(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】大口径色収差補正メタレンズ、メタレンズシステム及び光学システム
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20230721BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
G02B13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581020
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2021104460
(87)【国際公開番号】W WO2022007738
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010647972.5
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522502679
【氏名又は名称】シェンチェン メタレンクス テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN METALENX TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】ハオ チェンロン
(72)【発明者】
【氏名】タン フェンゼ
(72)【発明者】
【氏名】チュー ジェン
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087NA03
2H087NA14
2H087PA01
2H087PA02
2H087PA17
2H087PB01
2H087PB02
2H087RA00
2H087UA02
(57)【要約】
本発明は大口径色収差補正メタレンズ、メタレンズシステム和光学システムを開示する。前記メタレンズは、可視光及び赤外光を含む異なる波長帯の光を透過可能である基板と、前記基板の一面に設けられる複数のスーパーストラクチャーユニットであって、前記スーパーストラクチャーユニットはアレイ状に配列され、各スーパーストラクチャーユニットの中心位置、又は各スーパーストラクチャーユニットの中心位置及び頂点位置にはナノ構造がそれぞれ設けられるスーパーストラクチャーユニットとを含み、複数のスーパーストラクチャーユニットの前記基板の一面はメタレンズ表面を形成し、前記メタレンズ表面は半径方向に沿って複数の同心円環領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環領域に色収差無しの集束を形成でき、当該ナノ構造を有するメタレンズは入射光の偏光に対してセンシティブではなく、従来の普通レンズより、メタレンズの厚さが小さく、重量が軽く、伝統的なメタレンズの収差を補正でき、より鮮明な画質を取得できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大口径色収差補正メタレンズであって、
異なる波長帯の光を透過可能な基板と、
前記基板の一面に設けられる複数のスーパーストラクチャーユニットであって、前記複数のスーパーストラクチャーユニットはアレイ状に配列され、各スーパーストラクチャーユニットの中心位置、又は各スーパーストラクチャーユニットの中心位置及び頂点位置にはナノ構造がそれぞれ設けられるスーパーストラクチャーユニットと、を含み、
前記ナノ構造は第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ軸対称であり、前記第1軸及び前記第2軸に沿って前記ナノ構造を分割することで複数の同様なナノ構造ユニットを取得し、前記第1軸と前記第2軸とは垂直に配置されるとともに、前記ナノ構造の高さ方向にそれぞれ垂直であり、
前記複数のスーパーストラクチャーユニットの前記基板の一面はメタレンズ表面を形成し、前記メタレンズ表面は半径方向に沿って複数の同心円環領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環領域に色収差無しの集束を形成できることを特徴とする大口径色収差補正メタレンズ。
【請求項2】
前記異なる波長帯の光は可視光及び赤外光を含むことを特徴とする請求項1に記載の大口径色収差補正メタレンズ。
【請求項3】
前記ナノ構造はナノピラー構造であり、前記ナノピラー構造は正ナノコラム、負ナノコラム、中空ナノピラー構造、角型ナノピラー構造及びトポロジナノピラー構造のうちの1つ又は複数を含み、好ましくは、負角型ナノピラー構造、負中空角型ナノピラー構造又は中空角型ナノピラー構造のうちの1つ又は複数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の大口径色収差補正メタレンズ。
【請求項4】
前記ナノピラー構造の光学位相は、前記ナノピラー構造の高さ、断面の形状及び前記ナノピラー構造の材質に関連し、
前記断面は前記基板に平行であり、
前記ナノ構造の材質はフォトレジスト、石英ガラス、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、結晶質及び非晶質シリコン、窒化ガリウム、結晶質ゲルマニウム、硫化セレン、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラスのうちのいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項3に記載の大口径色収差補正メタレンズ。
【請求項5】
前記メタレンズ表面の複数の円環領域は全体的に、前記メタレンズの焦点面で入射光の中心波長及び2つのエッジ波長に対して干渉増強を行い、
好ましくは、前記メタレンズ表面の円環は、メタレンズの、半径方向に沿う等価屈折率に従って周期的に配列され、等価屈折率はナノ構造材料の屈折率と空気の屈折率との間にあり、
好ましくは、前記メタレンズ表面の円環は、メタレンズの、半径方向に沿う群遅延に従って周期的に配列され、ナノ構造ベースにおける最大群遅延から最小群遅延を減算して群遅延周期を取得し、好ましくは、前記入射広域スペクトラム光はN個の特徴波長に離散し、メタレンズ表面の、半径方向r
0に沿う箇所のナノ構造のN個の特徴波長での位相と理論位相の絶対値との和が最小であり、下記の式に従って最適化を行って、以下を取得し、
【数13】
【数14】
はメタレンズ表面の、半径方向r
0に沿う箇所のナノ構造の特徴波長λ
iでの位相であり、i=1,2,…,Nであり、
【数15】
はメタレンズ表面の、半径方向r
0に沿う箇所の特徴波長λ
iの理論位相であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の大口径色収差補正メタレンズ。
【請求項6】
前記メタレンズ表面には、ナノ構造に対応する反射防止膜がめっきされ、基板の他の表面には、基板材料に対応する反射防止膜がめっきされることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の大口径色収差補正メタレンズ。
【請求項7】
色収差球面収差補正メタレンズシステムであって、
鏡筒と、
前記鏡筒内に装着され、異なる波長での光学位相が異なる請求項1~6のいずれか1項に記載のメタレンズと、を含むことを特徴とする色収差球面収差補正メタレンズシステム。
【請求項8】
光学システムであって、
鏡筒と、
同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットにおけるナノ構造が異なる少なくとも2枚の請求項1~6いずれか1項に記載のメタレンズと、を含み、
前記少なくとも2枚のメタレンズは同軸で、前記鏡筒内に装着され、前記メタレンズの異なる波長での光学位相が異なり、前記メタレンズのうちの少なくとも1つは、他のメタレンズの、対応する波長での収差を補正するためのものであることを特徴とする光学システム。
【請求項9】
そのうちの1つの前記メタレンズは、他のメタレンズの収差を補正するように配置され、前記収差は球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、位置色収差及び倍率色収差のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項8に記載の光学システム。
【請求項10】
前記メタレンズは第1メタレンズ及び第2メタレンズを含み、
入射光は前記第1メタレンズ及び前記第2メタレンズを順に経て、
前記第1メタレンズは前記第2メタレンズの全ての収差を補正するためのものであることを特徴とする請求項8に記載の光学システム。
【請求項11】
前記メタレンズの基板の他の表面には第1可視光波長帯反射防止膜がめっきされ、前記メタレンズ表面には第2可視光波長帯反射防止膜がめっきされることを特徴とする請求項10に記載の光学システム。
【請求項12】
前記メタレンズの基板の材質は石英ガラスであり、及び/又は
前記メタレンズのナノ構造の材質は窒化ケイ素、酸化チタン、窒化ガリウム、酸化アルミニウム及びシリカのうちのいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の光学システム。
【請求項13】
前記第1可視光波長帯反射防止膜は石英ガラスにマッチングし、及び/又は
前記第2可視光波長帯反射防止膜は前記ナノ構造の等価屈折率にマッチングすることを特徴とする請求項11に記載の光学システム。
【請求項14】
前記メタレンズの基板の他の表面には第1赤外波長帯反射防止膜がめっきされ、前記メタレンズ表面には第2赤外波長帯反射防止膜がめっきされ、前記第1赤外波長帯反射防止膜及び前記第2赤外波長帯反射防止膜は何れも結晶シリコンにマッチングすることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の光学システム。
【請求項15】
前記メタレンズの基板及びナノ構造の材質は結晶シリコン、結晶質ゲルマニウム、硫化セレン、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラスのうちの1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項8~14いずれか1項に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ分野に関し、特に、大口径色収差補正メタレンズ、色収差球面収差補正メタレンズシステム及び光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
結像、精密測定及び光通信などの科学、工業分野において、基本的な部品として、光学レンズは重要な作用を有する。伝統的な光学レンズは材料切断、表面研磨、仕上げ研磨及びコーティングなどの一連の複雑なプロセスを介して製造される。複数の伝統的な光学レンズからマルチレンズ群光学システムを構成する際、このようなシステムは一般的に多枚の屈折レンズ又はミラーレンズから構成され、1つの特定の応用結像、例えば無限イメージング、映像投影及び顕微結像などを完成させる。ところが、一般的に、伝統的な屈折ミラーレンズからなるレンズ群は、体積が大きく、且つ重量が重いなどという欠陥を有する。近年、メタレンズは小型光学レンズの新興技術になって、伝統的なレンズの体積が大きく、かつ重量が重いという欠陥を解决した。ところが、メタレンズには、偏光にセンシティブであり、広域スペクトラムの透過率が低く、大口径と色収差補正とを両立できないなどのいくつかの問題がある。
【0003】
また、本発明の理解を容易にするために、本発明の用語を以下のように解説する。群遅延(group delay)は、デバイス又は伝送媒体による全位相シフトの、角周波数に対する変化率、即ち、dφ/dωであり、φは全位相シフトであり、ωは角周波数であり、2πfに等しく、fは周波数である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術問題に対して、本発明の実施例は大口径色収差補正メタレンズ、色収差球面収差補正メタレンズシステム及び光学システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例の第1態様は大口径色収差補正メタレンズを提供し、大口径色収差補正メタレンズは、
可視光及び赤外光を含む異なる波長帯の光を透過可能である基板と、
前記基板の一面に設けられる複数のスーパーストラクチャーユニットであって、複数の前記スーパーストラクチャーユニットはアレイ状に配列され、各スーパーストラクチャーユニットの中心位置、又は各スーパーストラクチャーユニットの中心位置及び頂点位置にはナノ構造がそれぞれ設けられる複数のスーパーストラクチャーユニットと、を含み、
前記ナノ構造は第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ軸対称であり、前記第1軸及び前記第2軸に沿って前記ナノ構造を分割することで得られた複数のナノ構造ユニットは同様であり、前記第1軸と前記第2軸は垂直に配置されるとともに、前記ナノ構造の高さ方向にそれぞれ垂直であり、
前記複数のスーパーストラクチャーユニットの前記基板の一面はメタレンズ表面を形成し、前記メタレンズ表面は半径方向に沿って複数の同心円環領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環領域に色収差無しの集束を形成できる。
【0006】
好ましく、前記ナノ構造はナノピラー構造であり、前記ナノピラー構造は正ナノコラム、負ナノコラム、中空ナノピラー構造、角型ナノピラー構造及びトポロジナノピラー構造のうちの1つを含み、好ましくは、負角型ナノピラー構造、負中空角型ナノピラー構造又は中空角型ナノピラー構造である。
【0007】
好ましく、前記ナノピラー構造の光学位相は、前記ナノピラー構造の高さ、断面の形状及び前記ナノピラー構造の材質に関連し、
前記断面は前記基板に平行であり、
前記ナノ構造の材質はフォトレジスト、石英ガラス、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム(サファイア)、結晶質及び非晶質シリコン、窒化ガリウム、結晶質ゲルマニウム、硫化セレン、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラスのうちのいずれか1つ又は2つ以上である。
【0008】
好ましく、前記メタレンズ表面の複数の円環領域の間は、前記メタレンズの焦点面で入射光の中心波長及び2つのエッジ波長に対して干渉増強を行い、
好ましくは、前記メタレンズ表面の円環は、メタレンズの、半径方向に沿う等価屈折率に従って周期的に配列され、等価屈折率はナノ構造材料の屈折率と空気の屈折率との間にあり、
好ましくは、前記メタレンズ表面の円環は、メタレンズの、半径方向に沿う群遅延に従って周期的に配列され、ナノ構造ベースにおける最大群遅延から最小群遅延を減算して前記群遅延周期を取得し、好ましくは、前記入射広域スペクトラム光はN個の特徴波長に離散し、メタレンズ表面の、半径方向r
0に沿う箇所のナノ構造のN個の特徴波長での位相と理論位相の絶対値との和が最小であり、下記の式に従って最適化を行って、以下を取得し、
【数1】
【数2】
はメタレンズ表面の半径方向r
0に沿う箇所のナノ構造の特徴波長λ
iでの位相であり、i=1,2,…,Nであり、
【数3】
はメタレンズ表面の、半径方向r
0に沿う箇所の特徴波長λ
iの理論位相である。
【0009】
好ましく、前記メタレンズ表面及び基板の他の表面には、ナノ構造材料及び基板材料に対応する反射防止膜がそれぞれめっきされる。ここに言及された対応関係について、本出願人のCN202022010432.4(遠赤外線ケイ素ベースのメタレンズ反射防止膜及びメタレンズ)を参照すればよく、これに関して、CN202022010432.4の全ての内容は本明細書に援用される。
【0010】
本発明の実施例の第2態様は色収差球面収差補正メタレンズシステムを提供し、色収差球面収差補正メタレンズシステムは、
鏡筒と、
前記鏡筒内に装着され、異なる波長での光学位相が異なる上記のいずれか1つに記載のメタレンズと、を含む。
【0011】
本発明の実施例の第3態様は光学システムを提供し、光学システムは、
鏡筒と、
同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットにおけるナノ構造が異なる少なくとも2枚の請求項1~5のいずれか1項に記載のメタレンズと、を含み、
前記少なくとも2枚の前記メタレンズは同軸で、前記鏡筒内に装着され、前記メタレンズの異なる波長での光学位相が異なり、前記メタレンズのうちの一方は、他のメタレンズの、対応する波長での収差を補正するためのものである。
【0012】
好ましく、そのうちの1つの前記メタレンズは、他のメタレンズの収差を補正するように配置され、前記収差は球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、位置色収差及び倍率色収差のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
好ましく、前記メタレンズは第1メタレンズ及び第2メタレンズを含み、
入射光は前記第1メタレンズ及び前記第2メタレンズを順に経て、
前記第1メタレンズは前記第2メタレンズの全ての収差を補正するためのものである。
【0014】
好ましく、前記メタレンズの基板の他の表面には第1可視光波長帯反射防止膜がめっきされ、前記メタレンズ表面には第2可視光波長帯反射防止膜がめっきされ、前記メタレンズの基板の材質は石英ガラスであり、及び/又は
前記メタレンズのナノ構造の材質は窒化ケイ素、酸化チタン、窒化ガリウム、酸化アルミニウム及びシリカのうちのいずれか1つ又は2つ以上である。
【0015】
好ましく、前記第1可視光波長帯反射防止膜は石英ガラスにマッチングし、及び/又は
前記第2可視光波長帯反射防止膜は前記ナノ構造の屈折率にマッチングし、
又は、前記メタレンズの基板の他の表面には第1赤外波長帯反射防止膜がめっきされ、前記メタレンズ表面には第2赤外波長帯反射防止膜がめっきされ、前記第1赤外波長帯反射防止膜及び前記第2赤外波長帯反射防止膜は何れも結晶シリコンにマッチングする。
【0016】
好ましく、前記メタレンズの基板及びナノ構造の材質は結晶シリコン、結晶質ゲルマニウム、硫化セレン、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラスのうちの1つ又は2つ以上である。
【発明の効果】
【0017】
以上の本発明の実施例が提供する技術的解決策によれば、第1軸及び第2軸に沿って本発明のメタレンズのナノ構造を分割することで得られた複数のナノ構造ユニットは同様であるため、メタレンズは入射光の偏光に対してセンシティブではなく、従来の普通レンズより、メタレンズの厚さが小さく、重量が軽く、また、本発明のメタレンズ表面は半径方向に沿って複数の同心円環領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環領域に色収差無しの集束を形成でき、各特徴波長は何れも同一焦点に集束し、当該メタレンズは、従来の色収差補正メタレンズナノ構造のエネルギー効率の屈折率/群遅延の制限を解決し、従来の色収差補正メタレンズより、当該メタレンズは色収差を補正するとともに、センチメートルレベルの大口径を備え、伝統的なメタレンズの収差を補正し、より鮮明な画質を取得できる。
【0018】
また、本発明のメタレンズシステムは、鏡筒に装着される本発明のメタレンズを有し、メタレンズの異なる波長での光学位相が異なり、本発明の光学システムは、同軸で鏡筒に装着される多枚の本発明のメタレンズを有し、本発明のメタレンズ光学システムは広域スペクトラムセグメント広角結像の能力を有し、従来のメタレンズ光学システムより、本発明の光学システムは、メタレンズの、体積が小さく、重量が軽いという利点を維持するとともに、全ての収差を補正し、ハイビジョン、広角且つ広域スペクトラムに結像を行うことができる。
【0019】
ここで、以上の一般的な記載及び以下の詳細に対する記載は本発明を限定せず、ただ例示的及び解説的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1つの実施例におけるメタレンズの集束模式図及び一部の表面構造図面である。
【
図2A】本発明の1つの実施例におけるメタレンズ表面の正六角形配列図である。
【
図2B】本発明の1つの実施例におけるメタレンズ表面の正方形配列図である。
【
図3A】本発明の1つの実施例における正ナノピラー構造の模式図である。
【
図3B】本発明の1つの実施例における負ナノピラー構造の模式図である。
【
図3C】本発明の1つの実施例における中空ナノピラー構造の模式図である。
【
図3D】本発明の1つの実施例における負中空ナノピラー構造の模式図である。
【
図3E】本発明の1つの実施例における角型ナノピラー構造の模式図である。
【
図3F】本発明の1つの実施例における負角型ナノピラー構造の模式図である。
【
図3G】本発明の1つの実施例における中空角型ナノピラー構造の模式図である。
【
図3H】本発明の1つの実施例における負中空角型ナノピラー構造の模式図である。
【
図3I】本発明の1つの実施例におけるトポロジナノピラー構造の模式図である。
【
図4A】本発明の1つの実施例におけるケイ素ベースのナノ構造等価屈折率と10μm光学位相との関係図(動作波長8~12μm)である。
【
図4B】本発明の1つの実施例におけるケイ素ベースのナノ構造の10μmでの群遅延と10μm光学位相との関係図(動作波長8~12μm)である。
【
図5A】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズ周期等価屈折率(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図である。
【
図5B】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、8μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図である。
【
図5C】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、10μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(等価屈折率法)である。
【
図5D】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、12μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(等価屈折率法)である。
【
図5E】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズ周期群遅延(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(群遅延法)である。
【
図5F】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、8μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(群遅延法)である。
【
図5G】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、10μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(群遅延法)である。
【
図5H】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、12μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(群遅延法)である。
【
図5I】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、8μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(グローバル検索法)である。
【
図5J】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、10μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(グローバル検索法)である。
【
図5K】本発明の1つの実施例における、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの、12μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図(グローバル検索法)である。
【
図6A】等価屈折率法によって設計される、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの焦点付近のx-z平面光強度分布図である。
【
図6B】群遅延法によって設計される、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの焦点付近のx-z平面光強度分布図である。
【
図6C】グローバル検索法によって設計される、焦点距離が25mmであり、口径が19mmであるメタレンズの焦点付近のx-z平面光強度分布図である。
【
図7】本発明の別の実施例における、動作波長が8~12μmである二重メタレンズの光学システムの模式図である。
【
図8A】
図7の光学システムの第1メタレンズの等価屈折率と半径との関係図である。
【
図8B】
図7の光学システムの第2メタレンズの等価屈折率と半径との関係図である。
【
図9】
図7の光学システムの変調伝達関数図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、例示的な実施例を詳しく説明し、その例示は図面に示される。以下の記載は図面に関する場合、特に言及しない限り、異なる図面における同じ符号は、同様又は相当の要素を示す。以下、例示的な実施例に記載の実施形態は、本発明と一致する全ての実施形態を示していない。その逆に、特許請求の範囲において詳しく記載された、本発明のいくつかの態様と一致する装置、及び方法は一例に過ぎない。
【0022】
本発明において用いられる用語は本発明を限定することを意図せず、ただ、特定の実施例を記載することを目的とする。明細書において他の意味を明らかに表現していない限り、本発明及び特許請求の範囲において用いられる単数形式の「1種」、「前記」及び「当該」は多数の場合も含む。また、ここで、本明細書において用いられる用語「及び/又は」とは、1つ又は複数の関連項目の任意、又は全ての可能な組み合わせを含む。
【0023】
ここで、本発明において第1、第2、第3などの用語を使用して各種の情報を記載する場合があるが、これらの情報はこれらの用語に限定されない。これらの用語はただ同一種の情報を互いに区別する。例えば、本発明の範囲から逸脱しない場合、第1情報は第2情報とも呼ばれてもよく、同様に、第2情報は第1情報と呼ばれてもよい。状況によって、ここで使用した「仮に」という語句は、「……の場合」或「……の時」或いは「……応じて決定する」として解説されてもよい。矛盾しない場合、以下の実施例及び実施形態における技術的特徴を互いに組み合わせてもよい。
【0024】
複数の伝統的なレンズからなる光学システムには、組立アライメントの要求が高く、多数枚のレンズによって収差補正の光エネルギーの使用率が低減し、体積及び重量が大きく、且つシステム全体が複雑であるなどの複数の欠陥がある。平面回折レンズはある程度、体積及び重量を低減させることができるが、波長スケールの断面構造によって、正確な位相分布が困難になるため、高解像度という要求を達成できない。
【0025】
光学メタサーフェスは急速に台頭して、小型化、平面化光学を実現するための主流の方式になっている。光学メタサーフェスは、メタサーフェスによるアキシコンレンズ、ブレーズド回折格子、偏光子、ホログラム乾板及び平面レンズを実現する。連続的な2π位相で変化するメタサーフェスによって、単層球面収差除去メタレンズが可能となる。また、2層メタサーフェスメタレンズは、全ての単色収差を補正する。ところが、加工技術の極限による制限のため、従来の色収差補正メタレンズは、大口径及びより大きな数値の孔径を両立しにくく、メタレンズの結像光線システムへの適用が大幅に制限されている。
【0026】
本発明の実施例はナノ構造を提供し、第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ軸対称であり、前記第1軸及び前記第2軸に沿って前記ナノ構造を分割することで得られた複数のナノ構造ユニットは同様であり、前記第1軸と前記第2軸とは垂直に配置されるとともに、前記ナノ構造の高さ方向にそれぞれ垂直であり、異なる位置の前記ナノ構造の、異なる波長での光学位相が異なり、これにより、メタレンズの異なる波長での光学位相分布を限定する。
【0027】
本発明の実施例はメタレンズをさらに提供し、当該メタレンズは、可視光及び赤外光を含む異なる波長帯の光を透過可能である基板と、前記基板の同一表面に設けられる複数のスーパーストラクチャーユニットとを含み、複数の前記スーパーストラクチャーユニットはアレイ状に配列され、好ましくは、前記スーパーストラクチャーユニットは正六角形及び/又は正方形であってもよく、各スーパーストラクチャーユニットの中心位置、又は各スーパーストラクチャーユニットの中心位置及び頂点位置には1つのナノ構造がそれぞれ設けられ、前記ナノ構造は第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ軸対称であり、前記第1軸及び前記第2軸に沿って前記ナノ構造を分割することで得られた複数のナノ構造ユニットは同様であり、前記第1軸と前記第2軸とは垂直であり、且つ前記ナノ構造の高さ方向にそれぞれ垂直である。異なる位置での前記ナノ構造の、異なる波長での光学位相が異なることで、メタレンズの、異なる波長での光学位相分布を限定する。前記複数のスーパーストラクチャーユニットの前記基板の一面はメタレンズ表面を形成し、前記メタレンズ表面は半径方向に沿って複数の同心円環領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環領域に色収差無しの集束を形成できる。本発明のメタレンズの、異なる波長での光学位相は異なる。メタレンズ表面は半径方向に沿って複数の同心円環領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環に色収差無しの集束を形成し、各円環の間はメタレンズの焦点面で、入射光の中心波長及び2つのエッジ波長に対して干渉増強を行うことで、色収差補正メタレンズに対して大口径と大数値の孔径とを両立させるという問題を解决した。
【0028】
本発明の実施例は色収差球面収差補正メタレンズシステムをさらに提供し、前記メタレンズシステムは、鏡筒と、レンズと、本発明の第1態様に記載の少なくとも1つのメタレンズとを含み、前記メタレンズは前記鏡筒内に装着され、前記メタレンズの異なる波長での光学位相が異なり、これにより、色収差無し、且つ球面収差無しの集束/発散を達成し、前記基板側の一面から形成されたメタレンズ表面、及び基板の他の表面には、ナノ構造材料、及び基板材料に対応する反射防止膜がそれぞれめっきされる。
【0029】
本発明の実施例は光学システムをさらに提供し、前記光学システムは、鏡筒と、本発明の第1態様に記載の少なくとも2枚のメタレンズとを含み、前記少なくとも2枚の前記メタレンズの、同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットにおけるナノ構造が異なり、例示的に、2枚の前記メタレンズのうち、1枚のメタレンズの、同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットでのナノ構造はナノコラム構造であってもよく、他方では角型ナノピラー構造であって、他のいくつかの実施例において、前記光学システムは多くの前記メタレンズを含む場合、各メタレンズの、同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットでのナノ構造は、部分的に同様である可能性があり、少なくとも2つの前記メタレンズは間隔を空けて配置され、前記メタレンズは同軸で前記鏡筒内に装着され、前記メタレンズの異なる波長での光学位相が異なり、前記メタレンズのうちの一つは、他のメタレンズの、対応する波長での収差を補正する。前記光学システムの1つの前記メタレンズは、他のメタレンズの収差を補正するように配置され、前記収差は球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、位置色収差及び倍率色収差のうちの少なくとも1つを含む。本発明の色収差補正メタレンズ及びその光学システムは、全収差補正広域スペクトラムセグメント広角結像の能力を有し、従来のメタレンズ光学システムより、本発明の光学システムは、体積が小さく、重量が軽く、集積しやすいという利点を維持するとともに、全ての収差を補正し、ハイビジョン、広角且つ広域スペクトラムに結像を行うことができる。
【0030】
以下、例示的な実施例を詳しく説明し、その例示は図面に示される。
【0031】
実施例1:
本発明の実施例はナノ構造21を提供し、前記ナノ構造21は第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ軸対称であり、前記第1軸及び前記第2軸に沿って前記ナノ構造21を分割することで得られた複数のナノ構造ユニットは同様であり、前記第1軸と前記第2軸とは垂直に配置されるとともに、前記ナノ構造21の高さ方向にそれぞれ垂直であり、異なる位置での前記ナノ構造21の、異なる波長での光学位相が異なることで、メタレンズ200の、異なる波長での光学位相分布を制限しており、前記ナノ構造21はナノピラー構造である。
【0032】
ナノ構造21はナノピラー構造であってもよいし、水平軸及び垂直軸に沿ってそれぞれ軸対称である他のナノ構造であってもよい。以下、ナノ構造21がナノピラー構造である例を説明するが、ここで、ナノ構造21は他の構造である場合、以下の実施例におけるナノピラー構造を、対応する構造に置き換えてもよい。
【0033】
ナノピラー構造は正ナノコラム、負ナノコラム、正ナノピラー構造、負ナノピラー構造、中空ナノピラー構造、負中空ナノピラー構造、角型ナノピラー構造、負角型ナノピラー構造、中空角型ナノピラー構造、負中空角型ナノピラー構造及びトポロジナノピラー構造のうちの1つを含む。例示的に、同一メタレンズにおいて、ナノピラー構造は正ナノピラー構造、負ナノピラー構造、中空ナノピラー構造、負中空ナノピラー構造、角型ナノピラー構造、負角型ナノピラー構造、中空角型ナノピラー構造、負中空角型ナノピラー構造及びトポロジナノピラー構造のうちの1つであり、加工が行い易い。
【0034】
本出願の実施例において、ナノ構造21の光学位相は、ナノピラー構造の高さ、断面の形状及びナノピラー構造の材質に関連する。ナノピラー構造の断面は基板1に平行である。ここで、第1軸、第2軸はナノ構造21の中心を通るとともに、水平面に平行である。
【0035】
図3A~
図3Iを参照する際、ナノピラー構造の高さ(即ち、ナノピラー構造のz方向における高さ)はHである。
【0036】
複数のナノ構造21から形成された構造全体は可視光を透過しようとすると、ナノピラー構造の高さHは300nm以上、且つ1500nm以下であり、隣接するナノピラー構造の間のピッチ(即ち、隣接する2つのナノピラー構造の中心の間のピッチ)は300nm以上、且つ650nm以下であり、ナノ構造の最小サイズ(直径、辺の長さ及び/又は隣接する2つのナノピラー構造の間の最小ピッチなど)は40nmであってもよい。例示的に、ナノピラー構造の高さHは300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、1200nm、1300nm、1400nm又は1500nmなどである。例示的に、隣接するナノピラー構造の間のピッチは300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、又は650nm、或いは範囲内の他の任意値である。
【0037】
複数のナノ構造21から形成された構造全体は8~12umの波長帯の赤外光を透過しようとすると、ナノピラー構造の高さHは5μm以上、且つ50μm以下であり、隣接するナノピラー構造の間のピッチは1.5μm以上、且つ5μm以下であり、ナノ構造の最小サイズ(直径、辺の長さ及び/又は隣接する2つのナノピラー構造の間の最小ピッチなど)は40nmであってもよい。例示的に、ナノピラー構造の高さHは5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm又は50μmなどである。例示的に、隣接するナノピラー構造の間のピッチは1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm又は5μm、或いは範囲内の他の任意値である。
【0038】
図3Aを参照する際、正ナノピラー構造211は第1円柱体を含み、当該第1円柱体は中実構造である。正ナノピラー構造211はx-y平面において範囲が40nm~400nmの間にある断面直径dを有し、例えば、dは40nm、50nm、150nm、200nm、230nm、300nm、350nm、400nm又は範囲内の任意の数値に設定されてもよい。
【0039】
図3Bを参照する際、負ナノピラー構造212は第1柱体2121を含み、第1柱体2121の断面の形状は、スーパーストラクチャーユニット2の形状と同様であり、例示的に、スーパーストラクチャーユニット2が六角形である場合、第1柱体2121の断面の形状も六角形であり、スーパーストラクチャーユニット2が正方形である場合、第1柱体2121の断面の形状も正方形である。本実施例において、第1柱体2121の断面の大きさはスーパーストラクチャーユニット2の大きさと同様である。第1柱体2121には、その天井部から底部まで延在する円柱状の第1中空部2122が設けられ、第1柱体2121と第1中空部2122とは同軸に配置される。負ナノピラー構造212はx-y平面(即ち、断面)において範囲が40nm~400nmの間にある断面直径dを有し、例えば、dは40nm、50nm、150nm、200nm、230nm、300nm、350nm、400nm又は範囲内の任意の数値に設定されてもよい。
【0040】
図3Cを参照する際、中空ナノピラー構造213は第2円柱体2131を含み、第2円柱体2131には、その天井部から底部まで延在する円柱状の第2中空部2132が設けられ、第2円柱体2131と第2中空部2132とは同軸に配置される。中空ナノピラー構造213はx-y平面において、断面外直径d
1及び内直径d
2を有し、d
1-d
2の範囲が40nm~400nmの間にあり、例えば、d
1-d
2は40nm、50nm、150nm、200nm、230nm、300nm、350nm、400nm又は範囲内の任意の数値に設定される。
【0041】
図3Dを参照する際、負中空ナノピラー構造214は第2柱体2141を含み、第2柱体2141の断面の形状は、スーパーストラクチャーユニット2の形状と同様であり、例示的に、スーパーストラクチャーユニット2が六角形である場合、第2柱体2141の断面の形状も六角形であり、スーパーストラクチャーユニット2が正方形である場合、第2柱体2141の断面の形状も正方形である。本実施例において、第2柱体2141の断面の大きさはスーパーストラクチャーユニット2の大きさと同様である。さらに、第2柱体2141には、その天井部から底部まで延在する円柱状の第3中空部2142が設けられる。さらに、第3中空部2142の内部には、中実構造である第3円柱体2143が設けられる。第2柱体2141、第3中空部2142及び第3円柱体2143は同軸に配置され、第2柱体2141は、第3円柱体2143の高さに等しく、第3円柱体2143の底部は基板1に貼り付けられる。
【0042】
図3Eを参照する際、角型ナノピラー構造215は、中実構造である第3柱体を含み、第3柱体の断面の形状は正方形である。
【0043】
図3Fを参照する際、負角型ナノピラー構造216は第4柱体2161を含み、第4柱体2161の断面の形状は、スーパーストラクチャーユニット2の形状と同様であり、例示的に、スーパーストラクチャーユニット2が六角形である場合、第4柱体2161の断面の形状も六角形であり、スーパーストラクチャーユニット2が正方形である場合、第4柱体2161の断面の形状も正方形である。本実施例において、第4柱体2161の断面の大きさはスーパーストラクチャーユニット2の大きさと同様である。さらに、第4柱体2161には、その天井部から底部まで延在する第4中空部2162が設けられ、第4中空部2162の断面の形状は正方形であり、第4柱体2161及び第4中空部2162は同軸に配置される。
【0044】
図3Gを参照する際、中空角型ナノピラー構造217は第5柱体2171を含み、第5柱体2171の断面の形状は正方形である。さらに、第5柱体2171には、その天井部から底部まで延在する第5中空部2172が設けられ、第5中空部2172の断面の形状は正方形である。第5柱体2171及び第5中空部2172は同軸に配置される。同一断面において、第5柱体2171に対応する正方形と第5中空部2172に対応する正方形の対応的な対角線は同一線上に配置される。
【0045】
図3Hを参照する際、負中空角型ナノピラー構造218は第6柱体2181を含み、第6柱体2181の横断面の形状は、スーパーストラクチャーユニット2の形状と同様であり、例示的に、スーパーストラクチャーユニット2が六角形である場合、第6柱体2181の断面の形状も六角形であり、スーパーストラクチャーユニット2が正方形である場合、第6柱体2181の断面の形状も正方形である。本実施例において、第6柱体2181の断面の大きさはスーパーストラクチャーユニット2の大きさと同様である。さらに、第6柱体2181には、その天井部から底部まで延在する第6中空部2182が設けられ、第6中空部2182の断面の形状は正方形である。第6中空部2182の内部には、中実構造である第7柱体2183が設けられ、第7柱体2183の断面の形状は正方形である。実施例において、第6柱体2181、第6中空部2182及び第7柱体2183は同軸に配置される。同一断面で、第7柱体2183に対応する正方形と第6中空部2182に対応する正方形の対応的な対角線は同一線上に配置される。
【0046】
図3Iを参照する際、トポロジナノピラー構造219は、中実構造である第8柱体を含む。第8柱体の断面の形状は多角形であり、多角形の辺は弧状である。
【0047】
実施例2:
本発明の実施例はメタレンズ200を提供し、
図1~
図2Bを参照する際、当該メタレンズは基板1、及び基板1の同一表面に設けられる複数のスーパーストラクチャーユニット2を含む。基板1は異なる波長帯の光を透過でき、本発明の実施例において、異なる波長帯の光は可視光及び赤外光を含んでもよいし、他を含んでもよい。例示的に、基板1から透過した可視光の波長は400nm以上、且つ700nm以下でもよい。例示的に、基板1から透過した赤外光の波長は8μm以上、且つ12μm以下でもよい。メタレンズ200の表面は半径方向に沿って複数の同心円環230領域に分けられ、入射広域スペクトラム光は各円環230に色収差無しの集束を形成し、各円環230の間はメタレンズの焦点面で、入射光の中心波長及び2つのエッジ波長に対して干渉増強を行い、又は、メタレンズ表面ナノ構造21が、数千から数万個を含む偏光不明のナノ構造ベースから、最適に選択(
図1のメタレンズ表面の一部の図面)されることにより、各特徴波長は何れも同一焦点に集束し、色収差補正メタレンズに対して大口径と大数値の孔径とを両立させるという問題を解決する。
【0048】
複数のスーパーストラクチャーユニット2はアレイ状に配列され、スーパーストラクチャーユニット2は正六角形及び/又は正方形であり、例示的に、
図2Bを参照する際、各スーパーストラクチャーユニット2の中心位置には1つのナノ構造21がそれぞれ設けられ、このようなアレイ配列によって形成されたメタレンズ200のナノ構造21の数量は最も少ないとともに、形成されたメタレンズ200の性能もニーズに合っている。或いは、例示的に、
図2Aを参照する際、各スーパーストラクチャーユニット2の頂点位置及び各スーパーストラクチャーユニット2の中心位置には1つのナノ構造21がそれぞれ設けられてもよい。ここで、1つのナノ構造21は、ナノ構造の全体化で認定され、ある場合、前記ナノ構造21は複数のサブナノ構造であってもよく、複数のナノ構造として認められる。
【0049】
例示的に、いくつかの実施例において、
図2Aを参照する際、全てのスーパーストラクチャーユニット2は何れも正六角形であり、他のいくつかの実施例において、
図2Bを参照する際、全てのスーパーストラクチャーユニット2は何れも正方形であり、他のいくつかの実施例において、複数のスーパーストラクチャーユニット2は正六角形のアレイユニット及び正方形スーパーストラクチャーユニットを含む。ここで、他の実施例において、スーパーストラクチャーユニット2は他の正多角形に設計されてもよい。
【0050】
本実施例において、異なる位置のナノ構造21の異なる波長での光学位相が異なることで、メタレンズの異なる波長での光学位相分布を限定して、広域スペクトラムセグメントメタレンズを形成する。ここで、本出願の実施例の複数のナノ構造21から形成された構造全体は、可視光又は赤外光を同時に透過してもよいし、異なる波長帯の光を同時に透過してもよい。
【0051】
例示的に、基板1の厚さは0.1mm以上であり、2mmより小さく、例えば、基板1の厚さは0.1mm、0.5mm、1mm、1.5mm、2mm又は範囲内の任意の数値に設定されてもいい。
【0052】
本実施例の複数のナノ構造21から形成された構造全体の厚さはミクロンレベルであるため、基板1のナノ構造21は平面構造に近似する。好ましくは、複数のナノ構造21から形成された構造全体の厚さは50μm以下、例えば、1.5μm、5μm、10μm、1.5μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μmなどである。好ましくは、複数のナノ構造21から形成された構造全体の厚さと、メタレンズシステムの動作波長の大きさとは同一オーダーである。また、ここで、本発明の実施例において、メタレンズの厚さは、複数のナノ構造21から形成された構造全体の厚さと基板の厚さとの和である。ここで、基板1は複数のナノ構造21を支持する支持構造のみであり、基板1の材質とナノ構造21の材質とは同様であってもよいし、異なってもよい。
【0053】
例示的に、基板1の材質は石英ガラス又は結晶シリコンであってもよく、ここで、基板1の材質は他の材質であってもよい。
【0054】
例示的に、ナノ構造21の材質は、フォトレジスト、石英ガラス、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム(サファイア)、結晶シリコン(結晶質及び非晶質シリコンを含む)、窒化ガリウム、結晶質ゲルマニウム、硫化セレン、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラスのうちの1つ又は2つ以上であり、ここで、ナノ構造21の材質は他の材質であってもよい。また、本発明の実施例において、メタレンズ200の形状は基板の形状によって決定され、基板1は円形、方形、正多角形などの規則的な形状であってもよいし、不規則的な形状であってもよい。例示的に、基板1は円形であると、メタレンズ200の形状は円形であり、例示的に、基板1は正方形であると、メタレンズ200の形状は正方形である。
【0055】
ナノピラー構造は、大口径高速レーザー直接書き込み加工方式、フォトエッチング加工方式及びナノインプリント加工方式のうちの1つで、基板1に加工されるが、加工方式はこれらの加工方式に限定されない。
【0056】
例示的に、いくつかの実施例において、メタレンズ200表面の円環230は、メタレンズの、半径方向に沿う等価屈折率に従って周期的に配列される。メタレンズ200の等価屈折率は式(1)に示される。
【数4】
式(1)において、
【数5】
はメタレンズ表面の半径rであり、波長はλの位相であり、ωは光の円周波数であり、cは光速であり、Hはナノピラー構造の高さであり、rはメタレンズ200表面の半径、即ち、各ナノ構造21から基板1の中心までの距離である。
図4Aのブロックに示すように、ナノ構造21の等価屈折率データベースにおける等価屈折率区間は、中心位相が2π全体にできるだけ亘ることを保証することを前提として、最大等価屈折率から最小等価屈折率を減算して
【数6】
となる。
【0057】
式(1)における等価屈折率がナノ構造等価屈折率データベースにおける等価屈折率区間に対して余剰を取ることで、式(2)に示すように、周期等価屈折率を取得する。
【数7】
例示的に、いくつかの実施例において、メタレンズ200表面の円環230はメタレンズの、半径方向に沿う群遅延に従って周期的に配列される。メタレンズ200の表面径方向の群遅延は式(3)に示される。
【数8】
図4Bのブロックに示すように、ナノ構造群遅延データベースにおける群遅延区間は、中心位相が2π全体になるべくわたることを保証することを前提として、最大群遅延から最小群遅延を減算してΔGDとなる。
【0058】
式(3)における群遅延がナノ構造群遅延データベースにおける群遅延区間に対して余剰を取ることで、式(4)に示すように、周期群遅延を取得する。
【数9】
式(4)において、GD
P(r)はメタレンズの半径rでの群遅延である。
【0059】
例示的に、いくつかの実施例において、入射広域スペクトラム光はN個の特徴波長に離散し、式(5)に示すように、メタレンズ表面の半径方向r
0に沿う箇所のナノ構造のN個の特徴波長での位相と理論位相の絶対値との和が最小である。
【数10】
式(5)において、
【数11】
はメタレンズ表面の半径方向r
0に沿う箇所のナノ構造の特徴波長λ
iでの位相であり、i=1,2,…,Nであり、
【数12】
はメタレンズ表面の半径方向r
0に沿う箇所の特徴波長λ
iの理論位相であり、c
iはi番目の特徴波長に対応する最適化重みである。網羅的な方法で式(5)を解いて、ナノ構造データベースにおける全ての構造に亘り、最適な解を取得する。
【0060】
実施例3:
本発明の実施例は色収差球面収差補正メタレンズシステムをさらに提供し、当該システムは鏡筒(図示せず)及びメタレンズ200を含む。メタレンズ200は鏡筒内に装着され、メタレンズの異なる波長での光学位相が異なることで、色収差無し、且つ球面収差無しの集束/発散を達成する。
【0061】
例示的に、当該メタレンズ200の動作波長帯は8~12μmであり、口径は19mmであり、焦点距離は25mmである。当該メタレンズ200のメタレンズ周期等価屈折率(理論/実際)とメタレンズ半径との関係について、
図5Aを参照すればよく、実線は理論上必要な等価屈折率であり、星印はナノ構造ベースにおける、実現可能な等価屈折率である。
図5B~
図5Dは、当該メタレンズ200の、8μm、10μm、12μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図を示す。周期等価屈折率法によって設計されたメタレンズの焦点付近のx-z平面光強度分布図については、
図6Aを参照すればよい。
【0062】
例示的に、当該メタレンズ200の動作波長帯は8~12μmであり、口径は19mmであり、焦点距離は25mmである。当該メタレンズ200のメタレンズ周期群遅延(理論/実際)と、メタレンズ半径との関係については、
図5Eを参照すればよく、実線は理論上必要な群遅延であり、星印はナノ構造ベースにおける、実現可能な群遅延である。
図5F~
図5Hは、当該メタレンズ200の、8μm、10μm、12μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図を示す。周期群遅延法によって設計されたメタレンズの焦点付近のx-z平面光強度分布図については、
図6Bを参照すればよい。
【0063】
例示的に、当該メタレンズ的動作波長帯は8~12μmであり、口径は19mmであり、焦点距離は25mmである。
図5I~
図5Kは、当該メタレンズの、8μm、10μm、12μm位相(理論/実際)とメタレンズ半径との関係図を示す。グローバル検索法によって設計されたメタレンズの焦点付近のx-z平面光強度分布図については、
図6Cを参照すればよい。
【0064】
例示的に、色収差球面収差補正メタレンズシステムの動作波長は遠赤外線波長帯にあるため、当該色収差球面収差補正メタレンズシステムの、遠赤外線波長帯での透過率を向上させるために、例示的に、メタレンズ200では、基板1の他の表面、即ち、ナノ構造が設けられていない一面には、第1赤外波長帯反射防止膜がめっきされ、基板の一面から形成されたメタレンズ表面には第2赤外波長帯反射防止膜がめっきされ、基板1及びナノ構造21の材質は何れも結晶シリコンであり、第1赤外波長帯反射防止膜及び第2赤外波長帯反射防止膜は何れも結晶シリコンにマッチングし、第1赤外波長帯反射防止膜は、第2赤外波長帯反射防止膜の材質と同様であってもよいし、異なってもよい。
【0065】
無論、好ましくは、メタレンズの基板1の他の表面には、第1可視光波長帯反射防止膜がめっきされてもよく、メタレンズ表面には第2可視光波長帯反射防止膜がめっきされてもよく、この場合、メタレンズの基板の材質は石英ガラスであってもよく、第1可視光波長帯反射防止膜は石英ガラスにマッチングし、メタレンズのナノ構造21の材質は窒化ケイ素、酸化チタン、窒化ガリウム、酸化アルミニウム及びシリカのうちのいずれか1つ又は2つ以上であり、第2可視光波長帯反射防止膜は上記ナノ構造の材料の屈折率にマッチングする。
【0066】
実施例4:
本発明の実施例は光学システムをさらに提供し、当該光学システムは鏡筒(図示せず)と、それぞれ第1メタレンズ210、第2メタレンズ220である2枚のメタレンズとを含み、第1メタレンズ210及び第2メタレンズ220の、同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットにおけるナノ構造が異なり、例示的に、2枚の前記メタレンズのうちの1枚のメタレンズの、同じ半径でのメタレンズ表面のスーパーストラクチャーユニットにおけるナノ構造は中空ナノピラー構造であり、他枚は負角型ナノピラー構造である。入射光は第1メタレンズ210及び第2メタレンズ220を順に経て、第1メタレンズ210は第2メタレンズ220の全ての収差を補正する。
【0067】
例示的に、当該メタレンズシステムの動作波長帯は8~12μmであり、入射瞳口径は7mmであり、焦点距離は7mmであり、全画角は50°×38.5°である。当該光学システムの第1メタレンズ210、第2メタレンズ220の周期等価屈折率(理論/実際)と、メタレンズ200の半径との関係については、
図8A及び
図8Bをそれぞれ参照すればよく、実線は理論上必要な等価屈折率であり、星印はナノ構造ベースにおける、実現可能な等価屈折率である。
【0068】
当該光学システムの変調伝達関数については、
図9を参照すればよい。
図9に示すように、各視野の変調伝達関数は何れも回折極限に達し、当該メタレンズ光学システムの優れた広域スペクトル広角結像能力を表す。
【0069】
以上の実施例は本発明の技術的解決策を限定しておらず、単に説明するためのものである。上記の実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば理解できるように、依然として上記各実施例に記載の技術的解決策を修正し、又はその一部の技術特徴に対して等価的に置き換えを行ってもよく、これらの修正又は置き換えによって、相応的な技術的解決策の本質は本発明の各実施例の技術的解決策の精神及び範囲から離脱することがない。
【符号の説明】
【0070】
1・・・基板
2・・・スーパーストラクチャーユニット
21・・・ナノ構造
211・・・正ナノピラー構造
212・・・負ナノピラー構造
2121・・・第1柱体
2122・・・第1中空部
213・・・中空ナノピラー構造
2131・・・第2円柱体
2132・・・第2中空部
214・・・負中空ナノピラー構造
2141・・・第2柱体
2412・・・第3中空部
2143・・・第3円柱体
215・・・角型ナノピラー構造
216・・・負角型ナノピラー構造
2161・・・第4柱体
2162・・・第4中空部
217・・・中空角型ナノピラー構造
2171・・・第5柱体
2172・・・第5中空部
218・・・負中空角型ナノピラー構造
2181・・・第6柱体
2182・・・第6中空部
2183・・・第7柱体
219・・・トポロジナノピラー構造
200・・・メタレンズ
210・・・第1メタレンズ
220・・・第2メタレンズ
230・・・円環
【国際調査報告】