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特表2023-532361レーザ誘起プラズマ分光法を使用してエアロゾル形態の生物学的粒子を特徴付ける方法および関連するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】レーザ誘起プラズマ分光法を使用してエアロゾル形態の生物学的粒子を特徴付ける方法および関連するシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/71 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
G01N21/71
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500263
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2021069233
(87)【国際公開番号】W WO2022008749
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】2007327
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518131632
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サブルモンティエール、オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルノー、ジャン - フィリップ
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA04
2G043BA16
2G043BA17
2G043DA02
2G043DA05
2G043EA10
2G043GA04
2G043GB05
2G043HA05
2G043JA03
2G043LA02
(57)【要約】
本発明は、レーザ誘起プラズマ分光法を使用してエアロゾル形態の(すなわち、周囲ガス中に浮遊する)生物学的粒子を特徴付ける方法および関連するシステムに関するものである。この方法は、a)特徴付けが意図される生物学的粒子を含む周囲ガスを捕集するステップ(Ea)と、b)真空チャンバ(CH)内で前記粒子(JAB)のジェットを生成するステップ(Eb)と、c)レーザビーム(FL)をパルスの形態で送り、粒子のジェット(JP)の伝搬方向に対して横方向に真空チャンバ(CH)内でレーザビームを集束させて、集束体積(VF)内に、レーザビーム(FL)とジェットの少なくとも1つの個々の粒子(N)との間の相互作用によってプラズマを生成するステップであって、プラズマは、レーザビームとジェットの個々の粒子との間の相互作用に特有である他の粒子を送る、ステップと、d)プラズマによって送られた粒子を捕集するステップ(Ed)と、e)生物学的粒子を最終的に特徴付けるために、前記粒子の分光分析を実行するステップ(Ee)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形態、すなわち周囲ガス中に浮遊する生物学的粒子を、レーザ誘起プラズマ分光法によって特徴付ける方法であって、
a)特徴付けが求められる前記生物学的粒子を含む周囲ガスをサンプリングするステップと、
b)真空下のチャンバ(CH)内で前記粒子(JAB)のジェットを発生させるステップと、
c)レーザビーム(FL)をパルスの形態で放射し、粒子ジェット(JP)の伝搬方向に対して横方向に前記真空チャンバ(CH)内で前記レーザビームを集束させて、集束体積(VF)内に、前記レーザビーム(FL)と前記ジェットの最大1つの個々の粒子(N)との間の相互作用によってプラズマを生成するステップであって、前記プラズマは、前記レーザビームと前記ジェットの前記個々の粒子との間の相互作用に特有である他の粒子を放出する、前記プラズマを生成するステップと、
d)前記プラズマから放出された前記粒子を捕集するステップと、
e)前記粒子の分光分析を実行して、前記生物学的粒子を最終的に特徴付けるステップとを含む、方法。
【請求項2】
ステップa)とステップb)との間で、以下のサブステップ、すなわち、
aa)混合チャンバと呼ばれるチャンバ(CHM)に前記周囲ガスを導入するサブステップと、
ab)エアロゾルの形態で、特徴付けが求められる前記生物学的粒子の特定の分子に対する少なくとも1つのタイプの受容体を前記混合チャンバに導入するサブステップであって、前記少なくとも1つのタイプの受容体は、他の方法でマーキングされる、前記少なくとも1つのタイプの受容体を導入するサブステップと、
ac)前記混合チャンバ内で、特徴付けが求められる前記生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含むエアロゾルを、特徴付けられる前記生物学的粒子を含む前記サンプリングされた周囲ガスと混合するサブステップとが実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップab)の前に、特徴付けが求められる前記生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含む前記エアロゾルを乾燥させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
サブステップac)の後、ステップb)を実施する前に、前記形成された混合物を乾燥させる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
マーカーが磁性材料であり、サブステップac)の後、ステップb)を実施する前に、前記磁性材料を含む粒子のみが任意の適切な磁気手段によって選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
特徴付けが求められる前記生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含む前記エアロゾルは、前記マーキングされた受容体の噴霧溶液(SOL)から得られる、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液(SOL)は、アルコール(例えば、エタノール)をベースとする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップab)は、特徴付けが求められる前記生物学的粒子の特定の分子に対するいくつかの異なるタイプの受容体をエアロゾルの形態で前記混合チャンバ(CHM)に導入するステップからなり、各々のタイプの受容体は、別の方法でマーキングされている、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各々のタイプの受容体は、異なるマーキングがされる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステム(D)であって、前記システム(S)は、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体の前記エアロゾルを生成する手段(M)と、
混合チャンバ(CHM)であって、
サンプリングされるガスのための第1の入口(E1)と、
特徴付けが求められる前記生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体のエアロゾルを生成する前記手段(M)によって生成されたエアロゾルのための第2の入口(E2)と、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含む前記エアロゾルを、特徴付けられる前記生物学的粒子を含む前記サンプリングされた周囲ガスと混合するための出口(OUT)とを含む、前記混合チャンバ(CHM)と、
レーザ誘起プラズマ分光法によって前記粒子を特徴付ける装置(D)であって、
チャンバ(CH)内で前記粒子のジェット(JP)を前記混合チャンバ(CHM)から来るガスから生成するシステム(SG)であって、前記チャンバ内を真空にするために、前記チャンバ内に存在するガスを圧送するための手段(MP)が前記チャンバに関連付けられている、前記ジェット(JP)を生成するシステム(SG)と、
前記レーザビーム(FL)をパルスの形態で放射することができるレーザ(L)であって、前記チャンバ(CH)内の前記レーザビームを、前記粒子ジェット(JP)の伝播方向に対して横方向に集束させるように構成された光学デバイス(DO)が前記レーザ(L)に関連付けられており、前記レーザビーム(FL)と前記ジェットの前記粒子(N)との間の相互作用によって前記焦点体積(VF)内に前記プラズマを生成し、前記プラズマは、前記レーザビームと前記ジェットの前記粒子との間の相互作用に特有の他の粒子を放出する、前記レーザ(L)と、
前記プラズマによって放出された前記粒子を捕集する手段(MC)と、前記粒子の分光分析を行う手段(MAS、MAS’)とを含む、少なくとも1つの検出装置(DD、DD’)と
を備える、前記装置(D)と
を備える、システム(S)。
【請求項11】
前記混合チャンバ(CHM)は、前記少なくとも1つのタイプのマーキングされた受容体の前記エアロゾルを生成する前記手段(M)と前記混合チャンバ(CHM)の前記第2の入口(DE)との間、または前記混合チャンバ(CHM)の前記出口(OUT)のレベルのいずれかに配置された少なくとも1つの乾燥器(SECH1、SECH2)を備える、請求項10に記載のシステム(S)。
【請求項12】
前記混合チャンバは、Goldberg回転ドラムである、請求項10に記載のシステム(S)。
【請求項13】
前記プラズマによって放出された前記粒子を捕集する前記手段(MC)は、複数のN本の光ファイバ(FO、FO、FO、…、FON-1、FO)(Nは、厳密に1よりも大きい自然数)を含み、各々の光ファイバ(FO、FO、FO、…、FON-1、FO)の一端(E1、E2、E3、…、EN)は、前記プラズマによって放出された前記粒子の捕集を保証するために、前記焦点体積(VF)の周りに配置され、前記焦点体積(VF)の方を向いている、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム(S)。
【請求項14】
前記光ファイバ(FO)は、前記チャンバ(CH)の球形の外壁(PEXT)に取り付けられている、請求項13に記載のシステム(S)。
【請求項15】
前記プラズマによって放出された前記粒子の分光分析を行う前記手段(MAS、MAS’)は、
互いに異なる波長帯域でのフィルタリングを保証することができる、複数のノッチタイプのフィルタ(FCB)と、
各々のノッチフィルタに関連付けられた、例えば電子光電子増倍管タイプの、光検出器(PDT)とを備える、請求項10~14のいずれか一項に記載のシステム(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲ガス中のエアロゾルの形態の生物学的粒子の特徴付けの分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周囲ガスは、特に、建物の内部または外部の周囲の空気とすることができる。
【0003】
今日、空気中の生物学的粒子の検出は、周囲空気を吸い込み、粒子をある(小さな)体積の液体またはゼラチンフィルター内に蓄積させることによって、現在行われている。次いで、求められる生物学的粒子の存在が、ストリップ法と呼ばれる方法によってチェックされるか、または顕微鏡によって滴定される。
【0004】
あるいはまた、空気中に含まれるエアロゾル堆積物、生物学的粒子を含む可能性のある堆積物を得ることも可能である。次いで、求められている生物学的粒子の堆積物中の存在が、様々な技術を使用して確立される。特に蛍光X線および顕微鏡法を含む、使用できる多くの技術がある。
【0005】
したがって、既知の技術では、捕集ステップと検出ステップというまったく異なる機器上で実行されるため、時間的にも空間的にもまったく異なる2つのステップで操作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、既存の技術は時間がかかり、さらに、通常はインサイチュー(in situ)で実行されない。
【0007】
本発明の1つの目的は、周囲のガス中にエアロゾルの形態で存在する生物学的粒子を特徴付けるための、既存の解決策よりも効率的な解決策を提案することである。
【0008】
特に、本発明は、生物学的粒子のリアルタイムかつインサイチューでの特徴付けを提供できる解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、エアロゾル形態、すなわち周囲ガス中に浮遊する生物学的粒子を、レーザ誘起プラズマ分光法によって特徴付ける方法であって、
a)特徴付けが求められる生物学的粒子を含む周囲ガスをサンプリングするステップと、
b)真空下のチャンバ内で前記粒子のジェットを発生させるステップと、

c)レーザビームをパルスの形態で放射し、粒子ジェットの伝搬方向に対して横方向に前記真空チャンバ内で前記レーザビームを集束させて、集束体積内に、レーザビームとジェットの最大1つの個々の粒子との間の相互作用によってプラズマを生成するステップであって、前記プラズマは、レーザビームとジェットの前記個々の粒子との間の相互作用に特有である他の粒子を放出する、ステップと、
d)プラズマから放出された前記粒子を捕集するステップと、
e)これらの粒子の分光分析を実行して、前記生物学的粒子を最終的に特徴付けるステップとを含む、方法を提案する。
【0010】
本発明に係る方法は、以下の特徴の少なくとも1つを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
ステップa)とステップb)との間で、以下のサブステップ:
aa)混合チャンバと呼ばれるチャンバ(CHM)に周囲ガスを導入するサブステップと、
ab)エアロゾルの形態で、特徴付けが求められる生物学的粒子の特定の分子に対する少なくとも1つのタイプの受容体を混合チャンバに導入するサブステップであって、前記少なくとも1つのタイプの受容体は、他の方法でマーキングされる、サブステップと、
ac)混合チャンバ内で、特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含むエアロゾルを、特徴付けられる前記生物学的粒子を含むサンプリングされた周囲ガスと混合するサブステップとが実施される。
ステップab)の前に、特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含むエアロゾルを乾燥させる。
サブステップac)の後、ステップb)を実施する前に、形成された混合物を乾燥させる。
マーカーが磁性材料であり、サブステップac)の後、ステップb)を実施する前に、磁性材料を含む粒子のみが任意の適切な磁気手段によって選択される。
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体は、前記マーキングされた受容体の噴霧溶液から得られる。
溶液は、アルコール(例えば、エタノール)をベースとする。
ステップab)は、特徴付けが求められる生物学的粒子の特定の分子に対するいくつかの異なるタイプの受容体をエアロゾルの形態で混合チャンバ(CHM)に導入するステップからなり、各々のタイプの受容体が、マーキングされる。
各々のタイプの受容体は、異なるマーキングがされる。
【0011】
この目的のためにも、本発明は、本発明に係る方法を実施するためのシステムであって、前記システムは、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体のエアロゾルを生成する手段と、
混合チャンバであって、
サンプリングされるガスのための第1の入口と、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体のエアロゾルを生成する前記手段によって生成されたエアロゾルのための第2の入口と、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含む前記エアロゾルを、特徴付けられる前記生物学的粒子を含むサンプリングされた周囲ガスと混合するための出口とを含む、混合チャンバと、
レーザ誘起プラズマ分光法によって前記粒子を特徴付ける装置であって、
チャンバ内で前記粒子のジェットを混合チャンバから来るガスから生成するシステムであって、チャンバ内を真空にするために、チャンバ内に存在するガスを圧送するための手段がチャンバに関連付けられている(接続される)、システムと、
レーザビームをパルスの形態で放射することができるレーザであって、チャンバ内の前記レーザビームを、粒子ジェットの伝播方向に対して横方向に集束させるように構成された光学デバイスがレーザに関連付けられており、レーザビームとジェットの粒子との間の相互作用によって焦点体積内に前記プラズマを生成し、前記プラズマは、レーザビームとジェットの前記粒子との間の相互作用に特有の他の粒子を放出する、レーザと、
プラズマによって放出された粒子を捕集する手段と、粒子の分光分析を行う手段とを含む、少なくとも1つの検出装置とを備える、装置とを備える、システムを提案する。
【0012】
本発明に係るシステムは、以下の特徴の少なくとも1つを、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
混合チャンバは、少なくとも1つのタイプのマーキングされた受容体のエアロゾルを生成する手段と混合チャンバの第2の入口との間、または混合チャンバの出口のレベルのいずれかに配置された少なくとも1つの乾燥器を備える。
混合チャンバは、Goldberg回転ドラムである。
プラズマによって放出された粒子を捕集する手段は、複数のN本の光ファイバ(Nは、厳密に1よりも大きい自然数)を含み、各々の光ファイバの一端は、プラズマによって放出された粒子の捕集を保証するために、焦点体積の周りに配置され、焦点体積の方を向いている。
前記光ファイバは、チャンバの球形の外壁に取り付けられる。
プラズマによって放出された粒子の分光分析を行う手段は、
互いに異なる波長帯域でのフィルタリングを保証することができる、複数のノッチタイプのフィルタと、
各々のノッチフィルタに関連付けられた、例えば電子光電子増倍管タイプの、光検出器とを備える。
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して理解するために、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る生物学的粒子を特徴付ける方法の概略図である。
図2】レーザ誘起プラズマ分光法によって動作する、エアロゾル中の生物学的粒子を特徴付ける装置の断面図を示す。
図3図2に示される装置内で、レーザビームと、生物学的粒子を含む周囲ガスのサンプリングから来る粒子で形成される粒子ジェットとの間の相互作用の領域を概略的に示す。
図4a図2に示される特徴付け装置の一部の外部斜視図であり、その一部には、複数の光ファイバの形態で、前記装置のレーザビームとエアロゾルの粒子との間の相互作用によって生成された粒子を捕集する手段が示されている。
図4b図4aの第1の断面平面の図である。
図4c図4aの第2の断面平面の図である。
図5a図4a~図4cに示される光ファイバ捕集手段を備える検出装置の概略図である。
図5b】これもまた図4a~図4cに示される光ファイバ捕集手段を備える代替の検出装置の概略図である。
図6図2に示される装置の一部の拡大断面図である。
図7】特に図2の装置を含む、本発明に係る生物学的粒子特徴付けシステムの全体概略図である。
図8図7に示されるシステムを形成するために図2に示される装置と共に使用される混合チャンバを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、(O、X、Y、Z)は直交参照フレームを定義する。
【0016】
本発明は、特に、図1に模式的に示すように、レーザ誘起プラズマ分光法により、エアロゾル形態の(すなわち、周囲ガス中に浮遊する)生物学的粒子を特徴付ける方法に関するものである。生物学的粒子とは、細胞、細胞内成分、微生物(例えば、バクテリア、ウイルス)だけでなく、生物学的起源の非生物高分子(例えば、DNA、タンパク質、RNA)を含む粒子を意味する。しかしながら、本発明に係る方法は、典型的には100nmのオーダーの小さいサイズの生物学的粒子に特によく適している。これは、例えば、通常はウイルスのサイズである。
【0017】
この方法は、
a)特徴付けが求められる生物学的粒子を含む周囲ガスをサンプリングするステップ(ステップEa)
b)真空下のチャンバCH内で粒子JABのジェットを発生させるステップ(ステップEb)と、
c)レーザビームFLをパルスの形態で放射し、粒子ジェットJPの伝搬方向に対して横方向に真空チャンバCH内でレーザビームを集束させて、集束体積VF内に、レーザビームFLとジェットの最大1つの個々の粒子Nとの間の相互作用によってプラズマを生成するステップであって、プラズマは、レーザビームとジェットの個々の粒子との間の相互作用に特有である他の粒子を放出する、ステップ(ステップEc)と、
d)プラズマによって放出された粒子を捕集するステップ(ステップEd)と、
e)これらの粒子の分光分析を実行して、生物学的粒子を最終的に特徴付けるステップ(ステップEe)とを含む。
【0018】
ステップc)において、レーザビームFLは、特に、粒子ジェットJPの伝搬方向に対して垂直または略垂直に集束され得る。
【0019】
上記の方法を実施するために、図2に示すように、レーザ誘起プラズマ分光法(LIBS)によって前記粒子を特徴付ける装置Dを使用することができる。
【0020】
装置Dは、このチャンバ内に真空を生成するために、チャンバ内に存在するガスを圧送する手段MPが関連するチャンバCH内に粒子ジェットJPをサンプラーEから来るガスから生成するシステムSGを備える。通常、チャンバCH内の圧力は、生物学的粒子の特徴付けのために、1ミリバール以下のオーダーとすることができる。
【0021】
システムSGは、例えば、空力レンズLA、圧送手段MP’によって真空にされたチャンバCH’、および有利にはダイバータECOを備えることができる。空力レンズLAには、入口ENT’で、サンプラーEからサンプリングされ、場合によっては希釈されたガスが供給され、このガスは、エアロゾルの形態の粒子を含む可能性がある。次いで、空力レンズLAの出口SORT’では、キャリアガス中の粒子のジェットJは、特に真空下にある(通常、生物学的粒子の特徴付けのために、圧力が、10mbarまたはそれ以下のオーダーであり得る)ので、膨張チャンバCH’内で生成される。次いで、キャリアガス中の粒子のジェットJGPは、キャリアガスの大部分を除去するダイバータECOを通過し、ダイバータの後、すなわちチャンバCH内に、粒子のジェットJPのみが残るようにする。一方、空力レンズを使用すると、通常、10-3mbar~1mbarの圧力によって定義される真空にチャンバCH内をすることができる。これにより、最適な動作が保証される。
【0022】
空力レンズLAの代わりに、ノズルを設けることができる(図示せず)。ノズルを使用すると、最適な動作を保証するという同じ目的で、通常、10-3mbar~1mbarの圧力によって定義される真空にチャンバCH内をすることができる。
【0023】
装置Dはまた、パルスの形態でレーザビームFLを放射することができるレーザLを備える。
【0024】
このレーザLに関連して、粒子ジェットJPの伝搬方向DPに対して横方向にビームFLをチャンバCH内で集束させるように光学デバイスDOが配置されている。図示の場合、レーザビームFLは、粒子ジェットJPの伝播方向DPに対して垂直である。
【0025】
これにより、レーザビームFLと粒子のジェットJP内の粒子Nとの間の相互作用によって焦点体積VF内にプラズマを生成することができ、プラズマは、レーザビームFLとジェット内の粒子との間の相互作用に特有の他の粒子を放出する。これらの他の粒子は、イオン、電子、または光子であり得る。
【0026】
レーザビームFLとジェットJPの粒子Nとの間の相互作用が起こるチャンバCH内の真空で動作するという事実は、典型的には数百ナノメートル未満の(特に、200nm以下、150nm以下、さらには100nm以下のサイズの)非常に小さいサイズの生物学的粒子を容易に個別に検出することを可能にする。ウイルスは通常、サイズが約100nmであることを覚えておくべきである。
【0027】
特に、図3を参照することができる。
【0028】
生物学的粒子への適用では、粒子ジェット内の1cm当たり10~10個の粒子の密度が一般的である。粒子ジェット内の粒子密度は、周囲ガス内の粒子密度に依存する。また、粒子の性質とサイズにも依存する。例えば、50nmの金属ナノ粒子でマーキングされた受容体に付着した直径100nmのオーダーの生物学的粒子(例えば、ウイルス粒子)の場合、直径Dが100μmのオーダーの十分にコリメートされた粒子ジェットが得られ、これにより、ジェット内の10~10粒子/cmのオーダーの生物学的粒子の密度を観察できる。
【0029】
焦点体積は、通常、10μmのオーダーであり得る。
【0030】
レーザLは、例えばファイバレーザとすることができる。
【0031】
その(パルスの)繰り返し周波数は、一般的に1kHz~1MHzである。妥当な時間内にサンプリングされた多数のエアロゾル粒子を特徴付けるには、最小繰り返し周波数が重要である。サンプラーによってサンプリングされたガス中の粒子の濃度が比較的低い場合、各々のショットまたはレーザパルスでの焦点体積VF内で粒子に遭遇する確率を高めるために、1MHzオーダーのはるかに高い繰り返しレートが重要な場合がある。
【0032】
焦点体積のレベルで実装される最小強度は、通常、10GW/cmのオーダーである。これは、焦点体積VF内でプラズマを生成するために必要な強度にほぼ対応する。これを達成するために、レーザLの固有の特性を明らかに使用することができるが、代わりに、またはそれに加えて、光学デバイスDOの特性も使用することができる。
【0033】
光学デバイスDOは、特に、光学レンズまたは単に顕微鏡対物レンズの形態であってもよい。
【0034】
通常、倍率10倍の顕微鏡対物レンズDOに関連付けられた約0.2mJのパルスエネルギーで、1065nmで動作するファイバレーザLは、焦点体積VF内で10GW/cmの最小強度を提供することを可能にする。
【0035】
焦点体積VFを超えて、すなわち粒子ジェットJPの粒子と相互作用した後、レーザビームFLは、例えばレンズのセットの形態のいわゆる再コリメーション光学デバイスDORによって有利に再コリメートされる。次いで、再コリメートされたレーザビームFLは、レーザビームFLの出力を測定できる手段(添付の図には図示されない)に送ることができる。これにより、事後的に、レーザLによって理論的に注入された出力が実際にこのレーザLによって提供されたものであることを確認できる。
【0036】
装置Dはまた、プラズマによって放出された粒子を捕集する手段MCと、これらの粒子の分光分析を行う手段MASとを備える少なくとも1つの検出装置DDを備える。
【0037】
プラズマによって放出された粒子を捕集する手段MCは、様々な設計のものとすることができる。
【0038】
しかしながら、本発明の範囲内で、捕集手段として、複数のN本の光ファイバFO、FO、FO、…、FON-1、FO(Nは、厳密に1よりも大きい自然数)を想定することが有利であり、各々の光ファイバFO、FO、FO、…、FON-1、FOの一端E、E、E、…、EN-1、Eは、焦点体積VFの周りにこの目的のために配置され、それの方を向いている。
【0039】
この可能性は、図4(a)~図4(c)の装置Dの異なる断面図に示されている。
【0040】
多数の光ファイバを提供する利点は、特に、プラズマによって放出された粒子を捕集するための単一の光ファイバの使用に対して、捕集される粒子の数を倍増できることである。これにより、検出装置DDの感度を高めることができる。光ファイバの数が多いほど、感度が高くなることは理解できる。
【0041】
有利なことに、外壁PEXTが球形であるチャンバCHを設けることもできる。この場合、チャンバCHの壁に取り付けられた光ファイバFOは、プラズマが生成される焦点体積VFの周りの4πステラジアンの最大立体角を最もよくカバーするように、この球体上に配置することができる。この構成により、所与の数Nの捕集光ファイバについて、他の構成と比較して検出装置DDの感度を高めることができる。各々の光ファイバFO、FO、FO、…、FON-1、FOの端部は有利には、焦点体積VFの中心から数ミリメートルの距離に配置することができ、その最も適切な調整値は、特に使用される光ファイバのコア径に依存する。
【0042】
非限定的な一例として、可能な一実装形態の一例を以下に示す。N=158本の光ファイバが、チャンバCHの球状外壁PEXTに取り付けられている。各々の光ファイバのコア直径は、1mmである。このような配置により、理論的には、異なる光ファイバのそれぞれの端部E、E、E、…、EN-1、Eが、焦点体積VFの中心から4mm~6mmに配置されている場合、プラズマによって放出されるすべての粒子の44%の捕集が可能になる。コア直径が600ミクロンであり、その捕集端が焦点体積VFの中心から4mmに配置された単一の光ファイバを備える捕集手段を基準にして、捕集されるプラズマによって放出される粒子の量は、理論的には317倍となる。
【0043】
もちろん、代わりに単一の光ファイバを使用して捕集を実行することも可能であるが、この場合、検出の感度が低下する。
【0044】
分光分析手段MAS、MAS’に対して、様々な選択肢が利用可能である。
【0045】
したがって、図5(a)に示される第1の選択肢によれば、所与の波長帯域でのフィルタリングを保証することができる少なくとも1つのノッチ型フィルタFCBと、少なくとも1つの光検出器PDT(例えば、電子光電子増倍管タイプのもの)とを備えた分光分析手段MASを想定することができる。特に、Hamamatsu社によって提案されたPMT H12775(https://www.hamamatsu.com/eu/en/product/type/H12775/index.html)を使用できる。
【0046】
したがって、ノッチフィルタは、特定のスペクトル領域を選択し、このスペクトル領域内の光(プラズマによって放出される粒子の中には光子がある)の強度は、光検出器PDTによって決定される。
【0047】
例えば、4つのスペクトル帯域A、B、C、およびDを考慮すると、考慮される帯域の各々における信号の強度(すなわち、考慮されるスペクトル帯域に応じて、それぞれI(I=A、B、C、またはD))が得られる。この目的のために、別個の帯域での選択を保証する複数のノッチフィルタFCBと、フィルタFCBと同数の(特に、電子光電子増倍管タイプの)光検出器PDTとを設ける必要がある。
【0048】
また、信号の全体的な強度I(すなわち、帯域A、B、C、およびDのすべてに対して、長い蓄積時間にわたって取得された強度)を測定することもできる。
【0049】
あるいはまた、考慮される各々のスペクトル帯域A、B、C、およびDに対して、(強度測定値とは無関係に)考慮されるスペクトル帯域に応じて、イベント数NEI(I=A、B、C、またはD)が計数され得る。
【0050】
これらの異なるデータ、NEI、I、およびIは、分析されている粒子ジェット内の粒子の異なる物理量に関連している。
【0051】
したがって、イベントNEIの数は、検出される粒子ジェット内の粒子の数に関連付けることができる。このようにして、サンプリングされた周囲ガス中の粒子の数、すなわち、サンプリングされたガス中の粒子の数濃度(すなわち体積)を決定することができる。
【0052】
さらに、Iは、分析された個々の粒子中に存在する所与の化学元素の原子数、すなわち、分析された個々の粒子中の対応する化学元素の割合に比例する。したがって、異なるスペクトル帯域A、B、C、およびDで測定された強度を比較すると、分析された個々の粒子中に存在する様々な化学元素(上述の4つのスペクトル帯域に強度がある場合は4つ)のそれぞれの割合を取得できることが明らかである。
【0053】
また、全体的な強度Iは、分析される個々の粒子に存在する原子の数に比例する。このようにして、サンプラーEによってサンプリングされたガス中の粒子の質量濃度を決定することができる。
【0054】
したがって、サンプリングされたガス中にエアロゾルの形態で存在する生物学的粒子に関する一定量の情報を取得することが可能である。
【0055】
実用的な観点から、これは、検出しようとする生物学的粒子のタイプの較正後に実行できる。この較正は、これらのデータのアセンブリを現場で決定できるように、最初に実験室で実行する必要がある。
【0056】
さらに、電子光電子増倍管タイプの光検出器の応答時間は非常に短く、典型的には数ナノ秒のオーダーであることに留意すべきである。したがって、このタイプの検出は、本発明の場合のように、繰り返し周波数が高いパルスレーザの使用に特に適している。光検出器PDTの応答/蓄積時間がレーザの1サイクル(サイクル=レーザの2つのパルス間の時間)より長くなることを回避するために、特別な予防措置を講じる必要はない。
【0057】
図5(b)に示す第2の選択肢によれば、インテンシファイア電荷結合素子ICCDタイプのカメラを備えた光学スペクトログラフSOを備えた分光分析手段MAS’を想定することができる。
【0058】
この第2の選択肢では、非常に広い波長範囲にわたる完全なスペクトル分析が可能になる。
【0059】
また、実験室での較正後に、分析される粒子ジェットの個々の粒子中に存在する化学元素を定量化することもできる。
【0060】
この選択肢は最終的に、第1の選択肢で取得されたものと同じ情報、すなわちエアロゾル粒子の質量濃度、数濃度、およびサイズへのアクセスを可能にする。
【0061】
実際には、強度Iは、カメラICCD上で「蓄積」と呼ばれるモードを選択することによって取得することができる。
【0062】
一方、IとNIE(上記の例では、I=A、B、C、またはD)を取得するには、カメラICCDの特定の動作モードを使用して、このカメラの遅い取得速度を補償する必要がある。このタイプのカメラの応答時間は、100ミリ秒のオーダーであり、高い繰り返し周波数で動作するパルスレーザの使用とは必ずしも互換性がない。また、カメラICCDの蓄積時間は、レーザパルスとカメラICCDによる取得の開始との間の遅延と、ゲート幅(すなわち、カメラICCDが信号を蓄積する時間)と、カメラICCDの読み出し時間(すなわち、カメラに関連付けられた電子機器がカメラICCDのピクセルに含まれる情報を読み取る時間)を考慮した上で、2つのレーザパルス間の時間よりも短く維持する必要がある。
【0063】
これらすべての測定を実行するために、レーザ誘起プラズマ分光法による粒子の特徴付け装置Dが、一度に焦点体積VF内の個々の粒子1つのみを分析することを保証されなければならない。統計的な観点から、装置Dの焦点体積VFは、粒子が10回のレーザショットで最大1回検出された場合にのみ、粒子ジェットからの個々の粒子を示すことが示され得る(図3を参照)。生物学的粒子(例えば、ウイルスまたはバクテリア)の検出の場合、この条件は、そのような粒子に期待される濃度レベルにより、実際には事実上満たされる。実際、通常、空気中のウイルス濃度は非常に低い(例えば、100ウイルス/cm未満である)可能性がある。しかしながら、そのような濃度は、多くの場合、人に感染するのに十分である。
【0064】
最後に、エクサイチュー分析のために粒子を捕集し、本発明に係る装置 Dでリアルタイムに取得された結果を様々な技術で確認または完了することが興味深い可能性があることに留意すべきである。
【0065】
このため、特に図6に見られるように、装置Dが基板を含むことができる基板ホルダーMET(堆積物はその後、例えば蛍光X線を生成するために使用できる)と(透過型電子顕微鏡を実行するために)その両側のグリッドを提供することは有用である。基板ホルダーは、グリッドが比較的短時間粒子ジェットにさらされ得るように、その主軸の周りを回転できるように取り付けられることが有利である。実際、透過型電子顕微鏡検査を実行する目的で、ジェット内の粒子の実際の凝集状態を調べることができる(基板上で実行されるように、これらのグリッド上に粒子の層が堆積した場合、これは考慮できなかった)。
【0066】
前述のように、使用される測定技術により、検出が求められる生物学的粒子に関する一定量の情報を提供することができる。
【0067】
しかしながら、上記の測定技術は、必ずしもすべてのタイプの生物学的粒子の明確な検出を可能にするわけではない。例えば、炭素、水素、窒素、酸素にそれぞれ対応する異なるスペクトル帯域A、B、C、Dを使用し、各々のスペクトル帯域の強度を測定することで、これら4種類の化学元素の各々のそれぞれの割合が、実際にはまったく異なる生物学的粒子を画定することを可能にする。場合によっては、非常に特異なスペクトル帯域を追加して、対象の生物学的粒子のみに見られる非常に特異な化学元素を検出することができるが、これではすべての生物学的粒子を明確に識別することはできない。
【0068】
したがって、任意の生物学的粒子に対してそのような可能性を提供することも本発明の意図である。
【0069】
この目的のために、本発明に係る方法は、ステップa)とステップb)との間で、以下のサブステップ:
aa)混合チャンバと呼ばれるチャンバCHMに周囲ガスを導入するサブステップと、
ab)エアロゾルの形態で、特徴付けが求められる生物学的粒子の特定の分子に対する少なくとも1つのタイプの受容体を混合チャンバに導入するサブステップであって、前記少なくとも1つのタイプの受容体は、他の方法でマーキングされる、サブステップと、
ac)混合チャンバ内で、特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含むエアロゾルを、特徴付けられる前記生物学的粒子を含むサンプリングされた周囲ガスと混合するサブステップとを提供する。
【0070】
ステップaa)、ab)およびac)を実施するのに適したシステムSが図7に示されており、前の図に示されているレーザ誘起プラズマ分光法によって前記粒子を特徴付けるための装置Dに対して適所にある。また、混合チャンバCHMと、様々な化学成分をそれに供給できるようにする様々な要素とのより詳細な図を図8に示す。
【0071】
システムSは、特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体のエアロゾルを生成するための手段Mを備える。
【0072】
システムSは、
サンプリングされるガスのための第1の入口E1と、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体のエアロゾルを生成する前記手段Mによって生成されたエアロゾルのための第2の入口E2と、
特徴付けが求められる生物学的粒子に特異的な分子でマーキングされた前記少なくとも1つのタイプの受容体を含むエアロゾルを、特徴付けられる前記生物学的粒子を含むサンプリングされた周囲ガスと混合するための出口OUTとを含む混合チャンバCHMも備える。
【0073】
混合チャンバCHMの重要性は、図8からよりよく理解できる。
【0074】
この図8では、入口E1の左側に、特徴付けが求められる生物学的粒子PBと他のすべての粒子APと呼ばれる2種類の粒子を含む周囲のガスが見られる。その後、これらの粒子はすべて、入口E1を通って混合チャンバCHMに入る。混合チャンバの入口E2の前において、マーキングされた受容体の溶液SOLが、マーキングされた受容体を含む液滴G(エアロゾル)の形態で噴霧器PULによって噴霧される。(任意選択の)乾燥器SECH1を通過することにより、マーキングされた受容体RMを乾燥させる。次いで、マーキングされた受容体RMは、入口E2を通って混合チャンバに入る。次いで、混合チャンバ内で、マーキングされた受容体は、特徴付けが求められる生物学的粒子の特定の分子に結合して、マーキングされた生物学的粒子PBMを形成する。混合チャンバの目的はもちろん、マーキングされた生物学的粒子の最大値を得ることである。しかしながら、図8に見られるように、混合チャンバの出口OUTのレベルで、生物学的粒子PBならびに混合チャンバCHMの入口E1でサンプリングされた周囲のガス中に存在する前記他の粒子APに結合することができなかったマーキングされた受容体RMがある。
【0075】
混合チャンバCHMは、少なくとも1つの乾燥器SECH1、SECH2を備えることができる。
【0076】
乾燥器SECH1は、前記少なくとも1つのタイプの受容体のエアロゾルを生成する手段Mと混合チャンバCHMの第2の入口DEとの間に配置することができる。これにより、ステップab)を実施する前に、前記少なくとも1つのタイプのマーキングされた受容体を含むエアロゾルを乾燥させることができる。この乾燥ステップは、求められる生物学的粒子および/またはその受容体の問題の特定の分子が乾燥媒体中で結合できる場合に重要であり得る。混合チャンバCHMの後に配置された装置Dを使用するには、乾燥が必要である。
【0077】
あるいはまた、乾燥器SECH2は、混合チャンバCHMの出口OUTのレベルに配置することができ、したがって、乾燥器SECH1は存在しない。これにより、ステップb)が実施される前のサブステップac)の後に、形成された混合物を乾燥させることができる。この乾燥ステップは、求められる生物学的粒子の問題の特定の分子および/またはその受容体が水性媒体中でのみ結合できる場合に想定することができる。乾燥は、結合が実行された後、混合チャンバの出口でのみ実行される。
【0078】
もちろん、乾燥器SECH1を実装しても、乾燥器SECH2を動作させることもできる。
【0079】
特定の一実施形態では、混合チャンバCHMは、Goldberg回転ドラムとすることができる。このようなドラムは、時間の経過とともにエアロゾルの安定性を高めることを可能にする(したがって、壁部へのエアロゾルの堆積は大幅に防止される)。
【0080】
有利なことに、受容体のマーキングは磁性材料(例えば、コバルトを含むナノ粒子)を用いて行うことができる。この場合、サブステップac)の後、ステップb)を実施する前に、例えば、混合チャンバCHMの出口OUTに配置された、任意の適切な磁性手段によって、この磁性材料を含む粒子のみを選択することができる。換言すれば、磁性材料を含む粒子のみがレーザ誘起プラズマ分光法による特徴付け装置Dに入ることができ、残りは混合チャンバCHMに残る。したがって、図8のスキームに従って、周囲のガスからサンプリングされた前記他の粒子APが、レーザ誘起プラズマ分光法によって前記粒子を特徴付ける装置Dに入らないことを保証することができる。
【0081】
図8に示すように、溶液SOLからマーキングされた受容体エアロゾルMRを生成することは、1つの選択肢にすぎない。
【0082】
しかしながら、この選択肢を使用する場合、溶液SOLは水ベース(水溶液)にすることができる。しかしながら、受容体の性質が許す場合、溶液SOLは、アルコールベース(アルコール溶液)(例えば、エタノール)であってもよい。アルコールは水よりも揮発性が高いため、これによって乾燥しやすくなる。最終的に、これにより、任意の乾燥器SECH1および/またはSECH2をシステムS内で分配することも可能になる。
【0083】
有利なことに、ステップab)は、混合チャンバCHMに、エアロゾルの形態で、特徴付けが求められる異なるタイプの生物学的粒子に特異的な分子に対するいくつかの異なるタイプの受容体を導入するステップであって、各々のタイプの受容体がマーキングされる、ステップからなることができる。したがって、第1のタイプの生物学的分子(例えば、SARS-CoV 1)に結合できる第1のタイプの受容体を有することが可能であり、第2のタイプの生物学的分子(例えば、SARS-CoV 2)に結合できる第2のタイプの受容体を有することが可能である。
【0084】
また、特徴付けを改善するために、受容体の各々のタイプに対して異なるマーキングを提供することができる。したがって、この例を使用すると、特定の分子SARS-CoV 1の受容体のためのマーキングは、銀ナノ粒子とすることができ、特定の分子SARS-CoV 2の受容体のためのマーキングは、金ナノ粒子とすることができる。
【0085】
受容体/特定の分子の対は、多様であり得る。特に、それは、抗体/抗原、アビジン/ビオチン、レクチン/多糖、またはDNA-PNA(デオキシリボ核酸-ペプチド核酸)対とすることができる。
【0086】
前述のように、マーキングにより、任意のタイプの生物学的粒子を一意に特徴付けることができる(例えば、金ナノ粒子でマーキングされた受容体に結合したSARS-CoV 2を一意に特徴付けることができる)。
【0087】
焦点体積VFのレベルで、レーザショットによって実際に粒子が検出されない場合がある。実際には、これは、10回のレーザショットのうち少なくとも9回に関係するため、最も頻繁に発生するケースである。
【0088】
また、場合によっては、サンプリングされたガス内に存在する生物学的ではない粒子APが検出されることもある。これは、本発明の範囲とは関係がない。
【0089】
しかしながら、生物学的粒子が焦点容積VF内に存在する場合、例えば、炭素(247.86nm)、水素、窒素(746~776nm)、または酸素(77.2~77.5nm)の化学元素のいずれかの特徴的な波長の検出を実行することによって検出できる。しかしながら、これらの化学元素はすべての有機物に存在するため、多くの場合、これらの化学元素の各々のそれぞれの組成をスペクトル帯域検出で分析しても、一義的な情報を取得することができない。これが、SARS-CoV 2に存在するリン(178nm、214nm、または254nmで識別可能)などのより希少な化学元素の検出が追加され得る理由である。
【0090】
しかしながら、これにより、すべての場合に一義的な検出を実行できるわけではない。
【0091】
したがって、マーキングの存在は問題を改善する。なぜなら、適切に選択された場合(例えば、金ナノ粒子)、それは波長で簡単に識別可能な信号LIBSを提供し、さもなければ強力である(金ナノ粒子の場合は、268nmまたは275nm)。しかしながら、図8の説明で示されているように、(混合チャンバの存在にもかかわらず)検出が求められる生物学的粒子PBに結合していないマーキングされた受容体RMは、LIBSによって動作する装置Dに入る可能性がある。
【0092】
したがって、生物学的粒子の明確な検出を保証するために、マーキングの特徴的な信号を検出すると同時に、問題の生物学的粒子の特徴的な信号を検出する必要がある。SARS-CoV 2を例にとると、その存在は、化学元素リンの波長特性と金ナノ粒子の波長特性の両方で検出された信号の強度のピークを検出することによって、疑いの余地なく保証することができ、精緻化により、金ナノ粒子はSARS-CoV2の特定の分子(例えば、抗原)の受容体(例えば、抗体)をマーキングすることが思い出される。
【0093】
最後に、本発明が生物学的粒子の明確な検出を可能にする限り、単位時間当たりのこの生物学的粒子の検出数を計数することも可能であることに留意すべきである。次に、以前の実験室の較正(所与の生物学的粒子の単位時間当たりの検出数の計数が、前記生物学的粒子の既知の濃度について行われる)により、使用中に、この計数値に問題の生物学的粒子(例えば、ウイルス)の数濃度(単位体積当たりの数)を関連付けることができ、したがって、SARS-CoV 2を例にとると、その濃度、およびその結果として人が感染する確率を決定することができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6
図7
図8
【国際調査報告】