(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸混合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A01N 37/44 20060101AFI20230724BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A01N37/44
A01P21/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580087
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 US2021038851
(87)【国際公開番号】W WO2021262950
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509319074
【氏名又は名称】バレント・バイオサイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Valent BioSciences LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】サーピン,マーシー アン
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,ロバート ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ウーラード,デレク
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,フランクリン ポール
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB03
4H011BB06
4H011BC18
4H011DA13
4H011DD03
(57)【要約】
本発明は、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(ACC)混合物に関する。本発明はさらに、本発明のACC混合物を施用することによって、木本多年生植物において、萌芽を促進または同調化させる方法に関する。本発明はさらに、本発明のACC混合物を施用することによって、木本多年生植物において、植物の成長を促進する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(ACC)またはその塩と、窒素含有肥料との混合物を含む、木本多年生植物において、芽の休眠を打破するための農業用組成物であって、ACCおよび窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、農業用組成物。
【請求項2】
窒素含有肥料が、硝酸カルシウムアンモニウム肥料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
窒素含有肥料が、15-0-0肥料、17-0-0肥料、および27-0-0肥料からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
窒素含有肥料が、15-0-0肥料であり、ACCおよび15-0-0肥料の比率が、約1:10~約1:1,000の比率である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
窒素含有肥料が、15-0-0肥料であり、ACCおよび15-0-0肥料の比率が、約1:60~約1:2,000の比率である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
窒素含有肥料が、17-0-0肥料であり、ACCおよび17-0-0肥料の比率が、約1:100~約1:3,000の比率である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
窒素含有肥料が、17-0-0肥料であり、ACCおよび17-0-0肥料の比率が、約1:300~約1:1000の比率である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
有効量の1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(ACC)またはその塩、および有効量の窒素含有肥料を施用することを含む、木本多年生植物の萌芽を促進する方法であって、ACCおよび窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法。
【請求項9】
植物成長が、植物のシュート成長である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
木本多年生植物が、サクラ属(Prunus)またはリンゴ属(Malus)の木である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ACCまたはその塩、および窒素含有肥料が、順次に、または同時に施用される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
有効量のACC、および有効量の窒素含有肥料を施用することを含む、木本多年生植物において、萌芽を同調化させる方法であって、ACCおよび窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法。
【請求項13】
植物成長が、植物のシュート成長である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
木本多年生植物が、ブドウの木である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
木本多年生植物が、サクラ属(Prunus)またはリンゴ属(Malus)の木である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ACCまたはその塩、および窒素含有肥料が、順次に、または同時に施用される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
有効量の1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(ACC)またはその塩、および有効量の窒素含有肥料を施用することを含む、木本多年生植物の植物成長を促進する方法であって、ACCおよび窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法。
【請求項18】
植物成長が、植物のシュート成長である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
木本多年生植物が、サクラ属(Prunus)またはリンゴ属(Malus)の木である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ACCまたはその塩、および窒素含有肥料が、順次に、または同時に施用される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)混合物に関する。本発明はさらに、本発明のACC混合物を施用することによって木本多年生植物における萌芽を促進または同調させる方法に関する。本発明はさらに、本発明のACC混合物を施用することにより木本多年生植物の成長を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
落葉果樹およびブドウの木などの木本多年生植物は、許容可能な果実収量を適切に得るために、成長期の間に低温になることを必要とする。具体的には、植物は、成長期の終わりに休眠芽を発達させて、成長期の間で生き残る可能性を高くする。この芽の段階は休眠期(dormancy)として知られている。打破される休眠期、および再開する木本多年生植物の成長のためには、ある程度の低温が必要である。効果的な低温は、低温の期間と低温期間における温度の両方に基づく。これは、通常、続いて温度上昇が起こり、休眠を打破し、同調した開花と果実の発達をもたらす。木本多年生植物におけるこの休眠打破は、萌芽(芽吹き)(bud break)として知られている。
【0003】
最も商業的に成功した芽の休眠を打破する化学物質は、水素シアナミド(「HC」)である。HCは、Dormex(登録商標)の有効成分である(Dormexは、ドイツのAlzChem AGの登録商標であり、そこから販売されている)。低温の不足を補うことに加えて、HCは、果実の結実と収量の増加をもたらす早期のより同調する萌芽を開始するために使用されている。しかしながら、HCは、非常に有毒であり、皮膚および/または粘膜との接触によりヒトの健康に悪影響を与えることが示されている。Schep et al., The adverse effects of hydrogen cyanamide on human health: an evaluation of inquiries to the New Zealand National Poisons Centre. Clin Toxicol (Phila). 2009 47(1):58-60、および、Update: hydrogen cyanamide-related illnesses-Italy, 2002-2004, MMWR Morb Mortal Wkly Rep, 2005 Apr 29, 54(16), 405-408を参照されたい。さらに、高い割合のHCは、シーズン中の植物毒性と関連しており、繰り返し使用すると、ブドウの健康と収量を長期的に低下させる可能性がある。
【0004】
1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)は、植物においてACCシンターゼによって合成され、エチレン生合成の前駆体として作用する。エチレンは、開花の同調化(パイナップル)、ストレス、結実、葉の脱落、および開花などを含む、いくつかの植物応答に関与していることが示されている。エチレン前駆体としての役割から、ACCは、農業においてエチレン応答事象を誘発するために使用されている。
【0005】
窒素含有肥料は、栽培される植物種の成長を促進するために使用されている。窒素含有肥料は、リンゴ、サクランボおよびブドウの萌芽の早期化と萌芽の同調化を促進することも示されている。しかしながら、窒素含有肥料は、芽の休眠を打破する上で、水素シアナミドほど効果的ではなく、一貫性もない。Hawerroth FJ, et al.: Erger and calcium nitrate concentration for budbreak induction in apple trees, Acta Hort., 2010 Aug, 872(32), 239-244を参照されたい。
【0006】
したがって、本技術分野において、植物または動物の健康に悪影響を与えることなく、水素シアナミドと同等またはそれ以上に芽の休眠を打破することが可能な組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、有効量の1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸(「ACC」)またはその塩と、有効量の窒素含有肥料との混合物を含む、芽の休眠を打破するための農業用組成物であって、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、農業用組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、有効量のACCまたはその塩、および有効量の窒素含有肥料を含む組成物を施用することによって、木本多年生植物において、早期の萌芽を促進するか、または萌芽および開花を同調化させる方法であって、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法に関する。
【0009】
本発明はさらに、有効量のACCまたはその塩、および有効量の窒素含有肥料を含む組成物を施用することによって、木本多年生植物の植物成長を促進する方法であって、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のACC混合物は、予想外にも、木本多年生植物において、市販の萌芽剤の標準品であるDormex(登録商標)と同等かそれ以上の萌芽(すなわち、成長の開始)を促進し、同調化させることが見出された。さらに、本発明のACC混合物は、予想外にも、各活性剤単独の効果の合計よりも高い割合で、木本多年生植物において、萌芽(すなわち、成長の開始)を促進および同調化させ、植物の成長を促進することが見出された。
【0011】
本明細書において、「芽の休眠を打破すること」または「萌芽」という語句は、休眠期間を続けている芽からの成長の開始を意味する。
【0012】
本明細書において、「促進する」との用語は、より早期に開始または増強することを意味する。
【0013】
本明細書において、1-アミノ-1-シクロプロパンカルボン酸またはACCとの用語は、CAS番号22059-21-8である、下記の化学構造:
【化1】
のものを意味する。
【0014】
本発明によって使用できる塩としては、これに限定されるものではないが、塩酸塩、二水和塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、タンニン酸塩、硫酸塩、トシル酸塩、エシル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「窒素含有肥料」との用語は、窒素を含有する肥料を意味する。
【0016】
本明細書において、「硝酸カルシウムアンモニウム肥料」との用語は、カルシウムおよび窒素を硝酸塩とアンモニウムの形態で含む肥料を意味する。
【0017】
「15-0-0肥料」は、約15%の窒素を含有する肥料を意味し、Erger(登録商標)(ErgerはイタリアのValagro S.P.A.の登録商標であり、米国テネシー州コリアーヴィルのHelena Chemical Companyから入手可能)、および、イタリアのValagro S.P.A.によるPCT国際出願公開WO/2001/037653A2に記載された全ての製剤(その全体が本明細書に組み込まれる)が含まれる。Erger(登録商標)は、Activ Erger(登録商標)(Valagro S.P.A.、イタリア)と組み合わせて使用されたが、これは、追加の窒素源となる。
【0018】
本明細書において、「17-0-0肥料」との用語は、約17%の窒素を含有する肥料を意味する。CAN17(登録商標)は、17-0-0肥料の供給源として使用された。CAN17は、硝酸アンモニウムと硝酸カルシウムに由来する、4.6%のアンモニウム態窒素、11.6%の硝酸態窒素、1.3%の尿素態窒素、および8.8%のカルシウムとして、合計17%の窒素を含んでいる。CAN17は、J.R.Simplot Company(Boise,ID,USA)から入手できる。
【0019】
本明細書において、「27-0-0肥料」との用語は、約27%の窒素を含有する肥料を意味する。CAN27は、27-0-0肥料の商業的供給源の1つである。YaraBela CAN27は、13.5%の硝酸塩、13.5%のアンモニア性、4%のカルシウム、および1%のマグネシウムとして、27%の窒素を含んでいる。
【0020】
本発明は、スプレー、ドレンチ、ドリップ(滴下)、ペインティング、またはブラシでのローリング、ワイピングおよびケミゲーション(薬液かんがい)技術を介して、適用することができる。
【0021】
本明細書において、量、比率、重量パーセンテージなどに関するすべての数値は、「約」または「およそ」として、それぞれの特定の値のプラスまたはマイナス10%で、定義される。例えば、「少なくとも5.0重量%」という語句は、「少なくとも4.5重量%から5.5重量%」と理解されるべきである。したがって、特許請求された値の10%以内の量は、特許請求の範囲に包含される。
【0022】
本明細書において、「有効量」とは、萌芽、萌芽の同調性を向上し、および/または生重量(新鮮重量)を増加させる、ACCまたはその塩および/または肥料の量を意味する。「有効量」は、ACCまたはその塩および肥料の濃度、処理される植物の種または品種、目的とする結果、および植物のライフステージなどの要因に応じて変化する。したがって、必ずしも正確な「有効量」を特定できるとは限らない。
【0023】
一実施形態において、本発明は、有効量のACCまたはその塩と、有効量の窒素含有肥料との混合物を含む、芽の休眠を打破するための農業用組成物であって、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、農業用組成物に関する。
【0024】
一実施形態において、ACCまたはその塩の有効量は、約1~約10,000ppm(パーツ・パー・ミリオン)、好ましくは約100~約3,000ppm、より好ましくは約300~約1,000ppmであり、最も好ましくは、約300または約1,000ppmである。
【0025】
好ましい実施形態において、窒素含有肥料は、硝酸カルシウムアンモニウム肥料である。
【0026】
より好ましい実施形態において、窒素含有肥料は、15-0-0肥料、17-0-0肥料、および27-0-0肥料からなる群から選択される。
【0027】
一実施形態において、窒素含有肥料の有効量は、約1%~約90%、好ましくは約3%~約50%、より好ましくは約3%~約30%、さらにより好ましくは約6%~約30%、最も好ましくは約6%または約30%である。
【0028】
別の実施形態において、本発明の組成物は、界面活性剤をさらに含む。本発明での使用に適した界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80など、ソルビタン誘導体、例えば、Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)85(Tween(登録商標)は、Croda Americas,Inc.の登録商標であり、Tween(登録商標)80および85は、Croda,Inc.から入手可能である)など、エトキシル化アルコール、例えば、Brij(登録商標)98(Brij(登録商標)は、Uniqema Americas LLCの登録商標であり、Brij(登録商標)98は、Croda Inc.から入手可能である)など、エトキシル化アルキルフェノール、例えば、Rhodia Inc.のIgepol CA-630、Igepol、およびIgepol CO-630など、エトキシル化脂肪酸、例えば、Myrj(登録商標)52(Myrj(登録商標)は、Atlas Powder Companyの登録商標であり、Myrj(登録商標)52は、Croda Inc.から入手可能である)など、シリコーン系界面活性剤、例えば、Silwet L-77(登録商標)(SilwetおよびSilwet L-77は、Momentive Performance Chemicalsの登録商標であり、Silwet L-77(登録商標)は、Momentive Performance Chemicalsから入手可能である)など、および、ブロックポリマー界面活性剤、例えば、Pluronic(登録商標)P85、およびPluronic(登録商標)P104(Pluronicは、BASF Corporationの登録商標であり、Pluronic(登録商標)P85およびP104は、BASF Corporationから入手可能である)など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
アニオン性界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、高級脂肪酸モノグリセリド一硫酸塩の水溶性塩、例えば、水素化ヤシ油脂肪酸の一硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩など、高級アルキル硫酸塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど、アルキルアリールスルホネート、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど、アルキルエトキシ硫酸塩、モノアルキルホスフェート、α-オレフィンスルホネート、1,2-ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル、有機ホスフェートエステル、例えば、モノ-およびジ-アルキルエトキシホスフェートなど、および、低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミド、例えば、脂肪酸、アルキルまたはアシル基中に12~16個の炭素を有するものなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
シリコーン界面活性剤としては、これに限定されるものではないが、PEG-12ジメチコンスルホコハク酸二ナトリウム(商品名Mackanate DC-100で、McIntyre Group,Ltd.から入手可能)、およびPEG-12ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-7ジメチコンコハク酸塩(すべてSilTech,LLCから入手可能)、PEG-20/PPG-6ジメチコン、PEG-14/PPG-4ジメチコン、PEG-4/PPG-12ジメチコン、PEG-20/PPG-20ジメチコン(Evonikから入手可能)、ジメチルシロキサンとメチル(ポリオキシエチレン)シロキサンのコポリマー(信越シリコーンから入手可能)、ジメチルシロキサンとメチル(ポリオキシエチレン)シロキサンとメチル(ポリオキシプロピル)シロキサンのコポリマー(信越シリコーンから入手可能)、SILSOFT(Momentus Performance Materialsから入手可能)、これには例えば、PEG-8トリシロキサン、PEG-8/PPG-26ジメチコン、PEG-20/PPG-23ジメチコン、PEG-20/PPG-15ジメチコン、PEG-23/PPG-6ジメチコン、PEG-17ジメチコン、およびPPG-12ジメチコンが含まれ、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、有効量のACCまたはその塩、および有効量の窒素含有肥料を含む組成物を施用することを含む、木本多年生植物において、好ましくはブドウの木において、萌芽および開花を促進または同調化する方法であって、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法に関する。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、有効量のACCまたはその塩、および有効量の窒素含有肥料を含む組成物を施用することを含む、木本多年生植物において、好ましくはブドウの木において、植物の成長を促進する方法であって、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料の比率が、約1:0.3~約1:3,000の比率である、方法に関する。
【0034】
本発明の方法において、ACCまたはその塩、および窒素含有肥料は、順次に、または同時に施用することができる。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明は、ACCまたはその塩、および15-0-0肥料を、約1:10~約1:1,000、より好ましくは約1:60~約1:200の比率で含む、芽の休眠を打破するための農業用組成物に関する。
【0036】
別の好ましい実施形態において、本発明は、ACCまたはその塩、および17-0-0肥料を、約1:100~約1:3,000、より好ましくは約1:300~約1:1000の比率で含む、芽の休眠を打破するための農業組成物に関する。
【0037】
木本多年生植物とは、それらが成長した地面に戻っても枯れない茎を有する植物を意味し、これに限定されるものではないが、ブドウの木(ツル)、キウイフルーツの木(ツル)、核果(stone fruit)の木、これには限定されるものではないが、モモの木、ネクタリンの木、アプリコットの木、サクラ(チェリー)の木が含まれ、リンゴの木、ナシの木、ブルーベリーの低木(茂み)、ラズベリーおよびブラックベリーを含む低木(イバラ)、が挙げられる。
【0038】
一実施形態において、木本多年生植物は、ブドウの木を含まない。
【0039】
これらの代表的な実施形態は、決して限定的なものではなく、本発明のいくつかの態様を説明するためだけに記載されている。
【0040】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、限定を目的として提供されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1.ACC混合物のリンゴ(Malus)に対する有効性
方法
本発明の混合物による萌芽を促進し同調化させる能力を評価するために、これらの混合物を野外で生育したリンゴ属(リンゴ)の根茎(rootstock)に施用し、萌芽(成長の開始)およびその後のシュートの発達について調べた。ACC、Dormex(50%HC)、15-0-0(Erger(登録商標))、および17-0-0肥料(CAN17)、およびそれらの混合物を、25cmの高さに剪定した鉢植えのリンゴの根茎の新芽(シュート)に、それぞれ個々に、または連続して(同時施用)、施用した。処理後28日目に、植物の萌芽について評価した。これらの評価の結果は、以下の表1~5に示される。
【0042】
混合物が予想しないほどの結果を提供したかどうかを決定するために、観測された併用効力(「OCE」)を予想併用効力(「ECE」)で割った。ここで、予想ECEは、下記のアボット法によって計算される。
ECE = A+B-(AB/100)
【0043】
上記式において、ECEは、予想される併用効力であり、ここで、AおよびBは、単独の有効成分によって付与される、対照に対する萌芽の速度、対照に対する植物当たりの萌芽の数、対照に対するシュートの長さ、または対照に対するシュートの重量である。混合物のOCEと混合物のECEの比率が1より大きい場合、予想よりも大きな相互作用が混合物に存在する。(Gisi, Synergistic Interaction of Fungicides in Mixtures, The American Phytopathological Society, 86:11, 1273-1279,1996)。
【0044】
【0045】
上記の表1に示されるように、1%のHCの施用が萌芽(bud breaking)の基準であり、12日までに50%のリンゴが休眠を打破した。しかしながら、1000ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物は、それと同じ時に萌芽に達した。対照の植物は、50%の萌芽に達するのに14日かかった。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界標準のHCと同様に、萌芽を引き起こす作用を有することを示している。
【0046】
ACCと17-0-0肥料の混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果をもたらした。具体的には、1000ppmのACCと30%の17-0-0肥料との混合物は、OCE:ECE比が3となった。したがって、本発明の混合物の施用は、商業的な施用と同様の休眠打破の予想外の促進をもたらす。
【0047】
【0048】
【0049】
収穫時(植え付け後28日)に、植物あたりおよびシュート1センチメートルあたりの萌芽した芽の数を評価した。上記の表2および表3に示されるように、1%のHCの施用が萌芽の基準であり、リンゴは、植物あたり平均8.13個の萌芽と、シュート1センチメートルあたり0.325個の節となった。しかしながら、1000ppmのACCと6%Ergerの混合物は、1%のHCよりも、植物あたりおよびシュート1センチメートルあたりの予想外の数の萌芽を引き起こした。したがって、本発明の混合物の施用は、商業的標準であるDormexと同様の予想外の休眠打破の促進をもたらす。
【0050】
【0051】
【0052】
収穫時(植え付け後28日)に、生重量および萌芽あたりの生重量を評価した。上記の表4および表5に示されるように、1%のHCの施用が生重量の基準であり、リンゴ根茎は新芽を合わせて平均7.99グラムになり、これは新芽を合わせた芽あたりの生重量0.98グラムに相当した。300ppmおよび1000ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物は、どちらも、1%のHCよりも芽あたりの生重量が大きくなった。さらに、1000ppmのACCと肥料の混合物は予想よりも大きな生重量をもたらし、300ppmおよび1000ppmのACCと30%17-0-0肥料の混合物は、予想よりも大きな芽あたりの生重量をもたらした。このデータは、生重量の向上において、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界をリードするHCよりも優れていることを実証している。さらに、本発明の混合物の施用は、商業的な施用と同様またはより優れた予想外の休眠打破の促進をもたらす。
【0053】
実施例2.ACC混合物のサクラ(Prunus)に対する有効性
方法
本発明の混合物による萌芽を促進し同調させる能力を評価するために、これらの混合物を温室内のサクラ属(核果)植物に施用し、萌芽(成長の開始)およびその後のシュートの発達について調べた。ACC、Dormex(50%HC)、15-0-0(Erger(登録商標))、および17-0-0肥料(CAN17)、およびそれらの混合物をそれぞれ、サクラ植物のシュートに、個々に、または連続して(同時施用)、施用した。処理後28日目に、植物の萌芽について評価した。これらの評価の結果は、以下の表6および表7に示される。
【0054】
【0055】
上記の表6に示されるように、1%のHCの施用が萌芽(bud breaking)の基準であり、7日までにサクラは50%の萌芽に達した。しかしながら、30%の17-0-0肥料、および、1000ppmのACCと肥料の混合物は、5日で早期の萌芽を引き起こした。さらに、300ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物により、7日で植物は50%の萌芽に達した。対照植物は、50%の萌芽に達するのに14日かかった。このデータは、ACCと窒素含有肥料の混合物が、業界標準のHCと同様に、萌芽において良好に作用することを実証している。
【0056】
【0057】
収穫時(植え付け後28日)に、新しい成長物の生重量を評価した。上記の表7に示されるように、1%のHCの施用が生重量の基準であり、サクラは、新芽を合わせて生重量が平均4.76グラムになった。ACCと肥料の混合物は、1%のHCよりも大きな生重量をもたらした。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界をリードするHCと同様に生重量の向上に良好に作用することを実証している。
【0058】
さらに、ACCと17-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、300ppmおよび1000ppmのACCと30%の17-0-0肥料により、OCE:ECEの比が2.53および11.80となる、植物あたりの生重量が得られた。したがって、本発明の混合物の施用は、商業的施用と同様またはより優れた予想外の休眠打破の促進をもたらす。
【0059】
実施例3.ACC混合物のサクラに対するさらなる有効性
方法
本発明の混合物による萌芽を促進し同調させる能力を評価するために、これらの混合物を温室内のサクラ属(核果)植物に施用し、萌芽(成長の開始)およびその後のシュートの発達について調べた。ACC、Dormex(50%HC)、および17-0-0肥料(CAN17)、およびそれらの混合物をそれぞれ、サクラ植物のシュートに、個々に、または連続して(同時施用)、施用した。処理後4~21日に、植物の萌芽について評価した。これらの評価の結果は、以下の表8~10に示される。
【0060】
【0061】
上記の表8に示されるように、1%のHCの施用が萌芽(bud breaking)の基準であり、リンゴの50%が9日までに休眠を打破した。しかしながら、100ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物、および300ppmのACCと10%の17-0-0肥料の混合物は、同じ時に萌芽に達した。さらに、100ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物、300ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物、および600ppmのACCと、3%、10%、または30%の17-0-0肥料の混合物は、8日で1%のHCよりも早く50%の萌芽に達した。50%の萌芽に最も早く到達したのは300ppmのACCと10%の17-0-0肥料で、7日で50%の萌芽に達した。対照植物は、50%の萌芽に達するのに10日かかった。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界標準のHCと同等またはそれ以上に萌芽の同調を引き起こす作用を有することを実証している。
【0062】
ACCと17-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、100ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物、300ppmのACCと3%または10%の17-0-0肥料の混合物、および600ppmのACCと3%の17-0-0肥料の混合物は、OCE:ECEの比が1.5~2.0になった。したがって、本発明の混合物の施用は、予想外の休眠打破の同調の促進をもたらす。
【0063】
【0064】
上記の表9に示されるように、1%のHCの施用が萌芽の標準であり、萌芽0%の6日後、リンゴの100%が休眠を打破した。しかしながら、100ppmのACCと10%の17-0-0肥料の混合物、および300ppmのACCと10%の17-0-0肥料の混合物は、同じ時に0~100%の萌芽に達した。さらに、300ppmのACCと3%の17-0-0肥料の混合物、600ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物、100ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物、および300ppmのACCと30%の17-0-0肥料の混合物は、4~5日で、1%のHCよりも早く、0~100%の萌芽に達した。対照植物は、0~100%の萌芽に達するまでに10日かかった。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界標準のHCと同等またはそれ以上に0~100%の萌芽を引き起こす作用を有することを実証している。
【0065】
ACCと17-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、600ppmのACCと3%の17-0-0肥料を除くすべての混合物は、OCE:ECE比が2.0~10.0となった。したがって、本発明の混合物の施用は、予想外の休眠打破の同調の促進をもたらす。
【0066】
【0067】
収穫時(植え付け後28日)に、新しい成長物の生重量を評価した。上記の表10に示されるように、1%のHCの施用が生重量の基準であり、サクラは、新芽を合わせて生重量が平均1.64グラムになった。ACCと肥料の混合物は、1%のHCよりも大きな生重量をもたらした。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界をリードするHCと同様に生重量の向上に作用することを実証している。
【0068】
さらに、ACCと17-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、300ppmのACCと3%の17-0-0肥料を除くすべての混合物は、OCE:ECEの比が1.55~9.13となる、植物あたりの生重量が得られた。したがって、本発明の混合物の施用は、商業的施用と同様またはより優れた予想外の休眠打破の促進をもたらす。
【0069】
実施例4.ACC混合物のサクラに対するさらなる有効性
方法
本発明の混合物により萌芽を促進し同調させる能力を評価するために、これらの混合物を温室内のサクラ属(核果)植物に施用し、萌芽(成長の開始)およびその後のシュートの発達について調べた。ACC、Dormex(50%HC)、および15-0-0肥料(CAN15)、およびそれらの混合物をそれぞれ、サクラ植物のシュートに、個々に、または連続して(同時施用)、施用した。処理後4~21日に、植物の萌芽について評価した。これらの評価の結果は、以下の表11~13に示される。
【0070】
【0071】
上記の表11に示されるように、1%のHCの施用が萌芽(bud breaking)の基準であり、リンゴの50%が9日までに休眠を打破した。しかしながら、100ppmのACCと10%の15-0-0肥料の混合物、300ppmのACCと10%の15-0-0肥料の混合物、600ppmのACCと3%の15-0-0肥料の混合物は、同じ時に萌芽に達した。さらに、100ppmのACCと6%または10%の15-0-0肥料の混合物、300ppmのACCと3%または6%の15-0-0肥料の混合物、および600ppmのACCと6%または10%の15-0-0肥料の混合物は、7~8日で、1%のHCよりも早く50%の萌芽に達した。対照植物は、50%の萌芽に達するのに11日かかった。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界標準のHCと同等またはそれ以上に萌芽の同調を引き起こす作用を有することを実証している。
【0072】
ACCと15-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、300ppmのACCと3%の15-0-0肥料の混合物は、OCE:ECEの比が1.3となった。したがって、本発明の混合物の施用は、予想外の休眠打破の同調の促進をもたらす。
【0073】
【0074】
上記の表12に示されるように、1%のHCの施用が萌芽(bud breaking)の基準であり、萌芽0%の6日後、リンゴの100%が休眠を打破した。しかしながら、100ppmのACCと6%または10%の15-0-0肥料の混合物、300ppmのACCと10%の15-0-0肥料の混合物、および600ppmのACCと6%または100%の15-0-0肥料の混合物は、4~5日で、1%のHCよりも早く、0~100%の萌芽に達した。対照植物は、0~100%の萌芽に達するまでに10日かかった。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界標準のHCと同等またはそれ以上に0~100%の萌芽を引き起こす作用を有することを実証している。
【0075】
ACCと15-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、100ppmのACCと10%の15-0-0肥料の混合物、300ppmのACCと3%の15-0-0肥料の混合物、600ppmのACCと10%の15-0-0肥料の混合物は、OCE:ECEの比が2.0となった。したがって、本発明の混合物の施用は、予想外の休眠打破の同調の促進をもたらす。
【0076】
【0077】
収穫時(植え付け後28日)に、新しい成長物の生重量を評価した。上記の表13に示されるように、1%のHCの施用が生重量の基準であり、サクラは、新芽を合わせて生重量が平均3.15グラムになった。ACCと肥料の混合物は、1%のHCよりも大きな生重量をもたらした。このデータは、ACCと特定の窒素含有肥料の混合物が、業界をリードするHCと同様に生重量の向上に作用することを実証している。
【0078】
さらに、ACCと15-0-0肥料との混合物は、いくつかのパラメーターに対して予想外の併用効果を与えた。具体的には、600ppmのACCと3%の15-0-0肥料を除くすべての混合物は、OCE:ECEの比が1.14~273.75となる、植物あたりの生重量が得られた。したがって、本発明の混合物の施用は、商業的施用と同様またはより優れた予想外の休眠打破の促進をもたらす。
【国際調査報告】