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特表2023-532446排尿抑制のための植込み型装置の固定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】排尿抑制のための植込み型装置の固定
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230721BHJP
   A61F 2/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61B17/00 600
A61F2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579821
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021070512
(87)【国際公開番号】W WO2021263254
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/042,947
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/949,991
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358752
【氏名又は名称】ウロメディカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UROMEDICA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バートン、ジョン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】クック、ティモシー シー.
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097BB01
4C097BB05
4C097BB09
4C160DD01
4C160MM53
(57)【要約】
植込み型装置は、導管と、尿失禁治療のための尿道の接合等の、体管腔の制御可能な接合のために導管の前端部付近で導管に連結している調節可能な膜要素と、導管の前端部又はその付近に位置している固定機構とを有している。様々な実施形態において、固定機構は、プッシュワイヤの動きを利用して植込み型装置を組織に固着させることができる。任意選択的に、固定機構は、プッシュワイヤの別の動きを利用して植込み型装置を組織から解放させて、植込み型装置の再配置又は除去を可能にすることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の体管腔を接合するためにプッシュワイヤを用いて前記生体の組織内に配置されるように構成された植込み型装置であって、
チャンバを画定している内面を有する連続壁を含む調節可能な膜要素と、
導管外周面、導管後端部、導管前端部及びプッシュワイヤ管腔を含む長尺状の導管であって、前記導管外周面が、前記導管前端部又はその付近で前記調節可能な膜要素に接続及び密着しており、前記プッシュワイヤ管腔が、前記導管内を長手方向に延びているとともに、前記プッシュワイヤの一部分を受容するための入口と、前記プッシュワイヤの受容された部分の収容に適した直径とを有している、導管と、
前記導管前端部に連結しているとともに、前記プッシュワイヤの動きを利用して前記植込み型装置を前記組織に固着させるように構成されている固定機構と、を備えた植込み型装置。
【請求項2】
前記固定機構が、前記プッシュワイヤの追加の動きを利用して、前記植込み型装置を前記組織から解放させるように構成されている、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項3】
前記固定機構が固着部材を有しており、前記プッシュワイヤの前記動きを利用して前記固着部材を前記組織内に延ばすことによって、前記植込み型装置を前記組織に固着させるように構成されている、請求項1に記載の植込み型装置。
【請求項4】
前記固定機構が、前記プッシュワイヤの追加の動きを利用して、前記固着部材を前記組織から後退させるように構成されている、請求項3に記載の植込み型装置。
【請求項5】
前記固定機構が、前記プッシュワイヤの締付回転方向の回転によって前記植込み型装置を前記組織に固着させるように構成されており、かつ、前記プッシュワイヤの弛緩回転方向の回転によって前記植込み型装置を前記組織から解放させるように構成されている、請求項4に記載の植込み型装置。
【請求項6】
前記固着部材が螺旋部を有している、請求項3~5のいずれか一項に記載の植込み型装置。
【請求項7】
前記固定機構が、前記螺旋部と共に回転するように前記螺旋部に連結している基部であって、前記導管前端部又はその付近において前記プッシュワイヤ管腔内に配置されている基部を備えている、請求項6に記載の植込み型装置。
【請求項8】
前記長尺状の導管が、前記導管前端部又はその付近で前記プッシュワイヤ管腔の面に付着しているネジ付スリーブをさらに有し、
前記基部がネジ付基部を有し、前記ネジ付基部が、
前記プッシュワイヤの前記締付回転方向の回転によって前記螺旋部が前記導管前端部において前記プッシュワイヤ管腔から出て前記組織内に入ることを可能とするように構成されており、かつ、
前記プッシュワイヤの前記弛緩回転方向の回転によって前記螺旋部が前記組織から後退して前記プッシュワイヤ管腔に戻ることを可能とするように前記ネジ付スリーブと嵌合するように構成されている、請求項7に記載の植込み型装置。
【請求項9】
前記長尺状の導管が、前記導管前端部又はその付近で前記プッシュワイヤ管腔の面に付着しているブッシングをさらに備え、前記基部の少なくとも一部分が、前記プッシュワイヤの前記締付回転方向の回転によって前記螺旋部が前記組織内に入ることを可能とし、かつ、前記プッシュワイヤの前記弛緩回転方向の回転によって前記螺旋部が前記組織から後退することを可能とするように、前記ブッシング内に配置されている、請求項7に記載の植込み型装置。
【請求項10】
前記基部が前記導管前端部又はその付近で前記プッシュワイヤ管腔の面に付着していることによって、前記プッシュワイヤの前記締付回転方向の回転によって前記螺旋部が前記組織内に入ることを可能とし、かつ、前記プッシュワイヤの前記弛緩回転方向の回転によって前記螺旋部が前記組織から後退することを可能とするように、前記調節可能な膜要素及び前記長尺状の導管が前記固定機構の前記螺旋部及び前記基部と共に回転する、請求項7に記載の植込み型装置。
【請求項11】
前記プッシュワイヤ管腔に加えて、該プッシュワイヤ管腔とは別個に前記導管内を長手方向に延びる膨張管腔であって、前記導管後端部に位置している後側開口部と、該後側開口部を介して導入される流動性材料によって前記調節可能な膜要素を調節可能に拡張又は収縮させるために前記調節可能な膜要素の前記チャンバと連通している前側開口部とを有している膨張管腔と、
前記導管後端部において前記導管に接続している後側ポートであって、空洞と、該空洞を密閉するように構成された弾性セプタムとを有しており、前記空洞が前記流動性材料を収容するように構成されているとともに前記膨張管腔の前記後側開口部を介して前記膨張管腔と連通している、後側ポートと、をさらに備えている請求項1~10のいずれか一項に記載の植込み型装置。
【請求項12】
前記プッシュワイヤ管腔が、前記導管後端部に位置している後側開口部である前記入口と、前記後側開口部を介して導入される流動性材料によって前記調節可能な膜要素を調節可能に拡張又は収縮させるために前記調節可能な膜要素の前記チャンバと連通している前側開口部とを有しており、
前記導管後端部において前記導管に接続している後側ポートであって、空洞と、該空洞を密閉するように構成された弾性セプタムとを有しており、前記空洞が前記流動性材料を収容するように構成されているとともに前記プッシュワイヤ管腔の前記後側開口部を介して前記膨張管腔と連通している、後側ポートをさらに備えている請求項1~10のいずれか一項に記載の植込み型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書は、植込み型の医療装置に関し、より詳細には、患者に植え込まれた尿失禁治療用装置の移動を抑制するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿失禁を治療するための植込み型装置は、例えば、導管で後側ポートに接続されたバルーン等の調節可能な膜要素を備えている。植込み型装置は、低侵襲手術によって、調節可能な膜要素が患者の尿道の近傍に配置されるとともに、後側ポートが患者の皮膚の下に配置された状態で患者に植え込まれる。調節可能な膜要素は、手術中及び手術後に、針を用いて経皮的に後側ポートに対する流体の注入又は抽出を行うことによって調節できる。例示的な治療では、このような植込み型装置が2つ患者に留置され、2つの調節可能な膜要素が患者の膀胱頸部に圧力と支持をもたらすことによって、腹圧性尿失禁(例えば、くしゃみ、咳又は身体活動時の尿漏れ)や、神経因性膀胱(例えば、脊髄損傷による尿漏れ)等による意図しない尿漏れを防ぐ。このような治療の有効性は、調節可能な膜要素を患者の目標位置に正確に配置すること、留置後に調節可能な膜要素を調節すること、及び調節可能な膜要素の位置を長期間にわたって維持することに左右される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、患者に植え込まれた尿失禁治療用装置の移動を抑制するための方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
植込み型装置は、導管と、尿失禁治療のための尿道の接合のような、体管腔の制御可能な接合のために導管の前端部付近で導管に連結している調節可能な膜要素と、導管の前端部又はその付近に位置している固定機構とを有している。様々な実施形態において、固定機構は、プッシュワイヤの動きを利用して植込み型装置を組織に固着させることができる。任意選択的に、固定機構は、プッシュワイヤの別の動きを利用して植込み型装置を組織から解放させて、植込み型装置の再配置又は除去を可能にすることもできる。
【0005】
例示的な一実施形態では、植込み型装置は、生体の体管腔を接合するためにプッシュワイヤを用いて生体の組織内に配置されるように構成されている。植込み型装置は、調節可能な膜要素、長尺状の導管及び固定機構を有している。調節可能な膜要素は、チャンバを画定している内面を有する連続壁を含む。長尺状の導管は、導管外周面、導管後端部、導管前端部及びプッシュワイヤ管腔を含む。導管外周面は、導管前端部又はその付近において調節可能な膜要素に接続及び密着している。プッシュワイヤ管腔は、導管内を長手方向に延びているとともに、プッシュワイヤの一部分を受容するための入口と、プッシュワイヤの受容された部分の収容に適した直径とを有している。固定機構は、導管前端部に連結しているとともに、プッシュワイヤの動きを利用して植込み型装置を組織に固着させるように構成されている。
【0006】
別の例示的な実施形態では、生体の組織内の体管腔を接合する方法が提供される。本方法は、植込み型装置を提供することと、プッシュワイヤを用いて植込み型装置の固定機構を操作することとを含む。植込み型装置は、調節可能な膜要素、長尺状の導管及び固定機構を有している。調節可能な膜要素は、チャンバを画定している内面を有する連続壁を備えている。長尺状の導管は、導管外周面、導管後端部、導管前端部及びプッシュワイヤ管腔を有している。導管外周面は、導管前端部又はその付近において調節可能な膜要素に接続及び密着している。プッシュワイヤ管腔は、導管内を長手方向に延びているとともに、プッシュワイヤの一部分を受容するための入口と、プッシュワイヤの受容された部分の収容に適した直径とを有している。固定機構は、植込み型装置を組織に固着させるように構成されている。
【0007】
この要約は、本出願の教示の一部の概要であり、本主題の排他的又は網羅的な扱いを意図するものではない。本主題に関する詳細は、詳細な説明及び特許請求の範囲に記載されている。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその法的な均等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本主題の一実施形態に係る、植込み型装置と、植込み型装置の調節可能な膜要素に流動性材料を供給するためのシリンジ源とを示す斜視図。
図2】本主題の一実施形態に係る、図1に示す植込み型装置の縦断面図。
図3】本主題の一実施形態に係る、図2の3-3線断面図。
図4】本主題の一実施形態に係る、植込み型装置の挿入前に患者の体管腔の近傍の植え込み位置まで体組織内に挿入されたガイドプローブを示す図。
図5】本主題の一実施形態に係る、調節可能な膜要素が収縮した状態でガイドプローブ上に配置されて、所望の位置まで部分的に前進した植込み型装置を示す図。
図6】本主題の一実施形態に係る、患者の体組織を体管腔に向かって移動させて体管腔の調節可能な制限を行うために、体組織内の所望の位置で拡張された状態の植込み型装置を示す図。
図7】本主題の一実施形態に係る、図6の7-7線断面図。
図8】本主題の一実施形態に係る、後側ポートが患者の皮膚の下に位置する状態で挿入された後の植込み型装置を示す図。
図9】本主題の一実施形態に係る、別の植込み型装置を示す概略図。
図10】本主題の一実施形態に係る、別の植込み型装置を示す概略図。
図11】本主題の一実施形態に係る、尿道の接合を改善するための植込み型装置のおおよその配置標的部位を示す上面図。
図12】本主題の一実施形態に係る、尿道の接合を改善するための植込み型装置のおおよその配置標的部位を示す、尿道の長さ方向に沿った植え込み領域の図。
図13】本主題の一実施形態に係る、植込み型装置及びプッシュワイヤを示す図。
図14】本主題の一実施形態に係る、別の植込み型装置及びプッシュワイヤを示す図。
図15】本主題の一実施形態に係る、別のプッシュワイヤを示す図。
図16】本主題の一実施形態に係る、さらに別のプッシュワイヤを示す図。
図17A】ばねを有する固定機構を備えた、プッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の図であり、ばねが伸長位置にある状態を示す図。
図17B】ばねを有する固定機構を備えた、プッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の図であり、ばねが静止位置にある状態を示す図。
図18A】本主題の実施形態に係る、図17A及び図17Bのばねの作製に使用するワイヤの図であって、半円形の断面を有するワイヤを示す図。
図18B】本主題の実施形態に係る、図17A及び図17Bのばねの作製に使用するワイヤの図であって、長方形の断面と凹部とを有するワイヤを示す図。
図18C】本主題の実施形態に係る、図17A及び図17Bのばねの作製に使用するワイヤの図であって、半円形の断面と凸部とを有するワイヤを示す図。
図19】本主題の一実施形態に係る、別のプッシュワイヤと共に使用される図17の植込み型装置の前端部を示す図。
図20A】本主題の一実施形態に係る、挟み具を有する固定機構を備えた、プッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の図であり、挟み具が開いた状態を示す側断面図。
図20B】本主題の一実施形態に係る、挟み具を有する固定機構を備えた、プッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の図であり、挟み具が閉じた状態を示す側断面図。
図20C】本主題の一実施形態に係る、挟み具を有する固定機構を備えた、プッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の図であり、挟み具が閉じた状態を示す端面図。
図21】本主題の一実施形態に係る、螺旋部を有する固定機構を備えた、プッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部を示す図。
図22A】本主題の一実施形態に係る、図21のプッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の一例の図であり、植込み型装置がシングルルーメン装置又はマルチルーメン装置である上面図。
図22B】本主題の一実施形態に係る、図21のプッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の一例の図であり、植込み型装置がマルチルーメン装置である側面図。
図23】本主題の一実施形態に係る、図21のプッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部の別の例を示す図。
図24】本主題の一実施形態に係る、図21のプッシュワイヤと共に使用される植込み型装置の前端部のさらに別の例を示す図。
図25】本主題の一実施形態に係る、植込み型装置を組織に固着させる方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本主題の以下の詳細な説明は、本主題が実施され得る特定の態様及び実施形態を例示として示す添付図面の主題を参照する。これらの実施形態は、当業者が本主題を実施できるように詳細に記載されている。本開示における「一実施形態」又は「様々な実施形態」は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではなく、2つ以上の実施形態を指すことを意図している場合もある。以下の詳細な説明は例示であり、限定的な意味で解釈されるべきではない。本主題の範囲は、特許請求の範囲及び特許請求の範囲が権利化されるところの法的均等物の全範囲を参照して定義される。
【0010】
本明細書では、尿失禁を治療するために植込み型装置を周囲組織に固定させる機構等について説明される。植込み型装置は、例えば、導管によって後側ポートに接続されている調節可能な膜要素を有している。導管は、調節可能な膜要素のチャンバと後側ポートの内部空洞とを連通させる管腔を有している。本明細書に記載される植込み型装置(例えば、図1に示される植込み型装置110)の様々な構造要素は、それぞれ様々な用語で参照される場合がある。「調節可能な膜要素」(例えば、図1に示される調節可能な膜要素112)は、例えば、調節可能な要素、拡張型要素、拡張型膜要素、前方拡張型膜要素、バルーン又は調節可能なバルーンと称される場合もある。「導管」(例えば、図1に示される導管114)は、例えば、中心導管要素、装置導管、接続導管、接続導管チューブ又は管状の長尺状本体と称される場合もある。「後側ポート」(例えば、図1に示される後側ポート116)は、例えば、後側ポート部又は後側ポート要素と称される場合もある。「管腔」(例えば、図2に示される第1の管腔215及び第2の管腔217)は、例えば、通路、内側通路又は内部通路と称される場合もある。
【0011】
一例において、植込み型装置は、導管によってポートに接続された調節可能なバルーンを有している。バルーンは尿道の近傍に配置され、尿道壁に周方向の圧縮ではない圧縮を加える。治療の有効性は、尿道壁に近接した尿生殖隔膜の上の尿道膀胱接合部付近の恥骨後腔等における、患者の体内でのバルーンの適切な位置決めに左右される。2つのバルーン(例えば、2つの植込み型装置)が使用される場合は、一般的に、尿道に対して左右対称で横方向に配置されることが好ましい。蛍光透視法やTRUS(経直腸超音波検査法)等の医用画像技術を用いることによって、バルーンの位置決めを助けることができる。2019年6月24日に出願された米国特許出願公開第16/450246号明細書に記載されているように、植込み型装置及び/又は1つもしくは複数の手術器具に組み込まれたセンサを使用して、バルーンの位置決めを助けてもよい。
【0012】
植え込み処置において、植込み型装置は、バルーンが目標部位の所定の位置に配置されて固定された状態で、患者の体内に留置される。組織のカプセル化反応を発生させて目標部位でバルーンを安定させるために、バルーンは、4~6週間の間、通常は最大1.0ccまでわずかに膨張させる。特に、カプセル化が起こらなかった場合、植込み型装置の植え込みに使用された拡張経路内を植込み型装置が移動する傾向がある。したがって、植え込み処置中に装置を固定させることが非常に重要である。カプセル化後、望ましくない閉塞を引き起こすことなく排尿抑制を達成して維持するために、バルーン内の流体の量を調節する1つ又は複数の調節処置を患者に対して行うことができる。
【0013】
本主題は、植込み型装置のバルーンの望ましくない変位を防止するための固定機構を有する、尿失禁を治療するための植込み型装置を提供する。図1図10は、固定機構を組み込むことができる植込み型装置ならびに固定機構の作動及び作動停止を行うためにも使用可能な植え込み用手術器具の様々な実施形態を示す。植込み型装置及び手術器具の様々な実施形態が図1図10に示されるとともに以下に説明されるが、これらは例示であり、限定的ではない。このような例ならびに植込み型装置及び手術器具の別の例は、参照によって本明細書に組み込まれる、UroMedica社に付与された米国特許第5964806号明細書、米国特許第6045498号明細書、米国特許第6419624号明細書、米国特許第6579224号明細書及び米国特許第8926494号明細書に記載されている。図13図24は、植込み型装置に組み込まれた固定機構の様々な実施形態を示している。
【0014】
図1に、本主題に係る、長尺状の植込み型装置110を示す。植込み型装置110は、完全に拡張した大きさで示されている調節可能な膜要素112を有している。調節可能な膜要素112は、後側ポート116に接続された長尺状の導管114に気密状態で取り付けられている。後側ポート116は、第1の管腔215を介して拡張型要素112に連通している(図2)。導管114は、拡張型要素112をわずかに超えて延びる前端部114Aを有している。シリンジ120は、中空針121及び軸方向に移動可能な後側のプランジャ122を有している。シリンジ120は、後側ポート116を介して適切な流動性材料を植込み型装置110に調節可能に注入することによって、調節可能な膜要素112を拡張するために使用される。
【0015】
様々な実施形態において、植込み型医療装置110は、手術器具としてのプッシュワイヤ(プッシュロッドとも称される)を用いて、植え込み処置において配置される。導管114は、1つ又は2つの長尺状の管腔又は通路を有している。図9及び10に、プッシュワイヤを用いて配置される植込み型医療装置110(固定機構無し)の例を示す。
【0016】
他の様々な実施形態では、植込み型医療装置110は、手術器具としてのガイドプローブ(ガイドワイヤとも称される)を用いて、植え込み処置において配置される。このような植え込み方法は、オーバーザワイヤ方法とも称される。図2及び3にさらに示すように、導管114は、2つの長尺状の管腔又は通路を有している。第1の管腔215は、調節可能な膜要素112を拡張するために後側ポート116の空洞216Aから送られる流動性材料のための内側通路を形成している。導管114は、後端部で後側ポート116に一体的に取り付けられている。第2の管腔217は、前側開口部117Aから後側開口部117Bまで延び、長尺状のガイドプローブ(図4)を受容して、患者の体組織内の所望の位置まで植込み型装置110を送達させるように機能する。
【0017】
第1の管腔215を有する植込み型装置110の重要な特徴である第1の開口部215Aは、後側ポート116の空洞216Aに位置している。空洞216Aは、弾性セプタム218と導管114との間に位置し、第1の管腔215に接続されている。流動性材料は、第1の開口部215Aを介して注入される。第1の管腔215の第2の開口部215Bは調節可能な膜要素112に作動流体を届けるように機能する。膜の体積を調節する際には、シリンジ120の中空針121から供給される流体がセプタム218を介して注入され、調節可能な膜要素112に接続された導管114を通って進む。後側ポート116の直径は、空洞216A及びセプタム218を収容するために、導管114の直径よりも大きいことが好ましい。セプタム218は締め付けリング119によってしっかりと留められている。
【0018】
調節可能な膜要素112を含む植込み型装置110全体は、シリコーン又はポリウレタンエラストマ等の生体適合性材料で形成され、導管114及び後側ポート116は一体構造として形成できる。任意選択的に、調節可能な膜要素112、後側ポート116及び導管114は、一体に型成形してもよい。図2に示すように、調節可能な膜要素112の前端部は、213において、適切な接着材料によって導管チューブ114に接着されている。
【0019】
本主題に係る植込み型装置及びアセンブリは、3つの主要部材を備えている。第1の部材である長尺状ガイド部材は、剛性の高い中実の長尺状ガイドプローブ424(図4)として構成される。図4及び図5に概して示すように、ガイドプローブ424は、患者の体組織の所望の部位に植込み型装置110を送達するように構成されている。あるいは、長尺状ガイド部材は可撓性を有するガイドワイヤとして構成されてもよい。このようなガイドワイヤは、体組織の所望の位置に挿入された別の中空の剛性プローブを介して体組織に最初に送達させることができる。アセンブリの第2の部材である植込み型装置110は、調節可能な膜要素112と、2つの管腔215及び217を有する導管114と、後側ポート116とを有している。植え込み時には、中実の長尺状ガイドプローブ424をまず患者の体組織に外科的に挿入して最初の経路を形成した後に、植込み型装置110が患者の体内の体管腔の近傍の所定の位置に誘導される。植込み型装置110の管腔前端開口部117Aをガイドプローブ424の後端部上に配置して、植込み型装置110を誘導することによって、調節可能な膜要素112(収縮状態)が、調節可能に制限する体管腔の近傍の体組織内の所定の位置まで送られる。第2の管腔217の直径は、植込み型装置110がプローブ部材上を容易にスライドできるように、ガイドプローブ424の直径よりもわずかに大きい。
【0020】
植込み型装置110の植え込み時には、制限を加える必要のある患者の体管腔432付近の皮膚430に医師がまず小さい切開部を形成する。次いで、蛍光透視法又は超音波撮像等による視覚化手段を用いて、患者の解剖学的構造に応じて、中実のガイドプローブ424が所望の位置まで進められる。その後、調節可能な膜要素112が最初の非拡張状態すなわち収縮状態にある状態で、導管114の第2の管腔117の開口部117Aを、ガイドプローブ424の後端部424A上でスライドさせる。導管114の前端部114Aは、植込み型装置110が組織を通過しやすいように尖っていてもよい。ガイドプローブ424は、導管114の第2の管腔217を介してスライドし、後側開口部117Bから出る。図2に示すように、開口部117Bは、調節可能な膜要素112と後側ポート116との間に位置している。しかしながら、調節可能な膜要素112の近くに開口部117Bを配置することが有益である場合もあり、もしくは、第2の管腔217が後側ポート116内を通って延在していることが有益である場合もある。
【0021】
必要に応じて、ガイドプローブ424にマーク533を設けてもよい。後側ポート116等の、植込み型装置110の特徴部とマーク533とを位置合わせすることによって、植込み型装置110を患者の体組織430の正しい深さに適切に配置できる。セプタム218を患者の皮膚の近くに配置しやすくするために、複数の長さの導管114を設けることが必要な場合もある。又は、導管114の形状をコイル状ばねに似た螺旋形状とすることによって、導管114の有効長を調節可能としてもよい。
【0022】
植込み型装置110をガイドプローブ424上で前進させて収縮状態の調節可能な膜要素112を体管腔432の近傍の所望の位置に配置した後に、シリンジ120の針121でセプタム218を穿孔し、第1の管腔215を介して調節可能な膜要素112に流動性材料を注入することによって、体管腔432を所望の程度に制限することができる。医師は、体管腔に流体を注入して制限部位を通過させ、背圧を測定すること等によって、体管腔432の制限の望ましい程度を決定できる。
【0023】
図1及び図6に示すように、通常、流動性材料の供給源は、弾性セプタム218の穿孔に用いられる中空針を有するシリンジ120である。しかしながら、植込み型装置110に対する両方向の接続をもたらす手段を備えた別の流体容器を使用してもよい。流動性材料は、例えば、生理食塩水、流動性ゲル又は液体キャリア中の粒子のスラリーである。膜の膨張の程度をX線によって視認可能とするために、放射線不透過性の流動性材料を用いることが有益である場合もある。
【0024】
植込み型装置110を送達する別の方法では、体組織からガイドプローブ424を引き抜いた後に、調節可能な膜要素112が膨張させられる。さらに別の方法では、最初に体外で植込み型装置110を中実ガイドプローブ424の上に配置し、次にこれら両方を1つのユニットとして体組織に挿入する。この後者の方法を容易に行うためには、中実ガイドプローブ424と導管114内の第2の管腔217との間にある程度の摩擦が発生することが望ましい場合もある。
【0025】
調節可能な膜要素112が体管腔432の近くに配置され、後側ポート116のセプタム218が皮膚430の近くに配置された状態で植込み型装置110が適切に配置された後に、シリンジ120から装置に流動性材料が注入される。拡張型部材をある程度まで膨張させた後に、体組織による拡張型部材のカプセル化に適した程度まで収縮させてもよい。次に、ガイドプローブ24が装置から引き抜かれ、体組織内にわずかに拡張した膜要素が残る。次いで、例えば図8に示す縫合糸834等の手段によって、皮膚の切開部431がポート116上で閉じられる。
【0026】
本主題の植込み型装置110では、手術後に膜の拡張を調節することが可能である。この調節は、セプタム218が調節可能な膜要素112から離れて配置されているが、患者の皮膚の下の皮膚に近い部位に位置していることによって可能となっている。例えば、ポート及びセプタムの位置は、皮膚領域の触診等によって特定することができ、シリンジの針を皮膚及びセプタムを貫通して挿入することによって、拡張型部材に対する材料の追加又は除去を行うことができる。これによって、体管腔の制限の程度を増加又は低減することが可能である。
【0027】
セプタム218の密閉を確実にするために、後側ポート116よりも径が小さく、堅く締め付ける金属リング119をポートの周囲に配置することによって、空洞216A内にセプタム218が圧縮状態で配置される。調節可能な膜要素112の拡張又は調節後にシリンジ120の針121がセプタム218から引き抜かれた後には、セプタム218の周囲に密閉状態が確実に維持される。
【0028】
図4図8は、患者の体組織に植込み型装置110を適切に植え込むための「オーバーザワイヤ」と称する方法又は手順を概して示している。図4に示すように、医師は、患者の尿道等の体管腔の位置を特定した後に、小さい切開部431を形成し、体管腔432の近傍の所望の位置までガイドプローブ424を体組織内に挿入する。通常、この手順は、医師によって例えば蛍光透視等の視覚誘導を利用して局所麻酔下で行われる。次に、医師は、植込み型装置110を、図1及び図2に示すように、第2の管腔217を介してガイドプローブ424上に配置する。ガイドプローブ424は、後側開口部117Bから入って、前側開口部117Aから出る。十分な可撓性を有する導管114を備えた植込み型装置110は、ガイドプローブ424に沿って体組織内を前進する。
【0029】
体組織内の所望の位置に達した後に、セプタム218を通って挿入された中空針121を有するシリンジ120等の供給源から、適切な流動性材料が植込み型装置110に導入されることによって、図6に示すように、調節可能な膜要素112が少なくとも部分的に拡張される。次に、ガイドプローブ424が取り出され、調節可能な膜要素112が、体管腔432を制限するために所望の拡張サイズまでさらに拡張される。シリンジ120が植込み型装置110から取り外された後には、弾性セプタム218によって、調節可能な膜要素112が所望のサイズに維持される。次に、患者の切開部431が、ポート116及びセプタム218上で縫合糸834を用いて外科処置によって閉じられる。
【0030】
図9図24に、プッシュワイヤを用いて配置可能な植込み型装置の例及びプッシュワイヤの例を示す。このような植込み型装置を患者の体組織に適切に植え込むための方法又は手順は、図4図8に示すオーバーザワイヤの方法又は手順と同様であるが、ガイドプローブの代わりにプッシュワイヤが使用される点において異なっている。医師は、患者の尿道等の体管腔の位置を特定した後に、切開部を形成し、体管腔の近傍の所望の位置までシースを体組織内に挿入する。次に、医師は、例えばプッシュワイヤ管腔内にプッシュワイヤが予め挿入されて組付けられた状態の植込み型装置をシース内に配置し、プッシュワイヤを押して、体組織内の所望の位置まで植込み型装置を前進させる。次に、シースが患者の組織から抜き出され、植込み型装置の調節可能な膜要素が所望のサイズまで拡張される。
【0031】
図9は、本主題の一実施形態に係る植込み型装置キット940の断面図である。植込み型装置キット940は、調節可能な膜要素912と長尺状の導管914とを有する植込み型装置910を備えている。導管914は、後端部(基端部とも称する)962の第1の開口部915Aから第2の開口部915Bまで導管914内を長手方向に延びる第1の管腔915を少なくとも有している。図においては、植込み型装置910はシース946のチャネル944内に配置されている。
【0032】
植込み型装置キット940は、導管914の後端部962に連結されている後側ポート916をさらに有している。一実施形態では、後側ポート916は、化学接着剤によって、又は当該技術分野で周知の音波溶接技術によって、長尺状の本体914の後端部962に連結される。別の実施形態では、後側ポート916及び後端部962は、当該技術分野で周知の液体射出成形等のポリマー成形処理によって一緒に形成される。
【0033】
後側ポート916は空洞916Aを有しており、空洞916Aは、導管914の第1の開口部915Aと連通している。一実施形態では、後側ポート916は、空洞916Aにアクセスするための弾性セプタム918も有しており、弾性セプタム918は、例えば針による穿孔が繰り返された後に自己封止する。一実施形態では、弾性セプタム918は、後側ポート916の周りに配置された締め付けリング919によって後側ポート916に保持される。一実施形態では、締め付けリング919は、例えばチタン等の生体適合性材料からなる。一実施形態では、弾性セプタム918は、シリコーン又はポリウレタン等の生体適合性材料からなる。後側ポート916は、後側ポート916の外面954によって画定される外径を有している。一実施形態では、後側ポート916の外径は、1~15ミリメートルであり、特定の例では、4.5ミリメートルである。
【0034】
一実施形態では、後側ポート916の外面及び調節可能な膜要素912のサイズ(直径等)が、チャネル944の内側のサイズ(直径等)よりも小さく形成されることによって、シース946のチャネル944を通って植込み型装置910が長手方向に移動できる。代替的な実施形態では、後側ポート916が十分な可撓性を有する材料を少なくとも1つ含んでいることによって、弛緩状態にある後側ポート916を十分に小さいサイズまで圧縮できるようになっており、その結果、シース946のチャネル944を通って植込み型装置910が長手方向に移動できる。様々な実施形態では、導管914が十分に高い剛性を有していることによって、導管914の管状の長尺状本体の後端部に加えられた力によって、植込み型装置910が、シース946のチャネル944を通って少なくとも部分的に移動可能となっている。一実施形態では、導管914の剛性は、導管914の管状の長尺状本体の形成に使用される材料の種類によって決まる。あるいは、管状の長尺状本体に支持要素を追加してもよい。例えば、金属コイルを管状の長尺状本体内に長手方向に配置することによって、管状の長尺状本体の剛性を高めることができる。
【0035】
植込み型装置910が体内に配置されると、流動性材料源を後側ポート916に解放可能に接続することによって調節可能な膜要素912が膨張される。一実施形態では、流動性材料源は、ノンコアリング針を備えたシリンジを含み、針は弾性セプタム918を通って挿入される。測定された量の流体を植込み型装置910に導入可能であり、調節可能な膜要素912は、流動性材料源から後側ポート916の空洞916Aに導入される流動性材料の量に応じて拡張又は収縮する。次いで、調節可能な膜要素912によって、体管腔が少なくとも部分的にかつ調節可能に制限される。人工器具への注入に適した流体の例としては、通常の生理食塩水、シリコーンゲル等のポリマーゲル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール又はカルボキシメチルセルロース等のハイドロゲル、ヒアルロン酸、デキストラン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等の高粘度液体、等張性造影剤等の放射線不透過性流体が挙げられるが、これらに限定されない。調節可能な膜要素912が膨張した後に、後側ポート916のセプタムから針が引き抜かれる。別の実施形態では、検出可能なマーカ970が、調節可能な膜要素912の連続壁に埋め込まれている。体内の物体の位置特定手段として電磁エネルギーによる任意の数の視覚化手法を用いることによって、患者の組織内の調節可能な膜要素912の位置を、検出可能なマーカ970によって特定できる。一実施形態では、検出可能なマーカ970はタンタルで形成され、調節可能な膜要素912の視覚化に用いられる視覚化手法は、当該技術分野で周知のX線又は蛍光透視法である。
【0036】
別の実施形態では、検出可能なマーカが植込み型装置910に埋め込まれている。例えば、検出可能なマーカ970は、導管914の前端部(先端部とも称される)960(先端等)に配置される。又は、検出可能なマーカは、調節可能な膜要素912の連続壁に配置してもよい。体内の物体の位置特定手段として電磁エネルギーによる任意の数の視覚化手法を用いることによって、患者の組織内の前端部960又は調節可能な膜要素912の位置を、検出可能なマーカ970によって特定できる。一実施形態では、検出可能なマーカ970はタンタルで形成され、前端部960又は調節可能な膜要素912を視覚化に用いられる視覚化手法は、当該技術分野で周知のX線又は蛍光透視法である。別の実施形態では、シースも検出可能なマーカを有しており、このマーカはシースの壁の中又は上に組み込むことができる。又は、シース全体が放射線不透過性を有するように形成してもよい。
【0037】
図10は、本主題に係る植込み型装置1010の別の実施形態を示す図である。植込み型装置1010は、調節可能な膜要素1012及び導管1014を有している。導管1014は、前端部1060を有している。一実施形態では、導管1014の外周面は、調節可能な膜要素1012に接続及び密着している。一実施形態では、調節可能な膜要素1012は、チャンバを画定している内面を有する連続壁を備えている。
【0038】
導管1014は、第1の管腔1015及び第2の管腔1017を有している。一実施形態では、第1の管腔1015は、第1の開口部1015Aから1つ又は複数の第2の開口部1015B(例えば、図10に示される2つの開口部)まで導管1014内を長手方向に延びている。第2の開口部1015Bは、第1の開口部1015Aを介して導入される流動性材料によって調節可能な膜要素1012を調節可能に拡張又は収縮させるために、調節可能な膜要素1012のチャンバと連通している。調節可能な膜要素1012からの流体の漏れを防止するために、第1の管腔1015は、導管1014の前端部1060又はその付近に閉鎖端を有している。閉鎖端は、例えばシリコーン接着剤を使用して、第1の管腔1015の前端部を封止することによって形成できる。又は、第1の管腔1015は、導管1014の前端部に到達する前に終端するように製造してもよい。
【0039】
第2の管腔1017は、導管1014に沿って入口1017Aから前端部1060の閉鎖端1017Bまで長手方向に延びている。一実施形態では、第2の管腔1017及び入口1017Aは、組織内での植込み型装置1010の前進に用いられるプッシュロッドを受容できる直径をそれぞれ有している。
【0040】
植込み型装置1010は、導管1014の後端部に連結された後側ポート1016をさらに有している。一実施形態では、後側ポート1016は、後側ポート916と同様であり、空洞1016A及び弾性セプタム1018を有している。空洞1016Aは、第1の開口部1015Aで第1の管腔1015に連結及び連通している。弾性セプタム1018は、調節可能な膜要素1012を拡張(膨張)及び/又は収縮させるために流体を導入及び/又は抜き出すための針による空洞1016Aへのアクセスを可能にしている。弾性セプタム1018の直径は、空洞1016Aの直径よりもわずかに大きく、弾性セプタム1018に圧縮を生じさせて密閉状態をより確実にする。
【0041】
図11は、膀胱1101及び尿道1102を示す上面図であり、本主題の一実施形態に係る、尿道の接合を改善するための植込み型装置1110のおおよその配置標的部位を示す図である。植込み型装置1110は、本明細書に記載される植込み型装置の任意の実施形態(位置を示すために図示されている拡張型膜要素又は調節可能な膜要素)を表すものであり、例えば、植込み型装置110、植込み型装置910、植込み型装置1010又は植込み型装置110、910及び1010の特徴の様々な組み合わせを含む植込み型装置等であるが、これらに限定されない。図11図14には、これらの図に示される構造の例示的な向きを示す、X軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標系が示されている(各図ではX軸、Y軸及びZ軸のうちの2つが示されている)。Z軸の方向は、おおよその植え込み位置における尿道1002の方向に沿っている。植え込み位置は、前立腺全摘出術の場合は膀胱頸部と尿道膀胱接合部の付近であり、TURP(経尿道的前立腺切除術)後の場合は、尿道のさらに下の前立腺の頂点である。
【0042】
図12は、本主題の一実施形態に係る、尿道の接合を改善するための植込み型装置1110のおおよその配置標的部位を示す、植え込み領域の尿道1102の長さに沿った(又はY軸に沿った)図である。本主題は、患者への植え込み時及び/又は植え込み後の植込み型装置1110の調節において植込み型装置1110の正しい配置を助けることができる。本主題を適用することによって、特に、Y軸(矢状軸図)に沿った植込み型装置1110の正確な配置を容易化できる。
【0043】
図13は、本主題の一実施形態に係る、植込み型装置1310及びプッシュワイヤ1324を有する植込み型装置キット1320を示す図である。植込み型装置1310及びプッシュワイヤ1324は、装置キットとして提供可能であり、このキットは、他の付属品も含んでいてもよい。植込み型装置1310は、体管腔の接合に使用することができ、調節可能な膜要素1312、長尺状の導管1314、後側ポート1316及び固定機構1350を有している。調節可能な膜要素1312は、体管腔を接合するように構成され、チャンバを画定している内面を有する連続壁を備えている。導管1314は、導管後端部1314Aと、調節可能な膜要素1312に連結された導管前端部1314Bと、導管前端部1314Bの近くで調節可能な膜要素1312に接続及び密着している外周面と、導管後端部1314A付近の管腔入口1317Aから導管前端部1314Bの管腔前端部1317Bまで導管1314内を長手方向に延びるプッシュワイヤ管腔1317とを有している。管腔入口1317Aは、プッシュワイヤ1324の一部分が入ることができる大きさに形成されている。管腔前端部1317Bは、固定機構1350の種類に応じて、プッシュワイヤ1324が植込み型装置1310を押すことができるように閉鎖された前端部であってもよいし、プッシュワイヤ1324の一部分が出ることができる出口であってもよい。プッシュワイヤ管腔1317は、管腔入口1317Aを介して入るプッシュワイヤ1324の少なくとも一部を収容できる直径を有している。この直径は、導管1314の外側に位置するプッシュワイヤ1324の一部分を押すことによって、プッシュワイヤ1324がプッシュワイヤ管腔1317内を長手方向に移動できる直径である。プッシュワイヤ1324を長手方向に移動させることによって、組織内で植込み型装置1310を前進させることに加えて、固定機構1350の操作も行える。また、上記直径は、プッシュワイヤ1324の回転運動を利用して固定機構1350を操作する際に、導管1314の外側に出ているプッシュワイヤ1324の一部分を回転させることによって、プッシュワイヤ1324がプッシュワイヤ管腔1317内で回転できる直径である。
【0044】
後側ポート1316は、導管後端部1314Aに連結されており、導管1314内の膨張管腔(図13には図示されていない)を介して調節可能な膜要素1312のチャンバと連通する空洞を有している。このため、チャンバに流体を注入することによって調節可能な膜要素1312を拡張させることと、チャンバから流体を抜き出すことによって調節可能な膜要素1312を収縮させることとが可能となっている。いくつかの実施形態では、後側ポート1316は、導管後端部1314Aに解放可能に連結される。
【0045】
様々な実施形態では、植込み型装置1310は、マルチルーメン(例えば、デュアルルーメン)型の植込み型装置であり、プッシュワイヤ管腔1317及び膨張管腔(図13には図示しない)を別々の管腔として有している。
【0046】
固定機構1350は導管前端部1314Bに連結され、植込み型装置1310を組織に固着させることによって、植え込み後の植込み型装置1310の組織内での変位を抑制する。様々な実施形態では、固定機構1350は、固定機構1350内に組織の一部分を能動的に捕捉することによって、植込み型装置1310を組織に固着させる。固定機構1350は、組織の捕捉された部分の生存を永続的に維持できるスペースを有している。また、固定機構1350は、組織での植込み型装置1310の再配置又は組織からの植込み型装置1310の除去のために、組織の捕捉された部分を解放できるように構成されている。様々な他の実施形態では、固定機構1350は、固着部材を組織内に延ばすことによって、植込み型装置1310を組織に固着させる。固定機構1350は、組織での植込み型装置1310の再配置又は組織からの植込み型装置1310の除去のために、固着部材を組織から取り外すことができるように構成されている。
【0047】
植込み型装置1310は、図1図10を参照して説明した植込み型装置から選択される好適な植込み型装置と固定機構1350との組み合わせを示すものであり、植込み型装置は、例えば、植込み型装置110、植込み型装置1010又は植込み型装置110、910及び1010の特徴の様々な組み合わせを含む植込み型装置等であるが、これらに限定されない。
【0048】
プッシュワイヤ1324は、プッシュワイヤ後端部1326A及びプッシュワイヤ前端部1326Bを有する長尺状のプッシュワイヤ本体1326を備えている。プッシュワイヤ前端部1326Bは、組織内で植込み型装置1310を前進させるだけでなく、固定機構1350を操作する(例えば、作動及び/又は作動停止させる)ために適した任意の形状を有している。長尺状のプッシュワイヤ本体1326は、導管1314のプッシュワイヤ管腔1317内を長手方向に移動できる直径を有している。プッシュワイヤ1324の長手方向の移動は、プッシュワイヤ1324をその長手軸(導管1314の長手軸と実質的に平行)に沿って移動させることを含む。プッシュワイヤ本体1326は、導管1314のプッシュワイヤ管腔1317内での回転に適した直径を有している。プッシュワイヤ1324の回転運動は、プッシュワイヤ1324をその長手軸を中心に回転させることを含む。
【0049】
本明細書において、固定機構の「作動」は、植込み型装置を組織に固着させる固定機構の動作を指し、固定機構の「作動停止」は、植込み型装置を組織から解放させる動作を指す。したがって、固定機構は、植込み型装置を組織に固着させる状態にあるときは作動しており(すなわち、作動状態にある)、植込み型装置を組織に固着していない状態にあるときは非作動状態にある(すなわち、作動停止状態にある)。
【0050】
本明細書において、「実質的」、「概して」、「おおよそ」、「略」等の用語は、手作業の正確性や製造誤差等の実際的な要因に起因する不完全性又は不正確さを指す場合もあるが、これらに限定されない。例えば、導管のプッシュワイヤ管腔内にプッシュワイヤが部分的に配置されたときには、プッシュワイヤの長手軸と導管のプッシュワイヤ管腔の長手軸とは、(1)製造公差内の誤差、(2)プッシュワイヤ管腔内のプッシュワイヤの手動制御による動き、(3)プッシュワイヤの一部分がプッシュワイヤ管腔の外に出ている、等の理由により完全に平行ではないため、「実質的に平行」である。このような用語(「実質的」、「概して」、「おおよそ」、「略」等)は、設計による小さい偏差を指す場合もある。例えば、プッシュワイヤ管腔が、導管の長手軸に対して「実質的に平行」である構成において、入口に隣接するプッシュワイヤ管腔の小部分(導管の側面側)は、設計上、導管の長手軸とは平行ではない。マルチルーメン型の植込み型装置では、プッシュワイヤ管腔は、導管の長手軸に対して「実質的に平行」である。このプッシュワイヤ管腔の大部分は、膨張管腔のスペースを確保するために導管の中心を外して配置されているが、プッシュワイヤ管腔の前端部は、導管の長手軸に平行ではなく、導管の前端部の中心で終端していてもよい。
【0051】
図14は、本主題の一実施形態に係る、植込み型装置1410及びプッシュワイヤ1324を有する植込み型装置キット1420を示す図である。植込み型装置1410及びプッシュワイヤ1324は、装置キットとして提供可能であり、このキットは、他の付属品も含んでいてもよい。植込み型装置1410は、体管腔の接合に使用することができ、調節可能な膜要素1412、長尺状の導管1414、後側ポート1416及び固定機構1450を有している。調節可能な膜要素1412は、体管腔を接合するように構成され、チャンバを画定している内面を有する連続壁を備えている。導管1414は、導管後端部1414Aと、調節可能な膜要素1412に連結された導管前端部1414Bと、導管前端部1414Bの近くで調節可能な膜要素1412に接続及び密着している外周面と、導管1414内を長手方向に延びる膨張管腔1415とを有している。膨張管腔1415は、導管後端部1414Aに位置する管腔後側開口部1415Aと、管腔前側開口部1415Bと、管腔前端部1415Cとを有している。管腔前側開口部1415Bは調節可能な膜要素1412のチャンバと連通しており、チャンバに流体を注入することによって調節可能な膜要素1412を拡張させることと、チャンバから流体を抜き出すことによって調節可能な膜要素1412を収縮させることとを可能としている。管腔前端部1415Cは、プッシュワイヤ1324が、組織内で植込み型装置1410を前進させること、かつ/又は、固定機構1450を操作することを可能とする。管腔前端部1415Cは、管腔1415から流体が漏れないように構成された閉鎖端である。
【0052】
後側ポート1416は、導管後端部1414Aに連結されており、膨張管腔1415を介して調節可能な膜要素1412のチャンバと連通する空洞1419を有している。このため、チャンバに流体を注入することによって調節可能な膜要素1412を拡張させることと、チャンバから流体を抜き出すことによって調節可能な膜要素1412を収縮させることとが可能となっている。空洞1419は弾性を有するセプタム1418によって密閉されている。セプタム1418は、例えば、流体を注入及び吸引するためのシリンジに連結された中空の針によって穿孔された後に自己封止する。いくつかの実施形態では、後側ポート1416は、導管後端部1414Aに解放可能に連結される。
【0053】
様々な実施形態において、植込み型装置1410は、プッシュワイヤ管腔としても機能する膨張管腔1415を有するシングルルーメン型の植込み型装置である。膨張管腔1415は、プッシュワイヤ管腔1317の上記必要条件を満たしており、プッシュワイヤ管腔入口は膨張管腔後端部1415Aである。プッシュワイヤ1324は、セプタム1418を穿孔することによって膨張管腔1415内に入る。
【0054】
固定機構1450は導管前端部1414Bに連結され、植込み型装置1410を組織に固着させることによって、植え込み後の植込み型装置1410の組織内での変位を抑制する。様々な実施形態では、固定機構1450は、固定機構1450内に組織の一部分を能動的に捕捉することによって、植込み型装置1410を組織に固着させる。固定機構1450は、組織の捕捉された部分の生存を永続的に維持できるスペースを有している。また、固定機構1450は、組織での植込み型装置1410の再配置又は組織からの植込み型装置1410の除去のために、組織の捕捉された部分を解放できるように構成されている。様々な他の実施形態では、固定機構1450は、固着部材を組織内に延ばすことによって、植込み型装置1410を組織に固着させる。固定機構1450は、組織での植込み型装置1410の再配置又は組織からの植込み型装置1410の除去のために、固着部材を組織から後退させることができるように構成されている。様々な実施形態では、固定機構1450は、管腔前端部1415Cで漏れの発生しない管腔1415と共に機能する(これに対し、固定機構1350は、作動するために管腔前端部1317Bから出るプッシュワイヤ1324を必要とする場合もあれば、必要としない場合もある)。
【0055】
植込み型装置1410は、図1図10を参照して説明した植込み型装置から選択される好適な植込み型装置と固定機構1450との組み合わせを示すものであり、植込み型装置は、例えば、植込み型装置910又は植込み型装置110、910及び1010の特徴の様々な組み合わせを含む植込み型装置等であるが、これらに限定されない。
【0056】
図15に、本主題の一実施形態に係る、別のプッシュワイヤ1524を示す。植込み型装置キット1320又は1420は、プッシュワイヤ1324に加えて、又はその代わりに、プッシュワイヤ1524を有している。プッシュワイヤ1524は、長尺状のプッシュワイヤ本体1526と、プッシュワイヤ本体1526内を長手方向に延びるコア管腔1552とを含む中空プッシュワイヤである。プッシュワイヤ本体1526は、プッシュワイヤ後端部1526A及びプッシュワイヤ前端部1526Bを有する長尺状のプッシュワイヤ本体1526を備えている。コア管腔1552は、プッシュワイヤ後端部1526Aに後側開口部1552Aを有し、プッシュワイヤ前端部1526Bに前側開口部1552Bを有している。プッシュワイヤ1324の機能に加えて、プッシュワイヤ1524は、固定機構1350又は1450の中又は周囲の領域に対する流体の注入及び抜き出しを可能にする。
【0057】
図16に、本主題の一実施形態に係る、さらに別のプッシュワイヤ1624を示す。植込み型装置キット1320又は1420は、プッシュワイヤ1324/1524に加えて、又はその代わりに、プッシュワイヤ1624を有している。プッシュワイヤ1624は、長尺状のプッシュワイヤ本体1626と、プッシュワイヤ本体1626内を長手方向に延びるコア管腔1652とを含む別の中空プッシュワイヤである。プッシュワイヤ本体1626は、プッシュワイヤ後端部1626A及びプッシュワイヤ前端部1626Bを有している。コア管腔1652は、プッシュワイヤ後端部1626Aに後側開口部1652Aを有し、プッシュワイヤ前端部1626B及び/又はその付近に複数の前側開口部1652Bを有している。プッシュワイヤ1324の機能に加えて、プッシュワイヤ1624は、固定機構1350又は1450の中又は周囲の領域に対する流体の注入及び抜き出しを可能にする。
固定機構の例
固定機構1350及び1450の様々な実施例を以下に説明する。各実施例は、当業者であれば本明細書の記載から理解するように、固定機構1350及び1450の一方又は両方として好適に使用できる。例えば、いくつかの実施例は、開口している管腔前端部を有するプッシュワイヤ管腔を必要とし、したがって、植込み型装置1310の一部としての使用に適している。別の実施例は、閉じた(漏れの発生しない)管腔前端部を有するプッシュワイヤ管腔もしくは膨張管腔と共に使用することができ、したがって、植込み型装置1410の一部としての使用に適している。このような実施例は、本主題に係る様々な固定機構を限定するものではなく、例示である。
1.プッシュワイヤを介した固着/解放
様々な実施形態において、固定機構(例えば、固定機構1350又は1450)は、プッシュワイヤ(例えば、プッシュワイヤ1324、1524又は1624)を介して伝達されるエネルギーを受けることによって、植込み型装置(例えば、植込み型装置1310又は1410)を組織に固着させる。別の様々な実施形態においては、固定機構は、プッシュワイヤを介して伝達された別のエネルギーを受けることによって、植込み型装置を組織から解放させることもできる。
1.1.プッシュワイヤの長手方向の動きの利用
様々な実施形態において、固定機構は、長手方向前方へのプッシュワイヤの動きによって組織の一部分と係合し、長手方向逆向きのプッシュワイヤの動きによって組織の係合部分を捕捉することによって、植込み型装置を組織に固着させる(すなわち作動する)ことが可能である。プッシュワイヤの長手方向前方への動きは、プッシュワイヤを押すこと、すなわち、導管前端部に向かって力を加えることによって起こる。プッシュワイヤの長手方向逆向きの動きは、固定機構の種類に応じて、プッシュワイヤを引くこと、かつ/又は、押圧を停止することによって起こる。他の様々な実施形態では、固定機構は、プッシュワイヤの長手方向の追加の動きを利用して組織の捕捉された部分を押し出すことによって、再び組織の別の部分を捕捉することなく、植込み型装置を組織から解放させる(すなわち、非作動状態になる)ことができる。いくつかの実施形態では、固定機構は、植込み型装置がまだ患者の体内にある間に組織の別の部分を意図せず係合して捕捉することを防ぐために、植込み型装置が組織から解放された後は非作動状態に維持される。様々な実施形態においては、植込み型装置は、プッシュワイヤを用いて固定機構を操作することなく(すなわち、固定機構を非作動状態にせずに)、組織の捕捉された部分から引き離すことによって組織から解放させることができ、この方法は「引き抜き解放」と称される。植込み型装置は、許容程度を超える組織及び/又は装置の損傷を発生させることなく引き抜き解放を行えるように構成される。例えば、固定機構が作動している状態で、組織の捕捉された部分から植込み型装置を引き抜くために必要な引張力(「引き抜き力」と称される)の量は、植込み型装置が患者の体内で破壊されることを防止できる程度に小さくする必要がある。
【0058】
様々な実施形態において、引き抜き力の量は、実験によって決定され、固定機構の設計における制約事項として考慮される。引き抜き力の大きさは、組織内での植込み型装置の移動の防止に要する力よりも大きくする必要があるが、許容程度を超える組織及び/又は装置の損傷を発生させる引張力よりも小さくなければならない。例えば、過度の引き抜き力によって植込み型装置の導管が破壊されて、装置の前部が患者の体内に残った場合、除去に外科手術が必要となる場合もある。試作の植込み型装置を使用した実験では、約2.267キログラム(5ポンド)の引張力で導管が損傷する可能性があることがわかった。組織内における植込み型装置の許容程度を超える移動を防止するために必要な引張力は、約0.453キログラム(約1ポンド)であった。したがって、固定機構は、引き抜き解放を可能にするために、引き抜き力が約0.907~1.184キログラム(2~4ポンド)であるように設計する必要がある。
【0059】
図17A及び図17Bに、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ1324と共に使用される植込み型装置1710の前端部を示す。植込み型装置1710は植込み型装置1310の一例であり、固定機構1350の一例である固定機構1750を備えている。図17に示すように、植込み型装置1710の前端部は、導管前端部1714Bを有する長尺状の導管1714の前部を含む。プッシュワイヤ管腔1717は、導管1714内を長手方向に延び、管腔前端部1717Bを有している。
【0060】
固定機構1750は、コイルばね1752及び装置先端部1753を有している。図17Aは、伸長位置のばね1752を示している。図17Bは、静止位置(すなわち、自然長)のばね1752を示している。ばね1752は、導管前端部1714Bに連結されたばね後端部1752Aと、ばね前端部1752Bとを有している。装置先端部1753は、ばね前端部1752Bに連結されて、プッシュワイヤ前端部1326Bを受容しており、ばね1752を伸ばすためにプッシュワイヤ1324によって前方に押される。ばね1752は、プッシュワイヤ1324の長手方向前方への動きを利用して伸長することによって(図17A)組織の一部分と係合し、プッシュワイヤ1324の長手方向逆向きの動きを利用して静止位置に戻ることによって(図17B)組織の係合した部分を捕捉し、これによって、植込み型装置1710を組織に固着させる。固着を適切に安定させるために、プッシュワイヤ1324を長手方向に前後に繰り返し移動させる必要がある場合もある。ばね1752は、プッシュワイヤ1324の長手方向の追加の動きを利用して組織の捕捉された部分を押し出すことによって、再び組織の別の部分を捕捉することなく、植込み型装置1710を組織から解放させることができる。解放後に、ばね1752が組織の別の部分に係合して捕捉することを防止するために、ばね1752を伸長位置に維持しながら、組織の捕捉された部分から植込み型装置1710を遠ざけることができる。様々な実施形態においては、(ばね1752を伸長させるために)プッシュワイヤ1324を用いることなく、組織の捕捉された部分から引き離すことによって植込み型装置1710を組織から解放させることができる(引き抜き解放)。植込み型装置1710は、許容程度を超える組織及び/又は装置の損傷を発生させることなく引き抜き解放できるように構成できる。
【0061】
図18A図18Cに、本主題の様々な実施形態に係る、ばね1752の作製に使用できる各ワイヤを示す。様々な実施形態では、ばね1752は金属製であり、複数の巻回部を有している。ばね1752に捕捉された組織部分の生存を維持するために、静止状態で巻回部間には隙間が空いている。様々な実施形態では、ばね1752は金属ワイヤから形成される。金属ワイヤの例としては、図18Aに示すワイヤ1852A、図18Bに示すワイヤ1852B及び図18Cに示すワイヤ1852Cが示されている。金属ワイヤ1852Aは、半円形の断面を有している。半円形の断面を有するワイヤの平坦面は、円形の断面を有するワイヤと比較して、組織に対するグリップ力が高い。金属ワイヤ1852Bは、巻回部間に隙間を形成するために、ワイヤに凹部1855及び/又は1856を有する概して長方形の断面を有している。ワイヤの長方形の断面は、ばねが静止位置又は圧縮位置にあるときに巻回部が入れ子状態になることを防ぐ。金属ワイヤ1852Cは、巻回部間に隙間を形成するために、ワイヤに凸部1857を有する略半円形の断面を有している。金属ワイヤの他の例としては、円形断面を有する金属線や、編組ワイヤが挙げられる。様々な実施形態において、金属ワイヤは、伸長位置にあるばねによる組織の一部分の係合及び/又は静止位置にあるばねによる組織の係合部分の捕捉を容易にし、かつ、植込み型装置の使用期間にわたって、静止位置にあるばねに捕捉された組織の生存を維持できる任意の断面及び/又は特徴を有することができる。
【0062】
様々な他の実施形態では、ばね1752は、格子状チューブ(例えば、血管内ステントと同様の構造)又はデュロメータ硬度の高い螺旋状シリコーンチューブであってもよい。ばね1752は、生体適合性を有し、伸長と静止位置への復帰との1つ又は複数のサイクルによって組織の一部分を係合及び捕捉できる任意の構造を有することができる。
【0063】
図19に、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ1624と共に使用される植込み型装置1710の前端部を示す。図19は、図17のプッシュワイヤ1324の代わりにプッシュワイヤ1624が使用されている点で図17とは異なっている。プッシュワイヤ1624は、プッシュワイヤ1624を用いてばねを伸長させて、植込み型装置1710を組織に固着させる際に、組織の一部分をばね1752に係合させることを容易にするため、かつ/又は、植込み型装置1710を組織から解放させる際に、組織の一部分をばねから押し出すことを容易にするために使用される。固着時には、シリンジ1958を使用して、プッシュワイヤ1624のコア管腔1652の前側開口部1652Bを介して流体(空気等)を吸引できる。これによって、管腔1652内の圧力が下がり、ばね1752の巻回部間の隙間に組織がさらに引き込まれる。解放時には、シリンジ1958を使用して、プッシュワイヤ1624のコア管腔1652の前側開口部1652Bを介して流体(生理食塩水等)が注入される。これにより、ばね1752の巻回部間の隙間に位置していた組織の部分がばね1752から押し出される。
【0064】
図20A図20Cに、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ2024と共に使用される植込み型装置2010の前端部を示す。植込み型装置2010は植込み型装置1310の一例であり、固定機構1350の別の例である固定機構2050を備えている。図20に示すように、植込み型装置2010の前端部は、導管前端部2014Bを有する長尺状の導管2014の前部を含む。プッシュワイヤ管腔2017は、導管2014内を長手方向に延び、管腔前端部2017Bを有している。プッシュワイヤ2024は、プッシュワイヤ1324の一例であり、長尺状のプッシュワイヤ本体2026と、固定機構2050を操作するように構成されたプッシュワイヤ前端部2026Bとを有している。
【0065】
固定機構2050は、導管前端部2014Bに連結された挟み具2064を有している。図20Aは、開いた状態の挟み具2064を示す側断面図である。図20Bは、閉じた状態の挟み具2064を示す側断面図である。図20Cは、閉じた状態の挟み具2064を示す端面図である。挟み具2064は、プッシュワイヤ2024の長手方向前方への動きを利用して開くことによって(図20A)組織の一部分と係合し、プッシュワイヤ2024の長手方向逆向きの動きを利用して閉じることによって(図20B)、組織の係合部分を捕捉し、これによって植込み型装置2010を組織に固着させる。挟み具2064は、プッシュワイヤ2024の長手方向の別の動きを利用して組織の捕捉された部分を押し出すことによって、再び組織の別の部分を捕捉することなく、植込み型装置2010を組織から解放させることができる。解放後に、挟み具2064が組織の別の部分に係合して捕捉することを防止するために、挟み具2064を開いた状態で、組織の捕捉された部分から植込み型装置2010を遠ざけることができる。様々な実施形態においては、植込み型装置2010は、プッシュワイヤ2024を用いることなく、組織の捕捉された部分から引き離すことによって組織から解放させることができる(引き抜き解放)。植込み型装置2010は、許容程度を超える組織及び/又は装置の損傷を発生させることなく引き抜き解放できるように構成される。
【0066】
プッシュワイヤ前端部2026Bは、挟み具2064を開くために適した形状を有している。様々な実施形態では、挟み具2064は、X線マーカとして機能するために、タンタル又はニチノール(ニッケルとチタンの合金)等の放射線不透過性材料を含んでいる。
1.2.プッシュワイヤの回転運動の利用
様々な実施形態において、固定機構は、締付回転方向にプッシュワイヤを回転させることによって植込み型装置を組織に固着させる(すなわち作動する)ことができる。他の様々な実施形態において、固定機構は、弛緩回転方向にプッシュワイヤを回転させることによって植込み型装置を組織から解放させる(すなわち非作動状態になる)ことができる。一実施形態では、締付回転方向は時計回りの方向であり、弛緩回転方向は反時計回りの方向である。別の実施形態では、締付回転方向は反時計回りの方向であり、弛緩回転方向は時計回りの方向である。様々な実施形態において、植込み型装置は、プッシュワイヤを用いて固定機構を操作することなく、組織の捕捉された部分から引き離すことによって植込み型装置を組織から解放させることができる(すなわち、固定機構を非作動状態にしない引き抜き解放)。植込み型装置は、許容程度を超える組織及び/又は装置の損傷を発生させることなく引き抜き解放を行えるように構成される。例えば、固定機構が作動している状態で、組織の捕捉された部分から植込み型装置を引き抜くために必要な力の量は、植込み型装置が患者の体内で破壊されることを防止できる程度に小さくする必要がある。
【0067】
図21に、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ2124と共に使用される植込み型装置2110の前端部を示す。植込み型装置2110は植込み型装置1310又は1410の一例であり、固定機構1350又は1450の別の例である固定機構2150を備えている。図21に示すように、植込み型装置2110の前端部は、導管前端部2114Bを有する長尺状の導管2114の前部を含む。プッシュワイヤ管腔1317又は膨張管腔1415の一例である管腔2117は、導管2114内を長手方向に延び、管腔前端部2117Bを有している。プッシュワイヤ2124は、プッシュワイヤ1324の一例であり、長尺状のプッシュワイヤ本体2126と、固定機構2150を操作するように構成されたプッシュワイヤ前端部2126Bとを有している。
【0068】
固定機構2150は、基部2167と、基部2167に連結された螺旋部2166とを有する螺旋アセンブリである。基部2167は、導管前端部2114Bで管腔2117に連結され、プッシュワイヤ2124のプッシュワイヤ前端部2126Bと係合するように構成されている。植込み型装置2110は、螺旋部2166が組織に入るようにプッシュワイヤ2124(基部2167に係合している)を締付回転方向に回転させることによって、組織に固着される。固着後には、プッシュワイヤ2124を弛緩回転方向に回転させることによって、植込み型装置2110を組織から解放させることができる。いくつかの実施形態では、螺旋部2166は、植込み型装置2110を組織から単に引っ張ることによって、植込み型装置2110を組織から解放できるように構成されている(引き抜き解放)。例えば、螺旋部2166は複数の巻回部を有していてもよく、引き抜き解放によって生じると予測される組織及び/又は植込み型装置2110の損傷を許容程度に抑えるようにサイズ設定してもよい。様々な実施形態では、螺旋部2166の巻回部の数は、締付回転運動の程度を制御することによって引き抜き力の量を制御できるように決定される。引き抜き力の量は、植込み型装置が固着される組織の種類(例えば、脂肪、筋肉又は瘢痕組織)によって異なり、患者によって異なる場合もある。植え込み処置中、処置を行う医師は、例えば、植込み型装置を引いて引き抜き力を感じながら締付回転運動を段階的に行うことによって、実際に組織に入れる螺旋部2166の巻回部の数を決定することができる。
【0069】
様々な実施形態においては、プッシュワイヤ管腔及び膨張管腔の両方として機能する管腔2117を備えたシングルルーメン型の植込み型装置として植込み型装置2110を構成するために、基部2167が水密性を有するように管腔2117に連結される。様々な他の実施形態では、基部2167は、別個の膨張管腔を有するマルチルーメン型の植込み型装置のプッシュワイヤ管腔に連結される。
【0070】
図22図24を参照して、固定機構2150を備えた植込み型装置2110のいくつかの例を以下に説明する。様々な実施形態において、固定機構2150(図22図24を参照して以下に記載する様々な実施例を含む)を構成する材料を選択する際の考慮すべき点としては、例えば、長期植え込みのための生体適合性、MRI(磁気共鳴画像法)の安全性、放射線不透過性及び複数の材料が使用される場合には電食に対する耐性等が挙げられる。適切な材料の例としては、チタン、ニチノール(ニッケルチタン)、タンタル及びプラチナイリジウム等が挙げられる。
1.2.1.ネジ付スリーブ内で回転する基部を有する螺旋部
図22Aに、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ2124と共に使用される植込み型装置2210の前端部を示す。植込み型装置2210は植込み型装置2110の一例であり、螺旋アセンブリであるとともに固定機構2150の一例である固定機構2250を備えている。図22Aに示すように、植込み型装置2210の前端部は、導管前端部2214Bを有する長尺状の導管2214の前部を含む。プッシュワイヤ管腔(プッシュワイヤ管腔1317等)として機能するか、又はプッシュワイヤ管腔及び膨張管腔(膨張管腔1415)として機能する管腔2217は、導管2214内を長手方向に延び、管腔前端部2217Bを有している。プッシュワイヤ2124は、プッシュワイヤ1324の一例であり、長尺状のプッシュワイヤ本体2126と、固定機構2250を操作するように構成されたプッシュワイヤ前端部2126Bとを有している。
【0071】
導管2214は、導管前端部2214Bで管腔2217の面に付着しているネジ付スリーブ2270を有している。固定機構2250は、ネジ付基部2267と、ネジ付基部2267に連結された螺旋部2266とを有している。ネジ付基部2267及びネジ付スリーブ2270は互いに嵌合しており、ネジ付基部2267はネジ付スリーブ2270内で回転することによって長手方向に移動できるように構成されている。ネジ付基部2267は、プッシュワイヤ2124を締付回転方向に回転させることによって螺旋部2266が管腔2217から出て組織に入るように、かつ、プッシュワイヤ2124を弛緩回転方向に回転させることによって螺旋部2266が組織から解放されて管腔2217内に後退するように、プッシュワイヤ2124のプッシュワイヤ前端部2126Bと係合している。また、螺旋部2266は、組織及び/又は植込み型装置2210に許容程度を超える損傷を発生させることなく、組織から植込み型装置2210を単に引っ張ることによって、組織から螺旋部2266を解放できるように構成されている(引き抜き解放)。ネジ付スリーブ2270の大きさ及び導管2214内での位置は、螺旋部2266を完全に導管2214内に配置できるように設定される。これによって、患者に対する挿入中に、螺旋部2266を植込み型装置2210の外面から適宜離すことができる。
【0072】
様々な実施形態においては、プッシュワイヤ管腔及び膨張管腔の両方として機能する管腔2217を備えたシングルルーメン型の植込み型装置として植込み型装置2210を構成するために、ネジ付基部2267及びネジ付スリーブ2270が水密性を有するように構成される。他の様々な実施形態では、ネジ付スリーブ2270は、管腔2217がプッシュワイヤ管腔(膨張管腔とは別に形成される)であるマルチルーメン型の植込み型装置のプッシュワイヤ管腔に付着される。
【0073】
図22Bは、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ2124と共に使用される植込み型装置2210の前端部を示す別の図である。図22Aは、シングルルーメン型の植込み型装置又はマルチルーメン型の植込み型装置のいずれかである、植込み型装置2210の前端部の上面図である。図22Bは、植込み型装置2210の前端部の側面図である。膨張管腔2215は、植込み型装置2210の調節可能な膜要素(図示せず)のチャンバと連通する管腔前側開口部2215Bを有している。膨張管腔2115は、導管2214内で終端するように製造されているか、導管前端部2214Bが塞がれていることによって、水密性を有している。
1.2.2.ブッシング内で回転する基部を有する螺旋部
図23に、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ2124と共に使用される植込み型装置2310の前端部を示す。植込み型装置2310は植込み型装置2110の別の例であり、螺旋アセンブリであるとともに固定機構2150の別の例である固定機構2350を備えている。図23に示すように、植込み型装置2310の前端部は、導管前端部2314Bを有する長尺状の導管2314の前部を含む。プッシュワイヤ管腔(プッシュワイヤ管腔1317等)として機能するか、又はプッシュワイヤ管腔及び膨張管腔(膨張管腔1415等)として機能する管腔2317は、導管2314内を長手方向に延び、管腔前端部2317Bを有している。プッシュワイヤ2124は、プッシュワイヤ1324の一例であり、長尺状のプッシュワイヤ本体2126と、固定機構2350を操作するように構成されたプッシュワイヤ前端部2126Bとを有している。
【0074】
導管2314は、導管前端部2314Bで管腔2317の面に付着しているブッシング2371を有している。固定機構2350は、基部2367と、基部2367に連結された螺旋部2366とを有している。基部2367は、固定機構2350が導管2314に対して長手方向に移動することなく、基部2367がブッシング2371内で回転できるように構成されている。基部2367は、プッシュワイヤ2124を締付回転方向に回転させることによって螺旋部2366が組織に入るように、かつ、プッシュワイヤ2124を弛緩回転方向に回転させることによって螺旋部2366が組織から解放されるように、プッシュワイヤ2124のプッシュワイヤ前端部2126Bと係合している。また、螺旋部2366は、組織及び/又は植込み型装置2310に許容程度を超える損傷を発生させることなく、組織から植込み型装置2310を単に引っ張ることによって、組織から螺旋部2366を解放できるように構成されている(引き抜き解放)。固定機構2350は、螺旋部2366が完全に又は実質的に導管2314の外側に配置されるように構成される。螺旋部2366の直径は、管腔2317の直径によって制限されない。図示の実施形態では、螺旋部2366の直径は管腔2317の直径よりも大きく、管腔前端部2317Bが導管2314の前端部の中心にあるとき、導管2314の直径と実質的に同じである。様々な実施形態において、螺旋部2366の直径は、管腔2317の直径に対してより大きくても、実質的に同じでも、より小さくてもよく、植え込まれた植込み型装置2310を正しい位置に保持するために要する力の量に基づいて決定できる。
【0075】
様々な実施形態においては、プッシュワイヤ管腔及び膨張管腔の両方として機能する管腔2317を備えたシングルルーメン型の植込み型装置として植込み型装置2310を構成するために、基部2367及びブッシング2371が水密性を有するように構成される。他の様々な実施形態では、ブッシング2371は、膨張管腔に加えて、管腔2317がプッシュワイヤ管腔として機能するマルチルーメン型の植込み型装置のプッシュワイヤ管腔に付着されている。植込み型装置2310のこのようなマルチルーメン型の実施形態におけるプッシュワイヤ管腔及び膨張管腔の相対位置は、図22Bに示される植込み型装置2210と同じ又は同様であってもよい。
1.2.3.植込み型装置に固定された基部を有する螺旋部
図24に、本主題の一実施形態に係る、プッシュワイヤ2124と共に使用される植込み型装置2410の前端部を示す。植込み型装置2410は植込み型装置2110の別の例であり、螺旋アセンブリであるとともに固定機構2150の別の例である固定機構2450を備えている。図24に示すように、植込み型装置2410の前端部は、導管前端部2414Bを有する長尺状の導管2414の前部を含む。プッシュワイヤ管腔(プッシュワイヤ管腔1317等)として機能するか、又はプッシュワイヤ管腔及び膨張管腔(膨張管腔1415)として機能する管腔2417は、導管2414内を長手方向に延び、管腔前端部2417Bを有している。プッシュワイヤ2124は、プッシュワイヤ1324の一例であり、長尺状のプッシュワイヤ本体2126と、固定機構2450を操作するように構成されたプッシュワイヤ前端部2126Bとを有している。
【0076】
固定機構2450は、基部2467と、基部2467に連結された螺旋部2466とを有している。基部2467は、付着部2472(接着層等)を介して、導管前端部2414Bにおいて管腔2417に付着している。基部2467は、プッシュワイヤ2124を締付回転方向に回転させることによって螺旋部2466が組織に入るように、かつ、プッシュワイヤ2124を弛緩回転方向に回転させることによって螺旋部2466が組織から解放されるように、プッシュワイヤ2124のプッシュワイヤ前端部2126Bと係合している。基部2467は管腔2417に付着しているため、プッシュワイヤ2124が基部2467と係合して回転すると、植込み型装置2410全体が螺旋部2466と共に回転する。また、螺旋部2466は、組織及び/又は植込み型装置2410に許容程度を超える損傷を発生させることなく、組織から植込み型装置2410を単に引っ張ることによって、組織から螺旋部2466を解放できるように構成されている(引き抜き解放)。螺旋部2466の直径は、管腔2417の直径によって制限されない。図示の実施形態では、螺旋部2466の直径は、管腔2417の直径と実質的に同一である。様々な実施形態において、螺旋部2466の直径は、管腔2417の直径に対してより大きくても、実質的に同じでも、より小さくてもよく、植え込まれた植込み型装置2410を正しい位置に保持するために要する力の量に基づいて決定できる。
【0077】
様々な実施形態においては、プッシュワイヤ管腔及び膨張管腔の両方として機能する管腔2417を備えたシングルルーメン型の植込み型装置として植込み型装置2410を構成するために、付着部2472によって基部2467が管腔2417に対して水密性を有するように付着及び密着している。他の様々な実施形態では、基部2467は、膨張管腔に加えて、管腔2417がプッシュワイヤ管腔として機能するマルチルーメン型の植込み型装置のプッシュワイヤ管腔に付着している。植込み型装置2410のこのようなマルチルーメン型の実施形態におけるプッシュワイヤ管腔及び膨張管腔の相対位置は、図22Bに示される植込み型装置2210と同じ又は同様であってもよい。マルチルーメン型の植込み型装置と比較すると、シングルルーメン型の植込み型装置は、プッシュワイヤ管腔の直径がより大きいため、より直径の大きいプッシュワイヤを収容できる。直径の大きいプッシュワイヤは、固着又は解放時に、より大きいトルクで植込み型装置2410を回転させることができる。植込み型装置2410がシングルルーメン型の植込み型装置(植込み型装置1410の例等)である様々な実施形態では、植込み型装置2410は、(1)セプタム(セプタム1418等)を介して再度挿入されたプッシュワイヤ2124を弛緩回転方向に回すことによって植込み型装置2410の完全な状態を維持する、(2)後側ポート(後側ポート1416等)を切断し、プッシュワイヤ2124を直接的に管腔2417に再挿入して弛緩回転方向に回す、又は(3)プッシュワイヤ2124を使用せずに植込み型装置2410を引き出す(引き抜き解放)ことによって植込み型装置を患者から取り出す。
2.管腔を介した固着/解放
様々な実施形態において、固定機構(固定機構1350又は1450等)は、管腔(植込み型装置1310のプッシュワイヤ管腔1315、植込み型装置1410の膨張管腔1415、プッシュワイヤ1524のコア管腔1552又はプッシュワイヤ1624のコア管腔1652等)を介して伝達されたエネルギーを受けることによって、植込み型装置(植込み型装置1310又は1410等)を組織に固着させる。他の様々な実施形態においては、固定機構は、管腔を介して伝達された別のエネルギーを受けることによって、植込み型装置を組織から解放させることもできる。様々な実施形態において、固定機構は、管腔に1つ又は複数の流体を流すことによって、液圧で制御してもよい(例えば、液圧によって作動し、かつ/又は、液圧によって作動停止する)。
2.1.管腔を介して伝達される圧力の利用
様々な実施形態においては、組織への植込み型装置の固着を容易化するために、組織の一部分へのアクセスを提供する植込み型装置の管腔又はプッシュワイヤの中の流体を抜き出して低圧又は真空を発生させることによって、組織の一部分を固定機構に係合させて、固定機構内に捕捉する。管腔は、組織へのアクセスを可能にする1つ又は複数の前側開口部を有している。このような管腔の例としては、植込み型装置の1つ又は複数の前側開口部を有するプッシュワイヤ管腔と、中空プッシュワイヤの1つ又は複数の前側開口部を有するコア管腔とが挙げられる。他の様々な実施形態においては、植込み型装置を組織から解放しやすくするために、管腔に流体を注入して液圧を発生させることによって、組織の捕捉された部分を固定機構から押し出す。管腔に対する流体の抜き出し及び注入は、管腔にシリンジを連結することによって実行できる。
【0078】
この圧力方法は、組織の一部分の係合及び押し出しを容易化するために、プッシュワイヤを用いて組織の一部分を固定機構と係合させ、組織の係合部分を捕捉することによって組織に植込み型装置を固着させ、プッシュワイヤを用いて組織の捕捉された部分を押し出すことによって植込み型装置を解放させるように構成された別の固定方法と共に用いてもよい。このような方法の一例は、図19を参照して前述した。
2.2 管腔を介して伝達されるエネルギーの利用
様々な実施形態では、固定機構は、管腔を介して液体を受容することによって、植込み型装置を組織に固着させる。液体によって固定機構の熱的又は化学的な反応が生じ、組織の一部分が固定機構内に係合されて、固定機構内に捕捉される。別の様々な実施形態では、固定機構は、管腔を介して別の液体を受容することによって、植込み型装置を組織から解放させる。液体によって固定機構の別の熱的又は化学的な反応が生じ、組織の捕捉された部分が固定機構内から押し出される。シリンジを管腔に連結して液体を注入してもよい。
【0079】
一実施形態においては、固定機構が挟み具を有している。開放閾値温度を超える高温の液体が送達されることによって挟み具が開いて組織の一部分を受容し、閉鎖閾値温度未満の低温の液体が送達されることによって挟み具が閉じて組織の受容された部分を捕捉することによって、植込み型装置を組織に固着させる。一実施形態においては、図20に示すように、植込み型装置2010が挟み具2064を有している。挟み具2064は、熱的に制御可能な材料で形成されており、温度を変化させることによって挟み具2064の状態が変化する。挟み具2064は、プッシュワイヤ2024の代わりに用いてもよいし、追加的に用いてもよい。この実施形態では、挟み具2064は、管腔内に高温の液体が注入されると開き、管腔内に低温の液体が注入されると閉じる。高温の液体及び低温の液体は、温度の異なる同一の液体(例えば生理食塩水)であってもよい。
固定方法の例
図25は本主題の一実施形態に係る、植込み型装置を組織に固着させる方法2580を示すフローチャートである。様々な実施形態において、植込み型装置は、生体の組織内の体管腔の制御可能な接合を行うことによって、例えば、患者の尿失禁を治療する。植込み型装置の例には、本明細書に記載された様々な実施形態の植込み型装置のすべてが含まれるが(例えば、植込み型装置110、910、1010、1310、1410、1710、2010、2110、2210、2310及び2410)、これらに限定されない。一例においては、以下に説明する方法2580は、プッシュワイヤ(植込み型装置を配置するための手術器具として使用される)を使用して、固定機構の操作(作動及び任意の作動停止)を行うが、これに限定されない。
【0080】
2581で、植込み型装置が提供される。植込み型装置は、調節可能な膜要素(バルーンとも称される)及び長尺状の導管を有している。調節可能な膜要素は、チャンバを画定している内面を有する連続壁を備えている。長尺状の導管は、導管外周面、導管後端部、導管前端部及びプッシュワイヤ管腔を有している。導管外周面は、導管前端部又はその付近において調節可能な膜要素に接続及び密着している。プッシュワイヤ管腔は、導管内を長手方向に延びているとともに、プッシュワイヤの一部分を受容するための入口と、プッシュワイヤの受容された部分の収容に適した直径とを有している。植込み型装置は、導管後端部で導管に恒久的に又は離脱可能に連結された後側ポートを有していてもよい。2281で提供される植込み型装置の例としては、本明細書に記載された植込み型装置110、910及び1010ならびにこれらの様々な実施形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
2582において、植込み型装置に、組織内に植え込まれた後の植込み型装置の変位を抑制するための固定機構が設けられる。つまり、植込み型装置は固定機構も有している。このような植込み型装置2281の例としては、本明細書に記載された植込み型装置1310、1410、1710、2010、2110、2210、2310及び2410ならびにこれらの様々な実施形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
2583で、固定機構を作動させることにより、植込み型装置が組織に固着される。様々な実施形態において、治療効果の向上を目的とした植込み型装置の組織への再配置や、組織からの除去が必要になる場合もある。この場合、2584において任意選択的に、固定機構を非作動状態にすることによって、植込み型装置を組織から解放させる。いくつかの実施形態では、固定機構を非作動状態にすることなく、植込み型装置を引っ張ることによって、植込み型装置を組織から解放させる(引き抜き解放)。このような実施形態では、固定機構は、組織及び/又は植込み型装置に発生する可能のある損傷の程度を許容程度内に制限するように構成される。例えば、固着力は、植込み型装置が引き抜かれるときに植込み型装置の導管が破壊されない程度の量に制限する必要がある。
【0083】
様々な実施形態では、2583において、固定機構を作動させて組織の一部分を固定機構内に捕捉することによって、植込み型装置を組織に固着させる。2584では、固定機構を非作動状態にして組織の捕捉された部分を固定機構から解放することによって、又は単に植込み型装置を引っ張ることによって(引き抜き解放)、植込み型装置を組織から解放させる。他の様々な実施形態では、2583で、固定機構を作動させて固定機構の固着部材を組織内に延ばすことによって、植込み型装置を組織に固着させる。2584において、固定機構を非作動状態にして固定機構の固着部材を組織から後退させることによって、又は単に植込み型装置を引っ張ることによって(引き抜き解放)、植込み型装置を組織から解放させる。
【0084】
様々な実施形態においては、プッシュワイヤによってエネルギーを伝達することによって2583で固定機構を作動させる。任意選択的に、プッシュワイヤによって別のエネルギーを伝達して、2584で固定機構を非作動状態にしてもよい。2583で伝達されるエネルギー及び2584で伝達されるエネルギーは、同じ種類のエネルギーであってもよいし、種類の異なるエネルギーであってもよい。一実施形態では、固定機構は、プッシュワイヤの長手方向の動きによって作動し、任意選択的に、プッシュワイヤの別の長手方向の動きによって作動停止する。別の実施形態では、固定機構は、回転方向へのプッシュワイヤの回転運動によって作動し、任意選択的に、逆回転方向へのプッシュワイヤの回転運動によって作動停止する。さらに別の実施形態では、固定機構は、プッシュワイヤを用いて非機械的エネルギーを固定機構に送達することによって作動し、任意選択的に、プッシュワイヤを用いて別の非機械的エネルギーを固定機構に送達することによって作動停止する。このような実施形態では、固定機構の作動停止は任意であり、固定機構を非作動状態にすることなく、植込み型装置を単に引っ張ることによって植込み型装置を解放してもよい(引き抜き解放)。
【0085】
様々な実施形態においては、2583で固定機構を作動させるために管腔に流体を流す。任意選択的に、管腔に別の流体を流すことによって、2584で固定機構を非作動状態にする。この管腔は、植込み型装置の導管のプッシュワイヤ管腔及び/又はプッシュワイヤのコア管腔であってもよい。このような実施形態では、固定機構の作動停止は任意であり、固定機構を非作動状態にすることなく、植込み型装置を単に引っ張ることによって植込み型装置を解放してもよい(引き抜き解放)。
【0086】
本出願は、本主題の適用例又は変形例を含むよう意図されている。上記の詳細の説明は例示であり、限定的ではない。他の実施形態は、上記記載から当業者には明らかである。本主題の範囲は、特許請求の範囲及び特許請求の範囲が権利化されるところの法的均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
【国際調査報告】