(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】EGFR突然変異NSCLCの治療に使用するための、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤の組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 45/08 20060101AFI20230724BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230724BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230724BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230724BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230724BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230724BHJP
A61K 31/4738 20060101ALI20230724BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
A61K45/08
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K31/5377
A61K31/506
A61K31/454
A61K31/4738
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580178
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021067346
(87)【国際公開番号】W WO2021260109
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522132856
【氏名又は名称】トルレモ・セラピューティクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TOLREMO THERAPEUTICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリュッキガー-マングアル,シュテファニ
(72)【発明者】
【氏名】グルーバー,ドロテーア
(72)【発明者】
【氏名】ボーナッカー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュビル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ-ローマー,デボラ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリティウス,シャルル-ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ラウダト,サラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086BC42
4C086BC67
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、とりわけ、NSCLCに罹患している患者の治療に使用するための、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、前記NSCLCは前記EGFRに発がん性変更を呈する、組合せ。
【請求項2】
前記EGFRにおける前記発がん性変更は、前記EGFRの過剰活性化をもたらす、請求項1に記載の使用のための組合せ。
【請求項3】
前記発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン18またはエクソン19またはエクソン20における欠失および/または挿入;EGFR遺伝子におけるキナーゼドメイン重複;EGFR遺伝子の増幅;L858R、G719S、G719A、G719C、V765A、T783A、S768I、S768V、L861Q、E709X、L819Q、A750P、およびそれらの組合せからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸を示すアミノ酸置換を前記EGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;ならびに上述のもののいずれかの組合せにより引き起こされる、請求項1または2に記載の使用のための組合せ。
【請求項4】
前記発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失、好ましくは前記EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失;前記EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項5】
但し、前記NSCLCが、EGFR阻害剤の以前の投与により前記EGFRに耐性変更をさらに呈する場合、前記組合せの前記EGFR阻害剤は、以前に投与された前記EGFR阻害剤ではない、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項6】
前記EGFRにおける前記耐性変更は、T790M、C797X、L792X、G796X、L718Q、L718V、G724S、D761Y、V834L、T854A、およびそれらの組合せからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸を示すアミノ酸置換を前記EGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異により引き起こされる、請求項5に記載の使用のための組合せ。
【請求項7】
前記EGFRにおける前記耐性変更は、前記EGFRにアミノ酸置換T790MをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異により引き起こされる、請求項5または6に記載の使用のための組合せ。
【請求項8】
前記CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、化合物A、化合物C、化合物00030、化合物00071、CCS1477、GNE-781、GNE-049、SGC-CBP30、CPI-637、FT-6876、化合物462、化合物424、および化合物515からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項9】
前記EGFR阻害剤は、ABBV-321、アビベルチニブ、アファチニブ、アルフルチニブ、アルモネルチニブ、アパチニブ、AZD3759、ブリガチニブ、D0316、D0317、D0318、ダコミチニブ、DZD9008、エルロチニブ、FCN-411、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ナザルチニブ、ネラチニブ、オラフェルチニブ、オシメルチニブ、ポジオチニブ、ピロチニブ、レジベルチニブ、TAS6417、バンデタニブ、バルリチニブ、XZP-5809、アミバンタマブ、CDP1、セツキシマブ、GC1118、HLX07、JMT101、M1231、ネシツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、パニツムマブ、SCT200、SI-B001、SYN004、ザルツムマブ、およびそれらの組合せからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項10】
前記組合せは、各治療サイクル中に前記患者に投与される、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項11】
(i)および(ii)は、別々の剤形として投与されるか、または単一の剤形に含まれている、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項12】
(i)および(ii)が別々の剤形として投与される場合、各治療サイクル中の投与は、同時的または逐次的である、請求項11に記載の使用のための組合せ。
【請求項13】
前記治療は、唯一の活性作用剤として投与された場合の前記EGFR阻害剤の療法効果の持続時間と比較して、療法効果の持続時間の延長をもたらす、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項14】
前記治療は、唯一の活性作用剤として投与された場合の前記EGFR阻害剤の療法有効性と比較して、療法有効性の増加をもたらす、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【請求項15】
前記治療は、前記EGFR阻害剤に対する耐性の予防をもたらす、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療の分野である。したがって、本発明は、NSCLCに罹患している患者の治療に使用するための、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
非小細胞肺がん(NCSLC)は、世界で最も一般的な悪性腫瘍であり、がん死亡の主要原因であり、5年生存率は5%以下である。
【0003】
最近、Houらは、p300が、NSCLC細胞において上皮間葉転換を誘導することにより、増殖、遊走、および侵襲を促進することを報告している(Houら、BMC Cancer(2018年)18巻:641頁を参照)。こうした結果は、p300がRNAiにより下方制御されたNSCLC細胞株で得られた。このように、p300タンパク質の発現は、核酸誘導機序により下方制御された。
【0004】
p300(EP300およびKAT3Bとしても知られている)は、多数の異なるドメインを有し、多数のDNA結合転写因子を含む多様なタンパク質に結合する大型タンパク質である。サイクリックAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)結合タンパク質CBP(CREBBPおよびKAT3Aとしても知られている)は、p300と非常に密接に関連するタンパク質であり、この2つのタンパク質は、広範な配列同一性および機能的類似性に照らして、一般的にパラログと呼ばれている。
【0005】
CBP/p300は、ヒストンおよび他のタンパク質のリジン側鎖へのアセチル基の付着を触媒することが示されているリジンアセチルトランスフェラーゼである。CBP/p300は、転写を活性化することが提唱されており、その作用機序は、DNA結合転写因子をRNAポリメラーゼ機構へと橋渡しすることによるものであるか、または転写開始前複合体のアセンブリを支援することによると考えられる。そのため、異なるCBP/p300ドメインは、異なる遺伝子を転写するためにプロモーターおよびエンハンサーにおいてアセンブリされる様々な異なる転写因子と相互作用すると考えられている(DysonおよびWright、JBC 291巻、13号、6714~6722頁、
図2を参照)。
【0006】
CBP/p300の複数ドメインの1つは、ブロモドメインである。ブロモドメイン自体は、1992年にショウジョウバエ(Drosophila)で始めて識別され、約10年後にはアセチル-リジンとの結合モジュールであることが報告された。ヒトでは、配列類似性および構造類似性に基づき8つのグループに分類することができる多数のブロモドメイン含有タンパク質が存在する。すべてのブロモドメイン含有タンパク質が転写プログラムの調節に関与していると考えられる。発がん性再編成(Oncogenic rearrangement)は、ブロモドメイン含有タンパク質、より具体的にはそれらのブロモドメインを標的とすることが、特にがんの治療に有益であり得ることを示唆する。
【0007】
そのため、ブロモドメイン含有タンパク質の1つのグループを構成する、典型的にはBETタンパク質と呼ばれるいわゆる「ブロモドメインおよびエクストラターミナルモチーフ」タンパク質を標的とする幾つかの薬物候補が開発されており、現在臨床試験が行われている。BETタンパク質標的薬物の例は、INCB054329(Incyte Corporation)、ABBV-075(AbbVie)、およびI-BET762(GlaxoSmithKline)である。ブロモドメイン含有タンパク質の別々のグループの一部であるCBPおよびp300のブロモドメインを選択的に標的とする薬物も存在する。そのような阻害剤としては、例えば、転移性去勢抵抗性前立腺がんおよび血液学的悪性腫瘍の治療について現在臨床研究が行われているCCS1477(CellCentric)、または転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療について現在研究が行われているFT-7051(Forma Therapeutics Inc.)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で考察されているHouらによる結果に照らすと、効果的なNSCLC治療を提供するためには、NSCLCにおけるp300の役割、特にその様々なドメインをさらに解明する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の目的および概要
本発明の発明者らは、驚くべきことに、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤、つまり、CBP/p300のブロモドメインに選択的に結合するブロモドメイン阻害剤は、単独で投与した場合、NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせて投与すると、EGFRに発がん性変更を呈するNSCLCの効果的な治療を提供することを見出した。言い換えると、本発明者らは、驚くべきことに、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤の組合せが、EGFRに発がん性変更を呈するNSCLCに対してこの2つの活性物質のいずれかがそれ自体で呈する効果と比較して、EGFRに発がん性変更を呈するNSCLCの治療により効果的であることを見出した。したがって、上記で記述されているように、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、単独で投与した場合は効果がなく(「効果がない」とは、特に、対象の標的病変または非標的病変に対して、RECIST 1.1応答基準により規定される客観的応答が存在しないことを意味する)、単独で投与した場合のEGFR阻害剤の効果は、EGFR阻害剤に対する耐性が発生する可能性が高いため経時的に減少する。
【0010】
第1の態様では、本発明は、NSCLCに罹患している患者の治療に使用するための、(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。第1の態様は、NSCLCに罹患している患者の治療に使用するための、(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCは、この組合せで使用されるEGFR阻害剤のラベルの1つもしくは複数の適応症に示されているEGFR突然変異プロファイルにより特徴付けられるか、またはNSCLCは、この組合せで使用されるEGFR阻害剤により臨床治験設定で標的とされるEGFR突然変異プロファイルにより特徴付けられる、組合せであるとみなすこともできる。
【0011】
第1の態様の好ましい実施形態では、EGFRにおける発がん性変更は、EGFRの過剰活性化をもたらす。EGFRにおける発がん性変更は、構成的に活性なEGFR(EGFRの酵素活性、すなわちプロテインキナーゼ活性が構成的に活性であるという意味で)をもたらす可能性さえある。
【0012】
第1の態様のさらに好ましい実施形態では、EGFRにおける発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン18またはエクソン19またはエクソン20における欠失および/または挿入;EGFR遺伝子におけるキナーゼドメインの重複;EGFR遺伝子の増幅;L858R、G719S、G719A、G719C、V765A、T783A、S768I、S768V、L861Q、E709X、L819Q、A750P、およびそれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換をEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;ならびに上述のいずれかの組合せにより引き起こされる。発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失;EGFR遺伝子のエクソン20における挿入;L858R、G719S、G719A、G719C、V765A、T783A、S768I、S768V、L861Q、E709X、L819Q、A750P、およびそれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換をEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;ならびに上述のいずれかの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。また、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失;EGFRにアミノ酸置換L858RをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFR遺伝子のエクソン18における欠失および挿入は、特に、EGFRにE709~T710の欠失をもたらす欠失およびEGFRのこの位置におけるDの挿入である。EGFR遺伝子のエクソン19における欠失は、特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失である。EGFRのエクソン19における欠失および挿入は、特に、EGFRにL747~A750の欠失をもたらす欠失およびEGFRのこの位置におけるPの挿入、またはEGFRにL747~T751の欠失をもたらす欠失およびEGFRのこの位置におけるSの挿入である。EGFR遺伝子のエクソン20における挿入は、特に、D761~E762、A763~Y764、Y764~V765、A767~S768、S768~V769、V769~D770、D770~N771、N771~P772、P772~H773、H773~V774、V774~C775、V765~M766、およびこれらの組合せからなる群から選択される2つのアミノ酸間のEGFRの位置にアミノ酸の挿入(任意のアミノ酸すなわちXという意味での)をもたらす挿入である。発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが最も好ましい場合がある。また、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失またはEGFRにアミノ酸置換L858RをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異により引き起こされることが非常に好ましい場合もある。本明細書にて「X」がアミノ酸として参照される場合、「X」は、任意のアミノ酸(しかしながら、無論のこと、該当する場合、例えばE709Xの場合、対応する位置の野生型アミノ酸とは異なるアミノ酸)を示す。
【0013】
第1の態様の実施形態では、NSCLCは、EGFRにおける耐性変更をさらに呈していない。したがって、本発明に使用するための組合せは、第一選択治療として使用されることになり、この組合せのEGFR阻害剤は、EGFRに発がん性変更を呈するNSCLCを治療するために投与される(または適応が指示される)任意のEGFR阻害剤であってもよい。
【0014】
第1の態様の別の実施形態では、NSCLCは、EGFRに耐性変更をさらに呈する。EGFRにおける耐性変更は、特に、T790M、C797X(主にC797S)、L792X、G796X、L718Q、L718V、G724S、D761Y、V834L、T854A、およびそれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換をEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異により引き起こされてもよい。EGFRにおける耐性変更は、T790M、C797X(主にC797S)、L718Q、L718V、T854A、およびそれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換をEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異により引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更は、アミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異により引き起こされることが最も好ましい。本明細書にて「X」がアミノ酸として参照される場合、「X」は、任意のアミノ酸(しかしながら、無論のこと、該当する場合、例えばC797Xの場合、対応する位置の野生型アミノ酸とは異なるアミノ酸)を示す。
【0015】
NSCLCがEGFRに耐性変更をさらに呈する場合、患者は、初期には効果的だったが、その後耐性の発生のため、特にEGFR耐性変更の発生のため無効になった(第1の)EGFR阻害剤で以前に治療されていた。本発明の使用のための組合せでは、そのようなシナリオでのEGFR阻害剤は、以前に投与された(第1の)EGFR阻害剤ではなく、少なくとも1つの耐性変更にも関わらず単独で投与した場合に初期には療法的に効果的である(第2または第3の)EGFR阻害剤であることを理解することが重要である。本発明らがここで「初期には療法的に効果的であること」と言うのは、この(第2または第3の)EGFR阻害剤に対してさえさらなる耐性が発生し、この(第2または第3の)EGFR阻害剤も最終的には無効になることが一般的に観察されるためである。そのようなシナリオでは、本発明の使用のための組合せは、第二選択治療または第三選択治療として使用されることになる。例を挙げると、発がん性変更を呈するNSCLCに罹患している患者にゲフィチニブが以前に投与されたことがあってもよく(第一選択治療として単独で)、ゲフィチニブ治療は経時的に(典型的には約10~約12か月の期間後に)無効になり、ゲフィチニブ治療中にEGFR T790M耐性変更が腫瘍に発生したことが見出された(例えば、EGFR突然変異を検出するための生検および対応する検査により)。そのような状況では、ゲフィチニブは、本発明の使用のための組合せに使用されることはないが、特に、EGFR T790M突然変異陽性NSCLCを有し、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)療法時にまたは療法後に疾患が進行した患者の治療に効果的であることが示されている(および適応が指示されている)オシメルチニブが使用されることになる。
【0016】
上記を考慮に入れると、本発明は、一実施形態では、NSCLCに罹患している患者の治療に使用するための、(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCは、EGFRに発がん性変更を呈しており、但し、NSCLCが、EGFR阻害剤の以前の投与のためEGFRに耐性変更をさらに呈する場合、この組合せのEGFR阻害剤は、以前に投与されたEGFR阻害剤ではなく、特に、EGFRにおけるこの耐性変更(すなわち、以前に投与されたEGFR阻害剤を療法的に無効にした耐性変更)にも関わらず療法的に効果的なEGFR阻害剤である、組合せに関する。また、NSCLCが、EGFR阻害剤の以前の投与のためEGFRに耐性変更をさらに呈する場合、この組合せのEGFR阻害剤が、以前に投与されたEGFR阻害剤ではなく、この耐性変更にも関わらず単独で投与した場合に第1の治療サイクル中に療法的に効果的なEGFR阻害剤である限り、またはNSCLCが、EGFR阻害剤の以前の投与のためEGFRに耐性変更をさらに呈する場合、この組合せのEGFR阻害剤が、以前に投与されたEGFR阻害剤ではなく、EGFRにこの耐性変更をさらに呈するNSCLCの治療に適応が指示されているEGFR阻害剤である限り、本発明の第1の態様による使用のための組合せであるとみなすことができる。
【0017】
2つの特定のEGFR阻害剤(すなわち、「X」および「本組合せのEGFR阻害剤」)を考慮する場合の例を挙げると、上記の段落は、一実施形態では、NSCLCに罹患している患者の治療に使用するための、(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCは、EGFRに発がん性変更を呈しており、但し、NSCLCがEGFR阻害剤Xの以前の投与のためEGFRに耐性変更をさらに呈する場合、この組合せのEGFR阻害剤はEGFR阻害剤Xではない、組合せを指すと理解される。この組合せのEGFR阻害剤は、EGFRにおける耐性変更(つまり、以前に投与されたEGFR阻害剤Xを療法的に無効にした耐性変更)にも関わらず、療法的に効果的であることに留意されたい。
【0018】
第1の態様の別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、小分子阻害剤である。したがって、そのような実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、例えばCBPおよび/またはp300に対するshRNAまたはRNAiなどの核酸ベース阻害剤ではない。
【0019】
第1の態様の別の実施形態では、EGFR阻害剤は、小分子阻害剤または抗体である。したがって、そのような実施形態では、EGFR阻害剤は、例えばEGFRに対するshRNAまたはRNAiなどの核酸ベース阻害剤ではない。第1の態様のさらに別の実施形態では、EGFR阻害剤は、小分子阻害剤である。第1の態様のさらなる実施形態では、EGFR阻害剤は、EGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害する。
【0020】
CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、化合物A、化合物C、化合物00030、化合物00071、CCS1477、GNE-781、GNE-049、SGC-CBP30、CPI-637、FT-6876、化合物462、化合物424、および化合物515からなる群から選択してもよい。こうした化合物は、市販されているかもしくは下記でさらに概説されているように公的に開示されているかのいずれか、またはそれらの合成および構造は本出願の実施例に示されている。CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、化合物A、化合物C、CCS1477、GNE-781、GNE-049、CPI-637、化合物462、化合物424、および化合物515からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0021】
EGFR阻害剤は、ABBV-321、アビベルチニブ、アファチニブ、アルフルチニブ、アルモネルチニブ、アパチニブ、AZD3759、ブリガチニブ、D0316、D0317、D0318、ダコミチニブ、DZD9008、エルロチニブ、FCN-411、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ナザルチニブ、ネラチニブ、オラフェルチニブ(olafertinib)、オシメルチニブ、ポジオチニブ、ピロチニブ、レジベルチニブ、TAS6417、バンデタニブ、バルリチニブ、XZP-5809、アミバンタマブ、CDP1、セツキシマブ、GC1118、HLX07、JMT101、M1231、ネシツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、パニツムマブ、SCT200、SI-B001、SYN004、ザルツムマブ、およびそれらの組合せからなる群から選択してもよい。また、EGFR阻害剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、バンデタニブ、ネシツムマブ、オシメルチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、ブリガチニブ、ポジオチニブ、およびそれらの組合せからなる群から選択してもよい。好ましい実施形態では、EGFR阻害剤は、アビベルチニブ、アファチニブ、アルフルチニブ、アルモネルチニブ、アパチニブ、AZD3759、ブリガチニブ、D0316、D0317、D0318、ダコミチニブ、DZD9008、エルロチニブ、FCN-411、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ナザルチニブ、ネラチニブ、オラフェルチニブ、オシメルチニブ、ポジオチニブ、ピロチニブ、レジベルチニブ、TAS6417、バンデタニブ、バルリチニブ、XZP-5809、およびそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、EGFR阻害剤は、ゲフィチニブまたはオシメルチニブである。EGFR阻害剤は、オシメルチニブであることが最も好ましい場合がある。
【0022】
第1の態様の好ましい実施形態では、本組合せは、各治療サイクル中に患者に投与される。
【0023】
第1の態様のさらに別の実施形態では、EGFR阻害剤は、第1の治療サイクル中に唯一の活性作用剤として投与され、続いて後の治療サイクル中にCBP/p300ブロモドメイン阻害剤が追加投与され、その場合、第1の治療サイクル中(つまり、本発明の組合せの投与前)のEGFR阻害剤単独の投与に応答したEGFRにおける耐性変更は、まだ発生していない。上記に記述されているように、耐性変更の発生は、例えば、EGFR突然変異を検出するための生検および対応する検査により評価することができる。本発明による使用のための組合せを使用すると、耐性の発生を防止することができるため、本組合せを各治療サイクル中に投与することが好ましい。
【0024】
第1の態様の別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤は、別々の剤形として投与されるか、または単一の剤形に含まれている。CBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤が別々の剤形として投与される場合、各治療サイクル中の投与は、同時であってもよくまたは逐次であってもよい。これには、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤をまず投与し、続いてEGFR阻害剤を投与するという選択肢が含まれる。
【0025】
第1の態様のさらに別の実施形態では、治療は、唯一の活性作用剤として投与した場合のEGFR阻害剤の療法効果の持続時間と比較して、EGFR阻害剤の療法効果の持続時間の延長をもたらす。さらに別の実施形態では、治療は、唯一の活性作用剤として投与した場合のEGFR阻害剤の療法有効性と比較して、EGFR阻害剤の療法有効性の増加をもたらす。別の実施形態では、治療は、EGFR阻害剤に対する耐性の防止をもたらす。
【0026】
第1の態様の別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、約1mg~約3000mg、好ましくは約10mg~約2000mg、より好ましくは約15mg~約1000mgの1日量で投与される。CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、約10mg、約15mg、約20mg、約50mg、約100mg、約250mg、約500mg、約1000mg、約1500mg、約2000mg、約2500mg、または約3000mgの1日量で投与することが好ましい場合がある。投与は、断続的に行ってもよく、つまり毎日でなくともよいが、投与が行われる当日には上述の1日量を投与してもよい。CCS1477、化合物462、化合物424、または化合物515を、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤として使用する場合、それぞれの化合物は、約10mg~約600mgの1日量で投与することができる。
【0027】
第1の態様の別の実施形態では、EGFR阻害剤が唯一の活性作用剤として投与される場合、EGFR阻害剤は、典型的な1日量(特に、利用可能な場合、ラベルに言及されているEGFR阻害剤の1日量)の範囲内の1日量で投与される。典型的な1日量(または利用可能な場合は、適応が指示されている1日量)は、使用されることになる特定のEGFR阻害剤に依存する。したがって、ゲフィチニブは、例えば、本発明の使用のための組合せでは、約50~約300mg、好ましくは約100mg~約250mg、最も好ましくは約150mg~約250mgの1日量で投与してもよい。オシメルチニブは、例えば、本発明の使用のための組合せでは、約5~約1500mg、好ましくは約10mg~約100mg、最も好ましくは約50mg~約80mgの1日量で投与してもよい。エルロチニブは、例えば、本発明の使用のための組合せでは、約10~約300mg、好ましくは約25mg~約200mg、最も好ましくは約100mg~約150mgの1日量で投与してもよい。アファチニブは、例えば、本発明の使用のための組合せでは、約5~約100mg、好ましくは約10mg~約80mg、最も好ましくは約20mg~約40mgの1日量で投与してもよい。ダコミチニブは、例えば、本発明の使用のための組合せでは、約5~約100mg、好ましくは約10mg~約80mg、最も好ましくは約15mg~約50mgの1日量で投与してもよい。
【0028】
第1の態様の別の実施形態では、EGFR阻害剤は、EGFR阻害剤が唯一の活性作用剤として投与される場合、上述の典型的な1日量よりも低い1日量で投与される。言い換えると、EGFR阻害剤が唯一の活性作用剤としてではなく、本発明による使用のための組合せにて投与される場合、EGFR阻害剤は、EGFR阻害剤が唯一の活性作用剤として投与される場合に使用される量よりも低い量で投与してもよい。これは、例えば、上記で示されている例の場合、1日量は、示されている範囲の下限であるか、そうした範囲を下回ることになることさえあることを意味する。
【0029】
第1の態様のなおさらなる実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)化合物Aおよび(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。この実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブであり、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更に対応するアミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異は、EGFR阻害剤がオシメルチニブである実施形態では、存在してもよくまたはしなくてもよい。
【0030】
第1の態様のなおさらなる実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)化合物Aまたは化合物Cおよび(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。この実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブであり、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更に対応するアミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異は、EGFR阻害剤がオシメルチニブである実施形態では、存在してもよくまたはしなくてもよい。
【0031】
第1の態様のなおさらなる実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)CCS1477および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。この実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブであり、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更に対応するアミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異は、EGFR阻害剤がオシメルチニブである実施形態では、存在してもよくまたはしなくてもよい。
【0032】
第1の態様のなおさらなる実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)GNE-781またはGNE-049および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。この実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブであり、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更に対応するアミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異は、EGFR阻害剤がオシメルチニブである実施形態では、存在してもよくまたはしなくてもよい。
【0033】
第1の態様のなおさらなる実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)CPI-637および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。この実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブであり、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更に対応するアミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異は、EGFR阻害剤がオシメルチニブである実施形態では、存在してもよくまたはしなくてもよい。
【0034】
第1の態様のなおさらなる実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患している患者の治療に使用するための、(i)化合物462または化合物424または化合物515および(ii)EGFR阻害剤の組合せであって、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、組合せに関する。この実施形態では、EGFR阻害剤はオシメルチニブであり、発がん性変更は、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失(特に、EGFRにE746~A750またはL747~E749の欠失をもたらす欠失);EGFRにアミノ酸置換L858RまたはA750PをもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異;およびそれらの組合せにより引き起こされることが好ましい場合がある。EGFRにおける耐性変更に対応するアミノ酸置換T790MをEGFRにもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異は、EGFR阻害剤がオシメルチニブである実施形態では、存在してもよくまたはしなくてもよい。
【0035】
第2の態様では、本発明は、それを必要とする患者のNSCLCを治療するための方法であって、有効量の(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および有効量の(ii)EGFR阻害剤を患者に投与することを含み、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、方法に関する。
【0036】
第3の態様では、本発明は、それを必要とする患者においてEGFR阻害剤の療法効果の持続期間を延長するための方法であって、有効量の(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および有効量の(ii)EGFR阻害剤を患者に投与することを含み、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、方法に関する。言い換えると、EGFR阻害剤の療法効果の持続時間は(本組合せで投与した場合)、NSCLC治療の唯一の活性作用剤として投与した場合のEGFR阻害剤の療法効果の持続時間と比較して延長される。
【0037】
第4の態様では、本発明は、それを必要とする患者においてEGFR阻害剤の療法有効性を増加させるための方法であって、有効量の(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および有効量の(ii)EGFR阻害剤を患者に投与することを含み、NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する、方法に関する。言い換えると、EGFR阻害剤の療法有効性は(本組合せで投与した場合)、NSCLC治療の唯一の活性作用剤として投与した場合のEGFR阻害剤の療法有効性と比較して増加される。
【0038】
第5の態様では、本発明は、NSCLC細胞の増殖を阻止するための方法であって、有効量の(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および有効量の(ii)EGFR阻害剤を細胞に投与することを含み、NSCLC細胞はEGFRに発がん性変更を呈する、方法に関する。
【0039】
第6の態様では、本発明は、NSCLC細胞の増殖を遅らせるための方法であって、有効量の(i)CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および有効量の(ii)EGFR阻害剤を細胞に投与することを含み、NSCLC細胞はEGFRに発がん性変更を呈する、方法に関する。
【0040】
第1の態様に関して上記で概説した実施形態は、第2~第6の態様の方法に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1-1】ブロモドメイン(化合物A、CCS1477)またはHATドメイン(A485)に結合するCBP/p300阻害剤のみが、EGFR突然変異非小細胞肺がん細胞(NSCLC)のEGFR阻害剤誘導性遺伝子発現を鈍化させるが、CBPとβ-カテニンとの相互作用を妨げる阻害剤(ICG001)は鈍化させないことを示す図である。耐性を引き起こすゲートキーパー突然変異T790Mを有するかまたは有しない細胞株に2つの異なるEGFR阻害剤が使用されている。示されている調節遺伝子の例は、ALPP(アルカリホスファターゼ、胎盤型;AおよびC)およびHOPX(ホメオドメインのみのタンパク質;BおよびD)である。qPCRを用いた二重重複での2つの独立実験のデータ(平均±SD)。
【
図1-2】ブロモドメイン(化合物A、CCS1477)またはHATドメイン(A485)に結合するCBP/p300阻害剤のみが、EGFR突然変異非小細胞肺がん細胞(NSCLC)のEGFR阻害剤誘導性遺伝子発現を鈍化させるが、CBPとβ-カテニンとの相互作用を妨げる阻害剤(ICG001)は鈍化させないことを示す図である。耐性を引き起こすゲートキーパー突然変異T790Mを有するかまたは有しない細胞株に2つの異なるEGFR阻害剤が使用されている。示されている調節遺伝子の例は、ALPP(アルカリホスファターゼ、胎盤型;AおよびC)およびHOPX(ホメオドメインのみのタンパク質;BおよびD)である。qPCRを用いた二重重複での2つの独立実験のデータ(平均±SD)。
【
図2A】CBP/p300のブロモドメイン(BRD)に結合するエナンチオマー(化合物A)のみが、EGFR阻害剤媒介性NSCLC細胞増殖阻害を濃度依存的な様式で増強するが、CBP/p300のブロモドメインに結合しないエナンチオマー(化合物B)は増強しないことを示す図である。EGFR突然変異HCC827細胞の細胞数を経時的にモニターした。(A)細胞を、DMSO単独で(黒丸)、20nM EGFR阻害剤単独で(ゲフィチニブ;第1世代EGFR阻害剤、白丸)、またはCBP/p300 BRD阻害剤のブロモドメイン結合エナンチオマー(化合物A)と組み合わせて処理した。(B)HCC827細胞を、EGFR阻害剤の非存在下で、化合物AおよびBに曝露した。EGFR阻害剤の非存在下では、化合物Aは、EGFR突然変異NSCLC細胞の増殖に対する効果を喪失し、CBP/p300のブロモドメインに結合しない化合物Bのような挙動を示す。提示されているグラフは、各時点および条件を三重重複した1つの実験からものである(平均±SD)。
【
図2B】CBP/p300のブロモドメイン(BRD)に結合するエナンチオマー(化合物A)のみが、EGFR阻害剤媒介性NSCLC細胞増殖阻害を濃度依存的な様式で増強するが、CBP/p300のブロモドメインに結合しないエナンチオマー(化合物B)は増強しないことを示す図である。EGFR突然変異HCC827細胞の細胞数を経時的にモニターした。(A)細胞を、DMSO単独で(黒丸)、20nM EGFR阻害剤単独で(ゲフィチニブ;第1世代EGFR阻害剤、白丸)、またはCBP/p300 BRD阻害剤のブロモドメイン結合エナンチオマー(化合物A)と組み合わせて処理した。(B)HCC827細胞を、EGFR阻害剤の非存在下で、化合物AおよびBに曝露した。EGFR阻害剤の非存在下では、化合物Aは、EGFR突然変異NSCLC細胞の増殖に対する効果を喪失し、CBP/p300のブロモドメインに結合しない化合物Bのような挙動を示す。提示されているグラフは、各時点および条件を三重重複した1つの実験からものである(平均±SD)。
【
図3A】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤(化合物A、CCS1477)のみが、EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。CBP/p300阻害剤のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインを阻害するCBP/p300阻害剤(A485)は、EGFR阻害剤の非存在下でさえ、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼす。(A)、(B)、(C)、(D)、および(E) EGFR突然変異NSCLC細胞株HCC827の細胞数が、核蛍光染色を使用して96ウェルプレートで経時的に[日数]測定した薬物処理(グラフ凡例の記号)の関数としてプロットされている。
図3(A)および(B)および(C)左側:化合物A(
図3A)、CCS1477(
図3B)、SGC-CBP30(
図3C)、またはA485による細胞の単一作用剤処理を示す図である。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物A CCS1477、SGC-CBP30は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさない。
図3(A)および3(B)および3(C)右側ならびに
図3(D)および3(E):300nMゲフィチニブ(EGFR阻害剤)の存在下における、化合物A(A)およびCCS1477(CBP/p300 BRD-I)(B)およびSGC-CBP30(C)および化合物00071(D)および化合物00030(E)およびA485(CBP/p300 HAT-I)の抗増殖活性。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物AおよびCCS1477およびSGC-CBP30および化合物00071および化合物00030は、化合物がEGFR阻害剤を伴わずに使用される場合は抗増殖効果が存在しないにも関わらず、EGFR突然変異NSCLC細胞におけるEGFR阻害剤の効果を増強する(左)。提示されている曲線は、三重重複の1つの実験からのものである(平均±SD)。
【
図3B】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤(化合物A、CCS1477)のみが、EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。CBP/p300阻害剤のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインを阻害するCBP/p300阻害剤(A485)は、EGFR阻害剤の非存在下でさえ、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼす。(A)、(B)、(C)、(D)、および(E) EGFR突然変異NSCLC細胞株HCC827の細胞数が、核蛍光染色を使用して96ウェルプレートで経時的に[日数]測定した薬物処理(グラフ凡例の記号)の関数としてプロットされている。
図3(A)および(B)および(C)左側:化合物A(
図3A)、CCS1477(
図3B)、SGC-CBP30(
図3C)、またはA485による細胞の単一作用剤処理を示す図である。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物A CCS1477、SGC-CBP30は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさない。
図3(A)および3(B)および3(C)右側ならびに
図3(D)および3(E):300nMゲフィチニブ(EGFR阻害剤)の存在下における、化合物A(A)およびCCS1477(CBP/p300 BRD-I)(B)およびSGC-CBP30(C)および化合物00071(D)および化合物00030(E)およびA485(CBP/p300 HAT-I)の抗増殖活性。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物AおよびCCS1477およびSGC-CBP30および化合物00071および化合物00030は、化合物がEGFR阻害剤を伴わずに使用される場合は抗増殖効果が存在しないにも関わらず、EGFR突然変異NSCLC細胞におけるEGFR阻害剤の効果を増強する(左)。提示されている曲線は、三重重複の1つの実験からのものである(平均±SD)。
【
図3C】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤(化合物A、CCS1477)のみが、EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。CBP/p300阻害剤のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインを阻害するCBP/p300阻害剤(A485)は、EGFR阻害剤の非存在下でさえ、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼす。(A)、(B)、(C)、(D)、および(E) EGFR突然変異NSCLC細胞株HCC827の細胞数が、核蛍光染色を使用して96ウェルプレートで経時的に[日数]測定した薬物処理(グラフ凡例の記号)の関数としてプロットされている。
図3(A)および(B)および(C)左側:化合物A(
図3A)、CCS1477(
図3B)、SGC-CBP30(
図3C)、またはA485による細胞の単一作用剤処理を示す図である。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物A CCS1477、SGC-CBP30は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさない。
図3(A)および3(B)および3(C)右側ならびに
図3(D)および3(E):300nMゲフィチニブ(EGFR阻害剤)の存在下における、化合物A(A)およびCCS1477(CBP/p300 BRD-I)(B)およびSGC-CBP30(C)および化合物00071(D)および化合物00030(E)およびA485(CBP/p300 HAT-I)の抗増殖活性。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物AおよびCCS1477およびSGC-CBP30および化合物00071および化合物00030は、化合物がEGFR阻害剤を伴わずに使用される場合は抗増殖効果が存在しないにも関わらず、EGFR突然変異NSCLC細胞におけるEGFR阻害剤の効果を増強する(左)。提示されている曲線は、三重重複の1つの実験からのものである(平均±SD)。
【
図3D】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤(化合物A、CCS1477)のみが、EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。CBP/p300阻害剤のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインを阻害するCBP/p300阻害剤(A485)は、EGFR阻害剤の非存在下でさえ、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼす。(A)、(B)、(C)、(D)、および(E) EGFR突然変異NSCLC細胞株HCC827の細胞数が、核蛍光染色を使用して96ウェルプレートで経時的に[日数]測定した薬物処理(グラフ凡例の記号)の関数としてプロットされている。
図3(A)および(B)および(C)左側:化合物A(
図3A)、CCS1477(
図3B)、SGC-CBP30(
図3C)、またはA485による細胞の単一作用剤処理を示す図である。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物A CCS1477、SGC-CBP30は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさない。
図3(A)および3(B)および3(C)右側ならびに
図3(D)および3(E):300nMゲフィチニブ(EGFR阻害剤)の存在下における、化合物A(A)およびCCS1477(CBP/p300 BRD-I)(B)およびSGC-CBP30(C)および化合物00071(D)および化合物00030(E)およびA485(CBP/p300 HAT-I)の抗増殖活性。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物AおよびCCS1477およびSGC-CBP30および化合物00071および化合物00030は、化合物がEGFR阻害剤を伴わずに使用される場合は抗増殖効果が存在しないにも関わらず、EGFR突然変異NSCLC細胞におけるEGFR阻害剤の効果を増強する(左)。提示されている曲線は、三重重複の1つの実験からのものである(平均±SD)。
【
図3E】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤(化合物A、CCS1477)のみが、EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。CBP/p300阻害剤のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインを阻害するCBP/p300阻害剤(A485)は、EGFR阻害剤の非存在下でさえ、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼす。(A)、(B)、(C)、(D)、および(E) EGFR突然変異NSCLC細胞株HCC827の細胞数が、核蛍光染色を使用して96ウェルプレートで経時的に[日数]測定した薬物処理(グラフ凡例の記号)の関数としてプロットされている。
図3(A)および(B)および(C)左側:化合物A(
図3A)、CCS1477(
図3B)、SGC-CBP30(
図3C)、またはA485による細胞の単一作用剤処理を示す図である。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物A CCS1477、SGC-CBP30は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさない。
図3(A)および3(B)および3(C)右側ならびに
図3(D)および3(E):300nMゲフィチニブ(EGFR阻害剤)の存在下における、化合物A(A)およびCCS1477(CBP/p300 BRD-I)(B)およびSGC-CBP30(C)および化合物00071(D)および化合物00030(E)およびA485(CBP/p300 HAT-I)の抗増殖活性。CBP/p300のブロモドメインを標的とする化合物AおよびCCS1477およびSGC-CBP30および化合物00071および化合物00030は、化合物がEGFR阻害剤を伴わずに使用される場合は抗増殖効果が存在しないにも関わらず、EGFR突然変異NSCLC細胞におけるEGFR阻害剤の効果を増強する(左)。提示されている曲線は、三重重複の1つの実験からのものである(平均±SD)。
【
図4-1】(A)[時間]での経時的なHCC827細胞数の評価を示す図である。化合物Aは、EGFR阻害剤の非存在下ではEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると薬物耐性の発生を防止する。処理:凡例に従って、DMSO、1μM化合物A、300nMゲフィチニブ、または300nMゲフィチニブおよび1μM化合物Aの組合せ。例示グラフは、DMSOおよび化合物Aについては6ウェルの、またはゲフィチニブもしくはゲフィチニブ+化合物A処理については24ウェルの細胞数(平均±SD)を示す。(B)ゲフィチニブまたはゲフィチニブ+化合物Aで0日間または22日間処理した、ドットプロットとしての1ウェル当たりの細胞数(Aと同様の2つの実験プレートから、1条件当たり48ウェル)。
****p<0.0001、ダンの多重比較付きクラスカル-ワリス検定。(C)22日後の処理に対する応答が、特定のウェルの初期細胞数の倍数変化の対数として示されている、(A)と同様に分析した2つのプレート(48ウェル/1条件当たり)の、300nMゲフィチニブまたは300nMゲフィチニブ+1μM化合物Aで処理したウェルのウォーターフォールプロット。ウェルを、倍数変化の対数が最も高いものから最も低いものへと並べ替えた。中空バーはゲフィチニブ処理ウェルであり、黒塗りバーは、ゲフィチニブ+化合物A処理ウェルを表す。細胞は化合物A単独には応答しないが、化合物Aは、EGFR阻害剤と組み合わせると、EGFR阻害剤に対する応答を有意に増加させる。
【
図4-2】(A)[時間]での経時的なHCC827細胞数の評価を示す図である。化合物Aは、EGFR阻害剤の非存在下ではEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると薬物耐性の発生を防止する。処理:凡例に従って、DMSO、1μM化合物A、300nMゲフィチニブ、または300nMゲフィチニブおよび1μM化合物Aの組合せ。例示グラフは、DMSOおよび化合物Aについては6ウェルの、またはゲフィチニブもしくはゲフィチニブ+化合物A処理については24ウェルの細胞数(平均±SD)を示す。(B)ゲフィチニブまたはゲフィチニブ+化合物Aで0日間または22日間処理した、ドットプロットとしての1ウェル当たりの細胞数(Aと同様の2つの実験プレートから、1条件当たり48ウェル)。****p<0.0001、ダンの多重比較付きクラスカル-ワリス検定。(C)22日後の処理に対する応答が、特定のウェルの初期細胞数の倍数変化の対数として示されている、(A)と同様に分析した2つのプレート(48ウェル/1条件当たり)の、300nMゲフィチニブまたは300nMゲフィチニブ+1μM化合物Aで処理したウェルのウォーターフォールプロット。ウェルを、倍数変化の対数が最も高いものから最も低いものへと並べ替えた。中空バーはゲフィチニブ処理ウェルであり、黒塗りバーは、ゲフィチニブ+化合物A処理ウェルを表す。細胞は化合物A単独には応答しないが、化合物Aは、EGFR阻害剤と組み合わせると、EGFR阻害剤に対する応答を有意に増加させる。
【
図5A】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤は、T790Mゲートキーパー突然変異を有するEGFR突然変異NSCLC細胞において、第3世代EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。(A)DMSO、50nMオシメルチニブ、2μM化合物A、または50nMオシメルチニブと2.0、0.5、もしくは0.125μM化合物Aの組合せの存在下での、時間[時]の関数としてのNCI-H1975細胞数の評価。化合物Aは、第3世代EGFR阻害剤の非存在下では、T790Mゲートキーパー突然変異を有するEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると薬物耐性の発生を防止する。(B)DMSO、50nMオシメルチニブ、2μM CCS1477、または50nMオシメルチニブと2.0、0.5、もしくは0.125μM CCS1477との組合せの存在下でのNCI-H1975細胞増殖の評価。CCS1477は、第3世代EGFR阻害剤の非存在下では、T790Mゲートキーパー突然変異を有するEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると薬物耐性の発生を防止する。(例示グラフは、各データおよび時点の二重重複を示し、ロジスティック増殖曲線フィッティングはGraphPad Prismで計算されている)。
【
図5B】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤は、T790Mゲートキーパー突然変異を有するEGFR突然変異NSCLC細胞において、第3世代EGFR阻害剤の効果を増強し、EGFR阻害剤の非存在下では細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す図である。(A)DMSO、50nMオシメルチニブ、2μM化合物A、または50nMオシメルチニブと2.0、0.5、もしくは0.125μM化合物Aの組合せの存在下での、時間[時]の関数としてのNCI-H1975細胞数の評価。化合物Aは、第3世代EGFR阻害剤の非存在下では、T790Mゲートキーパー突然変異を有するEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると薬物耐性の発生を防止する。(B)DMSO、50nMオシメルチニブ、2μM CCS1477、または50nMオシメルチニブと2.0、0.5、もしくは0.125μM CCS1477との組合せの存在下でのNCI-H1975細胞増殖の評価。CCS1477は、第3世代EGFR阻害剤の非存在下では、T790Mゲートキーパー突然変異を有するEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると薬物耐性の発生を防止する。(例示グラフは、各データおよび時点の二重重複を示し、ロジスティック増殖曲線フィッティングはGraphPad Prismで計算されている)。
【
図6A】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤は、EGFR阻害剤の非存在下で使用した場合は、in vivoで効果を示さないが、EGFR阻害剤と組み合わせると、EGFR阻害剤の効果を増強し、より良好な経時的腫瘍制御および療法に対するより良好な奏効率を提供する。(A)EGFR突然変異NCI-H1975異種移植片の平均腫瘍容積(+SEM)が経時的にプロットされている。4つの異なる処置群が図示されている:ビヒクル(30% PEG300/H2O;交差丸;n=4)、20mg/kg CCS1477(白丸;n=4)、2mg/kgオシメルチニブ(黒丸;n=9)、または20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(半黒丸;n=10)。CCS1477は、EGFR阻害剤の非存在下で使用した場合、腫瘍増殖に効果を示さない。しかしながら、EGFR阻害剤と組み合わせると、療法に対する応答が増加され、療法の経過にわたって腫瘍サイズが良好に制御される。(B)4つの処置群すべての最良平均応答が、ウォーターフォールプロットで示されている(ビヒクルは灰色、20mg/kg CCS1477は白色、2mg/kgオシメルチニブは黒色、および20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kgオシメルチニブは四角)。破線は、初期腫瘍容積の30%の低減を示す。ブロモドメイン結合阻害剤(CCS1477)単独に対する応答が存在しないにも関わらず、ブロモドメイン結合阻害剤(CCS1477)をEGFR阻害剤(オシメルチニブ)と組み合わせると、療法に対する奏効率が増加する。
【
図6B】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤は、EGFR阻害剤の非存在下で使用した場合は、in vivoで効果を示さないが、EGFR阻害剤と組み合わせると、EGFR阻害剤の効果を増強し、より良好な経時的腫瘍制御および療法に対するより良好な奏効率を提供する。(A)EGFR突然変異NCI-H1975異種移植片の平均腫瘍容積(+SEM)が経時的にプロットされている。4つの異なる処置群が図示されている:ビヒクル(30% PEG300/H2O;交差丸;n=4)、20mg/kg CCS1477(白丸;n=4)、2mg/kgオシメルチニブ(黒丸;n=9)、または20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(半黒丸;n=10)。CCS1477は、EGFR阻害剤の非存在下で使用した場合、腫瘍増殖に効果を示さない。しかしながら、EGFR阻害剤と組み合わせると、療法に対する応答が増加され、療法の経過にわたって腫瘍サイズが良好に制御される。(B)4つの処置群すべての最良平均応答が、ウォーターフォールプロットで示されている(ビヒクルは灰色、20mg/kg CCS1477は白色、2mg/kgオシメルチニブは黒色、および20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kgオシメルチニブは四角)。破線は、初期腫瘍容積の30%の低減を示す。ブロモドメイン結合阻害剤(CCS1477)単独に対する応答が存在しないにも関わらず、ブロモドメイン結合阻害剤(CCS1477)をEGFR阻害剤(オシメルチニブ)と組み合わせると、療法に対する奏効率が増加する。
【
図7】化合物00004と複合体化したヒトCREBBPのブロモドメインの結晶構造決定に際してREFMAC5を用いて化合物をモデル化する前の初期モデルの精密化から得られたモデルの初期Fo-Fc差電子密度マップ(等高線は4.0σ)を示す図である。
【
図8】EGFR阻害剤ゲフィチニブと組み合わせた化合物Aは、HCC4006長期細胞増殖の阻害を媒介することを示す図である。詳細は実施例9に提供されている。
【
図9】EGFR阻害剤オシメルチニブと組み合わせた、化合物A、化合物C、および構造的に関連しない選択的CBP/p300ブロモドメイン阻害剤(CCS1477、FT-6876、およびGNE-781)は、HCC827長期細胞増殖の阻害を媒介することを示す図である。詳細は実施例10に提供されている。
【
図10】EGFR阻害剤オシメルチニブと組み合わせた、化合物A、化合物C、および構造的に関連しない選択的CBP/p300ブロモドメイン阻害剤(CCS1477、FT-6876、およびGNE-781)は、HCC4006長期細胞増殖の阻害を媒介することを示す図である。詳細は実施例11に提供されている。
【
図11A】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤は、EGFR阻害剤の非存在下で使用した場合は、in vivoで効果を示さないが、EGFR阻害剤と組み合わせると、EGFR阻害剤の効果を増強し、より良好な経時的腫瘍制御および療法に対するより良好な奏効率を提供することを示す図である。(A)EGFR突然変異NCI-H1975異種移植片の平均腫瘍容積(+SEM)が経時的にプロットされている。4つの異なる処置群が図示されている:ビヒクル(交差丸)、90mg/kg化合物C(白丸)、2mg/kgオシメルチニブ(黒丸)、および90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(半黒丸)。(B)4つの処置群すべての最良平均応答が、ウォーターフォールプロットで示されている(ビヒクルは灰色、90mg/kg化合物Cは白色、2mg/kgオシメルチニブは黒色、および90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブは四角)。破線は、初期腫瘍容積の30%の低減を示す。詳細は実施例12に提供されている。
【
図11B】CBP/p300のブロモドメインに結合する阻害剤は、EGFR阻害剤の非存在下で使用した場合は、in vivoで効果を示さないが、EGFR阻害剤と組み合わせると、EGFR阻害剤の効果を増強し、より良好な経時的腫瘍制御および療法に対するより良好な奏効率を提供することを示す図である。(A)EGFR突然変異NCI-H1975異種移植片の平均腫瘍容積(+SEM)が経時的にプロットされている。4つの異なる処置群が図示されている:ビヒクル(交差丸)、90mg/kg化合物C(白丸)、2mg/kgオシメルチニブ(黒丸)、および90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(半黒丸)。(B)4つの処置群すべての最良平均応答が、ウォーターフォールプロットで示されている(ビヒクルは灰色、90mg/kg化合物Cは白色、2mg/kgオシメルチニブは黒色、および90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブは四角)。破線は、初期腫瘍容積の30%の低減を示す。詳細は実施例12に提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本発明をより詳細に説明する前に、下記の定義を導入する。
【0043】
1. 定義
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「a」および「an」という単数形は、状況が明確に別様の指示をしない限り、対応する複数形も含む。
【0044】
「約」という用語は、本発明の状況では、当該特徴の技術的効果が依然として保証されると当業者が理解することになる正確性の間隔を指す。この用語は、典型的には、示されている数値から±10%、好ましくは±5%の逸脱を示す。
【0045】
「含む(comprising)」という用語は、限定的ではないことを理解する必要がある。本発明の目的では、「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising)」という用語の好ましい実施形態であるとみなされる。以下において、群が、少なくともある特定の数の実施形態を含むと規定されている場合、これは、好ましくはそうした実施形態のみからなる群を包含することも意味する。
【0046】
「CBP/p300ブロモドメイン阻害剤」という用語は、本明細書で使用される場合、CBPのブロモドメインおよびp300のブロモドメインに強力におよび選択的に結合する小分子を意味する。この用語は、「CBP/p300のブロモドメインに選択的に結合するブロモドメイン阻害剤」および「CBP/p300の阻害に選択的なブロモドメイン阻害剤」という用語と同義である。この場合の「強力に結合する」とは、CBPのブロモドメインおよびp300のブロモドメインに結合する際のKdが、約300nM未満、好ましくは約100nM未満であることを意味する。この場合の「選択的に結合する」とは、小分子が、実施例4に示されているBROMOscan(商標)を実施した際に、BROMOscan(商標)の任意の他のブロモドメイン含有タンパク質またはブロモドメインの結合のKdよりも、好ましくは、本出願の実施例4の表中のDiscoveRx遺伝子記号により示されているさらなるブロモドメイン含有タンパク質またはブロモドメインと比較して、少なくとも約20分の1よりも低い、好ましくは少なくとも約30分の1よりも低い、より好ましくは少なくとも約50分の1よりも低い、最も好ましくは少なくとも約70分の1よりも低いKdで、CBPのブロモドメインおよびp300のブロモドメインに結合することを意味する。比較のために、CBPおよびp300を除く、BROMOscan(商標)の任意のブロモドメイン含有タンパク質またはブロモドメインの最も低いKdを、CBPおよびp300の最も高いKdと比較する。したがって、例えば、BRD4(全長、短鎖-iso.)のKdが、CBPおよびp300を除くすべてのブロモドメイン含有タンパク質またはブロモドメインの中で最も低いKdであり、7100nMである場合、それを、29nMであるCBPのKdと比較する(12nMであり、したがってCBPのKdよりも低いp300のKdとではない)。上述の例は、下記の実施例4の表の化合物Aに対してなされている。
【0047】
上記に概説されている強力で選択的な結合により、通常はCBP/p300のブロモドメインを介して生じる、細胞内の相互作用パートナーとの相互作用が阻害されるため、この分子は「阻害剤」と呼ばれる。「相互作用を阻害する」という用語は、好ましくは、CBP/p300のブロモドメインと相互作用パートナーとの相互作用が全く生じない(少なくとも検出可能なレベルではない)ことを意味する。しかしながら、CBP/p300のブロモドメインと相互作用パートナーとの所与の相互作用(100%に設定)が、大幅に、例えば、約50%、約40%、約30%、好ましくは約20%、より好ましくは約10%、または最も好ましくは約5%もしくはそれよりも低いレベルに低減された場合、そのような相互作用の低減は、依然として「相互作用を阻害する」という用語に包含される。相互作用を阻害する化合物の医学的使用に関しては、十分な療法効果を達成するために相互作用を完全に阻害する必要はない可能性がある。したがって、「阻害する」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の効果を達成するのに十分な相互作用の低減も指すことを理解する必要がある。
【0048】
「EGFR」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質「上皮増殖因子受容体」を指す。EGFRは、上皮増殖因子を含む、その特定のリガンドの結合により活性化される膜貫通タンパク質である。増殖因子リガンドにより活性化されると、EGFRは、不活性単量体から活性ホモ二量体への転換を起こす。リガンド結合後にホモ二量体を形成することに加えて、EGFRは、ErbB2/Her2/neuなどのErbB受容体ファミリーの別のメンバーと対になって、活性化ヘテロ二量体を作出することができる。EGFR二量体化は、その固有の細胞内タンパク質チロシンキナーゼ活性を刺激する。その結果、EGFRのC末端ドメインにある幾つかのチロシン残基の自己リン酸化が生じ、それにより、それら自体のホスホチロシン結合SH2ドメインを介してリン酸化チロシンと付随する幾つかの他のタンパク質により下流活性化およびシグナル伝達が誘発される。こうした下流シグナル伝達タンパク質は、幾つかのシグナル伝達カスケード、主にMAPK、Akt、およびJNK経路を開始させ、DNA合成および細胞増殖に結び付く。EGFR過剰活性化に結び付く突然変異は、肺がんを含む少なからぬがんに関連付けられており、とりわけ、その定常的活性化をもたらし、制御不能な細胞分裂をもたらす可能性がある。
【0049】
「EGFR阻害剤」という用語は、本明細書で使用される場合、最終的に細胞増殖をもたらす細胞内下流シグナル伝達が阻害されるように、EGFRに対して作用することが可能な分子を指す。この状況での「阻害された」という用語は、好ましくは、下流シグナル伝達がそれ以降は生じないことを意味する。しかしながら、所与の下流シグナル伝達(100%に設定)が大幅に、例えば、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、好ましくは約20%、より好ましくは10%、または最も好ましくは約5%もしくはそれよりも低いレベルに低減された場合、そのような下流シグナル伝達の低減は、依然として「細胞内下流シグナル伝達を阻害する」という用語に包含される。下流シグナル伝達を阻害する化合物の医学的使用に関しては、十分な療法効果を達成するためにシグナル伝達を完全に阻害する必要はない可能性がある。したがって、「阻害する」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の効果を達成するのに十分な下流シグナル伝達の低減もこの状況で指すことを理解する必要がある。EGFR阻害剤は、EGFRの細胞外リガンド結合ドメインに結合し、したがってそれを阻止することができる。そのようなEGFR阻害剤は、典型的には、抗体、特に、アミバンタマブ、CDP1、セツキシマブ、GC1118、HLX07、JMT101、M1231、ネシツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、パニツムマブ、SCT200、SI-B001、SYN004、ザルツズマブ(zalutuzumab)、およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノクローナル抗体である。また、EGFR阻害剤は、受容体の細胞質側に結合し、それによりEGFRチロシンキナーゼ活性を阻害することができる。そのようなEGFR阻害剤は、典型的には、小分子、特に、アビベルチニブ、アファチニブ、アルフルチニブ、アルモネルチニブ、アパチニブ、AZD3759、ブリガチニブ、D0316、D0317、D0318、ダコミチニブ、DZD9008、エルロチニブ、FCN-411、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ナザルチニブ、ネラチニブ、オラフェルチニブ、オシメルチニブ、ポジオチニブ、ピロチニブ、レジベルチニブ、TAS6417、バンデタニブ、バルリチニブ、XZP-5809、およびそれらの組合せからなる群から選択される小分子である。
【0050】
「NSCLCはEGFRに発がん性変更を呈する」という用語は、本明細書で使用される場合、NSCLC腫瘍が、EGFRの突然変異型を有し、EGFRのこの突然変異型は、NSCLCの発症に関与が示唆されることを意味する。言い換えると、EGFRの突然変異型は、任意選択で他の要因の中でも、NSCLCの発症に関連するかまたは発症の原因であるとみなすことができる。EGFRの突然変異型は、EGFR遺伝子に変更があるためNSCLC腫瘍に存在し、そのような変更は、特に、EGFR遺伝子における欠失、EGFR遺伝子における挿入、EGFR遺伝子における欠失および挿入、EGFR遺伝子の重複、EGFR遺伝子の増幅、ならびに/またはEGFRにアミノ酸置換をもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異である。対応する具体的な変更は、上記で概説されている。多くの場合、EGFR遺伝子にはそのような変更の組合せが見出される。「EGFRにおける発がん性変更」は、下記で規定される「EGFRにおける耐性変更」ではない。
【0051】
「EGFRにおける耐性変更」という用語は、本明細書で使用される場合、EGFR阻害剤で治療した際に、NSCLC腫瘍が(発がん性変更に加えて)EGFRにおいてさらなる変更を獲得し、EGFRにおけるこのさらなる変更は、上記EGFR阻害剤(つまり、治療のために使用され、初期にはNSCLCが感受性であったEGFR阻害剤)による治療をNSCLC耐性にすることを意味する。耐性は、EGFR遺伝子における変更により媒介され、この変更は、特に、EGFRにアミノ酸置換をもたらすEGFR遺伝子における少なくとも1つの塩基突然変異であり得る。したがって、上記で規定した「EGFRにおける発がん性変更」とは対照的に、「耐性変更」は、NSCLCの初期発症に関連しているとも、原因であるともみなされない。むしろ、耐性変更は、つまり、以前に投与された(およびこの治療に対する腫瘍の応答として耐性変更が発生する前はNSCLCの治療に効果的だった)特定のEGFR阻害剤による治療に対する耐性をNSCLCに付与するという点で、NSCLCにさらなる増殖優位性を提供する。顕著な「EGFRにおける耐性変更」は、ゲートキーパー突然変異とも呼ばれる、EGFRにおけるアミノ酸置換T790Mである。「EGFRにおける耐性変更」は、上記で規定した「EGFRにおける発がん性変更」ではない。しかしながら、無論のこと、両タイプの変更が、NSCLC腫瘍のEGFRに存在する可能性があり、患者において頻繁に検出され、対応する細胞株がモデル系として存在する(例えば、細胞株NCI-H1975を参照)。
【0052】
EGFRの「過剰活性化」という用語は、本明細書で使用される場合、EGFRが、野生型状況と比較してより活性であり、特に下流活性化およびシグナル伝達に関してより活性であり、したがってがん性細胞増殖をもたらすことを意味する。
【0053】
「小分子」という用語は、本明細書で使用される場合、低分子量を有する小型有機化合物を指す。本発明の状況での小分子は、好ましくは、5000ダルトン未満、より好ましくは4000ダルトン未満、より好ましくは3000ダルトン未満、より好ましくは2000ダルトン未満、またはさらにより好ましくは1000ダルトン未満の分子量を有する。特に好ましい実施形態では、本発明の状況での小分子は、800ダルトン未満の分子量を有する。別の好ましい実施形態では、本発明の状況での小分子は、50~3000ダルトン、好ましくは100~2000ダルトン、より好ましくは100~1500ダルトン、さらにより好ましくは100~1000ダルトンの分子量を有する。
【0054】
「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患を治癒または改善し、疾患の再発を予防し、疾患の症状を緩和し、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結を縮小させ、疾患の安定(つまり悪化しない)状態を達成し、転移を予防し、疾患進行速度を減少させ、および/または治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長するための臨床介入を指す。
【0055】
「治療サイクル」という用語は、本明細書で使用される場合、患者の状態を初期評価した後で薬剤が一定期間投与され、次いで患者の状態が、典型的には別の治療サイクルを開始する前に再評価されることを意味する。
【0056】
本明細書で参照されているCBP/p300ブロモドメイン阻害剤の詳細は以下の通りであり、化合物A、化合物C、化合物00030、および化合物00071の構造は、本出願の実施例セクションに示されている。さらに、こうした化合物の合成経路は、本出願の実施例のセクションに示されている。CCS1477は、例えば、Aobiousから市販されており、そのCAS番号は2222941-37-7である。GNE-781は、例えばMCE(MedChemExpress)から市販されており、そのCAS番号は1936422-33-1である。GNE-049は、例えばMCE(MedChemExpress)から市販されており、そのCAS番号は1936421-41-8である。SGC-CBP30は、例えばMCE(MedChemExpress)から市販されており、そのCAS番号は1613695-14-9である。CPI-637は、例えばMCE(MedChemExpress)から市販されており、そのCAS番号は1884712-47-3である。FT-6876は、例えばMCE(MedChemExpress)から市販されており、そのCAS番号は2304416-91-7である(FT-6876は、「CBP/p300-IN-8)」とも呼ばれる)。化合物462、424、および515の構造は下記に図示されており、こうした構造および合成経路は、国際公開第2020/006483号パンフレットに示されている(特に、化合物424については33および34頁、化合物462については42および43頁、ならびに化合物515については47および48頁を参照)。
【0057】
【0058】
2. 本発明者らによる驚くべき知見
本発明者らは、CBP/p300のブロモドメインと強力に結合する新規化合物を特定し、ブロモドメインを含むタンパク質は多数存在することが周知であるため、CBP/p300のブロモドメインに対する結合が選択的であることも示した。
【0059】
CBP/p300は、真核生物転写調節ネットワークの中心ノードであること、ならびに400個よりも多くの転写因子および他の調節タンパク質と相互作用することが特定されている。CBP/p300は、数多くの細胞内シグナル伝達経路間のクロストークおよび干渉を調節しており、細胞内調節機構を乗っ取るために腫瘍ウイルスにより標的とされる(DysonおよびWright、前掲、6714頁、右欄を参照)。CBP/p300は、DysonおよびWright、前掲の
図1から導き出すことができるように、幾つかのドメインを含む大型タンパク質である。こうしたドメインは、NRID、TAZ1、TAZ2、KIX、CRD1、BRD、CH2(PHDドメインおよびRINGフィンガードメインを有する)、HAT、ZZ、およびNCBDドメインである。こうしたタンパク質のサイズおよびそれらのドメインが様々であることから、例えば、CBP/p300が可能である相互作用が多岐にわたるため、多数の異なる相互作用パートナーと相互作用することによるそれらの細胞機能が非常に多様であることがすでに明らかになっている。ヒストンアセチルトランスフェラーゼとしてのCBP/p300の酵素活性は、HATドメインに位置している。上記に記述されているように、この酵素機能は、主に転写活性化に関与することが示唆されている。また、CBP/p300は、翻訳後修飾、特にリン酸化を受ける。それら自体の酵素活性ならびにこうしたタンパク質が翻訳後修飾を受けることは、CBP/p300の種々の機能および効果に対して、さらに別のレベルの複雑性を導入する。こうした機能および効果が相反する可能性さえあることは、GoodmanおよびSmolk、Genes&Development 2000年、14巻:1553~1577頁の導入セクションに見事に要約されており、そこには、CBP/p300機能の主要なパラドックスの1つは、こうしたタンパク質が、正反対の細胞プロセスに寄与することが可能であると考えられること、およびCBP/p300がアポトーシスを促進するかまたは細胞増殖を促進するかは、状況に大きく依存すると考えられることであると記述されている。疾患、特にがんとの関連で言えば、これは、そもそもCBP/p300が関与している場合は、CBP/p300がどのように関与するかに関して、特定の疾患および特定のがんタイプの状況が決定的な影響を及ぼすことになることを意味する。
【0060】
上記に照らせば、例えば一般的な「CBP/p300阻害剤」により影響を受ける可能性がある細胞プロセスにおいて単一の機能をCBP/p300に帰属させることが可能ではないことは驚くべきことではない。むしろ、複雑性のレベルが甚大であるため、CBP/p300の種々の機能の精査は、CBP/p300の特定のドメインを調査する場合にのみ、つまり例えば、HATドメインにおけるCBP/p300の酵素活性を阻害する場合に達成される効果を分析することによってのみ、またはある特定のドメインを阻止(または「阻害」)することにより相互作用パートナーとの特定の相互作用を不可能にする場合にのみ可能であると考えられる。さらに、これは、上記で概説したように、それぞれの状況、例えば、特定の疾患またはがんタイプなどの状況で理解しなければならない。
【0061】
したがって、本発明者らは、阻害剤が、CBP/p300のブロモドメインを介した相互作用パートナーとの相互作用を不可能にする特定の状況において、阻害剤の効果を研究することに移行した。現在、CBP/p300のブロモドメインは、ヒストン尾部の、ならびにp53およびCREBの転写因子IDR(天然変性領域)を含む転写因子IDRのアセチル-リジン残基を認識することが知られている(DysonおよびWright、前掲、6717頁、右欄を参照)。本発明者らは、Houら(Houら、前掲)による最近の刊行物に照らして、非小細胞肺がん(NSCLC)細胞におけるそれらの阻害剤の効果を調査することに着手した。この刊行物では、p300は、p300のshRNA媒介性下方制御に基づき、重要な腫瘍プロモーターとして、NSCLC細胞の細胞増殖、遊走、および侵襲を促進すると結論付けられている。しかしながら、本発明者らは、阻害剤を単独で適用した場合、試験したNSCLC細胞株の増殖に対する効果を観察することができなかった。このように、例えば前立腺がんなどの他のがんタイプとは対照的に、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、NSCLC細胞の増殖に対して効果を示すことができず、CBP/p300の異なるドメインを標的とする阻害剤が、NSCLC細胞内で完全なp300タンパク質がRNAiにより下方制御される場合に観察される効果を示すことができるか否かは依然として判明していない。
【0062】
本発明者らは、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤の試験に移行し、驚くべきことに、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤が、EGFRに発がん性変更を呈するNSCLC細胞におけるEGFR阻害剤の効果を、EGFR阻害剤単独の投与と比較して延長したことを見出した。言い換えると、本発明者らのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、EGFRに発がん性変更を呈するNSCLCの増殖に対してそれ自体で効果を示すことはできないが、EGFR阻害剤と共に用いると効果を呈した。さらに言い換えると、本発明者らのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤およびEGFR阻害剤の組合せは、試験したEGFR突然変異NSCLC細胞の顕著な増殖阻害を経時的にもたらした。
【0063】
こうした実験のため、本発明者らは、発がん性変更としてEGFR遺伝子のエクソン19に欠失を有するが(エクソン19に欠失を有するHCC827は、EGFRのE746~A750の欠失をもたらし、エクソン19に欠失を有するHCC4006は、EGFRにL747~E749の欠失をもたらす)、EGFRに耐性変更を有しないNSCLC細胞株を使用した。したがって、こうした細胞株は、腫瘍が「EGFRエクソン19欠失」を有するNSCLCを有する患者の第一選択治療のモデル系とみなすことができる。ゲフィチニブおよびオシメルチニブを、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤と組み合わせて、対応するEGFR阻害剤として使用した(下記の実施例を参照)。また、本発明者らは、発がん性変更L858Rならびに耐性変更T790Mを呈するEGFRを有するNSCLC細胞株(NCI-H1975)を使用した。EGFR T790Mは、例えば、ゲフィチニブ治療に応答した耐性変更として発生し、ゲフィチニブ治療を無効にすることが知られている。したがって、この細胞株は、腫瘍が、初期EGFR阻害剤治療に対する耐性を発生させたNSCLCを有する患者の第二選択治療のためのモデル系とみなすことができる。この細胞株では、本発明者らは、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤と組み合わせてオシメルチニブのみを使用した(オシメルチニブは、ゲフィチニブを無効にする、EGFRにおける耐性変更T790Mにも関わらず、効果的であることが示されているため)。ゲフィチニブとCBP/p300ブロモドメイン阻害剤との組合せの試験は、T790M突然変異を考慮すると無意味だった。
【0064】
すべての試験した細胞株において、長期間のインキュベーションにわたって顕著な増殖阻害が観察されたことは特に注目に値する。それは、EGFR阻害剤を単独で使用した場合、耐性の発生により、経時的な増殖阻害は完全であることを維持しないことになるからである。下記の実験セクションのデータが示すように、これは、ゲフィチニブを単独で適用した場合だけでなく、オシメルチニブを単独で適用した場合も該当する。したがって、オシメルチニブは、初期には突然変異EGFR T790Mにより提供される耐性を克服することが可能であるため、初期には効果的であるが(NSCLCがそれに対して既に耐性であるゲフィチニブとは対照的に)、これも経時的にはオシメルチニブに対する耐性を発生させ、それにより最終的にはオシメルチニブが無効になる。CBP/p300阻害剤の結果を考慮して、本発明者らは、観察された効果がCBP/p300阻害剤それら自体に一般化することができるか否かの調査を行った。この目的のため、さらなるCBP/p300ブロモドメイン阻害剤、すなわちCCS1477、SGC-CBP30、FT-6876、およびGNE-781を試験した。本発明者らが試験した様々なセットのCBP/p300阻害剤の構造は関連しておらず、それらの共通特徴は、こうした阻害剤により達成される効果、すなわちCBP/p300ブロモドメインの選択的阻害のみに関することに留意されたい。すべての試験したCBP/p300阻害剤の構造は、以下の通りである。
【0065】
【0066】
試験したEGFR阻害剤ゲフィチニブおよびオシメルチニブは、構造および作用がまったく異なるが(ゲフィチニブは「非共有結合阻害剤」であるのに対し、オシメルチニブは「共有結合阻害剤」である)、EGFRのキナーゼ活性に対する阻害機能を共通して有することも言及されるべきである。さらに、ゲフィチニブおよびオシメルチニブは、それらの開発に関する点で、すなわち、NSCLCを治療するための第1世代の薬物(つまりゲフィチニブ)およびNSCLCを治療するための第3世代の薬物(つまりオシメルチニブ)という点で、全く異なる。
【0067】
さらに、本発明者らは、単一のNSCLC細胞株を試験しただけでなく、3つの異なるNSCLC細胞株(HCC827、HCC4006、およびNCI-H1975)を使用した。所与の疾患の単一の細胞株を用いたin vitro実験では信頼性の低い結果が提供される可能性があるが、所与の疾患の少なくとも2つの異なる細胞株で同一の結果が得られれば、得られた結果が信頼できるものであることを示す非常により強力な指標となるため、これは特に重要である。さらに、そのようなアッセイでは、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤の効果をより信頼性高く分析する立場に立てるように、EGFR阻害剤により初期に、特に処理の数日後に十分に増殖が阻害されたNSCLC細胞株を使用することが好ましいと考えられる。無論、異種移植モデルに基づく結果、およびNSCLC細胞株を使用した場合の初期知見と一致する結果は、実験から導き出すことができる全体的な結論をさらにより良好に裏付ける。そのような異種移植データは、本明細書の下記の実施例セクションに示されているように、本発明者らによっても同様に得られた。
【0068】
3. 本発明の化合物の医薬組成物
「CBP/p300ブロモドメイン阻害剤」および「EGFR阻害剤」は、本明細書で特許請求されている使用のための「薬学的活性作用剤」である。上記に記述されているように、それらは、別々の剤形で存在するかまたは単一の剤形に含まれているかのいずれであってもよい。
【0069】
「薬学的活性作用剤」は、本明細書で使用される場合、化合物が、患者、つまりヒトまたは動物の応答をin vivoでモジュレートすることができることを意味する。「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、医薬組成物に一般的に含まれる、当業者に公知の賦形剤を指す。そのような賦形剤は、下記において例示的に列挙されている。上記に示されている「薬学的活性作用剤」の規定に照らして、薬学的に許容される賦形剤は、薬学的に不活性であると規定することができる。
【0070】
市販のEGFR阻害剤を、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤と組み合わせて使用する場合、投与は、別々の剤形により行われ、EGFR阻害剤は、認可されている剤形および投与経路により投与されることが好ましい。CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、以下に示されている剤形で投与してもよく、または現在臨床試験が行われている剤形で投与してもよい。
【0071】
本発明による使用のための剤形は、経口、頬側、経鼻、直腸、局所、経皮、または非経口適用のために製剤化することができる。経口適用が好ましい場合がある。非経口適用が好ましい場合もあり、非経口適用としては、静脈内、筋肉内、または皮下投与が挙げられる。また、本発明の剤形は、製剤または医薬組成物と称される場合がある。
【0072】
一般に、本発明による医薬組成物は、組成物に関して達成されるべき機能に応じて選択されることになる、種々の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。本発明の意味での「薬学的に許容される賦形剤」は、コーティング材料、膜形成材料、増量剤、崩壊剤、放出調節材料、担体材料、希釈剤、結合剤、および他のアジュバントを含む、薬学的剤形を調製するために使用される任意の物質であってもよい。典型的な薬学的に許容される賦形剤としては、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプンおよびデンプン誘導体、ラクトース、ならびにステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、崩壊剤、ならびに緩衝剤のような物質が挙げられる。
【0073】
「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、薬学的に許容される有機または無機担体物質を指す。好適な薬学的に許容される担体としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、油、好ましくは植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、界面活性剤、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、石油エーテル性脂肪酸エステル(petroethral fatty acid ester)、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンなどが挙げられる。医薬組成物は、滅菌することができ、必要に応じて、活性化合物と有害な反応をしない、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香味物質、および/または芳香物質などのような助剤と混合することができる。
【0074】
本発明のために液体剤形が考慮される場合、液体剤形としては、水などの、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含む、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁物、およびシロップを挙げることができる。こうした剤形は、例えば、かさを付与するための微結晶性セルロース、懸濁剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、および甘味料/香味料を含んでいてもよい。
【0075】
非経口適用の場合、特に好適なビヒクルとしては、溶液、好ましくは油性溶液または水性溶液、ならびに懸濁物、エマルジョン、または移植片が挙げられる。非経口投与用の医薬製剤が特に好ましく、非経口投与用の医薬製剤としては、水溶性形態の水溶液が挙げられる。加えて、懸濁物は、適切な油性注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁物の粘度を増加させる物質を含んでいてもよい。
【0076】
特に好ましい剤形は、本発明の医薬組成物の注射用調製物である。したがって、滅菌注射用水性または油質懸濁物は、例えば、好適な分散剤、湿潤剤、および/または懸濁剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。また、滅菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁物であってもよい。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水および等張性塩化ナトリウム溶液がある。溶媒または懸濁媒体として、滅菌油も従来から使用されている。
【0077】
本発明の医薬組成物を直腸投与するための坐剤は、例えば、化合物を、室温では固体であるが直腸温度では液体である、ココアバター、合成トリグリセリド、およびポリエチレングリコールなどの好適な非刺激性賦形剤と混合することにより、直腸で溶融して、坐剤から活性作用剤が放出されることになるように調製することができる。
【0078】
吸入による投与の場合、本発明による化合物を含む医薬組成物は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガスを使用することにより、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル噴霧の形態で便利に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することにより決定することができる。化合物およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤の粉末混合物を含む、インヘラーまたは吸入器で使用するための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤化することができる。
【0079】
経口剤形は、液体であってもよくまたは固体であってもよく、例えば、錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤、散剤、発泡製剤、糖衣錠、および顆粒剤が挙げられる。経口使用のための医薬調製物は、固体賦形剤として得ることができ、任意選択で、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの増量剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加してもよい。経口剤形は、活性作用剤の即時放出または活性作用剤の持続放出を保証するように製剤化することができる。
【0080】
4. さらなる開示および実施形態
受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤および他のキナーゼ阻害剤の臨床的抗腫瘍効果は耐久性ではない。通常、こうした阻害剤に対する耐性が発生する。より具体的には、EGFR阻害剤(EGFRi)の臨床的抗腫瘍効果は耐久性ではない。EGFR阻害剤に対する耐性は、療法剤および臨床状況に応じて、通常は9~19か月以内に発生する。したがって、がん患者の薬物耐性を防止することになるがん治療の様式を開発することが望ましい。歴史的に、薬物耐性に取り組むためのほとんどの手法は、再発腫瘍の遺伝的駆動因子に着目してきた。既に確立されている薬物耐性を克服する努力の一環として、腫瘍再増殖を駆動する新たに突然変異したタンパク質を、単独でまたは主要ながん薬物と組み合わせて療法的に標的にすることになる。EGFRi治療に対する1つの耐性機序は、EGFRiを無効にする突然変異であるゲートキーパー突然変異がEGFRタンパク質に発生することである。最も一般的には、このゲートキーパー突然変異は、T790M突然変異である。オシメルチニブなどの突然変異特異的阻害剤は、突然変異EGFR T790Mを阻害しない第1世代EGFR阻害剤に対して確立された薬物耐性を克服するために使用される。EGFRi治療に対する別の耐性機序は、他の受容体チロシンキナーゼを介して、例えば、MET、ErbB2、HGF、ErbB3、IGF1R、AXL、NTRK1、BRAF、FGFR3、またはFGFR1の増幅、過剰発現、または活性化により活性化されるバイパスシグナル伝達である。バイパスシグナル伝達を阻害するための療法的介入が臨床で試験されているが、結果は様々である。
【0081】
国際公開第2018022637号パンフレットなどの以前の開示には、特に、p300突然変異を有するがんを治療するための新規がん療法としてのCBP/p300阻害剤の使用が記載されている。国際公開第2011085039号パンフレットには、CBP/p300ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)の活性を阻害することを含む、がんを治療するための方法、およびがんを有する対象を治療するための、特にDNA損傷化学療法抗がん剤と組み合わせた、CBP/p300 HAT阻害剤の使用が記載されている。
【0082】
がん薬物耐性の発生を防止するための新しい効果的な方法および組成物が必要とされている。これは、とりわけ、本セクション4の実施形態により対処される。
【0083】
実施形態1:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXL阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRas(カーステンラット肉腫(Kirsten Rat Sarcoma))もしくはBRAF(がん原遺伝子B-Rafおよびv-Rafマウス肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログB)阻害剤を、それを必要とする動物に投与することを含む、動物のがんを治療するための方法に使用するためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤であって、がんは、対応する受容体チロシンキナーゼにまたはKRasもしくはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独は、がんの進行を緩徐させない、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤。
【0084】
実施形態2:がんを有する動物に、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、動物における、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤がん療法に対する応答の持続時間を延長するための方法に使用するためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤であって、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与した場合のがん療法に対する応答の持続時間は、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩の投与の非存在下でのがん療法に対する応答の持続時間と比較して延長され、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXL阻害剤からなる群から選択される、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤。
【0085】
実施形態3:がんの治療に使用するための組成物であって、組成物は、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXLの阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の相乗的組合せを含み、がんは、対応する受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独はがんの進行を緩徐させない、組成物。
【0086】
実施形態4:がん細胞の増殖を阻害するための方法であって、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXL阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤を投与することを含み、がん細胞は、対応する受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独は、がん細胞の増殖を阻害しない、方法。
【0087】
実施形態5:受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに対する変更は、発がん性変更である、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0088】
実施形態6:受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR阻害剤である、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0089】
実施形態7:受容体チロシンキナーゼに対する変更は、EGFRにおける突然変異である、実施形態6に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0090】
実施形態8:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の組成物または組合せは、CBP/p300阻害剤単独あるいは受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤単独と比較して、がん治療において相乗的である、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0091】
実施形態9:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の組成物または組合せは、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤に対するがんの耐性のリスクを遅延または低減させる、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0092】
実施形態10:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤に対するがん細胞の耐性を防止するための有効量で投与される、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0093】
実施形態11:EGFR阻害剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ダコミチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、バンデタニブ、ネシツムマブ、オシメルチニブ、アファチニブ、AP26113、EGFR阻害剤(CAS番号879127-07-8)、EGFR/ErbB2/ErbB-4阻害剤(CAS番号881001-19-0)、EGFR/ErbB-2阻害剤(CAS番号17924861-4)、EGFR阻害剤II(BIBX1382、CAS番号196612-93-8)、EGFR阻害剤III(CAS番号733009-42-2)、EGFR/ErbB-2/ErbB-4阻害剤II(CAS番号944341-54-2)、またはPKCβII/EGFR阻害剤(CAS番号145915-60-2)からなる群から選択される、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0094】
実施形態12:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、式(I)の化合物:
【0095】
【0096】
であり、式中、
R1は、ハロゲン、および-(1~20個の炭素原子ならびに任意選択でO、N、およびSから選択される1~15個のヘテロ原子を含む、任意選択で置換された炭化水素基)から選択され;
R21は、水素、炭素原子間に1~3つの酸素原子を含んでいてもよい-(任意選択で置換されたC1~6アルキル)、および-(任意選択で置換されたC3~6シクロアルキル)から選択され;
R3は、-(任意選択で置換されたヘテロシクリル)、-(任意選択で置換されたカルボシクリル)、-(任意選択で置換されたC1~6アルキレン)-(任意選択で置換されたヘテロシクリル)、および-(任意選択で置換されたC1~6アルキレン)-(任意選択で置換されたカルボシクリル)から選択され;
X1、X2、およびX3の各々は、N、CH、およびCRxから独立して選択され、X1、X2、およびX3の少なくとも1つはNであり;
R31は、-水素、-C1~6-アルキル、および-(1つまたは複数のFで置換されているC1~6-アルキル)から選択され;R3および任意のR31は、任意選択で連結されていてもよく;
Eは、存在しないか、または-CH2-、-CHRx-、-CRx
2-、-NH-、-NRx-、-O-、-L1-L2-、および-L2-L1-から選択されるかのいずれかであり、L1は、-CH2-、-CHRx-、-CRx
2-、-NH-、-NRx-、および-O-から選択され、L2は、-CH2-、-CHRx-、および-CRx
2-から選択され;
R6xは、-ハロゲン、-OH、=O、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、1つまたは複数のOHで置換されたC1~6アルキル、任意選択で1つまたは複数のRxbで置換された単環式アリール、任意選択で1つまたは複数のRxbで置換された単環式へテロアリール、任意選択で1つまたは複数のRxbで置換された単環式シクロアルキル、任意選択で1つまたは複数のRxbで置換された単環式ヘテロシクロアルキル、任意選択で1つまたは複数のRxbで置換された単環式シクロアルケニル、任意選択で1つまたは複数のRxbで置換された単環式ヘテロシクロアルケニルであり、Rxbは、-ハロゲン、-OH、=O、C1~4アルキル、C1~2ハロアルキル、1つまたは2つのOHで置換されたC1~2アルキルから独立して選択され;
環Aは、1つまたは複数の基Rxでさらに置換されていてもよく、環Aの任意の2つのRx基は、任意選択でR21基と連結されていてもよく、および/もしくは環Aの任意Rx基は、任意選択でR21と連結されていてもよく;ならびに/または環Aは、R6xと一緒になって、以下の部分構造:
【0097】
【0098】
を有する二環式部分を形成するように、1つの基Rxでさらに置換されていてもよく、
式中、環Bは、-(任意選択で置換された複素環)または-(任意選択で置換された炭素環)であり;
各Rxは、-ハロゲン、-OH、-O-(任意選択で置換されたC1~6アルキル)、-NH-(任意選択で置換されたC1~6アルキル)、-N(任意選択で置換されたC1~6アルキル)2、=O、-(任意選択で置換されたC1~6アルキル)、-(任意選択で置換されたカルボシクリル)、-(任意選択で置換されたヘテロシクリル)、-(任意選択で置換されたC1~6アルキレン)-(任意選択で置換されたカルボシクリル)、-(任意選択で置換されたC1~6アルキレン)-(任意選択で置換されたヘテロシクリル)-O-(任意選択で置換されたC1~6アルキレン)-(任意選択で置換されたカルボシクリル)、および-O-(任意選択で置換されたC1~6アルキレン)-(任意選択で置換されたヘテロシクリル)から独立して選択され、
任意選択で置換された炭化水素基、任意選択で置換されたC3~6シクロアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換された複素環、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換された炭素環、および任意選択で置換されたC1~6アルキレンの任意選択の置換基は、-(任意選択で1つまたは複数のハロゲンで置換されたC1~6アルキル)、-ハロゲン、-CN、-NO2、オキソ、-C(O)R*、-COOR*、-C(O)NR*R*、-NR*R*、-N(R*)-C(O)R*、-N(R*)-C(O)-OR*、-N(R*)-C(O)-NR*R*、-N(R*)-S(O)2R*、-OR*、-O-C(O)R*、-O-C(O)-NR*R*、-SR*、-S(O)R*、-S(O)2R*、-S(O)2NR*R*、-N(R*)-S(O)2-NR*R*、任意選択でハロゲンまたはC1~6アルキルで置換されたヘテロシクリル、および任意選択でハロゲンまたはC1~6アルキルで置換されたカルボシクリルから独立して選択され;各R*は、H、任意選択でハロゲンで置換されたC1~6アルキル、任意選択でハロゲンまたはC1~6アルキルで置換されたヘテロシクリル、および任意選択でハロゲンまたはC1~6アルキルで置換されたカルボシクリルから独立して選択され、同じ窒素原子に接続されている任意の2つのR*は、任意選択で連結されていてもよく、
任意選択で置換されたC1~6アルキルおよび任意選択で置換されたC1~6アルキレンの任意選択の置換基は、-ハロゲン、-CN、-NO2、オキソ、-C(O)R**、-COOR**、-C(O)NR**R**、-NR**R**、-N(R**)-C(O)R**、-N(R**)-C(O)-OR**、-N(R**)-C(O)-NR**R**、-N(R**)-S(O)2R**、-OR**、-O-C(O)R**、-O-C(O)-NR**R**、-SR**、-S(O)R**、-S(O)2R**、-S(O)2-NR**R**、および-N(R**)-S(O)2-NR**R**から独立して選択され;各R**は、H、任意選択でハロゲンで置換されたC1~6アルキル、任意選択でハロゲンまたはC1~6アルキルで置換されたヘテロシクリル、および任意選択でハロゲンまたはC1~6アルキルで置換されたカルボシクリルから独立して選択され、同じ窒素原子に接続されている任意の2つのR**は、任意選択で連結されていてもよい、
任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0099】
実施形態13:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、式(A)のアリールイミダゾリルイソキサゾール:
【0100】
【0101】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R°およびRは、同じであるかまたは異なり、各々は、H、あるいは非置換であるかまたはOH、-OC(O)R’、もしくはOR’で置換されたC1~C6アルキルであり、R’は、非置換C1~C6アルキルであり;
Wは、NまたはCHであり;
R1は、非置換であるかまたは置換された基であり、C連結4員~6員ヘテロシクリル;C3~C6シクロアルキル;非置換であるかまたはC6~C10アリール、5員~12員N含有へテロアリール、C3~C6シクロアルキル、OH、-OC(O)R’、もしくはOR’で置換されたC1~C6アルキル(式中、R’は、上記で規定の通りである);および以下の式のスピロ基:
【0102】
【0103】
から選択され、
Yは、-CH2-、-CH2CH2-、または-CH2CH2CH2-であり;
nは、0または1であり;
R2は、C6~C10アリール、5員~12員N含有へテロアリール、C3~C6シクロアルキル、およびC5~C6シクロアルケニルから選択される基であり、基は、非置換であるかまたは置換されており、C6~C10アリールは、任意選択で5員または6員複素環式環に融合されており;
好ましくは、アリールイミダゾリルイソオキサゾールは、式(Aa*):
【0104】
【0105】
を有する、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0106】
実施形態14:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、式(Ba)の化合物
【0107】
【0108】
であり、式中、
R1は、-O(C1~C3アルキル)であり;
R6は、任意選択で独立して1つまたは複数のRBで置換されたフェニルであり、RBは、-O-C1~6アルキル、-O-C3~6シクロアルキル、-O-アリール、または-O-へテロアリールから選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリール、またはへテロアリールは、任意選択で独立して1つまたは複数のハロゲンで置換されているか;
またはCBP/p300阻害剤は、式(Bc)の化合物
【0109】
【0110】
であり、式中、
R1は、-OR5であり;
R5は、-C1~6アルキル、-C3~8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはへテロアリールであり;
R6は、-OH、ハロゲン、オキソ、-NO2、-CN、-NH2、-C1~6アルキル、-C3~8シクロアルキル、-C4~8シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、スピロシクロアルキル、スピロヘテロシクリル、へテロアリール、-OC3~6シクロアルキル、-Oアリール、-Oヘテロアリール、-(CH2)n-OR8、-C(O)R8’、-C(O)OR8、または-C(O)NR8R9、-NHC1~6アルキル、-N(C1~6アルキル)2、-S(O)2NH(C1~6アルキル)、-S(O)2N(C1~6アルキル)2、-S(O)2C1~6アルキル、-N(C1~6アルキル)SO2C1~6アルキル、-S(O)(C1~6アルキル)、-S(O)N(C1~6アルキル)2、または-N(C1~6アルキル)S(O)(C1~6アルキル)であり、各アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、スピロシクロアルキル、スピロヘテロシクリル、へテロアリール、またはアリールは、任意選択で1つまたは複数のR10で置換されており;
R7は、各出現において独立して、-H、ハロゲン、-OH、-CN、-OC1~6アルキル、-NH2、-NH(C1~6アルキル)、-N(C1~6アルキル)2、-S(O)2H(C1~6アルキル)、-S(O)2N(C1~6アルキル)2、-S(O)2(C1~6アルキル)、-S(O)2OH、-C(O)C1~6アルキ、-C(O)NH2、-C(O)NH(C1~6アルキル)、-C(O)N(C1~6アルキル)2、-C(O)OH、-C(O)OC1~6アルキル、-N(C1~6アルキル)SO2C1~6アルキル、-S(O)(C1~6アルキル)、-S(O)N(C1~6アルキル)2、-S(O)2NH2、-N(C1~6アルキル)S(O)(C1~6アルキル)、またはテトラゾールであり;
R10は、各出現において独立して、-C1~6アルキル、-C2~6アルケニル、-C2~6アルキニル、-C3~8シクロアルキル、-C4~8シクロアルケニル、ヘテロシクリル、へテロアリール、アリール、-OH、ハロゲン、オキソ、-NO2、-CN、-NH2、-OC1~6アルキル、-OC3~6シクロアルキル、-Oアリール、-Oへテロアリール、-NHC1~6アルキル、-N(C1~6アルキル)2、-S(O)2NH(C1~6アルキル)、-S(O)2N(C1~6アルキル)2、-S(O)2C1~6アルキル、-C(O)C1~6アルキル、-C(O)NH2、-C(O)NH(C1~6アルキル)、-NHC(O)C1~6アルキル-C(O)N(C1~6アルキル)2、-C(O)OC1~6アルキル、-N(C1~6アルキル)SO2-C1~6アルキル、-S(O)(C1~6アルキル)、-S(O)N(C1~6アルキル)2、または-N(C1~6アルキル)S(O)(C1~6アルキル)であり、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、へテロアリール、またはアリールは、任意選択で1つまたは複数の-R12で置換されており;
R12は、各出現において独立してハロゲンであり;
mは、0~5の整数であり;
rは、0~5の整数である、
任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0111】
実施形態15:がんの進行緩徐は、動物における標的病変または非標的病変のRECIST 1.1.応答基準を使用して測定される、先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0112】
実施形態16:がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である、任意の先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0113】
実施形態17:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、実施形態12に記載の式(I)の化合物であり、受容体チロシンキナーゼ阻害剤はEGFR阻害剤であり、受容体チロシンキナーゼはEGFRであり、がんはNSCLCであり、より好ましくはNSCLCは、EGFR T790M突然変異を含み、より好ましくは受容体チロシンキナーゼ阻害剤はオシメルチニブである、先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0114】
実施形態18:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、実施形態13に記載の式(A)の化合物、好ましくはCCS1477(CAS 2222941-37-7)であり、受容体チロシンキナーゼ阻害剤はEGFR阻害剤であり、受容体チロシンキナーゼはEGFRであり、がんはNSCLCであり、より好ましくはNSCLCは、EGFR T790M突然変異を含み、より好ましくは受容体チロシンキナーゼ阻害剤はオシメルチニブである、先行する実施形態に記載の使用のためのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤もしくは組成物または方法。
【0115】
上記の実施形態13に関して、式(A)の化合物は、国際公開第2016170324号パンフレット、国際公開第2018073586号パンフレット、および国際公開第2019202332号パンフレットに記載されていることに留意されたい。すべての出願およびそれらの開示は、それらの全体が、特に式(A)の化合物に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
別の実施形態では、動物のがんを治療するための方法であって、それを必要とする動物に、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXL阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤を投与することを含み、がんは、対応する受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独は、がんの進行を緩徐させない、方法が提供される。
【0117】
別の実施形態では、組成物を用いてがんを治療するための方法であって、組成物は、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXLの阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の相乗的組合せを含み、がんは、対応する受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独はがんの進行を緩徐させない、方法が提供される。
【0118】
別の実施形態では、動物における、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤がん療法に対する応答の持続時間を延長するための方法であって、がんを有する動物に、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、CBP/p300阻害剤またはその薬学的に許容される塩を投与した場合のがん療法に対する応答の持続時間は、CBP/p300阻害剤またはその薬学的に許容される塩の投与の非存在下でのがん療法に対する応答の持続時間と比較して延長され、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXLからなる群から選択されるか、またはKRasもしくはBRAF阻害剤である、方法が提供される。
【0119】
別の実施形態では、がん細胞の増殖を阻害するための方法であって、がん細胞に、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXL阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤を投与することを含み、がん細胞は、対応する受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独は、がん細胞の増殖を阻害せず、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、キナーゼ阻害剤に対するがん細胞の耐性を防止するための有効量で投与される、方法が提供される。
【0120】
別の実施形態では、がん細胞において細胞死を誘導するための方法であって、がん細胞に、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤、ならびにEGFR、ALK、MET、HER2、ROS1、RET、NTRK1、およびAXL阻害剤からなる群から選択される受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤を投与することを含み、がん細胞は、対応する受容体チロシンキナーゼまたはKRasまたはBRAFに変更を含み、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤単独は、がん細胞において細胞死を誘導しない、方法が提供される。
【0121】
一実施形態では、受容体チロシンキナーゼに対する変更は、発がん性変更であってもよく、セクション4のこの実施形態での「発がん性変更」という用語は、細胞がん原遺伝子に対する遺伝子変化を指す場合がある。こうした遺伝子変化/変更の帰結は、細胞に増殖優位性を付与する可能性がある。一実施形態では、突然変異、遺伝子増幅、遺伝子融合、および/または染色体再編成の遺伝的機序は、ヒト新生物のがん遺伝子を活性化する可能性がある。
【0122】
別の実施形態では、発がん性変更は、EGFR-エクソン19欠失、EGFR-L858R、EGFR-T790M、EGFR-T854A、EGFR-D761Y、EGFR-L747S、EGFR-G796S/R、EGFR-L792F/H、EGFR-L718Q、EGFR-エクソン20挿入、EGFR-G719X(Xは任意の他のアミノ酸)、EGFR-L861X、EGFR-S768I、またはEGFR増幅を含む群から選択されるEGFR遺伝子突然変異である。好ましい実施形態では、変更は、EGFR-T790Mである。別の実施形態では、がんはNSCLCであり、変更は、EGFRエクソン19欠失、L858R、またはT790Mを含む突然変異である。
【0123】
別の実施形態では、発がん性変更は、KIF5B-RET、CCDC6-RET、NCOA4-RET、TRIM33-RET、RET-V804L、RET-L730、RET-E732、RET-V738、RET-G810A、RET-Y806、RET-A807、またはRET-S904Fを含む群から選択されるRET遺伝子突然変異または再編成である。
【0124】
別の実施形態では、発がん性変更は、HER2エクソン20挿入または突然変異、およびHER2-C805S、HER2 T798M、HER2 L869R、HER2 G309E、HER2 S310F、またはHER2増幅を含む群から選択されるHER2遺伝子突然変異である。
【0125】
別の実施形態では、発がん性変更は、CD74-ROS1、GOPC-ROS1、EZR-ROS1、CEP85L-ROS1、SLC34A2-ROS1、SDC4-ROS1、FIG-ROS1、TPM3-ROS1、LRIG3-ROS1、KDELR2-ROS1、CCDC6-ROS1、TMEM106B-ROS1、TPD52L1-ROS1、CLTC-ROS1、およびLIMA1-ROS1、またはROS1 G2032R、D2033N、S1986Y/F、L2026M、および/またはL1951Rを含む突然変異を含む群から選択されるROS1遺伝子融合または再編成である。
【0126】
別の実施形態では、発がん性変更は、MET遺伝子増幅、MET Y1230C、D1227N、D1228V、Y1248HなどのMET遺伝子突然変異、ならびにMETエクソン14スキッピング、またはTPR-MET、CLIP2-MET、TFG-MET融合、KIF5B-MET融合を含む群から選択される遺伝子融合もしくは再編成である。
【0127】
別の実施形態では、発がん性変更は、G12C、G12V、G12D、G13D、Q61HまたはLまたはR、K117Nを含む群から選択されるKRas遺伝子突然変異である。
【0128】
別の実施形態では、発がん性変更は、NSCLCにおけるEML4-ALK、TFG-ALK、KIF5B-ALK、KLC1-ALK、STRN-ALK、EML4-ALK、C2orf44-ALK、EML4-ALK、TPM-ALK、VCL-ALK、TPM3-ALK、EML4-ALK、またはVCL-ALKを含む群から選択されるALK遺伝子突然変異または遺伝子融合または再編成である。
【0129】
別の実施形態では、発がん性変更は、V600EまたはV600Kを含む群から選択されるBRAF遺伝子突然変異である。
【0130】
別の実施形態では、発がん性変更は、TPM3-NTRK1、ETV6-NTRK3、TPM3-NTRK1、TPR-NTRK1、TFG-NTRK1、PPL-NTRK1、ETV6-NTRK3、TPR-NTRK1、MPRIP-NTRK1、CD74-NTRK1、SQSTM1-NTRK1、TRIM24-NTRK2、LMNA-NTRK、ETV6-NTRK3、BCAN-NTRK1、ETV6-NTRK3、AML、GIST、NFASC-NTRK1、BCAN-NTRK1、AGBL4-NTRK2、VCL-NTRK2、ETV6-NTRK3、BTBD1-NTRK3、RFWD2-NTRK1、RABGAP1L-NTRK1、TP53-NTRK1、AFAP1-NTRK2、NACC2-NTRK2、OKI-NTRK2、PAN3-NTRK2、またはF589L、G595R、G667C/S、A608Dを含む群から選択されるNTKR1遺伝子突然変異、またはG623R、G696Aを含む群から選択されるNTRK3遺伝子突然変異を含む群から選択されるNTKR遺伝子融合または再編成である。
【0131】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、EGFR阻害剤である。別の実施形態では、EGFR阻害剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、バンデタニブ、ネシツムマブ、オシメルチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、AP26113、ポジオチニブ、EGFR阻害剤(CAS番号879127-07-8)、EGFR/ErbB2/ErbB-4阻害剤(CAS番号881001-19-0)、EGFR/ErbB-2阻害剤(CAS番号17924861-4)、EGFR阻害剤II(BIBX1382、CAS番号196612-93-8)、EGFR阻害剤III(CAS番号733009-42-2)、EGFR/ErbB-2/ErbB-4阻害剤II(CAS番号944341-54-2)、またはPKCβII/EGFR阻害剤(CAS番号145915-60-2)群から選択される。
【0132】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼに対する変更は、EGFR遺伝子における突然変異である。
【0133】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、RET阻害剤である。別の実施形態では、RET阻害剤は、カボザンチニブ、バンデタニブ、レンバチニブ、アレクチニブ、アパチニブ、ポナチニブ、LOXO-292、BLU-667、またはRXDX-105を含む群から選択される。
【0134】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、HER2阻害剤である。別の実施形態では、HER2阻害剤は、トラスツズマブ、ヒアルロニダーゼ/トラスツズマブ fam-トラスツムズマブデルクステカン、ado-トラスツズマブエムタンシン、ラパチニブ、ネラチニブ、ペルツズマブ、ツカチニブ、ポジオチニブ、またはダコミチニブを含む群から選択される。
【0135】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、ROS1阻害剤である。別の実施形態では、ROS1阻害剤は、クリゾチニブ、セリチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、エトレクチニブ(Etrectinib)、カボザンチニブ、DS-6051b、TPX-0005を含む群から選択される。
【0136】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、MET阻害剤である。別の実施形態では、MET阻害剤は、クリゾチニブ、カボザンチニブ、MGCD265、AMG208、アルチラチニブ、ゴルバチニブ、グレサンチニブ(glesantinib)、ホレチニブ、アブマチニブ(avumatinib)、チバチニブ(tivatinib)、サボリチニブ、AMG337、カプマチニブおよびテポチニブ、OMO-1[JNJ38877618]または抗MET抗体オナルツズマブおよびエミベツズマブ(emibetuzumab)[LY2875358]または抗HGF抗体フィクラツズマブ(ficlatuzumab)[AV-299]およびリロツムマブ[AMG102]を含む群から選択される。
【0137】
別の実施形態では、阻害剤は、KRas阻害剤である。別の実施形態では、KRas阻害剤は、AMG510、MRTX849、JNJ-74699157/ARS-3248、BI1701963、BAY-293、または「RAS(ON)」阻害剤を含む群から選択される。
【0138】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、ALK阻害剤である。別の実施形態では、ALK阻害剤は、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ロラチニブ(Loratinib)、またはブリガチニブを含む群から選択される。
【0139】
別の実施形態では、阻害剤は、BRAF阻害剤である。別の実施形態では、BRAF阻害剤は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、または任意の非特異的RAF阻害剤を含む群から選択される。
【0140】
別の実施形態では、受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、NTRK阻害剤である。別の実施形態では、NTRK阻害剤は、エントレクチニブ、ラロトレクチニブ(LOXO-101)、LOCO-195、DS-6051b、カボザンチニブ、メレスチニブ、TSR-011、PLX7486、MGCD516、クリゾチニブ、レゴラフェニブ、ドビチニブ、レスタウルチニブ、BMS-754807、ダヌセルチブ、ENMD-2076、ミドスタウリン、PHA-848125 AC、BMS-777607、アルトリラチニブ(altriratinib)、AZD7451、MK5108、PF-03814735、SNS-314、ホレチニブ、ニンテダニブ、ポナチニブ、ONO-5390556、またはTPX-0005を含む群から選択される。
【0141】
別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の組成物または組合せは、CBP/p300阻害剤単独あるいは受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤単独と比較して、がんの治療に相乗的である。セクション4の実施形態の状況で使用される場合、「相乗的」という用語は、薬物の総効果を各薬物の個々の効果の合計よりも大きくする、2つまたはそれよりも多くの薬物間の相互作用を指す。好ましい実施形態では、相乗効果は、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の組合せに対する、動物の奏効率の増加である。別の実施形態では、奏効率の増加は、がんの治療における有効性の増加として測定される。
【0142】
別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および受容体チロシンキナーゼまたはKRasもしくはBRAF阻害剤の組成物または組合せにより提供される抗がん効果は、CBP/p300阻害剤あるいは受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の同じ容量による単剤療法により提供される抗がん効果よりも大きい。セクション4の実施形態の状況で使用される場合、「抗がん」という用語は、悪性またはがん性疾患の治療を指す。別の実施形態では、本発明は、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKrasもしくはBRAFの組成物または組合せにより提供される抗がん効果は、単剤療法単独よりも少なくとも2倍大きい、少なくとも3倍大きい、少なくとも5倍大きい、または少なくとも10倍大きい、使用のための組成物または方法を提供する。
【0143】
別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤またはその薬学的に許容される塩、および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の組成物または組合せは、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤に対するがんの耐性のリスクを遅延または低減する。セクション4の実施形態の状況で使用される場合、「がんの耐性」という用語は、薬剤の有効性の低減を指し;より具体的には、この用語は、がん細胞による薬物耐性の発生を指すことができる。別の実施形態では、がんは、少なくとも3か月間、6か月間、9か月間、12か月間、24か月間、48か月間、または60か月間、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤に対して耐性にならない。別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤に対するがん細胞の耐性を防止するための有効量で投与される。
【0144】
別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、CBPおよび/またはp300のブロモドメインを阻害する。p300(ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300、E1A結合タンパク質p300、E1A関連タンパク質p300とも呼ばれる)およびCBP(CREB結合タンパク質またはCREBBPとしても知られている)は、2つの構造的に非常に類似した転写共活性化タンパク質である。
【0145】
セクション4の実施形態の状況で使用される場合、「CBP/p300ブロモドメイン阻害剤」という用語は、CBPブロモドメインおよび/またはp300ブロモドメインに結合し、CBPおよび/またはp300の生物学的活性または機能を阻害および/または低減させる化合物を指すとみなすことができる。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、CBPブロモドメインおよび/またはp300ブロモドメインとの接触および/または相互作用により、一次的に(例えば、単独で)CBPおよび/またはp300に結合することができる。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、CBPブロモドメインおよび/またはp300ブロモドメイン、ならびに追加のCBPおよび/またはp300残基および/またはドメインとの接触および/または相互作用により、CBPおよび/またはp300に結合することができる。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、CBPおよび/またはp300の生物学的活性を実質的または完全に阻害することができる。一部の実施形態では、生物学的活性は、クロマチン(例えば、DNAに付随したヒストン)および/または別のアセチル化タンパク質に対する、CBPおよび/またはp300のブロモドメインの結合であってもよい。セクション4の実施形態の状況でのある特定の実施形態では、阻害剤は、約50μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満、約10nM未満、または約1nM未満のIC50または結合定数を有してもよい。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、CBPブロモドメインに結合および阻害することができる。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、p300ブロモドメインに結合および阻害することができる。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、CBP/p300のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害しなくてもよい。
【0146】
一実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、式(I)の化合物である。一実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、式(A)の化合物、好ましくはCCS1477(CAS 2222941-37-7)である。別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、FT-7051である。別の実施形態では、式(I)の化合物、式(A)の化合物、好ましくはCCS1477、またはFT-7051は、10mg、15mg、25mg、50mg、100mg、150mg、または200mgを含むリストから選択される濃度の1日用量の薬物である。別の実施形態では、CCS1477は、週に2、3、4、5、6、または7日投与される。別の実施形態では、CCS1477は、1日2回投与される。別の実施形態では、がん細胞への投与は、がん細胞を、CBP/p300阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤と接触させることを含む。
【0147】
別の実施形態では、投薬量は、患者の年齢、体重、および状態、ならびに投与経路を含む、様々な要因に依存する。1日投薬量は、幅広い範囲内で様々であってもよく、各々の特定の場合の個々の要件に合わせて調整されることになる。しかしながら、典型的には、化合物を単独で成体ヒトに投与する場合の各投与経路に適合させた投薬量は、0.0001~50mg/kg体重の範囲、最も一般的には0.001~10mg/kg体重、例えば0.01~1mg/kgの範囲であってもよい。このような投与量は、例えば1日1回~5回で投与することができる。静脈内注射の場合、好適な1日用量は、0.0001~1mg/kg体重、好ましくは0.0001~0.1mg/kg体重であってもよい。1日投薬量は、単一投薬量として投与してもよく、または分割用量スケジュールに従って投与してもよい。
【0148】
別の実施形態では、がんの進行またはがん治療に対する応答の持続時間は、対象/動物における標的病変または非標的病変のRECIST 1.1.応答基準を使用して測定することができる。
【0149】
別の実施形態では、「がんの進行を緩徐させない」という用語は、セクション4の実施形態では、対象がいかなるRECIST 1.1臨床応答も達成していないことであると規定することができる。別の実施形態では、「がんの進行を緩徐させない」という用語は、セクション4の実施形態では、対象/動物がRECIST 1.1臨床応答を部分的に達成していないことであると規定することができる。別の実施形態では、「がんの進行を緩徐させない」という用語は、RECIST 1.1に従って客観的奏効率がないことおよび/または無増悪生存期間が増加しないこととして測定される。別の実施形態では、「がんの進行を緩徐させない」という用語は、標的病変の最長直径の基線合計を基準として、標的病変の最長直径の合計の30%未満の減少として測定される。
【0150】
ある特定の実施形態では、がんは、聴神経腫、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性t細胞白血病、基底細胞癌、胆管癌、膀胱がん、脳がん、乳がん、気管支原性癌、子宮頸がん、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(chronic myelocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia)、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、増殖異常性変化、胚性癌、子宮内膜がん、内皮肉腫、上衣腫、上皮癌、赤白血病、食道がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、本態性血小板血症、ユーイング腫瘍、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、生殖細胞精巣がん、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、重鎖病、頭頸部がん、血管芽腫、ヘパトーマ、肝細胞がん、ホルモン非感受性前立腺がん、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺がん、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ腫、T細胞またはB細胞起源のリンパ性悪性腫瘍、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽腫、NUT正中癌(NMC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、乏突起膠腫、口腔がん、骨原性肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腺癌、乳頭癌、松果体腫、真性赤血球増加症、前立腺がん、直腸がん、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮脂腺癌、セミノーマ、皮膚がん、小細胞肺癌、固形腫瘍(癌および肉腫)、小細胞肺がん、胃がん、扁平上皮がん、滑膜腫、汗腺癌、甲状腺がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、精巣腫瘍、子宮がん、およびウィルムス腫瘍から選択される。ある特定の実施形態では、がんは、黒色腫、NSCLC、腎臓がん、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、肝細胞がん、または乳がんである。本方法のいずれかのある特定の実施形態では、がんは、肺がん、乳がん、膵臓がん、結腸直腸がん、および/または黒色腫である。ある特定の実施形態では、がんは肺である。ある特定の実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がんNSCLCである。ある特定の実施形態では、がんは乳がんである。ある特定の実施形態では、がんは黒色腫である。ある特定の実施形態では、がんは結腸直腸である。
【0151】
別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤は、単一組成物として同時に動物に投与される。別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤は、別々に動物に投与される。別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤は、同時的に動物に投与される。別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の前に動物に投与される。別の実施形態では、動物はヒトである。
【0152】
一実施形態では、作用剤、例えば医薬製剤の「有効量」という用語は、所望の療法結果または予防結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量を指すことができる。一部の実施形態では、有効量は、(i)特定の疾患、状態、もしくは障害を治療するか、(ii)特定の疾患、状態、もしくは障害の1つもしくは複数の症状を減弱、改善、もしくは排除するか、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態、もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症を予防もしくは遅延させる、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の量を指す。一部の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤の有効量は、がん細胞の数を低減させることができ;腫瘍のサイズを低減させることができ;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害する(つまり、ある程度緩徐させ、好ましくは停止させる)ことができ;腫瘍転移を阻害する(つまり、ある程度緩徐させ、好ましくは停止させる)ことができ;腫瘍増殖をある程度阻害することができ;および/またはがんに関連付けられる症状の1つもしくは複数をある程度軽減することができる。がん療法の場合、有効性は、例えば、疾患進行停止時間(TTP)を評価することおよび/または奏効率(RR)を決定することにより測定することができる。一部の実施形態では、有効量は、薬物抵抗性または薬物抵抗性持続性がん細胞の活性または数を著しく減少させるのに十分な、本明細書に記載のCBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤実体の量である。
【0153】
一実施形態では、本開示の化合物は、がんを治療するための放射線療法または別の化学療法剤と併用して、ヒトまたは動物患者に投与してもよい。別の実施形態では、CBP/P300阻害剤またはRTK阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤が放射線療法と同時的にまたは逐次的に投与されるか;またはがんを治療するための1つまたは複数の別の化学療法剤との組合せ調製物として同時的にまたは逐次的に投与される組合せ療法を提供することができる。このまたは各々他の化学療法剤は、典型的には、治療されるがんのタイプに従来から使用されている作用剤だろう。組合せのための化学療法剤のクラスは、一実施形態では、例えば、前立腺がんアンドロゲン受容体アンタゴニストの、例えばエンザルタミド、およびCYP17A1(17a-ヒドロキシラーゼ/C17,20リアーゼ)の阻害剤、例えばアビラテロンの治療のためであってもよい。他の実施形態では、組合せ療法での他の化学療法剤は、ドセタキセルを含んでいてもよい。
【0154】
一実施形態では、「組合せ」という用語は、セクション4では、同時投与、別々の投与、または逐次投与を指すことができる。投与が逐次的または別々である場合、第2の成分の投与の遅延は、組合せの有益な効果を喪失させるようなものであってはならない。
【0155】
別の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼ阻害剤またはKRasもしくはBRAF阻害剤に対する応答は、持続的応答である。一実施形態では、「持続的応答」は、治療の中止後の腫瘍増殖の低減に対する持続的効果を指すことができる。例えば、腫瘍サイズは、投与段階の開始時のサイズと比較して、同じかまたはより小さいままであり得る。
【0156】
別の実施形態では、「治療」という用語(および「治療する」または「治療すること」などの変化形)は、治療されている個体または細胞の自然な経過を変更することを試みる臨床的介入を指すことができ、予防のためにまたは臨床病理の過程中のいずれでも実施することができる。治療の望ましい効果としては、疾患の発症または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の縮小、疾患の状態の安定化(つまり、悪化しないこと)、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善または緩和、治療を受けていない場合の予想生存期間と比較した生存期間の延長、および寛解または予後向上の1つまたは複数を挙げることができる。ある特定の実施形態では、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤および受容体チロシンキナーゼまたはKRasもしくはBRAF阻害剤を使用して、疾患もしくは障害の発症を遅延させるか、または疾患もしくは障害の進行を緩徐させることができる。一実施形態では、治療を必要とする個体としては、状態もしくは障害をすでに有するもの、ならびに状態もしくは障害を有し易いもの(例えば、遺伝子突然変異または遺伝子もしくはタンパク質の異常発現により)、または状態もしくは障害を予防しようとするものが挙げられる。
【0157】
一実施形態では、「遅延」という用語は、疾患(がんなど)の発症または疾患の耐性を先送りする、妨げる、緩徐させる、遅らせる、安定させる、および/または延期することを指すことができる。この遅延は、疾患の履歴および/または治療されている個体に応じて、様々な時間の長さであり得る。当業者であれば明らかであるように、十分なまたは著しい遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含することができる。例えば、転移の発症などの末期がんを遅延させることができる。
【0158】
5. 実施例
以下の実施例は単なる例示であり、本発明をさらに説明するためのものである。こうした実施例は、本発明をそれらに限定するものではないと解釈されるものとする。
【0159】
化合物00003(化合物B)、00004(化合物A)、00030、00071、および化合物Cの調製を以下に記載する。参考になると思われる場合は、中間体化合物および/または上述の化合物に近い化合物の合成経路が示されている。
【0160】
基本的実験方法
LCMS法:
方法A:装置:Agilent 1260 二連ポンプ:G1312B、脱気器;オートサンプラー、ColCom、DAD:Agilent G1315D、220~320nm、MSD:Agilent LC/MSD G6130B ESI、pos/neg 100~800、ELSD Alltech 3300 ガス流速1.5mL/分、ガス温度:40℃;カラム:Waters XSelect(商標)C18、30×2.1mm、3.5μ、温度:35℃、流速:1mL/分、勾配:t0=5%A、t1.6分=98%A,t3分=98%A、ポストタイム(Posttime):1.3分、溶出液A:アセトニトリル中0.1%ギ酸、溶出液B:水中0.1%ギ酸)。
【0161】
方法B:装置:Agilent 1260 二連ポンプ:G1312B、脱気器;オートサンプラー、ColCom、DAD:Agilent G1315D、220~320nm、MSD:Agilent LC/MSD G6130B ESI、pos/neg 100~800、ELSD Alltech 3300 ガス流速1.5mL/分、ガス温度:40℃;カラム:Waters XSelect(商標)C18、50×2.1mm、3.5μ、温度:35℃、流速:0.8mL/分、勾配:t0=5%A、t3.5分=98%A,t6分=98%A、ポストタイム:2分;溶出液A:アセトニトリル中0.1%ギ酸、溶出液B:水中0.1%ギ酸)。
【0162】
方法C:装置:Agilent 1260 二連ポンプ:G1312B、脱気器;オートサンプラー、ColCom、DAD:Agilent G1315C、220~320nm、MSD:Agilent LC/MSD G6130B ESI、pos/neg 100~800;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18、30×2.1mm、3.5μ、温度:25℃、流速:1mL/分、勾配:t0=5%A、t1.6分=98%A,t3分=98%A、ポストタイム:1.3分、溶出液A:95%アセトニトリル+5%水中10mM重炭酸アンモニウム、溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH9.5)。
【0163】
方法D:装置:Agilent 1260 二連ポンプ:G1312B、脱気器;オートサンプラー、ColCom、DAD:Agilent G1315C、220~320nm、MSD:Agilent LC/MSD G6130B ESI、pos/neg 100~800;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18、50×2.1mm、3.5μ、温度:25℃、流速:0.8mL/分、勾配:t0=5%A、t3.5分=98%A,t6分=98%A、ポストタイム:2分、溶出液A:95%アセトニトリル中+5%水中10mM重炭酸アンモニウム、溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH9.5)。
【0164】
UPLC法:
方法A:装置:Agilent Infinity II;二連ポンプ:G7120A、マルチサンプラー、VTC、DAD:Agilent G7117B、220~320nm、PDA:210~320nm、MSD:Agilent G6135B ESI、pos/neg 100~1000、ELSD G7102A Evap 40℃、Neb 50℃、ガス流速1.6mL/分、カラム:Waters XSelect CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:25℃、流速:0.6mL/分、勾配:t0=5%B、t2分=98%B,t2.7分=98%B、ポストタイム:0.3分、溶出液A:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH9.5)、溶出液B:アセトニトリル)。
【0165】
方法B:装置:Agilent Infinity II;二連ポンプ:G7120A、マルチサンプラー、VTC、DAD:Agilent G7117B、220~320nm、PDA:210~320nm、MSD:Agilent G6135B ESI、pos/neg 100~1000、ELSD G7102A:Evap 40℃、Neb 40℃、ガス流速1.6mL/分、カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:40℃、流速:0.6mL/分、勾配:t0=5%B、t2分=98%B,t2.7分=98%B、ポストタイム:0.3分、溶出液A:水中0.1%ギ酸、溶出液B:アセトニトリル中0.1%ギ酸)。
【0166】
GCMS法:
方法A:機器:GC:Agilent 6890N G1530NおよびMS:MSD 5973 G2577A、EI-ポジティブ、検出温度:280℃ 質量範囲:50~550;カラム:RXi-5MS 20m,ID 180μm,df 0.18μm;平均速度:50cm/秒;注入容積:1μl;注入器温度:250℃;分割比:100/1;キャリアガス:He;初期温度:100℃;初期時間:1.5分;溶媒遅延:1.0分;速度 75℃/分;最終温度 250℃;保持時間 4.3分。
【0167】
方法B:機器:GC:Agilent 6890N G1530N、FID:検出温度:300℃およびMS:MSD 5973 G2577A、EI-ポジティブ、検出温度:280℃ 質量範囲:50~550;カラム:Restek RXi-5MS 20m,ID 180μm,df 0.18μm;平均速度:50cm/秒;注入容積:1μl;注入器温度:250℃;分割比:20/1;キャリアガス:He;初期温度:60℃;初期時間:1.5分;溶媒遅延:1.3分;速度 50℃/分;最終温度 250℃;保持時間 3.5分。
【0168】
方法C:機器:GC:Agilent 6890N G1530N、FID:検出温度:300℃およびMS:MSD 5973 G2577A、EI-ポジティブ、検出温度:280℃ 質量範囲:50~550;カラム:Restek RXi-5MS 20m,ID 180μm,df 0.18μm;平均速度:50cm/秒;注入容積:1μl;注入器温度:250℃;分割比:20/1;キャリアガス:He;初期温度:100℃;初期時間:1.5分;溶媒遅延:1.3分;速度 75℃/分;最終温度 250℃;保持時間 4.5分。
【0169】
キラルLC:
方法A:(装置:Agilent 1260 四連ポンプ:G1311C、オートサンプラー、ColCom、DAD:Agilent G4212B、220~320nm、カラム:Chiralcel(登録商標)OD-H 250×4.6mm、温度:25℃、流速:1mL/分、定組成:90/10、時間:30分、溶出液A:ヘプタン、溶出液B:エタノール)。
【0170】
分取逆相クロマトグラフィー:
方法A:機器タイプ:Reveleris(商標)分取MPLC;カラム:Phenomenex LUNA C18(150×25mm、10μ);流速:40mL/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中0.1%(容積/容積)ギ酸、溶出液B:アセトニトリル中0.1%(容積/容積)ギ酸;勾配:t=0分 5%B、t=1分 5%B、t=2分 30%B、t=17分 70%B、t=18分 100%B、t=23分 100%B;検出UV:220/254nm。適切な画分を一緒にして凍結乾燥した。
【0171】
方法B:機器タイプ:Reveleris(商標)分取MPLC;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18(145×25mm、10μ);流速:40mL/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH=9.0);溶出液B:99%アセトニトリル+1%水中10mM重炭酸アンモニウム;勾配:t=0分 5%B、t=1分 5%B、t=2分 30%B、t=17分 70%B、t=18分 100%B、t=23分 100%B;検出UV:220/254nm。適切な画分を一緒にして凍結乾燥した。
【0172】
キラル(分取)SFC
方法A:(カラム:SFC機器モジュール:Waters Prep100q SFCシステム、PDA:Waters2998、フラクションコレクター:Waters2767;カラム:Phenomenex Lux Amylose-1(250×20mm、5μm)、カラム温度:35℃;流速:100mL/分;ABPR:170bar;溶出剤A:CO2、溶出液B:メタノール中20mMアンモニア;定組成10%B、時間:30分、検出:PDA(210~320nm);PDAに基づく分画収集)。
【0173】
方法B:(カラム:SFC機器モジュール:Waters Prep100q SFCシステム、PDA:Waters2998、フラクションコレクター:Waters2767;カラム:Phenomenex Lux Celulose-1(250×20mm、5μm)、カラム温度:35℃;流速:100mL/分;ABPR:170bar;溶出剤A:CO2、溶出液B:メタノール中20mMアンモニア;定組成10%B、時間:30分、検出:PDA(210~320nm);PDAに基づく分画収集)。
【0174】
方法C:(カラム:SFC機器モジュール:Waters Prep100q SFCシステム、PDA:Waters2998;カラム:Chiralpak IC(100×4.6mm、5μm)、カラム温度:35℃;流速:2.5mL/分;ABPR:170bar;溶出剤A:CO2、溶出液B:20mMアンモニアを有するメタノール;t=0分 5%B、t=5分 50%B、t=6分 50%B、検出:PDA(210~320nm);PDAに基づく分画収集)。
【0175】
方法D:(カラム:SFC機器モジュール:Waters Prep100q SFCUV/MS directedシステム;Waters2998フォトダイオードアレイ(PDA)検出器;Waters Acquity QDa MS検出器;Waters2767試料管理装置;カラム:Waters Torus2-PIC 130A OBD(250×19mm、5μm);カラム温度:35℃;流速:70mL/分;ABPR:120bar;溶出剤A:CO2、溶出液B:メタノール中20mMアンモニア;線形勾配:t=0分 10%B、t=4分 50%B、t=6分 50%B、検出:PDA(210~400nm);PDA TICに基づく分画収集)。
【0176】
出発物質
標準試薬および溶媒は、最も高い商業的純度のものを入手し、そのまま使用した。購入した具体的な試薬を以下に記載する。
【0177】
【0178】
【0179】
重要な中間体の合成手順
中間体1:1-(5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン
【0180】
【0181】
1L鋼製オートクレーブ中の6-メチルニコチン酸メチル(100g、662mmol)の酢酸(250mL)溶液に、白金(IV)酸化物(0.5g、2.202mmol)を添加し、その後60℃の10bar水素雰囲気下で反応混合物を撹拌した。迅速な水素消費が観察された。水素消費が停止し還元が完了するまで、オートクレーブを数回再充填した。混合物を室温に冷却し、セライトで濾過した。濾過液を濃縮して、メチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセテートをジアステレオ異性体の混合物(143.8g、100%)として得、それを次のステップでそのまま使用した。GCMS(方法A):tR 2.40(80%)および2.48分(20%)、100%、MS(EI)157.1(M)+、142.1(M-Me)+。水(500mL)およびジクロロメタン(500mL)の混合物中のメチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセテート(53g、244mmol)の溶液に、重炭酸ナトリウム(82g、976mmol)を注意深く添加し(泡立ち!!)、その後無水酢酸(29.9g、293mmol)をゆっくりと添加した。反応混合物を、室温で2時間撹拌した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、メチル1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(49g、100%)を黄色油状物として得た。メタノール中アンモニア(7N、500mL、3.5mol)中のメチル1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(49g、246mmol)の溶液を、圧力容器中で40時間120℃にて撹拌した。混合物を室温に冷却し、濃縮して、淡黄色固形物を得た。この固形物をジクロロメタンに溶解し、シリカ栓で濾過した。濾過液を濃縮して、1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキサミドを白色に近い固形物として得、それを次のステップでそのまま使用した。前ステップに由来する1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキサミド(266mmol)の、オキシ塩化リン(500mL、5.37mol)溶液を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で蒸発させて、濃縮油状物を得た。この油状物をトルエンと共に2回共蒸発させ、冷却飽和炭酸ナトリウム(泡立ち!)および酢酸エチル間で注意深く分割した。有機層を塩基性水層から分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、生成物を、静置時に固化した濃縮油状物として得た。粗産物を、ジクロロメタンに溶解し、シリカ栓で濾過した(ジクロロメタン中10%メタノールで溶出した)。これにより、1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボニトリル(28g、63%)を、静置時に固化した油状物として得た。GCMS(方法A):tR 3.78(63%)および3.89分(378%)、100%、MS(EI)166.1(M)+。1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボニトリル(23g、138mmol)のエタノール(300ml)溶液に、ヒドロキシルアミン溶液(50%水溶液、25.4mL、415mmol)を添加し、その後反応混合物を16時間還流しながら撹拌した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチルと共に3回共蒸発させて乾燥し、1-アセチル-N-ヒドロキシ-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミドを粘着性固形物として得た。LCMS(方法A):tR 0.13分、100%、MS(ESI)200.2(M+H)+。収率が定量的であると仮定して、生成物を、次のステップでそのまま使用した。前ステップに由来する1-アセチル-N-ヒドロキシ-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミド(23g、138mmol)のエタノール(500mL)溶液に、酢酸(23.79mL、416mmol)および水(5mL)中50%Raney(登録商標)-ニッケルスラリーを添加し、その後反応混合物を、水素雰囲気下で2日間50℃にて撹拌した。混合物をセライトで濾過し、ある程度の量のエタノールで洗浄し、濃縮して、70gの濃縮油状物を得た。これを、酢酸エチルと共に2回共蒸発させ、減圧下でよく乾燥して、1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミドアセテート(33g、98%)を緑黄色油状物を得、それを次のステップでそのまま使用した。LCMS(方法A):tR 0.14分、90%、MS(ESI)184.1(M+H)+。ナトリウム(18.14g、789mmol)の窒素雰囲気下乾燥メタノール(60mL)溶液に、1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミドアセテート(32g、132mmol)およびマロン酸ジメチル(26.1g、197mmol)を添加し、その後反応混合物を50℃で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、水(300mL)に入れ、6N塩酸を使用してpH4まで酸性化し、沈殿させた。沈殿物を濾過し、1-(5-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オンを黄色固形物(10.4g、31%)として得、それを次のステップでそのまま使用した。オキシ塩化リン(200mL、2146mmol)中の1-(5-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(10.4g、41.4mmol)の懸濁物を、50℃で撹拌した。固形物は、ゆっくりと、およそ3時間後に溶解した。5時間後、反応合物を減圧下で濃縮し、トルエンと共に2回共蒸発させた。残留油状物を、氷で注意深くクエンチし、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、1-(5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体1、6.8g、57%)を、静置時に固化した黄色油状物として得た。LCMS(方法A):tR 1.88分、100%、MS(ESI)288.1(M+H)+。
【0182】
中間体2:1-((2S,5R)-5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン
【0183】
【0184】
N-アセチル-D-ロイシン(1kg、5.77mol)のエタノール(1.5L)溶液に、メチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(934g、2.38mol、中間体1の段落にて調製)の酢酸エチル(3L)溶液を添加し、混合物を40℃に加熱した。得られた溶液を、16時間かけて室温に到達させた。その間に沈殿が生じた。沈殿物を濾過し、ジエチルエーテル(500mL)で洗浄し、空気乾燥して、粗メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(287g、34%)を白色固形物として得た。粗メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(287g、869mmol)を、エタノールおよび酢酸エチル1:2の高温混合物(1L)から結晶化させた。沈殿物を濾過し、濾過ケーキを、ジエチルエーテルおよびn-ペンタン1:1の混合物(500mL)中ですり潰した。沈殿物を濾過し、空気乾燥して、メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(128g、44%)を白色固形物として得た。メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(128g、387mmol)のジクロロメタン(1L)溶液に、飽和炭酸ナトリウム溶液(1L)を添加した。2相系を10分間激しく撹拌し、層を分離した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して清澄溶液を得た。次に、トリエチルアミン(65mL、465mmol)および無水酢酸(44mL、465mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、メチル(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(93g)を淡黄色固形物として得た。オートクレーブに、メタノール中7Nアンモニア(600mL、4200mmol)中のメチル(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(93g、387mmol)を投入し、3日間60℃に加熱した。混合物を濃縮して、(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキサミド(102g)を淡黄色油状物として得た。収率が定量的であると仮定して、生成物を、次のステップでそのまま使用した。キラルLC(方法A)tR=12.35分、>98%ee。(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキサミド(50g、271mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート(77g、407mmol)を数回に分けて添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。メタノール中7Nのアンモニア(200ml、9.15mol)をゆっくりと添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を濃縮して、(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミド(50g)をピンク色固形物として得、それを次のステップでそのまま使用した。メタノール中5.4Mナトリウムメトキシド(99mL、535mmol)のメタノール(200mL)溶液に、メタノール(400mL)およびマロン酸ジメチル(61.4mL、535mmol)中の(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミド(49g、267mmol)を添加した。混合物を、50℃に加熱し、24時間撹拌した。混合物を、濃塩酸で酸性化し(約pH3)、より少ない容積に濃縮した。残留物を、シリカで濾過し(ジクロロメタン中20%メタノール)、濃縮してオレンジ色油状物を得た。粗生成物を、シリカカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%~20%のメタノール)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(12g、17%)を無色ゴム状物として得た。LCMS(方法C):tR 0.17分、100%、MS(ESI)252.1(M+H)+。1-((2S,5R)-5-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(12g、47.8mmol)のオキシ塩化リン(80mL、858mmol)溶液を、60℃で24時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、トルエンと共に2回共蒸発させて、黄色油状物を得た。油状物を、酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。水性層を、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を得た。油状物を、シリカカラムクロマトグラフィー(トルエン中0%~20%のテトラヒドロフラン)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体2、1.5g、11%)を無色ゴム状物として得た。LCMS(方法B):tR 3.34分、100%、MS(ESI)288.0(M+H)+;キラルUPLC(方法:A)tR 2.54分、>95%eeおよびde。
【0185】
中間体3:1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オンの合成
【0186】
【0187】
1L鋼製オートクレーブ中の6-メチルニコチン酸メチル(100g、662mmol)の酢酸(250mL)溶液に、白金(IV)酸化物(0.5g、2.202mmol)を添加し、その後反応混合物を、60℃の10bar水素雰囲気下で撹拌した。迅速な水素消費が観察された。水素消費が停止するまで、オートクレーブを数回再充填した。混合物を室温に冷却し、セライトで濾過した。濾過液を注意深く濃縮して、メチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセテートをジアステレオ異性体の混合物(143.8g、100%)として得、それを次のステップでそのまま使用した。GCMS(方法A):tR 2.40(80%)および2.48分(20%)、100%、MS(EI)157.1(M)+。ジアステレオ異性体の混合物としてのメチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセテート(2.1kg、9924mmol)を、ジクロロメタン(4L)で希釈し、4M水酸化ナトリウム溶液を、約pH9になるまでゆっくりと添加した。層を分離し、水性層を、ジクロロメタンで2回抽出した(各抽出後に、水性層を、約pH9になるまで4M水酸化ナトリウム溶液で再塩基性化した)。一緒にした有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、より少ない容積(約2L)へと濃縮して(35℃、450mbar)、メチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(2.8kg、8905mmol)を、ジクロロメタン中約50%の黄色溶液として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3, 回転異性体の混合物) δ 5.10 (s,.3H), 3.63 (s, 1H), 3.49 - 3.42 (m, 2.2H), 3.41 - 3.34 (m, 0.8H), 3.18 - 3.10 (m, 0.8H), 3.09 - 3.03 (m, 0.2H), 2.64 - 2.54 (m, 0.8H), 2.53 - 2.34 (m, 1.2H), 2.30 - 2.20 (m, 1H), 1.95 - 1.76 (m, 1H), 1.53 - 1.36 (m, 1H), 1.35 - 1.21 (m, 1H), 1.04 - 0.90 (m, 1H), 0.89 - 0.84 (m, 0.8H), 0.83 - 0.76 (m, 2.2H).N-アセチル-D-ロイシン(1kg、5.77mol)のエタノール(1.5L)溶液に、メチル6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(934g、2.38mol)の酢酸エチル(3L)溶液を添加し、混合物を40℃に加熱した。得られた溶液を、16時間かけて室温に到達させた。その間に沈殿が生じた。沈殿物を濾過し、ジエチルエーテル(500mL)で洗浄し、空気乾燥して、粗メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(287g、34%)を白色固形物として得た。粗メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(287g、869mmol)を、エタノールおよび酢酸エチル1:2の高温混合物(1L)から結晶化させた。沈殿物を濾過し、濾過ケーキを、ジエチルエーテルおよびn-ペンタン1:1の混合物(500mL)中ですり潰した。沈殿物を濾過し、空気乾燥して、メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(128g、44%)を白色固形物として得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.80 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.80 - 5.00 (s, 2H), 4.20 - 4.04 (m, 1H), 3.63 (s, 3H), 3.32 - 3.21 (m, 1H), 2.93 - 2.80 (m, 2H), 2.73 - 2.65 (m, 1H), 2.04 - 1.94 (m, 1H), 1.82 (s, 3H), 1.68 - 1.49 (m, 3H), 1.49 - 1.37 (m, 2H), 1.30 - 1.15 (m, 1H), 1.02 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.85 (m, 6H).メチル(3R,6S)-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレートアセチル-D-ロイシネート(128g、387mmol)のジクロロメタン(1L)溶液に、飽和炭酸ナトリウム溶液(1L)を添加した。2相系を10分間激しく撹拌し、層を分離した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して清澄溶液を得た。次に、トリエチルアミン(65mL、465mmol)および無水酢酸(44mL、465mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、メチル(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(93g)を淡黄色固形物として得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 回転異性体の混合物) δ 5.02 - 4.87 (m, 0.5H), 4.84 - 4.68 (m, 0.5H), 4.18 - 4.05 (m, 0.5H), 3.89 - 3.77 (m, 0.5H), 3.71 (d, J = 11.6 Hz, 3H), 3.31 - 3.18 (m, 0.5H), 2.79 - 2.67 (m, 0.5H), 2.51 - 2.31 (m, 1H), 2.11 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 2.01 - 1.90 (m, 1H), 1.88 - 1.55 (m, 3H), 1.33 - 1.21 (m, 1.5H), 1.20 - 1.06 (m, 1.5H).オートクレーブに、メタノール中7Nアンモニア(600mL、4200mmol)中のメチル(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシレート(93g、387mmol)を投入し、3日間60℃に加熱した。混合物を濃縮して、(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキサミド(102g)を淡黄色油状物として得た。収率が定量的であると仮定して、生成物を、次のステップでそのまま使用した。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 回転異性体の混合物) δ 7.38 (s, 1H), 6.89 (d, J = 24.7 Hz, 1H), 4.76 - 4.59 (m, 0.5H), 4.39 - 4.24 (m, 0.5H), 4.16 - 4.01 (m, 0.5H), 3.72 - 3.51 (m, 0.5H), 3.14 - 2.99 (m, 0.5H), 2.68 - 2.51 (m, 0.5H), 2.30 - 2.12 (m, 0.5H), 2.11 - 1.92 (m, 3.5H), 1.78 - 1.38 (m, 4H), 1.23 - 1.11 (m, 1.5H), 1.09 - 0.94 (m, 1.5H); キラルLC (方法A) tR= 12.35分, >98% ee.(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキサミド(50g、271mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート(77g、407mmol)を数回に分けて添加し、混合物を、室温で4時間撹拌した。メタノール中7Nのアンモニア(200ml、9.15mol)をゆっくりと添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を濃縮して、(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミド(50g)をピンク色固形物として得、それを次のステップでそのまま使用した。メタノール中5.4Mナトリウムメトキシド(99mL、535mmol)のメタノール(200mL)溶液に、メタノール(400mL)およびマロン酸ジメチル(61.4mL、535mmol)中の(3R,6S)-1-アセチル-6-メチルピペリジン-3-カルボキシミドアミド(49g、267mmol)を添加した。混合物を、50℃に加熱し、24時間撹拌した。混合物を、濃塩酸で酸性化し(約pH3)、より少ない容積に濃縮した。残留物を、シリカで濾過し(ジクロロメタン中20%メタノール)、濃縮してオレンジ色油状物を得た。粗生成物を、シリカカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%~20%のメタノール)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(12g、17%)を、無色ゴム状物として得た。LCMS(方法C):tR 0.17分、100%、MS(ESI)252.1(M+H)+。1-((2S,5R)-5-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(12g、47.8mmol)のオキシ塩化リン(80mL、858mmol)溶液を、60℃で24時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、トルエンと共に2回共蒸発させて、黄色油状物を得た。油状物を、酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。水性層を、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を得た。油状物を、シリカカラムクロマトグラフィー(トルエン中0%~20%のテトラヒドロフラン)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(1.5g、11%)を無色ゴム状物として得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 回転異性体の混合物) δ 7.95 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 4.85 - 4.72 (m, 1H), 4.69 - 4.62 (m, 1H), 4.23 - 4.13 (m, 1H), 4.07 - 3.98 (m, 1H), 3.97 - 3.88 (m, 1H), 3.00 - 2.89 (m, 1H), 2.81 - 2.67 (m, 1H), 2.09 - 1.72 (m, 7H), 1.71 - 1.58 (m, 2H), 1.25 - 1.14 (m, 3H), 1.12 - 1.05 (m, 2H); LCMS (方法B): tR 3.34分, MS (ESI) 288.0 (M+H)+; キラルUPLC (方法: A) tR 2.54分, >95% eeおよびde.アルゴン下で、1,4-ジオキサン(20mL)中の2-トリブチルスタンニルピラジン(607mg、1.65mmol)、1-((2S,5R)-5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(500mg、1.74mmol)、およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(244mg、0.34mmol)を、100℃に加熱し、32時間撹拌した。混合物を、1%トリエチルアミンを含むジクロロメタンで希釈し、シリカにコーティングした。これを、シリカカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミンを含むジクロロメタン中0%~40%のアセトニトリル)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体3、134mg、18%)を、オレンジ色ゴム状物として得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 回転異性体の混合物) δ 9.46 - 9.41 (m, 1H), 8.80 - 8.76 (m, 1H), 8.65 - 8.59 (m, 1H), 8.33 - 8.29 (m, 1H), 7.66 - 7.59 (m, 1H), 4.86 - 4.70 (m, 0.5H), 4.27 - 4.17 (m, 0.5H), 4.09 - 3.97 (m, 0.5H), 3.55 - 3.41 (m, 0.5H), 3.06 - 2.98 (m, 0.5H), 2.88 - 2.82 (m, 0.5H), 2.10 - 1.90 (m, 6H), 1.89 - 1.76 (m, 0.5H), 1.75 - 1.61 (m, 1.5H), 1.29 - 1.20 (m, 1.5H), 1.17 - 1.10 (m, 1.5H); LCMS (方法C): tR 1.81分, MS (ESI) 331.1 (M+H)+.
最終生成物の合成手順
実施例1:1-((2S,5R)-2-メチル-5-(4-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(00001)および1-((2R,5S)-2-メチル-5-(4-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(00002)の合成
【0188】
【0189】
3-アミノ-5-メチルピリジン(0.751g、6.94mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、テトラヒドロフラン中1Mのリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(6.94mL、6.94mmol)を添加し、混合物を室温で10分間撹拌した。次に、テトラヒドロフラン(20ml)中の1-(5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体1、1g、3.47mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を、飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、ブラインで1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色固形物を得た。固形物を、シリカカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%~5%のメタノール)で精製して、1-(5-(4-クロロ-6-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(788mg、60%)を黄色発泡体として得た。LCMS(方法B):tR 1.81分、100%、MS(ESI)360.1(M+H)+。窒素下で、2-(トリブチルスタンニル)ピラジン(103mg、0.28mmol)、1-(5-(4-クロロ-6-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(50mg、0.14mmol)、およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(9.75mg、0.01mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)に溶解した。混合物を、24時間80℃に加熱し、室温に冷却した。混合物を、アセトニトリルを使用してC18栓から溶出し、濾過液を、逆相クロマトグラフィー(方法B)で精製し、凍結乾燥して、1-(2-メチル-5-(4-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(22mg、37%)を白色固形物として得た。得られたシスエナンチオマー混合物を、キラル分取SFC(方法A)に供し、凍結乾燥して、両立体異性体を得た。1-((2S,5R)-2-メチル-5-(4-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(5mg、22%)LCMS(方法D):tR 3.17分、100%、MS(ESI)404.1(M+H)+;キラルUPLC(方法:A):tR 3.17分、>95%eeおよびde。1-((2R,5S)-2-メチル-5-(4-((5-メチルピリジン-3-イル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(6mg、27%)LCMS(方法D):tR 3.17分、100%、MS(ESI)404.2(M+H)+;キラルUPLC(方法A):tR 4.60分、>95%eeおよびde。
【0190】
化合物00003(本明細書では化合物Bとも呼ばれる)および00004(本明細書では化合物Aとも呼ばれる)を、適切な出発物質を用いて実施例1と類似の手順を使用して調製した。
【0191】
【0192】
実施例2:1-((2S,5R)-5-(4-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イルアミノ)-6-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(00013)の合成
【0193】
【0194】
アルゴン下で、1,4-ジオキサン(20mL)中の3-(トリブチルスタンニル)ピリジン(607mg、1.65mmol)、1-((2S,5R)-5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体2、500mg、1.74mmol)、およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(244mg、0.34mmol)を、100℃に加熱し、32時間撹拌した。混合物を、1%トリエチルアミンを含むジクロロメタンで希釈し、シリカにコーティングした。これを、シリカカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミンを含むジクロロメタン中0%~40%のアセトニトリル)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-(ピリジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(134mg、18%)を、オレンジ色ゴム状物として得た。LCMS(方法C):tR 1.81分、100%、MS(ESI)331.1(M+H)+。1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(30mg、0.09mmol)の2-プロパノール(2mL)溶液に、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-アミン(36.2mg、0.27mmol)および塩酸(0.02mL、0.27mmol)を添加した。混合物を、60℃で16時間撹拌し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を得た。油状物を、逆相クロマトグラフィー(方法B)で精製し、凍結乾燥して、1-((2S,5R)-5-(4-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イルアミノ)-6-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン1-オンを、青みがかった固形物として得た。LCMS(方法B):tR 2.19分、100%、MS(ESI)428.1(M+H)+。
【0195】
化合物00030を、適切な出発物質を用いて実施例2と類似の手順に従って調製した。
【0196】
【0197】
実施例3A:1-((2S,5R)-2-メチル-5-(4-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)-6-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(00071)の合成
【0198】
【0199】
2-メチルピリジン-4-アミン(3.19g、29.5mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(100mL)溶液に、テトラヒドロフラン中1Mのリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(29.5mL、29.5mmol)を添加し、混合物を10分間撹拌した。次に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)中の1-((2S,5R)-5-(4,6-ジクロロピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体2、850mg、2.95mmol)を、10分間かけて添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を、飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、ブラインで1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して褐色油状物を得た。油状物を、シリカカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン中80%~100%の酢酸エチル、続いてジクロロメタン中0%~10%のメタノール)で精製して、1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(275mg 25%)を黄色油状物として得た。LCMS(方法A):tR 1.49分、100%、MS(ESI)360.1(M+H)+。窒素下で、1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(275mg、0.76mmol)、炭酸ナトリウム(162mg、1.53mmol)、ピリジン-3-ボロン酸(188mg、1.53mmol)、およびPdCl2(dppf)-CH2Cl2付加物(62.4mg、0.08mmol)を、1,2-ジメトキシエタン(6mL)および水(2mL)の混合物に溶解した。混合物を、1時間80℃に加熱し、C18栓で濾過し、濃縮して、暗色残留物を得た。残留物を、逆相クロマトグラフィー(方法B)で精製し、凍結乾燥して、淡黄色固形物を得た。生成物を、キラル分取SFC(方法B)によりさらに精製し、凍結乾燥して、1-((2S,5R)-2-メチル-5-(4-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)-6-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(135mg、41%)をベージュ色固形物として得た。LCMS(方法D):tR 3.06分、100%、MS(ESI)403.2(M+H)+;キラルSFC(方法B):tR 3.60分、>95%eeおよびde。
【0200】
実施例3B:1-((2S,5R)-2-メチル-5-(4-((3-(1-メチル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)フェニル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(化合物C)の合成
【0201】
【0202】
1-((2S,5R)-5-(4-クロロ-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(中間体3、120mg、0.36mmol)の2-プロパノール(2mL)溶液に、3-(1-メチル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)アニリン(188mg、1.08mmol)および塩酸(0.08mL、1.08mmol)を添加した。混合物を、70℃で16時間撹拌し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を得た。油状物を、逆相クロマトグラフィー(方法B)で精製し、凍結乾燥して、1-((2S,5R)-2-メチル-5-(4-((3-(1-メチル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)フェニル)アミノ)-6-(ピラジン-2-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン(化合物C、102mg、60%)を白色固形物として得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 回転異性体の混合物)δ 10.01 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 9.56 (dd, J = 11.0, 1.1 Hz, 1H), 8.80 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 8.54 - 8.42 (m, 2H), 7.72 - 7.54 (m, 2H), 7.53 - 7.39 (m, 2H), 4.86 - 4.76 (m, 1H), 4.27 - 4.16 (m, 0.5H), 4.15 - 4.03 (m, 3.5H), 3.58 - 3.42 (m, 0.5H), 3.00 - 2.86 (m, 1H), 2.86 - 2.68 (m, 0.5H), 2.17 - 1.96 (m, 5H), 1.93 - 1.77 (m, 0.5H), 1.76 - 1.64 (m, 1.5H), 1.27 (d, J = 6.8 Hz, 1.5H), 1.13 (d, J = 7.0 Hz, 1.5H); LCMS (方法D): tR 3.31分, MS (ESI) 470.2 (M+H)+.
実施例4:化合物00004と複合体化したヒトCREBBPのブロモドメインの結晶構造、および化合物A、化合物C、およびCCS1477のBROMOscan(商標)結果
結晶化
実験セットアップ:結晶化に使用した構築物は、残基1081~1197を含んでいた。ハンギングドロップ蒸気拡散セットアップを使用して、化合物00004と複合体化したCREBBPの結晶を得た。20.3mg/mlの濃度(10mM Hepes、500mM NaCl、5%グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.4)のCREBBPを、4.3mM(3.0倍モル過剰)の00004(DMSO中150mM)と共に1時間事前インキュベートした。次いで、1μlのタンパク質溶液を、1μlのレザバー溶液(0.1M MgCl2、0.1M MES/NaOH pH6.3、18%(重量/容積)PEG6000、および10%(容積/容積)エチレングリコール)と混合し、0.4mlのレザバー溶液上方で4℃にて平衡化させた。良好に回折する結晶が出現し、4日間で十分なサイズに成長した。
【0203】
データ収集
結晶を、取付け前に10%グリセロール(最終濃度)結晶化液滴に添加することにより凍結保護した。CREBBP/00004結晶の完全な1.6Åデータセットを、ダイヤモンド光源(ジドコット、英国、ビームラインi03)で収集し、autoPROCパイプライン内のXDS、Pointless and Aimlessにより、データを統合し、分析し、スケーリングした(表1)。
【0204】
【0205】
構造決定および精密化
以前に決定されたCREBBPの構造を開始モデルとして使用して、分子置換を行った。手動での再構築およびREFMAC5による精密化を交互に数ラウンド繰り返すことにより、最終モデルを完成させた(表2)。単一の等方性温度因子(isotropic B-factor)を用いて1原子ごとに原子置換係数をモデル化した。
【0206】
【0207】
結果:本発明者らは、1.6Å分解能まで回折したCREBBP/00004の結晶を生成し、タンパク質-リガンド複合体の3次元構造を決定した。CREBBPの各鎖の化合物結合部位の初期モデルのFo-Fcオミットマップの明瞭な電子密度は、化合物全体の結合を明らかにし(
図7)、その明確な配置を可能にした。加えて、この構造により、化合物00004の絶対立体化学(ピペリジン部分の2S、5R)も確認される。
【0208】
BromoKdMAX-アッセイ
BromoKdMAXをDiscoverXで実施した。このアッセイは、化合物が特定の(例えば、100nMまたはそれよりも低い)Kdでp300のブロモドメインおよび/またはCBPのブロモドメインに結合するか否かを決定するために使用することができる。
【0209】
アッセイ原理は以下の通りである。BROMOscan(商標)は、小分子ブロモドメイン阻害剤を識別するための、新規で業界をリードするプラットフォームである。実績のあるKINOMEscan(商標)技術に基づき、BROMOscan(商標)では、独占所有のリガンド結合部位特異的競合アッセイを使用して、試験化合物とブロモドメインとの相互作用が定量的に測定される。このロバストで信頼性の高いアッセイパネルは、ハイスループットスクリーニングに好適であり、定量的リガンド結合データを提供して、強力で選択的な小分子ブロモドメイン阻害剤の識別および最適化を容易にする。BROMOscan(商標)アッセイは、微量ブロモドメイン濃度(<0.1nM)を含み、それにより幅広い範囲の親和性(<0.1nM~>10uM)にわたって真の熱力学的阻害剤Kd値が報告される。
【0210】
アッセイを以下のように実施した。ブロモドメインアッセイでは、ブロモドメインを提示するT7ファージ株を、24ウェルブロックにてBL21菌株由来の大腸菌宿主中で並行して増殖させた。大腸菌を対数期まで増殖させ、凍結ストックからのT7ファージに感染させ(感染多重度=0.4)、32℃で振盪しながら溶菌するまでインキュベートした(90~150分間)。ライセートを遠心分離し(5,000×g)、濾過して(0.2μm)、細胞残渣を除去した。ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを、ビオチン化小分子またはアセチル化ペプチドリガンドで30分間室温にて処理して、ブロモドメインアッセイ用の親和性レジンを生成した。リガンド化ビーズを過剰ビオチンでブロッキングし、ブロッキング緩衝液(SeaBlock(Pierce)、1%BSA、0.05%Tween 20、1mM DTT)で洗浄して、未結合リガンドを除去し、非特異的ファージ結合を低減させた。ブロモドメイン、リガンド化親和性ビーズ、および試験化合物(つまり、化合物A、化合物C、またはCCS1477のいずれか)を、1×結合緩衝液(17%SeaBlock、0.33×PBS、0.04%Tween20、0.02%BSA、0.004%アジ化ナトリウム、7.4mM DTT)中で一緒にすることにより、結合反応をアセンブリした。試験化合物を、100%DMSO中の1000×ストックとして調製した。11点3倍化合物希釈系列および1つDMSO対照点を使用して、Kdを決定した。Kdを測定するための化合物はすべて、100%DMSO中での音響伝達(非接触分注)で分配する。次いで、DMSOの最終濃度が0.09%になるように、化合物を直接希釈してアッセイにした。すべての反応は、ポリプロピレン384ウェルプレートで実施した。各々の最終容量は0.02mlだった。アッセイプレートを振盪しながら室温で1時間インキュベートし、親和性ビーズを、洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で洗浄した。次いで、ビーズを、溶出緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20、2μM未ビオチン化親和性リガンド)に再懸濁し、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。溶出液中のブロモドメイン濃度を、qPCRにより測定した。
【0211】
結果は、以下の通りである。
【0212】
【0213】
対応するデータは、i)SGC-CBP30については、例えばWuら、NATURE COMMUNICATIONS(2019年)10巻:1915頁 https://doi.org/10.1038/s41467-09672-2の補足情報において、ii)GNE-781については、例えば、Romeroら、J.Med.Chem.2017年、60巻、9162~9183頁において、およびiii)FT-6876については、例えば、AACR年次集会2020、バーチャル集会II、2020年6月22~24日のポスター#3079(表題は、「FT-6876,a potent and selective inhibitor of CBP/p300 with antitumor activity in AR-positive breast cancer」)において公的に入手可能である。
【0214】
実施例5
物質および方法
遺伝子発現分析:
250000個のHCC827(ATCC;CRL2868;EGFRエクソン19欠失E746~A750を有する)細胞/ウェルまたは200000個のNCI-H1975(ATCC;CRL5908;EGFR L858RおよびT790Mを有する)細胞/ウェルを、薬物処理の前日に、6ウェルディッシュ(Greiner Bio-1、7657160)の10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むRPMI培地に播種した。次いで、1μM化合物A(化合物Aは、本明細書では化合物00004とも呼ばれる)、CCS1477(Chemgood;C1505)、A-485(Lucerna-Chem;HY-107455)、またはICG-001(Selleckchem、S2662)を含むかまたは含まないDMSO、EGFR阻害剤(HCC827の場合、ゲフィチニブ[最終100nM、LC Laboratories;G-4408];NCI-H1975の場合、オシメルチニブ[最終20nM、LC Laboratories;O-7200])のいずれかで、細胞を24時間処理した。その後、細胞を、2mlのPBSで3回洗浄し、300μlの溶解緩衝液(RA1+1%TCEP[Sigma 646547])で溶解した。RNAを抽出するための吸引用のMacherey-Nagel NucleoSpin8 RNAキットプロトコール(740698.5)に従ってRNAを抽出し、RNAをH2Oで溶出した。0.5~2μgのRNAを、Thermo Scientific高容量cDNA逆転写キット(4368813)を使用して逆転写した。次いで、等量のcDNAを、384ウェル形式のKapa SYBR fastキット(KK4611)をRoche Light Cycler 480で使用してqPCR分析に供した。遺伝子の遺伝子発現は、ハウスキーピング遺伝子CT値(b-アクチン)を目的の遺伝子のCTから差し引くことにより、およびDMSO対照値を目的の試料から差し引くことによりΔΔCTを算出して、最終的に処理試料と対照処理試料との間の倍数変化差を算出することにより評価した。
【0215】
プライマー:
ACTB(b-アクチン):fwd 5’GCC CCAGCTCACCATGGAT3’(配列番号1)、rev 5’TGGGCCTCGTCGCCCACATA3’(配列番号2);
ALPP:fwd 5’AGAAAGCAGGGAAGTCAGTGG3’(配列番号3)、rev 5’CGAGTACCAGTTGCGGTTCA3’(配列番号4);
HOPX:fwd 5’GACCATGTCGGCGGAGACC3’(配列番号5)、rev 5’GCGCTGCTTAAACCATTTCTGGG3’(配列番号6)。
【0216】
ブロモドメイン結合CBP/p300阻害剤およびHATドメイン結合CBP/p300阻害剤は、EGFR突然変異非小細胞肺がん細胞(NSCLC)におけるEGFR阻害剤誘導性遺伝子発現を鈍化させるが、CBPとβ-カテニンとの相互作用を妨げる阻害剤は鈍化させない。
【0217】
異なる作用様式(つまり、CBP/p300の異なるタンパク質ドメインとの結合)を有する他のCBP/p300阻害剤(CBP-I)と並行して、化合物Aの遺伝子発現を評価した。化合物AおよびCCS1477は、CBP/p300のブロモドメインに結合し(BRD-I)、A-485は、CBP/p300の触媒ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を標的とし(HAT-I)、ICG-001は、CBPとβ-カテニンとの相互作用を妨害する(CBP/β-Cat-I)。
【0218】
図1は、結果を示し、示されている調節された遺伝子は、ALPP(アルカリホスファターゼ、胎盤型;
図1Aおよび
図1C)およびHOPX(ホメオドメインのみのタンパク質;
図1Bおよび
図1D)である。20nMゲフィチニブ(EGFR阻害剤)に、または20nMゲフィチニブの存在下で1μMの異なるCBP阻害剤に24時間曝露したHCC827での遺伝子発現(
図1A~1B)。NCI-H1975(ゲフィチニブ耐性をもたらすEGFR T790M突然変異を有する)での遺伝子発現を、20nMオシメルチニブ(第3世代EGFR阻害剤)に、または20nMオシメルチニブの存在下で1μMの異なるCBP/p300阻害剤に24時間曝露した。データは、二重重複のqPCRを用いた2つの独立した実験からのものである(平均±SEM)(
図1C~1D)。
【0219】
結果:EGFR突然変異NSCLC細胞株は両方とも、2つの異なるEGFR阻害剤(第1世代ゲフィチニブおよび第3世代オシメルチニブ)による処理に応答して、例示遺伝子ALPPおよびHOPXを上方制御する。化合物AおよびCCS1477(両方ともCBP/p300ブロモドメイン結合物質)およびA-485(CBP/p300の触媒阻害)は、EGFR阻害剤誘導性遺伝子発現を逆転させる。CBPとβ-カテニンとの相互作用を阻害する異なる作用様式の化合物(ICG001)は、EGFR誘導性遺伝子発現を鈍化させない。
【0220】
実施例6
物質および方法
細胞計数:
2000個のHCC827(ATCC;CRL2868)細胞/ウェルを、10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むRPMI培地中での薬物処理の1日前に、96ウェルプレート(Greiner BioOne 655090)に播種した。幾つかのプレートに播種し、細胞計数の各時点で1つのプレートを固定し、分析のために染色した。翌日、細胞を、DMSOまたはゲフィチニブと組み合わせて(
図2では20nM、
図3では300nM)、表記の化合物および濃度で処理した[
図2は化合物AおよびBを示し;
図3は、化合物A、CCS1477(Chemgood;C1505)、SGC-CBP30(Selleckchem;S7256;CAS番号1613695-14-9)、A-485(Lucerna-Chem;HY-107455)、化合物00071、および化合物00030を示す]。各プレートを固定および分析する時まで細胞培養を継続した。時点を延長する場合は、培地および薬物を週2回補充した。
【0221】
固定および画像化:
所定の時間にプレートをPBSで3回洗浄し、細胞を、80μlの4%PFAで10分間室温にて固定した。PBSでの3回の洗浄ステップ後、細胞を、100μlのPBS中10μg/mlのHoechst33342(Thermo Scientific H12492)を用いて、室温で暗所にて2時間染色した。3×PBS洗浄ステップ後、電動X/Yステージおよび5×対物レンズを有するZeissApotomeを自動画像化モードで使用して、Hoechst33342シグナルを取得した。Hoechst33342スポット(核)の画像分析および決定は、ImageJ を使用して行った。GraphPad Prismを使用して、核の個数を時間の関数としてプロットした。
【0222】
細胞増殖の無標識決定:
2000個のHCC827(ATCC;CRL2868)細胞/ウェルまたは2000個のNCI-H1975(ATCC;CRL5908)を、10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むRPMI培地中での薬物処理の1日前に、96ウェルプレート(Greiner BioOne 655090)に播種した。翌日、ウェルを、CELIGO Imaging Cytometerの明視野画像化を使用して無標識で画像化し、初期細胞数を決定した。その後、細胞を、DMSO、単一の薬物、または薬物組合せのいずれかで処理し、明視野モード(CELIGO Imaging Cytometer)を使用して数週間にわたって定期的に画像化して、各ウェルの細胞増殖を経時的に追跡した。増殖培地および処理物質を、週2回補充した。HCC827の薬物および濃度:300nMゲフィチニブ、1μM化合物A、および300nMゲフィチニブ+1μM化合物A。薬物および濃度 NCI-H1975:50nMオシメルチニブ(LC Laboratories;O-7200)、0.125、0.5、もしくは2μM CCS1477(Chemgood;C1505)および0.125、0.5、もしくは2μM化合物A、または図に表記されている組合せ。細胞数は、CELIGOソフトウェアに組み込まれている「直接細胞計数」分析ツールを使用して明視野モードで決定した。
【0223】
CBP/p300のブロモドメインに結合するエナンチオマー(化合物A)のみが、EGFR阻害剤媒介性NSCLC細胞増殖阻害を濃度依存的様式で増強するが、CBP/p300のブロモドメインに結合しないエナンチオマー(化合物B)は増強しない。
【0224】
EGFR突然変異HCC827細胞の細胞数を経時的にモニターした。
図2Aは、DMSO単独(黒丸)で、20nM EGFR阻害剤単独(ゲフィチニブ;第1世代EGFR阻害剤、白丸)で、または表記の化合物濃度のCBP/p300 BRD阻害剤化合物Aの活性エナンチオマー(上段)もしくはCBP/p300のブロモドメインに結合しないそのエナンチオマー化合物B(化合物Bは、本明細書では化合物00003とも呼ばれる)との組合せで処理した細胞を示す。
図2B HCC827細胞を、EGFR阻害剤の非存在下で、化合物AおよびBに曝露した。提示されているグラフは、各時点および条件を三重重複した1つの実験からのものである(平均±SD)。
【0225】
結果:HCC827細胞数は、20nMゲフィチニブで処理すると初期には減少するが、継続的なゲフィチニブ暴露下では再増殖し始める。再増殖は、BRD-I化合物Aを使用したCBP/p300の阻害により調査期間にわたって阻害されたが、対応する非ブロモドメイン結合エナンチオマー化合物Bでは阻害されなかった。興味深いことには、組合せ療法において再増殖を防止するBRD-I効果は、BRD-Iが単一作用剤としては活性ではないにも関わらず生じる。
【0226】
EGFR阻害剤と組み合わせた化合物AおよびベンチマークCBP/p300阻害剤は、HCC827細胞増殖阻害を媒介した。
【0227】
図3(A)および(B)および(C)および(D)および(E)は、核蛍光染色を使用して96ウェルプレートで経時的に[日数]測定した薬物処理(グラフ凡例の記号)の関数としてのEGFR突然変異NSCLC細胞株HCC827の細胞数を示す。
図3(A)および(B)および(C)左側グラフ:化合物A(
図3A)、CCS1477(
図3B)、SGC-CBP30(
図3C)、またはA485による細胞の単一作用剤処理。
図3(A)および(B)および(C)右側グラフならびに
図3(C)および(D):300nMゲフィチニブの存在下での化合物A(
図3A)およびCCS1477(CBP/p300 BRD-I)(
図3B)および化合物SGC-CBP30(
図3C)および化合物00071(
図3D)および化合物00030(
図3E)およびA485(CBP/p300 HAT-I)の抗増殖活性。提示されている曲線は、三重重複の1つの実験からのものであり(平均±SD)、同様の実験で同様の結果が繰り返し得られた。
【0228】
図4Aは、[時間]での経時的なHCC827細胞数の評価を示す。化合物Aは、EGFR阻害剤の非存在下ではEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると、薬物耐性の発生を防止する(1つの例示プレートが、ゲフィチニブの場合はn=24ウェル、およびゲフィチニブ+化合物A処理の場合はn=24ウェル、DMSO:n=6、化合物A:n=6、平均±SDで示されている)。
図4Bは、ゲフィチニブまたはゲフィチニブ+化合物Aで0日間または22日間処理した、1ウェル当たりの細胞数(Aと同様の2つの実験プレートから、1条件当たりn=48ウェル)をドットプロットとして図示する。
図4Cは、
図4Aと同様に分析した、300nMゲフィチニブまたは300nMゲフィチニブ+1μM化合物Aで処理した2つのプレート(1条件当たりn=48ウェル)のウェルのウォーターフォールプロットを示す。22日目の細胞数の増加は、薬物処理前(0日目)の各ウェルの初期細胞数からの倍数変化の対数として算出した。
【0229】
結果:
図3Aおよび3Bおよび3Cおよび3Dおよび3E:HCC827細胞数は、300nMゲフィチニブによる処理後、初期には減少するが、継続的なゲフィチニブ曝露下では再増殖し始める。5つの独立したBRD-IまたはHAT-Iを使用してCBP/p300を阻害することにより、調査期間にわたって再増殖が阻害される。興味深いことには、組合せ療法において再増殖を防止するBRD-I効果は、BRD-Iが単一作用剤としては活性ではないにも関わらず生じる。
【0230】
図4A、4B、および4C:化合物Aは、それ自体では細胞数に対する効果が弱い/効果を示さないが、300nMゲフィチニブは、初期には細胞増殖を完全に阻止する。しかしながら、長期間培養では、ゲフィチニブのみで処理した場合、細胞は再増殖するが、化合物Aとの同時処理は、調査期間(>22日)にわたって再増殖を有意に遅延させるかまたは完全に防止する。
【0231】
EGFR阻害剤と組み合わせた化合物AおよびベンチマークCBP/p300阻害剤は、NSCLC細胞増殖阻害を媒介した - NCI-H1975。
【0232】
図5(A)は、DMSO、50nMオシメルチニブ、2μM化合物A、または50nMオシメルチニブと2.0、0.5、もしくは0.125μM化合物Aとの組合せの存在下での、時間[時]の関数としてのNCI-H1975細胞数の評価を示す。
図5(B)は、DMSO、50nMオシメルチニブ、2μM CCS1477、または50nMオシメルチニブと2.0、0.5、もしくは0.125μM CCS1477との組合せの存在下での、NCI-H1975細胞増殖の評価を示す。(例示グラフは、各データおよび時点の二重重複を示し、ロジスティック増殖曲線フィッティングはGraphPad Prismで計算した)。
【0233】
結果:
図5:CBP/p300 BRD-IおよびEGFR-Iの組合せ効果は、さらなるEGFR突然変異NSCLC細胞株および異なるEGFR-I化合物に当てはまる。化合物AおよびCCS1477は、それら自体では細胞数に対する効果が弱いかまたは効果を示ないが、50nMオシメルチニブは、初期には細胞増殖を阻止する。しかしながら、長期的には、細胞は、50nMオシメルチニブの存在下でさえ、ゆっくりとした速度で増殖を継続し、増殖の継続は、化合物AまたはCCS1477との同時処理により用量依存的に遅延される。
【0234】
実施例7
異種移植片:200万個のNCI-H1975細胞(ATCC;CRL5908)を、NMRI-ヌードマウス(Janvier)の両脇腹に注射した。より大きな腫瘍が約200mm3の容積に達した際に、マウスを処置群に分配した。マウスを、ビヒクル(30%PEG300/H2O;202371 Sigma-Aldrich)、20mg/kg CCS1477(ChemieTek;CT-CCS1477)、2mg/kgオシメルチニブ(O-7200 LC Laboratories)、または20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(事前に混合されたDMSOストック)で1日1回経口処置した。手動ノギスを使用して、腫瘍容積を週2~3回測定した。腫瘍容積は、以下の式を使用して算出した:より大きな腫瘍直径×より小さな腫瘍直径の2乗÷2。平均腫瘍容積の線形フィッティングに基づき、曲線の傾きを回帰分析(両側)で比較した。オシメルチニブ群とオシメルチニブ/CCS1477群との間に有意差が検出された。ビヒクル処置とCCS1477単一作用剤処置との間には有意差を観察することができなかった。
【0235】
応答は、時間tにおける腫瘍容積変化をその基線と比較することにより決定した:腫瘍容積変化%=Δ電圧=100%×((Vt-V初期)/V初期)。最良応答は、t≧10日のΔ電圧の最小値だった。各時間tについて、t=0~tのΔ電圧の平均も算出した。最良平均応答は、t≧10日でのこの平均の最小値であると定義される。この指標は、応答の速さ、強さ、および耐久性の組合せを単一の値で捉えるものである。応答基準(mRECIST)は、RECIST基準21から取ったものであり、以下のように定義した:(この順序で適用される):mCR、最良応答<-95%および最良平均応答<-40%;mPR、最良応答<-50%および最良平均応答<-20%;mSD、最良応答<35%および最良平均応答<30%;mPD、他の未分類のもの。14日間の治験を完了する前に有害事象のために犠牲にしたマウスは、データセットから削除した。
【0236】
EGFRiおよびCBP/p300iの組合せのin vivo有効性
図6(A)は、EGFR突然変異NCI-H1975異種移植片の平均腫瘍容積(+SEM)が経時的にプロットされていることを示す。4つの異なる処置群が図示されている:ビヒクル(30% PEG300/H2O;交差丸;n=4)、20mg/kg CCS1477(白丸;n=4)、2mg/kg オシメルチニブ(黒丸;n=9)、または20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(半黒丸;n=10)。
図6(B)は、4つの処置群すべての最良平均応答が、ウォーターフォールプロットに示されていることを示す(ビヒクルは灰色、20mg/kg CCS1477は白色、2mg/kgオシメルチニブは黒色、および20mg/kg CCS1477と組み合わせた2mg/kg オシメルチニブは四角)。破線は、初期腫瘍容積の30%の低減を示す。
【0237】
結果:
図6:CBP/p300のブロモドメイン阻害剤は、EGFR阻害剤の非存在下で使用する場合、EGFR突然変異NSCLC異種移植腫瘍増殖に対して効果を示さない。しかしながら、CBP/p300のブロモドメイン阻害剤をEGFR阻害剤と組み合わせると、療法に対する応答が増加し、療法の経過にわたって腫瘍サイズが良好に制御される。驚くべきことに、ブロモドメイン結合阻害剤(CCS1477)単独に対する応答が存在しないにも関わらず、ブロモドメイン結合阻害剤(CCS1477)をEGFR阻害剤(オシメルチニブ)と組み合わせると、療法に対する奏効率が増加する。
【0238】
実施例8
物質および方法:
CBPブロモドメイン結合アッセイ(TR-FRET):
DMSO中10mMの化合物溶液を、DSMOで事前に希釈して、25×DMSOストック溶液にした。次いで、それらをアッセイ緩衝液で4×希釈した。DMSO濃度を安定に保ちながら、アッセイ緩衝液で系列希釈を実施した。アッセイ緩衝液中5μlの化合物を、アッセイプレート(アッセイキットに提供されていた)に移し、TR-FRETアッセイ(Cayman chemicals 600850)を、製造業者の説明書を使用して実施した。暗所で室温にて1時間インキュベーションした後、Tecan M1000プレートリーダーのTR-FRETモードを使用して、アッセイプレートを読み取った(トップリード;励起340nM バンド幅20nM;発光620nM バンド幅7nM;最初のウェルで最適なゲインを決定、点滅回数:5回;点滅周波数100Hz;積分時間:500μs、遅延時間:100μs、室温)。TR-FRET比は、670nm発光を620nm発光で除算することにより算出した。EC50の算出は、正規化された値(DMSO=1)および陽性対照(0)で行った。値を対数に変換し、傾きが可変である非線形回帰(4パラメーター)を使用して、値を用量応答曲線にフィッティングして、EC50値を評価した(下記の表3を参照)。
【0239】
【0240】
>10μMのEC50を有する化合物00003が、本明細書で規定のCBP/p300ブロモドメイン阻害剤に対応しないことは、TR-FRETデータから明らかである。
【0241】
実施例9
物質および方法
細胞増殖の無標識決定:
10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むRPMI培地中で薬物処理する1日前に、2000個のHCC4006(ATCC;CRL2871;EGFRエクソン19欠失L747~E749を有する)を96ウェルプレート(Greiner BioOne 655090)に播種した。翌日、CELIGO ImageCytometerの明視野画像化を使用してウェルを無標識で画像化し、初期細胞数を決定した。その後、細胞を、DMSO、単一の薬物、または薬物組合せのいずれかで処理し、明視野モード(CELIGO Imaging Cytometer)を使用して数週間にわたって定期的に画像化して、各ウェルの細胞増殖を経時的に追跡した。増殖培地および処理物質を、週2回補充した。HCC4006の薬物および濃度:300nMゲフィチニブ(LC Laboratories;G-4408)、1μM化合物A、および300nMゲフィチニブ+1μM化合物A。細胞数は、CELIGOソフトウェアに組み込まれている「直接細胞計数」分析ツールを使用して明視野モードで決定した。
【0242】
図8Aは、HCC4006細胞数の経時的な[日数での]評価を示す。化合物Aは、EGFR阻害剤の非存在下ではEGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、EGFR阻害剤と組み合わせると、薬物耐性の発生を防止する(DMSO:n=6、化合物A:n=6、ゲフィチニブ:n=24、ゲフィチニブ+化合物A:n=24、平均±SD)。
図8Bは、ゲフィチニブまたはゲフィチニブ+化合物Aで0日間または20日間処理した1ウェル当たりの細胞数をドットプロットとして示す(Aでの実験から、1条件当たり24ウェル、x軸に表記されている「+」は、ゲフィチニブ+化合物Aを示す)。
図8Cは、300nMゲフィチニブまたは300nMゲフィチニブ+1μM化合物A(1条件当たり24ウェル)で処理し、
図4Aと同様に分析したウェルのウォーターフォールプロットを示す。各ウェルの20日目の細胞数増加を、薬物処理前(0日目)の各ウェルの初期細胞数からの倍数変化の対数として算出した。
【0243】
結果:
図8A、8B、および8C:化合物Aは、それ自体ではHCC4006細胞数に対して効果を示さない/効果があっても非常に弱いが、300nMゲフィチニブは、細胞増殖を初期には完全に阻止する。長期間培養では、HCC4006細胞は、ゲフィチニブのみで処理した場合、再増殖するが、化合物Aとの同時処理は、調査期間(>20日)にわたって再増殖を完全に防止する。
【0244】
実施例10
物質および方法
細胞増殖の無標識決定:
2000個のHCC827(ATCC;CRL2868)を、10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むRPMI培地中での薬物処理の1日前に、96ウェルプレート(Greiner BioOne 655090)に播種した。翌日、CELIGO Image Cytometerの明視野画像化を使用してウェルを無標識で画像化し、初期細胞数を決定した。その後、細胞を、DMSO、単一の薬物(オシメルチニブおよびCBP/p300ブロモドメイン阻害剤の各々)、または100nMのオシメルチニブおよび1つのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤の薬物組合せで処理した。薬物濃度は、下記に示されている。プレートを、明視野モード(CELIGO Imaging Cytometer)を使用して数週間にわたって定期的に画像化して、各ウェルの細胞増殖を経時的に追跡した。増殖培地および処理物質を、週2回補充した。HCC827の薬物および濃度:100nMオシメルチニブ(EGFR阻害剤、LC Laboratories;O-7200)、およびCBP/p300ブロモドメイン阻害剤については:1μM化合物A、0.2μM化合物C、0.2μM CCS1477(ChemiTek;CT-CCS1477)、1μM FT-6876(「CBP/P300-IN-8」、MedChemExpress;HY-136920)、および0.2μM GNE-781(MedChemExpress;HY-108696)。細胞数は、CELIGOソフトウェアに組み込まれている「直接細胞計数」分析ツールを使用して明視野モードで決定した。
【0245】
図9A~9Eは、21日間にわたるHCC827細胞数の評価を示す。CBP/p300ブロモドメイン阻害剤[(A)化合物A、(B)化合物C、(C)CCS1477、(D)FT-6876、および(E)GNE-781)]は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、オシメルチニブと組み合わせると、100nMオシメルチニブに対する薬物耐性の発生を防止する。DMSO曲線および100nMオシメルチニブ処理の時間経過は、すべての条件が並行して実行されたため、パネル9A~9Eでは同一であることに留意されたい(DMSO:18ウェル、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤:各々6ウェル、オシメルチニブ:12ウェル、およびオシメルチニブ+CBP/p300ブロモドメイン阻害剤のすべての組合せ:12ウェル、平均±SD)。
【0246】
結果:
図9A~9E:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、それ自体ではHCC827細胞数に対して効果を示さない/効果があったとしても弱いが、100nMオシメルチニブは、細胞増殖を初期には阻止する。長期間培養では、オシメルチニブのみで処理した場合、HCC827細胞は再増殖するが、様々なCBP/p300ブロモドメイン阻害剤との同時処理は、21日間の調査時間にわたって再増殖を完全に防止する。
【0247】
実施例11
物質および方法
細胞増殖の無標識決定:
2000個のHCC4006(ATCC;CRL2871)を、10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むRPMI培地中での薬物処理の1日前に、96ウェルプレート(Greiner BioOne 655090)に播種した。翌日、ウェルを、CELIGO Image Cytometerの明視野画像化を使用して無標識で画像化して、初期細胞数を決定した。その後、細胞を、DMSO、単一の薬物(オシメルチニブおよびCBP/p300ブロモドメイン阻害剤の各々)、または100nMのオシメルチニブおよび1つのCBP/p300ブロモドメイン阻害剤の薬物組合せで処理した。薬物濃度は、下記に示されている。プレートを、明視野モード(CELIGO Imaging Cytometer)を使用して数週間にわたって定期的に画像化して、各ウェルの細胞増殖を経時的に追跡した。増殖培地および処理物質を、週2回補充した。HCC827の薬物および濃度:100nMオシメルチニブ(EGFR阻害剤、LC Laboratories;O-7200)、およびCBP/p300ブロモドメイン阻害剤については:1μM化合物A、0.2μM化合物C、0.2μM CCS1477(ChemiTek;CT-CCS1477)、1μM FT-6876(「CBP/P300-IN-8」、MedChemExpress;HY-136920)、および0.2μM GNE-781(MedChemExpress;HY-108696)。細胞数は、CELIGOソフトウェアに組み込まれている「直接細胞計数」分析ツールを使用して明視野モードで決定した。
【0248】
図10A~10Eは、21日間にわたるHCC4006細胞数の評価を示す。CBP/p300ブロモドメイン阻害剤[(A)化合物A、(B)化合物C、(C)CCS1477、(D)FT-6876、および(E)GNE-781)]は、EGFR阻害剤の非存在下では、EGFR突然変異NSCLC細胞の細胞増殖に影響を及ぼさないが、オシメルチニブと組み合わせると、100nMオシメルチニブに対する薬物耐性の発生を防止する。DMSO曲線および100nMオシメルチニブ処理の時間経過は、すべての条件が並行して実行されたため、パネル(A~E)では同一であることに留意されたい(DMSO:18ウェル、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤:各々6ウェル、オシメルチニブ:12ウェル、およびオシメルチニブ+CBP/p300ブロモドメイン阻害剤のすべての組合せ:12ウェル、平均±SD)。
【0249】
結果:
図10A~10E:CBP/p300ブロモドメイン阻害剤は、それ自体ではHCC4006細胞数に対して効果を示さない/効果があったとしても弱いが、100nMオシメルチニブは、細胞増殖を初期には阻止する。長期間培養では、オシメルチニブのみで処理した場合、HCC4006細胞は再増殖するが、様々なCBP/p300ブロモドメイン阻害剤との同時処理は、21日間の調査時間にわたって再増殖を有意に遅延させるかまたは完全に防止する。
【0250】
実施例12
この異種移植例は、上記の実施例7に沿って実施した。したがって、200万個のNCI-H1975細胞(ATCC;CRL5908)を、NMRI-ヌードマウス(Janvier)の両脇腹に注射した。より大きな腫瘍が約200mm3の容積に達した際に、マウスを処置群に分配した。マウスを、ビヒクル(pH4酢酸塩緩衝液0.1M中0.8%(容積)DMSO(CAS[67-68-5]);5%(容積)NMP(CAS[872-50-4])、4.2%(容積)DMA(CAS[127-19-5])、90%(容積)の40%(重量/容積)Captisol(CAS[182410-00-0]))、90mg/kg化合物C、2mg/kgオシメルチニブ(O-7200 LC Laboratories)、または90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(事前混合)で1日1回経口処置した。ノギスを使用して、腫瘍容積を週2~3回測定した。腫瘍容積は、以下の式を使用して算出した:より大きな腫瘍直径×より小さな腫瘍直径の2乗÷2。平均腫瘍容積の線形フィッティングに基づき、曲線の傾きを回帰分析(両側)で比較した。オシメルチニブ群とオシメルチニブ/化合物C群との間に有意差が検出された。ビヒクル処置と化合物C単一作用剤処置との間には有意差を観察することができなかった。
【0251】
応答は、時間tにおける腫瘍容積変化をその基線と比較することにより決定した:腫瘍容積変化%=Δ電圧=100%×((Vt-V初期)/V初期)。最良応答は、t≧6日のΔ電圧の最小値だった。各時間tについて、t=0~tのΔ電圧の平均も算出した。最良平均応答は、t≧10日でのこの平均の最小値であると定義される。この指標は、応答の速さ、強さ、および耐久性の組合せを単一の値で捉えるものである。応答基準(mRECIST)は、RECIST基準21から取ったものであり、以下のように定義した:(この順序で適用される):mCR、最良応答<-95%および最良平均応答<-40%;mPR、最良応答<-50%および最良平均応答<-20%;mSD、最良応答<35%および最良平均応答<30%;mPD、他の未分類のもの。14日間の治験を完了する前に有害事象のために犠牲にしたマウスは、データセットから削除した。
【0252】
図11(A)は、経時的にプロットされた、EGFR突然変異NCI-H1975異種移植片の平均腫瘍容積(+SEM)を示す。4つの異なる処置群が図示されている:ビヒクル;交差丸;n=8、90mg/kg化合物C(白丸;n=6)、2mg/kgオシメルチニブ(黒丸;n=9)、または90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブ(半黒丸;n=12)。処置期間にわたる平均腫瘍容積の線形回帰フィッティングを実施し、オシメルチニブおよび化合物Cと組み合わせたオシメルチニブの傾きを比較した。2群間の傾きに有意差を検出することができた。傾きは、それぞれ、オシメルチニブ群では正(+6.4)であり、組合せ群では負(-7.4)であった。
図11(B)には、4つの処置群すべての最良平均応答がウォーターフォールプロットで示されている(ビヒクルは灰色、90mg/kg化合物Cは白色、2mg/kgオシメルチニブは黒色、および90mg/kg化合物Cと組み合わせた2mg/kgオシメルチニブは四角)。破線は、初期腫瘍容積の30%の低減を示す。
【0253】
結果:結果は、上記の実施例7で得られた結果を裏付ける。今回は、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤として、CCS1477の代わりに化合物Cを使用した。2つの阻害剤は、構造的には関連していないが、同じ機能を有する。したがって、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤を、EGFR阻害剤の非存在下で使用する場合、EGFR突然変異NSCLC異種移植腫瘍増殖には効果を示さない。しかしながら、CBP/p300ブロモドメイン阻害剤(実施例7ではCCS1477、本実施例では化合物C)を、EGFR阻害剤(ここではオシメルチニブ)と組み合わせると、療法に対する応答が有意に増加し、腫瘍サイズは療法の経過にわたって非常により良好に制御される。
【配列表】
【国際調査報告】