(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20170101AFI20230721BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230721BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20230721BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230721BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230721BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230721BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20230721BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20230721BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230721BHJP
C08G 63/66 20060101ALI20230721BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/14
A61K31/5415
A61K31/18
A61K9/08
C08G63/66 ZBP
C08G65/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500342
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021068376
(87)【国際公開番号】W WO2022008382
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520017823
【氏名又は名称】メディンセル エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエット スランドゥ
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ ロペス ノリエガ
(72)【発明者】
【氏名】フェイフェイ ング
(72)【発明者】
【氏名】マリー エメレンティエンヌ キャニョン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトール ニコラン
(72)【発明者】
【氏名】シルビオ クーリア
(72)【発明者】
【氏名】ジャン マヌエル クロス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
4J005
4J029
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB32
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4C086AA01
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4C086AA03
4C086BC89
4C086MA03
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4C206ZA81
4J005AA02
4J005AA21
4J005BC00
4J029AA01
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4J029AD01
4J029AE06
4J029EG09
4J029EH01
4J029JE182
(57)【要約】
少なくとも3つのポリエステルアームを含む多分岐コポリマーであって、前記ポリエステルは、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)であり、ポリエーテルを含む中心コアに結合していて、前記多分岐コポリマーは水溶液に実質的に不溶性である、多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、少なくとも1つの薬学的活性成分、および前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒を更に含む、医薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのポリエステルアームを含む多分岐コポリマーであって、前記ポリエステルは、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)であり、ポリエーテルを含む中心コアに結合していて、前記多分岐コポリマーは水溶液に実質的に不溶性である、多分岐コポリマー
を含む医薬組成物であって、
少なくとも1つの薬学的活性成分、および前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒
を更に含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルの分子量は、10kDa以下、5kDa以下、好ましくは4kDa以下、好ましくは3kDa以下、好ましくは2kDa以下、好ましくは1kDa以下、または好ましくは0.5kDa以下、任意に少なくとも0.2kDaである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも3つのポリエステルアームを含む多分岐コポリマーであって、前記ポリエステルは、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)であり、ポリエーテルを含む中心コアに結合していて、前記ポリエーテルの分子量は、10kDa以下、5kDa以下、好ましくは4kDa以下、3kDa以下、または2kDa以下、または1kDa以下、または0.5kDa以下である、多分岐コポリマー
を含む医薬組成物であって、
少なくとも1つの薬学的活性成分、および前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒
を更に含む、医薬組成物。
【請求項4】
前記多分岐コポリマーは、水溶液に実質的に不溶性である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記多分岐コポリマーは、水溶液中、任意に水中で、15mg/mL未満、任意に10mg/mL未満、5g/mL未満、2mg/mL未満、または1mg/mL未満の溶解度を有する、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項6】
水性溶解度は37℃で測定される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
in situデポーを形成するのに適している、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記多分岐コポリマーは式A(B)
nのものであり、式中、Aは前記中心コアを表し、Bは前記ポリエステルアームを表し、nはアームの数を表し、少なくとも3の整数であり、nは3、4、5、6または8であり、好ましくは3または4である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリオールから誘導可能な多分岐ポリエーテルである、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基、任意に3、4、5、6または8つのヒドロキシル基で置換された炭化水素である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリオールは、1つ以上のエーテル基を更に含む、請求項9~11の何れかに記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールメタン、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、またはイノシトールである、請求項9~12の何れかに記載の組成物。
【請求項14】
前記多分岐ポリエーテルの各枝は、ポリエステルまたはそのモノマーもしくは前駆体と反応することができる末端反応性基を有する、請求項9~13の何れかに記載の組成物。
【請求項15】
前記末端反応性基はヒドロキシル基である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記多分岐ポリエーテルは、式1~4の何れかを有する、請求項9~15の何れかに記載の組成物:
式1
【化1】
(式中、R
1は
【化2】
、Hまたはアルキルであり、xは0または1であり、mは2と76の間の整数である。)
式2
【化3】
(式中、mは5と40の間の整数である。)
式3
【化4】
(式中、mは5と40の間の整数である。)
式4
【化5】
(式中、mは25と30の間の整数であり、vは6である。)。
【請求項17】
前記多分岐ポリエーテルは式1を有し、xは1であり、R
1はアルキル、任意にエチルである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記多分岐ポリエーテルは式1を有し、xは1であり、R
1は
【化6】
である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記多分岐ポリエーテルは式1を有し、xは0であり、R
1はHである、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記多分岐コポリマーは、請求項9~19の何れかに記載の多分岐ポリエーテルと、D,L-ラクチドおよびε-カプロラクトンとを反応させることによって得ることができる、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項21】
前記多分岐コポリマーは、前記多分岐ポリエーテルによって開始される、前記D,L-ラクチドおよびε-カプロラクトンの開環重合によって得ることができる、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
各アームにおけるエステル繰り返し単位の数は、独立して、5~230、任意に10~115、任意に10~90の範囲であり、ヘキサノエート繰り返し単位に対する乳酸繰り返し単位の比は25/75~99/1の範囲である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項23】
前記多分岐コポリマーは、式5~8の何れかを有する、何れかの先行する請求項に記載の組成物:
式5
【化7】
(式中、R
3は
【化8】
、Hまたはアルキルであり、xは0または1であり、mは2と76の間の整数であり、nは5と230の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)
式6
【化9】
(式中、mは5と40の間の整数であり、nは10と115の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)
式7
【化10】
(式中、mは5と40の間の整数であり、nは10と115の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)
式8
【化11】
(式中、mは25と30の間の整数であり、nは10と90の間の整数であり、qは0.25と0.99の間であり、vは6である。)。
【請求項24】
前記多分岐コポリマーは式5を有し、xは1であり、R
3はアルキル、任意にエチルである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記多分岐コポリマーは式5を有し、xは1であり、R
3は
【化12】
であり、式中、mは2と76の間の整数であり、nは5と230の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記多分岐コポリマーは式5を有し、xは0であり、R
3はHである、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記多分岐コポリマーは式5を有し、前記ポリエーテルコアは2kDaの分子量を有し、前記エステル繰り返し単位とエチレンオキシドのモル比は4または6である、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの薬学的活性成分は、10℃と37℃の間の温度で懸濁液の形態である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリエーテルの分子量は、0.5kDa~10kDa、任意に1kDa~10kDa、好ましくは2kDa~10kDa、好ましくは2kDa~5kDa、または最も好ましくは0.5kDa~2kDaの範囲である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項30】
前記多分岐コポリマーのエチレンオキシドに対する前記エステル繰り返し単位のモル比は、1~10、好ましくは2~6である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項31】
前記薬学的に許容される有機溶媒は生体適合性有機溶媒であり、任意に、前記溶媒の量は、前記組成物全体の少なくとも25%、または少なくとも35%(w/w%)である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項32】
前記薬学的に許容される有機溶媒は、以下の群から選択される、請求項31に記載の組成物:ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、およびそれらの混合物。
【請求項33】
前記薬学的活性成分は疎水性である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項34】
前記薬学的活性成分は、メロキシカム、タムスロシン、またはそれらの組み合わせである、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項35】
前記少なくとも1つの薬学的活性成分は、前記組成物全体の、0.05%~60%、任意に0.05%~40%、任意に5%~30%、任意に5%~25%、任意に5%~20%、任意に10%~20%(w/w%)の量で存在する、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項36】
注入可能な液体である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項37】
前記多分岐コポリマーは、前記組成物全体の、20%~70%、任意に20%~60%、任意に30%~60%、任意に30%~50%(w/w%)の量で存在する、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項38】
表2に規定される組成物である、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項39】
少なくとも1日間、任意に少なくとも3日間、任意に少なくとも7日間、任意に少なくとも30日間、任意に少なくとも90日間、任意に少なくとも180日間、任意に少なくとも1年間、対象に薬学的活性成分を送達するのに適している、何れかの先行する請求項に記載の組成物。
【請求項40】
請求項1~39の何れか一項に記載の医薬組成物を製造する方法であって、請求項1~39の何れかに記載の多分岐コポリマーを薬学的に許容される有機溶媒に溶解することと、続いて薬学的活性成分を前記組成物に添加することを含む、方法。
【請求項41】
請求項1~39の何れかに記載の組成物を、水性媒体、水または体液と接触させることにより、ex vivoまたはin situで生成される、生体吸収性デポー。
【請求項42】
請求項1~39の何れか一項に記載の組成物を対象に投与することと、in situデポーをin vivoで形成させることを含む、薬学的活性成分の制御放出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御放出薬物送達または医薬組成物、特に、in situデポーを生成するのに適した医薬組成物に関する。具体的には、本発明は、ポリエーテルを含む中心コアに結合した少なくとも3つのポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)アームを含み且つ水溶液に実質的に不溶性の多分岐コポリマーを含み、さらに少なくとも1つの薬学的活性成分、および前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒を含む、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2012/090070Aは、生体適合性有機溶媒に溶解した線状(m)PEG-ポリエステルの混合物を含む、溶媒交換in situ形成デポー(solvent-exchange in situ forming depot(ISFD))技術を記載している。注入すると、溶媒が拡散し、水に不溶なポリマーが析出して、活性医薬成分(active pharmaceutical ingredient(API))を閉じ込めることができるデポーを形成する。原薬は、このデポーから、長期間にわたって放出される。
【0003】
徐放のための改善された技術を提供する必要性が依然として存在する。分岐PEG-ポリエステルコポリマーの使用は、高粘度、高注入性値(high injectability value)、および比較的遅い分解速度などの欠点に悩まされている現在使用されている技術を改善する潜在的な方法として特定されている。
【0004】
星型PEG-ポリエステルコポリマーは、中心コアに接続されたいくつかの(3つ以上の)直鎖からなる分岐構造である。星型コポリマーは、星型ホモポリマーまたは星型コポリマーの2つのカテゴリーに分類することができる。(S.J. Buwalda et al., Influence of amide versus ester linkages on the properties of eight-armed PEG-PLA star block copolymer hydrogels, Biomacromolecules 11(2010年)224-232頁)。星型ホモポリマーは、同一の化学構成成分および類似の分子量を有する放射アームを含む対称構造からなる。星型コポリマーは、類似の分子量を有するが、少なくとも2つの異なるモノマーから構成される放射アームを含む対称構造からなる。
【0005】
星型(マルチアームまたは多分岐としても知られる)コポリマーは、Cameron et al, Chemical Society Reviews,40,1761,2011年、およびBurke et al, Biomacromolecules,18,728,2017年に記載されている。
【0006】
Hiemstra et al, Biomacromolecules,7,2790頁,2006年;Buwalda et al, Biomacromolecules,11,224頁,2010年;Calucci et al, Langmuir,26,12890頁,2010年;Mayadunne et al,US2016/0058698A1,2016年は、熱ゲル化水性システム(thermogelling aqueous systems)を記載している。
【0007】
EP1404294B1は、溶媒交換によってin situ形成デポー(in situ forming depot(ISFD))を形成するための分岐(コ)ポリマーの利用を記載している。
【0008】
したがって、より低い粘度、改善された注入性、改善されたまたは異なるAPIの放出特性またはデポー分解速度を有する、星型コポリマーに基づく、新しい溶媒交換ISFD製剤を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも3つのポリエステルアームを含む多分岐コポリマーであって、前記ポリエステルは、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)であり、ポリエーテルを含む中心コアに結合していて、前記多分岐コポリマーは水溶液に実質的に不溶性である、多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、少なくとも1つの薬学的活性成分、および前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒を更に含む、医薬組成物を提供する。
【0010】
典型的には、前記ポリエーテルの分子量は、10kDa以下、5kDa以下、4kDa以下、3kDa以下、または2kDa以下、または1kDa以下、または0.5kDa以下、任意に少なくとも0.2kDaである。
【0011】
本発明はまた、少なくとも3つのポリエステルアームを含む多分岐コポリマーであって、前記ポリエステルは、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)であり、ポリエーテルを含む中心コアに結合していて、前記ポリエーテルの分子量は、10kDa以下、5kDa以下、好ましくは4kDa以下、3kDa以下、または2kDa以下、または1kDa以下、または0.5kDa以下である、多分岐コポリマーを含む医薬組成物であって、少なくとも1つの薬学的活性成分、および前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒を更に含む、医薬組成物を提供する。
【0012】
上記組成物は、in situデポーを形成するのに適している。
【0013】
驚くべきことに、多分岐または星型コポリマーベースの製剤は、線状コポリマー類似体のみを含む製剤と比較して、より低い粘度および改善された注入性を有すると同時に、薬学的活性成分の改善されたまたは異なる放出プロファイルをもたらすことが見出された。
【0014】
典型的には、前記多分岐コポリマーは、水溶液、任意に水に実質的に不溶性である。
【0015】
好ましい実施形態では、前記多分岐コポリマーは、水溶液中、任意に水中で、15mg/mL未満、任意に10mg/mL未満、5g/mL未満、2mg/mL未満、または1mg/mL未満の溶解度を有する。典型的には、前記溶解度は37℃で測定される。
【0016】
典型的には、前記多分岐コポリマーは式A(B)nのものであり、式中、Aは前記中心コアを表し、Bは前記ポリエステルアームを表し、nは少なくとも3の整数である。本発明の実施形態では、nは、少なくとも4、または少なくとも6、または少なくとも8である。nは3、4、6または8であり得る。好ましくは、nは3または4である。
【0017】
一実施形態では、前記中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリオールから誘導可能な多分岐ポリエーテルである。典型的には、前記ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基を含む。前記ポリオールは、典型的には、少なくとも3つのヒドロキシル基、任意に3、4、5、6または8つのヒドロキシル基で官能化された炭化水素である。いくつかの実施形態では、前記ポリオールは、1つ以上のエーテル基を更に含む。好ましくは、前記ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、またはイノシトールである。
【0018】
好ましい実施形態では、前記多分岐ポリエーテルは、式1~4の何れかを有する:
式1
【化1】
(式中、R
1は
【化2】
、Hまたはアルキルであり、xは0または1であり、mは2と76の間の整数である。)
式2
【化3】
(式中、mは5と40の間の整数である。)
式3
【化4】
(式中、mは5と40の間の整数である。)
式4
【化5】
(式中、mは25と30の間の整数であり、vは6である。)。
【0019】
一実施形態では、前記多分岐ポリエーテルは式1を有し、xは1であり、R1はアルキル、任意にエチルである。
【0020】
一実施形態では、前記多分岐ポリエーテルは式1を有し、xは1であり、R
1は
【化6】
である。
【0021】
一実施形態では、前記多分岐ポリエーテルは式1を有し、xは0であり、R1はHである。
【0022】
前記ポリエステルアームは、典型的には、前記ポリエステルの前駆体またはモノマーを前記ポリエーテルコアと反応させることによって形成される。例えば、前記ポリエーテルを、D,L-ラクチドおよびε-カプロラクトンと反応させる。
【0023】
好ましい実施形態では、前記多分岐ポリエーテルの各枝は、ポリエステルまたはそのモノマーもしくは前駆体と反応することができる末端反応性基を有する。典型的には、前記末端反応性基はヒドロキシル基またはアミン基であるが、好ましくはヒドロキシル基である。
【0024】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは、上記の多分岐ポリエーテルと、D,L-ラクチドおよびε-カプロラクトンとを反応させることによって得ることができる。前記多分岐コポリマーは、前記多分岐ポリエーテルによって開始される、前記D,L-ラクチドおよびε-カプロラクトンの開環重合によって得ることができる。
【0025】
一実施形態では、各アームにおけるエステル繰り返し単位の数は、独立して、5~230、任意に10~115、任意に10~90の範囲であり、ヘキサノエート繰り返し単位に対する乳酸繰り返し単位の比は25/75~99/1の範囲である。
【0026】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは、式5または式6または式7または式8を有する:
式5
【化7】
(式中、R
3は
【化8】
、Hまたはアルキルであり、xは0または1であり、mは2と76の間の整数であり、nは5と230の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)
式6
【化9】
(式中、mは5と40の間の整数であり、nは10と115の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)
式7
【化10】
(式中、mは5と40の間の整数であり、nは10と115の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)
式8
【化11】
(式中、mは25と30の間の整数であり、nは10と90の間の整数であり、qは0.25と0.99の間であり、vは6である。)。
【0027】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは式5を有し、xは1であり、R3はアルキル、任意にエチルである。
【0028】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは式5を有し、xは1であり、R
3は
【化12】
であり、式中、mは2と76の間の整数であり、nは5と230の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。
【0029】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは式5を有し、xは0であり、R3はHである。
【0030】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは式5を有し、前記ポリエーテルコアは2kDaの分子量を有し、前記エステル繰り返し単位とエチレンオキシドのモル比は4または6である。
【0031】
一実施形態では、前記多分岐コポリマーは式5を有し、前記ポリエーテルコアは0.45kDaの分子量を有し、前記エステル繰り返し単位とエチレンオキシドのモル比は6である。
【0032】
好ましい実施形態では、前記ポリエーテルの分子量は、0.5kDa~10kDa、任意に1kDa~10kDa、好ましくは2kDa~10kDa、好ましくは2kDa~5kDa、または最も好ましくは0.5kDa~2kDaの範囲である。
【0033】
好ましい実施形態では、前記組成物中の前記多分岐コポリマーのエチレンオキシドに対する前記エステル繰り返し単位のモル比は、1~10、好ましくは2~6である。
【0034】
本発明の組成物は、前記組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒を含む。典型的には、前記有機溶媒は生体適合性有機溶媒であり、任意に、前記ビヒクルの量は、前記組成物全体の少なくとも25%、または少なくとも35%(w/w%)である。好ましくは、前記薬学的に許容されるビヒクルは、以下の群から選択される:ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、およびそれらの混合物。
【0035】
一実施形態では、前記薬学的活性成分は疎水性である。これは、正のlogPまたはlogD値と、1mg/mL未満の生理学的pH(pH7.0~7.4)における水性溶解度とを有する薬学的活性成分を意味する。
【0036】
好ましい実施形態では、前記薬学的活性成分は、メロキシカム、タムスロシン、またはそれらの組み合わせである。
【0037】
一実施形態では、前記少なくとも1つの薬学的活性成分は、前記組成物全体の、0.05%~60%、任意に0.05%~40%、任意に5%~30%、任意に5%~25%、任意に5%~20%、任意に10%~20%(w/w%)の量で存在する。
【0038】
好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの薬学的活性成分は、10℃と37℃の間の温度で懸濁液の形態である。
【0039】
好ましい実施形態では、前記組成物は注入可能な液体である。
【0040】
好ましい実施形態では、前記多分岐コポリマーは、前記組成物全体の、20%~70%、任意に20%~60%、任意に30%~60%、任意に30%~50%(w/w%)の量で存在する。
【0041】
一実施形態では、前記組成物は、表2に規定される通りである。
【0042】
典型的には、前記少なくとも1つの薬学的活性成分の放出は、前記組成物によって調節され得る。
【0043】
一実施形態では、前記組成物は、少なくとも1日間、任意に少なくとも3日間、任意に少なくとも7日間、任意に少なくとも30日間、任意に少なくとも90日間、任意に少なくとも180日間、任意に少なくとも1年間、対象に薬学的活性成分を送達するのに適している。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、上記の医薬組成物を製造する方法であって、上記の多分岐コポリマーを薬学的に許容されるビヒクル、例えば、溶媒に溶解することと、続いて薬学的活性成分を前記組成物に添加することを含む、方法を提供する。
【0045】
さらなる態様では、本発明は、上記の組成物を、水性媒体、水または体液と接触させることにより、ex vivoまたはin situで生成される、生体吸収性デポーを提供する。前記デポーは、PCLA部分がin vivoで分解し、PEGが身体によって同化され、排泄されるという意味で生体吸収性である。
【0046】
最後の態様では、上記の組成物を投与することと、溶媒交換in situデポー(solvent-exchange in situ depot)をin vivoで形成させることを含む、薬学的活性成分の制御放出方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【0047】
本明細書で使用される「生体吸収性」または「生分解性」という用語は、ブロックコポリマーがin vivoで加水分解を受けて、その構成要素である(m)PEGおよびポリエステルブロックに由来するオリゴマーまたはモノマーまたは繰り返し単位を形成することを意味する。例えば、PCLAは加水分解を受けて、6-ヒドロキシカプロン酸(6-ヒドロキシヘキサン酸)と乳酸を形成する。加水分解プロセスの結果、デポーの質量が徐々に減少し、最終的には消失する。
【0048】
「多分岐コポリマー」という用語は、ポリエーテルを含む中心コアに結合した少なくとも3つのポリエステルアームを有するポリマーを意味する。ポリエステルアームは、「枝」、「アーム」または「鎖」と呼ばれることがある。「多分岐コポリマー」という用語は、「星コポリマー」または「星型コポリマー」または「マルチアームコポリマー」という用語と同じ意味を有し、これらの用語は全体を通して交換可能に使用される。
【0049】
典型的には、ポリエーテルの分子量は、10kDa以下、5kDa以下、4kDa以下、3kDa以下、または2kDa以下、または1kDa以下、または0.5kDa以下である。好ましくは、ポリエーテルは、少なくとも0.2kDaの分子量を有する。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)によって測定される数平均分子量(Mn)である。ポリスチレン標準から得られた検量線を使用するGPCが、Mnを測定するための好ましい方法である。
【0050】
典型的には、多分岐コポリマーは式A(B)
nのものであり、式中、Aは中心コアを表し、Bはポリエステルアームを表し、nは少なくとも3の整数である。本発明の実施形態では、nは少なくとも4、または少なくとも6、または少なくとも8である。好ましくは、nは4である。n=3またはn=4の多分岐PEG-PCLAブロックコポリマーの構造の例を以下に示す。
式5
【化13】
(式中、R
3は
【化14】
、Hまたはアルキルであり、xは0または1であり、mは2と76の間の整数であり、nは5と230の間の整数であり、qは0.25と0.99の間である。)。
【0051】
ポリオールは、複数のヒドロキシル基を含む有機化合物である。典型的には、ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する。典型的には、ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基、例えば、3、4、5、6または8つのヒドロキシル基で官能化された炭化水素である。ポリオールはまた、1つ以上のエーテル基を含み得る。典型的には、ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、ヘキサグリセロール、エリスリトール,キシリトール,ジ(トリメチロールプロパン)(diTMP)、ソルビトール、またはイノシトールである。
【0052】
ポリエーテルは、複数のエーテル基を含む有機化合物である。
【0053】
好ましい実施形態では、中心コアは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリオールから誘導可能な(得ることができる)多分岐ポリエーテルである。例えば、多分岐ポリエーテルは、エチレンオキシドとポリオールとの反応によって形成され得る。多分岐ポリエーテルは、エチレンオキシドとポリオールとの反応によって得ることができる。多分岐ポリエーテルは、星型PEGと呼ばれることがある。エチレンオキシドは、ポリオールのヒドロキシル基と反応してPEGアームを形成する。例えば、ペンタエリスリトールは、エチレンオキシドと反応して、以下の式1に示す4アームまたは4分岐ポリエーテルを形成し得る:
式1
【化15】
式中、xは1であり、R
1は
【化16】
であり、mは2と76の間の整数である。
【0054】
xが1であり、R1がHまたはアルキルである3アームポリエーテルは、エチレンオキシドとトリメチロールメタンまたはトリメチロールプロパンとの反応によってそれぞれ形成される。
【0055】
xが0であり、R1がHである3アームポリエーテルは、エチレンオキシドとグリセロールとの反応によって形成される。
【0056】
別の実施形態では、多分岐ポリエーテルは、以下の式2および式3に示すような6アームまたは6分岐ポリエーテルである:
式2
【化17】
式中、mは5と40の間の整数である。
式3
【化18】
式中、mは5と40の間の整数である。
【0057】
別の実施形態では、多分岐ポリエーテルは、以下の式4に示すような8アームまたは8分岐ポリエーテル(v=6)である:
式4
【化19】
式中、mは25と30の間の整数であり、vは6である。
【0058】
典型的には、多分岐ポリエーテルの各枝は末端ヒドロキシル基を有するが、ポリエステルまたはそのモノマーもしくは前駆体と反応することができる他の末端反応性基も考えられる。ポリエステルは、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)(PCLA)である。典型的には、多分岐ポリエーテルの各枝の末端ヒドロキシル基が、ポリエステルのモノマーまたは前駆体と反応してポリエステルアームを形成する。例えば、D-L-ラクチドおよびε-カプロラクトンは、多分岐ポリエーテルと反応してPCLAアームを形成し得る。
【0059】
一実施形態では、各アームにおけるエステル繰り返し単位の数は、独立して、5~230、任意に10~115、任意に10~90の範囲であり、ヘキサノエート繰り返し単位に対する乳酸繰り返し単位の比は25/75~99/1の範囲である。ポリマーが3つまたは4つのエステルアームを有する場合、好ましくは、各アームにおけるエステル繰り返し単位の数は独立して5~230の範囲である。ポリマーが6つのポリエステルアームを有する場合、好ましくは、各アームにおけるエステル繰り返し単位の数は独立して10~115の範囲である。ポリマーが8つのポリエステルアームを有する場合、好ましくは、各アームにおけるエステル繰り返し単位の数は独立して10~90の範囲である。
【0060】
好ましい実施形態では、ポリエーテルの分子量は、0.5kDa~10kDa、任意に1kDa~10kDa、好ましくは2kDa~10kDa、好ましくは2kDa~5kDa、または最も好ましくは0.5kDa~2kDaの範囲である。
【0061】
「デポー注入」という用語は、「デポー」と呼ばれる固形塊などの局在化した塊に薬物を沈着させる、通常は皮下、皮内または筋肉内への流動性医薬組成物の注入を意味する。本明細書で定義されるデポーは、注入によりin situで形成される。したがって、製剤は溶液または懸濁液として調製することができ、体内に注入することができる。
【0062】
「in situデポー」は、対象への組成物の注入後に医薬組成物の析出によって形成される固形の局在化した塊である。医薬組成物は、水溶液に実質的に不溶性の多分岐コポリマーを含む。したがって、医薬組成物が人体または動物の体の水性環境と接触すると、転相が起こり、組成物が液体から固体に変化する、すなわち組成物の析出が起こり、「in situデポー」が形成される。
【0063】
「in situデポー」は、先行技術に記載されているヒドロゲル医薬製剤と明確に区別され得る。
【0064】
ヒドロゲルは、ポリエーテルコアおよびPCLA枝を含む星ポリマーから形成することができる。ポリエーテルコアおよびPCLA枝を含む特定の星ポリマーは、水溶液中でミセルを形成することができる。疎水性PCLA外側ブロックは隣接するミセルと会合して、連結したミセルまたは大きな凝集体のネットワークを形成し、特定の温度および濃度範囲でゲルを生じる。ヒドロゲルは、大量の水分を吸収することができる三次元ネットワークを有する。ヒドロゲルを構成するポリマーは、水溶液に可溶性である。対照的に、本発明で使用される多分岐ポリマーは、水溶液に実質的に不溶性である。本発明の医薬組成物は、水を含まないか、または実質的に水を含まない。例えば、本発明の医薬組成物は、0.5%w/w未満の水を含む。
【0065】
典型的には、前記多分岐コポリマーは、水溶液に実質的に不溶性である。典型的には、これは、前記多分岐コポリマーが、水溶液中、任意に水中で、15mg/mL未満、任意に10mg/mL未満、5g/mL未満、2mg/mL未満、任意に1mg/mL未満の溶解度を有することを意味する。典型的には、前記溶解度は37℃で測定される。
【0066】
好ましい実施形態では、水中の前記多分岐コポリマーの溶解度は、以下のように決定された。
コポリマー500mgを空の20mLバイアルに入れた。5mLの超純水を加え、バイアルを37℃で2時間連続ボルテックスにかけた。次いで、バイアルを3000rpmで10分間遠心分離した。上清を既知の重量の別のバイアルに移し、-80℃で一晩置いた後、24時間凍結乾燥した。可溶化されたコポリマーの量は、空のバイアルと凍結乾燥されたバイアルの重量の差として決定された。
【0067】
先行技術に記載されている温度感受性ヒドロゲル、またはサーモゲル(thermogels)は、典型的には、特定の狭い温度範囲、例えば30~35℃で固体であり、この固化は可逆的である。対照的に、本発明で形成されるin situデポーは、はるかに広い温度範囲、例えば20~37℃の水性媒体中に注入された場合、固体である。
【0068】
さらに、PEGおよびPCLAに基づくヒドロゲルは、典型的には、本発明の組成物によって形成されるデポーよりも短い期間、APIの放出を可能にする。
【0069】
本発明の組成物は、当該組成物全体の少なくとも20%(w/w%)の量の薬学的に許容される有機溶媒を含む。溶媒は、典型的には、生体適合性溶媒である。好ましくは、薬学的に許容されるビヒクルは、以下の群から選択される:ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、およびそれらの混合物。前記溶媒の量は、典型的には、組成物全体の少なくとも25%、または少なくとも35%(w/w%)である。溶媒の量は、組成物全体の20%~60%、任意に30%~60%、好ましくは40%~60%(w/w%)であり得る。溶媒の量は、多分岐コポリマー、薬学的活性成分および任意の他の賦形剤の存在に留意して、100w/w%までのバランスを提供する。
【0070】
前記組成物は、少なくとも1つの薬学的活性成分を含む。
【0071】
一実施形態では、前記薬学的活性成分は疎水性である。
【0072】
好ましい実施形態では、前記薬学的活性成分は、メロキシカム、タムスロシン、またはそれらの組み合わせである。
【0073】
一実施形態では、前記少なくとも1つの薬学的活性成分は、前記組成物全体の、0.05%~60%、任意に0.05%~40%、任意に5%~30%、任意に5%~25%、任意に5%~20%、任意に10%~20%(w/w%)の量で存在する。
【0074】
本発明の組成物は、薬学的活性成分の懸濁液を製剤化するのに特に適している。懸濁液は、溶質粒子(例えばAPI)が溶媒中に溶解または完全に溶解せず、溶媒全体に懸濁する不均一な混合物である。APIの溶媒への溶解度が低い場合、またはAPIが高濃度で配合されている場合に、懸濁液が形成され得る。可溶性フラクションは、APIの総量に対する可溶化APIのパーセンテージとして定義される。この量は、適切なUPLC法を用いて測定することができる。
【0075】
好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの薬学的活性成分は、10℃と37℃の間の温度で、懸濁液の形態である。
【0076】
星型PEG-PCLAコポリマーは、PEGおよびPCLAを含む線状ブロックコポリマーと比較して、または、WO2012/090070AもしくはPCT/EP2020/050333に開示されているようなポリ(乳酸)(PLA)またはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)を含む星または線状ブロックコポリマーと比較して、より低い粘度および注入性を有することが実証されている。この特徴により、本発明の星型PEG-PCLAコポリマー組成物は、懸濁液の形態の少なくとも1つの薬学的活性成分と共に使用するのに特に適している。
【0077】
好ましい実施形態では、前記化合物は注入可能な液体である。
【0078】
前記多分岐コポリマーは、好ましくは、前記組成物全体の、20%~70%、任意に20%~60%、任意に30%~60%(w/w%)、任意に30%~50%(w/w%)の量で存在する。
【0079】
典型的には、前記組成物における前記エステル繰り返し単位とエチレンオキシドのモル比は1~10、好ましくは2~6である。
【0080】
典型的には、少なくとも1つの薬学的活性成分の放出が、前記組成物によって調節され得る。
【0081】
一実施形態では、前記組成物は、少なくとも1日間、任意に少なくとも3日間、任意に少なくとも7日間、任意に少なくとも30日間、任意に少なくとも90日間、任意に少なくとも180日間、任意に少なくとも1年間、対象に薬学的活性成分を送達するのに適している。
【0082】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの薬学的活性成分の放出速度を調節するための、上記の医薬組成物の使用を提供する。
【0083】
さらなる態様では、本発明は、上記の医薬組成物を製造する方法であって、上記の多分岐コポリマーを薬学的に許容されるビヒクルに溶解することと、続いて薬学的活性成分を前記組成物に添加することを含む、方法を提供する。
【0084】
さらなる態様では、本発明は、上記の組成物を、水性媒体、水または体液と接触させることにより、ex vivoまたはin situで生成される、生体吸収性デポーを提供する。
【0085】
最後の態様では、上記の組成物を対象に投与することと、in situデポーをin vivoで形成させることを含む、薬学的活性成分の制御放出方法が提供される。
【0086】
医薬組成物は、好ましくは非経口投与に適している。「非経口投与」という用語は、筋肉内、腹腔内、腹腔内、皮下、静脈内、および動脈内を包含する。それはまた、皮内、海綿体内、硝子体内、脳内、くも膜下腔内、硬膜外、関節内、および骨内投与を包含する。
【0087】
対象は、動物であっても植物であってもよい。「動物」という用語は、動物界のすべてのメンバーを包含する。動物は、ヒトであってもヒト以外の動物であってもよい。
【0088】
本明細書で使用される「植物」という用語は、植物界のすべてのメンバーを包含する。
【0089】
「薬学的活性成分(Pharmaceutically active ingredient)」とは、さまざまな医学的疾患を治療または予防するための薬物または医薬品を意味する。本出願の目的のために、用語「活性成分(active principle)」は「活性成分(active ingredient)」と同じ意味を有する。したがって、活性成分(active ingredient)、活性成分(active principle)、薬物または医薬品という用語は、交換可能に使用される。「活性医薬成分(Active Pharmaceutical Ingredient)」、すなわち「API」という用語も使用される。本明細書で使用される薬物または活性成分という用語は、限定されるものではないが、動物または植物の体内で局所的または全身的に作用する生理学的または薬理学的に活性な物質を含む。
【0090】
本明細書で使用される「疾患」は、感染、食事、またはプロセスの機能不全によって引き起こされる、ヒト、動物または植物における任意の障害を意味する。
【0091】
「空間製剤(spatial formulation)」という用語は、動物または植物の体上または体内に適用することができ、必ずしもシリンジを通して投与する必要がない任意の製剤を包含する。
【0092】
本明細書で使用される「繰り返し単位」は、ポリマーの基本的な繰り返し単位である。
【0093】
本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」は、本出願を通してPEGと略記され、ポリ(エチレンオキシド)またはポリ(オキシエチレン)と呼ばれることがあり、これらの用語は本発明で交換可能に使用される。
【0094】
略語「PCLA」は、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)を指す。
【0095】
略語「PEG」は、ポリ(エチレングリコール)を指す。
【0096】
略語「CL」は、ε-カプロラクトンまたはヘキサノエート繰り返し単位を指す。カプロラクトンは、ポリエステル合成の反応物として使用される閉環を指す。開環すると反応し、ヘキサノエート繰り返し単位が形成される。
【0097】
コポリマーは以下のように命名されている:
【0098】
DLkC-szPxRpは、D,L-ラクチド(DL)およびε-カプロラクトン(C)から構成される星型PEG-PCLAコポリマーを表し、ここで、kはCLに対するLAのモル比であり、zはアームの数を表し、xはポリオールとPEG(しばしば「星型PEG」と呼ばれる)の反応から形成されるポリエーテルコアの数平均分子量(kDa)であり、pは[(乳酸+ヘキサノエート)/エチレンオキシド][(LA+CL)/EO]モル比であり、コポリマー内のPCLA鎖長の計算を可能にする。
【0099】
例えば、DL80C-s4P2R6は、2kDaの星型PEGブロックを有する4アーム星型PEG-PCLAコポリマーで、全体の[(LA+CL)/EO]モル比が6である。各ポリエステルアームは80%LAで構成されている。
【0100】
DLkC-PxRpは、D,L-ラクチド(DL)およびε-カプロラクトン(C)から構成される線状PCLA-PEG-PCLAトリブロックポリマーを表し、ここで、k、xおよびpはPEG-PCLA星型コポリマーと同じ情報を提供する、すなわち、kはCLに対するLAのモル比を表し、xはPEG鎖の分子量(kDa)であり、pは[(LA+CL)/EO]モル比である。
【0101】
DLkC-dPxRpは、D,L-ラクチド(DL)およびε-カプロラクトン(C)から構成される線状mPEG-PCLAジブロックポリマーを表し、ここで、k、xおよびpはPEG-PCLA星型コポリマーと同じ情報を提供する、すなわち、kはCLに対するLAのモル比を表し、xはPEG鎖の分子量(kDa)であり、pは[(LA+CL)/EO]モル比である。
【0102】
本明細書で使用される製剤の「注入性」は、所定のパラメータを使用して製剤を注入するために必要とされる力(ニュートン(N)単位)によって定義される。これらのパラメータには、注入速度、注入量、注入時間、シリンジの種類または針の種類などが含まれる。これらのパラメータは、使用される少なくとも1つの薬学的活性成分、または皮下、眼内、関節内などの所望の投与方法に基づいて変化し得る。それらは、製剤間の差異および変動を観察できるように、製剤内に存在する少なくとも1つの薬学的活性成分に基づいて調整され得る。資格を有する医療従事者が許容される時間内に製剤を容易に投与できるように、注入性は低く保たなければならない。許容される注入性値は、後述の測定方法で0.1N~20Nとすることができ、0.1N~10Nの注入性が最も好ましい。最適でない注入性は、20N~30Nを超える場合がある。製剤は、30~40Nではほとんど注入できず、40Nを超えると注入できない。注入性は、以下の分析条件を用いて、テクスチュロメーター、好ましくはLloyd Instruments社のFT plusテクスチュロメーターを使用して測定することができる:実施例4に記載されているように、500μLの製剤を、1mLシリンジ、23G 1インチテルモ針、1mL/分の流速で注入する。
【0103】
「粘度」は、定義上および本明細書で使用される場合、流動に対する流体の抵抗、および剪断応力または引張強度による漸進的な変形の尺度である。それは、可動流体の内部摩擦を表す。液体の場合、それは「厚さ(thickness)」という非公式な概念に対応する。「動粘度」とは、力が加えられた状態での流体の流れに対する抵抗の尺度を意味する。動的速度は、1mPa.s~3000mPa.sまたは5mPa.s~2500mPa.sまたは10mPa.s~2000mPa.sまたは20mPa.s~1000mPa.sの範囲であり得る。動粘度は、円錐プレート測定システムを備えたアントンパール(Anton Paar)社のレオメーターを用いて測定される。典型的には、700μLの試験製剤を測定プレート上に置く。温度は+25℃に制御する。使用する測定システムは、直径50mm、円錐角1度の円錐プレート(CP50)である。CP50は、低粘度を示す製剤の正確な値を取得するのにより適している。動作範囲は10~1000秒-1である。10秒間ボルテックスした後、スパチュラを使用して、製剤を温度調節された測定プレートの中央に配置する。測定システムを下げ、測定システムと測定プレートの間に0.104mmの隙間をあける。10~1000秒-1の剪断速度範囲にわたって21の粘度測定点が決定される。懸濁液については、分析前に測定位置で60秒の静止時間を設定し、続いて1000秒-1で30秒-1の予備剪断を行った。示した値は、100秒-1で得られたものである。
【0104】
本発明で使用される代表的な薬物および生物学的に活性な薬剤には、限定されるものではないが、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体のフラグメント、減感作剤(desensitizing agent)、抗原、ワクチン、ワクチン抗原、抗感染薬、抗うつ薬、興奮剤、アヘン剤、抗精神病薬、非定型抗精神病薬、緑内障治療薬、抗不安薬、抗不整脈薬、抗菌薬、抗凝固薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、制吐薬、抗真菌薬、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、抗生物質、抗菌薬、抗アレルギー薬、抗糖尿病薬、ステロイド性抗炎症剤、うっ血除去剤、縮瞳薬、抗コリン薬、交感神経刺激薬、鎮静薬、催眠薬、サイキックエナジャイザー、トランキライザー、ホルモン、アンドロゲンステロイド、エストロゲン、プロゲステロン剤、体液剤(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛剤、コルチコステロイド、鎮痙剤、抗マラリア剤、抗ヒスタミン剤、心臓作用剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病薬、降圧薬、ベータアドレナリン遮断薬、栄養剤、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト、殺虫剤、駆虫剤、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0105】
薬学的活性成分は、メロキシカム、タムスロシン、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0106】
薬物の組み合わせが、本発明の生分解性薬物送達組成物において使用され得る。例えば、エリテマトーデスを治療する必要がある場合、本発明では非ステロイド性抗炎症剤とコルチコステロイドを一緒に投与することができる。
【0107】
ワーム(worms)の治療用の医薬品や動物用ワクチンなどの獣医薬もまた本発明の一部である。
【0108】
また、ポティウイルス科、ジェミニウイルス科、ブニヤウイルス科トスポウイルス属に由来するウイルス、およびバナナストリークウイルスなどの植物用ウイルス薬も本発明に包含される。また、タバコモザイクウイルス、カブクリンクル、大麦黄萎凋病、リングスポット西瓜およびキュウリモザイクウイルスに対する薬剤を、本発明の生分解性薬物送達組成物に使用することができる。
【0109】
当業者には、水性環境で放出され得る他の薬物または生物学的に活性な薬剤が、記載された送達システムにおいて利用され得る。また、さまざまな形態の薬物または生物学的に活性な薬剤を使用することができる。これらには、限定されるものではないが、非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミドなどの形態が含まれ、これらは、動物もしくは植物に注入されると、または動物もしくは植物の体上もしくは体内に適用できるような空間製剤としてまたはロッドインプラントとして使用されると、生物学的に活性化される。
【0110】
薬学的活性成分の薬学的有効量は、薬学的活性成分、動物または植物の医学的状態の程度、および薬学的活性成分を送達するのに必要な時間に応じて変化し得る。溶液または懸濁液がシリンジ針を介して注入するのに許容可能な粘度を有し、かつ、動物または植物に過剰摂取させることなく医学的状態を効果的に治療できる限り、ポリマー溶液に組み込まれる薬学的活性成分の量に臨界上限はない。送達システムに組み込まれる薬学的活性成分の下限は、薬学的活性成分の活性と治療に必要な時間の長さに単純に依存する。
【0111】
本発明の生分解性薬物送達組成物では、薬学的有効量は、長期間にわたって徐々に放出され得る。この徐放は、連続的または不連続的、線形または非線形であってもよく、多分岐コポリマーの組成に起因して変化し得る。
【0112】
薬学的活性成分は、必要な治療の種類および使用される生分解性薬物送達組成物に応じて、1日間~1年間またはそれ以上の期間にわたって放出され得る。一実施形態では、生分解性薬物送達組成物は、薬学的活性成分を少なくとも1日間、任意に少なくとも3日間、任意に少なくとも7日間送達することができる。別の実施形態では、生分解性薬物送達組成物は、薬学的活性成分を少なくとも30日間送達することができる。一実施形態では、生分解性薬物送達組成物は、薬学的活性成分を少なくとも90日間送達することができる。さらに別の実施形態では、生分解性薬物送達組成物は、薬学的活性成分を1年間以上送達することができる。
【0113】
生分解性薬物送達組成物は、好ましくは室温で、注入可能な液体であり得、過剰な力を加えることなくシリンジを通して注入することができる。これらの生分解性薬物送達組成物は、in situ形成および生分解性であり、動物または植物に注入されると固体デポーに変わる。
【0114】
該組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルをさらに含むことができる。
【0115】
本発明の組成物は、組成物の全体の少なくとも20%(w/w%)の有機溶媒を含む。有機溶媒は、以下の群から選択され得る:ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、2-ピロリドン、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、およびそれらの混合物。一実施形態では、DMSO、NMP、トリプロピオニンまたはそれらの混合物が溶媒として使用され得る。
【0116】
略語一覧:
API 活性医薬成分
CL ε-カプロラクトンまたはヘキサノエート
【化20】
分散度
DMI ジメチルイソソルビド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPE ジペンタエリスリトール
DSC 示差走査熱量測定
diTMP ジ(トリメチロールプロパン)
EO エチレンオキシド
GA グリコール酸
GPC ゲル浸透クロマトグラフィー
GPC-TDA ゲル浸透クロマトグラフィー-三重検出器アレイ
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
ISFD in situ形成デポー
IVR in vitro放出
KRT Krebs-Ringer-Tris緩衝液
LA 乳酸
MALDI-TOF マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間
mPEG メトキシ-ポリ(エチレングリコール)
mPEG-PCLA メトキシ-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)
NA 該当なし
NMP N-メチル-2-ピロリジノン
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCL ポリ(ε-カプロラクトン)
PCLA ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)
PCLA-PEG-PCLA ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)-b-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ε-カプロラクトン-コ-乳酸)
PE ペンタエリスリトール
PEA ポリ(エチレンアジペート)
PEG ポリ(エチレングリコール)
PGA ポリ(グリコール酸)
PHA ポリ(ヒドロキシアルカノエート)
PLA ポリ(乳酸)
PLGA ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)
RT 室温
SD 標準偏差
THF テトラヒドロフラン
TMP トリメチロールプロパン
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
1H-NMR プロトン核磁気共鳴
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】
図1は、3つの異なる製剤からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示す:40.00%のDL90C-s4P2R4星型コポリマーを2.00%の活性医薬品成分(API)および58.00%のDMSOと共に含有する製剤F71(〇);40.00%のDL90C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する製剤F75(□);および、40.00%のDL90C-s4P2R4星型コポリマーを20.00%の活性医薬品成分(API)および40.00%のDMSOと共に含有する製剤F62(△)。In vitro放出試験は、実施例3の表3中、F71についてはセットアップ1、F75およびF63についてはセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を以下の表2に示す。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、3つの異なるAPIローディングで徐放を可能にすることを示している。特に、データは、懸濁液の形態の製剤(F75およびF62)からのAPI放出が、溶液の形態の製剤(F71)からのAPI放出よりも実質的に遅いことを示している。
【
図2】
図2は、F64からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示すグラフである。製剤F64(□)は、40.00%のDL30C-s4P2R4星型コポリマーを、20.00%の活性医薬成分(API)および40.00%のDMSOと共に含有する。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を以下の表2に示す。結果は、本発明による星型コポリマーベースの製剤が、少なくとも172日間まで薬物の徐放をもたらすことを示している。
【
図3】
図3は、2つの異なる製剤からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示す:40.00%のDL80C-P2R4トリブロックコポリマーを20.00%の活性医薬品成分(API)および40.00%のDMSOと共に含有する製剤F79(□)、ならびに、40.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを20.00%の活性医薬品成分(API)および40.00%のDMSOと共に含有する製剤F63(〇)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を表2に示す。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、同等の分子量および同一の総コポリマー含有量を有する線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度を示すことを示している。実際、製剤F63は、製剤F79よりも遅い放出速度を示す。
【
図4】
図4は、製剤F63およびF79の注入性値を示す。データは、コポリマーのローディングが同じで、分子量が同等の場合、星型コポリマーベースの製剤は線状コポリマーベースの製剤よりも低い注入性を有することを示している。実際、製剤F63の注入性値は、F79の注入性値を下回っている。表4に注入性データの詳細を示す。
【
図5】
図5は、F88からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示すグラフである。製剤F88(□)は、50.00%のDL80C-s3P0.45R6星型コポリマーを、10.00%の活性医薬成分(API)および40.00%のDMSOと共に含有する。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を以下の表1に示す。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、少なくとも91日間まで薬物の徐放をもたらすことを示している。
【
図6】
図6は、3つの異なる製剤からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示す。30.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および60.00%のDMSOと共に含有する製剤F85(〇)、40.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する製剤F74(□)、ならびに50.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および40.00%のDMSOと共に含有する製剤F86(△)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を以下の表1に示す。結果は、星型コポリマー含有量の増加が放出速度の低下をもたらすことを示している。実際、製剤F86は、F74およびF85と比較してより遅い放出速度を示す。同様に、製剤F74は、F85と比較してより遅い放出速度を示す。
【
図7】
図7は、2つの異なる製剤からの経時的なメロキシカムの総in vitro累積放出パーセンテージを示す。40.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する製剤F74(□);ならびに40.00%のDL80C-s4P2R6星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する製剤F76(▽)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を表2に示す。データは、星型コポリマー内のPCLA鎖の長さ(分子量)の増加が、同じコポリマー含有量の製剤における放出速度の調節をもたらすことを示している。製剤F76は、F74よりも遅い放出速度を示す。
【
図8】
図8は、F89からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示すグラフである。製剤F89[化21]は、44.40%のDL80C-s4P5R4星型コポリマーを、10.00%の活性医薬成分(API)および45.60%のDMSOと共に含有する。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を以下の表2に示す。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、少なくとも21日間まで薬物の徐放をもたらすことを示している。
【
図9】
図9は、2つの異なる製剤からの経時的なメロキシカムの総in vitro累積放出パーセンテージを示す。40.00%のDL50C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する製剤F73(〇)、ならびに、40.00%のDL90C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する製剤F75(△)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を表2に示す。データは、星型コポリマー内のLA/CLモル比の変更が、同じコポリマー含有量の製剤における放出速度の調節をもたらすことを示している。製剤F75は、F73よりも遅い放出速度を示す。
【
図10】
図10は、2つの異なる製剤からの経時的なメロキシカムのin vitro累積放出パーセンテージを示す:40.00%のDL80C-P2R4トリブロックコポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のNMPと共に含有する製剤F91(△)、ならびに、40.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを10.00%の活性医薬品成分(API)および50.00%のNMPと共に含有する製剤F90(▽)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ2に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を表2に示す。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、同じコポリマー含有量で同等の分子量の線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度をもたらすことを示している。実際、製剤F90は、F91と比較してより遅い放出速度を示す。
【
図11】
図11は、2つの異なる製剤からの経時的なタムスロシンのin vitro累積放出パーセンテージを示す:40.00%のDL80C-P2R4トリブロックコポリマーを14.40%の活性医薬品成分(API)および45.60%のDMSOと共に含有する製剤F94(〇)、ならびに、40.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを14.40%の活性医薬品成分(API)および45.60%のDMSOと共に含有する製剤F92(□)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ1に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を表2に示す。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、同等の分子量および同一の総コポリマー含有量において、線状コポリマーベースの製剤と比較して、より遅い放出速度を示すことを示している。実際、製剤F92は、製剤F94よりも遅い放出速度を示す。
【
図12】
図12は、2つの異なる製剤からの経時的なタムスロシンの総in vitro累積放出パーセンテージを示す。40.00%のDL80C-s4P2R4星型コポリマーを14.40%の活性医薬品成分(API)および45.60%のDMSOと共に含有する製剤F92(〇);および、40.00%のDL80C-s4P2R6星型コポリマーを14.40%の活性医薬品成分(API)および45.60%のDMSOと共に含有する製剤F93(□)。In vitro放出試験は、実施例3の表3のセットアップ1に従って行った。具体的なブロックコポリマー製剤を表2に示す。データは、星型コポリマー内のPCLA鎖の長さ(分子量)の増加が、同じコポリマー含有量の製剤における放出速度の調節をもたらすことを示している。製剤F93は、F92よりも遅い放出速度を示す。
【
図13】
図13は、F76からの経時的なメロキシカムのナノグラム/ミリリットルで表される総活性部分血漿濃度を示すグラフである。製剤F76[化22]は、40.00%のDL80C-s4P2R6星型コポリマーを、10.00%の活性医薬成分(API)および50.00%のDMSOと共に含有する。In vivo放出試験は、実施例6に開示されたセットアップに従って行われた。結果は、星型コポリマーベースの製剤が、少なくとも28日間までin vivoで薬物の徐放をもたらすことを示している。
【0118】
図8の[化21]は
【化21】
、
図13の[化22]は
【化22】
である。
【実施例】
【0119】
実施例1:材料
星型ブロックコポリマー
以下に、本発明の医薬組成物で使用される多分岐PEG-PCLAコポリマーを得るための一般的な反応スキームを示す。文字mおよびnは、それぞれ、PEGブロックおよびポリエステルブロックの繰り返し単位の数を表す。文字qは、相対的なLA/CLモル含有量を表す。合成経路と実験条件を考慮すると、マルチアームポリマーは対称的であり、各アームは同じ構造と組成を示すと想定される。以下のスキーム1では3アームPEG誘導体が用いられているが、異なる数のPEGアームを有する多分岐PEGを用いて、類似の反応スキームを使用できることが理解されるであろう。
【化23】
【0120】
多分岐ブロックコポリマーは、多分岐PEGまたは星PEGと呼ばれる多分岐ポリエーテルによって開始されるD,L-ラクチドおよびε-カプロラクトンの開環重合によって合成される。D,Lラクチドおよびε-カプロラクトンモノマーは、多数のサプライヤーから入手でき、通常、Corbion社(Diemen、オランダ)およびAlfa Aesar社(ウォードヒル、マサチューセッツ州、米国)からそれぞれ購入することができる。ラクトンの開環重合は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気で、通常の加熱またはマイクロ波照射によって行われる。さまざまな分子量および構造の星PEGマクロ開始剤、すなわちスキーム1に示すような3アーム、4アームPEG-OHは、Creative PEGWorks社(ダーハム、ノースカロライナ州、米国)、Jenkem社(プレイノ、テキサス州、米国)、Sigma-Aldrich社(セントルイス、ミズーリ州、米国)などのいくつかのサプライヤーから市販されている。あるいは、多分岐PEGは、エチレンオキシドとポリオールとの反応によって形成することができる。
【0121】
通常の加熱の一般的な手順では、多分岐PEGと150~250ppmの触媒(ヒドロキシル基あたり0.15~6.50mol%に相当する)を、不活性雰囲気中で丸底フラスコ中に導入する。続いて、目標とするRおよびモノマー比に基づく適量のラクトンを、80℃で混合物に添加する。反応混合物を不活性雰囲気/真空の1サイクルに供し、次いで130℃で一晩加熱する。
マイクロ波支援重合の一般的な手順では、適量のすべての反応物、すなわち、多分岐PEG、触媒およびラクトンを同時に容器に添加し、200℃で25分間加熱する。
【0122】
加熱の種類とは無関係に、得られたコポリマーを室温で冷却する。粗ポリマーを可溶化し、活性炭を通して濾過して触媒を除去し、沈殿させて未反応のモノマーおよびオリゴマーを除去する。次いで、純粋なポリマーを真空下で一晩乾燥させる。
【0123】
星型ブロックコポリマーは、1H-NMR、DSCおよびGPCによって反応および精製後に特性評価され、目的のポリマー特性が達成されていることを確認する。
【0124】
1H NMRスペクトルは、Bruker社製Avance 300MHzスペクトロメーターにより、適切な重水素化溶媒、例えば重水素化クロロホルム(CDCl3)中で、標準的な手順に従って、外部企業によって記録される。モノマー変換率、モノマー比、R比などの特性は、特徴的なピークの積分から算出される。
【0125】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は、Malvern社製のゲル浸透クロマトグラフィー-三重検出器アレイ(GPC-TDA)装置で実施される。ポリマー15mg/mLのTHF溶液2mLを調製し、濾過して、分析用のスクリューキャップ付き1.5mLバイアルに入れる。各ポリマーのdn/dc値を決定した後、100μLのポリマー溶液をGPCシステムに注入する。M
nおよび分散度
【化24】
、固有粘度などの特性が考慮され、注入から得られた平均値が以下の表1にまとめられている。
【0126】
DSCアッセイは、インジウム標準で校正されたMettler Toledo DSC3+を用いて実施される。典型的な実験では、サンプル(通常は5~10mg、秤量して40μLのアルミニウム製るつぼに密封)を-80℃に冷却し、最初に100℃まで昇温してその熱履歴を消去した。次いで、ポリマーを-80℃に冷却し、200℃までの2回目の加熱走査を実行して、熱転移を測定した。全ての走査は10℃/分の昇温速度で行われ、実験はN2フロー(50mL/分)下で行われた。すべての加熱および冷却ランプに続いて、10分間の等温ステップを行い、サンプルを平衡化した。Tgは、熱流変化の半値高さの点(half-height point)における温度とした。各実験はデータの信頼性を高めるために重複して行われた。測定されたTgの誤差は通常0.2~0.5℃であり、その平均値(最も近い整数に丸められた値)を報告する。
【0127】
【0128】
線状ブロックコポリマー(比較)
本発明の多分岐コポリマーを線状ジブロックおよびトリブロックコポリマーと比較した。
【0129】
比較トリブロックコポリマーは以下の式を有する:
Av-Bw-Ax
式中、AはPCLAであり、Bはポリエチレングリコールであり、vおよびxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、v=xまたはv≠xである。
【0130】
比較ジブロックコポリマーは以下の式を有する:
Cy-Az
式中、AはPCLAであり、CはメトキシPEGであり、yおよびzは繰り返し単位の数であり、yは2~250の範囲であり、zは1~3,000の範囲である。
【0131】
比較例として使用される線状トリブロックおよびジブロックコポリマーのさらなる説明は、参照により本明細書に組み込まれるWO2012/090070A1、WO2019016233A1、WO2019016234A1およびWO2019016236A1に見出すことができる。
【0132】
線状ブロックコポリマーは、PEG(トリブロックコポリマー)またはメトキシ-PEG(ジブロックコポリマー)によって開始されるD,L-ラクチドとε-カプロラクトン混合物の開環重合によって合成される。ラクトンの開環重合は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気中で、通常の加熱またはマイクロ波照射により行われる。
【0133】
通常の加熱の一般的な手順では、PEGまたはメトキシ-PEGと150~250ppmの触媒(ヒドロキシル基あたり0.15~6.50mol%に相当する)を、不活性雰囲気中で丸底フラスコに導入する。続いて、目標とするRおよびモノマー比に基づく適量のラクトンを、80℃で混合物に添加する。反応混合物を不活性雰囲気/真空の1サイクルに供し、次いで130℃で一晩加熱する。
【0134】
マイクロ波支援重合の一般的な手順では、適量のすべての反応物、すなわち、PEGまたはメトキシ-PEG、触媒およびラクトンを同時に容器に添加し、200℃で25分間加熱する。
【0135】
加熱の種類とは無関係に、得られたコポリマーを室温で冷却する。粗ポリマーを可溶化し、活性炭を通して濾過して触媒を除去し、沈殿させて未反応のモノマーおよびオリゴマーを除去する。次いで、純粋なポリマーを真空下で一晩乾燥させる。
【0136】
線状ブロックコポリマーは、1H-NMR、GPCおよびDSCによって反応および精製後に特性評価され、目的のポリマー特性が達成されていることを確認する。星型ブロックコポリマーと同じ方法を特性評価に用いた。
【0137】
実施例2:水中における星型コポリマーの可溶性フラクションの分析
水溶解度試験を実施して、水中における星型コポリマーの可溶性フラクションを決定した。
【0138】
水溶解度分析は、以下のステップで構成されていた:
【0139】
空の20mLバイアルを秤量した(1)。コポリマー500mgを秤量し、対応するバイアルに加えた。5mLの超純水を各バイアルに添加した。バイアルをボルテックスしながら37℃で2時間インキュベートした。目視観察を行い、写真を撮影した。次いで、バイアル(1)を3000rpmで10分間遠心分離した。10mLガラスバイアル(2)を秤量した。(1)の上清を(2)に移し、質量を記録した。バイアル(2)を-80℃に一晩置いた後、凍結乾燥機に22時間置いた。水溶解度は、乾燥およびバイアル(2)中の残りの乾燥コポリマーを秤量した後に決定した。溶解したコポリマーの量を、空のバイアルと凍結乾燥したバイアルの重量の差異として決定した。水溶解度の分析は、1回の分析で行った。
【0140】
結果は、DL80C-s4P2R4およびDL80C-s4P5R4の水溶解度値が、それぞれ、0.13mg/mLおよび0.34mg/mLであることを示す。
【0141】
実施例3:in vitro放出試験
メロキシカムのセットアップ1の詳細手順:
【0142】
製剤調製
風袋を測定した空の3mLのガラスバイアルで、必要なコポリマーの量を秤量した。ガラスバイアルの風袋を再度測定した。パスツールピペットを用いて、正確なDMSO質量を添加した。次いで、ビヒクル(コポリマー+溶媒)を、コポリマーが完全に溶解するまで、室温(RT)で6~7時間ローラーミキサー上に置いた。次いで、ガラスバイアルの風袋を測定し、必要なAPI量を秤量した。次いで、製剤をローラーミキサー上に室温で一晩置いた。
【0143】
懸濁液製剤中のAPIの可溶性フラクション(SF)の測定
可溶性フラクション測定試験は、in vitro放出(IVR)と並行して実施され、懸濁液製剤中に可溶化された正確なAPIパーセンテージを決定した。この試験は3連で行った。500μLの製剤を、事前にボルテックスした対応するガラスバイアルから0.5mLCodanシリンジに抜き取った。製剤を1.5mLフィルター付きエッペンドルフチューブに注入し、室温にて13200rpmで5分間遠心分離した。遠心分離後、50μLの上清を0.5mLのCodanシリンジに吸引した。シリンジを洗浄し、風袋を測定し、製剤を無針シリンジから、50mLの空のファルコンチューブに直接注入した。空のシリンジを秤量し、ファルコンチューブに注入された正確な上清の質量を記録した。上清を15mLのHPLCグレードアセトニトリルに溶解し、溶液をボルテックスした。完全に溶解した後、超純水5mLを加えて、溶液をボルテックスした。サンプル1mLを0.45μmのPTFE Phenomenexフィルターで濾過し、1.5mLのHPLCバイアルに入れた。API可溶性フラクションは、UPLCを用いて決定した。メロキシカムの濃度範囲が0~160μg/mlの検量線から、溶液中のメロキシカムの量を算出した。
【0144】
In vitro放出セットアップ
50μLの製剤を、事前にボルテックスした対応するガラスバイアルから0.5mL Codanシリンジに抜き取った。シリンジを洗浄し、風袋を測定し、製剤を無針シリンジから20mLの放出緩衝液を含む50mLのプレフィルドガラスバイアルに直接注入した。使用した緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、10mMリン酸二ナトリウム、1.8mMリン酸一カリウムおよび0.1%アジ化ナトリウムであった。注入すると、溶媒が製剤から拡散し、残りのポリマーが水性環境内でin situデポーを形成する。析出およびデポー形成が起こったら、ハサミを用いてシリンジからデポーを切り取った。正確なデポー質量を決定するために、シリンジを再び秤量した。
【0145】
ポリマー溶液に組み込まれたメロキシカムは、固化することにつれてポリマーマトリクス内に封入された。
【0146】
すべてのデポーが形成されたら、ガラスバイアルを37℃で180rpm(Unimax 1010機器、Heidolph社)で一定に振盪しながら維持した。
【0147】
IVRは、以下に詳述するステップに従って分析された:
【0148】
API定量化のためのIVRサンプリングとIVRサンプルの調製
所望の各時点で、分析用に十分な量の緩衝液を50mLガラスバイアルから抜き取って、その後、全緩衝液をリフレッシュした。各サンプル1mLを、0.2μm親水性フィルターを通して1mLのHPLCガラスバイアルに濾過した。残りの媒体を捨て、20mLの新しい緩衝液をガラスバイアルに加えた。シンク条件は試験の全期間中維持された。放出された緩衝液中のAPI含有量を、UPLCを用いて測定した。製剤から放出されたメロキシカムの量は、メロキシカムの濃度が0~160μg/mlの範囲の検量線から算出した。
【0149】
いくつかのパラメータ、例えば、製剤の質量、緩衝液の量は、試験対象のAPI、その緩衝液への溶解度、ならびにその目標用量および放出期間に応じて調整され得る。異なるパラメータを用いたセットアップを以下の表3に示す。
【0150】
試験したすべての製剤を以下の表2に示す。
【0151】
【0152】
【0153】
実施例4:注入性
本試験の目的は、ビヒクルおよび/または製剤の注入性に対する星型コポリマーの使用の潜在的な影響を、これらのビヒクルおよび/または製剤の値を相互に、ならびに類似の線状ポリマーと比較することにより評価することであった。
【0154】
注入性分析は、Lloyd Instruments社のFT plusテクスチュロメーターを用いて、以下に述べる手順に従って実施した:
【0155】
製剤またはビヒクルを15秒間ボルテックスした。無針の1mL Codanシリンジを使用して、500μLの製剤を抜き取った。注入性測定中の干渉を避けるために、気泡を取り除いた。次いで、23G 1インチのテルモ針を、ビヒクルまたは製剤用にそれぞれシリンジに取り付けた。シリンジをテクスチュロメーター上に置いた。流量は1mL/分に固定した。速度は56.3mm/分に固定した。固定速度で製剤の注入を開始した。注入デバイス(すなわち、シリンジ+針)は、レプリケートごとに変更した。
【0156】
各レプリケートを注入するのに必要なニュートン(N)単位の平均力を、テクスチュロメーターソフトウェアを用いて計算した。上記のセットアップを用いて、本発明者は、手で容易に注入できる製剤の最大値として20Nを定義した。
【0157】
【0158】
実施例5:動粘度分析
動粘度分析は、円錐プレート測定システムを備えたアントンパール(Anton Paar)社のレオメーターを用いて、以下の分析条件下で行われた:
・測定システム:直径50mm、円錐角1度の円錐プレート(CP50)。CP50は、低粘度を示す製剤の正確な値を取得するのにより適している。
・動作範囲:10~1000mPa.s。
・温度は25℃に制御される。
・ビヒクル量:0.7mL。
【0159】
分析前に、製剤またはビヒクルを10秒間ボルテックスした。スパチュラを用いて適量のサンプルを温度調節された測定プレートの中央に配置した。測定システムを下げ、測定システムと測定プレートの間に0.104mmの隙間をあけた。10~1000秒-1の剪断速度にわたって21の粘度測定点が決定された(10点/ディケード)。懸濁液については、分析前に測定位置で60秒の静止時間を設定し、続いて1000秒-1で30秒の予備剪断を行った。粘度データは、曲線プラトーの平均値である100秒-1の剪断速度で計算されたものに対応する。動粘度分析は、十分な量が利用可能な場合には二重に行われた。
【0160】
【0161】
実施例6:薬物動態試験
In vivo詳細セットアップ手順:
メロキシカム製剤は、体重200~250gの成体雄ラットにおける薬物動態試験で試験された。メロキシカム18.6mgを含む製剤を、1mLのSoft Ject(登録商標)シリンジと23G(1インチ 0.6×25mm)テルモ(登録商標)針を用いて、ラットの肩甲骨間領域に皮下投与した。注入する製剤の量は160μLに固定した。血液サンプルをさまざまな時点でEDTAチューブに収集した:T0.5h、T1h、T3h、T8h、T24h(1日目)、T48h(2日目)、T96h(4日目)、T168h(7日目)、T240h(10日目)、T336h(14日目)、T504h(21日目)、T672h(28日目)。血液サンプルを遠心分離し、各時点からの血漿を保持した。血漿サンプルをLC/MS/MSによって分析して、メロキシカム含有量を定量化した。
【国際調査報告】