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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20230720BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A61B1/06 510
A61B1/00 R
A61B1/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579880
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2021055587
(87)【国際公開番号】W WO2022003503
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020117580.9
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】尾登 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】シュレーター,ティルマン
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161DD01
4C161DD07
4C161JJ06
4C161QQ02
4C161QQ04
4C161QQ07
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】第1の波長スペクトルを有する第1の光を発する基板上に取り付けられた第1の光源と、第2の波長スペクトルを有する第2の光を発する基板上に取り付けられた第2の光源と、第1の光および第2の光の少なくとも一方の少なくとも一部を第1の変換光および第2の変換光にそれぞれ変換するリン光体層と、を備えており、リン光体層は、第1の光の残りの部分、第2の光の残りの部分、第1の変換光、および第2の変換光を発するように構成され、リン光体層は、第1および第2の光源に接触し、第1および第2の光源上ならびに第1および第2の光源を結ぶ基板上の経路上で連続しており、リン光体層と基板とが、第1の光源および第2の光源を取り囲んでいる、照明装置が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に取り付けられ、第1の波長スペクトルを有する第1の光を発するように構成された第1の光源と、
前記基板上に取り付けられ、前記第1の波長スペクトルとは異なる第2の波長スペクトルを有する第2の光を発するように構成された第2の光源と、
前記第1の光および前記第2の光の少なくとも一方の少なくとも一部を、第1の変換光および第2の変換光にそれぞれ変換するように配置されたリン光体を含んでいるリン光体層であって、前記第1の変換光の第3の波長スペクトルは前記第1の波長スペクトルとは異なり、前記第2の変換光の第4の波長スペクトルは、前記第2の波長スペクトルとは異なる、リン光体層と、
を備えており、
前記リン光体層は、前記第1の光の残りの部分、前記第2の光の残りの部分、ならびに前記第1の変換光および前記第2の変換光の少なくとも一方を発するように構成され、
前記リン光体層は、前記第1の光源および前記第2の光源に接触し、前記第1の光源上、前記第2の光源上、および前記第1の光源と前記第2の光源とを結ぶ前記基板上の経路上で連続しており、
前記リン光体層と前記基板とが、前記第1の光源および前記第2の光源を取り囲んでいる、照明装置。
【請求項2】
各々が前記第1の光を発するように構成され、前記基板上に取り付けられた複数の前記第1の光源と、
各々が前記第2の光を発するように構成され、前記基板上に取り付けられた複数の前記第2の光源と、
を備え、
前記リン光体層は、前記第1の光源の各々および前記第2の光源の各々に接触し、前記第1の光源の各々の上、前記第2の光源の各々の上、および前記第1の光源と前記第2の光源とを結ぶ経路上で連続しており、
前記リン光体層と前記基板とが、前記第1の光源および前記第2の光源を取り囲んでいる、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記リン光体層は、前記基板の全体を覆う、
前記第1の光のうちの100%が、前記リン光体層に進入する、および
前記第2の光のうちの100%が、前記リン光体層に進入する、
のうちの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1の波長スペクトルは、青色光を主に含み、
前記第2の波長スペクトルは、紫色光および/または紫外光を主に含み、
前記リン光体は、前記第1の出力光が白色に見えるように、前記青色光の第1の部分を黄色光に変換するように構成され、
前記リン光体は、前記紫色光および/または紫外光の第2の部分を前記黄色光に変換するように構成され、
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記第1の波長スペクトルは、青色光を主に含み、
前記第2の波長スペクトルは、紫色光および/または紫外光を主に含み、
前記リン光体は、前記第1の出力光が白色に見えるように、前記青色光の第1の部分を緑色および赤色光に変換するように構成され、
前記リン光体は、前記紫色光および/または紫外光の第2の部分を前記緑色光に変換するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記リン光体層において、前記リン光体は媒体中に分散させられている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1の光源は、発光ダイオードまたはレーザダイオードである、および
前記第2の光源は、発光ダイオードまたはレーザダイオードである、
のうちの少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第1の光源が発光ダイオードまたはレーザダイオードである場合に、前記基板は、第1の端子を備え、前記第1の光源は、前記第1の端子に電気的に接続される、
前記第2の光源が発光ダイオードまたはレーザダイオードである場合に、前記基板は、第2の端子を備え、前記第2の光源は、前記第2の端子に電気的に接続される、
のうちの少なくとも1つである、請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記第1の光源は、前記第1の端子を介して制御可能であり、
前記第2の光源は、前記第2の端子を介して制御可能であり、
前記第1の光源は、前記第2の光源とは別個に制御可能である、請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1の光源は、第1の光ファイバの出射端であり、前記照明装置は、前記第1の光を前記第1の光ファイバに入力するように構成された第1の発光素子を備える、
前記第2の光源は、第2の光ファイバの出射端であり、前記照明装置は、前記第2の光を前記第2の光ファイバに入力するように構成された第2の発光素子を備える、
のうちの少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記リン光体層は、複数のリン光体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記基板は、接着剤を備え、
前記接着剤は、前記リン光体層に接着し、
前記接着剤の最大厚さは、前記第1の光源および前記第2の光源のうち、前記第1の光源および前記第2の光源のうちの最大厚さが最も小さい光源の最大厚さの10%以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の照明装置を製造する方法であって、
前記第1の光源および前記第2の光源が取り付けられた前記基板を用意するステップと、
前記第1の光源上、前記第2の光源上、および前記第1の光源と前記第2の光源とを結ぶ前記基板上の前記経路上に、前記リン光体を含む流体またはゲルを送出するステップと、
前記ゲルを硬化させ、あるいは前記流体を乾燥させて、前記リン光体層を得るステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記硬化に先立って前記リン光体ゲルを流動させるステップ
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の照明装置を製造する方法であって、
前記第1の光源および前記第2の光源が取り付けられた前記基板を用意するステップと、
前記第1の光源上、前記第2の光源上、および前記第1の光源と前記第2の光源とを結ぶ前記基板上の前記経路上に、前記リン光体を含む流体を噴霧するステップと、
前記噴霧した流体を乾燥させて、前記リン光体層を得るステップと、
を含む方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の照明装置を製造する方法であって、
前記第1の光源および前記第2の光源が取り付けられた前記基板を用意するステップと、
前記リン光体を含むシートを、平面図において前記シートが前記第1の光源、前記第2の光源、および前記第1の光源と前記第2の光源とを結ぶ前記基板上の前記経路の形状に対応する形状を有するように、作成するステップと、
前記シートが前記第1の光源、前記第2の光源、および前記経路を覆うように、前記シートを前記基板、前記第1の光源、および前記第2の光源に取り付けて、前記リン光体層を得るステップと、
を含む方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の照明装置を製造する方法であって、
前記第1の光源および前記第2の光源が取り付けられた前記基板を用意するステップと、
前記リン光体を含むシートを、前記シートによって前記第1の光源、前記第2の光源、および前記第1の光源と前記第2の光源とを結ぶ前記基板上の前記経路が覆われるように、前記基板に取り付けるステップと、
前記シートのうちの前記基板を超えて延在する部分を切断して、前記リン光体層を得るステップと、
を含む方法。
【請求項18】
人体の管腔への挿入のための内視鏡の堅固な先端部分またはカプセル型内視鏡であって、対物レンズと、前記対物レンズによって撮像される対象空間の少なくとも一部分を前記第1の出力光および前記第2の出力光の少なくとも一方によって照明するように配置された請求項1~12のいずれか一項に記載の照明装置とを備える、内視鏡の堅固な先端部分またはカプセル型内視鏡。
【請求項19】
請求項18に記載の堅固な先端部分と、前記人体の前記管腔への挿入のための可撓または堅固なシャフトとを備え、前記堅固な先端部分は、前記可撓または堅固なシャフトに直接的または間接的に接続される内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるスペクトルで対象物を照明する照明装置に関する。とくには、本発明は、内視鏡、とりわけ広視野対物レンズを備える内視鏡の先端部に有用な照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白色光(WL)および血管パターン強調照明(いわゆるヘモグロビン吸収スペクトルに同期した照明スペクトルを有する狭帯域照明)が、内視鏡撮像においてますます一般的になってきている。エネルギー効率、およびより広い配光角を作り出すために、光ファイバを取り入れることなく、内視鏡の遠位端に光源を有することがより好ましい。しかしながら、マイクロサイズパッケージ(例えば、500um×500um)にて血管パターン強調照明のための良好なスペクトルを有する既製のLEDは存在しない。
【0003】
一般に、異なる色の光による撮像が、当技術分野において知られている。例えば、白色光撮像(WLI)および「スペクトル撮像」が存在する。WLIにおいて、対象物(結腸など)は、白色光によって照明される。対象的に、スペクトル撮像において、対象物は、白色光のスペクトル分布とは異なるスペクトル分布を有する光で照明される。例えば、実質的に紫色光および緑色光のみを含むスペクトルを用いたスペクトル撮像が、血管パターン強調照明に使用されることが知られている。
【0004】
図1が、WLIおよびスペクトル撮像の両方を可能にする先行技術による内視鏡の照明システムを示している。この照明システムは、白色LED(ここでは、黄色リン光体で覆われた青色LEDとして示されている)、ならびに白色LEDとは別の紫色LEDおよび緑色LEDを備えている。スペクトル撮像においては、紫色および緑色LEDのみが発光する。したがって、出射光は、左側における紫色から緑紫色を経て右側における緑色へと至る勾配を有する。WLIにおいては、白色LEDのみが発光する。
【0005】
このような照明システムはいくつかの欠点を有し、例えば、紫色光と緑色光との相対強度が対象物上の位置によって異なる。さらに、白色光による照明が、対象物上で、紫色および緑色LEDによる照明とは異なる位置に位置する。したがって、先行技術の内視鏡を使用する医師は、同じ位置を異なる照明下で容易に観察することが不可能である。またさらに、内視鏡の先端部に3つのLEDを収容するために、かなりのスペースが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術を改善することである。すなわち、本発明の一態様によれば、独立請求項に記載の照明装置が提供される。本発明のさらなる態様は、照明装置を備える内視鏡の堅固な先端部、照明装置を備える内視鏡、および照明装置を製造するための方法を提供する。さらなる詳細は、それぞれの従属請求項に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、以下の利点のうちの少なくとも1つを達成することができる。
【0008】
・WLIおよびスペクトル照明の両方を可能にする照明装置に必要な空間が低減される;
・容易に実装できる構成である;
・色分布が、先行技術による色分布よりも均質である;
・医師が一位置を異なる照明下で容易に観察することができる。
さらなる利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【発明の効果】
【0009】
上記の改良および以下で説明される例のいずれも、それらが言及するそれぞれの態様に単独で、あるいは組み合わせにて適用することが、代替形態を除外するものとして明示的に述べられていない限りにおいて可能であることを、理解されたい。
さらなる詳細、特徴、目的、および利点が、添付の図面と併せて検討される本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】先行技術による照明システムを示している。
図2】スペクトル照明に使用される本発明のいくつかの実施形態による照明装置のユニットセルの断面を示している。
図3図2の照明装置をスペクトル照明に使用した場合の発光スペクトルを示している。
図4】WLIに使用される図2による照明装置のユニットセルを示している。
図5図4の照明装置をWLIに使用した場合の発光のスペクトルを示している。
図6】スペクトル照明に使用される本発明のいくつかの実施形態による別の照明装置のユニットセルを示している。
図7】スペクトル照明に使用される図6の照明装置の発光スペクトルを示している。
図8】WLIに使用される図6の照明装置を示している。
図9】WLIに使用される図8の照明装置の発光スペクトルを示している。
図10】本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができるリン光体層の別の例を示している。
図11】本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができるリン光体層の別の例を示している。
図12】本発明のいくつかの実施形態による照明装置を示している。
図13】本発明のいくつかの実施形態による照明装置を備える内視鏡の堅固な先端部の平面図を示している。
図14】本発明のいくつかの実施形態による製造方法を示している。
図15】本発明のいくつかの実施形態による製造方法を示している。
図16】本発明のいくつかの実施形態による製造方法を示している。
図17】本発明のいくつかの実施形態による製造方法を示している。
図18】リン光体層の好ましい最小厚さの決定を示している。
図19】LEDの放射分布の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で、本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明するが、実施形態の特徴は、とくに記載のない限り、互いに自由に組み合わせることが可能である。しかしながら、特定の実施形態の説明は、例として与えられているにすぎず、本発明を開示された詳細に限定するものとして理解されることを決して意図していないことが、明確に理解されるべきである。
【0012】
図において、同じ数字は対応する構成要素を示し、それら構成要素は異なる文字によって区別される。図は概略図にすぎない。とくに、サイズは一定の縮尺ではない。例えば、光源(LEDまたは光ファイバの出射端)は、実質的に点であってよい。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、異なるピーク波長を有する少なくとも2種類の光源が、プリント回路基板(PCB)上に配置される。なお、2種類のLEDが使用されると仮定したが、種類の数は2よりも多くてもよい。LEDの代わりに、光ファイバ内にそれぞれの光を放射するように構成された発光素子(レーザまたはLEDなど)を有する光ファイバの発光端を、光源として使用することもできる。この場合、発光素子は、内視鏡の近位端に配置されてもよい。光源は、混合されてもよく、例えば、第1の種類の光源がLEDであってよく、第2の種類の光源が光ファイバの出射端であってよい。以下では、LEDが光源の例として説明されるが、本発明は、光源としてのLEDに限定されるものではない。
【0014】
さらに、1つ以上のリン光体を含むリン光体層が、PCBおよびLED上に配置される。より詳細には、リン光体層は、リン光体層とPCBとがLEDを取り囲むように、少なくともLEDおよびPCB上の経路に接触する。リン光体層は、LEDおよび経路を覆って連続している。ここで、「取り囲む」という用語は、好ましくは、PCBおよびリン光体層が、すき間なく全ての側面からLEDを囲むことを意味する。しかしながら、「取り囲む」という用語は、PCB内、および/またはリン光体層内、および/またはPCBとリン光体層との間の界面に、1つ以上の小さなすき間が設けられる場合も含む。そのような1つ以上のすき間が存在する場合、それらは、LEDが発する各々の光の少なくとも95%がリン光体層に進入し、あるいはPCBによって吸収されるように配置される。
【0015】
図2が、本発明のいくつかの実施形態による照明装置のユニットセルを示している。照明装置は、1つ以上のユニットセルを備える。各々のユニットセルは、第1の種類の第1のLED2a(UV光を放出するLEDなど)と、白色LEDなどの異なるスペクトルを放出する第2のLED3aとを備える。LEDは、PCB4aの一方の面に実装されている。ユニットセルのLED2a、3aは、リン光体を含むリン光体層1aを照明する。リン光体は、第1のLEDからの光(第1の光)の少なくとも一部分を第1の変換光に変換する。さらに、リン光体は、第2のLEDからの光(第2の光)の少なくとも一部分を第2の変換光に変換することができる。第1の変換光は、第1の光とは異なるスペクトルを有する。第2の変換光は、存在する場合、第2の光とは異なるスペクトルを有する。
【0016】
例えば、図3に示されるように、スペクトル照明の場合、UV LED2aのみが光でリン光体層を照明する一方で、白色LED3aは消灯する。この場合、発光スペクトルは、波長(ピーク波長)λ3の付近(例えば、400~430nm)のLED2aからの紫色または濃青色光(UV光と呼ばれることもある)と、出口層1aのリン光体による変換からの(例えば、λ2の付近の波長:520~580nmの)緑色光とを含む。
【0017】
白色光照明においては、第2のLED3aのみが出口層1aを照明する一方で、第1のLED2aは暗い。この場合、白色LED3aは、図5に破線で示されるような発光スペクトルを有するリン光体で覆われた青色LEDである。すなわち、青色領域(約440~460nmのλ1)に高いピークを有し、λ2付近の緑色領域に広い極大を有する。リン光体層1a内のリン光体による変換により、λ1の付近の青色光の強度が低下し、λ2の付近の広い極大が増強され、広がっている。このようにして、白色光照明が行われる。
【0018】
図3および図5に示したスペクトルは、単なる例である。別の種類のLEDを別の種類のリン光体と組み合わせる他の組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。リン光体層に、単一の種類のリン光体ではなく、複数の種類のリン光体を使用してもよい。これらの異なる種類のリン光体は、混合されても、異なる層に配置されてもよい。
【0019】
図6図9が、図2および図4の白色LED3aが440~460nmの範囲の光を発する青色LED3bに置き換えられている点を除いて図2図5に対応する本発明のいくつかの実施形態によるユニットの別の例を示している。この例において、第1のLED2bおよびリン光体層1b内のリン光体は、図2および図4と同じであるため、図7に示されるスペクトル照明の場合のスペクトルは、図3に示したスペクトルと同じである。
【0020】
しかしながら、白色光照明の場合、青色LED3bは、図2および図4の白色LED3aよりもさらにリン光体を励起する。したがって、白色光照明の場合の発光スペクトルは、図9に示されるように、λ2の付近により大きくかつより広いピークを有する。
【0021】
図10および図11が、本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができるリン光体層1cおよび1dのさらなる例を示している。図10に示されるように、LEDは、青色光(ピーク波長約450nm)および紫色光(ピーク波長約420nm)を放射する。リン光体層中のリン光体は、これらの両方の光の一部を黄色光(ピーク波長約550nm)に変換する。図11に示されるように、リン光体層1dは、複数の種類のリン光体を含む。図10のリン光体層1cのリン光体に加えて、第2の種類のリン光体が、それぞれのLEDからの青色光の一部を赤色光(ピーク波長約630nm)に変換する。このようにして、リン光体層1dからの出力光は、青色LEDのみがオンである場合、実質的に白色である(RGBを充分な量にて含む)。紫色光に関する第2のリン光体の赤色光への変換効率は、きわめて小さい。したがって、紫色LEDのみがオンである場合、出力光は、図10のリン光体層1dと基本的に同じである。
【0022】
図2図4図6、および図8において、リン光体層1は、平坦な発光面を有する。発光面は、PCBに面する面の反対側である。しかしながら、これは必須ではない。例えば、図12に示されるように、リン光体層1eは、一定の厚さを有してもよい。この場合、LEDの厚さゆえに、発光面は平坦でない。いくつかの実施形態において、リン光体層1の発光面は平坦でなく、リン光体層1の厚さも一定でない。例えば、そのような実施形態において、LED2および3が取り付けられるPCB4の表面の凹凸は、部分的に平坦化されてよい。
【0023】
いくつかの実施形態においては、少なくとも第1の種類のそれぞれの第1のLED2および第1の種類とは異なる(異なるピーク波長を有する)第2の種類のそれぞれの第2のLED3を各々が備える複数のユニットセルが、PCB4上に配置され、共通のリン光体層1によって覆われる。各々のユニットセルにおいて、第1および第2のLEDは、同じやり方で配置されている。ユニットセルは、例えば線(直線または曲線)にて配置されてよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、ユニットセルは、円または円の一部にて配置される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、PCB上に配置された2種類のLEDからなる複数のユニットセルと、1つ以上のリン光体を含む共通のリン光体層とを備える照明装置が、対象空間を撮像するように構成された対物レンズの周りに配置される。照明装置は、この対象空間の少なくとも一部を照明するように配置される。
【0025】
そのような配置が、図13に示されている。図13は、内視鏡の堅固な先端部を平面図(対象空間から見た平面図;リン光体層および照明装置を覆う随意による透明な蓋は省かれている)にて示している。LED2f、3fが、中央の対物レンズ5を取り囲んでいる。この平面図の下部に、作業チャネル51が示されている。
【0026】
PCBは、リン光体層をPCBに取り付けるために接着剤を含むことができる。接着剤は、リン光体を含んでも、含まなくてもよい。接着剤は、リン光体を含まない場合には、かなり薄くなければならない。例えば、接着剤の最大厚さは、第1の光源および第2の光源のうち、第1の光源および第2の光源のうちの最大厚さが最も小さい光源(LED)の最大厚さの10%以下である。好ましくは、この比が5%以下である。好ましくは、接着剤は、存在する場合、LEDが放射する光の少なくとも95%がリン光体層に進入するように配置される。より好ましくは、放射された光の少なくとも98%、さらには100%が、リン光体層に進入する。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、リン光体層がリン光体層に面するPCBの表面に局所的に平行である場合、PCBの表面に垂直な方向のリン光体の量は、実質的に一定である。すなわち、平均値を中心にして20%よりも大きく変動することがなく、好ましくは10%よりも大きく変動することがなく、さらにより好ましくは5%よりも大きく変動することがない。照明装置が複数のユニットセルを含む場合、いくつかの実施形態において、リン光体層に面するPCBの表面に垂直な方向のリン光体の量を、ユニットセルの配置に対応して変化させてもよい。例えば、ユニットセルが周期的に配置される場合、垂直方向のリン光体の量を同じ周期で変化させることができる。リン光体層に面するPCBの表面は、LEDが取り付けられる表面である。
【0028】
リン光体層の厚さ方向において、リン光体の濃度は実質的に一定であってよい。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、リン光体の濃度がピークを有してもよい。リン光体層が複数のリン光体を含む場合、それらをリン光体層内に均一に分布させることができ、あるいは厚さ方向における異なるレベルにて配置することができる。
【0029】
好ましくは、リン光体層に面するPCBの表面は、実質的に平坦であってよい。例えば配線および/または接着剤に起因する平面性の変動が、第1の光源および第2の光源のうち、第1の光源および第2の光源のうちの最大厚さが最も小さい光源(LED)の最大厚さの10%以下であってよい。好ましくは、この比が5%以下である。しかしながら、本発明は、PCBの実質的に平坦な表面に限られない。本発明のいくつかの実施形態は、リン光体層に面するPCBの湾曲した表面を含むことができる。
【0030】
光源がLEDである場合、PCBは、LEDを制御するための回路を備えることができる。この目的のために、LEDは、PCB上に配置された端子に電気的に接続される。いくつかの実施形態において、各々のLEDが別々に制御されてよい。いくつかの実施形態において、少なくとも第1の種類のLEDが、第2の種類のLEDとは別個に制御されてよい。「制御する」とは、少なくともオンとオフとを切り替えることを意味する。これは、それぞれのLEDが発する光の強度および/または色を設定することをさらに意味することができる。同じことが、例えば光源がレーザダイオードである場合など、光を(PCB上で)局所的に発生させる他の光源にも当てはまる。
【0031】
LEDは、表面実装型デバイス(SMD)またはフリップチップボンディングなど、任意の既知のやり方でPCB上に実装されてよい。
【0032】
本明細書において上述したように、照明装置は、好ましくは、人体の管腔への挿入のための内視鏡の堅固な先端部に配置される。そのような堅固な先端部は、対物レンズを備えることができ、照明装置は、対物レンズの周りに配置されてよい。さらに、堅固な先端部は、撮像素子、作業チャネル、などを備えることができる。堅固な先端部は、本発明の実施形態が内視鏡も包含するように、人体の管腔への挿入のための可撓または堅固なシャフトに直接的または間接的に(角度セグメントを介して)接続されてよい。いくつかの実施形態においては、堅固な先端部を単独で(すなわち、内視鏡のシャフトに接続されることなく)使用することができる。すなわち、照明装置を、いわゆる「カプセル型内視鏡検査」に使用することができる。
【0033】
しかしながら、本発明は、人体の管腔への挿入のための内視鏡の堅固な先端部分における照明装置に限られない。他の内視鏡(パイプライン用の内視鏡など、人体の管腔への挿入に適していない)にも適用可能である。例えばCCTVなどのカメラの対象空間を照明するために、内視鏡以外にも適用可能である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、そのような照明装置を製造するためのいくつかの選択肢が存在する。それらは、LEDを光源の例として説明されるが、LEDに限られない。
【0035】
第1の製造方法が、図14に示されている。リン光体が、流体またはゲルに溶かされ、流体またはゲルが、ディスペンサ100によって、光源が取り付けられたPCB上に送出される。詳細には、流体またはゲルは、PCBと流体またはゲルとでLEDを取り囲むように、少なくともLED上およびLEDを接続する経路上に送出される。次いで、流体が乾燥させられ、あるいはゲルが硬化させられて、リン光体を含むリン光体層が得られる。
【0036】
流体またはゲルは、乾燥または硬化が終了するまで、流体またはゲルが送出された領域に実質的にとどまるように充分な粘度を有さなければならない。光源が光を局所的に発生させる(例えば、光源がLED、レーザダイオード、などである)場合、送出に先立って、光源は、PCB上に配置された端子に電気的に接続される。リン光体(または、リン光体を含む媒体)をPCBに接着するために接着剤が必要である場合、送出に先立って、接着剤をPCBおよびLEDに薄層として塗布することができる。
【0037】
リン光体を含む流体またはゲルを形成するための溶媒の例は、シリコーンである。接着剤の例は、ポリマーである。
【0038】
リン光体層を形成するために、流体またはゲルを各位置に1回または複数回送出することができる。流体またはゲルが複数回送出される場合、流体またはゲル内のリン光体は同じであっても、異なる送出作業において異なるリン光体が流体またはゲルに含まれてもよい。したがって、リン光体層は、異なるリン光体からなる内部層状構造を有してもよい。
【0039】
第2の製造方法が、図15に示されている。図15によれば、リン光体を溶解させた流体が、噴霧器101によってPCB上に噴霧され、次いで乾燥させられる。それ以外の点で、第2の製造方法は、第1の製造方法に一致する。
【0040】
図16が、第3の製造方法を示している。第3の製造方法においては、リン光体シートが作成され、リン光体シートは、媒体(例えば、シリコーン)に分散させたリン光体を含み、あるいはリン光体シートは、リン光体からなる。リン光体シートは、光源が取り付けられたPCBよりもはるかに大きくてよい。次いで、リン光体層の形状に対応した形状を有するピースが、リン光体シートから切り出される。ここで、用語「対応する」は、ピースがリン光体層と同じ形状であってよく、あるいはLEDへのレベル差、熱膨張による収縮、などを考慮した形状であってよいことを意味する。すなわち、切り出されたピースは、最終的なリン光体層とわずかに異なる形状であってもよい。
【0041】
次いで、切り出されたピースのうちの1つが、光源が実装(必要に応じ、PCBの端子に電気的に接続)された1つのPCBに適用される切り出されたピースは、好ましくは、LED(光源)が実装されたPCBの表面に適合するために、或る程度の可撓性を有するべきである。切り出されたピースをPCBおよび/またはLEDと接着するために接着剤が必要とされる場合、接着剤を、PCBおよび/またはLEDに薄層として塗布することができ、かつ/またはリン光体シートに薄層として塗布することができる(ピースを切り出す前、または切り出し後のピースのどちらでも)。この製造方法において使用可能な接着剤の例は、3Mの467MPなどの粘着転写テープである。
【0042】
図17が、第3の製造方法の変形例である第4の製造方法を示している。図17によれば、リン光体シートが、光源が実装(必要に応じ、PCBの端子に電気的に接続)された複数のPCB上に積層される。接着剤を、リン光体シートおよび/またはPCB/LED上に塗布することができる。その後に、積層体の不要な部分が切断によって除去される。このようにして、リン光体層が、光源が実装されたPCBの全体を覆う。他の点では、第4の方法は第3の方法に一致する。
【0043】
いくつかの実施形態(図示せず)において、複数の照明装置のPCBは、大型のPCBの各部であってよい。これらの実施形態において、照明装置のPCBを、第4の方法によるリン光体層を切断するステップにおいて、大型のPCBから切り出すことができる。このようにして、各々の照明装置のPCBおよびリン光体層が同じ工程で切り出されるため、製造工程を1つ節約することができる。
【0044】
図18が、照明装置による実質的に均一な照明の提供を保証するためにリン光体層が好ましくは有するべき最小厚さの導出を示している。図18の下部に、リン光体層の発光面の各位置が、第1のLEDのうちの少なくとも1つによって、その強度の少なくとも50%で照明されるべきであることが示されている。この条件は、最小厚さT11=D11/2*tanθ50である場合に満たされる。D11は、隣り合う2つの第1のLEDの間の距離を指し、θ50は、第1のLEDの発光がその最大発光の50%となる放射角度を指す。θ50の値は、第1のLEDの放射特性から得ることができる。典型的な例が、図19に示されている。この例において、θ50は約55°である。
【0045】
同じ考慮事項が、第2のLEDにも同様に当てはまる。それぞれの最小厚さが異なる場合、リン光体層は、好ましくは、2種類のLEDのそれぞれの最小厚さのうちの大きい方である最小厚さを有するべきである。第2のLEDの発光がその最大発光の50%となる放射角度をΦ50と示す。
【0046】
図18の上部に、(LED間の所与の距離ならびにLEDおよび不透明な壁(存在する場合)の所与の高さにおける)θ50およびΦ50の最大値を決定し、あるいは(θ50およびΦ50の所与の値ならびにLEDおよび不透明な壁(存在する場合)の所与の高さにおける)LED間の最小距離を決定し、あるいは(θ50およびΦ50の所与の値ならびにLED間の所与の距離における)LEDおよび不透明な壁(存在する場合)の最大高さを決定するための追加の考慮事項が示されている。すなわち、50%の強度を有する発光光線の高さが、隣接するLEDまたは壁(存在する場合)の高さよりも高くなければならない。図18の上部において、
【0047】
・T12は、第1のLEDに面する第2のLEDの縁部の位置における第1のLEDからのこの光線の高さを示し、
・T21は、第2のLEDに面する第1のLEDの縁部の位置における第2のLEDからのこの光線の高さを示し、
・T13は、第1のLEDに面する隣接壁の縁部の位置における第1のLEDからのこの光線の高さを示し、
・T23は、第1のLEDに面する隣接壁(図示せず)の縁部の位置における第2のLEDからのこの光線の高さを示し、
・D12は、第1のLEDと第2のLEDとの間の最短距離を示し、
・D21は、第2のLEDと第1のLEDとの間の最短距離を示し(D12=D21)、
・D13は、第1のLEDと隣接壁との間の最短距離を示し、
・D23は、第2のLEDと隣接壁(図示せず)との間の最短距離を示す。
【0048】
第1のLED、第2のLED、および壁が、厚さt、t、およびtを有する場合、関係T12>t、T21>t、T13>t、およびT23>tが得られる。限界の場合、θ50およびΦ50に関する条件は、tanθ50=D12/T12、tanθ50=D13/T13、tanΦ50=D21/T21、およびtanΦ50=D23/T23である。
【0049】
図18の上部および下部において導出された条件は、本発明のいくつかの実施形態によれば好ましいが、必須ではない。例えば、いくつかの実施形態において、これらの条件のうちの部分集合のみが満たされてよく、あるいは、これらの条件のいずれも満たされなくてもよい。
【0050】
発光素子を内視鏡の遠位端に配置して備える本発明のいくつかの実施形態は、発光素子が近位端に位置するボックス内に配置され、光が1つ以上の光ファイバを介して遠位端へと導かれる他の照明システムよりも、電力変換に関して効率がより高いがゆえに有利である。たとえ光源が内視鏡の近位端の制御本体内に配置される場合でも、空間は制限される。
【0051】
さらに、紫色および青色LED用の共通のリン光体システムを内視鏡の遠位端に配置することが、近位端への配置に関する以下の考慮事項ゆえに好ましい(ただし、必須ではない):
【0052】
白色LED(WLED)が、リン光体で覆われた標準的なパッケージを有する。しかしながら、リン光体は散乱を引き起こし、すなわち光を効率的に光ファイバへと集めることが難しい。紫色LEDに関して、標準的なリン光体パッケージは存在しない。かなりのコストを伴うカスタマイズが必要であり、このリン光体が、WLEDと同様に光を散乱させる。
【0053】
対照的に、リン光体層が遠位端に配置される場合、リン光体による光の散乱は、光をより広い角度に分配して広い視野を照らすために、好都合ですらある。発光素子(LEDなど)は、遠位端に(リン光体層の背後に)配置されてもよく、あるいは近位端に配置されてもよく、光は発光素子から1つ以上の光ファイバを通って遠位端まで導かれる。この場合、上述したように、光ファイバの出射端が光源として作用する。
図1
図2
図3
図4
図5
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【国際調査報告】