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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】輸送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 54/02 20060101AFI20230721BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20230721BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B65G54/02
H02K41/03 A
H02K41/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581536
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 IT2021050204
(87)【国際公開番号】W WO2022003745
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020000015829
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500361593
【氏名又は名称】イ・エメ・ア,インドゥストリア・マキーネ・オートマティーク・ソシエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ザニボーニ カルロ
(72)【発明者】
【氏名】ミニェッリ コラド
【テーマコード(参考)】
3F021
5H641
【Fターム(参考)】
3F021AA01
3F021BA03
3F021CA01
5H641BB06
5H641BB19
5H641GG02
5H641HH03
5H641JA03
5H641JA09
5H641JA13
(57)【要約】
製品、特に組み立てられるべき製品、を輸送する輸送システム(10)であって、中断のない連続的なスライド経路に沿って延在する静的なスライド軌道(11)と、進行の方向(A)に前記スライド軌道(11)上で動かされることができる移動ユニット(12)と、前記スライド軌道(11)上で前記移動ユニット(12)を動かすモータ手段と、を備える輸送システム(10)。輸送システム(10)は、少なくとも1つの転動ガイド(16、17)と、スライド関係に従って前記転動ガイド(16、17)と協働するように構成される少なくとも1つの転動ユニット(18、19)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品、特に組み立てられるべき製品、を輸送する輸送システム(10)であって、
中断のない連続的なスライド経路に沿って延在する静的なスライド軌道(11)と、
進行の方向(A)に前記スライド軌道(11)上で動かされることができる移動ユニット(12)と、
前記スライド軌道(11)上で前記移動ユニット(12)を動かすように構成されるモータ手段と、
前記スライド経路に沿って延在し、前記スライド軌道(11)の近くに配置され、少なくとも1つの第1の直線部分(16a)及び少なくとも1つの第1の湾曲部分(16b)を備える第1の転動ガイド(16)と、
を備え、
前記移動ユニット(12)は、前記第1の転動ガイド(16)と協働する少なくとも第1の転動ユニット(18)を備え、
前記第1の転動ガイド(16)は、前記第1の直線部分(16a)と前記第1の湾曲部分(16b)との間に介在する第1の遷移ゾーン(16c)を備え、
前記第1の転動ガイド(16)は、第1及び第2の転動面(20a、21a)をそれぞれ有する第1及び第2のカム(20、21)を備え、
前記第1の転動ユニット(18)は、互いに一致せず前記進行の方向(A)に離間している第1及び第2の転動軸(X1、X2)の周りで前記第1及び第2の転動面(20a、21a)上をそれぞれ転動するように構成された第1及び第2の転動要素(24、25)を備え、
前記第1及び第2の転動面(20a、21a)は、前記スライド経路に沿って一定である第1及び第2の幅(LI、L2)を有し、前記スライド軌道(11)に対して第1及び第2の転動高さ(H1、H2)にそれぞれ配置され、
前記スライド経路における同じ点で測定される、前記第1及び前記第2の転動高さ(H1、H2)の値の差の絶対値は、前記測定が行われる前記点におけるカム・プロファイル・オフセット(S)を定義することを特徴とする前記輸送システム(10)であって、更に、
前記第1及び第2の転動高さ(H1、H2)の両方が前記少なくとも1つの第1の直線部分(16a)に沿って不変であり、且つ、前記少なくとも1つの第1の湾曲部分(16b)に沿って不変であり、前記カム・プロファイル・オフセット(S)が前記第1の直線部分(16a)に沿って一定であり前記第1の湾曲部分(16b)に沿って一定であるように、前記第1及び第2のカム(20、21)は構成され配置され、
前記第1又は第2の転動高さ(H1、H2)のいずれか少なくとも1つが前記第1の遷移ゾーン(16c)に沿って可変値を持ち、前記カム・プロファイル・オフセット(S)が前記第1の遷移ゾーン(16c)に沿って可変値を持つように、前記第1及び第2のカム(20、21)は構成され配置されることを特徴とする輸送システム(10)。
【請求項2】
前記第1及び第2の転動軸(X1、X2)は、互いに平行であり、及び/又は、前記進行の方向(A)に対して垂直であることを特徴とする請求項1に記載の輸送システム(10)。
【請求項3】
前記輸送システム(10)は、前記第1の転動ガイド(16)から離間し、前記スライド経路に沿って展開する第2の転動ガイド(17)を備え、
前記第2の転動ガイド(17)は、少なくとも1つの第2の直線部分(17a)と少なくとも1つの第2の湾曲部分(17b)とを備え、第2の遷移ゾーン(17c)が前記第2の直線部分(17a)と前記第2の湾曲部分(17b)との間に介在し、
前記第2の転動ガイド(17)は、第3の転動面(22a)を有する少なくとも第3のカム(22)を備え、
前記移動ユニット(12)は更に、第3の転動軸(X3)の周りで前記第3の転動面(22a)上を転動するように構成された第3の転動要素(26)を備えた第2の転動ユニット(19)を備え、
前記第3の転動面(22a)は、前記スライド経路に沿って一定である第3の幅(L3)を有し、前記スライド軌道(11)に対して第3の転動高さ(H3)に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の輸送システム(10)。
【請求項4】
前記第3の転動高さ(H3)は、前記スライド経路全体に沿って前記第1の転動高さ(H1)に等しく、
オプションとして、前記第3の転動軸(X3)は、前記第1又は第2の転動軸(X1、X2)のいずれか少なくとも1つと平行であることを特徴とする請求項3に記載の輸送システム(10)。
【請求項5】
前記第1及び第3の転動面(20a、22a)は、前記スライド経路全体に沿って互いに平行であり、
オプションとして、前記第1及び第3の転動軸(X1、X3)は、一致することを特徴とする請求項3又は4に記載の輸送システム(10)。
【請求項6】
前記第1及び第3の転動面(20a、22a)は、前記第1及び第2の遷移ゾーン(16c、17c)のそれぞれにおいて同じ曲線プロファイルを持つことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項7】
前記第1の転動ガイド(16)は、前記スライド軌道(11)の一方の側に隣接して配置され、
前記第2の転動ガイド(17)は、前記スライド軌道(11)のもう一方の側に隣接して配置されることにより、
前記スライド軌道(11)が、前記第1及び前記第2の転動ガイド(16、17)の間に介在することを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項8】
前記第2の転動ガイド(17)は、第4の転動面(23a)を有する第4のカム(23)を備え、
オプションとして、前記第4のカム(23)は、前記第3のカム(22)に隣接するように位置することを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項9】
前記第2の転動ユニット(19)は、更に、第4の転動軸(X4)の周りで前記第4の転動面(23a)上を転動するように構成された第4の転動要素(27)を備え、
前記第4の転動軸(X4)は、前記第1又は第2の転動軸(X1、X2)のうちいずれか少なくとも1つに平行であり、
前記第4の転動面(23a)は、前記スライド経路に沿って一定の第4の幅(L4)を持ち、前記スライド軌道(11)に対して第4の転動高さ(H4)に配置され、
前記第4の転動高さ(H4)は、前記スライド経路全体に沿って前記第2の転動高さ(H2)に等しいことを特徴とする請求項8に記載の輸送システム(10)。
【請求項10】
前記第2及び第4の転動面(21a、23a)は、前記スライド経路全体に沿って互いに平行であり、
オプションとして、前記第2及び第4の転動軸(X2、X4)は一致することを特徴とする請求項8又は9に記載の輸送システム(10)。
【請求項11】
前記第1及び第3のカム(20、22)は、より外側に配置され、
前記第2及び第4のカム(21、23)は、より内側に配置され、
前記スライド軌道(11)は、前記第1及び前記第2の転動ガイド(16、17)の間に介在することを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項12】
製品、特に組み立てられるべき製品、を輸送する輸送システム(10)であって、
中断のない連続的なスライド経路に沿って延在する静的なスライド軌道(11)と、
進行の方向(A)に前記スライド軌道(11)上で動かされることができる移動ユニット(12)と、
前記スライド軌道(11)上で前記移動ユニット(12)を動かすように構成されるモータ手段と、
前記スライド経路に沿って展開し、前記スライド軌道(11)の近くに配置され、少なくとも1つの第1の直線部分(16a)及び少なくとも1つの第1の湾曲部分(16b)を備える転動ガイド(16)と、
を備え、
前記移動ユニット(12)は、前記転動ガイド(16)と協働する少なくとも1つの転動ユニット(18)を備え、
前記転動ガイド(16)は、前記第1の直線部分(16a)と前記第1の湾曲部分(16b)との間に介在する第1の遷移ゾーン(16c)を備え、
前記転動ガイド(16)は、第1及び第2の転動面(20a、21a)をそれぞれ有する第1及び第2のカム(20、21)を備え、
前記転動ユニット(18)は、互いに一致せず前記進行の方向(A)に離間している第1及び第2の転動軸(X1、X2)の周りで前記第1及び第2の転動面(20a、21a)上をそれぞれ転動するように構成された第1及び第2の転動要素(24、25)を備え、
前記第1及び第2の転動要素(24、25)は、前記移動ユニット(12)が前記進行の方向(A)に前記スライド軌道(11)上を移動させられる時、前記スライド軌道(11)に対して第1及び第2の基準高さに前記第1及び第2の転動軸(X1、X2)のそれぞれを配置するように構成されることにより、前記スライド経路における同じ点で測定される、前記第1及び前記第2の基準高さの差が前記移動ユニット(12)の前傾値を定義することを特徴とする前記輸送システム(10)であって、更に、
前記第1及び第2の基準高さの両方が、前記少なくとも1つの直線部分(16a)に沿って不変であり、且つ、前記少なくとも1つの湾曲部分(16b)に沿って不変であり、前記前傾値は、前記直線部分(16a)と前記湾曲部分(16b)とにおいて一定であるように、前記第1及び第2のカム(20、21)は構成され配置され、
前記第1又は第2の基準高さのいずれか少なくとも1つが前記遷移ゾーン(16c)に沿って可変値を持ち、前記前傾値は前記遷移ゾーン(16c)で可変値を持つように、前記第1及び第2のカム(20、21)は構成され配置されることを特徴とする輸送システム(10)。
【請求項13】
製品、特に組み立てられるべき製品、を輸送する輸送システム(10)であって、
静的スライド軌道(11)と、
スライド関係において前記スライド軌道(11)と協働することができる少なくとも1つの転動ユニット(18)を備える少なくとも1つの移動ユニット(12)と、
前記スライド軌道(11)上で前記移動ユニット(12)を移動させるように駆動するように構成されるモータ手段と、
を備え、
前記スライド軌道(11)は、中断のない連続的なスライド経路に沿って延在し、
前記輸送システム(10)は、更に、前記スライド経路に沿って展開し前記スライド軌道(11)の近くに配置される転動ガイド(16)を備え、前記転動ガイド(16)は、少なくとも1つの第1の直線部分(16a)と少なくとも1つの第1の湾曲部分(16b)とを備え、前記転動ユニット(18)と転動関係で協働することができることを特徴とする前記輸送システム(10)であって、更に、
前記転動ガイド(16)は、前記第1の直線部分(16a)と前記第1の湾曲部分(16b)との間に介在する第1の遷移ゾーン(16c)を備え、前記転動ユニット(18)に含まれる第1及び第2の転動要素(24、25)によって転動関係に従ってそれぞれ接触されることができる第1及び第2の転動面(20a、21a)をそれぞれ有する第1及び第2のカム(20、21)を備え、
前記第1及び第2の転動面(20a、21a)は、前記スライド経路に沿って一定である第1及び第2の幅をそれぞれ有し、前記スライド軌道(11)に対してそれぞれ第1及び第2の転動高さ(H1、H2)に配置され、
前記スライド経路における同じ点で測定される、前記第1の転動高さ(H1)及び前記第2の転動高さ(H2)の値の差の絶対値は、カム・プロファイル・オフセット(S)を定義し、
前記第1及び第2の転動高さ(H1、H2)の両方が、前記少なくとも1つの直線部分(16a)に沿って不変であり、且つ、前記少なくとも1つの湾曲部分(16b)に沿って不変であり、前記カム・プロファイル・オフセット(S)は、前記直線部分(16a)と前記湾曲部分(16b)とにおいて一定であるように、前記第1及び第2のカム(20、21)は構成され配置され、
前記第1又は第2の転動高さ(H1、H2)のうちいずれか少なくとも1つは、前記遷移ゾーン(16c)に沿って変化する値を有し、前記カム・プロファイル・オフセット(S)は、前記遷移ゾーン(16c)に沿って変化する値を有するように、前記第1及び第2のカム(20、21)は構成され配置されることを特徴とする輸送システム(10)。
【請求項14】
前記スライド軌道(11)は、閉じられた経路に沿って展開し、
オプションとして、前記第1及び第2のカム(20、21)は、互いに隣接することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項15】
前記第1及び第2の転動面(20a、21a)は、前記第1の遷移ゾーン(16c)において、互いに異なる曲率半径を有する曲線プロファイルを有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項16】
前記モータ手段は、
前記スライド軌道(11)の壁(14)に配置された一次コイル(13a)を備えるリニアモーター(13)と、
前記スライド軌道(11)上で前記移動ユニット(12)を動かすために前記一次コイル(13a)と相互作用するように前記移動ユニット(12)に収納された少なくとも1つの永久磁石(13b)と、
を備えることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【請求項17】
前記遷移ゾーン(16c)において、
前記第1のカム(20)は、前記第2のカム(21)のプロファイルに対して突出する弓形のプロファイルを備える部分を有するか、又は、
前記第2のカム(21)は、前記第1のカム(20)のプロファイルに対して突出する弓形のプロファイルを備える部分を有することを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の輸送システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別の物品、特に組み立てられるべき製品のための輸送システムに関するが、これに限定されない。好ましくは、本発明による輸送システムは、電磁駆動を備えたリニアモータ、インデックス付き又は「段階的に」移動するベルト/チェーン輸送システムの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
産業オートメーションの分野では、通常、産業用処理ラインに設けられた異なる処理ステーション間でばらばらの製品又は個別の物品を輸送できる自動輸送システムが周知である。
【0003】
このような輸送システムは、製品を前進させる経路を画定するコンベア部材を備える。
【0004】
従来技術で知られている幾つかの解決策では、コンベア部材はベルト、チェーン、又は他の同様な輸送部品として構成され、少なくとも1対のドローイング・ローラー上でループ状に閉じられており、少なくとも1つのローラーがモータ回転することにより、製品が置かれているコンベア部材をその回転によって前進させる。
【0005】
従来技術で知られている他の解決策では、コンベヤ部材は複数の輸送スライダとして構成され、複数の輸送スライダのそれぞれが1つ又は複数の製品を支持し、固定されたリニアガイド上をスライドする。ガイドは、製品を運ぶスライダが予想される前進経路をたどることを可能にするような方法で展開する、直線及び湾曲セグメントを含む。
【0006】
従来技術で知られている解決策に含まれるこの種類の輸送システムの一例は、国際公開第2018/047059号として公開された国際特許出願に記載されている。
【0007】
従来技術で知られているこの種類のソリューションで広く使用されている技術の1つは、電磁駆動のリニアモータの技術である。この技術によれば、各輸送スライダが、固定部分に埋め込まれた複数の電磁石と協働する永久磁石を備え、電磁石が永久磁石に面するような位置にあり、電磁石と永久磁石と間に空隙が介在する。永久磁石は、電磁石と協働して、特定の輸送スライダを駆動することが望まれる場合に、電磁石を選択的に作動させることによって輸送スライダを駆動することを可能にし、輸送スライダは、従来技術で知られている方法に従って、発生した電磁場により移動する。
【0008】
電磁駆動のリニアモータを使用する輸送システムは、例えば、一次又は二次包装での製品の包装など、多くの産業部門で長い間使用されてきた。実際、これらのリニアモータは、急加速が可能で、輸送スライダの動きを個別に制御できるため、非常に優れた性能を発揮する。
【0009】
従来の輸送システムの欠点の1つは、特に、直線セグメントと湾曲セグメントによって形成された閉じた経路で輸送スライダを正しく前進させるために、設計上の大きな制約が存在することである。実際、輸送スライダの形状は、湾曲セグメントの特性、特に曲率半径に厳密に依存する。容易に理解されるように、直線セグメントから湾曲セグメントへの遷移において、スライダは途切れることなく経路をたどることができなければならない。
【0010】
特に、電磁駆動のリニアモータを備えた輸送システムの場合、スライダに格納された永久磁石は、リニアガイドに局所的に接するように配置される。その結果、エアギャップは、磁石の異なるポイントで異なる値が想定される。換言すれば、この状態では、永久磁石の2つの側端部における永久磁石と電磁石との間の距離は、永久磁石の中心に比べて、遥かに大きい。
【0011】
これは、輸送スライダとガイドの湾曲セグメントの形状の設計が非常にデリケートなステップであることを意味する。なぜならば、輸送システムの正しい機能を保証し、スライダがガイドとの接触を失うのを防ぐ必要があるためである。また、リニアモータを備えた駆動の場合、電磁場が局所化され一時的に制限されているだけであっても、輸送スライダの前進を決定する電磁場が弱められたり中断されたりすることを、防ぐ必要がある。
【0012】
従って、輸送スライダの直線セグメントから湾曲セグメントへの遷移は、非常にデリケートなステップである。実際、これらのセグメント間の遷移では、この遷移における速度ベクトルの方向の瞬間的な変化が加速を不連続にするため、輸送スライダはガイドから逸脱する傾向があり、これによって、リニアガイドから輸送スライダが外れやすくなる。
【0013】
既知の輸送システムの別の欠点は、輸送スライダの形状の制約によって、輸送スライダのそれぞれの輸送能力が低下することである。なぜなら、輸送スライダが一度に少数の製品しか支持できないためである。これは、スライダの大きさの設計上の制約となるため、非常に不利であることは明らかである。
【0014】
従って、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服できる輸送システムを完成させる必要がある。
【0015】
特に、本発明の1つの目的は、特に輸送スライダが直線セグメントから湾曲セグメントに遷移する間、システムの正しい機能を保証するために使用中に信頼できる輸送システムを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、同じスライダ上で組織化されたより多くの製品を移動できるように、各輸送スライダが従来技術で知られているスライダよりも大きな負荷容量を有する輸送システムを提供することである。
【0017】
出願人は、従来技術の欠点を克服し、これら及び他の目的や利点を得るために、本発明を成し、試験し、具現化した。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、独立請求項に記載され、特徴付けられる。従属請求項は、本発明の他の特徴又は主な発明思想の変形を説明する。
【0019】
上記の目的に従って、製品、特に組み立てられるべきばらばらの製品を輸送するための輸送システムが提供され、これは、従来技術の限界を克服し、そこに存在する欠陥を排除する。
【0020】
本発明による輸送システムの1つの利点は、許容される最大の大きさの為に移動ユニットの積載能力を従来著しく制限している設計上の制約を排除することである。従来技術で知られている移動ユニットの全体の大きさよりも移動ユニットの全体の大きさが大きい場合、特に直線セグメントと湾曲セグメントとの間の遷移ゾーンにおいて、スライド軌道から移動ユニットが外れないように、移動ユニットをスライド軌道に対して配置することを可能にする可変カム・プロファイル・オフセットの存在のおかげで、上記利点が可能となる。そのような大きさの一例は、同じ転動ユニットの転動要素間の中心間距離であり、本発明による輸送システムの移動ユニットにおけるこの中心間距離は、従来技術で知られている移動ユニットを特徴付ける中心間距離よりも遥かに大きく、特に、3倍又は4倍も大きい。
【0021】
本発明のこれら及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる一実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の教示による輸送システムの概略的且つ単純化された斜視図である。
図2図2は、図1の輸送システムに含まれる移動ユニットの概略と簡略化された正面図である。
図3図3は、図1の輸送システムに含まれるスライド軌道の一部についての、拡大されており縮尺通りではない、概略上面図であり、図2の移動ユニットに含まれる異なる転動ユニットが示されている。図3a及び図3bは、図3の拡大された詳細を示す図である。
図4図4は、図3aの拡大された詳細を示す、概略的で簡略化された斜視図である。
図5図5は、図3bの拡大された詳細を示す、概略的で簡略化された斜視図である。
図6図6は、図2の移動ユニットの概略断面図であり、本発明の輸送システムに含まれるスライド軌道の一部も断面で見ることができる。
図7図7は、図2の移動ユニットの概略断面図であり、本発明の輸送システムに含まれるスライド軌道の一部も断面で見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
理解を容易にするために、可能な場合、同じ参照番号を使用して、図面内の同一の共通要素を特定している。1つの実施形態の要素及び特徴は、さらなる明確化なしに、他の実施形態と好適に組み合わせる、又は他の実施形態に組み込むことができることが理解される。
【0024】
ここで、本発明の可能な実施形態を詳細に参照するが、そのうちの1つ又は複数の例が、非限定的な例示として添付の図面に示されている。ここで使用される語句及び用語も、非限定的な例を提供するためのものである。
【0025】
図1を参照すると、製品を輸送するための輸送システムが記載されており、全体として参照番号10で示されている。
【0026】
添付の図面に示されていない製品は、例えば、自動化された生産ラインの文脈における、特に包装部門における、組み立てられるべき製品であり得る。製品の種類、形状、及びサイズが本発明の保護範囲に影響を与えることなく、本発明による輸送システムが、多くの種類の異なる製品を輸送するのに適していることは明らかである。
【0027】
輸送システム10は、中断のない連続的なスライド経路に沿って延在する静的なスライド軌道11を備える。
【0028】
図1に見られる図示の例では、スライド軌道11は、長方形に内接することができ、従って、交互の順番で互いに接続された4つの直線部分及び4つの湾曲部分を備える。
【0029】
なお、スライド経路は、図1に示されここに説明される場合のように閉じていてよく、又は開いていてもよい。
【0030】
輸送システム10は、スライド軌道11に沿って移動することができ、図2並びに図6及び図7の断面図でよく見ることができる、参照番号12で示される移動ユニット又はスライダを備える。移動スライダ12は、スライド軌道11上を進行方向Aに双方向に移動する(図3)。
【0031】
移動スライダ12は、モータ手段によってスライド軌道11に沿って動かされる。
【0032】
図示の実施形態では、輸送システム10は、永久磁石13b(図2、6及び7)と相互作用する一次コイル13a(図6及び図7)を備えたリニアモータ13を備え、スライド軌道11上で移動スライダ12を移動させる。
【0033】
特に、リニアモータ13は、複数の一次コイル13aを含み、これらは、好ましくは、スライド軌道11に沿って一様に分配される。一次コイル13aは、図6及び図7の断面図に見られるように、スライド軌道11の壁14に配置される。
【0034】
更に、リニアモータ13は、特にスライダのキャビティ15内に収容された、移動スライダ12と動作可能に関連付けられた少なくとも1つの永久磁石13bを備える(図2、6及び7)。好ましくは、キャビティ15の形状は、永久磁石13bの形状と一致する。
【0035】
複数の移動スライダ12が設けられ、その全てがスライド軌道11上をスライドする輸送システム10の幾つかの変形例では、輸送システム10は、それぞれがそれぞれの移動スライダ12に関連付けられた複数の永久磁石13bを備える。
【0036】
どの場合でも、移動スライダ12の移動は、従来技術で周知の様態に従って、順次進行に従って一次コイル13aを選択的に作動させることによって達成される。スライダに搭載された永久磁石13bとの電磁場の相互作用のおかげで、生成された電磁場は、移動スライダ12の動きを決定する。
【0037】
以下ではリニアモータの使用についてのみ言及するが、記載されていることは、移動スライダが段階的に移動するインデックス付きのチェーン、ベルト・コンベアなどの他の種類の輸送システムにも適用できる。
【0038】
輸送システム10は、互いに離間し、スライド軌道11上での移動スライダ12の移動を可能にするように構成された、スライド経路に沿って展開する第1の転動ガイド16及び第2の転動ガイド17を備える。移動スライダ12は、第1及び第2の転動ガイド16、17とそれぞれ協働する第1の転動ユニット18及び第2の転動ユニット19を備え、それらは下記の詳細に説明するモードを備える。
【0039】
図1に示す実施形態では、第1の転動ガイド16はスライド軌道11の下側に隣接して配置され、第2の転動ガイド17はスライド軌道11の上側に隣接して配置され、スライド軌道11は、転動ガイド16、17の間に介在する。
【0040】
各転動ガイド16、17は、参照番号16a、17aで示されるそれぞれの直線部分と、参照番号16b、17bで示されるそれぞれの湾曲部分とを備える。1つのそれぞれの直線部分16a、17aから1つのそれぞれの湾曲部分16b、17bへの通過は、参照番号16c、17c(図3)で示されるそれぞれの遷移ゾーンに対応して生じ、これらは、以後、「第1の遷移ゾーン16c」及び「第2の遷移ゾーン17c」と呼ぶ。
【0041】
更に、各転動ガイド16、17は、それぞれが転動面を有する一対のカムを備える。
【0042】
明確にするために、以下では、第1の転動ガイド16に含まれる一対のカムを、参照番号20及び21でそれぞれ示される「第1のカム」及び「第2のカム」という表現で呼ぶ。一方、第2の転動ガイド17に含まれる一対のカムを、参照番号22及び23でそれぞれ示される「第3のカム」及び「第4のカム」という表現で参照する。同様に、第1のカム20は、第1の転動面20aを含み、第2のカム21は、第2の転動面21aを含み、第3のカム22は、第3の転動面22aを含み、第4のカム23は、第4の転動面23aを含む。
【0043】
好ましくは、第1のカム20は第2のカム21に隣接し、第3のカム22は第4のカム23に隣接する。
【0044】
添付の図面に示される実施形態では、第1及び第3のカム20、22はより外側に配置され、第2のカム21及び第4のカム23はより内側に配置され、スライド軌道11は転動ガイド16、17の間に介在する。
【0045】
カム20、21、22、23の転動面20a、21a、22a、及び23aは、スライド経路全体に沿って一定のそれぞれの幅を有し、スライド軌道に対してそれぞれの転動高さに配置される。これらの転動幅及び高さは、第1、第2、第3、及び第4の転動面20a、21a、22a、及び23aについて、順に、それぞれ参照番号L1、L2、L3、及びL4、並びにH1、H2、H3、及びH4で示される(特に図6参照)。
【0046】
転動高さH1、H2、H3、及びH4は、それぞれの固定基準面からの距離として測定され、各固定基準面は、転動経路全体に沿ってそれぞれの転動面20a、21a、22a、及び23aに面するように配置され、スライド経路に平行に位置する共通の基準線がその上にある。
【0047】
図示の例では、カム20、21、22、23の転動面20a、21a、22a、及び23aとスライド軌道との間の距離は、スライド軌道の壁14に対して測定される。
【0048】
移動スライダ12の第1の転動ユニット18は、第1及び第2の転動面20a、21a上を、参照符号X1、X2で示される第1及び第2の転動軸の周りにそれぞれ転動するように構成された第1及び第2の転動要素24、25を備える(図4及び図5)。
【0049】
同様に、移動スライダ12の第2の転動ユニット19は、第3及び第4の転動面22a、23a上を、参照符号X3、X4で示される第3及び第4の転動軸の周りにそれぞれ転動するように構成された第3及び第4の転動要素26、27を備える(図2、6、及び7)。
【0050】
図示の実施形態では、第1、第2、第3、及び第4の転動要素24、25、26、及び27はキャスターであるが、既知の種類又は将来開発される種類の、例えば、車輪、ローラー、小さなローラーなど、転動可能な任意の転動要素として構成できることは明らかである。
【0051】
それぞれの転動面20a、21a、22a、及び23aの幅の大きさは、それらの上を転動しなければならないそれぞれの転動要素24、25、26、及び27の大きさ及び形状の関数として、大きさが決定され適合される。
【0052】
第1、第2、第3、及び第4の転動面20a、21a、22a、及び23aの転動高さH1、H2、H3、及びH4は、スライド軌道の直線部分16a、17aと湾曲部分16b、17bとの両方に沿って一定であるが、遷移ゾーン16c、17cにおいては、以下に説明するモダリティに従って、可変である。
【0053】
特に、スライド経路の同じ点で測定されなければならない、第1及び第2の転動高さH1、H2の値の間の差の絶対値は、カム・プロファイル・オフセットS(図3)を定義する。これは、以下に詳しく説明する図3a及び図3bの拡大図でよりよく見ることができる。
【0054】
以下、本明細書において、カム・プロファイル・オフセットSを参照する時は、同じ転動ガイドの2つのカムの高さを同じ点で測定したものとして理解されるべきである。
【0055】
完全に同様の方法で、スライド経路の同一点で測定された第3及び第4の転動高さH3、H4の値の間の差の絶対値も、上記のようにカム・プロファイル・オフセットSを定義する。
【0056】
カム・プロファイル・オフセットSがそれぞれの遷移ゾーン16c、17cで測定された場合にのみ、カム・プロファイル・オフセットSが、特に各箇所ごとに、変化する値を有するように、第1及び第2の転動高さH1、H2並びに第3及び第4の転動高さH3、H4は、配置される。
【0057】
従って、第1及び第2の転動面20a、21aは、第1の遷移ゾーン16cにおいて互いに異なる曲線プロファイルを有する。同様に、第3及び第4の転動面22a、23aも、第2の遷移ゾーン17cにおいて互いに異なる曲線プロファイルを有する。
【0058】
好ましくは、第1の転動面20aと第3の転動面22aは、スライド経路全体にわたって互いに平行であり、同様に、第2の転動面21aと第4の転動面23aも、スライド経路全体にわたって互いに平行である。換言すれば、第3の転動高さH3は、スライド経路全体にわたって第1の転動高さH1と同じであり、同様に、第4の転動高さH4は、スライド経路全体にわたって第2の転動高さH2と同じである。
【0059】
従って、第1及び第3の転動面20a、22a並びに第2及び第4の転動面21a、23aは、スライド経路全体にわたって互いに同一のプロファイルをそれぞれ有する。
【0060】
図3aと3bは図3の拡大図であり、移動スライダ12の第1の転動ユニット18と第1の転動ガイド16との間の相互作用を見ることが可能であり、第1の転動ユニット18は、これらの図面では破線の長方形で示される。前述の輸送システムの幾何学的構成によれば、移動スライダ12の第2の転動ユニット19と第2の転動ガイド17との間の相互作用は、図3、3a及び図3bに示されるものと完全に同一であるので、省略する。
【0061】
図3a及び図3bの拡大図では、転動高さH1及びH2、つまり、カム・プロファイル・オフセットSも、説明を明確にするために著しく誇張されており、第1の遷移ゾーン16cにおける転動面20a及び21aは、純粋に例示として考えなければならないことに留意されたい。
【0062】
遷移ゾーンで異なるカム・プロファイルを選択したのは、このようにして、第1の転動ガイドのみについて、スライダの第1及び第2の転動要素のために異なるプロファイルを有する2つのレール(第1及び第2の転動面)が作られるためである。
【0063】
特に図3aを参照すると、直線部分16aから湾曲部分16bへの第1の遷移ゾーン16cにおいて、第1の転動高さH1は変化し、第1の転動高さH1は、第2の転動高さH2より大きい。なぜならば、第1の転動面20aは、壁14に対しての第2の転動面21aの突出量よりも大きく壁14に対して突出しているからである。前述のように、2つの高さH1とH2の間の差の絶対値によって、カム・プロファイル・オフセットSが決まり、カム・プロファイル・オフセットSは、第1の遷移ゾーン16cにおいて局所的につまり各箇所ごとに変化する。
【0064】
実際には、第1の遷移ゾーン16cにおいて、第1の転動面20aの曲率半径(一定ではない)は、第2の転動面21aの曲率半径(一定ではない)よりも、各箇所ごとに小さい。
【0065】
更に、図3aを参照すると、第1の遷移ゾーン16cにおける第1の転動高さH1の値は、直線部分16a及び湾曲部分16bにおける第1の転動高さH1の一定値より大きい値を有し、一方、図3aの第1の遷移ゾーン16cにおける第2の転動高さH2の値は、好ましくは、直線部分16a及び湾曲部分16bにおける第2の転動高さH2の一定値よりも小さい。実際には、第1の遷移ゾーン16cにおけるカム・プロファイル・オフセットSの変化は、第1の転動高さH1(より大きな曲率半径)及び第2の転動高さH2(より小さな曲率半径)の値に同時に起こる変化によるものである。
【0066】
図3bを参照すると、第1の遷移ゾーン16cでは、図3aに示す他の第1の遷移ゾーン16cとは異なり、第2の転動高さH2が変化し、第2の転動高さH2は、第1の転動高さH1より大きい。なぜならば、第2の転動面21aは、スライド軌道11の壁14に対しての第1の転動面20aの突出量よりも大きく壁14に対して突出しているからである。この場合も、2つの高さH1とH2の間の差の絶対値によって、カム・プロファイル・オフセットSが決まり、カム・プロファイル・オフセットSは、第1の遷移ゾーン16cにおいて局所的につまり各箇所ごとに変化する。
【0067】
更に、図3bを参照すると、第1の遷移ゾーン16cにおける第2の転動高さH2の値は、直線部分16a及び湾曲部分16bにおける第2の転動高さH2の一定値より大きく、一方、図3bの第1の遷移ゾーン16cにおける第1の転動高さH1の値は、好ましくは、直線部分16a及び湾曲部分16bにおける第1の転動高さH1の一定値よりも小さい。実際には、図3bの第1の遷移ゾーン16cにおけるカム・プロファイル・オフセットSの変化は、第2の転動高さH2(より大きな曲率半径)及び第1の転動高さH1(より小さな曲率半径)の値に同時に起こる変化によるものである。
【0068】
上記説明した構成によれば、各湾曲部分16bに対して一対の遷移ゾーン16cがあり、各遷移ゾーン16cは、湾曲部分16bの入口及び出口で湾曲部分16bを直線部分11aに接続するように湾曲部分16bの側部に位置している。これらの2つの遷移ゾーン16cにおけるカム・プロファイル・オフセットSの傾向は可変であり、図3で明確に分かるように湾曲部分16bに関して線対称である。
【0069】
具体的には、遷移ゾーンにおける転動高さの値がその直線部分と湾曲部分におけるそれぞれの転動高さの値よりも大きいカムは、遷移ゾーン16cにおいて、こぶ又はアーチ型のプロファイルを形成し、その頂部はスライド軌道とは反対の方向を向いており、他方、同じ転動ガイドに属する他のカムは、このこぶに対応して、スライド軌道に向かって、つまり、こぶの反対方向に向かって、わずかにくぼみを有している。
【0070】
言い換えると、湾曲部分16bの一方の側で、遷移ゾーン16cは、こぶを有する第1のカム20と、くぼみを有する第2のカム21と、を有し、同じ湾曲部分16bの反対側では線対称的に、他の遷移ゾーン16cは、くぼみを有する第1のカム20と、こぶを有する第2のカム21と、を有する。
【0071】
上記説明したこの線対称構成の理由は、このように、スライド軌道11上での移動スライダ12のスライド中に他の転動要素よりも湾曲部分16bからより離れた(つまり直線部分16aにより近い)位置にあるスライダの転動要素は、こぶのあるプロファイルを有するカムに沿って移動する、つまり、それは、スライド軌道に対して距離をおく。一方、スライド軌道上でのスライダのスライド中に、他の転動要素よりも湾曲部分16bにより近い(つまり直線部分16aからより離れた)位置にある移動スライダ12の転動要素は、くぼみのあるプロファイルを有するカムに沿って移動する。
【0072】
本発明による輸送システム10は、第1の直線部分16a及び第1の湾曲部分16bにおいて、第1及び第2のカム20、21の第1及び第2の転動面20a、21aの間のカム・プロファイル・オフセットSは一定である。同様に、第2の直線部分17a及び第2の湾曲部分17bにおいて、第3及び第4のカム22、23の第3及び第4の転動面22a、23aの間のカム・プロファイル・オフセットSは一定である。換言すれば、直線部分16a、17aにおいて及び湾曲部分16b、17bにおいて、第1及び第2の転動高さH1、H2並びに第3及び第4の転動高さH3、H4の両方が不変であるように、第1及び第2のカム20、21並びに第3及び第4のカム22、23が構成及び配置される。このように、カム・プロファイル・オフセットSは、直線部分16a、17a及び湾曲部分16b、17bの両方において一定である。一方、第1又は第2の転動高さH1、H2の少なくとも1つ、つまり、第3又は第4の転動高さH3、H4の少なくとも1つは、それぞれの遷移ゾーン16c、17cに添って可変値を有し、カム・プロファイル・オフセットSは、遷移ゾーンに沿って可変値を有する。
【0073】
示されている例では、直線部分16a、17aの第1及び第3の転動面20a、21aの転動高さH1、H3は、湾曲部分16b、17bのそれと等しく、また、直線部分16a、17aの第2及び第4の転動面22a、23aの転動高さH2、H4は、湾曲部分16b、17bのそれと等しい。好ましくは、第1の湾曲部分16b(図3)に沿って、第1の転動高さH1は第2の転動高さH2に等しい。なぜならば、第1の転動面20aは、スライド軌道11の壁14に対して、壁14に対する第2の転動面21aの突出量と同じだけ突出しているためである。この場合、カム・プロファイル・オフセットSを決める、2つの高さH1とH2との差の絶対値は、第1の湾曲部分16bにおいて一定であり、すなわち、それは、第1の湾曲部分16bに沿って移動しても変化せず、ゼロに等しい。
【0074】
1つの特定の実施形態によれば、転動ガイド16、17の直線部分16a、17a及び湾曲部分16b、17bにおいて、第1、第2、第3、及び第4の転動面20a、21a、22a、及び23aの転動高さH1、H2、H3、及びH4は、互いに等しい。
【0075】
移動スライダ12に関して、添付の図面に示されている好ましい実施形態によれば、第1及び第2の転動要素24、25のそれぞれの第1及び第2の転動軸X1、X2は、互いに一致せず、進行方向Aに離間している。好ましくは、第1及び第2の転動軸X1、X2は、互いに実質的に平行である。同様に、第3及び第4の転動軸X3、X4は、互いに一致せず、進行方向Aに離間している。好ましくは、第3及び第4の転動軸X3、X4は、互いに実質的に平行である。
【0076】
その結果、第3及び第4の転動軸X3、X4は、第1又は第2の転動軸X1、X2の少なくとも一方、より好ましくは両方に平行である。添付の図面に示されるこの特定の場合では、転動要素24、25、26、及び27の4つの転動軸X1~X4の全てが互いに平行である。
【0077】
好ましい実施形態では、第1及び第3の転動軸X1、X3は一致しており、「一致している」ことは、図2に明確に示されているように、単一の直線上、特に鉛直な直線上に配置されるように、それらが互いに長手方向に整列していることを意味する。
【0078】
同様に、第2及び第4の転動軸X2、X4も、前述の定義に従って、一致しており、両方とも、第1及び第3の転動軸X1、X3が配置される上記直線に平行であって鉛直な別の直線によって定義される単一の準線(directrix)上に配置される(図2)。
【0079】
好ましくは、全ての転動軸X1、X2、X3、及びX4は、進行方向Aに対して垂直に配置される。
【0080】
すなわち、転動要素24、25、26、及び27の幾何学的配置により、第1の転動ユニット18に含まれる一対の転動要素24、25の中心間距離I(図2)を、図2に示すように、第2の転動ユニット19に含まれる一対の転動要素26、27間の中心間距離Iに等しくさせる。これらの中心間距離は、転動要素24-25及び26-27の転動軸X1-X2及びX3-X4の間の距離として定義される。
【0081】
遷移ゾーン16c、17cにおけるカム・プロファイル・オフセットSの値は、中心間距離Iに比例する。したがって、中心間距離Iが増加すると、カム・プロファイル・オフセットS値が大きくなり、遷移ゾーンの長さが長くなる。
【0082】
好ましくは、本発明による輸送システム10は、転動要素24、25、26、及び27の直径が約25mmの時、中心間距離Iが約100mmの値に達することができるように、転動要素24、25、26、及び27を配置することを可能にし、この中心間距離Iは、従来技術で知られているこの種類の移動スライダの距離を通常特徴づける中心間距離の3倍又は4倍の値に達する。従って、本発明の教示によれば、移動スライダ12の大きさは遥かに大きく、従って、それは、従来技術で知られている種類のスライダよりも著しく大きな負荷容量を持つ。
【0083】
尚、移動スライダ12が遷移ゾーン16c、17cに沿って移動するとき、第1及び第2の転動軸X1、X2、並びに第3及び第4の転動軸X3、X4は、図3a及び図3bの拡大でよくわかるように、スライド軌道11に対して、特に壁14に対して、それぞれ第1及び第2の基準高さに配置されるように構成される。図3a及び図3bにおいては、基準高さは、一点鎖線で表される軌跡に沿って配置される。第1及び第2の基準高さは、第1の遷移ゾーン16cにおいて、スライド経路に沿って可変であり、これによって、スライド経路の同じ点で測定された絶対値での第1及び第2の基準高さの差が、移動スライダ12の前方傾斜値を定義する。移動スライダ12が破線の長方形で概略的に表される図3a及び図3bの拡大図では、スライド軌道11に対する移動スライダ12の相対的な配置は、上記のように前傾を非常に明確に示している。
【0084】
図示されない1つの変形例によると、本発明による輸送システム10は、第1の転動ガイド16のみを含むことができ、第2の転動ガイド17は無くてもよい。結果として、この変形例によれば、輸送システムは、第1の転動ユニット18のみを含み、第2の転動ユニット19は含まない。上記説明したものと技術的に完全に等価な他の変形例では、輸送システム10は、第2の転動ガイド17と第2の転動ユニット19のみを含み、第1の転動ガイド16と第1の転動ユニット18を有さない。換言すれば、本発明の幾つかの変形例では、輸送システム10は、1つの転動ガイドのみを含み、それは、スライド軌道11の下側に隣接するものであってもよいし、又は、スライド軌道11の上側に隣接するものであってもよく、その結果、それぞれの転動ユニット18又は19のみが上記のようにガイド上を転動できる。
【0085】
本発明による輸送システム10は、また、互いに反対側に配置された一対の支持面28、29を含み、その間にスライド軌道11が介在する。
【0086】
図1及び7に示されるように、移動スライダ12は、移動スライダ12の位置を決定するために、スライド軌道11と協働するように構成された少なくとも1つのエンコーダアーム30を備える。
【0087】
移動スライダ12は、また、例えば車輪、キャスター、ローラー、小さなローラーとして構成され、支持面28、29のうち少なくとも1つ、又はより好ましくは、2つと協働する複数の支持転動要素を備える。図2に示されるように、支持転動要素は、参照番号31で示されるホイールとして構成され、それぞれはそれぞれの水平方向の軸の周りを回転可能であり、各支持ホイールは、それぞれの転動要素24、25、26、及び27の近くに配置される。特に、1対の支持ホイールは、スライド軌道11の下側に隣接する支持面28と協働して転動するように構成され、別の1対の支持輪は、参照番号29で示され、スライド軌道11の上側に隣接する他の支持面と協働して転動するように構成されている。
【0088】
幾つかの変形例では、輸送システム10は、転動高さH1及びH2、並びにH3及びH4が、直線部分16a、17a及び湾曲部分16b、17bにおいても、互いに異なっており、カム・プロファイル・オフセットSを常に一定に維持する。この場合、移動スライダ12の正確なスライドを保証するために、異なる転動要素24、25、26、及び27は、それらが転動するそれぞれの転動面20a、21a、22a、及び23aのプロファイルに適切に関連付けられた、互いに異なる直径を有することができる。この変形例の代替えとして、又はこの変形例に組み合わせて、異なる転動要素24、25、26、及び27は、全て同じ直径を持つことができるが、それぞれの転動軸X1、X2、X3、及びX4は、転動要素24、25、26、及び27が転動する転動面20a、21a、22a、及び23aのプロファイルに相関するように、スライド軌道11から適切な距離にそれぞれ配置されている。
【0089】
特許請求の範囲によって規定される本発明の分野及び範囲から逸脱することなく、上記説明したように、部品の変更及び/又は追加を輸送システム10に対して行うことができることは明らかである。
【0090】
本発明は、幾つかの特定の実施形態の例を参照して説明されたが、当業者は、特許請求の範囲に記載された特徴を有し、すべてが特許請求の範囲に定義された保護の範囲内に入る、輸送システムの他の多くの均等な形態を確実に達成することができるであろう。以下の請求項では、括弧内の参照の唯一の目的は読みやすくすることであり、それらは、特定の請求項で請求される保護分野に関する制限要因と見なされるべきではない。
図1
図2
図3-3b】
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】