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特表2023-532346トレーサを使用して皮膚状態の処置を制御するためのデバイス及び方法
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  • 特表-トレーサを使用して皮膚状態の処置を制御するためのデバイス及び方法 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】トレーサを使用して皮膚状態の処置を制御するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20230720BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581553
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 US2021070789
(87)【国際公開番号】W WO2022006587
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/046,521
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エドガー・アルバート・デュール
【テーマコード(参考)】
4C117
4C267
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB09
4C117XB12
4C117XB13
4C117XE42
4C117XJ01
4C117XJ13
4C117XJ34
4C117XJ42
4C267AA61
4C267BB47
4C267BB48
4C267BB62
4C267CC01
(57)【要約】
皮膚状態を処置するためのデバイス及び方法が提供される。デバイスは、組成物を皮膚に塗布するアプリケータ装置を含んでもよい。皮膚状態を処置するための活性成分、及びトレーサを含む組成物。デバイスはまた、皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得する検出器装置を含んでもよい。デバイスは、画像データを解析して、皮膚状態に対応するアーチファクトが皮膚の撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつその場所から検出されたトレーサの量を判定する処理装置であって、アーチファクトが検出され、トレーサの量が所定の閾値レベル未満であるときに、組成物を場所に塗布するように、アプリケータ装置に指示する処理装置を更に含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚状態を処置するための手持ち式デバイスであって、
組成物を皮膚に塗布するアプリケータ装置であって、前記組成物が、前記皮膚状態を処置するための活性成分、及びトレーサを含む、アプリケータ装置と、
皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得する検出器装置と、
前記画像データを解析して、前記皮膚状態に対応するアーチファクトが前記皮膚の前記撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつ前記場所から検出された前記トレーサの量を判定する処理装置であって、前記アーチファクトが検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、前記組成物を前記場所に塗布するように、前記アプリケータ装置に指示する、処理装置と、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記アプリケータ装置が、前記組成物の固定された投与量を前記皮膚に塗布するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
プロセッサが、前記画像データを解析して、前記場所での前記アーチファクトのアーチファクト規模を判定し、前記アーチファクト規模及び前記トレーサの前記量の関数として、前記場所に塗布される前記組成物の投与量を判定し、かつ前記アーチファクトが検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、前記組成物の前記投与量を前記場所に塗布するように、前記アプリケータ装置に指示するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記トレーサの前記所定の閾値レベルが、前記活性成分の所望の投与量閾値に対応する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記検出器装置が、遠赤色光又は赤外光を前記皮膚の領域に送達するための第1の光源と、前記皮膚の領域からの光を検出するためのセンサと、を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記遠赤色光が、約690nmのピーク波長を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
緑色光を送達するための第2の光源と、赤外光を送達するための第3の光源と、を更に備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2の光源が、約540nmのピーク波長を有し、前記第3の光源が、約840nmのピーク波長を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項9】
前記トレーサが、遠赤色スペクトルの光を吸収し、可視赤色スペクトルの光を有意に吸収しない、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
前記トレーサが、シアン染料又はシアン顔料である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記トレーサが、非スルホン化シアニン染料である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記トレーサが、約690nmのピーク波長を有する光を吸収し、約610nmのピーク波長を有する光を有意に吸収しない、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
前記トレーサが、ヒトには見えない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記トレーサが、蛍光染料又は蛍光顔料である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記組成物が、前記皮膚の外観を修正するための少なくとも1つの化粧品成分を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記組成物が、不透明な物質、化粧品顔料、及び化粧品染料のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記組成物が、反射率変性剤を更に含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記皮膚状態が、過剰なメラニン沈着、感染、炎症、座瘡、シワ、及び皮膚色の不均一性からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
皮膚状態を処置する方法であって、
検出器装置によって、前記皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得することと、
処理装置によって、前記画像データを解析して、前記皮膚状態に対応するアーチファクトが前記皮膚の前記撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつ前記場所から検出された前記トレーサの量を判定することと、
前記アーチファクトが前記場所から検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、アプリケータ装置によって、前記場所に組成物を塗布することと、を含み、前記組成物が、前記皮膚状態を処置するための活性成分と、前記トレーサと、を含む、方法。
【請求項20】
前記解析する工程が、
前記プロセッサによって、前記場所での前記アーチファクトのアーチファクト規模、及び前記場所から検出された前記トレーサの前記量を判定することと、
前記プロセッサによって、前記アーチファクト規模及び検出された前記トレーサの前記量の関数として、前記場所に塗布される前記組成物の投与量を判定することと、を含み、
前記アプリケータ装置は、前記アーチファクトが検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、前記組成物の前記投与量を前記場所に塗布する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月30日に出願された米国仮出願第63/046,521号の優先権を主張するものであり、本仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、角質表面(例えば、皮膚、毛髪、若しくは爪)又はエナメル質(例えば、歯)などの処置表面上の状態を処置するためのデバイス及び方法に関する。より具体的には、本発明は、表面に処置を選択的に適用し、トレーサを使用して処置を追跡するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
局所皮膚処置の手動適用は、皮膚の目視検査及びユーザによる局所皮膚処置の手動投与に依存する。局所皮膚処置を投与するこの方法は、処置を必要とする皮膚の領域の視覚的識別に依存する。しかしながら、皮膚状態は、任意の目に見える症状が目によって皮膚で観察される前に存在し得る。したがって、そのような目視検査及び局所皮膚処置の手動適用は、皮膚状態に罹患しているが、目に見える皮膚アーチファクトをまだ形成していない皮膚の領域を識別するのには効果的ではない。加えて、局所処置の手動投与は、皮膚状態に罹患している簡潔な領域よりも広い皮膚領域への皮膚処置の適用をもたらし得る。例えば、ユーザは、指を使用して局所軟膏を手動で塗布することができ、局所軟膏は、典型的には、例えば、処置を必要とする座瘡発生、発症前座瘡又は色素沈着過度などの皮膚アーチファクトの簡潔な領域よりも広い。処置は潜在的な有害作用を伴う可能性があるので、処置のそのような広範な適用は望ましくない。更に、処置は、皮膚状態によって影響されない皮膚の領域に対していかなる有益な効果も付与することが期待されず、したがって、皮膚のこれらの領域に対するいかなる潜在的な有害作用も不必要である。皮膚状態によって影響されない皮膚の領域への処置の適用は、有益であるとは予想されず、これは、皮膚の審美的外観又は健康におけるいかなる顕著な改善も提供することなく処置を不必要に無駄にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な一実施形態は、皮膚状態を処置するための手持ち式デバイスを対象とする。デバイスは、組成物を皮膚に塗布するアプリケータ装置を含む。組成物は、皮膚状態を処置するための活性成分、及びトレーサを含む。デバイスはまた、皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得する検出器装置を備える。デバイスは、画像データを解析して、皮膚状態に対応するアーチファクトが皮膚の撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつその場所から検出されたトレーサの量を判定する処理装置を更に備える。処理装置は、アーチファクトが検出され、トレーサの量が所定の閾値レベル未満であるときに、組成物を上記の場所に塗布するように、組成物アプリケータ装置に指示する。
【0005】
皮膚状態を治療するための方法も記載される。方法は、検出器装置によって、皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得することを含む。方法はまた、処理装置によって、画像データを解析して、皮膚状態に対応するアーチファクトが皮膚の撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつその場所から検出されたトレーサの量を判定することを含む。方法は、アーチファクトが上記の場所から検出され、トレーサの量が所定の閾値レベル未満であるときに、アプリケータ装置によって、組成物を上記の場所に塗布することを更に含む。組成物は、皮膚状態を処置するための活性成分と、トレーサと、を含む。
【0006】
本発明のこれら及び他の態様は、図面及び添付の特許請求の範囲を含む、本発明の以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1a】本出願の実施形態による、皮膚状態を処置するための例示的なデバイスのブロック図を示す。
図1b】皮膚の領域を撮像し、組成物を皮膚に塗布するために使用される図1aの例示的なデバイスを示す。
図2】本出願の実施形態による、皮膚状態を処置する例示的な方法を示す。
図3】本出願の例示的な実施形態による、皮膚状態を処置する別の例示的な方法を示す。
図4a】実施例IIIに記載されるように、ユーザの顔を横切る複数のパスにわたる化粧品組成物の塗布を示すシミュレーション画像を示す。
図4b】実施例IIIに記載されるように、ユーザの顔を横切る複数のパスにわたって塗布された皮膚光沢剤の塗布を示すシミュレーション画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用される「処置する」、「処置すること」、又は「処置」という用語は、状態又は障害の存在若しくは徴候を好転、緩和、予防、改善、又は排除することを指す。
【0009】
本明細書において「局所塗布に好適な」又は「局所投与に好適な」という用語は、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応、見苦しい外観などを伴わずに、皮膚、特にヒトの皮膚への使用に好適な成分及び/又は処置を指す。
【0010】
本明細書で使用される「有益剤」という用語は、局所塗布に好適な皮膚状態を処置するための任意の有益な化合物/組成物/抽出物又は活性成分を指す。皮膚状態としては、例えば、感染、炎症、座瘡、不均一な皮膚の色調、日光による損傷、シミ、シワ、色素沈着過度、湿疹、蕁麻疹、白斑、乾癬、酒さ、いぼ、帯状疱疹、ヘルペス、不均一な色素沈着及び色調、発赤/酸化的皮膚ストレス(美白を必要とする)、たるみ/弾力性の喪失などが挙げられ得る。組成物中に組み込まれ得る有益剤の例示的な実施形態は、以下に更に記載される。
【0011】
座瘡に有用な有益剤の非限定的なリストには、過酸化ベンゾイル、レチノール、レチナール、レチノイン酸、酢酸レチニル、及びパルミチン酸レチニルを含むレチノイド、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、及び酒石酸を含むが、これらに限定されない、ヒドロキシ酸、硫黄、亜鉛PCA(亜鉛ピロリドンカルボン酸)、アラントイン(5-ウレイドヒダントイン)、ローズマリー、4-ヘキシルレゾルシノール、N-アセチルグルコサミン、グルコノラクトン、ナイアシンアミド、アゼライン酸、及びレスベラトロールが含まれる。
【0012】
有用な色素沈着活性有益剤の非限定的なリストには、レゾルシノール、例えば、ナイアシンアミド、4-ヘキシルレゾルシノール、クルクミノイド(例えばSabiwhite(テトラヒドロクルクミン)、フィチン酸、レスベラトロール、ダイズ(Glycine Soja)油、グルコノラクトン、アゼライン酸、及び、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチニルアセテート、及びレチニルパルミテートを含むレチノイド、酵素、例えば、ラッカーゼ、チロシナーゼ阻害物質、メラニン分解剤、メラノソーム移動阻害剤、例えば、PAR-2アンタゴニスト、スクラブ剤、日焼け止め、レチノイド、抗酸化物質、トラネキサム酸、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩、皮膚漂白剤、リノール酸、アデノシン一リン酸二ナトリウム塩、カモミール抽出物、アラントイン、乳白剤、タルク及びシリカ、亜鉛塩などが含まれる。好適なチロシナーゼ阻害物質の例としては、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、コウジ酸、アルブチン、レゾルシノール、ヒドロキノン、フラボン(例えば、カンゾウフラバノイド、カンゾウ根抽出物、クワ根抽出物、ディオスコレア・コポジータ(Dioscorea Coposita)根抽出物、ユキノシタ科抽出物など)、エラグ酸、サリチル酸塩及び誘導体、グルコサミン及び誘導体、フラーレン、ヒノキチオール、二酸、アセチルグルコサミン、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール(Magnolignan)、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール(4-HPB)、これらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンCの誘導体の例としては、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸-2-グルコシド、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、及びビタミンCを多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンEの誘導体の例としては、α-トコフェロール、β、トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、及びこれらの混合物、酢酸トコフェロール、リン酸トコフェロール、及びビタミンE誘導体を多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。レゾルシノール誘導体の例としては、レゾルシノール、4-置換レゾルシノール、例えば、4-ブチルレゾルシノール(ルシノール)、4-ヘキシルレゾルシノール、フェニルエチルレゾルシノール、1-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニル)-プロパンなどの4-アルキルレゾルシノール、及びレゾルシノールを多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。サリチル酸塩の例としては、4-メトキシカリウムサリチレート、サリチル酸、アセチルサリチル酸、4-メトキシサリチル酸及びこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、チロシナーゼ阻害物質としては、4-置換レゾルシノール、ビタミンC誘導体、又はビタミンE誘導体が挙げられる。
【0013】
発赤/酸化防止用活性有益剤の有用なリストとしては、スルフヒドリル化合物及びその誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム及びN-アセチル-システイン)などの水溶性酸化防止剤、リポ酸及びジヒドロリポ酸、レスベラトロール、ラクトフェリン、並びにアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル及びアスコルビルポリペプチド)が挙げられる。本発明の組成物に使用するのに好適な油溶性酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、レチノイド(例えば、レチノール及びパルミチン酸レチニル)、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェロール)、トコトリエノール、及びユビキノンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物において使用するのに好適な酸化防止剤を含有する天然抽出物としては、フラボノイド及びイソフラボノイドを含有する抽出物、並びにその誘導体(例えば、ゲニステイン及びダイゼイン)、レスベラトロールを含有する抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然抽出物の例としては、ブドウ種子、緑茶、松の樹皮、プロポリス、及びナツシロギクの抽出物が挙げられる。「ナツシロギクの抽出物」とは、植物「タナセタム・パルテニウム(Tanacetum parthenium)」の抽出物を意味する。1つの特に好適なナツシロギク抽出物は、約20%の活性ナツシロギクとして市販されている。
【0014】
有用なシワ活性有益剤の非限定的なリストには、N-アセチルグルコサミン、2-ジメチルアミノエタノール、塩化銅などの銅塩、アルジライン、シンエイク(syn-ake)などのペプチド、銅、コエンザイムQ10、ディル、ブラックベリー、キリ、ピキア・アノマーラ(Picia anomala)、及びチコリを含有するもの、4-ヘキシルレゾルシノールなどのレゾルシノール、クルクミノイド、並びに、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチニルアセテート、及びレチニルパルミテートを含むレチノイド、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、及び酒石酸を含むがこれらに限定されないヒドロキシ酸が含まれる。
【0015】
有用な保湿活性有益剤の非限定的なリストには、ヒアルロン酸及び保湿剤が含まれる。ヒアルロン酸は、直鎖ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又は直鎖ヒアルロン酸と架橋ヒアルロン酸との混合物であってもよい。これは、塩形態、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムであってもよい。保湿剤とは、皮膚の最上層の含水量を増加させる意図の化合物(例えば、吸湿性化合物)である。好適な保湿剤の例としては、グリセリン、ソルビトール、トレハロース、又はこれらの塩若しくはエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
有用な増白活性有益剤の非限定的なリストには、ビタミンC及びアスコルビン酸2-グルコシドなどのその誘導体、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、又は前述のもののいずれかの任意の組み合わせなどのα-ヒドロキシ酸、サリチル酸などのβ-ヒドロキシ酸、ラクトビオン酸及びグルコン酸などのポリヒドロキシ酸が含まれる。
【0017】
皮膚のたるみのための有用な有益剤の非限定的なリストは、ブラックベリー抽出物、ハグマノキ抽出物、ナツシロギク抽出物、フィランサスニルリ(Phyllanthus niruri)の抽出物、並びに銅及び/又は亜鉛成分を有する二金属錯体が含まれる。銅及び/又は亜鉛成分を有する二金属錯体は、例えば、クエン酸銅-亜鉛、シュウ酸銅-亜鉛、酒石酸銅-亜鉛、リンゴ酸銅-亜鉛、コハク酸銅-亜鉛、マロン酸銅-亜鉛、マレイン酸銅-亜鉛、アスパラギン酸銅-亜鉛、グルタミン酸銅-亜鉛、グルタル酸銅-亜鉛、フマル酸銅-亜鉛、グルカル酸銅-亜鉛、ポリアクリル酸銅-亜鉛、アジピン酸銅-亜鉛、ピメリン酸銅-亜鉛、スベリン酸銅-亜鉛、アゼライン酸銅-亜鉛、セバシン酸銅-亜鉛、ドデカン酸銅-亜鉛、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
更なる皮膚有益剤又は活性物質は、以下の段落に列挙される活性物質を含んでもよい。これらの活性物質の一部は上記に列挙されているが、それらは、リストをより堅牢なものにするのを確実にするために以下に含まれている。
【0019】
好適な追加の有益剤の例としては、皮膚美白剤、暗色化剤、抗老化剤、トロポエラスチン促進剤、コラーゲン促進剤、抗座瘡剤、光沢調整剤、抗微生物剤(例えば、抗酵母剤、抗真菌剤及び抗細菌剤)、抗炎症剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛剤、日焼け止め剤、光防護剤、酸化防止剤、角質溶解剤、洗剤/界面活性剤、保湿剤、栄養素、ビタミン、エネルギーエンハンサ、制汗剤、皮膚収斂剤、防臭剤、脱毛剤、発毛強化剤、発毛遅延剤、安定剤、水和増進剤、有効性増進剤、抗たこ剤、皮膚コンディショニング剤、抗セルライト剤、フルオリド、歯ホワイトニング剤、歯石防止剤、及び歯石溶解剤、悪臭防止剤(例えば、悪臭マスキング剤)又はpH変更剤などが挙げられる。種々の好適な追加の化粧用として許容可能な活性物質の例としては、UVフィルタ、例えば、限定されるものではないが、アボベンゾン(Parsol1789)、ビスジスリゾール二ナトリウム(Neo Heliopan AP)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Uvinul A Plus)、エカムスル(Mexoryl SX)、アントラニル酸メチル、4-アミノ安息香酸(PABA)、シノキセート、エチルヘキシルトリアゾン(Uvinul T150)、ホモサラート、4-メチルベンジリデンカンファー(Parsol5000)、メトキシケイ皮酸オクチル(Octinoxate)、サリチル酸オクチル(Octisalate)、パジメートO(Escalol507)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(Ensulizole)、ポリシリコーン-15(Parsol SLX)、トロラミンサリチル酸、ベモトリジノール(Tinosorb S)、ベンゾフェノン1-12、ジオキシベンゾン、ドロメトリゾールトリシロキサン(Mexoryl XL)、イソコトリジノール(Uvasorb HEB)、オクトクリレン、オキシベンゾン(Eusolex4360)、スルイソベンゾン、ビスオクトリゾール(Tinosorb M)、二酸化チタン、酸化亜鉛、カロテノイド、フリーラジカル捕捉剤、スピントラップ、レチノイド及びレチノールなどのレチノイド前駆体、レチノイン酸及びパルミチン酸レチニル、セラミド、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、ミネラル、エストロゲンなどのホルモン、ヒドロコルチゾンなどのステロイド、2-ジメチルアミノエタノール、塩化銅などの銅塩、Cu:Gly-His-Lysなどの銅を含有するペプチド、コエンザイムQ10、プロリンなどのアミノ酸、ビタミン、ラクトビオン酸、アセチル補酵素A、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、NADH及びFADH2などの電子輸送体、並びにオーツ麦、アロエベラ、ナツシロギク、ダイズ、シイタケ抽出物などのその他の植物抽出物、並びにこれらの誘導体及び混合物が挙げられる。
【0020】
好適な皮膚美白有益剤の例としては、チロシナーゼ阻害物質、メラニン分解剤、メラノソーム移動阻害剤(PAR-2アンタゴニストを含む)、スクラブ剤、日焼け止め、レチノイド、抗酸化物質、トラネキサム酸、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩、皮膚漂白剤、リノール酸、アデノシン一リン酸二ナトリウム塩、カモミール抽出物、アラントイン、乳白剤、タルク及びシリカ、亜鉛塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
好適なチロシナーゼ阻害物質の例としては、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、コウジ酸、アルブチン、レゾルシノール、ヒドロキノン、フラボン(例えば、カンゾウフラバノイド、カンゾウ根抽出物、クワ根抽出物、ディオスコレア・コポジータ(Dioscorea Coposita)根抽出物、ユキノシタ科抽出物など)、エラグ酸、サリチル酸塩及び誘導体、グルコサミン及び誘導体、フラーレン、ヒノキチオール、二酸、アセチルグルコサミン、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール(Magnolignan)、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール(4-HPB)、これらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンCの誘導体の例としては、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸-2-グルコシド、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、及びビタミンCを多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンEの誘導体の例としては、α-トコフェロール、β、トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、及びこれらの混合物、酢酸トコフェロール、リン酸トコフェロール、及びビタミンE誘導体を多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。レゾルシノール誘導体の例としては、レゾルシノール、4-置換レゾルシノール[例えば、4-ブチルレゾルシノール(ルシノール)、4-ヘキシルレゾルシノール(Synovea HR、Sytheon)、フェニルエチルレゾルシノール(Symwhite、Symrise)、1-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニル)-プロパン(ニビトール、Unigen)などの4-アルキルレゾルシノール]、及びレゾルシノールを多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。サリチル酸塩の例としては、4-メトキシカリウムサリチレート、サリチル酸、アセチルサリチル酸、4-メトキシサリチル酸及びこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、チロシナーゼ阻害物質としては、4-置換レゾルシノール、ビタミンC誘導体、又はビタミンE誘導体が挙げられる。より好ましい実施形態では、チロシナーゼ阻害物質は、フェニルエチルレゾルシノール、4-ヘキシルレゾルシノール、又はアスコルビル-2-グルコシドを含む。
【0022】
好適なメラニン分解剤の例としては、ペルオキシド及び酵素(例えば、ペルオキシダーゼ及びリグニナーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、メラニン阻害剤としては、ペルオキシド及びリグニナーゼが挙げられる。
【0023】
好適なメラノソーム移動阻害剤の例としては、PAR-2アンタゴニスト(例えば、ダイズトリプシン阻害物質又はボーマン-バーク阻害物質)、ビタミンB3及び誘導体(例えば、ナイアシンアミド)、必須ダイズ、全ダイズ、ダイズ抽出物が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、メラノソーム移動阻害剤としては、ダイズ抽出物又はナイアシンアミドが挙げられる。
【0024】
剥離剤の例としては、α-ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、又は前述のもののいずれかの任意の組み合わせ)、β-ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸、ポリヒドロキシ酸、例えば、ラクトビオン酸及びグルコン酸)、及び機械的剥離剤(例えば、マイクロ皮膚擦傷剤)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、剥離剤としては、グリコール酸又はサリチル酸が挙げられる。
【0025】
日焼け止めの例としては、アボベンゾン(Parsol1789)、ビスジスリゾール二ナトリウム(Neo Heliopan AP)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(Uvinul A Plus)、エカムスル(Mexoryl SX)、メチルアントラニレート、4-アミノ安息香酸(PABA)、シノキセート、エチルヘキシルトリアゾン(Uvinul T150)、ホモサレート、4-メチルベンジリデンカンファー(Parsol5000)、オクチルメトキシシンナメート(Octinoxate)、オクチルサリチレート(Octisalate)、パジメートO(Escalol507)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(Ensulizole)、ポリシリコーン-15(Parsol SLX)、トロラミンサリチレート、ベモトリジノール(Tinosorb S)、ベンゾフェノン1-12、ジオキシベンゾン、ドロメトリゾールトリシロキサン(Mexoryl XL)、イスコトリジノール(Uvasorb HEB)、オクトクリレン、オキシベンゾン(Eusolex4360)、スルイソベンゾン、ビソクトリゾール(Tinosorb M)、二酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
レチノイドの例としては、レチノール(ビタミンAアルコール)、レチナール(ビタミンAアルデヒド)、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、リノール酸レチニル、レチノイン酸、パルミチン酸レチニル、イソトレチノイン、タザロテン、ベキサロテン、アダパレン、これらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、レチノイドは、レチノール、レチナール、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、リノール酸レチニル、及びこれらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせからなる群から選択される。特定のより好ましい実施形態では、レチノイドは、レチノールである。
【0027】
酸化防止剤の例としては、スルフヒドリル化合物及びその誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム及びN-アセチル-システイン、グルタチオン)、リポ酸及びジヒドロリポ酸、レスベラトロール及び誘導体などのスチルベノイド、ラクトフェリン、鉄及び銅キレート剤、並びにアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体(例えば、アスコビル-2-グルコシド、パルミチン酸アスコルビル及びアスコルビルポリペプチド)などの水溶性酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物に使用するのに好適な油溶性酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、レチノイド(例えば、レチノール及びパルミチン酸レチニル)、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェロール)、トコトリエノール、及びユビキノンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物において使用するのに好適な酸化防止剤を含有する天然抽出物としては、フラボノイド及びイソフラボノイドを含有する抽出物、並びにその誘導体(例えば、ゲニステイン及びダイゼイン)、レスベラトロールを含有する抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然抽出物の例としては、ブドウ種子、緑茶、紅茶、白茶、マツ樹皮、ナツシロギク、パルテノライドを含まないナツシロギク、オート麦抽出物、クロイチゴ抽出物、ハグマノキ抽出物、ダイズ抽出物、ザボン抽出物、小麦胚抽出物、ヘスペレジン、ブドウ抽出物、スベリヒユ抽出物、リコカルコン、カルコン、2,2’-ジヒドロキシカルコン、サクラソウ抽出物、プロポリスなどが挙げられる。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、座瘡に対して有用な有益剤として、サリチル酸、亜鉛PCA(亜鉛ピロリドンカルボン酸)、アラントイン(5-ウレイドヒダントイン)、ローズマリー、4-ヘキシルレゾルシノール、N-アセチルグルコサミン、グルコノラクトン、ナイアシンアミド、アゼライン酸、及びレスベラトロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、有用な色素沈着活性有益剤のリストには、テトラヒドロクルクミン、フィチン酸、レスベラトロール、ダイズ(Glycine Soja)油、グルコノラクトン、ラッカーゼ、4-ヘキシルレゾルシノール、N-アセチルグルコサミン、グルコノラクトン、ナイアシンアミド、アゼライン酸、及びレスベラトロールが含まれる。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、有用な活性有益剤のリストには、座瘡及び色素沈着を同時に処理することが含まれ、4-ヘキシルレゾルシノール、N-アセチルグルコサミン、グルコノラクトン、ナイアシンアミド、アゼライン酸、及びレスベラトロールが含まれる。
【0031】
本明細書で使用する用語「フレクセル」とは、デジタル的に取得された画像内の単一の大きいピクセル又は少数のピクセルに対応する、皮膚の小さなピクセル様の領域を指す。例えば、フレクセルは、約1/15~約1/5インチの平均直径を有する皮膚領域に対応してもよい。
【0032】
本出願は、処置表面の状態を処置し、処置表面に以前に投与された処置のレベルを追跡するためにトレーサを塗布するためのデバイス及び方法を提供する。処置は、状態を処置するための有益剤を有する組成物を投与することを含んでもよく、又はそうでなければ皮膚に有益な効果を付与することができる有益剤を含まない療法(例えば、光線療法及び/又はレーザ処置)を投与することを含んでもよい。処置は、生体表面と外部環境(例えば、空気)との界面、特に局所表面などの任意の好適な処置表面に適用され得ることが企図される。好適な生体表面としては、角質表面(皮膚、毛髪、及び/又は爪の表面などが挙げられるが、これらに限定されない)、及びエナメル質表面(例えば、歯の表面)を挙げることができる。好ましくは、処置表面は、哺乳動物又はヒトのものである。皮膚に関する例示的な実施形態について本明細書で説明するが、本出願のデバイス及び方法は、処置を任意の好適な処置表面に選択的に適用するために使用され得ることが企図される。
【0033】
より詳細には、本出願は、皮膚状態(例えば、過剰なメラニン沈着、感染、炎症、座瘡、シワ、及び皮膚色の不均一性)を処置するために、(例えば、哺乳動物又はヒトの顔の)皮膚に処置を選択的に投与するためのデバイス及び方法を提供する。デバイス及び方法は、皮膚アーチファクト(例えば、感染及び/又は炎症からの発赤、座瘡、紅斑、発症前座瘡、不均一な皮膚の色調、日光による損傷、シミ、シワなど)を識別し、アーチファクトの出現を低減し、皮膚の健康及び/又は皮膚の全体的な審美的外観を改善するために、皮膚アーチファクトに関連付けられた皮膚状態の処置の投与を制御する。本出願のデバイスは、皮膚の領域の画像を解析して、組成物を塗布すべき場所、例えば、皮膚アーチファクトが検出される場所を識別し、かつ識別された場所から検出されたトレーサの量を判定する。デバイスは、検出されたトレーサの量に基づいて皮膚アーチファクトの処置を制御する。以下で更に説明されるように、デバイスは、皮膚の領域に対応するデータを収集するための検出器装置を含む。データは更に解析されて、皮膚状態を検出し、かつ/又は皮膚の領域上に以前に堆積されたトレーサの量を定量化する。デバイスは、皮膚状態に対応するアーチファクトが検出されるかどうかを判定するためにデータを解析し、この解析に基づいて、皮膚状態のための処置を皮膚の領域に適用する。解析は、皮膚状態を処置するための処置の最適レベルを生成し得る。デバイスは更に、皮膚の領域から検出されたトレーサの量に基づいて、皮膚の領域に以前に投与された処置の量を判定し、最適レベル未満の処置が皮膚の領域に以前に適用されたことをトレーサの量が示すときに、更なる処置を適用する。
【0034】
図1a及び図1bは、局所用組成物を皮膚に塗布することによって皮膚状態を処置するための例示的なデバイス100を示す。図1bは、有益剤182、トレーサ184、及び/又は化粧品組成物186を皮膚101のアーチファクト190に塗布するために使用される例示的なデバイス100を更に示す。有益剤182、トレーサ184、及び化粧品組成物186は、3つの別個の層で図1bに示されているが、それらは、任意の組み合わせで一緒に混合されてもよく、皮膚101上に任意の順序で塗布されてもよいことが企図される。本実施形態のデバイス100は、ユーザの手のひら内に保持されるように設計された手持ち式デバイスとなるような大きさ及び形状となっている。本実施形態によるデバイス100は、ヘッド部分102とハンドル部分104とを備えている。デバイス100のハンドル部分104は、その内部に構成要素を収容するための空洞を画定する細長い形状を有する。いくつかの実施形態では、ハンドル部分104は、ユーザの手の掌の中に保持されるような大きさ及び形状である。その他の実施形態では、ハンドル部分104は、ユーザの手の指先によって保持されるような大きさ及び形状である。
【0035】
この実施形態によるデバイス100のヘッド部分102は、皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得する検出器装置110を備える。本実施形態のヘッド部分102はまた、検出器装置110からの画像データに基づいて処理装置130によって案内されるように皮膚の部分に組成物を選択的に塗布するアプリケータ装置120も備えている。いくつかの実施形態では、検出器装置110、及びアプリケータ装置120は、ヘッド部分102の嵌め込み部分106の一部となっており、処置しようとする皮膚の範囲上にヘッド部分102が配置される際に嵌め込み部分106が皮膚と接触しないようになっている。
【0036】
検出器装置110は、光(例えば、可視、赤外光、赤色光、青色光、緑色光及び/又は紫外光)を皮膚の領域に送達する少なくとも1つの光源111と、皮膚の領域から反射された光を検出する少なくとも1つのセンサ122と、を備える。光源111は、可視光、赤外光、赤色光、青色光、緑色光及び/又は紫外光で皮膚の領域を照明するための任意の好適な発光デバイスを備えてもよい。例えば、光源111は、1つ又は2つ以上のLEDを備えてもよい。光源111は、皮膚による光の反射率を検出及び/又は測定するのに十分な量の照明を皮膚の領域にわたって提供するように選択され、配列されてもよい。更に、少なくとも1つの光源111は、以下で更に説明されるように、皮膚上のトレーサの量を検出及び/又は測定するために、皮膚の領域にわたって照明の量を提供するように選択され、配列される。好ましくは、光源111は集合的に、撮像される皮膚の範囲にわたって実質的に均一な光の分布を与える。
【0037】
一実施形態では、光源111は、白色LEDを備える。白色LEDは、光の波長の2つの異なる帯域に対応する、異なる波長での放射パワーの少なくとも2つの別個のピークを有する複合光を提供し得る。具体的には、白色LEDは、2つの異なる波長でピーク放射パワーを提供する。例えば、白色LEDは、3000K~5700Kの範囲の色温度及び/又は70~80の演色評価数(Color Rendering Index、CRI)を有してもよい。特定の実施形態では、白色LEDは、5700Kの色温度及び/若しくは70のCRI、4000Kの色温度及び/若しくは75のCRI、又は、3000Kの色温度及び/若しくは80のCRIを有してもよい。好ましくは、白色LEDは、寒色系色温度から暖色系色温度の範囲の色調(青色スペクトル内に第1のピーク/帯域を有し、緑色スペクトル内に第2のピーク/帯域を有する)を有してもよい。
【0038】
光源111は、皮膚上のトレーサの量を検出及び/又は測定するために所望の波長で、ピーク放射パワーを提供するように選択されてもよい。他の実施形態では、検出器装置100は、各々が異なるピーク波長を有する複数の光源111を備える。各光源がピーク強度(例えば、ピーク放射パワー)を提供する波長は、本明細書ではピーク波長と呼ばれる。例えば、光源111の各々は、赤色光、青色光、緑色光、赤外光、及び紫外光のうちの異なる1つを放射してもよい。
【0039】
一実施形態では、検出器装置110は、赤色光又は遠赤色光を送達するための第1の光源を備える。検出器装置110は、緑色光を送達するための第2の光源及び/又は青色光若しくは赤外光を送達するための第3の光源を更に備えてもよい。具体的には、検出器装置110は、3つの光源111を備えてもよく、各光源は、以下の表1に指定された波長又はその付近のピーク波長を有する光を送達する。
【0040】
【表1】
【0041】
センサ112は、皮膚からの光を検出するための任意の好適な構成要素を備えてもよい。例えば、センサ112は、皮膚から1つ又は2つ以上の波長の反射光及び/又は放射光の量に対する感度を有し得る。更に、少なくとも1つのセンサ112は、皮膚上に存在するトレーサの量を検出及び/又は測定するように選択される。好適なセンサ112としては、例えば、当業者に理解されるように、光学センサ、写真用カメラ若しくはビデオカメラ、フォトダイオード及び/又はフォトトランジスタを挙げることができる。検出器装置120のセンサ112は、センサ112の赤色、緑色、及び/又は青色のチャネル内の光を検出することができるRGBカメラであってもよい。一実施形態において、センサ112は、異なる波長範囲内で受信された光の成分を検出するための1つ又は2つ以上のフィルタアレイを有する光学カメラであってもよい。例えば、センサ112は、光の赤色成分、緑色成分及び青色成分の各々を別々に検出するためのカラーフィルタアレイ(例えば、ベイヤーフィルタアレイ)を有する光学カメラであってもよい。例えば、光学カメラは、可視スペクトルにわたって異なるレベルの感度(例えば、%量子効率)を有する少なくとも3つの異なるカラーフィルタを有してもよい。カラーフィルタアレイは、(1)赤色カラーフィルタ(例えば、610nmの波長又はその付近のピーク感度を有する)、(2)緑色カラーフィルタ(例えば、540nmの波長又はその付近のピーク感度を有する)、及び(3)青色カラーフィルタ(例えば、450nmの波長又はその付近にピーク感度を有する)を含んでもよい。これらのカラーフィルタの各々は、異なる波長でピーク感度を提供する。センサ112は、皮膚上のトレーサの量を検出及び/又は測定するために所望の波長でピーク感度を提供するように選択されてもよい。
【0042】
光源111及びセンサ112を含む検出器装置110は、コンピュータアクセス可能媒体140に記憶された命令を実行するために処理装置130に動作可能に接続される。この実施形態の処理装置130は、光源111を制御し、センサ112から受信した画像データを受信及び解析する。処理装置130及びコンピュータアクセス可能媒体140は、デバイス100内又はデバイス100の外部の任意の場所に位置付けられてもよいことが企図される。一実施形態では、図1aに示すように、処理装置130及びコンピュータアクセス可能媒体140は、ハンドル部分104内に位置する。代替的に、図1bに示されるように、処理装置130及びコンピュータアクセス可能媒体140は、デバイス100の外部に位置し、有線又は無線接続を介してデバイス100に動作可能に接続されてもよい。この実施形態の処理装置130はまた、所望のフレクセルに組成物を選択的に塗布するアプリケータ装置120も制御する。処理装置130は、限定するものではないが、例えば、全体的に1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサを含み得るコンピュータ/プロセッサであってもよい、若しくはその一部であってもよい、又はこれを含んでもよく、コンピュータアクセス可能媒体140(例えば、メモリ記憶デバイス)上に記憶された命令を使用してもよい。コンピュータアクセス可能媒体140は、例えば、その内部に実行可能命令を含む非一時的コンピュータアクセス可能媒体であってもよい。記憶装置は、コンピュータアクセス可能媒体140とは別々に提供されてもよいが、これは、処理装置130に命令を提供して、特定の代表的な手順、プロセス、及び方法を実行するように処理装置130を構成してもよい。
【0043】
この実施形態によるアプリケータ装置120は、有益剤と、トレーサと、を含む局所用組成物をフレクセル上に堆積させるための好適な組成物塗布デバイスを備える。本実施形態における例示的な局所用組成物塗布デバイスは、例えば、噴霧器(例えば、電子噴霧器若しくはエアブラシ噴霧器)、液滴制御デバイス、又は当業者に理解されるような所望の場所に組成物を小さな液滴として塗布するための他の任意の好適な塗布デバイスを含む。例示的な一実施形態では、アプリケータ装置120は、加圧された液体又は粘性組成物を堆積させるためのノズルを備える。ノズルは、組成物の薄層をフレクセル上に堆積させるための任意の好適なデバイスであってよい。例えば、ノズルは、液体又は粘性組成物が入った第1のチャンバと、組成物が所望の場所に分注される際に組成物と混合される噴射剤を収容する第2のチャンバと、を備えてもよい。ノズルの例示的な実施形態について上記に述べたが、本出願のデバイスは、当業者には理解されるように、圧力下で組成物の液滴を分配するための任意の好適なノズルを備えていてよいことが企図される。
【0044】
アプリケータ装置120は、皮膚に塗布される局所用組成物を収容するリザーバ150に動作可能に接続され、その結果、リザーバ150内の組成物は、皮膚上への堆積のためにリザーバ150からアプリケータ装置120に移送することができる。局所用組成物は、有益剤及び/又はトレーサを含む。局所用組成物は、皮膚の外観を修正するための化粧品成分、皮膚に更なる利益を付与するための成分(例えば、水和のための保湿剤)、又はキャリアを更に含み得る。一実施形態では、リザーバ150は、有益剤と、トレーサと、を含む組成物を収容する。あるいは、アプリケータ装置120は、2つの別個のリザーバ150に動作可能に接続され、第1のリザーバは、有益剤を含む組成物を収容し、第2のリザーバは、トレーサを含む組成物を収容する。アプリケータ装置120は、これら2つの組成物を所定の比率で移送して混合物を形成し、混合物を皮膚上に塗布するように構成されてもよい。
【0045】
別の実施形態では、アプリケータ装置120は、各々が異なる組成物を収容する複数のリザーバ150に動作可能に接続される。リザーバ150は、有益剤、トレーサ、化粧品成分、又はこれらの組み合わせを有する組成物を収容してもよく、これらの成分の各々は、以下で更に詳細に説明される。一実施例では、アプリケータ装置120は、2つのリザーバ150、すなわち、有益剤と、トレーサと、を含む組成物を収容する第1のリザーバ、並びに化粧品組成物を収容する第2のリザーバに動作可能に接続される。化粧品組成物は、皮膚の外観を修正するための任意の好適な化粧品成分を含み得る。第1及び第2のリザーバの組成物は、皮膚に更なる利益を付与するための成分(例えば、水和のための保湿剤又はキャリア)を更に含み得る。この例では、アプリケータ装置120は、第1のリザーバの組成物及び第2のリザーバの化粧品組成物を別々に移送して皮膚上に塗布する(例えば、アプリケータ装置120によって分配される各組成物の別々のパルスとして)ように構成されてもよい。加えて、又は代替的に、アプリケータ装置120は、処理装置130によって指定された量で第1及び第2のリザーバから2つの組成物を移送して混合物を形成し、混合物を皮膚上に塗布するように構成されてもよい。別の例では、図1bに示されるように、アプリケータ装置120は、有益剤を含む組成物を収容する第1のリザーバ150a、トレーサを含む組成物を収容する第2のリザーバ150b、及び化粧品組成物を収容する第3のリザーバ150cに動作可能に接続される。この実施形態では、アプリケータ装置120は、第1、第2及び第3のリザーバ150a、150b、150cの組成物のうちのいずれか1つ又は2つ以上を、皮膚上への塗布のために処理装置130によって指定された量で移送するように構成されている。
【0046】
アプリケータ装置120は、一連の導管、弁、及び/又は圧力源によって、リザーバ150に流体接続される。リザーバ150は、デバイス100内の任意の場所に収容されてもよいことが企図される。例示的な一実施形態では、図1aに示すように、リザーバ150はデバイス100のハンドル部分104内に収容される。いくつかの実施形態では、リザーバ150は、その内部の内容物が使い果たされた際に交換することができる取り外し可能な容器であってもよい。例えば、リザーバ150は、皮膚に塗布される組成物を内部に収容する加圧キャニスタであってもよい。
【0047】
トレーサは、皮膚への局所塗布に好適な任意の化合物、組成物、又は成分であってよい。以下で更に説明するように、トレーサは、皮膚に投与される処置のレベルに比例する量でアプリケータ装置120によって塗布される。例えば、皮膚上のフレクセルから検出されたトレーサの量を、フレクセルに以前に投与された有益剤の量と相関させることができるように、トレーサは、皮膚に塗布された有益剤の量に比例する量でアプリケータ装置120によって塗布されてもよい。トレーサは、局所塗布に好適な染料又は顔料であってもよい。トレーサは、例えば、ユーメラニン、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、皮膚着色などの皮膚上のアーチファクトの自然に生じる着色によって吸収された光とは異なるピーク波長を有する光を吸収及び/又は放射するように選択されてもよく、その結果、トレーサは、検出器装置110によって皮膚の自然に生じる着色とは別個に検出可能である。
【0048】
一例において、トレーサは、皮膚アーチファクトの検出を抑制する化合物、組成物又は成分であってもよい。例えば、そのような抑制トレーサは、例えば、皮膚アーチファクトを含有する皮膚の領域から後に取得される画像データが皮膚アーチファクトを検出することを抑制されるように、皮膚アーチファクトに塗布されるカラー化粧品であってもよい(例えば、皮膚の変色はカラー化粧品によって軽減される)。抑制トレーサは、皮膚アーチファクトの1、アーチファクトの規模に比例する量で投与されてもよい。別の例では、トレーサは、皮膚アーチファクトの検出に最小限に干渉する化合物、組成物、又は成分であってもよく、したがって、皮膚アーチファクトの、アーチファクトの規模とは無関係に活性物質(及びそのトレーサ)の塗布を可能にする。これは、有益な効果を付与するために有益剤が最小治療的閾値を超えて投与される必要がある一方で、有害な効果(例えば、毒性)を引き起こすために過剰に塗布されない、有益剤の投与を制御するのに特に有用である。
【0049】
いくつかの実施形態では、トレーサは、ヒトの目に見える染料又は顔料であり、例えば、トレーサは、可視光スペクトル(例えば、約400nm~約700nm)内の波長を有する光を吸収する。例えば、トレーサは、赤色光(例えば、約600nm~約700nmのピーク波長を有する光)、緑色光(例えば、約500nm~約565nmのピーク波長を有する光)、又は青色光(例えば、約450nm~約485nmのピーク波長を有する光)を吸収する染料又は顔料であってもよい。特に、トレーサは、原色の最も強い強度に対応するピーク波長を有する光を吸収する。例えば、トレーサは、610nm又はその付近(すなわち、標準的な観察者によって観察される赤色のピーク波長)、540nm又はその付近(すなわち、標準的な観察者によって観察される緑色のピーク波長)、又は450nm(すなわち、標準的な観察者によって観察される青色のピーク波長)のピーク波長を有する光を吸収する。別の例では、トレーサは、約640nm~約650nmのピーク波長を有する赤色光を吸収する。上述した標準的な観察者のピーク波長は、CIE 1931標準的な観察者カラーマッピング関数に基づく。この実施形態のトレーサは、皮膚に塗布されたときに目に見えるので、トレーサは、アーチファクトの出現を低減し、かつ/又は皮膚の審美的外観を向上させるために塗布される化粧品組成物中の化粧品成分として投与されてもよい。
【0050】
別の実施形態では、トレーサは、ヒトの目にはかすかに見えるような弱く見える染料又は顔料であってもよい。トレーサは、原色の各々について標準的な観察者によって観察されるピーク波長での波長よりも実質的に高い又は実質的に低いピーク波長を有する染料又は顔料であってもよい。好ましくは、トレーサは、デバイス100の少なくとも1つのセンサ112のピーク感度に対応する狭帯域の光を吸収する。例示的なトレーサとしては、遠赤色スペクトルの光を吸収する弱可視シアン色を有する(例えば、約650nm~約700nmのピーク波長を有する)染料及び/又は顔料を挙げることができる。より具体的には、トレーサは、690nm又はその付近のピーク波長を有する赤色光を吸収するが、610nm又はその付近のピーク波長を有する光を有意に吸収しない。他のトレーサとしては、約500nm~約600nmのピーク波長を有する緑色光を吸収する弱可視マゼンタ色を有する染料及び/又は顔料、並びに約400nm~約500nmのピーク波長を有する青色光を吸収する弱可視黄色を有する染料及び/又は顔料を挙げることができる。好適な可視又は弱可視トレーサとしては、スルホン化又は非スルホン化シアニン染料を挙げることができる。例えば、トレーサは、Lumiprobe Corporationから市販されているものなどの、約550nm~約700nmのピーク波長を有する光を吸収する非スルホン化シアニン色素である。
【0051】
別の実施形態では、トレーサはヒトの目に見えない。トレーサは、周囲光条件下ではヒトの目には見えないが、エネルギー源(例えば、光)によって励起されるときに蛍光を発する蛍光染料及び/又は顔料であってもよい。蛍光トレーサは、可視光、赤外光(例えば、約700nm~約1mmの波長を有する)、又は紫外光(例えば、約10nm~約400nmの波長を有する)を送達する検出器装置110の少なくとも1つの光源111によって励起され得る。光が蛍光トレーサに送達されるときに、光からの光子がトレーサの電子によって吸収されて、接地状態からより高い原子価レベルの励起状態に遷移する。電子が励起状態から接地状態に戻ると、エネルギーが発光の形態で放出され、この発光は検出器装置110の少なくとも1つのセンサ112によって検出することができる。例えば、蛍光トレーサは、Cyanagenから商品名Chromisで、又はBiotiumからCF(登録商標)Dyesで市販されているものなどの蛍光色素を含むことができる。好適な蛍光トレーサとしては、例えば、ジピロメテンボロンジフルオリド(BDP)、トリメチンシアニン、ペンタメチンシアニン、eptamethineシアニン、及びクマリンを挙げることができる。例えば、蛍光トレーサは、約400nm~約850nmのピーク放射波長を有する蛍光染料を含んでもよい。
【0052】
化粧品成分は、例えば、不透明な物質、着色化粧品、又は皮膚の外観を向上させるための任意の他の好適な組成物などの、例えば、皮膚の外観を修正するための皮膚への局所塗布のための任意の好適な化粧品成分を含み得る。一実施形態では、化粧品成分は、反射率変性剤(reflectance modifying agent、RMA)(皮膚の反射率を変化させるのに有用な任意の成分)を含む。例えば、好適なRMAとしては、インク、染料、顔料、漂白剤、化学的に変化する剤、及び皮膚の反射率を変化させるために使用され得るその他の物質を挙げてもよい。いくつかの好適なRMAとしては、染料又は希釈顔料などの透明なRMAを挙げてもよい。その他の好適なRMAとしては、高屈折率粒子を有する不透明なRMAを挙げてもよい。具体的に言えば、高屈折率粒子は、2.0以上の屈折率を有する粒子を含んでもよい。特定の一実施例では、RMAは、二酸化チタンの粒子を含んでもよい。具体的には、二酸化チタン粒子は、化粧品組成物中に均一に分布及び/又は懸濁されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、ヘッド部分102はまた、そうでなければ皮膚状態を処置するか、又は皮膚に有益な効果を付与することができる有益剤を用いずに療法を投与するための処置装置(図示せず)を任意選択で備えてもよい。例えば、処置装置は、皮膚上のフレクセルを明るくする、色素沈着を低減する、炎症を低減する、感染を低減するために、光線療法又はレーザ処置を提供し得る。この実施形態では、皮膚上のフレクセルから検出されたトレーサの量を、フレクセルに以前に投与された処置の強度に相関させることができるように、トレーサは、処置装置によって皮膚に適用された処置の強度のレベルに比例する量でアプリケータ装置120によって塗布されてもよい。
【0054】
本実施形態によるデバイス100は、デバイス100を制御して動作させるための電力を供給する電源160を更に備える。電源160は、デバイス100内の任意の場所に位置し得るか、又は代替的にデバイス100の外部にあってもよいことが企図される。例示的な一実施形態では、図1に示すように、デバイス100のハンドル部分104内に収容される電源160は、検出器装置120、アプリケータ装置130、及び/又は処理装置130に動作可能に接続される。当業者であれば、種々の既知の好適な電源を使用してもよいことを理解するであろう。例えば、電源10は、電池又は外部電源への接続を含んでもよい。具体的に言えば、電源10は、再充電可能なバッテリーデバイスを備えてもよい。
【0055】
使用時、ヘッド部分102は、処理される皮膚の範囲の上に配置される。使用中、デバイス100は、皮膚の複数の異なる領域を撮像するために利用されてもよい。例えば、ヘッド部分102を皮膚の表面にわたって移動させることでデバイス100に皮膚の異なる範囲(任意の所望のフレームレートで)を連続的に撮像させて画像データを取得し、この画像データを解析して、皮膚状態を処置するための処置を選択的に投与し、所望のフレクセル(皮膚上の場所)でトレーサを含む組成物を塗布することができる。より詳細には、ユーザは、使用セッション中に、皮膚の表面にわたってヘッド部分102を行ったり来たり複数回通過するように移動させて、先に処理された範囲をデバイス100に再確認させることで見逃された又は不完全に処理されたアーチファクトを検出し、皮膚上の識別されたアーチファクトに更に処置することができる。
【0056】
本出願はまた、皮膚状態を処置する方法を含む。例示的な方法200を図2に示す。工程202では、ユーザは、デバイス100のヘッド部分102を皮膚の表面、例えば顔の皮膚に対して配置することによって、装置100の使用を開始することができる。ヘッド部分102は、皮膚のある範囲、例えば、デバイス100によって撮像及び解析されるフレームを構成する範囲をカバーする。
【0057】
工程204において、検出器装置110は、その領域を撮像して皮膚の領域に関する画像データを取得する。皮膚の領域を撮像するために、検出器装置110は、光源111を使用して皮膚の領域を照明し、センサ112を用いて画像データを生成するために画像を記録する。例示的な実施形態では、皮膚の領域を照明する光源111のうちの少なくとも1つは、処置を必要とする皮膚アーチファクト(例えば、感染及び/又は炎症からの発赤、座瘡、紅斑、発症前座瘡、不均一な皮膚色調、日光による損傷、シミ、シワなど)の根底にある生物学的成分を検出するのに好適なピーク波長を有し得る。より具体的には、皮膚の領域を照明する光源111は、例えば、ユーメラニン、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、皮膚着色などの根底にある生物学的成分のピーク吸収波長に対応する少なくとも1つのピーク波長を有し得る。
【0058】
別の実施形態では、工程204は、各々が異なる波長を有する光で皮膚の領域を照明する複数の異なる光源111を利用する(又は、光源は、異なる方向から皮膚に当たるように配列される)。この実施形態における光源111は、皮膚アーチファクトの根底にある生物学的成分の差分検出を提供するのに好適な波長を有することができる。特に、この実施形態における複数の光源111のうちの2つは、これらの異なる光源111のうちの少なくとも2つによる照明下で取得された画像データの比較が、皮膚アーチファクトの根底にある生物学的成分の量を検出及び/又は測定するために使用され得るように、異なるピーク波長を有し得る。例えば、工程204は、3つの異なる色の光、すなわち、(1)赤色光又は遠赤色光、(2)緑色光、及び(3)青色光又は赤外光で皮膚の領域を照明する。具体的には、工程204は、表1において上記で指定された波長又はその付近のピーク波長を有する光で皮膚の領域を照明することができる。複数の光源111の各々は、センサ112を用いて画像を記録するために皮膚の領域を照明するように同時に提供され得る。代替的に、複数の光源111の各々は、複数の別個の画像を記録するために皮膚の領域を照明するように順次提供されてもよく、各画像は、各対応する光源111によって照明される。
【0059】
工程206において、処理装置130は、検出器装置110からの画像データを解析して、皮膚状態に対応するアーチファクトが皮膚の撮像領域内のフレクセルで検出されるかどうかを判定し、かつフレクセルから検出されたトレーサの量を判定する。処理装置130は、アーチファクトが撮像領域におけるフレクセルに存在するかどうかを判定するために、任意の好適な方法によって画像データを解析することができる。一例では、処理装置130は、画像データを解析して、フレクセルのアーチファクトの規模を判定し、アーチファクトの規模が所定の閾値レベルよりも大きいときに、フレクセルでアーチファクトが実際に検出されると判定する。アーチファクトの規模は、皮膚アーチファクトの出現の強度(例えば、皮膚の発赤の強度、皮膚変色の暗さ、シワの出現の強度)に対応する。処理装置130はまた、画像データを解析して、もしあれば、フレクセルから検出されるトレーサの量を判定する。工程208に示すように、フレクセルでアーチファクトが検出される場合、方法200は工程210に進む。アーチファクトが検出されない場合、皮膚のフレクセルは、処置が必要であるとしてデバイス100によって検出されない。したがって、方法200は、フレクセルにいかなる処置も組成物も適用せず、方法200は工程220に進む。
【0060】
工程210において、方法200は、フレクセルから検出されたトレーサの量が所定の閾値レベル未満であるかどうかを比較する。検出されたトレーサの量が所定の閾値レベル未満である場合、方法200は工程212に進む。検出されたトレーサの量が所定の閾値レベル以上である場合、方法200は工程220に進む。以下で更に説明するように、トレーサは、皮膚に投与される処置のレベルに比例する量でアプリケータ装置120によって塗布される。したがって、検出されたトレーサの量は、皮膚に以前に投与された処置のレベルに対応する。方法200は、検出されたトレーサの量を利用して、皮膚に以前に投与された処置のレベルを追跡し、アーチファクトが使用セッションの過程にわたって検出される場合、各フレクセルに投与された処置の総レベルを制御する。特に、検出されたトレーサの量は、フレクセルに以前に投与された有益剤の量に対応する。ヘッド部分102が複数のパスで前後に移動するので、フレクセルは2回以上検出され得る。フレクセルで検出されたトレーサの量は、使用セッションにおける複数のパスからフレクセル上に蓄積された有益剤の総量に対応する。所定の閾値レベルは、使用セッションにおいてフレクセルに塗布することができる有益剤の最大総量を制御するように選択される。
【0061】
有益剤の効果は、概して、有益剤の投与量が増加するにつれて、有益剤に対する治療的応答が、より高い用量でプラトーに近づくまで増加することを示す用量反応曲線に沿って治療的有益性を付与する。有益剤はまた、有害作用を引き起こし得る。典型的には、有害作用は、低用量での有益剤の有害作用が最小であるか、又は低いが、投与量が増加するにつれて増加する有害作用曲線に沿って、投与量に依存する。そのような有害作用には、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応、見苦しい外観などが含まれ得る。トレーサの所定の閾値レベルは、有益剤の有害作用に対する治療的有益性のバランスをとるために滴定される投与量に対応するように選択された有益剤の所望の投与量レベル閾値に対応し得る。いくつかの実施形態では、所望の投与量レベル閾値は、ユーザの皮膚に安全に投与することができる最大用量に対応し得る。他の実施形態では、所望の投与量レベル閾値は、皮膚に対する過度の目に見える刺激及び/又は変色を回避しながら治療的効果を付与するのに十分な用量に対応し得る。
【0062】
工程212において、処理装置130は、皮膚状態の処置をフレクセルに投与するように、アプリケータ装置120に指示する。特に、処置は、皮膚状態を処置するための有益剤を含む局所用組成物の塗布である。一実施形態では、アプリケータ装置120は、有益剤と、トレーサと、を含む組成物の固定用量のパルスを適用する。トレーサは、有益剤と同じ組成物の一部であり、したがって、組成物の各固定用量における有益剤の量に比例する固定量で塗布される。あるいは、アプリケータ装置130は、(1)有益剤を含む第1の組成物の第1の固定用量、及び(2)トレーサを含む第2の組成物の第2の固定用量の、2つの別個のパルスを順次適用するように構成されてもよい。第2の組成物は、好ましくは、第1の組成物と同時に、又はそれに近い時間枠内で塗布され、その結果、ヘッド部分が使用セッションにおいて複数のパスで前後に移動するにつれて、フレクセル上に蓄積された第2の組成物の総量が第1の組成物の総量に比例するように維持される。
【0063】
別の実施形態では、アプリケータ装置120は、有益剤と、トレーサと、を含む組成物の可変用量を有するパルスを適用する。可変用量は、フレクセルのアーチファクトの規模及びフレクセルから検出されたトレーサの量に基づいて、処理装置130によって判定される。例示的な実施形態では、処理装置130は、アーチファクトの規模の関数として組成物の所望の総用量を判定する。例えば、処理装置130は、フレクセルでのアーチファクトの規模(例えば、紅斑の発赤の強度、暗斑の強度)を解析し、フレクセルでのアーチファクトを処置するための有益剤の総量を判定してもよい。有益剤の総量は、アーチファクトに対応する皮膚状態を処置するための有益剤の治療的有効量である。加えて、処理装置130は、フレクセルから検出されたトレーサの量に基づいて、フレクセルに以前に塗布された有益剤の累積量を判定する。次いで、処理装置130は、アーチファクトを処置するための有益剤の総量と、フレクセルに以前に塗布された有益剤の累積量との差異として、アプリケータ装置120によって塗布される可変用量を判定する。あるいは、アプリケータ装置130は、(1)有益剤を含む第1の組成物の第1の可変用量、及び(2)トレーサを含む第2の組成物の第2の可変用量の、2つの別個のパルスを順次適用するように構成されてもよい。処理装置130は、上述の方式で第1の組成物の第1の可変用量を判定し、第1の可変用量に比例する値を有するものとして第2の可変用量を判定する。上述した固定投与量の実施形態と同様に、第2の組成物は、好ましくは、第1の組成物と同時に、又はそれに近い時間枠内で塗布され、その結果、ヘッド部分が使用セッションにおいて複数のパスで前後に移動するにつれて、フレクセル上に蓄積された第2の組成物の総量が第1の組成物の総量に比例して維持される。
【0064】
工程220において、デバイス100は、ユーザによって皮膚の新しいフレーム又は範囲に移動され、プロセスが繰り返される。この移動は、例えば、加速度計又は画像解析などの任意の好適な手段によって、デバイス100によって検出されてもよい。次に、方法200は工程204に戻り、デバイス100によって決定された通りに、上記に述べたのと同じ方式で、皮膚状態の処置及びトレーサを、撮像、解析し、選択的に適用し、皮膚に以前に投与された処置の量又はレベルを追跡する。方法200は、例えば、デバイス100を皮膚から除去する、又はデバイス100のスイッチを切る(具体的には、デバイスの電源160を切る)など、任意の好適な動作によって、工程204~212のいずれか1つの前にユーザによって中断及び終了されてもよいことに、留意されたい。
【0065】
別の例示的な方法300を図3に示す。工程302~308、工程312及び工程210は、それぞれ、方法200に関して上述した工程202~208、工程212及び工程220と同じである。工程310は、図3に示され、以下で説明されることを除いて、工程210と実質的に同様である。工程310において、方法は、フレクセルから検出されたトレーサの量が所定の閾値レベル未満であるかどうかを比較する。検出されたトレーサの量が所定の閾値以上である場合、方法300は工程314に進む。工程310は、使用セッションの過程にわたって各フレクセルに投与される処置の総レベルを制限するが、フレクセルでアーチファクトが検出されたときに化粧品塗布を更に適用するために別個の工程に進む。工程314において、処理装置130は、フレクセルに化粧品組成物を塗布するように、アプリケータ装置120に指示する。アプリケータ装置120によって塗布された化粧品組成物の量は、固定量であってもよく、又は工程306において判定されたアーチファクトの規模の関数として、処理装置130によって可変的に選択されてもよい。更に、工程314において塗布された化粧品組成物の可変量は、工程312において投与された皮膚状態の処置のレベルとは独立して判定されてもよい。方法300の工程312及び314は、図3に順次示されているが、工程312及び314は、逆の順序で実行されてもよい(すなわち、工程310がはいである場合、工程314に進み、次いで工程312に進む)。代替として、工程312及び314は、独立して実行されてもよい(すなわち、工程310がはいである場合、工程312及び314の各々に独立して進む)。例えば、工程312は、処置及びトレーサを皮膚に適用するための1つ又は2つ以上のノズルによって実行されてもよく、工程312は、化粧品組成物を皮膚に塗布するための別個のノズルによって実行されてもよい。
【0066】
例示的な実施形態では、処理装置130は、画像データを解析して、発症前座瘡が存在し得るかどうかを判定する。具体的には、処理装置130は、画像データを解析して、皮膚の領域でのヘモグロビンのレベルの増加に対応すると考えられる皮膚上の発赤の存在を検出する。処理装置130は、画像データを解析して、ヘモグロビンからのスペクトル寄与を、例えば、メラニンなどの他の皮膚成分から分離することができる。特に、処理装置130は、画像データを解析し、画像データを基準データと比較して、他の皮膚成分からの基準スペクトル寄与なしに、ヘモグロビンからのスペクトル寄与の正規化値を生成することができる。特に、画像データは、赤色、緑色、及び青色の反射率測定値を提供するセンサ122によって取得され得る。これらの反射率測定値の各々は、画像データにおいてベクトルとして表され、他の皮膚成分からのスペクトル寄与とは無関係に皮膚において存在するヘモグロビンの量について経験的に生成された推定値に対応する規範的データを含むルックアップテーブルと比較され得る。処理装置130は、画像データに基づいて検出されたヘモグロビンの量を判定し、その量を、皮膚の撮像領域の付近の領域におけるヘモグロビンの近接レベルと比較し、紅潮及び近傍領域における皮膚灌流を引き起こす他の影響に対する基準背景値を生成してもよい。処理装置130が、発症前座瘡病変が検出されると判定した場合、デバイス100は、発症前座瘡の出現を低減するか、又は発症前座瘡の発疹を防止するために、処置、特に治療的活性剤(例えば、サリチル酸)を投与することができる。投与された処置の量又はレベルは、皮膚の領域から検出されたヘモグロビンの正規化量の関数として判定され得る。いくつかの実施形態において、検出されたヘモグロビンの正規化量が所定の閾値以上であるときに、処置の固定最適量又はレベルが所望され得る。他の実施形態では、検出されたヘモグロビンの正規化量の関数として判定された処置の可変最適量又はレベルは、それが所定の閾値以上であるときに所望され得る。例えば、検出されたヘモグロビンの高い正規化量は、発疹した座瘡に対応する可能性があり、したがって、発疹した病変で皮膚を更に刺激しないように、より少ない投与量の治療的活性剤(例えば、サリチル酸)が望ましい可能性がある。処理装置130は更に、画像データを解析して、検出されたトレーサの量を判定し、トレーサの量を、皮膚の領域に以前に適用された処置の量又はレベルに相関させてもよい。以前に適用された処置の量又はレベルが、上記で判定されたような最適な量又はレベル未満である場合、更なる処置がデバイス100によって適用される。更なる処置の量又はレベルは、固定され得るか、又は上記で判定されるような処置の最適な量又はレベルと、皮膚の領域に以前に適用された処置の量又はレベルとの間の差異として判定される可変量であり得る。
【0067】
当業者であれば、本明細書に記載される例示的な実施形態は、別個のソフトウェアモジュールとして、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとしてなど、任意の数の方法で実装され得ることを理解するであろう。例えば、例示的な方法は、非一時的な記憶媒体に記憶され、コンパイルされたときに1つ又は2つ以上のプロセッサコア又は別個のプロセッサによって実行され得るコードのラインを含む、1つ又は2つ以上のプログラム内で具体化されてよい。一実施形態によるシステムは、複数のプロセッサコアと、上記の例示的な方法を実行するためにこれら複数のプロセッサコア上で実行される命令セットとを備える。プロセッサコア又は別個のプロセッサは、任意の好適な電子デバイス、例えば、デバイスの内部のオンボード処理装置、又はデバイスの少なくとも一部と通信可能なデバイスの外部の処理装置、例えば、モバイルコンピューティングデバイス、スマートフォン、コンピューティングタブレット、コンピューティングデバイスなどに組み込まれてもよく、又はそれと通信してもよい。
【実施例
【0068】
(実施例I)
実施例Iでは、本出願のデバイス及び方法は、座瘡及び/又は発症前座瘡を検出及び処置するために使用されてもよい。座瘡又は発症前座瘡などの感染又は炎症によって引き起こされる皮膚の発赤又は皮膚の紅斑は、皮膚の罹患部分の血流からの発赤の増加と相関する。したがって、実施例Iの例示的なデバイスは、例えば、皮膚の罹患部分でのオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの量の増加など、血流の増加に対する生物学的成分の増加を検出するように構成されている。
【0069】
光吸収は、例えば、褐色ユーメラニン、黒色ユーメラニン、オキシヘモグロビン、及びデオキシヘモグロビンなどの異なる生物学的成分について異なる波長にわたって異なる。例えば、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの両方は、緑色スペクトルと比較して赤色スペクトル内でより少ない光を吸収し、したがって、赤色光及び緑色光は、皮膚上のオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンのレベルを区別して検出及び/又は測定するために使用され得る。特に、690nm又はその付近のピーク波長を有する遠赤色光は、540nm又はその付近のピーク波長を有する緑色光と比較して、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンによって有意に少なく吸収される。更に、オキシヘモグロビンはデオキシヘモグロビンよりも多くの赤色光を吸収するが、波長が赤外スペクトル内で増加するにつれて、デオキシヘモグロビンはオキシヘモグロビンよりも多くの光を吸収する。したがって、赤色光と赤外光との組み合わせを使用して、皮膚の領域に存在するオキシヘモグロビンを検出し、改善された皮膚浸透を提供して、発症前の座瘡病変を検出することができる。褐色ユーメラニン、黒色ユーメラニン及び他の皮膚着色(例えば、皮膚のあざ)もまた、緑色光と比較して、赤色光又は遠赤色光によって区別して検出及び/又は測定することができる。青色光は更に、緑色光で皮膚上のオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンのレベルを区別して検出及び/又は測定するために使用することができる。特に、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンは、緑色光よりも青色光を有意に多く吸収するが、褐色ユーメラニン及び黒色ユーメラニンは、青色光よりも緑色光を多く吸収する。したがって、青色光源、緑色光源及び/又は遠赤色光源を異なる組み合わせで使用して取得された画像データを解析して、皮膚の発赤又は皮膚の紅斑を識別し、座瘡又は発症前座瘡に対応する皮膚アーチファクトを検出することができる。更に、異なる波長の光は、皮膚浸透のレベルに対応する、皮膚の異なる深さからの成分を検出し得る。可視スペクトル内では、波長が増加するにつれて、皮膚浸透のレベルは概して増加する。皮膚浸透のレベルは、約1,100nmの波長で浸透のピークレベルに達するまで波長とともに増加し続け、約3.5mmの皮膚浸透を提供する。したがって、近赤外光は、可視光と比較して、より高いレベルの皮膚浸透(例えば、約2倍)での検出を可能にする。実施例Iは、座瘡及び/又は発症前座瘡の検出を説明するが、異なる波長にわたる光吸収の差異を使用して、他のタイプの皮膚アーチファクト及び/又は疾患(例えば、皮膚がん)を識別するために、皮膚の異なる成分を検出することができることが企図される。
【0070】
例示的なデバイスは、3つの別個の光源、(1)青色光源、(2)緑色光源、及び(3)遠赤色光源を有する検出器装置を備える。青色光源は、450nm又はその付近のピーク波長を有する。緑色光源は、540nm又はその付近のピーク波長を有する。遠赤色光源は、690nm又はその付近のピーク波長を有する。
【0071】
実施例Iにおいて、例示的なデバイスの検出器装置は、皮膚から偏光を放射及び検出して、そうでなければヒトの目に見えないかすかな発赤又は紅斑を有する皮膚の部分を識別し、座瘡の早期検出及び処置を提供するように更に構成され得る。遠赤色光を吸収するシアン色を有するトレーサは、方法200、300において上述した様式で、座瘡を処置するための有益剤に比例する量で皮膚に塗布される。特に、トレーサは、690nm又はその付近のピーク波長を有する遠赤色光を吸収する。そのような例示的なトレーサは、可視スペクトル内の光を吸収するが、ヒトの目には弱く見える一方で、わずかな緑色の直食を付与して、座瘡によって引き起こされた皮膚の発赤又は紅斑の外観を修正する。
【0072】
(実施例II)
実施例IIでは、座瘡及び/又は発症前座瘡を検出及び処置するための本出願のデバイス及び方法の別の実施形態が提供される。実施例IIの例示的なデバイスは、3つの別個の光源、(1)緑色光源、(2)遠赤色光源、及び(3)赤外光源を有する検出器装置を備える。緑色光源は、540nm又はその付近のピーク波長を有する。遠赤色光源は、690nm又はその付近のピーク波長を有する。赤外光源は、840nm又はその付近のピーク波長を有する。図9に見られるように、緑色光と比較した赤外光の差分吸収は、緑色光と比較した遠赤色光の差分吸収よりも更に大きい。したがって、実施例Iと同様に、緑色光源、遠赤色光源及び/又は赤外光源を異なる組み合わせで使用して取得された画像データを解析して、皮膚の発赤又は皮膚の紅斑を識別し、座瘡又は発症前座瘡に対応する皮膚アーチファクトを検出することができる。この三連の光源にわたって平均すると、皮膚は、実施例Iと比較してほぼ2倍の浸透を有し、表面事象からの干渉が低減された状態で、発症前座瘡のような皮下事象をより良好に検出する。
【0073】
赤外励起波長を有する蛍光トレーサは、方法200、300において上述した様式で、座瘡を処置するための有益剤に比例する量で皮膚に塗布される。トレーサは、赤外光、特に、840nm又はその付近のピーク波長を有する光によって励起することができ、皮膚上のトレーサの量を検出器装置によって検出及び測定することができるように、可視スペクトルにおける光を放射することができる。
【0074】
(実施例III)
実施例IIIでは、本出願のデバイス及び方法は、不均一な皮膚色調を検出及び処置するために使用されてもよい。この例では、皮膚の色調を更に改善するために、実施例IIIのデバイス及び方法を利用する前に、感染、座瘡、シワなど、皮膚のメラニンレベルに影響を及ぼさない皮膚状態を別個に処置することができる。例示的なデバイスは、方法300に従って、輝度不均一性を検出し、アーチファクトが検出されるときに、第1の固定用量の皮膚光沢剤及び第2の固定用量の化粧品組成物を独立して塗布するように構成されている。特に、デバイス100は、皮膚の領域における輝度の不均一性を検出するために緑色光で皮膚の領域を利用する照明する。緑色光は、ヒトの目が均一性を知覚する主な要因であるため、輝度の不均一性を検出するのに特に有用であると考えられる。皮膚光沢剤は、ある期間にわたって繰り返し使用することによって、根底にある皮膚の色調を徐々に変化させ、一方、化粧品組成物は、皮膚の外観に即時の修正を提供する。ユーザが例示的なデバイスのヘッド部分を複数回のパスにおいて皮膚を横切って前後に移動させると、デバイスは、皮膚のフレクセル上で所定の閾値レベルに達するまで皮膚光沢剤を皮膚断片に塗布する。デバイスは、皮膚上のアーチファクトの出現に基づいて化粧品組成物を塗布し、皮膚に塗布される皮膚光沢剤とは独立して制御される。したがって、使用セッションにおいて投与された皮膚光沢剤の量が所定の閾値レベルに達したフレクセル上では、化粧品は、皮膚の所望の外観に達するまで、フレクセルに塗布され続けることができる。図4aは、実施例IIIによる、顔を横切る複数のパスにわたってユーザの顔に塗布された化粧品組成物の場所及び量を示すシミュレーション画像を示す。図4bは、実施例IIIによる、顔を横切る複数のパスにわたってユーザの顔に塗布された皮膚光沢剤の場所及び量を示すシミュレーション画像を示す。
【0075】
(実施例IV)
実施例IVでは、本出願のデバイス及び方法は、座瘡及び不均一な皮膚色調の両方を検出及び処置するために使用されてもよい。実施例IVの例示的なデバイスは、有益剤を含有する2つの異なる組成物、(1)座瘡を処置するための有益剤を含む第1の組成物、及び(2)皮膚光沢剤を含む第2の組成物を塗布するように構成されている。第1の組成物は、緑色光を放射する蛍光トレーサを更に含み、第2の組成物は、赤色光を放射する蛍光トレーサを更に含む。
【0076】
実施例IVの例示的なデバイスは、3つの別個の光源、(1)青色光源、(2)緑色光源、及び(3)遠赤色光源を有する検出器装置を備える。青色光源は、450nm又はその付近のピーク波長を有する。緑色光源は、540nm又はその付近のピーク波長を有する。遠赤色光源は、690nm又はその付近のピーク波長を有する。検出器装置は、光源の異なる組み合わせを循環し、光源のこれらの異なる組み合わせの下で検出された画像に対応する画像データを生成するように構成されている。具体的には、検出器装置は、(1)遠赤色光と組み合わされた青色光及び緑色光、並びに(2)他の光を伴わない青色光のような光源の2つの構成を循環する。処理装置は、青色光の下で取得された画像に対応する画像データを解析して、皮膚上のフレクセルから検出された緑色蛍光トレーサの第1の量及び赤色蛍光トレーサの第2の量を判定する。処理装置は、皮膚の発赤又は皮膚の紅斑に対応するアーチファクトの部分の第1の大きさ、及び検出された緑色蛍光トレーサの量に基づいて、塗布する第1の組成物の量を判定する。処理装置は、検出された緑色蛍光トレーサの量が第1の所定の閾値レベルに達するまで、第1の組成物を塗布するように、アプリケータ装置に指示する。同様に、処理装置は、皮膚輝度の低減に対応するアーチファクトの部分の第2の大きさ、及び検出された赤色蛍光トレーサの量に基づいて、塗布する第2の組成物の量を判定する。処理装置は、検出された赤色蛍光トレーサの量が第2の所定の閾値に達するまで、第2の組成物を塗布するように、アプリケータ装置に指示する。第1の所定の閾値は、第2の所定の閾値レベルから独立して判定される。
【0077】
本明細書に開示される特定の実施形態は、本発明のいくつかの態様を例示することを意図するため、本明細書に記載及び特許請求される本発明は、これらの実施形態によって範囲が限定されるものではない。いかなる同等の実施形態も、本発明の範囲内にあることが意図される。実際、本明細書に図示及び説明されたものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。このような修正はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。本明細書で引用されたすべての刊行物は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0078】
〔実施の態様〕
(1) 皮膚状態を処置するための手持ち式デバイスであって、
組成物を皮膚に塗布するアプリケータ装置であって、前記組成物が、前記皮膚状態を処置するための活性成分、及びトレーサを含む、アプリケータ装置と、
皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得する検出器装置と、
前記画像データを解析して、前記皮膚状態に対応するアーチファクトが前記皮膚の前記撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつ前記場所から検出された前記トレーサの量を判定する処理装置であって、前記アーチファクトが検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、前記組成物を前記場所に塗布するように、前記アプリケータ装置に指示する、処理装置と、を備える、デバイス。
(2) 前記アプリケータ装置が、前記組成物の固定された投与量を前記皮膚に塗布するように構成されている、実施態様1に記載のデバイス。
(3) プロセッサが、前記画像データを解析して、前記場所での前記アーチファクトのアーチファクト規模を判定し、前記アーチファクト規模及び前記トレーサの前記量の関数として、前記場所に塗布される前記組成物の投与量を判定し、かつ前記アーチファクトが検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、前記組成物の前記投与量を前記場所に塗布するように、前記アプリケータ装置に指示するように構成されている、実施態様1に記載のデバイス。
(4) 前記トレーサの前記所定の閾値レベルが、前記活性成分の所望の投与量閾値に対応する、実施態様1に記載のデバイス。
(5) 前記検出器装置が、遠赤色光又は赤外光を前記皮膚の領域に送達するための第1の光源と、前記皮膚の領域からの光を検出するためのセンサと、を備える、実施態様1に記載のデバイス。
【0079】
(6) 前記遠赤色光が、約690nmのピーク波長を有する、実施態様5に記載のデバイス。
(7) 緑色光を送達するための第2の光源と、赤外光を送達するための第3の光源と、を更に備える、実施態様5に記載のデバイス。
(8) 前記第2の光源が、約540nmのピーク波長を有し、前記第3の光源が、約840nmのピーク波長を有する、実施態様5に記載のデバイス。
(9) 前記トレーサが、遠赤色スペクトルの光を吸収し、可視赤色スペクトルの光を有意に吸収しない、実施態様6に記載のデバイス。
(10) 前記トレーサが、シアン染料又はシアン顔料である、実施態様9に記載のデバイス。
【0080】
(11) 前記トレーサが、非スルホン化シアニン染料である、実施態様10に記載のデバイス。
(12) 前記トレーサが、約690nmのピーク波長を有する光を吸収し、約610nmのピーク波長を有する光を有意に吸収しない、実施態様9に記載のデバイス。
(13) 前記トレーサが、ヒトには見えない、実施態様1に記載のデバイス。
(14) 前記トレーサが、蛍光染料又は蛍光顔料である、実施態様13に記載のデバイス。
(15) 前記組成物が、前記皮膚の外観を修正するための少なくとも1つの化粧品成分を含む、実施態様1に記載のデバイス。
【0081】
(16) 前記組成物が、不透明な物質、化粧品顔料、及び化粧品染料のうちの少なくとも1つを含む、実施態様15に記載のデバイス。
(17) 前記組成物が、反射率変性剤を更に含む、実施態様15に記載のデバイス。
(18) 前記皮膚状態が、過剰なメラニン沈着、感染、炎症、座瘡、シワ、及び皮膚色の不均一性からなる群から選択される、実施態様1に記載のデバイス。
(19) 皮膚状態を処置する方法であって、
検出器装置によって、前記皮膚の領域の画像に対応する画像データを取得することと、
処理装置によって、前記画像データを解析して、前記皮膚状態に対応するアーチファクトが前記皮膚の前記撮像領域内の場所で検出されるかどうかを判定し、かつ前記場所から検出された前記トレーサの量を判定することと、
前記アーチファクトが前記場所から検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、アプリケータ装置によって、前記場所に組成物を塗布することと、を含み、前記組成物が、前記皮膚状態を処置するための活性成分と、前記トレーサと、を含む、方法。
(20) 前記解析する工程が、
前記プロセッサによって、前記場所での前記アーチファクトのアーチファクト規模、及び前記場所から検出された前記トレーサの前記量を判定することと、
前記プロセッサによって、前記アーチファクト規模及び検出された前記トレーサの前記量の関数として、前記場所に塗布される前記組成物の投与量を判定することと、を含み、
前記アプリケータ装置は、前記アーチファクトが検出され、前記トレーサの前記量が所定の閾値レベル未満であるときに、前記組成物の前記投与量を前記場所に塗布する、実施態様19に記載の方法。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
【国際調査報告】