(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】光学センサを備えた音響光学ハーモニックイメージング
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579983
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 US2021039551
(87)【国際公開番号】W WO2022006067
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520196081
【氏名又は名称】ディープサイト テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DeepSight Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】944 Lundy Lane,Los Altos,California United States 94024
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ダンファ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ラン
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ジャンガン
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE09
4C601EE01
4C601EE02
4C601EE04
4C601EE06
4C601GB41
4C601GB50
(57)【要約】
音響光学イメージングシステムは、基本周波数fを有する超音波信号を伝送する少なくとも1つの変換器を含み得る。音響光学イメージングシステムは、伝送された超音波信号に対応するハーモニック関係超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答を生成し得る、少なくとも1つの光学センサを含む。例えば、1つ以上の光学センサは、少なくともf/MからNfまでの範囲の帯域幅を有し得、M及びNは1より大きい整数である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本周波数fを有する超音波信号を伝送するように構成された少なくとも1つの変換器と、
前記伝送された超音波信号に対応するハーモニック又はサブハーモニック超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答を生成するように構成された少なくとも1つの光学センサと、
を備え、
前記前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともf/MからNfまでの範囲の帯域幅を有し、
M及びNは1より大きい整数である、音響光学イメージングシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともQfのスーパーハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Qは3又はそれ以上の整数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学センサは、2f又はfの周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともPfのウルトラハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Pは1より大きい非整数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともPfのウルトラハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Pは1より大きい非整数有理数である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光学センサは、f/Rのサブハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Rは1より大きい数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記基本周波数fは第1の基本周波数f
1であり、前記少なくとも1つの変換器は第2の基本周波数f
2を有する第2の超音波信号を発生させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光学センサは、1つ以上の線形結合nf
1+mf
2の周波数に対応する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
n及びmはnf
1+mf
2が正の数であるような整数である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
n及びmは正の整数である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光学センサの前記1つ以上の光学応答に基づいて、イメージを発生させるための命令を記憶するコンピュータ可読媒体を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光学センサの前記1つ以上の光学応答における変化に基づいて、イメージを発生させる命令を記憶するコンピュータ可読媒体を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータ可読媒体は、
前記変化に基づいて前記少なくとも1つの光学センサにおける各超音波エコーの大きさを計算すること、及び、
各超音波エコーの前記大きさを表示のためのピクセル値に変換すること、
を行う命令をさらに記憶する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記変化はスペクトルシフトを示し、
各光学応答は、前記スペクトルシフトより小さい半値全幅(FWHM)を伴う少なくとも1つのスペクトル共振特徴を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの変換器は、圧電変換器、容量性微小超音波変換器(CMUT)、ポリマ厚膜(PTF)変換器、光音響変換器、及び圧電微小超音波変換器(PMUT)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記複数の光学信号を1つ以上の光学検出器に伝搬するように構成された1つ以上の光学導波路に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記1つ以上の光学応答に対して光学的に透明な材料の閉ループを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記少なくとも1つの光学センサにおいてウィスパリングギャラリーモード(WGM)のセットの伝搬を可能にする、有効屈折率及び壁厚を有するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記少なくとも1つの光学センサの前記有効屈折率よりも低い有効屈折率を伴うポリマ構造に埋め込まれる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの光学センサの前記有効屈折率は、前記超音波エコーの受信の際に前記少なくとも1つの光学センサの光弾性効果に起因して変化する、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
基本周波数fを有する少なくとも1つの変換器を介して超音波信号を媒体に伝送することと、
前記伝送超音波信号に対応するハーモニック又はサブハーモニック超音波エコーを受信した際に、少なくとも1つの光学センサを介して1つ以上の光学応答を生成することと、を含み、
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともf/MからNfまでの範囲の帯域幅を有し、
M及びNは1より大きい整数である、音響光学イメージングのための方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともQfのスーパーハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Qは3又はそれ以上の整数である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの光学センサは、2f又はfの周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成された、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともPfのウルトラハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Pは1より大きい非整数である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの光学センサは、少なくともPfのウルトラハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Pは1より大きい非整数有理数である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの光学センサは、f/Rのサブハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
Rは2又はそれ以上の整数である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記基本周波数fは第1の基本周波数f
1であり、前記少なくとも1つの変換器は第2の基本周波数f
2を有する第2の超音波信号を発生させるように構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの光学センサは、1つ以上の線形結合nf
1+mf
2の周波数に対応する超音波エコーを受信した際に、前記1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成するように構成され、
n及びmはnf
1+mf
2が正の数であるような整数である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
n及びmは正の整数である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
コンピュータ可読媒体を介して、前記少なくとも1つの光学センサの前記1つ以上の光学応答に基づいてイメージを発生させること、
を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
コンピュータ可読媒体を介して、前記少なくとも1つの光学センサの前記1つ以上の光学応答における変化に基づいてイメージを発生させること、
を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
コンピュータ可読媒体を介して、前記変化に基づいて前記少なくとも1つの光学センサにおける各超音波エコーの大きさを計算すること、及び、
コンピュータ可読媒体を介して、各超音波エコーの前記大きさを表示のためのピクセル値に変換すること、
を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記変化はスペクトルシフトを示し、各光学応答は、前記スペクトルシフトより小さい半値全幅(FWHM)を伴う少なくとも1つのスペクトル共振特徴を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの変換器は、圧電変換器、容量性微小超音波変換器(CMUT)、ポリマ厚膜(PTF)変換器、光音響変換器、及び圧電微小超音波変換器(PMUT)のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記複数の光学信号を1つ以上の光学検出器に伝搬するように構成された1つ以上の光学導波路に結合される、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記1つ以上の光学応答に対して光学的に透明な材料の閉ループを備える、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記少なくとも1つの光学センサにおいてウィスパリングギャラリーモード(WGM)のセットの伝搬を可能にする、有効屈折率及び壁厚を有するように構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記少なくとも1つの光学センサの前記有効屈折率よりも低い有効屈折率を伴うポリマ構造に埋め込まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの光学センサの前記有効屈折率は、前記複数の超音波エコーの受信の際に、光弾性効果に起因して変化する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記媒体は非線形媒体である、請求項20に記載の方法。
【請求項40】
前記媒体は生体組織である、請求項20に記載の方法。
【請求項41】
1つ以上の基本周波数を有する1つ以上の超音波信号を媒体に伝送することと、
1つ以上の光学検出器の光学応答における少なくとも1つの変化を検出することと、
前記光学応答において前記検出された変化に基づいて、前記媒体のイメージを発生させることと、を含み、
前記光学応答における前記少なくとも1つの変化は、前記1つ以上の超音波信号に対応する超音波エコーを受信した際に生成され、
前記受信される超音波エコーの少なくとも一部は、前記1つ以上の基本周波数のスーパーハーモニック周波数、前記1つ以上の基本周波数のサブハーモニック周波数、前記1つ以上の基本周波数のウルトラハーモニック周波数、又は、前記1つ以上の基本周波数の線形結合である、周波数を有する、音響光学イメージングの方法。
【請求項42】
コンピュータ可読媒体を介して、前記少なくとも1つの光学センサの前記1つ以上の光学応答に基づいてイメージを発生させること、
を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
コンピュータ可読媒体を介して、前記少なくとも1つの光学センサの前記1つ以上の光学応答における変化に基づいてイメージを発生させること、
を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
コンピュータ可読媒体を介して、前記変化に基づいて前記少なくとも1つの光学センサにおける各超音波エコーの大きさを計算すること、及び、
コンピュータ可読媒体を介して、各超音波エコーの前記大きさを表示のためのピクセル値に変換すること、
を更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記変化はスペクトルシフトを示し、各光学応答は、前記スペクトルシフトより小さい半値全幅(FWHM)を伴う少なくとも1つのスペクトル共振特徴を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記複数の光学信号を1つ以上の光学検出器に伝搬するように構成された1つ以上の光学導波路に結合される、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記サブハーモニック周波数と前記スーパーハーモニック周波数との間の周波数レンジをカバーする帯域幅を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記1つ以上の光学応答に対して光学的に透明な材料の閉ループを備える、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記少なくとも1つの光学センサにおいてウィスパリングギャラリーモード(WGM)のセットの伝搬を可能にする、有効屈折率及び壁厚を有するように構成される、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記少なくとも1つの光学センサの前記有効屈折率よりも低い有効屈折率を伴うポリマ構造に埋め込まれる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの光学センサの前記有効屈折率は、前記複数の超音波エコーの受信の際に光弾性効果に起因して変化する、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記媒体は非線形媒体である、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記媒体は生体組織である、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2020年7月1日出願の米国特許出願第63/046,888号の優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は一般に音響光学イメージングの分野に関し、特に、超音波感知及びハーモニックイメージングのための光学センサを伴う方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 超音波感知は、多数の利点に起因して医用イメージングを含む様々な業界で使用される。例えば超音波感知は、著しい侵入深さを有する超音波信号を利用する。更に超音波イメージングは、非電離放射線に基づくものであるため、有利なことに非侵襲形のイメージングであるものと知られている。
【0004】
[0004] 従来の超音波感知は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ポリマ厚膜(PTF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び容量性微小超音波変換器(CMUT)などの、圧電材料を使用する。しかしながら、こうした従来の超音波感知に関連付けられた課題の1つは、それらの狭帯域幅である。したがって、従来の超音波感知の基礎的なイメージングよりも高い解像度、良好な侵入、及び少ないアーチファクトを取得するために、様々な周波数ハーモニクスを伴う超音波イメージングモードのための、新規の改良されたデバイス及び方法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 概して、いくつかの実施形態において、音響光学イメージングシステムは、各々がそれぞれの基本周波数(例えば基本周波数f)を有する1つ以上の超音波信号を伝送する少なくとも1つの変換器(例えば、1つの変換器、10の変換器、100の変換器など)を含み得る。少なくとも1つの変換器は、圧電変換器、容量性微小超音波変換器(CMUT)、ポリマ厚膜(PTF)変換器、光音響変換器、圧電微小超音波変換器(PMUT)などを含み得る。音響光学イメージングシステムは、伝送超音波信号に対応する、基本周波数、スーパーハーモニック、ウルトラハーモニック、サブハーモニック、又は、差分ハーモニック超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答を生成する広帯域音響応答を伴う、少なくとも1つの光学センサ(例えば、1つの光学センサ、10の光学センサ、100の光学センサ、など)を含む。
【0006】
[0006] 基本周波数は、元の伝送超音波信号の周波数として定義可能である。スーパーハーモニックは、元の伝送周波数又は基本周波数の整数の倍数として定義可能である。例えば、第2のスーパーハーモニックは、基本周波数が3メガヘルツ(MHz)であるとき、6MHzである。ウルトラハーモニックは、基本周波数より高いがスーパーハーモニックではない周波数として定義可能である。例えば、基本周波数が3MHzであるとき、1つの可能なウルトラハーモニックは4.5MHzである。サブハーモニックは、元の伝送周波数又は基本周波数の何分の1かとして定義可能である。例えば、基本周波数が3MHzであるとき、1つの可能なサブハーモニックは1.5MHzである。(例えば、少なくとも1つの変換器によって伝送される)伝送超音波信号が複数の周波数(例えば2つの周波数)を含むとき、場合によっては、音響光学イメージングシステムによってイメージングされる非線形媒体が、いわゆる差分ハーモニクスも生成し得る。例えば、伝送超音波信号が3MHz及び5MHzの両方の周波数を含む場合、1つの可能な差分ハーモニックは、5-3=2MHz周波数を含むことができる。場合によっては、少なくとも1つの光学センサ(例えば、ウィスパリングギャラリーモード(WGM)光学共振器、マイクロバブル共振器、マイクロスフェア共振器、マイクロディスク共振器)は、少なくともf/MからNfまでの範囲の音響応答帯域幅を伴う1つ以上の光学応答に対して光学的に透明な材料の閉ループを含み得、M及びNは1より大きい整数である。少なくとも1つの光学センサのこうした広帯域音響応答を活用することによって、音響光学イメージングシステムは、超音波信号の基本周波数、サブハーモニック、ウルトラハーモニック、スーパーハーモニック、及び/又は、差分ハーモニクスを使用し得る。結果として、こうした装置は、それほど複雑ではなく、費用効率の高い様式で容易に大量生産され得る。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態において、少なくとも1つの光学センサは、少なくともQfのスーパーハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成し得、Qは3又はそれ以上の整数(例えば、3f、6f、11f、など)スーパーハーモニック周波数)である。更に、少なくとも1つの光学センサは、2f又はfの周波数を有する超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成し得る。同様に、少なくとも1つの光学センサは、f/Rのサブハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成し得、Rは2又はそれ以上の整数(例えば、f/2、f/5、f/8など)である。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態において、少なくとも1つの光学センサは、少なくともQfのウルトラハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成し得、Qは1より大きい非整数(例えば、1.5f、2.5f、3.33fなど)である。同様に、少なくとも1つの光学センサは、f/Rのサブハーモニック周波数を有する超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成し得、Rは1より大きい非整数(例えば、f/1.5、f/2.75、f/4.33など)である。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態において、少なくとも1つの変換器は、第1の基本周波数f1を有する第1の超音波信号及び第2の基本周波数f2を有する第2の超音波信号を発生させ得る。更に、少なくとも1つの光学センサは、1つ以上の線形結合nf1+mf2の周波数に対応する超音波エコーを受信した際に、1つ以上の光学応答の少なくとも一部を生成し得る。パラメータn及びmは、線形結合nf1+mf2が正の数になるように選択される整数を表す。しかしながら、パラメータn及びmは、負の整数又は正の整数を含み得る。したがって、線形結合は、第1の基本周波数の倍数と第2の基本周波数の倍数との差であり得るか、又は、第1の基本周波数の倍数と第2の基本周波数の倍数との合計であり得る。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態において、音響光学イメージングシステムは、少なくとも1つの光学センサの1つ以上の光学応答に基づいてイメージを発生させるための命令を表すコードを記憶する、コンピュータ可読媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、変化に基づいて少なくとも1つの光学センサにおける各超音波エコーの大きさを計算することによって、また更に、各超音波エコーの大きさを表示のためのピクセル値に変換するためのコードを実行することによって、イメージを発生させるための命令を提供し得る。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態において、変化はスペクトルシフトを示し得る。少なくとも1つの光学センサは、各光学応答が、スペクトルシフトより小さい半値全幅(FWHM)を伴う少なくとも1つのスペクトル共振特徴を含むように、高い感度であり得る。場合によっては、少なくとも1つの光学センサは、高品質係数(Q値)を有するいくつかのスペクトル応答特徴(例えば、数十のスペクトル応答特徴、数百のスペクトル応答特徴など)を含み得る。いくつかのスペクトル応答特徴の各々は、少なくとも1つの光学センサを使用してイメージを形成するために検出されるスペクトルシフトよりも小さい可能性がある。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態において、少なくとも1つの光学センサは、少なくとも1つの光学共振器においてウィスパリングギャラリーモード(WGM)のセットを伝搬可能な、有効屈折率及び壁厚を有し得る。更に、少なくとも1つの光学センサは、複数の光信号を1つ以上の光学検出器に伝搬するために、1つ以上の光学導波路(例えば、光ファイバ、光集積回路導波路など)に結合され得る。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態において、少なくとも1つの光学センサのスペクトル応答特徴における変化は、超音波エコーの受信時の少なくとも1つの光学センサの光弾性効果に起因した、少なくとも1つの光学センサの有効屈折率における変化によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの光学センサは、少なくとも1つの光学センサの有効屈折率よりも低い有効屈折率を有するポリマ構造に埋め込まれ得る。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態において、音響光学イメージングの方法は、基本周波数fを有する少なくとも1つの変換器を介して超音波信号を媒体に伝送することを含み得る。更に方法は、伝送超音波信号に対応するハーモニック又はサブハーモニック超音波エコーを受信した際に、少なくとも1つの光学センサを介して1つ以上の光学応答を生成することを更に含む。少なくとも1つの光学センサは、少なくともf/MからNfまでの範囲の帯域幅を有し得、M及びNは1より大きい整数である。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態において、媒体は非線形媒体を含み得る。特に、いくつかの実施形態において、媒体は生体組織を含み得る。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態において、音響光学イメージングの方法は、1つ以上の基本周波数を有する1つ以上の超音波信号を媒体に伝送することを含み得る。1つ以上の信号は媒体上に入射し、結果として、媒体の視覚表現を形成可能な超音波エコーが生じ得る。更に方法は、1つ以上の光学検出器の光学応答における少なくとも1つの変化を検出することを含み得、少なくとも1つの変化は、超音波エコーを受信した際に生成される。受信される超音波エコーの一部は、スーパーハーモニック周波数、ウルトラハーモニック周波数、サブハーモニック周波数、又は、1つ以上の基本周波数の線形結合である、周波数を有し得る。方法は、光学応答において検出された変化に基づいて、媒体のイメージを発生させることも含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】[0017]例示の音響光学イメージングシステムを示す概略図である。
【
図2】[0018]光学センサの例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図3A】[0019]変換器の例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図3B】[0020]変換器の例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図3C】[0021]光学センサの例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図4】[0022]超音波信号に応答した光学センサの例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図5A】[0023]光学マイクロバブル/マイクロスフェア共振器の例示的幾何学形状を示す概略図である。
【
図5B】[0024]光学マイクロディスク共振器の例示的幾何学形状を示す概略図である。
【
図6A】[0025]光学センサのセットの例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図6B】[0025]光学センサのセットの例示的スペクトル応答を示す図である。
【
図6C】[0025]光学センサのセットの例示的スペクトル応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0026] 本発明の様々な態様及び変形例の非限定的な例を本明細書で説明し、添付の図面に示す。
【0019】
[0027] 本明細書で説明するように、光学センサに基づく音響光学イメージングシステムは、例えば、圧電又はCMUT変換器などの従来の変換器に基づいて超音波エコーを感知する超音波システムには見られないレベルでの、高感度及び広帯域応答を同時に達成可能である。この高感度及び広帯域応答を使用して、音響光学イメージングシステムは、従来の変換器によって発生させられるイメージよりも高い侵入深さ及び/又は高い空間分解能を伴う媒体の超音波イメージを発生させるために、広範な音響周波数を検出可能である。
【0020】
<ハーモニック音響光学イメージングシステム>
[0028]
図1に示されるように、音響光学イメージングシステム101は、1つ以上の変換器110及び1つ以上の光学センサ120を含み得る。変換器110は、イメージングのための媒体に向かって、基本周波数fを有する超音波信号111を発生させるように、及び/又は伝送するように、構成される。媒体は、例えば体組織などの非線形媒体とすることができる。光学センサ120は、超音波信号111と媒体との相互作用に応答して反響する超音波エコー121を受信した際に、光学応答を生成するように構成される。いくつかの変形例において、媒体を介する超音波信号111の伝搬は、基本周波数fを含む様々な周波数、及び、1つ以上のサブハーモニック周波数、1つ以上のウルトラハーモニック周波数、1つ以上のハーモニック及び/又はスーパーハーモニック周波数などを含むハーモニック関連周波数において、エコーを生成し得る。下記で更に説明するように、音響光学イメージングシステム101は、有利なことに広範囲のイメージングモード及び機能性のための、ハーモニックイメージング、ウルトラハーモニックイメージング、スーパーハーモニックイメージング、サブハーモニックイメージングなどを含む、様々なハーモニック関連イメージングを広く実行できるようにする、これらの特殊なハーモニック関連周波数を含む広範な周波数を検出するように構成され得る。単一の音響光学イメージングシステムにおける1つ以上の光学センサの使用も、より少ない超音波プローブを備えるイメージングシステムを可能にし、それによって、音響光学イメージングシステムの複雑さの低減及び効率性の向上につながることから、有利である。
【0021】
<変換器>
[0029] 超音波信号を発生させるため及び/又は伝送するための変換器110は、例えば、圧電変換器、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)変換器、ポリマ厚膜(PTF)変換器、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)変換器、容量性微小超音波変換器(CMUT)、圧電微小超音波変換器(PMUT)、光音響変換器、単結晶材料(例えば、LiNbO3(LN)、Pb(Mg1/3Nb2/3)-PbTiO3(PMN-PT)、及びPb(In1/2Nb1/2)-Pb(Mg1/3Nb2/3)-PbTiO3(PIN-PMN-PT))に基づく変換器、及び/又は、超音波信号を発生させるため及び/又は伝送するための任意の適切な構成要素を含み得る。更に、いくつかの変形例において、変換器110は、(例えば、光学センサ120からの信号と組み合わせて)イメージの発生で使用するための特定の制限された周波数において、超音波エコーを検出するように構成され得る。
【0022】
<光学センサ>
[0030] 光学センサ120は、高感度音響光学イメージングシステムを含む、高感度、高帯域幅の適用例に適したものであり得る。場合によっては、例えば、各光学センサ120は、何らかの許可された光の周波数を閉ループ内部で連続的に伝搬すること、及び、許可された光の周波数の光学エネルギーを閉ループ内に記憶することを可能にする、透明媒体の閉ループを含むことができる。例えば、光学センサ120は、光学センサ120の凹状表面を進行するウィスパリングギャラリーモード(WGM)の伝搬を可能にし、許可された周波数に対応して、センサの周囲を循環させることを可能にする。WGMからの各モードは、許可された光の周波数からの光の周波数の伝搬に対応する。前述のWGM共振器は、例えば、球体、ディスク、リング、バブル、円柱、及び/又は環状体の形で現れる可能性がある。それらは、共振器内を伝搬する光の波長における損失の低い、例えば赤外スペクトルウィンドウ内のシリカ及びシリコン、又は、中赤外ウィンドウ内のカルコゲニドなどの、光学透明材料で作ることができる。
【0023】
[0031] 光学センサ120は、有利なことに、許可された光の周波数が各光学センサ120の閉ループ内に長期間とどまることが可能であるという点で、高い品質係数を有することに少なくとも部分的に起因して、高い感度及び広い帯域幅を有する。光学センサ120の許可された光の周波数は、光学センサ120の幾何学パラメータ、透明媒体の屈折率、及び光学センサ120を取り囲む環境の屈折率に、少なくとも部分的に基づき得る。本明細書で説明する品質係数は、共振器内を伝搬する光が体験する損失によって決定され、損失は、材料吸収、材料及び構造の不均質性、放射消散、光散乱、外部導波路への結合レートによってもたらされ得る。
【0024】
[0032] 各光学センサ120は、光を受け取り、光を伝送し、(例えば、音響光学イメージングシステムにおける超音波イメージング又は他の感知適用例にとって)実際に有用であるために、外の世界に結合され得る。光学センサ120に基づく音響光学イメージングシステムは、超音波(例えば超音波エコー)に応答して、センサの光弾性効果及び/又は物理的変形を介して、超音波を直接検出し得る。例えば、超音波(又は任意の圧力波)の存在下で、共振器を進むWGMは、屈折率及び共振器の形状の変化によって生じるスペクトルシフトを経験する。スペクトル変化は、スペクトルドメイン及び光学センサ120との間の光伝送強度において、容易に監視及び分析可能である。追加の空間及び他の情報は、光学センサ120の監視及び分析によって更に導出可能である。
【0025】
<光学センサの例>
[0033] 前述のように、光学センサは、超音波感知及び/又は超音波イメージングなどの適用例での使用に有利な、高い品質係数及び広帯域のスペクトル応答、並びに様々な他の有益な特徴を有する。光学センサは、例えば、光学共振器(例えばWGM光学共振器)、マイクロバブル共振器、ファイバベース共振器、集積光共振器、マイクロディスク共振器などを含み得る。
【0026】
[0034]
図5Aに示されるように、少なくとも1つの光学センサは、光学マイクロバブル共振器などのウィスパリングギャラリーモード(WGM)光学共振器であり得る。光学マイクロバブル共振器は、例えば、ガラス、透明ポリマ、シリコン窒化物、二酸化チタン、又は、光学マイクロバブル共振器の動作波長において適切に光学的に透明な任意の他の材料などの、光学的に透明な材料で作ることができる。光学マイクロバブル共振器は、半径(R)の外側マイクロバブル表面及び半径(r)の内部マイクロバブル表面を含み、それによって、(R-r)と等価の共振器壁厚を定義する。光学マイクロバブル共振器の(WGMのセットの伝搬に起因する)共振周波数のセットは、高い感度の音響光学感知プローブに適した高品質係数を有することができる。一般に、WGM光学共振器の感度は、WGM光学共振器の品質係数を増加させることによって向上可能である。特に、こうした実施例において、感度は、光学マイクロバブル共振器の壁厚(R-r)によって制御可能である。超音波検出器として使用されるとき、光学マイクロバブル共振器は、本明細書で更に詳細に説明するように、低雑音等価圧力及び高帯域動作帯域幅を有することができる。
【0027】
[0035] いくつかの実施例において、光学センサは、光学導波路内を伝搬する光が光ファイバ内で結合し、光ファイバの周囲を伝搬するとき、光ファイバ及び光学導波路の断面において形成される感知ノードを含み得る。いくつかの変形例において、光学センサは集積光学共振器を含み得る。例えば、いくつかの変形例において、光学センサは、PCT出願第PCT/US2020/064094号及びPCT出願第PCT/US2021/022412号に記載のWGM光学共振器のうちのいずれかと同様であり得、これら出願の各々はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
[0036] 光学センサの内部及び/又は周辺の空間は、超音波強化材料などのポリマ構造で満たされ得る。例えば、光学センサは、ポリフッ化ビニリデン、パリレン、ポリスチレンなどで満たされ得る。超音波強化材料は、光学センサの感度を上げることができる。例えば超音波強化材料は、光学センサが超音波エコーのセットを受信することに応答して、超音波強化材料の屈折率が、(例えば、超音波エコーのセットによって誘発される機械的応力又はひずみを受け取った際に)光学センサの材料の屈折率よりも大きく変化するように、相対的に高い弾塑性光学係数を有することができる。ポリマ構造の有効屈折率は、光学センサの有効屈折率よりも低い可能性がある。
【0029】
[0037]
図5Bに示されるように、光学センサはマイクロディスク共振器であってよい。マイクロディスク共振器は、例えば、ガラス、透明ポリマ、シリコン窒化物、二酸化チタン、シリコン、又は、マイクロディスク共振器の中、上、及び/又は周辺で光を伝搬するのに適した任意の他の材料などの、光学的に透明な材料及び/又は光学的に不透明な材料で作ることができる。いくつかの変形例において、マイクロディスク共振器は、光学的に透明な材料及び光学的に不透明な材料の組み合わせで作られ得る。マイクロディスク共振器の(WGMのセットの伝搬に起因する)共振周波数のセットは、高感度の音響光学感知プローブに適した高品質係数を有することができる。
【0030】
[0038] いくつかの変形例において、光学センサにおける超音波の圧力が光学センサに含まれる材料の屈折率における変化を生じさせ得るため、前述の光学センサ(例えばWGM光学共振器)による超音波信号の感知が起こる。光学センサの中、上、及び/又は周辺で伝搬するWGMモードの厚み、並びに、光学センサの中、上、及び/又は周辺でのモード分布は、超音波感知のための空間ウィンドウと見なされ得る。超音波信号及び空間ウィンドウの畳み込みは、結果として光学センサの光学応答における変化を生じさせ得る。
【0031】
[0039]
図6Aから
図6Cは、光学センサ(例えばWGM光学共振器)のセットの例示的スペクトル応答である。
図6Aから
図6Cの各々の上部プロットは、光学WGM共振モードの物理的寸法/分布に対応する、概して矩形の空間ウィンドウを示す。場合によっては、入来する超音波エコーの周波数ドメイン内のスペクトル応答は、矩形空間ウィンドウと共に畳み込まれ得る。矩形空間ウィンドウとのスペクトル応答の畳み込みは、
図6Aから
図6Cの各々の下部プロットに示されるように、結果としてシンク関数を生じさせる。シンク関数は、各矩形空間ウィンドウのフーリエ変換(すなわち矩形関数)である。各矩形空間ウィンドウの異なる長さは、結果として、
図6Aから
図6Cの各々の下部に示されるように、周波数ドメイン内の異なるスペクトル応答を生じさせる。いくつかの変形例において、光学センサ(又は、更に言えば任意のセンサ)のセットの帯域幅は、スペクトル応答の振幅が特定の閾値(例えば0.5)より上である、周波数レンジとして定義され得る。
図6Aから
図6Cの比較は、より広い帯域幅(広帯域応答)が、WGM光学共振器の矩形空間ウィンドウを狭く設定することによって達成され得ることを示す。これに対して、
図6Aから
図6Cの比較は、狭い帯域幅が、WGM光学共振器の矩形空間ウィンドウを大きく設定することによって達成され得ることを示す。
図6Bに示されるように、狭いWGM光学共振器構造の場合、WGM共振モードの空間分布は、WGM光学共振器のジオメトリによって制約され得る。
図6Aに示されるように、より大きなWGM光学共振器構造の場合、WGM共振モードの空間分布は、WGM光学共振器のジオメトリによってそれほど制約されず、潜在的には著しく変化し得る。異なる次数のWGM共振モードは、構造内の異なる厚み又は分布を有し得る。
【0032】
[0040] いくつかの変形例において、他の空間ウィンドウ(例えば、ガウスウィンドウ、ハミングウィンドウ、カイザーウィンドウ、凹関数など)は、入来する超音波エコーの周波数ドメイン内のスペクトル応答と共に畳み込まれ得る。例えば、場合によっては、カイザーウィンドウは入来する超音波エコーの周波数ドメイン内のスペクトル応答と共に畳み込まれ得る。カイザーウィンドウは、第1のパラメータM及び第2のパラメータbを含む。第1のパラメータMは幅を決定し、第2のパラメータbは形状を制御する。場合によっては、第2のパラメータb=0のとき、カイザーウィンドウは矩形ウィンドウを表し得る。場合によっては、第2のパラメータb=4.86のとき、カイザーウィンドウはハミングウィンドウを表し得る。しかしながら、前述のスペクトル応答は単なる例であり、他の変形例において、1つ以上の光学センサのセットは任意の適切なスペクトル応答を有し得ることを理解されたい。
【0033】
[0041] 光学センサの帯域幅は、異なる空間分布を有する光学センサ内を伝搬する光学モードを選択することによって、調整され得る。例えば、光学センサの赤道面内にほとんどが閉じ込められる基本モードは、広帯域応答を提供し得る。これに対して、より大きな空間分布を伴う高次モードは、狭帯域応答を有し得る。光学センサの広帯域応答は、音響光学イメージングシステムが、基本周波数f、サブハーモニック周波数(例えばf/2)、及び/又はスーパーハーモニック信号(例えば2f)を伴う、伝送される超音波信号と同じか又は同様の周波数を伴う超音波エコーを監視できるようにし得る。場合によっては、狭帯域応答を伴う高次モードを使用して、追加のスペクトル感度が向上した、超音波信号を伝送する変換器の基本周波数f内の対象となる特定帯域内の信号に焦点を合わせる。いくつかの変形例において、光学センサの超音波帯域幅は、光学センサのジオメトリを制御することによって調整され得る。いくつかの実施例において、光学センサ内及び超音波エコーの伝搬方向に沿った、より強い光(すなわち光学モード)の閉じ込めは、結果として、光学センサ内のより広い帯域幅のスペクトル応答を生じさせ得る。例えば、マイクロディスク共振器に垂直の超音波エコーの伝搬の方向に沿った、明視野に対するより厳密な空間閉じ込めを伴うマイクロディスク共振器は、光学マイクロバブル共振器内よりも広い帯域幅を提供し得る。
【0034】
<コンピューティングデバイス>
[0042] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、光学センサ120の1つ以上の光学応答に基づいてイメージを処理及び発生させるための、コンピューティングデバイス150を含み得る。いくつかの実施例において、各光学センサは、1つ以上の光学応答を1つ以上の光学検出器に伝搬するように構成された、1つ以上の光学導波路に結合される。いくつかの実施例において、1つ以上の検出器は、1つ以上の光学応答を電気信号に変換し、次いで電気信号はコンピューティングデバイス150に送信される。場合によっては、1つ以上の光学検出器は、音響光学イメージングシステム101に含められ得る。
【0035】
[0043] いくつかの実施例において、コンピューティングデバイス150は、メモリ、通信インターフェース、及びプロセッサ(図示せず)を含み得る。通信インターフェースは、コンピューティングデバイス150の様々な内部構成要素(例えば、メモリ、プロセッサ)、又は、コンピューティングデバイス150の外部構成要素(例えば、変換器110、光学センサ120)にデータを送信/受信し得る。通信インターフェースは、1つ以上の光学検出器から電気信号を受信し、それらをメモリ及び/又はプロセッサに送信し得る。メモリは、電気信号に基づいてデータを記憶し得る。プロセッサは、例えば、1つ以上の光学応答に基づいてイメージを発生させるために、命令又はコードのセットを実施及び/又は実行するように構成された、ハードウェアベース集積回路(IC)又は任意の他の適切な処理デバイスを含み得る。
【0036】
[0044] いくつかの実施例において、コンピューティングデバイス150は、光学センサ120の1つ以上の光学応答における変化に基づいて、イメージを処理及び発生させる。各光学応答は、半値全幅(FWHM)によって、及び/又は、スペクトル共振特徴の品質係数(Q値)によって、特徴付け/記述可能な、少なくとも1つのスペクトル共振特徴を含む。変化は、1つ以上の光学応答の振幅における変化、又は、1つ以上の光学応答の共振周波数における変化とすることができる。変化は、各超音波エコーの大きさを示すことが可能であるため、コンピューティングデバイス150は、変化に基づいて光学センサ120のロケーションにおけるその超音波エコーの大きさを計算し得る。追加又は代替として、変化は、超音波エコーを受信した際に、光学センサ120への光弾性効果に起因した光学センサ120の有効屈折率における変化に起因し得る。有効屈折率における変化の結果として、共振周波数はスペクトルシフトによって変化する。光学センサ120は、少なくとも1つのスペクトル特徴のFWHMがスペクトルシフトよりも小さいという意味では、超音波エコーに対して非常に敏感である。コンピューティングデバイス150は、更に、各超音波エコーの大きさを光学センサ120のロケーションに関連付け得る。上記プロセスを様々な様式で(例えば、ラスタ走査、並列処理など)繰り返すことによって、コンピューティングデバイス150は、イメージを発生させるために、マッピングされた大きさのセットをロケーションのセットにマッピングし得る。
【0037】
<動作>
[0045] 前述のように、音響光学イメージングシステム101は、広範な周波数にまたがって超音波イメージングを実行するように構成され得る。動作中、変換器110(例えば圧電変換器)を使用して、少なくとも1つの基本周波数fを有する超音波信号(例えば、超音波パルス、超音波正弦波など)を発生させることができる。光学センサ120(例えば、少なくとも1つの変換器110に関して向上した感度及び拡張された帯域幅を伴うWGM光学共振器)を使用して、基本周波数よりも小さい、等しい、及び/又は大きい周波数において、超音波信号に対応する超音波エコーを検出し得る。したがって、光学センサ120の組み込みによって、下記で更に説明するように、本明細書で説明する音響光学プローブが、基本周波数f(例えば、サブハーモニック周波数及び/又はウルトラハーモニック及び/又はスーパーハーモニック周波数、及び/又は差分周波数を含む)のハーモニック関係モードからイメージを検出及び発生させることを可能にし得る。こうしたハーモニック関係周波数からの検出及びイメージ発生を可能にすることによって、光学センサ120は、音響光学イメージングシステム101によって達成される医用超音波イメージングの解像度及びコントラストを、大幅に増加させ得る。
【0038】
<基本イメージング>
[0046] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、対応する伝送超音波信号の基本周波数fと同じ周波数を有する反射エコーに基づく超音波イメージングの形である、少なくとも基本イメージング(FI)を実行することができる。伝送超音波信号の基本周波数fは、しばしば、侵入深さと空間解像度との間のトレードオフを用いて選択される。例えば、深部組織のイメージングの場合、超音波プローブの基本周波数fは、超音波信号が組織内により深く侵入可能であるが、結果として生じるイメージは低い空間解像度を有することになるように、決定され得る。高解像度イメージングについての別の例では、超音波プローブの基本周波数fは、伝送超音波信号の波長が組織内の詳細な空間特徴を解像可能であるが、浅い組織深度においてのみであるように、決定され得る。言い換えれば、伝送周波数は侵入深さ又は空間解像度のいずれかを犠牲にするため、基本イメージングは限定された適用例を有し得る。しかしながら、従来のシステムとは異なり、音響光学イメージングシステム101は、追加又は代替として、基本イメージングに比べて、超音波イメージングの侵入深さ及び空間解像度の両方を向上させるために、他の特殊化周波数を検出するように、容易に構成可能である。
【0039】
<ハーモニック、スーパーハーモニック、及びウルトラハーモニックイメージング>
[0047] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、基本イメージングの代替又は追加として、組織ハーモニックイメージング(THI)を実行し得る。THIは、2f(第2のハーモニック周波数)に等しい周波数に基づく検出及びイメージングを含む。基本周波数に基づく基本イメージング(FI)に比べて、ハーモニック波がサイドローブではなく主に主ビーム内で発生し、したがってハーモニックイメージは、クラッタ及びオフアクシス散乱イベントにそれほど敏感でないため、THIは、結果として生成されるイメージ内により少ないアーチファクトを生じさせる。また、ハーモニック場は徐々に増大する(すなわち、生成されるハーモニック波エネルギーは深度の増加と共に増加する)ため、THIによって生成されるイメージにおける残響及び近視野雑音の影響は低減され得る。
【0040】
[0048] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、基本イメージング及び/又はTHIの代替又は追加として、スーパーハーモニックイメージング(SHI)を実行する。SHIは、少なくともQfのスーパーハーモニック周波数を検出することを含み、Qは3又はそれ以上の整数である。ハーモニックイメージングの利点は、向上した超音波イメージング解像度、より良好な信号対雑音比(SNR)、低減したスペックル雑音、及び/又は、増加した侵入深さを含む。
【0041】
[0049] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、基本イメージング、THI、及び/又はSHIの代替又は追加として、ウルトラハーモニックイメージング(UHI)を実行し得る。UHIは、少なくともPfのウルトラハーモニック周波数を検出することを含み、Pは1より大きい非整数(例えば、1より大きい非整数有理数)である。ウルトラハーモニックイメージングの利点は、向上した超音波イメージング解像度、より良好な信号対雑音比(SNR)、低減したスペックル雑音、及び/又は、増加した侵入深さを含む。
【0042】
[0050] 従来の超音波システムは、従来の変換器の帯域幅制限及び感度制限を含むという理由によって、THI、SHI、及び/又はUHIの利点から恩恵を受けていない。従来の変換器の帯域幅制限は、より高い周波数の検出を低減(排除)する。更に、感度制限は、より高いハーモニック周波数の超音波エコーのエネルギー強度を低下させるために、従来の変換器の検出感度を低減する。これに対して、光学センサ120を伴う音響光学イメージングシステム101は、従来システムの欠点無しにTHI、SHI、及びUHIをすべて実行するために、少なくとも1つの変換器110に関して拡張された帯域幅及び向上した感度を有する。
【0043】
<サブハーモニックイメージング>
[0051] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、基本イメージング、THI、及び/又はSHIの代替又は追加として、サブハーモニックイメージングを実行し得る。サブハーモニックイメージングはサブハーモニック周波数f/Qを採用し、Qは整数でありfは基本周波数である。サブハーモニック周波数の使用により、より良好な位置分解能が提供される。追加として、サブハーモニックイメージングは、周囲組織からの血管情報を明瞭に示すために、向上した血液対組織のコントラストを提供し得、これは従来の超音波イメージングシステムで達成することは困難である。少なくとも1つの変換器110に関して拡張された帯域幅及び向上した感度を伴う、光学センサ120を備える音響光学イメージングシステム101は、サブハーモニック(下位)周波数において超音波エコーから十分な情報を収集/受信することができる。
【0044】
<差分組織ハーモニックイメージング>
[0052] いくつかの変形例において、音響光学イメージングシステム101は、基本イメージング、THI、SHI、UHI、及び/又はサブハーモニックイメージングの代替又は追加として、差分組織ハーモニックイメージング(DTHI)を実行することができる。音響光学イメージングシステム101は、複数の基本周波数f1、f2、・・・fnを使用し得、例えば、k1f1+k2f2・・・+knfnなどの複数の基本周波数間の算術関係に基づいて、1つ以上の超音波イメージを発生させ得、k1、k2、・・・knは整数である。DTHI周波数の使用により、サブハーモニック周波数より低い周波数からSHIで使用される周波数より高い周波数まで及び得る、様々な新規の未開拓なイメージングモードを提供することができる。こうした広帯域の周波数応答は、従来の超音波イメージングシステムで達成することは困難である。したがって、光学センサ120を伴う音響光学イメージングシステム101の使用により、潜在的なFI、THI、SHI、UHI、及び/又はサブハーモニックイメージングよりも高い解像度、より良好な侵入、及びより少ないアーチファクトを含む様々な利点を備える、イメージングDTHI周波数を提供することができる。
【0045】
[0053] いくつかの実施例において、1つ以上の変換器110は、(
図3Aに示すような)第1の基本周波数f
1及び第2の基本周波数f
2を含む超音波信号111のセットを、イメージングのための媒体に向けて発生及び/又は伝送し得る。1つ以上の変換器110は、第1の基本周波数及び/又は第2のハーモニック周波数(
図3Bに示すようなf
2-f
1及び2f
1)に関するハーモニック周波数の狭帯域幅のみを検出し得るため、他のDTHI関係周波数(例えば、f
2+f
1及び2f
2)からの有益なイメージング情報を検出することができない。しかしながら、
図3Cに示すように、1つ以上の光学センサ120は、1つ以上の線形結合mf
1+nf
2の選択をより広範に検出する帯域幅を有し得、m及びnは整数であるため、mf
1+nf
2は(
図3Cに示すように)正の数になる。したがって、他の形では従来の変換器によって検出できない周波数(例えば、f
2+f
1及び2f
2)を検出するために光学センサ120を使用することで、超音波イメージング機能を大幅に強化することができる。言い換えれば、第1の基本周波数及び第2の基本周波数の合計及び絶対差(それぞれ|f
2+f
1|及び|f
2-f
1|)は、音響光学イメージングシステム101を使用して強化された超音波イメージングのために検出可能である。
【0046】
[0054] 例えば、第1の基本周波数f1は2MHzとすることができ、第2の基本周波数f2は5MHzとすることができ、m及びnは正の整数及び負の整数6及び-1とすることができる。結果として、mf1+nf2の線形結合は7MHzになり、少なくとも1つの光学センサ120の帯域幅内にあり、これによって検出される。
【0047】
[0055] 例えば、第1の基本周波数f1は3MHzとすることができ、第2の基本周波数f2は2.5MHzとすることができ、m及びnはどちらも正の整数1及び5とすることができる。結果として、mf1+nf2の線形結合は15.5MHzになり、少なくとも1つの光学センサ120の帯域幅内にあり、これによって検出される。
【0048】
[0056] 第1の基本周波数f1及び第2の基本周波数f2のいずれか1つは、追加又は代替として、基本イメージング、ハーモニックイメージング、スーパーハーモニックイメージング、ウルトラハーモニックイメージング、及び/又はサブハーモニックイメージングの基礎を形成し得ることを理解されたい。例えば、1つ以上の光学センサ120は、f1/Q、f1/2、f1、2f1・・・及び/又はRf1を含む、第1の基本周波数f1の選択又はそのすべてのハーモニック関係周波数を検出し得、Q及びRは、1より大きい整数を含む正の数である。追加又は代替として、1つ以上の光学センサ120は、f2/S、f2/2、f2、2f2・・・及び/又はTf2を含む、第2の基本周波数f2の選択又はそのすべてのハーモニック関係周波数を検出し得、S及びTは、1より大きい整数を含む正の数である。
【0049】
[0057] いくつかの変形例において、変換器110は超音波信号111を音響光学イメージングのための媒体に発生/伝送するために使用され得るが、音響エコーを検出するためには、(変換器110及び光学センサ120の両方ではなく)光学センサ120のみが使用され得る。光学センサ120は、f/Q、f/2、f、2f、3f、4f、5f・・・及び/又はRfを含む、超音波エコー121の選択又はそのすべての周波数を検出するのに十分な広さの帯域幅を有し得、Q及びRは(
図2に示すように)1より大きい整数を含む正の数である。したがって、光学センサ120は、サブハーモニックイメージング、基本イメージング(FI)、組織ハーモニックイメージング(THI)、スーパーハーモニックイメージング(SHI)、ウルトラハーモニックイメージング(UHI)、及びサブハーモニックモードを含む周波数に、同時に使用可能である。しかしながら、いくつかの変形例において、変換器110のうちのいくつか又はすべては、追加として、いくつかの周波数を検出するために使用され得る。サブハーモニックイメージング、FI、THI、SHI、及びUHIモードのうちのサブセットは、臨床適用例に応じて選択可能である。場合によっては、音響光学イメージングシステムは、第1のタイプのイメージングにおいてFI及びTHIのみが同時に使用可能であり、第2のタイプのイメージングにおいてサブハーモニック及びSHIモードが使用可能である。同様にまた、音響光学イメージングシステムは、臨床適用例に応じて任意の所与の時点で、サブハーモニックイメージング、基本イメージング(FI)、組織ハーモニックイメージング(THI)、スーパーハーモニックイメージング(SHI)、又はウルトラハーモニックイメージング(UHI)モードのうちの、1つのみに使用可能である。
【0050】
[0058]
図4は、超音波信号に対する光学センサの例示のスペクトル応答を示す。音響光学イメージングシステムは、スペクトル的に敏感であり、広帯域応答を有する、少なくとも1つの変換器及び少なくとも1つの光学センサ(例えばウィスパリングギャラリーモード(WGM)共振器)を含み得る。少なくとも1つの変換器は超音波信号を伝送するように構成され得、少なくとも1つの光学センサは、超音波信号に応答して超音波エコーを受信するように構成され得る。超音波信号は、強度のセット及び基本周波数f
iのセット(例えば、第1の基本周波数f
1、第2の基本周波数f
iなど)によって、特徴付け/記述され得る。光学センサは、基本周波数のセット、基本周波数のセットのうちのサブハーモニック周波数のセット、基本周波数のセットのうちのスーパーハーモニック周波数のセット、基本周波数のセットのうちのウルトラハーモニック周波数のセット、及び/又は、基本周波数のセットのうちの差分ハーモニクスのセットを含む、超音波エコー周波数において、超音波エコーを受信し得る。
【0051】
[0059] いくつかの実施例において、超音波造影剤(例えばガスマイクロバブル)は、信号反射を増加させるため、及び/又は、超音波イメージングにおいてコントラストを向上させるために、血管内に導入/注入され得る。基本周波数fにおいて超音波照射されるとき、超音波造影剤は、入来する超音波信号をより良好に反射すること、及び、ハーモニック及びサブハーモニック周波数において非線形振動をより良好に発生させることも助け得る。場合によっては、組織もハーモニック周波数において非線形振動を発生させることができるが、サブハーモニック周波数(例えばf/2)において信号を発生させるための能力は、超音波造影剤だけに限定可能である。組織はサブハーモニック応答を発生させないため、サブハーモニックイメージングは、周辺の組織からの信号を抑制しながら、超音波造影剤からの信号を分離するための方法として使用されている。しかしながら、周辺組織の信号の抑制は、超音波検査者が解剖学的及び組織ランドマークを見るための能力を低下させる場合がある。したがって信号の抑制は、一般に、一次イメージングモードとしてのサブハーモニックイメージングの使用を限定するものと知られている。広帯域及び高感度のセンサを使用する音響光学イメージングシステム101は、本明細書で説明する他のイメージングモダリティに加えて、サブハーモニックイメージングの使用を好都合に実行可能にすることができる。
【0052】
[0060] したがって、光学センサ120は、超音波を検出するために変換器110を交換するために使用され得るか、又は、超音波イメージングシステムにおいて超音波周波数を検出するために変換器110を組み合わせ得る。1つ以上の光学センサ120は、すべての周波数(f/M、・・・、f/2、f、2f、3f、4f、5f、・・・、Nf)を検出するのに十分広い帯域幅を有し得、M及びNは1より大きい整数を含む正の数である。これらの周波数のうちのいくつか又はすべては、超音波イメージングに使用され得る。例えば、1つ以上の光学センサ120は、複数の動的イメージングモードのための、サブハーモニックイメージング、基本イメージング、組織ハーモニックイメージング、ウルトラハーモニックイメージング、及び/又は、スーパーハーモニックイメージングに、同時に使用され得る。更に、1つ以上の光学センサ120は、差分組織ハーモニックイメージングにおける変換器110の帯域幅制限を克服し得、したがって、複数の基本周波数の組み合わせに基づく新しいイメージングモード(例えば、追加のf2+f1及び2f2周波数の検出であり、f2+f1は2つの異なる基本周波数)が可能になる。
【0053】
[0061] 言い換えれば、光学センサ120の広帯域応答を活用することによって、音響光学イメージングシステムは、以前は従来の超音波イメージングシステムでは達成できなかった新しいスーパーハーモニック周波数及び差分関係周波数を含む、基本周波数、サブハーモニック周波数、スーパーハーモニック周波数、ウルトラハーモニック周波数、及び/又は差分周波数を含む、イメージングモードを実行可能にし得る。したがって、本明細書で説明する音響光学イメージングシステムは、従来の音響イメージングシステム(例えば医用超音波イメージングシステム)の帯域幅及び感度の制限を克服し得る。
【0054】
[0062] 前述の説明は、説明の目的で、本発明を完全に理解するために特定の用語を使用した。しかしながら当業者であれば、本発明を実施するために特定の細部は不要であることが明らかとなろう。したがって、本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。それらが網羅的であること又は本発明を開示された精密な形に限定することは意図されておらず、前述の教示に鑑みて、多くの改変及び変形が可能であることが明らかである。本実施形態は、本発明の原理及びその実際の適用例を説明するために選択及び説明されており、それによって当業者であれば、企図される特定の用途に適するような様々な改変を用いて本発明及び様々な実施形態を利用することが可能になる。下記の特許請求の範囲及びそれらの等価物は、本発明の範囲を定義することが意図される。
【国際調査報告】