(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】IL-5結合分子、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230721BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230721BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230721BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230721BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230721BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230721BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230721BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230721BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230721BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230721BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230721BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230721BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230721BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20230721BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230721BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230721BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P37/08
A61P11/06
A61P17/00
A61P19/02
A61P11/00
A61P7/00
A61P7/06
A61P13/12
A61P31/06
G01N33/53 P
C07K16/24
C07K16/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580478
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2021077650
(87)【国際公開番号】W WO2022037031
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010843501.1
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522500387
【氏名又は名称】南京融捷康生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】REGENECORE BIOTECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Building 07, 16 Tree-House, Tanmi Rd., Jiangbei New Area Nanjing, Jiangsu 210000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蘇 志鵬
(72)【発明者】
【氏名】孟 巾果
(72)【発明者】
【氏名】張 雲
(72)【発明者】
【氏名】王 樂飛
(72)【発明者】
【氏名】姚 堯
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB17
4C085BB50
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA71
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
IL-5結合分子、その調製方法及びその使用が記載される。結合分子は、以下の相補性決定領域:配列番号43~49で示される配列のいずれかから選択されるCDR1のアミノ酸配列、配列番号50~56で示される配列のいずれかから選択されるCDR2のアミノ酸配列、及び配列番号57~62で示される配列のいずれかから選択されるCDR3のアミノ酸配列を含む。結合分子はIL-5に特異的に結合し、IL-5によって誘導される細胞増殖を効果的に阻害することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-5に特異的に結合することができ、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含む免疫グロブリン単一可変領域の少なくとも1つを含むIL-5結合分子であって、
CDR1は配列番号43~49で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有し、CDR2は配列番号50~56で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有し、CDR3は配列番号57~62で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する、IL-5結合分子。
【請求項2】
前記相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列が以下の(1)~(13)のいずれかで示される、請求項1に記載のIL-5結合分子であって:
(1)配列番号43、56及び58、
(2)配列番号49、51及び60、
(3)配列番号47、56及び57、
(4)配列番号45、54及び57、
(5)配列番号46、50及び61、
(6)配列番号47、56及び62、
(7)配列番号48、56及び57、
(8)配列番号45、53及び57、
(9)配列番号44、55及び57、
(10)配列番号43、56及び59、
(11)配列番号43、52及び59、
(12)配列番号47、56及び59、並びに
(13)配列番号47、52及び59;
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変領域は、FR1、FR2、FR3及びFR4を含むフレームワーク領域を更に含み、
FR1は配列番号63~68で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有し、FR2は配列番号69~72で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有し、FR3は配列番号73~86で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有し、FR4は配列番号87で示されるアミノ酸配列を有し;
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変領域の前記フレームワーク領域FR1、FR2及びFR3は、以下の(14)~(28)のいずれかで示される配列を有する、IL-5結合分子:
(14)配列番号65、72及び85、
(15)配列番号65、72及び82、
(16)配列番号64、71及び86、
(17)配列番号65、72及び73、
(18)配列番号65、72及び84、
(19)配列番号66、69及び83、
(20)配列番号68、72及び76、
(21)配列番号66、69及び79、
(22)配列番号63、72及び85、
(23)配列番号67、70及び80、
(24)配列番号65、72及び78、
(25)配列番号65、72及び77、
(26)配列番号67、70及び81、
(27)配列番号65、72及び74、並びに
(28)配列番号65、72及び75。
【請求項3】
前記免疫グロブリン単一可変領域がVHHであり;
好ましくは、前記VHHが配列番号1~12で示される配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有し;
好ましくは、前記VHHがヒト化VHHであり;及び
好ましくは、前記ヒト化VHHが配列番号13~21で示される配列のいずれかから選択される配列を有する、請求項2に記載のIL-5結合分子。
【請求項4】
前記VHHに連結された免疫グロブリンFc領域を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載のIL-5結合分子。
【請求項5】
前記免疫グロブリンFc領域がヒト免疫グロブリンFc領域であり、
好ましくは、前記ヒト免疫グロブリンFc領域がヒトIgG4のFc領域である、請求項4に記載のIL-5結合分子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のIL-5結合分子をコードし、
好ましくは、前記核酸が配列番号22~42で示される配列のいずれかから選択される配列を有する、単離された核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の単離された核酸を含む組換えベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の組換えベクターを含有する宿主細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の宿主細胞を培養してIL-5結合分子を得ることを含む、IL-5結合分子の調製方法。
【請求項10】
コンジュゲーション成分と、請求項1~5のいずれかに記載のIL-5結合分子とを含む、IL-5タンパク質に結合させるためのコンジュゲートであって、
前記コンジュゲーション成分が前記結合分子にコンジュゲートし、
前記コンジュゲーション成分が検出のためのマーカー及び/又は化合物を含み、
好ましくは、前記検出のためのマーカーが放射性元素である、コンジュゲート。
【請求項11】
請求項1~5のいずれかに記載のIL-5結合分子を含む、IL-5タンパク質の検出のためのキット。
【請求項12】
疾患を治療するためのIL-5を標的とする薬物の調製における、請求項1~5のいずれかに記載のIL-5結合分子の使用であって、
好ましくは、前記疾患が、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、疱疹、慢性特発性蕁麻疹、硬皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、グレーブス病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、及び腎疾患のいずれから選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療バイオテクノロジーの分野に関し、特にIL-5に対する結合分子、その調製方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトインターロイキン5は、IL-5とも呼ばれ、IL-13及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と共に、造血及び炎症に関与するサイトカインである。3つのサイトカインはすべて、好酸球の産生、機能及び生存を促進し、従って、炎症性疾患に影響を与えることができる。例えば、好酸球は、喘息、アトピー性皮膚炎及びアレルギー性鼻炎に対してエフェクターとして主に機能する。
【0003】
症候性喘息患者からの肺組織及び気管支肺胞洗浄液(BAL)中における増加したIL-5mRNA及びタンパク質レベルと共に、好酸球特異的サイトカインとして、IL-5が大部分の研究者に注目されている。IL-5レベルとアレルゲン刺激と疾患活動との間に相関関係があることも、研究者によって観察された。しかし、IL-5に加えて、GM-CSF及びIL-3も喘息における好酸球の産生及び活性化に機能し、アレルギー性炎症が起こる場所でGM-CSF及びIL-3が合成されていることが示されたことは明らかである。これらのサイトカインの発現は、浸潤性好酸球の総数及び好酸球活性化の程度の増加に役立つことができる。これらのサイトカインは、異なる段階での好酸球浸潤に機能することも可能である。抗原チャレンジを受けた患者からの最新の動力学データとして、IL-5レベルは2~7日目に増加し、GM-CSFレベルは2日目にピークに達して16日目も上昇が継続したことが示された。
【0004】
IL-5、GM-CSF及びIL-3は、細胞表面受容体に結合することで、好酸球及び他の正常細胞及び癌細胞を刺激する。細胞表面受容体には、3つの受容体で共有されるリガンド特異的なα鎖及び鎖(βc)が含まれる。各受容体のα鎖との結合は、受容体活性化の最初のステップである。しかし、α鎖との結合だけでは、活性化には不十分である。続いて、リガンドがβcをリクルートし、その後、以下に示す2つの主要な機能的結果を有するステップが続く。第1に、それによって、IL-5、GM-CSF及びIL-3の結合が実質的に不可逆的になり、その後、受容体の完全な活性化がもたらされる。これらの受容体の主要なシグナル伝達成分として、βcがJAK-2、STAT-5及び他のシグナル伝達分子の活性化を導き、最終的にはIL-5に通常伴われる過剰な細胞活性、GM-CSF及びIL-3の刺激、例えば好酸球の接着等を導き、その結果、脱顆粒及び細胞毒性がもたらされ、細胞生存率が延びる。
【0005】
好酸球活性化のためのサイトカインの活性を阻害又は拮抗するために、研究者は3つの主要な方法を試した。それらの方法の1つは、関連するサイトカインに対する抗体を使用する。例えば、IL-5に対する抗体がアレルゲン誘発性喘息の動物モデルで用いられる。この方法は、気道及び気管支への好酸球の流入による高応答を防ぐ点で比較的長期間作用性の効果を示した。しかし、高い親和性、IL-5特異的抗体、及びIL-5を標的とする薬剤が依然として不足している。この観点で、本発明が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、IL-5結合分子、その調製方法及びその使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記のように実現される。
第1の側面に従って、本発明の実施態様は、IL-5に特異的に結合することができ、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含む免疫グロブリン単一可変領域の少なくとも1つを含むIL-5結合分子を提供する。
【0008】
CDR1のアミノ酸配列は配列番号43~49で示される配列のいずれかから選択され、CDR2のアミノ酸配列は配列番号50~56で示される配列のいずれかから選択され、CDR3のアミノ酸配列は配列番号57~62で示される配列のいずれかから選択される。
【0009】
第2の側面に従って、本発明の実施態様は、前記の実施態様のIL-5結合分子をコードする単離された核酸を提供する。
【0010】
第3の側面に従って、本発明の実施態様は、前記の実施態様の単離された核酸を含む組換えベクターを提供する。
【0011】
第4の側面に従って、本発明の実施態様は、前記の実施態様の組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0012】
第5の側面に従って、本発明の実施態様は、前記の実施態様の宿主細胞を培養してIL-5結合分子を得ることを含むIL-5結合分子の調製方法を提供する。
【0013】
第6の側面に従って、本発明の実施態様は、コンジュゲーション成分と、前記の実施態様のIL-5結合分子とを含む、IL-5タンパク質に結合させるためのコンジュゲートであって、
コンジュゲーション成分はIL-5結合分子にコンジュゲートし、及びコンジュゲーション成分は検出のためのマーカー及び/又は化合物を含む、コンジュゲートを提供する。
【0014】
第7の側面に従って、本発明の実施態様は、前記の実施態様のIL-5結合分子を含むIL-5を検出するためのキットを提供する。
【0015】
第8の側面に従って、本発明の実施態様は、疾患を治療するためのIL-5を標的とする薬剤の調製における、前記の実施態様のIL-5結合分子の使用が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の有利な効果を有する。
本発明の実施態様は、IL-5結合分子、その調製方法及びその使用を提供する。結合分子は、IL-5に特異的に結合することができ、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含む免疫グロブリン単一可変領域の少なくとも1つを含む。CDR1のアミノ酸配列は配列番号43~49で示される配列のいずれかから選択され、CDR2のアミノ酸配列は配列番号50~56で示される配列のいずれかから選択され、CDR3のアミノ酸配列は配列番号57~62で示される配列のいずれかから選択される。結合分子は、IL-5に特異的に結合することができ、IL-5で誘導される細胞増殖を効果的に阻害することができ、IL-5関連疾患の予防、診断及び/又は治療のために使用することができる。
【0017】
本発明の実施態様の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に、実施態様を記載するために必要とされる添付の図面を簡単に説明する。以下の添付の図面には、本発明のいくつかの実施態様のみが示され、これらの図面は発明の範囲の限定と考えることはできないことは理解されるべきである。当業者は、創造的な労力無しに、依然として添付の図面から他の図面を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1におけるヒト組換えIL-5タンパク質のゲル電気泳動解析の結果を示す。
【
図2】実施例1におけるナノボディライブラリーのスクリーニング後の組換えIL-5タンパク質の濃縮を示す。P/Nは、「バイオパニング中の陽性ウェルから溶出したファージでTG1細菌を感染した後に増殖したモノクローナル細菌の数」/「陰性ウェルから溶出したファージでTG1細菌を感染した後に増殖したモノクローナル細菌の数」である。このパラメータは濃縮の間に徐々に増加する。I/Eは、「各ラウンドでのバイオパニング中の陽性ウェルに加えたファージの総量」/「バイオパニング中の陽性ウェルから溶出されたファージの総量」である。このパラメータは濃縮の間に徐々に1に近づく。
【
図3】実施例2における抗体株1B3及び2B3のヒト化変異体のそれぞれのアラインメントの結果を示す。
【
図4】検証例1における実施例1で得られた大腸菌で発現された12株の抗体のIL-5との結合の分析結果を示す。
【
図5】検証例2におけるTab1とTab2のIL-5との結合の用量反応関係を示すグラフである。
【
図6】検証例2における対照抗体1(Tab1)及び対照抗体2(Tab2)で中和されたIL-5誘導TF-1細胞の増殖の用量反応関係を示すグラフである。
【
図7】検証例3における実施例3で得られたIL-5特異的Fc融合単一ドメイン抗体で中和されたIL-5誘導TF-1細胞の増殖の用量反応関係を示すグラフである。
【
図8】検証例3における実施例3で得られた異なるヒト化Fc融合単一ドメイン抗体で中和されたIL-5誘導TF-1細胞の増殖の用量反応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施態様の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下に本発明の実施態様における技術的解決手段を明確に、完全に説明する。実施例に具体的な条件が明記されていない場合、通常の条件又はメーカーが推奨する条件に従って実行する。製造者の記載がない試薬又は装置は全て、市販で入手できる一般的な製品である。
【0020】
<用語の定義>
本明細書において「単一ドメイン抗体」(sdAb)は、ナノボディとも呼ばれ、軽鎖を自然に含まず、重鎖の1つの可変領域(VHH)のみを含む抗体である。
【0021】
本明細書において「ヒト化抗体」は、標的抗体(例えば、動物抗体)の重鎖可変領域とヒト抗体の定常領域とを融合させた抗体、又は標的抗体の相補性決定領域(CDR1~3の配列)をヒト抗体の可変領域中に移植して得られた抗体、又は標的抗体にヒト抗体のフレームワーク領域(FR1~4)の特徴に従ったアミノ酸変異を行って得られる抗体を意味する。ヒト化抗体は、合成で又は部位特異的変異誘発で得ることができる。
【0022】
本明細書において「二重特異性抗体」は、2つの抗原を同時に認識することができる小さな二価二重特異性抗体断片である。Hollinger et alは、抗原Aの抗体の軽鎖可変領域(VLA)の遺伝子を抗原Bの抗体の重鎖可変領域(VHB)に短いペプチド分子で連結して、同様に、VHAをVLBに連結し、二組のキメラ遺伝子をバイシストロニックな発現プラスミドに導入して、二重特異性抗体の発現プラスミドを構築した。発現後、VLA-VHBをVHA-VLBに交差結合して、二重特異性抗体を形成させた。本出願において、二価抗体で認識することができる抗原の1つは、IL-5タンパク質である。二価抗体で認識することができる他の抗原は、既存の抗原のいずれかから選択され得る。
【0023】
本明細書において「多価抗体」は、マルチ抗体とも呼ばれ、様々な抗原を同時に認識する(二重特異性抗体と同様に)ことができる改変された構造を有する抗体(二重特異性抗体と同様に)を意味する。本発明において、多価抗体で認識することができる抗原の1つは、IL-5タンパク質である。
【0024】
本明細書に記載された「CDR」は、抗体の相補性決定領域である。抗体は、通常、2つの可変領域:重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。重鎖可変領域又は軽鎖可変領域は、通常、3つのCDRを含む。
【0025】
<実施態様>
本発明の実施態様は、IL-5結合分子を提供する。IL-5結合分子は、IL-5に特異的に結合することができ、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含む免疫グロブリン単一可変領域の少なくとも1つを含み、
CDR1のアミノ酸配列は配列番号43~49で示される配列のいずれかから選択され、CDR2のアミノ酸配列は配列番号50~56で示される配列のいずれかから選択され、CDR3のアミノ酸配列は配列番号57~62で示される配列のいずれかから選択される。
【0026】
好ましくは、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、以下の(1)~(13)のいずれかで示される:
(1)配列番号43、56及び58、
(2)配列番号49、51及び60、
(3)配列番号47、56及び57、
(4)配列番号45、54及び57、
(5)配列番号46、50及び61、
(6)配列番号47、56及び62、
(7)配列番号48、56及び57、
(8)配列番号45、53及び57、
(9)配列番号44、55及び57、
(10)配列番号43、56及び59、
(11)配列番号43、52及び59、
(12)配列番号47、56及び59、並びに
(13)配列番号47、52及び59。
【0027】
任意の実施態様において、免疫グロブリン単一可変領域は、FR1、FR2、FR3及びFR4を含むフレームワーク領域を更に含む。単一領域抗体の構造は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4である。
【0028】
FR1のアミノ酸配列は配列番号63~68で示される配列のいずれかから選択され、FR2のアミノ酸配列は配列番号69~72で示される配列のいずれかから選択され、FR3のアミノ酸配列は配列番号73~86で示される配列のいずれかから選択され、FR4のアミノ酸配列は配列番号87で示される。
【0029】
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変領域の前記フレームワーク領域FR1、FR2及びFR3は、以下の(14)~(28)のいずれかで示される配列を有する:
(14)配列番号65、72及び85、
(15)配列番号65、72及び82、
(16)配列番号64、71及び86、
(17)配列番号65、72及び73、
(18)配列番号65、72及び84、
(19)配列番号66、69及び83、
(20)配列番号68、72及び76、
(21)配列番号66、69及び79、
(22)配列番号63、72及び85、
(23)配列番号67、70及び80、
(24)配列番号65、72及び78、
(25)配列番号65、72及び77、
(26)配列番号67、70及び81、
(27)配列番号65、72及び74、並びに
(28)配列番号65、72及び75。
【0030】
好ましくは、免疫グロブリン単一可変領域はVHHである。
好ましくは、前記VHHのアミノ酸配列は、配列番号1~12で示される配列のいずれかから選択される。
【0031】
好ましくは、前記VHHは、ヒト化VHHである。
好ましくは、ヒト化VHHの配列は、配列番号13~21で示される配列のいずれかから選択される。
【0032】
好ましくは、結合分子は、VHHに連結された免疫グロブリンFc領域を更に含む。
好ましくは、免疫グロブリンFc領域は、ヒト免疫グロブリンFc領域である。
好ましくは、ヒト免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4のFc領域である。
【0033】
本発明の実施態様は、前記の実施態様のいずれかのIL-5結合分子をコードする、単離された核酸を提供する。
好ましくは、核酸の配列は、配列番号22~42で示される配列のいずれかから選択される。
【0034】
本発明の実施態様は、前記の実施態様のいずれかの単離された核酸を含む組換えベクターを提供する。任意の実施態様において、組換えベクターは、プラスミド、ファージ、又はウイルスベクターであることができる。
【0035】
本発明の実施態様は、前記の実施態様の組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。任意の実施態様において、宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であることができる。
【0036】
本発明の実施態様は、前記の実施態様の宿主細胞を培養してIL-5結合分子を得ることを含む、IL-5結合分子の調製法を提供する。
【0037】
前記の実施態様のいずれかで記載された結合分子は、人工合成で調製するか、又はそのコード遺伝子を先に合成して生物学的発現を行って得ることができる。
【0038】
本発明の実施態様は、コンジュゲーション成分と、前記の実施態様のいずれかのIL-5結合分子とを含む、IL-5タンパク質に結合させるためのコンジュゲートを提供する。コンジュゲーション成分は前記結合分子にコンジュゲートし、及びコンジュゲーション成分は検出のためのマーカー及び/又は化合物を含む。
好ましくは、検出のためのマーカーは放射性元素である。
【0039】
本発明の実施態様は、前記の実施態様のいずれかのIL-5結合分子を含む、IL-5タンパク質の検出のためのキットを提供する。
【0040】
更に、本発明の実施態様は、疾患を治療するためのIL-5を標的とする薬物の調製における、IL-5結合分子の使用を提供する。
【0041】
好ましくは、前記疾患は、喘息、アレルギー性皮膚炎、湿疹、関節炎、疱疹、慢性特発性蕁麻疹、硬皮症、肥厚性瘢痕、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、川崎病、鎌状赤血球症、グレーブス病、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核、及び腎疾患のいずれから選択される。
【実施例】
【0042】
以下において、本発明の特徴及び性能を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0043】
実施例1
抗IL-5タンパク質単一ドメイン抗体の調製
A.ヒト組換えIL-5タンパク質の発現ベクターの構築
NCBI中の検索によってIL-5のコード配列をNM_000879.2のアクセッション番号で得た。コード配列でのコーディングによって、NP_000870.1のアクセッション番号を有するアミノ酸配列が提供された。TMHMM及びSMARTウェブサイト上で、NP_000870.1に対応するアミノ酸配列の膜貫通領域及び細胞外端のそれぞれの分析を行った。分析結果から、IL-5タンパク質が膜貫通領域を持たない分泌タンパク質であり、1~19位にシグナルペプチドを有し、全長で134アミノ酸を有することが示された。遺伝子合成によって、IL-5タンパク質の20~134位のアミノ酸をコードする核酸配列を、ベクターpcDNA3.4にクローニングした。構築した担体をSangerシーケンシングし、元の配列をアラインメントした。好結果の検証の後、組換えプラスミドをバッチで抽出し、エンドトキシンを除去し、標的タンパク質の発現及び精製のために懸濁された293F細胞に遺伝子導入した。精製されたヒト組換えIL-5タンパク質のSDS-PAGE分析結果を
図1に示す。
図1中、マーカーは標準タンパク質分子量勾配を示し、hrIL-5-cHisはカルボキシ末端にヒスチジンタグを有するヒト組換えIL-5タンパク質を示す。
【0044】
発現され精製されたヒト組換えIL-5のタンパク質の純度は約90%であることが、
図1から分かる。この実施例で得られたIL-5タンパク質はラクダの免疫及び抗体スクリーニングに用いられた。
【0045】
B.抗IL-5タンパク質単一ドメイン抗体ライブラリーの構築
ステップAで得た精製されたヒト組換えIL-5タンパク質600μgを等体積のフロイント完全アジュバントと混合し、週に1回、合計7回、Inner Mongolia Alxa Bactrianラクダを免疫した。初回免疫を除き、残りの6回の免疫は組換えIL-5タンパク質とフロイント不完全アジュバントの等体積の混合物300μgを用いて行って、ラクダ内に抗IL-5抗体を産生させた。
【0046】
免疫後、ラクダの末梢血リンパ球100mLを採取し、リンパ球からRNAを抽出した。抽出した全RNAを用いてcDNAを合成し、cDNAを鋳型としてネスティッドPCRによって重鎖抗体可変領域(VHH)を増幅した。次いで、pMECSベクターと増幅されたVHH断片を制限エンドヌクレアーゼを用いてそれぞれ消化し、消化された断片とベクターを連結した。連結した断片をコンピテント細胞TG1に形質転換し、IL-5タンパク質のファージディスプレイライブラリーを構築した。ライブラリー(組換えTG1細胞)の大きさは約1×109であると決定した。
【0047】
C.抗IL-5タンパク質単一ドメイン抗体のスクリーニング
ステップBで得た組換えTG1細胞200μLを2×TY培地に接種して培養した。培養中に40μLのヘルパーファージVCSM13を添加してTG1細胞を感染させ、一晩培養してファージを増幅させた。翌日、PEG/NaClでファージを沈殿させ、増幅させたファージを遠心分離で回収し、増幅されたファージライブラリーを得た。
【0048】
NaHCO
3(100mM,pH8.3)中に希釈されたIL-5タンパク質500μgを4℃で一晩、ELISAプレートにコンンジュゲートさせた。陰性対照ウェルも提供された。2日目に、200μLの3%脱脂乳を加えて、室温で2時間阻害した。阻害の後、100μLの増幅されたファージライブラリー(約2×10
11ファージ粒子)を加えて、室温で1時間作用させた。その作用から1時間後、プレートをPBS及び0.05%Tween20で5回洗浄し、非結合ファージを洗浄した。IL-5タンパク質に特異的に結合するファージを最終濃度2.5mg/mLでトリプシンで解離させ、対数増殖期の大腸菌TG1細胞に感染させた。感染された大腸菌TG1細胞を37℃で1時間培養し、次のスクリーニングのためのファージを製造し回収した。同じスクリーニングプロセスを別のラウンドで繰り返し、徐々に濃縮させることができた。10倍以上の濃縮効率として、濃縮の効果を
図2及び表1に示す。
【0049】
【表1】
ラウンド3の濃縮で、P/Nが2500であり、I/Eが4であることが、この結果から分かる。
【0050】
D.ファージELISAによるIL-5に対する特異的陽性クローンのスクリーニング
濃縮効率が10倍以上である場合、スクリーニングされた陽性クローンから400個の単一コロニーを選択し、96深ウェルプレート中、100μg/mLのアンピシリンを含むTB培地に接種した。ブランク対照も提供された。プレートを37℃で対数増殖期まで培養した。次に、最終濃度1mMでIPTGを加えて、28℃で一晩培養した。
【0051】
浸透圧破裂によって、抗体粗抽出物を得た。ヒト組換えIL-5タンパク質をNaHCO3(100mM,pH8.3)に希釈し、100μgのヒト組換えIL-5タンパク質をELISAプレート中、4℃で一晩コーティングした。100μLの得られた抗体粗抽出物をELISAプレートに移し、そこに抗原(組換えIL-5タンパク質)を加え、室温で1時間培養した。未結合抗体をPBSTで洗浄した。1:20000希釈のマウス抗HAタグ抗体(サーモフィッシャー)100μLを加え、室温で1時間培養した。未結合抗体をPBSTで洗浄した。1:20000希釈の抗ウサギHRPコンジュゲート(西洋ワサビパーオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギ抗体,サーモフィッシャー)100μLを加え、室温で1時間培養した。未結合抗体をPBSTで洗浄した。西洋ワサビパーオキシダーゼ発色溶液を加え、37℃で15分間反応させ、停止液を加えてマイクロプレートリーダーで波長450nmの吸収を測定した。サンプルウェルの光学濃度(OD)が対照ウェルのODより5倍を超える時、サンプルウェルを陽性クローンウェルと決定した。プラスミド抽出とシークエンシングのために、陽性クローンウェル中の細菌を、撹拌機上の100μg/μLのアンピシリンを含有するLB培地に移した。配列アラインメントソフトウェアVector NTIを用いて各クローンの遺伝子配列を分析した。同一のCDR1、CDR2及びCDR3配列を有する株を同一のクローンとし、異なる配列を有する株を異なるクローンとした。最終的に、IL-5タンパク質特異的単一ドメイン抗体を得た。単一ドメイン抗体は、VHH全体を形成するFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のアミノ酸配列を有する。得られた単一ドメイン抗体の組換えプラスミド(陽性プラスミド、標的配列)を、原核生物系で発現させて、最終的に単一ドメイン抗体タンパク質を得ることができる。
【0052】
E.宿主大腸菌中のIL-5タンパク質特異的単一ドメイン抗体の精製及び発現
ステップDのシークエンシング分析によって得られた異なるクローンの陽性プラスミド(pMECS-VHH)を、大腸菌HB2151に電気穿孔した。これをLB+amp+グルコース培養プレート(すなわち、アンピシリン及びグルコースを含有する)に広げて、37℃で一晩培養した。単一のコロニーを選択し、アンピシリンを含むLB培地5mL中で接種し、攪拌機上で37℃で一晩培養した。1mLの一晩後の培養液を330mLのTB培地に接種し、撹拌機上で37℃で培養した。分光光度計を用いて、波長600nmの吸収を測定し、OD600として記録した。OD600値が0.6~0.9の範囲で測定された時、1MのIPTGを加えて、撹拌機上で28℃で一晩培養した。大腸菌を遠心分離で回収した。浸透圧破裂によって、抗体粗抽出物を得た。アフィニティークロマトグラフィーでNiカラムを通して抗体を精製した。精製された単一ドメイン抗体を表2に示す。
【0053】
【0054】
実施例2
抗IL-5単一ドメイン抗体のヒト化
単一ドメイン抗体のヒト化のために、タンパク質表面上のアミノ酸のヒト化及びユニバーサルフレームワークの移植によって、ヒト化を行った。
【0055】
以下のステップで、タンパク質表面上のアミノ酸のヒト化を行った。参照として相同配列を有するNbBcII10抗体(PDBアクセッション番号:3DWT)を用い、Discovery Studio及びモデリングソフトウェアーを用いて抗体株1B3及び2B3に対してホモロジーモデリングを行った。タンパク質三次元構造に従って、アミノ酸の溶媒に対する相対的アクセス性を計算した。
【0056】
以下の特定のステップで、VHHのヒト化のためのユニバーサルフレームワークの移植を行った。まず、配列相同性に従って、ナノボディNbBcII10(PDBアクセッション番号:3DWT)に基づいて、ヒト抗体DP-47を参照してタンパク質表面上のアミノ酸をヒト化して、FGLAとしてVHH配列フレームワーク-2のいくつかのアミノ酸を改変することで、VHHのヒト化のためのユニバーサルフレームワークh-NbBcII10FGLA(PDBアクセッション番号:3EAK)を設計し、提供された。フレームワークとして直接用いられるh-NbBcII10FGLAのCDRを、抗体株1B3及び2B3のCDRでそれぞれ置き換えて、抗体のヒト化を完了した。
【0057】
抗体株1B3及び2B3をヒト化して、5つのヒト化抗体株変異体を得た。表3及び表4は、これらのヒト化変異体の配列番号とアミノ酸の変化を示す。アミノ酸残基は、Kabatナンバリングシステムで番号が付けられた。表3及び表4の中の「○」は、ナノボディクローンのその位置に変異(置換)が存在することを示す。具体的には、例えば、「S11L」は、11位でS(セリン)がL(ロイシン)に置換されていることを意味し、「S66T」は、66位でS(セリン)がT(トレオニン)に置換されていることを意味する。
図3はヒト化された配列のアラインメントの結果を示す。
【0058】
【0059】
【0060】
実施例3
F.IL-5タンパク質単一ドメイン抗体のFc融合タンパク質の真核細胞発現ベクターの構築
実施例1のステップDでスクリーニングされた単一ドメイン抗体の核酸配列を、サンガーのシーケンシング方法で得た。配列合成によってコドン最適化された上記の塩基配列を、改変されたベクターRJK-V4-hFCに導入した。
【0061】
RJK-V4-hFCは、ナノボディのユニバーサル標的ベクターであり、Invitrogenからの市販ベクターpcDNA3.4(ベクターの情報は、https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/manuals/pcDNA3_4_topo_ta_cloning_kit_man.pdfで得られる)でヒトIgGの重鎖コード配列(NCBIアクセッション番号:AB776838.1)のFc断片を融合することで得られる。ベクターは、IgG重鎖のヒンジCH2及びCH3領域を含む。具体的な改変は以下の通りである。
【0062】
pcDNA3.4中のXbaI及びAgeI制限酵素切断部位を選択した。オーバーラップPCRによってマルチクローニング部位(MCS)及び6×HisタグをそれぞれFc断片コード配列の5’末端及び3’末端に導入した。XbaI及びAgeI制限酵素切断部位を有する一対のプライマーを用いたPCRによって上記断片を増幅した。制限エンドヌクレアーゼXbaI及びAgeIを用いて、pcDNA3.4とプライマーに由来するXbaI及びAgeI制限酵素切断部位を有する増幅された断片をそれぞれ消化した。消化されたベクター及び導入された断片を、T4リガーゼを用いて連結し、その後、連結された生成物を大腸菌中に形質転換し、増幅し、シーケンシングで検証し、組換え真核細胞発現ベクターを得た。
【0063】
構築された組換え真核細胞発現ベクターをDH5α大腸菌中に形質転換し、プラスミドマキシプレップ抽出で培養し、エンドトキシンを除去した。マキシプレップ抽出されたプラスミドをシーケンシングによって同定した。確認された組換えベクターを、続く真核細胞中の遺伝子導入及び発現のために用いた。
【0064】
G.懸濁されたExpiCHO-S細胞中のIL-5タンパク質特異的単一ドメイン抗体のFc融合タンパク質の発現
遺伝子導入の3日前に2.5×105/mLの濃度でExpiCHO-S(商標)細胞を継代し、発展させた。計算で必要な体積中の細胞を、120mL(最終体積)のExpiCHO(商標)発現培地を含む500mLの振とうフラスコに移した。細胞を約4×106~6×106生細胞/mLの濃度で培養した。遺伝子導入の前日に、ExpiCHO-S(商標)を3.5×106生細胞/mLに希釈し、一晩培養した。遺伝子導入の当日、細胞密度と生細胞百分率を測定した。遺伝子導入の前に、細胞密度が約7×106~10×106生細胞/mLに達するべきである。37℃に予熱された新鮮なExpiCHO(商標)発現培地で細胞を6×106生細胞/mLに希釈した。計算で必要な体積中の細胞を、100mL(最終体積)の新鮮な予熱されたExpiCHO(商標)発現培地を含む500mLの振とうフラスコに移した。振とうフラスコを穏やかに上下ひっくり返して転回することで、ExpiFectamine(商標)CHO試薬を均一に混合し、3.7mLのOptiPRO(商標)培地で希釈し、振とうし、均一に混合した。ステップFで得たプラスミドDNAを4mLの冷えたOptiPRO(商標)培地で希釈し、振とうし、均一に混合した。ExpiFectamineCHO/プラスミドDNAの混合物を室温で3分間培養し、振とうフラスコを穏やかに振とうさせながら、調製された細胞懸濁液に穏やかに加えた。37℃、8%CO2を含む加湿空気中で、細胞を振とう培養した。遺伝子導入の1日後(18~22時間後)、600μLのExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及び24mLのExpiCHOフィードを加えた。遺伝子導入の約8日後(細胞生存率が70%未満であった)、上清を回収した。
【0065】
H.懸濁された293F細胞中の抗IL-5タンパク質単一ドメイン抗体のFc融合タンパク質の発現
遺伝子導入の3日前に、2.5×105/mLの濃度で293F細胞を継代し、発展させた。計算で必要な体積中の細胞を、120mL(最終体積)の新鮮な予熱されたOPM-293CD05培地を含む500mLの振とうフラスコに移した。細胞を約2×106~3×106生細胞/mLの濃度まで培養した。遺伝子導入の当日、細胞密度と生細胞百分率を測定した。遺伝子導入の前に、細胞密度が約2×106~3×106生細胞/mLに達するべきである。予熱されたOPM-293CD05培地で細胞を1×106生細胞/mLに希釈した。計算で必要な体積中の細胞を、100mL(最終体積)の新鮮な予熱された培地を含む500mLの振とうフラスコに移した。4mLのOpti-MEM培地でPEI(1mg/mL)試薬を希釈し、振とうし、ピペッティングで均一に混合した。ステップFで得たプラスミドDNAを4mLのOpti-MEM培地で希釈し、振とうし、均一に混合し、0.22μmのフィルターヘッドで濾過し、室温で5分間培養した。希釈されたPEI試薬を希釈されたDNAに加え、上下ひっくり返して転回して、均一に混合した。PEI/プラスミドDNAの混合物を室温で15~20分間培養し、振とうフラスコを穏やかに振とうさせながら、調製された細胞懸濁液に穏やかに加えた。37℃で5%CO2中、120rpmで細胞を振とう培養した。遺伝子導入の24時間及び72時間の後、5mLのOPM-CHOPFF05フィードを加えた。遺伝子導入の約7日後(細胞生存率が70%未満であった)、上清を回収した。
【0066】
I.抗IL-5タンパク質単一ドメイン抗体のFc融合タンパク質の精製
ステップG又はHで得られたFc融合タンパク質の発現上清を、0.45μmのディスポザブルフィルターヘッドで濾過して、不溶性不純物を除去した。タンパク質精製装置を用いて、ヒトFc融合タンパク質のプロテインAへの結合に基づいて、プロテインAにコンジュゲートされたアガロース充填剤を有するアフィニティークロマトグラフィーで濾液を精製した。プロテインAが事前に充填されたカラムに濾液を1mL/分の流量で流した。このステップで濾液中の標的タンパク質が充填剤に結合する。低塩バッファーと高塩バッファーで、カラムに結合した不純物タンパク質を洗浄した。カラムに結合した標的タンパク質を低pHバッファーで溶出させた。中和のためにpH9.0のTris-HCl溶液に、溶出された溶液を速やかに加えた。
【0067】
中和されたタンパク質溶液を透析し、SDS-PAGE分析を行った。95%以上の純度及び0.5mg/mL以上の濃度を有するタンパク質を低温保存し、使える状態にした。
【0068】
検証例1
実施例1で提供されたIL-5タンパク質特異的単一ドメイン抗体の用量反応関係の決定
50μLの1μg/mLのIL-5タンパク質をELISAプレート上に4℃で一晩コーティングした。プレートを洗浄した。200μLの5%牛乳を加え、37℃で1時間阻害した。実施例1で得られたIL-5タンパク質特異的単一ドメイン抗体(VHH)を2μg/mLに希釈し、次いで5倍勾配で希釈して合計8つの濃度勾配とした。プレートを洗浄した。50μLの抗体をデュプリケートのプレートに加え、37℃で1時間培養した。プレートを洗浄した。50μLのマウス抗HAタグHRP二次抗体を加え、37℃で30分間培養した。プレートを複数回、洗浄した。50μLの常温で保存されたTMBを加えて、室温で暗所で15分間、反応させた。50μLの停止溶液(1N HCl)を加えた。マイクロプレートリーダーを用いて結果物を測定し、記録した。曲線をプロットした。最大効果の50%の濃度(EC50)は、最大効果の50%を示す濃度であり、計算した。その結果を
図4及び表5に示す。
【0069】
【0070】
検証例2
ヒトIL-5タンパク質を標的とするツール抗体(Tab)の発現及び精製
Tab1(対照抗体1)及びTab2(対照抗体2)を得た。Tab1は、US7982005B2に示される配列を有するmepolizumabである。Tab2は、US6056957に示される配列を有するreslizumabである。
【0071】
哺乳動物細胞発現システムのためのコドン最適化のために、検索されたTab1及びTab2の配列がGeneral Biol (Anhui) Co.,Ltd.に委託され、それぞれpcDNA3.1ベクターにクローニングされた。
【0072】
耐性のためにスクリーニングされたプラスミド-陽性細菌が増幅され、プラスミドミディプレップキット(Macherey Nagel、カタログ番号740412.50)を用いてプラスミドを抽出した。100mLの細胞当たり100μgのプラスミド(50μgの重鎖及び50μgの軽鎖)を加え、PEIを用いて293F細胞(FreeStyle 293 Expression Medium,Thermo,カタログ番号12338026+F-68,Thermo,カタログ番号24040032)中で一時的に遺伝子導入し、発現させた。遺伝子導入から6~24時間後に、5体積%の10%ペプトロン(シグマ,カタログ番号P0521-100G)を加え、8%CO
2で130rpmで約7~8日間培養した。細胞生存率が50%に低下した時、発現上清を回収し、プロテインA(GE,カタログ番号17-5438-02)重力カラムで精製した。PBS透析後、Nanodropを用いて濃度を測定し、SECで純度を特定し、間接ELISAで結合を検証した。本方法によって得られたTab抗体は、2mg/mL以上の濃度と94%以上の純度を有する。IL-5タンパク質(Novoprotein,カタログ番号CS33)への結合のEC50を
図5及び表6に示す。
【0073】
【0074】
ヒト組換えIL-5タンパク質で誘導され、ツール抗体(Tab)で中和されたTF-1細胞増殖の実験
ヒト組換えIL-5タンパク質で誘導されたTF-1細胞増殖の実験:
蘇生後3~4代で継代したTF-1細胞を、10000細胞/ウェルで96ウェルプレート中に接種した。ヒトIL-5タンパク質を最大濃度500ng/mLの溶液で構成し、5倍勾配で希釈した。勾配希釈されたIL-5タンパク質溶液を細胞培養培地と等体積で細胞培養ウェルに加えた。72時間の培養後、発光細胞生存率検出キットを用いて細胞生存率を検出した。IL-5誘導TF-1細胞増殖のEC80を検出結果に従って計算した。EC80(最大効果の80%の濃度)は、最大効果の80%を示す濃度である。
【0075】
Tabで中和されたヒトIL-5タンパク質で誘導されたTF-1細胞増殖の実験:
蘇生後3~4代で継代したTF-1細胞を、10000細胞/ウェルで96ウェルプレート中に接種した。Tab1及びTab2を10μg/mLの溶液で構成し、5倍勾配で希釈した。勾配希釈されたTabを増殖実験で得られたEC80濃度でIL-5と1:1で混合して、混合溶液を得た。混合溶液を細胞培養培地と等体積で細胞培養ウェルに加えた。72時間の培養後、発光細胞生存率検出キットを用いて細胞生存率を検出した。IL-5誘導TF-1細胞増殖を中和するTAb1及びTab2のEC50濃度を検出結果に従って計算した。その結果を
図6及び表7に示す。
【0076】
【0077】
検証例3
抗IL-5タンパク質単一ドメイン抗体のFc融合タンパク質で中和されたIL-5誘導TF-1細胞の増殖の検出
蘇生後3~4代で継代したTF-1細胞を、10000細胞/ウェルで96ウェルプレート中に接種した。Tab1、Tab2及び実施例3-Iで提供された単一ドメイン抗体のFc融合タンパク質を10μg/mLの溶液で構成し、5倍勾配で希釈した。勾配希釈されたTab及び単一ドメイン抗体を増殖実験で得られたEC80濃度でIL-5タンパク質と1:1で混合して、混合溶液を得た。混合溶液を細胞培養培地と等体積で細胞培養ウェルに加えた。72時間の培養後、発光細胞生存率検出キットを用いて細胞生存率を検出した。IL-5誘導TF-1細胞増殖を中和する異なる単一ドメイン抗体のEC50濃度を検出結果に従って計算した。その結果を
図7~8及び表8~9に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
IL-5結合分子のアフィニティー動力学の検出
SDバッファーの構成:ウシ血清アルブミン及びTween20の質量(又は体積)分率がそれぞれ0.1%及び0.02%となるように、ウシ血清アルブミン及びTween20の適量を1×PBS(pH7.4)に溶解した。IL-5結合分子をSDバッファー中、10μg/mLの濃度で構成させた。
抗原使用液の構成:抗原を、SDバッファー中、200nMに構成させ、その後、2倍勾配で希釈し、合計5つの濃度勾配が設定された。更に1つのSDバッファーのブランク対照も提供された。0.1Mのグリシン保存溶液の適量を脱イオン水中で10倍に希釈し、均一に混合して、再生溶液を得た。Octet96及びその支援コンピュータ中のData Acquisitonソフトウェアをオンにした。適量の75%エタノールと共にレンズ用紙を用いて、取込みプローブの底面と側面を洗浄した。装置を15分間以上、予熱した。
センサーのプリウェッティング:試験前にセンサーをSDバッファー中に10分間以上、浸漬した。その後、試験操作のために、ベースライン→抗体→ベースライン→抗原の結合→抗原の解離→センサーの再生の手順に従って、機械手順を設定した。
【0081】
具体的に試験したIL-5結合分子のアフィニティー動力学パラメーターを表10に示す。
【0082】
【0083】
KDは親和性定数であり、単位はモル(M)である。
Kaは結合速度定数であり、単位はモル時間の逆数(1/Ms)である。
Kdは解離速度定数であり、単位は時間の逆数である。
R2はフィット度合、つまり実測曲線とフィット曲線がどれだけ一致しているかを示すものである。R2が1に近いほど、フィット値が実測値に近くなる。本システムでは、R2は少なくとも0.95よりも大きいものとする。
X2はシステムで測定した値を反映する統計的パラメータである。X2は3よりも小さいものとし、X2が小さいほど測定値の信頼性が高くなる。
その他の誤差値は対応するパラメータの誤差値であり、対応するパラメータより1桁(10倍)小さいか、それより小さいものとする。
【0084】
この結果から、ツール抗体に比べて、クローン1B3は僅かに小さいアフィニティー動力学定数を有し、残りのクローンは僅かに大きいアフィニティー動力学定数を有し、試験したサンプルの間でアフィニティー動力学定数に有意な差は見られず、統計的有意差は無かったことが示された。
【0085】
本明細書に記載されたものは、単に本発明の好ましい実施形態であり、本発明を限定することは意図されていない。当業者は、本発明に種々の変更及び改変を行うことができる。本発明の精神及び原則の範囲内で行われるあらゆる改変、等価な置換又は改善は、本発明の保護範囲に含まれるものである。
【配列表】
【国際調査報告】