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特表2023-532633リチウム二次電池の活性金属の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の活性金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/12 20060101AFI20230724BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20230724BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20230724BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20230724BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20230724BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230724BHJP
   C22B 3/42 20060101ALI20230724BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20230724BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
C22B26/12
H01M10/54
C22B3/08
C22B47/00
C22B23/00 102
C22B7/00 C
C22B3/42
C22B3/26
C01G53/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577360
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021006733
(87)【国際公開番号】W WO2021256732
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0074235
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョン フィ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ユン ビン
(72)【発明者】
【氏名】イ スン オク
(72)【発明者】
【氏名】ソン スン レル
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB08
4G048AC06
4G048AE05
4K001AA01
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA09
4K001AA13
4K001AA16
4K001AA17
4K001AA18
4K001AA19
4K001AA25
4K001AA27
4K001AA29
4K001AA31
4K001AA34
4K001AA40
4K001AA41
4K001AA42
4K001BA18
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA11
4K001DB03
4K001DB22
4K001DB23
4K001DB31
4K001DB38
4K001HA12
5H031RR02
(57)【要約】
リチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム金属複合酸化物に硫酸溶液を投入して硫酸化活物質溶液を製造する。硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出する。硫酸化活物質溶液から遷移金属が抽出された残余溶液にリチウム抽出剤を投入してリチウム前駆体を回収する。これにより、不純物の量が減少し、硫酸及び中和剤の再循環が可能な高収率のリチウム前駆体の回収方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属複合酸化物に硫酸を投入して硫酸化活物質溶液を製造するステップと、
前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出するステップと、
前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属が抽出された残余溶液にリチウム抽出剤を投入してリチウム前駆体を回収するステップとを含む、リチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項2】
前記遷移金属を抽出するステップは、前記硫酸化活物質溶液にアルキルリン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物、アルキルホスフィン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含む遷移金属抽出剤を投入することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項3】
前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、
前記遷移金属を抽出するステップは、前記硫酸化活物質溶液のpHを順次増加させ、マンガン、コバルトおよびニッケルを順次抽出することを含む、請求項2に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項4】
前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、
前記遷移金属を抽出するステップは、ニッケル、コバルトおよびマンガンを同時に抽出することを含む、請求項2に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項5】
前記リチウム抽出剤は、アルキルホスフィン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含む、請求項2に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項6】
前記遷移金属抽出剤および前記リチウム抽出剤は、アルカリ金属水酸化物でケン化した状態で投入される、請求項5に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項7】
前記リチウム抽出剤の投入により、前記残余溶液からアルカリ金属スルフェートおよびリチウムスルフェートが生成される、請求項6に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項8】
前記残余溶液から生成された前記アルカリ金属スルフェートを硫酸溶液およびアルカリ金属水酸化物に変換することをさらに含む、請求項7に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項9】
変換された前記アルカリ金属水酸化物を前記遷移金属抽出剤および前記リチウム抽出剤のケン化にリサイクルするステップをさらに含む、請求項8に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項10】
変換された前記硫酸溶液を前記硫酸化活物質溶液を製造するステップ、または前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出するステップにリサイクルするステップをさらに含む、請求項8に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項11】
前記残余溶液から生成された前記アルカリ金属スルフェートの前記硫酸溶液および前記アルカリ金属水酸化物への変換は、電気透析を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項12】
前記残余溶液に前記リチウム抽出剤を投入してリチウムスルフェートが生成され、
前記リチウム前駆体を回収するステップは、生成されたリチウムスルフェートを電気透析によってリチウム水酸化物に変換することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項13】
前記電気透析によってリチウム水酸化物と共に硫酸溶液が生成される、請求項12に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項14】
前記硫酸溶液を前記硫酸化活物質溶液を製造するステップ、または前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属を抽出するステップにリサイクルするステップをさらに含む、請求項13に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項15】
リチウム金属複合酸化物に硫酸を投入して硫酸化活物質溶液を製造するステップと、
前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出するステップと、
前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属が抽出された残余溶液から直ちに電気透析によってリチウム水酸化物を回収するステップとを含む、リチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項16】
前記リチウム水酸化物を回収するステップは、前記残余溶液に含まれているリチウムスルフェートを前記電気透析によってリチウム水酸化物に変換することを含む、請求項15に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項17】
硫酸溶液を、前記硫酸化活物質溶液を製造するステップ、または前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属を抽出するステップにリサイクルするステップをさらに含み、
前記硫酸溶液は、前記電気透析によってリチウムスルフェートから生成される、請求項16に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項18】
前記遷移金属を抽出するステップは、前記硫酸化活物質溶液に、アルキルリン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物、アルキルホスフィン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含む遷移金属抽出剤を投入することを含む、請求項15に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項19】
前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、
前記遷移金属を抽出するステップは、前記硫酸化活物質溶液のpHを順次増加させ、マンガン、コバルトおよびニッケルを順次抽出することを含む、請求項18に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項20】
前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、
前記遷移金属を抽出するステップは、ニッケル、コバルトおよびマンガンを同時に抽出することを含む、請求項18に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項21】
回収されたリチウム水酸化物の一部を、前記遷移金属抽出剤のケン化のためにリサイクルするステップをさらに含む、請求項18に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項22】
前記硫酸化活物質溶液を製造するステップは、硫酸と共に過水を投入することを含む、請求項1または15のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。より詳細には、酸溶液および塩基溶液が活用されるリチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池はカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器およびハイブリッド自動車、電気自動車などの車両の動力源として広く適用および開発されている。二次電池としては、リチウム二次電池が、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0003】
前記リチウム二次電池の正極用活物質としては、リチウム金属酸化物を用いることができる。前記リチウム金属酸化物は、さらにニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属を共に含有することができる。
【0004】
前記正極用活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造に製造コストの20%以上がかかっている。また、最近では環境保護への関心が高まることによって、正極用活物質のリサイクル方法の研究が進められている。
【0005】
例えば、強酸に廃正極活物質を浸出させて有価金属を順次回収する湿式工程が活用されていたが、前記のような湿式工程の場合は、溶液反応による副産物による再生選択性の低下や、環境汚染を引き起こすことがある。また、大量の溶液が使用されるため、工程効率性およびリチウム回収率などの観点から、十分なリサイクル特性を提供できないことがある。
【0006】
例えば、韓国特許第10-0709268号には、廃マンガン電池及びアルカリ電池のリサイクル装置及び方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、向上した反応効率および工程信頼性を有するリチウム二次電池の活性金属を回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るリチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム金属複合酸化物に硫酸を投入して硫酸化活物質溶液を製造することができる。前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出することができる。前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属が抽出された残余溶液にリチウム抽出剤を投入して、リチウム前駆体を回収することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記硫酸化活物質溶液に、アルキルリン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物、アルキルホスフィン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含む遷移金属抽出剤を投入して、前記遷移金属を抽出することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有することができる。前記硫酸化活物質溶液のpHを順次増加させ、マンガン、コバルトおよびニッケルを順次抽出することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、前記ニッケル、コバルトおよびマンガンを同時に抽出することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記リチウム抽出剤は、アルキルホスフィン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記遷移金属抽出剤および前記リチウム抽出剤は、アルカリ金属水酸化物でケン化した状態で投入することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記リチウム抽出剤により、前記残余溶液からアルカリ金属スルフェート及びリチウムスルフェートを生成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記残余溶液から生成された前記アルカリ金属スルフェートを硫酸溶液およびアルカリ金属水酸化物に変換することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、変換された前記アルカリ金属水酸化物を前記遷移金属抽出剤および前記リチウム抽出剤のケン化にリサイクルすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、変換された前記硫酸溶液を前記硫酸化活物質溶液を製造するステップ、または前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出するステップにリサイクルすることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記残余溶液から生成された前記アルカリ金属スルフェートの前記硫酸溶液および前記アルカリ金属水酸化物への変換は、電気透析を含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記残余溶液に前記リチウム抽出剤を投入して、リチウムスルフェートを生成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記リチウム前駆体の回収において、生成されたリチウムスルフェートを電気透析によってリチウム水酸化物に変換することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記電気透析により、リチウム水酸化物と共に硫酸溶液を生成することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記硫酸溶液を、前記硫酸化活物質溶液を製造するステップ、または前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属を抽出するステップにリサイクルすることができる。
【0023】
本発明の実施形態に係るリチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム金属複合酸化物に硫酸を投入して、硫酸化活物質溶液を製造することができる。前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出することができる。前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属が抽出された残余溶液から直ちに電気透析によってリチウム水酸化物を回収することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記リチウム水酸化物を回収するステップでは、前記残余溶液に含まれているリチウムスルフェートを前記電気透析によってリチウム水酸化物に変換することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、硫酸溶液を、前記硫酸化活物質溶液を製造するステップ、または前記硫酸化活物質溶液から前記遷移金属を抽出するステップにリサイクルすることができる。前記硫酸溶液は、前記電気透析によってリチウムスルフェートから生成することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記硫酸化活物質溶液に、アルキルリン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物、アルキルホスフィン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含む遷移金属抽出剤を投入して、前記遷移金属を抽出することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、前記硫酸化活物質溶液のpHを順次増加させ、マンガン、コバルトおよびニッケルを順次抽出することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有し、ニッケル、コバルトおよびマンガンを同時に抽出することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、回収されたリチウム水酸化物の一部を、前記遷移金属抽出剤のケン化のためにリサイクルすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記硫酸化活物質溶液の製造において、硫酸と共に過水を投入することができる。
【発明の効果】
【0031】
前述の例示的な実施形態によると、例えば、ニッケル、マンガンおよびコバルトをリチウム金属複合酸化物から抽出した後、リチウムをリン含有リチウム抽出剤を使用して高濃度でリチウム前駆体を回収することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、リチウム水酸化物をニッケル、マンガンおよびコバルトの中和剤として循環させて使用することができる。これにより、ナトリウム(Na)含有不純物を実質的に除去しつつ高濃度のリチウム前駆体を回収することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、例えば、リチウムスルフェートとして回収された予備リチウム前駆体を電気透析によってリチウム水酸化物に変換しつつ硫酸溶液を再循環させることができる。これにより、工程全体として投入される硫酸溶液を減少させ、工程収率および環境親和性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図2図2は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図3図3は、比較例によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態は、例えば、廃リチウム二次電池の正極から、湿式ベースの工程により、リチウムおよび遷移金属を含む前駆体を回収する方法を提供する。
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。但し、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0037】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0038】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【0039】
図1を参照すると、リチウム金属複合酸化物を、硫酸を投入して硫酸化することができる(例えば、S10工程)。
【0040】
例示的な実施形態によると、前記リチウム金属複合酸化物は、廃リチウム二次電池または使用済みのリチウム二次電池の正極活物質から得ることができる。
【0041】
前記リチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜とを含む電極組立体を含むことができる。前記の正極および負極は、それぞれ正極集電体および負極集電体上にコーティングされた正極活物質層および負極活物質層を含むことができる。
【0042】
例えば、前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、リチウムおよび遷移金属を含有するリチウム金属複合酸化物を含むことができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属複合酸化物は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0044】
[化学式1]
LiM1M2M3
【0045】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される遷移金属であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属複合酸化物は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むNCM系リチウム酸化物であってもよい。
【0047】
前記廃リチウム二次電池から前記正極を分離して廃正極を回収することができる。前記廃正極は、前述のように正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質に加えて、導電材及び結合剤を共に含むことができる。
【0048】
前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。前記結合剤は、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。
【0049】
いくつかの実施形態によると、回収された前記廃正極を粉砕して廃正極活物質混合物を生成することができる。これにより、前記廃正極活物質混合物は、粉末状に製造することができる。前記廃正極活物質混合物は、前述のようにリチウム金属複合酸化物の粉末を含み、例えばNCM系リチウム酸化物粉末(例えば、Li(NCM)O)を含むことができる。
【0050】
前記廃正極活物質混合物は、前記結合剤または前記導電材に由来する成分を一部含むこともできる。一実施形態では、前記廃正極活物質混合物は、前記リチウム金属複合酸化物粒子で実質的に構成されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記廃正極活物質混合物を、後述する溶液反応に導入する前に熱処理することができる。前記熱処理により、前記廃正極活物質混合物に含まれる前記導電材および結合剤のような不純物を除去または低減し、前記リチウム金属複合酸化物を高純度で前記溶液工程に投入することができる。
【0052】
前記熱処理の温度は、例えば約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。前記範囲内では、実質的に前記不純物が除去され、リチウム金属複合酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0053】
前述のいくつかの実施形態に従って準備されたリチウム金属複合酸化物に硫酸を投入して、硫酸化処理を施すことができる。これにより、硫酸化活物質溶液を製造することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記廃リチウム二次電池から正極を分離し、分離した正極に硫酸溶液を投入することもできる。この場合には、正極集電体から前記正極活物質層が剥離し、前記硫酸溶液に前記リチウム金属複合酸化物を溶解することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、硫酸を投入後、前記硫酸化活物質溶液中の不純物を除去するための前処理を行うことができる。例えば、前記不純物は、前述の廃正極活物質混合物中に残存する前記集電体、導電材、及び/又は結合剤の成分を含むことができる。前記前処理は、アルカリを用いた沈殿、ろ過、遠心分離、洗浄工程などを含むことができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記硫酸溶液と共に過水(H)を投入することができる。例えば、過水は還元剤として作用し、後述する遷移金属の抽出を促進できる。
【0057】
例えばS20工程では、前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出することができる。前記遷移金属は、前述のようにNi、CoおよびMnを含むことができる。
【0058】
例示的な実施形態によると、前記遷移金属は、遷移金属前駆体(例えば、遷移金属スルフェートの形態)で抽出することができる。例えば、Ni、CoおよびMnから、それぞれニッケルスルフェート(NiSO)、コバルトスルフェート(CoSO)、およびマンガンスルフェート(MnSO)を生成して収集することができる。
【0059】
例示的な実施形態によると、遷移金属抽出剤を前記硫酸化活物質溶液に投入して、前記遷移金属前駆体を収集することができる。前記遷移金属抽出剤は、リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、またはカルボン酸系化合物を含むことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記遷移金属の抽出は、pHを段階的に増加させながら行うことができる。例えば、pHを増加させながらMn、CoおよびNiを順次抽出することができる。
【0061】
例えば、pHを約3.5~4.5の範囲(例えば、約4)に増加させ、マンガン前駆体としてマンガンスルフェートを抽出することができる。その後、pHを約4.5~5.5の範囲(例えば、約5)に増加させ、コバルト前駆体としてコバルトスルフェートを抽出することができる。その後、pHを約6~7の範囲(例えば、約pH6.5)に増加させ、ニッケル前駆体としてニッケルスルフェートを抽出することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記遷移金属の抽出において、互いに異なる複数の遷移金属抽出剤を使用することができる。一実施形態では、MnおよびNiを抽出するための遷移金属抽出剤として、アルキルリン酸系化合物を使用することができる。例えば、前記アルキルリン酸系化合物としては、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA)を使用することができる。
【0063】
一実施形態では、Coを抽出するための遷移金属抽出剤として、アルキルホスホン酸またはアルキルホスフィン酸系化合物を使用することができる。例えば、前記アルキルホスホン酸またはアルキルホスフィン酸系化合物としては、2-エチルヘキシル2-エチルヘキシホスホン酸(2-Ethylhexyl 2-ethylhexyphosphonic acid、商業名:PC88A)またはビス(2,2,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸(bis(2,2,4 trimethylpentyl)phosphinic acid、商業名:Cyanex-272)を使用することができる。
【0064】
前記遷移金属抽出剤は、ケン化した状態で使用することができる。例えば、リン酸、ホスフィン酸またはホスホン酸系の抽出剤の場合は、プロトン(H+)サイトに遷移金属イオン(例えば、Mn2+、Co2+、Ni2+)が置換されて遷移金属を抽出することができる。
【0065】
この場合、反応溶液中のH+の濃度が増加するにつれてpHが低下し、前述の段階的な遷移金属の抽出を実現できないことがある。そのため、pHの低下を防止するために、予めケン化した遷移金属抽出剤を使用してpHの低下を抑制し、前述のようにpHの漸進的な上昇と共に遷移金属別の選択的抽出を行うことができる。
【0066】
一実施形態では、前述の遷移金属の抽出は、同時にまたは実質的に1回の抽出工程によって行うこともできる。この場合、Ni、CoおよびMnは、前述の遷移金属抽出剤の投入によって共に抽出することができる。
【0067】
例えば、S30工程では、前記硫酸化活物質溶液から、前述のように遷移金属が抽出された残余溶液からリチウムを抽出することができる。例示的な実施形態によると、リチウム抽出剤を使用して、前記残余溶液からリチウムを選択的に抽出することができる。
【0068】
前記リチウム抽出剤としては、アルキルホスフィン酸系化合物、アルキルホスホン酸系化合物またはカルボン酸系化合物を使用することができる。一実施形態では、前記リチウム抽出剤として、前述の遷移金属抽出剤とは異なる化合物を使用することができる。いくつかの実施形態では、例えば、前記リチウム抽出剤として、CYANEX936(Solvay社製)またはVersatic10(HEXION社製)を使用することができる。
【0069】
一実施形態では、前記リチウム抽出剤として、前述の遷移金属抽出剤と同一の化合物を用いることもできる。
【0070】
前記残余溶液は、例えば、ケン化した遷移金属抽出剤に由来するアルカリ金属イオン(例えば、Na+)をリチウムイオンと共に含むことができる。前記リチウム抽出剤は、リチウムイオンに選択的反応性を有し、リチウムイオンを捕集することができる。
【0071】
一実施形態では、前記残余溶液は二価イオンを含まなくてもよい。前述のように、前記硫酸化活物質溶液から遷移金属イオンを遷移金属抽出剤によって実質的にすべて抽出することができる。また、前記遷移金属抽出剤のケン化のための中和剤としては、一価のアルカリ金属水酸化物(例えば、NaOH)を使用し、Mg2+、Ca2+のような二価金属水酸化物を使用しなくてもよい。
【0072】
これにより、前記残余溶液は、リチウムおよび一価のアルカリ金属イオンを含み、前記リチウム抽出剤によるリチウム選択性を向上させることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記リチウム抽出剤は、ケン化した状態で使用し、リチウムの抽出によるpHの低下を防ぐことができる。
【0074】
硫酸ベースの残余溶液中でリチウムイオンを選択的に抽出することにより、リチウムスルフェートの形態の予備リチウム前駆体を収集することができる。例示的な実施形態によると、前記予備リチウム前駆体を、正極活物質としてリチウム金属複合酸化物を再合成するためのリチウム前駆体に変換することができる(例えば、S40工程)。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記リチウム前駆体への変換は、電気透析(electrodialysis)(例えば、第1の電気透析)によって行うことができる。前記第1の電気透析は、イオン交換膜を挟んで互いに対向する正極および負極を含むバイポーラ電気透析装置を用いて行うことができる。
【0076】
例えば、下記式1の反応により、前記バイポーラ電気透析装置内で加水分解によって前記リチウムイオン(例えば、前記負極に移動)及びスルフェートイオン(例えば、前記正極に移動)がイオン交換膜によって分離移動し、リチウム水酸化物を生成することができる。リチウム水酸化物は、前記リチウム前駆体として収集することができる。
【0077】
[式1]
LiSO+2HO→2LiOH+HSO
【0078】
前記残余溶液からリチウムを選択的に抽出することにより、前記残余溶液中には、例えば中和剤に由来するアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン(Na+))が残留し得る。例えば、前記アルカリ金属イオンは、ナトリウムスルフェート(NaSO)の形態で残留し得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記アルカリ金属スルフェートを中和剤に変換することができる(例えば、S50工程)。例えば、前述のリチウム前駆体への変換工程と実質的に同様なコンセプトにより、電気透析(例えば、第2の電気透析)を用いて、前記アルカリ金属スルフェートをアルカリ金属水酸化物(例えば、NaOH)に変換することができる。
【0080】
例示的な実施形態による活性金属の回収方法は、さらに硫酸リサイクル工程(例えば、S60-1工程およびS60-2工程)を含むことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、前述のように、第1の電気透析により、リチウムスルフェートからリチウム水酸化をリチウム前駆体として収集することができ、分離されたスルフェートイオンは水と反応して硫酸を生成することができる。前記第1の電気透析から生成した硫酸は、リチウム金属複合酸化物の硫酸化工程(S10)に再循環またはリサイクルすることができる(例えば、S60-1工程)。
【0082】
いくつかの実施形態では、前述のように、第2の電気透析により、ナトリウムスルフェートのようなアルカリ金属スルフェートから中和剤が再生され、分離されたスルフェートイオンは水と反応して硫酸を生成することができる。前記第2の電気透析から生成した硫酸は、リチウム金属複合酸化物の硫酸化工程(S10)に再循環またはリサイクルすることができる(例えば、S60-2工程)。
【0083】
一実施形態では、前記第1及び第2の電気透析から生成された硫酸は、遷移金属抽出工程(S20工程)に再循環させることもできる。
【0084】
例示的な実施形態による活性金属の回収方法は、さらに中和剤リサイクル工程(例えば、S70工程)を含むことができる。
【0085】
例えば、前記第2の電気透析により、NaOHのような中和剤を収集することができる。前記中和剤は、前記遷移金属抽出剤及び/又は前記リチウム抽出剤のケン化のために再循環することができる。ケン化した前記遷移金属抽出剤および前記リチウム抽出剤を用いて、それぞれ遷移金属の抽出およびリチウムの抽出工程を行うことができる。
【0086】
前述の例示的な実施形態によると、リチウム抽出剤を使用してリチウムイオンを高濃度に濃縮することができる。また、電気透析を用いて、濃縮されたリチウムイオンを追加の製剤または追加の反応物の投入なしに、直ちにリチウム水酸化物の形態のリチウム前駆体に変換することができる。これにより、リチウムの回収収率を増加させることができ、Na由来の不純物の量を低減することができる。
【0087】
また、硫酸及び中和剤のリサイクル工程により、投入される硫酸及び中和剤の量を減少させて工程効率を向上させることができ、環境汚染も顕著に低減することができる。
【0088】
図2は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。図1で説明した工程またはステップと実質的に同一または類似の工程またはステップでは、同一または類似の番号を使用している。
【0089】
図2を参照すると、前述のように、前記硫酸化活物質溶液から遷移金属を抽出した残留溶液に対して、直ちにリチウム前駆体への変換を行うことができる(例えば、S40工程)。
【0090】
前述のように、前記リチウム前駆体への変換は、電気透析によって行うことができる。前記電気透析により、前記残留溶液にリチウムスルフェートの形態で溶解したリチウムイオンを、リチウム水酸化物の形態のリチウム前駆体に変換して収集することができる。
【0091】
例示的な実施形態によると、前記残留溶液はリチウムスルフェートを含み、リチウム以外に、アルカリ金属イオン(例えば、Na+)またはアルカリ金属イオン化合物(例えば、NaSO)は含まなくてもよい。これにより、図1に示す実施形態におけるリチウム抽出剤の使用を省略することができ、直ちに電気透析によってリチウム水酸化物を変換/収集することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、変換されたリチウム水酸化物の一部は、中和剤で再循環させて遷移金属抽出剤のケン化に使用することができる(例えば、S70工程)。これにより、NaOHのような別の中和剤の使用を省略することができ、前述のように、前記残留溶液中にナトリウムイオンが実質的に含まれないようにすることができる。
【0093】
そのため、ナトリウムイオンを分離するためのリチウム抽出剤の使用および中和剤への変換工程を省略し、高濃度でリチウム前駆体を収集することができる。これにより、収集されたリチウム前駆体の一部を、遷移金属抽出剤のケン化のための中和剤として循環させることができる。
【0094】
図3は、比較例によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【0095】
図3を参照すると、比較例では、前述の実施例で説明したように、リチウム金属複合酸化物を硫酸化し(例えば、S10工程)、その後、遷移金属抽出剤を用いて、遷移金属を例えばスルフェートの形態で抽出/回収することができる。
【0096】
前記遷移金属抽出剤は、例えば、NaOHのような中和剤を用いてケン化して使用する。この場合、遷移金属が抽出された残留溶液中には、NaSOとLiSOが混合されて含まれ得る。
【0097】
比較例では、前記残留溶液からLiOHの形態のリチウム前駆体を回収(例えば、S30a工程)するために沈殿剤が使用される。例えば、NaCOを第1の沈殿剤として投入して、LiSOを炭酸リチウム(LiCO)に変換することができる。その後、例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH))を第2の沈殿剤として投入して、炭酸リチウムをリチウム水酸化物に変換することができる。
【0098】
前述の比較例によると、ケン化した遷移金属抽出剤および沈殿剤に由来するNaイオンまたはNaイオン化合物が不純物として残留し、リチウム前駆体の純度および収率が低下することがある。例えば、遷移金属抽出工程で用いられる遷移金属抽出剤の当量の2倍分のNaイオンまたはNaイオン化合物が発生し、沈殿剤として用いられるNaCOによってLiイオンの当量分のNaイオンまたはNaイオン化合物がさらに発生することがある。そのため、残留溶液において、リチウムの量よりもNaの量が増加することがある。
【0099】
これに対して、前述の例示的な実施形態では、沈殿剤の代わりにリチウム抽出剤を使用することにより、沈殿剤に由来するNa不純物を低減することができる。また、第2の電気透析によってNa不純物(例えば、NaSO)をNaOHに変換した後、遷移金属抽出剤のケン化工程にリサイクルすることができる。これにより、工程全体として発生するNa不純物の量を低減することができる。
【0100】
図2で説明したように、遷移金属抽出剤のケン化のための中和剤としては、LiOHを使用することもできる。この場合には、前記Na不純物を実質的に除去することができ、遷移金属が抽出された残留溶液から直接リチウムを濃縮することができる。これにより、リチウムの収率および純度をより向上させることができる。
【0101】
また、前述の実施形態では、全体として硫酸をリサイクルして使用することができ、工程の環境親和性、生産性をさらに向上させることができる。
【0102】
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0103】
実施例1
正極活物質として、LiNi0.6Co0.2Mn0.2を用いて、NaOHでケン化したリン酸系抽出剤でMn/Ni/Coを順次抽出した後、残りの残余溶液(Li5.9g/L、Na47.6g/L、pH6.45)を用意した(水相溶液)。前記残余溶液に対して、リチウム抽出剤として、PC88Aの0.8MまたはCyanex272の0.8M(50%NaOHでケン化、ケン化度30%)溶液(有機相溶液)を用いて、Liを抽出/濃縮した。
【0104】
前記水相溶液に対する前記有機相溶液の体積比は3に維持した。
【0105】
抽出前の水相溶液および抽出後の有機相溶液に含まれたLiおよびNaの濃度は、下記表1に示す通りである。
【0106】
【表1】
【0107】
抽出後の有機相溶液に対して2M硫酸溶液(水相溶液)でLiの脱去(濃縮)を行った。前記水相溶液に対する前記抽出後の有機相溶液の体積比は15に維持した。
【0108】
Liの脱去後に測定されたLiおよびNaの濃度は、下記表2に示す通りである。
【0109】
【表2】
【0110】
表1及び表2を参照すると、抽出前の水相溶液に対して脱去後のLiの選択度(Li/Na)が顕著に上昇したことを確認し、リサイクル工程を含む連続繰り返し工程が行われる場合には、Li選択度がより向上することを予測することができる。
【0111】
実施例2
正極活物質として、LiNi0.6Co0.2Mn0.2を硫酸浸出液(抽出前の水相溶液)に対して抽出剤として10%LiOHでケン化したVersatic10の0.8M(ケン化60%)溶液(有機相溶液)を用いて、Ni/Co/Mnを同時抽出した。
【0112】
前記水相溶液に対する前記有機相溶液の体積比は3に維持した。
【0113】
抽出前の水相溶液および抽出後の溶液に含まれた金属の濃度は、下記表3に示す通りである。
【0114】
【表3】
【0115】
表3を参照すると、抽出後の水相溶液でLiの濃度が顕著に上昇し、Ni、Co及びMnが抽出されてLiの純度及び回収率が増加した。また、リサイクル工程を含む連続繰り返し工程を行う場合には、Li選択度がより向上することを予測することができる。
【0116】
比較例
正極活物質として、LiNi0.6Co0.2Mn0.2を用いて、NaOHを用いてケン化したリン酸系抽出剤でMn/Ni/Coを順次抽出した後、残余溶液に対して蒸発濃縮してLiを収集した。
【0117】
蒸発濃縮後のLi及びNaの濃度は、下記表4に示す通りである。
【0118】
【表4】
【0119】
表4を参照すると、蒸発濃縮を進行しつつ水の除去率が増加するほど、LiがNaと共に共沈殿してLiの回収率が低下した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】