(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】カンプトテシン誘導体を合成するための中間体及びその製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
C07C 231/12 20060101AFI20230720BHJP
C07C 233/33 20060101ALI20230720BHJP
C07D 491/22 20060101ALI20230720BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230720BHJP
【FI】
C07C231/12 CSP
C07C233/33
C07D491/22
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580955
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2020122298
(87)【国際公開番号】W WO2022000868
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010593916.8
(32)【優先日】2020-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522502082
【氏名又は名称】上海皓元生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 宏▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 大明
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 涛
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲奇▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】周 治国
(72)【発明者】
【氏名】梅 魁
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 保富
(72)【発明者】
【氏名】高 強
(72)【発明者】
【氏名】袁 海玲
【テーマコード(参考)】
4C050
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD08
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG02
4C050GG03
4C050GG04
4C050HH01
4H006AA02
4H006AC27
4H006AC44
4H006BA05
4H006BA34
4H006BA36
4H006BA37
4H006BA62
4H006BB11
4H006BB12
4H006BB21
4H006BB22
4H006BB25
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM71
4H006BR70
4H039CA40
4H039CC20
4H039CH40
(57)【要約】
本発明は、カンプトテシン誘導体を合成するための中間体、及びその製造方法並びに用途を提供する。中間体Aは、3-フルオロ-4-メチルアニリンから、アシル化、臭化、クロスカップリング反応を経て得られる。この中間体Aは、中間体Bの製造、並びに、エキサテカンメタンスルホネートの製造に用いられる。中間体化合物Bは、中間体Aから、転位反応を経て得られる。エキサテカンメタンスルホネートは、化合物Bから、α位置のアセチルアミノ基の導入、アミノ基脱保護、縮合反応、加水分解反応を経て得られる。前記反応出発物質は安価であり、各工程の反応条件が穏和であり、かつ、操作が簡易であるうえ、収率が高く、工業化生産に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Bで表される中間体化合物の製造方法であって、
d、化合物Aの転位反応により、化合物Bを得る工程、
【化1】
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
化合物Aは、触媒、酸化剤、水、及び有機溶媒の存在下、転位反応を行い、化合物Bが得られる、
ここで、好ましくは、化合物Aと触媒とのモル比が、1:(0.1~0.5)であり、
好ましくは、化合物Aと酸化剤とのモル比が、1:(2~5)であり、
好ましくは、有機溶媒と水との体積比が、1:(0.9~2)である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法であって、
前記触媒は、銅粉、硫酸銅、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、硝酸銀、醋酸銀、及びフッ化銀からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、硝酸銀、フッ化銀、又は醋酸銀であり、より好ましくは、硝酸銀であり、
前記酸化剤は、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)、過硫酸カリウム、及び硝酸セリウムアンモニウムからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)、又は過硫酸カリウムであり、より好ましくは、過硫酸カリウムであり、
前記有機溶媒は、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルフォキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、アセトニトリルである、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
式Aで表される原料化合物の製造方法であって、
a、化合物1とアシル化剤を、触媒の作用の下、アシル化反応させて、化合物2を得る工程と、
b、化合物2と臭素化剤を、触媒、及び有機酸の作用の下、臭素化反応させて、化合物3を得る工程と、
c、化合物3とシクロブタノンを、塩基、及び有機溶媒の作用の下、クロスカップリング反応させて、化合物Aを得る工程と、
【化2】
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記工程aにおいて、
アシル化剤は、無水酢酸、塩化アセチル、エテノン、クロロ酢酸エステル、及びニトリル酢酸エステルからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、無水酢酸、又は塩化アセチルであり、
触媒は、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、ポリリン酸、及び硫酸からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、硫酸、又は無水塩化アルミニウムであり、より好ましくは、硫酸である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記工程bにおいて、
臭素化剤は、液体臭素、臭化水素、三臭化リン、三臭化アルミニウム、及びブロモコハク酸イミドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、液体臭素であり、
触媒は、臭素化マグネシウム、臭素化亜鉛、ヨード、醋酸パラジウム、醋酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸銅、及び酸化銀からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、醋酸ナトリウム、又はヨードであり、より好ましくは、醋酸ナトリウムであり、
有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びトリフルオロ醋酸からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、酢酸、又はトリフルオロ醋酸であり、より好ましくは、酢酸である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記工程cにおいて、
塩基は、カリウムt-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム及びナトリウムメトキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、カリウムt-ブトキシド、n-ブチルリチウム、又はナトリウムメトキシドであり、より好ましくは、n-ブチルリチウムであり、
有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びn-ヘキサンからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、テトラヒドロフランである、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
エキサテカンメタンスルホネート8の製造方法であって、
請求項1~3の何れかに記載の方法により中間体化合物Bを合成することを含み、
さらに、
e、(i)化合物Bとオキシム化剤を、塩基の作用の下、反応させ、(ii)常圧条件で、酸、触媒、水素ガスの作用の下、接触水素化分解反応させ、(iii)アミノ基に保護基を導入し、化合物4を得る工程(ここで、(ii)、(iii)の順序は交換可能であり、「ワンポット法」で行ってもよい。)と、
f、化合物4に酸を作用させ、アミノ基脱保護して、化合物5を得る工程と、
g、化合物5と化合物6を縮合反応させて、化合物7を得る工程と、
h、酸の作用の下、化合物7を加水分解反応させて、エキサテカンメタンスルホネート8を得る工程と、
【化3】
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、
前記工程e(i)において、
オキシム化剤は、亜硝酸エステルであり、亜硝酸ペンチル、亜硝酸n-ブチル、及び亜硝酸t-ブチルからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、亜硝酸n-ブチルであり、
好ましくは、塩基がカリウムt-ブトキシドであり、
好ましくは、工程(ii)において、酸が塩酸であり、
好ましくは、触媒がパラジウム炭素であり、
好ましくは、工程(iii)において、保護基がアセチル基である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の製造方法であって、
前記工程gにおいて、化合物5と化合物6をp-トルエンスルホン酸ピリジン塩、トルエンの作用の下、縮合反応させて、化合物7を得る、
好ましくは、前記縮合反応が還流反応であり、好ましくは還流水分離反応である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の製造方法であって、
前記工程hにおいて、メチルスルホン酸、水の作用の下、化合物7を加水分解反応させ、エキサテカンメタンスルホネート8を得る、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
エキサテカンメタンスルホネート8の製造方法であって、
請求項4~7の何れかに記載の製造方法により、式Aで表される化合物を合成すること、及び
請求項8~11の何れかに記載の製造方法により、化合物Aからエキサテカンメタンスルホネート8を合成すること、
を含むことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の合成技術分野に関する。特に、カンプトテシン誘導体を合成するための中間体及びその製造方法、並びに、当該中間体を用いてエキサテカンメタンスルホネートを合成する方法、及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
Exatecan(エキサテカン)は、DNA トポイソメラーゼ I(topoisomerase I) 阻害剤の一種として、化学名は、(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H, 12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)であり、水溶性のカンプトテシン誘導体であり、優れた抗腫瘍機能を有する。従来、臨床使用されるイリノテカンとは異なり、エキサテカンは、酵素による活性化を必要としない。Exatecan(エキサテカン)の構造は、下記の通りである。
【化1】
【0003】
Exatecan(エキサテカン)化合物及びその製造方法は、 EP0495432B1に開示されており、その合成方法のスキームは、下記のとおりである。
【化2】
【0004】
上記の中間体化合物Bの合成では、脱カルボニル化した後、酸化によりカルボニル基を導入する、繰り返し反応が行われ、原子利用率が低く、収率はわずか5.6%である。
【0005】
また、化合物Bからエキサテカン塩酸塩を合成する工程では、アミノ基脱保護(アセチル基)の後、アミノ基保護(トリフルオロアセチル基)が行われ、手順が繁雑であり、原子利用率が低く、工業化スケールアップ生産に向いていないうえ、収率もわずか4.5%である。o-フルオロトルエンからエキサテカン塩酸塩を合成するためには、合計11段階が必要であり、トータル収率はわずか0.25%である。
【0006】
化合物Bは、エキサテカン合成の鍵中間体であり、その他の公知の合成方法は特許文献WO1996026181A1にも開示されている。その具体的な合成スキームは下記の通りである。
【化3】
【0007】
上記の中間体化合物Bの合成方法も、閉環反応、開環反応、酸化反応、還元反応を繰り返し行われ、スキームが長く、反応操作が複雑であり、工業化スケールアップ生産に向いていない。
【0008】
特許文献WO2019044946A1では、中間体化合物Bの合成を改善し、化合物B、及び化合物Bからエキサテカンを製造する合成方法は以下の通りである。
【化4】
【0009】
上記合成方法により中間体化合物Bを製造する場合、ニトロ基がアミノ基に還元される工程において、後処理が複雑であり、かつ、スキームが長いため、工業化スケールアップ生産に向いていない。
【0010】
また、化合物Bからエキサテカンを合成する工程において、化合物Bにアセチルアミノ基を導入する反応の際、加圧水素化還元の条件が必要となり、かつ、縮合反応では、毒劇物のo-クレゾールが用いられているため、スケールアップ生産において一定の危険性が存在する。2-フルオロ-1-メチル-4-ニトロベンゼンからエキサテカンを製造するには合計10段階が必要であり、トータル収率は5.3%である。
【0011】
このため、高収率、低コスト、かつ、操作が簡易であり、工業化生産に好適な、エキサテカンの新生産プロセスの開発が急務である。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の目的は、エキサテカン合成の鍵中間体として使用可能な、新型中間体化合物Aを提供することにある。
【化5】
本発明の第2の目的は、中間体化合物Aの製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、中間体化合物Aを用いてエキサテカンの鍵中間体化合物Bを製造する方法を提供することにある。
【化6】
本発明の第4の目的は、中間体化合物Bを用いてエキサテカンメタンスルホネートを製造する方法を提供することにある。
本発明の第5の目的は、中間体化合物Aを用いてエキサテカンメタンスルホネートを製造する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の上記の目的を達成するための手段は、以下の通りである。
本発明の第2の目的を達成するために、
a、化合物1とアシル化剤をアシル化反応させて、化合物2を得る工程と、
b、化合物2と臭素化剤を臭素化反応させて、化合物3を得る工程と、
c、化合物3とシクロブタノンをクロスカップリング反応させて、化合物Aを得る工程と、
【化7】
を有する、中間体化合物Aの製造方法を提供する。
【0015】
当該方法により、反応出発物質が安価であり、合成スキームが簡単であり、原子利用率が高く、操作が簡易であり、各工程の反応条件が穏和であり、後処理が簡易であり、生産性が高く、工業化スケールアップ生産可能である、という有益な効果が得られる。
【0016】
本発明の第3の目的を達成するために、
d、化合物Aの転位反応により、エキサテカンの中間体化合物Bを得る工程、
【化8】
を含む、中間体化合物Aを用いたエキサテカンの鍵中間体(化合物B)の製造方法を提供する。
【0017】
従って、本発明のエキサテカンの中間体化合物Bの製造方法では、3-フルオロ-4-メチルアニリンを出発物質として、アシル化反応、臭素化反応、クロスカップリング反応を経て、中間体化合物Aが得られ、また、化合物Aの転位反応により、エキサテカンの中間体B(N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1-ナフチル)アセチルアミン)が得られる。
【0018】
上記の中間体化合物Aからエキサテカンの鍵中間体化合物Bを製造する方法では、反応の出発物質が入手し易く、合成スキームが簡単であり、反応条件が相対的に穏和であり、後処理が簡易でありながら、原子利用率が高く、かつ、非常に高い収率を得ることができる。工程a~dの4段階反応によりエキサテカンの中間体Bを得る、トータル収率は54%に達する。
【0019】
さらに、本発明の第4の目的のために、中間体化合物Aで製造した中間体化合物Bを用いて、エキサテカンメタンスルホネートを製造することができる。中間体化合物Bからエキサテカンメタンスルホネートを製造する方法は、
e、(i)化合物Bが、オキシム化剤との反応、(ii)接触水素化分解反応、(iii)アミノ基保護、を経て、化合物4を得る工程と、
f、化合物4が、酸性条件でアミノ基脱保護して、化合物5を得る工程と、
g、化合物5と化合物6を縮合反応させて、化合物7を得る工程と、
h、酸の作用の下、化合物7を加水分解反応させて、化合物8(エキサテカンメタンスルホネート)を得る工程と、
【化9】
を有する。
【0020】
ここで、工程eにおいて、工程(i)、(ii)及び工程(iii)は、「ワンポット法」で行ってよい。また、工程(ii)及び工程(iii)は、順序に行ってよい。例えば、先に工程(i)を行ってから、工程(ii)を行い、最後に工程(iii)を行ってもよい。或いは、先に工程(i)を行ってから、工程(iii)を行い、最後に工程(ii)を行ってもよい。
【0021】
このため、本発明の中間体化合物Bからエキサテカンメタンスルホネートを製造する方法において、化合物Bは、オキシム化、還元、アミノ基保護、アミノ基脱保護、縮合、加水分解を経て、エキサテカンメタンスルホネートが得られる。かかる各反応も、何れも、一般的な反応種類であって、反応条件が相対的に穏和であり、原料が入手し易く、後処理が簡易である。特に、工程eにおいて、オキシム化、還元、アミノ基保護、或いは、オキシム化、アミノ基保護、還元のスキームを採用することにより、従来の一定の危険性を有する高圧水素化条件の採用を回避している。本発明の方法において、還元過程は、常圧下で完了できるため、安全性が大幅に向上され、かつ、製品のスケールアップ生産に有利である。
【0022】
なお、工程gにおいて、還流水分離の縮合条件を採用することで、従来技術で用いられていた毒劇物のo-クレゾールの使用を回避し、反応の安全性が大幅に向上された。
【0023】
また、上記の過程では、非常に高い収率を得ることができ、工程e~hの4段階反応を経て中間体Bからエキサテカンメタンスルホネートを製造する、トータル収率は27.8%に達する。
【0024】
本発明の第5の目的のために、中間体化合物Aからエキサテカンメタンスルホネートを製造する方法は、上記の工程d~hを有してよい。当該方法において、化合物Aを出発原料として、エキサテカンメタンスルホネートを得る、トータル収率は22%に達する。
【0025】
本発明の第5の目的のために、化合物1を出発原料とし、中間体化合物Aを経て、エキサテカンメタンスルホネートを製造する方法は、上記の工程a~hを有してよい。当該方法において、化合物1を出発原料として、エキサテカンメタンスルホネートを得る、トータル収率は15%に達する。
【化10】
【0026】
上記の各方法は、何れも、反応の出発物質が安価であり、合成スキームが簡単であり、原子利用率が高く、操作が簡易であり、各工程の反応条件が穏和であり、後処理が簡易で、生産性が高いうえ、工業化スケールアップ生産が可能である、という有益な効果を得ることができる。
【0027】
なお、各化合物の構造式は、以下の通りである:
【化11】
【0028】
上記の反応により、エキサテカンメタンスルホネート、及びエキサテカンの中間体A、Bを製造する際、各工程の反応時間について、TLCなどの一般的なモニタリング手段を採用して、反応の進行具合をモニタリングし、反応を続けるか、或いは、終了させるかを判断し、かつ、反応終了後、必要により精製するか、或いは、そのまま次の反応に付するか等を判断することができる。
【0029】
上記の各工程の反応条件については、一般的な手段を採用してもよいが、下記の好ましい態様を採用すると、生成物の収率を向上させ、反応速度を上げ、かつ、コストを低下させることができる。
【0030】
好ましくは、工程aにおいて、化合物1とアシル化剤を、触媒の作用の下、アシル化反応させて、化合物2を得る。
【0031】
好ましくは、アシル化剤は、無水酢酸、塩化アセチル、エテノン、クロロ酢酸エステル、及びニトリル酢酸エステルからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、より好ましくは、無水酢酸、又は塩化アセチルである。
【0032】
好ましくは、触媒は、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、ポリリン酸、及び硫酸からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、より好ましくは、無水塩化アルミニウム、又は硫酸である。
【0033】
工程aの反応温度について、好ましくは、-10~30℃であり、より好ましくは、0~10℃である。工程aの反応時間について、好ましくは、0.5~2hであり、より好ましくは、0.5~1hである。
【0034】
工程aにおいて、化合物1とアシル化剤との質量比は、好ましくは、1:(2~4)である。
【0035】
工程aは、以下の原料仕込み順序、及び反応形態を採用してよい。
アシル化剤と触媒を均一に混合し、0~10℃まで降温させ、化合物1を複数回に分けて加え、加入完了後、0~10℃で0.5~1h反応させる。
反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、固形物を析出させ、ろ過した後、ケーキを水で洗浄し、固形物を採取して、オーブンで乾燥させることにより、化合物2が得られる。
【0036】
好ましくは、工程bにおいて、化合物2と臭素化剤を、触媒、及び有機酸の存在下、臭素化反応させて、化合物3を得る。
【0037】
好ましくは、臭素化剤は、液体臭素、臭化水素、三臭化リン、三臭化アルミニウム、及びN-ブロモコハク酸イミドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは液体臭素である。
【0038】
好ましくは、触媒は、臭素化マグネシウム、臭素化亜鉛、ヨード、醋酸パラジウム、醋酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸銅、及び酸化銀からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、より好ましくは、醋酸ナトリウム、又はヨードである。
【0039】
好ましくは、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びトリフルオロ醋酸からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、より好ましくは、酢酸、又はトリフルオロ醋酸である。
【0040】
工程bの反応温度について、好ましくは、60~90℃であり、より好ましくは80~90℃である。工程bの反応時間について、好ましくは、1~3hであり、より好ましくは、2~3hである。
【0041】
工程bにおける、化合物2:臭素化剤:触媒のモル比は、好ましくは1:(1~2):(1~2)であり、より好ましくは、1:(1~1.5):(1~1.5)である。化合物2と有機酸との質量比は、好ましくは、1:(2~4)である。
【0042】
工程bは、以下の原料仕込み順序、及び反応形態を採用してよい。
化合物2、及び触媒を有機酸に入れ、55~65℃まで加熱し、臭素化剤の有機酸混合液を滴加し、80~90℃に昇温させ、2~3h反応させる。
反応終了後、降温させ、反応液を氷水に注ぎ、固形物を析出させ、ろ過した。ケーキを水で洗浄し、固形物を採取した後、乾燥させることにより、化合物3が得られる。
【0043】
好ましくは、工程cにおいて、化合物3とシクロブタノンを、塩基、及び有機溶媒Aの存在下、反応させて、化合物Aを得る。
【0044】
好ましくは、塩基は、有機強塩基であり、好ましくは、カリウムt-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、及びナトリウムメトキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、より好ましくは、n-ブチルリチウム、カリウムt-ブトキシド、又はナトリウムメトキシドである。
【0045】
より好ましくは、n-ブチルリチウムは、n-ブチルリチウムの有機溶媒Bの溶液であり、好ましい有機溶媒Bは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びn-ヘキサンの何れかであり、より好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0046】
好ましくは、有機溶媒Aは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びn-ヘキサンからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、より好ましくは、テトラヒドロフランである。有機溶媒Aと有機溶媒Bは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
工程cにおける、各反応物の混合温度について、好ましくは、-78~-50℃であり、より好ましくは、-78~-65℃である。工程cの反応温度について、好ましくは、0~35℃であり、より好ましくは、室温である。工程cの反応時間について、好ましくは、2~5hであり、より好ましくは、2~3hである。
【0048】
工程cにおける、化合物3とシクロブタノンとのモル比は、好ましくは、1:(1~3)であり、より好ましくは、1:(1~2)である。化合物3と塩基とのモル比は、好ましくは、1:(1~3)であり、より好ましくは1:(2~3)である。
【0049】
工程cは、以下の原料仕込み順序を採用してよい。
化合物3を有機溶媒Aに溶解させ、-78~-50℃まで降温させて、塩基を滴加し、1~2h攪拌する。シクロブタノンを滴加し、-78~-50℃で0.5~1h攪拌した後、室温に戻し、0.5~1h反応させる。
反応終了後、塩化アンモニウム水溶液を加入して、反応をクエンチする。酢酸エチルで抽出し、有機相を合併して、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、ろ過し、回転乾燥させる。有機溶媒Cを加入して再結晶させ、化合物Aの純物質が得られる。有機溶媒Cは、メタノール、エタノール、ブタノール、及びプロピレングリコールからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくはエタノールである。
【0050】
好ましくは、工程dにおいて、化合物Aは、触媒、酸化剤、水、有機溶媒Dの存在下反応し、化合物Bを得る。
【0051】
好ましくは、触媒は、銅粉末、硫酸銅、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、硝酸銀、醋酸銀、及びフッ化銀からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、硝酸銀、フッ化銀、又は醋酸銀である。
【0052】
好ましくは、酸化剤は、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)(selectfluor)、過硫酸カリウム、及び硝酸セリウムアンモニウムからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、過硫酸カリウム、又は1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)である。
【0053】
好ましくは、有機溶媒Dは、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルフォキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくはアセトニトリルである。
【0054】
工程dの反応温度について、好ましくは、20~40℃であり、より好ましくは、25~35℃である。工程dの反応時間について、好ましくは、6~12hであり、より好ましくは、8~12hである。
【0055】
工程dにおける、化合物Aと触媒とのモル比は、好ましくは、1:(0.1~0.5)であり、より好ましくは、1:(0.2~0.3)である。化合物Aと酸化剤とのモル比は、好ましくは、1:(2~5)であり、より好ましくは、1:(3~5)である。
【0056】
工程dにおける、有機溶媒Dと水との体積比は、好ましくは、1:(0.9~2)であり、好ましくは、1:(1~1.5)である。
【0057】
工程dは、以下の原料仕込み順序を採用してよい。
化合物Aを有機溶媒D及び水に溶解させ、触媒及び酸化剤を加入し、25~35℃で8~12h反応させる。
反応終了後、酢酸エチルを入れ生成物を溶解させ、無機塩をろ過除去する。ろ液を酢酸エチルで抽出し、有機相を合併して、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質が得られる。
【0058】
好ましくは、工程eでは、(i)化合物Bとオキシム化剤を、塩基、有機溶媒Eの存在下、反応させ、(ii)酸、触媒、水素ガス、有機溶媒Fの作用の下、接触水素化分解反応させ、(iii)無水酢酸と反応させて、化合物4を得る。ここで、工程(i)、(ii)及び(iii)は、「ワンポット法」を採用して行ってもよい。或いは、工程(ii)と工程(iii)とは、任意の順序で順に行ってよい。例えば、先に工程(i)を行ってから、工程(ii)を行い、最後に工程(iii)を行ってよい。また、先に工程(i)を行ってから、工程(iii)を行い、最後に工程(ii)を行ってもよい。
【0059】
工程(i)において、オキシム化剤は、好ましくは亜硝酸エステルであり、例えば、亜硝酸ペンチル、亜硝酸n-ブチル、又は亜硝酸t-ブチルであり、好ましくは亜硝酸n-ブチルである。
【0060】
好ましくは、塩基は、カリウムt-ブトキシド、及びナトリウムt-ブトキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくはカリウムt-ブトキシドである。
【0061】
好ましくは、有機溶媒Eは、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、n-ヘキサン、トルエン、ジオキサン、及びt-ブタノールからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、テトラヒドロフランとt-ブタノールの混合溶媒である。
【0062】
工程(i)の反応温度について、好ましくは、-10~20℃であり、より好ましくは、0~5℃である。工程(i)の反応時間について、好ましくは、0.5~16hであり、より好ましくは、0.5~2hである。
【0063】
工程(i)における、化合物Bとオキシム化剤とのモル比は、好ましくは、1:(1~2)であり、より好ましくは、1:(1.2~1.6)である。化合物Bと塩基とのモル比は、好ましくは、1:(1~3)であり、より好ましくは、1:(1.5~2.5)である。
【0064】
工程(ii)において、好ましくは、酸は、塩酸、醋酸、メチルスルホン酸、及び臭化水素酸からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは塩酸であり、さらに好ましくは、2N 希塩酸である。
【0065】
好ましくは、触媒は、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、白金炭素、及び亜鉛粉末からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくはパラジウム炭素である。
【0066】
好ましくは、有機溶媒Fは、酢酸エチル、メタノール、エタノール、及びジクロロメタンからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくはメタノールである。
【0067】
工程(ii)の反応温度について、好ましくは、5~35℃であり、より好ましくは、15~30℃である。工程(ii)の反応時間について、好ましくは、0.5~3hであり、より好ましくは、2~3hである。工程(ii)の水素化分解反応は、好ましくは常圧反応である。
【0068】
工程(ii)における、化合物Bと酸とのモル比は、好ましくは、1:(1~3)であり、より好ましくは、1:(1.5~2.5)である。化合物Bと触媒との質量比は、好ましくは、1:(0.05~0.5)であり、より好ましくは、1:(0.1~0.2)である。
【0069】
工程(iii)の反応温度について、好ましくは、5~35℃であり、より好ましくは、15~30℃である。工程(iii)の反応時間について、好ましくは、0.5~3hであり、より好ましくは、1~2hである。
【0070】
工程(iii)における、化合物Bと無水酢酸とのモル比は、好ましくは、1:(1~3)であり、より好ましくは、1:(1.5~2.5)である。
【0071】
工程eは、以下の仕込み順序、及び後処理形態を採用してよい。
塩基を有機溶媒Eに入れ、0~5℃で攪拌し溶解させる。化合物Bを有機溶媒Eに溶解させ、上記の反応液に滴加する。オキシム化剤を滴加し、滴加完了後、0.5~2h反応させる。
反応終了後、酸を添加してpHを酸性に調整し、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、ろ過、濃縮する。粗製物をメチルt-ブチルエーテルで精製し、ろ過、固形物を採取し、干燥させる。
上記固形物を有機溶媒Fに入れ、10~25℃で、酸、触媒を加入し、水素ガスを流通させ、常圧下で、2~3h水素化反応させる。反応終了後、反応液をそのまま次の反応に付する。
上記反応液に無水酢酸を加入し、水素ガス保護を継続しながら、1~2h反応させる。
反応終了後、炭酸水素ナトリウムでpH>7まで中和させる。酢酸エチルで抽出し、有機相を合併して、水洗し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、濃縮させる。粗製物をメチルt-ブチルエーテルと酢酸エチルとの混合溶媒で精製し、ろ過干燥させることにより、化合物4が得られる。
【0072】
好ましくは、工程fにおいて、化合物4は、酸、溶媒Gの存在下で反応し、化合物5を得る。
【0073】
好ましくは、酸は、塩酸、硫酸、及び醋酸からなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは塩酸、さらに好ましくは、2N 希塩酸である。
【0074】
好ましくは、溶媒Gは、水、メタノール、エタノール、及び酢酸エチルからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくはメタノールである。
【0075】
工程fの反応温度について、好ましくは、40~80℃であり、より好ましくは、60~70℃である。工程fの反応時間について、好ましくは、0.5~3hであり、より好ましくは、1~2hである。
【0076】
工程fにおける、溶媒Gにおける化合物4の濃度は、0.01~0.04kg/Lであり、より好ましくは、0.02~0.03 kg/Lである。溶媒Gと酸との体積比は、好ましくは、1:(0.7~1.5)であり、より好ましくは、1:(0.9~1.2)である。
【0077】
工程fは、以下の原料仕込み順序を採用してよい。
化合物4を酸と溶媒Gの溶液に加入し、アルゴンガスの保護下、60~70℃で1~2h反応させる。
反応終了後、0~10℃まで降温させ、炭酸ナトリウム溶液でpH=3~4まで中和させる。続いて、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でpH=6~7まで中和させ、ろ過、ケーキを水で洗浄し、ケーキを採取して、干燥させることにより、化合物5が得られる。
【0078】
好ましくは、工程gにおいて、化合物5と化合物6とは、p-トルエンスルホン酸ピリジン塩、トルエンの作用の下、縮合反応を行い、化合物7が得られる。
【0079】
工程gの反応温度について、好ましくは、110~150℃であり、より好ましくは、130~140℃である。工程gの反応時間について、好ましくは、24~72hであり、より好ましくは、30~50hである。工程g的反応条件について、好ましくは還流反応、より好ましくは還流水分離反応、より好ましくは加熱還流水分離反応である。
【0080】
工程gにおける、化合物5と化合物6とのモル比は、好ましくは、1:(0.9~1.2)であり、より好ましくは、1:(1~1.1)である。化合物5とp-トルエンスルホン酸ピリジン塩とのモル比は、好ましくは、1:(0.02~0.3)であり、より好ましくは、1:(0.05~0.15)である。
【0081】
工程gは、以下の原料仕込み順序を採用してよい。
化合物5、化合物6、p-トルエンスルホン酸ピリジン塩を三口フラスコに入れ、トルエンを加入し、130~140℃で30~50h還流水分離反応させる。
反応終了後、反応液を冷却、ろ過し、メチルt-ブチルエーテル洗浄する。ケーキを收集し、乾燥させることにより、化合物7が得られる。
【0082】
好ましくは、工程hにおいて、化合物7は、メチルスルホン酸、溶媒Hの作用の下、加水分解反応し、化合物8(エキサテカンメタンスルホネート)が得られる。
【0083】
好ましくは、溶媒Hは、水、2-メトキシエタノール、エチルシクロヘキサンからなる群より選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは水である。
【0084】
工程hの反応温度について、好ましくは、90~120℃であり、より好ましくは、100~115℃である。工程hの反応時間について、好ましくは、4~12hであり、より好ましくは、6~8hである。
【0085】
工程hにおける、化合物7とメチルスルホン酸との質量比は、好ましくは、1:(3~30)であり、より好ましくは、1:(15~30)である。
【0086】
工程hは、以下の原料仕込み順序を採用してよい。
化合物7を溶媒Hで懸濁させ、メチルスルホン酸を徐々に加入すると、固形物が溶解し、かつ、発熱現象が起こる。窒素ガス置換後、100~115℃に加熱し、6~8h反応させる。
反応終了後、室温まで冷却し、ろ過して、ケーキを水で洗浄する。ろ液をエタノールで希釈し、固形物を析出させ、室温で攪拌し、ろ過、吸引乾燥し、粗製物をエタノール、水の混合溶液で再結晶させることにより、化合物8(エキサテカンメタンスルホネート)が得られる。
【0087】
従来技術と比べて、本発明の有益効果は、以下の通りである。
(1)反応出発物質が安価である。
(2)中間体の合成スキームが簡単であり、操作が簡易であり、かつ、各工程の反応条件が穏和である。
(3)後処理が簡易であり、生産性が高く、工業化スケールアップ生産が可能である。
(4)本発明のエキサテカンメタンスルホネート、及びその中間体A、Bの合成の全体の収率が高い。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、具体的な実施態様を挙げ、本発明について、明確、且つ、詳細に説明する。但し、以下に挙げた実施例は、本発明の実施例の一部にすぎず、全部ではない。また、これらの実施例は、本発明を説明するために挙げたものであり、本発明の保護範囲を制限する意図ではない。なお、当業者によって、本発明の実施例に基づき、創作的な労力を尽くすことなく得られる、他の実施例は、全て本発明の保護範囲に包括される。実施例において、具体的な条件を明示していないことについて、通常の条件、又はメーカー勧めの条件で行うものとする。さらに、使用する試薬、又は機器について、メーカーを明示していない場合、何れも、市販により入手可能な一般的な製品である。
【0089】
本発明の具体的な実施形態において采用する一部の試薬等は下記の通りである。
【表1】
【実施例】
【0090】
<実施例1>
化合物Aの調製
【化12】
本実施例の化合物Aの調製スキームは、上記の通りであり、製造方法は、以下の工程を含む。
a、無水酢酸(300 mL)及び硫酸(1.5 mL)を三口フラスコに入れ、攪拌しながら、10℃まで降温させた。化合物1(95 g)を複数回に分けて、反応瓶に加え、加入完了後、10℃で30分間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、固形物を析出させた。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、固形物を取り出し、乾燥させ、粗製物の化合物2を得た(117.8 g、92.8%)。
b、化合物2(115.5 g)及び醋酸ナトリウム(68 g)を酢酸(250 mL)に加入し、60℃に加熱し、反応液に、液体臭素(132.5 g)の酢酸(100 mL)混合液を滴加し、反応温度を80℃に上昇させ、2時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、黄色い固形物が生成された。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、白い固形物の化合物3を得た(167 g、98%)。
c、化合物3(160 g)をテトラヒドロフラン(1.5 L)に溶かせ、-78℃まで冷却した。n-ブチルリチウムのテトラヒドロフラン溶液(2.5M、0.624 L)を当該反応液に徐々に滴下して、1.5時間攪拌した。シクロブタノン(55 g)を当該反応液に徐々に滴下して、反応液を-78℃で0.5時間攪拌した後、反応温度を室温に戻し、さらに0.5時間攪拌した。反応液に、塩化アンモニウム水溶液を加入し、反応をクエンチした。酢酸エチル(500 mL)で3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、ろ過、回転乾燥した。2体積のエタノールで再結晶させることにより、純粋品の化合物Aを得た(110.8 g、72%)。
【0091】
<実施例2>
化合物Aの調製
本実施例の化合物Aの調製スキームは、実施例1と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
a、塩化アセチル(45 mL)及び無水塩化アルミニウム(5 g)を三口フラスコに入れ、攪拌しながら、0℃まで降温させた。化合物1(20 g)を複数回に分けて、反応瓶に加え、加入完了後、0℃で45分間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、固形物を析出させた。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、固形物を取り出し、乾燥させ、粗製物の化合物2を得た(24 g、90%)。
b、化合物2(10 g)及びヨード(15 g)をトリフルオロ醋酸(15 mL)に加入し、55℃に加熱し、反応液に、液体臭素(10.5 g)のトリフルオロ醋酸(5 mL)混合液を滴加し、反応温度を85℃に上昇させ、2時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、黄色い固形物が生成された。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、白色固形物の化合物3を得た(14 g、96%)。
c、化合物3(30 g)をn-ヘキサン(300 mL)に溶かせ、-78℃まで冷却した。カリウムt-ブトキシド(27 g)を当該反応液に徐々に加入して、1.5時間攪拌した。シクロブタノン(17 g)当該反応液にを徐々に滴下して、反応液を-78℃で0.5時間攪拌した後、反応温度を室温に戻し、さらに1時間攪拌した。反応液に、塩化アンモニウム水溶液を加入し、反応をクエンチした。酢酸エチル(100 mL)で3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、ろ過、回転乾燥した。2体積のエタノールで再結晶させることにより、純粋品の化合物Aを得た(20.2 g、70%)。
【0092】
<実施例3>
化合物Aの調製
本実施例の化合物Aの調製スキームは実施例1と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
a、無水酢酸(9.2 L)及び硫酸(30 mL)を三口フラスコに入れ、攪拌しながら、5℃まで降温させた。化合物1(2.5 kg)を複数回に分けて、反応瓶に加え、加入完了後、5℃で60分間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、固形物を析出させた。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、固形物を取り出し、オーブンで乾燥させ、粗製物の化合物2を得た(3.1 kg、93%)。
b、化合物2(1.5 kg)及び醋酸ナトリウム(770 g)を酢酸(3.6 L)に加入し、60℃に加熱し、反応液に、液体臭素(1.5 kg)の酢酸(1.4 L)混合液を滴加し、反応温度を90℃に上昇させ、3時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、黄色い固形物が生成された。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、白色固形物の化合物3を得た(2.16 kg、98%)。
c、化合物3(2 kg)をテトラヒドロフラン(15 L)に溶かせ、-78℃まで冷却した。n-ブチルリチウムのテトラヒドロフラン溶液(2.5M、7.8 L)を当該反応液に徐々に滴下して、1.5時間攪拌した。シクロブタノン(687 g)を当該反応液に徐々に滴下して、反応液を-78℃で0.5時間攪拌した後、反応温度を室温に戻し、さらに1.5時間攪拌した。反応液に、塩化アンモニウム水溶液を加入し、反応をクエンチした。酢酸エチル(5 L)で3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥させ、ろ過、回転乾燥した。2体積のエタノールで再結晶させることにより、純粋品の化合物Aを得た(1.45 kg、75%)。
【0093】
<実施例4>
化合物Aの調製
本実施例の化合物Aの調製スキームは実施例1と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
a、無水酢酸(30 mL)を三口フラスコに入れ、攪拌しながら、10℃まで降温させた。化合物1(10 g)を複数回に分けて、反応瓶に加え、加入完了後、10℃で30分間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、固形物を析出させた。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、固形物を取り出し、オーブンで乾燥させ、粗製物の化合物2を得た(6 g、45%)。
b、化合物2(10 g)を酢酸(20 mL)に加入し、60℃に加熱し、反応液に、液体臭素(11.5 g)の酢酸(10 mL)混合液を滴加し、反応温度を80℃に上昇させ、2時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、黄色い固形物が生成された。固形物をろ過し、水で3回洗浄して、白色固形物の化合物3を得た(11.7 g、80%)。
c、化合物3(10 g)をジオキサン(100 mL)に溶かせ、-78℃まで冷却した。ナトリウムメトキシド(5.5 g)を当該反応液に徐々に加入して、1.5時間攪拌した。シクロブタノン(3.5 g)を当該反応液に徐々に滴下して、反応液を-78℃で0.5時間攪拌した後、反応温度を室温に戻し、さらに0.5時間攪拌した。反応液に塩化アンモニウム水溶液を加入し、反応をクエンチした。酢酸エチル(50 mL)で3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥し、ろ過、回転乾燥した。2体積のエタノールで再結晶させることにより、純粋品の化合物Aを得た(6.3 g、65%)。各工程で得られた化合物について、通常の分離精製を行い、純粋品を同定した。構造同定データは、それぞれ、以下の通りである:
化合物2:1H NMR (CDCl3) δ: 7.68 (1H, s), 7.43 (1H, d, J = 12Hz), 7.07-7.14 (2H, m), 2.26 (3H, s), 2.20 (3H, s);ESI-MS: m/z C9H10FNO[M+H]+ 計算値: 168.1; 実測値 168.1;
化合物3:1H NMR (CDCl3) δ: 8.18 (1H, d, J = 12Hz), 7.59 (1H, s), 7.37 (1H, d, J = 8Hz), 2.27 (3H, s), 2.26 (3H, s);ESI-MS: m/z C9H9BrFNO [M+H]+ 計算値: 246.0/248.0; 実測値 246.0/248.0;
化合物A:1H NMR (CD3OD) δ: 7.68 (1H, d, J = 12Hz), 7.29 (1H, d, J = 8Hz), 2.52-2.56 (2H, m), 2.35-2.43 (2H, m), 2.29 (3H, s), 2.17 (3H, s), 2.02-2.06 (1H, m), 1.65-1.7 (1H, m);ESI-MS: m/z C13H16FNO2 [M+H]+ 計算値: 238.1; 実測値 238.1。
【0094】
<実施例5>
化合物Bの調製
【化13】
本実施例の化合物Bの調製スキームは、上記の通りであり、製造方法は、以下の工程を含む。
d、化合物A(50 g)をアセトニトリル(750 mL)及び水(750 mL)に溶かせ、硝酸銀(7.1 g)及び過硫酸カリウム(170 g)を加入し、30℃で8時間攪拌した。反応完了後、酢酸エチルを加入し生成物を溶解させ、無機塩をろ過去除した。ろ液を酢酸エチルで3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥後、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質を得た(33 g、66%)。
【0095】
<実施例6>
化合物Bの調製
本実施例の化合物Bの調製スキームは実施例5と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
d、化合物A(350 g)をトルエン(5.2 L)及び水(6.2 L)に溶かせ、フッ化銀(46.8 g)及び過硫酸カリウム(1.6 kg)を加入し、25℃で10時間攪拌した。反応完了後、酢酸エチルを加入し生成物を溶解させ、無機塩をろ過去除した。ろ液を酢酸エチルで3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥後、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質を得た(222 g、64%)。
【0096】
<実施例7>
化合物Bの調製
本実施例の化合物Bの調製スキームは実施例5と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
d、化合物A(2.5 kg)をジメチルスルフォキシド(25 L)及び水(25 L)に溶かせ、硝酸銀(355 g)及び過硫酸カリウム(8.5 kg)を加入し、35℃で12時間攪拌した。反応完了後、酢酸エチルを加入し生成物を溶解させ、無機塩をろ過去除した。ろ液を酢酸エチルで3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥後、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質を得た(1.96 kg、79%)。
【0097】
<実施例8>
化合物Bの調製
本実施例の化合物Bの調製スキームは実施例5と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
d、化合物A(20 g)をジクロロメタン(300 mL)及び水(300 mL)に溶かせ、硝酸銀(2.8 g)及び過硫酸カリウム(68 g)を加入し、30℃で8時間攪拌した。反応完了後、酢酸エチルを加入し生成物を溶解させ、無機塩をろ過去除した。ろ液を酢酸エチルで3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥後、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質を得た(4.6 g、23%)。
【0098】
<実施例9>
化合物Bの調製
本実施例の化合物Bの調製スキームは実施例5と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
d、化合物A(40 g)をテトラヒドロフラン(650 mL)及び水(1 L)に溶かせ、醋酸銀(8.4 g)及びselectfluor(298 g)を加入し、35℃で8時間攪拌した。反応完了後、酢酸エチルを加入し生成物を溶解させ、無機塩をろ過去除した。ろ液を酢酸エチルで3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥後、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質を得た(23.8 g、60%)。
【0099】
<実施例10>
化合物Bの調製
本実施例の化合物Bの調製スキームは実施例5と一致し、製造方法は、以下の工程を含む。
d、化合物A(35 g)をジメチルスルフォキシド(520 mL)及び水(520 mL)に溶かせ、フッ化銀(4.7 g)及び過硫酸カリウム(160 g)を加入し、30℃で10時間攪拌した。反応完了後、酢酸エチルを加入し生成物を溶解させ、無機塩をろ過去除した。ろ液を酢酸エチルで3回抽出して、有機相を合併し、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで干燥後、ろ過、回転乾燥し、カラムを通過させることにより、エキサテカンの鍵中間体化合物Bの純物質を得た(24.3 g、70%)。
化合物B:1H NMR (CDCl3) δ:8.43 (1H, d, J = 12Hz), 2.88-2.91 (2H, m), 2.66-2.69 (2H, m), 2.24 (3H, s), 2.17 (3H, s), 2.09-2.12 (2H, m);ESI-MS: m/z C13H14FNO2 [M+H]+ 計算値: 236.1; 実測値 236.1。
【0100】
<実施例11>
化合物8(エキサテカンメタンスルホネート)の調製
【化14】
本実施例の化合物8の調製スキームは、上記の通りであり、製造方法は、以下の工程を含む。
e、カリウムt-ブトキシド(34.6 g)をテトラヒドロフラン(650 mL)及びt-ブタノール(165 mL)の混合溶液に加入し、5℃で攪拌し溶解させた。化合物B(33.0 g)をテトラヒドロフラン(650 mL)の溶媒に溶解させ、上記反応液に滴加し、10min反応させ、亜硝酸n-ブチル(23.2 g)を滴加した。滴加完了後、1時間反応させた。2N 塩酸(360 mL)でpHを酸性に調節し、酢酸エチル(1 L)で抽出して、有機相を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで干燥し、ろ過濃縮した。粗製物にメチルt-ブチルエーテル(200 mL)を入れ精製し、ろ過、干燥した。
上記固形物(27.5 g)をメタノール(300 mL)に加入し、室温下、2N塩酸(127 mL)、パラジウム炭素(3.3 g)を加入して、水素ガスを流通させ、常圧下、2時間水素化反応させた。反応液は、そのまま次の反応に付する。
上記反応液に、無水酢酸(33.0 g)を加入し、水素ガス保護を続けながら、1時間反応させた。反応完了後、炭酸水素ナトリウムでPH>7まで中和させ、酢酸エチル(300 mL*2)で抽出して、水洗し、飽和食塩水洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで干燥し、濃縮させた。粗製物に、メチルt-ブチルエーテル(100 mL)、酢酸エチル(50 mL)の混合溶媒を加入し、精製、ろ過干燥することにより、薄黄色固形粉末の化合物4を得た(25.6 g、62%)。
f、化合物4(15.5 g)を2N 塩酸(620 mL)及びメタノール(620 mL)の溶液に加入し、アルゴンガスの保護下、60℃で0.5時間反応させた後、0~10℃まで降温させ、炭酸ナトリウム(65.7 g)の水(1314 mL)溶液でpH = 3~4まで中和させた。続いて、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でpH=6~7まで中和させ、ろ過、水100 mLで洗浄し、干燥することにより、固形粉末の化合物5を得た(12.4 g、93%)。
g、化合物5(10 g)、化合物6(10 g)、p-トルエンスルホン酸ピリジン塩(6 g)を三口フラスコに入れ、トルエン(500 mL)を加入して、130~140℃で48時間還流水分離反応させた。反応液を冷却、ろ過、メチルt-ブチルエーテル(100 mL)で洗浄し、固形物を採取して、乾燥させることにより、化合物7を得た(18.4 g、96.5%)。
h、化合物7(30 g)を水(600 mL)に懸濁させ、メチルスルホン酸(300 mL)を徐々に加入したところ、固形物が溶解し、且つ、発熱現象が見られた。窒素ガス置換後、112℃に加熱し7h反応させた後、室温まで冷却し、ろ過し、ケーキを水(100 mL)で洗浄した。ろ液をエタノール(4 L)で希釈して、固形物を析出させ、室温で20 min攪拌し、ろ過、吸引乾燥した。粗製物をエタノール/水=4:1(1 L)に懸濁させて、2 h加熱還流させた後、室温まで冷却させ、ろ過した。固形物を少量のエタノールで洗浄後、吸引乾燥、凍結乾燥した後、エキサテカンメタンスルホネート化合物8を得た(、16.7 g、50%)。
【0101】
<実施例12>
化合物7の調製
【化15】
本実施例の化合物7の調製スキームは、上記の通りであり、製造方法は、以下の工程を含む。
g、化合物5(5 g)、化合物6(5 g)、p-トルエンスルホン酸ピリジン塩(3 g)を三口フラスコに入れ、トルエン(200 mL)を加入して、130~140℃で72時間還流反応させた。反応液を冷却、ろ過し、メチルt-ブチルエーテル(50 mL)で洗浄し、固形物を採取して、オーブンで乾燥させることにより、化合物7を得た(6.4 g、71%)。
各工程で得られた化合物を通常の分離精製し、純粋品を同定した。構造同定データは、それぞれ、以下の通りである。
化合物4:
1H NMR (DMSO) δ:11.89 (s, 1H), 8.29 (d, J = 13.0 Hz, 1H), 8.22 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.59-4.65 (m, 1H), 3.09- 2.94 (m, 2H), 2.18-2.21 (m, 1H), 2.16 (s, 3H), 2.12 (s, 3H), 1.95-2.03 (m, 1H), 1.92 (s, 3H);ESI-MS: m/z C
15H
17FN
2O
3[M+H]
+ 計算値: 293.1; 実測値 293.1;
化合物5:
1H NMR (DMSO) δ:8.08 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.42 (s, 2H), 6.38 (d, J = 12.5 Hz, 1H), 4.51-4.41 (m, 1H), 2.91-2.94 (m, 1H), 2.79-2.84 (m, 1H), 2.10-2.18 (m, 1H), 1.98 (s, 3H), 1.90 (s, 3H), 1.81- 1.89 (m, 1H);ESI-MS: m/z C
13H
15FN
2O
2 [M+H]
+ 計算値: 251.1; 実測値 251.1;
化合物7:
1H NMR (DMSO) δ:8.43-8.55 (m, 1H), 7.80 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 6.55 (s, 1H), 5.54- 5.57 (m, 1H), 5.43 (s, 2H), 5.16-5.25 (m, 2H), 3.17 (s, 2H), 2.39 (s, 3H), 2.11- 2.13 (m, 2H), 1.80- 1.92 (m, 5H), 0.86-0.89 (m, 3H); ESI-MS: m/z C
26H
24FN
3O
5 [M+H]
+ 計算値:478.2; 実測値 478.2;
化合物8(エキサテカンメタンスルホネート):
1H NMR (D
2O) δ:7.08 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 7.05 (s, 1H), 5.33-5.34 (m, 1H), 5.24-5.27 (m, 1H), 5.19-5.21 (m, 1H), 5.16-5.17 (m, 1H), 5.12 (s, 1H), 3.25 (d, J = 13.4 Hz, 1H), 2.91-2.97 (m, 1H), 2.63-2.66 (m, 4H), 2.47-2.54 (m, 1H), 2.13 (s, 3H), 1.73-1.77 (m, 2H), 0.74 (t, J = 7.3 Hz, 3H); ESI-MS: m/z C
25H
26FN
3O
7S [M+H]
+ 計算値:532.2; 実測値 532.2。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明では、反応の出発物質が安価であり、中間体の合成スキームが簡単であり、各工程の反応条件が穏和であり、後処理が簡易であるうえ、生産性が高い。このため、本発明は、工業の利用に好適である。
最後に、以上の各実施例は、本発明の解決手段を説明するために挙げたものにすぎず、本発明を限定する意図ではない。前記の各実施例を挙げ本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、前記の各実施例に記載された態様に対し、変更、或いは、その中、一部又は全部の構成について同等の置換が可能であることは、理解できる筈である。なお、このような変更又は置換により、その形態の本質が本発明の範囲から外れることはない。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Bで表される中間体化合物の製造方法であって、
d、化合物Aの転位反応により、化合物Bを得る工程、
【化1】
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
化合物Aは、触媒、酸化剤、水、及び有機溶媒の存在下、転位反応を行い、化合物Bが得られ
ることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法であって、
化合物Aと触媒とのモル比が、1:(0.1~0.5)である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法であって、
化合物Aと酸化剤とのモル比が、1:(2~5)である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の製造方法であって、
有機溶媒と水との体積比が、1:(0.9~2)である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項
2に記載の製造方法であって、
前記触媒は、銅粉、硫酸銅、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、硝酸銀、醋酸銀、及びフッ化銀からなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
前記酸化剤は、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)、過硫酸カリウム、及び硝酸セリウムアンモニウムからなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
前記有機溶媒は、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルフォキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種で
ある、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法であって、化合物Aは、
a、化合物1とアシル化剤を、触媒の作用の下、アシル化反応させて、化合物2を得る工程と、
b、化合物2と臭素化剤を、触媒、及び有機酸の作用の下、臭素化反応させて、化合物3を得る工程と、
c、化合物3とシクロブタノンを、塩基、及び有機溶媒の作用の下、クロスカップリング反応させて、化合物Aを得る工程と、
を含む方法により製造される、
【化2】
ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の製造方法であって、
前記工程aにおいて、
アシル化剤は、無水酢酸、塩化アセチル、エテノン、クロロ酢酸エステル、及びニトリル酢酸エステルからなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
触媒は、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、ポリリン酸、及び硫酸からなる群より選ばれる一種又は複数種で
ある、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項
7に記載の製造方法であって、
前記工程bにおいて、
臭素化剤は、液体臭素、臭化水素、三臭化リン、三臭化アルミニウム、及びブロモコハク酸イミドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
触媒は、臭素化マグネシウム、臭素化亜鉛、ヨード、醋酸パラジウム、醋酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸銅、及び酸化銀からなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びトリフルオロ醋酸からなる群より選ばれる一種又は複数種で
ある、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項
7に記載の製造方法であって、
前記工程cにおいて、
塩基は、カリウムt-ブトキシド、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム及びナトリウムメトキシドからなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びn-ヘキサンからなる群より選ばれる一種又は複数種で
ある、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
式8で表されるエキサテカンメタンスルホネートの製造方法であって、
【化3】
式Aで表される化合物Aにより、式8で表されるエキサテカンメタンスルホネートを合成する、
【化4】
ことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法であって、
d、化合物Aの転位反応により、化合物Bを得る工程、
【化5】
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって
、
さらに、
e、(i)化合物Bとオキシム化剤を、塩基の作用の下、反応させ、(ii)常圧条件で、酸、触媒、水素ガスの作用の下、接触水素化分解反応させ、(iii)アミノ基に保護基を導入し、化合物4を得る工程(ここで、(ii)、(iii)の順序は交換可能であり、「ワンポット法」で行ってもよい。)と、
f、化合物4に酸を作用させ、アミノ基脱保護して、化合物5を得る工程と、
g、化合物5と化合物6を縮合反応させて、化合物7を得る工程と、
h、酸の作用の下、化合物7を加水分解反応させて、エキサテカンメタンスルホネート8を得る工程と、
【化6】
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の製造方法であって、
前記工程e(i)において、
オキシム化剤は、亜硝酸エステルであり、亜硝酸ペンチル、亜硝酸n-ブチル、及び亜硝酸t-ブチルからなる群より選ばれる一種又は複数種であり
、
塩基がカリウムt-ブトキシドで
ある、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の製造方法であって、
工程e(ii)において、酸が塩酸であり、触媒がパラジウム炭素である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の製造方法であって、
工程e(iii)において、保護基がアセチル基である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
請求項
13に記載の製造方法であって、
前記工程gにおいて、化合物5と化合物6をp-トルエンスルホン酸ピリジン塩、トルエンの作用の下、縮合反応させて、化合物7を得る
、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法であって、
前記縮合反応が還流反応である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項19】
請求項
13に記載の製造方法であって、
前記工程hにおいて、メチルスルホン酸、水の作用の下、化合物7を加水分解反応させ、エキサテカンメタンスルホネート8を得る、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項20】
下記式Aで表される化合物。
【化7】
【国際調査報告】