(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(54)【発明の名称】金属ストリップを溶接するための加工方法及び設備
(51)【国際特許分類】
B21B 15/00 20060101AFI20230721BHJP
B21C 49/00 20060101ALI20230721BHJP
B21C 47/26 20060101ALI20230721BHJP
B23K 11/04 20060101ALI20230721BHJP
B23K 33/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B21B15/00 A
B21C49/00 B
B21C47/26 E
B23K11/04 102
B23K33/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500406
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021068051
(87)【国際公開番号】W WO2022008317
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ホフバウアー
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026EA18
4E026HA03
(57)【要約】
金属ストリップ(1)の加工設備は、溶接機と、溶接機の下流に配置されたストリップ貯蔵部と、ストリップ貯蔵部の下流に配置された加工装置と、を有している。溶接機を用いて、金属ストリップ(1)は溶接され、無端ストリップを形成する。無端ストリップは、ストリップ貯蔵部に貯蔵され、ストリップ貯蔵部から加工装置に送り出される。金属ストリップ(1)の接続は、斜めに延在する溶接継ぎ目を通じて行われる。溶接継ぎ目が搬送方向(x)と形成する角度は、少なくとも部分的に90°とは異なっている。溶接継ぎ目を接続するために、関与する金属ストリップ(1)のストリップ先端(2)及びストリップ後端(3)がまず軽く回転し、両方のストリップ(1)は、溶接継ぎ目の形成によって互いに接続される。溶接継ぎ目は、溶接の際、専ら搬送方向(x)に対して横方向に延在している。最後に、関与する金属ストリップ(1)のストリップ先端(2)及びストリップ後端(3)は、元に戻るように回転する。これによって、溶接継ぎ目は、搬送方向(x)に対して斜めに延在している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(1)の加工方法であって、
-前記金属ストリップ(1)の加工設備のストリップ貯蔵部(8)に、断続的及び連続的に、前記金属ストリップ(1)に関して統一された搬送方向(x)において、前記金属ストリップ(1)が次々にそれぞれ供給され、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、各ストリップ先端(2)、各ストリップ後端(3)、及び、前記ストリップ先端(2)それぞれと前記ストリップ後端(3)それぞれとの間に各フィレット部分(4)を有しており、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、まず前記ストリップ先端(2)それぞれが、次に前記フィレット部分(4)それぞれが、最後に前記ストリップ後端(3)それぞれが、前記ストリップ貯蔵部(8)に流入し、
-前記ストリップ先端(2)それぞれは、各前縁(5)を有し、前記ストリップ後端(3)それぞれは、各後縁(6)を有し、
-前記前縁(5)それぞれは、前記金属ストリップ(1)それぞれが前記ストリップ貯蔵部(8)に供給される直前に、加工設備の溶接機(12)を用いて、前記ストリップ貯蔵部(8)にそれぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接され、これによって、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)と、それぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)との間には、各溶接継ぎ目(14)が形成され、
-前記溶接継ぎ目(14)それぞれは、前記搬送方向(x)に対して横方向に見た場合、関与する両方の前記金属ストリップ(1)のうちの一方の金属ストリップの、前記搬送方向(x)に延在する側縁(7)から、同じ金属ストリップ(1)の他方の側縁(7)又は他方の金属ストリップ(1)の側縁(7)へと延在しており、
-前記ストリップ貯蔵部(8)に貯蔵された前記金属ストリップ(1)は、前記金属ストリップ(1)を接続する前記溶接継ぎ目(14)も含めて、前記ストリップ貯蔵部(8)から、連続的又は断続的に、前記加工設備の加工装置(11)に供給され、
-前記加工装置(11)にはそれぞれ、まず前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)が、次に前記フィレット部分(4)が、その後でようやく前記ストリップ後端(3)が供給される加工方法において、
前記溶接機(12)は、
-前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)を、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接する前に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが軽く回転する、
-次に、両方のストリップ(1)が、前記溶接継ぎ目(14)を形成することによって互いに接続され、前記溶接継ぎ目(14)は、溶接の際に、専ら前記搬送方向(x)に対して横方向に延在する、
-最後に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが元に戻るように回転し、これによって、前記溶接継ぎ目(14)が、互いに溶接された前記金属ストリップ(1)の回転後に前記搬送方向(x)に対して斜めに延在するように動作することを特徴とする加工方法。
【請求項2】
前記溶接機(12)が、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とを回転させるために、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)との対応する領域内で、ループが形成されるように動作することを特徴とする、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記加工装置(11)が、少なくとも1つの圧延機スタンドを有する圧延機として構成されており、前記金属ストリップ(1)は、前記加工装置(11)の前記圧延機スタンド内で、各圧延長さで圧延され、前記溶接継ぎ目(14)それぞれが、前記搬送方向(x)において見て、前記圧延機スタンドそれぞれでの圧延の前に有している長手方向延在部分は、前記圧延長さそれぞれよりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記溶接継ぎ目(14)それぞれが前記搬送方向(x)と形成する角度(α)が、90°から約5°~10°の間、特に6°~8°の間で異なっていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項5】
金属ストリップ(1)の加工設備であって、
-加工設備は、ストリップ貯蔵部(8)を有しており、前記ストリップ貯蔵部(8)には、断続的及び連続的に、前記金属ストリップ(1)に関して統一された搬送方向(x)において、前記金属ストリップ(1)が次々にそれぞれ供給され、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、各ストリップ先端(2)、各ストリップ後端(3)、及び、前記ストリップ先端(2)それぞれと前記ストリップ後端(3)それぞれとの間に各フィレット部分(4)を有しており、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、まず前記ストリップ先端(2)それぞれが、次に前記フィレット部分(4)それぞれが、最後に前記ストリップ後端(3)それぞれが、前記ストリップ貯蔵部(8)に入り、
-前記ストリップ先端(2)それぞれは、各前縁(5)を有し、前記ストリップ後端(3)それぞれは、各後縁(6)を有し、
-加工設備は、前記ストリップ貯蔵部(8)の上流に配置された溶接機(12)を有しており、前記溶接機(12)を用いて、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)は、前記金属ストリップ(1)それぞれが前記ストリップ貯蔵部(8)に供給される直前に、前記ストリップ貯蔵部(8)にそれぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接され、これによって、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)と、それぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)との間には、各溶接継ぎ目(14)が形成され、
-前記溶接継ぎ目(14)それぞれは、前記搬送方向(x)に対して横方向に見た場合、関与する両方の前記金属ストリップ(1)のうちの一方の金属ストリップの、前記搬送方向(x)に延在する側縁(7)から、同じ金属ストリップ(1)の他方の側縁(7)又は他方の金属ストリップ(1)の側縁(7)へと延在しており、
-前記ストリップ貯蔵部(8)に貯蔵された前記金属ストリップ(1)は、前記金属ストリップ(1)を接続する前記溶接継ぎ目(14)も含めて、前記ストリップ貯蔵部(8)から、連続的又は断続的に、前記加工設備の加工装置(11)に供給され、
-前記加工装置(11)にはそれぞれ、まず前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)が、次に前記フィレット部分(4)が、その後でようやく前記ストリップ後端(3)が供給される加工設備において、
前記溶接機(12)は、
-前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)を、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接する前に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが軽く回転し、
-次に、両方のストリップ(1)が、前記溶接継ぎ目(14)を形成することによって互いに接続され、前記溶接継ぎ目(14)は、溶接の際に、専ら前記搬送方向(x)に対して横方向に延在し、
-最後に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが元に戻るように回転し、これによって、前記溶接継ぎ目(14)が、互いに溶接された前記金属ストリップ(1)の回転後に前記搬送方向(x)に対して斜めに延在するように構成されていることを特徴とする加工設備。
【請求項6】
前記溶接機(12)が、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とを回転させるために、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)との対応する領域内で、ループが形成されるように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の加工設備。
【請求項7】
前記加工装置(11)が、少なくとも1つの圧延機スタンドを有する圧延機として構成されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の加工設備。
【請求項8】
前記溶接継ぎ目(14)それぞれが前記搬送方向(x)と形成する角度(α)が、90°から約5°~10°の間、特に6°~8°の間で異なっていることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の加工設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの加工方法を基にしており、
-金属ストリップの加工設備のストリップ貯蔵部に、断続的及び連続的に、金属ストリップに関して統一された搬送方向において、それぞれ金属ストリップが次々に供給され、
-各金属ストリップは、各ストリップ先端、各ストリップ後端、及び、各ストリップ先端と各ストリップ後端との間に各フィレット部分を有しており、
-各金属ストリップは、まず各ストリップ先端が、次に各フィレット部分が、最後に各ストリップ後端が、ストリップ貯蔵部に流入し、
-各ストリップ先端は、各前縁を有し、各ストリップ後端は、各後縁を有し、
-各前縁は、各金属ストリップがストリップ貯蔵部に供給される直前に、加工設備の溶接機を用いて、ストリップ貯蔵部にそれぞれ直前に部分的に供給された金属ストリップの後縁に溶接されるので、各金属ストリップの前縁と、それぞれ直前に部分的に供給された金属ストリップの後縁との間には、各溶接継ぎ目が形成され、
-各溶接継ぎ目は、搬送方向に対して横方向に見た場合、関与する両方の金属ストリップのうちの一方の金属ストリップの、搬送方向に延在する側縁から、同じ金属ストリップの他方の側縁又は他方の金属ストリップの側縁へと延在しており、
-ストリップ貯蔵部に貯蔵された金属ストリップは、金属ストリップを接続する溶接継ぎ目も含めて、ストリップ貯蔵部から、連続的又は断続的に、加工設備の加工装置に供給され、
-加工装置にはそれぞれ、まず各金属ストリップのストリップ先端が、次にフィレット部分が、その後でようやくストリップ後端が供給される。
【背景技術】
【0002】
本発明はさらに、金属ストリップの加工設備を基にしており、
-加工設備は、ストリップ貯蔵部を有しており、ストリップ貯蔵部には、断続的及び連続的に、金属ストリップに関して統一された搬送方向において、それぞれ金属ストリップが次々に供給され、
-各金属ストリップは、各ストリップ先端、各ストリップ後端、及び、各ストリップ先端と各ストリップ後端との間に各フィレット部分を有しており、
-各金属ストリップは、まず各ストリップ先端が、次に各フィレット部分が、最後に各ストリップ後端が、ストリップ貯蔵部に流入し、
-各ストリップ先端は、各前縁を有し、各ストリップ後端は、各後縁を有し、
-加工設備は、ストリップ貯蔵部の上流に配置された溶接機を有しており、溶接機を用いて、各金属ストリップの前縁は、各金属ストリップがストリップ貯蔵部に供給される直前に、ストリップ貯蔵部にそれぞれ直前に部分的に供給された金属ストリップの後縁に溶接されるので、各金属ストリップの前縁と、それぞれ直前に部分的に供給された金属ストリップの後縁との間には、それぞれ溶接継ぎ目が形成され、
-各溶接継ぎ目は、搬送方向に対して横方向に見た場合、関与する両方の金属ストリップのうちの一方の金属ストリップの、搬送方向に延在する側縁から、同じ金属ストリップの他方の側縁又は他方の金属ストリップの側縁へと延在しており、
-ストリップ貯蔵部に貯蔵された金属ストリップは、金属ストリップを接続する溶接継ぎ目も含めて、ストリップ貯蔵部から、連続的又は断続的に、加工設備の加工装置に供給され、
-加工装置にはそれぞれ、まず各金属ストリップのストリップ先端が、次にフィレット部分が、その後でようやくストリップ後端が供給される。
【0003】
このような金属ストリップの加工方法と、関連する加工設備とは、例えば特許文献1から知られている。
【0004】
金属ストリップは、特に鋼又はアルミニウムから構成され得る。しかしまた、他の金属及び合金も可能である。加工装置は、ピックリング装置、ストレッチレベラー又は圧延機、特に冷間圧延機を含み得る。これらの構成要素の内の複数も存在していてよく、特に全ての構成要素が存在していてもよい。複数の構成要素が存在している場合、金属ストリップは次々に、当該構成要素を連続的に通過する。
【0005】
各金属ストリップを、巻き戻し機からストリップ貯蔵部に供給することが可能である。この場合、各金属ストリップは、コイルとして巻き戻し機に挿入され、その後で巻き戻される。必要に応じて、巻き戻し機と溶接機との間に、さらなるストリップ貯蔵部が配置されていてもよい。しかしながら、巻き戻し機も、さらなるストリップ貯蔵部も、必ずしも必要ではない。
【0006】
多くの場合、金属ストリップの加工装置は、連続的に動作する。連続的な動作とは、この関連においては、各加工装置に無端ストリップが供給されることを意味しており、従って、加工装置の構成要素はそれぞれ、無端ストリップの部分を持続的に加工する。このような動作モードは、例えばピックリング装置、ストレッチレベラー及び圧延機(特に冷間圧延機)に関して知られている。無端ストリップを生産するために、個々の、別々の金属ストリップが何回も、互いに接合される。すなわち、金属ストリップのストリップ先端は、先行する金属ストリップのストリップ後端に継ぎ足される。金属ストリップは、同じ材料(例えば金属ストリップに関して統一された化学組成を有する鋼)から、又は、互いに異なる材料(例えば互いに異なる化学組成を有する鋼)から構成されていてよい。寸法、すなわちストリップの幅及び厚さも、同じか、又は、互いに異なっていてよい。
【0007】
金属ストリップ同士の接続は、溶接機を用いて形成される各溶接継ぎ目を通じて行われる。溶接プロセスの間は、対応するストリップ先端及びストリップ後端は搬送されない。この理由から、溶接機と加工装置との間に、ストリップ貯蔵部が配置されている。ストリップ貯蔵部では、無端ストリップの可変の長さが記憶され、バッファリングされ得る。特に、無端ストリップがストリップ貯蔵部から流出する速度は、無端ストリップがストリップ貯蔵部に流入する速度とは無関係に調整され得る。これらの速度が異なる場合、自明のことながら貯蔵部の充填度が変化する。従って、より長い期間で考えると、流入する速度と流出する速度とは、平均して同じでなくてはならない。なぜなら、そうでなければ、ストリップ貯蔵部は、空回りするか、又は、オーバーフローするからである。しかしながら、短期間の速度の差は、ストリップ貯蔵部によって解消され得る。
【0008】
加工装置、溶接機及びストリップ貯蔵部の対応する態様と、その動作モードとは、当業者には一般的に知られている。
【0009】
無端ストリップが加工装置を通過する際、溶接継ぎ目も加工装置を通過する。溶接継ぎ目はしばしば、無端ストリップの弱点である。ストレッチレベラーでは、例えば溶接継ぎ目がストレッチレベラーを通過する際に、無端ストリップが断裂するという危険が存在する。圧延機スタンドでは、溶接継ぎ目が対応する圧延機スタンドのロールギャップを通過する間に無端ストリップが裂ける危険は、より大きい規模で存在する。質の高い溶接継ぎ目を形成することによって、この危険を減少させることが可能である。しかしながら、高い程度の加工ノウハウと、溶接機の質の高い保守とが必要である。特に、生産サイクル(例えば保守のために停止する前)の最後において、この質は、常に完全に維持できるものではない。さらに、しばしば、互いに溶接することが困難である材料を溶接する必要がある。このような材料の場合、ストリップが断裂する危険は特に高い。
【0010】
溶接継ぎ目の領域におけるストリップ断裂の危険を最小化するために、特に圧延機では、一方の金属ストリップから他方の金属ストリップへの移行部分、すなわち各溶接継ぎ目とその少し前と後ろの領域とは、特別な方法で、例えばより小さい圧延力及びより少ないパス削減で圧延される。しかしながら、圧延方法が異なるゆえに、移行部分は、金属ストリップの残りの領域とは異なる特性を有する。これは、幾何学的特性(例えばストリップの厚さ)にも、機械的特性(例えば引張強度、降伏力及び降伏点)にも該当し得る。従って、対応する移行部分はしばしば、使用することができず、スクラップになる。
【0011】
特許文献2からは、斜めに延在する溶接継ぎ目で2つの金属ストリップを接続することが知られている。金属ストリップの長手方向に対して15°から45°の角度が挙げられている。加工装置は、管状の装置である。
【0012】
特許文献3からは、斜めに延在する溶接継ぎ目で2つの金属ストリップを接続することが知られている。溶接継ぎ目が延在する角度は、溶接継ぎ目の長手方向延在部分が、後続の圧延プロセスの際の圧延長さよりも大きくなるように選択されている。
【0013】
特許文献4からは、溶接継ぎ目で2つの金属ストリップを接続することが知られている。溶接継ぎ目は、斜め又はジグザグ形に延在し得る。溶接継ぎ目が搬送方向と形成する角度は、少なくとも30°である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第19843282号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1260301号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0051590号明細書
【特許文献4】特開平07-178417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、ストリップの断裂の危険を最小化しながらも、特に圧延プロセスにおいて生じるスクラップを可能な限り少なく抑えるという可能性を創出することにある。さらに、1つのみの溶接継ぎ目が搬送方向に直交して形成され得る従来の溶接機を、斜めに延在する溶接継ぎ目14を形成することができるように改良する可能性が存在すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本課題は、請求項1の特徴を備えた金属ストリップの加工方法によって解決される。当該加工方法の有利な態様は、従属請求項2から4の対象である。
【0017】
本発明によると、冒頭に挙げた種類の加工方法は、溶接機が、
-各金属ストリップの前縁を、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップの後縁に溶接する前に、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップの後端とが軽く回転する、
-次に、両方のストリップが、溶接継ぎ目を形成することによって互いに接続され、溶接継ぎ目は、溶接の際に、専ら搬送方向に対して横方向に延在する、
-最後に、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップのストリップ後端とが元に戻るように回転し、これによって、溶接継ぎ目が、互いに溶接された金属ストリップの回転後に搬送方向に対して斜めに延在するように動作することによって改良される。
【0018】
これによって、各溶接継ぎ目はまず、もはや同時点にその全幅にわたっては加工装置に流入せず、加工装置内で同時点には加工されず、各溶接継ぎ目の様々な部分が、時間的に前後して、加工装置に流入し、加工装置内で次々に加工される。従って、どの時点でも、各溶接継ぎ目の一部分のみにそれぞれ、加工プロセスによる応力が作用する。例えば圧延プロセスの場合、どの時点でも、各溶接継ぎ目の対応する部分のみが変形する。特定の時点において加工される各溶接継ぎ目の部分は、少なくとも片側において、一般的には両側において、一方又は他方の金属ストリップの材料によって囲まれている。従って、負荷は、一方及び/又は他方の金属ストリップによって吸収され得る。負荷のわずかな部分のみが、各溶接継ぎ目に直接作用する。従って、各溶接継ぎ目への線形応力は、明らかに減少し得る。さらに、各溶接継ぎ目の加工によって生じる短時間の障害の規模は、各溶接継ぎ目の加工の際の時間的な延長によって、明らかに減少し得る。これによって、加工プロセスの安定感は増大し得る。最終的に、斜めの溶接継ぎ目が形成される方法は、既存の標準的な溶接機においても、適用可能である。
【0019】
各前縁は、先行する金属ストリップの端部と溶接するように前処理される。これは特に、各前縁のプロファイルを前処理することによって行われ得るので、各前縁のプロファイルは、先行する各金属ストリップの後縁のプロファイルと一致する。当該プロファイルは、各溶接継ぎ目の後続のプロファイルと一致する。この前処理は、例えば鋏を用いたクロッピングであってよい。ストリップ後端も、同様に前処理され得る。多くの場合、前処理は、ストリップ先端において各金属ストリップの小片を切断するレーザーを用いて行われるので、この加工によって形成される前縁は、各金属ストリップの前縁である。直接先行する各金属ストリップの後縁も、同様に前処理される。一般的に、溶接の直前に、両方の関与する金属ストリップは互いに向かって移動し、その結果、当該金属ストリップは、完全に隣接しているか、又は、少なくともほぼ隣接している。溶接プロセスの間、一方の金属ストリップのストリップ先端と他方の金属ストリップのストリップ後端とは、溶接機内で、例えばクランプによって固定されたままである。
【0020】
溶接機は、例えば、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップのストリップ後端とを回転させるために、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップのストリップ後端との対応する領域内で、ループが形成されるように動作し得る。
【0021】
多くの場合、加工装置は、少なくとも1つの圧延機スタンドを有する圧延機として構成されている。この場合、金属ストリップは、加工装置の圧延機スタンド内で、各圧延長さで圧延される。
【0022】
「圧延長さ」という概念は、当業者には一般的に知られている。当該概念は、搬送方向に見て、各金属ストリップが各圧延プロセスの際に、その各圧延機スタンドの流入側における厚さから、各圧延機スタンドの流出側における厚さまで圧延される領域を表している。各溶接継ぎ目が、搬送方向において見て、各圧延機スタンドでの圧延の前に有している長手方向延在部分は、好ましくは各圧延長さよりも大きい。特に、これによって、各溶接継ぎ目の圧延の際、いずれの時点においても、溶接継ぎ目全体に対して各圧延プロセスを行わないことが得られる。
【0023】
好ましくは、各溶接継ぎ目が搬送方向と形成する角度は、90°から約5°~10°の間、特に6°~8°の間で異なっている。
【0024】
一般的に、第1の圧延プロセスにおける圧延長さは、別の圧延プロセスにおける圧延長さよりも大きいか、又は、少なくとも小さくはない。金属ストリップの圧延によって、さらに各圧延プロセスにおいて、各溶接継ぎ目の長手方向延在部分は伸長する。従って、各溶接継ぎ目の長手方向延在部分が、搬送方向において見て、第1の圧延機スタンドでの圧延の前に、第1の圧延機スタンドにおける圧延の際の各圧延長さよりも大きい限りにおいて、これは、必然的に別の圧延プロセスにも適用される。しかしながら、そうではない場合、つまり例外的に、例えば第3の圧延プロセスの際の圧延長さが、第1の圧延プロセスの際の圧延長さよりも大きい場合でさえ、これは大抵重要ではない。これは、以下において、加工装置が、例えば4つの圧延機スタンドを有する圧延トレインとして構成されていると仮定される例を用いて説明される。このような場合に、溶接継ぎ目の形成直後の、各溶接継ぎ目の長手方向延在部分が、例えば第2の圧延機スタンドで金属ストリップが圧延される圧延長さより小さいとしても、単に、第1の圧延機スタンドにおける圧延による金属ストリップの伸長によって、各溶接継ぎ目の長手方向延在部分が対応して拡大することが保証されていればよいからである。第3及び第4の圧延機スタンド、又は、さらなる各圧延機スタンドにおける圧延に関して、同じ状況が当てはまる。
【0025】
本発明の課題は、さらに、請求項5の特徴を備えた金属ストリップの加工設備によって解決される。当該加工設備の有利な態様は、従属請求項6から8の対象である。
【0026】
本発明によると、冒頭に挙げた種類の加工設備は、溶接機が、
-各金属ストリップの前縁を、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップの後縁に溶接する前に、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップのストリップ後端とが軽く回転し、
-次に、両方のストリップが、溶接継ぎ目を形成することによって互いに接続され、溶接継ぎ目は、溶接の際に、専ら搬送方向に対して横方向に延在し、
-最後に、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップの後端とが元に戻るように回転し、これによって、溶接継ぎ目が、互いに溶接された金属ストリップの回転後に搬送方向に対して斜めに延在するように構成されていることによって改良される。
【0027】
本発明において「溶接機の構成」という概念は、包括的に理解されるべきである。溶接機の本発明に係る構成によって得られる利点は、加工方法の利点に対応する。
【0028】
好ましくは、溶接機は、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップのストリップ後端とを回転させるために、各金属ストリップのストリップ先端と、ストリップ貯蔵部に部分的に供給された金属ストリップのストリップ後端との対応する領域内で、ループが形成されるように構成されている。加工方法に関する上述の記載は、同様に有効である。
【0029】
好ましくは、加工装置は、少なくとも1つの圧延機スタンドを有する圧延装置として構成されている。
【0030】
好ましくは、各溶接継ぎ目が搬送方向と形成する角度は、90°から約5°~10°の間、特に6°~8°の間で異なっている。
【0031】
本発明の上述の特性、特徴及び利点と、これらを得る方法とは、実施例に関して図面を用いて詳細に行われる以下の記載との関連においてより明確になり、より明確に理解できるようになる。この際、以下の図が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】時間的に連続する異なる動作状態における金属ストリップの加工設備を示す図である。
【
図3】時間的に連続する異なる動作状態における金属ストリップの加工設備を示す図である。
【
図4】時間的に連続する異なる動作状態における金属ストリップの加工設備を示す図である。
【
図5】時間的に連続する異なる動作状態における金属ストリップの加工設備を示す図である。
【
図7】溶接前の2つの金属ストリップを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1によると、金属ストリップ1は、細長く平らな圧延材である。金属ストリップ1は、搬送方向xに搬送される。他の図面も参照のこと。各金属ストリップ1の前方領域は、いわゆるストリップ先端2を形成し、後方領域は、いわゆるストリップ後端3を形成している。これらの間には、各金属ストリップ1の中央領域、いわゆるフィレット部分4が存在している。
図1において破線で示された、ストリップ先端2とフィレット部分4との正確な境界、及び、フィレット部分4とストリップ後端3との正確な境界は、副次的な重要性を有する。各ストリップ先端2は、各前縁5で終端し、各ストリップ後端3は各後縁6で終端する。各前縁5と各後縁6との間には、金属ストリップ1の各側縁7が延在している。側縁7は、搬送方向xに対して平行に延在している。
【0034】
金属ストリップ1は、他の図面では、本発明の説明に際して、必要に応じて互いに区別するために、小文字a、b等によって補足される。同じことが、ストリップ先端2及びストリップ後端3等の、金属ストリップ1の異なる部分及びセクションにも適用される。
【0035】
図2によると、金属ストリップ1の加工設備は、ストリップ貯蔵部8を有している。
図2の描写によると、ストリップ貯蔵部8は、例えば複数の上側ロール9と下側ロール10とを有しており、ストリップ貯蔵部8内の金属ストリップ1は、上側ロール9と下側ロール10とを交互に通るように誘導される。上側ロール9を、例えば固定して配置することが可能であり、下側ロール10を、上側ロール9に対して下降させることが可能である。下側ロール10を加工させる程度次第で、ストリップ貯蔵部8に貯蔵される金属ストリップ1の量は変化する。
【0036】
加工設備はさらに、加工装置11を有している。加工装置11は、例えば
図1の描写によると、複数のスタンドを有する圧延トレインとして構成されていてよい。この場合、圧延トレインでは一般的に、冷間圧延が行われる。しかしまた、圧延トレインに対して付加的にであれ、代替的にであれ、加工装置11の別の態様も可能である。例えば、加工装置11は、ピックリング装置であってよいか、又は、圧延トレインに加えて、ピックリング装置を含み得る。後者の場合、ピックリング装置は圧延トレインの上流に配置されている。しかしながら、その具体的な構成とは無関係に、加工装置11は、ストリップ貯蔵部8の下流に配置されている。
【0037】
最終的に、加工設備は、溶接機12を有している。溶接機12は、ストリップ貯蔵部8の上流に配置されている。
【0038】
加工設備は、以下のように動作する。
【0039】
ある時点で、ストリップ貯蔵部8内には、一定量の金属ストリップ1が貯蔵されている。例えば、
図2に示された状態では、そのストリップ後端3cを除いて、金属ストリップ1cと、ストリップ後端3bと、金属ストリップ1bのフィレット部分4bの大部分とが貯蔵されている。金属ストリップ1bのストリップ先端2bと金属ストリップ1aとは、既にストリップ貯蔵部8を離れている。具体的には、金属ストリップ1bのストリップ先端2bは、依然として加工装置11に搬送される途中であり、金属ストリップ1aは、既に加工装置11内にあるか、又は、加工装置11を既に離れていることさえある。
【0040】
金属ストリップ1cのストリップ後端3cは、依然として溶接機12内に位置している。金属ストリップ1cのストリップ後端3bには、金属ストリップ1dが、そのストリップ先端2dで継ぎ足されることになっている。このために、金属ストリップ1dのストリップ先端2bは、溶接機12に供給される。このために、一般的に、金属ストリップ1dが、適切な量で、リール13から巻き戻される。具体的には、巻き戻しは、金属ストリップ1dのストリップ先端2dが、溶接機12内部で、金属ストリップ1cのストリップ後端2cの直ぐ近くに移動する範囲内で行われる。従って、
図3の描写によると、金属ストリップ1dの前縁5dは、極めて小さい間隔で(最大で数ミリメートル)、金属ストリップ1cの後縁6cに接している。
【0041】
当該状態では、溶接機12を用いて、金属ストリップ1dの前縁5dが、金属ストリップ1cの後縁6cに溶接される。従って、これら両方の縁部5d、6cの間には、溶接継ぎ目14が形成される。溶接によって、金属ストリップ1dは、金属ストリップ1a、1b及び1cのみを含んでいた無端ストリップの構成要素となる。
図4は、当該状態を示している。溶接の後、金属ストリップ1cのストリップ後端3cと、金属ストリップ1dのストリップ先端2d及びフィレット部分4dとは、搬送方向xにおいて、ストリップ貯蔵部8に供給される。金属ストリップ1dの供給は、ストリップ後端3dが依然として溶接機12に留まる範囲内で行われる。
図5は、対応する状態を示している。
【0042】
ストリップ貯蔵部8への金属ストリップ1の供給に関する限り、上述の手順で一通りのサイクルが完了する。当該サイクルは、何度も繰り返される。すなわち、何度も、新しい金属ストリップ1が、先行する金属ストリップ1に溶接され、ストリップ貯蔵部8に供給される。結果として、ストリップ貯蔵部8には、金属ストリップ1が断続的及び連続的に、次々に供給される。さらに、ごく自然な結果として、搬送方向xは、金属ストリップ1に関して統一されており、各金属ストリップ1は、まずそのストリップ先端2が、次にそのフィレット部分4が、最後にそのストリップ後端3が、ストリップ貯蔵部8に流入する。
【0043】
ストリップ貯蔵部8に貯蔵された金属ストリップ1(又は無端ストリップの対応する部分)の加工装置11への供給は、必要に応じて行われ得る。供給を断続的に行うことは、個別の事例において可能である。しかしながら、一般的には、連続的に行われる。これは、
図2から
図5からも明らかである。
【0044】
特に、溶接継ぎ目14は、金属ストリップ1a及び1bの間と、金属ストリップ1b及び1cの間とにおいて、
図2に示された状態では、特定の位置に存在しており、さらに、下側ロール10は、やはりストリップ貯蔵部8の充填度に対応する特定の高さに位置している。
図3に示されたように、金属ストリップ1dのストリップ先端2dが金属ストリップ1cのストリップ後端3cに近づくまでには、時間が経過している。この時間の間にも、一般的に、無端ストリップのストリップ貯蔵部8からの送り出しと、これに関連して、無端ストリップの加工装置11への供給とが行われている。しかしながら、
図2に示された状態に対して、ストリップ後端3cの位置は変化していない。従って、無端ストリップのストリップ貯蔵部8からの送り出しによって、ストリップ貯蔵部8の充填度は減少している。これに対応して、下側ロール10は、
図2の状態に対して上昇している。さらに、溶接継ぎ目14が金属ストリップ1a及び1bの間と、金属ストリップ1b及び1cの間とにおいて存在している位置が変化している。
【0045】
同様に、
図4に示されたように、金属ストリップ1c及び1dの間に溶接継ぎ目14を形成するためにも、時間が必要である。この時間の間にも、無端ストリップのストリップ貯蔵部8からの送り出しと、これに関連して、無端ストリップの加工装置11への供給とが行われている。
図3に示された状態に対して、ストリップ後端3cの位置は、依然として変化していない。しかしながら、無端ストリップのストリップ貯蔵部8からの送り出しによって、ストリップ貯蔵部8の充填度はさらに減少している。これに対応して、下側ロール10は、
図2の状態に対してさらに上昇している。さらに、溶接継ぎ目14が金属ストリップ1a及び1bの間と、金属ストリップ1b及び1cの間とにおいて存在している位置は、
図3の状態に対して再び変化している。
【0046】
金属ストリップ1cのストリップ後端3cと、金属ストリップ1dのストリップ先端2d及びフィレット部分4dとをストリップ貯蔵部8に供給するためにも、一定の時間が必要である。従って、溶接継ぎ目14が金属ストリップ1a及び1bの間と、金属ストリップ1b及び1cの間とにおいて存在する位置は再び変化している。しかしながら、金属ストリップ1cのストリップ後端3cと、金属ストリップ1dのストリップ先端2d及びフィレット部分4dとのストリップ貯蔵部8への供給は、無端ストリップのストリップ貯蔵部8からの送り出しよりも大きい速度で行われる。従って、金属ストリップ1cのストリップ後端3cと、金属ストリップ1dのストリップ先端2d及びフィレット部分4dとのストリップ貯蔵部8への供給によって、同時にストリップ貯蔵部8から無端ストリップを送り出すにも関わらず、ストリップ貯蔵部8の充填度は上昇する。これに対応して、下側ロール10は、
図4の状態に対して下降しており、一般的には、
図2のレベルと同じか、又は、少なくとも類似のレベルに下降している。
【0047】
金属ストリップ1のストリップ貯蔵部8への供給と同様に、当然の結果として、各金属ストリップ1は明らかに、まずそのストリップ先端2で、次にそのフィレット部分4で、最後にそのストリップ後端3で、加工装置11に供給される。
【0048】
以下に、
図6に関連して、金属ストリップ1c及び1dの間における溶接継ぎ目14の構成に言及する。しかしながら、対応する構成は、他の金属ストリップ1の間における溶接継ぎ目14にも1:1で適用可能である。
【0049】
一般的に、金属ストリップ1c、1dは、
図6によると互いに中心を合わせて配置されている。この場合、溶接継ぎ目14は、金属ストリップ1c、1dが同じストリップ幅bc、bdを有するか、又は、互いに異なるストリップ幅bc、bdを有するかとは無関係に、両方の金属ストリップ1c、1dの内の一方の金属ストリップの側縁7c、7dから、同じ金属ストリップ1c、1dの他方の側縁7c、7dへと延在している。金属ストリップ1c、1dの偏心接続の場合にも、この場合は生じ得る。しかしながら、金属ストリップ1c、1dの偏心接続の場合、溶接継ぎ目14が、両方の金属ストリップ1c、1dの内の一方の金属ストリップの側縁7c、7dから、他方の金属ストリップ1d、1cの側縁7d、7cへと延在することが可能である。しかしながら、一方の場合が実現するか、又は、他方の場合が実現するかとは無関係に、溶接継ぎ目14が搬送方向xと形成する角度αは、少なくとも部分的に、90°からは異なっている。溶接機12は、溶接継ぎ目14を形成できるように構成されており、そのように動作する。
【0050】
角度αが90°からどの程度異なるかは、必要に応じて決定してよい。例えば、90°からの逸脱は、約5°から10°、特に6°から8°の間であり得る。
【0051】
溶接プロセスそのものと、一方の金属ストリップ1の前縁5及び他方の金属ストリップ1の後縁6の前処理とに関しては、詳細に言及する必要はない。
【0052】
溶接継ぎ目14が斜めに延在することに関して具体的には、さらに、一方の金属ストリップ1のストリップ先端2及び他方の金属ストリップ1のストリップ後端3の対応する領域のクランプと、ループの形成とによって、金属ストリップ1が溶接機12内で、角度αで斜めに延在することが可能である。
図7は、金属ストリップ1の当該状態を示している。当該状態では、完全に従来の方法で、一方の金属ストリップ1の前縁5と、他方の金属ストリップ1の後縁6とが前処理され得る。
図7において破線で示されているように、切断は、同様に従来の方法で、搬送方向xに対して直交して行われ得る。溶接も、同じく完全に従来の方法で、搬送方向xに対して直交して行われ得る。一方の金属ストリップ1のストリップ先端2と、他方の金属ストリップ1のストリップ後端3とは、溶接プロセスの間、角度αを形成しながら斜めに延在しているが、溶接の後は再び、搬送方向xに方向付けられる(
図6を参照)という事情に基づいて、溶接の後、溶接継ぎ目14は角度αで延在している。
【0053】
本発明は、多くの利点を有している。特に、加工装置11は、溶接継ぎ目14のプロファイルゆえに、特定の時点において、溶接継ぎ目14の全幅にわたって溶接継ぎ目14に作用するのではなく、それぞれ部分領域にわたってのみ作用する。これによって、いずれの時点においても、各溶接継ぎ目14の部分領域のみに加工が行われる。特に、ストレッチレベラー及び圧延機では、溶接継ぎ目14に関する加工プロセスの変更はもはや不要である。スクラップとして選り分けられる必要がある規格外れの長さは、これによって減少し得る。従って、生産量は増大し得る。ストリップに亀裂が生じる危険は、ほぼゼロにまで低下し得る。さらなる好ましい効果として、溶接機12の保守間隔を増大させることが可能であり、溶接機12の保守も容易になる。これによって、加工設備の停止時間を削減することが可能であり、これによっても同様に、生産性が増大する。さらに、従来の溶接機12を、溶接機が溶接継ぎ目14を斜めに延在させることができるように改良することも可能である。
【0054】
本発明を、好ましい実施例を通じて詳細に図示かつ説明してきたが、本発明は、開示された例によっては限定されず、本発明の保護範囲を離れることなく、当業者が他の変型例を導き出すことが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 金属ストリップ
2 ストリップ先端
3 ストリップ後端
4 フィレット部分
5 前縁
6 後縁
7 側縁
8 ストリップ貯蔵部
9 上側ロール
10 下側ロール
11 加工装置
12 溶接機
13 巻き戻し機
14 溶接継ぎ目
b ストリップ幅
x 搬送方向
α 角度
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(1)の加工方法であって、
-前記金属ストリップ(1)の加工設備のストリップ貯蔵部(8)に、断続的及び連続的に、前記金属ストリップ(1)に関して統一された搬送方向(x)において、前記金属ストリップ(1)が次々にそれぞれ供給され、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、各ストリップ先端(2)、各ストリップ後端(3)、及び、前記ストリップ先端(2)それぞれと前記ストリップ後端(3)それぞれとの間に各フィレット部分(4)を有しており、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、まず前記ストリップ先端(2)それぞれが、次に前記フィレット部分(4)それぞれが、最後に前記ストリップ後端(3)それぞれが、前記ストリップ貯蔵部(8)に流入し、
-前記ストリップ先端(2)それぞれは、各前縁(5)を有し、前記ストリップ後端(3)それぞれは、各後縁(6)を有し、
-前記前縁(5)それぞれは、前記金属ストリップ(1)それぞれが前記ストリップ貯蔵部(8)に供給される直前に、加工設備の溶接機(12)を用いて、前記ストリップ貯蔵部(8)にそれぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接され、これによって、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)と、それぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)との間には、各溶接継ぎ目(14)が形成され、
-前記溶接継ぎ目(14)それぞれは、前記搬送方向(x)に対して横方向に見た場合、関与する両方の前記金属ストリップ(1)のうちの一方の金属ストリップの、前記搬送方向(x)に延在する側縁(7)から、同じ金属ストリップ(1)の他方の側縁(7)又は他方の金属ストリップ(1)の側縁(7)へと延在しており、
-前記ストリップ貯蔵部(8)に貯蔵された前記金属ストリップ(1)は、前記金属ストリップ(1)を接続する前記溶接継ぎ目(14)も含めて、前記ストリップ貯蔵部(8)から、連続的又は断続的に、前記加工設備の加工装置(11)に供給され、
-前記加工装置(11)にはそれぞれ、まず前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)が、次に前記フィレット部分(4)が、その後でようやく前記ストリップ後端(3)が供給される加工方法において、
前記溶接機(12)は、
-前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)を、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接する前に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが軽く回転する、
-次に、両方のストリップ(1)が、前記溶接継ぎ目(14)を形成することによって互いに接続され、前記溶接継ぎ目(14)は、溶接の際に、専ら前記搬送方向(x)に対して横方向に延在する、
-最後に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが元に戻るように回転し、これによって、前記溶接継ぎ目(14)が、互いに溶接された前記金属ストリップ(1)の回転後に前記搬送方向(x)に対して斜めに延在するように動作することを特徴とする加工方法。
【請求項2】
前記溶接機(12)が、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とを回転させるために、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)との対応する領域内で、ループが形成されるように動作することを特徴とする、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記加工装置(11)が、少なくとも1つの圧延機スタンドを有する圧延機として構成されており、前記金属ストリップ(1)は、前記加工装置(11)の前記圧延機スタンド内で、各圧延長さで圧延され、前記溶接継ぎ目(14)それぞれが、前記搬送方向(x)において見て、前記圧延機スタンドそれぞれでの圧延の前に有している長手方向延在部分は、前記圧延長さそれぞれよりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記溶接継ぎ目(14)それぞれが前記搬送方向(x)と形成する角度(α)が、90°か
ら5°~10°の
間で異なっていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項5】
金属ストリップ(1)の加工設備であって、
-加工設備は、ストリップ貯蔵部(8)を有しており、前記ストリップ貯蔵部(8)には、断続的及び連続的に、前記金属ストリップ(1)に関して統一された搬送方向(x)において、前記金属ストリップ(1)が次々にそれぞれ供給され、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、各ストリップ先端(2)、各ストリップ後端(3)、及び、前記ストリップ先端(2)それぞれと前記ストリップ後端(3)それぞれとの間に各フィレット部分(4)を有しており、
-前記金属ストリップ(1)それぞれは、まず前記ストリップ先端(2)それぞれが、次に前記フィレット部分(4)それぞれが、最後に前記ストリップ後端(3)それぞれが、前記ストリップ貯蔵部(8)に入り、
-前記ストリップ先端(2)それぞれは、各前縁(5)を有し、前記ストリップ後端(3)それぞれは、各後縁(6)を有し、
-加工設備は、前記ストリップ貯蔵部(8)の上流に配置された溶接機(12)を有しており、前記溶接機(12)を用いて、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)は、前記金属ストリップ(1)それぞれが前記ストリップ貯蔵部(8)に供給される直前に、前記ストリップ貯蔵部(8)にそれぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接され、これによって、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)と、それぞれ直前に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)との間には、各溶接継ぎ目(14)が形成され、
-前記溶接継ぎ目(14)それぞれは、前記搬送方向(x)に対して横方向に見た場合、関与する両方の前記金属ストリップ(1)のうちの一方の金属ストリップの、前記搬送方向(x)に延在する側縁(7)から、同じ金属ストリップ(1)の他方の側縁(7)又は他方の金属ストリップ(1)の側縁(7)へと延在しており、
-前記ストリップ貯蔵部(8)に貯蔵された前記金属ストリップ(1)は、前記金属ストリップ(1)を接続する前記溶接継ぎ目(14)も含めて、前記ストリップ貯蔵部(8)から、連続的又は断続的に、前記加工設備の加工装置(11)に供給され、
-前記加工装置(11)にはそれぞれ、まず前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)が、次に前記フィレット部分(4)が、その後でようやく前記ストリップ後端(3)が供給される加工設備において、
前記溶接機(12)は、
-前記金属ストリップ(1)それぞれの前記前縁(5)を、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記後縁(6)に溶接する前に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが軽く回転し、
-次に、両方のストリップ(1)が、前記溶接継ぎ目(14)を形成することによって互いに接続され、前記溶接継ぎ目(14)は、溶接の際に、専ら前記搬送方向(x)に対して横方向に延在し、
-最後に、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とが元に戻るように回転し、これによって、前記溶接継ぎ目(14)が、互いに溶接された前記金属ストリップ(1)の回転後に前記搬送方向(x)に対して斜めに延在するように構成されていることを特徴とする加工設備。
【請求項6】
前記溶接機(12)が、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)とを回転させるために、前記金属ストリップ(1)それぞれの前記ストリップ先端(2)と、前記ストリップ貯蔵部(8)に部分的に供給された前記金属ストリップ(1)の前記ストリップ後端(3)との対応する領域内で、ループが形成されるように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の加工設備。
【請求項7】
前記加工装置(11)が、少なくとも1つの圧延機スタンドを有する圧延機として構成されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の加工設備。
【請求項8】
前記溶接継ぎ目(14)それぞれが前記搬送方向(x)と形成する角度(α)が、90°か
ら5°~10°の
間で異なっていることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の加工設備。
【国際調査報告】