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▶ イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】抗CD73抗体とその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230720BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230720BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230720BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230720BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230720BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230720BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230720BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230720BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230720BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230720BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
A61P17/00
A61P15/00
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P43/00 107
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578993
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2021101233
(87)【国際公開番号】W WO2021259199
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】202010594227.9
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】チン ホア
(72)【発明者】
【氏名】シェン ハオラン
(72)【発明者】
【氏名】タン ロン
(72)【発明者】
【氏名】リウ チュンチエン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CD73に特異的に結合する新規抗体又はその抗原結合断片及び該抗体又はその抗原結合断片を含む組成物に関する。本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、そのポリヌクレオチドを含むベクター、該核酸又はベクターを含む宿主細胞、該抗体又はその抗原結合断片を含む免疫複合体及び医薬組成物に関する。さらに、本発明は、疾患の免疫療法、予防及び/又は診断におけるこれらの抗体又はその抗原結合断片の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i) 配列番号55に示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号91に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、又は
(ii) 配列番号56、57若しくは58に示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号92に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、又は
(iii) 配列番号59~64のうちのいずれか1つに示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号93に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、又は
(iv) 配列番号65、66又は67に示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号94に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、又は
(v) 配列番号68に示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号95に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、又は
(vi) 配列番号69に示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号96に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、又は
(vii) 配列番号70、71又は72に示されている重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び配列番号97に示されている軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDR、
を含む、抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRを含む、抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、該HCDR1が、配列番号1~15、132~133又は136~149のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、該HCDR2が、配列番号16~30、134又は135のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、該HCDR3が、配列番号31~37又は150~156のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、該LCDR1が、配列番号38~43のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、該LCDR2が、配列番号44~48のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、かつ、該LCDR3が、配列番号49~54のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る、抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む、抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、
該重鎖可変領域が、以下の:
(i) 表Bで列挙された任意の抗体のVHに含まれる3つの相補性決定領域(HCDR);又は
(ii) 表A又は表Dに示されているHCDR1、HCDR2及びHCDR3の組み合わせ、
を含み;及び/又は
該軽鎖可変領域が、以下の:
(i) 表Bで列挙された任意の抗体のVLに含まれる3つの相補性決定領域(LCDR);又は
(ii) 表A又は表Dに示されているLCDR1、LCDR2及びLCDR3の組み合わせ、
を含む、抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、
(a) 該重鎖可変領域VHが:
(i) 配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか;又は
(ii) 配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(iii) 配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して、1若しくは複数(好ましくは10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、挿入又は欠失、より好ましくはアミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、好ましくは、該アミノ酸変更がCDR領域内で起こらない、及び/又は
(b) 該軽鎖可変領域VLが:
(i) 配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(ii) 配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(iii) 配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して、1若しくは複数(好ましくは10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、挿入又は欠失、より好ましくはアミノ酸の保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る、
抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
以下の:
(i) 配列番号55に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号91に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、又は
(ii) 配列番号56、57又は58に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号92に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、又は
(iii) 配列番号59~64のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、又は
(iv) 配列番号65、66又は67に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号94に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、又は
(iv) 配列番号68に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号95に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、又は
(iv) 配列番号69に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号96に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、又は
(iv) 配列番号70、71又は72に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖可変領域、及び/又は配列番号97に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖可変領域、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
重鎖及び/又は軽鎖を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで:
(a) 該重鎖が:
(i) 配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されている配列の対応するCDR配列を含むか;
(ii) 配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(iii) 配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して1若しくは複数(好ましくは20又は10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有する、好ましくは、該アミノ酸変更が重鎖CDR領域内で起こらない、より好ましくは、該アミノ酸変更が重鎖可変領域内で起こらない、アミノ酸配列を含み;及び/又は
(b) 該軽鎖が:
(i) 配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されている配列の対応するCDR配列を含むか;
(ii) 配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成りるか;又は
(iii) 配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して1若しくは複数(好ましくは20又は10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有する、好ましくは、該アミノ酸変更が軽鎖CDR領域内で起こらない、より好ましくは、該アミノ酸変更が軽鎖可変領域内で起こらない、アミノ酸配列を含む、
抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
以下の:
(i) 配列番号106に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号124に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、又は
(ii) 配列番号107~109のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号125に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、又は
(iii) 配列番号110~115のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、又は
(iv) 配列番号116~118のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号127に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、又は
(v) 配列番号119に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号128に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、又は
(vi) 配列番号120に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号129に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、又は
(vii) 配列番号121~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る重鎖、及び/又は配列番号130に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る軽鎖、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体が、ヒト化又はヒト抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)若しくは(Fab’)2、単一領域抗体、二重特異性抗体(dAb)、ラクダ科の動物の抗体(重鎖抗体)又は直鎖抗体から成る群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
フレームワーク配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片であって、ここで、該フレームワーク配列の少なくとも一部が、ヒトコンセンサスフレームワーク配列である、抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
CD73への結合に関して請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体と競合するか、又はCD73への請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体の結合と拮抗するか若しくは妨げる、抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
以下の特性:
(1) 高い親和性での、例えば、約100nM未満の平衡解離定数(KD)での、CD73(例えば、ヒトCD73)への結合;
(2) 可溶性CD73の酵素活性の遮断;
(3) AMP-アデノシンによるCD4+T細胞増殖の阻害の無効化;
(4) AMP-アデノシンによるCD8+T細胞増殖の阻害の無効化;
(5) AMP-アデノシンによるT細胞活性の阻害の無効化、
の1若しくは複数を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含むベクターであって、好ましくは発現ベクターである該ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、原核細胞又は真核細胞であり;より好ましくは、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は抗体若しくはその抗原結合断片を調製するのに好適な他の細胞、好ましくはCHO細胞及び293細胞、から選択される、該宿主細胞。
【請求項16】
抗CD73抗体又はその抗原結合断片を調製する方法であって、請求項15に記載の宿主細胞を、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を発現するのに好適な状態下で培養し、任意選択で、該抗体又はその抗原結合断片を単離すること、を含み、そして任意選択で、該宿主細胞から抗CD73抗体又はその抗原結合断片を回収することをさらに含む、該方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって調製した抗CD73抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
請求項1~12及び17のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、並びに任意選択で、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~12及び17のいずれか1項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む免疫複合体。
【請求項20】
請求項1~12及び17のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、並びに抗PD1抗体を含む医薬組み合わせ物であって、好ましくは該抗PD1抗体がシンチリマブである、該医薬組み合わせ物。
【請求項21】
癌又は腫瘍の治療のための薬剤の製造における、請求項1~12及び17のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項22】
癌又は腫瘍の治療のための薬剤の製造における、請求項20の医薬組み合わせ物の使用。
【請求項23】
前記癌又は腫瘍が、乳癌、肺癌又は黒色腫である、請求項21~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
CD73によるT細胞増殖の阻害を無効化するための薬剤の製造における、請求項1~12及び17のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項20に記載の医薬組み合わせ物の使用。
【請求項25】
前記T細胞が、CD4+T細胞又はCD8+T細胞である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
T細胞活性を活性化するための薬剤の製造における、請求項1~12及び17のいずれか一項に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、或いは請求項20に記載の医薬組み合わせ物の使用。
【請求項27】
配列番号131に示されている第159~170アミノ酸の断片を含む、CD73の抗体結合エピトープであって、好ましくは、配列番号131に示されている第159、161、162、163及び170アミノ酸を含む、該エピトープ。
【請求項28】
有効量の、請求項1~12及び17のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項18に記載の医薬組成物、請求項19に記載の免疫複合体、或いは請求項20に記載の医薬組み合わせ物を対象に投与することを含む、癌などのCD73関連疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法。
【請求項29】
サンプル中のCD73を検出するための方法であって、以下の:
(a) 該サンプルを請求項1~12及び17のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させ;そして
(b) 該抗体又はその抗原結合断片とCD73との間の複合体の形成を検出し;任意選択で、該抗体を検出できるように標識すること、
を含む、該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、概して免疫学及び抗体工学の分野に関する。特に、本発明は、CD73に特異的に結合する新規抗体又はその抗原結合断片及び該抗体又はその抗原結合断片を含む組成物に関する。さらに、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、該核酸を含むベクター、該核酸又はベクターを含む宿主細胞、該抗体又はその抗原結合断片を含む免疫複合体及び医薬組成物に関する。さらに、本発明は、疾患の免疫療法、予防及び/又は診断におけるこれらの抗体又はその抗原結合断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
CD73(分化抗原群73)は、細胞外5’-ヌクレオチダーゼ(Ecto-5’-NT)としても知られている、70-kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質である。CD73は、ATPをアデノシンに変換するプロセスにおいて非常に重要な役割を果たす。それはCD39との組み合わせで、ATPをアデノシンに脱リン酸化するが、そのなかで、CD39がATPをADPやAMPに主に変換し、そして、CD73がAMPをアデノシンに脱リン酸化する。
【0003】
CD73は、乳癌や肺癌などのさまざまな腫瘍細胞で高度に発現される、そして、CD73の高発現は予後不良との間に正の相関が認められる。CD73の高発現は、HER2/ErbB2に対するモノクローナル抗体であるトラスツズマブによって治療された乳癌患者におけるより短い無病生存率との間に正の相関が認められる。加えて、CD73はまた、腫瘍組織内の内皮細胞、線維芽細胞、リンパ球、及び骨髄細胞において発現される。細胞膜表面のCD73分子は、ホスホリパーゼによって切断されて、細胞間物質と血液に入る。細胞間物質と血液内のCD73にもまた、5’-ヌクレオチダーゼ活性がある。ATPとその代謝産物であるAMP及びアデノシンは、細胞代謝、シグナル伝達、及び免疫ホメオスタシスにおいて重要な役割を有し、そしてそのなかで、アデノシンには免疫抑制活性がある。細胞外アデノシンは癌組織内に蓄積し、腫瘍の免疫回避の重要な機構の基礎となっている。アデノシンは、多くの癌において増殖や遊走を調整することが示されていて、抗腫瘍性T細胞を調節することによって免疫抑制効果を有している(Zhang et al. Cancer Res 2010; 70:6407-11)。そのため、有効な抗CD73分子抗体は、細胞表面CD73分子及び可溶性CD73分子の酵素活性を効率的に阻害し、その結果、AMPのアデノシンへの転換を妨げ、そして、アデノシンの蓄積によって引き起こされるT細胞増殖と活性の阻害を解除し、その結果、腫瘍内微小環境の変更、腫瘍免疫応答の活性化、及び腫瘍増殖の阻害の目的を達成するのに必要とされる。
【0004】
いくつかの抗CD73分子抗体が従来技術において開発されたが、それらはまた、高い抗体濃度にて可溶性CD73酵素活性に対する乏しい阻害効果(フック効果)を示す特許US20180194858A1で開示された抗CD73分子抗体;特許WO2018013611A1及びWO2016055609A1の抗CD73分子抗体はCD73の酵素活性を完全に遮断できなるわけではないなどの、それら自身の欠陥を有する。そのため、様々な抗体配列を有するそれ以上の優れた抗CD73分子抗体を開発する必要がまだ存在しており、本発明はこれらの要件を満たす。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、CD73分子に結合する新規抗体又はその抗原結合断片を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、該VHは:
(i) 表Bで列挙された任意の抗体のVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR);又は
(ii) (i)の配列に対して、3つのCDR領域内に少なくとも1つ、かつ、5、4、3、2又は1以下のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を全体的に含んでいる配列、若しくは
(iii) 表Bで列挙された抗体のうちのいずれか1つのVH配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、かつ、該配列の対応するCDRを含む配列、
を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、該VLは:
(i) 表Bで列挙された任意の抗体のVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDR);又は
(ii) (i)の配列に対して、3つのCDR領域内に少なくとも1つ、かつ、5、4、3、2又は1以下のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を全体的に含んでいる配列、若しくは
(iii) 表Bで列挙された抗体のうちのいずれか1つのVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、かつ、該配列の対応するCDRを含む配列、
を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含み、ここで、
(a) 該VHは:
(i) 表Bで列挙された任意の抗体のVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR);又は
(ii) (i)の配列に対して、3つのCDR領域内に少なくとも1つ、かつ、5、4、3、2又は1以下のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を全体的に含んでいる配列、若しくは
(iii) 表Bで列挙された抗体のうちのいずれか1つのVH配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、かつ、該配列の対応するCDRを含む配列;
(iv) 表A又は表Dに示されているHCDR1、HCDR2及びHCDR3の組み合わせ;
を含み、及び/又は
(a) 該VLは:
(i) 表Bで列挙された任意の抗体のVLに含まれる3つの相補性決定領域(CDR);又は
(ii) (i)の配列に対して、3つのCDR領域内に少なくとも1つ、かつ、5、4、3、2又は1以下のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を全体的に含んでいる配列、若しくは
(iii) 表Bで列挙された抗体のうちのいずれか1つのVL配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、かつ、該配列の対応するCDRを含む配列;或いは
(iv) 表A又は表Dに示されているLCDR1、LCDR2及びLCDR3の組み合わせ、
を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含むCD73分子、好ましくはヒトCD73タンパク質に結合する抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、
1) 該VHは、配列番号55に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号91に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
2) 該VHは、配列番号56に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号92に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
3) 該VHは、配列番号57に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号92に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
4) 該VHは、配列番号58に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号92に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
5) 該VHは、配列番号59に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号93に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
6) 該VHは、配列番号60に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号93に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
7) 該VHは、配列番号61に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号93に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
8) 該VHは、配列番号62に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号93に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
9) 該VHは、配列番号63に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号93に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
10) 該VHは、配列番号64に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号93に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
11) 該VHは、配列番号65に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号94に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
12) 該VHは、配列番号66に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号94に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
13) 該VHは、配列番号67に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号94に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
14) 該VHは、配列番号68に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号95に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
15) 該VHは、配列番号69に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号96に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
16) 該VHは、配列番号70に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号97に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
17) 該VHは、配列番号71に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号97に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;又は
18) 該VHは、配列番号72に示されているVHに含まれる3つの相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ、該VLは、配列番号97に示されているVLに含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、
(i) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号1~15、132~133又は136~149のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含み;該HCDR2は、配列番号16~30、134又は135のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含み;該HCDR3は、配列番号31~37又は150~156のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含み;及び/又は
(ii) 該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号38~43のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含み;該LCDR2は、配列番号44~48のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含み;該LCDR3は、配列番号49~54のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、
1) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号1又は136に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号16に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号31又は150に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号38に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号44に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号49に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
2) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号1又は136に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号16に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号32又は151に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号39に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号45に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号50に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
3) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号2又は137に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号17に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号32又は151に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号39に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号45に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号50に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
4) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号3又は138に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号18に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号32又は151に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号39に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号45に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号50に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
5) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号4又は139に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号19に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号33又は152に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号40に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
6) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号4又は139に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号33又は152に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号40に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
7) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号5又は139に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号21に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号33又は152に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号40に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
8) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号6又は140に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号22に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号33又は152に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号40に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
9) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号7又は141に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号23に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号33又は152に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号40に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
10) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号8又は142に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号23に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号33又は152に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号40に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
11) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号9又は143に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号24に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号34又は153に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号47に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号52に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
12) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号10又は144に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号25に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号34又は153に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号47に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号52に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
13) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号11又は145に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号26に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号35又は154に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号47に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号52に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
14) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号9又は143に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号24に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号36又は155に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号39に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号45に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号53に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
15) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号12又は146に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号27に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号36又は155に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号42に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号45に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号53に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
16) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号13又は147に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号28に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号37又は156に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号43に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号48に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号54に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;
17) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号14又は148に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号29に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号37又は156に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号43に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号48に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号54に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;或いは
18) 該VHは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、ここで、該HCDR1は、配列番号15又は149に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR2は、配列番号30に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該HCDR3は、配列番号37又は156に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該VLは、相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、ここで、該LCDR1は、配列番号43に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR2は、配列番号48に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り;該LCDR3は、配列番号54に示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成る。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域VH及び/又は軽鎖可変領域VLを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、
(a) 重鎖可変領域VHは:
(i) 配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、かつ、配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されている配列の対応するCDR配列を含むか;又は
(ii) 配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(iii) 配列番号55~72のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して1若しくは複数(好ましくは10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸の保存的置換)を有する、好ましくは、該アミノ酸変更がCDR領域内で起こらない、アミノ酸配列を含み;及び/又は
(b) 軽鎖可変領域VLは:
(i) 配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、かつ、配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されている配列の対応するCDR配列を含むか;又は
(ii) 配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(iii) 配列番号91~97のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して1若しくは複数(好ましくは10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸の保存的置換)を有する、好ましくは、該アミノ酸変更がCDR領域内で起こらない、アミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のものを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供する:
1) 配列番号55に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号91に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
2) 配列番号56に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号92に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
3) 配列番号57に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号92に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
4) 配列番号58に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号92に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
5) 配列番号59に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
6) 配列番号60に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
7) 配列番号61に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
8) 配列番号62に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
9) 配列番号63に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
10) 配列番号64に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
11) 配列番号65に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号94に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
12) 配列番号66に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号94に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
13) 配列番号67に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号94に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
14) 配列番号68に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号95に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
15) 配列番号69に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号96に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
16) 配列番号70に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号97に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
17) 配列番号71に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号97に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;又は
18) 配列番号72に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号97に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のものを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供する:
1) 配列番号55に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号91に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
2) 配列番号56に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
3) 配列番号57に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
4) 配列番号58に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
5) 配列番号59に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
6) 配列番号60に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
7) 配列番号61に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
8) 配列番号62に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
9) 配列番号63に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
10) 配列番号64に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号93に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
11) 配列番号65に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号94に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
12) 配列番号66に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号94に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
13) 配列番号67に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号94に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
14) 配列番号68に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号95に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
15) 配列番号69に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号96に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
16) 配列番号70に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号97に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;
17) 配列番号71に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号97に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL;又は
18) 配列番号72に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域VH、及び配列番号97に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域VL。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖及び/又は軽鎖を含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで:
(a) 該重鎖は:
(i) 配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、かつ、配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されている配列の対応するCDR配列を含むか;
(ii) 配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成るか;又は
(iii) 配列番号106~123のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して1若しくは複数(好ましくは20又は10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有する、好ましくは、該アミノ酸変更が重鎖CDR領域内で起こらない、より好ましくは、該アミノ酸変更が重鎖可変領域内で起こらない、アミノ酸配列を含み;及び/又は
(b) 該軽鎖は:
(i) 配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成り、かつ、配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されている配列の対応するCDR配列を含むか;
(ii) 配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから成りるか;又は
(iii) 配列番号124~130のうちのいずれか1つに示されているアミノ酸配列と比較して1若しくは複数(好ましくは20又は10以下、より好ましくは5、4、3、2、1)のアミノ酸変更(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的なアミノ酸置換)を有する、好ましくは、該アミノ酸変更が軽鎖CDR領域内で起こらない、より好ましくは、該アミノ酸変更が軽鎖可変領域内で起こらない、アミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のものを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供する:
1) 配列番号106に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号124に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
2) 配列番号107に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号125に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
3) 配列番号108に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号125に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
4) 配列番号109に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号125に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
5) 配列番号110に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
6) 配列番号111に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
7) 配列番号112に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
8) 配列番号113に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
9) 配列番号114に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
10) 配列番号115に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
11) 配列番号116に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号127に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
12) 配列番号117に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号127に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
13) 配列番号118に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号127に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
14) 配列番号119に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号128に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
15) 配列番号120に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号129に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
16) 配列番号121に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;
17) 配列番号122に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
18) 配列番号123に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130に示されているアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のものを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片を提供する:
1) 配列番号106に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号124に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
2) 配列番号107に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号125に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
3) 配列番号108に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号125に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
4) 配列番号109に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号125に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
5) 配列番号110に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
6) 配列番号111に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
7) 配列番号112に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
8) 配列番号113に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
9) 配列番号114に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
10) 配列番号115に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号126に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
11) 配列番号116に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号127に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
12) 配列番号117に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号127に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
13) 配列番号118に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号127に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
14) 配列番号119に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号128に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
15) 配列番号120に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号129に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
16) 配列番号121に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;
17) 配列番号122に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
18) 配列番号123に示されているアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD73抗体は、IgG1型抗体、IgG2型抗体、IgG3型抗体、又はIgG4型抗体である;好ましくは、抗CD73抗体はIgG4型抗体である。
いくつかの実施形態において、抗CD73抗体はモノクローナル抗体である。
いくつかの実施形態において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片はフレームワーク配列を含み、ここで、該フレームワーク配列の少なくとも一部がヒトコンセンサスフレームワーク配列である。
いくつかの実施形態において、本願は、CD73への結合に関して本明細書中に開示される例示的な抗体と競合するか、又はCD73への本明細書中に開示された例示的な抗体の結合と拮抗する、若しくは妨げる抗体に関する。
【0018】
いくつかの実施形態において、抗CD73抗体はキメラ抗体であり、そして、好ましい実施形態において、抗CD73抗体はヒト化される。いくつかの実施形態において、抗CD73抗体はヒト抗体である。本発明の抗CD73抗体はまた、その抗体断片、好ましくは:Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一領域抗体、二重特異性抗体(dAb)又は直鎖抗体、から成る群から選択される抗体断片も包含する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター、及び該核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片を調製する方法であって、本発明のコード核酸を発現するのに好適な条件下で本発明の宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、先に記載した方法によって調製された抗CD73抗体とその抗原結合断片を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む、免疫複合体、並びに医薬組成物及び医薬組み合わせ物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明はまた、CD73関連疾患又は障害(例えば、腫瘍)の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、免疫複合体、医薬組成物又は医薬組み合わせ物の使用も提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、CD73関連疾患又は障害(例えば、腫瘍)を予防及び/又は治療するための方法も提供し、該方法は、有効量の、本発明のCD73結合抗体又はその抗原結合断片、免疫複合体、医薬組成物又は医薬組み合わせ物を対象に投与することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組み合わせ物は、上記の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と抗PD1抗体を含んでおり、そして、該抗PD1抗体は好ましくはシンチリマブである。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、CD73によるT細胞増殖の阻害を無効にするための薬剤の製造における抗CD73抗体又はその抗原結合断片の使用も提供する。いくつかの実施形態において、前記T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞である。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、T細胞活性を活性化するための薬剤の製造における抗CD73抗体又はその抗原結合断片の使用も提供する。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、配列番号131に示されている第159~170アミノ酸の断片を含む、CD73の抗体結合エピトープ、好ましくは、配列番号131に示されている第159、161、162、163、及び170アミノ酸を含むエピトープ、も提供する。
【0025】
本発明はまた、サンプル中のCD73分子を検出するための方法に関し、該方法は:(a) 本発明の抗体又はその抗原結合断片を該サンプルと接触させ;そして、(b) 複合体が該抗体又はその抗原結合断片とサンプル中のCD73分子とによって形成されるかどうかを検出すること、を含む。
【0026】
本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片には、以下の利点がある:
1) 高親和性での、ヒト又はカニクイザルCD73への結合;
2) 細胞表面上の膜結合型CD73の酵素活性の完全な遮断;
3) 高親和性での、CHO-S細胞の表面上で発現されたヒトCD73への結合;
4) 可溶性CD73の酵素活性の遮断;
5) AMP-アデノシンによるCD4+T細胞増殖の阻害の無効化;
6) AMP-アデノシンによるCD8+T細胞増殖の阻害の無効化;
7) AMP-アデノシンによるT細胞活性の阻害の無効化;
8) 優れた抗腫瘍効果と安全性。
【0027】
次に詳細に説明される本発明の好ましい実施形態は、添付図面と組み合わせて読み取ることでよりよく理解できる。本発明を説明するために、図面に好ましい実施形態が示されている。しかしながら、本発明を図面に示される実施形態の特定の配置又は手段に制限することを意図していないことは理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】細胞表面におけるCD73分子の発現。
図2】抗CD73抗体分子は、Calu-6細胞の表面におけるCD73の酵素活性を阻害する。
図3】抗CD73抗体分子は、NCI-H292細胞の表面におけるCD73の酵素活性を阻害する。
図4】可溶性CD73の酵素活性に対する本発明の抗体の阻害作用。
図5】抗CD73抗体は、CHO-S細胞の表面で発現されたヒトCD73に結合する。
図6】抗CD73抗体分子は、CD4+T細胞の増殖活性を促進する。
図7】フローサイトメトリーによるCD8+T細胞におけるCD73発現の結果。
図8】抗CD73抗体分子は、CD8+T細胞の増殖活性を促進する。
図9a】抗CD73抗体によるヒトT細胞の活性化。
図9b】抗CD73抗体によるヒトT細胞の活性化。
図9c】抗CD73抗体によるヒトT細胞の活性化。
図10】抗PD-1抗体と組み合わせた抗CD73抗体によるT細胞の活性化。
図11】MDA MB231腫瘍担持NOGマウスモデルにおけるADI37505及びADI37506の腫瘍阻害活性。
図12】マウスの体重変化。
図13】A375腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおけるADI37505及び抗PD-1抗体の腫瘍阻害率。
図14】各群のマウスの体重変化。
図15】フローサイトメトリーによる、完全長ヒトCD73、CD73のN末端ドメイン及びC末端ドメインを過剰発現するGS CHO細胞への抗CD73抗体の結合。
図16a】フローサイトメトリーによる、CD73N末端突然変異を過剰発現するGS CHO細胞への抗CD73抗体の結合。
図16b】フローサイトメトリーによる、CD73N末端突然変異を過剰発現するGS CHO細胞への抗CD73抗体の結合。
図16c】フローサイトメトリーによる、CD73N末端突然変異を過剰発現するGS CHO細胞への抗CD73抗体の結合。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な説明
I. 定義
本発明の詳細な説明を行う前に、本明細書で説明されている特定の方法、方式又は試薬に変更がある可能性があるため、本発明はこれらに限定されるものではないことが理解されたい。なお、本発明で使用されている用語は特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれらによって限定されることは意図されず、特許請求の範囲によって限定される。別途定義が行われる場合を除き、本発明で使用されている技術用語又は科学用語はそのいずれも当業者の通常の理解と同じ意味を有する。
【0030】
本明細書で解釈のために以下の定義を使用し、しかも矛盾がなければ、単数形で使用される用語は複数の場合をも含み、逆の場合については同様である。なお、本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を加えるものではない。
【0031】
用語「約」は数値と共に使用されるとき、下限として記載数値より5%小さく上限として記載数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0032】
用語「約」は数値と共に使用されるとき、下限として記載数値より5%小さく上限として記載数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0033】
本明細書で使用される用語「及び/又は」は選択可能オプションのうちのいずれか1項又は選択可能オプションの2項又は複数項を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「包含する」又は「含む」とは、前記要素、整数又はステップを含むが、他の要素、整数又はステップを排除しないことを意味する。本明細書において、用語「包含する」又は「含む」を用いる場合、特記しない限り、述べられた要素、整数又はステップからなる場合を含む必要がある。例えば、ある具体的な配列の抗体可変領域を「包含する」ことを言及する場合、当該配列からなる抗体可変領域を含むことを指す。
【0035】
用語「抗体」は、本願において最も広い意味で使用されており、これだけに限定されるものではないが、所望の抗原結合活性を示すそのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、単鎖抗体、完全な抗体又は抗体断片を含む、様々な抗体構造を包含する。完全抗体は、概して少なくとも2つの完全長重鎖と2つの完全長軽鎖を含むが、場合によってはより少ない鎖を含んでいてもよく、例えば、ラクダにおいて天然に生じる抗体が重鎖のみを含み得る。
【0036】
用語「完全長抗体」や「完全抗体」は、自然抗体の構造に実質的に類似した構造を有するか、又は本明細書中に定義された重鎖含有Fc領域を有する抗体に言及するために本明細書中に互換的に使用される。
用語「抗体断片」は、上記抗体の任意の部分、好ましくはその抗原結合断片又はその可変領域、を含む。
【0037】
用語「抗原結合断片」は、完全抗体の一部を含みかつ完全抗体によって結合された抗原と結合する、完全抗体とは異なる分子を指す。抗原結合断片の非限定的な例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;二重抗体(dAb);線状抗体;単鎖抗体(例えば、scFv);単一ドメイン抗体、二価抗体若しくは二重特異性抗体の抗原結合断片;ラクダ科由来の抗体;及び所望の抗原(例えば、CD73)結合能を有する他の断片が挙げられる。
【0038】
用語「抗原」は、免疫応答を引き起こす分子を指す。このような免疫応答は、抗体の産生又は特異性免疫細胞の活性化に関係しており、又は両方に関係する可能性がある。当業者が理解できるように、ほぼ全てのタンパク質又はペプチドを含む大分子は、いずれも抗原として利用できる。加えて、抗原は組み換えDNA又はゲノムDNAから誘導されることができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」とは、抗原(例えば、CD73)における抗体分子と特異的に相互作用する部分を指す。
【0040】
本明細書中に使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成を有する抗体分子の調製を指す(すなわち、それらは同じタイプの免疫細胞によって産生され、免疫細胞のすべてが単一の親細胞のクローンであり、そしてこれにより、その分子はすべて同一である)。モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば、ハイブリドーマ技術、組み換え技術、ファージディスプレイ技術、CDRグラフティングなどの合成技術、又は斯かる技術若しくは当該技術分野で知られている他の技術の組み合わせによって製造されることができる。
【0041】
本発明で使用される場合、「結合」又は「特異性結合」という用語は、抗体の結合作用が抗原に対して選択的であり、かつ好ましくない又は非特異的な相互作用と区別できることを意味する。特定の抗原への結合に対する抗原の能力は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、表面プラズモン共鳴(SPR)又はバイオフィルム光学干渉技術(ForteBio)、或いは当該技術分野で知られている他の従来の結合定量法によって測定できる。
【0042】
本発明に関する例として、それは、インビトロにおけるアッセイ、好ましくは精製した野生型抗原を用いたバイオフィルム光学干渉アッセイによって、抗体又はその抗原結合断片が抗原エピトープに結合することを意味する。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、好ましくはそれがタンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物中の目的の抗原を認識するとき、抗原に特異的に結合すると言及される。
【0043】
重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体は「クラス」:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類され、そしてそれらのクラスの幾つかはサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、IgA1並びにIgA2などに更に細分される。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常領域はα、δ、ε、γおよびμと称される。5クラスの全てに見つかる軽鎖定常領域(CL)はκ(カッパ)及びλ(ラムダ)と称される。全長軽鎖と重鎖では、可変領域と定常領域が典型的には約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、そして重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。例えばFundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W. ed., 2nd ed., Raven Press, NY (1989))を参照のこと(これはあらゆる目的でその全内容が参考により本明細書中に援用される)。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は典型的に抗原結合部位を形成する。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義しており、前記領域は少なくとも一部の定常領域を含む。該用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG重鎖のFc領域は一般的にCys226又はPro230から重鎖のカルボニル基末端に延長している。一方、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよいし、又は存在しなくてもよい。特に明記しない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載のEU付番システム(別名EUインデックス)に準じる。
【0045】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体と抗原の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは一般に、各ドメインが4つの保存的なフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域とを含むように、類似の構造を有する(例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6thed., W. H. Freeman and Co. p91(2007)を参照のこと)。単一のVHドメイン又はVLドメインでも、抗原結合特異性を付与することができる。また、特定の抗原と結合する抗体に由来するVHドメイン又はVLドメインを利用して前記抗原と結合する抗体を分離することによって、相補性のVLドメイン又はVHドメインのライブラリをそれぞれスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150: 880-887(1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628(1991)を参照のこと。
【0046】
可変領域は、通常、4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)によって接続されている、相補性決定領域又はCDRとしても知られている3つの超可変領域から成る。エピトープに特異的に結合できる各対の2本の鎖からのCDRは、フレームワーク領域によって典型的にアラインされる。軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方が、N末端からC末端へとドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を一般的に含む。
【0047】
「相補性決定領域」、「CDR領域」、「CDR」又は「超可変領域」(超可変領域「HVR」と互換的に本明細書中に使用される)とは、抗体可変領域で領域であり、そしてそこでは、配列が高度に可変性であり、かつ、構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)が形成され、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)が含まれる。CDRは、主に抗原エピトープへの結合に関与する。重鎖及び軽鎖のCDRは、N末端から順に付番され、一般的にCDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれる。抗体重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはまた、HCDR1、HCDR2及びHCDR3とも呼ばれ、それに対して、抗体軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3とも呼ばれる。CDR配列は、当該技術分野で周知の様々なスキームを使用することによって、所定の軽鎖又は重鎖可変領域におけるアミノ酸配列から決定でき、該スキームとしては、抗体の三次元構造やCDRループの位相幾何学に基づくChothia(Chothia et al. (1989) Nature 342: 877-883, Al-Lazikani et al. “Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”, Journal of Molecular Biology, 273, 927-948 (1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th edition, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、International ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(International Immunogenetics Information Systems, World Wide Web imgt.cines.fr/)、及び多数の結晶構造を使用することによる親和性伝播クラスタリングに基づくNorth CDR定義(North et al., "A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations", Journal of Molecular Biology, 406, 228-256 (2011))などが挙げられる。
【0048】
例えば、CDR領域の異なった範囲がKabat及びChothia案などによって定義される。
【表1】
【0049】
また、参照CDR配列と同じKabat付番位置を有することに基づいてCDRを決定することもできる。
特に明記しない限り、本発明において「CDR」又は「CDR配列」という用語は、先に記載したいずれかの方法で決定されたCDR配列を包含する。
【0050】
特に明記しない限り、本発明において、(重鎖及び軽鎖可変領域残基の両方を含めた)抗体可変領域残基の位置に言及するとき、それはKabat付番システム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に従った付番位置を指す。
【0051】
一実施形態において、例えば、以下の表Aに示されているように、HCDR1の境界はAbM案に従って本発明において定義され、HCDR3の境界はIMGT案に従って定義され、及びHCDR2とLCDR1-3の境界は、Kabat案に従って定義される。一実施形態において、例えば、以下の表Dに示されているように、CDR1の境界はKabat案に従って本発明において定義される。
【0052】
しかしながら、同じ抗体可変領域のCDR境界が、異なった指定システムによって変更され得ることに注意しなければならない。すなわち、異なった指定システムに従って定義された同じ抗体可変領域のCDR配列は異なっている。よって、本発明で定義される特定のCDR配列を用いて定義された抗体を指すとき、前記抗体の範囲はまた抗体も包含し、そしてそれに関して、前記特定のCDR配列はそれらの可変領域配列に含まれるが、それに対して、主張されたCDR境界は、異なったスキーム(例えば、異なった指定システム基準又は組み合わせ)の適用のため、本発明によって定義された特定のCDR境界と異なる。
【0053】
異なった特殊性(すなわち、異なった抗原のための異なった結合部位)を有する抗体は、異なったCDRを有する。しかしながら、CDRは抗体によって異なるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与する。最小限の重複領域が、Kabat、Chothia、AbM、Contact、及びNorth法のうちの少なくとも2つを使用することによって決定でき、その結果、抗原結合のための「最小結合単位」が提供される。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であることができる。当業者が明らかにしたように、抗体の構造とタンパク質のフォールディングによって、CDR配列の残り部分の残基を確定することができる。従って、本発明は、本願に提供される如何なるCDRの変異体も考慮する。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基はそのまま保持することができ、Kabat又はChothiaに基づいて定義された残りのCDR残基は保守的なアミノ酸残基で置換されることができる。
【0054】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」又は「ADCC」という用語は、ある細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌免疫グロブリンが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、その後、その標的細胞を細胞毒素で死滅させることを可能にする、細胞傷害の一形態を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、その一方で、単球はγFc RI、γFc RII、及びγFc RIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92 (1991)の第464頁の表3にまとめられている。着目の分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5,500,362号、同第5,821,337号又は同第6,737,056号に記載のものなどのインビトロADCCアッセイを実施することができる。斯かるアッセイに適切なエフェクター細胞としては、PBMC及びNK細胞が挙げられる。これに代えて又はこれに加えて、着目の分子のADCC活性は、インビボにおいて、例えば、Clynes et al., PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているものなどの動物モデルで評価することができる。ADCC活性を評価するための例示的アッセイは、本明細書中の実施例に提供されている。
【0055】
「機能性Fc領域」という用語は、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有するFc領域を指す。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCRなど)のダウンレギュレートなどを含む。斯かるエフェクター機能には一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)の関連が求められ、それに例えば、本発明に開示されている複数種の測定手法を用いて評価できる。
【0056】
本発明で使用される用語「治療剤」は、化学療法剤、細胞傷害剤、ワクチン、追加の抗体、抗感染症剤、小分子薬物又は免疫調節剤を含む、例えば、腫瘍(例えば、癌)の予防又は治療に有効な任意の物質を包含する。
本明細書で使用される用語「免疫調節剤」とは、免疫応答を抑制又は調節する天然又は合成の活性薬剤又は薬剤を指す。免疫応答は、体液応答又は細胞応答であってもよい。
【0057】
用語「有効量」とは、本発明の抗体若しくはその断片又は複合体又は組成物の1回分又は複数回分の量が患者に投与された後、治療又は予防が必要な患者に所望の効果が得られるという量又は投与量を指す。治療又は予防目的のために、「有効量」を「治療的有効量」や「予防的有効量」に分けることができる。有効量は、当業者である主治医が、例えば、哺乳類の生物種、投与対象の大きさ、年齢、健康状態と、適用される疾患、疾患の程度又は重症度、個体患者における応答、投与される抗体、投与方式、投与製剤の生物学的利用能の特徴、選択される投与計画、併用療法の適用の複数種の要因を考慮して容易に決定することができる。
【0058】
一実施形態において、本発明のCD73抗体の有効量は、計測可能なパラメーターが(例えば、腫瘍増殖速度、腫瘍体積など)を対照と比較して少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、より一層好ましくは少なくとも約50%、60%又は70%、より一層好ましくは少なくとも80%又は90%好ましくは阻害する。
【0059】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」は、互換的に使用され、及び既に外因性ポリヌクレオチドが導入された細胞を指し、斯かる細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、元の初代より形質転換された細胞及びこれらより誘導された子孫を含むが、継代数を考慮しない。子孫は、変異が含まれる可能性があるため、核酸の内容において親細胞と同じではない。本発明では、初代の形質転換細胞からスクリーニング又は選択される同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。
【0060】
本発明で使用される場合、用語「多重特異性」抗体とは、少なくとも2つの抗原結合部位を有する抗体を指し、前記少なくとも2つの抗原結合部位の各抗原結合部位は、同じ抗原の異なるエピトープ又は異なる抗原の異なるエピトープと結合する。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原エピトープに対して結合特異性を有する抗体である。一実施形態において、本願は、第1抗原及び第2抗原に対する結合特異性を有する二重特異性抗体を本明細書に提供する。
【0061】
用語「エフェクター機能」は、免疫グロブリンアイソタイプによって変化する免疫グロブリンFc領域に直結する生物学的活性を指す。免疫グロブリンのエフェクター機能の例は、C1q結合及び補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合作用、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、免疫複合体介在性抗原提示細胞による抗原の取り込み、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレート及びB細胞活性化を含む。
【0062】
用語「サイトカイン」は、細胞集団から放出されて、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質の総称である。斯かるサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15などのインターロイキン(IL);TNF-α又はTNF-βなどの腫瘍壊死因子;並びにLIF、キットリガンド(KL)及びγ-インターフェロンを含めた他のポリペプチド因子、である。本発明で使用される場合、用語「サイトカイン」は、天然由来の又は組み換え細胞培養物に由来するタンパク質及び天然配列サイトカインの生物学的活性を有する同等物を含み、この同等物は、人工合成により産生された小分子実体、及びその医薬的に許容される誘導体と塩を含む。
【0063】
用語「キメラ抗体」は、(a)定常領域又はその一部を変化、置換又は交換することによって、抗原結合部位が異なる又は変化したタイプ、エフェクター機能及び/又は生物種の定常領域又はキメラ抗体に新しい性能を付与する完全に異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、医薬品)などに接続され、又は(b)可変領域又はその一部を、異なる又は変化した抗原特異性を有する可変領域によって変化、置換又は交換させた抗体分子を指す。例えば、マウス抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンに由来する定常領域に変更することによって修飾できる。ヒト定常領域に変更したため、該キメラ抗体は、抗原認識についてのその特異性を保持するとともに、元のマウス抗体と比べて、ヒトにおいて低下した抗原性を有する。
【0064】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト又はヒト細胞より産生された又はヒト以外に由来するものであって、ヒト抗体ライブラリ又はヒト抗体をコードする他の配列を利用する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものを指す。ヒト抗体に対する当該定義において、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が明確に除外されている。
【0065】
「ヒト化」抗体という用語は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。ある実施形態において、ヒト化抗体は少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質的全てを含み、ここで、CDRの全部または実質的に全部(例えば、6つのCDR)が非ヒト抗体のものに相当し、そしてFRの全部または実質的に全部がヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。抗体の「ヒト化形態」(例えば、非ヒト抗体)とは、ヒト化された抗体を指す。
【0066】
「免疫複合体」は、これだけに限定されるものではないが、細胞傷害剤又は標識を含めた、1若しくは複数の他の物質と複合化した抗体である。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「標識」とは、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブ若しくは抗体)に直接的又は間接的に複合又は融合され、かつ、複合又は融合の対象試薬による検出を促進する化合物又は組成物を指す。前記標識はそれ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)であるか、又は、酵素触媒によって標識されると検出可能な基質化合物又は組成物の化学的改変を触媒できる。当該用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリング(すなわち、物理的連結)させることによってプローブ若しくは抗体を直接標識すること、直接標識されている別の試薬との反応によりプローブ若しくは抗体を間接的に標識することを含む。間接的な標識の例は、蛍光標識されている二次抗体による一次抗体の検出、蛍光標識されているストレプトアビジンタンパク質で検出可能な、ビオチンを有するDNAプローブの末端標識の使用を含む。
【0068】
「個体」又は「対象」という用語は、哺乳類を含む。哺乳類の非限定的な例は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ(ヒツジ)、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)を含む。いくつかの実施形態において、前記個体又は前記対象はヒトである。
【0069】
「単離された」抗体という用語は、その存在する自然環境の成分と分離している抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって決定される純度が95%以上又は99%以上であるように精製される。抗体純度の評価方法の概要は、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B848:79-87(2007)を参照のこと。
【0070】
「抗CD73抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸」とは、単独のベクター又は別々のベクター内の核酸分子を含めた、抗体が重鎖又は軽鎖(或いは、その抗原結合断片)をコードする1若しくは複数の核酸分子、並びに宿主細胞内の1若しくは複数の位置に存在する斯かる核酸分子を指す。
【0071】
以下のとおりに配列間の配列同一性を算出する。
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列における同一性パーセンテージを決定するために、前記配列を最適化した上で比較を行ってもよい(例えば、比較の最適化のために第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列又は核酸配列のいずれか若しくは両者にギャップを導入するか、又は比較の便宜上、非相同配列を捨ててもよい)。1つの好ましい実施形態において、比較の便宜上、比較配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%である。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1配列の対象位置は第2配列の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占有されている場合、当該分子は当該位置において同一である。
【0072】
数学的アルゴリズムを用いて、2つの配列間において配列比較と同一性パーセンテージの算出を実現できる。1つの好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間における同一性パーセンテージはGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されているNeedlema&Wunsch((1970)J. Mol. Biol. 48: 444-453)アルゴリズム(http://www. gcg. comにて利用可能)に、Blossum62行列若しくはPAM250行列、ギャップ重み16、14、12、10、8、6若しくは4と長さ重み1、2、3、4、5若しくは6を用いて決定される。別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間における同一性パーセンテージはGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラム(http://www. gcg. comにて利用可能)に、NWSgapdna. CMP行列、ギャップ重み40、50、60、70若しくは80、長さ重み1、2、3、4、5若しくは6を用いて決定される。特に好ましくは、パラメータセット(特に断らない限り、1つのパラメータセットを使用する)には、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5のBlossum62スコアリング行列を採用する。
【0073】
また、2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列間における同一性パーセンテージは、ALIGNプログラム(2. 0版)に統合されているE. MeyersとW. Millerによるアルゴリズム((1989)CABIOS, 4: 11-17)によりPAM120加重残基表、ギャップ長さペナルティ12、ギャップペナルティ4を利用して決定されてもよい。
【0074】
より好ましくは、さらに例えば、本発明に記載の核酸配列とタンパク質配列を「参照配列」としてパブリックデータベースにおいて検索を実行することによって、他のメンバー配列又は関連の配列を同定することもできる。
【0075】
用語「医薬賦形剤」とは、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全若しくは不完全))、ビヒクル、担体又は安定化剤などを指す。
【0076】
用語「医薬組成物」とは、それに含まれる活性成分の生物学的活性が有効な形態で存在し、しかも前記組成物が投与される対象に許容されない毒性がある別の成分を含まない組成物を指す。
【0077】
「医薬組み合わせ物」という用語は、これだけに限定されるものではないが、キット、医薬組成物を含めた、非固定組み合わせ製品又は固定組み合わせ製品を指す。「非固定組み合わせ」という用語は、別々の実体として、活性成分(例えば、(i) 抗CD73抗体若しくはその断片と、(ii) 他の治療剤)が、特定の時間制約なしに同時に、連続して投与されるか、或いは同じ又は異なる時間間隔で、患者に投与されること、を意味し、ここで、斯かる投与は、患者において予防的又は治療的に有効なレベルの2以上の活性物質を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組み合わせ物で使用される抗CD73抗体若しくはその断片と他の治療剤は、それらが単独で使用されたときよりも多くならないレベルで投与される。「固定組み合わせ」という用語は、2以上の活性物質が単一体の形態で同時に患者に投与されることを意味する。該2以上の活性物質の用量及び/又は時間間隔は、好ましくは、疾患又は状態の治療において、各部分の組み合わせ使用がいずれかの成分単独で実現できるよりも優れた効果を生じさせるように選択される。各成分は同じ又は異なった個々の製剤の状態であってもよい。
【0078】
用語「組み合わせ療法」又は「併用療法」は、本開示に記載の癌又は感染を治療するための2つ以上の治療剤の投与を意味する。斯かる投与は、活性成分の一定の割合を有する単一のカプセルのような、実質的に同時にこれらの治療剤を同時投与することを含む。或いは、斯かる投与は、錠剤、カプセル、粉末及び液体などの、複数又は別個の容器での各活性成分の同時投与を含む。粉末及び/又は液体は、投与前に所望の投与量に再構成又は希釈することができる。加えて、斯かる投与は、各タイプの治療剤を実質的に同じ時間又は異なる時間に連続様式で使用することを含む。いずれの場合においても、治療案は、本明細書に記載の病的状態又は病状の治療における医薬の組み合わせの有益な効果を提供する。
【0079】
本明細書で使用される用語「治療」とは、出現している症状、病的状態、病状又は疾患の進行又は重症度に対する軽減、中断、遅延、寛解、停止、低減、又は逆転を指す。
【0080】
本明細書で使用される用語「予防」は、疾患、病的状態、特定の疾患若しくは病的状態に係る症状の発生又は進行に対する抑制を含む。いくつかの実施形態において、癌家族歴がある対象は、予防性計画対象の候補である。一般に、癌が言及される文脈では、用語「予防」は癌に係る病的状態又は症状が生じる前に、特に、癌に罹患するリスクのある対象に癌が生じる前の薬物投与を指す。
【0081】
用語「抗感染症活性剤」は、その投与濃度と投与間隔において、宿主の命に危険を及ぼすことなく微生物の成長を特異的に抑制又は解消する任意の分子を含む。前記微生物は、例えばウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫などの原生動物を含む。本明細書で使用される用語「抗感染症剤」は、抗生物質、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原生動物剤を含む。1つの具体的な態様において、前記抗感染症剤は、その投与濃度と投与間隔において宿主に毒性がない。
【0082】
抗細菌用の抗感染症剤又は抗細菌剤は、殺菌用(すなわち、直接死滅)又は静菌用(すなわち、分裂阻止)に大別することができる。抗細菌用の抗感染症剤は狭域抗菌剤(すなわち、影響を受けるのはグラム陰性菌など少数の種類の細菌サブタイプだけ)、広域抗菌剤(すなわち、幅広い種類に影響を与える)にさらに分類することができる。用語「抗ウイルス剤」は、ウイルスの成長、病原性及び/又はその生存を抑制又は解消する任意の物質を含む。用語「抗真菌剤」は、真菌の成長、病原性及び/又はその生存を抑制又は解消する任意の物質を含む。用語「抗原生動物剤」は、原生動物種(例えば、寄生虫)の成長、病原性及び/又はその生存を抑制又は解消する任意の物質を含む。
【0083】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用されるとき、それに連結された別の核酸を増殖させる核酸分子を指す。当該用語は、核酸の自己複製が可能な構造としてのベクター、それを導入していた宿主細胞のゲノムに結合されたベクターを含む。一部のベクターは、それに機能可能に連結された核酸の発現をガイドすることができる。本明細書で、斯かるベクターは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0084】
「対象/患者サンプル」という用語とは、患者又は対象より得た組織又は細胞サンプルの集まりを指す。組織又は細胞サンプルの由来としては、新鮮な、冷凍された及び/又は保存された器官、組織サンプル、生検サンプル若しくは穿刺サンプルなどの固形組織、血液若しくは任意の血液成分、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹腔内液(腹水)若しくは間質液などの体液、対象における妊娠若しくは発育の任意の段階に由来する細胞が挙げられる。組織サンプルは、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などの自然界に存在する組織に溶けない化合物を含んでもよい。本明細書に言及される腫瘍サンプルの非限定的な例は、腫瘍生検サンプル、吸引物、気管支肺胞洗浄液、胸膜腔内液(胸水)、痰、尿、手術標本、遊走する腫瘍細胞、血清、血漿、遊走する血漿タンパク質、腹水、腫瘍から誘導された若しくは腫瘍様の特性を示す初代細胞培養物又は細胞株、又はホルマリンで固定された若しくはパラフィンで包埋された腫瘍サンプル若しくは冷凍された腫瘍サンプルなどの保存された腫瘍サンプルを含む。
II. 抗体
別段の定めがない限り、「分化抗原群73」、「細胞外5’-ヌクレオチダーゼ」、「細胞外-5’-NT」及び「CD73」という用語は、本明細書中で使用される場合、任意の脊椎動物の起源(霊長動物(例えば、ヒト)や齧歯動物(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む)由来の任意の天然CD73を指す。該用語は、「完全長」の未加工CD73、並びに細胞内プロセシングによって産生された任意の形態のCD73又は任意のその断片を包含する。該用語はまた、CD73の天然に生じる変異株、例えばスプライス変異体又は対立遺伝子変異体も含む。いくつかの実施形態において、CD73はヒト又はカニクイザルCD73である。
【0085】
「抗CD73抗体」、「抗CD73」、「CD73抗体」又は「抗CD73抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、十分な親和性でCD73タンパク質に結合することができる抗体又はその抗原結合断片を指す。該抗体はCD73を標的とする診断剤及び/又は治療剤として使用できる。一実施形態において、抗CD73抗体は、例えば、放射免疫測定(RIA)又はバイオフィルム層の光学干渉法(例えば、Fortebio親和性アッセイ)又はMSD(Meso Scale Discovery)アッセイによって計測した場合に、CD73タンパク質へのその結合の約10%未満の程度で非CD73タンパク質に結合する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、十分な親和性でCD73(例えば、ヒト又はカニクイザルCD73)に結合する、例えば、平衡解離定数(KD)≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13Mなど、例えば、10-9M~10-13Mなど)でCD73に結合する。いくつかの実施形態において、CD73は、ヒト又はカニクイザルCD73である。いくつかの実施形態において、抗体結合親和力は、Bioflim Optical Interferometryを使用することによって測定される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、細胞表面で発現されたCD73に結合し、CD73の酵素機能を阻害する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、可溶性CD73分子に結合し、CD73の酵素機能を阻害する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、アデノシンの蓄積によって引き起こされたCD4+T細胞増殖の阻害を無効にすることができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、アデノシンの蓄積によって引き起こされたCD4+T細胞増殖の阻害を完全に無効にすることができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、アデノシンの蓄積によって引き起こされたCD8+T細胞増殖の阻害を無効にすることができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、アデノシンの蓄積によって引き起こされたCD8+T細胞増殖の阻害を完全に無効にすることができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、アデノシンの蓄積によって引き起こされたT細胞活性化の阻害を無効にすることができる。
いくつかの実施形態において、本発明のCD73結合抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、該VH及びVLは、表A又は表Dに示されているそれらから選択される6つのCDRの組み合わせを含む。
【0091】
好ましい実施形態において、本発明によって提供されるCD73結合抗体又はその抗原結合断片に含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の組み合わせは、表A又は表Dに示されている。
【0092】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含む。好ましくは、本発明において前記アミノ酸変異はアミノ酸置換であり、保存的な置換であることが好ましい。
【0093】
好ましい実施形態において、本発明において前記アミノ酸変異はCDR外の領域(例えば、FR)に生じる。より好ましくは、本発明において前記アミノ酸変異は重鎖可変領域外及び/又は軽鎖可変領域外の領域に生じる。
【0094】
いくつかの実施形態において、置換は保存的な置換である。前記保存的な置換とは、1つのアミノ酸が同種の別のアミノ酸によって置換されたことを指す。例えば、1つの酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸によって置換されたこと、1つの塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸によって置換されたこと、又は1つの中性アミノ酸が別の中性アミノ酸によって置換されたことを指す。例示的な置換は下記表に示されるとおりである。
【0095】
【表2】
【0096】
いくつかの実施形態において、置換は抗体のCDR領域に生じる。一般に、得られた変異体は、親抗体に対して特定の生物学的特性(例えば、親和力の増加)において修飾(例えば、改善)を有し、及び/又は親抗体の実質的に保持された特定の生物学的特性を有する。例示的な置換変異体は、親和力成熟抗体である。
【0097】
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体のグリコシル化の程度が増大又は低減するように改変される。抗体のグリコシル化部位の追加又は欠失は、アミノ酸配列を改変させて1若しくは複数のグリコシル化部位を生成又は除去することによって容易に実現できる。抗体がFc領域を含む場合、それに付着する糖類を改変させることができる。いくつかの使用では、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)機能を向上させるためにフコースモジュールを除去するなど、望ましくないグリコシル化部位を除去する修飾が有用であり得る(Shield et al. (2002) JBC277:26733を参照のこと)。他の使用では、ガラクトシド化修飾を行って補体依存性細胞毒性(CDC)を修飾することができる。
【0098】
一部の実施形態において、Fc領域変異体を産生させるために本明細書に提供される抗体のFc領域に1若しくは複数のアミノ酸修飾を導入することもできる。Fc領域変異体は、1若しくは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgGl、IgG2、IgG3又はIgG4Fc領域)を含み得る。Fc変異体の例については、米国特許第7,332,581号、同第6,737,056号、同第6,737,056号、WO2004/056312及びShields et al. ,J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604(2001)、米国特許第6,194,551号、WO99/51642及びIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184(2000)、米国特許第7,371,826号、Duncan&Winter,Nature 322: 738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、同第5,624,821号、及びWO94/29351を参照のこと。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明によって提供された抗体のFc領域は、点突然変異のS228、F234及び/又はL235、好ましくはS228P、F234A及び/又はL235Aを有する。
一部の実施形態において、システイン操作された抗体、例えば、抗体の1若しくは複数の残基がシステイン残基で置換された「チオMAb」の産生が必要とされる場合がある。例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように、システイン操作された抗体を生成することができる。
【0100】
一部の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、本分野で既知の事項として容易に得られる他の非タンパク質の部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導作用に適した部分の非限定的な例は、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1, 3-ジオキサン、ポリ-1, 3, 6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、デキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、ポリビニルアルコール、これらの混合物を含む。
【0101】
III. 本発明の核酸とそれを含むベクター及び宿主細胞
一態様において、本発明は、上記抗CD73抗体又はその抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を提供する。抗体重鎖可変領域をコードする例示的核酸配列は、配列番号73~90のいずれかに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含むか、又は配列番号73~90のいずれかから選択される核酸配列を含む。抗体軽鎖可変領域をコードする例示的核酸配列は、配列番号98~105のいずれかに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含むか、又は配列番号98~105のいずれかから選択される核酸配列を含む。本発明はまた、ストリンジェント条件下で先に記載した核酸にハイブリダイズするか、又は先に記載した核酸と比較して1若しくは複数の置換(例えば、保存的置換)、欠失又は挿入を有する核酸も包含する。
【0102】
一実施形態において、前記核酸を含む1つ以上のベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは発現ベクターで、例えば、真核発現ベクターである。ベクターの非限定的な例は、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージ又は酵母人工染色体(YAC)を含む。いくつかの実施形態において、ベクターはpV120ベクターである。
【0103】
発現用の発現ベクター又はDNA配列の用意が完了すると、適切な宿主細胞に発現ベクターをトランスフェクション又は導入することができる。上記の目的を達成するためには、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、パーティクルガン、脂質ベースのトランスフェクション又は他の通常技術を利用できる。プロトプラスト融合を利用する場合、培地において細胞を培養し適切な活性に対してスクリーニングする。産生されたトランスフェクション細胞の培養と産生された抗体分子の単離のための方法と条件は、当業者が知っている内容であり、本明細書に記載の方法と既存の技術により、使用された特定の発現ベクターと哺乳類宿主細胞の改変又は最適化を行うことができる。
【0104】
また、トランスフェクションされた宿主細胞に対する選択が可能な1つ以上のマーカーを導入することによって、染色体にDNAが安定的に導入された細胞を選択することができる。前記マーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性、殺生物剤(例えば、抗生物質)耐性又は重金属(例えば、銅)耐性などを付与することができる。選択可能な標識遺伝子は発現されるDNA配列と直接連結することによって、又は同時形質転換により同一の細胞に導入することができる。mRNA合成の最適化のために、他にエレメントを必要とする場合がある。これらのエレメントは、スプライシングシグナル、転写プロモーター、エンハンサー、終結シグナルを含んでもよい。
【0105】
一実施形態において、本発明は、核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。抗体又はベクターをコードする核酸をクローン化するか又は発現するために好適な宿主細胞は、本明細書中に記載した原核又は真核細胞を含む。一実施形態において、宿主細胞は真核生物のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞又はHEK293細胞)、或いは抗体又はその抗原結合断片の産生に好適な他の細胞から選択される。
【0106】
IV. 本発明の抗体分子の製造及び精製
一実施形態において、本発明は、抗CD73抗体又はその断片(好ましくは、抗原結合断片)の製造方法を提供し、ここで、前記方法は、抗体又はその断片(好ましくは、抗原結合断片)をコードする核酸の発現に好適な条件下において前記宿主細胞を培養すること、及び任意に前記抗体又はその断片を分離することを含む。ある実施形態において、前記方法は、宿主細胞から抗CD73抗体又はその断片を回収することをさらに含む。
【0107】
一実施形態において、CD73に結合する抗体を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、抗体の発現に適した条件において、前述したように、前記抗体(例えば、いずれか1本のポリペプチド鎖、及び/又は複数本のポリペプチド鎖)をコードする核酸又は前記核酸の発現ベクターを含む宿主細胞を培養すること、及び任意に前記宿主細胞(又は宿主細胞培地)から前記抗体を回収することを含む。
【0108】
遺伝子組み換えによりCD73に結合する抗体を製造するために、抗体(例えば、上記の抗体、例えば、いずれか1本のポリペプチド鎖、及び/又は複数本のポリペプチド鎖)をコードする核酸を分離し、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現のために、それを1つ以上のベクターに挿入する。斯かる核酸は、(例えば、抗体重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)通常のプロセスにより容易に分離し、そして配列決定である。
【0109】
本願に記載のとおり調製された抗体分子は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなど、既知の従来技術により精製できる。特定のタンパク質を精製するための実際の条件は、正味電荷、疎水性、親水性などの因素にも依存し、これは当業者にとって公知する内容である。本発明の抗体分子の純度は、様々な公知する分析方法のいずれかにより決定でき、前記公知する分析方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどを含む。
【0110】
V. アッセイ
本明細書で提供されるCD73結合抗体は、当該技術分野で知られている様々なアッセイにより、それらの物理的又は化学的特性、及び/又は生物学的活性によって同定されるか、スクリーニングされるか、又は特徴づけされる。一態様において、本発明の抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によって、それらの抗原結合活性について試験される。CD73への結合は、当該技術分野で知られている方法を使用することによって測定され、そして、例示的方法は本明細書中に開示されている。いくつかの実施形態において、Biofilm Layer Optical Interferometry又はMSDアッセイが使用される。
【0111】
上記アッセイのいずれかがCD73結合抗体の代わりに又はそれに加えて本発明の免疫複合体を用いて実施されることは理解される。
上記アッセイのいずれかがCD73結合抗体と他の活性物質を用いて実施されることは理解される。
【0112】
VI. 免疫複合体
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書中に提供される抗CD73抗体のいずれかと他の物質を含む免疫複合体を提供する。いくつかの実施形態において、他の物質は、例えば、細胞毒性剤又は化学療法薬などの治療剤である。細胞毒性剤としては、細胞に有害なあらゆる剤が挙げられる。免疫複合体の形成に好適な細胞毒性剤の例が当該技術分野で知られている。
いくつかの実施形態において、免疫複合体は腫瘍の予防又は治療に使用される。いくつかの実施形態において、その腫瘍は癌である。
【0113】
VII. 医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載の抗CD73抗体、若しくはその抗原結合断片、又はその免疫複合体のいずれかをを含む組成物を提供し、好ましくは、該組成物は医薬組成物である。一実施形態において、該組成物は、医薬添加剤をさらに含む。一実施形態において、該組成物(例えば、医薬組成物)は、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合断片若しくは免疫複合体、及び1若しくは複数の治療剤(例えば、化学療法薬、細胞毒性剤、ワクチン、他の抗体、抗感染活性物質、小分子薬物又は免疫調節薬)の組み合わせを含む。
いくつかの実施形態において、該組成物は、癌を予防するか又は治療するのに使用される。一実施形態において、該癌は乳癌、肺癌である。
【0114】
本発明としてはまた、抗CD73抗体又はその免疫複合体を含む組成物(医薬組成物を含む)、及び抗CD73抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物(医薬組成物を含む)も挙げられる。特定の実施形態において、該組成物は、1若しくは複数の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、或いは1若しくは複数の抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片をコードする1若しくは複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物はまた、当該技術分野で知られている医薬担体や医薬ビヒクルなどの好適な医薬賦形剤を含んでもよい。医薬賦形剤の使用に関しては、例えば、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", Fifth Edition, R.C. Rowe, P. J. Seskey and S.C. Owen, Pharmaceutical Press, London, Chicagoを参照のこと。
【0115】
本発明の医薬組成物はまた、治療される特定の適応症のために必要に応じて1若しくは複数の他の活性成分を含んでもよく、好ましくは、互いの活性に悪影響を与えないそれらの活性成分を含んでもよい。例えば、化学療法薬、細胞毒性剤、ワクチン、他の抗体、抗感染活性物質、小分子薬物又は免疫調節薬などの他の抗癌活性成分などが提供されることもまた望ましいであろう。該活性成分は、意図された適用に有効な量で組み合わせ物中に好適に存在する。
【0116】
VIII. 医薬組み合わせ物
本発明は、先に記載した本発明の医薬組み合わせ物を提供し、そしてそれは、抗CD73抗体又はその抗原結合断片及び抗PD1抗体を含み、さらに、該抗PD1抗体はシンチリマブである。
本発明は、癌又は腫瘍を治療するための薬剤の調製における先に記載の本発明の医薬組み合わせ物の使用を提供する。
【0117】
本発明の癌又は腫瘍としては、乳癌、肺癌及び黒色腫が挙げられる。
本発明の医薬組み合わせ物は、同時に、別々に又は連続して組み合わせた状態で使用され得る。
【0118】
本発明は、それを必要としている個体に有効量の本発明の医薬組み合わせ物を投与することを含む、癌を予防又は治療する方法を提供する。該有効量としては、予防的有効量や治療的有効量が挙げられる。
【0119】
IX. 適用
一態様において、本発明は、対象に有効量の本発明の抗CD73抗体若しくは抗原結合断片、免疫複合体、医薬組成物又は組み合わせ物を投与することを含む、CD73関連の疾患又は障害(例えば、癌)を予防及び/又は治療する方法を提供する。
該対象は、哺乳類、例えば、霊長目動物、好ましくは高等霊長目動物、例えば、ヒトであってもよい。一実施形態において、該対象は、本明細書中に記載の疾患を患っているか又はそのリスクがある。特定の実施形態において、該対象は、化学療法による治療及び/又は放射線療法などの他の治療を受けているか又は受けたことがある。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した癌は、例えば、ヒト乳癌、肺癌である。
【0120】
他の態様において、本発明は、本明細書中に記載したCD73関連の疾患又は障害の予防及び/又は治療のための薬剤の製造及び生産における抗CD73抗体若しくはその抗原結合断片、免疫複合体、医薬組成物又は医薬組み合わせ物の使用を提供する。
いくつかの実施形態において、抗体若しくはその抗原結合断片、免疫複合体、組成物、医薬組み合わせ物又は製品は、障害及び/又は障害に関連する症状の発症を遅らせる。
【0121】
X. 診断と検出のための方法と組成物
特定の実施形態において、本明細書中に提供される任意の抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、生物学的サンプル中のCD73の存在を検出するのに使用できる。本明細書中に使用される場合、「検出」という用語は、定量的又は定性的検出を含み、そして、例示的な検出方法としては、免疫組織化学、免疫細胞学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子複合磁性ビーズ、ELISAアッセイ、PCR技術(例えば、RT-PCR)が挙げられる。特定の実施形態において、該生物学的サンプルは、血液、血清又は生物起源の他の流体サンプルである。特定の実施形態において、該生物学的サンプルは、細胞又は組織を含む。いくつかの実施形態において、該生物学的サンプルは、過剰増殖性又は癌性の病巣に由来する。
【0122】
一実施形態において、生物学的サンプル中のCD73の存在又は不存在を検出する方法が提供される。特定の実施形態において、該CD73はヒトCD73である。特定の実施形態において、該方法は、本明細書中に記載の抗CD73抗体と生物学的サンプルを、CD73への該抗体の結合を可能にする状態下で接触させ、そして、抗CD73抗体とCD73の複合体が形成されるかどうか検出することを含む。該方法は、インビトロ法又はインビボ法であり得る。
【0123】

いくつかの実施形態において、CD73関連疾患又は障害(例えば、癌又は腫瘍)を治療する方法が提供され、該方法は、以下の:治療的有効量の抗CD73抗体を対象に投与することを含む。別の実施形態において、該方法は、対象に1若しくは複数の他の治療法を投与することをさらに含む。
【0124】
XI. 本発明の例示的な抗CD73抗体
表A. 本発明の例示的な抗体のCDRのアミノ酸配列
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0125】
表B. 本発明の例示的な抗体の軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【0126】
表C. 本発明の配列表の部分配列に対応する配列番号
【表5】
【0127】
表D. 本発明の例示的な抗CD73抗体の重鎖配列と軽鎖配列:
【表6-1】
【表6-2】
【0128】
1) ADI-34071
重鎖 (配列番号106)
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSGISWSSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDRRYGLTYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号124)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDITNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQSVVLPFTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0129】
2) ADI-34074
重鎖 (配列番号107)
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSGISWSSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGKYLPTGSVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号125)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYYDYPPITFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0130】
3) ADI-37496
重鎖 (配列番号108)
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDFYMHWVRQAPGKGLEWVSGISWSSTSIDYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGKYLPTGSVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号125)
【0131】
4) ADI-37497
重鎖 (配列番号109)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYFMHWVRQAPGKGLEWVSGISWSSGPIDYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGKYLPTGSVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号125)
【0132】
5) ADI-34086
重鎖 (配列番号110)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGPYGSGSYWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号126)
EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSSNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQYTNHYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0133】
6) ADI-37503
重鎖 (配列番号111)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGRASSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGPYGSGSYWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号126)
【0134】
7) ADI-37504
重鎖 (配列番号112)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFHNYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGTGRATYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGPYGSGSYWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号126)
【0135】
8) ADI-37505
重鎖 (配列番号113)
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYAMTWVRQAPGKGLEWVSAISGRGTATYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGPYGSGSYWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号126)
【0136】
9) ADI-37506
重鎖 (配列番号114)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNLAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGRATSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGPYGSGSYWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号126)
【0137】
10) ADI-37507
重鎖 (配列番号115)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFLNYAMAWVRQAPGKGLEWVSAISGRATSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGPYGSGSYWDTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号126)
【0138】
11) ADI-34095
重鎖 (配列番号116)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGARYPIAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号127)
DIQLTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQDISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANDFPITFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0139】
12) ADI-37513
重鎖 (配列番号117)
EVQLLESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFNFYGMHWVRQAPGKGLEWVAVINDEGINKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGARYPIAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号127)
【0140】
13) ADI-37522
重鎖 (配列番号118)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSHYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISDEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGWLRYPIAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号127)
【0141】
14) ADI-34101
重鎖 (配列番号119)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSRYDWSLFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号128)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYVLYPFTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0142】
15) ADI-37532
重鎖 (配列番号120)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYSMHWVRQAPGKGLEWVAHIVEGSDKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSRYDWSLFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号129)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCGASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYVLYPFTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0143】
16) ADI-34104
重鎖 (配列番号121)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCAVSGYSISSGYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYHSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARASIYTPPPEYFQHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号130)
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQQSRIYSTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC*
【0144】
17) ADI-37542
重鎖 (配列番号122)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCAVSGYSISEGYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYHTGFTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARASIYTPPPEYFQHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号130)
【0145】
18) ADI-37543
重鎖 (配列番号123)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCAVSGYSISSGYYWAWIRQPPGKGLEWIGSIFHSGFTFYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARASIYTPPPEYFQHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*

軽鎖 (配列番号130)

CD73タンパク質野生型配列 (配列番号131)
MCPRAARAPATLLLALGAVLWPAAGAWELTILHTNDVHSRLEQTSEDSSKCVNASRCMGGVARLFTKVQQIRRAEPNVLLLDAGDQYQGTIWFTVYKGAEVAHFMNALRYDAMALGNHEFDNGVEGLIEPLLKEAKFPILSANIKAKGPLASQISGLYLPYKVLPVGDEVVGIVGYTSKETPFLSNPGTNLVFEDEITALQPEVDKLKTLNVNKIIALGHSGFEMDKLIAQKVRGVDVVVGGHSNTFLYTGNPPSKEVPAGKYPFIVTSDDGRKVPVVQAYAFGKYLGYLKIEFDERGNVISSHGNPILLNSSIPEDPSIKADINKWRIKLDNYSTQELGKTIVYLDGSSQSCRFRECNMGNLICDAMINNNLRHTDEMFWNHVSMCILNGGGIRSPIDERNNGTITWENLAAVLPFGGTFDLVQLKGSTLKKAFEHSVHRYGQSTGEFLQVGGIHVVYDLSRKPGDRVVKLDVLCTKCRVPSYDPLKMDEVYKVILPNFLANGGDGFQMIKDELLRHDSGDQDINVVSTYISKMKVIYPAVEGRIKFSTGSHCHGSFSLIFLSLWAVIFVLYQ
【実施例
【0146】
実施例1. 本発明の坑CD73抗体の獲得、発現及び精製
1. 酵母ベースの抗体ディスプレイライブラリによる親抗体の獲得:
現行手法(WO2009036379;WO2010105256;WO2012009568)に従って、増幅を、Adimabから利用可能な酵母ベースの抗体ディスプレイライブラリによって実施したが、ここで、各ライブラリの多様性は1×109に達した。簡単に言えば、最初の2ラウンドのスクリーニングを、Miltenyiから入手可能なMACSシステムを使用した磁気活性化セルソーティングによって実施した。最初に、それぞれのライブラリの酵母細胞(約1×1010細胞/ライブラリ)を、100nMのビオチン標識ヒトCD73抗原(R&D Systems, 5795-EN)を含有するFACS洗浄バッファー(0.1%のウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝溶液)中で室温にて15分間インキュベートした。細胞を、50mlの予冷FACS洗浄バッファーで一度洗浄し、40mlの同じ洗浄バッファーで再懸濁し、500μlのストレプトマイシンビーズ(Miltenyi LS)を加え、そして、4℃にて15分間インキュベートした。1000rpmで室温にて5分間遠心分離した後に、上清を捨て、そして、細胞を、5mlのFACS洗浄バッファーで再懸濁し、そして、その細胞溶液を、Miltenyi LSカラムに加えた。添加後に、そのカラムを、毎回3mlの、FACS洗浄バッファーで3回洗浄した。Miltenyi LSカラムを、磁界から取り出し、5mlの成長培地で溶出し、そして、溶出した酵母細胞を回収し、37℃にて一晩培養した。
【0147】
次のラウンドのソーティングを、フローサイトメトリーによって実施した:MACSシステムを用いたスクリーニングによって得られた約1×108の酵母細胞を、FACSバッファーで3回洗浄し、そして、低濃度のビオチン(100-1nM)標識ヒトCD73抗原と共に室温にてインキュベートした。培地を捨て、細胞を、FACS洗浄バッファーで2回洗浄し、次に、LC-FITCと混合し(FITC標識ヤギ抗ヒト免疫グロブリンF(ab’)κ鎖抗体、Southern Biotech)(1:100希釈)、さらにSA-633(ストレプトアビジン-633、Molecular Probes)(1:500希釈)又はSA-PE(ストレプトアビジンフィコエリトリン、Sigma)(1:50希釈)試薬と混合し、そして、4℃にて15分間インキュベートした。細胞を、予冷FACS洗浄バッファーで2回すすぎ、0.4mlのバッファーで再懸濁し、そして、濾過しながら分離チューブに移した。細胞を、FACS ARIA(BD Biosciences)を使用してソートした。
【0148】
スクリーニングで得られた抗CD73抗体を発現する酵母細胞を、30℃にて48時間振盪して、抗CD73抗体の発現を誘導した。誘導後に、酵母細胞を室温にて1300rpmで10分間の遠心分離によって取り除き、そして、上清を採集した。上清中の抗CD73抗体を、Protein Aを使用して精製し、酢酸溶液、pH2.0で溶出し、そして、抗CD73抗体を採集した。検出後、抗体純度は>95%であった。
【0149】
それぞれ、ADI-34086、ADI-34101、ADI-34071、ADI-34095、ADI-34104及びAD-34074と称される、抗ヒトCD73抗体の合計6つの菌株をこのスクリーニングで得た。該抗体の特性を以下の表1に示す。
【0150】
2. 抗ヒトCD73抗体の親和性成熟:
より高い親和性を有する抗ヒトCD73抗体を入手するために、抗体ADI-34086、ADI-34101、ADI-34071、ADI-34095、ADI-34104及びAD-34074を以下の方法によって最適化した。
【0151】
VHmutスクリーニング
突然変異を、この方法で従来のミスマッチPCR法を使用して抗体重鎖領域内に導入した。具体的には、PCRプロセス中の塩基ミスマッチ確率は、1uMの超変異塩基類似体dPTPと8-oxo-dGTPを使用することによって、約0.01bpまで上昇した。
【0152】
得られたミスマッチPCR産物を、相同組み換えによって重鎖定常領域を含有するベクターに組み立てた。1×107のライブラリ容量を有する第二のライブラリを、CD73抗原力価、非標識抗原との競合、及び親抗体との競合を含めたスクリーニング圧力下で入手した。3ラウンドの成功したスクリーニングをFACS法によって実施した。
【0153】
CDRH1/CDRH2スクリーニング
VHmut法によって得られた子孫抗体の重鎖CDR3遺伝子は、1×108の多様性を有するCDRH1/CDRH2遺伝子ライブラリに組み立てられ、そして、3ラウンドのスクリーニングをそれにより実施した。第一ラウンドをMACS法によって実施し、さらに、第二及び第三ラウンドをFACS法によって実施した。抗体-抗原複合体を、親和性圧力に供して、最も高い親和性を有する抗体を選抜する。
【0154】
上記親和性成熟のプロセス後に、それぞれ、ADI-37503、ADI-37504、ADI-37505、ADI-37506、ADI-37507、ADI-37532、ADI-37513、ADI-37522、ADI-37497、ADI-37496、ADI-37542及びADI-37543と称する、親抗体に対して改良された親和性を有する抗ヒトCD73モノクローナル抗体12株を得た。
【0155】
そのため、本発明で例示されている18個の抗体のCDRのアミノ酸配列及び対応する配列の番号(配列番号)、軽鎖及び重鎖可変領域、軽鎖、並びに重鎖を、本願の表A、B、D、及び配列表で列挙する。本発明で例示されている抗体はIgG4形式である。
【0156】
3. CHO-S細胞における本発明の抗体の発現と精製:
抗体を発現するCHO-S細胞株を、製造業者の取扱説明書に従ってFreedom(登録商標) CHO-S(登録商標) Kit(Invitrogen)を使用して作出した。抗体分子の重鎖及び軽鎖のDNA配列を、最初に、軽鎖の重鎖上流と共に同じpCHO1.0プラスミド内に挿入した。次に、構築したpCHO1.0プラスミドを、化学的トランスフェクション又はエレクトロトランスフェクションによってCHO-S細胞株内に移入し、そして、トランスフェクションの48時間後に、ForteBioによって抗体産生を検出して、トランスフェクション効率を決定した。該トランスフェクト細胞を2ラウンドの圧力スクリーニングに供し、高い抗体発現を有する細胞のプールを得た。その後に、細胞プールが拡大し、抗体を大規模に発現させ、そして、細胞上清を回収し、Protein Aを用いて精製して、抗体純度を>95%にした。
【0157】
4. 293HEK細胞における本発明の抗体の発現と精製:
ベクターpV120を、293HEK細胞における抗体の一過性発現に使用した。該抗体の重鎖及び軽鎖を最初に、別々のpV120ベクターにクローン化した。該抗体分子の重鎖又は軽鎖を有するpV120ベクターを、化学的トランスフェクションによって293HEK細胞内に移入した。培養した293HEKを、製造業者によって提供されたプロトコールに従って、化学的トランスフェクション試薬ポリエチレンイミンPEI(Polysciencesから入手可能)を用いて一過性にトランスフェクトした。最初に、プラスミドDNAとトランスフェクション試薬を調製し、(トランスフェクション体積の1/5の体積を有する)F17培地(Gibco)を2本の50ml遠心分離チューブ中に加え、一方に濾過したプラスミド(130μg/100ml)を加え、もう片方に濾過したPEI(1g/L、Polysciences)(質量比(プラスミド:PEI)=1:3)を加え、20回、5分間そっと混合し、そして、15~30分間静置した。DNA/PEI混合物を、293HEK細胞にそっと注ぎ入れ、よく混合し、そして、37℃、8%のCO2にて7日間培養した。新鮮培地を48時間毎に加えた。7日間又は細胞生存率が≦60%に達するまで細胞を継続的に培養した後に、13,000rpmで室温にて20分間遠心分離した。その上清を、取り出し、そして、Protein Aを用いて精製して、抗体純度を>95%にした。
【0158】
同様に、実施例で使用した次の対照抗体のそれぞれを、293HEK細胞で発現させ、そして、精製した:
対照抗体Oleclumab(Omab)、その配列を米国特許第9,938,356B2号に開示した抗体の配列「MEDI9447」に示す。
対照抗体BMS4-2、その配列をWO2016/081748A2に開示した抗体の配列「CD73.4-2」に示す。
対照抗体Surface、その配列をWO2018/237157A1に開示した抗体の配列「373.A」に示す。
対照抗体CPI-006、その配列をWO2017/100670A1に開示した抗体の配列「CPX-006」に示す。
対照抗体Imab hu101-28、その配列を2018/137598A1に開示した抗体の配列「hu101-28」に示す。
対照抗体Innate 6E1、その配列をWO2016/131950A1に開示した抗体の配列「6E1」に示す。
【0159】
実施例2. 本発明の抗CD73抗体の親和性の検出
ヒトCD73に結合する本明細書中に記載した18個の抗CD73抗体の平衡解離定数(KD)を、Biofilm Layer Optical Interferometry(ForteBio)によって測定した。
【0160】
二価の親和性測定を、現行法(Estep, P et al., High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning. MAbs, 2013.5(2): p. 270-8)に従ったForteBio親和性定量方法による親和性最適化の前に、6つの抗体に対して本明細書中で実施した。簡単に言えば、センサーを、アッセイバッファーによりオフラインで30分間平衡化し、次に、オンライン検出を60秒間実施して、ベースラインを確立した。先に記載したように得られた精製抗体を、ForteBio親和性測定のためにAHQセンサー(ForteBio)にオンラインで取り込んだ。次に、抗体を取り込んだセンサーを、100nMのヒト又はカニクイザル抗原に5分間晒し、その後、該センサーを、解離のために5分間アッセイバッファーに移して、解離速度を測定した。反応速度アッセイを、1:1結合モデルを使用して実施した。
【0161】
親和性最適化前の6つの抗体の、Calu-6腫瘍細胞の表面で発現されたヒトCD73の酵素活性を阻害する能力を、CellTiter-Glo(登録商標)発光法に基づいて計測し、そして、酵素活性を阻害する能力を、AMP分解に関する異なった抗体の阻害曲線を比較して決定した。詳細な実験プロセスは以下のとおりであった:(1) Calu-6細胞を96ウェル平底プレートに植え付け、そして、一晩培養した。(2) 翌日、候補抗体の3倍連続希釈溶液(0~10000ng/mlの濃度範囲)を、Calu-6細胞と混合し、37℃、5%のCO2にて30分間、インキュベータ内でインキュベートした。(3) AMP溶液(Sigma、01930)を、調製し、2mMの終濃度にて抗体と共にインキュベートした細胞に加えた。該混合物を、37℃、5%のCO2にて3時間、インキュベータ内でインキュベートした。(4) ATP溶液(Sigma、A6419)を調製し、200μMの終濃度にて細胞培養上清及びCellTiter-Glo基質(Promega、G7572)と混合した。室温にて10分間振盪した後に、発光値をMultimode Reader(Molecular Divices, SpectraMax i3)(1000ms)によって読み取った。IC50値を、曲線に当てはめるによって計算した。
【0162】
先に記載したように実施したアッセイにおいて親和性最適化前の6つの抗体の親和性及び酵素活性を、以下の表1に示す。
【0163】
表1:親和性最適化前の6つの抗体の特性の概要
【表7】
【0164】
CD73二量体の存在のため、親和性最適化後の12個の抗体の一価(scfv)親和性を、次のようにForteBio親和性アッセイを使用することで測定した:センサーを、アッセイバッファーによりオフラインで30分間平衡化し、次に、オンライン検出を60秒間実施して、
ベースラインを確立した。ヒト又はカニクイザルCD73抗原タンパク質を、ForteBio親和性計測のためにAHQセンサー(ForteBio)にオンラインで取り込んだ。次に、抗原を取り込んだセンサーを、親和性成熟によって得られた抗体のscfv断片100nMに5分間晒し、その後、該センサーを、解離のために5分間アッセイバッファーに移して、解離速度を測定した。反応速度アッセイを、1:1結合モデルを使用して実施した。
親和性最適化後の12個の抗体の親和性を表2に示す。
【0165】
表2:親和性最適化後の本発明の抗体の親和性をBiofilm Layer Optical Interferometryによって計測した
【表8】
【0166】
上記の本発明の12個の例示的な抗体のすべてが、ヒト及びカニクイザルCD73に対して非常に高い親和性を示すことがわかった。
【0167】
実施例3. 本発明の抗CD73抗体は、細胞レベルにてCD73の酵素活性を阻害する
CD73分子は、様々な腫瘍細胞の表面で発現される。この試験では、NCI-H292及びCalu-6腫瘍細胞の表面のCD73分子の発現を、フローサイトメトリーによって検出した。図1に示すとおり、Calu-6腫瘍細胞の表面のCD73分子の発現は、NCI-H292細胞のそれより高かった。
【0168】
1. 親和性最適化した抗CD73抗体は、細胞膜CD73の酵素活性を阻害する
上記の例示的な12個の本発明の親和性最適化抗体のCalu-6腫瘍細胞の表面で発現されたヒトCD73の酵素活性を阻害する能力を、Omabを陽性対照として使用し、及び無関係のIgGを陰性対照として使用した、CellTiter-Glo(登録商標)発光法に基づいて計測した。酵素活性を阻害する能力を、AMP分解に関する異なった抗体の阻害曲線を比較して決定した。詳細な実験プロセスは以下のとおりであった:(1) Calu-6細胞を96ウェル平底プレートに植え付け、そして、一晩培養した。(2) 翌日、0~10000ng/mlの濃度範囲を有する、候補抗体の3倍連続希釈溶液を、Calu-6細胞と混合し、37℃、5%のCO2にて30分間、インキュベータ内でインキュベートした。(3) AMP溶液(Sigma、01930)を、調製し、2mMの終濃度にて抗体と共にインキュベートした細胞に加えた。該混合物を、37℃、5%のCO2にて3時間、インキュベータ内でインキュベートした。(4) ATP溶液(Sigma、A6419)を調製し、200μMの終濃度にて細胞培養上清及びCellTiter-Glo基質(Promega、G7572)と混合した。室温にて10分間振盪した後に、発光値をMultimode Reader(Molecular Divices, SpectraMax i3)(1000ms)によって読み取った。結果を図2に示す。以下の表3は、陽性対照としてOmabを用いた、細胞膜結合型CD73の酵素活性の阻害に関する、本発明の12個の例示的な親和性最適化抗CD73抗体のIC50をまとめる。
【0169】
表3:細胞膜上におけるCD73の酵素活性の阻害に関する抗CD73抗体分子のIC50値
【表9】
【0170】
上記の実験結果から、以下のことが結論づけられる:(1) 親和性成熟化後のすべての抗CD73抗体が、細胞表面のCD73の酵素活性を効果的に阻害できた。(2) 親和性成熟した子孫抗体ADI-37503、ADI-37504、ADI-37506、ADI-37505、ADI-37507、ADI-37532、ADI-37513、ADI-37522、ADI-37497及びADI-37496は、対照抗体Oleclumabに対して細胞表面のCD73の酵素活性を阻害するより強い能力を示す。
【0171】
より低いCD73発現を有するNCI-H292細胞では、本発明の抗CD73抗体ADI-37505とADI-37506及び対照抗体を、Omabを陽性対照として使用し、及び無関係のhIgG4を陰性対照として使用した、CellTiter-Glo(登録商標)発光法によって、NCI-H292細胞の表面に発現されたヒトCD73の酵素活性を阻害する能力について計測した。酵素活性を阻害する能力を、AMP分解に関する異なった抗体の阻害曲線を比較して決定した。詳細な実験プロセスは以下のとおりであった:(1) NCI-H292細胞を96ウェル平底プレートに植え付け、そして、一晩培養した。(2) 翌日、0~50mMの濃度範囲を有する、候補抗体の3倍連続希釈溶液を、NCI-H292細胞と混合し、37℃、5%のCO2にて30分間、インキュベータ内でインキュベートした。(3) AMP溶液(Sigma、01930)を、調製し、2mMの終濃度にて抗体と共にインキュベートした細胞に加えた。該混合物を、37℃、5%のCO2にて7時間、インキュベータ内でインキュベートした。(4) ATP溶液(Sigma、A6419)を調製し、200μMの終濃度にて細胞培養上清及びCellTiter-Glo基質(Promega、G7572)と混合した。室温にて10分間振盪した後に、発光値をMultimode Reader(Molecular Divices, SpectraMax i3)(1000ms)によって読み取った。結果を図3に示す。
【0172】
上記の実験結果から、以下のことが結論づけられる:(1) 抗体ADI-37505とADI-37506はともに、NIC-H292細胞の表面のCD73の酵素活性を効果的に阻害できる。(2) ADI-37505及びADI-37506の両方が、対照抗体Medimmune Omabのものより低い、それぞれ1.47nM及び1.27nMのIC50でCD73の酵素活性を阻害する。(3) 最大の酵素活性阻害率は、最高濃度でもMedimmune Omabに関して達成されなかったが、しかし一方で、ADI-37505及びADI-37506の両方が、高濃縮にてCD73酵素活性度を完全に阻害した。そのため、ADI-37505及びADI-37506の両方が、対照抗体と比較して、細胞レベルでCD73の酵素活性を阻害するより高い能力を示す。
【0173】
2. 親和性最適化した抗CD73抗体は、可溶性CD73の酵素活性を阻害する
細胞膜の表面のCD73分子を、ホスホリパーゼ作用下の細胞膜から分離し、そして、酵素活性を有する可溶性CD73分子になるように細胞間物質と血液を投入した。溶液中でヒトCD73の酵素活性を阻害する本発明の例示的な抗体の能力を、Cell Titer-Glo(登録商標)発光法に基づいて計測した。酵素活性を阻害する能力を、AMP分解に関する異なる抗体の阻害曲線を比較することによって測定した。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:(1) この実験の希釈培地として無血清EMEM培地(ATCC、30-2003)を37℃にて予熱し;(2) 50μlのCD73タンパク質(ACRO、CD3-H52H7)を、2nMの濃度にて96ウェル丸底プレートに加え;(3) 抗体溶液を、別の96ウェルプレートで、200nMの最高抗体終濃度で、EMEMを用いて3倍に連続的に希釈し(12個のグラジエント溶液);(4)
50μlの(3)のそれぞれの抗体グラジエント溶液を、(2)の96ウェル丸底プレートの各ウェルに加え、ピペッティングによって混合し;そして37℃にて30分間インキュベートし;(5) ATP(Sigma、A6419)とAMP(Sigma、01930)の原液をEMEM培地中に追加して、ATP=600μΜ、AMP=2mMの濃度を作り出し、50μlの上記溶液を、(4)の96ウェル丸底プレートの各ウェルに加え;そしてピペッティングによって混合し;(6) インキュベータ内で37℃にて1時間インキュベートし;(7) 50μlのCell-Titer Glo(Promega、G7572)基質を、96ウェル乳白色培養プレートに加え、50μlの(6)のそれぞれの溶液を加え、混合し、そして室温にて5分間インキュベートした。蛍光値をi3 Multimode Reader(Molecular Divices、SpectraMax i3)によって読み取った(1000ms)。
【0174】
結果を図4に示す:本発明の抗CD73抗体は、可溶性CD73の酵素活性を効果的に阻害し、その結果、アデノシンへのAMPの転換を阻害する。酵素活性の阻害に関して、ADI-37505及びADI-37506分子は、それぞれ1時間にて0.07184nM及び0.08974nMのIC50を有し、かつ、阻害作用は用量依存性を示す。Medimmune Omab抗体は、高濃度にて乏しい阻害効果しか示さず、かつ、フック効果を示す。
【0175】
実施例4. 本発明の抗CD73抗体は、CHO-S細胞で過剰発現されたヒトCD73に結合する
CHO-S細胞の表面で過剰発現されたヒトCD73に対する本発明の抗体の結合能を、フローサイトメトリーアッセイに基づいて計測した。様々な抗体の結合能を、CHO-S細胞の表面で発現されたヒトCD73とそれらの結合曲線を比較して測定した。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:(1) CHO-S細胞を解凍し、そして従来の方法に従って二次培養して、良好な状態の細胞を得た。(2) 0~400mMの濃度領域を有する3倍連続希釈候補抗体をCHO-S細胞と共に4℃にて30分間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後に、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光二次抗体(Southern biotech、2040-09)と共に4℃にて30分間インキュベートした。PBSでもう3回洗浄した後に、CHO-S細胞を100μlのPBSで再懸濁した。(3) 蛍光中央値をフローサイトメータ(BD、Celesta)によってPE蛍光チャンネルで計測した。(4) EC50と曲線のピーク値を比較し、そしてその結果を図5に示す。
【0176】
上記の実験結果から、以下のことが結論づけられる:抗体ADI-37505及びADI-37506は、CHO-S細胞の表面で発現されたヒトCD73に匹敵する結合能を有し、かつ、それらのEC50はMedimmune Omabのそれより優れている。
【0177】
実施例5. 本発明の抗CD73抗体は、CD73によるT細胞増殖の阻害を無効化し、そして、抗CD73抗体はインビトロにおいてT細胞を活性化する。
1. 本発明の抗CD73抗体は、CD73によるCD4+T細胞増殖の阻害を無効にする
CD73抗体分子は、CD73の酵素活性を阻害することができ、アデノシンへのAMPの転換を遮断し、そしてそれは、免疫抑制機能を有し、その結果、アデノシン蓄積によって引き起こされるT細胞増殖の阻害を無効にする。この原理に基づいて、この試験では、IL-2及びCD3/CD28ダイナビーズをCD4+T細胞培養システムに加えて、T細胞増殖を促進し、そしてAMPをさらに加えて、T細胞増殖を阻害する。このシステムでは、T細胞増殖の促進における、様々なCD73抗体分子の活性を評価する。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:(1) PBMC細胞を解凍し、そして一晩培養し、翌日、CD4+T細胞を単離し、そして製造業者の取扱説明書に従って、CD4+T Cell Enrichment Kit(stem cell、19052)によって精製した。(2) CD4+T細胞を、製造業者の取扱説明書に従って、Cell-Trace Far Red Live Cell Stainingキット(Thermo、C34564)を使用することによって標識した。(3) 20ng/mlのIL-2(R&D、202-IL500)及びビーズ:細胞=1:5のCD3/CD28ダイナビーズ(Gibco、11131D)を、標識したCD4+T細胞と混合し、次に、96ウェル丸底プレートに移し、1時間静置培養した。(4) 候補抗体分子の0-20nM段階希釈物を、その細胞に加え、混合し、そして30分間インキュベートした。(5) AMP溶液(Sigma、01930)を調製し、300μMの終濃度にてCD4+T細胞に加えた。混合後に、3日間インキュベータ内に置いた。(6) 細胞増殖の割合をフローサイトメトリー(BD、Celesta)によって検出した。(7) 細胞増殖曲線をプロットし、そして、EC50と曲線のピーク値を比較した。
【0178】
結果を図6に示す:ADI-370503、ADI-37505、ADI-37506、ADI-37513、ADI-37497及びADI-37542はすべて、AMP/アデノシンによって引き起こされるCD4+T細胞増殖の阻害を無効化でき、そしてその中でも、ADI-37503、ADI-37505及びADI-37506は、対照抗体Omabより高いプラットフォームを有し、かつ、また、それらのEC50も対照抗体Omabのものよりはるかに低く、ADI-37503、ADI-37505及びADI-37506が対照抗体Omabより優れた活性を有することを示している。
【0179】
2. 本発明の抗CD73抗体は、CD73によるCD8+T細胞増殖の阻害を無効にする
本発明の抗体ADI-37505を、CD8+T細胞の表面のCD73分子の発現を検出するのに使用した。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:(1) 従来の方法に従って、ヒト末梢血単核細胞を解凍した。(2) 20nMの抗体ADI-37505、並びにCD3(Biolegend)及びCD8(Biolegend)抗体を、末梢血単核細胞と4℃にて30分間インキュベートするのに使用した。PBSで3回洗浄した後に、PE標識ヤギ抗ヒトIgG蛍光二次抗体(Southern biotech)と共に4℃にて30分間インキュベートした。PBSでもう3回洗浄した後に、ヒト末梢血単核細胞を100μlのPBSで再懸濁した。(3) フローサイトメトリー(BD)アッセイ。結果を図7に示す。試験したヒト末梢血単核細胞のCD8+T細胞集団では、CD8+T細胞の49.5%が、表面にCD73分子を発現する。
【0180】
CD73抗体分子は、CD73の酵素活性を阻害することができ、アデノシンへのAMPの転換を遮断し、そしてそれは、免疫抑制機能を有し、その結果、アデノシン蓄積によって引き起こされるT細胞増殖の阻害を無効にする。この原理に基づいて、この試験では、20ng/mlのIL-2及び1×104のCD3/CD28ダイナビーズ:細胞をCD8+T細胞培養システムに加えて(5×104/ウェル)、T細胞増殖を促進し、そして1000μMのAMPをさらに加えて、T細胞増殖を阻害する。このシステムでは、T細胞増殖の促進における、様々なCD73抗体分子の活性を評価する。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:(1) PBMC細胞を解凍し、そして従来の方法に従って一晩培養し、翌日、CD8+T細胞を単離し、そして製造業者の取扱説明書に従って、CD8+T Cell Enrichment Kit(stem cell、19053)によって精製した。(2) CD8+T細胞を、製造業者の取扱説明書に従って、Cell-Trace Far Red Live Cell Stainingキット(Thermo、C34564)を使用することによって標識した。(3) 20ng/mlのIL-2(R&D、202-IL500)及びビーズ:細胞=1:5のCD3/CD28ダイナビーズ(Gibco、11131D)を、標識したCD8+T細胞と混合し、次に、96ウェル丸底プレートに移し、1時間静置培養した。(4) 候補抗体分子の0-100nM段階希釈物を、その細胞に加え、混合し、そして30分間インキュベートした。(5) AMP溶液(Sigma、01930)を調製し、1000μMの終濃度にてCD8+T細胞に加えた。混合後に、3日間インキュベータ内に置いた。(6) 細胞増殖の割合をフローサイトメトリー(BD、Celesta)によって検出した。(7) 細胞増殖曲線をプロットし、そして、それぞれの抗体のEC50と曲線のピーク値を比較した。
【0181】
結果を図8に示す。本発明の抗体ADI-37505、ADI-37506及び対照抗体Medimmune Omabはすべて、AMP/アデノシンによるCD8+T細胞増殖の阻害を無効化する。本発明の抗体は、対照抗体Omabのものより低いEC50でCD8+T細胞増殖を促進し、かつ、ADI-37505及びADI-37506の処置群における最大細胞増殖速度は、対照抗体Omabのものより高い。そのため、抗体ADI-37505及びADI-37506は、CD8+T細胞増殖を促進するのに、対照抗体Omabより優れた活性を有し、ここで、CD3/CD28+IL2を陽性対照として使用し、及びCD3/CD28+IL2+AMPを陰性対照として使用した。
【0182】
3. 本発明の抗CD73抗体によるT細胞の活性化
ヒトT細胞の活性化に対する本発明の抗体ADI-37505及びADI-37506のインビトロにおける効果を検出した。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:成熟樹状細胞(moDC、Allcells)を従来の方法に従って解凍し、そして別のドナーからの末梢血単核細胞と混合し(moDC:PBMC=1:10);次に、様々なグラジエント濃度の抗CD73抗体を追加し(濃度は図9に示す)、そしてAMP(Sigma、01930)を2000μMの終濃度にて培養系に追加した。該細胞を、混合し、そして4日間培養し、その後、細胞培養上清に分泌されたサイトカインのレベルを、Cytokine DetectionキットTNF-α(Cisbio、62HTNFAPEG)、IFN-γ(Cisbio、62HIFNGPEG)及びIL-2(Cisbio、62HIL02PEG)によって検出した。T細胞活性化の程度を、サイトカインの発現の量に従って算定した。
【0183】
結果を図9に示す。PBMC細胞との成熟DC細胞の共インキュベーションは、T細胞を活性化して、サイトカインTNF-α(図9a)、IFN-γ(Fig.9B)及びIL-2(図9c)を分泌する。AMPを系に追加したとき、CD73の作用によって産生されたアデノシンは、T細胞の活性を阻害した。本発明の抗体ADI-37505及びADI-37506は、異なった濃度にてアデノシンの阻害効果を除去でき、その結果、T細胞を活性化して、サイトカインを分泌する。様々な濃度の対照抗体Medimmune Omabは、本発明の抗体と比較して、T細胞の活性化に対してより乏しい効果を有する。
【0184】
実施例6. 抗PD-1抗体と組み合わせた本発明の抗CD73抗体による抗原特異的T細胞の活性化
ヒト記憶T細胞の活性化に対する、抗PD-1抗体(シンチリマブ、Cinda)と組み合わせた抗体ADI-37505の効果を検出した。詳細な実験プロセスは、以下のとおりであった:流行性耳下腺炎に感染した又は流行性耳下腺炎ワクチンでワクチン接種したドナーからの末梢血単核細胞を、従来の方法に従って解凍し;次に、様々な濃度(10nMから始まり、3倍に連続的に希釈した)の抗CD73抗体及び抗PD-1抗体シンチリマブを10nMの終濃度にて加え、そして1000μMの終濃度にてAMP(Sigma、01930)及び2μg/mlの終濃度にて流行性耳下腺炎(NOVUS、NBP2-62509)を培養系に追加した。混合し、そして5日間培養した。細胞培養上清に分泌されたサイトカインのレベルをCytokine DetectionキットIFN-γ(Cisbio、62HIFNGPEG)によって検出した。T細胞活性化の程度を、サイトカインの発現量に従って算定した。
【0185】
結果を図10に示し、流行性耳下腺炎とPBMCの共インキュベーションは、T細胞を活性化して、IFN-γサイトカインを分泌する。AMPを系に追加したとき、CD73の作用によって産生されたアデノシンは、T細胞の活性を阻害した。様々な濃度の本発明の抗体ADI-37505はすべて、T細胞活性化に対するアデノシンの阻害効果を除去でき、その結果、T細胞を活性化して、サイトカインを分泌し;T細胞の活性化は、抗PD-1抗体と組み合わせることによってさらに増強される。
【0186】
実施例7. 本発明の抗CD73抗体の抗腫瘍活性
この実験では、本発明の抗CD73抗体の抗腫瘍効果を、MDA MB231細胞(ATCC、HTB-26)を接種したNOGマウス(Beijing Weitong Lihua Laboratory Animal Technology Co., Ltd.)を使用して測定した。
【0187】
細胞:
末梢血単核細胞を、従来の方法に従って解凍し、カウントし、遠心分離によって回収し、そしてPBSで1×107細胞/mlに希釈した。各マウスには、0.2mlのPBMC懸濁液、すなわち、2×106細胞/マウス、を静脈内接種した。
MDA MB231細胞を規定どおりに二次培養した。末梢血単核細胞の接種5日後に、MDA-MB-231細胞を、トリプシン処理と遠心分離によって回収し、そして当該細胞をPBS+マトリゲル(Corning、356231)を用いて2.5×107細胞/mlの濃度に分散させた(1:1)。各マウスには、NOGマウスの右腹部皮下に0.2mlのMDA-MB-231細胞懸濁液(すなわち、マウスあたり5×106)を接種した。
投薬:
1日目に、腫瘍細胞を接種した後に、マウスを無作為に群(各群には7匹のマウス)に分けた。薬物を、接種後1、8、12、15、及び19日目に投与し(採用した抗体、陽性対照抗体、陰性対照抗体、及びその濃度を表4に示す)、そしてマウスの腫瘍体積と体重を1週間に2回観察した。観察を29日目までで終えた。相対腫瘍阻害率(TGI%)を、接種後29日目に算出し、そしてその算定式は以下のとおりであった:
TGI%=100%( h-IgG対照群の腫瘍体積-処置群の腫瘍体積)/(h-IgG対照群の腫瘍体積-h-IgG対照群の最初の腫瘍体積)。
腫瘍体積の計測:腫瘍の最も長い長軸(L)と最も長い幅軸(W)をノギスによって計測し、そして以下の式に従って腫瘍体積を計算した:V=L×W2/2。体重を、電子秤を使用して計測した。マウスは、研究期間を通じてそれらが>20%体重を失ったときに、安楽死させた。
【0188】
統計結果と分析:
腫瘍阻害率の結果を図11と表4に示す:腫瘍の大きさを29日目にまとめ、そして腫瘍阻害率を計算した。h-IgGと比べて、対照抗体Medimmune Omab、ADI-37505及びADI-37506の腫瘍阻害率は、それぞれ45%、76%及び46%である。抗体ADI-37505の腫瘍阻害効果は対照抗体のものより有意に優れている。同時に、マウスの体重を検出し、そして結果を図12に示す。投薬群のマウスでは、有意な体重減少は見られなかった。
【0189】
表4. 接種29日目の腫瘍阻害率
【表10】
【0190】
実施例8. A375腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおける抗PD-1抗体と組み合わせた本発明の抗CD73抗体の抗腫瘍有効性
末梢血単核細胞を、従来の方法に従って解凍し、カウントし、遠心分離によって回収し、そしてPBSで1×107細胞/mlに希釈した。各マウスには、0.2mlのPBMC懸濁液、すなわち、2×106細胞/マウス、を静脈内接種した。ヒト悪性黒色腫細胞A375(ATCC、CRL-1619(商標))を規定どおりに二次培養した。末梢血単核細胞の接種5日後に、A375細胞を、トリプシン処理と遠心分離によって回収し、そして当該細胞を、PBSを用いて3×107細胞/mlの濃度に分散させた。各マウスには、NOGマウスの右腹部皮下に0.2mlのA375細胞懸濁液(すなわち、マウスあたり6×106)を接種した。
投薬:
1日目に、黒色腫細胞を接種した後に、マウスを無作為に群(各群には8匹のマウス)に分けた。薬物を、接種後1、4、8、及び11日目に投与し(採用した抗体、陽性対照抗体、陰性対照抗体、及びその濃度を表5に示す)、そしてマウスの腫瘍体積と体重を1週間に2回観察した。観察を25日目までで終えた。相対腫瘍阻害率(TGI%)を、接種後25日目に算出し、そしてその算定式は以下のとおりであった:
TGI%=100%( h-IgG対照群の腫瘍体積-処置群の腫瘍体積)/(h-IgG対照群の腫瘍体積-h-IgG対照群の最初の腫瘍体積)。
腫瘍体積の計測:腫瘍の最も長い長軸(L)と最も長い幅軸(W)をノギスによって計測し、そして以下の式に従って腫瘍体積を計算した:V=L×W2/2。体重を電子秤を使用して計測した。マウスは、研究期間を通じてそれらが>20%体重を失ったときに、安楽死させた。
【0191】
統計結果と分析:
腫瘍阻害率の結果を図13と表5に示す:腫瘍の大きさを25日目にまとめ、そして腫瘍阻害率を計算した。h-IgGと比べて、10mg/kgの対照抗体Omabは、A375に対して抗腫瘍効果を示さず;ADI-37505処置群の腫瘍阻害率は33%であり;シンチリマブの腫瘍阻害は15%であり;ADI-37505とPD-1抗体(シンチリマブ)の併用療法の腫瘍阻害率は61%であり、そしてそれは、それぞれの単独の薬物のものより有意に優れている。同時に、マウスの体重を検出し、そして結果を図14に示す。投薬群のマウスでは、有意な体重の変化は見られなかった。
【0192】
表5. 接種後25日目の腫瘍阻害率
【表11】
【0193】
実施例9. ヒトCD73分子に対する本発明の抗CD73抗体の結合部位の試験
対照抗体と比べて、本発明のCD73抗体は、優れたインビトロ機能を示すので、本発明のCD73抗体は、CD73分子との特有の結合部位を有することが推測される。Fortebioの結果は、本発明のCD73抗体(ADI-37505とADI-37506)、Innate 6E1、BMS4-2及びSurfaceがOmabと同じCD73分子のビン(bin)に結合するが、それに対して、CPI-006とImab hu101-28はそれぞれを異なったビンに結合することを示す(表5)。CD73のN末端(第27~317アミノ酸)及びC末端(第337~549アミノ酸)を過剰発現するCHO-S細胞への様々なCD73抗体の結合を、試験でさらに調べた。
【0194】
GS-CHO細胞の表面に発現されたヒトCD73のN末端又はC末端ドメインへの本発明の例示的な抗体の結合能を、フローサイトメトリーアッセイに基づいて計測した。具体的な実験プロセスの詳細は、以下のとおりであった:(1) GS CHO細胞の一過性トランスフェクションのためのCD73のN末端(第27~317アミノ酸)及びC末端(第337~549アミノ酸)を発現するpLVX-IRES-puroヒトCDプラスミド(Suzhou Hongxun Biotechnology Co., Ltd.)の構築;(2) 48時間後、様々な濃度のADI-37505、ADI-37506、及び対照抗体を、一過性トランスフェクト細胞と共に4℃にて30分間インキュベートした。(3) PBS(Gibco、10010-023)で3回洗浄した後に、PE標識ヤギ抗ヒト二次抗体(SouthernBiotech、2040-09)と共に4℃にて30分間インキュベートした。PBSでもう3回洗浄した後に、細胞を100μlのPBSで再懸濁した。(4) 平均蛍光値を、フローサイトメータ(BD、Celesta)によってPEチャンネルで計測した。抗体濃度のLog10を水平座標として使用し、及びPEチャンネルの平均蛍光値を垂直座標として使用して、曲線をプロットし、そしてEC50と曲線のピークを比較した。
【0195】
結果を図15に示し、本発明のCD73抗体(ADI-37505とADI-37506)、Innate 6E1、BMS4-2、Surface、Omab及びCPI-006はCD73分子のN末端に結合し、それに対して、Imab hu101-28はCD73分子のC末端に結合する。
【0196】
この結果によると、CD73分子の25個のN末端変異体が当該試験において構築されて(表6)、アミノ酸突然変異がCD73分子へのCD73抗体の結合に影響を及ぼし得るかをさらに確認した。具体的な実験プロセスの詳細は、以下のとおりであった:(1) GS CHO細胞の一過性トランスフェクションのための図6に示したCD73分子のN末端特異的部位突然変異のpLVX-IRES-puroヒトCDプラスミドの構造;(2) 48時間後、様々な濃度の候補抗体を、一過性トランスフェクト細胞と共に4℃にて30分間インキュベートした。(3) PBS(Gibco、10010-023)で3回洗浄した後に、PE標識ヤギ抗ヒト二次抗体(SouthernBiotech、2040-09)と共に4℃にて30分間インキュベートした。PBSでもう3回洗浄した後に、細胞を100μlのPBSで再懸濁した。(4) 平均蛍光値を、フローサイトメータによってPEチャンネルで計測した。抗体濃度のLog10を水平座標として使用し、及びPEチャンネルの平均蛍光値を垂直座標として使用して、曲線をプロットし、そしてEC50と曲線のピークを比較した。
【0197】
表6. CD73分子のN末端突然変異体
【表12】
【0198】
検出結果を図16に示す:V163K、V170K及びL159A/Y161A/K162A/V170A突然変異を有するCD73分子は、本発明の抗体ADI-37505及びADI-37506への結合能を軽減したが、それに対して、通常、他の22個の突然変異体が本発明の抗体に結合する。そのため、そこにADI-37505及びADI-37506が結合するCD73結合エピトープは、CD73分子の第159、161、162、163及び170アミノ酸に位置していると推定される。
【0199】
表7に示すとおり、Innate 6E1、BMS4-2、Surface、Omab及びCPI-006は、CD73分子の対応する突然変異体に対する結合能を減弱したが、それに対して、通常、これらの突然変異体は、本発明のCD73抗体分子に結合する。そのため、そこに本発明のCD73抗体が結合するCD73結合エピトープは、Innate 6E1、BMS4-2、Surface、Omab及びCPI-006のものと必ずしも同じではないと推測される。
【0200】
表7. 本発明の抗体と対照抗体との間のヒトCD73分子結合における相違の分析
【表13】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図16c
【配列表】
2023532234000001.app
【国際調査報告】