(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】miRNA-485ハンチントン病の阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230721BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230721BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230721BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230721BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230721BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20230721BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230721BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230721BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230721BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230721BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230721BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20230721BHJP
C12N 5/0797 20100101ALN20230721BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/14
A61P29/00
A61P25/00
A61K31/7088
A61K31/712
A61K31/7125
A61K35/76
A61K35/761
A61K47/42
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N5/0797
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581521
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 IB2021055890
(87)【国際公開番号】W WO2022003608
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564467
【氏名又は名称】バイオーケストラ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ジン-ヒョブ
(72)【発明者】
【氏名】コ, ハン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム, デ フン
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ヒュン ス
(72)【発明者】
【氏名】リム, ユ ナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BD35
4B065BD50
4B065CA44
4C076AA22
4C076AA95
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4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA011
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4C086AA01
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4C086ZA22
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA22
(57)【要約】
本開示は、ハンチントン病の症状または状態を治療するためのmiRNA阻害剤の使用を含む。本開示に有用なmiRNA阻害剤は、miR-485の発現及び/または活性を阻害することができ、次に、ハンチントン病に関連するタンパク質または遺伝子発現のレベルを調節することができる。本開示は、ハンチントン病の治療を必要とする対象においてハンチントン病を治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンチントン病の治療を必要とする対象において前記ハンチントン病を治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象が、投与前に、神経過敏、抑うつ、不随意運動、協調運動障害、新しい情報の学習または意思決定の困難、制御不能な運動、情緒的問題、及び思考能力(認知)の喪失を含むハンチントン病の1つまたは複数の特徴を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、前記投与後、ハンチントン病の1つまたは複数の特徴の改善を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記改善が、前記投与前の前記特徴と比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ハンチントン病が、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルの減少に関連している、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記miRNA阻害剤が、オートファジーを誘導し、及び/または炎症を治療または予防する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハンチントン病が、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルの減少に関連している、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記miRNA阻害剤が神経発生を誘導する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
神経発生を誘導することが、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖、分化、遊走、及び/または生存率の増加を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
神経発生を誘導することが、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数の増加を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記神経発生を誘導することが、軸索、樹状突起、及び/またはシナプスの発生の増加を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記miRNA阻害剤が食作用を誘導する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記miRNA阻害剤がmiR-485-3pを阻害する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記miR485-3pが、5’-gucauacacggcucuccucucu-3’(配列番号1)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記miRNA阻害剤が、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を含み、前記miRNA阻害剤が約7~約30ヌクレオチドの長さである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記miRNA阻害剤が、SIRT1遺伝子の転写及び/またはSIRT1タンパク質の発現を増加させる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記miRNA阻害剤が、前記ヌクレオチド配列の5’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記miRNA阻害剤が、前記ヌクレオチド配列の3’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記miRNA阻害剤が、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)、5’-GUGUAUGA-3’(配列番号3)、5’-CGUGUAUGA-3’(配列番号4)、5’-CCGUGUAUGA-3’(配列番号5)、5’-GCCGUGUAUGA-3’(配列番号6)、5’-AGCCGUGUAUGA-3’(配列番号7)、5’-GAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号8)、5’-AGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号9)、5’-GAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号10)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号11)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号12)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号13)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号14)、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号15)、5’-UGUAUGAC-3’(配列番号16)、5’-GUGUAUGAC-3’(配列番号17)、5’-CGUGUAUGAC-3’(配列番号18)、5’-CCGUGUAUGAC-3’(配列番号19)、5’-GCCGUGUAUGAC-3’(配列番号20)、5’-AGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号21)、5’-GAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号22)、5’-AGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号23)、5’-GAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号24)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号25)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号26)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号27)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)、及び5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)からなる群から選択される配列を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記miRNA阻害剤が、5’-TGTATGA-3’(配列番号62)、5’-GTGTATGA-3’(配列番号63)、5’-CGTGTATGA-3’(配列番号64)、5’-CCGTGTATGA-3’(配列番号65)、5’-GCCGTGTATGA-3’(配列番号66)、5’-AGCCGTGTATGA-3’(配列番号67)、5’-GAGCCGTGTATGA-3’(配列番号68)、5’-AGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号69)、5’-GAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号70)、5’-GGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号71)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号72)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号73)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号74)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号75)、5’-TGTATGAC-3’(配列番号76)、5’-GTGTATGAC-3’(配列番号77)、5’-CGTGTATGAC-3’(配列番号78)、5’-CCGTGTATGAC-3’(配列番号79)、5’-GCCGTGTATGAC-3’(配列番号80)、5’-AGCCGTGTATGAC-3’(配列番号81)、5’-GAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号82)、5’-AGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号83)、5’-GAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号84)、5’-GGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号85)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号86)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号87)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)、及び5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号89)からなる群から選択される配列を有する、請求項1~15または17~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記miRNA阻害剤の前記配列が、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の配列同一性を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記miRNA阻害剤が、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)と少なくとも90%の類似性を有する配列を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記miRNA阻害剤が、1個の置換または2個の置換を有するヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記miRNA阻害剤が、ヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記miRNA阻害剤が、ヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記miRNA阻害剤が、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記miRNA阻害剤が骨格修飾を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記骨格修飾が、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記miRNA阻害剤が、送達剤中で送達される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記送達剤が、ミセル、エクソソーム、脂質ナノ粒子、細胞外小胞、または合成小胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記miRNA阻害剤がウイルスベクターによって送達される、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルスベクターが、AAV、アデノウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスベクターが、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはこれらの任意の組み合わせの血清型を有するAAVである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記miRNA阻害剤が、送達剤によって送達される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記送達剤が、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、またはコンジュゲートを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記送達剤が、
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に帯電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
前記カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記miRNA阻害剤が、イオン結合を介して前記カチオン性キャリアユニットと相互作用する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記水溶性バイオポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記水溶性バイオポリマーが、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む、請求項38~40に記載の方法。
【請求項42】
前記水溶性バイオポリマーが、下式:
【化12】
(式中、nは、1~1000である)を有する、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記nが、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記nが、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記水溶性バイオポリマーが、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である、請求項38~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
カチオン性キャリア部分が、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む、請求項38~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記カチオン性キャリア部分が、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、または少なくとも50個の塩基性アミノ酸を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記カチオン性キャリア部分が、約30個~約50個の塩基性アミノ酸を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項47または請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記カチオン性キャリア部分が、約40個のリシンモノマーを含む、請求項38~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記アジュバント部分が、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる、請求項38~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記アジュバント部分が、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項38~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記アジュバント部分が、下式:
【化13】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記アジュバント部分がニトロイミダゾールを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記アジュバント部分が、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記アジュバント部分が、アミノ酸を含む、請求項38~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記アジュバント部分が、下式:
【化14】
(式中、Arは、
【化15】
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記アジュバント部分が、ビタミンを含む、請求項38~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記ビタミンが、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記ビタミンが、下式:
【化16】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する、請求項58または請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項58~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記ビタミンが、ビタミンB3である、請求項58~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記アジュバント部分が、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20のビタミンB3ユニットを含む、請求項58~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記アジュバント部分が、約10個のビタミンB3ユニットを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約40個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約10個のビタミンB3を有するアジュバント部分と、を含む、請求項58~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記送達剤が、前記miRNA阻害剤と会合されることでミセルを形成する、請求項58~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記会合が、共有結合、非共有結合、またはイオン結合である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ミセル中の前記カチオン性キャリアユニットと前記miRNA阻害剤とが、前記カチオン性キャリアユニットの正電荷と前記miRNA阻害剤の負電荷とのイオン比が約1:1となるように溶液中で混合される、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記カチオン性キャリアユニットが、酵素分解から前記miRNA阻害剤を保護することができる、請求項66~68のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月1日出願の米国仮特許出願第63/047,090号の利益を主張し、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子提出された配列表の参照
本出願とともにASCIIテキストファイル(ファイル名:4366_031PC01_Seqlisting_ST25..txt、サイズ:77,432バイト、作成日:2021年6月29日)の形で提出される、電子的に提出される配列表の全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0003】
本開示は、ハンチントン病を治療するためのmiR-485阻害剤(例えば、少なくとも1つのmiR-485結合部位を含むヌクレオチド分子をコードするポリヌクレオチド)の使用を提供するものである。
【背景技術】
【0004】
ハンチントン病は、遺伝性の進行性神経変性障害である。この障害は、異常に長いポリグルタミン配列を持つハンチンチンタンパク質をもたらす、ハンチンチン遺伝子の反復するCAGトリプレットシリーズの拡大によって引き起こされる。ハンチントン病は通常、30代または40代で発症する。いくつかのまれなケースでは、ハンチントン病は小児期または青年期に発症し得る。症状には、腕、脚、頭、顔、上半身の不随意の痙攣や単収縮(舞踏病);記憶力、集中力、判断力、計画力、組織力の低下;気分の変化、特にうつ病、不安、突然の怒り及び過敏性が含まれる。ハンチントン病に罹患した個人は、症状が始まってから約15~20年生存する。
【0005】
ハンチントン病の治療法はなく、この病気に関連する脳細胞の変性を遅らせたり止めたりする方法もない。したがって、治療は症状の管理に重点が置かれる。心理療法、言語療法、理学療法、及び作業療法も、症状を管理するために使用され得る。しかし、さまざまな治療法に対する個々の反応は予測不可能であり、効果的な治療計画を見つけることは困難であり、時間がかかる。そのため、ハンチントン病の効果的な治療法が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ハンチントン病の治療を必要とする対象においてハンチントン病を治療する方法であって、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様では、対象は、投与前に、神経過敏、抑うつ、不随意運動、協調運動障害、新しい情報の学習または意思決定の困難、制御不能な運動、情緒的問題、及び思考能力(認知)の喪失を含むハンチントン病の1つまたは複数の特徴を示す。いくつかの態様では、対象は、投与後、ハンチントン病の1つまたは複数の特徴の改善を示す。いくつかの態様では、改善は、投与前の特性と比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍である。
【0008】
いくつかの態様では、ハンチントン病は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルの減少に関連している。いくつかの態様では、ハンチントン病は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルの減少に関連している。いくつかの態様では、対象は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルの減少に関連した疾患または状態を有する。
【0009】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、オートファジーを誘導し、及び/または炎症を治療もしくは予防する。
【0010】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は神経発生を誘導する。いくつかの態様では、神経発生を誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖、分化、遊走、及び/または生存率の増加を含む。いくつかの態様では、神経発生を誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数の増加を含む。いくつかの態様では、神経発生を誘導することは、軸索、樹状突起、及び/またはシナプス発生の増加を含む。
【0011】
特定の態様では、miRNA阻害剤は、食作用を誘導する。
【0012】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、miR485-3pを阻害する。いくつかの態様では、miR485-3pは、5’-gucauacacggcucuccucucu-3’(配列番号1)を含む。
【0013】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を含み、miRNA阻害剤は約7~約30ヌクレオチドの長さである。
【0014】
いくつかの局面において、miRNA阻害剤は、SIRT1遺伝子の転写及び/またはSIRT1タンパク質の発現を増加させる。
【0015】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列の5’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。
【0016】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列の3’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。
【0017】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)、5’-GUGUAUGA-3’(配列番号3)、5’-CGUGUAUGA-3’(配列番号4)、5’-CCGUGUAUGA-3’(配列番号5)、5’-GCCGUGUAUGA-3’(配列番号6)、5’-AGCCGUGUAUGA-3’(配列番号7)、5’-GAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号8)、5’-AGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号9)、5’-GAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号10)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号11)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号12)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号13)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号14)、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号15)、5’-UGUAUGAC-3’(配列番号16)、5’-GUGUAUGAC-3’(配列番号17)、5’-CGUGUAUGAC-3’(配列番号18)、5’-CCGUGUAUGAC-3’(配列番号19)、5’-GCCGUGUAUGAC-3’(配列番号20)、5’-AGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号21)、5’-GAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号22)、5’-AGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号23)、5’-GAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号24)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号25)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号26)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号27)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)、及び5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)からなる群から選択される配列を有する。
【0018】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-TGTATGA-3’(配列番号62)、5’-GTGTATGA-3’(配列番号63)、5’-CGTGTATGA-3’(配列番号64)、5’-CCGTGTATGA-3’(配列番号65)、5’-GCCGTGTATGA-3’(配列番号66)、5’-AGCCGTGTATGA-3’(配列番号67)、5’-GAGCCGTGTATGA-3’(配列番号68)、5’-AGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号69)、5’-GAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号70)、5’-GGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号71)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号72)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号73)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号74)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号75)、5’-TGTATGAC-3’(配列番号76)、5’-GTGTATGAC-3’(配列番号77)、5’-CGTGTATGAC-3’(配列番号78)、5’-CCGTGTATGAC-3’(配列番号79)、5’-GCCGTGTATGAC-3’(配列番号80)、5’-AGCCGTGTATGAC-3’(配列番号81)、5’-GAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号82)、5’-AGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号83)、5’-GAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号84)、5’-GGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号85)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号86)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号87)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)、及び5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号89)からなる群から選択される配列を有する。
【0019】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤の配列は5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の配列同一性を有する。
【0020】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)と少なくとも90%の類似性を有する配列を有する。
【0021】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、1個の置換または2個の置換を有するヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)を含む。
【0022】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)を含む。
【0023】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)を含む。
【0024】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0025】
いくつかの態様では、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)である。
【0026】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、骨格修飾を含む。
【0027】
いくつかの態様では、骨格修飾は、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾である。
【0028】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、送達剤中で送達される。
【0029】
いくつかの態様では、送達剤は、ミセル、エクソソーム、脂質ナノ粒子、細胞外小胞、または合成小胞である。
【0030】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤はウイルスベクターによって送達される。
【0031】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、AAV、アデノウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスである。
【0032】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはこれらの任意の組み合わせの血清型を有するAAVである。
【0033】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は送達剤によって送達される。
【0034】
いくつかの態様では、送達剤は、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、またはコンジュゲートを含む。
【0035】
いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に帯電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する。
【0036】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、イオン結合を介してカチオン性キャリアユニットと相互作用する。
【0037】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0038】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。
【0039】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、下式:
【化1】
(式中、nは、1~1000である)を有する。
【0040】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。
【0041】
いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である。
【0042】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。
【0043】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む。
【0044】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7、少なくとも8つ、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、または少なくとも50の塩基性アミノ酸を含む。
【0045】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約30~約50の塩基性アミノ酸を含む。
【0046】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0047】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約40個のリシンモノマーを含む。
【0048】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。
【0049】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0050】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化2】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する。
【0051】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ニトロイミダゾールを含む。
【0052】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、アミノ酸を含む。
【0054】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化3】
(式中、Arは、
【化4】
であり、
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する。
【0055】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ビタミンを含む。
【0056】
いくつかの態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。
【0057】
いくつかの態様では、ビタミンは、下式:
【化5】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する。
【0058】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンB3である。
【0060】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20のビタミンB3ユニットを含む。
【0061】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、約10のビタミンB3ユニットを含む。
【0062】
いくつかの態様では、送達剤は、約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約40個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約10個のビタミンB3ユニットを有するアジュバント部分と、を含む。
【0063】
いくつかの態様では、送達剤は、miRNA阻害剤と会合されることでミセルを形成する。
【0064】
いくつかの態様では、会合は、共有結合、非共有結合、またはイオン結合である。
【0065】
いくつかの態様では、ミセル中のカチオン性キャリアユニットとmiRNA阻害剤とが、カチオン性キャリアユニットの正電荷とmiRNA阻害剤の負電荷とのイオン比が約1:1となるように溶液中で混合される。
【0066】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、酵素分解からmiRNA阻害剤を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本開示のキャリアユニットの例示的な構造を示す。提示される例は、アニオン性ペイロード、例えば、遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸、例えば、miRNA(antimir)と静電的に相互作用することができるカチオン性キャリア部分を含む。いくつかの態様では、AMは、WPとCCとの間に配置することができる。CC及びAMコンポーネントは、簡単に直線的配置で描かれている。しかしながら、本明細書に記述されるように、CC及びAMは、スキャフォールドの形で配置することができる。
【
図2A】miR485-3p阻害剤有りまたは無しで処理されたNSC34細胞における集約されたHtt分析の概略図を示す。
【
図2B】miR-485-3p阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトNSC-34細胞における不溶性凝集ハンチンチン(Htt)のレベルの減少を示すウエスタンブロット分析を提供する。NSC-34細胞は、GFPタグ付き野生型(Q23)または変異体(Q74)Httのいずれかでトランスフェクトされた。
【
図3A】miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトHEK293T細胞における不溶性凝集ハンチンチン(Htt)のレベルの減少を示すウエスタンブロット分析を提供する。
【
図3B】
図3Aのウエスタンブロットに基づいて、相対的な凝集したhtt発現レベルを定量化するグラフを示す。
【
図4A】Q-23-HttトランスフェクトHEK293T細胞と比較して、miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトHEK293T細胞におけるオートファジータンパク質SIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIのレベルの増加を示すウエスタンブロット分析を提供する。
【
図4B】
図4Aのウエスタンブロットから決定されたSIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIそれぞれの相対レベルを定量化するグラフを示す。
【
図4C】
図4Aのウエスタンブロットから決定されたSIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIそれぞれの相対レベルを定量化するグラフを示す。
【
図4D】
図4Aのウエスタンブロットから決定されたSIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIそれぞれの相対レベルを定量化するグラフを示す。
【
図4E】
図4Aのウエスタンブロットから決定されたSIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIそれぞれの相対レベルを定量化するグラフを示す。
【
図5】Q23-HttトランスフェクトPC12細胞と比較して、miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞における不溶性凝集ハンチンチン(Htt)のレベルの減少を示すウエスタンブロット分析を提供する。
【
図6】Q23-HttトランスフェクトPC12細胞と比較して、miR-485-3p阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞におけるオートファジータンパク質SIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIのレベルの増加、及びカスパーゼ3の切断の減少を示すウエスタンブロット分析を提供する。
【
図7A】miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きhttの分布(
図7D及び7E)、及びQ23-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きHttの分布(
図7B及び7C)ならびに対照細胞(
図7A)を可視化する画像を示す。
【
図7B】miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きhttの分布(
図7D及び7E)、及びQ23-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きHttの分布(
図7B及び7C)ならびに対照細胞(
図7A)を可視化する画像を示す。
【
図7C】miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きhttの分布(
図7D及び7E)、及びQ23-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きHttの分布(
図7B及び7C)ならびに対照細胞(
図7A)を可視化する画像を示す。
【
図7D】miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きhttの分布(
図7D及び7E)、及びQ23-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きHttの分布(
図7B及び7C)ならびに対照細胞(
図7A)を可視化する画像を示す。
【
図7E】miR-485阻害剤で処理したQ74-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きhttの分布(
図7D及び7E)、及びQ23-HttトランスフェクトPC12細胞におけるGFPタグ付きHttの分布(
図7B及び7C)ならびに対照細胞(
図7A)を可視化する画像を示す。
【
図8A】miR-485阻害剤で処理されたQ74-Httトランスフェクト(
図8C及び8D)及びQ23-Httトランスフェクト(
図8A及び8B)初代皮質ニューロンにおけるGFPタグ付きhttの分布を視覚化する画像を示す。左のパネルは対照治療を示し、右のパネルはmiR485-3p阻害剤治療を示している。
【
図8B】miR-485阻害剤で処理されたQ74-Httトランスフェクト(
図8C及び8D)及びQ23-Httトランスフェクト(
図8A及び8B)初代皮質ニューロンにおけるGFPタグ付きhttの分布を視覚化する画像を示す。左のパネルは対照治療を示し、右のパネルはmiR485-3p阻害剤治療を示している。
【
図8C】miR-485阻害剤で処理されたQ74-Httトランスフェクト(
図8C及び8D)及びQ23-Httトランスフェクト(
図8A及び8B)初代皮質ニューロンにおけるGFPタグ付きhttの分布を視覚化する画像を示す。左のパネルは対照治療を示し、右のパネルはmiR485-3p阻害剤治療を示している。
【
図8D】miR-485阻害剤で処理されたQ74-Httトランスフェクト(
図8C及び8D)及びQ23-Httトランスフェクト(
図8A及び8B)初代皮質ニューロンにおけるGFPタグ付きhttの分布を視覚化する画像を示す。左のパネルは対照治療を示し、右のパネルはmiR485-3p阻害剤治療を示している。
【
図9A】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9B】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9C】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9D】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9E】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9F】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9G】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9H】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9I】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ23(
図9A~9I)ランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9J】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9K】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9L】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9M】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9N】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9O】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9P】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9Q】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【
図9R】miR485-3pがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強することを示す。それぞれQ74(
図9J~9R)トランスフェクトPC12細胞におけるHttタンパク質(左パネル)、LC3B(中央パネル)、及びDAPI(右パネル)の免疫蛍光標識(スケールバー、20μm)であり、対照(上段)、100nM(中段)、または300nM(下段)miR485-3pトランスフェクション。白い矢印は、Htt及びLC3の共局在を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
記載される特定の組成物またはプロセスステップは無論のこと異なり得ることから、本開示をより詳細に記載するのに先立って、本開示は特定の組成物またはプロセスステップに限定されない点を理解されたい。本開示を読むことにより当業者に明らかとなるように、本明細書において記載及び例示される個々の態様の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかから容易に分離され得るか、またはそれらの特徴と組み合わされ得る別個の構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載される事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施することが可能である。
【0069】
本明細書に示される見出しは本開示の様々な態様を限定するものではなく、本開示の態様は、本明細書の全体を参照することによって定義され得るものである。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるので、本明細書で使用される用語は、あくまで特定の態様を説明することを目的としたものであって、限定することを目的としたものではない点も理解されるべきである。
【0070】
I.用語
本開示をより容易に理解し得るようにするために、特定の用語を最初に定義する。本出願で使用される場合、本明細書で明示的に別段の定めがある場合を除き、以下の用語のそれぞれは、以下に示す意味を有するものとする。さらなる定義は本明細書の随所に示される。
【0071】
「a」または「an」なる用語で示される実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a nucleotide sequence(ヌクレオチド配列)」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すものとして理解される点に留意されたい。したがって、「a」(また「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。特許請求の範囲が任意選択の要素を除外するように作成され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に」、「のみ」(“solely”、“only”)等の排他的な用語の使用のため、または「否定的な」(“negative”)限定の使用のための先行記述となるよう意図される。
【0072】
さらに、「及び/または」は、本明細書において使用される場合、2つの指定された特徴または構成要素の各々の、他方を伴うか、または伴わない具体的な開示とみなされるものである。したがって、本明細書において「A及び/またはB」などの表現で使用される用語「及び/または」は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、B、及び/またはC」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、次の態様:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)の各々を包含することが意図される。
【0073】
態様が「~を含む」という語を用いて本明細書で説明されている場合は常に、「~からなる」及び/または「本質的に~からなる」という用語で説明されている別の形で類似する態様も提供されるものと理解されたい。
【0074】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供している。
【0075】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で承認された形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数値を包括する。値の範囲が列挙される場合、その範囲について列挙される上限値と下限値との間の介在する各整数値、及びそれらの各小数部も、そのような値の間の各部分範囲とともに、明確に開示されると理解されたい。あらゆる範囲の上限値及び下限値が、独立して範囲に含まれ得るか、または範囲から除外され得、上限値及び下限値のいずれかが含まれる各範囲、いずれも含まれない各範囲、または両方が含まれる各範囲も本開示に包含される。したがって、本明細書において列挙される範囲は、列挙される端点を含む範囲内の値のすべての省略表現であると理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。
【0076】
値が明示的に列挙される場合、列挙される値とほぼ同じ数量または量の値も、本開示の範囲内であると理解されたい。組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の各副組み合せも明確に開示され、本開示の範囲内である。反対に、異なる要素または要素群が個別に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。ある開示の任意の要素が複数の代替例を有すると開示される場合、各代替例が単独で、または他の代替例との任意に組み合わせで除外される、その開示の例も本明細書に開示され、ある開示の2つ以上の要素が、そのような除外を有し得、そのような除外を有する要素のすべての組み合わせが本明細書に開示される。
【0077】
ヌクレオチドは、一般的に認められたヌクレオチドの1文字記号により表記される。特に明記しない限り、ヌクレオチド配列は、5’から3’の方向で左から右へ記載される。本明細書においてヌクレオチドは、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一般的に公知のヌクレオチドの1文字記号により表記される。したがって、「a」はアデニンを表し、「c」はシトシンを表し、「g」はグアニンを表し、「t」はチミンを表し、「u」はウラシルを表す。
【0078】
アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に記載する。本明細書においてアミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される、一般的に公知のアミノ酸の3文字記号または1文字記号により表記される。
【0079】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大体、おおよそ、またはその範囲内の意味で使用される。「約」という用語を数値範囲と併せて使用する場合、その用語は、示されている数値の前後まで、その境界を広げることによって、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、例えば、上または下に10パーセント(より高いまたはより低い)の変動で、明示される値の上及び下に数値を修正することができる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)なる用語には、これらに限定されるものではないが、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3A及び3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、AAVタイプ12、AAVタイプ13、AAVrh.74、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gaoetal.(J.Virol.78:6381(2004))及びMorisetal.(Virol.33:375(2004))に開示されるAAV血清型及び系統群、ならびに現在知られているかもしくは今後発見される他の任意のAAVが含まれる(例えば、FIELDSetal.VIROLOGY,volume2,chapter69(4thed.,Lippincott-RavenPublishers)を参照)。いくつかの態様では、「AAV」には、既知のAAVの誘導体が含まれる。いくつかの態様では、「AAV」には、改変された、または人工AAVが含まれる。
【0081】
「投与」、「投与すること」なる用語、及びその文法的変化形は、本開示のmiRNA阻害剤などの組成物を、薬学的に許容される経路により対象に導入することを指す。本開示のmiRNA阻害剤を含むミセルなどの組成物の対象への導入は、腫瘍内、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、もしくは皮下)、直腸、リンパ内、髄腔内、眼周または局所を含む任意の好適な経路によるものである。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。好適な投与経路は、組成物または薬剤がその意図される機能を実行するのを可能にする。例えば、適当な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物または薬剤を対象の静脈内に導入することによって投与される。
【0082】
本明細書で使用する場合、関心対象の1つ以上の値に適用される「ほぼ」という用語は、明示される参照値と同程度である値を指す。ある特定の態様では、「ほぼ」という用語は、特に明記しない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、明示される参照値の両方向に(数を超えるか、またはそれ未満の)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下の範囲内の値の範囲を指す(かかる数がとり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0083】
本明細書で使用する場合、「保存された」という用語は、比較されている2つ以上の配列の同じ位置において不変に見出されるものである、それぞれポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を指す。相対的に保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸は、配列の他の部分で出現するヌクレオチドまたはアミノ酸と比べてより関連する配列の間で保存されているものである。
【0084】
いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」または「同一である」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの態様において、2つ以上の配列は、互いに約70%同一である、約80%同一である、約90%同一である、約95%、約98%、または約99%同一である場合、「高度に保存された」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも30%同一であるか、少なくとも40%同一であるか、少なくとも50%同一であるか、少なくとも60%同一であるか、少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「保存されている」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに約30%同一であるか、約40%同一であるか、約50%同一であるか、約60%同一であるか、約70%同一であるか、約80%同一であるか、約90%同一であるか、約95%同一であるか、約98%同一であるか、または約99%同一である場合、「保存されている」と言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長に適用することができ、または部分、領域、もしくはそれらの特徴に適用することができる。
【0085】
本明細書で使用する場合、「由来する」という用語は、特定の分子もしくは生物または情報(例えば、アミノ酸または核酸の配列)を使用して、特定の分子もしくは生物から単離されるか、製造される構成要素を指す。例えば、第2の核酸配列に由来する核酸配列は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか、または実質的に類似するヌクレオチド配列を含み得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、派生した種は、例えば、自然に生じる変異誘発、人為的定方向突然変異誘発、または人為的ランダム変異誘発により得られ得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドを派生させるために使用される変異誘発は、意図的に定方向、もしくは意図的にランダムであるか、または各々の組み合わせである。最初のものに由来する異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを作製するためのヌクレオチドまたはポリペプチドの変異誘発は、ランダム事象(例えば、ポリメラーゼの不忠実さにより引き起こされる)であり得、派生したヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば、本明細書において述べられる適切なスクリーニング法によりなされ得る。一部の態様では、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対する少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、少なくとも約65%、少なくとも約66%、少なくとも約67%、少なくとも約68%、少なくとも約69%、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有し、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。
【0086】
本明細書で使用する場合、「コーディング領域」または「コーディング配列」とは、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は通常はアミノ酸に翻訳されないがコーディング領域の一部とみなすことができる。ただし、すべてのフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドンと、得られるポリペプチドのカルボキシ末端をコードする3’末端の翻訳終止コドンとによって一般的に決定される。
【0087】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック型塩基対形成則により互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)、またはオリゴマーと標的遺伝子との間を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’)」に相補的である。相補性は「部分的」であってよく、その場合、所与の核酸塩基配列の核酸塩基のすべてより少ないものが塩基対形成則に従って他の核酸塩基配列と一致している。例えば、いくつかの態様では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%であり得る。したがって、特定の態様では、「相補性」という用語は、標的核酸配列(例えば、miR-485の核酸配列)との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の一致または相補性を指す。または例のような、「完璧な」または「完全な」(100%)相補性が、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に存在し得る。いくつかの態様では、核酸塩基配列間の相補性の程度は、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に顕著な影響を与える。
【0088】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側に存在するヌクレオチド配列を指す。ある特定の態様では、下流ヌクレオチド配列は、転写開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に存在する。
【0089】
「賦形剤」及び「キャリア」という用語は、互換的に使用され、化合物、例えば本開示のmiRNA阻害剤の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。
【0090】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを生成するプロセスを指す。発現には、マイクロRNA結合部位、小分子ヘアピンRNA(shRNA)、小分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物へのポリヌクレオチドの転写が限定されることなく含まれる。発現には、メッセンジャーRNA(mRNA)へのポリヌクレオチドの転写、及びmRNAのポリペプチドへの翻訳が限定されることなく含まれる。発現によって、「遺伝子産物」が生成される。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、例えば遺伝子の転写によって生成されるRNAなどの核酸であってよい。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、核酸、遺伝子の転写によって生成されるRNAもしくはmiRNA、または転写産物から翻訳されたポリペプチドであってよい。本明細書に記載される遺伝子産物には、例えばポリアデニル化またはスプライシングなどの転写後修飾を有する核酸、または、例えばリン酸化、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、またはタンパク質分解開裂などの翻訳後修飾を有するポリペプチドがさらに含まれる。
【0091】
本明細書で使用する場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間の、例えば核酸分子間の全体的関連性を指す。一般に、「相同性」という用語は、2つの分子の進化的関係を意味する。したがって、相同な2つの分子は、共通の進化的祖先を有する。本開示の文脈において、相同性という用語は、同一性及び類似性の両方を包含する。
【0092】
いくつかの態様では、ポリマー分子は、分子における少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のモノマーが同一(厳密に同じモノマー)であるか、または類似する(保存的置換)場合、互いに「相同である」とみなされる。「相同である」という用語は、必然的に少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列)間の比較を指す。
【0093】
本開示との関連で、置換(それらがアミノ酸置換と称される場合でも)は、核酸レベルで行われ、すなわち、アミノ酸残基を代替アミノ酸残基で置換することは、第1のアミノ酸をコードするコドンを第2のアミノ酸をコードするコドンで置換することによって行われる。
【0094】
本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間の、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的なモノマー保存性を指す。いかなる追加の修飾語もない「同一である」という用語、例えば、「ポリヌクレオチドAはポリヌクレオチドBと同一である」は、ポリヌクレオチド配列同士が100%同一(100%の配列同一性)であることを意味する。例えば、「70%同一である」と2つの配列を表現することは、例えば、「70%配列同一性」を有するとそれらを表現することに等しい。
【0095】
2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の同一率(%)の計算は、例えば、最適な比較のために2つの配列をアラインメントすることにより実行され得る(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の一方または両方にギャップが導入され得、同一でない配列が比較のために無視され得る)。ある特定の態様において、比較目的のためにアラインメントされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するアミノ酸位のアミノ酸、またはポリヌクレオチドの場合は塩基が比較される。
【0096】
第1の配列におけるある位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチドにより占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一率(%)は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列により共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一率(%)の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0097】
異なる配列同士(例えば、ポリヌクレオチド配列)をアラインするために使用することができる適当なソフトウェアプログラムは様々なソースから入手可能である。配列同一率(%)を決定するための適当なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して2つの配列間の比較を実行する。BLASTNが核酸配列を比較するために使用されるのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラム集の一部であり、またwww.ebi.ac.uk/Tools/psaのEuropean Bioinformatics Institute(EBI)から利用可能である、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherである。
【0098】
配列アラインメントは、当該技術分野において公知の方法、例えば、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X、またはClustal Omega)、MUSCLEなどを使用して実施され得る。
【0099】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列とアラインメントされている単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自身の配列同一性パーセントを有し得る。配列同一性パーセント値は、小数第1位に丸められることが留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられるが、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は、80.2に切り上げられる。また、長さの数値は常に整数であることに留意されたい。
【0100】
ある特定の態様では、同一性パーセンテージ(%ID)または第1のアミノ酸配列(または核酸配列)の第2のアミノ酸配列(または核酸配列)に対する同一性パーセンテージ(%ID)は、%ID=100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査または特定の配列アラインメントプログラムによりアラインメントされる)において完全な一致と評価されたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数であり、Zは、第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列を超える場合、第1の配列の第2の配列に対する同一性パーセントは、第2の配列の第1の配列に対する同一性パーセントより高くなるであろう。
【0101】
当業者は、配列同一性パーセントの計算のための配列アランイメントの作成が、もっぱら一次配列データにより駆動される2つの配列間比較に限定されないことを当業者は理解するであろう。配列アラインメントは、配列データを異種の供給源由来のデータ、例えば、構造データ(例えば、タンパク質結晶構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統学的データと統合することにより生成され得ることも理解されよう。異種のデータを統合して多重配列アラインメントを生成する好適なプログラムは、www.tcoffee.orgで利用可能であり、代替的に例えば、EBIから利用可能なT-Coffeeである。配列同一率を計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動または手動のいずれかで管理され得ることも理解されよう。
【0102】
本明細書で使用する場合、「単離された」、「精製された」、「抽出された」という用語、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、1つ以上の精製プロセスを受けた本開示の所望の組成物、例えば、本開示のmiRNA阻害剤の調製状態を指す。いくつかの態様では、本明細書で使用する場合、単離または精製は、夾雑物を含有する試料から本開示の組成物、例えば本開示のmiRNA阻害剤を取り出す、(例えば、画分を)部分的に取り出すプロセスである。
【0103】
いくつかの態様では、単離された組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さないか、または代替的に、望ましくない活性のレベルもしくは量が許容可能なレベルまたは量以下である。他の態様では、単離された組成物は、許容可能な量及び/または濃度及び/または活性以上の量及び/または濃度の本開示の所望の組成物を有する。他の態様では、単離された組成物は、組成物が取得される出発物質と比較して濃縮される。この濃縮は、出発物質と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%、少なくとも約99.999%、少なくとも約99.9999%、または99.9999%超であり得る。
【0104】
いくつかの態様では、単離された調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様では、単離された調製物は、任意の混入している生物学的物質を100%、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、または少なくとも約90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)または不要な核酸、タンパク質、脂質、もしくは代謝産物を含み得る。
【0105】
本明細書で使用する場合、「連結された」という用語は、共有結合または非共有結合によりそれぞれ第2のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に結合された、第1のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に直接的に結合もしくは並列され得るか、または代替的に介在配列が第1の配列から第2の配列までに共有結合により加わり得る。「連結された」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列の第2のポリヌクレオチド配列への5’末端または3’末端での融合を意味するだけでなく、第2のポリヌクレオチド配列(または第1のポリヌクレオチド配列)における任意の2つのヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチド配列(またはそれぞれ第2のポリヌクレオチド配列)全体の挿入も含む。第1のポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーにより第2のポリヌクレオチド配列に連結され得る。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであり得る。
【0106】
本明細書で使用する場合、「miRNA阻害剤」とは、miRNAの発現、機能、及び/または活性を減少させるか、変化させるか、及び/または調節することができる化合物を指す。miRNA阻害剤は、標的miRNA核酸配列と少なくとも部分的に相補的であるポリヌクレオチド配列であってよく、それにより、miRNA阻害剤は標的miRNA配列とハイブリダイズする。例えば、本開示のmiR-485阻害剤は、標的miR-485核酸配列と少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド分子をコードしたヌクレオチド配列を含み、それにより、miR-485阻害剤はmiR-485配列とハイブリダイズする。さらなる態様では、miR-485配列に対するmiR-485のハイブリダイゼーションは、miR-485の発現、機能、及び/または活性を減少させるか、変化させるか、及び/または調節する(例えば、ハイブリダイゼーションによって、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現の増大がもたらされる)。
【0107】
「miRNA」、「miR」、及び「マイクロRNA」という用語は、互換的に使用され、RNAによる遺伝子調節に関与する真核生物において見出されるマイクロRNA分子を指す。この用語は、前駆体からプロセシングされた一本鎖RNA分子を指すために使用される。いくつかの態様では、「アンチセンスオリゴマー」という用語は、本開示のマイクロRNA分子を記述するために使用することもできる。本開示に関連するmiRNAの名称及びそれらの配列は、本明細書において提供される。マイクロRNAは、不完全な塩基対形成により標的mRNAを認識及びそれに結合し、標的mRNAの不安定化または翻訳阻害をもたらし、これにより、標的遺伝子発現を下方調節する。逆に、miRNA結合部位を含む分子(一般にmiRNAのシード領域に相補的な配列を含む分子)によるmiRNAの標的化は、miRNAにより誘発される翻訳阻害を低減または阻害し得、標的遺伝子の上方調節をもたらす。
【0108】
「ミスマッチ」または「複数のミスマッチ」という用語は、オリゴマー核酸塩基配列(例えば、miR-485阻害剤)における塩基対形成則に従って標的核酸配列(例えば、miR-485阻害剤)と一致しない1つ以上の核酸塩基(連続しているまたは離れているにかかわらず)を指す。多くの場合、完全な相補性が所望されるが、いくつかの態様では、標的核酸配列に対する1つ以上(好ましくは6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つ)のミスマッチが生じ得る。オリゴマー内の任意の位置でのバリエーションが含まれる。ある特定の態様では、本開示のアンチセンスオリゴマー(例えば、miR-485阻害剤)は、末端近くでの核酸塩基配列のバリエーション、内部でのバリエーションを含み、存在する場合、通常、5’及び/または3’末端の約6、5、4、3、2、または1サブユニット以内に存在する。いくつかの態様では、1つ、2つ、または3つの核酸塩基が除去されてもよく、依然としてオンターゲットの結合を与えることができる。
【0109】
本明細書で使用する場合、「調節する」、「修飾する」という用語、及びそれらの文法的変化形は、一般に、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動に適用される場合、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用するために、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動を増加または減少させること、例えば、直接または間接的に、促進すること/刺激すること/上方調節することまたはそれらに干渉すること/それらを阻害すること/それらを下方調節することにより変化させる能力を指す。場合によっては、修飾因子は、ある特定の濃度、レベル、活性、または機能を、コントロールと比較して、または一般に予想される活性の平均レベルと比較して、もしくは活性のコントロールレベルと比較して増加及び/または減少させ得る。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiRNA阻害剤、例えばmiR-485阻害剤は、miR-485の発現、機能及び/または活性を調節する(例えば減少させる、変化させる、または失わせる)ことができ、それにより、SIRT1タンパク質もしくは遺伝子の発現及び/または活性を調節することができる。
【0110】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、一本鎖形態または二重螺旋のいずれかでのリン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ、例えば、ホスホロチオエート及びチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNA螺旋が可能である。核酸分子及び特にDNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次及び二次構造のみを指し、任意の特定の三次形態に限定されない。したがって、この用語は、とりわけ線形または環状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、プラスミド、スーパーコイルDNA、及び染色体に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について述べる際、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿った5’~3’方向での配列のみを提供する通常の慣例に従って本明細書に記載され得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAとしては、限定されるものではないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、及び半合成DNAが挙げられる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されるような1つ以上の核酸を含む。
【0111】
「薬学的に許容されるキャリア」、「薬学的に許容される賦形剤」という用語、及びそれらの文法的変化形は、ヒトを含む動物に使用するための米国連邦政府の規制機関により承認されたか、または米国薬局方に列挙される薬剤のいずれか、ならびに対象への組成物の投与を禁止する程度まで望ましくない生理作用の発生を引き起こさず、投与される化合物の生物活性及び特性を抑制しない任意のキャリアまたは希釈剤を包含する。医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が含まれる。
【0112】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、1種以上の他の化学成分、例えば、薬学的に許容されるキャリア及び賦形剤と混合もしくは混ぜ合わされたか、またはそれらの中に懸濁された、例えば、本開示のmiRNA阻害剤などの本明細書に記載される化合物のうちの1種以上を指す。医薬組成物の1つの目的は、本開示のmiRNA阻害剤を含む製剤の対象への投与を促進することである。
【0113】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらのアナログ、またはそれらの混合物が挙げられるヌクレオチドの任意の長さのポリマーを指す。
【0114】
いくつかの態様では、この用語は分子の一次構造を指す。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖、及び一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本鎖、二本鎖、及び一本鎖リボ核酸(「RNA」)を含む。
この用語は、例えば、アルキル化及び/またはキャッピングにより修飾されたポリヌクレオチド及び未修飾形態のポリヌクレオチドも含む。
【0115】
いくつかの態様では、「ポリヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、スプライシングされたまたはスプライシングされていないにかかわらず、tRNA、rRNA、shRNA、siRNA、miRNA及びmRNAを含む、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)、プリンまたはピリミジン塩基のN-またはC-配糖体である任意の他の種類のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルホリノポリマー、ならびにDNA及びRNAにおいて見出されるような塩基対形成及び塩基スタッキングを可能にする配置で核酸塩基を含有することを条件とする他の配列特異的合成核酸ポリマーを含む。
【0116】
本開示のいくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドであってよい。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、RNAである。いくつかの態様では、RNAは、合成RNAである。いくつかの態様では、合成RNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基を含む。いくつかの態様では、ある特定の種類のすべての核酸塩基が、非天然核酸塩基と置き換えられている(例えば、本明細書において開示されるポリヌクレオチドにおけるすべてのウリジンが、非天然核酸塩基、例えば、5-メトキシウリジンと置き換えられ得る)。
【0117】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、例えばSIRT1遺伝子によりコードされた、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含み得る。これらの用語は、自然に修飾された、または、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合など、他の任意の操作もしくは改変などの介入により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含される。例えば、1つ以上のアミノ酸アナログ(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、及びクレアチンなどの非天然アミノ酸が挙げられる)、及び当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも定義の範囲内に含まれる。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。
【0118】
ポリペプチドとしては、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、上述のもののホモログ、オーソログ、パラログ、フラグメント及び他の等価物、バリアント、ならびにアナログが挙げられる。
【0119】
ポリペプチドは、単一のポリペプチドであり得るか、またはダイマー、トリマー、もしくはテトラマーなどの多分子複合体であり得る。それらは、一本鎖または多連鎖ポリペプチドも含み得る。最も一般的に、ジスルフィド結合は、多鎖ポリペプチドに見られる。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的アナログであるようなアミノ酸ポリマーにも適用され得る。いくつかの態様では、「ペプチド」は、アミノ酸約50個以下の長さ、例えば、アミノ酸約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、または約50個の長さであり得る。
【0120】
本明細書で使用する場合、「予防する」、「予防すること」という用語、及びそれらの変化形は、疾患、障害、及び/または状態の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または臨床徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の進行を部分的または完全に遅延させること;及び/または疾患、障害、及び/または状態に関連する病理を生じるリスクを減少させることを指す。いくつかの態様では、転帰の予防は、予防的治療によって実現される。
【0121】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」及び「プロモーター配列」という用語は互換可能であり、コーディング配列または機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般的に、コーディング配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、天然遺伝子にその全体が由来してもよく、または自然界にみられる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されてもよく、またはさらには、合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプにおいて、または発生の異なる段階において、または異なる環境的もしくは生理学的条件に応じて、遺伝子の発現を誘導することができる点は、当業者には理解されよう。ほとんどの細胞タイプでほとんどの時間に遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の細胞タイプにおいて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。発生または細胞分化の特定の段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処理後に誘導されて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「誘導性プロモーター」または「調節可能なプロモーター」と呼ばれる。多くの場合で調節配列の正確な境界は完全には定義されていないことから、異なる長さのDNAフラグメントが同じプロモーター活性を有し得る点もさらに認識されよう。
【0122】
プロモーター配列の境界はその3’末端では転写開始部位であり、バックグラウンドよりも高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小の数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に延びている。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS1によるマッピングによって簡便に定義される)ばかりでなく、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)も見出される。いくつかの態様では、本開示とともに使用することができるプロモーターには、組織特異的プロモーターが含まれる。
【0123】
本明細書で使用する場合、「予防」とは、疾患もしくは状態の発症を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防または遅延させるために使用される治療的行動または行動方針を指す。
【0124】
本明細書で使用する場合、「予防法」は、健康を維持し、疾患または状態を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防もしくは遅延させるために取られる手段を指す。
【0125】
本明細書で使用する場合、「遺伝子調節領域」または「調節領域」という用語は、コーディング領域の上流(5’側のノンコーディング配列)、その内部、またはその下流(3’側のノンコーディング配列)に位置して、転写、RNAプロセシング、または関連するコーディング領域の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節領域には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、またはステムループ構造が含まれ得る。コーディング領域が真核細胞内での発現のためのものである場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列がコーディング配列の3’側に通常は配置される。
【0126】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤(例えば、1つ以上のmiR-485結合部位を含むRNAをコードしたポリヌクレオチド)は、1つ以上のコーディング領域と機能的に関連付けられたプロモーター及び/または他の発現(例えば、転写)制御エレメントを含むことができる。機能的関連付けにおいて、遺伝子産物のコーディング領域は、1つ以上の調節領域と、その遺伝子産物の発現が調節領域(複数可)の影響または制御下に置かれるようにして関連付けられる。例えば、コーディング領域とプロモーターとは、プロモーター機能の誘導が、そのコーディング領域によってコードされたmRNAの転写をもたらし、かつプロモーターとコーディング領域との連結の性質が、プロモーターが遺伝子産物の発現を誘導する能力を妨げず、またはDNA鋳型が転写される能力も妨げない場合に、「機能的に関連付けられている」。プロモーター以外の他の発現制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルを、遺伝子産物の発現を誘導するようにコーディング領域と機能的に関連付けることもできる。
【0127】
本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間の、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えばmiRNA分子)間の全体的関連性を指す。ポリマー分子同士の互いに対する類似率(%)の計算は、類似率(%)の計算が当該技術分野で理解されるところの保存的置換を考慮している点を除いて、同一率(%)の計算と同様にして行うことができる。類似率(%)は、用いられる比較尺度、すなわち、核酸同士が、例えばそれらの進化的な近さ、電荷、体積、柔軟性、極性、疎水性、芳香族性、等電点、抗原性、またはそれらの組み合わせのどれにしたがって比較されるかによって左右されることが理解される。
【0128】
「対象」、「患者」、「個体」、及び「宿主」なる用語、及びそれらの変化形は、本明細書において互換的に使用され、限定されるものではないが、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)が挙げられる、診断、処置、または治療が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。
【0129】
本明細書で使用する場合、「その必要がある対象」という表現は、例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現レベルを増加させるためなど、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR-485阻害剤)の投与から恩恵を受ける哺乳動物対象などの対象を含む。
【0130】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらす必要がある対象において所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらすのに十分な、本開示のmiRNA阻害剤を含む試薬または医薬化合物の量である。治療上有効量は、予防が治療とみなされ得る場合、「予防上有効量」であり得る。
【0131】
本明細書で使用する場合、「処置する」、「処置」、または「処置すること」という用語は、例えば、疾患または状態の重症度の低減、疾患経過の期間の低減、疾患または状態に関連する1つ以上の症状の改善または除去、疾患または状態を必ずしも治療しない、疾患または状態を有する対象に対する有益な効果の提供を指す。この用語には、疾患もしくは状態またはその症状の予防または防止も含まれる。
【0132】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。
【0133】
「ベクター」とは、宿主細胞内に核酸をクローニング及び/または導入するための任意の担体を指す。ベクターは、結合されたセグメントの複製をもたらすように別の核酸セグメントを結合させることができるレプリコンとすることができる。「レプリコン」とは、インビボで自律的な複製ユニットとして機能する(すなわち、それ自身の制御下で複製することができる)任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)のことを指す。「ベクター」という用語には、細胞に核酸をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで導入するためのウイルス性及び非ウイルス性の担体が含まれる。例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む数多くのベクターが当該技術分野で知られており、使用されている。適当なベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、適当なポリヌクレオチドフラグメントを、相補的な粘着末端を有する選択されたベクターにライゲートすることによって行うことができる。
【0134】
ベクターは、ベクターを取り込んだ細胞の選択または特定を可能とする選択マーカーまたはレポーターをコードするように操作することができる。選択マーカーまたはレポーターの発現によって、ベクターに含まれる他のコーディング領域を取り込んで発現する宿主細胞を特定し、及び/または選択することが可能となる。当該技術分野において知られ、使用されている選択マーカーの例としては、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する耐性を与える遺伝子、ならびに表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアン調節遺伝子、イソペンテニル基転移酵素遺伝子などが挙げられる。当該技術分野において知られ、使用されているレポーターの例としては、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択マーカーはレポーターとみなすこともできる。
【0135】
II.使用方法
ハンチントン病の治療
いくつかの態様では、本開示は、miR-485を阻害する化合物(miRNA阻害剤)を対象に投与することによってハンチントン病の治療を必要とする対象においてハンチントン病を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、対象は、投与前に、神経過敏、抑うつ、不随意運動、協調運動障害、新しい情報の学習または意思決定の困難、制御不能な運動、情緒的問題、及び思考能力(認知)の喪失のうちの1つまたは複数の特徴を示す。いくつかの態様では、対象は、投与後、ハンチントン病の1つまたは複数の特徴の改善を示す。いくつかの態様では、改善は、投与前の特性と比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍である。
【0136】
SIRT1の調節
いくつかの態様では、ハンチントン病は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子のレベルの減少に関連している。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させる。
【0137】
サーチュイン1(SIRT1)は、NAD依存性脱アセチル化酵素サーチュイン1としても知られ、ヒトではSIRT1遺伝子によってコードされているタンパク質である。SIRT1遺伝子はヒトの第10番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000010.11のヌクレオチド67,884,656~67,918,390(+鎖の方向))。SIRT1遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「調節タンパク質SIR2ホモログ1」、「サイレント接合型情報調節因子2ホモログ1(silent mating-type information regulation2 homolog1)」、「SIR2」、「SIR2様タンパク質1」、「SIR2L1」、「SIR2α」、「1型サーチュイン」、「hSIRT1」、または「hSIR2」が挙げられる。
【0138】
ヒトSIRT1タンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも2種類の既知のアイソフォームがある。SIRT1アイソフォーム1(UniProt識別番号:Q96EB6-1)は747個のアミノ酸からなり、カノニカル配列として選択されている(配列番号31)。SIRT1アイソフォーム2(「Δエクソン8」としても知られる(UniProt識別番号:Q96EB6-2)は、561個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:454~639:欠失(配列番号32)。下記表1に、2つのSIRT1アイソフォームの配列を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0139】
本明細書で使用する場合、「SIRT1」なる用語は、細胞によって天然に発現されるSIRT1のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSIRT1アイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSIRT1アイソフォーム2の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はSIRT1アイソフォーム1及びアイソフォーム2の発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、アイソフォーム1及びアイソフォーム2の両方を併せて「SIRT1」と呼ぶ。
【0140】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現)と比較してSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0141】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485、例えばmiR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることにより、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、miR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることができる。
【0142】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるmiR-485-3pの発現)と比較してmiR-485-3pの発現及び/または活性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少させる。特定の態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるmiR-485-5pの発現)と比較してmiR-485-5pの発現及び/または活性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少させる。さらなる態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるmiR-485-3p及びmiR-485-5pの発現)と比較してmiR-485-3p及びmiR-485-5pの両方の発現及び/または活性を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少させる。いくつかの態様では、miR-485-3p及び/またはmiR-485-5pの発現は、miR-485阻害剤の投与後に完全に阻害される。
【0143】
本明細書に記載されるように、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与された場合にSIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示は、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、減少した)レベルに関連したハンチントン病の治療を必要とする対象において、それを治療する方法を提供する。
CD36の調節
【0144】
いくつかの態様では、ハンチントン病は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子のレベルの減少に関連している。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現の増加が必要な対象において、その発現を増加させる。
【0145】
クラスター決定因子36(CD36)は、血小板糖タンパク質4としても知られ、ヒトではCD36遺伝子によってコードされているタンパク質である。CD36遺伝子は第7番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000007.14のヌクレオチド80,602,656~80,679,277(+鎖の方向))。CD36遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「血小板糖タンパク質IV」、「脂肪酸転移酵素」、「スカベンジャー受容体クラスBメンバー3」、「糖タンパク質88」、「糖タンパク質IIIb」、「糖タンパク質IV」、「トロンボスポンジン受容体」、「GPIIIB」、「PASIV」、「GP3B」、「GPIV」、「FAT」、「GP4」、「BDPLT10」、「SCARB3」、「CHDS7」、「PASIV」、または「PAS-4」が挙げられる。
【0146】
ヒトCD36タンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも4種類の既知のアイソフォームがある。CD36アイソフォーム1(UniProt識別番号:P16671-1)は472個のアミノ酸からなり、カノニカル配列として選択されている(配列番号36)。CD36アイソフォーム2(「ex8-del」としても知られる(UniProt識別番号:P16671-2)は、288個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:274~288:SIYAVFESDVNLKGI→ETCVHFTSSFSVCKS、及び289~472:欠失(配列番号37)。CD36アイソフォーム3(「ex6-7-del」としても知られる(UniProt識別番号:P16671-3)は、433個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:234~272:欠失(配列番号38)。CD36アイソフォーム4(「ex4-del」としても知られる(UniProt識別番号:P16671-4)は、412個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:144~203:欠失(配列番号39)。下記表2に、4つのCD36アイソフォームの配列を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0147】
本明細書で使用する場合、「CD36」なる用語は、細胞によって天然に発現されるCD36のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム2の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム3の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36アイソフォーム4の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はCD36のアイソフォーム1とアイソフォーム2、及び/またはアイソフォーム3とアイソフォーム4、及び/またはアイソフォーム1とアイソフォーム4、及び/またはアイソフォーム2とアイソフォーム3の両方の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤はすべてのCD36アイソフォームの発現を増加させることができる。特に断らない限り、アイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、及びアイソフォーム4を本明細書ではまとめて「CD36」と呼ぶ。
【0148】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現)と比較してCD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0149】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485の発現及び/または活性を低下させることにより、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させる。miR-485-3p及びmiR-485-5pの2つの成熟型が知られている。本明細書で開示されるように、いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、miR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることができる。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、miR-485-5pの発現及び/または活性を低下させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485-3p及びmiR-485-5pの両方の発現及び/または活性を低下させることができる。
PGC1の調節
【0150】
いくつかの態様では、ハンチントン病は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子のレベルの減少に関連している。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現の増加が必要な対象において、その発現を増加させる。
【0151】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマコアクチベーター1-アルファ(PGC1-α)は、PPARGコアクチベーター1アルファまたはリガンド作用モジュレーター6としても知られ、ヒトではPPARGC1A遺伝子によってコードされているタンパク質である。PGC-1α遺伝子はヒトの第4番染色体上に位置している(GenBankアクセッション番号NC_000004.12のヌクレオチド23,792,021~24,472,905(+鎖の方向))。PGC-1α遺伝子及びそのコードされたタンパク質の同義語が知られており、「PPARGC1A」、「LEM6」、「PGC1」、「PGC1A」、「PGC-1v」、「PPARGC1,「PGC1α」、または「PGC-1(α)」が挙げられる。
【0152】
ヒトPGC-1αタンパク質には、選択的スプライシングから生じる少なくとも9種類の既知のアイソフォームがある。PGC-1αアイソフォーム1(UniProt識別番号:Q9UBK2-1)は798個のアミノ酸からなり、カノニカル配列として選択されている(配列番号40)。PGC-1αアイソフォーム2(「アイソフォームNT-7a」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-2)は、271個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:269~271:DPK→LFL;272~798:欠失(配列番号41)。PGC-1αアイソフォーム3(「アイソフォームB5」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-3)は、803個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDETSPRLEEDWKKVLQREAGWQ(配列番号42)。PGC-1αアイソフォーム4(「アイソフォームB4」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-4)は、786個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDEGYF(配列番号43)。PGC-1αアイソフォーム5(「アイソフォームB4-8a」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-5)は、289個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDEGYF、294~301:LTPPTTPP→VKTNLISK、302~798:欠失(配列番号44)。PGC-1αアイソフォーム6(「アイソフォームB5-NT」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-6)は、276個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDETSPRLEEDWKKVLQREAGWQ、269-271:DPK→LFL、272-798:欠失(配列番号45)。PGC-1αアイソフォーム7(「B4-3ext」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-7)は、138個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~18:MAWDMCNQDSESVWSDIE→MDEGYF、144~150:LKKLLLA→VRTLPTV、151~798:欠失(配列番号46)。PGC-1αアイソフォーム8(「アイソフォーム8a」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-8)は、301個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:294~301:LTPPTTPP→VKTNLISK、302~798:欠失(配列番号47)。PGC-1αアイソフォーム9(「アイソフォーム9」としても知られる(UniProt識別番号:Q9UBK2-9)は、671個のアミノ酸からなり、以下の点でカノニカル配列と異なる:1~127:欠失(配列番号48)。下記表3に、9つのPGC-1αアイソフォームの配列を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0153】
本明細書で使用する場合、「PGC-1α」なる用語は、細胞によって天然に発現されるPGC-1αのあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム2の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム1の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム2の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム3の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム4の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム5の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム6の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム7の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム8の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム9の発現を増加させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、PGC-1αアイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、アイソフォーム4、アイソフォーム5、アイソフォーム6、アイソフォーム7、アイソフォーム8、及びアイソフォーム9の発現を増加させることができる。特に断らない限り、本明細書では、アイソフォーム1及びアイソフォーム2の両方を併せて「PGC-1α」と呼ぶ。
【0154】
いくつかの態様において、本開示のmiR-485阻害剤は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対応する対象におけるPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現)と比較してPGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%増加させる。
【0155】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485の発現及び/または活性を低下させることにより、PGC-1αタンパク質及び/またはPGC-1α遺伝子の発現を増加させる。miR-485-3p及びmiR-485-5pの2つの成熟型のmiR-485が知られている。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、miR-485-3pの発現及び/または活性を低下させることができる。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、miR-485-5pの発現及び/または活性を低下させることができる。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、miR-485-3p及びmiR-485-5pの両方の発現及び/または活性を低下させることができる。
【0156】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連するハンチントン病の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連するハンチントン病の1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、PGC1-αタンパク質及び/またはPGC1-α遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連するハンチントン病の1つ以上の症状を改善することができる。そのような症状の非限定的な例を以下に記載する。
【0157】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象におけるハンチントン病の1つ以上の症状の発症または発症のリスクを、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%低下させる。
【0158】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における記憶喪失を、参照(例えば、投与前の対象における記憶喪失)と比較して低下させる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における記憶喪失または記憶喪失の発症のリスクを、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%低下させる。
【0159】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における記憶保持を、参照(例えば、投与前の対象における記憶保持)と比較して改善する。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における記憶保持を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善及び/または増加させる。
【0160】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における空間作業記憶を、参照(例えば、投与前の対象における空間作業記憶)と比較して改善する。本明細書で使用する場合、「空間作業記憶」という用語は、短期間にわたる作業記憶における空間情報活動を維持する能力を指す。いくつかの態様では、空間作業記憶は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善される。
【0161】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるスカベンジャー細胞(例えば、グリア細胞)の食作用活性を(例えば、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象における食作用活性)と比較して増加させる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経細胞の樹状突起スパイン密度を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または約300%以上、増加させる。
【0162】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるアミロイドベータ(Aβ)プラーク負荷を(例えば、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象におけるアミロイドベータ(Aβ)プラーク負荷)と比較して低下させる。本明細書で使用する場合、「アミロイドベータプラーク」とは、大きな凝集体及び数個のアミロイドベータペプチドの小さな会合体を含むアミロイドベータの異常な沈着のあらゆる形態を指し、アミロイドベータペプチドのあらゆる変異を含み得る。アミロイドベータ(Aβ)プラークは、例えば、シナプス組成の異常、シナプス形状、シナプス密度、シナプス伝導性の喪失、樹状突起径の変化、樹状突起長さの変化、スパイン密度の変化、スパイン面積の変化、スパイン長さの変化、またはスパインヘッド径の変化などの神経細胞変化を引き起こすことが知られている。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるアミロイドベータプラーク負荷を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%、低下させる。
【0163】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経発生を(例えば、CD36タンパク質及び/またはCD36遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象における神経発生)と比較して増加させる。本明細書で使用する場合、「神経発生」という用語は、神経細胞が形成されるプロセスを指す。神経発生は、神経幹細胞及び前駆細胞の増殖、これらの細胞の新たな神経細胞タイプへの分化、ならびに新しい細胞の遊走及び生存を包含する。この用語は、主として出生前及び周産期の発生の正常な発生中に生じる神経発生、ならびに疾患、傷害、または治療介入後に生じる細胞再生を含むものとする。成人の神経発生は、「神経」または「神経系」発生とも呼ばれる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経発生を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または約300%以上、増加させる。
【0164】
いくつかの態様では、神経発生を増加及び/または誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖、分化、遊走、及び/または生存率の増加をともなう。したがって、いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象の神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖を増加させることができる。特定の態様では、神経幹細胞及び/または前駆細胞の増殖は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。いくつかの態様では、神経幹細胞及び/または前駆細胞の生存率は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0165】
いくつかの態様では、神経発生を増加及び/または誘導することは、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数の増加をともなう。いくつかの態様では、神経幹細胞及び/または前駆細胞の数は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0166】
いくつかの態様では、神経発生を増加及び/または誘導することは、軸索、樹状突起、及び/またはシナプス発生の増加をともなう。特定の態様では、軸索、樹状突起、及び/またはシナプス発生は、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加する。
【0167】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経細胞の樹状突起スパイン密度を、参照(例えば、投与前の対象における神経細胞の樹状突起スパイン密度)と比較して増加させる。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における樹状突起スパイン密度を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、増加させる。
【0168】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経細胞の樹状突起スパインの喪失を、参照(例えば、投与前の対象における神経細胞の樹状突起スパインの喪失)と比較して減少させる。いくつかの態様では、miR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、神経変性疾患に罹患している)における神経細胞の樹状突起スパインの喪失を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%減少させる。
【0169】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経炎症を(例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させることにより)、参照(例えば、投与前の対象における神経炎症)と比較して減少させる。特定の態様では、miR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における神経炎症を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%減少させる。いくつかの態様では、神経炎症の減少は、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターの量が減少することを含む。したがって、特定の態様では、miR-485阻害剤をハンチントン病に罹患している対象に投与することは、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターの量を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%減少させる。いくつかの態様では、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターは、TNF-αを含む。いくつかの態様では、炎症性メディエーターは、IL-1βを含む。いくつかの態様では、グリア細胞が産生する炎症性メディエーターは、TNF-α及びIL-1βの両方を含む。
【0170】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象(におけるオートファジーを(例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の発現を増加させることにより)増加させる。本明細書で使用する場合、「オートファジー」という用語は、細胞ストレス応答ならびに細胞恒常性を維持するために長寿命タンパク質、タンパク質凝集体、及び損傷したオルガネラの分解を担う生存経路のことを指す。当然のことながら、オートファジーの異常は、ハンチントン病など多くの神経変性疾患を含む数多くの疾患と関連している。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤をハンチントン病に罹患している対象に投与することは、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較してオートファジーを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、または少なくとも約300%以上、増加させる。
【0171】
当技術分野で知られているように、ハンチントン病に罹患している対象は、特定の運動及び/または非運動症状を示す。例えば、ハンチントン病に関連した運動症状の非限定的な例としては、休止時振戦、自発運動の低下(動作緩慢)、不随意運動(舞踏病)強直、姿勢不安定性、すくみ足、手書き時の障害(小字症)、表情の減少、遅発(アキネジア)、動作維持困難、不明瞭発語、嚥下障害及び制御不能な激しい動きが挙げられる。ハンチントン病に関連した非運動症状の非限定的な例としては、自律神経機能障害、神経精神障害(気分、認知機能、行動、または思考の変化)、感覚の変化(特に嗅覚の変化)、及び睡眠困難が挙げられる。
【0172】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、対象(例えば、神経変性疾患に罹患している)における1つ以上の運動症状を、参照(例えば、投与前の対象における対応する運動症状)と比較して改善する。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における1つ以上の運動症状を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善する。
【0173】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における1つ以上の運動症状を、参照(例えば、投与前の対象における1つ以上の運動症状)と比較して改善する。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象における1つ以上の非運動症状を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善する。
【0174】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるシナプス機能を、参照(例えば、投与前の対象におけるシナプス機能)と比較して改善する。本明細書で使用する場合、「シナプス機能」という用語は、細胞(例えば、神経細胞)のシナプスが別の細胞(例えば、神経細胞)に電気的または化学的信号を伝達する能力を指す。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるシナプス機能を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、または少なくとも約300%以上、改善する。
【0175】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるシナプス機能の喪失を、参照(例えば、投与前の対象におけるシナプス機能の喪失)と比較して予防、遅延、及び/または改善することができる。いくつかの態様では、miR-485阻害剤を投与することは、ハンチントン病に罹患している対象におけるシナプス機能の喪失を、参照(例えば、miR-485阻害剤を投与しなかった対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%予防、遅延、及び/または改善する。
【0176】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、当該技術分野では周知の任意の適当な経路で投与することができる。特定の態様では、miR-485阻害剤は、補足的投与、筋肉内投与、皮下投与、点眼、静脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、眼窩内投与、脳内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、脊髄内投与、心室内投与、髄腔内投与、大槽内投与、嚢内投与、腫瘍内投与、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0177】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、1つ以上のさらなる治療薬と併用することができる。いくつかの態様では、さらなる治療薬とmiR-485阻害剤とは同時に投与される。特定の態様では、さらなる治療薬とmiR-485阻害剤とは順次投与される。
【0178】
いくつかの態様では、さらなる治療薬は、運動症状または非運動症状を軽減する。いくつかの態様では、さらなる治療薬は、運動を制御するための薬物(例えば、テトラベナジン)、抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、リスペリドン、オランザピン及びクエチアピン)、抗うつ薬(例えば、シタロプラム、フルオキセチン、及びセルトラリン)、気分安定薬(例えば、ジバルプロエックス、カルバマゼピン、及びラモトリジン)、マンタジン、レベチラセタム、クロナゼパム、またはそれらの組み合わせである。
【0179】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤を使用して、他の治療(例えば、テトラベナジン、ハロペリドール、シタロプラム、ジバルプロエックス、クロナゼパムなど)に反応しなかった対象のハンチントン病を治療することができる。
【0180】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は副作用を生じない。特定の態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、対象に投与される際に体重に悪影響を及ぼさない。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、対象に投与される際に死亡率の増加をもたらさず、病理学的異常も引き起こさない。
III.miRNA-485阻害剤
【0181】
本開示では、miR-485活性を阻害することができる化合物を開示する(miR-485阻害剤)。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、少なくとも1つのmiR-485結合部位を含むヌクレオチド分子をコードするヌクレオチド配列を含んでおり、ヌクレオチド分子はタンパク質をコードしていない。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、miR-485結合部位は、標的miRNA核酸配列(すなわち、miR-485)と少なくとも部分的に相補的であるため、miR-485阻害剤はmiR-485の核酸配列とハイブリダイズする。
【0182】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR阻害剤のmiR-485結合部位は、miR-485の核酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有する。特定の態様では、miR-485結合部位は、miR-485の核酸配列と完全に相補的である。
【0183】
miR-485のヘアピン前駆体はmiR-485-5p及びmiR-485-3pの両方を生成することができる。本開示との関連で、「miR-485」は、特に断らない限り、miR-485-5p及びmiR-485-3pの両方を包含する。ヒト成熟miR-485-3pは、配列5’-GUCAUACACGGCUCUCCUCUCU-3’(配列番号1;miRBaseアクセッション番号MIMAT0002176)を有する。miR-485-3pの5’-UCAUACA-3’(配列番号49)の5’末端配列はシード配列である。ヒト成熟miR-485-5pは、配列5’-AGAGGCUGGCCGUGAUGAAUUC-3’(配列番号33;miRBaseアクセッション番号MIMAT0002175)を有する。miR-485-5pの5’-GAGGCUG-3’(配列番号50)の5’末端配列はシード配列である。
【0184】
当業者には明らかであるが、ヒト成熟miR-485-3pは、他の種のものと相当の配列類似性を有している。例えば、マウス成熟miR-485-3pは、ヒト成熟miR-485-3pと、5’末端及び3’末端のそれぞれで1個のアミノ酸が異なっている(すなわち、5’末端に余分な「A」があり、3’末端の「C」がない)。マウス成熟miR-485-3pは以下の配列を有する:5’-AGUCAUACACGGCUCUCCUCUC-3’(配列番号34;miRBaseアクセッション番号MIMAT0003129;下線部はヒト成熟miR-485-3pとの重複部分に相当する)。マウス成熟miR-485-5pの配列はヒトの配列と同一である:5’-agaggcuggccgugaugaauuc-3’(配列番号33;miRBaseアクセッション番号MIMAT0003128)。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、ヒト及びマウスのmiR-485-3p及び/またはmiR-485-5pに結合することができる。
【0185】
いくつかの態様では、miR-485結合部位は、miR-485-3pの配列(またはその部分配列)と相補的(例えば、完全に相補的)な一本鎖のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、miR-485-3pの部分配列は、シード配列を含む。したがって、特定の態様では、miR-485結合部位は、配列番号49に記載される核酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列相補性を有する。特定の態様では、miR-485結合部位は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを除いてmiR-485-3pと相補的である。さらなる態様では、miR-485結合部位は、配列番号1に記載される核酸配列と完全に相補的である。
【0186】
いくつかの態様では、miR-485結合部位は、miR-485-5pの配列(またはその部分配列)と相補的(例えば、完全に相補的)な一本鎖のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、miR-485-5pの部分配列は、シード配列を含む。特定の態様では、miR-485結合部位は、配列番号50に記載される核酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列相補性を有する。特定の態様では、miR-485結合部位は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを除いてmiR-485-5pと相補的である。さらなる態様では、miR-485結合部位は、配列番号35に記載される核酸配列と完全に相補的である。
【0187】
miRNAのシード領域は、標的mRNAと緊密な二重鎖を形成する。多くのmiRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)と不完全に塩基対合し、miRNAの5’近位の「シード」領域が対合特異性の大部分を与える。いずれの理論にも束縛されるものではないが、最初の9個のmiRNAヌクレオチド(シード配列を含む)がより高い特異性を与えるのに対して、この領域の3’側のmiRNAヌクレオチドはより低い配列特異性を与え、それにより、より高度のミスマッチした塩基対合を許容し、2~7位が最も重要であると考えられる。したがって、本開示の特定の態様では、miR-485結合部位は、miR-485のシード配列の全長にわたって完全に相補的(すなわち、100%の相補性)な配列を含む。
【0188】
本開示との関連で使用することができるmiRNA配列及びmiRNA結合配列としては、これらに限定されるものではないが、本明細書に示される配列表の配列の全部または一部、ならびにmiRNA前駆体配列、またはこれらのmiRNAのうちの1つ以上のものの相補体が挙げられる。その配列が、示されるmiRNAの成熟配列またはその相補的配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるようなmiRNAまたはその相補的配列を含めるために名前による特定のmiRNAまたはmiRNA結合部位を含む本開示のあらゆる態様も想到される。
【0189】
特定の態様では、本開示のmiRNA結合配列は、改変された配列がmiR-485に依然として特異的に結合できる限り、本明細書で提供される配列表に示される配列の5’末端、3’末端、または5’末端及び3’末端の両方にさらなるヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの態様では、本開示のmiRNA結合配列は、改変された配列がmiR-485に依然として特異的に結合できる限り、提供される配列表に示される配列に対して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のヌクレオチドにおいて異なり得る。
【0190】
miRNA結合分子またはmiRNAに関して本明細書に記載されるあらゆる方法及び組成物は、合成miRNA結合分子に関して実施することができる点も具体的に想到される。本開示のRNA配列に関連した開示は、対応するDNA配列に等しく適用できる点も理解されよう。
【0191】
いくつかの態様では、本開示のmiRNA-485阻害剤は、ヌクレオチド配列の5’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、miRNA-485阻害剤は、ヌクレオチド配列の3’末端に少なくとも1個のヌクレオチド、少なくとも2個のヌクレオチド、少なくとも3個のヌクレオチド、少なくとも4個のヌクレオチド、少なくとも5個のヌクレオチド、少なくとも6個のヌクレオチド、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチドを含む。
【0192】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、約6~約30ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、7ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、8ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、9ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、10ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、miR-485阻害剤は、11ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、miR-485阻害剤は、12ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、13ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、14ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、15ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、miR-485阻害剤は、16ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、17ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、18ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、19ヌクレオチドの長さである。特定の態様では、miR-485阻害剤は、20ヌクレオチドの長さである。さらなる態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、21ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、22ヌクレオチドの長さである。
【0193】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、配列番号2~30から選択される配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、配列番号2~30からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のミスマッチを場合により含んでもよい。
【0194】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGA-3’(配列番号2)、5’-GUGUAUGA-3’(配列番号3)、5’-CGUGUAUGA-3’(配列番号4)、5’-CCGUGUAUGA-3’(配列番号5)、5’-GCCGUGUAUGA-3’(配列番号6)、5’-AGCCGUGUAUGA-3’(配列番号7)、5’-GAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号8)、5’-AGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号9)、5’-GAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号10)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号11)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号12)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号13)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号14)、または5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGA-3’(配列番号15)を含む。
【0195】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-UGUAUGAC-3’(配列番号16)、5’-GUGUAUGAC-3’(配列番号17)、5’-CGUGUAUGAC-3’(配列番号18)、5’-CCGUGUAUGAC-3’(配列番号19)、5’-GCCGUGUAUGAC-3’(配列番号20)、5’-AGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号21)、5’-GAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号22)、5’-AGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号23)、5’-GAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号24)、5’-GGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号25)、5’-AGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号26)、5’-GAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号27)、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)、または5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)を有する。
【0196】
いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-TGTATGA-3’(配列番号62)、5’-GTGTATGA-3’(配列番号63)、5’-CGTGTATGA-3’(配列番号64)、5’-CCGTGTATGA-3’(配列番号65)、5’-GCCGTGTATGA-3’(配列番号66)、5’-AGCCGTGTATGA-3’(配列番号67)、5’-GAGCCGTGTATGA-3’(配列番号68)、5’-AGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号69)、5’-GAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号70)、5’-GGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号71)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号72)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号73)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号74)、5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGA-3’(配列番号75)、5’-TGTATGAC-3’(配列番号76)、5’-GTGTATGAC-3’(配列番号77)、5’-CGTGTATGAC-3’(配列番号78)、5’-CCGTGTATGAC-3’(配列番号79)、5’-GCCGTGTATGAC-3’(配列番号80)、5’-AGCCGTGTATGAC-3’(配列番号81)、5’-GAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号82)、5’-AGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号83)、5’-GAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号84)、5’-GGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号85)、5’-AGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号86)、5’-GAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号87)、5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)、または5’-GAGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号89)を有する。
【0197】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiRNA阻害剤(すなわち、miR-485阻害剤)は、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)と少なくとも90%の類似性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、miRNA阻害剤は、1個の置換または2個の置換を有するヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)を含む。特定の態様では、miRNA阻害剤は、ヌクレオチド配列5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)または5’-AGAGGAGAGCCGTGTATGAC-3’(配列番号88)を含む。
【0198】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~35、または62~89のいずれか1つと、N末端に少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個のさらなる核酸、C末端に少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個のさらなる核酸、またはその両方と、を含む。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~35、または62~89のいずれか1つと、N末端に1個のさらなる核酸及び/またはC末端に1個のさらなる核酸と、を含む。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~35、または62~89のいずれか1つと、N末端に1個または2個のさらなる核酸及び/またはC末端に1個または2個のさらなる核酸と、を含む。いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、本明細書に開示される配列、例えば、配列番号2~35、または62~89のいずれか1つと、N末端に1~3個のさらなる核酸及び/またはC末端に1~3個のさらなる核酸と、を含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、5’-GAGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号29)を含む。
【0199】
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、1個のmiR-485結合部位を含む。さらなる態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、少なくとも2個のmiR-485結合部位を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、3個のmiR-485結合部位を含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、4個のmiR-485結合部位を含む。いくつかの態様では、miR-485阻害剤は、5個のmiR-485結合部位を含む。特定の態様では、miR-485阻害剤は、6個以上のmiR-485結合部位を含む。いくつかの態様では、すべてのmiR-485結合部位は同じである。いくつかの態様では、すべてのmiR-485結合部位は異なる。いくつかの態様では、少なくとも1つのmiR-485結合部位が異なる。いくつかの態様では、すべてのmiR-485結合部位は、miR-485-3p結合部位である。他の態様では、すべてのmiR-485結合部位は、miR-485-5p結合部位である。さらなる態様では、miR-485阻害剤は、少なくとも1つのmiR-485-3p結合部位と、少なくとも1つのmiR-485-5p結合部位とを含む。
【0200】
III.a.化学修飾されたポリヌクレオチド
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、少なくとも1つの化学修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。本開示のポリヌクレオチドが化学修飾されている場合、ポリヌクレオチドは、「修飾ポリヌクレオチド」と呼ぶことができる。
【0201】
「ヌクレオシド」は、糖分子(例えば、ペントースまたはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書において「核酸塩基」とも称される)とともに含有する化合物を指す。「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾されたヌクレオチドは、1つ以上の修飾された非天然ヌクレオシドを含むように、任意の有用な方法により、例えば、化学的に、酵素的に、または組換えにより合成され得る。
【0202】
ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの領域または複数の領域を含み得る。かかる領域は、可変的な骨格結合を有し得る。連結は、標準的なホスホジエステル結合であり得、その場合、ポリヌクレオチドはヌクレオチドの領域を含む。
【0203】
本明細書において開示される修飾されたポリヌクレオチドは、様々な異なる修飾を含み得る。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドは、1種、2種、またはそれ以上(任意選択的に異なる)のヌクレオシドまたはヌクレオチド修飾を含有する。いくつかの態様では、修飾されたポリヌクレオチドは、1つ以上の所望の特性、例えば、未修飾ポリヌクレオチドと比較して改善された熱または化学安定性、低減された免疫原性、低減された分解、標的マイクロRNAに対する結合の増加、他のマイクロRNAまたは他の分子に対する低減された非特異的結合を示し得る。
【0204】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、化学修飾されている。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドに関して、「化学修飾」または必要に応じて「化学修飾された」という用語は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドに対する、限定されるものではないが、それらの核酸塩基、糖、骨格、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるそれらの位置、パターン、パーセント、または集団のうちの1つ以上における修飾を指す。
【0205】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの均一な化学修飾、または同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかにおける同じ出発修飾の漸減滴定(downward titration)によって生成される修飾の群、またはランダムな組み込みを伴うことを除いて同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの測定されたパーセントの化学修飾を有し得る。さらなる態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、ポリヌクレオチド全体にわたって同じヌクレオシド種類のうちの2つ、3つ、または4つの均一な化学修飾を有し得る(例えば、すべてのウリジン及びすべてのシトシンなどが、同じように修飾される)。
【0206】
修飾されたヌクレオチドの塩基対形成は、標準的なアデニン-チミン、アデニン-ウラシル、またはグアニン-シトシン塩基対だけでなく、ヌクレオチド及び/または非標準的もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチドの間で形成される塩基対も包含し、ここで、水素結合ドナー及び水素結合アクセプターの配置が、非標準的塩基と標準的塩基との間、または2つの相補的な非標準的塩基構造間の水素結合を可能にする。かかる非標準的塩基対形成の1つの例は、修飾された核酸塩基イノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対形成である。塩基/糖またはリンカーの任意の組み合わせが、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれ得る。
【0207】
当業者は、特に注記される場合を除き、本出願に記載されるポリヌクレオチド配列は、代表的なDNA配列において「T」を列挙するが、配列がRNAを表す場合、「T」は「U」と置換されることを理解するであろう。例えば、本開示のTDは、RNAとして、DNAとして、またはRNA及びDNAユニットの両方を含むハイブリッド分子として投与され得る。
【0208】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、8つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、18、20以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。
【0209】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドにおける核酸塩基、糖、骨格結合、またはそれらの任意の組み合わせは、少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%修飾される。
【0210】
(i)塩基修飾
特定の態様では、化学修飾は、本開示(例えば、miR-485阻害剤)のポリヌクレオチド内の核酸塩基に存在する。いくつかの態様では、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、修飾されたウリジン(例えば、シュードウリジン(ψ)、2-チオウリジン(s2U)、1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、1-エチル-シュードウリジン(e1ψ)、または5-メトキシ-ウリジン(mo5U))、修飾されたシトシン(例えば、5-メチル-シチジン(m5C))、修飾されたアデノシン(例えば、1-メチル-アデノシン(m1A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、または2-メチル-アデニン(m2A))、修飾されたグアノシン(例えば、7-メチル-グアノシン(m7G)または1-メチルグアノシン(m1G))、またはそれらの組み合わせである。
【0211】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、特定の修飾について均一に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたって修飾される)。例えば、ポリヌクレオチドは、同じ種類の塩基修飾、例えば、5-メチル-シチジン(m5C)により均一に修飾され得、これは、ポリヌクレオチド配列におけるすべてのシトシン残基が、5-メチル-シチジン(m5C)と置き換えられることを意味する。同様に、ポリヌクレオチドは、配列に存在する任意の種類のヌクレオシド残基について、修飾されたヌクレオシド、例えば、上記に記載されるもののいずれかとの置換により均一に修飾され得る。
【0212】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)は、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)における1種類の核酸塩基の少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%が、修飾された核酸塩基である。
【0213】
(ii)骨格修飾
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわちmiR-485阻害剤)は、ヌクレオシド間に任意の有用な結合を含むことができる。本開示の組成物において有用な、骨格修飾を含むそのような結合としては、これらに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:3’-アルキレンホスホネート、3’-アミノホスホロアミダート、アルケン含有骨格、アミノアルキルホスホロアミダート、アミノアルキルホスホトリエステル、ボラノホスフェート、-CH
2-O-N(CH
3)-CH
2-、-CH
2-N(CH
3)-N(CH
3)-CH
2-、-CH
2-NH-CH
2-、キラルホスホネート、キラルホスホロチオエート、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレン(メチルイミノ)、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、モルホリノ結合、-N(CH
3)-CH
2-CH
2-、ヘテロ原子ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオシド、ホスフィナート、ホスホロアミダート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、PNA、シロキサン骨格、スルファメート骨格、スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにチオノホスホロアミダート。
【化6】
【0214】
いくつかの態様では、上記に開示される骨格結合の存在は、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)の安定性及び分解に対する耐性を増加させる。
【0215】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)における少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の骨格結合が修飾される(例えば、それらのすべてがホスホロチオエートである)。
【0216】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)に含めることができる骨格修飾は、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾を含む。
(iii)糖修飾
【0217】
本開示のポリヌクレオチド(例えば、miR-485阻害剤)に組み込まれ得る修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは、核酸の糖に対して修飾され得る。いくつかの態様では、糖修飾は、miR-485核酸配列に対するmiR-485阻害剤の結合の親和性を増加させる。LNAまたは2’-置換糖などの親和性改善ヌクレオチド類似体をmiR-485阻害剤に組み込むことによって、miR-485阻害剤の長さ及び/またはサイズを小さくすることができる。
【0218】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)における少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチドが糖修飾(例えば、LNA)を含有する。
【0219】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22ヌクレオチドユニットが糖修飾される(例えば、LNA)。
【0220】
一般に、RNAは、酸素を有する五員環である糖基リボースを含む。非限定的な例示的修飾ヌクレオチドとしては、リボースにおける酸素の(例えば、S、Se、またはアルキレン、例えば、メチレンまたはエチレンとの)置換;二重結合の付加(例えば、リボースのシクロペンテニルまたはシクロヘキセニルとの置換);リボースの環縮小(例えば、シクロブタンまたはオキセタンの四員環の形成);リボースの環拡大(例えば、追加の炭素またはヘテロ原子を有し、6または七員環の形成、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、及びホスホロアミダート骨格も有するモルホリノ);多環式形態(例えば、トリシクロ);及び「アンロックド」形態、例えば、グリコール核酸(GNA)(例えば、R-GNAまたはS-GNA、ここで、リボースは、ホスホジエステル結合に結合されたグリコールユニットと置き換えられる)、トレオース核酸(TNA、ここで、リボースは、α-L-トレオフラノシル-(3’→2’)と置き換えられる)、及びペプチド核酸(PNA、ここで、2-アミノ-エチル-グリシン結合が、リボース及びホスホジエステル骨格と置き換わる)が挙げられる。糖基は、リボースにおける対応する炭素と反対の立体化学配置を有する1つ以上の炭素も含有し得る。したがって、ポリヌクレオチド分子は、糖として、例えば、アラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。
【0221】
リボースの2’ヒドロキシ基(OH)は、いくつかの異なる置換基で修飾または置換され得る。2’-位での例示的な置換としては、限定されるものではないが、H、ハロ、任意選択的に置換されたC1~6アルキル;任意選択的に置換されたC1~6アルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルキル;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリール-C1~6アルコキシ、任意選択的に置換されたC1~12(ヘテロシクリル)オキシ;糖(例えば、リボース、ペントース、または本明細書に記載されるいずれか);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2OR(ここで、Rは、Hまたは任意選択的に置換されたアルキルであり、nは、0~20(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、及び4~20)の整数である);「ロックド」核酸(LNA)(2’-ヒドロキシが、C1~6アルキレンまたはC1~6ヘテロアルキレン架橋により、同じリボース糖の4’-炭素に連結されており、ここで、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、アミノ架橋、アミノアルキル、アミノアルコキシ、アミノ、及びアミノ酸が挙げられる)が挙げられる。
【0222】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)に存在するヌクレオチド類似体は、例えば、2’-O-アルキル-RNAユニット、2’-OMe-RNAユニット、2’-O-アルキル-SNA、2’-アミノ-DNAユニット、2’-フルオロ-DNAユニット、LNAユニット、アラビノ核酸(ANA)ユニット、2’-フルオロ-ANAユニット、HNAユニット、INA(インターカレーティング核酸)ユニット、2’MOEユニット、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、LNAは、例えば、オキシLNA(例えば、β-D-オキシ-LNAまたはα-L-オキシ-LNA)、アミノLNA(例えば、β-D-アミノ-LNAまたはα-L-アミノ-LNA)、チオLNA(例えば、β-D-チオ-LNAまたはα-L-チオ-LNA)、ENA(例えば、β-D-ENAまたはα-L-ENA)、またはそれらの任意の組み合わせである。さらなる態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわちmiR-485阻害剤)に含めることができるヌクレオチド類似体は、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)を含む。
【0223】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(すなわち、miR-485阻害剤)は、修飾されたRNAヌクレオチド類似体(例えば、LNA)及びDNAユニットの両方を含み得る。いくつかの態様では、miR-485阻害剤はギャップマーである。例えば、米国特許第8,404,649号、同第8,580,756号、同第8,163,708号、及び同第9,034,837号(これらのすべてが参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。いくつかの態様では、miR-485阻害剤はマイクロマーである。米国特許公開第US20180201928号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0224】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(少なくとも、miR-485阻害剤)は、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼによる速やかな分解を防止するための修飾を含むことができる。修飾としては、これらに限定されるものではないが、例えば、(a)末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化、脱リン酸化、共役化、反転結合など)、3’末端修飾(共役化、DNAヌクレオチド、反転結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾塩基、安定化塩基、不安定化塩基、または広範なパートナーのレパートリーと塩基対合する塩基、または共役化塩基による置換、(c)糖修飾(例えば、2’位または4’位における)または糖の置換、ならびに(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含む、ヌクレオシド間結合の修飾が挙げられる。
【0225】
IV.ベクター及び送達システム
いくつかの態様では、本開示のmiR-485阻害剤は、例えば、SIRT1タンパク質及び/またはSIRT1遺伝子の異常な(例えば、低下した)レベルに関連した疾患または条件に罹患した対象に、当該技術分野では周知のあらゆる関連する送達システムを用いて投与することができる。特定の態様では、送達システムはベクターである。したがって、いくつかの態様では、本開示は、本開示のmiR-485阻害剤を含むベクターを提供する。
【0226】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはこれらの任意の組み合わせの血清型を有するAAVである。いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、第3世代アデノウイルスベクターである。ADEASY(商標)は、アデノウイルスベクターコンストラクトを作製するうえで圧倒的に最も一般的な方法である。このシステムは、シャトル(または導入)ベクター及びアデノウイルスベクターの2つのタイプのプラスミドで構成される。目的の導入遺伝子は、シャトルベクターにクローニングされ、検証され、制限酵素PmeIで線形化される。次いで、この構築物は、PADEASY(商標)を含有するBJ5183E.coli細胞であるADEASIER-1細胞に形質転換される。PADEASY(商標)は、ウイルス産生に必要なアデノウイルス遺伝子を含む約33Kbのアデノウイルスプラスミドである。シャトルベクター及びアデノウイルスプラスミドは、アデノウイルスプラスミドへのトランスジーンの相同組換えを促進する一致する左右の相同性アームを有する。標準的なBJ5183をスーパーコイルPADEASY(商標)及びシャトルベクターで同時形質転換することもできるが、この方法では非組換えアデノウイルスプラスミドのバックグラウンドが高くなる。次いで、組換えアデノウイルスプラスミドは、サイズ及び適切な制限消化パターンについて検証され、導入遺伝子がアデノウイルスプラスミドに挿入されていること、及び組換えの他のパターンが発生していないことが確認される。検証後、組換えプラスミドをPacIで線形化し、ITRが隣接する線形dsDNAコンストラクトを作製する。293または911細胞は線形化されたコンストラクトでトランスフェクトされ、約7~10日後にウイルスを回収することができる。この方法以外にも、本明細書に開示される方法を実施するために、本願が出願された時点で当該技術分野において周知のアデノウイルスベクターコンストラクトを作製するための方法を用いることができる。
【0227】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター(例えば第3または第4世代のレンチウイルスベクター)である。レンチウイルスベクターは、1つの細胞株に3つの別々のプラスミド発現システムをトランスフェクトする一過性トランスフェクションシステムで通常は作製される。これらには、トランスファーベクタープラスミド(HIVプロウイルスの一部)、パッケージングプラスミドまたは構築物、及び異なるウイルスの異種エンベロープ遺伝子(env)を含むプラスミドが含まれる。ベクターの3つのプラスミド成分は、HIVシェルに挿入されるパッケージング細胞に入れられる。ベクターのウイルス部分には挿入配列が含まれているため、ウイルスは細胞系内で複製できない。現在の第3世代のレンチウイルスベクターは、9つのHIV-1タンパク質(Gag、Pol、Rev)のうち3つだけをエンコードし、複製可能なウイルスの組換えを介した生成を避けるために、別々のプラスミドから発現する。第4世代レンチウイルスベクターでは、レトロウイルスゲノムはさらに減らされている(例えば、TAKARA(登録商標)LENTI-X(商標)第4世代パッケージングシステムを参照)。
【0228】
当該技術分野では周知の任意のAAVベクターを本明細書に開示される方法で使用することができる。AAVベクターは既知のベクターを含んでよく、それらのバリアント、フラグメント、または融合体を含んでよい。いくつかの態様では、AAVベクターは、AAVタイプ1(AAV1)、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ウシAAV、エビAAV、ヘビAAV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0229】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAAV、ヘビAAV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されたAAVベクターから誘導される。
【0230】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAAV、ヘビAAV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つのAAVベクターから誘導されるキメラベクターである。
【0231】
特定の態様では、AAVベクターは、当該技術分野では周知の少なくとも2つの異なるAAVベクターの領域を含む。
【0232】
いくつかの態様では、AAVベクターは、第1のAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAAV、ヘビAAV、またはこれらの任意の組み合わせ)に由来する末端逆位配列と、第2のAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAAV、ヘビAAV、またはこれらの任意の組み合わせ)に由来する第2の末端逆位配列と、を含む。
【0233】
いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.74、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヤギAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、エビAAV、ヘビAAV、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されたAAVベクターの部分を含む。いくつかの態様では、AAVベクターは、AAV2を含む。
【0234】
いくつかの態様では、AAVベクターは、スプライスアクセプター部位を含む。いくつかの態様では、AAVベクターは、プロモーターを含む。当該技術分野では周知の任意のプロモーターを本開示のAAVベクターで使用することができる。いくつかの実施態様では、プロモーターはRNAPolIIIプロモーターである。いくつかの態様では、RNAPolIIIプロモーターは、U6プロモーター、H1プロモーター、7SKプロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期遺伝子(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、Sv40プロモーター、PGK1プロモーター、Ubcプロモーター、ヒトβアクチンプロモーター、CAGプロモーター、TREプロモーター、UASプロモーター、Ac5プロモーター、ポリヘドリンプロモーター、CaMKIIaプロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、TEFプロモーター、GDSプロモーター、ADH1プロモーター、CaMV35Sプロモーター、またはUbiプロモーターである。特定の態様では、プロモーターは、U6プロモーターを含む。
【0235】
いくつかの態様では、AAVベクターは、構成的に活性なプロモーター(構成的プロモーター)を含む。いくつかの態様では、構成的プロモーターは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、βアクチンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、レトロウイルス末端反復配列(LTR)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、及び単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターからなる群から選択される。
【0236】
いくつかの態様では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの態様では、誘導性プロモーターは、組織特異的プロモーターである。特定の態様では、組織特異的プロモーターは、神経細胞、グリア細胞、または神経細胞及びグリア細胞の両方において、AAVベクターのコーディング領域の転写を誘導する。
【0237】
いくつかの態様では、AAVベクターは、1つ以上のエンハンサーを含む。いくつかの態様では、1つ以上のエンハンサーはAAV内に単独で、または本明細書に開示されるプロモーターとともに存在する。いくつかの態様では、AAVベクターは、3’UTRのポリ(A)テール配列を含むいくつかの態様では、3’UTRのポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、3’UTRのポリ(A)テール配列はbGHポリ(A)を含む。
【0238】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるmiR-485阻害剤は、送達剤とともに投与される。使用することができる送達剤の非限定的な例としては、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、ミセル、またはコンジュゲートが挙げられる。
【0239】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、本開示のmiRNA阻害剤(すなわちmiR-485阻害剤)と、送達剤と、を含む組成物も提供する。いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に帯電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する。
【0240】
いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(すなわち、miR-485阻害剤)を含む組成物は、イオン結合を介してカチオン性キャリアユニットと相互作用する。
【0241】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの水溶性バイオポリマーを含む。本明細書で使用する場合、「水溶性バイオポリマー」という用語は、生体適合性、生物学的に不活性、非免疫原性、非毒性、かつ親水性のポリマー、例えば、PEGを指す。
【0242】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、下式:
【化7】
(式中、nは、1~1000である)を有する。
【0243】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である。
【0244】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む。
【0245】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約27、少なくとも約28、少なくとも約29、少なくとも約30、少なくとも約31、少なくとも約32、少なくとも約33、少なくとも約34、少なくとも約35、少なくとも約36、少なくとも約37、少なくとも約38、少なくとも約39、少なくとも約40、少なくとも約41、少なくとも約42、少なくとも約43、少なくとも約44、少なくとも約45、少なくとも約46、少なくとも約47、少なくとも約48、少なくとも約49、少なくとも約50、少なくとも約51、少なくとも約52、少なくとも約53、少なくとも約54、少なくとも約55、少なくとも約56、少なくとも約57、少なくとも約58、少なくとも約59、少なくとも約60、少なくとも約61、少なくとも約62、少なくとも約63、少なくとも約64、少なくとも約65、少なくとも約66、少なくとも約67、少なくとも約68、少なくとも約69、少なくとも約70、少なくとも約71、少なくとも約72、少なくとも約73、少なくとも約74、少なくとも約75、少なくとも約76、少なくとも約77、少なくとも約78、少なくとも約79、少なくとも約80の塩基性アミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0246】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約40の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約45の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約50の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約55の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約60の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約65の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約70の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約75の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約80の塩基性アミノ酸、例えば、リジンを含む。
【0247】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせの数は、アニオン性ペイロードの長さに基づいて調整され得る。本明細書で使用する場合、「ペイロード」という用語は、それ自体で、もしくはアダプターを介して本開示のカチオン性キャリアユニットと相互作用的であり得、本開示のミセルの核内に含まれ得る生物活性分子、例えば、治療薬(例えば、miR485-3p阻害剤)を指す。例えば、より長い配列を有するアニオン性ペイロードは、より多い数の塩基性アミノ酸(例えば、リジン)と組み合され得る。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットにおける塩基性アミノ酸、例えば、リジンの数は、ポリマーにおけるプロトン化アミン対アニオン性ペイロード、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、antimirにおけるリン酸のモル比(N/P比)が、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、または約3となるように計算され得る。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットにおける塩基性アミノ酸、例えば、リジンの数は、ポリマーにおけるプロトン化アミン対アニオン性ペイロード、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、antimirにおけるリン酸のモル比(N/P比)が、約1.3~約1.7、例えば、約1.5となるように計算され得る。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットにおける塩基性アミノ酸、例えば、リジンの数は、ポリマーにおけるプロトン化アミン対アニオン性ペイロード、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、antimirにおけるリン酸のモル比(N/P比)が、約1.4となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットにおける塩基性アミノ酸、例えば、リジンの数は、ポリマーにおけるプロトン化アミン対アニオン性ペイロード、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、antimirにおけるリン酸のモル比(N/P比)が、約1.6となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットにおける塩基性アミノ酸、例えば、リジンの数は、ポリマーにおけるプロトン化アミン対アニオン性ペイロード、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、antimirにおけるリン酸のモル比(N/P比)が、約1.3となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットにおける塩基性アミノ酸、例えば、リジンの数は、ポリマーにおけるプロトン化アミン対アニオン性ペイロード、例えば、オリゴヌクレオチド、例えば、antimirにおけるリン酸のモル比(N/P比)が、約1.7となるように計算される。
【0248】
当業者は、カチオン性キャリア部分の役割はペイロードの負電荷(例えば、miRNA阻害剤のリン酸骨格における負電荷)を静電的相互作用により中性化することであるため、いくつかの態様では(例えば、ペイロードがantimirなどの核酸である場合)、カチオン性キャリアの長さ、カチオン性キャリアの正に荷電した基の数、ならびにカチオン性キャリアに存在する電荷の分布及び配置は、ペイロード分子の長さ及び電荷分布に依存することを理解するであろう。
【0249】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約35、約35~約40、約40~約45、約45~約50、約50~約55、約55~約60、約60~約65、約~約70、約70~約75、または約75~約80の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約30~約50の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約70~約80の塩基性アミノ酸を含む。
【0250】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、L-アミノ酸である。いくつかの態様では、正に荷電したキャリアは、D-アミノ酸及びL-アミノ酸を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、少なくとも1つの非天然アミノ酸またはその誘導体を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、L-4-アミノメチル-フェニルアラニン、L-4-グアニジン-フェニルアラニン、L-4-アミノメチル-N-イソプロピル-フェニルアラニン、L-3-ピリジル-アラニン、L-trans-4-アミノメチルシクロヘキシル-アラニン、L-4-ピペリジニル-アラニン、L-4-アミノシクヘキシル-アラニン、4-グアニジノ酪酸、L-2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、DL-5-ヒドロキシリジン、ピロリジン、5-ヒドロキシ-L-リジン、メチルリジン、ヒプシン、またはそれらの任意の組み合わせである。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約40のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約50のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約60のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約70のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約80のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約30のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約40のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約38のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約32のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約35のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約64のリジンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約63のリジンを含む。
【0251】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、単一のペイロード分子に結合する。他の態様では、カチオン性キャリア部分は、同一であり得るか、または異なり得る複数のペイロード分子に結合し得る。
【0252】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の正電荷及び核酸ペイロードの負電荷は、約5:1、約4:1、約3:1、約2.9:1、約2.8:1、約2.7:1、約2.6:1、約2.5:1、約2.4:1、約2.3:1、約2.2:1、約2:1、約2:1、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、約1:1.5、約1:1.6、約1:1.7、約1:1.8、約1:1.9、約1:2、約1:2.1、約1:2.2、約1:2.3、約1:2.4、約1:2.5、約1:2.6、約1:2.7、約1:2.8、約1:2.9、約1:3、約1:4または約1:5のイオン比率である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の正電荷及び核酸ペイロードの負電荷は、1:1の電荷比率である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の正電荷及び核酸ペイロードの負電荷は、3:2の電荷比率である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の正電荷及び核酸ペイロードの負電荷は、2:3の電荷比率である。
【0253】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの架橋部分(CM)を含む。「架橋部分」という用語は、架橋を形成することができる複数の薬剤を含むポリマーブロックの部分または一部を指す。いくつかの態様では、架橋を形成することができるいくつかの薬剤は、架橋剤の側鎖を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様では、CMは、架橋剤に連結したバイオポリマー、例えば、ペプチド(例えば、ポリリジン)を含む。
【0254】
いくつかの態様では、架橋部分は、1つ以上のアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約27、少なくとも約28、少なくとも約29、少なくとも約30、少なくとも約35のアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、またはそれらの組み合わせを含み、その各々は架橋剤に連結している。
【0255】
いくつかの態様では、架橋部分のリジンは中性電荷を有する(例えば、第三級アミンを含む)。いくつかの態様では、架橋部分のリジンは、チオール(例えば、リジンチオール)、及び第三級アミンを含み、それにより、リジンは中性電荷を有する。いくつかの態様では、架橋部分は、第三級アミンを介して架橋を形成する。いくつかの態様では、架橋部分は、チオールを介して架橋を形成する。本明細書で使用される場合、架橋部分の文脈における「リジン」は、架橋部分のリジンが担体単位の全体的な電荷に寄与しないような中性電荷を有する(例えば、第三級アミンを含む)リジンを指す。いくつかの態様では、架橋部分のリジンは、アミド結合を介して架橋剤に連結している。
【0256】
いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約10個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約11個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約12個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約13個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約14個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約15個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約16個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約17個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約18個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約19個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約20個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約23個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤に連結している。いくつかの態様では、架橋部分は少なくとも約35個のアミノ酸、例えばリジンを含み、その各々は架橋剤(例えば、リジンチオール)に連結している。
【0257】
いくつかの態様では、架橋剤はチオールである。いくつかの態様では、架橋剤はチオール誘導体である。
【0258】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。いくつかの態様では、アジュバント部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化8】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する。
【0259】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ニトロイミダゾールを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、アミノ酸を含む。
【0260】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化9】
(式中、Arは、
【化10】
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する。
【0261】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ビタミンを含む。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、下式:
【化11】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する。
【0262】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンB3である。
【0263】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約27、少なくとも約28、少なくとも約29、少なくとも約30、少なくとも約31、少なくとも約32、少なくとも約33、少なくとも約34、少なくとも約35、少なくとも約36、少なくとも約37、少なくとも約38、少なくとも約39、または少なくとも約40のアミノ酸(例えば、リジン)を含み、それらの各々はビタミンB3に連結している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約30個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約31個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約32個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約33個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約34個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約35個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約36個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約37個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約38個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約39個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約40個のアミノ酸(例えばリジン)を含み、その各々はビタミンB3に結合している。
【0264】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、それぞれがビタミンB3に結合している約20~約25個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約25~約30個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約30~約35個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約35~約40個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約40~約45個のアミノ酸(例えば、リジン)、またはそれぞれがビタミンB3に結合している約45~約50個のアミノ酸(例えば、リジン)を含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、それぞれがビタミンB3に結合している約20~約30個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約30~約40個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約40~約50個のアミノ酸(例えば、リジン)、それぞれがビタミンB3に結合している約25~約35個のアミノ酸(例えば、リジン)、または、それぞれがビタミンB3に結合している約35~約45個のアミノ酸(例えば、リジン)を含む。
【0265】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20のビタミンB3ユニットを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約10のビタミンB3ユニットを含む。
【0266】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、任意選択的にリンカーにより水溶性ポリマーに連結されている標的化部分を含む。本明細書で使用する場合、「標的化部分」という用語は、特定の生体物質または部位に結合する生体認識分子を指す。いくつかの態様では、標的化部分は、ある特定の標的分子に対して特異的(例えば、受容体を標的とするリガンドまたは表面タンパク質を標的とする抗体)であるか、組織に対して特異的(例えば、特定の器官または組織、例えば、肝臓、脳、または内皮にミセルを優先的に輸送する分子)であるか、または生理学的バリアを通した輸送を促進する(例えば、血液脳関門または形質膜を通した輸送を促進し得るペプチドまたは他の分子)。
【0267】
ペイロード(例えば、ヌクレオチド分子、例えば、miR485-3p阻害剤)を本開示に従って標的化するために、標的化部分は、カチオン性キャリアユニットに連結され得、これによって、ミセルの外面に連結され得る一方で、ミセルは、その核内に封入されたペイロードを有する。
【0268】
いくつかの態様では、標的化部分は、本開示のミセルを組織に標的化することができる標的化部分である。いくつかの態様では、組織は、肝臓、脳、腎臓、肺、卵巣、膵臓、甲状腺、胸部、胃、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、組織は、がん組織、例えば、肝臓癌、脳癌、腎臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺癌、乳癌、胃癌、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0269】
いくつかの態様では、組織は、中枢神経系の組織、例えば、神経組織である。いくつかの態様では、中枢神経系を標的とする標的化部分は、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)により輸送されることができる。LAT1(SLC7A5)は、大型中性アミノ酸及びいくつかの医薬品の両方の取り込みのための輸送体である。LAT1は、L-ドーパまたはガバペンチンなどの薬物を輸送し得る。LAT1は、脳微小血管内皮細胞において一貫して高レベルで発現される。溶質輸送体が主にBBBに存在するため、本開示のミセルのLAT1への標的化により、BBBを通した送達を可能となる。いくつかの態様では、本開示のミセルをLAT1輸送体に標的化する標的化部分は、アミノ酸、例えば、分枝鎖または芳香族アミノ酸である。いくつかの態様では、アミノ酸は、バリン、ロイシン、及び/またはイソロイシンである。いくつかの態様では、アミノ酸は、トリプトファン及び/またはチロシンである。いくつかの態様では、アミノ酸は、トリプトファンである。他の態様では、アミノ酸は、チロシンである。
【0270】
いくつかの態様では、標的化部分は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、チロキシン、メルファラン、L-ドーパ、ガバペンチン、3,5-I-ジヨードチロシン、3-ヨード-I-チロシン、フェンクロニン、アシビシン、ロイシン、BCH、メチオニン、ヒスチジン、バリン、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるLAT1リガンドである。いくつかの態様では、標的化部分は、LAT1に結合することができ、BBBを通過することができるチロシンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、LAT1に結合することができ、BBBを通過することができるリジンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、LAT1に結合することができ、BBBを通過することができるグルタミンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GABA受容体、LAT1、CNS逆転写酵素阻害剤、及び/またはドーパミン(DA)受容体に結合することができ、BBBを通過することができるフェニルアラニンを含む。ドーパミン受容体は、脊椎動物中枢神経系(CNS)において顕著であるGタンパク質共役受容体のクラスである。ドーパミン受容体は、Gタンパク質カップリングによってだけでなく、異なるタンパク質(ドーパミン受容体-相互作用タンパク質)相互作用によるシグナル伝達によっても異なるエフェクターを活性化する。神経伝達物質ドーパミンは、ドーパミン受容体の主要な内因性リガンドである。
【0271】
ドーパミン受容体は、動機付け、快感、認知、記憶、学習、及び細かい運動制御、ならびに神経内分泌シグナル伝達の調節を含む多数の神経プロセスに関与するとされる。異常なドーパミン受容体シグナル伝達及びドーパミン作動性神経機能は、いくつかの神経精神障害に関係付けられている。したがって、ドーパミン受容体は、神経薬の一般的な標的であり、抗精神病薬が、多くの場合、ドーパミン受容体アンタゴニストである一方で、精神刺激薬が、通常、ドーパミン受容体の間接的アゴニストである。
【0272】
いくつかの態様では、標的化部分は、CNS逆転写酵素阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるバリンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GABA受容体及び/またはCNS逆転写酵素阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるトリプトファンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GABA受容体及び/またはCNS逆転写酵素阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるロイシンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GABA受容体及び/またはCNS逆転写酵素阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるメチオニンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GABA受容体に結合することができ、BBBを通過することができるヒスチジンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、CNS逆転写酵素阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるイソロイシンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GSH輸送体に結合することができ、BBBを通過することができるグルタチオンを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、GSH輸送体に結合することができ、BBBを通過することができるグルタチオン-Metを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、一酸化窒素合成酵素(NOS)に結合することができ、BBBに結合することができる尿素/チオ尿素を含む。いくつかの態様では、標的化部分は、酸化還元機構によりBBBを通過することができるNAD+/NADHを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、プリンを含み、BBBを通過することができる。CNS標的化のためのさらなる標的化部分の例は、Sutera et al.(2016):Small endogenous molecules as moiety to improve targeting of CNS drugs,Expert Opinion on Drug Delivery,DOI:10.1080/17425247.2016.1208651に示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0273】
いくつかの態様では、組成物は、約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約40個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約10個のビタミンB3ユニットを有するアジュバント部分と、を含む。
【0274】
本開示は、本開示のmiRNA阻害剤(すなわちmiR-485阻害剤)を含むミセルであって、miRNA阻害剤と送達剤とが互いに会合した、ミセルも提供する。
【0275】
いくつかの態様では、会合は、共有結合、非共有結合、またはイオン結合である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷は、溶液中で本明細書に開示されるmiR-485阻害剤と混合される際にミセルを形成するのに十分であり、溶液中のカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷とmiR-485阻害剤(または阻害剤を含むベクター)の負電荷の全体的イオン比は、約1:1である。
【0276】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、酵素分解から本開示のmiRNA阻害剤(すなわち、miR-485阻害剤)を保護することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2020261227A1を参照されたい。
【0277】
いくつかの態様では、カチオン性担体ユニットは、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR485-3p阻害剤)と関連している。いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR485-3p阻害剤)に関連するカチオン性担体単位は、80個のリジン残基を含み、64個のリジン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン、例えば-NH3+を含む)、16個のリジン残基は架橋のために修飾されている(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリジン-チオールに連結している)。いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR485-3p阻害剤)に関連するカチオン性担体単位は、80個のリジン残基を含み、40個のリジン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミンを含む)、35個のリジン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリジン-チオールに連結している)、5個のリジン残基はアジュバント部分(例えば、ビタミン)を含むために修飾されている。いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR485-3p阻害剤)に関連するカチオン性担体単位は、80個のリジン残基を含み、38個のリジン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電した第四級アミンを含む)、23個のリジン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリジンチオールに連結している)、19個のリジン残基はアジュバント部分(例えば、ビタミン)を含むために修飾されている。いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR485-3p阻害剤)に関連するカチオン性担体単位は、80個のリジン残基を含み、32個のリジン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン、例えば-NH3+を含む)、16個のリジン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリジンチオールに連結している)、32個のリジン残基はアジュバント部分(例えば、ビタミン)を含むために修飾されている。いくつかの態様では、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、miR485-3p阻害剤)に関連するカチオン性担体単位は、80個のリジン残基を含み、63個のリジン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電した第四級アミンを含む)、17個のリジン残基はアジュバント部分(例えば、ビタミン)を含むために修飾されている。
【0278】
VI.医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は、対象に投与するのに適した本明細書に開示されるmiR-485阻害剤(例えば、miR-485阻害剤を含むポリヌクレオチドまたはベクター)を含む医薬組成物も提供する。医薬組成物は、一般的に、本明細書に記載されるmiR-485阻害剤(例えば、ポリヌクレオチドまたはベクター)と、薬学的に許容される賦形剤またはキャリアとを、対象への投与に適した形態で含む。薬学的に許容される賦形剤またはキャリアは、投与される特定の組成物、及び組成物を投与するために使用される特定の方法により部分的に決定される。
【0279】
したがって、本開示のmiR-485阻害剤を含む医薬組成物の多種多様な適当な製剤が存在する((例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18th ed.(1990)を参照)。医薬組成物は一般に、無菌状態で、米国食品医薬品局の適正製造基準(GMP)規制のすべてに完全に準拠したものとして製剤化される。
VII.キット
【0280】
本開示は、本開示のmiRNA阻害剤(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、または医薬組成物)と、必要に応じて使用説明書、例えば本明細書に開示される方法に従った使用説明書と、を含むキットまたは製品も提供する。いくつかの態様では、キットまたは製品は、miR-485阻害剤(例えば、本開示のベクター、例えばAAVベクター、ポリヌクレオチド、または医薬組成物)を1つ以上の容器に含む。いくつかの態様では、キットまたは製品は、miR-485阻害剤(例えば、本開示のベクター、例えばAAVベクター、ポリヌクレオチド、または医薬組成物)と、パンフレットと、を含む。本明細書に開示されるmiR-485阻害剤(例えば、本開示のベクター、ポリヌクレオチド、及び医薬組成物、またはこれらの組み合わせ)は、当該技術分野では周知の確立されたキット形式の1つに容易に組み込むことができる点は当業者には容易に認識されよう。
【0281】
以下の実施例は、例示のために示すものであって、限定のために示すものではない。
【実施例】
【0282】
実施例1:miR-485阻害剤の調製
(a)アルキン修飾チロシンの合成:本開示のミセルをBBBのLAT1輸送体に誘導するためのカチオン性キャリアユニットの組織特異的標的化部分(TM、
図1を参照)の合成のための中間体として、アルキン修飾されたチロシンを調製した。
【0283】
アセトニトリル(4.0ml)中、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-チロシンメチルエステル(Boc-Tyr-OMe)(0.5g,1.69mmol)及びK2CO3(1.5当量,2.54mmol)の混合物を、臭化プロパルギル(1.2当量,2.03mmol)に滴下した。反応混合物を60℃で一晩加熱した。反応後、反応混合物を、水:酢酸エチル(EA)を使用して抽出した。次いで、有機層を、ブライン溶液を使用して洗浄した。粗製物を、フラッシュカラム(ヘキサン中、10%EA)により精製した。次に、得られた生成物を、1,4-ジオキサン(1.0ml)及び6.0MのHCl(1.0ml)中に溶解した。反応混合物を100℃で一晩加熱した。次に、ジオキサンを除去し、EAにより抽出した。水性NaOH(0.5M)溶液をpH値が7になるまで混合物に加えた。反応物質をエバポレーターで濃縮し、12000rpmで0℃で遠心分離した。沈殿物を脱イオン水で洗浄して凍結乾燥した。
【0284】
(b)ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)(PEG-PLL)の合成:この合成ステップにより、本開示のカチオン性キャリアユニットの水溶性バイオポリマー(WP)及びカチオン性キャリア(CC)を調製した(
図1を参照)。
【0285】
ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)を、モノメトキシPEG(MeO-PEG)を高分子開始剤として用いてLys(TFA)-NCAの開環重合により合成した。要約すると、MeO-PEG(600mg、0.12mmol)及びLys(TFA)-NCA(2574mg、9.6mmol)を、1Mのチオ尿素を含有するDMF及びDMF(またはNMP)中に別々に溶解した。Lys(TFA)-NCA溶液を、マイクロシリンジによりMeO-PEG溶液に滴下し、反応混合物を37℃で4日間撹拌した。反応ボトルをアルゴン及び真空によりパージした。すべての反応をアルゴン雰囲気下で行った。反応後、混合物を過剰量のジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿物をメタノールに再溶解し、冷ジエチルエーテル中で再び沈殿させた。次いで、沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥後に白色粉末を得た。PEG-PLL(TFA)のTFA基の脱保護を行うため、次のステップを行った。
【0286】
MeO-PEG-PLL(TFA)(500mg)をメタノール(60mL)に溶解し、1NのNaOH(6mL)をポリマー溶液に撹拌下で滴下した。混合物を撹拌しながら37℃で1日維持した。反応混合物を10mMのHEPESに対して4回及び蒸留水に対して透析した。凍結乾燥後にPEG-PLLの白色粉末を得た。
【0287】
(b)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)(N
3-PEG-PLL)の合成:この合成ステップにより、本開示のカチオン性キャリアユニットの水溶性バイオポリマー(WP)及びカチオン性キャリア(CC)を調製した(
図1を参照)。
【0288】
アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン)を、アジド-PEG(N3-PEG)を用いてLys(TFA)-NCAの開環重合により合成した。要約すると、N3-PEG(300mg,0.06mmol)及びLys(TFA)-NCA(1287mg,4.8mmol)を、1Mのチオ尿素を含んだDMF及びDMF(またはNMP)に別々に溶解した。Lys(TFA)-NCA溶液を、マイクロシリンジによりN3-PEG溶液に滴下し、反応混合物を37℃で4日間撹拌した。反応ボトルをアルゴン及び真空によりパージした。すべての反応をアルゴン雰囲気下で行った。反応後、混合物を過剰量のジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿物をメタノールに再溶解し、冷ジエチルエーテル中で再び沈殿させた。次いで、沈殿物を濾過し、減圧下で乾燥後に白色粉末を得た。PEG-PLL(TFA)のTFA基の脱保護を行うため、次のステップを行った。
【0289】
N3-PEG-PLL(500mg)をメタノール(60mL)に溶解し、1NのNaOH(6mL)を撹拌しながらポリマー溶液に滴下した。混合物を撹拌しながら37℃で1日維持した。反応混合物を10mMのHEPESに対して4回及び蒸留水に対して透析した。凍結乾燥後にN3-PEG-PLLの白色粉末を得た。
【0290】
(c)(メトキシまたは)アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(N
3-PEG-PLL(Nic/SH))の合成:このステップでは、組織特異的アジュバント部分(AM、
図1を参照)を本開示のカチオン性キャリアユニットのWP-CCコンポーネントに結合させた。カチオン性キャリアユニットに使用した組織特異的アジュバント部分(AM)は、ニコチンアミド(ビタミンB3)とした。このステップにより、
図1に示されるカチオン性キャリアユニットのWP-CC-AMコンポーネントが得られる。
【0291】
アジド-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リジン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(N3-PEG-PLL(Nic/SH))を、N3-PEG-PLL及びニコチン酸のEDC/NHSの存在下での化学修飾により合成した。N3-PEG-PLL(372mg,25.8μmol)及びニコチン酸(556.7mg,PEG-PLLのNH2に対して1.02当量)を、脱イオン水及びメタノール(1:1)の混合物に別々に溶解した。EDC・HCl(556.7mg,N3-PEG-PLLのNH2に対して1.5当量)をニコチン酸溶液に加え、NHS(334.2mg,PEG-PLLのNH2に対して1.5当量)を混合物に段階的に加えた。
【0292】
反応混合物をN3-PEG-PLL溶液に加えた。反応混合物を撹拌しながら37℃で16時間維持した。16時間後、3,3’-ジチオジプロピオン酸(36.8mg,0.1当量)をメタノールに溶解し、EDC・HCl(40.3mg,0.15当量)、及びNHS(24.2mg,0.15当量)を脱イオン水にそれぞれ溶解した。次いで、NHS及びEDC・HClを、3,3’-ジチオジプロピオン酸溶液に順次加えた。粗製のN3-PEG-PLL(Nic)溶液を加えた後、混合液を37℃で4時間撹拌した。
【0293】
精製を行うため、混合物をメタノールに対して2時間透析し、DL-ジチオトレイトール(DTT,40.6mg,0.15当量)を加えた後、30分間活性化した。
【0294】
DTTを除去するため、混合物を、メタノール、脱イオン水中50%のメタノール、脱イオン水に対して順次透析した。
【0295】
d)フェニルアラニン-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(L-リシン/ニコチンアミド/メルカプトプロパンアミド)(Phe-PEG-PLL(Nic/SH))の合成:このステップでは、組織特異的標的化部分(TM)を上記のステップで合成したWP-CC-AMコンポーネントに結合させた。TMコンポーネント(フェニルアラニン)は、ステップ(a)で調製した中間体とステップ(c)の生成物との反応によって調製した。
【0296】
血管内の脳の内皮組織を標的化するため、LAT1を標的とするアミノ酸としてフェニルアラニンを、銅触媒の存在下でのN3-PEG-PLL(Nic/SH)とアルキン修飾されたチロシンとの間のクリック反応により導入した。要約すると、N3-PEG-PLL(Nic/SH)(130mg、6.5μmol)及びアルキン修飾フェニルアラニン(5.7mg、4.0equiv.)を脱イオン水(または50mMリン酸ナトリウム緩衝液)に溶解した。次いで、CuSO4・H2O(0.4mg,25mol%)及びTris(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA,3.4mg,1.2当量)を脱イオン水に溶解し、N3-PEG-PLL(Nic/SH)溶液を加えた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(3.2mg,2.5当量)を混合液に加えた。反応混合物を、室温で16時間撹拌しながら維持した。反応後、混合物を透析膜(MWCO=7,000)に移し、脱イオン水に対して1日間透析した。最終生成物を凍結乾燥後に得た。
【0297】
(e)ポリイオン複合体(PIC)ミセル製剤-上記に記載したようにして本開示のカチオン性キャリアユニットを調製した後、ミセルを作製した。本実施例に記載されるミセルは、アンチセンスオリゴヌクレオチドペイロードと組み合わされたカチオン性キャリアユニットからなるものである。
【0298】
MeO-PEG-PLL(Nic)またはPhe-PEG-PLL(Nic)とmiRNAを混合することによりナノサイズのPICミセルを調製した。PEG-PLL(Nic)を、0.5mg/mLの濃度でHEPES緩衝液(10mM)に溶解した。次いで、RNAse非含有水中のmiRNA溶液(22.5μM)を、miRNA阻害剤(配列番号2~30)(例えば、5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28)とポリマーとの比が2:1(v/v)となるようにポリマー溶液と混合した。
【0299】
ポリマーと抗miRNAとの混合比は、ミセル形成条件、すなわち、ポリマー(本開示のキャリア)中のアミンと抗miRNA(ペイロード)中のリン酸との比を最適化することにより決定した。ポリマー(キャリア)と抗miRNA(ペイロード)との混合物を、マルチボルテックスにより3000rpmで90秒間はげしく混合し、室温で30分間維持して、ミセルを安定化した。
【0300】
使用に先立ち、ミセル(10μMの抗miRNA濃度)を4℃で保存した。MeO-ミセルまたはPhe-ミセルを同じ方法を用いて調製し、ミセル調製時に両方のポリマーを混合することにより異なる量のPhe(25%~75%)を含有するミセルも調製した。
【0301】
実施例2:NSC-34細胞のHtt分解に対するmiR-485阻害剤の効果
【0302】
細胞培養
マウス運動ニューロン様ハイブリッド細胞株(NSC-34)細胞を、CedarlaneLabsから購入した。NSC-34細胞を培養液(10%(vol/vol)ウシ胎児血清(Gibco)、100units/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM)で維持し、加湿した5%CO2インキュベーター内で37℃に維持した。
【0303】
ウエスタンブロット(不溶性画分)
NSC-34細胞から不溶性画分を得るため、細胞ペレットをプロテアーゼ/フォスファターゼ阻害剤カクテルを含んだ不溶性抽出バッファー[50mMTris-HCl(pH7.5)+2%SDS]中、氷上で30分間、溶解した。ライセートを4℃で13,000rpmで15分間遠心分離した。タンパク質を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイキット(Bio-RadLaboratories、カタログ番号5000116)を使用して定量し、同じ最終濃度に調整した。変性後、ライセートをウエスタンブロット用に処理して不溶性Httを測定した。試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、PVDF膜に移し、マウス抗Htt一次抗体(Merck、カタログ番号MAB5374、1:1000)とインキュベートした。結果を強化された化学発光システムを使用して視覚化した。
【0304】
結果
ハンチンチン(Htt)分解に対するmiR-485阻害剤の効果を調べるために、NSC-34細胞(マウス運動ニューロン様細胞)にGFPタグ付き野生型(Q23)(pEGFP-Q23)または変異体(Q74)(pEGFP-Q74)Httをトランスフェクトした。GFPタグ付き野生型Q23(pEGFP-Q23)Httまたは変異体Q74(pEGFP-Q74)Httでトランスフェクトした後、miR485-3p阻害剤をトランスフェクトされたNSC34で共処理した。不溶性画分を前述のように取得し(48時間後)、Q74-GFPタグ付きNSC-34細胞及びQ24-GFPタグ付きNSC-34細胞における不溶性の凝集Httのレベルを分析した。不溶性の凝集Httは、miR485-3p阻害剤(5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号28))処理NSC-34細胞を含有する変異Httを発現するミセルにおいて有意に減少した(
図2A及び2B)。
【0305】
実施例3:HEK293T、PC12、及び一次皮質ニューロンのHtt分解に対するmiR-485阻害剤の効果
miR485-3pASO処理がHtt凝集を減弱できるかどうかを判断するために、HEK293T及びPC12細胞を6ウェルプレートに一晩播種し、JETOPTIMUS(登録商標)トランスフェクション試薬(ポリプラス)を使用して2μgQ23-EGFP、Q74-EGFPでトランスフェクトし、miR485-3pASO(すなわち、配列番号:28)で、50、100、及び300nMの最終濃度で48時間処理した。
図3A及び3Bに示すように、ウエスタンブロット分析により、Htt-Q74の過剰発現がHtt凝集を増加させることが明らかになった。細胞を蛍光顕微鏡で分析し、ライセートをウエスタンブロット分析用に採取した。
【0306】
トランスフェクション後48時間でのHtt凝集(斑点)を、増強された緑色蛍光遺伝子(EGFP)発現に基づいて蛍光顕微鏡下で評価した。
【0307】
上記の処理後、細胞を採取し、プロテアーゼ/フォスファターゼ阻害剤カクテル(CellSignalingTechnology、カタログ番号5872)を含んだ氷冷したRIPAバッファー(iNtRON Biotechnology)中、氷上で30分間溶解した。ライセートを4℃にて13,000rpmで15分間遠心分離し、上澄みを回収した。試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、PVDF膜に移し、次の一次抗体とインキュベートした:マウス抗HTTクローンEM48(1:1000,Sigma-Aldrich,St Louis,MO,USA)マウス抗SIRT1(1:1000;Abcam,Cambridge,MA,USA)、マウス抗PGC-1a(1:1000;Abcam,Cambridge,MA,USA)、マウス抗p62(1:1000;Abcam,Cambridge,MA,USA)、ウサギ抗切断型カスパーゼ-3(1:1000;Cell Signaling Technology,Danvers,MA,USA)、マウス抗GFP(1:1000;anta Cruz Biotechnology)、ウサギ抗LC3B(1:1000;Novus Biologicals,Centennial,CO,USA)、及びマウス抗β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology)。その後、膜を二次抗体と室温で1時間インキュベートし、ウエスタンブロット試薬(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL,USA)を使用してバンドを検出した。定量的分析を行うため、各バンドの密度をComputerImagingDevice及び付属のソフトウェア(Fuji Film、Tokyo、Japan)を使用して測定し、そのレベルを各試料についてハウスキーピングタンパク質のバンドに正規化した密度として定量的に表した。
【0308】
ウエスタンブロット分析により、HTT-Q74の過剰発現がHTT凝集を増加させることが明らかになった。しかしながら、miR485-3pASO処理はHTT凝集を減少させ、miR485-3pASO処理がHTT-Q74過剰発現HEK293T細胞においてHtt凝集を抑制できることを示した(
図3A及び3B)。
【0309】
オートファジーはHtt凝集体などの細胞内の誤って折りたたまれたタンパク質を除去できるため、オートファジー関連タンパク質をウエスタンブロット分析で分析した。
図4A~4Eは、miR485-3pASO処置が、SIRT1、PGC-1a、p62及びLC3-IIなどのオートファジー刺激因子を著しくアップレギュレートしたことを示し、miR485-3pASOがオートファジー機構を通じてHtt凝集を減少させたことを実証する。Htt凝集の減少は、SIRT1、PGC-1a、p62、及びLC3の発現増加を介してオートファジーを刺激することにより、miR485-3pASOで処理したPC12細胞でも観察された。(
図5及び6)。さらに、miR485-3pASO処理は、アポトーシスのマーカーであるカスパーゼ-3の切断を減少させ(
図6)、Htt誘導ニューロンアポトーシスがmiR485-3pASOによって遮断されたことを実証した。
【0310】
Htt凝集体の減少に対するmiR485-3pASO処理の効果をさらに検証するために、GFPタグ付き野生型(Q23)または変異体(Q74)Httを発現するPC12及び一次皮質ニューロンをmiR485-3pASOで処理した。制御された条件下で、Q23-Httを発現する細胞は、PC12細胞(
図7A~7E)または一次皮質ニューロン(
図8A~8D)のいずれにおいても検出可能な凝集体を伴わずにびまん性GFP分布を示した。対照的に、Q74-Httを発現する両方の細胞型はHtt凝集体を示し、miR-485-3pASO処理は、対照PC12細胞(
図7A~7E)及び一次皮質ニューロン(
図8A~8D)と比較してHtt凝集を減少させた。
【0311】
初代皮質神経細胞を17日目のマウス胎児から培養した。簡単に述べると、皮質を摘出し、氷冷したHBSS(Welgene,LB003-02)溶液中でインキュベートし、accumax(sigma、カタログ番号A7089)中、37℃で15分間、解離させた。培養物をHBSS中で2回、洗浄した。マウス神経細胞を、2%B27(Gibco、カタログ番号17504)、1%ピルビン酸ナトリウム、及び1%P/Sを含むneurobasal培地(Gibco、カタログ番号21103049)に再懸濁した。細胞を、70μMのセルストレイナー(SPL,93070)に通して濾過し、加湿した5%CO2インキュベーター内で37℃に維持した。培地を3日毎に換え、その後10日間インビトロで培養した後、細胞を実験に使用した。
【0312】
全てのデータは平均値±s.dとして表わす。事後比較(Student-Newman-Keuls検定)をPrism 8を使用して実行した。
【0313】
実施例4:miR485-3pASOがオートファジーの調節によってHtt凝集体の分解を増強する
miR485-3pASO処理がHtt凝集体の分解を促進できることをさらに検証するために、PC12細胞に、miR485-3p(5’-AGAGGAGAGCCGUGUAUGAC-3’(配列番号:28))と組み合わせてHttQ23またはHttQ74をトランスフェクトした。Q23(
図9A~9I)トランスフェクト細胞と比較して、Q74トランスフェクトPC12細胞(PJ-9R)ではHttタンパク質の凝集の増加が検出可能であり、miR485-3pASOトランスフェクション後に劇的に減少した(
図9A~9R)。オートファジー液胞の量が多いことも観察され(例えば、Q74-Conrolと比較して、Q74-miR485-3pASOでLC3Bと共局在するHttタンパク質を含むLC3B)、miR-485-3pASOがQ74-miR485-3pASOトランスフェクト細胞でHtt凝集のレベルを大幅に低下させることができることを示している。
【0314】
PC12細胞(8×104)を12ウェルプレートに一晩播種した。American Type Culture Collection(Bethesda,MD,USA)から入手したPC12細胞を、10%ウシ胎児血清、100units/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Welgene)で維持し、5%CO2加湿雰囲気で37℃に保った。細胞を24ウェルプレートで培養し、2μgのpEGFPHTT(Q23)/mHTT(Q74)プラスミドで24時間培養した後、TransIT-X2(商標)(Mirus)をトランスフェクトした。トランスフェクションと培地交換の後、細胞にmiR485-3pASOをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、カバースリップ上で増殖した細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液で修正し、ブロックし、一次及び対応する蛍光標識二次抗体と共にインキュベートした。HTTタンパク質の凝集及びオートファジーを、増強された緑色蛍光遺伝子(EGFP)発現及びLC3B斑点に基づいて蛍光顕微鏡下で評価した。
***
【0315】
特許請求の範囲を解釈するうえで、「発明の概要」及び「要約」のセクションではなく、「発明の詳細な説明」のセクションを用いることが意図されている点は認識されるべきである。発明の概要及び要約セクションは、本発明者(複数可)により意図される1つ以上であるが、すべてではない本開示の例示的態様を示し得、したがって、本開示及び添付の特許請求の範囲を如何様にも限定することを意図しない。
【0316】
本開示は、特定の機能及びそれらの関係の実施を示す機能的構成単位を用いて上記された。これらの機能的構成単位の境界は、説明の便宜上、本明細書において任意に定められたものである。特定の機能及びそれらの関係性が適切に実施されている限り、代替的な境界を定義することもできる。
【0317】
具体的な態様の上記の具体的な説明は本開示の一般的な性質を余すところなく示しているため、他者は、当業者の技能の範囲内の知識を適用することで、不要な実験を行うことなく、本開示の一般的概念から逸脱せずに、かかる具体的な態様を容易に改変し、及び/またはさまざまな用途に適合させることができる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書に示される教示及び助言に基づき、開示される態様の均等物の意味及び範囲内に包含されるものとする。本明細書における語句または用語は、説明を目的としたものであって、限定を目的とするものではなく、本明細書における語句または用語は本明細書の教示及び助言を考慮することで当業者によって理解されるはずである。
【0318】
本開示の幅及び範囲は、上記に記載した例示的な態様のいずれによっても限定されるべきでなく、下記の請求項及びそれらの均等物のみにしたがって定義されるべきものである。
【0319】
本出願全体を通じて引用され得る全ての引用参考文献(参考文献、特許、特許出願、及びウェブサイトを含む)の内容の全体を、あらゆる目的で、参照によって本明細書に明示的に援用し、また、それらに引用される文献も同様に援用する。
【配列表】
【国際調査報告】