(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】少なくとも電気特性を使用した配列決定のための構成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20230721BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230721BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12M1/00 A
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580489
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021038887
(87)【国際公開番号】W WO2022005868
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ロヘルト バシガルポ,マリア カンデラリア
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR42
4B063QS32
4B063QX01
(57)【要約】
本明細書では、少なくともポリマーブリッジの電気特性を変化させることを使用して、配列決定するための構成物及び方法が提供される。いくつかの例では、ブリッジは、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがり得、互いにハイブリダイズしている第1及び第2のポリマー鎖を含み得る。複数のヌクレオチドは、対応する標識に結合され得る。ポリメラーゼは、ブリッジに結合され得、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加し得る。それらのヌクレオチドに対応する標識はそれぞれ、第1のポリマー鎖と第2のポリマー鎖との間のハイブリダイゼーションを変化させ得る。検出回路は、少なくともブリッジを通る電気信号の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出し得、変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用したハイブリダイゼーションのそれぞれの変化に応答する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成物であって、
空間によって互いに分離された第1及び第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間の前記空間にまたがるブリッジであって、
互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリマー鎖を含む、ブリッジと、
第1及び第2のポリヌクレオチドと、
複数のヌクレオチドであって、各ヌクレオチドが対応する標識に結合されている、複数のヌクレオチドと、
少なくとも前記第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、前記複数のヌクレオチドのヌクレオチドを、前記第1のポリヌクレオチドに付加するためのポリメラーゼと、
前記第1及び第2のポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる、それらのヌクレオチドにそれぞれ対応する前記標識と、
少なくとも前記ブリッジを通る電気信号の変化を使用して、前記ポリメラーゼが前記ヌクレオチドを前記第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出するための検出回路であって、前記変化が、それらのヌクレオチドに対応する前記標識を使用した前記電気特性の変化に応答する、検出回路と、を含む、構成物。
【請求項2】
前記第1及び第2のポリマー鎖が、それぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の構成物。
【請求項3】
前記標識が、前記第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間の前記ハイブリダイゼーションを変化させるそれぞれのオリゴヌクレオチドを含む、請求項2に記載の構成物。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが、互いに異なる位置で前記ハイブリダイゼーションを変化させる、請求項3に記載の構成物。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが、異なる長さの領域において前記ハイブリダイゼーションを変化させる、請求項3又は4に記載の構成物。
【請求項6】
前記第1及び第2のポリマー鎖の前記ポリヌクレオチド並びに前記標識の前記オリゴヌクレオチドが、非天然DNAを含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の構成物。
【請求項7】
前記非天然DNAが、エナンチオマーDNAを含む、請求項6に記載の構成物。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドを含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の構成物。
【請求項9】
前記修飾ヌクレオチドが、修飾骨格、修飾糖、又は修飾塩基を有する、請求項8に記載の構成物。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドが、PNA及びLNAからなる群から選択される核酸類似体を含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の構成物。
【請求項11】
前記第1及び第2のポリヌクレオチドが、DNAを含み、前記標識が前記DNAと相互作用するタンパク質を含む、請求項2に記載の構成物。
【請求項12】
前記標識が、DNAインターカレータを含む、請求項1に記載の構成物。
【請求項13】
前記標識が、副溝結合剤を含む、請求項1に記載の構成物。
【請求項14】
前記標識が、ペプチドインターカレータを含む、請求項1に記載の構成物。
【請求項15】
前記標識が、絡み合ったアルファヘリックスを含む、請求項1に記載の構成物。
【請求項16】
前記第1及び第2のポリマー鎖が、それぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリペプチドを含む、請求項1に記載の構成物。
【請求項17】
前記標識の各々が、前記第1及び第2のポリペプチドのうちの少なくとも1つの電気特性を変化させるタンパク質、ペプチド、又はインターカレータを含む、請求項16に記載の構成物。
【請求項18】
方法であって、
ポリメラーゼを使用し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加することと、
前記ヌクレオチドにそれぞれ結合された標識を使用して、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジの第1のポリマー鎖及び第2のポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させることと、
少なくとも前記ブリッジを通る電気信号の変化を使用して、前記ポリメラーゼが前記ヌクレオチドを前記第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出することであって、前記変化が、それらのヌクレオチドに対応する前記標識を使用した電気特性のそれぞれの変化に応答する、検出することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記第1及び第2のポリマー鎖が、それぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリヌクレオチドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標識が、前記第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間の前記ハイブリダイゼーションを変化させるそれぞれのオリゴヌクレオチドを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標識が、互いに異なる位置で前記ハイブリダイゼーションを変化させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記標識が、異なる長さの領域において前記ハイブリダイゼーションを変化させる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2のポリマー鎖の前記ポリヌクレオチド並びに前記標識の前記オリゴヌクレオチドが、非天然DNAを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記非天然DNAが、エナンチオマーDNAを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記オリゴヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記修飾ヌクレオチドが、修飾骨格、修飾糖、又は修飾塩基を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記オリゴヌクレオチドが、PNA及びLNAからなる群から選択される核酸類似体を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記第1及び第2のポリヌクレオチドが、DNAを含み、前記標識が、前記DNAと相互作用するタンパク質を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記標識が、DNAインターカレータを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記標識が、副溝結合剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記標識が、ペプチドインターカレータを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記標識が、絡み合ったアルファヘリックスを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記第1及び第2のポリマー鎖が、それぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリペプチド鎖を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記標識の各々が、前記第1及び第2のポリペプチドのうちの少なくとも1つの電気特性を変化させるタンパク質、ペプチド、又はインターカレータを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
構成物であって、
空間によって互いに分離された第1及び第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間の前記空間にまたがるブリッジであって、ポリマー鎖を含む、ブリッジと、
第1及び第2のポリヌクレオチドと、
複数のヌクレオチドであって、各ヌクレオチドが対応する標識に結合されている、複数のヌクレオチドと、
少なくとも前記第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、前記複数のヌクレオチドのヌクレオチドを、前記第1のポリヌクレオチドに付加するためのポリメラーゼと、
前記ポリマー鎖の電気特性を変化させる、それらのヌクレオチドにそれぞれ対応する前記標識と、
少なくとも前記ブリッジを通る電気信号の変化を使用して、前記ポリメラーゼが前記ヌクレオチドを前記第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出するための検出回路であって、前記変化が、それらのヌクレオチドに対応する前記標識を使用した前記電気特性の変化に応答する、検出回路と、を含む、構成物。
【請求項36】
前記ポリマー鎖が、ポリペプチド鎖を含む、請求項35に記載の構成物。
【請求項37】
前記標識が、ペプチドインターカレータを含む、請求項35又は36に記載の構成物。
【請求項38】
前記標識が、絡み合ったアルファヘリックスを含む、請求項35又は36に記載の構成物。
【請求項39】
方法であって、
ポリメラーゼを使用し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加することと、
前記ヌクレオチドにそれぞれ結合された標識を使用して、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジのポリマー鎖の電気特性を変化させることと、
少なくとも前記ブリッジを通る電気信号の変化を使用して、前記ポリメラーゼが前記ヌクレオチドを前記第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出することであって、前記変化が、それらのヌクレオチドに対応する前記標識を使用した前記電気特性のそれぞれの変化に応答する、検出することと、を含む、方法。
【請求項40】
前記ポリマー鎖が、ポリペプチド鎖を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記標識が、ペプチドインターカレータを含む、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記標識が、絡み合ったアルファヘリックスを含む、請求項39又は40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月30日に出願され、「Compositions and Methods for Sequencing Using at Least Electrical Characteristics」と題された米国仮特許出願第63/046,618号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年6月11日に作成された当該ASCIIコピーは、IP_1969_PCT_SL.txtと称され、サイズは3,590バイトである。
【背景技術】
【0003】
DNAなどのポリヌクレオチドの配列決定に、学術的及び企業による莫大な量の時間及びエネルギーが費やされてきた。一部の配列決定システムは、「合成による配列決定」(sequencing by synthesis、SBS)技術及び蛍光をベースとする検出を使用する。しかし、蛍光をベースとする検出は、励起光源、イメージングデバイスなどの光学的構成要素を必要とすることがあり、この検出は、操作が複雑で、時間を浪費し、費用もかかり得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供される例は、少なくとも電極間のブリッジの電気特性を変化させることを使用する配列決定に関する。このような配列決定を実施するための構成物及び方法が開示される。
【0005】
いくつかの例では、ブリッジは、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがり得、単一のポリマー鎖を含み得るか、又は互いにハイブリダイズしている第1及び第2のポリマー鎖を含み得るか、又は3つ以上のポリマー鎖を含み得る。複数のヌクレオチドは、対応する標識に結合され得る。ポリメラーゼは、ブリッジに結合するか、又はそれに近接し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、第1のポリヌクレオチドにヌクレオチドを付加し得る。それらのヌクレオチドにそれぞれ対応する標識は、ブリッジの電気特性を変化させ得る。検出回路は、少なくとも、ブリッジを通る電気信号、例えば電流又は電圧の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出し得、変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性のそれぞれの変化に応答する。
【0006】
本明細書のいくつかの例では、空間によって互いに分離された第1及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジと、を含む、構成物が提供される。ブリッジは、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリマー鎖を含み得る。構成物はまた、第1及び第2のポリヌクレオチド、並びに複数のヌクレオチドも含み得、各ヌクレオチドは、対応する標識に結合される。構成物はまた、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、複数のヌクレオチドのヌクレオチドを、第1のポリヌクレオチドに付加するためのポリメラーゼも含み得る。それらのヌクレオチドにそれぞれ対応する標識は、第1及び第2のポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させ得る。構成物は、少なくともブリッジを通る電気信号の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出するための検出回路を含み得る。変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性の変化に応答し得る。
【0007】
いくつかの例では、第1及び第2のポリマー鎖はそれぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリヌクレオチドを含む。いくつかの例では、標識は、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを変化させるそれぞれのオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、互いに異なる位置でハイブリダイゼーションを変化させる。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、異なる長さの領域においてハイブリダイゼーションを変化させる。
【0008】
いくつかの例では、第1及び第2のポリマー鎖のポリヌクレオチド並びに標識のオリゴヌクレオチドは、非天然DNAを含む。いくつかの例では、非天然DNAは、エナンチオマーDNAを含む。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの例では、修飾ヌクレオチドは、修飾骨格、修飾糖、又は修飾塩基を有する。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、PNA及びLNAからなる群から選択される核酸類似体を含む。
【0009】
いくつかの例では、第1及び第2のポリヌクレオチドは、DNAを含み、標識は、DNAと相互作用するタンパク質を含む。いくつかの例では、標識は、DNAインターカレータを含む。いくつかの例では、標識は、副溝結合剤を含む。いくつかの例では、標識は、ペプチドインターカレータを含む。いくつかの例では、標識は、絡み合ったアルファヘリックスを含む。
【0010】
いくつかの例では、第1及び第2のポリマー鎖はそれぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリペプチドを含む。いくつかの例では、標識の各々は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間のハイブリダイゼーションを変化させるタンパク質、ペプチド、又はインターカレータを含む。
【0011】
本明細書において、いくつかの例では、ある方法が提供される。方法は、ポリメラーゼを使用し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加することを含み得る。方法は、ヌクレオチドにそれぞれ結合された標識を使用して、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジの第1のポリマー鎖及び第2のポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させることを含み得る。方法は、少なくともブリッジを通る電気信号の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出することであって、変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性のそれぞれの変化に応答する、検出することを含み得る。
【0012】
いくつかの例では、第1及び第2のポリマー鎖はそれぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリヌクレオチドを含む。いくつかの例では、標識は、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを変化させるそれぞれのオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例では、標識は、互いに異なる位置でハイブリダイゼーションを変化させる。いくつかの例では、標識は、異なる長さの領域においてハイブリダイゼーションを変化させる。いくつかの例では、第1及び第2のポリマー鎖のポリヌクレオチド並びに標識のオリゴヌクレオチドは、非天然DNAを含む。いくつかの例では、非天然DNAは、エナンチオマーDNAを含む。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの例では、修飾ヌクレオチドは、修飾骨格、修飾糖、又は修飾塩基を有する。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドは、PNA及びLNAからなる群から選択される核酸類似体を含む。
【0013】
いくつかの例では、第1及び第2のポリヌクレオチドは、DNAを含み、標識は、DNAと相互作用するタンパク質を含む。いくつかの例では、標識は、DNAインターカレータを含む。いくつかの例では、標識は、副溝結合剤を含む。いくつかの例では、標識は、ペプチドインターカレータを含む。いくつかの例では、標識は、絡み合ったアルファヘリックスを含む。
【0014】
いくつかの例では、第1及び第2のポリマー鎖はそれぞれ、互いにハイブリダイズした第1及び第2のポリペプチド鎖を含む。いくつかの例では、標識の各々は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間のハイブリダイゼーションを変化させるタンパク質、ペプチド、又はインターカレータを含む。
【0015】
本明細書のいくつかの例では、空間によって互いに分離された第1及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジと、を含む構成物が提供される。ブリッジは、ポリマー鎖を含み得る。構成物は、第1及び第2のポリヌクレオチド、並びに複数のヌクレオチドを含み得、各ヌクレオチドは、対応する標識に結合される。構成物は、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、複数のヌクレオチドのヌクレオチドを、第1のポリヌクレオチドに付加するためのポリメラーゼを含み得る。それらのヌクレオチドにそれぞれ対応する標識は、ポリマー鎖の電気特性を変化させ得る。構成物は、少なくともブリッジを通る電気信号の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出するための検出回路を含み得る。変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性の変化に応答し得る。
【0016】
いくつかの例では、ポリマー鎖は、ポリペプチド鎖を含む。いくつかの例では、標識は、ペプチドインターカレータを含む。いくつかの例では、標識は、絡み合ったアルファヘリックスを含む。
【0017】
本明細書において、いくつかの例では、ポリメラーゼを使用し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加することを含む、配列決定するための方法が提供される。方法は、ヌクレオチドにそれぞれ結合された標識を使用して、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジのポリマー鎖の電気特性を変化させることを含み得る。方法は、少なくともブリッジを通る電気信号の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出することであって、変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性のそれぞれの変化に応答する、検出することを含み得る。
【0018】
いくつかの例では、ポリマー鎖は、ポリペプチド鎖を含む。いくつかの例では、標識は、ペプチドインターカレータを含む。いくつかの例では、標識は、絡み合ったアルファヘリックスを含む。
【0019】
本明細書に記載されている利益を実現するため、本明細書に記載されている本開示の態様の各々の任意の個々の特徴/例は、任意の好適な組み合わせで一緒に実施されてもよいこと、及びこれらの態様のいずれか1つ以上からの任意の特徴/例は、任意の好適な組み合わせで、本明細書に記載されている他の態様の特徴のいずれかと一緒に実施されてもよいことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】二本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジのポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを含む配列決定のための例示的な構成物を示す概略図である。
【
図1B】二本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジのポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを含む配列決定のための例示的な構成物を示す概略図である。
【
図2A】二本鎖ポリマーブリッジのポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる標識を有するヌクレオチドの例を示す概略図である。
【
図2B】二本鎖ポリマーブリッジのポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる標識を有するヌクレオチドの例を示す概略図である。
【
図2C】二本鎖ポリマーブリッジのポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる標識を有するヌクレオチドの例を示す概略図である。
【
図3】二本鎖ポリヌクレオチドブリッジと、ブリッジのポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを変化させるヌクレオチド標識とを含む配列決定のための例示的な構成物を示す概略図である。図は、配列番号11を開示する。
【
図4】二本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジのポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを使用して、配列決定するための方法における操作の例示的な流れを示す図である。
【
図5A】一本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジの電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを含む配列決定のための例示的な構成物を示す概略図である。
【
図5B】一本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジの電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを含む配列決定のための例示的な構成物を示す概略図である。
【
図6】一本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジの電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを使用して、配列決定するための方法における操作の例示的な流れを示す図である。
【
図7A】3つ以上のポリマー鎖を含む例示的なポリマーブリッジを示す図である。
【
図7B】3つ以上のポリマー鎖を含む例示的なポリマーブリッジを示す図である。
【
図7C】3つ以上のポリマー鎖を含む例示的なポリマーブリッジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で提供される例は、少なくともポリマー鎖の電気特性を変化させることを使用する配列決定に関する。このような配列決定を実施するための構成物(compositions)及び方法が開示される。
【0022】
より具体的には、本構成物及び方法は、堅牢で、再現性があり、感度が高く、正確で、リアルタイムで動作し、単一分子を検出し、高いスループットを有する様式で、ポリヌクレオチドの配列決定に使用されるという有益性を好適に有し得る。例えば、本構成物は、第1及び第2の電極と、電極間の空間にまたがるブリッジと、を含むことができる。ブリッジは、二本鎖ポリマーを含み得、例えば、電流がブリッジを通って1つの電極から別の電極に流れることを可能にするような様式で互いにハイブリダイズしている第1及び第2のポリマー鎖を含み得るか、3つ以上のポリマー鎖を含み得るか、又は電流がブリッジを通って1つの電極から別の電極に流れることを可能にする単一のポリマー鎖を含み得る。それぞれのヌクレオチドに結合され得る標識は、ブリッジの1つ以上の電気特性、例えば、ブリッジの電気伝導性又は電気インピーダンスを変化させ得、少なくともこのような変化を使用して、それぞれのヌクレオチドが特定され得る。
【0023】
最初に、本明細書で使用されるいくつかの用語を簡単に説明する。次に、ポリヌクレオチドを電気的に配列決定するための一部の例示的な構成物及び例示的な方法を記載する。
【0024】
用語
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語「含むこと(including)」、並びに「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含まれた(included)」などの他の形態の使用は、限定ではない。用語「有すること(having)」、並びに「有する(have)」、「有すること(has)」及び「有した(had)」などの他の形態の使用は、限定ではない。本明細書で使用される場合、移行句中か又は請求項の本文中のいずれであっても、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、オープンエンドの意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、語句「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」と同義であると解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈において使用される場合、用語「含む(comprising)」は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、構成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、構成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
【0025】
本明細書全体を通して使用される「実質的に」、「およそ(approximately)」及び「約(about)」という用語は、処理のばらつきなどに起因する小さな変動を説明及び考慮するために使用されている。例えば、小さな変動は、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下を指すことができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「電極」は、電気を通す固体構造を意味することが意図されている。電極は、金、パラジウム、又は白金等の任意の好適な導電性材料、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ブリッジ」という用語は、2つの他の構造間に延在し、それらに結合された構造を意味することが意図される。ブリッジは、2つの電極間等、他の構造間の空間にまたがり得る。ブリッジのすべての要素を、両方の構造に直接結合させる必要はない。例えば、互いに関連付けられ、2つの電極間の空間にまたがる第1及び第2のポリマー鎖を含むブリッジにおいて、ポリマー鎖のうちの1つの少なくとも一方の末端は、電極のうちの1つに結合し、ポリマー鎖のうちの1つの少なくとも一方の末端は、他方の電極に結合する。しかし、両方のポリマー鎖は、電極の両方に結合する必要はなく、実際にポリマー鎖のうちの1つは、電極のいずれかにも結合する必要がない。ブリッジは、他の構造間に延在して、集約してそれらに接続するような様式で相互に結合されている複数の構成要素を含み得る。ブリッジは、化学結合を介して、例えば、共有結合、水素結合、イオン結合、双極子-双極子結合、London分散力、又はそれらの任意の好適な組み合わせを介して、電極などの別の構造に結合され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、互いに結合されたモノマーと称され得る多くのサブユニットの鎖を含む分子を指す。サブユニットは、繰り返してもよく、又は相互に異なっていてもよい。ポリマー及びそれらのサブユニットは、生物学的又は合成であり得る。ブリッジ又は標識内に適切に含まれ得る例示的な生物学的ポリマーには、ポリヌクレオチド(ヌクレオチドサブユニットから作製される)、ポリペプチド(アミノ酸サブユニットから作製される)、多糖類、ポリヌクレオチド類似体、及びポリペプチド類似体が含まれる。ブリッジ又は標識に使用するのに好適な、例となるポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドアナログは、DNA、鏡像異性体DNA、RNA、PNA(ペプチド-核酸)、モルホリノ及びLNA(ロックド核酸)を含む。ポリマーは、ポリヌクレオチドに結合され得るが、核酸塩基を欠いている、ホスホルアミダイトから誘導されたスペーササブ単位、例えば、Glen Research(Sterling、VA)から市販されており、例えば、スペーサホスホルアミダイト18(18-O-ジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト)を含み得る。例示的な合成ポリペプチドは、荷電アミノ酸、親水性、疎水性、及び中性アミノ酸残基などのすべての天然アミノ酸を含み得る。ブリッジ又は標識内に適切に含めることができる合成ポリマーの例としては、PEG(ポリエチレングリコール)、PPG(ポリプロピレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール)、PE(ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、NYLON(脂肪族ポリアミド)、TEFLON(登録商標)(テトラフルオロエチレン)、熱可塑性ポリウレタン、ポリアルデヒド、ポリオレフィン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ω-アルケン酸エステル)、ポリ(アルキルメタクリレート)、並びにHermanson,Bioconjugate Techniques,third edition,Academic Press,London(2013)に記載されているような他のポリマーの化学的及び生物学的リンカーが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズ」は、それらのポリマーの長さに沿って第1のポリマーを第2のポリマーに非共有結合的に会合させることを意味する。例えば、2つのDNAポリヌクレオチド鎖は、相補的な塩基対合を介して会合し得る。第1のポリマーと第2のポリマーとの間の会合の強度は、それらのポリマー内のモノマー単位の配列間の相補性とともに増加する。例えば、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間の会合の強度は、それらのポリヌクレオチド内のヌクレオチド配列間の相補性とともに増加する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」は、糖、及び少なくとも1つのホスフェート基を含み、一部の例では、核酸塩基もまた含む分子を意味することが意図される。核酸塩基のないヌクレオチドは、「脱塩基性」と称することができる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、修飾ホスフェート糖骨格ヌクレオチド、及びそれらの混合物を含む。ヌクレオチドの例には、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)及びデオキシウリジン三リン酸(dUTP)が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」はまた、天然に存在するヌクレオチドと比較して修飾された核酸塩基、糖及び/又はリン酸部分を含むタイプのヌクレオチドである、任意のヌクレオチドアナログを包含することが意図される。例となる修飾核酸塩基の例には、イノシン、キササニン、ヒポキササニン、イソシトシン、イソグアニン、2-アミノプリン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、2-プロピルグアニン、2-プロピルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、15-ハロウラシル、15-ハロシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-ウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン又はグアニン、8-アミノアデニン又はグアニン、8-チオールアデニン又はグアニン、8-チオアルキルアデニン又はグアニン、8-ヒドロキシルアデニン又はグアニン、5-ハロ置換ウラシル又はシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニンなどが含まれる。当技術において公知のとおり、ある特定のヌクレオチドアナログは、ポリヌクレオチド、例えば、アデノシン5’-ホスホスルフェートなどのヌクレオチドアナログに組み込まれた状態にはなり得ない。ヌクレオチドは、任意の好適な数のホスファート、例えば、3、4、5、6、又は6を超えるホスフェートを含み得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、相互に結合しているヌクレオチドの配列を含む分子を指す。ポリヌクレオチドは、ポリマーの非限定的な一例である。ポリヌクレオチドの例は、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)、リボ核酸(ribonucleic acid、RNA)、及びそれらのアナログを含む。ポリヌクレオチドは、RNA又は一本鎖DNA等のヌクレオチドの一本鎖配列、二本鎖DNA等のヌクレオチドの二本鎖配列であるか、又はヌクレオチドの一本鎖及び二本鎖配列の混合物を含み得る。二本鎖DNA(double stranded DNA、dsDNA)は、ゲノムDNA、及びPCR及び増幅生成物を含む。一本鎖DNA(single stranded DNA、ssDNA)は、dsDNAに変換され得、その反対もあり得る。ポリヌクレオチドは、DNA鏡像異性体などの天然に存在しないDNAを含むことができる。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの正確な配列は、公知であり得るか、又は未知であり得る。以下が、ポリヌクレオチドの例示的な例である:遺伝子又は遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、発現配列タグ(expressed sequence tag、EST)又は遺伝子発現のシリアル分析(serial analysis of gene expression、SAGE)タグ)、ゲノムDNA、ゲノムDNA断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、プライマー、又は上記のいずれかの増幅コピー。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドをポリヌクレオチドに重合することによってポリヌクレオチドを組み立てる活性部位を有する酵素を意味することが意図される。ポリメラーゼは、プライミングされた一本鎖ポリヌクレオチド鋳型に結合することができ、鋳型の配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドを形成するために、成長プライマーにヌクレオチドを連続的に付加することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、ヌクレオチドが遊離3’OH基を介して付加されるポリヌクレオチドとして定義される。プライマーは、ブロックが除去されるまで重合を防止する3’ブロックを有し得る。プライマーはまた、カップリング反応、又は別の部分にプライマーを連結することを可能にする5’末端において修飾部を有することができる。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、さまざまな天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「標識」という用語は、電気インピーダンス又は電気伝導性などの、ブリッジの電気特性の変化を引き起こすような様式でブリッジに結合され、その変化に基づいてヌクレオチドが特定され得る構造を意味することが意図される。例えば、標識は、このようなブリッジ内のポリマー鎖にハイブリダイズし得、ハイブリダイゼーションは、ブリッジの電気伝導性又は電気インピーダンス変化を引き起こし得る。又は、例えば、標識は、このようなブリッジ内のポリマー鎖間でインターカレートし得、インターカレーションは、ブリッジの電気伝導性又は電気インピーダンスの変化を引き起こし得る。しかしながら、標識は、ブリッジ内のポリマー鎖の任意の好適な電気特性を変化させ得ることを理解されたい。本明細書において提供される例では、標識は、ヌクレオチドに結合され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「基板」とは、本明細書に記載されている構成物のための支持体として使用される材料を指す。例となる基板材料は、ガラス、シリカ、プラスチック、石英、金属、金属酸化物、オルガノ-シリケート(例えば、多面体有機シルセスキオキサン(polyhedral organic silsesquioxanes、POSS))、ポリアクリレート、酸化タンタル、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal oxide semiconductor、CMOS)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。POSSの一例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の例では、本出願に使用される基板は、ガラス、溶融シリカ、又は他のシリカ含有材料などのシリカベースの基板を含む。いくつかの例では、基材は、ケイ素、窒化ケイ素、又は水素化シリコーンを含み得る。一部の例では、本出願において使用される基板は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリ(メタクリル酸メチル)などのブラスチック材料又は構成成分を含む。プラスチック材料の例は、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレン、及び環式オレフィンポリマー基板を含む。一部の例では、基板は、シリカベースの材料若しくはプラスチック材料、又はそれらの組み合わせであるか、又はそれらを含む。特定の例では、基材は、ガラス又はケイ素系ポリマーを含む少なくとも1つの表面を有する。一部の例では、基板は、金属を含むことができる。一部のこのような例では、金属は金である。いくつかの例では、基材は、金属酸化物を含む少なくとも1つの表面を有する。一例では、表面は、酸化タンタル又は酸化スズを含む。アクリルアミド、エノン、又はアクリレートもまた、基板材料又は構成成分として利用することができる。他の基板材料は、限定するものではないが、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、アルミニウム、セラミック、ポリイミド、石英、樹脂、ポリマー及びコポリマーを含むことができる。一部の例では、基板及び/又は基板表面は、石英であり得るか、又は石英を含むことができる。一部の他の例では、基板及び/又は基板表面は、GaAs又はITOなどの半導体であり得るか、又は当該半導体を含むことができる。上述のリストは、本出願を例示することが意図されているが、本出願を限定するものではない。基材は、単一の材料又は複数の異なる材料を含むことができる。基板は、複合体又は積層体とすることができる。いくつかの例では、基材は、有機シリケート材料を含む。
【0037】
基板は、水平、円形、球形、ロッド形状、又は任意の他の好適な形状とすることができる。基板は、剛性であってもよく、又は可撓性であってもよい。一部の例では、基板は、ビーズ又はフローセルである。
【0038】
基板は、基板の1つ又は複数の表面上にパターンを有していなくてもよく、テクスチャード加工を有していてもよく、又はパターンを有していてもよい。一部の例では、基板は、パターン形成されている。そのようなパターンは、ポスト、パッド、ウェル、隆起、チャネル、又は他の三次元凹状若しくは凸構造を含み得る。パターンは、基板の表面全体にわたって規則的であってもよく、又は不規則的であってもよい。パターンは、例えば、ナノインプリントリソグラフィーによって、又は例えば、非金属製表面に特徴部を形成する金属パッドの使用によって形成することができる。
【0039】
一部の例では、本明細書に記載されている基板は、フローセルの少なくとも一部を形成するか、又はフローセル内に位置するか、又はフローセルに連結されている。フローセルは、複数のレーン又は複数のセクターに分割されているフローチャンバを含んでもよい。本明細書において説明されている方法及び構成物に使用することができる例示的なフローセル、及びフローセルを製造するための例示的な基板は、限定するものではないが、Illumina、Inc.(San Diego,CA)から市販されているものを含む。
【0040】
ポリヌクレオチドを配列決定するための例となる構成物及び方法
図1A~1Bは、二本鎖ポリマーブリッジを含む配列決定のための例示的な構成物100を示す。ここで
図1Aを参照すると、構成物100は、基板101と、第1の電極102と、第2の電極103と、ポリメラーゼ104と、ブリッジ110と、ヌクレオチド121、122、123、及び124と、それぞれそれらのヌクレオチドに結合される標識131、132、133、及び134と、第1のポリヌクレオチド140と、第2のポリヌクレオチド150と、検出回路160と、を含む。ポリメラーゼ105は、ブリッジ110に近接しており、いくつかの例では、当技術分野で知られているような様式でリンカー106を介してブリッジ110に結合され得る。そのようなリンカー化学としては、例えば、システイン残基上の反応性チオールに対するマレイミド化学、リジン残基上の反応性アミンに対するNHSエステル化学、ビオチン-ストレプトアビジン、及びSpytag-SpyCatcherが挙げられる。
図1A~
図1Bに示される例では、構成物100の構成要素は、流体120で充填されたフローセル(例えば、壁161、162、162を有する)内に封入され得、ここで、ヌクレオチド121、122、123、及び124(関連する標識を有する)、ポリヌクレオチド140、150、及び適切な試薬が運ばれ得る。
【0041】
基板101は、第1の電極102及び第2の電極103を支持し得る。第1の電極102及び第2の電極103は、
図1Aに表示されているとおり、空間、例えば、長さLの空間によって互いに分離されていてもよい。Lの値は、いくつかの例では、約1nm~約1μm、例えば約1nm~約100nm、例えば約1nm~約10nm、例えば約10nm~約25nm、例えば約25nm~約50nmであり得る。第1の電極102及び第2の電極103は、任意の好適な形状及び配置を有してもよく、
図1Aで示唆されるほぼ長方形の形状に限定されない。
図1Aに示される第1の電極102及び第2の電極103の側壁は、必ずしもそうである必要はないが、互いに垂直又は平行であり得、必ずしもそのような電極の上面と直角に交差する必要はない。例えば、第1の電極102及び第2の電極103は、不規則形状であってもよく、湾曲していてもよく、又は任意の好適な数の鈍角又は鋭角を含んでもよい。いくつかの例では、第1の電極102及び第2の電極103は、互いに対して垂直に配置され得る。値Lは、第1の電極102と第2の電極103の互いに対して最も近い点間の間隔を指してもよい。
【0042】
ブリッジ110は、第1の電極102と第2の電極103との間の空間にまたがり得、互いにハイブリダイズした第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112を含み得る(それぞれのポリマー鎖内の円は、ポリマー鎖の長さに沿って互いに結合されたモノマー単位を示唆することが意図される)。第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112は、同じ種類のポリマーを含み得るが、それぞれのポリマー鎖中のモノマー単位の配列は、必ずしも互いに同じというわけではない。例えば、第1のポリマー鎖111は、第2のポリマー鎖112の配列に相補的である配列を有し得る。第1及び第2のポリマー鎖111、112は各々、第1の電極102と第2の電極103との間の空間の長さLとほぼ同じである長さを有し得るか、さもなければ、例えば、第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112各々が、第1の電極102及び第2の電極103の各々に(例えば、それぞれの結合を介して)直接結合され得るように、第1の電極102と第2の電極103との間の空間にわたるポリマー鎖111、112を許容する。いくつかの構成では、第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112はいずれも、必ずしも第1の電極102及び第2の電極103の一方又は両方に直接結合していないことを理解されたい。代わりに、第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112のいずれか又は両方は、第1の電極102及び第2の電極103の一方又は両方に直接的又は間接的にそれぞれ結合されている1つ以上の他の構造に直接結合され得る。
【0043】
本明細書でより詳細に説明されるように、標識131、132、133、及び134はそれぞれ、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスを調節するような様式で、第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させ得、この調節に基づいて、対応するヌクレオチド121、122、123、及び124の特定が決定され得る。例えば、
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、標識131、132、133、及び134はそれぞれ、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスを調節するような様式で、変化領域113内の第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖との間でハイブリダイゼーションを変化させ得、この調節に基づいて、対応するヌクレオチド121、122、123、及び124の特定が決定され得る。
【0044】
図1Aに示される構成物100は、対応する標識に結合した任意の好適の数のヌクレオチド、例えば、1つ又は複数のヌクレオチド、2つ以上のヌクレオチド、3つ以上のヌクレオチド、又は4つのヌクレオチドを含み得る。例えば、ヌクレオチド121(例示として、G)は、いくつかの例では、リンカー135を介して、対応する標識131に結合され得る。ヌクレオチド122(例示として、T)は、いくつかの例では、リンカー136を介して、対応する標識132に結合され得る。ヌクレオチド123(例示として、A)は、いくつかの例では、リンカー137を介して、対応する標識133に結合され得る。ヌクレオチド124(例示として、C)は、いくつかの例では、リンカー138を介して、対応する標識134に結合され得る。いくつかの例では、標識と同じ又は異なるポリマーを含み得るリンカーを介して、n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル化学物質又はクリック化学等の、技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して、ヌクレオチドと標識との間の結合が提供され得る。いくつかの例における標識131、132、133、及び134は、互いに同じ種類の材料を含み得るが、少なくとも1つの点で互いに異なり得、例えば、
図1Aで示唆されるように、互いに異なる長さを有し得る。あるいは、
図2Aを参照して以下に記載されるように、いくつかの例における標識131、132、133、及び134は、互いに異なる材料を含み得る。別の代替として、いくつかの例における標識131、132、133、及び134は、互いに同じ種類のポリマーを含み得るが、少なくとも1つの点で互いに異なり得、例えば、
図2Bを参照して記載される特定の例におけるように、互いに異なるモノマー単位の配列を有し得るか、又は
図2Cを参照して記載される特定の例におけるように、互いに異なる数のモノマー単位を有し得る。いくつかの例では、標識131、132、133、及び134は、変化領域113と同様に、同じ種類のポリマーを含み得、いくつかの例では、ポリマー鎖111、112のうちの一方又は両方の残部と同様に、同じ種類のポリマーを含み得る。
図1Bを参照してより詳細に記載されるような様式では、標識131、132、133、及び134の特定の特性は、これらの標識がそれぞれ、第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる場合、ブリッジ110を通る識別可能な電気信号、例えば、電流又は電圧の生成を容易にするようにそれぞれ選択され得る。標識は、互いに同じ電気特性を変化させ得るが、必ずしも必要ではない。標識は、互いに同じポリマー鎖の電気特性を変化させ得るが、必ずしも必要ではない。例えば、標識は、異なるポリマー鎖の異なる電気特性を変化させ得るか、又は同じポリマー鎖の異なる電気特性を変化させ得るか、又は異なるポリマー鎖の同じ電気特性を変化させ得るか、又は同じポリマー鎖の同じ電気特性を変化させ得る。
【0045】
図1Aに示される構成物100は、第1のポリヌクレオチド140及び第2のポリヌクレオチド150、並びに少なくとも第2のポリヌクレオチド150の配列を使用して、複数のヌクレオチド121、122、123、及び124のヌクレオチドを第1のポリヌクレオチド140に付加し得るポリメラーゼ105を含む。それらのヌクレオチドにそれぞれ対応する標識131、132、133、及び134は、
図1Bを参照して以下により詳細に記載されるような様式で、第1及び第2のポリマー鎖111、112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させ得る、例えば、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させ得る。検出回路160は、少なくともブリッジ110を通る電流又はそのインピーダンスの変化を使用して、ポリメラーゼ105がそれぞれ、ヌクレオチド121、122、123、及び124(この順番である必要はない)を、第1のポリヌクレオチド140に付加する配列を検出し得、変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識131、132、133、及び134を使用する電気特性の変化に応答する。例えば、検出回路160は、第1の電極102及び第2の電極103に電圧を印加し得、かかる電圧に応答してブリッジ110を通って流れる任意の電流を検出することができる。又は、例えば、検出回路560は、ブリッジ510を通して一定の電流を流し、第1の電極502と第2の電極503との間の電圧差を検出することができる。
【0046】
図1Aに示される特定の時間において、標識131、132、133、及び134のいずれも、ブリッジ110と接触していないため、比較的高い電流がブリッジ110を通って流れ得る。ヌクレオチド121、122、123、124は、流体120を通って自由に拡散し得、このような拡散の結果として、それぞれの標識131、132、133、134は、短時間ブリッジ110に接触し得、標識は、比較的迅速に脱ハイブリダイズし得、したがって、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスへの任意の結果として生じる変化は、不足しているため、検出不能であると予期されるか、又はヌクレオチドの第1のポリヌクレオチド140への付加に対応しないように明確に特定可能であると予期される。例えば、拡散の結果として、又はポリメラーゼ指向性ヌクレオチド組み込みのためにハイブリダイズする標識は、同一のハイブリダイズ寿命(統計的に言うと)を有し得る。寿命は、相互作用のオフレート(off rate)によって決定される。オフレートは、相互作用、温度、塩分、緩衝液、及び他の要因の性質によって支配される定数である。拡散性のものからの真の信号を区別することは、標識が結合している時間の百分率であり、それは、オンレート(on rate)によって決定される。オンレートは、標識の濃度とともに増加する(オフレートとは対照的)。例えば、濃度は、所与の体積で分子を見つける確率に対応する。ヌクレオチドは活性部位に保持されているため、標識の濃度は、拡散体と比較して、結合ヌクレオチドに対して大きくなり得る。したがって、オンレートははるかに高い。標識は、拡散性及び特定の状態で等しく迅速に脱ハイブリダイズすることができるが、特定の状態は、標識が非常に急速に再結合する。ヌクレオチドが組み込まれた後、標識とヌクレオチドとの間のリンカーが切断される。その結果、次に標識が脱ハイブリダイズする時に、それは拡散性標識と同じ浮遊確率を有する。
【0047】
比較すると、
図1Bは、少なくとも第2のポリヌクレオチド150の配列を使用して(例えば、その配列のCに相補的であるように)ポリメラーゼ105が第1のポリヌクレオチド140にヌクレオチド121(例示的に、G)を付加する時間を示す。ポリメラーゼ105は、標識131が(いくつかの例ではリンカー137を介して)結合されているヌクレオチド121に作用しているため、このような作用は、第1及び第2のポリマー鎖111、112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる、例えば、変化領域113内の第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させて、検出回路160を使用して検出できるようにブリッジ110の電気特性、例えば、電気伝導性又はインピーダンスに十分に長い変化を引き起こし、第1のポリヌクレオチド140に付加されたヌクレオチド121を特定できるように十分な量の時間、ブリッジ110に十分に近い位置で標識131を維持する。加えて、標識131は、第1及び第2のポリマー鎖111、112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる、例えば、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させる場合、ブリッジ110に電気特性、例えば、電気伝導性又はインピーダンスを付与する特性を有し得、これを介して、検出回路160は、他のヌクレオチドのいずれかと比較して、付加されたヌクレオチドを121(例示としてG)として独自に特定し得る。
【0048】
同様に、標識132は、第1及び第2のポリマー鎖111、112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる、例えば、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させる場合、ブリッジ110の電気特性、例えば、電気伝導性又はインピーダンスを変化させる特性を有し得、これを介して、検出回路160は、他のヌクレオチドのいずれかと比較して、付加されたヌクレオチドを122(例示としてT)として独自に特定し得る。同様に、標識133は、第1及び第2のポリマー鎖111、112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる、例えば、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させる場合、ブリッジ110の電気特性、例えば、電気伝導性又はインピーダンスを変化させる特性を有し得、これを介して、検出回路160は、他のヌクレオチドのいずれかと比較して、付加されたヌクレオチドを123(例示としてC)として独自に特定し得る。同様に、標識134は、第1及び第2のポリマー鎖111、112のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させる、例えば、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させる場合、ブリッジ110の電気特性、例えば、電気伝導性又はインピーダンスを変化させる特性を有し得、これを介して、検出回路160は、他のヌクレオチドのいずれかと比較して、付加されたヌクレオチドを124(例示としてC)として独自に特定し得る。
【0049】
図1A~1Bに示される非限定的な例では、標識131、132、133、及び134の異なる長さはそれぞれ、変化領域113が異なる長さを有することを引き起こし、これに基づいて、第1の電極102と第2の電極103との間の電気信号は、検出回路160がそれらの標識にそれぞれ結合されたヌクレオチド121、122、123、124を特定し得るような様式で変化し得る。しかしながら、標識131、132、133、及び134は、任意の好適なそれぞれの特性を有し得、これに基づいて、第1の電極102と第2の電極103との間の電気信号は、検出回路160がそれらの標識にそれぞれ結合されたヌクレオチド121、122、123、124を特定し得るような様式で変化し得ることを理解されたい。
【0050】
例えば、
図2A~2Cは、二本鎖ポリマーブリッジ内のハイブリダイゼーションを変化させる他の標識を有するヌクレオチドの例を概略的に示す。
図2Aに示される非限定的な例では、標識231は、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させる(特定の塗りつぶしを有する長方形によって示唆される)第1の材料を含む。標識232、233、及び234の各々は、同様に、異なる材料を含む(具体的に標識付けされていないが、互いに異なる塗りつぶしを有する長方形によって示される)。標識の物質におけるこのような変化は、これらの物質が第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させる場合、異なる、識別可能な信号、例えば、電流又は電圧を、ブリッジ110を通して提供し、これに基づいて、対応するヌクレオチドが特定され得る。
【0051】
図2Bに示される非限定的な例では、標識231’は、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させるような様式で、ブリッジ110内の選択されたモノマーとそれぞれハイブリダイズする(互いに異なる塗りつぶしを有する円によって示唆される)2つ以上の信号モノマーの配列を含む。標識231’の信号モノマーは、標識内の任意の好適な位置に位置し得る。標識232’、233’、及び234’の各々は、同様に、(具体的に標識付けされていないが、互いに異なる塗りつぶしを有する円によって示される)2つ以上の信号モノマーを含むが、それらのモノマーの特定の種類及び配列は、モノマーを示す円の異なる塗りつぶしによって示唆されることが意図されるように、標識間で変化する。標識の信号モノマーの種類及び配列におけるこのような変化は、それらのモノマーがブリッジ110内の選択されたモノマーとハイブリダイズする場合、対応するヌクレオチドが特定され得ることに基づいて、ブリッジ110を通して、異なる、識別可能な電気信号、例えば、電流又は電圧を提供する。
【0052】
1つの非限定的な例では、標識231’、232’、233’、234’は、互いに少なくとも部分的に異なる配列を有するそれぞれのオリゴヌクレオチドを含む。それらの配列は、変化領域113内の三本鎖「三重鎖」ポリヌクレオチドを提供するように、変化領域113内のブリッジ110にハイブリダイズし得る。標識のそれぞれのオリゴヌクレオチド配列は、変化領域113内のブリッジ110と互いに異なってハイブリダイズし得る。例えば、(互いに異なる塗りつぶしを有する円によって示唆される)標識231’の信号モノマーは、互いに同じ又は異なるヌクレオチドであり得る。他の標識中の信号モノマーは、他の標識の第1及び第2の信号モノマーから、配列、若しくは種類、又はその両方において異なるヌクレオチドであり得、その結果、各標識231’、232’、233’、234’は、第1及び信号モノマーの独自の配列を有する。各標識に対する第1及び第2の信号モノマーと、ブリッジ110との間のそれぞれのハイブリダイゼーションは、ブリッジ110を通る特定の電流又はインピーダンスを提供し得る。例えば、標識231’は、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスを、第1のレベルに調節するように、ブリッジ110の塩基とハイブリダイズする特定の塩基の対を有する配列を有し得、標識232’は、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスを、第1のレベルとは異なる第2のレベルに調節するように、ブリッジ110の塩基とハイブリダイズする特定の塩基の対を有する配列を有し得、標識233’は、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスを、第1及び第2のレベルとは異なる第3のレベルに調節するように、ブリッジ110の塩基とハイブリダイズする特定の塩基の対を有する配列を有し得、標識234’は、ブリッジ110の電気伝導性又はインピーダンスを、第1、第2、及びレベルとは異なる第4のレベルに調節するように、ブリッジ110の塩基とハイブリダイズする特定の塩基の対を有する配列を有し得る。いくつかの例における標識231’、232’、233’、及び243’は、
図3を参照して記載される様式と同様の様式で、ブリッジ110の互いに異なる部分とハイブリダイズし得る。
【0053】
同様に、標識231’、232’、233’、及び234’はそれぞれ、異なる標識からの電気信号を検出して、互いに区別することが可能となるように、モノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の任意の好適な組み合わせ、数、順序、及び種類をそれぞれ含み得る。例えば、
図2Cにおいて、標識231’’、232’’、233’’、及び243’’は、互いに異なる長さを有し得、例えば、変化領域113内のブリッジ110にハイブリダイズすることによって、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させ得る任意の好適な数のモノマーを含み得る。例えば、標識は、任意の好適な数のモノマー(例えば、ヌクレオチド)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10超のモノマーを含み得る。いくつかの例における標識231’’、232’’、233’’、及び243’’はまた、
図2Bを参照して記載されるような様式で、互いに異なる配列も有し得ることを理解されたい。加えて、
図2A~2Cに示される標識は、第1のポリマー鎖111と第2のポリマー鎖112との間のハイブリダイゼーションを変化させるものとして記載されているが、このような標識は、第1のポリマー鎖及び第2のポリマー鎖の一方又は両方の任意の好適な電気特性を変化させ得る。加えて、このような標識は、正確に2つのポリマー鎖を含むブリッジとともに使用することに限定されず、実際、単一のポリマー鎖又は3つ以上のポリマー鎖を含むブリッジとともに使用され得る。
【0054】
図3は、二本鎖ポリヌクレオチドブリッジと、ブリッジのポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを変化させるヌクレオチド標識とを含む配列決定のための例示的な構成物を概略的に示す。
図3に示される例では、構成物300は、
図1A~
図1Bを参照して記載される構成物100と同様であり得、例えば、(具体的には示されていない)基板、第1の電極302、第2の電極303、ポリメラーゼ305、第1のポリマー鎖311及び第2のポリマー鎖312を含むブリッジ310、並びに標識331に結合されたヌクレオチド321を含む。ポリメラーゼ305は、リンカー306を介して第1のポリヌクレオチド鎖311に結合され得、これは、剛性であり得、少なくとも第2のポリヌクレオチド350の配列を使用して、ヌクレオチド321などのヌクレオチドを第1のポリヌクレオチド340に付加し得る。構成物300は、
図1A~
図1Bを参照して記載されるような他の構成要素を含み得、ここでは省略される。
図3に示される特定のヌクレオチド配列は純粋に例であり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0055】
図3に示される例では、第1のポリヌクレオチド鎖311は、三角形によって示される点で、第1及び第2の電極302、303に結合され得、第2のポリヌクレオチド鎖312は、ブリッジ310の長さに沿って第1のポリヌクレオチド鎖311にハイブリダイズされ得る。ヌクレオチド321の標識331は、ブリッジ310とハイブリダイズする配列(例示として、TTTTTT)を有し得、ブリッジ310を通して第1の電気信号を提供する。他のヌクレオチド(具体的に示されていないヌクレオチド)の他の標識332、333は、ブリッジ310の他の部分とハイブリダイズする異なる配列を有し得、ブリッジ310を通して異なる電気信号を提供する。異なる標識の異なる配列は、
図1A~
図1Bを参照して記載されるような様式で、互いに識別可能なブリッジ310を通るそれぞれの電気信号を提供するように選択され得る。
【0056】
いくつかの例では、
図2Bを参照して記載される標識231’、232’、233’、及び243’、
図2Cを参照して記載される標識231’’、232’’、233’’、及び243’’、又は
図3を参照して記載される標識331、332、333のオリゴヌクレオチドは、修飾骨格を有するヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエートDNA)、修飾糖(例えば、2’o-メチル又は2’OH(RNA))、修飾塩基(例えば、メチル化塩基)、又はペプチド核酸(peptide-nucleic acid、PNA)若しくはロックド核酸(locked nucleic acid、LNA)などの核酸類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。このような標識は、ポリヌクレオチド鎖311、312(例えば、DNA又はエナンチオマーDNA)とともに使用される場合、それらのポリヌクレオチド鎖を含むブリッジを通る電流の流れ又はインピーダンスを検出可能に変化させるような様式で、ポリヌクレオチド鎖間のハイブリダイゼーションを変化させ得る。修飾ヌクレオチドは、ポリヌクレオチド鎖311、312が互いにハイブリダイズする様式を変化させ得る。例えば、標識における嵩高系の塩基修飾は、311と312との間の幾何学的配置を変化させ得、したがって、電気伝導特性に影響を及ぼす。同様の機構によって、糖又は骨格に対する修飾は、同様の効果を有し得る。本明細書で提供される任意のヌクレオチド系ブリッジ又は標識は、
図2B、2C、及び3を参照して記載されるような修飾ヌクレオチド又は核酸類似体を含み得る。
【0057】
他の例では、
図1A~1Bを参照して記載される標識131、132、133、134、又は
図2Aを参照して記載される標識231、232、233、234は、それぞれのDNA結合タンパク質を含み得る。このような標識は、ポリヌクレオチド鎖111、112(例えば、DNA又はエナンチオマーDNA)とともに使用される場合、それらのポリヌクレオチド鎖を含むブリッジを通る電流の流れ又はインピーダンスを検出可能に変化させるような様式で、ポリヌクレオチド鎖間のハイブリダイゼーション、又はそれらの電気伝導特性を変化させ得る。本標識において使用され得るDNA結合タンパク質の非限定的な例としては、分子スレッド、転写因子、デザイナージンクフィンガー及びロイシンジッパーなどの転写因子の結合ドメインとして機能するタンパク質、触媒的に不活性なヌクレアーゼ(例えば、Hind III、Eco RI)、ヒストン、RecA(及び他のリコンビナーゼ)、並びに触媒的に不活性なCrispr-Cas9及びその類似体が挙げられる。
【0058】
更に他の例では、
図1A~1Bを参照して記載される標識131、132、133、134、又は
図2Aを参照して記載される標識231、232、233、234は、それぞれのインターカレータ、例えば、副溝結合剤(minor groove binder、MGB)、DNAインターカレータ、又はペプチドインターカレータを含み得る。MGBの非限定的な例としては、ジスタマイシン、ネトロプシン、ビスベンズイマダゾール、ビスアミジン、ミトラマイシン、及びクロモマイシン、並びにそれらの類似体及び誘導体が挙げられる。DNAインターカレータは、隣接するDNA塩基対間にスタッキングすることが可能である平面芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する分子を含み得る。本標識において使用され得るDNAインターカレータの例としては、ダウノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ダクチノマイシン、ジテルカリニウム、ブレオマイシン、エルサマイシンA、m-AMSA、ミトキサントロン、アクリジン、及び臭化エチジウムが挙げられる。例えば、臭化エチジウムは、DNAヘリックスを長くして、DNAヘリックスの電気伝導性を変化させると考えられる。ペプチド系DNAインターカレータは、ペプチド骨格を含み得る。ペプチド系DNAインターカレータの例は、PNAである。
【0059】
いくつかの例では、
図1A~1Bを参照して記載される標識131、132、133、134、又は
図2Aを参照して記載される標識231、232、233、234は、それぞれ絡み合ったアルファヘリックスを含み得る。このようなアルファヘリックス系標識は、二本鎖ポリマーブリッジ(例えば、DNA)とともに使用される場合、ブリッジを通る電流の流れ又はインピーダンスを検出可能に変化させるような様式で、二本鎖間のハイブリダイゼーションを変化させ得る。本標識において使用され得るアルファヘリックスの例としては、例えば、本明細書中の他の箇所により詳細に記載されるようなペプチドコイルドコイル及びロイシンジッパーが挙げられる。
【0060】
いくつかの例では、
図1A~1Bを参照して記載されるブリッジ110は、任意の好適な数のポリペプチド鎖、例えば、2つ以上のポリペプチド鎖を含み得る。例えば、ブリッジ110の第1及び第2のポリマー鎖111、112はそれぞれ、互いにハイブリダイズした少なくとも第1及び第2のポリペプチド鎖を含み得る。
図1A~1Bを参照して記載される標識131、132、133、134、
図2Aを参照して記載される標識231、232、233、234、又は
図7A~7Cを参照して記載される標識731は、第1及び第2のポリペプチドの電気特性を変化させるそれぞれのタンパク質、ペプチド、又はインターカレータを含み得る。例えば、ブリッジ110のポリペプチド鎖111、112のうちの1つ以上、いくつかの例では、ブリッジ110のポリペプチド鎖の各々は、第1の電極102と第2の電極103との間の電子伝達に直接寄与し得る。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、このような電子伝達は、例えば、鎖の各々における芳香族アミノ酸側鎖(チロシン、トリプトファン、又はフェニルアラニンの側鎖など)のpi-スタッキングを使用して可能になり得ると考えられる。しかしながら、pi-スタッキング以外の他の輸送機構が、単独で又はpi-スタッキングと組み合わせて使用され得る。標識はそれぞれ、例えば、二量体、三量体、又はより高次体などの複合体の形成を使用して、ブリッジ110のポリペプチド鎖111、112のうちの1つ以上に電気伝導性(例示的な電気特性)の変化を付与し得る。したがって、標識の各々及びブリッジ110のポリペプチド鎖のうちの1つ以上は、いくつかの例では、第1の電極102から第2の電極103に電子を移動させるように一緒に作用し得る。標識は、標識-ポリペプチド鎖複合体の電気伝導性を互いに異なるように変化させるように(例えば、ペプチド系標識のアミノ酸置換を介して)変化し得、それによって異なる電気信号を提供し、これを介してヌクレオチドが特定され得る。
【0061】
図1A~1Bを参照して記載されるような例は、二本鎖ポリマーブリッジを含むが、ブリッジは、同様に一本鎖ポリマーであり得る若しくは一本鎖ポリマーを含み得るか、又は3つ以上のポリマー鎖を含み得ることを理解されたい。
図5A~5Bは、一本鎖ポリマーブリッジを含む配列決定のための例示的な構成物500を示す。ここで
図5Aを参照すると、構成物500は、基板501と、第1の電極502と、第2の電極503と、ポリメラーゼ504と、ブリッジ510と、ヌクレオチド521、522、523、及び524と、それらのヌクレオチドにそれぞれ結合される標識531、532、533、及び534と、第1のポリヌクレオチド540と、第2のポリヌクレオチド550と、検出回路560とを含む。ポリメラーゼ505は、ブリッジ510に近接しており、基板501は、第1の電極502及び第2の電極503を支持し得、構成物500の成分は、
図1A~1Bを参照して記載されるような様式で、(関連する標識を有する)ヌクレオチド521、522、523、及び524、ポリヌクレオチド540、550、並びに好適な試薬が運ばれ得る流体520で充填された(例えば、壁561、562、562を有する)フローセル内に封入され得る。
【0062】
ブリッジ510は、第1の電極502と第2の電極503との間の空間にまたがり得、ポリマー鎖511を含み得る(ポリマー鎖内の円は、ポリマー鎖の長さに沿って互いに結合されたモノマー単位を示唆することが意図される)。ポリマー鎖511は、第1の電極502と第2の電極503との間の空間の長さLとほぼ同じである長さを有し得るか、さもなければ、例えば、ポリマー鎖511が、第1の電極502及び第2の電極503の各々に(例えば、それぞれの結合を介して)直接結合され得るように、第1の電極502と第2の電極503との間の空間にわたるポリマー鎖511を許容する。いくつかの例では、ポリマー鎖511は、ポリペプチド鎖を含み得る。ポリペプチド鎖は、いくつかの例ではらせん状であり得る。例えば、らせん状ポリペプチドは、比較的長い距離にわたって電子を伝達させ得る良好な電子メディエーターであると考えられている。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ポリペプチドは、電子トンネル機構、ホッピング機構、又はその両方を使用して伝導し得ると考えられる。電子トンネル機構では、電子は、ポリペプチド鎖の分子軌道を通って、例えばチロシン、トリプトファン、又はフェニルアラニンなどの芳香族アミノ酸を通って移動し得る。ホッピング機構では、荷電粒子(正又は負)は、ポリペプチド鎖を通ってホッピングし得る。ポリペプチド鎖は、考察された構造に加えて、ベータ鎖を含むさまざまな構造を形成し得る。ポリペプチド鎖は、天然アミノ酸と非天然アミノ酸との任意の好適な組み合わせを含み得る。大きな芳香族残基(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)及びβ-分岐アミノ酸(トレオニン、バリン、イソロイシン)は、β-シートの中央のβ-鎖において見出されることが好ましく、芳香族残基は特に、上記で考察された機構を介して伝導性に寄与することが予期される。
【0063】
別の特定の非限定的な例では、ポリペプチド鎖は、配列GFPRFAGFP(配列番号1)を含み、これは、拡張されたF芳香族基の積み重ねが、電子が流れ得るpi-pi共役を提供することを可能にする左巻きらせん状骨格立体配座を有すると考えられる。芳香族残基の他の組み合わせ及び順序付けを使用して、特に第2のペプチドと複合体化してコイルドコイルを形成する場合、異なる大きさの伝導性が可能なペプチドを作成することが可能になる。いくつかの例では、このような鎖とともに使用するための標識は、同じ配列の第2の同一若しくはほぼ同一のコピー、又はFを欠くか若しくはFをFとは異なる電気伝導性を有するYなどの別の芳香族残基で置換する類似のポリペプチドを含み得る。このような様式では、2つの同じヘリックスを組み合わせてコイルドコイルを形成するか、又は2つの異なるヘリックスを組み合わせてコイルドコイルを形成すると、モノマーワイヤに対して異なる伝導性が得られ得、したがって、第2の標識の特定、最終的には標識に連結されたヌクレオチドの特定が可能になる。前述の原理は、4つのヌクレオチドがコード化され得るように、3つ以上の標識に拡張される。
【0064】
更に別の特定の非限定的な例では、ポリペプチド鎖のうちの1つ以上としては、配列FKEFAKL FKEFAKL FHKFAKL(配列番号2)が挙げられ、これは、このような配列の複数のコピーを含むフィブリルに自己組織化すると考えられ、このようなフィブリルは、同様に電気伝導性である。このような配列のうちの1つの実例は、ブリッジ510内に提供され得、このような配列のうちの別の実例は、このようなブリッジとともに使用するための第1の標識内に提供され得、例えば、ブリッジの電気伝導性を増加させることによって、ブリッジの電気伝導性を変化させるような様式で、ブリッジ内の配列で自己組織化することが予期され得る。このようなブリッジとともに使用するための第2の標識としては、配列LKELAKL LKELAKL LHELAKL(配列番号3)を挙げることができ、これは、このような配列の複数のコピーを含むフィブリルに自己組織化すると考えられ、このようなフィブリルは、非電気伝導性である。第2の標識中のこの配列は、例えば、第1の標識配列FKEFAKL FKEFAKL FHKFAKL(配列番号2)によって提供されるものよりも低いブリッジの電気伝導性を提供することによって、ブリッジの電気伝導性を変化させるような様式で、ブリッジ中の配列FKEFAKL FKEFAKL FHKFAKL(配列番号2)と自己組織化すると予期され得る。ワイヤと標識の両方における芳香族残基の他の組み合わせ及び順序付けを使用して、特に複合体化してコイルドコイルを形成する場合、異なる大きさの伝導性が可能なペプチドを作成することが可能になる。このような様式では、2つの同じ又は2つの異なるヘリックスを組み合わせてコイルドコイルを形成すると、モノマーワイヤに対して異なる伝導性が得られ得、したがって、第2の標識の特定、最終的には標識に連結されたヌクレオチドの特定が可能になる。前述の原理は、4つのヌクレオチドがコード化され得るように、3つ以上の標識に拡張される。
【0065】
更に別の特定の非限定的な例では、ブリッジ510は、電気伝導性であると考えられる天然微生物線毛に存在し得るようなPilAタンパク質を含み得る。G.sulfurreducensのPilAタンパク質は、電気伝導性ナノワイヤを形成するコイルドコイルモチーフを含むと考えられる。
【0066】
図5Bを参照して以下でより詳細に説明されるように、標識531、532、533、及び534はそれぞれ、ブリッジ510の電気伝導性又はインピーダンスを調節するような様式で、変化領域513内のポリマー鎖511の電気特性を変化させ得、この調節に基づいて、対応するヌクレオチド521、522、523、及び524の特定が決定され得る。
図5Aに示される構成物500は、
図1A~1Bを参照して記載されるものと同様の様式で、対応する標識、例えば、1つ以上のヌクレオチド、2つ以上のヌクレオチド、3つ以上のヌクレオチド、又は4つのヌクレオチドに結合された任意の好適な数のヌクレオチドを含み得る。例えば、ヌクレオチド521(例示として、G)は、いくつかの例では、リンカー535を介して、対応する標識531に結合され得る。ヌクレオチド522(例示として、T)は、いくつかの例では、リンカー536を介して、対応する標識532に結合され得る。ヌクレオチド523(例示として、A)は、いくつかの例では、リンカー537を介して、対応する標識533に結合され得る。ヌクレオチド524(例示として、C)は、いくつかの例では、リンカー538を介して、対応する標識534に結合され得る。
図5Bを参照してより詳細に記載されるような様式では、標識531、532、533、及び534の特定の特性は、それらの標識がポリマー鎖511内の電気特性を変化させる場合、ブリッジ510を通る識別可能な電気信号、例えば、電流又は電圧の生成を容易にするようにそれぞれ選択され得る。
【0067】
図5Aに示される構成物500は、第1のポリヌクレオチド540及び第2のポリヌクレオチド550、並びに少なくとも第2のポリヌクレオチド550の配列を使用して、複数のヌクレオチド521、522、523、及び524のヌクレオチドを、第1のポリヌクレオチド540に付加し得るポリメラーゼ505を含む。それらのヌクレオチドに対応する標識531、532、533、及び534はそれぞれ、
図5Bを参照して以下でより詳細に記載されるような様式で、ポリマー鎖511の電気特性を変化させ得る。検出回路560は、少なくともブリッジ510を通る電流又はそのインピーダンスの変化を使用して、ポリメラーゼ505がそれぞれ、ヌクレオチド521、522、523、及び524(この順番である必要はない)を、第1のポリヌクレオチド540に付加する配列を検出し得、変化は、それらのヌクレオチドに対応する標識531、532、533、及び534を使用するポリマー鎖の電気特性の変化に応答する。例えば、検出回路560は、第1の電極502及び第2の電極503にわたって電圧を印加し得、このような電圧に応答してブリッジ510を通って流れる任意の電流を検出し得る。又は、例えば、検出回路560は、ブリッジ510を通して一定の電流を流し、第1の電極502と第2の電極503との間の電圧差を検出することができる。
【0068】
図5Aに示される特定の時間において、標識531、532、533、及び534のいずれも、ブリッジ510と接触していないため、比較的高い(又は低い)電流がブリッジ510を通って流れ得る。比較すると、
図5Bは、少なくとも第2のポリヌクレオチド550の配列を使用して(例えば、その配列のCに相補的であるように)ポリメラーゼ505が第1のポリヌクレオチド540にヌクレオチド521(例示的に、G)を付加する時間を示す。ポリメラーゼ505は、標識531が結合しているヌクレオチド521に作用するため(いくつかの例では、リンカー537を介して)、このような作用は、検出回路560を使用して検出可能であるように、ブリッジ510の電気伝導性又はインピーダンスなどの電気特性において十分に長い変化を引き起こすのに十分な時間、ブリッジ510に十分に近い位置に標識531を維持し、第1のポリヌクレオチド540に付加されるヌクレオチド521を特定することを可能にする。例えば、標識531は、
図5Bに示されるような様式でポリマー鎖511の変形を引き起こし得る(例えば、ねじれ、よじれ、伸長、又は他の立体配座変化を誘導し得る)か、又はポリマー鎖511の電気伝導性状態を変化させ得、その結果、より低い(又はより高い)電流がブリッジ510を通って流れる。1つの特定の例では、ポリマー鎖511は、第1のらせん状ポリペプチドを含み、標識531は、ブリッジ510の電気特性を変化させる第1のらせん状ポリペプチドと二量体を形成する第2のらせん状ポリペプチドを含む。例えば、第2のらせん状ポリペプチドは、第1のポリペプチドの電気伝導性を変化させるか、又は第1のポリペプチド中のアミノ酸の電気環境を変化させるような様式で、第1のポリペプチドの立体配座を変化させ得る。例示的に、ポリペプチド鎖の電気伝導性は、トリプトファン残基の位置を使用して、調整可能であると予想され得る。例えば、ポリペプチド鎖の電気伝導性は、トリプトファン残基がポリペプチド鎖のいずれかの末端付近に位置する場合、より高くなると予期され得、トリプトファン残基がポリペプチド鎖の中央付近に位置する場合、より低くなると予期され得る。このような様式では、第1及び第2のらせん状ポリペプチドのそれぞれの電気伝導性は、識別可能な電気信号を提供し、ブリッジと関連付けられる場合、異なる標識として機能し、したがって、このような標識に結合されたヌクレオチドの特定を可能にするように調整され得る。あるいは、このような調整可能なペプチドは、ブリッジにおける使用のために調整され得、それらの電気伝導性は、標識を使用して調節され得る。
【0069】
標識531、532、及び533は、同様に、第1のポリマー鎖511の電気特性を変化させる場合、ブリッジ510の電気伝導性又はインピーダンスを変化させるそれぞれの特性を有し得、これを介して、検出回路560は、他のヌクレオチドのいずれかと比較して、付加されたヌクレオチドを独自に特定し得る。
図5A~5Bに示される非限定的な例では、標識531、532、533、及び534の異なる長さはそれぞれ、変化領域513が異なる長さを有することを引き起こし、これに基づいて、第1の電極502と第2の電極503との間の電気信号は、検出回路560がそれらの標識にそれぞれ結合されたヌクレオチド521、522、523、524を特定し得るような様式で変化し得る。しかしながら、標識531、532、533、及び534は、任意の好適なそれぞれの特性を有し得、これに基づいて、第1の電極502と第2の電極503との間の電気信号は、検出回路560がそれらの標識にそれぞれ結合されたヌクレオチド521、522、523、524を特定し得るような様式で変化し得ることを理解されたい。
【0070】
いくつかの例では、
図1A~1B、
図2A、
図5A~5B、又は
図7A~7Cを参照して記載される標識のうちの1つ以上は、それぞれのインターカレータ、例えば、DNAにインターカレートするペプチドを含み得る。このようなペプチド系標識は、いくつかの例では、ポリヌクレオチド鎖又はポリペプチド鎖とともに使用され得、それらの鎖を含むブリッジを通る電流の流れ又はインピーダンスを検出可能に変化させるような様式で、鎖間のハイブリダイゼーションを変化させ得るか、さもなければ、その鎖を含むブリッジを通る電流の流れを検出可能に変化させるような様式で、鎖のうちの1つ以上の電気特性を変化させ得る。ssDNA又は多重鎖DNA(例えば、dsDNA又は三重鎖DNA)とともに使用するための標識に含まれ得るペプチドの1つの非限定的な例は、ヘプタペプチドKGKGKGK(配列番号4)であり、これは、DNA配列ポリ(dG-d5meC)に結合し、そのDNA配列をB立体配座からZ立体配座に変換し得る。このような立体配座変化は、DNAブリッジにおける伝導性変化と同時に起こると予期され得る。加えて、上記のように、PNAは、本標識に含まれ得る。PNAは、例えば、dsDNAブリッジを有する三重鎖を形成し得る。dsDNAブリッジとともに三重鎖を形成し得る他の例示的な標識としては、LNA、2’-O-メチルリボヌクレオチド、及びRNAが挙げられる。二本鎖RNAブリッジとともに三本鎖を形成し得る例示的な標識としては、一本鎖RNAが挙げられる。
【0071】
いくつかの例では、
図1A~1B、
図2A、
図5A~5B、又は
図7A~7Cを参照して記載される標識のうちの1つ以上のうちの1つ以上は、それぞれ絡み合ったアルファヘリックスを含み得る。このようなアルファヘリックス系標識は、多重鎖(例えば、二本鎖)ポリマーブリッジ(例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチド)とともに使用される場合、ブリッジを通るインピーダンス又は電流の流れを検出可能に変化させるような様式で、ポリマー鎖間のハイブリダイゼーションを変化させ得る。又は、このような標識が、一本鎖ポリマー鎖(例えば、単一ポリペプチド鎖)を含むブリッジとともに使用される場合、その鎖を含むブリッジを通る電流の流れを検出可能に変化させるような様式で、その鎖の電気特性を変化させ得る。本標識において使用され得るアルファヘリックスの例としては、ペプチドコイルドコイル及びロイシンジッパーが挙げられる。例えば、異なる長さ及び構成のペプチドのセットは、さまざまな組み合わせで互いに相互作用して、例えば、さまざまな安定性の約21残基、約24残基、又は約28残基のコイルドコイルヘテロ二量体領域を形成するように、好適に設計され得る。得られたコイルドコイルは、マイクロモルからサブナノモルの範囲の解離定数を有し得、したがって、広範囲の調整可能な安定性を示す。
【0072】
いくつかの例では、
図1A~1B、
図2A、
図5A~5B、又は
図7A~7Cを参照して記載される標識のうちの1つ以上は、それぞれペプシ又はタンパク質を含み得る。このようなペプチド系又はタンパク質系標識は、ポリペプチド鎖とともに使用される場合、その鎖を含むブリッジを通る電流の流れ又はインピーダンスを検出可能に変化させるような様式で、鎖の電気特性を変化させ得る。例えば、標識のうちの1つ以上は、ポリペプチド鎖とともに、ロイシンジッパーを形成するペプチドの配列を含み得、ジッパーの1つのアルファヘリックス鎖は、ポリペプチド鎖によって提供され、ジッパーの他の半分は、標識によって提供される。dsDNA又はtsDNA(三本鎖DNA)と相互作用することが予期され得る例示的なペプチドとしては、Ac-(LRAL)3-OH(配列番号5)などのアルファヘリックスペプチド、グラミシジンなどのBターンペプチド、Ac-(KL)7-OH(配列番号6)などの逆平行Bシートペプチド、及びAc-(LR)5LFPV(RL)5-OH(配列番号7)などのベータヘアピンペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Ac-(LRAL)3-OH(配列番号5)及びAc-(LR)5LFPV(RL)5-OH(配列番号7)は、dsDNA断片:
5’-GCTAAAAAGAGAGAGAGATCG-3’(配列番号8)
3’-CGATTTTTCTCTCTCTCTAGC-5’(配列番号9)と相互作用することが予期され、
一方、グラミシジン及びAc-(LRAL)3-OH(配列番号5)は、tsDNAに結合し、それを安定化することが予期される。このようなタンパク質-DNAの相互作用は、例えば、DNAの形状を変化させることによって、DNA系ブリッジの伝導性を変化させることが予期され得る。
【0073】
別の例では、
図1A~1B、
図2A、
図5A~5B、又は
図7A~7Cを参照して記載される標識のうちの1つ以上は、ポリペプチド鎖と一緒になって、一方のコイルがポリペプチド鎖によって提供され、他方のコイルが標識によって提供されるコイルドコイルを形成するペプチドの配列を含み得る。例えば、コイルドコイルは、2つ以上のα-ヘリックスが互いに巻き付いて、左巻きスーパーコイルを形成することによって、自己組織化する場合に形成され得る。二量体、三量体、及び四量体は、容易に設計され得、最大7つのヘリックスの更に大きなコイルドコイルが容易に設計され得る。コイルドコイルは、「ノブ・イントゥ・ホール」(knobs-into-holes、KIH)として既知である特定のパッキング構造を含み得、それによって、疎水性残基の側鎖が「ノブ」として作用し、隣接するヘリックスからの4つの残基によって形成される「ホール」に充填される。いくつかのコイルドコイルはまた、反復し得るヘプタッド反復配列パターンを含有する。ヘプタッドは、7つのアミノ酸を含み得、これは、「abcdefg」と標識付けされ得、ここで、疎水性残基は、「a」及び「d」の位置に存在し、「(HPPHPPP)n」という形状の疎水性/親水性パターンをもたらす。疎水性アミノ酸を3つの残基及び4つの残基を離して配置すると、このような疎水性アミノ酸は、ヘリックスの同じ面上に存在することをもたらし得、この疎水性面の埋没がコイルドコイル形成の駆動力となり得る。
【0074】
ポリペプチド鎖とともに使用するための標識として使用され得る要素の他の例としては、dsDNA若しくはssDNA(負に荷電しており、したがって、正に荷電したペプチドワイヤに結合し得る)、又は抗ペプチド核酸アプタマーが挙げられる。例えば、抗ペプチド核酸アプタマーは、約5つの残基~約20の残基の範囲の小さいペプチド標的に対して容易に選択され得る。このようなペプチドは、例えば、電気伝導性ブリッジとして提供され得、一方、抗ペプチド核酸アプタマーは、このようなブリッジの電気伝導度を変化させることが予期され得る標識として提供され得る。いくつかの例では、アプタマーは、ペプチドエピトープを認識する核酸配列のランダムプールから選択され得る。1つの例として、1つのこのようなエピトープは、HIV-1のRevタンパク質の残基34~50に対応するペプチドを含み得る。選択されたアプタマーは、例えば19~36nMのKd値で、ペプチドエピトープに安定かつ特異的に結合し得る。
【0075】
更に上述したように、更に他の例では、本ブリッジは、3つ以上のポリマー鎖、例えば、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上のポリマー鎖を含み得る。
図7A~7Cは、3つ以上のポリマー鎖を含む例示的なポリマーブリッジを示す。
図7Aは、第1の電極702と第2の電極703との間に延在し、第1のポリマー鎖711、第2のポリマー鎖712、及び第3のポリマー鎖713を含むポリマーブリッジ710を示す。
図7Bは、第1の電極702’と第2の電極703’との間に延在し、第1のポリマー鎖711’、第2のポリマー鎖712’、第3のポリマー鎖713’、及び第4のポリマー鎖714’を含むポリマーブリッジ710’を示す。
図7Cは、第1の電極702’’と第2の電極703’’との間に延在し、第1のポリマー鎖711’’、第2のポリマー鎖712’’、第3のポリマー鎖713’’、及び第4のポリマー鎖714’’を含むポリマーブリッジ710’’を示す。いくつかの例では、
図7A~7Cの各々に示されるポリマー鎖のうちの1つ以上、2つ以上、又はすべては、ポリペプチドを含み得る。いくつかの例では、ポリマー鎖のうちの1つ以上、2つ以上、又はすべて、例えば、ポリペプチドのうちの1つ以上、2つ以上、又はすべては、ヘリックスであり得るか、又はベータ鎖を形成し得る。例えば、
図5Aを参照して上記に記載されるような様式では、らせん状ポリペプチドは、良好な電子メディエーターであると考えられ、比較的長い距離にわたって電子を伝達し得る。
図7A~7Cに示されるポリマー(例えば、ポリペプチド)鎖の各々は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の任意の好適な組み合わせを含み得る。
【0076】
1つの特定の非限定的な例では、8マー~16マー~24マーの長さの範囲のAla-Aib(アラニン-2-アミノイソ酪酸)配列の交互のアミノ酸配列を有するらせん状ペプチドは、本ブリッジのうちの1つにおいてポリペプチド鎖として使用され得る。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ホッピング機構は、このようなポリペプチド鎖における長距離電子伝達の原因となり得る。
【0077】
別の特定の非限定的な例では、ポリペプチド鎖のうちの1つ以上は、配列GFPRFAGFP(配列番号1)を含み、これは、拡張されたF芳香族基の積み重ねが、電子が流れ得るpi-pi共役を提供することを可能にする左巻きらせん状骨格立体配座を有すると考えられる。いくつかの例では、このような鎖とともに使用するための標識は、同じ配列の第2の同一若しくはほぼ同一のコピー、又はFを欠くか若しくはFをFとは異なる電気伝導性を有するYなどの別の芳香族残基で置換する類似のポリペプチドを含み得る。
【0078】
更に別の特定の非限定的な例では、ポリペプチド鎖の1つ以上としては、配列FKEFAKL FKEFAKL FHKFAKL(配列番号2)が挙げられ、これは、このような配列の複数のコピーを含むフィブリルに自己組織化すると考えられ、このようなフィブリルは、同様に電気伝導性である。このような配列の1つ以上の実例は、ブリッジ710、710’、710’’内に提供され得、このような配列の別の実例は、このようなブリッジとともに使用するための第1の標識内に提供され得、例えば、ブリッジの電気伝導性を増加させることによって、ブリッジの電気伝導性を変化させるような様式で、ブリッジ内の配列で自己組織化することが予期され得る。このようなブリッジとともに使用するための第2の標識としては、配列LKELAKL LKELAKL LHELAKL(配列番号3)を挙げることができ、これは、このような配列の複数のコピーを含むフィブリルに自己組織化すると考えられ、このようなフィブリルは、非電気伝導性である。第2の標識中のこの配列は、例えば、第1の標識配列FKEFAKL FKEFAKL FHKFAKL(配列番号2)を使用して提供されるものよりも低いブリッジの電気伝導性を提供することによって、ブリッジの電気伝導性を変化させるような様式で、ブリッジ中の配列FKEFAKL FKEFAKL FHKFAKL(配列番号2)のうちの1つ以上と自己組織化すると予期され得る。
【0079】
別の特定の非限定的な例では、ポリペプチド鎖のうちの1つ以上は、配列ELKAIAQEFKAIAKEFKAIAFEFKAIAQK(配列番号10)を含み、これは、芳香族側鎖の間隔及び配置が電子輸送の機構としてのpi-スタッキングを妨げると考えられる電気伝導性六量体コイルに自己組織化すると考えられる。
【0080】
図1A~1B又は2A~2Cを参照して記載されるような標識はそれぞれ、ブリッジ710、710’、又は710’’の電気特性を変化させ得る。例えば、
図7Aに示される標識731は、ポリペプチド鎖のうちの1つとともに二量体を形成することによって、ポリペプチド鎖のうちの2つとともに三量体を形成することによって、又はポリペプチド鎖のうちの3つすべてとともに四量体を形成することによって、ブリッジ710のポリペプチド鎖のうちの少なくとも1つに変化させた電気伝導性を付与し得る。又は、例えば、
図7Bに示される標識731’は、ポリペプチド鎖のうちの1つとともに二量体を形成することによって、ポリペプチド鎖のうちの2つとともに三量体を形成することによって、ポリペプチド鎖のうちの3つとともに四量体を形成することによって、又はポリペプチド鎖のうちの4つすべてとともに五量体を形成することによって、ブリッジ710’のポリペプチド鎖のうちの少なくとも1つに変化させた電気伝導性を付与し得る。又は、例えば、
図7Cに示される標識731’’は、ポリペプチド鎖のうちの1つとともに二量体を形成することによって、ポリペプチド鎖のうちの2つとともに三量体を形成することによって、又はポリペプチド鎖のうちの3つとともに四量体を形成することによって、ポリペプチド鎖のうちの4つすべてとともに五量体を形成することによって、又はポリペプチド鎖のうちの5つすべてとともに六量体を形成することによって、ブリッジ710’’のポリペプチド鎖のうちの少なくとも1つに変化させた電気伝導性を付与し得る。
【0081】
標識731、731’、731’’は、それぞれブリッジ710、710’、710’’の電気特性を検出可能に変化させる任意の好適な要素を含み得る。いくつかの例では、標識731、731’、731’’は、ペプチドインターカレータである。標識において使用され得るペプチドインターカレータの一例は、コイルであり、これは、例えば、それ自体がコイルドコイルを形成する2つ以上のポリペプチド鎖を含むポリペプチド系ブリッジとともに使用され得る。標識のコイルは、ポリペプチドブリッジのコイルドコイルとともに束(例えば、三重鎖)を形成し得、したがって、ブリッジの電気特性を検出可能に変化させ得る。
【0082】
図1A~
図1B、
図2A~2C、
図3、及び
図7A~7Cを参照して記載されるような構成物は、配列決定のための任意の好適な方法で使用され得る。
図4は、二本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジの少なくとも1つのポリマー鎖の電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを使用して、配列決定するための方法400における操作の例示的な流れを示す。方法400は、ポリメラーゼを使用し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加すること(操作410)を含む。例えば、
図1A~
図1Bを参照して記載されるポリメラーゼ105は、少なくとも第2のポリヌクレオチド150の配列を使用して、ヌクレオチド121、122、123、及び124の各々を第1のポリヌクレオチド140に付加し得る。又は、例えば、
図3を参照して記載されるポリメラーゼ305は、少なくとも第2のポリヌクレオチド350の配列を使用して、ヌクレオチド321及び他のヌクレオチドを第1のポリヌクレオチド340に付加し得る(他のヌクレオチドは具体的に示されていない)。
図7A~7Cに示される構成物は、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに同様に付加し得るポリメラーゼ(具体的ではない)を含み得る。
【0083】
図4に示される方法400は、ヌクレオチドにそれぞれ結合された標識を使用して、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジの第1及び第2のポリマー鎖のうちの少なくとも1つの電気特性を変化させること(操作420)を含み得る。例えば、
図1A~1Bを参照して記載される標識131、132、133、134、
図2Aを参照して記載される標識231、232、233、234、
図2Bを参照して記載される標識231’、232’、233’、234’、
図2Cを参照して記載される標識231’’、232’’、233’’、234’’の任意のものそれぞれは、ヌクレオチド121、122、123、及び124に結合され得る。ポリメラーゼ105がそれぞれ、それらのヌクレオチドを第1のポリヌクレオチド140に付加すると、それらのヌクレオチドに結合された標識はそれぞれ、第1の電極102と第2の電極103との間の空間にまたがるブリッジ110内の第1のポリマー鎖111及び第2のポリマー鎖112の少なくとも1つの電気特性を変化させ得る。又は、例えば、
図3を参照して記載される標識331は、ヌクレオチド321に結合され得、標識332、333などの、他の標識は、他のヌクレオチド(具体的に示されていない他のヌクレオチド)に結合され得る。ポリメラーゼ305がそれぞれ、それらのヌクレオチドを第1のポリヌクレオチド340に付加すると、それらのヌクレオチドに結合された標識はそれぞれ、第1の電極302と第2の電極303との間の空間にまたがるブリッジ310の第1のポリヌクレオチド鎖311と第2のポリヌクレオチド鎖312との間のハイブリダイゼーションを変化させるように、ブリッジ310にハイブリダイズし得る。
図7A~7Cに示される構成物について、ヌクレオチドに結合された標識は、同様に、それらの構成物のポリマー鎖のうちの1つ以上の電気特性を変化させ得る。
【0084】
再び
図4を参照すると、方法400は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性のそれぞれの変化に応答するブリッジを通る、少なくとも電気信号、例えば、電流又は電圧の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出すること(操作440)を含み得る。例えば、
図1A~1Bを参照して記載される検出回路160は、標識131、132、133、及び134を使用して、又は
図2Aを参照して記載される標識231、232、233、234を使用して、又は
図2Bを参照して記載される標識231’、232’、233’、234’を使用して、又は
図2Cを参照して記載される標識231’’、232’’、233’’、234’’を使用して、それぞれの変化に応答してブリッジ110を通る電気信号の変化を検出し得る。同様の検出回路(具体的には図示されず)は、標識331、332、333(及び他の同様の標識)とブリッジ310との間のそれぞれのハイブリダイゼーションに応答して、
図3に示されるブリッジ310を通る電気信号の変化を検出し得る。同様の検出回路(具体的には図示されず)は、標識731、731’、731’’(及び他の同様の標識)とそれぞれのブリッジとの間のそれぞれのハイブリダイゼーションに応答して、
図7A~7Cにそれぞれ示されるブリッジ710、710’、710’’を通る電気信号の変化を検出し得る。
【0085】
加えて、
図5A~
図5Bを参照して記載されるような構成物は、配列決定のための任意の好適な方法で使用され得る。
図6は、一本鎖ポリマーブリッジと、ブリッジのポリマー鎖の電気特性を変化させるヌクレオチド標識とを使用して、配列決定するための方法600における操作の例示的な流れを示す。方法600は、ポリメラーゼを使用し、少なくとも第2のポリヌクレオチドの配列を使用して、ヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加すること(操作610)を含む。例えば、
図5A~
図5Bを参照して記載されるポリメラーゼ505は、少なくとも第2のポリヌクレオチド550の配列を使用して、ヌクレオチド521、522、523、及び526の各々を第1のポリヌクレオチド560に付加し得る。
【0086】
図6に示される方法600は、ヌクレオチドにそれぞれ結合された標識を使用して、第1の電極と第2の電極との間の空間にまたがるブリッジのポリマー鎖の電気特性を変化させること(操作620)を含み得る。例えば、
図5A~
図5Bを参照して記載される標識531、532、533、534の任意のものそれぞれは、ヌクレオチド521、522、523、及び524に結合され得る。ポリメラーゼ505がそれぞれ、それらのヌクレオチドを第1のポリヌクレオチド540に付加すると、それらのヌクレオチドに結合された標識はそれぞれ、第1の電極502と第2の電極503との間の空間にまたがるブリッジ510内のポリマー鎖511の電気特性を変化させ得る。
【0087】
再び
図6を参照すると、方法600は、それらのヌクレオチドに対応する標識を使用した電気特性のそれぞれの変化に応答するブリッジを通る、少なくとも電気信号、例えば、電流又は電圧の変化を使用して、ポリメラーゼがヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドに付加する配列を検出すること(操作640)を含み得る。例えば、
図5A~
図5Bを参照して記載される検出回路560は、標識531、532、533、及び534を使用するそれぞれの変化に応答してブリッジ510を通る電気信号の変化を検出し得る。
【0088】
本明細書で提供される構成物及び方法のいずれかに対して、任意の好適な修飾を行うことができる。いくつかの例では、構成物100、300、又は500は、その中の任意の好適なポリマー(第1及び第2のポリマー鎖のポリヌクレオチド若しくは標識のオリゴヌクレオチド、又はその両方など)が、非天然DNA、例えば、エナンチオマーDNAなどの非天然ポリヌクレオチドを含むように修飾され得る。このような非天然ポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼを使用して作用される第1及び第2のポリヌクレオチドなどの、構成物中の任意の天然ポリヌクレオチドとともにハイブリダイズし得ない、したがって、さもなければこのようなハイブリダイゼーションからもたらされ得るいかなる干渉も最小限にし、場合によっては阻害さえする。
【0089】
さまざまな例示的な例が上に記載されているが、さまざまな変更及び改変が、本発明から逸脱することなく、本明細書において行われ得ることは、当業者に明白であろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内に収まる、このような変更及び改変のすべてを包含することが意図される。
【0090】
本明細書に記載されている利益を実現するため、本明細書に記載されている本開示の態様の各々の任意の個々の特徴/例は、任意の好適な組み合わせで一緒に実施されてもよいこと、及びこれらの態様のいずれか1つ以上からの任意の特徴/例は、任意の好適な組み合わせで、本明細書に記載されている他の態様の特徴のいずれかと一緒に実施されてもよいことを理解すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】