(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット
(51)【国際特許分類】
B23B 51/04 20060101AFI20230721BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B23B51/04 D
B23B51/00 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580732
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2021102612
(87)【国際公開番号】W WO2022001915
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010628593.1
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202021266566.6
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520348761
【氏名又は名称】桂林創源金剛石有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUILIN CHAMPION UNION DIAMOND CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 8 Chuangxin Road, Qixing District Guilin, Guangxi 541004, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋京新
(72)【発明者】
【氏名】▲龍▼慧玲
(72)【発明者】
【氏名】梁安▲寧▼
(72)【発明者】
【氏名】叶勇
(72)【発明者】
【氏名】郭新玲
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼人杰
(72)【発明者】
【氏名】王志勇
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼▲亮▼
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA05
3C037DD01
(57)【要約】
本発明は、作業リング(1)および排出溝(2)を含む低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットに関し、前記作業リングは円筒構造であり、複数の前記排出溝が前記作業リングの側壁の底部に環状に分布し、前記排出溝が前記作業リング外側壁の底部に設けられ前記作業リング内側に予設距離だけで窪み、前記窪みの距離が前記作業リングの側壁の厚さよりも小さい。本発明は以下の有益な効果を有する。1、低圧冷却水の漏れを回避する。2、排出口からスクラップを外部に排出することを容易にし、穿孔速度の向上を助長する。3、作業リング穿孔面が動作すると不等量の摩耗によるテーパ面を自動的に形成し、テーパ面の作用下でスクラップの排出、作業リングの初期穿孔時ワークリングおよび端欠け減少に寄与する。4、その他にも有益な効果がある。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業リング(1)と排出溝(2)を含み、前記作業リング(1)は円筒構造であり、複数の前記排出溝(2)は前記作業リング(1)の側壁の底部に環状に分布して、前記作業リング(1)を回転させて加工する際に、スクラップを排出する低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットであって、
前記排出溝(2)は前記作業リング(1)の外側壁の底部に設けられて前記作業リング(1)の内側に予設距離だけ窪み、前記排出溝(2)の窪み距離が前記作業リング(1)の側壁の厚さよりも小さい、ことを特徴とする低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項2】
前記作業リング(1)の側壁の厚さと前記排出溝(2)の窪み距離の差が、0mmを超え、0.5mm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項3】
前記排出溝(2)の底部の両側辺の対称的な中心線または前記排出溝(2)の底部の両側辺の夾角の中心線は、前記作業リング(1)の底面の円心を通過しない、ことを特徴とする請求項1に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項4】
前記排出溝(2)の底部の両側辺が平行に設置され、その対称的な中心線が前記作業リング(1)底面の円心を通過せず、且つ、前記排出溝(2)の底部の両側辺が前記作業リング(1)底面の円心に対してらせん状に配置され、らせん方向が前記作業リング(1)の回転方向と一致している、ことを特徴とする請求項3に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項5】
前記排出溝(2)の底部の両側辺が、前記作業リング(1)の回転方向上に沿って前後にそれぞれ第1の側辺(3)および第2の側辺(4)であり、前記第1の側辺(3)と前記第2の側辺(4)の夾角の中心線が前記作業リング(1)底面の円心を通過せず、前記第1の側辺(3)の一端が前記作業リング(1)の内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リング(1)の外側であって前記作業リング(1)の回転方向の反対方向に角度αだけ偏向し、前記第2の側辺(4)の一端が前記作業リング(1)の内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リング(1)の外側であって前記作業リング(1)の回転方向に角度θだけ偏向し、且つ、α>45°>θである、ことを特徴とする請求項3に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項6】
前記排出溝(2)の両側面が平行に設置され、その底部の両側辺の対称的な中心線が前記作業リング(1)底面の円心を通過せず、前記排出溝(2)の両側面が前記作業リング(1)の底面に対して前記作業リング(1)の回転方向に傾斜して設置され、前記排出溝(2)の両側面の一端が前記作業リング(1)の内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リング(1)の外側であって前記作業リング(1)の回転方向に予設の角度だけ偏向する、ことを特徴とする請求項3に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項7】
前記作業リング(1)の側壁に、前記排出溝(2)に対応するスタンバイ排出溝(5)が設けられ、前記スタンバイ排出溝(5)は、前記排出溝(2)上方に配置され、前記作業リング(1)の軸方向摩耗が前記排出溝(2)を超えた後にスクラップを排出する、ことを特徴とする請求項3に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項8】
前記排出溝(2)の頂部が丸み構造であり、前記スタンバイ排出溝(5)の底部と頂部がいずれも丸み構造である、ことを特徴とする請求項7に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項9】
前記作業リング(1)の外側壁に周方向に沿って複数の排出スロット(6)が均一に設けられ、前記排出スロット(6)の下端が前記作業リング(1)の底部まで延伸し、その上端が斜め上向きに延伸する、ことを特徴とする請求項8に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項10】
前記排出スロット(6)はらせん状であり、らせん方向が前記作業リング(1)の回転方向と一致している、ことを特徴とする請求項9に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項11】
前記排出溝(2)と前記スタンバイ排出溝(5)は、前記排出スロット(6)内の対応の位置に配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項12】
前記排出溝(2)と前記スタンバイ排出溝(5)の両側面は、前記作業リング(1)の回転方向に前後にそれぞれ第1の側面(9)と第2の側面(10)であり、前記排出スロット(6)の両側面は前記作業リング(1)の回転方向に前後にそれぞれ第3の側面(11)と第4の側面(12)であり、且つ、前記第1の側面(9)と前記第3の側面(11)が重なり合い、前記第2の側面(10)と前記第4の側面(12)が間隔を空けて配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【請求項13】
前記作業リング(1)の周方向における前記排出溝(2)の幅は、前記作業リング(1)の内側から前記作業リング(1)の外側に向かって徐々に増加する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ツールの分野に関し、具体的には、低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド薄肉加工用ドリルは、稼働時に冷却用の水が必要である。通常、水ポンプで十分な量の水を供給し、水圧と循環能力を大きくし、冷却水はドリル内壁と被加工物の芯との隙間に沿って、内径からドリル端面の穿孔面を介して外径に流れ、冷却と切屑排出を促進する強い力を発揮し、高い穿孔効率を達成することができる。何らかの異常が発生した場合、主に給水量が少なく、十分な水圧が得られないため、循環能力が低く、冷却力や切り屑排出力が弱くなり、穿孔効率に大きく影響し、焼損やコア閉塞などの事故が非常に起こりやすくなる。
【0003】
先行技術の薄肉加工用ドリルビットの一般的な形態には、作業リング強度の高い貫通シンクなし、ダイヤモンド作業層の長さ以上の単一長さの一般的な貫通シンク、作業リング強度の低いリレー式貫通シンク、ダイヤモンド作業層の長さ未満の単一長さのマルチセグメントリレー用、ダイヤモンド作業層の長さを覆うマルチセグメントシンク、通常作業リング強度が一般的貫通シンクの強度よりも優れている、の3つである。
【0004】
貫通シンクのない薄肉加工用ドリルビットは、低圧給水の条件下では、穿孔面の冷却が難しく、径方向内側の外径方向からの切りくず排出が非常に困難で、穿孔面の内径角が非常に丸まりやすく(
図1から
図2への変化)、最終的に穿孔速度に大きな影響を与えることになる。
【0005】
通常の貫通シンク、リレー貫通シンク薄肉加工用ドリルとも、冷却水が内径から外径に浸透して穿孔面に作用できる構造になっており、穿孔面に十分な水が作用できれば冷却効果、切粉除去効果が大幅に向上し、例えば、中国発明特許第201911348484.8号には、高速高効率ドリルビット(その排出口は前記の貫通シンクに相当)が開示されている。しかしながら、先行技術における貫通シンクは、作業リングの側壁を通過する構造であるため、低圧給水の条件下では、水の一部あるいは大部分は穿孔面から遠く離れた貫通シンクの内径から外径に排出されてしまい、作業リングの穿孔面に対する冷却効果を形成しないため、低圧給水による冷却や切屑排出が弱く、穿孔速度も遅いという状況をさらに悪化させることになって、穿孔速度に影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国発明特許第201911348484.8号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来技術の欠点を克服するために、本発明が解決しようとする技術的課題は、低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が上記技術的課題を解決する技術的解決策としては、作業リングと排出溝を含み、前記作業リングは円筒構造であり、複数の前記排出溝は前記作業リングの側壁の底部に環状に分布して、前記作業リングを回転させて加工する際に、スクラップを排出する低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットであって、前記排出溝は前記作業リングの外側壁の底部に設けられて前記作業リングの内側に予設距離だけで窪み、前記排出溝の窪み距離が前記作業リングの側壁の厚さよりも小さい、低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットを提供する。
【0009】
本発明は以下の有益な効果を有する。
1、低圧冷却水の漏れを回避する。
2、排出口からスクラップを外部に排出することを容易にし、穿孔速度の向上を助長する。
3、作業リング穿孔面が動作すると不等量の摩耗によるテーパ面を自動的に形成し、テーパ面の作用下でスクラップの排出、作業リングの初期穿孔時ワークリングおよび端欠け減少に寄与する。
4、作業リング穿孔面の内径角の丸みが低減し、内径から外径へのスクラップの排出を容易にする。
5、作業リングの全体強度が向上し、作業リング端面のフレアリスクを低減することができる。
【0010】
上記の技術的解決策に基づいて、本発明は以下のように改善され得る。
【0011】
さらに、前記作業リングの側壁の厚さと前記排出溝の窪み距離の差が0mmを超え、0.5mm未満である。
【0012】
さらに、前記排出溝の底部の両側辺の対称的な中心線または前記排出溝の底部の両側辺の夾角の中心線は、前記作業リングの底面の円心を通過しない。
【0013】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。スクラップは、排出溝内で作業リングの回転に伴って、排出溝から作業リング外側に向かって機械的な推力を受け、この機械的な推力の作用下でスクラップが排出溝からより容易に排出され、ドリルビットが高速かつ高効率で作業することができる。
【0014】
さらに、前記排出溝の底部の両側は平行に設けられ、その対称中心線が前記作業リング底面の円心を通過せず、前記排出溝底部の両側辺が前記作業リング底面の円心に対してらせん状に配置され、かつ、らせん方向が前記作業リングの回転方向と一致している。
【0015】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。スクラップが作業リングの回転による遠心力の作用下で排出溝に沿って外部に排出され、スクラップの排出速度を向上させることができる。
【0016】
さらに、前記排出溝の底部の両側辺が、前記作業リングの回転方向上に沿って前後にそれぞれ第1の側辺および第2の側辺であり、前記第1の側辺と前記第2の側辺の夾角の中心線が前記作業リング底面の円心を通過しなく、前記第1の側辺の一端が前記作業リングの内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リングの外側であって前記作業リングの回転方向の反対方向に角度αだけ偏向し、前記第2の側辺の一端が前記作業リングの内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リングの外側であって前記作業リングの回転方向に角度θだけ偏向し、かつα>45°>θである。
【0017】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。作業リングが回転すると、排出溝の第2の側辺が第1の側辺によって外部へ押し出されたスクラップを邪魔せず、作業リングの径方向にスクラップの排出速度が向上し、α>45°>θであると、低圧水条件下でスクラップを外径方向に排出することにより有利である。
【0018】
さらに、前記排出溝の両側面が平行に設置され、その底部の両側辺の対称的な中心線が前記作業リング底面の円心を通過せず、前記排出溝の両側面が前記作業リングの底面に対して前記作業リングの回転方向に傾斜して設置され、前記排出溝の両側面の一端が前記作業リングの内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リングの外側であって前記作業リングの回転方向に予設の角度だけ偏向する。
【0019】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。作業リングが回転すると、排出溝の両側面の一方側がスクラップに対して上向きに外部への押し付け力を印可し、作業リングの軸方向にスクラップの排出速度が向上する。
【0020】
さらに、前記作業リングの側壁に、前記排出溝に対応するスタンバイ排出溝が設けられ、前記スタンバイ排出溝が前記排出溝上方に配置され、前記作業リングの軸方向摩耗が前記排出溝を超えた後にスクラップを排出する。
【0021】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。作業リングの軸方向が摩耗しても正常に加工することが確保される。
【0022】
さらに、前記排出溝の頂部が丸み構造であり、前記スタンバイ排出溝の底部と頂部がいずれも丸み構造である。
【0023】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。応力集中を防ぎ、冷却水およびスクラップの流動を促進する。
【0024】
さらに、前記作業リングの外側壁に周方向に沿って複数の排出スロットが均一に設けられ、前記排出スロットの下端が前記作業リングの底部まで延伸し、その上端が斜め上向きに延伸する。
【0025】
さらに、前記排出スロットはらせん状であり、らせん方向が前記作業リングの回転方向と一致している。
【0026】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。スクラップが排出スロットに沿って上向きに排出されるのを容易にする。
【0027】
さらに、前記排出溝と前記スタンバイ排出溝は、前記排出スロット内の対応の位置に配置される。
【0028】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。排出溝から排出されたスクラップが即時に排出スロットを介して上向に排出される。
【0029】
さらに、前記排出溝と前記スタンバイ排出溝の両側面は、前記作業リングの回転方向に前後にそれぞれ第1の側面と第2の側面であり、前記排出スロットの両側面は前記作業リングの回転方向に前後にそれぞれ第3の側面と第4の側面であり、かつ前記第1の側面と前記第3の側面が重なり合い、前記第2の側面と前記第4の側面が間隔を空けて配置される。
【0030】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。切屑排出空間を増大し、切屑排出効率を向上させることができる。
【0031】
さらに、前記作業リングの周方向における前記排出溝の幅は、前記作業リングの内側から前記作業リングの外側に向かって徐々に増加する。
【0032】
上記のさらなる解決策は以下の有益な効果を有する。作業リングの穿孔面が摩耗後に自動的にテーパ面を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】貫通シンクなしの薄肉加工用ドリルビットの初期構造図である。
【
図2】貫通シンクなしの薄肉加工用ドリルビットの内径の角度を丸めた後の構造図である。
【
図3】本発明の実施例1のガラスを加工するときの水流れの概略図である(排出溝が切屑排出溝内にある)。
【
図8】本発明の実施例2のスクラップの径方向排出の概略図である。
【
図9】従来ドリルビットのスクラップの径方向排出の概略図である。
【
図16】本発明の実施例2の作業リングが一定期間作動した後の底部の拡大図である。
【0034】
そのうちに、点線は、排出溝の底部の両側辺の対称的な中心線または排出溝の底部の両側辺の夾角の中心線を指し、実線の矢印方向は、作業リングの回転方向または冷却水の流動経路を示し、破線の矢印はスクラップ排出方向を指す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の原理および特徴を説明するが、挙げられた実施例は本発明を解釈することのみを意図しており、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0036】
[実施例1]
図3~5に示すように、低圧内部給水型薄肉加工用ドリルビットは、作業リング1と排出溝2を含む。前記作業リング1は円筒構造であり、複数の前記排出溝2は前記作業リング1の側壁の底部に環状に分布し、前記作業リング1を回転させて加工するときスクラップを排出する。前記排出溝2は前記作業リング1の外側壁の底部に設けられて前記作業リング1の内側に予設距離だけで窪み、前記窪みの距離が前記作業リング1の側壁の厚さよりも小さく、前記作業リング1の側壁の厚さと前記窪みの距離の差が0mmを超え、0.5mm未満である。
【0037】
前記排出溝2の底部の両側辺が平行に設置され、その対称的な中心線が前記作業リング1底面の円心を通過せず、かつ前記排出溝2の底部の両側辺が前記作業リング1底面の円心に対してらせん状に配置され、らせん方向が前記作業リング1の回転方向と一致している。この実施例では、スクラップは作業リング1の回転遠心力の作用下で排出溝2に沿って外部へ排出され、スクラップの排出速度が向上し、ドリルビットの高速回転下での高効率作業を確保することができる。
【0038】
前記作業リング1の側壁に前記排出溝2に対応するスタンバイ排出溝5が設けられ、前記スタンバイ排出溝5は前記排出溝2の上方に配置され、前記作業リング1の軸方向摩耗が前記排出溝2を超えた後スクラップを排出する。作業リング1は連続加工では軸方向に摩耗し続け、摩耗がある程度に達した後、つまり排出溝2を超えた後、第2層のスタンバイ排出溝5は新しい排出溝2になり、新しい排出溝2と最初の排出溝2の構造は同様である。このように、上層のスタンバイ排出溝5は、作業リング1が摩耗して作業能力を失うまで、新しい排出溝2として連続的に形成することができる。前記作業リング1の外側壁に周方向に沿って複数の切屑排出溝6が均一に設けられ、前記切屑排出溝6の下端が前記作業リング1の底部まで延伸し、その上端が斜め上向きに延伸し、前記切屑排出溝6はらせん状であり、らせん方向は前記作業リング1の回転方向と一致している。切屑排出溝6は、スクラップが切屑排出溝6に沿って上向きに容易に排出されるように設計され、排出溝2とスタンバイ排出溝5は切屑排出溝6の外または切屑排出溝6の内に配置され得る。
【0039】
上記の設計により、従来技術中の作業リングの側壁を貫通する貫通シンクの代わりに、作業リング1の側壁を貫通しない排出溝2を採用することで、以下の利点を有する。
【0040】
第1に、排出溝2は作業リング1の側壁を貫通しない構造であるため、排出溝2が作業リング1の側壁の制限下で、冷却水のほとんどまたはすべてが作業リング1の穿孔面を通過し、従来技術における貫通シンクが作業リングの側壁を貫通し、低圧冷却水が貫通シンク内の穿孔面から離れた箇所で内径から外径へ漏れ、冷却水が作業リング1の穿孔面を冷却しない欠点を回避することができる。
【0041】
第2に、冷却水は内側壁で作業リング1の最も薄い箇所、すなわち排出溝2から外径へ比較的多く流れるので、排出口内のスクラップの外部への排出を容易にすると同時に、スクラップがらせん状切屑排出溝6から排出されやすく、穿孔速度の向上に有利である。
【0042】
第3に、作業リング1の研削面の任意の直径の加工材料層(ダイヤモンド)の周長とその直径に対応する被加工材料の周長との比が1であり、今度は、排出溝2を作業リング1の外側壁に設けて、前記作業リング1の周方向における前記排出溝2の幅が前記作業リング1の内側から前記作業リング1の外側に向かって徐々に増加するため、作業リング1の外径上の加工材料層(ダイヤモンド)の周長と外径に対応する被加工材料の周長との比が1未満であるため、作業リング1の外径の摩耗速度が速くなる。ドリルビットの動作とき、作業リング1の穿孔面の外径から内径に向かって軸方向の摩耗速度が速いものから遅いものになり、摩耗後、テーパ面14が自動的に形成され、テーパ面14の作用下でスクラップの排出が容易になると同時に、作業リング1の初期穿孔時のセンタリングを容易にして端欠けを低減することができる。
【0043】
第4に、作業リング1の穿孔面にテーパ面14が形成された後、その水平幅が狭くなり、すなわち水平幅がテーパ面14によって侵食されるため、作業リング1の穿孔面の内径角13の丸みが小さくなり(水平幅が大きいほど、穿孔面の内径角13の丸みが取りやすくなる)、内径のスクラップの外径への排出が容易になる。
【0044】
最後に、従来技術における作業リングの側壁を貫通する貫通シンクと異なり、作業リング1の側壁を貫通しない排出溝2によれば、作業リング1全体の強度を高め、作業リング1の端面つまり穿孔面のフレアリスクを低減することができる。
【0045】
[実施例2]
この実施例は主に排出溝2の構造を変えることを除いて、実施例1と同じである。
図6および
図7に示すように、前記排出溝2の底部の両側辺が前記作業リング1の回転方向に前後にそれぞれ第1の側辺3および第2の側辺4であり、前記第1の側辺3と前記第2の側辺4の夾角の中心線が前記作業リング1底面の円心を通過しない。
図17に示すように、前記第1の側辺3の一端が前記作業リング1の内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リング1の外側であって前記作業リング1の回転方向の反対の方向に角度αだけ偏向する。前記第2の側辺4の一端が前記作業リング1の内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リング1の外側であって前記作業リング1の回転方向に角度θだけ偏向し、α>45°>θである。この実施例では、作業リング1が回転すると、排出溝2の第1の側辺3が作業リング1の回転下で作業リング1の外側に押し出されたスクラップに対して径方向の機械的な押し付け力を印可する。第1の側辺3の作業リング1の回転方向の後方への偏向角度αが、第2の側辺4の作業リング1の回転方向の前方への偏向角度θよりも大きいため、第2の側辺4が第1の側辺3で外部へ押し出されたスクラップを邪魔せず、
図8に示すように、スクラップが作業リング1の回転に従って第1の側辺3の機械的な押し付け力の作用下で作業リング1の径方向に沿ってスムーズに排出され得る。上記のような設計がないと、つまり排出溝2の第1の側辺3と第2の側辺4が偏向しないと、
図9に示すように、作業リング1の回転下で、第2の側辺4は、第1の側辺3で外部へ押し出されたスクラップを邪魔し、ひいてはスクラップの排出速度を低減させる。
【0046】
さらに、第1の側辺3と第2の側辺4の上記設計により、両者が作業リング1内側に近接する両端部の距離が狭くなり、作業リング1外側に近い端部間の距離が広くなり、つまり作業リング1内側の加工材料(ダイヤモンド粒子)が多くなり、外側の加工材料が少なくなり、ひいては作業リング1内側の摩耗速度が外側の摩耗速度よりも遅い。したがって、一定時間作業した後、
図16に示すように、作業リング1の作業端(底面)が同様に対応の円錐/円錐面の形成に有利である。ある材料、例えばガラスを加工するとき、作業リング1の作業端の内側がまずガラスの表面内側に接触し、ガラスの欠けを効果的に回避することができる。
【0047】
[実施例3]
この実施例は主に排出溝2の構造を変えることを除いて、実施例1と同じである。
図10~
図13に示すように、前記排出溝2の両側面が平行に設置され、その底部の両側辺の対称的な中心線が前記作業リング1底面の円心を通過しない。前記排出溝2の両側面が前記作業リング1の底面に対して前記作業リング1の回転方向に傾斜して設置され、前記排出溝2の両側面の一端が前記作業リング1の内側壁の対応の位置に配置され、他端が前記作業リング1の外側であって前記作業リング1の回転方向に予設の角度だけ偏向する。前記排出溝2の頂部は丸み構造であり、前記スタンバイ排出溝5の底部と頂部はいずれも丸み構造である。丸み構造により、応力集中を防ぎ、スクラップの流動を促進することができる。この実施例では、作業リング1が回転すると、排出溝2の両側面が作業リング1に従って回転し、一方の側面が上向き(軸方向に上向き)に外部(作業リング1の外側)にスクラップを押し出し、両側面が平行に設置され、他方の側面は、一方の側面によるスクラップの押し出を邪魔せず、つまりスクラップを排出するための軸方向の機械的な押し付け力を形成する。スクラップは作業リング1の回転に従って、排出溝2の両側面で押し出されて作業リング1の軸方向に沿ってスムーズに排出される(
図13の破線の矢印で示される)。
【0048】
[実施例4]
この実施例は主に排出溝2の位置を変えることを除いて、排出溝2の構造は実施例1、実施例2または実施例3と同じであり、他の部分は実施例1と同じである。
【0049】
図14および
図15に示すように、前記作業リング1の側壁にスタンバイ排出溝5が設けられ、前記スタンバイ排出溝5は前記排出溝2の上方に配置され、前記作業リング1の軸方向摩耗が前記排出溝2を超えた後スクラップを排出する。前記スタンバイ排出溝5の底部と頂部はいずれも丸み構造であり、丸み構造により、応力集中を防ぎ、スクラップの流動および排出を促進することができる。前記作業リング1の外側壁にいくつかの切屑排出溝6が環状に配置され、前記切屑排出溝6はらせん状であり、らせん方向は前記作業リング1の回転方向と一致している。切屑排出溝6は、スクラップが切屑排出溝6に沿って上向き排出されるように設計される。前記排出溝2と前記スタンバイ排出溝5は前記切屑排出溝6内に配置される。この実施例では、排出溝2から排出されたスクラップは即時に切屑排出溝6を介して上向きに排出され、スクラップの排出速度が向上する。
【0050】
好ましくは、前記排出溝2と前記スタンバイ排出溝5の両側面は前記作業リング1の回転方向に前後にそれぞれ第1の側面9および第2の側面10であり、前記切屑排出溝6の両側面は前記作業リング1の回転方向に前後にそれぞれ第3の側面11および第4の側面12であり、前記第1の側面9と前記第3の側面11は重なり合い、前記第2の側面10と前記第4の側面12は間隔を空けて配置される。排出溝2の第1の側面9と切屑排出溝6の第3の側面11が重なり合うように設計することにより、作業リング1の回転下で、排出溝2から排出されたスクラップが後向き、つまり切屑排出溝6の第4の側面12に向かって移動し、排出溝2の第2の側面10と第4の側面12は間隔を空けて配置されてスクラップの最大排出空間を形成し、スクラップがより早く切屑排出溝6内に排出され、排出効率が向上する。スタンバイ排出溝5の第1の側面9と切屑排出溝6の第3の側面11が重なり合うように設計することにより、スタンバイ排出溝5の第2の側面10と第4の側面12が間隔を空けて配置され、同様に冷却水の最大排出空間を形成し、スタンバイ排出溝5から冷却水が流出し(作業リング1は摩耗し、スタンバイ排出溝5が排出溝2にならないとき、スタンバイ排出溝5から作業リング1の外側へ冷却水が流出して排出を補助する)、切屑排出溝6内のスクラップを排出させ、最良のブースト作用を有し、同様に排出効率が向上する。排出溝2/スタンバイ排出溝5が切屑排出溝6の一側と重なり合うと、例えば排出溝2/スタンバイ排出溝5が切屑排出溝6内の中央に設置され(第1の側面9および第2の側面10は第3の側面11および第4の側面12といずれも重なり合わない)、または第2の側面10が第4の側面12と重なり合うと、排出溝2/スタンバイ排出溝5の第2の側面10と切屑排出溝6の第4の側面12間に形成されたスクラップ、冷却水の排出空間が小さく、スクラップを迅速に排出することができない。
【0051】
上記の説明は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神および原則を逸脱せずに加えられた修正、同等置換や改善などは、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0052】
1 作業リング
2 排出溝
3 第1側辺
4 第2側辺
5 スタンバイ排出溝
6 切屑排出溝(排出スロット)
7 ベースボディ
8 ガラス
9 第1側面
10 第2側面
11 第3側面
12 第4側面
13 内径角
14 テーパ面
【国際調査報告】