(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】室内空気での病原体の蔓延を防止または最小化するための壁状の放射線場を有する照明器具およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20230724BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573658
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021000073
(87)【国際公開番号】W WO2021249668
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102020122343.9
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020125384.2
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522464388
【氏名又は名称】スマート ユナイテッド ホールディング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】ライナー プロハスカ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴィーゼル
(72)【発明者】
【氏名】ユリウス ムシャヴェック
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD11
4C058DD13
4C058KK02
4C058KK26
4C058KK28
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH17
4C180HH19
4C180KK04
4C180LL04
(57)【要約】
本発明は、部屋に1つまたは複数の放射源(10)を有する、ウイルスの蔓延を防止または最小化するための、および室内空気でのウイルスの蔓延を防止または最小化するためのシステムを前提とし、該放射源が部屋をいわゆるUV-Cライトウォールによってさらに小さなセグメントに分割し、部屋の中で1人または複数の人(P)の運動または存在を検知するためのセンサ機構と、人(P)の存在に少なくとも依存して1つまたは複数の放射源(10)を少なくとも部分的にオンまたはオフするために設計された制御部(16)とを有する。1つまたは複数の放射源(10)は、UV-C壁として作用する壁状の放射線場(10b)をそれぞれ生成し、それによって1つの部屋または複数の部屋を、ウイルスがUV-C光により不活性化されることでウイルスの蔓延を防止または最小化するさらに小さな部屋セグメントに分割するために設計され、制御部(16)は、センサ機構により検知された運動データが、人(P)のうちの1人が該当する放射線場(10b)を横切ろうとしていることを確からしいと思わせるときに、該当する放射源(10)を少なくとも部分的にオフにするために設計されることが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気の病原体に対するバリアを形成するための照明器具において、UV-C放射を放出する複数の発光手段(51,51a,51b;151.1,151.2)と、それぞれ前記発光手段(51,51a,51b;151.1,151.2)に付属する、放射を視準するための複数の光学素子(54,54a,54b;154U,154O)とを有し、前記複数の発光手段(51,51a,51b;151.1,151.2)およびこれらに付属する前記光学素子(54,54a,54b;154U,154O)が少なくとも1つのグループを形成し、1つのグループの内部で前記発光手段(51,51a,51b;151.1,151.2)から放出される視準された放射の放射方向Rは共通の面に、特に1つの平面に、位置している、照明器具。
【請求項2】
1つのグループの内部で前記発光手段(51,51a,51b)から放出される視準された放射の放射方向Rは互いに平行であり、または、1つのグループの内部のアンサンブルの放射方向Rは互いに平行であり、1つのアンサンブルは1つのグループの複数の発光手段(151.1,151.2)をこれに付属する光学素子(154U,154O)とともに含むことを特徴とする、請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
各々の前記グループが複数のアンサンブルを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記光学デバイス(54,55,154)は発散する放射割合を絞るための絞りデバイス(55)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
前記発光手段はLED(154.1,154.2)であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項6】
各々の前記発光手段(154.1,154.2)は前記照明器具(50)の長手方向で連続して配置された少なくとも2つのLEDチップ(176.1,176.2)からなることを特徴とする、請求項4に記載の照明器具。
【請求項7】
少なくとも1つのグループの前記発光手段(51,51a,51b)は下位グループ(57a,57b,57c;257a,157b,157c)に下位区分され、前記下位グループ(57a,57b,57c;257a,157b,157c)の発光手段(51,51a,51b)は共同で、ただし他の下位グループ(57a,57b,57c;257a,157b,157c)の発光手段(51,51a,51b)から独立して、オンオフ可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項8】
各々の前記下位グループが1つのアンサンブルに相当することを特徴とする、請求項7に記載の照明器具。
【請求項9】
前記照明器具は前記照明器具の中心平面に関して対称に配置された2つのグループを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項10】
前記照明器具(10,50,150)は天井組付けまたは壁組付けのための線形ライトとして構成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項11】
UV-C壁をなすように収束される、病原体を不活性化するUV-C放射は、200-222nmの、特に207-222nmの範囲内の波長を有する遠UV-C放射であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項12】
UV-C壁をなすように収束される、病原体を不活性化するUV-C放射は、223-280nmの範囲内の波長を有する、特に242nmを超える波長を有する、UV-C放射であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の1つまたは複数の照明器具(10,50,150)の形態の1つまたは複数の放射源(10)を有する、室内空気での病原体の蔓延を防止または最小化するためのシステムにおいて、
前記システムは、放射線場に対して隣接して形成される安全ゾーンでの1人または複数の人(P)または物品の侵入を検知するためのセンサ機構(14)と、人(P)および/または物品の存在に少なくとも依存して1つまたは複数の放射源(10,50,150)を少なくとも部分的にオンまたはオフするために設計された制御部(16)とを有し、前記制御部(16)は、前記センサ機構(14)が侵入を検知したときに、該当する前記放射源(10,50,150)を少なくとも部分的にオフにするために設計されることを特徴とする、システム。
【請求項14】
1つまたは複数の前記放射源(10,50,150)を保持するための可動のスタンド(20)を有することを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
1つまたは複数の前記放射源(10,50,150)は部屋セグメント(12)の区切りに沿って配置されるために設計され、前記制御部(16)は、1人または複数の人(P)が該当する部屋セグメント(12)にいるときに、該当する前記放射源(10,50,150)を作動化させ、人(P)が部屋セグメント(12)に入るときに、または出るときに、前記放射源(10,50,150)のうちの少なくとも1つを不作動化させるために設計されることを特徴とする、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項16】
前記部屋セグメント(12)の内部に病原体を不活性化および/または消毒する作用をもつ別の放射源(18)が配置され、前記制御部(16)は、前記部屋セグメント(12)に人(P)がいないときに、前記別の放射源(10)を作動化させるために設計されることを特徴とする、請求項13または15に記載のシステム。
【請求項17】
前記センサ機構は3DカメラないしTOFカメラおよび/または1つもしくは複数のCCDカメラを含むことを特徴とする、請求項13から16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサ機構(14)は少なくとも1つの光源を含み、前記光源から放出されて周囲の物体(62)により反射される光の反射された割合における変化を検出するようにセットアップされることを特徴とする、請求項13から17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記センサ機構(14)は安全ゾーンへの侵入を位置解像式に判定するようにセットアップされ、前記制御部(16)は侵入の場所をベースとして少なくとも1つの発光手段(51,51a,51b)のオフを行うようにセットアップされることを特徴とする、請求項13から18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
部屋の中の1つまたは複数の放射源(10)によって室内空気でのウイルスの蔓延を防止または最小化する方法において、
前記方法は、請求項1から12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの照明器具によって少なくとも1つの放射線場(10b)が生成されることと、部屋の中で1人または複数の人(P)もしくは物体(62)の運動または存在が検知されることと、人(P)または物体(62)の存在に少なくとも依存して1つまたは複数の前記放射源(10)の発光手段の少なくとも1つの部分が自動的にオンまたはオフされることを含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空気を消毒するための、および建物内での特にウイルスなどの病原体の蔓延を防止/最小化するための、壁状の放射線場を有する照明器具およびシステムに関し、並びに、これに対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に多くの人が共同作業をするところでの、および/または出入りするところでの、室内での衛生対策の健康上の意義は、世界的なコロナパンデミック以前から知られている。
【0003】
そこではUV放射によって室内空気を消毒するためのさまざまなシステムが、すでに提案されている。
【0004】
この目的に適った殺菌性のある放射はUV放射である。したがって好適な放射源は、一般に、およそ100から400nmの波長領域にあるUV放射を発するUVランプである。UV放射の内部では、UV-AからUV-Bを経てUV-Cへと波長が短くなっていくにつれて殺菌作用が増大する。したがって特別に好適なのは、特におよそ100から280nmの波長領域にあるUV-C放射を発するUV-Cランプである。およそ200から280nmの波長領域が好ましく、それは、この領域内では空気が放射に対して実質的に透過性だからである。このような種類の周知の放射源は、相応のUV光を放射するための水銀蒸気ランプ、または発光ダイオード、またはレーザダイオードである。
【0005】
殺菌性のUV-C放射は人の目や皮膚に有害であり得る。したがって、殺菌性のUV-C放射への暴露から人を守るための方策は、放射を収束させ、方向づけ、制限するためのミラー、絞り、および/またはシールドを含むことができる。これらは、放射が作用し得る空間領域での人の存在を検出するための、特に、放射源のすぐ前または横の領域での人の存在を検出するための、センサを含むのが好ましい。スイッチがセンサおよび放射源とリンクしていて、センサが人を検出すると放射源をオフにする。
【0006】
その一方で非特許文献1の論文には、遠UV-C光とも呼ばれる非常に短波長のUV-C光(207-222nm)が、暴露された哺乳類の皮膚を傷つけることなく、細菌を効率的に不活性化することが記載されている。その理由は、遠UV-C光が生体材料への強い吸収性に基づき、人の皮膚や目の外側の(生きていない)層を通り抜けることができないことにある。しかし細菌やウイルスはマイクロメートルもしくはそれ以下のサイズを有しているため、遠UV-C光はこれらに浸透して不活性化することができる。遠UV-Cは空気中のエアロゾル化したウイルスを効率的に不活性化することが示されており、222nm光の2mJ/cm2の非常にわずかな線量が、エアロゾル化したH1N1インフルエンザウイルスを95%以上不活性化する。
【0007】
人の存在を検出するのに適したセンサは、たとえば超音波センサやレーダセンサなどの人感センサであり、これらは、これらから発せられる超音波放射やレーダ放射が動いている人に当たって反射されたときのドップラー効果を利用し、または、動いている人によって引き起こされる熱放射の変化を家具の周囲で検出するパッシブ焦電センサ(PIRセンサ)である。近くにいる人をその動きに関わりなく検出することができる、たとえば容量式、光学式の超音波センサやレーダセンサなどの近接センサも適している。
【0008】
たとえば特許文献1より、病院の浴室ポッドを汚染除去するためのシステムが公知である。浴室ポッドの中にUV-C光源が配置され、人がその空間に入るとただちにこれがオフになる。
【0009】
特許文献2より、飛行機の客室に設置するためのUV放射源を有するシステムが公知である。乗客またはクルーメンバーが客室に入るときに、安全システムが放射源を作動化または不作動化する。
【0010】
特許文献3より、病室を汚染除去するための移動式のシステムが公知である。このシステムは病室に設置され、人がすべて部屋から出ているときに、タイマーを通じて始動する。
【0011】
特許文献4より、UV非透過性のビーム防護カーテンが公知であり、これを用いて、消毒されるべき部屋の特定の領域(たとえば大部屋の病室の1つのベッド)を隔離することができ、それによりUV放射源を用いての隔離された領域の消毒を可能にし、その間に、部屋の他の領域には人がとどまることができる。特許文献5より、パーティションを有し、その内側にUV放射源が配置される、同じ目的のための類似のシステムが公知である。
【0012】
消毒されるべき部屋に、またはUV防護により隔離された空間領域に、設置することができる、移動式のUV放射源がたとえば特許文献6や特許文献7から公知である。
【0013】
上に挙げたシステムの欠点は、汚染除去されるべき部屋から完全に人が出なればならないか、または、放射防護壁やカーテンなどの高いコストのかかる設置が必要になるかの、いずれかであることにある。予見できない頻繁な公衆の行き来がある空間では、このことは実現可能ではない。
【0014】
たとえば診療所の待合室など、恒常的に人がいる部屋の室内空気の連続的な消毒をするために、送風機、空調設備、またはベンチレータのハウジングの内部にUV-C放射源を配置することが知られている。たとえば特許文献8より、天井組付のためのこのような種類の装置が公知である。循環空気方式で作動するこのようなシステムの欠点は、該当する部屋の中にいる人の間での、場合により感染性のあるエアロゾルの拡散が依然として起こり得ることであり、状況によっては循環空気の空気流により、循環空気システムがない場合に起こるよりもいっそう急速にエアロゾルが伝搬することになる。
【0015】
さらに、閉鎖された空間内で空気の殺菌をする装置が特許文献9から公知である。この場合に光源としての役目を果たすのはUV光を放出する管であり、その放出された光が光学デバイスを用いて、可能な限り平行な光線へとフォーミングされることが意図される。この照明器具は作動時に、人が部屋の中にいる場合には、天井または上部の壁区域の方向にUV光を発するように向けられる。部屋のいっそう広い空気容積を殺菌できるようにするために、UV放射によって害を受ける恐れがある人が部屋の中にいない場合には、照明器具を回転させることができる。しかし発せられる放射に広がりがあるため、完全に人がいない領域の殺菌にしか照明器具を利用することができない。このことが成り立つのは、照射される領域が、人が通常いないほどの高さに位置する場合である。生成される放射線場のサイズは、ひとりの人から別の人へのウイルス伝播または一般に病原体の伝播を防止するための、人と人との間での動作を許容しない。
【0016】
本発明の課題は、人と人との間に放射線場が位置決めされたときにこれらの人の間で病原体の伝染を効果的に防止し、人の動きの自由度を損なうことがない、室内空気の病原体の蔓延を防止または最小化するための照明器具、ならびにこのような複数の照明器具により生成される壁状の放射線場を有するシステムを提供することにある。
【0017】
この課題は、請求項1の構成要件を有する、室内空気での病原体の、特にウイルスの蔓延を防止または最小化するための、壁状の放射線場の形態のバリアを形成するための照明器具によって解決され、ならびに、このような壁状の放射線場を有するシステムによって解決される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項から明らかとなる。本件の実施形態の意味における「バリア」は、ここでは機械的な区切りの意味で理解されるべきものではない。むしろバリアとは、病原体が、特にウイルスが、バリアの他の側へ到達することはできるものの、バリアを通過するときに不活性化されることを意味する。
【0018】
本発明は、1つの部屋または複数の部屋の放射源としての、室内空気での病原体の、特にウイルスの蔓延を防止または最小化するための照明器具、ならびにこのような1つまたは複数の照明器具を有するシステムに関し、特に、室内の1人または複数の人の運動または存在を検知するためのセンサ機構と、人間の存在に少なくとも依存して1つまたは複数の放射源をオンまたはオフするために設計された制御部とを有する。
【0019】
病原体に対するバリアを形成するために、照明器具は、殺菌作用の実現のためにUV-C放射を放出する少なくとも1つの発光手段を有する。以下においては簡略化のために、多くの場合においてウイルスだけを例示として対象に取り上げるが、本発明に基づいて形成されるバリアは細菌に関しても作用を奏する。1つないし複数の発光手段から放出される放射が光学デバイスによって視準され、それにより、厚みが長さと幅より少なくとも1つのオーダーだけ小さい、すなわち長さまたは幅の最大1/10である、放射線場が生じる。
【0020】
照明器具は、UV-C放射を放出する複数の発光手段を有する。好ましい発光手段はLEDである。従来技術で使用される管と比べたとき、LEDは狭帯域で利用可能であるという利点を有し、それにより、242nmを上回る波長を有する放射を模倣するLEDを照明器具のために選択することができる。それに伴い、生成されるUV光がオゾンの形成を引き起こさず、もしくはわずかな形成しか引き起こさないことが保証される。それに伴い、この照明器具は人がいる部屋での用途に特別に適している。したがって、殺菌によって発生するオゾンによる刺激が回避される。さらに照明器具の光学デバイスは、発光手段から放出される放射を視準するための複数の光学素子を含む。このとき各々の発光手段に、それぞれ少なくとも1つの光学素子が付属する。このときそれぞれの発光手段に付属する光学素子は、発光手段から放出されて1つまたは複数の光学素子を通して発せられる放射のサイズが、放射方向に対して垂直の方向で12cmよりも小さく、特に8cmよりも小さく、特別に好ましくは5cmよりも小さいように構成される。それに伴い、付属の光学素子を有するこのような複数の発光手段を相並んで配列することは、上に説明したサイズでの放射壁の形成を可能にする。
【0021】
すなわち光学デバイスは、発光手段から放出される放射が、互いに平行の2つの平面によって区切られる領域の内部でのみ実質的に射出されるような性質を有する。これらの平面の間隔が、上に挙げた厚みである。ここで「長さ」とは、照明器具から射出される放射の方向における寸法を表し、「幅」とは、長さと厚みに対して垂直の延在を表す。このとき長さは、たとえば照明器具が部屋の天井に組み付けられるときには床面までの距離である、放射方向における放射線場の少なくとも利用可能な延在として理解される。このとき部屋の典型的なサイズは最大で5mの高さを有し、それにより、少なくとも利用可能な5mの延在が意図されるのが好ましい。発光手段から放出される放射をいっそう強力に視準するのが好ましく、それにより、放射電磁場の最小長さと幅よりも2つのオーダーだけ厚みが小さくなるのが好ましい。
【0022】
部屋で使用されるべき照明器具については、厚みが、すなわち視準された放射が伝搬する平行の各平面の間隔が、少なくとも利用可能な5mの延在のもとで8cmの値を、好ましくは5cmの値を、超過しないのが特別に好ましい。放射線場およびこれに伴って照明器具の典型的な幅は、同じく最大5mであり得る。しかしながら照明器具をこれよりも短い長さで製作するのが好ましく、このことは組立と輸送を著しく簡易化する。そしてそれぞれの照明器具を、さらに大きい全幅を実現するために、一直線上に連続するように配置することもできる。
【0023】
このとき光学デバイスは、絞りデバイスも含むのが好ましい。この絞りデバイスは、放射線場から横へと放射割合が射出されるのを防止する。絞りデバイスはたとえば複数のチャネルによって形成されていてよく、これらのチャネルの総体が光射出面を形成し、または光射出面の手前で照明器具に配置され、照明器具から放出される放射全体をこのようなチャネルの総体を通してのみ射出することができる。このときチャネルの壁部は放出される放射を吸収する材料でコーティングされ、または吸収性の材料で製作される。このようにして、発光手段により放出される放射の視準された割合だけを、吸収されることなくチャネルを通過して射出することが実現される。放射の視準されていない割合に相当する散乱光は、絞りデバイスによって周囲へ射出されないよう妨げられる。このようにして、最終的に照明器具から出ていくUV-C放射を、仮想的な区切りとなる各平面の間で形成される領域だけに効率的に限定することができる。この領域がいわゆるUV壁を形成する。
【0024】
このとき複数の発光手段ならびにこれらに付属する光学素子が、少なくとも1つのグループを構成する。各々の発光手段について少なくとも1つの付属の光学素子によって生じる放射方向は、または、1つのグループのアンサンブルの放射方向は、同一のグループに属する全部の発光手段ないしアンサンブルについて互いに平行であり、共通の面に、特に1つの平面に、位置する。このとき1つのアンサンブルはそれぞれ複数の発光手段を含み、並びに、1つのグループ内部の相応の付属の素子を含む。それに伴って複数の個別の発光手段が、それぞれ発光手段に付属する光学素子とともに、上ですでに説明した壁状の放射線場の形成のために協同作用することができる。2つまたはそれ以上のグループが形成される場合、これらは特に、1つのグループの発光手段の放射方向が、他のグループの発光手段の放射方向に対して平行にアライメントされるように構成されていてよい。
【0025】
特に、光学素子は、1つの発光手段の視準された放射が、同一のグループの隣接する発光手段の視準された放射と重なり合うように、または少なくとも直接的に接するように、構成されて照明器具に配置されるのが好ましい。このようにして、それぞれ1つのグループに付属する発光手段の総体の放射線場が共同して隙間のないバリアを形成し、これを壁状の放射線場またはUV壁とも呼ぶ。個々の発光手段の間の同一の間隔を有するこのような複数のグループを互いに平行に配置し、各グループを照明器具の長手方向で互いにオフセットして配置することも考えられる。ただし長手方向の変位は、連続する発光手段の間の間隔よりも小さく、理想的にはこの間隔の半分である。このようにして、1つのグループの内部で隙間のない放射線場が生じていない場合にも、複数のグループの組合せによって、照明器具の長手方向に連続する共同の放射線場がもたらされる。
【0026】
発光手段の各々のグループがそれぞれの光学素子を含めて下位グループに分割されていてもよく、それぞれ異なる下位グループの発光手段の独立したオンとオフが可能になっていてよい。それに伴い、たとえばウイルスに対する比較的広いバリアを共同で形成する1つのグループの中から、発光手段の小さな部分だけをオフにすることができ、それは、その領域内で人に対する安全性リスクが生じ得ない限りにおいてである。それ以外の下位グループは、その間にオンにしたまま保つことができる。照明器具全体のすべてではない発光手段のオフは、少なくとも部分領域で放射線場を維持できるので、少なくとも部分的に防護が成立したまま保たれるという利点を有する。発光手段の1つのグループがどれだけの数の下位グループに下位区分されるかに関して、細かさを規定することができる。極端なケースでは、それぞれ1つの発光手段が1つの下位グループを形成する。
【0027】
さらに、上に説明した照明器具によって形成されていてよい1つまたは複数の放射源は、収束されたUV-C光によってUV-C壁として作用する壁状の放射線場をそれぞれ生成し、それによって1つの部屋または複数の部屋をさらに小さな部屋セグメントに分割し、ウイルスがUV-C光により不活性化されることで、ウイルスの蔓延を防止または最小化するために設計されることが提案される。センサ機構が用いられる態様では、制御部は、センサ機構により検知された運動データが、人のうちの1人が該当する放射線場に接近していることを示しているときに、該当する放射源またはその一部をオフにするために設計されるのが好ましい。
【0028】
放射線場へのこのような接近を想定することができるのは、たとえば放射線場に隣接して形成されてセンサ機構により監視される安全ゾーンへの物体の侵入をセンサ機構が確認した場合である。このとき物体の侵入は、人(ないし人の1つの身体部分のみ、たとえば指)、あるいはその他の物体も対象とすることができる。安全領域への物体の侵入が認識され、発光手段の相応の1つの下位グループまたは複数の下位グループが相応に(選択的に)オフされることで、反射された放射割合による人への間接的な危険が生じることも防止することができる。1つまたは複数の下位グループを選択的にオフにするために、安全ゾーンへの物体の侵入が少なくとも1つの次元に関して位置解像されて判定される。
【0029】
特に遠UV-C放射が利用される場合、上に説明した理由から、健康上の危険の心配がないものとしてセンサ機構とオフとを省略することもできる。
【0030】
特に、UV-C放射を高い強度で含む壁状の放射線場は、病原菌に対する拡散バリアを形成する。放射線場の強度と波長は、エアロゾルや液滴に含まれている可能性がある病原菌やウイルスが、壁状の放射線場を横断するときに死滅するように調整される。このようにして、このような種類の放射線場によって互いに隔離された部屋セグメントにいる人の感染確率を大幅に低減することができる。ウイルスが完全には死滅しなかった場合でも、口・鼻防護マスクや「ソーシャルディスタンシング」の対策の効果に匹敵する、またはこれを凌駕する、効果を得ることができる。
【0031】
まもなく放射線場が横断される確率を計算するアルゴリズムは、人の位置すなわち放射線場に対する人の近さに加えて、人の運動方向や運動速度も考慮することができ、ならびに、部屋の何らかの周辺条件を考慮することができる。このような周辺条件はたとえば家具によって定義されていてよく、その設置場所が制御部に保存される。通常の状況のもとでは、人がテーブルやパーティションの上に登ったり飛んだりすることは、発生の確率がきわめて低い。
【0032】
近似的に二次元の面を形成する、すなわち、長さや幅よりも小さい少なくとも1つのオーダーだけ小さい厚みを有する、放射線場のことを「壁状の」放射線場と呼ぶものとする。壁状の放射線場は、特に、密接して相並んで位置して平行に向く複数のビームから、特にレーザビームから、構成することもできる。
【発明の概要】
【0033】
本発明は、たとえば大規模オフィス、学校の教室、大部屋の病室、レストラン、工場の作業場など、人のいるさまざまな部屋で適用可能である。
【0034】
Welch et.Alの論文との関連で上で検討した利点があることから、ウイルスを不活性化するUV-C放射が200-222nm、特に207から222nmの範囲の波長を有する遠UV-C放射である実施形態が特別に好ましい。技術的に成熟した放射源であることから、およびコスト面の理由から、特定の適用分野では223-280nmの波長領域が好ましい場合もあり得る。
【0035】
さらに、1つまたは複数の放射源が、天井組付または壁組付のための線形ライトとして構成されることが提案される。各々の放射源が、たとえばLEDやレーザダイオードなどの1つまたは複数のUV-C放射器を装備していてよく、または、水銀蒸気ランプやポンピングレーザなどの比較的強力なUV光源を含むことができ、その光を適当な光学機構によって扇形に分割して、所望の壁状の形態を生成することができる。組付可能な線形ライトとしての実施形態により、部屋に後付けをする場合も含めて、フレキシブルな使用が可能である。
【0036】
1つまたは複数の放射源を保持するための自由に可動のスタンドをシステムが含んでいると、空間的な所与の条件が壁組付や天井組付を許容しない領域でもシステムを適用可能である。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態では、1つまたは複数の放射源はそれぞれ平行に延びる複数の放射線場を生成するために設計され、それにより二重壁または多重壁が生成される。それにより、防護効果をいっそう向上させることができる。
【0038】
さらに、1つまたは複数の放射源は部屋セグメントの区切りに沿って配置されるために設計されることが提案され、制御装置は、1人または複数人の人が該当する部屋セグメントにいるときに、該当する放射源を作動化するために設計され、および、人間が部屋セグメントに入るときに、または出るときに、放射源のうちの少なくとも1つを不作動化するために設計される。
【0039】
さらに、部屋セグメントは規則的な格子を形成することが提案される。それにより、広面積の部屋をフレキシブルにカバーすることができる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、消毒または不活性化の作用を有する別の放射源が部屋セグメントに配置される。そして制御部は、部屋セグメントに人がいないときに、別の放射源を作動化させるために設計されていてよい。それにより、人が部屋セグメントにいない間に、表面、コンピュータ、椅子などを効果的に消毒することができる。
【0041】
さらにセンサ機構は、該当する部屋セグメントで人の三次元の位置と姿勢を検知できるようにするために、および評価できるようにするために、3DカメラないしTOFカメラおよび/または1つもしくは複数のCCDカメラを含むことが提案される。
【0042】
本発明のさらに別の態様は、部屋の中の1つまたは複数の放射源によって室内空気でのウイルスの蔓延を防止または最小化する方法に関し、任意選択として、部屋の中で1人または複数人の人の運動または存在が検知されることを含み、および、人の存在に少なくとも依存して1つまたは複数の放射源が自動的にオンまたはオフされることを含む。
【0043】
1つまたは複数の放射源は、UV-C壁として作用し、それによって1つの部屋または複数の部屋をさらに小さな部屋セグメントに分割し、ウイルスがUV-C光により不活性化されることでウイルスの蔓延を防止または最小化する壁状の放射線場をそれぞれ生成するために設計され、本方法は、センサ機構により検知された運動データが、該当する放射線場を人のうちの1人が横切ろうとしていることを確からしいと思わせるときに、該当する放射源がオフにされることを含むことが提案される。
【0044】
さらに本発明は、部屋でのウイルスの蔓延を防止または最小化するための、および室内空気を消毒するためのシステムに関し、1つまたは複数の組み合わされた放射源を有し、1つまたは複数の組み合わされた放射源が収束されたUV-C光を、いわゆるライトウォールを形成し、それによって部屋をさらに小さいセグメントに分割し、ウイルスがUV-C光によって不活性化されることでウイルスの蔓延を防止または最小化し、人感センサとの組み合わせで、人が接近したときに個々のUV-Cライトウォールがオフにされ、または、人が離れたときに再びオンにされ、および、1つまたは複数のUV-Cライトウォールによって生じた個々の区画に区分された空間を照射して、エアロゾル(空気中に存在するウイルス)を不活性化させる追加のUV-C放射器を有することを特徴とする。
【0045】
その他の構成要件や利点は、以下の図面の説明から明らかとなる。発明の詳細な説明の全体、特許請求の範囲、および図面は、本発明の構成要件を特別な実施例と組み合わせで開示している。当業者はこれらの構成要件に単独でも着目し、別の組み合せまたは下位の組み合せをなすようにまとめて、特許請求の範囲に定義されている発明をニーズや特別な利用分野に合わせて適合化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】国際公開第2016049143A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第9,550,006B2号明細書
【特許文献3】米国特許第9,095,633B1号明細書
【特許文献4】国際公開第2015054389A2号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2014100493A1号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2012142427A1号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,656,424B1号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2009004046A1号明細書
【特許文献9】韓国特許第102152810号明細書
【非特許文献】
【0047】
【非特許文献1】D.,Buonanno,M.,Grilj,V.et al.”Far-UV-C light:A new tool to control the spread of airborne-mediated microbial diseases”Sci Rep 8,2752(2018)
【図面の簡単な説明】
【0048】
図面は次のものを示す。
【
図1】本発明の第1の実施例に基づく、室内空気でのウイルスの蔓延を防止または最小化するためのシステムを示す図である。
【
図2a】
図1のシステムの個々の部屋セグメントを3つの異なる状態で示す図である。
【
図2b】
図1のシステムの個々の部屋セグメントを3つの異なる状態で示す図である。
【
図2c】
図1のシステムの個々の部屋セグメントを3つの異なる状態で示す図である。
【
図3a】本発明の2つの異なる実施例に基づく、放射源および壁状の放射線場を示す模式的な断面図である。
【
図3b】本発明の2つの異なる実施例に基づく、放射源および壁状の放射線場を示す模式的な断面図である。
【
図4】バリアとしての壁状の放射線場を生成するための放射の収束を説明するためのグラフである。
【
図5】絞りデバイスの機能を説明するために
図4の一部分を示す拡大図である。
【
図6】隣接する発光手段の光学素子の配置についての例を示す図である。
【
図7】生成される放射線場を示す断面図であり、センサ機構によって監視される安全ゾーンの図が付されている。
【
図8】リフレクタユニットを用いて壁状の放射線場の一区域を共同で形成するための複数の発光手段素子を有する機構を説明するための図である。
【
図12】
図11のレンズと発光手段素子の配置を示す回転した図である。
【
図14】アンサンブルのリフレクタ面を示す図である。
【
図15】リフレクタユニットの第1のリフレクタ部分面についての照明強度分布を示す図である。
【
図16】リフレクタユニットの第2のリフレクタ部分面についての照明強度分布を示す図である。
【
図17】リフレクタユニット全体についての照明強度分布を示す図である。
【
図18】安全ゾーンへの物体の侵入が認識されたときの下位グループの選択的なオフを説明するための側面図である。
【
図19】本発明によるシステムの放射源のためのスタンドを有する、本発明のさらに別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
部屋の中の人間が空気を通じて伝染可能な病原体に感染することに対する、本発明から得られる防護を実現するための本発明による照明器具を説明するための具体的な実施形態に立ち入る前に、まず、本発明による照明器具を用いて実現されるシステムについて説明する。
【0050】
図1は、本発明に基づくシステムの第1の実施例を示しており、すなわち、大規模オフィスの室内空気でのウイルスの蔓延を防止または最小化するためのシステムを示している。この大規模オフィスは、列をなして配置された作業場と通路とを有する、直方体の部屋セグメントに分割された基本輪郭を有している。各々の作業場が、作業デスク、椅子、および棚を装備している。ただし本発明はこれ以外の部屋にも適用可能であり、たとえばそれぞれ相違する大きさの作業場を有する部屋や、オープンスペースコンセプトを有するオフィスにも適用可能である。
【0051】
部屋の天井に、放射源10の格子状の機構が取り付けられている。各々の放射源10は、1つまたは複数のUV-C放射器10a(
図3a,3b)を有する、たとえば水銀蒸気放電ランプ、LED、レーザダイオードなどを有する線形ライトであり、それぞれ壁状の放射線場10bを生成する。ここではLEDまたはレーザダイオードの使用が特別に好ましい。そのようにして、各部屋セグメントの間でバリアとして作用する、非常に幅の細い放射線場を生成できるからである。このようにして、部屋セグメントの中で感染者から出た病原体が、これらのバリアを通過して隣接する部屋セグメントへと達することがない。放射線場10bは、特に、207-222nmの範囲の波長を有する、短波長の遠UV-C放射を含むことができる。適当なフィルタにより、有害な波長をフィルタアウトすることができる。LEDまたはレーザダイオードの使用は、それ以外であればオゾンの形成に対する防護のために必要となるフィルタを省略することを可能にする。LEDは十分に狭帯域で利用可能であり、それにより、オゾンの形成についての242nmの臨界波長を完全に上回り、それにもかかわらず、所望の殺菌効果のために十分に短波長である波長領域を選択することができる。この領域内ではLEDの効率も、必要な照射強度を得るために十分に高い。遠UV-C放射を生成するために、特に、Kr-Cl混合ガスを含むエキシマランプが考慮の対象となる。以下においては便宜上、壁状の放射線場10bのことをUV-C壁とも呼ぶ。
図1,2aおよび2bでは、本来は目に見えないUV-C壁10bが、垂直に下方へと向かう白色の矢印として図示されている。
【0052】
壁状の放射線場10bを生成するために、放射を光学式に、またはスリット絞りによって、平行なビームへと収束ないし視準することができ、これについては
図4から17を参照して後でまた詳細に説明する。その代替または補足として、横に重なり合う放射プロファイルを有する平行のレーザビームを配置することによって、放射線場10bを生成することができる。さらに別の代替案は、1つの面で高速に往復運動する、ないしはスキャンされる、1つまたは複数のレーザビームであり-バーコードスキャナの場合に類似-、この場合、スキャン速度とビーム直径は、UV-C壁10bを通過して拡散する各々のエアロゾルが十分な放射線量に暴露されるように相互に調整される。
【0053】
部屋セグメント12はそれぞれUV-C壁10bによって互いに区切られている。
図1に示す実施例では、各々の部屋セグメント12が4つのUV-C壁10bによって区切られる。
【0054】
固体の壁が部屋に存在している場合には、これが部屋セグメント12の区切りを形成するので、
図1にはそのような特殊ケースは図示していないが、部屋の縁部や角部では、存在する固体の壁に加えて3つないし2つの別のUV-C壁10bによって部屋セグメント12が区切られるだけでよい。固体の壁で区切られる空間、たとえば個室オフィス、音響遮断された談話領域などが、部屋セグメント12を形成し、これがドア開口部や出入口を通じてのみ他の部屋セグメント12との間でエアロゾルを交換することができる、本発明の実施形態も考えられる。このようなケースでは、該当するドア開口部ないし出入口をUV-C壁10bによって、残りの部屋セグメント12から遮蔽すれば十分である。
【0055】
途中までの高さの壁や、パーティションなどの構造物を、UV-C壁10bによって天井まで延長ないし拡張することができる。このようなケースでは、該当する構造物の上面にも放射源10を組み付けて、天井に向かって上方へと放射させることができるであろう。
【0056】
さらに線形ライト10には、部屋の中の1人または複数人の人Pの運動または存在を検知するためのセンサ機構14のセンサ14a(
図3a,3b)が配置されている。
【0057】
中央の制御部16が、適当なソフトウェアにより、1つまたは複数の放射源10を、または個々の放射源10の少なくとも一部を、人Pの存在に少なくとも依存してオンまたはオフにするために設計されており、これについては以下で詳細に説明する。そのために制御部16は信号回線を介して、または無線式に、たとえばWLANを通じて、放射源10と通信する。
【0058】
制御部16は、人Pの位置データと運動データを評価して、人Pのさまざまな移動経路ないし運動についての確率を計算する。人Pが静止しており、すべてのUV-C壁10bから十分な距離をおいて作業場に座っているとき、次の何分の1秒かにUV-C壁10bを横切ることはあり得そうにない。一方、複数のUV-C壁10bによって部屋セグメント12に分割された通路を人間がスムーズに歩いているときには、次のUV-C壁10bを横切る時点を良好に予測可能である。健康上のリスクがあるため、わずかな確率があるだけですでに放射源10がオフにされるが、このとき閾値は、遠UV-Cビームが利用される場合にはリスクが低いので、これよりも長波長のUV放射タイプの場合よりも高い値に設定することができる。
【0059】
センサ機構14により検知された運動データを参照して、UV-C壁10bの横断について十分な確率が断定されると、制御部16は該当する放射源10を、または少なくともその一部を、オフにする。一部だけをオフにするために、放射源10に放射器として設けられる発光手段の総体がグループに、および場合により下位グループに区分され、これについては以下において放射源10としての照明器具の詳細な説明のなかで説明する。それに対して、放射源10で長手方向に延びる1つの発光手段が使用される場合には、発光手段全体のオフだけが可能である。別案として切換可能な絞りが設けられていてよく、これによって特定の領域がオフにされる。
【0060】
したがって、人Pは部屋の中を自由に動くことができる。その際に人Pが2つの部屋セグメント12の間の境界面を横切るとき、制御部16は、この境界面を形成するUV-C壁10bをオフにし、人が完全に第2の部屋セグメント12にいるときにUV-C壁10bを再びオンにする。
【0061】
1人または複数の人Pが該当する部屋セグメント12にいる場合、通常、該当する放射源10は作動化したままに保たれ、それにより、液滴やエアロゾルの中にいるウイルスや細菌が部屋セグメント12から出るときに死滅する。それにより、異なる部屋セグメント12にいる人Pが、バリアにより形成される放射線場によって互いに遮蔽される。人Pが部屋セグメント12にいる間には放射源10が作動化したまま保たれるので、散乱光による健康上の害を回避するために、放射源10から入射するUV-C光を吸収する線形吸収材が床に取り付けられていてよい。
【0062】
人PがUV-C壁10bを通って部屋セグメント12に入ろうとするとき、またはこれから出ようとするときにのみ、相応のUV-C壁10bに付属する放射源10が不作動化される。
【0063】
部屋の中の人の運動の、上に説明した検出の代替または追加として、放射線場に直接的に隣接して設けられる安全ゾーンに人または物品が侵入することが、センサ機構によって認識されることが意図されるのが好ましい。このような方式については、以下において
図7および18を参照しながらさらに説明する。このとき安全ゾーンへの任意の物体の侵入が評価されるのは、人または人の身体部分の直接的な照射を防止するだけでなく、生じる可能性のある反射も回避するためであり、このような反射によって、滞在している人が放射線場と距離をおいていても同じく害を受ける可能性がある。UV壁に直接的に隣接して形成される安全ゾーンの監視は、特に、このような安全ゾーンのすぐそばにまで達する動きが、まだUV壁の少なくとも1つの部分のオフにはつながらないという利点をもたらす。考えられる1つのシナリオは、本発明による放射源10ないし以下にさらに説明する照明器具が、レストランのテーブルの上に配置されることにある。このようなテーブルに座っている人が行うであろう典型的な動きは、UV壁から十分に距離をおいている領域で行われる。それに対して、たとえば対面している人に何かを渡そうとして、人がテーブルの上に手を伸ばすと、このことが安全ゾーンへの侵入時に認識されて、放射源10の相応の部分または全体がオフになる。このように、放射線場の僅少な厚みをもって人と人の間でバリアが形成され、一緒に1つの部屋にいる人と人との間で典型的に存在する距離を広げなくてよい。したがって、ひとりの人から次の人への病原体の飛散を防止する、本発明による人と人の間でのバリアの形成は、人と人の間での病気の伝染に対する確実な防護を可能にし、人が自身の行動を適合化しなくてよい。
【0064】
病原体の伝染は空気を介して行われる。屋内空間での空気運動の典型的な速度が0.1m/sを超えることはない。病原体を確実に不活性化するためには、これが照射によって最小エネルギ量を受け取らなければならない。すでに挙げた少なくとも0.6m/cm2のもとで、好ましい厚みdを有する放射線場でのウイルスまたは細菌の滞留時間は、不活性化を実現するのに十分に長い。それに対して従来技術では、これよりも大幅に大きい放射線場の容積すなわち厚みも必要となる。そこで典型的に実現されるさらに低い照射強度のもとでは、死滅のためにいっそう長い滞留時間が必要だからである。
【0065】
天井の中央部には、ウイルスを不活性化ないし消毒する作用を有する別の放射源18が部屋セグメント12に取り付けられている。
【0066】
制御部16は、部屋セグメント12に人がいないときに、別の放射源18を所定の時間インターバルのあいだ作動化するために設計される。この放射源18も、該当する部屋セグメント12に人Pが入ったときオフにされる。該当する部屋セグメント12の消毒がオフになっているか否かを人Pに知らせるために、発光ダイオードまたは信号システムが設けられていてよい。放射源18に統合されたセンサをセンサ機構14が含む、本発明の別の実施形態が考えられる。放射源18は、天井外装タイル、ランプ、または換気グリッドに組み込まれていてよく、または、たとえば煙感知器などの他の器具とともに1つのハウジングに組み込まれていてよい。
【0067】
図2a-2cは、
図1のシステムの単一の部屋セグメント12を3通りの異なる状態で示している。
【0068】
図2aに示す作業状態では、4つのUV-C壁10bによって区切られる部屋セグメント12の中で人Pが作業をしている。4つすべてのUV-C壁10bがオンになっており、それにより、エアロゾルに含まれる病原菌が、隣接する部屋セグメント12の間の境界面を横切るときに不活性化される。
【0069】
図2bに示す消毒状態では、人Pが部屋セグメント12の中で作業を終えて外に出ている。部屋セグメント12を出るときには、人Pの検知される動きに基づき、4つのUV-C壁10bのうちの1つがオフになる(図示せず)。4つすべてのUV-C壁10bがオンになっており、それにより活性のある病原菌が外に出ることができない。これに加えて、天井の中央に取り付けられた放射源18が所定の時間帯のあいだ作動化されて、作業場所の表面や部屋セグメント12の内部に浮遊している病原菌も死滅させる。
【0070】
図2cに示す休止状態では殺菌がオフになり、部屋セグメント12の中に人Pがいない。エネルギ節約のために、4つすべてのUV-C壁10bおよび天井に取り付けられた放射源10もオフにされる。
【0071】
図3aは、本発明の第1の実施例に基づく、放射源10および壁状の放射線場10bの模式的な断面図を示している。放射線場10bは、光学的に可能な範囲内で一定の約1cmの厚みを有している。
【0072】
上で説明したように制御部16は、部屋の中の1つまたは複数の放射源10によって室内空気でのウイルスの蔓延を防止または最小化する方法を具体化する。この方法は、部屋の中の1人または複数の人Pの運動または存在が検知されることを含み、および、人Pの存在に少なくとも依存して1つまたは複数の放射源10が自動的にオンまたはオフされることを含む。
【0073】
この方法に基づき、センサ機構14により検知された運動データが、人Pのうちの1人が該当する放射線場10bを横切るであろうことが、或いは人ないし物体が安全ゾーンへ侵入するであろうことが、確からしいと思わせるときに、該当する放射源10がオフにされる。
【0074】
図3bは、本発明の別の実施例を示している。繰り返しを避けるために、この実施例についての以下の説明は、基本的に、本発明の第1の実施例との相違点だけに限定する。構成要件に変わりはないので、当業者は第1の実施例に関する説明を参酌することができる。別の実施例の同一または類似の作用をする構成要件には、類似性を強調するために同じ符号が使われている。
【0075】
図3bに示す実施例では、放射源10は、たとえば50mmよりも小さい厚み、好ましくは40mmよりも小さい厚み、さらに好ましくは25mmまたは1mmの厚みと、たとえば1mmの間隔とを有することができる、平行に延びる複数の放射線場10b’-10b”を生成するためにそれぞれ設計される。平行な放射線場10b’-10b”の間のこれよりも広い間隔も可能であるが、所要スペースを増やしてしまう。放射線場10b’-10b”のこれ以外の個数も考えられる。
【0076】
上に説明したシステムを構成するために、放射源10として、
図4に示す実施形態に相当する照明器具50が利用されるのが好ましい。図面が模式的なものにすぎず、いかなる寸法比率の正確な反映も主張しないことに留意すべきである。むしろ適切と思われるところでは、本発明を容易に理解可能となるように寸法比率を調整している。
【0077】
図4に示す照明器具50は複数の発光手段51を有しており、この断面図によって発光手段51のうちの1つだけを
図4に見ることができる。さらに照明器具50は、UV-C放射に対して非透過性であるハウジング52を有している。ハウジング52は射出開口部53を備えていて、これを通して、発光手段51により生成されたUV-C放射を照明器具ハウジング52から射出することができる。図示した実施例では、照明器具50は部屋の天井に組み付けるために意図される。当然ながら、部屋の壁への組付けを行うこともできる。以下に説明する機能は、照明器具50の向きには左右されない。
【0078】
発光手段51は、リフレクタ54によって視準される、病原菌を死滅させるUV-C放射を放出する。リフレクタ54は、発光手段51から放出される放射を視準することができる光学素子の1つの例示である。これ以外の光学素子、たとえば相応に構成されたレンズなども、同じく考えられる。放出される放射の視準のために利用される光学素子の選択と特徴は、たとえば経済的または製造工学的な視点から、もしくは効率に基づいて行うことができる。
【0079】
回転対称のリフレクタ54の内面で反射される放射を、視準された放射と呼ぶ。発光手段51から放出される放射のこのような視準された割合が射出開口部53から射出され、視準により、視準される放射は直径dを有する仮想的な円筒の内部でz軸の方向に射出開口部53から射出される。リフレクタ54のジオメトリーは、5mの最大長さLで見積ることができる典型的な部屋の高さまたは部屋の寸法について、視準された放射の直径が常に8cmよりも小さく、好ましくは5cmよりも小さくなるように選択される。このような指定は好ましい値にすぎないことに留意すべきである。放射方向に対して横方向でのこのように小さい広がりを可能にするために、LEDが発光手段51として利用されるのが好ましい。直径dの内部で実現される照射強度は0.6mW/cm2よりも高く、それにより、バリアの放射線場に侵入する病原体が確実に死滅することが保証される。それぞれ大きな空気容積を照射する、従来技術から知られているシステムとは異なり、すでにわずかな経路区間で、視準された放射の直径dに相当する放射線場の厚みを通して病原体の不活性化を行うことができる。
【0080】
照明器具50の長軸は、紙面に対して垂直である。断面で示している発光手段51およびリフレクタ54の配置が照明器具50の長軸に沿って繰り返され、照明器具50に配置される複数の発光手段51およびそれぞれこれに付属するリフレクタ54が1つの線に沿って、好ましくは直線に沿って、配置される。それに伴い、照明器具50に配置される発光手段51およびそれぞれこれに付属するリフレクタ54は、
図4の図示した実施形態では共同で単一のグループを形成し、個々のすべての発光手段51およびこれに付属するリフレクタ54の放射方向Rが互いに平行にアライメントされて、1つの平面に位置する。その代替として、放射方向が湾曲した面に位置していてもよいが、1つの平面であるのが好ましい。したがって以下においては、一般性を損なうことなく、代表として1つの平面について取りあげる。
【0081】
以下でさらに詳しく説明するとおり、隣接するリフレクタ54がこの線に沿って配置されて、直径の内部で隣接するリフレクタ54によりそれぞれ視準される放射が互いに直接的に接し、領域Aの放射が重なり合い、そのようにして、発光手段51の視準された放射の総体が壁状の放射線場10bをウイルスに対するバリアとして生成するようになっている。照明器具50の長手方向および照射方向に対して垂直の方向におけるこの壁状の放射線場10bの最大の広がりは、すなわちy軸の方向への伸長は、2つの仮想的な平面E1およびE2によって区切られる。それに伴い、これら両方の平面E1およびE2の間隔は、仮想的な円筒の直径dに相当する。
【0082】
ここでは発光手段51とリフレクタ54は、視準された放射の強度が病原菌を死滅させるのに十分であるように、特に、上で説明したとおり0.6mW/cm
2よりも高くなるように、相互に調整される。それに対して、こうして形成されるUV壁10bの外部では、放射はクリティカルでない強度でのみ存在する。このような放射は、発光手段51から放出される放射の視準されていない割合によって生じ、すなわち、反射されずにリフレクタ54から外に出る割合によって生じる。
図4ではこのような放射割合が、平面E1とE2の間の領域の外部で個々のビームによって示されている。このとき領域Aでの放射強度は、人への健康上の害が起こり得ない程度に低い。
【0083】
安全性を向上させるために、絞りデバイス55が照明器具50の射出開口部53の領域に配置されるのが好ましい。絞りデバイス55がそれ自体で射出開口部53を形成することができ、或いは照明器具50のハウジング52の内部に、或いは外部に、配置されていてもよい。絞りデバイス55の作用形態については、以下で
図5を参照しながら詳しく説明する。絞りデバイス55により、発光手段51から放出される放射の視準されていない割合が遮断され、すなわち、開口部53からの射出が妨げられることが保証される。
図4に図示するように、発光手段51から直接放射されるこのような割合は、平面E1およびE2によって区切られるUV壁の外部で、領域Aを照明することになる。すなわちこれらの領域では、そこに存在するUV-C放射のクリティカルな強度が発生する限りにおいて、安全リスクなしに人がとどまることができないことになる。絞りデバイス55の厳密な位置決めには関わりなく、絞りデバイス55は、照明器具50のハウジング52から出る一切の放射が絞りデバイス55のチャネルを通過しなければならないように寸法決めされて位置決めされる。
【0084】
さらに
図4には、センサ機構の一部であり、その情報処理が制御部16に統合されていてよいセンサ14aが照明器具50に配置されることが示されている。図示した実施例では、制御部16は照明器具50に統合されている。しかし少なくともセンサ14aの信号が、或いはすでに評価された結果が、制御部16へと伝送される、それにより、これによって評価された信号をベースとして発光手段51のオンないしオフが可能である。
【0085】
図5は、発光手段51とリフレクタ54を絞りデバイス55とともに拡大図として示している。絞りデバイス55のチャネル56が模式的に示されており、これらは放射方向Rに対して平行に延び、そのようにして視準された放射を通過させ、それに対して、放射方向Rに対して斜めに延びる放射割合はチャネル56の内壁に入射する。内壁で反射される可能性があるビームそのものからも危険が生じないことを保証するために、チャネル56の内壁はUV-C放射を吸収する材料でコーティングされ、或いは、絞りデバイス55がそのような材料で製作される。
【0086】
絞りデバイス55は各々のリフレクタ54について個別に設けられていてよく、たとえばリフレクタ54の開口部を覆うことができ、または、リフレクタ54の総体について共通の絞りデバイスが設けられていてよい。
【0087】
さらに、照明器具50の詳細な説明については、複数の個別の発光手段51が、最終的にUV壁を形成する放射を共同で放出することが前提とされていることに留意すべきである。しかしながら、長手方向に延びる1つの発光手段を放射の生成のために利用することもできる。
【0088】
図6は、第1のリフレクタ54aおよび第2のリフレクタ54bの形態の隣接するリフレクタ54の反射面の断面図を、著しく簡略化して示している。両方のリフレクタ54aおよび54bは、壁状の放射線場10bの境界としての仮想的な円筒の直径dよりも、ないしは仮想的な平面E1およびE2の間隔dよりも、小さい間隔aをおいて照明器具50に配置されている。
【0089】
図示した実施例では、照明器具50に設けられる全部のリフレクタ54が同一のジオメトリーを有することを前提としている。したがって、これに伴ってそれぞれ発光手段51からその付属のリフレクタ54を用いて放出される視準された放射は、放射ジオメトリーに関して同じである。原則として、隣接するリフレクタ54について相違するジオメトリーを適用することも考えられる。その場合、回転対称のリフレクタが使用されるときのそれぞれの対称軸の間隔は、視準された放射を包絡する仮想的な円筒が互いに交差するように適合化される。隣接するリフレクタの視準された放射の重なり合いを実現するために、隣接するリフレクタは、それぞれの放射方向が僅少な角度を互いに形成するように配置されていてもよい。このとき特に第1、第3、第5...のリフレクタは、その放射方向が互いに平行であるが、第2、第4、第6...のリフレクタの放射方向との間では角度を形成し、その放射方向がやはり相互に平行であるように配置される。
【0090】
さらに上ですでに示唆したとおり、本発明による照明器具50ないしシステム全体の作動のためには、放出されるUV放射が人に当たり、そのために害が生じ得ることを高い信頼度で防止できることが必要である。システムとの関連ですでに説明した、人の動きの予測や人がいる場所の検出に加えて、放射線場に接して、すなわち平面E1およびE2に隣接して、定義される安全ゾーンへの直接的な侵入も検出することができる。
図7は、そのような安全ゾーンへの侵入の検出が可能となるセンサ機構を、著しく簡略化して示している。
【0091】
センサ14aを用いて、図示した実施例では、いわゆるラインレーザ(線形レーザ)60から放出された放射が表面に当たったときに生じる反射が検出される。図示した実施例では、レストランで典型的であるように、UV壁10bの両側に人がいる可能性があることを前提としている。したがってUV壁10bの両方の側にラインレーザ60が設けられ、並びに、レーザビームの反射を検出するための付属のセンサ14aとしてのカメラが設けられる。UV壁10bの左側に見られるように、左側に配置されたラインレーザ60の放出されたレーザ放射はたとえば床面またはその他の実質的に不変の設備品に当たる。その反射がセンサ14aによって検出される。
【0092】
それに対してUV壁10bの右側では、たとえば人の指であり得る、または人が動かした物品であり得る、物体62がUV壁10bに近づき、それに伴って、ラインレーザ60から発せられるレーザ光の一部を反射する領域に入ったことが示されている。ラインレーザ60から放出されるレーザ光の平面への侵入があった時点までは、そこでも光は床によってのみ反射されていた。それに対して物体62が侵入するとすぐに反射が変化し、そのことがセンサ14aによって検出される。その変化から、安全ゾーンへの物体の侵入を推定することができる。安全ゾーンは、UV壁10bないし区切りとなる平面E2から、平面E2の側に配置されたラインレーザ60によって平面E2と平行に発信される放射までの空間である。
【0093】
他方の平面E1の側でも、同様に安全ゾーンが形成されている。照明器具が壁の近くにこれと平行に取り付けられていて、この側からのUV壁10bの領域への侵入が不可能になっていれば、第2の安全ゾーンの形成を省略することができる。
【0094】
平行に配置された複数の放射線場10b’-10b”が照明器具50によって生成される場合、安全ゾーンは、それぞれ一番外側の放射線場に隣接してのみ設けられる。そして、複数の放射線場10b’-10b”によっていっそう広くなる端面側の間隔が、別個の防護措置によって遮蔽される。これは、放射線場に対して平行に配置される上に説明した安全デバイスに相当することができる。2つの壁の間で、またはUV光を遮蔽するその他の構造的な物体の間で、照明器具の広がりが延在していれば、その場合にも端面の安全確保を省略することができる。
【0095】
以上の説明は、ただ1つの発光手段とこれに付属するリフレクタを利用し、そのような複数のユニットが並べられて、ライトウォールを構成することができることをそれぞれ前提としている。図示している配置は、リフレクタの中心部に発光手段を配置する。ただし、実現可能な照射強度という観点からすると、そのような構成には問題がある。特に、こうした単純な配置では発光手段の広がりも、すなわち、たとえば少なくともLEDの放射面も、厚みdおよびその隣接する領域Aの内部で照明される、それぞれの面の間の区切りが非常に不鮮明になるように作用する。しかし、病原体を死滅させるために有効な領域を、その周囲から可能な限り鮮明に区切ることが望ましい。したがって、以下で説明するように、複数の発光手段素子が、およびそれぞれこれに付属する光学デバイス(リフレクタユニットのリフレクタ部分面)が、1つのUV放射器ユニットをなすように組み合わされる配置が好ましい。その場合、壁状の放射線場全体の構成は、このような複数のUV放射器ユニットが連続するように配置されることによって行われる。その他の点では、連続する配置によって壁状の放射線場を生成するシステムにも上記の説明が当てはまる。
【0096】
まず最初に
図8には、UV放射器ユニットのリフレクタユニット154の断面図が示されており、リフレクタユニット154の単一の部分面およびこれに付属する発光手段素子151.1によって生成される光路が模式的に示されている。図示した実施例で使用される発光手段素子151.1は、x軸の方向に連続するように配置された2つのLEDチップを有するLEDである。このような配置については、以下で
図11および12を参照しながらさらに詳しく説明する。ただし放射をする面の厳密な構成は、本発明にとって限定をするものではない。たとえば、LEDテクノロジーの今後の発展に依存して、それにより生成される放射出力が十分である限りにおいてLEDごとに1つのチップだけを使用し、または、別様に配置された複数のチップを使用することも考えられる。リフレクタユニット154は、以下において
図9,10を参照して、特に
図13も参照して、さらに詳細に説明するように、複数のリフレクタ面154U,154Oを有している。
【0097】
図8には、リフレクタユイット154が対称に構成されていて、その対称平面がx-z平面に位置することをすでに見て取ることができる。
図9では対称平面が記号Sで表されており、一点鎖線として図示されている。
図8に示すビーム形状は、UV放射を生成するLEDチップの側方の境界から発せられる。放出されたUV放射が、以下において
図11を参照してさらに詳しく説明する半球状のレンズを用いて、照明される面で結像され、そこではy方向にたとえば120mmよりも大きくない延在dを有する。この延在dは、放射をするLEDチップの幅のy-z平面における結像である。
図8には、リフレクタユニット154の半分しか発光手段素子151.1によって照射されないにもかかわらず、照射される領域は、対称平面Sに対して垂直に位置していてリフレクタ面154U,154Oの焦点を含む面の上で、z軸に対して対称に位置することを見て取ることができる。このことは、
図8では照射されていないリフレクタユニット154の部分面についても、相応の仕方で成り立つ。それに伴い、対称平面Sの両方の側で照射されるリフレクタユニット154の部分面が、反射されたUV光をy方向に、厚みdを有する同一の領域へと反射することが保証される。このことはリフレクタ面の軽微な傾きによって実現され、それにより、リフレクタ面144U,154Oの両方の焦点が一致することになる。
【0098】
図9には、
図8の部分IXの拡大図が示されている。発光手段素子151.1から放出される光が第1のリフレクタ面154Uで反射されることを見て取ることができる。図示している破線ないし点線は、発光手段素子151.1の放出をするチップのUV光の右側ないし左側のエッジ(y方向)のビーム形状を表す。図面の上半分には、y-z平面(対称平面S)に関して対称に位置する横置きの第2のリフレクタ面154Oが設けられていることを見て取ることができる。発光手段素子151.1および151.2の位置を明示するために、符号151.2が付されている個所に、このような別の発光手段素子が模式的に示唆されている。発光手段素子151.1および151.2の配置とアライメントは、同じくx-z平面に対して対称である。
【0099】
さらに
図9に見られるとおり、発光手段素子151.1および151.2は、入射した放射が両方のリフレクタ面154Uおよび154Oによって反射される領域の外部に位置している。このようにして、リフレクタユニット154で反射される放射の遮蔽(シェーディング)を回避することができ、照明される面での、ないし一般に生成される放射線場での、照射強度の望ましくない低減が防止される。ただし留意すべきは、その一方でz軸と、発光手段素子151.1から放出される放射の中心軸との間のいっそう小さい角度が、一方では以後の放射形状に関して好ましい場合があり、他方ではいっそう小さい設計幅を可能にすることである。
【0100】
図10は、
図9の領域Xでの再度拡大した図を示している。ここでは発光手段素子151.1に加えて、半球状のレンズ175も見ることができる。半球状のレンズ175の使用は、特に、そのようなレンズジオメトリーを容易かつ安価に入手可能であるという実際上の利点がある。これと同じ理由により、リフレクタ面154Uおよび154Oは楕円の部分面である。このとき楕円の一方の焦点は、放射が反射されるべきLEDチップの領域に位置し、すなわち幾何学的に見ると放射をする容積にその外縁を含めたものの内部に位置し、他方の焦点は、照明される面とz軸との交点に位置する。ここで「照明される面」とは、作動時に照明される面の組付や実際の距離に依存して、これと一致する基準面であってよい。5mまでの部屋の高さについては、この基準面は2.50mから5mの距離で意図されていてよい。このような条件は全部のリフレクタ面にも該当するので、x-z平面に対して対称に位置する両方のリフレクタ面154U,154は幅dを有する同一の領域を照明する。リフレクタ面154U,154Oはz軸に対してオフセットされて位置しているが、z軸に対する個々のリフレクタ面154U,154Oの光学軸の軽微な傾きは、両方のリフレクタ面144U,154Oを通じて、対称軸Sに対して垂直に位置する、リフレクタ面154U,154Oの焦点を通って延びる面の同一の領域がy方向に照明されることを惹起する。
【0101】
図11は、
図10の部分XIを拡大図として示している。半球状のレンズ175によって、LEDチップ176.1の拡大された結像が生成されることを見て取ることができるさらに、原理を説明するために
図8から10に示しているビームが、LEDチップ176.1のエッジから、すなわち側方の端部(y-z平面に対して)から、出ていくことを見て取ることができる。半球状のレンズ175のほうを向くLEDチップ176.1の面からだけでなく、その側方の外縁からもビームが発信されることに留意すべきである。LEDチップ176.1は支持体177の上に配置されている。このような構造は、使用される全部の発光手段素子151.iについて同一である。
【0102】
図12は、半球状のレンズ175および発光手段素子151.iの90°だけ回転させた図を示している。この回転させた図では、第1のLEDチップ176.1に隣接して配置された第2のLEDチップ176.2を発光手段素子151.iが有することを見て取ることができる。両方のLEDチップ176.1および176.2は、その長手方向延在がx軸に対して平行であるように配置されている。すでに説明したとおり、半球状のレンズ175により、両方のLEDチップ176.1および176.2によって生じるLEDチップ面の拡大された結像が生成される。このとき個々のLEDチップ176.1ないし176.2の、半球状のレンズ175のほうを向く面は正方形であり、1mmの辺の長さを有している。それに伴い、2mm×1mmの長方形の全体チップ面が生じる。このとき隣接して配置されたLEDチップ176.1および176.2の向きは、
図8で説明したような延在dが、LEDチップ176.1および176.2の幅の結像に相当するようになっている。それに対して、LEDチップ176.1および176.2の全体面の長手方向延在(2mm)の結像は、以下においてさらに説明するように、x軸に沿って延びている。
【0103】
上記の説明は1つのリフレクタ面154Uをそれぞれ対象としており、複数のリフレクタ面と、これらに付属する、少なくとも発光手段素子151.iおよびその手前に配置される半球状のレンズ175から構成されるユニットとが、1つのUV放射器ユニットをなすように協同作用する。
図13は、照明器具の長手方向に、すなわち図面ではx軸に対して平行に配置された、それぞれ6つのリフレクタ面を含んでいてそれ自体として対称に構成されたこのような2つのUV放射器ユニットを斜視図で示している。左側のUV放射器ユニットの6つのリフレクタ面は記号UL,UM,UR、およびOL,OMおよびORで表されており、記号Uで表されているリフレクタ面とその付属のユニットとが第1のグループに属し、記号Oで表されているリフレクタ面とその付属のユニットとが第2のグループに属する。図示した実施形態では、第1のグループと第2のグループは照明器具の中心平面に対して対称に、かつ互いに直接的に接するように配置されている。中心平面は、リフレクタの対称平面Sと一致する。すでに説明したリフレクタ面の相互に傾いたアライメントにより、それぞれ個々のグループによって反射される放射部分の好ましい重なり合いが生じる。このときそれぞれ互いに向かい合う両方のリフレクタ面は共通の焦点を有する。ただしLEDの利用可能な出力が上がるのに伴って、1列の配置、すなわち両方のグループのうちの一方だけを設けることも考えられる。図示した実施例のように、対称に配置された2つのグループが設けられる場合、これら両方のグループの間に間隔を設けることもできる。
【0104】
斜視図で示されているリフレクタユニットの視認性を損なわないようにするため、リフレクタ面UMについてのみ光路が
図13に示されている。x方向でのリフレクタ面についてのラスタ寸法は、1つの好ましい実施形態では70mmである。それに伴い、中央のリフレクタ面OM,UMはx=0のところに配置される。隣接するリフレクタ面ULおよびOLは-70mmのところであり、ないしURおよびORは+70mmのところである。それに伴ってリフレクタユニット154は、x方向に210mmの設計長さを有している。
【0105】
各々のリフレクタ面がY方向で60mmにわたって延びており、それにより、Y方向でのリフレクタユニットの全幅は120mmである。このような寸法(120mm×210mm)は、リフレクタユニット154に対して2500mmの距離で照明される面に相当する(基準面)。この距離は、リフレクタユニット全体の共通の裏面側の組付平面を起点として計測する。リフレクタユニット154の面と、照射される面とは等しい広さなので、複数のUV放射器ユニットを相並んで配列することで、壁状の放射線場の広がりの拡張を実現することができ、同時にその厚みを広げることがない。
【0106】
図14は、アンサンブルを形成する3つのリフレクタ面UL,UMおよびURの縦断面図を示している。リフレクタ面UL,URの両方の外側の放射方向が中心に向かっていることを見て取ることができ、3つすべての放射方向が1つの平面に位置している。そしてアンサンブルの放射方向Rと呼ぶのは、中央のリフレクタ面UMの放射方向である。図示した例は、それぞれ3つのLEDを1つのアンサンブルにまとめている。しかしながら、このことは限定をするものではない。その代替として、2つのLEDがこれらに付属するリフレクタ面とともに、或いは4つまたはそれ以上のLEDがこれらに付属するリフレクタ面とともに、それぞれ1つのアンサンブルをなすようにまとめられていてよい。このケースでは、リフレクタ面が両方の側で対称に配置される対称線のことを、放射方向と呼ぶ。その代替として、両方の外側のリフレクタ面ULおよびURのための発光手段は、以下にまた説明するとおり、同一の効果を得るために、中央のリフレクタ面UMの発光手段に対してラスタ寸法よりもわずかに広い間隔をもって配置することもできる。
【0107】
図15は、リフレクタ面UMに関して配置されている発光手段素子151.1についてのみ、x方向とy方向における照明強度の推移を示している。x-y平面の原点に関して対称に位置する長方形が、この発光手段素子151.1によって照射されることを見て取ることができる。或いはリフレクタ面URに付属する別の発光手段素子による光も、同一の長方形の面を照明する。その理由は、リフレクタ面の対称性に関してx軸の方向に若干変位した発光手段ユニット151の配置にある。中央のリフレクタ面UMのための発光手段素子は、x方向でリフレクタ面の上の中央に配置されているのに対して、外側に配置された両方の発光手段素子はわずかにオフセットされて位置決めされており、それにより、中央のリフレクタ面の発光手段ユニットに対する間隔が、リフレクタ面のラスタ寸法よりも大きくなっている。このことは、リフレクタ面URについて
図17に示すように、反射されるUV放射のセンタリングにつながる。
【0108】
その代替として、上で説明したように、リフレクタ面ないし発光手段素子の傾きを意図することもできる。ただしこのことは、一方ではリフレクタユニット154のいっそう複雑な製造につながり、また、発光手段素子を1つの共通の平面に配置できなくなることにつながる。
【0109】
そして6つすべてのリフレクタ面が、付属する6つの発光手段素子151.iの光を反射したときに生じる照明強度に着目すると、
図16に示すような照明強度の分布がもたらされる。
【0110】
上記の説明は、2つのLEDチップが共同で1つの発光手段素子を形成することを前提としていることに留意すべきである。しかしながら、2つよりも多いLEDチップが発光手段素子を形成することも考えられ、それは、たとえば3つの、これら複数のLEDチップが同じく1列に配置される限りにおいてである。そのようなケースでは、リフレクタ面の個数を減らすことさえできる。各々のリフレクタ面が、このケースでは3つのLEDチップによって照明されることになるからである。決定的に重要なのは、照明される面で発生する損失を考慮したうえで、十分に高い照射強度が実現されることにある。LEDチップの所与の放射出力のもとで、特定の面を照射するのに必要なチップの個数がそこから明らかとなる。照明された面で発生する照射強度は、壁状の放射線場での出力密度を表すための目安にすぎないことに留意すべきである。病原体を死滅させるためには、最終的に、照明器具と照射される面との間の、光によって透過される領域が決定的に重要である。
【0111】
次に、上ですでに触れた安全デバイスの機能について
図18の図面を参照して説明する。
図18に示す配置は、
図7を参照してすでに説明したような照明器具50を、センサ14aおよびラインレーザ60とともに示している。ラインレーザ60から発信されるレーザ光が、破線の三角形によって模式的に図示されている。このときレーザ光が発信される平面は、照明50の発光手段51の総体によって発信することができる視準された放射に対して、平行に間隔をおいている。ラインレーザ60の発信されたレーザ光の反射された割合がセンサ14aによって検出されて、評価部に供給される。上ですでに説明したとおり、評価にあたっては特にレーザ光の反射の変化が検出され、それにより、ラインレーザ60により照明される領域への物体の侵入を、センサ機構ないしその情報処理装置14によって認識することができる。センサ機構14は特にプロセッサを有することができ、または、センサ14aから伝送される情報を処理するためのその他のデバイスを有することができる。このようなデータ処理のための装置は、制御部16と一緒に具体化されていてよい。図示した実施例では、制御部16はセンサ機構14の情報処理部を含めて、照明器具50に統合されている。
【0112】
例示として示している照明器具50には、全部で14個の発光手段51が直線に沿って配置されており、
図8では図面の見やすさのために個別には示していないこれらの発光手段51の各々に、リフレクタ54の形態の光学素子(ここでは符号なし)が付属している。放出されるUV光は、矢印として図示する放射方向によって代表として表現されている。発光手段およびこれに付属する光学素子の放射方向は、図面から直接的に明らかなように、互いに平行にアライメントされる。さらに、照明器具50の発光手段の全部の放射方向が1つの平面に位置している。このように、照明器具50のすべての発光手段が共同で1つのグループの発光手段を構成する。
【0113】
図示しているような単一のグループの発光手段だけを有する照明器具50の代替として、複数のグループの発光手段が設けられていてもよい。そして1つのグループの内部で発光手段およびこれに付属するリフレクタは、同じくそれぞれの放射方向が互いに平行になり、1つの平面に位置するように、または上ですでに代替案として挙げたように1つの面に位置するように、配置される。このとき異なるグループの平面(または面)は、互いに平行に間隔をおいて配置されていてよく、または角度を有することもできる。
【0114】
照明器具50の発光手段およびこれに付属する光学素子のグループについて、このグループが3つの下位グループ57a,57bおよび57cに下位区分されることが示されている。これらの下位グループ57a,57bおよび57cの各々が、複数の発光手段およびこれに付属する光学素子を含んでいる。下位グループ57a,57bおよび57cは制御部60によって個別に制御することができ、すなわちオンオフすることができる。
【0115】
そして、ラインレーザ60により照明される平面に侵入したときに、センサ14aによって検出される信号に基づいて物体62が認識されると、センサ14aから制御部16ないしそこに統合されているセンサ機構14の情報処理装置へと伝送される信号から、物体62の位置が判定される。
【0116】
図18には1つのラインセンサ60と1つのセンサ14aだけが示されているが、このようなラインレーザとセンサ14aの複数の組み合わせを設け、その検出方向が0°ないし180°に等しくない角度を有するのが特別に好ましいことに留意すべきである。このような機構の組合せを用いて、物体62の位置決定が2つの次元で可能である。さらに、このような2つの機構が利用されれば、示されている物体62の陰に位置する可能性がある別の物体を別個に検知することも可能である。
【0117】
それに対して1つの機構だけを利用したときは、少なくとも1つの方向(x軸)で物体62の位置を決定することができる。認識された位置が制御部16で評価されて、放出される視準された放射が物体62に当たることになる下位グループ57a,57bまたは57cがオフにされる。図示した実施例では、それは中央のグループ57bである。「位置」という概念のもとでは、検出された物体62の中心点だけでなく、その広がりも意味されることに留意すべきである。すなわち認識された物体62が、下位グループ57a,57bまたは57cから放射される光の領域内に完全には位置していないとき、物体62の広がりを含めた位置検出に基づき、1つだけではない下位グループがオフにされる。
【0118】
それに対して、2つの方向(x軸、y軸)について位置座標が既知であれば、第2の照明器具150を利用することができ、その構造は基本的に照明器具50のものに匹敵し、その放射方向は照明器具50の放射方向とともに0°ないし180°に等しくない角度を形成する。照明器具50および150の放射方向は互いに垂直であるのが好ましい。このとき両方の照明器具50および150の放射方向は同一の平面に位置するのが好ましく、それにより、ラインレーザ60とセンサ14aを含めたセンサ機構14を共同で利用することができる。センサ機構14を用いて物体62の位置が二次元で決定されれば、認識された物体62の領域で放出をする照明器具50の下位グループ57bがオフにされるだけでなく、第2の照明器具150の相応の下位グループ157bもオフにされる。図面から直接的に明らかなとおり、それに伴って比較的小さい領域だけがUV-C放射で照明されないので、バリアの広い隙間を防止することができる。
【0119】
模式的にのみ図示している
図18の例では、照明器具50および150は独自の制御部16ないし116を有している。両方の照明器具50および150を制御するために共通のセンサ機構14が利用されるべきケースでは、照明器具50の制御部16ないしセンサ機構14と、照明器具150の制御部116との間の通信が意図される。その代替として、すでに
図1で示したように、複数の照明器具50,150...で発光手段を制御するための外部の制御部が設けられていてもよい。
【0120】
図18に関する上記の説明は、1つの下位グループが1つのアンサンブルまたは複数のアンサンブルを含む場合に、同様の仕方で当てはまる。
【0121】
複数のグループが対称平面Sに対して対称に配置される場合、発光手段の分割は両方の下位グループについて同一であるのが好ましい。その場合、対称に配置された各グループの間には安全デバイスが必要ない。それぞれ外方を向く側に、このような安全デバイスを設けるだけで足りる。このとき、両方のグループの互いに対応する下位グループないしアンサンブルが共同で制御される。対応する下位グループないしアンサンブルは、x軸に関する同一の位置と同一のサイズとによって定義される。
【0122】
図19は、UV-C放射を水平方向に放射し、そのようにしてUV-C壁10bを形成する、本発明によるシステムの放射源10のためのスタンド20を有する、本発明の別の実施形態を示している。利用分野に応じて、スタンド20は1つ、2つ、3つ、または4つの放射源10を装備していてよく、これらがスタンド20を起点として、さまざまな空間方向に発信される4つのUV-C壁10bを生成することができる。放射されるUV-C光を隣接するスタンドによって、またはこの目的のために設置される吸収壁もしくは吸収スタンドによって、吸収することができる。
【0123】
本発明の図示しない別の実施形態では、スタンドは、垂直に下方に向かって放射をする線形ライトないし放射源を保持することができる。さらに、線形ライトないし放射源が床の上にあり、天井に向かって放射をすることが考えられる。
【国際調査報告】