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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】金属酸化物日焼け止め製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230721BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q17/04
A61K8/31
A61K8/29
A61K8/27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580841
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021039788
(87)【国際公開番号】W WO2022006215
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/045,990
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511289736
【氏名又は名称】アミリス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリアーノ クリスタ リンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスワナータン ラムヤ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC081
4C083AC092
4C083AC101
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC211
4C083AC251
4C083AC261
4C083AC262
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC531
4C083AC581
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC901
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD261
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB45
4C083BB47
4C083BB48
4C083CC19
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE17
(57)【要約】
本発明では、金属酸化物日焼け止め、スクワラン、および1つの酸化防止剤を含む日焼け止め製剤が提供される。提供される日焼け止め製剤により、スクワランおよび酸化防止剤を添加せずに金属酸化物を含む日焼け止め製剤と比較して、金属酸化物の単位質量あたりのSPFが増加した。また、この日焼け止め製剤の塗布を伴う皮膚への紫外線ダメージを防止する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物、スクワラン、および1つまたは複数の酸化防止剤を含む、日焼け止め製剤。
【請求項2】
前記日焼け止め製剤が、前記金属酸化物単体よりも高い、単位質量あたりの紫外線防止指数(SPF)を有する、請求項1に記載の日焼け止め製剤。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化亜鉛および酸化チタンから選択される、請求項1または2に記載の日焼け止め製剤。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、フェルラ酸エチルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項5】
溶媒をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項6】
前記溶媒が水である、請求項5に記載の日焼け止め製剤。
【請求項7】
キレート剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項8】
前記キレート剤が、グルコン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、EDTA、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウムから選択される、請求項6に記載の日焼け止め製剤。
【請求項9】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項10】
前記界面活性剤が、カプリリル/カプリルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、イソステアリン酸、セテアリルグルコシド、およびアラキジルグルコシドから選択される、請求項8に記載の日焼け止め製剤。
【請求項11】
湿潤剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項12】
前記湿潤剤が、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、およびキシリトールから選択される、請求項10に記載の日焼け止め製剤。
【請求項13】
乳化安定剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項14】
前記乳化安定剤が、アカシアセネガルガム、キサンタンガム、セルロースガム、微結晶セルロースから選択される、請求項13に記載の日焼け止め製剤。
【請求項15】
増粘剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項16】
前記増粘剤が、パルミチン酸セチル、セテアリルアルコール、ジヒドロアビエチン酸メチル、ベヘニルアルコール、ブラシカアルコール、アラキジルアルコール、ココナッツアルコール、パルミチン酸ソルビタンから選択される、請求項15に記載の日焼け止め製剤。
【請求項17】
乳化剤をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項18】
前記乳化剤が、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、レシチン、ステアリン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸セテアリルから選択される、請求項17に記載の日焼け止め製剤。
【請求項19】
前記スクワランに加えて、追加のエモリエント剤をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項20】
前記スクワランに加えて追加される前記追加のエモリエント剤が、カプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドから選択される、請求項19に記載の日焼け止め製剤。
【請求項21】
分散剤をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項22】
前記分散剤が、ポリヒドロキシステアリン酸から選択される、請求項21に記載の日焼け止め製剤。
【請求項23】
皮膚コンディショニング剤をさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項24】
前記皮膚コンディショニング剤が、パルミトイルプロリンナトリウム、およびニンファエアアルバ花エキスから選択される、請求項23に記載の日焼け止め製剤。
【請求項25】
防腐剤をさらに含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項26】
前記防腐剤が、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ヒドロキシアセトフェノン、クロロフェンシン、ソルビン酸カリウム、1,2-ヘキサンジオール、およびカプリリルグリコールから選択される、請求項25に記載の日焼け止め製剤。
【請求項27】
品質改良剤をさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項28】
前記品質改良剤が、エチルヘキシルグリセリンである、請求項27に記載の日焼け止め製剤。
【請求項29】
皮膚保護剤をさらに含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項30】
前記皮膚保護剤がフウリンホオズキ(physalis angulate)抽出物である、請求項29に記載の日焼け止め製剤。
【請求項31】
トコフェロールをさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項32】
前記金属酸化物の含有量が、前記製剤の約5w/w%~約25w/w%である、請求項1~31のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項33】
前記スクワランの含有量が、前記製剤の約1w/w%~約25w/w%である、請求項1~32のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項34】
前記酸化防止剤の含有量が、前記製剤の約0.1w/w%~約2w/w%である、請求項1~33のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項35】
前記金属酸化物の含有量が約14w/w%であり、前記スクワランの含有量が約5w/w%であり、前記酸化防止剤の含有量が前記製剤の約0.7w/w%である、請求項1~34のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤。
【請求項36】
請求項1~32のいずれか1項に記載の日焼け止め製剤の有効量を対象の皮膚に塗布することを含む、対象の皮膚への紫外線ダメージを防止する方法。
【請求項37】
前記日焼け止め製剤が、紫外線への曝露前に皮膚に塗布される、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物日焼け止め製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日光への過度の曝露は、様々な皮膚がんの発生率の増加や皮膚の老化の加速など、多くの健康上の問題を引き起こすことが知られている。紫外線(UV)領域(200nm~400nm)の放射は、日光曝露の有害な影響のほとんどに関連づけられている。太陽光の悪影響を和らげるために、紫外光のエネルギーを遮断または減衰させる製品が数多く開発されている。このような製品は紫外線を遮断するもので、紫外線防止指数(SPF)と呼ばれる指標によって相対的な有効性が評価される。紫外線濾光剤には金属酸化物日焼け止めおよび化学日焼け止めの2種類が開発されている。金属酸化物は有効な日焼け止めであるが、塗布すると乾燥感や粉っぽさがあり、一般的に白い残留物が残る特徴がある。一方で化学日焼け止めは塗布性が良く、吸収されて目に見える残留物が残らないことが多いという特徴がある。しかし、最近の研究では、化学日焼け止めは健康への影響が懸念されることが示唆されている。
【0003】
紫外光はエネルギー量によって3種類に区分される。最もエネルギーが強い放射はUVC(200nm~290nm)と呼ばれる。幸運にも、UVCは大気によって吸収されるため、大きな曝露リスクはない。2種類目の紫外光であるUVB(290nm~320nm)は、免疫抑制、紅斑の出現、および皮膚がんの誘発など、紫外線への曝露による大半の急性影響の原因である。3種類目の紫外光であるUVA(320nm~400nm)は、最もエネルギーの弱い光線である。しかしながら、この3種類のうち、UVAが最も深く真皮に浸透する。
【0004】
歴史的には、UVAは皮膚にダメージを与えるものではないと考えられてきた。そのため、SPFの測定は、製品が持つ紅斑の形成を防ぐ能力を測定することで、UVB放射の効果に焦点を合わせてきた。しかし現在では、UVAが皮膚の光老化に関与しており、腫瘍の原因にもなることが広く理解されている。したがって、SPFが高くてもUVA保護が低い製品は使用者を危険にさらす可能性がある。それはUVA線を効果的に遮断しないまま、長時間日光を浴びることを促すためである。現在では、より広い保護スペクトルを持つ製品が好まれている。このような広域スペクトルを持つ日焼け止め製品は、2種類以上の紫外線濾光化合物の混合物を含んでいることが多い。しかし、広域スペクトルを持つ日焼け止めの開発により、新たな問題が生じている。これは、使用による健康上のリスクがあると考えられる化学日焼け止めの混合物が含まれていることが多いためである。したがって、従来の金属酸化物日焼け止めの欠点を克服し、化学日焼け止めの健康への悪影響を持たない、さらなる広域スペクトルを持つ金属酸化物ベースの日焼け止めが求められている。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本開示は、粉っぽさがなく、白い残留物を残さず、且つ広域スペクトルおよび高い紫外線防止指数(SPF)を持つ金属酸化物日焼け止め製剤に関するものである。
【0006】
一実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、金属酸化物、スクワラン、および1つまたは複数の酸化防止剤を含有する。別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、金属酸化物単体よりも高い、単位質量あたりのSPFを有する。さらに別の実施形態では、その金属酸化物は、酸化亜鉛および酸化チタンから選択される。さらなる実施形態では、その酸化防止剤は、フェルラ酸エチルである。さらなる実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、溶媒を含有する。好ましい実施形態では、その溶媒は水である。別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、キレート剤を含有する。好ましい実施形態では、そのキレート剤は、グルコン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、EDTA、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウムから選択される。さらに別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、界面活性剤を含有する。好ましい実施形態では、その界面活性剤は、カプリリル/カプリルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、イソステアリン酸、セテアリルグルコシド、およびアラキジルグルコシドから選択される。さらに別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、湿潤剤を含有する。好ましい実施形態では、その湿潤剤は、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、およびキシリトールから選択される。さらなる実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、乳化安定剤を含有する。好ましい実施形態では、その乳化安定剤は、アカシアセネガルガム、キサンタンガム、セルロースガム、微結晶セルロースから選択される。別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、増粘剤を含有する。好ましい実施形態では、その増粘剤は、パルミチン酸セチル、セテアリルアルコール、ジヒドロアビエチン酸メチル、ベヘニルアルコール、ブラシカアルコール、アラキジルアルコール、ココナッツアルコール、パルミチン酸ソルビタンから選択される。さらに別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、乳化剤を含有する。好ましい実施形態では、その乳化剤は、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、レシチン、ステアリン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸セテアリルから選択される。別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、スクワランに加えて追加されるエモリエント剤を含有する。好ましい実施形態では、スクワランに加えて追加されるエモリエント剤は、カプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドから選択される。さらに別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、分散剤を含有する。好ましい実施形態では、その分散剤は、ポリヒドロキシステアリン酸から選択される。一実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、皮膚コンディショニング剤を含有する。好ましい実施形態では、その皮膚コンディショニング剤は、パルミトイルプロリンナトリウム、およびニンファエアアルバ花エキスから選択される。別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、防腐剤を含有する。好ましい実施形態では、その防腐剤は、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ヒドロキシアセトフェノン、クロロフェンシン、ソルビン酸カリウムから選択される。別の実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、品質改良剤を含有する。好ましい実施形態では、その品質改良剤は、エチルヘキシルグリセリンである。
【0007】
特定の実施形態では、金属酸化物の含有量は、製剤の約5w/w%から約25w/w%である。他の実施形態では、スクワランの含有量は、製剤の約1w/w%~約25w/w%である。さらに他の実施形態では、酸化防止剤の含有量は、製剤の約0.1w/w%から約2w/w%である。本発明の実施形態では、金属酸化物の含有量は、約14w/w%であり、スクワランの含有量は、約5w/w%であり、酸化防止剤の含有量は、製剤の約0.7w/w%である。
【0008】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される日焼け止め製剤の有効量を対象の皮膚に塗布することを含む、対象の皮膚への紫外線ダメージを防止する方法を提供する。本方法の一実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、紫外線への曝露前に塗布される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ブランク(対照)プレートについて得られた平均吸光度スペクトルを示すグラフである。
図2】紫外線曝露前の、日焼け止め試験試料を塗布したプレートの紫外線領域における平均吸光度スペクトルを示すグラフである。
図3】紫外線曝露後の、試料を塗布したプレートの紫外線領域における平均吸光度スペクトルを示すグラフである。
図4】広域スペクトル保護分析におけるブランク(対照)プレートの平均吸光度スペクトルを示すグラフである。
図5】広域スペクトル保護分析および臨界波長の計算における日焼け止め試験試料による保護を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示される日焼け止め製剤は、製剤内の活性剤として、鉱物酸化物紫外線吸収剤としても知られる金属酸化物に依存する。適切な金属酸化物としては、酸化亜鉛および酸化チタンが挙げられる。酸化亜鉛は、製剤の好ましい金属酸化物である。
【0011】
開示される金属酸化物ベースの日焼け止め製剤は、金属酸化物日焼け止めに加えて、1つまたは複数の酸化防止剤およびスクワランを含む。スクワランと組み合わせた酸化防止剤は、酸化防止剤およびスクワランを欠く製剤と比較して、本製剤のSPFを高めることが見いだされた。したがって、酸化防止剤およびスクワランの成分は、金属酸化物の紫外線遮断能力を強めることが見いだされた。酸化防止剤とは酸化を抑制する化合物である。好ましい酸化防止剤は、フェルラ酸エチルである。他の実施形態においては、好ましい酸化防止剤はトコフェロールを含む。
【0012】
本明細書において、「スクワラン」は、以下の式を有する化合物を指す。
【0013】
【化1】
【0014】
本発明の日焼け止め製剤には、スクワランが含まれる。スクワランは、本製剤中でエモリエント剤として作用し、金属酸化物日焼け止め化合物の好ましくない特性を緩和する。これには、重い感触や粘着質な感触を低減し、塗布時の粉っぽい仕上がりを低減または解消することが含まれる。驚くべきことに、スクワランおよび酸化防止剤の組み合わせは、日焼け止め中の金属酸化物の量に相関して、本発明による金属酸化物日焼け止めのSPFを高めることも見いだされた。特定の実施形態では、スクワランは、本製剤の約1w/w%~25w/w%を構成する。別の実施形態では、スクワランは、本製剤の約5w/w%~20w/w%を構成する。好ましい実施形態では、本発明による日焼け止め製剤は、本製剤の約5w/w%を構成する。
【0015】
本明細書に開示される日焼け止め製剤は、1つまたは複数の溶媒を含有してもよい。溶媒は、1つまたは複数の機能を有する様々な溶質を本製剤中に溶解するために使用される。溶媒によって溶解された溶質は、キレート剤、界面活性剤、湿潤剤、乳化安定剤、増粘剤、乳化剤、スクワランに加えて追加するエモリエント剤、分散剤、皮膚コンディショニング剤、防腐剤、および品質改良剤として機能してもよい。本発明の好ましい溶媒は水である。
【0016】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数のキレート剤を含有してもよい。キレート剤は、金属イオンと反応して、安定な水溶性錯体を形成する化学化合物である。例示的なキレート剤としては、グルコン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、EDTA、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウムが挙げられる。本発明の好ましいキレート剤は、グルコン酸ナトリウムである。
【0017】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、本製剤の1つまたは複数の液体の表面張力を低下させる機能を有する。例示的な界面活性剤としては、カプリリル/カプリルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、イソステアリン酸、セテアリルグルコシド、およびアラキジルグルコシドが挙げられる。本製剤に有用な好ましい界面活性剤としては、カプリリル/カプリルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、およびイソステアリン酸が挙げられる。
【0018】
本明細書に開示される製剤はまた、1つまたは複数の湿潤剤を含有してもよい。湿潤剤は、本製剤の水分を保持する化合物であり、典型的には、複数の親水性基を有する吸湿性化合物である。例示的な湿潤剤としては、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、およびキシリトールが挙げられる。本製剤の好ましい湿潤剤はグリセリンである。
【0019】
本明細書に開示される製剤はまた、1つまたは複数の乳化安定剤を含有してもよい。乳化安定剤は、乳剤を構成する液滴が凝集しないようにするために使用される。例示的な乳化安定剤としては、アカシアセネガルガム、キサンタンガム、セルロースガム、微結晶セルロースが挙げられる。本製剤の好ましい乳化安定剤は、アカシアセネガルガムおよびキサンタンガムである。
【0020】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の増粘剤を含有してもよい。増粘剤は、本製剤を密にし、それにより本発明による日焼け止め製剤の全体的な粘度を高めることによって作用する化合物である。例示的な増粘剤としては、パルミチン酸セチル、セテアリルアルコール、ジヒドロアビエチン酸メチル、ベヘニルアルコール、ブラシカアルコール、アラキジルアルコール、ココナッツアルコール、パルミチン酸ソルビタンが挙げられる。好ましい増粘剤としては、パルミチン酸セチル、セテアリルアルコール、およびジヒドロアビエチン酸メチルが挙げられる。
【0021】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の乳化剤を含有してもよい。乳化剤は、異種の化学物質(疎水性化合物および親水性化合物など)がエマルション中で分離しないようにする化合物である。例示的な乳化剤としては、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、レシチン、ステアリン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸セテアリルが挙げられる。好ましい乳化剤としては、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、およびレシチンが挙げられる。
【0022】
本明細書に開示される製剤は、スクワランに加えて、1つまたは複数のエモリエント剤を含有してもよい。エモリエント剤とは、水分の蒸発を遅らせるか、または防ぐことによって皮膚を柔らかくする物質である。スクワランはエモリエント剤として機能する。しかしながら、1つまたは複数の追加のエモリエント剤を製剤に添加してもよい。スクワランに加えて追加する好適なエモリエント剤としては、カプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドが挙げられる。
【0023】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の皮膚保護剤を含有してもよい。好ましい皮膚保護剤はフウリンホオズキ(physalis angulate)抽出物である。
【0024】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の分散剤を含有してもよい。分散剤は、懸濁液中またはコロイド分散液中の粒子の分離を改善し、本製剤内の特定の化合物の沈降または凝集を減少させる化合物である。本製剤の好ましい分散剤は、ポリヒドロキシステアリン酸である。
【0025】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の皮膚コンディショニング剤を含有してもよい。好適な皮膚コンディショニング剤としては、パルミトイルプロリンナトリウム、ニンファエアアルバ花エキス、ビサボロール、およびエチルヘキシルグリセリンが挙げられる。
【0026】
本明細書に開示される製剤は、1つまたは複数の防腐剤を含有してもよい。例示的な防腐剤としては、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ヒドロキシアセトフェノン、クロロフェンシン、ソルビン酸カリウム、1,2-ヘキサンジオール、およびカプリリルグリコールが挙げられる。好ましい防腐剤はフェノキシエタノールである。他の実施形態においては、好ましい防腐剤は、ヒドロキシアセトフェノン、1,2-ヘキサンジオール、およびカプリリルグリコールである。
【0027】
本明細書において、「有効量」は、所望の反応を少なくとも部分的に達成するため、または治療される特定の症状の発症もしくは進行を遅延させる、もしくは進行を阻害する、もしくは完全に停止させるために必要な量を意味する。その量は、処置される対象の健康状態および身体状態、処置される対象の分類群、所望の保護の程度、組成物の製剤、医学的状況の評価、ならびに他の関連因子に応じて変化する。その量は、日常的な試験を通じて求められる比較的広い範囲に収まることが予想される。
【0028】
本明細書において、「対象」または「患者」は、本開示の方法の1つを使用して治療される生物である。一実施形態において、対象は、ヒトまたは家畜などの哺乳動物の対象である。
【0029】
本明細書において、「約」という用語は、当業者によって理解されるものであり、それが使用される文脈によってある程度異なるものである。使用される用語を考慮して、この用語の使用が当業者にとって明確ではない場合、「約」は、最大で、その特定の用語のプラスまたはマイナス20%を意味してもよい。
【0030】
本明細書において、「軟膏」という用語は、一般的に知られており、市販されている任意の軟膏であってもよい。
【0031】
本明細書において、「UV」および「紫外線」は、200nm~400nmの波長を有する光を指す。
【0032】
本明細書において、「UVA」および「紫外線A」は、320nm~400nmの波長を有する光を指す。
【0033】
本明細書において、「UVB」および「紫外線B」は、290nm~320nmの波長を有する光を指す。
【0034】
本明細書において、「UVC」および「紫外線C」は、200nm~290nmの波長を有する光を指す。
【実施例
【0035】
実施例1: インビトロUVA保護因子および臨界波長決定
[試験設計および方法]
金属酸化物日焼け止め、スクワラン、および酸化防止剤を1つ含む日焼け止め試験試料を調製した(表1を参照)。この日焼け止めの紫外線指数(SPF)を、インビトロアッセイを使用して測定した。このインビトロアッセイは、6マイクロメートルの粗い表面を有するPMMA(ポリメタクリル酸メチル)プレート(Helioscreen社製Helioplate HD6)に基づくものである。
【0036】
【表1】
【0037】
上述の日焼け止め試験試料を、4枚のPMMAプレートの25cmの粗い表面積に1cm当たり約1.3mgの量で塗布した。日焼け止め試験試料を、本発明による日焼け止め製剤をあらかじめ含ませておいた指先で、PMMAプレート表面全体に手動で広げた。この試料を、29.1~29.2℃に保たれた暗い乾燥チャンバ内に30分間安置し、乾燥させた。
【0038】
対照プレートは、日焼け止め試験試料の代わりにグリセリン対照を塗布したことを除き、同様に処理した。対照プレートの吸光度スペクトルを、290nm~400nmの領域で、1nm間隔で測定した。各プレート上の5つの異なる点から5つのスペクトルを得た。各点の読み取り面積は0.79cmである。
【0039】
日焼け止め試験試料の吸光度スペクトルを、対照プレートを基準値として、290nm~400nmの領域で、1nm間隔で測定した。日焼け止め試験試料の5つのスペクトルを、プレートの5つの異なる点から得た。各プレートの平均吸光度スペクトルを用いて、初期インビトロSPF(SPFインビトロ)を以下の式で算出した。
【0040】
【数1】
【0041】
次に、インビトロSPFの値をインビボ試験で得られた値と等しくするために使用する、調整係数Cを求めた。Cの値は、条件を満たすように、繰り返し計算した。
【0042】
【数2】
【0043】
係数Cの値は、対照基準により定められるとおり、0.8~1.6の範囲内でなければならない。決められた範囲外の値が得られた場合は、新たにプレートを用意して得られた結果を検証することになっていた。
【0044】
これらのデータを用いて、製品の初期UVA-PF(UVA-PF)を以下の式で算出した。
【0045】
【数3】
【0046】
日焼け止め試験試料を含む4枚のPMMAプレートすべてを、日焼け止め試験試料を実際の条件に近い条件下に置くために、制御された照射線量の紫外線に曝露した。UV Special Glassフィルターを装着した照射器UV Atlas(モデルSuntest CPS+)を使用した。日焼け止め試験試料をUVA、UVB、および可視領域の放射に曝露し、その照射線量が、以下の式で計算されたUVA領域のエネルギー量D(J/cm)となるように計算した。
【0047】
【数4】
【0048】
ここで、D0はISO 24443により、UVA放射の照射線量1.2J/cmとして定義されている。
【0049】
紫外線曝露チャンバの温度は全工程中監視し、28.9℃~33.6℃の間に維持した。
【0050】
日焼け止め試験試料を紫外線に曝露した後、上記の手順に従って、4枚のプレートの吸光度をそれぞれ再度測定し、各プレートから5つのスペクトルを得た。各プレートの平均吸光度スペクトルを用いて、UVA-PFを以下の式で求めた。
【0051】
【数5】
【0052】
また、インビボSPFの値から、SPF/UVA-PFの比を算出した。
【0053】
臨界波長(λc)の計算は、すべてのプレートに塗布した日焼け止め試験試料について、紫外線曝露後の吸光度スペクトルに基づいて算出した。臨界波長は、日焼け止め製剤のUVA保護能力のもう1つの測定値であり、以下の式に従って、日焼け止め試験試料の吸光度が総吸光度の90%に等しくなる、より低い波長として定義される。
【0054】
【数6】
【0055】
標準物質S2は、上記と同じ手順に従って試験した。照射後の標準物質のUVA-PF平均値は、10.7~14.7の範囲内でなければならない。
【0056】
[結果]
日焼け止め試験試料のUVA-PFの測定を4枚のプレートで繰り返した。試料のUVA-PFを、各プレートについて得られたUVA-PFの平均から算出した。日焼け止め試験試料のSPF/UVA-PFおよびλcの比率も同様の方法で算出した。次いで、日焼け止め試験試料および標準物質のUVA-PFの95%信頼区間(CI95%)を、以下の計算式で求めた。
【0057】
【数7】
【0058】
CとUVA-PFの比は、以下の式に従って計算されるCI[%]に対応する。
【0059】
【数8】
【0060】
この試験は、標準物質S2の平均UVA-PFが予想される範囲内であり、且つc値が製品および標準物質S2の両方の平均UVA-PFの17%よりも優れていなかった場合(CI[%]<17.0)に有効であると見なすことができる。
【0061】
図1は対照プレートから得られた平均吸光度スペクトルであり、図2は日焼け止め試験試料を塗布した全プレートから得られた平均吸光度スペクトルである。表2は、各プレートについて個別に計算したインビトロSPF、調整係数C、およびUVA-PFのそれぞれの値を示している。調整係数Cは、インビトロSPFをインビボの値である30に調整するように算出した。
【0062】
【表2】
【0063】
試料は、18か月ごとに校正される照射器で紫外線曝露にさらした。320nm~400nmの領域(UVA)における太陽シミュレータの分光放射照度は78.78W/mである。図3は、日焼け止め試験試料で処理したプレートの紫外線曝露後の平均吸光度スペクトルである。表3は、各プレートについて個別に計算したUVA-PFのそれぞれの値であり、表4は、日焼け止め製剤の平均UVA-PFおよび95%信頼区間である。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
日焼け止め試験試料の平均UVA-PFは15.6であり、変動係数は2.5%であった。インビボSPFに基づき計算したSPF/UVA-PFの平均比は1.9であった。平均臨界波長(λc)は375nmであった。C値は、平均UVA-PFの17%(CI[%]、17%)に劣っていたため、本試験は有効であると見なすことができた。標準物質S2の平均UVA-PFは14.0を示した。得られたUVA-PF値は期待される範囲内であり、c値は平均UVA-PFの17%より劣っていた(CI[%]<17.0%)。
【0067】
実施例2: UVA-PFのインビボ評価
[試験設計および方法]
20歳から61歳(平均35歳)でフォトタイプIIIからIVの女性の対象10名を募集し、インフォームドコンセントの下で本試験に参加させた。試験参加基準は、健康な対象であること、検査部位の皮膚が無傷であること、試験手順に従うことに同意すること、試験参加に書面で同意できること、18歳から70歳であること、フォトタイプIIからIVであること、およびITAが20から41の間であることである。試験除外基準には以下のものが含まれる。妊娠または授乳中、適用部位の皮膚病理、1型糖尿病、妊娠糖尿病、合併症を伴う糖尿病、インスリン使用者、糖尿病に関連する皮膚病の存在、低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、および/または高浸透圧性昏睡の前歴、免疫不全、試験開始前2週間以内の全身性コルチコステロイドまたは免疫抑制薬の使用、抗ヒスタミン薬もしくは抗炎症薬の現在の使用、または試験中にこれらの薬剤の使用する意図、皮膚疾患、日焼け止め試料成分に対する先行反応、化粧品、衛生用品、日焼け止め、および/または局所使用製品に対するアレルギーまたは過敏症の既往歴、その他の疾患または健康上のリスク、過去4週間以内における試験場所への日光曝露、過去2か月以内におけるSPF/UVA-PFを測定する試験への参加、光感受性薬の服用、日光曝露に対するアレルギー、光アレルギー、または中毒反応の既往歴、過去1か月以内におけるセルフタンニング製品の使用、現在受けている人工日焼け、試験3週間以内の予防接種、本人または家族の皮膚がん既往歴、日焼け、傷跡、および/または進行中の皮膚病変、ならびにその他、試験評価を損なうと試験者が判断した条件。
【0068】
対象がストレッチャーの上に横たわっている状態で、対象の背中の3つの部位を区切り、それぞれ約30cmの部位とした。領域の1つに日焼け止め試験試料を塗布し、残る領域のうち1つには対照を塗布し、3つ目の領域は無処置とした。2.0mg/cmに相当する約60+/-1.5mgの日焼け止め製剤を適応し、指サックを使用して塗布した。15分から30分間の休息時間の後、3つの部位に照射した。照射には、6回連続の紫外線A放射(320~400nm)照射線量を使用し、各照射線量間で25%のばらつきがあるようにした。
【0069】
照射部位の色素沈着を、各曝露の完了後2時間から24時間以内に評価した。保護された領域および保護されていない領域について、訓練を受けた専門家が、各UVA曝露終了直後の相対的に同じ時間に観察した。最小持続性色素沈着照射線量(MPPD)は、境界が明確な最初の反応を引き起こすことができる紫外線A(320~400nm)の最小照射線量と定義し、その反応はUVA放射に曝露した領域の大部分に現れ、UVA曝露後2時間から24時間以内に観察されたものとした。
【0070】
各対象について、生成物のUVA-PFを、保護された皮膚のMPPD(MPPDp)および保護されていない皮膚のMPPD(MPPDu)の比として計算した。
【0071】
【数9】
【0072】
いずれかの照射領域の評価中、以下の場合は結果を棄却した。1)色素沈着の変化がなかった(過少曝露)、2)全領域に色素沈着の変化があった(過剰曝露)、または3)色の変化の進行が規則的な順序に従わなかった場合。
【0073】
UVA-PFの測定は、最低10件の有効な結果を得るのに十分な数の対象において繰り返した。日焼け止め試験試料および対照の平均UVA-PF(x)および標準偏差(s)を計算した。次いで、日焼け止め試験試料および対照のUVA-PFの95%信頼区間を、以下の計算式で求めた。
【0074】
【数10】
【0075】
[結果]
10人の対象が試験を完了した。各対象について得られたデータを表5に、ならびに日焼け止め試験試料および対照の平均UVA-PF、標準偏差および95%信頼区間を表6に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
実施例3: SPFのインビボ評価
[試験設計および方法]
21歳から49歳(平均37歳)でフォトタイプIからIIIの女性の対象10名を募集し、インフォームドコンセントの下で本試験に参加させた。試験参加基準は、健康な対象であること、検査部位の皮膚が無傷であること、試験手順に従うことに同意すること、試験参加に書面で同意できること、18歳から70歳であること、フォトタイプIからIIIであること、およびITAが28より高いことである。試験除外基準には以下のものが含まれる。妊娠または授乳中、適用部位の皮膚病理、1型糖尿病、妊娠糖尿病、合併症を伴う糖尿病、インスリン使用者、糖尿病に関連する皮膚病の存在、低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、および/または高浸透圧性昏睡の前歴、免疫不全、試験開始前2週間以内の全身性コルチコステロイドまたは免疫抑制薬の使用、抗ヒスタミン薬もしくは抗炎症薬の現在の使用、または試験中にこれらの薬剤の使用する意図、皮膚疾患、日焼け止め試料成分に対する先行反応、化粧品、衛生用品、日焼け止め、および/または局所使用製品に対するアレルギーまたは過敏症の既往歴、その他の疾患または健康上のリスク、過去4週間以内における試験場所への日光曝露、過去2か月以内におけるSPF/UVA-PFを測定する試験への参加、光感受性薬の服用、日光曝露に対するアレルギー、光アレルギー、または中毒反応の既往歴、過去1か月以内におけるセルフタンニング製品の使用、現在受けている人工日焼け、試験3週間以内の予防接種、本人または家族の皮膚がん既往歴、日焼け、傷跡、および/または進行中の皮膚病変、ならびにその他、試験評価を損なうと試験者が判断した条件。
【0079】
対象がストレッチャーの上に横たわっている状態で評価を開始し、次に、対象の背中に30cmの領域を3つ区切った。第1の領域を日焼け止め試験試料で処理し、第2の領域を対照(SPF16を有する有名な日焼け止め)で処理し、第3の領域を未処理の対照とした。日焼け止め試験試料および日焼け止め対照はマイクロピペットを用いて塗布した。いずれも物質60mgを塗布したが、これは約2.0mg/cmに相当する。次いで、3つの部位に、物質の塗布から約15~30分後に照射した。照射には、6回連続の紫外線照射線量を使用し、各照射線量間で25%のばらつき(SPFが25以下の物質用)および12%のばらつき(SPFが25を超える物質用)があるようにした。この一連の照射は、事前に行った仮測定により、最小紅斑照射線量の予想値を中心としたものであった。照射線量の計算に用いた式は以下である。
【0080】
【数11】
【0081】
SPF値が25を超える製品では、使用した係数は1.25ではなく1.12であった。
【0082】
紅斑は訓練を受けた専門家が、照射後16~24時間の間に評価した。最小紅斑照射線量(MED)は、曖昧ではなく、認知できる最小限の紅斑を生成できる最低紫外線照射線量として定義した。
【0083】
各対象の製品のSPFiは、保護された皮膚のMED(MEDp)および保護されていない皮膚のMED(MEDu)の比として計算した。
【0084】
【数12】
【0085】
いずれかの照射部位の評価において、紅斑の出現が認められなかった(亜曝露)、すべての領域に紅斑が認められた(過剰曝露)、または紅斑の進行が規則的な順序に従わなかった場合は、結果を棄却した。
【0086】
SPFの測定を、最低10件の有効な結果を得るのに十分な数の対象において繰り返した。日焼け止め試験試料および対照の平均SPF(x)および標準偏差(s)を計算した。次いで、日焼け止め試験試料および対照のSPFの95%信頼区間を、以下の計算式で求めた。
【0087】
【数13】
【0088】
[結果]
10人の対象それぞれについて測定した日焼け止め試験試料のSPFを表7に示し、日焼け止め試験試料の平均SPFを表8に示す。
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
実施例4: 広域スペクトルUV分析
FDA規格-2011によると、まずブランクプレートと製品プレートのUV透過率を求めてから吸光度の値に変換し、臨界波長の計算式に挿入できるようにする必要がある。グリセリンを塗布したブランクPMMAプレートの吸光度スペクトルを290nm~400nmの範囲で1nm間隔で測定した。約0.75mg/cmの量の日焼け止め試験試料を、表面の粗い3枚のPMMAプレートに塗布し、指先により手動で塗り広げて視覚的に均一なフィルムコーティングを得た。日焼け止め試験試料を含むプレートは、28.8℃~29.2℃の温度に制御された乾燥チャンバの内部に、光から保護した状態で最低15分間安置した。
【0092】
日焼け止め試験試料を含む3枚のPMMAプレートすべてを、製品を実際の条件に近い条件下に置くために、制御された照射線量の紫外線に曝露した。日焼け止め試験試料をUVA、UVB、および可視領域の放射に曝露し、4MEDに相当する800J/meffの紅斑有効エネルギー量を与えた。
【0093】
日焼け止め試験試料を含むプレートに照射した後、グリセリンで処理したプレートを基準として、この3つの試料プレートのそれぞれの吸光度を290nm~400nmの範囲において、1nm間隔で求めた。
【0094】
臨界波長(λc)は、すべてのプレートに塗布した日焼け止め試験試料について、紫外線照射後の吸光度スペクトルに基づいて算出した。臨界波長は、製品の吸光度が総吸光度の90%に等しくなる最低波長として、以下の式によって定義される。
【0095】
【数14】
【0096】
日焼け止め試験試料の臨界波長(λc)は、3つのプレートのそれぞれの個々の値の平均である。日焼け止め製品に広域スペクトル保護を提供すると表示するには、平均臨界波長が370nmに等しいかそれ以上である必要がある。
【0097】
[結果]
図4は、すべてのブランクプレートについて得られた平均吸光度スペクトルである。対して、図5は日焼け止め試験試料で処理したプレートの紫外線照射後の平均吸光度スペクトルである。表9は、日焼け止め試験試料の塗布データおよび日焼け止め試験試料を塗布した各プレートの臨界波長(λc)である。
【0098】
【表9】
【0099】
上記の日焼け止め試験試料の臨界波長は、373nmであると計算された。したがって、日焼け止め試験試料製剤は、広域スペクトル保護を提供する。
【0100】
実施例5: ラベル付けおよび有効性に関するFDAのガイドラインを用いたSPFの測定:市販向けヒト用日焼け止め医薬品
21歳から52歳(平均38歳)でフォトタイプIからIIIの女性の対象10名を募集し、インフォームドコンセントの下で本試験に参加させた。試験参加基準は、健康な対象であること、検査部位の皮膚が無傷であること、試験手順に従うことに同意すること、試験参加に書面で同意できること、18歳から70歳であること、フォトタイプIからIIIであること、およびITAが28より高いことである。試験除外基準には以下のものが含まれる。妊娠または授乳中、適用部位の皮膚病理、1型糖尿病、妊娠糖尿病、合併症を伴う糖尿病、インスリン使用者、糖尿病に関連する皮膚病の存在、低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、および/または高浸透圧性昏睡の前歴、免疫不全、試験開始前2週間以内の全身性コルチコステロイドまたは免疫抑制薬の使用、抗ヒスタミン薬もしくは抗炎症薬の現在の使用、または試験中にこれらの薬剤の使用する意図、皮膚疾患、日焼け止め試料成分に対する先行反応、化粧品、衛生用品、日焼け止め、および/または局所使用製品に対するアレルギーまたは過敏症の既往歴、その他の疾患または健康上のリスク、過去4週間以内における試験場所への日光曝露、過去2か月以内におけるSPF/UVA-PFを測定する試験への参加、光感受性薬の服用、日光曝露に対するアレルギー、光アレルギー、または中毒反応の既往歴、過去1か月以内におけるセルフタンニング製品の使用、現在受けている人工日焼け、試験3週間以内の予防接種、本人または家族の皮膚がん既往歴、日焼け、傷跡、および/または進行中の皮膚病変、ならびにその他、試験評価を損なうと試験者が判断した条件。
【0101】
対象がストレッチャーの上に横たわった状態で評価を開始し、次いで、対象の背中にそれぞれ30cmの領域を5つ区切った。まず、マイクロピペットを用いて、2.0mg/cmに相当する約60mgの量の日焼け止め試験試料を塗布し、訓練を受けた専門家が指サックを使用して均一に塗り広げた。最低15分経過後、日焼け止め試験試料を塗布した部位に照射した。何も塗らなかった部位にも照射した。試料の塗布、紫外線への曝露、およびMEDの定義は、室温が18℃~26℃の安定した条件下で実施した。
【0102】
SPFが8以下の製品に対し、6回連続のB+A紫外線照射(290nm~400nm)を、各照射線量のばらつきを25%として実施した。SPF8~15の製品に対しては、20%のばらつきを用いた。対して、SPFが15を超える製品に対しては15%のばらつきを用いた。一連の照射線量は、3番目の出力を中心とし、この出力は(事前に求めた)初期MEDuに予想されるSPF値を掛けた値に等しくなる必要がある。
【0103】
訓練を受けた専門家が、紅斑を照射後16~24時間の間に評価した。最小紅斑照射線量(MED)は、曖昧ではなく、認知できる最小限の紅斑を生成できる最低紫外線照射線量として定義した。
【0104】
各対象の日焼け止め試験試料の静的SPFiを、保護された皮膚のMED(tpMEDp)および保護されていない皮膚のMED(MEDu)の比として、以下の式によって計算した。
【0105】
【数15】
【0106】
SPFの測定を、最低10件の有効な結果を得るのに十分な数の対象において繰り返した。日焼け止め試験試料および対照の平均SPF(エックスバー)および標準偏差(s)を計算した。次いで、日焼け止め試験試料および対照の最終SPFを、以下の計算式で求めた。
【0107】
【数16】
【0108】
日焼け止め試験試料の表示SPFは、最終SPFの値よりも低い、より高い整数値として定義される。
【0109】
[結果]
表10は、個々の対象ごとの試験結果であり、表11は、日焼け止め試験試料および対象の平均値である。
【0110】
【表10】
【0111】
【表11】
【0112】
実施例6: 第二の鉱物系日焼け止め
第二の鉱物系日焼け止めを調製した(表9参照)。第二の日焼け止めの処方は敏感肌用(例えば、乳児や幼児用)である。
【0113】
【表12】
【0114】
第二の日焼け止め処方の紫外線防止指数(SPF)を静的および耐水パラメーターから完全太陽光UV(290~400nm)について決定するために、健康な志願者による単盲検試験を実施した。静的SPFは、耐水性の前に、水への浸漬無しで決定した。耐水性は、水への浸漬から40分後に決定した。この研究プロトコルは、FDAの日焼け止め最終規則(Sunscreen Final Rule)、21CFR、パート201および310に準拠して実施した。各対象は、未保護の皮膚のMEDを決定するために、連続した5回の光曝露によって処理した。副部位は、MED曝露後20±4時間(16~24時間)に評価した。MEDは、副部位に知覚可能な最小の紅斑をもたらした最低照射量として求めた。MEDの決定後、背面のMED試験領域の上に3つの試験領域の枠取りをした。対照標準調製物(平均SPFが16.3)を1つの領域に塗布し、1つの領域はMEDの再決定のために未処理とし、試験製品用の試験調製物塗布とした。曝露期間は個別のMED>に基づき決定した。期待されるSPFが15を超える製品については、曝露はMEDuの0.76x、0.87x、1.00x、1.15x、および1.32xとした(ここでxは、製品の期待されるSPFである)。試験した副部位および対照である副部位の紅斑の程度は、曝露後20±4時間(16~24時間)に評価し、「保護」した皮膚のMEDを決定した。次に個別のSPFおよび平均SPFを計算した。静的SPFの決定に続き、試験品の耐水性を決定した。静的試験と同様に、背面のそのままの試験部位に試験品を塗布した。各副部位を入浴用チューブ(spa tube)に20分間隔で2回浸漬し、浸漬の間に15分の乾燥時間を設け、合計40分の水浸漬とした。次に対象をUVに暴露した。試験した副部位の紅斑の程度は、曝露後20±4時間(16~24時間)に評価し、「保護して水に浸漬した」皮膚のMEDを決定した。次に浸漬後の個別のSPFおよび平均SPFを計算した。標準調製物の静的SPF値は16.33(標示SPF=15)であった。使用した方法の詳細については上記実施例に示した。
【0115】
第二の日焼け止め処方の平均静的SPFの結果(N=10)は、平均SPF値が53に達した。計算した表示SPF=50だった。
【0116】
第二の日焼け止め処方の平均40分浸漬SPF(SPFwi)の結果(N=10)は、平均SPF値が46.09になり、計算した表示SPF=43だった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】