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特表2023-532283アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び紫外線安定剤を含む組成物並びに関連する物品及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び紫外線安定剤を含む組成物並びに関連する物品及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20230720BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20230720BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20230720BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20230720BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20230720BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20230720BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20230720BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08L33/04
C08L67/00
C08L75/04
C08L83/04
C08L91/06
C09D133/04
C09D183/04
C09D167/00
C09D191/06
C09D7/48
C09D175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579992
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 US2021038821
(87)【国際公開番号】W WO2021262934
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/043,476
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/188,808
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ケント イー.
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー,アリアンヌ イー.
(72)【発明者】
【氏名】モラーズ,ラウル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】レミジオ,エリカ ジェイ.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィッキ,マーカス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブランディーズ,フランク エー.
(72)【発明者】
【氏名】ステギンク,デイヴィッド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】テート,フランシス ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AE034
4J002BG021
4J002BG031
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG071
4J002CF012
4J002CK023
4J002CP034
4J002DK007
4J002EB127
4J002EE036
4J002EJ057
4J002EU076
4J002EU176
4J002EU186
4J002EV327
4J002FD046
4J002FD056
4J002FD187
4J002GH00
4J002GL00
4J002HA07
4J038BA211
4J038CG141
4J038DD001
4J038DG001
4J038DL031
4J038MA08
(57)【要約】
組成物は、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び紫外線に対する安定剤を含み、その中の安定剤が紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、又はそれらの組み合わせである。コーティングされた物品は、90日間の屋外曝露の後に、少なくとも部分的にコーティングされた物品の表面が有する、国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値が15超である、広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含む。組成物及びコーティングされた物品を製造する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
アクリルポリマーと、
撥水性ポリマーと、
紫外線に対する安定剤と、を含み、前記安定剤は、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、又はそれらの組み合わせである、組成物。
【請求項2】
前記アクリルポリマーが、架橋されているか、又は架橋性であるか、の少なくともいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルキドポリマーを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アクリルポリマー及び前記アルキドポリマーの総重量に基づいて、前記アクリルポリマーが少なくとも50重量パーセントの量で存在し、前記アルキドポリマーが少なくとも5重量パーセントの量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリウレタンを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記撥水性ポリマーが、シリコーンポリマー又はワックスである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
殺生物剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
水を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、前記方法が、前記アクリルポリマーの水中分散液、前記撥水性ポリマーの水中分散液、及び前記安定剤の水中分散液を組み合わせて、コーティング組成物を製造することを含む、方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する基材を含む、物品。
【請求項11】
前記基材が、処理された又は未処理の、広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、パーティクルボード、ファイバーボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の物品を製造する方法であって、前記方法が、
前記アクリルポリマーの水中分散液、前記撥水性ポリマーの水中分散液、及び前記安定剤の水中分散液を組み合わせて、前記組成物を製造することと、
前記組成物を前記基材の少なくとも一部分に適用することと、を含む、方法。
【請求項13】
コーティング組成物を前記基材の少なくとも一部分に適用する前又は後の少なくともいずれかで前記基材を加熱することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
その表面の少なくとも一部分にコーティングを有する、広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含むコーティングされた物品であって、1日の最高気温の平均が20℃~25℃の範囲での90日間の屋外曝露であって、その間、前記コーティング及び前記表面が、250mm~265mmの範囲の総降水量、12~14時間の範囲の平均日照時間、及び4.0~4.5の範囲の平均UV指数に曝露された屋外曝露の後に、前記少なくとも部分的にコーティングされた表面が有する、国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値が15超である、コーティングされた物品。
【請求項15】
請求項14に記載のコーティングされた物品を検査する方法であって、前記コーティングがフォトルミネセンス化合物を含み、前記方法が、前記コーティングされた物品を紫外線又は青色光のうちの少なくとも1つに曝露して、前記表面の少なくとも一部分の上の前記コーティングを検査することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月24日に出願された米国特許仮出願第63/043,476号及び2021年5月14日に出願された同第63/188,808号の優先権を主張し、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(背景技術)
窓枠、家具、キャビネット、及び床材などのセルロース含有材料から製造された物品は、多くの場合、物品の外観をより良くするため、及び/又は下地物品を劣化させ得る様々な環境条件からの保護を提供するために1つ以上の組成物で処理される。米国特許出願公開第2007/0116732号(Goebelら)は、処理された及び/又はコーティングされたセルロース含有基材を製造するための方法、並びに処理された及び/又はコーティングされたセルロース含有基材を製造するためのサイクルタイムを短縮するための方法を報告している。米国特許第8,404,312号(Nowakら)は、加工木材製品(engineered wood products)のための2液型エッジシーリング組成物を開示している。米国特許出願公開第2017/0247573号(Agrawalら)は、配向性ストランドボードのためのワックス組成物を開示している。米国特許第6,383,652号(Templetonら)、同第8,461,253号(Ambroseら)、及び同第9,228,093号(Parkerら)は、木材をコーティングするために有用であると考えている水性組成物を記載している。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、例えば、紫外線及び水の影響、特に物品の灰色化、及び物品における付随する物理的変化から、セルロース材料から製造された物品を保護するために有用な組成物を提供する。本開示は、そのような灰色化及び物理的変化に耐性がある物品を更に提供する。いくつかの実施形態では、組成物はまた、水に曝されるか、又は水中に浸漬されたときに、水白化(water-whitening)に耐性がある。
【0004】
一態様では、本開示は、アクリルポリマーと、撥水性ポリマーと、紫外線に対する安定剤と、を含む組成物を提供し、その中の安定剤は、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、又はそれらの組み合わせである。
【0005】
別の態様では、本開示は、組成物で少なくとも部分的にコーティングされている表面を有する基材を含む、物品を提供する。
【0006】
別の態様では、本開示は、組成物の製造方法を提供する。本方法は、水中のアクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤を組み合わせて、組成物を製造することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液を組み合わせて、組成物を製造することを含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、物品の製造方法を提供する。本方法は、上述した組成物又は上述した方法によって製造された組成物を、基材の少なくとも一部分に適用することを含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、少なくとも部分的にコーティングされている表面を有する、広葉樹材(hardwood)、針葉樹材(softwood)、配向性ストランドボード、又は合板(plywood)のうちの少なくとも1つを含むコーティングされた物品を提供する。1日の最高気温の平均が20℃~25℃の範囲での90日間の屋外曝露であって、その間、コーティング及び表面が、250mm~265mmの範囲の総降水量、12~14時間の範囲の平均日照時間、及び4.0~4.5の範囲の平均UV指数に曝露された屋外曝露の後に、少なくとも部分的にコーティングされている表面が有する、国際照明委員会(International Commission on Illumination)のL、a、及びbスケールでのb値が15超である。
【0009】
本願において、
「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示するために用いることができる全般的な種類を含む。「a」、「an」及び「the」の用語は、「少なくとも1つ/少なくともいずれか」という用語と互換可能に使用される。
【0010】
列挙が後に続く、「のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙中の項目のうちのいずれか1つ、及び列挙中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを含むことを指す。列挙が後に続く、「のうちの少なくとも1つ/いずれか」という語句は、列挙中の項目のうちのいずれか1つ、又は列挙中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0011】
「架橋性である」及び「架橋されている」という用語は、ネットワークポリマーを形成するために、ポリマー鎖を一緒に接合するか、又は共有化学結合によってポリマー鎖を一緒に接合することができることを指す。架橋されたポリマーは、概して、不溶性という特徴があるが、適切な溶媒の存在下では、膨潤性となり得る。「架橋された」という用語は、部分的に架橋されていることを含む。「架橋性である」という用語は、架橋されていても又はまだされなくてもよいが、架橋を受ける又は更なる架橋を受けることができるポリマーを指す。
【0012】
「ポリマー」という用語は、実際に、又は概念的に、1つ以上のモノマーから誘導された単位の複数の反復を含む構造を有する分子を指す。「モノマー」という用語は、他のものと組み合わせてポリマーを形成することができる低相対分子量の分子を指す。「ポリマー」という用語には、ホモポリマー及びコポリマー、並びに例えば、共押出又は反応により、混和性ブレンドで形成され得るホモポリマー又はコポリマーが含まれる。用語「ポリマー」は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー、及び星型ポリマーを含む。
【0013】
すべての数値範囲は、特に記述されない限り、これらの範囲の端点、及び端点同士の間の非整数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
配向性ストランドボード(OSB)は、大まかには、樹脂コーティングされた木材ストランドの複数の連続層を移動ウェブに適用することによって製造されるエンジニアードボードパネルである。木材ストランドの各層は、最終ボードにおける機械的強度を構築する異なる配向で先行層に送達される。木材ストランドの最終マットは、高い圧力及び温度の条件下で圧縮されて、所望のボード厚さを作り出す。
【0015】
OSBは、木造の建設において広範に使用されているが、表面の外観は時間及び水分への曝露、日光、並びに温度上昇の関数として劣化する。これらの条件下では、ボードの色は灰色になる傾向がある。本発明者らは、この変色が木製ストランドの剥落又はチッピングを伴うことを観察した。更に、建設業界では、退色が性能の低下を意味するという認識がある。高温で水分に曝露されると、ボードはまた、水の浸透により膨潤し、ボードを使用することをより困難にする。本発明者らは、他の木材及びエンジニアード・ウッド・プロダクトと同様にこれらの問題を観察した。
【0016】
OSBは、下塗りされた後に塗装することができるが(www.thespruce.com/osb-looks-hideous-can-you-paint-it-1822689を参照されたい)、OSB上の塗料の漏れ及び接着は、木材ストランドの滑らかさ及び圧縮された性質、並びに136度と測定したOSBの高い平均接触角のために困難である。これらの特性が、下地ボードの環境保護、並びに木材への接着を提供するコーティングを開発することを困難にしている。
【0017】
本開示は、例えば、OSB及び他のセルロース材料から製造された物品を紫外線及び水の影響、特に物品の灰色化及び物品における付随する物理的変化の影響から保護するために有用な組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、水への曝露後の白化に対して耐性がある。
【0018】
本開示の組成物は、アクリルポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「アクリル」及び同様の用語は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含することを意味する。様々なアクリルポリマーが、組成物において有用であり得る。いくつかの実施形態では、アクリルポリマーは、少なくとも4個の炭素原子(いくつかの実施形態では、4~14個の炭素原子、4~10個の炭素原子、4~8個の炭素原子、又は6~8個の炭素原子)を有する直鎖又は分岐鎖アルコールのアクリレート及び/又はメタクリレートエステルを含む疎水性アクリルモノマーから製造される。アクリルポリマーで使用するために好適であるそのようなモノマーの例としては、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチル-ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、及びそれらの混合物が挙げられる。アクリルポリマーの調製で使用するための他の好適なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、オリゴマーアクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、及びそれらの混合物などの少なくとも部分的に親水性のモノマーが挙げられる。アクリルポリマーを製造するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、そのような親水性モノマーは、典型的には、最大2、1、又は0.5重量パーセントの量で使用される。アクリルポリマー中に酸性官能基が存在する場合、それらは、例えば、アミン(例えば、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、トリエタノールアミン、ジメチルエチルエタノールアミン、及びN’,N’-ジメチルアミノプロピルアミン)又はアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)を使用して中和することができる。他のモノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ニトリル(例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル)、ビニル及びハロゲン化ビニリデン、並びにビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)が、アクリルポリマーに有用に組み込まれてもよい。
【0019】
アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるように、例えば、10,000~1,000,000グラム/モル、50,000~500,000、又は50,000~200,000グラム/モルの範囲であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、アクリルポリマーは、架橋されているか、又は架橋性であるか、の少なくともいずれかである。言い換えれば、アクリルポリマーは、ポリマー鎖を架橋することが可能である官能基を含むか、又は場合によっては、既に反応してそのような架橋を形成している官能基を有する。いくつかの官能基が低温(例えば、室温)で架橋を提供するためにアクリルポリマーに組み込まれており、数例を挙げれば、シラン基、N-メチロール基、アセトアセトキシ、又は金属キレートを有するカルボン酸、及びケトン又はアルデヒド基がある。そのようなアクリレートの説明は、例えば、Parvate,S.and Mahanwar,P.「Advances in Self-Crosslinking of Acrylic Emulsion:What We Know and What We Would Like to Know」;Journal of Dispersion Science and Technology,2019,Vol.40,No.4,pp.519-536に見出すことができる。この物品では、自己架橋は、互いに反応することができるポリマー鎖だけではなく、担体流体(例えば、水)の除去時に架橋を受けることができる1剤型アクリル系(典型的にはエマルジョン)も指す。いくつかの実施形態では、架橋性であるか、又は架橋されているか、の少なくともいずれかであるアクリルポリマーは、組成物中のアクリルポリマーの少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、又は95%を構成する。
【0021】
N-メチロールアクリルアミド(NMA)は、例えば、N-メチロール基をアクリルポリマーに組み込むために有用なモノマーである。1つのアクリルポリマー鎖のメチロール基は、ホルムアルデヒド及び水分子の切断を伴って、別のアクリルポリマー鎖のメチロール基と反応して、架橋を提供することができる。
【0022】
ビニルシラン及びメタクリルオキシシランなどのシランにおける不飽和は、アクリルポリマー鎖への組み込みを可能にする。コーティングの乾燥時に、pHが低下し、アルコキシシランのシラノール(Si-OH)への加水分解を引き起こし、これが次いでポリマー鎖上で利用可能な第2のシラノールと結合して、シロキサン(Si-O-Si)結合を形成する。
【0023】
上述した酸官能性アクリルモノマーは、ペンダントカルボン酸基をアクリルポリマーに組み込むために有用であり得る。多価金属又は金属錯体は、これらの酸基のための架橋剤として有用である。有用な多価金属としては、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、又は任意の2つ以上の金属の混合物が挙げられる。通常、金属架橋剤は、リン酸塩、プロピオン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、アンモニア、酸化物、炭酸塩、又はアセチルアセトネートの塩又は錯体である。
【0024】
アルデヒド及び/又はケトン官能基を含むアクリルモノマー(例えば、ジアセトンアクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、及びアリルアセトアセテート)は、アクリルコポリマーのカルボニル官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤と反応することができる。カルボニル基と反応性の少なくとも2つのアミン窒素を有する任意の窒素含有化合物は、架橋剤として使用され得る。そのような架橋剤は、脂肪族若しくは芳香族のポリマー又は非ポリマーであってもよく、単一で、又は2つ以上の組み合わせで使用されてもよい。好適な架橋剤の例としては、アジピン酸ジヒドラジド、ジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、及びテトラアミノエチレンが挙げられる。いくつかの実施形態では、架橋剤は、アクリルポリマーのカルボニル官能基と反応性の官能基(例えば、ヒドラジド基)が、アクリルポリマー中に含有されるカルボニル基の1当量当たり0.02~5当量、0.1~3当量、又は0.5~2当量の範囲であるような量で組成物中に存在する。本開示の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が基材に適用された後にエマルジョン中の水が蒸発すると、ヒドラジド基とカルボニル基が脱水縮合の結果として架橋し、硬化膜を形成する。
【0025】
本開示を実施するために有用ないくつかのアクリルポリマーは、例えば、商品名「AC2403」、「AC3630」、及び「AC2514」で、Alberdingk Boley,Greensboro,N.C.から、商品名「RHOPLEX」で、グレード「AC-1034」、「GL-618」、及びCS-4000でDow,Midland,Mich.から、並びに商品名「CARBOSET GA7487」で、The Lubrizol Corporation,Wickliffe,Ohioからエマルジョンとして市販されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、架橋性アクリルポリマーは、シラン基、N-メチロール基、アセトアセトキシ基、カルボン酸基、ケトン、又はアルデヒドのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、架橋されたアクリルポリマーは、シロキサン結合、金属キレート化アセトアセトキシ若しくはカルボン酸基、α-アミノアミド基、又はケチミン若しくはアルジミン基のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、組成物中の固形分の総重量(すなわち、いかなる水又は有機溶媒も除く)に基づいて、少なくとも90重量パーセントのその実施形態のいずれかにおいて上述されたアクリルポリマーを含む。
【0028】
本開示の組成物は、撥水性ポリマーを含む。好適な撥水性ポリマーとしては、ワックス、シリコーン、ポリブタジエンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0029】
好適なポリブタジエンポリマーとしては、例えば、Denka Performance Elastomer(NewYork,N.Y.)から市販されているポリクロロプレンホモポリマーが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、撥水性ポリマーはワックスである。ワックスは、典型的には、20℃で固体であり、分解することなく40℃を超える融点を有し、融点のすぐ上の温度で比較的低い粘度を有する。ワックスの供給源は、例えば、植物(例えば、カルナウバ、キャンデリラ、獣脂、大豆、及びパーム)、動物(例えば、蜜蝋、ラノリン、及びラノセリン)、鉱物(例えば、モンタン、パラフィン、及び微結晶)、又は合成物(例えば、ポリエチレン、脂肪酸アミン、及びポリアミド)であり得る。いくつかの実施形態では、ワックスは、パラフィンワックスである。パラフィンは、1分子当たり約18~約60個の炭素原子を含有する炭化水素の混合物であり、直鎖状(すなわち、ノルマルパラフィン又はn-パラフィン)又は分岐状(すなわち、イソパラフィン)であり得る。低分子量パラフィンは、より低い沸点を有し、高分子量パラフィンは、より高い沸点を有する。したがって、炭素数によるパラフィンの区別が可能である。いくつかの実施形態では、ワックスは、ポリエチレンワックスである。ポリエチレンワックスは、典型的には、低分子量ポリエチレンであるが、それらは概して、パラフィンワックスよりも高い分子量を有する。
【0031】
ワックスは、分散液(例えば、エマルジョン)に好都合に配合されてもよい。溶融ワックスは、例えば、界面活性剤の存在下で水中に分散させることができる。パラフィン及びポリエチレンワックスは、例えば、商品名「AQUACER」でBYK(Wesel,Germany)から、及び商品名「PROWAX」でExxonMobil(Irving,Texas)からエマルジョンとして市販されている。アミドワックスは、例えば、商品名「CERIDUST」でClariant(Muttenz,Switzerland)から市販されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、撥水性ポリマーはシリコーンである。シリコーン油及びワックスが有用であり得る。有用なシリコーンは、典型的には、主鎖からのペンダントであるか又は末端位置での反応性官能基を含んでも、又は含まなくてもよいポリジメチルシロキサンである。有用な官能基は、ビニル、メルカプト、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシル、又はヒドリド官能基のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、シリコーンは、反応性官能基によって非置換であるポリジメチルシロキサンと、反応性官能基を含むポリオルガノシロキサンとの混合物である。そのような反応性官能基は、シリコーンを水中に分散させるのに有用である。シリコーンは、例えば、商品名「SILRES」でWacker(Adrian,Mich.)、及び商品名「SILCO PHOBE」でSilcona GmbH & Co.KGから水中エマルジョンとして市販されている。
【0033】
撥水ポリマーは、任意の有用な量で存在し得る。いくつかの実施形態では、撥水ポリマーは、組成物中の固形分の総重量(すなわち、いかなる水又は有機溶媒も除く)に基づいて、最大6、5、4、又は3重量パーセントの量で存在する。いくつかの実施形態では、組成物中の固形分の総重量に基づいて、撥水ポリマーは少なくとも0.005又は0.01重量%の量で存在する。組成物の固形分の総重量に基づいて、いくつかの実施形態では、撥水性ポリマーは1重量%~5重量%、又は1.5重量%~2.5重量%の範囲で存在する。
【0034】
本開示の組成物は、UV光に対する安定剤を含む。安定剤は、UV吸収剤(UVA)、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、又はそれらの組み合わせであり得る。UVAは、典型的には、400ナノメートル(nm)未満の波長で電磁放射を吸収又は遮断することができるが、400nmを超える波長で実質的に透過性のままである化合物である。UVAは、UV光から吸収した光エネルギーを可逆的な分子内プロトン移動による熱として発散することが可能であることが、当業者には知られている。そのような化合物は、光誘起分解の物理的及び化学的プロセスに介入することができる。UVAは、典型的には、少なくとも70%(いくつかの実施形態では、180nm~400nmの波長領域のUV光のうちの少なくとも80%、又は90%超)を吸収するのに十分な量で、本明細書に開示されるコーティング組成物中に含まれる。典型的には、UVAは、ポリマー中で高溶解性である場合、吸収性が高く、光耐久性があり、200℃~300℃の温度範囲で熱的に安定していることが望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるコーティング組成物中の安定剤は、赤シフトUVA(RUVA)である。RUVAは、典型的に、長波UV領域において強化されたスペクトル有効範囲を有し、ポリマーの黄変を引き起こし得る長波長UV光を遮断することができる。HALSは、典型的には、光分解から生じ得る、フリーラジカルを捕捉することができる化合物である。
【0035】
任意の部類のUVAが有用であり得る。有用な部類として、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、シンナメート、シアノアクリレート、ジシアノエチレン、サリチレート、オキサニリド、及びパラアミノベンゾエートが挙げられる。これらの実施形態のいくつかでは、ペンダント紫外線吸収基がトリアジン、ベンゾフェノン、又はベンゾトリアゾールを含む。好適なUVAとしては、トリアジン(例えば、2-(4,6-ジフェニル-1-3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]フェノール及び2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジンなどのヒドロフェニル置換トリアジン)、ヒドロキシベンゾフェノン、及びベンゾトリアゾール(例えば、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール)が挙げられる。好適なHALSとしては、デカン二酸、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルが挙げられる。好適なUVA及びHALSとしては、例えば、商品名「TINUVIN」及び「CHIMASSORB」でBASF,Florham Park,NJから入手可能なものが挙げられる。いくつかの市販されているUVA及びHALSは、有利には、例えば、商品名「TINUVIN 5333-DW」及び「TINUVIN 123-DW」でBASFから、水性分散液として提供される。
【0036】
UVAはまた、本開示の組成物中のアクリルポリマー、アルキドポリマー、又は他のポリマーを製造するために有用なモノマーと共重合することができる。好適な重合可能なUVAの例としては、2-(シアノ-β,β-ビフェニルアクリロイルオキシ)エチル-1-メタクリレ-ト、2-(α-シアノ-β,β-ビフェニルアクリロイルオキシ)エチル-2-メタクリレ-ト、N-(4-メタクリロイルフェノ-ル)-N’-(2-エチルフェニル)オキサミド、ビニル4-エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメ-ト、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(4-アクリロイルオキシブトキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、4-(アリロキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-3’-メタクリルアミドメチル-5’-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-ビニルフェニル)-2-ベンゾトリアゾ-ル、2-(2H-ベンゾトリアゾ-ル-2-イル)-4-メチル-6-(2-プロペニル)フェノ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシプロピルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシプロピルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-メチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-メトキシフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-エチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-エトキシフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-メチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-メトキシフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-エチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-エトキシフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメトキシフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジエトキシフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジエチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、これらのアクリレートのメタクリレート、及びこれらのメタクリレートのアクリレートが挙げられる。
【0037】
UV光に対する安定剤は、任意の有用な量で存在することができる。いくつかの実施形態では、組成物中の固形分の総重量に基づいて(すなわち、いかなる水又は有機溶媒も除く)、安定剤は、最大6、5、4、又は3重量パーセントの量で存在する。いくつかの実施形態では、組成物中の固形分の総重量に基づいて、安定剤は少なくとも0.005又は0.1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、組成物中の固形分の総重量に基づいて、安定剤は0.5重量%~5重量%、又は1重量%、又は2重量%の範囲で存在する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物はまた、アルキドポリマーを含む。アルキドポリマーは、典型的には、多塩基酸、アルコール、及び不飽和油又は脂肪酸の組み合わせに基づく縮合由来ポリエステルとして定義される。いくつかの実施形態では、アルキドポリマーは、様々な乾性油、半乾性油、及び不乾性油と異なる割合で反応したポリヒドロキシルアルコール及びポリカルボン酸のポリエステルである。アルキドポリマーは、例えば、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのポリカルボン酸から、並びに存在する場合、そのような酸の無水物から製造され得る。ポリカルボン酸と反応させることができる有用な多価アルコールとしては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び2,3-ブチレングリコールが挙げられる。好適な油としては、ココナツ油、魚油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、綿実油、ベニバナ油、大豆油、及びトール油が挙げられる。油は、製造中のエステル化によって樹脂分子に結合され、ポリマー中で共有結合している状態になる。完全飽和油は、アルキドに可塑化効果を与える傾向があるが、不飽和油は、酸化により架橋し、急速に乾燥して、より頑丈且つ耐久性のあるアルキド樹脂をもたらす傾向がある。様々な割合の、多価カルボン酸、多価アルコール、及び油を使用して、様々な特性のアルキド樹脂を得る。市販のグリセロールアルキドは、エステル交換及び脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリドの混合物をもたらす、脂肪油とグリセロールとの反応によって調製することができる。これらのモノグリセリド及びジグリセリドは、二塩基酸又は酸無水物と反応して、ペンダント脂肪酸基が結合しているポリエステル樹脂を形成する。アルキド樹脂は、例えば、Polymer Science:A Comprehensive Reference,Vol.10”Polymers for a Sustainable Environment and Green Energy”by T.W.Abraham,R.Hofer,2012,pp.27-28に記載されている。
【0039】
水系アルキドポリマーは、例えば、商品名「BECKOSOL AQ」でReichhold Inc.から、商品名「VOXTAR」でPerstorp ABから、及び商品名「SYNAQUA」でArkemaから市販されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、アクリルポリマーとアルキドポリマーとの総重量に基づいて、その実施形態のいずれかにおいて上述されるアクリルポリマーは少なくとも50重量パーセントの量で存在し、アルキドポリマーは、少なくとも5重量パーセントの量で存在する。アクリルポリマーとアルキドポリマーとの総重量に基づいて、アクリルポリマーは50重量パーセント~95重量パーセント、60重量パーセント~90重量パーセント、75重量パーセント~95重量パーセント、又は80重量パーセント~95重量パーセントの範囲の量で存在し得る。アクリルポリマーとアルキドポリマーとの総重量に基づいて、アルキドポリマーは5重量パーセント~50重量パーセント、10重量パーセント~40重量パーセント、5重量パーセント~25重量パーセント、5重量パーセント~20重量パーセント、5重量パーセント~15重量パーセント、10重量パーセント~15重量パーセント、最大20重量パーセント、又は最大15重量パーセントの範囲の量で存在し得る。アルキドポリマーの存在は、典型的には、以下の実施例における表5の比較例9と比較例3の比較に示されるように、基材への組成物の接着のために有益である。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ポリウレタンを含む。ポリウレタンは、典型的には、1分子当たり平均で少なくとも約2、10、又は20個のウレタン結合を含む。ポリウレタンポリマー中に存在するウレタン結合の数は、特にハイエンドでは制限されないが、いくつかの実施形態では、ポリウレタンポリマーは、ポリウレタンポリマーの1分子当たり平均で1,000、200、又は50未満のウレタン結合を含む。ポリウレタンは、任意の好適な構造配置の主鎖を含み得る。主鎖は、任意選択で、1つ以上の他の主鎖結合(例えば、アミド、エステル、カーボネートエステル、エポキシ、エーテル、イミド、イミン、若しくは尿素結合、又はそれらの組み合わせ)を含んでもよい。更に、ポリウレタンポリマーの主鎖は、任意選択で、1つ以上のオリゴマー又はポリマーセグメント(例えば、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリ(カーボネートエステル)、エポキシ、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイミン、若しくはポリ尿素セグメント、又はそれらの組み合わせ)を含んでもよい。ポリウレタンは、直鎖状、実質的に直鎖状、又は分岐状であってもよい。
【0042】
ポリウレタンは、任意の好適な反応物及び任意の好適なプロセスを使用して形成され得る。ポリウレタンは、典型的には、1つ以上のイソシアネート、1つ以上のポリオール、及び任意選択で1つ以上の追加の反応物(例えば、1つ以上の活性水素基を有する)を含む出発物質から形成される。場合によっては、化学量論的過剰のイソシアネートをポリオールと反応させる。例えば、イソシアネート基対ヒドロキシル基の比は、約1.1:1~3:1(NCO:OH)、約1.2:1~2.5:1、又は約1.3:1~2:1の範囲であり得る。ポリウレタンは、任意の好適な分子量、例えば、約1,000~約10,000又は約2,500~約7,500の数平均分子量を有し得る。
【0043】
好適なイソシアネートとしては、1つ、2つ、3つ、又は4つのイソシアネート基を有するもの、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(すなわち、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン);5-イソシアナト-1-(2-イソシアナトエタ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン;5-イソシアナト-1-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン;5-イソシアナト-(4-イソシアナトブタ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン;1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン;1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン;1-イソシアナト-2-(4-イソシアナトブタ-1-イル)シクロヘキサン;1,2-ジイソシアナトシクロブタン;1,3-ジイソシアナトシクロブタン;1,2-ジイソシアナトシクロペンタン;1,3-ジイソシアナトシクロペンタン;1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン;1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン;1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン;ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;エチルエチレンジイソシアネート;トリメチルヘキサンジイソシアネート;ヘプタメチレンジイソシアネート;2-ヘプチル-3,4-ビス(9-イソシアナトノニル)-1-ペンチル-シクロヘキサン;1,2-、1,4-、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;1,2-、1,4-、及び1,3-ビス(2-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン;1,3-ビス(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン;1,2-、1,4-、又は1,3-ビス(4-イソシアナトブチ-1-イル)シクロヘキサン;液体ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン;並びにそれらの誘導体又は混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、イソシアネート又はイソシアネートの混合物は、非芳香族(例えば、脂肪族)である。いくつかの実施形態では、イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のうちの少なくとも1つを含む。
【0044】
ポリウレタンを調製するために好適なポリオールとしては、モノマー、オリゴマー、ポリマー、及びそれらの混合物が挙げられ、ジオール、トリオール、4個以上のヒドロキシル基を有するポリオール、及びそれらの混合物が挙げられる。反応物として、又はオリゴマー若しくはポリマーポリオールの出発物質として使用するためのポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、1,4-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレン若しくはポリプロピレングリコール、イソプロピリデンビス(p-フェニレン-オキシプロパノール-2)、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なオリゴマー及び/又はポリマーポリオールの例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテル-エステルポリオール、ポリ尿素ポリオール、ポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、飽和若しくは不飽和ポリオレフィンポリオール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、少なくとも1つのイソシアネート基を有し、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの末端イソシアネート基を有するプレポリマー中間体を通して形成される。そのようなイソシアネート末端プレポリマーは、例えば、1分子当たり少なくとも2つの活性水素基を有する材料をジイソシアネートなどのイソシアネート化合物と反応させることによって生成され得る。好適な「活性水素基」としては、酸素(O)、硫黄(S)、及び/又は窒素(N)原子に結合した水素を有する基(例えば、-OH、-COOH、-SH、及び-NH)が挙げられる。材料は、アクリル、アルキド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、又はそれらの混合物などのオリゴマー若しくはポリマー材料であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、水分散性ウレタン樹脂である。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、十分な数の塩の基又は塩形成基を含み、水性担体と組み合わせると安定な水性分散液を提供する。いくつかの実施形態では、塩の基若しくは塩形成基を有するモノマー又はオリゴマーは、ポリウレタンを生成するために使用される反応物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、ジメチロールプロピオン酸又は無水トリメリト酸などの酸又は無水物官能性、塩形成モノマーを使用してポリウレタンを形成する。あるいは、プレポリマーを、塩基若しくは塩形成基を含む化合物と反応させてもよい。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、第三級アミンで中和された酸若しくは無水物基(又はアニオン性塩の基を形成することができる他の中和可能な基)を含む。
【0047】
本開示を実施するために有用ないくつかのポリウレタンは、例えば、商品名「U4101」、「U4000」、「U915」、及び「U933」でAlberdingk Boleyからエマルジョンとして市販されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、アクリルポリマー、ポリウレタン、及びアルキドポリマーの総重量に基づいて、ポリウレタンポリマーは少なくとも5重量パーセントの量で存在する。アクリルポリマー、ポリウレタン、及びアルキドポリマーの総重量に基づいて、ポリウレタンは5重量パーセント~25重量パーセント、10重量パーセント~25重量パーセント、又は5重量パーセント~20重量パーセントの範囲の量で存在し得る。ポリウレタンの存在は、以下の実施例における表5の比較例9と比較例3の比較に示されるように、基材への組成物の接着のために有益であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ポリウレタンを本質的に含まない。この文脈において、「本質的に含まない」とは、組成物がポリウレタンを含まないか、又は組成物の総重量に基づいて2重量%、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.05重量%、又は0.01重量%以下のポリウレタンを含むことを意味する。
【0049】
本開示の組成物は、他の添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、接着促進剤、消泡剤、湿潤剤、合体剤、脱気剤、充填剤、殺生物剤、酸化防止剤、又はフォトルミネセンス化合物のうちの少なくとも1つを含む。好適な接着促進剤としては、商品名「DYNASYLAN」でEvonikから入手可能なものなどの官能性シラン(例えば、アミノシラン)が挙げられる。好適な充填剤としては、シリカ及びグラスバブルズが挙げられる。好適なシリカ充填剤は、例えば、商品名「DISPERCOLL S 5005」でCovestro (Pittsburgh,Penn.)から水性分散液として市販されている。シリカなどの充填剤は、例えば、UV光を遮断又は散乱させるために有用であり得る。任意の好適な量の充填剤が、組成物中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中の固形分の総重量に基づいて(すなわち、いかなる水又は有機溶媒も除く)、最大10、8、又は5重量パーセントの充填剤(シリカを含む)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中の固形分の総重量に基づいて、少なくとも1、3、又は5重量%の充填剤(シリカを含む)を含む。
【0050】
好適な殺生物剤の例としては、防カビ剤、殺真菌剤、殺虫剤、及び殺藻剤が挙げられる。そのような材料の例としては、有機スズ化合物(例えば、トリフェニル及びトリブチルスズオキシド);塩素化化合物(例えば、トリ-、テトラ-、及びペンタクロロフェノール、モノ-及びジクロロナフタレン);有機水銀化合物(例えば、酢酸フェニル水銀及びオレイン酸フェニル水銀);3-ヨード-2-プロピニルブチルカーボネート;Buckman Laboratories,Inc.から商品名「BUSAN 1025」で入手可能な80重量パーセントの溶媒中の10重量パーセントのメチレンビス(チオシアネート)と、10重量パーセントの2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールとのブレンド;金属ナフテン酸塩(例えば、ナフテン酸亜鉛及びナフテン酸銅);プロピコナゾール;テブコナゾール;イミダクロプリド;及びホウ酸亜鉛が挙げられる。更に、好適な殺生物剤としては、商品名「ACTICIDE」でThor Specialties,Inc.,Shelton,Conn.から入手されるものが挙げられる。殺生物剤は、任意の有用な量で、本開示の組成物中に含まれ得る。いくつかの実施形態では、組成物中の固形分の総重量に基づいて、殺生物剤は0.001~1、又は0.01~1重量パーセントのレベルで組成物中に存在する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、フォトルミネセンス化合物を含む。有用なフォトルミネセンス化合物としては、UV又は青色光への曝露時に蛍光を発するものが挙げられる。本開示の組成物に有用なフォトルミネセンス化合物の例としては、ローダミン(例えば、[9-(2-カルボキシフェニル)-6-ジエチルアミノ-3-キサンテニリデン]-ジエチルアンモニウムクロリド(ローダミンB)、9-[2-(エトキシカルボニル)フェニル]-3,6-ビス(エチルアミノ)-2,7-ジメチルキサンチリウムクロリド(1:1)(ローダミンG)、及び6-アミノ-9-(2-メトキシカルボニルフェニル)キサンテン-3-イリデン]アザニウムクロリド(ローダミン123))、並びに3’,6’-ジヒドロキシスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(フルオレセイン)が挙げられる。
【0052】
フォトルミネセンス化合物は、任意の有用な量で、本開示の組成物中に含まれ得る。いくつかの実施形態では、フォトルミネセンス化合物は、組成物中の固形分の総重量(すなわち、いかなる水又は有機溶媒も除く)に基づいて、最大5、4、3、2、1.5、1、又は0.5重量パーセントの量で組成物中に含まれる。いくつかの実施形態では、組成物中の固形分の総重量に基づいて、フォトルミネセンス化合物は少なくとも0.05、0.1、又は0.25重量パーセントの量で組成物に含まれる。フォトルミネセンス化合物は、以下に更に詳細に記載されるように、組成物が基材に均一に適用されたか、又は基材上にそのまま残っているかを検査するために有用であり得る。フォトルミネセンス化合物の選択において、検査の条件下で大幅に光退色することがない化合物を選択することが有利であり得る。
【0053】
本開示は、その実施形態のいずれかに上述した本開示の組成物を製造する方法を含む。本方法は、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤を組み合わせて、組成物を製造することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アルキドポリマーをアクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ポリウレタンを、アクリルポリマー、任意選択のアルキドポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む。成分は、概して、任意の順序で組み合わせることができ、従来の方法によって混合することができる。
【0054】
様々な実施形態で上述したように、本開示の組成物は、水を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物のための担体流体は、主に水を含み、したがって、組成物は「水性」と見なされ得る。例えば、いくつかの実施形態では、担体流体は、担体流体の総重量に基づいて、少なくとも80、90、又は95重量パーセントの水である。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、架橋性アクリル分散液(例えば、エマルジョン)、撥水性ポリマー、安定剤、及び任意選択でアルキドポリマー、ポリウレタン、並びに/又は殺生物剤を含む水性組成物を含むか、又はそれらに由来する。架橋性アクリル分散液(例えば、エマルジョン)は、それらの実施形態のいずれかで上述したもののいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、架橋性アクリル分散液(例えば、エマルジョン)は、それらの実施形態のいずれかで上述したように、カルボニル基又は金属塩と反応性の少なくとも2つのアミン窒素を有する窒素含有化合物などの架橋剤を含む。本発明者らは、撥水性ポリマー、安定剤、及び任意選択のアルキドポリマー、ポリウレタン、並びに/又は殺生物剤の存在が、概して、水を除去して架橋されたアクリルポリマーを形成する際に、架橋を受けるための架橋性アクリル分散液(例えば、エマルジョン)の能力を害するものではないことを見出した。
【0056】
いくつかの実施形態では、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、紫外線に対する安定剤、及び任意選択のアルキドポリマー並びに/又はポリウレタンは、水が連続相の主成分であり、場合によっては、排他的成分であり分散液の分散相中にある粒子の形態である。いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、5ミクロン以下、いくつかの実施形態では、1ミクロン以下、500ナノメートル以下、400ナノメートル以下、300ナノメートル以下、又は200ナノメートル以下の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、少なくとも1ナノメートル、5ナノメートル、10ナノメートル、50ナノメートル、又は少なくとも100ナノメートルの平均粒径を有する。粒径は、国際規格ISO 13321に記載される光子相関分光法によって測定することができる。
【0057】
本開示の組成物が水性であるとき、組成物はまた、1つ以上の共溶媒(例えば、凝集溶媒)を含有してもよいが、これは必須ではない。有用な凝集溶媒の例としては、多価アルコールのエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチル(若しくはモノエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(若しくはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(若しくはモノエチル)エーテル、2-ブトキシエタノール(すなわち、ブチルセルソルブ)、又はジ(プロピレングリコール)メチルエーテル(DPM));アルキレングリコール及びポリアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);並びに2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「TEXANOL」で、Eastman Chemical Company,Kingsport,TNから入手可能なエステルアルコール)が挙げられる。組成物は、組成物の総重量に基づいて、最大5、4、3、2、又は1重量パーセントの凝集溶媒を含有することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、紫外線に対する安定剤、及び任意選択のアルキドポリマー並びに/又はポリウレタンは、例えば、界面活性剤によって安定化されるエマルジョンとして提供される。エマルジョンの総重量に基づいて、界面活性剤は少なくとも0.001重量パーセント、0.005重量パーセント、0.01重量パーセント、又は少なくとも0.05重量パーセントで存在し得る。エマルジョンの総重量に基づいて、界面活性剤は最大10重量パーセント、7.5重量パーセント、5重量パーセント、又は最大3重量パーセントで存在し得る。2つ以上のエマルジョンが組み合わされて本開示の組成物を製造するとき、組成物は、2つ以上の界面活性剤を含んでもよく、組成物の総重量に基づいて、界面活性剤の組み合わされた量はこれらの量のいずれかであり得る。
【0059】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、若しくは非イオン性界面活性剤又は分散剤、又はそれらの相溶性混合物、例えば、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との混合物であり得る。好適なカチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルピリジニウム、セチルジメチルアミンアセテート、及びアルキル基が8~18個の炭素原子を有する塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムが挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸アルカリ脂肪アルコール;イソプロピルベンゼンスルホン酸カリウムなどのスルホン酸アリールアルキル;スルホコハク酸オクチルナトリウムなどのスルホコハク酸アルカリアルキル;及び1~5個のオキシエチレン単位を有するオクチルフェノキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウムなどのアルカリアリールアルキルポリエトキシエタノールスルフェート若しくはスルホネートが挙げられる。反応性官能基を有する界面活性剤も有用であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、「低VOCコーティング組成物」である。本明細書で使用される場合、「低VOC組成物」という用語は、組成物が、組成物の総重量に基づいて、最大5、4、3、2、又は1重量パーセントのVOC(揮発性有機化合物)を含有することを意味する。本明細書で使用される場合、「VOC」という用語は、少なくとも1つの炭素原子を有し、大気光化学反応に関与する化合物を指す。典型的には、揮発性有機化合物は、20℃で0.1mmHg超の蒸気圧、又は216℃未満の沸点のうちの少なくとも1つを有する。「VOC」の例としては、アルコール、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、その実施形態のいずれかで上述される本開示の組成物を製造する方法は、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液を組み合わせて、組成物を製造することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アルキドポリマーの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ポリウレタンの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、任意選択のアルキドポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む。これらの分散液のいずれかが、水中に分散した液体形態でポリマーを含む場合、分散液は、エマルジョンと見なすことができる。成分は、概して、任意の順序で組み合わせることができ、従来の方法によって混合することができる。
【0062】
本開示は、本開示の組成物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する基材を含む物品を提供する。好適な基材としては、セルロース材料、例えば、広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、合板、板紙、厚紙、圧縮繊維ボード、木材ベニヤ、デッキボード、フェンスボード、パーティクルボード、チップボード、及びファイバーボードが挙げられる。例としては、中密度ファイバーボード、高密度ファイバーボード、及び高耐湿性ボードが更に挙げられる。広葉樹材及び針葉樹材の基材を含む基材は、処理されても又は未処理でもよい。そのような材料は、全て、マツ、オーク、カエデ、マホガニー、及びチェリーなどの木材で製造され得る。しかしながら、場合によっては、材料は、樹脂材料、すなわち、フェノール複合材料などの木材/樹脂複合材料、木材繊維と熱可塑性ポリマーとの複合材、及びセメント、繊維、又はプラスチッククラッディングで補強された木材複合材などの別の材料と組み合わせて木材を含み得る。別の例では、基材は、木材及び木材副生成物粒子並びに結合樹脂を含む粒子ボードであり得る。いくつかの実施形態では、基材は、処理された又は未処理の広葉樹材(例えば、オーク、マホガニー、カエデ、及びチェリー)、針葉樹材(例えば、マツ及びスギ)、配向性ストランドボード、パーティクルボード、ファイバーボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、基材は、処理された又は未処理の広葉樹材(例えば、オーク、マホガニー、カエデ、及びチェリー)、針葉樹材(例えば、マツ及びスギ)、配向性ストランドボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含む。
【0063】
本開示は、そのような物品を製造する方法を提供する。本方法は、組成物を基材の表面の少なくとも一部に適用することを含む。組成物は、様々な技術(例えば、浸漬、噴霧、ブラッシング、ロールコーティング、バーコーティング、又はカーテンコーティング)を直接的に使用して表面に適用してもよく、又は組成物が、最初に広げる器具(例えば、布又はブラシ)に適用され、次いで表面に適用されてもよい。本方法は、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤を組み合わせて、組成物を製造することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、アルキドポリマー又はポリウレタンのうちの少なくとも1つを、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液を組み合わせて、組成物を製造することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アルキドポリマー又はポリウレタンのうちの少なくとも1つの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む。成分は、概して、任意の順序で組み合わせることができ、従来の方法によって混合することができる。これらの分散液のいずれかが、水中に分散した液体形態でポリマーを含む場合、分散液は、エマルジョンと見なすことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、物品を製造する方法は、組成物を基材の表面の少なくとも一部に適用する前に、基材を加熱することを更に含む。加熱は、基材の表面が少なくとも75℃、80℃、又は少なくとも90℃の温度に達するのに十分な任意の時間で実行され得る。基材は、例えば、上述したOSBを製造するために熱及び圧力を適用する際に、製造プロセスの一部として加熱することができる。他の実施形態では、基材は、製造及び一定期間の貯蔵後に加熱することができる。これらの実施形態では、基材は、少なくとも75℃、80℃、又は少なくとも90℃、且つ最大150℃、125℃、又は100℃の温度に設定されたオーブン内で、少なくとも30、60、又は90分間加熱され得る。加熱はまた、例えば、ヒートガン又は赤外線ランプで実行されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、物品を製造する方法は、コーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部に適用した後に、基材を加熱することを更に含む。加熱は、例えば、オーブン、ヒートガン、又は赤外線ランプで実行され得る。ここでもまた、加熱は、基材の表面が少なくとも75℃、80℃、又は少なくとも90℃の温度に達するのに十分な任意の時間で、例えば、少なくとも10、15、30、60、又は90分間実行され得る。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、少なくとも75℃、80℃、又は少なくとも90℃、且つ最大150℃、125℃、又は100℃の温度に設定されたオーブン内で、少なくとも10、15、30、60、又は90分間加熱され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示の物品を製造する方法は、水を組成物から除去することを更に含む。加熱は、水を組成物から除去するために有用であり得る。本発明者らは、組成物が水中の分散液の形態であり、基材がその実施形態のいずれかに上述されたように加熱されるとき、水が20、10、又は5秒以内に除去され得ることを見出した。
【0067】
以下の実施例に示されるように、本開示の組成物は、基材上にコーティングされたときに、少なくとも90度、95度、100度、105度、又は少なくとも110度の接触角を提供し得る。より高い接触角は、水の湿潤及び基材への浸漬に対する耐性の向上の指標である。以下の実施例の表5に更に示されるように、本開示の組成物は、比較例よりも良好な基材への接着を有する。
【0068】
以下の実施例の表7に更に示されるように、90日間の屋外曝露後に、コーティングされた基材が有する、国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値は15超である。15のb値は、試料が灰色に見え始めるときの指標である。灰色化の程度は、例えば、標準色度法、例えば、国際照明委員会によって確立されたCIELAB色空間スケールによって決定することができる。CIELABスケールは、3つのパラメータ、L、a、及びbを有する。「L」は、明度値であり、「a」は、赤色度(+a)及び緑色度(-a)の尺度であり、「b」値は、黄色度(b+)及び青色度(-b)の尺度である。「a」及び「b」値の両方について、0からの逸脱が大きいほど、色が鮮やかになる。CIELABのb値を得るためのコーティングされた基材の測定は、商品名「COLORFLEX」でHunter Lab(Reston,VA)から入手可能な比色計を用いて、以下の実施例に記載される方法を使用して行われる。表7に示されるように、本開示の実施例は、90日の屋外曝露後に、比較例よりも高いb値を有していた。また、表7に示されるように、コーティングされた物品が灰色に見えるまでの時間は、比較例よりも本開示の実施例で長かった。予想外に、撥水性ポリマーの存在は、撥水性ポリマーを含まずに紫外線に対する安定剤を含む組成物よりも、より高いb値及び灰色の外観に達するのにより長い時間を提供した。例えば、表7の実施例5に対比して比較例8を参照されたい。
【0069】
本開示は、その表面の少なくとも一部分にコーティングを有する広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含むコーティングされた物品を提供し、1日の最高気温の平均が20℃~25℃の範囲での90日間の屋外曝露であって、その間、コーティング及び表面が、250mm~265mmの範囲の総降水量、12~14時間の範囲の平均日照時間、及び4.0~4.5の範囲の平均UV指数に曝露された屋外曝露の後に、少なくとも部分的にコーティングされた表面が有する、国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値が15超である。有用なコーティングは、それらの実施形態のいずれかで上述されたもののいずれかを含む。これらの条件下での屋外曝露時の湿度は、いくつかの場合、70%~85%、75%~85%、又は約80%の範囲であり得る。平均日温度、降水量、平均日照時間、平均UV指数、及び湿度は、いくつかの組織によって追跡されており、https://climate.weather.gc.ca、https://www.worldweatheronline.com、及びhttp://www.timebie.com/sunなどの様々なウェブサイトに見出すことができる。
【0070】
本発明者らは、1日の最高気温の平均が20℃~25℃の範囲での90日間の屋外曝露であって、その間、その少なくとも部分的にコーティングされた表面が、250mm~265mmの範囲の総降水量、12~14時間の範囲の平均日照時間、及び4.0~4.5の範囲の平均UV指数に曝露された屋外曝露の後に、少なくとも部分的にコーティングされた物品の表面が有する、国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値が15超かどうかが、以下の実施例に記載されるように、ASTM G155-13,Standard Practice for Operating Xenon Arc Light Apparatus for Exposure of Non-Metallic Materialsに従って、ASTM G155-13のAppendix X1のTable X3.1のCycle 1で概説された個別化設定を用いて、及び以下の設定を有して:
照射量:340nmで0.68W/m以上
黒色パネル温度:70℃(明期)、70℃(明期及び水噴霧期)
チャンバ温度:47℃(明期)、47℃(明期及び水噴霧期)
相対湿度:70%(明期)、95%(明期及び水噴霧期)
耐候試験が実施される場合、Atlas Material Testing TechnologyからのAtlas Ci5000 Xenon Weather-Ometerで加速耐候試験を使用して決定することができることを見出した。本発明者らは、この試験方法を使用する69~86MJ/mの、295nm~385nmの総放射照度が、上述した条件下で、90日間の自然劣化の等価物を提供することを見出した。したがって、本発明者らは、1日の最高気温の平均が20℃~25℃の範囲での90日間の屋外曝露であって、その間、その少なくとも部分的にコーティングされた表面が、250mm~265mmの範囲の総降水量、12~14時間の範囲の平均日照時間、及び4.0~4.5の範囲の平均UV指数に曝露された屋外曝露の後に、少なくとも部分的にコーティングされた物品の表面が有する、上記の加速耐候性後にb値が15超である国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値が15超であることを判定した。
【0071】
ある特定のポリマーコーティング組成物は、水に曝露されたときに白化するか又は乳白色の外観を示し得る。典型的には、そのような白化は、可逆的であり、乾燥時に消失する。本開示の組成物では、そのような白化は、屋外曝露されると、組成物でコーティングされたセルロース系物品の灰色化を防止又は遅延させる組成物の能力を妨害しないが、コーティング自体の乳白色の外観は、状況によっては、あまり望ましくない場合がある。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、水に曝露されたときにそのような白化に抵抗することができる。これらの実施形態では、組成物は、目視検査によって判定して、7日間水に浸漬された後に透明なままであり得る。本開示の組成物中の撥水性ポリマーは、本開示の組成物が白化する傾向を効果的に低減する。例えば、実施例11対比較例16の比較、比較例13対比較例10の比較、及び比較例17対比較例14の比較を参照されたく、これらの全ては、撥水性ポリマーを含む組成物が、撥水性ポリマーを含まないことを除いて同じであるか、又は非常に類似した組成物よりも乳白色の外観を発現する可能性が低いことを示している。本開示の組成物のために選択されたアクリル樹脂は、組成物が白化する傾向に影響を及ぼし得る。例えば、以下の実施例12対8を参照されたい。また、以下の実施例に示されるように、アルキドポリマーの存在は、組成物における白化のレベルを低減させることができ、例えば、実施例14~17対比較例10~13をそれぞれ参照されたい。更に、組成物を高温で硬化させることは、組成物が白化する傾向を低減させることができる。以下の実施例に報告されるように、95℃で15分間硬化される場合、実施例及び比較例の大部分は、7日間の水浸漬にわたって透明なままであった。
【0072】
それらの実施形態のいずれかにおける本開示の物品及びコーティングされた物品は、最大250マイクロメートル、最大125マイクロメートル、最大100マイクロメートル、最大50マイクロメートル、又は最大25マイクロメートルのコーティング厚さを有し得る。
【0073】
コーティング中のフォトルミネセンス化合物の存在は、コーティングが表面全体に適用されることを確認するために使用することができる。この確認は、適用プロセス中にインラインで行われても、又はコーティング後及びコーティングの乾燥後に品質の確認として追加されてもよい。確認は、コーティングされた物品を表面の少なくとも一部分の上のコーティングを検査するために、紫外線又は青色光の少なくとも1つにコーティングされた物品を曝露することによって行うことができる。更に、フォトルミネセンス化合物は、例えば、上記の条件下での90日間の屋外曝露後、又は作業現場で曝露された後のいずれかの環境条件への曝露後に、コーティングの摩耗に関する情報を提供するために有用であり得、それは、例えば、取り扱いによって、又は作業ブーツ若しくは他のツールに曝露されることによって、いくらかの屋外曝露及びいくらかのレベルの摩耗を受けることがある。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態
第1の実施形態において、本開示は、
アクリルポリマーと、
撥水性ポリマーと、
紫外線に対する安定剤であって、安定剤は、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、又はそれらの組み合わせである、紫外線に対する安定剤と、を含む、組成物を提供する。
【0075】
第2の実施形態において、本開示は、アクリルポリマーが、架橋されたものであるか、又は架橋性であるか、のうちの少なくともいずれかである、第1の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0076】
第3の実施形態において、本開示は、架橋するアクリルポリマーが、シラン基、N-メチロール基、アセトアセトキシ基、カルボン酸基、ケトン、若しくはアルデヒドのうちの少なくとも1つを含み、及び/又は架橋されたアクリルポリマーがシロキサン結合、金属キレート化アセトアセトキシ若しくはカルボン酸基、α-アミノアミド基、又はケチミン若しくはアルジミン基のうちの少なくとも1つを含む、第2の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0077】
第4の実施形態において、本開示は、架橋性であるか、又は架橋されているか、の少なくともいずれかであるアクリルポリマーが、組成物中の全アクリルポリマーの少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、又は95%を構成する、第2又は第3の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0078】
第5の実施形態において、本開示は、組成物が、架橋性アクリルポリマー分散液、撥水性ポリマー、及び安定剤を含む水性組成物であり、及び/又はそれに由来し、架橋性アクリルポリマー分散液が、任意選択で架橋剤を含む、第1~第4の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0079】
第6の実施形態において、本開示は、アルキドポリマーを更に含む、第1~第5の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0080】
第7の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー及びアルキドポリマーの総重量に基づいて、アクリルポリマーが少なくとも50重量パーセントの量で存在し、アルキドポリマーが少なくとも5重量%の量で存在する、第6の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0081】
第8の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー及びアルキドポリマーの総重量に基づいて、アルキドポリマーが最大20重量パーセントの量で存在する、第7の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0082】
第9の実施形態において、本開示は、殺生物剤を更に含む、第1~第8の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0083】
第10の実施形態において、本開示は、ポリウレタンを更に含む、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0084】
第11の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー、ポリウレタン、及び任意選択でアルキドポリマーの総重量に基づいて、ポリウレタンポリマーが少なくとも5重量パーセントの量で存在する、第10の実施形態に記載の組成物を提供する。
【0085】
第12の実施形態において、本開示は、撥水性ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0086】
第13の実施形態において、本開示は、撥水性ポリマーが、ワックスを含む、第1~第12の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0087】
第14の実施形態において、本開示は、紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、シンナメート、シアノアクリレート、ジシアノエチレン、サリチレート、オキサニリド、又はパラ-アミノベンゾエートのうちの少なくとも1つを含み、又は紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、又はトリアジンのうちの少なくとも1つを含む、第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0088】
第15の実施形態において、本開示は、組成物が、フォトルミネセンス化合物を更に含む、第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0089】
第16の実施形態において、本開示は、安定剤が、紫外線吸収剤とヒンダードアミン光安定剤との組み合わせである、第1~第15の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0090】
第17の実施形態において、本開示は、水を更に含む、第1~第16の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を提供する。
【0091】
第18の実施形態において、本開示は、第1~第17の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を製造する方法であって、方法が、
アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤を組み合わせて、組成物を製造することを含む、方法を提供する。
【0092】
第19の実施形態において、本開示は、アルキドポリマーを、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む、第18の実施形態に記載の方法を提供する。
【0093】
第20の実施形態において、本開示は、ポリウレタンを、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む、第18又は第19の実施形態に記載の方法を提供する。
【0094】
第21の実施形態において、本開示は、第1~第17の実施形態のいずれか1つに記載の組成物を製造する方法であって、方法が、
アクリルポリマーの水中分散液であって、任意選択でアクリルポリマーの分散液が、架橋剤を更に含む、アクリルポリマーの分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液を組み合わせて、組成物を製造することを含む、方法を提供する。
【0095】
第22の実施形態において、本開示は、アルキドポリマーの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む、第21の実施形態に記載の方法を提供する。
【0096】
第23の実施形態において、本開示は、ポリウレタンの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、組成物を製造することを更に含む、第21又は第22の実施形態に記載の方法を提供する。
【0097】
第24の実施形態において、本開示は、第1~第17の実施形態のいずれか1つに記載の組成物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する基材を含む、物品を提供する。
【0098】
第25の実施形態において、本開示は、基材が、処理された又は未処理の広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、パーティクルボード、ファイバーボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含む、第24の実施形態に記載の物品を提供する。
【0099】
第26の実施形態において、本開示は、第24又は第25の実施形態に記載の物品を製造する方法であって、方法が、第1~第17の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、又は第18~第23の実施形態のいずれか1つに記載の方法によって製造された組成物を、基材の少なくとも一部に適用することを含む、方法を提供する。
【0100】
第27の実施形態において、本開示は、組成物を基材の少なくとも一部に適用する前に、基材を加熱することを更に含む、第26の実施形態に記載の方法を提供する。
【0101】
第28の実施形態において、本開示は、コーティング組成物を、基材の少なくとも一部に適用した後に、基材を加熱することを更に含む、第26又は第27の実施形態に記載の方法を提供する。
【0102】
第29の実施形態において、本開示は、基材を加熱することが、少なくとも75℃の温度で少なくとも15分間行われる、第27又は第28の実施形態に記載の方法を提供する。
【0103】
第30の実施形態において、本開示は、コーティング組成物から水を除去することを更に含む、第26~第29の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0104】
第31の実施形態において、本開示は、コーティングで少なくとも部分的にコーティングされている表面を有する広葉樹材、針葉樹材、配向性ストランドボード、又は合板のうちの少なくとも1つを含むコーティングされた物品であって、1日の最高気温の平均が20℃~25℃の範囲での90日間の屋外曝露であって、その間、その少なくとも部分的にコーティングされた表面が、250mm~265mmの範囲の総降水量、12~14時間の範囲の平均日照時間、及び4.0~4.5の範囲の平均UV指数に曝露された屋外曝露の後に、少なくとも部分的にコーティングされた物品の表面が有する、国際照明委員会のL、a、及びbスケールでのb値が15超である、コーティングされた物品を提供する。
【0105】
第32の実施形態において、本開示は、コーティングが、
アクリルポリマーと、
撥水性ポリマーと、
紫外線に対する安定剤であって、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、又はそれらの組み合わせである、紫外線に対する安定剤と、を含む、第31の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0106】
第33の実施形態において、本開示は、アクリルポリマーが、架橋されているか、又は架橋性であるか、の少なくともいずれか1つである、第32の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0107】
第34の実施形態において、本開示は、架橋性アクリルポリマーが、シラン基、N-メチロール基、アセトアセトキシ基、カルボン酸基、ケトン、若しくはアルデヒドのうちの少なくとも1つを含み、及び/又は架橋されたアクリルポリマーがシロキサン結合、金属キレート化アセトアセトキシ若しくはカルボン酸基、α-アミノアミド基、又はケチミン若しくはアルジミン基のうちの少なくとも1つを含む、第33の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0108】
第35の実施形態において、本開示は、架橋性であるか、又は架橋されているか、の少なくともいずれかであるアクリルポリマーが、コーティング中の全アクリルポリマーの少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、又は95%を構成する、第33又は第34の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0109】
第36の実施形態において、本開示は、コーティングが、架橋性アクリルポリマー分散液、撥水性ポリマー、及び安定剤を含む水性組成物であり、並びに/又はそれに由来し、架橋性アクリルポリマー分散液が、任意選択で架橋剤を含む、第32~第35の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0110】
第37の実施形態において、本開示は、コーティングが、アルキドポリマーを更に含む、第31~第36の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0111】
第38の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー及びアルキドポリマーの総重量に基づいて、アクリルポリマーが少なくとも50重量パーセントの量で存在し、アルキドポリマーが少なくとも5重量%の量で存在する、第37の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0112】
第39の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー及びアルキドポリマーの総重量に基づいて、アルキドポリマーが最大20重量パーセントの量で存在する、第37又は第38の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0113】
第40の実施形態において、本開示は、コーティングが、殺生物剤を更に含む、第31~第39の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0114】
第41の実施形態において、本開示は、コーティングが、ポリウレタンを更に含む、第31~第40の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0115】
第42の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー、ポリウレタン、及び任意選択でアルキドポリマーの総重量に基づいて、ポリウレタンが少なくとも5重量パーセントの量で存在する、第41の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0116】
第43の実施形態において、本開示は、撥水性ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、第32~第42の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0117】
第44の実施形態において、本開示は、撥水性ポリマーが、ワックスを含む、第32~第43の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0118】
第45の実施形態において、本開示は、紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、シンナメート、シアノアクリレート、ジシアノエチレン、サリチレート、オキサニリド、又はパラ-アミノベンゾエートのうちの少なくとも1つを含む、第32~第44の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0119】
第46の実施形態において、本開示は、紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、又はトリアジンのうちの少なくとも1つを含む、第45の実施形態に記載のコーティングされた物品を提供する。
【0120】
第47の実施形態において、本開示は、安定剤が、紫外線吸収剤とヒンダードアミン光安定剤との組み合わせである、第32~第46の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0121】
第48の実施形態において、本開示は、コーティングが、フォトルミネセンス化合物を更に含む、第31~第47の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を提供する。
【0122】
第49の実施形態において、本開示は、第32~第48の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品を製造する方法であって、方法が、
アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤を含むコーティング組成物を、基材の少なくとも一部分に適用することを含む、方法を提供する。
【0123】
第50の実施形態において、本開示は、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤を組み合わせて、コーティング組成物を製造することを更に含む、第49の実施形態に記載の方法を提供する。
【0124】
第51の実施形態において、本開示は、アルキドポリマーを、アクリルポリマー、アルキドポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、コーティング組成物を製造することを更に含む、第50の実施形態に記載の方法を提供する。
【0125】
第52の実施形態において、本開示は、ポリウレタンを、アクリルポリマー、撥水性ポリマー、及び安定剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて、コーティング組成物を製造することを更に含む、第50又は第51の実施形態に記載の方法を提供する。
【0126】
第53の実施形態において、本開示は、アクリルポリマーの水中分散液であって、アクリルポリマーの水中分散液が、任意選択で架橋剤を更に含む、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液を組み合わせて、コーティング組成物を製造することを更に含む、第49の実施形態に記載の方法を提供する。
【0127】
第54の実施形態において、本開示は、アルキドポリマーの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、コーティング組成物を製造することを更に含む、第53の実施形態に記載の方法を提供する。
【0128】
第55の実施形態において、本開示は、ポリウレタンの水中分散液を、アクリルポリマーの水中分散液、撥水性ポリマーの水中分散液、及び安定剤の水中分散液のうちの少なくとも1つと組み合わせて、コーティング組成物を製造することを更に含む、第53又は第54の実施形態に記載の方法を提供する。
【0129】
第56の実施形態において、本開示は、コーティング組成物を、基材の少なくとも一部分に適用する前に、基材を加熱することを更に含む、第49~第55の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0130】
第57の実施形態において、本開示は、コーティング組成物を、基材の少なくとも一部分に適用した後に、基材を加熱することを更に含む、第49~第56の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0131】
第58の実施形態において、本開示は、基材を加熱することが、少なくとも75℃の温度で少なくとも15分間行われる、第56又は第57の実施形態に記載の方法を提供する。
【0132】
第59の実施形態において、本開示は、コーティング組成物から水を除去することを更に含む、第47~第58の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0133】
第60の実施形態において、本開示は、組成物が、フォトルミネセンス化合物を含み、方法が、物品を紫外線又は青色光のうちの少なくとも1つに曝露して、基材の表面を検査することを更に含む、第26~第30又は第49~第59の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0134】
第61の実施形態において、本開示は、第24又は第25の実施形態に記載の物品を検査する方法であって、組成物が、フォトルミネセンス化合物、又は第48の実施形態に記載のフォトルミネセンス化合物を含み、方法が、物品を紫外線又は青色光のうちの少なくとも1つに曝露して、基材の表面を検査することを含む、方法を提供する。
【0135】
第62の実施形態において、本開示は、第1~第16の実施形態のいずれか1つに記載の組成物、又は第24若しくは第25の実施形態に記載の物品であって、組成物が、法線角度での目視検査によって判定して、周囲温度で水に7日間浸漬した後に透明なままである、組成物又は物品を提供する。
【0136】
第63の実施形態において、本開示は、第31~第48の実施形態のいずれか1つに記載のコーティングされた物品であって、コーティングが、法線角度での目視検査によって判定して、周囲温度で水に7日間浸漬した後に透明なままである、コーティングされた物品を提供する。
【0137】
本明細書に開示される組成物、物品及び方法の実施形態は、以下の実施例によって更に例証されるが、これらの実施例において記載される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例
【0138】
特に注記がない限り、実施例及び本明細書の残りの箇所における全ての部、百分率、比等は重量によるものであり、実施例において用いられる全ての試薬は、例えば、Sigma-Aldrich,St Louis,MOなどの総合化学品供給業者から入手したもの、若しくは入手可能なものであるか、又は従来の方法によって合成することができる。2.5インチ×5.75インチ(6.4cm×14.6)の寸法を有する、OSBのパネル、ポプラ合板、スギフェンスボード(CFB)、スギデッキボード(CDB)、及びカエデを、Home Depot of Canadaから得た。このセクションでは、以下の略語を使用する:ft=フィート、cm=センチメートル、in=インチ、μL=マイクロリットル、°=度、g=グラム、lbs=ポンド、℃=摂氏度、°F=華氏度、mm=ミリメートル、mL=ミリリットル、oz=オンス、min=分、MJ=メガジュール、及びm=平方メートル。別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【表1】
【0139】
試験方法1:接触角測定
接触角測定は、AST Products,Inc(Billerica,Massachusetts)から入手したVCA Optima XEを用いて行った。接触角を測定するために、1.5μLの脱イオン水を装置シリンジから表面上に分注した。機器に取り付けられたコンピュータを使用して、表面上の水滴の写真を直ちに撮影した。表面と水滴の左下隅との間の角度を測定した。初期写真を撮影した1分後、その同じ水滴の別の写真を撮影し、接触角を測定した。両方の測定値を記録し、コンピュータに保存し、表4に示す。
【0140】
試験方法2:接着測定
接着測定は、クロスハッチ試験に従って行った。コーティングされた表面に、カミソリの刃で1/2インチの「X」の切り込みを入れ、約3/4in×1+3/4in(1.9cm×4.4cm)のScotch(登録商標)テープを、「X」の上に押し付け、テープの約3/4in~1in(1.9cm×2.5cm)を残した。テープを手で直ちに除去し、テープ上で除去されたコーティングの量を分析した。結果は、「コーティングが除去されていない」から、「非常に少量のコーティングが除去されている」(コーティングの約1~5個の非常に小さな斑点が除去されている)、「少量のコーティングが除去されている」(コーティングの約6~10個の非常に小さな斑点が除去されている)、「中程度の量が除去されている」(テープの約半分がコーティングの斑点で覆われている)、「コーティングの多くが除去されている」(テープの大部分がコーティングの斑点で覆われている)までの範囲である。結果を記録し、表5に示した。
【0141】
試験方法3:水流出試験(Water Run-Off Test)
90°の角度で互いに位置付けられ、ねじで取り付けられた2つの合板から構成される取付け具を構築した。垂直ボードは、2ft×7+1/2in×5/8in(61cm×19.1cm×1.6cm)の寸法を有し、水平ボードは、1ft×7+1/2in×5/8in(30.5cm×19.1cm×1.6cm)の寸法を有していた。ユニットを一緒に保持する木材の2片は、6in×3.5in×1.5in(15.2cm×8.9cm×3.8cm)及び1.5in×3.5in×1.5in(3.8cm×8.9cm×3.8cm)の寸法を有していた。188.67g(0.42lb)の重量を有する12in×12in(30.5cm×30.5cm)のアルミニウムパネルを、マーキングに立て掛けて、傾斜角を作り出し、すなわち、アルミニウムパネルが9inに相当する設定で配置されているとき、角度は約42°である。
【0142】
この42°の傾斜角で試験を行った。OSBパネルを両面テープ(3M 467 MP、3M,St Paul,MNから入手)を使用してアルミニウムパネルに取り付け、ピペット(Fisherbrand(商標)Standard Disposable Transfer Pipettes、5.875インチ、13-711-7M、Molecular Bio Products Inc,Waltham,MAから入手)から一滴の水滴を、OSBパネルの上部に分注した。水滴が、OSBパネルの底部に流出するのに要する秒単位の時間を、ストップウォッチを用いて測定し、記録した。結果を表6に示す。
【0143】
試験方法4:耐候性試験
コーティングされていない及びコーティングされたOSBパネルを、2019年7月22日~2019年10月22日の期間にわたって、北緯43°、西経81°の場所で屋外の自然の曝露(耐候性)条件に曝した。耐候性試験にわたって、https://climate.weather.gc.caから取得した22℃(71.6°F)の1日の最高気温の平均、11℃(51.8°F)の1日の最低気温の平均、17℃(62.6°F)の1日の平均気温の平均;https://www.worldweatheronline.comから取得した257mm(10.12in)の総降水量、13時間の平均日照時間;及びhttp://www.timebie.com/sunから取得した4.2の平均UV指数があった。この期間にわたる平均湿度は、https://www.worldweatheronline.comによって報告されているように80%であった。
【0144】
写真を撮影し、Hunter Lab(Reston,VA)から入手したColorflex比色計を使用して、CIE L色彩値を測定することによって試料を監視した。試料が湿っていた場合、写真撮影及び測定の前に、それらを実験室で最低24時間乾燥させた。
【0145】
CIELAB色空間(CIE L又は簡単に「Lab」色空間と略されることもある)は、1976年に国際照明委員会(CIE)によって規定された色空間である。これは、3つの値:黒色(0)から白色(100)までの明度についてのL、緑色(-)から赤色(+)までのa、及び青色(-)から黄色(+)までのbとして色を表す。CIELABは、これらの値の同じ量の数値変化が、おおよそ同じ量の視覚的に知覚される変化に対応するように設計された。
【0146】
2in×2in(5.1cm×5.1cm)のOSBパネル試料上で、2つ又は3つのスポットをOSBパネルに沿って測定し、各値を平均化した。次いで、値を表及びグラフにプロットした。結果を表7に示す。
【0147】
試験方法5:加速耐候性
試験試料を、Atlas Material Testing Technology(4114 North Ravenswood Avenue,Chicago,Ill.,60613)製のAtlas Ci5000 Xenon Weather-Ometerにおける加速耐候試験条件に曝露した。試験は、ASTM G155-13、「Standard Practice for Operating Xenon Arc Light Apparatus for Exposure of Non-Metallic Materialsm」に従って実施し、カスタマイズされた設定は、ASTM G155-13の別表X1において表X3.1のサイクル1に概説されている。カスタマイズされた設定は以下である。
【0148】
照射量:340nmで0.68W/m以上
黒色パネル温度:70℃(明期)、70℃(明期及び水噴霧期)
チャンバ温度:47℃(明期)、47℃(明期及び水噴霧期)
相対湿度:70%(明期)、95%(明期及び水噴霧期)
試験試料に曝露した、295~385nm(MJ/m)の総放射照度を報告する。
【0149】
本発明者らは、この試験方法を使用する69~86MJ/mの295nm~385nmの総放射照度(TUV)が、試験方法4:耐候性試験を使用する3ヶ月の自然劣化に相当するものを提供することを見出した。
【0150】
試験方法6:乳白色の観察
試料を、コーティングされた側に置いて、水浴に入れた。白化又は乳白色のレベルに関する目視観察を24時間後に行い、7日間繰り返した。結果を表10に報告する。
【0151】
実施例EX1~EX5及び比較例(CE)CE1~CE9の調製
50ml(1.7oz)のトリポアカップ(Fisherbrand(商標)Tri-Cornered Polypropylene BeakersでFisher Scientific,Waltham MAから入手)を秤の上に置き、秤をゼロに合わせた。所定の重量に達するまで、ピペット(Fisherbrand(商標)Standard Disposable Transfer Pipettes、5.875インチ(14.9cm)、13-711-7M、Molecular Bio Products Inc,Waltham,MAから入手)を用いて、各材料を容器に分注した。次いで、舌圧子(Scientific,Waltham MAから入手)を使用して配合物を約30秒間混合した。典型的には、4~10g(0.14~0.35oz)の配合物を調製した。実施例及び比較例の配合物を表2に示す。
【表2】
【0152】
OSBパネルの上にコーティングされた実施例EX1~EX5及び比較例CE1~CE9の調製
OSBパネル(12in×12in又は30.5×30.5cm)を、2in×2in(5.1cm×5.1cm)の寸法の試料に切断した。使用される各パネルの重量を記録した。各例についてのパネルの1つの複製セットを、コーティング前に、94℃のオーブン内に少なくとも1時間置いた。OSBパネルをコーティングするとき、周囲のOSBパネルを秤上に置き、約0.25~0.30g((0.009~0.011oz)の実施例又は比較例のコーティングを、ピペット(Fisherbrand(商標)Standard Disposable Transfer Pipettes、5.875インチ(14.9cm)、13-711-7M、Molecular Bio Products Inc,Waltham,MAから入手)からOSBパネルの片側に分注した。次いで、実施例又は比較例のコーティングを、新しい1インチ幅の剛毛ペイントブラシ(D.I.Y.Pure Bristle Paint Brushes、Home Hardware,Canadaから入手)で表面全体に均一に広げた。パネル及び湿潤コーティングの重量を記録した。完成した湿潤コーティング重量はおよそ0.20gであった。次いで、加熱されたOSBパネル上で手順を繰り返した。コーティングが乾燥してから、パネル及び乾燥コーティングの重量を記録した(表3に示す)。コーティングされたOSBパネルを、評価前にドラフト内で24時間乾燥させた。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0153】
実施例EX6~EX17及び比較例(CE)CE10~CE17の調製
実施例EX6~EX17及び比較例CE10~CE17の調製を、以下の修正を伴って、実施例EX1~EX5及び比較例CE1~CE9に概ね記載されたように行った。50mL(1.7oz)のSpeedMixerカップ(Flacktek,Landrum,S.Cから入手)を50mL(1.7oz)のトリポアカップの代わりに使用した。舌圧子を用いて混合する代わりに、配合物をFlacktek SpeedMixer Model DAC 150 FV(Flacktek,Landrum,SCから入手)内で3540rpmにて約1分間混合した。EX6~EX17及び比較例CE10~CE17についての配合物を、以下の表8に提供する。
【表8】
【0154】
OSBパネル上にコーティングされた実施例EX6~EX17及び比較例CE10~CE17の調製
2in×2in(5.1cm×5.1cm)OSBパネル上の、実施例6、8、11、12、14、16、及び17、並びに比較例CE10~CE17のコーティングを、以下の修正を伴って実施例EX1~EX5及び比較例CE1~CE9に概ね記載されたように行った。各パネルの重量、並びにHunter比色計を使用して測定されるL色値を、コーティング前に測定した。全ての試料を周囲条件でコーティングした。実施例又は比較例の組成物の約0.14~0.17g(0.005~0.006oz)を、パネルごとに使用した。完成した湿潤コーティング重量は、約0.11gであった。実施例6、8、11、12、14、16、及び17については、2in×2in(5.1cm×5.1cm)のパネルの2つのセットをコーティングした。1つのセットを、周囲条件で24時間乾燥させた。1つのセットを、95℃のオーブン内に15分間配置し、取り出して、次いで周囲条件で24時間放置した。
【0155】
実施例7、9、13、及び15は、実施例6、8、11、12、14、16、及び17と同じ方法でコーティングし、95℃で1時間硬化させた。実施例10は、実施例6、8、11、12、14、16、及び17と同じ方法でコーティングし、周囲条件で硬化させた。
【0156】
コーティングの厚さを、湿潤コーティング重量から、及び所与の表面積についての実験的に決定されたコーティング重量対厚さ比から計算し、以下の表9及び10に報告する。
【0157】
実施例7、9、10、13、及び15を、試験方法5:加速耐候性試験を使用して評価した。OSBパネルの初期b値、加速耐候性試験からの295nm~385nmの77MJ/m総放射照度(TUV)後のb値、及び灰色の外観を有するためにパネルが必要とする加速耐候性試験からのTUVを、以下の表9に記録する。
【表9】
【0158】
周囲条件で硬化させた実施例6、8、11、12、14、16、及び17並びに比較例CE10~CE17を、試験方法6:乳白色の観察を使用して評価した。水浸漬の1日後、2日後、及び7日後の乳白色のレベルを、以下の表10に記録する。
【表10】
【0159】
95℃で15分間硬化させた場合、実施例11、12、14、16、17、及び比較例CE-10~CE-14、CE-16、及びCE-17は、7日間の水浸漬でも透明なままであった。実施例6は、3日後に中程度に乳白色であり、7日後に乳白色であることが観察された。実施例8は、5日後にわずかに乳白色であることが観察された。CE-15は、2日後に非常にわずかに乳白色であり、7日後に透明であることが観察された。
【0160】
木材パネル上の実施例EX1、EX4、及びEX6の調製
実施例1、4、及び6の組成物の新しい調製物を、EX6~EX17及び比較例(CE)CE10~CE17について記載された方法を使用して調製した。
【0161】
2.5in×5.75in(6.4cm×14.6)のOSBの木材パネル(OSB-2)、ポプラ合板(合板)、スギフェンスボード(CFB)、スギデッキボード(CDB)、及びカエデ上の実施例1、4、及び6の組成物のコーティングを、以下の修正を伴って、実施例EX1~EX5及び比較例CE1~CE9について概ね記載されたように行った。各パネルの重量、並びにHunter比色計を使用して測定されるL色値を、コーティング前に測定した。全ての試料を周囲条件でコーティングした。実施例の組成物の約0.52~0.63g(0.018~0.022oz)を、パネルごとに使用した。完成した湿潤コーティングの重量は、約0.41gであった。パネルを95℃のオーブン内に15分間配置し、次いで周囲条件で24時間乾燥させた。コーティングの厚さを、湿潤コーティング重量から、及び所与の表面積についての実験的に決定されたコーティング重量対厚さ比から計算し、以下の表11に報告する。パネルを、試験方法5:加速耐候性試験を使用して評価した。パネルの初期b値及び加速耐候性試験からの295nm~385nmの59MJ/m総放射照度(TUV)後のbを、以下の表11に記録する。
【表11】
【0162】
本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者によって本開示の様々な修正及び変更を行うことができ、本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態に不当に限定されるものではない点を理解するべきである。
【国際調査報告】