物と接触させることと、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドにおけるインスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することと、を含む。
【0010】
また、インスリン抵抗性レポーターを含む幹細胞も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つである。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれか1つから分化した胚体内胚葉細胞も本明細書に開示される。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれか1つから分化した前方前腸細胞も本明細書に開示される。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれか1つから分化したインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドも本明細書に開示される。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれか1つから分化した膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、又は肝細胞も本明細書に開示される。また、本明細書に開示される幹細胞、胚体内胚葉、又は前方前腸細胞のうちのいずれか1つから分化した肝臓オルガノイドも本明細書に開示される。
【0011】
また、インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのインスリン抵抗性を評価するインビトロ方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させることと、1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドがインスリン抵抗性を示すことを決定することと、を含む。
【0012】
また、インスリン抵抗性を治療する化合物又は組成物をスクリーニングするインビトロ方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることと、インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを化合物又は組成物と接触させることと、1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、化合物又は組成物がインスリン抵抗性を治療することができることを決定することと、を含む。
【0013】
また、本明細書に開示されるスクリーニング方法のうちのいずれか1つによって同定される化合物又は組成物も本明細書に開示される。また、本明細書に開示されるスクリーニング方法のいずれか1つによって同定される化合物又は組成物のうちのいずれか1つ以上を含む医薬組成物も本明細書に開示される。また、同定された化合物又は組成物のうちのいずれか1つを対象に投与することによって、それを必要とする対象におけるインスリン抵抗性を治療する方法も本明細書に開示される。
【0014】
また、対象におけるインスリン応答をモニタリングする方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイド、又はインスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドを対象に移植することと、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン抵抗性レポーターの発現をモニタリングすることと、を含む。
【0015】
本開示の例示的な実施形態は、以下の番号が付された実施形態において提供される:
1.インスリン抵抗性レポーターを含む、肝臓オルガノイド。
2.肝臓オルガノイドがヒト肝臓オルガノイド(HLO)である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
3.肝臓オルガノイドが人工多能性幹細胞(iPSC)から生成される、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
4.肝臓オルガノイドがヒト対象に由来するiPSCから生成される、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
5.iPSCが、最初に前方前腸細胞に分化される、実施形態3又は4の肝臓オルガノイド。
6.前方前腸細胞を一定期間凍結保存し、前方前腸細胞を肝臓オルガノイドに分化させる前に解凍する、実施形態5の肝臓オルガノイド。
7.インスリン抵抗性レポーターが、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列と、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列の各々を分離する自己切断ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列と、を含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
8.インスリン抵抗性レポーターが、レポータータンパク質をコードする配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する1つ以上の核酸配列と、レポータータンパク質をコードする配列の各々を分離する自己切断ペプチドをコードする配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する1つ以上の核酸配列と、を含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
9.レポータータンパク質が蛍光タンパク質である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
10.蛍光タンパク質がmScarletである、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
11.レポータータンパク質が発光タンパク質である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
12.発光タンパク質がルシフェラーゼである、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
13.インスリン抵抗性レポーターが、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する1つ以上の核酸配列を更に含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
14.インスリン依存性遺伝子が、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
15.インスリン依存性遺伝子がPCK1である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
16.インスリン依存性遺伝子が、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
17.インスリン依存性遺伝子と関連する配列と相同性を有する1つ以上の核酸配列が、レポータータンパク質をコードする配列及び自己切断ペプチドをコードする配列に隣接し、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と相同性を有する配列が、肝臓オルガノイドのゲノムへの組換えのための相同領域として作用する、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
18.インスリン抵抗性レポーターが、CRISPRヌクレアーゼを使用して肝臓オルガノイドのゲノムに組み込まれている、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
19.CRISPRヌクレアーゼがCas9である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
20.肝臓オルガノイドが、1つ以上の脂肪酸による肝臓オルガノイドの処理後の脂肪肝オルガノイドであり、脂肪肝オルガノイドがインスリン抵抗性を示す、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
21.1つ以上の脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイド。
22.前述の実施形態のうちのいずれか1つのインスリン抵抗性レポーター。
23.インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドの肝臓のインスリン抵抗性を評価するインビトロ方法であって、
インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、
肝臓オルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させることと、
1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、
1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、肝臓オルガノイドが肝臓のインスリン抵抗性を示すことを決定することと、を含む、方法。
24.肝臓オルガノイドを、オベチコール酸(OCA)、ピオグリタゾン、若しくはメトホルミン、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上と接触させることを更に含む、実施形態23の方法。
25.ベースライン発現レベルを定量化する前に、肝臓オルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることを更に含む、実施形態23又は24の方法。
26.ベースライン発現レベルを定量化した後、かつ肝臓オルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させる前に、肝臓オルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることを更に含む、実施形態23~25のうちのいずれか1つの方法。
27.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)によって引き起こされる肝臓のインスリン抵抗性を治療する化合物又は組成物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることと、
インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、
肝臓オルガノイドを化合物又は組成物と接触させることと、
1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、
1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、化合物又は組成物が肝臓のインスリン抵抗性を治療することができることを決定することと、を含む、方法。
28.肝臓オルガノイドが、実施形態1~21のうちのいずれか1つの肝臓オルガノイドである、実施形態23~27のうちのいずれか1つの方法。
29.インスリン抵抗性レポーターが実施形態22のインスリン抵抗性レポーターである、実施形態23~28のうちのいずれか1つの方法。
30.1つ以上の脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態23~29のうちのいずれか1つの方法。
31.肝臓オルガノイドが、肝臓のインスリン抵抗性の治療を必要とするヒト対象に由来する、実施形態23~30のうちのいずれか1つの方法。
32.インスリン抵抗性レポーターを含む、幹細胞。
33.幹細胞が人工多能性幹細胞(iPSC)である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
34.幹細胞がヒト対象に由来する、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
35.インスリン抵抗性レポーターが、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列と、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列の各々を分離する自己切断ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列と、を含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
36.インスリン抵抗性レポーターが、レポータータンパク質をコードする配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する1つ以上の核酸配列と、レポータータンパク質をコードする配列の各々を分離する自己切断ペプチドをコードする配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する1つ以上の核酸配列と、を含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
37.レポータータンパク質が蛍光タンパク質である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
38.蛍光タンパク質がmScarletである、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
39.レポータータンパク質が発光タンパク質である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
40.発光タンパク質がルシフェラーゼである、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
41.インスリン抵抗性レポーターが、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する1つ以上の核酸配列を更に含む、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
42.インスリン依存性遺伝子が、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
43.インスリン依存性遺伝子がPCK1である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
44.インスリン依存性遺伝子が、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
45.インスリン依存性遺伝子と関連する配列と相同性を有する1つ以上の核酸配列が、レポータータンパク質をコードする配列及び自己切断ペプチドをコードする配列に隣接し、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と相同性を有する配列が、肝臓オルガノイドのゲノムへの組換えのための相同領域として作用する、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
46.インスリン抵抗性レポーターが、CRISPRヌクレアーゼを使用して幹細胞のゲノムに組み込まれている、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
47.CRISPRヌクレアーゼがCas9である、前述の実施形態のうちのいずれか1つの幹細胞。
48.実施形態32~47のうちのいずれか1つの幹細胞から分化した胚体内胚葉細胞。
49.実施形態32~47のうちのいずれか1つの幹細胞から分化した前方前腸細胞。
50.実施形態32~47のうちのいずれか1つの幹細胞から分化したインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
51.インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、又は肝細胞を含む、実施形態50のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
52.インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、肝臓オルガノイドである、実施形態50又は51のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド。
53.実施形態32~47のうちのいずれか1つの幹細胞から分化した、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、又は肝細胞。
54.肝臓オルガノイドがインスリン抵抗性レポーターを含む、実施形態32~47のうちのいずれか1つの幹細胞から分化した肝臓オルガノイド、実施形態48の胚体内胚葉細胞、又は実施形態49の前方前腸細胞。
55.肝臓オルガノイドが、1つ以上の脂肪酸による肝臓オルガノイドの処理後の脂肪肝オルガノイドであり、脂肪肝オルガノイドがインスリン抵抗性を示す、実施形態54に記載の肝臓オルガノイド。
56.1つ以上の脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態55に記載の肝臓オルガノイド。
57.前述の実施形態のうちのいずれか1つのインスリン抵抗性レポーター。
58.インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのインスリン抵抗性を評価するインビトロ方法であって、
インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、
インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させることと、
1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、
1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドがインスリン抵抗性を示すことを決定することと、を含む、方法。
59.インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを、オベチコール酸(OCA)、ピオグリタゾン、若しくはメトホルミン、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上と接触させることを更に含む、実施形態58の方法。
60.ベースライン発現レベルを定量化する前に、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることを更に含む、実施形態58又は59の方法。
61.ベースライン発現レベルを定量化した後、かつインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させる前に、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることを更に含む、実施形態58~60のうちのいずれか1つの方法。
62.インスリン抵抗性を治療する化合物又は組成物をスクリーニングするインビトロ方法であって、
インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることと、
インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、
インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを化合物又は組成物と接触させることと、
1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、
1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、化合物又は組成物がインスリン抵抗性を治療することができることを決定することと、を含む、方法。
63.インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、前述の実施形態のうちのいずれか1つのインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドである、実施形態58~62のうちのいずれか1つの方法。
64.インスリン抵抗性レポーターが実施形態26のインスリン抵抗性レポーターである、実施形態58~63のうちのいずれか1つの方法。
65.1つ以上の脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態58~64のうちのいずれか1つの方法。
66.インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、インスリン抵抗性の治療を必要とするヒト対象に由来する、実施形態58~65のうちのいずれか1つの方法。
67.インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが肝臓オルガノイドであり、インスリン抵抗性が肝臓のインスリン抵抗性である、実施形態58~66のうちのいずれか1つの方法。
68.肝臓のインスリン抵抗性が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)によって引き起こされる、実施形態67の方法。
69.実施形態62~68のうちのいずれか1つの方法によって同定される化合物又は組成物。
70.実施形態69の化合物又は組成物と、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と、を含む、医薬組成物。
71.実施形態69の化合物若しくは組成物、又は実施形態70の医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるインスリン抵抗性を治療する方法。
72.化合物又は組成物又は医薬組成物が、経腸、経口、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、又は皮下投与される、実施形態71の方法。
73.インスリン抵抗性の治療を必要とする対象におけるインスリン抵抗性の治療に使用するための、実施形態62~68のうちのいずれか1つの方法によって同定される組成物又は組成物。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に記載の特徴に加えて、追加の特徴及び変形例は、以下の図面及び例示的な実施形態の説明から容易に明らかになるであろう。これらの図面は実施形態を描写しており、範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0017】
【
図1A】ヒト肝臓オルガノイド(HLO)形成の概略図の実施形態を示す。
【
図1B】全培養20日目のHLOの明視野像の実施形態を示す。
【
図1C】アルブミン(ALB)、肝細胞核因子4アルファ(HNF4)、E-カドヘリン、及びDAPIで染色された全培養20日目のHLOの免疫蛍光画像の実施形態を示す。
【
図2A】HLOにおける肝細胞の単一細胞RNA配列決定(scRNA-seq)プロファイリングの実施形態を示す。特徴的な肝細胞マーカーであるALB、アポリポタンパク質(APOE)、コラーゲン1型アルファ1(COL1A1)、及び血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRA)の相対的な単一細胞発現レベルが示されている。
【
図2B】肝星細胞、胆道細胞、及び胆管細胞の特徴的なマーカーである、ALB、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、COL1A1、アクチンアルファ2(ACTA2)、骨形成タンパク質4(BMP4)、ケラチン19(KRT19)、無翅型6(WNT6)、及びクロモグラニンA(CHGA)の相対的な単一細胞発現レベルの実施形態を示す。
【
図3A】肝臓インスリン応答の概略図の実施形態を示す。
【
図3B】HLOにおけるインスリン反応に必要な受容体/シグナル伝達分子の発現の実施形態を示す。インスリン受容体基質1(IRS1)、インスリン受容体基質2(IRS2)、及びインスリン受容体(INSR)の相対的な単一細胞発現レベルが示されている。
【
図3C】インスリン応答性をアッセイするための候補レポーター遺伝子の実施形態を示す。
【
図4A】HLOにおけるインスリン処理に応答したAKTリン酸化の実施形態を示す。
【
図4B】HLOにおけるインスリン処理に応答した糖新生調節遺伝子発現の抑制の実施形態を示す。フォークヘッドボックスO1(FOXO1)、CAMP応答エレメント結合タンパク質1(CREB1)、TFE1、及びホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1(PCK1)の相対的な発現レベルが示されている。
【
図4C】HLOにおけるインスリン処理に応答した脂質生合成調節遺伝子発現の誘導の実施形態を示す。ステロール調節エレメント結合タンパク質1c(SREBP1C)、脂肪酸シンターゼ(FASN)、ATP-クエン酸リアーゼ(ACLY)、及びアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)の相対的な発現レベルが示されている。
【
図5A】インスリン応答を可視化及び定量化するためにCRISPR/Cas9を使用してPCK1レポーターiPSCの確立の実施形態を示す。
【
図5B】iPSCクローンへのレポーター構築物の組み込みを確認する実施形態を示す。
【
図5C】PCK1レポーター構築物の組み込み後に細胞の形態又は増殖の変化が観察されないことを示す実施形態を示す。
【
図6A】HLOにおけるcAMP処置後のPCK1依存性mScarlet蛍光(糖新生に対応する)の上方制御、及びインスリン処置後のPCK1依存性蛍光の下方制御を示す免疫蛍光画像の実施形態を示す。
【
図6B】HLOにおけるcAMP処理後のPCK1依存性ルシフェラーゼ発光(糖新生に対応する)の上方制御及びインスリン処理後のPCK1依存性ルシフェラーゼ発光の下方制御の実施形態を示す。
【
図6C】インビトロイメージングによるHLOにおけるPCK1-ルシフェラーゼ発光の検出の実施形態を示す。HLOを±cAMP及び±インスリンで処理して、糖新生及びインスリン刺激を調節した。PCK1レポーターで遺伝子編集されなかったHLOは、発光を示さなかった。
【
図6D】
図6Cのインビトロイメージングで検出されたHLOにおけるPCK1-ルシフェラーゼ発光の定量化の実施形態を示す。
【
図6E】以前にインスリンを枯渇させたHLOにおけるPCK1-ルシフェラーゼ発光に対する異なるインスリン濃度(インスリン対照なし、10nM、100nM、又は1000nM)の影響を試験する実施形態を示す。PCK1レポーターのルシフェラーゼ活性は、インスリン刺激に応答して減少した。
【
図6F】以前にインスリンを枯渇させたHLOにおけるPCK1-ルシフェラーゼ発光に対する異なるインスリン処理時間(インスリン対照なし、1時間、2時間、又は3時間)の影響を試験する実施形態を示す。PCK1レポーターのルシフェラーゼ活性は、1時間の処理後に減少した。
【
図6G】以前にインスリンを枯渇させたHLOにおけるcAMP処理の効果を確認する実施形態を示す。HLOは、24時間cAMPで処理するか、24時間のcAMPに続いて3時間インスリンで処理した後、イメージングを行った。PCK1レポーターのルシフェラーゼ活性は、cAMP処理によって増加され、インスリン刺激によって阻害された。
【
図7A】オレイン酸処理を使用した脂肪肝HLO誘導の概略図の実施形態を示す。
【
図7B】オレイン酸を使用して生成された脂肪肝誘導HLOにおける脂肪滴及び持続的PCK1活性化を示す免疫蛍光画像の実施形態を示す。
【
図7C】300μMのオレイン酸で処理した対照HLO又は脂肪性肝炎HLO(sHLO)におけるNMRによるトリグリセリドの定量化の実施形態を示す。
【
図7D】脂肪滴形成に関連する遺伝子発現解析の実施形態を示す。ジアシルギセロールとアシル-CoAからのトリグリセリドの形成を触媒するDGAT1及びDGAT2の上方制御がsHLOで検出された。
【
図7E】対照HLO又はsHLOにおける炎症誘発性サイトカイン遺伝子の発現及び分泌の分析の実施形態を示す。TNFa、TGFb、IL6、及びIL8の遺伝子発現、並びにIL1bの分泌を試験した。これらの炎症誘発性サイトカインは、sHLOで均一に上方制御された。
【
図7F】インビトロイメージングで検出されたように、sHLOで上方制御されたPCK1-ルシフェラーゼ活性の実施形態を示す。
【
図7G】脂肪肝sHLO対対照HLOにおけるルシフェラーゼ発光(相対及び絶対)及び定量的RT-PCRによって測定されるPCK1発現の定量化の実施形態を示す。sHLOは、PCK1の発現及び活性の増加を示した。
【
図7H】sHLO対対照HLOにおけるグルコース産生の定量化の実施形態を示す。sHLOにおけるPCK1活性の上方制御は、グルコース産生の促進を伴っていた。
【
図7I】sHLO及び対照HLOにおけるインスリンシグナル経路の分析の実施形態を示す。AKTのリン酸化はsHLOで阻害された。
【
図7J】sHLOにおけるインスリン応答性の分析の実施形態を示す。インスリン経路の下流の標的遺伝子の遺伝子発現を定量化した。PCK1、CREB1、及びFOXO1のインスリン応答性は、sHLOでは抑制されなかった。
【
図7K】sHLOにおけるPCK1のインスリン応答解析の実施形態を示す。sHLOのPCK1はインスリンに応答しなかった。
【
図7L】sHLOにおける糖新生に対するインスリン応答の解析の実施形態を示す。sHLOにおけるグルコース産生は、インスリン刺激の影響を受けなかった。
【
図8A】ピオグリタゾン(PIO)及びメトホルミン(MET)と比較して、オベチコール酸(OCA)で処理された脂肪肝HLOにおける脂肪蓄積の減少の代表的な免疫蛍光画像及び定量化の実施形態を示す。
【
図8B】OCA、PIO、及びMETで処理された脂肪肝HLOにおける炎症関連タンパク質の定量化の実施形態を示す。腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、核因子カッパBサブユニット1(NFKB1)、及び核因子カッパBサブユニット2(NFKB2)の相対的な遺伝子発現が示されている。
【
図8C】OCA処理後の脂肪肝HLOにおけるインスリン応答性の回復の実施形態を描写する。
【
図8D】OCAによる処理後の脂肪肝HLOにおける糖新生及び脂質生合成に関与する代表的な遺伝子に対するインスリン応答性の回復の実施形態を示す。FOXO1、CREB、SREBP1C、及びFASNの相対的な遺伝子発現が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
正常な細胞では、インスリンによる刺激は一般に、糖新生の速度を低下させ、脂質生合成の速度を増加させる。これは、インスリンが細胞表面のインスリン受容体に結合し、AKTがリン酸化されることによるシグナル伝達経路の活性化によって起こる。逆に、インスリンレベルの低下及び/又はcAMP若しくはグルカゴンのいずれかの存在は、糖新生の上方制御をもたらす。しかしながら、細胞はインスリン抵抗性を発症し、インスリンによって混乱しにくい糖新生の恒常的な調節不全を経験する可能性がある。このインスリン抵抗性の現象は、何百万人もの個人に影響を与える重大な医学的負担であり、特に糖尿病前症又は2型糖尿病だけでなく、他の代謝障害とも関連している。
【0019】
本開示は、概して、細胞内で発現させて、細胞内のインスリン応答並びに関連する糖新生及び/又は脂質生合成を定量化するための効率的かつ確実な方法を提供することができるインスリン抵抗性レポーターに関する。これは、例えば、インスリンに対する細胞の相対的な感受性を評価する、又は細胞が示すインスリン感受性若しくは抵抗性に影響を与える化合物をスクリーニングする、迅速なプロセスを提供する。細胞は患者に由来する可能性があり、個別化医療の機会が開かれる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドである。全ての生体細胞はインスリンを使用するが、顕著な細胞型は、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋肉細胞、又は肝細胞等の、比較的大量のエネルギーを消費する細胞、又はグルコースを貯蔵及び/若しくは産生する細胞である。生体器官の形態に非常によく似た三次元細胞構造であるオルガノイドの生成方法の開発は、自然の生物学的機能をより全体的に表す組織の研究も可能にする。インスリン抵抗性レポーターは、これらの細胞型におけるインスリン機能を調査するために、これらの細胞、組織、又はオルガノイドのいずれかに対して操作され得ることが想定される。
【0021】
哺乳類における糖新生の主要な場所は肝臓であるため、肝臓に影響を与える疾患は、インスリンシグナル伝達経路、糖新生、及び脂質生合成を含む更なる合併症を引き起こす可能性がある。脂肪肝(例えばNAFLD又はNASH)と糖尿病との併存症は十分に認識されている。したがって、これら及び他の関連疾患に関連する肝機能の理解を深めること、並びにこれらの疾患を診断及び治療するためのモデルに対する高い必要性が存在する。
【0022】
したがって、いくつかの実施形態において、オルガノイドは、ヒト肝臓オルガノイド(HLO)等の肝臓オルガノイドである。HLOは多能性幹細胞(PSC)から生成することができ、PSC由来のオルガノイドは、間葉系細胞、星状細胞、胆道細胞、及び胆管細胞を含む、肝細胞以外の肝臓組織形態及び追加の細胞型を構成するため、結果として得られる肝臓オルガノイドは、肝細胞又は成体幹細胞由来の「オルガノイド」の従来の二次元又は三次元培養よりも優れていることが証明されている。したがって、これらのPSC由来のHLOは、代謝、インスリン調節、及び炎症と関連する疾患を調査するための優れたモデルである。いくつかの実施形態において、これらのHLOは、インスリン抵抗性レポーター(本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つ等)を発現するように遺伝子操作することができ、インビトロで天然のヒト肝臓インスリン応答を再現するためのモデルとして使用することができる。いくつかの実施形態において、脂肪肝表現型を示すように、これらのHLOを更に操作することができる。正常及び脂肪肝オルガノイド機能を比較することにより、ヒト肝臓のインスリン抵抗性を評価するためのアッセイが更に記載される。
用語
【0023】
以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面では、文脈上別段の指示がない限り、典型的には、類似の記号は類似の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定することを意味するものではない。本明細書に提示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に一般に記載され、図に示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、及び設計することができ、それらは全て、本明細書に明示的に企図されることが容易に理解されよう。
【0024】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者による本開示に照らして読まれたときに一般に理解されるのと同じ意味を有する。本開示の目的のために、次の用語を以下に説明する。
【0025】
本明細書の開示は、多くの実施形態を説明するために肯定的な言葉を使用している。本開示はまた、物質又は材料、方法ステップ及び条件、プロトコル、又は手順等の主題が完全に若しくは部分的に除外される実施形態を含む。
【0026】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0027】
「約」は、参照する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量(amount)、重量又は長さに対し10%と同程度に変動する量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量又は長さを意味する。
【0028】
この明細書全体を通して、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと」という言葉は、記載されたステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素のグループを包含することを意味するが、いかなる他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素のグループも排除しないことを意味することが離解されよう。「からなる(consisting of)」は、語句「からなる」が続く全てを含むことを意味する。そのため、語句「からなる」は、列挙された要素が必要であり(required)、又は必須(mandatory)であり、その他の要素が存在し得ないことを示す。「本質的にからなる(consisting essentially of)」とは、この語句の前に列挙されたあらゆる要素の包含を意味しており、他の要素は、この列挙された要素に関して本開示で明示される活性若しくは作用を妨げない又はこの活性若しくは作用に寄与しないものに限定される。したがって、「本質的にからなる」という句は、列挙された要素が必要であり(required)、又は必須(mandatory)であるが、その他の要素は任意選択的であり、列挙された要素の活性若しくは作用に実質的な影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよく、又は存在しなくてもよいことを示す。
【0029】
本明細書で使用される「個体」、「対象」、又は「患者」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類、又は鳥、例えば、ニワトリ、並びに他の脊椎動物又は無脊椎動物を意味する。「哺乳動物」という用語は、通常の生物学的意味で使用される。したがって、これには、具体的には、サル(チンパンジー、類人猿、サル)及びヒトを含む霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ラット、マウス、モルモット等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される「有効量」又は「有効用量」という用語は、明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、観察可能な効果をもたらす記載された組成物又は化合物のその量を指す。現在開示されている主題の活性組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象及び/又は用途に対して所望の応答を達成するのに有効な量の活性組成物又は化合物を投与するように変えることができる。選択される投薬量レベルは、組成物の活性、配合物、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療される状態の重症度、及び治療される対象の身体的状態並びに病歴が挙げられるが、これらに限定されない様々な因子に依存するであろう。いくつかの実施形態において、最小用量が投与され、用量制限毒性がない場合、用量は最小有効量に増量される。本明細書では、有効用量の決定及び調整、並びにそのような調整をいつどのように行うかの評価が企図されている。
【0031】
本明細書で使用される「機能」及び「機能的」という用語は、本明細書に照らして理解されるような明白で通常の意味を有し、生物学的、酵素的、又は治療的機能を指す。
【0032】
本明細書で使用される「阻害する」という用語は、本明細書に照らして理解されるようなその一般的かつ通常の意味を有し、生物学的活性の減少又は防止を指すことができる。減少は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは100%であるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、又は約それ以下であるパーセンテージ、あるいは前述の値のうちのいずれか2つによって定義される範囲内にある量によるものであり得る。本明細書で使用される場合、「遅延」という用語は、明細書に照らして理解されるような一般的かつ通常の意味を有し、生物学的事象の、そうでない場合に予想されるよりも遅い時間への遅れ、延期、又は延期を指す。遅延は、約0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%であるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、若しくは約それ以下であるパーセンテージ、又は前述の値のうちのいずれか2つによって定義される範囲内にある量の遅延であり得る。阻害及び遅延という用語は、必ずしも100%の阻害又は遅延を示すとは限らない。部分的な阻害又は遅延が実現され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、明細書に照らして理解されるような一般的かつ通常の意味を有し、(1)最初に産生されたとき(自然界及び/又は実験環境で)に、それが関連付けられた構成成分の少なくともいくつかから分離されている、及び/又は(2)人間の手によって産生、調製、及び/又は製造されたときにそれが関連付けられた成分の少なくともいくつかから分離されている、物質及び/又は実体を指す。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に関連していた他の成分の10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%、実質的に100%、若しくは100%と等しい、約前述の値である、少なくとも前述の値である、少なくとも約前述の値である、前述の値以下である、又は約前述の値以下であるもの(又は前述の値を含む及び/又はまたがる範囲)から分離され得る。いくつかの実施形態において、単離された薬剤は、80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、実質的に100%、又は100%純粋と等しい、約前述の値である、少なくとも前述の値である、少なくとも約前述の値である、前述の値以下である、又は約前述の値以下(又は前述の値を含む及び/又はまたがる範囲)である。本明細書で使用される場合、「単離された」物質は、「純粋」であり得る(例えば、他の成分を実質的に含まない)。本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、多細胞生物又は組織に含まれない細胞を指してもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「インビボ」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を与えられ、組織抽出物又は死んだ生物とは対照的に、生きている生物、通常は動物、ヒトを含む哺乳動物、及び植物内での方法の実施を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「エクスビボ」は、明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を与えられ、自然条件のほとんど変化のない生体外での方法の実行を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を与えられ、生物学的条件の外、例えばペトリ皿又は試験管内での方法の実施を指す。
【0037】
本明細書で使用される「核酸」又は「核酸分子」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)等のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、自然に細胞内に現れるもの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成されたフラグメント、及びライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用によって生成されたフラグメントを指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNA及びRNA等)であるモノマー、又は天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドのエナンチオマー形態)、又は両方の組み合わせから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分及び/又はピリミジン若しくはプリン塩基部分に変化を有することができる。糖修飾には、例えば、1つ以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、及びアジド基による置換が含まれるか、又は糖をエーテル若しくはエステルとして官能化することができる。更に、糖部分全体を、アザ糖及び炭素環式糖類似体等の立体的並びに電子的に類似した構造に置き換えることができる。塩基部分の修飾の例としては、アルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリン若しくはピリミジン、又は他の周知の複素環式置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合又はそのような結合の類似体によって結合することができる。ホスホジエステル結合の類似体としては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、又はホスホルアミデートが挙げられる。「核酸分子」という用語はまた、いわゆる「ペプチド核酸」を含み、これは、ポリアミド骨格に結合した天然に存在する又は修飾された核酸塩基を含む。核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれかであり得る。「オリゴヌクレオチド」は、核酸と互換的に使用することができ、二本鎖若しくは一本鎖のDNA又はRNAのいずれかを指すことができる。核酸(単数又は複数)は、様々な生物学的システムにおける核酸(単数又は複数)の増幅及び/若しくは発現に使用することができる核酸ベクター又は核酸構築物(例えば、プラスミド、ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バクテリオファージ、コスミド、フォスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、又はヒト人工染色体(HAC))中に含まれ得る。典型的には、ベクター又は構築物はまた、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インデューサー、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、複製起点、クローニング部位、多重クローニング部位、制限酵素部位、エピトープ、レポーター遺伝子、選択マーカー、抗生物質選択マーカー、標的化配列、ペプチド精製タグ、若しくはアクセサリー遺伝子、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されないエレメントも含有するであろう。
【0038】
核酸又は核酸分子は、異なるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする1つ以上の配列を含むことができる。これらの1つ以上の配列は、同じ核酸若しくは核酸分子内で隣接して、あるいは、例えばリンカー、リピート若しくは制限酵素部位間の余分な核酸、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、若しくは300の塩基長、又は前述の長さのうちのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の長さであるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、あるいは約それ以下である、任意の他の配列と結合することができる。本明細書で使用される核酸に関する「下流」という用語は、明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、核酸が二本鎖である場合、コード化配列(センス鎖)を含有する鎖上の前の配列の3’末端の後ろにある配列を指す。本明細書で使用される核酸に関する「上流」という用語は、明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、核酸が二本鎖である場合、コード化配列(センス鎖)を含有する鎖上の後続の配列の5’末端の前にある配列を指す。本明細書で使用される核酸に関する「グループ化」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、直接若しくは、例えばリンカー、リピート若しくは制限酵素部位間の余分な核酸、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、若しくは300の塩基長、あるいは、前述の長さのうちのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の長さであるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、又は約それ以下である、任意の他の配列と近接して生じるが、一般に、機能的若しくは触媒的ポリペプチド、タンパク質、又はタンパク質ドメインをコードする配列間とは生じない2つ以上の配列を指す。
【0039】
本明細書に記載の核酸は、核酸塩基を含む。一次、標準、天然、又は未修飾の塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、及びウラシルである。他の核酸塩基としては、プリン、ピリミジン、修飾核酸塩基、5-メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、イノシン、7-メチルグアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ブロモウラシル、イソグアニン、イソシトシン、アミノアリル塩基、色素ラベル付け塩基、蛍光塩基、又はビオチンラベル付け塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書に照らして理解されるそれらの一般的かつ通常の意味を有し、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸から構成される高分子を指す。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質の多くの機能は当技術分野において既知であり、酵素、構造、輸送、防御、ホルモン、又はシグナル伝達が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、常にではないが、多くの場合、核酸テンプレートを使用してリボソーム複合体によって生物学的に生成されるが、化学合成も利用できる。核酸テンプレートを操作することにより、2つ以上のペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質の置換、欠失、短縮、付加、複製、又は融合等のペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質変異を実行することができる。これらの2つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の融合は、同じ分子内で隣接して、あるいは、例えばリンカー、リピート、エピトープ、若しくはタグ間の余分なアミノ酸、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、若しくは300の塩基長、又は、前述の長さのうちのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の長さであるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、あるいは約それ以下である、任意の他の配列と結合することができる。本明細書で使用されるポリペプチドに関する「下流」という用語は、明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、前の配列のC末端の後ろにある配列を指す。本明細書で使用されるポリペプチドに関する「上流」という用語は、明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、後続の配列のN末端の前にある配列を指す。
【0041】
本明細書で使用される任意の所与の物質、化合物、又は材料の「純度」という用語は、仕様に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、予想される存在量に対する物質、化合物、又は材料の実際の存在量を指す。例えば、物質、化合物、又は材料は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%純粋であり、その間の全ての小数を含む。純度は、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、脂質、細胞膜、細胞破片、小分子、分解産物、溶媒、担体、ビヒクル、若しくは汚染物質、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない不必要な不純物の影響を受ける場合がある。いくつかの実施形態において、物質、化合物、又は材料は、宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸、プラスミドDNA、汚染ウイルス、プロテアソーム、宿主細胞培養成分、プロセス関連成分、マイコプラズマ、発熱物質、細菌内毒素、及び外来性感染性因子を実質的に含まない。純度は、電気泳動、SDS-PAGE、キャピラリー電気泳動、PCR、rtPCR、qPCR、クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、分光法、UV-可視分光法、赤外線分光法、質量分析法、核磁気共鳴、重量測定、若しくは滴定、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない技法を使用して測定することができる。
【0042】
本明細書で使用される任意の所与の物質、化合物、又は材料の「収率」という用語は、仕様に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、予想される存在量に対する物質、化合物、又は材料の実際の総量を指す。例えば、物質、化合物、又は材料の収率は、予想される総量の80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、若しくは100%であるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、又は約それ以下であり、その間の全ての小数を含む。収率は、反応又はプロセスの効率、望ましくない副反応、分解、投入物質、化合物、若しくは材料の品質、又は製造の任意のステップ中での所望の物質、化合物、若しくは材料の損失によって影響を受ける場合がある。
【0043】
本明細書で使用される「インスリン」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、体の細胞におけるグルコース取り込みを調節する主要な代謝ホルモンを指す。インスリンは通常、細胞表面に見られる膜貫通インスリン受容体(INSR)タンパク質と相互作用する。受容体へのインスリンの結合は、肝細胞における糖新生、筋肉及び脂肪細胞等の細胞における血糖の取り込み、糖新生の下方制御、及び脂質生合成の上方制御を含むがこれらに限定されない影響を与えるシグナル伝達経路を誘導する。いくつかの実施形態において、インスリンとの接触又はインスリンによる処理を含む方法は、インスリン、インスリンアスパルト、インスリングルリシン、インスリンリスプロ、インスリンイソファン、インスリンデグルデク、インスリンデテミル、インスリン亜鉛、又はインスリングラルギンを含むがこれらに限定されないインスリン誘導体又はその模倣物を用いて行うこともできる。加えて、バナジウム、ビグアニド、メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミン、チアゾリジンジオン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、トログリタゾン、トリミドン、スルホニル尿素、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリクラジド、グリクロピラミド、グリキドン、メグリチニド、レパグリニド、ナテグリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、ミグリトール、アカルボース、ボグリボース、インクレチン、グルカゴン様ペプチド1、グルカゴン様ペプチド作動薬、エクセナチド、リラグルチド、タスポグルチド、リキシセナチド、セマグルチド、デュラグルチド、胃抑制ペプチド、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、セプタグリプチン、テネリグリプチン、ゲミグリプチン、プラムリンチド、ダパグリフロジン、カナパグリフロジン、エンパグリフロジン、又はレモグリフロジンを含むがこれらに限定されない、グルコースの代謝及び/若しくは調節、インスリン感受性に影響を有する、又は糖尿病の治療に使用される、他の化合物又は組成物も、代替品として、あるいは本明細書に列挙されるインスリン又はその誘導体若しくは模倣物と組み合わせて使用することができる。
【0044】
本明細書で使用される「インスリン応答性」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、インスリンを生成する、インスリンと相互作用する、又はインスリンに反応する細胞、組織、若しくはオルガノイドを指す。インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドには、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、若しくは肝細胞、又はそれらの細胞のうちの1つ以上を含む任意の組織又はオルガノイドが含まれるが、これらに限定されない。これらの細胞又は組織の機能不全のインスリン応答(インスリン抵抗性又は過敏症)は、糖尿病、高インスリン血症、体重増加、高血圧、高血糖症、脂質異常症、又は非アルコール性脂肪肝疾患(NALFD)等の炎症性疾患を含むがこれらに限定されない数多くの疾患又は障害を患者において引き起こし得るか又は原因になり得る。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを使用する本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つが、本明細書に列挙される細胞、又はその組織若しくはオルガノイドに適用される。更に、他の実施形態において、本明細書に記載の幹細胞又は幹細胞組成物のうちのいずれか1つを、本明細書に列挙される細胞、又はその組織若しくはオルガノイドのうちのいずれか1つに分化させることができる。
【0045】
本明細書において使用される用語「インスリン抵抗性」は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、インスリンに対する細胞の感受性が低下する現象を指す。これは、インスリンが個体の膵臓によって内因的に生成され得るか、又は治療のために外因的に投与され得る個体にも当てはまる。過度の血糖値及び/又はインスリンの血中レベルの上昇(膵臓が高い血糖値に反応することが原因で発生する場合もある)は、正常なレベルのインスリン放出に対する細胞の応答性を低下させる可能性がある。これは特に前糖尿病及び2型糖尿病につながる可能性があるが、インスリン抵抗性は、メタボリックシンドローム、脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、肥満、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、高血糖症、高インスリン血症、又は脂質異常症等の他の疾患及び障害と関連している。更に、インスリン抵抗性は、一般的には1型糖尿病の主な原因ではないが、1型糖尿病患者もインスリン抵抗性を発症する可能性がある。
【0046】
本明細書で使用される「インスリン抵抗性レポーター」という用語は、本明細書に照らして理解されるような一般的かつ通常の意味を有し、インスリンレベル、インスリン依存性経路の活性、又はインスリンの活性によって影響を受ける任意の標的若しくは経路における変化に反応し、上記反応に従って検出可能な影響を示す、生物学的に関連する構築物を指す。この用語は、レポーターとして直接作用する場合もしない場合もあるが、レポーターの機能を実行するタンパク質に翻訳されるか、又は直接タンパク質に適用される核酸構築物に適用され得ることを当業者は理解するであろう。当技術分野で一般的に使用され、本明細書で使用される例示的なレポーターには、従来の顕微鏡及び他のデバイスで容易に捕捉することができる光を放出するレポーターが含まれる。しかしながら、刺激に応答して化学反応を誘導する化学レポーター(例えば、青白色スクリーニング)又は選択マーカーレポーター(例えば、抗生物質耐性)等の当技術分野で既知の他のレポーターも、他のレポーターと組み合わせて又はその代用として、同様に使用され得ることが想定される。本明細書に開示されるように、インスリン抵抗性レポーターを生成するための1つの手法は、1つ以上のレポーターの発現をインスリン関連経路に関与するタンパク質の発現に機能的に結びつけることである。この場合、インスリン関連経路に関与するタンパク質の発現の調節(発現の上方制御又は下方制御)も、レポーターの同じ調節につながる。
【0047】
本明細書で使用される「インスリン抵抗性レポーター」という用語は、インスリン抵抗性の現象のみを検出するレポーターに限定されないことを理解されたい。代わりに、「インスリン抵抗性レポーター」は、インスリンの活性、発現、量、又は機能(インスリン感受性を含む)の任意の調節に応答して検出可能な影響を示し得るレポーター構築物の任意の実施形態を包含することを意図している。本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターの適用のいくつかの非限定的な例には、生理学的な、正常な条件下でのインスリン活性のモデル化、インスリン抵抗性のモデル化、インスリン過敏症のモデル化、及び対象の移植後のモニタリングが含まれる。「インスリン応答レポーター」という用語は、本明細書では「インスリン抵抗性レポーター」と互換的に使用される。
【0048】
本明細書で使用される「インスリン依存性遺伝子」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、インスリン関連経路に関与する任意の遺伝子(及びそれぞれ発現されるタンパク質)を指す。この遺伝子は、インスリンシグナル伝達カスケードに関与している可能性があり、インスリンがインスリン受容体に結合すると、PCK1等の特定の代謝酵素の活性の活性化又は阻害が引き起こされ、それにはタンパク質の翻訳後修飾(AKTのリン酸化等)又は調節遺伝子の発現の変化も伴う場合がある。糖新生及び脂質生合成は、どちらも細胞内のインスリンシグナル伝達の影響を受けるため、これら2つの代謝プロセスを調節する又は実行する遺伝子及びタンパク質は、インスリン依存性遺伝子のカテゴリーに含まれる。任意の1つのインスリン依存性遺伝子をインスリン抵抗性レポーターに作動可能に連結することにより、インスリン依存性遺伝子の測定、及びインスリン刺激に応答したインスリン依存性遺伝子の存在量若しくは機能の任意の変化、又はその欠如の検出が可能になることを理解されたい。当業者は、特定のインスリン依存性遺伝子を使用することの意図された結果を理解するであろうことが想定される。例えば、糖新生に関与するタンパク質は、インスリンに応答して発現の減少を示すと予想されるが、脂質生合成に関与するタンパク質は、インスリンに応答して発現が増加すると予想される。
【0049】
本明細書で使用される「バイシストロン性エレメント」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、上記バイシストロン性エレメントに隣接するコード配列に基づいて、2つのタンパク質の融合物の生成ではなく、2つの別個のタンパク質の発現をもたらす遺伝子配列を指す。自己切断ペプチド及び内部リボソーム侵入部位(IRES)の2つの主要なバイシストロン性エレメントが一般的に知られている。自己切断ペプチドは、特定のアミノ酸配列を利用して、配列の2つのアミノ酸間のペプチド結合形成のリボソームスキッピングをもたらす。これにより、翻訳後に結合していない2つのタンパク質が生じる。周知の自己切断ペプチドには、T2A、P2A、E2A、及びF2A配列が含まれる。IRESは、通常の5’キャップなしでリボソームを動員するのに十分な二次構造を形成するRNA配列を含む。これらのバイシストロン性エレメントのタイプはどちらも、同じmRNAから生じるため、2つ以上の別個のタンパク質の発現が望ましい場合、及び2つ以上の別個のタンパク質の相対的レベルが概して同等に維持される場合に有用である。本明細書に開示されるように、インスリン抵抗性レポーターのレベルの測定によりインスリン依存性遺伝子のレベルに対する推論が可能になるように、インスリン依存性遺伝子とインスリン抵抗性レポーターとの間にバイシストロン性エレメントを配置して、両方の成分の同等の発現を誘導することができる。更に、2つ以上のレポーター遺伝子の間にバイシストロン性エレメントを配置して、複数の検出手法が可能になるようにすることができる(例えば、蛍光及び発光)。
【0050】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」は、明細書に照らして理解されるようなその明白で通常の意味を有し、用いられる投与量及び濃度で細胞又は哺乳動物に曝露されている細胞又は哺乳動物に対して無毒であるか、又は許容可能なレベルの毒性を有する担体、賦形剤、及び/又は安定剤を指す。本明細書で使用される「薬学的に許容される」「希釈剤」、「賦形剤」、及び/又は「担体」は、本明細書に照らして理解されるようなそれらの明白かつ通常の意味を有し、ヒト、ネコ、イヌ、又は他の脊椎動物宿主への投与と適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むことを意図している。典型的には、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/又は担体は、ヒト並びにネコやイヌ等の非ヒト哺乳動物を含む動物で使用するために、連邦政府、州政府、又は他の規制当局の規制当局によって承認されるか、又は米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に記載されている。希釈剤、賦形剤、及び/又は「担体」という用語は、医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指すことができる。そのような医薬希釈剤、賦形剤、及び/又は担体は、石油、動物、植物又は合成由来のものを含む、水及び油等の無菌液体であり得る。水、生理食塩水、並びにデキストロース及びグリセロールの水溶液は、特に注射可能な溶液のために、液体希釈剤、賦形剤、及び/又は担体として用いることができる。好適な医薬希釈剤及び/又は賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等を含む。生理学的に許容される担体の非限定的な例は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体はまた、アスコルビン酸等の抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、アミノ酸、グルコース、マンノース、デキストリン等の炭水化物、EDTA等のキレート剤、マンニトールやソルビトール等の糖アルコール、ナトリウム等の塩形成対抗剤、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤、PLURONICS(登録商標)のうちの1つ以上を含み得る。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤、増量剤、乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、徐放性製剤等の形態をとることができる。製剤は、投与様式に適合している必要がある。
【0051】
抗凍結剤は、大きな氷の結晶の形成を防ぐことにより、低温凍結保存の効率及び収率を向上させるための細胞組成添加剤である。抗凍結剤には、DMSO、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、トレハロース、ホルムアミド、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、グリセロール3-リン酸、プロリン、ソルビトール、ジエチルグリコール、スクロース、トリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、グリコール、又はヒドロキシエチルスターチが含まれるが、これらに限定されない。抗凍結剤は、細胞の解凍後の生存率を高めるための栄養素(例えば、アルブミン、血清、ウシ血清、ウシ胎児血清[FCS])等の他の成分を含む凍結保存培地の一部として使用され得る。これらの凍結保存培地において、少なくとも1つの抗凍結剤は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%であるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、又は約それ以下である濃度、あるいは前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意のパーセンテージで見出され得る。
【0052】
望ましい特性を有する追加の賦形剤には、保存剤、アジュバント、安定剤、溶媒、緩衝液、希釈剤、可溶化剤、洗浄剤、界面活性剤、キレート剤、抗酸化剤、アルコール、ケトン、アルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、塩、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム糖、デキストロース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、セルロース、血清、アミノ酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチルフェノールエトキシレート、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、ゼラチン、エステル、エーテル、2-フェノキシエタノール、尿素、又はビタミン、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。一部の賦形剤は、血清、アルブミン、オボアルブミン、抗生物質、不活性化剤、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、β-プロピオラクトン、ゼラチン、細胞破片、核酸、ペプチド、アミノ酸、又は増殖培地成分又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、製造プロセスからの残留量又は汚染物質であり得る。賦形剤の量は、0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%w/wであるか、約それであるか、少なくともそれであるか、少なくとも約それであるか、それ以下であるか、若しくは約それ以下であるパーセンテージ、又は前述の数のうちのいずれか2つによって定義される範囲内の任意の重量パーセンテージで、組成物中に見出され得る。
【0053】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に照らして理解されるように、その平易で通常の意味を有し、鎮痛剤、治療剤、他の材料等を含むがこれらに限定されない、組成物又は賦形剤の比較的非毒性の無機及び有機酸又は塩基付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例には、塩酸及び硫酸等の鉱酸に由来するもの、及びエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸に由来するものが含まれる。塩の形成のために好適な無機塩基の例には、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩が含まれる。塩はまた、毒性がなく、そのような塩を形成するのに十分強いものを含む、好適な有機塩基で形成され得る。例えば、そのような有機塩基のクラスは、メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンを含む、モノ、ジ、及びトリアルキルアミン;モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミンを含むモノ、ジ、又はトリヒドロキシアルキルアミン;グリシン、アルギニン、リジンを含むアミノ酸;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジルフェネチルアミン;トリヒドロキシメチルアミノエタンを含み得るが、これらに限定されない。
【0054】
適切な製剤は、選択した投与経路によって異なる。本明細書に記載の化合物の製剤及び投与のための技術は、当業者に知られている。化合物を投与する複数の技術が、経腸、経口、直腸、局所、舌下、口腔、耳内、硬膜外、皮内、エアロゾル、非経口送達(筋肉内、皮下、動脈内、静脈内を含む)、門脈内、関節内、皮内、腹膜、髄内注射、髄腔内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内又は眼内注射を含む当技術分野に存在し、これらに限定されない。医薬組成物は、一般に、特定の意図された投与経路に合わせて調整されるであろう。
【0055】
本明細書で使用される場合、「担体」は、本明細書に照らして理解されるようなその平易で通常の意味を有し、細胞、組織及び/又は身体器官への化合物の通過、送達、及び/又は取り込みを容易にする化合物、粒子、固体、半固体、液体、又は希釈剤を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、明細書に照らして理解されるようなその明白で通常の意味を有し、薬理学的活性を欠くが薬学的に必要又は望ましい場合がある医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤を使用して、その質量が製造及び/又は投与するには小さすぎる強力な薬物のバルクを増加させることができる。それはまた、注射、摂取又は吸入によって投与される薬物の溶解のための液体であり得る。当技術分野における希釈剤の一般的な形態は、ヒトの血液の組成を模倣するリン酸緩衝生理食塩水等であるが、これに限定されない緩衝水溶液である。
【0057】
本明細書で使用される「w/w%」又は「重量/重量%」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、100を掛けた組成物の全重量に対する成分又は薬剤の重量に関して表されたパーセンテージを指す。本明細書で使用される「v/v%」又は「体積/体積%」という用語は、本明細書に照らして理解されるその一般的かつ通常の意味を有し、組成物の全液体体積に対する化合物、物質、成分又は薬剤の液体体積に関して表されたパーセンテージに100を掛けたものを指す。
【0058】
幹細胞
本明細書で使用される場合、「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られる)という用語は、胚性及び胚外細胞型に分化することができる幹細胞である。そのような細胞は、完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は、卵子及び精子細胞の融合から生産される。受精卵の最初の数分割によって生産される細胞も全能性である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞(ESC)」という用語は、一般にES細胞とも略され、本明細書で使用される場合、本明細書に照らして理解されるようなその明白で通常の意味を有し、多能性であり、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する細胞を指す。本開示の目的のために、「ESC」という用語は、胚性生殖細胞を包含するために広義で使用される場合がある。
【0060】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、本明細書に照らして理解されるようなその明白で通常の意味を有し、体のほぼ全ての細胞型、すなわち、内胚葉(胃内壁、胃腸管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、及び外胚葉(表皮組織及び神経系)を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかに由来する細胞に分化することができる任意の細胞を包含する。PSCは、着床前胚盤胞の内部細胞塊細胞の子孫であり得るか、又は特定の遺伝子の発現を強制することによって、非多能性幹細胞、例えば成体体細胞の誘導によって得られてもよい。多能性幹細胞は、任意の好適な供給源に由来し得る。多能性幹細胞の供給源の例は、ヒト、げっ歯類、ブタ、及びウシを含む哺乳動物の供給源を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、明細書に照らして理解されるようなその明白で通常の意味を有し、一般にiPS細胞とも省略され、特定の遺伝子の「強制」発現を誘導することにより、成人の体細胞等の通常は非多能性細胞から人工的に誘導された多能性幹細胞の一種を指し、hiPSCはヒトiPSCを指す。当技術分野で知られているいくつかの方法では、iPSCは、特定の幹細胞関連遺伝子の、成体線維芽細胞等の非多能性細胞へのトランスフェクションによって誘導され得る。トランスフェクションは、レトロウイルス又はレンチウイルス等のウイルスを使用してウイルス形質導入によって達成され得る。トランスフェクトされた遺伝子は、マスター転写調節因子Oct-3/4(POU5F1)及びSox2を含み得るが、他の遺伝子も誘導の効率を向上させる。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞は、形態学的及び生化学的に多能性幹細胞と同様になり始め、典型的には、形態学的選択、倍加時間、又はレポーター遺伝子及び抗生物質性選択によって単離される。本明細書で使用されるとき、iPSCは、第一世代iPSC、マウスにおける第二世代iPSC、及びヒト誘導多能性幹細胞を含む。いくつかの方法において、4つの極めて重要な遺伝子であるOct3/4、Sox2、Klf4、及びc-Mycを使用して多能性幹細胞にヒト線維芽細胞を形質転換するためにレトロウイルス系が使用される。他の方法において、体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、及びLIN28で形質転換するためにレンチウイルス系が使用される。iPSCで発現が誘導される遺伝子としては、Oct-3/4(POU5F1)、Sox遺伝子ファミリーのある特定のメンバー(例えば、Soxl、Sox2、Sox3、及びSox15)、Klfファミリーのある特定のメンバー(例えば、Klfl、Klf2、Klf4、及びKlf5)、Mycファミリーのある特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、及びN-myc)、Nanog、LIN28、Tert、Fbx15、ERas、ECAT15-1、ECAT15-2、Tcl1、β-カテニン、ECAT1、Esg1、Dnmt3L、ECAT8、Gdf3、Fth117、Sal14、Rex1、UTF1、Stella、Stat3、Grb2、Prdm14、Nr5a1、Nr5a2、E-カドヘリン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される場合、「前駆細胞」という用語は、明細書に照らして理解されるようなその明白で通常の意味を有し、本明細書に記載の方法で使用することができる任意の細胞を包含し、それを通じて、1つ以上の前駆細胞は、それ自体を再生するか、1つ以上の専門化された細胞型に分化する能力を獲得する。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、多能性であるか、又は多能性になる能力を有する。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、多能性を獲得するために外部因子(例えば、成長因子)の処理に供される。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、全能性(totipotent)(又は全能性(omnipotent))幹細胞、多能性幹細胞(誘導性又は非誘導性)、複能性幹細胞、寡能性幹細胞、及び単能性幹細胞であり得る。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、胚、乳児、小児、又は成人由来であり得る。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、遺伝子操作又はタンパク質/ペプチド処理を介して多能性が付与されるような処理に供される体細胞であり得る。前駆細胞には、胚幹細胞(ESC)、胚性がん腫細胞(EC)、及び胚盤葉上層幹細胞(EpiSC)が含まれる。
【0063】
いくつかの実施形態において、1つのステップは、多能性であるか又は多能性になるように誘導され得る幹細胞を得ることである。いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は胚性幹細胞に由来し、また、この胚性幹細胞は哺乳動物初期胚の全能性細胞に由来し、インビトロで無限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期段階の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を誘導するための方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本出願に記載の例示的な実施形態で使用されるが、本明細書に記載の方法及び系は、任意の幹細胞に適用可能であることが当業者によって理解される。
【0064】
本開示による実施形態で使用することができる追加の幹細胞には、限定されないが、National Stem Cell Bank(NSCB)、University of California,San Francisco(UCSF)のHuman Embryonic Stem Cell Research Center、Wi Cell Research InstituteのWISC cell Bank、University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC)、Novocell,Inc.(San Diego,Calif.)、Cellartis AB(Goteborg,Sweden)、ES Cell International Pte Ltd(Singapore)、Israel Institute of Technology(Haifa,Israel)のTechnion、及びPrinceton University及びUniversity of Pennsylvaniaによって主宰されるStem Cell Databaseによって主宰されるデータベースによって得られる、データベースに記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。本開示による実施形態で使用することができる例示的な胚性幹細胞には、SA01(SA001)、SA02(SA002)、ES01(HES-1)、ES02(HES-2)、ES03(HES-3)、ES04(HES-4)、ES05(HES-5)、ES06(HES-6)、BG01(BGN-01)、BG02(BGN-02)、BG03(BGN-03)、TE03(13)、TE04(14)、TE06(16)、UC01(HSF1)、UC06(HSF6)、WA01(HI)、WA07(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なヒト多能性細胞株には、TkDA3-4、1231A3、317-D6、317-A4、CDH1、5-T-3、3-34-1、NAFLD27、NAFLD77、NAFLD150、WD90、WD91、WD92、L20012、C213、1383D6、FF、又は317-12細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
発生生物学では、細胞分化は、より専門化されていない細胞がより専門化された細胞型になるプロセスである。本明細書で使用される場合、「有向分化」という用語は、より専門化されていない細胞が特定の専門化された標的細胞型になるプロセスを記載する。専門化された標的細胞型の特殊性を、最初の細胞の運命を定義又は変更するために使用することができる任意の適用可能な方法によって決定することができる。例示的な方法には、遺伝子操作、化学処理、タンパク質処理、及び核酸処理が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子を輸送し、胚性幹細胞実質的に同一のiPSCをもたらすことができる。アデノウイルスは、それ自体の遺伝子を標的の宿主と組み合わせないため、腫瘍を創出する危険性が排除される。いくつかの実施形態において、iPSCを生成するために非ウイルスベースの技術が用いられる。いくつかの実施形態において、非常に低い効率ではあるが、いずれのウイルストランスフェクション系も全く使用せずに、プラスミドを介して再プログラミングを達成することができる。他の実施形態において、タンパク質の直接送達を使用してiPSCを生成し、そのようにしてウイルス又は遺伝子修飾の必要性を排除する。いくつかの実施形態において、マウスiPSCの生成は、同様の方法論を使用して可能である。ポリアルギニンアンカーを介して細胞に運ばれる特定のタンパク質による細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの実施形態において、低酸素条件下で体細胞をFGF2で処理することによって多能性誘導遺伝子の発現を増加させることもできる。
【0067】
本明細書で使用される「フィーダー細胞」という用語は、本明細書に照らして理解されるようなその一般的かつ通常の意味を有し、成長因子を培地に分泌するか、又は細胞表面に表示すること等によって、多能性幹細胞の増殖をサポートする細胞を指す。フィーダー細胞は一般に付着細胞であり、増殖が停止する場合もある。例えば、フィーダー細胞は、照射(例えば、ガンマ線)、マイトマイシン-C処理、電気パルス、又は穏やかな化学固定(例えば、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒド)によって増殖が停止される。ただし、フィーダー細胞は必ずしも増殖を停止するとは限らない。フィーダー細胞は、成長因子の分泌、細胞表面への成長因子の表示、培養培地の無害化、又は細胞外マトリックスタンパク質の合成等の目的に役立ち得る。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は、支持された標的幹細胞に対して同種又は異種であり、これは、下流の用途に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞はマウス細胞である。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は、マウス線維芽細胞、マウス胚性線維芽細胞、マウスSTO細胞、マウス3T3細胞、マウスSNL 76/7細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト前皮線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト脂肪間葉細胞、ヒト骨髄間葉細胞、ヒト羊膜間葉細胞、ヒト羊膜上皮細胞、ヒト臍帯間葉細胞、ヒト胎児筋細胞、ヒト胎児線維芽細胞、又はヒト成人ファロピウス管上皮細胞である。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞から調製された馴化培地は、フィーダー細胞共培養の代わりに、又はフィーダー細胞共培養と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態において、フィーダー細胞は、標的幹細胞の増殖中には使用されない。
【0068】
遺伝子編集
幹細胞、多能性幹細胞、iPSC、ESC、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉細胞、前方前腸細胞(又は前方前腸スフェロイド)、又はオルガノイド(肝臓オルガノイドを含むが、これらに限定されない)等の、本明細書に開示される細胞のいずれかは、インスリン抵抗性レポーターを発現するように遺伝子改変することができる。いくつかの実施形態において、iPSC又はESCは、胚体内胚葉細胞、前方前腸スフェロイド、若しくはオルガノイド、又はそれらの任意の組み合わせへの分化前に遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、iPSCは、遺伝子改変の前に、最初に胚体内胚葉細胞に分化される。いくつかの実施形態において、胚体内胚葉細胞は、前方前腸スフェロイド若しくはオルガノイド、又はその両方への分化前に遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、胚体内胚葉細胞は、遺伝子改変の前に、最初に前方前腸スフェロイドに分化される。いくつかの実施形態において、前方前腸スフェロイドは、オルガノイドへの分化前に遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、前方前腸スフェロイドは、遺伝子改変の前にオルガノイドに分化される。いくつかの実施形態において、オルガノイドが遺伝子改変される。
【0069】
本明細書に開示される細胞は、当技術分野で一般的に知られている方法を使用して、インスリン抵抗性レポーターで改変することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、CRISPRヌクレアーゼ、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、又はメガTALを使用して遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、細胞は、非相同末端結合又は相同性指向修復アプローチを使用して遺伝子改変することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、CRISPRヌクレアーゼを使用して遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、細胞は、相同性アプローチを使用して遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、細胞は、CRISPRヌクレアーゼを用いた相同性アプローチを使用して遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12a、Cas12b、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、又はCas14aである。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼはCas9である。
【0070】
いくつかの実施形態において、細胞は、インスリン抵抗性レポーターで遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは糖新生レポーターである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは脂質生合成レポーターである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、レポータータンパク質は蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、蛍光タンパク質をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、蛍光タンパク質はmScarletである。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号8の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号15のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、レポータータンパク質は発光タンパク質である。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、発光タンパク質をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、発光タンパク質はルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号10の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号17のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、耐性マーカーをコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、耐性マーカーはネオマイシン耐性マーカー(neoR)である。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号18のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、1つ以上のバイシストロン性エレメントを含む。いくつかの実施形態において、バイシストロン性エレメントは、自己切断ペプチド又はIRESである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、自己切断ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、若しくはF2A、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、P2A自己切断ペプチドは、配列番号7の核酸配列及び配列番号14のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、T2A自己切断ペプチドは、配列番号9の核酸配列及び配列番号16のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、内因性遺伝子と相同性を有する1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、内因性遺伝子は、糖新生又は脂質生合成に関与する遺伝子である。いくつかの実施形態において、遺伝子はPCK1である。いくつかの実施形態において、遺伝子は、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、FOXO1、CREB1、GSK3A、GSK3B、MTOR、SREBP1C、ACC、ACLY、FASN、及びGCKからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、内因性遺伝子の発現が蛍光タンパク質、発光タンパク質、耐性マーカー、又はそれらの任意の組み合わせの発現をもたらすように、細胞内の内因性遺伝子に挿入される。
【0071】
いくつかの実施形態において、細胞は、インスリン抵抗性レポーターで遺伝子改変される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、細胞のインスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、インスリンシグナル伝達に応答して何らかの方式で調節される任意の遺伝子(又は結果として生じるタンパク質)である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子はPCK1である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子の発現は、インスリン抵抗性レポーターの発現をもたらす。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子及びインスリン抵抗性レポーターは、バイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、バイシストロン性エレメントは、自己切断ペプチド又はIRESである。いくつかの実施形態において、自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、若しくはF2A、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、P2A自己切断ペプチドは、配列番号7の核酸配列及び配列番号14のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、T2A自己切断ペプチドは、配列番号9の核酸配列及び配列番号16のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれている。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、CRISPRヌクレアーゼを使用してインスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれている。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、Cas12a、Cas12b、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、又はCas14aである。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼはCas9である。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、相同性指向修復を使用してインスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれる。相同性指向修復によるインスリン抵抗性レポーターの組み込みのためのPCK1に対する相同性の例示的な領域は、配列番号6及び13として提供される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、2つ以上のレポーター遺伝子を含み、2つ以上のレポーター遺伝子は、1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている。
【0072】
いくつかの実施形態において、iPSC、胚体内胚葉細胞、前方前腸スフェロイド、又はオルガノイドは、当技術分野で既知の方法に従って遺伝子改変又は編集される。例えば、Cas9等のCRISPRヌクレアーゼを使用した遺伝子編集は、PCT公開第WO2013/176772号、同第WO2014/093595号、同第WO2014/093622号、同第WO2014/093655号、同第WO2014/093712号、同第WO2014/093661号、同第WO2014/204728号、同第WO2014/204729号、同第WO2015/071474号、同第WO2016/115326号、同第WO2016/141224号、同第WO2017/023803号、及び同第WO2017/070633において検討されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
インスリン抵抗性レポーター
【0073】
インスリン抵抗性レポーターが本明細書に開示される。これらのレポーターは、生物学的細胞における糖新生、脂質生合成、又はインスリン活性と関連する他の経路と関連するシステムを視覚化、測定、又は定量化するために使用される核酸構築物及び結果として生じる発現タンパク質として具現化される。一般に、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターは、インスリン経路に関与するタンパク質の発現と共に生じる1つ以上のレポータータンパク質の発現によって機能し、インスリン関連タンパク質の発現の変化は、1つ以上のレポータータンパク質の発現にも適用される。
【0074】
インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域及び3’相同領域に隣接する1つ以上のレポーター遺伝子を含むインスリン抵抗性レポーターが本明細書に提供される。5’相同領域及び3’相同領域は、インスリン依存性遺伝子の遺伝子座における1つ以上のレポーター遺伝子の相同性指向の遺伝子編集に使用される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子はPCK1である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する1つ以上のレポーター遺伝子及び5’相同領域のうちの少なくとも1つは、バイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の3’側に挿入されることが意図される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する1つ以上のレポーター遺伝子及び3’相同領域のうちの少なくとも1つは、バイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の5’側に挿入されることが意図される。いくつかの実施形態において、バイシストロン性エレメントは、自己切断ペプチド又はIRESである。いくつかの実施形態において、自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドである。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子若しくは発光タンパク質をコードする遺伝子、又はその両方を含む。いくつかの実施形態において、蛍光タンパク質がmScarletを含むか、又は発光タンパク質がルシフェラーゼを含む。しかしながら、当技術分野で一般的に知られている任意の他の蛍光タンパク質及び任意の他の発光タンパク質を使用することができる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号8の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号15のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号10の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号17のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、ネオマイシン耐性マーカー等の耐性マーカーを更に含む。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号18のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、2つ以上のレポーター遺伝子を含み、2つ以上のレポーター遺伝子は、1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、1つ以上のバイシストロン性エレメントは、1つ以上の自己切断ペプチド又はIRESを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドを含む。1つ以上のバイシストロン性エレメントによる2つ以上のレポーター遺伝子の分離は、複数の別個の(すなわち、融合されていない)レポータータンパク質の発現を可能にする。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域は、配列番号6と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する3’相同領域は、配列番号13と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。細胞、組織、又は肝臓オルガノイドを含むオルガノイドのいずれかを遺伝子改変して、これらのインスリン抵抗性レポーターのいずれかを発現させることができる。
【0075】
細胞、組織及びオルガノイド組成物
本明細書に開示される方法では、多能性幹細胞(PSC)を直接使用するか、又は下流の細胞型に分化させることができる。いくつかの実施形態において、PSCは、胚体内胚葉細胞に分化される。いくつかの実施形態において、PSCは、前方前腸細胞に分化される。いくつかの実施形態において、PSCは、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドに分化される。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、若しくは肝細胞であるか、又はこれらを含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態において、PSCは肝臓オルガノイドに分化される。いくつかの実施形態において、PSCは、当技術分野で既知の方法によって、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、若しくは肝細胞、又はそれらの組織若しくはオルガノイドに分化される。
【0076】
インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドが、本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのインスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子はPCK1である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子の発現は、インスリン抵抗性レポーターの発現をもたらす。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子及びインスリン抵抗性レポーターは、バイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の3’側にある。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の5’側にある。いくつかの実施形態において、バイシストロン性エレメントは、自己切断ペプチド又はIRESである。いくつかの実施形態において、自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、CRISPRヌクレアーゼを使用してインスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれている。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼはCas9である。しかしながら、遺伝子編集の任意の他の方法を使用して、インスリン抵抗性レポーターをインスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、1つ以上のレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子若しくは発光タンパク質をコードする遺伝子、又はその両方を含む。いくつかの実施形態において、蛍光タンパク質がmScarletを含むか、又は発光タンパク質がルシフェラーゼを含む。しかしながら、当技術分野で一般的に知られている任意の他の蛍光タンパク質及び任意の他の発光タンパク質を使用することができる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号8の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号15のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、耐性マーカーを更に含む。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号10の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号17のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、耐性マーカーを更に含む。いくつかの実施形態において、耐性マーカーはネオマイシン耐性マーカーである。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号18のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、2つ以上のレポーター遺伝子を含み、2つ以上のレポーター遺伝子は、1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、1つ以上のバイシストロン性エレメントは、1つ以上の自己切断ペプチド又はIRESを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、胚体内胚葉細胞、又は前腸細胞である。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、哺乳動物又はヒトのインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドである。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、又は胚性幹細胞に由来している。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、インスリン機能不全と関連する疾患若しくは障害を有するか、又は発症するリスクがある対象からの細胞に由来している。いくつかの実施形態において、インスリン機能不全は、インスリン抵抗性又はインスリン過敏症を含み得る。いくつかの実施形態において、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害は、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、肥満、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0077】
肝臓オルガノイドを生成する方法は、例えば、PCT公開第WO2018/085615号、同第WO2018/085615号、同第WO2018/085622号、同第WO2018/085623号、同第WO2018/191673号、同第WO2018/226267号、同第WO2019/126626号、同第WO2020/023245号、及び同第WO2020/069285号において検討されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。任意の既知の肝臓オルガノイド組成物又はその作製方法は、本明細書に記載のヒト肝臓オルガノイド(HLO)に適用可能である。
【0078】
また、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドも本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子はPCK1である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子の発現は、インスリン抵抗性レポーターの発現をもたらす。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子及びインスリン抵抗性レポーターは、バイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の3’側にある。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子の5’側にある。いくつかの実施形態において、バイシストロン性エレメントは、自己切断ペプチド又はIRESである。いくつかの実施形態において、自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、CRISPRヌクレアーゼを使用してインスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込まれている。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼはCas9である。しかしながら、遺伝子編集の任意の他の方法を使用して、インスリン抵抗性レポーターをインスリン依存性遺伝子の遺伝子座に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、1つ以上のレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子若しくは発光タンパク質をコードする遺伝子、又はその両方を含む。いくつかの実施形態において、蛍光タンパク質がmScarletを含むか、又は発光タンパク質がルシフェラーゼを含む。しかしながら、当技術分野で一般的に知られている任意の他の蛍光タンパク質及び任意の他の発光タンパク質を使用することができる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号8の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号15のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、耐性マーカーを更に含む。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号10の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号17のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のレポーター遺伝子は、耐性マーカーを更に含む。いくつかの実施形態において、耐性マーカーはネオマイシン耐性マーカーである。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号18のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、2つ以上のレポーター遺伝子を含み、2つ以上のレポーター遺伝子は、1つ以上のバイシストロン性エレメントによって分離されている。いくつかの実施形態において、1つ以上のバイシストロン性エレメントは、1つ以上の自己切断ペプチド又はIRESを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の自己切断ペプチドは、P2A、T2A、E2A、又はF2A自己切断ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドは、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態において、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドは、正常な肝臓オルガノイドと比較して多数の脂肪滴を含む。いくつかの実施形態において、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドは、肝臓オルガノイドを脂肪酸と接触させることによって生成される。いくつかの実施形態において、脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、若しくはステアリン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドは、インスリン抵抗性及び/又は2型糖尿病の表現型を示す。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性は、正常な肝臓オルガノイドと比較して、AKTリン酸化の減少、インスリンに応答したPCK1、CREB1、若しくはFOXO1の発現抑制の低減、又はインスリンに応答した糖新生抑制の低減、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドは、正常な肝臓オルガノイドと比較して、より多くの脂肪滴、DGAT1/2の発現の増加、又は炎症誘発性サイトカインの発現及び/若しくは分泌の増加、又はそれらの任意の組み合わせを示す。いくつかの実施形態において、炎症誘発性サイトカインは、TNFα、TGFb、IL6、IL8、若しくはIL1b、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドは、哺乳動物又はヒトの肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドは、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、又は胚性幹細胞に由来している。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドは、インスリン機能不全と関連する疾患若しくは障害を有するか、又は発症するリスクがある対象からの細胞に由来している。いくつかの実施形態において、インスリン機能不全は、インスリン抵抗性又はインスリン過敏症を含み得る。いくつかの実施形態において、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害は、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、肥満、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、高脂血症の表現型を誘導するための化合物又は組成物で処理される。いくつかの実施形態において、化合物又は組成物は、1つ以上の脂肪酸を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態において、高脂血症の表現型を誘導するための化合物又は組成物で処理された肝臓オルガノイドは、脂肪肝の表現型を引き起こす。いくつかの実施形態において、脂肪肝の表現型を有する肝臓オルガノイドは、脂肪肝オルガノイドである。いくつかの実施形態において、脂肪肝オルガノイドは、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を示す肝臓組織に似ている。いくつかの実施形態において、脂肪肝オルガノイドは、脂肪性肝炎を示す肝臓組織に似ている(すなわち、脂肪性肝炎肝臓オルガノイド)。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、高脂血症の表現型を誘導するために使用される化合物又は組成物による処理後にインスリン抵抗性を示す。脂肪酸を使用して脂肪肝オルガノイド及び/又は脂肪性肝炎オルガノイドを生成する方法は、PCT公開第WO2018/085622号において検討されており、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。いくつかの実施形態において、高脂血症の表現型は、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを、オベチコール酸、ピオグリタゾン、若しくはメトホルミン、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上(例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ)で処理することによって、完全に又は部分的に逆転する。脂肪肝疾患の治療のためのオベチコール酸の使用は、PCT公開第WO2018/085623号において検討されており、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0080】
また、インスリン抵抗性レポーターを含む幹細胞も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)である。いくつかの実施形態において、幹細胞はiPSCである。いくつかの実施形態において、幹細胞はヒト対象に由来する。いくつかの実施形態において、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列と、レポータータンパク質をコードする1つ以上の核酸配列の各々を分離する自己切断ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列と、を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、レポータータンパク質をコードする配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する1つ以上の核酸配列と、レポータータンパク質をコードする配列の各々を分離する自己切断ペプチドをコードする配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有する1つ以上の核酸配列と、を含む。いくつかの実施形態において、レポータータンパク質は蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態において、蛍光タンパク質は、mScarletであるか、又は当技術分野で既知の任意の他の蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号8の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、mScarletは、配列番号15のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、レポータータンパク質は発光タンパク質である。いくつかの実施形態において、発光タンパク質は、ルシフェラーゼであるか、又は当技術分野で既知の任意の他の発光タンパク質である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号10の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、配列番号17のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、レポータータンパク質は、耐性マーカーを更に含む。いくつかの実施形態において、耐性マーカーはネオマイシン耐性マーカーである。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号11の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ネオマイシン耐性マーカーは、配列番号18のペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の相同性を有する1つ以上の核酸配列を更に含む。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、糖新生遺伝子又は脂質生合成遺伝子である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子は、PCK1、G6PC、G6PC2、G6PC3、GSK3A、GSK3B、MTOR、GCK、FOXO1、CREB1、TFE1、TFE3、SREBP1C、FASN、ACLY、及びACCからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子はPCK1である。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と相同性を有する1つ以上の核酸配列は、レポータータンパク質をコードする配列及び自己切断ペプチドをコードする配列に隣接し、インスリン依存性遺伝子と関連する配列と相同性を有する配列が、肝臓オルガノイドのゲノムへの組換えのための相同領域として作用する。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、CRISPRヌクレアーゼを使用して幹細胞のゲノムに組み込まれている。いくつかの実施形態において、CRISPRヌクレアーゼはCas9である。しかしながら、当技術分野で既知の遺伝子編集の任意の他の方法を使用して、インスリン抵抗性レポーターを幹細胞のゲノムに組み込むことができる。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する配列は、インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域及び3’相同領域を含む。5’相同領域及び3’相同領域は、相同性指向修復によるインスリン依存性遺伝子の遺伝子座へのインスリン抵抗性レポーターの組み込みを可能にする。いくつかの実施形態において、インスリン依存性遺伝子と関連する5’相同領域は、配列番号6と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の相同性を有する核酸配列を含み、かつ/又は、インスリン依存性遺伝子と関連する3’相同領域は、配列番号13と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の相同性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0081】
また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれかから分化した胚体内胚葉細胞も本明細書に開示される。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれか1つから分化した前方前腸細胞も本明細書に開示される。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれかから分化したインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドも本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、又は肝細胞を含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドは、1つ以上の脂肪酸による肝臓オルガノイドの処理後の脂肪肝オルガノイドである。いくつかの実施形態において、1つ以上の脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む。また、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれかから分化した膵臓細胞、脳細胞、脂肪細胞、筋細胞、又は肝細胞も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される幹細胞のうちのいずれかから分化した細胞のうちのいずれかは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される細胞のうちのいずれかは、インスリン機能不全を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される細胞のうちのいずれかは、インスリン抵抗性を示す。
【0082】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される細胞のうちのいずれかを、後に使用するために凍結保存することができる。細胞は、当技術分野で一般的に知られている方法に従って凍結保存することができる。
【0083】
スクリーニング方法、指標としての使用方法、及び医薬組成物
インスリン機能不全と関連する疾患又は障害の治療のための候補化合物をスクリーニングするインビトロ方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイド、又はインスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドを、候補化合物と接触させることと、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドにおけるインスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することと、を含む。いくつかの実施形態において、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害は、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、肥満、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドは、本明細書に開示される肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、本明細書に開示されるインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドは、脂肪肝オルガノイド又は脂肪性肝炎肝臓オルガノイドである。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドにおけるインスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することは、接触させるステップの前と比較して、AKTリン酸化の増加、インスリンに応答したPCK1、CREB1、若しくはFOXO1の発現抑制の増加、又はインスリンに応答した糖新生抑制の増加、又はそれらの任意の組み合わせを観察することを含む。いくつかの実施形態において、肝臓オルガノイドにおけるインスリン機能不全と関連する疾患又は障害の改善を観察することは、接触させるステップの前と比較して、脂肪滴数の減少、DGAT1/2の発現の低下、又は炎症誘発性サイトカインの発現及び/若しくは分泌の減少、又はそれらの任意の組み合わせを観察することを含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン依存性遺伝子の3’側にある。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン依存性遺伝子の5’側にある。
【0084】
また、インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのインスリン抵抗性を評価するインビトロ方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させることと、1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドがインスリン抵抗性を示すことを決定することと、を含む。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを、オベチコール酸(OCA)、ピオグリタゾン、若しくはメトホルミン、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、ベースライン発現レベルを定量化する前に、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、ベースライン発現レベルを定量化した後、かつインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドをインスリン又はその誘導体若しくは模倣体と接触させる前に、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、本明細書に開示されるインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、1つ以上の脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、インスリン抵抗性の治療を必要とするヒト対象に由来する。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは肝臓オルガノイドであり、インスリン抵抗性は肝臓のインスリン抵抗性である。いくつかの実施形態において、肝臓のインスリン抵抗性は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン依存性遺伝子の3’側にある。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン依存性遺伝子の5’側にある。
【0085】
また、インスリン抵抗性を治療する化合物又は組成物をスクリーニングするインビトロ方法も本明細書に開示される。インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを1つ以上の脂肪酸と接触させることと、インスリン抵抗性レポーターの1つ以上のレポータータンパク質のベースライン発現レベルを定量化することと、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドを化合物又は組成物と接触させることと、1つ以上のレポータータンパク質の処理後の発現レベルを定量化することと、1つ以上のレポータータンパク質の発現レベルの変化又はその欠如に基づいて、化合物又は組成物がインスリン抵抗性を治療することができることを決定することと、を含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、本明細書に開示されるインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターは、本明細書に開示されるインスリン抵抗性レポーターのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、1つ以上の脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、インスリン抵抗性の治療を必要とするヒト対象に由来する。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは肝臓オルガノイドであり、インスリン抵抗性は肝臓のインスリン抵抗性である。いくつかの実施形態において、肝臓のインスリン抵抗性は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン依存性遺伝子の3’側にある。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターとインスリン依存性遺伝子とが、バイシストロン性エレメントによって分離されるように、インスリン抵抗性レポーターは、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン依存性遺伝子の5’側にある。
【0086】
また、インスリン抵抗性、又はインスリン機能不全と関連する疾患若しくは障害の治療、改善、又は予防に対する効果を有することが見出された、本明細書に開示されるスクリーニング方法のいずれかによって同定される化合物又は組成物も本明細書に開示される。
【0087】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、有効量の本明細書に記載のインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのうちのいずれか1つと、薬学的に許容される担体、賦形剤、又はそれらの組み合わせと、を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなる医薬組成物に関する。本明細書に記載の医薬組成物は、ヒト及び/又は獣医学の用途に好適である。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイド(肝臓オルガノイド等)を検出デバイスとして使用して、対象における循環インスリンのレベルを測定することができる。
【0088】
また、対象におけるインスリン応答をモニタリングする方法も本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、方法は、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイド、又はインスリン抵抗性レポーターを含むインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドを対象に移植することと、肝臓オルガノイド又はインスリン応答性細胞、組織、若しくはオルガノイドのインスリン抵抗性レポーターの発現をモニタリングすることと、を含む。いくつかの実施形態において、インスリン抵抗性レポーターを含む肝臓オルガノイドは、本明細書に開示される肝臓オルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、インスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドは、本明細書に開示されるインスリン応答性細胞、組織、又はオルガノイドのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、対象は、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害を有するか、又は発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、インスリン機能不全は、インスリン抵抗性又はインスリン過敏症を含み得る。いくつかの実施形態において、対象は、インスリン機能不全と関連する疾患又は障害を有していないか、又は発症するリスクがなく、インスリンの正常な生理学的活性がモニタリングされる。
【実施例】
【0089】
実施例1.ヒト肝臓オルガノイド(HLO)は、インスリン応答のモデルとして使用することができる。
ヒト細胞に由来するもの等の肝臓オルガノイドは、本明細書に記載の方法及びさもなければ当技術分野で既知の方法に従って生成することができる。例えば、多能性幹細胞から肝臓オルガノイドを生成する例示的な方法は、PCT公開第WO2018/085615号、同第WO2018/191673号、同第WO2018/226267号、同第WO2019/126626号、同第WO2020/023245号、及び同第WO2020/069285号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0090】
肝臓オルガノイドの生成の概略の実施形態を
図1Aに示す。簡単に説明すると、多能性幹細胞(egiPSC又はESC)は、最初にアクチビンA及びBMP4と共に培養することによって胚体内胚葉細胞に分化され、その後、胚体内胚葉細胞は、FGF経路活性化因子(例えばFGF4)及びWnt経路活性化因子(スフェロイドの形態であり得る、前腸細胞を生成するためのGSK3阻害剤(例えば、CHIR99021)であり得る)を含む前腸誘導培地で培養される。必要に応じて、これらの前腸細胞は、後に使用するために凍結保存することができる。前腸細胞は、基底膜マトリックス(例えばマトリゲル)に包埋され、FGF2、VEGF、EGF、CHIR99021、及びTGF-b阻害剤を含む分化培地で培養され、肝臓オルガノイドを生成する。得られた肝臓オルガノイドは均一な形態(
図1B)を有し、肝臓組織に緊密に類似し、肝臓固有のマーカーであるアルブミン(ALB)及び肝細胞核因子4(HNF4)、並びに上皮細胞マーカーE-カドヘリン(
図1C)を発現する。
【0091】
肝臓オルガノイドの構成細胞の単一細胞RNA配列決定(
図2A)により、1)ALB、APOE、RBP4、及びTDO2等の肝細胞の特徴的なマーカーを発現する実質細胞(約82.4%)、並びに2)肝星細胞、胆道細胞、及び胆管細胞(COL1A1、PDGFRA、ACTA2、BMP4、WNT6)の特徴的なマーカーを発現する非実質細胞(約17.5%)の異なる集団が明らかになった(
図2B)。これらの多能性幹細胞由来の肝臓オルガノイドは、ヒト肝臓組織の挙動をエミュレートする可能性を有する。
【0092】
HLOは、インスリン応答に関与する遺伝子及び経路を示す。
図3Aは、肝臓のインスリン応答の概略図を示す。HLOの単一細胞RNA配列決定のプロファイリングにより、インスリン受容体(INSR)、並びにインスリン受容体基質1及び2(IRS1/2)が発現していることが明らかになった。INSR及びIRS2は多成分HLOの肝細胞集団に集中していたが、IRS1は星状細胞集団でも発現していた。
【0093】
HLOは、インビトロでのAKTリン酸化、糖新生、及び脂質生合成のインスリン刺激に対する応答を示した。HLOのインスリン応答性は、ウエスタンブロット法及びqPCRを使用して分析した。調製したHLOをインスリン飢餓下で24時間培養した後、インスリンに曝露した。
【0094】
インスリンシグナル伝達の下流で活性化されるAKTのリン酸化を分析する。HLOを0ng/mL、10ng/mL、及び100ng/mLのインスリンで20分間処理した後、ウエスタンブロット用にタンパク質を抽出した。インスリンはHLOにおいてAKTリン酸化を誘導する(
図4A)。
【0095】
HLOの糖新生及び脂質生合成調節遺伝子のインスリン応答性を分析するために、HLOを100ng/mLのインスリンで8時間処理した後、qPCR用にRNAを抽出した。インスリン処理されたHLOでは、糖新生調節遺伝子の発現(FOXO1、CREB1、TFE1、PCK1)がインスリン刺激によって抑制された(
図4B)。逆に、脂質生合成調節遺伝子の発現(SREBP、FASN、ACLY、ACC)は、インスリン刺激によって誘導された(
図4C)。
【0096】
実施例2.インスリン応答レポーターは、iPSC及び下流細胞で確立することができる。
HLOインスリン応答性を視覚化及び定量化するために、CRISPR/Cas9システムを使用してiPSCを遺伝子編集し、mScarlet(蛍光)及びルシフェラーゼ(発光)遺伝子を含むレポーター構築物を糖新生調節遺伝子PCK1の下流、エクソン10の3’末端に挿入した(
図5A)。
図5Aは、レポーター機能の概略も示している。グルカゴン又はcAMPへの曝露によって糖新生が増強されると、PCK1の発現増加と共にmScarlet及びルシフェラーゼが発現する。インスリンへの曝露によって糖新生が抑制されると、mScarlet及びルシフェラーゼの発現も、PCK1の下方制御と相関して減少する。例示的なレポーター構築物は、配列番号4の核酸配列及び配列番号5のペプチド配列として表される。しかしながら、代替レポーターを使用するもの等、他のレポーター構築物が使用され得ることが想定される。更に、PCK1の代わりに使用される代替のインスリン経路調節遺伝子を
図3Cに示す。Cas9をPCK1の3’側に向けるための例示的なsgRNAは、配列番号1~3として提供される。
【0097】
実施例3.インスリン応答性は、PCK1レポーターHLOで観察することができる。
ヒトiPSCを遺伝子編集して、PCK1の3’末端に蛍光及び発光レポーター構築物を挿入した。所望の位置での構築物の挿入は、遺伝子座の増幅によって検証され(
図5B)、正常な形態が観察された(
図5C)。これらの遺伝子編集されたiPSCは、その後HLOに分化した。インスリン応答性を分析するために、HLOを100μMのcAMPで24時間処理した。その後、100ng/mLのインスリンを3時間適用し、蛍光及びルシフェラーゼ活性を測定した。cAMP処理の結果、糖新生に応答してPCK1-mScarletの蛍光及びルシフェラーゼ活性が増加した(
図6A~B)。加えて、cAMPによる処理後、100ng/mLインスリンで3時間処理した結果として、PCK1-mScarletの蛍光及びPCK1のルシフェラーゼ活性がインスリン刺激に応答して低下した。
図6C~Dは、インビトロイメージングによって測定されたPCK1-ルシフェラーゼ発光の検出を示す。レポーター構築物で遺伝子編集されていないiPSCに由来するHLOは、いずれの条件(cAMP、インスリン)でもルシフェラーゼシグナルを示さなかった。
【0098】
レポーターHLOを用いて、インスリン応答の様々なパラメーターを試験した。
【0099】
インスリン濃度の影響を試験した。PCK1-ルシフェラーゼHLOのインスリンを24時間枯渇させ、その後ルシフェラーゼイメージングのために0nM、10nM、100nM、又は1000nMのインスリンで1時間処理した。PCK1のルシフェラーゼ活性は、インスリン刺激に応答して減少した(
図6E)。
【0100】
インスリン処理時間の影響を試験した。インスリンを枯渇させたHLOを100nMのインスリンで1、2、又は3時間処理した(インスリン対照なし)。PCK1のルシフェラーゼ活性は、1時間の処理後に減少した(
図6F)。
【0101】
cAMP処理の影響を確認した。インスリンを枯渇させたHLOを100μMのcAMPで24時間処理した後、ルシフェラーゼイメージングを行った。別の条件では、cAMPで処理したHLOを100nMのインスリンで3時間処理した。PCK1-ルシフェラーゼ活性は、cAMP処理によって増加し、インスリン刺激によって阻害された(
図6G)。
【0102】
実施例4.脂肪性肝炎ヒト肝臓オルガノイド(sHLO)モデルは、2型糖尿病の症状を示す
脂肪酸処理により、HLOにおいて脂肪性肝炎の表現型を誘発する。300μMのオレイン酸に72時間HLOを曝露して脂肪蓄積を誘導する(
図7A)。脂肪のイメージング及びNMRベースの分析は、sHLOに多数の脂肪滴を示した(
図7B~C)。ジアシルグリセロール及びアシル-CoAからのトリグリセリドの形成を触媒するDGAT1/2が、正常なHLOと比較してsHLOで増加した(
図7D)。炎症誘発性サイトカインの発現及び分泌もsHLOにおいて増加した(
図7E)。
【0103】
sHLOは、2型糖尿病の特徴であるPCK1の一定の活性化を介して過剰な糖新生を示した。過剰な脂肪蓄積により誘導したsHLOにおいてPCK1の顕著な増加が観察され、これはグルコース産生の促進も伴っていた(
図7F~H)。
【0104】
sHLOにおけるインスリン応答性を調べた。インスリン応答性を検出するために、sHLO及びHLO対照のインスリン枯渇を24時間行った後、インスリン刺激を行った。
【0105】
ウエスタンブロットによるインスリンシグナル分析を、100nMのインスリンで20分間処理することにより行った。AKTのリン酸化がsHLOにおいて阻害された(
図7I)。PCK1、CREB1、及びFOXO1のインスリン応答性は、sHLOにおいて抑制されなかった(
図7J~K)。これらの結果は、PCK1及び他の糖新生遺伝子がsHLOのインスリンに応答しないことを示した。更に、sHLO(
図7L)におけるインスリン刺激後、グルコース産生は抑制されなかった。
【0106】
実施例5.脂肪肝オルガノイドを使用したインスリン抵抗性及び脂肪肝改善薬のスクリーニング
脂肪肝HLOはインスリン抵抗性を示すことが確認されたため、NAFLD及びインスリン抵抗性を改善する薬物のスクリーニングに適用された。HLOを脂肪酸で6日間処理して脂肪肝の表現型を誘導した。次いで、候補薬物をsHLOに48時間曝露した。
【0107】
オベチコール酸(OCA)処理は、脂肪蓄積及び炎症性遺伝子の発現(TNFa、NFKB1、NFKB2)を減少させた(
図8A~B)。逆に、メトホルミン(MET)処理は、HLOの脂肪蓄積に改善を示したが、炎症反応の改善は限定的であった。ピオグリタゾン(PIO)で処理したHLOは、脂肪蓄積及び炎症反応において限定的な改善を示した。
【0108】
候補薬物を用いた処理による脂肪肝HLOのインスリン応答性の改善を調査するために、sHLOをインスリン枯渇下で24時間インキュベートした後、インスリンに曝露した。
【0109】
インスリンに応答した糖新生を分析するために、HLOを100ng/mLのインスリンで3時間処理した後、ルシフェラーゼ活性を測定した。PCK1-ルシフェラーゼアッセイに基づくと、OCA処理した脂肪肝HLOは、インスリン応答性の改善を示した(
図8C)。
【0110】
インスリン応答に関与する遺伝子の発現を分析するために、sHLOを100ng/mLで8時間処理した後、RNAを抽出した。OCA処理したsHLOはインスリン応答性を改善し、糖新生調節遺伝子の抑制及び脂質生合成調節遺伝子の上方制御をもたらした(
図8D)。
【0111】
要約すると、INSR及びIRS2は多成分肝臓オルガノイドの肝臓集団で発現し、HLOの肝臓集団がインスリンシグナルに応答し、ヒトインスリン応答を模倣することが示唆される。ヒト肝臓オルガノイドは、脂肪を蓄積し、脂肪肝表現型を示したときに、肝臓のインスリン抵抗性を示した。脂肪肝オルガノイドでは、PCK1が継続的に活性化され、糖新生が促進された。OCA処理は、脂肪肝HLOにおける脂肪蓄積、炎症反応、及び糖新生/脂質生合成を改善した。これは、脂肪蓄積に有益な薬物が、肝臓のインスリン応答性を改善する可能性も有し得ることを示唆している。本明細書に開示されるヒト肝臓オルガノイドモデルは、生体に見られる他の末梢組織の代謝とは区別される肝臓のインスリン抵抗性及び脂肪代謝を調査する機会を提供する。
【0112】
前述の実施形態の少なくともいくつかでは、実施形態で使用される1つ以上の要素は、そのような置き換えが技術的に実現可能でない場合を除いて、別の実施形態で互換的に使用することができる。当業者は、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び構造に対して、他の様々な省略、付加、及び改変を行うことができることを理解されよう。そのような全ての改変及び変更は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、主題の範囲内に含まれることが意図されている。
【0113】
本明細書における実質的に全ての複数及び/又は単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数から単数へと、及び/又は単数から複数へと言い換えることができる。明確にするために、様々な単数/複数の置き換えを本明細書において明確に説明することができる。
【0114】
通常、本明細書及び特に添付された特許請求の範囲(例えば、添付された特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、通常は「オープンな」用語として意図されている(例えば、用語「含む(including)」は「含むがこれに限定されない」と解釈すべきであり、用語「有する」は「少なくとも有する」と解釈すべきであり、用語「含む(include)」は「含むがこれに限定されない」と解釈すべきである等)ことを当業者は理解するであろう。導入される請求項の詳述の具体的な数が意図されている場合には、そのような意図は、この請求項で明示的に詳述され、そのような詳述が存在しない場合にはそのような意図は存在しないことを当業者は更に理解するであろう。例えば、理解の補助として、下記の添付された特許請求の範囲は、請求項の詳述を導入するために、導入的語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかしながら、そのような語句の使用は、同じ請求項が導入的語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」等の不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の詳述の導入が、そのように導入される請求項の詳述を含む任意の特定の請求項を、ただ1つのそのような詳述を含む実施形態に限定することを意味すると解釈すべきではなく(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈すべきであり)、同じことが、請求項の詳述を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。加えて、導入される請求項の詳述の具体的な数が明示的に詳述されている場合、そのような詳述は、少なくとも詳述された数を意味する(例えば、その他の修飾語句なしでの「2つの詳述」という単なる詳述は、少なくとも2つの詳述又は2つ以上の詳述を意味する)と解釈すべきであることを当業者は認識するであろう。更に、「A、B、及びCの少なくとも1つ等」に類似する慣習が使用される場合では、通常、そのような構文は、当業者がこの慣習を理解するであろう意味が意図されている(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」には、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステム等が含まれるがこれらに限定されないであろう)。A、B、又はCの少なくとも1つ等」に類似する慣習が使用されている場合では、通常、そのような構文は、当業者がこの慣習を理解するであろう意味が意図されている(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」には、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するシステム等が含まれるがこれらに限定されないであろう)。明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する実質的にいかなる離接語及び/又は離接語句も、用語のうちの1つ、用語のいずれか又は両方の用語を含む可能性を意図すると理解すべきであることを当業者は更に理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0115】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループによって説明されている場合、これにより、本開示は、マーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループによっても説明されることを当業者は認識するであろう。
【0116】
当業者に理解され得るように、文書として記述するという観点等のあらゆる目的のために、本明細書で開示されている全ての範囲は、あらゆる可能な部分範囲及びこれらの部分範囲の組み合わせも包含する。列挙されているあらゆる範囲を、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分等に分解される同じ範囲を十分に説明して可能にすると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲を、下3分の1、中3分の1及び上3分の1等に容易に分解することができる。当業者にも理解され得るように、「最大」、「少なくとも」、「超」、「未満」等の全ての言葉は、詳述される数を含み、本明細書で考察されるように後に部分的範囲に分解され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解され得るように、範囲は各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つの項目を有するグループは、1、2、又は3つの項目を有するグループを指す。同様に、1~5つの項目を有するグループは、1、2、3つ、4、又は5つの項目を有するグループを指し、以下同様である。
【0117】
本明細書では様々な態様及び実施形態が開示されているが、当業者にはその他の態様及び実施形態が明らかであるであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は説明を目的としており、限定していることを意図されておらず、真の範囲及び趣旨は下記の特許請求の範囲で示される。
【0118】
公開及び未公開の出願、特許、及び文献の参照を含むがこれらに限定されない、本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、本明細書の一部となる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が明細書に含まれる開示と矛盾する範囲まで、明細書は、そのような矛盾する資料に優先する、及び/又は優先することを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】