(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ナノチタニアの作製方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/053 20060101AFI20230721BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230721BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20230721BHJP
【FI】
C01G23/053
B82Y40/00
B82Y30/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500357
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2021104590
(87)【国際公開番号】W WO2022007760
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010642210.6
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523004604
【氏名又は名称】寧波極微納新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】梁先華
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CB05
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD07
(57)【要約】
チタン酸素化合物粉末を少量の水と触媒と混合するステップと、密封した後で熱処理して、ナノチタニア生成物を得るステップと、を含み、チタン酸素化合物粉末は、低結晶性チタニア、結晶しないチタニア、チタン酸、メタチタン酸、水酸化チタン、ポリチタン酸、水和チタン酸のうちの一種又は複数種の組み合わせを含み、触媒は、酸または塩化物であり、具体的な酸は、塩酸、過塩素酸、次亜塩素酸、硝酸、フッ酸、硫酸、酢酸のうちの一種又は複数種の組み合わせから選択され、具体的な塩化物は、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四塩化ケイ素、塩化アルミニウム、塩化ジルコニウムのうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される、ナノチタニアの作製方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
まず、チタン酸素化合物粉末を少量の水と触媒と混合するステップと、
次に、上記少量の水と触媒を混合したチタン酸素化合物粉末を密封するステップと、
続いて、上記密封後の少量の水と触媒を混合したチタン酸素化合物粉末を熱処理して、ナノチタニア生成物を得るステップと、を含む
ナノチタニアの作製方法。
【請求項2】
前記密封は、少量の水及び触媒を混合したチタン酸素化合物粉末を、加熱される場合に体積変化が発生しない一定の体積の容器に入れて密封することである
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項3】
前記チタン酸素化合物粉末は、低結晶性チタニア、結晶しないチタニア、チタン酸、メタチタン酸、水酸化チタン、ポリチタン酸、水和チタン酸のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項4】
前記チタン酸素化合物粉末は、チタン源により加水分解、分離、精製及び乾燥過程を経て得られ、前記チタン源は、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、三塩化チタン、チタニウムイソプロポキシド、チタン酸テトラブチル、チタニウムアルコキシド、フッ化チタン酸、チタニウムテトラフルオライドのうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項5】
前記チタン酸素化合物粉末は、ナノチタン酸塩により酸交換、洗浄及び精製プロセスを経た後で取得される
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項6】
前記チタン酸素化合物粉末は、チタン金属により陽極酸化により作製される、または、前記チタン酸素化合物粉末は、チタン金属により酸性溶液中で過酸化水素水と加熱反応して得られる
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項7】
前記少量の水とチタン酸素化合物の質量%は、1%から100%である
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項8】
前記少量の水とチタン酸素化合物の質量%は、5%から50%である
ことを特徴とする請求項7に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項9】
前記少量の触媒とチタン酸素化合物の質量%は、1‰から30%である
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項10】
前記少量の触媒とチタン酸素化合物の質量%は、1%から15%である
ことを特徴とする請求項9に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項11】
前記触媒は、塩酸、過塩素酸、次亜塩素酸、硝酸、フッ酸、硫酸、酢酸のうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される酸あり、
または、
前記触媒は、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四塩化ケイ素、塩化アルミニウム、塩化ジルコニウムのうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される塩化物である
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項12】
前記混合過程は、まず水をチタン酸素化合物粉末に添加した後で触媒を添加してもよく、または、まず触媒をチタン酸素化合物粉末に添加した後で水を添加してもよく、または、触媒と水をチタン酸素化合物粉末に同時に添加してもよく、または、触媒と水を混合した後でさらにチタン酸素化合物粉末に添加してもよい
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項13】
前記熱処理の方式は、マイクロ波加熱、電気加熱、油加熱、水蒸気加熱方式のうちから選択される一種である
ことを特徴とする請求項1に記載のナノチタニアの作製方法。
【請求項14】
前記熱処理は、低温熱処理であり、前記熱処理の温度は、100℃~200℃であり、前記熱処理の時間は、2~24時間である
ことを特徴とする請求項13に記載のナノチタニアの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照関連参照】
【0001】
本願は、2020年7月6日に提出された出願番号が202010642210.6であり、発明名称が「ナノチタニアの作製方法」である中国特許出願の優先権を要求し、その内容は、すべて引用により本願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本願は、特にナノチタニアの作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノチタニアとは、粒子径が100ナノメートル未満のチタニアを指し、小さい粒子径、高い比表面積、優れた光触媒活性、安定した化学的性能と熱的性能、超親水性などの特殊効果を有し、空気管理、殺菌消毒、自己クリーニング材料、日焼け止めスキンケアなどの分野で代替できない応用メリットを有する。例えば、ナノチタニアは、ホルムアルデヒド、ベンゼン、TVOC、SOx、NOxなどの分解に用いられることもできるし、冷蔵庫の汚染臭気の除去、空調ガスの清浄化などに用いられることもでき、室内、車内の空気管理の効果を発揮できる。ナノチタニアは、ガラス、ルーバ、鏡、街灯などの表面に応用され、自己クリーニング効果を実現できる。ナノチタニアは、さらに、医療機器、カテーテル、手術室、日焼け止め化粧品、日焼け止め衣類、増白製品、耐老化塗料などの分野でも広く応用されている。また、ナノチタニアは、さらに、リチウムイオン電池の負極材料、水素エネルギーの光触媒または光電触媒の採取などのエネルギー転化および貯蔵の分野に使用できる。
【0004】
現在、ナノチタニアの作製方式は、主に気相法と液相法の2種類がある。気相法は、気体を直接利用したり、様々な手段で物質を気体に変えたりして、気体状態で物理的または化学的に変化させ、最後に冷却過程で凝集成長してナノ粒子を形成する方法である。気相法は、主にガス凝縮法、スパッタ法、活性水素-溶融金属反応法、流動液面上真空蒸発法、混合プラズマ法および通電加熱蒸発法などを含む。気相法は、通常、反応温度が高く、プロセス技術が複雑で、機器と技術に対する要求が高く、投資が多いため、製品コストが高い。気相合成法と比較して、液相合成法は、反応のコントロールが容易で、機器が簡単で、エネルギー消費が少ないなどの利点があり、実験室と工業上で広く採用されているチタニア材料を作製する方法である。液相法は、主に沈殿法、水熱法、ゾル-ゲル法、マイクロエマルション法、加水分解法などを含む。これらの方法で得られたナノチタニア材料は、収率が低く、粒子サイズの分布が通常不均一であり、プロセスフローも長い。
【0005】
ナノチタニア材料の粒径の大きさと水溶性の分散性の程度は、ナノチタニア材料の空気管理などの各分野での応用効果を直接決定し、かつ、ナノチタニア材料に基づいて開発された各種の派生系製品の性能を最終的に決定する。ナノチタニア材料の粒径の大きさと水溶性の分散性の程度もナノチタニア材料の価格を直接決定する。作製技術や合成プロセスなどの影響を受けて、現在市場に出回っているナノチタニア粉体とは、いずれもナノレベルの粒子が集まった大きな粒子であり、真の意味でのナノチタニア材料ではなく、これらの材料は、水中での分散性が悪く、不透明で沈降しやすく、実用上で大きな欠陥を持っている。同時に、ナノチタニア材料の価格は、一般的に高く、その価格は、ミクロン、サブミクロンチタニア材料の数十から数百倍である。したがって、アメリカ、日本、ヨーロッパなどの先進国では、ナノチタニアに関する研究が活発に行われ、前後に大量の人力、物資が投入されているが、性能に優れたナノチタニア材料は、低コストで、大規模に開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、性能に優れたナノチタニア材料を低コストで、大規模に開発するために、新しい固液界面合成方法で得られたナノチタニア材料を提供することである。本技術発明は、単分散ナノ材料を大規模で、低コストで生産できないという技術的課題を解決し、生産コストを低減し、ナノレベルのチタニア粒子の集りを低減し、水溶性と分散性を増加させ、応用効果と使用分野を向上させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、チタン酸素化合物粉末前駆体を少量の水と混合し、前駆体固体の表面に薄い水層を形成するとともに、触媒の作用により、加熱条件下でチタン酸素化合物粉末前駆体を「溶解-閉じ込め成長」させて粒径の均一な結晶性ナノチタニア粒子生成物に徐々に転化することを原理とする。
【0008】
本発明で得られた「溶解-閉じ込め成長」の化学的メカニズム過程は、水熱法による「溶解-成長」過程と比較して顕著な差異と技術的革新効果がある。ここに、水熱法は、水を溶媒とし、通常、反応物を完全に浸漬させて水に分散させて反応させる必要がある。しかし、本技術における反応物は、少量の水だけと混合し、表面のみに薄い水層があるため、転化時の反応物粉体の溶解と再結晶過程におけるイオン拡散遷移経路と距離が制限され、転化反応が微小な体積内に制限されることによって、サイズや大きさが均一で超微細なナノ材料生成物が得られる。それと同時に、本発明における触媒は、前駆体の溶解を促進し、薄い水層での溶質チタンイオンの濃度と核生成量を増加させ、粒子の大きさが均一なナノチタニア生成物の形成をさらに促進し、最終的に単分散ナノチタニア材料を形成する。
【0009】
具体的には、上記の目的を達成するために、本願は、以下の技術的解決手段を採用する。
【0010】
まず、チタン酸素化合物粉末を少量の水と触媒と混合するステップと、
次に、上記少量の水と触媒を混合したチタン酸素化合物粉末を密封するステップと、
続いて、上記密封後の少量の水と触媒を混合したチタン酸素化合物粉末を熱処理して、ナノチタニア生成物を得るステップと、を含むナノチタニアの作製方法である。
【0011】
好ましい実施形態として、前記チタン酸素化合物粉末は、低結晶性チタニア、結晶しないチタニア、チタン酸、メタチタン酸、水酸化チタン、ポリチタン酸、水和チタン酸のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。
【0012】
好ましい実施形態として、前記チタン酸素化合物粉末は、チタン源により加水分解、分離、精製及び乾燥過程を経て得られ、前記チタン源は、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、三塩化チタン、チタニウムイソプロポキシド、チタン酸テトラブチル、チタニウムアルコキシド、フッ化チタン酸、チタニウムテトラフルオライドのうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される。
【0013】
好ましい実施形態として、前記チタン酸素化合物粉末は、ナノチタン酸塩により酸交換、洗浄及び精製プロセスを経た後で取得される。
【0014】
好ましい実施形態として、前記チタン酸素化合物粉末は、チタン金属により陽極酸化により作製される、または、前記チタン酸素化合物粉末は、チタン金属により酸性溶液中で過酸化水素水と加熱反応して得られる。
【0015】
好ましい実施形態として、前記少量の水とチタン酸素化合物の質量%は、1%から100%である。
【0016】
好ましい実施形態として、前記少量の水とチタン酸素化合物の質量%は、5%から50%である。
【0017】
好ましい実施形態として、前記少量の触媒とチタン酸素化合物の質量%は、1‰から30%である。
【0018】
好ましい実施形態として、前記少量の触媒とチタン酸素化合物の質量%は、1%から15%である。
【0019】
好ましい実施形態として、前記触媒は、塩酸、過塩素酸、次亜塩素酸、硝酸、フッ酸、硫酸、酢酸のうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される酸である。
【0020】
好ましい実施形態として、前記触媒は、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四塩化ケイ素、塩化アルミニウム、塩化ジルコニウムのうちの一種又は複数種の組み合わせから選択される塩化物である。
【0021】
好ましい実施形態として、前記混合過程は、まず水をチタン酸素化合物粉末に添加した後で触媒を添加してもよく、または、まず触媒をチタン酸素化合物粉末に添加した後で水を添加してもよく、または、触媒と水をチタン酸素化合物粉末に同時に添加してもよく、または、触媒と水を混合した後でさらにチタン酸素化合物粉末に添加してもよい。
【0022】
好ましい実施形態として、前記密封は、少量の水及び触媒を混合したチタン酸素化合物粉末を、加熱される場合に体積変化が発生しない一定の体積の容器に入れて密封することである。
【0023】
好ましい実施形態として、前記熱処理の方式は、マイクロ波加熱、電気加熱、油加熱、水蒸気加熱方式のうちから選択される一種である。
【0024】
好ましい実施形態として、前記熱処理は、低温熱処理であり、前記熱処理の温度は、100℃~200℃であり、前記熱処理の時間は、2~24時間である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の利点は以下のとおりである。
1.合成されたチタニアナノ粒子のサイズが均一であり、粒径の大きさ及び結晶相がいずれも制御可能である。
2.合成されたチタニア材料は、水と混合して自発的に分散してナノチタニア粒子が安定的に懸濁する水分散液を形成することができる。
3.合成されたチタニア材料分散液の紫外光吸収が強いと同時に、可視光領域で極めて高い光透過性を有し、応用分野を大幅に拡大する。
4.該チタニア光触媒は、優れた光触媒活性を有し、触媒効率は、P25材料の10倍である。
5.合成過程全体は低温、低圧で行われ、プロセス過程が簡単で、コストが低く、大規模化で合成し応用することができる。
【0026】
後述の説明と図面を参照して、本発明の特定の実施形態が詳しく開示されており、本発明の原理が採用され得る態様が明示されている。本発明の実施形態は範囲上で規制されないことを理解すべきである。
【0027】
一つの実施形態に記載および/または示される特徴について、同一又は類似の態様で、一つ又は複数のほかの実施形態で使用され、ほかの実施形態における特徴と組み合わせ、又はほかの実施形態における特徴を代替することができる。
【0028】
「含む/含める」という用語は、本文で使用される場合、特徴、部材全体、ステップ或いは部材の存在を指すが、一つ又は複数の他の特徴、部材全体、ステップ或いは部材の存在/付加を除外しないことを強調しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明瞭に説明するために、以下、実施例又は従来技術を記載するために使用する必要のある添付図面を簡潔に紹介する。下記記載の図面は本発明のある実施例に過ぎないことが自明であり、当業者にとって、進歩的な労力を払わないことを前提として、これらの図面に基づいてほかの図面を取得することができる。
【0030】
【
図1】本発明の技術の「溶解-閉じ込め成長」の化学メカニズム過程であって、小さいスケール、粒径の均一なナノ材料を得る。
【
図2】伝統的な水熱法による「溶解-成長」過程であって、生成物の粒径の大きさが不均一で、大きな粒子を形成する。
【
図3】実施例1で得られた生成物を水で分散させた後、シリコンウェハに滴下塗布し、乾燥後に観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】実施例1で作製されたチタニア生成物のX線回折図であって、主な結晶相は、アナターゼ相である。
【
図5】実施例1で得られたナノチタニア生成物に水を加えて得られた質量割合が1%の水分散液であって、安定的なコロイド状に分散した分散状態を有している。
【
図6】実施例1で得られた濃度が1万分の5のナノチタニア水分散液とP25水分散液の紫外-可視光吸収曲線である。
【
図7】実施例1で得られたナノチタニア生成物及びP25の光触媒がローダミンBを分解する曲線である。
【
図8】比較例1で得られた生成物を水で分散させた後で、シリコンウェハに滴下塗布し、乾燥後に観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図9】比較例1で得られた生成物に水を加えて得られた懸濁液を24時間後に沈殿させてデラミネーションを形成した結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
当業者が本発明における技術的解決手段をより良好に理解するために、以下、本発明の実施例における図面を結び付けて、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で完全に説明する。説明する実施例は、本発明の全部の実施例ではなく、一部の実施例に過ぎないことが明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が進歩的な労力を払わずに取得したほかの実施例の全ては、本発明の権利範囲に属するべきである。
【0032】
特に定義のない限り、本文で使用される全ての技術と科学用語は、当業者が一般的に理解する意味と同一である。本文において、本発明の明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明することを目的とするだけで、本発明を規制するためではない。本文で使用される用語である「及び/又は」は、一つ又は複数の関連の列記された項目の任意及び全部の組み合わせを含む。
【実施例1】
【0033】
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水1ミリリットルと四塩化チタン0.25グラムをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃で2時間マイクロ波加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0034】
本発明の実施例は、ナノチタニア材料を得る新しい固液界面合成方法を提供し、該技術原理を
図1に示す。チタン酸素化合物粉末前駆体を少量の水と混合すると、前駆体の固体表面に薄い水層を形成するとともに、触媒の作用により、加熱条件下でチタン酸素化合物粉末前駆体を「溶解-閉じ込め成長」させて粒径の均一な結晶性ナノチタニア粒子生成物に徐々に転化する。
【0035】
水熱法(
図2に示す)と比較して、本技術で得られた「溶解-閉じ込め成長」の化学的メカニズム過程は、水熱法による「溶解-成長」過程と比較して顕著な差異と技術的革新効果があり、本技術における反応物は、少量の水だけと混合し、表面のみに薄い水層があるため、転化時の反応物粉体の溶解と再結晶過程におけるイオン拡散遷移経路と距離が制限され、転化反応が微小な体積内に制限されることによって、サイズや大きさが均一で超微細なナノ材料生成物が得られる。それと同時に、本技術における触媒は、前駆体の溶解を促進し、薄い水層での溶質チタンイオンの濃度と核生成量を増加させ、粒子の大きさが均一なナノチタニア生成物の形成をさらに促進し、最終的に単分散ナノチタニア材料を形成する。
【0036】
上記の説明は、
図3~
図7でも証明できる。
図3に示すように、実施例1で得られた生成物を少量取り、脱イオン水に分散させた後で、少量を取ってシリコンウェハ上に滴下し、自然に乾燥させ、乾燥された後でシリコンウェハを走査型電子顕微鏡の試料台に導電ペーストで貼り付け、走査型電子顕微鏡で試料の形態を観察するために用いられる。
図3から、生成物のチタニアナノ粒子の粒径は、5ナノメートルから10ナノメートルであることがわかり、さらに本実施例で得られたナノチタニアは、小さな粒径を有し、単分散性に優れていることが説明されている。
【0037】
図4は、実施例1で作製されたチタニア生成物のX線回折図であって、
図4から、本実施例1で作製されたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であり、良好な結晶性を有していることがわかる。本実施例1で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が1%のナノチタニア分散液を得、
図5に示すように、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、1年以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。実施例1で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成した後、上記分散液体を取って厚さ1センチの石英セルに入れて、試料の紫外-可視光吸収曲線を測定する。
図6に示すように、本実施例1で得られたチタニア材料分散液は、極めて低い濃度で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収することができ、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は、95%以上である。P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例で得られる製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有し、具体的な比較方式として、本実施例1で得られた生成物とP25(デグサ)試料をそれぞれ1グラム測り取って濃度が2.0×10-5モル/リットルのローダミンB溶液100ミリリットルに分散させ、暗所で30分間磁気撹拌し、温度バランスと吸着バランスをとる。その後、紫外線ランプをつけ、攪拌し、一定の時間ごとに試料を3ミリリットル取り出し、粒子を遠心分離し、紫外可視分光器で550ナノメートルのところで溶液の吸光度を測定し、ローダミンBの残りの濃度を計算する。
図7から、本実施例1で得られた生成物のチタニア光触媒は優れた光触媒活性を有し、触媒効率は、P25材料の10倍であることがわかる。
【0038】
上記により、本発明の利点は、(1)合成されたチタニアナノ粒子のサイズが均一で、粒径の大きさと結晶相が制御可能であることと、(2)合成されたチタニア材料は、水と混合して自発的に分散してナノチタニア粒子が安定的に懸濁する水分散液を形成することができることと、(3)合成されたチタニア材料分散液の紫外光吸収が強いと同時に、可視光領域で極めて高い光透過性を有し、材料の応用分野を大幅に拡大することと、(4)該チタニア光触媒は、優れた光触媒活性を有し、触媒効率は、P25材料の10倍であることと、(5)合成過程全体は、低温、低圧で行われ、プロセス過程が簡単で、コストが低く、大規模化で合成し応用することができることと、にある。
【実施例2】
【0039】
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら、水0.1ミリリットルと四塩化チタン1.25グラムをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃で2時間マイクロ波加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0040】
本実施例2で得られた生成物のナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニアの粒子径は主に8ナノメートルから20ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例2で得られたナノチタニアは、ルチル相を少量含み、主な結晶相がアナターゼ相であることが確認された。
【0041】
本実施例2で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が1%のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、半年以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0042】
実施例2で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の3の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は90%以上である。
【0043】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例2で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例2得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約8倍である。
【実施例3】
【0044】
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水2ミリリットルと四塩化チタン0.5グラムをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃で2時間マイクロ波加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0045】
本実施例3で得られた生成物のナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニアの粒子径は主に10ナノメートルから20ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例3で得られたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であることが確認された。
【0046】
本実施例3で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が5‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、半年以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0047】
実施例3で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は80%以上である。
【0048】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例3で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例3で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約7倍である。
【実施例4】
【0049】
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水4ミリリットルと四塩化チタン0.05グラムをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃で2時間マイクロ波加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0050】
本実施例4で得られた生成物ナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニアの粒子径は主に10ナノメートルから50ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例4で得られたナノチタニアは、ルチル相を少量含み、主な結晶相がアナターゼ相であることが確認された。
【0051】
本実施例4で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が1‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、三ヶ月以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0052】
実施例4で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は70%以上である。
【0053】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例4で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例4で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約5倍である。
【実施例5】
【0054】
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながら水酸化ナトリウム溶液0.5モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりナトリウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってナトリウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら質量濃度が20%の塩酸溶液を2ミリリットル入れ、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜をオーブンに入れ、140℃で20時間加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0055】
本実施例5で得られた生成物のナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニアの粒子径は主に8ナノメートルから20ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例5で得られたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であり、ルチル相を少量含むことが確認された。
【0056】
本実施例5で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が5‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、半年以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0057】
実施例5で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、380ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は80%以上である。
【0058】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例5で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例5で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約7.5倍である。
【実施例6】
【0059】
硫酸チタニルを20グラム取って500ミリリットルの水にゆっくりと加え、攪拌して溶液にした後で、攪拌しながら水酸化カリウム溶液0.8モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりカリウムイオンと硫酸イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってカリウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら、水1ミリリットルと濃硝酸2ミリリットルをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜をオイルバスに入れ、180℃で10時間加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0060】
本実施例6で得られた生成物のナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニアの粒子径は主に20ナノメートルから50ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例6で得られたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であることが確認された。
【0061】
本実施例6で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が1‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、一ヶ月以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0062】
実施例6で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は50%以上である。
【0063】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例6で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例6得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約3倍である。
【実施例7】
【0064】
チタン酸テトラブチル20グラムを脱イオン水500ミリリットルにゆっくりと滴下し、攪拌してチタン酸の沈殿にする。上記チタン酸の沈殿を分離洗浄の操作により有機物を除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水1ミリリットルと三塩化チタン1ミリリットルをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜をオーブンに入れ、120℃で24時間加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0065】
本実施例7で得られた生成物のナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニアの粒子径は主に5ナノメートルから20ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例7で得られたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であって、少量のルチル相があることが確認された。
【0066】
本実施例7で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が5‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、半年以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0067】
実施例7で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき,紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は85%以上である。
【0068】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例7で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例7で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約8.5倍である。
【実施例8】
【0069】
スポンジチタン粉を5グラム取り、濃度が1モル/リットルの硝酸と質量濃度が5%の過酸化水素水を含む溶液500ミリリットルに分散させ、80℃で攪拌してチタン酸素化合物の沈殿を得る。上記チタン酸素化合物の沈殿を分離、洗浄および乾燥してチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水0.5ミリリットルと四塩化ケイ素0.5ミリリットルをそれぞれ加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜をオイルバスに入れ、160℃で15時間加熱し、ナノチタニア生成物を得る。
【0070】
本実施例8で得られた生成物のナノチタニアは、粒子径が小さく、単分散性がよく、ナノチタニア粒径は主に10ナノメートルから30ナノメートルに分布していることが走査型電子顕微鏡で観察された。X線回折により、本実施例8で得られたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であることが確認された。
【0071】
本実施例8で得られたナノチタニア生成物を水に加え、質量割合が5‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定的なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、半ヶ月以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0072】
実施例8で得られたナノチタニアを水に分散させ、濃度が1万分の5の水分散液を形成し、該水溶液は厚さ1センチの石英セルの中で、370ナノメートル未満の紫外光を完全に吸収でき、紫外線吸収能力が高いと同時に、400ナノメートルを超える可視光領域では極めて高い光透過性を有し、光透過率は60%以上である。
【0073】
P25などの他のナノチタニア材料と比較して、本実施例8で得られた製品は、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用を大幅に拡大した。本実施例8で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、太陽光照射でローダミンB染料を分解する効率は、商業P25材料の約5.5倍である。
【0074】
比較例1
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水10ミリリットルと四塩化チタン0.25グラムをそれぞれ加え、持続的に攪拌し懸濁液にする。その後、上記懸濁液を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃でマイクロ波で2時間加熱し、生成物を得る。
【0075】
走査型電子顕微鏡写真の
図8に示すように、本比較例で得られた生成物において、ナノチタニア粒子の大きさが不均一で、いずれも大量の大きな粒子が含まれており、生成物の形態構造の差異が顕著で、棒状粒子の形態もあり、小さな粒子の凝集体の形態もある。
図9に示すように、本比較例で得られたチタニア生成物は、水中に分散させて安定で透明な分散液を形成することができず、長時間に超音波撹拌しても懸濁液体しか得られず、かつ、この懸濁液は、数時間内で沈殿層が現れる。XRD試験により、本比較例で得られたチタニア生成物には、ルチル相チタニアが大量含まれており、実施例1で得られた高活性のアナターゼ相チタニアは得られなかった。本比較例の製品の光触媒性能は、P25商業製品よりも小さく、効率は、P25の2分の1に過ぎず、実施例1の製品の性能の20分の1だけであり、光触媒性能は極めて悪い。また、本比較例1で得られたチタニア材料分散液の極低濃度での可視光透過率は、10%未満であり、該材料の自己クリーニング、美観、フィルムなどの製品分野への応用が大幅に制限されている。本比較例では、生成物の形態、分散性、触媒効率などの構造、性能において、いずれも実施例の生成物による発明効果を得ることができない。
【0076】
比較例2
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら、水10ミリリットルと四塩化チタン2.5グラムをそれぞれ加え、持続的に攪拌し懸濁液にする。その後、上記懸濁液を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃でマイクロ波で2時間加熱し、生成物を得る。本比較例で得られた生成物は、比較例1で得られた生成物と略一致し、水に分散させて分散液を形成することができず、得られた生成物は、懸濁液体であり、数時間内に沈殿層が現れる。また、本比較生成物には、ルチル相が大量含まれており、光触媒性能は、P25商業製品よりも小さく、P25の0.3倍にすぎず、光触媒性能が劣っている。本比較例では、生成物の形態、分散性、触媒効率などの構造、性能において、いずれも実施例の生成物による発明効果を得ることができない。
【0077】
比較例3
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら水1.25ミリリットルを加え、攪拌を続けて少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を形成する。その後、上記少し湿ったチタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃でマイクロ波で2時間加熱し、生成物を得る。本比較例では、反応物を完全に結晶性のナノチタニア生成物に転化することができず、本比較例で得られた生成物は、水に分散されて分散液を形成することができず、得られた生成物は、懸濁液体であり、数時間内に沈殿層が現れる。また、本比較品の光触媒性能は、P25商業製品よりも小さく、P25の0.8倍に過ぎず、光触媒性能が劣っている。本比較例では、生成物の形態、分散性、触媒効率などの構造、性能において、いずれも実施例の生成物による発明効果を得ることができない。
【0078】
比較例4
四塩化チタン液体を20グラム取って水30ミリリットルにゆっくり滴下し、攪拌して溶液を形成する。上記溶液を水で500ミリリットルに希釈した後で、攪拌しながらアンモニア水溶液1.0モル/リットルを最終溶液のpHが中性になるまでゆっくり滴下し、チタン酸塩の沈殿を得る。上記チタン酸塩の沈殿を分離洗浄の操作によりアンモニウムイオンと塩素イオンを除去した後で、酸溶液中で酸交換を行ってアンモニウムイオンを完全に除去し、分離乾燥した後でチタン酸素化合物粉末を得る。その後、上記で得られたチタン酸素化合物粉末を5グラム取り、攪拌しながら四塩化チタン1.25グラムを加える。その後、上記チタン酸素化合物粉末の混合物を反応釜に入れて密封する。最後に、上記反応釜を電子レンジに入れ、160℃でマイクロ波で2時間加熱し、生成物を得る。本比較例では、反応物を完全に結晶性のナノチタニア生成物に転化することができず、本比較例で得られた生成物は、水に分散されて分散液を形成することができず、得られた生成物は、懸濁液体であり、数時間内に沈殿層が現れる。また、本比較生成物の光触媒性能は、P25商業製品よりも小さく、P25の0.6倍に過ぎず、光触媒性能が劣っている。本比較例では、生成物の形態、分散性、触媒効率などの構造、性能において、いずれも実施例の生成物による発明効果を得ることができない。
【0079】
本文で引用されている何れかの数字値は全て下限値から上限値まで1つの単位でアップする下位値と上位値の全ての値を含み、何れかの下位値と何れかの上位値との間に少なくとも2つの単位の間隔があればよい。例を挙げると、もし1つの部材の数または過程変数(例えば温度、圧力、時間等)の値は1から90と記載すると、20から80が好ましく、30から70がより好ましく、該明細書にも、例えば15から85、22から68、43から51、30から32などの値も明確に列挙されていることを説明することを目的とする。1より小さい値について、1つの単位が0.0001、0.001、0.01、0.1であると適宜に考えられる。こられは明確に記載しようとする例示に過ぎず、最低値と最高値との間に列挙されている数値の全ての可能な組合せは類似する方式で該明細書に明確に記載されていると考えられる。
【0080】
特に説明されるほか、全ての範囲は端点及び端点間の全ての数字を含む。範囲とともに使用される「約」又は「近似」は該範囲の2つの端点に適合される。従って、「約20から30まで」は、「約20から約30まで」をカバーしようとし、少なくとも明記されている端点を含む。
【0081】
以上の説明は規制するためのものではなく、図示して説明するためのものであると理解すべきである。
【0082】
上記説明を閲覧することによって、提供された例示以外の多くの実施形態及び多くの応用は、当業者にとって自明なものである。従って、本教示の範囲については、上記説明を参照して確定するものではなく、添付した請求項及びこれらの請求項に記載の相当物の範囲の全てを参照して確定すべきである。全面的になる目的から、全ての文章及び特許出願と公告を含む公開を参考した資料は、引用によってここに援用されている。前記請求項で省略されるが、ここで開示された主題のいかなる面は、該主体内容を放棄するためのものではなく、発明者が該主題を開示の発明主題の一部に考慮しないと考えてはならない。
【国際調査報告】