(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】多機能性粉末IMCREEおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20230721BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61L9/01 B
A61L9/01 M
C09K3/00 L
C09K3/00 S
C09K3/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580067
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2021012449
(87)【国際公開番号】W WO2022065779
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122156
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522497319
【氏名又は名称】ワイシーインクリー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YCIMCREE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】101, 1Fl, 33 Dosan-daero 27-gil, Gangnam-gu, Seoul 06032 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビョン, ウ ヨン
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA16
4C180BB06
4C180BB08
4C180CC15
4C180EA23X
4C180EA24X
4C180EA27X
4C180EA28X
4C180EA34X
4C180EA35X
4C180EA36X
4C180EA63X
4C180EA66X
(57)【要約】
酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む第1成分;および酸化鉄(Fe2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化硫黄(SO3)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO2)およびこれらからなる群から選択された少なくとも一つを含む第2成分を含み、37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射率が0.5%ないし5%であり、有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)が0.8ないし2.0であり、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352, Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)それぞれに対して、菌減少率(%)が90%以上である多機能性粉末を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む第1成分;および
酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化カリウム(K
20)、酸化ナトリウム(Na
2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化硫黄(SO
3)、酸化ホウ素(B
2O
3)、酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO
2)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つを含む第2成分;を含み、
37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射率が0.5%ないし5%であり、
下記式1による有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)が0.8ないし2.0である、
多機能性粉末:
[式1]
{(Cai-Caf)/Cai}/{(Cfi-Cff)/Cfi}
前記式1において、前記Caiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のアンモニアガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のアンモニアガス濃度値であり、前記Cfiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のホルムアルデヒドガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のホルムアルデヒドガス濃度値である。
【請求項2】
[式2]
アンモニア脱臭率(%)=(Cai-Caf)/Caix100
前記式2において、前記Caiは23℃の温度および45%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のガス濃度値である、請求項1に記載の前記式2によるアンモニア脱臭率が90%以上である多機能性粉末。
【請求項3】
[式3]
ホルムアルデヒド脱臭率(%)=(Cfi-Cff)/Cfix100
前記式3において、前記Cfiは23℃の温度および45%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積のガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のガス濃度値である、請求項1に記載の前記式3によるホルムアルデヒド脱臭率(%)が50%以上である多機能性粉末。
【請求項4】
[式4]
菌減少率(%)=(X-Y)/X * 100
前記式4において、前記Xは対照群の生菌数(CFU, Colony-Forming Unit)であり、前記Yは前記の多機能性粉末を処理した試料処理群の生菌数(CFU)である、請求項1に記載の黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352, Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)それぞれに対して、前記式4による菌減少率(%)が90%以上である多機能性粉末。
【請求項5】
前記第1成分対前記第2成分の重量比が70:30以上、100:0未満である、請求項1に記載の多機能性粉末。
【請求項6】
前記第1成分が酸化カルシウム(CaO)および酸化マグネシウム(MgO)を含み、前記第2成分が三酸化硫黄(SO
3)および酸化ストロンチウム(SrO)を含み、前記第1成分対前記第2成分の重量比が95:5以上、100:0未満である、請求項1に記載の多機能性粉末。
【請求項7】
前記第1成分の全重量100重量%中の前記酸化カルシウムの重量が90重量%以上である、請求項6に記載の多機能性粉末。
【請求項8】
前記第1成分が酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)および酸化カルシウム(CaO)を含み、
前記第2成分が酸化鉄(Fe
20
3)を含み、
前記第1成分対前記第2成分の重量比が75:25以上、100:0未満である、請求項1に記載の多機能性粉末。
【請求項9】
前記第1成分の全重量100重量%中の酸化ケイ素および酸化アルミニウムの総重量が80重量%以上である、請求項8に記載の多機能性粉末。
【請求項10】
多機能性粉末またはその加工物を含む機能材;および樹脂または粘度を含む基材を含み、
保管対象収容部および保管対象保護部を含み、
前記多機能性粉末が酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む第1成分;および
酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化カリウム(K
2O)、酸化ナトリウム(Na
2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化硫黄(SO
3)、酸化ホウ素(B
2O
3)、酸マンガン(MnO)、二酸化チタン(TIO
2)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つを含む第2成分;を含み、
37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射率が0.5%ないし5%であり、
下記式1による有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)が0.8ないし2.0である、
多機能性保管物品:
[式1]
{(Cai-Caf)/Cai}/{(Cfi-Cff)/Cfi}
前記式1において、前記Caiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のアンモニアガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前期密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のアンモニアガス濃度値であり、前記Cfiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のホルムアルデヒドガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のホルムアルデヒドガス濃度値である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建築分野、農水産業分野、自動車産業分野など様々な技術分野に適用され、環境にやさしい素材として機能できる多機能性粉末およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人類は、変化する環境の下で、より適切で良い道具を作るために努力し、発展してきた。このような過程で様々な素材が開発されており、新しい素材の開発は現代の産業社会で電気電子、医療、自動車、繊維、建築などに至るまで国の主力産業分野全般にわたって非常に重要である。
【0003】
新素材は、その材質によって金属材料、非金属無機材料、新高分子材料、複合材料などに区別できる。非金属無機材料は、天然または人工的に合成された無機化合物を加工して作られた材料で、このような非金属無機材料が天然成分を適切に加工して新素材として開発される場合、環境にやさしい素材として活用できる。
【0004】
第4次産業革命時代に入り、ビッグデータや人工知能などの影響で、経済の生産性や人の生活の質が急速に向上している。人口構造の側面において高齢化が進んでおり、これに伴い健康および安全に対する追求が強化されている実情である。これに伴い、バイオ基盤素材技術、再生医療素材技術などが脚光を浴びている。
【0005】
また、気候環境の側面においてエコ産業と清浄エネルギー技術分野が拡大している傾向であり、これに伴い、エコエネルギー素材技術や資源循環素材技術などが有望技術として浮上している。
【0006】
このような時代的要求を考慮すると、環境汚染や有害化学物質などの要素を減らし、人類の健康と福祉の増進を追求する新しい環境にやさしい新素材の開発が切実な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一具現例は、多機能性粉末として遠赤外線を放射して人体の体温を適正温度に保つ温熱作用および人体の水準を適正水準に保つ乾湿作用をし、各種栄養分のバランスを通じて代謝機能を促進し、免疫性を強化する利点を備えた粉末を提供する。また、前記の多機能性粉末を通じて有害ガスの脱臭効果を具現し、特に生体組織に刺激的で有害なアンモニアガスおよびホルムアルデヒドガスの消臭効果が同時に優れた効果を得て、抗菌作用に優れた効果を得る。
【0008】
本発明の他の具現例は、前記の多機能性粉末を適用して有機物の長期保管性能に優れ、多様な形態で製造されて広範囲な活用性を備えた保管物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一具現例において、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む第1成分;および酸化鉄(Fe2O3)、酸化カリウム(K2O) 酸化ナトリウム(Na2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化硫黄(SO3)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO2)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つを含む第2成分;を含み、37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射率が0.5%ないし5%であり、下記式1による有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)が0.8ないし2.0である多機能性粉末を提供する。
【0010】
[式1]
{(Cai-Caf)/Cai}/{(Cfi-Cff)/Cfi}
【0011】
前記式1において、前記Caiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のアンモニアガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のアンモニアガス濃度値であり、前記Cfiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のホルムアルデヒドガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のホルムアルデヒドガス濃度値である。
【0012】
前記多機能性粉末は、下記式2によるアンモニア脱臭率が90%以上であり得る。
【0013】
[式2]
アンモニア脱臭率(%)=(Cai-Caf)/Caix100
【0014】
前記式2において、前記Caiは23℃の温度および45%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のガス濃度値である。
【0015】
前記多機能性粉末は、下記式3によるホルムアルデヒド脱臭率(%)が50%以上であり得る。
【0016】
[式3]
ホルムアルデヒド脱臭率(%)=(Cfi-Cff)/Cfix100
【0017】
前記式3において、前記Cfiは23℃の温度および45%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のガス濃度値である。
【0018】
前記多機能性粉末は、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352, Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)それぞれに対して、下記式4による菌減少率(%)が約90%以上であり得る。
【0019】
[式4]
菌減少率(6)=(X-Y)/X * 100
【0020】
前記式4において、前記Xは対照群の生菌数(CFU, Colony-Forming Unit)であり、前記Yは前記多機能性粉末を処理した試料処理群の生菌数(CFU)である。
【0021】
前記多機能性粉末は、前記第1成分対前記第2成分の重量比が70:30以上、100:0未満であり得る。
【0022】
一具現例による前記多機能性粉末は、前記第1成分が酸化カルシウム(CaO)および酸化マグネシウム(MgO)を含み、前記第2成分が三酸化硫黄(SO3)および酸化ストロンチウム(SrO)を含み、前記第1成分対前記第2成分の重量比が95:5以上、100:0未満であり得る。
【0023】
他の具現例による前記多機能性粉末は、前記第1成分が酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化カルシウム(CaO)を含み、前記第2成分が酸化鉄(Fe2O3)を含み、前記第1成分対前記第2成分の重量比が75:25以上、100:0未満であり得る。
【0024】
本発明の他の具現例において、前記多機能性粉末またはその加工物を含む機能材;および樹脂または粘土を含む基材を含み、保管対象収容部および保管対象保護部を含む多機能性保管物品を提供する。
【発明の効果】
【0025】
前記多機能性粉末は、遠赤外線放射性能を基に人体に良い影響を及ぼすことがある。具体的には、前記多機能性粉末による遠赤外線は、人体の体温を適正温度に保つ温熱作用および人体の水準を適正水準に保つ乾湿作用をし、各種栄養分のバランスを通じて代謝機能を促進して免疫性を強化する利点を有する。また、毛細血管の拡張と細胞組織の生成を助け、血行を促進して発汗作用および痛み緩和効果があり、新陳代謝を促進する。
【0026】
また、前記多機能性粉末は、有害ガスの脱臭効果を具現し、特にアンモニアおよびホルムアルデヒドのような生体組織に刺激的で有害なガスの消臭効果が優れた利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は以下で開示される実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、単に本実施例は本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0028】
図面で複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして、図面で、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示した。明細書全体にわたって同じ参照符号は同じ構成要素を指す。
【0029】
なお、本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」または「上部に」あるとするとき、これは他の部分「真上に」ある場合だけでなく、その中間にまた別の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「真上に」あるとすると、中間に他の部分がないことを意味する。併せて、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「下に」または「下部に」あるとするとき、これは他の部分「真下に」ある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「真下に」あるとすると、中間に他の部分がないことを意味する。
【0030】
本発明による一実施例において、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む第1成分;および酸化鉄(Fe2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化硫黄(SO3)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO2)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つを含む第2成分;を含み、
【0031】
37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射率が0.5%ないし5%であり、
【0032】
下記式1による有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)が0.8ないし2.0である、多機能性粉末を提供する。
【0033】
[式1]
{(Cai-Caf)/Cai}/{(Cfi-Cff)/Cfi}
【0034】
前記式1において、前記Caiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のアンモニアガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のアンモニアガス濃度値であり、前記Cfiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のホルムアルデヒドガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のホルムアルデヒドガス濃度値である。
【0035】
天然物質から抽出された様々な鉱物は環境にやさしい素材として活用可能性が高い。また、これらの原料、最終組成および製造工法などによって具現可能な機能および効果がかなり広範囲に調節できる。一具現例による前記多機能性粉末は、遠赤外線放射機能および有害ガス消臭機能を同時に具現する利点を有する。
【0036】
*前記多機能性粉末は、37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射率が約0.5%ないし約5%であり得、例えば、約0.5%ないし約4%であり得、例えば、約0.5%ないし約3.5%であり得、例えば、約0.5%ないし約2%であり得、例えば、約0.5%ないし約1.5%であり得る。前記「遠赤外線放射率」は、5μmないし20μm範囲の波長領域帯のうち、少なくとも一つの波長帯に対する放射率を意味する。
【0037】
前記多機能性粉末は、37℃で5μmないし20μm波長領域の遠赤外線放射エネルギーが約1.00×102W/m2・μm以上であり得、例えば、約1.00×102W/m2・μmないし約5.00×102W/m2・μmであり得、例えば、約2.00×102W/m2・μmないし約4.00×102W/m2・μmであり得る。前記遠赤外線放射エネルギーは、前述の波長領域で放射されるエネルギーの総和と定義され、波長別放射エネルギーグラフの下記面積値で求めることができる。
【0038】
前記多機能性粉末の遠赤外線放射エネルギーの最大ピーク値は、37℃で約6μmないし約12μm波長領域に現れることがある。この時、前記遠赤外線放射エネルギーの最大ピーク値は、約25W/m2・μmないし約40W/m2・μmであり得る。
【0039】
前記多機能性粉末は、人体の体温と類似した37℃条件下において前述した遠赤外線放射特性を有する。すなわち、前記多機能性粉末による遠赤外線は、人体の体温を適正温度に保つ温熱作用および人体の水準を適正水準に保つ乾湿作用をし、各種栄養分のバランスを通じて代謝機能を促進し、免疫性を強化する利点を有する。また、毛細血管の拡張と細胞組織の生成を助け、血行を促進して発汗作用および痛み緩和効果があり、新陳代謝の促進に有利であり得る。例えば、前記遠赤外線放射率および放射エネルギーは、KFIA-FI-1005標準規格の方法によって測定できる。
【0040】
前記多機能性粉末は、アンモニアガスとホルムアルデヒドガスそれぞれに対する有害ガス脱臭性能に優れているとともに、一般的に同時に除去率を高めるのが難しい前記二つのガスの脱臭性能がいずれも所定の水準以上に具現される効果を示し得る。前記式1の有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)は、前記多機能性粉末のアンモニアガス脱臭性能とホルムアルデヒドガス脱臭性能の均衡度を示したものである。前記式1による有害ガス脱臭均衡指数が約0.8ないし約2.0であり得、例えば、約0.8以上、約2.0未満であり得、例えば、約0.8ないし約1.7であり得、例えば、約0.9ないし約1.6であり得る。前記多機能性粉末は、アンモニアおよびホルムアルデヒド脱臭性能において、二つの有害ガスのうちいずれかのガスに対してのみ極端に偏らず、二つの有害ガスの両方に対して、前記有害ガスの脱臭均衡指数に相応する均衡的な脱臭性能を示し得る。特に、前記多機能性粉末は、前記有害ガス脱臭均衡指数が前記範囲に相応する脱臭均衡度を具現することによって、アンモニアおよびホルムアルデヒドが存在する条件下で効果的にガス脱臭性能を具現することができる。
【0041】
一具現例で、前記多機能性粉末は、下記式2によるアンモニア脱臭率(%)が90%以上であり得る。
【0042】
[式2]
アンモニア脱臭率(%)=(Cai-Caf)/Caix100
【0043】
前記式2において、前記Caiは23℃の温度および45%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のガス濃度値である。
【0044】
前記多機能性粉末は、前記式2によるアンモニア脱臭率(%)が約90%以上であり得、例えば、約92%以上であり得、例えば、約94%以上であり得、例えば、約95%以上であり得る。アンモニアは、人体に接触する場合、皮膚組織が損傷するおそれがあり、喉頭炎や気管支炎などの各種炎症の原因になり得る有害ガスである。前記多機能性粉末は、前記第1成分および前記第2成分を含みながら、特定の構造および大きさの粒子形状を有することによって、このような優れたアンモニアガス除去性能を具現することができる。
【0045】
一具現例において、前記多機能性粉末は、下記式3によるホルムアルデヒド脱臭率(%)が50%以上であり得る。
【0046】
[式3]
ホルムアルデヒド脱臭率(%)=(Cfi-Cff)/Cfix100
【0047】
前記式3において、前記Cfiは23℃の温度および45%の相対湿度条件の下、2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のガス濃度値である。
【0048】
前記多機能性粉末は、前記式3によるホルムアルデヒド脱臭率(%)が約50%以上であり得、例えば、約55%以上であり得、例えば、約60%以上であり得、例えば、約90%以上であり得、例えば、約95%以上であり得る。ホルムアルデヒドは、可燃性無色気体で引火点が低くて爆発の危険性があり、繰り返し露出する場合、呼吸器に慢性的な刺激を起こすなど有害なガスである。前記多機能性粉末は、前記第1成分および前記第2成分を含みながら、特定の構造および大きさの粒子形状を有することによって、このような優れたホルムアルデヒドガス除去性能を具現することができる。
【0049】
一具現例において、前記多機能性粉末は、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352, Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)それぞれに対して、下記式4による菌減少率(%)が約90%以上であり得る。
【0050】
[式4]
菌減少率(%)=(X-Y)/X*100
【0051】
前記式4において、前記Xは対照群の生菌数(CFU, Colony-Forming Unit)であり、前記Yは前記多機能性粉末を処理した試料処理群の生菌数(CFU)である。
【0052】
例えば、前記菌減少率(%)は、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352, Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)それぞれに対して、約90%以上、例えば、約95%以上、例えば、約96%ないし約100%、例えば、約97%~約100%、例えば、約99%ないし約100%であり得る。それぞれの菌に対して、いずれも前述した範囲の菌減少性能を具現することによって、前記多機能性粉末は抗菌性能が要求される応用分野への適用が有利であり、人体および環境にやさしい性能を大幅に向上させることができる。
【0053】
前記の多機能性粉末は、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む第1成分;および酸化鉄(Fe2O3)、酸化カリウム(K2O) 酸化ナトリウム(Na2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化硫黄(SO3)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO2)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つを含む第2成分を含む。
【0054】
前記の多機能性粉末の前記第1成分は、前記のこの球体の種類に加えて異種成分をさらに含めることができ、前記第2成分も前記の球体の種類に加えて異種成分を含めることができる。
【0055】
前記の多機能性粉末の前記第1成分および前記第2成分の重量比は、前記第1成分対前記第2成分が約70:30以上、約100:0未満であり得、例えば、約70:30ないし約99.9:0.1であり得、例えば、約75:25以上、約100:0未満であり得、例えば、約75:25ないし約99.9:0.1であり得、例えば、約80:20ないし約99.9:0.1であり得、例えば、約85:15ないし約99.9:0.1であり得、例えば、約90:10から約99.9:0.1であり得、例えば、約75:25ないし約95:5であり得、例えば、約75:25ないし約90:10であり得、例えば、約75:25ないし約89:11であり得、例えば、約80:20ないし約89:11であり得、例えば、約96:4ないし約99.9:0.1であり得、例えば、約97:3ないし約99.9:0.1であり得る。前記第1成分対前記第2成分の重量比が前記の範囲を満たすことによって、遠赤外線放射性能および有害ガスの脱臭性能が同時に目的の水準で具現できる。
【0056】
一具現例による前記多機能性粉末(以下、「多機能性粉末-I」という)は、前記第1成分が酸化カルシウム(CaO)および酸化マグネシウム(MgO)を含み、前記第2成分が三酸化硫黄(SO3)および酸化ストロンチウム(SrO)を含み、前記第1成分(A)および前記第2成分(B)の重量比(A:B)95:5以上、100:0未満であり得る。
【0057】
前記第1成分は、酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)以外に相対的少量の異種成分をさらに含めることができ、前記第2成分も三酸化硫黄(SO3)と酸化ストロンチウム(SrO)以外に相対的少量の異種成分をさらに含めることができる。このとき、「相対的少量の異種成分」とは、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、三酸化硫黄(SO3)、酸化ストロンチウム(SrO)など明示された各成分より少ない含量の異種成分を意味する。
【0058】
具体的には、前記多機能性粉末-Iにおいて前記第1成分対前記第2成分の重量比は約96:4ないし約99:1であり得、例えば、約97:3ないし約99:1であり得る。前記第1成分および前記第2成分の重量比がこのような範囲を満たすことによって、遠赤外線放射性能およびアンモニア/ホルムアルデヒド消臭性能が目的水準で具現できる。特に、抗菌および脱臭性能に優れ、天然鉱物として人工化学物質に比べて人体にやさしい機能に優れた利点を得ることができる。
【0059】
具体的には、前記多機能性粉末-Iにおいて前記第1成分が酸化カルシウム(CaO)および酸化マグネシウム(MgO)を含み、前記第1成分全体100重量%中の酸化カルシウム(CaO)が90重量%以上であり得る。例えば、前記第1成分全体100重量%中の前記酸化カルシウム(CaO)が約91重量%以上であり得、約92重量%以上であり得、例えば、約93重量%以上、約98重量%以下であり得る。 このように、前記第1成分の主成分が酸化カルシウム(CaO)である場合、抗菌および脱臭性能を考慮した側面でより有利である。
【0060】
具体的には、前記多機能性粉末-Iにおいて前記第1成分は酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化アルミニウム(Al2O3)を含めることができる。このとき、前記第1成分全体100重量%中の酸化カルシウム(CaO)が90重量%以上であり、前記酸化マグネシウム(MgO)の含量が前記酸化アルミニウム(Al2O3)の含量より多くなり得る。より具体的には、前記酸化マグネシウム(MgO)対前記酸化アルミニウム(Al2O3)の重量比は約5:1ないし約25:1であり得、例えば、約8:1ないし約24:1であり得、例えば、約10:1ないし約25:1であり得、例えば、約15:1ないし約20:1であり得る。前記第1成分の組成がこのような条件を抗菌および脱臭性能を考慮した側面でより有利であり得る。
【0061】
具体的には、前記多機能性粉末-Iにおいて前記第2成分が三酸化硫黄(SO3)および酸化ストロンチウム(SrO)を含み、前記第2成分中の前記三酸化硫黄(SO3)の含量が前記酸化ストロンチウム(SrO)の含量より多い場合がある。より具体的には、前記三酸化硫黄(SO3)対前記酸化ストロンチウム(SrO)の重量比は約1:1超過、約10:1以下であり得、例えば、約2:1ないし約8:1であり得、例えば、約2:1ないし約6:1であり得、例えば、約3:1ないし約6:1であり得る。前記第2成分の組成がこのような条件を満たすことによって、抗菌および脱臭性能を考慮した側面でより有利であり得る。
【0062】
他の具現例による前記多機能性粉末(以下、「多機能性粉末-II」という)は、前記第1成分が酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化カルシウム(CaO)を含み、前記第2成分が酸化鉄(Fe2O3)を含み、前記第1成分対前記第2成分の重量比が約75:25以上、約100:0未満であり得る。
【0063】
前記第1成分は、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化カルシウム(CaO)以外に相対的少量の異種成分をさらに含めることができ、前記第2成分も酸化鉄(Fe2O3)以外に相対的少量の異種成分をさらに含めることができる。このとき、「相対的少量の異種成分」とは、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化カルシウム(CaO)、酸化鉄(Fe2O3)など明示された各成分より少ない含量の異種成分を意味する。
【0064】
具体的には、他の具現例による前記多機能性粉末-IIにおいて前記第1成分対前記第2成分の重量比は、例えば、約75:25ないし約99:1であり得、例えば、約85:15ないし約99:1であり得、例えば、約90:10ないし約99:1であり得、例えば、約95:5ないし約99:1であり得る。前記第1成分および前記第2成分の重量比がこのような範囲を満たすことによって、遠赤外線放射性能およびアンモニア/ホルムアルデヒド消臭性能が目的水準で具現できる。
【0065】
具体的には、前記多機能性粉末-IIは、前記第1成分が酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化カルシウム(CaO)を含み、前記第1成分全体100重量%中の前記酸化ケイ素(SiO2)および前記酸化アルミニウム(Al2O3)の総重量が約80重量%以上であり得る。例えば、前記第1成分全体100重量%中の前記酸化ケイ素(SiO2)および前記酸化アルミニウム(Al2O3)の総重量が約85重量%以上、例えば、約85重量%ないし99重量%、例えば、約90重量%ないし99重量%であり得る。このように、前記第1成分の主成分が酸化ケイ素(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)の場合、遠赤外線放射性能に優れた利点を最大化することができる。
【0066】
より具体的には、前記多機能性粉末-IIは、前記第1成分中の前記酸化ケイ素(SiO2)の含量が前記酸化アルミニウム(Al2O3)の含量と同じか、より多い場合がある。より具体的には、前記第1成分中の前記酸化ケイ素(SiO2)対前記酸化アルミニウム(Al2O3)の重量比は約1:1ないし約4:1であり得、例えば、約1:1ないし約3:1であり、例えば、約1:1ないし約2:1であり得、例えば、約1:1ないし1.8:1であり得、例えば、約1:1ないし1.5:1であり得、約1:1ないし約1.2:1であり得る。これにより、前記多機能性粉末は、優れた遠赤外線放射性能および脱臭性能を具現することができる。
【0067】
一具現例において、前記多機能性粉末-IIは、前記第2成分が酸化鉄(Fe2O3)および酸化ナトリウム(Na2O)を含めることができる。この場合、前記酸化鉄(Fe2O3)の含量が前記酸化ナトリウム(Na2O)の含量と同じか、より多い場合がある。これにより、より向上した遠赤外線放射性能を具現することができる。具体的には、前記酸化鉄(Fe2O3)対前記酸化ナトリウム(Na2O)の重量比が約1:1ないし約3:1であり得、例えば、約1:1ないし約2:1であり得、例えば、約1:1ないし1.8:1であり得、例えば、約1.1:1ないし約1.5:1であり得る。これにより、前記多機能性粉末は、優れた遠赤外線放射性能および脱臭性能を同時に具現するのに有利であり得る。
【0068】
前記多機能性粉末の組成は、蛍光X線分析装置(X-Ray Fluorescence, XRF)を用いて確認することができ、前記多機能性粉末の製造のための原料および製造過程における様々な工程条件により調節される。
【0069】
前記多機能性粉末の酸化還元電位(Oxidation-Reduction Potential, ORP)は、約600mV以下であり得る。例えば、前記多機能性粉末のORPは、約-20mVないし約600mVであり得、例えば、約-20mVないし約550mVであり得、例えば、約-20mVないし約250mVであり得、例えば、約-10mVないし約220mVであり得、例えば、約-10mVないし約10mVであり得、例えば、約170mVないし約200mVであり得る。前記酸化還元電位は、前記多機能性粉末1gを脱イオン水(deionized water)10mLに分散させた後、24時間の間、振とう抽出した後、遠心分離してその上澄み液を対象に測定した。前記多機能性粉末は、前記範囲の酸化還元電位に相応する還元力を有することにより、人体および環境に親和的な性能を具現することができ、脱臭および抗菌作用により有利であり得る。
【0070】
前記の多機能性粉末の水素イオン濃度(pH)は、約5.0ないし約13.5であり得、例えば、約5.0ないし約7.0であり得、例えば、約5.5ないし7.0であり得、例えば、約7.0ないし13.5であり得、例えば、約8.0ないし13.5であり得、例えば、約10.0ないし13.0であり得る。このとき、前記水素イオン濃度(pH)は、前記多機能性粉末1.0gを蒸留水10mL内に分散させた溶液を製造した後、24±2℃の温度および35±5%の相対湿度条件下で30分配置した後、前記溶液の上澄み液のpHを測定して得た。前記多機能性粉末は、前記範囲の水素イオン濃度を有することにより、人体および環境に親和的な性能を具現することができ、脱臭および抗菌作用により有利であり得る。
【0071】
前記多機能性粉末の塩基置換容量(CEC)は、約5cmol(+)/kgないし約50cmol(+)/kgであり得、例えば、約5cmol(+)/kgないし約45cmol(+)/kgであり得、例えば、約10cmol(+)/kgないし約45cmol(+)kg cmol(+)/kgであり得、例えば、約15cmol(+)/kgないし約45cmol(+)kgであり得、例えば、約15cmol(+)/kgないし約25cmol(+)/kgであり得、例えば、約30cmol(+)/kgないし約45cmol(+)/kgであり得る。前記「塩基置換容量」は、陽イオン置換容量を意味し、具体的には、前記多機能性粉末が保有する交換可能な交換性陽イオンの総量を示したものとして、養分の保有能力を示す指標として活用できる。前記多機能性粉末が前記範囲の塩基置換容量に相応する陽イオン置換能力を保有することにより、有害ガス脱臭性能および有害金属吸着性能に優れ、汚廃水などの浄化機能の具現に有利になり得る。
【0072】
前記多機能性粉末の電気伝導度(EC)は、約0.01ds/m(1:10)以上であり得、例えば、約0.0lds/m(1:10)ないし約10ds/m(1:10)であり得、例えば、約0.01ds/m(1:10)ないし約2ds/m(1:10)であり得、例えば、約5ds/m(1:10)ないし約10ds/m(1:10)であり得る。前記電気伝導度が前述した範囲を満たすことにより、前記の多機能性粉末は人体および環境に対する親和性を最大化することができる。
【0073】
前記多機能性粉末は、平均粒径(D50)が約20μmないし約200μmであり得、例えば、約20μmないし約150μmであり得、例えば、約20μmないし約100μmであり得、例えば、約20μmないし約80μmであり得、例えば、約20μmないし約60μmであり得、例えば、約25μmないし約55μmであり得、例えば、約30μmないし約50μmであり得る。前記範囲の大きさの多機能性粉末を使用することによって流通および後続加工が有利になり、前記粉末による優れた遠赤外線放射性能および脱臭性能の具現に有利になり得る。
【0074】
本発明による他の具現例において、前記多機能性粉末またはその加工物を含む機能材;および樹脂または粘土を含む基材を含み、保管対象収容部および保管対象保護部を含む多機能性保管物品を提供する。
【0075】
前記多機能性保管物品において、前記多機能性粉末に関する事項はすべて前述したとおりである。
【0076】
前記機能材は、前記多機能性粉末から由来する遠赤外線放射性能およびアンモニア消臭性能などの様々な機能を具現する材料として、前記多機能性粉末自体またはその加工物を含めることができる。前記多機能性粉末の加工物とは、前記多機能性粉末の本来の機能を損なわずに熱処理、表面処理または相変化などの加工を加えた物質で、前記機能材は前記多機能性粉末、この加工物またはこれらの混合物を含めることができる。
【0077】
前記基材は、前記機能材と一緒に混合され、前記多機能性物品の骨格を成す物質として樹脂または粘土を含めることができる。
【0078】
前記基材が樹脂を含む場合、前記樹脂はポリエチレン(Polyethylene, PE)、ポリプロピレン(Polypropylene, PP)、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride, PVC)、ポリスチレン(Polystyrene, PS)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile, PAN)、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene, ABS)、AS樹脂(Styrene-acrylonitrile copolymer)、アクリル樹脂(Polymethyl Methacrylate, PMMA)、ポリエチレンテレフタラート、(Polyethylene terephthalate, PET)、ポリアミド(Polyamide, PA)、ポリカーボネート(Polycarbonate, PC)、ポリフェニレンスルファイド(Polyphenylene sulfide, PPS)、フェノール樹脂(Phenolics)、エポキシ樹脂(Epoxy resin)、ポリウレタン(polyurethane)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含めることができるが、これに制限されるわけではない。
【0079】
前記基材が粘土を含む場合、前記粘土は五色穴土を含めることができる。
【0080】
一具現例において、前記多機能性保管物品は、前記基材100重量部に対して、前記機能材を約1重量部ないし約80重量部含めることができ、例えば、約1重量部ないし約40重量部、例えば、約1重量部ないし約20重量部含めることができる。
【0081】
前記多機能性保管物品は、前記機能材および前記基材が混合された混合原料を製造する段階;および前記混合原料を成形して前記保管対象収容部および前記の保管対象保護部を備えた形態の物品を製造する段階;を含む製造方法で製造することができる。
【0082】
一具現例において、前記基材が樹脂を含む場合、前記混合原料の成形は、前記樹脂の融点以上の温度で前記混合原料を溶融させた後、押出、射出または除膜する段階を含めることができる。
【0083】
他の具現例において、前記基材が粘土を含む場合、前記混合原料の成形は、前記混合原料を約1,000℃ないし約1,500℃の温度で焼成する段階を含めることができる。
【0084】
前記多機能性保管物品は、その用途が特に制限されないが、例えば、食品保管容器、食品熟成容器、飲み物保管容器、ビニールバッグ、携帯電話ケースなど多様である。
【0085】
前記多機能性粉末は、遠赤外線放射性能を基に人体に良い影響を及ぼすことができる。具体的には、前記多機能性粉末による遠赤外線は、人体の体温を適正温度に保つ温熱作用および人体の水準を適正水準に保つ乾湿作用をし、各種栄養分のバランスを通じて代謝機能を促進し、免疫性を強化する利点を有する。また、毛細血管の拡張と細胞組織の生成を助け、血行を促進して発汗作用および痛み緩和効果があり、新陳代謝を促進する。
【0086】
また、前記多機能性粉末は、有害ガスの脱臭効果を具現し、特にアンモニアおよびホルムアルデヒドのような生体組織に刺激的で有害なガスの消臭効果が優れた利点を有する。
【0087】
さらに、前記多機能性粉末を含む前記多機能性保管物品は、保管対象の長期間の保管および状態維持性能に優れ、重金属、微生物および有害ガスなどから前記保管対象を保護する性能に優れている。
【実施例】
【0088】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記の実施例は、本発明を具体的に例示したり説明したりするためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されてはならない。
【0089】
<実施例および比較例>
【0090】
実施例1
天然鉱物原料を精製した後、325メッシュサイズに粉砕して酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化アルミニウム(Al2O3)を含む第1成分;および三酸化硫黄(SO3)および酸化ストロンチウム(SrO)を含む第2成分が含まれた多機能性粉末を製造した。その組成は、下記の表1のとおりである。
表1を参照すると、前記第1成分対前記第2成分の重量比は99.7:0.3であり、前記第1成分中の酸化マグネシウム対酸化アルミニウムの重量比は18.3:1であり、前記第2成分中の三酸化硫黄対酸化ストロンチウムの重量比は5.4:1である。
【0091】
【0092】
実施例2の天然鉱物質原料を精製した後、325メッシュ(mesh)サイズに粉砕して酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)および酸化マグネシウム(MgO)を含む第1成分;および酸化鉄(Fe2O3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化カリウム(K2O)、二酸化チタン(TiO2)、三酸化硫黄(SO3)、酸化マンガン(MnO)を含む第2成分が含有された多機能性粉末を製造した。その造成は、以下の表2のとおりである。
表2を参照すると、前記第1成分対前記第2成分の重量比は97:3であり、前記第1成分全体100重量%のうち、前記酸化ケイ素および前記酸化アルミニウムの総重量は約97%であり、前記酸化ケイ素対前記酸化アルミニウムの重量比は1.09:1であり、前記酸化鉄対前記酸化ナトリウムの重量比は1.43:1である。
【0093】
【0094】
<評価>
実験例1:遠赤外線放射特性評価
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれについて、KFIA-FI-1005標準規格の方法によって遠赤外線放射率および放射エネルギーを測定した。具体的には、37Cで測定され、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR Spectrometer)を用いた黒体(Black body)に対する測定結果である。その結果は、下記表3に記載されたとおりである。
【0095】
実験例2:有害ガス脱臭性能評価
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれに対して、1.0gの試料を用意し、23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のアンモニアガスまたはホルムアルデヒドガスを注入した後の初期ガス濃度値(C)を測定した後、前記多機能性粉末1.0gを前記密閉空間内に配置した後、30分、60分および120分が経過したそれぞれの時刻にガス濃度値(C)を測定した。続いて、下記式2および下記式3によってそれぞれアンモニア脱臭率およびホルムアルデヒド脱臭率を測定し、下記式1の有害ガス脱臭均衡指数(Harmful gas deodorization balance index)を導き出した。その結果は、下記表3に記載されたとおりである。
【0096】
[式1]
{(Cai-Caf)/Cai}/{(Cfi-Cff)/Cfi}
【0097】
[式2]
アンモニア脱臭率(%)=(Cai-Caf)/Caix100
【0098】
[式3]
ホルムアルデヒド脱臭率(%)=(Cfi-Cff)/Cfix100
【0099】
前記式1ないし式3において、前記Caiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のアンモニアガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cafは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のアンモニアガス濃度値であり、前記Cfiは23±5℃の温度および45±10%の相対湿度条件下で2L容積の密閉空間内に100ppm容積%のホルムアルデヒドガスを注入した後の初期ガス濃度値であり、前記Cffは前記密閉空間内に前記多機能性粉末1.0gを配置し、120分経過した後のホルムアルデヒドガス濃度値である。
【0100】
実験例3:酸化還元電位(Oxidation-Reduction Potential, ORP)
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれに対して、1.0gの試料を用意し、これをコニカルチューブ(conical tube)に入れた後、脱イオン水(deionized water)10mLを加えて24時間の間、振とう抽出した後、遠心分離して上澄み液を得た。前記上澄み液に対してORPを測定した。
1) ORPを測定するために、Water Quality Analyzer HORIBA LAQUA F-72(Kyoto, Japan)を使用した。
2) 電極は、HORIBA 9300-10D ORP Electrode(Kyoto, Japan)を使用した。
3) 試料のORPを測定する前に、ORP標準溶液Quinhydrone 263mV±30mV、25℃(Thermo scientific, Waltham, MA, USA)を使用し、補正後測定した。
4) 各試料は、10回測定した後、平均と標準誤差を示した。その結果は、下記表3のとおりである。
【0101】
実験例4:水素イオン濃度(pH)
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれに対して、1.0gの試料を用意した後、各試料を蒸留水10mL内に分散させた溶液を製造した後、24±2℃の温度および35±5%の相対湿度条件下で30分配置した後、前記溶液の上澄み液に対してThermo/orion 5 star pH meterを用いてpHを測定した。
【0102】
実験例5:塩基置換容量(CEC)および電気伝導度
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれについて、下記の方法で塩基置換容量を測定した。浸出管、洗浄液容器と水器が連結された装置を設置する。前記浸出管は、長さ4cm、内径0.3cmの脚と長さ12cm、内径1.3cmの管で構成され、前記洗浄液容器は100ml容量で10mlの目盛があるものを使用した。前記浸出管の下部に脱脂綿を少量入れて支持層とし、その上に濾過紙(6種)を細かく切って水に入れて沸かし、濾過パルプを作った後、5mmの厚さで濾過綿を作る。
続いて、前記浸出管の下部に酢酸アンモニウム液数mlを加え、前記多機能性粉末5~10gを少量ずつ入れて浸らせるものの、洗浄液容器のコックを調整して酢酸アンモニウム液100mlが4~8時間以内に浸透するように落とす速度を調節する。浸透液は、置換塩基の定量分析に使用する。浸透完了後、少量のアルコールで浸透管の内側上部を洗浄し、アルコール50mlを用いて過剰な酢酸アンモニウム液を除去する。NH4+イオンで飽和した分析試料を10%の塩化ナトリウム液100mlに置換してNH4+を置換浸出して供試液とする。供試液の全量または一定量を蒸留フラスコに取り、浸出液中のアンモニア態窒素を窒素定量法により蒸留し、滴定してNH4+を定量し、得られた数値を試料100g当たりの当量(me)に換算して塩基置換容量とする。
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれに対して、試料10gを取り、100mlの三角フラスコに入れ、蒸留水50mlを加えて1時間振とうする。続いて、濾紙で濾過して電気伝導度測定装置で電気伝導度を測定した。
【0103】
実験例6:平均粒径
前記実施例1および2の多機能性粉末それぞれに対して、メッシュ(mesh)を用いて分級処理を実施し、通常の粒度分析方法を用いてそれぞれの平均粒径を算出した。
【0104】
実験例7:抗菌性能評価
前記実施例1の多機能性粉末に対して、3gの試料を準備して蒸留水100mLにこれをよく混ぜて混合液を製造した。続いて、前記混合液を5分間放置して沈殿させた後、上澄み液を評価に使用した。前記上澄み液をそれぞれ黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352、Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)と5分間反応させた後、下記式4による菌減少率(%)を算出した。その結果は、下記表3に記載されたとおりである。
【0105】
[式4]
菌減少率(%)=(X-Y)/X * 100
【0106】
前記式4において、前記Xは対照群の生菌数(CFU, Colony-Forming Unit)であり、前記Yは試料処理群の生菌数(CFU)である。
【0107】
【0108】
前記表3を参照すると、前記実施例1ないし2の多機能性粉末は、人体に良い遠赤外線放射性能に優れ、アンモニアおよびホルムアルデヒドの優れた消臭効果が同時に具現される利点を有することが確認できる。具体的には、前記実施例1ないし2の多機能性粉末は、有害ガス脱臭均衡指数が約0.8ないし約2.0、より具体的には、約0.9ないし約1.7、より具体的には、約1.0ないし1.6の範囲を満たすことによって、アンモニアおよびホルムアルデヒドの二つの有害ガスに対してこれに相応する脱臭均衡度を示し、これは前記多機能性粉末の応用において向上した有害ガス除去性能で具現できる。
【0109】
特に、前記実施例1の多機能性粉末の場合、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538, Staphylococcus aureus)、大腸菌(ATCC 8739, Escherichia coli)、肺炎菌(ATCC 4352, Klebsiella pneumonia)および緑膿菌(ATCC 10145, Pseudomonas aeruginosa)それぞれに対する菌減少率が99%超過、例えば、99.5%ないし100%の範囲を満たすことにより、アンモニアおよびホルムアルデヒド脱臭性能に加えて抗菌性能において著しく向上した機能を具現することが確認できた。
【0110】
これと同時に、前記実施例1および2の多機能性粉末は、酸化還元電位(ORP)、水素イオン濃度(pH)、塩基置換容量(CEC)および電気伝導度も所定の範囲を満たすことによって様々な応用分野に活用できる。
【国際調査報告】