(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】超音波装置および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/21 20060101AFI20230724BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230724BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20230724BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230724BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
C12M1/21
C12M3/00 A
C12M1/02 A
C12N5/071
B01D19/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579015
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021038190
(87)【国際公開番号】W WO2021262572
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ホーナー,クリストファー バウマン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4D011
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029DA03
4B029DB19
4B029DE08
4B029DG08
4B029GA03
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC08
4B065BC19
4B065BC50
4B065BD50
4B065CA44
4D011AA18
4D011AC08
(57)【要約】
超音波装置は、超音波表面を有する筐体、超音波変換器、および超音波変換器から超音波表面にエネルギーを提供し、集束させる超音波ホーンを備える。細胞培養容器から捕捉気泡を除去する方法は、細胞培養容器のマイクロキャビティウェル内の液体中に捕捉された気泡を含む細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程を含む。機械的撹拌が、超音波装置により生じ、マイクロキャビティウェルから捕捉気泡を除去するために細胞培養容器に施される。細胞培養容器から細胞集合体を解放する方法は、マイクロキャビティウェル中に細胞集合体を含む細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程を含む。細胞培養容器の表面に超音波装置からの機械的撹拌を施すことによって、細胞集合体がマイクロキャビティウェルから解放される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器から捕捉気泡を除去する方法において、
細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程であって、該細胞培養容器は、該細胞培養容器のマイクロキャビティウェル内の液体中に捕捉された気泡を含む工程、および
前記超音波表面で機械的撹拌を行って前記マイクロキャビティウェルから捕捉された気泡を除去する工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記機械的撹拌がパルス振動である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記機械的撹拌が連続振動である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記機械的撹拌を行う工程が、超音波ホーンを使用して、超音波変換器から超音波エネルギーを提供し、集束させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記超音波表面で前記超音波ホーンに対して前記細胞培養容器を保持することによって、該細胞培養容器に前記機械的撹拌を与える、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記細胞培養容器が、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記細胞培養容器が、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記機械的撹拌が、15秒以下の増分で前記細胞培養容器に与えられる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
細胞培養容器から細胞集合体を解放する方法において、
マイクロキャビティウェル内に細胞集合体を含む細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程、および
前記超音波装置から前記細胞培養容器の表面に機械的撹拌を施すことによって、前記マイクロキャビティウェルから前記細胞集合体を解放する工程、
を有してなる方法。
【請求項10】
前記細胞培養容器の表面が底面である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記機械的撹拌が15秒以下の増分で施される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記機械的撹拌が連続的に施される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記機械的撹拌がパルス状に施される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記細胞集合体がスフェロイドまたはオルガノイドである、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記細胞培養容器が、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
キットにおいて、
超音波装置であって、
超音波表面を備え、開口を有する筐体と、
前記筐体内に配置され、25kHzと100kHzの間の周波数で動作する超音波変換器と、
前記開口から突出する面を有する超音波ホーンであって、前記超音波変換器から前記超音波表面へ集束されたエネルギーを供給する超音波ホーンと、
を備えた超音波装置、および
前記超音波装置に動作可能に接続された細胞培養容器であって、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板を含む細胞培養容器、
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2020年6月25日に出願された米国仮特許出願第63/043877号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、超音波装置および細胞培養に超音波装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生体組織において構造化された細胞の生理的関連性のために、3次元(3D)細胞培養におけるスフェロイドおよびオルガノイドの使用が増加し続けている。スフェロイドおよびオルガノイド3次元細胞培養は、特に、組織工学、再生医療、および前臨床試験における薬剤の薬物動態学的および薬力学的効果をより良く理解するためなど、多くの用途で使用されている。
【0004】
市販のスフェロイドおよびオルガノイド生成プラットフォームは、研究および他の使途のために大量のスフェロイドおよびオルガノイドを生成する増大している必要性を満たそう努めている。このプラットフォームは、多くのマイクロキャビティウェルを有する基板を含むことが多く、個々のスフェロイドまたはオルガノイドは、各ウェル内で生成されることになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スフェロイドの生成には、ウェルに気泡が入ることが問題となる。ウェルに細胞を播種する前に気泡があると、細胞がウェルの底に定着できず、そのため、スフェロイドやオルガノイドの均一な分布や凝集形成が妨げられてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による超音波装置は、細胞培養容器のマイクロキャビティ基板内の捕捉気泡の機械的除去を可能にし、それによって、捕捉気泡を除去するために以前に使用された手動撹拌または化学処理の技術を回避することができる。手動撹拌には、気泡を取り除くために基板を作業面に叩きつけたりぶつけたりすることが含まれることがあるが、そのような行為は、容器の破損および完全性の喪失につながる。気泡を除去するための化学処理方法としては、基板の表面を官能化して湿潤性を高めること、エタノールなどの低い濡れ角を有する溶媒で表面を予め濡らすこと、その系を高流速でフラッシングすること、および基板の表面に亘り溶解できるように多糖類で表面を被覆することが挙げられるであろう。しかしながら、化学処理方法では、余計な工程段階や、処理済み基板の特別な包装が必要とされる。
【0007】
本発明の装置は、一貫した周波数で振動する圧電超音波変換器を使用する。超音波振動はキャビテーション事象をもたらし、捕捉気泡に音の周波数を与えることで気泡が膨張および収縮し、それによって、細胞培養容器内のマイクロキャビティウェルから気泡が除去される。このように、機械的な振動により、複雑な工程段階が加わったり、特別な包装を必要としたり、細胞培養容器の破損を引き起こしたりせずに、マイクロキャビティウェル内の捕捉気泡を除去することが可能である。設置面積が小さい超音波装置を提供することにより、この装置は、無菌細胞培養フード内で使用することができ、時間を節約し、スフェロイド生成プロセスの効率を高めることにより、工程段階を最小限度にし、ユーザエクスペリエンスを簡素化することができる。
【0008】
本発明の一態様によれば、超音波装置は、超音波表面を有する筐体、筐体内に配置された超音波変換器、および超音波変換器から超音波表面へエネルギーを供給し、集束させる超音波ホーンを備える。
【0009】
超音波変換器は、超音波圧電変換器であることがある。超音波装置の超音波周波数は、約25kHzから約100kHzの範囲にあることがある。いくつかの実施の形態において、超音波周波数は、約40kHzであることがある。超音波装置は、超音波電力ドライバボードをさらに含むことがある。超音波装置は、連続振動を提供することがある。超音波装置は、パルス振動を提供することがある。
【0010】
超音波表面は、超音波ホーンの面が突出する開口を含むことがある。この装置は、筐体の表面に配置された電源スイッチをさらに含むことがある。この装置は、筐体の表面上に配置された表示灯をさらに含むことがある。この装置は、超音波表面上に起動スイッチをさらに含むことがある。超音波装置は、携帯型であることがある。
【0011】
超音波表面は、細胞培養容器を受け入れ可能であることがある。細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含むことがある。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティフラスコであり、T-25フラスコ、T-75フラスコ、T-175フラスコ、またはT-225フラスコを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレートであり、96ウェルのスフェロイドマイクロプレート、384ウェルのスフェロイドマイクロプレート、または1536ウェルのスフェロイドマイクロプレートを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、多層マイクロキャビティ細胞培養容器であり、CellSTACK(登録商標)容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、HYPERFlask(登録商標)容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、またはHYPERStack(登録商標)容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)を含む。
【0012】
本発明の一態様によれば、細胞培養容器から捕捉気泡を除去する方法は、細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程であって、この細胞培養容器は、細胞培養容器のマイクロキャビティウェル内の液体中に捕捉された気泡を含む工程、および超音波表面で機械的撹拌を行ってマイクロキャビティウェルから捕捉された気泡を除去する工程を含む。
【0013】
機械的撹拌は、パルス振動であることがある。機械的撹拌は、連続的な振動であることがある。行われた機械的撹拌は、超音波変換器から超音波エネルギーを提供し、集束させるために超音波ホーンを使用する工程を含むことがある。機械的撹拌は、約15秒以下の増分で細胞培養容器に施されることがある。
【0014】
機械的攪拌は、超音波表面で細胞培養容器を超音波ホーンに対して保持することによって、細胞培養容器に施されることがある。細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器であることがある。細胞培養容器は、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板を含むことがある。
【0015】
本発明の一態様によれば、細胞培養容器から細胞集合体を解放する方法は、マイクロキャビティウェル内に細胞集合体を含む細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程、および超音波装置から細胞培養容器の表面に機械的撹拌を施すことによって、マイクロキャビティウェルから細胞集合体を解放する工程を含む。
【0016】
機械的撹拌は、15秒以下の増分で細胞培養容器に施されることがある。機械的撹拌は、細胞培養容器に連続的に施されることがある。機械的撹拌は、パルス状に細胞培養容器に施されることがある。細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含むことがある。細胞集合体は、スフェロイドまたはオルガノイドであることがある。細胞培養容器の表面は、底面であることがある。
【0017】
本発明の一態様によれば、キットは、超音波装置と、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板を含む細胞培養容器とを含むことがある。
【0018】
記載された装置、方法、およびキットの適用可能性のさらなる範囲は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および図面から明らかになるであろう。詳細な説明および具体例は、説明の精神および範囲内での様々な変更および修正が当業者には明らかになるので、例示のためにのみ与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下の図面を参照することによって、本開示の性質および特徴をさらに理解できるであろう。添付図面において、同様の構成要素または特徴は、同じ参照ラベルを有することがある。
【
図6】本発明の実施の形態による方法を適用する前(A)と後(B)の細胞培養容器を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
バルクスフェロイドマイクロキャビティ基板形状の固有の疎水性のために、水溶液中の水分子の水素結合により高い表面張力が生じる。その表面張力は、液体がマイクロキャビティに入るのではなく、マイクロキャビティの上を越えて広がり、それによってマイクロキャビティウェルが濡れるのを妨げてしまう。表面張力の問題を解決するための従来の技術には、ウェルを予め濡らすため、またはコーティングを施すための化学処理がある。例えば、エタノールなどの非極性溶媒から水などのより極性の溶媒までのグラデーションや、その中間の混合溶媒で、ウェルを予め濡らすことができる。別の例として、基板をグルコースで被覆する場合、極性分子に対する水の親和性により、マイクロキャビティウェルの濡れと充填をより良くすることができる。しかしながら、いずれの技術も化学処理であり、細胞培養の前に余計な取扱いおよび処理工程を必要とする。
【0021】
対照的に、本発明の装置および方法は、超音波を使用して表面張力を克服する。したがって、本発明は、化学処理ではなく、マイクロキャビティウェルの湿潤化を支援するために使用できる、機械的方法を提供する。この装置は、化学修飾や表面改質ではなく、機械的撹拌を用いて、マイクロキャビティウェルの底部から捕捉空気を除去する。本発明のいくつかの実施の形態において、細胞培養容器またはバルクスフェロイドマイクロキャビティ基板を伴う超音波装置を含むキットが提供される。本発明の装置および方法は、マイクロキャビティ基板または容器の製造工程を簡略化する。機械的撹拌を用いることにより、マイクロキャビティ基板は、多糖類被覆工程などの化学的被覆工程をもはや必要としない。化学的被覆がもはや不要であるため、マイクロキャビティ基板の特別な包装も不要になる。
【0022】
本発明の装置および方法は、マイクロキャビティウェルの底部から捕捉気泡を除去するために、超音波に応答して液体中の気泡のキャビテーションを利用する。ある実施の形態において、圧電変換器は、AC電圧波形が印加されると、決定された周波数で振動し、この変換器は電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。特定の実施の形態において、本発明の装置は、約220kHzからGHzの周波数までに及ぶ周波数で動作する超音波圧電変換器を含む。気泡(air bubbles or gas bubbles)が高周波振動を受けると、波圧の変化によって、流体内に含まれる気泡が、崩壊するまで急速に膨張および収縮し、それによってキャビテーションとして知られる衝撃波が放出される。マイクロキャビティ基板に超音波周波数を施すことにより、本発明の装置は、従来使用されてきた化学修飾の代わりに、機械的撹拌によってマイクロキャビティウェルの底部から気泡を除去することができる。
【0023】
本発明の装置および方法はまた、スフェロイド形成のためのマイクロキャビティ基板の処理を単純化する。本発明の装置は、一貫した予測可能な機械的撹拌を発生させる。機械的撹拌がマイクロキャビティ基板の表面に施されると、捕捉気泡を除去するために、実験台などの作業面上で細胞培養容器を手動で「叩く」または「ぶつける」必要がなくなる。また、装置のサイズと小さい設置面積のために、超音波装置を細胞培養フード内で使用することができる。したがって、この装置サイズにより、細胞培養プロセスおよび細胞培養容器への細胞の播種の最中に気泡を除去するために卓上遠心分離機または他の方法を使用するために、クラスII細胞培養フードなどの細胞培養フードから基板を取り出す必要がなくなる。本発明では、細胞培養フード内で気泡を除去できることにより、マイクロキャビティ基板を細胞培養フードの無菌環境内に維持しながら、工程所要時間および取扱時間が短縮される。
【0024】
本発明の装置および方法は、スフェロイドまたはオルガノイドの生成プロセスの後期にも有用であることが分かる。本発明は、長期間の培養後、マイクロキャビティ基板に付着したスフェロイドまたはオルガノイドを取り外すために使用することができる。本発明の装置を使用して機械的撹拌を提供することにより、スフェロイドまたはオルガノイドを破壊せずに、もしくは内に含まれる細胞を損傷せずに、スフェロイドまたはオルガノイドを取り外すことが可能である。
【0025】
本発明の超音波装置は、超音波表面を有する筐体、筐体内に配置された超音波変換器、および超音波変換器から超音波表面へエネルギーを供給し、集束させる超音波ホーンを備える。超音波変換器は、圧電型超音波変換器であることがある。いくつかの実施の形態において、装置は、起動スイッチ、電源スイッチ、設定スイッチ、表示灯、またはそれらの組合せも備える。いくつかの実施の形態において、本発明による超音波装置と、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのバルクマイクロキャビティ基板とを含むキットが提供される。
【0026】
本発明の装置は、電源、および電力を増幅するための超音波電力ドライバボードまたは制御ボードをさらに備える。電源は、電池またはコンセントなど、どの適切な電源であってもよい。装置は、AC入力ケーブルおよびプラグまたは電池入力を含むことがある。どの適切な制御装置が使用されてもよい。例えば、制御装置は、制御ボード、電力増幅モジュール、またはそれらの組合せを含むことがある。起動スイッチは、超音波ホーンの面の外周に配置されることがある。電源スイッチは、エネルギーを節約するために装置の出力を落とし、また装置が使用されていないときに望ましくない動作を防止するために設けられることがある。
【0027】
筐体の表面が、超音波表面を含むことがある。超音波表面は、装置の最上面であることがある。超音波表面は、超音波ホーンの面が突出する開口を含むことがある。超音波表面は、細胞培養容器を受け入れることができる。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む。ある実施の形態において、超音波装置は、設置面積が小さく、それによって、装置を、細胞培養フード下の貴重なスペースを占有することなく、そのフード内で使用することができる。ある実施の形態において、装置は、小型で、モジュール式であり、細胞培養フード内での使用に適した寸法を有する。いくつかの実施の形態において、装置は、6インチ(約15cm)の立方体のような形状である。装置は、密封された内部構成要素から作られることがあり、それにより、無菌細胞培養フード内で使用するために装置を容易に拭き取ったり、消毒したりすることができる。いくつかの実施の形態において、装置は携帯型である。
【0028】
筐体は、剛性構造を提供するどの適切な材料から形成されてもよい。例えば、筐体は、剛性プラスチック材料または他の剛性非導電性材料から形成されることがある。いくつかの実施の形態において、超音波ホーンの少なくとも一部は、筐体の超音波表面から突出している。超音波表面から突出する超音波ホーンの部分は、超音波ホーンの面であることがある。
【0029】
本発明の装置および方法は、任意の適切な超音波周波数および所望の超音波周波数で動作する任意の適切な超音波変換器を使用してもよい。いくつかの実施の形態において、キャビテーションのための超音波周波数は、約25kHzから約100kHzの範囲である。いくつかの実施の形態において、超音波周波数は、約40kHzである。超音波変換器は、圧電型超音波変換器であることがある。超音波変換器は、40kHz 60Wの超音波変換器であることがある。いくつかの実施の形態において、超音波周波数は、約25kHzから約100kHzの範囲である。いくつかの実施の形態において、超音波周波数は、25kHz、40kHz、および80kHzから選択される。好ましい実施の形態において、超音波周波数は40kHzである。超音波周波数が、約20kHzまでである、人間の聴覚の範囲よりも大きいことが好ましい。ある実施の形態において、超音波変換器は、KEMET Electronics Corporation(フロリダ州フォートローダーデール所在)製の40kHz圧電型超音波変換器、またはSteiner & Martins,Inc.(フロリダ州ダベンポート所在)製の40kHz圧電型超音波空気変換器であることがある。他の超音波変換器が考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0030】
ホーンは、超音波変換器から放出される超音波エネルギーを集束させることができるどの適切な超音波ホーンであってもよい。超音波ホーンは、どの適切なサイズおよび形状であってもよく、どの適切な材料から形成されてもよい。ある実施の形態において、超音波ホーンは、金属製の円筒形超音波ホーンである。超音波ホーンは、アルミニウム、チタン、または鋼など、どの適切な材料から製造されてもよい。一例として、超音波ホーンは、円筒形または矩形ブロックのような形状であってもよい。ある実施の形態において、超音波ホーンは、Branson Ultrasonics Corp.(コネチカット州ダンベリー所在)またはSonitek Corporation(コネチカット州ミルフォード所在)製のものなどの円筒形アルミニウム超音波ホーンであってよい。他の超音波ホーンも、考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0031】
ここに記載されるように、本発明の装置は、バルクスフェロイド形成のための細胞播種の均等な分布を支援するために、マイクロキャビティウェルの底部から捕捉気泡を除去するために使用することができる。本発明の装置は、マイクロキャビティウェルから細胞を取り外すために使用することもできる。
【0032】
いくつかの実施の形態において、本発明の装置および方法は、細胞培養容器内のマイクロキャビティウェルを水溶液で「ウェットアウトする(wet-out)」または完全に飽和させるために、細胞培養容器またはバルクスフェロイドマイクロキャビティ基板と共に使用される。機械的撹拌の一貫した予測可能な手段として超音波変換器を使用することにより、一連のマイクロキャビティウェルから捕捉気泡を除去し、それによって、マイクロキャビティウェルを「ウェットアウト」させることができる。マイクロキャビティウェルの「ウェットアウト」は、下流での処理のために、一連のマイクロキャビティに亘り均質な細胞播種および細胞スフェロイドの形成を可能にする。
【0033】
いくつかの実施の形態において、本発明の装置および方法は、スフェロイドまたはオルガノイドをマイクロキャビティウェルから取り外すために使用される。長期間培養されたスフェロイドは、バルクスフェロイドマイクロキャビティ基板または細胞培養容器の微小規模のウェルなどのマイクロキャビティウェル内にしっかりと留まっているであろう。スフェロイドやオルガノイドなどの凝集した細胞をマイクロキャビティウェルから除去する従来使用されてきた方法には、手作業による掻き出しや激しい洗浄があるが、これはスフェロイドやオルガノイドを損傷させる可能性がある。本発明による超音波装置を使用することにより、一貫した予測可能な機械的撹拌手段が提供され、これにより、従来使用されていた手動または化学的プロセスと比較して、長時間培養されたスフェロイドを容易に除去することが可能になる。
【0034】
いくつかの実施の形態において、本発明の装置は、マイクロキャビティ基板製品などの細胞培養容器と共に使用するのに適している。マイクロキャビティ基板製品の非限定例には、T-25フラスコ、T-75フラスコ、オープンウェルプレート、およびマイクロキャビティ細胞培養プレートがある。マイクロプレート製品の非限定例としては、EZSPHERE(Nacalai USA製)、AGGREWELL(STEMCELL Technologies製)、SPHERA(Nunclon製)、CELLSTAR(Greiner Bio-One製)、CELLCARRIER(PerkinElmer製)、およびNANOCULTURE(MBL International製)、96ウェルのスフェロイドマイクロプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、384ウェルのスフェロイドマイクロプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、1536ウェルのスフェロイドマイクロプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、およびELPLASIAプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)が挙げられる。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティフラスコであり、T-25フラスコ、T-75フラスコ、T-175フラスコ、またはT-225フラスコを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレートであり、96ウェルのスフェロイドマイクロプレート、384ウェルのスフェロイドマイクロプレート、または1536ウェルのスフェロイドマイクロプレートを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、多層マイクロキャビティ細胞培養容器であり、「CellSTACK」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、「HYPERFlask」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、または「HYPERStack」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)を含む。他の細胞培養容器も、考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0035】
装置の電源を入れると(電源スイッチを有する装置では、電源スイッチをON位置に回し、電源により電力が装置に供給される)、装置の超音波面にある超音波ホーンの面上に細胞培養容器が置かれるまで、装置は待機モードとなる。細胞培養容器が超音波ホーンの面上に置かれると、超音波変換器の電源が入る。起動スイッチを有する装置では、細胞培養容器を超音波表面および超音波ホーンの面上に置くことは、超音波変換器の電源を入れる起動スイッチを入れることも含むことがある。電源が入ると、超音波変換器はバルクスフェロイドマイクロキャビティの表面を振動させ、それによって、細胞培養容器のマイクロキャビティウェル内の捕捉気泡(または捕捉スフェロイド)を取り外す。振動の機械的作用は、捕捉気泡を取り除くには十分に過酷であるが、容器または基板への壊滅的な破壊を避けるには十分に穏やかである。
【0036】
細胞培養プロセスの段階的進行に応じて、振動は、細胞播種または細胞収穫のために使用されることがある。細胞播種では、スフェロイドやオルガノイドの生成を可能にするために、マイクロキャビティウェル内のキャビテーションによって捕捉気泡を取り除くために振動が使用される。細胞収穫では、生成したスフェロイドやオルガノイドを収穫するために、マイクロキャビティウェルから細胞を取り外すのに、振動とそれに続くキャビテーションが使用される。
【0037】
連続振動またはパルス振動などの装置の異なる設定が提供されることがある。いくつかの実施の形態において、装置は連続振動を提供する。いくつかの実施の形態において、装置はパルス振動を提供する。パルス振動は、パルス状の断続的な振動であることがある。装置は、約15秒以下の増分で機械的撹拌または振動を提供することがある。いくつかの実施の形態において、パルス振動は、約15秒以下の増分で発生する。パルス振動は、超音波変換器のON-OFFシーケンスまたはインパルスを交互に繰り返すことによって、もしくは超音波振動の時限的な間隔をプログラミングすることによって提供されることがある。パルス振動により、マイクロキャビティから捕捉気泡をより効果的に除去することができ、装置の動作によって発生する熱と音の量を制限し、それによって、変換器の寿命が延びる。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態による超音波装置100を示す。超音波装置100は、超音波表面25を有する筐体15、筐体15内に配置された超音波変換器、および超音波変換器から超音波表面25へエネルギーを供給し、集束させる超音波ホーン35を含む。超音波ホーン35は、超音波表面25から突出した面37を有する。OFF-ONモードを有する電源スイッチ55が、超音波装置100の前面に設けられている。
【0039】
図2は、本発明の実施の形態による超音波装置200を示しており、装置200は、超音波表面25上の超音波ホーン35の面37の周囲に起動スイッチ50をさらに含む。どの適切な起動スイッチまたはボタンを使用してもよい。例えば、細胞培養容器がボタンを押し下げたときに押し下げられ、それによって、超音波変換器を起動させるボタンが使用されることがある。装置の電池の電力レベルを示すライトなどの表示灯53が、超音波装置の前面に示されている。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態による超音波装置300を示す。装置300は、超音波表面25を有する剛性筐体15を含む。超音波表面25を覆う蓋23も設けられている。この蓋は、丁番付きの蓋(図示されている)もしくは留め金を持つ蓋またはかみ合う蓋など、どの適切な蓋であってもよい。他のタイプの蓋も考えられる。超音波表面25は、様々なサイズと寸法の細胞培養容器を受け入れるのに適した、トレイなどの平面であることがある。超音波ホーンの面37は、筐体15の超音波表面25から突出している。矩形の超音波表面の面37が示されている。
【0041】
電源スイッチ55が、超音波装置300の前面に設けられている。いくつかの実施の形態において、電源スイッチは、ON位置とOFF位置を有する。ON位置にある場合、超音波装置は、起動され、待機モードとなり、超音波表面に物品が接触したときに、装置が機械的撹拌を提供する。電源スイッチがOFF位置にある場合、超音波装置は動作しない。超音波装置300の前面に、設定スイッチ49が設けられている。設定スイッチにより、この装置の異なる設定を起動させることができる。例示の設定に、パルス撹拌、連続撹拌、および適時選択設定がある。超音波装置300の前面に、表示灯51、52、および54が設けられている。これらの表示灯は、電源スイッチ、設定スイッチ、および超音波表面に関連付けられることがある。例えば、表示灯51は設定スイッチ49のモードを示し、表示灯52は電源スイッチ55のモードを示し、表示灯54は超音波変換器が起動しているか否か、および/または超音波表面25に機械的撹拌を与えているか否かを示す。
【0042】
図4は、超音波装置100の分解図を示す。装置100は筐体15を含む。いくつかの実施の形態において、筐体15は、図示されているように、立方体のような形状であることがある。筐体は、剛性プラスチック筐体など、非導電性材料であることがある。筐体15内には、制御装置または制御ボード40、超音波変換器30、面37を有する超音波ホーン35、および絶縁材(図示せず)が配置されている。制御装置は、超音波電源ドライバボードなど、どの適切な制御装置であってもよい。筐体15の上面は、超音波表面25の役割を果たす。超音波表面25は、超音波ホーン35の面37が突出する開口21を有する。図示された電源45はコンセントである。電気コードと電源プラグ47は、電源スイッチ55がON位置に入れられると、装置100に電源45から電力を供給する。制御ボード40および超音波変換器30は、電力を機械的撹拌の形態の超音波出力に変換し、この超音波出力は、超音波ホーン35によって集束され、超音波表面25で超音波ホーン35の面37と同一平面に配置された細胞培養容器に提供される。
【0043】
細胞培養容器から捕捉気泡を除去する方法が提供される。本発明の一態様によれば、細胞培養容器から捕捉気泡を除去する方法は、細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程であって、この細胞培養容器は、細胞培養容器のマイクロキャビティウェル内の液体中に捕捉された気泡を含む工程、および超音波表面で機械的撹拌を行ってマイクロキャビティウェルから捕捉された気泡を除去する工程を含む。
【0044】
機械的撹拌は、パルス振動であることがある。機械的撹拌は、連続的な振動であることがある。生成された機械的撹拌は、超音波変換器から超音波エネルギーを提供し、集束させるために超音波ホーンを使用する工程を含むことがある。機械的撹拌は、超音波表面で細胞培養容器を超音波ホーンに対して保持することによって、細胞培養容器に施されることがある。機械的撹拌は、約15秒以下の増分で細胞培養容器に施されることがある。
【0045】
いくつかの実施の形態において、超音波ホーンの面は、超音波表面から突出している。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、細胞培養容器に機械的撹拌の形態にある超音波エネルギーを施し、それによって、捕捉された気泡を除去するために、超音波ホーンの面に対して細胞培養容器を同一平面に保持することによって、位置付けられている。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器の底面は、超音波ホーンに対して同一平面に保持されている。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、細胞培養容器の底面の異なる部分が超音波ホーンの面と同一平面にあるように、ユーザによって手動で操作される。
【0046】
いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、スフェロイドやオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板またはバルクマイクロキャビティ基板である。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティフラスコであり、T-25フラスコ、T-75フラスコ、T-175フラスコ、またはT-225フラスコを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレートであり、96ウェルのスフェロイドマイクロプレート、384ウェルのスフェロイドマイクロプレート、または1536ウェルのスフェロイドマイクロプレートを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、多層マイクロキャビティ細胞培養容器であり、「CellSTACK」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、「HYPERFlask」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、または「HYPERStack」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)を含む。他の細胞培養容器も、考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態による装置を使用する方法400を示す。超音波装置100は、超音波変換器の周りに配置された筐体15、および超音波ホーン35を含む。この超音波ホーンの面37は、筐体15の超音波表面25から突出している。マイクロキャビティ基板のウェルを濡らすための超音波装置は、使用前に、「OFF」位置にある。「OFF」および「ON」モードは、電源スイッチ35により示されることがある。装置の電源スイッチ35が「ON」状態にされると、細胞培養容器60によって起動されるまで、待機モードのままである。
【0048】
細胞培養容器は、マイクロキャビティフラスコ、マイクロキャビティプレート、多層マイクロキャビティ細胞培養容器、またはマイクロキャビティウェル内で細胞を培養させることのできる他の細胞培養容器など、どの適切な細胞培養容器であってもよい。細胞培養容器は、マイクロキャビティウェルを備えたマイクロキャビティ基板を含む。細胞培養容器は、バルクスフェロイドマイクロキャビティ基板を含むことがある。
【0049】
細胞培養容器に細胞培養培地70または他の液体が加えられたときに、マイクロキャビティウェルのサイズのために、ウェルが細胞培養培地70で満たされずに、気泡65がマイクロキャビティウェル内に捕捉される。方法400において、捕捉された気泡65を含む細胞培養容器60が超音波ホーンの面37に対して同一平面に配置された場合、超音波装置100が起動され、超音波波形80が生成される。超音波波形80は、機械的撹拌を与えて、細胞培養容器60を振動させ、マイクロキャビティウェル内のどの捕捉された気泡65も取り外す。与えられる超音波エネルギーは、連続的であっても、またはパルス状であってもよい。細胞培養容器60は、捕捉された気泡65が除去されるまで、超音波表面25に対して保持することができる。捕捉された気泡65が除去されると、細胞培養容器60は、超音波装置100の超音波表面25から取り除かれ、その時点で、超音波波形80が停止され、超音波装置100は待機モードとなる。
【0050】
ある実施の形態において、本発明の超音波装置は、起動ボタンまたはスイッチを備える。細胞培養容器内のマイクロキャビティ基板のウェルを濡らすための超音波装置は、使用前に、「OFF」位置にある。この装置の電源スイッチが「ON」状態にされると、起動スイッチが細胞培養容器によって押し下げられるまで、待機モードとなる。起動スイッチが押し下げられると、超音波装置が起動され、超音波変換器からの機械的エネルギーが超音波ホーンによって集束される。細胞培養容器が超音波ホーンの面に対して同一平面にあるように位置付けられた、または保持されたときに、超音波エネルギーが細胞培養容器に施される。このように、バルクスフェロイドマイクロキャビティ基板を収容する細胞培養容器が超音波装置の超音波表面に対して配置されて、起動スイッチを押し下げ、超音波ホーンの面に対して同一平面に保持されたときに、超音波波形が生成されて、細胞培養容器を振動させ、マイクロキャビティウェル内に捕捉された気泡を取り外す。細胞培養容器は、細胞培養容器の表面の異なる区域が超音波ホーンの面に対して同一平面に配置されるように、超音波エネルギーを印加している間に、手動で操作されることがある。捕捉された気泡が除去されると、細胞培養容器は、超音波装置の超音波表面から取り除かれ、その時点で、超音波波形は停止され、超音波装置は待機モードとなる。
【0051】
図6は、(A)本発明の方法を経る前、および(B)本発明の方法を適用した後の培養フラスコなどの細胞培養容器の概略図を示す。図(A)から分かるように、培養フラスコ60は、キャップまたは蓋63を有することがあり、バルクスフェロイドマイクロキャビティ基板75を収容している。細胞培養培地70または基板の表面をウェットアウトするために使用される他の流体が添加された際に、マイクロキャビティ基板75のマイクロキャビティウェルの底部に、捕捉された気泡65が形成される。図(B)において、超音波装置の起動後の培養フラスコ60が示されている。装置の起動後に、気泡のキャビテーションが起こる。図(B)から分かるように、捕捉された気泡のキャビテーションが起こり、マイクロキャビティ基板75は、流体が満たされたマイクロキャビティ85を有している。このように、マイクロキャビティは、ウェットアウトされ、スフェロイドを形成するために細胞を添加する前に、流体で満たされている。
【0052】
細胞培養容器から細胞集合体を解放する方法が提供される。例えば、細胞集合体は、スフェロイドまたはオルガノイドであることがある。スフェロイドを培養する場合、凝集したスフェロイド培養物は、大きく成長し過ぎ、マイクロキャビティにおいてそれ自体で留まることがある。本発明の超音波装置を使用する方法は、スフェロイドに損傷を与えずに、凝集したスフェロイド培養物を取り外し、それゆえ、スフェロイドを収穫することができる。本発明の一態様によれば、細胞培養容器から細胞集合体を解放する方法は、マイクロキャビティウェル内に細胞集合体を含む細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程、および超音波装置から細胞培養容器の表面に機械的撹拌を施すことによって、マイクロキャビティウェルから細胞集合体を解放する工程を含む。
【0053】
細胞集合体は、スフェロイドまたはオルガノイドであることがある。細胞培養容器の表面は底面であることがある。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのバルク基板である。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティフラスコであり、T-25フラスコ、T-75フラスコ、T-175フラスコ、またはT-225フラスコを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、マイクロキャビティプレートであり、96ウェルのスフェロイドマイクロプレート、384ウェルのスフェロイドマイクロプレート、または1536ウェルのスフェロイドマイクロプレートを含む。いくつかの実施の形態において、細胞培養容器は、多層マイクロキャビティ細胞培養容器であり、「CellSTACK」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、「HYPERFlask」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)、または「HYPERStack」容器(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated製)を含む。他の細胞培養容器も、考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0054】
機械的撹拌は、15秒以下の増分で細胞培養容器に施されることがある。機械的撹拌は、細胞培養容器に連続的に施されることがある。機械的撹拌は、パルス状に細胞培養容器に施されることがある。いくつかの実施の形態において、超音波装置は、数百ミリ秒から約15秒までの増分でパルス状である。超音波変換器を連続的に運転せずに、断続的に運転することによって、本発明の方法は、マイクロキャビティウェルを除去する上でのより効率的なキャビテーション作用を可能にする。
【0055】
一例において、この装置は、約15秒に亘り連続運転し、次いで、止めた。この時点以降は、電源スイッチを、ON位置とOFF位置との間で交互に切り換えた。電源スイッチをOFFにした時に、捕捉された気泡が、細胞培養容器中の液体の表面に浮かぶのが観察された。超音波変換器が動作した周波数により、気泡にとって中断したアニメーションの一点となり、その気泡はマイクロキャビティから解放されているが、流体内でその場に留まっていた。超音波振動が一旦消されると、気泡は気液界面に逃れた。
【0056】
本開示の多数の実施の形態が、添付図面に示され、先の詳細な説明に記載されているが、本開示は、開示された実施の形態に限定されず、以下の請求項に述べられ、定義される開示から逸脱せずに、多数の再配置、変更および置換が可能であることを理解すべきである。
【0057】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0058】
実施形態1
超音波装置であって、
超音波表面を有する筐体、
前記筐体内に配置された超音波変換器、および
前記超音波変換器から前記超音波表面へエネルギーを供給し、集束させる超音波ホーン、を備えた超音波装置。
【0059】
実施形態2
前記超音波変換器が超音波圧電変換器である、実施形態1に記載の装置。
【0060】
実施形態3
前記超音波表面が細胞培養容器を受け取ることができる、実施形態1に記載の装置。
【0061】
実施形態4
前記細胞培養容器が、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む、実施形態3に記載の装置。
【0062】
実施形態5
前記超音波表面が、前記超音波ホーンの面が突出する開口を含む、実施形態1に記載の装置。
【0063】
実施形態6
超音波周波数が、25kHzから100kHzの範囲にある、実施形態1に記載の装置。
【0064】
実施形態7
前記超音波周波数が40kHzである、実施形態6に記載の装置。
【0065】
実施形態8
前記超音波装置が、超音波電源ドライバボードをさらに含む、実施形態1に記載の装置。
【0066】
実施形態9
前記筐体の表面に電源スイッチが配置されている、実施形態1に記載の装置。
【0067】
実施形態10
前記筐体の表面に表示灯が配置されている、実施形態1に記載の装置。
【0068】
実施形態11
前記超音波表面上に起動スイッチをさらに含む、実施形態1に記載の装置。
【0069】
実施形態12
前記超音波装置が連続振動を与える、実施形態1に記載の装置。
【0070】
実施形態13
前記超音波装置がパルス振動を与える、実施形態1に記載の装置。
【0071】
実施形態14
前記超音波装置が携帯型である、実施形態1に記載の装置。
【0072】
実施形態15
細胞培養容器から捕捉気泡を除去する方法において、
細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程であって、該細胞培養容器は、該細胞培養容器のマイクロキャビティウェル内の液体中に捕捉された気泡を含む工程、および
前記超音波表面で機械的撹拌を行って前記マイクロキャビティウェルから捕捉された気泡を除去する工程、
を有してなる方法。
【0073】
実施形態16
前記機械的撹拌がパルス振動である、実施形態15に記載の方法。
【0074】
実施形態17
前記機械的撹拌が連続振動である、実施形態15に記載の方法。
【0075】
実施形態18
前記機械的撹拌を行う工程が、超音波ホーンを使用して、超音波変換器から超音波エネルギーを提供し、集束させる工程を含む、実施形態15に記載の方法。
【0076】
実施形態19
前記超音波表面で前記超音波ホーンに対して前記細胞培養容器を保持することによって、該細胞培養容器に前記機械的撹拌を与える、実施形態18に記載の方法。
【0077】
実施形態20
前記細胞培養容器が、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器である、実施形態15に記載の方法。
【0078】
実施形態21
前記細胞培養容器が、スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板を含む、実施形態20に記載の方法。
【0079】
実施形態22
前記機械的撹拌が、15秒以下の増分で前記細胞培養容器に与えられる、実施形態15に記載の方法。
【0080】
実施形態23
細胞培養容器から細胞集合体を解放する方法において、
マイクロキャビティウェル内に細胞集合体を含む細胞培養容器を超音波装置の超音波表面に位置付ける工程、および
前記超音波装置から前記細胞培養容器の表面に機械的撹拌を施すことによって、前記マイクロキャビティウェルから前記細胞集合体を解放する工程、
を有してなる方法。
【0081】
実施形態24
前記細胞培養容器の表面が底面である、実施形態23に記載の方法。
【0082】
実施形態25
前記機械的撹拌が15秒以下の増分で施される、実施形態23に記載の方法。
【0083】
実施形態26
前記機械的撹拌が連続的に施される、実施形態25に記載の方法。
【0084】
実施形態27
前記機械的撹拌がパルス状に施される、実施形態25に記載の方法。
【0085】
実施形態28
前記細胞集合体がスフェロイドまたはオルガノイドである、実施形態23に記載の方法。
【0086】
実施形態29
前記細胞培養容器が、マイクロキャビティプレート、マイクロキャビティフラスコ、または多層マイクロキャビティ細胞培養容器を含む、実施形態23に記載の方法。
【0087】
実施形態30
キットであって、
実施形態1に記載の超音波装置、および
スフェロイドまたはオルガノイドを生成するためのマイクロキャビティ基板を含む細胞培養容器、
を含むキット。
【符号の説明】
【0088】
15 筐体
23 蓋
25 超音波表面
30 超音波変換器
35 超音波ホーン
37 面
40 制御ボード
45 電源、コンセント
47 電気コードと電源プラグ
49 設定スイッチ
50 起動スイッチ
51、52、54 表示灯
55 電源スイッチ
60 細胞培養容器
63 キャップまたは蓋
65 捕捉された気泡
70 細胞培養培地
80 超音波波形
85 マイクロキャビティ
100、200、300 超音波装置
【国際調査報告】