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特表2023-532624経皮生成物供給のためのウェアラブルデバイス
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  • 特表-経皮生成物供給のためのウェアラブルデバイス 図1
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  • 特表-経皮生成物供給のためのウェアラブルデバイス 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】経皮生成物供給のためのウェアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20230724BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20230724BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H04R1/28 330
A61M37/00
A61N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569041
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-24
(86)【国際出願番号】 ES2021070237
(87)【国際公開番号】W WO2021229117
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20382391.9
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522441471
【氏名又は名称】メディクセンサーズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522441482
【氏名又は名称】アヘンシア エスタタル コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス,エメ.ペ.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン デ ビスカロンド,エドゥアルド ワルテル
(72)【発明者】
【氏名】モンテシノス ペレス,ホセ カルロス
(72)【発明者】
【氏名】デ メルカド サンタマルタ,フアン セサル
(72)【発明者】
【氏名】モンテロ デ エスピノサ フレイホ,フランシスコ ラモン
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
5D019
【Fターム(参考)】
4C160JJ23
4C160KL03
4C160MM22
4C267AA71
4C267BB23
4C267BB40
4C267BB45
4C267CC01
5D019AA08
5D019AA22
5D019EE01
5D019FF03
(57)【要約】
【解決方法】本発明は、共振している2つの超音波共振器(1、2)を収容し、外側空洞部(6)を有するヘッド(3)を含む経皮生成物供給のためのウェアラブルデバイスに関する。より遠位の第1共振器(1)は、第1周波数で皮膚に向かって放射し、より近位の第2共振器(2)は、空洞部(6)を取り囲み、第2周波数で皮膚に平行に放射する。1つの周波数は高周波ソノフォレーシス(HFS)であり、他方は低周波ソノフォレーシス(LFS)である。第2共振器(2)は、第1共振器(1)の波が通過することを可能にするための孔(7)を含む。第2共振器(2)からの波は、ヘッド(3)、孔(7)、空洞部(6)を通過し、ヘッド(3)の反対側の領域で跳ね返って第1共振器(1)からの波に干渉する。波間の干渉により静止電場が形成され、それによって、皮膚の透過性が増大するため、小型化したデバイスをウェアラブルに組み込むことが可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮生成物供給のためのウェアラブルデバイスであって、
ヘッド(3)であって、該ヘッドは、
使用時にユーザの皮膚に接近するように意図される近位領域(4)、
前記ユーザの皮膚からさらに遠ざかる遠位領域(5)、ならびに
前記近位領域(4)において画定され、かつ使用時に前記ユーザの皮膚に向かって配向されるように意図される、外側空洞部(6)を含む、ヘッドと、
前記ヘッド(3)の前記遠位領域(5)に収容され、第1周波数で共振して動作し、前記第1周波数でユーザの皮膚に向かって超音波を放射するための第1共振器(1)と、
前記ヘッド(3)の前記近位領域(4)に収容され、第2周波数で共振して動作し、前記第2周波数で皮膚と平行な方向に超音波を放射するための第2共振器(2)と、を含み、
ここで、前記第1周波数および第2周波数の一つが高周波ソノフォレーシス(HFS)周波数であり、他方の周波数が低周波ソノフォレーシス(LFS)周波数であり、前記ヘッド(3)は、前記共振器(1、2)によって放射された波が、前記ヘッド(3)を出る前にガス状物質に遭遇することなく前記ヘッド(3)を通って循環することを可能にするように構成され、
前記第2共振器(2)は、前記第1共振器(1)からの波動が前記第2共振器(2)に当たることなく通過することを可能にするための内側貫通孔(7)を含むこととともに、前記ヘッド(3)の空洞部(6)の前記第2共振器(2)の高さに相当する部分が、前記第2共振器(2)に囲まれていること、および
ここで、第2共振器(2)からの波動は、反対側の位置で前記ヘッド(3)に跳ね返り、前記第1共振器(1)からの波動に干渉するために、前記ヘッド(3)、貫通孔(7)および空洞部(6)を通って方向付けられることを特徴とする、ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記LFS周波数は、50~60kHzの範囲に含まれる、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記HFS周波数は、800~1200kHzの範囲に含まれる、請求項1~2のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記第1共振器(1)は、円板形状を有する、請求項1~3のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
前記第2共振器(2)は、環状体形状を有する、請求項1~4のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記第1共振器(1)は、前記ヘッド(3)と共に、前記LFS周波数で共振して動作し、かつ前記第2共振器(2)は前記HFS周波数で動作するように意図される、請求項1~5のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記第2共振器(2)が、HFS周波数で供給される時にHFS周波数で厚みモードで共振するために、HFS範囲内の厚みモードでの振動の基本周波数を有する環状体形状を有する一方、前記第1共振器(1)がHFS範囲内の厚みモードでの振動の基本周波数を有する円板形状を有し、ここで、前記ヘッド(3)が、さらに、前記第1共振器(1)と接触するように意図される少なくとも1つの構成要素(8、9、10)を含み、第1共振器(1)+ヘッド(3)の組立体が、LFS周波数で供給されたときにLFS周波数で共振するようにLFS範囲内の伸長モードでの基本周波数を有するトランスデューサを構成するように、物理的連続性を有して形成される、請求項6に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
前記構成要素(8、9、10)は、屈曲により振動する膜(8)を含み、前記第1共振器(1)と前記第2共振器(2)の間に、前記第1共振器(1)と接触して挿入される、請求項7に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項9】
前記構成要素(8、9、10)は、さらに2つの突起部(9、10)を有し、一方は近位(9)、他方は遠位(10)にあり、それらの間に前記膜(8)が支持される、請求項8に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項10】
前記第1共振器(1)はHFS周波数で、および前記第2共振器(2)はLFS周波数で共振して動作するように意図される、請求項1~5のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項11】
前記第1共振器(1)は、HFS周波数で供給された時にHFS周波数で厚みモードで共振するために、厚みモードの基本周波数がHFS範囲にある円板形状を有する一方、前記第2共振器(2)は、LFS周波数で供給される時にLFS周波数で半径方向モードで共振するために、径方向モードの基本周波数がLFS範囲にある環状体形状を有する、請求項10に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項12】
前記ヘッド(3)は、前記第1共振器(1)上に配置され、前記第1共振器(1)からの振動を伝達手段によって前記空洞部(6)に伝えるための伝達ディスク(14)をさらに含む、請求項11に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項13】
前記ヘッド(3)は、1つの単一のモノブロック体から構成される、請求項1~12のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項14】
前記ヘッド(3)は、金属材料、好ましくは、アルミニウム、または生体適合性ポリマー材料、好ましくは、ポリプロピレンで作製される、請求項1~13のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【請求項15】
前記ヘッド(3)は、前記第2共振器(2)の前記貫通孔(7)の少なくとも一部を占める収容部(13)を含む、請求項1~14のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康とパーソナルケア分野に、より具体的に、例えば、薬物と化粧品などの活性物質の生成物を供給するために含まれ得る。より具体的に、発明の対象は、生成物を経皮的に、かつ非侵襲的に供給するためのウェアラブルデバイスである。
【背景技術】
【0002】
インスリンなどの相当なサイズを有する分子の薬物を経皮的にかつ非侵襲的に供給するために様々な技術およびデバイスが存在する。
【0003】
そうするために、薬物は、特にインスリンなどの高分子量の分子に対して低い吸収能力を有する、患者の皮膚の角質層を通過する必要がある。
【0004】
ヒト皮膚の構造は、脂質マトリックスに埋め込まれた死細胞(corneocytes)の外層からなる角質層を有し、それによって特に毛穴より大きい分子サイズのインスリンなどの物質が角質層を通って拡散し難くなる。
【0005】
この意味で、低電圧を用いる電気泳動(最大150Vの電圧を用いる)またはイオン浸透療法などのいくつかの技術は、当初に開発された。
【0006】
1950年に始めの頃、皮膚に接しており、皮膚の内部に適用される物質を含有する流体上に超音波を適用することからなる、ソノフォレーシスの有益性が発見された。最初に、小分子の透過性を十分に可能にするために角質層の層を混乱させて、コルチコステロイドの伝達のために700kHzから10000kHz(高周波ソノフォレーシス、HFS)までの周波数が使用されたが、安定したキャビテーションの効果により脂質マトリックス中の角質層中で気泡が振動し、それにより超音波を使用しない場合に比べて最大10倍多く伝達することができた。
【0007】
1990年代に始まり、超音波を適用する場合にキャビテーションがある物質の皮膚を通る伝達を改善すること、および液体中のキャビテーショに関連する効果は、周波数に応じて逆に増加することを知り、中低周波数でのソノポレーション(sonoporation)に関する研究が始められた。20~100kHzの低周波(低周波ソノフォレーシス、LFS)を用いる効果が研究され始め、LFSにおいて低い周波数ほど、透過性が高くなることが発見され、これによって、一時的なキャビテーションがLFSを用いる皮膚の透過性を改善するための最も重要なメカニズムであることは実証される。
【0008】
1996年以降、いくつかの多周波ソノフォレーシス、HFS範囲中の1つの周波数およびLFS範囲中の別の周波数、に関する研究は、HFSとLFSとの個別の適用に関する納得のある結果を有して公開された。しかしながら、LFS周波数を適用するために、LFS周波数を提供するトランスデューサのサイズが、周波数が低いほどかつ強度が高くなるほど、増大する欠点がある。したがって、十分な強度を提供するデバイスのサイズは、ウェアラブルの一部としては大きすぎることが判明した。つまり、必要な強度を達成するために使用される低周波超音波トランスデューサは大きすぎるため、ウェアラブルデバイスに追加することができない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ウェアラブルの非侵襲的な方法で経皮生成物を供給するためのウェアラブルデバイスを記載しており、例えば、圧電方式の、2つの超音波共振器の組み合わせであって、1つの同じヘッドに収納され、1つは遠位位置に配置され、他は、近位位置に配置され、各共振器は、ヘッドの構成との組み合わせで、トランスデューサを画定し、1つの共振器はLFS周波数で共振して動作し、他の共振器はHFS周波数で共振して動作し、同様に、近位位置に配置される共振器が他の遠位側に配置される共振器から放射が通る貫通孔の内部を有し、結果的に両共振器からの放射が相互作用して静止場を形成し、所定の共振器サイズに対して透過性の効果を増大させ、既定の性能を得るためにデバイスのサイズを小さくすることが可能になる。
【0010】
本発明のデバイスによって、生成物は、可逆的な方法で、かつ皮膚に損傷を与えることなく、キャビテーションと毛穴を開くことによって角質層を通過する。
【0011】
本発明のデバイスは、後述で説明されるように、排他的にではないが、任意選択で医療用途を有する。
【0012】
通常は、先行技術文献により、共振器の厚みと大さはそれらが動作する周波数および強度によって画定される。しかしながら、本発明のデバイスは、その設計によって、ヘッドの構造全体を通して異なる方法で波面を放射するため、その結果、LFSとHFSの両方の場合に、生じた波動は所望の周波数および強度を提供し、前述のように、静止場を形成すると、透過性の効果を増幅するため、特にLFS周波数の範囲において、所望の周波数に共振ピークを得ながら、結果として波動を増幅することに成功する。これにより、デバイスは、ウェアラブルの一部に適したサイズに組み上げることが可能になる。
【0013】
デバイスの構成は、様々な生成物を供給するために適用することを可能にする。生成物は、高いまたは低い密度または粘度がある液体になり得、同様に、ゲル、軟膏またはクリーム剤などの非液状の性質であり得る。液体および非液状の性質の両方の生成物がインスリンなどの薬物を含有し得るため、デバイスは、医療用のデバイスであってもよい。代替的に、デバイスは、液体または、上記されたように、例えば、クリーム剤、ゲル、軟膏など非液状の性質を有する化粧品の他のタイプの生成物を供給するように構成することができる。
【0014】
本発明には、近位位置に配置される共振器はLFS周波数で共振して動作し、かつ遠位位置に配置される共振器はHFS周波数で共振して動作する、好ましい例示的な実施形態を有し、および、例えば、近位位置に配置される共振器はHFS周波数で共振して動作し、かつ遠位位置に配置される共振器はLFS周波数で共振して動作する、逆事象が起こる別の好ましい例示的な実施形態を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
前述および他の利点ならびに特徴は、よりよく理解するため、添付図面を参照したいくつかの実施形態の以下の詳細な説明に基づいて、例示的かつ非限定的に解釈されなければならない。
図1】デバイスのヘッドの概略側面図を示す。
図2A】本発明のデバイスの第1の例示的な実施形態の構成の概略断面側面図を示す。
図2B】ヘッドの概略断面側面図を示す。
図3A】本発明のデバイスの第2の例示的な実施形態の構成の概略断面側面図を示す。
図3B】ヘッドの概略断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、上記の図1図3Bの支援で、一般的に生成物を経皮的に供給するための医療用ウェアラブルデバイスの好ましい例示的実施形態の詳細な説明が提供され、該デバイスは特に、排他的ではない方法で、薬剤、より具体的にはインスリンを供給することが意図され、該デバイスは、キャビテーションおよび毛穴を開くことによって、可逆的な方法で、皮膚に対して損傷を与えることなく、生成物がユーザの皮膚の角質層を通過することを可能する。
【0017】
図1によって示されるように、本発明のデバイスは、1つの同じヘッド(3)内に収容される、例えば、圧電性種類の2つの超音波共振器(1、2)を含む。ヘッド(3)は、ユーザの皮膚に接触することを意図した近位領域(4)と、近位領域(4)とは反対側にあり、したがって、ユーザの皮膚から遠ざかる遠位領域(5)を有する。
【0018】
近位領域(4)において、ヘッド(3)は、使用時に、気体の存在を防止し、したがって、ヘッド(3)から皮膚への超音波の伝達を可能にするために、液体であり得るか、あるいは軟膏、クリームまたはゲルなどの非液体の性質を有し得る超音波伝導物質を収容することを意図した外側空洞部(6)を有する。一般的に、超音波伝導物質は塗布される生成物そのものと一致するが、必ずしもそうである必要はない。具体的に、生成物を空洞部(6)内のヘッド(3)上に堆積させ得、その後、皮膚を生成物と接触させるためにヘッド(3)が皮膚に当てられる。代替的に、本デバイスは、(例えば、接着剤によって)固定されるように配置されるパッチなどの生成物のリザーバー(図示せず)に適用されるか、またはユーザの皮膚に重ね合わせるだけでもよい。別の可能性として、例示すると、デバイスは、特に所定の用量に従って生成物を供給することを可能にするために、空洞部(6)の近傍でヘッド(3)に着脱可能にまたは着脱不能にのいずれかで取り付けられる供給要素(図示せず)を追加的に含む。ヘッド(3)は、好ましくは、生体適合性のある材料または素材で作製される。
【0019】
共振器(1、2)は、遠位領域(5)に位置し、したがって、空洞部(6)の影響を受けない第1共振器(1)と、近位領域(4)に位置し、以下に説明されるように空洞部(6)の少なくとも一部を囲む第2共振器(2)を含む。共振器(1、2)は、狭帯域の超音波を放射し、各共振器(1,2)は所定の周波数で共振して動作するように意図される。
【0020】
第1共振器(1)は、例えば、円板のような形状であってもよく、使用時に、ユーザの皮膚に向かって、一般的に空洞部(6)の方を向いている前記皮膚に垂直な方向へ、第1周波数で超音波放射を放出する。さらに、使用時に第2周波数の波動を放射する第2共振器(2)は、中空であり、すなわち、第1周波数の波動が第2共振器(2)に当たることなく通過できるように、内側貫通孔(7)を含む。好ましくは、内側貫通孔(7)は、第1共振器(1)よりも大きく、第1共振器(1)が放射する波動がすべて、第2共振器(2)の孔(7)を通過するようになる。第2共振器(2)は、円形、四角形などの母線を有するか、円形または他のタイプの準線を有するか否かを問わず、環状体の形状を有し得る。好ましくは、円形トーラス、すなわちリングトーラス、または断面が長方形の環状体の形状を有する。
【0021】
第1共振器(1)は、第2共振器(2)に重ね合わされて配置されるが、当該第2共振器(2)に収容されていない、すなわち異なる高さに配置されている。重ね合わせることによって、前に示されるように、第1共振器(1)から放射された波動は、第2共振器(2)に衝突することなく、孔(7)を通過することが可能になる。
【0022】
第2共振器(2)の高さに相当する、ヘッド(3)の空洞部(6)の部分は、前記第2共振器(2)によって囲まれている。その結果、第2共振器(2)から放射される波動は、皮膚に対して実質的に平行となり、第1共振器(1)の作用による透過効果を増幅させることが可能となる。
【0023】
ヘッド(3)は、以下に説明されるように、共振器(1、2)を支持し、波動の経路の物理的連続性をもたらし、第1周波数および第2周波数での共振を引き起こすという3つの機能を有する。ヘッド(3)は、アルミニウムなどの金属製、あるいは、ポリプロピレンなどの生体適合性ポリマー材料製であることが好ましい。好ましくは、ヘッド(3)はモノブロック体である。共振器(1、2)はヘッド(3)上に組み立てられており、該ヘッドは、共振器(1、2)の誤作動を防止するために、共振器(1、2)が組み立てられると、共振器(1、2)から放射される波動がヘッド(3)から出る前にガス状物質に遭遇することなくヘッド(3)を循環するように構成される。例として、図2A図2B図3A、および図3Bに示されるように、ヘッド(3)は、第2共振器(2)の孔(7)に収容され、好ましくは孔(7)の周辺部を占有する収容部(13)を含む。好ましくは、収容部(13)は、ヘッド(3)と一体的に構成される。
【0024】
前述されるように、第2共振器(2)は、例えば、上記のリング形状を備えているため、孔(7)を有し、空洞部(6)がヘッド(3)の収容部(13)と共に孔(7)も占有するように、空洞部(6)と対応してヘッド(3)の内部に収容される。その結果、そして第一に、第1共振器(1)からユーザの皮膚に向かって放射される放射線は、孔(7)および空洞部(6)を通過して皮膚に到達する。第二に、第2共振器(2)によって水平方向に発生する波動は、ヘッド(3)から「無限」に漏れるのではなく、孔(7)から放射され、それによってヘッド(3)と空洞部(6)を通り、その理由で衝突してヘッド(3)自体の反対側領域に跳ね返り、水平方向すべてに発生するため、第2共振器(2)からの波動に対して空洞部(6)内に静止場が形成され、該静止場は、第1共振器(1)の波動と相互作用し、共振状況下で、ヘッド(3)と第2共振器(2)に囲まれた領域で皮膚に作用する効果を増大させ、影響を受ける皮膚の領域の透過性がさらに増大し、したがって供給効果も増大する。したがって、ウェアラブルに組み込まれ得るような小型のデバイスにおいて、所望の共振条件や強度条件を得ることが可能である。
【0025】
2つの共振器(1,2)のうちの一方は、第1共振器(1)または第2共振器(2)が放射する周波数は、他方の共振器(1,2)が放射するより高い周波数よりも著しく低い周波数である。低周波は、約20kHz~100kHzの典型的なLFSゾーン、すなわち超音波の最低ゾーンにある。ヒト聴覚の上限閾値である20kHzに近い値では、ユーザに聴覚的な不快感を与えるものの、満足のいく結果が得られる。50kHz~60kHzの間の55kHz環境内の周波数が好ましい低周波として選ばれている。さらに、その高周波は一般的なHFSゾーン、例えば、1MHz前後、800kHz~1200kHzの間である。第1周波数が高周波、かつ第2周波数が低周波の場合、あるいはその逆の場合でも、本発明は十分に機能する。
【0026】
本発明のデバイスの他の特徴は、上記に示される共振器(1、2)の構成とヘッド(3)への組込みとは別に、以下に説明されるように、共振の取り扱いである。
【0027】
前に示されるように、一方の共振器(1,2)は、HSF周波数で超音波を放射し、HSF周波数で共振するためにHSF周波数で供給されるように意図され、他方の共振器(1,2)は、LSF周波数で超音波を放射し、LSF周波数で共振するためにLSF周波数で供給されるように意図される。各共振器(1、2)は、その構造のため、ある振動モード、例えば、厚みモード、または半径方向モードに応じた基本振動数を有する。
【0028】
例えば、円柱(円板)形状の固体共振器(1、2)は、厚みモードの基本周波数を有し、共振器サイズを増加すると、該基本周波数が低下し、その逆もある。例えば、4MHzのセラミックは、厚み0.5mm、直径6mm、2MHzのセラミックは、厚み1mm、直径6mm、1MHzのセラミックは、厚み2mm、直径10mmとされ得る。すなわち、第1共振器(1)のようにサイズが減少した円板形状の共振器(1,2)は、適応を必要とすることなく、厚みモードのHFS周波数での共振を得るのに適している。
【0029】
しかし、第2共振器(2)のような、例えば、環状体形状の中空共振器(1、2)は、LFS周波数で厚みモード共振を動作させるために、ウェアラブルデバイスでは許容できない大きなサイズにならざるを得ない。
【0030】
前述の欠点を解決するために、本発明は、以下に示される2種類の解決策を提示し、これらは後に実施例において詳細に説明される。
【0031】
第1の解決策は、以下に説明されるように、LFS周波数で共振して動作するために、HFS範囲内の厚みモードの基本周波数を備えた、例えば、円板形状の固体である第1共振器(1)を使用し、ヘッド(3)に第1共振器(1)と接触することを意図したいくつかの構成要素(8、9、10)を含み、結果的に、第1共振器(1)+ヘッド(3)のアセンブリが物理的な連続性を有して形成され、LFS周波数が第1共振器(1)の厚みモードの基本周波数でないにもかかわらず、LFS周波数で供給されるとLFS周波数の伸長モードで共振するトランスデューサを構成することからなる。リングなどの中空形状を有する第2共振器(2)は、HFS周波数が供給されるとHFS周波数で共振するように、厚みモードの基本周波数がHFS範囲内にあり得る。以下、図2A図2Bに従って詳細に説明される第1実施例は、第1の解決策で説明された内容を裏付ける寸法や特徴を示す。
【0032】
さらに、第2の解決策は、リングのような中空形状の第2共振器(2)が、そのサイズと構造のため、厚みモードではなく、半径方向モードの基本周波数がLFS範囲内にあることを利用することからなる。したがって、第2共振器(2)はLFS周波数が供給されると、LFS周波数で半径方向モードで共振して動作することになる。さらに、円板形状の第1共振器(1)は、その寸法から、厚みモードの基本周波数がHFSの範囲内にあり、HFSの周波数が供給されると、HFSの周波数で共振する。以下、図3A図3Bに従って詳細に説明される第2実施例は、第2の解決策で説明された内容を裏付ける寸法や特徴を示す。
【実施例
【0033】
本発明のデバイスは、屈曲-伝達(図2Aと2Bを参照)や伝達-伝達(図3Aと3Bを参照)など、共振器(1、2)の異なる種類の動作に基づくことができる動作を有する。屈曲-伝達で動作する共振器(1、2)の場合、図2A図2Bによれば、好ましくは金属製である膜(8)が、全体的にヘッド(3)の一体部分として配置され、第1共振器(1)と接触した状態で屈曲によって振動する。さらに、ヘッド(3)は、一方が近位(9)で他方が遠位(10)である2つの突起部(9、10)をさらに含み得、突起部(9、10)は、第1共振器(1)と一体となって、所定のLFS周波数において伸長モードで共振して動作するために、膜(8)と協働する。図3A図3Bによれば、伝達-伝達の場合、同様にヘッド(3)は、振動を伝達するための伝達円板(14)を含み得るが、膜(8)は必要でない。
【0034】
空洞部(6)の高さは、好ましい例示的な実施形態によれば約1~2mmであるとともに、空洞部(6)内に収容可能である所望の生成物の内容物に基づき選択される第2共振器(2)の高さに関連しており、理由としては、量が少ないとユーザは空洞部(6)内の生成物を頻繁に交換しなければならず、同様に量が多いとより大きな量を投与するリスクが大きくなるからである。空洞部(6)は、使用時に、気体の存在を防止することでヘッド(3)から皮膚への超音波の伝達を可能にするべく、超音波伝導物質を含有する。超音波伝導物質は、超音波伝導性があれば、液体であってもよい、またはクリーム、ゲル、軟膏などの非液体性質を有してもよい。具体的に、超音波伝導性である場合、まさしく塗布対象の生成物とすることができる。本発明のデバイスは、上記のクリーム、ゲル、軟膏などの非液体性質の生成物を供給するためにも使用できる。そのためには、先ず本発明のデバイスは、キャビテーションの効果を発生させて皮膚の毛穴を開くために、無害な可能性がある超音波伝導物質と共に使用され、その後、デバイスを使用することなく、クリーム、ゲル、軟膏などの非液体性質の活性生成物を塗布して吸収させるために、先述の効果を利用する。
【0035】
例示的で非限定的な例として、ヘッド(3)は、断面が逆U字型であり、直径約25mm、高さ約2~10mm、好ましくは5~10mmであり、空洞部(6)の高さが約2~3,3mmである円筒形状を有する
【0036】
十分に高い音響圧力を達成して、十分な数のキャビテーション気泡を発生させ、キャビテーション気泡を爆縮させることによって皮膚の毛穴を開くという前述の複合効果を有利にするには、0.5W/cmを上回る、好ましくは1W/cmを上回る高超音波強度を生じる放射波が、より都合がよい。この意味では、1W/cmを上回る強度が十分に適していると考えられる。いくつかの法律による制限を満たすために、特に、皮膚損傷の結果生じるリスクを防ぐために、強度値を1W/cm~2W/cmの間に維持することが望ましい。
【0037】
2つの共振器(1,2)を備えたヘッド(3)の特徴の2つの例示的な例は、図2A図2B図3A、および図3Bで例示されるように、以下に示す。
【0038】
両方の例では、ヘッド(3)はアルミニウム製のモノブロック体である。代替的に、ポリプロピレン製のモノブロック体とすることもできる。
【0039】
屈曲-伝達と呼ばれる第1実施例(図2A、2Bを参照)によれば、以下の構成要素が含まれる。
-力を加えるためのセラミック円板として構成された第1共振器(1)であって、厚みが0.5mm~1mmの間で変動し、直径6mmであり、厚みの振動基本周波数が2MHzまたは4MHzである、第1共振器(1)。
-力を加えるためのセラミックにおいて、断面が長方形で円形の直交軸を有し、厚み2mm、外径20mm、内径14mmであり、厚みの振動基本周波数が1MHzの環状体として構成される、第2共振器(2)。
-直径11mmであり厚みが変動し、第1共振器(1)と第2共振器(2)の間に挿入され、第1共振器(1)に接触し、第1共振器(1)と一体となって、第1共振器(1)から供給される伸縮振動モードで振動させるための振動膜(8)。
-高さが変動し、直径11mmであり、膜(8)上にある空洞部(6)。
-一方が近位(9)で他方が遠位(10)であり、間に膜(8)が支持される2つの突起部(9、10)であって、遠位突起部(10)が外径14mm、内径8mmであり、近位突起部(9)が外径11mm、内径8mmである、2つの突起部(9、10)。突起部(9、10)は、膜(8)と協働して、第1共振器(1)と一体となって、所定のLFS周波数55kHzで共振して動作する。
-共振器(1,2)を固定するためのヘッド(3)であって、一部が膜(8)と突起部(9,10)で構成され、第1共振器(1)による伝達の振動が供給される、ヘッド(3)。
-ヘッド(3)の一部を構成し、孔(7)の周辺に近い区域に収容されることを意図される収容部(13)。
-厚みが変動し、第2共振器(2)とヘッド(3)の間にある接着剤層(12)。
【0040】
第1の実施例では、第2共振器(2)の結合された「厚み」モードが使用され、第2共振器(2)が付着されたヘッド(3)への直接伝達により共振振動が伝達され、第2共振器(2)の共振周波数は、第2共振器(2)の形状および材料に本質的に依存するが、わずかな変動はヘッド(3)の壁厚に起因する。同様に、第1共振器(1)は、第1共振器(1)の特徴、具体的に第1共振器(1)の全体的な屈曲、ならびに振動膜(8)および突起部(9、10)の構成に応じる、55kHzの屈曲モードで主周波数の供給源として使用される。
【0041】
さらに、伝達-伝達と呼ばれる第2実施例(図3A、3Bを参照)によれば、以下の構成要素が含まれる。
-力を加えるためのセラミック円板として構成された第1共振器(1)であって、厚み2mm、直径10mmであり、厚みにおける振動の主周波数が1MHzである、第1共振器(1)。
-力を加えるためセラミックで作製され、断面が長方形で円形の直交軸を有し、厚み2mm、外径20mm、内径14mmであり、半径方向振動の主周波数が55kHzである環状体として構成される、第2共振器(2)。
-第1共振器(1)の振動を伝達によって受信し、この振動を第1共振器(1)から空洞部(6)へと伝達するために、直径11mmで厚みが変動し、第1共振器(1)上に配置される伝達円板(14)。
-可変の高さが約3.5mm、直径11mmであり、伝達円板(14)の上にある空洞部(6)。
-共振器(1、2)を固定するためのヘッド(3)であって、一部が伝達円板(14)によって構成され、第1共振器(1)からの伝達によって振動を受けるヘッド(3)。
-ヘッド(3)の一部を構成し、孔(7)に収容されることを意図される収容部(13)。
【0042】
第2実施例では、第2共振器(2)の第1の半径方向モードを使用して、ヘッド(3)、具体的に収容部(13)の屈曲モードを、低周波数で、第2共振器(2)が付着されるヘッド(3)の壁に第2共振器の半径方向伝達によって刺激する。第2共振器(2)の最終周波数は、ヘッド(3)と一体となって、第2共振器(2)の全体的な屈曲に応じるものであり、この場合は55kHzである。さらに、第1共振器(1)は、HFS周波数の厚みモードによる直接伝達によって動作する。
【0043】
第2実施例では、第1実施例の場合とは異なり、振動膜(8)は組み込まれず、共振器(1、2)から空洞部(6)への波の直接伝達が推奨される。第1実施例は、第2共振器(2)が1~3MHzなどのHFSで放射するときに、第1共振器(1)と膜(8)が共同して55kHzなどのLFS周波数で共振させるために、屈曲振動する膜(8)を組み込んである。対照的に、第2実施例では、第1共振器(1)において、第1共振器(1)の放射周波数と共振周波数は類似しており、屈曲の代わりに伝達のみが存在するように1MHzに近い。したがって、2つの周波数には直接達成される伝達が存在するため、このモデルは伝達-伝達と呼ばれる。この2つの実施例では、第1周波数と第2周波数が入れ替えられている。第1実施例では第1周波数がLFS、第2周波数がHFSであり、第2実施例ではその逆となっている。
【0044】
2つの実施例のそれぞれについて、かつ全体として、本発明のいずれかの実施形態において、ヘッド(3)は、金属、例えば、アルミニウム、または代替的にポリマー、例えば、ポリプロピレンなどの生体適合性材料で作製できることが想定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
【国際調査報告】