(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】疾患及び障害を治療するためのカベオリン-1スキャフォールドドメインペプチドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20230721BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230721BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230721BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230721BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20230721BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230721BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230721BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230721BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230721BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230721BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230721BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230721BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20230721BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K48/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P43/00
A61P9/10
A61P35/00
A61P19/02
A61P27/12
A61P19/10
A61P25/28
A61P25/00
A61P9/12
A61P11/00
A61P11/06
A61P7/02
A61P3/10
A61P31/04
C07K14/435 ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580873
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021039546
(87)【国際公開番号】W WO2022006064
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519342839
【氏名又は名称】エムユーエスシー ファウンデーション フォー リサーチ ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ダンダパニー カッパスワミー
(72)【発明者】
【氏名】エレナ トゥールキナ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084CA18
4C084DC32
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA42
4C084ZA45
4C084ZA54
4C084ZA59
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZA97
4C084ZB26
4C084ZC20
4C084ZC35
4C084ZC52
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
線維症を含む疾患又は障害、微小血管漏出を含む疾患又は障害、腎疾患、心疾患、及び老化に関連する疾患又は障害を治療するための、CSDドメインペプチド及び使用方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における微小血管漏出又はそれに関連する疾患若しくは障害、腎疾患、心疾患、又は老化に関連する疾患若しくは障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に、CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントを、あるいはCSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントをコードする核酸分子を含む組成物の有効量を投与することを含み、ここで、CSDドメインペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項2】
前記疾患又は障害が、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、アルツハイマー病及び関連する神経変性疾患、並びに高血圧からなる群から選択される老化に関連する疾患又は障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腎疾患が、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記心疾患が、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微小血管漏出に関連する疾患又は障害が、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象における疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に、CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントを、あるいはCSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントをコードする核酸分子を含む組成物の有効量を投与することを含み、ここで、CSDドメインペプチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項7】
前記疾患又は障害が、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、アルツハイマー病及び関連する神経変性疾患、及び高血圧からなる群から選択される老化に関連する疾患又は障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患又は障害が、線維症又は線維症関連疾患若しくは障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患又は障害が、微小血管漏出又は微小血管漏出に関連する疾患若しくは障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患又は障害が、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患又は障害が腎疾患である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記腎疾患が、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患又は障害が心疾患である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記心疾患が、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列含む修飾CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアント。
【請求項16】
請求項15に記載の修飾CSDドメインペプチドを含む組成物。
【請求項17】
医薬的に許容し得る担体をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
対象の疾患又は障害を治療又は予防する、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記疾患又は障害が、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、腎疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、AD及び関連する神経変性疾患、糖尿病の合併症、及び高血圧からなる群から選択される老化に関連する疾患又は障害である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記疾患又は障害が、線維症又は線維症関連疾患若しくは障害である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記疾患又は障害が、微小血管漏出又は微小血管漏出に関連する疾患若しくは障害である、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記疾患又は障害が、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記疾患又は障害が腎疾患である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
前記腎疾患が、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記疾患又は障害が心疾患である、請求項18に記載の組成物。
【請求項26】
前記心疾患が、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、鼻腔内、口腔咽頭内、及び腹腔内からなる群から選択される送達経路による投与のために製剤化される、請求項16に記載の組成物。
【請求項28】
微小血管漏出又はそれに関連する疾患若しくは障害、腎疾患、心疾患、又は老化に関連する疾患若しくは障害を治療又は予防するための組成物であって、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントを含む、組成物。
【請求項29】
前記疾患又は障害が、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、腎疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、AD及び関連する神経変性疾患、糖尿病の合併症、及び高血圧からなる群から選択される老化に関連する疾患又は障害である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記腎疾患が、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記心疾患が、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記微小血管漏出に関連する疾患又は障害が、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、鼻腔内、口腔咽頭内、及び腹腔内からなる群から選択される送達経路による投与のために製剤化される、請求項28に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月30日に出願された米国仮出願第63/046,106号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が支援する研究開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたR01AR062078、及び国防総省によって授与されたW81XWH-11-1-0508の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
カベオリン-1(Cav-1)は、平滑筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、上皮細胞、及び内皮細胞(EC)のカベオラ細胞小器官の主要な構造成分である。カベオリン-1は、いくつかのシグナル伝達カスケードにおけるキナーゼに結合し、それによってキナーゼ機能を阻害するか、又はキナーゼの代謝回転を促進するマスター調節タンパク質である(Tourkina et al., 2005, J Biol Chem, 280:13879-13887; Couet et al., 1997, J Biol Chem, 272:6525-6533; Le Saux et al., 2008, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 295:L1007-L1017; Oka et al., 1997, J Biol Chem, 272:33416-33421; Razani et al., 2001, J Biol Chem, 276:6727-6738; Rybin et al., 1999, Circ Res, 84:980-988; Wang et al, 2008, Am J Respir Crit Care Med, 178:583-591)。カベオリン-1は、SSc患者及び動物モデルの線維芽細胞及び単球を含むいくつかの細胞型で過小発現されている(Tourkina et al., 2005, J Biol Chem, 280:13879-13887; Lee et al., 2014, Front Pharmacol, 5:140; Lee et al., 2014, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 306:L736-L748; Del Galdo et al., 2008, Arthritis Rheum, 58:2854-2865; Kasper et al., 1998, Histochem Cell Biol, 109:41-48; Tourkina et al., 2010, Ann Rheum Dis, 69:1220-1226)。この欠乏は、線維芽細胞によるColIの過剰発現、いくつかのケモカインへの単球の過剰移動、及び単球のCD45+/ColI+/α-平滑筋アクチン+(ASMA+)線維芽細胞への分化の促進につながる(Tourkina et al., 2011, Fibrogenesis Tissue Repair, 4:15; Tourkina et al., 2005, J Biol Chem, 280:13879-13887; Reese et al., 2014, Front Pharmacol, 16:141; Lee et al., 2014, Front Pharmacol, 5:140; Tourkina et al., 2010, Ann Rheum Dis, 69:1220-1226)。細胞及び動物におけるカベオリン-1欠乏の影響は、カベオリン-1スキャフォールドドメインペプチド(CSD、カベオリン-1のアミノ酸82~101)を使用して元に戻すことができる(Tourkina et al., 2008, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 294:L843-L861; Wang et al., 2006, J Exp Med, 203:2895-2906)。CSDは細胞に侵入し(Tahir et al., 2009, Cancer Biol Ther, 8:2286-2296; Tahir et al., 2008, Cancer Res, 68:731-739)、全長カベオリン-1と同様にキナーゼを阻害することにより、全長カベオリン-1の代理として機能することができる(Bucci et al., 2000, Nat Med, 6:1362-1367; Bernatchez et al., 2005, Proc Natl Acad Sci USA, 102:761-766)。低カベオリン-1の線維化促進効果とインビトロでのCSDによるそれらの逆転に加えて、低カベオリン-1はインビボで線維化促進性である。カベオリン-1KOマウスでは、肺、皮膚、及び心臓の線維症が観察される(DelGaldo et al., 2008, Arthritis Rheum, 58:2854-65; Cohen et al., 2003, Amer Jour of Cell Phys, 284:C457-74; Drab et al., 2001, Science, 293:2449-52; Razani et al., 2001, J Biol Chem, 276:38121-38)。CSDはまた、インビボで肺、皮膚、及び心臓の線維症も阻害する(Tourkina et al., 2011, Fibrogenesis Tissue Repair, 4:15; Reese et al, 2014, Frontiers in Pharma, 5: epub; Tourkina et al., 2008, Amer Journal of Lung Cell Mol Phys, 294:L843-61; Pleasant-Jenkins et al, 2017, Lab Invest, 97:370-382)。対照的に、内皮細胞(これは高レベルでカベオリン-1を発現する)では、場合によっては、CSDがカベオリン-1の機能に対する競合物として作用することから、CSDの有益な効果が生じる可能性がある(Chidlow et al., 2009, Gastroenterology, 136(2):575-84 e2; Tahir et al., 2009, Cancer biology & therapy, 8(23):2286-96)。
【0004】
線維症、微小血管漏出を含む疾患及び障害、並びに老化及び老化に関連する疾患及び障害を治療又は予防するための組成物及び方法が当技術分野において依然として必要とされている。本発明は、この満たされていない必要性を満たす。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
1つの実施態様において、本発明は、対象における微小血管漏出又はそれに関連する疾患若しくは障害、腎疾患、心疾患、又は老化に関連する疾患若しくは障害を治療又は予防する方法に関し、この方法は、それを必要とする対象に、CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントを、又はCSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントをコードする核酸分子を含む組成物の有効量を投与することを含み、ここで、CSDドメインペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0006】
1つの実施態様において、疾患又は障害は老化に関連する疾患又は障害である。1つの実施態様において、疾患又は障害は、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、アルツハイマー病及び関連する神経変性疾患、又は高血圧である。
【0007】
1つの実施態様において、疾患又は障害は腎疾患である。1つの実施態様において、腎疾患は、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である。
【0008】
1つの実施態様において、疾患又は障害は心疾患である。1つの実施態様において、心疾患は、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である。
【0009】
1つの実施態様において、疾患又は障害は微小血管漏出に関連する。1つの実施態様において、疾患又は障害は、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)疾患である。
【0010】
1つの実施態様において、本発明は、対象の疾患又は障害を治療又は予防する方法に関し、この方法は、それを必要とする対象に、CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアント、又はCSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントをコードする核酸分子を含む有効量の組成物の有効量を投与することを含み、ここで、CSDドメインペプチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
1つの実施態様において、疾患又は障害は、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、アルツハイマー病及び関連する神経変性疾患及び高血圧からなる群から選択される老化に関連する疾患又は障害である。
【0012】
1つの実施態様において、疾患又は障害は、線維症、又は線維症関連疾患若しくは障害である。
【0013】
1つの実施態様において、疾患又は障害は、微小血管漏出、又は微小血管漏出に関連する疾患若しくは障害である。1つの実施態様において、疾患又は障害は、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)疾患である。
【0014】
1つの実施態様において、疾患又は障害は腎疾患である。1つの実施態様において、腎疾患は、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である。
【0015】
1つの実施態様において、疾患又は障害は心疾患である。1つの実施態様において、心疾患は、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である。
【0016】
1つの実施態様において、本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む修飾CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントに関する。
【0017】
1つの実施態様において、本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む修飾CSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントを含む組成物に関する。1つの実施態様において、組成物はさらに、医薬的に許容し得る担体を含む。
【0018】
1つの実施態様において、組成物は対象の疾患又は障害を治療又は予防する。1つの実施態様において、疾患又は障害は、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、アルツハイマー病及び関連する神経変性疾患、及び高血圧からなる群から選択される老化に関連する疾患又は障害である。1つの実施態様において、疾患又は障害は、線維症又は線維症関連疾患若しくは障害である。1つの実施態様において、疾患又は障害は、微小血管漏出又は微小血管漏出に関連する疾患若しくは障害である。1つの実施態様において、疾患又は障害は、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。1つの実施態様において、疾患又は障害は腎疾患である。1つの実施態様において、腎疾患は、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、腫瘍増殖及び転移、又は高血圧である。1つの実施態様において、疾患又は障害は心疾患である。1つの実施態様において、心疾患は、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である。
【0019】
1つの実施態様において、組成物は、鼻腔内、口腔咽頭内、及び腹腔内からなる群から選択される送達経路による投与のために製剤化される。
【0020】
1つの実施態様において、本発明は、微小血管漏出又はそれに関連する疾患若しくは障害、腎疾患、心疾患、又は老化に関連する疾患若しくは障害を治療又は予防するための組成物に関し、この組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCSDドメインペプチド、又はそのフラグメント若しくはバリアントを含む。
【0021】
1つの実施態様において、疾患又は障害は老化に関連する疾患又は障害である。1つの実施態様において、疾患又は障害は、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、腎疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、AD及び関連する神経変性疾患、糖尿病の合併症、又は高血圧である。
【0022】
1つの実施態様において、疾患又は障害は腎疾患である。1つの実施態様において、腎疾患は、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、又は高血圧である。
【0023】
1つの実施態様において、疾患又は障害は心疾患である。1つの実施態様において、心疾患は、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、又は高血圧である。
【0024】
1つの実施態様において、疾患又は障害は、微小血管漏出に関連する疾患又は障害である。1つの実施態様において、微小血管漏出に関連する疾患又は障害は、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。
【0025】
1つの実施態様において、組成物は、鼻腔内、口腔咽頭内、及び腹腔内からなる群から選択される送達経路による投与のために製剤化される。
【0026】
図面の簡単な説明
本発明の例示的な実施態様の以下の説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施態様の正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、うっ血性心不全(CHF)モデルにおいて、全長CSD、82-89、88-95、及び94-101(それぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4)を使用した実験の概要を提供する。
【
図2】
図2は、CSDが、CHFモデルにおいて、HW/BW比、左心室(LV)重量、及び後壁厚(pWTh-d)に対するAngIIの作用を抑制することを証明する例示的な実験データを示す。
【
図3】
図3は、CSDが、CHFモデルにおいて、駆出率(EF)、短縮率(FS)、及び等容弛緩時間(IVRT)に対するAngIIの作用を抑制することを証明する例示的な実験データを示す。
【
図4】
図4は、CSDサブドメインが、ColI沈着及びHSP47レベルの上昇に関して測定された場合、心臓におけるAngII誘発性線維症の作用を抑制することを証明する例示的な実験データを示す。
【
図5】
図5は、AngIIが、82-89と88-95の両方によってほぼ完全に抑制される(組織内のIgG重鎖レベルで測定される)心臓の微小血管漏出を誘発することを証明する例示的実験データを示す。
【
図6】
図6は、CHFモデルにおいてW82-89(配列番号6)を使用した実験の概要を提供する。
【
図7】
図7は、W82-89が、AngIIによって誘発される、心臓のHW/BW比、微小血管漏出、及びColIレベルの病理学的上昇を抑制することを証明する例示的な実験データを示す。
【
図9】
図9は、CSDが、心臓と腎臓の老化に関連する病理学的変化を抑制することを証明する実験の実験計画を示す。
【
図10】
図10は、CSDが、心臓の線維症及び微小血管漏出に対する老化の影響を逆転させることを証明する例示的な実験データを示す。
【
図11】
図11は、CSDが、腎臓の線維症及び微小血管漏出に対する老化の影響を逆転させることを示す例示的な実験データを示す。
【
図12】
図12は、CSD処理有り又は無い場合の、若いマウス又は老齢マウスの心臓及び腎臓組織切片のピクロシリウスレッド染色の代表的な例を示す例示的な実験データを示す。
【
図13】
図13は、CSDによる心臓及び腎臓における老化の影響の逆転を証明する例示的な実験データを示す。
【
図14】
図14は、CSDが、老化した心臓において短縮率(FS)及び駆出率(EF)、並びに等容弛緩時間(IVRT)に対して正の作用を有することを証明する例示的な実験データを示す。
【
図15】
図15は、老化マウスにおいて心筋細胞肥大が上昇し、この上昇がCSDによって逆転されたことを証明する例示的な実験データを示す。
【
図16】
図16は、CSD(配列番号1)を使用して、脳の老化に対するCSDの作用を調べる実験の概要を提供する。
【
図17】
図17は、18か月齢のマウスが、若いマウスよりもはるかに高レベルの微小血管漏出及び線維症を脳に有し、全身CSD処理が、これらのレベルを、ほぼ、健康な3か月齢のマウスで観察されるレベルまで低下させることを証明する例示的な実験データを示す。
【
図18】
図18は、18か月齢のマウスが、若いマウスよりもはるかに高レベルの活性化チロシンキナーゼを脳に有し、及び全身CSD処理が、これらのレベルを、ほぼ、健康な3か月齢のマウスで観察されるレベルまで低下させることを証明する例示的な実験データを示す。
【
図19】
図19は、非修飾CSDサブドメインによる肺及び皮膚線維症の抑制を証明する実験のための実験計画を示す。
【
図20】
図20は、CSD及び非修飾サブドメインによる肺線維症の抑制を証明する例示的な実験データを示す。(上)マッソントリクローム染色された肺組織切片は、ブレオマイシンによって引き起こされた大規模な線維症と、82-89によるその抑制を証明す。(下)アシュクロフト(Ashcroft)スコアが、試料の正体を知らされていない獣医病理学者によって決定された(1群あたりn=6)。ブレオ+治療対ブレオ+ビヒクルについて、
*p<0.05。
【
図21】
図21は、CSD及びCSDサブドメインペプチドによる皮膚線維症及び皮内脂肪の消失の抑制を証明するデータを示す。真皮の厚さと皮内脂肪の測定のために、ポンプ出口付近の皮膚を採取した。生理食塩水/ビヒクル対ブレオ/ビヒクルについて、
∧∧∧p<0.001。ブレオ/ビヒクル対ブレオ/ペプチド処理について、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図22】
図22は、CSD及び非修飾サブドメインによる単球遊走の抑制を証明するデータを示す。
【
図23】
図23は、CSDの修飾された水溶性バージョン(WCSD)による肺及び皮膚線維症の抑制を証明する実験のための実験計画を示す。
【
図24】
図24は、修飾された水溶性CSDによる肺及び皮膚線維症の抑制を証明する生存及び組織学的データを示す。下のパネルは、マッソントリクローム染色した組織切片である。
【
図25】
図25は、WCSDが、線維細胞、ECMタンパク質、筋線維芽細胞マーカー、及び微小血管漏出に対するその作用を通じて、ブレオマイシン誘発性肺線維症を抑制することを証明する例示的な実験データを示す。
【
図26】
図26は、WCSDによる腫瘍増殖の阻害を証明するデータを示す。
【
図27】
図27は、ニンテダニブ及びCSDの修飾された水溶性バージョンが、異なるキナーゼ阻害プロフィールを有することを証明するデータを示す。
【
図28】
図28は、CSDの修飾された水溶性バージョンが、それらの親の修飾されていない形態よりもキナーゼ阻害剤としてより活性であることを証明するデータを表す。
【
図29】
図29は、鼻腔内(i.n.)が、CSDの修飾された水溶性バージョンの有望な送達経路であることを証明するデータを示す。
【
図30】
図30は、初代マウス肺線維芽細胞培養による蛍光ペプチドの取り込みを証明するデータを示す。
【
図31】
図31は、異なる投与経路後のW82-89の血漿レベルを証明するデータを示す。
【
図32】
図32は、腹腔内投与後の血漿へのW82-89の取り込みが、CSD又はWCSDの取り込みよりもはるかに有効であることを証明するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本発明は、CSDドメインペプチドが、線維症及び微小血管漏出、並びにアンギオテンシンII(AngII)によって誘発されるうっ血性心不全(CHF)及び腎疾患の他の態様を抑制するのに有効であることを証明する実験に、部分的に基づいている。さらに、CSDドメインペプチドは、心臓、腎臓、脳における老化に関連する病理学的変化の治療に有効であった。従って、いくつかの実施態様において本発明は、本発明のCSDドメインペプチドを投与することを含む、対象における線維症、微小血管漏出及びそれに伴う疾患及び障害、並びに老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、並びに腎疾患を治療する方法に関する。
【0029】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、以下の各用語は、このセクションで関連付けられた意味を有する。
【0031】
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つ又はそれ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として「エレメント」は、1つのエレメント又は2つ以上のエレメントを意味する。
【0032】
量、時間的持続などの測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用される「約」は、特定された値から±20%、±10%、±5%、±1%、±0.1%、±0.1%未満の変動、又はそれらの間の任意のパーセントを包含することを意味し、そのような変動は開示された方法を実行するのに適切であるためである。
【0033】
「異常な」という用語は、生物、組織、細胞、又はそれらの成分の文脈で使用される場合、「正常な」(予想される)それぞれの特性を示す生物、組織、細胞、又はそれらの成分からは、少なくとも1つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば、年齢、治療、時刻)が異なる生物、組織、細胞、又はそれらの成分を指す。ある細胞又は組織のタイプでは正常又は予想される特性が、別の細胞又は組織のタイプでは異常である場合がある。
【0034】
「と組み合わせて」という用語は、本明細書において、指示された治療が同時に施されるか、又は最初の治療が1つ又はそれ以上の追加の治療と連続して施されることを意味するために使用される。
【0035】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持できず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。
【0036】
対照的に、動物の「障害」は、動物が恒常性を維持できる健康状態であるが、動物の健康状態は、障害がない場合よりも好ましくはない。病気を治療せずに放置しても、必ずしも動物の健康状態がさらに悪化するわけではない。
【0037】
疾患又は障害の症状の重症度、患者がそのような症状を経験する頻度、又はその両方が低下する場合、疾患又は障害は「軽減」されている。
【0038】
化合物の「有効量」又は「治療有効量」は、その化合物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な化合物の量である。送達ビヒクルの「有効量」は、化合物を効果的に結合するか又は化合物を送達するのに十分な量である。
【0039】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、互いに作動可能に連結された2つ又はそれ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を指す。
【0040】
本明細書で使用される「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」又は文法上の同等物は、互いに共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。「核酸」という用語は、一本鎖、二本鎖、又は複数鎖のDNA、RNA、及びそれらの類似体(誘導体)を含む。オリゴヌクレオチドは、典型的には、長さ約5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50、又はそれ以上のヌクレオチドから、長さ約100ヌクレオチドまでである。核酸及びポリヌクレオチドは、より長い長さ、例えば200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000などを含む任意の長さのポリマーである。特定の実施態様において、本明細書の核酸はホスホジエステル結合を含む。他の実施態様において、例えばホスホルアミデート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又はO-メチルホスホロアミダイト結合を含むペプチド骨格(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Pressを参照)、及びペプチド核酸の骨格と結合を含む代替骨格を有し得る核酸類似体が含まれる。他類似体核酸には、正の、非イオン性骨格、及び非リボース骨格を持つもの、例えば米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号、並びにChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Sanghui & Cook, eds、Sanghui&Cook編に記載されているものが含まれる、1つ又はそれ以上の炭素環式糖を含む核酸もまた、核酸の1つの定義に含まれる。リボース一リン酸骨格の修飾は、さまざまな理由で、例えば、生理学的環境におけるそのような分子、又はバイオチップ上のプローブとしての安定性と半減期を上昇させるために、行うことができる。天然の核酸と類似体の混合物を作ることができ、あるいは、異なる核酸類似体の混合物、並びに天然に存在する核酸と類似体の混合物を作製することができる。
【0041】
ヌクレオチド配列は、別のヌクレオチド配列と機能的な関係にある場合、「作動可能に連結されている」。例えばプロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を与えるなら、コード配列に作動可能に連結されている。又はリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されているなら、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている」とは、連結されているDNA配列が互いに近くにあり、分泌リーダーの場合、連続して読み取り段階にあることを意味する。ただし、エンハンサーは連続している必要はない。結合は、便利な制限部位での結合によって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来法に従って使用される。
【0042】
2つ又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一の」又はパーセント「同一性」という用語は、以下に説明するデフォルトパラメーターを用いてBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用するか、用手法のアラインメントと目視検査によって測定した場合(例えば、NCBIウェブサイトなどを参照)、同一であるか又は特定のパーセント同一である(すなわち、比較ウィンドウ又は指定された領域で最大の一致を得るために比較及び整列された場合、特定の配列について約60%の同一性、好ましくは61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%,75%,76%,77%,78%,79%,80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性)アミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2つ又はそれ以上の配列又は部分配列を指す。このような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補体を指すか、又はそれに適用することができる。この定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮することができる。好ましくは、同一性は、長さが少なくとも約10アミノ酸又は20ヌクレオチドである領域にわたって、又はより好ましくは長さが10~50アミノ酸又は20~50ヌクレオチドである領域にわたって存在する。本明細書で使用される場合、パーセント(%)アミノ酸配列同一性は、配列を整列させ、最大パーセント配列同一性を達成するために必要に応じてギャップを導入した後に、参照配列内のアミノ酸と同一である候補配列中のアミノ酸のパーセントとして定義される。パーセント配列同一性を決定するためのアラインメントは、当業者の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含むアラインメントを測定するための適切なパラメーターは、公知の方法によって決定することができる。
【0043】
配列比較では、通常1つの配列が参照配列として機能し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列をコンピューターに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。好ましくは、デフォルトのプログラムパラメーターを使用するか、代替パラメーターを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0044】
特に他に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いに縮重したバージョンであり同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。
【0045】
20個のアミノ酸が、タンパク質に一般的に見られる。これらのアミノ酸は、その側鎖の化学的性質に基づいて9つのクラス又はグループに分類することができる。同じクラス又はグループ内での、あるアミノ酸残基から別のアミノ酸残基への置換は、本明細書において「保存的」置換と呼ばれる。保存的アミノ酸置換は、タンパク質のコンフォメーションや機能を大幅に変更することなく、タンパク質に頻繁に行うことができる。あるアミノ酸残基を異なるクラス又はグループの別のアミノ酸に置換することは、本明細書において「非保存的」置換と呼ばれる。対照的に、非保存的アミノ酸置換は、タンパク質のコンフォメーションと機能を変更する傾向がある。
【0046】
いくつかの実施態様において、保存的アミノ酸置換は以下の置換を含む:グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びロイシン(L)のいずれかによる、これらの脂肪族アミノ酸のいずれかの置換;セリン(S)によるスレオニン(T)の置換、その逆も同様である;アスパラギン酸(D)によるグルタミン酸(E)の置換、その逆も同様である;グルタミン(Q)によるアスパラギン(N)の置換、その逆も同様である;リジン(K)によるアルギニン(R)の置換、その逆も同様である;フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)による、これらの芳香族アミノ酸の任意の他のものの置換;及びメチオニン(M)によるシステイン(C)の置換、逆もまた同様である。タンパク質の三次元構造における特定のアミノ酸の環境及びその役割に応じて、他の置換も保存的と見なすことができる。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)はしばしば交換可能であり、アラニン(A)とバリン(V)も交換可能である。比較的疎水性のメチオニン(M)は、頻繁にロイシンやイソロイシン、時にはバリンと交換することができる。リジン(K)とアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であり、これら2つのアミノ酸残基のpKの差が重要ではない位置で交換可能であることがよくある。さらに特定の環境では、他の変更を「保守的」と見なすことができる(例えば、BIOCHEMISTRY at pp. 13-15, 2nd ed. Lubert Stryer ed. (Stanford University); Henikoff et al, Proc. Nat'l Acad. Set USA (1992) 89: 10915-10919; Lei et al., J. Biol. Chem. (1995) 270(20): 1 1882-1 1886を参照)。
【0047】
いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)のいずれかによる、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、セリン(S)及びトレオニン(T)のいずれかによる、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)のいずれかによる、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、グルタミン(Q)及びアスパラギン(N)のいずれかによる、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、リジン(K)及びアルギニン(R)のいずれかによる、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)のいずれかによる、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、メチオニン(M)、システイン(C)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、メチオニン(M)及びシステイン(C)のいずれかによる、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、ヒスチジン(H)による、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びプロリン(P)のいずれかの置換を含む。いくつかの実施態様において、非保存的アミノ酸置換は、プロリン(P)による、グリシン(G)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、リジン(K)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びヒスチジン(H)のいずれかの置換を含む。.
【0048】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用され、長さ又は翻訳後修飾に関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味する。以下に示すように、本明細書に記載のポリペプチドは、例えば、野生型タンパク質、野生型タンパク質の生物学的に活性なフラグメント、又は野生型タンパク質若しくはフラグメントのバリアントであり得る。バリアントは、本開示に従って、アミノ酸の置換、欠失、又は挿入を含むことができる。置換は、保存的でも非保存的でもよい。いくつかの実施態様において、保存的置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン、及びロイシン;アスパラギン酸、及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン、及びスレオニン;リジン、ヒスチジン、及びアルギニン;並びにフェニルアラニン及びチロシン。
【0049】
発現後、タンパク質(例えば、CSDドメインペプチド)を単離することができる。本明細書に記載の任意のタンパク質(例えば、本明細書に記載の結合体、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント)に適用される「精製された」又は「単離された」という用語は、例えば、天然には、タンパク質を発現する原核生物における、例えば他のタンパク質、脂質、及び核酸に伴う成分(例えば、タンパク質、又は他の天然に存在する生物学的若しくは有機分子)から、分離又は精製されているポリペプチドを指す。典型的にはポリペプチドは、試料中の総タンパク質の少なくとも60重量%(例えば、少なくとも65、70、75、80、85、90、92、95、97、又は99重量%)を構成する場合に精製される。
【0050】
「標識物」又は「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、磁気共鳴画像的、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な検出可能な部分には、32P、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、常磁性分子、常磁性ナノ粒子、超小型超常磁性酸化鉄(「USPIO」)ナノ粒子、USPIOナノ粒子凝集体、超常磁性酸化鉄(「SPIO」)ナノ粒子、SPIOナノ粒子凝集体、標準超常磁性酸化鉄(「SSPIO」)、SSPIOナノ粒子凝集体、多分散超常磁性酸化鉄(「PSPIO」)、PSPIOナノ粒子凝集体、単結晶SPIO、単結晶SPIO凝集体、単結晶酸化鉄ナノ粒子、単結晶酸化鉄、他のナノ粒子造影剤、ガドリニウムキレート(「Gdキレート」)分子を含むリポソーム又は他の送達ビヒクル、ガドリニウム、放射性同位体、放射性核種(例えば、炭素-11、窒素-13、酸素-15、フッ素-18、ルビジウム-82)、フルオロデオキシグルコース(例えば、フッ素-18標識)、任意のガンマ線放出核種、陽電子放出放出核種、放射性標識グルコース、放射性標識水、放射性標識アンモニア、バイオコロイド、マイクロバブル(例えばアルブミン、ガラクトース、脂質、及び/又はポリマーを含むマイクロバブルシェル;空気、重ガス、パーフルオロカーボン、窒素、オクタフルオロプロパン、パーフレキサン脂質ミクロスフェア、パーフルトレンなどを含むマイクロバブルガスコア)、ヨウ素化造影剤(例えばイオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソール、イオパミドール、イオキシラン、イオプロミド、ジアトリゾエート、メトリゾエート、イオキサグレート)、硫酸バリウム、二酸化トリウム、金、金ナノ粒子、金ナノ粒子凝集体、蛍光発色団、2光子蛍光発色団、又はハプテン及びタンパク質、又は(例えば、放射性標識物を、標的ペプチドと特異的に反応するペプチド又は抗体に取り込むことによって)検出可能にすることができるその他の物質が含まれる。検出可能な部分には、ナノ粒子、粒子、凝集体に封入され、追加の組成物でコーティングされ、標的物質(例えば、抗体又は抗原結合フラグメント)に結合するように誘導体化された上記組成物のいずれも含まれる。抗体を標識物に結合するための当技術分野で公知の任意の方法を使用することができ、例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc., San Diegoに記載の方法を使用することができる。
【0051】
本明細書で使用される「医薬的に許容し得る」という用語は、「生理学的に許容し得る」及び「薬理学的に許容し得る」と同義で使用される。医薬組成物は、一般に、緩衝剤及び貯蔵保存のための薬剤を含み、投与経路に応じて、適切な送達のための緩衝剤及び担体を含むことができる。「診断上許容し得る」という用語は、「生理学的に許容し得る」及び「薬理学的に許容し得る」と同義で使用され、診断用組成物を指す。
【0052】
「医薬的に許容し得る賦形剤」及び「医薬的に許容し得る担体」は、対象への活性物質の投与及び対象による吸収を補助し、患者に重大な有害な毒物学的影響を引き起こすことなく、本発明の組成物に含めることができる物質を指す。医薬的に許容し得る賦形剤の非限定的な例には、水、NaCl、通常の生理食塩水、乳酸リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味剤、香味剤、塩溶液(リンゲル液など)、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミロース又はデンプン)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、及び色素などが含まれる。そのような調製物は滅菌し、必要に応じて、滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色剤、及び/又は本発明の化合物と有害な反応を起こさない芳香物質などの補助剤と混合することができる。当業者は、他の医薬的賦形剤が本発明において有用であることを認識するであろう。
【0053】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書において交換可能に使用され、インビトロ又はインサイチューであっても、本明細書に記載の方法に適した任意の動物又はその細胞を指す。特定の非限定的な実施態様において、患者、対象、又は個体はヒトである。
【0054】
「治療」、「治療する」、又は「治療している」は、疾患又は状態の影響を軽減する方法を意味する。治療とは、症状だけでなく、病気や状態自体を軽減する方法を指す場合もある。治療は、本来のレベルからの任意の減少であり得、特に限定されるものではないが、疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の完全な除去であり得る。従って、開示された方法において、「治療」は、確立された疾患の重症度又は疾患の進行の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の低下を指すことができる。例えば、疾患又は障害の影響を軽減するための開示された方法は、疾患を有する対象において、その疾患の1つ又はそれ以上の症状が、同じ対象又は対照対象における本来のレベルと比較して10%減少する場合、治療であるとみなされる。従って、低下は、天然又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の低下であり得る。「治療」は、必ずしも疾患又は状態の治癒を意味するわけではないが、疾患又は状態の見通しの改善を意味することが理解され、本明細書において企図される。
【0055】
本明細書で使用される「治療する」及び「予防する」という用語は、発症の遅延、症状の頻度又は重症度の軽減、症状の改善、患者の快適性又は機能(例えば関節機能)の改善、病状の重症度の軽減などを指す。治療の効果は、所定の治療を受けていない個人又は個人の集団と、又は治療前又は治療中止後の同じ患者と比較することができる。「予防する」という用語は一般に、患者における所定の疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性自己免疫疾患、癌、感染症、免疫疾患、又は他の疾患)又は疾患症状の発生の減少を指す。上記のように、予防は完全(検出可能な症状がない)又は部分的でもよく、従って、治療なしで発生し得る場合よりも、観察される症状は少なくなるであろう.
【0056】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる組成物である。当技術分野で多数のベクターが知られており、特に限定されるものではないが、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが含まれる。すなわち用語「ベクター」には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。この用語はまた、例えば、ポリリシン化合物、リポソームなどの、細胞への核酸の移動を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、特に限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが含まれる。
【0057】
範囲:この開示を通じて、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式での説明は、便宜上及び簡潔にするためだけのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能な部分範囲を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などを、具体的に開示していると見なすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0058】
説明
内皮細胞は、多くの疾患及び障害に直接関与しており、特に限定されるものではないが、微小血管漏出、末梢血管疾患、脳卒中、心疾患、糖尿病、インスリン抵抗性、慢性腎不全、腫瘍増殖と転移、静脈血栓症、喘息、糖尿病の網膜症及びその他の合併症、ARDS(例えば、ウイルス感染又は肺損傷によって誘発される)、敗血症、及び重度のウイルス感染症を含む。さらに、内皮機能障害は、アルツハイマー病(AD)を含む疾患及び障害が含まれる。
【0059】
本発明は、部分的には、CSDドメインペプチドの投与が、微小血管漏出を阻害し、AngII及びブレオマイシン及び老化の病理学的効果を抑制することができたという発見に基づいている。
【0060】
従って、本発明の組成物は、線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、並びに腎疾患を治療するために使用することができる。
【0061】
様々な実施態様において、本発明の組成物及び方法は、線維性疾患又は障害を治療するために使用することができる。線維症は、特に限定されるものではないが、肺、肝臓、心臓、腎臓、脳、関節、皮膚、骨髄などを含む体内の多くの組織で発生する可能性がある。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して治療できる線維性疾患及び障害の非限定的な例には、特に限定されるものではないが、間質性肺疾患、特発性肺線維症、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、レイノー現象、肺線維症、肝硬変、心房線維症、心内膜線維症、関節線維症、クローン病、縦隔線維症、骨髄線維症、尿細管間質線維症、肝線維症、前黄斑線維症、網膜線維症、皮膚線維症、創傷関連線維症、ペイロニー病、腎性全身性線維症、進行性腫瘤線維症、後腹膜線維症、線維腫、強皮症、及び特に放射線療法による放射線誘発性線維症が含まれる。
【0062】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して治療することができる老化関連疾患及び障害の非限定的な例には、特に限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、腎疾患、微小血管漏出、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、AD及び関連する神経変性疾患、糖尿病の合併症、及び高血圧が含まれる。
【0063】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して治療することができる微小血管漏出を伴う疾患及び障害の非限定的な例には、特に限定されるものではないが、うっ血性心不全、強皮症及び間質性肺疾患全般、喘息、腎不全、アルツハイマー病及び血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が含まれる。
【0064】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して治療することができる心臓及び腎臓の疾患及び障害の非限定的な例には、特に限定されるものではないが、心肥大、アテローム性動脈硬化、心筋症、脳卒中、腎炎症性損傷、腎機能障害、慢性腎不全、及び高血圧が含まれる。
【0065】
本明細書で使用される治療という用語は、修復、交換、増強、改善、発生又は再発の防止、救出、再増殖、又は再生を含むことを当業者は理解している。
【0066】
カベオリン-1スキャフォールドドメインペプチド(CSD)
1つの実施態様において、この方法は、疾患又は障害の治療のために、それを必要とする対象にCSDドメインペプチドを投与することを含む。
【0067】
カベオリン-1は、カベオラの主要なコートタンパク質である。カベオラは、元々、原形質膜のフラスコ型の陥入として電子顕微鏡画像で観察された。コレステロールとスフィンゴ脂質が豊富なこれらのオルガネラは、エンドサイトーシス、小胞輸送、及び特定のシグナル伝達カスケードの区画化で機能する。カベオラコートタンパク質のカベオリンファミリーには3つのメンバーが含まれ、このうちカベオリン-1及びカベオリン2は、脂肪細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞で豊富に発現される。カベオリンは、MAPキナーゼファミリーのメンバー、PKCのアイソフォーム、Akt、Gタンパク質、Srcファミリーキナーゼ、及び増殖因子受容体を含むシグナル伝達分子のスキャフォールドとして機能する。カベオリン-1がさまざまなキナーゼに結合し、こうしてそれらの活性を阻害する能力は、カベオリン-1スキャフォールドドメイン(CSD、カベオリン-1のアミノ酸82~101;DGIWKASFTTFTVTKYWFYR(配列番号1)として知られている配列にマッピングされている。
【0068】
1つの実施態様において、CSDドメインペプチドのサブドメインは、CSDドメインペプチドの少なくとも6つの連続するアミノ酸残基を含む。1つの実施態様において、サブドメインは、アミノ酸配列DGIWKASF(配列番号2)、SFTTFTVT(配列番号3)、又はVTKYWFYR(配列番号4)を含む。
【0069】
1つの実施態様において、CSDドメインペプチドは、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基をさらに含む。様々な実施態様において、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基はペプチドを修飾して、1)ペプチドの水溶性を上昇させるか、2)エキソプロテアーゼによるタンパク質分解からペプチドを保護するか、3)本来は通過しない原形質膜を通過してペプチドを運搬するか、又はこれらの任意の組み合わせを行う
【0070】
1つの実施態様において、CSDドメインペプチドは、このペプチドのC末端又はN末端に、少なくとも1、2、3、4、5、又は5を超えるD-リジン残基をさらに含む。1つの実施態様において、CSDドメインペプチドは、このペプチドのC末端及びN末端のそれぞれに、少なくとも1、2、3、4、5、又は5を超えるD-リジン残基をさらに含む。1つの実施態様において、CSDドメインペプチドは、C末端に2つのD-リジン残基及びN末端に2つのD-リジン残基(k)をさらに含む。1つの実施態様において、サブドメインは、アミノ酸配列kkDGIWKASFTTFTVTKYWFYRkk(配列番号5)、kkDGIWKASFkk(配列番号6)、kkSFTTFTVTkk(配列番号7)、又はkkVTKYWFYRkk(配列番号8)を含む。
【0071】
1つの実施態様において、CSDドメインペプチドは、少なくとも1つのタンパク質修飾をさらに含む。1つの実施態様において、CSDドメインペプチドは、N末端アセチル化及びC末端アミドのうちの少なくとも1つを含む。
【0072】
開示された治療方法で使用できるCSD又はそのサブドメインの多くの変化があることが理解され、及び本明細書で企図される。本明細書で具体的に企図されるのは、CSD又はそのサブドメインに対して行われる、標的結合を阻害しないが、例えばタンパク質分解の回避においてペプチドを補助することができる修飾又は変異である。行うことができるCSD又はそのサブドメインの修飾及び変異には、米国特許出願第8,058,227B2号に詳細に記載されているものが含まれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
CSDドメインペプチド又はそのサブドメインは、細胞への侵入を助けるために修飾され得ることがさらに理解される。従って、本明細書において企図されるのは、細胞への侵入を助けることができるCSD又はそのサブドメインに対して行うことができる任意の既知の修飾である。また、経験的データに基づいて、細胞への侵入を助けるCSD又はそのサブドメインへの修飾もここで企図される。さらに、CSD又はそのサブドメインを含む融合ペプチドを含む組成物を対象に接触させることを含む、線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、並びに腎疾患を治療する方法が、本明細書において企図される。
【0074】
CSDドメインペプチドは、カベオリン-1結合ドメインへの結合を介して、線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、並びに腎疾患を治療することが理解され、本明細書において企図される。CSDの誘導体若しくは類似体、又はカベオリン-1標的に結合できる薬剤などのCSDの任意のバリアントもまた、線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、及び腎疾患の治療に有効であることがさらに理解される。そのような薬剤、CSD又はそのサブドメインの類似体又は誘導体の本体は、CSDの他のバージョンと比較して、インビボ及びインビトロでの疾患モデルに対するそれらの有益な作用によって決定することができる。
【0075】
本発明はまた、本明細書に開示されるアミノ酸配列と実質的な相同性を有するペプチドバリアントの任意の形態を含むと解釈されるべきである。1つの実施態様においてペプチドバリアントは、本明細書に開示されるアミノ酸配列と、少なくとも約50%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%相同である。
【0076】
本発明はまた、本明細書に開示されるアミノ酸配列の実質的な長さを有するフラグメントの任意の形態を含むと解釈されるべきである。1つの実施態様において、フラグメントは本明細書に開示されるアミノ酸配列の長さの、少なくとも約50%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。
【0077】
本発明はまた、本明細書に開示されるアミノ酸配列と実質的な相同性及び実質的な長さの両方を有する、ペプチドバリアントの任意の形態のフラグメントを含むと解釈されるべきである。1つの実施態様において、ペプチドバリアントのフラグメントは、本明細書に開示されるアミノ酸配列と、少なくとも約50%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%相同であり、及び本明細書に開示されるアミノ酸配列の長さの、少なくとも約50%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。
【0078】
あるいは、本ペプチドは、組換え手段によって又はより長いペプチドからの切断によって作製され得る。ペプチドは、アミノ酸分析又は配列決定によって確認することができる。
【0079】
本発明によるペプチドのバリアントは、(i)アミノ酸残基の1つ又はそれ以上が保存又は非保存アミノ酸残基(例えば、保存アミノ酸残基)で置換され、そのような置換されたアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされていてもされていなくてもよいもの、(ii)1つ又はそれ以上の修飾アミノ酸残基があるもの、例えば置換基の結合によって修飾されている残基があるもの、(iii)本明細書に記載のペプチド又はドメインのフラグメント、及び/又は(iv)別のペプチド、すなわち、例えばリーダー配列又は分泌配列、又は精製に使用される配列(例えば、Hisタグ)か、又は検出に使用される配列(例えば、Sv5エピトープタグ)などのペプチドと融合されているもの、であり得る。フラグメントには、ペプチド、又は元の配列のタンパク質分解切断(マルチサイトタンパク質分解を含む)を介して生成されたペプチドが含まれる。バリアントは、翻訳後修飾又は化学的修飾されている場合がある。そのようなバリアントは、本明細書の教示から当業者の範囲内にあると見なされる。
【0080】
当技術分野で知られているように、2つのペプチド間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸代替物を、第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。バリアントは、元の配列とは異なるペプチド配列を含み、例えば、目的のセグメントごとに残基の40%未満、目的のセグメントごとに残基の25%未満、目的のセグメントごとに残基の10%未満異なるか、又は元のペプチド配列と目的のセグメントごとにわずか数個の残基が異なり、同時に元の配列と十分に相同であって、元の配列の機能を保持するペプチド配列を含むと定義される。本発明は、元のアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%、又は95%類似であるか又は同一であるアミノ酸配列を含む。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズム及び方法を使用して決定することができる。2つのアミノ酸配列間の同一性は、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))を使用して決定することができる。
【0081】
本発明のペプチドは、翻訳後修飾されていてもいなくてもよい。例えば、本発明の範囲内にある翻訳後修飾には、シグナルペプチド切断、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、タンパク質分解、ミリストイル化、ペプチド折り畳み、及びタンパク質分解プロセシングなどが含まれる。いくつかの修飾又はプロセシング事象は、追加の生物学的機構の導入を必要とする.例えば、シグナルペプチド切断及びコアグリコシル化などのプロセシング事象は、イヌのミクロソーム膜又はアフリカツメガエルの卵抽出物(米国特許第6,103,489号)を標準的な翻訳反応に添加することによって調べることができる。本発明のポリペプチド又はペプチドは、Reedijk et al. (The EMBO Journal 11(4):1365, 1992)に記載の方法などの従来法を使用してリン酸化することができる。
【0082】
本発明のペプチドは、翻訳後修飾によって又は翻訳中に非天然アミノ酸を導入することによって形成される非天然のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドの翻訳中に非天然アミノ酸を導入するには、さまざまなアプローチが利用可能である。
【0083】
本発明のペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)などの他の分子と結合することができる。これは、化学的に反応性のあるPEG誘導体で修飾できるシステイン変異又は非天然アミノ酸を挿入することによって達成できる。1つの実施態様において、ペプチドを他のペプチドに結合させて、融合ペプチドが調製される。これは、例えばN末端又はC末端融合ペプチドの合成によって達成され得るが、但し、得られる融合ペプチドは本明細書に記載のペプチドの機能を保持しなければならない。
【0084】
本発明のペプチドの環状誘導体も本発明の一部である。環化は、ペプチドが他の分子との結合に適した立体構造をとることを可能にする。環化は、当技術分野で知られている技術を使用して達成することができる。例えば、遊離スルフヒドリル基を有する2つの適切に離間した成分間で、ジスルフィド結合が形成され得るか、又は1つの成分のアミノ基と別の成分のカルボキシル基との間で、アミド結合が形成され得る。環化はまた、Ulysse, L., et al., J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 8466-8467により記載されたように、アゾベンゼン含有アミノ酸を使用して達成することもできる。結合を形成する成分は、アミノ酸の側鎖、非アミノ酸成分、又はこれら2つの組み合わせでもよい。本発明のある実施態様において、環状ペプチドは、正しい位置にベータターンを含み得る。正しい位置にアミノ酸Pro-Glyを付加することにより、ベータターンを本発明のペプチドに導入することができる。
【0085】
上述のペプチド結合連結を含む環状ペプチドよりも柔軟な環状ペプチドを生成することが望ましい場合がある。ペプチドの左右の位置にシステインを導入し、2つのシステイン間にジスルフィド架橋を形成することにより、より柔軟なペプチドを調製することができる。2つのシステインは、ベータシート及びターンを変形させないように配置される。ペプチドは、ジスルフィド結合の長さとベータシート部分の水素結合の数が少なさの結果、より柔軟である。環状ペプチドの相対的な柔軟性は、分子動力学シミュレーションによって決定することができる。
【0086】
本発明はまた、標的タンパク質、又は得られたタンパク質を所望の細胞成分若しくは又は細胞型若しくは組織に向けることができる標的化ドメインに、融合されたか又は組み込まれた、本明細書に記載のペプチドに関する。キメラタンパク質又は融合タンパク質は、追加のアミノ酸配列又はドメインも含み得る。キメラタンパク質又は融合タンパク質は、さまざまな成分が異なる供給源に由来するという意味で組換え体であり、従って自然界では一緒には見られない(すなわち、異種である)。
【0087】
1つの実施態様において、標的化ドメインは、膜貫通ドメイン、膜結合ドメイン、又は例えば小胞又は細胞表面と結合するようにタンパク質を指令する配列であり得る。1つの実施態様において、標的化ドメインは、タンパク質を特定の細胞型又は組織に標的化することができる。例えば、標的化ドメインは、標的組織の細胞表面抗原に対する細胞表面リガンド又は抗体であり得る。標的化ドメインは、本発明のタンパク質を細胞成分に標的化することができる。
【0088】
本発明のタンパク質は、従来の技術によって合成することができる。例えばタンパク質をは、固相ペプチド合成を用いる化学合成によって合成することができる。これらの方法は、固相合成法又は液相合成法のいずれかを使用する(例えば、固相合成法については、J. M. Stewart, and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Ed., Pierce Chemical Co., Rockford Ill. (1984) and G. Barany and R. B. Merrifield, The Peptides: Analysis Synthesis, Biology editors E. Gross and J. Meienhofer Vol. 2 Academic Press, New York, 1980, pp. 3-254 for solid phase synthesis techniques; 及び古典的な溶液合成については、M Bodansky, Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Berlin 1984, and E. Gross and J. Meienhofer, Eds., The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, suprs, Vol 1を参照)。例として、本発明のポリペプチドは、N-フルオレニルメトキシ-カルボニル-O-ベンジル-L-ホスホスレオニン誘導体としてホスホスレオニンを直接取り込む9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相化学を用いて合成することができる。
【0089】
少なくとも1つの他の分子と結合した、本発明のペプチド又はタンパク質を含むN末端又はC末端融合タンパク質は、組換え技術によりペプチド又はタンパク質のN末端又はC末端を、所望の生物学的機能を有する選択されたタンパク質又は選択マーカーの配列と融合させることによって調製することができる。得られる融合タンパク質は、本明細書に記載の選択されたタンパク質又はマーカータンパク質に融合されたCSDドメインペプチドを含む。融合タンパク質を調製するために使用できるタンパク質の例には、免疫グロブリン及びその領域、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン(HA)、及び末端切断型mycが含まれる。
【0090】
本発明のペプチドは、生物学的発現系を使用して開発することができる。これらのシステムを使用すると、ランダム配列の大きなライブラリーを作成し、特定のペプチドに結合する配列についてこれらのライブラリーをスクリーニングすることができる。ライブラリーは、ランダムなペプチド配列をコードする合成DNAを適切な発現ベクターにクローニングすることによって産生することができる(Christian et al 1992, J. Mol. Biol. 227:711; Devlin et al, 1990 Science 249:404; Cwirla et al 1990, Proc. Natl. Acad, Sci. USA, 87:6378を参照)。ライブラリーはまた、重複ペプチドの同時合成によって構築することもできる(米国特許第4,708,871号を参照)。
【0091】
本発明のペプチドは、無機酸、例えば塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸などと、又は有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸と反応させることにより、医薬的塩に変換することができる。
【0092】
本発明はさらに、本発明のペプチド又はそのフラグメントが、異種ペプチド(すなわち、無関係のペプチド又はその一部、例えば、ポリペプチドの少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、又は少なくとも500個のアミノ酸)に、組換え的に融合又は化学的に結合(共有結合又は非共有結合の両方を含む)される融合ペプチドをさらに包含する。ペプチドを生成する。融合は必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介してもよい。
【0093】
1つの例では、本発明のペプチド又はそのフラグメントを、様々なタイプの免疫グロブリンに由来する配列に融合させることができる融合ペプチド。例えば本明細書に記載のように、本発明のポリペプチドをヒトIgG又はIgM分子の定常領域(例えば、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメイン)に融合させて、融合したペプチド又はそのフラグメントをインビボより可溶性で安定であるようにすることができる。別の実施態様において、このような融合ペプチドを対象に投与して、インビボでリガンドとその受容体との間の相互作用を阻害することができる。このような相互作用の阻害は、特定の細胞応答を引き起こすシグナル伝達をブロック又は抑制する。
【0094】
1つの実施態様において、融合ペプチドは、そのN末端又はC末端で異種配列に融合された本発明のポリペプチドを含む。別の実施態様において、本発明のペプチドは、ヘキサヒスチジンペプチドなどのタグ配列、特に例えばpQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, Calif., 91311)などのタグ(それらの多くは市販されている)に融合することができる。Gentz, et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されているように、例えばヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。ペプチドタグの他の例はヘマグルチニン「HA」タグであり、これは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質(Wilson, et al., 1984, Cell 37:767)、及び「フラグ」タグ(Knappik, et al., 1994, Biotechniques 17(4):754-761)に由来するエピトープに対応する。これらのタグは、組み換えにより産生された本発明のペプチドの精製に特に有用である。
【0095】
遺伝子を細胞に導入して発現させる方法は、当技術分野で知られている。1つの実施態様において、ペプチドは、コアセルベーション技術によって又は界面重合によって、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセルを、又はポリ(メチルメタクロレート)マイクロカプセルを使用することによって、又はコロイド系において、調製されたマイクロカプセルに、封入することができる。コロイド分散システムには、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースのシステム(水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソームを含む)が含まれる。
【0096】
1つの実施態様において、本発明は、CSDドメインペプチド又はCSDドメインペプチドをコードする核酸分子を含む移植可能なスキャフォールド又はデバイスを提供する。例えば、いくつかの実施態様において、本発明は、特に限定されるものではないが、スキャフォールドの中又は上にCSDドメインペプチド又はCSDドメインペプチドをコードする核酸分子を含む、ヒドロゲル、電気紡糸スキャフォールド、ポリマーマトリックスなどを含む組織工学作成スキャフォールドを提供する。
【0097】
核酸分子
1つの実施態様において、本発明の方法は、CSDドメインペプチド又はそのサブドメインをコードする核酸分子を含む組成物を投与することを含む。1つの実施態様において、核酸分子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又は配列番号8のアミノ酸配列をコードする。
【0098】
さらに、核酸分子は、本明細書に開示されるCSDドメインペプチドと実質的な相同性を有するペプチドをコードする。いくつかの実施態様において、単離された核酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、又は配列番号8から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むCSDドメインペプチドをコードする。
【0099】
単離された核酸は、特に限定されるものではないが、DNA、cDNA、及びRNAを含む任意のタイプの核酸を含み得る。例えば1つの実施態様において、組成物は、例えばCSDドメインペプチドをコードする単離されたcDNA分子を含む単離されたDNA分子を含む。1つの実施態様において、組成物は、CSDドメインペプチドをコードする単離されたRNA分子を含む。
【0100】
本発明の核酸分子は、血清中又は細胞培養の増殖培地中での安定性を改善するために修飾することができる。本発明の核酸分子の安定性、機能性、及び/又は特異性を増強し、免疫刺激特性を最小化するために、修飾を加えることができる。例えば、安定性を高めるために、3’-残基を分解に対して安定化することができ、例えばこれらは、プリンヌクレオチド、特にアデノシン又はグアノシンヌクレオチドからなるように選択することができる。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2’-デオキシチミジンによるウリジンの置換は許容され、分子の機能には影響しない。
【0101】
核酸は、さまざまな標準的クローニング法及び化学合成技術を使用して生成することができる。その技術には、特に限定されるものではないが、核酸増幅、例えばCSDコード配列にアニーリングできるプライマー(例えば、縮重プライマー混合物)を使用するゲノムDNA又はcDNA標的とのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる。核酸はまた、化学合成(例えば、固相ホスホルアミダイト合成)又は遺伝子からの転写によって産生することもできる。次に、産生された配列をインビトロで翻訳するか、又はプラスミドにクローニングして増殖させ、次に細胞(例えば、酵母又は細菌などの宿主細胞、真核生物、例えば動物又は哺乳動物細胞、又は植物)で発現させることができる。
【0102】
細胞トランスフェクションは通常ベクターを使用するため、核酸をベクター内に含めることができる。「ベクター」という用語は、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどのウイルス、又は遺伝子操作(すなわち、「クローニングベクター」)のために、又は挿入されたポリヌクレオチド(すなわち、「発現ベクター」)を転写又は翻訳するために使用することができる当技術分野の他のビヒクルを指す。そのようなベクターは、ポリヌクレオチドを核酸と操作可能に連結して導入し、転写されたコード化タンパク質をインビトロ、エクスビボ、又はインビボで細胞内で発現させるのに有用である。
【0103】
ベクターは一般に、少なくとも、細胞内で増殖するための複製起点を含む。ベクター内に存在する発現制御エレメントを含む制御エレメントは、転写及び翻訳を容易にするために含まれる。「制御エレメント」という用語は、少なくとも、その存在が発現に影響を与えることができる1つ又はそれ以上の成分を含むことを意図しており、プロモーター若しくはエンハンサー以外の又はそれに加えて、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列、多重遺伝子の作成のためのリボソーム結合部位(IRES)エレメント、又はポリシストロン性メッセージ、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする遺伝子の正しい読みとり枠の維持、目的の遺伝子の転写物の適切なポリアデニル化を提供するポリアデニル化シグナル、終止コドンを含むことができる。
【0104】
含まれるベクターはウイルスベクターに基づくもの、例えばレトロウイルス(分裂細胞及び非分裂細胞に感染するためのレンチウイルス)、フォーミーウイルス(米国特許第5,624,820号、第5,693,508号、第5,665,577号、第6,013,516号、及び第5,674,703号;WO92/05266、及びWO92/14829)、アデノウイルス(米国特許第5,700,470号、第5,731,172号、及び第5,928,944号)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(米国特許第5,604,090号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号)、サイトメガロウイルス(CMV)に基づくベクター(米国特許第5,561,063号)、レオウイルス、ロタウイルスゲノム、シミアンウイルス40(SV40)、又はパピローマウイルス(Cone et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349 (1984); Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982; Sarver et al., Mol. Cell. Biol. 1:486 (1981);米国特許第5,719,054号)などである。アデノウイルスは、ゆっくり複製する細胞及び/又は最終分化した細胞に効率的に感染し、ゆっくり複製する細胞及び/又は最終分化した細胞を標的とするために使用することができる。シミアンウイルス40(SV40)及びウシパピローマウイルス(BPV)は、染色体外エレメントとして複製する能力を有する(Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982; Sarver et al., Mol. Cell. Biol. 1:486 (1981))。発現に有用な追加のウイルスベクターには、多能性幹細胞又はその子孫(例えば、分化細胞)においてポリヌクレオチド又はトランス遺伝子を導入しその発現を指令するための、レオウイルス、パルボウイルス、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルス、及びラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルス及びセムリキ森林ウイルス)、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)が含まれる。
【0105】
核酸を含むベクターは、核酸が発現制御エレメントに作動可能に連結されている場合に発現させることができる。本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」は、それらが意図した様式で作動することを可能にする、参照されるエレメント間の物理的又は機能的関係を指す。従って、核酸に「作動可能に連結された」発現制御エレメントは、制御エレメントが核酸の転写、及び必要に応じて転写物の翻訳を調節することを意味する。
【0106】
「発現制御エレメント」という用語は、作動可能に連結された核酸の発現に影響を与える核酸を指す。プロモーター及びエンハンサーは、発現制御エレメントの具体的な非限定例である。「プロモーター配列」は、下流(3’方向)の配列の転写を開始させることができるDNA調節領域である。プロモーター配列は、転写開始を促進するヌクレオチドを含む。エンハンサーもまた遺伝子発現を調節するが、これは、作動可能に連結された遺伝子の転写開始部位から離れた場所で機能することができる。エンハンサーは、遺伝子の5’又は3’末端のいずれか、並びに遺伝子内(例えば、イントロン又はコード配列中)で機能する。追加の発現制御エレメントには、リーダー配列と融合パートナー配列、多重遺伝子の作成のための内部リボソーム結合部位(IRES)エレメント、又はポリシストロン性メッセージ、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする遺伝子の正しい読みとり枠の維持、目的の転写物の適切なポリアデニル化を提供するポリアデニル化シグナル、及び停止コドンが含まれる。
【0107】
発現制御エレメントには、作動可能に連結された核酸の転写がシグナル又は刺激の存在なしで起きる「構成的」エレメントが含まれる。哺乳動物細胞での発現には、ウイルス起源又は他の起源の構成的プロモーターを使用することができる。例えば、SV40、又はウイルスの長末端反復(LTR)など、又は哺乳動物細胞のゲノムに由来する誘導性プロモーター(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター;熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答エレメント)、又は哺乳類ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;マウス乳腺腫瘍ウイルスLTR)が使用される。
【0108】
作動可能に連結された核酸の発現を上昇又は低下させるシグナル又は刺激に応答して発現を与える発現制御エレメントは「調節可能」である。シグナル又は刺激に応答して作動可能に連結された核酸の発現を上昇させる調節可能なエレメントは「誘導性エレメント」と呼ばれる。シグナル又は刺激に応答して作動可能に連結された核酸の発現を低下させる調節可能エレメントは「抑制性エレメント」と呼ばれる(すなわち、シグナルは発現を低下させる;シグナルが除去されるか又は存在しない場合、発現は増加する)。
【0109】
発現制御エレメントには、「組織特異的発現制御エレメント」と呼ばれる特定の組織又は細胞型で活性なエレメントが含まれる。組織特異的発現制御エレメントは、他の細胞又は組織型と比較して、転写アクチベータータンパク質、又は特定の細胞又は組織型で活性な他の転写調節因子によって認識されるため、通常、特定の細胞又は組織型でより活性である。
【0110】
核酸又はタンパク質は、細胞及びその子孫において安定的又は一過性にトランスフェクト(発現)され得る。この細胞を増殖させ、導入された核酸を転写し、タンパク質を発現させることができる。トランスフェクトされた細胞の子孫は、複製中に突然変異が起こる可能性があるため、親細胞と同一ではない可能性がある。
【0111】
遺伝子を細胞に導入して発現させる方法は、当技術分野で知られている。発現ベクターに関連して、ベクターは、宿主細胞、例えば哺乳類、細菌、酵母、又は昆虫細胞に、当技術分野の任意の方法によって容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0112】
ペプチド又はタンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、微量注入、電気穿孔などが含まれる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al. (2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。
【0113】
目的のペプチド又はタンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、ヒト細胞などの哺乳動物に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照されたい。
【0114】
ペプチド又はタンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散システム、例えば巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースのシステム、例えば水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが含まれる。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0115】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)には、脂質製剤の使用が企図される。別の態様において、核酸は脂質と結合され得る。脂質と結合した核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在され、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合した連結分子を介してリポソームに結合され、リポソームに捕捉され、リポソームと複合体を形成し、脂質を含む溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中の懸濁液として含有され、ミセルに含有されるか又はミセルと複合体を形成し、又はそうでない場合は脂質と結合する。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター結合組成物は、溶液中の特定の構造に限定されない。例えばそれらは、二重層構造で、ミセルとして、又は「崩壊した」構造で存在してもよい。またこれらは、単に溶液中に散在されているだけで、サイズや形状が均一でない凝集体を形成している可能性がある。脂質は、天然脂質又は合成脂質である脂肪物質である。例えば、脂質には、細胞質中に自然に存在している脂肪滴や、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含む化合物のクラスが含まれる。
【0116】
本発明のベクターは、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用して、核酸遺伝子治療に使用することもできる。遺伝子送達の方法は当技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,399,346号、5,580,859号、5,589,466号を参照されたい(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の実施態様において、本発明は遺伝子治療ベクターを提供する。
【0117】
治療計画
1つの実施態様において、本発明の、CSDドメインペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む組成物が対象に投与される。1つの実施態様において、治療計画は、本発明の、CSDドメインペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む組成物の単回投与、又は本発明の、CSDドメインペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む組成物の複数回投与を含み得る。本発明の少なくとも1つの組成物の複数回投与は、担当医師によって選択された期間にわたって連続して行うことができる。治療過程の評価方法は、担当医師の技術の範囲内である。
【0118】
治療の必要性の決定は、通常、問題となっている疾患又は障害に一致する病歴及び理学的検査によって評価される。治療の必要性が確認される対象には、線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、及び腎疾患を有すると診断された対象が含まれる。線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、及び腎疾患の原因には、特に限定されるものではないが、遺伝性疾患、自己免疫疾患、炎症、損傷又は外傷による傷害、放射線又は酸化的フリーラジカルによる損傷、又は環境若しくは医療物質への暴露が含まれる。
【0119】
1つの実施態様において、本明細書に記載の方法による治療を必要とする対象は、線維症、微小血管漏出、老化及び老化に関連する疾患及び障害、心疾患、及び腎疾患を有すると診断されるか、又はそれらを発症するリスクがある。1つの実施態様において、対象は、特に限定されるものではないが、哺乳類(例えば、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、及びヒト)、爬虫類、及び鳥類(例えば、ニワトリ)を含む動物である。
【0120】
本発明の方法は、疾患を効果的に治療又は予防するために、既存の治療法と併せて容易に実施できることを認識すべきである。本発明の方法及び組成物は、非生物学的及び/又は生物学的薬剤との同時又は逐次治療を含むことができる。
【0121】
本発明の組成物は、全身投与(例えば、静脈内注射)又は有益であると考えられる部位への直接投与を含むいくつかの経路によって適用され得る。本発明の組成物は、任意の既知の投与経路を使用して投与することができ、既知の投与経路には、特に限定されるものではないが、局所、結腸(直腸)、局所、鼻内、及び非経口(腹腔内、皮下、静脈内、皮内又は、筋肉内注射、全身、非経口、又は局所、例えば経口製剤、固体又はエアロゾルを含む吸入製剤、及び他の製剤(経皮、口腔内、又は舌下投与用の製剤を含む)が含まれる。いくつかの実施態様において、組成物は、鼻腔内(i.n.)、中咽頭内(o.p.)、又は腹腔内(i.p.)投与用に製剤化される。
【0122】
1つの実施態様において、本発明は、本発明のCSDドメインペプチド、又は本発明のCSDドメインペプチドをコードする核酸分子を投与することを含む、少なくとも1つのキナーゼを阻害する方法に関する。1つの実施態様において、キナーゼは、TGFβR2、PKCα、PKCε、cMet、VEGFR2、TGFβR1、及びSrcのうちの少なくとも1つである。
【0123】
医薬品の製剤化と投与
1つの実施態様において、本発明は、本発明のCSDドメインペプチド又は本発明のCSDドメインペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を、本明細書に記載の疾患又は障害を有する対象に投与する方法に関する。例えば、特定の実施態様において、対象は、間質性肺疾患、特発性肺線維症、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、レイノー現象、肺線維症、肝硬変、心房線維症、心内膜線維症、関節線維症、クローン病、縦隔線維症、骨髄線維症、尿細管間質線維症、肝線維症、前黄斑線維症、網膜線維症、皮膚線維症、創傷関連線維症、ペイロニー病、腎性全身性線維症、進行性腫瘤線維症、後腹膜線維症、線維腫、強皮症、特に放射線による放射線誘発線維症治療、アテローム性動脈硬化、心血管疾患、腎疾患、微小血管漏出、関節炎、白内障、骨粗鬆症、高血圧、うっ血性心不全、間質性肺疾患、喘息、腎不全、アルツハイマー病や血管性認知症を含む神経変性疾患、癌、静脈血栓症、糖尿病及び糖尿病の合併症、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心肥大、心筋症、脳卒中、腎炎症性損傷、慢性腎不全、及び腎機能障害を有する。
【0124】
1つの実施態様において、試料は、癌を有するか又は癌のリスクがある対象から単離される。1つの実施態様において、癌は乳癌であるが、本発明は乳癌の検出に限定されない。以下は、開示された方法及び組成物によって診断又は治療することができる癌の非限定的な例である:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、虫垂癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚性腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、脳星状細胞/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児視覚経路腫瘍、脊索腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、頭蓋外癌、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、肝外癌、眼癌、息肉腫、胆嚢癌、胃(胃)癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(gist)、胚細胞腫瘍、妊娠性癌、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視覚経路神経膠腫、視床下部腫瘍、眼内(眼)癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、ランゲルハンス細胞癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性骨線維性組織球腫及び骨肉腫、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性扁平上皮頸部原発性潜在癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、真菌症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、卵巣、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、中分化型松果体実質腫瘍、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、原発性中枢神経系癌、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎盂及び尿管癌、第15染色体上のナット遺伝子が関与する気道癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌(黒色腫)、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、扁平上皮頸部癌、胃(胃)癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体芽細胞腫、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、絨毛腫瘍、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚経路及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンストロレムマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍[[発明者、このリストを確認するか、必要に応じて追加の癌を加えてください。]]
【0125】
対象への本発明の1つ又はそれ以上の組成物の投与は、既知の手順を使用して、対象の微小血管漏出、腎疾患、心疾患、及び老化関連疾患又は障害を予防又は治療するのに、有効な用量で有効な期間実施することができる。治療効果を達成するために必要な1つ又はそれ以上の治療用組成物の有効量は、対象の疾患又は障害の状態、並びに対象の年齢、性別、及び体重などの要因に応じて変化し得る。投与計画は、有効量の構成に影響を与える可能性がある。
【0126】
1つ又はそれ以上の組成物の投与量は、治療状況の緊急性に比例して増加又は減少され得る。当業者は、過度の実験を行うことなく、関連する要因を調べ、治療用化合物の有効量に関する決定を下すことができるであろう。
【0127】
本発明の1つ又はそれ以上の医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、特定の対象、組成物、及び投与様式に対して、対象への毒性なしで、所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るために変動され得る。
【0128】
特に、選択される用量レベルは、使用される特定の1つ又はそれ以上の組成物の活性、投与時間、1つ又はそれ以上の組成物の排泄速度、治療期間、他の薬物、1つ又はそれ以上の組成物と組み合わせて使用される化合物又は材料、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態、及び過去の病歴、並びに医療分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存する。
【0129】
当業者である医師、例えば医師又は獣医師は、必要とされる1つ又はそれ以上の医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、医薬組成物に使用される本発明の1つ又はそれ以上の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。
【0130】
典型的には、本発明の方法で対象に投与され得る用量は、対象の体重1kgあたり0.5ng~約50mgの量の範囲であるが、投与される正確な用量は、、特に限定されるものではないが、対象のタイプ及び治療される疾患状態のタイプ、対象の年齢及び投与経路を含む任意の数の要因に応じて変化する。1つの実施態様において、化合物の投与量は、対象の体重1キログラムあたり約1ng~約10mgで変化する。1つの実施態様において、投与量は、対象の体重1キログラムあたり約3ng~約1mgで変化する。
【0131】
バイオアベイラビリティを改善し、反復注射に伴う合併症を軽減するために、本発明は、本発明の組成物を単独で又は他の薬剤と組み合わせて持続的に送達することを企図する。本発明における持続的送達は、特に限定されるものではないが、ポリマーゲル、リポソーム及びナノ粒子を含むコロイド系、シクロデキストリン、コラーゲンシールド、拡散チャンバー、柔軟な担体ストリップ、及びインプラントを含む多くの異なる送達系を介して達成することができる。
【0132】
本発明の組成物は、軟膏の形態であることができる。軟膏には、表面との薬物接触時間を延長できるという利点がある。軟膏は一般に、例えば白色ワセリンと鉱油からなる基剤を含み、多くの場合、無水ラノリン、ポリエチレン鉱油ゲル、及び非刺激性であると製剤化学者によって認識されており、薬剤の拡散を可能にし、貯蔵条件下で妥当な期間、薬剤の活性を保持する他の物質を含む。
【0133】
本発明の組成物の治療量は、経口投与することができる。これらの経口剤形の場合、組成物は、医薬的に許容し得る固体又は液体担体とともに製剤化され得る。固形製剤には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、及び分散性顆粒が含まれる。用量当たりに投与される組成物の濃度又は有効量は、実際の組成物に広く依存する。しかしながら、総経口1日用量は、通常、約50mg~30gの範囲であり、特定の実施態様において、約250mg~25gの範囲である。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊助剤、又は封入材料としても機能し得る1つ又はそれ以上の物質であり得る。適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、低融点ワックス、カカオ脂などが含まれる。「製剤」という用語は、活性成分が、他の担体有り又は無しで、担体によって取り囲まれ、従ってそれと結合しているカプセルを提供する担体としての封入材料との活性化合物の製剤を含むことを意図している。同様に、カシェ剤とトローチ剤も含まれる。錠剤、粉末、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、トローチ剤を、経口投与に適した固形剤形として使用することができる。
【0134】
吸入による投与の場合、本発明による化合物は、注入器、ネブライザー、若しくは加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から都合よく送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含むことができる。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。あるいは、吸入又は注入による投与のために、本発明による化合物は、乾燥粉末組成物、例えば化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えば、吸入器又は注入器を用いて粉末を投与することができるカプセル又はカートリッジ、又は例えばゼラチン若しくはブリスターパック中の単位剤形で提供することができる。
【0135】
必要な有効量は複数の投与単位の投与により達成されるため、各剤形の個々のエアロゾル用量に含まれる1つ又はそれ以上の有効成分の単位含有量自体は、特定の適応症又は疾患を治療するための有効量を構成する必要はないことが理解される。さらに、有効量は、個々に又は一連の投与において、剤形中の用量よりも少ない量を使用して達成され得る。
【0136】
口腔内投与に適した製剤は、有効成分を含む粉末又はエアロゾル化若しくは噴霧化された溶液若しくは懸濁液を含み得る。そのような粉末状、エアロゾル化、又はエアロゾル化された製剤は、分散された場合、好ましくは約0.1ナノメートル~約2000マイクロメートルの範囲の平均粒子サイズ又は液滴サイズを有し、本明細書に記載の追加成分の1つ又はそれ以上をさらに含んでもよい。
【0137】
組成物はまた、対象への直接適用又は注入のいずれかのために、不活性マトリックス内に含有され得る。不活性マトリックスの1つの例として、リポソームは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から調製することができ、例えば、この脂質は熱転移が低いため、卵ホスファチジルコリン(PC)から調製することができる。リポソームは、当業者に知られている標準的な手順を使用して作成される。ナノグラムからマイクログラムの範囲の量の組成物が卵PCの溶液に添加され、親油性薬物がリポソームに結合する。
【0138】
徐放性薬物送達システムを使用して、一定期間にわたって活性物質(例えば、CSDドメインペプチド又はそのサブドメイン)の徐放をもたらすことができる。徐放性製剤は、ポリマー(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール)酸、ポリ(乳)酸、ポリ無水物)の、又はミクロスフェアとして製剤化され得る脂質のカプセルの形態であり得る。リポソームと結合した組成物は、点滴薬の形で又は水性ベースのクリームとして直接塗布することができ、又は注入することもできる。直接塗布するための製剤では、リポソームカプセルが磨耗や損傷により劣化するにつれて、薬物は時間の経過とともにゆっくりと放出される。注入用製剤では、細胞による消化によってリポソームカプセルが分解される。これらの製剤は両方とも、徐放性薬物送達システムの利点を提供し、被験者が長期にわたって絶えず薬物に曝らされることを可能にする。
【0139】
徐放性製剤では、ミクロスフェア、カプセル、リポソームなどは、ボーラス用量として投与された場合には毒性となり得る濃度の組成物を含み得る。しかしながら徐放性投与は、任意の期間に放出される濃度が毒性量を超えないように処方される。これは、例えば、ビヒクルの様々な調製物(コーティングされているか又はコーティングされていないミクロスフェア、コーティング又はコーティングされていないカプセル、脂質、又はポリマー成分、単層又は多層構造、及び上記の組み合わせなど)によって達成される。他の変量には、対象の薬物動態-薬力学パラメーター(例えば、体重、性別、血漿クリアランス率、肝機能など)が含まれる場合がある。ミクロスフェア、マイクロカプセル、リポソームなどの形成及び充填、並びにそれらの移植は、当業者に知られている標準的な技術である。
【0140】
本発明の複数の組成物は、同時に、別々に、又はある期間にわたって間隔をあけて投与して、組み合わせの最大効果を得ることができる。迅速な投与から連続灌流まで、各投与の持続時間を変えることができる。その結果、本発明の目的のために、組合せは、成分の物理的会合によって得られるものだけに限定されるものではなく、同時に又は一定期間の間隔を置いて行うことができる別個の投与を可能にするものにも適用される。
【0141】
本発明のCSDドメインペプチド又はそのサブドメインをコードする核酸の対象への投与は、遺伝子治療を使用して達成され得る。遺伝子治療は、エクスビボ又はインビボ技術による細胞への治療遺伝子の挿入に基づく。インビトロ又はインビボでの遺伝子治療に適したベクター及び方法が記載されており、この分野の専門書として知られている。例えば、Giordano, Nature Medicine 2 (1996), 534-539; Schaper, Circ. Res 79 (1996), 911-919; Anderson, Science 256 (1992), 808-813; Isner, Lancet 348 (1996), 370-374; Muhlhauser, Circ. Res 77 (1995), 1077-1086; Wang, Nature Medicine 2 (1996), 714-716; WO94/29469;WO97/00957、又は Schaper, Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 635-640、及びそこで引用された参考文献を参照されたい。ポリヌクレオチド、すなわち本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞への直接挿入のために、又はリポソーム若しくはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス又はレトロウイルスベクター)を介した挿入によって設計することができる。本発明に従って使用できる適切な遺伝子分配系には、リポソーム、受容体によって媒介される分配系、裸のDNA、及びヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターが含まれる。遺伝子治療のための体内の特定の部位への核酸の分配は、例えばウィリアムズ (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88 (1991), 2726-2729) によって記載されたものなどの微粒子銃分配システムを使用することによって達成することもできる。組換えDNAを用いて細胞をトランスフェクトするための標準的な方法は、分子生物学の分野の専門家によく知られている。例えば、WO94/29469を参照されたい。遺伝子治療は、本発明の組換えDNA分子又はベクターを患者に直接投与することにより行うことができる。
【0142】
癌治療薬
1つの実施態様において、本発明は、本発明のCSDドメインペプチドをそれを必要とする対象に投与することを含む、癌転移を治療する方法を提供する。いくつかの実施態様において、CSDドメインペプチドは、手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、又はホルモン療法、又はこれらの組み合わせなどの癌の補足的治療法と組み合わせて投与することができる。
【0143】
化学療法剤には、細胞障害性剤(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムシンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ-2a組換え体、パクリタキセル、テニポシド、及びストレプトゾチ)、細胞障害性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、又はエチルスルホン酸)、アルキル化剤(例、アザレイ、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラトプラチナム、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シスプラチナム、クロメゾン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジゾン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドーパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、及びYoshi-864)、抗有糸分裂剤(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、及び硫酸ビンクリスチン)、植物アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン、タキソテレ)、生物学的製剤(アルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、インターロイキン2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、モルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM-26、及びVP-16)、及び合成物質(例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、cis-ジアミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、オールトランスレチノイン酸、グリアデル、及びポルフィマーナトリウム)が含まれる。
【0144】
抗増殖剤は、細胞の増殖を低下させる化合物である。抗増殖剤には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、酵素、生物学的応答調節剤、その他の薬剤、ホルモン及び拮抗剤、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミド及び酢酸ロイプロリド)、抗エストロゲン剤(例えば、クエン酸タモキシフェン及びその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン、及びロロキシフェン)が含まれる。特定の抗増殖剤のさらなる例には、特に限定されるものではないが、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチムストロンチウム-89クロリド、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン、及びオンダンセトロンが含まれる。
【0145】
本発明のCSDドメインペプチドは、単独で、又は他の抗腫瘍剤(細胞障害性/抗腫瘍剤及び抗血管新生剤を含む)と組み合わせて投与することができる。細胞傷害性/抗腫瘍剤は、癌細胞を攻撃して死滅させる薬剤と定義されている。いくつかの細胞傷害性/抗腫瘍剤は、腫瘍細胞の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤であり、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、ダカバジンである。他の細胞傷害性/抗腫瘍剤は、腫瘍細胞の代謝拮抗剤、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキセート、メルカプトプリン、アザチオプライム、及びプロカルバジンである。他の細胞傷害性/抗腫瘍剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、及びダウノマイシンである。これらの化合物用に市販されている多数のリポソーム製剤がある。さらに他の細胞障害性/抗腫瘍剤は有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)である。これらには、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシドが含まれる。その他の細胞障害性/抗腫瘍剤には、タキソールとその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、及びビンデシンが含まれる。
【0146】
抗血管新生剤は、当業者に周知されている。本開示の方法及び組成物で使用するのに適した抗血管新生剤には、ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。血管新生の他の既知の阻害剤には、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(アルファ及びベータを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、及びメタロプロテイナーゼ-1及び-2の組織阻害剤(TIMP-1及び-2)が含まれる。抗血管形成活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなどのトポイソメラーゼを含む小分子も使用することができる。
【0147】
開示された化合物と組み合わせて使用することができる他の抗癌剤には、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:アクルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビスアントレン;ビスナフィドジメシレート;バイゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベタイマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸;フルオロウラシル;フルオロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンII、又はrIL2を含む)、インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲステロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メトレデパ;ミチンドマイド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;ミトスパー;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴル;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェノール;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビンピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。他の抗癌剤には、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3:5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TK拮抗薬;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラフォライド;血管新生阻害剤;拮抗薬D;拮抗薬G;アンタレリクス;抗背側形成形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節因子;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABL拮抗薬;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータアレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビスアントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;キャレストM3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ディドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール、9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲン拮抗薬;エタニダゾール;エトポシドリン酸;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロン作動薬;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアネ;ヨードキソルビシン;イポメアノール、4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミゾール;リアロゾール;線状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リゾフィリン;溶解ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチの二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスティム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;複数の腫瘍抑制因子1ベースの治療;マスタード抗癌剤;ミカペロキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレストプ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド酸化防止剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストーン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;パーフルブロン;ペルフォスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニルアセテート;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫モジュレーター;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類。プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;raf拮抗薬;ラルチトレキセド;ラモセトロン;ラスファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ラス阻害剤;ras-GAP阻害剤;レテリプチン脱メチル化;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチイド;ロキニメックス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴル;サイントピン;SarCNU;サルコフィト
ールA;サルグラモスティム;Sdi1ミメティック;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフラン;ソブゾキサン;ボロカプテートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルバロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチド拮抗剤;スラディスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣物;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセン二塩化物;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメックス;泌尿生殖器洞由来増殖抑制因子;ウロキナーゼ受容体拮抗薬;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム、赤血球遺伝子治療;ベラレゾール;ベラミン;ベルディン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンカルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマー。
【0148】
実験例
以下の実験例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例は、例示のみを目的として提供されており、別段の指定がない限り限定を意図したものではない。従って、本発明は、決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形態様を包含すると解釈されるべきである。
【0149】
さらなる説明がなくても、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作製及び利用し、請求された方法を実施できると考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の例示的な実施態様を具体的に指摘するものであり、決して本開示の残りの部分を限定するものと解釈されるべきではない。
【0150】
実施例1:アンギオテンシンII誘発性心疾患の治療におけるCSDドメイン
本明細書に示されるデータは、アンギオテンシンIIによる処理によって心疾患及び微小血管漏出が誘発されたマウスにおいて、CSDドメインペプチド(表1)がこれらの病態の抑制に大きな活性を有することを示す。
【0151】
図1は、全長CSD、82-89、88-95、及び94-101(それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4)を使用した実験の概要を提供する。
【0152】
AngIIによって、心臓重量/体重(HW/BW)、左心室(LV)重量、及びpWTh(後壁の厚さ)の非常に顕著な変化が誘発される(
図2)。AngIIはまた、駆出率(EF)、短縮率(FS)、及び等容弛緩時間(IVRT)の病理学的変化も誘発する(
図3)。これらのパラメーターのそれぞれについて、88-95はAngIIの影響を抑制するのに最も効果的なCSDサブドメインである。ただし、82-89は、HW/BWに対するAngIIの影響を抑制する上で88-95と本質的に同等に効果的であり、EF、FS、及びIVRTに対して有意な有益な効果がある。
【0153】
図2と
図3は、CSDと2つのサブドメインが、AngIIに誘発されるHW/BW比の上昇と心室機能の病理学的変化を抑制することを示すデータを提供する。AngII又はビヒクルを2週間注入された若いマウス(3ヶ月齢)は、CSD、示されたサブドメイン、又はスクランブルCSD(0.8μmol/kg)を腹腔内注射で毎日投与された。マウスは心エコー検査によって、後壁の厚さ(pWTh)、短縮率(FS)、心拍出量(CO)、駆出率(EF)、及び等容弛緩時間(IVRT)の変化について評価された。シャム+Veh対AngII+Vehについて
***p<0.001の有意な変化が示される。AngII+Veh対AngII+CSD又はAngII+CSDサブドメインについて、AngIIによる変化の有意な抑制が、
∧p<0.05、
∧∧p<0.01、
∧∧∧p<0.001として示される。各治療に使用されたマウスの数は、HW/BWデータに示される。
【0154】
心臓ではAngIIは、増加したColI沈着とHSP47レベルで測定される線維症を誘発する(
図4)。両方のパラメーターについて、88-95はAngIIの影響を抑制するのに最も効果的なCSDサブドメインであるが、82-89にも有意な有益な効果がある。AngIIは心臓の微小血管漏出を誘発する(組織内のIgG重鎖レベルで測定される)が、これは、82-89と88-95の両方によってほぼ完全に抑制される(
図5)。
【0155】
図4と5は、2つのCSDサブドメインが、心臓のAngIIに誘発された微小血管漏出と線維症を有意に抑制することを示す。AngII又はビヒクルを2週間注入された若いマウス(3ヶ月齢)は、示されたCSDの示されたサブドメインを毎日腹腔内注射で投与された。ColIとHSP47(
図4)及び微小血管漏出(
図5)についての典型的な実験の結果を、ウエスタンブロット(1群2~3匹のマウス)で示す。データは以下で定量される(n=4)。有意な変化は、シャム+Veh対AngII+Vehについて
*p<0.05及び
**p<0.01として示される。AngIIに誘発される変化のサブドメインによる有意な抑制は、AngII+Veh対AngII+CSDサブドメインについて、
∧p<0.05、
∧∧p<0.01、及び
∧∧∧p<0.001として示される。
【0156】
図6は、W82-89(配列番号6)を用いた実験の概要を提供する。上記のように、AngIIは、HW/BW比、微小血管漏出、及び線維症の極めて顕著な変化を誘発する(
図7)。これらのAngIIによって誘発される病状はすべて、W82-89によって高い有意性で抑制される。
【0157】
図7は、AngIIにより誘発される心臓のHW/BW比、微小血管漏出、及びColIレベルの病理学的上昇を、W82-89が抑制することを示す。AngII又はビヒクルを2週間注入された若いマウス(3ヶ月齢)は、毎日W82-89の腹腔内注射投与を受けた。IgG重鎖(IgGH)の漏出とColIの蓄積がウェスタンブロットで示される。IgGHが心臓ホモジネートの上清画分で分析されたが、ColIはペレット画分に見られたため、アクチンローディング制御が2回存在する。定量(n=4)で、有意な変化が、シャム+Veh対AngII+Vehについては、
**p<0.01及び
***p<0.001として示され、W82-89によるAngII誘発変化の反転については、
∧∧p<0.01及び
∧∧∧p<0.001として示される。
【0158】
図8は、
図1~7のデータをまとめたものである。88-95は、試験した最も有効なジメチルスルホキシド(DMSO)可溶化ドメインである。しかし、82-89を水溶性(W82-89)に変更すると、82-89よりも有効になり、少なくとも88-95と同じくらい有効になる。従って、82-89と88-95の両方がCSD内の活性ドメインである。
【0159】
【0160】
小文字は、カベオリン-1の一部ではないD-アミノ酸を示す。注入のために、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4を非常に少量のジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、次に生理食塩水で100倍希釈する。配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8は水溶性であるため、生理食塩水に直接溶解する。これらは水溶性であるため、WCSD(配列番号5)、W82-89(配列番号6)、W88-95(配列番号7)、及びW94-101(配列番号8)と呼ばれることがある。
【0161】
実施例2:CSDは、心臓と腎臓の老化に関連する病理学的変化を逆転させる
本明細書に示されるデータは、老化により心臓及び腎臓の疾患及び微小血管漏出が発生したマウスにおいて、CSDペプチド(表1)がこれらの病状の抑制活性が非常に高いことを示す。
【0162】
図9は、CSD(配列番号1)を用いた実験の概要を提供する。
【0163】
高齢者のさまざまな臓器の機能は、次第に低下していく。これは、一部には線維症と微小血管漏出の増加によるものである。本実施例に示される実験は、マウスにおいてこれらの進行過程を調べた。その結果は、18ヶ月齢(65歳のヒトと同様の年齢)のマウスを6週間毎日CSDで治療すると、心臓と腎臓における線維化及び微小血管漏出のレベルが、健康な3ヶ月齢のマウス(20歳のヒトと同様の年齢)で観察されるレベルまで低下することを示す。
【0164】
心臓の線維症と微小血管漏出はいずれも、3か月から9か月へそして18か月への老化とともに進行する。18ヶ月齢のマウスのCSD処理は、線維症と微小血管漏出のレベルを、ほぼ3ヶ月齢のマウスで観察されるレベルまで逆転させる(
図10)。
【0165】
腎臓の線維症と微小血管漏出はいずれも、3か月から9か月そして18か月への老化とともに進行する。18ヶ月齢のマウスのCSD処理は、線維症と微小血管漏出のレベルを、3ヶ月齢のマウスで観察されるレベルまでほぼ逆転させる(
図11)。
【0166】
CSD処理した老齢マウスの線維化の低下をさらに検証するために、心臓及び腎臓の組織切片をピクロシリウスレッドで染色し、コラーゲン体積分率を決定した(
図12)。若いマウスと比較して、老齢のマウスは、心臓と腎臓の両方で高レベルのピクロシリウスレッド染色を示したが、これはCSD処理によって有意に低下した。
【0167】
図10、
図11、及び
図12は、心臓と腎臓において、老化に関連する微小血管の漏出と線維化がCSDによって逆転することを示す。若いC57/Bl6マウス(3ヶ月)、中年期のC57/Bl6マウス(9ヶ月)、及び老齢のC57/Bl6マウス(18ヶ月)に、生理食塩水ビヒクル又はCSDを6週間毎日腹腔内注射した。IgG重鎖漏出及びColI蓄積は、心臓(
図10)及び腎臓組織(
図11)のウェスタンブロットによって評価された。アクチンはローディング対照であった。カテゴリごとに2~3匹のマウスが示される。定量(n=4)で、若いマウスと老齢マウスの間で有意な変化が
***p<0.001として示され、CSDで治療された老齢マウスの減少では
∧∧∧p<0.001として示される。
図12には、記載のマウスの心臓及び腎臓組織切片のピクロシリウスレッド染色の代表的な例が示される。データを、コラーゲン体積分率に関して定量した(n=3)。若いマウスと老齢マウスの間で有意な変化が、
***p<0.001及び
**p<0.01として示され、CSDで治療された老齢マウスにおける減少については、
∧p<0.05として示される。
【0168】
チロシンキナーゼの活性化(リン酸化)は、結合部のタンパク質への影響により血管透過性亢進に関与しているため、受容体及び非受容体チロシンキナーゼの活性化に対するCSDの影響を調べた(
図13)。微小血管漏出及び線維症で発生した変化と同様に、心臓と腎臓の両方で、受容体チロシンキナーゼPDGFR及び非受容体チロシンキナーゼc-SrcとPyk2の活性化において、老化に関連する大きな上昇が観察された。再度、これらの老化に関連する変化は、CSDによってほぼ完全に逆転した。
【0169】
図13は、老齢マウスの心臓及び腎臓におけるチロシンキナーゼの活性化がCSDによって逆転することを示す。
図10と
図11で使用した同じ抽出物を、PDGFR(α-Y849/β-Y857)、c-SrcY426、及びPyk2Y402中のリン酸化チロシン残基に特異的な抗体を使用して、チロシンキナーゼ活性化についてウエスタンブロットで分析した。アクチンはローディング対照であった。定量で、若いマウスと老齢マウスの間で有意な変化が、
***p<0.001及び
**p<0.01として示され、CSDで治療された老齢マウスにおける減少については、
∧∧∧p<0.001及び
∧∧p<0.01として示される。
【0170】
心臓における微小血管漏出、線維症、及びチロシンキナーゼシグナル伝達に対するCSDの有益な効果を考慮して、心室機能に対するCSDの効果を心エコー検査によって評価した。FSとSVについては、若いマウスと老齢のマウスの間に有意差は認められなかったが、CSDはこれらのパラメーターにプラスの効果をもたらした(
図14)。IVRT(拡張機能の測定)では、老化によって心室弛緩時間が延長されたが、これはCSD処理によって解消された(
図14)。これらの観察結果は、これらのマウスの心機能が、高齢者の心不全の最も一般的な形態である「駆出率が保たれた心不全(拡張期心不全又はHFpEF)」を有するヒト患者の心機能に類似していることを示唆する。
【0171】
AngIIで処理された若いマウスは心筋細胞肥大を発症し、これがCSDによって逆転されるため、老齢マウスでもこのパラメーターを評価した。実際、AngII処理マウスと同様に、老齢マウスで心筋細胞肥大が上昇し、この上昇はCSDによって逆転された(
図15)。
【0172】
CSDは老齢マウスの心室機能を改善する
図10及び
図11で使用したものと同じマウスで、殺処分する前に心エコー分析を実施した。傍胸骨短軸像(PSAX)のMモードエコー測定を使用して、EFとFSの変化を定量した。IVRTの測定には、PSAXの組織ドップラー測定が使用された。値は、平均±SEMとして表示される。統計的に有意な変化は、若いマウスと老齢マウスの間では、
***p<0.001として示され、CSD処理による老齢マウスの機能改善では、
∧p<0.05として示される(
図14)。
【0173】
CSDは、老化に関連する心肥大を逆転させる
図10で使用したものと同じマウスの左心室組織切片をヘマトキシリン-エオジンで染色し、各群(n=3)について少なくとも50個の心筋細胞を、SigmaScan Pro画像解析を使用して測定することにより、心筋細胞の断面積を定量した。統計的有意性は、若いマウスと老齢マウスの間で、
***p<0.001として示され、CSD処理による老齢マウスの肥大の減少については、
∧p<0.05として示される(
図15)。
【0174】
実施例3:CSDは脳における老化に関連する病理学的変化を逆転させる
本明細書に示されるデータは、老化により脳疾患及び微小血管漏出が発生したマウスにおいて、CSDペプチド(表1)がこれらの病状の抑制に非常に活性があることを証明する。
【0175】
図16は、CSDを使用した実験の概要を提供する(配列番号1)。これは、表示値が心臓や腎臓組織ではなく脳組織で実行されたことを除いて、
図9で説明した実験と似ている。結果は、18ヶ月齢のマウスは若いマウスよりも、脳内の微小血管漏出及び線維症(
図17)及び活性化チロシンキナーゼ(
図18)のレベルがはるかに高く、全身CSD処理によりこれらのレベルが、ほぼ、健康な3ヶ月齢のマウスで観察されたレベルまで低下することを示している。
【0176】
脳における老化に関連する微小血管漏出、線維症、及びチロシンキナーゼの活性化はCSDによって逆転する
マウスは、CSD注入が4週間であることを除いて、
図10に記載されているように処理された。脳組織抽出物を、微小血管漏出及び線維症(
図17)及びチロシンキナーゼ活性化(
図18)についてウェスタンブロットによって分析した。定量(n=3)で、CSD処理により、若いマウスと老齢マウスの間で有意な変化が、
***p<0.001及び
**p<0.01として示され、老齢マウスにおける低下については、
∧∧∧p<0.001及び
∧∧p<0.01として示される。
【0177】
実施例4:非修飾CSDサブドメインによる肺及び皮膚線維症の抑制
非修飾CSDサブドメインが肺及び皮膚の線維症に及ぼす影響を調べる実験を行った。
図19は、非修飾CSDサブドメインによる肺及び皮膚線維症の抑制を証明する実験についての実験計画の詳細を提供する。ブレオマイシン又は生理食塩水ビヒクルを含むポンプをマウスの皮下に移植した。1週間後、ポンプは空になっており、指示された処理物を含む2週間で空になるように設計されたポンプと交換された(1群あたりn=6)。この2週間後、マウスを殺処分した。
【0178】
図20は、ブレオマイシンによって引き起こされる大規模な線維症と、アシュクロフトスコアで読み取られた(n=6)82-89、88-95、及び94-101サブドメインペプチドによるその抑制を証明するデータを示す。Bleo+Veh対Bleo+CSDサブドメインについて、*p<0.05。
【0179】
図21は、CSD及びCSDサブドメインペプチドによる皮膚線維症及び皮内脂肪の消失の抑制を示す。ポンプ出口付近の皮膚を採取し、真皮と皮内脂肪の厚さを測定した。生理食塩水/ビヒクル対ブレオ/ビヒクルについて、
∧∧∧p<0.001。ブレオ/ビヒクル対ブレオ/ペプチド処理について、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【0180】
活性化された単球の損傷した肺組織への動員は、線維症の進行に寄与し、CSDによってインビボで抑制される(
図22)。骨髄(BM)単球を、対照マウス及びブレオマイシン処理マウスから分離した。対照マウスと比較して、ブレオマイシン処理マウスでは、BM単球の移動が有意に増加することが観察された。この増強された移動は、単球を採取する前に、非修飾サブドメインのそれぞれを用いてインビボでマウスを処理することにより、ほぼ完全に抑制される。Bleo/ビヒクル対Bleo/ペプチド処理について、
***p<0.001。
【0181】
これらすべての表示値で、CSDの3つのサブドメインすべてが活性であった。全体に、試験したサブドメインの中で82-89が最も活性があった。
【0182】
実施例5:修飾された水溶性バージョンのCSDによる肺及び皮膚線維症の抑制
肺及び皮膚線維症に対する修飾された水溶性バージョンのCSDサブドメインの効果を調べる実験も行った。
【0183】
図23は、修飾された水溶性バージョンのCSD(WCSD;配列番号5)による肺及び皮膚線維症の抑制を証明する実験の実験計画に関する詳細を提供する。ブレオマイシン又は生理食塩水ビヒクルを含むポンプをマウスの皮下に移植した。1週間後、ポンプは空になった。さらに、マウスは示されたように毎日腹腔内注射され、次に、22日目にすべて殺処分された。全ての群には4匹のマウスが含まれていた。
【0184】
図24は、WCSDが生存に対して顕著な有益な効果を有することを証明する生存及び組織学データを提供する。大規模な肺線維症及び炎症性細胞浸潤が、ブレオマイシンによって引き起こされ、治療が8日目まで遅れた場合でもWCSDによって抑制される。8日目に開始されるWCSD処理は、ブレオマイシンによって誘発される皮膚の経皮脂肪層のほぼ完全な消失も抑制する。
【0185】
図25は、WCSDが、線維細胞、ECMタンパク質、筋線維芽細胞マーカー、及び微小血管漏出に対する作用を通じて、ブレオマイシン誘発性肺線維症を抑制することを証明する。線維細胞(CD45+/ColI+細胞)は、フローサイトメトリーによって定量された。ECMタンパク質(ColI、テネイシンC)、筋線維芽細胞マーカー(HSP47、ASMA)、及び微小血管漏出(灌流後に組織に残ったIgG重鎖)は、ウエスタンブロッティングで定量された(n=4)。ウエスタンブロットデータは、アクチンローディング対照に対して標準化した後、デンシトメトリーで定量された。生理食塩水で処理したマウスの値を、1.0任意単位に設定した。生理食塩水/ビヒクル対ブレオ/ビヒクルについて、
∧∧p<0.01、
∧p<0.05;ブレオ/ビヒクル対ブレオ/WCSDについて、
*p<0.05。
【0186】
これらのパラメーターはすべて、ブレオマイシン処理によって大幅に上昇し、WCSDによって対照の生理食塩水処理マウスのレベルまでほぼ完全に抑制された。
【0187】
実施例6:WCSDによる腫瘍増殖の阻害
腫瘍間質の細胞(癌関連線維芽細胞、内皮細胞)の機能は、腫瘍によってその成長を促進するように修飾される。複数のグループが、ヒトとマウスの両方の腫瘍間質の細胞でカベオリン-1が欠乏していることを観察している。従って、腫瘍増殖を阻害するWCSD(配列番号5)の能力を、同所性にMet1乳癌細胞を注入した同系マウスで試験した。マウスは、腫瘍細胞注入(n=6マウス/群)の翌日から開始して、毎日ビヒクル又はWCSD(0.8μmol/kg)の腹腔内投与を受けると、腫瘍増殖が100%阻害された(
図26)。
【0188】
実施例7:水溶性バージョンのCSDによる精製キナーゼの阻害
水溶性バージョンのCSDペプチドは、TGFβR2、PKCα、PKCε、及びcMetを阻害するが、ニンテダニブはこれらのキナーゼに効果がない(
図27)。逆に、ニンテダニブはVEGFR1、VEGFR3、PDGFRα、及びPDGFRβを阻害するが、水溶性バージョンのCSDは直接的な阻害を示さない。ニンテダニブと水溶性バージョンのCSDペプチドの両方が、VEGFR2、TGFβR1、及びSrcを阻害するが、ニンテダニブははるかに低い濃度で機能した。これらの観察結果は、水溶性CSDペプチドがインビボで100倍以上低い濃度で機能するという事実とともに、ニンテダニブと水溶性CSDペプチドとが異なる作用メカニズムを持っているに違いないことを示す。これは、水溶性CSD候補が、ニンテダニブで起きることが知られているよりも、深刻な副作用ははるかに小さい可能性があるという考えを支持している。
【0189】
修飾された水溶性CSDペプチドは、キナーゼ阻害剤として、これらの親の非修飾形態よりもより活性である(
図28)。
【0190】
実施例8:送達の最適化
水溶性CSDペプチドの異なる送達経路を評価する実験を行った。
図29は、水溶性CSDペプチドの鼻腔内(i.n.)投与が有望な送達経路であることを証明する。2匹のマウスに、100μlのPBS中の0.8μmol/kgフルオレセイン化W82-89を単回腹腔内注射した。2匹のマウスに、フルオレセイン化W82-89を鼻腔内投与した(30μlのPBS中4μmol/kg(鼻孔あたり15μl))。較正された毛細管チューブを使用して、各ペアのうちの1匹のマウスの上顎静脈から3分、30分、2時間、及び6時間目に、及び各ペアの他のマウスから10分、1時間、4時間、及び8時間目に、50μlの血液を採取した。血液を直ちに200μl PBS/10mM EDTAで希釈し、遠心分離して血漿を採取した。血漿中のW82-89のレベルは、蛍光プレートリーダーを使用して決定された。
【0191】
記載されている鼻腔内(i.n.)送達は、腹腔内送達と同様のピーク血清レベルを提供した。さらに、鼻腔内送達により、血漿中にW82-89が長時間存在し、鼻腔内送達の曲線下面積は、腹腔内投与よりも1.5倍以上高かった。これらの結果は、鼻腔内送達は、患者に好ましいだけでなく、W82-89を送達するための効果的なアプローチである可能性がある。
【0192】
初代肺線維芽細胞を、N末端の蛍光色素FAM又は遊離FAMを用いて合成された5μMの指示されたペプチドを補足した完全培地(DMEM/10%血清)中で4時間培養した。遊離FAMは細胞に取り込まれなかったが、FAM標識W82-89及びFAM標識CSDは取り込まれ、FAM標識WCSDははるかに多く取り込まれた(
図30)。これは、CSDを水溶性にする修飾により、細胞による取り込みも大幅に改善されることを示す。
【0193】
指示された経路(
図31)によって送達されたフルオレセイン化W82-89の単回投与後、間隔を置いて上顎静脈から血液を採取し、血液由来の血漿中のW82-89のレベルを蛍光プレートリーダーを使用して決定した。腹腔内送達後、血漿中に高レベルの蛍光ペプチドが存在することに注目されたい。しかし、局所送達、強制経口投与、又はエアロゾル後は、血漿中に蛍光ペプチドはほとんど存在しなかった。患者を治療するための好ましい経路である鼻腔内及び口腔咽頭経路は、血漿中に比較的高レベルの蛍光ペプチドを与えた。これは、おそらく鼻内及び口腔咽頭投与が、肺を介しするり込みを含む可能性がある。
【0194】
指示された蛍光ペプチドの単回の腹腔内投与後、間隔を置いて上顎静脈から血液を採取し、血液由来の血漿中のペプチドのペプチドのレベルを蛍光プレートリーダーを使用して決定した。W82-89の取り込みは、CSD又はWCSDの取り込みよりもはるかに多かった(
図32)。
【0195】
前述の詳細な説明及び付随する実施例は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0196】
開示された実施態様に対する様々な変更及び修正は、当業者には明らかであろう。特に限定されるものではないが、本発明の化学構造物、置換基、誘導体、中間体、合成法、組成物、製剤、又は使用方法に関連するものを含むそのような変更及び修正は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【配列表】
【国際調査報告】