(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】岩石層にボーリング孔を加工する方法および装置
(51)【国際特許分類】
E21B 7/15 20060101AFI20230720BHJP
E21B 7/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E21B7/15
E21B7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580936
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2021068291
(87)【国際公開番号】W WO2022003147
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020117655.4
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501591
【氏名又は名称】アルノー ロマノウスキー
【氏名又は名称原語表記】Arno Romanowski
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グローテンドルスト,ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA04
2D129AB14
2D129BA04
2D129CB01
2D129CB16
2D129EA16
(57)【要約】
ボーリング孔の外側に位置するレーザビーム発生器を用いてレーザ掘削するための方法であって、レーザボーリングヘッドにボーリングロッドを介して液状の窒素を供給し、液状の窒素をボーリングヘッドの領域においてガス状の状態に移行させ、レーザガイド管(19)を地表に向かう方向に通流する保護ガス流(18)と、環状空間を介して剥離させられた岩石材料を搬出する搬送ガス流(15)とに分割する方法。加熱ガス流(10)は、電気的な加熱装置(11)により加熱され、レーザビームが加えられた坑底に向けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビーム(7)を坑底(4b)に照射することによって岩石層(3)にボーリング孔(4)を加工する方法であって、前記レーザビーム(7)を、前記ボーリング孔の外側に位置するレーザビーム発生器により発生させ、かつボーリングロッド(2)に結合された、前記坑底(4b)に位置するレーザボーリングヘッド(1)に適切な補助手段を用いて供給し、前記レーザボーリングヘッド(1)に、前記ボーリングロッド(2)を介して窒素を供給し、該窒素を、
- 通過する前記レーザビーム(7)を妨害性の浮遊物質から保護する保護ガス流(18)として働く部分流と、
- 前記坑底(4b)において剥離させられた岩石材料を、前記ボーリングロッド(2)と前記坑壁(4a)との間に残っている環状空間を介して前記ボーリング孔(4)から搬出する搬送ガス流(15)として働く別の部分流と
に分割する、方法において、
前記レーザビーム(7)を、前記ボーリングロッドの長さにわたって延び、自由横断面が前記保護ガス流(18)により通流されるレーザガイド管(19)を介して前記レーザボーリングヘッド(1)に供給し、
前記窒素を、前記ボーリングロッド(2)を介して液状の凝集状態で前記レーザボーリングヘッド(1)に供給し、前記レーザボーリングヘッド(1)の領域においてガス状の凝集状態に移行させ、かつ
供給された前記窒素から、加熱ガス流(10)として働く別の部分流を付加的に分岐させ、該別の部分流を、前記レーザボーリングヘッド(1)に対応配置された電気的な加熱装置(11)により加熱して、前記レーザビーム(7)が照射される前記坑底(4b)に向ける
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
搬送ガスとして液状の窒素を付加的に使用し、該液状の窒素を前記レーザボーリングヘッド(1)の領域において、前記坑底から流れ戻り、かつ前記坑底から剥離させられた前記岩石材料を含む前記搬送ガス流(15)内に噴射し、かつ前記レーザボーリングヘッド(1)の領域において、前記搬送ガス流(15)と該搬送ガス流中にある前記岩石材料とを冷却しながら、前記ガス状の凝集状態に移行させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザボーリングヘッド(1)に供給された前記窒素から、冷却ガス流(24)として働く別の部分流を分岐させ、該別の部分流を、前記ボーリングロッド(2)を介して前記ボーリング孔(4)から導出し、その際に前記ボーリングロッド(2)を内側から冷却することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記レーザボーリングヘッド(1)に供給された前記窒素から、クリーニングガス流(14)として働く別の部分流を分岐させ、該別の部分流が、前記レーザボーリングヘッド(1)の、前記坑底(4b)に面したレーザビーム出口開口をクリーンに保つことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法を実施する装置において、前記ボーリングロッド(2)が、
- 前記レーザビーム(7)を通過させるための、前記保護ガス流(18)により通流されるレーザガイド管(19)と、
- 前記レーザガイド管(19)を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む二重管(21)であって、該二重管(21)の環状空間が、液状の窒素により通流される、二重管(21)と、
- 前記二重管(21)を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む絶縁管(22)と、
- 前記絶縁管(22)を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む外側の保護管(23)と
を有し、
- 前記二重管(21)を取り囲む前記環状空間が排気されており、
- 前記外側の保護管(23)と前記絶縁管(22)との間の前記環状空間が、前記レーザボーリングヘッド(1)から戻る冷却ガス流(24)に接続されており、
- 前記外側の保護管(23)により取り囲まれた1つ以上の管が、前記レーザボーリングヘッド(1)への電気的なエネルギおよび電気的な信号を伝送するための電気的な導体を備えている
ことを特徴とする、装置。
【請求項6】
前記外側の保護管(23)が鋼から成っており、前記保護管(23)の内部に配置された前記管が、炭素繊維強化されたプラスチック(CFK)から成っていることを特徴とする、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記ボーリングロッド(2)が、複数の長手方向区分に分割されており、該長手方向区分のそれぞれの端部が、螺合可能な印籠継手(25,26)により互いに結合されており、前記印籠継手(25,26)の領域において、
-前記レーザガイド管(19)と、前記二重管(21)の前記環状空間と、前記外側の保護管(23)と前記絶縁管(22)との間の前記環状空間との互いに隣接する区分が、互いに整合して圧力密に結合されており、
- 前記電気的な導体の互いに隣接する区分が、互いに導電接続されており、
- 前記二重管(21)を取り囲む、排気された前記環状空間の互いに連続する前記区分は、接続することなしに、互いに圧力密に閉じられている
ことを特徴とする、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
前記レーザボーリングヘッド(1)が、ハウジング(5)を有しており、該ハウジング(5)のハウジングカバー(5a)が、前記ボーリングロッド(2)の前記外側の保護管(23)に取り付けられており、前記ハウジング(5)が、
- 前記ハウジング(5)を通って延び、前記ボーリングロッド(2)の前記レーザガイド管(19)に接続する、前記レーザビームのための通過通路(6)であって、該通過通路(6)の出口開口が、ハウジング底部(5b)の領域においてエキスパンダーレンズ(8)により光透過性に覆われている、通過通路(6)と、
- ハウジング内室内に配置され、前記ボーリングロッド(2)の前記二重管(21)の前記環状空間に接続された装置であって、到来する液状の窒素を送りかつ/または気化させ、かつガス状の窒素を貯蔵しかつ規定された種々異なる部分流に分割するための装置と、
- ハウジング周壁(5c)に配置され、前記搬送ガス流の流れ方向で傾斜して延びる、前記搬送ガス流(15)内に液状および/またはガス状の窒素を噴射するための搬送ジェットノズル(16,17)と、
- 前記ハウジング底部(5b)に配置され、前記坑底(4b)の方向に向けられた、前記加熱ガス流(10)のための加熱ジェットノズル(9)と、
- 前記ハウジング内室内に配置された、加熱ガス流(10)のための電気的な加熱装置(11)と、
- 全ての窒素部分流の制御および調整のための電磁弁および体積流量調整器(28,29)と
をさらに備えていることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
冷却ガス流(24)として働く前記部分流が、前記ハウジング内室を通って流れ、該ハウジング内室が、前記ボーリングロッド(2)の前記外側の保護管(23)と前記絶縁管(22)との間の前記環状空間に接続していることを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記ハウジング底部(5b)に、クリーニングガス流(14)として働く前記部分流(14)のためのクリーニングノズル(12)が配置されており、該クリーニングノズル(12)が、前記ハウジング底部(5b)の下面に対して平行に延び、かつ前記レーザビームのための前記通過開口(6)を覆うエキスパンダーレンズ(8)に向けられていることを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記レーザボーリングヘッドの前記ハウジング(5)内で、前記レーザビーム(7)のための前記通過開口(6)が、保護ガス流(18)として働く前記部分流のための流入開口(20)を備えていることを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記レーザビーム(7)のための前記通過開口(6)および/または前記レーザガイド管(19)の内部に、前記レーザビーム(7)を変向するレンズおよび/またはミラー系を保持するための互いに離間した保持装置(27)が配置されており、該保持装置(27)が、前記保護ガス流(18)に対してガス透過性に形成されていることを特徴とする、請求項5から11までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを坑底に照射することによって岩石層にボーリング孔を加工する方法であって、レーザビームを、ボーリング孔の外側に位置するレーザビーム発生器により発生させ、ボーリングロッドに結合された、坑底に位置するレーザボーリングヘッドに適切な補助手段を用いて供給し、レーザボーリングヘッドに、ボーリングロッドを介して窒素を供給し、窒素を、レーザボーリングヘッドの領域において、
- 通過するレーザビームを妨害性の浮遊物質から保護する保護ガス流として働く部分流と、
- 坑底において剥離させられた岩石材料を、ボーリングロッドと坑壁との間に残っている環状空間を介してボーリング孔から搬出する搬送ガス流として働く別の部分流と
に分割する、方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の装置は、例えば特許文献1から公知である。上述の種類のこの公知のボーリング(掘削)法では、レーザビームを供給し、かつ保護ガスおよび搬送ガスとして必要とされる窒素を供給するための補助手段として、可撓性の管、例えば螺旋管が使用され、この管の内室内には、レーザビームを伝送するためにグラスファイバケーブルが配置されており、この場合、管内には、十分な量の窒素を通過させるために依然として十分な自由空間が残されている。保護ガス流とレーザビームとは、レーザボーリングヘッドの下面に設けられた、坑底に面した開口を通じて一緒に出て、一緒に坑底に当たる。坑底に当たったレーザビームのエネルギは、坑底に露出している岩石材料を剥離し、しかも岩石材料に応じて、溶融、気化および/または破砕によって剥離する。次いで、熱により剥離させられた岩石材料は、同時に坑底に当たった保護ガス流により、坑底の縁部に向かって押し退けられ、この縁部で、排出方向に向くように調整された搬送ガス流の気流によって捕捉され、この搬送ガス流は、坑底から剥離させられた材料を、ボーリングロッドと坑壁との間に存在する環状空間を介してボーリング孔から搬出する。
【0003】
このような方法および装置では、実際の実施時に問題を引き起こす互いに相反する一連の要求が存在する。
【0004】
この方法において使用される、坑底の岩石の熱による剥離のためには、当然ながら、実質的にレーザビームによりもたらされる大量のエネルギが必要とされる。対応する実験により、通常の岩石層において、レーザビームによる坑底における岩石材料の熱による剥離のためには、400W/cm2を上回る出力密度が必要とされることが判った。この出力密度を達成するためには、先行技術による装置では、レーザビームを、坑底における衝突領域において相応して集束させ、坑底にわたって逐次ガイドしなければならない。このためには、十分な掘削進捗を達成することが望ましい場合、レーザボーリングヘッド内に組み込まれた複雑な機構および/または支援するボーリング工具が必要である。これに対して、例えばレーザボーリングヘッド内のエキスパンダーレンズを用いて坑底全体に同時に充分に集中的に照射することができれば、より良好であろう。しかし、このためには、通常のボーリング孔直径では、500kWを超える、好適には600kW~700kWの出力を有するレーザビームが必要である。
【0005】
しかし、このような高い出力を有するレーザビームは、特に、グラスファイバケーブルが到達しようとするボーリング孔深さに基づいて2000m~10000mの長さでなければならない場合、もはやグラスファイバケーブルを介して簡単に伝送することはできない。すなわち、グラスファイバケーブルは、比較的大きな減衰率を有しているので、グラスファイバケーブルがこのような長さである場合、供給されたレーザビームは、もはや十分な強度でレーザボーリングヘッドに到達しない。
【0006】
さらに、レーザビームの出力の必要となる増大は、熱的な問題を引き起こす。なぜならば、レーザビームと共にもたらされる、坑底において熱の形態で放出されるエネルギは、レーザボーリングヘッドおよびボーリングロッドの許容することのできない過熱をもたらし得るからである。保護ガス流および搬送ガス流のガス状の窒素の供給量は、レーザビームのこのような高い出力を考慮すると、過剰な熱を十分な程度導出するためには不十分である。さらに、坑底に冷たい保護ガス流を集中的に供給することは、坑底の領域において、坑底の岩石材料の、熱による剥離過程を妨げ得る熱的な短絡を引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0044102号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の方法を改良して、ボーリング孔が極めて深い場合でも、レーザボーリングヘッドまたはボーリングロッドにおいて有害な過熱が生じることなしに、十分に迅速な掘削進捗が可能となるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、冒頭で述べた形式の方法を起点として、
- レーザビームを、ボーリングロッドの長さにわたって延び、自由横断面が保護ガス流によって通流されるレーザガイド管を介してレーザボーリングヘッドに供給し、
- 窒素を、ボーリングロッドを介して液状の凝集状態でレーザボーリングヘッドに供給し、レーザボーリングヘッドの領域においてガス状の凝集状態に移行させ、
- 供給された窒素から、加熱ガス流として働く別の部分流を付加的に分岐させ、この部分流を、レーザボーリングヘッドに対応配置された電気的な加熱装置により加熱して、レーザビームが照射される坑底に向けることを規定している。
【0010】
従来技術により一般的なグラスファイバケーブルの代わりに、保護ガス流により通流されるレーザガイド管を、本発明により規定するように使用することによって、レーザビームを極めて高い出力でほぼ損失なしに、ボーリングロッドの全長にわたって伝送することが容易に可能である。すなわちクリーンなガス状の窒素は、極めて低い減衰作用を有している。レーザガイド管の形状におけるレーザビームのビーム方向の変向と、場合によっては必要とされる修正のために、ガイド管内に適切な間隔で適切なレンズ系および/またはミラー系を配置することが簡単に可能である。これらのレンズ系および/またはミラー系は、当然ながら通過する保護ガス流を中断してはならない。
【0011】
さらに、本発明による方法では、窒素がレーザボーリングヘッドに液状の凝集状態で供給され、レーザヘッドの領域においてようやくガス状の凝集状態に移行されることによって、レーザボーリングヘッド、保護ガス流、搬送ガス流およびボーリングロッドの冷却のために冷却媒体が十分な量で提供される。すなわち、凝集状態の移行は、極めて吸熱性であり、供給される体積を著しく増大させるので、これにより、レーザボーリングヘッドの領域において過熱現象を回避するために十分な量で冷たい窒素ガスが提供され、必要に応じて分配され得る。
【0012】
最終的に本発明によりさらに規定された、坑底に向けられ、電気的に予熱された加熱ガス流によって、上述の熱的な短絡は最終的に回避される。その結果、レーザビームの剥離作業と、同時的に坑底において剥離させられた岩石材料の、搬送ガス流の方向への導出とを支援するこの加熱ガス流を、任意に強化することが簡単に可能である。それどころか好適には、この加熱ガス流に、その都度露出している岩石の溶融温度に近い温度が与えられる。
【0013】
本発明による方法における別の問題は、上昇する搬送ガス流中に含まれる溶融または気化した岩石材料が、場合によってはボーリングロッドと坑壁との間の環状空間内への流入前に、この岩石の固化温度を下回るまで冷却されなければならないことにある。この冷却により、この岩石材料はボーリングロッドおよび/または坑壁に堆積しないようになる。このためにはさらに、搬送ガスとして液状の窒素を付加的に使用し、この液状の窒素を、レーザボーリングヘッドの領域において、坑底から流れ戻り、かつ坑底から剥離させられた岩石材料を含む搬送ガス流内に噴射し、かつこの領域において搬送ガス流と、この搬送ガス流中にある岩石材料とを冷却しながら、ガス状の凝集状態に移行させることが提案されている。このために使用される液状の窒素は、レーザボーリングヘッド内で、このレーザボーリングヘッドにボーリングロッドを介して供給された液状の窒素流から分岐させられる。
【0014】
好適にはさらに、レーザボーリングヘッドに供給された窒素から、冷却ガス流として働く別の部分流を分岐させ、この別の部分流を、ボーリングロッドを介してボーリング孔から導出し、その際にボーリングロッドを内側から冷却することが規定されている。これにより、付加的に、ボーリングロッドの内室に搬送ガス流から熱が不必要に供給されないようになる。
【0015】
最終的に、本発明による方法では、レーザボーリングヘッドに供給された窒素から、クリーニングガス流として働く別の部分流を分岐させ、この別の部分流は、レーザボーリングヘッドの、坑底に面した、エキスパンダーレンズによって覆われているレーザビーム出口開口をクリーンに保つことがさらに規定されている。これにより、光透過性に被覆されたレーザビーム出口開口が、剥離された岩石材料から成る、坑底から上昇する浮遊物質によって汚され、これによりレーザビームに対して透過性が低くなることは回避される。
【0016】
さらに本発明の対象は、上述した方法を実施するための装置である。この装置は、まずボーリングロッドの特別な構成により特徴付けられる。このボーリングロッドは、
- レーザビームを通過させるための、保護ガス流により通流されるレーザガイド管と、
- レーザガイド管を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む二重管であって、二重管の環状空間が、液状の窒素により通流される二重管と、
- 二重管を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む絶縁管と、
- 絶縁管を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む外側の保護管と
を有しており、
- 二重管を取り囲む環状空間が排気されており、
- 外側の保護管と絶縁管との間の環状空間が、レーザボーリングヘッドから戻る冷却ガス流に接続されており、
- 外側の保護管により取り囲まれた1つ以上の管が、レーザボーリングヘッドへ電気的なエネルギおよび電気的な信号を伝送するための電気的な導体を備えている。
【0017】
このようなボーリングロッドは、コンパクトな構造形式で、レーザガイド管を通じた高出力レーザビームの十分に減衰されない通過と、二重管の環状空間を通じた液状の窒素の、真空により十分に断熱された伝送と、搬送流からの熱に対するボーリングロッド全体の良好な断熱と、レーザボーリングヘッドへの電気的なエネルギおよび電気的な信号の伝送とを可能にする。
【0018】
好適にはさらに、外側の保護管が鋼から成っており、保護管の内部に配置された管が、炭素繊維強化プラスチック(CFK)から成っていることが規定されている。鋼から成る外側の保護管は、ボーリングロッド全体に、必要となる安定性と、外側からの意図せずに発生する過熱に対する鈍感さとを与える。内側の管のために使用される材料は、小さな重量および極めて高い強度により優れており、さらに良好に断熱性であり、十分に電気的に絶縁性である。
【0019】
さらに、本発明に係る方法を実施するための装置は、レーザボーリングヘッドが、ハウジングを有していて、ハウジングのハウジングカバーが、ボーリングロッドの外側の保護管に取り付けられており、ハウジングが、
- ハウジングを通って延び、ボーリングロッドのレーザガイド管に接続する、レーザビームのための通過通路であって、通過通路の出口開口が、ハウジング底部の領域においてエキスパンダーレンズにより光透過性に覆われている、通過通路と、
- ハウジング内室内に配置され、ボーリングロッドの二重管の環状空間に接続された装置であって、到来する液状の窒素を送りかつ/または気化させ、かつガス状の窒素を貯蔵しかつ規定された種々異なる部分流に分割するため装置と、
- ハウジング周壁に配置され、搬送ガス流の流れ方向で傾斜して延びる、搬送ガス流内に液状の窒素を噴射するための搬送ジェットノズルと、
- ハウジング底部に配置され、坑底の方向に向けられた、加熱ガス流のための加熱ジェットノズルと、
- ハウジング内室内に配置された、加熱ガス流のための電気的な加熱装置と、
- 全ての窒素部分流の制御および調整のための電磁弁および体積流量調整器と
をさらに備えていることを特徴とする。
【0020】
このようなレーザボーリングヘッドにより、ボーリングロッドのレーザガイド管を介して到来するレーザビームを、十分に減衰させず坑底に供給し、ボーリングロッドの二重管を介して供給された液状の窒素を気化させ、体積流量を制御して種々異なる部分流に分割することが可能である。
【0021】
さらに、冷却ガス流として働く部分流が、ハウジング内室を通って流れ、かつハウジング内室が、ボーリングロッドの外側の保護管と絶縁管との間の環状空間に接続していると好適である。これにより、ハウジング冷却を担う冷却ガス流は同時に、ボーリングロッドの外面を十分に冷却して保持する機能を得る。
【0022】
本発明に係る装置の使用時には、坑底から上昇する岩石粒子が、レーザビームの出口領域に配置されたエキスパンダーレンズを汚染する恐れが生じる。このことを阻止するために、ハウジング底部に、クリーニングガス流として働く部分流のためのクリーニングノズルが配置されており、これらのクリーニングノズルは、ハウジング底部の下面に対して平行に延び、かつレーザビームのための通過開口を覆うエキスパンダーレンズに向けられていることがさらに規定されている。
【0023】
レーザガイド管に、レーザボーリングヘッドのハウジングを始めとして、十分にかつ全長にわたってクリーンな保護ガス流を供給するためには、レーザボーリングヘッドのハウジング内で、レーザビームのための通過通路が、保護ガス流として働く部分流のための流入開口を備えていることがさらに規定されている。
【0024】
最終的には、レーザビームのための通過通路および/またはレーザガイド管の内部に、レーザビームを変向するレンズおよび/またはミラー系を保持するための互いに離間した保持装置が配置されており、これらの保持装置が、保護ガス流のためにガス透過性に形成されていることが規定されている。このような装置により、ボーリング孔およびこれに対応するボーリングロッドが直線形の形状から逸脱している場合に、必要に応じてレーザビームを新たに配向しかつ/または焦点化させることが可能である。
【0025】
本発明の実施例を以下に図面つき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】作業位置において坑底の上側に位置する、ボーリングロッドに取り付けられたレーザボーリングヘッドを概略的に示す縦断面図である。
【
図2】ボーリングロッドを概略的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面において、レーザボーリングヘッドには、全体として参照符号1が付されており、このレーザボーリングヘッド1を支持するボーリングロッドには、全体として参照符号2が付されている。レーザボーリングヘッド1とボーリングロッド2とは、坑壁4aおよび坑底4bを備えた、岩石層3に加工されたボーリング孔4内に位置している。
【0028】
作業位置において坑底4bの上側に僅かに離間して保持されたレーザボーリングヘッド1は、実質的に円筒形のハウジング5を有しており、このハウジング5のハウジングカバー5aは、ボーリングロッド2に結合されている。
【0029】
さらにハウジング5は、坑底4bに対して離間して配置されたハウジング底部5bを有しており、このハウジング底部5bは中央に、ボーリングロッド2を介して供給されかつハウジング5を通って伝送されるレーザビーム7のための通過開口6を備えている。通過開口6内には、エキスパンダーレンズ8が位置しており、このエキスパンダーレンズ8は、到来するレーザビーム7を、坑底4b全体にレーザビーム7が照射されるように拡大する。
【0030】
さらにハウジング底部5bには、加熱ジェットノズル9が位置しており、加熱ジェットノズル9は、坑底4bの方向に向けられた加熱ガス流10を形成し、この加熱ジェットノズル9には、ハウジング5の内室内に配置された電気的な加熱装置11から加熱ガスが供給される。
【0031】
さらにハウジング底部5bには、クリーニングノズル12が位置しており、これらのクリーニングノズル12は、ハウジング底部5bの下面に対して平行に、中央に配置されたエキスパンダーレンズ8に向かう方向に調整されており、かつクリーニングノズル12には、ハウジング5の内部に位置する窒素集合容器13から、エキスパンダーレンズ8をクリーンに保つためのクリーニングガス流14としてのクリーンなガス状の窒素が供給される。
【0032】
さらに、レーザボーリングヘッド1のハウジング5は、ハウジング周壁5cを有しており、ハウジング周壁5cは、坑底4bから上昇する剥離した岩石材料を含む搬送ガス流15の通過のための環状空間を、坑壁4aに対して環状に残している。この搬送ガス流15は、加熱ガス流10が加えられる坑底4bの縁部領域を起点としており、坑底から剥離させられた岩石材料をボーリング孔4から搬出する。
【0033】
この上昇する搬送ガス流15を支援するために、レーザボーリングヘッド1のハウジング5のハウジング周壁5cには、搬送ジェットノズル16および17が配置されており、これらの搬送ジェットノズル16,17は、搬送ガス流15の方向で傾斜して延びており、かつこれらの搬送ジェットノズル16,17には、ハウジング5の内部から液状の窒素および/またはガス状の窒素を供給することができる。搬送ジェットノズル16を介して液状の窒素がもたらされる場合、この液状の窒素は、搬送ガス流15中に含まれる岩石材料の冷却に特に強力に寄与する。
【0034】
レーザボーリングヘッド1にレーザビーム7をできるだけ減衰させずに供給することができるように、かつさらにレーザボーリングヘッド1に十分な量の窒素を供給することができるようにするために、特別に形成されたボーリングロッド2が設けられている。このボーリングロッド2を、以下で詳細に説明する。
【0035】
このボーリングロッド2は、互いに同心的に配置された複数の管を有している、すなわち、
- レーザビーム7を通過させるための、保護ガス流18によって通流される内側のレーザガイド管19であって、クリーンな窒素ガスから成るこの保護ガス流18は、レーザガイド管19の内部に、レーザボーリングヘッド1のハウジング5内の通過開口6の上側で、しかもハウジング5の内部に位置する流入開口20を介して、通過開口6内に供給される、レーザガイド管19と、
- レーザガイド管19を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む二重管21であって、この二重管21の環状空間21aが液状の窒素により通流される、二重管21と、
- 二重管21を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む絶縁管22と、
- 絶縁管22を同心的に、かつ半径方向で離間して取り囲む外側の保護管23と
を有している。
【0036】
レーザガイド管19に向かって、かつ絶縁管22に向かって二重管21を取り囲む環状空間は排気されており、これによって二重管21の環状空間を通って流れる液状の窒素は、十分に断熱して保持され得る。
【0037】
外側の保護管23と絶縁管22との間の環状空間は、レーザボーリングヘッド1のハウジング5から戻る冷却ガス流24に接続されており、この冷却ガス流24が、ボーリングロッド2の外側を十分に冷却する。
【0038】
外側の保護管23は鋼から成っていて、ボーリングロッド1全体の良好な安定性および耐荷重性を与える。これに対して、保護管23の内部に位置する全ての管、すなわちレーザガイド管19、二重管21および絶縁管22は、炭素繊維強化プラスチック(CFK)から成っている。
【0039】
さらに、外側の保護管23によって取り囲まれた複数の管のうちの1つ以上の管は、レーザボーリングヘッド1の方向に電気的なエネルギおよび電気的な信号を伝送するための電気的な導体(詳細には図示せず)を備えている。
【0040】
ボーリングロッド2の取扱いを簡略化するために、ボーリングロッド2は、複数の長手方向区分に分割されており、これらの長手方向区分のそれぞれの端部が、螺合可能な印籠継手25,26により互いに結合され得る。これらの印籠継手25,26の領域において、レーザガイド管19と、二重管21の環状空間と、外側の保護管23と絶縁管22との間の環状空間との互いに隣接する区分が、互いに整合して圧力密に結合されている。さらに、この印籠継手25,26の領域では、電気的な導体の互いに隣接する区分が互いに導電接続されている。これに対して、ボーリングロッド2の個別の区分内に存在する、二重管21を絶縁するために排気された環状空間は、それぞれ個別に圧力密に閉じられており、互いに接続されていない。
【0041】
最終的にはさらに、レーザビーム7のための通過開口6および/またはレーザガイド管19の内部には、レーザビーム7を変向するレンズ系またはミラー系を保持するための複数の保持装置27が互いに離間して配置されており、これらの保持装置は、保護ガス流18に対して透過性に形成されている、つまり、保持装置の縁部には、対応する貫通孔が設けられている。
【0042】
レーザボーリングヘッド1のハウジング5内には、複数の電磁弁28および体積流量調整器29が位置しており、これらの電磁弁28および体積流量調整器29は、ボーリングロッド2内に含まれる信号導体を介して駆動制御可能であり、二重管21を介してハウジング5に供給された液状の窒素を、必要に応じて搬送ジェットノズル16,17と、ガス状の窒素のための集合容器13と、加熱ガス流10のための加熱装置11と、ハウジング内部空間とに対応して分配する。ここで、制御および調整は、システムが、レーザビームにより供給されるエネルギにもかかわらず、熱力学的に平衡を維持するように行われる。
【0043】
図面に示されたシステムは、原則的に以下のように作業する。
【0044】
レーザガイド管19内には、ボーリング孔4の外側に位置する高出力レーザ発生器から、500kW~700kWの出力を有するレーザビーム7が供給され、レーザボーリングヘッド1に供給される。同時に、レーザガイド管19には下から、クリーンな窒素ガスから成る保護ガス流18が供給され、これによって、レーザビームは、レーザボーリングヘッド1までの経路においてほとんど減衰されないようになっている。次いで、レーザボーリングヘッド1内で、レーザビーム7は、エキスパンダーレンズ8により、坑底4b全体をカバーするように拡大させられる。
【0045】
レーザビーム7を拡大させるのと同時に、坑底4bには加熱ガス流10が供給される。この加熱ガス流10は、予め加熱装置11によって、坑底4bに露出している岩石の溶融温度に近いか、またはそれどころかその溶融温度を上回る温度にされている。レーザビーム7および加熱ガス流10の作用下で、坑底4bの表面において岩石材料は溶融、気化または破砕によって除去され、加熱ガス流10によって坑底4bの外縁部へと押し退けられる。
【0046】
その際に、この縁部領域において、除去された岩石材料を含む上方に向けられた搬送ガス流15が形成され、この搬送ガス流15は、ハウジング周壁5cと坑壁4aとの間の環状空間を通って上方に向かって進む。
【0047】
この上昇する搬送ガス流内には、さらに搬送ジェットノズル16および17を用いて液状の窒素および/またはガス状の窒素が吹き込まれ、これによって搬送ガス流15は冷却されると同時に強化される。次いで、岩石材料を含むこの搬送ガス流15は、ボーリングロッド2と坑壁4aとの間の環状空間を介してボーリング孔4から出る。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザボーリングヘッド
2 ボーリングロッド
3 岩石層
4 ボーリング孔
4a 坑壁
4b 坑底
5 ハウジング
5a ハウジングカバー
5b ハウジング底部
5c ハウジング周壁
6 通過開口
7 レーザビーム
8 エキスパンダーレンズ
9 加熱ジェットノズル
10 加熱ガス流
11 加熱装置
12 クリーニングノズル
13 窒素ガス用の集合容器
14 クリーニングガス流
15 搬送ガス流
16 搬送ジェットノズル
17 搬送ジェットノズル
18 保護ガス流
19 レーザガイド管
20 流入開口
21 二重管
22 絶縁管
23 保護管
24 冷却ガス流
25/26 印籠継手
27 保持装置
【国際調査報告】