(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】チタニアを作製する方法およびチタニアの分散性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/053 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
C01G23/053
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500368
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-07
(86)【国際出願番号】 CN2021104594
(87)【国際公開番号】W WO2022007764
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010642220.X
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010642931.7
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523004604
【氏名又は名称】寧波極微納新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】梁先華
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CB05
4G047CC03
4G047CD04
(57)【要約】
チタニアを作製する方法およびチタニアの分散性を向上させる方法であって、ここに、低温結晶化チタニアを作製する方法は、(1)チタン化合物を加水分解、分離、精製および乾燥過程を経て水和チタン酸を得るステップと、(2)前記水和チタン酸を100℃から200℃に加熱するステップと、(3)前記加熱された水和チタン酸系に塩化水素ガスを通じるとともに、定圧反応させて、結晶性ナノチタニア材料を得るステップと、を含む。該低温結晶化チタニアの技術方法により、ナノチタニアの沈殿合成法を改善し、チタニアナノ材料の性能と応用分野を促進することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)チタン化合物を加水分解、分離、精製および乾燥過程を経て水和チタン酸を得るステップと、
(2)前記水和チタン酸を100℃から200℃に加熱するステップと、
(3)前記加熱された水和チタン酸系に塩化水素ガスを通じるとともに、定圧反応させて、結晶性ナノチタニア材料を得るステップと、を含むことを特徴とする低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項2】
前記チタン化合物は、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、チタニウムイソプロポキシド、チタン酸テトラブチルのうちから選択される一種または複数種の組合せであることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項3】
前記加水分解過程は、チタン化合物と水とを直接反応させることである、または、前記加水分解過程は、チタン化合物とアルカリ水溶液とを反応させることであることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項4】
前記通される塩化水素ガス中に水蒸気がさらに含まれていることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項5】
前記定電圧反応の圧力は、0.5気圧から20気圧であり、好ましい圧力は、1気圧から10気圧であることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項6】
前記定圧反応の時間は、3時間から24時間であることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項7】
前記結晶性ナノチタニア材料の結晶相は、ルチル相またはアナターゼ相またはルチル相とアナターゼ相の複合相であることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項8】
前記結晶性ナノチタニア材料は、添加剤や分散剤を含まない純水中で自発的に分散して、主にコロイド分散である安定な分散液を形成することができることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項9】
前記結晶性ナノチタニア材料は、粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体であり、前記結晶性ナノチタニア材料の界面が酸性であることを特徴とする請求項1に記載の低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【請求項10】
前駆体である固体チタニアAを容器内に入れるステップと、
前記前駆体である固体チタニアAが入っている容器内に塩化水素ガスを充填して低温加熱処理を行い、分散性チタニアBの生成物を得るステップと、を含む
請求項1から9のいずれか1項の作製方法で得られたチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項11】
前駆体であるチタニアAと比較して、前記分散性チタニアBの生成物の水中での分散度が10倍以上向上していることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項12】
前駆体であるチタニアAと比較して、前記分散性チタニアBの生成物の水中での分散安定性が10倍以上向上していることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項13】
前駆体であるチタニアAと比較して、前記分散性チタニアBの生成物の水中で分散した後の透明度が10倍以上向上していることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項14】
前記分散性チタニアBの生成物は、添加剤や分散剤を含まない純水中で自発的に分散して、主にコロイド状の分散である安定な分散液を形成することができることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項15】
前記分散性チタニアBの生成物は粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体であり、前記分散性チタニアBの生成物の界面が酸性であることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項16】
前記分散性チタニアBの生成物は、結晶性ナノチタニアであり、前記結晶性ナノチタニアの結晶相は、アナターゼ相、ルチル相、ブルッカイト相のうちの一種または複数種の組合せであることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項17】
前記前駆体である固体チタニアAは粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体であり、好ましくは、前記前駆体である固体チタニアAは粒径が50ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が50ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体であることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項18】
前記前駆体である固体チタニアAは、結晶性チタニア粒子または結晶しないチタニア粒子であることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項19】
前記前駆体である固体チタニアAは、水酸化チタン、水酸化チタン水合物、チタン酸、チタン酸水合物のうちの一種または複数種の組合せをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項20】
前記塩化水素雰囲気に水蒸気がさらに含まれており、前記水蒸気の圧力は、0.1気圧から10気圧であることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項21】
前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスの圧力は、0.5気圧から20気圧であり、好ましくは、前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスの圧力は、1気圧から10気圧である
ことを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項22】
前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスは、所定の圧力範囲内で変動し、前記塩化水素雰囲気は、持続的に提供され、前記塩化水素雰囲気は、外部から入力して提供されることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【請求項23】
前記熱処理の温度は、80℃から300℃であり、好ましい熱処理の温度は、100℃から200℃であり、前記熱処理の時間は、2時間から48時間であることを特徴とする請求項10に記載のチタニアの分散性を向上させる方法である。
【発明の詳細な説明】
【相互参照関連参照】
【0001】
本願は、2020年7月6日に提出された出願番号が202010642220.Xであり、発明名称が「低温でチタニアを結晶化させる方法」であり、および2020年7月6日に提出された出願番号が202010642931.7であり、発明名称が「チタニアの分散性を向上させる方法」の中国特許出願の優先権を要求し、その内容は、すべて引用により本願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本願は、チタニアを作製する方法およびチタニアの分散性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノチタニアとは、粒子径が100ナノメートル未満のチタニアを指し、小さい粒子径、高い比表面積、優れた光触媒活性、安定した化学的性能と熱的性能、超親水性などの特殊効果を有し、空気管理、殺菌消毒、自己クリーニング材料、日焼け止めスキンケアなどの分野で代替できない応用メリットを有する。例えば、ナノチタニアは、ホルムアルデヒド、ベンゼン、TVOC、SOx、NOxなどの分解に用いられることもできるし、冷蔵庫の汚染臭気の除去、空調ガスの清浄化などに用いられることもでき、室内、車内の空気管理の効果を発揮する。ナノチタニアは、ガラス、ルーバ、鏡、街灯などの表面に応用され、自己クリーニング効果を実現できる。ナノチタニアは、さらに、医療機器、カテーテル、手術室、日焼け止め化粧品、日焼け止め衣類、増白製品、耐老化塗料などの分野でも広く応用されている。また、ナノチタニアは、さらに、リチウムイオン電池の負極材料、水素エネルギーの光触媒または光電触媒の採取などのエネルギー転化および貯蔵の分野に使用できる。
【0004】
現在、ナノチタニアの作製方式は、主に気相法と液相法の2種類がある。液相合成法は、反応の制御が容易で、機器が簡単で、エネルギー消費が少ないなどの利点があり、実験室と工業的に広く用いられているチタニア材料を作製する方法である。液相法は、主に沈殿法、水熱法、ゾル-ゲル法、マイクロエマルション法などを含む。
【0005】
ここに、沈殿法のプロセスとは、一定の温度下で、溶液のpH値を制御することにより、チタン源を水中で加水分解させ、不溶な水和チタン酸の沈殿を形成した後で、ろ過、洗浄、乾燥、焼成などのステップでチタニア粉体を得ることを指す。沈殿法では、高い結晶性のチタニア材料を得るために、焼成の温度は、通常500℃を超え、高い焼成温度により、生成物のチタニア粉体中の粒子が大きくなり、分散性の良いナノチタニア粒子材料を形成することができないと同時に、高い焼成温度によって、機器の投入と合成中のエネルギー消費量を増加させた。
【0006】
従って、沈殿法における焼成温度を下げることは、沈殿法によるチタニア材料の合成の重要なステップであり、生成物の性能向上とコスト低減に重要な意義がある。
【0007】
さらに、材料の性質は、そのサイズと非常に重要な関係があり、粒子径が超小さいナノ粒子は、エネルギー、環境、触媒などの面でより優れた性質を示すことができる。例えば、粒子径が100ナノメートル未満のチタニア材料であれば、小さい粒子径、高い比表面積、優れた光触媒活性、安定した化学と熱性能、超親水性などの特殊効果を有し、空気管理、殺菌消毒、自己クリーニング材料、日焼け止めスキンケアなどの分野で代替できない応用メリットを有する。
【0008】
ナノチタニア粒子の分散液の濃度と安定性は、反応過程と最終的な生成物に重要な影響を及ぼす。チタニアの運用範囲の絶えず拡大に伴い、例えば、空気管理、材料成型、塗料、インク作製などの応用分野では、製品性能は、チタニア粉体の液体媒体中での分散の程度に大きく依存し、分散がよければよいほど、最終的に製品の応用効果もよい。通常、ナノチタニア粒子は、サイズが小さく、界面に大量の欠陥が存在し、界面活性が高く、熱力学的に不安定な状態にあり、液体媒体中に分散したナノ粒子は、凝縮や凝集しやすく、沈降して、安定な分散液を形成できず、ナノ粒子特有の性能を失い、実用上大きな欠陥を持つ。主な表現として、(1)光触媒の分野では、光触媒に調製された後で、ドアや窓、革などの表面に塗装されることができず、なぜかというと、白い斑点が形成され、美観に悪い影響を及ぼし、凝集後のナノ粒子の光触媒活性が高くなく、ホルムアルデヒドなどの汚染物を除去する効果が目立たないためである。(2)自己クリーニングの分野では、光の散乱・反射が強く、光透過率が悪いため、ガラスや鏡などの透明表面に直接使用できない。(3)美容スキンケア製品の分野では、透明で自然な肌の色のスキンケアや日焼け止め製品を製造するために用いることができず、肌に不自然な白色を呈させる。(4)フィルム製品の分野では、透明フィルムの製品、透明耐久性上塗り塗料、ファインセラミックスなどの面に広く応用できない。
【0009】
ナノチタニア粒子の凝集を阻止し、単分散のチタニアナノ粒子を得ることによって、チタニアナノ材料の光学、電気学、触媒などの分野での使用性能を大幅に向上させることができる。現在、物理分散法と化学分散法を用いて安定なナノ粒子の分散液を作製することが報道されている。ここに、物理分散法は、主に外力を用いてナノ粒子を分散させるものであり、機械的攪拌による分散、超音波による分散と高エネルギー処理法による分散を含み、物理分散法には、外力が停止すると粒子が再凝集するという欠点がある。化学分散法は、界面化学方法を用いて、界面処理剤を入れて分散させるものであり、たとえば、水相分散ナノ粒子の作製は、通常、水溶性界面活性剤やポリマーの誘導と拘束によって実現されるが、粒子表面に有機物などの修飾分子が被覆されているため、分散性に対する制御による材料性能の向上への貢献は、削減され、例えば、チタニウムアルコキシドとアルキルアミンとの反応を利用して水溶性チタニアナノ粒子を作製するなど、このようなアルカリ剤の存在によって、生成物の界面活性を鈍化させてその光触媒性能を低下させてしまうと同時に、異なる応用体系も、界面に修飾された分子と悪い反作用効果を発揮し、最終的な製品の応用性能を低下させる可能性があり、例えば、ポリエチレングリコールを安定剤として使用することによって、チタニアナノ粒子の分散性を向上させるが、その触媒活性を低下させてしまう。また、上記のようにして得られたチタニア分散液の生成物は、依然として液体懸濁液であり、粒子を完全に単分散させることができず、かつ、粒子の大きさが不均一であり、安定なコロイド状の分散液を形成できず、輸送コストが高く、実用に制限されるなどの困難を招く。
【0010】
そのため、界面有機物添加剤を一切使わず、低温で処理することでナノチタニアの分散性を大幅に向上させることができる技術的方法を開発して、チタニアナノ材料の応用分野と使用効果を進めることが迫られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような欠点に鑑み、本発明は、ナノチタニアの沈殿合成法を改善し、チタニアナノ材料の性能と応用分野を促進することができるために、低温結晶化チタニアを作製する技術方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、チタニアナノ材料の応用分野と使用効果を促進するために、ナノチタニアの分散性を大幅に向上させる技術方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を用いる。
(1)チタン化合物を加水分解、分離、精製および乾燥過程を経て水和チタン酸を得るステップと、
(2)前記水和チタン酸を100℃から200℃に加熱するステップと、
(3)前記加熱された水和チタン酸系に塩化水素ガスを通じるとともに、定圧反応させて、結晶性ナノチタニア材料を得るステップと、を含む低温結晶化チタニアを作製する方法である。
【0014】
好ましい実施形態として、前記チタン化合物は、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、チタニウムイソプロポキシド、チタン酸テトラブチルのうちから選択される一種または複数種の組合せである。
【0015】
好ましい実施形態として、前記加水分解過程は、チタン化合物と水とを直接反応させることである、または、前記加水分解過程は、チタン化合物とアルカリ水溶液とを反応させることである。
【0016】
好ましい実施形態として、前記通される塩化水素ガス中に水蒸気がさらに含まれている。
【0017】
好ましい実施形態として、前記定電圧反応の圧力は、0.5気圧から20気圧であり、好ましい圧力は、1気圧から10気圧である。
【0018】
好ましい実施形態として、前記定圧反応の時間は、3時間から24時間である。
【0019】
好ましい実施形態として、前記結晶性ナノチタニア材料の結晶相は、ルチル相またはアナターゼ相またはルチル相とアナターゼ相の複合相である。
【0020】
好ましい実施形態として、前記結晶性ナノチタニア材料は、添加剤や分散剤を含まない純水中で自発的に分散して、主にコロイド分散である安定な分散液を形成することができた。
【0021】
好ましい実施形態として、前記結晶性ナノチタニア材料は、粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体であり、前記結晶性ナノチタニア材料の界面が酸性である。
【0022】
前駆体である固体チタニアAを塩化水素の雰囲気中で熱処理し、分散性チタニアBの生成物を得るステップを含むチタニアの分散性を向上させる方法である。
【0023】
前駆体である固体チタニアAを容器内に入れるステップと、
前記前駆体である固体チタニアAが入っている容器内に塩化水素ガスを充填して低温加熱処理を行い、分散性チタニアBの生成物を得るステップと、を含むチタニアの分散性を向上させる方法および生成物である。
【0024】
好ましい実施形態として、前駆体であるチタニアAと比較して、前記分散性チタニアBの生成物の水中での分散度が10倍以上向上している。
【0025】
好ましい実施形態として、前駆体であるチタニアAと比較して、前記分散性チタニアBの生成物の水中での分散安定性が10倍以上向上している。
【0026】
好ましい実施形態として、前駆体であるチタニアAと比較して、前記分散性チタニアBの生成物の水中で分散した後の透明度が10倍以上向上している。
【0027】
好ましい実施形態として、前記分散性チタニアBの生成物は、添加剤や分散剤を含まない純水中で自発的に分散して、主にコロイド状の分散である安定な分散液を形成することができた。
【0028】
好ましい実施形態として、前記分散性チタニアBの生成物は、粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体であり、前記分散性チタニアBの生成物の界面が酸性である。
【0029】
好ましい実施形態として、前記分散性チタニアBの生成物は、結晶性ナノチタニアであり、前記結晶性ナノチタニアの結晶相は、アナターゼ相、ルチル相、ブルッカイト相のうちの一種または複数種の組合せである。
【0030】
好ましい実施形態として、前記前駆体である固体チタニアAは、粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が100ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体である。
【0031】
好ましい実施形態として、前記前駆体である固体チタニアAは、粒径が50ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子または粒径が50ナノメートル未満のナノレベルのチタニア粒子の凝集体である。
【0032】
好ましい実施形態として、前記前駆体である固体チタニアAは、結晶性チタニア粒子または結晶しないチタニア粒子である。
【0033】
好ましい実施形態として、前記前駆体である固体チタニアAは、水酸化チタン、水酸化チタン水合物、チタン酸、チタン酸水合物のうちの一種または複数種の組合せをさらに含む。
【0034】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気に水蒸気がさらに含まれており、前記水蒸気の圧力は、0.1気圧から10気圧である。
【0035】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスの圧力は、0.5気圧から20気圧である。
【0036】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスの圧力は、1気圧から10気圧である。
【0037】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスの圧力は、一定であってもよいし、変化していてもよい。
【0038】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気は、持続的または間欠的に提供される。
【0039】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気のソースは、反応系内部から提供されることもでき、または、外部から入力して提供されることもできる。
【0040】
好ましい実施形態として、前記熱処理の温度は80℃から300℃であり、好ましい熱処理の温度は、100℃から200℃である。
【0041】
好ましい実施形態として、前記熱処理の時間は、2時間から48時間である。
【0042】
好ましい実施形態として、前記塩化水素雰囲気における塩化水素ガスは、所定の圧力範囲内で変動し、前記塩化水素雰囲気は、持続的に提供され、前記塩化水素雰囲気は、外部から入力して提供される。
【発明の効果】
【0043】
本発明の利点は以下のとおりである。
1、この低温結晶化チタニアを作製する方法は、ナノチタニア沈殿合成法における焼成温度を大幅に下げ、焼成温度を500℃から最低の100℃に下げ、エネルギー消費と機器投入を節約した。
2、この低温結晶化チタニアを作製する方法で得られたナノチタニア材料は、比表面積、分散性および触媒性能などの面において、いずれも大幅に向上している。
3、このチタニアの分散性を向上させる方法は、何らの界面有機物添加剤を一切使用しないため、ナノチタニア分散液の応用分野に普遍性を持たせ、分散液の使用分野と使用効果を向上させた。
4、このチタニアの分散性を向上させる方法は、処理温度が低く、操作ステップが簡単で、安価で、大規模な工業化の普及に有利である。
【0044】
後述の説明と図面を参照して、本発明の特定の実施形態が詳しく開示されており、本発明の原理が採用され得る態様が明示されている。本発明の実施形態は範囲上で規制されないことを理解すべきである。
【0045】
一つの実施形態に記載および/または示される特徴について、同一又は類似の態様で、一つ又は複数のほかの実施形態で使用され、ほかの実施形態における特徴と組み合わせ、又はほかの実施形態における特徴を代替することができる。
【0046】
「含む/含める」という用語は、本文で使用される場合、特徴、部材全体、ステップ或いは部材の存在を指すが、一つ又は複数の他の特徴、部材全体、ステップ或いは部材の存在/付加を除外しないことを強調しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明瞭に説明するために、以下、実施例又は従来技術を記載するために使用する必要のある添付図面を簡潔に紹介する。下記記載の図面は本発明のある実施例に過ぎないことが自明であり、当業者にとって、進歩的な労力を払わないことを前提として、これらの図面に基づいてほかの図面を取得することができる。
【0048】
【
図1】実施例1で得られたチタニア水分散液を銅網に滴下塗布して乾燥させた後、観測した透過型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例1で作製されたチタニアの生成物のX線回折図であり、主な結晶相がアナターゼ相である。
【
図3】実施例1で得られたチタニア材料と水を混合したコロイド状の水分散液である。
【
図4】実施例1で得られたナノチタニアの生成物とP25のローダミンBを光触媒分解する曲線である。
【
図5】実施例4で得られたナノチタニアに水を加えて得られた質量割合が5‰の水分散液であり、比較的に安定した分散状態を有している。
【
図6】質量割合が5‰の前駆物である水酸化チタン懸濁液を2時間静置した光学写真であり、明らかなデラミネーション現象があり、懸濁液が不安定である。
【
図7】実施例4で得られた生成物を水で分散させた後で、シリコンウェハに滴下塗布し、乾燥後に観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図8】前駆体である水酸化チタンを水で分散させた後で、シリコンウェハに滴下塗布し、乾燥後に観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【
図9】比較例3で得られた生成物を水で分散させた後で、シリコンウェハに滴下塗布し、乾燥後に観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
当業者が本発明における技術的解決手段をより良好に理解するために、以下、本発明の実施例における図面を結び付けて、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で完全に説明する。説明する実施例は、本発明の全部の実施例ではなく、一部の実施例に過ぎないことが明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が進歩的な労力を払わずに取得したほかの実施例の全ては、本発明の権利範囲に属するべきである。
【0050】
特に定義のない限り、本文で使用される全ての技術と科学用語は、当業者が一般的に理解する意味と同一である。本文において、本発明の明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明することを目的とするだけで、本発明を規制するためではない。本文で使用される用語である「及び/又は」は、一つ又は複数の関連の列記された項目の任意及び全部の組み合わせを含む。
【実施例1】
【0051】
まず、0.25モル/リットルの四塩化チタン水溶液と1モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液とを体積比が1対1の割合で徐々に混合し、洗浄、分離した後で、常温常圧で乾燥して水和チタン酸を得た。次に、上記で作製された水和チタン酸10グラムを取って耐圧防錆チューブに入れるとともに、160℃に加熱した。その後、耐圧防錆チューブに塩化水素ガスを充填し、チューブ内の圧力を5気圧に保持し、160℃で12時間恒温にし、ナノチタニア粉体材料を得た。
【0052】
本実施例で得られた生成物を少量取り、脱イオン水に分散させた後で、少量を取って銅網に滴下塗布し、自然乾燥させ、
図1に示すように、透過型電子顕微鏡で試料の形態を観察するために用いられる。
図1から、生成物のチタニアナノ粒子の粒径は、5ナノメートルから10ナノメートルであることがわかり、さらに本実施例で得られたナノチタニアは、小さな粒径を有し、単分散性に優れていることが示された。
【0053】
図2は、本実施例で作製されたチタニアの生成物のX線回折図であり、
図2から、本実施例で得られたナノチタニアは、主な結晶相がアナターゼ相であり、良好な結晶性を有することがわかり、さらに本発明によりナノチタニア沈殿合成法における焼成温度を大幅に下げ、焼成温度を500℃から160℃に下げることができることが示された。
【0054】
図3に示すように、本実施例で得られたナノチタニアの生成物を水に加え、質量割合が5‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、6ヶ月以上放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0055】
図4に示すように、本実施例で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、触媒効率が商業P25材料の9倍であり、具体的な比較方式として、本実施例1で得られた生成物とP25(デグサ)試料をそれぞれ1グラム測りとって濃度が2.0×10-5モル/リットルのローダミンB溶液100ミリリットルに分散させ、暗所で30分間磁気撹拌し、温度バランスと吸着バランスをとった。その後、擬似太陽光ランプをつけ、攪拌し、一定の時間ごとに試料3ミリリットルを取り出し、粒子を遠心分離し、紫外可視分光器で550ナノメートルのところで溶液の吸光度を測定し、ローダミンBの残りの濃度を計算した。
【0056】
上記により、本発明の利点は、(1)この技術方法により、ナノチタニア沈殿合成法における焼成温度を大幅に下げ、焼成温度を500℃から160℃に下げ、エネルギー消費と機器投入を節約したことと、(2)この技術方法で得られたナノチタニア材料は、比表面積、分散性および触媒性能などの面でいずれも大幅に向上していることとに、ある。
【実施例2】
【0057】
まず、脱イオン水にチタン酸イソプロピルを体積比が1対20の割合でゆっくり滴下し、撹拌してチタン酸の沈殿を形成し、洗浄、分離した後で、60℃で常圧乾燥して水和チタン酸を得た。次に、上記で作製された水和チタン酸10グラムを取って耐圧防錆チューブに入れるとともに、120℃に加熱した。その後、耐圧防錆チューブに塩化水素ガスを充填し、チューブ内の圧力を1気圧に保持し、120℃で24時間恒温にし、ナノチタニア粉体材料を得た。
【0058】
本実施例で得られた生成物を少量取り、脱イオン水に分散させた後で、少量を取って銅網に滴下塗布し、自然乾燥させ、透過型電子顕微鏡で試料の形態を観察するために用いられ、生成物のチタニアナノ粒子の粒径は、10ナノメートルから20ナノメートルであることがわかり、さらに本実施例で得られたナノチタニアは、小さな粒径を有し、単分散性に優れていることが示された。
【0059】
X線回折図により、本実施例で得られたチタニアの生成物は、主な結晶相がアナターゼ相であり、良好な結晶性を有していることが確認され、さらに、本発明によりナノチタニア沈殿合成法における焼成温度を大幅に下げ、焼成温度を500℃から120℃に下げることができることが示された。
【0060】
本実施例で得られたナノチタニアの生成物を水に加え、質量割合が5‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、10ヶ月放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0061】
本実施例で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、触媒効率が商業P25材料の6倍であり、具体的な比較方式として、本実施例で得られた生成物とP25(デトサ)試料をそれぞれ1グラム測りとって濃度が2.0×10-5モル/リットルのローダミンB溶液100ミリリットルに分散させ、暗所で30分間磁気撹拌し、温度バランスと吸着バランスをとった。その後、擬似太陽光ランプをつけ、攪拌し、一定の時間ごとに試料3ミリリットルを取り出し、粒子を遠心分離し、紫外可視分光器で550ナノメートルのところで溶液の吸光度を測定し、ローダミンBの残りの濃度を計算した。
【実施例3】
【0062】
まず、0.25モル/リットルの硫酸チタニル水溶液と1モル/リットルのアンモニア水溶液とを体積比が1対1の割合で徐々に混合し、洗浄、分離した後で、80℃で乾燥して水和チタン酸を得た。次に、上記で作製された水和チタン酸10グラムを取って耐圧防錆チューブに入れるとともに、200℃に加熱した。その後、耐圧防錆チューブに質量割合が30%の水蒸気を含む塩化水素ガスを充填し、チューブ内の圧力を10気圧に保持し、200℃で5時間恒温にし、ナノチタニア粉体材料を得た。
【0063】
本実施例で得られた生成物を少量取り、脱イオン水に分散させた後で、少量を取って銅網に滴下塗布し、自然乾燥させ、透過型電子顕微鏡で試料の形態を観察するために用いられ、生成物のチタニアナノ粒子の粒径は、20ナノメートルから50ナノメートルであることがわかり、本実施例で得られたナノチタニアは、分散性が良好であることが示された。
【0064】
X線回折図により、本実施例で得られたチタニアの生成物は、主な結晶相がルチル相であり、良好な結晶性を有していることが確認され、さらに、本発明によりナノチタニア沈殿合成法における焼成温度を大幅に下げ、焼成温度を500℃から200℃に下げることができることが示された。
【0065】
本実施例で得られたナノチタニアの生成物を水に加え、質量割合が1‰のナノチタニア分散液を得、該分散液は、優れた単分散性を有し、水溶液中で安定なコロイド状の分散液を形成することができ、ナノ粒子の懸濁が安定し、凝集も沈降もしにくく、1ヶ月放置しても溶液にデラミネーション現象は発生しなかった。
【0066】
本実施例で得られたナノチタニア材料は、良好な光触媒活性を有しており、触媒効率が商業P25材料の2倍であり、具体的な比較方式として、本実施例で得られた生成物とP25(デトサ)試料をそれぞれ1グラム測りとって濃度が2.0×10-5モル/リットルのローダミンB溶液100ミリリットルに分散させ、暗所で30分間磁気撹拌し、温度バランスと吸着バランスをとった。その後、擬似太陽光ランプをつけ、攪拌し、一定の時間ごとに試料3ミリリットルを取り出し、粒子を遠心分離し、紫外可視分光器で550ナノメートルのところで溶液の吸光度を測定し、ローダミンBの残りの濃度を計算した。
【0067】
比較例1
まず、0.25モル/リットルの四塩化チタン水溶液と1モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液とを体積比1対1で徐々に混合し、洗浄、分離した後で、常温常圧で乾燥して水和チタン酸を得た。次に、上記で作製された水和チタン酸10グラムを取って耐圧防錆チューブに入れるとともに、160℃に加熱した。その後、耐圧防錆チューブに空気を充填し、チューブ内の圧力を5気圧に保持し、160℃で12時間恒温にし、生成物を得た。検出した結果、本比較例で得られた生成物は、依然として結晶しないチタン酸であり、結晶相を持つナノチタニア材料に転化することができない。
【0068】
比較例2
まず、0.25モル/リットルの四塩化チタン水溶液と1モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液とを体積比1対1で徐々に混合し、洗浄、分離した後で、常温常圧で乾燥して水和チタン酸を得た。次に、上記で作製された水和チタン酸10グラムを取って耐圧防錆チューブに入れ、常圧で160℃に加熱するとともに12時間恒温にし、生成物を得た。検出した結果、本比較例で得られた生成物は、依然として結晶しないチタン酸であり、結晶相を持つナノチタニア材料に転化することができない。
【実施例4】
【0069】
まず、水酸化チタン(広東翁江化学試薬有限会社、CAS番号:20338-08-3、純度≧99%)粉末を10グラム測りとって、耐圧防錆チューブに入れた。その後、耐圧防錆チューブを120℃に加熱し、チューブ内の塩化水素注入口の圧力を約2気圧(1.5気圧から2気圧の間で変動する)、水蒸気口の注入圧力を約1気圧に保持し、120℃で24時間恒温にし、分散度、安定性、透明性が著しく向上したナノチタニア粉体材料を得た。
【0070】
本実施例4で得られたチタニア材料は、主な結晶相がアナターゼ相である。本生成物は水と混合すると、攪拌なしでも自発的に分散してナノチタニア粒子が安定的に懸濁した水分散液を形成することができた。
図5は、本実施例で得られたナノチタニアの生成物に水を加えて得られた質量割合が5‰の水分散液であり、該分散液は、良好な単分散性を有し、水溶液中で比較的に安定なコロイド状の分散液を形成することができ、明らかなチンダル現象を有する。ナノ粒子は、懸濁が安定で、沈降しにくく、3日以上放置しても溶液に明らかなデラミネーション現象は、発生しなかった。比較のために、
図6は、質量割合が5‰の前駆体である水酸化チタン懸濁液を2時間静置した光学写真であり、明らかなデラミネーション現象があることが見られ、懸濁液が不安定であり、本技術で得られた生成物の懸濁の安定性が36倍以上向上していることが分かる。
【0071】
本実施例4で得られたチタニア材料水分散液は、550ナノメートル波長における光透過率が85%であり、同じ濃度の前駆体である水酸化チタン懸濁液の光透過率の2.5%に比較して、透明度が34倍向上している。具体的な実験操作として、本実施例1で得られたチタニア材料を少量取り、質量割合が1万分の5の水分散液に調製し、比較のために、質量割合が1万分の5の前駆体である水酸化チタン懸濁液も調製した。その後、上記分散液をそれぞれ取り、厚さ1センチの石英比色皿に入れ、試料の550ナノメートル波長における光透過度を測定し、ブランクとして純水を用いた。
【0072】
本実施例4で得られた生成物を少量取り、脱イオン水に分散させた後で、少量を取りシリコンウェハ上に滴下し、自然乾燥させ、乾燥後のシリコンウェハを導電ペーストで走査型電子顕微鏡の試料台に貼り付け、
図7に示すように、走査型電子顕微鏡で試料の形態を観察することに用いた。
図7から、生成物のチタニアナノ粒子は、分散度が良く、シリコンウェハ上で広げることができ、粒子の大きさが約50ナノメートルで、粒子の均一性が良好であったことがわかる。比較として、
図8は、前駆体である水酸化チタンの走査型電子顕微鏡写真であり、前駆体は、50ナノメートル程度のナノ粒子が堆積した凝集体であり、分散度が悪いことが見られ、さらに、前駆体が水中で沈降してデラミネーションしやすいことが示された。走査型電子顕微鏡写真上の同一面積中の粒子数をそれぞれ統計することによって、本技術で処理されたチタニアの生成物の分散度が著しく向上し、分散度が約50倍向上していると推定できる。これにより、本技術で処理されたチタニアの生成物は、分散度、分散安定性、分散後の透明度などの面でいずれも顕著に向上し、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用が大幅に拡大したことがわかる。
【0073】
上記により、本発明の利点は、(1)この技術方法は、何らの界面有機物添加剤を一切使用しないため、ナノチタニア分散液の応用分野に普遍性を持たせ、分散液の使用分野と使用効果を向上させたことと、(2)この技術方法は、処理温度が低く、操作ステップが簡単で、安価で、大規模な工業化の普及に有利であることと、にある。
【実施例5】
【0074】
まず、水酸化チタン(広東翁江化学試薬有限会社、CAS番号:20338-08-3、純度≧99%)粉末を10グラム測りとって、耐圧防錆チューブに入れた。その後、耐圧防錆チューブを150℃に加熱し、チューブ内の塩化水素注入口の圧力を約8気圧、水蒸気口の注入圧力を約8気圧に保持し、150℃で12時間恒温にし、分散度、安定性、透明性が著しく向上したナノチタニア粉体材料を得た。
【0075】
本実施例5で得られたチタニア材料は、主な結晶相がアナターゼ相であり、微量のルチル相を含有する。本生成物は水と混合すると、攪拌なしでも自発的に分散してナノチタニア粒子が安定的に懸濁した水分散液を形成することができ、明らかなチンダル現象を有する。分散液中のナノ粒子は、懸濁が安定で、沈降しにくく、2日放置しても溶液に明らかなデラミネーション現象は、発生しなかった。比較のために、前駆体である水酸化チタン懸濁液を2時間静置した後で、明かなデラミネーション現象が出現し、本技術で得られた生成物の懸濁の安定性が24倍以上向上していることが分かる。
【0076】
本実施例5で得られたチタニア材料水分散液は、550ナノメートル波長における光透過率が67%であり、同じ濃度の前駆体である水酸化チタン懸濁液の光透過率の2.5%に比較して、透明度が27倍向上しており、具体的な実験は、実施例4と同じである。実施例4と同じ電子顕微鏡による観察方法を用いて、本実施例5で得られたチタニア材料水分散液の分散度は、約20倍向上している。これにより、本技術で処理されたチタニアの生成物は、分散度、分散安定性、分散後の透明度などの面でいずれも顕著に向上し、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用が大幅に拡大したことがわかる。
【実施例6】
【0077】
まず、チタニウムイソプロポキシドを含有するエタノール溶液をpH値が2の硝酸-エタノール水溶液にゆっくり滴下して加水分解するとともに、洗浄、分離乾燥して得られる作製方法で自製の結晶しないナノチタニア粒子を10グラム測りとって、耐圧防錆チューブに入れた。その後、耐圧防錆チューブを140℃に加熱し、チューブ内の塩化水素注入口の圧力を一定の2気圧に保持し、140℃で16時間恒温にし、分散度、安定性、透明性が著しく向上した水相単分散ナノチタニア粉体材料を得た。
【0078】
本実施例6で得られたチタニア材料は、結晶相がアナターゼ相である。本生成物は水と混合すると、攪拌なしでも自発的に分散してナノチタニア粒子が安定的に懸濁した水分散液を形成することができ、明らかなチンダル現象を有している。分散液中のナノ粒子は、懸濁が安定で、沈降しにくく、60日放置しても溶液に明らかなデラミネーション現象は、発生しなかった。比較のために、前駆体である懸濁液を5時間静置した後で、明かなデラミネーション現象が出現し、本技術で得られた生成物の懸濁の安定性が288倍以上向上していることが分かる。
【0079】
本実施例6で得られたチタニア材料水分散液は、550ナノメートル波長における光透過率が95%であり、同じ濃度の前駆体である懸濁液の光透過率の6%に比較して、透明度が16倍向上しており、具体的な実験は、実施例4と同じである。実施例4と同じ電子顕微鏡による観察方法を用いて、本実施例6で得られたチタニア材料水分散液の分散度は、約10倍向上している。これにより、本技術で処理されたチタニアの生成物は、分散度、分散安定性、分散後の透明度などの面でいずれも顕著に向上し、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用が大幅に拡大したことがわかる。
【実施例7】
【0080】
まず、チタニウムイソプロポキシドを含有するエタノール溶液をpH値が2の硝酸-エタノール水溶液にゆっくり滴下して加水分解するとともに、洗浄、分離乾燥した後で、300℃アニール処理を3時間行って得られる作製方法で結晶相がアナターゼ相である自製の結晶性ナノチタニア粒子を10グラム測りとって、耐圧防錆チューブに入れた。その後、耐圧防錆チューブを200℃に加熱し、チューブ内の塩化水素注入口の圧力を一定の5気圧に保持し、水蒸気口の注入圧力を5気圧にし、200℃で10時間恒温にし、分散度、安定性、透明性が著しく向上したナノチタニア粉体材料を得た。
【0081】
本実施例7で得られたチタニア材料は、結晶相がアナターゼ相である。本生成物は水と混合すると、攪拌なしでも自発的に分散してナノチタニア粒子が安定的に懸濁した水分散液を形成することができ、明らかなチンダル現象を有している。分散液中のナノ粒子は、懸濁が安定で、沈降しにくく、10日放置しても溶液に明らかなデラミネーション現象は、発生しなかった。比較のために、前駆体である懸濁液を3時間静置した後で、明かなデラミネーション現象が出現し、本技術で得られた生成物の懸濁の安定性が80倍以上向上していることが分かる。
【0082】
本実施例7で得られたチタニア材料水分散液は、550ナノメートル波長における光透過率が83%であり、同じ濃度の前駆体である懸濁液の光透過率の3.6%に比較して、透明度が23倍向上しており、具体的な実験は、実施例4と同じである。実施例4と同じ電子顕微鏡による観察方法を用いて、本実施例7で得られたチタニア材料水分散液の分散度は、約20倍向上している。これにより、本技術で処理されたチタニアの生成物は、分散度、分散安定性、分散後の透明度などの面でいずれも顕著に向上し、チタニア材料の紫外吸収、美観などの製品分野への応用が大幅に拡大したことがわかる。
【0083】
比較例3
まず、水酸化チタン(広東翁江化学試薬有限会社、CAS番号:20338-08-3、純度≧99%、粒径が20~30nmである)粉末を10グラム測りとって、耐圧防錆チューブに入れた。その後、耐圧防錆チューブを120℃に加熱し、チューブ内の水蒸気口の注入圧力を約1気圧に保持し、120℃で24時間恒温にし、生成物を得た。例えば、走査型電子顕微鏡写真の
図9に示すように、本比較例で得られた生成物の形態は、前駆体と基本的に一致する。それと同時に、製品は、水中に分散して安定的で、透明な分散液を形成することができず、得られた生成物は、懸濁液体であり、2時間すると、沈殿デラミネーションが出現した。したがって、本比較例の処理により、チタニアの生成物の分散度、分散安定性、分散後の透明度等の面での性能を変えることができない。
【0084】
本文で引用されている何れかの数字値は全て下限値から上限値まで1つの単位でアップする下位値と上位値の全ての値を含み、何れかの下位値と何れかの上位値との間に少なくとも2つの単位の間隔があればよい。例を挙げると、もし1つの部材の数または過程変数(例えば温度、圧力、時間等)の値は1から90と記載すると、20から80が好ましく、30から70がより好ましく、該明細書にも、例えば15から85、22から68、43から51、30から32などの値も明確に列挙されていることを説明することを目的とする。1より小さい値について、1つの単位が0.0001、0.001、0.01、0.1であると適宜に考えられる。こられは明確に記載しようとする例示に過ぎず、最低値と最高値との間に列挙されている数値の全ての可能な組合せは類似する方式で該明細書に明確に記載されていると考えられる。
【0085】
特に説明されるほか、全ての範囲は端点及び端点間の全ての数字を含む。範囲とともに使用される「約」又は「近似」は該範囲の2つの端点に適合される。従って、「約20から30まで」は、「約20から約30まで」をカバーしようとし、少なくとも明記されている端点を含む。
【0086】
以上の説明は規制するためのものではなく、図示して説明するためのものであると理解すべきである。
【0087】
上記説明を閲覧することによって、提供された例示以外の多くの実施形態及び多くの応用は、当業者にとって自明なものである。従って、本教示の範囲については、上記説明を参照して確定するものではなく、添付した請求項及びこれらの請求項に記載の相当物の範囲の全てを参照して確定すべきである。全面的になる目的から、全ての文章及び特許出願と公告を含む公開を参考した資料は、引用によってここに援用されている。前記請求項で省略されるが、ここで開示された主題のいかなる面は、該主体内容を放棄するためのものではなく、発明者が該主題を開示の発明主題の一部に考慮しないと考えてはならない。
【国際調査報告】