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特表2023-532280免疫細胞のmRNAトランスフェクション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】免疫細胞のmRNAトランスフェクション
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230720BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230720BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230720BHJP
   C12N 15/00 20060101ALN20230720BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20230720BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/00 100Z
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579959
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021039168
(87)【国際公開番号】W WO2021263152
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/044,855
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521029782
【氏名又は名称】カリスマ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリチンスキー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】大谷 有美
(72)【発明者】
【氏名】ロス, ケイリー
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD39
4B065CA24
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)を送達することによって免疫細胞を修飾する方法及びCARを含む修飾免疫細胞に関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞を修飾する方法であって、以下のステップ、すなわち、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を修飾するステップと、
(b)前記mRNAを精製するステップと、
(c)前記mRNAを前記免疫細胞に送達するステップとを含み、
前記免疫細胞は、マクロファージ、単球または樹状細胞を含み、
前記修飾免疫細胞は、CARを含む、前記方法。
【請求項2】
前記修飾するステップが、前記mRNAに修飾ヌクレオチド、5’または3’非翻訳領域(UTR)に対する改変、キャップ構造、及び/またはポリ(A)テールを含めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャップ構造が、AGCap1、m6AGCap1、または抗リバースキャップアナログ(ARCA)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記修飾ヌクレオチドが、シュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)、N1-メチル-シュードウリジン(N1mPsU)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記精製するステップが、シリカ膜精製及び/または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記送達するステップが、トランスフェクションを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記修飾するステップが、前記mRNAにAGCap1及び5moUを含めることを含み、前記精製するステップが、シリカ膜精製を含み、前記送達するステップが、エレクトロポレーションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾するステップが、前記mRNAにAGCap1及びPsUを含めることを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、エレクトロポレーションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記修飾するステップが、前記mRNAにAGCap1及びN1mPsUを含めることを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、エレクトロポレーションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記修飾するステップが、前記mRNAにm6-AGCap1及びN1mPsUを含めることを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、エレクトロポレーションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記修飾するステップが、前記mRNAにm6-AGCap1及びPsUを含めることを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、エレクトロポレーションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記修飾するステップが、AGCap1及びPsUを含むように前記mRNAを修飾することを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、トランスフェクションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記修飾するステップが、前記mRNAにm6-AGCap1及びPsUを含めることを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、トランスフェクションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記修飾するステップが、前記mRNAにm6-AGCap1及びN1mPsUを含めることを含み、前記精製するステップが、HPLCを含み、前記送達するステップが、トランスフェクションを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記修飾するステップが、前記mRNAにAGCap1及び5moUを含めることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記修飾するステップが、前記mRNAにm6AGCap1及び5moUを含めることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫細胞をRNaseL阻害剤で処理するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記RNaseL阻害剤がスニチニブを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記RNaseL阻害剤がABCE1を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記処理するステップが、前記送達するステップの前に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫細胞を、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養するステップをさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記サイトカインが、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNFα、IL-6、STNGL、LPS、CD40アゴニスト、4-1BBリガンド、組換え4-1BB受容体、TLRアゴニスト、ベータ-グルカン、IL-4、IL-13、IL-10、TGF-β、グルココルチコイド、免疫複合体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サイトカインがIFN-βを含む、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記培養するステップが、前記送達するステップの後に行われる、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記修飾免疫細胞が前記CARを発現する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
CAR発現が、前記CARをコードする非修飾mRNAが送達されたのと同じタイプの修飾免疫細胞におけるCAR発現と比較して増加する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記修飾免疫細胞が、前記CARをコードする非修飾mRNAが送達されたのと同じタイプの修飾免疫細胞におけるエフェクター活性と比較して、エフェクター活性の増大を示す、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の方法によって作製された修飾免疫細胞。
【請求項29】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、生存率の増加を示す、請求項28に記載の修飾免疫細胞。
【請求項30】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、前記CARをコードする前記mRNAの発現の増加を示す、請求項28または請求項29に記載の修飾免疫細胞。
【請求項31】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CAR発現の増加を示す、請求項28~30のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項32】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、前記CARをコードする前記mRNAの寿命の延伸を示す、請求項28~31のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項33】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、前記CARの寿命の延伸を示す、請求項28~32のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項34】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、エフェクター活性の増加を示す、請求項28~33のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項35】
前記CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、M1分極の増加を示す、請求項28~34のいずれか1項に記載の修飾免疫細胞。
【請求項36】
1つ以上の修飾mRNAであって、修飾ヌクレオチド、5’または3’非翻訳領域(UTR)に対する改変、キャップ構造、ポリAテール、またはそれらの組み合わせを含む、前記1つ以上の修飾mRNA、及び
1つ以上のRNaseL阻害剤を含む、組成物。
【請求項37】
前記キャップ構造が、AGCap1またはm6AGCap1を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記修飾ヌクレオチドが、シュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)、またはN1-メチル-シュードウリジン(N1mPsU)を含む、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上のRNaseL阻害剤がスニチニブを含む、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記1つ以上のRNaseL阻害剤がABCE1を含む、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月26日に出願された米国仮特許出願第63/044,855号に対する優先権及び利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、全身性アミロイドーシス、プリオン病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、線維症など、多くの疾患及び障害に対して調査されてきたが、直面している機能的制限は、依然として対処する必要がある。
【0003】
したがって、発現、生存率、及び機能を強化するために最適化された治療方針を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、とりわけ、単球、マクロファージ及び/または樹状細胞を含む免疫細胞を修飾するための方法、システム及び組成物を包含する。いくつかの実施形態では、提供される方法、システム、及び/または組成物は、修飾された免疫細胞の産生の強化及び/または特性の強化を提供する。驚くべきことに、本開示は、修飾mRNA(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)などの目的の導入遺伝子をコードする5’キャップまたはウリジン修飾mRNA)の使用によって、ヒト単球、マクロファージ及び/または樹状細胞の発現レベル、発現の持続性、及び生存率の有意な増加がもたらされる可能性があるという認識を包含する。さらに、本開示は、インターフェロンベータの使用によって、CARまたは他の導入遺伝子をコードするmRNAをトランスフェクトしたCAR単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞の発現レベル、発現の持続性、及び機能の有意な増加がもたらされる可能性があるという認識を包含する。本開示はまた、RNAse阻害剤(例えば、RNAseL阻害剤)の使用によって、所望のポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド(例えば、導入遺伝子)の有意な発現レベルの増加がもたらされる可能性があるという認識を包含する。
【0005】
一態様では、本開示は、免疫細胞を修飾する方法を提供であって、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を修飾するステップ、mRNAを精製するステップ、及びmRNAを免疫細胞に送達するステップを含み、免疫細胞は、マクロファージ、単球または樹状細胞を含み、修飾免疫細胞はCARを含む、方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAに修飾ヌクレオチド、5’または3’非翻訳領域(UTR)に対する改変、キャップ構造、及び/またはポリ(A)テールを含めることを含む。いくつかの実施形態では、キャップ構造は、AGCap1、m6AGCap1、または抗リバースキャップアナログ(ARCA)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、シュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)、N1-メチル-シュードウリジン(N1mPsU)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、精製するステップは、シリカ膜精製及び/または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。いくつかの実施形態では、送達するステップは、トランスフェクションを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにAGCap1及び5moUを含めることを含み、精製するステップは、シリカ膜精製を含み、送達するステップは、エレクトロポレーションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにAGCap1及びPsUを含めることを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、エレクトロポレーションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにAGCap1及びN1mPsUを含めることを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、エレクトロポレーションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにm6-AGCap1及びN1mPsUを含めることを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、エレクトロポレーションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにm6-AGCap1及びPsUを含めることを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、エレクトロポレーションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、AGCap1及びPsUを含むようにmRNAを修飾することを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、トランスフェクションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにm6-AGCap1及びPsUを含めることを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、トランスフェクションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにm6-AGCap1及びN1mPsUを含めることを含み、精製するステップは、HPLCを含み、送達するステップは、トランスフェクションを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにAGCap1及び5moUを含めることを含む。いくつかの実施形態では、修飾するステップは、mRNAにm6AGCap1及び5moUを含めることを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、免疫細胞をRNaseL阻害剤で処理するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、RNaseL阻害剤は、スニチニブを含む。いくつかの実施形態では、RNaseL阻害剤は、ABCE1を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、処理するステップは、送達するステップの前に行われる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、免疫細胞をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNFα、IL-6、STNGL、LPS、CD40アゴニスト、4-1BBリガンド、組換え4-1BB受容体、TLRアゴニスト、ベータ-グルカン、IL-4、IL-13、IL-10、TGF-β、グルココルチコイド、免疫複合体、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFN-βを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、培養するステップは、送達するステップの後に行われる。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって、CARを発現する修飾免疫細胞がもたらされる。いくつかの実施形態では、CAR発現は、CARをコードする非修飾mRNAが送達されたのと同じタイプの修飾免疫細胞におけるCAR発現と比較して増加する。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAが送達されたのと同じタイプの修飾免疫細胞におけるエフェクター活性と比較して、エフェクター活性の増大を示す。
【0013】
別の態様では、本開示は、本発明の方法によって作製された修飾免疫細胞を提供する。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、生存率の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの発現の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CAR発現の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの寿命の延伸を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARの寿命の延伸を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、エフェクター活性の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、M1分極の増加を示す。
【0014】
別の態様では、本開示は、1つ以上の修飾mRNAであって、修飾ヌクレオチド、5’または3’非翻訳領域(UTR)に対する改変、キャップ構造、ポリAテール、またはそれらの組み合わせを含む、1つ以上の修飾mRNA、及び1つ以上のRNaseL阻害剤を含む組成物を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、キャップ構造は、AGCap1またはm6AGCap1を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、シュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)、またはN1-メチル-シュードウリジン(N1mPsU)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のRNaseL阻害剤は、スニチニブを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のRNaseL阻害剤は、ABCE1を含む。
【0016】
図面は、例示のみを目的としており、限定を目的としていない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】様々な修飾を含むmCherry mRNAによる、エレクトロポレーションまたはトランスフェクション後のマクロファージ生存率を示す例示的なグラフを示す。
図1B】様々な修飾を含むmCherry mRNAによる、エレクトロポレーションまたはトランスフェクション後の平均蛍光強度を示す例示的なグラフを示す。
図1C】様々な修飾を含むmCherry mRNAによる、エレクトロポレーションまたはトランスフェクション後の持続性を示す例示的なグラフを示す。
図2A】様々な修飾を含むCAR mRNAによる、エレクトロポレーションまたはトランスフェクション後のマクロファージ生存率を示す例示的なグラフを示す。
図2B】様々な修飾を含むCAR mRNAによる、エレクトロポレーションまたはトランスフェクション後のCAR発現を示す例示的なグラフを示す。
図2C】様々な修飾を含むCAR mRNAによる、エレクトロポレーションまたはトランスフェクション後のCAR発現を示す例示的なグラフを示す。
図3A】マクロファージ機能に対するCAR mRNA修飾の効果を示す例示的なグラフを示す。マクロファージにCARm RNAをエレクトロポレーションした2日後の腫瘍増殖曲線を示す。
図3B】マクロファージ機能に対するCAR mRNA修飾の効果を示す例示的なグラフを示す。4:1のエフェクター(CARマクロファージ)対標的(がん細胞)の比率で、がん細胞をCARマクロファージと共培養した場合の腫瘍増殖曲線を示す。
図3C】マクロファージ機能に対するCAR mRNA修飾の効果を示す例示的なグラフを示す。2:1のエフェクター(CARマクロファージ)対標的(がん細胞)の比率で、がん細胞をCARマクロファージと共培養した場合の腫瘍増殖曲線を示す。
図3D】マクロファージ機能に対するCAR mRNA修飾の効果を示す例示的なグラフを示す。1:1のエフェクター(CARマクロファージ)対標的(がん細胞)の比率で、がん細胞をCARマクロファージと共培養した場合の腫瘍増殖曲線を示す。
図4A】サイトカインによる処理後のCARマクロファージ生存率を示す例示的なグラフを示す。
図4B】サイトカインによる処理後の表面マーカー平均蛍光強度を示す。
図4C】サイトカインによる処理後のCARマクロファージ生存率を示す例示的なグラフを示す。
図4D】サイトカインによる処理後の表面マーカー平均蛍光強度を示す。
図4E】サイトカインによる処理後の表面マーカー平均蛍光強度を示す。
図4F】サイトカインによる処理後の表面マーカー平均蛍光強度を示す。
図5A】様々な修飾を含むCAR mRNAをトランスフェクションし、インターフェロンサイトカインで処理した後の、マクロファージ生存率を示す例示的なグラフを示す。
図5B】様々な修飾を含むCAR mRNAをトランスフェクションし、インターフェロンサイトカインで処理した後の、CAR発現を示す例示的なグラフを示す。
図5C】様々な修飾を含むCAR mRNAをトランスフェクションし、インターフェロンサイトカインで処理した後の、平均蛍光強度を示す例示的なグラフを示す。
図6】インターフェロンサイトカインで処理されたマクロファージにおけるCAR発現の持続性を示す例示的なグラフを示す。
図7A】CAR mRNAをトランスフェクションし、様々なIFN-β濃度で処理した後の、CARマクロファージ生存率、CAR発現及び平均蛍光強度を示す例示的なグラフを示す。
図7B】CAR mRNAをトランスフェクションし、様々なIFN-β濃度で処理した後の、M1マーカーの誘導を示す例示的なグラフを示す。
図8A】CAR mRNAによるエレクトロポレーション及びIFN-βによる処理の2日後のCARマクロファージM2及びM1マーカー平均蛍光強度を示す例示的なグラフを示す。
図8B】CAR mRNAによるエレクトロポレーション及びIFN-βによる処理の7日後のCARマクロファージM2及びM1マーカー平均蛍光強度を示す例示的なグラフを示す。
図9A】CARマクロファージの抗腫瘍機能を示す例示的なグラフを示す。種々の濃度のIFN-βによる感作を伴うかまたは伴わない場合で、CAR mRNAをトランスフェクトしたマクロファージの結果を示す。
図9B】CARマクロファージの抗腫瘍機能を示す例示的なグラフを示す。様々な修飾を含むCAR mRNAをトランスフェクトし、IFN-βで処理したマクロファージの結果を示す。
図9C】CARマクロファージの抗腫瘍機能を示す例示的なグラフを示す。CAR mRNAをトランスフェクトし、インターフェロンサイトカインで処理したマクロファージの結果を示す。
図10】サイトカイン分泌に対するインターフェロンによるCARマクロファージの処理の効果を示す例示的なグラフを示す。
図11A】マクロファージにおけるCAR mRNAの持続性及びCARマクロファージ機能の持続時間に対するインターフェロンによる処理の効果を示す例示的なグラフを示す。インターフェロンサイトカインで処理されたCARマクロファージにおける生存率及びCAR発現の試験からの結果を示す。
図11B】マクロファージにおけるCAR mRNAの持続性及びCARマクロファージ機能の持続時間に対するインターフェロンによる処理の効果を示す例示的なグラフを示す。CAR mRNAをエレクトロポレーションし、インターフェロンサイトカインで処理したマクロファージで培養したがん細胞からの腫瘍増殖の結果を示す。
図11C】マクロファージにおけるCAR mRNAの持続性及びCARマクロファージ機能の持続時間に対するインターフェロンによる処理の効果を示す例示的なグラフを示す。CAR mRNAをエレクトロポレーションし、インターフェロンサイトカインで処理したマクロファージで培養したがん細胞からの腫瘍増殖の結果を示す。
図12A】マクロファージ生存率、CAR発現、M1マーカー発現、及びCARマクロファージ機能性に対するインターフェロンによる処理の効果を示す例示的なグラフを示す。CAR mRNAをトランスフェクトし、インターフェロンで処理されたマクロファージの生存率、CAR発現及びM1マーカー発現を示す。
図12B】マクロファージ生存率、CAR発現、M1マーカー発現、及びCARマクロファージ機能性に対するインターフェロンによる処理の効果を示す例示的なグラフを示す。CAR mRNAをエレクトロポレーションし、インターフェロンサイトカインで処理したマクロファージで培養したがん細胞からの腫瘍殺傷の結果を示す。
図12C】マクロファージ生存率、CAR発現、M1マーカー発現、及びCARマクロファージ機能性に対するインターフェロンによる処理の効果を示す例示的なグラフを示す。CAR mRNAをエレクトロポレーションし、インターフェロンサイトカインで処理したマクロファージで培養したがん細胞からの腫瘍殺傷の結果を示す。
図13】トランスフェクトされたマクロファージに対するIFN-γの効果を示す例示的なグラフを示す。
図14A】CARマクロファージに対するRNaseL阻害剤の効果を示す例示的なグラフを示す。IFN-γ及びRNaseL阻害剤スニチニブで処理した後の、トランスフェクトされたマクロファージにおけるmCherry発現を示す。
図14B】CARマクロファージに対するRNaseL阻害剤の効果を示す例示的なグラフを示す。スニチニブで処理されたCARマクロファージで培養されたがん細胞の腫瘍増殖曲線を示す。
図14C】CARマクロファージに対するRNaseL阻害剤の効果を示す例示的なグラフを示す。スニチニブで処理されたCARマクロファージの腫瘍殺傷活性を示す。
図15】mCherryをコードするmRNA及びRNaseL阻害剤ABCE1をコードするmRNAを共トランスフェクトしたマクロファージのマクロファージ生存率及びmCherry発現を示す例示的なグラフを示す。
図16】CARをコードするmRNA及びRNaseL阻害剤NS1をコードするmRNAを共トランスフェクトしたマクロファージにおけるCAR発現を示す例示的なグラフを示す。
図17】CARをコードするmRNA及びRNaseL阻害剤ABCE1またはRNaseL阻害剤NS1のいずれかをコードするmRNAを共トランスフェクトしたマクロファージにおけるCAR mRNAの安定性を示す例示的なグラフを示す。
図18A】マクロファージ及びCARマクロファージとCD40リガンド(CD40L)とのインキュベーション後の腫瘍殺傷能力を示すグラフである。
図18B】マクロファージ及びCARマクロファージとCD40リガンド(CD40L)とのインキュベーション後のM1及びM2マーカーの発現誘導を示すグラフである。
図19A】マクロファージ及びCARマクロファージと4-1BBとのインキュベーション後の腫瘍殺傷能力を示すグラフである。
図19B】マクロファージ及びCARマクロファージと4-1BBとのインキュベーション後のM1及びM2マーカーの発現誘導を示すグラフである。
図20A】マクロファージ及びCARマクロファージと4-1BBリガンド(4-1BBL)とのインキュベーション後の腫瘍殺傷能力を示すグラフである。
図20B】マクロファージ及びCARマクロファージと4-1BBリガンド(4-1BBL)とのインキュベーション後のM1及びM2マーカーの発現誘導を示すグラフである。
図21】CAR mRNAをエレクトロポレーションしたヒト単球におけるCAR発現を示す例示的なグラフを示す。
図22】異種移植固形腫瘍マウスモデルにおいて、IFN-β感作がある場合とない場合における、mRNAエレクトロポレーションを介して生成されたCARマクロファージの有効性を示す例示的なグラフを示す。
図23】同系固形腫瘍マウスモデルにおいて、IFN-β感作がある場合とない場合における、mRNAエレクトロポレーションを介して生成されたCARマクロファージの有効性を示す例示的なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明がより容易に理解されるために、ある特定の用語は、最初に以下に定義される。以下の用語及び他の用語の追加の定義は、本明細書全体に記載される。本発明の背景を説明し、その実践に関するさらなる詳細を提供するために、本明細書で参照される刊行物及び他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用している。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0020】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、目的の1つ以上の値に適用される場合、記載された基準値に類似した値を表す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載がない限り、または特に文脈から明らかでない限り、記載された基準値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に収まる値の範囲を指す(ただし、そのような数値が、取り得る値の100%を超える場合を除く)。
【0021】
活性化:本明細書で使用される場合、「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激された、またはそのエフェクター機能を発揮するために刺激された、細胞、例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞の状態を指す。活性化は、誘導されたサイトカイン産生、食作用、細胞シグナル伝達、標的細胞殺傷、及び/または抗原プロセシング及び提示にも関連している可能性がある。
【0022】
活性化単球/マクロファージ/樹状細胞:本明細書で使用される場合、「活性化単球/マクロファージ/樹状細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けているか、またはエフェクター機能を発揮している単球/マクロファージ/樹状細胞を指す。「活性化単球/マクロファージ/樹状細胞」という用語は、とりわけ、エフェクター機能を実行している細胞、または、食作用、サイトカイン分泌、増殖、遺伝子発現の変化、代謝の変化、及びその他の機能を含む、休止状態では見られない何らかの活性を発揮している細胞を指す。
【0023】
薬剤:本明細書で使用される場合、「薬剤」(または「生物学的薬剤」もしくは「治療剤」)という用語は、本明細書に記載の修飾細胞によって発現、放出、分泌、または標的に送達され得る分子を指す。薬剤には、限定されないが、核酸、抗生物質、抗炎症剤、抗体またはその断片、抗体剤またはその断片、成長因子、サイトカイン、酵素、タンパク質(例えば、RNAse阻害剤)、ペプチド、融合タンパク質、合成分子、有機分子(例えば、低分子)、炭水化物、脂質、ホルモン、ミクロソーム、その誘導体または変異体、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。薬剤は、標的または標的細胞上に存在する受容体、抗原決定基、または他の結合部位などの任意の細胞部分に結合することができる。薬剤は細胞内に拡散または輸送され、細胞内で作用することがある。
【0024】
抗体:本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の標的抗原への特異的結合をもたらすのに十分であるカノニカルな免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。当技術分野において知られているように、天然に産生されるようなインタクト抗体は、互いに会合して「Y字型」構造と一般的に称されるものとなる、2個の同一の重鎖ポリペプチド(各約50kD)、及び2個の同一の軽鎖ポリペプチド(各約25kD)から構成されている、約150kDの四量体薬剤である。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(各々約110アミノ酸長)から構成されている。すなわち、アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)の後に、3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びカルボキシ末端CH3(Yの基部の先端に位置する)が続いている。「スイッチ」として知られている、短い領域は、重鎖可変領域及び定常領域を接続する。「ヒンジ」は、CH2及びCH3ドメインを抗体の残りに接続する。このヒンジ領域中の2箇所のジスルフィド結合は、インタクト抗体中で2個の重鎖ポリペプチドを互いに接合する。各軽鎖は2つのドメインから構成されている。すなわち、アミノ末端可変(VL)ドメインの後にカルボキシ末端定常(CL)ドメインが続き、これらは、別の「スイッチ」によって互いから分離している。インタクト抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体から構成されており、これらの二量体において、重鎖及び軽鎖が1つのジスルフィド結合によって互いに結合し、2つの他のジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに接続することにより、二量体同士が接続され、四量体が形成される。また、天然に産生された抗体は、典型的にはCH2ドメインでグリコシル化されている。自然抗体の各ドメインは、2つのベータシート(例えば、3本鎖、4本鎖、または5本鎖のシート)同士がまとまって固まった逆平行ベータバレルになることから形成された「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域」として知られる3つの超可変ループ(CDR1、CDR2、及びCDR3)、及び4つの若干不変な「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含む。自然抗体がフォールドするとき、FR領域がベータシートを形成してドメインの構造フレームワークとなり、重鎖と軽鎖の両方のCDRループ領域が三次元空間で結合する結果、Y構造の先端に位置する1つの超可変抗原結合部位を作出する。天然に存在する抗体のFc領域は、補体系の要素に結合し、例えば細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞などのエフェクター細胞の受容体にも結合する。Fc受容体に対するFc領域の親和性及び/または他の結合特性は、グリコシル化または他の修飾を介して調節することができる。いくつかの実施形態では、(例えば、CARの成分として)本発明に従い産生及び/または利用される抗体は、グリコシル化されたFcドメイン、例えば修飾または操作されたグリコシル化を伴うFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、自然抗体中に見出されるものとして、十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む、いずれかのポリペプチド、またはポリペプチドの複合体は、このようなポリペプチドが自然に産生される(例えば、抗原に反応する動物によって生成される)か、遺伝子組換え工学、化学合成、または他の人工システムもしくは方法論によって産生されるかどうかにかかわらず、「抗体」と称される、及び/または「抗体」として使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス抗体、ウサギ抗体、霊長類抗体、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列要素は、当技術分野で公知であるように、ヒト化されたもの、霊長類化されたもの、キメラなどである。さらに、本明細書で使用される「抗体」という用語は、適切な実施形態(別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り)において、代替的な実施態様において抗体の構造及び機能的特徴を利用するための当技術分野において公知である、または開発されたコンストラクトまたはフォーマットのいずれかを意味し得る。例えば、いくつかの実施形態では、本発明に従い利用される抗体は、限定するものではないが、インタクトIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性抗体または多特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、抗体断片、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離されたCDRまたはそれらのセット、一本鎖Fv、ポリペプチド-Fc融合物、単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、ラクダ科抗体、マスク抗体(例えば、Probodies(登録商標))、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖ダイアボディまたはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、Nanobodies(登録商標)ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標)、Affibodies(登録商標)、TrimerX(登録商標)、MicroProteins、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、ならびにKALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットである。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生された場合には有しているはずの共有結合的修飾(例えば、グリカンの結合)を欠いている場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合的修飾(例えば、グリカンの結合、ペイロード[例えば、検出可能な部分、治療的な部分、触媒部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリエチレングリコールなど]を含むことができる。
【0025】
抗体剤:本明細書で使用される場合、「抗体剤」という用語は、特定の抗原に特異的に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、用語は、特異的結合を付与するのに十分な免疫グロブリン構造的要素を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗体剤には、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体剤は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な1つ以上の定常領域配列を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体剤は、当技術分野で公知であるように、ヒト化されたもの、霊長類化されたもの、キメラなどである1つ以上の抗体配列要素を含むことができる。多くの実施形態では、「抗体剤」という用語は、代替的な実施態様において抗体の構造的及び機能的特徴を利用するための、当技術分野で公知のもしくは開発されたコンストラクトまたはフォーマットの1つ以上を指すために使用される。例えば、いくつかの実施形態では、本発明に従い利用される抗体剤は、限定するものではないが、インタクトIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性抗体または多特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など)、抗体断片、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離されたCDRまたはそれらのセット、一本鎖Fv、ポリペプチド-Fc融合物、単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、ラクダ科抗体、マスク抗体(例えば、Probodies(登録商標))、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖ダイアボディまたはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、Nanobodies(登録商標)ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標)、Affibodies(登録商標)、TrimerX(登録商標)、MicroProteins、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、ならびにKALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットである。いくつかの実施形態では、抗体剤は、天然に産生された場合には有しているはずの共有結合的修飾(例えば、グリカンの結合)を欠いている場合がある。いくつかの実施形態では、抗体剤は、共有結合的修飾(例えば、グリカンの結合、ペイロード[例えば、検出可能な部分、治療的な部分、触媒部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリエチレングリコールなど]を含むことができる。多くの実施形態では、抗体剤は、アミノ酸配列が相補性決定領域(CDR)として当業者に認識された1つ以上の構造的要素を含むポリペプチドであるか、アミノ酸配列が相補性決定領域(CDR)として当業者に認識された1つ以上の構造的要素を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体剤は、アミノ酸配列が参照抗体で見られるものに実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるか、またはアミノ酸配列が参照抗体で見られるものに実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、配列が同一であるか、または参照CDRと比較した場合1~5のアミノ酸置換を含むかのいずれかであるという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、参照CDRとの少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、参照CDRとの少なくとも96%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、含まれたCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が参照CDRと比較した場合欠失、付加、または置換されるが、含まれたCDRが参照CDRのものと他の点では同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、含まれたCDR内の1~5のアミノ酸が参照CDRと比較した場合欠失、付加、または置換されるが、含まれたCDRが参照CDRと他の点では同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、含まれたCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が参照CDRと比較した場合置換されるが、含まれたCDRが参照CDRのものと他の点では同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれたCDRは、含まれたCDR内の1~5のアミノ酸が参照CDRと比較した場合欠失、付加、または置換されるが、含まれたCDRが参照CDRと他の点では同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRに実質的に同一である。いくつかの実施形態では、抗体剤は、アミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメインとして当業者に認識された構造的要素を含むポリペプチドであるか、またはアミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメインとして当業者に認識された構造的要素を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体剤は、免疫グロブリン結合ドメインに対して相同であるか、または大部分は相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗体剤は、アミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメインとして当業者に認識された構造的要素を含むポリペプチドではない、及び/またはアミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメインとして当業者に認識された構造的要素を含むポリペプチドを含まない。いくつかの実施形態では、抗体剤は、免疫グロブリン構造的要素を含まない分子または組成物(例えば、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む受容体または他の天然に存在する分子)であり得るか、またはそれらを含み得る。
【0026】
抗体断片:本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、インタクト抗体の一部を指し、インタクト抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、直鎖状抗体、scFv抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体、及びそれらのヒト及びヒト化バージョンが挙げられる。
【0027】
抗体重鎖:本明細書で使用される場合、「抗体重鎖」という用語は、天然に存在する立体配座にある全抗体分子中に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち大きい方を指す。
【0028】
抗体軽鎖:本明細書で使用される場合、「抗体軽鎖」という用語は、天然に存在する立体配座にある全抗体分子中に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち小さい方を指す。
【0029】
合成抗体:本明細書で使用される場合、「合成抗体」という用語は、例えば、本明細書に記載のバクテリオファージによって発現する抗体など、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を指す。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成された抗体、及びそのDNA分子が抗体タンパク質を発現する抗体、または抗体を特定するアミノ酸配列を意味すると解釈されるべきであり、ここでDNAまたはアミノ酸配列は、利用可能かつ当技術分野で周知である合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られる。
【0030】
抗原:本明細書で使用される場合、「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘発することができる分子を指す。この免疫応答には、抗体産生、特異的免疫学的適格細胞の活性化のいずれか、またはその両方が含まれる場合がある。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として機能することができることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えDNAまたはゲノムDNAに由来することができる。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、本明細書で使用される用語「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要がないことを理解するであろう。本発明は、2つ以上の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むが、これらに限定されないこと、及びこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を誘発するために種々の組み合わせで配置されることは容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要がまったくないことを理解するであろう。抗原を、合成して生成することができるか、または生体試料に由来することができることは容易に明らかである。そのような生体試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞または体液が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
抗腫瘍効果:本明細書で使用される場合、「抗腫瘍効果」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の延伸、またはがん状態に関連する種々の生理学的症状の改善によって明らかになりうる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」はまた、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、及び抗体の、最初の腫瘍の発生の予防における能力によっても明らかにすることができる。
【0032】
自己由来:本明細書で使用される場合、「自己由来」という用語は、後に個体に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0033】
同種異系:本明細書で使用される場合、「同種異系」という用語は、同じ種の異なる動物に由来する任意の物質(例えば、細胞の集団)を指す。
【0034】
異種:本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、異なる種の動物に由来する任意の物質(例えば、細胞の集団)を指す。
【0035】
がん:本明細書で使用される「がん」という用語は、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖を特徴とする疾患を指す。がん細胞は、局所的に、または血流やリンパ系を介して体の他の部分に広がる可能性がある。種々のがんの例としては、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、大腸癌、腎癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌などが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、がんは、甲状腺髄様癌である。
【0036】
保存的配列修飾:本明細書で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意に影響または変化を与えないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾には、アミノ酸の置換、付加及び欠失が含まれる。修飾は、部位特異的変異導入及びPCR媒介変異導入などの当技術分野で知られている標準的な技術によって、種々の実施形態に適合する抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変化した抗体を、本明細書に記載の機能アッセイを使用して抗原に結合する能力について試験することができる。
【0037】
共刺激リガンド:本明細書で使用される場合、「共刺激リガンド」という用語は、単球/マクロファージ/樹状細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合し、それにより、増殖、活性化、分化などを含むが、これらに限定されない、単球/マクロファージ/樹状細胞応答を媒介するシグナルを提供する、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を指す。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、及びB7-H3に特異的に結合するリガンドを含めることができるが、これらに限定されるものではない。共刺激リガンドはまた、とりわけ、単球/マクロファージ/樹状細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、例として、限定されるものではないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンドも包含する。
【0038】
細胞毒性の:本明細書で使用される場合、「細胞毒性の」または「細胞毒性」という用語は、細胞を殺傷するまたは損傷することを指す。一実施形態では、代謝的に増強された細胞の細胞傷害性が改善され、例えば、マクロファージの細胞溶解活性が増加する。
【0039】
有効量:本明細書で使用される場合、「有効量」及び「治療有効量」は交換可能であり、特定の生物学的結果を達成するのに有効であるか、または製造、治療もしくは予防上の利点を提供する、本明細書において記載される化合物、製剤、材料もしくは組成物の量を指す。このような結果には、当技術分野で好適な任意の手段によって判定される抗腫瘍活性が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
エフェクター機能:本明細書で使用される場合、「エフェクター機能」または「エフェクター活性」は、免疫細胞の刺激に応答して免疫細胞によって実行される特異的活性を指す。例えば、マクロファージのエフェクター機能は、食作用によって、細胞片、異物、微生物、がん細胞、及びその他の不健康な細胞を飲み込んで消化するものである。
【0041】
コードする:本明細書で使用される場合、「コードする」とは、定義されたヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)配列または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどの、ポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列の固有の特性ならびにそれに起因する生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり通常は配列表に示されるヌクレオチド配列であるコード鎖も、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖もともに、タンパク質、またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると称することができる。
【0042】
内因性:本明細書で使用される場合、「内因性」とは、特定の生物、細胞、組織もしくは系の内部に由来するか、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
【0043】
外因性:本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、特定の生物、細胞、組織もしくは系の外部から導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の物質を指す。
【0044】
拡大:本明細書で使用される場合、「拡大」という用語は、細胞、例えば、単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞の数の増加におけるように、数が増加することを指す。一実施形態では、エクスビボで拡大した単球、マクロファージ、または樹状細胞は、培養物中に最初に存在している数と比較して数が増加する。別の実施形態では、エクスビボで拡大した単球、マクロファージ、または樹状細胞は、培養物中の他の細胞型と比較して数が増加する。いくつかの実施形態では、拡大はインビボで起こり得る。本明細書で使用される「エクスビボ」という用語は、生きている生物(例えば、ヒト)から取り出され、生物の外側で(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクター内で)増殖された細胞を指す。
【0045】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」という用語は、核酸配列からの任意の遺伝子産物の生成を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は転写物であり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、核酸配列の発現は、以下のうちの1つ以上を含む:(1)DNA配列からのRNA鋳型の生成(例えば、転写による)、(2)RNA転写産物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端形成による)、(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳、及び/または(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0046】
発現ベクター:本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、発現するヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、コスミド、プラスミド(例えば、裸のものまたはリポソーム中に含まれるもの)及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)など、当技術分野で公知のすべてのベクターが含まれる。
【0047】
断片:本明細書で使用される場合、「断片」または「部分」という用語は、全体のうちの別個の部分を含むが、構造全体に見出される1つ以上の部分を欠いている構造を指す。いくつかの実施形態では、断片は、そのような別個の部分からなる。いくつかの実施形態では、断片は、全体に見出される特徴的な構造要素または部分からなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド断片は、ヌクレオチド全体に見出される少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500もしくはそれ以上のモノマー単位(例えば、核酸)を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド断片は、ヌクレオチド全体に見出されるモノマー単位(例えば、残基)の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、25%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上を含むか、またはそれらからなる。物質または実体の全体は、いくつかの実施形態では、全体の「親」と称される場合がある。
【0048】
相同性:本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合に互いに「相同」であると考えられる。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%類似している(例えば、関連する化学的性質を持つ残基を対応する位置に含む)場合に互いに「相同」であると考えられる。当業者に理解されるように、相同性の程度を決定するために配列の比較を可能にする様々なアルゴリズムが利用可能であり、これは、例えば、異なる配列でどの残基が互いに「対応する」かを検討する際に、ある配列で指定された長さの、別の配列に対するギャップの許容によることを含む。2つの核酸配列間の相同性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のための2つの配列を整列させることにより実行され得る(例えば、最適なアラインメントのための第1及び第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のためには非対応配列を無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較目的のための整列した配列の長さは、参照配列の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。次に、対応するヌクレオチド位置でのヌクレオチドが比較される。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同じヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で同一であり、第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と類似のヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置で類似している。2つの配列間の相同性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列に共通する同一及び類似の位置の数の関数である。
【0049】
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれの位置がアルギニンによって占められている場合、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列が、アラインメントにおいて同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、多くの場合パーセンテージとして表される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致している位置または同一である位置の数の一次関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマー中の5つの位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一であり、位置の90%(例えば、10のうち9つ)が一致しているかまたは同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0050】
実質的同一性:本明細書で使用される場合、「実質的同一性」という用語は、アミノ酸配列または核酸配列間の比較を指す。当業者には理解されるように、2つの配列は、それらが対応する位置に同一の残基を含有する場合、一般に「実質的に同一」であると考えられる。当技術分野において周知であるように、アミノ酸配列または核酸配列は、ヌクレオチド配列用のBLASTN、アミノ酸配列用のBLASTP、ギャップBLAST、及びPSI-BLASTなどの市販のコンピュータープログラムで利用可能なものを含む様々なアルゴリズムのいずれかを使用して比較することができる。いくつかの実施形態では、対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が、関連する一続きの残基にわたって同一である場合、2つの配列は実質的に同一であると考えられる。いくつかの実施形態では、関連する一続きは完全な配列である。いくつかの実施形態では、関連する一続きは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500またはそれ以上の残基である。CDRとの関係において、「実質的な同一性」への言及は、通常、参照CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。
【0051】
免疫細胞:本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という用語は、免疫応答、例えば免疫応答の促進に関与する細胞を指す。免疫細胞の例には、マクロファージ、単球、樹状細胞、好中球、好酸球、マスト細胞、血小板、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、Tリンパ球、またはB-リンパ球が含まれるが、これらに限定されない。免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)の供給源は、対象から得ることができる。
【0052】
免疫応答:本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、リンパ球が抗原分子を異物と同定し、抗体の形成を誘導し、及び/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する場合に起こる抗原に対する細胞応答及び/または全身応答を指す。
【0053】
免疫グロブリン:本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスを指す。B細胞によって発現する抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称されることがある。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、及びIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、胃腸分泌物、気道及び尿生殖路の粘液分泌物などの体分泌物に存在する一次抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、ほとんどの対照の一次免疫応答で産生される主要な免疫グロブリンである。これは、凝集、補体結合、及びその他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌及びウイルスに対する防御に重要である。IgDは抗体機能が判明していない免疫グロブリンであるが、抗原受容体として機能している場合がある。IgEは、アレルゲンに対する曝露時にマスト細胞及び好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことによって即時型過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
【0054】
単離された:本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、天然状態から修飾または除去されたものを指す。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、または例えば宿主細胞などの非天然環境で存在することができる。
【0055】
修飾:本明細書で使用される場合、「修飾」という用語は、本発明の分子または細胞の変化した状態または構造を指す。分子は、化学的、構造的、及び機能的など、多くの方法で修飾することができる。細胞は、核酸の導入によって修飾することができる。
【0056】
調節する:本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、治療もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベル及び/または性質と比較して、及び/または他の点では同一であるが治療を受けていない対象における応答のレベル及び/または性質と比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加もしくは低下、及び/または応答の性質の変化を媒介することを指す。この用語は対象、好ましくはヒトにおいて、天然のシグナルもしくは応答を撹乱させ、及び/またはそれに影響を与え、それにより有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0057】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、少なくとも3つのヌクレオチドのポリマーを指す。いくつかの実施形態では、核酸はDNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸はRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖部分と二本鎖部分の両方を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のホスホジエステル結合を含む骨格を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合及び非ホスホジエステル結合の両方を含む骨格を含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のホスホロチオエートまたは5’-N-ホスホラミダイト結合及び/または、例えば「ペプチド核酸」におけるような、1つ以上のペプチド結合を含む骨格を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の、またはすべての天然残基(例えば、アデニン、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、グアニン、チミン、ウラシル)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の、またはすべての非天然残基を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、ヌクレオシドアナログ(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、及びそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、天然残基のものと比較して、1つ以上の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはポリペプチドなどの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、酵素合成(例えば、相補的鋳型に基づく重合、例えば、インビボまたはインビトロでの、組換え細胞もしくは系における複製、または化学合成による)によって調製され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000以上の残基長である。
【0058】
作動可能に連結した:本明細書で使用される場合、「作動可能に連結した」という用語は、例えば調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を意味し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係へと配置される場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結される。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結されるDNA配列は、同じリーディングフレームにおいて、隣接しており、必要な場合、2つのタンパク質コード領域を繋げるためのものである。
【0059】
過剰発現腫瘍抗原:本明細書で使用される場合、「過剰発現」腫瘍抗原または腫瘍抗原の「過剰発現」という用語は、患者の特定の組織または臓器の内部にある固形腫瘍のような疾患領域からの細胞における腫瘍抗原の発現が、その組織または臓器からの正常細胞における発現のレベルと比べて異常なレベルであることを指す。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする固形腫瘍または血液悪性腫瘍を有する患者は、当技術分野で知られている標準的なアッセイによって判定することができる。
【0060】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖を指す。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される場合、核酸及びポリヌクレオチドは交換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、加水分解されて単量体の「ヌクレオチド」になり得るという一般的な知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドには、非限定的に、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術及びPCR(商標)などを用いた組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、当技術分野において利用可能な任意の手段により、ならびに合成手段により得られるすべての核酸配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
ポリペプチド:本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、典型的にはペプチド結合によって連結される残基(例えば、アミノ酸)の任意のポリマー鎖を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、人間の手の作用によって設計及び/または生成されるように操作されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはその両方を含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸のみまたは非天然アミノ酸のみを含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、または両方を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはそれらの任意の組み合わせで、1つ以上のペンダント基または他の修飾、例えば、1つ以上のアミノ酸側鎖の修飾またはそれへの結合を含み得る。いくつかの実施形態では、そのようなペンダント基または修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、ペグ化など、例えばそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは環状であってもよく、及び/または環状部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは環状ではなく、及び/または環状部分を含まない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは直鎖状である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ステープルポリペプチドであるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、「ポリペプチド」という用語は、参照ポリペプチド、活性、または構造の名称に付加され得、そのような場合、これは、関連する活性または構造を共有し、したがってポリペプチドの同じクラスまたはファミリーのメンバーであると考えることができるポリペプチドを指すために本明細書で使用される。そのようなクラスごとに、アミノ酸配列及び/または機能が知られているクラス内の例示的なポリペプチドを本明細書が提供し、及び/または当業者はそれに気付くであろう。いくつかの実施形態では、そのような例示的なポリペプチドは、ポリペプチドのクラスまたはファミリーの参照ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、クラスの参照ポリペプチドと、いくつかの実施形態では、クラス内のすべてのポリペプチドと)、有意な配列相同性または同一性を示し、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列要素)を共有し、及び/または共通の活性を共有する(いくつかの実施形態では、同等のレベルで、または指定範囲内で)。例えば、いくつかの実施形態では、メンバーポリペプチドは、少なくとも約30~40%であり、多くの場合、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上を超える参照ポリペプチドとの全体的な程度の配列相同性または同一性を示し、及び/または、多くの場合90%、またはさらに95%、96%、97%、98%、または99%を超える非常に高い配列同一性を示す少なくとも1つの領域(例えば、いくつかの実施形態では、特徴的な配列要素であるか、またはそれを含み得る保存領域)を含む。このような保存領域は、通常、少なくとも3~4個、多くの場合最大20個以上のアミノ酸を包含し、いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上の連続アミノ酸の少なくとも1つの一続きを包含する。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含むか、またはそれからなり得る。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、複数の断片を含むか、または複数の断片からなり得、そのそれぞれは、目的のポリペプチドに見られるものとは互いに対し異なる空間配置で、同じ親ポリペプチドに見られ(例えば、親に直接連結された断片は、目的のポリペプチドでは空間的に分離されているか、またはその逆である場合があり、及び/または断片は、親とは異なる順序で目的のポリペプチドに存在する場合がある)、したがって、目的のポリペプチドは、その親ポリペプチドの誘導体である。
【0062】
タンパク質:本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合によって互いに連結された一連の少なくとも2つのアミノ酸)を指す。タンパク質は、アミノ酸以外の部分を含むことができる(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなどであり得る)、及び/または別途加工あるいは修飾され得る。当業者は、「タンパク質」が、細胞によって産生される完全なポリペプチド鎖(シグナル配列有りまたは無し)であっても、またはその特徴的部分であってもよいことを理解するであろう。当業者は、タンパク質が、例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって連結されるか、または他の手段によって会合される2つ以上のポリペプチド鎖を含み得る場合があることを理解するであろう。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、または両方を含有することができ、かつ当業者に既知の種々のアミノ酸修飾またはアナログのいずれも含有することができる。有用な修飾は、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組み合わせを含むことができる。「ペプチド」という用語は、一般的に、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満、または10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指すように使用される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗体、抗体断片、その生物学的に活性な部分、及び/またはその特徴的部分である。
【0063】
シグナル伝達経路:本明細書で使用される場合、「シグナル伝達経路」という用語は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす種々のシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。「細胞表面受容体」という語句には、シグナルを受け取り、細胞の原形質膜を介してシグナルを伝達することができる分子及び分子の複合体が含まれる。
【0064】
単鎖抗体:本明細書で使用される場合、「単鎖抗体」という用語は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖断片が、操作されたアミノ酸の長さを介してFv領域に連結される組換えDNA技術によって形成された抗体を指す。単鎖抗体を生成する種々の方法が知られており、これには、米国特許第4,694,778号、Bird (1988)Science 242:423-442、Huston et al. (1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883、Ward et al. (1989)Nature 334:54454、Skerra et al. (1988)Science 242:1038-1041に記載されているものが含まれる。
【0065】
特異的に結合する:本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、抗体剤などの抗原結合ドメインに関して、特異的抗原を認識するが、試料内の他の分子を実質的には認識しないまたはそれに結合しない抗原結合ドメインまたは抗体剤を指す。例えば、ある種由来の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインまたは抗体剤はまた、1つ以上の種由来の抗原に結合し得る。しかし、そのような種間反応性自体は、抗原結合ドメインまたは抗体剤の特異的なものとしての分類を変更するものではない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインまたは抗体剤は、抗原の異なる対立遺伝子型にも結合し得る。しかし、そのような交差反応性自体は、抗原結合ドメインまたは抗体剤の特異的なものとしての分類を変更するものではない。場合によっては、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語を、抗原結合ドメインまたは抗体剤、タンパク質、またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関連して使用することができ、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味してもよい。例えば、抗原結合ドメインまたは抗体剤は、タンパク質全体ではなく特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗原結合ドメインまたは抗体剤がエピトープ「A」に特異的である場合、標識化「A」及び抗原結合ドメインまたは抗体剤を含む反応において、エピトープA(または遊離した非標識化A)を含有する分子の存在によって、抗体に結合した標識化Aの量が減少する。
【0066】
刺激:本明細書で使用される場合、「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、FcR複合体、TLR複合体、またはTCR/CD3複合体)が、例えば、その同族リガンドと結合し、これにより、限定されないが、Fc受容体機構または合成CARを介したシグナル伝達などのシグナル伝達事象を媒介することによって誘導される一次応答を指す。刺激は、TGF-ベータのダウンレギュレーション、及び/または細胞骨格構造の再編成など、ある特定の分子の発現の変化を媒介することができる。本明細書で使用される場合、「刺激分子」という用語は、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合する単球、マクロファージ、または樹状細胞の分子を指す。いくつかの実施形態では、刺激分子は、CD64(FcγRI)、CD32a(FcγRIIa)、CD32b(FcγRIIb)、CD32c、CD16a(FcγRIIIa)、CD16b(FcγRIIIb)、FcεRI、FcεRII、FcαRI(CD89)またはCD40ドメインを含むFcR細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、刺激分子は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、またはTLR9ドメインを含むTLR細胞外ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「刺激性リガンド」という用語は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、マクロファージ、樹状細胞、B細胞など)または腫瘍細胞上に存在する場合、単球、マクロファージ、または樹状細胞上の同族結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と呼ばれる)と特異的に結合し、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含むがこれらに限定されない免疫細胞による応答を媒介するリガンドを指す。刺激性リガンドは当技術分野で周知であり、とりわけ、Toll様受容体(TLR)リガンド、抗toll様受容体抗体、アゴニスト、及び、単球/マクロファージ受容体に対する抗体を包含する。加えて、インターフェロン-ガンマなどのサイトカインは、マクロファージに対する強力な刺激物質である。
【0067】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、ネコ、またはイヌ)を指す。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または状態、例えば、本明細書で提供されるように治療することができる疾患、障害または状態、例えば、本明細書に列挙されるがんまたは腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に罹患しやすく、いくつかの実施形態では、罹患しやすい対象は、疾患、障害、または状態を発症する素因がある、及び/または(基準対象または基準集団で観察される平均リスクと比較して)リスクの増加を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または状態の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の特定の症状(例えば、疾患の臨床症状)または特徴を示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または状態のいずれの症状または特徴も示さない。いくつかの実施形態では、対象は患者である。いくつかの実施形態では、対象は、診断及び/または療法が施される及び/または施された個体である。
【0068】
実質的に精製された:本明細書で使用される場合、「実質的に精製された」という用語は、例えば細胞に適用される場合、他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。実質的に精製された細胞はまた、天然に存在する状態で通常関連する他の細胞型から分離された細胞を指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団は、均質な細胞集団を指す。他の例では、この用語は、天然状態で天然に会合している細胞から分離された細胞を単に指す。いくつかの実施形態では、細胞をインビトロで培養する。他の実施形態では、細胞はインビトロで培養されない。
【0069】
標的:本明細書で使用される場合、「標的」という用語は、提供される方法、システム、及び/または組成物の対象である体内の細胞、組織、器官、または部位、例えば、治療を必要とするか、または、例えば抗体(もしくはその断片)もしくはCARによって優先的に結合される体内の細胞、組織、器官、または部位を指す。
【0070】
標的部位:本明細書で使用される場合、「標的部位」または「標的配列」という用語は、結合が起こるのに十分な条件下で結合分子が特異的に結合し得る核酸の部分を定義するゲノム核酸配列を指す。
【0071】
T細胞受容体:本明細書で使用される場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、抗原の提示に応答してT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合性複合体分子に結合した抗原を認識する役割を担う。TCRは、アルファ(α)及びベータ(β)鎖のヘテロ二量体から構成されるが、一部の細胞ではTCRはガンマ及びデルタ(γ/δ)鎖から構成される。TCRは、構造的に類似しているが、異なる解剖学的位置及び機能を有するアルファ/ベータ及びガンマ/デルタ形態で存在しうる。各鎖は、可変ドメインと定常ドメインの2つの細胞外ドメインで構成されている。いくつかの実施形態では、TCRは、TCRを含む任意の細胞、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、及びγδT細胞を含む任意の細胞上で修飾することができる。
【0072】
治療的:本明細書で使用される場合、「治療的」という用語は、治療及び/または予防を指す。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0073】
トランスフェクトされた:本明細書で使用される場合、「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクト」または「形質転換」または「形質導入」細胞は、外因性核酸をトランスフェクト、形質転換、または形質導入した細胞である。この細胞は、初代対象細胞及びその子孫を含む。
【0074】
治療する:本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状または特徴の部分的または完全な緩和、改善、発症の遅延、阻害、予防、緩和、及び/または発生率及び/または重症度の低下を指す。いくつかの実施形態では、治療は、疾患、障害、及び/または状態の徴候または特徴を示さない対象に施すことができる(例えば、予防的であり得る)。いくつかの実施形態では、治療は、例えば、疾患、障害、及び/または状態に関連する病態を発症するリスクを減少させる目的で、疾患、障害、及び/または状態の初期または軽度の徴候もしくは特徴のみを示す対象に、施すことができる。いくつかの実施形態では、治療は、疾患、障害、または状態の確立された、重度の、及び/または後期の徴候を示す対象に施すことができる。いくつかの実施形態では、治療は、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に施すこと、または免疫細胞を、インビトロで転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターと接触させることを含み得る。
【0075】
腫瘍:本明細書で使用される場合、「腫瘍」という用語は、細胞または組織の異常増殖を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び/または非転移性の細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、がんに関連しているか、またはがんの兆候である。いくつかの実施形態では、腫瘍は分散性腫瘍または液状腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍であり得る。
【0076】
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物を指す。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスが含まれる。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性及び非ウイルス性の化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本開示の全体を通じて、本発明の種々の態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式での説明は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能な部分範囲を具体的に開示したと考えるべきである。例えば、1から6までなどの範囲の記述は、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などの、その範囲内の個々の数だけでなく、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までなどの、具体的に開示された部分範囲を有すると考えるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0078】
詳細な説明
免疫細胞
本開示は、とりわけ、本明細書に記載の少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)を含む修飾免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのCARを含む免疫細胞は、(a)細胞外ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞外ドメイン)、(b)膜貫通ドメイン(例えば、本明細書に記載の膜貫通ドメイン)、及び(c)細胞内ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞内ドメイン)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞集団は、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び/またはそれらの前駆体を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞の集団は、単球、マクロファージ、もしくは樹状細胞、または細胞株の精製された集団を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、免疫細胞が活性化され、例えば、免疫細胞は、例えば不活性細胞と比較して、サイトカイン産生、ケモカイン産生、食作用、細胞シグナル伝達、標的細胞殺傷、及び/または抗原提示の増加を示す。いくつかの実施形態では、活性化免疫細胞は、例えば、不活性細胞と比較して、遺伝子発現の変化、例えば、炎症誘発性遺伝子(例えば、TNF、IL-12、IFN、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、またはIL-1のうちの1、2、3、4、5、6、または7つ)発現の誘導を示す。ある特定の実施形態では、活性化免疫細胞は細胞分裂を受けている。いくつかの実施形態では、免疫細胞の標的エフェクター活性は、CD47及び/またはSIRPα活性の阻害によって増強される。CD47及び/またはSIRPα活性は、免疫細胞を抗CD47もしくは抗SIRPα抗体で処理することによって、または当業者に公知の任意の方法によって阻害することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、対象から得られる(例えば、単離される)。免疫細胞は自己由来であっても、同種異系または万能ドナーから供給されてもよい。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、腫瘍、及び/または胚性幹細胞(ESC)などの人工多能性幹細胞を含む多くの供給源から得ることができる。ある特定の実施形態では、細胞は、Ficoll分離などの当業者に公知の任意の数の分離技術を使用して、対象から収集された血液の単位から得ることができる。いくつかの実施形態では、対象の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。アフェレーシスによって収集された細胞は、洗浄して血漿画分を除去し、様々な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))または培養培地)に再懸濁することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、単球)の濃縮は、プラスチック接着を含む。いくつかの実施形態では、濃縮後の免疫細胞(例えば、単球)の分化は、GM-CSFによる刺激を含む。いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシス組成物(例えば、ロイコパック)などの血球(例えば、単球、リンパ球、血小板、血漿、及び/または赤血球)を含む組成物を、濃縮のために使用する。いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシス組成物(例えば、ロイコパック)は、健康なヒトドナー由来の試料を含む。ある特定の実施形態では、免疫細胞(例えば、単球)のアフェレーシスに続いて、GM-CSFによる動員が行われる。ある特定の実施形態では、免疫細胞(例えば、単球)の選択は、マイクロビーズ(例えば、CliniMACS Prodigyデバイス上のMACS(登録商標)MicroBeads)を使用するCD14陽性選択を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞前駆体(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞の前駆体)を、本明細書に記載の組成物及び方法で使用する。免疫細胞前駆体は、インビボまたはエクスビボで免疫細胞に分化させることができる。免疫前駆細胞の非限定的な例には、造血幹細胞、骨髄系共通前駆細胞、骨髄芽球、単芽球、前単球、またはそれらの中間体が含まれる。例えば、人工多能性幹細胞を使用して、単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞を生成することができる。人工多能性幹細胞(iPSC)は、末梢血、線維芽細胞、皮膚、角化細胞、腎上皮細胞などの正常なヒト組織に由来する場合がある。自己由来、同種異系、または万能ドナーのiPSCは、骨髄系統(例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、またはそれらの前駆体)に分化する可能性がある。
【0082】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、末梢血から、例えば、赤血球を溶解し、リンパ球及び赤血球を枯渇させることにより、例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離により単離することができる。代替的には、免疫細胞は、臍帯組織から分離することができる。免疫細胞の特定の下位集団は、陽性または陰性選択技術によってさらに分離することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD34、CD3、CD4、CD8、CD56、CD66b、CD19、またはCD20を含むがこれらに限定されないある特定の抗原を発現する細胞を枯渇させることができる。いくつかの実施形態では、例えば陰性選択による免疫細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞に固有の表面マーカーを指向する抗体の組み合わせを使用して達成することができる。非限定的な例として、細胞選択はまた、陰性選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーを指向するモノクローナル抗体のカクテルを使用する陰性磁気免疫接着またはフローサイトメトリーを含み得る。
【0083】
陽性または陰性選択による、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)の所望の集団の単離中に、免疫細胞の濃度及び表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変化させることができる。細胞とビーズの最大接触面積を確保するために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を大幅に減少させることが望ましい場合がある。
【0084】
いくつかの実施形態では、投与前に、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)(例えば、本明細書に記載のCARを含む)を炎症促進剤で処理する。いくつかの実施形態では、炎症促進剤による処理は、本明細書に記載の免疫細胞の抗腫瘍活性を増加させる。いくつかの実施形態では、炎症促進剤による処理は、本明細書に記載の免疫細胞におけるM1表現型を促進する(例えば、M2表現型からM1表現型へのスイッチ)。いくつかの実施形態では、炎症促進剤は、CD40アゴニスト(例えば、CD40L)を含むか、またはCD40アゴニストである。いくつかの実施形態では、炎症促進剤は、41BBリガンドアゴニスト(例えば、4-1BB)を含むか、または41BBリガンドアゴニストである。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)(例えば、本明細書に記載のCARを含む)を、炎症促進剤と組み合わせて対象に投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)(例えば、本明細書に記載のCARを含む)を、炎症促進剤と実質的に同時に、その前に、またはその後に対象に投与する。いくつかの実施形態では、炎症促進剤による投与は、本明細書に記載の免疫細胞の抗腫瘍活性を増加させる。いくつかの実施形態では、炎症促進剤による投与は、本明細書に記載の免疫細胞におけるM1表現型を促進する(例えば、M2表現型からM1表現型へのスイッチ)。いくつかの実施形態では、炎症促進剤は、CD40アゴニスト(例えば、CD40L)を含むか、またはCD40アゴニストである。いくつかの実施形態では、炎症促進剤は、41BBリガンドアゴニスト(例えば、4-1BB)を含むか、または41BBリガンドアゴニストである。
【0086】
マクロファージ
マクロファージは、病原体または腫瘍細胞などの標的細胞の検出、食作用、及び破壊に特化した免疫細胞である。マクロファージは自然免疫系の強力なエフェクターであり、少なくとも3つの異なる抗腫瘍機能が可能である:死細胞、死にかけている細胞、微生物、がん細胞、細胞残屑、またはその他の異物の食作用、腫瘍細胞に対する細胞毒性、及び適応抗腫瘍免疫応答を調整するための腫瘍抗原の提示。
【0087】
蓄積された証拠は、マクロファージが多数のがんの腫瘍微小環境に豊富に存在し、集合的に腫瘍関連マクロファージ(TAM)と呼ばれる多くの表現型を採用することができることを示唆している。腫瘍微小環境の免疫抑制性によって、通常、より多くのM2様TAMがもたらされ、これは、抗腫瘍免疫応答の一般的な抑制にさらに寄与する。しかし、最近の研究では、TAMは、炎症誘発性シグナルを介して「再プログラム」されることが可能であること、及びM2表現型からよりM1表現型へのスイッチが生産的抗腫瘍免疫応答と関連していることが確認されている。内因性TAMを誘導してM1型細胞にスイッチを行い、M2に覆す(subverted)ことができないマクロファージを操作することにより、抗腫瘍免疫療法を大幅に向上させ、このことは、この分野における重要な進歩となる。
【0088】
いくつかの実施形態では、マクロファージは、未分化もしくはM0マクロファージを含むか、または未分化もしくはM0マクロファージである。ある特定の実施形態では、マクロファージは、CD14、CD16、CD64、CD68、CD71、もしくはCCR5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つを含むか、または発現する。種々の刺激にさらされると、M0マクロファージは、マクロファージ表現型マーカー、サイトカイン産生、及び/またはケモカイン分泌によって同定され得るいくつかの異なる集団に分極化するように誘導される。
【0089】
いくつかの実施形態では、マクロファージは、分極化マクロファージを含むか、または分極化マクロファージである。活性化の古典的な条件下では、M0マクロファージは、LPS、IFNγ、GM-CSFなどの炎症誘発性シグナルにさらされ、M1マクロファージに分極化する可能性がある。一般に、M1マクロファージは、Th1及びTh17T細胞応答などの炎症誘発性免疫応答に関連している。他の刺激にさらされると、マクロファージが多様な「代替的に活性化された」マクロファージの群またはM2マクロファージの群に分極化する可能性がある。
【0090】
いくつかの実施形態では、マクロファージは、M1マクロファージを含むか、またはM1マクロファージである。いくつかの実施形態では、マクロファージは、M1マクロファージの1つ以上のマーカー(例えば、CD86、CD80、MHC II、IL-1R、TLR2、TLR4、iNOS、SOCS3、CD83、PD-L1、CD69、MHC I、CD64、CD32、CD16、IL1R、IFITファミリーメンバー、またはISGファミリーメンバーのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18)を発現する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、比較的高レベルの1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1、TNF、IL-12、IL-18、IL-23、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-2、IL-6、IL-8、またはIL33のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12)またはケモカイン(例えば、CCもしくはCXCケモカインの一方または両方)(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16のCXCケモカイン、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28のCCケモカイン、例えば、CX3Cケモカインのうちの1つ、例えば、Cケモカインの1つまたは両方)を分泌する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、免疫応答及び/または炎症を刺激する。いくつかの実施形態では、マクロファージは、M2マクロファージ(例えば、M2a、M2b、M2c、及びM2dマクロファージ)を含むか、またはM2マクロファージである。M2aマクロファージは、IL-4、IL-13、及び/または真菌感染によって誘導される可能性がある。M2bマクロファージは、IL-1Rリガンド、免疫複合体、及び/またはLPSによって誘導される可能性がある。M2cマクロファージは、IL-10及び/またはTGFβによって誘導される可能性がある。M2dマクロファージは、IL-6及び/またはアデノシンによって誘導される可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、対象における免疫応答を減少させる。いくつかの実施形態では、マクロファージは、M2マクロファージの1つ以上のマーカー(例えば、CD206、CD163、またはCD209のうちの1つ、2つ、または3つ)を発現する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、1つ以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10もしくはTGFβの一方または両方)の分泌の増加を示す
【0092】
いくつかの実施形態では、マクロファージは、少なくとも1つのアップレギュレートされたM1マーカー及び/または少なくとも1つのダウンレギュレートされたM2マーカーを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのM1マーカー(例えば、HLA DR、CD86、CD80、PD-L1、CD83、CD69、MHC I、CD64、CD32、CD16、IL1R、IFITファミリーメンバー、及び/またはISGファミリーメンバー)が、マクロファージでアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのM2マーカー(例えば、CD206、CD163、及び/またはCD209)がマクロファージでダウンレギュレートされる。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、食作用の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、腫瘍細胞に対して細胞毒性の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、腫瘍抗原提示の増加(例えば、食作用後の提示)及び/または抗原プロセシングの増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、腫瘍殺傷の増加(例えば、食作用、溶解、アポトーシス、または殺腫瘍サイトカイン(例えば、TNFα)の産生による)を示す。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、好ましい遺伝子(例えば、CD80、CD86、MHC-I、MHC-II、CD40、41BBL、TNF、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL2、IL12、IL6、IL8、IL1b、及び/またはCXCL12)の発現増加または好ましくない遺伝子(例えば、CD163、CD206、TGFβ、IL10、及び/またはIL4)の発現減少の一方または両方を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、ROSの産生の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、代謝の再プログラミングを示す(例えば、インターフェロンシグナル伝達経路、TH1経路、PTENシグナル伝達、PI3Kシグナル伝達、MTORシグナル伝達、TLRシグナル伝達、CD40シグナル伝達、41BBシグナル伝達、41BBLシグナル伝達、マクロファージ成熟シグナル伝達、樹状細胞成熟シグナル伝達、CD3ゼータシグナル伝達、FcRγシグナル伝達、CD64シグナル伝達、CD32aシグナル伝達、CD32cシグナル伝達、CD16aシグナル伝達、TLR1シグナル伝達、TLR2シグナル伝達、TLR3シグナル伝達、TLR4シグナル伝達、TLR5シグナル伝達、TLR6シグナル伝達、TLR7シグナル伝達、TLR8シグナル伝達、TLR9シグナル伝達、ALKシグナル伝達、AXLシグナル伝達、DDR2シグナル伝達、EGFRシグナル伝達、EphA1シグナル伝達、INSRシグナル伝達、cMETシグナル伝達、MUSKシグナル伝達、PDGFRシグナル伝達、PTK7シグナル伝達、RETシグナル伝達、ROR1シグナル伝達、ROS1シグナル伝達、RYKシグナル伝達、TIE2シグナル伝達、TRKシグナル伝達、VEGFRシグナル伝達、CD40シグナル伝達、CD19シグナル伝達、CD20シグナル伝達、41BBシグナル伝達、CD28シグナル伝達、OX40シグナル伝達、GITRシグナル伝達、TREM-1シグナル伝達、TREM-2シグナル伝達、DAP12シグナル伝達、MRシグナル伝達、ICOSシグナル伝達、MyD88シグナル伝達、V/I/LxYxxL/Vシグナル伝達、SIRPαシグナル伝達、CD45シグナル伝達、Siglec-10シグナル伝達、PD1シグナル伝達、SHP-1シグナル伝達、SHP-2シグナル伝達、KIR-2DLシグナル伝達、KIR-3DLシグナル伝達、NKG2Aシグナル伝達、CD170シグナル伝達、CD33シグナル伝達、BTLAシグナル伝達、CD32bシグナル伝達、SIRPβシグナル伝達、CD22シグナル伝達、PIR-Bシグナル伝達、及び/またはLILRB1シグナル伝達)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、細胞生存メカニズムの誘導を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、細胞死メカニズムの誘導を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、食作用チェックポイントに対する耐性の増加、トラフィキングを助けるためのケモカイン受容体の発現の増加、他の免疫細胞を動員するためのケモカインの発現の増加、ECM分解酵素の発現の増加(例えば、腫瘍ECMを分解し、及び/または抗線維化活性を示すMMP)、または増殖の増加、のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、CAR発現の持続時間の改善、細胞表面上でのCARの安定性の改善、CAR発現レベルの増加、またはCARのバックグラウンド活性の低下のうちの1、2、3、または4つ、を示す。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、対象における感染(例えば、感染病原体の)を減少させる。いくつかの実施形態では、感染病原体は、ウイルス、原生動物(例えば、トリパノソーマ、マラリア、またはトキソプラズマ)、細菌(例えば、マイコバクテリウム、サルモネラ、またはリステリア)、真菌(例えば、カンジダ)、またはそれらの組み合わせを含むか、またはそれらである。いくつかの実施形態では、ウイルスには、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、またはE型肝炎)、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(例、HIV1またはHIV2)、T細胞白血病ウイルス、リンパ向性ウイルス(例えば、HTLV1またはHTLV2)、単純ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型または2型)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)ウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2))、エボラウイルス、西ナイルウイルス、またはそれらのバリアントもしくは組み合わせが含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するマクロファージは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないマクロファージと比較して、対象(例えば、神経変性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、線維性疾患、アミロイドーシス、またはそれらの組み合わせを有する対象)における少なくとも1つのタンパク質凝集体の形成を食作用を介して減少させ、及び/または既存の凝集体を分解する。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、タウオパチー、シヌクレオパチー、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、原発性進行性失語症、前頭側頭型認知症、皮質基底層型認知症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ダウン症候群、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハラーフォルデン・シュパッツ症候群、ポリグルタミン病、トリヌクレオチドリピート病、及びプリオン病、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は、全身性エリテマトーデス、血管炎、関節リウマチ、歯周炎、潰瘍性大腸炎、副鼻腔炎、喘息、結核、クローン病、慢性感染、遺伝性周期熱、悪性腫瘍、全身性血管炎、嚢胞性線維症、気管支拡張症、表皮水疱症、循環性好中球減少症、免疫不全、マックルウェルズ(MWS)病、及び家族性地中海熱(FMF)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アミロイドーシスは、原発性アミロイドーシス(AL)、続発性アミロイドーシス(AA)、家族性アミロイドーシス(ATTR)、ベータ2ミクログロブリンアミロイドーシス、限局性アミロイドーシス、重鎖アミロイドーシス(AH)、軽鎖アミロイドーシス(AL)、原発性全身性アミロイドーシス、ApoAIアミロイドーシス、ApoAIIアミロイドーシス、ApoAIVアミロイドーシス、アポリポタンパク質C2アミロイドーシス、アポリポタンパク質C3アミロイドーシス、角膜ラクトフェリンアミロイドーシス、トランスサイレチン関連アミロイドーシス、透析アミロイドーシス、フィブリノーゲンアミロイドーシス、Lect2アミロイドーシス(ALECT2)、及びリゾチームアミロイドーシス、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、高血圧性心疾患、メタボリックシンドローム、高血圧症、脳血管疾患、及び心不全、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、特発性肺線維症、肝硬変、嚢胞性線維症、強皮症、心臓線維症、放射線誘発性肺損傷、脂肪性肝炎、糸球体硬化症、間質性肺疾患、肝線維症、縦隔線維症、後腹膜腔線維症、骨髄線維症、及び皮膚線維症、からなる群から選択される。
【0097】
単球
単球は、血液、骨髄、及び脾臓内を循環する多能性細胞であり、一般に、定常状態では増殖しない。単球は、直径が約10~30μmの範囲でサイズが大きく異なる。単球の細胞質に対する核の比率は、約2:1から約1:1までの範囲であり得る。通常、単球は、感染時などに血液から組織への移動を媒介するケモカイン受容体及び病原体認識受容体を含む。単球は、炎症性サイトカインを産生し、細胞及び/または毒性分子を取り込み、樹状細胞またはマクロファージに分化することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、単球は、1つ以上の表現型マーカーを含むかまたは発現する。ヒト単球細胞の表現型マーカーの例としては、CD9、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CDw17、CD31、CD32、CD33、CD35、CD36、CD38、CD43、CD49b、CD49e、CD49f、CD63、CD64、CD65s、CD68、CD84、CD85、CD86、CD87、CD89、CD91、CDw92、CD93、CD98、CD101、CD102、CD111、CD112、CD115、CD116、CD119、CDwl2lb、CDw123、CD127、CDw128、CDw131、CD147、CD155、CD156a、CD157、CD162 CD163、CD164、CD168、CD171、CD172a、CD180、CD206、CD131a1、CD213 2、CDw210、CD226、CD281、CD282、CD284、及びCD286、が挙げられるが、これらに限定されない。マウス単球細胞の表現型マーカーの例としては、CD11a、CD11b、CD16、CD18、CD29、CD31、CD32、CD44、CD45、CD49d、CD115、CD116、Cdw131、CD281、CD282、CD284、CD286、F4/80、及びCD49bが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、単球は、CD11b、CD14、またはCD16のうちの1つ、2つ、または3つを含む。ある特定の実施形態では、単球は、CD14+ CD16-単球、CD14+ CD16+単球、またはCD14- CD16+単球を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、単球はマクロファージに分化する。いくつかの実施形態では、単球は樹状細胞(DC)に分化する。単球は、当技術分野において公知の任意の技術によってマクロファージまたはDCに分化することができる。例えば、単球からマクロファージへの分化は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)によって誘導される。単球のDCへの分化は、IL-4と組み合わせた顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)によって誘導することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、1つ以上のサイトカイン(例えば、TNF、IL-12、IFN、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、またはIL-1のうちの1、2、3、4、5、6、または7つ)の分泌の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、食作用の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、生存の向上を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、マクロファージ(例えば、M1またはM2マクロファージ)への分化の増強を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、DC(例えば、常在性または移動性DC及び/またはリンパ組織及び非リンパ組織における)への分化の増強を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、腫瘍細胞に対して細胞毒性の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、腫瘍抗原提示の増加(例えば、食作用後の提示)及び/または抗原プロセシングの増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、腫瘍殺傷の増加(例えば、食作用、溶解、アポトーシス、または殺腫瘍サイトカイン(例えば、TNFα)の産生による)を示す。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、好ましい遺伝子の発現増加または好ましくない遺伝子の発現の減少の一方または両方を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、ROSの産生の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、代謝の再プログラミングを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、細胞生存メカニズムの誘導を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、細胞死メカニズムの誘導を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、食作用チェックポイントに対する耐性の増加、トラフィキングを助けるためのケモカイン受容体の発現の増加、他の免疫細胞を動員するためのケモカインの発現の増加、ECM分解酵素の発現の増加(例えば、腫瘍ECMを分解し、及び/または抗線維化活性を示すMMP)、または増殖の増加、のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現する単球は、例えば、本明細書に記載のCARを含まない単球と比較して、CAR発現の持続時間の改善、細胞表面上でのCARの安定性の改善、CAR発現レベルの増加、またはCARのバックグラウンド活性の低下のうちの1、2、3、または4つ、を示す。
【0102】
樹状細胞
樹状細胞(DC)は、免疫応答の開始及び自己抗原に対する免疫系の寛容の維持に関与する、骨髄由来の特殊な抗原提示細胞である。樹状細胞は、リンパ器官と非リンパ器官の両方に見られる場合があり、一般にリンパ系または骨髄系から生じると考えられている。
【0103】
いくつかの実施形態では、DCは、1つ以上の表現型マーカーを含むかまたは発現する。DCの例示的な表現型マーカーには、CD11c、CD83、CD1a、CD1c、CD141、CD207、CLEC9a、CD123、CD85、CD180、CD187、CD205、CD281、CD282、CD284、CD286、及び部分的にCD206、CD207、CD208及びCD209が含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
未成熟DCは、抗原捕捉能力が高いが、T細胞刺激能力が比較的低いことを特徴とする場合がある。炎症性メディエーターは、DCの成熟を促進する。DCが成熟段階に達すると、抗原捕捉能力の低下及び/またはT細胞を刺激する能力の増加など、未成熟DCと比較して特性が劇的に変化する。いくつかの実施形態では、DCは、未成熟DCを含むか、または未成熟DCである。他の実施形態では、DCは成熟DCを含むか、または成熟DCである。
【0105】
理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するようにDC細胞を修飾することにより、成熟DCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、抗原捕捉能力及びT細胞刺激の増加を同時に示すことができると考えられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むかまたは発現するDCは、腫瘍抗原提示を媒介し、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、腫瘍抗原提示を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、腫瘍T細胞刺激を媒介し、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、T細胞刺激を増加させる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、1つ以上のサイトカイン(例えば、TNF、IL-12、IFN、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、またはIL-1のうちの1、2、3、4、5、6、または7つ)の分泌の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、食作用の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、腫瘍抗原提示の増加(例えば、食作用後の提示)、抗原プロセシングの増加、抗原交差提示の増加、T細胞感作の増加、及び/またはT細胞の刺激を示す。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、好ましい遺伝子の発現増加または好ましくない遺伝子の発現の減少の一方または両方を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、ROSの産生の増加を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、代謝の再プログラミングを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、細胞生存メカニズムの誘導を示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、細胞死メカニズムの誘導を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、食作用チェックポイントに対する耐性の増加、トラフィキングを助けるためのケモカイン受容体の発現の増加、他の免疫細胞を動員するためのケモカインの発現の増加、ECM分解酵素の発現の増加(例えば、腫瘍ECMを分解し、及び/または抗線維化活性を示すMMP)、または増殖の増加、のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または5つを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを含むまたは発現するDCは、例えば、本明細書に記載のCARを含まないDCと比較して、CAR発現の持続時間の改善、細胞表面上でのCARの安定性の改善、CAR発現レベルの増加、またはCARのバックグラウンド活性の低下のうちの1、2、3、または4つ、を示す。
【0109】
免疫細胞の修飾方法
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞を修飾する方法であって、(a)キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を修飾するステップ、(b)核酸を精製するステップ、及び(c)核酸を免疫細胞に送達するステップを含み、免疫細胞は、マクロファージ、単球または樹状細胞を含み、修飾免疫細胞はCARを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞を修飾する方法を提供であって、(a)キメラ抗原受容体(CAR)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を修飾するステップ、(b)mRNAを精製するステップ、及び(c)mRNAを免疫細胞に送達するステップを含み、免疫細胞は、マクロファージ、単球または樹状細胞を含み、修飾免疫細胞はCARを含む、方法を提供する。
【0110】
いくつかの実施形態では、本開示は、修飾mRNAを免疫細胞に送達することを含む方法であって、mRNAはCARを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、提供される方法は、任意選択で送達するステップの前に、免疫細胞をRNaseL阻害剤で処理するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、免疫細胞を、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNFα、IL-6、STNGL、LPS、CD40アゴニスト、4-1BBリガンド、組換え4-1BB受容体、TLRアゴニスト、ベータ-グルカン、IL-4、IL-13、IL-10、TGF-β、グルココルチコイド、免疫複合体、またはそれらの組み合わせ)とともに培養するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFN-βを含む。
【0111】
核酸の修飾
本開示のいくつかの実施形態では、核酸コンストラクトは、mRNAであるか、またはmRNAを含む。いくつかの実施形態では、本開示によるmRNAは、非修飾または修飾mRNAとして合成され得る。通常、mRNAは、安定性を高めるために修飾される。mRNAの修飾には、例えば、RNAのヌクレオチドの修飾を含めてもよい。したがって、本開示による修飾mRNAには、例えば、骨格修飾、糖修飾または塩基修飾を含めてもよい。いくつかの実施形態では、mRNAを修飾するステップは、mRNAに修飾ヌクレオチド、5’または3’非翻訳領域(UTR)に対する改変、キャップ構造、及び/またはポリ(A)テールを含めることを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、プリン(アデニン(A)、グアニン(G))またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))、ならびにプリン及びピリミジンの修飾ヌクレオチドアナログまたは誘導体として、例えば、1-メチル-アデニン、2-メチル-アデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-シュードウラシル、クエオシン(queosine)、β-D-マンノシル-クエオシン、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、及びホスホルアミデート、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン及びイノシン、を含むがこれらに限定されない、天然に存在するヌクレオチド及び/またはヌクレオチドアナログ(修飾ヌクレオチド)から合成することができる。このようなアナログの調製は、例えば、米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319号、米国特許第5,262,530号、及び米国特許第5,700,642号から当業者に公知であり、これらの開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNA(例えば、CARをコードするmRNA)は、RNA骨格修飾を含み得る。典型的には、骨格修飾は、RNAに含まれるヌクレオチドの骨格のホスフェートが化学的に修飾される修飾である。例示的な骨格修飾には、典型的には、メチルホスホネート、メチルホスホルアミデート、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート(例えば、シチジン5’-O-(1-チオホスフェート))、ボラノホスフェート、正に荷電したグアニジニウム基など、からなる群からの修飾が含まれるが、これらに限定されず、これは、ホスホジエステル結合を他のアニオン性基、カチオン性基または中性基で置き換えることを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNA(例えば、CARをコードするmRNA)は、糖修飾を含み得る。典型的な糖修飾は、含まれるヌクレオチドの糖の化学修飾であり、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミン-オリゴリボヌクレオチド(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン5’-三リン酸、2’-メチルウリジン5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、及びその異性体(2’-アラシチジン5’-三リン酸、2’-アラウリジン5’-三リン酸)、またはアジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン5’-三リン酸)、からなる群から選択される糖修飾が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNA(例えば、CARをコードするmRNA)は、ヌクレオチドの塩基の修飾(塩基修飾)を含み得る。塩基修飾を含む修飾ヌクレオチドは、塩基修飾ヌクレオチドとも呼ばれる。そのような塩基修飾ヌクレオチドの例としては、2-アミノ-6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、2-アミノアデノシン5’-三リン酸、2-チオシチジン5’-三リン酸、2-チオウリジン5’-三リン酸、4-チオウリジン5’-三リン酸、5-アミノアリルシチジン5’-三リン酸、5-アミノアリルウリジン5’-三リン酸、5-ブロモシチジン5’-三リン酸、5-ブロモウリジン5’-三リン酸、5-ヨードシチジン5’-三リン酸、5-ヨードウリジン5’-三リン酸、5-メチルシチジン5’-三リン酸、5-メチルウリジン5’-三リン酸、6-アザシチジン5’-三リン酸、6-アザウリジン5’-三リン酸、6-クロロプリンリボシド5’-三リン酸、7-デアザアデノシン5’-三リン酸、7-デアザグアノシン5’-三リン酸、8-アザアデノシン5’-三リン酸、8-アジドアデノシン5’-三リン酸、ベンズイミダゾールリボシド5’-三リン酸、N1-メチルアデノシン5’-三リン酸、N1-メチルグアノシン5’-三リン酸、N6-メチルアデノシン5’-三リン酸、O6-メチルグアノシン5’-三リン酸、シュードウリジン5’-三リン酸、ピューロマイシン5’-三リン酸またはキサントシン5’-三リン酸、が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、シュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)、N1-メチル-シュードウリジン(N1mPsU)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0115】
典型的には、mRNA合成は、N末端(5’)末端への「キャップ」及びC末端(3’)末端への「テール」の付加を含む。キャップの存在は、ほとんどの真核細胞に見られるヌクレアーゼに対する耐性を提供する上で重要である。「テール」の存在は、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護する役割を果たす。
【0116】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のmRNA(例えば、CARをコードするmRNA)は、5’キャップ構造を含む。5’キャップは通常、以下のように付加される:最初に、RNA末端ホスファターゼが5’ヌクレオチドから末端リン酸基の1つを除去し、2つの末端リン酸を残し、次に、グアノシン三リン酸(GTP)がグアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加され、5’三リン酸結合が生成され、グアニンの7-窒素は、メチルトランスフェラーゼによってメチル化される。キャップ構造の例には、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5’)A)及びG(5’)ppp(5’)G)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、キャップはCap0構造を含む。キャップ0構造は、塩基1及び2に付着したリボースの2’-O-メチル残基を欠いている。いくつかの実施形態では、キャップはAGCap1構造を含む。AGCap1構造は、塩基2に2’-O-メチル残基を有する。いくつかの実施形態では、キャップはCap2構造を含む。Cap2構造は、塩基2及び3の両方に付着した2’-O-メチル残基を有する。いくつかの実施形態では、キャップ構造は、AGCap1、m6AGCap1、または抗リバースキャップアナログ(ARCA)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の修飾mRNAは、m6AGCap1及びシュードウリジン(PsU)を含む修飾ヌクレオチドを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNA(例えば、CARをコードするmRNA)は、3’ポリ(A)テール構造を含む。mRNAの3’末端のポリ(A)テールには、通常、約10~400個のアデノシンヌクレオチド(例えば、約100~400個のアデノシンヌクレオチド、約10~200個のアデノシンヌクレオチド、約10~150個のアデノシンヌクレオチド、約10~100個のアデノシンヌクレオチド、約20~70個のアデノシンヌクレオチド、または約20~60個のアデノシンヌクレオチド)が含まれる。いくつかの実施形態では、mRNAは、3’ポリ(C)テール構造を含む。mRNAの3’末端の好適なポリ(C)テールには、通常、約10~200個のシトシンヌクレオチド(例えば、約10~150個のシトシンヌクレオチド、約10~100個のシトシンヌクレオチド、約20~70個のシトシンヌクレオチド、約20~60個のシトシンヌクレオチド、または約10~40個のシトシンヌクレオチド)が含まれる。ポリ(C)テールは、ポリ(A)テールに付加されてもよいし、ポリ(A)テールの代替物であってもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示のmRNA(例えば、CARをコードするmRNA)は、5’及び/または3’非翻訳領域を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を与える1つ以上の要素、例えば、鉄応答要素を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、長さが約50~500ヌクレオチドの間であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、細胞内でのmRNAの位置の安定性に影響を与えるタンパク質の結合部位、またはmiRNAの1つ以上の結合部位のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、長さが50~500ヌクレオチド以上であり得る。
【0120】
核酸送達
本開示は、とりわけ、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を修飾するための方法であって、キメラ抗原受容体(CAR)またはその断片をコードする1つ以上の核酸配列を含む核酸コンストラクトを免疫細胞に送達することを含む、方法を提供する。方法は、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に、(a)細胞外ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞外ドメイン)、(b)膜貫通ドメイン(例えば、本明細書に記載の膜貫通ドメイン)、及び(c)細胞内ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞内ドメイン)をコードする1つ以上の核酸配列を含む核酸コンストラクトを送達して、免疫細胞が(a)~(c)を含むCARを含むようにすることを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸配列を含む核酸コンストラクトは、(d)細胞外リーダードメイン(例えば、本明細書に記載の細胞外リーダードメイン)、(e)細胞外ヒンジドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞外ヒンジドメイン)、または(f)細胞内共刺激ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞内共刺激ドメイン)のうちの1つ、2つ、または3つをさらにコードする。
【0121】
本明細書に記載の少なくとも1つのCARをコードする1つ以上の核酸配列を含む核酸コンストラクトは、物理的、化学的、または生物学的方法によって免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸送達の1つ以上の物理的、化学的、または生物学的方法を使用して、本明細書に記載の少なくとも1つのCARをコードする1つ以上の核酸配列を導入し、CARをコードしない1つ以上の核酸配列を導入することができる。本明細書に記載の核酸コンストラクトを免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入するための物理的方法は、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、Viromer媒介トランスフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、メカノトランスダクション(例えば、スクイーズ型技術)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。核酸コンストラクトは、市販の方法、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(登録商標)(Amaxa Biosystems,Cologne,Germany)、ECM 830 BTX(Harvard Instruments,Boston,Mass.)、Gene Pulser II(登録商標)(BioRad,Denver,Colo.)、Multiporator(登録商標)(Eppendort,Hamburg Germany))、Maxcyte STX(Maxcyte)、Maxcyte VLX(Maxcyte)、Maxcyte GT(Maxcyte)、CliniMacs エレクトロポレーター(Miltenyi Biotec)、またはNeon トランスフェクションシステム(Thermo Fisher)を使用して免疫細胞に導入することができる。核酸コンストラクトはまた、mRNAトランスフェクション、例えばカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、リポフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、または「遺伝子銃」などの微粒子銃送達システムを用いて免疫細胞に導入することができる(例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)を参照のこと、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0122】
本明細書に記載の核酸コンストラクトを免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入するための生物学的方法には、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)に遺伝子を挿入するために広く使用されるようになっている。ウイルスベクターはまた、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス(例えば、Adf535)、またはアデノ随伴ウイルスに由来し得る(例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照のこと、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。レンチウイルスなどのレトロウイルスベクターは、導入遺伝子の長期かつ安定な組み込み及び娘細胞におけるその増殖が可能になる長期遺伝子導入を達成するための好適なツールである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、Vpxタンパク質とともにパッケージングされる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開番号WO2017/044487に記載されているように)。いくつかの実施形態では、Vpxは、ビリオン関連タンパク質(例えば、ウイルス複製のためのアクセサリータンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、Vpxタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)によってコードされる。いくつかの実施形態では、Vpxタンパク質は、サル免疫不全ウイルス(SIV)によってコードされる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)は、Vpxタンパク質がパッケージングされたレンチウイルスベクターでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、Vpxは、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)の少なくとも1つの抗ウイルス因子を阻害する。いくつかの実施形態では、Vpxタンパク質がパッケージングされたレンチウイルスベクターは、例えば、Vpxタンパク質がパッケージングされていないレンチウイルスベクターと比較して、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)のトランスフェクション効率の増大を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、例えば、Ad2ベクターまたはAd5ベクター(例えば、Ad5f35アデノウイルスベクター、例えば、ヘルパー依存性Ad5F35アデノウイルスベクター))によるトランスフェクションの前に、少なくとも1つのVpx mRNAのエレクトロポレーションまたはトランスフェクションの一方または両方を行う。本明細書に記載の核酸コンストラクトを免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)に導入するための化学的手段には、コロイド分散システム、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質系システム(例えば、油水中エマルジョン、ミセル、混合ミセル、ナノ粒子、リポソーム、及びリポフェクタミン-核酸複合体)が含まれる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸コンストラクトを送達するためのシステムは、脂質系システムである。本明細書に記載の核酸コンストラクトは、リポソームの水性内部に封入され、脂質二重層内に散在し、連結分子を介してリポソームに付着し、リポソームに捕捉され、リポソームと複合体を形成し、脂質を含む溶液または懸濁液に分散され、脂質と混合され、ミセルと複合体を形成し、またはそうでなければ脂質と会合されてもよい。本明細書に記載の方法で使用する脂質は、天然に存在する脂質または合成脂質であり得る。脂質は商業的供給源から入手することもできる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリンは、Sigma(St.Louis,MO)から入手することができ、ジセチルホスフェートは、K&K Laboratories(Plainview,NY)から入手することができ、コレステロールは Calbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロールは、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL.)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の原液は、約-20℃で保存することができる。
【0124】
核酸精製
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、核酸(例えば、CARをコードするmRNA)を精製するステップを含む。いくつかの実施形態では、核酸(例えば、CARをコードするmRNA)を精製するステップは、当技術分野で公知の任意の標準的な精製方法の使用を含む。いくつかの実施形態では、核酸(例えば、CARをコードするmRNA)を精製するステップは、シリカ膜精製、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、Dynabeads、LiCl沈殿、フェノール-クロロホルム抽出、樹脂ベースの精製、ポリA単離、RNeasy、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、核酸(例えば、CARをコードするmRNA)を精製するステップは、シリカ膜精製を含む。いくつかの実施形態では、核酸(例えば、CARをコードするmRNA)を精製するステップは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。
【0125】
修飾中の免疫細胞の処理及び培養
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、免疫細胞を修飾するプロセス中に免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を処理する1つ以上のステップを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を、インビトロで転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターで処理するステップを含む。インビトロ転写(IVT)mRNAは、種々のエンドソーム自然免疫受容体(Toll様受容体3(TLR3)、TLR7、TLR8)及び細胞質自然免疫受容体(プロテインキナーゼRNA活性化(PKR)、レチノイン酸誘導性遺伝子Iタンパク質(RIG-I)、メラノーマ分化関連タンパク質5(MDA5)及び2’-5’-オリゴアデニル酸シンターゼ(OAS))によって認識される。これらの異なる経路を介したシグナル伝達は、1型インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン-6(IL-6)、IL-12、及び転写プログラムのカスケードの活性化に関連する炎症を引き起こす。全体として、これらは、特異的免疫応答を誘導する態勢にある炎症誘発性微小環境を作出する。さらに、真核生物の翻訳開始因子2α(eIF2α)リン酸化による翻訳の減速、リボヌクレアーゼL(RNaseL)によるRNA分解の促進、自己増幅mRNAの複製の過剰発現及び阻害などの下流の影響は、薬物動態及びIVT mRNAの薬力学と関連性がある。
【0127】
いくつかの実施形態では、インビトロで転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターは、RNase阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、インビトロで転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターは、RNaseL、RNase T2またはRNase1阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、インビトロで転写されたmRNAによって活性化される経路のモジュレーターは、RNaseL阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、RNaseL阻害剤は、スニチニブを含む。いくつかの実施形態では、RNaseL阻害剤は、ABCE1を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をRNaseL阻害剤で処理すると、RNaseL阻害剤で処理されなかった同じタイプの修飾免疫細胞におけるmRNA安定性と比較して、修飾免疫細胞におけるmRNA安定性が増加する。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をRNaseL阻害剤で処理すると、RNaseL阻害剤で処理されなかった同じタイプの修飾免疫細胞におけるCAR発現と比較して、修飾免疫細胞におけるCAR発現が増加する。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をRNaseL阻害剤で処理すると、RNaseL阻害剤で処理されなかった同じタイプの修飾免疫細胞におけるエフェクター活性と比較して、修飾免疫細胞におけるエフェクター活性が増加する。
【0129】
本開示のいくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を処理するステップは、mRNAを免疫細胞に送達するステップの前に行われる。
【0130】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養するステップを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNFα、IL-6、STNGL、LPS、CD40アゴニスト、4-1BBリガンド、組換え4-1BB、CD19アゴニスト、TLRアゴニスト(例えば、TLR-1、TLR-2、TLR-3、TLR-4、TLR-5、TLR-6、TLR-7、TLR-8またはTLR-9)、TGF-β(例えば、TGF-β1、TGF-β2、またはTGF-β3)、糖質コルチコイド、免疫複合体、インターロイキン-1アルファ(IL-1α)、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-20、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、TNF-β、CD154、リンホトキシンベータ(LT-β)、A増殖誘導リガンド(APRIL)、CD70、CD153、グルココルチコイド誘導TNF受容体リガンド(GITRL)、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、OX40L(CD252)、TALL-1(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー13B-TNFSF13B)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF関連弱アポトーシス誘導因子(TWEAK)、TNF関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、エリスロポエチン(Epo)、甲状腺ペルオキシダーゼ前駆体(Tpo)、FMS関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT-3L)、幹細胞因子(SCF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、メロゾイト表面タンパク質(MSP)、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質(NOD)リガンド(例えば、NOD1、NOD2、またはNOD1/2アゴニスト)、RIG-I様受容体(RLR)リガンド(例えば、5’ppp-dsRNA、3p-hpRNA、Poly(I:C)、またはPoly(dA:dT))、C型レクチン受容体(CLR)リガンド(例えば、カードラン、β-グルカン、HKCA、ラミナリン、プスツラン、スクレログルカン、分散性WGP、可溶性WGP、ザイモザン、ザイモザン劣化、フルフルマン(furfurman)、b-GlcCer、GlcC14C18、HKMT、TDB、TDB-HS15、またはTDM)、環式ジヌクレオチドセンサーリガンド(例えば、C-Gasアゴニストまたはインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)リガンド)、インフラマソーム誘導因子(例えば、ミョウバン、ATP、CPPD結晶、ヘモゾイン、MSU結晶、ナノSiO2、ニゲリシン、またはTDB)、アリール炭化水素(AhR)リガンド(例えば、FICZ、インジルビン、ITE、またはL-キヌレニン)、アルファプロテインキナーゼ1(ALPK1)リガンド、マルチPRRリガンド、NFKB/NFATアクチベーター(例えば、コンカナバリンA(concavalin A)、イオノマイシン、PHA-P、またはPMA)、またはそれらの組み合わせ、を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IFN-βを含む。
【0131】
本開示のいくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)を培養するステップは、mRNAを免疫細胞に送達するステップの後に行われる。
【0132】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養すると、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、修飾免疫細胞の生存率が増加する。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養すると、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、修飾免疫細胞のタンパク質(例えば、CAR)発現が増加する。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養すると、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、タンパク質(例えば、CAR)発現の寿命が延伸する。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養すると、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、修飾免疫細胞のエフェクター活性が増加する。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)をサイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養すると、サイトカインまたは免疫刺激組換えタンパク質とともに培養されなかった同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、修飾免疫細胞のM1分極が増加する。
【0133】
修飾免疫細胞
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、本開示の方法によって作製される。
【0134】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、生存率の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%の生存率の増加を示す。
【0135】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの発現の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの発現の少なくとも100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、または2000%の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの発現の少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、または20倍の増加を示す。
【0136】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CAR発現の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CAR発現の少なくとも100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、または2000%の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CAR発現の少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、または20倍の増加を示す。
【0137】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの寿命の延伸を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARをコードするmRNAの寿命の少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、3週間、または1か月の延伸を示す。
【0138】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARの寿命の延伸を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、CARの寿命の少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、3週間、または1か月の延伸を示す。
【0139】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、エフェクター活性の増加を示す。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%のエフェクター活性の増加を示す。いくつかの実施形態では、エフェクター活性の増加は、サイトカイン産生、ケモカイン産生、食作用、細胞シグナル伝達、標的細胞殺傷、及び/または抗原提示の増加を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、M1分極の増加を示す。いくつかの実施形態では、M1分極の増加は、CD86、CD80、MHC II、IL-1R、TLR2、TLR4、iNOS、SOCS3、CD83、PD-L1、CD69、MHC I、CD64、CD32、CD16、IL1R、IFITファミリーメンバー、またはISGファミリーメンバーを含むM1マーカーのレベルの増加を含む。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%のM1分極の増加を示す。
【0141】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、M2分極の減少を示す。いくつかの実施形態では、M2分極の減少は、CD206、CD163、またはCD209を含むM2マーカーのレベルの減少を含む。いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞は、CARをコードする非修飾mRNAを含む同じタイプの修飾免疫細胞と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%のM2分極の減少を示す。
【0142】
アッセイ
免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)における本明細書に記載の核酸コンストラクトの存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。例えば、そのようなアッセイとしては、サザンブロット法及びノーザンブロット法、RT-PCR及びPCR等の当業者に周知の分子生物学的アッセイ、ならびに例えば、免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット法)による特定のペプチドの存在または不在の検出等の生化学的アッセイが挙げられる。本開示の他のアッセイには、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、免疫蛍光顕微鏡法、MSDサイトカイン分析、質量分析(MS)、RNA-Seq及び機能アッセイが含まれる。
【0143】
様々なアッセイを実行して、修飾免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、または樹状細胞)の種々の特徴、例として、限定されるものではないが、免疫細胞の生存率、核酸(例えば、mRNA)の発現、核酸(例えば、mRNA)の寿命、タンパク質(例えば、CAR)の発現、タンパク質(例えば、CAR)の寿命、エフェクター活性、及びM1分極などを決定することができる。
【0144】
GenBankアクセッション番号を含む、本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の所属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において記載されているものと類似または同等の方法及び物質を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法及び物質を本明細書に記載する。
【0145】
キメラ抗原受容体(CAR)
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、免疫エフェクター細胞上で発現するように操作され、細胞を特異的に標的とし、及び/または抗原に結合する人工細胞表面受容体を指す。CARは、例えば、養子細胞移入による治療として使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、単球、マクロファージ、及び/または樹状細胞は、患者から(例えば、血液、腫瘍または腹水から)取り出され、特定の形態の抗原に特異的な受容体を発現するように修飾される。いくつかの実施形態では、CARは、抗原、例えば腫瘍関連抗原に対して特異的に発現している。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、修飾免疫細胞、例えば、修飾マクロファージ、単球、または樹状細胞は、その中でCARを発現させることによって生成される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含むCARを含み、免疫細胞は、マクロファージ、単球、または樹状細胞を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の細胞外リーダードメイン、1つ以上の細胞外ヒンジドメイン、及び1つ以上の細胞内共刺激ドメインのうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、CARは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインまたはヒンジ(例えば、CD8またはCD28ヒンジドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞内ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインまたはヒンジを含む。本明細書で使用する場合、「スペーサードメイン」または「ヒンジ」という用語は、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメインまたは細胞内ドメインのいずれかに連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、スペーサードメインまたはヒンジは、最大300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、最も好ましくは25~50個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーは、好ましくは長さが2~10の間のアミノ酸であり、CARの膜貫通ドメインと細胞内ドメインとの間の連結を形成し得る。リンカーの例には、グリシン-セリンダブレットが含まれる。
【0149】
いくつかの実施形態では、CARを含む免疫細胞は、安全スイッチ(例えば、オンスイッチ及びオフスイッチ、自殺スイッチ)、論理ゲート、例えば、ANDゲート(例えば、2つ以上のCARであって、そのそれぞれが1つ以上のシグナル伝達ドメインを欠いているため、完全な免疫細胞(マクロファージ、単球、または樹状細胞など)の活性化または機能には、両方/すべてのCARの活性化が必要であるもの)、ORゲート(例えば、2つ以上のCARであって、そのそれぞれが細胞内ドメイン、例としてCD3ζ及び共刺激ドメインを有するもの)、及び/またはNOTゲート(例えば、2つ以上のCARであって、そのうちの1つに、それ以外のCAR(複数可)の機能に拮抗する抑制ドメインが含まれる)を含むがこれらに限定されない1つ以上の制御システムを含み得る。
【0150】
本開示はまた、CARをコードする核酸配列(例えば、単離核酸配列)を含む免疫細胞であって、核酸配列は、細胞外ドメインをコードする核酸配列、膜貫通ドメインをコードする核酸配列、及び細胞内ドメインをコードする核酸配列を含み、細胞は、CARを発現する単球、マクロファージまたは樹状細胞である、免疫細胞を提供する。
【0151】
いくつかの実施形態では、CARは、免疫細胞における発現のために、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインなどのCARの別のドメインに作動可能に連結された細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインをコードする核酸は、膜貫通ドメインをコードする核酸に作動可能に連結され、膜貫通ドメインをコードする核酸は、細胞内ドメインをコードする核酸に作動可能に連結される。
【0152】
いくつかの実施形態では、CARを含む免疫細胞のエフェクター活性は、CARの抗原結合ドメインに特異的に結合する抗原を含む標的細胞に対して指向される。いくつかの実施形態では、標的細胞に対して指向される標的化エフェクター活性は、食作用、標的化細胞傷害、抗原提示、またはサイトカイン分泌であるか、またはそれらを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)において抗食作用シグナル伝達を阻害する少なくとも1つのドメイン(例えば、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、例えば、CD47及び/またはSIRPα活性の阻害を増強することにより、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)のエフェクター活性を改善する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、例えば、CD47に結合し、ドミナントネガティブ受容体として働き、SIRPα活性を阻害する(例えば、CD47シンク)。いくつかの実施形態では、SIRPαに結合する本明細書に記載のCARは、例えば、活性化受容体を含む(例えば、CD3z細胞内ドメインを含む)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、CD47とSIRPαの少なくとも1つの相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、CARは、食作用論理ゲートであるか、またはそれを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、本明細書に記載のCARを含むまたは発現する)は、SIRPα(例えば、ドミナントネガティブSIRPαまたはSIRPαの高親和性改変バリアント(例えば、CV1))、5F9 scFv、B6H12 scFv(例えば、ヒト化B6H12 scFv)、PD1(例えば、ドミナントネガティブPD1またはHAC-I)、抗PD1 scFv(例えば、E27またはデュルバルマブ)、Siglec-10、Siglec-9、Siglec-11、及び/またはSHP-1、のうちの少なくとも1つのバリアントまたは断片を含むまたは発現する。いくつかの実施形態では、バリアントまたは断片は、変異細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、バリアントまたは断片は、少なくとも1つの細胞内ドメインを含まないまたは発現しない(例えば、免疫細胞は、抗CD47 scFv、CD8ヒンジドメイン、及びCD8膜貫通を含むまたは発現する)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、本明細書に記載のCARを含むまたは発現する)は、例えば阻害チェックポイントをブロックするドミナントネガティブ受容体を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、切断ペプチド(例えば、P2A、F2A、E2A及び/またはT2Aペプチド)と、抗食作用シグナル伝達の少なくとも1つの阻害ドメインを含む少なくとも1つの第2のCARとをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2のCARは、SIRPα(例えば、SIRPαの高親和性改変バリアント(例えば、CV1))、5F9 scFv、B6H12 scFv(例えば、ヒト化B6H12 scFv)、またはCD47結合細胞外ドメインまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2のCARは、SIRPα膜貫通ドメインまたはその断片を含む。特定の実施形態では、第2のCARは、ヒンジドメイン(例えば、CD8ヒンジドメイン)をさらに含む。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの第2のCARは、(i)リーダー配列(例えば、CD8リーダー)、ii)細胞外ドメイン(例えば、SIRPα、CV1、5F9 scFv、またはB6H12 scFv(例えば、ヒト化B6H12 scFv)細胞外ドメイン)、及びii)膜貫通ドメイン(例えば、SIRPα膜貫通ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、切断ペプチド(例えば、P2Aペプチド)及び少なくとも1つのマーカータンパク質(例えば、CD20またはその断片、CD19またはその断片、NGFRまたはその断片、合成ペプチド、及び/または蛍光タンパク質)をさらに含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、本明細書に記載のCARを含むまたは発現する)は、1つ以上のホスファターゼデッド(phosphatase dead)ドメイン(例えば、ホスファターゼデッドShp1、ホスファターゼデッド72-5ptase(INPP5E)、ホスファターゼデッドShp2、及び/またはホスファターゼデッドSHIP-1ドメイン)及び/または構成的に活性なキナーゼドメイン(例えば、構成的に活性なLYNドメイン)を含むまたは発現する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、切断ペプチド(例えば、P2A、F2A、E2A及び/またはT2Aペプチド)及び1つ以上のホスファターゼデッド(phosphatase dead)ドメイン(例えば、ホスファターゼデッドShp1、ホスファターゼデッド72-5ptase(INPP5E)、ホスファターゼデッドShp2、及び/またはホスファターゼデッドSHIP-1ドメイン)及び/または構成的に活性なキナーゼドメイン(例えば、構成的に活性なLYNドメイン)をさらに含む。
【0157】
細胞外ドメイン
本開示は、細胞外ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、Fc受容体(FcR)細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、toll様受容体(TLR)細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、リーダードメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、FcR細胞外ドメイン、TLR細胞外ドメイン、リーダードメイン、抗原結合ドメイン、及びヒンジドメインのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。
【0158】
FcR細胞外ドメイン
いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメインは、全長FcR細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメインは、全長FcR細胞外ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメイン(またはその一部)は、ヒトFcR細胞外ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメインは、CD64(FcγRI)、CD32a(FcγRIIa)、CD32b(FcγRIIb)、CD32c、CD16a(FcγRIIIa)、CD16b(FcγRIIIb)、FcεRI、FcεRII、またはFcαRI(CD89)ドメインを含む。
【0159】
TLR細胞外ドメイン
いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメインは、全長TLR細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメインは、全長TLR細胞外ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメイン(またはその一部)は、ヒトTLR細胞外ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、またはTLR9ドメインを含む。
【0160】
リーダードメイン
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の細胞外リーダードメインを含む。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、細胞外リーダードメインをコードする核酸配列を含むが、細胞外リーダードメインは、CARが免疫細胞内で発現する前にCARから切断される。いくつかの実施形態では、細胞外リーダードメインは、ヒト細胞外リーダードメインであるか、またはヒト細胞外リーダードメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外リーダードメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、細胞外リーダードメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、細胞外リーダードメインは、CD8細胞外リーダードメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外リーダードメインは、刺激または共刺激ドメイン由来のリーダードメインを含む(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、ALK、AXL、DDR2、EGFR、EphA1、INSR、cMET、MUSK、PDGFR、PTK7、RET、ROR1、ROS1、RYK、TIE2、TRK、VEGFR、CD40、CD19、CD20、41BB、CD28、OX40、GITR、TREM-1、TREM-2、DAP12、MR、ICOS、MyD88ドメイン)。
【0161】
抗原結合ドメイン
いくつかの実施形態では、CARは、例えば標的細胞上の抗原に結合する抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、自己免疫疾患、及び/またはがん細胞に関連する抗原に結合する抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用する抗原を認識する。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、目的の腫瘍またはがんに特異的な抗原などの腫瘍抗原に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、1つ以上の抗原がんエピトープを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1(CD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319及び19A24とも称される)、C型レクチン様分子-1(CLL-1またはCLECL1)、CD33、上皮増殖因子受容体変異体III(EGFRvIII)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドGD3(aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer)、TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA)、Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAcα-Ser/Thr))、プロテアーゼ特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、CD38、CD44v6、がん胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、B7H3(CD276)、KIT(CD117)、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL-13Ra2またはCD213A2)、メソテリン、インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Ra)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロテアーゼセリン21(テスチシン(Testisin)またはPRSS21)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ルイス(Y)抗原、CD24、血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-β)、ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4)、CD20、葉酸受容体アルファ、受容体チロシン-プロテインキナーゼERBB2(Her2/neu)、ムチン1、細胞表面関連(MUC1)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、神経細胞接着分子(NCAM)、プロスターゼ(Prostase)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、伸長因子2突然変異型(ELF2M)、エフリンB2、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、プロテアソーム(プロソーム、マクロパイン)サブユニット、ベータ型、9(LMP2)、糖タンパク質100(gp100)、切断点クラスター領域(BCR)及びエーベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)からなるがん遺伝子融合タンパク質(bcr-abl)、チロシナーゼ、エフリンA型受容体2(EphA2)、フコシルGM1、シアリルルイス接着分子(sLe)、ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer)、トランスグルタミナーゼ5(TGS5)、高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA)、o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2)、葉酸受容体ベータ、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連物(TEM7R)、クローディン6(CLDN6)、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D)、染色体Xオープンリーディングフレーム61(CXORF61)、CD97、CD179a、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、ポリシアル酸、胎盤特異的1(PLAC1)、globoHグリコセラミド(GloboH)の六糖部分、乳腺分化抗原(NY-BR-1)、ウロプラキン2(UPK2)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1)、アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3)、パンネキシン3(PANX3)、Gタンパク質共役受容体20(GPR20)、リンパ球抗原6複合体、座位K9(LY6K)、嗅覚受容体51E2(OR51E2)、TCR γ選択的リーディングフレームタンパク質(TARP)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、がん/精巣抗原2(LAGE-1a)、黒色腫関連抗原1(MAGE-A1)、染色体12pに位置するETS転座変異体遺伝子6(ETV6-AML)、精子タンパク質17(SPA17)、X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1)、アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie 2)、黒色腫癌精巣抗原-1(MAD-CT-1)、黒色腫癌精巣抗原-2(MAD-CT-2)、Fos関連抗原1、腫瘍タンパク質p53(p53)、p53突然変異体、プロステイン、サバイビン(surviving)、テロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1またはガレクチン8)、T細胞1によって認識される黒色腫抗原(メランAまたはMART1)、ラット肉腫(Ras)突然変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、肉腫転座切断点、アポトーシスの黒色腫阻害因子(ML-IAP)、ERG(膜貫通型プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子)、N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17)、ペアードボックスタンパク質Pax-3(PAX3)、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、v-mycトリ骨髄細胞腫ウイルス癌遺伝子神経芽腫由来ホモログ(MYCN)、RasホモログファミリーメンバーC(RhoC)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、シトクロムP450 1B1(CYP1B1)、CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORISまたはBrother of the Regulator of Imprinted Sites)、T細胞3によって認識される扁平上皮細胞癌抗原(SART3)、ペアードボックスタンパク質Pax-5(PAX5)、プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4)、滑膜肉腫、X切断点2(SSX2)、終末糖化産物受容体(RAGE-1)、腎臓ユビキタス1(RU1)、腎臓ユビキタス2(RU2)、レグマイン、ヒト乳頭腫ウイルスE6(HPV E6)、ヒト乳頭腫ウイルスE7(HPV E7)、腸管カルボキシルエステラーゼ、熱ショックタンパク質70-2突然変異型(mut hsp70-2)、CD79a、CD79b、CD72、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、IgA受容体のFc断片(FCARまたはCD89)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2)、CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF)、C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A)、骨髄間質細胞抗原2(BST2)、EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2)、リンパ球抗原75(LY75)、グリピカン-3(GPC3)、Fc受容体様5(FCRL5)、または免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)、を含む。ある特定の実施形態では、腫瘍抗原は、ERBB2(Her2/neu)を含む。ある特定の実施形態では、腫瘍抗原は、PSMAを含む。ある特定の実施形態では、腫瘍抗原は、メソセリンを含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、ミスフォールドタンパク質抗原またはタンパク質凝集体のタンパク質、例として目的の疾患/障害に特異的なタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、疾患/障害は、神経変性疾患/障害、炎症性疾患/障害、心血管疾患/障害、線維性疾患/障害、またはアミロイドーシス(例えば、免疫グロブリン軽鎖またはトランスサイレチンのタンパク質凝集体によって媒介される)である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患/障害は、タウオパチー、アシンヌクレオパチー、初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病(ベータアミロイドのタンパク質凝集体によって媒介される)、第17染色体に関連するパーキンソニズム(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病、原発性進行性失語症、前頭側頭型認知症、皮質基底型認知症、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体型認知症、ダウン症候群、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハラーフォルデン・シュパッツ症候群、ポリグルタミン病、トリヌクレオチドリピート病、家族性英国型認知症、致死性家族性不眠症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(アイスランド型)(HCHW A-I)、散発性致死性不眠症(sFI)、可変プロテアーゼ感受性プリオン病(VPSPr)、家族性デンマーク型認知症、及びプリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病、CJD、バリアント・クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)など)、からなる群から選択される。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、またはそれらの任意の断片、例えばscFvであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、アプタマー、ダーピン(darpin)、センチリン(centyrin)、天然に存在する受容体もしくは合成受容体、アフィボディ、または他の改変タンパク質認識分子であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、哺乳動物抗体もしくはその断片であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、全体的または部分的に、CARが最終的に使用される同じ種に由来する。例えば、ヒトで使用する場合、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはその断片(例えば、scFv)を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、2つ以上の抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは二重特異性CARである。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、1つ以上の抗原結合ドメインを含む2つ以上の異なるCARを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性CARを含む、及び/または1つ以上の抗原結合ドメインを含む2つ以上の異なるCARを含む免疫細胞は、2つの抗原が存在することを必要とすることによって、オフターゲット及び/またはオンターゲット組織外効果を低減することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、二重特異性CARを含み、及び/または1つ以上の抗原結合ドメインを含む2つ以上の異なるCARを含み、この場合、CARは、単独では修飾細胞の活性化を媒介するには不十分であるが、一緒になると相乗的であり、修飾細胞の活性化を刺激する別個のシグナルを提供する。いくつかの実施形態では、そのような構成は、「AND」論理ゲートと称してもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、二重特異性CARを含む、及び/または1つ以上の抗原結合ドメインを含む2つ以上の異なるCARを含む免疫細胞は、細胞の活性が刺激される前に、1つの抗原が存在し、第2の正常なタンパク質抗原は存在しないことを必要とすることによって、オフターゲット及び/またはオンターゲット組織外効果を低減することができる。いくつかの実施形態では、そのような構成は、「NOT」論理ゲートと呼んでもよい。ANDゲートとは対照的に、NOTゲートCAR修飾細胞は、単一の抗原に結合することによって活性化される。しかし、第2の受容体の第2の抗原への結合は、CARを介して永続化されている活性化シグナルを無効化するように機能する。典型的には、そのような阻害受容体は、正常組織では豊富に発現するが腫瘍組織には存在しない抗原を標的とする。
【0167】
ヒンジドメイン
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の細胞外ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ヒンジドメインは、ヒト細胞外ヒンジドメインであるか、またはヒト細胞外ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ヒンジドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、細胞外ヒンジドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞外ヒンジドメインは、CD8a細胞外ヒンジドメインまたはIgG4もしくはCD28細胞外ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外ヒンジドメインは、例えば、腫瘍抗原に対する最適なサイズ(例えば、阻害分子の排除を可能にする)、最適な柔軟性、最適なタンパク質フォールディング、最適なタンパク質の安定性、最適な結合、最適なホモ二量体化、及び/またはホモ二量体化の欠如など、CARの物理化学的パラメーターを最適化する。
【0168】
膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、CARは、例えば、細胞外ドメインを細胞内ドメインに接続する膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CARの1つ以上の他のドメイン(複数可)と天然で関連している。いくつかの実施形態では、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、膜貫通ドメインを修飾して、他の表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの結合を回避することができる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、天然に存在する源または合成源のいずれかに由来し得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、天然に存在する膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒト膜貫通ドメインであるか、またはヒト膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8a、CD64、CD32a、CD32c、CD16a、TRL1、TLR2、TLR3、TRL4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、ALK、AXL、DDR2、EGFR、EphA1、INSR、cMET、MUSK、PDGFR、PTK7、RET、ROR1、ROS1、RYK、TIE2、TRK、VEGFR、CD40、CD19、CD20、41BB、CD28、OX40、GITR、TREM-1、TREM-2、DAP12、MR、ICOS、MyD88、CD3ゼータ、FcRγ、V/I/LxYxxL/V、SIRPα、CD45、Siglec-10、PD1、SHP-1、SHP-2、KIR-2DL、KIR-3DL、NKG2A、CD170、CD33、BTLA、CD32b、SIRPβ、CD22、PIR-B、LILRB1、CD36、またはSyk膜貫通ドメインを含む。
【0169】
FcR膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、全長FcR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、全長FcR膜貫通ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、ヒトFcR膜貫通ドメインもしくはその一部であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、CD64(FcγRI)、CD32a(FcγRIIa)、CD32b(FcγRIIb)、CD32c、CD16a(FcγRIIIa)、CD16b(FcγRIIIb)、FcεRI、FcεRII、またはFcαRI(CD89)ドメインを含む。
【0170】
TLR膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、全長TLR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、全長TLR膜貫通ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、ヒトTLR膜貫通ドメインもしくはその一部であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、またはTLR9ドメインを含む。
【0171】
細胞内ドメイン
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、ヒト細胞内ドメインもしくはその一部であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメイン及び/または他の細胞質ドメインは、CARが発現する細胞(例えば、免疫細胞)の活性化に関与する。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、当該CARを含む免疫細胞におけるシグナル活性化及び/または伝達に関与する。
【0172】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、シグナル活性化及び/または伝達に関与する少なくとも1つのドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、共刺激分子及びシグナル伝達ドメインのうちの少なくとも1つであるか、またはそれらのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、二重シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、3つ以上のシグナル伝達ドメインを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、表面受容体の細胞質部分を含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは共刺激分子を含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、免疫細胞においてシグナル伝達を開始するように作用する分子を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、1つ以上の共刺激分子、例として、CD3由来の少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、FcイプシロンRIガンマ鎖、その任意の誘導体またはバリアント、同じ機能的能力を有するそれらの任意の合成配列、及びそれらの任意の組み合わせ、の任意の部分を含む。
【0175】
FcR細胞内ドメイン
いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、全長FcR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、全長FcR細胞内ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、ヒトFcR細胞内ドメインまたはその一部であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、CD64(FcγRI)、CD32a(FcγRIIa)、CD32b(FcγRIIb)、CD32c、CD16a(FcγRIIIa)、CD16b(FcγRIIIb)、FcεRI、FcεRII、またはFcαRI(CD89)ドメインを含む。
【0176】
TLR細胞内ドメイン
いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、全長TLR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、全長TLR細胞内ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、ヒトTLR細胞内ドメインもしくはその一部であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、またはTLR9ドメインを含む。
【0177】
シグナル伝達ドメイン
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒト細胞内シグナル伝達ドメインもしくはその一部であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ、FcR γ、CD64、CD32a、CD32c、CD16a、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、ALK、AXL、DDR2、EGFR、EphA1、INSR、cMET、MUSK、PDGFR、PTK7、RET、ROR1、ROS1、RYK、TIE2、TRK、VEGFR、CD40、CD19、CD20、41BB、CD28、OX40、GITR、TREM-1、TREM-2、DAP12、MR、ICOS、MyD88、V/I/LxYxxL/V、SIRPα、CD45、Siglec-10、PD1、SHP-1、SHP-2、KIR-2DL、KIR-3DL、NKG2A、CD170、CD33、BTLA、CD32b、SIRPβ、CD22、PIR-B、LILRB1、Syk、41BBリガンド(41BBL、TNFSF9)、CD27、OX40L、CD32b、CD11b、ITGAM、SLAMF7、CD206、CD163、CD209、デクチン-2、または1つ以上のサイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン(例えば、IL1R、IL2R、IL3R、IL4R、IL5R、IL6R、IL7R、IL8R、IL9R、IL10R、IL11R、IL12R、IL13R、IL14R、IL15R、IL17R、IFNaR、IFNgR、TNFR、CSF1R、CSF2R、Dap10、CD36、デクチン-1、またはICOSL細胞内シグナル伝達ドメイン)、を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、二重シグナル伝達ドメイン、例として41BB、CD28、ICOS、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、CD116受容体ベータ鎖、CSF1-R、LRP1/CD91、SR-A1、SR-A2、MARCO、SR-CL1、SR-CL2、SR-C、SR-E、CR1、CR3、CR4、デクチン1、DEC-205、DC-SIGN、CD14、CD36、LOX-1、CD11bを、上記の段落に列挙したシグナル伝達ドメインのいずれかと任意の組み合わせで含む。
【0180】
共刺激ドメイン
本明細書で使用される場合、「共刺激分子」または「共刺激ドメイン」は、初期刺激を高めるかまたは弱めるために使用される免疫細胞内の分子を指す。例えば、TLRなどの病原体関連パターン認識受容体またはCD47/SIRPα軸は、免疫細胞上の分子であり、それぞれ初期刺激を高めたり弱めたりする。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、本明細書に記載の他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、バリアント、または断片、同じ機能的能力を有する、共刺激分子の任意の合成配列、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性であるドメインであり得る。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、特定の免疫細胞型(例えば、本明細書で提供される修飾免疫細胞)に対して内因性ではないドメインであり得る。
【0182】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル」は、免疫細胞上のCARの活性化などの一次シグナルと組み合わせて、免疫細胞の活性化をもたらすシグナルを指す。
【0183】
切断ペプチド
本明細書で使用される場合、切断ペプチドとは、細胞内で組換えタンパク質の切断を誘導することができるペプチドを指す。いくつかの実施形態では、切断ペプチドは2Aペプチドである。いくつかの実施形態では、切断ペプチドは、P2A、F2A、E2AまたはT2Aペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、1つ以上の切断ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、切断ペプチドをコードする核酸配列を含む核酸はまた、1つ以上の細胞内ドメインをコードする1つ以上の核酸配列、及び1つ以上のペプチド剤を含む1つ以上の核酸配列を含み、核酸の翻訳は、切断ペプチドによって1つ以上のペプチド剤から分離された1つ以上の細胞内ドメインを含むタンパク質をもたらす。いくつかの実施形態では、第1のプロモーターは、CARをコードする1つ以上の核酸に作動可能に連結され、第2のプロモーターは、ペプチド剤をコードする1つ以上の核酸に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、CAR及び任意選択で1つ以上のペプチド剤を含む核酸配列は、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列をさらに含む。IRES配列は、翻訳の開始を促進するmRNAへのキャップ非依存性リボソーム結合を開始する任意のウイルス、染色体または人工的に設計された配列であり得る。
【0184】
ペプチド剤
本明細書で使用される場合、ペプチド剤は、免疫細胞においてCARと共発現するペプチドを指す。いくつかの実施形態では、ペプチド剤を、CARの化学量論的バランス及び最適なシグナル伝達を確保するために、CARと共発現させる。いくつかの実施形態では、ペプチド剤は、同一のペプチド剤とホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態では、ペプチド剤は、異なるペプチド剤とヘテロ二量体を形成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、1つ以上のペプチド剤をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド剤は、FcRガンマ鎖であるか、またはFcRガンマ鎖を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド剤は、任意のペプチド、タンパク質、受容体、分泌抗体またはその断片(例えば、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、またはナノボディ)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド剤は、1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-6、IL-8、TNF-α、IFNα、IFNβ、IFN-γ、GMCSF、またはMCSFのうちの1つ以上)、CD40-L、ドミナントネガティブSIRPα、ドミナントネガティブPD1、ドミナントネガティブCD45、ドミナントネガティブSIGLEC10、またはドミナントネガティブLILRBを含む。
【0185】
Fc受容体(FcR)
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の抗原結合ドメイン及びFcR細胞外ドメインを含み、及び/またはCARの膜貫通ドメインはFcR膜貫通ドメインを含み、及び/またはCARの細胞内ドメインはFcR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、N末端からC末端まで、1つ以上の細胞外結合ドメイン、FcR細胞外ドメイン、FcR膜貫通ドメイン、及びFcR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメイン、FcR膜貫通ドメイン、及びFcR細胞内ドメインのうちの1つ以上は、ヒトFcRドメインであるか、またはヒトFcRドメインを含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメイン、FcR膜貫通ドメイン、及びFcR細胞内ドメインが一緒になって、全長FcRを構成する。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメイン、FcR膜貫通ドメイン、及びFcR細胞内ドメインが一緒になって、全長FcRの一部を構成する。いくつかの実施形態では、FcR細胞外ドメインは、全長FcR細胞外ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、FcR膜貫通ドメインは、全長FcR膜貫通ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、FcR細胞内ドメインは、全長FcR細胞内ドメインの一部を含む。
【0186】
Toll様抗原受容体(TLR)
いくつかの実施形態では、CARは、1つ以上の抗原結合ドメイン及びToll様受容体(TLR)細胞外ドメインを含み、及び/またはCARの膜貫通ドメインはTLR膜貫通ドメインを含み、及び/またはCARの細胞内ドメインはTLR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、N末端からC末端まで、1つ以上の細胞外結合ドメイン、TLR細胞外ドメイン、TLR膜貫通ドメイン、及びTLR細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメイン、TLR膜貫通ドメイン、及びTLR細胞内ドメインのうちの1つ以上は、ヒトTLRドメインであるか、またはヒトTLRドメインを含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメイン、TLR膜貫通ドメイン、及びTLR細胞内ドメインが一緒になって、全長TLRを構成する。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメイン、TLR膜貫通ドメイン、及びTLR細胞内ドメインが一緒になって、全長TLRの一部を構成する。いくつかの実施形態では、TLR細胞外ドメインは、全長TLR細胞外ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、TLR膜貫通ドメインは、全長TLR膜貫通ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、TLR細胞内ドメインは、全長TLR細胞内ドメインの一部を含む。
【0187】
核酸コンストラクト
本開示は、とりわけ、本明細書に記載の少なくとも1つのCARまたはその断片をコードする核酸分子を提供する。免疫細胞は、本明細書に記載の少なくとも1つのCARをコードする核酸分子(例えば、外因性核酸分子)を含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのCARをコードする核酸分子は、(a)細胞外ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞外ドメイン)、(b)膜貫通ドメイン(例えば、本明細書に記載の膜貫通ドメイン)、及び(c)細胞内ドメイン(例えば、本明細書に記載の細胞内ドメイン)を含む。
【0188】
特に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、型によってはイントロン(複数可)を含み得る程度までイントロンを含み得る。「コードする」とは、定義されたヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNA及びmRNA)配列または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどの、ポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列の固有の特性ならびにそれに起因する生物学的特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり通常は配列表に示されるヌクレオチド配列であるコード鎖も、非コード鎖もともに、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられ、タンパク質、またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードするということができる。
【0189】
「作動可能に連結した」または「転写制御」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置される場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結される。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されるDNA配列は、互いに隣接することができ、2つのタンパク質コード領域を繋げることが必要な場合、同じリーディングフレームにある。
【0190】
本明細書に記載の少なくとも1つのCARまたはその断片をコードする核酸分子は、DNA分子、RNA分子、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、核酸分子は、本明細書に記載の少なくとも1つのCARまたはその断片をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)転写物を含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、核酸分子は、本明細書に記載の少なくとも1つのCARまたはその断片をコードするDNAコンストラクトを含むか、またはそれである。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARのすべてまたは断片は、例えば、細胞(例えば、哺乳動物細胞)における発現のために、コドン最適化核酸分子によってコードされる。例えば米国特許第5,786,464号及び第6,114,148号に開示されているように、様々なコドン最適化法が当技術分野で知られており、そのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0192】
本明細書に記載の核酸の発現は、CARポリペプチドまたはその断片をコードする核酸を発現ベクターのプロモーターに作動可能に連結することによって達成することができる。例示的なプロモーター(例えば、構成的プロモーター)には、伸長因子-1αプロモーター(EF-1α)プロモーター、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ユビキチンCプロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端リピート(LTR)プロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)プロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、またはクレアチンキナーゼプロモーター、が含まれるが、これらに限定されない。誘導性プロモーターの例には、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。ベクターはまた、転写開始の頻度を制御するために、追加のプロモーター要素、例えばエンハンサーを含むことができる。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのCARまたはその断片をコードする核酸分子を含むベクターは、ウイルスベクターを含むか、またはウイルスベクターである。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、記載されている(例えば、Sambrook et al., 2012, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NYにおいて)。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクター)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターを含む(例えば、米国特許第9,149,519号または国際公開第WO2017/044487に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0194】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスは、二本鎖DNAを含むウイルスの大きな科である。アデノウイルスは、宿主の細胞機構を使用してウイルスのRNA、DNA、及びタンパク質を合成しながら、宿主細胞の核内で複製を行う。アデノウイルスは、複製細胞及び非複製細胞の両方に影響を与えて、大型の導入遺伝子を収容すること、及び宿主細胞ゲノムに組み込まれることなくタンパク質をコードすることが当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターは、Ad2ベクターまたはAd5ベクター(例えば、Ad5f35アデノウイルスベクター、例えば、ヘルパー依存性Ad5F35アデノウイルスベクター)を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。AAV系は、一般に当技術分野でよく知られている(例えば、Kelleher and Vos,Biotechniques,17(6):1110-17(1994)、Cotten et al.,P.N.A.S. U.S.A.,89(13):6094-98(1992)、Curiel,Nat Immun,13(2-3):141-64(1994)、Muzyczka, Curr Top Microbiol Immunol,158:97-129(1992)、及びAsokan A, et al.,Mol.Ther.,20(4):699-708(2012)を参照のこと)。組換えAAV(rAAV)ベクターを生成し、使用する方法は、例えば、米国特許第5,139,941号及び第4,797,368号に記載されている。
【0196】
AAV1、AAV2、AAV3(例えば、AAV3B)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、及びAAV11、ならびにそのバリアントを含むいくつかのAAV血清型が特徴付けられている。一般に、任意のAAV血清型を使用して、本明細書に記載の少なくとも1つのCARを送達することができる。いくつかの実施形態では、AAV血清型は、特定の組織に対する向性を有する。
【0197】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用して高レベルの正確なゲノム編集を促進し、相同組換え(HR)中にドナー鋳型DNAとして機能することが最近示されている。
【0198】
いくつかの実施形態では、ベクターはガンマレトロウイルスベクターを含む(例えば、Tobias Maetzig et al., “Gammaretroviral Vectors: Biology, Technology and Application” Viruses. 2011 Jun;3(6): 677-713、に記載のもの、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例示的なガンマレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MLV)、脾限局巣形成ウイルス(SFFV)、及び骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、ならびにそれらに由来するベクターが含まれる。
【0199】
いくつかの実施形態では、ベクターは、CAR、例えば本明細書に記載の少なくとも1つのCAR、及び第2のCAR、例えば本明細書に記載の異なるCARをコードする2つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CAR及び第2のCARをコードする2つ以上の核酸配列は、単一の核酸分子によって、例えば、同じフレーム内で単一のポリペプチド鎖としてコードされる。いくつかの実施形態では、2つ以上のCARは、1つ以上の切断ペプチド部位(例えば、自動切断部位または細胞内プロテアーゼの基質)によって分離されている。特定の実施形態では、切断ペプチドは、ブタテスコウイルス-1(P2A)ペプチド、ゾセアアジグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)ペプチド、ウマ鼻炎A型ウイルス(E2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(F2A)ペプチド、またはそのバリアントを含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、ベクターは、CAR、例えば本明細書に記載の少なくとも1つのCARをコードする少なくとも1つの核酸配列、及び、CAR、例えば本明細書に記載のサイトカイン(例えば、TNF、IL-12、IFN、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、及び/またはIL-1)または本明細書に記載の刺激リガンド(例えば、CD7、B7-1(CD80))、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、ICOS-L、ICAM、CD30L、CD40、CD40L、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、及び/またはB7-H3リガンド)と共発現する少なくとも1つの遺伝子をコードする少なくとも1つの核酸を含む。
【0201】
医薬組成物
本開示は、とりわけ、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を、1つ以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の修飾mRNAであって、修飾ヌクレオチド、5’または3’非翻訳領域(UTR)に対する改変、キャップ構造、ポリAテール、またはそれらの組み合わせを含む、1つ以上の修飾mRNA、及び1つ以上のRNaseL阻害剤を含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、AGCap1またはm6AGCap1キャップ構造を含む1つ以上の修飾mRNAを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、シュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)、またはN1-メチル-シュードウリジン(N1mPsU)を含む修飾ヌクレオチドを含む1つ以上の修飾mRNAを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、スニチニブを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ABCE1を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、m6-AGCap1及びPsU修飾を含むmRNAをトランスフェクトしたマクロファージを含み、mRNAはCARをコードし、マクロファージはIFN-βとともに培養され、IFN-βとともにマクロファージを培養すると、同一のmRNAでトランスフェクトされたがIFN-βとともに培養されていないマクロファージと比較して、CAR発現、CAR持続性、CARマクロファージ機能、M1表現型、M2誘導因子に対する耐性、またはそれらの組み合わせが向上する。
【0203】
「治療有効量」、「免疫学的有効量」、「抗免疫応答有効量」、または「免疫応答阻害有効量」が示されている場合、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、免疫応答、及び状態の個体差を考慮して、医師が決定することができる。
【0204】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物は、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース、デキストラン、もしくはマンニトールなどの炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、またはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化物質、EDTAやグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、血清及び凍結防止剤などの防腐剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は汚染物質を実質的に含まない、例えば、検出可能なレベルの汚染物質(例えばエンドトキシン)は存在しない。
【0205】
本明細書に記載の医薬組成物は、治療または予防すべき疾患、障害、または状態に適した様式で投与することができる。投与の量及び頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患、障害、または状態のタイプ及び重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は臨床試験によって決定され得る。
【0206】
本明細書に記載の医薬組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体及び固体の剤形、例として、液体溶液(例えば、注射用及び注入用溶液)、分散液または懸濁液、リポソーム、及び座薬などが含まれる。好ましい組成物は、注射用または注入用溶液であり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、経動脈、または腹腔内投与用に製剤化することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内)投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内注入または注射用に製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、筋肉内または皮下注射用に製剤化される。本明細書に記載の医薬組成物は、免疫療法で一般に公知の注入技術を使用して投与するために製剤化することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988、を参照のこと、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0208】
本発明で使用される場合、「非経口投与」及び「非経口的に投与された」という用語は、通常は注射または注入による、経腸及び局所投与以外の投与様式を指し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、腫瘍内、及び胸骨内注射及び注入を含むがこれらに限定されない。
【0209】
本明細書に記載の免疫細胞を含む医薬組成物は、約10~約10細胞/kg体重(例えば、約10~約10細胞/kg体重)の投与量で投与することができ、これらの範囲内のすべての整数値を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)の用量は、少なくとも約1×10、約1.1×10、約2×10、約3.6×10、約5×10、1×10、約1.8×10、約2×10、約5×10、約1×10、約2×10、約5×10、約1×10、約2×10、または約5×10細胞を含む。本明細書に記載の医薬組成物は、ある特定の投与量で複数回投与することもできる。特定の患者に最適な投与量及び治療レジーム(regime)は、患者を疾患、障害、または状態の徴候について監視し、適宜に治療を調整することによって、当業者によって容易に決定され得る。
【0210】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物を対象に投与し、続いて血液を再採取し(またはアフェレーシスを実施し)、収集した免疫細胞を活性化し、活性化された免疫細胞を対象に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、複数回、例えば数週間ごとに実行することができる。免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、約10ccから約400ccまでの採血から活性化することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、約20cc、約30cc、約40cc、約50cc、約60cc、約70cc、約80cc、約90cc、または約100ccの採血から活性化される。理論に拘束されるものではないが、本明細書に記載の複数回の採血及び再注入を含む方法を、ある特定の免疫細胞集団に対して選択することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物は、第2の治療と組み合わせて(例えば、前、同時、または後に)投与される。例えば、第2の治療法には、抗ウイルス療法(例えば、シドフォビル、インターロイキン-2、シタラビン(ARA-C)、またはナタリズマブ)、キメラ抗原受容体-T細胞(CAR-T)療法、T細胞受容体(TCR)-T細胞療法、化学療法、放射線、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、FK506抗体、またはグルココルチコイド)、アンタゴニスト(例えば、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、CD47アンタゴニスト、SIRPαアンタゴニスト、CD40アゴニスト、CSF1/CSF1Rアンタゴニスト、またはSTINGアゴニストのうちの1つ以上)、または免疫除去剤(例えば、抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)、抗CD3抗体、サイトキシン、フルダリビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、または照射)、が含まれるが、これらに限定されない。
【0211】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物は、化学療法剤(例えば、フルダラビン、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはリツキサン)を使用する骨髄移植またはリンパ球除去療法と組み合わせて(例えば、その前、それと同時、またはその後に)投与される。ある特定の実施形態では、対象は、高用量化学療法による標準治療とその後の末梢血幹細胞移植を受ける。ある特定の実施形態では、移植後、対象は、本明細書に記載の免疫細胞を含む医薬組成物の注入を受ける。本明細書に記載の医薬組成物は、手術前または手術後に投与することができる。
【0212】
対象に投与される任意の前述の療法の投与量は、治療される疾患、障害、または状態により、また特定の対象に基づいて、変化する。ヒトへの投与のための投与量のスケーリングは、当技術分野で認められている慣行に従って行うことができる。例えば、アレムツズマブの用量は、一般に、成人に対して約1mg~約100mgであり、通常、約1日~約30日の間の期間、毎日投与され、例えば、1日あたり約1mg~約10mgの日用量である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,120,766号に記載されているように)。
【0213】
治療方法
本開示は、とりわけ、対象における疾患または障害(例えば、本明細書に記載の疾患または障害)を治療する方法であって、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物を送達することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物の治療有効量を、疾患または障害を有する対象に投与する。本明細書に記載の医薬組成物は、対象の疾患もしくは障害を治療するため、または対象の免疫応答を刺激するための医薬の製造に使用するためのものであり得る。
【0214】
本明細書に記載の方法で治療される対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒト(例えば、本明細書に記載の疾患もしくは障害を有する、または有するリスクのある患者)であり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)は、対象に関して自己由来、同種異系、または異種であり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書に記載の投与レジメンに従って、単独で、または1つ以上の治療剤、手順、または治療方針と組み合わせて対象に投与することができる。
【0215】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物は、腫瘍またはがんに関連する疾患、神経変性疾患または障害、炎症性疾患または障害、心血管疾患または障害、線維性疾患または障害、アミロイドーシスに関連する疾患、及びそれらの組み合わせ、を治療または予防するために使用することができる。
【0216】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物を用いて、対象のがんまたは腫瘍を治療する(例えば、低減させる、阻害する、またはその進行を遅延させることのうちの1つ以上)方法が提供される。対象は、がんの成人型または小児型を有する可能性がある。がんは、初期、中期、もしくは後期段階にあるか、または転移性がんであり得る。がんとしては、固形腫瘍、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫などの骨髄腫)、または転移病変を挙げることができるが、これらに限定されない。固形腫瘍の例としては、種々の器官系の悪性腫瘍、例えば、肉腫及び癌腫、例えば、腺癌、例として、肺、乳房、卵巣、リンパ系、胃腸(例えば結腸)、肛門、生殖器及び尿生殖路(例えば、腎臓、尿路上皮、膀胱細胞、前立腺)、咽頭、CNS(例えば、脳、神経またはグリア細胞)、頭頸部、皮膚(例えば、黒色腫、例えば皮膚黒色腫)、膵臓、及び骨(例えば、脊索腫)を侵すものなど、が挙げられる。
【0217】
いくつかの実施形態では、がんは、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)(例えば、扁平上皮及び/または非扁平上皮組織に関する非小細胞肺癌(NSCLC)、またはNSCLC腺癌)、または小細胞肺癌(SCLC))、皮膚癌(例えば、メルケル細胞癌または黒色腫(例えば、進行性黒色腫))、卵巣癌、中皮腫、膀胱癌、軟部組織肉腫(例えば、血管周囲細胞腫(HPC))、骨癌(骨肉腫)、腎臓癌(例えば、腎癌(例えば、腎細胞癌))、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、胆管癌、肉腫、骨髄異形成症候群(MDS)、前立腺癌、乳癌(例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、またはHer2/neuの1つ、2つまたはすべてを発現しない乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳癌)、大腸癌(例えば、再発性大腸癌または転移性大腸癌、例えば、マイクロサテライト不安定性大腸癌、マイクロサテライト安定性大腸癌、ミスマッチ修復熟練(mismatch repair proficient)大腸癌、またはミスマッチ修復欠損大腸癌)、鼻咽頭癌、十二指腸癌、子宮内膜癌、膵臓癌、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC))、肛門癌、胃食道癌、甲状腺癌(例えば、甲状腺未分化癌)、子宮頸癌(例えば、子宮頸部扁平上皮細胞癌)、神経内分泌腫瘍(NET)(例えば、非定型肺カルチノイド腫瘍))、リンパ増殖性疾患(例えば、移植後リンパ増殖性疾患)、リンパ腫(例えば、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、または白血病(例えば、骨髄性白血病またはリンパ性白血病)、から選択される。
【0218】
いくつかの実施形態では、がんは、脳腫瘍、例えば膠芽腫、神経膠肉腫、または再発性脳腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、膵臓癌、例えば、進行膵臓癌である。いくつかの実施形態では、がんは、皮膚癌、例えば、黒色腫(例えば、ステージII~IV黒色腫、HLA-A2陽性黒色腫、切除不能黒色腫、または転移性黒色腫)、またはメルケル細胞癌である。いくつかの実施形態では、がんは、腎癌、例えば腎細胞癌(RCC)(例えば、転移性腎細胞癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、例えば転移性乳癌またはステージIV乳癌、例えばトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である。いくつかの実施形態では、がんは、ウイルス関連癌である。いくつかの実施形態では、がんは、肛門管癌(例えば、肛門管の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、子宮頸癌(例えば、子宮頸部の扁平上皮癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、胃癌(例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)陽性胃癌、または胃癌もしくは胃食道接合部癌)である。いくつかの実施形態では、がんは、頭頸部癌(例えば、HPV陽性及び陰性頭頸部扁平上皮癌(SCCHN))である。いくつかの実施形態では、がんは、鼻咽頭癌(NPC)である。いくつかの実施形態では、がんは、大腸癌、例えば、再発性大腸癌、転移性大腸癌、例えば、マイクロサテライト不安定性大腸癌、マイクロサテライト安定性大腸癌、ミスマッチ修復熟練大腸癌、またはミスマッチ修復欠損大腸癌、である。
【0219】
いくつかの実施形態では、がんは、血液癌である。いくつかの実施形態では、がんは、白血病、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性白血病、または急性白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫、リンパ球性リンパ腫、またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(例えば、再発性もしくは難治性HLまたはDLBCL)である。いくつかの実施形態では、がんは、骨髄腫、例えば多発性骨髄腫である。
【0220】
本明細書に記載の免疫細胞(例えば、マクロファージ、単球、または樹状細胞)を含む医薬組成物を使用して、対象における免疫応答を増強または調節することができる。一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、対象(例えば、本明細書に記載の疾患もしくは障害を有する、またはそのリスクがある対象)における免疫応答を増強、刺激、または増加させる。ある特定の実施形態では、対象は、免疫不全であるか、またはそのリスクがある。例えば、対象は、化学療法及び/または放射線療法を受けているかまたは受けたことがある。
【0221】
いくつかの実施形態では、対象は、炎症性障害(例えば、慢性または急性炎症性障害)を発症しているか、または発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、自己免疫疾患もしくは障害を発症しているか、または発症するリスクがある。本明細書に記載の方法で治療することができる例示的な自己免疫疾患としては、アルツハイマー病、喘息(例えば、気管支喘息)、アレルギー(例えば、アトピー性アレルギー)、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アテローム性動脈硬化症、ベーチェット病、セリアック病、心筋症、クローン病、肝硬変、糖尿病、糖尿病性網膜症、湿疹、線維筋痛症、線維筋炎、糸球体腎炎、移植片対宿主病(GVHD)、ギラン・バレー症候群、溶血性貧血、多発性硬化症、重症筋無力症、変形性関節症、多発性軟骨炎、乾癬、関節リウマチ、敗血症、脳卒中、血管炎、人工呼吸器誘発性肺損傷、移植拒絶、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、またはウェゲナー肉芽腫症、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
本明細書に記載の医薬組成物の投与は、任意の都合のよい方法(例えば、注射、摂取、輸液、吸入、埋込み、または移植)で行うことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、注射または注入によって投与される。本明細書に記載の医薬組成物は、患者に、経動脈、皮下、静脈内、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、または腹腔内投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、非経口的に(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内に)投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、筋肉内または皮下注射によって投与される。本明細書に記載の医薬組成物は、対象の炎症部位、局所疾患部位、リンパ節、臓器、腫瘍、または感染部位に直接注射することができる。
【0223】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明される。本実施例は、説明のみを目的として提供されている。それらの実施例は、本開示の範囲または内容を何らかの形で限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0224】
以下の実施例は、本明細書に記載の方法及び組成物をどのように作製及び使用するかを当業者に説明するために提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0225】
方法
マクロファージへの単球の分化
本開示の例示的な方法では、正常なドナーのアフェレーシス由来のロイコパックを、Elutra Cell Separation System(Terumo BCT)を使用する水簸、またはCliniMACS Prodigy(Miltenyi Biotec)もしくはCliniMACS Plus(Miltenyi Biotec)を使用する細胞分離に供して、赤血球、血小板、リンパ球、及び顆粒球を減少させた。製造業者の指示に従って、水簸を使用して単球を濃縮するか、またはMACS CD14+選択(Miltenyi Biotec)を使用して正の選択を行った。フローサイトメトリーを使用して、選択前及び選択後(正及び負の画分)の純度及び生存率を試験した。選択されたCD14+単球は、最長7日間でマクロファージに分化した。分化したマクロファージを5~7日目に採取し、凍結培地で凍結保存するか、未処理で実験に使用した。場合によっては、細胞を、単球状態で選択後に利用した。
【0226】
エレクトロポレーション
本開示の例示的な方法では、未処理のまたは解凍したヒトマクロファージを解凍し、エレクトロポレーションの1日前に37℃で一晩培養した。マクロファージを収集し、PBSで洗浄した。生細胞は、NC200で計数した。Neon Transfection Systemを使用してトランスフェクトされたマクロファージの場合、1e+6個のマクロファージあたり50nM~300nMのmRNAを、氷上でエレクトロポレーション緩衝液中で混合した。マクロファージには、Neon Transfection SystemまたはMaxcyte Electroporation systemでエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、細胞を氷上で10分間保持した。細胞を収集し、計数し、さらに使用するためにマクロファージ培養培地で培養した。その後、細胞をプレートに移し、回収のために37℃で15分間静置した。さらなる使用のために、マクロファージ培養培地を含む6ウェルプレートに細胞をプレーティングした。
【0227】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)
Live/Dead Fixable Aqua Dead Cell染色キット(Thermo)または類似の試薬を使用して、生存率を評価した。さらに、NC-200(Chemometec)を使用して、細胞生存率を評価した。
【0228】
初代ヒトマクロファージは、2段階染色プロトコル:ヒトHER2/ERBB2タンパク質-Hisタグ(Sino Biological Inc、10004-H08H-100)一次染色、続いてHuman TruStain FcX(Biolegend、422302)及び抗-HisタグAPC(R&D Systems、IC050A)二次染色、を使用して、CAR-HER2発現について試験した。TruStain FcX(Biolegend、422302)を、単球、マクロファージ、またはFc受容体を発現する単球細胞株のFACS染色に使用した。マクロファージの純度は、以下のパネル:抗CD11b PE(Biolegend、301306)、抗CD14 BV711(Biolegend、301838)、抗CD3 FITC(eBioscience、11-0038-42)、抗CD19 PE-CY7(eBioscience、25-0198-42)、抗CD66b PerCP-CY5.5(Biolegend、305108)、抗CD56 BV605(Biolegend、318334)、及びLive/Dead Fixable Aqua(L/D aqua)Dead Cell染色キット(Thermo Fisher、L34957)、を使用して試験した。分化のための播種前に、CD14 MACS選択後の単球純度を試験するために、同じパネルを使用した。初代ヒトマクロファージのM1/M2マーカーは、以下のパネル:抗CD11B PE(Biolegend、301306)、抗CD80 BV605(Biolegend、305225)、抗CD86 BV711(Biolegend、305440)、抗CD206 BV421(Biolegend、321126)、抗CD163 APC-CY7(Biolegend、333622)、抗HLA-DR BV785(Biolegend、307642)、抗HLA ABC PE/CY7(Biolegend、311430)、及びLive/Dead Fixable Aqua Dead Cell染色キット、で検出された。
【0229】
機能アッセイ
標的がん細胞とCARマクロファージの共培養
NucLight Green GFPを安定に発現するHER2+乳癌細胞(CRL2351)またはHER2+卵巣癌細胞(Sartorious #4475)などの標的細胞を使用した。以下に記載するように、CARによって標的とされる同族抗原を発現する追加の細胞株を評価した。CARマクロファージを、示された期間、示された比率で標的細胞と共培養した。インビトロでの抗腫瘍効果を定量化するために、約1時間ごとに培養ウェルの緑色蛍光強度を監視するIncucyteライブイメージング顕微鏡(Sartorius)を使用して、標的がん細胞の相対数を測定した。CARマクロファージの抗腫瘍活性を、対照マクロファージまたは標的細胞単独と比較した。GraphPad Prismを使用して、データをグラフ化し、統計分析を実行した。
【0230】
インターフェロン(IFN)によるCARマクロファージの処理
CAR mRNAのトランスフェクション後、マクロファージを、10~300ng/mLの組換えヒトIFN-α、IFN-β、またはIFN-γ(peprotech)を含むマクロファージ培養培地で、示されているように4~24時間培養した。示された時間の後、IFN含有培地を洗い流した。さらなる分析のために、IFN感作CARマクロファージを使用した。
【0231】
炎症誘発性因子によるCARマクロファージの処理
CAR mRNAのトランスフェクション後、2e+6個のマクロファージを、様々な濃度の炎症誘発性メディエーターを含むマクロファージ培養培地で培養した。典型的な炎症誘発性メディエーターには以下が含まれる:4~48時間の、TLR1/2アゴニスト(例えば、Pam3CSK4)、TLR3アゴニスト(例えば、Poly(I:C))、TLR4アゴニスト(例えば、LPS-EK標準(Escherichia coli K12由来のリポ多糖))、TLR5アゴニスト(例えば、FLA-ST標準)(S.typhimurium由来のフラジェリン))、TLR6/2アゴニスト(例えば、FSL-1)、TLR7アゴニスト(例えば、イミキモド)、TLR8アゴニスト(例えば、ssRNA40/LyoVec)、TLR9アゴニスト(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)、IFN-γ 20ng/mL、TNF-α 20ng/mL、β-グルカン、組換えヒトCD40リガンド、組換えヒト41BBリガンド、組換えヒト41BB受容体、TNFα、IL6、IL12、STINGアゴニスト、cGASアゴニスト、及びその他の炎症誘発性メディエーター(サイトカイン、アゴニスト、抗体、小分子、ペプチド)。示された時間後に培地を洗い流し、感作CARマクロファージをさらなる分析に使用した。
【0232】
マクロファージ表現型の評価(M1/M2)
初代ヒトマクロファージのM1/M2マーカーは、以下のパネル:抗CD11B PE(Biolegend、301306)、抗CD80 BV605(Biolegend、305225)、抗CD86 BV711(Biolegend、305440)、抗CD206 BV421(Biolegend、321126)、抗CD163 APC-CY7(Biolegend、333622)、抗HLA-DR BV785(Biolegend、307642)、抗HLA ABC PE/CY7(Biolegend、311430)、Live/Dead Fixable Aqua Dead Cell染色キット、で検出された。サイトカイン産生(IL12、IFN-γ、TNF-α、IL6、IL8、IL1b、MCP-1、IL10、IL4、IL13、及びその他のヒトサイトカイン)を、製造元の推奨に従ってMSD機器(Meso Scale Discovery)を使用して、下記のように処理されたマクロファージ(対照またはCAR)から収集された上清で評価した。場合によっては、マクロファージを、示されたエフェクター対標的比で抗原担持標的細胞と共培養した。
【0233】
mCherry発現の検出
ヒト単球またはマクロファージにおける蛍光レポーター遺伝子mCherryのトランスフェクション効率、発現の持続性、及び発現の強度を、示された期間、Incucyte(Sartorius)でリアルタイムライブ顕微鏡を使用して評価した。
【0234】
スニチニブによるマクロファージの処理
マクロファージを、mRNAエレクトロポレーションまたはトランスフェクションの前に、0~10μMのスニチニブ(RNAse-L阻害剤)で2時間処理した。コード化導入遺伝子の発現レベル及び発現の持続性を、上記の方法を用いて評価した。
【0235】
リアルタイムPCR
コード化導入遺伝子(CARなど)のリアルタイムPCRは、標準的な方法を使用して実行した。手短に言えば、Ambion RiboPure RNA精製キット(AM1924、Thermo Fisher)を使用してRNAを単離し、RT-qPCR用のiScript RT Supermix(1708841、Bio-Rad)を使用して逆転写させた。定量的PCRでは、鋳型cDNA、プライマー、Taqman Gene Expressionプライマー/プローブ、及びTaqman Gene Expression Master Mix(4369016、Applied Biosystems)を、製造元の指示に従って使用した。
【0236】
CAR発現の持続時間の決定
フローサイトメトリー
本開示の例示的な方法では、50,000個のCARマクロファージを96ウェルプレートのウェルにプレーティングした。抗HER2 CAR発現を測定するために、Hisタグ付き組換えHER2タンパク質を、BSAを補充したPBSなどの緩衝液とともに細胞に加え、インキュベートした。次いで、細胞を300×gで5分間スピンダウンし、次いで上清を除去した。次に、PBS中で5分間、ヒトTruStain FcX(BioLegend、カタログ422302)などのFcブロッキング溶液を使用して、Fc受容体をブロックした。Fcブロッキングに続いて、細胞生存率及び他の表面マーカー用の染色を行うことができる。例えば、LIVE/DEAD(商標)Fixable Aqua Dead Cell染色キット(Invitrogen、カタログL34957)を使用して、細胞の生存率を決定することができる。さらに、HisタグAPCコンジュゲート抗体(R&D Systems、カタログIC050A)などの抗His抗体を加えた。CARの発現を、フローサイトメトリーによって、すなわち、最初に単一細胞集団のゲーティング、続いて生細胞の選択、最後に細胞のAPC蛍光の測定によって決定した。CARを発現する細胞は、抗His抗体にさらされていない対照細胞よりもAPCチャネルで明るくなる。CAR陽性細胞の明るさは発現の程度を決定し、経時的に繰り返し測定することでCARの発現を経時的に追跡することができた。
【0237】
免疫蛍光(IF)顕微鏡法
本開示の例示的な方法では、細胞を、ガラススライド上で適切に培養した。次に培地を除去し、細胞をPBSで3回洗浄した。次に、4%パラホルムアルデヒドまたはメタノールを使用して、細胞を固定した。固定液中でのインキュベーション時間は、固定液の独自性に依存していた。適切な時間が経過したら、固定液を除去し、細胞を再度PBSで3回洗浄した。細胞内染色が必要な場合は、PBS中の1%Triton X-100(Thermo Fisher、カタログBP151-100)で細胞をインキュベートし、PBSで3回洗浄した。次いで、PBS中のBSAなどのブロッキング溶液を細胞に加え、60分間ブロッキングさせた。次にブロッキング溶液を除去し、細胞を洗浄した。製造元の指示に従って蛍光色素コンジュゲート抗体を希釈し、細胞に一晩結合させた。次に抗体溶液を除去し、細胞を洗浄した。最後に、ProLong(商標)Diamond Antifade Mountant with DAPI(Invitrogen、カタログP36966)などの封入溶液を細胞に適用し、カバーガラスをその上に置いた。これを、イメージングの前に24時間乾燥させた。イメージングは、蛍光顕微鏡を介して実行した。CARを発現する細胞は、フルオロフォアの適切なチャネルで、CARを発現していない細胞よりも明るかった。
【0238】
RT-PCR
本開示の例示的な方法では、マクロファージを溶解し、製造業者の説明書に従って1ステップキットRTPCRキット(SuperScript(商標)III Platinum(商標)ワンステップqRT-PCRキット、Invitrogenカタログ11732-020)を使用して、RNAを収集した。CARに特異的なプライマーをアッセイに使用した。CARのmRNAを含むマクロファージは、RTPCRアッセイでシグナルを示したが、形質導入されていないマクロファージはシグナルを示した。
【0239】
CARエフェクター細胞機能の決定
本開示の例示的な方法では、CAR導入遺伝子を、核酸(例えば、DNA、mRNA、または化学修飾mRNA)によるエレクトロポレーション/トランスフェクションを介して、またはレンチウイルス、アデノウイルスまたは代替ウイルスベクターによるウイルス形質導入を介して、単球またはマクロファージに導入した。CARの発現を、フローサイトメトリー、リアルタイムPCR、または蛍光顕微鏡による抗原特異的染色を使用して確認する。これらの技術は、CARの発現の強度及び速度論を決定するためにも使用することができる。マクロファージの表面に発現するCARコンストラクトを、標的陽性細胞株に対する腫瘍食作用アッセイ及び/または腫瘍殺傷アッセイにおける活性について試験する。標的細胞の食作用及び/または殺傷を引き起こすコンストラクトを、サイトカイン分泌、ケモカイン分泌、免疫細胞動員能力、表現型変化(すなわち、M1/M2への自己分極)、及びT細胞刺激/抗原提示機能について試験した。
【0240】
食作用アッセイ
フロー食作用アッセイ(細胞)
本開示の例示的な方法において、標的陽性腫瘍細胞及び標的陰性腫瘍細胞は、製造者の指示に従ってCellTrace(商標)CFSE Cell Proliferation Kit(Invitrogen、カタログC34554)で標識化されるか、または細胞は、蛍光タンパク質(例えば、GFP)を発現するように操作された。次に、CAR発現マクロファージ及び対照マクロファージを、マクロファージ:腫瘍細胞比1:1でU底96ウェルプレートにプレーティングし、4時間培養した。インキュベーションの終わりに、細胞をウェルから取り出し、フローサイトメトリー用に染色した。パネルには、生存率色素及びマクロファージ特異的マーカー、例としてCD11bが含まれていた。生細胞をゲーティングすると、CD11b/CFSE二重陽性である細胞は、細胞を貪食したと推定されるマクロファージであった。CARマクロファージは、CARを含まないマクロファージと比較して、標的陽性腫瘍細胞とともに培養すると、二重陽性細胞のパーセンテージが増加するはずである。標的ベースの食作用の特異性は、標的に対して陰性の細胞で培養された対照マクロファージを使用して試験した。
【0241】
フロー食作用アッセイ(ビーズ)
本開示の例示的な方法では、ポリスチレンビーズをCARの標的または無関係のタンパク質で機能化した。さらに、これらのビーズを、pH反応性色素であるpHrodo(商標)Red、SE(Invitrogen、カタログP36600)で標識化した。酸性化すると、色素の蛍光レベルが上昇した。次に、ビーズを、CARマクロファージ及び形質導入されていないマクロファージとともに培養した。一定期間後、マクロファージを取り出し、フローサイトメトリー用に、生存率色素及びマクロファージ特異的マーカー、例としてCD11bを使用して染色した。生細胞をゲーティングすると、CD11b/pHrodo二重陽性である細胞は、ビーズを貪食したと推定されるマクロファージと考えられた。CARマクロファージは、CARを含まないマクロファージと比較して、標的陽性ビーズとともに培養すると、二重陽性細胞のパーセンテージが増加するはずである。標的ベースの食作用の特異性は、標的に対して陰性のビーズで培養された対照マクロファージを使用して試験した。
【0242】
Incucyte(細胞)
本開示の例示的な方法では、GFPのような蛍光タンパク質を発現する標的陽性腫瘍細胞を、96ウェルプレートにおいてCARマクロファージ及び形質導入されていないマクロファージとともに培養した。エフェクターマクロファージと標的腫瘍細胞との間の比率を、0:1E:Tである標的細胞のみの対照の他に、10:1E:Tから1:10E:Tまで変化させた。マクロファージの数は、ウェルあたり10e3マクロファージで一定に保った。4時間ごとに経時的な蛍光の変化を測定して、培養中に発生した腫瘍細胞の殺傷量を決定した。さらに、画像分析技術を使用して、培養物中のマクロファージの位置を決定し、腫瘍細胞を貪食したマクロファージの数を決定した。
【0243】
Incucyte(ビーズ)
本開示の例示的な方法では、CARのタンパク質標的を担持するpHrodo機能化ビーズを、96ウェルプレートのウェル内のCARマクロファージ及び形質導入されていないマクロファージの両方に加えた。マクロファージをウェルあたり20e3の濃度でプレーティングし、ビーズを5:1のビーズ対マクロファージ比で加える。pHrodoの蛍光を、30分ごとに5時間測定した。最初の時点と1時間の時点との間の蛍光の増加の比率を使用して、発生した食作用の量を決定した。CARマクロファージは、形質導入されていない対照よりも蛍光の変化が大きいと予想された。
【0244】
マウスモデル
異種移植マウスモデル
本開示の例示的な方法では、NSGS(NSG-SGM3)マウスに対し、腹膜癌腫症をモデル化するために、腹腔内投与を介して、HER2+ヒト卵巣癌であるSKOV3でチャレンジした。マウスを、IFN-β感作がある場合及びない場合(または陰性対照)において、mRNAエレクトロポレーションによって生成されたヒトCARマクロファージで処理した。腫瘍量を、生物発光イメージングを介して監視した。
【0245】
同系マウスモデル
BALB-C免疫適格マウスに、皮下注射により、HER2+大腸癌のモデルであるCT26-HER2を移植した。腫瘍が移植されると、マウスを、IFN-β感作がある場合及びない場合(または陰性対照)において、mRNAエレクトロポレーションによって生成されたCARマクロファージで処理した。腫瘍量を、腫瘍塊のキャリパー測定によって監視した。
【0246】
実施例1:初代ヒトマクロファージにおける発現及び生存率に対するmRNA修飾の効果
ドナーマクロファージ(HC153444及び/またはHC156308)をCD14+単球から分化させ、mCherry mRNAをエレクトロポレーションまたはトランスフェクションした。mCherrym RNAには、AGCap1、m6AGCap1、または抗リバースキャップアナログ(ARCA)を含むバリアントキャップ構造、及びシュードウリジン(PsU)、5-メトキシウリジン(5moU)、または5-メチルシチジン/シュードウリジン(5meC PsU)を含む修飾ヌクレオチドなどの例示的な修飾が含まれていた。mRNA発現及び細胞生存率を、トランスフェクション後1日目または15日目にFACSによって検出した。
【0247】
mCherry mRNAバリアントは、エレクトロポレーションした場合、マクロファージの生存率に影響を及ぼさなかったが、mRNAをトランスフェクションしたマクロファージの生存率は、バリアントに応じて36%から70%の範囲であった(図1A)。mCherry発現細胞のパーセンテージは、エレクトロポレーションされた細胞ではほぼ100%、トランスフェクトされた細胞では70~90%であった(データは示していない)。mCherryの平均蛍光強度(細胞あたりに発現するmCherryタンパク質の数を表す)は、mRNA修飾及びトランスフェクト方法に依存していた(図1B)。AGCap1は、エレクトロポレーションされた細胞でより大きなmCherry強度を生成したが、PsU修飾及びHPLC精製により、トランスフェクトされた細胞でより大きなmCherry強度が生成された。
【0248】
図1Cに示すように、mCherry RNAの持続性は、mRNA修飾及び使用したmRNA送達方法に依存していた。mCherry mRNAは、エレクトロポレーションされたマクロファージと比較して、トランスフェクトされたマクロファージでより長く持続した。AGCap1を含むmRNAは、エレクトロポレーションされた細胞でm6AGCap1 mRNAよりも良好に持続した。HPLC精製は、エレクトロポレーションされた細胞よりもトランスフェクトされた細胞に大きな影響を与えた。
【0249】
実施例2:マクロファージの生存率に対するCAR mRNA修飾の効果
ドナーマクロファージ(HC153444)をCD14+単球から分化させ、マクロファージをエレクトロポレーションまたはトランスフェクションを用いてCARをコードするmRNA(CAR mRNA)をトランスフェクトした。HER2細胞外ドメイン及びCD3ゼータ細胞内ドメインを含むCARをコードするmRNAを使用した。CAR発現及び細胞生存率は、1日目にFACSによって検出した。
【0250】
図2Aに示されるように、mRNAをエレクトロポレーションしたマクロファージの例示的な生存率は、評価されたすべてのmRNA修飾について>80%であった。Viromer mRNAをトランスフェクションしたマクロファージは、ほとんどのCAR発現マクロファージ及び未処理マクロファージで>90%の生存率を示したが、m6AGCap1及びPsU修飾を含むmRNAならびに5moU修飾を含むmRNAをトランスフェクションしたマクロファージの生存率は65%であった。さらに、図2Bに示すように、エレクトロポレーションされたマクロファージでは、m6AGCap1及びPsU修飾を含むCAR mRNAによって、CAR発現が最も高くなった。mRNAをトトランスフェクションしたマクロファージでは、m6AGCap1、N1mPsU、及び/またはPsU修飾を含むCAR mRNAによって、CAR発現が最も高くなった。図2Cに示すように、mRNA5’Capからm6AGCap1への最適化、及びウラシルからシュードウラシル(PsU)への修飾により、ヒトマクロファージでのCAR発現が約3倍増加した。
【0251】
実施例3:マクロファージ機能に対するCAR mRNA修飾の効果
ヒトマクロファージをCD14+単球から分化させ、マクロファージにHER2 CARをコードするmRNA(CAR mRNA)をエレクトロポレーションした。エフェクター(CARマクロファージ)と標的(がん細胞)の比率が5:1になるように、CAR mRNAをトランスフェクトしてから2日後に、蛍光標識化HER2+乳癌細胞(CRL2351)を、CARマクロファージと共培養した。
【0252】
図3Aに示されるように、m6AGCap1PsU修飾を含むHER2 CAR mRNAをトランスフェクトしたマクロファージは、Ad5f35を形質導入したマクロファージに匹敵する強力な殺傷活性を示した。m6AGCap1PsU修飾を含むHER2 CAR mRNAをトランスフェクトしたマクロファージは、5moU修飾を含むHER2 CAR mRNAをトランスフェクトしたマクロファージと比較して、最高の標的細胞殺傷活性を示した(図3B~3D)。これらの結果はまた、最適化mRNA修飾をトランスフェクトしたマクロファージは、標的(がん細胞)に対するエフェクター(CAR-M)の比率が低くても、抗腫瘍活性がより高いことを示している。
【0253】
実施例4:M1分極はmRNAの持続性及びマクロファージ/CAR-マクロファージ機能を強化する
m6AGCap1及びPsU修飾を含むHER2 CAR mRNAを、ヒトマクロファージにエレクトロポレーションした。M1表現型を誘導するサイトカイン、例としてIFN-アルファ、IFN-ベータ、IFN-ガンマ、IFN-ガンマプラスリポ多糖(LPS)、TNF-アルファ、IL-6、またはSTINGリガンド(STING-L)とともに、細胞を最長48時間培養し、その後サイトカインを洗い流し、新しい培地を加えた。CAR発現及びM1マーカー発現は、トランスフェクション後2日目及び7日目に測定した。マクロファージがトランスフェクトされた2日後に、蛍光標識化HER2+乳癌細胞(CRL2351)を、HER2 CARマクロファージと共培養した。がん細胞の増殖は、Incucyteライブイメージング顕微鏡で4時間ごとに蛍光を介して監視した。エフェクター(CARマクロファージ)対標的(がん細胞)の比率は5:1であった。
【0254】
図4Aに示すように、試験したインターフェロンサイトカインは、2日目にCARトランスフェクトマクロファージの生存率の低下をもたらさなかった。驚くべきことに、IFN-βで処理されたマクロファージは、対照培地、IFN-αまたはIFN-γで処理されたマクロファージよりも高いCAR発現を示した(図4B)。図4Cに示すように、インターフェロンサイトカインでマクロファージを処理しても、7日目にCARトランスフェクトマクロファージの生存率の低下をもたらさなかった。驚くべきことに、IFN-βで処理されたマクロファージは、対照培地、IFN-αまたはIFN-γで処理されたマクロファージよりも高いCAR発現を示した、すなわち、IFN-βが、ヒトマクロファージにおけるCARなどのmRNAコード導入遺伝子の発現期間を改善することを示している(図4D)。さらに、mRNAをトランスフェクトしたCARマクロファージをIFN-α、IFN-β、またはIFN-γで処理すると、M1表現型が誘導され(CD86発現に基づく、図4E)、M2マーカーが減少した(CD163発現に基づく、図4F)。IFN-βは、評価されたインターフェロンのうちの最も強いM1表現型をもたらし、M1表現型は処理後少なくとも7日間持続した(図4E)。
【0255】
実施例5:CAR発現、CARマクロファージ機能、M1表現型マーカー及びサイトカイン産生に対するIFN処理の効果
インターフェロン処理が、異なる修飾を含むmRNAをトランスフェクトしたマクロファージに異なる影響を与えるかどうかを決定するために、5つの異なるmRNA修飾も試験した。異なるmRNA修飾を含むHER2 CAR mRNAを、ヒトマクロファージにエレクトロポレーションした。CAR発現及びM1マーカーは、エレクトロポレーション後4日目にフローサイトメトリー(Attune)によって検出した。次に、4日目のCARマクロファージ細胞を、Nuc-Light標識化HER2+乳癌細胞株(CRL2351)と、エフェクター(CARマクロファージ)対標的(がん細胞)の比率5:1で共培養した。がん細胞の増殖を、Incucyteライブイメージング顕微鏡で4時間ごとに蛍光を介して監視した。
【0256】
図5Aに示されるように、IFN-β処理をした場合またはしない場合において、すべての評価された化学物質をトランスフェクトしたマクロファージは、高い生存率を示した。AGCap1またはm6AGCap1及びPsUまたはN1mPsU修飾CAR mRNAをトランスフェクトしたマクロファージは、発現のレベルが最も高く、IFN-βによって、4日目のすべての修飾についてCARを発現する細胞のパーセンテージがわずかに改善された(図5B)。しかし、IFN-β処理により、評価されたすべてのmRNA修飾のCAR MFIに基づいて、細胞あたりに発現するCARの数が著しく増加し、m6AGCap1/PsU共修飾mRNAの発現が最も高くなった(図5C)。
【0257】
CAR持続性に対するIFN-βの影響をさらに評価するために、HER2 CARをコードするm6AGCap1/PsU mRNAをエレクトロポレーションしたヒトマクロファージを、2日目及び7日目に評価した。IFN-β処理によって、IFN-βで処理されていないCARマクロファージと比較して、7日目にCAR発現率が大幅に改善された(図6)。
【0258】
CAR発現の改善に対するIFN-β処理の効果を検証し、IFN-β濃度を最適化するために、M6AGCap1/PsU修飾mRNAをトランスフェクトしたマクロファージを、0、3、10、30、または100ng/mL IFN-βで4時間処理し、エレクトロポレーション後4日目及び7日目に、生存率、CARパーセンテージ、及びCAR MFIを評価した。ヒトマクロファージによるCAR発現に対するIFN-β用量依存効果が観察された(図7A)。実施例4に記載したように、CARマクロファージをIFN-βで処理するとM1表現型が誘導されたので、効果が用量依存的であるかどうかを決定するためにさらなる実験を行った。図7Bに示すように、M1マーカーCD80、CD86、及びHLA-DRの誘導は、IFN-βの用量依存的であった。
【0259】
マクロファージ表現型は可塑性があると考えられており、IL-10などの免疫抑制性サイトカインはM2表現型を誘導することが知られていることを考慮して、IFN-β処理または未処理HER2 CAR mRNAトランスフェクトマクロファージに対するIL-10処理の影響を評価した。IFN-β処理CARマクロファージはIL-10の影響に抵抗し、M2マーカーCD163を発現しなかったが、代わりにM1マーカーCD86の発現を、IL-10による処理後48時間(図8A)、及び処理後7日間保持した(図8B)。IFN-β感作CARマクロファージは、他のM2誘導因子にも抵抗した。
【0260】
IFN-βによる感作を伴うかまたは伴わない場合で、HER2 CARをコードするmRNAをトランスフェクトしたマクロファージの抗腫瘍機能を評価するために、形質導入されていない(UTD)マクロファージまたはCARマクロファージを、0、3、10、30、または100ng/mL IFN-βで4時間または20時間感作した。次に、これらのエフェクター細胞を、HER2+乳癌細胞株CRL2351-GFPと、3:1または1.5:1のエフェクター対標的比で共培養し、Incucyteライブイメージング顕微鏡を使用してGFP発現に基づいて抗腫瘍活性を測定した。IFN-β感作により、CARマクロファージが、がん細胞を殺傷する能力が改善した(図9A)。IFN-β処理が修飾を含むmRNAでCARマクロファージの抗腫瘍活性を改善したかどうかを評価するために、IFN-β処理を伴うかまたは伴わない場合で、独自の修飾を含むmRNAをエレクトロポレーションしたマクロファージの抗腫瘍活性を評価した。IFN-β処理によって、5moU mRNAをトランスフェクトしたものを除くすべてのCARマクロファージの抗腫瘍活性が改善された(図9B)。改善されたmRNAトランスフェクトCARマクロファージの抗腫瘍効果がすべてのインターフェロンに普遍的であるかまたはインターフェロンベータのみに普遍的であるかどうかを評価するために、M6AGCap1/PsU mRNAをエレクトロポレーションしたマクロファージを、IFN-アルファ、ベータ、またはガンマで処理し、それらのがん細胞殺傷能力を評価した。IFN-βで処理されたCARマクロファージには、IFN-αまたはIFN-γよりも大きな効果があり、がん細胞殺傷が最も高かった(図9C)。
【0261】
マクロファージのインターフェロン処理が他の抗腫瘍機能を改善するかどうかを評価するために、HER2+乳癌細胞との共培養後のインターフェロン処理または未処理mRNAトランスフェクトHER2 CARマクロファージのサイトカイン分泌を評価した。m6AGCap1及びPsU修飾を含む150nM HER2 CAR mRNAを、ヒトマクロファージにエレクトロポレーションした。HER2+乳癌細胞(CRL2351)を、マクロファージにCAR mRNAをトランスフェクトした後、3:1のエフェクター(CARマクロファージ)対標的(がん細胞)の比率でCARマクロファージと共培養した。がん細胞とマクロファージを共培養してから48時間後に上清を収集し、Meso Scale Discovery(MSD)装置を使用してサイトカインレベルを測定した。図10に示すように、マクロファージをIFN-α、IFN-β、またはIFN-γで処理すると、マクロファージからのサイトカインIL-6、IL-8、及びTNFαの分泌が増加した。
【0262】
インターフェロンによる処理がマクロファージにおけるCAR mRNAの持続性をさらに改善できるかどうか、及びCARマクロファージの機能性を拡張できるかどうかを決定するために、追加の研究を実施した。m6AGCap1及びPsU修飾を含む300nM CAR mRNAを、ヒトマクロファージにエレクトロポレーションした。細胞を20ng/mL IFNとともに24時間培養した後、細胞を洗浄してサイトカインを除去した。CAR発現を、トランスフェクション後2日目にフローサイトメトリー(Attune)によって検出した。次に、細胞を、Nuc-Light標識化HER2+乳癌細胞株(CRL2351)と、エフェクター対標的の比率3:1で共培養した。がん細胞の増殖を、Incucyteライブイメージング顕微鏡で蛍光を介して監視した。マクロファージにおけるCAR発現及びM1マーカーは、トランスフェクション後7日目にフローサイトメトリー(Attune)によって検出した。
【0263】
図11Aに示されるように、CAR mRNAによるトランスフェクションの2日後、CARマクロファージの生存率及びCAR発現は、IFN-γで処理されたマクロファージを除いて非常に高かった。さらに、図11B及び図11Cに示すように、IFN処理によって、CARマクロファージの標的細胞殺傷活性が高まった。図11Cは、がん細胞とマクロファージを72時間共培養した後の標的細胞の殺傷を示す。IFNによる処理はまた、マクロファージの生存率、CARの発現、M1マーカーの発現、及びCARマクロファージの機能に影響を与えた。図12Aに示すように、トランスフェクトされたマクロファージをIFN-βで処理すると、インターフェロンで処理されなかったマクロファージと比較して、細胞生存率、HER2 CARの発現、及びM1マーカーCD80、CD86、及びHLA-DRの発現が7日後の時点で増加していた。図12Aは、すべてのマクロファージが7日目に高い生存率を示していたが、IFN-βで処理されたマクロファージでは、有意差でCARの発現レベルが最も高かったことを示す。図12Bは、エレクトロポレーションの7日後にがん細胞殺傷アッセイで試験されたすべてのCARマクロファージのうち、IFN-βで処理されたマクロファージでは、がん殺傷レベルが最も高かった(腫瘍増殖の減少が最も大きい)ことを示している。マクロファージをエレクトロポレーションした7日後、マクロファージを標的がん細胞と72時間共培養した。図12Cに示すように、すべてのインターフェロンは、インターフェロンで処理されていないCARマクロファージと比較して、CARマクロファージのがん細胞殺傷活性を改善した。
【0264】
実施例6:トランスフェクトされたマクロファージはIFNγに対して感受性がある
ヒトマクロファージに、m6AGCap1及びPsUまたはN1mPsU修飾を含むmCherry mRNAをトランスフェクトし、次いで異なる用量のIFN-γで1日間培養した。mCherryの発現は、Incucyteライブイメージング顕微鏡で監視した。図13Aに示すように、マクロファージにmRNAをトランスフェクトすると、IFN-γによってmCherry mRNAの発現が減少した。
【0265】
インビトロ転写mRNAは、種々のエンドソーム自然免疫受容体(例えば、Toll様受容体(TLR)3、TLR7、及びTLR8)及び細胞質自然免疫受容体(プロテインキナーゼRNA活性化(PKR)、レチノイン酸誘導性遺伝子Iタンパク質(RIG-I)、メラノーマ分化関連タンパク質5(MDA5)及び2’-5’-オリゴアデニル酸シンターゼ(OAS))によって認識されることが以前に示されている。これらの異なる経路を介したシグナル伝達は、1型インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン-6(IL-6)、IL-12、及び転写プログラムのカスケードの活性化に関連する炎症を引き起こす。全体として、これらは、特異的免疫応答を誘導する態勢にある炎症誘発性微小環境を作出する。さらに、真核生物の翻訳開始因子2α(eIF2α)リン酸化による翻訳の減少、リボヌクレアーゼL(RNaseL)によるRNA分解の促進、自己増幅mRNA複製の過剰発現及び阻害などの下流の影響はすべて、IVT mRNAの薬物動態及び薬力学と関連性がある。
【0266】
TLR経路を介したIFN-γの活性化によって、2’-5’-オリゴアデニル酸(2-5A)を生成する2’-5’-オリゴアデニル酸シンターゼ(OAS)が活性化される可能性があり、これによって次にRNaseLが活性化される可能性があり、RNA分解及びアポトーシスがもたらされる可能性がある。
【0267】
実施例7:CARマクロファージに対するRNaseL阻害剤、スニチニブ及びABCE1の効果
RNaseL阻害剤が、トランスフェクトされたmRNAのIFN-γ誘導不安定性を救済できるかどうかを決定するために、m6AGCap1及びPsU修飾を含むmCherry mRNAのトランスフェクションの2時間前に、ヒトマクロファージを1μMのスニチニブ(RNaseL阻害剤)で処理した。次に、トランスフェクトされた細胞を異なる投与量のIFN-γで1日間培養した。mCherryの発現は、Incucyteライブイメージング顕微鏡で監視した。図14Aに示すように、スニチニブによって、mRNAのIFN-γ誘導分解が救済された。
【0268】
RNAse L阻害によって、mRNAトランスフェクトCARマクロファージの抗腫瘍機能を改善できるかどうかを評価するために、マクロファージを、修飾を含むmRNAでトランスフェクトし、スニチニブで前処理した後、がん細胞殺傷アッセイにおいてエフェクター細胞として評価した。1nMスニチニブで前処理されたCARマクロファージは、スニチニブで前処理されていないCARマクロファージ、またはスニチニブで処理された、もしくは処理されていない非トランスフェクト対照マクロファージよりもがん細胞殺傷が高かった(図14B)。48時間のCRL2351乳癌細胞殺傷アッセイにおけるスニチニブ感作CARマクロファージの改善されたがん殺傷能力を図14Cに示す。
【0269】
別のRNaseL阻害剤(RLIまたはABCE1)の効果も試験して、概念をさらに検証した。ヒトマクロファージに、m6AGCap1及びPsU修飾を含むmCherryをコードするmRNAと、ABCE1をコードするmRNAとを共トランスフェクトした。
【0270】
図15に示されるように、エレクトロポレーションの48時間後、ABCE1共発現によって、目的のmRNAコード導入遺伝子の発現が有意に改善された。ABCE1を共トランスフェクトしたマクロファージの生存率は影響を受けず、高いままであった。ABCE1共トランスフェクションにより、mCherryの発現が約2倍増加し、スニチニブで前処理すると、この効果がさらに高まった。
【0271】
実施例8:遺伝的にコードされたRNaseL阻害剤のCARマクロファージに対する効果
他の遺伝的にコードされたRNaseL阻害剤によってCAR発現を改善できるかどうかを評価するために、修飾を含むCAR mRNAとNS1をコードするmRNAとの共トランスフェクションを評価した。NS1は、NS1Aタンパク質をコードするインフルエンザA由来の遺伝子である。図16に示されるように、ABCE1とCAR mRNAまたはNS1とCAR mRNAの共トランスフェクションによって、対照遺伝子mCherryとCARの共トランスフェクションと比較して、CAR発現のレベルが増加した。NS1共トランスフェクションによって、ABCE1共トランスフェクションよりも高いCAR発現がもたらされた。
【0272】
ABCE1及び/またはNS1がCAR発現に影響を与えるメカニズムを評価するために、修飾を含むHER2 CARをコードするエレクトロポレーションされたmRNAの減衰をRT-qPCRによって評価した。8時間でのCARプラスmCherry mRNA、CARプラスABCE1 mRNA、またはCARプラスNS1 mRNAをトランスフェクトしたマクロファージにおけるCAR mRNAの相対存在量を、2時間でのCAR mRNAの存在量と比較した。図17に示すように、mCherry(陰性対照)を共トランスフェクトしたCAR mRNAのレベルは6時間で50%を超えて低下したが、ABCE1 mRNAまたはNS1 mRNAを共トランスフェクトしたCAR mRNAのレベルは上昇し続けた。
【0273】
実施例9:マクロファージの感作
Her2-ゼータCAR発現マクロファージを生成するために、初代ヒトマクロファージを、90×10細胞/mLの濃度で300nM mRNA(TriLink)を含有するEP緩衝液(MaxCyte)に懸濁した。100μLの細胞混合物をエレクトロポレーションカセット(OC100x2、MaxCyte)に加え、実験T細胞1設定を使用してエレクトロポレーションを行った。細胞をカセットから取り出し、UpCellプレート(Thermo Scientific)上の20%FBS(Gibco)を含有する3mLのTexMACS培地(Miltenyi Biotech)にプレーティングし、37℃、5%COで一晩インキュベートした。
【0274】
組換えCD40リガンド(Peprotech)、4-1BBリガンド(Enzo Life Sciences)、及び4-1BB受容体(Peprotech)を、分子グレードの水に再懸濁して、ストック濃度100μg/mLにした。次にストック溶液を使用して、PBSで2~0.002μg/mLの範囲の使用液を作成した。使用液100μLを96ウェルプレートのウェルに加え、室温で4時間放置した。
【0275】
プレートをインキュベーターから取り出し、室温で30分間放置した。細胞をプレートから剥がし、NC-200自動細胞カウンター(Chemomtech)を使用して計数し、10%FBSを含むTexMACS培地に再懸濁させた。タンパク質コーティングプレートをPBSで2回洗浄した後、10%FBSを含む最終体積100μLのTexMACS培地にマクロファージを加えた。プレートを37℃、5%COで3時間インキュベートした。3時間後、核GFPを発現するCRL-2351細胞10,000個を、各ウェルに加えた。GM-CSFの最終濃度は、すべてのウェルで10ng/mLであった。Incucyte(Essen Bioscience)を用いて細胞溶解を検出した。腫瘍細胞死を、時間0に対するウェルあたりの積分GFP強度によって計算した。
【0276】
細胞表面タンパク質の検出のために、マクロファージを、アゴニスト分子でコーティングされたウェルの最終体積200μLのTexMACS培地+10%FBS+10ng/mL GM-CSF中にプレーティングし、37℃及び5%COで3日間インキュベートした。細胞を、300μL Accutase(Sigma)で30分間インキュベートし、染色のために96ウェル丸底プレートに移した。細胞を、20μg/mL Her2-Hisを含有するFACS緩衝液中で室温にて20分間インキュベートした後、Human TruStain FcXで室温にて10分間インキュベートした。表面タンパク質染色は、以下のパネルを使用して行った:CD80-FITC、CD86-PE、CD163-APC-Cy7、CD206-BV421、抗His-APC、Aqua Live/Dead水溶液。表面タンパク質発現の検出は、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fischer)を使用して完了させた。
【0277】
CARマクロファージをCD40Lで処理すると、マクロファージ及びCARマクロファージの腫瘍殺傷能力が有意に改善された(図18A)。CD40Lによる感作はまた、CAR mRNAをトランスフェクトしたマクロファージにおいてM1表現型を誘導した(図18B)。4-1BB及び4-1BBLによる処理によって、CD40Lほど強力ではないが、同様の結果がもたらされた(図19A~19B及び図20A~B)。これらの結果は、CD40LなどのCD40アゴニストによるCARマクロファージの前処理または感作により有効性が向上する場合があり、CARマクロファージをCD40アゴニストとともに含む併用療法により有効性が向上する場合があることを示している。
【0278】
実施例10:ヒト単球に対するmRNA修飾の効果
修飾を含むCAR mRNAのヒト単球への送達も評価した。具体的には、M6AGCap1及びPsU修飾を含むHER2 CARをコードするmRNAを、5人のヒトドナー由来の単球にエレクトロポレーションした。図21に示すように、強度とパーセンテージの両方で高いCAR発現が達成された。
【0279】
実施例11:異種移植固形腫瘍マウスモデルにおけるmRNAエレクトロポレーションによって生成されたCARマクロファージの有効性
異種移植固形腫瘍マウスモデルにおけるmRNAエレクトロポレーションによって生成されたCARマクロファージの有効性を評価するために、5つの群を使用した。研究群には、非治療、モック治療群、IFN-βを伴うモック治療群、mRNA CAR-マクロファージ(mRNA-CAR)治療群、及びIFN-βを伴うmRNA CAR-マクロファージ(mRNA-CAR+IFNb)治療群が含まれていた。
【0280】
NSGSマウスに、6e5 SKOV3細胞を注射した(1群あたりn=5マウス)。続いて、マウスを、図22の矢印によって示されるように、0、4、及び8日目に腹腔内注射によって8e6個のマクロファージで治療した。腫瘍量は、IVISイメージングシステム(Perkin Elmer)を使用する生物発光イメージングによって測定した。マウスを、2~3日ごとに画像化した。
【0281】
図22に示されるように、mRNA CAR-マクロファージまたはIFN-βで刺激されたmRNA CAR-マクロファージで治療されたマウスは、対照と比較して、腫瘍増殖の抑制を示した。
【0282】
実施例12:同系固形腫瘍マウスモデルにおける、mRNAエレクトロポレーションによって生成されたCARマクロファージの有効性
同系固形腫瘍マウスモデルにおけるmRNAエレクトロポレーションによって生成されたCARマクロファージの有効性を評価するために、5つの群を使用した。研究群には、非治療群、モック治療群、IFN-βを伴うモック治療群、mRNA CAR-マクロファージ(mRNA CAR)治療群、及びIFN-βを伴うmRNA CAR-マクロファージ(mRNA CAR+IFNb)治療群が含まれていた。
【0283】
BALB/cマウスに、7.5e5個のCT26-HER2結腸癌細胞を皮下注射した(1群あたりn=12~13匹のマウス)。腫瘍注射の12日後(平均腫瘍質量が50mmになると)、約3e6個のマクロファージを腫瘍内注射した。16日目及び20日目に追加のマクロファージを注射した(1回の注射につきマウス1匹あたり約3e6個、図23に矢印で示す)。隔週でキャリパーを使用して腫瘍体積を測定し、以下の式を使用して腫瘍体積を推定した:腫瘍体積=長さ×幅^2/2、式中、長さは腫瘍の最大直径を表し、幅は垂直方向の腫瘍直径を表す。
【0284】
図23に示すように、IFN-β処理mRNA CAR-マクロファージを受けたマウスのほぼ80%がそれらの腫瘍を拒絶したが、モック、IFN-β処理モック、またはmRNA CAR-マクロファージを用いたマウスの約60%が腫瘍を拒絶した。IFN-β感作mRNA CAR-マクロファージによって、陰性対照と比較して腫瘍の増殖が有意に抑制された。特に、免疫適格性マウスモデルとの関係では、IFN-β感作mRNA CARマクロファージは、mRNA CARマクロファージまたはIFN-β感作対照マクロファージよりも優れており、このことは、CAR操作とIFN-β感作の間の相乗効果を示している。
【0285】
均等物
当業者は、本開示に対する様々な変更、修正、及び改良が当業者には容易に想起されることが理解されるべきである。そのような変更、修正、及び改良は、本開示の一部であることを意図しており、本発明の精神及び範囲内であることを意図している。したがって、前述の説明及び図面は単なる例であり、本開示に記載されているいずれの発明も以下の特許請求の範囲によってさらに詳細に説明されている。
【0286】
当業者は、本明細書に記載のアッセイまたは他のプロセスで得られた値に起因する偏差または誤差の典型的な基準を理解するであろう。本発明の背景を説明し、その実践に関するさらなる詳細を提供するために、本明細書で参照される刊行物、ウェブサイト、及び他の参考資料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22
図23
【国際調査報告】