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特表2023-532367リチウムイオン電池正極活性材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池正極活性材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230720BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230720BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230720BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230720BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500307
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2021103025
(87)【国際公開番号】W WO2022007663
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010644842.6
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520062661
【氏名又は名称】巴斯夫杉杉▲電▼池材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】唐 波
(72)【発明者】
【氏名】寧 漂
(72)【発明者】
【氏名】韓 圭▲シ▼
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA07
4G048AB01
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA15
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【要約】
【課題】リチウムイオン電池正極活性材料を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池正極活性材料は、リチウムイオン電池正極活性材料マトリックスと硫黄化合物とを含み、硫黄化合物のうち、S元素の質量はリチウムイオン電池正極活性材料の総質量の0.06~0.40%を占め、硫黄化合物は、硫酸塩の形式でリチウムイオン電池正極活性材料に分布する。その製造方法としては、正極活性材料マトリックスと硫黄化合物と(または正極活性材料前駆体、リチウムソース及び硫黄化合物)を混合して焼成し、リチウムイオン正極活性材料を取得する。リチウム電池の充放電プロセスで、正極活性材料における硫酸塩は、電解液と反応してアルキルスルホネート構造を形成し、この官能基構造は、正極活性材料及び電解液のインターフェースの安定性を増強し、電解液から正極材料表面への破壊を阻止し、正極活性材料の保護フィルムとして、正極材料のサイクル性能を向上させ、リチウム電池のサイクル寿命を延ばす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池正極活性材料マトリックスと硫黄化合物とを含み、硫黄化合物のうち、S元素の質量はリチウムイオン電池正極活性材料の総質量の0.06~0.40%を占め、前記硫黄化合物は、硫酸塩の形式でリチウムイオン電池正極活性材料に分布する、
ことを特徴とするリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項2】
硫黄化合物のうち、S元素の質量は、リチウムイオン電池正極活性材料の総質量の0.06~0.13%を占める、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項3】
前記硫黄化合物は、硫酸リチウム、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムのうちの1種類または複数種類を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項4】
前記硫黄化合物は、主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項5】
前記正極活性材料マトリックスの表面には水酸化コバルトも被覆され、前記水酸化コバルトの被覆量は、コバルト元素で計算され、被覆コバルト元素の質量は、リチウムイオン電池正極活性材料の総質量の0.1~1.5%を占める、
ことを特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項6】
前記硫黄化合物は、主に正極活性材料マトリックスにトッピングされる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項7】
前記正極活性材料マトリックスの化学式は、LiNi(1-y)であり、MはCo、Mn、Al、Mg、Ti、Zrのうちの1種類または複数種類であり、0.95≦x≦1.05、0.50≦y≦1である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池正極活性材料。
【請求項8】
正極活性材料マトリックスと硫黄化合物とを化学量論で混合して焼成し、リチウムイオン正極活性材料を取得するステップを含み、前記焼成は温度が300~750℃、焼成の時間が3~15時間である、
ことを特徴とする請求項1~5、7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法。
【請求項9】
混合プロセス中には水酸化コバルトも添加される
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
正極活性材料前駆体とリチウムソースと硫黄化合物とを化学量論で混合して焼成し、リチウムイオン正極活性材料を取得するステップを含み、前記焼成は温度が650~950℃、焼成の時間が6~18時間である、
ことを特徴とする請求項1~3、6~7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池正極材料分野に属し、特にリチウムイオン電池正極活性材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属化合物、特にニッケル系リチウム金属層状構造の酸化物は、リチウムイオン電池において一般的な正極活性材料である。リチウム電池の充放電プロセスにおいて、正極活性材料は、電解液と様々な副反応が発生し、正極材料の構造破壊を速くする。正極材料の構造安定性を向上させ、材料と電解液との副反応を緩和するために、金属酸化物、金属フッ化物、金属リン酸塩がトッピングされ、または被覆されることは、一般的な改質手段であり、主な目的として、層状材料の構造安定性を増強し、または活性材料と電解液との直接的接触を阻止することによって、副反応の発生を回避する。
【0003】
上記技術手段は、ある程度で、正極材料の性能を向上することができるが、相変わらずリチウム電池のより高い性能要求を満足することができない。上記言及された物質種類のほかに、リチウム金属化合物に硫酸塩を導入して正極材料の性能向上に所定の効果を果たす。専利US7645542B2は、硫酸イオンを含む正極活性材料を公開し、硫酸イオンと残りのリチウム(炭酸リチウム及び水酸化リチウム)との反応により硫酸リチウムを形成し、残りのリチウムの消耗により、活性材料の容量を向上させるが、この技術は硫酸イオンの含有量に対する要求が高く、即ち0.4%以上であり、そうでなければ、硫酸イオンは、残りのリチウムの消耗に十分ではなく、初期容量を向上させることができなく、同時に、添加された硫酸塩は硫酸リチウムではなく、そうでなければ、残りのリチウムと反応して性能向上の目的に達することができない。専利CN109742347Aは、複合被覆層を有する高ニッケル正極材料を公開し、リチウム金属層状構造及びリン酸リチウムまたは硫酸リチウムは複合被覆層であり、硫酸リチウム被覆物は、速いイオン伝導体として倍率性能を向上させるが、それは液相にリン酸塩または硫酸塩が沈殿される必要があり、且つ有機溶剤で洗浄する必要があり、工程が複雑、製造コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする技術課題は、上記背景技術で言及された不足及び欠陥を克服し、リチウムイオン電池正極活性材料及びその製造方法を提供する。
【0005】
上記技術課題を解決するために、本発明の提出する技術的解決手段は下記である。
【0006】
リチウムイオン電池正極活性材であって、正極活性材料マトリックスと硫黄化合物とを含み、硫黄化合物のうち、S元素の質量はリチウムイオン電池正極活性材料の総質量の0.06~0.40%を占め、前記硫黄化合物は硫酸塩の形式で存在する。
【0007】
S元素は、正極活性材料において硫酸塩の形式で存在し、硫酸イオンの電子親和力が高く、活性材料の遷移金属と結合可能で、表面及びインターフェースを安定させる。リチウム電池の充放電プロセスで、正極活性材料における硫酸塩は、電解液と反応してアルキルスルホネート構造を形成し、この官能基構造は、正極活性材料及び電解液のインターフェースの安定性を増強し、電解液から正極材料表面への破壊を阻止し、正極活性材料の保護フィルムとして、リチウム電池のサイクル寿命を延ばすことができる。S元素の含有量が低過ぎると、十分なアルキルスルホネート官能基を形成し難く、活性材料及び電解液のインターフェース安定性を増強する役割を果たすことがなく、S元素の含有量が高すぎると、形成された保護フィルムは厚くなり、リチウムイオンの転送を阻害し、電池容量を低減させる。
【0008】
本発明の出願者は、探索的研究と繰り返す試験検証により、S元素の含有量が0.06%に達する場合に、十分なアルキルスルホネート官能基を形成することができ、活性材料と電解液のインターフェースの安定性を顕著に向上させることができ、同時に、S含有量が0.13%を超えない場合に、形成された保護フィルムの厚さは、リチウムイオンの転送への阻害が小さく、電池容量の低下が顕著ではない、と発見した。しかし、S元素の含有量を0.13%を超える以降、S含有量の増加に伴って、形成されたアルキルスルホネート保護層の厚さが増加するが、サイクル性能に対する向上が顕著ではなく、同時にリチウムイオンのデインターカレーションが酷く阻止され、容量低下が速くなるようにする。したがって、良好なサイクル性能及び容量を兼ねるために、硫黄化合物のうち、リチウムイオン電池正極活性材料の総質量に占めるS元素の質量比例は0.06~0.13%が好ましい。
【0009】
上記リチウムイオン電池正極活性材料について、好ましくは、前記硫黄化合物は、硫酸リチウム、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムのうちの1種類または複数種類を含む。異なるタイプの硫酸塩からリチウム金属化合物への影響は異なり、硫酸イオンの導入はいずれも正極活性材料の電解液での安定を増強するが、別に導入された金属は、リチウム金属化合物に対して異なる付加効果を果たす。例えば、硫酸コバルト、硫酸マンガンの添加、Co及びMnの導入は、リチウム金属化合物の構造安定性を増強し、硫酸アルミニウムの添加、Alの導入は、正極活性材料の構造安定性及び熱安定性を増強するが、容量を低下し、硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムを添加すると、NaはLiサイトを置き換え、ラティスボリュームを拡大し、リチウムイオンの転送抵抗を低減させる可能性があるが、容量が低下する。硫酸リチウムの添加は、サイクル性能、初回効率及び放電容量を大幅に向上させることができ、硫酸イオンの存在によりサイクル性能を向上させることができ、Liの導入により格子内の欠落したLiを補充することができ、リチウム補充剤の役割を果たすので、初回効率及び放電容量も向上する。
【0010】
上記リチウムイオン電池正極活性材料について、好ましくは、前記硫黄化合物は主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される。
【0011】
上記リチウムイオン電池正極活性材料について、好ましくは、前記正極活性材料マトリックスの表面には水酸化コバルトも被覆され、前記水酸化コバルトの被覆量は、コバルト元素で計算され、被覆コバルト元素の質量は、リチウムイオン電池正極活性材料の総質量の0.1~1.5%を占める。被覆される水酸化コバルトは残りのリチウムと反応してコバルト酸リチウム構造を形成し、表面構造安定性を増強し、効率及び倍率性能を向上させることができ、表面に被覆される硫酸塩物質との補完効果を果たし、活性材料の電気化学的性能を共増強する。
【0012】
上記リチウムイオン電池正極活性材料について、好ましくは、前記硫黄化合物は主に正極活性材料マトリックスにトッピングされる。
【0013】
上記リチウムイオン電池正極活性材料について、好ましくは、前記正極活性材料マトリックスの化学式は、LiNi(1-y)であり、MはCo、Mn、Al、Mg、Ti、Zrのうちの1種類または複数種類であり、0.95≦x≦1.05、0.50≦y≦1である。
【0014】
総の発明思想として、本発明は、正極活性材料マトリックスと硫黄化合物とを化学量論比で混合して焼成し、リチウムイオン正極活性材料を取得するステップを含み、前記焼成の温度が300~750℃、焼成の時間が3~15時間である上記リチウムイオン電池正極活性材料の製造方法をさらに提供する。
【0015】
硫酸塩は、被覆の形式で導入されてもよく、即ち硫酸塩と正極活性材料マトリックスとが共焼結し、このような場合に硫酸塩は活性材料のインターフェース及び表面に均一に分布し、活性材料の電解液での化学的安定性を向上させ、電気化学反応プロセス中にサイクル性能のほかに熱安定性を向上することもできる。
【0016】
上記製造方法について、好ましくは、前記混合プロセス中に水酸化コバルトも添加される。
【0017】
総の発明思想として、本発明は、正極活性材料前駆体とリチウムソースと硫黄化合物とを化学量論比で混合して焼成し、リチウムイオン正極活性材料を取得するステップを含み、前記焼成の温度が650~950℃、焼成の時間が6~18時間である上記リチウムイオン電池正極活性材料の製造方法をさらに提供する。
【0018】
上記製造方法について、好ましくは、前記リチウムソースは、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウムのうちの1種類または複数の種類である。リチウムソースが硫酸リチウムである場合に、当該リチウムソースは硫酸イオンも提供する。
【0019】
硫酸はトッピングの形式で導入されてもよく、即ち正極活性材料前駆体と、リチウム化合物、硫酸塩とが共焼結して、硫酸塩を含むリチウム金属化合物を形成し、硫酸塩が遷移金属と酸素との間の不完全な結合を補充し、表面エネルギーを安定させる役割を果たすことができ、硫酸塩にトッピングされる活性材料の一次粒子の形態及び大きさが変化し、電気化学反応プロセス中にサイクル性能のほかに、容量及び効率を向上させることもでき、同時に正極活性材料前駆体のそのものにもSが含まれ、トッピングの効果も具備してもよい。
【0020】
従来技術に比べて、本発明の利点は、下記である。
【0021】
(1)本発明のリチウムイオン電池正極活性材料について、硫酸塩はリチウム金属化合物マトリックスに分布し、リチウム電池充放電プロセスにおいて、正極活性材料における硫酸塩は、電解液と反応してアルキルスルホネート構造を形成し、この官能基構造によって正極活性材料と電解液のインターフェース安定性を増強し、電解液の正極材料表面への破壊を阻止し、正極活性材料の保護フィルムとして、正極材料のサイクル性能を向上させ、リチウム電池のサイクル寿命を延ばす。
【0022】
(2)本発明のリチウムイオン電池正極活性材料について、異なるタイプの硫黄化合物を導入することにより、例えば容量、倍率性能、安全性などの異なるタイプの要求を満たすことができる。本発明で提供される硫酸塩物質は、異なるタイプのリチウム金属化合物サイクル性能の向上に対してユニバーサルを有し、同時に異なる金属の硫酸塩を選択してさまざまなパフォーマンス要求を満たすことができる。
【0023】
(3)本発明は、正極活性材料マトリックスの表面に水酸化コバルト及び硫酸塩を同時に被覆し、被覆された水酸化コバルトが残りのリチウムと反応してリチウムコバルト酸素構造を形成し、表面構造安定性を増強し、効率及び倍率性能を向上させ、サイクル性能を向上させる硫酸塩物質との補完効果を果たし、活性材料の電気化学的性能を共増強する。
【0024】
(4)本発明でリチウム電池正極活性材料を製造する方法ステップは簡単で操作しやすく、操作が便利であり、硫酸塩として使用可能なタイプが多く、コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例3で製造される正極活性材料のSEM画像である。
図2】比較例1で採用されるリチウム金属化合物のSEM画像である。
図3】比較例2で製造される正極活性材料のSEM画像である。
図4】各実施例及び比較例の正極活性材料からなる電池容量比較図である。
図5】各実施例及び比較例の正極活性材料からなる電池の25℃におけるサイクル容量保持率の比較図である。
図6】各実施例及び比較例の正極活性材料からなる電池の45℃におけるサイクル容量保持率の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を理解しやすくするために、以下に明細書の図面及び好ましい実施例を参照しながら本発明をより全面的で詳しく説明するが、本発明の保護範囲は下記の具体的な実施例に限定されない。
【0027】
別の定義がない限り、以下に使用される全ての専門用語は当業者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される専門用語は具体的な実施例を説明する目的だけであり、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【0028】
特に説明しない限り、本発明に使用される様々な原材料、試薬、機器及び装置等はいずれも市場で購入するか又は従来方法で製造されることができる。
【0029】
実施例1:
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.01Ni0.88Co0.10Al0.02及びLiSOを含み、LiSOのうち、S含有量は、正極活性材料の総質量の0.09%を占め、LiSOは主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される。
【0030】
本実施例のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物と硫酸リチウム粉末とを計量比で計量し、ミクスチャーのうち、S含有量が0.09%となるように、高速機械攪拌装置により均一に混合するステップと、
(2)ステップ(1)で取得された混合物を、酸素雰囲気で6時間焼成するステップであって、焼成温度が650℃であり、焼成後の材料がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0031】
本実施例で得られた正極活性材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定した結果は、図4図6に示す。25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は208.5mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は95.3%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.9%である。
【0032】
実施例2:
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.03Ni0.88Co0.10Al0.02及びAl(SOを含み、Al(SOのうち、S含有量は、正極活性材料の総質量の0.12%を占め、Al(SOは主に正極活性材料マトリックスにトッピングされる。
【0033】
本実施例のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法は、
(1)ニッケルコバルト水酸化アルミニウム前駆体、水酸化リチウム、硫酸アルミニウムを計量比で均一に混合するステップであって、水酸化リチウム的添加量によって活性材料のうちモル比Li/Me(Me=Ni+Co+Al)=1.03となり、硫酸アルミニウムの添加量によってSがリチウム電池正極活性材料総質量の0.12%を占めるステップと、
(2)ステップ(1)で取得されたミクスチャーを酸素雰囲気で、750℃の条件で15時間焼成するステップであって、焼成製品がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0034】
得られた硫酸アルミニウムがトッピングされた正極活性材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定し、即ち25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は207.7mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は94.9%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.4%である。
【0035】
実施例3:
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.01Ni0.88Co0.10Al0.02及びCoSOを含み、CoSOのうち、S含有量は正極活性材料の総質量の0.13%を占め、CoSOは主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される。
【0036】
本実施例のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物と硫酸コバルト粉末とを混合し、高速機械攪拌装置により均一に混合させるステップであって、ミクスチャーのうち、S含有量が0.13%であり、添加されたCo含有量が0.24%であるステップと、
(2)ステップ(1)の混合物を酸素雰囲気で、650℃の高温条件で6時間焼成するステップであって、焼成後の材料がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0037】
走査型電子顕微鏡による観察から、図1に示すように、硫酸コバルトを焼結した正極材料の表面に被覆される一次粒子が凸凹して平らかでないが、硫酸コバルト粉末が高温で焼成後に反応し熔融してリチウム金属化合物内部にも入ることが表明される。
【0038】
本実施例で得られた正極活性材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定した結果は、図4図6に示す。25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は207.5mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は95.2%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.7%である。
【0039】
実施例4:
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.01Ni0.88Co0.10Al0.02及びLiSO、Co(OH)を含み、LiSOのうち、S含有量は正極活性材料の総質量の0.09%を占め、被覆コバルトの含有量は0.24%であり、LiSO及びCo(OH)は正極活性材料マトリックスの表面に共被覆される。
【0040】
本実施例のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物、硫酸リチウム、水酸化コバルト粉末を所定の質量比で混合し、高速機械攪拌装置により均一に混合させるステップであって、添加された硫酸リチウムによってS含有量が正極活性材料の総質量の0.09%を占め、添加された水酸化コバルトのCo含有量が実施例3における硫酸コバルト添加のCo含有量と同じでともに0.24%であるステップと、
(2)ステップ(1)の混合物を酸素雰囲気で、650℃の高温条件で6時間焼成するステップであって、焼成後の材料がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0041】
得られた硫酸リチウム、水酸化コバルトが共被覆される正極材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定した結果は、図4図6に示す。25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は209.3mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は96.1%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は93.2%である。
【0042】
実施例5
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.01Ni0.88Co0.10Al0.02及びCoSOを含み、CoSOのうち、S含有量は正極活性材料の総質量の0.06%を占め、CoSOは主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される。
【0043】
本実施例のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物と、硫酸コバルト粉末とを混合し、高速機械攪拌装置により均一に混合させるステップであって、ミクスチャーのうち、S含有量が0.06%であるステップと、
(2)ステップ(1)の混合物を酸素雰囲気で、650℃の高温条件で6時間焼成するステップであって、焼成後の材料がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0044】
本実施例で得られた正極活性材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定し、即ち25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は207.8mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は94.5%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.1%である。
【0045】
実施例6
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.01Ni0.88Co0.10Al0.02及びCoSOを含み、CoSOのうち、S含有量は正極活性材料の総質量の0.40%を占め、CoSOは主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される。
【0046】
本実施例のリチウムイオン電池正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物と、硫酸コバルト粉末とを混合し、高速機械攪拌装置により均一に混合させるステップであって、ミクスチャーのうち、S含有量が0.40%であるステップと、
(2)ステップ(1)の混合物を酸素雰囲気で、650℃の高温条件で6時間焼成するステップであって、焼成後の材料がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0047】
本実施例で得られた正極活性材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定し、即ち25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は206.2mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は95.2%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.8%である。
【0048】
比較例1:
実施例1における分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属酸化物して測定すると、S含有量が約0.02%であり、この部分のS含有量は主に正極材料を合成する前駆体原料に硫酸塩雑質を導入したものである。走査型電子顕微鏡による観察から、図2に示すように、当該材料の表面は滑らかである。
【0049】
この被覆されていない正極材料マトリックス(分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属酸化物)を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定した結果は、図4図6に示す。25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は203.2mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.1%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は87.7%である。
【0050】
実施例1の硫酸リチウムの被覆、実施例3の硫酸コバルトの正極材料の被覆を比較した結果、硫酸塩の導入によって材料のサイクル性能を大幅に向上させると表明される。
【0051】
比較例2:
実施例1と同じリチウム金属酸化物Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02を用いて、この材料に対して水酸化コバルト被覆を採用し、添加されたコバルト含有量は実施例3で添加されたコバルト含有量と同じである。
【0052】
本比較例の正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物と水酸化コバルト粉末とを所定の質量比で混合し、高速機械攪拌装置により均一に混合させるステップであって、水酸化コバルトが添加されたCo含有量が実施例3で硫酸コバルトが添加されたCo含有量と同じでともに0.24%であるステップと、
(2)ステップ(1)の混合物を酸素雰囲気で、650℃の高温条件で6時間焼成するステップであって、焼結後の材料が水酸化コバルトを被覆する正極活性材料であるステップと、を含む。
【0053】
走査型電子顕微鏡による観察から、図3に示すように、焼結した正極材料の表面に被覆される一次粒子が凸凹して平らかでなく、また、測定すると、S含有量が約0.02%であり、この部分のS含有量は主に正極材料を合成する前駆体原料に硫酸塩雑質を導入したものである。
【0054】
得られた水酸化コバルトが被覆される正極材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定した結果は、図4図6に示す。25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は203.8mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.3%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は89.7%である。
【0055】
比較例3:
本発明のリチウムイオン電池正極活性材料であって、正極活性材料マトリックスLi1.01Ni0.88Co0.10Al0.02及びCoSOを含み、CoSOのうち、S含有量は正極活性材料の総質量の0.50%を占め、CoSOは主に正極活性材料マトリックスの表面に被覆される。
【0056】
本比較例のリチウム電池正極活性材料の製造方法は、
(1)分子式Li1.01Ni0.88Co0.10Al0.02のリチウム金属化合物と、硫酸コバルト粉末とを混合し、高速機械攪拌装置により均一に混合させるステップであって、ミクスチャーのうち、S含有量が0.50%であるステップと、
(2)ステップ(1)の混合物を酸素雰囲気で、650℃の高温条件で6時間焼成するステップであって、焼成後の材料がリチウム金属化合物及び硫酸塩を含む正極活性材料であるステップと、を含む。
【0057】
得られた正極活性材料を、リチウムシートを負極とするボタン電池に製造して測定し、即ち25℃、電圧区間3.0~4.3Vの条件で0.2C充放電が行われ、放電比容量は203.4mAh/gであり、1C/1C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は95.0%であり、45℃で0.5C/0.5C充放電の50周サイクルした後の容量保持率は92.9%である。
【0058】
表1は各実施例及び比較例の正極活性材料の電気性能結果である。
【0059】
表1 各実施例及び比較例の正極活性材料の電気性能結果
【0060】
実施例3及び比較例2を比較することにより、被覆物にいずれもCoが導入されるが、実施例に添加されたものが硫酸塩であるため、水酸化コバルトの被覆よりも、可サイクル性能を大幅に向上させることができると表明される。比較実施例1、実施例4及び比較例2により、硫酸リチウム及び水酸化コバルトの共被覆によって、材料サイクル性能を向上させるとともに、容量を顕著に向上させることもできると表明される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】